運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-11 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十一日(金曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○戦争による遺族及び傷い者に関する  件 ○引揚促進に関する件   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) それでは只今から委員会を開会いたします。国会が休会に入る前に皆さんの御協議を得まと、戦争犠牲首に対する国家補償の問題につきまして、御承知通り三月三十日、参議院は全会一致を以て政府のこの戦争犠牲者への国家補償に対する施策を一日も速かに施すべきであるという決議案を通過さしたのであります。引続きまして、皆さんの御要望従つて、私は関係当局といろいろ折衝をして参つておるのであります。再開に当りまして、僅か二十日間の国会開催日程の間には、なかなか急速にこの問題の解決はできるとは思われないのでありまするが、併し昨日も関係方面に参りまして、いろいろ折衝をして参つたのでありますが、結局は政府がどういうふうな腹構えを持つておるか。結論において日本政府の出方如何というのが関係方面側の意向でもあつたのでありまして、それで今日の段階におきましては、吉田総理大臣代り官房長官のお出でを願つて、いろいろ質問したいと思いますし、又この問題は当然法文化しまするというと、その裏付としての予算がなければならないので、これに対する大蔵省の御意見として、その腹構えについて伺いたいと思います。只今河野主計局長が見えておられますので、この戦争犠牲者に対する国家補償その他の法案に対する裏付になる予算というものは、次の国会その他において、或いは補正予算について相当考えておられるかどうか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  3. 河野一之

    政府委員河野一之君) お答えいたします。戦争犠牲者という言葉が適応いたしますか、どうですか、これは言葉使いようにもよるのですが、旧軍人軍属遺家族等につきましては、過去における国家の財政的なり或いは社会的なりのいろいろな施設が必ずしも十分であつたとは思わないのでありまして、今後講和を控えまして、この面において一段と躍進しなければならないことと存じております。この範囲、その程度等につきましては、いろいろ考え方もあるのであり、又財政上の制約等もあるのでありまして、私どもといたしましては、できるだけ厚いことをいたしたいと考えますが、又そういう方面の点も考え併せまして、できるだけ不公平のないように、均衡のとれたものにいたしたいと考えております。今度の補正予算にこれを計上するかどうかというお尋ねでございまするが、只今補正予算措置につきまして、特に具体的な作業をいたしておるわけではございません。いろいろの問題もございまするが、併し早晩この問題について手を触れて考えて見なければならん、こういうふうに考えておる次第でございます。
  4. 木村守江

    木村守江君 只今主計局長お話でありますが、戦争犠牲者に対しては必らずしも十分であつたとは思わないというようお話でありましたが、私は必らずしも十分というよりも、もつともつとひどくて、全然かまつていないというくらいが本当のところではないかと思うのです。そういうふうな必らずしも十分でないと、十分である部分があるかのような話し工合ですが、それであつたら非常な認識不足だと私は思うのです。そういうふうな生ぬるい考えではなく、これは全く十分でない、必らずしも十分ではないではなく、全く十分でないということを固く心にとどめておいて、そしてこれの実現方をどうしてもやつて行かなくちやいけないというような御決心があるかどうか、そのことをお聞きしたいと思います。
  5. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私ども戦争犠牲者という言葉を使うのがいいかどうか、非常にこの範囲が不明確でありますので、実は私どもといたしましては、できるだけそういう言葉を避けておるわけでありますが、一番おつしやつておる点は旧軍人軍属等遺家族の問題だと私は思うのであります。この問題につきましては、これも観念の持ち方でありますが、引揚の問題の重要なる一環でありまして、従来未復員者給与法、当委員会の非常な御功績でおやりになりました未復員者給与法或いは生活保護法或いは更生援護厚生省所管施設、そういつたところで或る程度私は全然なかつたとは言えないと思つております。件しそれが十分であつたかというと、私は決して十分でなかつた、考うべき幾多の問題を残しておる。従つてこの面について十分努力しなければいけない、こう思つておる次第であります。
  6. 木村守江

    木村守江君 戦争犠牲者の問題ですが、これは戦争犠牲者と呼ぶ呼びようが、戦争犠牲者と呼んでも呼び方なんか問題でないと思うのです。これは本当戦争のために自分の体を不自由にしている戦傷者或いは戦争によつて遺家族になつた人たち、そういうものの呼び方などは問題じやないと思うのです。実際問題として、戦争によつてつた実際の状態考えたとき、そういう呼び方などに拘泥されずに、実際問題として早急にこれは援護しなければならない問題だと思うのです。それから勿論いろいろの方面で今まで援護して来たので、全然やつていないのではないということはわかりますが、そのやり方についても、これは常識的に考えても本当の目薬ぐらいの状態であつて、実際の援護という点までには行つていないと思うのです。そういう点をどうしてもこれは早急にやらなければならない大きな問題だと考えるのですが、大蔵当局としてはこれをどうにかして実現さしたいというお考えがありますか、どうか、その決意のほどをお漏らし願います。
  7. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私は戦争犠牲者という言葉についてどうということはございません。考えると非常に広いものでありまして、例えば戦争で家を焼かれていても戦争犠牲者だというふうに言うかたもあるのであります。或いは空襲で怪我をしたというかたも戦争犠牲者という言い方をなさるかたがあるものですから、本問題として一番重点を置かれて戦争犠牲者とお考えになつておることは、旧軍人軍属ではあるまいかと私は申上げたのでありまして、言葉の綾にとらわれておるのではないのであります。従来戦争犠牲者と申しますか、こういつた関係のものにつきましては、一般的な社会保護対象として取上げられておつたのです。生活保護法を中心とし、母子保護法児童福祉法とか、そういつた中でできるだけこういう方面について予算をそちらのほうに廻すよう措置をとつて来たことは事実でございます。これはもう国会においても、そういうような御要望がございましたし、できる限りの措置をしたのでありますが、ただ如何せん絶対的の金額が少いと思われますし、国家で又こういつた一般的な支出はこれは特殊な時代、特殊な環境にあり、特殊の事情にあるおかたに対して、痒い所に手が届くというふうに十分に行き渡らなかつたという憾みはどうしても救い得ないと思うのであります。例えて申しますれば、旧軍人傷痍軍人というものが、例のあのスキヤツピンによりまして恩給がなくなりまして、現在傷疾増加恩給の分しかないわけでありますが、その額が伊置かれておる、それでなければ生活保護法に行くんだと、こういうよう一般的な支出で救い得る面もありますけれども、なかなか思うに任せなく、従つてそういつた特殊的なものについては特殊的な取扱いをしろというのが当委員会その他のおつしやることであり、又国民の気持でもあろうと思うのであります。私どもとしては、そういうラインに沿いまして、できるだけ努力いたしたい。勿論これは社会保障制度の重要な一環でもありますし、又国民としては当然この点について関心を持つておることであり、政府としてもその線に沿つて十分努力いたしたいと、こう考える次第であります。
  8. 木村守江

    木村守江君 大変に丁寧な御答弁がありました。非常に有難い次第であります。併しですね。戦争犠牲者、これは言葉が悪いのですが、そういうものに対して一般援護施設でやつているんだというような話ですが、例えば傷病兵に例をとつて見ましても、一般の公務員の公職によつて受けた、いわゆる不具者取扱い方が非常に違うと思うのです。そういう点が一番問題だと思うのですが、そういうふうなことを、戦傷者についても、或いはその遺家族についても、一般援護施設に均霑的に浴さしめるのだつたら、戦争犠牲者のみを除外するというような方向であつてはいけないと思うのであります。少くともその線までは早急にやらなければならない義務があると思うのです。その点は如何でございましよう
  9. 河野一之

    政府委員河野一之君) お話は少し具体的になりましたのでありますが、例えば今のお話の例につきましても、現在傷痍軍人は平均いたしまして、確か二千三百円ずつの年金であると思うのであります。これは終戦の年の十一月の二十四日でありましたか、指令が出まして、一般的な軍人であるが故に特別の取扱いをしちやいかんというあの指令に基くものでありまして、その後この増加恩給に相当する分は、一般的の厚生保険等におけるいわゆる公務傷病による年金の給付と権衡を合してずつと来ております。併し御承知よう軍人のまあ何と言いますか、厚生保険地におきまして、これは前収を基礎にしてやつておるのでありまして、軍人の場合に前収というものをどう考えるのか、そういう点も非常に疑問の点もございますし、又階級によつてこれを区別するということが、今の社会感情としていいのか悪いのか、こういつた点につきまして、相当検討を要するものがあると思うのであります。一律に現在のものを何倍するというよう考え方もありましようが、やはりそこに終戦後における或る秩序或いは社会感情というものを基礎にして、どの程度であろうかということを検討する段階に現在なつておると思うのであります。せいぜいそういうふうなラインで検討しておる段階でございますからして、決してなおざりにしておるのではないということを御了承願いたいのでございます。
  10. 小酒井義男

    小酒井義男君 主計局にいろいろ質問をしておるのですが、やはりこれは根本的な政府態度が、私はこの前の決議をしておるわけなんですが、そういう問題に対して、誠意を以てこれを実行しようという熱意の問題が私は根本的な問題だと思うのです。そういう点について、何か先ほど官房長官かどなたかが出られるようお話つたのですが、まだ来られないですが。
  11. 千田正

    委員長千田正君) 二時半に来ます。
  12. 小酒井義男

    小酒井義男君 それじやそのときに、どうせこういう政府態度についていろいろ質問して見たいと思います。
  13. 内村清次

    内村清次君 この問題はやはり先ほど小酒井委員も言われましたように、政府がどういうふうな基本的な態度を以て臨んでおられるかということが一番大事なんですが、これはもう第二国会以来、終戦後になりまして、あの混乱の時代は別といたしまして、第二国会以来政府はこの点に対しては努力いたしておりますということは、これはもう局長も、大臣に聞いても、総理大臣に聞いてもその通りですよ。ところがその努力しておらるるその政府が、どこでこの障害があつておるか、その事情一つ発表して頂きたいですね。勿論政府のほうで法律も作つてくれないし、だからといつて、そのまま終戦以来六カ年間にもなりまして、講和態勢はだんだん整つて来ておるというよう情勢下におつて、私たち遺家族の大会に出席をいたしましても、これは国内的なそういう対象かたがたと接しましても、一番戦争の直接の犠牲者という家族かたがた、又傷痍者かたがたの切実な叫びというものは、これはもう私たちが申すまでもないことである。直接の犠牲者である。先ほど河野局長は、今範囲が非常に漠然としておるのだというようなことを言つていらつしやるが、私たちが先ず狙つておるのは直接の犠牲者ですね。結局旧軍人或いは軍属かたがたです。そういうようかたがたに対しまして、これは当時赤紙一つで出て行つた。そういうようかたがたがどこにその罪があるかという問題ですね、そうして今生活の支柱を失つて路頭に迷つておられる。路頭に迷つておられるならば生活保護法でいいじやないかというようなことでなくして、直接そういうよう犠牲にみずから国家のためにあつておられるかたに対して、国家が補償してやるということは当然なことであつて、而も各そういうよう戦敗国におきましても、国家補償の途ができておる今日、どうして我が国にそれができないかという問題、そこで集約して言いますと、政府努力しておるというけれども、どういう努力をしておられるのかという問題ですね。先ほどこちらのほうでは、法律問題も、立法措置がだんだん各委員の御熱誠によつてできつつあるのだが、そのあつておる今日の並行作業として、大蔵省において予算関係を、これだけは一つ今回はこの法律案裏付けするよう予算を確立しようじやないかというふうな話合が一体できておるかどうかですな。政府がどこまでこれを関心を持ち、関係当局に即ち交渉して、これだけは一つ確立して行うこという基本的な精神を持つておられるかどうかということと、それから予算裏附をどれくらいまで一つ補正予算のときでも確立してやろうというようなことをお考えであるか、そういうことを一つ局長から説明して頂きたい。努力しておる、努力しておるということは、もうあなたから聞かんでも、各大臣から今まで私たちは聞いておるのですわ。問題はどれくらいの額ほどを考えておるのだというようなことを率直に言つて頂きたいと思いますがね。
  14. 河野一之

    政府委員河野一之君) どこにも障害というようなものは別にあるわけじやないのでありまして、要するにこれは非常に権衡の問題でもあり、その権衡とりかたによつて非常に金額の多くなるものであります。今内村さんが言われましたように、直接戦争犠牲者という者をどこに限るか、軍人軍属だけに限る、こういうものも一つ段階でありまするし、或いは徴用で行つた者をどうするか、或いはドイツにおけるがごとく、工場等における者もどうするかという、いろいろな範囲の問題もありまするし、それから単に遺家族のこと、或いは傷痍軍人のことだけでいいのか、悪いのか、まあその辺に限るといたしましても、現在百二十万からの遺家族がおられるわけでありまして、仮にこれは根拠あるわけではありませんが、一万円といたしましても、年間百二十億円が要るわけでありますから、並々ならん財源の問題になるわけであります。それから引揚のかたなんかを考えて見ましても、現地において粒々辛苦の資産をそのままにして帰つて来られ、そうしてそれを向うへ放棄されてあるわけであります。こういつたことも、生命身体のほうが財産より大事だという考え方もございまするけれども、こういつたことも全然考えられなくてもいいものか、考えられなくても、社会環境上いいものであるか、そういつた範囲に亘つておりますので、なかなかその見通しが付かないのであります。勿論政府独断できめるわけでありませんし、各種の機関に御意見を拝聴しなければならんと思いますが、現在厚生省でも案を立てておられるようであります。或いは政党の政務調査会あたりでも案があるようでありますし、これはいろいろお考えに基いておるわけでありまして、そういう案を総合調整して、そうして予算でどういうふうな程度であるならば、まあ妥当であろうかというようなことを検討して、そうして最後の決定をしなければならん、又それについて国会の御意見も拝聴しなければならん、こういうようなことであろうと思うのであります。講和その他にからみまして、いろいろな問題もございますが、これは国内問題として一番重要な問題であるということは私どもよく認識しておるのでありまして、先般来関係当局がたびたび集まりまして、協議をいたしておる段階でございます。できるだけ速かに成案を得たいというふうに考えておる次第でございまして、決して口から出まかせに努力々々と申上げておる次第ではないことを御了承願いたいのであります。
  15. 千田正

    委員長千田正君) 河野局長は二時から用事があつて行かなければならないのでございますし、政府態度につきましては、吉田首相代り官房長官が二時半に来られますから、そのとき改めて御質疑を願いたいと思います。なおその後の引揚状況につきまして倭島局長から……。倭島局長も二時から御用事があるらしいのですが、一応簡単に御説明を承わつて置きたいと思います。その後国際情勢が非常に変つて来ておることは皆様御承知のことでありますし、極東に限つて現在動乱をめぐる戦鬪が継続されておる状況下において、我々国民として常に心配しておるのではありますが、ソ連に残されておるところの抑留者並びに中国に、共産制度下においてなお且つ戻ることのできない我々の同胞に対するその後の状況について、外務当局としておわかりの点だけ一つ説明願いたいと思います。
  16. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 御説明申上げます。引揚問題の経緯については皆さんよく御承知通りでございますが、その後ソ連政府の方からは司令部を通じて何ら正式の通牒も説明もございません。なおこの問題は昨年以来結局国際連合で取上げられることになりましたので、現在の段階といたしましては、国際連合で本問題の解決を急いで頂くということを期待する次第でございますが、国際連合のその後の動きでございますけれども、御承知通り昨年の十二月の総会の決議によりますと、四月三十日までに、第三次世界大戦捕虜を未だに抑留しておる国があるならば、又はその抑留中に捕虜で亡くなつたというよう関係があるならば、その関係国から国際連合報告を出す、その報告を出す期間が今年の四月三十日になつております。実はどういうよう関係国から、どういう報告が出たかということは、政府としても一日も早く知りたいと思つておりまして、これは司令部の然るべきところを通じて、本件がわかつたならば一日も早く知らして頂きたいということで今お願いをしておりますが、残念ながら未だにこの結果を知ることができませんのです。それから昨年の十二月の決議によりますと、もう一つその報告の問題のほかに、今年の五月以後、適当なる機会に国連引揚に関する特別委員会が招集せられまして、この引揚問題解決に当るということになつております。この三人委員会任命につきましても、当初の計画では、その委員任命国際赤十字が推薦するものによる、若しもそれができない場合には国連のほうで任命をするということになつてつたのでありますが、最初赤十字のほうはこの任命自分らのところでやるのは適当でないと思われるからということで断わつたことはわかつておりますが、その後果して国連のほうで誰が任命ぜられたかということと、それからもう五月になりましたが、果してこれがどういうふうに会合を開く予定その他になつておるかということも、政府として一日も早く知りたいことでございますので、これを関係の筋を通じて是非早く情報を得たいと思つておりますが、残念ながら今日も出る前に更に確めて参りましたけれども、今日までのところまだその情報が得られません。併しながら更に私今日も重ねてお願いをして置きましたから、何らかの情報は間もなく得られることだと思います。なお国連のこういうような活動を控えまして、日本政府のほうとしましては、国連にいろいろ本問題解決のために努力して頂くのに、少しでも頼りになる資料或いはその他のものがあれば提供したいと思つておりまして、その問題はいろいろ現在用意をしております。それからこの引揚の問題につきまして、皆さん御存知じの通り他方講和条約がいろいろ考えられており、ダレス特使日本へ二度おいでになりました。その際にこの問題の重要性というものにつきましては、総理から特に又御説明を願いまして、何らかこの問題の解決促進についてお考え願いたいということは十分申入れがしてございます。その結果等につきましては、講和条約のあり方がまだはつきり見通しが付かない状況でございますので、どういうよう措置が講じられるかわかりませんが、講和条約の問題に関連しても引揚関係は十分考慮せられることだろうと我々考えております。それが大筋の引揚の問題でございますが、曾つて委員会でも御質問がございましたので、附加えて御説明を申上げたいと思いますのは、朝鮮に、もともと日本人であつた婦人朝鮮の家庭に入つて、その後朝鮮籍を取得した婦人が四、五百名釜山に待機して、日本に帰りたいという問題につきまして、どうなつておるかという御質問を受けたことがありますので、それの最近の状況を一言申上げますと、現在政府承知しておりますこういう関係調査をしております人は全部で約六百八十名ございます。その中の大部分は現在身許調査を終りまして、相当この中の大部分の人が間もなく日本のほうへ引揚げて来られるのではないかと思いますが、ただこの中には実際日本人でなくて、朝鮮人日本人の名前を詐称しておるような人があつたり、それからどうも身許調査をしても全然わからない、日本の内地に調査する根拠がないというのがあつたり、又多少の根拠があつても、これを扶養したり、引取つたりするということの、そういう意思がないというよう状況のかたも相当ございますので、これらの人たちにつきましては、すぐ引揚ができるというところへ行かないと思いますが、すでに調査を終えました相当部分の、この今申上げました大部分のかたについては、司令部のほうに政府として調査の結果を報告しておりますし、いずれ間もなく日本のほうへ帰つて来る許可が出るのではないかと思つております。大体最近の問題を御報告申上げます。
  17. 内村清次

    内村清次君 次に昨年斎藤中山代表及び只今説明を頂きました倭島局長が、国連に使いせられましたその当時の御努力及びサンプソン夫人等の御努力によりまして、この御報告のあつた点は、この四月か、五月かには日本にその調査団を派遣するという決議がなされたということを私たちは聞いておりまして、その後両代表も、又倭島局長各地の未帰還者留守家族に対しましても、この現地報告がなされておりまして、恐らく全国の留守家族かたがたも、その日の到来することを一日千秋の思いで待ち佗びておられることだとたちは信じております。勿論私たちもその一環といたしまして、その御報告、又我々も国民代表の立場から報告をしておつたわけでありまするが、只今情報によれば、まだ調査団の派遣も、確定した日にちも情報がないというようなことでありまするが、これは今一度やはり政府のほうにおきましても、一つ積極的に調査団の来朝を早くして頂くよう方法をとる必要があるのではないかと思うのでありますが、そういうよう方法につきまして、何か具体的な或いは又我々委員といたしましての要望、そういう点があるかどうか、その点が第一点です。それから第二点といたしましては、政府のほうにおきましても、やはり調査団が来られますれば、相当な資料を提供しなくてはならないのでありますが、その資料がすでに現在は完備しておるかどうか、その完備の程度におきまして、これは今日は共産党の議員のかたは来ておりませんが、すでに問題になつておる点ですが、そういうよう委員会の空気を察せられたところの科学的な調査というものが、はつきりと政府においてできておるかどうか、先ずこの二点から伺います。
  18. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) お答え申上げます。今の第一点の質問でございますが、恐らく斎藤さん、中山さん両代表各地で御説明せられたときにもそうであつたと思いますが、実はその国連調査団が来るというのは、これは多少遅れる、四月というようなことでなかつたんではないかと私は思います。つまりその点をちよつと御説明申上げますと、昨年の国連決議では、第一、つまり二段階に分れておりまして、第一段階が四月末までに関係国報告を出す、そうして国連引揚についての特別委員会、これは三人で構成するわけですが、その委員会は五月以後に集まるということになつておる。それでできれば五月以前に組織をするということですが、我々の承知しておるところでは、先ほど申上げましたように、まだ組織されておらないのじやないか、或いは果して任命されているかどうか、その点がまだはつきりしておりませんが、つまりはつきりその委員会が集まつて会合を開くというのは五月以後になる、なぜかというと、四月末までに報告書が来ますから、その報告書を調べて、その上で必要な措置をとろうじやないかという趣旨でありますから、どうしてもその委員会が集まつていろいろと活動を開始するのは五月以後になる。従つて何ぼ早くても我が国に来てもらえるというためには五月以後になります。従つて恐らく斎藤さん、中山さんの御説明も、早くても五月以後ということになると思いますが、今一応の私の見当を申上げますれば、もう五月に入つておりますし、まだどの程度に組織され、活動を開始しているか、まだはつきりしない程度でございますから、来て頂くとしても、もう少し遅れるのじやないかと思います。それでもう一つ御参考までに申上げますと、大体今年の九月の中頃ら今年の総会が開かれます。今年の九月中頃から開かれる委員会報告をしなければならん。従つて遅くとも九月初めまでには、大体のその委員会調査或いは適当な措置をとるなら、その措置を一応完了しなければならん。従つて五月から九月までの間になります。我々としては今の御意見ように、一日も早く来て頂きたいと思つております。それではその委員会にこちらへ来てもらうようにするためにどういうよう措置をとつておるかということでございますが、これは実は口頭では頼んでおります。殊にこの引揚問題を昨年国連に提起してくれた国が、米国、英国、濠洲の三国でございますし、特に米国のほうを通じまして、その問題でまあ来てもらうように頼んでおります。口では頼んでおります。それからこれはまだはつきり具体的に申上げかねますが、近く国連に参考資料を手紙で日本政府から送ることになつておりますし、その中にも是非この引揚特別委員会に来て頂きたいこと、日本のいろいろ引揚関係事情調査して頂きたいということは勿論書かれる予定になつております。そういうことで具体的に実際上口頭ではすでに連絡をしてありますし、それから書面を以つても近く政府で又その要請をするということになつております。
  19. 内村清次

    内村清次君 先ほどの数字ですね、いわゆる未復員者の数字ですね、そういう点は科学的に調査しておられるかどうか。
  20. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) ちよつと申落しましたが、その点はまあ御承知通りソ連のほうから何とも通知も何にもありませんので、政府といたしましては、国内でできるだけのことをする、できるだけのことと申しますと、大体二つのことでありますが、引揚者のかたかたからいろいろ聞くということと、留守宅家族の届出その他で調査するということで、現在までに約三十二万名の氏名がわかつております。それが今まだ整理中でありまして、もう少し数字は殖えるかと思いますが、具体的にいわゆる未帰還者という人たちの氏名のわかつた者でも三十二万名現在ございます。そういうよう関係資料をいろいろ整理をしておるわけでありまして、その一部は間もなく国連のほうへ政府から参考資料として提供する、勿論こちらへ向うから調査のために来てもらうときには、更に十分な資料を提供したいと思つて今用意をしておるところでございます。
  21. 内村清次

    内村清次君 今一点。それから最近の新聞でしたか、ソ連の何ですか、今軍編成の中に日本軍の編成をなしておるというようなことをちよつと新聞で私たちも見たのですが、これは丁度選挙中でありまして、私たち各地におきまして、そういう質問を受けた。そこでこれは留守家族の一様に考えておりますことは、そういうような、三十二万とあなたがおつしやつておるようなそういう未復員者のうち、一つの軍事行動に使用さるるような編成部隊の中に或いは動員されておりはしないか。又将来動員されるような即ち憂いはないではなかろうか、こういうところで非常に心配しておる。そこで各地の世話課を通じまして、その後の未復員者のかたがた留守家族に対するところの即ち同腕の通信、そういう通信が集約されて外務省関係のほうに入手されておるかどうか。どういうよう自分たち現地において動静をしておるかというようなことの大あらましのようなことが世話課を通じて、留守宅から世話課に通ずる、世話課はあなたのほうに通ずるというような即ち動静がなされておるかどうか。こういう点につきまして御説明願いたい。
  22. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) お答え申上げます。先ほど三十二万と申しましたのは、これは中共地区も含む数でございますし、それからその中にはいずれ適当な時期に発表があると思いますが、死亡者が相当多いという点を附加えて申して置きたいと思います。それからソ連軍云々の件でございますが、我々は何らそれについての情報を持つておりません。それからなおシベリア或いは満州等からの留守宅家族への通信についての情報でございますが、これは大体留守宅のほうからそれぞれ関係のところを通して我々のほうへ情報を頂いております。
  23. 千田正

    委員長千田正君) 大体よろしうございますか。
  24. 小酒井義男

    小酒井義男君 今内村委員から質問されたように、ソ連軍ということで当局情報をお持ちにならんということでありましたが、朝鮮戦線に日本の部隊が、これはソ連軍というだけじやなしに、もつと広い意味において、そういうものが動いておるというようなことについては何か情報をお持ちになつておるのですか。
  25. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 全然情報を持つておりません。
  26. 千田正

    委員長千田正君) 倭島局長委員長から二点だけ……。一点は先ほど朝鮮におられるところの日本婦人、これが内地において引取り、或いは扶養する点に確とした証拠がない人は全然入れないという要請でありますかということが一点。それからもう一点は、中共を認めておられるところの英国政府若しくはインドその他を通じて、中共におるところの在外同胞に対しての帰還方、或いはその他について外務省当局が英国政府若しくはインド政府等に対して何か懇請しておられたかどうか。その二点だけをお伺いして置きたい。
  27. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 第一の、全然身寄りのないかたがた並びに身寄りが多少ございましても、どうもそういう人に引取りにくいというような意思表示のあるかたがたについては、まだその人たちについても何ら最後の決定はなされておりません。なされておりませんが、恐らく釜山におられましても、その人たちについては救済の措置が講じられておるわけでありまして、これはむしろ日本に帰つて来られても、又救済の対象になるわけでありますが、現地におつても同様向うで救済を受けておられるわけでありまして、恐らく暫らくまだ現地にとどまられるというようなことになるかも知れません。併しこの点はまだ何ら最後の決定がなされておりません。  それから中共からの同胞の引揚の問題でございますが、従来関係方面を通じてその問題はお願いがしてございます。恐らく司令部から今お話の英国並びにインドの方へもお話を願つたことだろうと思います。その結果についてはまだ承知しておりません。それからなお最近赤十字の代表が北京の方へ行かれた機会がありまして、そういう機会を通じて中共の引揚の問題をお願いしてあります。これもできれば集団的な引揚がしたいというような申入れがしてあるのでありますが、これもまだその結果が判明しておりません。
  28. 千田正

    委員長千田正君) 一応倭島局長に対する質問はこれで打切りまして、内閣を代表しまして岡崎官房長官がお見えになつておりますから、御質問申上げたいと思います。  当委員会としまして、先ほど申上げました通り、この三月三十日、引揚に関する特別委員会並びに厚生委員会全員を以て提案しましたところの戦争犠牲者に対する国家補償を、講和会議以前に政府は速かにその処置を講ずべきであるという決議案全会一致を以て参議院並びに衆議院を通過したのでありますが、その後政府としましては、この問題に対してどういうふうな処置をとつておられるかということと、最近講和会議が近き将来に行われるに際しまして、吉田総理大臣ダレス特使と御会見の際、このいわゆるネツクになつておりますところのAG二百六十号の恩給停止に関する問題と、並びにスキヤツピンの七百五十五号、無差別平等取扱いに関する問題に対する緩和方を、政府当局としては講じておられるかどうかということは、この戦争犠牲者に対する国家補償という、特に遺族、傷痍軍人その他に対する問題は常にこのAG二百六十号並びにスキヤツピンの問題が関係があるために、十分今まで処置が講ぜられなかつたというのが常に政府の御答弁であつたのであります。それにつきまして、当委員会としましても、委員会皆さん要望によりまして、委員長たる私が微力ではありましたが、関係筋と折衝を重ねて来ておるわけであります。昨日も折衝した結果は、一体日本政府はこの問題に対してどれだけの考えを持つておるのかという点について自分らは十分に今までも承知しておらない。だからこの意見については明確を避けたいが、委員会としてはむしろ政府に対してその所信を聞かれたほうがいいのじやないか、こういう意味もありましたので、今日は特にお忙しいところでありますが、吉田総理代りに岡崎官房長官お願いいたしまして、政府の所信のほどをお伺いしたい、かようなわけでお呼び申上げたわけであります。どうかその点について……。
  29. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) これはいろいろ率直に申上げたほうがいいと思うのですが、速記があるとちよつと工合が悪いので……。
  30. 千田正

    委員長千田正君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  31. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて……。
  32. 内村清次

    内村清次君 そこで問題は昨年の十月でしたか、西ドイツのほうでははつきりと戦争犠牲者に対する国家補償をやつておるのですが、詳しい外交事情について、官房長官として西ドイツあたりは一体どういう雰囲気でこういうことを国の法律として制定し、予算も編成せられて、現在もう支給しておるという状態は、これはどういう関係であつたのですか。
  33. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) これは私二つの事情があると思います。一つはあそこが不幸にして東と西に分れておる。そのために東のほうでやつておることよりもいいことを西のほうでやつてやらなければならん関係が出て来る。それからもう一つはドイツ系の、アメリカへ帰化したドイツ系のアメリカ人が、これが非常に有力な人がおられる。数から言いましても数百万人、そうしてなかなか有力な人がいる。そのためにアメリカの国内の国会議員なんかを動かす力が非常にある。この人たちが結束してやれば議員を落すことができますから……。ところが日本の場合には残念ながら二世の数が非常に少い。従つてボートというか、投票権に影響することが非常に少い。ついアメリカの国内で発言をしてくれる人というのが少い。この二つの事情でどうしてもドイツ側のほうが有利になる。又アジアとヨーロッパを同じように見ようと思つても、ヨーロッパ優先主義ということがつい出て来るのは、アメリカの国内にヨーロッパ出身のアメリカ人がたくさんおり、有力だからアジアのほうをやりたくても、これはやれないというよう事情がある。決してドイツの政府のやりかたがうまいとか、まずいとかいうのではなくてそういう国内的の関係が多分にあると思う。それからヨーロッパ、ドイツに対しては、これはおかしな話ですが、非常に尊敬を以て各国の人が見ておる。技術のほうでも、それから学問のほうでも、そういう点が大分実際上は違うのではないかと思います。
  34. 森崎隆

    ○森崎隆君 官房長官のさつきのお話について、ちよつと申上げたいのですが、速記をとめて頂きたいと思います。
  35. 千田正

    委員長千田正君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  36. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて下さい。  私はこの問題で長官にお伺いするのですが、それは今のいろいろな事情において非常にこの問題の法文化、或いは予算化ということは、かなりの相当な困難に遭遇することは前々からわかるのですが、例えば現在厚生省或いは各政党の政務調査会等においては真剣にこの問題について研究をされておると思いますので、内閣直属のこういうものに対する審議会というようなものを作つて、そうして各省並びに各政党の調査会或いは学術研究の中の人たちで審議会というものを作つて講和会議が済んだあとでこういう問題を実施するといたしましても、そういう審議会を作つて慎重に審議するということについては、政府はお考えはありませんか。
  37. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) 只今のところは、政府は先般の両院の決議を持つておりますが、この決議の趣旨には全面的には副えないとしても、幾分でも副うよう努力を試みております。只今のところ、今おつしやつたような審議会というような構想は持つておりませんが、御意見もありますから、その点も考えて見ようと思います。
  38. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御質疑はございませんか。
  39. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 昨日総理大臣が本会議で、講和条約ができた以後に、その講和条約が多数講和になる、全面講和ににならない。その場合にソ連なり、中共なりと不幸にして講和が遅れるというような場合、ソ連、中共におる未復員者の復員については、引続きどうするか、こうするかというようなことを十分ダレス氏にお願いしたというようなことがあつたのでありますが、ただその内容についてはそのときにはお話がなかつたのでありますが、講和ができましても、ソヴイエトなり、中共なりと仮に講和ができていないということは、戦争状態が継続しておるわけで、そういう場合にはやはり従来のよう国連を通す、或いは第三国を通すというふうなことで、引揚げの問題の促進については一歩前進するような連絡なり、機嫌なりというふうなものができにくい。報復というと言葉は悪いかも知れませんが、ソヴイエトなり、中共のほうで、むしろ報復的というような意味で復員を邪魔する、がえんじないというような虞れがありはしないか、むしろそのほうが多くなりはしないかということが心配されるのですが、そこらの点は今の連絡方法、機構の問題、それから今のロシアのほうにそんなことがありやなしやというようなお見通しについて伺いたいと思います。
  40. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) 法律的にはお話通りでして、外交関係が回復しなければ直接の交渉機関はできないわけですから、今までと同じ種類の間接な手段で促進にできるだけ努力するより仕方がないと思いますが、事実問題としては、例えば第一次大戦後、ヴエルサイユ条約ができましたときには、理由は違いますが、世界の二大国であるアメリカと中華民国はあのときは参加しなかつた。それでただほかの国が主部調印してしまいますと、やはりだんだん必要になつて来まして、二年半ばかり経つてから、アメリカも中華民国も講和条約に参加したわけであります。で、世界の多数の国が講和をするということになりますと、勢い残つた国も講和を真剣に考えて、成るべく平和関係を樹立するという方向に向うのが従来では例であります。今度の場合はいろいろな特殊の事情がありましようが、それで私どもはそれほど逆効果があるというふうには余り考えておりません。これは世界的な大きな原因によつてそのまき添えとか、いろいろなことをこうむるということはあるかも知れませんが、この問題だけについて非常に逆効果があるというふうにはむしろ考えておりません。むしろほかの国との講和も促進されるような方向に向うのじやないかとさえ思われます。殊に今と違つて多数の国と平常関係ができて交通ができるということになりますと、いろいろな方面から又情報の入手とか、或いは促進の方法も手広くなつて来ますので、少くとも現状よりは悪くなるということはなくて、むしろ多少でもよくなりつ進むであろうと予期はいたしておるのであります。
  41. 千田正

    委員長千田正君) それでは重ねて官房長官お願いしたいのは、今までの状況から言うと、相当な困難があるとは思いますけれども、是非関係筋の御折衝には特段のお力添えを願いたいということと、それから今の法文化するにしても、なかなか容易じやないと思いますが、各省とも研究されておるでしようし、各政党の調査会の中にも、或いは全般的に考えるか、一つ一つを切離して考えたほうが即時実施に可能であるかというような非常に現実的な問題についての御研究もなさつておるようでありますので、我々委員会としましても、いずれお願いするとは思いますが、内閣自体として、これに対する審議会を速かに設けて頂くような方向に持つてつて頂きたいことを特にお願いいたします。  それからなお今の援護局長の田辺局長は、今度復員局長を兼ねられるということになりまして、一応皆さんに御挨拶を申上げます。
  42. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) 私は従来引揚援護局の仕事を担当しております。今度併せて復員局のほうの仕事を兼ねることになりました。どうぞよろしくお願いいたします
  43. 千田正

    委員長千田正君) 局長にちよつとお伺いしたいのですが、実際今の戦争犠牲者、特に遺族、或いは傷痍軍人という問題があるというと、曾つて軍人軍属、この家庭が殆んど全部でありますので、将来の調査機関にしろ、実施機関にしろ、私どもから考えれば、現在の復員局がそのまま将来のこうした施策機関としての現業機関として働いたほうがいいと思いますが、こういう点について厚生省あたりの考えとしてはどういうふうに考えておられますか。
  44. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) この戦争犠牲者、遺族、傷痍軍人等に対する何らかの施策が行われるということになりまして、それは厚生省でやるか或いは内閣のほうの機関でやるか、いずれにいたしましても、いろいろの資料を集め、証拠書類を揃えて最後の認定にまで持つて行くということについては、これは特殊な対象でありますので、旧軍人軍属関係しておりまする復員局系統が一番適当であろう、又必要なことであると、こう思つております。昔軍人援護があつた時代におきましても、遺族、傷痍軍人に関する申請書については、すべて軍のほうでこの書類を整えまして、陸軍省、海軍省でまとめて、それから恩給局へ送つて恩給局で最後の認定をするという経緯になつております。現在でも傷痍軍人に対する恩給は少額ながら継続しておりますが、その点についての事務的な取扱いは昔と同じやり方でやつております。これはもつと将来どうするかという問題について、なお一層研究はしなければならんと思いますが、そういつた方向が実施の一つの機関として全部引受けるということになるかどうかはわかりませんが、実施する際のそういつた下準備の役割は復員局系統の機関が当るということは十分考えられると思います。
  45. 千田正

    委員長千田正君) もう一つ質問したいのですが、このAG二百六十号、スキヤツピン七百五十五号に相当せずして、今のネツクを或る程度うまくはずして実施できるということは、傷痍軍人年金増額は可能であるというふうに考えます。その点についてはどういうふうな考えになつておりますか。若し我々として今考えていることがあるとすれば、法文化したいというのは、委員会として全般的な問題としては、今岡崎官房長官の言うように容易ではないかも知れませんが、私は傷痍軍人に対する問題はかなり可能であると信じておりますが、その点のお考えは如何ですか。
  46. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) この指令を見ますと、一般傷痍者に対するこういつた年金程度を超えない範囲においてやることは差支えないというふうに書いてあるのです。一般程度というものは、現在のところ船員保険法、癈疾年金法でございますか、その率によつてつております。昔の言葉で申しますれば、第六項症以上でございます、今でもそうなつていると思いますが、第六噴流以上に対しては年金、第七項症、それから款症に対しては、それには一時金ということになつております。この一時金の金額の算定の率なり、年金の算定の率は船員保険法という法律による率と同じになつております。ただ率をかけまする元の、何と言いますか、俸給でございますね、俸給というものは昔の軍人の階級別の、昔の月給を大体基準にしております。大将が五百円で兵隊が八十円、その八十円に対して、年どのくらいかということで計算をしております。大将の場合には五百円に対して、傷の重い軽いによつてつております。但しこの八十円なり、五百円なりというものは今日の物価に適応しておりませんので、そこは今日はたしかその率をかけたものの十倍ということになつております。これは私もよく存じませんが、その当時の俸給額を今日の物価事情に換算したら幾らになるかという計算は、この指令に触れるのじやないかと思います。これは私どものほうの所管でございませんので、恩給局系統のかたに伺つて見なくちやわからんと思います。これは現在では恩給局でやつております。
  47. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御質疑ありませんか。
  48. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) これは御参考までに申しますが…ちよつと速記を止めて下さい。
  49. 千田正

    委員長千田正君) 速記を止めて……。    〔速記中止〕
  50. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて……。  それではこれで散会いたします。    午後三時三十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            森崎  隆君            高良 とみ君    委員            木村 守江君            内村 清次君            小酒井義男君            成瀬 幡治君            飯島連次郎君            杉山 昌作君            鈴木 直人君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    外務省管理局長 倭島 英二君    大蔵省主計局長 河野 一之君    引揚援護援護    局長      田辺 繁雄君