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1951-03-17 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十七日(土曜日)    午前十時四十四分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○引揚促進に関する件  (外地戦犯に関する件)  (在朝鮮日本婦女子引揚に関する件)  (中国甘粛省留用邦人引揚に関す  る件) ○海外抑留同胞救出記念切手発行に関  する請願(第五八一号)(第八一七  号)   ―――――――――――――
  2. 千田正

    委員長千田正君) 只今から委員会を開会いたします。  今週中の委員会以外で、委員長皆様の申合せによつてやりましたことを一応御報告申上げますが、そのうちの最初一つは、例のフイリピン戦犯に対するところの処刑に対する減刑歎願、これは皆様の御協力を得まして先般GHQリーガル・セクシヨンへ行きまして、フイリピン大統領キリノ氏宛に、この委員会委員長名を以ちまして減刑歎願の案文を提示しまして、GHQ許可を得て、更にこの十三日衆議院若林在外同胞引揚委員長と私が参りして、フイリピン大使に会見いたしまして、いろいろこちらの事情を訴えましてお話いたしましたところが、非常に好意的に、皆さん請願書は直ちにキリ大統領にお届けします。同時に今までいろいろ歎願書が来たけれども、これは或る意味においては日本国民を代表した御意見と承わりますから、特にキリ大統領に直接お渡しすると、こういうお答えがありました。そうして結局は個々に対する再審査、なせかと言いますと、あの死刑宣告を受けておる人たちの大部分は、復員局の調べによりますと、殆んど無実の罪で死刑宣告を受けておるという状態なのでありまして、是非これはキリ大統領の再審査において正しい判決、それから寛容のある判決をして頂きたいという旨をお伝えしまして、約一時間懇談してお願いして帰つて参りました。そしてそのときの大使お話にも、どうか我々も懸命にやりますが、日本国民皆さんも遠慮なく、一つこういう問題がありましたならば、個人でもよろしいし団体でもよろしいからどしどし言つて来て頂きたい。そうしてできるだけフイリピン国民の感情もやわらげると同時に、日本国民の意思も伝えたい、こういうお話でありましたから、一応御報告申上げます。  更に先般この委員会におきまして、この戦争犠牲者、特に遺族並びに身体に障害を受けた傷痍者に対する特別立法をしたいという皆さんの御意見もありましたので、西ドイツにおけるところの戦争犠牲者に対する立法関係法案もこの間入手いたしましたので、法制局並びに厚生省或いは復員局、そういうものを中心にして研究しております。更に兼岩議員からの御提案のありました西ドイツ或いはアメリカその他の国のこともよろしいが、ソヴイエトのあれも研究する必要があるのではないかという申入れもありましたし、これは各国法案を研究して、そのうちから日本でどれを適用して行くかという面を研究するために、先般森崎君と私と一緒ソヴイエト大使館を訪ねまして、文化部長に会いまして、ソ連戦争犠牲者に対する立法或いは実際行なつている状況を聞いて参りました。その点の御報告あとから詳しく申上げようと思いますが、大体世界各国同じような状況に行つております。残念ながら日本だけが遺族或いは傷痍者に対しては何らの見るべきものを一つもやつておらない。当然これは道義心から考えましてもやらなくちやならない大きな一つの問題だと思いますので、皆様もこの問題を一つ真剣に御研究願いたいと思います。いずれ案ができましたらそれぞれお手許に御配付いたしまして御研究願いたいと思います。  本日はこの朝鮮事変以来問題になつておりましたところの、朝鮮におりまする日本人のいわゆる朝鮮籍に入つておるところの婦人引揚問題に対しまして、外務省から一応状況の御報告がありますので御聴取願いたいと思います。
  3. 紅露みつ

    紅露みつ君 その前に委員長……、比島の戦犯については委員会としてもかねがね取上げておる問題です。殊に最近委員長衆議院連絡をとられて大変御苦労をかけまして深く感謝しておりますが、ほかの地区人数は少いのですが、濠洲それから仏印濠洲に十一人、仏印に四人となつておりますが、この死刑囚に対しても何らかの方法をとりたいと私ども思うのでございますが、皆さんの御意見は如何でございましようかしら。
  4. 千田正

    委員長千田正君) 非常に結構だと思います。それで殊に仏印関係かたがたと思いますが、やはり佐藤議長宛請願行つたそうです。ところが佐藤議長請願書も受取つておらないので、口頭で、フランス大使や何か自分の友人でもあるから十分考えて上げてもよろしいけれども請願書の形式で来た場合は特別委員会のほうへ付託になる、そこで特別委員会のほうから特に議長にそういう御相談があつたら、いつでもお手伝いいたしますからというお答えをしてあるらしいのです。それで仏印の問題、今の濠洲の問題、それからイギリス関係英領におけるところの問題、こういう問題も相当つておりますので、次々とそういう手を打つて行きたいと思いますから、その点御協力を願いたいと思います。
  5. 森崎隆

    森崎隆君 今の紅露さんの申されたことやはり大切だと思います。フイリピンの問題は感情的な問題もありまして、早期に手を打たなければならんというので先に取上げたのですが、それ以外の地区死刑囚なんかおる場合ですが、必ずしも執行されないとは限らないのでありますので、手続その他の請願手続、すべて同じように時期的にやはり遅れないように一緒にやつて頂くことが当然だと思いますので、紅露さんのおつしやる通り、よろしく是非お願いしたい。
  6. 千田正

    委員長千田正君) それはこの間の委員会でも政府当局から説明がありました通り濠洲死刑囚に対するあれは四名残つておりますが、最近の情報によるというと、すでに今まで全然死刑を執行しておらなかつたけれども、最近に至つて刑場を整理して、絞首台などを用意したという情報があるので、或いは早急にそれを執行されるのじやないかというふうにも見受けられますので、この点は至急関係各国ヘフイリピンと同様に、減刑若しくは内地服役という問題を一つお願いして見たいと思いますから、是非皆さんの御協力を得たいと思います。
  7. 紅露みつ

    紅露みつ君 豪協洲については、この前の委員会でもお話が出たのですが、連絡が大変悪いというお話なんですが、そうして見れば、殊にいろいろな連絡をとる時間もかかると思いまするので、これは是非至急に着手して頂きたいと思います。
  8. 千田正

    委員長千田正君) 来週のうちにでも関係各国代表者に対しまして、フイリピン大使同様にお願いして、何とかこの問題を、内地における服役の問題、それからでき得れば減刑問題等、この二つの問題と、若しそれができなかつたとすれば、いわゆる待遇改善、こちらから申入れることは不当に当るかも知れませんので、いわゆる俘虜規定或いは戦犯規定の内容の範囲において、できるだけの待遇をして頂きたいという請願を、関係各国にお願いして見ようと、こう思つておりますので、皆さんの御協力を頂きたいと思います。
  9. 紅露みつ

    紅露みつ君 よろしくお願いいたします。   ―――――――――――――
  10. 千田正

    委員長千田正君) それでは他に御質問がなければ、この朝鮮婦女子引揚に関する件につきまして外務省から武野課長が見えておりますので、御説明をお願いすることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 千田正

    委員長千田正君) それでは只今から、外務省武野引揚課長から在朝鮮日本婦女子引揚に関する状況報告があります。
  12. 武野義治

    説明員武野義治君) 新聞でも御承知のように、釜山収容所の数カ所におきまして、約六百に近い日本人婦女子が非常な困窮した生活の下に置かれ、そうして一日も早く日本に帰りたいという陳情が出されておるという件につきましては、いろいろな情報で、委員皆様がた十分情報をお持ちと思いますが、私ども引揚課といたしましては、総司令部から四回に亘りまして身元調査要求を受けておるのでございます。本年の一月五日附におきましては、百六十八名の人々、一月八日附には七十一名、二月二十三日には二百六十七名、二月二十七日附を以て七十九名、計五百八十五名の身元調査に対しまして要求を受けたわけでございます。一月の二回に亘りまする調査を実施いたしまして、二月の中旬に総司令部のほうに連絡を申上げたのでありまして、私ども立場といたしましては、日本人の血を持たれたかたがた、特にこういつたような特別な状況から苦難に会われておるかたがた、そうして夫は死亡し或いは行方不明になつておる、今後の生計の問題も非常に心細い、こういうふうないろいろな情勢から、我々といたしましてはできるだけの奉仕をいたしたい、こういう気持でこの問題の調査を担当したわけであります。勿論この調査の実際は、国家地方警察本部連絡いたしまして、そちらのほうからやつて頂いたわけでございまするが、その結果、非常にその困難な問題は全然本籍がなくなつて見当らない、或いは戦災かその他によりまして、非常に見出し得ないという者がかなりあつたようでございます。そうして見出し得ましたものにつきましても、第一回目の調査ではいろいろ郷里におきまして本人を十分に知つておるというところが割合に少くて、親戚縁者その他を歴訪いたしまして、いろいろの要素を確認したという点におきまして、相当の困難があつたようでございましたが、とにかく或る点の項目についてはだんだんわかつてつたわけであります。併しながらこのポイントといたしましては、いわゆる本籍という問題になりますが、只今申上げましたように本籍が見出し得ないというものがかなりあるわけであります。本籍を見出し得た者も、ここにお廻しいたしました書類の二項目から六項目にかけましては、非常に欠けたものがある。例えば渡鮮の時期というような問題につきましても、これはいわゆる終戦向うへ渡つておるというケースが少くないわけであります。そうして終戦後は御承知のように、日本人渡鮮というものは非常に厳禁されておつたわけでございまして、指令にも、一九四六年三月十六日の引揚に関する基本指令が出ましたときにも、その最後附属書第七雑件にございますが、日本国民朝鮮への旅行というものは、日本及び朝鮮占領のために必要不可欠な旅行と認め得られない限りは認められない。又その際に、日本国民個人個人の業務の解決とか、或いは日本国民に関する厚生だとか救護事業というようなために、これを援助する目的で渡鮮するというようなことは、この必須要目とは広められないというような、相当厳格な規定もございますように、日本人としての渡鮮は禁止せられておつた、特別の場合を除いては禁止されておつた。それから朝鮮人として渡航するということも、やはりこの基本指令に基きまして、大韓民国の居留民団がいろいろ書類を取りまとめ、そうして民団は代表国にこれを伝達する、そうして代表団が総司令部許可を得るという一連の手続によりまして、この渡鮮というものが行われた。従つてこの調査をいたしますと、終戦後渡航したという場合には、やはり朝鮮名を以て正式の朝鮮人というような印象の下に、渡航しておる者があるのではないかと私ども考えざるを得なかつたのでございます。従つて終戦後におきましては占領軍の管下におきまして、渡鮮というものが、相当こういうふうにやかましい問題になつておりますときに、現在釜山におる帰りたいという者の中には、かなりのそういう人人もおる。こういう問題につきましては、やはり心から同情はいたしますけれども、一応そうした法規的なバツク・グラウンドを発揮させなければならない状況にあつたわけでございます。又渡鮮の時期も、終戦前というものもかなりございました。従つてこれは終戦前、例えば一九三九年に行つたとか、或いは終戦前数年前に行つた、或いは第一次大戦の直後に行つたという者もございましたが、こういう場合にはやはり鮮籍がはつきりしておるならば、これは朝鮮人として正式に入国許可をもらつて、そうしてこちらへ来たときには、外国人登録令の対象になつて行くという形にならざるを得ないと思いまするが、これも最終的な決定というものは総司令部にございますわけであります。我々はただこういつたいつ渡鮮したか、どういう状況の下に渡鮮したかということに、できるだけ詳細にインフオーメーシヨンを与えたいと考えておる次第でございます。  それから次に正式結婚内縁の妻かというような問題もございますが、非常にデリケートな問題でございまして、勿論内縁の場合には、戸籍が残つておるわけでございますが、これが終戦前に向うへ行かれた、そうして内縁状況にあるという場合丁には、日本人としての帰還ならばこれは問題はないわけでありますが、御承知のように日本人として帰る場合には、朝鮮の、南鮮政府のいわゆる証明書というものが出たわけでございます。いわゆる退去証明書というものが出たわけでざいますが、この退去証明書は、朝鮮事変以後は確かにこれは停止されておるのではないかと私は記憶しておるわけでございますが、従つて退去証明書がないという場合には、これは本人がたとえ内縁の者であると主張しても、やはり調査をしなければならないという問題が起つて来る。もう一つは、その子供の問題でありますが、子供も十九ぐらいの子供もあつたり、相当大きな子供もございます。小さい子供もございますが、これなどはやはり朝鮮籍に入つているという者が多いと思います。というのは、内地調査いたしましても、こちらに残つておる家族は知らないというのが大部分でありますが、一人ぐらいならあれだが、その後生れた二人、三人については知らない、こういうことになりますと、やはり現在十六歳未満の子供は親と随伴する、こういつたような一般的な取扱を考慮に入れましても、やはり子供のいわゆる朝鮮名前とか、或いははつきりした系累の何と申しますか、本当の親か子かということにつきましてやはり内地でわかる限りの調査もいたしたいということになるわけでございます。  又身元引受人についてでございますが、この身元引受人ということも、かなりその家族のほうでは冷淡な場合もないわけじやなはいのでございまして、もう親兄弟と訣別して行つたとかいうこともあり得るのでございますが、とにかくこういう事態になつて、親許なり或いは親戚が引受けるということになりますれば、これは相当確実な帰還一つの条件になるわけでございますが、そうでございませんと、全部これはやはり国家的に面倒を見て上げなければならない、先ほどのように子供の場合には、国内相当学校の問題とか、或いは御婦人なら結婚の問題、それから食糧配給の問題というものがございます。最近の例でございましたが、帰つて来たときには、やはり自分朝鮮籍を抜いておる、日本人であるという印象で帰つて来られた、そうして援護庁のほうでやはり特別な計らいと言いますか、とにかく引揚証明書というものをもらつて郷里に帰つて来た、帰つて来て、その証明書によつて日本人ということを立証しようという気持でございましたのでしようが、残念ながら法律的な関係においては、こうした正式な離婚というものはできておらん、従つて本人結婚というような問題も、朝鮮人ということ以外には、日本人としての法規的立場においての結婚というものはできない。又学校の問題も、そういうようにこれは朝鮮人として取扱わなければならない。併しながら御本人日本人だと思つておりますから、外国人登録令の適用によつて登録されるということも、あえて喜んでやらない。中途半端の関係ということもございました。このように一度国内に入れましたら、もう政府関係者としては、できるだけ親切に取扱いたいという点がございますが、やはりいろいろ帰つて来られるかたがた個人的ないろいろのお考えの程度によりましては、なかなかこちらの希望するような状況で、援護のほう、その他の関係においてマツチするというわけには行かないというケースもあるわけでございます。これは若干余談ではございますが、そのように我々といたしましても、入れるときの調査というものはやはり十分にして置きたい、そうして入れたらできるだけのあれをしたい。勿論その取終的決定というものは総司令部にございますから、そういつた点でやはり我々はできるだけその詳細なことを報告申上げたい、こういうような気持調査を進めておりました。先般のように、この書類にございますように、三月一日附のときから、今後約一カ月半を要する見込であるというふうに謳つてございますが、最初の二件につきまして、而もわかり得る範囲というものは、来週の半ば頃までには何とかしてもらいたいといつて国警のほうにも督促しているのでございます。国警のほうでも非常に努力されておられるのでありますが、国警本来の仕事も多うございまして、なかなか各方面の御要望に沿うほどスピーデイに処理されて行くということは、或いは御期待のようには行かないということがあるのではないか。その点は私どもも本当に気にしている次第でございますが、とにかくできるだけ釜山かたがたのために調査を一刻も早くまとめて、そうして入国許可を許せるものは、そういうふうに総司令部のほうにも我々の見解についても附言いたしたい、こういうような気持でやつております。最後に、内地戸籍を有する者は当然引揚げ得るわけで、これは勿論でありますが、総司令部により入国許可された鮮籍日系婦女子に対しては、右に準じて援護を与えることにしているということになつております。従つて我々といたしましては、委員皆さんがたの御発言の御趣旨を十分拝聴いたしまして、そうしてその趣旨に副うように努力しているのでございますが、今のところまだ完結した調査というものは、もうちよつとかかる、こういうことで御了解願いたいと思います。
  13. 千田正

    委員長千田正君) ちよつとお諮りしますが、只今朝鮮日本婦女子引揚に関する問題について御説明頂いたのですが、実は今日の議題には載つておりませんけれども、先般新聞紙上中国の非常に奥地にあるところの甘粛省方面留用された邦人が約六百名おつて、是非この留用を解いて早く日本に帰りたいというようなことを、たしか朝日新聞つたと思いますが、こういつた問題の事情についても若し御存じならば、こういうような問題についてどういうふうな方法をとれるかという、何とか日安がついているかという点で、外務省引揚課長にお伺いしたいのですが、これはあとにしますか。今続けて聞きますか。
  14. 紅露みつ

    紅露みつ君 ほかをあとに廻して、やはり一応そうした御説明を願つたほうが都合がよろしいのじやないかと思います。
  15. 千田正

    委員長千田正君) それでは武野課長に、或いは突然で十分おわかりにならないかと存じますが、先般新聞紙上で、中国終戦時において留用された人たちが、その後今年の春になつて日本に帰らせられるのではないかと思つて、まあ移動した。ところがそれが中国奥地甘粛省であつた。そうして自分らは今ここに何年留用されるかわからない、誠に淋しい立場にある、でき得るならば、留用を解いて速かに日本の祖国に帰してもらうような方法をとつてもらえないだろうか、日本国民皆様並びに日本政府当局に、こういうような立場にある者の心情を訴えてもらいたいというような意味のものが新聞に出ておりましたが、そういう問題に対して、いわゆる終戦中国留用されて、そうして留用の期間が或いは無制限であつたかも知れない、でありますが、帰りたい、帰らしてもらいたいというような人たちに対する何らかの方法をとる方法がないかということと、そういう点において外務当局関係方面に御折衝なさつたか、或いは今後なさる方法があるかどうかという点につきまして、甚だ突然でありまするが、できれば外務省としてのあれを御発言を願いたい。お考えを聞かしてもらいたいと思います。
  16. 武野義治

    説明員武野義治君) 先日の朝日新聞の記事を見ましたときに、私ども実はいろいろその民間方面から、現地からの通信というものを受けたことについて報告を受けておるのでございます。従つてこの報告が責任ある政府当局のものという意味ではなしに、民間からの得た情報としてお聞き取り願いたいと思うのでありますが、昨年の八月から九月にかけまして、満州におりまする例えば元の満鉄の機関、こういつた所の従業員が数百名隊をなし、或いは各個に北京引揚げて行つておる。或いは済南に行つておる。要するにこれから華北に出発するという手紙を出した、或いは別途北方のほうに行くという者もございましたようでありますが、鉄道関係は昨年の八、九月と思いますが、全部準備を整えて管内と言いますか、北京中心とした地方に移動したということを手紙報告された。そうしてこの手紙最後には、この手紙自分最後の便りになるかも知れないということが載つていたことを私記憶しておるのであります。その後私どももこうしたいわゆる鉄道関係留用者というものは、なお数百名あるのではないかということを考えておりました際でもありますので、早速こういつた情報関係方面にも伝達いたしました。勿論この留用者という問題は、満州におきまして一応ソ連が八月九日に入つて来た。そうしてそれ以後続々と入つて来た。そうしてその間において非常に多数の死亡者なり、或いは日本人狩によつて相当多くの人々が狩り出され、そうして更にそのうち、並びにその以外においても多勢の留用者というものがそこで狩り出された。こういうような関係になりますと、我々といたしましては、相当の数のやはり留用者が残つていたものと推定せざるを得ないわけであります。そうして他にも満州並び毛沢東政権の下におきましては、こうした流用者というものはおのずから全部が国家的な規模において、国家的な直接の機関においてそうした人々が使われる。例えば炭鉱にいたしましても鶴崗炭鉱というものはもはや民間の純然たる炭鉱ではなしに、国家的な色彩の下に運営されておるということを考えざるを得ない。そういう意味におきまして、幅の広い意味における留用者というものは相当の数に上つた。而もこうした日本人技術者として優秀であるということと、非常に使うのに使いいいという点、その他無理がきくという点、いろいろな点からどうしても離したがらない。殊に交通機関におきましては、満州における、或いはその他の地域における問題というものが非常にアキユートになつておりまして、そうしてこうした留用者というものは相当使われた。殊にこの朝鮮事変以後というものは、満州におけるいわゆる緊急体制といいますか、そういうものが施行されておる。従つて日本人というもので非常に有用な人々はやはり再編成といいますか、就職、職業関係の再配置というか、そういうものが行われた、又そういう意味において奥地開発というものについて更に狩り出された。勿論この狩り出されたときには或いは日本に帰るのだという評判が立つたわけでありまして、そうして我々といたしましても、情報として、昨年のことでありますが、相当集団的に引揚げるのではないかというまあ希望を持つたわけでありますが、残念ながらそれは実現されない。やはりそういつた日本人というのは、やはり一カ月たてば日本に帰す、或いは二カ月たてば日本に帰すというような形において、その途中における脱走なしにまとめてどこかに移動するということの手段に使われたのではないか。要するに引揚ということほど魅力のある題目はないのでありまして、こうした形においてそういつた一般日本人というものが相当無疵に大量に各地に移動させられておる。着いたら最後そこで厳重な警戒の下に或る種の作業に就かなければならない、こういう形になるわけでありまするので、我々といたしましては、向うからの手紙によりまして、たとえその引揚げ近きにありというようなことを言われても、もう軽々には信ずることができなくなつておるという状況にあるわけであります。この相当の、大多数の人々を如何にして早く故国に帰すかという問題になりますと、これは昨年来しばしば申されたと思いますが、総司令部におきましてもこの問題について非常に御尽力を下さつておられますが、中共政府のほうは何ら報告を、これに対して何らの回答も与えていないというのが今以て続いておる状況でございまして、機会あれば、そういつた向う邦人関係情報については総司令部連絡をし、そして今後の引揚についての御尽力を仰いではおるのでありますが、そうしたいろいろ国際的な問題が非常に多くの点において困難なものがありますために、実際上アツピールしてもそれが届かん、或いはそれが無視されてしまうというようなことになるわけでございます。ただ我々としてはこの努力を決してゆるめないつもりでもございますし、又飽くまでも今後といえども努力するつもりでございますが、現在のところ、殊に朝鮮事変が起つて以来というものは、現地における情勢というものも日本人にとつて決して有利ではないという形になつております。ですから個々の引揚者の場合におきましても、昨年朝鮮事変が起る前に見られましたような個人引揚についても、昨今は殆んどないという形になつております。その点は私も非常に皆様と御同様に苦慮いたしておるわけでございますが、とにかく引揚に関する総司令部を通じての努力ということは飽くまでも継続して参るつもりでございます。
  17. 千田正

    委員長千田正君) 只今の中共地区におけるところの留用者状況は、只今武野課長から御説明つた通りでありますが、御質疑は後といたしまして、先ほど最初に御説明ありましたところの在朝鮮日本婦女子引揚に関する只今外務省の御発表に対しまして御質疑のあるかたは一つ御質問願いたいと思います。
  18. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 今釜山におるという日本婦女子の五百八十五人というものは、司令部のほうから日本政府に対して身元調査をするようにというような依頼があつたように説明を聞いたんですが、いわゆる司令部と言いますか、朝鮮におるアメリカの軍隊自身が五百八十五人というものをわかつておるわけですから、向うのほうで調査をして、そうして向うのほうで身元がはつきりするということはできないものですか、お聞きします。
  19. 武野義治

    説明員武野義治君) 御説のように、相当向うで調べられておると思いますが、要するに向うで申告したもの、例えば本籍が果して確かなものであるかどうか、こういうものをこちらのほうで調べることになるわけであります。  従つて相待つて完全な調べをすることになるんじやないかと思いますが、その点は私どもとしてはただ司令部から命ぜられた項目についてできるだけ調べる。而も向うから申告したと称するものの確度を調べる、こういうことになつております。
  20. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 調査項目が六つあるわけですけれども、この調査項目についてアメリカの軍隊が五百八十五人について釜山でそれぞれ調査をされて、そうして五百八十五人からいろいろ聞き取つたことについて、その項目日本政府に示して頂いて、そうしてそれが間違いがないかどうかということをこちらで調べる、こういうことであれば非常にいいと思うのですけれども、そういうふうにアメリカの軍隊が調べた項目をはつきり示されないで、この六つの調査項目をただ抽象的に、こういうものを調べろと言われたのではどうも連絡がはつきりしないように思われるのですが、どういうふうなものを示されて来ておるのか。いわゆる五百八十五人の婦女子がそれぞれ米国軍隊に報告された、そのものを全部日本政府に渡してもらつておるのかどうかですね、それをお聞きしたいと思います。
  21. 武野義治

    説明員武野義治君) 総司令部のほうからは、この文書におきましては、二、三の項目についてはつきり明示をしておりまして、更に口頭連絡、或いは常時の連絡におきましてこういうこと、こういうことという具体的な指令を受けておるわけでてございます。御質問のお考え通りに行けばそれが一番理想的じやないかと思いますが、私どもはただこういう項目について具体的に調査をする、こういうことを受けておりますので、それをやつております。
  22. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 どうも一方的にこういうものを調査しろと言われて調査するというだけでなく、五百八十五人日本人がおられるわけですから、そのうちには全部日本語をよくわかつておる人もあるでしようし、相当インテリの人もおるわけですから、そういう日本人の間で二、三人の人をアメリカの軍隊から選んでもらつて、そうしてそういう人が向うで直接日本人婦女子にいろいろ調査をして、そうしてできるだけわかるようにしてこちらに示して頂きたいということを、日本政府から司令部のほうにお願いするということはできないわけでしようか。
  23. 武野義治

    説明員武野義治君) 鈴木委員の御希望の点は、できるだけ今後の連絡において副いたいと思います。口頭の連絡によつて行きたいと思います。
  24. 紅露みつ

    紅露みつ君 終戦後に相当の人が渡鮮しておるというお話でございますのですが、これはどういう目的を以て行かれたものでしようか。大概一様のものですか。それともいろいろな理由がございますのですか。
  25. 武野義治

    説明員武野義治君) 御質問の御趣旨につきましては、実はどういう目的で行つたかということにつきましては、私ども内地でわかる範囲のことは調べておるのでございますが、なかなか個人々々のいろいろな理由もございますので、個々のケースについてこうだ、ああだということは私どもではまだはつきりしたまとまつたものはできておりません。ただできるだけ調べたいという努力はしております。大体こちらで結婚して内縁関係になつてつておるという関係がございますから、やはりそういう意味で渡航しておるというのがかなり大部分の目的じやないかと思います。ただ先ほども申上げましたように、朝鮮人として渡航する場合には居留民団を通じましていろいろ願い書を出します。そしてそれが韓国の代表団に行きまして、それで司令部へ行つて司令部のほうから許可が下りますと、厚生省に渡り、厚生省から地方へ行く。こういう段取になつておりますので、その間においてやはり何のために渡鮮するかということが出て来るわけでございます。それから婦女子の、終戦後に帰つて結婚して行かれたかたがたの御主人の名前を突き止めれば、こちらで渡鮮したときの事情というものはわかるということも言い得るわけでございます。そのときに大体その渡鮮の目的とか何とかいうものは、御婦人関係でなく、御主人の関係において解決されるのではないか、こう思います。まだそこまでの調査はいたしておりません。
  26. 紅露みつ

    紅露みつ君 それから身元引受人についてという調査項目ですけれども、身元引受は相当ありますのでしようか。どんな率で現われておりましよう。
  27. 武野義治

    説明員武野義治君) 只今まで調べたのは、やはり二、三割の率のように考えております。なかなか親兄弟を振り捨てて行つたというのもあるようでございますし、それから又引受けるというかたもありますから、勿論今までのところは二、三割ほど、調べた範囲では二、三割のところ引受けると言つております。
  28. 紅露みつ

    紅露みつ君 この調査ですね、一カ月或いは一カ月半ぐらいで果して結論が出るというお見通しでしようか。そして今鈴木委員からも言われましたように、これは一つ方法として、向うにいる者が自治的に調査をするということは、これはできないことではないように考えられるのですね。これは終戦当時の大連あたりで、非常に自治的に収めて行つた例なんかから見ましても、或る程度の調査はできるように思いますので、これは是非至急にそうしたことをしてもらうように司令部のほうに連絡外務省からとつて頂いたほうがよろしいと思うのですね。それとは係りなくこちらはこちらでどんどんこの調査を進めて行く、そういうふうにして行かないと、一カ月や一カ月半の間になかなか調査ができないのじやないでしようか。何か調べて見ますと、僅かな労賃をもらつて、みじめな生活をしておるというような報道もありますので、ただ荏苒過ごすのは、大変に私どもの心持としては気の毒に、相済まないように思うのですね、是非そういう方法もとつて頂きたいと思いますが、一カ月や一カ月半でこちらの調査が済みますでしようか。国連のほうでは責任を持つてくれておりますか。
  29. 武野義治

    説明員武野義治君) 御指摘の点は確かに問題だと思います。ただ我々といたしましては、冒頭述べましたように、できるだけこのかたがたに奉仕する意味において、この調査の完璧を期したいということでございます。その調査の結果について司令部が如何に御判断になるかということがあるのでございます。我々としては、できるだけの努力はいたしたい、こう申上げるほかございません。ただ先ほど申されました、自治的な調査を促進する方法はないかということは、御期待に副いたいと思つて、口頭連絡向うにこういう希望を申上げるということは喜んでいたしたい、こう思つております。
  30. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御質疑ありませんか。
  31. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 端的に言つて、帰りたい人ならば帰してあげたらいいじやないかという気持があるのですが、大変むずかしく調べておられるような事情は、本当のところどこにあるのでしようか。つまり項目のうち一番重点ですな、何か戦争関係しておられますか。
  32. 武野義治

    説明員武野義治君) そういうことは全然ございません。ただこの終戦後特に日本人の出入国及び外国人の出入国ということは、司令部として非常に厳格にやつておられることは御承知通りであります。そうして要するに向うで調べた本籍というものを調べて見ても、こちらにはないということがとても多いのであります。向う報告したものもこつちで調べて見ますと全然日本人の新がいないというようなこともあり得る。従つて向うで以てまとめた資料を確認する意味において、日本調査をする、こういうことでございまして、そうした特にその本質的な狙いはどこだというものはございません。当然帰れるべき者は引揚げさせなければなりませんし、又そういつたあいまいな者はやはりこれを厳粛に調査しなければならない。若し万一日本政府の調査によつてあいまいな場合でも糊塗して入れてしまつた、入れてしまつたあとにおいて何らか占領目的に有害な行為でもあるというような場合には、これは今後の引払の問題について大きな影響があるものと考えます。従つて我々といたしましては、やはりここは時間もかかるし、それから向うにおるかたがたには非常にお気の毒なことと思いますが、やはり注意深くやつてつて、そうしてその後の引揚の問題について影響のいいように考えて行きたいと思つておりす。
  33. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 まあはつきりした人から、今紅露委員も言われたように、はつきりした人から帰して来るという可能性はどういうお見込ですか。全部がはつきりするまで帰れないのか、はつきりわかつた……一、二割ははつきりしておると今あなたは言われたが、そういうかたは早く帰れそうなんですね。
  34. 武野義治

    説明員武野義治君) 私たちとしては、そうした情報は全部提供いたしまして、最後決定は全部総司令部にお任せする。
  35. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 従来の例からお見通しはどうですか。
  36. 武野義治

    説明員武野義治君) 我々の希望は、わかつた者はできるだけ、全部まとまつてからというのじやなしに、わかつている範囲だけでも引揚げさせる、こういう考えであります。
  37. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 になるだろうという見通しですね。
  38. 武野義治

    説明員武野義治君) そういうふうなことを希望として申上げるつもりです。
  39. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 外地におるかたがた引揚げさせるときには、今までもいつもこういうふうに厳重に身元調査のようなことをして、そうしてそれがはつきりしなければ引揚げさせないということをやつたのでしようか。これは日本人であるということがはつきりすれば、兼岩君の言うように、こちらにずつと送つて来て、そうしてこちらに来てからいろいろ調査してもいいような気がするのですがね。今までは全部こういうふうに一人々調査をして、そうしてもう非常にはつきりしなければ返さないと言うようなやり方をやつていたのでしようか。その点を一つ
  40. 武野義治

    説明員武野義治君) 御指摘の点は、要するに引揚問題という問題に関連いたしました今後の大きな問題の性格の一つを持つておるわけでございますが、別に日本人として立証できれば勿論差支えないわけでございます。入国は全然自由でございます。ただこの場合におきましては、鮮籍の日本人婦女子、こういう形になつております。そしうて朝鮮籍人々は、終戦後この引揚の問題が集団的に、それから司令部の集団計画によつて、或いは最高司令官の個々の許可によつて、個々に行われるようになりました現在においても、要するに日本人引揚というものに対しては、全然そういう何らの障害はないわけであります。ただこの場合は自分たちは日本人であると、こう言いますが、いろいろのデータを調べて見ますと、どうしてもこれはやはり終戦後、特に帰る機会を放棄しておる者も少くないようでありますので、殊に終戦後禁止されている厳格な規定に対して、やはりそれを侵して行つているのじやないかと思われるようなケースもあり、従つてこの場合におきましては、特にやはりこの調査を厳重にいたしまして、そして安全な引揚げさせ方をしたい。許可する場合には勿論引揚契約に基いて行う、これは勿論当然でありますが、そういうふうに大事をとつておるわけでございます。
  41. 千田正

    委員長千田正君) 別に御質疑がなければ、次の中共地区における……。
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一方、一部の朝鮮人たち内地から朝鮮に帰すのだというようなことが言われ、一部行われたという説もあつて、我々非常に遺憾に考えておるのですが、それと同じように日本人でありながら、或る日本人は入れる、或る日本人は入れないということは、私非常に将来の全体としての引揚問題は勿論のこと、将来の日本の国並びに日本民族がアジアにおいて隣邦国家と提携して発展して行くということに非常に障害の種を蒔くようなことだと私は思いますので、引揚外務省におかれてもできるだけそういうことの激化するのでなくて、公正に政治的見解とか、これは主として政治的見解になるわけですね、つまり資本主義に賛成するか、共産主義に賛成するかというような、そういうふうな当然憲法で各個人の自由である問題のために入国を許すとか、又は追い返すととかいうことは、私将来大きな禍根を残すと思う、日本人の将来の発展のために。従つて引揚課においては、そういうことを激化する方向でなくて、できるだけ緩和する方向に努力することを私としては希望いたします。
  43. 武野義治

    説明員武野義治君) 私どもは別に激化させるとか、緩和させるというような、そういうようなけじめは全然考えておりません。日本人というものを当然我々は迎えなければならないという立場において、ただ日本人であるかどうかという確認の場合には慎重を期したい、こういう意味でございます。
  44. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ところがですね、そうじやないんですよ。あなたがたの調べておるところを見るとですね、あなたの言われるようなことであれば、本籍の確認だけでよい。ところが実際はそうじやない、渡鮮の時期、渡鮮の際自発的に行つたものか、又強制的に連行されたか、思想的関係、刑事関係、政治関係について異常があるかどうか、正式結婚内縁の妻か、身元引受人について、こういつた項目はあなたの言われたことと相反するのです。だから私はそう言うのです。今度は日本におる朝鮮人で今の政府から見て面白からざる反対の意見を持つておる者を追い返すなどというような乱暴なことが行われようとしておる。或いは一部分行われたという情報も我々聞いておるのですが、ちよつとあなたの言うのと違うのですよ、実はね、如何ですか。
  45. 武野義治

    説明員武野義治君) 我々はこうした問題はやはり一つの本人たち日本を離れましたいろいろの状況というものを調べて見るということは、先ほど申上げましたように、いろいろの点においてやはり法規的なあれがありますので、それに違反したりなんかするというような理由はなかつたのではないかというような形において、やはり従来の占領行政に関連して調査をせざるを得ないわけでございます。又刑事関係とか政治関係というのは、別にこれがどうだつたからこれを拒否するとかという、そういう問題ではなくて、これはただ一応調べて置くというだけでございまして、この最終決定は、やはり総司令部にあるわけであります。従つて何も思想的関係がこうだから入れないとかいうことは、直ちにそういう結論にはならないという考え方でおります。
  46. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 日本人日本へ帰つて来ることに何か他の条件が要りますか。日本人つた日本へ帰つて来れるじやありませんか。何か占領政策の上で、日本人であつて日本へ帰れんというような事情が、あなたがた御当局の、あなたの御意見でなくて、従来取扱われた実際の経験であつたのじやないのでしようか、その辺如何なものですか。
  47. 武野義治

    説明員武野義治君) 実際の例についてはちよつと記憶しておりません。若し御質問の御要点が、そういうことを文書において……。
  48. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あつたかなかつたか、あなたの取扱われた中で……。
  49. 武野義治

    説明員武野義治君) 今記憶しておりません。
  50. 森崎隆

    森崎隆君 今の問題はいろいろ御意見もあると思いますが、そういう点で原則は、勿論兼岩さんのおつしやる通りです。ところが何故調べるかということは、これは武野さんのほうに聞いたところでわからないのです。総司令部に折衝しなければわからない。
  51. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 折衝した結果……。
  52. 森崎隆

    森崎隆君 その言葉の折衝というのは、もう少し含みを持つて考えなければならない。占領下の日本の係官の占領当局との折衝の結果という言葉の意味は、やはりそこに深い意味があるのじやないか、それは私は今それを聞こうとしているわけじやない。原則は兼岩さんのおつしやることに賛成いたしますが、それにはこういう意味で総司令部の意向もあることだし、いろいろございますので、ここでそういうことを全部議論して、その議論で一つの結論が出まして、その結論を何か持つてつて、それに最後決定をするというようなことならそれも結構でございますが、要するに我々の意向というものも、原則ではつきりしておる、そういう意味一つ善処願わなければ仕方ないと思う。
  53. 紅露みつ

    紅露みつ君 同感。
  54. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 これは兼岩君は、本人について思想的傾向、例えば共産主義信奉者であるか、民主主義者であるかというようなことをきめて、共産主義者であれば入れないというようなことを考えての資料ではないようですね。結局現在朝鮮におつて日本人であると称して引揚を希望しておる数百名の婦女子がおる。そこでそれらの者が本当に日本人であるだろうかどうかということの疑問を持つておるために、日本政府に聞いて来ておるのがこの人数だろうと思うのですね、従つて日本人に間違いないが、これは果して共産主義信奉者であるかどうかというようなことを聞くのではなくて、日本人であるかどうかわからないものだから日本調査を命じて来ておる。日本人であるなら当然帰すと、こういうことのように思われるのです。ですから問題はそこにあるのだが、私は先ほど申しましたのは日本人であるかどうかを知るためにも、まあ向うのほうに五百何十人もおるのだから、お互に資料をもらつて来て、それに基いて調査してもらつたら早くわかりやすいのじやないか、引揚を希望しておるから、そういう調査方法のことを申上げたので、調査することが悪いということは私はないと考えております。
  55. 千田正

    委員長千田正君) 委員長から特にお伺いをしますが、この問題の中で一番至難な点は、婦人は今の通り日本人であるかどうかという問題ですが、子供ですね、朝鮮の国籍の人と日本婦人との間にできた子供を含んでおると思いますが、子供の国籍如何ということになるとどつちをどうするということは一番至難な問題ですが、それに対してはどういう判断をされるように大体司令部あたりは考えておりますか。
  56. 武野義治

    説明員武野義治君) 最後的に司令部の御意向がどうであるということは全然聞いておりません。ただ我々といたしましては、やはり従来渡航関係や何かの一般的な手続においては、十六歳未満はやはり親に従うという一般的なあれがございます。
  57. 千田正

    委員長千田正君) 親でも、女親に従うのですか。
  58. 武野義治

    説明員武野義治君) というのは、大体男親がいない場合は女親しかないという考えでおりますが、要するにこういう場合には、やはり母親に従つてきめるのじやないかと考えております。十九歳や二十歳になつた成年以上に達しました者については、やはりそう簡単には行かないと思います。
  59. 千田正

    委員長千田正君) それではあなたに聞きますが、例えばそういう場合においては、日本婦人のほうに国籍が入る、或いはその婦人自分の生んだ子供でなくても或いは連れて来るかも知れないが、そういう場合にはやはり別に日本国民としての国籍を喪失するかどうか、そういう問題も続いて起きて来るわけです。例えば現在行われている社会の裏面の一つといたしまして、進駐軍の兵士と日本婦人との間に生れた子供が、どつちも引取り手のない場合に、国籍が喪失している状況ですが、それと同じように取扱うものかどうかという点も、今後司令部との折衝の過程において、そういうふうな問題が当然外務当局としても聞いて置く必要があるのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  60. 武野義治

    説明員武野義治君) 今ここでお答えできないことを残念に思いますが、今後の折衝の過程においてその点はよく留意したいと思つております。
  61. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕としてはもう一点、課長の答えが僕と大分食い違つている点があるからもう一遍はつきりしたいと思う。この第四の思想的関係、政治的関係について、異常があるかどうかということについては一体何を、総司令部との折衝の過程において、あなたのほうはどういう過程においてこういう項目を入れられたのか、実際どういうことを調査されているのか、その調査の結果それが引揚にどう影響するか、これをはつきり聞いて置きたい、この一点、向うさんの天降りの命令なのか、それともあなたのほうから申入れられたのかということが一点、第二点は、思想的、政治的関係であるかどうかということはどういう点を調べられるか。第三に調べた結果、どういう条件なら帰ることが困難で、どういう条件なら帰ることが容易なのか、この三点ですね。
  62. 武野義治

    説明員武野義治君) 先ほど申上げましたように、この問題につきまして、そのように深刻にお考えになられることはないと思います。我々がいろいろ調査する場合に、どうしても刑事関係やそれから政治的にどういう団体に入つたかどうかというようなこともいろいろあります。思想的関係というものがどうだつたということを調べて悪いことはないのであります。悪かつたからこれは入国を拒否するとか、そういう問題は別に起つて来るわけではないと思います。ただ本人についてできるだけ詳細なデータをつかみたいというのが狙いでありまして、即ち日本人であるかどうかという問題、それからこれに関連して、どういう目的で一体渡鮮したのであるかというようなことは、何もこれは婦人関係でありますから、主なるものは婚姻に伴つてつた問題でありまして、そういうかたがたは殆んど思想的問題というものはないと思います。実際我々が今日まで調べたケースについて考えましても、そういつた思想的な関係というものは出て来ておりません。又刑事関係というものも、殆んど国内における事件というものは、やはり調べたところかなりのものはないという状況になつております。政治関係についても同じようなことが言い得るのであります。ただこれは念のためにこういうふうな要項を置いただけであります。何もこれが中心の眼目になつて入国許可とか何とかを決定するときに、どれだけ役に立つかどうかという問題に、直ちに結論をつけるということは妥当ではない。私どもはただ一切の情報を調べて、それを最終的に総司令部決定に待つというだけのことをやるという形でありますから、どうぞ誤解のないように一つお願いいたします。
  63. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どうも答えがピントを外れている。若し私の質問に直接の答えがなければ、一つ委員長から通じて頂きたい。こういう思想的、政治的関係という条項を入れられたのは、総司令部からの命令で入れられたのか、どういう事情で入れられたのか。第二点はどういう点を調べてどうされるのか。思想的といつても非常に広汎で、思想的、政治的に異常があるかどうかということはどういうことを調査されるのか。第三には、その場合にそれが帰つて来るのにどういう影響を与えるか。この三つをお答え願いたい、簡潔に。
  64. 武野義治

    説明員武野義治君) 只今私がお答え申上げた以外にはお答えいたしかねます。
  65. 森崎隆

    森崎隆君 こういうことは考えられませんですか。兼岩君も項目の問題で、いろいろ只今問題になつておりますが、この引揚に現在六百名ばかり載つているのですが、これは日本人で曽つてつたことは一応事実として認めますが、これが大多数南鮮にやはりいられたかた、そうしますと終戦直後にやはり日本に当然大部分の者が皆帰つて来た、それがやはり向うにこれまでとどまつていた、こういう者はやはり朝鮮人として、曽つて日本人であつたが、朝鮮人としてのはつきりした意識を持つて向うに踏みとどまる意思があつたものと一応考えるのですが、もう一つは、終戦向うに不法渡鮮するか何かで行つた。或る意味考えますと、やはり日本を放棄して朝鮮に籍を移すという気持もあつたかも知らんが、或いは又特別の用務で個人的な出張かも知れませんが、そういうことから考えますと、南鮮はああいうように戦乱の渦中に巻き込まれました結果、今になつて帰るということにつきまして、曽つて日本人であつたが、現在は一応朝鮮人としての籍を持つている人々日本引揚げる、曽つて日本人であつたからということで引揚げる場合、これをいわゆる引揚該当者としての日本人として取扱うか、或いは今は朝鮮人であるから、これは日本国のほうへ移民の形で入るかという一つの判断の資料として調査するというように私は解釈できるのじやないかと思うのですが、そういうふうに解釈した場合には、いろいろ調査の要項もあるだろう。思想的問題ということは、これはどういうことでこの調査項目になつたのかわかりませんけれども、少くともこれは資本主義信奉者又は共産主義信奉者というようなことの判断ではないと思います。又ソ連から帰つて来るところの曽つての旧軍人の関係かたがたでも、随分共産党に入党したかたがたも堂々と帰つて来るということを考えますと、そういうことは別にないと思うのだが、やはり一つ調査の形式としては、こういういろいろな面が入るのじやないかというような解釈ができるかどうか。私はそういうことも考えられるのじやないかと思いますが、それについて何か意見がありましたら、そちらのほうのこれと違つた意見、又そんなことは誤りだということでございましたら御指摘頂きたい。
  66. 武野義治

    説明員武野義治君) 只今森崎先生のおつしやつたことは、私非常に同感でございまして、個人的には正にそういつたような感じでやつております。別に意見は申上げません。最後にございますように、この調査に基き、内地戸籍を有する者は当然引揚げ得るわけであつて、これに対しては従来通り引揚援護を行う、日本人であるということが戸籍上わかりましたら、内地人として取扱うのが当然でありましてただ総司令部によつて入国許可された鮮籍日系婦女子に対しては、右に準じて援助を与えるということになつておりますから、その点、純然たる日本人引揚というものではこの点はないということでお考えを願います。
  67. 千田正

    委員長千田正君) 兼岩委員から、さつきの三項目についての質問がありましたが、恐らく兼岩委員の聞きたいのは、思想的に言つて入国を拒絶したり或いは許したりするのかという点が重点だろうと思います。それが又どういうサゼツシヨンで出たのか、いわゆる連合国側の指示によつて出たのか、日本外務当局がそれを申入れたのか、そういう点をはつきりしてもらいたいという意味だろうと思うのですが、先ずその点について、これは向う側からのはつきりした指示があるとか或いは何とかいう点について、若し明瞭に言い得ればおつしやつたほうがいいと思いますし、それから言うべき立場でないとすれば止むを得ないですから、言い得る立場でないことを明瞭にお答え願います。
  68. 武野義治

    説明員武野義治君) これは向うが言つたとか、こつちがどうしたとかということではなしに、いろいろな関係において折衝の間においてこれもあれもと、こういうふうにだんだんにこういうものが入るという形になつておりまして、これは何も四を一に書いたからと言つて、一がウエイトが大というような形ではないのであります。若干こういうような疑問が起りましたのは、書き方の点において或いは間違つた点があつたのかも知れませんが、ちよつと私も出張をしておりましたので、直接に折衝したわけではございませんので、若しそういう点においてどうしてもはつきりした返答を聞きたいということでございましたら、更に突き詰めた答をしなければなりませんが、私が今まで聞いた範囲では、この問題は余りこれによつて入国許可されるとか、どうとかということにすぐに飛躍して結び付ける問題ではない、さように考えております。
  69. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一言、私がこういうことを聞くのは、これは非常に重大な関係が将来発生して来るからであります。例えば神戸、名古屋の朝鮮人問題にからんで、又労働運動を熱心にやつたり、或いは共産党に入党したりした者は帰してしまうという計らいが一部に進行中であるというふうに私ども考えておるわけです。そうして一部は実行された形跡がある。そうしてそういうことが一方に行われ、又向うから帰つて来た者の思想とか、政治関係を掘り返すというようなことが行われて行くと、アジアの親善が行われるのでなくて、やはり将来戰争の原因となり、アジアの民族と民族との今後の協力も妨げることになつて来るから、私はこれはやはり重大な問題だと考えているのです。併しこれを課長の職責におられる官吏として、これ以上私は、この問題について答えにくいようならば、聞かなくてもよいと思います。これは大臣なり次官なりでよろしいが、私はこの問題は今後はつきりさせて行きたい。これが引揚問題についての、今後の一つの大きな重点だと考えるから、私はこの問題は大臣、次官に聞いて明らかにするということで、課長が答えにくければ、しなくてもよろしいから、大臣、次官にこの問題は明らかにしたいと考える。その理由は以上述べたような関係からです。
  70. 千田正

    委員長千田正君) 委員長から申上げますが、結局あと一カ月半くらいしますと、入国許可をする者、或いはしない者というふうに大別せられると思います。大別されたときにおいて入国許可されない者のうち、例えば思想的に好ましからざる者、この該当者があつたとすれば、この点は何かという点は相当突き詰めてこれは聞く必要があると思いますから、もう暫らくこれはお預けにして頂きたいのであります。  この辺でこの問題の質疑を打切りたいと思いますか、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   ―――――――――――――
  71. 千田正

    委員長千田正君) では打切りまして、さつき申上げましたところは、武野課長から詳しく御説明がありましたけれども、まだ十分皆さんの御質疑の対象になるかどうかわかりませんが、甘粛省の中共の地区留用された邦人が、その後朝鮮事変或いはその他の影響かどうかわからないけれども、各方面に移駐しておる。中にはもう日本留用解除してもらつて帰りたい、こういう立場にある人たちの切々たるいろいろな情報が入つているのでありますが、その点について先ほどから武野課長から一応の御説明がありましたが、この点につきまして又御質問がありましたら、時間も余りありませんから、簡単に御質疑を願いたいと思います。
  72. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 中共地区におりまする日本人で帰りたいという希望を持つている者については、朝鮮事変以後どういうふうな取扱をされておりますのですか。なお引揚げて来た事実があつたら、その例をお聞かせ願いたい。
  73. 武野義治

    説明員武野義治君) 朝鮮事件が起るまでは、割に、中国北京政府と言いますか、中共政府が留用者に対しまして、各留用機関留用解除してよろしいという指令はぼつぼつ出されたようでありまして、毎月ぼつぼつ個人的にそういつた留用期間解除者が帰つてつたことについては、前にも御報告申上げた通りでありますが、朝鮮事件が起りましてからは、そういつた留用解除者というものは極めて少いのでありまして、本年二月には十一名が、大体満州において留用せられたものが二名でありますか、大連関係において一名、北京、天津において一名その他やはり満州方面において留用きれておつたという者が合計十一名帰つて来ております。これはいずれも留用期間解除者でありまして、従来留用解除に当りましては、非常に長い期間運動を個人的に続けていたとい巧者が、漸くその時期において許可を得て、便船その他において便宜を得て帰つて来たというふうに聞いております。そのほか、殆んど朝鮮事件が起つてから、そういつた留用者只今までは、二月に十一名ということになつております。
  74. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 今まで聞いておるところによりますと、帰りたい者については、便船があれば帰すという方針であるけれども、船賃がない、船賃は自分が負担しなければならないというので、船賃がないために帰ることができないで困つておるという手紙内地家族等に盛んに来ている。それで船賃を工面して、向うに送つてやろうというようなことが言われて、船賃を一時流用するような方法を国その他において考えたらどうかというような話があつたように思われるのですが、船賃さえあれば便船の都合によつてはいつでも帰すというようなことになつているのではないでしようか。この十一名は船賃があつてつて来られたのか。そのほかのない者は、それがないために帰つて来れないという結果になつておるのか。或いは中共方面で政策的に帰さないという政策をとつているのか。その点を、帰すという政策であるなら、船賃を持つていないために帰られないのであるか、それを一応お聞きしたい。
  75. 武野義治

    説明員武野義治君) 留用機関が解除いたしますときは、従来の例では、その大部分が退職手当に類するものをもらいまして、それを自分自分の負担の形において船会社に払つて帰る、即ち留用機関がとにかく帰る一切の費用は負担するというのが殆んどの例でございます。従つてこの許可があるけれども、船賃がないというようなこともまま聞くのでございますが、ちよつと確実な情報というものはまだ入手しておらないのでございます。そうして船賃を送れば帰れるというようなことも聞くのでございますが、実際問題として合法的に送金するという途も今のところはない。従つてつて来た人たちは、その過去の蓄積によつて十分負担し得たものか、或いは留用機関がこれを負担したということに尽きるわけでございます。こちらから送つて帰れたというようなことはちよつと私ども聞いておりません。
  76. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうすると今問題になつておるところの一団ですね、どこにおるのですか。
  77. 千田正

    委員長千田正君) 甘粛省です。
  78. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そのかたがたも或る一定の費用を持つてつて、便船があれば自由に帰れるということになるのではないか、特別にこつちの方面で帰りたければ、一つ回船してくれというようなことを司令部を通じて中共政府に言わなければならんというような手続になるのですか。
  79. 武野義治

    説明員武野義治君) 若しこうした事実が正しいものといたしましても、私どもは過去のいろいろなインフオーメーシヨンから申しますと、留用機関が、許可を与えるということは非常に長い年月の闘争の結果得られたというようなことが多いのでありまして、そうして日本人が非常に役立つために、これを留用するということが原則のようにさえも思うのであります。従つてまだ全然許可を得ていないという、若しこれが事実ならば、そういつた許可も得られないということが実情じやないかと思います。若し許可が得られ、やはり留用期間を終つて帰すということになるのじやないかと思いますが、これは実際上私も事実確認しているわけではございませんので、ただそういうような想定の下にお答え申上げる次第でございます。
  80. 紅露みつ

    紅露みつ君 武野課長からの御答弁を伺つて、ここに甘粛省の六百名に対する記事について見ましても、外務省としましてもやはり心配はしているが、方法はないというようなことをおつしやつておられますので、こうした切々たる状態を訴えて来たのには、私どもこれに携わるものとして、又血の繋がるこれだけの同胞がいながらどうすることもできないというのは本当に情ないことだと思うのです。それでそれにつけても思い出されますのは、国連に提訴しまして、引揚に関する調査委員会ができると、こういうことになつたのでございますが、一体そのほうの進捗状態はどんなふうになつておりましようか、外務省ではおわかりでございましようか。国連のほうの引揚に対する調査委員会がどういうふうに今なつておりましようか、その後の情報が入つておりましたら御説明を願いたいと思います。
  81. 武野義治

    説明員武野義治君) 結論を申上げますと、まだ何ら情報は入つておりません。御承知のように、あの決議は、本年の四月三十日までに関係国は第二次大戦の際にその支配下に置いた一切の捕虜について、その捕虜というのは、一般邦人を含めますが、そういつた人々について情報を提供するということになつております。そうして四月三十日になりまして、それが国連に全部出され、それが五月に適当な機会に特別委員会が招集されまして検討する、その後においてこの委員会は適当な措置を講ずる、その際に委員会はそういつたキヤンピングを訪れる、各国はそれに対して便宜を与えるというようなことが規定されておりまして、まだ国際連合のほうでどのような考えが、特別委員会における準備が行われておるかということについては、情報としては入つておりません。私どもはこれが入り次第、又それを渇望しておるのでありますが、入り次第御報告申上げたいと思いますが、只今までのところございません。
  82. 紅露みつ

    紅露みつ君 国連のことでございますから、外務省が何とお思いになりましても、俄かにどうということは運べないと思いますが、国際的にどうすることもできないという中共の状態に対して、どう考えたら一体いいとお思いになりますか、当面の外務省としてどんなふうにお考えになりますか、一つ意見で結構ですから。
  83. 武野義治

    説明員武野義治君) 私の個人的な意見を申上げて甚だ恐縮なんですが、この問題はやはり世界の純粋な人道の問題から考えて行かなければならない。そうしてこの人道の問題に関連いたしましては、やはり世界宣言の趣旨もございますし、それから捕虜に対する待遇というものは、国際条約において、又一般国際法規において詳細に規定されておるのでありますから、こうした過去のいわゆる法規、国際法の問題と、人道の問題、両方の点から国際連合において公平に結論を、この問題に対する結論を下すものと考えております。勿論どのような結果になるかということは予測し行るわけではございませんが、要するに我々日本政府がどれだけ残つておる、残されておる、その結果についてこのぐらいのデータを持つ、片方はこの程度の、こういうものであつて、これが絶対正しいと、いろんな意見が出て来るわけでございますから、恐らく日本政府のほうといたしましても、この特別委員会に何らかの資料の提供を要求されるのではないかと思うのです。その際にいろいろ特別委員会はこの報告を、すべてこの報告を検討いたしまして、結局これはどこの点を衝くべきであるかという問題が起つて来ると思いますが、そうして衝くべきところを衝いて、そうして出て来た結論というものは、やはり国際連合において、こうした法規並びに人道の問題からはつきりしたこの問題の結論を得るように努められるのではないかと考えております。それが現在我々で考えられ得るまあ限度でございますか。
  84. 千田正

    委員長千田正君) この問題につきましては、いずれ武野課長さんが今までお話がありましたけれども、更に外務省当局にもう一度おいでを願いまして、政府の意のあるところをお伺いしたいと思います。というのは、中共を認めておる国のいわゆる日本に公館を持つておられる国が相当あると私は思います。相当といいますのは、二、三あると思います。例えばイギリスであるとか、印度であるとか、そういう国は日本にいわゆる公館を持つておられると思いますので、公館を、いわゆる役所ですね、持つておると思いますので、連合国側、或いは対日理事会、そういうところを通じてこれは何回でも折衝しなければならん問題になると思いますので、外務当局にもう一度おいでを願つて、その間を折衝しておられるかどうか、今後折衝する意思があるかどうか、そういう点についても各委員から改めて御質疑を頂きたいと思うのでありまして、今日は外務当局説明はこの点で打切りたいと思います。
  85. 紅露みつ

    紅露みつ君 ちよつと一つ問題が違う問題ですが、伺いたいと思いますのは、マリアナ群岳の小の一島だと言われておりますアナタハン島といいますか、そこにまだ引揚げない軍属のような、これは神奈川県の三崎から行つておりました人が何人か入つておりますので、口頭で私陳情を受けたのでございましたが、外務省としては、かねがねこの陳情をお受けになつていろいろ御調査を頂いたように申しておりますが、一向に運ばれていない、どうしたんだというような口頭の陳情を過日受けたのでございますが、どうなつておりますか、御説明が願えたらと存じます。
  86. 武野義治

    説明員武野義治君) 紅露委員の申されましたように、このアナタハン島には約二十名ちよつと一、二名と記憶しておりますが、この程度の人々が、戦争中の死亡というものを免れましで、あの島で残つておるということの報告を、例の沖縄に帰りました比嘉かず子なる女性から外務省もそのインフオーメーシヨンを受けたわけでありまして、その後調査して見ますると、確かに三崎その他各県の人々で残つておる人があるということがわかつて参りました。そこで私どもは総司令部に懇請いたしまして、一日も早くその事実を確めて、そうして帰して頂くように努力が願いたい、こういう懇請を続けておりまして、そうして家族からの手紙三百数十通というものを司令部に二月の下旬に提出いたしまして、その手紙家族から残つておる人々に対して、一人について相当数になりますが、そうした手紙を盛り込み、又写真も入れまして、終戦後の日本の現状も説明しまして、何しろ向うは降伏しないというのが実情のようであります。そうですから終戦の事実も知らない、敗戦を信じない、それで向うへ残つて、うつかり出て行くとどこかへ連れて行かれるかも知れないというような恐怖のうちにあるということも、家族その他から聞いたのでありますが、そういうことについての鮮明といいますか、説明をいろいろ盛り込んだ手紙というものや、家族の写真なども入れまして、それを二月下旬に送り込んだのであります。そうしてその手紙は恐らく司令部といたしましても、現地のほうに適当な便によつて送達されておると思いますが、私ども家族立場考えまして、できるだけそのお知らせ願える範囲情報の提供を希望したわけでありますが、何しろ運び方とか伝達方というようなことは、やはり占領軍の軍紀にも関連がありまして、私どもそう突き詰めて、こうして、いつ何日、何で運んでどうしたというところまでは聞けないというところがございますから、聞ける範囲でお知らせ願いたいという希望を出して置きました。やはりこの問題も決して司令部のほうとしても放置されていないことを確信しております。若干時間がかかることは止むを得ないと思います。
  87. 紅露みつ

    紅露みつ君 留守家族の申しますには、船は自分たちで何とか用意する、ただ向うに行つて連れて来たいという願いで、自分たちで用意しても迎えに行きたいということはもう切実な訴えなんでございますけれども、そういうことはできますでしようか。
  88. 武野義治

    説明員武野義治君) その点も相当希望があつたようでございますが、日本の船舶の行動というものは、総司令部が部内でいろいろのことでお考えがあつて、そうして決定されておるわけでありまして、日本船の行動というものも非常なやはり制限があると思います。というのは、やはりその民船が指定の航路を外れますといろいろな危険があるわけであります。従つてそういう船がどこかに自由に着くというようなことも、必ずしもそうしたことも申上げられないような点だと思いますが、とにかく危険があるのです。そうしてその安全のために、やはり司令部としては自分の責任の下において処置するという形において進められておるのじやないかと思います。
  89. 紅露みつ

    紅露みつ君 伺いますと、いろいろ理由があると思いまして、やはり慎重にしなければ、船関係の危険もそうであると納得が行くのでございますが、それは司令部のほうに早急の機会に、どうなつておるかということ、それから促進して頂きたいということもございますから、外務省のほうから具申して頂きたいと思います。
  90. 武野義治

    説明員武野義治君) 承知いたしました。
  91. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は今の紅露委員に大賛成で、それは委員会としてそういう島にいつまでも放つて置かずに一日も早く帰れるように、これは委員会としても取上げられてあれしたらいいと思います。それからこの大きな問題、中共地区、或いは満鉄従業員の問題ですね、実は先日私外務省行つた際に、私の友人が五年以来満鉄にいて消息がないので死んだと思つて聞いて見たら早速取調べて下さつて、生きておるということ、それから最近までの足取りもわかつた。そういう状態で、個人的にもいろいろ集めておられるということを僕は認めて、非常にその努力に対して多くするものなんです。ところが問題の本質は、さような個人的な点だけでは解決しないので、つまり中共政府と何らかの、例えば委員長が言われたような形で何らか努力されたかどうかということ、それとも今日は時間の関係があるなら、この問題は質問も含んで、紅露委員の国連の問題についても私十分意見もあり、促進についてはもう少し大きく考え、且つ協力したいと考えておるのですが、時間の関係でこの問題は問題を含んだまま継続されて行くのですか。何か今日聞いたというだけで、委員長として効果があると考えますか、この方法は。
  92. 千田正

    委員長千田正君) 今日は実は公報にありましたように、この問題を出しておるのですが、出席議員も多数じやありませんので、殊に土曜日のせいでもあるからいろいろ時間の都合もございましようが、多数のかたがお見えになつておりませんので、大体今までお聞きすると、兼岩委員或いは皆様の御熱心な御質疑があつたわけなんですが、朝鮮婦人の問題は一応けりがつきましたので、中共地区、その他の海外におけるところの未帰還人たちに対する引揚に関する問題というか、これ又今おつしやつた通り大きな問題であります。ここにいわば今のようなアナタハン島のような問題もありますし、或いは戦犯のような問題もありますし、多々あると思います。これは大きな問題でありますが、一つ一つ揚げて行つても厖大なものであるけれども、総括した御意見はむしろ今日は、五名の委員というよりも、又日を改めてこの問題は討議したいと思いますので……。
  93. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 では紅露委員の問題は、一委員から一外務課長でなくて、この委員会としてそういう島で戦争……そういう誤解から今なお奮鬪をしておられる同胞の人を残して置くということは非常に僕は遺憾だと思う。委員会として何らかの強力な措置をとるように議事を進行願います。
  94. 千田正

    委員長千田正君) 只今紅露委員、兼岩委員からの御提案のありました南方アナタハン島になお今日もおられるところの我々同胞の救出の問題につきましては、一応外務省が勿論交渉はしておるでしようが、国会の当委員会として改めてこの問題は関係当局に折衝することに御異議がなければ、その通り取計らいたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 森崎隆

    森崎隆君 これは紅露さん、この根本的な問題は、僕らはつきりしないが、ただ朝鮮におられた日本婦女子引揚の問題は、今そこまで帰つておられる、これを受入れるか受入れんかということになつている、これだけは特別なんですね。偶然にさつきも甘露省その他の島の問題もありました。根本は日本に帰れたら帰りたい。すぐ受入れられる人が内地におるが、帰してくれない。本人は帰りたいといつても帰してくれない。又いるかいないか、いるとしましてもその調査ができない、これは根本だと思います。そこに我々引揚委員会の使命があるのですから、ただ五人、六人の問題が偶然に発見されて公開する。これは勿論有難いことだけれども、もつと根本問題だけは常に把握して、本筋が進まなければ全体の解決はできないと思う。その点だけははつきりと認識して我々やらなければいけない。
  96. 紅露みつ

    紅露みつ君 森崎委員からのお話、それは御尤もなんで、勿論帰りたい人は早く帰して貰わなければならないし、帰る方法がこちらだけでつくという場合はなお更のことだと思います。これは国際問題に触れないでこちらで迎えに行ける、これはすぐ迎えに行つて貰わなければならないと思いますけれども朝鮮婦女子の問題は、婦女子の問題でありますだけに、私どももひとしお深い関心を持つているのですが、一カ月とか一カ月半とかいう期限もついていることですから、その結論を待つて、そしてこれは解決することになるであろうと思いますので、そういう関係にない単純なる今のような問題については、委員長が言われますように、どうぞそうした御処置をつけて頂きたいと思います。
  97. 千田正

    委員長千田正君) 皆様の仰せの通り委員長としましても取計らいたいと思います。  ただここにお諮りいたしだいのは、請願のうちのただ一件を特に今日お取上げ頂きたいと思います。関係当局としまして郵政省から郵務局の荒巻管理課長が見えておりますので、それは海外の抑留同胞の救出運動のための記念切手を発行してもらいたいという請願が二件来ております。この点を若しここに、十分くらい政府の説明ができそうですから、お差支えなかつた請願のうちのこの件だけを挙げて置きたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 千田正

    委員長千田正君) それでは外務省のほうの問題は、今日はこれで打切りまして、いずれ改めて又外務省のほうにお願いいたします。大変どうも有難うございました。   ―――――――――――――
  99. 千田正

    委員長千田正君) 請願五百八十一号、東京都台東区御徒町三ノ二十四日本健青会宮崎一郎から、海外抑留同胞救出記念切手発行に関する請願、紹介議員大谷瑩潤氏、請願第八百十七号、海外抑留同胞救出記念切手発行に関する請願、東京都千代田区西神田二ノ二在外同胞帰還促進全国協議会上島善一、紹介議員長島銀藏氏及び高橋進太郎氏、この内容は、在外同胞の帰還促進並びにこの救出の運動のために、この留守家族その他が十分なるいわゆる救出資金も何もないので、未だ帰らざる同胞のために、最終の段階にまでこの運動を続けて行きたいが、残念ながら十分なる資金がない、どうかこれを国家で税込みの記念切手を発売して頂いて、その収入によつてこの救出運動を国民運動として取げてもらいたいという請願趣旨であります。この点につきまして郵政省としてのお考えを述べて頂きたい。
  100. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 只今委員長の御説明趣旨につきまして、この問題につきましては、前の国会のときにおきましても御提案がございまして、郵政省といたしましての考え方を御説明申上げて参つたのでございます。郵政事業が国民全般の一人心々と非常に結び付いておる非常な平和的な事業である関係上、而も全国津々浦々に至るまで、機関を持つておりまする事業でありまするので、郵政事業の機能の大きいところを御認識頂いておるのでありまするが、海外同胞引揚の問題は、実に大きな政府の果さなければならない事業であることは私どもも重重承知しておるのであります。この問題につきましてはいろいろ研究いたしておるところでありまするが、一昨年以来、寄附命付きの葉書によりましてのいわゆる共同募金並びに日赤に対する寄附金の醵出ということを、年賀郵便葉書の発行と相兼ねまして実施いたしましたところ、国民各位の非常な御協力を得まして、昨年は一億五千万、このたびの年賀葉書は四億、即もそれぞれ一億五千万円並びに四億円の醵出がございまして、これを日赤並びに共同募金に対しまして、郵政省として一括差上げましてそれぞれの社会事業団体、それぞれの必要の向に配分されておるのでございます。従いましてこのことを他の言葉を以つて申上げますれば、郵政事業としては、この海外同胞引揚の問題につきましても非常に協力しなければならないということは認識されておるのでありまするけれども、何分にも寄附金運動というものが実は多方面にございまして、例えば、御承知かと思いまするけれども、結核予防のための寄附金の問題、或いは又国宝保存のための寄附金の問題、或いは戦災孤児の救血の問題という形におきまして、郵政事業に対するいろいろな方面からの御期待が非常に多いのでございまして、これを実は一々取上げて参りたいのでございますけれども、このことは寄附というものの性質上、これを受けまする国民側の考え方も相当考えて行かなければならない問題でございまして、あれも取り、これも取るということは、却つて国民側におきましてこの寄附金というものを果して政府はどう考えておるのかということを恐れるのでございまして、只今までのところ共同募金並びに日赤に対する年賀葉書を通しての一括した大きな寄附金に対する御協と力いう形におきまして、二十六万の従事員が皆一括してこの事業に協力されておるというふうになつておりまするので、我々事務当局の考え方といたしましては、個々の寄附金の募金運動というものに対しては今のところ消極的に考えたい、一括した共同募金運動というものによつてこの問題に対する御協力の責任を果させて頂きたい、かように考えておるのでございます。法律の趣旨におきましては、郵政省に附置されておりまするところの郵政審議会というものがございまして、この郵政審議会が、寄附金をするかどうか、又寄附をする団体は如何ようなものにするかというようなことをきめる建前になつておるのでございまして、法の建前といたしましては、各種の寄附金付の、具体的に申しますと、社会福祉の増進を目的とする事業を行う団体というものに対する寄附金は可能でございます。只今までのところ私ども考えておりまする内容はさような点でございます。
  101. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 郵政省でいろいろな場合に記念切手を発行をしておりますが、あの収入というものはいわゆる寄附金のような意味で、それでできた収入が全部他の方面に使われるということでなくして、郵政事業全体の収入を挙げるという意味においてあれはやつておるのだろうと思うのですが、今の請願によりますと、引揚問題に関する記念切手を作つて、そうしてその記念切手で得た収入全部は引揚方面の運動、民間運動の団体、それに寄附して行く、こういうふうな請願のように思われるのですが、先ほどのお話によると年賀郵便は二円を三円にするのですね。そうしてその一円の分は赤十字社なり社会共同募金のほうに全部やつて、これは郵政事業のほうの収入にはならない、こういうことはよくわかつておるのですが、記念切手の際は、あれは他の方面にやるのじやなくて全部郵政省の自身の会計に入つておるように考えておるのですが、その点はどうですか。
  102. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 記念切手は郵政事業の収入でございます。郵政事業は御承知通り特別会計になつておりまして、只今までのところ御承知のように料金が非常に何と申しますか、調整を要する事情もございまして、収入状況は赤字になつておるのでございます。従いまして郵便事業としましての切手収入というものをそつくりそのまま一般会計へ出すということは、只今までのところは考えられないところなのでございます。然らばそういう一つの目的を持つた特別の切手を発行して、それを政府一般会計のほうに献上するかという問題は、非常に事業の運営に関する根本問題でございまして、若しも郵政事業というものが一般会計の所属の下に、いわゆる専売事業として政府の一般会計に献納するごとき姿であるならば、会計としてこれを取りまとめの上、そういう方面に一般会計へ繰入れて行くというようなことは考えられないことはないと思いまするが、特別会計で現在赤字の状態にありまするとき、郵政事業としての能力は非常に低いということを申上げざるを得ないと思うのでございます。御提案の趣旨が、私どもは、寄附金附きのものであるというならば、これは郵政事業の収入ではございません。寄附金に関する限りは、これは国民の一人々々の血の溜つた、集められた金でございまするから、これはもう当然差しげる。併し郵便というものは、切手で発行する以上は、それが郵便の料金として使われ、郵便の現実の利用の上に現われて来るのでございまするので、郵便切手として出す以上は、郵政事業としてそれだけのサービスをいたします関係上、それをそつくりそのまま……、例えば記念切手という形にせよ、郵便としての通用力を持つている切手でございますので、これを一般会計に出すということは技術的にむずかしい問題と思つております。さような意味合いにおきまして、私ども記念切手というものを発行いたすにつきましても、寄附金付きのものならば考えられますけれども、これを一般会計にそつくりそのまま差上げるということは、切手が郵便に使われるということ、並びに現在の郵政事業の赤字という問題から考えまして非常に困難のように思うのでございますけれども……。
  103. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうしますと今までの記念切手というものは、例えば八円なら八円というものを、そのまま図案を変えて別の図案にして、そうして八円の切手を何とか記念切手ということでやつておる、そしてそれをみんなが買う。そしてそれは一般の郵政事業の方面において特別会計の収入増にするという形になつておる。従つて今の請願にあるところの引揚問題に関するところの記念切手というものを作る場合に、八円というものでそういうものを作つたのでは、やはり今の建前上、一般会計に繰上げるということはできないし、寄附金にすることもできない。そこで例えば十円くらいにして、そうしてその二円というものをいわゆるお年玉で考えていたようにして、そうして二円くらいを寄附にするというやり方はできるものですか。
  104. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) その点は先ほど申上げましたように可能でございます。現在お年玉葉書についてやつております。又葉書についてやつておりますと同じ法律的な理由で切手についても可能でございます。
  105. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 切手について今までやつた例はございますか。
  106. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 切手についてやつた例は、戦前におきましては、たしか愛国航空切手で寄附金付きのものを出した例がございます。それから終戦後におきましては、年賀葉書になります前に、昭和二十二年並びに二十三年度におきましては二円五十銭であつたかと思います。それからもう一つは、八十銭であつたと思いますが、日赤並びに共同募金という形におきまして切手で発行した例が二つでございます。
  107. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 その際の切手は、やはり普通の八円とか二円とかという切手ですか。或いは八円のほかに二円加えた切手ですか。どうですか。
  108. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) それは当時の郵便料金、たしか書状が五銭だつたかと思いますが、その書状の料金に二円五十銭を加えた七円五十銭……。
  109. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 いわゆる附加えたわけですね。
  110. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 附加えたわけです。
  111. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 普通の料金に附加えた……。
  112. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 附加えたわけですが、書状にも使われて、そうして郵政省としましてその売上分の、つまり寄附命部分を会計的に整理いたしましてこれを寄附金団体へ交付してある。これは現在もまだ売れ残つておりまして、二十三年或いは二十二年当時に発行いたしたむのが、現在もまだぼつぼつと窓口で売れておりまして、それを寄附金のほうに郵政省から繰入れておるということを続けておるようなわけでございます。
  113. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 それじや今の請願は、まあやろうと思えば、これは極めて大切なものだと、だからこれはやろうと、国民的にもやろうという考えになれば、今の八円の切手を十円くらいにしてやるという手続はやれないわけではないということになりますね。
  114. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) さようでございます。
  115. 紅露みつ

    紅露みつ君 私どもも先般九州をずつと調査に廻つたのでございますが、至る所の懇談会、座談会、或いは代表者調査の際なんかもこの問題が非常に熱望されておりまして、至る所で熱望されており、やろうと思えばできるのだ、こういうことになつた以上、どうしてもやろうと思つて頂かなければ困るかと思うのですね。でこれは一般の社会福祉と同じものではないと思うのですね。とにかく抑留同胞救出運動、この運動の資金は全然ないのです。ですから本当ならばこれはそういうような苦心をしないでも、国から出して頂かなきやならない性格のものだと思うのですが、何しろ予算の上でそれができないものですから、こういうことを考えられたのだと思うのですが、併しこれは審議会にかけてやつて頂かなきやならない問題だと思います。そしてこれは永続的なものでもありませんし、ほかの社会事業とは全く性格が違うものですから、本請願は採択されるように希望いたします。
  116. 荒巻伊勢雄

    説明員(荒巻伊勢雄君) 法律的には全くおつしやる通り私も可能だと思つております。先ほどからも繰返しますように、非常に郵政省の力が大きいものでございますので、結核予防の問題だとか、国宝保存の問題だとか、戦災孤児救済の問題だとか、個別的に寄附金付きの切手の発行ということの要望が数々ございます。私の所にも毎日お見えになられますので、その都度我我の考えを卒直に申上げておるのでございますが、郵政審議会に諮 べき性質のことでございますので、なお私も十分研究さして頂きたいと思います。
  117. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 それでこれはこの委員会では採択しまして、政府に送付するということの手続をとつて頂きたいと思います。これは政府がどういうふうにするかということは、政府に任せるということにして……。
  118. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういう団体で受取つた命をどういうふうに使われる考えで、額をどのくらい得ようとしておられるのですか。それは何という団体ですか。
  119. 千田正

    委員長千田正君) その団体は、在外同胞帰還促進全国協議会、それから日本健青会、さつき私が御説明申上げました通りで、いわゆる国連が、更に今度三人委員会ですか、特別委員会を持つて世界各国のいろいろな調査を始める様子であるし、ただ日本では何ら国民の運動としての、或いは調査も十分に行届いておらない、この留守家族からなるところの帰還促進全国協議会としましては、留守家族が今まで懸命な努力をして来たけれども、もう資金の方途がなくなつた。まだまだ今後帰つて来なければならないので、それまで国民運動としてこれを展開して行きたい。寄附金の配分については、海外抑留同胞救出国民運動総本部、これが先般来各県に設けられておるのであります。海外抑留同胞救出総本部というのは、衆議院の第一会館の中に本部を存置しておいて、日本の各県に各支部があつて、各県会、或いは市会が運動の中心になつて、留守家族と共にこの運動を展開しておるわけですが、金が勿論ないというのが現状なので、こういう出願をして来ておるわけであります。寄附金の配分について要望されておりますのは、海外抑留同胞救出国民運動総本部及び在外同胞帰還促進全国協議会の二大中央機関に対してなされるよう要望すというのが請願の条項の中に入つております。これはいずれにしても最も妥当な意味において、若しこれが採択されて、又或いは政府が審議会で審議して、その使途につきましては、最も公平妥当な意味において使われることは勿論だと思いまするので、その点は国会としましても十分に監視もし、又要望もすることができると思いますが……。
  120. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 いつか国会で、国会の蛆虫がどうとか、そういう過激なスローガンで奪還というような、つまり世界平和、民族提携を基礎にして引揚を促進するのでなくて、何か一つの国と、一つの国を喧嘩させて、そうして奪還というものを、逆にそういつたことに利用しようとするような傾向の団体があつたんですが、その団体と同一物ですか、違いますか。日比谷で何かやられて過激な言葉を連ねて。(「同じだよ」と呼ぶ者あり)そんなものに金を出すということは僕は絶対に反対だ。あの馬鹿な気違いみたいな団体、僕はやつぱり世界平和を基礎として、民族が相共に強く提携するということを前提として引揚の促進をやらないと、民族が喧嘩をし合う、どつかの国が尻馬に乗つてその軍事基地を提供させて、そうして国会の蛆虫どもは何をやつているかというような、フアッシヨ的な言辞を弄して促進されるようなもんじやない。つまり引揚なんていうものは、そういうことにまで、僕は郵便で寄附金まで取つて、それで金を出すというようなことでは、改めて討論を展開したいと思うな、僕は。そうして各団体の従来の実績を調査して見たいから、保留させてもらいたい、即決しないで。
  121. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私は採択して政府に送付するというのは、その配分する目的が、若しそれが政府において実現をするというような段階になつて、一定の国民運動となつて、たくさんの切手が売り出されて収入が挙がるというような段階に行つた場合においては、その使い方については、必ずしもその請願の中にある団体ということを特定してきめるというふうでなく、この趣旨は非常にいいのだからというような意味において採択して、あとの使い方なり方法は、そのときに又検討して考えるということにして……。
  122. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 折角の鈴木委員のお言葉だが、反対論も成立つぜ。一体戦争被害者に対して何故国家がもつと出さんか。そういう寄附金を押付けるのは何事であるか。戦争を起した政府こそが、戦争の一切の国民に対するあと始末は徹底的に付けるべきである。私はこちらから強調されるのがこの委員会として正しいので、そういう寄附金に問題を持つて行くということは反対だ、鈴木委員のお説もあるけれども
  123. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この前は採択されましたか。
  124. 紅露みつ

    紅露みつ君 これは衆議院にも出たので衆議院がどうしたかということの連絡をとるはずになつておりましたね。
  125. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 保留にして頂きたい。
  126. 紅露みつ

    紅露みつ君 連絡がとれなかつたのです。
  127. 千田正

    委員長千田正君) 私が委員長になつてから初めてです。
  128. 紅露みつ

    紅露みつ君 今国会初めてです。
  129. 千田正

    委員長千田正君) この記念切手というのはなかつたはずです、別な……。それではどうしますか、一応衆議院にも出ておるはずと思いますから。
  130. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 もう少し保留というか、まだ結論を出さないで……。
  131. 千田正

    委員長千田正君) それでは今日一応これは皆さんで御審議願つて、次の機会においてこれは決定いたしたいと思います。
  132. 森崎隆

    森崎隆君 もう少し委員がたくさん出た時に。
  133. 千田正

    委員長千田正君) 今日は少数でございまして、残念であります。それでは次の委員会のとき、ほかの請願、陳情もありますので、今日は関係当局たる郵政省のこれに対する一応の考えを我々は聴取したということにいたしたい。御判断はそれでは次の機会に譲りたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 千田正

    委員長千田正君) 本日はこれを以て閉会いたします。    午後零時五十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            森崎  隆君            高良 とみ君            紅露 みつ君    委員            木村 守江君            内村 清次君            杉山 昌作君            鈴木 直人君            木内キヤウ君            兼岩 傳一君   説明員    外務省管理局引    揚課長     武野 義治君    郵政省郵務局管    理課長     荒巻伊勢雄君