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1951-03-13 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十三日(火曜日)    午後二時二十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○引揚促進に関する件  (外地戰犯に関する件)   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) 只今から委員会を開会いたします。本日の議題としましては引揚促進に関する件でありまするが、特にそのうち先般来当委員会において取上げて種々研究もし且つ関係方面に折衝しておりますところのフイリツピン戰犯者に関する件につきまして、本日参考人神保信彦君をここにお呼びいたしまして、比島戰犯者に関する件につきまして供述をお願いすることになりました。これから参考人の御供述を聞くことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千田正

    委員長千田正君) それでは只今から参考人神保信彦君から、只今議題になりました比島戰犯者に関する件につきまして、あなたの知れる範囲内におきましてここに御供述願いたいと思います。特に今までの経過と現在の戰犯者、そのうち特に死刑判決を受けておる数及びその人たちの日常の起居の問題、或いはフイリツピン国民感情並びにフイリツピン当局はこの問題をどういうふうに将来取扱うであろうかというような点につきましても、あなたのお考えでここでお話できる範囲内におきまして御供述願いたいと思います。特に参考人において希望がございますならば、その希望を申述べて頂いて結構でございます。
  4. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 率直に私のいろいろの経験を申上げますけれども、差支えあるところはあとで抜いて頂きます。このフイリツピン戰犯につきましては、過去五年の間復員局及び外務省渉外課のほうであらゆる手段を盡しております。又家族の人も日本人の許された範囲内においては私は最大の努力を盡しておると思います。勿論引揚同胞の皆さまの全般的な見地からの並々ならぬ御指導とGHQとの交渉というものも、私は実に━━された日本人としましてはもう最大限やつておるのではないかと思います。それで大体戰犯は、自分は身を以つて体験した者でありまして、御承知でしようが、済南で一年戰犯になつてつて、幸いにロハス大統領の特別の審査と、蒋介石関係で帰つて来た者です。それから私は戰犯の問題につきましては十分開心を持つてつておうまして、そうして現在のこの段階になつたのであります。そこで大体においてフイリツピン戰犯が一番━━ように思われます。これはあとちよつと申上げますが、日、比の民族感情が然らしむるものでありますが、やはう我々がフイリツピンを知らなかつたためだと思います。そこでまあ戰犯の本質ですな、━━━こういうまあ歴史的な批判は将来に仰ぐものですし、それから戰犯個人が罪があるかないかというようなこと、これも又もうすべて研究外だと思います。国と国との━━でありますから、個人にとつては誠にこれは━━━━━、気の毒千万なものであります。そこで私が今考えておりますのは、講和条約を前に控えまして死刑の人を何とか一つ救いたいという人道的な見地から微力を盡しておるのであります。促つてこれは政治活動でもなければ何でもないので、私はどこまでも、誰に回つても正しく自分意見を発表してもいいだろうと思つております。そこでフイリツピン戰犯は、野尻あたりがたびたび報告しておりますから、皆さん承知だと思いますが、終戰後死刑囚が非常に多いです。実はどのくらいだか知りませんが、野尻さん御存じないですか。
  5. 野尻徳男

    説明員野尻徳男君) 五五%か六〇%だと思います。
  6. 神保信彦

    参考人神保信彦君) もうこれは━━な数です。大抵のところはどのくらいですかね。
  7. 野尻徳男

    説明員野尻徳男君) 平均二〇%です。
  8. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 大体戰犯の法律の条文そのものを見ますと、これは死刑或いは無期なんとかとなつているのです。戰犯死刑にきまつておるのです。━━━━━━ものです。そうして 戰勝国の━━ですから━━、すべてか通ります、私の経験を以てすれば。これは中国戰犯で私は実際によく知つていますから、戰犯の内容とか何とかいうことはこれはもうよくわかつておりますが、もう現在の戰犯ケース段階においては、私は無意味だろうと思います。これは御承知のように、フイリツピンからトレツドとか二、三人の調査官が来まして資料を集めて、四年に亙つて資料を持つて行つて向うで裁判をやつて向うで公判を開いて、初審、再審とやつてつておるのです。そうして証拠日本から持つて行きましたし、あらゆる証拠いろいろやつた結果がもうすべて大統領のもとに行つてしまつたのです。だから現在ですと、日本高等裁判所ですか、書類だけのものです。書類の上には立派に━━と皆作つてありますから、今そういうことにつきまして証拠を出しましても、私はもう無意味だろうと思います。従つてこれからのところはこれしかないと私は思います。その前にちよつと経過を申しますと、大体皆さんの御配慮で、フイリツピン戰犯死刑にはしましたけれども、執行はしないだろうと考えておりました。それは御承知のようにカトリツクの国でありますし、死刑は大体しない国です。ケソン時代からしなかつた国ですから。それともう一つは、初めに米軍時代に三名ほど死刑執行したのです。ところかその三名の将兵最後まで無実を訴えたというのです。そして又何ら天地神明に恥じない態度を持つておるというので、米国立会つた宣教師が、これはやはり裁判官が死刑執行を変えておらないから、こういうようになるのだろうというようなことを発表しまして、それからとまりまして、大体二年の間死刑は一人もやらなかつたようであります。そこで私らも相当楽観しておつたんですが、去年の十一月の末にだんだん世界情勢講和条約を目の前にしてこう結末を急いで来ますと、発表しましたことは、日本戰犯については寛赦も、それから減刑もしないだろうということを発表しまして、そのとき議会の人や或いは家族の人は騒いだのですが、併し大体の空気楽観論でしたから、問題にならなかつたです。一月の初めに死刑執行官のところから手紙が来ましたときも、これはしないたろうと考えておりました。そんなことはあり得ない、終戰五年になつて今更殺すことはないだろうと皆考えておつたわけなんです。ところがやはり大統領関係者から手紙が来ましてそう楽観できないのだと言つて来まして、皆さんに連絡か何かしたのですか、微力で及ばない間に到底殺されてしまつた。それが一月の二十日です。それからあと復員局外務省の人や議会特に引揚委員長のかたなんか、重大にお考えになりまして御盡力になつてから、一応今死刑執行をとめた形式になつております。併しこれが又全然これから実行しないかとなりますと、私はそうそうはつきり言えないだろうと思うのです。やはり一応考慮しますということは大統領から言つて来ております。そうしますと、あとに残つておる六十名というものが危険な状況に今あると思います。そこでこの表より見ましても、マヌスが十一名、モンテンルパが六十名、サイゴンが四名で、フイリツピンがこんなに六十名もあるのですから、この六十名を殺すということは誠に我々日本人としては済まないことだと思います。幸いに議会人々の御盡力で今そういう問題を取上げられて御検討なさつておるということは、非常に私は自分としても感謝しますし、獄舎にある人々及びその家族、及び海外から引揚げた将兵というもの は、口では言いませんけれども、非に関心を持つております。それですか ら、何とか死刑囚だけを少しでも、一人でも少くしたいというのが私の最後の……判決であります。そこで現在の段階でどうするかという問題ですが、私はこれはこうよりしかないと思います。やはり何といいますか、或る国民運動のようなものを展開して、新聞の社説で書き、世論に訴える、署名運動をやる。そうして日本のほうでは戰犯について非常に関心を持つてつて、重大なものを日本人に与えたんだということを、日本人国内でやるんでなく、これをやはり電波かニユースマニラに伝えなければ、全然意味のないことだと思います。これはこの米国とかフイリツピンとか中国と交渉しても……私は現在痛切に感ずることです が、敗戰国外交というものは外交ではないのでしようか、とにかく意思表示というものを相手に伝えなければ実に意味ないことで、そこで今まで戰犯救助のためにいろいろ努力しておりますが、大体の主として歎願書ですね、それからまあ意思表示、例えば向うから来た宣教師に頼む、バイヤーに頼む、政治家代議士に頼むというのは、大抵どこかへ行つてしまうか、実に危いのです。本当に危いのです。やはり向うにおいて大統領の秘書のところにおる直接の最高責任者が私に言いますから、日本人から来た書類はここに止まつておる、決して上には行くかないのです。どうぞ委員長、いろいろあとで引つかかるところは訂正をお願いいたして置きます。それですから、これは結局何と言いますか、我々の気休めの仕事に過ぎないのです。その間に弁護士の悪いのも入れば━━━の悪いのも入つて、溺れる者は藁をも掴むの心理になつておりますから、適当にこれはやられます。そうしてだんだんと日本フイリツピンとの空気が悪くなつて来るのです。それですから現在の段階ではやはり英字新聞とか或いはニユースとか何かで、そういうものを使つてフイリツピンマニラに伝えるようにしなければいけないと思うのです。それが一つ。その次はです、これは私の考えでは占領以来戰犯の規定なりGHQ態度、それからいろいろのものはさつぱり変つておりません。戰犯に対しては従つて五年前にやつていけなかつたことは今でもやつていけないのですが、そこはだんだん法規の外に情勢は動いておりますから、そこで今ですと個人としてなら僕ははつきり意思表示キリ大統領初め要人に伝えていいんだろうと思います。従つて例えば、仮にです、吉田総理自分学校の子弟が死刑囚だとなれば、自分学校の同窓生の先輩として、個人として言う。或いは外務省のお役人が今マニラ戰犯におるから、外務省先輩としてまあ意見を言う。総理大臣政府代表でなくというような立場で、或いは政党のお偉い人々なんかが個人立場で、私は電報手紙歎願をお出しになるのが一番効果的でないかと思います。まあそれしか今の段階では私はないのではないかと思います。電報を打つか、それでまあ取りあえず死刑を止めて置く。これが各政党の協議で議決となりますと、これは事面倒となりますから、個人の資格でやつてもらいたいということを私はまあお願いするわけであります。そこでそういうのが向うに行きましてどう反響するかということです。これがやはりこういう、結局事実を申上げますと、一月の末にいろいろフイリツピン歎願の情報が入つて来ますと、その在野党の新聞キリ政権を倒すためにでかでかと反対論読を書いております。逆効果になるのは向う国内がなるのです。これはフイリツピン戰犯キリノが寛大に一々審査するなどということはとんでもないことだ、戰争中日本軍がやつたと同じように二十名三十名とまとめて━━━━━、それから米国とか或いは中国か何かの外国人歎願をお願いするということはとんでもない話であるから、そういうのは日本人が卑怯なんであるというように散々に━づいております。そういう空気で行きますから、よほどこの歎願の場合には、政治的なものは離れて、人道的な立場でまあお願い、懇願する、目をつぶつてお願いするというのでなければいけないと思います。そうしますと、ここでだんだん話がフイリツピン日本民族感情になるのですが、日本人の中にも相当これで反省する人もあれば、或いはフイリツピンがいけないという人もおりまして、なかなかこうまとまらんものであると思います。やはりこの日比関係というものの民族感情の将来なんですが、これはまあちよつと脇道になりますが、私は非常に大きなものになるだろうと思います。大きなものということは、この米国政策なんかに、別にこのアジアの後進国民族意識というものがいろいろ邪魔するのでないか。今賠償の問題とかそれから貿易協定とか、そういうことを研究しておりますが、なかなかこれは面倒な問題になると思います。やはり━━━━━というのですか、何かありますが、やはり一票を持つておるものですから、なかなかこれは、ダレス氏が行つてみたところでなかなかうまく行かない。それですからこれは日本フイリツピンとの間の空気を先ず直すということがいろいろの前提になると思います。そこでまあどうしても民族感情から直して、それから戰犯に入つて行くようになるだろうと思います。そこでまあ今まで復員局外務省人々の力でです、私の考えではあらゆる手を盡しておると思います。それから宣教師の人、YMCAから、カトリツクの人から、日本の仏教徒の人もよくやつております。これは実際肉親以外の人は関心を持つておらんわけですがよくやつておりますから、あと私はこれは日本の本当に考える人が個人立場はつきりと電報なり手紙なりでフイリツピン要人意思を伝えるということが一番残された方法だと思います。なお一番まあ合法的な方法としましては、日本の偉い人がマツカーサー元帥にでも手紙なりお会いになりまして、マツカーサー元帥のアレンジによつてまあキリ大統領━━すということは非常に効果的だと思います。これは向うからもそういうことは言つて来ますが、この一月の中頃に二十名死刑にしたあとキリ大統領のほうでは、死刑の反応を日本人はどう受取つているかということを知らせるように言つて来ております。そこで、それまで、これはまあフイリツピン・ミツシヨン内部のことですが、日本戰犯がどうだとか、米国戰犯がどうだというようなことは、フイリツピン・ミツシヨンでは本国のほうにさつぱり報告していないのですな。私はこれは非常に━━しているのですが、そうして結局死刑が十四名にきまつてからあと米国のほうだけに言つているのです。勿論これは内部の話ですが、十四名殺したとか殺すというようなことは、本国政府からフイリツピンミツシヨンに伝わつていないのです。実際私としては唖然たるものがあるのですが、だから非常に縁のつながる国であつて縁が切れておるのです。そういうような関係ですから、どうしても世論英字新聞の上なり、ニユースの上に発表するというような方法しか現在同胞を救う途はないと思います。まあ遠慮ない話を申上げましたが、これで終ります。
  9. 千田正

    委員長千田正君) 委員長からお伺いしますが、先般あなたの御供述の中に、ここ約二年間ばかり死刑執行というようなものはなかつたのにかかわらず、戰犯は十六名ですかの死刑が行われたと、こういうことは今世界のいずれの国の中においても、戰鬪行為は別として、曾つての戰争のために犯罪として認められた者に対する判決乃至執行はすでに一応は終つて、むしろ平和なる世界建設のために各国が努力して、そしていわゆる国際間の感情をできるだけ平和によつて導いて行こうとするときに当つて、逆にフイリツピンにおいては死刑執行するというような挙に出たということは、フイリツピン国民感情の中に、何か日本に対して更に新らしく平和事態に対しまして、日本が例えばポツダム宣言を忠実に履行して新らしく平和国家としてスタートしようとするこの意図に対して、何か含むところがあるか、或いは国民感情が逆に、逆行して来た結果、突如として今まで行われなかつた死刑執行が行われたという点につきまして、どういうためにそういうふうに起きたか、当然なすべき死刑執行したに過ぎないというようにお考えなさいますか、それともフイリツピン国民感情は何かしら急に変化しまして、突如として死刑執行するような状況に陥つたというようにお考えになりますか、その点について。
  10. 神保信彦

    参考人神保信彦君) それはやはり七十余名の死刑判決をきめておるのですから、それを帳消しにして、全部許すということはできないだろうと思います。それで一月の初めに死刑執行官キリ大統領と会つているとき、閣下はもう死刑を取止めたと我々は考えておりますがと、そう言つてみました、まあそれは向うから来た手紙なんでございますが、そうすると、いや我我軍事委員会できめた二年前のその決定をそのまま執行しなければならないだろうというように答えでおりますから、やはり或る一定の方針つたろうと思います。決して私は逆効果でもないだろうと思います。まあそれはその方針を貫かれなければならない政策、何と申しますか、貫いて行かなければならないほど━━ということを知りながら、それをやらなければならないほどキリ政権が不安定なんだろうと思うのです。それだけ民族感情が余りに熾烈なんだろうと思います。まあ今度十四名殺してからあとも、キリノ氏はやはり確かに個人手紙ではまあ━━だと言われたということを言つておりますが、一般民族感情はなお火をつけたようになつて来ておりますし、今の賠償問題と引つ絡めて、やはり民族感情が予想以上に、我々が考えた以上に深刻に悪いだろうと思います。それが私はあの━━の原因だろうと思います。
  11. 内村清次

    内村清次君 私今参考人であられまする神保さんのことを聞きますことはどうかと存じますが、実は今日が初めてでありますもので、その間の事情からお尋ねいたしまして、問題点について供述をお願いしたいと思います。  神保さんはこのフイリツピンにお出でになりましてどういうですね、まあ一概に言いますると、どういう御経歴を持つておられますか。又フイリツピンからこちらのほうにお帰りになりました年月でございますね。それからいつ頃お帰りになりましたか。その点実は私はまだ不案内でございますので、その点から、一つどうか。
  12. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 作戰の始まりましたのが昭和十六年ですけれども、十七年の三月にフイリツピンに行きまして、二年間おつて、十九年の一月にフイリツピンから中国に、北支に行きました。そして二十一年の三月に済南から帰つて来まして、七月に日本に着きました。
  13. 千田正

    委員長千田正君) 現在どういう立場におられるかということもお尋ねしてありますが……。
  14. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 帰つて来ましてから故郷の山形におりましたが、まあ皆さんのいろいろの関係で出て来まして、日本フイリツピンとの間の空気を緩和するというのが、私の与えられた使命と思いまして、文化の交流とか、経済の提携ということを蔭ながら、まあGHQとかフイリツピン・、・ミツシヨンと交渉してやつております。そしてその賠償貿易或いは植民とかいう研究、それにはどうしても大きな問題に戰犯というものが浮んで来ますので、それを研究していました。
  15. 内村清次

    内村清次君 そういたしますと、フイリツピンにおきまして御溝在中に、或いはこの戰犯関係と何か密接な、何かこれと関連あるところのお仕事をなさつてつたんであるか、或いは又これは甚だ私も言い過ぎて相済まないと思いますが、先ほどの当初の御供述のときにも何か戰犯関係にも自分は関連しておつたちよつとお話になつたのですが……。
  16. 神保信彦

    参考人神保信彦君) そうなんです。
  17. 内村清次

    内村清次君 それで、どういうような関係でそういうような戰犯人となつて、又これはもう今日帰つていらつしやるからして、無罪としてお帰りになつていらつしやるからして、そういうような点を、御参考になる点を一つ供述して頂きたいと思います。
  18. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 委員長、私個人のことになりますがいいのでございますか。
  19. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつとそれに関連して……。
  20. 千田正

    委員長千田正君) ちよつと速記を止めて。    午後二時五十七分速記中止    ——————————    午後三時二十七分速記開始
  21. 千田正

    委員長千田正君) 速記を始めて。
  22. 内村清次

    内村清次君 ここで政府のほうで統計を出してありまするフイリツピンモンテンルパ戰犯者の中で、死刑判決を受けた人が六十名だと、それから又無期判決、それから有期判決と、こういうようなかたがたは、もうすでにあなたは大体におきまして当時のかたであつて、どういうような、即ち戰犯的な行為があつたというようなことはよく御存じでありますかどうか。
  23. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 私個人としては一々は知つておりませんが、復員局のかたなんかはよく知つておりまして、よく相談しておりますから、その事情は何かよくわかつております。
  24. 内村清次

    内村清次君 そういたしますと、これは皆軍人かたがたばかりでございますか。或いは又フイリツピンにおられたところの民間かたがたもいらつしやいますか。
  25. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 民間の人も相当入つております。会社の人なんかもおります。それからあの当時は終戰間際にはフイリツピンにおつた地方の人を皆集めて兵隊に入れたものですから、軍人地方人々の区別がつかない。一応軍服を着せられたというかつこうであります。それで入つている人がありますから、やはり軍人以外の人もあると思います。
  26. 内村清次

    内村清次君 そういたしますと、何と申しますか、いわゆる只今だんだん死刑囚かたがたはその死刑をやられるというような事態が非常に急迫して来たということにつきましては、先ほどの御証言でまだ対日感情が非常に悪いのだと、この対日感情というものが、いわゆる現在のフイリツピン関係政府筋、或いは民衆のうち、こういうような階層の中のどの方面が一番熾烈であるか、或いは全般的にそういう対日感情が非常にまだ悪化しておるというようなことを御認識なさつておるか。
  27. 神保信彦

    参考人神保信彦君) それはフイリツピン民族として━━に入つているのだと思います。これは労働者もインテリも、それから何と申しますか警察軍の人なんかも皆そうです。そこで事例を申上げますと、フイリツピンから信用する政治家が来る、信用する或いは宗教家、或いは何か偉い人が来ますと、私ども会いますと終り頃になると必らず言うのです。私は面白くないと思われることは日本に来て見て初めて日本人のいいことがわかる、神保なんかに会つて見て、非常に君は立派だ、君がやつて来て、ロハスあの人を助けることをしなければ、フイリツピン人は本人を永久に許さんだろう、なんと言いますね、そういうことを三人に言われましたが、どうもほめるのか何か知りませんが、とにかく友達がはつきり言いますね。それから帰つて行つてからそういう大臣級の者も言つて来るのは、やつぱりフイリツピンの対日感情が悪いからまだまだ君がフイリツピン関係を好転しようと努力して名乗りを上げるのは早いだろう、もう小し自重してくれ、フイリツピンに来ることは実際に危険だろう、そういうことをよく言つて来ますから実際に悪いのだろうと思いますね。丁度生命の危險ということがありますが、これは又政府が護衛すれば大丈夫ではないかと私は実は向う大臣と相談した、そうしたら、日本銀座あたりでも共産党がおるだろう、共産党日本人を殺す場合にそれを防げないじやないか、マニラにもフクハラハツプ団がおるから、そいつが日本人を殺した場合には、これは確かに祖国防衛の勇士のようになるだろう。これはやるだろうというのです。それまで防げないからどうも危いというのです。だから私は一般によほど悪いのだろうと思うのです。フイリツピンに前におつた実業家の人はよくわかつております。やはりそうでない人は一般ちよつと悪いだろうと思うのですね、そうでない人は、本当に深刻なものです。これはいつまで続くかということですね。これは昨年の大統領選挙が終つたらよくなるだろうと思つてつたが、そうでないし、今年の十一月に日本と同じようにやはりフイリツピン地方県知事、州の選挙があります、それまでは僕はこの感情というものは好転しないだろうと思うのです。皆それの政策選挙を争つておりますから、丁度蒋介石日本に反抗したような態度をとつたようなものです。それですからフイリツピンの対日感情は実際に悪いだろうと思うのであります。
  28. 内村清次

    内村清次君 この感情が各階層に瀰漫いたして悪化している現在の段階におきまして、今なお我々といたしましても、又参考人神保さんといたしましても、どうか戰犯者を救いたいという熱情については一致しているわけでございますが、この死刑判決を受けたかたがた、こういうかたがたが、これは一応の通信によれば、もう非常に短時日のうちに次々と死刑執行があるのだというようなことも一面聞きまするが、併し何か期間的にまだ相当な余裕があるのであるというようなことの、何か確信があるかどうか……。
  29. 神保信彦

    参考人神保信彦君) どうも私には……。
  30. 内村清次

    内村清次君 そういたしますと、先ほどの公述の中で、とにかく国民運動を起す、そうして起きたことが向うのほうに即ち反映をし、或いは又は手紙その他いわゆる顯宮が私の、個人を以てそうして出すというようなことが非常に有効であろうというようなことをおつしやつておりますが、そういたしまするとこの一番有効な方法といたしましては、先ほどの公述の中にあることであろうと思いますが、問題は、手紙を出しても先ほどの公述ではキリ大統領までは届かん場合があるのだということもおつしやつておるし、何か今、日本で起す運動そのものが直接に向うに反映して行かなければならないという方法、この方法によつて必ずこれは一応取りやめになる、死刑囚死刑執行を取りやめになるし、だんだんと戰犯解除を受けるというようなことにつきましては御自信があるわけでございますね。その運動方法の如何によつて戰犯は必ず解除になるというような一応の見通しはあるわけでございますか。
  31. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 見通しは、はつきりは私ないと思います。そうして一応死刑をとめるということは本当だと思います。それを六十名全部許して帰すかどうかということは私は個人としては疑問を持つております。併し六十名全部殺さずに十名か五名くらい殺して、あとは帰してよこす。それで殺す時期も今から二、三カ月の間に五、六人殺して帰すというところに大体落ちつくのではないかと私は思います。これは非常な英断ですね。ところがいろいろなマツカーサー元帥の指令でも、指令ということには参りませんから、何かマツカーサー元帥キリノ氏のほうに死刑をやめたらどうかということでも言つてもらえればこれはストツプになると思います。そこまで行けば……。ただそのマツカーサー元帥も国が違うし実行できないと言うでありましようから、何か強い手があればストツプになる。向う要人もストツプしたいのはやまやまだが、国民感情なだめさえすればストツプしたい。ですから千田委員長が行かれても、この際よくお話願えればいい結果が得られるのではないかと思います。そこでお願いするわけなんです。
  32. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたが中国戰犯容疑になられた政府国民政府ですか、中共政府ですか。
  33. 神保信彦

    参考人神保信彦君) 国民政府です。
  34. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 連続的に質問をします。つまり政治的にはどのような、ロハス氏は現在どういうことをしておられますか。あなたの問題が起きた頃は、つまり政治的にはどのような、現在のキリ大統領とり関連で、どのような政治的立場をとられたかたですか。
  35. 神保信彦

    参考人神保信彦君) あの人は自由党です。従つて自由党の総裁がキリノ氏で、副総裁です。その当時は彼は民間に下つて弁護士をしておりましたね。それで政治上には何らの権力もありませんでした。
  36. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 独立運動というものとはどういう関係でございましたか。
  37. 神保信彦

    参考人神保信彦君) ケソンとロハス氏なんかが独立運動をずつとやつて来た人です。政治上と経済上の地盤を作りながら運動をやつて来ている人です。
  38. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると独立に、つまり独立の、尤もいろいろ政党的の考えでありましようが、独立の最も徹底した型と、いろいろな型がありますね、独立運動にも……。ロハス氏は独立運動にはどのくらいの立場をとつてつておられたのですか。
  39. 神保信彦

    参考人神保信彦君) ロハス氏は、フイリツピン独立を本当にやつたのはロハス氏です。
  40. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 アメリカの従属国にいるわけでしようフイリツピンは。その関係は。
  41. 神保信彦

    参考人神保信彦君) それはロムロ氏なんかとも多少違つている。どちらかというと、ラウレルに近い政策ロハス氏はとつておりまして、やはりアジア人の、その伝統というものを重んじておつた人です。それでロハス氏は、米国では非常に人材は買つておりましたけれども、まあ彼を多少気違いのように思う点もあつたらしいのです。    〔委員長退席、理事大谷瑩潤君委員長席に着く〕
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 突は私は遅れて来たし、あとの又委員会がありますから、ピント外れでも困るのですが、この戰犯問題についてどういう結論を得ようという明確な、今日のお開きの委員会に明確な目的があるなら知らして頂きたい、おわかりになつておりましたら。つまりどういう結論を得るために参考人をお呼びしているのか。
  43. 大谷瑩潤

    ○理事(大谷瑩潤君) 結論を出すという予定はないそうです。
  44. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 併し大体の目的は、効果は……。
  45. 大谷瑩潤

    ○理事(大谷瑩潤君) 参考人のかたから事情を聞くということです。
  46. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 わかりました。僕は突にあなたのお話は、実際の話というのは面白いので、非常に興味がある。個人的にでもお暇があつたら、私はあなたからいろいうことを聞かしてもらいたいと思うのです。そこで併し、この委員会の引揚問題として、ちよつと一つ戰犯問題で考えられることは、これは各会派のお方にも御意見を聞きたいのですが、つまり戰犯には三種類か四種類あるのじやないか。つまり本当の侵略的な戰争を意識的にやり、国民を戰争に引ずり込んだ許すべからざる戰犯もありましようし、第一級戰犯といいますか。それからそういう者の指導で、止むなく、先ほどあなたのおつしやつたように、殺さないでもいいのに人を殺すことをした人、第二級といいますか。それからまあ止むを得ずやつた人は第三というべきでしよう。むしろ第二級の中には性質が乱暴で、無知識というか、殺さないでもいい者を興味本位に殺したり、つまり第一級の戰犯ではないけれども、人道上許すべからざるようなことをした人もあり、それから止むを得ずやつた人もあり、中には全く無実の罪で苦しんでおる人もあるし、やるにはやつたけれども情状実に酌量すべき者もあり、私は五種類も六種類もあるだろうと思う。僕の大学時代の同級生が今井という工兵の少将なんです。彼がマレーで捕われたとき、私たちクラス会は直ちに署名して、助命の歎願を出したのです。私たちはそのときにはこういう意見を出したのです。つまりこれを許してくれというふうに言うことも一つのあれだが、つまり公平な裁きをしてくれ、つまり科学的によく調べをしてくれ、あの男は詩人である。技術者であると同時に詩人である。詩人というものは悪いことをしないはずだと友人としては考えておるというふうな、つまり向うの裁判権というものを徒らに刺戟しないで、つまり真実を慎重に明らかにしてくれ、我々クラスメート、学校時代に長らく机を並べた者から言えば、彼はさような破廉恥なことをし得べき人物じやないのだということを、私も歎願書に署名して出したのです。    〔理事大谷瑩潤君退席、委員長着席〕
  47. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 その効果があつたかどうか、彼は罪を免かれて帰つて来たわけで、我々が考えた通りだつたのです。その辺のところを、委員長途中から来られましたが、参考人に来てもらつて非常に有益な、いい話を聞いたんだが、効果の挙げ方について、私は別に、つまり漠然としたいわゆる人道主義的な……漠然でもありませんが、そういう助命歎願方法をとられるか、その辺のところのお考えの余地があるのじやないかという気がするのですが、この参考人をお呼びして、効果をどういうところに委員長は挙げようとしておられるか、ちよつと差支えなかつたら聞かして頂きたい。
  48. 千田正

    委員長千田正君) 実は私は只今途中から伺いましたが、最初は全部の減刑歎願をやるつもりであつたのであります。それは勿論死刑囚ばかりでなく ……。併しGHQ、或いはフイリツピンの代理大使等に折衝の過程のうちにおいて、今あなたのおつしやるように全部をどうということは別に考えなければならないんじやないか、ということは、キリ大統領はすでに先般、日本死刑囚に対しては改めて再審をする用意ありということを、中外に声明しておられるのであつて、我々の歎願書を別に書替えることにしたのであります。というのは十分に個々の、いわゆる現在戰犯として死刑の宣告を受けておる人たちに対して、個々に十分に審査をして頂きたい、そうして貴国の立場において、大統領の又立場において、できるならば個々の再審の結果、減刑をお願いできるならば、日本国民の幸福これに過ぐるものはないというので、そういう意味歎願書を書きまして、明日フイリツピン大使に折衝することになつておるのであります。
  49. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この委員会でですか。
  50. 千田正

    委員長千田正君) ところがそこでです。委員会として行こうと思いましたところが、GHQのほうから、特別委員会のほうで取扱つてはおるが、委員会の決議であるとか、そういうことはやらんほうがいいだろう、ということは政治的に少くとも委員会が決議をして持つて行くということになれば、フイリツピンの内政に干渉し、又司法権に対して干渉することになるから、むしろ委員会は各国民からの要望を十分愼電に理解した結果、委員長個人として特にこの問題についてフイリツピンの大使と会つたほうがいい。或いはキリ大統領に対して両院の委員長が特に個人立場において国民感情を取次ぐという意味でお会いになつたほうがいい。委員会としてでないほうがいいだろうと、そういう意味で行かれることをあえて忠告する。こういうのでありましたので、その前に最も詳しい立場にあられる神保参考人においでを願つて、今までの経過、或いはフイリツピンの現在の国民感情、そういうものを参考に伺つて、明日正式に行きたいというのが、委員長が又皆さんにお諮りして神保参考人をお呼びした理由の一つであります。
  51. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一つだけで僕は終るんですが、今神保参考人もおつしやいましたように、フイリツピンの問題は非常にむずかしいと思うんです。で私たちの得ておるところは、四分の一くらいが武装農民団によつて占領されておるというのが先々月すでに私どもの得た情報なんですが、つまり独立運動とかマルクス運動とか、統一されておるようにも私は見ておるんです。従つてフイリツピンの政治的な流れ、一つ民族的な運動のうちには、民族主義的な民族運動もあれば、又マルクス主義的なプロレタリア運動もあり、農民解放の運動もあり、それらと、それから大きな戰争の犠牲の後を受けて、大きな復興の問題があり、それからアメリカその他の外国との関係もあり、そういうアジア人のアジアというものもあり、そういうものが非常に相錯綜しておるんです。そうして大まかにいえば、私はやはり民族の解放運動と無産者の解放運動というものが二本の紐のようになつておるんじやないかと思います。従つて私ども共産党としては、この戰争の犠牲というものに対して飽くまでも平和を主張すると同時に、戰争犠牲者というものに対しては十分の償いをしなければならんということを主張すると同時に、真の第一級戰犯戰犯的戦犯というものに対しては、嚴格に処分する必要があるというふうに考えておるわけなんです。但しその処分というものについていろんな立場から死刑を極刑とするか、無期を極刑とするか、とかいろんな議論はありましようが、そういう第一級及び第二級と言いますか、破廉恥的な者を歎願するということには賛成できないように私は思うのです。結論を出すのは早いのですが、併し無実の罪とか、それから余儀なくされたかたに対しては十分な考慮が必要じやないか、それから、なお、これを何かの政治的な意図でやつても、余りきれいなところを見せても、今言いましたように東洋の政治状態その他は非常に変化しやすいものでありますから、やはりこの問題は十分慎重に考え、軽卒な行動は、一時効果は挙げたように見えて、向うの状態が変れば又状態が変るのですから、その辺は非常に愼重な国際的な問題だから、慎重な態度が必要じやないかということはここで申上げたいと思うのです。私の発言したいのは以上です。
  52. 千田正

    委員長千田正君) 兼岩委員のおつしやるのは御尤もであります。それで委員長といたしましても、これはこの前の委員会戰犯の問題についてはお諮りいたしたのでありますが、併し決議であるとか、或いはどうとかいうような嚴格な問題を持つて行きますというと、今あなたのおつしやる通りフイリツピンの現在の状況においていろいろな、或いはこちらが予期しないような問題が起きてはいけないという細心の注意を以ちまして実は申上げたのであります。單なる全部の減刑とか、或いは内地服役というようなことよりも、大統領の声明したその個々の容疑者に対して、更に改めて再検討し、再審査して頂いて、それが確実に減刑に値いするものであつたならば、でき得る可能なる範囲内においてお願いしたい、というのが、今度改めて私が行く一つの使命と思つております。でありまするから、明日私がフイリツピンの大使に会いましても、あなたのおつしやるように、十分慎重に、これはむしろ私個人のお願いとして、皆さんの総意を個人のお願いにして甚だ失礼なことでありますが、そのほうが効果的であるようでありますので、そういうふうにお願いして、慎重を期したいと思つております。何か参考人にほかに御質問のことはございませんでしようか。それでは参考人も長い間お待ち願つて、更にいろいろ貴重なる御公述を頂きまして有難うございました。大変御繁忙中のところだそうでございますので……。何とぞ今後とも今の委員会の各位のお気持を十分御存じのことと思いますので、特段の御協力を願いまして、我々の期待するように、一日も早く無実の罪を以て処刑される人のないように、特に御協力をお願いしたいと思うわけであります。長い間有難うございました。
  53. 神保信彦

    参考人神保信彦君) どうも恐れ入りました。
  54. 千田正

    委員長千田正君) では引続きまして、比島以外の戰犯につきまして当局からの説明を頂きます。只今復員局から野尻徳男さん、井上忠男さん、市木崎秀丸さん、並びに外務省からは連絡局の吉村調査課長が見えております。只今比島以外の各地における戰犯状況につきまして説明をお願いすることにいたします。
  55. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それについて、ちよつと私は案から、調査に行つた報告をしに来いと言つておられるので席を外さなければならないのですが、説明は秘書が聞いておりますから、それに対する質疑を次の機会にさしてもらうことにして頂いて……。
  56. 千田正

    委員長千田正君) それではどうぞ。
  57. 野尻徳男

    説明員野尻徳男君) それでは極く箇單に各地区の状況だけ申上げます。  先ほど終戰以来の概略の経緯を申上げましたが、現状におきましては巣鴨に、この表にございますように千三百四十六名、三月十二日現在でございます。外地に七百二十名、総計二千六十六名の戰犯者が抑留されております。この中にはまだ未決の者が十一名残つておりますが、これは主として現在続行されておりまする濠洲のマヌス島の裁判の未決者であります。この裁判は続行中でございますから、恐らく三月一ぱいを以て終るのではないかと予想をしております。二千六十六名のうち、死刑判決を受けました者は七十七名、無期判決は四百六名、その他は有期でございます。軽いほうの有期判決者はすでに逐次釈放され、満刑しつつありますので、概して五年以上といつたようなところの人が多いのでございます。抑留地につきましては、外地ではこの表にございますように、仏印、これはサイゴンに死刑判決を受けた方が四名、それから英国管理下ではマライ地区数個所、それから離れたところではボルネオのゼツセルトン、それからビルマの管理になつておりますが、英国の判決を受けました者がラングーンにおります。なお英国と濠洲との両方の戰犯者を収容しております香港に七十名くらいの者があります。それから濠洲のマヌス島に二百六十名ぐらいでありますが、これは先ほど申しましたように一部裁判が続行されております。それから先ほどお話に出たフイリツピンのヤニラの近くのモンテンルパに百十四名というところが外地の現在の抑留地分であります。従来は非常に多数の抑留地に、もつとたくさんの者がおりまして、裁判も各地で行われたのでありますが、現在では裁判をやつておりますのはマヌス島のみ、抑留者もこの通りに減つて来ておるわけであります。  各地の状況の特異な点だけ申上げますと、その順序は南のほうから申しますと、濠洲のマヌス島におきましては死刑囚、未決囚、既決囚それぞれ嚴格なる区分をいたしまして、鉄条網の張りめぐらしたうちにそれぞれ少しずつ待遇を異にしておるのでございますが、相互の連絡は全くとれません。そうして未決囚につきましては現在弁護団が日本から派遣されまして裁判に協力しておるわけであります。大部分のものは既決でございますが、従来待遇その他につきましては必ずしも満足すべき状況でございませんでしたので、従来から家族それから政府からもGHQを通じまして歎願しまして、待遇は最近においては相当に改善されて参つております。なお内地から慰問品と申しますか、救恤物資を送ることを許可されまして昨年も二回に亙つてつております。その状況は別の表に差上げた通りでございます。年末に送りましたものはまだ利着したということを聞いておりませんが、それによりまして、辛うじて故国の匂をかぐことができておるわけであります。味噌、醤油等の日本に特有の食事というものにつきましては非常に現地では喜んでおります。なお通信は相当の年月を要するのでございますが、漸く殆んど全員にとれるようになりまして、極めて一部のみが連絡がなかなかとれないといつたものも中にはございます。特にマヌス島におきましては、台湾人であつて日本軍に従事して戰犯になりましたものが相当数ございます。一部朝鮮人も含まれておるように思いますが、七十六名現在おりまして、台湾との通信連絡も思うように行かないために非常に悩んでおるという状況を特に指摘し得ると思います。他の地域と違いましてこの濠州はまだ裁判が全部終つてないためでありますか、殆んど減刑なり、仮釈放といつたような恩典が附与されておりません。判決の日から判決のされました刑期だけ確実に服役するといつたような状況でございますので、現在五年以上のものは帰つておらない状況でございます。食事その他は漸次そうやつて改善されては来ておりますけれども、思うような食事がとれない、又量も少い、熱地であるという関係から体力が低下しておりまして、これは南方全域に通じて言えることでありますが、平均一キロ半くらいの体重減を生じております。ために病人も相当数逐次出るような状況でございます。特に死刑囚十一名、これは極く最近判決のございました海軍関係の事件で七名を加えまして十一名になつたのでございますが、この処遇につきましては、全く隔離されておりまして、現地に死刑囚の教誨師として送つております浅井教講師さんが辛うじて短時間連絡できるのみでありまして、而もそれも單なる安否を問うておる程度でありまして、その他のことに関しては連絡できない、いわんや他の者は一切面会ができないという状況にありまして、内情は私どもに詳しく伝わつておりませんが、相当苦しい立場に置かれております。食事あたりも土間でしやがんで短時間に食べるといつたような状況でございますし、一切他人との談話をすることができません。独房に入つておりますので、全く孤独な立場にあります。昨年秋頃からこの死刑囚判決されて出て来たのでありますけれども、恐らく死刑執行はされないであろうという希望的な観測であつたのでございますが、現地におきましては、最近絞首台は準備されたということを聞いております。又詳しいあれがありましたら御質疑に応じていたします。  次は英国関係でございますが、先ほどのように各方面に分散して収容されておるのでございますが、その管理状況につきましては必ずしも一定しておりませんが、概して現地の土民、現地人と同じような起居をする刑務所が多いのでありまして、その獄則に縛られまして、又必ずしも日本人に対して好意的でない気持が多分に反映いたしまして、食事の量にしましても、運動にしましても又各種の規則等につきましても、非常な辛酸を嘗めておるという状況にありまして、現地ではとにかく内地服役を一日も早くお願いしたいということを本人らも念願しておりますし、家族もその切願であります。クワラルンプールのようにちよつと特異性のありますところでは、現地の華僑の奥さんになつておる日本人の婦人がおりまして、これらの連中が差入れ等も若干やつてくれているのでありますし、特に森という人が大変よく面倒を見てくれるというような感謝の声もございます。日本から殆んど従来慰問品の送出しを許可されなかつたのであります。この関係で現地でも殆んど救恤品が来ることを諦めておりますが、せめてもの通信だけを頼みにいたしております。その通信もオートラムのあたりでは三十分間ぐらいの間にまとまつて来た束になつたものをざつと見てしまつてすぐ回収するといつたようなことで内地の声も十分受取れないという気の毒な状況にございます。ビルマにつきましては、その前にこの土地におきます恩典でございますが、イギリス当局としましては昨年服役期間一年を八カ月計算にするということと、まあ再審査と申しますか、量刑の調整を若干やりまして、そのために若干ずつの減刑処置を受けております。これは英国の管理下にあります地域全域に及んでおるようでありまして、香港にもその服役者に恩典が及んでおります。香港には濠洲の処罰を受けた人も入つておるのでございますが、これも同一の管理を受けておる状況でございます。なお香港におきましては、無期の者は二十一年という計算にして、而もその三分の二服役すれば、つまり一年を八カ月計算にするわけです、釈放されるという規定が宣告されたそうでございまして、同じ濠洲の戰犯者でありましても、マヌス島におる者と香港における者とはそれだけの恩典の差ができております。ビルマにつきましてはこれはイギリスが処罰したものをビルマ当局が管理を引受けておるという状況にございます。従つて内地服役とか何とかいう行政的な処理も英国当局がこれに同意しなければ執行できないという立場にあるようでございます。併し一般の待遇につきまして他の地域と違いまして、ビルマ人は日本人に大変好意的でございまして、又その当局も非常に面倒を見てくれておるようでありまして、司法大臣がわざわざ刑務所を廻つて何か不自由なところはないかというふうな慰問の言葉をかけ、待遇も改善してくれているという状況であります。なおバーモ博士であるとか、ビルマ第一の実業家と言われるニザメという人も絶えず差入れをしてくれているといろ状況であります。この地域も慰問品を送出すということは従来許可されておらなかつたのでございます。今のような現地の差入れがありますのと、最近はときどき日本船が米積みに向うへ参りまして、そのたびごとに面会を許可されまして、連絡なり又差入れを許されておるようでございますので、先ず物心両面に亙つて比較的いいほうな状況になつて、なおつい最近この地区におきましては一年の服役期間に六カ月の加算がつくという、その割で計算をされるように昨年一月からなつたそうであります。従つて比較的早く帰り得る状況にあると思います。以上のごとく南方諸地域フイリツピンを除きまして各地とも大同小異でございまするが、熱地であり、又給与も不良であり、又戰争に出ましてから、長いのは十年近くも抑留されておるという状況にありますので、たとえ現地でこれはフイリツピンからの……話がそれますが、フイリツピンからの連絡によりましても、仮に将来東亜の天地が乱れた、日本が危いといつたときでも決して外地におることを自分らは希望するものでない、つまりどんな苦労をしても日本帰りたい、こういう気持を表明しておるのはこれは当然だと思いますが、家族も目下唯一の念願であります。政府といたしましても昨年秋GHQに内地服役の歎願をいたしております。これに対しては未だ何らの回答がございませんが、目下のところ見通しははつきりいたしておりません。それから申し落しましたが、仏印のサイゴンには死刑囚が四名残つております。これは昨年の六月、その他の者はやはりサイゴン若しくはサイゴン附近のプロコンドル島という島に既決になつてつたのでありますが、内地服役いたしまして、死刑囚だけが残つております。これ又一年以上放擲された状況にございますので、大丈夫であろうという予測はしておりますけれども、家族のものとしてはフイリツピン状況もございますので、いても立つてもおられんという状況でございます。これは先ほどの濠洲につきましても同様の感じと思います。フイリツピンにつきましては、今詳しく御説明がございましたので省略いたしますが、一言附加えますと、加賀尾という教誨師さんが、これは昨年の三月まで比島に教誨師として残留することを許されたのでありますが、その後みずから挺身して残されまして、今なおその世話に当つておられます。殊に最近死刑囚が出たりしますというと、それらの一切の始末、残る者の不安や家庭を慰めることから、各種のお世話を一切引受けてやつておられるかたがおるということを附加えます。通信は全域とも大体通ずるようになつております。これは一、二年前までは、甚だしく連絡がとれなかつた場所もございまして、家族の悩みであつたのでありますが、最近はよくこの面は改善されましたし、給与も一般に従来とは面目を新たにしておることは事案でございますが、何分日本人の嗜好に適さない食事等が与えられる関係もありまして、病人は各地とも多発しております。せめてこの病人だけでも早く巣鴨のほうに帰してもらいたいという希望政府としても非公式にお願いしておるのでございまするが、実現に至つておりません。これに比しまして、巣鴨の管理の状況は最近は特に自治を許され、又日本人の直接の管理に世話を受けるようになりましたために、外地の抑留とは面目を異にした状況でありまして、巣鴨の管理の状況がいいということは外地に刻々に伝わつて参りますが、その状況をお聞きして、外地抑留者といたしましては是非減刑もさることながら、とにかく内地に服役替してもらいたいということが熱願でございますし、又手紙が参りますというと、マツカーサー減刑並びに仮釈放の恩典が加えられますので、外地では五年、六年といつたところでないと釈放されないものでありましても、現在巣鴨からは、巣鴨に抑留されている人たちは、十年以上の人も仮釈放で出て来るという状況にありまして、甚だその辺が不均衡と言えば不均衡になつておるわけであります。早く米軍の管理下に入れてもらいたいという希望を持つております。以上極く概要でございますが……。
  58. 千田正

    委員長千田正君) 只今復員局野尻君の戦犯抑留に関する御報告がありましたが、これに対しまして御質疑がございましたら……。
  59. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 この左の一番上の端の表は朝鮮人、台湾人でございますか。
  60. 野尻徳男

    説明員野尻徳男君) 朝鮮人、台湾人、沖縄、まあ沖縄はちよつと国籍ははつきりいたしませんが、一応第三国人として……。
  61. 千田正

    委員長千田正君) ほかにございませんか。なければ只今戰犯フイリツピン以外の問題につきましては更に只今の御報告によりまして、次回において皆さまから御質疑を頂きたいと思います。
  62. 野尻徳男

    説明員野尻徳男君) 家族その他の希望といたしまして、濠洲のマヌス島におきまして出ましたこの死刑判決者に対しまして、当然助命の歎願を熱願しておることと存じますが、濠洲の空気も又必ずしも日本に対して同情的でないという点もございますし、又距離が遠いせいもあり、従来日本に特別の知己がないという濠洲におきましては、日本から歎願をする又伝手も極めて少いのでありまして、この点死刑囚家族としましては、非常に困つたというか誠に苦しい立場にあります。これらにつきまして政府復員局といたしましても、家族の声を聞きますると、やはり国民の総意を代表されまする国会において、この問題を取上げて頂けたら大変有難いのではないか、こういうことをお願いしたいと思います。
  63. 千田正

    委員長千田正君) 只今野尻君からの御要望につきましては、先般も濠洲の戰犯者に対する減刑歎願並びに内地服役の歎願がありましたが、いずれもこれはやはり改めてお諮りいたしまして、その方法を講じたいと思つております。今日は長い間皆さまの御辛抱を願つたわけでありますが、先ほども申上げました通り、フイリツピン戰犯に関しましては、明日午前十一時衆議院の若林委員長並びに私がフイリツピンの大使に公式面会いたしまして、歎願書を手交し、且つ口頭を以てお願いすることにしておりますので、この点は是非皆さまにおかれましても御了解願いたいと思います。  本日はこれを以て散会いたしたいと思います。    午後四時二十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            大谷 瑩潤君            森崎  隆君            高良 とみ君            紅露 みつ君    委員            長島 銀藏君            内村 清次君            小酒井義男君            成瀬 幡治君            兼岩 傳一君   説明員    引揚援護庁復員    局法務調査部  野尻 徳男君    参  考  人 神保 信彦君