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1951-07-19 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月十九日(木曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○在外資産に関する件 ○引揚者定着援護に関する件 ○未復員者給与法及び特別未帰還者給 与法の一部改正に関する件   —————————————
  2. 森崎隆

    理事森崎隆君) それでは只今から委員会を開きます。  本日の議題となつておりますのは引揚促進に関する件、引揚者定着援護に関する件並びに在外資産に関する件、以上でございます。  先ず第一に在外資産に関しまして、大蔵省当局より説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森崎隆

    理事森崎隆君) それでは在外資産に関する件、大蔵省上田外債課長
  4. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 在外財産に関する御説明を申上げるとなりますと、いろいろの面からこの問題は取上げられることのできる大きな問題だと存じますが、この問題を扱つております事務当局といたしまして、現在までの状況というものをお話申上げて、更に御質問がございますれば補足いたしたいと、そう考えております。先ず、在外財産ということの定義でございますが、これはいろいろと細かい点になりますと問題があると存じます。併し、一応説明の便宜といたしまして、極く常識的に外国に残置して来られた日本引揚者のかたの財産、その財産の中には動産、不動産を主とすることは勿論でありますが、そのほかのいろいろな債権だとか、そういうようなものも含んでおるわけであります。もつと言えば無体財産権在外財産の中に含んであるわけでありますが、いわゆる外国にあるという意味のことは、法律的に言いますとなかなか複雑なようでありまして、異論がございますが、一応そういうよう意味でおとり願つて話を進めて行きたいと思います。  先ず第一に、在外財産のことにつきまして、先日発表になりました条約草案の第十四条でございますか、それに各連合国は、この条約の効力の発生の時にその管轄の下にある次のもののすべての財産権利及び利益を差し押え、留置し、清算し、又はその他の方法によつて処分する権利をもつということが書いてありまして、例外はCに規定してございますが、そのCに規定してある例外以外は、そういう在外財産原則として相手方に取られてしまう、そういうことが規定してあるわけであります。この取られてしまうという考え方でありますが、これは積極財産消極財産とあるうちに、ここに書いてありますように、差押え、留置し、清算しと書いてありますように、個々に払うべき債務は、払つたその残り各国自由処分に附される、そういうふうに考えられております。従いまして、例えば、アメリカにAという銀行とBという二つ日本銀行ができておりまして、それがこの規定によりまして差押えされ、清算されたといたしますと、Aにプラス残り、Bにマイナス残つたといたします。そういたしますと、Aのプラスは、一応アメリカの例で申しますと、今までのところ、そのAのプラス向うウオー・クレイム・フアンドと言つておりますが、そういつたフアンドに没収されてしまうわけであります。若しBという銀行マイナスが超過であるというような場合には、現在のところそのマイナス請求は、日本のBという銀行に対して向うから個人的なクレイムが来る。特にそれは戦争前の債務であります場合にはその個人的な請求が来る、そういうふうに考えられております。それで、一般に例えば企業再建整備法金融機関再建整備法の場合に考えられました日本一つにし、外国アメリカであろうとイギリスであろうと皆一本にいたしまして、プラスマイナスを考えてバランスするようにして日本整理をやつたような場合がございますが、そのよう意味で、例えばアメリカイギリスプラスマイナスを相殺するというようなことは、我々が知つております限りにおきましては、それができないようであります。アメリカアメリカイギリスイギリスで、それぞれ清算する、而もAという銀行、Bという銀行が同じ日本財産であるからといつて、プールして清算されるということもないように聞いております。従いまして、平均全部プールしたものよりも取られるものは多くなりましようし、向うから将来請求されるものも多くなるだろう、そう考えられるわけであります。例外の、どういう財産がそれでは日本国に、その所有者に返されるかと申しますと、第十四条の二項のCのところに、次のものを除くと書いて、i、ii、iii、iv、vというようなものがございます。これは一は簡單に申上げますと、そのまま現地で、例えば戦争中も向うに生れことを許されておつて、特別に敵国人扱いをされなかつた日本人財産は返される。二番目は日本外交官外交用財産又は外交職員財産は返される。三番目は宗教慈善団体の、慈善又は宗教目的のために使用されていた財産、これは没収はされない。四番目は貿易再開後の新らしく取得された財産、これはいわゆる正式の承認を得て新らしく作つた財産でありますので、これは新らしい没収対象にならない。五番目は、これはいろいろ解釈が分れている問題でございますが、その表示の債権が、例えば向う日本人が持つてつたその実体財産日本に存在するというような場合にわざわざ日本まで追つかけて来て向うの敵産管理人なり、政府なりがその財産の引渡しを求めるということはない、そういうようなふうに了解しております。今申上げました五つの例外のほかは一応原則として取られる、そういう恰好になるわけであります。この条約にこうやつて取られると書かれておりますことが、取ることができるという権利を持つだけでありまして、各国が例えばイタリー条約の場合には、条約成文上は取上げるというふうに書いてありますが、あと金融協定で、例えば英米仏ではそれぞれ態様は異なりますが、清算した残りのものはイタリー国民に返すというようなことを協定をしている向きもございますので、必ずしも、例えば先ほど申上げましたアメリカウオー・クレイム・フアンドにすでに放り込まれたもの、或いは又放り込まれる過程にあるものについても永久に返つて来る望みはないかと申しますと必ずしもそうではないようでございます。併し条約草案の上からは一応今みたいな形での清算が行われて、各個についてプラスは取られ、各個についてのマイナス各個に対する債権者日本まで追つかけて来る。ただその場合に戦争中の債務じやなくて、戦争前から存在しておつた債務、そういうものについて追つかけて来る、そういうふうに考えております。でこういう規定が出て見ますと、現地財産を残して引揚げて来られたかたにつきましては、日本政府賠償能力がないということで、まあいわば賠償の代りにこれらの財産を取られたというようなことになりますので、何らかの補償を行なう形にしてくれるはずだ、或いはしてもらいたいいう要望が当然に心理的に起ると思いますが、この補償の問題につきましては、実はこの戦争によりましていろいろな国が戦争をやつたということのためにその犠牲を受けられているかたは案に種々様々でありまして、この在外財産没収せられますかたの犠牲は勿論大きなものでありますけれども、そのほかにまだ未解決な犠牲補償の問題がたくさん残つているわけでございます。そういうものとも兼ね合せ考えまして、日本財政の許す範囲というもので、恐らく補償の問題は政府並びに国会最高政策として決定せられるものだ、そういうふうに考えられておりまして、事務当局といたしましては、一応在外財産はどれだけあるかということにつきまして一応の調査をした数字がございます。これは昭和二十年の終戦の直後に司令部からの指令が出まして、存外財産のうち積極財産のみにつきまして報告を求められ、それによりまして大蔵省令の九十五号というものを二十年の暮に出しまして報告を求めたのであります。それでこの省令に基きます報告は約四十八万通提出せられておりまして、うち約四十五万通が個人のものでございます。御承知のよう引揚げられましたかたの人数は軍人軍属のかたと、一般人のかたと合せまして約六百五十万くらいすでに引揚げられておりますと記憶いたしますか、そのうちの約半数が一般人のかたである。そうすると約三百万ぐらいのかたが引揚げて来られたわけでありますが、家族構成を見ますと一人の世帯主に対して家族が二・七というふうになつているように聞いておりますので、約三百万の四分の一くらいな家族数になる。いわゆる世帯数になる。そうしますと七十万から約八十万見当の世帯主のかたの報告があつて然るべきものだと存じますが、今申上げましたよう数字にとどまつております。これはどう解釈していいかわかりませんが、そのときの調査が或る人たちから見れば、何と申しますか、余り協力しなくても、もうしても仕方がないというようなことでありましたものか、或いは別の見方から言いますれば何らかの補償がこれによつて与えられると考えられましたかたもありましたせいか、証憑書類の提出を要求しなかつただけにいろいろな恣意的な数字も出ておるように、それを担当して調査したかたからの報告がございます。従いまして四十八万通につきまして一応整理はいたしましたが、その整理の結果が直ちに在外財産積極財産の総額であるということを言うのはちよつと冒険ではないか、むしろ手許にある数字で一番正確な数字であつて余り信用のならない数字である。そういうよう変ちくりんな数字が現在省令九十五号というもので求められましたものでございます。それで先ほど申上げましたよう司令部から要求されまして、これは何らかワシントンでの要望に基くものだと聞いておりますが、その司令部からの要望で、日本政府はただその要望に基いて作つたという形になつております。これを円価格で皆に書いて頂きましたので、評価方法なり、又評価の確実性というものは、今申上げましたよう余り信頼はできないということで、もう一つ別方法で当時の大蔵省管理局在外財産調査会という独自の調査機関引揚げのかたに御協力を願いまして調査機関を作りまして、そこで法人につきまして個々別々に質問状を出しまして調査した数字がございます。これは私の記憶によりますと約六千三百社くらいの商社に出したよう記憶しておりますが、そういう商社につきまして計数を調べました。この場合も負債は一応できるだけ取りましたが、やはり負債の取り方は取り足りなくて、主として積極財産ということになつております。それから個人財産につきましては、そのときのいろいろな実態を調べました結果、大体法人財産の一五、六%から二〇%程度がその各地域における個人財産というような大体の観念ができたのであります。この二つ数字を基礎といたしまして司令部のC・P・Cで日本側意見を聞きつつC・P・C独自の計数ワシントン報告しておるように我々は聞いておりますが、これらの計数はすべて今申上げましたようGHQ関係調査し、GHQの何らかの目的のために使用されるということでありました結果と存じますが、全然未発表になつております。私はここでこの数字を申上げる自由を持ちませんが、相当厖大金額になるということだけは申上げられると思います。我々の常識からいたしますと、この厖大金額について、現在当時の円価格によつて評価しても、或いはドル価格によつて評価しても、日本はそれを完全に補償する能力はないということだけは事務当局として言える、そう思います。  以上簡單でございますが、大体の外国財産に関する問題点を申上げまして、あとは御質問に応じたいと思います。
  5. 森崎隆

    理事森崎隆君) 一応上田課長からの説明は終りましたが、これに関連いたしまして御質疑のあるかたはどうぞ。
  6. 内村清次

    内村清次君 私はこのたび宮城、福島、新潟と引揚関係調査に参つたものでありますが、各国係者座談会を開きました空気といたしましては、勿論本委員会で取上げまして今進行中でありまする在外公館の借上問題、これに対する関心も勿論熾烈でありましたが、問題はこの在外資産の問題ですね、これが対日講和草案発表せられました今日において又間近に調却の時期も切迫いたしております今日におきまして、各引揚者かたがたが現在の生活の実相からいたしまして資産関係の今後の整理取扱につきましての関心が非常に熾烈であります。これは本委員会といたしましても、これは各委員かたがたの御協力も勿論でありまするが、当然又各委員かたがたもこの点につきましては、今後におきまして相当な御意見もあることだと存じますが、問題はこの草案発表されまして、まだこれが各引揚者間によく熟知されておらない、そういう憾みもありまして、ただ残した財産は一体どうなるのであるかというような危惧が非常に私たち質問として発せられたわけであります。  そこで只今課長お話を聞きまして今後の政府取扱につきましても二、三点御質問も申上げますが、先ずこの大蔵省令として出されましたこの調査方法ですね、これが引揚者かたがたから聞いて見ますと、非常にこの手続が面倒と言えば、当時の混乱の状態からいたしましてまあいろいろの手続の問題からいたしまして、或いは又個人の何と申しまするか、所持金ですか、こういうような問題と関連して具体的に言いますると、英文その他で二、三十通の書類を出さなければならない、人に代書を頼めば現在でも三百円ですか、それくらいの金、当時は又相当高い料金を取られたというようなところと、それから先ほど説明の中にありましたが、真実これは今後の調査をされて返還の材料になるものであるかどうであるかというような点が明確でなかつたために、まだその調査に応じなかつたというよう向き相当ありまして、現在ではどうしてもこれは一つ返してもらわないと、六年間ここに引揚げて帰つて来ても何ら更生の目途も立つておらないという生活内容からして、これは残した財産に魅力を感じておられるよう状態もありまして、今差当つて一つ報告整理して見よう、併し何としても先立つものは金であるということで非常に躊躇された面もあるわけでございます。こういう実情でありまするが、問題はこの草案内容からいたしまして、国家がこの在外資産に対しては財的においては最高政治的にこれは処理するとしても、一応は政府責任を以て引揚者には返還するというよう空気政府部内において熱意を持つておられるかどうか、この点が第一点。  それから先ほども言いましたように非常にこの手続が、書類関係が複雑である関係だが、これを何とか簡素化していま一応そういう引揚者関心に応えるべく調査政府として積極的に進める御意思があるかどうか、先ずこの二点を一つお聞きしたい。
  7. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 先ず第一の問題でございますが、在外財産返還するという意味を例えばこの条約草案にございますようなふうにきまつてしまわないで、返してくれるだろうというよう交渉をするというよう趣旨だといたしますと、これはこの草案の成立に関しましては外務省責任を持つておやり下すつておりまするので、外務省のほうから御説明頂けるかと思います。それから若しその返還ということが、現物が返らないならば、それに相当する現在のお金で返す、そういうよう趣旨でございましたならば、先ほども申上げましたように、先ず第一は正確にその実体財産を調べることが第一でありますが、それに相応するお金をお払いするほどの余力はないのではなかろうかと、事務当局としては考えております。  それから第二の引揚者のかたたちの熱烈なる要望があるから、もう一度はつきりと調査してはどうか、そういう御意見に対しましては、実はこれも最高方針といたしまして正確に調査して、それを一ぱい払わないまでも、それに比例して払うとか、或いは何らかその調査実態に応じたよう補償をするとか、そういう根本方針がきめられましたら、調査すべきものと存じます。併しその方針がきまらないでおります際に、今申されましたよう調査するとなりますと、相当な手数とお金と労力とがかかるわけでありますが、それをやつて補償されるかどうかもわからないということでは、却つて逆効果になるのではなかろうか。そういう点を心配いたしておる次第でございます。  それから当時の九十五号の書類が極めて英文が入つておりましたために、普通のかたではなかなか出しにくい、而も短時日のうちに私の記憶では十数通だと思いますが、いずれにしても厖大なものになり、それを出すということは、なかなか普通の人にはいたしがたい。いわんや代書引受けみたいな商売までそのときできましたような次第で、相当お金、私の記憶では当時の五百円封鎖のときで三十円、あのときの三十円ですから相当の金だと思いますが、そういうふうな当時としては相当お金を出さなければ報告がなかなかできなかつたというような点もございますので、仰せの通り当時としてはやりたくてもなかなかやれない、又報告の期限も過ぎてしまつたということがあると思います。操返して申しますように、最高方針としてこの金額に対して、在外財産に対してどういうよう救済方法をとられるか、又財産に応じた補償が与えられるか、或いは引揚者更生対策としての政策をおとりになるか、それによつてこの厖大調査をやるかやらないかということもきまる問題じやなかろうか、さように存じている次第であります。
  8. 内村清次

    内村清次君 今の第一の御答弁の中で、例えば調査のものが集まつて来ても、相当その対象になるところの金額厖大であるから、国家としての補償十分財政上においては到底できないだろう、こういうようお話があつたのだが、大体私は聞きようによりましては、今の引揚者熱意からしますると相当又心配さるるお言葉であるから、この点は今後の、即ちお互い国会盛上り、その他政府熱意からいたしましてどういうふうになつて行くかというようなことをも一つお含みの点を十分一つ事務当局のほうでも考えておいてもらわんと、非常にこれは大きな影響が与えられるとおもいまするからして、その点は一つそういうふうにお考えをお願いしたい。同時にこれは、今日は草葉さんもいらつしやいますから、この草案の十四条の問題は、これは引揚即ち抑留されておるかたがた引揚促進の問題とからんでおりまして、例えば委員会といたしましても重要でありますし、国といたしましてもやはり重要な問題であろうと存じますが、外務省といたしましては、この条約締結交渉その他からいたしまして、賠償関係在外資産の問題との関連性はどういうふうな内容になつておりますか。若し関知いたしておられますならば、一つお話を願いたいと思います。
  9. 鈴木直人

    鈴木直人君 ちよつとそれに関連して私も一つお伺いいたしたいことがあります。先ほど説明を聞きましてまだはつきりしない点が一点あるのです。それで一緒にどちらのほうからでもいいですが、御説明して頂きたいと思つて……まあ在外資産のうちの積極財産については一応わかつたのですが、それをどういうふうに今後国内問題として取扱うかということは、国会といたしましても、その条約内容はわかつて来ておりますが、消極財産ですね、例えば甲という人が百万円の借金上海なら上海銀行にある、そしてそのまま引揚げて来た。そして向うには財産一つもないというような場合には、その借金というものはその甲という個人向うのAという上海銀行との戦前における債権債務関係になつて残るのか。その点、もうちよつとお聞きしておきたいと思います。
  10. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 若し戦争前にそういう借金を、例えば中国側の、中国銀行と、又は中国人個人にされております場合には、それが金銭上の貸借関係その他のものでありましても、契約或いは債務であります限りそれらは個人債務として、この戦争があつたからそれが消えるとか、政府に肩替りされるとかいうようなことはないというふうに解釈いたしております。
  11. 鈴木直人

    鈴木直人君 そこで今度は積極財産ですね、百万円甲という日本人上海預金して来た。ところが戦争でこの通りなつた。併しまだ百万円は貸してある、残したままにまだ残つておる、そういうものについては条約締結後においてはそれはもう零になつてしまうわけですか。こういうことになるということはないのですか。
  12. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 若しその預金がいわゆる中国人個人、又は中国銀行に対する預金でございますと、預金そのものがいわゆる差押え、留置又は清算対象になりまして、例えば不動産を残して来られたのと同じような形で手許に帰つて来ない。そういうふうに考えております。
  13. 鈴木直人

    鈴木直人君 そうしますと、相当金を持つてつて向うに預けたり、積極的の財産を残して引揚げて来た人は、仮に零になつたけれでも、その分について国内において政府補償するという処置をとつたとしますと、そのもの政府から補償金としてもらわれる。それから今度は逆に借金して来たというような者は、今度はやはり借金として後から返さなければならないという義務を持つておるということになるので、これは戦争がなかつた場合にはそういうものが正当のものになりますけれども、金を残して来た人はよ過ぎるような気がしますけれども、併しこれは戦争がなかつたならば当然債権債務の継続ということになりますが、その辺はどういうことになりますかね。戦争がなかつたなら勿論金を持つていた人が日本に来ても、当然借金して来たものは返さなければならん。それが戦争がなかつたと同じよう状態に還元するというならば、金を置いて、財産を置いて引揚げて来た人は、国際的には英米方面から全部取上げられても、国内的にはやはり政府から補償してもらえるということが必要になつて来ると思いますが、それが本当なんでしようかね。どうもその辺がわからないのです。その関係だけ一応お聞きしておきます。なおちよつと……実は私たち在外財産というものは、殆んど消極財産でも積極財産でも不可抗力として消滅してしまつたと解釈しておつたから、向う借金しても、貸金なんかも零になるのだと考えておつたのですが、借金があるものは元と同じように残るという条約内容になつておるのですね。そういうふうになるのですね。
  14. 杉山昌作

    杉山昌作君 在外財産対今の引揚げた時の問題になるのですが、そうすると、例えばアメリカとかイギリスでしたら、戦争が始まつたらすぐ引揚げる。そのときに残して来るのですが、それが中国台湾となると、戦争になつていよいよ敗戦となつて引揚げて来る。そうなるとどこの時期をつかまえて調査することになるのですか。
  15. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 調査は一応終戦時を原則とするというふうにして調査をいたしております。併し各人に書いて頂きましたので、その終戦時と申しましても記憶を辿つてお書きになりますので、必ずしも例えば明確に八月の時価によるというような、明確なレポートがで来ておるとは思えないのです。
  16. 森崎隆

    理事森崎隆君) ほかにございませんか。では私から……まあ希望でございますが、私から一言……。
  17. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 今さきお話のありました点で、今日は委員の立場で一つ、対日講和草案の中から見ますと、いわゆる在外財産も、今度の日本の領土から割譲する地域と、そうじやない地域二つに分けておる。割譲地域は第四条によりまして、いわゆる例えば台湾とが朝鮮、或いは千島、樺太方面の邦人の財産、こういうものと、それからその他の今さきお話のいわゆる外地財産、今は外地でありますけれども、当時の内地というものと区別して取扱う、そういう意味割譲地は、第四条に今後両当局間で相談する、その点なかなか面倒なことだと思うので、どういう相談……、外地の問題であると思いますので、日本国前記当局との間の特殊取扱主題とする。従つて日本国及びその国民財産及び請求権で弟二条及び第三条に掲げた地域にあるもの又はこの地域を現在管治している当局及びそこの住民に対するものの処理並びに日本国及びその国民に対する別記の当局及び住民請求権処理は、日本国前記当局どの間の特別取極の主題とする。」こういうので今後の問題である。今後取極めをいわゆるその当局とやつて行く。それからその他のいわゆる外地関係、今お話なつた問題は、その場合は今はつきりここに書いてあるようなことで、第十四条でございましたか、特別のものを除いては、「すべての財産権利及び利益を差し押え、留置し、清算し、又はその他の方法によつて処分する権利をもつ。」ということになつておるのであります。そこでそれならそういうものに対して、特に私有財産の問題に対して日本政府はどういう立場をとるかということが いわゆる引揚げて来られたかたがたの最も大きな関心を持つ問題であります。いわゆる外地から引揚げていらつしやつたかた、それから従来の内地であつたところから引揚げて来たときに残して来た財産、この財産が分かれて来ると思うのです。これが只今お話のあつたように、その当時の円価から考えてもなかなか厖大なものである。理論と実際とはなかなかマッチしないよう状態になつて来た。国際法的に考えると、私有財産をただそれを没収したりなんかするということは、これは従来からその例は余りない。国家がこれを何とかするという問題が当然起つて来ることを予想しての、いろいろ引揚問題で各地に行われる強い要望が出て来ると考えております。これは講和条約に基いた最も大きい問題であります。まだ日本政府がこれに対してこうという確信も確答も又決定も現在にはできておらない、これが事実なんですから……。併し輿論のあるところはやつぱり強く出すことがいいのじやないかと思うのであります。
  18. 内村清次

    内村清次君 そこでこれは今後の取扱の主管をされるところは大蔵省になりますか、外務省になりますか、この点はあなたのほうからでもよいのですが、答弁をして頂きたい。勿論これは外務省関係との条約その他でやつぱり関連性があることでありますから、政府としては、当然我々としても連携を希望する、連携を密にして頂きたい。問題は今草葉委員から言われましたように、一番今後のこの委員会といたしましても問題になる問題であります。そこでどうしてもこれはやはり一応向うの指令によつて、四十八万通ですか、四十五万ですか、これくらいの個人報告がなされておりますが、まだ先ほど私が言いましたような事後報告のものが多いわけですね。同時に最近未提出者においても関心を持つておるという事態はこれはもう決して間違いない事実ですからして、やはり一応その対象金額がどのくらいになるということは第二義にいたしましても、今後の推移に任せるといたしましても、やはり一応調査の必要があるのじやないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点に対しての大蔵省関係空気をいま一度明確に答弁をして頂きたい。それと、今日は条約問題はこれはちよつと或いは的を外れるかと存じますけれども、この点は具体的な御質問は控えまして、具体的にこういう問題も出たわけです。例えば銀行から手形を発行してもらつて、その手形を自分が持つているときに終戦になつて引揚げて来た。そういうよう人たち相当、これは福島県の問題でしたが、あるのだ。そういう手形の問題は一体どういうふうに今後取扱われるものであろうかというよう質問がありまして、こういう点に対しての、これが一つ財産として認めらるる問題であるかどうか。銀行預金でなくて手形の問題、これも一つお伺いしたいと思います。
  19. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 恐らく送金小切手と申しますか、送金手形に組まれたかたが、それをこちらに持ち帰られたた問題、或いは途中で中間に帰宅された問題、そういうことでの関心が一番強かろうと存じますので、その点で御説明申上げたいと思いますが……。
  20. 内村清次

    内村清次君 そのうちに商業手形ですね、その点も含めて答弁して頂きたいと思います。
  21. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 現地銀行が出しました商業手形でございますと飽くまでも現地銀行とそのかたとの手形上の債権債務ということになりまして、勿論それは一つ日本側銀行に対する債権として十分財産価値のあるものでございますので、債権としての在外財産というふうになると考えて頂きたいと思います。併し先ほど申上げましたように、日本側銀行そのもの現地清算されるのが普通でございます。そうしますと先ず第一にその手形を所有しておられるかたは銀行に対する債権者として、中国人なり日本人なりすべて一般の債権者としてその清算に先ず参加されるわけであります。参加されまして幾らかの清算の結果の配当分配金が来たといたします。今度はそれが在外財産という形で向うに又取上げられる、そういう形になると思います。それで在外財産であることには変りはございませんが、その手形が例えば内地で取れるとか或いはその手形は財産ではないとかいうようなことにはすぐはならないのでございます。
  22. 内村清次

    内村清次君 調査の問題はどうですか。
  23. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 調査の問題につきましては、実は大蔵省の中でも二つの考え方がありまして、司令部から言われて調査した調査は何といつても不完全なものであるから、補償の有無にかかわらず、調査したらどうかという意見と、それから先ほど申上げましたように、調査するということは相当これは将来どうするかということを前提しないでは、ただ無駄骨折になるというようなことに若しなるといたしますとこれは悪い、却つて引揚者のかたに御迷惑をかけるだけだ。それで先ず政策そのものはつきりした上でやつても遅くはあるまい、そして御承知のよう証憑書類を完全にお持ちになつているかたは殆んど台湾だけだつたかと思います。朝鮮の一部、それから満州の一部にやや詳細の証憑書類をお持ち帰りのかたがいるようでありますが、そのほかのかたはそれこそ体一つでお帰りになつたというかたが多いのでございまして、そのかたに証憑書類を求めるということは殆んど不可能だ。併しながらと言つて証憑書類がなければ、その宣誓をすれば確実なものをお書きになるかというと必ずしも報告の結果ではそうでないようであります。終戦後六年たちました今日詳細の証憑書類をつけて調査をするということは言うべくしてなかなか行いがたい。それから再調査をすれば、それが補償のための再調査ということになりますと、嘘を申告するかたに対してのそれを阻止する方法がなかなか困難である。そういう点がございますので、いろいろ考え合せまして、政策の決定まで一応見送くろうというような態度が現在の大蔵省の態度であると言えると存じます。
  24. 内村清次

    内村清次君 私ここでそう申しますのは、今回三県廻つて見ましただけで、或る県は全然この問題については係のかたあたりが一つも関和しておらないかたが相当課長級のかたがたにそういう人がいるのが一つと、それから案外座談会を開いて見ると、引揚者のかたは非常にこれを要望しておられるという事態と、それから或る県のごときは県独自で報告書類整理して、その整理して簡素化したやつをやつぱり引揚者のかたに配つて、そして極く低廉な代書料も特定に一つ指定もして世話をしているところもあるのですよ。三県だけですが、恐らく他もこういつたよう状態で各県の民生部関係が酷な取扱をやつてはしないか、併し徒らに引揚者としては、これはどの県に撒布されておられるか、条約の間近になつて参りましたときには、一応の考え方のように私たちは考えられる問題で、そうすると引揚者と密接な関係のあるかたが、一つ関心を持たないところもあるとか、そういうことではいけないから、これは何とか一つ政府のほうでも早く態度を決定して頂かないと、やたらにいわば社会不安を起す遠因になりはしないか、こういうふうなことを私は直感いたしましたので、まあこうやつて質問するわけですが、政策の問題は勿論大事でございましよう。併しこの点は委員会としても一つ委員長を通じまして責任者である大臣あたりを一つ今後早急にこういう問題を調査してもらいたいということが一点ですが、外務省関係はこの問題については一つ関心はないのでございましようか。
  25. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 大いに関心がある。殊に今のよう状態からイタリーの条約にはその点を大変はつきり書いてございますから、問題は日本よりも楽だと思います。つまりイタリーでは割譲地の場合には別に住んでいる場合にはその人の財産、そうでない場合は第三国人の取扱をやる、こういうのですから割にいい。これは今度の日本の場合は台湾、朝鮮その他というものがああいうふうに決定いたしますると、その所にある従来の財産というものは、当局者において、今後の協議の主題とするという問題ですから、その主題はどういうところに置いてくるかということは、相談の結果、その他の地域只今お話なつような特定の所を除いては権利を喪失するというような恰好になつて来る。併しそのあとにおける自治というのは全然出ておらないわけであります。併し私ども数百万の国民の最も関心の的であり、又一種の生命に次ぐものですから、その取扱は大変大きい問題です。大いに関心を持つているのであります。
  26. 鈴木直人

    鈴木直人君 沖縄のごときは内地でありましたから、戦争が熾烈になつた場合には強制疎開ということで子供を連れて来たり、あそこの住民はこちらのほうによこしたりして、内地だと思つてつたら殆んどこつちに来てそのまま占領されてこつちに残つた人がかなりある。勿論帰つた人も随分多いのですが、そうすると非常にこつちに来ている者と向うに住んでいる者とは財産なんかよほど取扱が異なると思いますが、いろいろの問題がありますが、ああいうのも条約が終つた後解決するということになつているんですか。
  27. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 信託統治の問題は、割譲地の中に入れるかどうかは解釈の問題になりますが、併しこれに類するものかも知れません。併し信託統治下にある場合には、国籍の問題なんかというのはなかなかむずかしい問題であります。そこに住んでいる人とこちらにいる人と、沖縄の人は内地に三十万、現地に百万、外地に十万いる、こういうふうに考える。沖縄に百万いる人の損害、併しその沖縄というのは、現在その財産アメリカが信託統治の治政権者になつている、そうしてそこで行政も司法もすべてアメリカの支配下にある。こうなるから日本が行政の権限の及ばない恰好ですから、この問題は別問題になつて来やしないでしようか。
  28. 鈴木直人

    鈴木直人君 ちよつと上田さんにお話を伺いたい。さつきの在外財産政府補償するとしても、財政的に考えて大変だろうという、非常に厖大金額が、これは商社等も調べにあるのですね。例えば満鉄のような実に厖大財産を持つているようなところ、実は我々一番心配し、ここで問題になつているのは、そういう満鉄という商社あたりの在外財産じやなしに、引揚げて来た人が向うに残して来た金というのが今後の問題の中心になると思います。そうすると非常に日本財政の負担は、これは厖大金額だとおつしやるならば、そういう我々の問題にしているのは一体それほど大きいのでございましようか、どうでしようか。
  29. 上田克郎

    説明員上田克郎君) それも大体商社を十といたしますと、個人財産は二割程度という大体の推則になつております。個人財産だけにつきましても、現在の予算の金額から考えますと、なかなか馬鹿にならん数字だと思います。
  30. 鈴木直人

    鈴木直人君 わかりました。
  31. 上田克郎

    説明員上田克郎君) 一言報告書の問題で附加えさせて頂きたいと思いますが、福島県では、実は日本銀行を通じまして取りました九十五号という報告書を又これから出してもいいかというよう質問が出て参りまして、お出し下さるなら法律上の問題としてではなくて、参考までお出し下されば結構でございます。頂いておきたいということは御返事申上げました。それで実は報告書を出していないかという御懸念はこれから補償される場合に自分が出してない場合にその補償から漏ればしないかという心配が一番大きな心配だろうと存じます。でその点は明らかに若し補償をその財産に応じてするというよう政策決定がいたされました場合は改めて皆さんから報告書を頂くということは確言できると存じます。ただ従来の九十五号と申しますのは、大体どの程度日本在外財産があるものだろうかということを司令部が知りたいということが前提になつておりますので、少額の個々の人の残されたものはもう殆んど無視してアメリカが計算したということになつておりまして、補償のためのレポートではございませんので、その点は御心配のないようになるというふうに存じております。
  32. 森崎隆

    理事森崎隆君) 私から一言だけ私見を述べまして要望申上げたいと思いまするが、今各委員からいろいろ御意見がありましたことと大体同じでございますが、正確度の高い調査を是非して頂きたいということが一つでございます。これはまあいろいろな困難な条件もございましようが、御存じのように昔の戦争と近代の戦争の終結の状態というものは非常に変つております。占領政策そのこと自体を見ましても非常に文明度の高い人道的見地からなされておりまして、何百年か前の戦争とは比較にならないような合理的なものになつており、又科学性も十分そこにはあるように考えまするが、そういう点から考えまするとむずかしいとか、又厖大だとか、殆んど不可能に近いというような理由で、この大切な在外資産調査を怠るということは、やはり文家国家の将来のためにも私はよくないのじやないか、やはりどんなに困難でも一応政府責任におきまして成るべく高い正確度を持つた調査をして頂きたい。  それからその次は今も杉山委員から非常に適切なポイントを指摘されましたように、大体の調査が終りました全部につきまして、果してどういうようにこれを処理するか、これを考えて頂きたい。と申しますのは、やはりこの在外資産が名目はどうでございましようとも、やはり国家責任において果さなければいけない賠償といつたような性格を実質的には持つことに私はなると考えております。そういうような性格を持つ限りはそれに対してできるだけの補償国家はやはりやらなければならん。そこにやはり厖大金額に対してどの程度まで補償ができるかということが起るのでございまするが、たとえそれが一%でも、〇・一%でも、或いは一万分の一でも、又杉山委員から申されましたよう個人の場合だけについてそれ相当責任を持つといつたようなことをはつきりと政府の態度を表明されましてやつて頂きたい。これは御存じのよう在外公館等を通じまして政府に貸付けましたあの財産のことについて随分いろいろ問題が出て来まして、現在それの調査中ということになつておりますのですが、この問題はさつきも内村委員から申されましたように、全国で一応諦めたかに見えますけれども、やはりみんな心の底にこの問題についての政府の善処方を熱望しておる。良識のある国民が人のいい意味でもう諦めておる。だからこれをこのままにしてうつちやつてもいいということには決してならないのでありまして、何とかしてやはりいち早く政府の態度、これは個人財産についてはその何%かを何とか補償したい。年限は五年でも十年でもいいといつたような線を打ち出すことが、そういう人々に対するやはり政府の誠意を示すことになると私は考えますので、是非この点をお考え頂きたい。  第三の点はやはり保管しておる戦勝国との間に是非とも有利な意味交渉を何とか一つつてもらわなければならん。これもやはり政府としては当然努力さるべき大切な面であろうと私は考えます。  もう一つは特別の例かも知れませんが、例えば外国にのみ財産を持つておりまして、引揚げで帰つて、内地に何にもない、而も相当老齢で、これまで六年間は何とかやつて来ましたけれども、老後の生活の保障というものは全然ない。外国財産の何%かさえあれば何とか老後の生活ができるのじやないかといつたような人々については、特にこういう人々の生活の保障という意味からも何らかの手を打つて頂きたい。こういう意見をいろいろ各方面から実は聞かされておりますので、それだけ要望いたしまして次に移りたいと思います。   —————————————
  33. 森崎隆

    理事森崎隆君) それじや第二の議題でございますが、引揚者定着援護に関する件につきまして、特に入植の問題で、農林省の農地局の入植課の柳沢事務官からいろいろ説明を求めることに御異議はございませんでございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 森崎隆

    理事森崎隆君) それでは柳沢事務官。    〔理事森崎隆君退席、委員長着席〕
  35. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) 海外引揚者の入植の状況につきまして簡單に御説明を申上げます。昭和二十六年の三月末現在で、入植の定着戸数が大体十四方一千戸になつております。そのうち海外引揚者で入植したかたがたの定着しておる戸数が三万五千四百九十一戸になつております。その内訳を御説明申上げますと、曾つて満州へ満州開拓民という名前で送り出されましたいわゆる満州移民のかたがたでありますが、終戦時の在外戸数が大体十四万三千百六十二戸と推定されております。そのうち引揚げました戸数が七戸八百六十三戸でございます。そのうち現在まで開拓地に入植しましたものが二万五千六百六十三戸であります。それから樺太におきます専業農家でございますが、この人たち終戦時は一万一千七百五十戸おつたことになつておりますが、この引揚戸数が一万百五十四戸でございまして、この人たちは主として北海道へ定着したのでございますが、その定着戸数が六千八百十二戸になつております。その他南洋諸島とか、或いは台湾、朝鮮などから引揚げられたかたがたで入植されたかたがたが三千十六戸、その計が先ほど申上げましたように三万五千四百九十一戸と、こういうことになつております。この戸数は先ほども申上げましたように、今年の三月末現在の戸数でございます。引揚者で入植者として取扱う場合には主として外地において農業を営んでおつた人、言い換えれば引揚専業農家を主たる対象として入植を指導して参つたのでありますが、特に満州開拓民、それから樺太引揚農家というような人は外地において開拓の経験が相当積まれておつた結果にもよるのでありますが、現在内地に還つて参りまして殆んど引揚者が国内の開拓事業の推進力になつているというふうに申上げていいんじやないかと思います。先ほども申上げましたように、約十四万戸の入植者の三割乃至四割を占めるところの引揚者が開拓の中心になつている、こういう状態でございます。なお二十六年度におきましてもぼつぼつ入植している人があるようでございますが、現在では相当外地から還つて来て、長い間たつての入植であつて、一般の入植者と同じような形で入つているというよう状態であります。  以上簡單でございますが、海外引揚者の入植状況を御報告申上げました。
  36. 千田正

    委員長(千田正君) 只今農林省の入植課の柳沢事務官から一応の御説明がありましたが、委員の各位から御質疑がございましたら……。
  37. 内村清次

    内村清次君 この入植の戸数ですね、これだけの御報告でしたが、あなたのほうで例えば住宅問題、或いは家畜導入の問題など、こういうのと関連して御説明をして頂いてどうですか。
  38. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) お答え申上げます。現在入植者には住宅は各個に一戸ずつ補助金の形で造ることになつております。ただたまたま昭和二十年度、二十一年度頃は、補助金がありましても木材とか釘とかの入手が困難であつたために家が建たないでしまつた。そういう結果現在約二万戸ばかり過年度入植者の不足住宅がございます。たまたま昭和二十六年度から大体三カ年計画くらいで不足住宅の解消も予算化しております。それから家畜の導入、それから農具、種子とかそういうものを手に入れるためには開拓者資金融通法という法律に基きますところの政府の特別会計から、大体一戸当り十三万円を限度として、三カ年に亘つて融資をしております。利息は大体三分六厘五毛ですから非常に安い利息であります。五カ年据置で十五カ年の年賦償還で返す、こういうようなことをやつております。
  39. 内村清次

    内村清次君 御答弁の様子から見ると、あなたのほうでは家屋の建設補助金あたりもあなたのほうで世話しているらしいですね。そうすると先ほどの御答弁では入植者には必ず一戸ずつを建てて、そうして入植させるとこういうお話ですが、実際各県をお廻りになりまして、そうして果して家が、例えば今引揚者の七坪半、そのくらいの家でも完全に建つているかどうかということの実情調査はなされておりますか。
  40. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) 住宅につきましては、只今申上げましたように約二万戸の不足住宅が過年度にあるわけであります。今とります予算は大体一万戸入植がきまりますと、一万戸分は必ずついているわけでございますから、そのうちの五〇%ぐらいは過年度の入植者に廻しているわけであります。たまたま本年度からそれ以外に今年は内地が四千戸、北海道が八百戸でございますが、これだけの不足住宅の解消のための、過年度の不足住宅解消のための住宅の建築費がとられております。これを三カ年間ぐらい継続してやつて参りますと、過年度の入植者も現入植者と同じように全部家が建つ、こういうことになるわけであります。御質問の開拓地の住宅の実態調査は個個の開拓地について全部やつております。ただ古い時代に建てた家がその時分の資材の関係、釘等の関係で非常に粗雑なものができている。これはできるだけいろいろな技術的な指導をやりまして完全なものを造らして行くというふうにやつております。
  41. 内村清次

    内村清次君 これは福島県の事例ですが、自興会という、引揚者の入植関係の自治会を組織しておられるかたがたの代表者の言葉を聞いたわけですが、県内で千六百二十二戸の入植住宅があるのだが、まだ五百戸は足らかい。同時に二千円ですか、あなたのほうの補助は……、そのくらいの少額補助では現在の資材の値上りでは到底建てる補助のほんの一部しかない。これでは今では丁度草で造つた家の中に住んでいるのだが、どうしても住宅問題を解決してもらわなければいけないというようなことがこうやつて陳情がなされているのですが、その点私もこれは又あとの家畜の補助、それから電気導入費の補助、こういう問題と総合いたしまして、感想として私は申述べたのですが、実はこの委員会に入植関係の、これはあなたではなかつたのですが、ほかの課長さんもおられまして非常に入植の状況というものは向上をして、いわゆる既存の農家の水準以上に突破したところもあるのだ。入植反別についても、それから生産についても相当状況がよろしいというようなことを常に聞かされておつたわけです。それで実際に当つて見ると、これは県そのものでも相当困難性があるような陳情を受けるわけで、どうも実際当つて見たのとあなたがたの答弁を聞いて見るのと差があるのです。そこでこれはどうしてもやはりあきらかに一つ報告をしてもらわないと行つて見て私たちはどうも困る状況に立至りまして、例えば先ほどの家屋の補助にいたしましても、或いは更生資金としての十三万円の即ち資金貸付の状況にいたしましても、金融公庫の貸付状態もさほど円滑には参つておらない部面が大分見えておるわけであります。それから特に困難にされておるのはその電気導入費の補助ですね、これは昨年でしたか、補助金が政府のほうで極く少額ですが、補助をやつておられるらしいのですが、開拓地はもう非常に現在の状態を見てみますと、相当距離的に遠隔の地にある関係で、而も又電気の導入までには非常に金が要るからというようなことで以て電燈会社あたりでなかなか積極的にやつてくれないということで、この電気問題でも困つておられる向きがあることを大分聞いておるわけですが、こういうような補助額の増額ですね、こういう点につきましてどういうお考えを持つておられるか。それから家畜の問題につきましても、やはり政府の答弁では生産も非常に向上して来ておるというようお話であつたけれども、実際に行つて見ると、牛一頭或いは馬というような大家畜の導入あたりも実際においては非常に困難視されておるのだ、こういう状況ですが、これに対するところの補助額問題はどうであるか、こういう点をいま少しく具体的にあなたがたの今年度の方針或いは又将来の計画を今立てておられるところの方針、こういう点をお聞かせ願いたいと思います。
  42. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) 先ほどお話のありました住宅でございますが、住宅は二戸当り内地が五万円でございまして、それから北海道が六万円になつております。で大体十坪の家を建てる事業費の半額補助という形で昭和二十六年度予算に組んだわけであります。ところが御存じのようにその後物凄い値上りをいたしまして現在ではこれではとてもやつて行けない。今度の国会に是非この補正予算として大体五割増くらいのものを要求しよう、こういうふうに計画しております。それから先ほど申上げました、海外引揚者の問題であつたために非常によくやつておる、とこう申上げたわけでございますけれども、御存じのようにあの緊急開拓事業というものが実施されまして、昭和二十年の頃は各県でも押すな押すなで入つて来る開拓者を止めることができないというほど食糧状態が逼迫しておつたわけであります。まあそういう関係相当質的にも開拓者としてふさわしくない人も入つておる。でそういう人たち相当脱落して今日に至つておるわけであります。ところがそういう人たちの中には全然農業にも無経験である、又当時の開拓者を補導育成する県の行政組織、或いは指導組織が完備しておらないというようなことから、昭和二十年から昭和二十二年くらいまでの入植者は非常にお気の毒のような結果になつております。開拓者資金融通法が制定されましたのは昭和二十二年の三月頃でございます。従いまして二十年度、二十一年度の入植者は当時の補助金で僅か三千五百円のものをもらつて入植しておつたのであります。あとは開墾費をもらうだけである。こういうよう状態であつたのであります。従いましてその融資金をもらつた後の入植者は非常にうまく行つているわけであります。それから電気導入の問題でございますが、御指摘のように僅か一千三百万円しか今年度は取つておりません。我々のほうでは三億円要求したのでございますが、それが僅か一千三百万円、我々としても極力開拓地には電気をつけて、少くも電気をつけることによつて明るい開拓ができるように考えておるわけでございます。できるだけ我々の力の及ぶ限り予算確保に努力したい、こう思つております。それから家畜導入の問題でございますが、開拓地は御存じのように皆な畑作経営が大半でありまして、そういう点から開拓地と既存農家との比例を見ますと、開拓地のほうが非常に大家畜、それから中小家畜も二戸当り平均を見ますと多いわけであります。併しながら今の状況ではとてもそれではやつて行けないのでありまして、どうしても家畜導入は徹底的にやつて行かなければならぬ。実は今度の国会に提出された積雪寒冷地帯振興対策としての補正予算にも、家畜導入は一般の既存農家より以上に強力にやらなければいけないというので、別途要求をしようということで予算化しております。我我といたしましても、できるだけその開拓者を定着させるために努力しておるのでございますが、確かに御指摘のような点がたくさんあると思いますが、どうぞ常に我々を御督励下さいまして、できるだけ開拓者の定着のために努めたい、こう考えております。
  43. 内村清次

    内村清次君 それから二、三点お尋ねしたいことは、満州で各種免許を持つておられる獣医師とか看護婦それから医師、こういう点の問題はあなたのほうでは、これは厚生委員会のほうからも関連いたしまして、こういう点は免許できるか、相当要望があると思いますが、この横の連絡はどうなつておりますか。
  44. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) お答え申上げます。満州における現地開業医でございますが、これは樺太も同じかと思いますが、満州における現地開業医は、実は我々のほうからも現地開業医が何人いるかということを調査いたしまして、特に先ほどお話のありました自興会が中心になりまして厚生省に積極的に働きかけて、現地開業医だけは特に試験制度というものを採用してもらうわけであります。第一回の試験のときには、非常に簡單にパスした人が多かつたのでございますが、その後司令部から医師については試験制度を非常に厳重ということで、だんだん困難になつておりますが、現在約三・四十人未だにどうしても合格できないで、今年の予備試験を受けて、果して通るか通らんかわからんというような不安を持つているかたがたがございますが、この人たちのためには、特にその考え方を変えてもらつて、何とか通るようにというふうに厚生省に掛合つているわけであります。ただ今残つているかたは年齢が大体四十歳、五十歳くらいの人が多いわけでありまして、勉強してもなかなか頭に入らない。実地のほうはわかつていても、試験の結果が非常に悪いものですから、厚生省のほうではどうにもならんというような状況でございます。それから満州における副獣医でございますが、これは日本の獣医師とは大分性質が違つておりまして、従つて日本の獣医師法に基く試験を受けなければならんのであります。ただ満州国の新京の獣医大学とか、そういうような満州国の獣医大学にして、まだ正式な手続はとつてなくとも、一応日本の獣医師法で認めてもよろしいと思われるような程度の学校がハルピンにもあります。いろいろあるのでありますが、こういうよう人たちにつきましては大体試験を受けて合格しておるはずです。それから副獣医の人たちは、現在の獣医師法の試験制度によりますと、やつぱり内地へ来てもう一回学校を出ないとちよつとむずかしいのじやないかというふうに考えられます。
  45. 内村清次

    内村清次君 いま一点お尋ねいたしますが、これはその時の座談会では自興会の代表者が特にこの調査の費用の増額の問題即ち未引揚者のこれを取上げてお話があつたわけですけれども、これは大体共通的な問題で、あとで世話課長さんあたりのお話も聞いたわけですが、どうしてもこの調査費用は外務省が先ず取つて、そうしてその取つた残りを各県に別当てられる関係で、世話課あたりは非常にこれに困難しておるというのですが、これは是非とも一つ調査費用を増額してもらわないと、結局こういうような自分で作つた会の費用を、これを突き進んで行けば、お互いに入植者なら入植者から取つたところの費用で世話課の調査協力をするのだとか、或いは延いては外務省関係調査協力するという形になつては来るが、その費用自体において困難しておるというのが結論でございますが、草葉さん一つどういうふうになつているかですな……。
  46. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) お話よう調査費用が大変少くて大変御迷惑をかけておると思うのです。これは年々相当実は増額しておりますが、実際の実態においては大変府県に参りますると極く僅かになつておる。そこで府県によりましては、それと同額又はそれ以上の金を府県費で支弁して、そうして調査の万全を期するという恰好をとつてくれておりますが、年々相当要求してもなかなか通つて来ないような格好になつておりますので、今後一層その点は注意したいと思います。
  47. 内村清次

    内村清次君 世話課からのこの総体的な意見としては、この援護庁のほうと外務省関係との即ち機構の問題ですね。あれを何とか一本にこの問題についてはできないかというようお話があつたのですが、委員長はそういうお話を開いておられませんか。
  48. 千田正

    委員長(千田正君) それは前から問題になつておる問題です。これからあと重要な問題があるのです。仮にこの未復員者給与法と特別未帰還者給与法と、その時一応その間の関係も伺つておきたいのですが、殊にこれからいわゆる戦争犠牲者に対する新らしい法案が生み出されるとすれば、その基礎算定となるべきところのこの戦争犠牲者に対するデータの集積がはつきりしなければいけないと思うのです。そういう点からいたしましても、この前我々が法案を通過してあるのでありますけれども、それは結局しつかりしたものが出て、そして総合的な一本の筋の通つた行き方をやらんというと、なかなか徹底した対策ができないのじやないか。こういう点からしばしば厚生省並びに外務省大蔵省等に対しては、当委員会としてはその間の問題を何回となく質疑応答を繰返しておるわけであります。ところが実際問題になりますというと、厚生省と外務省はお互いの現場の立場から手を握つて行きますが、大蔵省の問題になりますと、金の支出という問題になるとどうもうまく行かない。それにはやはりこの委員会がよほどしつかりこの二省を鞭撻すると同時に、大蔵省に対して要求しなければならないのじやないかと私はさように考えております。幸い外務省から草葉政務次官がお見えになつておりますが、外務省の立場として今のような問題はどうお考えになりますか。
  49. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) これは全くお話通りで、又予算によりましては、援護庁あたりが引揚げ数が少くなつておりますが、そういう費用が残つてつても流用するというようなことはちよつと都合が悪いような建前なんです。そこで結局は基本予算において委員会等が強力に推し進めて頂いて、いわゆる認識を深めるということが大事だと思うので、どうぞ将来一つ委員会が大いに御活動を願いたいと思います。
  50. 内村清次

    内村清次君 非常に私も現在の世話課その他に行つて見まして痛切に今度は考えて参りました。ああいつた条約の締結というのが非常に皆に影響が響いておるわけですね。それから今までの事務取扱その他の点からしまして相当世話課などにおいては詳細な調査をなされて、これは全く言葉のように世話の状態でやつておられるわけですね。そうして民政部あたりとよく連絡をとつてつておられるが、中央においてどうしても費用の問題にいたしましても、それから船の問題にいたしましても、それから先の見通しの問題にいたしましても、一体となつておらん関係相当困難しておるようですな。これは何とかこれは機構改革をお考えであるなら、いま少し能動的な組織形態にならんものであろうか。こういうふうに私は感じて参りましたのですが……。
  51. 千田正

    委員長(千田正君) そういう意味でこの前の国会戦争犠牲者に対する対策審議会法を法案として我々は通過したのですが、あれができておれば大蔵省も入つておりますし、外務省並びに厚生省が入つておるのですから、そこで調査費用とか、そういうものは一本建にして、どの省から流してやるか。厚生省なら厚生省一本建にして行こう。外務省外務省としてのいわゆる外地における問題に対する予算の獲得という点について未引揚者の問題についてはそれをやる。国内の調査は厚生省が一本建でやらなければならんというような総合的計画を立てようといつた審議会であつたのですが、それが御承知のように中途でぶらつとなつてしまつたわけで、御承知のよう状態でありますが、恐らく政府側では今度の国会が開かれると同時に、戦争犠牲者の問題は相当慎重に進めたいという意向を漏しておられたようですから、できれば誠に結構なんでありますが、いろいろ実は内村委員のおつしやる通り、末端においては誠にその調査不十分であるということを言うて政府当局に対しては我々は相当猛省を促さなければならない。こういうふうに私としては考えますか。  それでは今の農林省の柳沢事務官に対する御質問紙ほかにありませんか。
  52. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 只今住宅問題で承わつたのですが、一戸に対して五万円、それから今度はそれに対して五割増ぐらいに予算を組みたい、こういうお話でありますが、実際問題としてその程度のものでできますかな。私はそれを承わつて見たいと思います。
  53. 柳沢晋一郎

    説明員(柳沢晋一郎君) お答え申上げます。先ほども申上げましたように、一戸当り十万円の家を建てる。でそのうちの動力費、その他は殆んど開拓者が自己負担をする。資材費、それから特に大工さんの費用というようなものだけを考えまして、最低限の家が大体十万円と、こういうことに実はなつておるわけなんです。で現在は先ほど申上げましたように、大体五割増くらいを要求しなければできない。今まで出しました補助金で申上げますと、大体五万円で七坪半くらいの家を皆建つております。十坪の家と申しましても十坪の家はとてもできませんで、実際は七坪半くらいの家ができるのです。と申しますのは、実際は緊急開拓事業が始まりましたばかりには二十年度、二十一年度にはどつと五万、六万の入植者が入つたわけです。当時のあれから行きますと、その人たちに家を建ててやるということは並大抵の行き方ではできないというので、建築隊というものを作つたわけです。その後入植者の戸数がずつと減りましてから建築隊制度というのをやめておるのです現在でも各県で未だ建築隊というものを持つておるのがありますが、これは県で要請いたしまして、これを開拓地に移動させて作つておるわけです。この人たちが現在造つておる家を見ましても、その人たちの、言い換えますと、生計費です、こういうものを彈き出して、言い換えると、建築隊の運営をしつつ開拓者の家が現在もできておる。こういうことを申上げますと、粗末なものだが一応はできるとお考え願つていいんじやないか、こういうふうに思います。
  54. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 私としては実際に即して本当にできるということがはつきりするならばそれでいいわけですけれども、ただ机上プランでこれくらいを補助したらいいんだというような中途半端な考え方をやめて頂いて、もつとがつちりした計算と計画によつてお進め願いたい、かように希望する次第であります。
  55. 千田正

    委員長(千田正君) 今長島委員からもそういう御注文がありましたし、私委員長としましても、今のは住宅だけの問題がそういうふうな誠に少い経費でやつておるのですが、或いは家畜が不足して来ると、やはり家畜の費用というものも付かなければならん。まあいろいろあるでしようが、今日柳次事務官にお願いしたいことは、先ほどあなたが御説明なつた、この入植者の数及び戸数ですね、更にこれを内地の次、三男と外地から引揚げて来た者と、こういうようなものを誠にお手数だとは存じますが、更に本年度、過去三年なり、五年なりのあなたのほうの材料が整つておるのから抜書きして頂いて簡單で結構ですからレポートを頂きたいと思います。  それでは次の未復員者給與法と特別未帰還者給與法の、それらの医療費でありますか、医療費の問題が期限が切れるという状況でありますので、これは当委員会としても、最初法案を作つたたけにこの問題を等閑に付すわけには行きませんので、その重大な点だけを田島事務官から御説明を願つて、次の会長会か何かにおいて皆様の慎重なる御審議を願いたいと思います。
  56. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 未復員者給典法第八条の二に復員後三カ年間必要な医療を国か行うという規定があります。それから附則の第二条に「この法律施行の日から三年間、その者」と言いますのはそれ以前に復員しているものも指すのでございます。そういうものに刻して必要な療養を行う、この療養に関する条項があるのでありますが、この条項は御承知の通り委員会で発議して頂きまして、前からございました未復員者給與法に挿入して頂いて復員して来ました患者諸君がこの法律の恩恵に大幅に浴しておる、非常にまあ患者諸君にとりましては有難い条項なのであります。ところが現在の状況を申しますと、大体この法律によりまして療養を受けておりますものが五月末の現在を見ますと六千六百三十人ほどおります。そこの中には、これは実を申しますと、結核患者がまあ大多数で、あとは精神の異常者、それから外傷が若干、そのほかいろいろな例えば栄養失調とかマラリヤとかいろいろありますが、そういうものは数は極く少くなつております。大部分の者は結核といつたようなものであります。この現在六千六百の中には実はこの法律が施行されまする前に復員をしておりました関係上、本年の十二月二十八日になりますとこの法律施行の日から三年間という条項によりまして、この法律の恩典に浴することができない、そういう状況に相成るのであります。そのパーセンテージを大体調べて見ますと、九〇%に近いもの、これがもう未復員者給與法の適用を受けられないとすれば、あとは治療を受けられないかたは生活保護法によるとか、何とかいずれ国費を要することなのでありまするか、そういう方面に転嫁をしなければならない。こういう状況に相成つておるのでありまして、従いまして諸先生がた地方等をお廻りになりますと、患者諸君はこの点を非常に憂慮しておるだろうと思います。そこで何とかいたしまして、この規定を変いて頂きまして、今暫くはと申しますか、或いはまあ相当長い間に亘つて療養ができまするようなふうに御改正でもお願いしなければならんじやないかと考えておりまして、その準備はいたしております。そこで先ほど申しましたように、六千六百の約九〇%近いものが療養を受けられなくなる。その患者は今申しましたように結核性の患者が非常に多い。それからあとは精神異常者といつたようなことで、これは放り出されても非常に困るかたがたばかりでありますので、是非ともこういう点につきまして早急に救われますようにいたしたい、かように考えまして、その事務的な準備は進めております。それで次の臨時国会までには是非間に合せたいというようなことで予算等も一応は彈いておるような状況であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  57. 内村清次

    内村清次君 私も今回の調査によりまして、これは宮城、福島、新潟等各座談会におきましても、この問題が特にこれは急を要するから何とか一つつてもらいたいというような陳情があつたわけでございまして、この十二月でこれは切るらしいですね。そうして見ますと、私といたしましても社会党といたしましても、臨時国会はそれまでにあるから、各委員かたがたにも報告してこの法案の改正については努力しますという答弁はいたして参りましたが、特に佐渡に参りましてこれは予定外でございましたが、国立病院を見せて頂いたわけでございます。ここは大体結核患者が療養を主としたところの国立療養所であつたわけですが、丁度玄関を出るときに結核の傷痍者のかたが走り出て参りまして、是非陳情したいとこういうようなことで話を聞いて見るとやつぱり今の問題で、帰つて来てからお母さんが七十になるのに一人でおつて、自分はこうやつて病院に入つて十二月で、この医療手当が切れるというようなことになりますが、何とか一つ精神的な面におきましてもお救い下さいと、こういうような話がありまして、非常にこれは患者自体におきましても特にこの点については神経を病んでおるようでありますから、是非一つ報告申上げますると共に、何とかこれは処置をしてもらいたいと、こういうことで今日委員長を通じてお願いしたわけですが、そうすると今聞いて見ますると、やつぱり六千六百三十人の約九〇%ですか、大した問題ですから……。
  58. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 仰せ御尤もです。幸い十二月までまだ余裕がありますので、この会期中に次回からでも一つ研究を始めて頂いて、或いは臨時国会等において法案改正なり、適当な方法をするように進めて行つたらどうですか。
  59. 千田正

    委員長(千田正君) 只今草葉委員からの御提案がありましたが、その通り一つなお政府側としましても草案を一応作つて頂いて見て、我々としましてもその点を慎重に皆さんの御審議を願つてこの臨時国会劈頭において通過のできるような工合に運んで行きたいと思いますが如何でございますか。
  60. 鈴木直人

    鈴木直人君 これは予算を伴うものなんですが、法律は仮に改正するのは当然で、私は賛成ですが、これは法律を改正するかしないかということをはつきりしなくても、その程度の予算は今度の補正予算なり来年度の予算の中に一般の引揚費として含めて計上されているとこういうふうに考えてよろしうございますか。そうすると單に法律さえ改正すれば金の問題は今までの通りにまあ全体の予算さえ取つて置けばいいのだということになるから、別に補正予算なり臨時予算なり何か理由をつけて、大蔵省なりそういうふうに要求しなければならん。そういうことだとむずかしいのじやないか。一般予算の中にどんどんそれくらいの金は出せるということになつておると思うからそれをお聞きしておきたい。
  61. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 本年度の予算は当初予算におきまして二億二千万円、大体今の七千人程度のものという見当で二億二千万円を要求してございます。それでこの法律を改正して頂くといたしますれば、この第四半期の一、二、三、三カ月分を取りあえず補正予算に組んで頂くということに相成るのだろうと思つておるのでございますが、ただその予算は今のところ大蔵省と私どものほうと話合いはいたしておるのでございますが、その予算をどういうふうに新らしく補正予算に組むか、或いは前のやつは若干残つておるのを不用額を立てるべき分もございますので、そつちのほうの流用に行くべきか、そこのところはまだ研究中のように聞いております。
  62. 鈴木直人

    鈴木直人君 予算の立て方が、この法律は十二月で終つてしまう、そうすると六千人近く人が金は要らなくなる、こういう計算から細かに計算して一、二、三の分を除いて予算を取つてあるようなことはないのじやないか。十二カ月の予算ということで取つておるのじやないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  63. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 実は十二月で切れるということを考えて予算を立ててございますが、この中には十二月までに使い切つているということにもなつておらない。若し法律が改正されますならば、若干ほかから増ししてもらいますれば、何とかやつて行けるそうでございますけれども、併し建前上どうすべきかについては、先ほど申上げましたように考慮しております。
  64. 鈴木直人

    鈴木直人君 予算の点も一緒に、法律と同時に計算されて適当に準備して頂きたいと思います。
  65. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 鈴木委員お話ように、予算は急いでやらないと、補正予算は次の国会に間に合わんので、今のうちに一つ政府に折衝してそれをやつて行くほうが、金のほうが大事だと思います。
  66. 千田正

    委員長(千田正君) それでは如何でしよう。来週あたりもう一度皆さんの御都合を伺つて、この問題で開いて頂いて、その間一つ田島さんのほうで大蔵省その他と交渉つて見まして、どの程度まで行けるかということを、あなたがたのほうの政府案として、案を一つ、試案を一つつて見て下さい。
  67. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 昨日、一昨日ですか、厚生省の予算のことでいろいろ討議したわけですが、来週というふうにゆつくりなさらないで、もつと早く急いで……。
  68. 千田正

    委員長(千田正君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  69. 千田正

    委員長(千田正君) 速記を始めて。只今委員からの御提案もあります通り、この問題は早急を要することなのでありますので、大蔵当局並びにその他の折衝につきましては、委員長に御一任願いまして、そうしまして、私から又各委員並びに理事に御相談しまして、極力早めにこの問題の具体策、結論を作つて見たいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 千田正

    委員長(千田正君) ではさようにいたしまして、最も近い将来にもう一度皆様のお集まりを願いまして、その間の事情を御報告申上げたいと思います。若しほかに御質問がなければ、これで今日閉じたいと思いますが……ちよつと今田島事務官から御報告があります。田島事務官。
  71. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) 先ほど在外資産の問題で、条約案との関係お話がありましたが、実は例の、いろいろ御心配願つております在外の戦犯者の問題でありますが、あれが草案の第十一条に、日本は判決を履行せよといつたよう趣旨の条項もございますが、これにつきましては、若干はつきりしないような点もございますので、今研究いたしておるのでございますが、更に又この条項につきましても、御研究を願いまして、在外の未引揚の戦犯者に関しまする処置について、御一段の御努力を、私が申上げて非常に僭越でございますが、お願いいたしたいと思います。なお、戦犯者につきましては、これは新聞紙上にも載りましたので、御承知かと思いますが、近くシンガポール及び北ボルネオ附近から百二、三十名の者が引揚げる模様であります。これはまだ情報程度でございまして、正式な通告ではないのでございますが、これは情報の出所その他からいたしまして、相当確実ではないか。大体八月の三日頃、シンガポールを出発する、こういうふうな予定になつておるのではなかろうかというふうに考えております。いろいろと御尽力頂きまして、これはまあイギリス関係の分でございますから、だんだん片付きつつありますけれども、ここでこれも私から、非常に僭越でございますが、お願いいたします。
  72. 内村清次

    内村清次君 今委員長からも、この委員会をお閉じのような御発言になつておりますが、私勿論まだ調査をいたしました関係での定着援護の問題で、まあ集団住宅の問題、こういう問題も実は今日の委員会で取上げて頂きたいと思つておりましたのですが、それはこの次の早急の委員会に譲ることにいたしますが、ただ一点、今日は草葉委員もおいででありますから、お伺いしたいのですが、実はこの前の委員会で、倭島局長が御答弁の中にも一番問題にされておりました先般の国連のオブザーバーに出ました三代表の御報告の末尾におきまして、第三委員会委員の決定をして、そしてできれば日本調査に来朝する、こういうよう報告があつたわけであります。この点を各県を廻りました座談会で、未復員者のかたがたが非常にこれも又講和の問題と関連いたしまして、非常に関心を持つておるわけです。そこで私の答弁といたしましては、委員会の倭島局長の言葉そのままを何ら装飾なく報告したわけでございます。ところが、丁度新潟が一番最後でありましたが、新潟に参りましたときに世話課長から発言がありまして、実は第三委員会においては委員の決定がなされたのだというような情報が外務省から入つたと、こういう話であつたわけです。そこで、その点の真偽を、一つ情報がありますれば草葉委員から御報告をお願いしたいことが一点と、それから第三委員会かたがたが来朝して調査をされるというような、そういう情報がどうなつておるかというのが第二点。第三点はこの未復員者のかたがた条約草案の中においてどういうふうに織込まれておるか、或いは又その話合いがなされておるか。又どういうような環境に置かれるものであるかということを、一つ外務省関係の見解を申して頂きたい。これだけを一つ今日取上げて頂きまして散会して頂きたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) 只今の第一の昨年の十二月国連総会における第三委員会の決定は、三人の委員を決定したことは事実だが、併し人の決定はなされてないと記憶しております。最初はたしか国際赤十字に依頼するという状態であつたが、国際赤十字がこれを引受けない場合には議長がこれを指名するということになつてつた記憶しております。倭島局長が申上げた通りだと思います。それから第二点の、これらの人たちが国内に調査に来るという問題、これは四月三十日までに各関係国が報告をして、報告が不十分な場合には委員を選定してそうしてその人たちが実働に入る。従つて極く最近までの情勢では余り報告各国から十分出ておらないよう状態だからそれでその状態に応じて国際連合は委員を選任してそうして関係国に派遣をするなど適当な方法をとる、恐らく派遣をするという方法をとつて来るものではないかと期待いたしております。時期は最初の間はもう五月の早々か六月には見えるのではないかと期待しておつたわけでございますが、そこまでは進んでおらない状態だと思いますが、いずれはそういう状態に必ずやなることを私も希望しておるのです。それから第三の点の平和条約の中に未帰還者の問題は今のところ私の記憶では余り触れていないのではないか。従いまして最近講和条約草案の中にむしろポツダム宣言の最も重要と思われる点を挿入しながら未解決の分をあれで解決するよう方法をとつてくれというような運動が大分強く出ておるようであります。今のところではポツダム宣言にありまする未復員者、未帰還者の問題は、今度の平和条約草案の中にはあの形において又その他の形においては入つておらないと存じております。これは結局国際連合で取上げて参つておりますから、国際連合のほうの解決を待つというほうがむしろ早くなつて来はしないか、こう考えております。
  74. 内村清次

    内村清次君 今の第一点の問題が新潟でもうすでに決定なされたという通知が来たわけです。そういう情報がキヤツチされたということだつたのですが、これはお知つてじやないのですか。
  75. 草葉隆圓

    説明員草葉隆圓君) それはつまり最近決定したようであります。今までにビルマのカイン、それからベルナドツト、それにサルバドールのケレーの三人を国際連合の議長が選任したという情報が確定だと思います。去年の十二月にはそれが決定せずに、ただ選任するということだけ、これはそういうことであります。
  76. 内村清次

    内村清次君 第三点の条約草案につきましては、私たちもこれは大いに要望がありまして、政府がなぜこの問題を草案の中に一つ挿入しないかという問題は、これは私たちは要求したいのですが、今日その問題には触れたいのですけれども、時間の関係でやめますけれども、これはやはり外務当局のほうではあなたの答弁だけじや満足できないんですよ。これは恐らく引揚者かたがたも留守家族かたがたも満足できないだろうと思います。この点はもう少し一つ積極的に対策を講じて頂きまするよう要望を申上げておきます。
  77. 千田正

    委員長(千田正君) これは非常に重要な問題でありますし、又草葉政務次官としましては政府側の立場として慎重を期しておられるような点もありますので、今日の委員会は一応これで閉じましてなお懇談のうちにおいて一応又お話を願いたいと思います。  それでは一応本日の委員会はこれで閉じます。    午後一時散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事      森崎  隆君    委員            木村 守江君            草葉 隆圓君            長島 銀藏君            内村 清次君            曾祢  益君            鈴木 直人君            杉山 昌作君            兼岩 傳一君   説明員    外務政務次官  草葉 隆圓君    大蔵省理財局外    債課長     上田 克郎君    厚生事務官    (引揚援護庁復    員局復員課勤    務)      田島 俊康君    農林省農地局入    植課課長補佐  柳沢晋一郎君