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1951-01-31 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年一月三十一日(水曜日)    午後一時四十一分開会   ―――――――――――――   委員の異動 一月二十七日委員河崎ナツ辞任につ き、その補欠として成瀬幡治君を議長 において指名した。   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○引揚促進に関する件  (国際連合に対し感謝決議に関す  る件)   ―――――――――――――
  2. 千田正

    委員長千田正君) では只今から委員会を開会いたします。議事に入ります前にお諮りいたしたいことがございますが、それは社会党内村委員から理事辞任願委員長の手許まで提出されております。その代りとしまして社会党より森崎委員理事に推薦して参つておりますが、内村委員理事辞任を許可し、森崎委員理事に推薦することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千田正

    委員長千田正君) ではさように決定いたしました。    ―――――・―――――
  4. 千田正

    委員長千田正君) これより本日の議事に入ります。去る二十九日委員長及び理事打合せの会合におきまして、本特別委員会の運営について協議いたしました結果、本日は国民代表として国連総会に御出席下さいましたところの三人のかた、即ち衆議院中山マサ先生日本YMCA主事齋藤惣一氏及び外務省監理局長の倭島英一氏の御出席をお願いいたしまして、我が未帰還同胞に関する国際連合審議の模様を忌彈なく御報告をお願いしまして、私どもとしましては今後の引揚促進の貴重なる資料といたしたいと存じまして、本日ここにおいでを願つわけでありますが、齋藤惣一氏並びに倭島英一氏は先般来御病気でどうも出席できないというので、本日は中山マサ先生がお見えになつておりますので、中山さんから諸般の事情の御報告を頂きまして、私ども又御意見の交換をしたいと思いますが、御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千田正

    委員長千田正君) では早速、中山先生から一つ報告をお願いしたいと思います。その前に私ども委員会といたしましては昨年長い間国連に使いされまして、未だ日本立場独立国として認められない立場にあつて、而も国際連合という重大なる会議に幾多の難関をどうにか切抜けられて、そうして日本国民の訴えを果して来て頂きましたこれら代表の三人に対しまして、参議院は深甚の敬意と感謝を捧げるものでありまして、委員会といたしましてお礼を申上げます。では中山さんから一つ報告をお願いいたします。
  6. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 過分なるお言葉を頂きまして誠に恐縮に存じております。昨年の五月二日は皆さんも御記憶の通り国会最後の日でございましたが、その日に参集両議院が手をつなぎまして、いろいろと留守家族政府国会とが三つ巴になりまして何とかこの国民の悲願、三十七万を一日も早くということを努力して参りましたにもかかわりませず、一向ポツダム宣言において約束されたことが実行されませんし、一月として五万の約束の人数が帰されたこともございませんので、遂にGHQの御了承を得まして国連にこの問題を提訴し、そうしてコミツシヨンを日本に送つて頂いて、タス通信が申しますところのもはや帰すべき人は帰したということが事実か、或いは私たちが主張して参りました三十七万外地にありということが事実か、その白黒をつけてもらいたいというのがあの決議案の内容でございました。秋になりまして国連総会が開かれたならば、あの提案がどうなるかということを楽しみに暮しておりましたところが、はからずも国連に使いせよという申出を受けまして夢かとばかり驚き且つ喜んだのであります。これまで再々陳情団に会いまして親の立場、妻の立場というものはよく聞かされておりましたけれども、羽田に参りまして、あすこで、多分ニユースで御覧頂いたことと思いますが、いたいけな子供たちが私どもに花を渡しながらお父さんを連れて帰つて来て下さいといわれましたときにはしみじみと子供立場ということを確認したのでございます。あの子供たちの年配からいたしますれば、多分親が出征する前後に生れたものであろうと存じますが、まだ見ぬ親をかほどまでに慕つているこの子供たちの念願を達して上げなければならないと思いましたときに、自分の使命の重大性を感じたのでございます。  遂にワシントンに参りました。要しました時間は三十六時間でございますので、東京から急行で長崎へ行く時間でございますので、世界が誠に小さくなつたという感覚を覚えました。ワシントンでは国務省に参りまして、あそこの中に東洋課というものがございまして、ついこの頃まで東京にいらっしゃいましたおかたがたがそこの重要な地位に就いていらっしゃいます。特にブルナーというアメリカの領事がいらっしゃいますが、その人の下で働いておりましたオバートンという人が私ども世話役になつて下さいましたし、そのかたとは私多少知り合いの間でございましたので、これはいい都合だと思いました。そこでアチソン長官にもお目にかかりまして、今まで日本人終戰後アメリカに来た人は数多くある。併し日本国民代表して来たのはあなたがたが初めてだといわれましたときには本当になかなかうかうかしてはいられない。是非この終戰後日本代表としての責任を果たさなければ国へ帰つてまず第一に留守家族に会わせる顔がない、国民に会わせる顔がないということを痛感いたしたのでございますが、ここで皆さんも御了承通りに私どもはオフィシャル・オブザーバーという肩書を頂いて参つたのでありまするから、委員会に出まして発言権利も何もないのでございますから、それが何をしに行つたという御質問があろうと思います。第一に私どもがしなければならなかつたことは、この問題をよく理解して頂く。あの知性の高いと言われているルーズベルト夫人ですらこの三十七万の中に一般邦人が入つているということを御存じありませんでした。何しろ満洲の地、ああいう外地に私ども日本人が参りまして、そこに家族的に住居をかまえておつたというようなことから説明して参りました。これに非常に役立ちましたのは千葉県の金崎という奥様から頂いた手紙でありました。この手紙は私たちもあそこに住んでいたのであるが、夫が満鉄に出ておつたが、ソ連の兵に拉致されてそのまま行方不明になつている、何とか夫のありかを知りたいというのがこの奥様のお手紙で、ございましたので、これが何よりの証拠となつたのであります。而もソ連軍によつて連れて行かれたというのですから多分ソヴイエトのほうへ連れて行かれて、或いは兵隊の代用品にされているかも知れないということもここで申上げました。資料の提供ということが私どもの第一の任務でございました。こうして私どもが内地で得ましたそういうふうな資料を持つて行くと同時に、向うで頂きました資料も又英文に訳しまして向うへ提供した。この千葉県の金崎氏の手紙そつくりそのままサンプソン夫人人道委員会でお読上げ下さいましたものの一つでございまして、こうしていろいろと資料を提供し、三十七万の問題をよく来る日も来る日も一週間の間ここで国務省打合せをいたしましていろいろとその筋の人たち出会つて話合をしたということが私ども任務一つでございました。  一週間たちましてニユーヨークに参りましたのでございますが、ここからレークサクセスに参りますのに殆んど一時間かかります。あの有名な五番街、繁華街のつい入つたところに私どもの宿をとつて下すつておりましたが、そこからペンシルヴアニア・ステーシヨンに歩きますと十五分、ニユーヨークは近頃は電車を殆んど廃止しております。と申しますのは、非常に交通が多いものでざいますから、電車よりもむしろバスによつて、その空間を利用して運行を早めるというのが、向う人たち考えかたらしうございまして、それで電車がございませんし、ペンシルヴアニァに行くにはバスもございませんので、何しろこの貧乏国代表として行つておりますので、お手当も少いものでございますから、タクシーに乗るということも用心いたしませんととんだことになるという虞れで毎朝ここに歩いて参りました。それからこの間汽車衝突事故があつて、多数の人がなくなりましたロングアイランドに汽車で参りましてこれが四十五分。グレートネツクという所で降りまして又バスで十五分参りますと、このレークサクセス飛行機に用いられております飛行機の安定を図る胴部の製作所でございましていわゆる工場でございます。それがここに提供されておるのでございますけれども、中に入つて見ますと工場というような感覚は更にないのでございます。あたかも学校か何かのような感覚でございまして、ここは委員会だけが行われる所でございます。ニユーヨークとこちらとの中間にフラツシングメドウスという所がございますが、ここが皆さまがたニユースで御覧になつてうしろの壁に世界の地図が出ておりますが、あの総会だけが行われる場所でございまして、あたかも国会と同じように、練り上げたものを総会にかけるという仕組になつております。このフラツシングメドウスにおきまして、国連の第五回の記念日演説会が催されまして、トルーマン大統領お話を聞いて参りました。トルーマン大統領国連の名誉にかけて世界の平和を維持する、若しもこの平和が侵略者によつて脅かされる場合には、武力を用いてでもこの平和を守らなければならんという決意縷々お話になつていらつしやいましたが、丁度そのときに四カ国の外務大臣級の人がプラツトホームに、このテーブルの両脇に坐つておりました。ヴイシンスキー氏もそこにおられましたので、どういう態度で以てこの演説を聞いておられるかと思つて注意して見ておりましたが、頻りにノートをしておられました。又何かの場合にこの演説に対する反駁をする資料をとつていらつしやるのだろうと思つておりました。私どもが参りましたと時を同じくしてドイツから四人の人が見えました。二人は国会のかたでございまして、一人は外務省、もう一人は通訳の人が見えました。敗戰後初めてこの敗戰国ドイツ代表敗戰国日本代表が一堂に会しまして、お互いに協議しました事項がこの引揚の問題でございまして、私ども三十七万は非常に多い数だと思つておりましたところが、向うの状況を聞きますと私どもの問題より以上に大きな数を向うは持つて来ておりました。未だ帰らざる、いわゆるプリズナー・オブ・ウオー、POW言つておりますが、これ即ち復員しない人たちが五十万、一般邦人を寄せたら百万以上になりますということを申しておられました。あなたがたの国は地理的に分れていないから誠に仕合せですよ、私どもは東と西に分れて、或る者は、東に帰したと言われて西のほうには帰つて来ていない。実に混乱せる状態で、東のほうにすべて政府のほうの機関があるから、西は一から積立てて行かなければならない、負けたは負けたにしても、まだ日本のほうがよほど我々よりも歩がいいということを言つて、しみじみと述懐していらつしやつたのでございますが、このかたがたとも打合せまして、何とかしていわゆるポツダム宣言約束された、POWという形でなしに、一般邦人の問題も大いに強調しようというのが、又向う考え方でもございました。  こうして私どもはもうこの問題は取上げられるか、取上げられるかと思つて待てど暮せどなかなか六十二議題の中に入つてはおりますけれどもそれが取上げられて来ません。一カ月の予定を以て参つたのでございますから、いらいらと待つておりまして、どういうわけでこれが遅くなつているかということをいろいろ手を廻し調べて見ましたところが、ルクセンブルグ、フランス、オランダ、この三国は自分たちの未引揚者たち相手国と個人的に折衝して解決しよう、だから今ドイツ日本人たちがこの問題を提げてここに来たのは誠に迷惑だ、これが国連で取上げられるということになると、或いは自分たちのほうが不利になるのではないかというようなことを考えるらしうございまして、どうもこういう方面から邪魔が入つている。又アラビア・ブロツクはこれはいわゆる政治的の宣伝だ、だからこんな問題を人道委員会にかけられなんじや、たださえ啀み合つているところの二つの陣営に要らざる刺戟を與える、だからこれはここで取上げてもらいたくないという感覚を持つて、こういうブロツクが頻りに策動している。こういうことでだんだんだんだんと遅くなつて来たということがわかつたのでございます。報道の自由という問題がこの人道委員会において取上げられましたときに、英国代表が、この問題の討議が終つたたらば引揚の問題を取上げようということを提案して下すつたのでございますが、なかなか論が盡きませず遂に採決によりまして解決することになりましたところが、遂に引揚の問題を取上げに賛成した国が十カ国、反対十三カ国、棄権二十三カ国となりましたので、これでは一体これはどうなるのだろう、よく私どもが議会でやられることを見ております、好ましからざる問題は審議未了という形にして、これを又の機会まで延ばすのじやないかということも、私どもが心配し出した種になりました。  この時分に、皆さまも御了承になつて、新聞で御案内安全保障理事会中共代表伍大将が率いますところの五、六名の代表南鮮代表が到着いたしました。朝鮮問題に中共が進出したことに関して、又中共側アメリカが第七艦隊を支那海に入れたのであるから、国内事情にタツチして来てアメリカこそ侵略者であるということを提訴して参りまして、この問題が非常にやかましくなつて参りました。マリク氏は議事の問題で二時間半もねばりまして実にただならない様相が出て参りました。アメリカオースチン代表が先ず先に発言をしたいということを申出でましたところが、この問題を提訴したところ中共側代表が、第一に発言するのが当然であるということで又やいやい言い始めましてエジプトの代表でございましたか、誰が先に発言するかということで、こうして時間を浪費して一人も発言しないというような結果になつてしまつたではないかということで、採決になりまして、遂に国連に属するところアメリカ代表が第一に発言をすべしということになつて参りました。私どもがこの日本から国連の動きを見ておりますと誠にぬるぬると遅いと思いますが、実にこの何でもない、私どもから考えますと実にばかばかしいと思うような点につきましても、ながながと六十ヵ国の代表が入れ代り立ち代り論議いたしておりますので、ああいうことになるということを目の前に見たのでございます。遂に伍代表発言のときになりましたところが非常なる決意を以て来ておりますと見えまして、中共の四億の国民をひつさげてアメリカ侵略者を必ず海に叩込んでみせるという脅迫じみた発言がございまして、この瞬間から国連は何だか黒雲にでも蔽われたかの感じがいたしました。又その感覚がずつとニユーヨークに或いはそのほかの州に拡がりまして、アメリカ国民は非常な不安にかられて来ておりましたのでございます。  こういうわけでございますので、この問題が非常に火花を散らしておりましたので、私ども引揚の問題は何だか片つ方のほうに押しやられたような感覚を受けましてこれではなかなか私ども発言権利もなし、どういうふうになるかということが、私ども夜半に夢覚めまして眠られない晩が幾晩かもあつたのでございます。この引揚の問題のつい前に取上げられました問題が避難民の問題と一般に訳しておりますけれども英語でデイスプレイスト・パースンズと申しまして、いわゆる国を失つた人たち、ソヴイエト・ブロツクの手が伸びて参りまして共産主義政府が確立を見ましたところ国民たちは、もう自分の国にいるのが嫌だと、いわゆる今後共産主義政権の下には生活がしたくないということで、どんどんと自分の国を出て行く人が多くなつて非常にその数が多いために、これが又国連の問題になつて参りましたが、その山で誠に哀れに思いましたのは二十八万の学童の問題でございました。フラツシングメドウスにおきまして、最後総会のときにギリシヤ代表が立ちまして、この二十八万の学童は団体的に学校から拉致された、この学童を是非帰してもらわなければならないということを力説しました。ベルギーの代表は非常にこの問題に同情を寄せまして、そうして立つて申されておりましたが、ギリシヤという国は歴史の上から見ても非常に文化豊かなる国である、この文化豊かなる国の子供たちが、その文化の中に育つことができないで拉致されて行つてその代表が使いました言葉をそのまま訳しますならば、赤い動物となつてからギリシャに帰されるであろう、而もアテネの政権が転覆きれて共産主義政権になつて帰されるであろう、こういうことは国連の両日にかけで黙視してはならないということを力説いたしましたが、遂に採決によりまして二十八万のこの学童は是非その本国に送還されなければならないという決定を見たのでございます。この問題の成行きを私はずつと見守つておりまして、この問題は成るほど避難民の問題であるかも知れませんが、或る意味においては引揚の問題でもあり、この問題の成行きによつては私どもの問題も、又結果もほぼ察知されると思いまして、懸命になつて通つてつたのでございますが、何ら約束もしてないところのこの人々すらも帰されるのであるならば、ポツダム宣言約束された私ども同胞は必ず帰してもらえるという、ここでほのぼのとした希望を私は持ち始めたのであります。  遂に私どもの問題が取上げられる日が第三人道委員会に出て参りました。この人道委員会はほかの委員会と異なり殊に目立ちます点と申しますれば、非常に女性代表が多いということでございます。ほかの委員長で私が傍聽しました限りにおきましては婦人代表は一人もございませんでした。併しこの委員会では御案内アメリカ代表ルーズヴエルト夫人、第二代表サンプソン夫人、インドのマノン夫人、イラクのアフノン夫人、そのほかオランダ代表婦人でございました。もう一カ国どこでございましたか名前を忘れましたが婦人代表を出しておつたということは、この人道問題というものを、やはり男女両方立場から処理して行くべきだという感覚を持つておる国が非常に多いということが私これでわかつて誠に喜ばしいことであると思いました。この委員会オランダのかたでございまして、非常に外交的にも、昔外務大臣をしたこともおありになるかただそうでございますが、誠にてきぱきと事務を処理して下さいました。その横にはリポーターといういろいろなことを報道する人、うしろのほうに事務局のかたがいらつしやいまして前にはずうつと馬蹄形になりました机がございました。そこに第一代表が坐り、そのあと第二代表、そのうしろには相談役という人がございましていろいろな問題をその場で自分の論点に有利なように三人の人たちがいろいろ相談してやつていらつしやるようでございました。そこにはテレビジヨン機械も置いてございます。アメリカ家庭には非常にテレビジヨンが多く入つて参つておりますので、家庭にいながらその場の様子が見られるようにテレビの機械も置いてございますし、又右のほうには五つのガラスの部屋がございまして、そのガラス張りの部屋の中に通訳の人が二人ずつ英語ロシヤ語、フランス語、スペイン語、支那語、この五つ言葉が、この委員会の、どこの委員会でもそうでございまして、主要語になつておりまして、即座にそれが各国語通訳されます。私どもの坐つておりますうしろにはちやんとダイアルが取付けてありまして、そうして第二のダイアルを廻しますと英語が、私がつけておりますイヤホーンに通つて来るという仕組になつておりますので、即座に今論議されておる、例えばロシヤ語でやつておりましようとも、それが直ちに自分が理解ができるという仕組になつておりますのでございます。そうしてこの国連に対するところアメリカ民衆の興味も非常なものでございまして、中等学校以上の学生たちが団体で見学に来ておるのをしばしば見受けました。一般市民たちも毎日の切符が手に入らないというぐらいに大勢の者が各いろいろな委員会に出て参つておりました。  この問題が取上げられましたときに先ず第一に英国代表が、その曾つて敵国であつたドイツの未帰還者の問題を取上げましてかかる大きな戦争のあとには非常な混乱が起るから、或る程度の秩序に達するまでには相当の日にちがかかるということはこれは常識だ、併しもはや五年も終ろうとしておる今日まで、まだこういう問題がここに考えられなければならないということは誠に残念なことであるという言い出しの下に、ドイツ人々を是非帰すところ責任が我々にあるということを力説なさつたのでございます。次には濠洲でございましたが、この濠洲代表日本の問題を取上げて下さいました。特に濠洲代表に私ども感謝いたしましたことはこの一般邦人の問題も是非このなかに含ませて頂きたいと交渉をいたしましたときに、本国からまだ一般邦人も共に取上げていいというところの通告を受けていないから困るということをおつしやつたのでございますが、いろいろとそれが間に合いませんものですからお願いをいたしましたところが、その代表の肚でこのなかに一般邦人の問題も取上げて下すつたという措置をして下さいました。そしておつしやいましたことには濠洲日本に対して決して好感を持つていない、国民感情は誠に悪い、それもそうでございましよう。この頃平和、講和の問題が出て来ておりますときに、濠洲のこのスポークスマンが、日本に若し再軍備をさせたならば又侵略国になるかも知れないというような、誠に日本人の気持のまだ不徹底なくらいに向うでは私ども考え方を御存じないのでございますから、こういう日本に対する悪い感覚がまだ深いということはよくわかることだと思いますが、併し言を進めて感情約束とは全然別である、ポツダム宣言において約束したことは必ず守らなければならないということをおつしやいましたが、国民感情が非常に悪いということは、聞いておる私どもには悲しいことでしたけれども、併しこれも又或いは有利な戰法であつたかも知れないということも考えられました。  次がアメリカ代表サンプソン氏でありました。第一代表ルーズヴエルト夫人矢表に立たないでサンプソン夫人がこの責任者になつて下さいましたということは、サンプソン夫人お話を聞きますと誠に思いやりの深いところがあると思います。法律的の問題は自分は弁護士であるが故によくわかつておる、而も自分黒人であるから自分の祖先は奴隷生活をして来た、日本外地に抑留されている人たちは今は強制労働をさせられて、いわば奴隷生活をしている人たちである、こういう同じ経験を持つておるところの者がこのことを発言したならば、いわゆる白人アメリカ人が言うよりも、むしろ諸外国は、黒人アメリカ人が言つたほうが、この問題に対するところ同情がより深いということを自分は考えたので、この仕事を自分が引受けたんだということをおつしやつて下さいました。このかたは非常に法律家としても立派な態度で以てやつて行つておる人であるということは、自分はよく離婚訴訟を持つて来る人たちがあると、自分がちやんと考えた案を、その案によつて三月共同生活を続けて下さい、そうしてそれでも離婚がしたいというならば起訴して提起して上げましようと言う。大体三月たつたらその別れようと言つた夫婦でもやはり落着いて、私は金儲けをし損いましたよ、併しお金儲けをするよりもむしろ人間の愛情を身につけるということが人間は幸福なんだから、私はそういう方法でやつておるとおつしやつて下さいましたことによりましても、このサンプソン夫人の如何に人道的な立場に立つていらつしやるかということを御了承願えると思います。このかたは懸命になつてどものためにお話下さいました。  次はソヴィエトの代表アルチエニヤン氏でございましたが、このかたは国連憲章の一〇七條を持出して、第二大戰の時の敵国に関することで起つたことについては国連では取上げないという一條があるから、この問題はこの国連において取上ぐべき問題じやない。であるが故にソヴイエトとしてこの問題に関係しないとおつしやいましたが、それで来られるのかと思いましたところが、なかなかそれだけのことではなしに、南方において行衞不明になつたというような人たちはソヴイエトにおるのじやないとタス通信で発表した通りだと言われ、いわゆる未だ帰らないと言われておる人たちアメリカにおる、アメリカがハワイにおいて、沖繩においてこれを強制労働に使つておる、フランスにもおる、英国にもおる、濠洲にもおるじやないか、ベルギーの炭坑にもこういう人たち強制労働に使つておるじやないかと、とんでもないことを言い出されたのであります。ところがさすがに弁護士でいらつしやるところサンプソン夫人はよろしうございます、それならば私ども自分の国のアメリカを開放して見て頂きますから、ソヴイエトも又私ども言つておるところのこの国連引揚委員会の提案に対して共同提案者となつて一つつて下さい、そうして鉄のカーテンを開けて、いるかいないかを見せて頂きましようということを言われましたのは、誠にお手際だつたと私は思つております。  そういうわけでやつておりますが、ここにレバノンとシリヤと二つの国、朝鮮の停戰の問題にもこの国々が活躍しておるようでございますが、この二つの国が修正案を持出したのであります。それはいわゆる国連の三人委員会を作つて、この人たちにこの問題を徹底的に調べてもらうということを骨抜きにしようという動きでありました。ただ国連委員会に、その国にはまだおると言われた国が報告をされればいいじやないか、御案内通りにもう過去五年間私どもは待ちましたけれども、タス通信はございますが、なかなか本当の報道がされないという悩みを持つておりましたところへ、こんなことにされたら大変だと思いました。フランスは又修正案を持ち出しまして、とにかくいないという国でも一度自分の国を調査する必要があろうと思うから調査してもらいたいということを申出ましたが、ソヴイエトはこの調査にも断然反対をしたのであります。いろいろとそこには動きがありましたが、英国代表はさすがに議事に慣れていらつしやると見えまして、提案をどんどん取入れて、ついにそのほかの国は報告だけでいいじやないかと言いましたので、私どもの願いとして早速この委員会が活動してくれることを希望したのでありますが、いろいろの事情の下に四月末日までに各国が報告をこの国連委員会にして、そうして五月の最も早い時期においてこの三人委員がこの報告を調査してその調査が満足すべきものでないならば現地に渡つてこれを調査する、そうして国連の面目にかけてこの引揚の問題を解決するというところへ持つてつたのであります。ソ連ブロツクのポーランドは、この問題は必ず政治的色がついておると言つたのでありますから、ソ連の心配を除けるためにはこの三人委員は絶対に政治色のない人、そうして万国赤十字がこの三人を選ぶということになつておりまして、この委員会から早速に赤十字に電報を以てこの責任を引受けてくれるかということを聞きましたところが、各国が門戸を開放するならば引受けていいということを言うて参りましたので、いささか怪しくなりましたので、若し赤十字が引受けないならば、リー事務総長がこの三人を指名するということで落着いたのでございますが、その間、日本から行つておりましたこの問題に関する書類、イタリー、ドイツからも書類が参りましたが、委員長がこの書類を委員会の各代表に配付するという問題を出しましたが早速又ソ連ブロックがこれに反対しました。国連の書類でない、即ち国連に属していない国から提出した書類は国連の書類ではない、だからそれを配付する資格はないものだということを申したのであります。併し委員長は、この書類は国連に属する国の紹介によつてリー事務総長の手に渡つて、リー事務総長から自分の手に渡つて来たのだから、これは完全に国連の書類であるということを主張されました。そうして私が失笑いたしましたのは、チリーの代表が、誠におかしなことをソ連代表はおつしやる、ついこの間まで報道の自由という問題で一週間ばかりここで討議した時に、ソ連代表が報道は自由にしなければならないということを力説なさつた。だからこの引揚の問題は我々は十分に知識がないのだから、それに関する書類があるならばそれを配付してもらつて、十分にこの問題を呑込んだ上で採決に廻すのが報道の自由をここで地で行くことではないかということをおつしやいましたので、ソ連もこれには一言もなく遂に採決によつてこれを配付されるということになつたのであります。そうして日本で持つて参りました「平和を求めて」という小冊子がございまして、引揚の写真入りのものがございますが、これをそこに齋藤先生が出してお置になりましたところが、又ソ連ブロツクから非常にやかましく誰がこれをここへ出したのだというようなことになつて参りました。そういうことになりましたら今までそれを誰もとる人がございませんでしたのに、反対する人が出て来たものですからもう皆が我も我もその冊子を欲しがりまして、それがなくなつてしまつたということがこれ又面白い現象だつたと思います。こういうことで遂に四十三カ国賛成、五カ国反対、何の問題でもこの五カ国は共に反対の立場に立たれます。そうして八カ国が棄権ということになりました。この衆議院では棄権をなさるかたは棄権という立場を発表になりませんけれども、この国連はこの点が実に面白いと思いました。賛成、反対と言つて棄権ということも坐りながら発表するのであります。ずつとその場合はフランス語と英語でやつております。そうしてフランス語でアラエルマシヨンと言つているようでございますが、こういうわけで四十三カ国という国が私どもが心配をしておりましたにもかかわらず、これだけの多数の国がこの問題に対して賛意を表してくれたということは英、米、濠三カ国がいろいろと心配して下さつたこともございます。又私どももいろいろな筋を通じまして各国の人と個人折衝をいたしましてこの問題を呑込んで頂くように努力さして頂きましたのでございます。  こういうことによりまして皆この参議院、衆議院かたがた及び国民のこの問題に対する熱意が一つに集結して何と申しましようか、この実を上げさしたのでもあると私は考えまして、ここにここの委員会のおかた様がたが非常にこの問題を熱心に討議し、又そのために御努力下さいましたことを私は感謝に堪えないのでございます。こうして若しこれがこの世界動乱の中で問題にされないでしまつたならばどうして留守家族に顔を合せられようかと思つたのでございます。向うにおりましたときに或る母親から手紙をもらいまして、これまでの五年の冬は、冬になると伜がどこで凍えているだろうかと思うとたまらない気がした。併しこの冬は三人の代表がやつてくれるから、ほのぼのと希望を持つてこの冬は暮しいい冬であるという手紙も頂きましたし、いろいろなお手紙を頂きますと誠にたまらない気持になつておりましたのでございます。帰りまして齋藤先生は南のほうに、私は北のほうをずつと廻つて報告に行つて参りました。留守家族の喜びは非常なものでございました。二十九日でございました、天皇、皇后両陛下に拜謁仰せつかりまして、この問題の報告を三人が二十分ずついたしました、あとは御質問ということになつておりましたが、二十分かそこでの御質問であろうと思つておりましたところが、一時間に亘つて陛下は一々御質問を下さいました。そうして留守家族が非常にこの朝鮮問題で気を落しておりましたが、国連でやつて頂きましたので喜んでおりますということを申上げましたところが、どういう点で喜んでいるということがわかるかという御下間がございました。それでさつき申上げました手紙の話、行つた先々での留守家族の状況を申上げましたら非常に御満足の体であつたのでございます。両陛下ともそこまでこの問題にお心をお悩ししておいであそばすということを拜しまして誠に恐懼感激をいたしましたのでございます。  これを以て私の報告を終わります。
  7. 千田正

    委員長千田正君) どうも有難うございました。三人の代表かたがたが非常に御奮闘なされた結果について只今中山さんから御報告があつたような次第であります。皆様の御手許に差上げてございますところ国際連合第五総会において一九五〇年十二月十四日採択された決議本文、捕虜問題平和的解決のための措置、これが三人のかたがた向うに渡られて御奮闘された結果なのであります。誠にこのことにつきましては重ねて我々国民として感謝する次第であります。
  8. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 申遅れましたが、向うの受付書類の中に日本の三団体から、これに対して、国連でこの問題を取上げてくれるなという要請があつたという記録がございますので、私は衆議院のほうの引揚委員会にどういう理由によつてどういうよりどころがあつてそういう要請をされたかという調査要求書を若林委員長に出しておきましたので、いずれはこの点もわかつて来ることと思います。
  9. 千田正

    委員長千田正君) それでは只今の中山さんからの御報告につきまして皆さんの御意見を一つ、或いはいろいろ御質問なさる点もあると思いますので、これからお願いしたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
  10. 千田正

    委員長千田正君) それではどうぞ。
  11. 大谷瑩潤

    ○大谷瑩潤君 反対しておられる団体の状況をもう少し詳しく御説明願います。
  12. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 国連に小さい書物屋さんがございます。そこに行きますと国連に関した書類一切がございますし、それからいろいろなかたが例えば滋賀県の留守家族のかたからいろいろな陳情書なんか来ておりますと、それがいつ受取つてどこから来たということが一々出ております。どこから手紙をお出しになつてもそういうような受付のことがちやんと記録に載つております。それによつてわかつております。
  13. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 今の問題ですがね、それは国連代表たちにどんな影響を與えておりましたでしようか。
  14. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 私どももそれが或いは反対の派によつて利用されるかしらんと思つておりましたけれども、それが利用されませんでした。
  15. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 いつ頃ですか。
  16. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 私どもも日附は覚えませんでした。
  17. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 大してそれが取上げられるほど影響がなかつたようですね。
  18. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) そういうわけです。それからもう一つ申遅れましたが、私どもが帰りにワシントンに又寄りましたところが、濠洲のほうの兵隊さんの未復員者がその数はわかつておりませんけれども、ほんのちよつぴり帰し始めたという事実があるのでございますから、こういう国連の動きがあつたために、又そういう動きがあるということも御記憶置き頂きたいと思います。
  19. 千田正

    委員長千田正君) どなたか御質問ございませんか。
  20. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 先ほど委員長はこれについて意見を出して云々と言われましたが、何かに到達したいのですか、この報告を基礎として。
  21. 千田正

    委員長千田正君) この報告を基礎として今後の引揚促進に関しまして皆さんの御意見を交換して頂きたい。こういう報告があつたが、この委員会としましては引揚促進に対しては一体どういう態度で臨むべきかという点も御意見をお伺いして置きたいと思います。それで兼岩先生は何ですか、別に御質問ございませんか。
  22. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 質問なくはないのですが、この委員会として今後何か或る方針をきめる前提になるやのあなたの発言がありましたから、そういうお考えがあるならばあらかじめ聞いておいて、そうして質問しようというわけです。
  23. 千田正

    委員長千田正君) それでは私としてお諮りいたしたいのは先はど申上げました通り皆さんのお手許に届いておりますところの、国連において取上げて決定されたところの、この問題の措置に対しまして、衆議院のほうでは、これは共産党は御反対だつたといいまするが、共産党を除いて、日本国民の使節に対してとつて頂いた国連の措置に対する感謝決議文を出そう、こういうことになつておるが、参議院も同調して同時に出して頂いたら如何かと、こういうお話もございました。参議院としては十分御報告を伺つた上で皆さんにお諮りしまして、若し皆さんの御意見が御一致を見たならば、同時にそういう方法をとつたほうがよいと思いますので応お諮りいたします。その点についてまあ御意見を承わりたいと思います。
  24. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと質問します。最後中山議員の御報告になりました賛成が五、反対が四、棄権が二十三でしたか。
  25. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) それは四十三が賛成、反対五、棄権が八です。
  26. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 棄権が八、賛成が四十三、反対が五というのは、実際はこの四月までの各国が報告し、五月には三人委員会で調査するというこれは調停案ですか。
  27. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 英・米・濠の三カ国の提案ですね。国連引揚に関する小委員会の設置案に対する反対ですね。わかりますか。向うでは私どもはそう訳しますけれども、アツドラオツク委員会と申しております。これはラテン語でございますが、そのことにのみ関する委員会という意味だそうでございます。それは私ども国連引揚に関する小委員会と訳しております。三人ですね。
  28. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 引揚に関する国連の小委員会……。
  29. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) その三人の指名は赤十字がしなければリー事務総長がするという條件で決定された……。
  30. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そのことと、ここにあります横文字と、訳されたこの決議文とはどういう関係になるのですか。
  31. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) それにずつと内容が書いてございます。
  32. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この内容と申しますと、賛成四十三で決定されましたものの……この事柄が四十三、五、八という内容で決定されたものの御説明でございますか。
  33. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) さようでございます。
  34. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは今配られたばかりでまだ読んでおりませんが、それが四月までに各国が報告し……。
  35. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) そうでございます。それを五月に入つて最も早い時期にこの三人委員会が調査して、そうして場合によつて日本に来るかも知れないというわけですね。
  36. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 意見を述べてもよいのですか。
  37. 千田正

    委員長千田正君) よろしうございます。
  38. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 地の各会派においてもいろいろな御意見をお持ちだろうと思いますが、私は共産党としては只今委員長が考えておられるような事柄に賛成できないのであります。その理由を簡潔に申述べます。  私どもはこういう問題を国連に持つて行くということが反対であるという根本的の立場を堅持しておりますが、その点につきましてはここで繰返さないことにいたします。ずつと参議院で前々回か、何回か引続いております委員会において、この問題は私の前任者であるところの中野重治委員から十分申上げております。併し必要とあらば申上げることにしてそのことは理由は繰返しませんが、その点が根本的な態度であります。さてそれが私ども共産党の反対を押切つて、多数を以て中山議員その他を御派遣になつて、そうして非常な御努力の結果こういうような決定を見た。これに対して感謝を出すという問題なのでありますが、私ども共産党としては戰争に反対である、従つて戰争による犠牲者に対しては深甚なる同情を持ち、これらの引揚の問題及び戰争で受けられた戰争犠牲者に対しては非常に深い我々は感情を持つのであります。併しそれは何が故に持つかというと、再び戰争を起さないという意味なのでありまして、第三次大戰を如何にして防ぐかということと関連さして私はこの問題も考えたいのであります。ところが従来この委員会衆議院におけるこの委員会の多数の従来の足跡を振返つて見ますと、三十七万問題が、本当の三十七万の戰争犠牲者の問題を温かく解決するということでなくて、三十七万という数字を使つて世界の二大国であるところの米国を先頭とする資本主義国家群と、ソ同盟を先頭とするソヴイエト社会民主主義陣営に摩擦を起させて、その摩擦を利用して次の日本立場日本一つ立場の利益を図ろうとするというふうな傾向が顕著でありまして、これは一々この委員会の過去にも私は触れませんけれども、そういうことは顕著なのであります。結局私どもは、この引揚問題の三十七万という事実は何ら日本政府としても科学的な証明が全然ない事柄でありますし、それから、それらの政府が従来発表いたしております内容を検討いたしましても、科学的な意味で納得させることができないのであります。そういう問題をこういう形で世界の対立陣営の対立緩和に資しないで、むしろそれを激化するような方向にこれが利用され、そうして使いされたかたが主観的にどういう意味を持つておいでになろうとも、客観的に世界の戰争、二つの二大陣営の反感を激化する形に、これが政治的に利用されておるという、この主観如何にかかわらず、結果としてそういう事柄の行動に対して、これに深甚な謝意を全会一致で表する、これに対する感謝状を出す、というようなことには私ども共産党としては賛成することができないのであります。
  39. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 ちよつともう一つお尋ねしますが、委員長に。今のお諮りでしようか、御希望的な、最後こういうふうな結論に持つて行きたいというお話の中に、感謝というのはもう一つ具体的にどちらのほうに感謝が、その点が今の御質問にもありましたように、三人のかたがたに対する感謝か、国連に対する感謝か、とにかくはつきりしていないようですが。
  40. 千田正

    委員長千田正君) 私はその点に対して……
  41. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 国連に対する感謝だと思つて反対意見を述べたのです。
  42. 千田正

    委員長千田正君) それは私の方に衆議院委員長からの申出は、この国連がこの問題を取上げて、ソ連代表でしたか、さつきの御報告の中にもアメリカの関係しておる方面にも日本の捕虜がいるのではないか、ベルギーにもいると、或いは方々にもいるというようないろんな議論が出たのです。それがまあ一番いいのは調査をしようじやないかと、お互いに調査してそうして確実におるならば、還えすものは還えす、死亡者があつたら氏名を発表するというような、一つの調査の線を作ろうということを決議するというのがこの決議案であるということを、とにもかくにもその数字の正確云々ということは別として、未帰還の人の生死不明な点を調査しようということを取上げてくれた国連決議に対して感謝しようというのが、衆議院の意向のようであつたのであります。特別委員会はそれで参議院でもその点について同調して欲しいという申入れがありましたので、一応皆さんにお諮りをお願いしたわけであります。その点につきましての御意見を伺つたのであります。
  43. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 本委員会は、第一国会以来引揚促進ということに努力して参つたのでございまして、連合国の司令部を通じて、これはもう何回となく引揚促進、それからその数の割合は別といたしましても、そのかたたちがどうなつておるかということについて、これはできるだけの努力をして参つたのであります。それでとにかく行くところまで行つて、この上は手がないというところ行つて、これが国連に提訴されたわけなんで、今兼岩委員の言われるように、三十七万、三十七万と言われますが、これをそつくりどうというわけではなくて、それの調査をしてもらうのであるからして、この調査はこの機関によつてして頂くより途がない、それで三十七万ということが非常にこれは問題になるのですが、併し調査の結果が、明らかに調査してもらえば結果が数字も明らかになつて来るでしようから、私どもとしてはとにかく数が合わないということが、三十七万、これは嚴然とした事実なんですから、これを調査してもらうということは非常に結構なことでもあるし、感謝しなければならないと私は思うのです。
  44. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 私も今おつしやつているように、引揚未帰還の三十七万というような空漠とした数を議論しておつても、実際どれだけ残つておるかということの実態を把握することが一番大切なことだと思うのです。そういうことを国連がやつてくれるということに対して、感謝をするという決議を別に拒否する理由はないと思いますので、その決議をすることに私は賛成をしたいと思います。
  45. 千田正

    委員長千田正君) 外に御意見ございませんか。……勿論これは各党、会派に皆さんがお帰りになつて、先ず党や或いは会派に御報告なさつて態度を決められても結構なことだと思いますので、本日はそれでお諮り願つたわけです。この次の会の劈頭にお答えを願つて、勿論案文もあるだろうと思いますし、衆議院の方でも衆議院の案文、当委員会としては又こちらとしてどういうような案文を作るかということを皆さんにお諮りしたいと思うのです。ただそれを決議するかしないか、決議案を出すか出さないかという御態度を決めるという意味において、お諮り願つたわけであります。
  46. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 委員長の今のお言葉でございますけれども、党に持ち帰つて今度の委員会に……
  47. 千田正

    委員長千田正君) 若しそういうことをしなければ、お答えができないという会派があるとするならばですよ。これは委員会決議ではありませんから、本会におけるところ決議に提出しようというのであります。衆議院と相談の上……
  48. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 これは本会においてすでに議決をして、その線によつてこの動きが出て、一つはですよ、必ずしもそうばかりではないが、アメリカ、イギリス、濠州、三国が提案にはなりましたが、少くとも委員会ではこの国会のそういう意思表示をして、その線に向つてこのようになつた、そうしてまあ一応今後の活動を待ちますが、いわゆる我々の国会の意思も大いに忖度されながら進んで来ておるのではないかと思うのです。従つてこの国連の動きに対して国会は更に感謝をするということは、当然な筋道ではないかと、それで私は賛成いたします。
  49. 千田正

    委員長千田正君) それでは委員会としてこれを提出するかしないかということを一応決めまして、あとは会派に帰つて委員会としてはこういうふうに、決定したと御賛同を得るならば得ると、或いは兼岩委員のように反対なら反対とはつきり御返事をして頂けば、それを議運にかけまして、あとは本会議に提出することになると思います。そういうことにして差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 森崎隆

    ○森崎隆君 この感謝決議の問題は、国連に対する感謝決議だけでございますか、それとも又その中には派遣されて行きました代表に対する感謝も入つておるのですか。
  51. 千田正

    委員長千田正君) 実はこの三人の方に先ほど甚だ僭越でございましたが、委員長から、この当委員会としては深甚なる敬意と感謝を申上げてはおりますが、私御苦労であるということには当然感謝しておりますけれども、この決議案をここに提出しようとするのは、国連がとつてくれたこの処置に対する感謝決議案を今お諮りしているのです。
  52. 森崎隆

    ○森崎隆君 重ねて、国連に対しまする場合言は、私たちは大賛成いたしたいと思います。これはいろいろ共産党の方も御意見はあろうと思いますが、とにかく未帰還者のかたに一人でも早く還つて頂きたいということが我々の使命であると思うのです。そういう意味で感謝せざるを得ないというのは当然我々の行き方ではないかと思います。ただもうこれにつきまして、両議院の間に摩擦を起すとか何とかいうことは、いろいろ観方もありましようし、又個人的な意味でその間にあつて事務的に斡旋をしておるものに、何か多少そういうような疑念を起すような落度もあつたかと思いますが、全体といたしましては、これはそういうように我我はとるべきだと思います。それから今委員長のお言葉でよくわかつたのでありますが、出られた三名の代表の方に対しましては、委員長のとられた措置で結構だと思います。ただ若しこういうようなことでわざわざ外国まで行かれまして盡力されたそういうかたがたに、特に国会感謝決議をしなければならん、又そういつたような例もありますれば別でございますけれども、そうでなければ委員長のとられた態度で結構です。心から私は感謝をいたしたい。ただ国会で正式に決議するということになりますれば、これは国連に対する、その点ははつきりしたいと思いまして……。
  53. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今日決定されるのではないから、これは国会決議の問題で重大ですから、私はもう一言だけ言わせて頂きます。今小酒井君その他からあつたのでありますけれども、卒然として形式的にものを考えればあなたの言われるようにもなるでしようけれども、僕は一、二これに対して国連の持つておる重大性を指摘したいのですが、一体そのようなことを小委員会でお決めになつたとして、日本引揚げないかたの相当多数の人が中国、北鮮関係にいるだろうと思うのですが、中国、北鮮関係の主権を承認していない国連が調査するというのは一体どうして調査するのだ、それが一つ。それからソヴイエト同盟としてはすでに国の立場から正確な報告をしておるものを一体もう一度、それを疑つてもう一遍調査し直して報告しろという、こういう態度日本のイニシヤチブにおいて出して、一体そういう国際的な常識から考えて、一強国の主義主張は第二といたしまして、一強国の国の面目をかけて世界報告しておるものを、お前の数字はあやしいから本当のことを言えというような、そういう決議をするということが第三。第三に一体日本政府は何をやつたか、私がここに持つておるのは「帰還促進だより」という在外同胞帰還促進全国協議会で発行しておられる機関誌なんですが、これにこういうことが書いてある。「特に我々を憤慨させたのは過日の国勢調査カードの記入欄に旅行者をかく欄はあつても在外同胞を書き入れるところはない。日本国家は海外同胞国民の中に入れてないのだ。政府の此の態度は完全に見殺しにしている正確なる証拠である云々」と、激越な調子でこの「帰還促進だより」は書いておられるが、一体日本政府は、ここに外務省の政務次官もおられるが、最近に僕は……。
  54. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 委員長にとどめて下さい。そういうことは、委員会では普通のことを発言すればいいので、僕は何も言う必要はない。
  55. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 いや、あるよ。君は外務政務次官としてこの問題を明らかにしてもらいたいということ、それから……。
  56. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 委員長発言を禁止して下さい。
  57. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何です禁止とは。君が外務政務次官として僕と問答したじやないですか、速記を調べたらいいじやないですか。
  58. 千田正

    委員長千田正君) それでは兼岩委員、外務政務次官として、政府当局として答弁を求めますか。それとも……。
  59. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それじや求めましよう。あとで求めましよう。よろしい、それじや内容を二つに分けましよう。第一は……、第二の外務政務次官に対する質問を僕は保留しましよう、あとでやりましよう。  それじやもう一つのほうです。数の不正確、よその国を疑う前に先ず自分の国で、内部で盡すべきを盡しておるかというと、先般国勢調査の際もまじめな調査をしていない。これについて私は前委員長、あなたもおられた、あなたも理事として僕の要求を承認しておられたが、何故にそういう簡単な国内の調査さえしないのかということ。原則的な立場と、それから実務的な立場と両方から政府は答弁しろということをはつきり……速記録を読んでみれば分りますが、前委員長のときにそういうことを政府に要求して、委員会にそういうことを報告してくれということを皆承認されておるけれども、今日までちつともない。つまり国勢調査というようなそういう機会さえも利用してこれを明らかにする誠意さえ自分の国ではやらないでおいて、よその国ばかり疑うということは、これは一体どういうことか。  もう一つの点は外務政務次官にお尋ねしましよう。一つ席に着いて下さい。
  60. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 委員長からそういうことをあとで……。
  61. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 前々からの関係で解決されていないところを尋ねたい。
  62. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 僕は今日は委員として来ておるので、委員に来るたびに外務政務次官に引つ張られるというのは委員として発言ができないから一つ皆さん御了解を願いたい。
  63. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういう意味ですか。
  64. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 兼岩委員からいろいろのお話で、政府当局として、政府委員としての申したいことはおありだと思います。私どももいつでも政府には言いたいことはありますけれども、話が混同しますから、この際は政府委員に対する質問は区切つて、今これだけの問題にして頂けばいいと思うのですが。
  65. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 紅露委員のおつしやるのは御尤もですが、私の言いたいのは、そういうことを国会を挙げてこういう重大な決議をされる以上は、以下三つの点をよくお考え下さい。第一は承認していない中共を一体どうやつて調査するつもりか。中共、北鮮そういう関係を除外してどうするつもりか。それから言い落しましたが、南方、東南アジア、その他の在外同胞をどういうように調査するつもりか、つまり一方だけ調査して他方調査し得ないところを残してもかまわんというのかというのが一点なんです。それから第二点としては、一強国が、一立派な国が、政治的なイデオロギーの好き嫌いは別として、ソ同盟の国を挙げてこういう数だということをちやんと正式な国家の発表機関を通して発表しているものを、お前の言うのはどうも疑はしいという言い方をして、一体それを以て十分そういう成績が挙がるというのか。それから第三に、仮にそれを十歩讓つてそういうことをはつきりとして言つた日本政府はそれだけのことを盡しているかというと、今言つたように最近の国勢調査の機会を利用して調査することすらサボつておるのみか、私がその原因を、どういうわけでしなかつたかということを明らかにしてくれというこの委員会で承認されたことさえも返答さえもしていない。それから今日は外務政務次官として御登壇は嫌だそうだから、僕はその次にしてもよろしい。だから無理に出さんでもいいが、ただ私の外務政務次官として繰返し討論したことは、それで政府に、これに対して明らかにしなかつたことは、三十七万という根拠が政党政派でなくて、科学的な常識を持つておるものなら納得できるだけの根拠がないじやないか、一つ僕を納得させんでもいいから、常識のあるはかの委員諸君を納得させるだけの広告をしてくれろということを再三要求しておるけれども、一度もそういうことをしておらない。要するに政府はそういうような国内的な調査において自分はルーズなことをやつて置いて、よその国へまあ御苦労さんでしたけれども、二人おいでになつて、遠路遥々と乏しい手当でおいでになつてバスに乗つたりいろいろして、タクシーに乗れずに御心配願つたのだけれども、そういうことは結構だと言つて感謝するのはいいけれども、以上述べた点をもう少し政党にお帰りになつて、そのことが世界の平和と、日本引揚者の促進と、戦争犠牲者の救済と、そうしてその将来の世界の平和、国際親善ということにどういうふりに役立てるかということをよほど愼重にお考えにならないと、国際問題だから愼重にやつて頂きたいということをもう一遍発言させて頂いたわけです。
  66. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 兼岩委員からいろいろ御意見があるのですが、私はこう思うのでございます。それは中共を認めてないとか、承認しでないとかいう問題は、これはもう政治的な問題だと思うのですね。それでこれは帰らない人があるということはもう繰返し申上げておるから、純然たる事実なんですから、この問題についてはもう政治というものよりも人道的に言つたら、どうしても中共を認めてないからそのままでというのじやなく、人道的な立場に立つて調査もして頂きたいし、これに協力もして頂きたいと私は思うのです。それから中共を認めてないのだからどうして調査するか、その効果が拳がるかという御意見ですけれども、これは中共、朝鮮と兼岩さんは限定されるからそんなふうにお思いになるのじやないかと思うのです。調査する地域は今さつきの報告がありましたように、ほかのまだ幾つかの外国にも関連があるので調べて頂かなければならないので、特に朝鮮、中共と限定されるから妙に片寄るのではないでしようか。  それから三十七万という数字を大変固執されるのですが、私どもはその調査によつて明らかになると思うし、それから政府に対して怠慢といいますか、不足を言いたいという気持は私も持つております。もう少し正確に御報告も頂きたいという、これはもう兼岩委員と御一緒に後の機会に政府にはお尋ねしたいと思いますけれども、とにかく日本政府としても通信があつたかたもあり、それから引揚げたかたの舞鶴その他における情報によつても、相当数の向うに健在であるであろうと思われる数が挙つておるのですから、全部それが消息不明だというような状態ではないのですから、この三十七万にはそうこだわる必要はないと思うのですね。調査の結果は自然とこれがはつきりして来るでしようから……。ですからこれはそういうふうに固くおなりにならないで、そうしてこれは今は感謝の問題が出ているのですが、これはいずれ党にお話になるかたもありまして、それから決定するでしようから、三十七万ということはやはりそうこだわらないほうがいいんじやないかと私は思うのですが……。
  67. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 紅露委員の人道的御発言はよく了解します。併し三十七万が問題の主体なんです。嘘だつた一つ中山委員に解説願つてもよいと思います。そうして二十七万の内容たるや、政府はシベリア二十三万二千余、樺太七万九千、満洲六万というので、調査するといつたら、調査しなければならないのはシベリアと樺太と満洲でしよう。だから今そういうような決議アメリカでされた、その小委員会決議は有難い、大変感謝する、人道的にやつてくれといつて、よろしいということでやるということになると、シベリアと樺太と満洲と調べることになる。シベリアを調べるにはソ同盟の面に泥を投げかけるという恰好になる、樺太については……満洲は承認もしていない、満洲をどうやつて一体調べるか。中国の政府はたしか台湾におるはずでしよう。それは台湾に調査を命じてみても、行つて調べるためには大陸に上陸して政権を取直してやらんと調査ができない。そういうような非科学的な、つまり常識から言つて根拠のないそういうことを参議院が本会議で御決議をなさつて、そうして物笑いになるだけなら結構だけれども世界の二大対立に徒らに波を起させる、事実無根である上に波を起させるということは軽々しく、つまりはつきり言つて小酒井先生のごときが賛成されるということは、賛成されたのではないと思うのですが、これはよほどあなたのほうの党是としても私は冷静にもう一遍、今日は決定するのじやないそうですから、もう一度御再考願つて然るべき問題ではないかと私はこういうふうに考えます。
  68. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 いろいろ御意見が出ておるようでございますが、ここは国際連合委員会ではないわけで、従つてこれの調査の方法とかそういうものは我々がここでかれこれ論議しても何もならんことです。これは国際連合行つて一つ適当に発言するなり、意思表示をすべきものである。ここはその行動に対してどういう態度をとるか、そういう問題でございますので、おのずから論議はそれに限定して御審議願うことが結構だと思います。
  69. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何に限定するのですか、もう一遍聞かして頂きましよう。わからないからもう一遍聞きますけれども、あなたの言われることはちつともわからないのです。もう一遍私のわかるように一つ……何に限定するのですか。
  70. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 委員長のお尋ねがありましたら、お答えいたします。
  71. 千田正

    委員長千田正君) 今の……。
  72. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は、自分の問いは逸脱関していないと思うのです。問題の本質を突いておると思うのですが、先生は今国運に行つてやれと言われるが、私は日本の参議院が本会議で決定しようとするには、各会派でよく問題を愼重にお取扱になつたほうがよいというその根拠を申上げておるので、私は国連でする議論じやないと思うのですけれども、草葉君は国連だと言うなら、どういう点が私の議論が逸脱しておるのか、御指摘願いたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 これは参議院で昨年五月の本会議決議をいたしております。すでに国連にこれを訴えるという決議をして、そうしてそれによつて一つの動きで、且つ又先ほど申上げましたようにアメリカ、イギリス、オーストラリアがこれを取上げてこのような決議がなされた。これに対して感謝をするかしないかの問題です。
  74. 千田正

    委員長千田正君) 委員長が申上げます。この問題は結論としていろいろな立場の観点から申されておると思いますが、要は現実に引揚げて来ておらない人が多数ある。この真相を何とか一日も早くつかみたいというのは、およそ留守家族感情でもあり、又国民の要望でもあるのでありまして、この点においては先ほど兼岩委員から国内の態勢がなつておらんという点も、これは当委員会はしばしば政府に対して鞭撻したところでありまして、同時に我々は世界各国に訴える、そうして人道的立場において一日も早く我が同胞の安否を知りたい、或いは死亡しておるものだとするならば、その氏名も知りたいというのは、これは当然国民としての感情であると思いますので、外に向つて国連に向い、或いは全世界に向つて正義と愛と人道の立場に立つて同情を願い、国内においてはそれに対処するだけの万般のいわゆる態勢を整えなければならないのは当然のことでありますので、当委員会としましては真劍に、各党の御意見もあるでしようが、そういう立場において国民の期待を裏切らないような方向に進んで行きたいと思うのであります。この点はおのおのの立場において観点が違うと思いますが、委員長としてはそういう立場において今後の運営もして行きたいと思いますので、御了承願いたいと思います。    〔「了承」と呼ぶ者あり〕
  75. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 中山マサ議員にちよつとお尋ねいたしますが、三十七万問題が調査の中心であり、且つその内容は政府外務省の監理局の、今私が申上げましたシベリヤ二十三万二千余、樺太七万九千、満洲六万、この数字に関する調査ではございませんか。
  76. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) とにかく三十七万が全部生きておるか、死んでおるかはこれは知りません。一番いい方法はソ連が死んだ人の数を記録があるならば発表してもらうのが一番いいのですが、それがわからないでしよう、発表しないのですから。一人も死んでおる人をタスでは発表していないんです。そういうことですから、向うさまにもそういうふうにまだ見落しがあるのですから、この三人委員会で政治力のない人が最も第三者の立場でやつてくれて、それがどうなるか、どれだけ死んで、どれだけ生きておるかということを調べてもらいたいというのが留守家族の願いなんです。それをいわゆる国民の願いとしてこういう動きになつたのですから、そこは外務省が、その記録は戦争が終つたときに生きておつた人間の今名前をちやんと持つているはずなんです。
  77. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もうちよつと正確に御答弁願いたいと思いますが、私は今正確に材料を持つてお尋ねしているのですから。併しこの日本政府外務省の発表の三十七万という数字は、シベリア二十三万二千、樺太七万九千、満洲六万ということの根拠において扱つておりますが、あなたの国連へ行かれた問題もこの数字を以てなさつたでしよう。
  78. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) その数の点は外務省の……。あなたはそうおつしやつていましよう。ところ国連委員会においてアルチエニヤン氏はこれはいない、よその国にいると言うから、よその国はそれじや調べて下さい。開放するから調べてくれ、若しいるなら結構だと言つてくれているのだから、この態度を……。そこでそのよその国も一緒にやつてもらいたいというのが私の願いです。必ずしもソヴイエトだけにいないのだつたら、いるところから連れて帰りさえしたらいいのですから。あなたもずつと留守家族にお会いになつたから、その気持はおわかり願えるでしよう。死んだならば死んだでいい、死んだということを知らしてくれといつて、若い妻が言つて来るのですから、だから私らには死んだ数がわからないのですから、終戦当時はこれだけおつたということがはつきりしておるということを日本政府言つておるのですから、これが皆生きておるとは言つていない。だから死んでおるかも知れない。それをタス通信は一人の死人も発表してない、死んだ数について向うから言つてくれれば一番いいのですけれども……
  79. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今あなたのはシベリアの問題だけで、樺太とか満洲とかの問題は……。
  80. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 樺太でも満洲でも世界中どこでもいいのです。出しでくれれば、私は必ずしもソ連をどうしようというような気持はありません。この問題は完全に超党派的に考えて頂きたい。日本人としてこれを考えるというところに根本的の立場がなければならんです。あなたのように……。
  81. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 超党派的結構ですが……。
  82. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) 私たちは死んだ人の数を言つて貰いたいのです。あなたが日本政府をいじめますように、向うさまにもなぜ死人を発表せんかと、こう言つて頂きたいのです。
  83. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私が数字を挙げてこう言つておるのに、あなたは抽象的に、感情的にぼかされておるが……
  84. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) あなたは政府委員をどなり付けられるが、私はここの委員じやないので、こういうことは言いたくないのですが、私ども日本人として忍びないのです。あなたも留守家族人たちに会つて頂けばわかりますが……。
  85. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 感情に走らないで理性的に話しましよう。
  86. 中山マサ

    衆議院議員中山マサ君) それは女はどうしても感情的になるのが……
  87. 千田正

    委員長千田正君) それでは順次整理して行きましよう。兼岩委員お話は、いわゆる日本政府国連に提訴した数の三十七万というのは、殆んど地域的に言えばソ連領内若しくはソ連と同様に動いておる中共地区内だけにおるものとして国連に提訴しておられるが、この点は誠にけしからん……
  88. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 けしからんというのでなく、事実かどうかというのです。
  89. 千田正

    委員長千田正君) そうですか、事実かどうかというのですね。それから中山先生のは、三十七万は政府の発表のまま間違ないと信じて国連に坂上げた。併し国連の取上げておるのも、日本政府の言うておることも、正しいか正しくないかわからない。ソ連のタスが正しいか正しくないかもわからない。その他ベルギー或いはその他の国におるかも知れんというようないろいろな問題があつて議論が沸騰して来るから、この委員会を設けて一応調査して、そしてそれから結論を出すというのが取上げた理由なんで、それを今御報告頂いておるわけです。その方から整理して行きましよう。
  90. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 数の問題につきましては、どうも責任者政府に対して後日お尋ねすることにして、議事を進行することにして頂きたいと思います。
  91. 千田正

    委員長千田正君) それでは先ほどお諮り申上げました国連総会に対する決議の件につきましては、今日ここで各会派の御態度を発表して頂きますか、委員会として一応イエスかノーか決めて、そうしてあとは本会議に提出するかしないかは各会派へ帰つて委員会でこういう決定をしたが、これを本会議にかけるかどうかということを会派へお帰りになつてお諮りになつて運営委員会の方へ廻しますか。
  92. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は留保を望みます。愼重に相談してみたいと思います。
  93. 千田正

    委員長千田正君) ほかに御意見のある方は……。
  94. 安井謙

    ○安井謙君 これは先ほどからいろいろ議論が出ておるようですが、本日決定して、でき得れば本会議に提出することも一応ここの委員会で決定して頂きたい。
  95. 千田正

    委員長千田正君) それではお諮りいたします。  この本委員会としては、これを取上げて本会議に提出してもらいたい。本委員会としてはそれを決議案として提出することに決定するということに御賛成の方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  96. 千田正

    委員長千田正君) それでは兼岩委員のほうの共産党においては、十分慎重に審議するということでありますが、多数を以ちまして、この決議案を提出することを運営委員会その他に要望することを決議いたします。
  97. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 それと同時に、提案には委員全部が提案者になるという工合に重々しくやつて頂いたらと思いますか……。
  98. 千田正

    委員長千田正君) 只今杉山委員の御提案につきまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 千田正

    委員長千田正君) 御異議ないものと認めます。さように取計らいたいと思います。  なお、案文の点につきましては、衆議院の方のとでき得れば同じような案文で行きたいと思いますので、一応衆議院委員長とも協議の上でき上り次第お諮りいたしまして、又御訂正のあるものにつきましては皆さんの御意見を参酌しまして、決定したいと思いますから、さよう御了承願いたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 千田正

    委員長千田正君) では、そういうことにいたします。  これで本日の委員会を閉じたいと思います。    午後三時十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            大谷 瑩潤君            森崎  隆君            紅露 みつ君    委員            草葉 隆圓君            安井  謙君            小酒井義男君            曾祢  益君            成瀬 幡治君            杉山 昌作君            木内キヤウ君            兼岩 傳一君   衆議院議員    中山 マサ君