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松原一彦君 この法案の画期的な收獲は、医師は適正妥当な技術に対する診療費を取り、調剤は原則として薬剤師の手にゆだねるということであります。但し医師の診療に対しましては必ず処方箋を出すということが原則にな
つたのであります。この処方箋を出すということが、今日までは患者の要求によ
つてのみ出すことにな
つてお
つたのでありますが、今回は診療に伴な
つて処方箋は投薬の必要がある場合には必ず出すということにな
つたのでありまして、この点は私は非常に大きな牧獲だと思うのであります。これは一面において医師の権益を擁護するものであり、同時に義務を規定するものであります。ただそこで例外といたしまして、診療者に処方箋を交付するということが支障のある場合には極めて稀れな例外を省令において定め
ようというのであります。これは極めて局限された例外でなくてはなりません。
只今谷口
委員から八カ條の例外を例示せられて参考にせられたいということでありましたが、これは参考と思います。私は
専門家でありませんからしてよくわかりませんけれ
どもが、この例外をルーズにいたしますというと、この処方箋を出すということは無意味にな
つてしまいます。
従つてこの例外を規定せられる場合におきましては、
政府におきましても
審議会を設けまして御決定になるのでありますが、その省令において決定せられる場合におきましては、どうか第一條の主要目的が断じて阻害されない
ように、正しく行われます
ように十分御念をお入れ下さいまして、私は
只今の八カ條は
一つの引例としておとり頂きましても、厳重にこの点につきましての規定を設け下さる
ように希望いたすものであります。又一面調剤は薬剤師のみが行い得る原則はこれは従来からもあ
つたのでありますが、今回いよいよはつきりいたしたのであります。その例外といたしましては、医師が自己の処方箋によ
つて調剤することが例外のうちの制限せられた例外として認められております。この点につきましては薬剤師には例外はないのであります。薬剤師の調剤には、薬剤師そのものには例外が設けられておりません。
従つて薬剤師の調剤の例外として医師が自己の処方箋によ
つて調剤することができると規定したのでございますから、医師以外のものの調剤という
ような行為に対しましては、私は厳重に取締
つて頂きたい、そうでなければ片手落であります。又一面私
どもがここに医師の調剤権とも申すべき医師の調剤能力を各種の証人によ
つて確かめまして、医師といえ
ども調剤能力あるものと一応我々は心得たのであります。併しながら薬剤師の調剤は最も専門的なよりよきものであることは当然でございますので、よりよいものへの移行はこの医療の進展、
文化の進むに
従つて当然行われるものと思います。さ
ような意味におきまして、私はこの現在の
日本の
文化の
程度及び
国民の信頼感等を考慮いたしまして、たとえ医師の調剤が薬剤師の調剤に比べては或いは低いものであろうとも、
国民多年の習慣はその信頼度においてなお医師に多くのものを持
つておると信じますが故に、又交通機関その他の不完全な今日におきましては、重症患者等を背中に負
つて参ります場合もございますので、ここに
一つの新らしい観点から、患者即ち
国民の選択、信頼度に応ずる選択を許して、
国民の、即ち患者の求める方向を医師にし
ようとも薬剤師にし
ようともよろしいという條件が容れられたのでございます。これは今後
国民の
教育が進み、自覚が高まるに連れまして、その信頼感の高いほうに移行いたして行くのでございますから、医師の方面に向
つて調剤を求めるものもございまし
よう。或いは最も信頼感が高まりますれば、薬剤師のほうへも移行いたすことと思います。これは私
どもは
国民そのものの病気をした場合における選択権、信頼感によるところの選択の自由を認めることが現段階に応ずるものであると信じたからでございます。か
ような意味におきまして、薬剤師の側におきましても、どうか薬剤師以外の者に調剤せしめるとか、無診調剤とか、或いは恐らく今後は初診料等の
関係から医師の門を叩くことが億劫になる者も生ずるかと思うのであります。さ
ようなことが医家の門を叩くよりも先ず薬剤師の所に行
つて家庭薬を求め、或いは注射薬を求める、素人療治を行う者が増加するという
ようなことがあ
つてはならないのであ
つて、それが嵩じますというと、伝染病の早期発見もできませんのみならず、医家の門を叩くことが極めて容易であり、自然に先ず医者にかかるということを習慣付ける
ように、又今後の病人が先ず医者に走るというこの考え方を減退せしめないだけの用意が非常に肝腎だと思うのであります。でありまするからして、薬剤師の側におきましても、どうかこの
趣旨をよく呑み込まれて、無診投薬とか或いは店頭において注射等が濫用せられない
ように、厚生省においても厳にお取締を願いたいと思うのであります。か
ような意味におきまして、申すまでもございませんが、別に省令を設けらるる際における
審議機関等を入念にお選び下さいまして、双方共に不公平のない
ようにいたしたいと思うものでございます。この法案を
審議するに当りまして、私の最も憂えますことは、さつき常岡
委員が提案の
理由として述べられました
ように、医療行為は医師と薬剤師との協力によ
つてのみ完成すると思います。これが対立、抗争という
ような形をとることは極めて
国民の憂いとするところであるのであります。願わくは医師の側においても十二分にこの法案成立の上に誠意を示され、薬剤師の側においてもこれに協力を與えてこの法案を一応完成し、それが同時に
国民、即ち患者としての
国民の満足すべきものである
ようにいたしたいという念願を持
つて実は
審議して参
つたつもりでおるのであります。どうかこの協力の下にこの法案が完全に施行せられまする
ように、
当局においても十二分の御用意をお願い申上げたい。社会に
法律のみが先行することは許されません。なお
あと七年もあるのでありますから、この間に適正妥当な診療報酬をお定めになりまして、そうして医師の権益を擁護し、同時に薬剤師の側における無診投薬等のことのない
ように十二分に御監督下さいました上で、
国民の納得の行きます新らしい医療
制度の
効果ある実践が行われまする
ように切望しまして、私はこの修正案に賛成いたすものであります。