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1951-05-24 第10回国会 参議院 厚生委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十四日(木曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○医師法歯科医師法及び薬事法の一  部を改正する法律案内閣提出)  (右法案に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより厚生委員会を開会いたします。  本日は医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案審議のため証人といたしまして、法政大学総長大内兵衞先生清水幾太郎先生、島津忠承先生平林たい子先生末高信先生田子一民先生、以上六人のかたがたに御出席を願つております。本日は特に医薬分業我が国社会制度の上に大きな影響のありまする問題といたしまして、この方面の一流のかたがた証人として御出席願つた次第でございます。これより証人宣誓を求めることにいたします。証人として御注意申上げることは、およそ御承知のことと存じまするから省略いたします。証人宣誓は法規の定むるところでございまするから、これから順次証人のかたに宣誓書の御朗読を願うことにいたします。総員起立を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 大内兵衞    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 平林たい子    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 清水幾太郎    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 島津 忠承    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 末高  信    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 田子 一民
  3. 田子一民

    証人田子一民君) 委員長から田子かずたみとおつしやいましたが、田子いちみんでございます。
  4. 山下義信

    委員長山下義信君) 御着席を願います。それでは御着席の順に医薬分業の是非につきましての御証言を承わりたいと存じます。大体午前中に皆様がたの御証言を頂きまして、委員のほうから質疑のありますかたの質疑につきまして、なお御答弁、御証言を頂きまして、午前中に終了いたしたいと存じておりますので、御了承を願います。  なお大内証人には御多用で、お急ぎのようでございますので、大内証人に対しまする御証言につきましては、特に御証言の済み次第質疑をいたしまして、それが終了いたしまして御退席願うことになつておりますから御了承を願います。それでは大内証人から御証言をお願いいたします。
  5. 大内兵衞

    証人大内兵衞君) 医薬分業に関する今回の法案につきまして、山下委員長から何か当委員会において意見を述べよということでありますが、私不用意でありまして、本法案につきましては何ら結論的な意見を持つておりません。私は先に社会保障審議会の会長といたしまして、この法案に関係する厚生省の委員会委員に指定されましたが、今申上げたような理由でそれをお断わりいたしました。併しながら私は一個の社会科学をやつておる人間といたしまして、又一個の国民といたしまして、この問題に関心を持たないわけではありません。又一定の基本的な意見を持たないではありません。そういう意味におきまして、二、三の点についてこれが我々国民にとつて如何に重大な問題であるか、又どういうふうにこれを国民は実際に感ずるかということを述べまして、諸君の御審議の御参考にして頂けばと存じます。  第一にこの問題について注意すべきことは、医術にしましても、薬術、或いは薬学医学とも日本におきましては日本文明の最初の光りであつたということ、そうしてそれが長く国民の仰いで、尊んだ術であるということ、そういう職業であるということを御記憶願いたいと存じます。これは徳川時代から今日に至るまで医学医術薬学薬術発達歴史をみればわかることでありますが、特に田舎におきまして、お医者さんがどんな高い社会的地位を占めておるかということをお考えになればわかると思います。このことは非常に重大な問題、即ち医術医者社会的に非常な重大な責任を持つておるということであります。  第二に、併しながら次のことが問題になると思います。今日の日本医学及び医術薬学及び薬術、何といいますか薬局に関する諸技術が世界的に非常に遅れておるということであります。これはいろいろ実証するまでもないことでありますが、我々といたしまして、社会科学者として感ずることはいわゆる社会保障制度というものが今日日本で十分確立していないということと関連しておると思います。そのためにつまり一方においては技術的に非常に遅れた医術薬術を持つており、そうしてそれらが社会保障という制度によつて統一し、国民のためにされておらないためにどういうことが生じまするかというと、日本においては貧乏な国民部分農民、プロレタリアそういうものは日本田舎においては世界のほかの人々、他の人々が受けている恩恵を少しも受けていない、受けることが非常に困難であるという問題になるわけであります。  第三には、そういう事情がどうしてできて来たかという問題、何に関連するかと申しまとこれはいろいろのことがありますが、直接には戰争に関連するわけであります。この戰争日本においては直接には多数の不具、廃疾者、遺児、未亡人というものを生ぜしめましたが、併しそういう直接の問題は医術とは余り関係のない間接の問題によつて非常に重大な問題となつております。間接の問題と申しますのは、申すまでもなくインフレーシヨンでありますし、インフレーシヨンによる貧乏の問題であります。つまり日本ほど而も日本の今日ほど過去と比較して、医療問題ほど痛切な問題はないのでありまして、その医療問題なるものが貧乏人の問題、国民下層階級の問題、田舎農民の問題として特に考えられなければならんという状態であります。  第四に私は注意を促したいと思うのは、今の理由によりまして戰後においては日本医療機関薬剤機関というものがすべて危機に瀕しておるということであります。これは昔のお医者様というものがあらゆる職業のうちで一番有利な職業であつたということ、相当の資本を投じ、学資金を投じてもお医者になつておるということ、この有利な職業であるということと比較いたしまして、今日はその反対でありまして、これには今申上げましたようなこの一般的な社会的情勢もありますけれども政府医療並びに薬事制度に対する政策が誤つてつたということでもあります。併しそれらと相待ちまして、こういう事実が非常に現われておるということは国民として非常に残念なことであります。  一つは非常に悪い医者が、インチキ医者が殖えておるということ、もう一つはそういう悪い薬局並びに非常に不正な薬剤師、又は特にこの少しもきかない薬を国民に騙して売るというようなことが非常に横行しておるということは日本の恥ずべき社会状態であると共に、国家医療に対しまして十分厳格な制度をとつて今日までいなかつたということは、これも又国家として恥ずべきことではないか、こう考えるのであります。すべてこれらのことは非常に複雑な問題でございますから、どこを責め、誰をどうしたらいいかということについて一朝一夕に私は抗議をするようなことを申述べるわけには行きませんが、この今申上げた事実はこれは国民として忘れられないことであると思います。  ところが、そこにアメリカ軍の進駐以来一つの事変が起りました。それは申すまでもなく彼らの持つて来た医療行政に対する卓抜なる知識と、そうして又彼らが持つて来た新らしい薬と、そうしてそれに関する諸制度というものが日本にどんどん入つて来たということであります。これが私は日本に新らしい医学薬学医術薬術に関する問題を起しておるとそう認識するものであります。それらのことにつきまして、個々の事実は非常にたくさんありますがそれらを通じてこれを申しますというと、新らしい国家の厚生行政なるものが非常に拡大されて来た。そこで一方においては有力なる医師、有力なる医師団体、同時に有力なる医師とそういう国家行政とが非常に密接に結び付いて来た。同時に薬療につきましてもそうでありまして、大きな製薬会社が非常に堂々たる姿を持つて来た。そこでその平面におきましてはいろいろな現象が起つて来た。つまり非常に貧弱にして非常に役に立たない薬をそういういい薬と同じかのごとく売出す、或いは又非常につまらない医療を非常に有益な医療の名において実行するというようなことがますます盛んに行われて来ました。これがつまり先ほど申しました医術薬学その他の実際におけるインチキ性の横行となるわけであります。これが国民にとつては最も困る問題であります。  以上五つ述べましたが、更に医療のようなことが特に日本において問題になるのは何故かというと、これも先ほど一応述べましたような日本国民の生活が非常に貧弱であるということ、国民が昔からお医者様に対して特殊な、不当と言われるまで高い尊敬を払つておるということ、従つて国民がそれらに騙されやすいということ、その騙されるのにはそれぞれの非常に大きな根拠があるということにあると思います。そこでこの事実は社会現象的には、国民保險とか、或いは健康保險とかいういわゆる社会保險制度の盛んなる利用となつて現われておるのであります。それらが單に利用されておるならば大変結構でありますが、その利用の結果が国民保險及び健康保險、その他いわゆる社会保險なるものそれ自身が非常な危殆に瀕しておるのであります。で、これがどんなに危殆に瀕しておるか、今やすべてのこれらの機関が殆んど崩壊しつつあるという状況にあるということは、私ども社会保障制度審議会委員として十分によく知つておるところであり、皆さんもよく御承知通りであります。即ち日本の問題は世界の問題のうちでも貧と病の問題が特に日本において鋭く大きく現われておる。それは日本歴史医者歴史薬学歴史とに対しては最も恥ずべき状態にあるということを我々は考えなくちやならんと思います。それならばどうしたならばいいのかという問題は、これは割合に要約すれば簡單になると思います。それはつまり我々が新たに社会的な問題の解決をしなければならん、つまり社会保障制度を十分完全に実行しなければならんということになると思います。そこで私どもは昨年の十月十六日社会保障制度に関する勧告というものを提出してあるわけでありますが、問題は政府はそれらに対してどういう態度をとつておるか、又参議院なり衆議院のそれぞれの諸公はどういう熱意を示しておるかということであります。併し今それらについて何ら申上げることはありませんが、私自身政府態度そのものについては十分な賛意を表することができないのであります。それらについてのほうがつまりこの私の今問題とする医薬分業の問題と決して無関係でないということを私は御注意申上げたいと思うのであります。つまりそういう条件の下において政府が取上ぐべき問題、又議会が坂取上ぐべき問題は、決して医薬分業というような技術的な、非常に困難であつて而社会的な諸条件にいろいろかかつておるという問題ではなくして、むしろ根本的にその社会条件を改革することによつて医薬分業の問題をもう少し合理的に進める方向に進むべきではないかというのが私の全体的な意見であります。つまり日本医薬制度の現在の状況は決してなま易しい方法では解決できないというのであります。つまり国家並びに地方公共団体がもう少し医薬両方に対する責任を自己の責任として取上げることが必要である。つまり公的な大きな病院をもう少し拡充すること、そうすればおのずから医薬分業ができることになるのであります。又もう少し田舎にも都会にも立派な薬局を作ること、小さな薬局をぶつ潰してそうして立派な大きな薬局だけにして、そこには立派な薬が整つておるということ、その薬はインチキな薬ではなくして、それは国家のもう少ししつかりした保証と国家の検査とを経た薬だけが並んでおつて、そうしてこのインチキな薬、悪い薬は絶対に売られないような制度を確立するということが必要である、私はそういうふうに考えるのであります。然るに政府がどういうわけでありましようか、我が国医薬分業というような、昔からあつて而も到底なかなか解決できないような問題だけを取上げて議論に付するということに私は多少の疑問を持つわけであります。申すまでもなくこの医薬分業それ自身につきましては、そういう意味において全体の位置が問題になると思いますが、それならば医薬分業自身は問題とならんかと言いますと、それはやつぱり問題となると思います。併し前に述べましたような理由によりまして、これは非常に技術的なむずかしい問題を持つておるのであります。原理的に申しますというと極めて簡單なことであると思います。と申しますのは、医薬分業すべきかすべからざるかという議論を立てますならば、これはもう世界制度として医薬必ず分業すべきものであると思います。ドイツにおきましては昔からそうでありますし、アメリカにおきましても大部分はそうであると傳えられておりますが、その詳細は知りませんが、いずれにいたしましても今日の学問の分化から申しまして、薬学医学とが分れているということを前提といたしますというと、やはり職業といたしましても、原則としてはそれを前提とすべきものであるということは疑いないと思います。従来これは日本において医薬が一緒にやられたということは、これは日本文明特殊性でありまして、これは止むを得なかつたことと思いますのですが、それが理想でないことは問題ありません。  これらの点につきまして、世の中にこういう議論があると思います。今まで医薬分業にしてなかつたのだから医薬分業にすることは営業の自由を害するものであるという議論があります。これはちよつとおかしな議論で問題にならんと思います。つまり営業の自由と今日申しますのは、如何なる場合でありましても、特に許可認可を要するような営業におきましてはその許可条件認可条件というようなことを法律で付けることについては、何ら差支えがないのでありまして、若しそのことができないならば、弁護士とかその他すべてのものが一定条件を備えるということは不可能になります。日本ではそういう意味においては、医術につきましても薬学についても、今日よりは遥かに嚴重なる監督を必要とするということが私の議論の中心であります。日本においては医は仁術なりと申します。誠に美しい言葉でありますし、又そうであることを希望する次第でありますが、事実は九層倍以上の水を売つて仁術を施しているという人もないとは限らない。つまりそういう人に対しては明らかに法律を以てこれを征服する心掛けがなければならんと思います。併し他方において、先ほど申上げましたように日本薬局なるものが非常に不完全であつて、あそこに行つても大抵ろくな薬がないという実情は私ども市民として経験しているところであります。小さな薬局が町の角々に幾つ幾つも軒を並べているが、どれもこれも役に立たない。その中には余り立派な薬剤師がいないというような状況は真に憂うべきであります。すべてこれらのことを合理化するということが医療行政の目下の任務であります。私は今の医薬分業という法律がその目的に直接適つているかどうかということにつきましては、何らの具体的な知識を持つておりませんから、具体的にお答えをするだけの知識はありませんのですが、併し問題はそういうふうに問題を立てるべきではないというのが私の議論でありまして、大きな社会保障制度の中において医薬分業はどの程度にすべきか、そして社会保障制度によつて医薬分業のされていない条件を今後如何に克服すべきかという問題を提起すべきであるとそう考えるものであります。私はこれを以て終ります。
  6. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございました。只今の大内証人に対する御質疑のありますかたはどうぞ御質疑を願います。  別に御質疑はございませんか。それでは大内博士証言は終了いたしました。誠に有難うございました。  次には平林たい子先生の御証言をお願いいたします。
  7. 平林たい子

    証人平林たい子君) 私は将来医薬分業すべきものだという考えを持つております。併しこの法案には反対であります。この法案が強行する社会的な条件はまだ備つていないと思うからでございます。そこでお医者様や薬のお世話になる家庭の主婦として、この案にどういうふうに困るところがあろかということを具体的に申上げます。  私は現在の条件の下ではお医者様と薬剤師とどちらを信用するかといえば、御医者様のほうを信用いたします。なぜと申しますのに、お医者様は自分信用において薬を盛るわけでございまして、自分の薬が悪ければ自分の評判が悪くなつてしまいます。ところが若しお医者さんが処方箋を書きまして薬剤師がそれを調剤するということになりますと、薬剤師は他人の作つた処方箋によつて薬を盛るということだけでございます。そこに自分信用ということは考えないで済むのでございます。この二つ事情考えてみますと、明らかにお医者さんに薬を盛つてもらつたほうがいいと思うのでございます。  第二に、医薬分業になりますと、お医者さんは大変貧乏になると思うのでございます。今でも私の近所のお医者さんは大変貧乏でございまして、英語の内職をしております。この上貧乏になれば医学の勉強はできないと思うのでございます。新らしい医薬の療法が大変低下いたすと思うのでございます。  第三には、患者の負担が増加するということであろうと思います。これは医師会のかたがいろいろ言つておりますが、勿論お医者さんの診断書が高くなる。それから薬剤師調剤料、いろいろなものが加わるというほかに、お医者さんが唯一の残された途として注射をする。現在でも我々病人注射に非常に悩まされております。ちよつと咳が出るとお医者さんはすぐ注射をする。病人はそれをお医者さんに断る権利はないのでありまして、それに非常に悩まされております。これが将来唯一の残されておる途として注射を盛んにするということになれば、実に私どもは困るわけでございます。それから一番この法案で私がいやになつたと思いましたことは、お医者さんが調剤をすると禁錮か罰金になる点でございます。犯罪人が罰せられるのは当然でございますが、犯罪でもないものがこんな重い罰をせられるということは民主主義に合致しないと私は思います。まして調剤を禁止しなければならぬお医者さんの処方箋によつて薬を盛るということはナンセンスであります。  それにこの法律昭和三十三年に実施されるということは私にはどういう意味だかわかりません。七年も先のことを今からきめて置かなければならないという理由は私にはわからないのでございます。  それに地方農村には薬剤師とか薬局というものは少いのでございまして、昭和三十三年になりましても、この状態は恐らく余り変らないだろうと思うのでございます。明治維新から八十何年経つておりますけれども地方にはまだ無医村がたくさんあるのでございます。都会ばかりにこういう案を実行するという意味は私にはわからないのでございます。若しこれが医学進歩のためであるというならば、農村医学進歩しなくてもいいのか。それから患者のためだというなら、農村患者にはこういう恩典を均霑させなくてもいいのかと私は逆に伺いたいのでございます。これだけでございます。
  8. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございます。あとで一括して御質疑をさせて頂きたいと思いますので、お待ち願いたいと思います。  次には清水幾太郎先生の御意見を伺いたいと思います。
  9. 清水幾太郎

    証人清水幾太郎君) 私は元来非常に病弱でありまして、長年お医者さんや薬剤師かたがたの御厄介になつておるものでございます。本日は社会学者としてでなく、むしろ診療或いは薬局利用消費者という立場から、この法律案について二、三の意見を申述べたいと思います。こういう立場から考えました場合に、この法律案に盛られております理想は誠に立派なものでございまするが、併し現在の日本実情に照して考えました場合、よく申す平地に乱を起すような感じがしないわけでもないのでございます。それよりもむしろ現在の任意分業というのでございましようか、現在の制度のほうが好都合ではないか、こういうふうな感じがいたします。なお以下三つにわけまして私の意見を申述べたいと存じます。  第一番目に、私はこの法律案の基礎にある理想的な問題を考えたいと思います。第二番目にこの法律が実現せられました場合に、我々消費者或いは利用者立場から見て当然起ると予想されますところの不利益乃至不便について申上げたいと存じます。第三番目に簡單ながら結論を申添えたいと存じます。  第一番目に私の理解いたしますところでは、この法律案の狙いというものは、近代文明の特徴であります專門化或いは分化ということであります。專門化分化原理医療方面にも徹底させまして、各專門部門進歩を促進させるというところにあろうかと存じます。そういう分化、專門の原理に最近ではいろいろ疑惑も起り、又問題も生じておりますが、一応は先ず近代文明原理を根本の理想として考えることができようかと存じます。併しこの問題を具体的に考えました場合、次の二つの点が当然考えられなければならないと存じます。その第一は日本社会一般医療方面以外におきましても、分化ドイツ語でデイフエレンチールングというものがひどく遅れておりますことは御案内通りであります。又分化がこういう意味分化、或いは專門化社会の各方面に進んでおりますアメリカでも聞くところによりますと、一般強制分業というようなものが行われておらないということでございます。分化というものがひどく立遅れております日本の現実におきまして、医療方面にだけ理想的な分化が押し進められるということはおのずから各方面に多くのアンバランスを招くことになるのではないかということ、これが第一の点であります。  第二の点といたしまして、分化して行く、分れて行く、その分れ目に立つておりまするのが、私のような患者、病弱のものであろうかと存じます。或いは一般大衆というものがその分れる分れ目に立つておるのではないかと思います。この患者というものは御承知のように非常に特別な意味で弱い人間でございます。お医者さんを訪れ又薬屋さんの店頭に現われます人間は、煙草を買つた化粧品を買つたりする人間とは聊か趣を異にしておることは御承知通りであります。又患者団体を結成いたしまして社会的に圧力を加えろということもできませんし、又署名を求めることもできません、デモンストレーシヨンも行うことができないという甚だ弱い立場に置かれているものであります。こういう弱いものの立場を先ず第一に考えるということが私の解するところでは恐らくは民主主義というものの理想ではないかというふうに考えますし、又その弱いものの一人或いはその代表というような意味で私の言葉をお聞き下さるというような御趣旨もあるのではないかとこう考えるのであります。  第二の問題といたしまして、若しもこの法律案のように分業が強制的に行われます場合に起りますところの、或いはそれを阻みますところの若干の困難について申上げたいと思います。第一番は、これ又御案内のように日本における交通機関の非常な未発達、結局は我々日本国民の貧しさというところから来るのでございましようが、アメリカのように自動車が自由に使えるというのであればともかくでございますが、まあお医者様から薬屋へ飛んで行くということも比較的簡單にできましようけれども、現在の日本では電話もなかなか発達いたしておりません。せいぜい自転車で行く、或いは病人を負ぶつて行くというような風景、或いはリヤカーに病人を乗せて運んで行くような風景、これは私ども毎日のように見ておりますのでございます。又私自身交通の不便なために病人を負ぶつて医者を訪ねたこともございます。併し今度お医者だけを訪ねるので済まないで、その足で病人を負ぶつたままで、リヤカーに病人を乗せたままで更に薬局を訪ねるというようなことを考えましただけでも甚だ気持が暗くなるわけでございます。  第二番目の点は、若干の資料によりまするというと、どうも日本全国を見渡しましてお医者さんの数よりも薬局の数のほうがかなり少いような数字を見ております。つまり一薬局当りの人口のほうが一診療所当りの人口よりも遥かに多いような数字を私は見ております。  第三番目の点といたしましては、強制的に分業を行いました場合、日本薬局というものは現在の東大病院の薬局のような、或いは慶応病院の薬局のようなああいうすべての患者の、つまりいろいろな科の患者の必要を満たすだけの薬品を備えつけなければならないのではないか、内科の患者だけが来る薬局とか、精神科の患者だけが来る薬局というのでなく、各科の患者が参りますだけの完備した薬局でなければならん。そういう薬局は現在東京を見渡しましても十指に満たないのではないかと存じます。地方は言うに及ばないことと、こう考えまするというと、東京の或る一部にある例外の状態がむしろ基準にされてしまうのではないか、むしろ例外的なものが基準になりノーマルなものと前提されてこの立法が行われるのではないかと、こういう感じがいたすわけでございます。  第四番目の問題といたしまして、これは意地の悪いもので重病人は大抵夜中に発生するようでございます。私の経験でも夜中にお医者さんを起したことがたびたびございます。一軒のお医者さんを起すだけでもなかなか面倒なもの、いやな思いをいたし、又いやな思いをお医者さんのほうにもさせるものでございましよう。もう一軒薬局を起さなくちやならないということを考えますというと、私はむしろ怖しい気持がいたすのであります。先だつてアメリカから帰つて参りました者の言葉を聞きますと、アメリカではまあ或る程度分業が進んでおるけれども医者薬局との間に直通電話があつて、電話局を通さない直通電話がある。そのくらいに連絡がうまく行つておる。そういう連絡、或いは統合の面を深く考えていない限り、又連絡統合の面で立派な条件が満たされない限り、強制的な分業というものは現在の条件では非常に不幸な結果を招くのではないか。  第五番目は、専門家の間ではいろいろこの分業後の医療費についての細かい計算があるようでございますが、私はただ常識的な立場から申しまして、どうも高くなるような気がいたしてならないのであります。どう考えても医療費が上るという結果が出るような気がいたすのであります。医者が診察料だけで生活するということになりますと、どうしても相当の額を私どもからとられるという結果になることは見易い理であろうかと存じます。アメリカのように或る程度分業が進んでおります場合に診察料というものは最低、一番安いので約五ドル、少々よくなると二十五ドルぐらいとられる。夜になるとそれが倍になる。アメリカに非常に売薬が発達いたしておりますのは、とても診察してもらうのが経済的に重荷になるから、まあ取りあえず売薬を飲んで置くという、そういう条件が働いて売薬の発達を促しているのであるということを聞いておるわけでございます。この問題は確かに私ども医者に払いまする金の中に診察の費用と、それから薬品代というものが未分化のままで分れないままで込められているということはこれは確かによくないことだと思います。併しここにはたびたび指摘されまするように、日本の非常な貧しさというものが同時に現われている。国民大衆の経済的な状態というものが無形の技術というものに対して支払うことを非常に困難にさせている面があるのではないか。家屋の問題にいたしましても、理想から申せば食堂もある、寐室もある、居間もある、書斎もあるというのが理想でございましよう。併し一般大衆の家庭においては一つならば一つの部屋を食堂にも使うし、寐室にも使えば居間にも書斎にも使う、全部を込めて一つがまあ働きをしておるのが現状でございまして、無形の技術に対して支払うだけの経済的余力のない国民生活におきましては、現在のような未分化状態というものがよいとは思いませんけれども、免れ難い現状ではないかというふうな感じがいたすのでございます。私の友人に精神病医がございまして、精神病医の場合には薬を盛ることもせず、手術もせず、患者医者が話合つて、そうして病気を治療するという方法があることは御案内通りでございます。併しその友人の申しまするのには、口先で以て患者としやべり合つて、そうして治療してやるというそういう形ではどうしてもお金がとれない、患者とあれは口先で話しただけじやないか、それなのに金をとるのは太いというような空気が実際にございまして、非常に生活が困難であるということを申しておりました。或る程度までこれに似た事情が精神病医だけでなく広く内科、小見科各方面に現われて来るのではないかということが想像されます。第六番目は、これもしばしば言われますように、やはり責任の所在というものが何かはつきりしなくたつて来るのではないか。今日までのところでございますと、病人がよくならない場合にはお医者が下手なんだろう。いやたけのこだろうとか、やぶだろうとか、まあ失礼な言葉申しまして、結局はお医者を取換えるという結果が出て参るわけでございます。今度強制的に分業いたしました場合に、一体お医者が下手なのか薬屋が下手なのか、これは素人の悲しさでなかなかわかりません。お医者様のところへ文句を言いに行けばそれは薬屋が悪いのだと言うし、薬屋へ行けばそれは医者が悪いのだということでございましよう。その間に立つて素人の病人が右往左往するという非常に情ない結果が出て来るのではないかという、こういう感じがいたします。  第七番目に考えられますることは、そのように面倒になり、且つ恐らくは費用が高くなつて参るといたしまするならば、現在日本の津々浦々に行われておりまするところの非科学的な迷信がむしろもつと発達するような結果を持つのではないか、今日の日本において医療方面にどれだけの迷信が根を張つているかということは想像にあまるものがございます。私ども東京都内、杉並区に住んでおりまするが、私のあたりでもまともにお医者様の門を叩くよりもお水をもらつて来るとか、おはらいをするとかということが非常にそれが普通のこととなつて行われているような状態なんでございます。なぜ迷信というものは非科学的でありながら今日まで続いておるかと申しますと、第一には私はお医者ざんより安いということなので、ただ科学を知らないとか、近代科学を馬鹿にしているとか何とかということではなくて、やはり安いということが迷信に走らせておる根本の事情であると考えます。  これはまあ早い話がおまじないか、何かの場合であると、これは思召しで済む、診察料であるとちやんときまつて払わなければならない。おまじないであると、思召しで今日のところは結構でございます。これは大衆の感覚から言つて非常に楽な有難い気持のものでございます。第二にはこれは面倒でない、規則づくめでない、非常にルーズであるということ、融通が利くということであります。第三番目の問題は、非常に近代文明分化原理と丁度反対でありますが、未だ分れていないということ、あいまい、混沌であるということのよさであります。おまじない、迷信とかに頼ります場合には、これは一つの病気ではございません、一つの病気ではなくてどんな病気でも祈祷師やなんかが治してくれます。又單に病気だけでなくて、商売が繁昌するようにもやつてくれる。或いは一家の和合まで引受けてくれる。すべて未分化のままで一括してやつてくれるというところに迷信の実に大きな魅力があると考えます。このような理由のあり基礎のある迷信というものがむしろもつと力を持つて来るのではないだろうかということ、これが私の最も憂するところでございます。  第三番目といたしまして簡單に結論を申述べたいと思います。以上のようなふうに考えますというと、弱い被療者大衆の立場から見ますと、患者医者調剤してもらうこともできるし、薬剤師調剤させることもできるという現状のほうが当分の間よいのではないだろうか。強制分業を行うというには国民の経済状態の非常な改善、交通機関の非常な進歩ということと併せて又社会保障制度の全面的な革新と充実ということが背後にあつてこそ意味があるのではないだろうか、言換えれば諸般の事情アメリカ以上に進歩するというようなことがあつたときに初めて意味を持つのではないか、そうでございませんと、この技術的な意味を持つております立法を強行いたしました場合、法律社会的現実にむしろ先に立つて行く、先行するという傾向になるのでありまして、丁度身長を着物の寸法に合せるような結果になりかねないと思うのでございます。  以上ぶしつけな言葉を連ねましたが、私の正直な感想でございます。
  10. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございました。  次は日本赤十字社社長島津忠承証人証言をお願いいたします。
  11. 島津忠承

    証人(島津忠承君) 日本赤十字社といたしましては、医薬分業の可否につきまして、今日まで何らの意思決定をいたしておりませんので、ここに私の考えを申述べさして頂きたいと思うのでございます。  医薬分業につきましては、原則といたしましては反対することはできないと存じます。が併し、その実施に当りまして、国民医療費の負担が増加するかどうかということが問題だろうと存じます。若し実施によりまして国民医療費の負担が増加するというようなことになりましたならば、国民保健の向上を念願いたしております赤十字といたしましても重大な関心事でございますし、又このことは一般国民にとりましても重大な問題であると存じまして、分業の結果医療費の負担がどういうふうになるかということにつきましては、私今日承知いたしませんので、この点が納得できますようになりますならば、この分業制度は新らしい制度でありますだけに、私も大いにこれに期待するものでございます。以上でございます。
  12. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございました。  次は社会保障制度審議委員末高証人の御証言をお願いいたします。
  13. 末高信

    証人末高信君) ここで証言を行いますところの機会を得ましたことは、私は非常な光栄であると共に重大な責任を感ずる次第であります。終戰後いろいろな問題が次から次へと起きて参りましたが、一番大きな問題は国民の窮乏ということではなかろうかと思います。この問題を根本的に掘下げてみれば、国土に比例しまして人口過多であるとか、或いは人口に対して生産力が低いとかいうようなことに帰着いたしまして、それらを改善しなければ根本的にこの国民の窮乏を癒すことはできないと思うのであります。併しながら個人々々の窮乏の原因について考えてみますると、老齢であるとか、死亡であるとか、失業であるとか、かずかず数えられるでございましようが、一番大きな問題は病気によるところの窮乏でなければならないと思うのであります。そこでその病気による窮乏に対する対策が先ほど大内先生の言われましたところの社会保障制度の中心をなすものであると考えられるのでございます。そこで経済の立場から社会保障制度を確立するということが一面要望せられると共に、その裏付としての医療の画期的充実ということが私ども非常にこの際やらなければならない仕事ではなかろうかと思うのであります。  そこで次に本論に入るわけでございまするが、この分業問題につきましては、私は原理的にも実行的にも賛成するものでございます。というのは只今いろいろ他の証人かたがたから、日本は非常に窮乏である。従つて医療費の十分な支出が国民としては堪えられない、従つて今日のままのほうがいいのではなかろうかという御議論がございましたが、分業をやつておりまする国は世界中でアメリカだけではないのでありまして、今日におきましては日本と同じような窮乏の状態にあると考えられるところのヨーロツパの各国はすでに分業をやつているのだということを考えてみますると、分業が技術面におきまして、又医療費の合理化におきまして飛躍的な発展ということになりますれば、我が国といたしましても、分業を今日において達成することができるのではなかろうかと思うのであります。  そこで、お医者さんがたは、すでに薬に関する学問を十分修めておるのであるからして、従つて調剤をやるのは当然であるという御議論は私しばしば承わるのでございますが、單にそれを或る程度学問を修めているから調剤ができる、調剤のごときは極めて末梢的な技術であつて、実は一科目、或いは二科目の程度におきます大学の講座で以て講義を聞けば簡單にできるというふうに考えるほど調剤というものが軽んぜらるべき技術であるかどうか、例えば建築学の專攻をいたしまするところの人間は、恐らく土木につきましても一応の学問をやつているはずでございます。大学における建築科の教科課程を見ましても、土木に関するところの教科科目がないのです。併しながら建築を依頼されたところの人間が、土木までもやらなければ、俺の建築はできないのだというような御議論は私には納得できないのでございます。  さて、そういうような前提の下に、分業に何故賛成するかという二、三の理由を私ここで申上げたいと思うのであります。それは只今申しましたように、專門家が先ず調剤に関与するということが医療を画期的に向上せしむることになるのではなかろうか、というのはお医者さんが成るほど御自分で以て処方せられるどいう場合に、これが他の薬局、或いは他の技術者の検討と申しますか、とにかくその目に触れるその調剤をするのだということによりまして、恐らく特別な緊張をいたしまして、正確な薬をお盛りになる。又薬剤師のほうは四カ年の大学課程を経まして、試験を通りましたところの薬剤師といたしまして、そこで調剤ということによりまして、その薬を正確に盛ることができるのではなかろうかというふうに考えられまするし、又或るかたは、信頼するところのお医者さんだからこそその薬が効くと思うのだ、こういうふうなお話がございますが、併しながら薬局に整備せられているところの薬が古くて使いものにならない薬であるとか、或いはその数に制限がありまして、必ずしもお医者さんからもらつて来るところの処方箋は十分調剤できないということは、私薬屋でもございませんし、又医者でもございませんからして、実情をつまびらかにいたしておりませんけれども、併し国家が検定をいたして、監督の下に医者医者として仕事をし、薬屋薬屋として仕事をしている以上、薬局に対しましてはやはり十分そういうような整備の規格というものがあるに違いないと思うのであります。そこで常に正確な薬がそこに整備せられているということになりますれば、お医者さんの小さな薬局において存在しているところの薬よりも、その薬の種類に束縛せられない十分な処方が行われ、又その処方に基くところの調剤が行われるのではなかろうか、こういうふうに考えられるのであります。それから更に処方が公開せられることによりまして、医療に対するところの社会の認識が高まつて行くというところの効果を私どもこの医薬分業に対して期待するのであります。或るかたがたの御反対理由といたしまして、処方が素人の手に渡りますると、同じような病気をした場合にその処方を悪用し、又更に二重、三重に使うようなケースがあつて、どうも我々として納得できないというようなことをお医者さんから承わることがあるのでありまするが、そのことは非常に私はおかしいと思うのであります。若しも電気なら電気につきましての学問を或る程度やるということが高等学校程度の課程におきまして、物理学の内容といたしまして是非必要である。ところがそれを教えますると、家へ帰つて参りましてスイツチを捻つてみたり、壊れたところを付け変えてみようとした場合に、シヨートを起して却つて家中暗くしてしまうというような実情がしばしばあるから、高等学校におきまして物理の内容として電気なんぞを教えないほうがよろしいというようなことの議論に通ずるのではなかろうか、そういうような悪用、誤用によります弊害があるということは、国民の自覚によつて徐々に改善せられて行くのでありまして、そういうことの改善が行われないであろう、いつまでたつても誤用、悪用が行われるだろうということを考えることは、日本国民性に対するところの信頼を全面的に拒否するというような、日本人に対する信頼感の如何にかかつて来るのではなかろうか、かように考えるものであります。  それから更に調剤等の仕事に煩わされないためにお医者さんがたの技術が更に進歩する余裕がそこに出て来る、お医者さんがたは調剤その他によるところに時間を割く、その時間を捨てることによりまして更に学界に出席するとか、專門雑誌を読まれるとかいようなことによりまして、開業して後の日進月歩の医学進歩に追随して行くというところの時間的余裕が出て来るのではなかろうかと思うのであります。  それから次に医療費の負担が多分非常に増加するであろうということにつきましては、いろいろな観点からこれは反省してみなければならないと思うのであります。私ども聞くところによりますると、医療報酬に関する臨時調査会でございますか、先般厚生省にございましたところの調査会におきましての結論は、医療費を上げないような含みをこの際はするのだというような決議の御決定があつたように承わつておるのでございますが、このことに関連いたしまして、更に例えば今日行われているところの二剤投与、或いは数剤投与というようなことが、恐らくこの医薬分業を機会として、必要な限度において薬が投与せらるるのだという習慣が欧米と同じように高まつて来るということによりまして、医薬に対するところの、特に薬品に対するところの費用というものはむしろ少くなるのじやなかろうかというふうに考えているのでございます。それから又或る方面からのお話によりますると、とても今日でさえも医者は窮乏である、貧乏である、それから薬を取上げてしまつて医者の生活権を脅すものであるという御議論があるのでございます。一面尤もにも考えられるのでございまするが、今日健康保險の一点單価は都市におきまして十一円、農村におきまして十円という單価で以て、多くの病院などは経営を行なつておるのでございまして、而も病院、診療所等におきましては、医者薬剤師がすでに分離した姿におきまして、その両者の生活が、とにかく医療担当者の生活が行われているところを見ましても、分業したから直ちに医療費の負担が上るということは私自身どうも納得できないのでございます。  そこで、然らば分業というものをいわゆる任意分業の姿におきまして推進して行つたらばどうか、というお話を又しばしば私ども聞かされるのでございまするが、これに対する私の意見といたしましては、成るほどイギリス、アメリカのように数百年の伝統によりまして、法制によらずして自然分業をしておるという所におきましては、何も分業を法定する必要はないのでございまするが、併しながら日本の現状におきましては、強制分業というよりもむしろ法律によつてそのことを定める、法定の分業ということこそまさにやるべきことではなかろうかと、かように考える次第でございます。  従いまして、私は今国会に提案せられておりまするところの医師法その他の改正案に盛られております分業に対しましては、全面的に賛成するものでございます。
  14. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございました。最後に中央社会福祉協議会会長田子一民先生に御証言をお願いいたします。
  15. 田子一民

    証人田子一民君) 只今お読上げになりました協議会は、発足後まだ三年ぐらいのものであります。而もその協議会の定款そのものが未だ医療の関係を含んでおりません。而うして個人たる私は何しろ社会局に長く勤めましたけれども、不幸にして医療行政に携わつたことがありません。又親戚に医者若しくは薬剤師も持つておりませんので、深く御参考になりますような材料を申上げることはできないのであります。ただ、ウエルフエアを目的にしました協議会の会長としての意見は、この分業によつて果して今までよりも患者の負担が軽くなるものか、第二には適正なる治療が行われるものか、又治療を受けますものは今までよりも極めて便利になるものであるか、この三点が御審議の中心になるのではないかと思うのであります。  而うしてこれらの論議は單に原則的議論、或いは自己の所信を述べるといつたようなことでなく、国民の生活そのものの実態によく触れまして、それに医者立場も離れ、薬剤師立場も離れ、真に患者の身になつて考えることが最も大切でないかと思うのであります。私は長年、社会事業に專念をして来ておるものでありますが、欧米等の制度を、この医療制度ではありませんが、社会事業に関しまする制度等もよく及ぶ限り調べております。併しこれを日本で行います場合には、必らず日本というこの現実に足を置いたもの、私の本などには日本社会事業、こういうことをよく書いてございます。でこの医薬分業制度もやはり外国はこうである。ここはこうである。原則はこうである。原則には何がないとかあるとかいうそういう理論とか、或いは外国の実情とかいうことよりも日本の国会は日本に即した考えで御決定になることが妥当でないかと思うのであります。甚だ空疎なる陳述でございまするけれども自分は会長の資格におきましては、これ以上申す自由を持ちませんので惡しからず御了承を得たいのであります。  なお委員長に特に僅かの発達しか遂げておりません、中央福祉協議会の会長として御紹介にあずかりましたことを、誠に光栄に存じます。
  16. 山下義信

    委員長山下義信君) 以上で証人証言は終りました。御証言に対しまして御質疑がございましたならば、どうぞ御質疑をお願いいたします。
  17. 有馬英二

    ○有馬英二君 田子一民先生にお伺いしたいのでありますが、只今の御意見誠に御尤もに存ずるのでありまするが、もう少しく具体的に何らか御意見を伺われませんでしようか。
  18. 田子一民

    証人田子一民君) 実はこれに出席します前に、理事会を招集する時間がありますれば、理事の意見も実は承わつて参れたんでありますが、その時間を持ちませんでした。それから会長、副会長、部長等に相談をしました結果は、会長としてはこの程度に話したらいい、会の意見としてもそれならばみんなが納得するだろう。その他あなたは長年この社会事業などをやつておるから、個人としてかれこれ申上げては後に会としてどうかと思うから、この程度にとめてもらいたい。さように御承知を願います。
  19. 山下義信

    委員長山下義信君) 只今有馬委員から質疑がありました通り、実は田子証人に特に御出席を願いましたのは、日本社会事業の全分野から、国民福祉の立場からこれがどういう影響を及ぼすかという点について国会は御証言を期待したのでありますが、御事情さようでございますれば止むを得ません。他に御質疑ございませんか。
  20. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 末高先生に伺いたいのでありますが、医療費が高くならないように思うというお話でございましたが、厚生省のほうの資料から見ますと一・六%高くなる、医師会の資料を見ますと二一%高くなるというような資料が出ておりますが、先生のほうは医療費が高くなるとは思われないというように只今おつしやいましたが、高くならないというのはどういうところに根拠がございまして高くならないのでございましようか。その点を一つお伺いをします。
  21. 末高信

    証人末高信君) 只今の御質疑にお答えいたします。医師会、それから厚生省等におきまして高くなるだろうという数字が出ておることを私存じておりますが、私根本資料を持ち合せてございませんので、それらのものを本当に良心的に検討する自由がないのでございますが、ただこういうようなことが言われております。あの資料は現在の慣行料金をそのまま認めて、医者はその慣行料金の收入は全額従来と同じように継続するのだというこういうような立場からあの数字が出ておるということを承わつたのであります。それが第一点と、先ほど私の陳述の際に申上げましたように、只今この薬と診察と申しますか、治療費が全部薬代の中に含まれておるというのが実情でございますが、そういたしますると、先ほど証人のうちのどなたかが申上げたように、注射に逃げるだろうとか等々いろいろなことを言われ、又そういうような評判が世間にあることはたしかでございますが、これは私は医者を侮辱するも甚だしいものではなかろうか。医者が必要のない注射であるとか、薬であるとか、いうものに全部逃げてそうしてその収入を今後とも継続するだろうなんていうことはおよそ七万のお医者さんに対する非常な大きな侮辱ではなかろうかと考えます。お医者さんももう少し良識ある、良心のある御考慮をなさつておるものと私は考えております。但し今日の実情におきましては、薬によつて自己の生活を維持して行かなければならないという立場から、或いは一剤に盛ることが適当である場合に二剤にしておる。従いまして二剤投与或いは数剤投与ということがしばしばあるということは現在の経済の実情から見て止むを得ないことではなかろうかと思います。そういたしますと、そういうような薬を投薬するというようなことが整理せられ、合理化せられることによりまして、これは医療費を上げないで済むのではなかろうかということと同時に、先ほど又申しましたように、あの医療報酬の協議会と申しまするか、審議会上申しまするか、あの会議の御決定は上げないで行こうではないかと、それにつきましてはお医者さんも又薬屋さんも全面的に協力する。十年、二十年の後の姿は私どもよくわかりませんが、分業になりました当初は上げずに行こうではないかというような御決議があつたように考えられます。そういうような御決議は必ずや実現せられるに違いないと考えますので、従いまして私は医薬分業を直ちに実行いたしましても、三十三年度から全面的に実行いたしましても、当分の間著しい値上りはないものと考えております。
  22. 山下義信

    委員長山下義信君) ほかに御質疑はございませんですか。……平林さんに伺いますが。さつき御証言の中に大変お医者さんの中で生活に困つて内職までしていらつしやるかたがあるというお話がございましたが、なぜそんなふうに非常に困つていらつしやるのでございましようか。
  23. 平林たい子

    証人平林たい子君) それは健康保險が普及したためだと聞いております。
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) 普及のために……。ああそうでございますか。
  25. 平林たい子

    証人平林たい子君) 非常に困つて、私の接触しております近所のお医者さんは皆非常に生活に困つております。なんの背景もない町の開業医でございませけれども……。
  26. 山下義信

    委員長山下義信君) そのかたがたはやつぱり健康保險に入つておる被保險者の診療をやつていらつしやるのではないかと思いますが、余り患者が来ないのでございましようか。余りはやらないのでございましようか。
  27. 平林たい子

    証人平林たい子君) 患者の数が少いのに、余りはやらないのに被保險者が多いかららしいのでございます。
  28. 山下義信

    委員長山下義信君) そうですか。他に御質疑ございませんか。……御質疑ございませんければ証人かたがたの御証言は終了したことにいたします。  本日は証人かたがたには大変御多用中のところ御出席を頂きまして、有益な御証言を拜聽いたしまして感謝に堪えません。有難うございました。  本委員会は午後続行いたすことに相成つておるのでございますが、この際懇談に移りたいと存じます。御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 山下義信

    委員長山下義信君) それではこれより懇談に移ります。速記をやめて……。    午前十一時三十九分懇談会に移    る    —————・—————    午前十一時四十二分懇談会を終    る
  30. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは暫時休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。    午前十一時四十三分休憩    —————・—————    午後一時四十一分開会
  31. 山下義信

    委員長山下義信君) これより午前に引続き委員会を開会いたします。  午後は政府並びにかねて御要求のありました法務府の法制意見局長官並びに本院の法制局長の出席を求めておりますので、御質疑のありますかたは御質疑をお願いいたします。厚生大臣代理は間もなく御出席のはずであります。御了承願います。
  32. 藤原道子

    ○藤原道子君 厚生大臣は代理でありますか。
  33. 山下義信

    委員長山下義信君) 保利労働大臣が厚生大臣代理を務めておるわけでございます。
  34. 藤原道子

    ○藤原道子君 保利さんが見えるわけでございますね。
  35. 山下義信

    委員長山下義信君) そうでございます。
  36. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 医薬分業問題について先般公聽会を開きました際に、中谷宇吉郎氏から医薬分業というものは場合によると憲法違反になる慮れがあるのではないかという御発言もございました。なお私も曾つてこの委員会において、医薬分業というものは憲法第十三条との関係に少し疑問がある、こういうことを申上げたことがあるのでありまして、この強制医薬分業というものが憲法第十三条とそれから第二十二条、これの「職業選択の自由」ということとの関係から、この医薬分業ということが憲法の精神に反するのではないかという疑義がありますので、この点をどういうふうに解釈したらいいかということを法制意見局長官並びに法制局長の御意見を承わりたい。
  37. 山下義信

    委員長山下義信君) 藤森さんどちらを先に……。
  38. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 法制意見局長官から。
  39. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) では先ず私から只今の御質疑に対しまして、憲法上の問題をお答え申上げます。御指摘の通りに本案について関係のあります条文は第十二条と第二十二条であろうと存じます。当面の条文といたしましては無論この二十二条のほうが手近であろうと思いますから、これを手がかりにして申上げますが、要するに二十二条におきましては、職業選択の自由を保障しておりますが、何人も、公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有するということになつております。只今御指摘の十三条におきましても「公共の福祉に反しない限り」という文字がございます。従いましてこれらの条文との関連におきましては、本案が公共の福祉に反するかどうかということによつて憲法上の疑義が解決されるものと考えるのでございます。そこでその観点から私ども考えておりますことを申上げますというと、現在この薬事法におきまして、調剤に当りますものは一定の資格を持つてつて、厚生大臣の免許を得たいわゆるいわばれつきとした薬剤師でなければならないという大原則を掲げております。この大原則は、調剤という人の生命に直接関係のあるようなことに携わる人についてこういう条件、制限を設けることが公共の福祉の上からこれは止むを得ないどころではない、必要であるということが言い得ることは、これは申すまでもないところだと思うのであります。従いまして、若しこの見地だけを貫いて行きますならば、薬剤師の免許を受けておらないものが調剤をするということはむしろ変則であるから、その変則を改めて原則のほうの建前を一貫するように持つて行くことが公共の福祉に適合するゆえんであるというふうに一応申し得るところであると存じます。この場合について考えなければなりませんのは、この薬局とか、薬剤師などの分布状況その他から来ます国民の側としての便とか不便とかいうような現実の面もやはり公共の福祉に関係のあることでございますから、その方面も無視するわけには行かないと存ずるのであります。現行法は御承知通り昔の薬剤師法の建前を踏襲いたしまして、この点について一種の妥協といいますか、そういう調整をいたしまして、医者自分の手がけたものに関する限りにおいては調剤ができるということを認めておるわけであります。これを時代の進歩、周囲の情勢に応じまして、原則に引き直すということは先ほど最初に申しました立場から申しますれば、当然成り立ち得ることでございます。但し第二に述べました実際の現実面の要請というものを勘案しなければなりませんので、この法律案におきましては、先ほどの大原則のほうに引き直す方向へは向つておりますけれども、事柄を一挙に運ぶということを避けまして、この薬事法二十二条の改正要綱の中に盛られますような、診療の必要であるとか、或いは薬局の普及状況というものと睨み合せで、そこに調整ができるような建前にいたしてありまして、現実面の要請を強力に取入れてあるということでございます。従いましてこれらの点を総合して考えますれば、本当は憲法の精神には違反しない、公共の福祉に適合する措置を内容としておるというふうに申し得ると存ずるのであります。
  40. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 十三条は、これは個人の幸福の追求でありますが、公共の福祉に反しない限り、個人は自分の幸福を追求することができるということが保障されております。若しここに一人の病人があるとする。これが飽くまで自分の命をかけて自分の診断を受けた医者から薬がもらいたい、調剤を願いたいという人がありました折に、これを法律で阻止するということがこの十三条に違反するようなことがありませんか。
  41. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは只今申しました建前から申しますれば、一定の資格というものが公共の福祉上或る種の仕事をなさる人々についてはつきり打ち立てられております以上は、この公共の福祉という点をどちらに見るかということにならざるを得ないのであります。例えば医者の免状は持つておらないという人でも非常に実際上医術の巧みな人が直ぐお隣りにおるという場合に、その人の診療を受け得ないで、二三町先の正式の資格持ちのお医者さんに走らなければならないという問題と同様の問題であります。こういう一種の職業に携わるかたがたについてそういう資格をきめるということは、大きな大乗的見地から言つての公共の福祉の要請であるということに相成ろうと考えます。
  42. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 今の御説明で少し合点が行かないのですが、医者があつて、その人にみてもらいたいが、單にそれがいないとか、或いはそういうことで他にみてもらうという場合で、私が申上げておるのは診断を受けた医者から是非最終の治療までという考え方から投薬をもらう場合に、これが公衆の福祉には反しないと考えるのですが、それでもなお公衆の福祉に影響があるとお考えでしようか。
  43. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お尋ねの趣旨がちよつとはつきりいたしませんが、この問題は一定医者とか、或いは薬剤師とかいうようなものについての資格をきめて、それ以外の人はそういう仕事はしてはならんということが、一体あらゆる観点から見て公共の福祉に適合することであるかどうかということに煎じ詰めれば盡きることのように私は思うのであります。従いましてそういうことになりますれば、先ほどから申上げましたように、全然資格のない人がそういう大事な仕事に携わるということは結局公共の福祉の上かち非常な慮れがあるということに相成らざるを得ないのでありまして、それで先ほど例を申しました手近な所で非常に素人で医術の巧みなかたがおられる。併し法律上そのかたに医療をしてもらうわけにはいかないという結果が出て来るのも止むを得ないことで、そういう観点から申しますれば、今のお尋ねも一応お答えしたことになるのじやないかと思いますけれども……。
  44. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 医者でない人に治療を受けるということは、これは明らかに法律でも禁止されておりまするが、調剤というものは現在においては医者にこれは許されております。先ほど申された通り、こういう状態において、これが自分の幸福追求のために投薬を求めるということは決して公衆の福祉には反しないと考えるのですが、そういう見方はございませんか。
  45. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お尋ねの趣旨は我々が医者でない人の診療を受ける、或いは薬剤師でない人の調剤を受けるということが公共の福祉にどういう関係を持つかという御趣旨のように思うのでありますが、それはどういうふうに申上げていいのか、非常に便利である……私は法律的な形式論を申しておりますから、そのつもりでお聞き願いたいと思います。一方政策の問題は別にしておりますから、その点御了承の上でお聞き願いたいのでありますが、手近な所に便利な人がおるけれども、その人は法律の資格を持つておらないからその人を利用することはできない。それは不便であることは事案であります。ありまするけれども、そういう人について嚴重な資格を法律できめておるということは、大きな見地からの公共の福祉の要請に基いてそういう法律ができておるのであるからこれは止むを得ない。而してそういう嚴重な資格を法律できめるということも公共の福祉という観点から憲法上容認されておるというふうに申上げるべきだと思います。
  46. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 今すべての国民は病気に罹つた上には自分の進むべき途が二つ与えられる。一方は医者にかかつてそうして終始一貫医者から薬をもらつて病気を治すということと、又一方は自分の求める場合には医者の診断を受けて、薬剤師に行つて薬をもらつて病気を治す、この二つの方法が与えられておるのです。で若し強制分業という線が出て来た場合には、この二つの途が一つにせられるようになるというわけです。こういうふうになつた折にはこの十三条の個人の幸福追求ということが否定されるのではないか、こういうことをお尋ねしておるのです。
  47. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) このことは最初に私が申上げましたように、公共の福祉というものを見るについては大きな目から申しました先に申上げましたような観点からと、それから多くの人々の便、不便、多くの人々が非常に不便を感ずるというようなことであれば、理想論もこれは多少調整をしなければならないという考え方があることは、最初申述べた通りであります。その観点から然らばその間の調整をどういうふうに持つて行くかということは、これは立法政策の問題としてはいろいろな調整の仕方があると思います。その点はむしろ国会においていろいろ御審議を願うべきことだろうと思いますが、これは立法政策の問題であつて、憲法論の範囲におきましては、私は先ほど述べました通りに、本案の中に書いてある一種の調整、この二十二条に二つの号がありまして条件が上つておりますが、それらのあります以上は憲法上の問題はないであろうということを申上げたのです。
  48. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 先ほどもつたのでありますが、社会行政が不完全な場合にこういうようなことをするということは、これは社会行政が悪いから、一般国民が非常に迷惑をするということが起つて来るのです。そうするとこれは当然この社会福祉を阻害するものだ、社会福祉に副わんものだという考え方があるのですが、如何でしようか。社会行政が非常に完備しおるのならばとにかく、今社会行政が十分完備しておらない、そういうときになお法律を以てそれを禁止するとか、どうとかいうことは、この法律がむしろ公共の福祉を阻害するものじやないか、こう考えられるのですが、如何ですか。
  49. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは現状の認識の問題になるわけであります。私どもは抽象的に考えますというと、薬剤師法そのものがすでにその前にも法令がありましたけれども、まあ薬剤師法が大正年間にできて御承知通りそうしてそのときから大体この現在の薬事法と同じような関係の当該条文は同じようなことになつておる。そのときから今日までずつと時勢がどのくらい進化しておるかというような点を勘案しますと、よほど変つておるだろうということは言われるのです。そこにも今度現状の認識の問題になるだろうと思います。
  50. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 法制局長の御意見を伺いたいのですが……。
  51. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 私は純然たる法律解釈の問題として申上げるのでありますが、御承知のように職業選択の自由は憲法二十二条で保障されておるのでありますが、それは無制限に職業選択が自由であるというのではなく、「公共の福祉に反しない限り」という制約の下に職業選択を与えられておるわけであります。そこで問題になつております医薬分業ということがこれによつて若し仮に公共の福祉が増進されるとか、そのために社会生活に非常に福利が増進されるというのであれば、その公共の福祉に反しない限りにおいてのみ、職業選択の自由は保障されておるのでありますから、公共の福祉の要請からそういつた場合に制限を受けるということは憲法上許されるものと考えます。併しながら現在医薬分業することが結局公共の福祉の増進になるかどうかということになりますと、私は全然素人でありまして、專門的に医薬分業したほうが社会生活の幸福が増進されるということについては全然知識がございませんので、それが果して公共の福祉を増進することになるかどうかは政策問題、或いは社会問題として研究さるべきことでありまして、若し仮にそれが公共の福祉を増進するということであるならば、憲法違反にならないであろうというふうに形式的に考えます。
  52. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 私から一言お尋ねしたいと思いますが、意見局長にお尋ねするのでありますが、医者調剤能力を持つておりまして、すでに多年調剤をやつておるのであります。又今回の改正法案にも出ておりますが、あれにいたしましても、或る場合には医者調剤をさせてもいいということがあるのは、医者調剤能力があるということになると存じます。この医者調剤というのは既得権である、従つて医者調剤投薬をするということが公共の福祉を害しない以上は、これはその既得権を取上げるということは憲法違反であるというふうに考えてもおりますし、又そういうふうなことを問題に法務庁などの方面でされておるようなこともありますようですが、その点について一つ……。
  53. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ず既得権というお言葉がございましたが確かに一種の既得権を侵害することに結果においてはなりますが、これは今の既得権が公共の福祉という要請上何することも止むを得ないということになれば、これは失われることも止むを得ないということは一応憲法の建前になつておりまして、先ほどからの問題にそれが繋がることになるわけであります。御承知のようにこの営業、或いは職業というようなものの取締りというものは、殆んどすべての場合にこれは既得権の問題を生ずるわけでございます。新憲法になりましてからも例えば御承知の通訳、案内業、ガイドでありますが、ガイドの法律などができまして、一定の免許を受けたものでなければガイドはやれないというような法律ができました。そうするとその日まで実際上ガイドをやつておりました人の職業営業上の既得権というものがそこに侵害されるわけでございます。これは公共の福祉の要請上止むを得ないこととして一応言葉は惡うございますが、諦めて頂かなければならないというような建前になる、ただその間二カ月とか三カ月、或いは一年とかいう猶予期間を置いて、その間に適当な準備をなざる余裕を与えるというような立法になつております。その他いろいろ建築士の関係とか、或いは測量士の関係とか、公認会計士、いろいろの業種についてたくさんの立法が出ておりますが、これらのものも皆只今私が申しましたような観点から憲法違反ではないという説明がなされて参つておるわけでございます。それから医者の中にも実際上調剤の能力は十分お持ちであるというお言葉でございましたが、これも実際そうであろうと私ども素人でございますけれども思います。思いますが、ただ法律屋といたしまして、冷やかなことを申上げれば、それならば薬剤師なり何なりの資格をおとりになることもやさしいであろうから、そのほうにお進みになるほかあるまいというようにそつけなく申上げれば、そういうようなことにもなるのであります。
  54. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 只今のお話よくわかりますが、この医師調剤、投薬をいたしますということは、或る場合におきましては、この調剤、投薬を禁止いたしますというと、多くの国民に不便、不利益が起つて来るようなことがかなりありますので、従つて医者調剤、投薬を或る場合にするということは決して公共の福祉を害するというふうなことには思われずに、却つて公共の福祉を増進するものであるというふうなように考えられるのでありまするが、そうしますと、公共の福祉を増進するものであれば、やはり既得権を侵害するのは憲法違反じやなかろうかと、こういうふうなこともあるのであります。
  55. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 大変形式張つたことばかり申上げて申訳ありませんが、若しも医者というものが調剤能力を十分なる資格を持つておるということが、いわゆる薬剤師と同等であるということが言えるかどうか、これは厚生行政の関係でありまして、私どもがそうであるとかないとか申上げる能力は持つておりませんけれども、先ほど申しましたように、昔からのこの薬事法制の建前というものは、飽くまでも調剤薬剤師でなければならんという方針を堅持してできておるのでございます。昔の薬剤師法におきましてのこの医者に対する特例というものは、むしろ附則のほうなんかで極く例外扱いをしているというような見地から見まして、やはりその間にはつきりした区分が形式上はあるんじやなかろうかというふうに考える。我々の法律的頭からはそういう感じがしてならないのであります。
  56. 松原一彦

    ○松原一彦君  医師が今日まで調剤して来た行為は、七十年来のこの立法の変遷を見ましても、やはり本則ではない。薬剤師が扱うのが本則になつておる。その点については疑いはないのでございます。併し日本の今日の文化、経済等の程度におきまして、たとえ不足ながらもこの法律の中には、今ここに薬事法第二十二条第一項によつて除外されるというものの内容が参つております。これは多分厚生省から出したものと思いますが、一、緊急治療の場合にはよろしい。二、所要の医薬品を医師のみが処理する場合においてはよろしい。なおその他審議会において十分研究の上に必要と考えられる場合はよろしい、こういうことになりまして、絶対禁止でなく制限禁止であります。なお薬事法第二十二条第一項中除外された地域というところに一つ郡部とあります。二は市部において薬局の普及が十分でない地域というふうに書いてあるのであります。よりよきものえの移行は当然であります。でありますから、医師薬剤師が二人おるときにどちらを選ぶべきかということが公共の福祉の上から薬剤師のほうへ移るのは私は当然のことだと思います。但しこの日本の現状において、却つて広汎に特例が設けられておるという立場から、医師調剤することも又止むを得ないものということになるときに、この罰則でありますが、これには罰則が附いております。薬剤師医療行為を行なつた場合においてのつまり薬剤師法の違反、医師調剤行為を行なつた場合の違反、これが今回の大きな峻嚴なる強制的な分業でありますが、その場合に等しく第五十六条によつて三年以下の懲役若しくは三万円以下の罰金という罰則が付いているのであります。一方に医師は例外としての調剤行為が認められておるのでありまして、その医師の権能の中で許されておる部分の違反と、それから能力はないものとして今日如何なる場合においても歴史的にも薬剤師医療行為に対する違反とが同一の罰則において処分せられるということが妥当な立法であるかどうか、この点に対するところの意見長官の御意見を伺いたい。
  57. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この場合におきましては、法律の禁止しておりますところに対しての処罰の関係でございますからして、このいずれも法律の許された枠を越えてなされることの弊害というものは、これは同一の価値を持つものである。従つて罰則関係もこれを同一にむしろすべきであつて、ただ現実の違反事件の場合におきまして、これが裁判になりまして、この法律の罰則の範囲内でどの程度の判決が下るかということは、裁判官がおのおの事情を考慮して適切なる判決を下される。法律の建前といたしましては、これは私は同じ扱いにすべきものではないかというふうに考えている次第であります。
  58. 松原一彦

    ○松原一彦君 それは裁判官の判定によつて重くも軽くも取扱うということでございますが、私は日本国民立場から見て、又現状の経済上の要求その他一般から見まして、特例を設ける場合のこの条項が、「省令の定めるところにより診療上必要があるとされる場合」と、ここに条項が上げられているのでありますが、この「診療上必要があるとされる場合」というところの内容を、今私は政府に聞いているのでございますが、まだ審議会の議を経なければこれは決定せん法律でございますけれども、これを決定しておくことはこの法律を制定する上に非常に大事な審議上の問題だと思うのであります。そこでここに現われている文字の、「省令の定めるところにより診療上必要があるとされる場合」は、これは医師の診療上必要ということ、医師から見たる場合の診療上の必要と限定せられるべきものでしようか、患者の要求というようなことは絶対にこの文字の中には含まれておらんものでしようか。
  59. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 法律的に申しますと、「省令の定めるととろにより診療上必要があるとされる場合」ということになつております以上は、只今お話のように、実は省令ができて来ないとわからないのでございます。或いは省令で、今の患者のほうがどうしてもと言つて来た場合には、必要があると患者のほうが言つて来た場合にはどうこうということもこれは考えられないことはございません、考えられないことはございませんが、この趣旨は、省令で一般社会通念を受けまして、社会通念上こういう場合は診療上必要なものとして医師に投薬をさせてもよいというふうに一般に認められるような、即ち客観的に社会通念上認められるような場合を省令で列挙されるものというふうに予想しております。
  60. 松原一彦

    ○松原一彦君 そうしまするというと、患者が特に緊急を要する、旅行をする、今薬を持つて行きたい、行かねばならんといつたような場合に、患者の要求は全然、絶対にこれは容れられない建前でございましようか、これを伺いたい、私はそういう建前と思うのですが、さようでございましようか。
  61. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私一個の考え申しますよりも、やはり先ほど申しましたように、社会通念上誰が見ても成るほどこれは診療上必要とすべき場合であろうというようなところを審議会なりなんなりに諮られて、この省令が適正に定められるというふうに考えるのでございます。今の御指摘の場合はどつちに入るであろうかということは、この場でちよつと個人的の感じを申上げることは差控えさせて頂きたいと思います。
  62. 松原一彦

    ○松原一彦君 私は医療進歩の上から、新制度のできますことについては結構なことだと思うのでありますけれども、必ずしも日本の今日の現状及び患者立場から言いますというと、これでは少し行き過ぎになつて困る場合が生じはせんかということを懸念をするのであります。七十年間の紛争になつておりますこの問題の終止符を打つ場合に、社会的コンデイシヨンの現状から逸脱し過ぎるというと、これは国民の福祉に非常に大きい影響があるのであります。私は国民も納得し、医師も納得し、薬剤師も納得する線を見出したいのであります。そういう意味におきまして、私はここにまだ若干のこの立法の上に不安を持つのであります。これは強引に押し切つてしまうべきものではないと、かような点から一応冷靜な法律上の御見解を承わつて若し今仰せの通りの御見解であるならば、私はこの法案には服しかねるのであります。さようなことを申上げまして、私の質問しました要旨をまとめておきます。
  63. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 今度の法律の改正案を見ておりますと、一部の医師調剤が認められ、それから一部は認められない、その認められない人たちがそれを犯した場合には重罰を受ける。こういう事柄は一つの非常に大きな矛盾じやないか、こう思うのですが、長官の御意見を伺いたい。
  64. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この一部のお医者さんの関係で釣合いのとれない結果が生ずるということは、これは結果においてはそういう場面が出て来るわけでありますが、併しながらそのバランスのとれないという事情が、非常に何ら合理的の理由のない、実際わがままな理由によつて若しそういう結果が生じまするならば、これは誠に不適当であり、よくないことであることは明瞭でございますけれども、只今のような事柄は、この二十二条に基きまするところの条件から生ずるのでございまして、この条件が合理的な基準によつて定められるということは当然ここで予想されるところでございますから、合理的な基準から来る不測のちぐはぐと申しますか、違いというものはこれは止むを得ないところと申上げなければならんことと思います。
  65. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 私は医師の既得権、そういう観点から言うのじやないのです。医師というものが或る地方では調剤ができる、それは能力があるから認められる。又能力のないものが認められないことは尤もでありますが、これは非常におかしいじやないですか、医師の関係が……。既得権とかそういうことではなしに、その人が調剤能力があるから当然一部の医師調剤を認められる。刑罰を受けない。それから或る地域の医師に関しては調剤をすれば三年以下の懲役又は三万円以下の罰金、これは非常に大きな本質的な矛盾があると思うのですがどうですか。
  66. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは先ほど最初に申しましたような二つの観点からの要請の調和点をどこに求めるかというところから来ます点でありまして、先ほど申しました一つの要請であるところのおよそ調剤薬剤師の資格を持つ者でなければならんということで徹底いたしますならば、今のような御疑念はないことになる。併しながらそれに対しましてこの実情から来る調整というものを加えております。その調整は薬局の普及の問題とかというような観点から取入れられて来るのであります。その薬局の普及状況等を然らばその調整の基準とすることは不適当であるか適当であるかといえば、これ又一応合理的な基準であると何びともお考えになるだろうと思うのです。従いましてその基準はいずれも合理的である、その基準の噛み合わされた結果として現実に多少均一にならない部面が出て来るということは、すべての制度について運用上生ずることでありまして、我々の立場から申しますれば、これは法律上止むを得ないことであるというふうに考えるわけでございます。
  67. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 患者側ですね、医療を受ける人たちがその医師から薬を欲しい、その医師も又調剤能力がある、こういう場合に、現在の医学を学ぶ者はそういうのは普通なんですが、そういう場合でもそれはいけない、こうすることは法律としては本質的に僕はおかしいじやないかと、こう思うのです。どうですか。
  68. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 大体お話に出ております事柄は立法政策の問題に相当関連しての事柄であろうと私は考えます。従いまして、この法案について憲法違反かどうかというふうにお尋ねがあれば、私はこれは憲法違反とは考えません。かくかくの理由でございますというふうに先ほどから申述べたわけであります。ところがこの法案をここをこういうふうにいじつたらどうだ、右のほうにいじる、左のほうへいじるという考え方は、これは立法政策の問題としていろいろ私はあると思います。これが最初の立法政策上これ一つしかないという案なら、これ又法律的に申しますれば、そういう答えになると思うのであります。
  69. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 長官に尋ねると何ですから、実際に厚生当局並びに政府委員に質問しますから……。
  70. 山下義信

    委員長山下義信君) 法制意見長官並びに法制局長に対して御質問はございませんですか……。  意見長官に一つお伺いしておきたいのですが、「販売又は授与の目的で調剤してはならない。」二十二条ですか……、これは恐らく昔風の書き方によれば他人に授与してはならんという意味だろうと思うのですが、妻とか子供とか家族の場合は授与の範疇に入りましようか、どうでしようか。
  71. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは文字そのものから申しますと、授与ということの相手方がきめてございませんから、お尋ねの自分の家族に対して渡すために調剤するということも入るではないかということは一応言えそうでございます。言えそうでございますが、授与の目的で調剤云々というようなことがありまして、恐らくこの御指摘の例の場合は我々素人の家庭におきましても同様な事態はこれはあり得るわけでございます、そういう場合を予想しての立法とは考えられませんから、仮りにこれが違反事件となつて出て参りましても、これは裁判官がおきめになることで私ども予測はできませんけれども、まさか処罰はされないであろうというふうに考えます。
  72. 山下義信

    委員長山下義信君) そうすると、意見長官の御意見では、授与の範囲内ではあるが、実際問題というときには情状酌量されるというのでしようか。授与の範囲内には入らないという御意見でしようか。
  73. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 文字の文理上の解釈としては入りますが、情理上の解釈からして只今申述べましたような結論になるだろうというふうにも思つております。
  74. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 只今の二十二条のところでございますが、最後のところで「患者又は現にその看護に当つている者に対し、処方せんを交付しなければならない」。この「交付」という言葉は何か相手方があつて受取るというときのみに交付という字を使つて、こういう場合には提供という字を使うのが本当ではなかろうかという人がありますが、これは如何でございましようか。
  75. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 正におつしやる通りでございまして、交付というのは相手方が必らずおりまして、その相手方に渡すという……、とにかく紙でありますればその紙が相手方に移る、その渡すという意味でございます。提供ということになりますというと、ただ差出して相手方がこれを取るか取らんかは別でありますけれども、とにかく相手方の手に移すまでの気持が提供という言葉ではいささか稀薄だということになると思います。
  76. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 字句の解釈がいろいろ出ているようでありますから、私も一言意見長官にお聞きいたします。調剤という言葉の解釈ですね、例えば單味のものをそのままやるというような場合、或いはいろいろ調合されて一つの錠剤のようなものができておるような場合に、それを医者がやることもやはり調剤の観念に入るのか入らないのか、法制的に解釈を聞いておきたいのです。
  77. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 何でも私は知つていなければならんはずになつておるのでございますが、(笑声)只今の点は用心をいたしまして先ず厚生省当局からお答えをして頂きまして、それで私がその通りならその通りということで一つ御勘弁をお願いいたします。
  78. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 結構です。厚生当局からお願いいたします。
  79. 松原一彦

    ○松原一彦君 只今谷口委員からお尋ねしました第二十二条の「処方せんを交付しなければならない。」というこの文句は、例えば今病院でやつておるような場合、医師から直ちに薬局に廻るということをも拘束いたしますか。本人に交付しない、薬局に交付する……。
  80. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 「患者又は現にその看護に当つている者に対し、」というのでございますから、薬局というのは患者でもありませんし、その看護に当つているものでもございませんから、薬局に渡しただけではこの条件には嵌らないというふうに考えます。
  81. 松原一彦

    ○松原一彦君 これは手続上の問題でありますけれども、そうすると結局今後の病院等において薬局を持つておる所でも、医師は診察のみを行なつてそれに応ずる処方箋患者に手交する、患者は病院の薬局からもらつても、或いは地方薬剤師からもらつてもよろしいと、こういうことになるわけなんでございますね。この法文上の解釈はその病院からもらわねばならん義務は患者にはないわけなんですね。
  82. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) そうです。
  83. 松原一彦

    ○松原一彦君 わかりました。
  84. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 調剤ということにつきまして、大体私どもがかくのごときものであると考えておりますことを申上げます。調剤という言葉一般的に最も広く考えますと、これは薬剤を調製するあらゆる場合を含むことになるのでございますけれども、ここでこの法律におきまして調剤と申しておりますことは、これは特定の人の特定の疾病を治療するために薬剤を調製する行為を言つていると存じます。従いまして、その調整する行為の中には秤量、即ちはかるとか、或いは薬を混合するとか、或いは溶解をする等のそういうよう事実行為、これを調剤と申すと存じております。なお従来調剤という言葉の解釈につきましては、大正六年の三月十九日の判決に示されました大審院の見解がございますが、それを御参考までに申上げますと、調剤とは、一定の処方に従い、二種以上の薬品を配合し、或いは一種の薬品を使用し、特定の分量に従い、特定の薬法に適合すること、特定人の特定の疾病に対し薬剤を調製すること、こうなつております。ところが只今の薬事法におきましては、販売又は授与の目的で行う調剤薬剤師以外の者に禁止いたしておるのでありますから、前項に申上げました調剤行為でありましても、医者患者の処置のために使用する場合の調剤行為は含まれていないと、こういうふうに解釈いたしておる次第でございます。
  85. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 法制意見長官今のでいいのですか。
  86. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 全く同感でございます。(笑声)
  87. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 さつき私が質問しました例えば調合してあるような錠剤のようなものを与えるとか、單味のものをやるというような具体的な話ですが、それは今の説明から言うとどうなつたのですか。
  88. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 只今の問題につきましては従来いろいろな意見があつたのでございますけれども、併しどこかで線を引かなければならんということになりますと、その線は大体私が申上げましたように薬剤を調製する行為であつて、秤量とか或いは混合、溶解等の何らかのそういう事実的な行為ということを調剤と私どもは解釈する次第でございます。
  89. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 率直に調剤の観念に入らないということですね。錠剤のものをやる場合には……。
  90. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) それはこの錠剤にいたしましても、若しもその処方が医者から出されまして、その錠剤を作らなければならないというような場合は当然これは調剤に入るのでございます。さもなくて売つております錠剤というようなものを扱うということは調剤の行為の中に少くとも私ども考えておりますところの事実行為というものにはならないと、こういうふうに存ずる次第でございます。
  91. 松原一彦

    ○松原一彦君 これはどなたにお尋ねしていいかわかりませんが、私全く素人でございますからわからないのでありますが、如何なるものにもすべて技術者には助手というものが付きますが、調剤助手というような者があるのでございましようか、ないのでございましようか。
  92. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 薬事法におきましてはそういう者はございません。
  93. 松原一彦

    ○松原一彦君 そうしますと、薬局内においては薬剤師のみがやるのであつて、これを包んだり袋に入れたりするようなことも助手を使うことはできないのでございますか。
  94. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) それは実際問題といたしましては、調剤ということは只今申上げましたように秤量、混合或いは溶解等の事実行為でありまして、且つそれを患者がそのまま服用できますような形に整えるわけでございますから、従いまして仰せのような点につきましては、興薬剤師の監督の下においてならば少くとも紙に名前を書きますとか、或いは袋に入れますとか、或いは薬を包むくらいは差支えないと思いますけれども……。
  95. 松原一彦

    ○松原一彦君 それをお尋ねしますのは、現行薬事法にも禁止せられておるものと認められる医者薬局における今日の取扱方、医師のみが薬剤師の行う調剤を自己の診療する患者、即ち自分の出した処方箋によつて行うことができることになつておるのでありますが、私の知つている限り多くの医者調剤はいたしておりません。皆大部分医者以外の家人がやつているというのが今日の実例でございますが、それは助手として厚生省はお認めになりますか、或いはこれは薬事法違反としてお取締になりますか。
  96. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 当然医者以外のものが薬を量つたり、或いは混ぜ合したりすることにつきましてはこれは薬事法違反だと思います。
  97. 松原一彦

    ○松原一彦君 この立法ができてからすでに二年以上になげます。現行の薬事法はすでに二年以上になりますが、その間その辺に対するところの取締状態がわかつておりますかの違反者としてお挙げになるなり或いは御督励になつた事実がありますか。これを承わります。
  98. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) その件に関しましては、常に関係地方庁の関係官に対しまして督励いたしているのでございます。事実問題といたしまして、そういう点につきまして挙げました例もございますのですが、ただその問題につきましては非常にむずかしい点がございます。と申しますわけは、大体におきまして医者のいわゆる調剤所は小さな窓口が見えるだけでございますから、従つて何らかの囮的な行為でもやります以外には、その事実行為をつかまえるということは極めてむずかしい点に難点がある次第でございます。
  99. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 この薬事法考えておる薬剤師というものの主たる仕事といいますか、仕事は何かということですが、変な質問ですが、お聞きした
  100. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 従来のいわゆる明治二十二年に出ましたところの薬品営業取締規則、或いは大正十四年に出ましたところの薬剤師法におきましては、薬剤師とは、ちよつと私は今ここに持つておりませんが、薬剤師とは調剤をなすものを言うと、薬剤師は薬品の製造並びに販売をなす者とする、こうなつてつたのでありますが、その後戰争中の昭和十八年にできましたところの薬事法におきましては、薬剤師調剤並びに医薬品の製造云々ということがございまして、薬事衞生に寄与することを以て目的とするということになつてつたわけでありますが、今回の薬事法におきましては、薬剤師医薬品の調製、鑑定、保存、調剤並びに交付を行うとなつておる次第でございます。従いまして、只今申上げましたことが薬剤師がなすことでございます。
  101. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 先日高野証人意見によりますと、薬剤師の主たる仕事の範囲というものが、主たるところは調剤だというようなお話があつたのでありますが、これは私の質問の点についで証人からそういうお答えがあつたのでありますが、常識として薬剤師の大部分の仕事は調剤とお考えになつておるのかどうか。
  102. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 私が只今申上げましたように、従来の薬剤師法或いは薬事法におきましてもその通りでございましたが、極く新らしくできました薬事法におきましては只今申上げたようなことでございまして、但しこの極く新らしくできました薬事法はこれは相当アメリカ側の示唆も入つておりまして、極く具体的に薬剤師がいたします事柄をすべて羅列した次第でございますが、大体明治初年以来日本におきましては、薬剤師なるものを作りましたのは、これは即ち薬剤師をして調剤をせしめるということが先ず主眼であると私は存じております。なおこれに関しましては現在の薬剤師職業の分布を申上げますと、非常にはつきりすると思うのでございますが、大体現在薬剤師は約四万六千おるのでございますが、その中で薬局を開設いたしておりますものが二七%、それから薬局に勤務いたしておりますのが七%でございます。町の薬局でございます。即ち三四%が町の薬局におるわけでございます。それから次に病院、診療所の薬局に勤務いたしておりますのが、一〇%でございまして、即ち薬剤師の中の四四%、一番大きな位置を占めております四四%が即ち多かれ少かれ調剤に関係いたしておるかたであります。それからそのほかに医薬品の製造、販売、輸入業ということに従事しているのが二五%と申しますわけは、現在薬事法におきましても医薬品の製造、販売に関しましては、原則といたしまして薬剤師責任者として売らなくてはならないということになつております。その他衞生行政に携つておりますのが五%、それから後は研究或いは教育に携つておりますのが一%ということになつておりまして、なおこれ以外に全然タツチしておりませんのが二五%でございますが、これは大部分女でございます。従いまして薬剤師の数をこれを一〇〇%といたしまして、四五%、或いはもつと大きい率でございますか、これが即ち現在その職についております薬剤師でございます。
  103. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私こういう質問をしましたのは、この間からずつといろいろの論議を聞いておりますというと、どうも調剤したり何かしておる薬剤師にこういうことを言つたら悪いかも知れませんが、大学教育を経た資格を持つ者で更に国家試験を受けて薬剤師になるわけですね。今のそれほどまでにしなければならな、のかどうかというと、どうも調剤ということだけを主として考えると、どうもそこらの感じがぴんと来ないのですが、調剤を主とする薬剤師制度にしても大学教育まで受けさして、更に国家試験まで経て薬剤師というものを作らなければならぬことかどうかということについて、薬務局長の御意見を伺いたい。
  104. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 当然薬を正しく調剤いたしまして、そうしてこれを患者に与えるということに対しましては、これはひとり調剤の技術だけの問題ではございませんで、それに達しますにはこの薬がどういう方法でできているか、或いはどういう成分を持つているか、どういう点で有効であるか、或いはこの貯蔵はどういうふうにすべきか、文或る場合には薬自身が正しいものかどうか、即ちこれを鑑定し分析するだけの能力がなければならない。私はこれは当然のことでございまして、その点につきましては、これは何びとも認めているわけでございます。と申しますのは、大体外国におきましても、四年間の薬学教育というものは殊にアメリカ等におきましても、殆んどアメリカは殊に日本よりその点がはつきりいたしておりまして、いわゆる薬科大学を出ました者は大体におきまして調剤に従事する薬剤師になるわけでありますが、その教科課程におきましても同様でございます。それらの点につきましては、くどくなりますから私は深くは申上げませんが、併しながら大体薬科大学におきますところの教科、殊に專門学科としての教科時間は大体三千時間ございます。それ以前におきまして勿論教養的な課程がございますが、專門的な授業時間といたしましては大体三千時間でございますが、その三千時間の中で、只今申しましたところのいわゆる薬の性質であるとか、薬の製造であるとか、更にその基礎になる化学であるとか、そういつたものが大体二千二百時間ございまして、更にその中で調剤の特に関係いたします時間は少いところで三百時間、多いところでは四百数十時間というものを調剤に使つているのが大体の例でございます。
  105. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私がこういうことを聞きましたのは、今の一体いわゆる薬理学とかそういう化学的のことが主であるとするならば、お医者さんのほうにも大体そういう常識というか知識は相当持つておるのじやないかと我々考えられる。調剤ということがこね合わす、混合したり、練つたりすることが主でないのだとすれば、学問的のことならば大体お医者さんにも持つているのじやないかというような感じがするので、それを先ほどからいろいろ議論されている法律で罰則までつけて医者から禁じてしまうということはどうも国民的感情として納得できないのではないかという私自身感じを持つし、又一般の人も持つているのではないかと思いますので、今のような質問をしたわけなんです。
  106. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 先般医科大学或いは総合大学の医学部長或いは教授のかたがた証言によりましても、全体の時間的には、いろいろの御説があつたようでありますが、大体調剤に関係するといいますと多少語弊がありますが、調剤に関係する薬理学或いは処方学というものは全体で百五十時間というようなお話があつたのであります。なお薬そのものに関しますところの講義というものは、私の知つております範囲では、医科大学においてはなされておらないと私は存じております。即ち私が申しましたところの薬の性状であるとか、或いは薬の製法であるとか、或いは薬の鑑定の仕方であるとかいうようなことは、これは医科大学等におきましては教授されていないと私はさよう承知しておる次第でございます。
  107. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 もう一つ今日示された資料の薬事法二十二条第一項で除外される緊急治療というものがあるのでありますが、この緊急治療というのは、文字通り応急処置というような意味の場合だけ言うのでしようか、どうでしようか。これは薬務局長か、或いは医務局長か、どつちかわかりませんが……。
  108. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 勿論この問題につきましては、これをはつきりいたしますことは、すでに法律の中にもございます通り審議会の議を経なくてはならない次第でございまして、一応私どもといたしましては、大体そういつたことが問題になるのではなかろうかというだけの案でございます。只今仰せになりました緊急治療の場合と申しますのは、私どもの解釈では特に緊急止むを得ざる場合というふうに解釈いたしておる次第でございます。
  109. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私は更に医者病人を診た場合に、直ちにこれをどう診断していいかいろいろわからないような場合に、試みにいろいろ投薬したり、いろいろなことをしなければならん場合もある。そういう場合もやはり医者としては一応その場合応急処置、緊急処置と考えて、そういう場合までもこの概念に入るかどうかという、これは省令ができてからの問題かも知れませんが、我々この医薬分業審議する際の参考として、どの程度まで医者が投薬できるかという限界を知りたいので承わつておるのであります。
  110. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 厚生省におきまして、各関係技術官その他等がいろいろ話合いましたところでは、只今仰せになりました医者がいわゆる探りを入れるというようなことは、この緊急治療の場合に該当しないのではなかろうかという意見が強いのでございます。
  111. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 医務局のほうも大体そういうお考えですか。
  112. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 私のほうから只今の御質問の問題は、医師法歯科医師法にも関連のある事柄でございますからお答え申上げたいと思います。私どもは観念的には、医者の行います治療の手段として、処方と処置というような、これはすでに診療録の記載事項の中に省令に掲げられてある文句でございます。こういうものを一応区別しております。その場合に処置と申しまするのは、医師又は医師の補助者でありますところの看護婦が医師の指示に従いまして直接患者に手を下して行いますものを指す。そのことは従つて先ほど薬務局長が申上げておるように、全然調剤とか、或いは処方箋とかいう問題には関係のないことであるというふうに解釈いたしておるのであります。そこで残りました処方の問題でございますが、その中には、ここに掲げました緊急治療が入るという考え方がございます。これは具体的に申しますならば、結局患者に今すぐ薬を飲ませなければ、病状から申しまして薬局に行つて薬をもらつて飲むのでは間に合わん。すぐ飲ますことが治療上必要であるというような判断がされますような場合には、これは直接手を下さずに患者自身の手で飲ませる場合がございます。そういう場合は処方という観念に入る。それがここで言う緊急治療の場合であるというふうに解釈いたしております。
  113. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私は医者患者を治療する場合は科学的、物理的なことばかりでなしに、やはり患者に安心を与えるとかいう精神的要素も非常に入るのじやないかと思いまするので、神経質になつておる患者処方箋を見たりして非常に神経を高めるとか、自分が非常に疑うとか、いろいろな場合がると思うのです。そういう場合はやはり医者が当然投薬して行かなければならんような場合が起るんじやないかと思いますが、そういう場合も将来医薬分業の際にどういうふうに考えてもらえるのかということが、私はこの法律案審議する上に私個人としては非常に重大な関心を持つておるわけであります。そういう場合についての考え方を伺いたい。
  114. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) その問題につきましては、医薬制度調査会におきましても若干の論議をせられたと聞いております。その後厚生省におきましても、この法律の施行上あの仕事は非常に重大な問題でありますので、いろいろと論議を重ねて参つたのであります。只今のところまで結論に達しておりますのは、事実上さような場合があることは私どもも認めておるのでございます。併しながらこれは恐らくお話の点は処方箋の交付のことに関連してのことと存じます。処方箋を交付するような場合に、薬剤、薬品の内容を知らせることによつて、場合によると極めて稀ではありまするけれども、病状が本人にわかつてしまう。そうして本人が不必要な心配をし、治療上の効果が上らないことを生ずる慮れがあるということは考えられるのでございますが、さような病状のあることを全然私ども否定いたすものではないのでありますが、その種類の患者は先ず多くの場合相当重症な患者でありましようし、又そういう患者につきましては看護に当つておる家族その他の者もおると思います。そういう者に処方箋を交付する建前にいたしますれば、先ずそれ以外には精神的な、処方箋を交付しては困るというようなことは考えられませんでしたので、処方箋の交付につきましては、そういう考え方から特に精神的な影響ということについて特別な考慮を今申上げた以上に払う必要はないであろうという結論に到達いたしたのであります。
  115. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私は更に医者が探りを入れる場合に日に日に薬を変えてみるというような場合にも、毎日処方箋が、違つた薬が出て行くというような場合、相当薬を与えても患者のほうで毎日薬が変つておるということがわかるというような患者もあるかも知れませんが、処方箋でそれがはつきり出るというような場合にはこれは相当考えてもらわなければならないのじやないか。そういうふうに第二十二条第一項において除外される場合が相当大幅にあるのかどうかということは、相当重要な問題になると思うので私は聞いておるのですが、今久下次長が言われた以外にも患者に対する関係で考えねばならん場合がこれは相当あると思うのです。仮にこの制度が実施されるというような場合にはそこらの点はよほど愼重に研究してもらつて審議会で研究されるということになつておりまするので、それがどの程度までされるかということによつて、我々は各国民として、或いは患者としてこれを認めていいかどうかという判断の一つの資料となると思うので聞いておるのです。
  116. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 只今お話を伺つておりますると、薬事法第二十二条の調剤に対する例外の場合と医師法歯科医師法の、医師法第二十二条、歯科医師法第二十一条の処方箋の交付に関する場合のこととが若干入り交つてお話になつておるようにも窺えるのでありますが、私が申上げました趣旨は、お話の御趣旨は患者に薬品を与えまして、薬剤の内容を知らせることによつて治療上に影響があるというような場合についての御意見だと思います。私は医師法歯科医師法の例外としてお答え申上げたのでありますが、薬事法第二十二条の例外の場合には医師がこの一号、二号に該当する以上はその場合でも……。ちよつと混乱して恐縮いたしました。この場合と区別して話をする必要があるかと思うのでありますが、勿論この薬事法第二十二条の例外を定めます場合には相当慎重に考えなければならんのでありますけれども患者に対する精神的な影響というようなことにつきましては、薬事法二十二条の場合にはそう考慮する必要はなく、むしろ医師法歯科医師法処方箋の交付の場合に考えていいのじやないかと思つております。これにつきましては、先ほども申上げましたようにいろいろ検討いたして見たのでございまするが、患者又は現にその看護に当つておる者ということに、どちらかに渡せばいいということによつて大体問題は解消するのではないかというのが私どもの到達いたしました結論でございます。
  117. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 もう一点、答えは簡單でいいのですが、これも我々の判断の上に非常に必要なことだと思うのですが、この分業が行われることによつて国民の負担は、医療費というものは高くなるのか安くなるのか、それを医務当局、厚生省は今どういうふうに考えておられるか。それだけの結論だけでいいのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  118. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 実は前提申しませんと、結論だけはちよつと申上げにくいのでありますが、ちよつと簡單に申上げますが、医療費はこれをやることによつて高くなるかどうかということは前にも申上げたことがあろうかと存じまするが、この法律を施行いたします前提といたしまして、医療費を如何にきめるかということは私ども審議会で検討して頂かなければならんと思つております。これは結局きめ方によると何度も申上げておると思うのでありますが、きめ方によると思うのでありまして、ただ実情から考えまして、全然上らないようにきめることは、医師の生活等を考慮いたしました場合には苛酷である。若干のことは考慮しなければならんという程度には考えておりますが、併しそれにいたしましても、そう大したことはないと思うとこういうふうな考え方であります。
  119. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 そうすると、大体現在のような薬価というか、この条件の下に分業制度が行われて、医師の診察料、薬剤師調剤料というものが新たに加つて来るわけだと思うのでありますが、それならば大体或る程度は常識的な判断でいいのですが、高くなると我々は解釈していいのですか。きめ方によつて高くならないかどうかわからんとおつしやつたのですが……。
  120. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 私ども考え方としては高くならずにきめられるというように考えております。
  121. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 そうしますと、これはやはり健康保險国民健康保險保險経済のほうにも、まあ高くならんということであれば影響はないというふうに我々は判断していいのでありましようか。これは保險局長がおられんから医務局長、医務局の立場からお答え願います。
  122. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 結論だけでちよつと申上げにくい点がありますが、社会保險とか、或いは私どもの直接やつております国立療養所というようなものにつきましては、私ども責任を持つて厚生省として或る程度のことはきめられるのでございまして、その限度において私どもは高くならないきめ方ができるであろうし、高くならないであろうと申上げておるのであります。他の一般自由診療の場合におきましては、これは法律上も何ら私どもは診療報酬をきめるわけに参りませんので、実際の診療報酬の動きを見る以外には仕方がないと考えております。
  123. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと確めておきますが、次長の最前の答弁は、分業による一般医療費の高くなるか安くなるかについての御答弁になつたのか後段はあなたの所管する国立病院その他の診療所等の場合においては高くならないというような御答弁でありましたが、どちらの意味でございましようか。
  124. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 最初お答え申上げたのは、その辺を区分せずに申上げましたので、むしろ後のほうのほうをしたお答えをとつて頂きたいと思います。
  125. 山下義信

    委員長山下義信君) わかりました。
  126. 松原一彦

    ○松原一彦君 この法律が成立しますと、医師にも薬剤師にも大きな制約が加わると思うのでありますが、現行の薬事法ではいわゆる国民公定処方とかいうものであらかじめ薬を調剤してこれを販売する行為は薬剤師にも許されておると開いておるのでありますが、それは今度の法律ではどうなりますのでしようか。その点を明らかにして頂きたい。
  127. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) 従来薬局を開設いたしております薬剤師に対しまして、いわゆる薬局売薬なるものが許されて認められておつたのでございます。即ちそれは一定の処方のものを役所に届出しまして、そうして例えば胃の薬なら胃の薬というものはこうこうこういう処方のものを自分の所の薬として売出したいという意味で、そういう許可が与えられておつたのでございますが、このものが非常にたくさんな数になりまして、数と申しますか、種類になりまして、とても収拾がつかないくらいの種類でございましたのですが、それが戰争中資材の不足或いは原料薬品の不足等でこれを或る程度の基準に合致したものにすることが適当であろうということからいたしまして、薬局におきまする売薬の整理をいたしたのでございます。それによりまして、今月俗に申しております国民処方というのができたのでございますが、これは俗称でございます。正しく申しますならば、薬事法によりまする公定書の中の国民医薬品集、その中の一部をなしておるものでございます。これにはいろいろな種類がございまして、胃の薬から頭痛の薬、或いは眠り薬、或いは皮膚病等の薬、いろいろのものがございますが、併しながら大体従来何万といろいろな種類がありましたものを一つにしたものでございまして、それには番号がついてございまして、検印の番号がついておる次第でございますが、この問題につきましては、臨時診療報酬調査会或いは医薬制度調査会におきましても、何だか薬剤師医師に類似したような行為をするような、つまりその処方のものを作ることは、作つて患者に与えることはそういうような感じが深いというようなことでいろいろな問題が出ましたのでありますが、その際の結論といたしましては、極く必要なものを処方を更に整理いたしまして、そうして整理されたものをやはり薬剤師に、即ち薬局においてこれを製造販売することを許そうではないかということになつております。と申しますわけは、大体薬剤師医薬品の製造をなし得る能力を持つておりまして、而もこれは設備がその際薬事法にございまするところの基準に合致いたしますれば、厚生省におきましてその製造を許可しておるのでございます。従いましてその意味において国民医薬品集にございまする薬も又薬局薬剤師たちがその許可をとつておるのでございまして、その意味におきましては当然この種のものの内容或いは種類に対しましては、或る程度の考慮がなされるかも知れませんが、将来ともこのものは作り得る次第でございます。但しこれが医者が処方いたしますとか、或いは医者処方箋によつて薬を与えるというようなふうな誤解を生じないようなことには十分注意が喚起さるべきであります。なお只今問題になつておりますところの国民医薬品集の中におきまするこの種のものは、これは必ずしも薬局におきますところの薬剤師のそういうような売出すところの薬というわけではございませんで、一種のこれはそういう製剤類の基準となつておるものでございまして、従いましてその意味におきまして、これが大量に製造工場におきまして作られておる例もたくさんあるのでございます。例えて申しますならば、その中にサントニン散というものがございます。これは御存じの虫下しの薬でございますが、これは今日サントニンが十分でないという点からいたしまして、一般の売薬、いわゆる家庭薬の処方はすべてこの国民医薬品集の中にございまするところのその処方に従つて作らせておる次第でございます。
  128. 松原一彦

    ○松原一彦君 法を立てる以上は、この法が行わるべきであることをば前提といたさなければなりません。今日午前中の日本における高い知識層のかたがたの陳述にも意見が半々に分れておるのでございます。現に医療法によつて二十床以上でなければ病院とすることはできない。四十八時間以上患者をとめ置くことはできないという法律ができてすでに数年も経つておる。この十月かはこれを実施すべき期限に到達しておるというのでありますが、果してこの実施ができるお見込でございましようか、どうでございましようか。これは私は関連事項としてこの立法の上から、法の権威の上から申上げる。日本の病院は多く燒けておるのであります。患者を収容する余地がない。五床、十床の小さな病院が今日まではこれを収容して参つたのでありますが、理想から申せば二十床以上、広い敷地と建物とを要することは勿論であります。そこまで行きたいのであります。是非そこまで行きたいのでありますが、日本の経済状態社会生活、この貧困極まる国民生活の現状からできないのであります。又私の知つておるものでも若干の産科の病床を持つておるけれども、これがこの秋からはできないということになつて非常に悩んでおる、それならばそこに新らしい増築を行つて、投資をして要求通りの、基準通りの病院を造り得るかというと、その資金の運用ができないのであります。非常に困り切つておるのでありますが、果してその医療法に示すような規格の病院としての実施が、四十八時間以上とめ置くことのできないこの法律がこの期限通りに実施になるお見込でございましようか。どうでしようか。
  129. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 只今のお話は医療法第十三条の規定についてのお尋ねでございます。この規定の根本的な考え方についての是非の議論は別といたしまして、少くともかような規定ができておりまして、これがお話の通り一応十三条の適用が三年の期限のことについては今年の十月に切れることに相成つております。それで実施できるかどうかというようなお尋ねと拝承したのでありますが、私どもが予備的な調査をいたしましたところでは、若干の地域におきましては現状において適用施行をしていい部分があるような結論を得ております。その意味は現在診療所が持つておりますベツド、過去の最高の収容数並びに一方においてはその附近にあります病院の収容余力というようなものを総合勘案をいたしまして、診療所におりました患者が期限後におきましては、病院のほうに収容される可能性があるかどうかという見地から予備的な調査をして見たのでありますが、今申上げたような大体見通しでございます。  なおこの点につきましては、極めて重大な問題でもありますので、私どもとしては近く全国の各都道府県の主務課長会議を開催いたしまして、その点につきましてはとくと打合せをして見たいと思つております。その結果でございませんと、具体的な標準等を只今申上げる段階に至つておらないのであります。十分地方実情をさような機会に伺いまして、そうしてこの点につきましては無理のないような施行をいたすようにしたいと考えておる次第であります。
  130. 松原一彦

    ○松原一彦君 無理のないようなふうにいたしたいということは、これを現行医療法の示す通りに実施することには困難があると、これをやれば無理になると、だからして或る程度まではこれに修正を加えて或いはこの時期の延長を行なつて国民の要求に応ずる、時代の現状に応ずるだけのここに何かの手配をしようというお考えと私は思うのでありますが、そうして見ますと、私どもが幾多考えさせる問題に逢着しております。例えば結核の撲滅のためにあらゆる手段を講じておるのでありますが、伝染の慮れのある、感染が周囲に及ぼす影響の強いものに対しましては、強制収容をするという法律はできるのでありますが、併し収容すべきベツトは現にないのであります。ないのにどうして強制収容をすることができるか、結局その法律は行なわれないということになるのであります。  法律は現実から逸脱したものであつてはならないと思うのであります。若し法律は作るけれどもが、これは行なわれないということが見えすいておるものならば、我々立法者としては非常な用意をして十二分にこれを審議してかからなければならないと思うのです。例えばこの法律ができますというと、観念的には非常な進歩であります。私は悪いとは思いません。若し医師というものの権能のうちから調剤というものを除いても法理的にも間違いないということになり、将来その方針で医科大学においても学生を養成し、薬科大学においてもこれに応ずる薬剤師を養成すれば、それはいいのであります。観念的にはいいのでありますが、一体日本のこの貧乏極まるこの現実、敗残の日本の間に合わせばかりやつておる現実に、この理想の物差が当てはまるかどうか、今日まで我々は幾多の悩みを持つて来ておる。六三制の問題のごときも強力な示唆によつてやるのはやられましたが、今日は全く地方の経済が混乱してしまつて、或いは引戻そうという説も起つておる、新制大学の整理も起つておるのであります。かような場合におきまして、この法律が果して円満に行なわれるかどうか、これは現に今行なわれておるところの薬事法ですらも実際においては空文なんであります。この責任政府はお考えにならんのでしようか、どうでしようか。全く空文であります。医師でない者に調剤せしめておる現実は誰が考えても満ち満ちておる。これは誰も知つておる事実で、政府としても御存じないことはない。窓口が小さいからわからないというのは詭弁です。そんなことはありません。  又薬剤師は診療行為をしてはならない、無診療投薬をしてはならないということは今日の薬事法にははつきり現われておるのであります。それにもかかわらず国民処方というもの、公定処方といつたような名の下にやはり無診調剤は相当数私は行われておるものと思うのであります。法律は作るけれども、その法が行われないというところに私どもは法の権威を悲しむのであります。今日の証人がたびたび申されましたように、社会情勢に副うたる立法ができなければならないのでありますが、米英のごとき豊かな経済の下において自然になつてつた文化と違つて、この貧乏極まる日本の中に今国民が果してこの法律を制定して国民も満足し、或いは医師もこれを違法行為をせずに実行し、薬剤師も無診投薬を行わないで法の示す通りに行われるかどうかという見通しにつきまして、私は深く憂うるものであります。そうして一方にはこれを行えば非常に罪人を出すのであります。若し掘つてつたならば今日といえども、この薬事法でも、私は開業医の大部分犯罪になると信ずるのであります。それは氣の毒だから大目に見て置くということでは法の権威はございません。そんなことならば、さような法網を細かにして、そうして拔けられるような穴をあけるということはよろしくないことなのであります。私どもは決してこの医療進歩を妨げておるのではないのであります。医療進歩を望むけれども、貧乏な日本と、この社会情勢の下にこの飛躍的な、而も七十年間慣行して参つておる身にしみ込んだ医師考え方があり、薬剤師考え方があるのであります。そこに私は政府当局がどうもまだ定義もはつきりしないものがある文法の行われるという見通しにつきましても、私自身には非常な大きい危惧の念を持つておりますために実は念を入れようといたしておるのであります二十八年の一月から行われるといろ医療報酬の点についても私は先般来伺つておるのでありますが、これは私は至難だと思う。なかなか以てこの解決が付くものじやない、大きなこれは論争となつて事態は満足すべき結論は出ないのではないか、そのときにやはり多数決で押切つて紛争の種を蒔きつつこれを進めて行くかどうか、又三十三年から行わるるところの嚴然たる分業が現下のような姿において行われて果して医療の目的は達せられるかどうかを疑うのであります。私は医師薬剤師とは断然対等なものだと思う。決して一方の従属関係のものじやないと思う。併しながら医療という目的を達する上からはどうしてもこれは協力行為でなくてはならん、分業でなくて協力でなくてはならんということは高野薬剤師協会の理事長もはつきり申しておる。どうしてもこの短期間内に押切つて、この法律を可決するか否決するかというところまで行かなければならんものであるか、なお十二分に審議して、そうして医師の側においても満足し、薬剤師の側においても讓歩もし満足もする、そうして国民も納得するような線が出ないものであるかどうかと思つて、私は先般来かように質疑を続けておるわけであります。その点につきまして、当局の側ではどうしてもこの法律を押切つて今出してやらねばならないものであるかどうか、又やる場合における責任をお持ちになるかどうかを伺いたい。
  131. 有馬英二

    ○有馬英二君 これに関連して、只今の松原議員の質問は非常な重大な質問であると私は思いますから、すべからく厚生大臣の出席を求めてその答弁を聞きたい。
  132. 山下義信

    委員長山下義信君) 厚生大臣しばしば出席を要求いたしましたのでございますが、労働委員会で発言中で質疑応答中でありますので、出席できかねるということでございます。只今有馬委員の御意見もございましたので、松原委員質疑に対しましては大臣の出席を求めまして、責任ある答弁をさせるということでよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 山下義信

    委員長山下義信君) さように取り計らうことにいたします。医務局次長から発言を求められました。
  134. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 先ほど医療法の十三条のことに関連いたしまして、私の申上げましたことが、お話伺つておりますと、或いは若干誤解を生ずる慮れがあるのではないかと思いまして、御質問ではございませんでしたが、もう少し具体的に申上げておきたいと思います。  私が先ほど無理のないようにいたしますということを申上げましたのは、具体的に申上げますると、医療法第十三条の精神に従つて収容を要する患者がありました場合には、病院に収容するというのが十三条の精神であると考えております。そういうような収容を必要とする患者が出ました場合に収容する病院がなくなるというようなことが生じましたならば非常に無理である、そういうことのないようにいたすというつもりで申上げたのでございます。お話を伺つておりますると、現在猶予期間の間患者を収容して病室として使つておりました診療所が、若し十月以降あの医療法の第十三条が適用されることによつてその当該診療所としては非常な損害を蒙るというような問題につきましては、私どもとしては法律の施行上はどうもいたし方ないことであるというような点でおるのでございます。その辺一言弁明申上げておきます。
  135. 松原一彦

    ○松原一彦君 それじや伺いますが、ここに十五床の小さい診療所があるとします。併し十月が来ますと僅か四十八時間しか患者をとめることができないのであります。併しながら現にそこには病床があるのでありますが、これは一体どういうふうに御処分になるおつもりでございますか。国家はこの損害に対する弁償をおやりになりますか、どうですか。
  136. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) その問題になりますると、一つの立法論になると思うのでございまして、私の立場からそれをお答え申上げる筋合のものではないと思います。国家補償の問題につきましては、私ども法律によつて定められた事項でもございまするので、国家補償をする必要はないのではないかと考えるのですが、なおその点は勉強をしてみたいと思つております。
  137. 松原一彦

    ○松原一彦君 いや私はそこに無理があると言うのであります。今六疊の間に八人もおらねばならないほどに住宅は欠乏しておるのであります。ところが二十疊以下でも診療所としては現に病人も収容してそのベツドを利用いたしておるのであります。それは診療所であつて病院ではないというようなところからそれは相成らん、賠償責任は別問題としましても、そういうふうに規格を高くとることに無理があるのじやないかと私は言うのです。だから恐らく私はこの法律の適用は恐らく何年か延びるものと心得る、又延ばさなければならんものと私は心得る。さような高飛車のものであつてはならん、現状に即して国民生活に最も適切な措置をとらなければならんのが我々立法部のものの責任であります。さような残酷な措置はとるべきじやない、ここにもすでに見通しの誤りがあるのであります。できない法律を作つて、そうしてみずから悩んで法律の権威はそこでなくなつてしまう。欧米の標準等をそのまま取つて来たのでは到底いけない、日本の現実であるということを私は悲しむと同時に、これに応じないようなものを作ることに対する非常な懸念を持つということをさつきから申上げておるのでありますから、私はあなたのおつしやることをば誤解しておるのではないのであります。
  138. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  139. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を起して下さい。  保利大臣は労働委員会で発言中でございますが、只今質問に対しての答弁中でございますので、済み次第出席するとのことでございました。
  140. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 先ほどの松原委員のお話について関連して申上げますが、先般本委員会においてこの病院の猶予問題について私が東医務局長にお尋ねいたしましたところが、丁度当時久下次長はお留守であつたと思いますが、この法律のなお二年間猶予期間があるということを、これによつてなお二年間この方針で行きたい。こういう御答弁がありました。おわかりになりますか。そういうことを東医務局長が答弁しておられますので、この際これを申上げて、なお久下次長にお考えのなにがあればともかく、そういうことを一応東局長から発表されておりますから……。
  141. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) お話の通り私は東医務局長がこの問題につきまして、先般お答えを申上げたときにはおりませんでした。そのことにつきましてはその後医務課長から話を聞いておりますが、只今又聞きましたのですが、医務局長がお答えを申上げました趣旨は、原則的には法律の規定は御承知通り三年間でございまするが、病院の普及の十分でない地域につきましては更に二年間猶予期間があります。従つて病院の普及が十分でないという地域を如何に判断をするかというのが、この法律の十月に一応切れます地域をどうするかということにかかつて来るわけであります。又私は医務局長もその意味におきまして無理のないようにと申上げたのであつて、全面的に五年間猶予してしまうということが現在の法律の建前においてはできますかどうか。私自身も疑いますし、又医務局長もそういう意味で申上げたのではございませんようでございます。私が申上げましたと同様に、この十月に一応切れて十三条の適用になりますような地域は無理のないように、言葉の裏を返して申しますれば、極力小地域にとどめましてやつて行くようなことになるであろうというつもりでございます。
  142. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 私はその当時の答弁を伺いましたときには、とにかくこのもう二年間の猶予期間をできるだけ十分に活かして、そうしてそういう不便を避けたいという御答弁のように伺つたのでございますが、今あなたの御答弁によりますと、最小限度と言いますが、私はむしろそれより大きく幅をとつてやろうというふうなお話であつたように承わつております。
  143. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  144. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を起して下さい。
  145. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私のさつきの質問もちよつと尻切れとんぼのようになつちまつているのですが、つまり調剤行為を中心とする薬剤師制度に対して大学教育もせねばいけない、国家試験もせんければいけないという非常な重い条件を付けておるわけでありまするが、ところが医師に対してたとえ例外的場合とは言え相当の場合、而も重要な場合に調剤行為を認めている、而もこれは三十三年が過ぎてもこの例外的調剤行為というのはずつとあるだろうと思うのですけれども、そこの感じがどうも私ちよつと割切れないように思うので……。
  146. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) それは私が先ほども申しましたように、当然医者の仕事というものは病気の診断をいたしまして、そうしてその病症に適するところの処方箋薬剤師に書く、これまでが医者としての専門的な領域であります。大体におきまして先般医科大学の学長等のお話もございましたが、調剤云々の質問に対しまして、調剤医学というものは特に教えておらんが、薬理学の中で処方学或いは調剤に関することをやつておるとこういうお話でございまして、実際問題といたしましてはお医者さんが調剤についておやりになつておる、学校において学んでおられることは極めて僅かでございます。従いまして従来といえども医者に対しまして調剤を認めておりますことは特殊の条件を付けまして、そうして特殊の条件の下にこれを認めておるのでございます。その程度でございまするからして、従いまして薬剤師調剤におきまするところの知識なり或いは勉強なり或いは経験というものとはその間に非常なる差があるということは当然と私どもは存ずる次第であります。
  147. 山下義信

    委員長山下義信君) 松原委員最前の御質問の要旨を御説明を願います。
  148. 松原一彦

    ○松原一彦君 厚生大臣代理にお尋ね申上げますが、今ここに画期的な重大法案が提案せられておるのであります。いわゆる医薬分業法案であります。でこの法案は御承知通りに明治初年からの問題でございまして、当時ドイツ流の医学が行われて、そのときから日本には医薬は原則として分業になつておるのであります。医者は薬を売つてはならんということになつておりまして、爾来この方針で以てずつと今日まで立法はできて参つておると思います。これは明らかな事実でありますが、それが七十年間行われなかつたということは、これには相当の理由があると私は思う。それでいろいろ法律を改正して見てもこれは行われない、その最も大きな理由は、最初は薬剤師が不足したからであります。併し薬剤師はだんだん充実して参つて今日は相当数にまで充実して参つたから、もはや任意分業ではいけない、どうしてもこれは法律による強制分業でなくちやならんというところに到達したものと私は見るのであります。それは政府のこの法案を出されました理由であろうと思うのでありますが、併し先般来いろいろ審議いたして参りまするというと、この法案には誠にむずかしい問題が伴つておりまして、これを断行することにつきましては、今後においても非常に障害が生ずるのではないか、又この法案はその適用の中で特に例外事項がきめられておりまして、今日内示せられましたところのものを見ましても、医師調剤は緊急治療の場合、或いは医薬品を医師のみが処理しておる場合、或いは地域的には郡部の全体、これは広範囲であります。全国の郡部はすべて医師調剤のできる範囲としてあります。又市部においても薬局の分布不十分の所はこれができるというように特例範囲が非常に広範に亘つておるのであります。医師薬剤師でないからして調剤ということに対しては不十分であるということは私も認めます。よりよきものに移行するのでありますから、薬剤師がこれに当ることには異議ございませんが、かように多くの特例を設けなければならないというほどにまだまだ日本には薬剤師の分布は不十分でございます。併し薬剤師の分布の十分な所はやろうといたしましても一応了解ができますけれどもが、今日の薬事法ですらも実は行われていないのであります。現行薬事法は励行されておらないのであります。現行の薬事法は御承知通り薬剤師でない者は医師以外には調剤することはできないのでありますが、現実は医師以外の家族の者、或いは医師の助手等が公公然とこの調剤をいたしておる、これは明らかに違法でありますけれどもが、併しその取締は行われておりません。又薬剤師の無診調剤というようなことも或いは私よく知りませんけれどもが、大部分において行われておりはしないかと私は思うのであります。法を作る以上は法には権威がなければならん、社会情勢を無視して法が先行することは法の権威の上からも許されないことですし、国民福祉の面からもこれは愼まなければならんことと思う。現行法すらも行われていない今日にこの峻嚴なる法律を作りまして、慣行による医師調剤が或る一定の地域内においては若しこれを行なつた場合には三年以下の懲役といつたような嚴重な処分も伴つておる、これは法律だけで以てこの医薬分離を励行しましても、七十年の慣行による国民医療に対する観念を一挙に覆すことはできないと思うのであります。やはり国民の中には是非医者から薬をもらいたいという者も相当多数あることは公聽会、或いは懇談会等を各地に開きまして、聽取しましたところによりましても明らかなのであります。薬剤師側からは固有の権利を侵害するのはこれは全く医師側の横暴だと言いますけれども、私は必ずしもそうは思わないのであります。七十年間養つて来たところの国民医療に対する考え方には拔き得ざるものがあるのです。それをば法律で以て一挙に押し切つて、そうしてこれを実施して、果して政府はこの法律が行われるというお見込みがあるかどうか、そうしてこれをこの国会にでも上げなければならない何か切実なる必要に迫られておいでになるのかどうか。この法律昭和二十八年一月一日までに適正なる診療報酬をきめて、医師は診療報酬によつて生活をすることを原則とし、薬は全国的に医者からもらつても、薬剤師からもらつても等価となる、等しい値となる、原価に技術料を加えたものでありますから、等しい値となるのでありますが、その適正なる診療報酬というものは実はまだできておらんのであります。あと一年半を残すばかりでありますが、その間に果してこれが、医師の技術というものは決して平等ではない、今日の社会保險のように同じ点数で以て如何たる名医にも、如何なる辺鄙の古い医者にも同様の診療報酬を払うということではこれは私は納まらないと思う、又現に今日の薬事法が行われておらないと同様に、曾つて医療法の中にきめられましたところの二十床以下のものは病院と称することを得ず、四十八時間以上患者をとめることができないという、これは誠に結構なことでありますが、日本の富の現実は十五床のものを取上げてしまつて、それをば遊ばせて、そうして飛躍して、これは病院ではないからそこに患者はとめられんというようなことは、住宅問題の今日のごとき窮状に対してこれは観念的な飛躍であつて日本の現実に適しない、今二カ年以上延ばさなければならないことになつて、折角作つても先に延ばす、堂々と白書にこれを破られても取締る途がないというようなことでは立法の権威に関する、さような意味におきまして、厚生大臣はこの重大なる法案をどうあつてもこの国会内に上げてしまわなければならないものという何か御決心、或いはその理由があるのでございましようか。私はこの法案は実は目的とするところは非常に結構だと思うのです。どうかこうありたいと思う。併しこうあらしめるためには医師側においても納得し、薬剤師側においても納得し、同時に国民全体が誠にと思うところに来なければ、私は法案そのものとしては絵に描いた餅であつて、不備である、どうか私どもは流そうともせず、潰そうともしないのであります。もつともつと熱心に審議して、どうか満足の行く完全な現実に即したものを得たいというので、先般来いろんな方面からこの法案審議いたしておるのですが、立法上の疑義等につきましては、まだ解決の付かん問題があります。これは一応今日專門当局から意見の開陳もありまして、一応了解いたしております。行われざる法律を軽々に作つて悔を後に残すことは、大臣も御承知通りに六三制の問題にしましても、新制大学の問題にしましても、或いはその他幾多の問題で我々は苦い経験をなめておるのです。さような意味におきまして、この法案審議のために所管大臣の御所見を承わりたいのでございます。
  149. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先般来本委員会においていわゆる医薬分業案の御審議のためにできるだけ多くの意向を御斟酌、お取入れになり、非常な御審議に御苦心を頂いておりますことに対して深く感謝をいたしておる次第でございまして、松原さんのお話の通り、この法律を提出いたしておりまする理由は、これによつて国民医療保健の向上を目指し、文化国家にふさわしいこの医療保健の実を挙げたいというところに目的がございますわけで、そのためにはまあお医者さんと薬剤師の両者間の協調を得なければ、仮に法律を作りましてもその目的を達するということは実際容易ではなかろう、従つてどうかこの関係者の御協調を何とか得られないものかと切望しておる次第でございます。さらばとて同時にこの問題は、只今お話のように長い間の懸案でもあり、又医療保健の向上という上から見まして、立法措置を講ずることが果して妥当であるか否かということについてはいろいろの御意見もあるであろうと存じますけれども、一応政府といたしましては、かかる法律措置によつて分業を実施いたし、両者協調の上に国民医療保健の向上に資して頂くことがこの場合妥当ではないかという考えを持つて提案をいたしておるような次第でございます。従いまして、この審議はもとより十分御審議も願い、特に愼重な御審議を願う気持は切々たるものがございますけれども、同時に又できるだけ一つ皆様の叡智を傾けて頂きまして、円満な結論が速かに得られますれば非常に仕合せである、かようにまあ切望いたしておるような次第であります。
  150. 松原一彦

    ○松原一彦君 実はたくさんな陳情、請願、電報攻めにも会つたのでありますが、如何にもこの法案を遅延しておりますことが厚生委員の怠慢か、或いは実は厚生委員の構成分子の中には医者がたくさんおられますので、医者の横暴から押しておるのかといつたような印象を受けることは、私は医者でも薬剤師でもないのでありますから、私は医師側からも牽制せられてはおりません。薬剤師に溺れるものでもありません。どうかして双方の正しい権益を守りつ、円満な国民的な了解に行きたいということでございます。現にこれが非常にむずかしいものである証拠には各政党ともにまだ態度がきまつておらん、事実討論の域に達しておらん、自由党においても、社会党においても、多数の対策委員を挙げて研究しておられますが、私聞きますところによるというと、態度はまだ決定いたしておらん、決定いたしかねるところのこれは複雑な事情があり、社会福祉の上から見ても、この現状の上からも幾多の難点があるのであります。さような意味におきまして、私は厚生委員だけの怠慢でこれが遅延しておるのじやないということを御認識頂きまして、そうして政府においても資料を提供せられ、なおいろいろ審議を盡して、そうして結論に達したいと私どもは希望しておるのでございますが、御意見如何でしようか。
  151. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先ほど申上げました通りでありまして、従いまして御審議上、必要な資料等につきましては、政府といたしましても万全の努力を傾けるつもりでございますから、どうかそういう御趣意において御審議をお願いいたします。
  152. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 問題は少々違うのでございますけれども、最初に労働大臣と厚生大臣と兼務をしておられますので、この際大臣の御意見をお伺いいたしたいのでございます。  それはほかでもございませんが、私どもの即ち看護事業の看護婦の教育の問題は多々取上げられておりますが、教育とは違いまして、看護事業の問題は医師法歯科医師法薬事法それから保健婦、助産婦、看護婦法の中にも当然取上げらるべき看護事業の一つでございます派出の看護事業の問題が非常に何と申しましようか、おろそかにしておられると言つちや誤弊がございますけれども、どうも度外視されているような傾向がございまして、非常に私ども看護婦仲間の間で大きな問題になつて来ておるのでございますが、恐らく労働委員会のほうでは、衆参両院ともにいろいろ問題が出ていることと思うのでございますが、これは労働省だけの問題でないと存じます。およそこの医療の問題に関係がございますので、丁度厚生大臣を兼務されていらつしやいますので、一つ何とかいい御解決が願えればと存じますので、御承知のようにこの終戰後職業安定法によりまして、この派出業務が労働省の職業安定所の下にこれが管轄されるようになりましてから、何となしにこの看護事業が一つの特殊事業であり技術であります看護婦の仕事が、技術だと言われて職業安定所の下でやりかけられておりますが、どうもこれは技術というよりは一種の労働というように見られたと申しますか、考え方が変になつて参りました。労働省で職業安定所でやらしてもらつていることは非常にわかるのでございますが、労働省の職業安定所にやらして頂いているだけでは非常に困る。何とか看護婦の技術を十分に活かせるように紹介の仕方をして欲しい。それについては只今職業安定所でやつていられます看護婦の登録を、そこから技術者として有料で派出の業務をすることができます方法と、そのほかにもう一つ何とか協会あたりで仕事をしてはどうかという大きな問題が起るわけでありますので、御承知のようにこの外国の例をとりますのじやございませんけれども、外国の実情日本実情と違いますから、勿論これは直接とれるわけではございませんが、アメリカの看護婦協会ではたくさんこの登録技術者の仕事をいたしておるのであります。一つの技術者の供給ということでは職業紹介の法律にも余り束縛されませずに、実に立派に技術の紹介が行われておるのでございますが、労働省におかれましては、只今職業安定所でやつておられますあの中に技術者の紹介として專門の看護の仕事を学んだ看護婦を一つお入れになつて頂く見解はおありになりませんか。こうした経済下の下では協会にすぐこの仕事をどうしろとか、どこにどうしろとおつしやつてもなかなか今のところできないのでございます。職業安定所では日届労務者と一緒に看護婦の紹介をやつておられるのであります。何も看護の仕事がおわかりにならないかたがやつておられますが、外科の看護婦を小見科のほうへ廻したり、そうして夜勤でなければならない人を晝動にしたりするので、国民も非常に不利益を蒙ります。それでアメリカあたりでは外科の堪能なかたは外科に付けます。内科のほうに堪能なかたは内科に付けます。非常によく能率を挙げて、国民も看護婦も両々相待つて利益を得ておるのを見て参りましたのでございますが、一つ職業安定所の中の、紹介事業に看護婦を取入れて頂けますかどうか。ちよつと労働大臣に御答弁願いたいと思います。
  153. 山下義信

    委員長山下義信君) 井上議員の発言は議題外でございましたが、すでに御発言になりましたので、この際保利労働大臣の答弁を求めることにいたします。
  154. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 実は私は余り技術的の問題のようでございますから、詳しくはわかりませんのでございますけれども職業紹介の仕事というものは、結着しますところ民生の安定でありますから、従つて看護婦さんのために非常に不便を起しておる、或いはその看護婦さんの不便が看護を受けたいという患者の又不便を起すというようなことは、私は制度もそういうことは期待をいたしていないと思いますから、できるだけそういう民生安定という上から行きましても、職業紹介という上からいたしましても、実際の事情に合うようにできるだけ一つ幅を持つた動かし方をしてもらうようにやつて来ておりますけれども、或いは只今お話の点については相当ぎこちない取扱が行われておるようにも承わりますし、十分一つ御趣意の点は事務当局に傳えまして、遺憾のないようにいたしたいと思うのであります。特にただ一点そういうふうな、ともすると実際の事情に合わない、ぎこちないやり方をしなければならんという点は、非常な日本民主化の一つの大きな要請事項となつておりますレーバー・ボスの排撃というふうなことの要請が非常に強いために、妙な機関を通さなければ働きに行くことができんというようなことで、却つて大衆の方々に不便をかけておるような向も看護婦さんだけでなしに相当にありますから、できるだけ法の制度の精神に沿うて行きたい、そのためには一つ努力をいたして見たいと思います。只今のお話の点につきましては御満足の参ります答弁は私はちよつとできませんけれども、事務当局に移しまして、十分善処させるようにいたします。
  155. 山下義信

    委員長山下義信君) 厚生大臣に御質疑はございませんか……。委員長から一つ伺いたいのですが、これは大臣に伺わなければならんと思うのですが、この第二十二条の第二項にですね、除外例の省令でおきめになることは審議会の意見を聞くと、こう第二項で定めておりますが、別に定める審議会というのはですね、すでにある審議会でありましようか、それともすでにある審議会ならば如何なる審議会を指しておるのでございましようか。それから新たに定める審議会というのでありまするならばですね、これは御承知のように国家行政組織法によりまして、法律によらなければ審議会の設置はできないはずであります。それならば法律が政令、省令に委任立法をいたしますならば、この法律が通過いたしますればすぐにできるわけでありますが、政令や省令で作れない審議會でございますから、この本法と同時に審議会の設置法をお出しになるのが建前ではないかと思うのでありますが、なぜ同時にこの必要な審議会の設置法案をお出しにならなかつたか、それで今後お出しになるならば、この必要な本法の中に謳つてありまする審議会の設置法案はいつお出しになる御予定であるかということを承わりたいと思います。
  156. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ここに予想いたしております審議会は、全然新たなる手続の下に新たなる審議会を設けたいという趣意でございまして、ただ法律実施に至りますまでに相当の期間がございましたので、今回同時には提案をいたさなかつたのでございますが、この期間中には必ず所定の手続をとりまして設置をいたしだい、かように考えておる次第でございます。
  157. 山下義信

    委員長山下義信君) 期間中と申しますと、何の期間中でございますか。
  158. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 法律実施に至るまでの間にですね、附則の……。
  159. 山下義信

    委員長山下義信君) そうすると附則の実施予定に間に合わないようなことができまするが、速やかにお出しになるような御予定でもおありになるのでしようか。
  160. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) これは昭和三十三年までにきめることでございまして、従いましてそれまでには当然この審議会は設置いたしたいということでございます。
  161. 山下義信

    委員長山下義信君) そういたしますと、審議会はこの二十八年一月一日から施行する部分については関係がないのでありますね。
  162. 慶松一郎

    政府委員(慶松一郎君) その通りであります。
  163. 山下義信

    委員長山下義信君) よろしうございます。ほかに御質疑はございませんですか。  それでは本日の委員会はこの程度で散会いたします。    午後四時十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            小杉 繁安君            井上なつゑ君            有馬 英二君    委員            石原幹市郎君            草葉 隆圓君            中山 壽彦君            長島 銀藏君            堂森 芳夫君            河崎 ナツ君            藤原 道子君            藤森 眞治君            谷口弥三郎君            松原 一彦君   国務大臣    労働大臣厚生大    臣臨時代理   保利  茂君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    厚生省医務局次    長       久下 勝次君    厚生省薬務局長 慶松 一郎君    厚生省社会局長 木村忠二郎君   事務局側    常任委員会專門    員       草間 弘司君    常任委員会專門    員       多田 仁己君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   証人    法政大学総長  大内 兵衞君            平林たい子君            清水幾太郎君    日本赤十字社社    長       島津 忠承君    社会保障制度審    議会委員    末高  信君    中央社会福祉協    議会会長    田子 一民