○井上
なつゑ君 院議に基きまして、只今
上程されております
医師法、
歯科医師法及び
薬剤師法の一部改正に関しまして、地方におきまする各界の
かたがたの
意見を聞く会が仙台と名古屋に開催いたされましたのでございますが、私どもは仙台に参りましたので、その
状況を御
報告申上げます。
五月二十日宮城県と山形県と福島県よりの
代表者の
出席を求めまして、仙台におきまして
医薬分業についての
意見を聞くの会を催した次第でございますが、この会を催します前に、参議院から宮城県に対しまして、会の準備方を依頼いたしましたのが五月十五日でございまして、この間準備の時間が非常に短こうございましたので、宮城県といたしましては、非常に心配をなさいまして、特にこの宮城県下におさましてのこれまでの
状況が、医師、
薬剤師の間に何らの問題も起
つておりませんので、却
つてこういうような公聴会のようなものが催されたということで、私は聞くの会というのでございますが、先方では公聴会とおとりになりまして、公聴会を催されることによ
つていいろいろな紛争を来たしはしないかということと、その時日に余裕がないということで、参議院にお
断わりの電報があ
つたりなんかいたしまして、その間ごたごたいたしましたが、とにかく厚生省の三浦事務官と専門
調査員室の今藤
調査主事が先発いたしまして、先方のほうとよく話合をいたされました結果、とにかく聞くの会を催すことができたのでございますが、それにいたしましても聞くの会に
出席して頂きます人選に相当県が因られたということは事実でございますが、結局その聞くの会は余り時間を要すまいということで、県では当日の午後二時から五時まで用意して頂きました。それから当方からの
出席議員は有馬、小杉、中山藤森、藤原各議員と私でございました。県のかたに座長を
お願いいたしましたところ、そうした前に挙げました事情の下に県ですることは困難の様子をお示しになりました結果、とにかく一応座長を私にしろということでございましたので、僭越ながら私が座長をさせて頂きました次第でございます。
当日の
出席者は総計二十九名、
一般受療者側八名、うち県市から県の民生
委員、県の地方労働
委員、農林省からは県の農協農政部長その他主婦連
合会の人々、小
学校の先生、家庭の主婦の
かたがたが見えておられました。それから病院、診療所のお
医者さん、
薬剤師の
かたがた、それから
一般代表として塩釜市長、白石の町長、社会保障
関係として健保被保険者、言論界といたしまして新聞社のかた、新明さんというかたが見えておられました。それから宮城県、福島県の
医師会、
薬剤師会の
代表者が出ておられました。そして
出席者の
意見を総合いたして見ますと、
一般にこの地方では分業については割合に関心が少いということが認識されたのでございます。若しこの分業を進めて行くにいたしましても、相当の準備期間がいるのではないかというような空気が感ぜられました。そして結局これは皆さんの御
意見ではお
医者さんと
薬剤師が対立して行くことにな
つては困るので、結局お
医者さんと
薬剤師の
かたがたが相協力をして行かないと、この問題を進めて行けないのではないかというような
意見が出ましたのでございます。
大体これらの御
意見を分類いたして見まして、ちよつと御
報告したいのでございますが、賛成と
反対と時期尚早と賛否不明の四つに分けて見たいと思う次第であります。賛成の主なる御
意見といたしまして、小
学校の先生、御婦人の先生でございまして、これはお
医者さん、
薬剤師の問題ではない、
国民の保健という点から
患者の立場を
考えてもらいたい。それから
処方箋が発行されることになりますと、自分の病気の名前につきまして、大変
国民が認識いたしますので、非常に治療上にもよいから、
医薬分業には絶対に賛成いたしますと表明されました。それから医療費は高くなるように見えるが、長期の病気の場合には決して高くならないという御
意見、そうして農村におきましては、一日も早く無医村、無薬局をなくされたいということでございました。次に婦人会の代表のかた、これは農業のかたでございますが、
医薬分業になれば、よい診療、よい治療をして頂きまして、早く病気を治して頂けるからこれに賛成する。そうしてお
医者さんと
薬剤師のおのおのの専門分野において、
責任を持
つて頂くことができるので、そうして
医者と
薬剤師がそれぞれの
責任において協力して頂いてほしいという條件付で賛成されました。それから私立病院に勤務する
薬剤師のかたでございますが、これは
医薬分業にすれば、誤診ということがなくなりますので、これに賛成する、それと今度は的確なるお薬と的確なる
調剤をなすことができるので、病気を短縮して経済的にも非常に
負担が少くなる。それと先進国は
医薬分業であり、国際保健機関にもこれに参加した今日、絶対に
医薬分業にすべきであるという御
意見であります。それから町長さんの御
意見といたしまして、
医薬分業の法案は医療がよくなると政府は確信があ
つて出しておるのでありましようが、そういう確信があるならば一日も早く断行して欲しい。そうしてそれによ
つての今度の
医薬分業によ
つて国民のために不便に
なつたり、医療費の高く
なつたりしないようにして欲しい。そうして医療内容は向上し、病気をしても早く治し、とにかく社会保障
制度を立てて早くこの法案のように進んでもらいたいということでございました。言論界の
代表者からは、先進国が分業をや
つておるのであるから、いずれ分業になると思うけれども、強制分業にしなくても何とか分業にな
つて行くのではないかと思う。それにしても社会保障
制度を早く確立して行けば、この問題は非常に早く片付くのではないかというような御
意見でございました。それから、法案を出した以上は政府は
責任を持
つてもらいたい。それから医師と
薬剤師の論争が多いので
一般国民は非常にこの問題についてわか
つていないのじやないか、それについて啓蒙が要るのではないかということでございました。そうしてもつと
国民に
考えてもらう余裕を与えてもらいたい。それから分業について
国民が納得しているから、これをしたらどうかというような御
意見が出ておりました。それからお
医者さんにも話をしてよく
考えて頂けば、お
医者さんもこれについて
反対しなくな
つて下さるだろうというようなことでございました。それから現在でも
処方箋を発行されているのだから、お
医者さんに思い切
つて処方箋を発行して頂いてはどうか。併し強制分業によりまして、実施後かなり不安なことは見逃せないことである。それから医療費は高くなるか安くなるか判断ではわからない、とにかくお
医者さんと
薬剤師のやりかた如何によ
つて定められたい。
国民にと
つては不便であるけれども、利益である。医療内容は変りがなければ分業は必要ないが、医療内容はよくならなければならないというような御
意見でございました。
それから
反対の主なる御
意見としまして、民生
委員のかたが、強制分業は妥当でないので、
国民の納得の行くようにされたい、それがために
反対。薬価は安くなるが、医療費は相対的に高くな
つて国民にと
つては不便である。分業になれは医療内容が悪くなるとは
考えられない。科学的には当然分離すべきであるけれども、精神的に
考える余地があるというようなことでございました。それから農漁村の代表のかたもやはり
反対でございましたが、
反対でも
処方箋は出してもらいたい。農村漁村には医療費を安くされたい。それで農村漁村には
医薬分業は不便である。病院勤務のお
医者さんでございますが、現在任意分業でございますので社会的に支障はないので、強制分業に
反対である。分業になれば医療費は高くなる。医療内容は変らないけれども、
国民にと
つては不便である。自然の成り行きで分業にな
つて行くことが望ましい。その次は東北
大学附属病院の歯科医師のかたでございましたが、これも法律で強制は
反対である。文化が進むにつれて分業になるので、そういうようにすればいいではないか。それから釜石市長のかたは、法律を以ての強制分業は
反対。薬価は安くなるけれども医療費は高くなる、
国民生活の現状から見て高くなることは困る。文化が進歩すれば自然に分業になるのであるから、そういうふうにや
つてはどうかということでございました。それから、法律を作るときには法律を作る目的をよく
考えてもらいたい。医師、
薬剤師のための法律でなくて
国民保健のための法律で、そういうふうにしてもらいたい。
その次は時期尚早というグループであります。農漁村の
代表者は、分業には賛成であるが、今直ちに強制分業には賛成できず、準備期間をおいて指導啓蒙して頂きたい。それからお
医者さんが
患者に
処方箋を発行することは望ましい。それから、分業することによ
つて診療内容がはつきりしますので、医療費は高くならないと思う。それから結局医師、
薬剤師が
増加して薬局が農村に分布すれば、独立採算がとれることにな
つて国民の利益は高くなると思う。やはり時期尚早のことで主婦連
合会の代表でございましたが、
処方箋の登録は賛成であるが、強制分業をすることは
考えさせられる。却
つて医療費は
考え方によ
つて安くなるのではないか。分業に
なつたら医師、薬局が近くにあればよいが、今のところでは不安である。民情と民意に副
つて考えてもらいたい。県地方労働
委員のかたは、現在のままの
状態で
処方箋の発行ができるのであるから、強制分業は
国民の感情に反する問題である。医師の
調剤ができんということは不安を持つ。任意分業ということが現在の
国民に知られてないのであるから、このことについて啓蒙をしてもらいたい。社会保障
制度を確立されたい。それからその次は被保険者の一人でございますが、いわゆる
医薬分業については七十年間も医師と
薬剤師が論争されているが、
一般国民が何らこのことを知らない、それで病気に
なつたときは何もかも医師任せでこれまで来たということが感ぜられる、このことも是正しなくちやならん。
医薬分業をすれば不便になる。それから現在でも任意分業で医師が
処方箋を書いてくれることにな
つておりますが、
患者は要求することができないという現状にある。それから
処方箋を発行することは、
患者が病気に
なつたとき治す上に望ましい。それが被保険者の一人の御
意見でございます。
それからその次は賛否不明のグループでございます。仙台市の教育
委員、主婦連
合会副
会長の婦人のかた、医師、
薬剤師のおのおのの
意見を聞けば成るほどと思う。医師、
薬剤師の間には何か割切れないものがある。
国民が一番幸いになるような法律を作
つてもらいたい。選挙立候補者の公報のそれと同様に、
医薬分業について何か公報を出して
国民に知らせてもらいたいというような御
意見が出ております。これは賛否不明のグループでございます。それから健康保険組合の
かたがたより、賛否は余り明かにされませんで、医師が良心的に診療するならば適正診療という
言葉は出なか
つたろうと思う。
薬剤師の場合においても、分業にな
つて適正
調剤という
言葉が出て来ると非常に困る。それから専門分野に医師、
薬剤師の分野を専念してもらいたい。それから保険経済の豊かでない現状から医療費の高くなるのは困る。医療の内容についてはおのおのの分野で熱心にや
つて行けばよいと思うというのが健康保険組合の一人の御
意見でございます。そのほかにございますが、省略いたします。
それからその次は
医師会、
薬剤師会の
意見でございましたが、これは大体参議院におきましてすでに伺
つております
意見と大同小異でございましたので、これを省略させて頂さます。
大体以上が仙台におきましての会の概略でございます。