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1951-05-15 第10回国会 参議院 厚生委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十五日(火曜日)    午前十時三十一分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○医師法歯科医師法及び薬事法の一  部を改正する法律案内閣提出)  (右法案に関し証人証言あり)   ―――――――――――――
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより本日の厚生委員会を開会いたします。本日は、医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案審議のために証人といたしまして日本医師会代表榊原亨君、同じく武見太郎君、日本歯科医師会代表佐藤運雄君、日本薬剤師協会代表高野一夫君、同じく横井亀吉君、並びに臨時医薬制度調査委員勝俣稔君の六人のかたに御出席を願つております。これより証人宣誓求めることにいたしますが、宣誓に入ります前に証人のかたに念のため申上げて置きます。証人が虚偽の陳述をしたり、正当な理由がなく証言を拒んだりいたしますと、法律によりまして罰せられることになつておりますので、お含み置きを願います。それでは証人のかたに順次宣誓をお願いいたします。宣誓書の朗読を願います。総員起立を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 榊原  亨    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 武見 太郎    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 佐藤 運雄    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 高野 一夫    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 横井 亀吉    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 勝俣  稔
  3. 山下義信

    委員長山下義信君) 御着席を願います。それでは本日は先ず臨時医薬制度調査委員勝俣証人から臨時医薬制度調査会における審議状況並びに同調査会答申案に対しまして証人の御所見の御証言をお願いすることにいたします。次いで勝俣証人を除く他の証人かたがたからは医薬分業是非につきまして御所見を願いたいと存じます。その順序は日本医師会代表武見証人から、次は日本薬剤師協会代表高野証人、次は日本歯科医師会代表佐藤証人、次は日本薬剤師協会代表横井証人、次は日本医師会代表榊原証人、こういう順に御証言を願いたいと存じます。時間の制限はいたしませんが、できるだけ要点の御証言をお願いいたしたいと存じます。なお証人各位の御証言に対しましては、適当な機会に委員各位から御質疑があろうかと存じますので、お含み置きを願いたいと存じます。それでは勝俣証人から御証言を願いたいと存じます。
  4. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) ちよつと伺いますが、私の証言につきまして随分広汎な証言のようでございますが、この問題につきまして、私自身考えましても相当長いものになると思いますので、これではちよつと時間の関係もありますし、又私自身としても不可能な点が、又真実を述べ、何事もかくさず、つけ加えないような答弁をなすということはなかなか困難だろうと思いますから、そのうちのどういう部分について証言をお求めになつているか、お聞きいたしたいと思います。
  5. 山下義信

    委員長山下義信君) 承知いたしました。それでは主として御証言を願いたいと存じまするのは、あなたの委員としてお出でになりました調査会審議は果して慎重な審議でありましたかどうか、十分に審議をせられましたかどうかという点であります。それから第二点といたしまして、臨時診療報酬調査会答申基礎にせられまして医薬制度調査会答申の御審議をせられましたかどうか。若しその診療報酬調査会答申が御起草になつたとすれば、どういう点が重要な御資料に相成つたかという点であります。なお最後医薬制度調査会答申案賛否決定をなされました前後の状況、又十九票対十一票という賛否のその採決状況というものが、果して調査会の全般の空気と申しますか、賛否の動向をよく現わしたものであるかどうかというような点であります。なおあなた御自身答申案に対しまするこの賛否の御意見も簡明に承わりたいと存じます。
  6. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 第一の慎重審議に議したかというお話は、これはまあ非常な慎重審議をやつたということを申上げたいのであります。記録にも書いてあるはずでございまするが、本当にみんな心身疲れるまでこれを慎重審議をいたしました。なおこの問題につきましては、私自身としては全会一致を以てやるべき性質のものである、投票なんかによつてすべきものでない、一般患者大衆のことを考えてやるべきものでございますから、議論はできるだけするが、併しどこまでも全会一致でこの問題を解決してもらわにやならないというような空気でおりました関係上、慎重審議をやつたということを申上げます。  第二の臨時診療報酬調査会答申基礎として医薬分業のものをやつたかどうかという問題につきましては、これは無論そういうために臨時診療報酬調査会というものを作つた関係上、これは非常な慎重審議をやりましてでき上つたものでございまして、これを基礎考えてやつたことは事実であります。どういう点を基礎に置いてやつたかというお話でございまするが、それにつきましては、現在日本においては医者だけが技術料というものを取つておらんというのが事実であります。ほかの技術者はみんな技術料を取つておるけれども、お医者さんだけは今までの習慣技術料というものを、実際問題に即しただけのものを取つておらないということは、どこまでもやはり真の技術料というものを考えなくちやいけない、こういうので臨時報酬調査会のほうにおいて考えられたところ基礎を以てやり、なお薬価に対しては原価計算調剤料というものだけにして行ごう、こういうことを基礎にしてやつたのでございます。この技術料につきましては、科学的に一々の、個々の例に当つて、病気に、或いは手術によつて将来決定すべきものである。これは中央社会保険医療協議会であるとか、或いは医療審議会決定されるものであると存じます。併しこれは私自身考えて見まして、政府では一カ年間の間においてこれができるというように言われておりまするが、なかなかこれはその点は私はむずかしい問題じやなかろうか、相当な日にちは要するのじやなかろうかというようにこれを考えておるわけであります。でございますから、これを基礎にはしておりませんのでございます。総括的に今の技術料決定診療費決定薬価決定という抽象的の面を基礎にしてやつてつたと私は存じております。  それから第三の、最後の総会における賛否の問題でございます。このときにも私はこの賛否をきめるのにも、やはり最初申上げたように患者大衆の便利を考えにやならない、利益を考えにやならない、医療内容向上考えにやならないという見地から、これは投票によつて決定すべきものではなくして、是非全会一致でやつて頂きたい、議論が随分たけなわになりましたが、私はそのときになお休憩求めて、そうして休憩の間に何らかの途を講じたらいいのじやなかろうか。こういうような意味合で私は最後までその考えを持つてつたのであります。併し遂にこれも不成功に終りまして、それで止むを得ず決をとるようなことになつたのであります。  私自身のこの問題に対しての考えはどうかというようなお話につきましては、この法律によつて何らか医薬分業を一歩前進せにやならない。というのは、総司令部のほうの意向が非常に反映しているというような現在の占領治下においては、そうせざるを得ないのじやなかろうか。それには私は見通しというものを考えなければならん。私自身としては余りに妥協案であるかも知れませんけれども、第一案というものを私はどこまでも主張したかつたのであります。これは現状にも即し、何らかこの点でやつて行けるのじやなかろうかというので、私は医師会の幹部のかたにもそういうことを申上げたこともございます。併し第一案も、第二案も、第三案も、どうも医師会としては入れることができない。第四案の持合せもない、こういうようなことで遂に決をとることになりましたが、私は第三案は葬つてもらいたい。第二案も葬つてもらいたい。第一案を私はどこまでもやつて頂きたい、こういうような考えで、投票には私は第三案には反対投票をなした次第であります。以上であります。
  7. 山下義信

    委員長山下義信君) 証人に伺いますが、国民医療の負担の増減の問題、即ち医薬分業制度をいたしました暁における医療費増減の問題につきましては、十分な調査審議がせられたでございましようか如何でございましようか。
  8. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 医療費の問題につきましては、相当事務当局からも健康保険の現在の材料中心にいたし、それから医師会のほうからのお話も考慮いたしまして審議したような次第であります。併し私はこの医療費は下るということは絶対にない、上ることには私はなると思うのです。どの程度かという問題につきましてはいろいろの議論もあるようでございまするが、これがとにかく医療内容向上等考えから参りましても、政府のほうでは極く僅か上るようなことを言うておりますが、私は医師会ほど上るとは思いませんけれども、或る程度はどうしても上るのじやないか、こういうような点につきましては相当な審議をしたと思います。
  9. 山下義信

    委員長山下義信君) 今一つ伺いますが、受療者側意見というものにつきまして十分に調査会は御審議になりましたでしようかどうでしようか。
  10. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 受療者側会議にも出ておりまして、特別委員にも出ておりまして相当な審議はしたと私は思うのです。
  11. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは今一つ伺いますが、賛否の十九票対十一票というこの三十名の投票がありましたわけですが、その投票に参加しなかつた委員かたがたの中に、或いは中立系と申しますか、受療者側と申しますか、そういう委員の欠席が多数にあつたということは事実でありますか。
  12. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) その当時出席しておつた者は全部私は投票したと思います。人数も塩田先生と私は勘定をして行つて、それで大部分私は投票したと思います。あそこで棄権したという人は私割合に少いのじやなかろうか。それからなお模様を申上げますると、受療者のほうのかたがたから非常に原案に対するところ修正意見が出たようです。私はそれでこれは受療者のほうに相当この原案を認める空気が相当あるのじやなかろうかという感じを投票前に私は見た。私自身修正ちよつとしたところが、若しこれが通つた場合には、非常に困る点が出て来ると思うからという修正意見も私は出しましたが、先ほど申上げましたように第一案に何とか漕ぎつけたいという考えから私は反対投票をしたような次第であります。
  13. 山下義信

    委員長山下義信君) 勝俣証人に対して御質疑はございませんですか。
  14. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 只今勝俣証人の御証言中に診療報酬調査会資料基礎にしてなさいましたとおつしやいましたけれども、それでもなお技術料というものを認める点において、これを基礎にしたようにおつしやつたのですが、政府のほうでは一年ぐらいの間に個々技術料と申しましようか、そうしたのは一年ではできないとおつしやいましたのですが、およそ何年ぐらいかかるおつもりでございましようか、ちよつとお伺いしたいのであります。
  15. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 只今お話は、技術料の問題につきましては、日本医師会が非常な広汎な資料をお持ちになりまして、それから政府のほうでも国立病院や或いは私立の病院やらの材料を持合せまして、それでとにかく或る標準だけは作りまして、これを果してそれでやつたならば現在の先生方の、開業医のかたなんかに患者が行く頻度から考えて見て、果してこれが実際に行えるかどうかという問題は非常に大きな問題であつて日本医師会では岡山県にこれを適用して調査させて、それでやはり、或る修正をなさいまして、それでまあ技術料というものはこういうような方向で進まにやならんのじやなかろうかということになつて、今申上げたように抽象的にS1、S2というもののうちS1が理論的にきまつてつたわけなのでありまして、これを今後各疾病、或いは手術いろいろな面にこれをやつて行くということは一応の日本医師会科学技術基礎としたものがございまするので、これによつてつて行けば私はできるとは思いまするが、中央社会保険医療協議会やら、医療審議会等でこれを具体化するということは、その会の運営の方法にもよりましようし、又これも国会通つてからやるんだろうと思いますから、なかなか今準備は政府はしておるかどうかそれは知りませんが、相当な日にちで相当勉強しなければ一カ年間の間ということはむずかしいのじやなかろうかというように私は率直に考えておるのでありまして、これがいや二年かかるとかというような見通しは私はあるわけじやありませんが、本当に一生懸命にやればそれは一年でできるかも知れませんけれども、今申上げたように科学技術を根幹としての技術料というようなことになりますと、やはり専門家かたがたの御意見も承わらなければならんというようなことになると、日にちが相当やはり、そう自分ところ丸がかりの形じやありませんから、なかなか日にちもかかりやしないか。又併しこれも本当に皆でやるつもりになれば私は或る期限ではできると思いますけれども、これが又いろいろな事情でなかなか調査もしなければならないというような場合も起きやしないかというようなことを考えると、果して一カ年間でこれができるかどうか。これは私はこの事務を担当しておるほうの政府の決心如何じやなかろうかと私は思うのであります。若しもあれでしたならば政府のほうを御督励なさるなり、政府の御所見をお求めになるなりして頂けたほうが私は明確なことじやなかろうかと思うのであります。
  16. 松原一彦

    松原一彦君 勝俣証人にお尋ねしますが、勝俣証人は第一案を支持せられ、第三案が行われたのでは困ると言われましたが、その困るという点は何ですか。その点を明らかにして頂きたい。第三案では困るということは何を基礎としたる困る困らんですか。
  17. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 私は第一案であつたならば、せめて全会一致ということになりはしないかという考えを私は根本的に持つてつたのです。
  18. 松原一彦

    松原一彦君 困るというのは誰が困るのですか。国民が困るのですか、医師が困るのですか。
  19. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) いやこれは国民が同時に困るということになりはしないか。全会一致で行くということは、一般患者大衆を我々としては考えなければならないのにもかかわらず、どうも第三案ではなかなかその同調が非常にむずかしいという考えで、私はそう考えたのです。
  20. 松原一彦

    松原一彦君 その同調がむずかしいというのは、その調査会同調がむずかしいのですか。私のお聞きしたいのは、これを法律にした場合における全国民医療を受け、その医療を新体制によつて進めねばならないという修正の上に、何か困る理論的根拠、或いは実際的根拠がおありになつての困る困らんですか。これは重大な岐れ目なんですが……。
  21. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 私は協議会としてこれが全会一致で行くならば順次に医療問題を第一歩進めるという意味合において一致しなかつたならば非常に困るし、まあこの協議会全会一致で朗らかに行きたいということを私は冀つたのでございます。そういう意味合においてこれが法律によつて通つた後においてどうとかいうような問題は私は考えておらなかつたのであります。そこでこの協議会が一致して行くものであるならば、その原案国会通つたならば、これは皆一致して患者大衆のためにいい結果ができるのじやなかろうか。こういう考えで私は第一案を支持したような次第であります。
  22. 松原一彦

    松原一彦君 私がお尋ねしたいのは、その重大なる医療制度の進歩の上に新しきここに法律を作ろうというのでありますから、その法律ができて後の国民影響ということが第一の問題であつて調査会が困る困らんというのは第二の問題ではないかと思つてつたのですが、今のお話では前提条件が第一案で行けばまとまつて行くし、それでよろしい、第三案はまとまらないから困るというのでは、私はどうも国会としては頗るもの足らない気がするのであります。第一案を拝見いたしますというと、従来開業して来ておるものには従来通りの法律でやつて行く、新規に開業するものにはこの医師調剤は許さん、こういうふうになるもののように心得ております。勿論それには特例を設けられますが、そうすると新規開業医者は、今後は大学卒業者でなければ医者になれないのでありますが、それは調剤を差しとめてもよろしい。それから従来の開業医調剤を自由にしてもよろしい、ここに非常に矛盾がありはしないか。その点をはつきりして置いて頂かないと、どうもこの法律審議する上に私は医者の側にそういうふうな一体何か理論的根拠があるのかどうかをお伺いしたい。
  23. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) これは非常な妥協案でございまして、第一案、第二案というふうに妥協案でまとめて行きたいという考えが皆の御意向であつたろうと思います。併しこのように妥協案が行かなかつたもので、すつきり理論的には筋の通つた第三案というものがそこに出て来たわけであります。医師会のほうでも、第一案につきましては今お話のようにそんな筋の通らないことは、松原さんのお話のように筋の通らないことは具合が悪いと言われて、第一案を蹴られたと私は思うのであります。けれども私自身としては、お前の意見はどうかと言うから今のことを申上げたような次第であります。そこで私は、この画期的の問題でありまするがために、そう画期的にすぐさま徹底的なことをやるということは、国民大衆に、患者大衆に及ぼすところ影響もございましようし、そういうことを考慮いたしまして、何らか第一歩前進するという意味合から行けば、これはまあまあという妥協案でございます。もともと妥協案でございます。だから今松原さんの言われるように画期的なのにこういう不徹底なことは何事かということを言われておるようでありますが、これは先ず前進ということで一致して行かれたならばいいのではなかろうかという私は考えを以て申上げたわけであります。
  24. 藤森眞治

    藤森眞治君 只今医療費お話がございましたが、医療費は大体において上るように思う。併し政府資料のように少くはないが、又一方日本医師会のいうように高くはならないと思う。こういう御説明があつたと存じますが、そういたしますと、これについて何か具体的の御調査がございましたのでしようか。それから又こういうふうにお考えになります基礎と申しまするか、どういうところからこういうお考えが出たのですか、その基礎をお伺いします。
  25. 勝俣稔

    証人勝俣稔君) 別に詳しい基礎というものは私はございません。ただ今の保険医療費というものが本当の医療費に一体行つておるかどうか。健康保険単価中心にしてこれを計算して見て、それで少しば殖えるというような考えでおつたのでは私はどうかと思う。今までの健康保険というものは非常に少かつたために、医師は或る意味合からサービスのように考え、今まで長い間やつて来た。併し現在のような調子で、ところによれば福岡県のごときは九〇%は健康保険で行くというようなことになりますると、なかなか医師経済というものは成立つて行かん。こういうことを考えた場合には、私としては多少今の健康保険国民保険単価でこれをやつて行くというと、相当無理な点があるのではないかというように私は考えておるものであります。併しこれが非常に高くなるとは思つておりません。とにかくこういうような抽象的の意見でございますけれども、今の、ただ健康保険経済とか、実績からだけ換算して、極く僅か上るということでは無理ではないか。多少上つて国民に良い医療を与えるということは、やはり国家経済から見たならば、むしろ望しいことではなかろうかというように私は考えておるのであります。
  26. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑ございませんか。御質疑がなければ勝俣証人証言は終つたことにいたします。  次は医薬分業に関しまする賛否の御意見につきまして、先ず日本医師会代表武見証人の御証言求めます。
  27. 武見太郎

    証人武見太郎君) 医薬分業の可否についてと書いてございますが、私は本日の、これは医師調剤を禁止する強制医薬分業ということと、現在行われておりまするような任意分業がもつと徹底をいたしました形の医薬分業と、この二つを考えなければならないと存じております。この問題を二つながら眺めて考えますのに、一番大事なことは、国会を僅か三年前に通つた現在の任意分業の案について、今日又いろいろと論議を重ねなければならないという本質的な問題にメスを入れて考えなければ到底今度強制医薬分業を行いましても、私はその結果は甚だ面白くない混乱に陥るのではないかということを憂えております。この三年間身じつくり考えて、細かく観察いたしまして、そうして今後の策を立てることが私は一番大事な問題だと考えております。私は法律による強制には賛成いたしませんが、分業の問題を真剣に考えることはしなければならないと思つております。国会審議を経まして、司令部の指導によつて三年前に任意分業法律はできましたし、その法律を推進すべき役割を持つ厚生省薬剤師協会日本医師会健康保険組合その他の団体は、この任意分業を推進すべき何らの努力もいたされなかつたということが実情でございます。法律は作りましたが、厚生省直轄病院に対しましてもこれを推進すべき何らの措置をおとりになつておらなかつたのであります。又薬剤師協会は、いろいろな薬の広告ネオンライトによつてなされますけれでも、医師に行つたら処方箋をもらつていらつしやいというような広告患者啓蒙宣伝をなすつた例を私は知らないのであります。又開業医におきましても当然なすべき、その法律の精神を当時から推進したような形跡はございませんでした。こういうふうな状態で三年間を経過いたしました。又強制医薬分業に賛成されております健康保険組合国民健康保険組合も、この人たちも、直営病院はおろか、自分たちの会員に対しても、組合員に対しましても、この啓蒙宣伝努力を何らいたしておりませんが、こういうふうな情勢におきましては私はどんな法律を作りましても、社会的な事実ができて行かないということを心配いたすのでございます。そうして私はこの三年間において社会的にどんな変化があつたかということを考えまして、その変化に対応して法律の改正が行われますならば私はこれは結構だと存じます。然るに客観的な情勢がこの三年間に私の考えますところでは殆んど変つていないと考えます。変つておりません客観的情勢で、努力もしないで置いて、もう一遍法律で行こうというところに私は大きな矛盾を感ずるのでございます。  社会情勢変化というものは一体どういうことをこの場合に考えなければいけないかと考えますと、これは日本人が、古来医師無形労働力に対して報酬支拂うという習慣がないということを教育することが第一でございます。これは私が昨年の四月三日にサムス准将を訪ねて日本人無形労働力に対して支拂いをする習慣がないということをお話しいたしましたら、それは大いに啓蒙しなければならないのだということを言われました。その無形労働力に対する報酬ということは非常に喧しく論議されました。これが技術に対する基礎的な考え方でございますが、こういうふうな困難なことが僅か三年間の間に、それができるほど急速に発達いたすとは私は考えておりません。又もう一つには、医薬分業をいたしておりますアメリカその他の国は、非常に医療費も余計でありますし、国民生活程度も高いのでございます。日本の生産の条件から、国民生活の条件から考えまして、三年間によほどの変化はいたしましたけれども、まだ安心してこれを分業できるというふうな、私は社会の生産面において、十分にこれを見ることができないと思います。それから一般の労働分化の原則に従いましても、今日の清勢におきましてはこの問題を見逃すわけには行かないと思いますが、どうしても一般の労働分化の概念でこの問題が処理できないと思います。  もう一つの問題は、私はこれは技術の問題で、後にも考えなければならんと思いますが、現在の医薬品は三年前の医薬品よりは相当に質もよくなつておる。併しながらこれは医師の撰択を経ないで、いきなり患者が使つて害がないかという点に至りますと、相当に考慮しなければならない段階でございます。医師の手を通じて薬を呑むということと、医師が薬を撰択するということが必要のないような、非常に純度の高い立派な薬品のみの状況になりますことを私は一日千秋の思いで待つております。現在の三年間の短時日の間にその目的が達したとは考えておりません。  以上申上げましたような四つの社会情勢変化がございません。そうして関係団体の努力もございません。それで今日の法律によつて、この医師調剤を禁止しなければならないということは、私には理解できないことでございます。ただその間におきまして、アメリカの薬剤師協会使節団の勧告が出ておりますこの勧告は我我に教えるところ極めて多いのであります。薬学教育の問題、薬品の質の問題、或いは又薬剤師の技能の向上、その他薬事審議会のような委員会の構成に至るまで、実に広汎にして詳細な勧告が僅か二週間の滞日期間になされた超人的な業績というものは、私は非常に尊敬を拂います。但しその中にはどうしても二週間の滞日期間に日本の実情を十分に把握できなかつたのじやないかと思うことも若干はございます。そういう点はさておきまして、この受取り方についても、私は我々の社会情勢基礎にいたしまして、この勧告を受取る必要があると考えております。それがこの三年間の任意分業の実態と今日の現状であると思います。そういう社会情勢の面から、私は現在法律によつて医師調剤を禁止しようということは、私は何らの根拠を見出すことができないのであります。  それから次に、これは最近におきます学術の進歩は、いろいろな学問に学術分野の再編成を要求しております。その事実は、医学においても薬学においても見逃すことはできないのであります。ビタミン発見以後におきましては、殆んど薬学の領域から薬という新らしい薬は出ておりません。この事実は私は十分に認識して頂かなければならないと思います。これは決して薬学の諸君が不勉強なるが故でなくて、世界的に学問が再編成されているということを見逃してはならないのであります。私は古来の習慣を墨守することを賛成いたしません。又現場を維持することのみに賛成するものではございません。世界におきます学問の流れを重視いたしまして、それを我が国民の福祉、生活に結び付けるような方法こそ望ましいのではないかと考えます。そういたしますと、今日製薬会社におきます薬は、大量生産のことに関しましては、農芸化学や或いは化学工業の人たちが主に生産に従事しております。それから薬品の発見や、その成状の検査、その他人体に応用いたします部分は勿論医学の領域でございますが、日本の薬学大学その他におきましていろいろな過程から考えまして、私は不幸にして、日本の薬学は現在までにはノウ・アイデアの状態を脱却していないのであります。この状態を脱却いたしまして、日本の薬学が一つの学問としての方法論を確立いたしますときには、私は社会的権利義務の体系となり得ると考えます。併しながら現在は不幸にしてその段階になさそうでございます。薬の製造の殆んど大部分が、有機化学、合成化学の人でもできることであります。薬学でなければできないということが殆んどないのであります。殆んどないと申しますよりは、全くないと申上げても差支えはないと考えております。そのくらいに学問の分野が再編成されております。これを、例をほかにとりますと、量子力学の発展によつて物理、化学の区別はなくなりました。この点から申しましても私は、こういう医学と薬学が緊密なる連絡をとりまして、そうして新らしい日本で学問の分野を開いて行くことを心から希呈するものでございます。ただその薬学の実態その他の点は現状のものは誠に遺憾でありますが、私は将来それが緊密に連絡して、日本の薬学が世界的に進歩するような情勢を作るような社会的基盤を、こういうふうなものによつて与え得るならば、私は医師のほうは相当な犠牲を払つてもこれには協力しなければならないと考えております。  併しながら薬学と調剤とは、私は必ずしも全部一致しているとは考えません。勿論調剤は薬学の領域であることは考えますが、医学の人で調剤ができないという考え方には私は納得できないのでございます。この問題に関しましては、これは日本と西洋との違いもございますが、産業革命前におきますいわゆる薬局は街の科学者でございます。みずから材料を作り上げまして、薬を作つて与えるという一つの化学工場を持つてつたわけでございますが、産業革命によりまして大きな化学工業に吸収されましたあとは、でき上つた品物を開けて混ぜ合せるということが主たる任務に変つて来たのでございます。これも社会機構の変化と学問の発達とがもたらした一つのエポツクメーキングの事実でございます。そういうふうな点から考えまして、今日の薬剤師として世間に出られたかたは、薬品の製造に当るよりは街の調剤を専業せざるを得ないというような形に追い込まれております。  そういたしますと、どうしても医薬分業という問題に出て来るのが当り前でありますが、本来の薬学の姿は、立派な薬品を作り、世界の人類の福祉に貢献すべきだと考えまして、私は調剤のみが薬学の目的であるかのごとき印象を世間に与えておられることを、私は遺憾に思うのであります  それから私は、街の薬剤師のかたは、医師に対して調剤権を主張されるよりは、国民大衆に対して薬一般についての指導的な立場をおとりになるべきだと考えておりますが、現在におきましては、未だそういうふうなことはあまりはつきりと行われておりません。この問題に対しては、私は自分の仕事と関係がございませんから深入りはいたしません。  先ほどから新医療体系の問題が出ておりますが、その次の新らしい医療体系は、医と薬と分離することによつて医療向上がもたらされるという前提の下に考えられております。この分離によつて医療向上がもたらされるということには、もう一つ私は前提条件が必要だと考えております。この医と薬との分離が、現在の非常に厳しい生活、国民経済の中で、米櫃を二つに分けますことのみによつて医療向上発展ができるという考え方は、私はそれは非常に独断的であると考えます。この点に関しましては、最初から強制的に米櫃を二つに分けようというお考えが厚生当局には非常に濃厚におありになりました、併し私は、その考え方によつて医療向上がすぐに実現するとは考えておりません。又それによつて薬学の向上をもたらし得るかということを考えますならば、私は決してもたらし得ないということしか御返事できないのであります。医師技術料と申しますものは、医学の水準を維持し、学問の再生産を生む社会的基盤をなすべき技術料でございます。薬剤師の技術料も、当然そうあるべきであると私は考えております。併し今日の経済状勢の下におきまして、これを二つに分離いたしましたそういうものが、おのおのの学問の社会的基盤たり得ないことは、およそ経済事情の下において明らかに看取できることじやないかと考えます。  それから私は、現在の街の薬局について申上げたいと思いますが、薬のことは薬剤師でなければわからないとおつしやるが、私はこれは空中で安定している状態の薬のことはおわかりでしようが、身体の中に入つてからの化学変化やその他のことはおわかりになるわけはないのであります。それが薬のことは薬剤師でなければわからんとおつしやいますが、御自分でお作りになつた薬ならよくおわかりになるでしようが、現在はでき上つた薬の取次販売が主な業務であります。分業になりましても、取次販売の外へは出ることはないと私は考えます。そういたしますと、御自分でその薬の内容を一々検定したり試験なさるということは、到底不可能であります。物によりましては国家検定が行われておりますが、その検定が必ずしも正鵠を得たものであるか、又は医師が満足して使えるものであるかということについては、幾多の疑問がございます。この疑問を現在の薬品製造技術の段階におきましては、皆様も十分に御承知だと存じますが、葡萄糖やカルシウムのような簡単なものにおきましても、注射しましたときの副作用によつて命を失うような騒ぎを演ずるようなことが現在においても絶無ではございません。又ジアスターゼのようなものにおきましても、市販売を求めてこれを検定いたしまするならば、場当にその効果において差がございます。こういうふうな情勢におきまして、米櫃を二つに分けて薬を街の薬剤師にのみ委せるということは、私は治療の全きを期し得ないと考えるものでございます。ズルフオン剤が、注射して針を抜かないうちに患者が死んだという例もたくさんございます。こういうふうな幾つかのまだ日本の未熟にして粗悪な薬品が製造されておりますときには、医師がそれを選定するということが非常に重大な役割でございます。これは国民保険、衛生上医師が完全に薬品の選定からその責任を免れる日の一日も早いことを私は望むのであります。なお強制医薬分業によりましてその状態が一日も早くもたらされるという証拠は、何ものも考え得ないのでございます。  私は以上の大体のことから申しまして、反対でございますが、もう一つ附加えなければなりませんことは、これは患者というものは、信頼した医師から薬をもらい、信頼した薬剤師から薬をもらうことが一番よいのでありますが、信頼ということがどういう形で行われるかと申しますと、処方を公用して、患者が要求すれば、快く与えるということは、私は確かにその医師が一つの信頼を獲得するのに最もよい手段であると思うのでありまして、私は処方箋の発行には全幅の賛成をいたします。併しその処方箋が、日本の現在の程度におきましては、往々にして素人の調剤を助長したり、或いは又その生半可な薬の知識から自分の病気を臆測するとか、いろいろのことも考えられます。よく秘密治療ということをおつしやいますが、私は疾病の治療に対して、医師には秘密治療ということはないと考えております。これは立会診察の場合、裁判の場合、その他の場合、全部明らかにされることでありまして、往々にして患者が聞けば、それに答えることが或いは害があると思えば、その保護者なり親族に対しては率直に答える。何も秘密ということはこの患者医師との間にはございません。又、これは秘密で教えてくれないとか、あの先生には秘密があるということが患者にわかつておれば、その先生のところには行かないはずであります。これを秘密治療とおつしやるのは、私は事を曲げるも甚だしいものであると考えております。私はでき得れば医師は処方箋を快く出すべきたと考えますが、これは決して秘密治療を要求するために出さないのではなく、秘密治療を公開するために出すのでもないということを御記憶願わなければならないと存じます。それから何が秘密かということになりますと、安い薬を高く売ることが秘密であるかのように取られる慮れがあります。私はそういうことは決して考える必要はないじやないかと思います。現に我々が処方箋を書きましても、大体の薬局は適正妥当か、或いはそれより少し高いくらいの料金しかお取りになりません。そうしてほぼ医師の窓口で渡しておるのと同じように私は見受けております。私は秘密治療ということの表現が、如何にもそのうちに卑しい根性を含んでおることを残念に思うのであります。それから又、我々が処方箋を出しました場合には、往々にして最も利益の多い薬を調合なさることが考えられます。これは我々は実際にそういう経験を持つておりますし、実例も持つております。これは利益を対象といたしまするならば止むを得ないことであります。そういうことが是正されますように、製薬会社が高純度の薬をきちんとした値段で提供してくれるということが望ましいのであります。私は医薬分業の最大の前提といたしまして、今日の製薬会社の状態というものは、社会保障制度を希望する国民を前にして、これほど不届きな存在はないと考えております。法律に上りまする原価計算の提出を拒否することができるのでありまして、製薬会社の原価計算を我々は知ることができません。而も、二十億に及ぶ広告費を使つております。この製薬会社を背景としてできました薬が、街の薬局において細分されますときに、これはその会社の厖大ないろいろな無駄な経費が国民大衆に直接に転嫁されております。この状態を脱却いたしまして、それが品質の向上に向けられましたときた、初めて医薬分業は可能になるのではないかと考えます。今日の医薬分業の体系といたしまして、今日の製薬会社というものは非常に資本の増加率も多いのでありますし、又いろいろな面からこれは無計画生産であり、完全なる自由企業であります。私はその重大な社会的責任の一つの事実として挙げたいのは、今日におけるヒロポン患者の社会悪との結び付きであります。ヒロポン患者は決して医師の処方箋によつてするものではありません。これは殆んど大部分は街の薬局においてそういうふうなものを授けられる。これは今後はそれが翼循環してどんどんと殖えて来て、今日の社会悪の大部分を形成しているのであります。これが街の薬剤師諸君がプロフエツシヨソとしての態度であるかどうかということについて私は甚だ疑いなきを得ないのであります。この状態を道徳的或いは科学的或いは社会経済機構の上からそういうものをなくし得るような形にいたしまして、そして街の薬剤師諸君が公共性を確立する具体的な方途を発見されることを私は希望するのであります。そういうふうな幾つかの社会機構の問題、その他の道義上の問題、それから徳性の問題と結び付かなければ、私はこの問題は法律によつて強制することが国民に対して甚だしく危険であり、無駄であると思うのであります。  それならばどうするかと申しますならば、やはり現在の任意分業によりまして、そして医師と薬剤師が社会的なそういう事実を作つて行くことにお互いに協力することが一番大切だと考えます。私はその協力なくして国民大衆へのプロフエツシヨナル・サービスはないということを断言して憚からないのであります。私はそれが故に強制的に医師調剤を禁止する今度の医薬分業案には絶対に賛成いたしかねるのであります。
  28. 山下義信

    委員長山下義信君) 続いて日本薬剤師協会代表高野一夫証人から御陳述を願います。
  29. 高野一夫

    証人高野一夫君) 私は簡単に私の意見を申上げる前に、この医薬分業論の賛否議論がこの数年来の間に極めて変化して参つたということをあらかじめ申上げて置きたいのであります。  一昨年頃までは医師会側におきましては医薬分業は絶対反対であつた。薬剤師側は絶対医薬分業をすべしという議論であつたのであります。ところが昨年一月日本医師会日本歯科医師会並びに日本薬剤師協会の幹部を以て組織いたしておりまする三志会におきまして、我々は懇談的にこの分業問題を相談をして、そうして協力して、医療向上を図ろうじやないか、こういうようなことで数回に亘りまして協議をいたしたのであります。その席におきましてもいろいろ議論百出いたしましたが、少くともそのときにこういうことだけは意見の一致を見たのであります。それは、最後日本医師会からこういう案文が出ております。三志会においては医師、歯科医師、薬剤師がおのおの専門的技能の社会化により、その職域を明確化することに各自協力するよう意見の一致を見た。そしてあとに今の任意分業論がついておるのであります。少くとも従来反対であつたところ日本医師会におきましても、専門職域の明確化、医師、歯科医師、薬剤師の特殊の技能を活かして、そして医療向上を図るべきであるという意見については一致して参つたのであります。それから昨年十月十六日に社会保障制度審議会が政府に対しましていろいろの社会保障の問題について勧告いたしました。その勧告の中にこういうことがあるのでございます。「社会保障制度における医療は、医学及び薬学の向上、進歩に即応し」云々ということがございました。なお又従来医療機関というものの範囲は診療所、歯科診療所のみを含んでおつたのでございますが、薬局は当然医療機関の範疇に入るべきものであるということを可決いたしまして政府に勧告いたしました。この「社会保障制度における医療は、医学及び薬学の向上、進歩に即応し」、云々という言葉はどういうことであるかと申しまするというと、これは医学のみを以てしては医療向上、進歩は図れない。勿論薬学のみを以つても図れるわけでではないのであります。医学と薬学とう独立したおのおの専門分野に立脚したところの学問がお互いに相協力して向上し、進歩する、相協力することによつて社会医療の進歩の確立ができる、こういうことを承認をいたしたのであります。ということは、薬局は医療機関である。即ち薬局を開設する薬剤師は薬学によつて医学と協力して医療に参加すべきである。薬剤師のなすべき行為は医療行為の一部分である。薬剤師は医療の担当者であるということをここで明確に認めて政府に勧告をいたした次第であります。  それからなおこの社会保障制度の勧告につきましては、只今証言されました武見証人日本医師会の代表委員として出席されておりますが、もつぱら我々意見の一致を見まして、協力して頂いたという事実もあるわけであります。さようにこの従来とかく第三者を抜きにいたしまして、医師と薬剤師との間の論争になつておりました医薬分業問題の中に、医療を受ける側、そのほかとにかく第三者側が介入されまして分業論が戰わされるようになりましてから、この医薬分業賛否議論でなくして、賛成の上に立つて、その方法を如何にすべきかということに議論の焦点が縮まつてつたのであります。  なお医薬制度調査会におきましては、従来医師会側代表委員最後の直前まで、その法制化に反対をしておられたのであります。併しながら丁度この医薬制度調査会最後委員会が二十八日の午前でございました。午後が本会議でございました。その二十八日の午前の特別委員会におきまして、谷口日本医師会長は、昨夜は三時まで徹夜い理事会を開き、なお又今朝は六時から九時までかかつて相談をしたが、医薬分業の法制化については異議を唱えないことにした。ただここに第一案、第二案、第三案については呑めないが、そのほか何らかの別個の案ができないものかと言つていろいろやつたけれども、名案が浮ばないから、この案にも、案そのものには賛成ができない、こういうふうに特別委員会で明瞭に御発表になつたのであります。このことにつきましては、この二十八日の午後の本会議におきましてここにおりまする横井証人が質問をいたしております。横井証人は感違いをしておりまして、この特別委員会の様子をいろいろ御報告を聞いておるというと、医師会のほうではすべての法律の改正に御同意ができないような様子に見受けられるということを言つておるのであります。ところがこれに対しまして谷口日本医師会長は、先刻横井委員の御質疑で、ちよつと間違つて考え頂いてはいけませんから申上げて置きますが、医師会は法制化するということに反対であるというように考えておられるようでありますが、これは医師会は昨日までは、そういうような考えもありましたけれども、只今では法制化に絶対反対というわけではないのであります。ただここに出ておる一案、二案、三案というものは非常に研究して見ました結果、どれも日本医師会としては呑むことはできん、反対しなければならん、こういう立場で、非常にいい案ができれば、それまで反対ではないということを申上げて置きますという駄目を押されておるのであります。これは速記録に載つております。かような経過を見まするというと、この医薬分業の法制化ということにつきましては、最後の段階におきまして日本医師会は賛成の意を表する。その後更に又任意心業論が出ておりますけれども、とにかく医薬分業の是なることを認めて、その方法が任意であるか、或いは又強制であるかということに現在議論が分れておるように思うのであります。これは我々の間においてでもであります。  そこでこの医薬分業の是なることを調査会において、一応調査会としてはきめたわけでございますが、この医薬分業の是なることを我々は賛成するにつきましては、臨時診療報酬調査会答申に非常に意義があると考えるのであります。それは先ずこの臨時診療報酬調査会が六カ月間かかりまして、あらゆる材料を基にしまして相当細かい数字まで弾き出しまして、あの答申そのものは極めて簡単な原則論でございまするけれども、あの極めて簡単な原則論を出すに当つては、先ほど勝俣証人からも御証言がありましたように、半年に亘つて詳細なる数字の検討をいたしたのでございまするが、この答申の原則の第一は、医療報酬なるものを診療報酬調剤報酬の二つに区別しておることでございます。これは即ち診療行為と調剤行為とにおのずから区別せらるべきものであるという証言を得た。その構成がおのずから違つたところがあるということを認めたわけであります。なお又両方共にその報酬原価計算方式であるべきであるということをきめましたことも、従来の医療費の徴収の仕方が極めて合理的でない。これを内容における構成を明確にいたしまして、人件費は人件費、或いは所要経費は所要経費、薬の原価は薬の原価、そのほかに医師、薬剤師の調剤診療に関する技術料なるものを加えましてそうして極めて合理的なるいわゆる患者、第三者が納得のできるような報酬にしなければならないということをきめたのであります。これが第二に非常に重要なことであろうと思います。  第三に分業になれば医療費が上るか下がるかという問題でございますが、この診療報酬調査会分業を目標として議論をしたのではございませんけれども、その結論は分業の可否を議論するについて参考になるのだから急いでやれとこういうようなことでございました。暗々裡に又始終分業の問題がこの診療報酬調査会においても発言されたのでありまするが、この診療報酬調査会答申に基きました場合に考たられることは、医療費はこの診療報酬調剤報酬に新たに分けて原価計算方式を採用いたしました場合に、国民の負担が、医療費が上るであろうか下がるであろうか。こういう最も患者にとつての重大なる問題であります。これは上るか下がるかではなくして、上げるか下げるかにある。我々は現在の国民医療費がすでに国民としては最高の限度に達していることを一応そう思う。そうすれば現在の国民の負担が、薬剤師、医師、歯科医師に支払つております千億に達する国民医療費負担、これを成るべく超えないように、その範囲において新らしい報酬は算定すべきではなかろうか、こういう議論が専ら行われたのであります。そこで答申にもございます通りに、国民医療費の負担力を勘案して、国民経済的負担力に相応するようにきめらるべきであるということを言つておるのであります。従つて国民経済生活、そういうことが向上されますれば、当然又医療費向上増額も考えられることである。併しながら単価は別といたしまして、全体として国民の負担する医療費なるものは、成るべく国民の現在の医療費から上げないようにしようじやないか。多くの増額は期待できないということを言つておりますけれども、技術料なるものはこれに制約されるものであるということを結論として出しておるのであります。従つて医療費分業になつて上るとか下るとかいうことは、それよりも上げるか下げるかでありまして、上げるか上げないかである。上げないにきめようじやないか、こういうことであつたと私は強く感じておるのであります。従いまして今後技術料、所要経費並びに人件費、薬の原価、こういうものはおのずから原価計算によつて決定されるものであつて、それ以上に圧縮することはできません。併しながら伸縮自在に圧縮せられるものは技術料であります。この技術料をきめるに当つては、そういう点を十分に勘案して、実際数字を出すべきものである。これが臨時診療報酬調査会医療費に関する答申であると私は思います。そういたしますれば、この分業になりましても、この調査会答申に基きまして、厚生省中心としまして、何らかの調査会が設けられまして、ここで実際数字が弾かれることになりますれば、その目標は現在の国民医療費を増額しない範囲において、その枠内において一つやろうじやないか、こういうような目標の下に算定せらるべきものであるということを固く信じて疑わないものであります。  なおこの計算につきましては、相当の年月を要することは勿論でございますが、厚生省はこの調査会におきまして、二年間でやりたい、こういうことであります。そこで昭和二十六年昭和二十七年一ぱいかかつて、このすべての実際数字を出そう。こういうことでありまして、従つて処方箋強制発行のことも昭和二十八年一月一日からというようなことが出て参つたと私は記憶いたします。  なおこの医療費の問題につきましては、例えば従来薬の中にこめておりました再診料なり何なりそういうものを別に取る。技術料として別に取ることになりますれば、薬の代価は薬剤師が取る、そのほかに医師は又別個に技術料を取るので、如何にも高くなるではないかというような印象を与えられるのでありますけれども、これは原価計算方式によつて明瞭になることと存じますが、私は医療向上ということを目標に、我々は考えなければならないのであります。何も医師と薬剤師の問題だけではない。医療向上ということを考えられ、医師が薬のことを手離して、そうして自分の専門の医療に精進するということになりますならば、例えば現在八百屋式にやつております医師よりも、専門の内科、小児科、耳鼻咽喉科のほうが遥かにその医師の医学上の技価が向上する、医学医術のみに専心しますならば当然医療向上することも期待できると思います。そういたしますれば、例えば治療日数というようなものも、現在は平均七日から十日まで延びておりますがこれも従つて十日が或いは九日になり、八日になり、又七日になり、短かくなつて参ろうかと思います。  なお又薬の投薬数にしましても、現在殆んど大多数のものが二剤投与の習慣になつております。医師のほうから聞きますというと、例えば健康保険にしましても、保険では二剤投与というと、あとでぶつぶついうことを伺つておりますが、こういう点についてもお互いに医学と薬学の協力することによつて十分にできるのではないか。そこで我々が回数算を定いたしますれば、現在一カ年に医師患者に投与しておると考えられる延べ剤数が大体八億三千五百万剤になつておる。この八億三千五百万剤分の薬が歯科医師は除外しておりますが、医師によつて患者に全国で一カ年に投与されておる数字であると概算を立てております。この八億三千五百万剤分の薬が更にもつと減ることになりますれば、ここに国民の全体的の負担は邊かに軽減されることになりはしないか。こういうことを考え、且つ又そうあるべきことを期待いたしておるのであります。  なお又医師会調査によりますれば、現在自費診療は社会保険に比べて一・五倍で、而も社会保険のほうでは経営が成立たないから、これを一・五倍に上げたいという医師会に希望が強いのであります。これは調査会のほうにも共にこの案ができたのでありますが、併しながら我々はこれに対しまして同意を表さなかつたのでございます。社会保険を一・五倍引上げますれば、単価を引上げますれば当然自費診療もこれにつれて上げられるということは、これは私は当然の帰結であろうかと思います。そういたしますれば、医療費は今のままではいかない。一二%でも、上げれば、三割でも五割でも幾らでも上つて参ろうかと思います。併しながらなお社会保険の点数を上げることが妥当であるかどうかということは、私は内容において申上げかねるのであります。これは厚生省中央社会保険医療協議会なるものがございますので、その中央社会保険医療協議会において十分に御検討願つて然るベきものであろうと考えます。  それから薬草の学問の本質の問題でございますが、薬学は調剤だけが主ではないというようなことは、よく言われるのでございまするけれども、この点については、あとで横井証人から詳しく証言がされるかと思いまするが、勿論医学の中には、眼科の専門がある或いは耳鼻咽喉科の専門がございます。解しながらその眼科だけを専攻して眼科の専門医には絶対になれんのであります。ただ耳咽喉鼻の学問だけをやりましても、耳咽喉鼻科の専門家にはなれんのであります。やはり全体の医学を基本的に学んで、そうしてそういうことを一通り心得て、そういうことが土台となり基礎の学問技能となりまして、初めて専門医としての医療がなし得る、こういうふうに考えるのであります。調剤におきましても医科大学を調べますれば調剤をやつておるところとやつていないところと、やつていないところ多いのでございますが、我々の調査によりますれば多いのでございますが、この調剤もただ調剤の学問、その時間数が多いとか少いとかいうだけで以て完璧とは言えない。調剤に用いるところの薬品の製造品質、製造法いろいろのことをやはり吟味いたして、薬に関するすべての学問をあらゆる点から総合して、そういう基本的の学問知識なるものを頭にたたき込んで置いて、そうして初めて調剤なる行為が完璧を期せられる。勿論只今武見証人からお話がありました通り、薬剤師の中にも十分やはり調剤のことをいろいろ勉強していない薬剤師もあろうかと思います。併しながらそれはそういう薬剤師もございましようが、それは大いに今後勉強しなければならんと考えますが、すべての薬剤師なるものはとにかく調剤をする者が薬剤師であると薬事法できめられております。調剤を目的として薬剤師の資格を取るのでございます。製薬につきましてはこれはいろいろ又議論がございまするが、本日は製薬の問題を論ずべきでないと思いますので私はやめますが、薬剤師は製薬はできますけれども、薬剤師の目的は製薬にあるのではないのでございます。調剤をする者を薬剤師ということになるのであります。然らばその薬剤師に、調剤の学問をやつた薬剤師に、国家試験の試験問題も参考資料に差上げてございますが、そういうことを薬剤のみを中心とした国家試験を課せられまして、そうして漸く資格を得た薬剤師に薬剤師の専門行為をやらせるということは、学問の薬学の本質から考えて、私は当然お考えをお願い申上げたいと思うのであります。なおこの法律強制することがいいとか悪いとかいうことでありますが、私はこの点については先般も塩田先生から御証言がありました通りに、あるべき正しい姿を法制化するというならば差支えないではないか、自分はそう思うという御証言がございましたように私は傍聴席で拝聽いたしました。強制という言葉は法律できめて無理強いするという印象を如何にも与えるのでございます。この強制分業任意分業ということは、これは医師会側から出た言葉でありますが、若しも正しい姿を法制化して、それを強制という言葉を使うならば、右側を通行するのも強制通行、入学するのも強制入学、運転するのも運転手でなければできないというのも強制運転、こういう言葉で言い現わさなければ私は甚だ矛盾になりはしないかと私はかように思うのであります。すべて我々の家族制度にいたしましても、或いは農地のあり方にいたしましても、すべての問題が正しくあるべき姿を民法その他の法律においてきめ、決して強制せられるのでなくして我々のあるべき姿をそこに制度にきめて置いて、そうしてその制度に従つて社会の秩序を守つて行こうじやないかというのが法律ではなかろうかと考えるのでございます。私どもは分業の問題を本質的にここで法制化するということにいささかも強制という印象は受けられないように存ずるのでございます。任意分業につきましては、どつちからでも楽をもらえということは、医師と薬剤師の本質が同一でありますならば、医師からでも薬剤師からでももらえということは議論が成り立つのでございますけれども、医師なるものは医師法医療医師でなければならないということをきめて、而も全然別の学問をやり、別の国家試験を受けた医師でございます。薬剤師も只今申上げたような薬剤師、この全然違つた医師、歯科医師三つ列べましてどつちかを選べというようなことは、これは正しい選択を患者にさせるということにはならないのじやないかというふうに私は考えるのであります。  なお外国におきまして然らば法律によつてこれを禁じてあるかどうかというようなことでございまするが、この点について私どもが多少調べた点を時間もございませんので簡単に申上げまするというと、いつでも医薬の問題が出ますというと、曾つての敗戰前まで我々の先進国であるドイツの問題を引合いに出されるのでございますが、先ず簡単にドイツの問題を申上げますれば、現在これは西ドイツにおいて現行の医師法、薬剤師法などを見ましても分業でなければならんということはきめてはいない。併しながらドイツの現行刑法におきましてこういうことがあるのでございます。医師に対して、警察的許可なくして毒物又は指定薬品を調剤し、陳列し、販売又は授与するものは百五十マルク以内の罰金又は拘留に処すと明記してありまして、ここにはつきりと医師調剤を禁止した意味が現われておるのでございます。それから別に薬局管理規則というのがございまして、その五十一条にはこういうことがございます。医師の薬室に関する規定がございます。それから薬局に対する医師の開設権が一部認められる場合があるのでございます。それは薬局がその土地に存在しない場合に限り開設を許されることになつておる点、こういう点がございます。そういう点から見ましても、原則的に医師調剤、投薬をすることができないというふうにきめられておることは明らかに言えるのではなかろうかと考えるのでございます。  米国におきましては連邦法においては何らの規定がないようであります。各州法においてそれぞれ薬事法を規定されておる。それによりますと、すべて原則において薬剤師以外の者の調剤、投薬を明らかに禁止いたしておるのでございます。併しながらただキャンサス、ミシシツピー、ネブラスカ、ネバタ、ノースカロライナ、ロードアイランド、ユタ、こういうもの以外におきましては、現在の日本薬事法のごとく、医師が診療する自己の患者に限つて処方箋、調剤、投薬ができるという例外規定がございます。併しながらアメリカにおきましてはこの例外規定は、日本における例外規定がまるで本則を台なしにしまして、例外規定が本筋であるかのごとくなつておりまするが、アメリカにおきましては飽くまでも例外規定は例外規定で、アメリカの医師会におきましては薬剤師の真似をするところ医師は排斥する、こういうことの医道の倫理性が行われておる。又薬剤師に対しましても薬剤師協会におきまして、薬剤師が医師の真似をしちやいかんということの薬剤師の倫理道をきめられております。これが明確に実際に行われておるわけであります。  英国におきましては、従来そういうはつきりした医師に禁止したことはないようでございますが、一九一一年に国民健康保険法が制定せられまして、そのときにこの保険法による投薬は全部薬剤師によらなければならないという厳重な規則が出ております。当時全人口の約五〇%がこの保険に参加いたしたのであります。従つて全人口の五〇%に対する医療は明確にこの保険法によりまして分業が行われておつたわけであります。なお又一九四六年に最近問題になりましたところのナシヨナル・ヘルス・サービスが制定せられ、これが殆んど九十何%の医師国民共に入つておりまして、これによりまするものは全部分業になつております。そうして医師は御承知の通りに登録制度になつておりまして、登録を行なつておる。薬剤師は調剤手数料、実費、そういうものを加えたものをもらつおる、こういう規定になつております。  かようにすべて私考えまするに、学問は進歩すれば進歩するほど分化されるのでございます。併しながら分化されますが、その境界線というのは極めてあいまいでデリケートな点がございます。例えば医学と歯科医学を分けまして、簡単な医療は歯科医師も判断でき、又治療できる点もございましよう。又歯科医師の口腔治療にいたしましても、簡単なものはやはり普通の医師にもやれようかと考えます。併しながら歯科医師法におきまして歯科医療は歯科医師でなければならないということをきめまして、歯科医師以外の者が歯科医療をやることを日本歯科医師法は禁じておるのであります。又医療においても多少の点は歯科医師も判断はできる。或いは薬剤師といえども多少医学の常識を持つておれば多少の判断はできる。又薬剤師でなくても一般の人といえども、これはゆうべの何かあたつたのだから中毒じやないかということが当るわけでありまするけれども、そういうことを抜きにいたしまして、医療というものは、医師以外には絶対に禁止されておるのが現在の日本医師法のあり方でございます。かように考えますれば、この調剤のことにつきましても、私は日本の医学をやりました医師が、調剤のことが全然できないとは私は断言はいたしません。それは薬学につきましては、薬剤師に次いで勉強をして、そして最も日常薬事に触れておるのでございますから、医師は薬事にも相当の智識を持つておることは当然でございます。併しながら、そこにおのずから薬学と医学という区別がございまして、おのずから仕事は医師、歯科医師、薬剤師というものが、我が国ではすべて法律において制定され、そうしてなすべきことが原則においてきめられておるならば、その原則通りに実行するように仕向けて行くのが、本当の国民に対する政治のあり方ではなかろうか。かように考えるのでございます。曾つて大正年代に、ときの内務大臣の若槻さんは、この現在の医師調剤が附則においてきめられておる。この点について附則は飽くまでも附則であつて、これはいつかは廃止して原則に還るべきものであるということを、当時薬医行政の主務大臣でありました内務大臣が、国会においても言明されたこともあつたのでございます。さように境界線から行きましても、お互いに相通ずるところがございますけれども、併しながらおのずからそこに分野を定めて、そうしてその専門の学問、機能を生かして協力するということが、本当の患者に対する完璧なる医療を施し、親切なる態度ではなかろうか、かように考えるのであります。  なお又私どもはこの医薬分業医薬分業という言葉は、実にいかんのじやないかということをかねがね考えております。これは医と薬との業務が違つておる。それを分離しろという意味でございますから、分業という言葉は的確にその意味を表わしておるとは思いまするけれども、いつも私どもが困りますのは、これを英訳し、或いは仏訳し、独訳する場合に、医薬分業という言葉がないのでございます。私どもがアメリカの使節団の、我々が勧告を受けましてから、この医薬の制度の調査医薬分業のことを勉強するにつきましては、アメリカの医師会、歯科医師会並びに薬剤師協会から非常なる援助を受けまして、そうしていろいろ便り通信を頂き、資料を頂きまして、そうして検討をいたしたのでございます。この医薬分業を如何に訳すかということが非常に問題があつたのでございます。先ず最初にこの分業そのままを訳しましてセパレーシヨンという言葉を使つた。セパレーシヨン・オブ・ハーマシイ・アンド・メデイシン、併しながらセパレーシヨンという言葉は分離という言葉で、如何にも医師、薬剤師が翌して離れ離れになるという印象を与えやしないかということを私どもはかねがね感じておるのでございます。そこで然らばこれはセパレーシヨンでなくて、スペシユアリゼーシヨン、専門家、専門職ということが本当ではないかというので、こういう言葉を使つてみたのであります。併しながら、これもぴんと来ない。それで医師と薬剤師が専門化することが当然のことじやないかということがぴんと来ない。遂に最後にアメリカ医師会の助言によりまして、我々薬剤師協会の会長であります京大教授の刈米博士がアメリカに行かれて、そのときに最も適当なる言葉を発見いたしたのであります。それはコーポレーシヨン・オブ・ハーマシイ・アンド・メデイシン薬学と医学の協力、これが我々の言う医薬分業論であるということがびんと肝に銘じたのでございます。医師と薬剤師おのおのが対立して離れ離れになるというのではなくして、お互いに専門分野の専門技能を生かし合つて、そうして足らざるを補い合つて、我々も勉強が足りませんから、大いに勉強いたしまするが、大いに勉強して、補い合つて時間の倹約をし、いろいろ専門の技能を磨く、それをコーオペレーシヨン、医師と薬剤師、医学と薬学が協力するコーオペレーシヨン・オブ・ハーマシイ・アンド・メデイシン、医学と薬学の協力ということが医薬分業の本体ではなかろうかということを考える。そういう精神におきまして、だんだん医師会側もこのコーオペレーシヨンの必要性を認め、そういう議論に近ずきつつあることは、私は誠に欣快に堪えないというような感じがいたしておる次第でございます。  なお分業論の答申につきまして詳しく申上げたいこともございますけれども、あとで我々のほうの代表の横井委員もおりまするし、時間もございませんので、一応これで私の証言を終ります。
  30. 山下義信

    委員長山下義信君) 武見証人並びに高野証人の両証言に対しまして、御質問がございましたならばどうぞ御質問を願います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  31. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を始めて。暫時休憩いたします。午後は一時二十分より再開いたします。    午後零時六分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十四分開会
  32. 山下義信

    委員長山下義信君) 午前に引続きまして開会いたします。証人証言を続行いたします。午後は最初日本歯科医薬会代表佐藤証人の本案に対しまする賛否の御証言をお願いいたします。
  33. 佐藤運雄

    証人佐藤運雄君) なるべく重点的に簡単に申上げたいと思います。この医薬分業に対する賛否如何ということをお答えいたしまするならば、ちよつと簡単のようであつて簡単でないのであります。と申しまするのは、これを二つに分けて申上げたほうがはつきりいたすので、一つはその原則として医薬分業はどうであるかこういうことに対して一つ、それからもう一つはこの実行についで如何と、こう二つに分けますると、比較的にはつきり意見が申上げられると思うのです。この医薬分業を原則的に可とするか、否とするかということは、これは私が申上げるまでもなく、すでに薬事法ができましたときに、これが大体きまつておるといつてもいいと思うのであります。薬事法ができまして、これは医療担当者も、医療を受けるものも、又政府も一般にこれを薬事法を認めてお偽のでありまするから、原則として医薬分業はこのときに賛否がすでにきまつたことと考えているのです。私どもも薬事法の存在を否定しておりません限り、これは賛成するのが当然であると考えておるのです。  ただこの実施の面におきましては、おのずからそこに違いがあります。薬事法におきましてもいろいろ例外がありますのはそのためであると考えております。幾ら原則として立派なものであつても、これが実施のできるような状態にありませんというと、実施は何事でもできないわけで、この点においては医薬分業も同じであります。この実施について即時実施とか、数年、近いうちにとかいうようなことについての話でありますけれども、これは一面においては医療担当者の側と、それから医療を受けるものとの両者の間に、医薬分業を直ちに受けることのできる状態になつておりませんので、この点においては大いに考慮を要することと思つておるのであります。  然らば医療の担当者の面において、どういうことが考えられなければならんかといえば、無論一つは経済的の問題であります。御承知の通り現在仮に医薬分業を即刻と申さないでも、極めて近いうちにこれを実施したとすれば、大都市は別といたしまして、地方におりまする医者経済問題、或いは死活問題と大きく申せば、申してもいいくらいに影響がありまするので、これをどうか解決いたしません限りは、医療担当者としては今これを実施するということに協力することはできないと思うのであります。併しこの点はすべての面でよく認識されまして、医療費の新体制を確立するということについて協議が進んでおりまするから、その医療費の新体制ができまして、医薬分業をしても、医師経済問題には、生活には関係がない、むしろ幾らかでもよくなるというふうなら尚更でありますけれども、少しも分業前と変らんというような状態になることが第一に必要であろうと思うのであります。  それからもう一つはこれは長い伝統のだめからでありましようけれども、受療者の側において、医者の薬に対する愛着と申しまするか、信頼性と申しまするか、これがありまするので、是非先生の薬をもらいたい、薬局からもらつて来るのではなんだか信頼することができないから、是非医者さんの薬を、先生の薬をもらいたいというこの心持があるのであります。これはアメリカあたりの様子を聞いて見ますと、そこが一つの大きな相違で、又日本の特徴とでも申しますか、そうしてアメリカでありますと、医者ところへ薬をもらいに行くにしても、薬剤師にもらつて来るのが当然であるけれども、こういう事情で行かれないから先生の薬を下さい。医者ところへ薬をもらいに行くにしても、そういう言い現わしかたではないでしようけれども、そういう心持でもらうというのでありますけれども、日本では薬局からもらうのはいやだから、先生のを下さい。そこは常識と申しますか、教養と申しますか、それの違いでありまするが、これが医者に対しては大なる苦痛といつてもいいくらいであろうと思うのであります。併しこれはすぐに直るわけのことでもありませんから、これはどうしても国民の常識をそういうほうに向けて行かなければならない。それでありますから医療担当者のほうから申しますれば、生活に少しも損害を受けることがなくて、国民も納得してくれるならば、調剤、投薬、これはかなり面倒な手数なことで、相当な時間がかかります。そういう時間を好んで是非道楽で、特別な趣味でこれをやろうという人は恐らくないでしよう。それだけの余裕があれば、念を入れて診療のほうに力を注ぎたいというのが、これは一般の医者の常識でありますから、その点において我々は大いに考えなければならんと考えるのであります。  それから国民の側におきましては、受療者の側におきましては、一つは診療費が高くなるということであります。これも極めて大切なことでありますが、これは薬剤師協会のほうでもいろいろ考えておられますし、又当事者のほうでも相当のお考えがありましようから、なるべく医療費が高くならないような医療費の体制を確立する。そうして又或る面において国家の補助とか何とかいろいろ問題もありましようけれども、いろいろな方法を講じたならばそれほど上らないでもすむだろうと思います。又或いは僅か上つてもそれがためによわいい診療が受けられるというのであれば、国民も納得することがあり得ると考えられますので、そういう点から考えまするというと、この医療費の高騰ということは或る程度抑制することはできると思うのであります。  それからもう一つ今申上げました通りに、医者の薬が効くのだというこの考え方、これはどうしても教育によつてこれを直すよりほか仕方がない。法律でこれを禁ずるというようなことは到底すべきことではないと考えておりまするし、又できべきことでもないのでありますから、そういうように国民を教育することは相当の期間がかかるだろうと考えます。それでありますから、医薬分業の実施ということについては、医療担当者とそれから受療者との両方の状態がこれを受入れるのに適当になつたときに、医薬分業の実施ということはすべきであり、現在のところこれを実施するということについては恐らくは賛成する人は、私以外にも余りないだろうと考えております。  然らばこれを法律化するということはどうか。考え方は二つありまして、一つは現在目標をきめて置いて、およそ医療費の新体制を作るのには何年くらいかかる。それから国民を教育するにはどのくらいかかる。そういう年月を念頭に置きまして、およそこのくらいならば両方ができ上る。そのときに実施するようにしたらいいだろう。そういうことを先ず法律できめて、そうしてそのほうに着々進んで行こうという考え方と、それからもう一つは医療費の新体制をちやんときめて、それから国民もそういうように教育して満足なところへ、医療担当者も受療者も満足の行く、納得の行つたときに、はじめてこれを法律化すべきである。この二つが考えられると思うのであります。併し同じことでありまするから、どちらがこの原則を忠実に立派にやつて行くことの可能性が多いかというと、どうしても我が国の国情から申しますと、アメリカや何かと違いまして、常識のほうを発達させて、それがよくなつてから実施するというのでは、どうしても遅くなる。不確実になる憂えがありますので、ここでおよその目安をつけて、この頃になつたらば医薬分業を実施するということは少しも差支えないのではないか、こう考えますので、私は法律化することについては絶対に反対ということは申しませんし、是非そうしなければならんとも考えておりませんけれども、又そうすることはよくないとも考えておりませんが、今申上げますることの観点からいたしましては、ここで成るべく余計年月を見越しておいて、そうして法制化したほうがこの原則を生かすのに確実な漸進を見ることができるだろうとこう考えておるのであります。  一応結論のようなことだけを申上げまして、又御質疑がありましたら後ほどお答え申したいとこう考えております。
  34. 山下義信

    委員長山下義信君) 佐藤証人に伺つて置きますが、佐藤証人医薬制度調査会答申案には御賛成なすつたのでございますか。御反対ですか。
  35. 佐藤運雄

    証人佐藤運雄君) 賛成いたしまして……。
  36. 山下義信

    委員長山下義信君) 賛成でございますか。
  37. 佐藤運雄

    証人佐藤運雄君) はい。多少の異存はございましたけれども、やはり委員会の決議としてそれに従つておりました。
  38. 山下義信

    委員長山下義信君) 次は日本薬剤師協会代表横井証人の御証言をお願いいたします。
  39. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) 午前中から各証人からいろいろお話がございまして、大体言い尽されておりまするので、私は極めて簡単に医薬分業是非について申したいと思います  私どもが医薬分業を主張といたしまするのは理由はいろいろございまするけれども、その主要なる点は二つあると存じます。第一は医薬を分離すれば、一般の人々は必ず仕合せになると考えております。第二の点は我々が与えられました職能、いわゆる天職によつて、一般の人々に奉仕がしたいという考え方、この二つが主な点になつておるのでございます。  その第一の医薬を分離すれば一般の人々が必ず仕合せになるということでありますが、これはあらゆる場合に私どもの仲間から申上げておりまするので、これも極めて簡単に、その要点だけを申上げて見たいと思います。医薬が分離せられれば、治療が公開せられる。先ほど医薬が分離せられると、公開だとか、秘密だとかいう言葉についてお話がございましたけれども、少くとも薬事、薬に関しては、現在秘密がとられておるわけなんであります。薬の内容を直接伺いますればお話し頂けるかも分りませんけれども、患者の立場から自分の頂いております薬をお医者さんに反問するだけの度胸のある患者は恐らくないと存じまするので、やはり薬に関する限りは現在秘密の治療が行われておるのであります。これが分離されますれば全部これが公開せられるわけでありまして、何人といえどもその内容を十分承知しながら治療を浮けることができるようになりまして、従つて薬に関する一切の秘密というものはなくなるわけでございます。そうなりますれば薬品の配給にしましても、或いは調剤にいたしましても、勢い正確にならざるを得んと思います。正確になると同時に、薬品の価格などに関しましても万人がこれを知りながらそれを頂くのでありますから、価格に関しても大きな影響があると考えるのでございます。これが一番大切なことでありまして、この処方箋が万人に公開せられるということによつて、最も必要な、最も効果のある薬品のみが処方せられることになりますれば、先ほどお話のありましたこの二剤主義が時には一剤主義になるとか、或いはそういう傾向によつて治療の期間が著しく短縮せらることになると存ずるのであります。特にこの処方に過誤のある場合などにも、調剤学について、いわゆる専門の学問をいたしまして、そうして而も国家試験を受けておる薬剤学に対する、調剤に対する知識を持つた薬剤師が一々これを検討いたしますので、過誤の責任の所在が明らかになると同時に、この過誤というものを恐らく絶無にすることができると思うのであります。調剤薬品の価格におきましても、厚生省調査によりまするというと、社会保険の薬品の原価というものは一日分が五円六十四銭になると私どものほうで計算したのでありますが、医師会のほうの調査によると五円六十銭になるということになつておるのであります。社会保険におきましては、一日分の薬価が平均二十三円三十九銭になつております。一般自由診療においては医師会資料によつて見ましても、大体その一・五倍としましても一日分の薬価が三十五円になると考えられます。そこでその薬品の原価の五円六十銭、自由診療のほうは別にしまして、五円六十銭を差引きました残額から相当多額なものを、お医者のほうへいわゆる診療の費用として、薬の中に含まれておる診療の費用としてお取りになりましても、医薬を分離すれば一般通念から考えましても当然これは安くならざるを得んのでございます。さように考えられます。先ほどお話のありましたような高度な治療を行うとか、或いはより高額な収益を望むとなれば話は別になりますけれども、高くなるとか安くなるとかいうことはやはり等しいもので比較しなければならないと考えますので、いわゆる現在の事業を継続して医薬を分離した場合には、我々の計算では必ず安くなるこういうふうに考えておるわけでございます。併し特に臨時診療報酬調査会においていろいろ研究せられまして結論を出されましたその結論の末尾に付いておりまするが、現在の国民医療費の負担というものは限界点に達しておるということは、これは万人が認めておるものと考えております。従つて医薬を分離いたしまするにしましても、これを分離いたさないにしましても、国民にこれ以上の負担をかけることは私どもはいけないと考えておるのでどうしても薬剤師と医師側と協力して高くならないようにこれを分離して行く方途を考えて行かなければならないと考えております。従つて先ほど高野さんからもお話がございましたが、医薬を分離すれば安くなるか、高くなるかというような問題は、安くなるか、高くなるかではなくして、佐藤さんのお話のように、いわゆる医師経済問題、そういうものからいろいろ論ぜられて高くするか、安くするかということにかかつておるように考えるのであります。両者が相協力して高くせないようにすれば、これは高くならないで済むものと我々は確信を持つておるのであります。便不便の問題にしましても、現行の薬事法の二十二条の医師調剤に関する規定によりまするというと、これが実際行われておるとするならば、医者は自己の処方箋によつて自分自身調剤せなければならんことになつておるのであります。従つて例えば患者を診察いたしまする場合に一人診察いたしまして、そうして一人分の調剤をやる、又一八を診察して一人の調剤をやる、その間全部の患者を待たせるか、或いは又全部の患者を診察して、初め診察した患者からずつと全部の患者を待たしておいて、一番しまいに全部これを調剤するというようなことをやらなければならんのでありまして、これこそ本当に不便であります。これを便利だなどということは、これは誰が考えても納得できんことでございます。まして往診の場合などは、連続して往診する場合になどは、往診先から一々帰つて調剤するとか、或いは全部の往診が済んでしまわなければ最初に往診した所の調剤ができないとかいうようなことになりまして、これは決して便利ではなくて、むしろ医薬を分離することによつて、そのほうが便利ではないかと私どもは考えておるのでございます。  それから第二の、与えられた職能、天職によつて一般の人々に奉仕したいということでありますが、明治二十二年以前の太政官布告とか、或いは省令は別といたしまして、差当り明治二十二年三月十五日に法律第十号で薬品営業並薬品取扱規則が制定せられまして、その第一章、第一条に、薬剤師とは薬局を開設し、医師の処方箋により薬剤を調剤するものを言う、というふうに薬剤師の定義を下しております。薬剤師のなすべき職能が規定されまして、大正十四年四月十三日に薬事法が公布されまして、その第一条に、薬剤師とは医師、歯科医師又は獣医の処方箋により調剤をなす者を言う、というようにありますが、昭和十八年の戰時立法によりまして、その第二条に、薬剤師は調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどり国民体力の向上に寄与するを似て本分とする、と改められました。明治二十二年から昭和十八年まで、その間約五十年の間私たちは法律によつて与えられたただ一つの天職を行うために皆薬剤師になつて参りました。戰時立法が公布せられた昭和十八年の三月までに四万四千六百五十二人の者が薬剤師になつてつたのでありますが、現在約五万余の薬剤師がおりますが、その大部分医師の処方箋によつて調剤することをただ一つの天職と思つて薬剤師になつて参りました。たくさんの職業がありますが、法律で規定せられた職能を行うことができない、みずからの天職で一般の人々に奉仕できない職能は他に殆んど見受けられません。君は機関士の資格があるから従つて機関士の免許状を与える、併し当分の間石炭運びをやつておれ、その石炭運びが七十年間続いておるのであります。而もそれが例外なしに全薬剤師に及んでおるのでありますから、これは正しくない状態であると思います。そればかりでなしに、昨年十二月を期限といたしまして、調剤所の整備が命ぜられました。これは法律には規定されておりませんけれども国の方針で調剤所の整備が命ぜされました。薬剤師は数万円及至数十万円の金をかけまして調剤室並びに試験室の整備をいたしまして、この調剤室の整備のできない者は、薬剤師でありながら薬局を経営することが許されません。薬局として登録することが許されませんので、薬剤師でありながらもただ医薬品を販売する業者として現在残つておるような者もあるのであります。薬剤師の資格はあつても規定通りの調剤所ができなければ、薬局として登録されないのであります。この多額の金をかけて整備せられました調剤室は、ほか何をする所でもございません、医師の処方箋を調剤する所であります。医師の処方箋を調剤する以外に用のない場所でございます。大学を出まして国家試験を受けまして、特に調剤に関する科目の国家試験を受けまして、そうて規定通りの調剤室を整備する、すべてこれは医師の処方箋によつて調剤をせんがためでございます。これが全都法律、規則によつて規定されておるのでございます。世上往々にして医薬の分離は医師と薬剤師の米櫃争いだと言われております。先ほども米櫃の一つを二つにすることだとどなたからか出たのでありますが、今日の薬剤師は利益の高などは決して考えておりません。正しき職能で以て一般の人々に奉仕したいという念願であります。何物を犠牲にいたしましても与えられた職能によつて、天職によつて世の中に奉仕したい、而もこれをすることが人々のためになると考えておるのであります。こういう考えを持つて薬剤師は今日医薬を分離せなければならんと考えておるのでございます。又医師会では分業になれば、治療に対して責任を持つことができないというようなことをおつしやつておいでになるようでありまするが、その癖又片方では医師会の言われまするところのいわゆるこの任意分業任意分業ならばよいというようなお話が出ておるのでありまして、甚だこれは矛盾したことだと考えておるのでございます。一体これはどういうことか私どもにはよくわかりません。恐らく一般の人々にもこんな理由はわからんと私は存じます。法によつて規定せられた分業なら責任が持てないなどということは、どう考えても私どもには納得ができないのでございます。又医師会においては調剤は手技であつてむつかしい仕事ではないと言つておられまするが、例えば看護婦が結膜炎の眼を洗うようなものだというようなことをおつしやつておるのでありまするが、これはひとり我が国ばかりではございません、外国でもやはり調剤というものは一つのプロフエツシヨンだということが言われておる。現にアメリカの薬剤師会でありますが、故ルーズベルトがそこに臨んで薬学は立派にプロフエツシヨンになつているということを言つております。プロフエツシヨンとは神学、法学或いは医学、そういう天職というようなことを申すのでありまして、そのときに使つたルーズベルトのプロフエツシヨンという言葉は、この天職という意味で言つておるのであります。果して調剤というものが結膜炎を洗う看護婦の仕事のように考えられておるということは、そういう考え方だからこそこれは医薬を分離せなければならんと考えるようなわけでございます。又任意分業だとか、或いは強制分業だとかいうことにつきましても、先ほど高野さんからも強制分業についてはお話がございましたが、任意分業というのは、これは今世の中に大変やわらかくうまくマッチするために発明して言われるようになりました言葉でございまして、任意分業というのは、書いて字のごとく一人手に分業になるという言葉でございます。従つて医者さんのほうが分業にすることが当然である、従つて医者さんの考えの下に一人手に医薬が分離になつて行く形を任意分業と申すのでございまして、一つの枠をきめて置いて、そうして分業にならないような形の下に、欲しければやるがなどというようなことでは任意分業とは申されないように考えておるのであります。一つの例を挙げて見まするというと、例えば患者が処方箋を要求した場合には、医師のほうではいつでも処方箋を書いてやる、従つて患者はその処方箋を持つて薬剤師でもらおうと、医者でもらおうと自由なんだから任意だとおつしやいまするが、その処方箋を書きますることにも一つの枠がございまして、例えて申しまするならば、国の経営いたしておりまする健康保険、社会保險、それから国民健康保険におきましても、処方箋を書きますれば点数は五点でございます。五点と申しますると乙地五十円、甲地では五十五円ということになると存じます。そこで社会保険の薬代と申しますと、先ほど申上げましたように平均の価格が一日分二十三円三十九銭ということになつておりまするから、二日分で四十六円七十八銭になりますが、二日分でそんなお金になるわけなんです。ところが処方箋一枚もらいますると、今の話で甲地では五十五円、五点で出すわけなんでありまするから、従つて国民健康保険でありますれば、その半額は本人の負担になる。或いは七割負担の所もございましよう。いろいろございましようけれども、そういうことになるだろうと私は存じます。詳しいことは余り知りませんけれども、そこで二日分のお薬を頂くよりも高い料金を処方箋一枚に払つて、そうして処方箋をもらつて薬をもらう人は恐らく世の中にはないと思うのでございまして、先ほどちよつとお話がございました薬剤師のほうにおいても、或いは国民健康保険健康保険関係者のかたがたにおいても一般大衆を啓蒙することがなかつた。そういう点を啓蒙しなければならんというお話がございましたけれども、こういう枠が一つございまして、例えて言うならば、国民健康保険の係のかたがお前薬剤師のほうで成るべく薬をもらえ、処方箋を書いてやると言つて書かせば五点要るんでありますから、却つて薬よりもそのほうが高くなるという結果になるわけでありまして、こういうことで今の啓蒙しろということをおつしやりましても、これは蒙啓できないのであります。特に又患者と申しますれば、これは私が申上げなくても先生がたが御承知だと思いまするが、お医者さんにかかれば極めて弱いものでございまして、処方箋をくれなどということはとてもよう申せません。又今申上げるような自由診療におきましてはなお更高い処方箋料を要求される場合もあるんでありまするから、そういう点についてこれは言うべくして行われないことと考えております。特に私が不可思議と考えますのは、同じ文書料におきましても、処方箋は五点になつておる。ところが診断書とか或いは証明書とかいうようなものは、健康保険のほうでは何点という規定がないようでございます。そこで各地方の、この県あたりでやつておりまするのを見まするというと、いろいろございまするれども、大体一枚の診断書、証明書は十五円かち二十円くらいに規定されておるように存じております。そういたしますると同じ一枚の書類を書きまするにいたしましても、処方箋は五点ということになつておりますると、何だかそこにこう変なものがあるように考えられるわけなんであります。こういう枠の中で任意である、自由であるということを仰せられましても、これは任意でも自由でも何でもないのでありまして、こういう点が一般国民にはわかりません。従つてこの医薬分業が一般国民の大衆の声として恐らく挙らない理由になつておるのでございます。一面又この法律で規定することを強制だというお話でございますが、医業もやはりこれは法律で非常な保護を受けておいでになりまして、先ほども控室でお話がございましたが、医業の類似行為に対しましてもきつい厳禁の規定がございまして、決して法律で規定することは、正しい制度を法律によつて規定することは強制でも何でもないと私は考えております。こんなことは法律を制定せられまする専門家であらせられまする先生がたはよく御理解して頂けることと考えております。殊更に現在の世の中にマッチするかのようにあたかも自由なるごとく任意という言葉を、一般の人にいやな感じを与えるために強制という言葉をお使いになる。これはみんな医師会かたがたが今度発明された言葉でございまして、法律制定に関する専門の立場におられるかたはよく御理解願えると思います。正しい制度を法律で規定することは強制でも何でもないと存じております。以上医薬分業是非につきまして、その是なる理由を申上げた次第でございます。
  40. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは最後日本医師会の代表榊原証人証言こお願いいたします。
  41. 榊原亨

    証人榊原亨君) 患者又はその家族が信頼しております医師から薬をもらいたいという希望がございますときには医者からもらい、自分が信頼しておる薬剤師のかたから薬を調合してもらいたいときには自由な意思によつて薬剤師のほうからもらえるということを私どもは任意と申しておるのでございまして、その任意分業と申しますのは全く、患者の任意の意思によるという意味なのでございます。従いましてこの任意分業の姿がいいか、或いは法的で以て規定いたしまするところ医師から、医者が薬を渡してはいかんというこを規定いたします私どものいわゆる強制医薬分業がいいかということを判定いたしますのには、大体三つの方向があると私は考えておるのでございます。その一つは、医師に果して調剤能力、薬を調合いたします能力があるかどうかということを見極める必要があるのでございます。二つには、理論的に、先ほどからも証人のかたがおつしやいましたように、理論的に医師調剤を禁止するということが果していいかどうかということの考察でございます。最後に、これは最も重大なことではありまするが、果して強制医薬分業と申しますものが国民の利益になるかどうかという、この三つの観点から私どもはこれを考察いたしたいと思うのでございまするが、終戰後まだ問もない今日でございます、経済状態の逼迫しておる我が国といたしましては、この第三番目の、国民の利益関係にどういう影響があるかということを主として現実の面において考えまして、ここれを判定する必要があると私は考えておる次第でございます。  そこでその第一の、医師に果して薬を調合する力があるかどうかということでありますが、これは私どもが薬剤師の先生がたは、薬を合わしてはいかん、薬を調剤してはいかんということを言つておるのではないのでございまして、勿論薬剤師のかたがたは立派な能力者ではございますけれども、患者の利便、或いは患者の希望のある場合には医師も薬を合わすことができるかどうかということであるのであります。御承知のようにこの薬事学というものは、薬を作り出す、合成、これは武見君が申上げたのでありますが、合成するという方面のこと、薬を分析いたしますこと、それから今問題になつておりますところの薬を調合いたしますこと、或いは薬の効き方を考えますところの薬理学、こういうものがいろいろあるのでありますが、薬の効き方ということにつきましては、これはもう私ども医者が知つておりませんと、これは処方箋も書けないわけでありますし、治療もできないわけでありますから、特にこの薬の人体における効き方がどういう方向に効いて来るかという学問については、特に長時間の教育を受けておるのであります。それから薬を合わせますという調剤学につきましても、これは明日も御証言があると存じますが、相当の時間の調剤学というものを我々は学んでおるのであります。又その実際につきましては、私ども科学者といたしまして、薬を計るとか、或いは混合するとかいうことは、この調剤学を待つまでもなしに、化学の実験その他において十分にその能力を持つておる次第でございます。又現に私どもは医者といたしまして調剤をいたしまして大した過ちがないというようなことを考えて見ますということ、医師調剤の力がないということは言えないと私は思つておるのでござ  います。  第二の問題でございますところの、理論的にそれではこの医薬分業ということがどうだということになるのでございまするが、御承知のように先ず第一番目には、世界中どこで一体法律を以て医者が薬を合わしてはいかんということを禁止しておる所があるか。これは先ほどもお話がありましたのでございますが、ドイツ並びにその周囲の所、或いは英国の社会保険、保障等の場合にはさような規定もあるかと存じますが、アメリカのごときは、医師自分の診察をいたしました患者に投薬、調剤をすることができるばかりでなく、ほかの医者の処方箋をも医者が合わすことができるのであります。これらの点につきましては、この厚生常任委員会におられますところの堂森委員なんかが欧州なんかの実情を調査しておいでになりましたので、お聞き下さればよくわかるわけでありますが、今チユーリッヒの医師のごときは、医師のほうが、日本反対でありまして、医者のほうから分業をやつてくれと希望しておるのに、三回も国民側におきまして、これは医療費が上るから困るということで、国民側で反対いたしておるような事実があるのであります。こういうことをお考え下されば、理論的に申しましても、外国がそうだから日本がどうだというようなお話は成り立たぬと思うのであります。又法理論的に申しましても、大審院の判決にございますように、患者の病名、若しくは容態を聞き、病状を判断し、これに適応する薬名を調合供与するは医の行為にほかならずということが、はつきりと大審院の判決にもあるのでございまして、法理論からいたしましても、医師調剤を禁止するということはどうかと私どもは思つておる次第でございます。医師のほうからも、薬剤師のほうからも、自由に患者が撰択してもらえるという制度が勿論私どもはよいと思つておるのでございますが、なお日本医師は薬師と昔から言われ、又外国と著しく事情が違つていることは、先ほどもどなたか御証言になつたところでございますから、省略さして頂きたいと存ずるのでありますが、結局医療といいますものは経済的な取引ではないのでありまして、全く人と人との人格的信頼に立つて行われるものでございます。而もこの調剤投薬と申しますものは、医療の一部分でありまして、当然この調剤投薬については、医師が責任を持つてやるべきであります。併しながら医師の手が及びませんときには、或いは患者が希望しますときには、当然その専門家でおられるところの薬剤師のかたにお願いするということは、丁度外科医師が手術をいたしますときには、消毒した機械で手術をしなければならんのが、当然それは外科医師の責任であります。併しながらその機械を消毒いたしますのは便宜看護婦に頼む。或いはレントゲンの治療をいたします、或いはレントゲン写真をとることは、当然これは治療の一環といたしまして医者の責任でございますけれども、便宜レントゲン技師にそれをお願いする、こういうような立場に私どもはこの調剤ということを見ておるのであります。そこで理論的に申しましても、只今お話申上げました通りでございますが、それでは一番大事な国民の利害関係、利益ということにつきましては、一体この強制分業はどんなふうになつておるか、先ほどもお話になりましたように、第一番目に考えられやすいのは、医師の秘密治療の公開ということでございますが、これは私どもが考えて見なければならんのは、処方箋をもらいまして、患者のかた或いは家族のかたが、その処方の薬の名前を知りましても、それは決して衛生思想或いは衛生に対する概念が深まるというわけではないと私は思つておるのでございます。御承知のように医者患者を治療いたしますときには、これはいろいろ指導いたします、いろいろこういうふうにしなければならん、或いはああいうふうにしなければならんということを指示いたしまして、病気の治療の方法の方針を医者が当然授けるべきであるということは、法律ではつきりきまつておるところでございますが、ただ単に処方箋の中に含まれますところの薬の名前を見ただけで、そうしてそれが医療向上になるというようなことは考えられないのであります。むしろその場合に、例えば熱を持つております患者が処方箋をもらつて、アスピリンと若しも処方箋に書いてありました場合に、それが熱の出たときにはアスピリンを飲めばいいのだなというようなことを患者考えまして、自分で次に同じような熱が出たときに同じようなアスピリンを買つて来て自分が飲む。或いはこの前のアスピリンを合わして下さいというようなことを薬剤師のかたに強要して、お願いをして、そうして若しも飲んでそれが同じ種類の熱でなしに伝染病であつたという場合にはとんでもないことになるのでありまして、この素人療治、或いは素人のかたで考えて単に処方の内容を見て、これはこうだというようなことの速断をするということは、教育を受けない、まだ教育の十分でない我が国にとつては非常に危険なことだと私は思うのであります。このことは単に日本だけではないのでありまして、現にアメリカにおきましても、この処方箋によりまして無診投薬、或いは素人療治ということの弊害が多いために、これを如何にして取締るかということは、アメリカでも非常に困つておるのが現状でございまして、こういうことをよくお考えを願いたいと思うのであります。又先ほど薬剤師のほうのかたから処方の内容を公開されるというと価格が下るというお話があるのでありますが、決してそういうものではない、先ほど五円六十銭という数字をお示しになつたのでありますが、それは一剤におきまする薬の、健康保険におきまする一剤の中に含まれておるところの薬の原価であります。それに薬包紙、そういうものが七十何銭であります。或いは管理費などの経費を入れますと、平均いたしまして九円三十九銭という数が出て来るのであります。その上更にこれに税金を見てみますと、健康保険におきましては、五十万円以上収入のものにおきましては、大体半分の税金というものを、見なければならんという現状でございますと、そういたしますと只今のこの医療費が決して高いものではないというのがよくおわかりが行くと思います。従いまして若しも正確なる薬の内容が公示されましても、そのために医療費が下るということは、私どもは到底考えることができないと考えておるのであります。次にその利益と考えられておりますのは、医師調剤の時間が省けるから、自然に技術向上が来たされるということでありますが、これもアメリカ人のかたが調剤なさいますその技術と、日本の人の調剤いたします技術とは非常な違いがあるのです。例えて申しますと、皆さんがたがお飲みになつていらつしやいますところの薬を紙で包んである、この包むのは日本人でなければできないことです。従いまして向うの調剤の時間と、こちらの調剤の時間について、その労力というものは非常な違いがあるのでございます。従いまして若しも先ほどのお話の通り、往診とか、或いは患者は、大体日本におきましては零床診療所、即ちベットを持ちません、病床を持ちません診療所の一日平均の患者数は二十二人ということに昭和二十五年なつておるのであります。従つてそういうぐらいの患者を見てみまして、一日の投薬調剤するということは、さして大きい時間を消費するものでないのであります。勿論それ以上の患者が入つて来ると、医者は現に薬剤師のかたにお願いして、自分のうちに薬剤師のかたに来て頂いて、そうして調剤するのが実情でありまして、単に医薬分業をしたから、強制医薬分業をしたから、それで時間が浮いて来て、医学の技術向上のために非常に役立つたということは、一部分はあるでございましようが、机の上でお考えになるようなことではないのであります。これに反しまして強制医薬分業をいたしましたために受けますところの損失というものは非常に大きいのであります。先ずその医療費の負担が増大するということは、先ほどもいろいろお話が、御議論があつたのでありますが、私どもの計算いたしますところによりますと、新らしい医療費体系でなしに、現行のままでは一応約一二%の医療費が増加いたします。その額は百十七億に上ります。又新らしい医療費の体系、新らしい医療費の体系と申しますと、これはまだ御議論の余地がありますので、私どもが計算いたしました新らしい医療費の体系によりまして、薬剤師の先生がたが御調剤なさいますのが六四%、医者調剤いたしますのが三六%と若し仮定いたしましても、現行の医療費の二八%の増加を来たすのであります。  更にここに一つ大きな問題として皆さんがたに御承知おきを願いたいことは、社会保険の診療についてであります。御承知のように先ほども一剤投薬、二剤投薬というお話があつたのでありますが、社会保険の診療におきましては、できるだけ必要のない場合には、一剤投薬ということをやつておりました。そうして現状に応じまして、医者の出して参ります請求書を査定いたしておるのであります。若しも社会保険の診療報酬に違つた治療のために二剤投薬をいたしておるような場合には、その一剤の費用を取消して削つておるのであります。そうしてこの社会保険法の医療費を少くするように現在やつておるのでありますが、若しも今これを何らかの処置を講ぜずして強制医薬分業というようなことをやりますと、医者のほうからは、処方箋を取るか取らんか、これは別でありますが、医者のほうからは技術料の請求が出るだけであります。そうして薬剤師の先生がたからはその調剤手数料を含みました薬価の請求があるのでありますが、薬剤師のかたは処方箋によつて機械的に合わしておいでになるのでありますから、従つてそれが診療報酬に違反いたしまして、一剤でいいところを二割、三剤を使つた処方箋を頂戴されておられましても、それを査定することができないのであります。何となれば、その処方箋を書くのが医者であります。その医者まで遡つて計算することができないのでありまして、これが社会保険法におきまして、強制医薬分業をやつた場合には、医療費が著しく上ると仮定されるこれも一つの大きな原因であります。これを何とか処置しなければいかんと思つて私どもも考えておるのでありますが、今のところ名案が浮ばんというのが現状でありまして、これはとくと委員会におかせられましても、社会保険局のほうにでもお聞き下されば、これは事実ははつきりわかると思うのであります。この事実については厚生省も今のところ御対策がないと考えております。更に又医者はおのおの自分の好みます薬というものを、一応使います薬というものを保管しておるのであります。ところがすべての医者からのいろいろな処方箋によつて合わせるということになりますと非常にたくさんの薬を保管しておかなければならんということになりますので、一人々々の医者が保管しますよりも非常にたくさんの薬を用意しますために、それに要しまする資本の投下というようなものは非常に大きな額に上るのでありまして、このことから申しましても、医療費が高くなるわけであります。私どもはこういう点からいたしまして、非常に細かいこの資料を出して、臨時診療報酬調査会或いは臨時医薬制度調査会或いは臨時医療報酬調査会において是非具体的な数字を以て御計算をお願いして、少くともこの医療費が増すか、増さんか、これはもう国民に取つて一番重要なことでございますから、この御計算を願つて御検討をお願いいたしたいということを再三再四当委員会において申上げたのでありますけれども、不幸にしてこの数字的御検討は臨時医療報酬調査会におきましても医薬制度調査会におきましても行われていないということは、私ども医師会側にとりまして極めて残念なことと存ずる次第であります。更にこの時間、労力というものが患者の負担になる。先ほども医薬分業をしたほうが却つて時間が少くなるというお話でございましたが、これは子供を背負つて小児科へお母さんが参りまして、そうして漸く子供を診察してもらつて、そうして帰り、又この子供を背負つて近所の薬屋さんまで行つて、漸く薬をもらうというと、そのことの労力と時間がどれくらいになるかということを、常識的にお考え下さればわかることでございまするので、その点については触れません。更に先ほどもお話がございましたように、診療、治療の責任の所在がはつきりしない。強制医薬分業をいたしますと、治療の責任の所在がはつきりしない。これは御承知のように若しも今ここに患者がござざいまして、病気が治らんといたします。その場合にお医者さんの見立が悪いため病気が長引いて治らんのか、これは今の薬剤師の先生がたはそういうことはないとは思いますが、若しもその薬剤師のかたが御調剤になる薬に何らかの違いがあるのじやなかつたか、この問題の責任がどこにあるのかということがはつきりしないのであります。でそれはその薬を分析して見ればすぐ間違いはわかるじやないか、こういうふうにお考えになるかも知れませんが、今の化学におきましては、例えばアスピリンならアスピリンを、バイエルのアスピリンを使いました場合、バイエルのアスピリンを使つておるか普通のアスピリンを使つておるかということを分析を以ていろいろに証拠立てることができないのであります。ヂアスターゼにいたしましても、先ほドヂアスターゼの検定の話があるということは申しましたが、どこの製品を使つているかということは分析を以て証明することができないのであります。従いまして病気が治らんからという場合に、その責任がどこにあるかということが化学的に考えましてもはつきりし得ないのが現状であります。任意分業の場合はどうであるかということでありますが、これは任意分業で処方箋を患者がもらいたい、その家族がもらいたいと言われます場合には、勿論その患者、或いはその家族のかたが最も信用される薬剤師があるから、そういう要求をなさつてもらわれるわけでありますから、そこにはそういう間違いが起らん、起ることが少い、こういうふうに私は思つておる次第であります。更に先ほどもお話申しました無診投薬が殖える、或いは無診療の調剤が殖える、伝染病の早期発見ができん、まあいろいろそういうことから考えましても、この強制医薬分業というものは、ただ机の上で考えましてこれはいいとか悪いとかというようなこととは違つて、直接国民の利害関係に関連して来る重大なことであつて、この強制分業によつて利するところと損するところと比べますならば、この損失というものは雲泥の差であるということを申述ベたいと思うのであります。  それでもなおどうしても強制医薬分業をしなければならんということになりますというと、その条件というものが必要になつて来るのでありますが、その条件と申しますのは、第一番目に、国民の利便を中心として考えなければならんという条件であります。たとえて申しますというと、アメリカなんかでこの医薬分業がスムースに行つておりますのは、どの家でも自動車を持つておる、交遊機関はもうくもの巣のように張つておるということでありますし、これは簡単に自動車に乗つて薬をもらいに行けばいいのでありますが、日本におきましては、先ほど申しましたようにそう簡単に行かない、混み合う電車の中を、又電車に乗つて行かなければならないということになつて来る。或いは昼休みにちよつと工場の職場で診察をしてもらつて、すぐに薬をもらえればいいのですが、もらえんということになると、又帰りに寄つて薬をお医者さんにもらわなければなならんというふうに交通機関というものが整備されておりません現状といたしましては、甚だこれはむずかしいのではないかと思うのであります。又日本の生活様式そのものにつきましても、時間的余裕がない、これは勿論であります。毎日御飯を炊きましてそうして炊事をしておる奥さんが薬をもらう時間を限るということは、外国の簡単な生活様式とは違つておるということ、或いは又薬局の分布にいたしましても、それから薬局のかたからいつでも薬を頂く、若し調剤を拒む場合にはこれは罰則を設けるということは、丁度お医者が若しも診察を拒んだ場合には制裁を加えられるということと同じような態勢にならなければいけないのではないかと私どもは考えておる次第でございます。又先ほど薬局が医療機関の一部として公共性があるということを盛んに高野先生が言われましたが、全くその通りでありまして、薬局の公共性が十分に認められておらなければならん。或いは先ほど武見君が言われましたように、この医薬品の規格というもの、或いは生産の原価、或いはこの医薬品に対する誇大広告というようなものに対する取締というものができて来なければ、どうしても甚だこれがむずかしいのではないかと思うのであります。更に先ほどもこの歯科医師会の先生がおつしやいましたように、国民医薬分業に対する知識、例えば更に今後販路を求めたり、むちやに注射器を買つて来て自分で注射をするとか、或いは処方箋の期限を守らなかつたり、いろいろそういう国民の教育というものが十分行き渡つておりませんときに、このような強制的に法律を以てきめますということは、到底国民の側といたしまして、国民の利益者の側といたしまして忍ぶことができないのであります。それではこういうことを取締つたらいいじやないかということになるのでありますが、果してかくのごとき広汎なるいろいろな方面における取締ができるでございましようか。ということは、単なるヒロポンというあの一つの薬の取締さえが十分できない現状、あのヒロポンの取締さえができないというこの現状をお考え下さいますれば、これを取締るということはなかなかむずかしい。これはどうしても国民の教育、教養というものが盛上つて来た場合でなければいかんじやないか、こんなふうに私どもは思つておる次第であります。  そこでそれでは今までのままで、現行のこの任意分業のままで放つておいていいのか、そのままにしておくつもりかというお話でございますが、その点については、私どもははつきりと具体案を申上げたいと思うのであります。それは今これを法律できめるというようなことでなしに、いわゆる新らしい医療費の体系というものを至急実現して頂く、新らしい医療費の体系、それは結局薬価の中に医師技術料を含まない医料費の体系、言い換えて申しますならば、医者調剤投薬いたしましても、それによつて利益を得ないような医療費の体系というものを是非実現して頂きたい。これが実現いたしますというと、医者調剤投薬しますというのは、何ら一つも利益がないわけでありますから、何を好んで忙がしいのに、医者がわざわざ患者求めないの  に調剤投薬するというものはなくなる、これは当然なことであります。ただ医者がこの利益を求めないで調剤投薬いたします場合というのはどの場合かと申しますと、患者医者を信頼しまして、どうしても先生の薬でなければいかんから、どうしても先生からもらいたいといいます場合、或いは患者の全くの利便からサービスとして、ただ薬を投薬するだけが残つて来るわけでありますから、かような状態になりますというと、医者は自然に処方箋を発行することが多くなり、又そういう状態になりますというと、患者のほうも自然に教育が行届いて来るわけであります。この新医療費の体系というものが実現いたしますれば、何を好んでこの困難なときに、法律を以て強制的に医者が薬を飲ましてはいかんというように禁止する必要がどこにあるだろうかということを私どもは特に申上げたいのであります。先ほどもいろいろお話がありましたが、この医療費が高いとか安いとかいう問題がありますが、処方箋が高いとか何とかいうお話を承わつたのだと存ずるのでありますが、現在役所におきまして土地の台帳を閲覧する、土地の台帳を見せて頂くだけの手数料が二十円であります。これは現に政府がとつておいでになる。その土地台帳を見せるだけが二十円ということをお考え下さいますれば、私どもの医療費が那辺にあるかということはよくおわかりになろうと思うのであります。又先日御証言になつたということを承わつておるのでありますが、この技術料につきましても、先ほどもこの診療費体系において上げるか下げるかということは、上げる下げるという問題じやない、医療費が上がる下がるという問題じやなくて、上げないか下げないかということが問題であるというお話であつたのであります。私どもは非常にそれは疑問に思つた。と申しますのは、臨時診療報酬調査会におきましては科学技術向上し、国民医療を全つたからしむるために適正なる医療費は何ぼであるかということを査定するお話つたと私は思うのであります。適正なる医療費が何ぼであつたということをお話しておるわけでありまして、勝手気ままに上げるとか下げるとかいうことができる、一つの控の中に無理にはめ込むということは、私はとんでもないことだと思うのであります。又臨時診療報酬調査会においてもそういう御結論はなかつたと私は思う。この点については、勝俣委員がいらつしやいませんが、勝俣委員からも御証言頂けばはつきりわかると思うのであります。なお先般この技術料につきまして、技術料の計算の基礎が現行医療費の平均報酬の時間給を以て基本とするというようなお話があつたように聞いておるのでありますが、これは現行の医療費の平均報酬ではないのであつて、理論的に適正なる医療の平均報酬は何ぼであるかという基準を市めて、この医療報酬の算定をするというお話つたと私は考えておるのであります。従いまして如何なる平均報酬が正しいか、適正であるかということ、如何なる医者の生活費、平均報酬と申しては失礼でありますが、如何なる医師の平均生活費というものが適正であるかということを理論的に定めます場合には、どうしても最低生活費というものを計算しなければできないわけであります。ところが最低生活費を求めるということはなかなかむずかしいから、平均生活費で行くというような、そういう意味ではないと私は考えております。又そういう意味で私どもが平均報酬というものの基準を求めたわけではないわけであります。御承知のように、現行の国民医療費と申しますものは、極めて不合理な社会保険の診療報酬の枠がこの中にあるのでありまして、これはどうしても、科学技術に基く適正な医療内容を持つようにきめ直さなければいかんのであります。例えて申しますと、ここに久下医務局次官が御出席でありますが、この間アメリカのお話を承わりますと、アメリカで官吏の出張費が約十ドル、そうして宿賃は大体三ドル半だ、それで入院料は何ドルだと言つたら、二十ドルだということであります。そうすると宿賃が三ドル半で入院料が二十ドルと申しますと、日本で幾らかと申しますと、日本の宿賃は一千円、入院料は二百円こういうふうなことでありますので、これじやどうしても適正に上がるか下がるかという問題でありまして、上げるか下げるかという問題でないと思うのであります。御承知のように憲法におきましては、最低の生活というものを保障されておるのでありますが、この最低の生活と申しますのは、昭和何年の最低生活かということはこれはもう皆さんがたもよくおわかりのことであります。最低生活は昭和二十年であつてもいいのでありますけれども、その医療はどうしても昭和二十六年の医療でなければならん。日進月歩の医療というものは、日本国民の生活水準が低いために医療はそれに準じて低くてもいいのではないのであります。若しも低くてもいいのでありますならば、私どもはペニシリンの注射をやめなければならん。ストレプトマイシンの注射をやめなければならん。けれども今の日進月歩の医学をやるためには、どんなに苦しい生活をしながらもペニシリンを射し、ストレプトマイシンを射さなければならんのでありますから、従つて最低生活の水準はどこにございましようとも、日本国民に施しますその医療というものは、最高の、現代に応じた適正な科学技術に基く医療を施さなければならんのでありまして、ここに私どもは医療担当者といたしましても、又その他の部面におきましても、非常な苦しいところがあるのであります。と申しましても、私ども医療担当者だけが利益を得ようという考えを持つておるのではないのでありまして、結局国民医療そのものに影響を及ぼします点において十分なる御考慮を払つて、そういうお互いに苦しい……医者も我慢する、国民も我慢する、政府のかたも保護政策を……医療施設に対して低利資金を出して頂くとか、課税を安くして頂くとか、いろいろな保護政策があると思うのでありまして、そういう保護政策を政府もやつて頂きまして、ここに三者が一体になりまして犠牲を拂つて、そうして何とかやつて行かなければならん。今の苦しい日本の現状において何を好んで医療費の上りますところの、或いはまだまだいろいろな弊害の多いと考えられますところ強制的に医薬分業をして、医者が薬を調剤してはいかんということを法律で以てきめるということは、これは暴挙ではないかと私は思うのであります。  私どもは御承知のようにこの法律が施行された場合に、どんな弊害が日本に起るかということは先生がた御存じであります。例えば六三制の問題にいたしましても、警察制度の問題にいたしましても、あれが制定されまして数年を経た今日において又再検討しなければならんというこのことは何を物語るかということを深くお考え下さいまするならば、その二の舞を又もやせんとするところのこの強制医薬分業法案に対しましても、私どもは心から賛成を申上げることはできないのであります。以上を以ちまして私どもは新らしい医療費体系を行うことによつて、事実上分業の姿が日本にできましても私どもはあえてこれに反対を唱えるものではない、むしろ賛成をしているものでありますけれども、これを法律を以て強制してやるということについては、私どもは反対の意を表する次第であります。
  42. 山下義信

    委員長山下義信君) 証人各位の御証言は一応終了いたしました。御質疑のありますかたはどうぞ御質問下さ
  43. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 極く簡単な質問でございますが、高野証人に対しまして一、二お尋ねをいたしたいと思います。只今ここに出ております医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案、この法律案は先にありました医薬制度調査会におけるあの三案のうちのどの案とお考えになつておるのか、それを先ず一応お聞きしたい。
  44. 高野一夫

    証人高野一夫君) 医薬制度調査会におきましては、先般の調査会証言にもありましたように、第一案、第二案、第三案で、第三案を特別委員会の案と決定いたしまして本会議にかけました。多少修正をいたしまして、そうして第三案を特別委員会の多少修正いたしましたものを医薬制度調査会答申案といたしたのであります。今国会に上程されております政府案は、その答申に基いて法案が提出されたものと私は解釈いたしております。
  45. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 それではお尋ねいたしますが、この第三案に対しまして、その当時調査会におきまして、日本医師会長である、又同調査会委員であつた私並びに日本医師会委員はその第三案に賛成をいたしておりましたでしようか、反対をいたしておりましたでしようか、その点をはつきりとして頂きたい。
  46. 高野一夫

    証人高野一夫君) 採決の場合に如何なる投票をなさいましたか私は存じませんが、併しながら第三案に対して、少くとも発言において御反対をなすつてつたことはよく存じております。
  47. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 第三案に対しましても我々は反対をいたしておりました。然るに只今証言におきましては日本医師会長たる谷口はこの改正法律案に賛成しておるというようなことを証言されたのは、これは第三者を誤らせるところの非常に重大な発言であると思います。その際に私は、ここにも横井さんあたりの書かれたことを参考書類としてお出しになつておることを見てもわかりますように、日本医師会としては一案、二案、三案ともに反対である。但し第四案とでもして現在の制度以上な立派な法案ができたらそれには賛成するのであるが、現在においてはそういう法案はできておらんから、それで遺憾ながら全部に対して賛成することはできんということをはつきり申してあるのであります。それにもかかわらず薬剤師協会、而も日本の各地方の薬剤師協会から我々厚生委員に宛てまして同じ文句で、日本医師会長、参議院議員谷口弥三郎は法案の改正に賛成したというようなことが各地からも来ておるということは、これは第三者を惑わするための極めて、悪い言葉を使いたくはありませんが、人を惑わす一つの書き方であると存じておつたのであります。ところが図らずも本日の証言におきまして、かかる証言をされるということは、事実をかなり曲げた証言であると思います。あとで文その点に対しましては委員会において私はいろいろと話をして見たいと思います。
  48. 高野一夫

    証人高野一夫君) 谷口委員の私の発言に対する御解釈はどうか一つ冷静にお聞きを願いたい。先ほど私が証言いたしました内容は、一字一句本日の速記に残つておるはずであります。私はあなたが第一、第二、第三案のいずれかに御賛成なすつたということの証言は絶対にいたしておりません。あなたは第一、第二、第三案ともに御反対になつた。併しながら医薬分業を法制化することには同意をするというふうにあなたがおつしやつた、先ほど私が申上げたのは、あなたの御発言の速記録をそのまま読んだのです。自分は、昨日までは、医師会は昨日までは法制化することに反対であつたけれども、今日はそうでない。どうか横尾委員も誤解してくれるな、こういうふうにおつしやつて、当時ここに出ている第一案、第二案、第三案ともに呑むことができない。それで昨夕は徹夜して第四案の別案を作ろうと吟味したけれども、別案ができない。結局ここに出ているところのこの案に賛成いたしがたい。その点はあなたのおつしやつた通りこれは速記録にもちやんと載つている。私は午前にさように申上げたのです。この政府案に対して、或いはその政府案の基礎になりますところ答申案に対して、答申基礎になりますところの第三案に対して、あなたが御賛成になつたということは私は絶対に証言をいたしておりません。
  49. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 私の申しますのは、本日の証言の中におきましても、第三案ともに反対である。併しほかにいい案ができたら賛成はするけれども、今現在においては、賛成することはできないということを言つておるのであります。それにもかかわらず、各地方から来ます書類などにおきましては、日本医師会長たる私が賛成しておるように書いて、請願が多数に参つております。その言葉とあなたのおつしやつたのが同じように思いますので、後に又詳しく速記録を読んで又こちらで検討いたします。
  50. 高野一夫

    証人高野一夫君) 只今のような御質問でありまするというと、如何にも私は虚偽の証言をいたしておるかのごとき印象を皆さんにお与えいたしますので、明瞭にいたさなければならないと思いますが、私はいい別案ができれば賛成できるかも知れないけれども、あなたの只今の御発言の通りに、先ほどは速記録を読んだわけです、地方から如何なる陳情書が出ましようとも、それは私の関知するところではございません、私は、この我々のほうから出しておりまする雑誌にも明瞭に書いてございます。あなたが第一案、第二案、第三案のいずれかに御賛成なさつたというようなことは決して我々の機関誌にも書いてございません。ただ法制化には、それはあなたが有馬医務局長同道で、昨日までは法制化には反対であつたけれども、いろいろ考え直して医薬分業の法制化には同意するというような原則論をおつしやつた。これを我々は言つているのです。而もその後、日本医師会が相変らず法制化そのものに反対であるというパンフレットは配付いたしましたが、そういう議論をなさいますので、その点については矛盾がありやしないかということを我々は内部にいつて申上げておるわけです。併しあなたが第三案に賛成なさつたかどうかということを言つておりません。なお又そういう意味の陳情書が或いは我々の真意を誤解して出ているかどうかは存じませんが、私はあなたのお手許に参りました文書を見ておりませんのでこの点については何とも証言をいたしかねます。
  51. 藤森眞治

    藤森眞治君 私は武見証人それから高野証人それから榊原証人、この三人のかたに少しずつお伺いしたいと思います。先ず武見証人に伺いますが、我我が先般来、両調査会関係を承わつておりますると、どうも調査委員かたがたによつて多少見解が違うような感じがある。それにつきまして、日本医師会としては、この二つの調査会関係をどういうふうに御解釈しておられますか、この二つの関係を一つ医師会の態度を明瞭に承わりたい。それからもう一つ伺いたいのは、今朝来の御意見を承わつておりますると、武見証人高野証人も、いずれも結論的には医薬両者の協力が必要だ、こういうことを言つておられる。ただその相違しております点は、これを法律によつてやるか或いは任意の形で行くかというところに分れている、岐れ途があるわけです。而も只今谷口委員も若干発言に触れられましたが、今日の高野委員から出ておりまする資料によりますると、医師会側は三案とも反対された、こういうことであります。そうすれば医師会のほうとしては何かこれに、この後において、或いは現在においてどうすればそれがうまく医薬分業ができるかという医師会側の御意見を承わりたい、先ず武見証人から……。
  52. 武見太郎

    証人武見太郎君) この調査会のできます前に、私は当時日本医師会の副会長をいたしておりました。四月三日にサムス准将を訪ねて、その後厚生省で適正医療費協議会思つておりますが、そういうものの草案をお作りになつてお示しになつたのでございます。それは私たちがサムス准将お話を申上げた委員会の構成とは大分違つておりました。それで五月の末と思いますが、林厚生大臣に田宮会長と伺いまして、適正な医療費調査するという協議会医薬分業という制度を取扱うようになつているが、これはおかしいじやないかということを申上げました。それで私は適正の医療費というものは、分業とは関係なしにこれは当然されるべきものであつて、現在の任意分業法律をこしらえつ放しの厚生省は、二年間これを怠慢にして放りつぱなししておいた。今からでも遅くはないから、これは是非やらなければ任意分業は推進されないから、是非適正なる医療費というものの調査会を作つて頂きたい。但しその調査会は飽くまでも科学技術を尊重するものでなければならないということを申上げました。又分業という問題はこれと離れまして医薬制度をどう考えるかということを、殊に二年前にございました医薬制度調査会が四十人の委員によつて決定せられたのでありますから、その後の事情その他を一番よく知つておられるその当時のかたがたを成るべく委員としてもう一度医薬制度調査会を作つて頂きたい。これは国民大衆の観点から、この問題を制度として論議してきめて頂きたいのであつて、前の医療費調査会科学技術尊重という建前から、少くとも過半数は専門家でなければならない。併しこの制度のほうには、こういうことは固執いたしませんということを申上げました。その後又翌日伺いましてお会いたしましたときに、案が大体できました。これは私たちは飽くまでも適正医療費についても、任意分業についても当然なすべきことをしなかつたので、それをするという建前から、これをいたしましたのでありまして、この調査会の結論がすぐに第二段階の調査会に結ぶ結ばないということは当時は話はございませんでした。私は飽くまでも第一の調査会任意分業を推進する何らかの手段を尽してから厚生省は初めてそうしたことに出るべきものだという見解を持つておりました。林厚生大臣も私はそうであつた考えております。それからこの場合に特に申上げておかなければなりませんことは、過半数が専門家でなければならないということは、私たちがただ主張いたしましたのではございません。薬剤師協会使節団の勧告に、専門の委員会や審議会は過半数が専門家でなければならないということが載つておりましたので、こういう主張を申上げたのでございます。その時の話を少し申上げますと、如何なる雰囲気の下でこの調査会が生れたかということを御理解願うと大変に都合がいいと存じます。その時に森本総務課長は、専門家を過半数にしたら労働組合の人たちがその結果に承知しないだろうということを言われました。併しこれは科学技術尊重ということを数の上で現わすのが一番いいので、こういうふうにきまつたのでございます。それから又この問題に関しまして調査会を  一つで行こうというのは厚生省の最初のお考えでございました。それは早く結論を出すためには二つの調査会があつたらまずいから、一つで行こうと考えておられたんだろうと思いますが、この問題を二つに分けてそういうふうにいたしますことがきまりましたときに、ここにおいでの久下次長も御同席でございましたが、大臣はそれではそういうふうにしようというお話でございました。その当時は私たちは別に何も交渉がないのですが、新聞紙上では厚生当局談として、医師会を相手にしないでも分業をやるのだということが出ておりました。そういう雰囲気の中で厚生大臣はよく科学技術尊重の大事なことを認識されまして、我々のお願いすることを取入れて頂いたのであります。医薬制度に対する問題につきましては、これは四十年来の懸案であるから、やはり大勢の人たちが論議してきめたらよかろうということでそういうふうにきまつたのであります。そのときに、これは附けたりではありますが、当時の森本総務務課長は、そんなことをしたら斎田君が怒りますということを言つた。斎田君というのは渉外課長であります。私は非常に驚きまして、一つの省の大臣がこれでよろしいとおつしやるのに、一通訳が怒りますということは一体何事だと吾つてつたのでありますが、葛西次官以下の人が、省内のことは省内で収めるからこれでよろしいとおつしやつたので私は引下つたのであります。そういうような雰囲気の中にこの二つの調査会が生れたのであります。私は第一段階の調査会は飽くまでも科学技術尊重であり、任意分業推進のためであるというふうに私は考えておりました。それからそのあとの問題に関しましては、私は詳しくここで御答弁するほどの資料を持つておりません。
  53. 藤森眞治

    藤森眞治君 次に高野証人に伺いますが、実は先だつて我々の会派であなたがたの薬剤師協会の代表のかたに来て頂いて、いろいろ御説明を承わりました。そのとき私は例を健康保険にとりまして、現在の健康保険医者代が先ず二十円と見て、そうした場合にこれをどういうふうに分析されるのかということを伺いましたところが、薬剤の原価が大体六円、それからそれに対する調剤手数料と申しますか、手数料が四円、そうしてあとの十円というものはこれは医師がとつておるのだ、こういうふうに御説明を承わりました。それから、そういたしますと一日の調剤件数は大体どのくらいのお見込でしようかと申しましたところが、大体七十件を予想しておる、こういうことでありました。そうしますと、一日の薬剤師諸君の収入というものは二百八十円、これを三十日といたしましても八千四百円にしかならない。これでは少し少な過ぎるのではないか、それでは薬剤師側では、最底の生活費と申しますか、それをどのくらいに見ておられるかということを伺いましたところが、たしか一万六千円と言われたように覚えております。私の数字が間違つておりましたら御訂正をお願いいたします。そうしますと、到底これでは最低生活に達しないということで、非常に困つたことであります。医療費が安くなるということは、我々も国民の一人として同じような負担をしなければならない、誰か一人を犠牲にするということは許されない、こういうようなことになると、これは薬剤師諸君の犠牲において薬価が安くなるのではないか、こういうことは以てのほかのことである、こういうことを申上げたところが、いや、それはほかに物品販売等をやつておるからそれでカバーするのだというお話でありました。けれどもこれは経営の面で別であつて、若し純粋に薬剤師諸君が調剤ということを以て立たれる場合には、どうしても最低の生活は保障されなければならない。これは薬剤師諸君の犠牲において安くなるというような方法では甚だ困るということを申上げたのですが、それについてどういうふうなお考えがございましようか、承わりたいと思います。  それから第二点は、今朝ほど武見証人の御証言で、医師技術料というものは、いわゆる技術料そのものが今後の医学の向上或いは医療向上基礎になるべきだ、こういう御見解で定義付けられたわけであります。そうしますと、今調剤医療というものが分離いたしました際に、調剤技術料というものはどういうふうな基礎から出ておるのか、この二点を伺いたいと思います。
  54. 高野一夫

    証人高野一夫君) 只今の御質問に対して私の存じておることを申上げます。その先ず第一に、一日に七十剤ということが、先ずこの問題を御承知おき願いたいと思います。これはどういう基礎で七十剤というのかというと、これは仮定の数字でございますが、その基礎がどこにあるかと申しますと、先ず全国の都市におきまして医薬分業が完全に実施されたものと仮定いたします。そうしまして、大体その前に全国の診療所に従事している医師病院並びに開業医、すべてそういうかたがた患者に投用すると考えられる延剤数のおよその見当が推定されております。これが大体八億三千五百万剤余り、これが一カ年に全国の医師によつて患者に投用されておると推定されます。これは正確ではありませんが、およその見当で推定される延薬の数であります。この中で農村にいる医師と都市におる医師の比率がわかつておりますので、厚生省で都市において診療に従事しておる医師と農村におる医師との比率を分けまして、そうして都市におる医師患者に一カ年に投用しておると考えられる、推定される薬の数を算定いたしたのであります。ところが都市における投用する薬の数におきましても、病院におきましてはすでに分業ができております。技術的に分業が行われておる、又一般の診療所におきましても薬剤師を雇つて一般に技術上において薬剤師の専門知識と応用した分業ができておる、この点と除外いたしまして、全く医師自身調剤すると考えられる比率を出し、都市における診療所で薬剤師を置かずに医師自身が投用すると考えられる一カ年の薬の延剤数を算定いたしました。これも大よそでございますが、その一カ年の薬の数が都市の薬局に全部来るものと勘定いたしまして、而もそれを二十五日稼動の場合と、三十日稼動の場合と分けたのであります。そういたしますと大体一日七十幾剤になるのであります。それの端数は誤差がございますからちよん切りまして、大体これが完全に行つたものとして、一日に薬局に来るものは七十剤というふうに仮定をおいたわけであります。ところが大体厚生省では病院の詳しい調査ができておりまして、例えば手術をするのに何分かかり、その前に手を洗うのに何分、その後の処置に何分かかるというような詳細に調査したデータがあります。これに基きまして、病院における調剤数の計算が出してございますが、それによりますと病院において一人の薬剤師が一日に調剤する数は大体八十剤であります。多少数字は違つておるかも知れませんが、八十剤であります、ところ病院におきましては御承知の通りに薬瓶を運ぶ八もおり、試験室も別にあるというようなことで相当手が揃つておりますので、一日一人当り八十剤から八十五剤できようかと思いますけれども、薬局においては、そういうわけには参りませんので、先ず最高限度七十剤と一応先ほどの数字を仮定いたしました。そこで我々が東京都におきまして薬局の業態調査をいたしました資料を本日大きな袋に入れて差上げたのでございますが、二つの大きな表になつております。この業態調査におきまして詳細なる薬局の調査をしたのであります。回答は八百何十ありまして、旧市内と三多摩地方の郡部とに分けまして取扱つております薬品の営業状況、売上高、利益率、家族、いろいろなことを説細に調べたのでございます。この表をよくあとで御覧下さい。それによりまして空の中からいろいろ経費を差引きまして、その中で事業に関係する税金だけを差引きまして、残つたものが平均一軒当り一万五千八百円でございます。一応そういう数字が出て参ります。そこでその一万六千円は大体平均五人家族、その中から個人所得の税金を払わなければならないというのが平均数字として出て参つたわけなんであります。それで一万六千円を楯にとりまして、そうしてその薬局における業態調査から一体薬局においては何時間勤務をするかということを調べましたところが、十四時間半勤務しておることになつております。これは御承知の通りに裏が自分の家になつてつたりいたしますので、朝から晩まで営業しておる関係から、そういう数字が出て参つたわけであります。そこで今度は又七十剤に帰りますが、然らばその七十剤、七十日分をどういうふうな時間に調制するかということを、我々のほうの学界の委員会で病院において調査いたしたその平均数字をとりまして、七十剤というのはまあ七十日分ですから、二日分を一回に調剤する、從つて一日に三十五回調剤する、その一回を十二分間というふうに一応きめたのです。平均です。勿論植物を湧出しましたり、乳剤を作つたりしますのには三十分かかつたり二時間かかつたりいたしますが、粉末を混ぜ合すのは極めて簡単にできるものもございます。平均十二分、そういたしますと七十剤を三十五回調剤いたしまして、十二分間といたしますれば、正味七時間かかるわけであります。そこで一日に十四時間半、まあ十四時間として十四時間働きまして一万六千円を稼ぐということになりますれば、その中の七時間が調剤によつてこの収入であるとするならば、そのうちの八千円をその調剤技術料に割当ててもよかろうしやないか、こう実は考えられる、そういたしますと一割当り四円ということになる、ところが御承知の通り、又一万におきましては労働基準法なんかもございまして、薬剤師を雇つておる場合は八時間労働というようなことになりますというと、一人当りが十四時間も十五時間も働くわけに参りませんので、そうしますと、一人当りの、調剤師が一日要求する七時間というものは完全に一人の報酬になつてしまうということになりますれば、一剤八円というような勘定にもなつて参るわけでございます。ただ薬局においては許されたる業務といたしまして、又分業になりましても医師のほうと提携しまして、いろいろ医師のほうに注射薬も差上げねばならず、いろいろなこともございますので、医薬に関する販売業は薬局においてやはりやらなければならん、そういう建前から考えまして、そこで医薬販売業と調剤業を分けまして算定を一応いたしました。ただ七十剤というのはさような仮定の下に参りましたのです、どうかさように御了承願いたい
  55. 藤森眞治

    藤森眞治君 それからその次の調剤技術料の御見解を一つ。
  56. 高野一夫

    証人高野一夫君) 診療技術料調剤技術料と分けた場合の区別ですか。
  57. 藤森眞治

    藤森眞治君 ちよつと速記を……。
  58. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  59. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を始めて。
  60. 高野一夫

    証人高野一夫君) それは技術料のほかに、所要経費の中には医療並びに調剤技術向上を図るべき研究図書、そういうものに要する費用も所要経費の中に計算をすることになつております。診療報酬調査会、そこで技術料並びに調剤向上を図るということがやはり今までみたように込みでやるのでなくして、技術というものを表面に浮び上らして、そうしてその技術を評価する、こういう意味において私は技術向上に、技術料考え方が、そういう両者ともにその技術向上に資することになるのではないか、かように考えるのであります。調剤のほうは診療の場合と違いまして、診療の場合は難易差、技術指数を置きましたが、調剤の場合は難易差がございましたけれども、便宜上時間に正比例するような関係ということできめたわけでございますけれども、同上ということにつきましては、技術そのものを浮び上らせ、その技術に対する料金を設定するということが、技術を重んじ、尊敬し、そうしてその向上を図らせる理由になるのではないか、こういうようなふうに私どもは一応解釈をいたしておつたのです。
  61. 藤森眞治

    藤森眞治君 それでは次に榊原証人にお尋ねいたしますが、診療費が高くなるかならないか、もつと上げるか上げないかという御議論もございましたが、客観的に見て上るか下るか、この問題は我々も重大な関心を持つているところでございますが、殊に勝俣証人証言によりますと、高くはなる、併し医師会の言つているほどには高くはならない、併しこれは具体的にではなく抽象的にそう考えております、こういう御発言があつたと記憶しております。つきましては医師会のほうで一二%高くなるということを研究されております、この点をもう少し詳細に御説明願いたいと思うのでございます。
  62. 榊原亨

    証人榊原亨君) この一二%上ると申しますのは、現在の医療費のままという仮定の下でございます。新らしい医療費の態勢でございますと、先ほどお話申上げましたので、現在の医療費の能勢ということにおきましてどうかということでございます。そこでどういうふうな考えでやりましたかと申しますと、現在の薬餌料、薬価でありますが、その薬価の中に薬剤の薬の原価が幾らあるか、或いは薬袋、薬包紙というものの価が幾らあるか、薬瓶とかそういうものです、こういうものの費用が幾らか。そのほかに薬局、薬室を管理いたします費用、それから経費というものを見込みまして、そうしてそれを大体九円三十九銭という数を出して来たのであります。その数は薬袋、薬包紙につきましては七十七銭という数を出しておるのでありますが、これは薬剤師協会で御算定になつたものを使い、それから経費、管理費につきましては先ほど高野さんがおつしやいました厚生省の算定の数字を使いまして、ここに九円三十九銭というものを出して来たのであります。そこで若し強制医薬分業をいたしますと、その中で医師側に残りますものはなんぼ残さなければならんかと申しますと、今お話申しました薬の限界に相当する九円三十九銭というものを現在の薬価から引いた数であります。それは診察料その他の診察技術に相当するものでありますから、現行の薬価から薬剤原価に相当いたします先ほど申しました九円三十九銭というものを差引きまして、その残りました、差引きました数と、それからもう一つは、経費、管理費、経費が一円二十九銭、管理費が一円七十三銭となつておりますが、その経費、管理費を加えたものを以て医者側に残るものと算定いたしたのであります。医薬分業をしても薬を合わす必要がないのに、何故経費、管理費というものを医者側に残したかと、こういうお尋ね、御疑問が起ると思うのでございますが、これは若し強制医薬分業をいたしましても、現在開業医が持つています程度の薬室であります小さな薬室でありまして、その薬室は救急薬を調剤いたしますにも使わなければなりませんし、或いは手術その他の処置に使います薬を調刑することにも使わなければならない。或いは注射薬を取つて置くというようなことでございまして、今の開業医が持つております薬室程度のものは、強制医薬分業になつてもこれを廃止するわけには行かないのであります。従いまして一応その管理費、経費というものをその中に加えまして、そうしてそれを以て医師側に残されるものと算定いたします一方、今度は医薬分業になりますと、薬剤師の先生のほうにおいてどうかと申しますと、薬剤の材料費と、調剤技術料、手数料と申しますか、技術料と申しておりますが、それを足したものがそこに薬剤師のほうに行く、こういうことからいたしまして、全部を計算いたしたのであります。ちよつと数がおわかりにくいかも知れませんが、要すればこの資料をあとからお出ししてもよろしいかと思います。そういう算定をいたしております。
  63. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 高野証人にお尋ねいたしたいのでありますが、先刻の御証言のうちに、枠内において医療費を上げもできれば、下げもできるというようなお話がありましたが、その点がちよつと私ども了解に苦しむのであります。上げますということもこれは限度がありまして、これは国の民度に適合したものでなければならん。下げるというと、医療内容の低下の虞れもありますので、ただ私は臨時診療報酬調査会というものの結論を、この間赤木会長から聞いて見ますというと、診療報酬の基準をきめたのだということで、診療報酬の基準をきめただけでは、実際の数字がそこに出ておりませんから、医療費というものがどういうふうに高くなるか、どういうふうに変化するかということの結論には至つていないように思うのです。ただ先刻上げることもできれば、下げることもできる、枠内でということをおつしやられましたことがちよつと私了解に苦しむのです。その点をちよつと……。
  64. 高野一夫

    証人高野一夫君) 只今の御質問に対しましては、この枠内といつても多少語弊があるように思いますが、とにかく医療報酬なるものは国民医療費負担力に相当するものでなければならない。如何に高くしても、やはり国民が負担し得る限度というものがある。そこでその中でいろいろな細かいこともございますが、要するに結論としては、国民医療費負担力に制約される、こういうことなのであります。従つて現状においては多くの増額を期待できない。ということは御承知の通り現在金国民頭ならしにいたしまして、一人一年平均千四十七円の医療費医師、歯科医師に払つております。総額九百三十三億、およそ千億、これは国民の平均所得から考えまして、もうここの際これ以上は無理じやないかというようなことは、いろいろ国民の所得の中の何%が衛生費か、何%が食費か、住居費、教育費かということで仔細に調査会において検討いたしました結果、もうこの辺でこれ以上げないようにしなければならないということが、特にこれは私というよりも、医療を受ける側の強い御要望であつたのであります。その前提におきまして、先ほど榊原証人からお話ございました通りに、医師会の代表委員のほうでは、医師医師の最低生活費を保障するような意味の技術料のきめ方をしてもらわなければならない、こういう御要求があつたわけでございます。ところでこのことが、この医療費の上るか下るかということに非常に重大なる関係を来たすのでございます。この大事な人間の生命を預かつている医師が生活のことに苦慮しなければならない、生活上の不安を持つということは、患者にとつてこと極めて重大なことである。そういうことはあつてはいけないから、それは十分医師が生活し得る程度技術料を設定しなければならないけれども、併しながら今日全国を見渡して国民の最低生活を保障している所がどの部門にあるであろうか、何が故に診療に従事する医師だけ取出して、その国民の八千二百万の中の六万三千の医師だけ最低生活の保障をしなければならないか、これは非常な疑問であるというのがいわゆる中立系委員の御発言であつたように私は記憶しておるのであります。そこで今度は医師のいろいろな収入問題があるのであります。然らば現在開業医の平均月収は幾らかということになりまして、そこで医師会からデータが出ました。平均月収九万二千円という数字が出ました。この中で診療費を事業費として落しました。事業関係の税金も落しました。そこで個人所得がそれから出て参るわけでございます。その個人所得から払うべき税金を払つて生活をして行かなければならん。ところが個人所得の中から払わなければならん税金も事業のほうに入れまして経費として落して、もはや一厘一毛の税金、公課を払う必要のないようなデータになりまして、幾ら残つておるかというと三六%、平均三割六分のものが全くの純益である、こういう数字が医師会資料の中にあつたのであります。そこでその後又医師会から別な調査が出まして、開業医の月収は六万四千円であるということです。そこで六万四千円が適正であるか、九万二千円が適正であるか、どちらかということを質しましたところが、どちらとも言えない。それぞれの調査によつて出た数字である、こういうお話である。そこで若し九万二千円を楯にとりますれば、総額、全国の開業医が平均月収それだけといたしますれば、四百幾ら多くになるわけですが、この数字が適正かどうか私も存じません。ただそういう数字が出たものですから、議論になりましたので証言いたしますが、その中で個人所得として負担しなければならん税金も事業費、経費として落して、まるまる三割六分残るということであれば、医療は決して私は商業であり工業であるとは申しませんけれども、日本のいろいろな商工業について調べて見ても、五割儲けることもあるし、六割、十割儲けるものもございましよう。そこで大体のそういうものの平均が、そういう意味の純益が三割五分残るというような状態は余り聞かない、こういうお話が出たわけでございます。そこでそうなれば、このいわゆる平均月収、この算定の仕方についても相当余裕がありはしないか、この上に更に医師の子弟は一人必ず百四十万乃至百三十万かかるところの医学の教育をしなければならない。そういうようなことも計算の中に入つてつたのが先ほどの一二%乃至二八%の数字に現われて参るのでございます。そういうようなことが、一応この調査会においては納得ができないというようなことから、そこで大体において現在の報酬を総額においてこれで認めてもいいじやないか、こういうまあ一つの枠といえば枠に相当すれば相当するような一つの限度を原則としてここにきめた、こういうふうに私は一応解釈するのであります。
  65. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 もう一つお尋ねをいたしますが、日本薬剤師協会から医薬分業をすれば医療費は安くなるという小冊子がどこかでちよつと見たようで、詳しく見ておりませんが、何かそういうものを発行させておりますか。
  66. 高野一夫

    証人高野一夫君) 一昨年我々のほうの私的調査におきまして、そういうパンフレットを出したことがございます。
  67. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 そこで医療費というものは、あの小冊子を私は十分見ておりませんですが、あの中にたくさんの処方例が書いてありまして、そうして調剤料原価計算の数字が出ております。あの処方例はお医者さんが書いたのでありますが、あなたがたのほうで随時にお書きになつたものでありますか、それをお尋ねしたい。
  68. 高野一夫

    証人高野一夫君) 実は私どものほうでも現在は日本医師会と同様に薬剤師協会を再編成いたしまして、昔の学会と薬剤師会が一緒になつておりまして、それで学会の仕事も我々のほうでやつておりますのですが、その中に調剤技術委員会というものがありまして、これは病院の大体薬剤部長を以てやつおります。いろいろな病院における処方の研究、或いは調剤の研究等、そういうことをいたしております。それでそういう委員会におきまして実はあれを調べまして、病院における処方、或いは薬局に参りました処方、勿論処方は秘密にすべきものであると思いますので、ただ内容の品名とか数というようなことだけは、事実行われました医師の処方になつております。
  69. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 もう一つ、この医療費が安くなるということがあそこに書いてありますが、医療費というものは薬剤師に支払います料金と、医者に支払います技術料というものを二つ併せまして医療費になると私は考えておりますが、あの小冊子で見るというと、何だか医者技術料というものは抜きにしたような計算にちよつと見えましたのですが、そういうことはないのでありますか。  それからいま一つ、あの処方の薬剤の量を私は詳しく調べておりませんが、何か少し量が少ないような気持がしたのです。これは気持でありますから、よく調べませんとわかりませんが、そういうことを直覚しましたから、その点をちよつと一つ……。
  70. 高野一夫

    証人高野一夫君) その処方の量が少ないということは、あれは学者が集りましてやりましたので、医師がやりましたならそういうことは万々あるまいと思いますが、私はそのパソフレツトを持つておりませんし、内容を記憶しておりませんので、はつきり申上げられませんが、この医療費というものは、それは先生のおつしやる通りに、私どものほうも勿論調剤医療のうちの一部でございますし、調剤だけの問題で医療費が高くなる安くなるということは、これは断定が当然できないと思います。やはり医師の診療報酬調剤報酬と相待つて、総額において医療費が高くなるか安くなるかということを決定するのであります。そこではつきり私はあのパンフレットのことを記憶しておりませんから、今日も持つてつておりませんのですが、医療費がその頃の算定によりまして下がるということは、先ほど申しました一日七十剤とか、全国のいろいろな調査をまだやらない前のデータでございますので、いろいろな誤りがございますが知れませんが、ございましたらいずれ又あとで訂正をいたしますが、この医療費は、薬が分業になつて原価計算になる、この調査会の始まるずつと前のことです、原価計算になつて、その投薬について料金が我々の考えておるような原価計算で行けばこうこうなる、そうすると現在薬代として国民医師に支払つておる二百二十億に達すると想定せられる薬代の中で、原価計算で行けば薬代というものは大体百億かそこらぐらいになると一応の数字を出したわけなんです。そうするとそこに百三十何億の、七億か六億の差額が出て参ります。ところがその中には御承知の通り現在の薬価には再診料やいろいろな処置料が込めてあるわけでございます。これは百二十七億というものは、当然再診料が設定され初診料が上れば、そのほうに向けられて然るべきものではなかろうか、こういうふうに考えております。併しながら、そこで医療向上が行われますし、又薬の投薬の数も減つて参る。いろいろなことが学問的にお互いが協力することによつて緩和されて参りますれば、当然この薬の数、従つて国民の負担が、薬代の総額というものが減つて参る。それから考えましても国民の負担は決して上ることはないというような考えの下にああいう数字が出たのだろうと思います。細かい数字は只今記憶いたしておりませんので、細部に亘つて証言をいたしかねるのでありますが……。
  71. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 もう一つお尋ねいたします。今日まで医者が処方箋を発行いたしまして、その支払います料金というものは、何か一つの基準が今日まであつたのじやないか。私は実際処方箋を出しておるのです。私の家族の処方箋に対しては、私は料金は幾らになつておるかということを聞いたことがあるのです。その料金は医者からもらつた料金と余り差がないのです。ときによりますと医者からもらつた料金より高いような場合もあつたので、これは医者が私に対して負けて下さつたのか、事情はわからんのですが、余り医者からもらいました料金と薬剤師に支払いました料金との差が少い。場合によりますと却つて薬剤師のほうから調剤したほうが高かつたような事例も覚えております。今日までは何か一つの基準がありましたのですか、それをお尋ねしたい。
  72. 高野一夫

    証人高野一夫君) 健康保険におきましては調剤手数料、一剤につき四円ということがきまつておりますが、受診料の場合は、薬局に処方箋を持つて来ましたときの調剤につきましては薬剤師全体として何らの協定をいたしておりません。従つて原価計算でやる薬局もございますれば、勝手にきめてやつておる場合も勿論ございます。この点はこういう体系ができますれば、当然これに従わなければならない。ただ開業医ところへ出した場合より薬局のほうが高くなるという事例は事実あるのです。それはどういうことかと申しますと、そういうことにつきまして私ども実は薬局の薬剤師が実に暴利をむさぼつてけしからんことをしておるのじやないかつという考えを持ちまして、具体的に調査をいたしたのです。ところがその処方の内容を見ますというと非常に高い薬であつた、稀にしか使えないような薬というようなものが多く、その処方箋が廻つて来るのであります。従つて普通常用されるような、ありふれた薬とか、或いは比較的原価の安い薬、そういうもので調剤される場合はこれは当然どこへ行つても安いわけでありますが、例えば健康保険におきましても一点十円乃至十一円といたしまして一日分二十円乃至二十一円、或いは受診料が平均三十五円、この原価を非常に割るような場合の処方箋どいうものは、多く薬剤師に廻つて来る傾向が事実あつたのであります。その点につきましても我々はいろいろ考えたのでございますが、今後分業になりますれば、まあ安い薬であつても高い薬であつてもそれぞれ原価によつて、これは医師調剤なさる場合でも薬剤師が調剤なさる場合でも同様にそこに差がなく、患者が十分納得し得るような料金になるのじやないかと思いまして、この新体系ができ上ることを待望いたしておるような次第であります。
  73. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 私が今高くなつたという例は、医者のほうでの処方によつてもらつたものとこの処方が同一なのであります。実は私は変なことを申上げるのですけれども、私は家内に私の書いた処方を持たせてやりました。そうすると薬剤師からその処方を私のところへ返して来たのです。それで私は実は電話をかけまして、処方は薬剤師のところにとめておかれるつものじやなかろうか、今私のほうに返つて来たがどういうわけですかということを聞いたわけです。で、私は何となく調剤の確実性というようなことに不安を持ちました。丁度ほかの開業医のかたがほかの用で来られたので、かくかくの事情で一応見てくれないか、今こういう処方を書いたのだがという話をして、同じ処方の薬を医者からもらつたわけです。そのとき多分五円くらい私は高かつたように覚えておるのですが、これは何か間違いかも知れないが、そういうようなことがあつたということをちよつと覚えておるのです。それから先刻申上げました小冊子は一部私のところにも甚だ御迷惑ですけれどもお送り願いたい。
  74. 松原一彦

    松原一彦君 お尋ねしますが、私は全く素養のない、私この方面の知識のない者でありますから、間違いましたらお許し願います。実は私ども最近非常に悩まされておりますので、朝から晩まで電報と陳情と請願に追い立てられて(笑声)夜中まで叩き起されて非常に迷惑をいたしておるものであります。電報、請願書を見ますればすぐわかりますが、もう山をなしております。これを分類いたしますというと、賛成の側と反対の側があります。反対の側の電報、陳情等は、多く医師の側から出ますので、これは絶対反対と書いてある。それから時期尚早というのがPTAの会長とかその他受療者側の諸君の意見のように思われます。又賛成の側は薬剤師のほうでございます。これはまあ非常に数が多いのでありまするが、これを私のような第三者的、全国民の立場から見た者は、非常に奇異の感に打たれるのであります。だんだんこの法案のよつて来るところを調べて見ますというと、この法案はもともとアメリカの薬剤師協会の視察国の勧告に基くものであつて、それは医療の完成を期するために医者は薬売りであつてはならん。歯医者は器具売りであつてはならん。医者無形技術を適正な料金によつて業務を行う。薬を売つて生活すべきものではないというということがまあその根本となる、欧米の先進諸国のやつているようにそれぞれの分業的体制に進まねばならないということの私はまあ勧告に基いたもののように思う。大方これは、まあ素人でございますが、間違いはなかろうと思います。絶対反対と言われると私は非常に奇異の感を持つ。一体それに絶対反対であるかどうか。私どもは医療向上の上からやはり先進国のごとくに次第に分化して行つて、それぞれの専門の技術において互いに協力して行くという体制になることを希望するものであり、そうなるべきものであろうと固く信ずるものでありますが、この法律のできます前提条件には、診療報酬の適正なる決定がなくちやならない。そこにはつきりと治療費と称する無形技術に対する医者報酬と、それから薬代と称するものとの独立がはつきりとここに区分せねばならないと思いますが、それは間違いないのでしようかどうでしようか。医師側のかたにお伺いいたしたいと思いますが、絶対反対なのかどうか。前提冬件には御賛成なのかはつきりと伺いたいと思います。
  75. 榊原亨

    証人榊原亨君) 只今の御質問に偽答えいたします。今おつしやいましな通りでありまして、新しい医療費の体制と先ほど私どもが申しておりますのは、今おつしやつたそういう意味の新しい医療費の体制であります。従いましてそれは薬剤師協会の先生も是非早くやつてもらいたい、我々も是非早くやつてもらいたい。そういうことを早くやつて行きますれば、私どものほうといたしましては、法律強制しなくても処方箋もたくさん出るだろうし、いわゆる自由な意思においてアメリカのような状態になるだろうということを私どもは思つているのであります。従いまして請願とか陳情とかがどんなほうから出たか私は知りませんが、絶対反対というような意味は、今法律を以てきめるということに絶対反対だという意味ではないかと想像いたしますわけであります。
  76. 松原一彦

    松原一彦君 薬剤師の側にお尋ねするのでありますが、これは私どもがこうして陳情請願その他の運動に接しておりますというと、医者と薬剤師とが互いに分立抗争して、そうしてその分野の一歩も侵すことは相成らんというような喧嘩のように見えるのであります。これは受療者の側から見ると誠に困つたことでありまして、医者と薬剤師がこんな喧嘩になられたのでは困るという感じが舞々と起るのであります。  本来医療というものは、一つの体系の上に医者が責任を持つものである。併しその分化はおのずから将来やつて参るものだと思ひますが、一歩も侵すことはできないというほどの一体立法にせにやならんものか、英国或いはアメリカ等において現にやつている程度にやればいいものか、御満足になるものか、その点を薬剤師の側に伺いたい。
  77. 高野一夫

    証人高野一夫君) 実はどうも我々分業問題につきましては、医師側と薬剤師側の喧嘩みたいに思われまして、事実そういう点も頻々として起るものでありますから、誠に受療者側に申訳ないと思います。本当は先ほど私が申しました通り、とにかく我々がお互いに協力体制を作ろうという精神なんであります。こういうことは医療を受ける側からこの案が私は出るべきだろうと考えておりました。薬剤師がおり医師がいるのだから、お前たちがおのおの専門の技量を活かして協力し合い、俺たちの病気を早く治してくれというふうにこの分業運動は起るべき筋合のものであらうと私は考えております。併しながら国民全般の日常の問題ではございますけれども、問題の本質が極めて専門的な問題でありまするために、国民がこの問題の本質をつかまえられないと同時に、又むずかしいので関心を持たない、興味え持たないというようなことが、自然と医療担当者、両者の議論になつてしまつたと、こういうふうに私は考えられると思うのであります。ここで分業賛成の我々が言えば、我田引水かも知れませんが、それは我々はそういう協力体制岸作るために民衆と共に、患者と共にそういう美しい体制を作るために患者に代つて代弁すると、事実私個人はそういう気持でいるわけであります。そのほか一歩譲るとか譲らんとかいうことになりますと、実は調査会におけるこの結論は、十分我々としましても譲歩いたし、勿論お話合いの席でございますから、一歩も譲らんということになりましては、如何なる委員会におきましようとも、会議におきましようとも、懇談会をいたしましようとも話は成り立たないわけであります。両者がやはり成る程度鑑み寄り譲歩して、そうして円満な、皆が満足するような案を作りたいというのが我々の念願してやまなかつたところであります。現在でもその念願は決して衰えておりません。ただこの第三案、即ち現在の政府案として出されております点につきましては、なぜ三十三年から実施することになつたかということにつきまして、私から証言を申上げますと、これも如何にその間も円滑にお互いに譲歩し合つて話をまとめようと努力したかという、その努力の現れがおわかり下さるかと思います。というのは第二案におきまして、当分の間は医師調剤を認めるという案が第二であります。それで当分の間というのは一体どのくらいのことを言うのかということを私が聞きましたところ、谷口委員は、先ず五、六年でしようと、こういうことを谷口委員の口からお伺いしたのであります。五、六年と……。それではまあ五年とするならば、なぜ猶予期間五年ということをこの当分の間に変えて悪いのですか、十年二十年先のことではない、五、六年のうちに実現するだろうというお互いの共同声明をしなくても簡単明瞭、に猶予期間五年ということを置いたらどうですか。もつとはつきりするのじやないかということを、この案を提出されましたときにも申上げ、五年の話をされました谷口さんにも申げた。併しながら同意を得られなかつたのでありますが、我々はもつと短時日の問に受け入れ能勢を十分調えて、医師側のほうと協力してこの分業体制は十分できるという確信を持つておりますが、そういう五年というお話が出ましたので、我々のほうも虚心相懐に五年ということで従来のところでどうですかということを、つまり実は第三案に昭和三十三年から実施するという話も出たりしましたので、決して我々が最初から一歩も譲らんという気持はたかつたのであります。なお一つその点について我々の心境をここで述べますとくどくなりますが、申上げておきたいのは、第一案が出ましたときに、先般調査会佐藤特別委員長が御証言いたしましたように、第一案は谷口さんがこれを呑むという印象を強く受けたという報告を本会議においてもなされ、この席においても証言をされたのであります。私どもも強くその印象を受けたのであります。そういうことは七カ条の条件がありました。この条件が承認されますならば、一つこれから日本医師会に帰つて医師会を説得いたしましようという言葉を、速記録がございませんので、何とも証言できませんが、そういう印象を強く佐藤委員長から証言された通りに私も受けたのであります。ところが、これは先ほど松原先生からお話がございました通り、今までの医師には既得権を認める。これからのものは認めないというようなことは、医薬分業の非常な向上を図るというイデオロギーには背くわけでございますけれども、若しもこの案を谷口さんがお呑みになるならば……、条件は吟味いたしまして、そうして大体の条件の歩み寄りもできたように記憶しておりますけれども、これは厚生省のほうにお聞き下されば明確にわかると思います。それで私どもも、これは政治的な案であつたのでございますけれども、向うへ帰りまして幹事会を聞きまして、若しもこの案を医師会が呑むならば私たちも同調しなければならないかも知れない。そういうようなイデオロギーとは背くかも知れないけれども、調査会を円滑に運営するためには又もう一つの方法を考えなければならんというくらいにまで考えたわけであります。必ずしも一歩も譲らんということで調査会に臨んだのではありません。我々の念願を達成するような案を作りたいということで、ややそれに近いような第三案ができ上つたのであります。この第三案も同じく第二案、第四案と、全部我々医療関係者から出たわけではありません。医療を受ける側、学識経験者から作成された案でございます。
  78. 松原一彦

    松原一彦君 両者の御意見を聞きますというと、何とかして円満な結論を得たい。そうして国民全体に納得の行く線を打出したいという御希望の上に話が進められたように思われますが併し私ども立法者として将来への先例を作らねばならんわけで、国民の権利義務を掲げて来たるべき重大な法案をきめるのでありますから、この点について私はなお念を押しておきたいと思うのですが、第一案は、私は余りに現在の医師の功利的な、自分だけの位置を守るもののように思われてならん。新らしい医師は一切薬を出すことはならん、古い医者だけには薬をもらつて出していいといつたようなことは、私どもには全然合点の行かないものであります。如何にも功利的な争いのように思われてなりません。又薬剤師の側も、何でも一日も早くこれが実現を図ろうというところにも、天職を尽くすのは決して利益を求めるためではないと言わるるけれどもが、ここには折角の薬剤姉の免許状が遊んでおるというのみでなく、一つの非常にまあ反抗的なものがあるかのように思われまして、実は私どもは率直に申せば不快なんです。この問題を見る上に……、が、立法者として心配にならなければならない点で、これは医師の側がどうして第一案、第二案、第三案といつたような、又歯科医師の側も年数さえ課せば、或いは当分というものを何年かにすれば、この法律案は呑めるとお考えになつたかの点に疑問がある。と申すのは、今回の法律によりますというと、薬事法第二十二条によりまして、薬の調剤は薬剤師がせねばならん、薬剤師以外の者はすることはならん、又薬剤師は決して診療行為をしてはならん、こういうことが峻厳に原則として分たれる。但し審査会の議を経て、省令によつて部分的には特例として医師調剤が許されると、こういうことになるようであります。これもまあいいとしまして、これを侵した場合には、薬剤師が医師の領域を侵した場合、又医師が薬剤師の領域を侵して、調剤投薬をしてはならない地域において若し患者求めに応じて調剤投薬をすると、薬事法第五十六条によつて三年以下の懲役、三万円以下の罰金に処せられるという厳罰があるのであります。こういうことをこの法律を以てきめてしまうということが一体立法府の我々の立場としていいかどうかは、よほど吟味しなければならん問題だと思う。一体医師というものが医療というものに対するところの責任を持ち、且つ義務を持ち、そのために医師の修業年限は普通の大学と違つて年数は長い、而もインターンの期間まで付けて七年ということになつている。それほど念には念を入れて今後養成する。生命を預る大事な医師のみが処方箋というものを出す絶対権をこれは持つている。これは何人もほかの者はそういうことができない、医学博士もそういうことができない、医師でなくてはならんのでありますが、その絶対権を持つている医師がここに調剤をすることが相成らんとなるのです。そうしてこれを侵す場合においては懲役だ、罰金だということになるのであります。これが薬剤師が医師の職能を侵して調剤をするとか、或いは容態を聞いて見るということがあつたようなことになりますと、これは同様であります。その両方が同様な処分を受けるということが果して適法であるかどうか、ここに立法上の大きな疑問を持つのです。それならば医師調剤をする能力はないのかということになる。薬剤師が診療ということをしてはならんことは、これは能力がないのであります。医師調剤をすることならんというのは、制度が違う。専門においてはやつておらんから、精密の度において違つている。薬剤師が調剤することははつきりわかります。よくわかる。だれも納得する議論でありますが……、私よくそれを知りませんけれども、一体診療に従事する医師の免許状を持つた者が、自分の書いた処方箋に対してこれを混合する操作、調剤というものをすれば懲役にまで行かねばならん、罰金を科さねばならんという法理論的根拠があるかどうかということなんです。私は分業に賛成なんです。別に異議はない、又そうあるべきものだろうと思う。この重大な医師の権利を医師がみずから捨てられるものかということです。その点です。それから第一案などに至つてはけしからん案だと思うが、討論の場でないから申上げません。が、そうなりますと、今後は支障が起る。法理論的に非常に問題が起つて来るだろう。無能者に調剤させることの危険は勿論でありますが、能力がないということは私はどうも素人考えに合点が行かないので、医科大学の学長にも薬科大学の学長にも来て頂いて御証言を得ようと思つたのでありますが、今日ここにお出し頂きましたところ資料によつて見ましても、普通医師の内科用の内用薬というものは八十九極、外用薬は二十五種となつております。私が薬剤師の側や医師の側について聞きますと、最低五十種あればどうやら医師の薬剤室は処方箋に間に合うということでございました。最大限に出されましても百四、五十種あればどうやら間に合うということを聞いております。而もこれは局方であります。すでに政府公認の薬であります。この政府公認の局方の薬五十種か八十種のものを混合する操作を私は素人考え調剤と思うのですが、現に七十年もやつておいでになるのでありますが、それを犯した場合にこれは法律上懲役に行くというほどの峻厳なる立法がこれに伴なうという事実をば、今後何年か経つたらばよいというのでしようか、どうでしようか。この点を私は医師側及び歯科医師側にもお聞きしたい。又薬剤師の側もそれほどまでに峻厳にお求めになるのかどうかをお聞きしたい。
  79. 武見太郎

    証人武見太郎君) 只今松原委員からのお話でございますが、これは私も先ほど申上げましたように、医学と薬学の領域というものは非常に重複いたしておりまして、或る府県におきましては区別が付かないような状態に現在変りつつございます。学問の再編成の問題を今朝ほど申上げましたような線から考えましても、それほど峻厳にすることはそれは適当でないと考えております。又できるものではございません。それから医科大学におきます教授におきましても、これくらいのことは物理学的な操作でございます。今後この物理的な操作が、物理学者や化学を勉強した人たちに不可能であるというような根拠は何にもございません。その間の化学変化、薬理作用に関しましては医師は一通りを心得ております。殊に日常使つております薬に関してはこれは相当に詳しく知つておるものでございまして、七十年間行いまして、それが現在継続されているという事実それ自体が、私はこれを証明しておると思つております。医師に対して絶対に禁止して処罰するということになりましたならば、私は医学と薬学との親密関係を阻害いたしまして、将来の日本における医学の発展にも薬学の発展にも寄与しない結果を来たしやしないかということを恐れております。
  80. 佐藤運雄

    証人佐藤運雄君) 私は先ほど申上げましたのは、医師のほうに生活の不安がなくなつて、そうして国民が納得するようになつたら実施したらよかろうと申上げたのであります。その間の相当な期間があれば、これらは恐らくは達成されることになるだろうと思つて、その後に行うことは不賛成ではないと申上げたわけであります。それから只今お話の罰則については確かにおつしやる通りであります。そんな峻厳な罰則をすることは適当とは無論考えておりません  それからもう一つ御了承を願つておくのが必要なことではないかと思うのでありまするが、それは医師会のほうで申されておりまするところ強制分業であります。或いは只今問題になつておりまするところのこの法律がきまつて御もいろいろな除外例があつてその除外例は医師会のほうとよく相談をして厚生大臣がこれをきめるというそのことについては、無論罰則なりというものはありようわけはないのでありまするから、その除外例と申しまするか、特別の場合の考究について十分慎重を期したならば、これを犯すというようなことは恐らくはないだらうと考えております。これについても今おつしやつた罰則はそんなに峻厳ではあるべきではないと考えております。
  81. 松原一彦

    松原一彦君 私は医師の側が放棄せられることは異議がないのです。権利の放棄は自由でございますから、御放棄になるならば何も差支えないし、公共の福祉のために御放棄になつてもよろしいのですけれども、これを今回このまま立法しますと、その罰則はそのまま活きるのでございます。或いはお気付になつておらんのじやないかと年礼ながら思う点もあるのです。で薬剤師がこれを犯した場合においては、港剤師は免許状まで取上げられるのです。そうして非常に峻厳なる処分を受けなければならんという薬剤師にも言い処分がくついておる。同様のものを今度はこの法律がで費ますというと、医師の側もお受けにならなければならん。で、高野さんにもお聞きしたいのですけれども、そういうふうにまでも一体御要求になるのか。欧米にはそういう例はない、立法例はない、とのうち頻りに厚生省に立法例の提出を求めておりますが、出て来ませんが、このうち吉川さんその他の専門家のかたからお聞きしましても、欧米にいうてもドイツは除きますよ、ドイツを除いてはそういう立法例がない。明治二年に峻厳なる法律のこの基礎が定まつたといいますけれども、それは帝政時代のドイツでのことであつて、民主主義時代のドイツのことではないと私は思つておりますが、分業になるのはよろしいけれども、自然の発達の結果分業になり、おのずからそうならざるを得なくなつて国民も納得し、医師も薬剤師も納得してその域に達する、今日の欧米がそこに達しておるのですから、これには相当の文化の条件が要る、経済の条件が要る心施設の条件も要る、まあ私ども解釈しておるのですが、それをどうしてもできんからもう待てん、医者調剤したら懲役にやるぞというところまで行かなければならんものかどうかということを一つ薬剤師の側にもお聞きしたい。
  82. 高野一夫

    証人高野一夫君) 只今の御質問の趣旨はよくわかりましたのですが、私どもが正しくあるべき考えを文章に表わす、それで社会の秩序の規範にするというのが法律の精神であるというふうに素人流に解釈いたしております。そこでそういう制度が、そういうことが法制化されましたならば、これに関与するところ国民までどうかこれを守つてもらわなければならないのであります。これを犯すということを頭に置いて法律というものを定めることについては、私も余り好感を持たんのでございます。相手が、薬剤師が悪いことをするものだというようなことで議論をする、医者は悪いことをするというような建前で議論をしたのでは、これはいつまで経つて医療制度の正しい姿は発展できないのであります。そこで両者ともに悪いことをするやつもありましようが、それはお互いに皆協力し直すといたしまして、皆が正しい、いいことをし、そういうことをすることをここに法制化するのであるならば、罰則があろうとなかろうとにかかわらず、常識的に医師も薬剤師も、一般国民もこれを守つてくれるであろうということを私は確信いたしております。従つて長い懲役をやつたから、或いは高い罰金をやつたからよく守られるであろうとか、安い罰金だから、懲役がないから、短いから守られんであろうというようなことは、私どもも実は余り考えたくないのでございます。
  83. 松原一彦

    松原一彦君 恐らくそうだろうと私も想像しましたのは、薬剤師のないところにおいては医師調剤をして投薬することをも持例として認めるようになつておる。だからして能力のない者でないということはわかります。又救急の場合とか夜間とか、特別の場合はこれから審議によつて出て来ますでしよう。これもまだ政府の側から説明がありませんからその範囲がわかりませんけれどもが、恐らく医師調剤、投薬ということも或る特例は認められるということになるものと想像はつくのであります。そうして見るというと、この法律の目指すところ医療の進歩であつて国民が幸福になることであつて、そうして国民の支払う医療費というものが比較的安くつて比較的効果の多いものを売るということが国民全体の求むるところだ。七万何千人の医師の権利も守らなければなりませんが、五万幾千人の薬剤師の権利をも保護しなければならんというのがこの立法府の責任であります。併し同時に八千万国民の利害こそその主体をなすものだと私はこう思うのです。そういう意味でサムス氏等のこの勧告というのも強引に押切つてしまうというのじやなくして、欧米の現実のところにまで進め、こういうのであろうと私は思う。それならばこの法案には非常なまだこれは不完備なところがある。今あなたも、高野さんも言われた通りに、そこまで峻厳なる罰則行為までをも附加しようと思うのじやないと言われるというと、この法案はこれは通らん。又医師の側では放棄する意思はない、やはり原則としては医師の投薬というものは権利として保留したいということでおありなさるならば、これは絶対反対でなくして一つの相対的な反対であつて、歩みよりの余地があるものと思う。そうして見るというと、ここに出されておる法律案というものは、これはまだ未熟なる案である。今直ちに結論に達すべき案じやないと、私はまあこう皆さんの御証言から思うのでありますが、これはお答えを待たなくても私はさように信じますから、御証言によつてそういうふうに考えるということだけを申上げまして私の質問を終ります。
  84. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 私先ず高野証人に一言申上げておきたいと思います。先刻この第一案が出ました当時に、第一案は呑む、そうして七つの条件を出したというふうにとれるようにお話になつたと思いますが、そのとき第一案は出ておりました。確かに出ておりましたが、その際に私は日本医師会としては、新らしい医療費の新体制を是非やれば、自然法律の改正とか強制とかせんでも医薬分業になる。その新体制をやるのには七つばかりの条件が必要である。その条件は、或いは国民を指導するとか、無形のサービスに対するとか、技術料とかというような七つの条項を、これをやつてもらえば自然になるといういうことを申上げて、そうしてなお第一案については又医師会に帰つてよく相談をするということを申上げておるのであります。  それから第二案に対しまして、私が当分の間を五、六年というのは、私が言い出したような印象を受けるようなお託がございました。これは私がそういうことを申上げておりませずに、第二案に対しましても同様に我々はそれは呑むことはできん、反対の案であるというふうに申上げておるので、その際にほかの方面から当分というのは幾らぐらいかと、五、六年じやなかろうか、或いは十年、二十年じやなかろうかというようなお話が出ておりました。併し私から五年、六年というようなことは申上げてはおりませんからして、その点はお含み置きを願いたいと思います。
  85. 高野一夫

    証人高野一夫君) 只今又お叱りを受けましたが、実はこの速記録にもございます通りに斎藤委員長特別委員会報告の中にやはりそれが強い印象を受けたように出ておりました。私もその印象を受けたものですから申上げて置きます。  第二案の五年につきましては、これは丁度斎藤先生も脇においでになつたと思うのですが、そう記憶しておりますが、いろいろ懇談いたしております間に私があなたに御質問申上げまして、そういう話も、その五年という説は別から出た説かも知れませんけれども、私が伺いまして、それならば五年という文字を入れることによつて、やはり医師会と我々のほうと協調した案ができるのではなかろうかと、かように実は考えたわけでございます。殊にこの第二案につきましても斎藤特別委員長の報告にもありまする通りに、医師会委員は、只今引受けるということは困難であるが、全国理事会に諮りこの線でまとめるよう努力したいということが述べられたのでありまするが、その後委員会の開催中において医師会から医師会委員に連絡があつた槙様であり、医師会只今会合している理事から、法制化という問題が起るのならば如何なるものであつてもこれを受入れられないと、こういう電話が参つたということを、その席であなたが委員長の席のところへおいでになつて御発言になりました。それで委員長が非常に憤慨されたということも事実あつたわけでございまして、まあ過去のことをいろいろ言つても仕方がないのでございますが、私が如何にも何か間違つたことを申上げてお苦しめするような印象を他のかたにお与えしてはいけな、と思いまして、ありのままのことを申上げておるので、私はどうにかしてお互いが協力して円満なる案ができないであろうかということを、共に相談をしたということの証言材料として出上げて置きます。
  86. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 只今のお託によると五、六年というのは、私から言つたのむやないということがはつきりいたしましたからよろしいのですが、次にこの調査会におきまして速記録速記録というお言葉がございますが、実はこの調査会には初めは全然速記録というのはなかつたのでございます。その後調査会に速記録がないのはけしからんというので、政府に頻りに迫りました結果、速記録をとろう、併し速記録を出すだけの費用はないから、薬剤師会でやつているその速記録をこちらのほうで一部それをもらうことにしようという程度の速記録でございまして、完全な速記録というようには私ども思つておりませんからその点もついでに申上げて置きます。
  87. 高野一夫

    証人高野一夫君) 紳士たるべき谷口委員から誠に私は心さびしい御意見を伺うような泣きたくなるような感じがいたします。厚生省は予算がないので実はそういうあらゆる医師会資料、あらゆる厚生省資料、アメリカの資料、いろいろ取寄せまして大きい包三つございました。この包を抱えて、お互いが真剣に各方面が寄つて討議しました。その内容が記録に将来残らんということは誠にけしからんと考えまして、我々はあらゆる犠牲を忍んで速記録をとつたのでございます。この速記に当りました者は、毎日新聞におきまして主としてこういう方面の速記に当つておる女の速記者を特別に依頼して速記しました。なおおその後問題になりまして、薬剤師会が速記録をとるのはけしからんという医師会側の御先言がございました。併しながらこれは、我々がただ自由の立場においてとつてつたのであります。これが今日の御参考の材料に供せられたのであります。その後厚生省におきまして確かに速記をとつておるはずでございます。ただ翻訳されて印刷されておるかどうかは別問題でございますが、この速記の、速記者として資格のある、而も新聞社に籍を置いておるところの者が速記したものか、私的のものであつて、当になるとか当にならないとか、軽いとか軽くないとかいうようなことは、どうか一つおつしやらないようにお願いいたします。  どうかこれが御信用にならなければ御信用にならなくても我々は結構でございます。  この点の信用性につきましては、当時幹事席に厚生省側の局課長、次官以下すべて列席しております。ほかの委員も列席しております。悉くお呼びになりまして御証言求められ、記録を御参照下されば、これは正確であるか嘘であるかということは十分谷口さん納得行くだろうと思います。
  88. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 榊原証人にお伺い申上げますが、先ほどからたびたび新らしい医療体系ということが出ておりますが、殊にあなた様の御証言最後に、新らしい医療体系の早く実現を見たいというお言葉でございますが、これについてちよつとお伺いいたしたいと思いますが、新らしい医療体系とおつしやりますのは、先ほどの谷口委員からおつしやいますように、医師会では第一案、第二案、第三案も呑むことができなかつた、それをお呑みになることができなかつたのでございますが、医師会の持つておられます案はございましようか、どうでございましようか、その点一つ承わりたいのであります。それからその新らしい医療体系を失現いたしますに、何かあなた様はそれについての具体案がおありになりますかどうか、ちよつとお伺いいたします。  それからその新らしい医療体系の中へ先ほどおつしやつておられましたように、日本の各油院施設等もアメリカの病院のように内谷の充実を来すようなことが入つておりますかどうか、その三つについてお伺いいたします。
  89. 榊原亨

    証人榊原亨君) 只今お尋ねの新らしい医療費の体系と申しますものは、医薬分業法律で規定いたしますという法律案ではないのでございまして、サムス准将等の示唆によりまして、今まで薬代々々と申しまして、患者から医療担当者が取つておりましたその薬代の中には、薬の原価或いは薬を調剤いたします費用のほかに診察料等の技術料が入つておるのでございます。例えて申上げますると、健康保険におきましては、薬を出した場合には再診料、二度診察する料金でございますが、その再診料は取れないということを現行の社会保険の診療報酬ではきめておるのであります。薬を出した場合取らない。と申しますことは、その薬代に再診療が含まれているということでございます。ところが先ほども松原委員がおつしやいましたように、そういうふうに薬を出して、薬の中にそういう医師の診療の技術料を含ませておるということは、言い換えると医者が薬を売つて生活をするというようなことにも取れるから、この際是非ともこの医療費の新らしい体系を作りまして、医者技術料技術料で別に取り、薬代は薬代として徴収するというようにしたほうがいいというような示唆を受け、そこで私どもも成るほどその通りだということで、そういう医療費の体系を作るように私どもは努力をいたしたのであります。で、その資料は、この臨時診療報酬調査会におきまして厚生省のほうに百部印刷資料を全部お渡ししたのでありまして、それは厚生常任委員の先生がたにもお分けするのだから、百部出せということで百部ずつ厚生省に渡つておるはずでございますので、厚生省にその資料全部あると思うのでありますが、そこでその資料を長い間かかりましてそうして作りました資料があるのであります。それは日本医師会だけでございません、歯科医師会のほうでもお作りになりましたし、薬剤師協会のほうでもお作りになつて、又厚生省においても御研究になつたいろいろ資業あるのであります。で、その資料を以ちまして新しい医療費の体系を一つ作つて頂きたいということで、臨時診療報酬調査会で協議されたのでありますが、先ほど中山常任委員のおつしやいましたように、その基準だけをきめられまして、新らしい医療費の体系は何ぼ何ぼである、どの治療費は何ぼ何であるという具体的な数字が一つも検討されておらないのであります。そこで私どもといたしましては、一刻も早く一つ一つの医療報酬、例えて申しますと盲腸炎を手術いたしましたときの手術料、或いは薬の調剤料というようなものもきめて頂きたいのでありますが、それよりも少くとも新らしい医療費体系においては、全部の国民医療費が何ぼになるという数字くらいは是非臨時診療報酬調査会でおきめを願いませんと、医薬分業を若し強制いたしましても、そういう医療費の上るか下るかという具体的数字を是非お願いいたしたいと、かようにお願いいたしたのでありますが、期日の関係上そういう御研究はなかつたのであります。そこで私どもといたしましてもさつき高野証人がおつしやいました、日本医師会は或るときは六万円の医師の収入を出す、成るときは九万円を出した、こういうようなことを言つたのでありますが、あれは間違いでございまして、昭和二十五年度の九月現在の日本の零細の、ベットを持ちません小さい診療所であります。診療所の医師が平均して何ぼの収入を取つておるかということを調べたのであります。その結果が六万何千円という結果になつておるのでありますが、それを今度は理論的に……、それでは例えば自分の子供も医師にすることができんということもありますし、それからいろいろこの建物の償却等も要る、そういうふうに理論的に計算しましたものが九万何千円という数が出たのであります。六万円と申しますものは、実際昭和二十五年度の全国の零細の医者が取つております。九万何千円と申しますものは、それをいろいろ理論的に考えまして、それは私の方だけが、日本医師会だけがやつたのではありません。大阪の労働科学研究所のかたと経済学者というようなかたがたにお願いいたしまして作りましたそのものが九万何千円であるという形が出ておるのでございます。それから医療費が上る下るということで一二%……六万円と、九万円と二度も出したものだから一二%にまで上つておるというものではありません。一二%と申しますものは、全然これとは関係なしに、現在の医療費の体系でも医薬分業をすれば一%上るんだ、こういうことなんであります。そこで私どものその考えを更に全部が正しいからすぐそうだというのではありませんで、そういう資料を一つ御検討を願つて是非新らしい医料費の体系をお作り下さいましたならば、そうするならばもう医者が薬を出しても一つも儲からんということになるのでありますから、何を好んで医者が薬を出すことはない。ただ患者が、どうしても患者の便利のために、患者が先生に是非もらいたいという場合に薬をサービスとして出すようになるのでありますから、従つてそういうことになれば、自然に処方箋も殖えて行く、そうして今の欧米のような現状になるのではないだろうか。そういう姿が一番自然の、この水の流れに沿つて溝ができるような、自然の姿であつて、そこには何らの矛盾撞着というものはない。是非そういう体系をやつて頂きたいというのが、私ども日本医師会医療担当者としてのお願いであります。
  90. 有馬英二

    ○有馬英二君 私は日本医師会のかたにも、それから薬剤師協会の代表のかたにもお尋ねするのでありますが、一体この法案が通りまして、この法案が通るというと、先ほど松原委員からも言われましたように、医療向上を期するということが謳つてあります。誠に結構だと思うのであります。併し過去私の長い経験から考えましても、今まで数十年間旧体制で、つまり今までの医者が薬を出して来たというようなこの医療体系におきましても、十分我が国の医療向上を示して今日に至つておると私は思うのであります。これが併しながら医者が薬を出すことができない、薬剤師が薬を出さなければならんということで、どんなくらい一体飛躍するでありましようか。医療がどういう工合に向上するということがおわかりになりましようか。そのことを取りあえず高野証人に一つお伺いいたします。
  91. 高野一夫

    証人高野一夫君) 医療向上、学問の向上ということは、ここで物差のように測定することは不可能であろうと考えます。私の例えば病院におきましても現在分業が行われております。医師は医局におきましても内科、小児科、その他分れて、それぞれ専門の技術をやらております。調剤に関しましては薬剤部で薬剤師がやつております。その間に関します薬の問題につきましての病院における問題は、この医局と薬剤部が併置されて、そうしてお互いに協力していることによつて非常にうまく行つている。医療内容が的確に行つている事実が、事実我々医学界の間においても調査したあらゆるデータがあるのでございます。例えば不適性者があれば、これは病院におきましては、ただ小児科なら小児科に参りまて、それでいろいろ薬学的、いわゆるケミカルの立場からこれについて質す、そうしますと又それを質した我々のほうが間違いであつた場合は、勿論そのような釈明ができるわけであります。又聞違いを指摘しましてそれがケミカルの立場から誤つてつた、その医師は御存じでなかつたということならば、今後はその処方が改正されまして、そうして患者にはそういうことがわからない間に完全な調剤投薬が行われている事実が相当あります。これは取りも直さず、私は患者に対する医療向上であると考えます。なお又診療上におきましても、薬剤師を置いた開業医の場合と薬剤師を置かない開業医の場合とはおのずからそこに差異がある。但し私はここで分業によつて開業医が、病院においては別でありますが、すでにできている開業医が、調剤投薬のこと、或いは薬の仕入れのこと、そういうことをやらなくても済むということになりますれば、非常に時間的にも余裕があるということ、勉強する時間もできれば、或いは又患者をよわ慎重に診、より慎重に治療するということにもなります。勿論この調剤体或いは看護婦に委せ、或いは書生に委せるということならば、これは調剤医師自身が何ら関与しないことになりますから、そのために医師の時間を取られませんから毫も差支えないでありましようけれども、私はさようには信じたくないのであります。現在の薬事法の通り、医師患者を診たらば自分で処方箋をお書きになり、そうしてその処方箋を自分で薬室にお持ちになつて、そうしてそれの処方箋を法律の通り処方に従つて自分調剤をなさつておるものと私は常識的に信用いたします。そういたしますれば、次の患者を見る間に十分なり十五分なり或いは新製剤をやるような場合は三十分、四十分、或いは一時間、相当時間というものはその医者調剤室で時間を潰さなければならない。自分の専門の診療のことを勉強し、或いは患者を診るという時間はないわけでございます。そこでこういうようなふうに良識ある調剤が、法律通りの調剤医師が現在行われているというふうに我我は信じますが、そういたしまするならばなお更のこと、そういうような仕事をお手放しになりまして、その時間を本当の医学技術の面にお向けになりますならば、私はより以上に技術向上は期せずして行われるのではなかろうか。物差でどうこうということは測れませんけれども、やはりだんだん……、勿論日本の医術は非常に進歩して参りました。これは万人が認めております。私の学友は全部医者であります。個人的なことを申上げて恐縮でありますが、私は薬剤師よりも医者の友達が多いのであります。中学校時代も高等学校時代も全部学友が医者であります。従つて私は医者がまじめに、我我の同僚諸君がまじめに医療に従事しており、そうしてますます年と共に医療向上を図つてくれていることを私は目のあたりに見て、実に信頼をいたしておるのであります。なお更により以上に時間的余裕が出るということですらも又一歩前進し得るのである、かように実は期待いたします。物差で測れませんけれども、そういうような信念を持つております。
  92. 有馬英二

    ○有馬英二君 私ども立法府におる者は、白紙で公明正大に両方の御意見をよく聞きまして、先ほど松原委員が申されたように、八千万同胞の利益を考えて、単に薬剤師の利益とか或いは医師の利益とかを考えているのではないのであります。双方の側から今朝ほど来正々堂々と主張を樺聴いたしまして、誠に感服をしておるわけでありまして、併しながらこの前臨時診療調査会と、それから医薬調査会証人から伺つたのでありますが、この両方の調査会の結果が我々としては誠に不満足である。ただあれだけで非常に結論を急いだということを非常に不満に思うものであります。この点が私どもは、これは討論でありませんからこの点あなたに申上げるのじやないのでありますが、こういうような不満足な調査の結果に対して、今回提出されたところのこの法律案ができたということについては、私はどうも甚だ遺憾の煮を持つているものでありまして、これについてはあなたはどういうふうに考えておられるのでありましようか。
  93. 高野一夫

    証人高野一夫君) 先般赤木会長、斎藤特別委員長の証言がございました通りに、且つ又今日午前中に勝俣委員から御証言がありました通り、我々はできるだけの調査研究をいたし尽したつもりでおります。臨時診療報酬調査会におきましては、八月七日以来一月二十四日出しますまで、実に八カ月の間検討し、或るときは九時、十時までかかつたこともございます。そうして出ましたものは極めて簡単なこういう原則でございますけれども、この原則を出すについては、各方面から出た具体的の数字も十分検討し、生活費の問題から国民の負担の問題、所得の使い方の問題、税金の問題、いろいろな問題から検討いたしまして、そうしてこういう結論になつたのであります。我々といたしましては、ここに例えば受診料が幾ら、往診料が幾らということの算定を出し得ませんでしたことは残念でございますけれども、これは厚生省も申します通りに、二年くらいは当然かかると思いますので、半年やそこらではできません。こういう体系を考案するにつきましては十分の調査研究をいたしたつもりでございます。臨時医薬制度調査会におきましては本会議とも六回でございます。併しながら八回の特別委員会、これも私どもへとへとになるぐらいにいろいろ議論もし討議いたしまして、更にその前から引続き去年、一昨年から分業についてば医師会側と我々との間においては、少くとも相当の議論が戰わされておつたのであります。更に今度は第三者を加えまして、そういう立場からも議論が出ました。殊に医薬制度調査会におきましては四十名の構成員ができております。先般清水証人は、この四十名の構成員は、医薬両方面の代表者と学識経験者を加えますれば医療担当者のほうが多かつたと、こういう御証言がございました。これは間違つております。私はここで清水証人証言を訂正いたして頂きたいと思います。医師会が四名、我々が四名、歯科医師会が二名、都合三団体の代表が十名、医薬の専門学識経験者が合せて四名でございます。即ち医療関係者が学識経験者共に十四各でございまして、あと二十六名はすべて医療を受ける側であり、別な意味の学識経験者であつたのであります。従つてこの間みたような清水証人のああいう証言は全く逆でございます。なお又そのとき清水証人は、我々は余り発言しなかつた、期間が短かかつたということをおつしやいますが、これは私はほかの委員がおつしやるならば誠に又或る面においては傾聴いたすのでありますが、清水委員は殆んど出席なさつていないのであります。これは出席簿を見ればわかるのであります。本会議にも一日もお出にならない、特別委員会には一回か二回しかお見えにならない、お見えにならないでおつて審議を尽さないで、そうして期間が短かつたから審議ができないというような証言は、私はどうかと思うのであります。我々出席いたしました者は、そういうようなふうにすべての委員が熱心に討議をいたしました。或いは笑つて懇談をし、或いは口角泡を飛ばして議論をいたしましたけれども、必ずしも議論ばかりしたのではないのでありまして、大部分は和気靄々の間にいろいろ懇談をする、特に中立委員が大勢おりまして、中を調整し、いろいろな第三者としての意見も出して頂きましてこの案ができたのであります。相当の慎重審議を加えたものと実は確信いたしておるのであります。
  94. 有馬英二

    ○有馬英二君 私が申上げたのはそういう意味で申上げたのじやないのでありますが、あの診療調査会の結論は、単に基準を示したに過ぎない、薬価が上るか上らないか、診療費の要求さへもはつきりしないということで、この法律案を一体私どもはどういう工合に処理していいか、若し薬価上つても下つても、そういうことには関係ないのである、そういうことは一向かまわない、あとから勘定すればいいのだ、取りあえずこの法律を作れ、こういうようなことでは私どもは法律を作る気にならないのであります。根拠がない、若しそういうことで国民が満足しなかつたならば、一体その責任は誰が負うのでありましよう。この点を一つお伺いいたします。
  95. 高野一夫

    証人高野一夫君) 今朝ほど来我々がたびたび申上げております通り、医薬の分業、この医師と薬剤師の協力態勢を作るということは、これは決して国民医療費の問題だけではないと考えます。その点は従来もさんざん論じ尽しましたから申上げませんが、医療費の問題は極めて重大でありますが、事国民の命に関する医療の問題、この問題を如何なる体制にしたほうが国民により安心のできる医療措置、治療措置を講ぜられるかということが医師として考え、薬剤師として考えるべき、又医学、薬学をやつた者が当然国民に対して考えなければならない第一の私は義務じやなかろうかと思います。更にそういうような良識ある、いわゆる国民の、患者の命を第一において考えて、然る後に国民の負担が上るかどうかということになるわけでありますが、そこでその問題につきましては、ここで極めて御満足の行かないようなことになりますけれども、とにかく現在の国民医療費の総額、これを限度と一応考えて、この範囲内において事実上の算定をしたほうがいい、それで十分医師の生活も保障するというわけには行かんわけですが、十分生活もできるはずであるというようなことから、それは六カ月に亘りまして医師会側のデータ、厚生省側のデータ、我々のデータを材料にいたしまして、数字的に検討いたしました結果、そういう結論に到達いたしまして、この答申の第五項にありますように国民の負担力に相応してきめる。こういうことになつたと私は考えておりますので、従つて我々は国民の最も大事な命の問題を扱うので、最も安全なる方法でやるべきであるということ、その次にそれを行うことによつて医療費の問題は、この答申にあるがごとき方針で、今後厚生省調査会で算定ができるはずであると、こういうことを確信いたしましてその話を進めているわけであります
  96. 藤森眞治

    藤森眞治君 高野証人にお尋ねしますが、高野証人は今審議が十分できたというふうなお話でございましたが、私どもも審議が非常に熱心にやられたことはこれはよくわかつております。併し審議が十分にできたかということについては若干疑問を持つておりますが、あなたもお聞きになつたと思いますが、この間の調査会証人かたがたから承わると、とにかく非常に急がれたということは、清水証人からも赤木証人からも出ております。斎藤証人からも出ております。殊に宮尾証人は、重大な問題が未解決のままに置かれたことについて非常に遺憾の意を表す、こういうことを言つておられますが、この証言に対してあなたはどういうふうにお考えになりますか。
  97. 高野一夫

    証人高野一夫君) 実はこの調査会は御承知の通りにサムス准将の指示によつて厚生省が設置した調査会であります。そのときにこの両調査会の結論は、二カ月乃至三カ月の間に出されるであろうということが御挨拶の中にあつたように記憶いたします。ということは、そのときの調査会の目的なるものが、一つ一つの診療項目、例えば初診料をどうする、再診療をどうする、手術料をどうするというようなことでなくして、いわゆる医療費のあるべき姿を検討して、こういうふうに基準を定める。それが厚生省の、厚生大臣の発せちれたる諮問の基準ということになつておる。この基準を定めるということに目標があつたろうと考えます。そういたしますれば、そういう医療費の正しくあるべき姿を定めるということならば、二カ月乃至三カ月でできるじやないか、こういう最初の方針、考えであつたのではないかと察せられるわけであります。ところ診療報酬調査会が始まりますというと、各方面から非常に厖大なる資料が出て、十分熱心に御調査になりました結果、このデータが適切であるとかないとかいうことまでいろいろ吟味が始まりまして、そこで時日が非常に長くなつたのでございます。その代りにこの簡単なような原則には、相当の根拠が置かれたというふうに私は考えます。最後におきましてそれは関係筋から急がれたというようなことは、赤木会長から、その後どうなつているかということをサムス准将に呼ばれて聞かれたというような御発言があつたようでございますが、これは速記録を見ればわかると思いますが、一々会長の言葉を覚えておりませんけれども、そういうふうに了解いたしております。
  98. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 簡単に武見証人にお伺いしたいと思いますが、先ほど薬学というものを学問的の再編成といいますか、考え直さなければならん、或いは薬鶴の制度についてもいろいろお話がありまして、松原委員の御質問に対してお答えがありましたので大体わかつたのでありますが、高野証人お話によりますと、薬剤師の目標は調剤である、こういうことになつております。そこで現在薬剤師になるのには大学の課程を修めて、国家試験を経て薬剤師という者になるわけでありますが、現在の薬剤師のこの制度に対してどういうお考えを持つておられるのであるか、将来の参考のために武見証人にお伺いします。
  99. 武見太郎

    証人武見太郎君) 私は現在の段階において薬学の動きというものは先ほど申上げました通りであります。医学との関連も先ほど申上げました通りでございます。併しそれにもかかわらず、私は薬剤師が多数できますことを私は期待しております。その期待いたします理由は、薬剤師は調剤ばかりではございません。その他のいろいろな公衆衛生上の役目もございます。そういう方面に進出することが極めて少く、現在は調剤のみの感を与えていることは極めて遺憾だと考えております。
  100. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 そうしますと、やはり現在の制度において薬剤師という者を作り出すためには、あれだけの教育の課程もふませ、国家試験等も経て行かなければならんというお考えですか。
  101. 武見太郎

    証人武見太郎君) 勿論そういうふうに考えております。
  102. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 それから高野証人にお伺いしますが、高野証人は薬剤師の目標というか、明らかに調剤ということを強調されたわけですが、どういうお考えを持つていられますか。
  103. 高野一夫

    証人高野一夫君) 薬剤師という者は医師と同様に、医療に従事するために医師の免許を受けた者、これが医師である。薬剤師の業務に従事するために薬剤師の免許を受けた者が薬剤師である。従つて薬学を修めた者が公衆衛生に従事し、或いは衛生化学、下山事件のごとき裁判関係として、そのほか製薬等に従事する、これは薬剤師の資格があるなしにかかわらず、薬学出身者として、又医師の免許があるなしにかかわらず、医学出身者として従事すべき学問の分野でございます。医師の免許を受けて医療に従事すると同様に、薬剤師の免許を受けた者が薬剤師の業務に従事すべきである。その薬剤師の業務なるものは、現在薬事法にきめてございまする通りに薬品の鑑定、保存等いろいろございます。最後調剤をする者、こういうことになつております。調剤行為なるものは、而も販売又は授与の目的を以て調剤するのは薬剤師でなければならないという原則が厳として置かれて、薬剤師の免許を受けた者のみがその調剤をする、こういうふうに解釈いたしております。
  104. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 もう一遍、これはおかしな質問かも知れませんが、将来医療費の計算、算定の上においてこれは参考に承わつて置きたいのですが、新医療制度ができて薬が流れて行く場合に、薬剤師のほうで出したもの、薬代というか薬価というか、薬の本当の値段だけですが、薬というものは安く売れるか、或いはお医者さんのほうを通じて行つたほうが高いか安いか、質問はおかしいかも知れませんが、そういう問題について……。
  105. 高野一夫

    証人高野一夫君) 臨時診療報酬調査会におきまして調剤技術料の問題が出ましたときにこういう話が起つたのであります。これは中立側の某委員から起きました。調剤行為が薬剤師の専門的技能によるものとするならば、医師調剤した場合の調剤技術料と、薬剤師が調剤した場合の調剤技術料は差別があるべきである。例えば薬剤師が専門家として調剤するならば、これは本当に専門家であるから、これは一個四円ならば、医師は二円にするとか一円にするのが本当じやないか、そうして医者からもらう薬が薬局からもらう薬よりも安くてもいいんじやないか、こういう議論が学識経験者の中から起きたのでございます。ところで何もこれは専門の学問を楯に取つて議論しますればそういうことになりますが、我我はそういうことは考えませんのでこれはやはり仮に分業が実施せられるといたしましても、分業を実施した地域における薬局の医師の処方箋によつて調剤して患者に渡す薬価と、分業を実施していない地域において患者に渡す薬価とはこれは同一であるべきである。技術料をいろいろ細かに医師と薬剤師を区別して算定するということは、実際問題として到底不可能のことであるし、又その間薬価に差別を付けるということはどうかということでありまして、これは分業の実施如何にかかわらず、薬局からもらつた場合と医師からもらつた場合と、この答申を基準にして算定せられる限りは同一であると、こういうふうに一応考えがまとまつたのであります。
  106. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 調剤手数料以外にもその薬代というものがありますね、製薬会社からいろいろ出ておるこの薬代だけの値段について言えば、薬剤師のほうから出ようが医者ところから出ようが、それは大体同じものですがその間いろいろ中間商人があるとか、どういう制度になつておるか私よく知りませんが、その点は同じと考えて置いていいものでしようか。
  107. 高野一夫

    証人高野一夫君) 診療調査会のときにも病院、診療所に行く薬と、薬局に廻る薬の値段が違うということで、この調剤報酬の算定につきまして疑義がございました。併しながら薬局に廻る薬が病院に廻るより安いというようなこともございましようが、必ずしもそういうことでないのでございまして、この点は同一と考えてよいと私は考えます。
  108. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑はございませんですか……武見証人委員長から一つ伺うのですが、先ほどの御証言の中に、臨時診療報酬調査会の設置は任意分業を推進するために設けられたというようなふうに解釈したという御証言がありましたが、そういうふうでありましたか。
  109. 武見太郎

    証人武見太郎君) これは今まで任意分業法律だけを出して置いて、厚生省は何らの処置もおとりにならなかつたから、これはあの法律を出したときすべきものを今したと考えても、大いにこれはやらなければならないと考えますということで、林厚生大臣は、それはとにかくやらなければならない、それをこの第二段階の制度の問題とは分けて考えるということでございましたので、我々は任意分業を当時から主張しておりましたので、そういうふうに解釈いたしておりました。強制分業のための技術料ということは当時から考えておりませんでした。
  110. 山下義信

    委員長山下義信君) 医師会のほうからお出ましになりました委員は、大体そういう御解釈で委員をお引受になりましたのでしようか。
  111. 榊原亨

    証人榊原亨君) この二つの委員会におきましては、前段の臨時診療報酬調査会という調査会委員会におきましては、新しい治療費の体系を作りますために、科学技術に基きまする適正な医療費を算定する委員会であります。従いましてこの委員会は医薬分業とは何らの関係がないのであります。但し後段の医薬制度調査会におきましては、前段の委員会の結論を利用いたしまして、そうしてそれを応用して判定の参考にすると、こういうことでごさいました。従いまして医薬制度調査会におきまして、医薬分業を論ずることになるから、臨時診療報酬調査会におきましては医薬分業のほうに使われる材料については、成るべく早くこれを研究し、結論を出すようにというお話があつたわけであります。従いましてこの二つの委員会は性格上は全然別なものでございまするが、後段の医薬制度調査会におきまするところ資料材料として、臨時診療報酬調査会において出された結果を応用するということのように私どもは考え、又そういう意味で代表を出しておるわけであります。
  112. 山下義信

    委員長山下義信君) 御証言に食い違いがあるようでありますが、どういたしましようか。今の榊原証人の御証言では、後段の調査会関係があることを了承し、大体まあそういうことはわかつてつたというのでありますか……。
  113. 榊原亨

    証人榊原亨君) 食い違いはないのでありまして、武見証人がおつしやいましたことは、現在強制医薬分業が行われておらない現状といたしましては、任意分業であります。私どものいわゆる任意分業が行われておる、その任意分業におきまして新しい医療費の体系、即ち科学技術に基く医療費の体系を研究するのが前段の委員会であります。ところが後段の委員会ができまして、医薬分業を論ずるということになりますれば、前段の委員会でできました結果を応用して、そうしてそれを判定の資料にするという意床でありますので、二つの委員会は性格が違い、関係はただ後段の委員会が前段の委員会の結果を応用するということにとどまると、こういう意味に武見君はおつしやつたと思います。
  114. 山下義信

    委員長山下義信君) 両調査会は同時に発足したのではなかつたのでしようか。
  115. 榊原亨

    証人榊原亨君) 違います。初めに臨時診療報酬調査会というものができまして、臨時診療報酬調査会の結論が出てから後段の委員会を開くと、けれども余り前段の委員会が長くかかるようであつたならば、場合によつては両方を同時に行うようなことなるかも知らんと、こういうようなお話であつたのであります。
  116. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) 今ちよつと証言に違いがありまするので訂正いたしたいと思います。両調査会は同時に発足いたしまして、最初に両方の委員会が一緒に総会を開きまして、そうしてただ医薬制度調査会のほうは、一応診療報酬調査会の結果を見てというので休会になつてつたのでございます。その点間違つておりますので、ちよつと訂正いたします。  それからもう一つ申上げたいことがありますが、よろしうございますか。
  117. 山下義信

    委員長山下義信君) それでよろしうございます。
  118. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 昨日社会保障制度審議会の総会が開催せられまして、久下医務局次長から、今回の医薬分業法律案の経過報告をいたしたのであります。そのときに、この臨時診療報酬調査会なるものは医薬分業には関係なく適正なる医療費調査してもらいたい、こういう意味の話をしたと、こういうことをはつきり総会の席上で申さましたことを申上げて置きます。
  119. 松原一彦

    松原一彦君 医師側のかたにお聞きするのですが、今日の現行法でも、調剤は薬剤師がすべきものとなつておる。併し医師自分の診察したる患者に対して自己の作つたる処方箋によつて調剤することは許されておる。併し医者の家族、例えば細君とか書生とか、或いは看護婦等の調剤は一切認めてお力ません。私が見聞する限りにおいて最近の薬剤師の調剤室は、ガラス張りで見えるところに二坪以上を設けて、白い着物を着て、本当に合理的に薬剤師が扱つておられるように見えますし、他の人が入つておるのは余り見ません。恐らく医師調剤室を覗いたら、医師が白い着物を着て調剤てしているのは見つからんのではないかという懸念を持つのですが、それならば非常に不備であります。言語道断なことでありますが、それに対して現行法規違反として何か取締があつて、挙げられて処罰せられたという実例が医師会のほうに参つておりましようか。それに対する厚生省の監督がどこまで行われておるかということに対する御証言求めたい。
  120. 榊原亨

    証人榊原亨君) 只今お話は、そのことによりまして処罰されたということは私は聞いたことがないのであります。あるかも知れませんが、私は聞いたことがないのであります。又事実におきまして、看護婦が調剤の手伝いをするというようなことも事実行われておる部分もあるのでありまして、これは新医療費の体系ができて参りますれば、当然厳重に取締るべきものでございます。日本医師会といたしましてもそういうことがないように、できるだけ取締りたいと思います。
  121. 松原一彦

    松原一彦君 それは少し私は疑わしい、疑問がある。新医療費の体系ができなければ、現行のままで押すとあなたはおつしやるのですか。
  122. 榊原亨

    証人榊原亨君) 新医療費の体系ができるできないではありません。新医療費の体系は当然私どもは実施して頂かなければなりませんので、新医療費の体系ができますれば、当然私どもはそういうことも取締りますが、若し万一新医療費の体系がいろいろな事情でできないということがございましても、これは当然法の命ずるところでございますので、厳重取締らなければならんと思つております。
  123. 松原一彦

    松原一彦君 もう一つ重ねて伺いますが、あの薬剤師側から責められることに対して、医師会のほうの逃げは、相当にエゴイズムな点があると思う。政府が取締をしないというので先ほどお責めになつたが、医師会自身が自粛するという点についてどこまで御努力になつたか承わりたい。
  124. 榊原亨

    証人榊原亨君) この問題につきましては、随分医師会内にも、法律ができましたときから議論があつたのでありますが、当然これは医者がすべきものだということでございますので……。
  125. 松原一彦

    松原一彦君 現行法規がはつきりしておる。
  126. 榊原亨

    証人榊原亨君) 現行法規がはつきりしておりますので、薬剤師協会のほうからお申出があるまでもなしに、会長初め役員のかたがそういうことがないように注意するようにということは、再三そういう注意は出ております。
  127. 松原一彦

    松原一彦君 それはさつき私が申上げました五十六条によつて二十二条違反に対する懲役若しくは罰金というものは現在でも行われておるのです。現在でも医師以外の者がやれば当然これは医師が処分せられるのです。ところがそれに対して医師側は余りにルーズではないのでしようか。常に他を責め立てられつつ、医師側にも欠陥があるのじやないでしようか。又医師会側のほうは政府を責めるけれども、自粛してそういう点に国民に安心、若しくは薬剤師会に安心せしめる対抗的な御用意が足らんと私は見るのですが、あなたは如何ですか。
  128. 榊原亨

    証人榊原亨君) 今、委員のおつしやる通りでありまして、私は日本医師会の今日は代表で出ておりますが、会長ではないのでありますが、当然これはおつしやる通りに今後も注意すべきものだと思つております。
  129. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) 先ほどの中山先生のお話についてちよつと申上げたいのですが……。
  130. 山下義信

    委員長山下義信君) どうぞ。
  131. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) 先ほど中山先生から診療報酬調査会に対して医薬分業に関する事柄は全然無関係のようなお話がございましたが、診療報酬調査会に対して諮問せられましたことは……。
  132. 山下義信

    委員長山下義信君) 横井証人に申上げますが、中山委員お話ではないので、そういう説明を久下次官が昨日いたしたということの御発言であつたのであります。
  133. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) さようでございますか、違つておりました。
  134. 山下義信

    委員長山下義信君) ほかに御質問ございませんでしようか。最後榊原証人にいま一つ伺つておきますが、先ほどの御証言の中に、井上委員からの御質疑にも御証言があつたようでありますが、なお念を入れておきたいと思います。日本医師会の御意思を代表していられる証人の御証言として、新医療費の体系ができ上るならば決して分業には反対するものではない、こういう御証言があつたようでございます。それに間違いはございませんですか。
  135. 榊原亨

    証人榊原亨君) 新医療費の体系ができますれば、自然の姿において若しも医薬分業の姿ができましても、我々はこれに反対するものではなしに、むしろ賛成の意を表しておるということであまがす。
  136. 山下義信

    委員長山下義信君) わかりました。ほかに御質疑はございませんですか。
  137. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 少し声を痛めておりまして、今日は出ないので、大変恐縮でございますけれども、今おつしやいました問題ですね、先月どおつしやいましたところと少し私は違うように受取れるのですが、ここに新医療費の体系、今なさるあの問題は、それは決定すべきだと思います。先ほど、そうしますれば医薬分業も任意で、分業という法律を作らなくても自然になつて行くから……そういうふうに受取れたのです。今のですと、この分業反対していないということは、或いはそういう打つベき手を打つておき、十分準備をするのだつたら、やはりこういう罰金にするとかいうそういう法律は少し強過ぎますけれども、併し分業にするという、こういうふうな分業には、今のお言葉ですと反対しないというのですが、そこのところをもう少しはつきりおつしやつて頂きたいと思います。私たちに非常に大事なことでございますから……。
  138. 榊原亨

    証人榊原亨君) 新医療費の体系を実施いたしますと、自然に分業の夢が出て来るかも知れん、社会の情勢から真に分業の姿は出て来るかも知れない、そういう情勢になりますことについて私どもは反対をするものではない。むしろ賛成をするものである。こういうのであります。そういう新らしい分業の姿が出て来たときに、それを法律化して強制しなくても、そういう事実上アメリカと同じように法律を作らなくても、そういう姿が自然に出て来れば我々はそれが望ましいのだという意味でございます。法制化とは関係はございませんから、さように御了解願います。
  139. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 やはりそういう法律、それを一応法制化するということについては反対なんでございましよう。
  140. 榊原亨

    証人榊原亨君) 法律を以て強制する必要がなくなると私どもは思つております。新医療費の体系を行いますれば、もう医者が薬を出しても別に儲からんような状態でありますので、従つて自然に医薬分業の姿が現われて来るだろう。そういう姿になることについて私どもは反対するものではない。むしろそういう姿が一番好ましいものである。こういうことを申上げたのであります。
  141. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 おつしやることは尤もらしく聞えるのです。お医者様としては非常に楽で安心だと思うのでございますけれども、国民といたしましてそういうふうな体制だけで、やはりそうすれば儲らないからしないだろうということをおつしやるけれども、国民としてはどちらを選ぶかということは、あなたのお言葉の中ではそうですけれども、お医者さんに願いたいといえばやはり調剤なさるのでございましよう。先ほどのお言葉に任意分業というような言葉をおつしやつたのですが、武見さんからもそんなことが言われましたけれども、そこがあなたの、武見さんのお言葉の任意分業と通ずるのじやないかと思いますが、その辺を……。
  142. 榊原亨

    証人榊原亨君) 新医療費の体系を行いますと、新医療費の体系と申しますと、医者調剤をいたしまして、薬を調合いたしまして患者に与えましても、その報酬の中からは何ら幾らも利益がないのであります。そういう姿になつたときに、若し患者に薬を与えるという状態を考えて見ますと、それは全く患者がその先生を信用しまして、その先生から薬をもらわなければいかん、是非お願いしますといつた場合とか、或いは薬屋さんが遠いからやるとかいう患者の利便、或いは家庭の状態で薬屋さんまで行くことが非常にむずかしいという状態でありまして、医者が全くサービスの姿で、奉仕の姿で投薬するという状態であります。そういう状態で、好んで医者がそれの全部の薬を、全部そういう状態においても薬を合わせるということはないことになるわけでございますので、大部分の薬は処方箋を出すということに自然になる、そう私どもは思つております。そこでそういう状態になればそれが本当にアメリカなんかの先進国の姿と同じことになるのでありまして、そういう意味から新医療費体系を是非お願いしたい、そうすればそういう姿になるということを申上げておるのであります。又そういう姿というものについて私どもはそれに反対しておるのではない、こういうことでございます。
  143. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 そういう姿は結構な姿でございますが、自然になるか、そこのところを、そういうふうであれば、そのときに又そういうはつきりしたほうがいいじやないかというような、仮に法律があつても、あなたがたは別にお困りにならないのでありますから、そういうふうな法律を作つてもいいじやないですか。
  144. 榊原亨

    証人榊原亨君) そういう姿になれば、別に法律でそういうことを強制しなくても、必要がないと私は思うのであります。けれどもそれ以上は御意見でございまするから、又お考え下さい。
  145. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 非常に理想的な姿ですけれども、一応打つ手を打つておいて、なおそういう方向に促進して行くような、分業の方向に行くということは正しいことだというような方向へ国民をやはり推し進めて行く、先ほど武見さんは、啓蒙運動という言葉を使つていらつしやいましたですけれども、分業というものは、そういうことについてはつきりすることは正しいことだという結論の上に行くというところにまでは、まだはつきりしていないのでございますね。この際あなたがたの立場として新体制的な新医療費と医薬との、調剤との関係をはつきりしておけば、自然に人たちは行くであろうという……。
  146. 榊原亨

    証人榊原亨君) これは全く、この問題は国民の自由なる意思の選択によるべきものである。今新医療費の体系というような形になりますれば、国民の自由なる姿によつて選択することができますから、それから今から何年か経ちまして新医療費の体系が完成いたしましたとき、なお国民医者からもらつたほうがいい、こういうふうに国民の大多数が御判断になれば、我々はそれに従うべきものであります。けれども数年経つた後に、今のアメリカのように薬剤師よりは先生から薬を併せてもらつたほうが安全だ、確かだというふうに、国民のほうが御判断になれば、それはそれで結構と、こういうふうに私は思つておるのでありましてその姿があつちになるかこつちになるかということは、私ども医師が塚を入れるべきものじやない、ただそういう自由な選択に委せることができるような姿に持つて行くということだけが私どもの任務だと、かように私どもは考えておる次第でございます。
  147. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑はございませんか。  証人のかたで御発言の御要求がございますれば許可いたします。ございませんか。
  148. 横井龜吉

    証人横井龜吉君) これはまあくどくなりますから簡単にただ一つだけ申上げておきたいと思いますのは、先ほど来任意分業法律が三年前にきまつたというのが繰返えされておつしやつておいでになりますが、医薬分業に関する限り、薬剤師の職能に関する限り、明治二十二年にきまりました法律と現在行われております法律とは、附則が但書になつたというだけで、性質はちつとも変つておりませんので、任意分業に関する法律が出たわけではございませんので、まあ勿論御承知おき下さることと存じますが、その点だけちよつと申上げておきます。
  149. 山下義信

    委員長山下義信君) 本日は証人各位に長時間に亘りまして有益な御証言を頂きまして有難うございました。  本日はこれで以て散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後五時二十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            小杉 繁安君            井上なつゑ君            有馬 英二君    委員            石原幹市郎君            草葉 隆圓君            中山 壽彦君            長島 銀藏君            河崎 ナツ君            上條 愛一君            常岡 一郎君            藤森 眞治君            谷口弥三郎君            松原 一彦君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   証人    日本医師会代表 榊原  亨君    日本医師会代表 武見 太郎君    日本歯科医師会    代表      佐藤 運雄君    日本薬剤師協会    代表      高野 一夫君    日本薬剤師協会    代表      横井 龜吉君    臨時医薬制度調    査会委員    勝俣  稔君