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有馬英二君 小
委員長が差支えがありまして休んでおりますので、小
委員長に代りまして、
結核予防に関する小
委員会の経過並びに結果を御
報告申上げます。
本小
委員会は、第九国会に引続き、今国会におきまして、昨年十二月十日、五名の小委員が選ばれまして藤森委員が小
委員長に就任いたしました。本年二月以来六回に亘りまして小
委員会を開催いたしまして、かねてから懸案とな
つております
結核予防法改正政府案につきまして、
政府当局より
内容の
説明を聴取いたしました。一方現地について実情を把握するため、院議に諮り、中国並びに九州地方に議員を派遣いたしまして、視察を行うなど、愼重に
調査審議をいたして参
つたのでありますが、今国会に提出されました
結核予防法案につきましては、昨日本小
委員会に付託されまして、即日愼重
審議を行な
つて参りましたところ、一応次のような結論を得た次第でございます。
先ず本
法案を通観いたしますに、その
内容が比較的広汎であり、且つ本法による責任の所在も国及び地方公共団体は勿論、保健所、学校、工場事業場に分れており、なお民間
医療機関その他あらゆる方面との
関係も生じ、又相互関連いたしまする
法律も労働基準法、学校教育法、国家公務員法、生活保護法、地方自治法を初め、保健所法その他衛生諸法及び社会保險諸法その他など各般に亘
つております。その故に相互間の緊密な連絡と調整の円滑を欠くときは、本
法案の実施面における
結核予防の実効が期待しがたくなるのでありますが、運用のよろしきを得るならば、国民の福祉は期して待つべきものがあると信ずる次第であります。
政府は左の点に深く意を用いられて、本
法案の実施に当
つては
関係諸
機関並びに工場、事業場、
医師会等、民間諸団体との密接な連絡一体化、具体的な協力
関係を確立すると共に、国及び地方衛生当局の衛生教育普及活動に加えて、学校教育、社会教育を通じ、或いは一般開業医の
結核予防活動などの協力を得て、国民の末端にまで本
法案の
趣旨の徹底を期し、正しい
結核医療の普及を強く
政府に対して
要望するものであります。
次に、
結核予防事業の第一線
機関である保健所は、本法が実施せられる曉には、
健康診断、予防接種の実施、
結核患者の登録、家庭訪問指導、
結核診査協議会、他の行政庁との協議その他予想せられる
質問、
調査、従業禁止、入所命令、消毒等の
都道府県知事の委任
事務など急激な
事務量の増加の結果、現在の保健所の能力について杞憂に堪えないものがあるのであります。一例を挙げますと、
結核患者百五十万人のうち、
届出により登録された在宅患者を九十万と推定いたしますと、これに年四回の指導をするものとすれば、延三百六十万人となり、現在保健所の
結核関係保健婦数約三千名を以てすると、相当困難を予想されるのであります。又これに要する旅費その他の経費、自転車その他の装備についても、二十六年度予算を以てしては相当困難視されるのであります。これは家庭訪問指導実施の一例で、他の
健康診断その他についても同様のことが言えるのであります。
政府に対しまして、今後
保健婦の増加は勿論
医師その他職員の確保並びに従事職員に対しまして、
結核対策に即応するように
技術の再教育訓練に努め、保健所
機能の強化を図り、本
法案実施の万全を期するよう
要望するものであります。
次に、第六十一条において
健康診断及び予防接種に要する実費は本人又は保護者の負担とな
つておりますが、国民に受診義務及び予防接種義務を課し、ておるので、その費用は当然国において負担すべきものと考えられますが、
政府の
説明によれば、国家財政の見地から無料で実施するのは困難であるので、できるだけ減免の枠を拡げたいとのことでありますが、限られた二十六年度予算内で制限なく枠を拡げ得るとは考えられないので、
政府に対しまして、近い将来にすべての国民に無料で実施し得るよう今後の努力を
要望するものであります。
次に一般
結核患者に対する
医療については、
政府の
説明によれば、国家財政の見地から早期の
結核患者に対してのみ適正なる
医療として、人工気胸術、胸部外科手術、ストレプトマイシン、パラアミノ・サルチル酸療法を認め、その費用の二分の一を負担するとのことでありますが、社会保障
制度審議会においても、社会保險においてすべての
結核症の患者に対して
医療の給付をなし、国庫補助を行うべきことを勧告していることでもあり、
政府は今後すべての
結核癖患者に対して、右の療法を行い得るよう努力せられんことをなお又在宅患者に対しては人工気胸術による療法以外のものは、原則として入院患者に認める方針とのことでありますが、我が国
結核患者推定一五〇万人のうち、現有
結核病床の現状から、入院可能の者は僅かに六・六%、約一〇万人に満たないのでありまして、大多数の在宅患者が適正なる
治療を受けられないことになるのであります、かくては本法所期の実効は望みがたいのであります。要すれば在宅患者の
診療に当る一般開業医に対しても
結核専修の方途を講じ、不幸な在宅患者に近代医学の恵みを与え、適正な
治療を受けさせ得る方策を講ずるよう、
政府に対しまして今後の措置を強く
要望するものであります。
次に、
都道府県知事は
結核を伝染させる慮れのある者に対しては、従業禁止或いは
結核療養所に入所命令をなし得ることにな
つており、当該患者が受ける
医療について、その費用の全部又は一部を負担することができることとな
つておりますが、本人及びその家族についての生活保障には何らふれていないのであります。この場合当然国及び
都道府県が保障すべきものと考えられるものであります。
政府に対しまして、これらの者に対しては生活保護法の適用なり、その他の措置を講ずるなどを明確にして、法施行に支障のないよう努力せられるよう特に
要望するものであります。
次に、
健康診断、予防接種の費用については三分の一の国庫補助、
結核療養所の設置に要する費用並びに第三十四条の
医療費に対しましては二分の一の国庫補助をすることにな
つておりますが、残余については
都道府県又は市町村の負担といたしておるのであります。
従つて本法の完全なる実施を期待するときは、地方費の負担も必然的に増大されるものと考えられます。故に
政府は今後常に地方の実態を把握して、補助率を引上げて、国庫負担額を増加するとか、全額を国庫で負担するとか、又療養所設置に対しては国庫補助率の増加或いは起債を可能ならしむる等、適切なる措置をとられんことを切望するものであります。
最後に、
結核予防対策としての
健康診断、予防接種、
治療対策としての適正なる
医療、療養施設については、本法の実施により一応効果を期待し得られましようが、予防措置後の対策即ち要注意者の
結核発病防止のための保養所、養護施設の設置或いは
結核恢復者の後
医療、後保護施設については何ら
規定を見ないのは、
結核対策上欠くことのできない重要なる問題でありまして、甚だ遺憾とするところであります。
政府に対しまして、今後において積極的な研究考慮、適切なる措置を
要望するものであります。なお小
委員会におきましては、
結核予防法案に対しまして、別紙
要望事項を付して
原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。以上御
報告申上げます。
なお
結核予防法案に対する
要望事項が付してありますので、申上げます。
結核予防法案に対する
要望事項一、
健康診断、予防接種の実施を徹底させるためには、
医師その他
医療関係者の全幅的協力を得られるよう考慮すること。二、
健康診断、予防接種に要する医薬品その他資材の確保に遺憾のないようにすること。三、
健康診断、予防接種に要する費用は全額国庫負担とするよう予算措置を講ずること。四、ツベルクリン反応検査、X線検査、予防接種等実施
技術者に対して専門的再教育訓練の徹底を図ること。五、従業禁止、命令入所を命ぜられた患者に対する
医療の保護は十分でなければならぬと共に、その家族の生活の保障についても万全を期するよう考慮すること。六、
結核患者が適正なる
医療を受ける費用に対して公費負担の枠を拡大すると共に、国庫の補助率を高くすること。特に在宅患者も適正なる
医療を受けられるよう考慮すること。七、在宅患者、同居家族に対しては
医師、
保健婦の訪問指導を徹底せしめること。八、保健所、療養所の
医師、
保健婦、
看護婦の待遇を改善し、定員の確保に努めると共に、専門
技術の研修を徹底し、それぞれの
機能を十分発揮せしめるよう考慮すること。九、後
医療、後保護施設について根本方策を考慮すること。一〇、
結核発病防止のため保養所、養護学校、養護学級について根本的方策を考慮すること。一一、
結核の感染予防のため乳児院、託児所、保育所について考慮すること。一二、
結核の予防
治療に関する国の研究を振興すると共に民間における研究に対しても積極的に助成を行うこと。