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1951-02-15 第10回国会 参議院 厚生委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十五日(木曜日)    午後二時二十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (覚醒剤に関する件)   —————————————
  2. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) お待たせいたしました。それではこれから厚生委員会を開きます。  今日は覚醒剤につきまして参考人のかたがたからお話を伺うことになつております。最初に都立松澤病院長林先生からお話を伺います。
  3. 林しよう

    参考人林しよう君) 簡単に今申上げましたことをもう一遍ちよつと繰り返しますが、私どもがこの覚醒剤中毒患者に気が付き出したのは、大体昭和二十二年からでございますが、松澤でも実際入つて来た入院患者というのは、二十二年が一人、二十三年が一人というくらいでございます。二十四年から少し殖えて来まして九名、これは全新入院患者五百五十九名中の九名でございます。二十五年が五百六十六名中三十一名、今年になつてはまだ二人しか入つておりません。そういう状態でございます。女は今まで全部で四名のみでございます。これは申上げるまでもなく、覚醒剤というのは、大体が催眠剤の反対の作用をするような、眠りを去つて疲労感感じなくさせるというような薬でございますけれども中枢性興奮剤なのでございますが、そのほかにまあ個人的にかなりいろいろな違つた作用がある。主観的な感じというのは個人的にかなり違つております。これによつて非常に酒を飲んだときのような快感を感じやすい人が余計習慣性になりやすい。直接命にかかわるような毒性はそれほど目立たないので、かなりだんだんに大量に刺すようになつてまつたということが困るのでございます。そういつた個人で、同時にまあ私どもがその人の性格を見ておりますと、私どもの一口に言う意思薄弱、いわゆる一貫した目的のある生活態度のとりにくい人、すぐ目先の環境にいろいろな影響を受けて、すぐ意思が左右されてしまう。それによつて多少あとまで目的なり、一貫した生活態度のとれぬというような人が余計こうした習慣性になりやすい。大抵まあ麻薬中毒の場合でもそうでございますが、慣性中毒になつておる人というのは、先ず殆んどすべてが一種の性格異常を持つておる人と言つても差支えない。それだけにあとの扱いや何かが余計むずかしくなるというわけでございます。いわゆる不良の仲間とか、ぐれんたいとか、或いは博徒、やくざという仲間にこういうのが多いというのも、一つ仲間にそうした性格の人が余計寄り集まつてしまつておる。手取早いことをやるのにやりいい世界へそういう人が寄り集つて来る。従つてそういう世界ではどうしてもこうした中毒者が一人入ると、余計又それが広がつて、すぐそうなつてしまうということになるのだと思います。で、まあ大体私どもこれは注射でやるということは殆んど必要ないと思つておつたのですが、大体注射剤がこう使われるのは、恐らく日本だけのことだろう、私どもがまれに医薬として用いる場合も殆んどこれは内服で済ます、内服のほうがむしろ使うのに普通のやり方だと恩つておりました。これが非常に注射がはやる。又私らは針を刺して注射するということに一つの魅力を持つておるので、余計やりたがる。又実際作用も早ようございますから、一遍味をしめると、手取早いからどうしても注射する。それで一度に十筒とか、ときには二十筒ぐらい刺すというような人まで出て来て、一日それを数回繰返す。で、だんだんこれがなくてはもの足りない状態になりまして、こうした禁断症状その他のことは、又竹山さんのほうから一つお話を頂くほうがいいと思います。併しそれを繰返して行くうちに、だんだんしよつちゆう落着きのない、それから気の早い或いは短気な、そうしてふだんならば遠慮してやらないようなことを、すぐ手取早くやつてしまう、軽率の状態犯罪的なこと、いろいろなゆすり、たかりというようなことから、掻つ払いというようなことまでやつておると、余計手取早くやりいいというような状態、そういう状態だけのほかに、或る人は少くとも二、三十ミリのものを一日に刺しておるという人が、一月ぐらい刺すうちに、或いはもつと遅く出る人もございますが、明らかに私どもが異常とするような精神症状が出て来る。それの一番多いのは幻覚、殊に耳に聞えて来るというもの、ちよつと分裂病の或る時期に似たような状態になりまして、大抵自分悪口とか、それから批評とか、指図というようなことが聞えて来る、ああしろ、こうしろと言われるとか、悪口を言われるとか、それから批評をされるというようなことです。それから人によりましては、目に見えて来る人がこの頃まれにございます。大抵はこれは細かいものが虫に見えるという人が多うございます。で、まあ天井から細かい虫が落ちて来る、それで痒くてかなわんとか、体を刺されるとか、非常に落着きがなくなります。それから天井から毒が降つて来るとかいうような人もおりまして、もう大騒ぎをやつて家中掃除する。天井を外してしまう。成る人は折角建てた新らしい家を壊して、十間ばかり引ずつて建てたというような人もおります。これは奥さんと二人でやつて、両方ともそうなつております。何か奥さんが羽目板を洗つているから何をしているというと、虫がいてしようがないから、洗つているというようなこと、これは或る文士の人でございますけれども……。それから私の知つているお医者さんで、そういうのがおります。こみを拾つて顯微鏡でばかり見ている。しようがなくて困つているのですが、ごみを拾つては顯微鏡で見て、虫だと言つて、論文を書くと言い出したので困り出した人がおります。非常に落着きがなくなつて短気になつております。患者が来たときにはどうにかやつておるようでございますけれど、そういうような目に見えて来たり、耳に聞えたり、同時に非常に疑い深くなりまして、何でもないことが一々自分悪口や、それから自分に対する悪意にとれて来る。そういうところから嫉妬、妄想と私ども言つておるのですが、夫婦がお互いに相手を疑い出すというようなことが起つて来る。こんなことから、つい犯罪的ないろいろ傷害や、場合によつては殺人、放火というようなことが出て来る人もある。そういつた例の鑑定を私どもときどき仰せ付つてつております。恐らく七、八例は十分ある、十例くらいあつたかと思いますが、私ども仰せ付つております。一体こういつた本当の精神病的な状態になる人が松澤に大体入つて来ておる状態であります。これがどのくらいの率になるかは、私どもは確言することはできないのでありますが、その辺は竹山君のほうの調べた材料ではつきりするかと思いますが、二、三〇%くらいあるでしようか、如何でしようかと私は思つております。ともかくこれほど慢性中毒状態が起りやすいということは私ども考えなかつた。大体注射で余計起りやすいのか、どうかということも問題でございますが、私どもの経験では、錠剤を飲んでおりまして、一日に五、六十錠から百錠飲んでおるという人がありますが、その人はやはり同じような幻覚を起して来たのを知つております。恐らく飲むものでも起り得ると思います。ただ殆んど飲む人には慢性中毒の人がございませんから、なかなか出て来ないだけだと思います。それから内村先生なんかの御意見でもあるので、一つ申上げて置きますが、私ども医薬として使わぬわけではございません。併し比較的応用範囲は狭いものでございます。抑鬱症なんかの場合に使う、これは使い方が非常にむずかしいような気もいたしますが、やつていい場合もあります。そういう場合に使うこともございますし、それからまあこれはまれな病気でございますが、ナルコレプシイというのでございますけれども睡眠発作発作的に眠くなつてしまつてばつたり倒れる、倒れるところまで行かないでも眠くなる人がございます。癲癇に近いような病気で、ちよつと違いますが、そんな場合にこれを使うと非常によろしいので、昔から使つたりいたしております。それは多少実験的な意味では私ども実はちよちよい使つておるのでございます。分裂病の人の診断の場合に成る分量を与えて見たりすることもございます。こうした中枢系興奮剤というものは比較的例が少いので、これからまだいろいろ応用方面もあるのじやないかと思つております。そういう意味で、これは絶対に作らぬようにするということには、私どもは多少危惧を持つておる、まだ研究的の材料として使う余地がある、むしろ製造をやめましても、実際今のように中毒者が跋属しておるときには、やはりどこかで作つてしまう。なかなかこれは取締ることがむずかしい。むしろそれと同時に使用方面を少し嚴重取締る工夫がないだろうか。それでむしろこれは少し検討の上で、何か麻薬に準じて扱つて頂きたい、不法な使用というものは罪になるようにして頂きたい、そう考えております。実際麻薬といつても、これはモルヒネ類いばかりではない、コカインも入つております。大麻というものも入つております。コカインというものは大体ヒロポン類い覚醒剤に非常に似た作用を持つております。コカインもこのようにやはり耳に聞えて来るのがございます。まれですから、二、三例しか見ておりませんが、同じようでございます。それとやはり眠気だの身体のだるいというのはコカインでとれる、モルヒネをやつてつた人が同時にこれを併用して、そういう状態なつたというのを二、三例見ておりますが、非常に似ております。同じような意味で何とか麻薬に準じて扱えないか。ただ慢性中毒という状態モルヒネのほうでは多いのでございますけれどもモルヒネほどはつきり掴みにくい。身体症状というものがそれほどはつきりいたしません。その辺についての取締の仕方とか、何かも考えなければならんと思います。その辺は又実際法規をどうきめるかという問題のときに考えて頂きたいと思います。一応このくらいにして置きます。
  4. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) 一応皆さんから伺いますか……。それでは実際になお又御研究も重ねておいでになります慈恵医大精神学教室竹山先生にお願いします。
  5. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 私慈恵医大竹山でございます。本日お求めに応じまして、覚醒剤医療上の必要性、それから中毒状況社会的影響取締というようなことに関しまして、私ども意見をお聞き下さる機会を得ましたことは光栄に存ずる次第であります。  本来覚醒剤と申しましても、プロパミンメチルプロパリン等覚醒アミン或いはアンフエタミンと呼ばれてみるものでありましてこれは医療上にどういうふうな場合に使うかというふうなことでは、割合に範囲が狭いのであります。普通に覚醒剤が使われるような場合は、先ほどちよつとお話がありましたが、ナルコレプシーという睡眠発作、これは非常に稀な病気であります。このナルコレプシーそれから抑欝症、低血圧、それから急性の催眠剤中毒、そんなふうな場合に使われますが、あまり確実なものではありません。覚醒アミン薬効というのは、中枢神経興奮作用、それから血圧上昇作用であります。今申上げましたような疾患に使いまして、それほど著明な効果を出すものでもなく、又そのような場合には代用となり得る薬品もあるのであります。これ以外に覚醒アミンが使われますのは、疲労に際してその疲労感を除去するという場合に使うことがありますが、疲労というのはそもそも病気ではないし又覚醒アミンはこの疲労を直す薬ではない。一時的に疲労感を忘れさせる、から元気をつけさせるというだけの薬に過ぎないのであります。このほかアメリカなどはこの覚醒剤を使つているのは痩せ薬に使つている。それは長く使つておりますと、食慾がなくなり痩せて来ることがあるからであります。で医師はこの覚醒剤を治療上の必要があつて使う場合は非常に少いのであります。覚醒剤の大部分は、覚醒剤耽溺者がこれを使つているのであります。頂きましたこの調査資料にあります厚生省の「覚醒剤医療消費方面使用」、こういうふうなものも実際に純粋に医療上に使われていた数が出ていたとは思われないのであります。医療上に使われるのは、先ほど林先生が言われました散剤或いは錠剤の一部のものが使われておるに過ぎないのじやないかと推定されるのであります。  それで中毒状況はどういうふうになるかというのは、医療上の目的でなくて、このような覚醒剤を人がなぜ使うかという問題になるのでありますが、成るほどこれを使う人間は意思の弱い人、軽はずみの人が多いのでありますが、ともかく使つておるうちに人格変化が起つて来る。人が覚醒剤を使う目的で一番多いのは娯楽的な夜業、例えば麻雀だとか賭博だとか、そういうふうな娯楽的の夜業のために使い、或いは好奇心に基いて使い始めるのが一番多いのであります。それに続いては学生の試験勉強だとか中には麻薬中毒者麻薬の代用品としてこれを使つて行くような場合があります。これを使つて行きますうちに習慣性を生じて、使わないと何となくもの足りなくなる。これを得るために自制心がなくなり、反社会的な行動も発して来るようになる。こういうふうな覚醒剤常用者、これを慢性覚醒剤中毒と呼んでおります。慢性覚醒剤中毒の場合にどういうことが現れるかといいますと、三つばかりは特長があるのでありますが、第一には覚醒剤効果が持続しておるということ、それは落着きがなくなりいらいらし、全般的に刺戟性衰弱というような疲労状態を呈して来る。第二には覚醒剤が切れて来ると初めのうちはやめて二、三日間ぼうつとして眠い状態が続く。そのあとでは逆に眠れなくなりだるくなる。そうしてそれが暫く続いたあとに治るのであります。併し中には切れて来るときにいろいろと幻覚が起り朦朧状態を呈して来る場合があります。それと第三の覚醒剤常用者特長は、覚醒剤刺戟の固定ということ、覚醒剤を得るためにはどんな非道徳なことでもやつてのける。家庭的にも社会的にも問題を起すことがあり易い。この薬品を獲得しようとするときには激烈な飢餓の感を以てこれを要求する。こういうような状態が成立するのであります。これが覚醒剤慢性中毒者であります。更に彼らが覚醒剤を用い続けで行くと、この上に覚醒剤中毒性精神病というものが起ります。覚醒剤中毒性精神病が起るのは中毒者の七五%に相当するほど数が多いものでありまして、この点麻薬などよりも遥かに害毒が大きいものであるということができるのであります。この覚醒剤中毒性精神病にもいろいろな型がありまして、最も多い者は幻覚妄想型でありまして、精神病状態になつた者の約八五%がこの状態であります。それは先ほども言われました通り幻聽、ないものが聞えてくる、人が自分のことを呼んでいる声がはつきりと聞えてくる。それから幻視、これは初め錯覚のように起つて参りまして壁のしみだとか、天井しみだとか、そういうものが小さい虫や或いは小さい動物が動いているように見えたり、人の顔が化物のように見えてくる。こういう幻覚が起りまして被害関係妄想が起つてくる。自分が人に噂される、迫害される、附け狙われる、ことごとに意地悪をされるような妄想性幻覚が何事によらず起つて来るようになるのであります。この幻覚妄想を起す数が一番多いのでありますが、その外に譫妄型といいまして意識が鈍くなり、いろいろな幻覚が出没し、興奮してめちやくちやなことをやつてのける状態に陥ることがあるのです。これは直ぐに治りますが、反復して来る場合が多いのであります。その外に、まだ中毒性精神病として考えられるのは、記憶が非常に悪くなりぼんやりして来る。周囲の認識もうまくできなくなり、自分の家族のものの名前も忘れてしまつたり、これが誰であるか認識できなくなつたり、経験した出来事を直ぐ忘れてしまうというような記憶不良を主として呈する型が稀にはあるのです。中毒性精神病の型は、大体今の三つぐらいの型でありますが、これは覚醒剤使用を中止すれば、やがては治るものでありますけれども、中にはこの精神病状態が固定されておりまして、やめた後も数カ月間これを続けている場合もあります。私どもの例で最もひどいのは一年後の現在なお関係妄想がありまして、警察で自分を附け狙つておる、そのためにそれの防禦手段として非常識のことをしてしまうというような例があります。けれどもこのようになるのは多少素質的にも問題がある場合だと思います。併し覚醒剤がそれを運用して精神病状態を起すことが非常に多いものであるということは紛れもない事実であると思います。  次に社会的影響でありますが、これは先ほどお話があつた通りやはり犯罪面関係して来ることが一番多いのであります。覚醒剤運用者人格変化が起つて来、怒りぼく、だらしなく、無軌道の生活をやる。社会的の覊絆を問題としなくなり、自制力がなく、覚醒剤獲得行為をするためにそれが犯罪と呼ばれるようなことになつてしまうことがある。覚醒剤中毒者の癖として自分が使つておるだけでなく、これを他人にも勧めるという傾向が著しいのでありまして、そのために模倣性がある青少年はたやすくこの悪癖が染りまして、彼らが中毒者の群を作つておることが多いのであります。この中毒者の群というのは自制心失つた者たちの集りでありますから、たやすく犯罪行為にまで発展してしまう。中毒者犯罪関係して来るその関係の仕方は二通りありまして、我々が今まで覚醒剤中毒を鑑定した場合に見られる傾向は二つある。その第一のものは、覚醒剤を欲しいがその費用がないために金品を窃取するというような場合。第二には覚醒剤中毒の結果、幻覚妄想がありまして、それに基いて行為が発し且つ妄想状態でめちやくちやなことをやつたり乱暴なことをやつてしまう。つまり精神病の結果としての症状犯罪と呼ばれてしまうことがある。この二つの場合が犯罪関係して来るものであります。それから社会的影響で無視できないものは、これは直接覚醒剤関係しておりませんが、麻薬取締法を運営しておりますかたたち、警察官であるとか、検察官であるとか、麻薬取締官であるとか、そういう人たち覚醒剤中毒が存在しておるということで非常に困難しておる。それは麻薬中毒者は御承知のようにそれは違法であるとされますが、彼らを検挙した場合に大概の者は、いや自分ヒロポン中毒ですと言い張る、そのためにこれがよほど慣れた専門家でないと鑑別がむずかしくなる、専門家であつて鑑別がむずかしいことは多々あるのであります。そういうようないろいろな影響が社会的にはありますが、覚醒剤中毒、これをなくするにはどうしたらいいだろうかというふうなこと、これを我々がふだん考えておりますことをこの機会に申上げさして頂きますれば、いろいろなやり方があると思います。その一つ薬事法劇薬としての取締りを厳重にやるかどうかということであります。併し現在この薬事法の励行というのは非常に不徹底な実情にありまして、更に薬事法では薬品取扱者以外は毒薬、劇薬を不当に譲渡し、所持し、使用することを特に規定しておりません。それに販売業製造業者等取扱者薬事法違反を犯した場合に対する罰則が非常に軽いのであります。そういうふうなことから薬事法取締るということが余り効果を期待できない。  第二の案として麻薬取締法麻薬としてこれを追加指定したらどうかということであります。御承知のように麻薬取締法の第一條三項で新らしくこういうような薬を追加して指定することはできるかという問題になるのでありますが、成るほど覚醒剤習慣性があり、濫用される虞れがあり、害毒もあるという点で麻薬と同様、或いはそれ以上の害毒を持つているのでありますが、本質的には阿片、コカイン大麻というような麻薬と違うものでありまして、麻薬扱いするのは、麻薬というのは国際的に関連がある問題でありますので、特に日本だけがこの覚醒剤麻薬として扱うことは如何なものかとも思われます。  第三の案として、麻薬取締法に準ずるような何か法規があればどうかということなんであります。このことに関連しまして思い出されますのは、アメリカで第七十八議会以来ロジヤース夫人催眠剤麻薬と同じように取扱う法規を作れという運動をしておることであります。日本では覚醒剤中毒が非常に問題になつておりますが、アメリカではバルビツール酸属催眠剤中毒の問題が非常にやかましくなつておる。これは日本でもぼつぼつと近頃は見られるようになつて参りましたが、覚醒剤中毒と同じように激烈な精神症状を出すことがあるものでありまして、日本では現在のところ覚醒剤害毒に圧倒されておりまして、催眠剤中毒というようなものが比較的わからないでおるのでありますが、アメリカではこのためにいろいろの事故或いは犯罪が頻発しておるのであります。これを絶滅するためにロジヤース夫人なんかが毎年議会に出しましてこれの取締法規を作ろうとしております。そうしてロジヤース夫人の言うのは、やはり麻薬取締法に準ずるようなものを作れ、向うの連邦麻薬條例、これに準ずるようなものを作れということを主張しております。この考え方が日本における覚醒剤にもそのままに適用されるのではないかと思われます。麻薬覚醒剤と比べますと、麻薬の場合にはその医療上の必要性覚醒剤とは比べものにならないほど大きいのであります。それにもかかわらずその害毒を認めてこれを嚴重取締ろうというのは国際的な取りきめになつております。併し覚醒剤医療上の必要が先ほど申上げましたように甚だ少い、それにもかかわらず害毒麻薬と比較できないほど大きいということで、やはりこれは当然何らかの法的措置がとられる必要があるのではないかと思われます。麻薬取締法に準ずるようなものができるとしますると、我々が希望いたしますのは、この覚醒剤の原料の輸入製造販売、譲渡、所持使用に関して適当な規定ができることが望ましいのであります。麻薬以外に特に嚴重なそういう規定を作るということは、單に覚醒剤だけではなく、将来必ず起ると思われる催眠剤中毒に関しましても、やはり同じようなことが考えられるようになるのではないかと思つております。そういう覚醒剤取締法規というのは取扱者嚴重にきめ、取扱者でなければ輸入製造販売も管理も研究もできない、彼らだけが今申上げましたような行為を行なうことができ、そうして彼らが登録され、このような行為を記録し、且つ報告する義務があるというようになれば理想的だと思います。そうすれば取扱者でない者はこのような行為ができなくなる、従つて中毒者のような非取扱者、これはやはり覚醒剤所持とか使用とかできないことになるのでありまして、今申上げましたようなことが麻薬取締法に準ずるような法規を制定される場合に望ましい事柄だと考えられるのであります。現在覚醒剤は大部分中毒者によつて使われておりまして、害毒も甚だ大きいところから、この問題を取上げられまして御検討下さることに関しまして、我々麻薬覚醒剤中毒研究しているものにとりまして、非常に感謝に堪えない次第であります。
  6. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) 有難うございました。それでは防犯のほうの、犯罪方面から覚醒剤関係いたしましてのいろいろと当面しておいでになります警視庁防犯部少年第二課長の山本さんにお願いいたします。
  7. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 私山本でございます。時に好奇心模倣性が強くて自制心の弱い青少年に対する覚醒剤の害というのは非常に多いわけであります。私どもの取扱つておる数も相当ございます。その中の大体の症状というものをちよつと先に申上げますと、これは直接私ども調べたものを大体まとめたものでございますが、ヒロポンなど初め打つと、暑い夏には涼しくなるし、冬は温かいと、こういうような感じを受ける。まあ口が唾でねばねばして来る、又たばこをのんでもうまくない、どんなたばこをのんでもうまくなくなる。食慾もなくなる。反抗心が強くなる。ちよつとしたことにも気がむらむらして人を疑うようになる。落付がなくなる。話をしてもちぐはぐになつてまとまりがなくなる。憂欝になる。記憶力が減退して来る。神経衰弱になつて来る。自分を卑下する。人によつては狂暴性を帯びて来る。それから多くの中毒患者で最近偽造品を相当使う関係上熱を出したり、ふるえが出たりする。又注射するために注射器が不潔であるのでごみが入つて、又人の使つたものを使つたりするのでやはりふるえが出て来る、こういうような現象が現れて来る。それで結局肉体的に中毒症状、禁断症状、こういうものが出て参る関係上一種の生ける屍のような恰好になつて参ります。そうして経済的に一本か二本であるならばこれは小遣いでも買えますが、十本、十数本になりますと、百円、二百円となりましてどうしても経済的にも参つりて来て、家財を持出し、その結果窃盗その他犯罪が起き、そうして一生を誤まり、その一家を不幸のどん底につき込む、このような例が多数ございます。これを先ほど委員長さんの許へ差上げましたが、覚醒剤使用調査表というのがございまして、昨年一カ年間のまとまつたものがございます。これは未青年者だけでございますが、これを私どもの扱つた数だけ見ましても総計二千九百二、十才以下は五名、十一才が二十八名、十二才が七十名、十三才が百二十三名、十四才が百三十八名、十五才が二百十九名、十六才が三百九十二名、十七才が六百十六名、十八才が六百六十八名、十九才が五百十四名、二十才一百二十九名となつておりまして、男が二千三百八十四、女が五百十八となつております。一番多いのは十七、十八、十九が多いのでありますが、なお十才以下、十一、二というのは、これは浮浪児その他にこういう現象が多いということを示しております。そうしてこれが原因となつて特に犯罪なり不良化したもの、それもそこに挙げてありますように、殺人が一件、強盗十に、窃盗五百七十九、恐喝百四十一、詐欺横領八十七、たかり三、賭博五十、諸法令違反百六十八、家財持出三百二十三、家出百三十三。これらの数は直接覚醒剤を原因としての犯罪なり、不良行為に走つたというものの数でありまして、全体の数から見て一番多いのは家財持出であります。これは大体家財持出の二〇%ぐらいがヒロポンの金欲しさということになつております。そのほか賭博、恐喝というのが多うございます。これが私どもの大体扱つている数でありまして、全体の犯罪なり不良行為なりの数から見ますれば、大体七、八%ぐらいではないかと考えられます。これは先ほども申上げましたように、未成年者だけでありまして、これが成人のほうの数というものは大体この倍くらいになるのであります、犯罪についてですね。犯罪にならないその数になりますと、この十倍くらいと我々は大体ふんでおるのであります。  それでは第二点はこういうような青少年に害を及ぼし、国家の未来を危くするような結果も生じかねない。こういうような覚醒剤取締の盲点はどこにあるか。医療上どうしても必要であるというのなら、これはいたし方がありませんが、第一点は少くとも我々の考え方から申上げますならば、覚醒剤つの製造を禁止して頂きたい。少くとも注射液の禁止をお願いいたします。先ほどお話がありましたように、この注射液を打つということに非常に快感を覚え、好奇心を持つのでありまして、ひどいのになりますと、ただ注射を打つて……水を打つただけでいいのでりありまして、食塩水みたようなものを打つて置いても満足する、又着物の上から打つ、こういうような状態であります。ただぷすぷす刺す、それに大きな魅力を覚え、興奮を感じ好奇心を満足しておりますので……、注射液のことは、私は注射とか錠剤とかはよく知りませんが、注射液は効果が同じであるならば止めてもらいたい、粉末か、錠剤だけにして頂きたい。  第二点は、取締の盲点は不正所持の処断のできないということであります。麻薬に準じて取締をするように、でき得るならばそのような法規にして頂きたい。犯罪のために所持しておつても現在は取締ることができません。その取締ができ得るように薬事法を改正するなり、新らしい立法を作るなりして頂きたい。この取締状況も昨年一年度の表を差上げてございますが、検挙件数三百十八、検挙人員三百八十八、送致人員三百三十、違反種別の登録業者の濫売百六十一、無登録業者の闇売百五十一、偽造十一、押収の数量、百四十三万一千三百五十八、一番多いりのはヒロポンの百万六千本、ネオアごチン三十七万、こういうふうになつておりまして、最近特に偽造品も相当殖えて来ております。これだけであります。
  8. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) 有難うございました。  最後に、製造をなさつておいでになりますほうの御意見もお伺いしたいと思います。大日本製薬会社の東京支店長の豊島さんのお話を伺いたいと思います。
  9. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 覚醒剤を、私の所はヒロポンでございますが、売り出しましたのは昭和十六年でございまして、勿論薬を売り出します場合には、医療上の必要があるということを十分認めて出し、又その需要のどれくらいであるかということも推定して発売することは当然であります。そのときには覚醒剤というものは今まで医者の薬療になかつたものであるが、併し、こういうものができたことは、治療薬の一つの進歩だという意味で非常に調査いたしました。その頃勿論日本の文献というものは一つもございません。欧米の文献全部を渉猟いたしまして、そして用途、用法などを十分に研究いたしまして、その当時三浦謹之助先生も非常にそれに関心を持つておられまして、ときどきお伺いして御意見を伺つて、そうしていよいよ発売することになりました。この薬は、我々はその当時先ほど来申されますように、大脳の興奮作用と、もう一つは循環系に対する作用と、二つの大きな作用があるということで、この方面の用途を強調しようということで売出したのであります。ところが図らずもその頃には太平洋戰争が起りまして、精神興奮剤のほうが非常に重大視されて、戰華中は殆んど軍部に全部取られましていろいろなお菓子に入れたり、いろいろなことで使われまして、余り市場には出なかつたのでありますが、戰後になりまして民間に出るようになりましてから中毒の声を聞くようになりました。我々が昭和十六年頃に発売する頃には、中毒というものはそうひどいものだということは記載がなかつたのであります。又こういう薬は医療界に出てから間もない頃であつたせいもありましようが、そういう記載はないのであります。その当時その薬はそういうふうには思つておりませんでした。ただ大量に使つても生命の危険はない薬だというふうに考えておつたのですが、先ほど林先生がおつしやつたように、昭和二十二年頃からぼつぼつ中毒が現われたというお話でございます。我々の聞き知つたのは、もつとあとでございまして、ただこれはややもするとズーフトになります、嗜癖というふうになるということは十分承知しておつたのです。つまりたばこを吸つてたばこがやめられなくなると量が殖えるという程度のものとしか思つておらなかつたのです。ところがいろいろ御研究になりますと、麻薬に類したような禁断症状さえ出て来るというようなお話を伺つて、実はびつくりしたわけであります。医療上の必要ということは、これはたとえ僅少であつても、やはり我々の仕事としては、たとえ売上の少いものでも医療上必要な薬は、やはり治療界に提供しなければならんと考えております。こり薬は現在アメリカではアメリカの薬局方にも収載されておる現状でありまして、アメリカでは十分医療上の必要を認めておればこそ収載をしておるのだと考えております。純粋の医療上の目的からは、さように若干の必要性があるということは十分に言えまするが、併しそれが先ほどお話になりましたような中毒の問題、殊に社会的影響、それが犯罪と結付いておるというようなこととからみ合して、これの製造なり、取締ということが問題になつて来るなどと我々は考えております。  ではどうしたらいいかということなんです。中毒状況或いは社会的な影響ということは皆さんがお話になりましたが、又私もそう詳しくは存じませんですが、どうしたらいいかということなんです。我々はすでに昨年の後半から製造を中止しておりますが、依然として僞造品が……、我々の会社に僞造品り鑑定を求められるのが一月に何回となくあるのです。そういう現状であるということを見ますと、ますます以てむずかしい、取締もむずかしいと思うのであります。先ほど麻薬に準じた取締ということでありますが、又竹山先生お話では麻薬より大きな害毒があるというお話でありますが、これは私、若干、麻薬が今のようにヒロポンと同じような程度に入手できるのであれば、その害毒はむしろ麻薬のほうがより大きいのではないかという気がするのであります。今の麻薬取締状態においてこそ、ヒロポンと比較すれば、ヒロポンのほうがより大きい害毒を流すかも知れませんが、麻薬ヒロポンのように容易に密造でき、容易に入手できるというような状態であれば、麻薬のほうがずつと大きな害毒があるのではないかと思います。ヒロポンはまだまだその点において取締がゆるい。だからこそ害毒が大きいのではないかと思いますが、その点はあとでお伺いしたいと思います。ですからこの麻薬に準ずると申しましても、麻薬と違つたものであることは十分おわかりでありますから、我々製造業者は自粛し、或いは製造を中止してさえもこれが入手ができる。そういう密造が行われないような何か取締方面のことをお考え下さることが非常に大事だと思うのであります。医療上の量なんというものは先ほどお話を伺つておる通り、微々たるもりであります。にもかかわらずメーカーがたくさんおる。勿論数を減らし特定の会社に、極く良心的な会社に極く量を制限して作ることによつて、そしてそれが直接御使用になる以外、直接なルートで行くというようなことをやられれば医療上の必要は満たし、ほかの面には絶対に行かないということになるのではないか。たとえ法規でお取締りになろうと密造される限りにおいては、ヒロポン禍といいますか、ヒロポンだけではありませんが、私のところはヒロポンが代名詞になつて迷惑しているのですが、その点を十分に……、密造の根源を除くということを十分製造面でお考えになれば、これは行けるのではないかと考えております。
  10. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) 有難うございました。御出席のかたから御意見を伺いましたのですが、なお又今までお話下さいましたかたでお附け加えになりますことがございましたら伺います。
  11. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 只今もお話がありましたが、昭和十六年頃、これが害毒がないというようなことで発売された、製造されたということ、これはまあその頃は確かに害毒が余り問題になつておりませんでした。併し一九四〇年でありますから昭和十五年になりますが、この年すでにアメリカではダビドフがこれが習慣性を生じ中毒になることがあるといつうことを報告しております。これを一つ只今のお話に附け加えて置きます。それから麻薬中毒と比較して、覚醒剤中毒害毒が大きいということに関しても報告がありました。我々は麻薬中毒をすでに十七年間取扱つております。併し麻薬中毒の場合には、覚醒剤中毒のように中毒性精神病を起すことが少い。それはコカインとかヘロインを使つた場合に僅かに幻覚妄想の形を呈するこがあるのであります。麻薬を取扱つておりますと中毒性精神病状態になると思える者は甚だ少いのであります。併し覚醒灘の場合にはそれが非常に見られるということから、医学的に言えば害毒が大きいのだということが言えるのではないかと思うのであります。  それから只今もお話のありました通り密造が確かにいけない。正しいルートで正しく規定された製造販売が行われておりましたら、覚醒剤には成るほど一面に、非常に少い場合でありますが、医療上に使えるという場合もあるにはあるのであります。これは非常に少いのであります。併し確かに医療的に使えないというものでもありませんから、やはりこの密造を取締るとかというふうな趣旨を活かすためには、やはり麻薬取締法に準ずるようなものができたほうがいいという我々の希望があるわけであります。これを附加えさせて頂きます。
  12. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) 御質問でございますか。
  13. 林しよう

    参考人林しよう君) 注射の形で、お出しになつたのですか、如何ですか。
  14. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) やはりあれは初め粉末と一緒に取扱つた。それはなぜかといいますと、嗜眠状態のようなときには注射でなければ使えないということで、やはり注射で出しておるのです。
  15. 林しよう

    参考人林しよう君) 私余り勉強しておらないのですが、向うの文献でも注射を使つておりましたか。
  16. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) ありました。
  17. 林しよう

    参考人林しよう君) 私はどうも注射薬で出たのが気になつていたのですが、この前厚生省に出て初めて知つたのですが、製造を制限してから、錠剤と粉末を禁じて注射だけ許してあると言われて少々驚いたのですが。
  18. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 三浦先生には、注射を出すときに御相談しましたが、そのときこれは脳溢血なんかのとき、やはり注射があつたらいいのではないかということで初めから出しました。
  19. 林しよう

    参考人林しよう君) 今催眠剤中毒自殺の目的でたくさん飲んだ人を助ける場合にこれをやるということがありますが、これはときには逆に強く深くなつてしまうことがあります。アメリカではこの方面に使う場合はピクロトキンを使つてつて覚醒剤は使つておらない。曾つてよく行かないようなことがあつた。血圧はよろしい。これは非、常に水に溶けやすいものでございますから、粉末が出ておれば、医者がどうしても注射を使いたいというときには、注射液を作るということは非常にたやすい。一般の中毒者は、どうしてこれほど注射が好きかと思うほど注射が好きである。注射のアンプルはやめて頂きたい。私ども竹山さんがおつしやつたが、私の麻薬中毒と違うと言つておりますのは、モルヒネのときにはどうしても欲しくてしようがない。やめられない。そのために無理なことをしたり、実際にも働く意欲がなくなるということも実際にある。精神病的とか、幻覚妄想の出て来るということはモルヒネにおいては絶対にない。モルヒネ中毒患者でそういう状態があつたという場合には、コカインを併用しているという経験があることを私ども見ている。それとヒロポンは実質、的に違つておると思う。それよりも害毒が大きいか小さいかということは、別の価値判断ですが
  20. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) つまり中毒患者が治るという点からいつてそうでございますか。
  21. 林しよう

    参考人林しよう君) それは本人にとつては取るときは楽です。モルヒネよりは楽です。併しやはり病院のようなところで強制しないと取れません。その辺手数からいつたら同じですが、扱い方は少したやすいかも知れません。まあ一生懸命になつて取ろうというので、自分でかかるときは麻薬よりはたやすいかも知れません。
  22. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) それでは今度聞かして頂きましたので、委員がたで又もう少し先生がたにお伺いすることがございましたら、どうぞ……。
  23. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 私今日遅く参りまして、林君のお話は聞かれなかつたのですが、竹山君のお話を聞いたのでありますが、今厚生委員会の当面の問題となつておりますことは、この覚醒剤医療の面にはたくさん要らない。而して半面には非常に社会的に害毒を流す。従つてこの覚醒剤というものの製造を全然禁止したらどうか。又一面から言うと、警察予備隊の医務総監が今日お見えになりませんが、警察予備隊では覚醒剤を使おうとしておる、こういうような話も聞いておるのです。全然禁止していいのかどうか。成いは極度にこれを制限したらどうか。製造は禁止いたしましても、昨年の十二月一日以降、厚生事務次官の通牒で、新たな製造は禁止されているようでありますけれども、昨年末の厚生省の報告によりますというと、現在なおストツクが二、三千リツトルある。このストツクというものをどういうルートでそれを医療用に適正に流すことができるか。こういう面について一つ御両君の御意見を耳聽したいと思います。
  24. 林しよう

    参考人林しよう君) ちよつと申上げますが、これは沖中先生などにも少しお話をした結果なのでございますが、ともかくこういう薬が出て来たことは、これは一つの進歩ですから、使える面、嚴密の意味医療的の面で私ども使う場合は確かにあり、その他研究的の面で使いたいというような場合がある。これを殊に沖中さんの専門のほうでも、いろいろの実験的意味でお使いになる場合があるだろうと思います。私どももそういつた意味で少し使用しております。こういつたものを、今後のいろいろ発達のためその他に、製造を全然禁止してしまうということは、むしろ文化的な措置ではないという御意見は私どももそう思います。むしろ使用の面でこれを適当に取締ることができれば、そのほうの方途を取りだ、それから今思いつくままですが、警察予備隊で使うということ、戰争中からの一つの癖なんか、そのときのまあ御経験なんか残つていると思いますが、これは私ども絶対に反対いたします。こういう意味で、人の意欲を引つぱたいて何かやらせるというのは、これは極く一時的なものですね。そのために人間はいろいろな害を受けると申しますか、そういう慮れがある。これは或る意味において人間蔑視のやり方だと思います。大抵私どもは少し無理な夜業をするという場合には、ときに用いると薬になることもありますが、アメリカの局方にも載つておるように、注射を一時的に、少し無理するときに適量を使えば、そのときとしては能率が上るが、あとで休養が取れないといけません。そういうような場合もあるのですが、それを何か一律に強制するように演習のときに飲ませて、無理な演習をやらせるというようなことは、実際の戰時になつてのつぴきならんときならともかく、今から不断そういうことをお考えになるというのは、よほどこれは見当が違つていると、私どもそう思いますので、その点申上げて置きたいと思います。
  25. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 恐らくその予備隊には備蓄の意味しような。
  26. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) よく存じません。総監が来られましたら……。
  27. 林しよう

    参考人林しよう君) ちよつともう一遍附け加えますが、三千リツトルばかりというお話でしたが、これは全部溶液になつているのでございましようかね。溶液だから三千リツトルだとおつしやるのだろうと思いますが、これが粉末のままですと、私どもとしては使いにくい気がするのです。私どもは粉末や錠剤で使う場合が多いので、必要に応じて注射も使わないわけではございません。
  28. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 医療上に極く僅かには使います。覚醒剤は使える。それで又研究的にも使う場合もあります。それでありますから先ほどから申上げました通り正規なルートにのせて医療上に、或いは研究上に使うというために法規を作つたらどうかということです。ストツクがあるというお話につきましては、そういう法規では別に製造禁止とか、販売を禁止するというようなところまで考えていいものじやないだろうかと思うので、ストツクがあるからこれがどうなるかという問題にまではならないのじやないかと思います。
  29. 中山壽彦

    ○中山壽彦君 豊島君にちよつと伺いたいのですが、今まで私は覚醒剤注射剤だけが販売されているように思つておつたのですが、ちよちよい聞いて見ると粉末もあれば錠剤もある、これは私どもが聞いたところでは、粉末、錠剤等はよほど前に政府が販売禁止をしている。注射剤だけが販売許可になつているように聞いているのですが、その点を一つ明らかにしてもらいたい。それからもう一つは、覚醒剤の原料のエフエドリンですが、これは誰でも非常に入手し易い、そうしてこれを入手しますれば、製薬会社に多少勤めておつた人は、自分の下宿ででも何でも自分でできるという意味から、模造品というものが以前から非常にたくさん出ている。この量というものははつきりわからない。又そういうものがいろいろな人に売られて、非常な犯罪のもとにもなる、こういうようなことも無視しておるのですか、これらについて一つ承わりたい。
  30. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 散剤と錠剤でございますね、それはあの製造は一年一年製造の許可を得ることになつておりまして、そのために丁度この覚醒剤の問題が起つたときに、その製造の更新の時期に当りましたものですから、一応それが許可にならず、注射薬のほうだけが製造の許可が継続していたというかつこうになつておりまして、従つてまあ錠剤は造らないということになつたわけです。つまり錠剤のほうが早く製造許可のあれが切れてしまつたということで、造れないことになつたわけです。それから御質問の第二点のエフエドリンというもの、あれは劇薬ではありまするが、比較的容易に手に入るものであります。ですからあとそれが還元できるのですから、少しばかりの製薬の知識をお持ちのかたは容易にできると思います。従つて密造なんか行われ易いと言えましよう
  31. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 山本さんにちよつと伺いたいのですが、覚醒剤の密造ですね、密造はあなたのほうとして少しお調べになつて挙げられた例はございませんか。
  32. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) それに書いてございますように偽造を検挙したのは十一件、偽造数が七十五万五千六百七十四、これだけ昨年あつたわけです。
  33. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これは偽造品ですね、そうでございましよう
  34. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 偽造検挙件数十一件あります。
  35. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 ちよつと伺いますが、偽造というのは偽造製剤が出ておるのですか。偽造工場を押えたというのですか。
  36. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 偽造しておる人を送致した、それが十一……。
  37. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それが十一件ですか。
  38. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 下にその偽造して押収した数量が七十五万五千六百七十四。
  39. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これは僞造数は、偽造しておる者と関係なしに偽造製品がこれだけと書いてあるのですか。偽造したのは十一件だから、それから出て来たのがこれだけという数字ですか。
  40. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 上のと下のとは一致するわけです。
  41. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 一致するのですか、そうですが。
  42. 有馬英二

    ○有馬英二君 ちよつと林さんに伺いますが、私遅く来ましてお話を承われなかつたのでありますが、先ほどからもお話があつたろうと思うのですが、これの中毒症状ですね、私どもはこうい患者は余り扱わなかつたので、私はわからないのですが、どれくらい用いたら中毒ということが大体言えるのですか、或いは体質的に違うのですか。
  43. 林しよう

    参考人林しよう君) それは症状にもよりますが、要するに何遍も使つておるうちに量が殖えて使わずにおられない。これは主に麻薬の場合の診断症状の強い、身体症状ではないのでありますが、精神的な希求、飢渇という状態が出て来れば大体中毒と言えると思いますが、そういうときには一般に気が早くなつたり、落ち着きがなくなつていらいらしたり、手つ取早く悪いことをする。そういうきよろきよろした状態になる。そのほかに私どもは特に注意しましたのは、幻覚が出たり、妄想が出たり、そういうのが一番多いのでございます。
  44. 有馬英二

    ○有馬英二君 一回の量は……、中毒症状が出るまで……。
  45. 林しよう

    参考人林しよう君) これは個人的に非常に違います。一、二カ月に一日に先ず二、三十本で出る人もあります。数十本、百本近くでも年年近くたつて出るという人もあります。全然そのくらいまで行つても余りそういつた幻覚を出さん人もあります。私どもがそれはどれくらいのところかというので、竹山君が中毒患者の全部について調べたところ七、八〇%くらいまで何か妄想的な多少幻覚を持つておるような症状が出ておる。今竹山君の言われたのは、そうした幻覚妄想状態であつて、そういつたものが一番多いのでございますが、稀れにやめて暫らくしてから、最近も見たのですが、意識の障害に伴つて譫妄状態を急に起す、それからそれに伴つてその後コルサコフの状態になつてしまうのもあるが、これは稀れでございまして、私どもは数例にとどめるだけでございます。それから聞こえるやつと、それから今度虫や何かが余計見えて来るという二つ形があるように思います。幻覚症状に……。これは全く分裂病みたいでございますよ。知らないでいるとちよつと鑑別に因ることがあります。
  46. 有馬英二

    ○有馬英二君 なお竹山先生からも何か附け加えて伺つて置きたいと思いますが……。
  47. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) その使用量と期間でございますが、我々が経験した一番少い使用量は一日十筒ぐらいで、一月以内ですでに覚醒剤中毒になりまして、幻覚妄想を起して来た例もございます。その使用量と使用期間というものは個人差がありましてはつきりとはきめられません。併し非常に大量を持続していますと、例外なく一応精神病状態になつております。
  48. 有馬英二

    ○有馬英二君 なお竹山先生に伺いますが、私らはこれを臨床的に必要とする、つまり治療の目的でございますね。使う場合というのはどういうような場合なんですか。それを一つ先ほど承わらなかつたのですが、ちよつと伺つて置きたいと思いますが……。
  49. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) それは先ほどちよつと触れましたのでございますがナルコレプシー、それから抑欝病、それから記憶がなくなつているような病気、それから徐脈性低血圧といわれるいわゆる低血圧症、それと急性の催眠剤中毒の場合、こんなふうなときですけれども、余り聞かないのでございます。殊に急性催眠剤中毒に関しましては、只今林教授からもお話がありましたように、逆な効果を来たすことがあるので、余り望ましくない使用法なんです。習慣的に使われているのでは疲労を訴えて来たようなときに使うようなこともございますけれども、これは御承知のように、覚醒剤というものは疲労を回復させるものではございませんから、正しい医療上の使い方とは申せないと思います。まあそのくらいのもので、余りほかの疾病に対してこれが使われることはまあないように思つております。
  50. 有馬英二

    ○有馬英二君 それならば、これがどうしても医薬上必要欠くべからざるものであるとして、この製造禁止を絶対的のものであるとはお考えになつておらないわけですか。
  51. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) それは先ほどお話いたしました中でナルコレプシーでございますが、これはまあてんかん類似の疾患でなかなか面倒なものでございます。こういうときには覚醒剤を使つておりますと、その発作を抑制することができる。まあすべての場合ではありませんけれども、抑制できる場合もある。そういうような理由では使つてもいいと思います。併しこの場合でも、さつきお話がありました注射薬、すべて発作が起きているときには粉末が使えない、或いは錠剤が使えないから注射をさすというふうなことは、これは実際上にはないのでありまして、ナルコレプシー発作というのは極く数秒間の短いものでありまして、その発作のときに医者が駈けつけてこれに注射するという場合はないのでありまして、やはり錠剤なり、粉末なりで一日のうちに持続的に少量ずつ打つているということで、発作の鎭圧をしようという意味で使われるわけでありますから、ナルコレプシーに成るほど使う場合もあるけれども、このときに注射などということは役に立たない方法であると、そういうように思います。
  52. 林しよう

    参考人林しよう君) 今の絶対的になくしたらどうかというお話の問題でございますけれども、実際私ども使います場合だの、量だのが非常に少い。それからまあ成る程度の抑欝症などに使うときにも、本体は知らせずに使つて見て行こう。それでまあ影響を見て、あとのことをやるというような場合の使い方でございます。この薬はアドレナリン(副腎髄質ホルモン)の系統のものからこれがだんだんできて来まして、できたのは随分古いものでございますけれども、それが測らずも戰争中日本で、まあその前からだんだん使われて来ておるのでございますけれども、実際この中枢性の刺戟剤、或いは、いわゆる自律神経の中枢、その他についての研究の上からだんだんこういつたものからいろいろなものを引つ張り出すということも必要だと思うのでございます。それからこの中毒症状が非常に分裂病症状に似て来ているものが出て来ているということから、私どもはこれを一つ分裂病のいろいろな関係研究の、一つの手掛りにもしたいという考えを多少持つておりますので、ともかくこういつた一つのできて来たものは、害毒はあるにしても、一応他方法でそれを防ぐ方法を講じないで、絶対にこれを潰してしまうというのはどうも文化的でない。その辺は少し研究の自由の上から、やはり成る使える途は残しておいて頂けまいかと私どもは思うのです。実際に製造を禁止しても、取締りのほうが十分……、実際の使用取締りができなければ、これは幾らでもできて来ますので、割合に簡單にできますので、エフエドリンから作るということが、実際いろいろ聞いて見ますと、誰でもすぐ素人ができるものではなさそうでございますけれども、どうも高くついてしまうので、なかなかれだそうでございますが、併しそういう方法もあるので、エフエドリンはなくすわけに行かんものですし、実際的ではなかろうと思います。
  53. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 豊島さんに伺いたいのですが、あなたのほうで作つておるヒロポンは、エフエドリンの副産物としてできておるものが主なんでございますか。やはり合成もおやりになつておるのでございますか。
  54. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) あれはやりません。
  55. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 全然しませんか。
  56. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 今麻黄が十分入つておりますから、やはり麻黄のほうから作つております。
  57. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それでは合成は全然ないわけですね。
  58. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) ええないのです。
  59. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それはやはり副産物としてできるわけなんでしようか。或いはエフエドリンがヒロポンのほうへ入つて行くというふうになつて行くのでございますか。
  60. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 我々のほうでは、エフエドリンを潰してそれを作るということは昔はやらなかつたです。
  61. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 昨年我々が、大阪のほうの製薬業のほうぼうのところへ見せてもらいに行つたのですが、そのときにたしかあなたのほうの麻黄の輸入が、ガリオア資金なんかで相当たくさん入るというお話も承わつたので、これは結局エフエドリンが目的のために入つて来るというふうに伺つたので、まあこの山本さんからの何を見ましても、ヒロポンがやはり一番多い。偽造も一番多いということですが、エフエドリンになるものがヒロポンになつているということが考えられるのでございますが……。
  62. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) エフエドリンがなるのではございませんで、麻黄の中にございます。プソイド・エフエドリンというものを原料にして作ります。けれども副産物と申されると…、副産物と言いますかな。
  63. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それで現在は、もう製造は中止しておられるわけでございますね。
  64. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 勿論中止しております。
  65. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これはいつから中止になつたのでございますか。
  66. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 昨年の六月くらいから全部止めております。
  67. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 そうですか。
  68. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 少くとも私の会社はそういうふうにやつております。
  69. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 それで現在あなたのほうで手持で持つているのほどのくらい、先ほども中山委員から言われましたように覚醒剤三千リツトルと言われておりますが、あなたのほうのお手持はどのくらい。
  70. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 私、最近伺つておりません。大阪のほうのことは知りませんが、殆んどないように申しております。全然私の会社ではないようであります。併しそれは市場にはまだあるかも知れません。私の会社ではありません。
  71. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は林先生竹山先生にお伺いしたい。これは治療上或いは研究上必要だとおつしやる気持はわかるのでございますが、この覚醒剤がなければ絶対に駄目なのでございましようか。治療のほうでほかにそれに代るべき薬は絶対にないものかどうか、仮に治療に必要なものといたしましても、今私どもが恐れますのは、心身共に未熟の者が中毒患者に多いということであります。これが社会にどれだけの害悪を与えているかということを考ええまして、先日来各方面調査等に参りまして、まあ慄然としておるのであります。このときたださえ社会不安の醸されております今日に、果して僅かな治療の面に必要ということでこれを作らなければならないものかどうかということが一点でございます。  いま一点は、林先生が今素人には容易にできるものではないというお話もございましたので、研究上確かに逆行するとおつしやる気持もわかりますが、それならば研究の分として、特に先生方がそれを製造といいますか、研究用のものだけをおやりになるというような方法で社会の害悪に対しての分野から申しまして、そういう方法はとれないものかどうかということが一つ。  それからいま一つ、私は心身共に未熟な者が中毒にかかるということと併せまして、あのヒロポンは戰争中に軍需工場等で、労働者にフルに労働強化をやるために使われた。或いは特攻隊に使われた。いろいろ聞いております。それが今民間にこういうふうになつて来ております。又今の時代に中山先生からお話なつたように、予備隊の常備薬の中にこれは入つておる。或いは聞くところによると、某、何といいますか、電源開発工事に働いておる人たちのところで、労働者がこれをすでに使われておる。最近になりましては、これは許可がないうようでございますけれども、競馬馬にヒロポンを使つている。勝利を得ようというようなことさえ策動をされておるやに聞いておる。こういうふうにこのヒロポンが悪用々々という方面に使われて行くことを考えますときに、又民主主義の未熟と申しましようか、日本の今の状態から考えまして、良心的にということがなかなか困難なのであります。私たちは害があるから禁止するというようなことは、誠に余り政治家としては褒められたことではないと思いますけれども、併しながら広い分野から考えまして、今の日本の社会に流す害悪と、その学究的な立場、この学究がほかの方法で若しやれるとするならば、私はこの際大いに英断が必要じやなかろうか、こう思うわけであります。私素人でございますから先生方はお笑いになるかも知れませんが、社会を憂えますと、ついこういう気持になります。若しヒロポンがあるならば、軍需産業或いは特需景気というようなところですでに私はヒロポンが使われているように聞くのでありまして、誠に労働者の立場から考えまして、私は大いに考えさせられておるわけでございまして、この点一つお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  72. 林しよう

    参考人林しよう君) 御趣旨よくわかりましてございます。ただ私ども製造を禁止されてもそのほかにいろいろな、むしろ取締的のやり方のほうが実際の効果の上からいいまして先行するのじやないかと考えましたことと、それから実際に学問の進歩の上から言うと、こういうものも扱つて行きたいという気持もあることで申上げたのでありまして、差当り私ども一年に数例見るか見ないかという、この場合に使うくらいの分量は、これは私ども大学、或いは又関係しておるものと相談して、一部分つてもらうということは訳はない。それからまあ薬局あたりでやるということもできないことじやないと思います。それから又、これもやれなければほかの代用的のコカイン系統、カフイン系統のものなんか代用してみても成る程度本人の苦痛を除くことができるかも知れませんけれども、どうしても取締を強化すると同時に製造も一時は全面的に禁止しなければ徹底できぬということならば、一時はそうした犠牲を忍ぶのも私ども止むを得んと思つております。実際私ども研究可能である程度、必要な分を取扱をするということが、それが取締に触れて来ると問題でございますので、実験室的に扱うということはできると思います。
  73. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 只今の御意見は誠に御尤もでありまして、私どもも痛感しております。製造並びに販売を今のままにして置いたらその心配が出るだろうと思います。これは先ほど来申上げました、麻薬取締法の趣旨の規定でも考えまして、製造販売嚴重に制限いたしますれば只今のような御心配も消えるのじやないかと思います。
  74. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は先日来委員会で提案しておりますことは、最悪の場合には製造禁止することが一つ、その次に考えるとは麻薬と同じように番号を打つて、薬の何番から何番までどこそこへ行つておる、ルートを明らにして必要なところに必要なもの以外には絶対に流すことができないというような方法、現在あるものは全部国家が買上げるか何とかいたしまして、一大英断を以て今どこに幾らあるのだか、大体わかつたものでも、わかつてないものが相当あると思うので、製造が禁止され、或いはそのルートがそう明らかになりますと、所持しておる者が全部いわば取締れる、罰則をもつと強化すること、薬事法の改正によりまして罰則をもつと強化するというようなことができないものだろうか。いろいろと提案しておるのではございますけれども、その結論として今日は皆様方の御意見を伺つておるわけなんでございます。今のままにして置いて、それらも製造禁止してみたところで、これは効果がないことは明らかなんでございます。
  75. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 丁度その問題は麻薬取締規則から現在の麻薬取締法に移行しましたときと同じように考えてよろしいのでございます。製品としての麻薬並びに原料、これは麻薬取締法なつたときに、何も政府で買上げたものでなく、ただそれの在庫保持、それらの使用規定しただけなんです。これだけで十分じやないかと思うのであります。
  76. 赤松常子

    ○委員外議員(赤松常子君) 私厚生委員じやありませんが、質問をしてよろしうございますか。
  77. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) よろしうございますね。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) どうぞ。
  79. 赤松常子

    ○委員外議員(赤松常子君) 私は警視庁のかたにお尋ねしたいのでありますけれども、お取扱いになりました事件の中で家庭の経済状況はどういうところの人が多いのか、それが一つと、それからこういう注射などを打つというその動機は大人から教わつたものであろうか、同じ仲間から教わつたものであろうかということが一つ。それからお取扱いになつた件数のうちで、先ほどから藤原委員もおつしやつておるように、特需関係の中小企業あたりで生産を上げるために、特にそれを注射して働かせたというような事例がおありでございましたでしようか、如何でしようか。この三点お伺いしたいと思います。
  80. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 家庭の経済状況は大体において中位というところであります。特に際立つて貧乏人に多いとか、或いは特別な家庭であるとか、そういうような傾向は私は見でおりません。教わつた動機は、これはいろいろでありまして、一番大きいのはやはり不良仲間で親分から教わつて、その感化を受けている。それから本人の好奇心とこれがマツチして使つているのが一番多いのであります。中小企業のほうのあれは全然扱つた経験ございません。
  81. 赤松常子

    ○委員外議員(赤松常子君) もう一つ。その青少年は学生が多いのでしようか、或いは労働者が多いのでしようか。
  82. 山本鎭彦

    参考人山本鎭彦君) 丁度平々というところでございます。
  83. 赤松常子

    ○委員外議員(赤松常子君) わかりました。
  84. 有馬英二

    ○有馬英二君 林さんと竹山さんのお二人にやはり伺いたいのですが、先ほど山本さんがおつしやつたのは、その注射薬を第一になくしてしまつたほうがいいというように私承わつたと思うのですが、注射製造を禁止する、そして錠剤若しくは散薬というか、粉ですね、だけにして置けば今のような害毒は、害毒言つて病症という意味ではないですよ。社会的な害毒も含めまして、そういうことが絶対起らんということはないかも知れませんけれども、少くなるとお考えになりますか、如何でしようか。ちよつとそれをお伺いいたします。
  85. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) 中毒者の大部分を我々が見まして、殆んど全部注射によつてつている。注射を禁止すれば非常に少くなるということは言えると思います。併し散剤がやはり自由に手に入るような状態でありましたら、必ずこれを注射薬にしまして使うようになるものでありますから、やはり錠剤も散剤も嚴重取締られるべきものだと思います。
  86. 林しよう

    参考人林しよう君) 恐らく今のように癖がついておりますと、粉末が手に入ればそれで適当に薄めて使うだろうと思うのです。今大体一管が三ミリグラムでございます。ですからあれは随分薄いもので一グラムあると三百本ぐらいできてしまうあれになりますが、今のような中毒の癖がついておるときには、じきにそれを作るであろうと思うのでございます。粉末にしても錠剤にしてもやはり入手なり、讓渡なり、そういうところにあれがあつて、今の場合のようにレジストして使うようにしないといけないと思います。
  87. 有馬英二

    ○有馬英二君 そうしますと、先ほどからの治療上並びに研究上若干必要であるというお話があつたのでありまして、確かにこれは文化的に考えまして、私どもそれを全面的に禁止するということは学者のほうでお困りになる。学者を困らせるというような、私どももそういうことは余り好みませんけれども、併し注射剤を禁止して、錠剤並びに散剤を残して置くということも意味のないようなお話でありますと、若し禁止するということになれば全面的にこれを禁止しなければならんようになるのではないかと私は思うのですが、そういう工合になつた際にですね、あなた方研究者はどれくらいお困りになるか、若し日本製造しなければイギリスだとかアメリカあたりから輸入したものでお間に合いになりますかどうか、それはお気の毒ですが、私ども永年の医学的の研究の際に、日本で作つていない品物がたくさんあるのですから、ドイツからでなければ輸入できなかつたというようなことが、例えばサルバルサンにしても日本では製造してなくて全部ドイツから来たというような時代もあつたので、極く少数の製品量……極く少数と言つては甚だ悪いかも知れませんけれども研究者が必要とするくらいの量ならば外国から輸入をしたもので、幾らの金でもないと私は思うのですね。そういうものでお間に合せになるか、或いは先ほど竹山先生もおつしやつたような薬局或いは薬学の教室で作つておもらいになつて、それを研究所に置くという面もあるらしいから、その辺でお間に合せになつて、この社会的に非常に害毒を流すところのものを全面的に禁止してしまうという方向が私はいいのじやないかというようなことも考えられるのですが、如何でしようか、その点を一つ……。
  88. 林しよう

    参考人林しよう君) 差当りとしては私はそれでも結構だと思います。それから今注射のほうが出なくなれば一応非常にやりにくくは確かになると思うのでございます。粉末の入手のほうは少しやかましくすればむずかしくなりますし、今私はとにかく注射薬のほうが止められてるのだと思つていたくらいなので、差当りは注射液のほうがなくなることが結構だろうと思うのですが、やはりエフエドリンから作る人が出て来るだろうと思います。併しどうしても取締の罰則を強化しなくてはなるまいということが言えるのであります。一部必要な分だけ輸入することは結構だと思いますし、少量で済むと思いますので、輸入したときのほうがルートを調べるときにもやりようございます。
  89. 竹山恒壽

    参考人竹山恒壽君) これは製造を禁止しましても無くなつてしまうものではない。今のお話で、我々が本当に必要なときには研究室なりで作ればいいのではないかということと、これは将来に大きい禍根を残すものであります、特定のところで、研究所だけで作つているということが、これがどういうふうにだらしなく流れて行かないとも限らない。それでやはり製造を禁止しても作ることもできるというふうなものであれば、この製造販売を、先ほどから申上げました通り麻薬並みに取扱うことが一番合理的なやり方じやないかと考えております。
  90. 有馬英二

    ○有馬英二君 そうすると竹山先生の御意見は、製造を全面的に禁止してもなかなかこれは無くならんものである、即ち密造ということが行われるということが一つと、それからやはり麻薬取締法に準じて厳重に取締をしなければやはり製造並びに使用を禁止するということは、或いは絶対的じやないかも知れませんけれども害毒を禁圧することができるくらいな程度にそれを減少せしめることはむずかしい、かようにお考えになりますか。
  91. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 もう一つ豊島さんに伺いたいのですが、先ほどあなたの御意見では密造の根源を絶つことが重要だと言われましたが、これはもう我々のほうは同感なんですが、併しただ密造の根源を絶つということは言葉じや非常に優しいのですが、事実問題としては非常にむずかしい問題です。殊に現在あなたの会社のように、すぐに製造を自発的におやめになるというような、こういう一流の製薬業者のところは非常にいいですけれども、そう行かない、いわゆる密造をやつておるところは至つて困難だと思いますが、それにつきまして、製造業者の方面から御覧になつた方法で、何か密造の根源を絶つにいい思い付きなり、お考えはございませんでしようか。
  92. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) むずかしいですね。
  93. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これはやはりその道から何かいい智慧がお出になれば非常に結構だと思いますが……。
  94. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 実にむずかしいですな。やはり重い罰でも科さなければ駄目でしような。
  95. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 そうすると、やはり法律の改正とか、どうとかという方面から入つてつて、いわゆる取扱いにもなりましようし、製造ということにもなりましようし、そういう方面から縛つてつて、そこに重い罰則を作るというようなお考えでございましようか。
  96. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) まあそれも一つの手でございまして、もう一つ大事なことは、僕は社会的な啓蒙ということも一つお考え願えませんでしようか。それは幾らもうなくしようとしても、みんなが国民的な自覚がなければ到底むずかしいことだと思うのですね。
  97. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 これは私は初めから考えたのでございますけれども、これは一つ社会教育の方面から強く考えて行かなければならんということはわかつておるが、現在ぶつかつておるのは、社会教育のほうがいわゆる手遅れと言いましようか、悪いほらが進み過ぎておるものですから、そこでむずかしい問題が起きて来たわけです。そこを一つよく考えて、何かいいあなたがたの御体驗からいい方法でもあればというわけです。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで私の考えは、社会の道徳、教育啓蒙運動というようなことを自覚を促がすという意味から申しましても、ヒロポンというものはそれほど害があるということを一般が余り知らないのですね、ですからこういうことを私は十分に徹底させ、製造禁止までするほど害があるのだからというところで、一つこの際、まああるに越したことはないけれども、なくても済むという程度のものでございましたならば、私は飽くまでも製造を禁止して、心身共に未熟な青年たちを保護して行きたい、守つて行きたい、もうこういう気持ちが強いのでございます。それと併せて無論製造を禁止した、しつ放しではいけませんので、十分取締りをして行く。製造を禁止されているのに、若しも僞造品にしろ、何にしろ作つていれば重罰にするというところまで行かなければ、強化規定をしなければ、今の状態は救いがたいと思う。各所を視察した結果が私は悲観的なのでございます。警視庁に参りましても、各警察署に参りましても、或いはこの間看護法の問題で全国的に歩いて参りましたけれどもどこの県に参りましても熱望しております。衛生部あたりで手を焼いておるらしいのです。
  99. 有馬英二

    ○有馬英二君 ちよつと豊島さんにお伺いしたいのですが、先だつてあなたがたの業者の富山化学工業さんですか、二カ月の営業停止を受けましたね。あれはどのくらい業者に対して感銘を与えたものでしようか。非常な厳重な罰則というようなお考えがありましようか。或いはあんなものはなくてもいいというようなお考えになりましようか。
  100. 豊島順吉

    参考人(豊島順吉君) 二カ月間の営業停止ということは非常に大きな打撃でしよう。恐らく我々の会社であれば再起不能になるでしようというふうに考えますが、非常に重い罰だと思います。併しあそこまでの行政処分をお考えになつた経路を見ますると、むしろ遅きに失したのじやないかという感じを持つております。
  101. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) ほかにございますか。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 今日は十分伺いました。
  103. 河崎ナツ

    委員長河崎ナツ君) それでは質問もございませんようでございますから……。いろいろ今日は特に御不便なところを、いろいろ御苦難を越えて四人のかたがたがおいで下さいまして、いろいろ私どもに御経験のところを御指示下さいまして、本当に有難うございました。  それでは今日の厚生委員会はこれで終りにいたします。    午後四時二十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     河崎 ナツ君    理事      有馬 英二君    委員            石原幹市郎君            中山 壽彦君            長島 銀藏君            藤原 道子君            藤森 眞治君            松原 一彦君   委員外議員    労働委員長   赤松 常子君   事務局側    常任委員会專門    員       草間 弘司君    常任委員会專門    員       多田 仁己君   参考人    都立松澤病院院    長       林 しよう君    慈惠医科大学教    授       竹山 恒壽君    警視庁防犯部少    年第二課長   山本 鎭彦君    大日本製薬東京    支店長     豊島 順吉君