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政府委員(澁江操一君)
只今提案者であられます岩沢議員から
改正の主要点を
お話し申上げた次第でございますが、実はこの
法案の立案に関與いたしました建設省といたしまして、一言
只今申上げました主要
改正点を逐次逐いまして補足的な
説明をお聞き取り願いたいと、かように存ずる次第でございます。
改正の第一点が、
提案者から御
説明しましたように、
事業の
種類を整理した点にあるのでございますが、この点はこの
法律案の第三條を御覽願
つて頂くと、よくわかる次第でございますが、従来の
土地收用法におきましては、「國防其ノ他軍事ニ關スル
事業」が
一つ、それから「皇室陵墓の營建又ハ官公署ノ建設ニ關スル
事業」こうい
つたような新憲法下におきましては非常に妥当を欠いております公益
事業が掲げてある次第でございますので、これらを廃止、削除することにいたしたのでございます。更にその他の公益
事業につきましては、従来の扶規の上におきましては、極めて抽象的な公益
事業の項目が掲げてあるのは御承知の
通りでございまして、これを今回の
改正案におきましては具体的に
根拠法規を明示いたしまして、而も
事業の
内容にな
つております各種の施設等につきましては明文を掲げましてその
範囲を明らかにするように努めた次第でございます。例えて申上げますれば、従来の
規定におきましては、公益
事業の
一つとして社会
事業、乃至は教育とい
つたような字句を謳
つておるのでございますが、今回の
改正案におきましては、ここにございますように、第三條の二十一号乃至二十四号に亘りまして、社会
事業、或いは教育施設の
内容を、
法律の根拠を逐いまして、一面もその
範囲を明らかにするように努めた次第でございます。これによりまして公益
事業の
内容が何であるか、その運用が適正に行くというふうなことを狙
つた次第でございます。
更に第三点としまして、追加した
事業は何であるかということを申上げてみたいと思います。実質的に追加いたしました公益
事業といたしましては、第一号に掲げてございますこの駐車場という問題を掲げてございます。更に八号に無軌道電車、十六号に民間放送
事業、三十号に参りまして公営庶民
住宅、これらの
事業はそれぞれ新らしい
時代の要請に応じまして、公益
事業として取上げられ、乃至は
公共団体がこうした
事業を盛んに行われるような状況にな
つて参
つておりますので、これに関しまする
土地の取得、乃至は権利の
收用、こうい
つたようなことを可能ならしめるような
方法を講ずることが緊要とまあ考えまして、追加いたした次第でございます。これによりまして第三條の一号から三十三号に亘りまして、
只今申上げましたような根本方針に従いまして、できるだけその
範囲を明らかにして行く、適用を公正に行い得るようにして行く、
従つてそれによりまして被
收用者の私権の保護にも事欠くことのないようにする、こういう
建前で立案をいたしたような次第でございます。
次に
提案者が申上げましたこの
土地以外の
水利権、
漁業権、その他水の使用に関する権利の
收用に関する
改正規定でございますが、これは第
五條を御覧願
つて頂きますと、ここに大体の
範囲をおわかり願えると存ずるのでございます。御承知のように電源開発、その他の建設
事業をいたしますに伴いまして、立木権、或いは
漁業権、更には水の使用に関する各種の権利が、こうした建設
事業に伴いまして、当然消滅、乃至は制限しなければならない事態に立至
つて来るわけでございますが、これにつきましては
現行法におきましては、第七條で極めて抽象的な
規定があるにとどまるのでございまして、これを
はつきり明示するようにいたしまして、従いましてこれによりまして
收用し得る権利として一応確認すると同時に、
補償問題の対象としても取上げて行く
建前を取り得るようにする、こういうことを立案いたした次第でございます。
それから第三点といたしまして、
事業の認定
手続について
改正いたしました点でございますが、従来この
土地收用の対象となります公益
事業の認定につきましては、これは主務大臣、即ち現在の機構で申しますれば、
建設大臣がこれを認定するという
建前にな
つておるわけでございますが、今回の
改正案におきましては、これを一部地方長官に委讓いたしまして、大臣の認定権限にするもの、それから地方長官の認定権限に属するものと分けた次第でございます。これは第十七條を御覽願
つて頂きますと、出ておるわけでございますが、即ち大臣の認定権限に属します部分は、国又は
都道府県が起
業者である場合、或いは
事業を
施行する
土地が二府県以上に跨る場合、これらにつきましては
建設大臣の認定権限にいたしまして、それ以外の部分は、これは地方長官の認定権限に属する
事業というふうに
改正をいたしたわけでございます。
それから十八條を御覽願いますとおわかり願えると思いますが、認定の申請に関する各種の書類の
範囲につきまして整理をいたし、これを明確にすることに努めた次第でございます。更には認定をするための
要件を明らかにいたしました。これは第二十條に
規定いたしてございます。これらにつきましては、従来の
現行法は極めて抽象的不備でございますので、これらの点を明らかにするようにいたしました。
それから認定につきまして、最も御注意を願
つて頂きたいと思いますことは、従来
只今提案者から申上げましたように、官憲主義、一方的こういう
建前を改めまして、この
事業の認定につきましても、各
方面の
意見を聽取し得る
建前にいたしました。これは二十一條から二十四條に
亘つております。即ち第一に
関係行政
機関の
意見を聽取し得ることが第二十一條に出てございます。更に
専門的な学識経験を有する中正的な
意見を持
つておらるる
専門家の
意見を聽取し得る
規定を第二十二條に、更に一般の利害
関係者乃至はこの
関係人の
意見を聞くという
建前で公聽会の開催も必要においてはなし得るという
規定を二十三條に、それぞれ入れたわけでございます。利害
関係人につきましては、更に認定処分をいたす事前におきまして、この
内容を所要
手続によりまして、公示いたしまして、
関係人の
意見の提出をなし得る機会を與えることにいたしております。これは二十四條にその点を
規定いたしました。
それからこの二十七條、二十八條におきまして、
只今申上げましたように、地方長官の認定権限に一部委讓しております
関係上、これがために地方長官が
事業の認定を拒否した場合、或いは三カ月を経過いたしましても、認定をしなか
つたというような場合、こうい
つたような場合においてはこれを
建設大臣に起
業者から申請することにいたしまして、認定の促進を図るということを
規定いたしてございます。更に二十八條におきましては
事業認定の拒否をした場合に、これの再
審査をなし得る
規定を織込みました。これらによりまして
手続の促進を図りますと同時に、
事業認定の、即ち公益性の統一を図るという
建前も努めてとり得るようにいたした次第でございます。
次に第四点としまして
提案者から申上げました調停の申立て、乃至は和解を開き得る途を開いた点でございますが、これは
條文から申しますと、百八條以下を御覧願いたいと存じますが、御承知のように
現行法におきましてはこの当事者の協議が整わない場合には、直ちにこれを
收用審査会の裁決に持
つて来るという
建前にな
つております。併しながら現在
土地收用の行われております実際の動きを見て参りますと、これは協議の過程におきまして、或いは協議が整わないで、裁決の申請の途中におきましても、当事者の合意の結果、
收用審査会に調停の申立てをなし得る途を開くことは、これは当事者の合意の上でありますれば、これ又この
土地收用を円滑ならしめる
一つの
方法でありますので、これらについての必要な
規定を整備することにいたした次第でございます。百八條から百十
五條がこの
関係の
規定でございます。
更にもう一点、協議の確認という制度を百十六條から百二十一條に
亘つて規定してございます。当事者の協議の過程におきまして、或いは
土地の全部、乃至は一部の場合におきましても、協議が整いますれば、この結果を直ちに
收用委員会で公式にこれを取上げまして、これを確認いたしまして
法律的な効果を與えますことは、これ又協議の結果をまとめ、そうして
土地收用の
手続を促進する上におきまして、貴重だと考えますので、この点を
規定いたした次第でございます。
第五点は、
收用の裁決
機関が
土地收用審査会の機構を民主的に尊重いたし、並びに
審査手続を民主化した点でございまして、この
法案が最も重要視いたした点でございます。
收用審査会といたしましては、七人の構成
委員を以ちまして、
専門的な学識経験者の中から地方議会の同意の上で
知事が任命する
建前にいたしてございます。これは第五十二條を御覧願いたいと思います。更に会長は
委員の互選とする、
委員の身分を保障いたしまして、中立性を保持する
建前にする。これは五十
五條に
規定してございます。
收用審査会の
手続を民主化いたしました点は大体二点ございます。
一つは審理の公開主議をとることにいたしました。これは六十二條に
規定してございます。更に先ほど
提案者から申上げましたように口頭による陳述の途を広く認めるようにいたしました。
現行法におきましては、大体書面審理の
建前にいたしておりましたのでございますが、
改正案におきましては、口頭による陳述の途を開くようにいたしたのでございます。これにつきまして利害
関係人当事者それぞれ利害の主張の徹底を図りまして、
審査の公正を期し、妥当な合理的な結論を得るように、得る
建前にいたしたのでございます。
次は損失
補償に関する
改正点でございますが、これは
只今提案者から御
説明になりましたように、
一つは替地による
補償、八十二條に
規定してございますが、御承知のように、従来の
現行法におきましては、金銭
補償主義一本槍でございましたけれども、
土地收用の実際から申しますれば、
土地を以て生計を維持しております農家等におきましては、むしろ
土地は金銭によ
つても代えがたいような貴重な財産でございますので、これらの場合におきましては、替地による
補償の途を開くことがむしろ実情に合う次第でございますので、この
補償制度を新たに設けることにいたしました。
それから
現物補償の問題でございますが、これは八十三條から大体八十六條に
亘つて規定してございます。即ちその
一つは耕地の造成、これも起
業者が申請に基きまして耕地を作り、
只今申上げました替地による
補償と合せまして、
補償の
一つの途とする、或いは必要な
工事を代行いたしまして、金銭
補償に代えまして、
工事の代行、即ち役務の提供によ
つて損失
補償に代えまして、被
收用者乃至は利害
関係人の損失を
補償して行く、或いは移転の代行、更に宅地の造成、これらにつきましても同様の考えを以ちまして、この
改正案に
規定を織込むことにいたしました次第でございます。
更に
收用地以外の
土地に対する損失
補償、これは九十三條に
規定いたしたのでございますが、従来この点については、
現行法は明確を欠いておりましたので、これらの
收用地以外の
土地についてもその所有権者乃至は利害
関係人に損失を與えた場合はその損失が明確なものである限り、その損失を
補償して行く
建前にいたしまして、そうして九十三條に
規定することにいたした次第でございます。
なお、そのほかに附加えまして申上げますれば、緊急の必要に応ずるための
收用手続、これを百二十三條に
規定してございます。この今回の
改正の結果、
手続を民主化いたしましたし、又一面
手続の促進を図
つてはおりますけれども、実際こうした公益
事業をや
つて行く際におきまして時間的に相当がかる場合において、一面
公共の利益を害する虞れがあるような場合が生じないとも限りませんので、こうした場合における万全の途といたしまして、緊急の
施行を必要とする
事業を
施行するための
土地收用に関する
規定を百二十三條に
規定したのでございます。
なお、これらの
收用の
手続、
事業の認定はそれぞれ或る部分は地方長官の権限に委されておるわけでございまして、そのために相当地方
公共団体の負担になることも考慮いたしまして、今回の
改正案におきましては或る
程度の手数料を取り得る
建前にいたしました。これは百二十
五條に
規定されてありますが、これらによりまして、地方の財政的負担をできるだけ少くするようにも努めていた次第でございます。
簡單でございますが、
提案者の
理由説明につきまして若干補足いたしました。