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1951-05-08 第10回国会 参議院 建設委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月八日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○河川法の一部を改正する法律案(衆  議院提出)   —————————————
  2. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) それでは只今から委員会を開会いたします。  先ず本日は河川法の一部を改正する法律案の御審議を願います。
  3. 田中一

    田中一君 休会前の本委員会提案理由は納得いたしましたが、政府のこれに対する裏付の問題を質問してそのままに返事を聞いておりませんが、ここでその裏付資料並びに見解を御報告願いたいと思います。この改正法案が二十六年度公共事業費のうちどの河にそういう現象があるか、これの個所数字をお示し願いたい、こういう要求をしたと思うのです。これに対してお答えを願います。
  4. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 今回二十六年度附帯工事事業費といたしまして全国的に工事を予定いたしておりますのは大体固まりましたところが十億の程度ございますので、個所的には非常に多くございまするので、どの河どの河というちよつとまだ調べがつきかねるのでございまするが、大体国鉄関係で一億九千、約二億程度ございます。それから道路橋梁関係につきまして大体四億三千程度ございます。それから用排水施設等附帯工事が約四億三千程度ございます。そこで国鉄関係につきましては今度の改正法律現行法との間においては何ら変りはございません。それから道路関係につきましても、府県関係につきましては何ら動きはないのであります。問題は用排水路施設の問題のみでございまするが、これを現在におきましても法規通うにやりますとすれば、大体九千四百万円程度府県負担があるわけでございます。ただ現実制度といたしてでありまするが、実際の取扱につきましては、用排水につきましては、その地元のいわゆる組合なり梅町村なり、或いは府県管理の問題につきましてもいろいろ相談の上、この通りつているのは殆んどございません。五分の四或いは全額というような点で、非常に低く取つておるわけでございます。ただ新制度によりまするとそれより若干殖えまして四千七百万程度の問題でございます。併し現実の問題におきましては、先ほども申上げましたように、現在においてもこの用排水につきましては地元負担は相当苦しいので、減額いたしておりまするので、今回の制度を採用いたしましても、そのために却つて非常な負担が殖えるというようなことは余り考えておらない次第でございます。なお個所別に細かくという問題につきましては、これは非常にたくさんの問題になつておりまするので、まだちよつと資料ができかねておるような次第でございます。
  5. 田中一

    田中一君 そうするとこの配布になつた資料のうち、五の地方鉄道との関係、こういうものに対して政府としてはどういう見解を持つておるのですか。
  6. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 私鉄関係につきましては、直轄工事の問題につきましては、先般も休会前におきまして申上げましたように、河川工事との関連におきまして、まだ私鉄まで今年度におきましては手を著ける段階に至つておりませんので、今回の附帯工事においてはこれは考てえておらないのでございます。なおここに挙げられましたのは、これは提出者におかれまして将来ここ五、六年つ間において大体施行されるのがこの程度というところからであろうと存ずる次第でござついます。それをここに掲げられましたものと考えております。
  7. 田中一

    田中一君 そうしますと、政府としては私鉄関係のものはここ四、五年の間にはない、こういう御見解ですね。
  8. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 私鉄の問題につきましては、本年度において盛つてないと、こういうのでございましてここ五、六年の間に大体の予定として、この程度施行されるという考え方に基いて提出せられておるのでございまして、なおこれは予算関係並びに河川工事進捗状況によりましてこの程度が今後五年間くらいで実行できるかということは、まだはつきりいたしておるわけではございません。
  9. 田中一

    田中一君 提案者の一人の田中角榮議員からの御説明によると、この私鉄堤防蒿上げによる工事費というものの負担私鉄ができないから、若しこのままで行けば洪水になつた場合にはそこから漏水するというような御説明がさつきあつたのですが、そうしますと、二十六年度においてはそういうような危険がないというふうな提出者見解であるわけなんですね。そうしますと、この河川法のうちいろいろまだ改正しなければならん点もあると思いますが、この受益者負担という点で、一番おしまいの、閣議決定で現在このような方法をとつておるということになつておるにかかわらず、この法律を変えるというその真意がどこにあるか、提案者に伺いたいと思うのです。
  10. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 私が先ほど田中さんと座談の間にちよつとお話を申上げたことに対しての御質問でございますが、私が申上げるの、根本的には河川法明治二十九年法律七十一号という非常に古いものでありまして、その後この種の法律案がたくさん改正せられておりますし、特に現行道路法などと比べますと、河川法が当然道路法倣つて改正を要するものであるということが一つ理由として挙げられると思うのであります。もう一つは、原則的に受益者負担をするということ、現新憲法の下においてはこれは逆にならなければならんのではないか。いわゆる旧憲法下国家権力の非常に強い、国家権力至上状態において作られたもの、即ち国が必要を以て行う工事であつても、それによつて附帯的な工事を行わなければならない私人に対しても、当然私人がこの工事を拒むことができず、なおその工事費に対しては国がこれを補助するというようなことは現行憲法精神に反すると、こういうものは早急に改正をすることが妥当である。こういうふうな考えを持つておるわけであります。もう一つは、先ほど申されました河川改修の問題でありますが、現在建設省は二十六年度予算が非常に少いために、二十六年度予算執行面においては私鉄の問題に対しては直接関連を持たないというのでありますが、現在見返資金の二十五年度公共事業費に対して投じられた江戸川等の問題に対してはすでに東武鉄道の両岸で莫大もない見返資金を投じられて蒿上げをやつております。勿論高水位を上げたことによりまして当然この問題は起きるのでありますが、実際工事を竣工せしむるということは昭和三十五年度、六年度、七年度、三カ年計画を以てこれを行うわけでありますが、当時の状況からいいますと、少くともこの蒿上げ工事は三十六年度には着工しなければならない状態にあつたのでありますが、二十五年度の見返資金が打切られた現状においては、公共事業費においてこれをやつて、尻拭いをして行かなければならん。当然これだけの大きな見反資金を投下した以上、優先的にこの工事を結末をつけなければならない。即ち三カ年間、少くとも五カ年間にはこの問題を完了しなければならないという場合、二十七年度にはこの問題が当然起きて来る。その場合、どうしても蒿上げをしなければならない橋梁部分を、これが二十六年度に完成をした場合、二十七年度の初めにおいて私鉄問題等解決ができないという現状である場合は洪水等の場合、折角かけた国費が無駄になる虞れがあるということを申上げたのでありまして、事実二十五年度計画からいうと、今年度には当然この問題は解決しなければならない状態にあつたわけであります。その意味におきまして而も私有鉄道の問題と、莫大な国費を投じながらこの問題が解決できないため、実際工事が進捗しておらないという事情がありますために本法律案改正し、これが一貫した計画を樹立し、而も予算執行面に対して計画的な遂行ができるようにして頂きたいというのが提案本当の趣旨であります。
  11. 田中一

    田中一君 今提案者並び伊藤次長から伺つたことを要約しますと、私鉄関係においては現行法でも一向どこにも関係がない、若し改正案が通るならば国費が殖える、負担が殖える。従つてそれに対しては先般の御答弁にあつたように、二十六年度予算においては改正案通り予算は取つてないという御説明があつた。無論取つてないのが当然であつて、二十六年度工事にはそれに該当するものはないからこれは坂らないのだということであつたと思います。私が提案者に伺いたいのは、なぜ今急にこれを改正しなければならんか。御承知のように三十何年かにできたこの河川法がそのまま、この一部を改正すれば、昭和二十六年度の新憲法下の新らしい河川法であるという断定を下されれば別ですが、そうでなく、全体において三十何年かに制定されたところのこの河川法を、若しも政府としても改正したほうがいいという点があるならば、あえてこの一点だけを改正する必要はなかろうと思う。事実において閣議決定においてその不便が除かれておるという現状考えられるわけであります。で、もう一点伺いたいのは、いろいろ古い河川法について今改正しようという意図が河川局にあるかどうか、又事実仕事をやつてつて、これまで、今田中議員の御説明のように、非常に民主化された新憲法下河川法としてまずい点があるのじやないかというような点があれば、これも一つ次長から御説明願いたいと思います。ただこの一点だけを改正しなければならんという理由は非常に弱くなつているのではないかと思いますが、これに対して現在どういうようにお考えになつておりますか。
  12. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 河川法につきましては、先ほど田中議員からお話がございましたように、その制定明治二十九年という古いものでありまして、その後におきましての改正は殆んどなされておらない。そういう点におきまして河川法に現在の制度に即さないものが多々あるということは我々も承知しているのであります。この河川法規定の問題につきましては、最近の地方自治との関連もございますが、この自治との問題が、権限の地方委譲というような問題が、河川法行政という問題と十分にしつくり行くかという問題をよほど考究いたさないといろいろ不都合な問題があるので、そういうような点を特に重要視いたしまして、根本の思想から考え直して、そうして大改正をしなければならん問題がございます。なお水の利用の問題等につきましては現在の河川法におきましても、この運用によりまして、或る程度は目的は達して参れるのでございますけれども、この問題について細部に互る規定が欠けているという点におきまして、いろいろと疑問が出て来るのでございます。これらの問題は各省行政と非常に密接不離関係がございますので、各省とのいろいろの折衝の問題もなかなか早急に解決するものでもございませんし、こういうような点を考えまして、我々といたしましては折角研究研究を重ねておるのでございます。なお行政管理庁あたりからの意見も出ているようでございますが、これらにつきましても、我々としてはそれをそのまま取入れるわけにはいかんというような面もございまして、もう少し時日をかして頂いて、そういう大きな法律案改正につきましては早急にばたばたと作り上げるということはどうかと存じますので、まあその問題についてはいま少し時間をかして頂きたいと、こう存じておるわけでございます。そこでこの提案になりました附帯工事の問題でございますが、これは実は河川現実工事をやつて行くということにつきましては、負担の問題がいろいろともめる関係上、河川工事にマッチして進むごとのできないという実情は相当前々からあるのでございます。この点につきましては特に急いでこの部分だけでも直してはという、これは民間並びに政府方面でも考えましてのでありますけれども、いろいろと我々のほうにおきましてもなかなか負担関係上で踏切りもつかず、遷延いたしておつたようなわけでございまして、この問題は早く解決すべきであつたと、こう存ずる次第でございます。
  13. 田中一

    田中一君 伊藤次長かから御説明がありましたが、河川法はいろいろ改正をする点があると思うこれについては各方面ども研究、調査をしておるというお話でありますが、非常に結構と思います。併しながらこの一点だけを改正しなければならんという問題も無論含まれていると思いますが、二十六年度にはこれに該当するものがないから現行法のままでも一向差支えないという見解のようにとられるわけです。そういう該当する工事がないというように如何にも聞えるのですが、あえてこの一点だけを急に変えなければならんというのは、どういう意味から衆議院を通つて来たか、この点をもう少し突き進んで……。
  14. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 衆議院でこの提案に至りますまでには自由党、民主党、社会党、共産党を除いた殆んどの諸派が相当研究いたしたのでありますが、これに対しては簡単に申上げますと、抜本的に考えまして明治二十九年の法律と同じような法律であつて現行道路法は大正八年の制定であります。そうしますとだんだん社会性を帯びて来ており、現在に近い状態で以て作られた法律案としては同種のものである。現行道路法は御承知通り附帯工事原因者負担であります。勿論現在の状態において……、国家権力の非常に強い明治時代に作られた河川法でありますので、このようなことで通りましたのですが、現在の状態から考えますと、これを逆に見まして、国家工事を必要とした場合、その附帯工事は云云ということは別に、今度私鉄、その他河川に対する工事附帯工事として行う場合は、当然原因者負担するわけです。ところがその河川にいわゆる樋管を作る農業用排水の問題とか、鉄道が独自の立場において工場を行う、それがために附帯工事として何川の一部改修を行うという場合は、当然原因者負担になつているわけです。ところが国家権力の非常に強い時代法律そのままで以て、ただ国が行うものだけは今まで通り国が行う。そういう全然時代に逆行した法律でありますので、少くとも何とかしてこの一部でも改正したいと、これを関係方面に持つて行きましたときに、非常にこの改正案の文面がむずかしいというので、何とかもう少しすらつとわかるような法律案にならないかという質問がありましたが、これは全く当然のことでありまして、二十九年に作つた法律そのものが非常に古い古色蒼然たるものであります。ところがこの一部だけを改正する場合、やはりこの前後の字句を法文の体裁というものに合わさなければならんので、こういうものになるのですが、内容的には旧憲法から新憲法に移行したところの精神を非常に活かしておるということを説明しておるのでありまして、その面においても一つどうしても全文の改正、まさに法律案文の全体からも改正をして来なければならん。そういう表現の方法からも変えて来なければならん法律でありますが、ともかく現在の状態においては一部を改正することにいたして、この新憲法精神を十分に活かしたい。そういう両者の間に均衡を失しておるものと、公共精神に反しておるものとのバランスをとりたい。もう一つは二十六年度予算に入つておらないのに、どうして衆議院建長委員会がこれを今国会に通過を図るように提案をしたかという問題でありますが、これは現在参議院の建設委員会でも同じだと思います。私たち治山治水という面に対しては相当な努力もし、且つ実施面重点を置くことは勿論でありますが、こういう面に対しても同等の重点を置いておるわけでございます。いわゆる二十六年度を起点とする治山治水五ケ年計画という問題を研究いたしております場合は、審査をいたす対象として、当然計直を遂行する場合、立案する場合この問題が解決しない場合は、五ケ年計画が六カ年になるか七カ年になるか、全然今のところ予測が付かない状態であります。勿論国費執行面につきましては、その年度片々財政面から来るところの制約から、おのずから予算総額はきめられるのでありますが、我々建設委員会として治山治水問題に対しては、これから多くの計画を七カ年が五カ年に、五カ年が三カ年になるように、これが立案、計画実施に支障を来すようなものは早急にこれを取除いて行くということは当然考えられるわけでございます。その面におきますと、建設省只今説明は、現実面に対する説明でありますが、これを建設委員会として逆論を申上げますというと、現在建設省が立てております五カ年計画を遂行するためには、現在の法規上においては、殆んどその資力を持たない地方鉄道等が、負担金の捻出を如何にして行うかという目途がつかない場合は、建設省の立つた五カ年計画は、まさに画餅に帰するわけでありますが、その意味におきましては二十六年、すでに来年、再来年の実施計画を立てておるさなかでありますので、それに対しましては少くとも先の見通しが確実に立つような、そうして計画実施が完全にマツチするようにするためにはどうしても今のうちに本法を改正して置きたい。改正して置かなければその見込が殆んど立たなくなるのではないかという考えから、本国会に何とかしてお通しを願いたいということを申上げたのであります。
  15. 田中一

    田中一君 甚だ上手な御説明ですが、建設省はどういう考えですか。今の提案者の御説明に対して、この法律改正しなければ非常に困るというような面があるかないか、もう一度伺いたいと思います。
  16. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 今私鉄の問題ばかり御論議に上りましたわけでございますが、勿論私鉄はこの改正にも重要なる問題でありましたのですが、なおこれによりまするこの附帯工事用排水幹線にも相当数ございますのでございまして、この問題が現在においてはいろいろ取扱におきまして、昔の勅令、省令に則りまして、余りひどくならないようにというので、行政取扱相当負担を緩和いたしてあるわけでございますが、勿論行政取扱でするということになりますと、いろいろ役人の恣意が入るという点も相当ございますので、この点は若し法律ではつきりさせられますれば、全国的にそういうような問題の解決は楽になるかと、こう存ずるわけでございます。
  17. 田中一

    田中一君 よくわかりました。観点を変えましてもう一点伺いたいのですが、改正案によりますと、府県費が高くなるという点について、平衡交付金などの考え方、これは現在どういう方法をとろうとするか、伺いたいと思います。
  18. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 河川法改正によりまして、府県費用がどの程度増加して来るかという問題にかかつて来るわけでございますけれども、附帯工事にかかりますところの工作物管理者は、市町村が相当多いようであります。そういたしますと、市町村負担が軽減されまして、それだけのものが国や府県にかかつて来るということになつて参るわけでございます。市町村負担の軽減されましただけのものが府県負担の増加になりましても、地方財政全体として考えました場合には、財政支出は殖えないことになるだろうと思うのであります。地方財政全体として、所要財源が殖えるのではなくて、市町村が減つて参りまして府県が殖えるというだけのことでありましたら、地方財政平衡交付金総額の範囲内として、府県市町村とをどう分けて行くか、その分け方の問題を解決すればよろしいと思うのでありまして、これは従来からも負担関係が、府県市町村との間においてしばしば振り変る場合がございました。そういう場合には市町村財源を見ておつたものを府県に見て、或いは府県財源を見ておつたものを、これを消しまして市町村に見るというような方法を講じて参つておりますので、これは運営の問題として善処できるというふうに考えております。
  19. 小川久義

    小川久義君 先ほどから田中委員質疑応答を聞いておると、どうも私には本末顛倒しているように聞えるのですが、河川法の古い法律先ほどからお述べになつた通り、いろいろの不備欠陥があると思う。従つてこの河川法改正自治体を主体にした改正でなければならん。根本的にそれをやり変えなければならん。然るにただ一部だけを取上げて負担の率だけを変えようというようなこの狙い、而もそれは田中委員言つた通り該当のものはない。その該当のものが生ずるまでに建設省自体がこの法律根本的改正をすべきである。従つてそのときにいろいろの観点から取上げて行くべきだと思うのですが、僕はこの一部改正の要なしと断定する。従つて閣議決定の、これがどうしてもその通りつていない。それから該当の事項があつて早急にこれをきめなければならんというような必要が感ぜられない。それで今御説明があつたが、町村は軽くなつて県が重くなる。県も自治体であり町村自治体である。なぜその町村の軽いやつを県へ持つて行くことが大した影響がないということなのか。これから第下表の数字を見ても、現行法では国の負担が四億である、府県は一億である。私鉄が三億負担しておることになつておる。ところが改正案によると、国が六億になる、府県が三億になつて私鉄が零になる。市町村の軽くなる分と私鉄の出さなくなる分と、二つ合したものが県の負担になるとしかとれない、地方財政の逼迫しておる、平衡交付金のあてがい扶持である現状においては、府県負担が重くなることは私は納得行かない、この点に対して若し納得の行くような御説明があつたらお聞かせ願いたいと思う。
  20. 西村英一

    衆議院議員西村英一君) 只今小川さんの御質問にお答えしますが、ちよつと誤解があるような点があるのじやないかと思いますが。資料の出し方が非常にまずいのでありますが、閣議決定というのは、国有鉄道のものについてのみ閣議決定であります。国有鉄道の沿革を申しますと、国有鉄道河川との関係は、初めは全部国有鉄道は国でやるという建前で持つてつたのであります。ところがコーポレーシヨンになつてから企業者負担になつて原因者負担ということになつて河川が全額持つべきだ、原因者が持つべきだという理由からいろいろまあ折衝があつた。併し国有鉄道は……、尤も原因者負担と申しまして、河川国有鉄道についても全部持つのが本当でしようが、国有鉄道は一方又コーポレーシヨンでも国家の援助を受けておる。従つて閣議決定で半々ずつ持たせようじやないかと、こういうことになつたわけでして、それが河川が原因した場合にでも、国有鉄道は半分は持つてもらいたい、沿革的に申しますると、この閣議決定をやつたの原因者負担というものが元によつて、二分の一負担になつたのであります。従いまして国有鉄道は三十二条の適用を受けなくて、閣議決定その他の問題について費用分担が三十二条の規定を受けるわけなんであります。それからもう一つ小川さんの御質問の要点は、地方税の問題でありますが、この点は私たち提案者としても最も考えなければならん問題でございます。どれくらい負担が殖えるかということにつきまして。で、私は前の説明では殖えるということを申したと思いまするが、それは私こういう説明をしたと思うのです。府県市町村或いは水利組合等公共団体工作物管理者である場合は、管理者負担は特別の場合でなければもう持たんでもいいことになる。併しそれだけ殖えたものを国家負担しますので、府県だけといたしましては分担金負担しなければならんから、減つたものと分担金とのプラス・マイナスの増減によるんだと。併し二十六年度数字は、現在のところ第一表にありますように、二十六年度管理者としての府県負担は五百万円しかない。併し五百万円減ることによつて府県負担金が一方殖える、それとの差引においてはこの二十六年度限つては殖えるんじやないかということを申したのであります。併し実情は、それは法律上の建前でそうあるのでありまして、実情は実際各県がやられておりますところの方法は、これは全県ではありませんが、やはり町村が持つべきものに対しましても現在府県補助をいたしておるのは三分の一ぐらい補助をいたしておるのであります。でありますからして、市町村が持たないというようなことになりまするというと、その府県補助金も要らないというようなことも起こるわけであります。これは全県ではありませんが、大部分の県が市町村負担すべきものだけれども、市町村負担補助しておるというような例があるのであります。これは二十六年度について殖えると申しましたが、二十七年度は、或は二十五年度の例をとつて計算して見ますと、むしろ二十五年度は、二十五年度において若し法律改正になつておれば、府県負担は却つてつておるというふうなことになるのであります。それからもう一つ、第五表の私鉄との関係は、これはもう甚だまずい資料でございまして、我々が河川十カ年計画というようなものについて、今後河川を大いに改修しなければならん、その場合にどういうふうに私鉄との関係が起るだろうかということを大ざつぱに計算したものでございまして、甚だ誤解を招くと思うのでありまするが、いずれにいたしましても、そのために地方鉄道負担が軽くなるというようなことはありまするが、地方鉄道であろうと府県であろうと、或いは市町村であろうと、そういう工作物の如何を問わず、原因者負担する。河川が原因であつて河川負担する、又そういう建前をとることによりまして、私が提案理由説明に申しましたように、鉱害を除去するために大々的に河川改修を今後やつて行かなければならない。その場合にやはり支障になることは、現在の政令で委しておるあの補助規定では、補助規定建前で三分の二補助するか三分の一補助するか、そういうことをめぐりましていろいろなスムースに行ないところが出征来も多々あつたのであります。そういうことを改正いたしまして、河川一本といたしまして一、貫して計画ができて、スムースに工事を進捗させるということが、国家の非常に大きい資産を使いまして河川改修するゆえんに副うのではないだろうか。或いはそのために私鉄のほうの負担が減るというようなことも、これはあり得ると思いまするが、それは必ずしも私鉄をして特別に援助をするということでなしに、私鉄であろうとどういう工作物であろうと、原因者負担にするということが河川改修の促進になるのじやないか、こういうふうに提案者といたして考える次第でございます。どうか一つそういうふうに……。
  21. 小川久義

    小川久義君 原因者負担ということになるとなお更わからなくなるのですが、第五表を見まして、仮定の数字だと思いますが、国費で九億ほど負担して、府県も零になるなら原因者負担になると思うが、府県負担しておる、そうして私鉄が零になつておる。改正案としてはこれはおかしいことになるので、改正することによつて府県負担が重くなる。国の負担も重くなる。先ほど説明では、市町村が軽くなるという話ですが、軽くなるのは市町村であり、一銭も出さなくなるのは私鉄である。それを府県と国が負担するということになる。原因者負担なら、なぜ国が全部を出さない。府県負担をかつがせるような考え方であるのか。
  22. 西村英一

    衆議院議員西村英一君) この負担は、国庫の負担を、分損金として国庫が負担すべきものを、負担金として分けたものを現行の法規で分けて計上しただけでございます。
  23. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) ちよつと違うのです。これは政府から出された資料とそれから私たちが作つた資料がありますので、ちよつと誤解があるようでありますが、第五の表だけ見ますと、国が二億円増し、府県が一億円増して私鉄が零になるようでありますが、これを私鉄関係する河川改修部分だけをとると、こういうふうな表になりますが、実際はそうではなく、表第五、第四、第二を御覧になるとおわかりになる通り、表第四の二十五年度分を見られますと、用排水施設、国鉄、道路、私鉄に関する分は全然二十五年度にはなかつたわけです。道路、国鉄、用排水施設等が表第二になるわけです。いわゆる府県市町村水利組合等負担金は零になつて、国庫負担金が九億二千九百万円増すと、こういうふうになるのでありますから、私たちもがつけたところの地方鉄道との関係というものだけは別に一つ考えになつて頂かないと、表だけの上ではちよつと感覚がお違いになるのじやないかと思います。
  24. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 今の私鉄だけの何を申上げますと、実はこの原因者負担という言葉は、河川が原因になつてつた場合は河川費で負担する、こういうことでございます。それから河川費の負担というものは、現在の河川法で行きますと、河川管理者府県知事でありまして、府県知事の統括するところの府県がそれを負担しておる。そこで直轄工事の場合におきましては国がその費用の三分の二を持ち、府県が三分の一を持つ、そういう関係をここへ出したわけであります。それでその附帯工事河川費も全部こちらで持つ、そういう関係です。
  25. 田中一

    田中一君 この原因者負担ということが正しいならば、全部国費で持つというようにしたほうが、提案者の御希望に副うのではないかと思うのです。法の精神にも副うのではないかと思うのですが、そういうふうに結論づけられないものでしようか、どうでしようか。
  26. 西村英一

    衆議院議員西村英一君) これは現在国庫で以てすれば、現在の河川法第二十七条によれば負担金があるのです。国庫が全部持つのです。ところが全額国庫が持つのですが、国庫が持つ場合は、河川はそれの分担金が二十七条にあるのです。その分担金として別に持つわけです。ですからその点は第三十七条に規定されておる。
  27. 田中一

    田中一君 どうしてなのです。
  28. 西村英一

    衆議院議員西村英一君) 国庫の負担であります。国庫が負担する場合各は、二対一の割合で、その二分の一の分担金府県が二十七条により負担しなくちやいけない。そのために府県の分粗金が殖えるからそういうようなことになるのであります。
  29. 田中一

    田中一君 それでは重ねて伺いますが、結局原因者負担ということが本当提案者精神ならば、全部国庫で持つというように変えられんものでしようか。
  30. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) これは原因者負担という言葉は、結局河川が原因して起つた附帯工事河川費で全部賄う、こういう意味でございます。そこで河川費は普通ならば誰が持つかといいますと、先ほど申上げましたように府県が全部持つわけです。ところが補助の場合においては二分の一を国が出し、二分の一は府県が出す。ただ直轄の場合におきましては国が三分の二を持つ、実質の問題ですが……国が三分の二を持ち、府県が三分の一を持つということが河川法建前になつております。そこで国が工事をやりました場合、これは勿論河川工事をやました場合のことですが、河川工事をやりました場合に、それが原因で全部金を持つとなれば、それは河川費で持つわけです。そうすると、その河川費を国が三分の二を持つて府県が三分の一を持つ、こういうような恰好でございまして、これは全部改めるということはちよつと困難かと思うわけです。若しそういうことになりますれば、国で工事をやる場合におきましては府県負担というものは全然ないということになればそういうことになりまするが、それは今のところではできないと思います。
  31. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) これをもつと素直に考えて頂くと、きつとわかると思うのですが、原因者負担が原則でありますので、国が行う工事、即ち国が河川費で直轄工事を行う場合はこれに対する負担は国が全部持つ。それから県営で行う場合は県が原則として全部持つ、こういうように河川法を変えたいと、こういうわけであります。ところが今の伊藤次長の御説明によりますと、ちよつとこんがらがるように思うのですが、それを国が実際行う直轄工事でありましても、実際は三分の一を府県負担し、国が三分の二を負担して直轄工事をやつているのです。その場合国の行う附帯工事が幾らか殖えるということを申上げておるわけです。ですから県が行う場合は国からもらう三分の一、府県の出す三分の二の中で、県が原因者として負担するわけです。市町村の場合は、国から県がもらう三分の一に含まれて来るのですから県も損をしない、そういうふうなわけです。
  32. 田中一

    田中一君 もう一つ伺いますが、例えば東武鉄道はどうなんです。このような附帯工事ですね。
  33. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) この問題はどうも私鉄だけに利益を与えるのじやないかという意見が私たちにも初めあつたのですが、実際河川改修の全部の面からいたしますと、私鉄というのは非常に小さな粋なのです。実際は私鉄の問題はこの表五にありますように、現行法規で行く場合と比べましてゼロになるわけです。ゼロになりますが、私鉄のみでなく、このような附帯工事を今まで一部受益者として負担して来たものは全面的に取られるわけです。その分だけは国及び府県がというよりも、実際工事を行う管理者がこれを負担するわけであります。これは新憲法上当然である、こういうふうな見解を持つております。
  34. 小川久義

    小川久義君 具体的な問題で申上げますが、用水がある、そこへ私鉄の鉄橋がかかつておる、用水を拡げるという場合、その用水組合私鉄と話合うて、これだけ出してくれ、こうしてくれということが話合いでできておる場合が多いのです。これが法律になつてしまうと、何だ法律上から見て一銭も出さんでいいんじやないか、こういう場合が出て来ると思うのですが、どうでしようか。
  35. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) それはちよつと飛躍しておると思うのです。それは私鉄と用水の関係の場合、これは河川法でなくて、あなたが今言われたようなことが起るとすると、河川の橋梁といわゆる私鉄の橋梁と、河川樋管工事が三つ一緒に重なる場合、当然そういう問題が起るのであります。今あなたが言われたように、私鉄の腹をぶち抜いて樋管を通すというような場合はこの法律を適用をしないで、而も今まで通りお互いが話合うてやるわけです。ただ河川の問題は現在でも樋管工事を行う場合は、当然樋管工事を行う原因者負担するのでありますが、実際は河川工事を行なつておる管理者がこれに補助金を交付するという名目で三分の一なり四分の一なりを補助しておるわけであります。
  36. 小川久義

    小川久義君 僕は違つておる理由を特に言つたのはこの法を盾にして、それでやらなければならんのかということ……、僕の言葉は足らんかと思いますが、こういうことが一方にできると、河についての経費は原因者負担じやないか、こういう場合によつて悩むものが出て来る、そういうことになりはしないか。問題を違つたやつを特に出したのです。
  37. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) ちよつと御質問を伺いますが、用水の上を私鉄が通つておる場合、用水を拡張する場合、これは河川法は適用しません。
  38. 小川久義

    小川久義君 しないが、一方にこれができれば、こういうものが全部法律できまつた通り原因者負担ではないかと……。
  39. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) それは河川法で……。
  40. 小川久義

    小川久義君 それは河川法によらざることはわかつておるのですが、これを押しつけて来る場合が予想されるというのです。
  41. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) これは一般の法律常識で、河川法河川に関する場合でありましてほかのものは、道路を拡げる場合は、家を立ち退いてくれと、当然立退料を払うのですから、それで行けばいいと思います。
  42. 小川久義

    小川久義君 それは個々の問題で、意見の交換をしておるのですが、根本先ほど申上げましたように、次長さんは早くこの改正をして、今年は該当の事項がないのですからね、来年は出るかも知れない、四、五年後には出るかも知れないと、そういう話だから、それまでに一つ根本的な国の主権は変つてしまつたのに、明治二十九年の法律がまだ存続しておるというのは、どの面から見ても僕はおかしいと思う。とにかく一部取上げるだけでなくて事態に即応するように河川法全般を改正して置くというような方向に進む、これが一番いいのではないか。丁度破れ家を修理するようなもので、廂がいたんだから廂を直して見ても、根本が腐つてつて柱が倒れるというようなことは、これは改正する趣旨に僕は副わんと思うのですが、そうなりませんか。次長さん急速に研究してもらつて……。
  43. 伊藤大三

    政府委員伊藤大三君) 河川法改正問題でございますが、地方自治に即した前の河川法改正という問題でございまするが、ところが私、私見を述べましては甚だどうかと思いますが、そう甚だ簡単に参らない問題だと思うのです。特に河川地方自治に即した、どういうことを地方自治に即したかという問題は相当むずかしい問題があるかと思うのです。例えば今の河川を皆地方に委譲してしまつて、国が余りタツチせんというような行き方が、一つこの地方自治というような行き方でございます。果して現在の府県の財政状況やいろいろ考えまして、河川というものを地方に全部委譲してしまうと、これに国がタツチせんということが、果していいものかどうかという問題は、財政面から行きましても非常に困難な問題があります。更に水の利用面から行きまして、川の水の利用を県知事の自由に任せてしまつていいかというような問題も、相当これは難点があるかと思うのでございますが、こういうふうな問題を考えますと、河川という問題をそう簡単に地方自治地方自治という現在の制度下においてだけでは、私はもうちよつと踏切りをようしないような問題もございますので、こういう問題はもう少し制度が落付いて考えられるようになつてから考えて見たいと、こういうふうに私も考えておるわけでございます。決してなおざりにしておるわけではございません。いろいろな案を立てておるわけでございまして今急に出すということは申上げられません。
  44. 小川久義

    小川久義君 その地方自治を主体にしてというと、まるでその権限までも地方自治体に委譲してしまうというような考え方でなしにですね、二十九年に作つた法律よりもですね、もつとよいものを全般的に考えたらどうかということなんですよ。それで先ほど申上げましたように、廂がいたんで直したと、瀬を直して屋根を直しても、根本が腐つて柱が倒れるというような改正で廂なしに、そういうふうにお考えになつたらどうかと、こう言つておるわけです。
  45. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 二十六年度の中にはこれに関係するものがないからもう少し延ばしてもいいじやないかというお話でありますが、私鉄にだけウエートを置かれた考えであるからそういうふうにお考えになられるかも知れないと思いますが、二十六年度の中には私鉄はありません。河川工事を行うために用排水施設、道路改修工事というようなことは表第五にありますように非常に大きな問題がありますから、それでこの問題を解決するためには一つ早急に御改正願いたいということは、これは作るときに、先ほど申上げましたように総司令部に伺いましたときにも、どうも日本人の感覚からこういう字句が出るのかも知れないけれども、これはどうもわからない、このところむずかしい法律案でありましたが、私たち改正をする以上道路法河川法の抜本的改正ということを、過去三年間小委員会を作つてつておるのであります。これは現在皆さんがお考えになつてる国有財産法は、他の法律只今改正されて、それで国有財産法はまだ改正できない。市街地建築法も二年間もかかりましたが、先ず抜本的にやつて見ようということで建築基準法を作りましたが、との委員会でもう一遍練り直せということで、なかなか二十年、三十年もやつておるものを根本的にやるということはむずかしい。できるだけ現在よりも一歩進めた状況において改正をやつておるのでありますが、私どもも何分にも厖大なる法律でありまして、いろいろな議論もありますので、私はなかなかこれが抜本的に改正に至りませんために、少くとも私鉄のそれを取るので何とか一つお通しを願いたい。こういう意味で御審議を煩わしたのであります。どうぞよろしく。
  46. 小川久義

    小川久義君 どうも五表が気になりましてね。
  47. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) どうぞお取りになつて……。
  48. 小川久義

    小川久義君 どうもこういうものをつけられたのが、気持がどうもわからん。ちよつと初めの表から行くと、この五表が営利を目的とする私鉄が金を一銭も出さん法律なんです。そしてそれを国と県につけよう……。
  49. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 間違ないんです。どうぞ取つて下さい。
  50. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) ちよつと五分間ばかり休憩いたしたいと思います。    午前十一時四十六分休憩    —————・—————    午前十一時五十九分開会
  51. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) それでは休憩前に引続きまして委員会を再開いたします。
  52. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 この改正法案は治水の観点から河川改修せねばならん、こういうことに論拠がもともとあるように思います。従つて河川改修をする関係上、それに関連した附帯工事としてこれをするのは、これまた理由のあることでありますが、併しもう一つ考えるべき点は、河川改修することが、むしろ河川改修より先立つて、或いは鉄道殊に私鉄、そういう工作物或いは用水、そういう工作物河川改修より先立つて治水をせんならん、こういうものがある。併しこの法案が仮に通過しますと、そういうものは全然もうこの法案に隠れてしまつて、自分からすべき仕事をしない。この法案が通過したならば、全然自分の金がなくて、国の金或いは府県の金でできますから、そうした附帯工事を自分の負担でする馬鹿者はないようになる。そういうことについての御検討をなさつておりますかどうか、お伺いしたい。
  53. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 大先輩からの質問でありますので、非常にいい御質問であると思いますが、それは結論的に申上げて、実際国民的な道義、権利、義務、いわゆる個人の義務観念を高揚して行く以外にない、こういうふうに考えるのであります。それはお話によりお互いが考えた場合、当然治水という場合には堤防の補強をやらなければ、一朝洪水があつた場合に当然被害を受けるのは自分でありますので、自分が堤防の補強をなす面にある場合は、自発的に立退いてくれればいいですが、実際の状況からいうと、これはむずかしい問題であります。特に建設工事にかかりそうだから、一つ頑張つていて、幾らかずつでも買収単価を上げてやろうということが実情でありまして、過日の江戸川の工事などは、工事予算を組む前にこれが買収等をやつて置かなければならないのでありすしたが、工事が請負入札に付されてから用地買収にかかつたために非常に困難を来したようなことがあります。このようなことは先輩である赤木さん、十分御承知であられると思いますが、事実こういうような状態、なかんずく私鉄が、今の分は実際面からいつて国家補助もなく、それから金融面からいつても赤字を続けておるような状態でありまして、事実提防の蒿上げに協力をしたいと言つて現実面からできないような状態にあります。而もこの現行法規が適用せられておりますために、これが交渉ははかどらず、非常に河川改修面に対して支障を来しておるのでありまして、自分たちは何とか私鉄工事を行う事前に、自発的にこれが工事に協力態勢をとつて頂くことが望ましいことでありますが、これを法律的にどうこう制約を付けるということは、今の状態ではむずかしいのではないかということを考えておるわけであります。
  54. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 提案者から卒直なお話がありまして、よくわかりました。そこなんです。例えて申しますと、東武ですが、あれは堤防より低い、あれは洪水のときに非常に害する、そのために両方に非常に氾濫の虞れがあるということもある。でありますからして堤防の蒿上げよりも、むしろ私鉄のほうの蒿上げ、これは当然河川改修をしなくともあれですが、結局あなたのお話はそのまま通りなんですが、どうもそういうものに対して向うが赤字だからしてこの法案を適用して、国或いは府県が全部その費用負担するということは、少し虫がいいと解釈するのですが、どうですか
  55. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 実際それは赤木先生のお考えでありますが、赤木先生は建設省の大先輩でありますが、そういう受益をする面からお考えにならないで、国は根本的な、抜本的な治山治水を行うのだ、私たち河川法改正法案を提出したのは、多少益する人もあるだろう、多少損をする人もあるだろう。ただ現在の日本の政治は治山治水である。今我々の属しておるところは建設委員会であるということを考えますと、河川改修が如何にうまく合理的に早く行くかということから、河川法改正法案を提出するのでありまして、これは勿論私たちの選挙区にもありますが、明治の中頃に、信越本線にかかる関川の径間が三十五メーター以上でなければならんものが、二十五メーター以下になりましたので、二十年、三十年に亘つて年々二回ずつの水害を受け、その径間拡張工事の施行の請願に対しては二十年間運動して参つたのでありますが、二十五年度予算に、建設省国有鉄道折半で今年の三月三十一日に終つたようなわけであります。私鉄の場合を考えますと、私鉄も今も洪水で困つておるのだから、上げたらどうだというこことは、国鉄も同じでありますが、要するに財布の問題でありまして、なかなかやれないという実情にありまして、それが河川改修に非常に癌になつておるという、この癌だけは取除きたい、而もそれだけのことをやつてやる場合、当然利益を受けた人たちもただでおるというとは、日本人の状態として絶対にない。これは一つ幾らか河川改修のためにやつて、特別の利益を受けた人も当然何とかその措置はとるだろう、こういうところに期待する以外にないだろうと思います。
  56. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 今お話通り河川改修を当然すべきものだ、そういう前提でする私鉄の改良、これは止むを得んと思います。併しそれでない場合、それに非常に無理がありやしないか。そしてもう一つは、国が全額負担するのはいいが、先に小川さんの質問通り、例えば中小河川の場合に、中小河川は二分の一国が負担する、仮にここに工事のために五億円を要するとすると、五億円の中の二億五千万円を府県負担するのだ、今までは二億五千万円を私鉄が出していた。それを府県が二億五千万円出すそうすると大変に府県の税金に関係するというような気がしたので、先ほど小川さんの質問と同じだと思いますが……。
  57. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 非常に理論的なお話でありまして、私たち自身も赤木先生にこういう解決方法はどうですかと逆に御質問しなければならない問題でありまして、私などが答弁に立つなんということは僣越でありますが、実際問題といたしますと、鉄道の径間を鉄道自身が拡げなければ鉄道自体が非常に損であるという場合と、もう一つ鉄道蒿上げをしなければその鉄道が非常に損であるというような場合がありますが、現在の私鉄状況、国鉄の状況であつても、大蔵省として……、いわゆる独立採算制をとつておる国鉄としては、如何に毎年々々この貨物停車場が水浸しになるという状態であつても、工事ナンバーがそこまで来なければ予算に縛られてできないという、国鉄もなかなかできないようであります。径間拡張もたくさんありますが、その附帯的工事に比べると相当小さなものでありまして、その何%か何十分の一かであります。少くとも国が、府県がこの河川の附帯改修工事を行い、蒿上げ工事を行い、堤防の補強工事を行うという仕事は、鉄道が年々歳々の洪水によつて受ける被害とは比べられないところの大きな問題であります。だからその見地から国家が莫大もない国費を出してこの工事を行う、ここに必然的な附帯工事が起きて来る、県は中小河川に対して相当な県費を出してこれをやる、而も国が補助するという場合に、それに対する附帯工事というものは小さなものでありましても、やつぱりこの問題を解決せしめるためには、この河川改修を行わなければならない場合の附帯工事をどうする、府県がどうしても河川改修を行わなければならない立場に立ち至つた場合の附帯区工事をどうするというふうに、局限して一つ考えになつて頂く以外に途はないと、こう考えております。
  58. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 そこに理屈があるのです。もう少しその目、体的といいますか、数字的にいえば、やはり当然私鉄としてすべき責任があるのだ。或いは蒿上げしなければならん、そういうふうに河川改修はしなくても、そういう部分だけは私鉄がするのだ、その費用だけは投じて、あとの河川改修をやる費用はそのほかで……、そこまで行けば非常に合理的なんですが、やはりそこまで進んでいないようですが、或いは用水でもそう行くべきが私は本当だと思います。まあ併し私はこれ以上質問しません。
  59. 小林亦治

    ○小林亦治君 反対論のほうで、二十六年度予算と何も関係がないということで、非常に有力な反対の根拠があると思うのでありますが、大体この提案の趣旨は、新憲法の基本原則に引き直しておる道路法との権衡上まずいからかように直さなければならない。もう一つ行政取扱というものを成るべくなくして、抜本的に立法によるところの行政の運営を行わせなければならん。この三点から考えて見ますというと、やはりこれは一応通さなければならんじやないかと思うのであります。各種の反対意見というものは、この運営の上におきましては、十分これは楔になろうと思うのであります。各委員の反対論は非常に有益であつたと思うのであります。つきましては前に申上げましたこの三点から、先ずこれは通して上げなければならんものではないかと考えるのであります。時間ももう十二時過ぎましたから、通すなら通す、通さないなら通さない、どつちかにして頂きたい。成るべく早くしてもらいたい。
  60. 田中一

    田中一君 同じことをもう繰返しているのですから、実際こういう通して、私鉄が幾ら利益があるということを、具体的に示して頂きたいのです。何十%、或いは何%いうような小さいものだということを提案者は言いますけれども、事実一体今懸案になつているそういう個所があると思うのです。それを示して頂きたいと思うのですよ。これは五千万円でいい、それはまあ一応考えられますね。併し五千万円のために法律を変えるということも考えられない。これも何十億、数十億になつたと予想して、その場合も示して頂きたい。ただここでいい加減に通して、数十億の金が、府県のほうの負担が多額になることは困るのです。
  61. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) そんなことはないです。
  62. 田中一

    田中一君 ないならばないということをお示し願いたいと思います。再々申上げているのです。
  63. 田中角榮

    衆議院議員田中角榮君) 今のはあれですが、建設省資料によりますと、秋田県で百四十万円、福岡県で八十六万円、愛知県が三百十七万円、福井県で九十万円、兵庫県で千二百三十六万円、京都府で二百六十七万円、愛媛県四百二十万円、熊本県で四十五万円、それから東京、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬六県で七千四百万円、以上であります。
  64. 小川久義

    小川久義君 質疑を打切つて討論を……、先ほどから質疑の間に交わされた点を十分お汲取り願うこととして、討論を省略して直ちに採決に入られたい。
  65. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) ほかに御発言がなければ、討論を省略いたしまして直ちに採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) 御異議ないと認まして、採決いたします。本案に賛成の諸君の挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  67. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) 多数であります。よつて本案は決定いたしました。  なお本会議におきます委員長の口頭報告の内容等に関しまして、すべて前例に従いまして行いたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。次に本院規則第七十二条によりまして委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の署名を付することに相成つておりまするが、本案を可とせられたかたは逐次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     石川 榮一   徳川 宗敬     小林 亦治   小川 久義     赤木 正雄
  69. 小林英三

    ○委員長(小林英三君) 御署名漏れはございませんか。御署名漏れはないものと認めます。  では本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            赤木 正雄君            小川 久義君    委員            石川 榮一君            小林 亦治君            田中  一君            徳川 宗敬君            東   隆君   衆議院議員            西村 英一君            田中 角榮君   政府委員    地方自治庁財政    課長      奧野 誠亮君    建設省大臣官房    会計課長    植田 俊雄君    建設省河川局次    長       伊藤 大三君    建設省住宅局長 伊東 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       菊地 璋三君