○兼岩傳一君 この法律は、意図するところは非常にいいのです。科学的且つ総合的に
国土を
調査しようというので非常にいいし、それから
昭和二十二年以来
専門家の諸君が法律案をここまで持
つて来られた努力にも敬意を表するし、それからあらかじめ机上の
説明でなく、数カ所の場所をと
つて実際それのモデル的な
調査を進め、これを我々に見せて下さ
つたことも非常に周到な態度であるとして敬意を表したいと思います。
併しながらこうい
つた法律が出て、そうしてこれによ
つて一定の
予算が参りまして、そうして
技術者を中心にして
専門家の諸君が活動される。その活動の結果の政治的な意義という観点から
考えると、我々は遺憾ながらこの法律案の前途というものは極めて明白であり、且つこの法律案が吉田内閣の下で果すべき役割も非常に明確であると思います。これを具体的に言えば、先ず
基本調査につきましては、これは
測量の
合理化と、非常に将来に役立つということで、これは殆んど直接国民経済には寄与しない、つまり専門
技術としての
測量がここで合理的に遂行されるということに私は帰着するだろうと思う。それから同時に分類
調査の
効果ということに至れば、これも徒らに
国土が崩壊して行くという事実を図面の上に記録することに私はなるであろうと思う。それから
水調査に至
つては、これの基礎の上に水力の開発或いは農業生産の発展などということを云々されますが、吉田内閣が意図しているところは、こうい
つた水資源を真に日本の勤労者のために平和的に発展させることでなくて、外資導入などをして外国の資本をここへ持
つて来て、外国に利権を売渡して行くという結果に陥るその
一つの
調査になるに過ぎないであろう、且つそれが仮に外資導入その他の
方法によ
つて水力ができましたとしても、その電力資源というものは日本の農業及び平和産業を無限に発達させて行くという方向とは反対で、日米経済協力態勢という名の下に、むしろアメリカの再軍備拡張に照応するところの軍需産業の下請にこの水資源が使われるということに帰着し、農業は更に崩壊の度を進めるであろう。それから平和産業は更に崩壊の速度を進めるであろうということになると思う。それから地籍
調査に至りましては、これはそうでなくても苛酷なる税金を更に合理的に苛酷に取り、苛酷性を
合理化するということに帰着するであろう。即ちこの法律案が実際遂行される政治的な意義、及び国民経済に及ぼす影響を
考えますと、丁度表面的には進歩的なルーズベルト政権がニユーデイール政策を提げてT・V・Aで果したような役割を演ずるかのごとき幻想を与えておりますが、これはむしろヒツトラーが
国土計画の名の下に全国的な
調査をやりましてそうしてその
成果として世界に誇るべき自動車道路網の築造をして、当時の一九二〇年の初頭の世界をあつと言わせましたけれども、その帰着するところは、国内の労働問題の弾圧と、それから第二次大戦における二正面作戦の軍事移動に備えたという理由によりまして、立派なはずの
国土計画、科学
計画の粋を尽したヒツトラーの
国土計画は、徹底的にドイツ民族を崩壊に導くことに役立ち、現在ヒツトラー道路といえば、ヒツトラーの墓場という名称をヨーロッパで与えられておりますが、この
国土調査が仮に吉田内閣の下で行われるといたしますれば、まさにうまく行
つて、最もよくてヒツトラー道路の役を果す程度、即ち
政府が提案で
説明しておられます、及び
大臣が提案の理由で
説明しておられます経済自立をできるだけ早く達成するどころでなくて、これらの
資料は国を外国のための軍時基地化に使い、且つ外国の軍備拡張の手足とな
つて、日本の平和産業を亡ぼし、且つ第三次大戦に捲込まれる、或いは
国土の最後的な崩壊そのものに役立つであろうという、この
国土計画の
調査は、担当者の善意な意図及び
技術者及び科学者諸君の善良な意図、及び
政府の提案の美辞麗句にもかかわらず、私はこの法律案の果す役割は、およそ
希望と正反対のものであろうということを見通すのは困難でないと信じます。よ
つて日本共産党はこの法律案に反対であります。