○
証人(
中島英信君)
臨時物資需給調整法の一部を
改正する
法律案が出ておるようでございますが、これについて
最初一般的な
結論だけを申上げたいと思います。
大体においてこの
趣旨には
中小企業の
立場から見ても
賛成いたすものであります。この第一の
有効期間の
延長という点でありますが、現在残されておる
統制品目は非常に数が少くな
つております。これらのものは現在なお
統制の
存続を必要とするものが認められます。で
中小企業に特に
関係のあるものでは
相当に強く
存続を必要とするようなものも中にはあるのであります。それについては
あとでもう一度申上げますが、そうい
つた意味でこの
有効期限の一年間
延長ということには
賛成をいたすものであります。
なお第二番目の
物資需給調整審議会を設置する点も同様であります。ただこれについて特に
中小企業の
立場から申上げて置きたいことは、この
審議会の公正なる
運営であります。これは政令によ
つてきめられることにな
つておると思いますけれ
ども、実際には
相当に影響の大きい問題でありますので、一言申上げて見たいと思います。それはいろいろなこの
審議会が設けられる際に、
民間産業界からもそれぞれ
代表が参加する場合が多いのでございますけれ
ども、
中小企業関係の
事情なり、
意見を反映し得るような人が参加することは非常に稀なのであります。そのためにこれは
審議会に限らず、
一般に
経済施策が行なわれます場合に、この
中小企業はこの
施策の盲点になるということが従来までに多く見られておるところであります。
従つていろいろな
経済政策が実施されるに当
つて中小企業にいろいろなしわ寄せが行なわれて来る。これは皆さんもいろいろな点において
御覧になるところであると思います。
各種の
政策が実施されるに当
つてこのような
中小企業が場合によ
つたならば犠牲にされる、或いは
被害者の
立場に立つというようなことが少くないのでありまして、こうい
つた点を防いで公正な
産業政策の実施という面から見て、
審議会のような
機関にはやはり
中小企業の
実情に通じ、且つそのあり方について正しい識見を持
つておる者を加えるということが是非必要であるとこういうふうに考えます。
従つて單に
民間から
民間の
産業人を加えると言う場合には、当然
中小企業関係の
代表も加えてこうい
つた被害を除去することが必要であると考えます。
第三の点についても別に
意見はございません。
なおこの現在、
臨時物資需給調整法は現在行なわれております
経済統制の一部をなしておるわけでありますが、私は
中小企業の
立場からそういう
経済統制一般の問題について少し
意見を申述べたいと思います。
その中にこの
物調法に関する問題についてもなお若干織込んで申上げたいとこういうふうに思います。
最初お断りして置きたいと思いますことは、
中小企業と
一般に言いますけれ
ども、実は
内容がかなり複雑にな
つております。
従つて例えば
統制経済に関する
意見を聞きましても、或る者は絶対に反対であるというような
意見を言い、中には
賛成とい
つたような
意見を申述べる場合もあり得るわけでありますから、これは
業種が違い、規模が違うに
従つて統制の及ぼす影響なり、或いは
統制と関連した
利害関係とい
つたようなものがそれぞれ異る点があるからであります。例えば
業種の面で大きく
商業と
工業或いはその他の
事業と見た場合に、
商業と
工業でも同じ
中小企業で以て
物資の
配給その他に関しては当然
利害関係が異
つておるわけであります。又同じ
製造工業の中におきましてもいろいろな分野があります。例えば
中小企業だけで占められておるような産業分野、つまり
中小企業の専門的な分野があります。又大
企業と
中小企業が併存して競合しておるような分野があります。こうい
つた場合にはそれぞれ特殊の
生産、
配給の規制等の場合に当然
利害関係が若干異
つて来るわけであります。例えば専門の分野の中でも原料部門を小数の大
企業が持
つておる、その供給を受けて
中小企業者が
生産をしておるとい
つたようなものになりますというと、かなり変
つた性格を現わして来るわけであります。例えばメリヤスの加工とい
つたようなものがあります。これは殆んど全部中小
工業と言
つてよいのであります。こういうものの原料は例えば綿メリヤスでありますと、やはり紡績
会社から提供される。こういう場合にこれが單なる自由放任ということになりますと、メリヤス
業者の手に材料が十分に渡らんというような場合が非常に懸念されるわけであります。又
自主統制とい
つたような形をと
つた場合にもこれは実際的にそのほうへ材料が廻らんというようなこともでき上
つて来る。こういう
意味でこういう特殊な部門、即ち原料部門が少数の大
企業に独占とい
つては言い過ぎかも知れませんが、大体占められておる。こうい
つたような
関係に立
つておるところにあ
つては、やはり
国家的な
見地から公正な
割当てその他をするという必要もあるわけでありますから、こういう
業種に属する人たちはやはり或る種の
統制というものを
経済情勢によ
つては必要と考えておるわけであります。つまり非常に原料の供給が多い場合には勿論別でありますが、現在のような
程度の場合においては、むしろ
統制によ
つて公平な、公正な
経済活動ができる、こういうような状況であります。これは現在の
物調法のやはり指定品目の中にも入
つておるのでありますがこうい
つた品目についてはやはり
存続するということがその
中小企業のために必要だ、こういうような
関係にな
つておるのであります。なお逆に又
統制というものを余り好まない
業種というものも
相当にこれはあります。その点は先ほどお断りしましたように、
業種により、或いは又規模等によ
つてそれぞれ
利害関係が若干内部的には異
つておるわけであります。
一般的に概括して申上げますというと、やはり
統制についてこれを歓迎する者は少いのであります。殊に
中小企業は自由
企業的な性格を非常に強く持
つております。それから戰時中に行われました
経済統制の或る
意味で
被害者であ
つた。こういう
経験からして主観的には殆んど
経済統制というものを好まないわけであります。但し私も
中小企業者でありますけれ
ども、
中小企業者というものは若干割合に
経験だけによ
つてものを考え、或いは若干近視眼的なところもあるわけでありまして、
従つてこれを客観的に見た場合に果してどういうような形が
利益であるかということについては検討を要する点もあるかと思
つております。ですから
統制につきましては
統制が絶対的にいいとか、絶対に惡いとかいうことは一概には言えないという考えであります。つまり
統制の目的なり、方法なり、
内容なり、形なりによ
つてそれぞれ
関係が違
つて来る、こういうふうに考えておるわけであります。結局要点としましては、
中小企業の
存続発展ができるような方向に向けられること、そのためには資材の
配給等に関して言えば、資材の
配給が公平に行なわれるということが行なわれるならばいいのでありまして、
従つてどういうふうな方法なり、形を
統制がとるかということによ
つて、それぞれの方法に対する是非の見解が出て来るわけであります。即ち
一般的に言いますというと、
経済統制によ
つて活動がそれぞれ制限をされ不便になり、又能率やその他の成績が非常に害されるわけでありますが、
統制自体はでき得べくんばやはり避けたほうがいいというわけであります。但し特殊の
経済情勢の場合においては公平な、妥当な方法をとられることがときには必要な場合がある、こういうような
意味であります。それは丁度消費
物資について言えば、非常に食糧が
不足なときには貧乏な人間には却
つて統制があるごとによ
つて却
つて食糧を確保できるとい
つたようなのと同じ
意味になると思うのであります。それで
統制の必要、特に現在の事態において
統制が必要であるかどうかというような点について次に申上げたいと思いますが、現在でもやはり
経済統制が若干行なわれておるわけであります。
従つて完全な自由
経済ではないわけでありますが、これは
実情から言いまし、恐らく現在の
経済を完全な自由放任状況に置くということは困難であると思います。そうい
つた場合には不公正な競争も起りやすいし、或いは
消費者の
利益を害するということもできますし、又
経済秩序を混乱させる場合もあるわけでありますからして、完全な
統制の撤廃、或いは完全な自由競争ということが必ずしも適当ではないわけでありますが、問題は
従つてどういうような
條件の下にどういうような
統制をするかということにあると思いますが、大体私らが考えておりますのは、
統制が必要な場合というのは、需要と供給の
関係が非常に食い違
つて来る、いわゆるアンバランスにな
つているような場合、或いは
経済変動が非常に急激に行なわれる場合、例えば物価等が非常に急速に激しく変動する、こうい
つたような場合にはやはり或る
程度のこれに対する
措置が必要であります。つまり資材が非常に少い場合、或いはインフレーシヨンの激しい場合ということになると思います。それで現在果してそういうような状況にあるかどうかということでありますが、この点につきましては、世間でも
一般に言われておりますけれ
ども、非鉄金属などは
相当に資材が足りなくな
つて来ております。一方又価格が上
つて来ております。
中小企業でも
一般にそういうものを原料として使う
中小企業は原料の獲得難、或いは原料高、製品安と言
つたような状況に悩まされている状況であります。これを
統制したほうがいいか、自由のままのほうがいいかということになりますと、それは
業者のそれぞれの
立場によ
つても違うのでありますから、個々の
業者の
意見には幾らか相違もあるわけであります。併し足りなくても自由な状況にな
つておれば
自分の腕で以て幾らでも取
つて行くんだから自由のほうがいい。こういう考えを持
つている者もあります。それから一方ではできるだけ公正にやはり
割当られ、且つ適正なる価格で手に入れるような方法をとられることが必要であるというような見解もありますし、どちらかと言いますと、
中小企業の場合は
統制された場合には従来のような
統制が行われると、その
割当の対象から除外されるとかいうような懸念もあり、又
割当をもらうとしても非常に少くて実際には役に立たないという場合もある。又
割当によ
つて物資を実際に獲得する場合には非常に手数がかかる、煩雑になるという点もあるために、概して
統制を避けることができるならば
統制を避けて、こうい
つた物の供給がもつと潤沢に行われるような面において
経済の
政策を進めるとい
つたようなことが望ましいというようなことが大体
一般的な見解であります。その他非鉄金属以外のものについても最近は原料の面においては
相当窮屈にな
つて来ておりまするが、大体同じような見解ですけれ
ども、但しこれもそうい
つた狭い視野からでなしに、現在の国際的な政治
経済の状況から見て、今後ますますこの材料の
不足が甚だしくな
つて来る、そうしてそれは長期に亘るだろうという見通しがとられるならば、この場合には全体的な視野から見て、或いは
統制というものも場合によ
つては避けられない場合もあるのではないかということも考えられますが、その場合には、次に述べますけれ
ども、適正な公平な
配給の
統制方法をと
つてもらいたいというようなところが
一般の
要望とな
つておるのでありす。勿論資材が單に
不足するとい
つた面からだけでなしに、非常に
各種の資材についても、或いはその他の物価、その他についても不均衡がある場合には、若干こういうものを是正して行く必要があると思いますが、
中小企業の力というものは
経済的には余り強くない、つまり社会
経済の内部におけるこの地位なり力というものは、その数の割合には割合に弱いものでありますからして、そうい
つた面に十分に
自分たちの地位を、
自分たちの
利益を守るということができない。その
関係からして
経済の非常な変動が激しいというとその煽りを食うということが非常に多いわけであります。
従つて若しそうい
つたような懸念が多い場合には、大局的な
見地から見てやはり
経済安定の
施策を講じてもらう必要がある。現在
経済九
原則以来とられて来ているところの
経済安定
政策は、重点がどちらかというと通貨資金にあるわけでありまして、やはり本当の
意味で
国民の
経済生活は安定に直結するというよりも、むしろそうい
つた財政、金融面における安定という面が強いわけでありますからして、そうい
つた狭い
意味でなしにもつと広汎に、やはり
国民経済の均衡安定を図り得るような
政策が根本的には絶えず必要であるというふうに考えております。併し
統制をすぐするか否かということは別として、そういうような
見地から絶えず
国家として
経済情勢に対する調査なり測定なり、或いは計画とい
つたものは絶えず必要であるわけであります。つまり混乱が起
つてから
措置をとるということではなしに、そういうことが起らないような予防的な
意味において、それに対する準備というものは絶えず必要であると、こういうふうに考えております。それでそうい
つた点から見た場合に、現在の事態はどうであるかという点でありますが、この点は現在の朝鮮事変等は或る
意味で世界的な戰争に繋が
つておる面があると共に、或る面においては局部的である、こうい
つたものに対する見通しに対する判断は我々としては非常に困難なわけでありますけれ
ども、併し恐らく世界的に一つの準戰時体制的な形において進みつつあるということは大体において言えるのではないかと思うのであります。こうい
つた点を考えますというと、でき得るだけ
統制を避けて行くことも、仮にこの状況が進んだ場合には何らかの
経済統制をやはり考えなければならない。或いは部分的に、或いはそれを段階的に行うことも考えなければならないことがあると思うのであります。そうい
つた点を一応見た場合には、やはりただ單に
統制は好ましくないということばかりはい
つておられないわけであります。それで我々の
立場としては、結局
統制が若しも避けられないというような場合には先ほど申上げましたように、この
統制の目標と方法というものについてあらかじめ絶えず検討を加えて置く必要があると考えております。その点ではこれはまあ
一般的にしばしば指摘されておるわけでありますから、私らが特に申上げることはないのでありますけれ
ども、戰時中に行われた
統制と今後行われる
統制とは基本的にいろいろな状況が違うわけであります。つまり直接
日本が戰争をやることを目標として行うものではなしに、やはりこれは主として外部的な
関係のほうが主にな
つておるということ、
日本の場合にはどうしても生活のやはり安定という点と結び付かなければならんということ、特に我々はこの前に行われた
統制の場合には、非常に多くの
中小企業は実は転業をさせられたり、廃業をさせられたりしたわけであります。戰後にな
つて辛うじてこれが復活したという状況であります。そうい
つたように、前に行われたような
統制というものが小数の例外はありますけれ
ども、多くの
中小企業には非常に打撃を与えたわけであります。
従つてそうい
つた形における
統制というものを好まないことは言うまでもないわけでありまして、仮に
統制が必要であ
つても
中小企業の
日本経済における重要性というものを十分につかみ、且つ今後の
日本の産業構造の中に
中小企業の占める位置というものをできるだけ公正につかんで、その上に立
つてこうしたものが当然に生き残
つて行けて、且つ
国民経済の全体に寄与するようなことを目標としてやはり考えられる必要があると考えております。その点は特に必要なことでありまして、若しその目標がはつきりしてお
つて、そうして
統制がとられるならばおのずから方法もここに出て来るわけでありますからして、必ずしも犠牲者にならなくても済むというわけであります。これは実例を申上げますと、戰後例えば油脂なら油脂
工業で石けんの
関係の
統制が行われておりました。この
統制が集中
生産の問題が起ると同時に非常に変
つたわけであります。その
意味において或る部分この
統制が外されたのでありますが、そのときにどういう現象が起
つたかというと、その以後において殆んど大部分の中小石けん
業者というものは没落してしま
つたわけであります。塗料などにおいても同様なことが起
つたわけであります。これは勿論前の戰後
最初の時期に行われてお
つた統制がいいか惡いかという点については、若干批判の余地があるかも知れませんけれ
ども、つまり
統制されてお
つた時期において却
つて中小企業というものが比較的安定をした営業をしてお
つた。それが一部分或いは大部分自由競争の中にいきなり放り出されると、却
つて急にそれが顛落してしま
つた。こうい
つた例もあるのでありますが、これは要するに
統制の方法の如何によ
つては
中小企業も適正に生きて行くことができる。これを急激に変化を与えたり、或いわこの状況が非常に不利なときに、いきなり自由競争の中にぶち込まれるということは却
つて生きて行けない場合が出て来ます。自由競争が
最初から行われておる場合はこれは別でありますけれ
ども、そういうような実例もあるわけでありまして、
従つて統制を歓迎するという
意味ではないのでありますが、若し
統制が必要な場合、多くの
法律がよければ、これは必ずしも
中小企業に打撃をそれほど与えなくても済むというわけでありまして、こういう点に十分な考慮をされる必要があるわけであります。そうしてこれは私先ほどの
委員長のお話で、現在の
経済統制というお話でありました。若干将来に亘
つてずれるかも知れませんけれ
ども、現在そういうような新らしい
経済統制に或いは入るかも知らんというような状況でありますからして、それにもう一つ若干附加えて申上げたいと思います。それは若しも今後そういう
経済統制が必要だということに
なつた場合には、適正な方法をとるためにはやはり
最初から
統制に
関係する法規の中で
中小企業に
関係する
措置を十分に織り込んで行くことが必要であります。この点は
アメリカの最近の国防
生産法などを見てみましても、かなりはつきりと
中小企業に対する考慮というものが中に払われておるようであります。国防
生産法の
ちよつと
條文を忘れましたけれ
ども、第七章の中に、基本的に
中小企業に対する保護の、或いは適正な考慮を払わなけりやならんということが
原則的に一応謳
つてあります。なお国防
生産関係の
機関の中には
中小企業に対する専門の
機関というものが設けられております。そうして
政府が発註する場合にもどういうものを発註するかということを
中小企業者にあらかじめ知らせる、それから価格等についてもあらかじめこれに対して考慮を払えるような方法を講じて、つまり公平に
中小企業も註文が受けられるとい
つたような点、或いは資材の
配給についてもやはり受けられるとい
つたようなことを今度の
アメリカの国防
生産法の中にはつきりと
規定しており、且つそれに基いてそうい
つた中小企業面を専門に担当する
機関というものが設けられておるわけであります。こうい
つた点は今後若し
日本においてそうい
つた統制が考えられる場合には十分に参考にすべきことであると思うのであります。これは單に
中小企業をただ育成するとか、保護するとかいうような
意味だけでなしに、そうすることによ
つて国家の財政支出の面においてもこれを合理化することができると思うのであります。つまりできるだけ広い
企業にこの受註の機会を与えるということによ
つて、比較的低廉な価格で能率的に
生産する
中小企業があ
つた場合には、そういうものにも発註するということによ
つてこの調達の費用というものを軽減することもできるわけであります。こういう
意味から言いますというと、
国家的に見ても財政の支出の面における合理化という問題を同時にこれは達成することができる
措置であると思うわけであります。單に
中小企業の
利益を考えるということだけでなしに、
国家的な
施策としてやはりプラスしております面が非常に多いのであります。
従つてこれは今まで
日本で行われたように
中小企業はどうな
つてもいい、そういうものは倒れてもかまわないのだとい
つたような考え方の上に立
つた施策でなしに、
中小企業というものを本当に
日本の
経済の中に活して行くということを前提として、そうして公平なる
施策がとれるような方法が望ましいわけであります。この
アメリカの国防
生産法の
中小企業関係の問題については、なおいろいろ申上げたいこともありますけれ
ども、直接
関係が余りございませんから、今の要点に関する点だけを申上げたのであります。
それからなお特に関連のある
統制の方法に関して一言申上げて置きたいことは、
統制のつまり対象になるものはいろいろあります一
企業自体、直接
企業に対してもこの
存続とか、拡大するとか、結合、或いは転換とい
つた問題も
統制の対象になりますし、或いは資材、価格、賃金、労働力とい
つたようなものも対象になります。又資金に対して規制をすることもある、或いは
生産、輸入に対する
各種の制限をする、こういうふうにいろいろありますが、恐らく
日本の現状から言えば、問題になるのはこの資材の面と、或いは続いて価格の面と、その
程度が主として現われると思います。併しこの資材だけを單にと
つて統制をした場合に、或る種の資材が
統制される場合に、その資材を主要な原料として作
つておるところの
製造工業におきましては、その資材が手に入らないならば、その
企業自体はもうやめなければならんというような状況になるわけであります。
従つて單に極く一部分の
統制を行な
つても、実際はこの
統制の相手に
関係のある
企業にと
つては
企業の
存続の問題に影響するわけであります。
従つてこの場合にはその資材は必要があるから
統制する、併しそのために
企業は潰れるか、潰れないか、そういうことは知らんというような形で行われる場合が非常に多いのであります。これは実際に非常に大きな問題でありまして、この形は自然淘汰というような形をと
つて、実際は或る
意味で意識的に
中小企業を淘汰するに等しいことになるわけであります。
従つてこうい
つたそういう懸念がある場合には、併せて他の方面において
中小企業の転換なり、或いは他の形における
存続のできるような
施策というものと当然併せてやる必要があると考えるわけです。
従つて統制をできるだけ避ける、そうしてできるだけ必要があれば部分的に始めて行くという場合においても、
最初から全面的な見通しだけはこれを持
つて、そのために生じて来るところの
弊害なり、産業に与える打撃というものに対してはこれを救済する方法というものを
最初から用意されるべきであると思うのであります。で、こういう場合に一番強い影響を受けるのは常に
中小企業なのでありまして、こういう点がしばしば看過されて行われるということのためにその
企業を失い、而もこれを大きな
経済政策の面についてその
実情を反映させるというような手を殆んど持たないために、泣き寝入りをするという
実情が非常に多いわけでありますからして、この点はそういうように
統制の方法として部分的、或いは段階的な方法がとられる場合において、間接的に与える影響というものを併せて考慮する必要があるわけです。
それから
最後にこの
統制の
機関と
責任の問題であります。これはこの
自主統制か、まあ
官僚統制といいますか、どつちなのかという問題がよく出ております。で、これはまあ
官僚統制の場合には先ほど
仲矢さんからもお話があ
つた通り、非常な
弊害が伴うのであります。併しまあ
自主統制の場合にも勿論若干伴う。ただ
統制の本質から行くとやはり
自主統制にも若干限界も勿論あると思います。これは詳しい細かい点は申上げませ人が、
結論としてはこの両方のやはり
弊害を避けてまあ両方のいいところのものをと
つた形のものが
結論としては出て来るのではないかというふうに考えております。特に
中小企業全体から見た場合に、或いは極く小部分の例かも知れませんが、先ほど申上げたメリヤス業のような
業種の場合をとりますと、そうい
つた場合に
自主統制がとられるということになると、恐らくこれは加工部門であるところの
中小企業のほうはそのために殆んど逼塞させられてしまう、こういう懸念もあるわけであります。
従つてこれはそれぞれの
業界に応じたやはり
施策か必要であ
つて、全り画一的なものであ
つてはいかんのではないかと考えております。なお一〇〇%
自主統制、一〇〇%
官僚統制ということは実際上行い得ないことでありますので、これらについては適宜やはりそうい
つた特徴を併せた方式というものが当然考えられるべきものであると思います。
それからまあそれに関連しまして、現在なお
統制が行われておるわけでありますが、一つの傾向は、そういう場合に
責任の所在が不明瞭になること、このために
業者は実は甚だ迷惑する場合があるわけであります。つまり切符は
官庁で発行する、ところが現物を手に入れることができない、そうい
つた場合にどこにその
責任があるかということが非常に不明瞭になる場合がある。
従つてこれは現在でもそうい
つた場合が言われつつあるわけでありますが、このやや総合的な方式をとられる場合に特にその懸念ができて来ますので、この
最後的な
責任、或いはこの部分的な
責任も、すべてこの
責任の所在をはつきりする。で仮に
割当の切符を出したという場合には、それが必ず現物化するところまで徹底してそれを追及することができるようでなければ、切符はもら
つたけれ
ども仕事ができないというようなことがしばしばできるわけであります。この点で
統制の
機関について考える場合には、各
機関の
権限と
責任を
相当はつきりして行くことか必要であることであります。そうしてこうい
つたものを合せて……結局どんな場合にも若干の
弊害はできて来るこ思いますので、そうい
つた弊害ができて来る場合にはこれに対する救済の方法を考えて置く必要がある。つまり
官僚統制を主とした場合には、
実情のわからない人たちがかなり天降り的に非能率的な
統制をする。
自主統制の湯口には
相当な力を持
つた少数の
企業に抑えられる場合がある。いわゆるボス的な支配をされる場合もあるので、どのような場合にも不公正な取扱を受けたものが、たれの救済を受けるために何らかの公訴する手続なり方法が与えられる必要があると考えるわけであります。そのためには適正な
委員会制度なり、一種の公聴会制度なり何か適当な方法を以てそれに対する救済の手を打
つて置く必要があると考えます。
大体予定の時間も過ぎたようでありますから、これで私の話は終りたいと思いますけれ
ども、
一般的な
経済統制に対して
中小企業の
立場から申上げることは、
経済統制の目標を適正な
国民経済の全般にやはり置いて目標を立てる必要があるということ、つまりそれは内部の産業の構造的な
関係をも十分に配慮する必要があるということです。それから
統制の対象を細かく選択する場合に影響する間接的な影響も同時に考えて、
中小企業の整備とい
つたようなものを濫りに生じないように
措置をするということであります。それから
統制の機構については
アメリカの国防
生産法に見るように、基本的にはやはりこれに対する担当
機関を設け、更にその下部の
機関においては必ずしも
自主統制でない、必ずしも
官僚統制でないそれは実際に適合した
組織を考えること。
最後にこうい
つたものから生じて出て来るところの
弊害というものも若干考えられますので、これに対しては特にその犠牲者になり易い、
被害者になり易い
中小企業のためには、これに対する救済の方法があらかじめやはり考えられてなければならんのではないかという点を申上げたつもりであります。これで私のお話は終りたいと思います。