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1951-07-13 第10回国会 参議院 外務委員打合会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月十三日(金曜日)    午前十時四十三分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○講和に関連する諸問題並びに国際情  勢等に関する調査の件  (対日講和条約草案に関する件)   ―――――――――――――
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは只今から外務委員打合会を開きます。今日は講和に関連する諸問題並びに国際情勢等に関する調査継続をいたすわけでありますが、御承知ようにこないだの十日にAP電といたしまして、対日講和条約草案発表がございましたし、引続きまして今暁正式にこの草案発表されたわけでございまして、これによりまして日本が現在及び将来に亘つて影響するところは非常に大きなものがあるわけであつて国民は全国民挙げて非常な関心を持つてこれに対しているわけでございますので、参議院といたしましても、特に外務委員会といたしましても、早速この問題を取上げまして、今日からこれを研究して行きたいと思います。どうぞ政府側におきましても、遠慮なく御意見の御発表を頂きたい。と同時に、委員各位にも熱心に御出席を頂きまして、御協力を頂きたいということを最初に申上げたいと思います。政務局長、何か御発言がございましたらお願いいたします。
  3. 島津久大

    説明員島津久大君) お手許に今暁発表になりました日本国との平和条約草案、これの外務省で仮訳をいたしましたものを差上げてございます。この草案発表になりまして、今後これにつきまして、配付を受けた各国から又意見が出ることと考えられます。従いましてこれが平和条約の最終的な案とは勿論考えられないのでございますが、大体まあ条約上今日まで主要な点について十分ダレス大使中心として討議が尽された模様でありますから、大きな違いは先ずないものではないかと想像いたします。又そういうよう関係国意見が集まりましてその上で最終案ができまして、九月早々に調印の運びになる予定と聞いておりますから、従いまして私ども事務当局といたしましても、できる限り迅速にこの草案につきまして研究を進めまして、国会の御研究に資したいと考えておるのでございます。何分今日出ましたばかりで、十分まだ検討を尽しておりません。従いましてこれに関連しまして種々資料が必要と存じます。これもできる限り速かに整備いたしまして、御参考に供したいと考えます。従いましてこの際草案全体につきまして逐条的に御説明申上げるのも如何かと考えますので、或いは御質問によりまして、今日の段階におきまして御答弁申上げられる点は申上げるということにいたしたいと思います。極く大まかな点だけを最初に極く短時間に概括的な御説明だけは順序といたしまして申上げることにいたしたいと思います。  この草案全体につきまして、ダレス大使が最近声明を発表されておるのであります。その趣旨によりますると、この草案作つた手続というものが、多数の関係国会議によらないで、個別的な折衝によつたということが、第一点として挙げられております。第二点といたしましては、日本に対して将来永久に亘る制限というものを課さないという特徴が挙げられておるのであります。大体この草案を見ますというと、制限的なものが殆んど全く出て参らないのであります。これは大きな特徴であろうと考えられます。そういたしまして全体から見まして、前文ではこの条約を結ぶ日本乃至は連合国の意図、目的、そういうものが調われておるのであります。これは前文にある通りでございまして、特に御説明の必要はなかろうかと存じます。  次に章を分けて申上げますと、第一章は、戰争状態の終結であります。第二章は、領土条項であります。ここに(a)から(f)まで列挙いたしておりますように、日本領土から離れる地域というものが列挙されておるのであります。従来いろいろ報道がございましたが、とれによつて正確にどこどこが離れるということがわかるわけであります。領土に関連いたしまして、北緯二十九度以南については特別に一条を設けてございます。地域に次ぎまして、日本から離れる地域、或いはこれに準ずる地域日本本土との間の財産承継相続、そういうよう関係条項が入つております。これは将来日本国とそういう当局との特別の取りきめによるということが謳われておりますので、これは講和条約が成立いたしました後の問題に残されることと考えられます。  第三章安全に関しましては專ら国連憲章原則が基本になつておるのでありまして、国連憲章第二条に掲げた義務のうち、特に、こういうよう義務を受諾するということが、第五条の冒頭に掲げてございます。これは御承知ように、第二条に原則が一項から七項まであるのでございます。そのうちの第三、第四、第五この主要な条項が、この条文の(a)の(i)(ii)(iii)この三項に大体そのまま盛られておるのであります。日本がそういうよう義務を受諾いたしますと同時に、連合国日本との関係においてこの第二条の原則に従うべきことを確認すると申しまして、これは五条の(b)でございますが、連合国側も又この原則に従うということを確認いたしたのでございます。その(c)項といたしまして、憲章第五十一条に掲げた個別的又は集団的自衛の、固有の権利を有すること、及び日本国が集団的安全保障取りきめを自発的に締結できることを承認するという重要な一項が加わつております。次に第六条といたしまして、占領軍の撤退、外国軍隊の駐屯、それに関連いたしまして、占領軍が保有しております財産返還、そういうよう規定が出て参るのでございます。以上が安全に関する条項であります。  第四章は政治及び経済条項でございまして、第七条には二国間の条約の復活に関して規定いたしております。第八条は従前の諸種の条約関係日本との関係というものを謳つておるのでございまして、例えば(a)項におきましては第二次大戰後戰争状態終了乃至は平和回復のための取りきめ、この効力の承認の問題、(b)項につきましてはコンゴー盆地ダーダネルスボスフオラス海峡の船舶の航行に関する問題、乃至はローザンヌの条約、即ちトルコの領土に関する関係、乃至はドイツ賠償支払に関する関係、そういうものの関係が語つてございます。九条は漁業。十条は中国における日本特権関係。第十一条は戰犯、十二条は日本経済関係協定を将来連全国と結ぶ用意があるか、その間の協定ができるまでの間どういう措置をとるか、最恵国待遇、その他の具体的な暫定掛冠について規定をいたしております。十三条は航空の問題であります。以上が政治乃至経済関係条項であります。  次の章、第五章に参りますと、請求権財産の問題でございます。冒頭に、日本原則として賠償を支払うべきであるけれども、実際は弁済能力に欠けておるということを申しまして、尤も次ようなことはしなければならんということで、賠償に関連しまして、最も損害を受けた国との間に今後交渉をするという形になつております。同時に在外財産処置、それに関する例外、そういうような具体的な規定がございます。そういたしまして、この賠償、或いは在外財産規定最後に、十四条の最後でありますが、この条約による規定、この条約による関係規定がない場合には、連合国はすべての請求権放棄する。つまりこの条約に書かれた以外には請求権はもうないのだということが明らかにされております。第十五条は在日連合国財産処置でありまして、手続乃至はその返還のいたしようが書いてあるわけであります。これに続きまして工業所有権著作権の問題、そういう問題が挙げられております。第十六条になりますと、捕虜補償の問題でありまして、その補償について如何なる財源を使うかということになりますと、戰争中中立国、乃至は旧敵国にある日本財産国際赤十字に引渡す。そうしてその補償に充てるという趣旨であります。そのほか捕獲審検所の問題、乃至は戰争状態存在前に存在した義務及び契約の処置、或いは対外債務の問題これが十八条であります。第十九条は日本請求権放棄、乃至は日独間の請求権の問題。第二十条はドイツ財産の処分の関係であります。二十一条になりますと、ここに中国朝鮮はこれこれの利益を受ける。つまり中国につきましては特殊権益日本放棄するということ、これは十条、それから日本在外資産の問題、これは第十四条の(a)2でございます。そういう利益を受ける。入らない場合にもこういう利益を受ける。朝鮮はこの条約の第二条独立であります。領域の条項の初めに出て参ります。それと第九条漁業及び第十二条通商関係最恵国待遇の問題、こういうよう利益を受ける資格を持つということが書かれております。  第六章は紛争の解決でありまして、国際司法裁判所の関係が二十二条であります。  第七章は最終条項でありまして、二十三条の初めは発効の条件であります。二十四条は批准書の寄託。二十五条は只今申上げましたよう連合国定義であります。この条約連合国と申しますのは、日本に対して戰争状態にある国であつて、この条約に署名し、且つ批准したものをいう、これが連合国という定義になるわけであります。従来連合国定義につきましては明確でなかつた点が多いと思うのであります。この条約の上から責任が明確になつて参るわけであります。二十六条は加入乃至別途条約の締結。  大体以上が草案の本文になるわけでありまして、これ以外に宣言といたしまして、二つに分かれた宣言がなされる。これは日本側が、日本国政府側宣言する形式でありまして、第一の宣言加入国間の国際文書、多数国条約関係でありまして、この二項に、条約効力発生の後六カ月以内に、次のよう国際文書に正式に加入する意向であるという趣旨日本宣言するわけでありまして、その意向として、その内容としまして、(1)から(9)までの条約協定その他が掲げられておるのでありまして、麻薬、或いは裁判関係経済統計、税関の関係航空、或いは海上の人命安全、戰争犠牲者の保護、その他の条約が掲げられておるのでありまして、かなり多数且つ厖大な内容をなすものであります。  次の害言はここにお読みになります通り、戰死者の墓、墓地、記念碑という関係でありまして、これに関しまして連合国委員会代表団、そういう機関ができますとしまして日本側は必要となることのある協定を締結するために交渉を行うということが日本政府の立場から宣言されるというわけであります。  極くあらましでございますが、一応の御説明は以上の通りであります。
  4. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 御質問ございましたら……。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 私は先ほど委員長が仰せられたように、従来この委員会におきまして講和問題に関する継続的な研究をしておりました関係で、このいよいよ公表されました米英共同草案に関する研究を今日から続けてやつて頂きたいと存ずるのであります。なお又根本問題といたしましては、私たちの会派のほうでは政府に対しまして速かに臨時国会を開催いたしまして調印前におきましてもこの条約の正式の審議といいますか、予備審査といいまするか、政府から提案してもらつて審査するということを政府に要求したいと思つておるのでございます。併しそれはそれといたしまして、先ほど申しましたように、委員会継続研究の一環といたしまして是非この会合が引続き行われることに賛成でございます。そこで本日は只今政府委員から簡単な御説明がありましたし、まだ十分に資料も頂いておりませんので余り詳しい御質問は差控えたいと存じます。そうしてこれは各条項別に非常に詳細な研究をして行かなければならないと存ずるのでありまするが、今日はさようなわけと、又一面におきまして同僚委員各位も余り多数おいでになつておらない関係もございまするので、二、三の点につきまして政府委員の御意見を伺いたいと存じます。続けて質問してよろしうございますか。
  6. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) どうぞ。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 それでは余り系統立てずに、あちらこちらピツク・アツプして二、三質問させて頂きたいと思います。  この第二章の領土の問題についてでありまするが、先ず第二条の権利権原及び請求権放棄することでございまするが、この権利権原及び請求権というのは、領土権その他どの程度のものを普通に権利権原及び請求権条約用語として使つておるのでございましようか。それと第四条との関係におきまして個別的にいろいろな請求権の問題があると思うのでありますが、殊に日本から分離します朝鮮等につきまして、領土権を第二条の(a)によつて日本放棄することは、これははつきりしていると思いますが、それに附随するいろいろな公の不動産、動産それらの問題、債務継承の問題、個人の請求権の問題、これらの関係は第二条、第四条との関係でごどうなるのかということをちよつと概括的に御説明願いたいと思います。
  8. 島津久大

    説明員島津久大君) この第二章の書きようでありますが、大体権利権原請求権ということになつておりますが、これは従来私も前例等を詳細承知いたしておりませんが、領土が離れる場合大体こういうよう書きようを従来の条約でしておるよう承知しております。こういう地域に対する主権が移るというようなことでなくて、こういうようなすべての、英文ではライト・タイトル・アンド・クレイム、そういうような実際上領土権を主体とした公法的な権利、それが二十二条に謳つてあると一応考えております。四条はむしろ私法上の問題が主ではないかと考えております。なお併し、この問題は十分実例等につきまして検討をいたさないと確定的なことは申上げられないのであります。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 大体今の御説明で第二条のほうの権利権原及び請求権は、主として領土権中心とした公法的な権利である。而して権利権原及び請求、権というものは、慣例語であるか使つておるのだ、こういう御説明であり、又第四条のほうは、主として私的な請求権のことというふうにお考えのようでございまするが、その御意見はわかりましたが、重要なことでありまするから、十分に先例等も御研究の上で、又その中間に位するのではなかろうかと思ういろいろな、例えば公法的な権利の中に国有鉄道とかその他不動産、こういう不動産がどうなる。或いは逆に日本の負つてつた債務継承分離国側のほうに負わせるのか負わせないのか、これらの問題についての先例並びに御解釈を御研究願つてあとでお答え頂きたいと思います。  それから第三条でありまするが、第三条は第二条と違つて、いわゆる権利権原及び請求権放棄すると、領土権放棄という形をとつておらないように見受けられます。そこで第三条の意味するところは、二つ義務日本に課しておる。第一は、これら二十九度以南地域を、アメリカ合衆国を唯一の施政権者とする信託統治に置くことの国際連合に対するアメリカ提案に同意する。これは信託統治制度の下に置こうというアメリカ提案はまだ出されてないのでありまして、当然にこれは講和後になると思うのであります。その提案があつた場合には同意するというあらかじめの同意をここに与えておることが一つ。いま一つは、その提案が行われ、或いは行われないかも知れないのですが、行われ且つ可決するまでの間は、合衆国が現状のように一切の権利を、権力を行使することを日本が認める。この二つ義務日本が負つておるように思うのでありますが、これらの関係におきまして領土権放棄のことを謳つておらないのは、第二条と異なつておるのは如何に解釈すべきか、領土権は将来日本に返るという意味のことをも、この規定趣旨から見ればその余地が残つておると解釈すべきか、して差支えないかどうか、この点は如何でございましようか。
  10. 島津久大

    説明員島津久大君) 只今指摘の第三条の関係の御意見の点は、まあ大変重要な問題でございまして、ちよつとこの解釈を簡単には申上げかねると思うのでありますが、殊にまあ信託統治性質如何、或いはその態様というような問題も関連すると存じますので、この点は十分研究をさして頂きたいと思います。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 それでは御回答はあとで願うことにいたします。第十条の中国関係権利放棄でありまするが、これは具体的に言いますというと、北京最終議定書及びその附属書等から生ずる「特典及び特権を含む中国におけるすべての特殊の権利及び利益放棄し、」こういうことでありまするが、これはいろいろな広汎な権利があると思うのですが、簡単に言うならば、従来言つてつた治外法権とか、或いは北京議定書に基く駐兵権とか、そういういわゆる不対等条約に基く一切の特権と、こういう意味なのか、それともどういうふうに解釈したらいいかお伺いしたいると思います。
  12. 島津久大

    説明員島津久大君) 第十条につきましては、曾祢委員のお説と同様に考えております。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 内国民待遇を与える場合に、日本として或る種の産業やなんかについて相互主義によるほかは、絶対的に内国民待遇を与えなければいけないものであるかどうか。従来の日本法制は終戰後大分改正されまして殆んど一切の、公的な権利は別といたしまして、政治的の発言権というのは別といたしまして、一切の産業等に対する日本人だけに限つておるよう法制は、殆んどやめたというふうに私は記憶しているのですが、例えば鉱業権、マイニングですね、こういうものとかいろいろあると思いますが、これは相互主義に従うという限りにおいては、一切内国待遇を与えなければならないのか、それとも或る種の産業については例外たり得るがどうか、如何ですか。
  14. 島津久大

    説明員島津久大君) 只今の点は、これは勿論原則としまして相互主義に基くわけでございますが、これは十二条の(d)を御覧になりますと、「この条の適用上、差別的措置であつて、その措置がそれを適用する当事国通商条約に通常規定されている例外に基くか、あるいはその当事国の対外的の財政状態又は国際収支(海運若しくは航海に関するものを除く。)を守る必要に基くか、あるいは重大な安全上の利益を維持する必要に基いており、且つ、その措置が事態に相応しており且つはしいままな又は不合理な方法で適用されるものでないものは、それぞれ内国民待遇又は最恵国待遇の許与を害するものとは認めない。」という例外はあるわけであります。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 そこでこの(d)の解釈なんですが、通商条約に通常規定されておる例外とは例養いろいろあるのであります、例えば内川航行は当然の例外として内国民待遇は與えなくてもいいわけですね。その他のそのあとに書いてある、「あるいは」以下の「その当事国の対外的の財政状態又は国際収支」「あるいは重大な安全上の利益を維持する必要に基いており、且つ、」まあ妥当なものについてはいいというのですが、その解釈には一体国際的にそうはつきりした基準があるのですか。こういうことを設けておいて、日本から見れば妥当だと言つて或る種の産業内国民待遇をしないといつた場合、同様紛争の種になる虞れはないかということを伺いたい。
  16. 島津久大

    説明員島津久大君) 最近締結されております通商条約には大体の基準ができておると承知いたします。具体的のことは只今資料を持つておりません。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 わかりました。第十四条ですが、(a)にある「連合国に対して適当な賠償を行い、且つ、同時にその負担する他の債務弁済する能力に欠けていることが認められる。」このところですが、「連合国に対して適当な賠償」のほうはわかりますが、「その負担する他の債務弁済」というのは占領費というようなことがすぐ頭に浮ぶのですが、その他どういうものを予想しておるかということはおわかりでしようか。
  18. 島津久大

    説明員島津久大君) これはどの債務という限定した、或いは具体的に明確にされておりませんので、大体一切の債務ということになると思うのでございますが、何がこれに当るかということは、まあ大体アメリカの例を取つて見ますと、アメリカに負つてある債務弁済すべきものを想像すればそういう見当だろうと思います。はつきりしたることはまだ申上げられません。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 私の開き方が非常に廻りくどかつたと思うのですが、当然に占領費のごときは含んでおると思いますが、そのほかに日本側から見て日本国債務言つてある限りは対外債務、それから国民……まあ対外債務、つまり公債とかその他の弁済能力がないというふうに、若し規定がそういう意味ならば非常に有難い規定になるわけなんで、どの程度これを解釈するかということはその後にいろいろ例外としてやらなきやならない補償等に関連して非常に重大な問題となると思いますので、その点を伺いたいわけです。
  20. 島津久大

    説明員島津久大君) 債務につきましては、先ほど概括的な御説明を申上げました際に、十四条の一番末項であります(b)、二十頁の一番最後に、こういう場合を除いた債務ということになつております。十四条は、「この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権戰争遂行中に日本国及び日本国民とつた行動から生ずる連合国及び連合国民の他の請求権並び占領の直接軍事費に関する連合国請求権放棄する。」この条約に書いてある場合だけということになります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 そうしますと賠償請求権のほかにここにある負担する他の債務というものは、賠償請求権のほかは、(b)に書いてあるものが補償債務と、こういう意味ですか。
  22. 島津久大

    説明員島津久大君) (b)に書いてあるようなものを除いた債務でございます。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 除いた債務……。そうじやないんでしよう。ここはですね、一般的に賠償とか損失補償とか占領費とかということをやる能力がない。債務の免除で本債務確認でもないわけですね。非常にだから幅の広い、能力がないんだというのだから、これは日本から見ればいろいろな債務をここにあれも払わなきやならない、これも払わなきやならない、だから或る種の国から言つて来るような特殊な補償原則としてはできないのだという有利な規定じやないかと思うから、債務というのはこれは幅広く解釈することができるんじやないか。然る上で(b)のところでこの条約に明定した義務以外は放棄してくれているわけでしよう。ここはだから債務確認でもなければ押付けでもなく、能力がないんだ、それを同時にやることは……、そうじやないんですか。
  24. 島津久大

    説明員島津久大君) 只今の御解釈通りと思います。この「他の債務弁済する能力」というのは、債務弁済する能力がないという点に重点があるので、その債務がなんであるかということはこれで明定してないと思いますが……。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 そこでまあサービスとか製造というようなものによる補償の一端にするということですが、これはこの条文の精神から言つて、これらのサービス等については当然に日本国としては無償に提供すると、こういう意味なんですか。
  26. 島津久大

    説明員島津久大君) これは協定内容次第によると思うのであります。どういう形になりますか、これは今後の問題と考えられます。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 それは有償無償というようなことは、この条項のあれとしては規定されておらなくて、個別的な話合いによつてきめらるべきものであると、かよう解釈してよろしうございますか。
  28. 島津久大

    説明員島津久大君) そのよう解釈いたしております。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 この(a)の1による日本国義務は、まあこういう趣旨により速かにここに規定された国、即ち戰争中日本占領され且つ損害を与えられた連合国にして希望するもの、これとの間にこの趣旨交渉に入るということだけのまあ義務ように思うのですが、交渉に入る以上は誠意を以てやることは当然でありますが、何カ月内に必ず作れというようなことはこの条項からは必ずしも出て来ないと思うのですが……。
  30. 島津久大

    説明員島津久大君) 文面上御指摘通り連合国と速かに交渉を開始するものとするということで、それ以上に要求されておることはなるいと思います。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 あともう少しお願いしたいのです。十六条の戰争中捕虜に対する補償の一部に充てるこの規定でありますが、中立国にあつた主な日本及び日本国民資産赤十字国際委員会に引渡済じやないかと思うのですが、その点はどうなんですか。実情はどうなんですか。新たに引渡すようなものが巨額にあるのですか。
  32. 島津久大

    説明員島津久大君) その点は実情を取調べましてお答を申上げたいと思います。どの程度で引渡済であるか、或いはどのような段階にあるか、これは調査いたしたいと思います。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 新聞にも何かこの解釈問題についての見解が出ておりましたが、二十三条の問題でありますが、この効力発生の要件である日本の批准及び主たる占領国としての、アメリカを含めた連合国の、ここに掲げた連合国の過半数の批准の寄託ということが書いてあるのですが、これは若しここに掲げました国全部が調印しない場合には、ここに掲げた国の中で調印したものの過半数の批准寄託によつて効力を発生するものであるか。やはりここに掲げた十四カ国ですが、アメリカを含む十四カ国の過半数の八カ国でなければ効力を発生しないのか。その点に関する御解釈はきまつたのですか。
  34. 島津久大

    説明員島津久大君) 確定的な解釈はございません。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 そうするとその点いずれ……併し重要なことですから有権的な解釈が速かになされなければならないと思いますが、適当な速かなる機会に伺えますか。
  36. 島津久大

    説明員島津久大君) お説の通り大変重要な問題でございまして、当然これは確定的な解釈が下されると思うのであります。一応事務的に私どもの見ましたところでは文脈上は今後署名する国の名前がここに上るわけでございますから調印する国ということでよかろうかと考えておるのでありますが、いずれ確定次第御報告申上げます。
  37. 曾禰益

    曾祢益君 確定的なあれではないけれども、今ここに書いてあるのは仮定的に書いてある、正式に考えるとここに署名を現実にする国が書かれてあるから特別な場合には三カ国或いは一カ国というような場合もあるということを予想しておられるわけですか。
  38. 島津久大

    説明員島津久大君) 一カ国、二カ国というほどまで極端には考えてはおりませんが、理窟から申すとそうなる。
  39. 曾禰益

    曾祢益君 署名する国……。
  40. 島津久大

    説明員島津久大君) 署名する国です。
  41. 曾禰益

    曾祢益君 今は仮に十四カ国……。
  42. 島津久大

    説明員島津久大君) そうです。
  43. 曾禰益

    曾祢益君 大体の御趣旨はわかりました。それから二十六条ですが、この規定はここに書いておりますように、連合国宣言に署名し、又は加入しており、日本に対して戰争状態にあり、その条約の署名国でない国と日本国との間に日本はこの条約と実質的に同一条件で、いわゆる二カ国間の平和条約を締結する用意を日本としては義務として負う。併しその義務条約の実施後三年間で満了する。それ以上は日本義務はい。こういうようなふうに書いてあると思うのですが、これはどの国であつてもここに書いてある四十二年一月一日の連合国宣言に署名し又は加入しており、日本に対して戰争状態にありながら、それだけの要件はあるけれども、条約に署名しなかつた国である限りはいずれの国との間にも同じ関係を持つのだと思うのですが、つまり特定の、例えば中国なら中国というものだけを予想しておる規定かも知れないが、この案文から行けば、例えばソヴイエト連邦が署名をしなかつたという場合にはやはりこの条項の適用を受けるというふうに解釈してよろしいかどうか。一般的そういう規定であるかどうか、この点をお伺いしたい。
  44. 島津久大

    説明員島津久大君) 二十六条の文面からいたしますと、このような条件に相当する国はどの国を問わない一般的な規定と考えます。
  45. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、この条約に原署名国でなかつたものの加入というほうは、これはダレス草案のほうには何かあつたように思うのですが、あれは変つたわけですか、今度は……。加入条項はどつかありましたかね。どうなんです。なくなつちやつたのですか。
  46. 島津久大

    説明員島津久大君) 独立の加入条項はございませんで、二十三条の規定によるか、或いはこの二十六条、只今お話の条文、これで行くことになつております。
  47. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると大分変つたわけですね。この前は加入条項があつて、それで個別的のあれも途が開かれておつたわけですね。但しこの条約によつて得るよりも日本がより大きな利益を挙げてはならないというよう条項があつた。それで加入条項の場合とそれから個別的な双務平和条約というようなものがあつたのが、今度変つて加入条項のほうはもうなくなつて原署名国にならない限りは三年以内にこの二十六条によつて個別的にやれ、この一本になつたわけですか。そうですね。
  48. 島津久大

    説明員島津久大君) 大体そういうことと思いますが、前の案というのもこれは実は何回の案か存じませんが……。
  49. 曾禰益

    曾祢益君 前の案というのはU・Pの案で政府はお持ちのようだけれども、遂に日の目を見なかつた案です。
  50. 島津久大

    説明員島津久大君) 以前の考え方は今回のように批准の点は別といたしまして、大多数の国が調印をするという形でなくて、以前は極く少数の国だけが原署名国として調印をして、それで効力が発生したあとでどんどん加入して来るというような考え方であつたように思いますが、現在はこういう考え方です。
  51. 曾禰益

    曾祢益君 私どもまだ勉強が足りないので、これ以上伺うあれもありませんので、私は今日はこの程度にさして頂きまして、次の委員会の日取りをおきめ願いまして継続研究会をして頂く。それまでに政府当局からもう少し資料を頂きたい。殊にいろいろな問題がありまして、今概括的に御説明を伺つたけれども、簡単に何か筋書きのような、これはこうだというようなことを書いて頂くと一々条約の全文を読まなくてもわかるところが非常に多いと思います。
  52. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 私一つだけちよつと伺つておきたいのですが、イタリーとの講和条約と、今度の関係国の……根本的な相違について何か御説明が頂けたら頂きたいと思います。
  53. 島津久大

    説明員島津久大君) これもできれば比較の表のようなものができれば御説明しやすいと思いますが、ちよつと思いつきましたところは、日本の戰争責任というようなものが謳つてございます。又軍備の制限、これはイタリー条約に具体的に規定してあるわけであります。そういう点も違つております。その他賄料として差上げます。
  54. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは本日の打合会はこれを以ちまして終ります。    午前十一時四十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事      曾祢  益君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   説明員    外務省政務局長 島津 久大君