運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-15 第10回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十五日(木曜日)    午後三時四十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○講和に関連する諸問題並びに国際情  勢等に関する調査の件  (外交問題に関する件)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 只今から外務委員会を開きます。  外務大臣から秘密会希望がございますので、国会法第五十二條により、本委員会秘密会といたすことに御異一議ございませんか。    〔「異議なし三呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御異議なしと認めます。それでは本委員会秘密会といたします。委員、閣僚、政府委員、本委員会に関連する事務をとられるかたのほかは御退場を願います。    ——————————   午後三時四十二分秘密会に移る
  4. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 本日の議題は講和に関連する諸問題並びに国際情勢等に関する調査でありまするが、特に外交問題について内閣総理大臣から説明を聴取することになつております。更に委員の諸君からは、御質疑がありましたらば御質疑を願いたいと、こう考えます。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 それでは私座つたまま御質問申上げたいと思います。折角総理から御説明があるようでありますから、成るべく簡単にいたしまして、質問の要点を先ず申上げますが、第一に、安全保障の問題についてであります。このたびのダレス氏と総理との会談の重点は、七原則をめぐつてお話であつたと思いますが、その中でもやはり安全保障が中核であつたということは間違いないと思うのであります。そこでこの安全保障についてダレス氏から提言がありまして、これは非常に私は重大な提言だと思うのであります。即ち日本が若し間接的な侵略に対して備えるという意思があるならば、いわゆる集団的安全保障に加わることができる。そこでそれの実体的な裏付けとして、アメリカ日本及びその附近に兵力を駐屯してもよろしいと、更にこの点は特に強調を要すると思うのでありまするが、朝鮮における場合と異なつて、いわゆる特権的な待避所を認めないということをはつきり言つております。これは別の言葉を以てすれば、日本に対する攻撃に対しては、これはアメリカがいわゆる全面戦争決意しておるということの私は現われである、との約束とも見られる。契約とも見られる。これはこの重大な提案に対しては、我々もアメリカ決意とその好意に対しては、これを諒とする立場にあるわけであります。併し国民といたしましては、実は今一つ心配を持つておる。それは日米防衞協定というものかできました結果、やはり日本国民として好むと好まざるとにかかわらず、アメリカと諸外国との戦争に自動的に引入れられるのではないか、この心配かあるわけであります。そういう場合に当りまして、例えば中共並びにソ連との関係をどうお考えになるか、この点について先ず伺いたいと思うのであります。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申しますが、ダレス特使の申出は、あなたの言われるのと少し違うのです。ダレス氏の言われる話は、日本防禦がない。無防禦の国に対して、つまり一種の真空状態にあるところへ持つて来て、そして若し間接侵入というか、まあ朝鮮のごとき場合があつたらどうするか。その場合に日本みずから防ぐ力がないとして、そして自由主義国家一環として日本考えてこれを守るためには、アメリカ兵隊を駐屯してもいい。こういう希望を、考えを述べられただけの話であつて約束契約もあるわけでもありません。そこで協定ができたのじやないので、向う気持を言われたので、それは結構な話である。日本として国内治安を守るだけの力はあるけれども、ほかのその集団的侵入に対してどうするかと今言われても、みずから再軍備をするとか、何とかいうようなことは日本においてはできない。そうするならば集団防禦ということになつて、そしてアメリカ側が進んで、日本保護してくれる、そのために兵隊を相変らず駐屯させるということになれば結構でありますというだけの話で、そこで協定ができたわけでも何でもない。ただ協定前提としてお互い気持話合つたということを御了承願いたい。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 まだ協定の形をとつていないということは勿論その通りだと思います。併し総理としては、そのアメリカ好意的と言いますか、その提案に対して国民の大多数と共にこの提案好意的に受入れたいと、こういう好意さを示しておるわけです。そこで私は協定ができておる、できておらないというような形式論でなくて伺いたいのでありますが、そういう協定に入るということがあり得るということで申上げたいのでありますが、今その質問に対する御答弁はなかつたと思いますか、次に進みたいと思います。  そこでそういう日米間の総理ダレス会談によつて一つのそういう機運かできておるということは否めないと思うのでありますが、それが協定恰好をとる場合に、一体日本総理の言つておられるように、まだ再武装をしておらないわけでありますし、又総理は再武装しないと言つておられるのですが、日本はそういう場合に、アメリカ保護をしてやろうというそういう保護の権利だけ持つてつて、勿論これに対しましていろいろな諸般の便利供与義務はありましようが、それは別として、防衞そのものは完全なる双務的のものでなくして、日本アメリカ保護されるという片務的の性質をお考えになつておるのであるか。これは私の第一問の点に関連しますから、防衞ができる場合に、双務性か、片務任かについてお考えをお示し願いたいと思います。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えしますか、双務であるか、片務であるか、如何なる義務を提供するか。又これに対して兵隊が駐屯すれば、従つて日本としては従来の施設を供与するということになりましようが、併しその協定双務的或いは片務的として、その片務の内容はどうであるか。範囲はどうなるかというようなほどの正確な話をしたのではなくて、向うが場合によつては、日本希望するならば、兵隊を常駐せしめてもいいと、その前には当然従来のサービスと同じようなサービスはするが、それから施設は供与してもらわなければならないだろうが、それに対してどういう考えを持つか。第一その希望を入れるか入れないか。希望は結構な話であると思う。然らば反対給付は何かという、そう契約的の義務裏付けはつきりしているわけではないのです。まあいずれその協定ができてから、そうなるでしよう。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 現段階においては総理のおつしやる通りで、秘密会だからおつしやらないのではなく、そういう性質のものであろうということはよくわかるのですが、併しだんだんにそれは国際取決めの性格を持つて来るものであると私は思うのであります。従いまして便益供与内容についても、又あとで御質問したいのですが、やはり防衞というものの性格については、はつきりそれが双務的なものか、片務的なものかということは、これはどうしても明らかになつて来なければならないので、総理のお考えを伺いたいと思うのです。私をして言わしむれば再軍備せず、人力も国外に出さないというような建前から言うならば、仮にそういうアメリカ提案を條約の形において受入れる場合においても、私は片務的なものであつてもいいのではないかという見地から伺つたわけなのです。それでその点はそれまでにいたしまして、次に施設等便益供与内容でありまするが、これは今総理お話にありましたように、勿論まだ具体的なコンクリートのものではないと思います。併しこれに関しまして、国論の動向については総理も御承知通り、即ちかような場合に外国軍隊、殊に特定国軍隊日本にいわゆる基地を持つというようなことは、過去における中国の例等から見ても、国権に対して重大なる侵害だということが非常に国民心配するところであります。そこでそういつたものであるかないかこれはやはり一つの大きな問題だと思うので伺いたいのですが、例えばこれもまだ條約の段階でないと言われれば、その通りだと思いまするが、併しこれについては、いろいろな先例がございます。例えばアメリカとフイリッピンの間の協定、或いはアメリカ英本国との間の飛行場等便益供与に関する協定等がございまして、それぞれによりまして、国権に対する制限というような点が違うと思います。従つてどういう程度便益供与ということをお考えであるか。更に又これも立入つた話ですが、かかる場合に若しアメリカ軍隊が、講和後新たな性格において日本へ残るような場合に、これの費用負担の問題はどうなるか、これらの点に関しては今回約束の形でなくても、いろいろお話合があつた、或いは総理のお考えもあろうと思うから、一つつて見たいと思います。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは、今お話したように、お互い気持話合つた程度ですから、さて費用はどうするか、必らずお前のほうで負担するか、日本で半分負担するかというようなことまでは言つておりません日本防禦がないのであるから、これに対してどうするか、軍備を持たないというのであるから、どうして安全の保障をするか、我々のほうにはこういう気持がある。そういう気持日本安全保障の一方法としては我々は喜んで考える。又国民も了承するだろうと思う。今のお話のようなむずかしい主権の問題、国権の問題とかいうほどまでに法律的のきわどい話はしておりません。政略的な政治的な問題である。いよいよその問題ができた場合には、そういう問題がコンクリートの問題として提案された場合には、それが単に国権とかいう問題でなく、日本全国の利害から考えてどうか、そういう考えで考慮してきめて行くべき問題だろうと思います。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 大体総理のお考え、今まで言つておられることはわかりましたが、いずれこういうものが具体化する段階が来ると思いますので、更にその段階行つたならば、御質問なり、意見を申上げたいと存じまするが、次にこれ又非常に私の先に進んだような点があるかも知れませんが、地域的集団保障についてお伺いしたいのです。仮に今総理ダレス氏との間の話のような、相互援助的な気持が具体化した場合には、これ又一つ日米防衞協定みたいなものになると思うのですが、総理はこれを日米間の二国間の防衞協定であつても、それ自体一つ国連憲章の五十一條に認められた集団的自衛権の発動である。五十二條以下の地域的防衞取決めというふうにお考えであるかどうか。つまり日米二ヵ国間のやつでも、国連憲章のいういわゆる地域的取決めだとお考えであるかどうか。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは出て来た具体化された場合の問題でありますが、これは併し想像ですよ、あれしたわけじやありませんが、これはやはり国連共同防衞一環として現われて来ることだろうと思います。が、その場合にお話のように、具体的に国連の五十一條とか何とかによつてというような話はなかつたのですが、想像して見れば、国連関係した問題でなければ、アメリカが単独で、単に日本防衞を引受けるというのではなく、国連の一メンバー・ステートとして提案されることになるだろうと想像します。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 その点は結構ですが、続けてこの集団的な安全保障について、日米間のみならず、もう少し広い意味地域的集団保障というようなことが、ダレス氏のあれにも、これは私の誤解だつたら直して頂きたいのですが、提案と言いますか、公表した声明にも出ておりますし、現に南方の、或る種の南方国の間にかような大西洋的な集団安全保障考えられているようですが、その国の意図は、必ずしもアメリカと同じでないようでありますけれども、とにかくそういう話がある。そこで我々はかような地域的の取決めというものが、国連憲章が合法的に認めたものであるということと、むしろ却つて国連憲章五十二條によれば、安全保障理事会がこういうものを奨励すべきだとすら言つておることを知つておるのでありますが、併しどうもその後の国際情勢の変化にやはり左右されまして、かような地域的な取決めが、即米ソ陣営の対立的な軍事同盟の形をとつている嫌いが大いにあると思うのであります。そこで若し日本が仮にかような地域的な取決めに入る場合に、日本との取決めの当事者がいわゆる西欧陣営だけであつたというような場合を想像いたしますと、極めて共産陣営ソ連中共等に刺激的な恰好になりはせんか、かような点について総理は如何にお考えであるか、伺いたいと思います。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えします。が、この大西洋協定とか或いはフィリピンあたりでいうような、フイリピン、それからどこですか、つまり太平洋防衞一つ大西洋同盟と同じような太平洋における保護太平洋における地域的集団條約というようなものを想像してのお話であるならば、この点は私は何にも話しておりません。昨日の本会議でも和田君の質問に対して、この点は話しておらない。話しておらないというのは、日本独立もしておらないのでありますから、独立国であると同じように、日本としてはこうするとか、ああするとか、或いはフィリピンその他と同盟を結ぶとかというようなことは、未だ言うべきことでないと思われたのだろうと思います。この点は少しも話しておりません。少くとも私との話合においては……。話の内容を申上げるわけじやありませんけれども、事実ないのであります。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 お話に触れてないということはわかりました。そこで今度はまあ総理構想なんですが、今のに関連いたしまして、目下構想が別に、これ又時期が早いというお考えかも知れませんが、こういうような集団保障の体形が考えられつあることは事実なんですが、そういうような場合は、一体日本太平洋の国とだけのあれに考えたほうがいいのか、それとも太平洋の国、太平洋の国と言いますとおかしいのですが、主として南方と言いますか、南方島嶼の国と、それにプラス、アジア諸国、即ちソ連中共その他大陸諸国が加わつたほうがいいとお考えであるか、これらについてどういうふうにお考えになるか伺いたい。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは将来の客観情勢によるでありましようが、今日アメリカ考えているところは、ソ連中共を初めから除外しているという話ではないのであつて従つて除外するということを前提としての話は何もなかつたのです。然らば私にどうかというと、これ又将来に属することであつてお答えができない。併しながら私はこれは想像でありますけれども、日本が仮に今のような同盟とか或いは集団保障條約を結んで、そのために直ちに中共や或いはソヴィエトの侵撃を受けるかと言いますと、これは多くの仮定が含んでおると思うのです。でありますから、昨日もそのために中共或いはソ連から直ちに軍を………侵撃を受けるか、これは予め占いすることはできぬとお答えをしたのです。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 それは勿論その通りと思います。いろいろな仮定がありますから……。  次に、総理は先ほどちよつとおつしやつた、これは私は非常に重大な点だと思うのですが、アメリカ構想なり或いは総理構想従つてダレス氏とのお話、そこまで行つたかどうか知りませんが、まあ我々の考えるところでは、やはり地域的集団保障或いは日米協定、これは私は地域的集団協定一つと思いますが、これも勿論国連憲章に認められたものと、公然ではあるけれども、他面やはりそこに若し集団保障に事実上大陸諸国が入つて来ないという場合に、又一つの刺激になる。そこで何とかもう少しこれを国連そのもの集団保障にくつけるようなものはできないであろうか、誰しも考えている、又ダレスさんも言つているように、又国連警察軍と申しますか、いわゆる正式の国連軍というものは現実にできており、もうそれにのみ頼ればいいということであれば、何人もかような問題について、そう頭を悩ますはずはない。而し事実出て来ておちないし、日本として無防衞日本であつていいということはあり得ない。そこにいわゆる空白状態というものが考えられる。併しその空白状態を埋める方法として、いきなり日米集団保障に行くだけが……。私はこれは外務省の専門家から見ると笑われるかも知れませんけれども、やはりそこにもう少し直接国連という一つの権威を持つものと直接に付けた方法があるのではないか、例えて申しますなれば、かかる講和後の国連、単、講和後而も国連軍が、正式の国連軍が設置されるまでの空白状態は確かに一つの世界に対する、平和に対する一つの問題でありますから、特にそのような問題を何人かの提起することによつて国連総会がこれを取上げ、国連総会においてこの問題を取上げて、例えば正式の国連軍ではないけれども、国連の名において国連総会の決定するところの特定の国或いは特定の部隊、これを日本に置いて国連軍の名において国連の言う対外安全保障に当る、かようなことについて一つ考えてもらうことはどうか、先ほど申上げましたよりに、アメリカ提案は重大なことであり、その好意は多とするのであるけれども、日本としてはやはりその辺のところが非常に重大な問題であるから、アメリカ提案をただそれでOKと言うのではなくて、もう少しそこに直接国連性格はつきり打つて出したように考えてもらうということを我々は少くとも考えているのでありますが、それらについての話合がおありであつたかどうか、或いは総理はどう考えられるかということについて承わりたいと思います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう話はいたしません。いたさないというわけは、これも想像ですけれども、ダレス氏は大統領の名代と言いますか、使節、特使として来られただけであつて従つて国連について一話をするということは自分権限外考えられるからでありましよう、と私は思う。又我々としても、まだ国連加入を許されるか、許されないかという、我々としてはそこまで言うべきでないと考えておるために、国連との関係については相当我我も注意しなければならんとは思いますけれども、ダレス氏との話合においてその点まで言及はいたしませんでした。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 まだ問題になつておらたかつたようでありますから、この点については私としては一つ御考慮を願いたいということを申上げて置きますと共に、これは国連に正式に加入の問題とは別に、総理も御承知のごとく、未加入の国であつても、かような問題を考えてもらうことは私はできると思います。  次に、再軍備ということは、もとより考えておらないということを再々言つておられるのでありますが、日本防衞の場合に、再軍備によらない日本の寄与というものは、先ほど別便宜供与お話がございましたが、例えば警察予備隊人力をこれに提供するというようなことが考えられておるか。或いはさようなお話があつたかどうかについて伺いたいと思います。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカは非常に犠牲払つて共同防衞のために尽力もし、将来尽力せんとして厖大な費用を、単にアメリカだけの何ではなくて、国防ばかりでない、ヨーロツパにもその他の防衞考えて非常な負担なり、犠牲を払つているのだ。この際日本はどれだけの協力をするか、どれだけの犠牲を払うかという考えもあり、従つて日本共同防衞に対する犠牲程度について聞かれたいのだろうと思います。併し私は敗戦後の日本の今日として、自国の安全を維持するだけで手一ばいであつて、それ以上のことをするということになれば、自然無理が行く。無理が行くために共産主義の激発と言いますか、乗ずるところになる危険もあるから無理はできない。又したいと思つてもできない。事実できないものはいたしかたないと言わざるを得ないのだ。併しながら日本国民気持として、或いは自負心として、自尊心として、いずれも常に他力本願で行くという、それは日本国民の気性が許さない。でき得るときになれば、日本がみずから犠牲を払い、進んで共同防衞に参加するという力ができた場合に、おのずから考えられることであるが、現状を土台にして考えて見れば、余り賛沢はできない。自分の国の、国内の安全を維持するだけが手一ぱいである。併しながら国力を回復すれば、日本国民希望として、要望として、できるだけの犠牲を払い、更に共同防衞の一端を負担する、日本負担するという気持になるだろうが、今日は如何せん力及ばざるものである。又力及ばざる負担をするといつたところが無益な話であるから、これは私は日本に対して、そう希望してもらいたくないし、又犠牲を強要してもらいたくないのであります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 題を変えまして、領土問題について若干伺いたいのでありますが、まあこれはいろいろ機微なことがあると、又特に秘密会に適した題ではないかと思いますが、今の調子で大いに総理が頑張つて下さつていることを我々も想像するのですが、日米防衞協定のことはまだ出ておらないと言われるけれども、そういう方向に進むものとして、若しそういう方向に進むものならば、もう本土それ自体が或る意味で全面的に共同防衞の目的から軍事的には利用できるわけです。さような観点に立つたならば、特に小笠原、沖縄等を特殊な性格に置くということは余り意味はなさないのではないか、かように思うのですが、信託統治は、特に切離すということは、日米防衞共同防衞のできる建前から見れば、強い意味を持たないと思うのですが、それらの点についてお話合いはどうであつたのですか。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは領土問題は非常なデリケートな問題であり、且つ又條約の内容をなすものでありますから、余り深いことは我々は言う立場にないのでありますが、併し日本国民要望しておるところは一応申述べたことは事実です。併しアメリカ側立場は、領土の問題はすでにポツダム協定声明その他においてきまつておるのだという建前で進んでおる。今後どれだけの意思があるか、どれだけ日本国民要望を容れてくれるか、全然無視することはないだろうと思いますけれども、どれだけの程度に容れるかということは、ダレス氏自身もこれは想像、又想像しても言えないところであると思うのです。その程度のお話合いで具体的にどうということは結論は得ませんでした。得ないということが本当だろうと思います。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 さような段階にあることと思いますが、今後従つて総理の御奮闘を願わなければならん。全国民の名において皆さんはお考えのことだろうと思うのですが、仮に信託統治がどうしてもやむを得ないという場合は、いろいろそういうことになればなるほど、領土権がどつちにあるのか、或いは住民国籍がどうだ、これが領土権はつきりしない。従つて住民国籍日本から離れるというようなことを何とかして避ける方法がないか、これらについてはいろいろ技術的な問題もございましよう。更に又信託期限の問題、或いは憲章に言いますような、施政権者がどうなるか、先例によりますれば、御承知でございましようが、施政権者にはいわゆる信託統治、土地を任す国が、政府施政権者になるというような先例があるようですが、これらの点について如何に研究されておるか、勿論これは言及された問題ではなくて、これからの問題でありますが、どのようにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは多少考えておることもありますが、ここで申すのは差控えたいと思います。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 わかりました、賠償問題については、すでに皆さん承知のように国際法の通念からいたしまして、賠償の取立てに優先するのが私は占領軍費始末ではないか、いろいろな国国において、賠償問題についていろいろなことを言つておるようでありますが、併し占領軍費始末については、これは主としてアメリカ決意の問題にかかつていると思うのです。そこでこのたびの話合いの中で、この占領軍費は一体どうなつているのか、終戦処理費については、これは確定的に日本負担にされることでございましようし、実はそれ以外にもアメリカの債権として、若し言うとすれば、いろいろの問題があると思いますが、更に又ガリオア、エロアの資金決済、かような問題がございまして、実は賠償を要求する、他の諸国に優先して、アメリカがこれを要求し得る立場にあるのではないかと思うのです。従つてそれらの問題について、アメリカはどういうふうな態度でおるか、これらについておつしやつたかどうかということを伺いたいと思います。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 話合いがあつたか、なかつたかということは、暫らくおいて、これは私の想像としてお聞き願いたいと思います。アメリカは占領費として日本に請求するか、しないかということはとにかくとして、ガリオア資金だけでも二十億ドル……。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 両方で二十億ドル。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 二十億ドルという計算が出ております。これをアメリカは主張するだろうと思います。主張するというのは、取立てるという意味よりも、むしろよその国の賠償に先立つてアメリカとしては先取特権があるんだ。二十億ドルとつてしまえば、あとは日本からとるものはない━━━━━━━━━━━━━━━━━━主張するだろうと思います。又日本も私は自分希望自分考えを率直に述べれば、少なくとも日本は終戦後、援助資金として日本の復興に役立つたガリオアのごときは、日本がいずれかのときに、支払える能力ができたときに支払うということが、日本国の名譽だと私は思つて、又そうすることによつて更に外資の導入ということも図り得るし、過去において日本は国債の元利の償還は少しも滯らせなかつたという経暦を持つておる国ですから、対日援助費までも頂くという建前がよくないのではないかと思います。併ししつかりしたことは話合つたわけでありませんけれども、そう私自身は考えております。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 在外私有財産の問題については、大体七原則に明らかになつておるんですが、これは結局お話になりましたか、それとも政府日本側の負担というような程度考えるべきでしようか。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本としての希望を、要望を述べたという程度に御承知願いたい。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 一般経済自立に関しては、存外発表されておるところが少ないのでありまして、発表されたところは、漁業の問題のごとく、いわば、これは当然で正しいことだとは思うけれども、日本側は自制するだけなんです。そこでこれは昨日の話もあつたようでありますが、一体原料、食糧等の補給等について、何らか特に日米防衞協定というようなものができるという建前からするならば、西洋側の戦略資源、配分計画等に相当な地位を与えてもらう、特に中共貿易というようなものの殆んど不可能なる現状において、そういうことはお考えになつておつたと思うのでありまするが、それらの点について具体的な話がなかつたのか、その点をお伺いいたします。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 具体的な話があつたか、なかつたかは別として、すでに日本の安全を保護したい。或いは援助したいという考えがあるアメリカでありますから、日本が食糧が足りなくなつた、或いは原料が不足して、日本の工場が潰れるとか、経済的に日本が崩潰するというようなことは、アメリカは黙つて見ているはずはないと思います。アメリカ考え方としては、これは想像ですけれども、日本アメリカも、政治的にも、経済的にも、又軍事的にも一つの集団と言いますか、一つのグループをなして、インコーポレイトして行こうという気持だろうと思います。従つて日本の工業が倒れるというような場合には、これは捨てて置かない気持だろうと想像します。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 最後にこれこそ秘密会の必要も、何もないことですが、漁業に関する交換公文ですが、これはこの際協定と認められて、国会の事後承認をお求めになるつもりであるか、どうか、これは形式論ですが、実際論として、我々はああいう趣旨のことが必要であるということはよくわかるのであります。ただアメリカとの間に自制し、それが今後協定化される場合に、「さけ」、「ます」のごとき特殊な養殖をやるからというので、そのまあ附近の実は養殖をした国の利益を荒さないということは正しいことだと思うのですが、これを又全アジア諸国に引用されて、日本の底曳網漁業等も勝手にどんどん制限されるというような先例になりはしないか、これが我々の一等心配するところであります。さような意味からも、あの協定をされようとされたのかどうか、そこら辺について伺いたいと思います。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはブリストルベイにおいて、先年農林省の水産監視船か何かが、そのブリストルペイに入つていて濫獲したという事実があつてアメリカの輿論、殊に太平洋海岸の輿論が相当刺戟されて、あの附近においては相当にその当時にも問題になつたことは承知しております。今でもその記憶は残つてつてそれは相当やかましい問題になつておるらしい、それで━━━━━上院の外交委員会等における太平洋沿岸選出の上院議員等の日本に対する対立感情を融和するために「さけ」や何かは勝手にとらない、とつつてしようがないじやないか。それでこういうことをするということが、対日講和條約を有利に導くのじやないかというように考えます。それからして我々は遠洋漁業よりも近海漁業のほうに相当利害関係を持つておることは御承知通りです。そこで今のマツカーサー・ラインを拡張してもらいたいというためにも、アメリカ側希望を相当に容れるのがよくはないか、又対日講和條約を促進する意味で、或いは又円満に片附ける意味から言つて見ても、日本の漁業の面から見ても、今のお話のような消極的な制限ということを気にするよりは、外洋に積極的に進出するためには、或るかくのごとき協約で済むことで、何も義務はありません。濫獲をしないという義務と言いますか、これは普通の話で、魚族を保護することは、これは国際的な義務であるべきものですから、するのが当然だと思います。更に向うの話にも、米国側の話にも、関心を高めるために委員会を作つて、そうしてそれにアメリカのオブザーバーでも入れて、共同して濫獲を防ぐということも必要じやないかという話合いをしたのです。話合いと言いますか、希望によつてああいう話を進めたのですが、これは併し條約ということになれば、無論国会の承認を得べきものであり、又そういうことになると思います。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 ━━━━━━━━━━、 私の言つておるのは、例えば朝鮮とか、中国とか、タイとか、ああいうところが同様に、例えば百五十浬のあれに入つちや困るというようなことまで、日米間であれをやつておるじやないか、これの先例にならんように一つしつかりしてもらいたい、こういう意味で申上げたのです。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) しつかりします。
  37. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 只今曾祢さんの質問に対して総理はたくさんお答えなつた。そのお答えの中には、私の質問しようと思つていたことも大分ありますので、私の質問したいと思うことは残つておるところ甚だ少いのですが、二、三点についてお伺いいたします  最初に領土の問題ですが、台湾、澎湖島、千島、南樺太、これはアメリカから示された七原則によりますと、米、英、ソ、中国、この四カ国の決定するところに任す、講和締結後一カ年たつても決定されない場合には国際連合の総会に任すということが言つてありますが、あの中国というのは中共であるか、蒋介石の国民政府であるかということが問題でありますのと、あの四国に任せるということが、若し中国が中共であれば、ソ連中共はこの講和会議に入つて来ないだろうと思われますが、講和会議に入つて来ない場合にはあれはどういう関係になるか。あの四カ国に任せられるということは、講和会議の延長という姿を持つのであるか、国際連合から委託されるということになるか、その筋合によつて非常に複雑な問題が他日起るではないかと思われますので、その点を総理はお話合いになつておるかどうか。又御意見も承わりたいと思います。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほど曾祢君にお答えしたようにダレス特使立場としてと言いますか、とつた態度は、領土問題はもうすでにきまつておるではないかという立場をとつて、成るべく触れたくないというようでございホした。併しながら私としては国民要望考えるところを述べた程度で、従つてどうする、こうしてこうするという結論には達することができなかつたのですが、今の問題でありますが、今日米政府としての立場考えて見ますと、ソ連が入つて来る、入つて来ないは別として、一応入つて来るものとして、すでに七原則についても交渉を開始したのでありますから、今後においても、とにかくそ連も入つて来るように一応話をするであろうと思います。そこで入つて来なかつた場合ということになりますが、その場合における決定は、結局国際連合若しくはそのときの国際情勢による話であつて、私が想像して、こうであろう、ああであろうと言つたところが、単に想像に過ぎないことであり、又余りデリケートなことでありますからして、はつきりしたことはお答えを差控えたほうがよかろうと思います。
  39. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 次に、やはり安全保障関係しますが、ダレスさんはあの七原則の中にも、日本自分軍隊を保有し得るに至るまで、アメリカ防衞の世話をするということが言つてありまして、それがまあいろいろな問題になつておるのでありますが、自分軍隊を持つに至るまでというその軍隊というものは、どういうものをあの十原則では考えておるのでございましようか。今の警察予備隊の強化したようなものを考えておるのであるか、アメリカ日本集団保障等によつてそうしたお世話をせんでもいいようになる場合ということを考えますと、海軍も空軍も或る程度まで持つに至るまでという意味でしようか。あの七原則及びあれに対するダレスさんの説明なんかから考えてどういうものだと、日本自分防衞し得るようになるまでという意味軍隊というものは、どういうふうに考えておられることでしようか。ダレス氏の考えでなくても総理大臣のお考えで承わりたい。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今お話のような、非常にはつきりした軍隊を持つまでとか、何とかいうことではなくて、つまり日本が自衛、みずから守る力のできるまでという漠然たる意味で、海軍を持つか、空軍を持つかという話まで至らない、のみならず、私としては軍隊を持たない。いわんや海軍は持たない。今のところでは内地の治安を維持するだけの力以上には何も我々としては言い得ないような戦敗国の日本としては国内の治安を維持するだけの話で、積極的に共同防衞の一端を担ぐとか、軍隊を置いて国連に入る、国連の若し條件が軍隊を持つというようなことを必要とするならば、これも日本としては現在力がないというくらいな微弱な経済力から見ても、それだけの何から言つて見ても、これも例えば軍隊を今日持つということになると、親を失い、子を失つた人の気持から言つて見ても、再び戦争というようなことを思い起すでしようから、そう簡単に憲法改正もむずかしいだろうと私も思う。それが多少余裕ができて、そして軍隊を持つことを考えるときまでは、日本は再軍備ということはどうも実行不可能ではないかと思います。故に軍隊という話は少しもしないのです。のみならず、希望を言われても、私としては責任はとれないということを初めからはつきり言つておるのです。そこでお尋ねのような空軍とか、海軍とかいうことについては少しも触れておりません。どういうことを要望しておつて、又どういうことを考え日本の自衛ができるまでということを言つておるのか。又その期間ということは何にも触れておらないのです。ただ日本希望するならば、みずから守る力がない以上は、そうしてその空間に対して、外国の侵入を受けた朝鮮のような場合を想像するならば、アメリカとしてもうつちやつて置けないから、軍隊の駐屯、従来の軍隊の常駐と言いますか、置くことにしよう、そういうふうな用意はあるという話を受けただけです。余りお話のように細密に亘つて話合をするときでなかつたものですから、しないほうがいいと思いましたから、空軍とか、何とかいうような詳細な話は少しもいたしておりません。
  41. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 集団保障ですが、集団保障ということになると、先にも御説明がありましたが、やはり地域的同盟のようなものができなければならんと思います。併し北大西洋條約でアメリカ軍隊二万が英国に駐屯しておる。或いは西ドイツにも二個師団のアメリカ軍隊がおる。それをあつちのほうでは国の体面を害するとか、何とかいうようなことは言わず、目的が集団保障にあるのですから、非常に今までのところ円満に行つておるようですが、日本集団保障というようなことも、ああいうような形式をお考えになつておるのかどうか、何か形あるお話合ができておつたのでしようか。
  42. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほども、又議会においても私ははつきり申した通り、いわゆる地域的と言いますか、本平洋同盟とか或いは保障同盟とかいうような話は毛頭しておりません。又ダレス氏としても言うだけの地位になかつたのでありましようし、我々は今日独立を回復することを專ら考えておるときで、独立してのちに云々というところまでは話を進める地位になかつたものですから、全然話はしておりません。
  43. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 先刻お話がありましたけれども、賠償の問題について、もう少し伺つて置きたいと思います。アメリカ賠償を非常に少くすることについては大いに努力して来ておるし、この五年間に大変に日本の荷を軽くしてくれたことは我々は感謝しておるのでありますが、今残つてつて非常な厄介な問題だと思うのは、フィリピンの八十億ドルの問題、これはアメリカとしても大変なことであると思いますが、ダレス氏はあれを日本から取立てることを打切りにしようという決意を持つておられたように思いますが、フイリピンにあれをよせということは簡単には言われないで、アメリカとしてはその代償になるようなことを考えるだろうと思いますし、フイリピンはすぐ金を取立てることにならんでも、その責任を日本に負わせたいようなふうであるし、あの問題についてはお話合いがあつたかどうか伺いたいと思います。
  44. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 特にフイリピンという話はありません。又ダレス特使としては、フイリピンに対してこう言おうとか、どう言おうとかいう話は無論せられる立場でもなかつたろうと思いますが、併しそういう賠償の取立てというようなことも一般的にあると思います。そして日本としては相当準しい立場にいるだろうという同情的の話はありましたけれども、フイリピンに対してどうしろとか、何とかいうような、賠償の要求としてはフイリピンばかりではありません、その他の国も相当ありますが、それに対する一般問題としてどうするとかいう話はないので、ただアメリカ政府として対日問題をどうするかというお話に限られて、その他に及んでおりません。
  45. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 二つの点についてお尋ねいたしたいと思います。  第一は、世界情勢の大局的の見方と、これに対処する我が国の方針についての基本的の考え方についてであります。先に前首相の芦田さんが発表せられました意見書の中で、こういうふうに言つておられる。ここ数年にして第三次大戦の起る可能性は頗る強い。アメリカも英仏も挙げてかかる見通しの下に汲々として準備を進めている際に、日本のみが傍観者のごとき態度で何らの用意もしないことは許されないところであるこういうふうに言つておられるのであります。即ち芦田氏はここ数年にして大戦勃発を予想して、その前提の下に準備、用意の必要あることを強調しておられるのであります。大先輩の言として傾聴いたすのでありまするが、併し忌憚なく申しますれば、私はかかる見解に対しては多大の疑問を持つているものであります。端的に申しまして、一方国際共産勢力の動きを見まするとき、世界の平和を脅かす危険の存在そのものはこれを認めざるを得ないのでありますけれども、他方において、民主陣営側の大戦阻止のための大きな動きも見逃すわけに行かないのであります。即ちアメリカその他の民主陣営諸国の大戦を阻止するため、戦争するためというのじやなくして、平和を築き上げて行かんがために団結して行く、そうしてその総合的の防衞力を強める、而も防衞力の強化ということと経済復興ということとは不可分だという原則の下に協力する、この協力を押し進めて行くことによつて大戦を阻止する。そうして平和に勝利し得るという固い信念の下に積極的の努力をしているものだと見るのであります。かような次第で、世界情勢の代表的な見解といたしまして、私は芦田氏のように、ここ数年にして大戦勃発を予想するというのじやなくして、民主陣営側の大戦阻止のための努力、この協力の推進によつて大戦は避け得られないものではない、こう見るのであります。従つて又これに対処する日本の方針といたしましても、戦争するための準備というのじや勿論なくして、飽くまでも大戦阻止の大目標をはつきりと掲げまして、そうしてこれがための努力、これがための平和準備というところに基本を置いて、そうして又大戦阻止のための民主陣営側の協力のうちに日本も参加して、そうして応分の共同責任を負担する。そこに重点を置いて行くべきだと私は信ずるのでありますが、併し一方芦田氏のような見解も確かに一方の代表的の見解ではないかと思うのであります。この辺のところの基本的の見解、考え方というものは、非常にこれは重大な問題、その影響するところも非常に大きいのでありまするからして、国民といたしましても、最も関心を集めておるところだと思うのでありまするが、この点についての総理の率直な御意見を伺わせて頂きたいと思います。  第二は、極く簡単にお伺いしたいと思いまするが、講和問題に対するアメリカソ連以外の諸国、即ちイギリス連邦諸国その他の諸国の態度についてであります。これからの段階におきまして、特にこれらの国の動向或いは態度というものは極めて重視すべきものであつて、又我が国としてもこれらの取扱いというものは重要な部面だと思うのであります。これらの国の態度につきまして、政府の見ておられますところ、私差支えない限り御説明願いたいと思います。これだけであります。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、芦田君の議論もこれは一つの聞くべき議論として、注意すべき議論として、国民がその日本の安全或いは日本の海外情勢等についての判断等については絶えず注意をするために、芦田君の議論も一つの世を成しめる議論として傾聴すべきものだと思つております。併しここで第三次戦争が起るか起らないかということの判断は、これも誰にも付かない話で、第三次戦争が起るものとして計画を考えておるということも、これは確かに考えるべきものだと思います。ただ今日においていつ起るか、即時に起るかということは芦田君は言つておるわけではない。我我として今日考えるべきことは、客観情勢について最も深い注意を払うと共に、先ず日本独立を確保する、日本の復興を確保することに努むべきものである。独立した後においてどうするかということは、又そのときに考えることでありますが、今日としては独立を回復し、復興に專念いたすべきものであつて、そうして余力を養なつて客観情勢に処するということが実際問題ではないかと思います。又英連邦と言いますか、その動きについては、新聞以外に我々何ものもよく承知しませんが、併し我々がイギリス人その他からして聞くところによれば、又感ずると言いますか、とにかくイギリスも日本の早期講和ということは、この間の連邦総理大臣の会議のときにもコミニユケの中にあるのですが、成るべく早期講和して行こう、日本を国際団体の一員に返すがいいという議論が圧倒的であつたようにコミニユケに書いてありまするから、英連邦としても、日本の早期講和ということについては歓迎をするのみならず、進んでその方向に向わしめようとしておるのではないかと思いまするが、その点についてはアメリカと何も意見の違つたところはないのではないかと思います。それから又イギリスとしては、日本と従来も相当貿易関係などがあつたのでありますから、それが直接取引の域に達したいということは、これは当然なことであり、又そういう意見、希望を始終聞いております。或いはこの間来た、何と言いますか、紡織業者代表者の意見等によつて見ても、成るべく早く直接取引ができるようにいたしたいと熱心に話しておつたところから考えて見ましても、単に紡織業者の一部の者ではなくて、イギリス国民もそう考えておるのではないか。又濠洲、ニュージーランド等も、日本に対して従来いろいろな誤解などもあつたようでありますが、これもだんだん氷解しつつあるのではないかと思います。というのは、過日外務大臣かの意見でありますか、早期講和にいたすべきものであると言つており、又だんだん羊毛その他の取引ができているために、日本に対する関心というものは漸次高まりつつあるのではないかと思います。濠洲の代表者等も、日本に対する反感は私が考えているほどではないのだと言つて、いろいろ説明をしてくれるというようなわけで、これを一、二年前或いは二、三年前と比べて見ると、濠洲の対日感情もよほど違つておるのではないかと想像されるものがあります。でありますから、その点については英米の間に何も意見の齟齬はないと思います。
  47. 團伊能

    ○團伊能君 先ほどからたびたびお話に出ましたのですが、ここに少しく繰返し総理にお伺いしたいと思いますのは、領土の問題でございますが、これはポツダム宣言を受諾した以上、これにつきまして、我々の言うべき筋合いもなく、又権利もない。又現に甚だデリケートな問題でございますために、ダレスさんも大体この点は言わぬほうがいいだろうというような御忠告もあつたように承わつておりますが、これは国民といたして、非常に切実な問題でございまして、殊に非常に狭隘な領土に多くの人口を持つておる日本といたしましては、例えば非常に小さな島一つでも非常に我々には貴重なものでございますので、国民の関心はこの点につきまして、非常に切実なものがあると存じますが、勿論これはこの点につきましては、我々が何と申しますか、ポジシヨンについて、いろいろこれを相談するということも困難ではないかと考えますけれども、一応領土の点につきまして、殊に実際的には今日我々が伺つておるところでは、例えば大きく千島とか、大きく琉球とかというような言葉を伺つておりますが、もつと切込んで小さいところに至る本当の区分というものがきめられるでございましようか。そのときに対して、日本から、或いは日本だけでなくても、連合国として相当の知識を持ち、或いは人類学的に、或いは又歴史的な板據の上に立つて、この区分を立てて頂くような方法を我々はお願いしたいところでございますが、この点につきましては、全くそれは言うべからざることでございましようか、或いは又日本人といたさなくても、或る第三者として一つの資料を提供することは可能でありましようか、お伺いいたします。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは可能であるのみならず、率直に日本国民意思を伝え、連合国側に明らかにすべきであり、又政府としては勿論のこと、関係者その他が意見を言われることは一向差支えないと思います。又日本国民要望に反するようなことはいたしたくないというような気持もあるようでありますから、陳情なり、意見なり、或いは只今お話のような歴史的に或いは学術的に、日本との関係はこうであるということを述べられることは一向差支えないのみならず、そうせられるがいいと思います。
  49. 團伊能

    ○團伊能君 その点について今我々が国民として考えておりますのは、一九四六年の一月二十九日でございましたか、最高司令官の覚書が渡され、我々の日本の統治から切離されたところの区域が一つの実績というような形で、あの切離された領土はすべて日本に帰つて来ない。そのうち残つたものだけが日本に帰るというような考えを持つておる人が多いのでございますが、その点は如何でございますか。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 領土の問題は、国境というものは万世不易なものではなく、始終変るものであり、しますからして、今日きまつたところは、それが永久に変らないものではなく、現に動きつつあるという事実もありますから、将来の客観情勢或いは内外情勢等によつて、ものと私は思います。又我々の利益になるように変更されるように我々は努めるべきものだと思います。
  51. 團伊能

    ○團伊能君 実はこの問題で、只今はマツカーサー・ラインの外になつてしまつたものが、日本から離れるといたします場合に、例えば余り気付かれていないが、鬱陵島の南の竹島、リヤンプール・ロックといつておりますが、これは漁業的にも非常に重要なものであり、日本海の真中にありますので、こういうものはどこに帰属するかということについても非常に疑惑がある。これは日本から離れるといたしましても、これはどこの国に帰属するか、ただ一つの離れ島でありますから、こういう問題も起ると思います。この点の説明と申しますか、何か方法でも立てられれば、非常に我々として希望するところでございます。  次に千島でございますけれども、ヤルタ会談において、千島という言葉もクリルという言葉で出ております。このクリルは明治八年の交換條約のときに、十八島の名が一々記載してございますので、クリル十八島というあの條約にあるものが、我々の認識いたしますクリルと考えます。つまちウルツプ島の以北からカムチヤツカに至る列島でございますが、併しそれから南の擇捉島、國後島、色丹島等は、これをクリルという認識の中に含めるのは非常に無理で、これはむしろ南千島と歯舞群島は、連合国が、我々が帰属を定めると言われましたが、日本の周辺島嶼として考えて頂きたいと思われまするし、又南のほうにおきましては、今日いろいろ歴史的に考えましても、琉球と申しますか、今日占領軍によりまして切離されました三十度という線は、琉球と日本を分けた線でなく、むしろ二十七度牛ぐらいの與論島の北当りから、それまでは従来薩藩領でございまして、琉球本島に近いところまでの琉球とのその辺の境が非常に我々としては疑義がある。この辺の陳情の方法を、国民といたしまして、この陳情ができる方法があればいたしたいというのでございますが、その方法についての総理のお考えを……。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私として申せば、外務省を通じて、それらの陳情その他をして頂ければ、外務省としては適当な筋と考えて、そちらに提出することに必ずいたします。
  53. 團伊能

    ○團伊能君 領土の問題はそれだけでございますが、あと二点、総理から先日来国会の御答弁その他で承わつておりますところで、一、二ちよつとはつきりさせて頂きたいところがございますが、第一は、自衛の問題でございまして、御説明の趣旨におきまして、よくわかります。又我々はそれに賛成いたしますところでございますが、一つ国民といたしましての不安は、日本が相当に自立経済も確立いたし、すべての経済情勢も回復して、みずからの力におきまして、相当の防衞施設を持ち得るときは日本がやるけれども、それまでは大体アメリカに助けててもらう。日本が便宜を供与するということを、私どもはその方法においてそれがいいと考えますが、もう一つ奥に入りまして、その自立もできないときにおきまして、事実上直接侵略を受けました場合、又外国の援助も不十分でございますか、十分と言いながら徹底せざるとき、我々といたしましては、この国土を防衞するについて少しも顧慮するところなく、みずから進んでみずからの国を守る権利がある。即ち民族としての基本的人権を守るために、たとえできようと、できまいと、たつてこれを守ると、これは経済問題でなしに、ここまで来ると死活の問題として考えなければならないと存じます。その点の自衛の根本観念をちよつと総理から教えて頂きたいと思います。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねのことは、結局具体的にどうして自衛するかということになると思いますが、自衛権の存在はもう独立国として疑うべからざるところでありますが、さて如何にして自衛するかという方法論になるであろうと思います。方法論としては、今みずから守る軍隊を持てば、これは議論はないことでありますが、みずから守るだけの軍隊を持たない場合にどうするか、或いは又自力で以て防禦はできないという場合には、これを集団的の防禦方法によるほか仕方がないと思います。例えばイギリスにしても、御指摘のように集団保障一環をなしておるものであり、その他ヨーロッパの各国は大西洋協定によつて集団的防禦をなそうとしておるのでありますから、戦敗国の日本ばかりでなく、戦勝国においてもなお且つみずから守ることができない。アメリカ自身も守ることができないから、それでヨーロッパと協同して行くというようなところになつておるので、今日の時勢は相手方は集団的に攻撃する、そうすると、どうしても自然に集団的に防禦するということに行くよりほか方法がないのではないかと思います。さて然らば如何にして集団防衞をするかというようなことになりますと、これは将来日本独立したときにおける、その以後における客観情勢によつて考えるべきもので、今日想像してこういうふうにしたらということは、これは言うことも差控うべきでもありましようし、又言うこともできないのではないかと思います。
  55. 團伊能

    ○團伊能君 私承わるところその点でございますが、私の申上げるところと少し違うところがございますが、その方法があるなしにかかわらず、侵略を受けました場合において、日本国民がこれを守る方法なく、又武装なくても、これに対して戦う権利があるかということです。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは権利は無論あると思います。然らばその権利をどう行使するかということが問題になるのじやないかと思いますが、権利は必ず存在いたしておると思います。
  57. 團伊能

    ○團伊能君 次でございますが、完全な自主権というものにつきましては、ダレス氏もしばしば説明されておられると思います。この自主権につきまして、勿論我々は道徳的に考えても、又我々の決意いたしました決意から申しましても、今日みずから作る、又よき忠告によりまして作りました民主的な政治形態、又制度を守つて行かなければならないものと存じます。又その義務を痛感いたすものでございますが、併しこの完全自主権というもののは、それらの変更につき、国民がみずから好むならば、この政体その他まで変更し得るものかどうか。これは道徳的な規定、道徳的にみずから律することによつて守られるばかりで、その場合これを変えることについて若しも日本国民が望むならば、その点を改善し得るものかどうか。その点……。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはダレス特使気持を申せば、日本には完全なる独立、自由、自主権を与える。であるから、何らの制限を加えたくないものであると言つておられるものでありますから、従つて如何なる変更も加えられ得るでありましようが、同時にダレス特使の言われたところは、日本が民主政治に……何と書いてあつたか忘れましたが、民主政治を期待するという程度で、その場合においてどうするということは書いてありませんが、希望としては日本が民主主義に徹することを期待しておる。その期待の下に完全なる自由を、自主権を与える、又制限は加えたくないという趣旨であると思います。
  59. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 私はこの際総理大臣に伺いたいと思いますが、大部分同僚の委員からお話があつたことがございますので、それを重ねて……。私時間を省きたいと存じますが、ただ一、二お伺いいたしたいと思いますのは、同僚の杉原君からもその一、二について触れてお尋ねがあつたようでありますが、講和問題によつての各国との関係、特に我が国と隣接した国々におけるその関係について、一、二伺いたいと思いまするが、一つはタイの問題でありますが、タイは私の灰関するところによりますと、日本とは戦争したのではないというような態度をタイはとつておるかのように聞いておりまするが、どういうふうにその辺はなつておりまするか。いま一つは、フイリピンの問題でございますが、これは賠償等の問題もあるようでございますし、いろいろとその辺にはこみ入つた感情もそこにあるようでございます。只今総理大臣からのお話によりますると、ニユージーランド或いはオーストラリアのほうの感情は非常に薄らいで来たというような御答弁を承わりまして、非常に嬉しく思うのでありますが、併しフイリピンの場合は必ずしもそうではないかというふうに私は存じます。又フィリピン国民性格から申しても、アングロサクソンとはおのずから違う点もあるかと存じまするが、そういうような状態に処して、今後の講和問題にどういう影響を与えまするか、その辺のことを若し伺えれば大変仕合せだと思います。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日直接に在外公館その他の外交機関を持つておりませんから、確実にこうだと私は断言するだけの資料はありませんが、私の接触した範囲で申しますと、タイの関係においてはお話通りであろうと思います。殊に現在のこれまで通商使節が来るとか、又その他の政治家、サラサスさんでしたかが見えるとかいうことで、そういう人に接触した私の感じから申すと、日本との間において直接に戦争をしなかつたこともあり、又日本の駐屯しておつた軍の態度もよかつたのでありますか、何らの恨みとか、或いは日本に対して好意は持つてつても、恨みというような感情は少しもないように思います。濠洲その他については、先ほど申した通りでありまするが、お話通りにフイリピンは甚だ厄介だと思います。というのは、あそこにおつた日本軍隊その他の行動に、いろいろその土地の人の恨みを買うようなひどいこともあつたようです。この間佐藤議長がフィリピンにフリーメーソンの関係で行かれるというときにも、治安状態がどうであるか、その懸念に関して行くことをやめられたというようなことも聞いておるのでありますが、又あの土地を通過した人から言つて見ても、市中の散歩もできないというようなことでかなり日本に対する空気は今なお険悪だろうというふうに聞いております。又タイ、フイリピン関係の人から、その他いろいろなことを聞いておりますが、併しこれも日本が悪いことばかりしておるのではない、いいこともしておりますし、それから又駐屯しておつた軍隊その他の行動も、直接に国民にいい感じを与えておる部落と言いますか、地方もあるらしいのでございまして、一概に悪いとは言えないようですが、少くともマニラの状態、空気は甚だ悪くて、今なお危険な空気もあるというようなことは、これは事実であろうと思います。そこでこの関係を元の関係に直すのには相当の時間がかかるのみならず、我々として更に努めなければならんと思いますが、仕合せに村田省蔵君などというような人は友人も持ち、又いい関係も作つておるようでありますから、こういう人の講和後においての努力によつてフィリピンとの間の関係がよく行くことに相当努むべきであり、努めなければいけないと思います。併しそれにしても、なお相当時間がかかると思います。マニラが一番憂慮すべき関係にあるように思われます。
  61. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 この際、政府としては海外に外務省から人を出しておいでになりまするが、非常にお話のように、又私も承知しておりますることにおきましても、非常に困難なことではありまするが、将来フイリピンのほうへ人をお出しになつて行くというようなお考えはございませんでしようか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはフイリピン政府との間に合意ができれば無論出したいと思います。というのは、政治関係もありますが、通商関係もありまして、捨てて置けるべき土地ではありませんから、若し同国政府希望するならば、又同意するならば喜んで出したいと思つております。
  63. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御質疑はありませんか……。本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御異議なしと認めます。それでは秘密会をこれで閉じます。   午後五時十六分秘密会を終る    ——————————
  65. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) なお、この際お諮りいたします。本日の委員会は祕密会でございましたが、会議録中に特に祕密を要し、参議院規則第百六十一条により会議録から削除すべき部分が一、ございましたならば、委員長において適宜削除いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 御異議なしと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            伊達源一郎君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久六君    外務省政務局情    報部長     田村 景一君   事務局側    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君