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前之園喜一郎君
山崎運輸大臣は現内閣の副
総理格のかたであります。又私ども平素非常に信頼を寄せている
大臣であられるので、ここで私は
通り一遍の儀礼的な応答でない極めて建設的な御意見をお伺いしたい、かように考えております。
先ほど
菊川委員の御
発言の中に、数字も非常に小さい、約四百万円ということでありますが、私
ども決算をや
つておりまして、何億、何十億という不正を毎日見ているものからすると、四百万円というのは非常に小さい感じがいたします。この
決算に現われて参りますもの、
大臣はよく御承知でありましようが、これを拾
つてみると非常に大きな不正が起きておる。例えば
薪炭特別会計のごとき五十余億幾円も、或いは
只今問題にな
つておる
大橋法務総裁の二重煙突、或いは
ガス代の
過払い、これは二億八千万円の
過払いをしておる。それから極く一、二のことだけ御参考に申上げるのでありますが、水を
買つておる。
防腐剤を
買つているのですが、その
防腐剤というのは九三%が水です。これを
買つてその
保管料を何百万円か払
つておる。而も売るときは一本五円で売
つておる。この国損は二億円近いものである。それから木材を四万五千石検収して金を払
つて、これは何もない、品物はないのです。その検収をした者は誰かというと、現衆議院議員の自由党の代議士をしておる。そうしてそのないものに金を払
つておる。そういうものを挙げてみると数限りないので、私ども四百万円ぐらいなんだというような
気持もするのですが、これは金が小さくても見逃すことのできないものです。私ども毎日
決算をや
つておりまして、各省の
幹部の人がたがおいでにな
つて、それらの
質疑応答をしているのですが、その
答弁というのは大方
只今運輸大臣のお答えにな
つたようなことなんです。誠に相済まん。道義の頽廃、綱精の弛緩、戰後のこれは
一つの問題がそういうようなものに現われたという紋切型である。私は毎日聞いてお
つて、政府のこういうような
不祥事件に対する御
答弁の
一つの雛型があるのじやないか。どの人が出ても同じことを言う、こういうふうに考えろぐらいに思うのであります。
運輸大臣は非常に謹嚴な
態度で、恐らく
運輸大臣は
決算委員会に出て来る
政府委員のような、そういう軽薄な
気持ではなかろうということを私は深く信ずるのであります。ただここで私は、特に私どもの経験を通じて
運輸大臣に申上げたいことは、今
運輸大臣が御
答弁になりました中に、こういう問題が起るのは道義の頽廃或いは
綱紀の弛緩である、これは尤もその
通りでありましよう、併しもつと深く掘下げてこの問題を考える必要があるのではないか、私ども法廷に出ることもありますが、戰後どういうふうなものが、どういう不正、犯罪があるかと申しますと、非常に若い者が多い、八割ぐらいというものは若い者である、そうして大
部分というものが当時の復員軍人、昔の軍人である、或いは又その何パーセントというものがこういうふうな公職にある者、而も法廷に出まするものは極く一
部分なんであります。
決算委員会を通じて犯罪と認められるのは非常に多いのであります。極く一
部分、僅か二%か三%のものが出るだけで、実際のところは犯罪は非常に多い、不正
事件というのは非常に多い。成るほど大橋氏のような事情もありましよう、私どもはもつと根本的に掘下げて考えなければならん問題だと思うのであります。いろいろ言われまする敗戰後の日本の
国民の道義の頽廃、特に青年層というもの、或いは公務員というものの国に対する前途の望みというものが非常に薄くな
つたということ、ここに私は根本の問題があるのじやないかと思うのであります。更に掘下げて考えて、或いは教育の面においても、社会道徳或いは社会教育、学校教育、それらのものを通じて各
方面から私どもはいわゆる吉田総理
大臣の言われる道義の高揚というものに全力を注がなければならんと思うのであります。私をして言わしめれば、罪を犯す者は悪いが、その根本はやはり今日の政治の貧困ということに期するのではないかと思うのであります。政治というものがもう少し
国民に希望を持たせ、青年に向うべきところをよく教え示して、そうして本当に起ち上
つて祖国再建のために盡くすという熱意に青年の
気持を向ける、或いは公務員の心構えをそこに引張
つて行くという政治力、政治のあり方というものが欠けているのじやないかと、かように私どもも考えておるのであります。毎日
決算委員会をやりまして、各省の代表者、責任者においでを願
つておるのでありますが、本当に悪か
つた、これから注意すると言われましても、それはその場限りであります。幸いに現内閣の最も重要な地位にあられる
運輸大臣に根本的にお考えを願いたいと思うわけであります。その点についての
運輸大臣のお
気持を
一つ腹蔵なくお伺いしたい。
それからもう
一つ私が強く感じますことは、
監督責任者の、最高責任者というとこの問題は
運輸大臣でありますが、少くとも
海上保安庁の問題であるならば、
海上保安庁の
長官或いは
部長、このかたが何らの責任を感じない、單に問題を起した者を叱りおく、或いは懲戒するというようなことでお茶を濁してはいけないのである。私は先ず第一に
監督の地位にあるものが責任を感じて、そうしてみずから
自粛自戒、も
つて範を示すという心構えでなければならんのじやないか、
只今菊川委員の
お話もありましたが、ああいうような
新聞記事が出るということは全く私は心外に堪えないのであります。
柳澤長官は最近お迭りにな
つたように聞いているのでありますが、そのお心持が今後において非常に必要だ、單に悪いことをした者を戒告するとか、或いは注意するとかというようなことでこういうような問題は解決されるべきことじやないと私は考えます。常に責任者が矢面に立
つてその責任を
自分が背負
つて行くという心がまえがなければならんと思うのでありますが、こういうような点について私は国鉄の桜木町
事件は同様な感じで今日まで国鉄の総裁が辞表を出されたということを聞いておらんのでありますが、その後どうな
つておるか、果して国鉄の最高責任者、その他重要な地位にあられる
かたがたがどの程度の責任観念を持
つておられるかということは、
国民ひとしく非常に疑問に思
つておる。これはひとえに私は政府の
一つの方針としてお考えになるべき問題ではないかと思うのであります。これらの点についても
運輸大臣の腹蔵なき御意見を拝聽いたしたいと思
つておるのであります。なお細かいことについて二、三ありますが、一先ず以上の二つの問題について御意見を伺いたいと思います。