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政府委員(
黒田靜夫君) 朝鮮動乱が起りまして、国際情勢がいろいろと変化して参りまして、内外の輸送
貨物は急激に増加しつつあるような
現状でございまして、特に特需
関係、或いは重要物資の輸送は年々これが殖えておる
実情でございますし、又最近とみに増加しておるような
現状でございますので、
政府のほうは船腹の増強にいろいろ懸命な努力を払
つてお
つたのでありますが、翻
つてこの
船舶による輸送を引受ける
港湾の能力なり
実情はどうかと申しますと、極端な不足に陥
つておりまして、これに何らか手を打たなければ非常な由々しい事態が生じつあるような
現状でございまして、これを数学的に
ちよつと申上げますと、現在我が国の
重要港湾で
外航貨物を主として取扱
つておりまする東京港、横浜港、神戸港、関門港、博多港、大阪港、名古屋港、清水港、この九つの港におきまして
港湾の輸送状況はどうな
つておるかということを見て参りますと、この九港におきまして、本船による取扱い
貨物量は、
昭和二十三年には千七百五十万トンございました。
昭和二十四年には二千三百万トンに上
つております。本年
昭和二十五年には、十二月までの実績と一月以降の推定を加えますと二千九百二十万トンに上
つております。
本年度はこの実績の推定、或いは生産指数の上昇等からいろいろ各港別に取扱い
貨物を積み上げて参りますと、三千六百万トンになる見込でございます。この三千六百万トンに対しまして、現在のこれらの
港湾の荷役能力はどれだけかと申しますと、二千六百万トン上かないのでございます。その結果如何なる事態が起きておりますかといいますと、二千六百万トンとしますと、
昭和二十四年度では二千三百万トンの扱い
貨物ですから、能力のほうが幾らか上廻
つてお
つたのでございますが、今年現在におきましては取扱い量が二千九百万トンで、ここに三百万トン不足しておるような
現状で、このために荷役を待
つておる船が相当各港に出ております。又標準荷役日数を超過する船が相当出て参
つておるような
現状であります。この現在二千六百万トンという能力は、これは接岸能力と艀の能力と二つに分けて
考えることができるかと思うのですが、接岸能力は、これが約九百二十万トンで、艀による能力、即ち沖荷役をやりまして荷揚げ場に揚げ得る能力、これは艀のトン数がその能力の基準にな
つて参るのでありますが、これが千七百万トン、合計二千六百万トンにな
つております。戦前はこれが七千五百万トンございまして、戦前に比べますと約三五%に落ちておるような
現状でございます。これを艇の能力と接岸能力に分けて言いますと、艀の能力は約三三%に落ちておるが、接岸能力は同じく三七%に落ちておるわけでございます。トータルを取りますと三五%に落ちております。なぜこのように能力が減
つたかと毒申しますと、艀におきましては戦前の艇が戦災によるもの、或いはその後風水害、或いは
港湾運送法等統制令がなくなりまして、艀業者が濫立いたしまして、非常な不当競争を惹起いたしまして、再生産をやる資金がない。いろいろ料率の不当な切下げ等が起りまして、艀を新造したり修理する能力がなか
つたがために、このように低下して参
つたのでございます。一方接岸能力は余り戦災も受けてないから戦前と同じような状態にあるではないかということが
考えられるのでございますが、これは横浜、神戸、関門、博多、東京におきましては公共用接岸
施設の七割乃至十割を進駐軍のために専用されております。このためにこれらの港におきましては約八割の能力を取られまして三割の能力しかないわけでございます。これに代るべき隣接港の清水、大阪、名古屋、四日市、これらの港におきましてはほぼ戦前の能力はございますが、ただ大阪港は先般のジェーン台風によりまして、石炭揚げ能力が相当被害を受けまして、まだ十分復旧しておらないがために、これらを全部合計しましても我が国の主要
港湾における接岸能力というものは三五%しかないわけでございまして、今日の
港湾に
出入する
貨物がすでに賄い切れなくて、今申しましたように荷役待船或いは荷役日数の遅延という現象を生じておるのでございましてこれに対しまして何らか手を打たなければいかない。その打つべき手の三、四を申上げたいと思うのでございますが、第一番には艇を急造することでございます。これは非常に速効的な効果がございまして、六万トンの艀を作り、十四万ドンの艀を修理いたしますと、年間約三百万トンの荷役の増強を期待できるような次第でありまして、これに要する資金は十億
程度でございます。一方これと並行いたしまして接岸
設備も急いで施行いたさねばなりませんので、横浜、東京、神戸、関門、博多等の接収を受けました港におきまして、これらに代るべき接岸
施設をそれぞれ
考えておりまして、これが工費にいたしまして約二十九億円、この二十九億の金を投じますると、六カ月乃至十二カ月後に…着手してからその期間後におきましてその能力はおよそ百八十万トン増加いたすわけでございます。艀のほうは十億かけまして三百万トンの能力が上る。接岸荷役のほうは二十九億かけて百八十万トンの能力が上りますが、接岸荷役をやりますと、艀の二回取りする必要がなくなりますので、二十九億かけますと年間約百八十万トンに対しまして、細かく申しまして、トン百五十円と申しますと二億五千万円の冗費が節約できるような次第でございます。
なお又これに伴いまして、最近いろいろ原料の輸入、食糧の輸入等が増加しておりますので、倉庫も
考えてやらなく
ちやいかん。倉庫も上屋倉庫新設三万坪。それから改造約十三万坪を
考えておりまして、これに要する工費は十五億円
ちよつとでございます。なお、これらの荷役の合理化を図りますために、荷役機械を
設備したり、或いは私企業による埠頭の
設備を十カ所ばかりやりたいと
考えておりまして、これらに要する工費は総額にいたしますと六十五億
程度になりまして、この
工事資金に対しましていろいろ見返資金、或いはその他の適当な時宜を得た
財政措置によりまして、これが実現できるよう努力いたしておるような次第でございます。一面におきまして、それでは接収された
施設が横浜、神戸等五つの港において八割もあるのだから、それを返してもら
つたらどうかということも
考えられるのでございますが、私
ども時々部分的に接収の解放を懇請しておるのでございますが、現在の国連協力の立場から、これが接収の解放になりますことはなかなか望めない
実情にございます。こうい
つたような
実情でございますので、この公共
施設の
整備とか、或いは艇船の新造、改造、倉庫、荷役機械、或いは私費埠頭の
設備のために要する資金の面等については、今後各位の絶大なる御支援御鞭撻をお願いする次第でございます、何か御
質疑等がございますれば……。