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1951-05-18 第10回国会 参議院 運輸・法務連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)    午後一時四十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件自動車抵当法案内閣送付) ○自動車抵当法施行法案内閣送付) ○道路運送車両法案内閣送付) ○道路運送車両法施行法案(内閣送  付)   —————————————
  2. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) 只今から運輸、法務連合委員会を開催いたします。  本日は自動車抵当法案道路運送車両法案並びに各その施行法案について前回に引続き御質疑のおありのかたは御質疑願います。
  3. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) 前回合同委員会伊藤委員から数点に亘りましての御質問に対して御答弁を保留いたして置きました。私どものほうといたしまして研究をいたしましたが、本日は法務府の村上民事局長が出席されましたので、村上民事局長から御答弁申上げるようにいたしたいと思いますので御了承お願いします。
  4. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) 只今自動車局長申出に対しまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) 御異議ないものと認めます。ではさよう決定いたします。
  6. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 前会の伊藤委員の御質問のうちの先ず自動車抵当法第六条に関連しまして、抵当自動車から分離したものに対して抵当権効力が及ぶかどうか、又それを及ぼすべきであるかどうかという点について御説明申上げます。これは不動産目的とする一般抵当権の場合と同様に、自動車から分離された部品附属品等に対しましては抵当権効力は及ばない。又追求力認め規定を置くことは適当でないと、かように考えます。抵当権者保護という立場を徹底いたしますれば、抵当権者同意を得ないで分離されたものに対しては追求力認めることが理想でありますけれども、物を特定することが極めて困難であります。あらかじめ登録原簿の上に、個々部品附属品を具体的に行使することが技術的に不可能に近いので、取引の安全、又一般債権者保護のためやむを得ないことと思うのであります。  次に自動車抵当法第十七条に関連しまして、道路運送車両法の十五条と十六条の関係についてであります。第十五条の抹消登録抵当権のほうで自動車滅失する等、自動車たる存在を失うことによつて抵当権消滅してしまう場合であります。十六条の場合は、登録申請によつて抹消されますけれども自動車自動車たることを失うのではないのであります。従いまして、抵当権を存続せしめる必要はあるのに反しまして、十五条の場合は抵当権の存続せしめる企地がないのであります。尤も十五条の第一項第一号にあります「用途廃止したとき」という表現は、やや不明瞭な感があるのでありますが、第一号冒頭の「登録自動が」とありますのは、「又は」から以下にもかかるのであります。登録自動車自動車用途廃止したとき、言い換えますと、登録自動車自動車たる用途をやめて、自動車と称することを得ないものになつたときという意味解釈いたしておるのであります。即ち、物理的滅失に準ずべき経済的効用の喪失の場合を意味するというふうに解釈いたすのであります。一方十六条の「運行の用に供することをやめたときは、」とありますが、この運行と申しますのは、第二条の第五項に定義が掲げてありますように、「人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所において用いることを除く。)をいう。」とありますが、例えて申しますと道路上で運行することはやめるけれども道路以外の場所でのみ自動車として使つて行くというような場合は、こちらに該当するわけなんでありまして、言い換えますと、十六条の場合は、自動車であることは失わないけれども道路上の運行の用に供することだけをやめるという場合なのであります。十五条の場合は不動産で申しますといわゆる滅失による不動産消滅登記に該当いたします。又十六条の場合は、不動産登記で申しますと、一旦登記された不動産につきましては、滅失しない限り抹消申請ということは不動産では許しておりませんけれども、こちらでは特に所有者申請によつて抹消登録ということを認めたわけであります。  次に抵当権実行に関し必要な事項を最高裁判所規則に委任することは不当ではないかという点について申上げます。申すまでもなく規則制定権は本来裁判所における訴訟手続規定範囲を超えることはないのでありますが、実体法上の権利変動に関する規定等規則に委ねるということは、憲法の精神に照しましても少くとも妥当ではないのであります。併しながら抵当権実行による目的物所有権移転は、直接の原因は、競売という執行機関行為でありますけれども目的物競売による所有権移転ということは、抵当権の本来の内容として、当然予定されていることでありまして、ここに規則に委ねようとする範囲は、如何なる順序方法によつて、如何なる時期に、この予定された権利変動が生ずるかということにとどまるのでありまして、実質的に新たな権利変動原因規定することまでも委任するものではなく、単なる裁判所における手続に関するものに過ぎないと言うことができるかと思うのであります。裁判所手続に関する規定も新憲法実施前は、細部に亘るまで法律規定されておりまして、命令に委任したものも甚だ稀であつたのでありますが、新憲法施行後の立法にはかなり広汎に手続規定規則に委任した例も相当の数に上つておりまして、それらの例に比較いたしまして、この法案における委任の範囲が特に広きに過ぎるとも思われないのであります。  次に所有者抵当権侵害行為について、罰則を設ける必要はないかという点でありますが、担保物件目的となつておりますものを所有者が損壊する行為につきましては、刑法二百六十一条に、器物損壊罪規定があります。民法規定する担保物件につきましては、そのほかに特別の罰則は設けてないのであります。尤も農業動産信用法等では、特別の罰則は設けてありますけれども、これはそれぞれの特殊の理由に基くものと思われるのであります。例えば農業動産信用法の十八条には、抵当権者に損害を加える目的を以て抵当権目的たる農業用動産を損傷し又は隠匿した行為を処罰することになつておりますし、又十九条におきましては、農業用動産処分行為を処罰することになつておりますが、この場合におきましては抵当権目的物が牛、馬等に至るまでの個々農業用動産でありまして、登記による公示方法も必ずしも十分な効果を期待できませんので、一般抵当権の場合に比べて、特に所有者の信義に訴える必要があるわけであります。かような理由刑法とは別に罰則を設けてあるものと思われるのであります。  自動車抵当におきましては、目的物一般的に申しますと個々農業用動産とは比較にならんほど財産として大きいものであります。むしろ不動産船舶等の例に従うのが適当だと考えたわけであります。  次に登録を以て抵当権成立要件とすることはどうかという点でありますが、民法物権設定移転につきまして登記効力要件とする、いわゆる形式主義をとつていないのでありまして、民法不動産抵当権と全く同じ性質を持つております。この自動車抵当について違つた主義をとりますことは、法制全般の調和がとれないばかりでなく、登録を以て有効要件とすることになりますと、登録公信力認め登録機関実質的審査権認めるということが伴つて来るのでありまして、登録機関の構成、能力等の現状から考えましても、今直ちにこれを実現することは困難と思われますので一般の例に従つたわけであります。以上或いは御質問の御趣旨に副わなかつた点もあつたかと思われますが御了承願います。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 大体の要旨はお伺いいたしました。第一の問題に対しまして、いわゆる物の追及権に対するところの御見解は了承できますがその根本に遡つて我々は考えなくちやならんと思うのです。あなたもおわかりのごとく、一体抵当権本質といたしまして、不動産抵当が先ず理想的なものと考えられる。いわゆる債権確保目的とする場合におきましては、如何なる方法を以てするかということについては、結局担保権、その中でも抵当権を以て理想とする。従つてこの理想的な担保権保持目的を達成するのに、動産の場合においてはこれと同様な方法によつて求められ得ないかということは今日まで古くから研究された課題であります。いわゆる動産に対しては、その債権確保するのに質権を以て最上のものとされておつた。それ以上のものは今日まで考えられなかつた。いわゆる学者或いは実際家の面におきましては、質権以上の担保権を作り上げることに我々は努力しておつたと思うのです。その理想が初めてここに実現されるという場合において、今日まで問題になつてつた動産に対するところ抵当権というものの欠点というものを私たちは考えなくちやならん。無批判にただ債権確保完璧を期する、その目的を達成することに汲汲として、その担保物にふさわしからざるものに対してこれを求めようとするその考え方、それを私たちは研究しなければならんと思うのです。御承知の通り不動産の場合と動産の場合と比較いたしますれば、不動産のいわゆる同一性というものはこれは容易に認識できる、動産同一性というものは我我認むることはできないのです。殊に自動車の場合におきましては日々消耗する。今日買つた自動車は一年先にその価値を我々は考えた場合には、半減以下になることは常識的に考えられるのです。日々消耗して行くものである。いわゆる担保物としての目的にふさわしからざるものであることは言うまでもないのです。そのもの価値変動せずしてそうして恒久に存続するものならば、抵当物としていわゆる抵当権目的物としての適法性認められることができるのです。そのもの自然消滅によつてなくなつてしまうということでは、その点においてもう本来の抵当権設定目的物としての適法性認められない。殊にそのものによつて債権価値を保全しようとする物権……、いわゆる価値保全のための物権である。その保全しようとする担保物が容易に分離されて行くということは、これは常識的にあなたもお認めになるだろう。而も分離されたものは変更されることも容易である。その変更を如何にして保全するかということが動産に対して我々が曾つて求めておつたところ動産抵当というものをここに創設するならば、ここに如何に調和するかということを我々は研究しなければならない。ただ目的を追及するに急にして鹿を追う者は山を見ずの例えでは断じていけないと思うのです。あなたも責任者だ、ただ漫然そういうあり来たりな御答弁をなさるということは私はあなたの責任を問いたいのです。もつと本質論を掘下げて第一点について御答弁をお願いしたい。
  8. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 自動車が、担保物として只今伊藤委員仰せのようないろいろな欠点と申しますか、不動産に比較いたしまして抵当権目的物にふさわしからぬ性質を備えておることは、私どもも十分考えたのであります。ただ従来動産につきまして、質権のみが抵当担保権として認められ、抵当権認められませんでした一番大きな原因は、公示制度が備わらないという点にあつたことを考えるのであります。日々消耗するものであつて担保価値が短期間に急速に下落する虞れがあるということは、無論担保物、殊に長期信用担保物としては甚だ不適当な性質を持つておるわけでありまするので、公示制度が考えられますならば、この長期信用に適しないという自動車性質考慮に入れた上で、これを担保物として抵当権制度認められますならば、極めてこれによつて利する面も多いのであります。その点を彼此比較検討いたしました結果、前回自動車局長から御説明申上げましたような公示方法がありますならば、この際自動車抵当制度を創設することが適当ではないかと、かような結論に達したわけであります。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 勿論その公示制度があればこそ我々もこれを問題にいたしておるのです。公示制度がなかつたら無論問題にはならないのです。ただ公示制度があるという一点のみによつて、いわゆる物件たる抵当権本質をも我々は顧みずして抵当権というここに創設的なものを、動産抵当権というものを創設するかどうかという結論、若し創設するなら別に反対するのではないのです。若し創設するならば、世界の立法例恥かしくない手当をすべきであるとこう申上げるのです。その欠点をどうして補正して行くか、いわゆる抵当権確保をどうして我々は認めようとするかということを言うておるのです。容易に分離すると、容易に消耗して行くという物に対して我々がどういう手当をして行かなくちやならんか、漫然と不動産抵当と同じように、いわゆる変更しない物と同じような考え方で以て、動産の場合もこの抵当権を創設するという考え方は不親切ではないかとこう申上げるのですが、それでその事例として分離されたものに対して追及権を寄こすかどうか、こういう御質問をしておつたわけです。だからそういう立法的な、いわゆる根本問題についての御考慮をそういう点に煩わしていないのではないか。ただ動産抵当権というものを作るに急にして、ただ登録制度があるからこれを目標にしてこれを創設するということでは、およそこういうような新らしい法律制度を設ける場合においての考え方としては、余りに私は浅薄ではないかと思うのですが……。
  10. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 私言葉が足りませんでしたのですが、公示制度があるからと言つて、これで正しく完成したわけではないのでありまして、消耗が早いということ、それから分離が容易であるというようなことは、抵当権目的物として甚だ不利な条件なのでありまして、この点も研究いたしたのでありますが、これは自動車について抵当制度認めます以上避けがたい難点でありましてかような難点があるにもかかわらず抵当制度を設ける必要があるかどうか、つまりかような性質を持つた自動車であることを知りながらなおこれに抵当権設定して金融を与えるという必要が実際にあるのかどうか、ということを彼此比較検討いたしたのであります。その結果先ほど申上げましたように決してこれは抵当権目的物として理想的なものであるとは考えないのでありますけれども公示制度も備わりこの動産を特定することができますならば、この制度を設けることによる利益のほうが、今申上げましたような自動車性質に伴う欠陷以上に大きいものと考えまして立案いたした次第であります。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 欠点はお認めになりましたんですが、その欠点立法者としては、殊に民事局にいらつしやるあなたとしては、国民に対しましてその点を如何ような手当をしても確保してやるということが私は親切じやないかというんです。ただ出したものに捉らわれずして、それを手当方法があるならば、研究して手当方法条文に現わすような親切心を持つたらどうですか、こう言うのです。できたものをなんでも通さなくちやならん、そういう面子論を捨てて真に我々は法律と取組んでよい法律を出すというお考えにならないかと、こう考えておるんです。勿論あなたのお説を待つまでもなく、今日自動車事業に対して金融制度の途を開くということは私は決して不同意を唱えておるものじやないんです。それが必要だからどんな法律でもいいんだ、又債権者に対してそういう危惧の念を抱かしめてこの抵当権に頼らざるを得ないのだというような、ないよりはあつたほうがいいというものよりも、完璧を期したもの、我々の人智を盡した、完璧を期したものを私は与えたほうが国民に対して利益じやないか。あなたもお認めになつたようにそういう担保物としての適応性がない。本来適応性のないこの自動車に対して、かような抵当権の創設を本法によつて認めますれば、後日必ずこれに対する訴訟事件が相当数出て来ることを私認知しなければならない。それに対するところのあなたは当事者として責任を負わなければならん。でそういう点は我々としてやはり考えて置かなくちやならんと思うのです。考慮される意思があるかどうかこの点を最後に伺つて置きます。
  12. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) もとよりこういう制度を作ります以上は、できる限り完全に近い法案にいたしたいと、かように考えます。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 では先ず御答弁考慮する意思があるものと私は受取つて置きます。  第二点は、今御答弁のありましたこの十七条の関係ですが、十七条によつて車両法の十五条によるのでありますが、十五条のいわゆる一項の第一号の後段に、「又は自動車用途廃止したとき。」ということが、村上さんは前段言葉を承けて、いわゆる滅失表現したものだ、こういうお説ですが、あなたは裁判官の御経歴があると思いますが、この文字をそういうふうに解釈されますか。又他の立法例から申しましても、又本法の他の用語例から申しましても、用途ということは使用目的……、こう解釈するのです。これは本法全文を読む際にそういう解釈は当然であります。この滅失の場合におきましてこれを用途廃止したというふうな使い分けはしていないはずです。車両規則の中に用途という文字がありますが、これは使用目的が例えば従来乗用車のものを霊柩車にするとか、或いに撒水車にするとか、荷物を運んでおつたものを撒水車にするとか、消防用にするとか、警察用にするとかいうようなふうに、使用目的を変更するというふうな用語例もあるのです。だから本法用語例といたしまして、單に用途という表現をそのまま前の文字を承けて、いわゆる滅失の場合を指しているのだというふうな解釈は私は出ないと思うのですが如何ですか。
  14. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 用途という言葉は、普通の場合によりますと、例えば伊藤委員仰せになりましたような使用目的というふうに使われているようであります。私先ほど申しましたのは、滅失意味するということを申上げたつもりではなかつたのでありまして、登録自動車自動車用途廃止したとき、自動車用途という言葉を、これを自動車たる用途というふうに読めば読めるのではないか。又この滅失解体と並べて書いてありますし、必ず抹消登録申請をしなければならないとありますので、自動車自動車でなくなつた、例えば自動車を土地に定着いたしましてこれを簡易住宅に転用するというような場合、これは物理的滅失ではありませんけれども、経済的な効用廃止するという意味におきまして物理的滅失に準じて考えられるのであります。さような場合を意味するものと解釈できるということを申上げたのであります。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 私はどうしても十五条の一項の一号の用送の廃止ということは、いわゆる自動車本来の目的廃止したと、いわゆる滅失と同様な意味におけるところ廃止を指すものだというふうには解釈は出て来ないと思うのであります。従つて十七条のこの問題に戻りますが、仮に村上さんの解釈のような解釈をとるといたしましても、十六条によりて後段前段とを分けて、前段の十六条のいわゆる抹消登録をされてしまう、それによつて抵当権の基本を失つてしまう。いわゆる返済期が、後段の場合は返済期が到来して抵当権実行に移れるが、前段の場合には実行に移れないというのは不公平な取扱になつて来るのじやないか。そうすると債務者は容易に、任意に抵当権実行を阻止することができるのじやないか、この点は如何ですか。
  16. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 十五条の場合には、自動車滅失し又は自動車でなくなるのでありまして、抵当権目的物ではなくなることによつて消滅する、従つて十七条の規定の適用を考える余地がないということになるわけであります。これが抵当権者に不公平な結果になるのではないかという点は御尤もでありますが、抵当権者同意を得ずにかような行為をすることは、これはいわゆる抵当権侵害になる不法行為でありまして、所有者がみずから抵当権目的物を毀滅する場合と同様な関係になるわけであります。單に不法行為になりますのみならず、刑法上の犯罪にもなるわけであります。この方面からかような行為は禁圧されることと考えるのであります。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 それは故意にそういうことをやつた場合はともかくとして、容易にこの条文を利用いたしまして抹消ができるのじやないでしようか。例えば衝突いたしましてまだ使用に堪えるにもかかわらず、いわゆる毀損して而も使用に堪えないと言つてもできるわけでしようし、そういう場合はいわゆるこの車両法の十五条で予想しておるように、滅失解体してもう原形がなくなつてしまつたという場合だけを想像していらつしやるでしようけれども、いわゆる使用用途廃止したという広いほうの言葉から来れば、あなたのように、解体してしまつたものが用途廃止したというふうに解釈すればこれは別問題ですが、そういう解釈は出て来ないのであります。私の解釈のほうが私は正しいと思うけれども、仮にあなたの解釈の通りいたしましたところが、少くも原形が存している場合があり得るわけです。そういう場合にもやはり抹消はできるでしよう。できることはこれは刑法の何も問題にならん、合法的に抹消ができる。それに対して抵当権消滅してしまうということは、折角の抵当権者がそれによつて非常な不利益を蒙るのじやないかと、こう思うのです。いわゆるこういう場合におきまして物上請求権のような規定があつてそのものにも及ぶというふうに、いわゆる不動産の場合のごとき規定があればともかくとして、本法においてはそれをせずという見解の下に立案されておるのでありますから、してみますればその代るべき品物が何もないという、いわば折鶴の担保権はそこにおいて失われてしまうのじやないか。これは私はむしろ債権者の任意によつてどちらにでも選択できるようにするとか。或いはそういう場合はできるとかいうふうに、こういう端的に十六条で以て前段後段とを、十七条から承けて区別する必要はないのじやないかと、こう思うのですが……。
  18. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 十五条の場合にも抹消登録申請をいたします際には登録事由を証する書面をつけて出すことになると思いますので、事実自動車用途廃止していないにもかかわらず用途廃止したという抹消登録をするということは、普通起り得ないことだと思うのであります。又抵当権消滅するかどうかということは、抹消登録をするかしないかということとは直接関係ないのでありまして、自動車自動車たることを失つたときには抹消登録をしなければならないというだけでありまして、抵当権消滅の時期は抹消登録をしたときではないのでありまして、自動車自動車じやなくなつたときに抵当権消滅する、自動車目的とする抵当権消滅する、かように考えるのであります。言い換えますと登録があつて抵当権消滅するのではなく、抵当権消滅したから抹消登録をする、るかように解釈いたしております。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 これは勿論抵当権登録があろうがなかろうが、抵当権成立には疑いない。抵当権はあるのですから、抵当権実行ができなくなるのではない。それがなくなれば勿論抵当権消滅する、抵当権消滅の唯一の重大なる理由でありますけれども、そうではなくして、物が現存する場合も想像されるのです。それでも後段の場合のごとく、いわゆる抵当権実行の時期を至らしめて、そのものによつて抵当権者が満足を得られるならば、それにおいて完済を行わしめるような権利権利者に与えて置いたほうがいいのではないか、こういうのです。いわゆる登録抹消したならば、直ちに以てそれは抵当権実行を不可能に陷らしめる、抵当権そのもの消滅しませんけれども抵当権実行を不可能ならしめる結果を法的にここで作つて置く必要がなかろうか、こう思うのです。
  20. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 自動車自動車としてまだ存在しておるにもかかわらず、抹消登録が行われるということになりますと、実体上の抵当権がたとえありましても、登録抹消の結果、抵当権実行に不便を感ずるということはあるかと思います。抹消登録申請をいたしまする際に、その原因たる理由を証する書面を出させるということによりまして、自動車自動車のまま存在するにもかかわらず、登録抹消されるということのないように手段を講じ得ると考えます。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 これは結局第十六条は根本の問題と又関連して来るのです。要するに抵当権、こういう自動車抵当権に対するところ権利実行を最後まで見守つてやるという考え方がここで打切られるという一つの穴ができるのです。あなたはただ善良な債務者のみを想像されるけれども、多くの債務者は善良にあらずして、いわゆる債務の完済ができない場合においては、善良の人といえどもなお且つ、不善良になりがちなものです。そういう場合を我我想像しなければならんでしよう、従つて故意にやる場合は別といたしましても、善意の場合でもなお且つそういう自動車用途を失つても、それから債務の完済を得られる場合を想像されるのです。そういう場合においても、その抵当権実行はできない、期限の到来を認めない、従つてこういう場合には、いわゆる十七条によつて、十六条の後段の場合と同様な期限の到来を認めたらどうか、そうすることによつて初めて債権者権利確保されるのじやないか。
  22. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 十五条の場合にも債務者債権者同意を得ずに抵当自動車の、ここにあります言葉に従いまして用途廃止しまして、その結果抵当権消滅するということになりますと、民法の百三十七条の債務者が担保を毀滅した場合に該当するのでありまして、期限の利益は失うわけであります。又この自動車用途廃止いたしました場合に、残つたものがやはり自動車であると考えますと、それに対する抵当権実行ということが考えられるわけでありますが、この法案におきましては、残つたものは自動車じやないという考え方でありますから、いわゆる自動車抵当権実行ということはできないつもりなのであります。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 まあ私は村上さんのその御意見には納得できないのです。村上さんは如何ように堅持されても、民法の弁済規定を引用されても抜けられると思いますけれども、それは故意の場合はともかく、善意の場合があり得ると思います。あなたは自動車営業に対して精通なさつていられないからそういう考え方をなさるのです。そういう場合があり得ると思います。又自動車そのものが毀損されて後も、価格を持つものが十分担保権を消化して余りある価格を持つ場合もあり得るのです。それからただ單に用途廃止したからといつて、直ちに抵当権のあれを不可能ならしめるということよりは、結局後者の場合と同じように扱つて抵当権実行の時期を直ちに認めるような、十七条と同じような救済方法認めたならば、私はこの債権者に対して有利であると考えるのです。殊に先ほどの車両法用途目的ということは、後日私は必ずその判例が出ますから、そのときにはあなたは責任をおとりになりますか。そういうような解釈は出て来ないと思う。だから本法において、まぎらわしい文字は、私は修正することがいいと思うのです。だからとにかくわかりにくい難解な、国民のために作る法律なんですから、国民が容易にわかるように作ることが今日の立法の技術になつておるのです。又我我第一国会以来、そういう方途を以て立法されておる、成るべく読んで見てわかるような法律を作るということがすべて我々が今日までとつて來たところの態度なんです。して見ますれば、この法律において難解な、少くとも我々が見ても難解である解釈が、あなたと私が議論しなくてはわからないような文字を使う必要はない。容易にわかるような表現に私は改める必要があると思う。  それから規則制定権の問題でありますが、規則制定権においてあなたと論議したところが、一時間二時間やつてつたつて終らないのですから、その問題には触れませんが、私といたしましては、これは單なる手続規定である。恐らく最高裁判所がこのルールを制定される場合において、單なる手続のみを規定するとは考えられない。又本法を一覽いたしましても、それだけでは賄い切れないと思うのです。いわゆる権利の得喪変更に対して影響を及ぼすし、実体法的なルールが定められなければ賄えないことは、あなたも容易に想像されると思います。單なる手続きで日にちをきめるとか、理由の証明を出すとかいうことでルールを賄えると思うのですか。競売法の規定、或いは強制執行法のいろいろな規定を運用せずして、この法律を基本にいたしまして、そういう点を私は書かなかつたならば、ルール制定は目的を逹し得ないと思う。これはもう火を睹るより明らかだと思います。従つて私はこのルール制定権に至らない範囲というものは、この法律自体の表現からいいますと、実体法的なものがルールの中に差し加えられることは予想されるが、あなたの説明はそういうものを差し加えないで、單なる手続規定のみほか書かないのだという保証がつくならば、これは別です。それでは自動車抵当法の運用がなされないと思うのです。動いて来ないと思います。それだけでは……。
  24. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど申しましたように、このルールの内容といたしまして、競落による所有権移転等で、実体法上の事項を規定することは考えられるのでありますが、この競落による権利移転は、本来抵当権の内容として当然予想されておることであつて、実質的にいいますと、全く新らしい権利変動規定するものではなく、ただそれを具体化する手続規定する、その結果当初予定された権利変動が生ずる、かように考えることができるかと思うのであります。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 大分長くなつて失礼でありますけれども、もう少しお許し願いたいと思います。手続規定はあなたのおつしやる通りに制約されて書かれれば、これは私ども認めます。併しそれでは不可能であることは、これは必ずルールを上げて参りますれば我々も又非難しなければならないことになつて来る。そうしなければこれは賄えないものであることも、あなたの御説のように得喪変更に関するあれは仮にあるといたしましても、それは抵当権の内容から出て来るところの法的効果だとこうおつしやるのですけれども、併し抵当権本質から出て来るところ効力というものは不動産抵当でも予想されて明記されておるごとく、いろいろの法律効果が生ずるのです。それをもルールの中に含むかどうかということをこちらは懸念するのです。あなたの御説のように抵当権に当然含むところ権利内容、抵当権効力というものは、抵当権設定契約によつて当然当事者においてそれは法律効果を予想したものであつて、そこから出て来る必然的の効果は、当事者がそれに対して処分を委ねておるのだから、ルールにおいてそれを変えても差支えないという御議論になるのですけれども、若しそうだとするならば抵当権の法的効果といたしまして、滌除であるとか、或いは代価弁済はここに書いてありますが、増価競売というような問題になつて参りました場合に、それをルールで定め得るかどうか。
  26. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 自動車抵当法案におきましては民法抵当権に関する規定のうち滌除の部分は規定をしていないのでありまして自動車抵当については滌除の制度をとらない考えなのであります。従いまして滌除の手続に伴います増価競売等の手続等が規則の中に規定されることはないと考えます。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 ではルール制定権の範囲はお説のごとく單なる手続のみということに我々はあなたの言質を取つて置きます。次にその滌除の問題ですが本法においてはこの代価弁済とかしてありますね。代価弁済いわゆる第三者の権利保護方法として代価弁済の一つの方法だけを認めておりますが、これでは第三者の権利保護するにはまだ足りないのじやないかと思うのです。又今日の自動車界におけるところの実態から考え合せましても、こういう債務付きのいわゆる担保権付きの自動車を買い得ることは往々にあることです。むしろそういうもりを買う場合が多いでしよう。その場合において又そういう担保権があるからそれに償却に困つた場合において処分するのですから、その場合においてあらかじめ担保権消滅してそうして品物を売るという債務者に力がないことはこれは当然です。ですから担保権付きのまま讓渡されることが多く見受けられる場合、その場合を想像いたしましていわゆる第三者のために代価弁済の方法を本文において二カ条設けておるのです。これだけでは私は第三者の権利保護としては足りないのじやないかと思う。むしろいわゆる滌除権を認めることがいいのじやないか、そうするならば担保権付きの自動車も容易に取引の目的として市場にこれが交換価値認められる。不当にいわわゆる抵当権者権利の行使によつて自動車の本来持つ価値を……、抵当権の一番欠点は御承知の通り私が説明するまでもなく、抵当権実行によつて不当に市場価格を減殺されることです。抵当物価値が必ず減殺されるのです。本来百万円のものが抵当権設定抵当権実行という圧力によつて、本来百万円に売れるものが八十万円、五十万円ということになるのです。これはもう学問上においても常に憂えられておるところの問題なんです。実際の取引の場合においても、それが十が十までそういう形態を備えておるのです。従つてそれを第三者が排除するためには、その抵当権を、第三者の権利行使によつて抵当権消滅させるという滌除の権利を第三者に認めることが、いわゆる自動車取引界におけるところのいわゆる第三者保護のために十分大きな効用をもたらすものではないか。代価弁済のみではなくして滌除の方法によれば真に公正なる価格が出て来るのです。不当に抵当権者の圧力をその自動車にこうむることはないと思うのです。本法において滌除権行使の規定を挿入するところの御意思があるかどうか伺つて置きます。
  28. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 滌除の制度は他の動産抵当即ち自動車農業用動産抵当につきましても特に適用を排除されております。成るべく手続を簡易にするという趣旨であろうかと思うのであります。一方船舶につきましては滌除の制度が適用されるわけでありますが、滌除の通知がありますと、抵当権者は一カ月内に増価競売の請求をしなければならんことになつております。又その請求をした後三日以内に増価競売の申立てをしなければならんわけでありますが、一般不動産と異りまして移動する物件につきましてこの滌除の規定を設けますと、抵当権者といたしましては抵当権実行に当つて先ず財産取得者に実行の通知をし、その他滌除の通知があれば増価競売の申立てをするという一連の手続をいたします間に、そのものの所在が変つて結局抵当権実行が極めて困難になるということも考えられるのであります。現に船舶につきましてはさような趣旨において滌除の制度は船舶に適用しないように改正さるべきだという意見も相当あるのでありまして、自動車抵当につきましてはそれらの事情を考慮いたしまして、滌除の制度を適用しないことに立案いたしたのであります。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 これは要するに本来動産抵当というものは、これは本質論に又戻るようですけれども動産抵当の場合において、いわゆる農業資産であるとか、或いは工場財団であるとか鉄道財団とか集団物に対するところ抵当権の場合においては、滌除は不適当であること、これは認めます。併し一箇の物を備えていわゆる抵当権にふさわしいものであるという動産というものに対して、船舶のごとき、或いはこういう自動車のごとき……認める場合においては、むしろ船舶と同様に考えることが当然じやないか。移動することは船舶も自動車も……船舶のほうがより以上世界的に移動するのですから自動車の比ではないのです。但し船舶に対しては移動するから、実行に対して不便があるから廃止するという意見がある、それは意見に過ぎないのである。今日船舶においてもそれぞれ行われておる、外国立法においても行われておるのですから、日本のみがそれを行わなかつた場合において、果して船舶に対するところの世界的取引が認められるかどうか。いわゆる船舶保險に対する条項は研究せられなければならん問題があるが、容易にそれは実現できない。自動車の場合においてただ移動するからという一事で以て滌除権を認めないということは理由にならん。これは要するに債権者のほうに便宜のように作ろうとするから……、債務者のほうにも権利認めて、公平に債務者権利保護しよう、又第三者の権利保護してやらなければならない。債権者が面倒臭いからということでは……、滌除権の行使は債権者にも痛いことは当然です。債権者がそういう価格を不当に安く指定するから、物権を不当に安い価格で債権者が取得しようという考え方を阻止するために、財産取得者に対しまして滌除権の行使を認めておるのです、公正なるところ価値を保存させようとすることが債務者のためであり、第三者のためである、こういう趣旨の下に滌除権が認められることは御承知の通りです。だからあえて本法の場合にこれを否定する理由はないと思うのです。それは農業資産の場合にはこれは取上げていません。それは抵当権本質にふさわしくない、工場財団の場合もふさわしくない。その他鉄道財団の場合もそうである。そういう集団のものに対するところ抵当権の場合には勿論認めないほうが適当でありましよう。併しこういう單一物、特定物に対するところの滌除権を認めて、債務者権利及び第三者の権利保護することがこれは公平ではないかと思います。
  30. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この滌除の制度につきましては、不動産の場合におきましても、財産取得者が不当に安い値段で申入れた場合に、債権者抵当権実行を暫らく待つて抵当物の値上りを待つというような機会を失わなければならんというような欠陥があるのでありまして、外国の立法例におきましても近時廃止しておる例もあるように聞いております。もとより抵当権者の立場だけから立法いたすことは適当でないのでありますけれども、この自動車抵当の場合におきましては、最初に申上げましたようになるべく手続を簡易にするというような趣旨からこの滌除の制度をとらなかつた次第であります。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 私はその点については不満です。ですからこれは債権者権利保護することに汲々として、債務者及び財産取得者のかたがたの権利保護しないことになりますから承服できません。同条で救済しようということは不備であり、公平を欠く、ものであり、債務者の財産上、経済上の利益を不当に制約するものである。殊に第三者の権利の制約は申すまでもない。その点において本法において少くとも滌除、若しくは滌除に代るべきところ立法措置を講ずべきである。こういうことを申上げて置きます。  それから成立要件及び対抗要件の問題はこれは立法上の基本的な考え方ですからこれはあなたと私と考え方が違うだけですからこの点は別に論議しません。  罰則の問題ですが、これは他の法律によつて罰則があるから云々ということではなく、いわゆる抵当権者権利を保全しようとするならば、やはり本法においてそういう規定を置くことのほうが却つて抵当権者権利確保するのではないか。又債務者も不当にそういう債権者権利を害するがごとき行為をなさないということにもなると思うのです。重ねてこの点を伺いたいと思います。
  32. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど申上げましたように、船舶及び不動産一般抵当権につきまして抵当権者権利確保のために刑法以外に特別の罰則を設けておりませんので、自動車の場合は他の罰則を設けております場合よりも、むしろこの不動産及び船舶の場合の例に傚うほうが適当と考えて特別の罰則を置かなかつたわけであります。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 本法において質権設定を禁止した理由を伺つて置きたいと思うのですが……。
  34. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 権利関係の錯雑を避けたいという気持でございます。
  35. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) 他に御質問のかたどうぞ御発言を願います。
  36. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 私は他の委員会のほうに出ておりましたので、どなたか御質問になつておることがありましたら一つ御容赦願いたいのです。十三条の代価弁済の条文解釈なのでございますが、説明書によりますと、こういう説明が加えてあつたようです。例えば六十万円の債権の担保となつております自動車を第三者が五十万円で買取つた場合には抵当権というものは消滅する、こういう説明が加えてあつたように思うのですが、そうした場合にあとの十万円というものはこれは抵当がないままで当初の債務者に負債として残つて行くことになるのでしようか。
  37. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この十三条は説明書にありますように民法三百七十七条と全く同趣旨でありまして、六十万円の債権のために自動車の上に抵当権設定してある。それは財産取得者が五十万円で買つた抵当権者のほうで五十万円の代金を自分のほうに受取れば、その抵当権消滅してもよろしい、残りの十万円は無担保になつてもよろしいという場合に抵当権者のほうから申出て、五十万円の返済を受取れば、それで抵当権消滅する、こういう趣旨でありまして、抵当権者と財産取得者が、どちらも都合がいいという場合に行われるわけであります。
  38. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 そうなりますと、今のこれは一つの例なんですが、十万円という債権が残るわけになるのですが、それを処分するというような状態になつたときには、それを支払い得る能力に非常に問題が起ると思うのですが、抵当のないものがそこに債権として残る場合の保証・債権者に対するところの保証というものは、どこでせられることになりまするのか、この点について……。
  39. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 債権者が残りの十万円が無担保になつては困る、何か保証がなければ困るという場合には、この代価弁済の請求をしない。請求をする場合は、残りの十万円は無担保になつてもよろいしと考えた場合なのであります。
  40. 伊藤修

    伊藤修君 この際もう一点明らかにして置きたいのですが、この抵当権によつて担保せられるところ債権範囲を伺いたいのですが……。
  41. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 債権範囲につきましては、何らの制限がない。民法抵当権によつて担保される債権と同じであります。
  42. 伊藤修

    伊藤修君 同じというと、どこまでです。
  43. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  44. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) 速記を開始して下さい。
  45. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 自動車抵当法の十二条に規定してあるのでありまして、これは民法の三百七十四条と同趣旨の規定であります。
  46. 伊藤修

    伊藤修君 そうするというと、違約金であるとか、或いは損害金であるとか、或いは特定な約定に基くところの違約金とか、そういうようなものは一切入らないわけですか。
  47. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 民法の三百七十四条の場合と同様に、債務不履行によつて生じた損害の賠償を請求する権利、いわゆる遅延利息につきましては、最後の二年分について担保されます。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 それではもう一点明らかにして置きたいのですが、附属物、従物、或いは附加物、この関係はどうなるのですか、抵当権の行使の場合……。
  49. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 附加物に対して抵当権が及ぶかどうかという点も、第六条に附加物について規定がありますが、全く民法不動産抵当の場合と同じ法理で解決されると考えます。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 法理とおつしやると、法理を聞いておるのですが、従物というのはどの範囲まで言うのですか。
  51. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 具体的なものですか。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 ええ。
  53. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) 従物と申しますと、車台のシート、そういうものを従物と言います。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 それは私の聞いておるのは、シートやハンドルやブレーキを聞いておるのじやない。それは一体となすものと考えて差支えない。それは附加物と考えて差支えないのですが、私の聞いておるのは、自動車についておるところの、例えば工作機械、或いはジヤツキだとか、まだその他のものがついておることがあるでしよう。そういうものまで及ぶのかどうか。タイヤのスペアというものまで及ぶかどうか、そういうことは、本法の場合に明らかにして置く必要がある。少くとも解釈の上においては速記録に明らかにして置いたほうがいいと思います。
  55. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 従物につきましては、抵当権設定当時の従物に対しましては、抵当権設定の効果が及ぶ。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 私の聞いておるのは、そんなことを聞いておるのじやない。内容を聞いておるのです。
  57. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 何が従物に当るかということですか。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 今具体的な例を挙げましたから、その例に対して従物になるかどうかということを御説明願いたい。
  59. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) 従物と申しますと、座席のカバー、只今シートと申しましたけれども、座席のカバー、或いはタイヤのスペア、或いはジヤツキその他の工作機械をつけておりますから、そういうような場合にはそれを従物と考えております。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 もう一点、そうするとトラツクの場合におきましては、ロープ、シートはどうなりますか。
  61. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) トラツクの場合のロープ、シートというのは、通常の場合全然別のものでございますから、これらは従物と考えておりません。
  62. 小泉秀吉

    ○小泉秀吉君 ちよつと思い付きですが、第六条の今の御質問と御説明ですが、「抵当権抵当自動車に附加して一体となつている物」という物の御解釈がいろいろ違うようですが、これは船なんかだと、附属物に対しての、はつきりした附属物の目録というようなものがついておるから、その物というのは、文章の上ではつきりしますが、ここだと、若しも裁判事件になるといろいろ解釈が違つて、結局裁判が長引くというようなことになるのだが何かこれこれのものは自動車の附属物、附属器具というような規定が、何か省令にしろ何にしろ、ほかのところでそんなものがはつきりしていると、こんな場合に非常にトラブルが少くなるのだと思うのですけれども、そういう御見解は政府のほうで如何ですか。
  63. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) 自動車の販売その他におきまして、実際に只今御指摘になりましたような、或いは工作機械であるとかというようなものがついております場合も、つかない場合も実際はあるのでありますが、それでついておりますラジオにいたしましても、最近の乗用車等におきましてはついておる場合もありますし、ついてないような場合もあります。ついておりますような場合には、やはり当然これは従物として考えておりますが、若しもついていないような場合には、設定行為に別段の定めがある場合ということで解決したい。特段の契約を、定めをして置きましてはつきりさせたい、こういうように考えております。属具の目録というような制度をとりますには、今回の登録は初めてのことでございますし、事務が非常に錯雑する虞れがありますので、それをとらない。設定行為に別段の定めをなすようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  64. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) それじや他に御質問がなければ……。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 これは本法に直接関係ないのですが、私の見るところによりますというと、今日この自動車に対しまして道監とか陸運とか、いろいろ監督機関があるようですが、局長ですか、牛島さんはその衝に当つていらつしやるのですが、なお全国の道監、或いは陸運の事務において、非常に我々として法務関係としては納得のできないなされ方があるように見受けられるのです。たまたまじやないのですがたまたま現われて来たのは、今朝の新聞ですか、昨夕の新聞ですか、埼玉の事件のごとき、あれはたまたまのことであつて、ああいう例は恐らく多くあると思うのです。又ああいう程度に至らんまでも、道監あたりの組織が私は相当腐敗しておるということは断言して憚からない。これに対するところの私は適切な監督権を行使して頂くとか、何らかの御処置をとつて頂かないと、延いては折角民間にこの行政権を委託した委員会制度というものが、国民の信頼を欠くことになると思います。今日道監のごときは、全く私は私情によつて左右されておる。或る勢力によつて左右されておると断言して憚からない。こういう点に対して、基本的にこれをこういう重要な私権の得喪変更を目的とするこういう重要なものを、そこに今度監理を委託する、登録制度の基本をそこに委託する、して見ますると、なお更今後責任が重くなつてくる。将来法律においていろいろな事項を相当委託されることと思うのです。従つてより以上私は公正な立場に立つて国民のために仕事を処理して頂かなくちやならん。遺憾ながら今日の道監の全国の組織というものは、全く部業者のとにかく相当の勢力というものが道監を左右していることは、蔽うべからざる事実である。そういうことがたまたまああいう不正行為になつて現われて来る。この点は勿論司法当局としても、この点に対しては我々強くこれに対して要望いたしたいと思うのですが、我々の所管において処理するまでもなく、当面の事務処理の担当責任者たるあなたにおいて、相当の厳重な訓令でも出して頂きまして、この処置を講じて頂きたい、かように考えております。
  66. 牛島辰彌

    政府委員牛島辰彌君) 只今伊藤委員から御指摘になりましたように、陸運行政の最末端の陸運事務所におきまする事務の監理能力が非常に弱い点もございまするし、最近車両の検査登録に関しまして、各所におきまして誠に申訳のない事態を惹起いたしましたことは、私といたしまして誠に恐縮に堪えないところでございます。これに至りまするにつきましては、種々原因もあつたろうかと思うのでありまするが、今後の検査登録の事務につきまして、なお陸運事務所全般の綱紀の粛正につきましては、十分に気を付けまして、かかる不名誉な申訳のないことがないように、気を付けて参りたいと思つております。
  67. 植竹春彦

    委員長植竹春彦君) それでは運輸、法務連合委員会をこれにて閉じます。    午後三時七分散会  出席者は左の通り。   運輸委員    委員長     植竹 春彦君    理事            岡田 信次君            小泉 秀吉君            高田  寛君    委員            仁田 竹一君            山縣 勝見君            小酒井義男君            高木 正夫君            前田  穰君            松浦 定義君            鈴木 清一君   法務委員    委員長     鈴木 安孝君    理事            伊藤  修君    委員            北村 一男君            長谷山行毅君   政府委員    運輸省自動車局    長       牛島 辰彌君    運輸省自動車局    整備部長    佐竹 達三君    法務民事局長 村上 朝一君   事務局側    常任委員会專門    員       古谷 善亮君    常任委員会專門    員       岡本 忠雄君    常任委員会專門    員       長谷川 宏君