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1951-03-12 第10回国会 衆議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十二日(月曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 島田 末信君 理事 福永 健司君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君       小川原政信君    尾関 義一君       金原 舜二君    佐々木秀世君       玉置 信一君    中川 俊思君       塚原 俊郎君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    今野 武雄君       林  百郎君  出席政府委員         労働政務次官  山村新治郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      中西  實君  委員外出席者         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償課長)  池邊 道隆君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 三月九日  委員柳澤義男辞任につき、その補欠として佐  藤榮作君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 同月十二日  委員佐藤榮作君、佐藤親弘君、松野頼三君、坂  本實君、篠田弘作君及び船越弘辞任につき、  その補欠として柳澤義男君、尾関義一君、小川  原政信君、佐々木秀世君、中川俊思君及び玉置  信一君が議長指名委員に選任された。 一月十六日  失業対策事業費国庫補助に関する陳情書  (第一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五三号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  まず労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を許します。今野君。
  3. 今野武雄

    今野委員 ちよつとお伺いしたいことは、この前労働災害についての資料をいただいたのでありますが、あれはこの前も話に出た通り労災保險の給付を受けた者の統計なんです。それで実際生の労働災害がどのくらいあるかということは、ちよつとわかりかねるというお話でしたけれども政府が直接に監督権を持つております現業官庁、あるいはまた国鉄公社、あるいは専売公社、あるいはまた特別調達庁関係のいわゆるLR労働者、こういうようなものについては、これはよもやそういう資料はそろわないはずはないと思いますが、そういう方面について労働災害がどのくらいあるかという資料がありましたら、それをお示し願いたいと思うのであります。
  4. 中西實

    中西政府委員 資料は、この前差上げましたのよりは大分詳細なのが最近でき上りました。必要でございますれば差上げたいと思います。  それからPDLRの、特にこれだけ抜きましての災害は、実はとつていないのであります。PDは、それぞれ違つた産業のものがありますので、そのおのおのの産業の中に入つております。LRも、これだけ抜き出すということはちよつとむずかしいと思います。荷役その他の関係で、一応出るには出ておりますが、これは一般荷役なり土建の方に入つておりまして、これだけ取出してというわけには参らないのでございます。
  5. 今野武雄

    今野委員 それはいついただけますか。と申しますのは、きよう法案の審議上間に合わなくとも――間に合わない場合には、それはあとで一般質問の中へ繰入れて重ねて御質問したいと思いますから、できるだけ急いでお出しいただきたいと思います。  それからもう一つお伺いしたいと思うのは、ただいま特調関係云々ということを申しましたが、たとえばこの間以来問題になつておりますいわゆる軍関係で雇われた者が、横浜港外で仕事をするといつても、横浜港外がずつと延長されて朝鮮まで行つてしまつておる。そしてそのために、戰場での災害と見らるべきものもあるわけであります。それからその途中で、この間私があげましたように門司港で二人が撃たれた。こういうような惨害も起つておるわけであります。そのほかまた、このごく近所でも最近に――最近といつても一月になりますが、起つた事件があるわけであります。それは多分御承知だろうと思うのでありますが、二月の十七日に、そこの虎の門にありますGHQのモータープール運転手佐藤重郎という、四十五歳の方でありますが、この方が夜勤務をいたしまして、夜おそく帰つた。そうすると、すぐそばの田村町の帝銀のところでもつて通りかかつた━━━━に突然顔面を強打されて、路上に転倒してしまつた。ただちに病院にかつぎ込んだけれども、死んでしまつた。この━━━━━━━━━━、すぐに近所の人がみんな寄つて来て逮捕いたしまして、MPに引渡して、事柄はすべて明らかになつたのでありますが、しかしその死亡した人に対して一体どうするかということに対しては、法的根拠云々というようなことで、なかなか片づかない。このことについては、そこのモータープールの夜間の総取締役をやつておる中村席次さんという方の名前で、そのことを明らかにした弔慰文などが出ておるわけであります。今後戰争状態か続いて行くと、こういうことはどんどん起つて来ることだと思います。そういうようなことは、一体労働災害とか、そういうようなものに入らないのかどうか、その点もお伺いしたいと思うのであります。
  6. 中西實

    中西政府委員 ただいまの事案につきましては、私どもまだ聞いておりません。直接管理の責任にあります特別調達庁の方で、しかるべく処置をしておるのではないか、かように思つております。それからLR直用でありますので、国の直接管理しております事業には、労災保險法適用はございません。労災保險対象にはならないわりであります。
  7. 今野武雄

    今野委員 労災保險適用にならないとすると、その人たちに対しては法的には一体どういうことで、その災害に対する、補償がなされておるか。この間も非常に詳しく申しましたが、たとえば十一月に横浜を出て、門司でもつてタバコ買いに出るところを、倉庫のところで二人射撃されて、一人はどうも殺されたらしい。これも目撃者がおるわけであります。そういう場合に一体法的にはどう処理されておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 山村新治郎

    山村政府委員 進駐軍関係の労務者につきましては、一切特別調達庁の方において処理いたしております。
  9. 今野武雄

    今野委員 そうすると、労働省ではそのことについてはわからないのですか。
  10. 山村新治郎

    山村政府委員 特別調達庁の方であります。
  11. 今野武雄

    今野委員 そうすると、今度は御意見でよろしいのですけれども、そういうことについて、法律上そういう人たちの遺族だとか、そういうものに対する補償規定というものは、現在ないかどうか。特別調達庁で処理するということはわかりますが、それは法的な処理であるかどうか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  12. 山村新治郎

    山村政府委員 特別調達庁の方の問題につきましては、これは多分法律はなく、規定でもつて処理いたしておると心得ております。
  13. 今野武雄

    今野委員 最近そういう事件が非常に多いわけでありまして、私の選挙区の横須賀あたりでも、撃たれた、けられたという事件が始終出て来る。こういうことは人道上も許されないことであります。日本国民としても、ちよつと耐えられないことでありますが、政府ではそういうようなことに対して、何か起つてからどうこうということもありますが、起らない先にどうするという対策をお持ちかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  14. 山村新治郎

    山村政府委員 御指摘のような事実が、もしかりにあつたといたしましたならば、これは特別調達庁の方に厳重に申入れをいたしたいと思いますし、またがつて労働省からも、基準法に違反することのないようにということにつきましては、折に触れまして特別調達庁申入れをいたしておる事実があります。
  15. 今野武雄

    今野委員 大体以上で質問を終りたいと思いますけれども最後に私希望いたしたいのです。このことは日本国民としては屈辱的なことでありまして、かつての中国の苦力や何かが、一体どういう扱いを受けたかということを考えるにつきましても、それと似たような状態に置かれておるということは、非常に重大問題だと思う。政府は、今のお答えですと、そういうことがあつたら一々特別調達庁で処理するといいますけれども、そういう小手細工ではなかなか解決できないことだと思います。ですからこの点については、日本国民を代表する政府であるなら、当然これははつきりした交渉を、政府として責任をもつてすべきではないかと思うわけであります。このことについて政府は、今までのお答えを聞くと、どうもそういうことは避けておられるような印象を受けるのは、はなはだ残念であります。われわれはやはり吉田内閣日本人の政府だというところを示してもらいたい。これを希望して私は質問を終ります。
  16. 島田末信

    島田委員 ただいま議題となりました労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案につきましては、この際質疑を打切りの上に、ただちに討論採決されんことを望みます。
  17. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの島田末信君の本法律案に関し質疑を打切り、ただちに討論採決に入るべしとの動議について、採決いたします。本動議賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  18. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて動議のごとく決しました。  これより労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案議題として、討論に入ります。柳澤義男君。
  19. 柳澤義男

    柳澤委員 私はただいま議題となつております労働者災害補償保險法の一部改正法案に対しまして、自由党を代表して賛成の意を表するものであります。  この改正案は、労働者災害補償法労働基準法裏づけといたしまして、生れてすでに三年有半、いわゆる業務上災害をこうむつた労働者に対しまして、的確かつ公正な災害補償を行い、労働者補償を受ける権利を擁護する一面、保險方式によつて事業主経済的負担の分散、軽減をはかるというのが目的とされております。ところが現在のままでありますと、過去五年の実績ということになつておりますのを、この改正案によりまして、これをもつと詰めて、三年の実績によつてメリツト制を実施するというのでございますから、これは結果におきまして、本法の実施の目的に一層の進歩をもたらすものである。言いかえれば災害防止努力払つた事業主に対しては、その負担を軽減され、災害を多く出した事業主に対しては、これによる負担を他の事業主に転嫁せしめないで、いわゆる公平な保險料の分担を期するという点において、重大な意義がありまするし、またその結果として、災害予防するということに対しまして、事業主の重大なる関心を深めることはきわめて明らかなことであります。これに反対する者は、あるいはこれだけで災害防止できるかというような御意見があるかもしれませんけれども、もとよりこの法律だけで災害防止できるものではございません。あるいは使用者施設改善とか、監督官庁監督指導、あるいは被用者もまた一層の注意を払うという、いろいろ総合的な施設その他の改善によりまして、初めて完全な防止ができることは言うまでもありませんが、本法改正されることによりまして、確かに災害予防につきましても、一つの大いなる進歩であるということは明らかなことであります。この意味におきまして、この改正案に満腔の賛意を表し、改正せらるべきが当然であると、かように考える次第であります。
  20. 倉石忠雄

  21. 青野武一

    青野委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案に対しまして、警告付賛成の意を表するものであります。  と申しますのは、なるほどこの法案を読んでみますと、確かに労働者災害補償保險法の第二十七条の現行法に比べて、改正案のすぐれておる点は認めるのでありますが、しかしながら法律改正して、それで労働者災害予防が完全にできるかと申しますと、そう簡單には行かないのであります。三百人の労働者を使つておるのを、今回の改正案では百名ということに削減しておりますが、百名程度の労働者を使つておりまする会社工場といつたようなものは、大体に所得税事業税の重圧に苦しんでおりますから、設備至つて十分でないところが多いのであります。例にとりますと、九州筑豊炭田あたりは、なるほど高松炭鉱あたりは非常にすぐれた設備をしております。三十人、五十人が炭車に乗つて炭坑数千尺の下におりますときに、誤つて一インチのワイヤーが切れますと、十六の枕木を切つて十七本目に炭車がとまるというようなしかけをしておるのは、おそらく高松炭鉱くらいのものであります。他の小さい炭鉱でありますと、五十人、八十人の労働者が、不幸にしてワイヤーが切れると、そのまま何千尺の坑内に落ちて、こつぱみじんになつて、これらの労働者は死んで行く、そういうこまかい規模の、資本の小さいところでは、十分な設備はできません。たとえば北九州のモーターをつくる工場八幡製鉄所、あるいは輸出向けカン詰カンをつくるところ、そういうところを私どもは地元の関係でありますので、いつも視察に参りますが、もう少しこういう点の設備改善をしたらどうかという注意をしましても、結局そこまで金がまわらないのであります。そういう点でいくら法律改正いたしましても、最後は人の問題であります。厳重な監督基準局がすると同時に、常にそういう事業主に慫慂いたしまして、災害防止するための相当すぐれた設備に金をよけい入れるようにしなければならぬのであります。東京あたりの大きな会社でも、私ども知つておりますが、朝は自分の家で飯を食つて来るが、晝飯、晩飯は経済安定本部役人をひつぱり出す、あるいは大蔵省の役人をひつぱり出す、晝飯と晩は会社の金で飯食いのつき合いをする、そういう重役が一つ会社には何人かおるが、そういうところにむだな金を使いますよりも、労働者災害防止するために有効適切に、こういつた方面に金を使うべきだということを、しみじみと私は常に感じさせられましたわけであります。従つて特殊の産業であります炭鉱にいたしましても、染料工場にいたしましても、また骸炭工場にいたしましても、りつぱな設備ができておつても相当の災害があるのに、百人と限定いたしますと、やはりそういう方面設備費用がまわりにくくなつて来ることは、これはある程度やむを得ないと思いますが、それがために労働者災害は累積して多くなつて行くことはやむを得ないという考え方には、どうしてもなれないのであります。従つて今回の現行法の三十七条を改正いたしました内容につきましては賛成でありますけれども、この点については監督官庁である労働基準局は、労働基準法裏づけとしての災害補償保險法関係から、適材を適所に配置いたしまして、十分監督をすると同時に、そういつた点について事業主警告を発し、そういう方面に生きた金を使わせるような努力を、私どもは希望してやまないのであります。今でも産後二十日もたつておらない産婦を、労働者の家内が二十日も三十日も産後に寝ておるとはぜいたくだ、われわれの炭鉱は百人か百二、三十人の炭鉱じやないか、お前たちが働かなかつたら君たちの給料を十分に払えないのだといつて、暴力的にこん棒を振りまわして、炭坑に追いやつて行くといつたような封建的なことが、やはり一部の炭鉱には行われておる。そういうような関係を考えますときに、どうしても人間に重点を置かなければならぬと思う。そういうことのないように、監督官庁努力することによつて、この改正法案というものが生きて来ると考えます。  あまり具体的に詳しく申し上げますと重複しますから、日本社会党といたしましては、そういうことを未然に防止すると同時に、労働者災害補償保險法の精神を生かし、監督者がそういう態度をとつて、これを厳重に監視して行くということを、ぜひやつてもらいたいということを、警告的に申し上げまして、社会党といたしましては、今回の労働者災害補償保險法賛成をするものであります。
  22. 倉石忠雄

  23. 今野武雄

    今野委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本法案に対して反対の意見を述べるものであります。  大体労働災害が最近になつて、特に昨年の朝鮮事変以来、非常に多くなつて来ているということは、われわれがふだんから接触しておる工場、鉱山、そういうところでもつていわれておる事実でありますが、それがやはり労働省資料によつても、ある程度考えられるわけであります。それが何によつてそうなつて来るかということでありますが、これは労働省資料では十分にうかがえないのであります。というのは、統計のとり方や何かについても、現在労働省事務官あたりから非難が出ておりますが、非常に少いところを選んでやる。これはちようど東條内閣のとき、化学工場その他でもつてつたと同じようなことが、現在行われておるということが、この当事者自身の中からそういう声が上つて来ております。こういうような条件のもとで、実際の災害状態がどんなにひどいものかということは、これは表面に現われたものよりもずつとひどいわけであります。そういう原因は一体何であるかといえば、これはもう一にも二にも労働強化であります。労働強化については、労働省としては労働時間はさほど延長していないということを言つておりますが、これはさつき言つたように、統計上の問題があると私は思つております。そればかりではなく、先日も中原君から出されたように、平均してはそう大したことはない。しかしながら期日や何かの非常に無理な註文を受けて、そして二日も、三日も連続して徹夜するというようなことがある、そういうことのために災害がふえております。ところがこの問題に対して根本的な措置を講じようとせず、そうして責任を全部事業主に負わせようということは、これはいかにも普通の常識では、とても考えられないことなのです。しかのみならず、私はこの問題がかねがね重大だと思いましたので、労働組合関係の人々にも意見を徴してみました。そうするとその人たちの言うのには、こういうことになつたならば、これはたいへんである。こういう法律改正は、労働者にとつては決して好ましいものではない。なぜならば、今まででもすでに労働災害が非常に多くなつて、そうして災害保險が赤字になつて来ておる。そのために、労働災害としていろいろな実際の災害を、労働災害保險対象にして扱わないということが、あつちこつちで行われておる。これを労働者の不注意だとか、その他個人的な責任に帰しておることが、非常に多くなつて来ておる。そうして進駐軍関係のある職場では、この監督があまりに労働災害を多く扱い過ぎておるということで、首になつておるという例さえ出て来ておる。こういうことがある現在、こういうように法律改正されますと、従つて多発といいますか、災害の多いところでは、それを少く見せるために、そのような無理な扱い労働者の職務上の災害労災保險対象と認めない、こういう態度がますます強化される。そうすれば、労働者にとつてはなお好ましくない状態になるということを、労働組合関係の者が申しておるわけでございます。  そういう点から見ましても、根本にさかのぼらないで、個人的な責任に帰する、こういう法律改正は、絶対に反対しなければならぬ。むしろもつと根本にさかのぼつて、われわれは日本がアメリカの軍需工場になること、これをやめるように政府としてやらなければ、こういう問題は解決しない。こういう見地から、われわれはこの改正に対して絶対に反対するものであります。
  24. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決をいたします。本法律案賛成諸君起立を願います。     〔賛成者起立
  25. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて法律案は可決されました。  なお本法律案に関する委員会報告書については、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。次回は公報をもつてお知らせいたします。     午後二時十五分散会