○保利国務大臣 まず
労働組合及び労使
関係の調整についてでありますが、特に自立経済達成の国民的要請のもとに、
政府といたしまして、かねてから中正健全なる
労働組合の発達助長及び労使
関係の合理的安定、紛争議の早期平和的解決をはかることを、その基本
方針として参
つたのでありますが、御承知のように終戰直後の混乱期におきましては、破壊的勢力の大きな影響を受けまして、
わが国の
労働運動にはまことに憂慮すべき
傾向が認められたのでありますが、経済的、社会的情勢が混乱から安定へと推移し、またこの種の問題に対する国民の認識の深まるに連れて、
労働組合も漸次経済再建に対する責任を自覚され、いわゆる自由にして民主的な方向に進んで参りましたことはまことに御同慶にたへないところであります。また労使間の紛争につきましても、純然たる経済争議たるの性格を把持され、できる限り自主的に解決しようとする
傾向が看取せられますことは、基本的に健全なる動向として認められるのであります。
労働省といたしましてはこれに対し、問題の性質上、いやしくも労使の間に干渉にわたるようなことは、これを避けるとともに、常にその動静を的確に
把握し、適切な教育
資料を絶えず提供し、も
つてこの
傾向を一段と助長いたしたい所存であります。来年度の予算において、
労働教育に関する経費の増額をはか
つたのも、この趣旨によるものであります。
なお第九臨時国会において制定されました地方公務員法に関連し、地方公営事業
労働関係法案の国会提出が予定されているのでありますが、自治庁において起案中の公営事業法案と相ま
つてその成案を得べく目下努力中でございます。
次に
労働基準行政について申し上げます。御承知のように
労働基準法は施行以来三年有余を経過したのでありますが、本法が
わが国労働者の
労働條件の改善と
労務管理の合理化を促進し、国際的には漸次ソーシヤル・ダンピングに対する諸外国の懸念を一掃して、国際的信用を高め、
わが国貿易の伸展に寄與しつつありますことは、否定し得ないところであると思うのであります。
しかし本法の施行、特に監督の実施にあたりましては、いわゆる警察的、形式的取締に堕することを戒め、諸般の社会的、経済的
條件に適合し、特に
わが国産業が中小
企業の基盤の上に立ち、千差万別の
事情にあることにかんがみまして、具体的妥当性のある措置を講じ、できる限り
関係者が得心をして法を守り、進んで
労働條件の改善に努めますことを、その基本的
態度として臨んでいるのでありますが、最近
違反事業場の数が漸次減少したことは、まことに喜ばしく存ずる次第であります。
なお右の
一般的
労働基準行政に付随し、目下最も重大な問題とされておりますのは、
産業災害の問題であります。御承知の如く終戰後、
産業災害は種々の
原因から
増加の
傾向を
示しているのでありますが、これが労使双方のみならず、
わが国産業に與える損失はまことに大きいものがありますので、
労働省といたしましては、労使双方の協力によ
つて安全運動を活発に行い、
災害防止に特段の努力をいたしたいと存じておる次第であります。また目下御審議をお願いいたしております
労災保險法の一部改正も、いろいろと御
見解を異にせられる方もあるようでございますけれ
ども、私
どもといたしましては、
災害防止の上にきわめて緊要な措置の一端であると信ずるのであります。
次に先年来問題となりました賃金不払いにつきましては、昭和二十四年初め以来、
基準局で
把握いたしました
件数が、昨年の末までに約四万三千件、
金額にして約二百二十億円に達したのでありますが、そのうち
件数において八八%、
金額において九五%が解決をしているのでありまして、
労働者の生活の確保と、
労働不安、ひいては社会不安の除去に、
相当の貢献をし得たことを喜びとするものでありますが、今後とも一層努力したいと存ずる次第であります。
最後に、
基準法を円滑に実施するためには、何と申しましても法の実施を担当する監督官の教養と常識に依存するところが、非常に大きいと
考えられますので、
労働省としては、昨年四月から
労働基準監督官研修所を設置いたしましたが、来年度におきましては、さらに予算の増額をはかり、その充実を期しておる次第であります。
次に職業安定
行政について申し上げます。
朝鮮動乱勃発以来、
特需及び輸出の増大によ
つて経済活動が活況を呈して参り、これに伴
つて雇用情勢は若干好転して来たのであります。具体的に申しますと、
労働力
調査による完全失業者の数は、昨年八月の五十五万を頂点として漸次減少し、十一月には三十七万に低下したのであります。一方職業安定所の窓口に現われた
状況を見まするに、常用
労働者について見ますと、求職数が昨年七月八十五万七千であつたものが、十二月には六十八万五千に減少し、一方求人数は七月における十六万が、十二月には二十四万に
増加して参
つたのであります。この
傾向は、日雇い
労働者についても同様に見られるのでありまして、全国登録者数、七月四十五万四千が、十二月には四十一万四千に減少し、一方求人は、七月延べ四百八十八万八千であ
つたのが、十二月には延べ六百六十一万九千と
増加を
示したのであります。右の如く雇用情勢はやや好転しているのでありますが、雇用量は
産業の景況に比例して必ずしも
増加してはおりませんし、また来年度においては、
相当数の新たなる
労働力人口の
増加、国際経済に処するための
企業合理化の進行等が見込まれますので、来年における失業情勢は必ずしも楽観は許されず、大きな見通しといたしましては、本年度と大差なく推移するものと予想されるのであります。かような情勢に対処するため、従来実施して来た諸般の
失業対策を一層強力に推進することとし、先般衆議院を通過いたしました昭和二十六年度予算に計上されましたことく、
失業対策事業費及び失業保險特別会計予算を、それぞれ増額した次第であります。ことに
失業対策事業につきましては、新たに資材費についても補助を行うこととし、本事業の経済的効果を一層高からしめるよう措置した次第であります。さらに最近の
わが国産業の趨勢にかんがみまして、従来の職業補導事業に再検討を加え、補導種目の転換及び新設を行う等、情勢に即応し、その刷新充実に努力しているのであります。以上申し上げましたごとき職業安定
業務の刷新
強化に伴いまして、公共職業安定所の
業務量も
相当増大いたしておりますので、
関係職員の
増加は、けだしやむを得ない
事情にあるのでございまして、定員九百名の
増加をはかるため、目下国会におきまして来年度予算とともに、定員法の一部改正の御審議を願
つている次第であります。
以上
労働行政の概要について申し上げましたが、なお御質問がありますれば、私なり
政府委員より御
説明いたしたいと存じます。