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1951-03-07 第10回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月七日(水曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 福永 健司君    理事 島田 末信君 理事 吉武 惠市君    理事 青野 武一君       天野 公義君    坂本  實君       佐藤 親弘君    篠田 弘作君       船越  弘君    石田 一松君       前田 種男君    今野 武雄君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         総理府事務官         (特別調達庁労         務管財部長)  中村 文彦君         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局長)    小野儀七郎君         労働政務次官  山村新治郎君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      中西  實君         労働事務官         (婦人少年局         長)      山川 菊榮君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  委員外出席         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 三月六日  委員佐藤親弘辞任につき、その補欠として中  島守利君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員中島守利辞任につき、その補欠として佐  藤親弘君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  失業対策事業予算単価引上げに関する請願(  丸山直友紹介)(第九五七号)  連合国関係労務者失業保険法適用に関する請  願(前田種男紹介)(第九六七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五三号)  失業対策労資関係並びに労働基準に関する件     —————————————
  2. 福永健司

    福永委員長代理 これより会議を開きます。  本日は倉石委員長事故のため欠席しておりますので、私がその職務を代行いたします。  ます前会に引続きまして、労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。中原健次君。
  3. 中原健次

    中原委員 この場合、私は先般もらいました資料に基きまして、少しくお昇ねしてみたいと思います。  この資料によりますと、産業別災害件数調そのものが、この内訳には、災害件数労働者災害補償保險保險金給付の実人員が書いてあります。今われわれが今日の特殊的な條件の中における労働問題を審議いたしますためには、まず全般的な労働災害が一体どういうふうになつているか、ひとりそれは災害補償対象になろ労働だけではなくて、一般災害状況というものをまず最初に聞いておく必要があるのではないかと考えるので、この資料以外に、すなわち保險金給付を伴わない一般労働災害状況がどうなつているかということを、最初に承りたいと思います。
  4. 中西實

    中西政府委員 この労災補償でやつておりますのは、御承知かと思います。が、大体休業においても一週間以上のもの、それから金額において六百円以上のものを、対象にしてやつておるのであります。実は基準法に基いて、安全衛生規則に基いて、それ以下の災害届出を要求されておるのでありますが、この届出が実は嚴格になかなか励行されませんので、一応の数字はございますが、常識的に考えましても非常に実際と違うのじやないかというようなものが集まつておるのであります。今盛んにこの報告励行方をやつておりますけれど、現実に合う数字が今のところまだ集まつていない。それでわれわれとしては、大体重症軽症とに一応わけまして、かつては二週間以上の者を重症、それ以下の者を軽症と扱つておりまして、大体比率は統計的に見て、軽症重症の十七割くらいになるのではないかというふうに見ておるのであります。そういうことから一応の推計は考えておりますが、実数は遺憾ながら今のところつかめていないという実情でございます。
  5. 中原健次

    中原委員 その一般的な災害計数につきましては、後ほどでよろしゆうございますから、その数字をまたお示しを願いたいと思います。次にこの序業別災害件数調だけでは、実は今日の特殊段階における労働災害実態をつかむのにちよつと困難するのであります。そこで業種別災害件数がどういうふうになつているかということについて、労働省当局としての責任ある件数発表が願いたいと思います。
  6. 中西實

    中西政府委員 ここに一応産業別には触れているのでございましてさらにこれの細分の数字をお聞きでございますが、ここには産業大分類が出ているのでございますが、中分類で今のところとつております。その資料はございますから、御必要なら差上げたいと思います。
  7. 中原健次

    中原委員 私が業種別災害件数を要求いたしましたゆえんは、今日の災害の最もはなはだしい傾向を見せている産業は一体何であるか、その業種が何であるかということをつかむことによりまして、わが国の今の労働行政方針というものがきまるべきではなかろうかと考えるのであります。そういう意味でなるだけ詳しく業種別にこれを細分して、災害実情をつかむのに容易ならしめるということが、対策を樹立する先行條件になるのではないか、このように考えるのであります。従つてその点についてはできるだけ詳細に、業種別に細分されました件数を示されたいと思うのであります。  第三には、この統計では疾病統計というものが発見されないように思えるのであります。この災害件数の中に、労災保險対象としてのということでありますから、その対象になり得る疾病があるいは包含されているかとも思いますが、しかしこの文書をそのままとりますと、疾病統計は含まれていないと思われるのであります。これはまた今日の労働災害状況を見るためには、やはり疾病にもわれわれの調査を及ぶべきであると思うのであります。と申しますのは、疾病といえばしばしは業務上の災害と違うというふうに説明している傾向があるのでありますか、もとよりそういう場合もあるでありましようし、最近の傾向から申しますと、主として疾病疲労の蓄積の上に発生している。蓄積した疲労が回復しないままに、繰返されて労働が行われる。そのときに疾病が非常な件数示していることを、私どもは予想しているのであります。従つて疾病統計というものも当然労働省当局として、労働省それ自身の持つ役割としても、これは積極的に調査なされていることと考えるのであります。従いましてこの疾病統計がもしわかりますならば、お示しを願いたい。
  8. 中西實

    中西政府委員 労災補償は、大体が主としてけがによる負傷の方の補償が主でありまして、はたして業務疾病なつたかどうかという認定は、きわめて困難でございます。この労災保險疾病を取扱つておりますもので、割合はつきりいたしておりますのは、主として金属鉱山におきまする珪肺等でございます。これは大体業務上の疾病ということが、割合はつきりするのであります。しかしこれも結核と一緒になりますと、非常にまた認定がむずかしくなるのでありますが、まあ割合はつきりした方であります。そのほか業務上の結核というのはよくあるのでありますが、これもきわめて認定がむずかしいのでありまして、大体本人の本來の体質によつてつたのか、業務上なつたのか、非常にむずかしいので、ほとんどの事例業務外のものであると認定をいたしまして、労災対象にいたしておりません。それで疾病につきましては、大体健康保險の方で一応救済がされているということで、私の方といたしましてはごく特殊な珪肺その他、明らかに業務上の疾病というものだけに限つております。
  9. 中原健次

    中原委員 疾病のことについては相当議論がありますけれども、質問の時間の関係もありますので、これは一応お預けにいたします。  ここに基準局災害原因災害程度別災害件数というのがありまして、度数率の非常に複雑な、きわめて緻密な数字が載つておりますが、この度数率を算出する方法が、はなはだ複雑をきわめておる。従つてこの実際をつかむことは、かなり困難な感じがする。ここにはきわめて親切に盛られてありますけれどもほんとうにこれを正確につかむ必要のために、一応算出の方法はどうなつておるか承りたい。
  10. 中西實

    中西政府委員 度数率は、労働時間百万時間において災害をこうむりました労働者の数ということで、一応国際的にも出すことになつております。こ処も国際的に、各国において若干違う方法をやつておるところもございますけれどもわが国におきましては、百万時間におきまする労働者災害件数割合ということで、計算いたしております。
  11. 中原健次

    中原委員 次に安全課発表をいたしました統計数字と、それから災害補償課統計数字と、この両方に食い違いがあるように思えるのでありますが、これはやはり当然両者の統計の上には統一性があり、一致するものがなければならぬ、こういうふうに思うのですが、この点はどうでございましようか。
  12. 中西實

    中西政府委員 災害がありますと、各事業場から必ず届出をしていただくように規定がなつておりますのは、先ほど申した通りでありますが、これがなかなか励行せられておらないのであります。労災の方の要求は、あります件数だけ明らかに出て参ります。そこでその間、つまり災害の方の届出と、今の労災の方の請求件数が若干食い違つて参りますので、私どもの方としましては、労災補償を受付けます場合に、必ず災害報告が出たかどうかということを確かめることをやらしておるのでありますが、そこにやはり若干の食い違いがあることは、今のところやむを得ない事情であるわけであります。
  13. 中原健次

    中原委員 食い違いのあることのやむを得ざる事情について御説明があつたのでありますが、そこにその課その課の立場から、ある一つ方針というか、なるべく件数を少く見積りたいという考えと、少く見積るにも見積るととのできない立場と、こういつたものが食い違つて、このような件数上の差ができたのではないか、よく知らぬが、私にはそういうふうにとれる。そういうことは、やはり労働行政一般から考えましても、適切な行政が行いがたいというふうにもなつて来ると思うのでありますが、かくありたいという数字をなるべく少く計上したいという考え方ではなくて、大胆率直にあるがまま把握して、その上に安全行政なり、その他すべてのものが盛り込まれて行くというふうになるべきではないか、このように考えるのであります。従つてこのことを特に要請いたしておきます。  さらにいろいろそのような災害状況を見ますると、実は事変前と事変後における災害状況が、非常にかわつておるのであります。年度別に見ましても、たとえば二十四年と二十五年との間における災害件数激増は、まことに目立つものがあるわけであります。産業別災害件数数調によつて見ますると、去年の二十四年度に比べて、二十五年度は大体二五%以上の増加率なつている。あるいは永久一部労働不能という欄を見ますと、八四%の激増を見せているわけであります。従つてそのよつて起る原因は何であるかということの探索が必要になつて来るのでありますが、この労働災害激増している原因把握の仕方が、おのずから国の労働行政に対する方針の基礎にもなる、こう思うのです。従つてこれはきわめて真劍な立場で、一般的なありきたりの考え方ではなしに、少くとも専門的な立場で、災害激増原因はどこにあるかということを究明されたかどうか。もちろんされておると思います。でありますれば、そのことについて当局説明がいただきたい、こういうように思います。
  14. 中西實

    中西政府委員 この統計は、先ほどお話がありましたように、労災補償保險取扱い件数災害件数ということで上つておるのであります。実はこの法律が施行になりましてから三年半になつたのですが、当初普及徹底の仕方といいますか、把握が十分でございませんでした。その後法律適用の範囲に入つて来ました事業場の数、労働者の数が、累年ふえて来ておるのでございます。二十四年度におきましては、適用事業場の数が大体二十七万八千でありましたが、現在におきましては約三十万になつております。そういうような関係で、一応この災害件数もふえておる。数のふえておる相当の部分が、そういう事情でございます。なお実際の災害件数も、今のところ正確な資料とは申しかねるのでありますが、それに基きまして分析いたしております。その傾向はやはり死亡者、障害の数、それぞれ若干ふえて来てはおります。この主たる原因は、結局今まで休廃止なつておつた施設、いわゆる管理工場で動いていなかつたようなものが、最近になつて動き出したというようなことも、原因なつておるかと思います。そのほか一般考えられますことは、戰時中からの施設腐朽荒廃が、今のところまだ立ち直つていないというような点、それから戦後災害防止に対する関心相当薄くなつて来ておること、なお考えられますことは、やはり労務管理状況がなおきちつとしていないようなことも、災害発生原因じやなかろうかと思いまして、これらの点につきまして、それぞれ今後対策を講じて行きたい、かように存じております。
  15. 中原健次

    中原委員 労働災害原因についていろいろ御説明がありましたが、特に見のがすことのできない一つの大きな傾向としましては、最近朝鮮動乱以後における特需に伴いまして、各工場職場に非常な労働強化傾向が出て来ておる。その労働強化傾向というか、労働強化そのものの中に、思わざる災害が頻発しておる、こういうことが見受けられるわけであります。従つて工場職場における事故増発原因として、そういう労働強化実情に対してどういうふうにお考えになるか、このことをこの際聞いておきたい。
  16. 中西實

    中西政府委員 労働強化の問題があるかどうかを端的に立証されますものとしましては、労働時間があると思うのであります。昨年事変が始まりました六月以降、実は十二月ごろまでしか統計がまだないのでありますが、それを見ますと、所定の時間はきまつておりますから増減はございませんが、時間外労働におきまして若干の増加がございます。この増加は、統計的に見ますと産業ごとに若干違つておりますけれども、一月を通じましてせいぜい多いところで五、六時間、平均をとりましても三、四時間の延長なつておりまして、これはすべて労働者の自主的な申出によつて労働をやつておりますので、その間大した労働強化というようなものが、数字上は現れていないと考えおります。それで一月の労働時間の平均は、大体百九十七時間余りでありますげ、これを二十五日稼動といたしましても、十時間には相当な間があるというような現状になつております。
  17. 中原健次

    中原委員 このような問題の詮索吟味というものは、非常に大切なんでありまして、もちろんそういうふうに表面に現われた時間延長をつかむことも大事でありますけれども表面に現われた以上に、もつときつい時間延長が隠されていはすまいか、こういう点は、かなり基準監督署等においても、私は責任を感ずべきではないかと思うのです。あるいはその他いろいろな事情で、労働強化が盛り込まれておるようでありますが、私個人相当資料を持つております。たとえば金属あるいは非鉄、電気その他の各企業について、労働強化から発生した事故は、とうてい数えることができないのであります。その実態をつかむためのあらゆる措置を講ぜられなければならぬのではないか。ただ單純に数字の上だけ、時間の上だけで報告されて、その面だけに立つて労働状況を見るということは、今日の段階では当局としてはかなり軽い態度になるのではないか。もう少し腰を入れて、裏の裏まで見通すという態度があるべきではなかろうかと私は思うのです。従つて労働基準監督署あたりが、ほんとうに裏を詮索して行けば、意外な状況を発見されるであろうことを、私は指摘しておきたいと思います。一々具体的な例をあげることは、時間の関係で申し上げません。しかし私は生きた生の事実をたくさんここに持つておりますので、またあとでお目にかけてもよろしいと思います。とにかくよほど掘り下げたところへ関心をお寄せ願いたい、そうでなければ、今日の災害実態をつかむことができないし、それができなければ、どのように労働行政について言葉の上で真劍にやつておいでになるかのごとく言われましても、その答えは出て来ないということになるのであります。  さてその次に私が申したいと思いますのは、経済安定本部一つ資料でありますが、朝鮮動乱の後に起りました労働強化に関するいろいろの事情が上つております。その安定本部資料をちよつと読んでみます。「連合軍関係仕事をもつぱらやつている企業特需を大幅に引受ている部面では、仕事の性格から納期の短いものが多く、しかもそれが嚴正に要求されるために、長労働時間はきわめて顕著である。前に述べたC作業所においては、七月をピークに連合軍軍用船の修理が殺到し、しかもこれを作戦の要請できわめて短期間に仕上げるために、極端な場合は、二、三日の連続徹夜を行うほどの繁忙さであつたので、平均された労働時間においても相当の長時間労働なつている。」こういうことを政府機関である安定本部発表しておるのであります。こういう実情から考えますると、先ほど局長からのお言葉は、少し掘り下げ方が足りないのではないか、こういう感じがするわけであります。なお労働時間の問題につきましても、安定本部計数は必ずしも局長の指摘されたのと一致しておらない、むしろさらに上まわつておるという事情に相なつておるわけであります。何がゆえに同一政府部内のそれぞれの機関調査が、それほどに食い違うのであるか、これはきわめて重要な問題かと思います。政府はいかに恐るべき数字が出て参りましようとも、いかにいまわしい状態が発見されようとも、大体そのときにあるがままを取上げて、それに対する対策考えるといことであつてほしいのであります。このような食い違いと、しかも安定本部それ自身調査課発表いたしておりまする労働強化実情について、労働省としてはどういうふうにお考えになるか、伺いたい。
  18. 中西實

    中西政府委員 安本の御指摘の資料につきまして、私どういう情報か知りませんが、ただいま申しました労働時間の関係は、内閣統計局でやつております毎月勤労統計によつておるのであります。これをとる限り、どこも食い違いはないのじやなかろうかと考えております。それから個々企業によりまして、非常な長時間労働があるというお話でありますが、実は予算総会におきましてもそういうようなお話がありましたので、そういう具体的のところを十分に個々調査いたしまして、若干仕事関係で一回あるいは二回、ときには連続して徹夜作業をやるというような事例もありますが、すべて基準法最低基準は十分守られて、その上に立つて行われておるということが、調査の結果はつきりいたしました。もちろん基準法違反がありますれば、それぞれ注意いたすことにいたしておりますが、大体今まで調べたところによりますと、相当長時間やつているところもあるようでありますが、すべて法律の手続によつてつておると考えております。
  19. 中原健次

    中原委員 基準方違反のことにつきましては、実は数え切れないほど多くのものがあるわけであります。違反が十分に取締られておらないし、指摘されてもおらないというようなことは、具体的に幾らでも事例をあげることができる。従つて労働基準局としても、今後相当本気なつてこの問題に取組まなければならないのではなかろうかというように考えております。これは希望でありますが、さらに労働強化状態につきまして、経営者団体発表しておるところを指摘して御参考に供したいと思います。これは資本家団体資料で、労働者機関がつくつたものとは違うのでありますが、それに指摘しておるところによりますと、いわゆる労働生産性のめざましい上昇について、非常に得々とここに数字が出ておるわけであります。この労働生産性向上ということは、労働者といたしまして非常に重大な関心を寄せなければならない事柄なのであります。もとより労働者は、生産に全能力を傾けて働き、生産上昇せしめるということについては、だれもこれに反対をする者はないのでありますが、いわゆる生産性向上ということについては、その裏に恐るべき労働強化という実情が内包しておるわけであります。ここに数字を申しますと、たとえば朝鮮動乱の起りました六月を基準といたしまして、十月現在で生産向上の率を見れば一三八程度に上つておる。それを生産金額に照し合せてみますと、生産金額では一九九・八という成績を示しておるわけであります。しかもそれに関連いたしまして資本家団体の指摘するところによりますと、さらにこういうふうに強調しておるわけであります。すなわち生産蔵入れ高に対する労務費が、十月のように五・五%にとどまつておるということは、戰前の経済界の最も活況を呈していた時期に、近似しつつあることを示すものであろうというようなことが書かれておるわけであります。これは経営者立場から考えますと、まことに仕合せなことであると考えておりますが、その陰に、労働者階級の恐るべき生命を削る犠牲というものが秘められておるということの想像がつくのであります。従いましてわれわれは労働者災害の問題をほんとうに腰を入れて考えるとするならば、そういう実情をいろいろの方面から分析して、これに対する方策を講じて行く。すなわち労働の再生産を容易ならしめるための方策として、このような状況を続けてよいのかどうか、そういう問題が起つて参るわけでありまして、この点についていろいろ資料は持つておりますが、一応政府の御見解を承つておきたいと思います。
  20. 中西實

    中西政府委員 私ども調査によりますと、生産指数上昇は六月を一〇〇といたしますと、十月は鉱工業一一五・八ということになつておりまして、大分お話数字とは違うのであります。もちろん部門によりまして、ごく臨時的の期間において相当労働強化があるということもないとは言えないと思いますが、私どもの第一線の監督署あたりは、常にそういう事態につきましては十二分に関知をいたしておる。いやしくも基準法に定めてある最低基準は、いかに特需でありましても、その他緊要な要務でありましようとも、これは守つて行かなければならないという方針意思表示をしておるわけであります。
  21. 中原健次

    中原委員 れだいま私が申しましたのは、経営者団体統計なのでありまして、そういう実態はひとつはつきりつかめるようにしていただきたい。そうでないと、せつかく政府の手元に集つて来ておる計数が、実態食い違いができるというような場合がしばしば起るのではないか。実情をありのままにつかむということなしには、労働行政は適宜なるものを打立てることができないということになるわけであります。この点繰返して申し上げておきます。  次に、ただいま申しましたような形でいろいろな労働強化があるのでありますが、その労働強化労働災害との関係について、いろいろ見解もありましようが、この災害関係として、合理的労働時間ということが当然考えられなければならないと思います。先ほど労働時間の延長をお認めのようなお話がありました。もちろんこれは労働者との了解の上でなされておるということでありましたが、ここにまだ日本の今日の労働者が、時間の延長をむしろ喜ばなければならないというような現象があるということは、一体どこからこれが生れておるか。労働階級ほんとうに、基準法で申しますように人に値するような生活を約束づけられておりますならば、だれが好んで時間外労働をあえて求めるでありましようか。私はむしろそこに今日の労働階級が、きわめて低廉なる賃金にくぎづけされておる、いわゆる低賃金を強要されておるという、そのところに時間延長をもむしろ喜ばなければならぬという現状が生れておると思うのであります。何でも最近大阪あたりで聞いたのでありますが、特需関係に動員されておる日雇い労働者あるいはその他の労働者が、みずから好んで、場合によれば臨時雇いを志願する、そういう傾向が現われておるそうです。何のために、あらゆる労働者の保護を受けておらない、あるいはそれから延ばされておる、非常に不利益な條件のもとに、しばしば約束づけられておる臨時雇いを喜ぶかと申しますと、臨時雇いのゆえに、いろいろな形で制約を受ける点も薄いというところから、わずかばかりの休みの時間を盗んで、あるいは阜頭で荷役作業に従事しておる。そうしてわずかの休憩の時間をも労働にさいて、その日の生活をささえておるという状況があるそうであります。こういうことはきわめて変則な形なのでありまして、そういう変則な労働事情がそこいら中に激増して来るという傾向は、これは労働行政を受持つ当局としては、大きな失敗だ。そういう傾向をそこいら辺に数えなければならぬというような事柄に、今追いやられておるという今日の実情を、労働省当局としてどういうふうにお考えなつておるか。それでよろしいというお考えであるか。それともそれに対する何らかの対策をお持ちであるか。このこともこの場合に承つておきたい。
  22. 中西實

    中西政府委員 就業時間が若干延びておることにつきまして、はたして労働者が喜んでしているかどうかということは、数字からは出て参らないのであります。ただいまのお話の、時間外労働をしますれば收入がふえる、そのことによつて労働者があるいは時間外労働を好むということは、実は戦時中にもその傾向が若干現われたのをわれわれ記憶しておるのでありますが、このことは結局、ほんとう労働は所定の時間で所定の仕事をやり途げる、基準法のねらいも結局経営の合理化、労働管理の合理化というところをねらつておるのでありまして、われわれとしましてはできるだけ合理的な労働ということを最も肝要なことと考え、このことにつきましては労使双方にさらに十分な理解をしていただきたい、かように考えておる次第であります。
  23. 中原健次

    中原委員 さらにそれに関連しまして、私はここに一、二の科学者が指摘しておる点をつけ加えて、私どもの要請を明らかにしてみたいと思います。それは労働能率の研究の権威者であるヴアーノンという博士がこういうことを言つておる。「疲労の生ずるにしたがつて生産量は減少して、傷害頻度は増加する傾向にある」こういうふうにヴアーノン博士は指摘いたしまして、注意を喚起しておるのであります。またさらに疾病の温床となるということを先ほどから私繰返しましたが、そのことにつきましてもフィッシャー教授が、「長時間労働労働者におよぼす影響を調査して、代表的連鎖は、疲労、風引き、結核、死であることをここに指摘する」こういうふうに言明しておるのであります。もちろんそのことについては、局長自身もお認めのようでありますが、われわれはこういうそれぞれの権威ある専門学者が、このことをはつきり指摘しておるというその根拠の上に立つても、その学門的な研究を尊重する立場から考えましても、この災害疾病状況については、依然としてその原因疲労の累積あるいは疲労の蓄積、そういうところにあることを十二分に認めて行かなければならぬと思います。さらにフレデリツーク・リーという教授が、「疲労に対しての有効な生理学的解毒剤は休憩であるが、しかし多くの資本家は晝食事休憩以外に他のもつと必要な休憩が、作業上有利なものであることを信ずることを厭つているようである。」こういうふうに指摘しております。こういうふうにそれぞれの専門科学者は指摘しておるのでありますが、もちろん政府にも、このような諸指摘に対して反論を持つておいでになるとは毛頭考えておりません。そうであるならば、そういう実情が累積され、そういうふうな意味で疲労の蓄積、労働強化の蓄積というようなものが、今日もたらしておる災害の諸状況に対して、相当根本的な対策を持たれるべきものではなかろうか。はたしてその根本的な対策をお持ちであるかどうか、私は疑うのであります。と申しますのは、今回のこの労災法一部改正の法律案に見てもうかがわれますように、このようなことで労働災害が逓減するであろうというような見方は、とんでもない皮相の見解でありまして、もつともつと問題は根本にあるのである。その根本にさかのぼらずして、労働災害の悲劇を防止する、あるいは逓減するというようなことは不可能である、こういうふうに私どもは思うのであります。そのことに関してどのような御見解をお持ちになるか、この点を伺つておきます。
  24. 中西實

    中西政府委員 御指摘のように、疲労相当災害に影響のあることは、これは私どもも認めておるのであります。最近アメリカあたりで、何時間労働がいいかというような実験がなされ、その結果も出ておるのであります。ところが日本におきまして、施設状況その他で、その結論がただちに日本に当てはまろうとは思いませんが、とにかく疲労ということが災害に非常な関係のあることは事実であります。疲労というものは、その人の体質、その人の性格等によりまして、非常に違つて参りまして、今までの災害の起ります大きな原因一つには、結局適材適所の配置ということに欠けておる場合に、非常に災害が多く起る。性格的に非常に不注意だという者が、非常に注意力を要するような所に置かれた場合には、そこに災害が起るというようなことで、適性配置ということが非常に重要ではなかろうか。さらにまた、いろいろな危害防止に対するちよつとした注意、ちよつとした設備が、災害防止に非常に役立つことも知つておるのでありまして、災害が起りますれば、みんなも非常に声を大きくするのですが、起るまでは、労使とも他人事のように考えて、これに対する注意を怠る、この辺が案外手近なようで、非常に大きな災害防止のための重点になつて来るのではないかというふうに考えておりまして、こういつたこまかい具体的な点につきまして、今後とも十分に原因を探求いたしまして、災害防止に努めて参りたい、かように存じております。
  25. 福永健司

    福永委員長代理 中原君、あと簡單にやつていただきます。
  26. 中原健次

    中原委員 時間の都合もあるようですから、それではもう一点だけ聞きまして、あとは、いずれ継続審議になることと考えますから、その機会に譲ることにいたします。  この場合、もう一点だけお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、この法律の一部改正によるいわゆるメリツト制の繰上げ実施と申しますか、この問題について、御提出の説明には、「本制度を早期に発動することによつて、事業主をして災害防止に対する関心を深めしめ、もつて産業における災害の減少をはからんとすることにあります。」こういうふうに書いてあります。この提案理由の、災害を減少したいという文字の上に現れた御意図はわかるのでありますが、私がさつきから指摘いたしましたような諸事情から総合して考えてみまして、はたしてこのメリット制を繰上げ実施することによつてそういう成果が期待できるかどうか。むしろ私は逆に、保險料率が上つて來る負担の過重に対する対策として、資本家の方では、その災害実情を、保險の給付を要せざる解釈の方へ推し進めて行く危險性はなかろうか。従つてむしろ労働者にとつては、実体的には災害激増し、しかもその災害に対する補償を確保することさえだんだん困難になつて来る、そういう現象が生れて来るのではなかろうか。これは過去のいろいろな経験から考えまして、よくありがちなことなのであります。特に最近われわれが最も深い関心を寄せなければならないことは、労働組合運動の先頭に立つておりますいわゆる忠実な指導者に対しまして、いろいろ弾圧的な措置が講ぜられておるという事実とからみ合せまして、すなわち労働組合の活発なる活動を、あらゆる方法で抑圧しつつあるその状況のもとにおいては、しばしば労働者が当然主張すべき、当然確保すべき事柄をも抹殺される危險性は、ますます増大しておると見るのであります。従いまして、そういうことをからみ合せて考えますならば、この法律の一部改正によつて政府が企図しておいでのような災害の減少を期待することが、はたして実質的にできるかどうか。すなわち災害の起る原因を芟除することなしに、原因はむしろそのままに放置しておいて、ただ保險料率だけをいらうことが、災害ほんとうになくすることに役立つかどうか。これはきわめて皮相な見解ではなかろうかと私は思うのでありまして、この点について当局は、どういうふうに御確信を持つておいでになるか、これをお伺いいたします。
  27. 中西實

    中西政府委員 その点につきましては、私ども大分見解が違うのでございまして業務上の災害に対する補償の問題は、これはかつての工場法以来実施されて来ておりまして、労働者側にも十分にこの趣旨の徹底を見ておるわけでございまして、メリツトをしきますために、自分の業務遂行上こうむりました災害、これに補償しないということは、おそらくあり得ないのではなかろうか、もちろんもしそういうことがありますれば、これはわれわれの方でも徹底的に、労働者の実質的な権利擁護をはかりたいと存じておりますがこのメリツト制をしきまして、そのことがどんどん出るというふうには実は考えておりません。一般の声を聞きましても、メリツト制をしくということで、やはり相当事業主、首脳部の人たちが、災害に対する関心を深めまして、急に施設の改善もはかるというような機運のあることも相当聞いております。私はそういつた心配はないという、ふうに確信いたしております。
  28. 中原健次

    中原委員 資本家、経営者側に対する重大な関心を持たれて、そのような弊害の起らないようにお努めを願えることと思いますが、私はただ期待だけではむずかしいのではないかと思う。だからこそそういう弊害は、このメリツト制の繰上げ実施によるということに、そう大きな主張を求めるのではなくて、むしろ災害のよつて起る原因、時間外労働あるいはそれに伴う労働強化疲労のそのために累積する状況、そういうものに対するほんとうに打込んだ方針が立てられなければならぬ、つまり今直面する問題で片づくことを申し上げますれば、労働基準法の完全なる実施をあくまでたてにとつてやるということが労働行政として持たれなければならぬ。聞くがごとくんば、むしろ労働基準法の改悪をさえ、政府は用意しつつあるといわれておるのであります。とんでもない、これは反対の現象であります。もし労働基準法の改悪をもつてこれに続くということになつて参りますれば、労働者災害のみならず、労働者のすべての権利はどうなる。これはとんでもない大きな事柄なのでありまして、従つてこの場合、政府労働基準法の完全なる実施のために、あくまで打込んで努める、こういうことに対する御決意はどうであるか。さらに関連して、労働基準法の改悪を用意しつつあるといわれておるのでありますが、そういうことはほんとうにあるのかないのか。このことを承つて、私の質問を一応打切りまして、継続いたしましてまた次の委員会に讓りたいと思います。
  29. 中西實

    中西政府委員 基準法の施行は、現在各第一線で、それぞれの企業の自主性に応じまして、これを適用いたしておるのであります。施行後三年半をたちまして、労使双方から、この基準法に対しましては相当な批判があるわけであります。その批判のあるところはわれわれとしましては常々検討を続けておるわけでありまして、その批判を検討の上で、今これをあるいはかえるかどうかというようなことにつきましては、今のところまだ全然考えておりません。
  30. 福永健司

    福永委員長代理 今野武男君。
  31. 今野武雄

    ○今野委員 最初委員長にお願いしたいのですけれども、ただいま中原君が質問をしていた事柄は、私ももつとつつ込んで質問したいと思つておるのであります。非常に重大な問題なんです。それで労働委員会はいつでも十分に開かれないのです。今後はもつと勉強して開いて、そして十分議を盡してもらいたい。このことを特にお願いしておきたいと思うのです。  それから私の質問でありますが、先ほど中原さんも指摘しておられましたが、災害補償保險法の一部を改正する法律案、これが施行されたときに一体どうなるかということを、試みに労働組合の人たちにぽつとこの問題を投げてみた。そうすると何と言うか。とつさに言うのは、これはたいへんだ、こういうことをされると、ますます労働者は苦しくなる、おかしいじやないか、これは資本家の負担がふえるというだけだからおかしいじやないか。いやそうじやない、そうじやなくして、現在でも職場でもつて労働災害を個人的な過失というふうにして、この保險の適用を受けさせないような傾向が非常に多い。そしてそういう件数を多く出しておる。つまり法案の説明などでは、災害多発事業となつておりますが、こういうような職場においては、その係長なり、あるいは監督官なりが罷免されたり、あるいは左遷されたり、そういう事件すら起つて来ておる。そういうような有様だから、これをやられるとますますそういうことになるからたいへんだ、こういうことを言われたのであります。先ほどからの中原君の質問も、やはりそういう点にずつと触れておつたわけですが、私は本日は特に労働大臣の出席を要求した建前から、このことについて一応お答えを願つた後に、労働大臣にも質問しなければなりませんから、この点については、この次にもつと詳しく質問したいと思うのですが、委員長どうでしようか、どういうふうにはからつてもらえますか。
  32. 福永健司

    福永委員長代理 また理事会を開きまして相談をいたします。
  33. 今野武雄

    ○今野委員 理事会じやなく、ここではつきりしなければ、私どもとしては質問する時間が——たとえば労働大臣がおられる間に大臣に対する質問を先にして、労働大臣の都合が悪ければ、後にこまかい質問を継続する……。
  34. 福永健司

    福永委員長代理 労働大臣がおられる間の質問というと、今の議題でなくですか。
  35. 今野武雄

    ○今野委員 もつと労働行政一般についてです。
  36. 福永健司

    福永委員長代理 それは後刻行います。
  37. 今野武雄

    ○今野委員 それが済んだ後にでもずつとやらせてもらえるかどうか、その点をはつきりしてもらえればいいわけです。
  38. 福永健司

    福永委員長代理 いずれにしても労災関係を先にやつてください。まだ時間がありますから……。
  39. 今野武雄

    ○今野委員 もう時間がないのですよ。四時ごろまでと言つたでしよう。
  40. 福永健司

    福永委員長代理 あなたが何時間でも質問されれば別ですが、そうなんでしよう。ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  41. 福永健司

    福永委員長代理 速記を始めてください。  それでは次に失業対策労資関係並びに労働基準に関する件を議題といたしまして、調査を進めます。  この際保利労働大臣より、本件に関しまして発言を求められておりますので、これを許します。保利労働大臣。
  42. 保利茂

    ○保利国務大臣 まず労働組合及び労使関係の調整についてでありますが、特に自立経済達成の国民的要請のもとに、政府といたしまして、かねてから中正健全なる労働組合の発達助長及び労使関係の合理的安定、紛争議の早期平和的解決をはかることを、その基本方針として参つたのでありますが、御承知のように終戰直後の混乱期におきましては、破壊的勢力の大きな影響を受けまして、わが国労働運動にはまことに憂慮すべき傾向が認められたのでありますが、経済的、社会的情勢が混乱から安定へと推移し、またこの種の問題に対する国民の認識の深まるに連れて、労働組合も漸次経済再建に対する責任を自覚され、いわゆる自由にして民主的な方向に進んで参りましたことはまことに御同慶にたへないところであります。また労使間の紛争につきましても、純然たる経済争議たるの性格を把持され、できる限り自主的に解決しようとする傾向が看取せられますことは、基本的に健全なる動向として認められるのであります。労働省といたしましてはこれに対し、問題の性質上、いやしくも労使の間に干渉にわたるようなことは、これを避けるとともに、常にその動静を的確に把握し、適切な教育資料を絶えず提供し、もつてこの傾向を一段と助長いたしたい所存であります。来年度の予算において、労働教育に関する経費の増額をはかつたのも、この趣旨によるものであります。  なお第九臨時国会において制定されました地方公務員法に関連し、地方公営事業労働関係法案の国会提出が予定されているのでありますが、自治庁において起案中の公営事業法案と相まつてその成案を得べく目下努力中でございます。  次に労働基準行政について申し上げます。御承知のように労働基準法は施行以来三年有余を経過したのでありますが、本法がわが国労働者労働條件の改善と労務管理の合理化を促進し、国際的には漸次ソーシヤル・ダンピングに対する諸外国の懸念を一掃して、国際的信用を高め、わが国貿易の伸展に寄與しつつありますことは、否定し得ないところであると思うのであります。  しかし本法の施行、特に監督の実施にあたりましては、いわゆる警察的、形式的取締に堕することを戒め、諸般の社会的、経済的條件に適合し、特にわが国産業が中小企業の基盤の上に立ち、千差万別の事情にあることにかんがみまして、具体的妥当性のある措置を講じ、できる限り関係者が得心をして法を守り、進んで労働條件の改善に努めますことを、その基本的態度として臨んでいるのでありますが、最近違反事業場の数が漸次減少したことは、まことに喜ばしく存ずる次第であります。  なお右の一般労働基準行政に付随し、目下最も重大な問題とされておりますのは、産業災害の問題であります。御承知の如く終戰後、産業災害は種々の原因から増加傾向示しているのでありますが、これが労使双方のみならず、わが国産業に與える損失はまことに大きいものがありますので、労働省といたしましては、労使双方の協力によつて安全運動を活発に行い、災害防止に特段の努力をいたしたいと存じておる次第であります。また目下御審議をお願いいたしております労災保險法の一部改正も、いろいろと御見解を異にせられる方もあるようでございますけれども、私どもといたしましては、災害防止の上にきわめて緊要な措置の一端であると信ずるのであります。  次に先年来問題となりました賃金不払いにつきましては、昭和二十四年初め以来、基準局把握いたしました件数が、昨年の末までに約四万三千件、金額にして約二百二十億円に達したのでありますが、そのうち件数において八八%、金額において九五%が解決をしているのでありまして、労働者の生活の確保と、労働不安、ひいては社会不安の除去に、相当の貢献をし得たことを喜びとするものでありますが、今後とも一層努力したいと存ずる次第であります。  最後に、基準法を円滑に実施するためには、何と申しましても法の実施を担当する監督官の教養と常識に依存するところが、非常に大きいと考えられますので、労働省としては、昨年四月から労働基準監督官研修所を設置いたしましたが、来年度におきましては、さらに予算の増額をはかり、その充実を期しておる次第であります。  次に職業安定行政について申し上げます。朝鮮動乱勃発以来、特需及び輸出の増大によつて経済活動が活況を呈して参り、これに伴つて雇用情勢は若干好転して来たのであります。具体的に申しますと、労働調査による完全失業者の数は、昨年八月の五十五万を頂点として漸次減少し、十一月には三十七万に低下したのであります。一方職業安定所の窓口に現われた状況を見まするに、常用労働者について見ますと、求職数が昨年七月八十五万七千であつたものが、十二月には六十八万五千に減少し、一方求人数は七月における十六万が、十二月には二十四万に増加して参つたのであります。この傾向は、日雇い労働者についても同様に見られるのでありまして、全国登録者数、七月四十五万四千が、十二月には四十一万四千に減少し、一方求人は、七月延べ四百八十八万八千であつたのが、十二月には延べ六百六十一万九千と増加示したのであります。右の如く雇用情勢はやや好転しているのでありますが、雇用量は産業の景況に比例して必ずしも増加してはおりませんし、また来年度においては、相当数の新たなる労働力人口の増加、国際経済に処するための企業合理化の進行等が見込まれますので、来年における失業情勢は必ずしも楽観は許されず、大きな見通しといたしましては、本年度と大差なく推移するものと予想されるのであります。かような情勢に対処するため、従来実施して来た諸般の失業対策を一層強力に推進することとし、先般衆議院を通過いたしました昭和二十六年度予算に計上されましたことく、失業対策事業費及び失業保險特別会計予算を、それぞれ増額した次第であります。ことに失業対策事業につきましては、新たに資材費についても補助を行うこととし、本事業の経済的効果を一層高からしめるよう措置した次第であります。さらに最近のわが国産業の趨勢にかんがみまして、従来の職業補導事業に再検討を加え、補導種目の転換及び新設を行う等、情勢に即応し、その刷新充実に努力しているのであります。以上申し上げましたごとき職業安定業務の刷新強化に伴いまして、公共職業安定所の業務量も相当増大いたしておりますので、関係職員の増加は、けだしやむを得ない事情にあるのでございまして、定員九百名の増加をはかるため、目下国会におきまして来年度予算とともに、定員法の一部改正の御審議を願つている次第であります。  以上労働行政の概要について申し上げましたが、なお御質問がありますれば、私なり政府委員より御説明いたしたいと存じます。
  43. 福永健司

    福永委員長代理 質疑を許します。天野公義君。
  44. 天野公義

    ○天野(公)委員 まず雇用及び失業関係について、政府当局にただしたいのであります。今労働大臣から、大体の朝鮮動乱以後の雇用の状態についての御説明があつたわけでありますが、もう少しこまかく正確に月別に、朝鮮動乱後最近に至るまでの雇用の動きをお伺いしたいと思います。
  45. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 私から最近の安定所の窓口に現われておりまする雇用の状況について、簡單に御説明を申し上げたいと思います。安定所の窓口に現われております常用労働者の面から申し上げます。昨年の四月、八月、十二月と切つて数字的に簡單に申し上げます。まず常用の求職者から申し上げますと、昨年の四月、求職者は八十二万六千六百四十二人でありましたが、八月に至りましで約九十万に近い、八十九万七千二百三十人という求職者でありました。その後九月、十月、十一月と逐月求職者は減少の一途をたどつてつておりまして、十二月に至りまして六十八万五千二百八十二人に減少いたしておりました。一昨年の十月以降と比較いたしてみますと、最も少い数字を示すに至つておるのであります。かように求職者は逐次減少いたして参り、従いまして失業保險金の受給者の関係も、昨年の八月を頂点といたしまして、逐月減少の傾向をたどつておるのであります。昨年の四月失業保險の受給者の数は三十九万二千九百四十人でありましたのが、八月には四十一万四千四百十一人にふえておりましたが、企業が整備されるものの数の減少並びに給付期間の満了等によりまして、失業保險金の受給者数は逐月減少いたしまして、十二月に至りまして三十一万に減つておるのであります。かように求職者は逐月減少し、失業保險金受給者も減少いたしますると同時に、積極的に毎月の求人数は逐月増加の一途をたどつておるのであります。すなわち昨年八月の求人の数は、十九万一千七百九十二人というきわめてわずかな求人でありましたが、それが逐月増加をいたしまして、十二月に至りますと二十四万百三十六人ということに相なつておるのであります。すなわち常用労働者に関しましては、積極的には求人が増加し、消極的には求職が減少するという形をたどつておるのであります。  次に日雇いの関係でありますが、常用労働者傾向とほぼ同じ傾向をたどつておるのであります。すなわち登録者の数は、昨年の四月約三十八万のものが、八月に至りまして四十二万にふえておりましたが、逐月減少いたしまして、十二月には四十一万に減少いたしております。なおこれは登録者の数でありますが、安定所を平均的に利用しております毎日の出頭労働者の致も昨年の四月は二十五万人程度でありました。それが八月には三十四万九千というふうに伸びましたけれども、その後逐月減少いたしまして、十二月には三十一万五千二百という数字に減少し、さらに本年一月に至りますと、二十七万七千という数字に減少をいたしておるのであります。かようなことでありますので、日雇い労働者の毎月平均就労日数も、きわめて悪い月もありましたけれども、最近におきましては、失対事業の拡充あるいは民間事業の求人の増加等によりまして、逐月改善を見ておる次第であります。すなわち昨年の四月は平均一六・二という平均就労日数でありました。さらに八月は一六・九という数字でありましたが、十二月に至りますときわめて改善されて参りまして、二一・八という数字なつておる次第であります。大体計数的に申しますと、先ほど大臣から御説明のありましたように、求職者は減少し、求人が増加するというふうな形で、徐々に明るい面が現われて来ておるということが申せると存じております。
  46. 天野公義

    ○天野(公)委員 今の御説明によりますと大分雇用状況がよくなつて来ているような、明るい見通しをお立てになつているのでありますが、先ほどの大臣の御説明によりますと、年度がかわるとまた新たな労働力の増加が見られる。すなわち失業者がまたふえて来るのではないかというような御見解もあつたようでありますが、こういう点と、それから二十六年度予算を実際に執行した場合の、二十六年度の雇用の見通しについて概略どうなるであろうかという政府見解を承りたいと思います。
  47. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 先ほど大臣から詳細お話がありましたので、申し上げろこともないかと思つておりますが、明年度におきましては労働人口も相当ふえて参り、大体百二十万程度の人口の増加が予想されますし、労働力といたしましても、六、七十万程度労働力人口がふえるのではないかと考えておる次第であります。この六十万程度労働人口の増加が、明年度における労働市場の一つの圧力になると考えておりまするが、他面、わが国経済の自立態勢を急ぐという面からいたしまして相当数の労働者増加ということ、就業者の増加ということも当然見込まれます。大体におきまして、先般の自立経済審議会の一応の試案によりますると、約六十万程度は就業者の数も増加するのであろうということが、一応見込まれておるのであります。しかしながら一面、企業合理化のためのある程度企業整備は、相当行われるものと見なければならない。こういうふうな観点からいたしまして、先ほど大臣から御説明のありましたように、本年度とほぼ大差ないのではなかろうかというような情勢でありますので、失業対策事業におきまして七十七億五千万円が成立いたしまして、毎月平均二十五日稼働といたしますと約十六万七千七日、二十五日稼働といたしまして約十七万人の失業者の吸収が可能になり、現在の第四・四半期の吸収の数よりも、多少増加して吸収することができる、こういうことに相なろうかと思つております。またある程度企業整備ということも考えられますので、御承知の失業保險特別会計におきまして、百六十八億の給付の予算をも計上いたしまして失業対策事業、失業保險金の支給、両々相まちましで応急的な措置を講じて参りたい、かように存じておる次第でございます。
  48. 天野公義

    ○天野(公)委員 大体安定所の窓口に現われたところの数字はわかるのでございますが、結局日本の失業問題の一番大きながんとなつているのは潜在失業者の問題、またそれをもう少しつつ込めば、農山漁村にある過剰労働力をどうするかという問題が、一番大きな問題になつていると思うわけであります。窓口に現われた人々を救済するということも、一つ方策ではありましようけれども、この農山漁村の失業対策をどういうふうにやつて行くかということも、また反面大きな問題であろうと思うわけであります。地方の方に参りますと、結局農山漁村の対策をどうするかということが、非常に大きな問題になつておりますけれども、なかなか表面化しないで、各家庭の生活水準を切り下げるというようなことによつて、問題がそのまま押し込められているというような感を深くするのでございますが、またそれが表面化して、農山漁村に失業対策事業を起すというような場合には、その起したところの県なり市というようなところに、財政的に非常な圧迫となつてこれが現われて来て、仕事をすればするほど、失業者が出て来るというような状況にもなつて来るわけであります。朝鮮動乱以後の労働事情という安本が出した資料を見ましても、神奈川県の場合において、いくら仕事をふやしても、労働者はどんどん出て来るというようなことが書いてあるが、このような状況も、結局その背後に農山漁村に失業者がおるということを如実に物語つているのでございまして、この問題を何とかしなければ、結局日本の失業問題の解決にはならないと思うわけでございます。この農山漁村の潜在失業者に対してどうしたらよいか、この点について政府見解を承りたいと思うのでありますが、ただ自立経済や産業の拡充という点ばかりに依存しないで、労働政策というような観点から、何らかもつと別な方策考えられてしかるべきであると考えるわけでありますので、その点を承りたいと思います。
  49. 保利茂

    ○保利国務大臣 ごもつともなことでございますが、要は雇用情勢が改善せられるということが、失業問題の根本的な解決でなければならない。雇用情勢の改善なしに失業問題を解決するということは、今日の国民経済力のもとにおいては、事実不可能であろうと存ずるのであります。日本の失業問題が非常に困難かつ複雑になつておりますゆえんは、御指摘のように都市農村を通じて、相当広範な不完全就業者と申しますか、潜在失業者と申しますか、この伏在が、要するにわが国の失業問題を非常に深刻ならしめているのであつて、この御説にはまつたく同感であるわけであります。従つてこの不完全就業者の安定をはからずして、失業問題を根本的に解決して行くという道はあり得ないと思うのであります。その点において第一番に考えられますことは、何といいましてもわが国人口の四十数パーセントを占めております農家の経済が、改善充実せられて行くということが、一つの大きな観点であろうと存じます。しかしながら全体的に申しますと、日本の縮小せられました産業構造と人口のギヤツプが、結局今日の失業問題を招致いたしておることでありますから、従つて何と申しましても、国全体としての産業規模を拡大充実して、雇用の源泉である企業を盛んならしめるということと、農山漁村の経済を充実することによつて、その方面における吸收力を強めて行く。すなわち自立経済を総合的に全国民の努力によつて達成して行くよりほか、失業問題の根本的な解決というものはあり得ないと私は思う。ただその過程におきまして応急的に処置しなければならない切迫しておる事情のもとにある失業者の方々に対して、政府は御承知のようにできるだけの努力をいたしておる次第であります。大体そういうふうに御了解を願いたい。
  50. 天野公義

    ○天野(公)委員 次にお伺いしたいことは、朝鮮動乱によりまして、たとえば神奈川であるとか、ある箇所は非常に景気がよくなつて、雇用量が増しておる、そういうような地域が非常に見受けられます。ところが朝鮮動乱の影響を受けない地域も、非常にたくさんあるわけであります。そういうところに失業対策事業を持つて行く場合に、予算の運営上、そういうような動乱の影響を十分しんしやくしてやつていただきたいと思うのでございますが、今のところ、あまりそういうような改善が見られないのではないかと思うのでございます。その点についてお伺いしたいと思います。
  51. 保利茂

    ○保利国務大臣 朝鮮動乱後における産業界の影響——申すまでもなく日本の今後の経済、産業というものは、国際情勢によつて非常に大きな影響を受ける。従つていろいろ産業別によつて、そのときどきの情勢を受けての消長は、私は日本の経済の本質からいつて、免れないと存ずるのであります。御指摘のようなことに対しましては、私どもとしては十分対処して参るつもりで、ともかくも機動的に運営いたすことによりまして、緊急失業対策事業の目的といたしておりますところを達成したい。御説に対しては、もちろん同感であります。
  52. 天野公義

    ○天野(公)委員 今の問題は、緊急失業対策の予算の運用とにらみ合せて、ぜひとも機動的に御善処のほどをお願いしたいと思うのであります。  次に、失業対策事業を県あたりで盛んにやつておるようなところもございますが、この失業対策事業が、県財政を相当圧迫しておるところがあるようでございます。そういう点に対して、県でやつておるのだから、労働省の方はあまり予算をまわさなくてもいいというようなお考えを持たずに、やらざるを得ない情勢にあるのであるからやつておるという見解をとられて、この失対事業が県財政の圧迫にならないように、そして他の県と均衡のとれるような方策を講じていただきたいと思うのでございますが、その点についての見解をお伺いしたいと思います。
  53. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 私からお答えを申し上げます。ただいま御意見のありましたように、失業情勢の悪化に伴いまして、県單位で相当やつた例があるのでありますけれども、これにつきましては、その後財政的な援助を多少いたすといつたふうなやり方も、考慮いたしておる次第でございます。それと同時に、最近におきましてやはり一般的に地方財政を圧迫する傾向がありますので、私どもといたしましては、地方起債のわくの拡充ということに力を注いで参りますと同時に、明年度から初めて資材費の補助もいたすことに相なりましたので、資材費の補助と相まちまして、地方財政の拡充に努力をいたして参りたい、かように存じておる次第であります。
  54. 天野公義

    ○天野(公)委員 資材費の補助を予算でとつたことは、非常な進歩だと思うのでございます。もう一つ、地方起債のわくは重大な問題でございますが、努力はされたといたしましても、結果が出て来なければ、なかなか問題は解決されないと思う。その地方起債のわくがどの程度に実現されるか、その点をお伺いしたいと思います。
  55. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 御承知のように本年度、昭和二十五年度の起債額は、当初十億予定いたされておりまして、その後もう少しわくを拡充すべく努力いたしたのでありますけれども、起債の総わくが非常に圧縮されましたので二十五年度におきましては、それほど拡充することはできなかつたのであります。明年度の起債のわくの点につきましては、目下地財委と協議中でありまして、まだ決定を見ておりませんので、本日申し上げることはできないような次第であります。
  56. 天野公義

    ○天野(公)委員 この地方起債のわくの拡大については、大臣以下労働省全体として、ぜひとも大いに御努力のほどをお願い申し上げたいと思うのであります。  次に、先はど大臣も、組合内における破壊的傾向がだんだんなくなつて来たというようなことを言われておるのでございますが、われわれとしてもこれは非常に喜ばしい傾向であると思うわけでございます。しかしながら反面よく考えて見ますと、昨秋行われたレッド・パージには、いろいろ問題を含んでおるのでございますが、大体の方向は了承せざるを得なかつたのでございます。このレッド・パージという措置によつて、一応表に立つた者は外へ出てしまつたわけでございましようけれども、まだレッド・パージを免れて中にもぐつた者が相当いるのではないかと思うのでございます。そういうもぐつた者の動きがどうなつておるか、そういう点もしお知りでしたら、この際お伺いしたと思います。
  57. 保利茂

    ○保利国務大臣 昨年夏以来、いわゆるレツド・パージというようなことが各企業において行われましたことは、私は非常に遺憾なことと存ずるのであります。かような措置をとらなければ、企業の安全を保全しがたいというような状況に置かれますことは、日本の産業実情から申しまして、非常に残念に存ずるのであります。その後の情勢を見まするに、労使双方におきまして、再びかかる遺憾な事態を引起さざるよう、いわゆる企業保全の上において、相当心を配つておられる状態でございまして、ただいまのところ、再びかかる事態が繰返されるというような懸念はない、またあつてはならないということを、私は心から願つておるものであります。
  58. 天野公義

    ○天野(公)委員 次に退職金の問題ですが、これは予算委員会でも大臣にお伺いして、その善処方を要望した次第でございます。この退職金に対する課税の税率が非常に高い。これが退職金について問題になることでございます。もう一つ、時期的な不均衡という面もあるわけでございます。同じ税率を適用されたとしても、十二月に退職した者と一月に退職した者とでは、金の運用の面においては非常な差が出て来るわけであります。それで退職金に対する税の引下げ、同じ税率を適用されるにしても、金を運用する面において非常な不均衡が生ずるという矛盾があるわけでありますので、この点について労働大臣のなお一層の御努力をお願いしたいと思うわけでございます。これは要望でございます。
  59. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまのいわゆる広範な勤労者の退職手当に対する課税問題につきましては、政府においても、與党自由党においても、真劍に今その方策を練りつつあるところでございますから、御期待のような結論が遠からず出て来るということを確信いたしております。
  60. 天野公義

    ○天野(公)委員 重ねてお願いしますが、この点ぜひとも御努力を願いたいと思います。  もう一つ婦人少年局の問題について質問を留保して、一応これで終ります。
  61. 福永健司

    福永委員長代理 島田末信君。
  62. 島田末信

    ○島田委員 私はこの際、先ほど天野君から御質問になつた農山漁村の失業対策について、もう一度政府考え方をお聞きしておきたいと思います。終戰後の変体的な欠乏経済の中において農山漁村はややゆたかな経済力を持つていたように、一般から見られがちでありました。そのために引揚者であるとか、あるいは疎開者であるとか、そういう者が一応農山漁村に相当立てこもつたという事実は、わが国実情からはつきりしておるのであります。それがだんだんと農山漁村の経済そのものが平常化するに従つて、開墾者あるいは開拓者というように、にわか仕立の農作者になつた者とか、あるいは漁村に立てこもつて、にわか仕立の漁撈を業としたような人々が、だんだん農山漁村から締め出しを食うといいますか、生活上どうしても競争力が足りないために、最近ではだんだん失業の区域にまで押し出されつつある現状であります。しからばそういう失業者が、今度は都市に向つて集中できるかと申しますと、わが国の現状では、都会地もまた生活は相当困難であるし、また失業者を十分収容するだけの余力を持たないために、やはりその大部分は農山漁村で失業をかこちつつ、今後いかに処して行くかということで困つている状態は、日とともによほど顕著になりつつあるのであります。こういう場合に、私は恒久的な一つ対策としては、先ほど大臣の申されたようなわが国の自立経済を達成し、全企業の公正な発達を見るということが、いわゆる雇用力を増進するということで間違いないと思うのでありますが、応急措置として、現在の緊急失業対策事業を農山漁村の、特に顕著な特殊な事情に置かれた失業対策の必要な区域に対しても、さらにある程度今後拡大適用して行くというふうなことが、必要ではなかろうかと思います。この応急措置として農山漁村に対し、さらに失対事業を拡大して行くような方針を、もはや今日の現状ではそろそろ考えもしなければならぬし、また実行に移すような用意が必要ではないか、かように考えるのでありますが、これに対する政府当局の所見だけを承つておきたいと思います。
  63. 保利茂

    ○保利国務大臣 御指摘の問題は、根本的には單なる失業問題という狭い問題ではなくして、農漁村政策を中心としての、総合的な大きな政策が中に含まれて行くものと存じますが、応急措置としては、先ほども申し上げましたように、緊急失業対策事業をそういう地方に強力に実施をいたして参り、あわせて一般公共事業の実施にあたりましても、できるだけその意図をもつてやり、あるいは逆に一般公共事業の実施地と、緊急失業対策事業の実施地とをにらみ合せまして、できるだけ広い分野にわたつて救済の実が上つて行くように、いわば一般公共事業と緊急失業対策事業を一環として、考慮実施して行かなければならない、またそういうことをいたしまして目的を達して参りたい、こういうふうに考えます。まつたく同感でございます。
  64. 青野武一

    ○青野委員 労働大臣にお尋ね申し上げます。去る二日の第二回労働委員会に、政務次官はおいでになつておりましたが、不幸にして労働大臣はいろいろな関係で見えておりませんでしたので、その次の労働委員会で私の質問に対してお答えを願いたいということを申し上げておいたのであります。二日の労働委員会は閉会後理事会を開きまして、本日——水曜日の七日に労働委員会を開くことを決定したのであります。労災保險法の改正の質疑が続いておりましたので、実は差控えておつたのであります。  お聞き及びとは思いますが、朝鮮動乱によつて、特に東京の自由労働者諸君が、昨年九月に仁川に大量に連れて行かれたというようなことについて、私はいろいろ御質問申し上げまして、最後に吉田内閣を代表する保利労働行政の面について、こういう質問をしたのであります。御承知のように太平洋戰争が無條件降伏に終つた。しかして十三箇国連合国の総司令部によつて、約五年間の対日占領政策が続けられ、このために連合国の軍隊が日本に駐屯することはわれわれも認めざるを得ないけれども、昨年六月二十五日に、三十八度線をはさんだ朝鮮三千万民族の統一のためと称せられている動乱が起りまして、そのためにいろいろな問題が起り、また日本の産業も影響を受けております。これは太平洋戦争で日本が無條件降伏して、十三箇国連合国の総司令部によつて対日占領政策をやられておる問題とは、はつきり申し上げまして別ではないか。そうすれば、現在何万か何十万か知りませんが、兵隊に——これは御承知のように、十三箇国連合国の軍隊とはまたおのずから違うはずですが、それらの人々によつて日本の産業が利用せられ、輸送機関が海陸ともにある程度利用せられているこういつたことがはたして国際的に、国連軍と国民を代表する政府との間のどういう協定、條約に基いてなされているか。その根拠については、国会議員の一部の人あるいは政府の一部の人も、なるべくほおかむりをしたいと思うでしようが、国民全体はこの点を非常に聞きたがつておるはずであります。重ねて申しますが、私は北九州でありまして、御承知のように東洋一と称せられている八幡の製鉄所を足元に控え、一たびもしこういう渦中に巻き込まれ、筑豊炭田並びに八幡製鉄所に空襲を受けますと、いくら政府が声をからしましても、鉄鋼一貫作業の模範的なこの製鉄所が壊滅すれば、日本の鉄鋼産業というものは成り立たない。こういう点から、私どもは自分の居住区域のことも考えて、非常に憂慮しておるのであります。この点について次の労働委員会で、吉田内閣を代表して保利労働大臣から、私の質問に対する御答弁をお願いしたい、こういうことを実は申し上げておつたわけでありますが、この点についてお答えが願いたいと思います。
  65. 中村文彦

    ○中村政府委員 お答え申し上げます過日もその件につきまして委員から御質疑があつたのでありますが、われわれといたしましては、国連軍に協力の件につきましては、格別な指令を受けているということは聞いておりません。ただ占領軍からレーバー・レキジシヨンが出まして、それに基きまして労務者の意思を考えて、要請に応ずるというのが事実でございます。従いまして今日のところ、占領軍司令官の指令第二号に基きました占領軍の労務要求を基礎にする労務の提供以外にはありません。
  66. 青野武一

    ○青野委員 重ねてお答えを願いたいと思います。それは私の質問する大体の要点は、御承知のように日本が太平洋戰争でほとんど焼野原にされた。少くとも二百万戸以上焼かれて、八百万からの戰災被害者を出し、戰争によつては、これはもう申し上げれば切りがないほどの大きな打撃を受けたのでありますが、ことさら戰争に介入して、立ち直りつつある日本をもう一ぺん壊滅状態にすることは非常に危險であり、祖国を守り、国民の生命を尊重する立場からも、そういう点については基礎的な協定なり、あるいは條約なりがないといたしますならば、非常に大きな問題が国際的に残るのではないかと考えるのであります。その点につきまして、一、二補足的にこの前の質問に関連いたしまして、お尋ねを申し上げたいと思いますのは、これは労働大臣がこの前御出席なつておりませんから、あらためて申し上げておきます齋藤局長もおいでになつております。が、大体職安の自由労働者の国連軍に対する雇用関係についての條件は、労働強化しない、日本の港以外には連れて行かない、そういうことで職業のあつせんをしたということは、この前も聞いておりますし、関係しております労務者諸君からも聞いておるのでありますが、実際には日本の港外に連れて行つていることは事実です。港外に連れて行くなら、初めから連れて行くということを納得ずくでやればいいが、九月の仁川の上陸には延べ三千九百二十二名という人が連れて行かれていることは事実です。そのうち六十二名は元山方面に連れて行かれて、非常な苦しい立場に立たされたということも聞いております。その関係者の二、三名は、おそらくうしろの傍聴席の中にもいると想像しております。こういうことは大体職安としても相当考えなければならぬことである。そうすると占領政策によつて総司令部が日本を統治しておりましても、政府とそういう協定なしに労働者個人といろいろ雇用契約をやつて、そうして船内作業を入れて二箇月なり、三箇月なり連れて行く。そのときには前渡金一千円、二箇月の期間といたしますと、自由労働者の家族は二箇月間千円では生活できません。一箇月に四、五へん来る配給物をとりに行つても、一ぺんに千円いる、そういう状態で非常に苦しい目にあつたという陳情が、三つや四つではありません。たくさん来ておりますがこういう点については、まさしく労働強化しないと言うが、実際は強化している。一十月の十六日にいよいよその目的を達して、自由労働者諸君が門司に着いたときに、内容は申しませんが、二人銃殺されている。倉庫の横を通つただけで銃殺されるというようなことは、自由労働者諸君の人権を無視するもはなはだしい。日本の自由労働者といつても、犬やねこではない。日本人にかわりはない。それらの諸君の生命は日本人が守つてやらなければならない。そういう点について、資料がありながら何らの交渉もなし得ないということは、それは自由労働者諸君の労働力を低く評価している証拠である。事実は幾らでもあげ得ると思います。また行くときにはこういうことをやつている。ある会社の通訳で、名前は省きますが、おれはこういう関係の司令官だ、お前たち何百人の自由労働者は今日から軍属になるんだ、いやもおうもない。一部の特定の日本人が、国連軍の関係で自由労働者を雇用するときに、おれは司令官だ、お前たちは軍属だと言う権利がどこにある、そういう情報が労働省に入つておらぬというはずはありません。こういう点について頭ごなしに来ることは、人権の無視であり、労働強化であり、約束に違背している。そういう状態が、朝鮮動乱が続く限り幾たびも繰返されると、日本の自由労働者は大体どこへ行けばいいのか。三百里も五百里も離れた外国の人ではないのです。東京におる三万五千の労働者の諸君は、非常にひどい目にあつてこりごりしているが、やがてまたそういう時期が来るかもしれない。そのときには政府は一体どういう処置をとるつもりであるか。職安が、労働強化しない、日本の港以外には連れて行かない、船内作業であると言つても、朝鮮の仁川は日本の港外であることは明瞭なんだ、それを一言の抗議もなし得ないということは、あまりにも奴隷根性がはなはだしい。いくらおほりばたが戰争に勝つても、日本人の生命はわれわれが守らなければならぬ。アメリカの民主主義はひつくり返したらヒトラーの暴力主義ではないはずである。こういう点についてはつきりした線を出していただかないと、ずるずるべつたりに戰争に巻き込まれる危險性がある。そのときの犠牲者には、やはりその大半は労働者がやられる。このはつきりした事実について御存じになつておりますか。その点を特調を代表して御答弁願いたい。
  67. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいま御指摘になりましたことにつきましては、実は私ども詳細に知つておりません。たださようなことについてのいろいろな状況につきましては、関係方面とは特に念を入れまして折衝を重ねているわけであります。従いましてさような強制労働をさせるような、あるいは本人の意思を全然無規しましてやるということはないはずであります。
  68. 青野武一

    ○青野委員 私たちは先ほども申しますように、あまり大義名分の立たない戰争に巻き込まれて、貴重な日本人の生命をむだにしたくないという立場に立つておりますから、それで申し上げるのでありますが、この前御質問しましたときに、私の納得しておらない点は、船員の方が魚雷に当つて、全部ではありますまいが、二十二名なくなられたということであります。自由労働者の方からも二名ばかり、私のところに来ております数字では、二百二十七名なくなつているという報告を受けております。それらの諸君に対して、大体百万円から二百万円程度の弔慰金が出るというお話であつた。その点私も納得行きます。それは自由労働者の生命が百万円でけつこうだ、二百万円でけつこうだという意味でなくて、今日の労働基準法から言つても、給料の千日分であれば二十万か三十万、これがこういう不幸な立場に立たれた人の家族のために支払われるということは、二十万や三十万という金額から言つたら、ある程度いいはずなんです。しかしそれがために労働者の生命をむちやに扱つていいということは決してあり得ない。ところがそれについての保障をどこが出すのか。それがたとえば日本の政府であれば、どういう官庁がその金を支払うのかという質問に対して、この前の労働委員会では、私が納得しないうちに閉会になつたので、これをひとつお願いします。
  69. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの御質問でありますが、これがレーバー・レキジシヨンが出てそれに基いております労務者でありますれば、もちろん政府といたして調達庁、その末端でありますれば府県労務管理事務所というものが支払うはずであります。
  70. 青野武一

    ○青野委員 それは一時立てかえですか、それともなくなられた人に対する弔慰金百万円から二百万円、船員の場合は御承知の通り高給をとつているから、二百万円近くなるでしよう。東京の自由労働者諸君は手取り二百四十二円、二百円と換算いたしましても千日分は二十万円とすると、百万円から百五十万円もらえるといたしましても、それは国連軍の戰争資金の中から出すのか、それを一時政府が立てかえるのか、それがわからない。
  71. 中村文彦

    ○中村政府委員 この件につきましては、先日も御指摘があつたのでありますが、レーバー・レキジシヨンの出ます建前から言えば、終戰処理費から支出されると思います。ただこの点につきましては多少不明確なものがありますので、詳細の御質問でありますれば、私所管でありませんので、財務部長なりとよく打合せした上で御回答いたしたいと考えております。
  72. 青野武一

    ○青野委員 財務部長と打合せをしなければお答えできないということですが、それでは終戰処理費の中から立てかえておるのか、将来もらえるのか、はつきりしてない点について御質問しておきますから、労働委員会委員の諸君なり、あるいは私のところへなり、ひとつよくお話合いをいたしまして、回答されるように御要求しておきたい。というのは、自由労働者も約二百五十円の中から、五円の所得税を払い、三円の保險料を払つておる。そうして手取り二百四十二円、日本の一千万労働者諸君は、苦しい中から勤労所得税を払つている。中小企業者もやはり重税に泣きながら差押えをされるのはこわいから無理な細工をして金を出している。そういうようなものが相当量入つたものが、終戰処理費の一千二十七億なんだ。われわれは━━━━━御婦人の口紅代を税金で出しているのではない。朝鮮動乱で船内作業に従事した人が、たとえば魚雷に当つて死んだり何かした者が、日本人の血税で弔慰金として出すというのは、国際的常識から言つても、あまりにも日本政府の腰が弱いのではないか。この点については、日本は朝鮮動乱に無関係立場なんです。無関係の日本人の税金で、その作業に従事した労働者で死んたり、けがした場合に、それを負担して行く。そんなことは十年もたつたら、われわれの子供が笑いますよ。その点を交渉するなり、はつきりしていただかないと、すべての大きな国際的な問題が、こういうルーズな状態で行つたのでは、日本の国民は自分の生活さえできない。そういうものがこのような無理な使い方をされるということは、これは納得ができない。この点ははつきり特別調達庁の最高の責任者、病気で寢ておられるという話ですから、財務部長なり長官と十分お話合いをしていただいて、全日本の国民に発表しても納得の行くようなお答えを願いたい。それができなければ、相当腰を入れておほりばたと交渉してもらいたい。そういうことは外国人でも笑いますよ。全然無関係な国民が、朝鮮動乱の犠牲者の費用を出すなんということは、常識でもちよつと考えられないことなんだ。  それからもう一つ伺いたいのでありますが、御承知のように日本には飛行場もあります。軍港もある。軍事基地は御承知の通り対日基地としてあるのでありましようが、そういうもののために、たとえば九州なら九州方面では、貨車が自由にならない。全国で四千五百台くらいの貨車が、朝鮮動乱の輸送に充てられている。そうすると私たちのいる福岡地方は、炭鉱地帶であり、工場地帶である。それが全然貨車の輸送というものについてはきゆうくつである。もちろん石炭を掘つている労働者諸君は、二十四、五万筑豊におりますが、いくら掘つても置き場がない。波止場に持つて行く貨車がいうことをきかないから、炭鉱一帶は石炭の山である。ところが値上りを見越してなかなか売らない。しかし労働者は坑内に入つて作業をするのに、一番大切なものは坑木だ。その坑木が全然輸送がきかない。石炭を掘つても輸送がきかない。だから仕事がない、そういつた大きな問題を含めて、炭労二十万の争議がこの間あつた。われわれに仕事を與えろ、朝鮮動乱でわれわれに対する影響があまりに大きいではないかということが、大きな理由であつたのであります。こういう状態で行きますと、重要な産業、特に肥料工場とか、発電所とか、炭鉱とか、製鉄所とかいつたところが、不幸にして爆彈の洗礼を受けるようになつたら——あるいはなるかもしれない。私どもは北九州におりますが、今日だろうか明日であろうかという状態もありました。今でも危險状態から一歩も出ておらぬ。こういう状態のときに、たとえば製鉄所がどかつとやられたら、だれが弁償してくれるだろう。死んだ人間はだれが補償してくれるか。こういう状態が現実の問題として、九州では非常に大きな問題になつている。これは九州だけではない。東京でも立川の飛行場があります。北海道にも炭鉱がある。名古屋から阪神地方に行つたら、軍需産業がどんどん発達しております。もしそういうところに大きな被害を受けるようなことがあつた場合には、労働者の弔慰金を日本人の税金で払わなければならぬというような状態ならば、こういうものは一体どこが払つてくれるのか。これも日本の政府が出すのか。これは先のことでありますが、われわれはひしひしとそういう危險にさらされている。逃げるといつたつて、逃げるところはないのです。職場を守るといつたつて職場を守つて死んだ人は一体どうなるのか。こういう点について、特別調達庁は終戰処理費からその金を出しておりますといつてのほほんとしておらないで、もつと日本の国土と国民の生活を考えて、いくら狹隘な第三国といえども、正しい意見は通る。国会でこういう意見があつたのですが、われわれもなるほどもつともだと思う、こういうことをしてくれては約束が違うじやないかという努力をすることが、働く労働者の生命を保障し、また労働條件をある程度向上せしめることになるのであります。この点について御意見を承りたい。そのほかまだ一般労働問題についての質問が、この前の委員会でも申し上げましたように、少くとも十項目ほどございますが、せつかく労働大臣が出て来られておりますので、私だけが時間をあまりよけい頂戴してもなんですから、今の御答弁を聞くことによつて、私の質問を終らせていただきます。
  73. 中村文彦

    ○中村政府委員 お答えいたします。ただいまの件につきましては、実は私の所管ではないと考えるのであります。ただ先ほど来おつしやいました点で、調達庁としては腰が弱いというようなおしかりを受けておりますが、私どもとしてはさような考え方は持つておりません。筋の通らないことにつききては、われわれといたしましても、できるだけ関係方面と十分な了解を盡した上で、措置するという考え方を持つておりますので、御了解願います。
  74. 青野武一

    ○青野委員 最後にもう一つ、これは委員長に御希望申し上げたいのであります。この前の三月二日の労働委員会が済みましてから、理事会を開きましたときに、本日——水曜日の七日に労働委員会を開くことに大体話がまとまつて、今日開いたのでありますが、その節に私の意見といたしまして理事会に申し上げたのは、この次というのは今日でありますが、今日ひとつ労使の問題、失業救済事業の問題などについて、東京都下の自由労働者の組合の幹部の諸君、あるいは朝鮮動乱に関して直接に関係した人をも何人か含めて、そういう人たちの意見を聞こうじやないか、参考人として呼んでみたらどうかということで、大体倉石委員長を初めといたしまして、いろいろ意見もありましたが、最後には、ではこの次というわけには行かないけれども、今日の次の委員会ごろには、四、五名くらいひとつ呼ぼうじやないかという話合いになつておつたと私は思います。それをこの際、労働委員会が閉会になりましたら、理事の人たちとお話合いをひとつして、ぜひ今日閉会直後にはつきりおきめを願いたい、こういうことを委員長に御希望申し上げて、私の質問を終ります。
  75. 福永健司

    福永委員長代理 その点は後刻御相談をいたします。今野武雄君。
  76. 今野武雄

    ○今野委員 私はやはり保利労働大臣にお伺いしたいと思います。私は昨年九月の四、五日ごろに朝鮮に連れて行かれた労働者の件について、保利労働大臣にお伺いしました。そして意見を尋ねたのであります。そうすると、そういうことは君たち共産主義者のデマだという非常に強い言葉があつた。調査したところが、そんなことは絶対にないと言われた。重ねて今年の一月二十九日の本会議において、田島議員がやはりその点について質問したところが、保利大臣はあそこの壇上からはつきりと、そういうことはためにする言葉であつて調査をしたところ絶対にそういうことはない、こういうことをおつしやつております。しかし現在なおそういう意見を持たれているかどうか。その点をまずお伺いしたいと思うのです。
  77. 保利茂

    ○保利国務大臣 どの問題でありますか、はつきりおつしやつていただきたいと思います。
  78. 今野武雄

    ○今野委員 朝鮮に、仁川上陸その他で連れて行かれた労働者の問題であります。
  79. 保利茂

    ○保利国務大臣 確かにあなたが労働省にお見えになつて、お話を伺つたことはございます。同時にお話をいただいたことについては、すぐ調べましたけれども、あなたが仰せになつたような事情にはなつていないということを申し上げたにすぎないのであります。その節あなたのお持ちになつておりましたビラでございますか、それをひとつ念のためにいただきたいということを、あなたに後日のためにお願いをしたわけですけれども、あなたはどうしてもそれを渡してくださらない。それによつてその問題は御了承を願います。
  80. 今野武雄

    ○今野委員 もう一つ、田島議員が質問したことについては、やはり調査の結果、これも事実無根だということでありますか。
  81. 保利茂

    ○保利国務大臣 それはたしかPD工場か何か、拳銃を持つて強制労働をさせたという問題ですか。
  82. 今野武雄

    ○今野委員 そうじやないのです。朝鮮行きの労働者です。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 それは私、速記録を見ないと記憶がありません。
  84. 今野武雄

    ○今野委員 それではあらためてこの席で申し上げたいと思います。さつき青野議員からも、その問題の一部が出たのでありますが、この前林君の言われたときも、はつきりしろというお話でしたから、私もはつきり申し上げます。十一月の十日に横浜から新興丸という船に乗せられて、大体千二百名の労働者が、朝鮮で荷役に従うために出かけたのであります。山下という人で、これは浅野ドツクの現在通訳をしているそうですが、始終労働者は会うそうであります。その人が司令官ということで乗つておりました。そうして出かけるやいなや皆に向つて、今からお前たちは軍属である、だから軍の規律に従つてやれ、こういうことを申し渡された。そうして新興丸は十一月十六日の夕方に門司は着きました。ところが、初めは何も持つて来なくてもよいということであつた。タバコもその他のものも配給を受けるということだつたが、タバコの配給も少しもない。そこでその乘つておりました労働者は、その夜の八時ごろタバコを買いに上陸した。ところが棧橋のところで、どうしても倉庫のそばを通らなければならないので、倉庫のそばを通りがけたら、そこに日本人のガードがおりまして、いきなり猟銃で射撃した。そうして二名の者が傷ついた。一名は横腹を押えてうーんとうなつて倒れた。そうしてもう一名は、自動車でもつて病院に連れて行かれたが、それはもう生死不明であるというようなことがあつたので、その労働者たちは、半分くらいはもうこわくなつてしまつて、船にもどつて、船の中で交渉した末、正式に上陸してもよろしいのだということになつて上陸した、そういう事件があつたわけであります。そうしてその労働看たちは、翌十一月十七日の夕方三時に、今度は信濃丸に乗つて出帆いたしました。興南に十九日に着きまして、それからずつと興南でもつて沖仲士をやつておつた。その中の六十二名は、特攻隊という名前で呼ばれていたそうでありますが、特攻隊と称して元山に連れて行かれて、そこで荷役をさせられたわけです。しかもその中の三分の二は、帰つて来たときに、もうほとんど起き上れないくらいの状態であつた。非常になぐられたり何かしたそうです。そういうようなわけで、この人たちは結局十二月の三十一日に、横浜に帰つて来たわけでありますが、その間興南の岸壁につけられた信濃丸に宿泊して、ひどい待遇を受けて来たというようなことがあるのでございます。このことについては、はつきりした証人もおるわけでございます。私が問題にしたいのは、さつき青野君からも申されましたが、日本の政府として、日本の労働者がこういうような戰場に出かけること、しかも国連軍の軍属になるというようなことを、いつ、いかなる條約その他のものによつてきめてあつたかということです。先ほどお伺いしてみますと、きめないということでありますが、きめないならば何に基いて、どういう権限に基いてこういうことをやつているか、このことをちよつとお尋ねしたいと思います。そういうことをやる権限が日本の政府にあるかどうか、あらためて保利さんに答えてもらいたいと思います。
  85. 保利茂

    ○保利国務大臣 御説明のことは、私は全然存じません。労働省として進駐軍の要員をあつせんいたします場合は、スキヤツプの指令に基いていたしております。スキヤツプの指令に従いますことは、日本政府の国際的の義務になつております。従つてそのあつせん後においては、特別調達庁の御所管になつておりますから、具体的な責任あることは、特別調達庁からお聞き取りを願いたいと思います。
  86. 福永健司

    福永委員長代理 今野君に申し上げますが、打合せの時刻も大分過ぎておりますから、あとごく簡單に願いまして、本日打切りたいと思います。
  87. 今野武雄

    ○今野委員 ただいまスキヤツプの指令が云々という話でありましたが、ただいま申したようなことは、私つくりごとでも何でもない、事実であります。ちやんと証人もある。そういうような事実があつたのです。船員などは、国連軍にいつされたかということを私自身に申しております。そういうふうなわけでありまして、そういうことが明らかになつた後の日本の政府としては、やはりそれに対して何らかの手を打つ必要はないのか。必要ありとお考えにならないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  88. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの今野委員の御質問でありますが、本件につきましては、先ほど青野委員にもお答えいたしました通り、私どもといたしましては、軍のレーバー・レキジシヨンに基きまして、それを基礎にいたしまして、占領軍の指令に基きました労務提供の責めを果しておりますので、それ以外にはないはずであります。
  89. 今野武雄

    ○今野委員 私の聞いているのは、やはり今後日本政府としては、日本人をそういうところにやるわけにはいかぬ、こういう態度を表明することができないのかどうか。このレーバー・レキジシヨンというのは、やはり占領行政のためであります。明らかにこれは作戰のためでありまして、占領行政のために使われているわけではない。だから、日本政府が引受けてないことであるとわれわれは了解するのですが、やはり作戰のために使用する分も日本の政府は引受けている、こうおつしやるのですか。そうじやないのですか、
  90. 中村文彦

    ○中村政府委員 軍のレーバー・レキジシヨンが基礎でありますので、われわれといたしましてはさような御指摘のような点、強制労働をやつておるということにつきましては、全然関與いたしておりません。なおわれわれとしましては、先ほど来から申し上げます通り、労務者の自由意思をよく考えてやります。またその点につきましてはつく向うにも指摘いたしておりますので、さようなことはないことだと私どもは存じております。
  91. 今野武雄

    ○今野委員 ちよつと待つてください。言葉がよくわからなかつたのですが、ないことだというのは、つまり私が指摘したような事実はないことだというのですか、それをはつきりしたいのです。
  92. 中村文彦

    ○中村政府委員 私さよなうなことを聞いておらないのであります。
  93. 今野武雄

    ○今野委員 私が申したのは事実なんです。ですから、あるとかないとかいうことは問題にならない。そういう事実に対して、日本の政府はどうするかということを聞いているのです。それを聞いているのに、そういうことを聞いていないというのでは、答えにならない。そうすると、政府はこの件についてまだ聞いてもいないし、従つて対策も立てていない、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。聞いていないなら、当然対策も立てていないわけですが、そういうふうに了解してよろしいですか。
  94. 中村文彦

    ○中村政府委員 私どもといたしましては、先ほどから繰返して申しております通り、さような強制労働、あるいは本人の意思を無視するようなことは、全然ないように強硬に申し入れておりますので、さようなことはないと考えます。
  95. 今野武雄

    ○今野委員 どうも答えが食い違つていることが、それでわかりました。それは本人の意思をどうとかということを問題にしていないのです。意思がどうであろうと、日本の国民がそういう戰闘行為に協力している、戰闘行為に従事させられている。このことに対して日本の政府としては、そういうことは困る、こういうふうなことは、日本の憲法の建前から言つても、何から言つても、当然やれるわけですから、その点について政府のお考えを聞いているわけです。つまり本人の自由意思であるとかないとかいうことを、今問題にしているのではないのです。
  96. 福永健司

    福永委員長代理 今まで答えた通りのようでありますが、ただいまの今野委員の発言中不穏当の箇所がありましたならば、後刻速記録調査の上、委員長において適当に処置いたします。
  97. 今野武雄

    ○今野委員 不穏当の箇所ということでありましたが、私事実を申し上げておるのですから、その際には御相談願いたいと思います。削つた結果事実が違つてしまつでは困りますから、その点は御相談願いたと思います。  それからもう一つ、今申したのは十一月十日にできた事件であります。それから九月の五日以来ずつとあることなんであります。同時に、最近にもやはりそういう問題が起つておる。それは三月三日に、やはりこれは技術者でありますが、沖繩行の技術者が出ております。それから三月十日に——これはまた三、四日あとのことでありますが、十日に第二陣が出る、飯田橋職安で募集して出ておる。これは百五十万円の生命保險をつけて、そうして給料は月三万円という証書を與えて、支度金一万円、一年契約ということで出ておりまするが、これも沖縄の現状というものを見ますれば、やはり軍事基地で働かされる。これは日本の占領行政のためにではなく、作戰の準備のために使われることは明らかであります。こういうことについても、日本の政府は積極的にお世話になつておるようです。こういうような金は一体どこから出るのでしようか。さつきも話が出まして、不明確のようでありますが、現在のところは終戰処理費から出ると見てさしつかえないですか。
  98. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 ただいま飯田橋で募集しておるというお話でありましたが、私まだ存じておりません。
  99. 福永健司

    福永委員長代理 次会は追つて公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十七分散会