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1951-03-02 第10回国会 衆議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二日(金曜日)     午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 島田 末信君 理事 福永 健司君    理事 吉武 惠市君 理事 稻葉  修君    理事 青野 武一君       天野 公義君    金原 舜二君       佐藤 親弘君    塚原 俊郎君       川崎 秀二君    早川  崇君       前田 種男君    林  百郎君       中原 健次君  出席政府委員         総理府事務官         (特別調達庁労         務管財部長)  中村 文彦君         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局長)    小野儀七郎君         労働政務次官  山村新治郎君         労働基準監督官         (基準局長)  中西  實君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  委員外出席者         総理府事務官         (特別調達庁労         務管財部労務企         画課長)    木下 芳美君         労働事務官         (労働基準局労         災補償課長)  池邊 道隆君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君 三月二日  委員佐々木秀世君辞任につき、その補欠として  坂本實君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五三号)  失業対策労資関係並びに労働基準に関する件     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  まず労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案を議題といたします。昨日の本委員会におきまして、労働大臣より本法律案について、提案理由説明を聽取いたしたので、本日はただちに質疑に入りたいと存じます。質疑は通告順によつてこれを許します。天野公義君。
  3. 天野公義

    天野(公)委員 労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、数点お伺いいたしたいと思います。  まず労災補償保險保險経済の問題に関連して、二、三お伺いしたいと思いますが、労災保險については、保險料の滯納が相当の額になつておると聞いておるわけですが、現在どの程度に滯納されておるか、年度別業種別というような観点からひとつお知らせ願いたいと思います。また支出額はどのような比率になつているか、これらの滯納保險料は将来徴收される見込みがあるかどうか、徴收不能として欠損処分をするものが生ずるかどうか、これらの数字はあとで文書にしていただいてもけつこうでありますが、概略でもひとつ承りたいと思います。
  4. 中西實

    中西政府委員 保險料徴收を完全にいたしますために、われわれとしてこれに一番努力を集中しておるのでありますが、大体十二月末におきまして一応査定をいたしましたものに対して、約八一%くらいの徴收率になつているかと存じております。こまかい数字につきましては、ちよつと手元に今のところございませんので、後ほどお示しいたしたいと思います。
  5. 天野公義

    天野(公)委員 労働者の業務上の災害というものは、災害が最近非常に増加しているように、統計では出ているわけであります。特に朝鮮事変の影響を受けて、相当災害がふえているように見受けられるわけでございますが、それは別といたしましても、設備の上にこれらの災害が生じても、または人間の上に災害が生じたといたしましても、一つ事業のみの損害ではないわけでありますが、労働基準法施行安全衛生方面に対する行政上の措置は、監督指導教育啓蒙等の各方面から見ても、十分であつたというふうには考えられないわけでございます。幸い本年度予算は幾らかふえているようでございますが、この予算でどの程度活動ができるか。また将来安全衛生の問題についてどのような方針労働省は臨まるるか、その辺の労働省見解方針計画等についてお伺いいたしたいと思います。
  6. 中西實

    中西政府委員 災害防止の問題につきましては、基準行政機構といたしまして、最重点を置いております一つでございます。昨年以来とつて参りました方策についてみますと、まず非常に災害の大きい事業場を選定いたしまして、これを災害防止特別指導をする事業場というふうに指定をいたしまして、特にここに相当指導を加えたのでありますが、その結果は千人以上の事業場におきましては、大体一五%ぐらい災害が減つている。それから千人以下の事業場につきましても、これははつきり出ていましたが、二、三パーセントの減少を見ている。そこでわれわれとしましては、啓蒙指導をいたしますれば、相当効果があるという確信を持つて来ているのでありまして、さらに来年度も続いてそういう方式もとつて参りたいと存じております。なお来年におきましては、予算といたしまして労災保險特別会計におきまして、約四百二十六万円の予算災害防止教育啓蒙宣伝のため計上をいたしておりますので、特に来年度におきましては初めて一般会計から安全教育の費用としまして、二百二万円ばかりの経費を計上いたしまして、これによつて労使災害防止に対する関心を喚起して、積極的に災害防止に協力していただく態勢をとつて参りたいと考えております。方法としましては、各地方におきまして、また中央においてもそうでありますが、労使とも産業災害防止対策協議会のごときものを設置いたしまして、これによつて労使におけるこの方面関心を高めて、相互研究しつつ災害の撲滅に努力して行くという方法も考えております。なおまた一方、労働組合にも十分に活動を願いまして、今後は労働組合日常活動として、この安全関係に力を入れていただくということについても要請をいたしつつあるのであります。なお各事業場におきまして、災害関係を担当いたしておりますいわゆる安全管理者というのがございますが、これの実地の教育指導ということに特に力を盡して行きたい、かように存じておる次第であります。結局は労使双方のこれに対する関心が最も重要なことでございますので、この点について特に力を注いで参りたいと存じております。
  7. 天野公義

    天野(公)委員 これらの災害を防止するためには、いろいろな教育方面も必要でありますし、また安全指導の面も重要なわけでございますが、予算が少いのでなかなか思うように行かないとは思いますけれども予算をとるように、政務次官に大いに政治力を発揮していただくと同時に、與えられた予算の範囲において、最大の効果をぜひ発揮していただきたいと思うわけでございます。  次に鉱山関係についてお伺いしたいのですが、この労災保險においても、鉱山事故が非常に負担になつておると聞いておるわけでございますが、一般製造工業との比較がどうなつているか、承りたいと思います。
  8. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 お答えいたします。お尋ねのように鉱山災害は、一般工場比較にならぬほど多いわけでございまして、特別な事故防止方式が要請されておるわけでございます。二十四年の統計におきますと、一般工場関係従業員千四百二十万、鉱山関係は五十三万、それに対する死亡が、一般工場におきまして千三百五十五、鉱山におきまして千十四という数字を示しております。千人当りにいたしまして約六倍の死亡、また負傷も同様でございまして、五倍半ほどになつております。
  9. 天野公義

    天野(公)委員 鉱山関係災害が大分多いようでございますが、特に朝鮮事変以来、鉱山災害が非常に多くなつていると思うわけですが、その点についてひとつお話願いたいと思います。
  10. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 六月の事変以降の災害状況でございますが、実は統計がまだ一部最近のものが不備な点もありますが、特に目立つてふえて参つております傾向はないのであります。ただ御承知のように金属鉱山等が、こういう時勢で活発な活動を始めて来つつあるのでございますので、小山と申しますか、中小鉱山で一時廃山になつてつたものが、逐次復活されるような傾向にあるわけでございまして、そういつた中小鉱山ちよつと災害が多くなつて来つつあるような傾向に見受けられるのであります。まだ統計にきわだつて現われて参つておりません。
  11. 天野公義

    天野(公)委員 それでは鉱山事故に関する統計を、なるべく早く委員会に出していただきたいと思います。  次に、この鉱山事故についてでありますが、坑内作業については、直接の監督権通産省にあるわけでありますが、通産省としては、一体こういうような、相当多くの災害が起つておるのに、この問題についてどのような監督教育あるいは指導をしておるのか、承りたいと思います。それと同時にまた労働省としては、ただそういうような問題を全部通産省にまかせきりで、おれの方は全然知らないのだというような態度をしておるのであるか、それとも労働保護の見地から、通産省に対して何らかの積極的な意思表示をしておるのであるか、またこの問題について、今後何らかの方法で善処したいという具体的な考えを持つておるかどうか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  12. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。労働省といたしましては、報告されます災害数字その他を参考にいたしまして、通産省関係に嚴重に、かかる災害がその後において発生しないように、連絡をいたしておる次第でございます。
  13. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 お答えいたします。先ほども申し上げましたように、特に災害が多いので、通産省保安局ができて、特別な監督指導に当つておるわけでございます。各地方にも保安監督部というものがございまして、特に災害の多い向きにつきましては、直接監督官が出向きまして、しさいに山を巡回いたしまして、指導監督に遺憾なきを期しておるわけでございます。またごの災害防止指導面でございますが、中央といたしましても、ポスターとかパンフレットとか、いろいろなものを用意いたしまして啓蒙宣伝に努めますし、各山におきましても、いろいろな機会に養成とか講習とかいうものを開きまして、一般技術向上等にも力を注いでおるわけでございます。山元も役所も、また働いておられる者も一体になつて保安思想の普及、技術向上といつたような点に力を入れて、施策を進めておるわけでございます。
  14. 天野公義

    天野(公)委員 この問題は、ただに労災というような問題だけではなくて、非常に重要な問題でありますので、通産省としても労働者としても、この問題については真劍に善処していただきたいと思うわけでございます。  次に通産省にお聞きしたいのでございます。それは産業災害は、設備の不完全、老朽という点からも生ずる場合もあるのでありますが、さらに産業技術向上ということについて指導的行政をつかさどる通産省として、設備事故との関係についでどういうふうに考えておられるか、この点についてどういう方針で臨まれるか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  15. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 お答えいたします。お話のように災害の発生は、いろいろな意味におきまして、山の設備との関係がきわめて緊密と申しますか、離るべからざる関係にあるわけでございます。従いまして私どもといたしましては、機会あるごとに設備完備という点に重点を置きまして、指導監督に努めておるわけでございます。何と申しましても、自然條件と申しますか、また経済條件等もございますので、保安法ができまして、一気にあらゆる設備等改善を行うということは、とうていできないのでございます。私どもといたしましては、とりあえず危險率が多くて、ほつておけないものに主力を置きまして、それは急いで整備してもらうということ、もう一つは、ごく簡易な施設等によりましてただちに実効の上るものは、どんどん着手してもらうという考え方からいたしまして、いろいろな施設を進めてもらつております。特に前者につきましては、御承知ガス山に対する爆発の予防といつた点は、一刻もゆるがせにできないのであります。そういつた点の整備をまず進めてもらうことにいたしたいと思います。また後者の簡易な施設を取進めてもらう例といたしましては、たとえば金属鉱山等におきましては、墜落の事故がばかにならないのでございますが、これなどもごく簡易なとびらをつけるとか、ふたをつけるとか、あるいは柵囲をまわすといつた設備によりまして、かなりの成績を上げつつあるのであります。またお尋ねにあります技術向上でございますが、これにつきましては特に戰時中、海外の技術との関係がとだえておりました関係等もありまして、かなり立遅れの感があるわけでございますが、終戰後外国技術導入等も積極的に行われまして、いろいろ機械化点等にも、相当画期的な刷新が行われつつあるのでございます。その他技術面向上といたしましては、大学あるいは通産省関係工業技術試験所とも緊密に連絡をし、また工業技術庁におきまして、いろいろな助成案をとつております。そういう方面とも鉱山保安関係施設等に関しましては、いろいろ連絡をとりまして、施設の遺漏なきを期しておるわけでございます。
  16. 天野公義

    天野(公)委員 そういう点についてなお一層の御努力を願いたいと思うわけでございます。  次に基準局長にお伺いしたいのですが、労働基準法に基く技能者養成というのがありますが、これは現在のところあまり重視されてない傾向にあるように思われるのです。実際の場合を考えると、技能者養成という問題は、相当大きな問題を含んでおるのじやないかと思うのであります。現在の日本学校教育でございますと、技術面指導を全然やつておらないで、学校を出ればすぐ勤めに行くというような場合に、技術上の欠陷相当仕事の上に出て来るのじやないかと思う。ことに朝鮮事変以後、急激に労働者を雇つたようなところでは、未熟練なるがゆえに相当災害が出ておるようなことも聞いておるのでございまして、     〔委員長退席福永委員長代理着席〕 こういうような技能者養成、もしくは職業補導といつた面に、なお一層労働省としては力を入れて、具体的な計画を立てて、できるならば技能者養成学校というようなしつかりした設備、もしくは職業補導学校というようなしつかりしたものにして、職業のあつせん、補導と同時に、技術向上、基礎的な技術の獲得という面に力を注いでいただきたいと思うわけですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  17. 中西實

    中西政府委員 技能者養成規定基準法にもございまして、率直に申し上げまして、実は基準行政の中で最も立ち遅れておる部分でございますが、最近進駐軍の方からも、特にこの方面の專門家が日本指導に参りまして、技能者養成の熱も高まつて参りました。現在基準法に基きまして、大体四十七職種技能者養成について規定を設けてやつてつたのでありますが、近くこれを百二十種ばかりに拡張いたしまして、そのくらいに拡張いたしますと、大体たいていの職種が間に合うことになります。これによつて相当この方面の伸びが期待できるのではないかと思つております。特に地方相当この方面の專任者も置き、また中央におきましても、この方面担当課を充実いたしまして、今後急速にこの方面を伸ばして行きたいということで進んでおる次第であります。十
  18. 天野公義

    天野(公)委員 法律簡單法律でございますが、その法律の背後に控えておる問題として、労働者災害という非常に大きな問題が含まれておるわけでございます。しかも労働者通産省と別個にわかれて、同じような問題を取扱つておるというような関係もありますので、労働省においてはぜひとも災害防止安全衛生ということの充実について、よく御連絡をとられて、万全を期していただきたいと思うわけであります。これで私の質問を終ります。
  19. 福永健司

    福永委員長代理 それでは前田種男君。
  20. 前田種男

    前田(種)委員 私は先に中西局長に、労災の最近の財政上のバランスが、こまかい数字はいいですが、大体のところどういうふうになつておるか、さらにまた未拂いの金額がどの程度つておるかという点を、もしおわかりになれば簡單に御説明願いたいと思います。
  21. 中西實

    中西政府委員 お尋ね労災保險の現況でございますが、本年度当初に赤字が大体十三億ばかりあつたのでありますが、これを五箇年償還でなしくずすということで計画を立てまして、同時に不適正な料率も改正いたしまして、保險経済健全化をはかろうとして参つたのでありますが、本年度の当初予算を組みます際には、大体昭和二十四年度実績に基きまして、月々の補償費の額が平均六億二千万円くらいであろうという予想のもとに、年間七十四億八千万円を予定しておつたのであります。ところがその後災害件数も増加いたしましたし、また医療費増等もございまして、現在までの実績においては月平均が六億九千万円ばかりになります。従つて年間八十二、三億を必要とする。そこで当初の予定よりは七億余の支出超過ができて来たわけであります。こういう状況から考え合せますと、本年度の末におきましては、大体收入が八十八億ばかりに対しまして支出は百二億、もちろんこの支出の百二億といいますのは、そのうち保險金が九十七億、その九十七億の中に昨年度から二十五年度に持ち越しましたのが十五億ありますので、本年度だけの保險金を見ますと大体八十二億ばかりであります。それと事務費と合せまして今申しました百二億になるわけであります。従つて二十五年度だけ見ますと若干の赤字ということでございますが、昨年度から持ち越しました分が十三億ばかりありますので、結局十四億ばかりが赤字になるということになろうかと存じております。そこでこれに対しましては、保險料完全徴集、さらに支出適正化ということで收支健全化に努めますとともに、一方若干の借入金をいたしまして、これらの措置によりまして、この二十五年度から二十六年度に越すにおきましては、大体昨年の未拂いが十五億余あつたのでありますが、本年は大体その半分の八億ばかり、約一箇月分とちよつとでありますから、これを未拂いとして翌年に持ち越す。四月になりますれば新たな保險料收入もありますし、さらに必要とあれば国庫余裕金の借入れもいたしまして、未拂いの整理をいたして行きたい、かように思つております。
  22. 前田種男

    前田(種)委員 今の説明でわかるように、十四億前後の赤字を出しているということは、端的に申し上げますと、それだけのけがをした労務者に対しての支拂いが遅延しているということになるわけです。満足にきめられた期日に支拂いしてすら、その労務者は、治療あるいは生活に非常に困るという現状にあるにもかかわらず、それが数箇月ももらえない、手当の支給がないということになりますと、そうした人々の家計費というものが非常に苦しい状態に追い詰められるということは、労働省通産省もよく御承知と思うのです。これをできるだけ改正して、何とかして政府は金融的な措置もさらに一段と構じて、そういう面の対策に万全を盡していただきたいと考えます、もし何かいい案があればお示し願えればけつこうでございますが、なければぜひ留意していただきたいという点を希望として申し上げておきます。  私は全体的に見まして、労働省通産省に特に猛省を促したい点は、労災ができます以前は、事業場でけがした場合は、事業主負担においていろいろなものがやられておつた。そうした場合は件数が多ければ多いほど、事業主が直接負担をしなければならぬのでありますから、設備安全装置あるいは労務者に対しての注意等についても、相当積極的な対策を立てておつたのです。しかし一旦労災が施行されまして、一定の掛金をかければ、けがした人の負担労災が全部まかなうために、直接事業場に経済的な打撃がないということで、設備やその他の面においても相当おろそかになりがちである。さらに労務者に対して相当注意監督すべき人も配置して万全を期さなければならぬのに、それもおろそかになつて、けがしても直接事業主には関係ないのだというような点が、特にここ二、三年来災害が非常に多くなつた原因だと私は見ております。もちろん戰争中、戰後のあのどさくさまぎれにおける設備の不完全を、一朝にしてとりもどすということは容易でありませんが、いろいろな日実をつけて事業主の方は、そういう方面設備改善安全装置等をやろうとしないのです。これは相当強い線で行政官庁として積極的な指示なり、監督をしなければだめだと私は考えます。ある面では、事業主に対して相当無理だというような強い線を出して、設備改善安全裝置完備をやらなければだめなのであります。要するに人命を非常に軽んじているという傾向が顕著に現われておりますので、こういう点に対して労働省通産省双方とも、どういう考え方で今後やつて行こうとしておられるか、この点に対してお答えを願いたいと思います。
  23. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。災害を受けられた労働者の方に対して、保險金の支拂いが遅れているということは、まことに御同情にたえない点でございますが、この点は、確かに御指摘の点がなくはないのであります。その問題につきましては、あるいは一部には事業主等において立てかえ拂いをしておるやに聞いている点もございますが、いずれにいたしましても、なるべくこれを早く拂うごとにつきましては、極力努力をいたしまして、御期待に沿いたいと存ずる次第でございます。なおそのために事業主安全設備等に対して、不完全なものが起りがちだという御指摘でございますが、この点は基準法によりまして、十分この災害防止の点について完備いたして行きたいと思う次第であります。
  24. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 鉱山関係で申しますと、事故があるたびに、労働省の方と緊密な連絡をいたしまして、給與の遅退のないようにいろいろ手はずを進めております。またお話施設改善につきましては、先ほど来ちよちよい申し上げたのでございますが、たとえば北海道における例でございますか、最近一年間保安施設関係で約四億の支出を見ております。これはその前年の額が二億三千万円程度でございまして、かなりの増額を見ているわけであります。それらも実は中央保安責任の箇所ができまして、また各会社等保安態勢が逐次整つて参つております。そういつた点で相互に連絡をとりまして、いろいろな施設の強化に、かなり重点を向けて参つているという傾向が見られるわけであります。今後とも私ども施設完備のために、いろいろ盡したい思うのでございますが、そういつた傾向になつております。
  25. 前田種男

    前田(種)委員 山村次官見解をもう一つ求めておきたい点は、今の設備の不完全あるいは安全装置が惡かつたために、事故が発生したという顕著な事実に対して、ある程度事業主に責を帰するか、あるいは現行法では、そういう措置が講ぜられるかどうかという点です。私も十分研究しておりませんが、構ぜられるならば、そういう法規によつて行政官庁が十分監督する、もし現行法でそれが不十分であるならば、法規を改正してでも、顯著なそういう事業主の当然の責任に帰さなければならぬような場合には、もつと事業主責任を持たすというようなことにすることによつて災害件数を非常に少くする道が講ぜられると思いますが、そういうことについて、次官見解を承つておきたいと思います。
  26. 山村新治郎

    山村政府委員 事業主が当然なすべきこの安全設備について怠つているという問題につきましては、これはまことに労働者の方々の安全のために憂うべきことでございますが、今回のメリツト制の点につきましても、要はやはり事業主がこの災害を防止するということに熱意を持つてもらいたいという一点に、そのねらいがあるのでございます。従いまして今回の法案の御可決を得まして、おそらくこの問題も解決いたす大きな力になることと存ずるのであります。なお現行法規の問題については、事務当局からお答えいたさせます。
  27. 中西實

    中西政府委員 ただいまおつしやいました事業主安全規則に違反いたしておりまして、そのために災害が起りました場合には、現行法によりまして給付請求ができることになつておりまして、現在それで実行いたしております。
  28. 前田種男

    前田(種)委員 今日までにそういう観点をもつて適用した実例があるかどうか、重ねて承つておきたいと思います。
  29. 中西實

    中西政府委員 金額は今ちよつと手元にございませんが、相当ございます。現在これは必ず嚴格に実施いたしております。
  30. 前田種男

    前田(種)委員 通産省小野局長にお聞きしますが、私は暮れの十二月八日の本委員会で、この災害が特に鉱山、炭鉱等に非常に多いので、どうしても通産省に積極的な対策を立ててもらわなければならぬという要望を申し上げるとともに、新しい最近のそうした具体的な数字を、この次の国会にぜひ提出してもらいたいということを要望しておく次第でございます。できますならば通産省関係のそうした数字に関する内容を、もし本日提出することが不可能でございますれば、一両日の間に提出していただく用意があるかどうか。あるいは本日説明していただけますならば、そうした点等をもう少し具体的に御説明願えますれば、お願いしたいと存じます。
  31. 小野儀七郎

    小野(儀)政府委員 災害の概況でございますが、先ほど工場との関係の対比をちよつと申し上げたのでございますが、鉱山プロパーの関係を、ことに終戰後の大体の動向をかいつまんで御説明申し上げたいと思います。十二月でございましたか、前回の委員会でも実は資料がそろわないのでございまして、うろ覚えの数字を申し上げたのでございます。災害の概数を申しますと、二十一年が五万七千回、二十二年が九万九千回、二十三年が十五万四千回、二十四年が十八万六千回、かように激増して参つております。二十五年は十一月、十二月等一部の数字がそろわないのでございますが、これを推定いたしまして約十八万二千という数字でとどまる予定でございます。そのうち死亡数字を申し上げますと、これは大体九百ないし千の数で、そうでこぼこはございません。二十三年の千二名が一番多いのでございます。二十四年が九百六十一名、二十五年が九百十名、約五%近くの改善を見ております。また重傷でございますが、重傷は二十二年が三万三千名、二十三年が四万二千名、二十四年が四万四千名、二十五年には三万八千名というふうに、かなりの減少を見ておるわけであります。またこれに対しまして軽傷でございますが、軽傷が実は累年かなり急激にふえておるわけでございます。二十一年が三万七千だつたものが、二十二年には六万六千、二十三年には十一万三千、二十四年には十四万二千、二十五年の数字も、実は遺憾ながらごくわずかでありますが、ふえまして十四万四千という数字に相なつております。かようにいたしまして、先ほどお話ございましたように、戰後の施設の荒廃あるいは未熟練工の増加といつたようないろいろな点がございまして、累年災害かなりふえて参つてつたのでございますが、二十四年を大体頂点として、二十五年には今申しましたように多少の減少を来しております。累年アツプ・カーブで参つたものが、ここでちよつとその調子を折つたようなことになつておりますので、これらは各業界あるいはお仕事に実際当つておる方面努力の結果が、多少ここに現われて参つておるものと、かように存じております。今申しましたのは全鉱山についてでございますが、この約九割というものが炭鉱の関係でございます。いずれ計数等は整理いたしまして、御提出することにいたします。
  32. 前田種男

    前田(種)委員 今の数字はできますならばプリントにして、各委員に配付していただきたいと思います。今の数字を承つておりましても、相当災害があることが顯著になつて来ております。これの対策は容易ではないということは私もよくわかるのです。通産省の立場から行きますならば、ともかく経営者、従業員がともに災害防止のために、ほんとうに積極的な協力をし、またそういう施策をして行かなければならぬと思います。労働省の立場から行きますならば、むしろ労働組合が中心になつて、今日お互いのからだをすり減らすことを、何とかして守るという観点に立つて安全設備あるいは災害防止ということにもつと積極的になり得るような態勢を、労働省みずからが指導するというようにやつていただきたいと考えます、最近のように金融面におきましても、あるいは資材面には特に物価騰貴の関係からいつて、おそらくそれぞれの事業量も、予定の設備改善その他は容易ではないというように、今年から来年にかけて見受けられるのです。これをまたそういう言い訳のためにおろそかにいたしますと、さらに災害率がふえる、増産はどんどんやらなければならぬ、設備改善はなされないということになりますと、さらに惡い状態になると考えられますので、こういう点等についてはむしろもつと積極的に、ほんとうにやらすという腹を政府できめていただきたい。特におざなり的な労働組合の協力を求めるということでなくして、もつと積極的に求めるような対策を具体的に立ててもらうようにお願いを申し上げます。特にこの点について山村次官見解を承つておいて、私の質問はこれで終りたいと思います。
  33. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。災害防止につきましては経営者はもちろんのこと、労働組合側にもお願いいたしまして、ここにぜひともこの災害の——絶滅ということは不可能かもしれませんが、少くなるように努力いたしたいと考えまして、労働省といたしましても、本年度災害三割減に目標をおきまして、この運動を強力に展開いたす所存であります。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 最初に委員長に議事進行に関してお尋ねしておきたいのですが、実は今日は第十国会において初めて開かれた労働委員会なんです。(「二回目だ」と呼ぶ者あり)二回目にしても、昨日は政府提案理由説明だけということで了解を得ておるわけです。それでわれわれとしては、昭和二十六年度政府の労働行政についての、全般的な問題を実は聞きたいわけです。町には失業者があふれております。それから労働強化の問題が、非常に大きな関心のある問題になつております。賃金ベースの問題も、物価騰貴と低賃金で、非常に大きな労働階級の関心の問題になつておる。そういう非常な窮迫した労働情勢のもとにある今日、政府としては労働行政についての全般的な所信を披瀝し、それに対してわれわれが一般的な質疑をするということが、政府の労働行政に対する熱意を示す一つの証左になると思うのです。ところが今日は労働大臣はどこに行つたか、全然わかりません。われわれにはその理由がわかりません。これはあとで次官に聞くつもりです。それから委員長も第二回目の大事な——第二回目といつても昨日は單に政府提案理由説明を聞くだけなんです。今日は本格的に初めて開かれた待望の労働委員会です。それに委員長が途中でどこかに行つて様子がわからない。これはまつたく吉田内閣が労働行政に対して熱意を持つていないという有力な証拠だと思う。それで最初にお伺いしたいのは、労働大臣がなぜ今日ここに見えないのか。それが第一点、それから委員長は今何をしておるのですか。これを明らかにしてから、私は質問を展開して行きたい。この点に関しては野党各派ともみな非常に不満を持つておる。第十国会における労働委員会の将来の運営の方針の上からも、また政府の労働行政に対してわれわれが疑いを持つておるところを明らかにするという必要の上からいつても、今日はこの点をはつきりさせてもらいたい。また政府の所信もはつきりさせておきたい。こういうことでお聞きしておるのですが、まず労働大臣は今日どういうわけで出て来られないのか。それからまずお聞きしておきたい。
  35. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。労働大臣は今日やむを得ない所用のために、他出いたしております。なお実は今日の委員会におきましては、大体昨日の理事会の模様を承りましたときに、労災関係のものを御審議なさるということに承つておりましたので、やむを得ない所用もかち合いましたのでこの次の委員会においては必ず労働大臣が出て、労働行政一般につきましても御答弁をいたす予定であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  36. 福永健司

    福永委員長代理 林委員にお答えいたしますが、倉石委員長は御承知の通り先刻までおりましたが、ちよつと出かけまして間もなく帰つて参ります。
  37. 川崎秀二

    ○川崎委員 関連して議事進行について申し上げます。私は労働委員会に久しぶりに出たのですが、最近の労働行政が国民の間に非常に重大な関心を呼びつつある折から、少しもこの労働委員会に対して、積極的な開催の意思が委員長にないことを、実際に不満を持つて今日までながめておつたのです。もとより先般来国会は、主として予算委員会を中心にした国政全般の総合検討が行われておつて、それに中心があつたことは事実です。しかしながら各常任委員会は、その機能を十分に発揮しなければならぬことは、新憲法、国会法、すべてこれを明記しておる次第であつて、われわれはでき得る限り常任委員会の機能を発揮して、先般来問題になつておるところの各種の労働問題について、深い検討を加えなければならない時節であつたと思うのです。しかるに先般あれほど天下の耳目を聳動した炭鉱ストライキの非常に瀰漫した際におきましても、何べん野党側から委員会開催の要求を出しても、委員長はこれに応じないという話であつた倉石委員長は、ややともすれば労働委員会を開催せずして、事なかれ主義に日を送らんとする傾向があるのであります。私はたまたま委員長のおらない席上で、委員長の彈劾をしようという計画をいたしておるのではない。いつかこのことは言わなければならぬと思つてつたのですが、こういう時期に到来している。しかも今日の與党の委員の出席ぶりは何ごとですか。今委員長の不信任案、労働大臣の不信任が労働委員会に出されれば、絶対多数の三百名を有しているところの自由党といえども、わが野党には歯が立たないであろう。與党の委員は何をしているか。與党の委員は、絶対多数を擁しておるのに、わずかに三名しかおらないということは、すでにして労働行政に対する自由党の、反時代的な感覚を物語つているところの十分なる証拠であると思う。ようやくにして、急報によつてけつけたのかどうか知らないが、二人か三人出て来たが、これは非常に重大な問題である。林君の発言は——普通ならば私は共産党の提唱には応じない立場にあるのだけれども、しかし本日の林君の発言は、最も真理をうがつてつて、議事進行に関するところの当然なる緊急の質問であつたと思う。委員長代理は、委員長に対してよく言つていただきたい。労働行政批判についての今日の重大な段階にあたつて、でき得る限り委員会を開けということを野党側が要求しているという事実、並びに労働大臣以下政府関係各官が必ず出席するように要求している事実、これをとりはからわなければ、労働委員会に関する限り、今後審議の進捗はできないので、十分にこれは注意を喚起される必要があると思うのです。以上議事進行に関して私の所見を申し述べた次第です。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 委員会における慣例から言いましても、委員長代理であるあなたにいくら当つても、柳に風でしようがないが、これは倉石委員長によく伝えていただきたい。とにかくきようは、第十国会における初めての本格的な労働委員会だ。そのときに労働大臣が出て来なくてどうするのか。一般的に吉田内閣の労働行政のもとに、ここに出されている労災法について討議をしなかつたならば、意味をなさない。労災法だから大臣は出て来なくていいという、そんな失礼な話はないと思う。従来の自由党の労働委員会に対する方針は、われわれから見れば、むしろ労働委員会を開かないことが、委員長の手柄のように見えている。(「邪推だ」と呼ぶ者あり)邪推ではない。現にきよう自由党の諸君が出て来ないということは、労働委員会の機能を実質的に喪失させようとする意思が現われていることがわかるわけだ。(「質問をやつたらいいじやないか」と呼ぶ者あり)だから委員長に嚴重に注意してもらいたいと言つておるのだ。この次には労働大臣をちやんと呼んで来て、吉田内閣の労働行政に対する一般的な方針を出してもらつて、それに対する一般的な質疑をして、それから労災法ならば労災法に入らなければ、われわれは一般的な方針もわからないで、労災法だけやれと言われても無理である。またそれが委員会に対する政府の儀礼です。通常国会における最初の本格的な労働委員会において、吉田内閣の労働行政一般的な方針を言わないでおいて、この法案が出たからすぐやつてくれというやり方がありますか。委員長を通じて十分この点を警告していただきたい。  それから次官にお聞きしたいのですが、やむを得ない事情とは何ですか。昨日は政府提案理由だけお聞きして、きよう質疑をするということは、労働大臣もちやんと知つているはずであります。委員長がきようは質疑をやめてくださいと言つたのは、昨日の話だ。明日にしてくれないかというから、せつかくのそういう申出だからきようはやめましよう、明日質疑をしましようということで、あなたの方の申出通りにやつているのではないか。ところが大臣は出て来ない。そんなばかな話はない。しかもこの委員会は非常に重大な委員会だ。(「大臣に質疑したかつたら、出て来るまで待て」と呼ぶ者あり)それが出て来ないじやないか。そんな失礼なものの言い方があるか。重大な労働委員会だというのに、大臣が出て来ないという失礼な話があるか。     〔「與党何を言うか」と呼び、その他発言する者多く、議場騷然〕
  39. 福永健司

    福永委員長代理 暫時休憩いたします。     午後二時三十九分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  40. 福永健司

    福永委員長代理 休憩前に引続きまして会議を開きます。林百郎君。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 質疑に入る前に、先ほど混乱がありましたから、結論だけ出しておきたい。自由党の吉武君から、あげ足をとるなというようなお話があつたのでございますか、私は別にあげ足をとるとかいうような、そんなけちな考えで委員長に申し上げたのではなくて、労働委員会を権威あらしめたい、労働委員会をあらゆる常任委員会の中で最も重要な委員会として、お互いにこれを守りたいという気持から申し上げたのだということを、御了解願いたいと思うのであります。  それからもう一つは、われわれとしては労災法の問題に入る前に、労働者諸君にとつて最も大きな関心事であつた物価と賃金の関係、あるいは賃金ベースの問題、それから朝鮮事変後非常に労働が強化せられておりますので、この労働強化の一般的な状態の問題、それからこうした労働強化にもかかわらず、労働産業法による労働者の保護ということが、最近非常に軽視されて来ておる傾向かありますので、労働者諸君はほとんど無権利の状態に陷つておる。それから失業救済あるいは失業保險の問題についても、非常に大きな不満の声が失業者諸君の間から出ております。しかもこのほとんどあぶれと、低賃金、安い手当によつて、生活に苦しめられておる失業者諸君が、戰時の労務者として動員されておるという問題、それから労働組合に対する吉田内閣の全般的な方針、たとえば日教組のごときは、府県あるいは市町村に交渉單位を認めるというような、われわれから見ると組合の分裂というような変な政策がとられておる、こういうような問題について、吉田内閣の持つ労働政策一般についてお聞きしたい、こういう熱意から、私は先ほどの発言をしたのであつて、決して小またすくいをしようとか、あげ足をとろうとかいうけちな考えでしたのでないということを、あらかじめ申し上げたいと思うのであります。  次に、労災法の問題についてでありますが、やはり労災法の問題を検討する上においては、最近の労働災害一般的な情勢、労働強化の一般的な情勢の中から、この法案を審議して行かなかつたならば、ただ條文の改正のことだけついて行つたのでは、われわれは象の足をさすつて象全体を想像しなければならないというような、はがゆい感じがするのであります。そういう意味合いからも労働大臣から、労働行政一般方針を聞き、それに対する質疑の中で、労災法の改正法案の質疑をしたいと思つたのであります。しかし遺憾ながら労働大臣は見えませんので、そうした根本的な方針についてお聞きする機会がなくて、やむを得ませんから、とりあえず労災法について、一、二非常にこまかい点でありますが、お聞きしておきたいと思うのであります。これは出席の政府委員けつこうですから、御説明願いたい。  最初にお聞きしたいのは、労災法第二十七條を改正せざるを得なくなつた理由です。これは提案理由の中に一応はありますけれども、やはり災害がふえて来て、保險料よりも保險金の支拂いが多くなつたということが、根本的な原因なのか。とこかくこの二十七條改正の必要に迫られて来た理由ですが、政府の提出理由によりますと、何も事新しくいまさらやる必要はないのだ。初めからこれはあたりまえのことで、災害防止に一生懸命努力しておる業種と、それに対して怠つておる業種との間に、差別をつけなければならないということは、最初からわかつておることである。なぜ今これを特に改正までしなければならないような情勢が起きて来たのか、まずお聞きしておきたい。
  42. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。先ほど来林委員から、大臣が出られないことにつきましての御詰問がございましたが、大臣はきようほんとうにやむを得ない所用で出られないのであります。その点御了承願いたいのであります。なお大臣が出られませんでも、失礼ながら私政務次官として答えられるだけはお答えしたいと思います。これだけを申し上げておきます。  それからただいまお尋ねの本法案提出の理由でございますが、同じ業種の中で、災害の多い事業場と少い事業場との差別が少いということにつきましては、確かに事業主自体の災害防止に対する熱意に欠けるうらみもございますので、災害を防止したいという点が第一のねらいでございます。なおメリツト制によりまして、災害が多くなつ事業主は、それだけ多くの保險料率をかけられることによつて、損害を生ずるわけでありますから、それだけ熱心に災害防止に対する施策を講ぜられるであろうということが、大きなねらいであります、なおまた今段階において急にやるようになつたのじやないかという御指摘でございますが、これは早晩実行しなければならないと考えておりましたのが、実現に移つた次第でございます。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 災害防止ということはまくわかるのですが、今ここで新たに災害防止が特に強調されるようになつたのは、やはり災害がふえて来たからですか、どういうわけですか。
  44. 中西實

    中西政府委員 災害は残念ながら、最近労災保險の面から見ましても、ふえて来つつございます。しかし特に最近災害防止がやかましくいわれたと申しますよりは、これは前々から基準行政としましても、重点を置いて来たところでございます。この労災保險経済におきまして、相当赤字が出ておるというようなことと相まちまして、この際メリット制を早急に施行する、こういうことになつた次第でございます。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 災害が最近特に多くなつたのはどういう理由ですか。     〔福永委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 中西實

    中西政府委員 お答えいたします。特に災害が最近急激にふえたというのではございませんで、たとえば今まで管理工場であつたのが動き出したとかいうようなことで、産業がだんだん復興するにつれまして、当然比率的にふえることはやむを得ないのでございます。実は災害統計の、戰前のものと現在のものとを比べる資料がございませんので、はたして現在の災害率が、かつてよりずつとふえておるかどうかということは、直接今の災害状況からは判断できないのであります。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 政府提出の資料からいいましても、たとえば土木建築業、林業の災害は、特に非常にふえておるのです。土木建築業のごときは、二十四年と二十五年との比較は大体倍、林業は五割、運輸、通信は四割、それから工業も大体二割ぐらいにふえております。これはあなたの方から出した資料からいつても、昨年より今年は非常にふえておりますが、これはどういう理由ですか。
  48. 山村新治郎

    山村政府委員 災害のふえた理由は、あるいはその災害の起つた個々の事業場で、いろいろな理由があるかもしれませんが、総体的に申しますときに、事業が殷賑をきわめて参つたということが、大きな原因であろうと思います。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 事業が殷賑を来したというのは、資本家の方からいえば殷賑だが、労働者の方からいえば、非常に労働が強化されて来たというように解釈していいのですか。
  50. 中西實

    中西政府委員 ただいま御指摘の林業、土木の関係でございますが、今お手元に配りましたのは労災保險からつかんだ数字でございます。そこで林業のごときは有機事業で、土木もそうでありますけれども労災で完全につかみまするのとつかみませんのとでは、非常に違つて来るわけであります。労災補償保險施行三年になりまして、相当普及しまして、業者もこれに加入するところが多くなつて来ました。そういう関係で、絶対的にふえたというよりは、実は労災保險の対象に多く加わつて来たというのが、おもな理由でございます。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 大分苦しい説明のようですが、災害はそうは起きていないのだが、労災災害はふえて来たというようにおつしやるようですけれども、やはり労災の対象になる災害がふえて来たということは、一般的に災害がふえたというように解釈するのが常識じやないのですか。
  52. 中西實

    中西政府委員 この有機事業につきましては、適用事業場の数と同様にお考えいただきたいと思います。これを的確につかめばつかむほど、それだけ労働者の数がふえる。それに従つて災害の数もふえるということで、比率にいたしますと、決してふえたということは直接申せないかと思います。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 比率からと言うけれども、われわれの調査によると大体倍くらいになつておる。そこでこの問題については、なおもう少し資料がほしいのでありますが、昭和二十五年一月から十二月までの月別の災害件数、これはあなたの方からもらつておる各業種区分別の表がありますが、これの月別のをひとつ出していただきたい。それから次に問題になりますのは、PDとかLR関係災害状況、これはどういうことになつておりますか。
  54. 中西實

    中西政府委員 PDはそれぞれの産業に入つておりまして、LRの関係は国の直轄になつておりまして、直轄の労務者につきましては、労災、補償保險の適用がないということになつております。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとやはりPDとLR関係災害にも資料があると思いますが、これの各別々のをひとつ出してもらいたいと思います。  それからもう一つお聞きしたいのは、朝鮮動乱後の自由労務者諸君の災害については、どういう方法が講ぜられておるか、それをお聞きしたい。
  56. 木下芳美

    ○木下説明員 朝鮮向けといいますか、朝鮮近海においていろいろ荷役その他に従事する労務者災害補償につきましては、基準法の適用がありますので、これと同額の災害補償をすべて支給しております。そのほかに特殊港湾荷役者等の給與規定を定めまして、基準法に定める額と同額のものを別個に支給しております。従いまして大体基準法にきめられた額の倍になるという状況になつております。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとやはり自由労働者諸君が、朝鮮動乱に動員されておることはあるわけですね。動員されておるとすればどういう手続で動員しておるか、大体どのくらいの人がこういう特殊な戰時労務の形に動員されておるか、これをひとつお聞かせ願いたい
  58. 木下芳美

    ○木下説明員 朝鮮動乱に動員されているとは言えませんが、要するに横浜におきまして、船員その他港湾荷役等の業務に服している者があります。従つてこれらの労務者に対する今のような特別の補償をしておるわけであります。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 今のは横浜港湾荷役だそうでありますが、私の聞いているのは、朝鮮に連れて行かれる人があると聞いているが、どのくらいの人がどんな手続で連れて行かれているかということをお聞きしたい。
  60. 木下芳美

    ○木下説明員 現在朝鮮に行つているかどうかということにつきましては、われわれ十分資料を持つておりません。要するに朝鮮でなくて、横浜その他の港湾におきまして、輸送任務に従事するところの労務者を提供しているわけであります。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると横浜だけであつて政府としては朝鮮まで連れて行くということについては、全然関知しておらないのですか。もし連れて行くものがあるとすれば、日本政府の関知しないことをしていることになるのですか。
  62. 木下芳美

    ○木下説明員 日本政府におきましては、連合軍の権限あるレーバー・レキシシヨンに基きまして、労務を提供しているわけであります。従つてもしお説のような者があるとしても、日本政府としては強制的にそちらの方に向けているという事実は一切ございません。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると行つている者がありとすれば、どういう関係で行くことになるのです。
  64. 木下芳美

    ○木下説明員 日本政府といたしましては、決して強制的に本人にその労務に服させることを命ずるのではないのでありまして、もしかりにそういう事実があるとするならば、本人の自由意思に基いて協力しているものと考えております。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると本人がもし行きたくないと言えば、自由に朝鮮行きを拒否することもできますし、それからそれを断つておりて来ても、別に三百二十五号違反とか何とかいう監督は絶対に受けないわけですか。
  66. 木下芳美

    ○木下説明員 仰せの通りでございます。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、こういうことがあるのです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━いろいろな事実が九州にありますが、これはどういうわけですか。
  68. 木下芳美

    ○木下説明員 そういう事実をわれわれは聞いておりません。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 聞いていない……。(「ちやんとはつきりした例を出せ」と呼び、その他発言する者多し)これはちやんと九州にある。そうすると、朝鮮から遺骨になつてつて来た人があるということを知つておりますか。
  70. 木下芳美

    ○木下説明員 船員は連合軍の命令に基きまして、あらゆるところへ行く任務を持つておりますので、それがその付近において触雷等によつて負傷し、死亡したという事実は聞いております。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 横浜の柳橋の職安ですが、ここには労務者の人で遺骨になつてつて来た人がある。われわれの方で二百何個じやないかと言つたら、職安の所長は、いや、それほどでもない、十二、三個だと言つておりましたが、そういうことは政府は御存じないのですか。
  72. 木下芳美

    ○木下説明員 今のような事実は聞いておりません。十数名というような事実は全然聞いておりません。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 では何名なら聞いている……。
  74. 木下芳美

    ○木下説明員 これにつきましては、はつきり聞いておりません。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 はつきり聞いていないが、うわさなら聞いているのか、どういうことなんです。どの程度なら聞いているのか。これはわれわれは職安で聞いているのです。だからそういう人がどういう補償を受けるかということが大事だと思います。
  76. 木下芳美

    ○木下説明員 子の補償につきましては、先ほど申しました通り、基準法にきめられた同額のものを別個に支給するという方針で、われわれは準備しております。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 具体的に一人どのくらいになるのですか。そういう場合にはどのくらいになるかということと、それが現実に支拂われた例があるかどうか、まだ一度も支拂つてないかどうか、その点お聞きしておきたい。
  78. 木下芳美

    ○木下説明員 港湾荷役に従事する間におきまして、近海におきましてはしけからはしけへ飛び移るときに転落したのであります。これについては災害補償をやつております。その詳細は承知しておりませんが、われわれが定めている特別の給與規定に基いて計算をいたしますと、最低約百万円から約二百万円くらいの程度の間において、遺族補償がされることになります。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると労務者で、かりに朝鮮事変に動員されて、もしそういうように生命を失つた人には、百万円から二百万円の間の補償が給付されるはずだ、また支拂つておるということですね。
  80. 木下芳美

    ○木下説明員 支拂つておるという事実については、まだ聞いておりません。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどは触雷で被害を受けた人があつて、そういう人にはこのくらいを拂うというように聞いたのですが、そうするとまだ、拂うということだけで、触雷にあつた人もない、拂つた例もない、将来もし起きれば百万から二百万は必ず拂うということですか。
  82. 木下芳美

    ○木下説明員 先ほどの触雷にあつたのは船員でありまして、陸上勤務者のいわゆる労災補償というものについては、まだ聞いておりません。船員につきましては、先ほど申しましたように、日本近海において触雷いたしまして、死亡したのがありますので、これについてはすでに支給しております。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一点だけ聞いて、その点を打ち切りたいと思うのですが、そうするともし将来労務者で、そういう被害を瞬けた人に対しては、支拂金はどのくらいになるか。船員なら百万から二言万の問ですが、労務者ならどのくらいになるのですか。
  84. 木下芳美

    ○木下説明員 労務者についても、計算で行きますと、おおむねその程度になります。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 その次にもう少し聞いておきたいのですが、本法案の改正のうちで、保險料率を百分の三十の範囲内で、上げる事業と下げる事業と出て来ると思うのでありますが、このうちの上げる方の業種は大体どんなのか、また下げる方の業種はどんな業種か、お聞きしておきたい。
  86. 中西實

    中西政府委員 上げる業種、下げる業種といいましても、業種ごとに上げるのと下げるのとあるのでございます。ですから業種ごとではございませんで、個々の事業ごとに上げるものと下げるものがあるということでございまして、大体百人以上の事業場が五千三百ぐらいございますが、そのうちの六十パーセントは下げる方、三十数パーセントがよけい納めなければならぬというふうになつております。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 ですからあなたの言うよけいに納ある企業体、どんな業種の中に上げる企業体が多いか、どんな業種の中に下げる企業体が多いかということを聞いているのです。
  88. 中西實

    中西政府委員 概して申しますと、とる方の多くなる産業は、石炭産業が一番多くとるようなことになります。それに金属鉱業とかいうのが、納める方が多い産業でございまして、引下げて安くする事業場の多い産業は、繊維産業とか、その他軽易な労働量の産業に、そういうのが多い傾向でございます。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 私が質問をしているのは、どういう業種に災害が特に多いのかということを明らかにしたいから、聞いているわけなのです。ですからこの次にやはり資料を出していただきたい。
  90. 中西實

    中西政府委員 産業の危險度によつて、料率が違つております。従つて本来なれば、大体拂いもどすといいますか、安くする方とよけいとる方ととんとんになるのが常態でございまして、それだけから見まして、産業災害が多いか少いかということは、その金額から出て来ないわけであります。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 金額を聞くのではなくて、料率を上げる方の企業体がどういう業種にあるか、それから料率を下げる企業体がどういう業種にあるかということを知りたいわけです。だからその判断が間違つておるか合つておるか、あなたから注意を受ける必要はない。判断はこつちがやるのです。資料だけ出してもらえばいい。
  92. 中西實

    中西政府委員 先ほど申しましたように、メリツト制によりまして大体上下の関係がゼロになるように考えてやつておるのでありますが、今のところ検討いたしておりまして、現在の料率で不適正なものが若干あるわけであります。それで不適正だと考えられますのは、金属業とか石炭業といつた部面にございます。いずれこの資料は差上げたいと思います。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。その正確な資料を出していただきたい。やはり時局の産業について相当労働が強化され、災害も起きておるのではないかというふうに、われわれも漠然として推測しておりますから、これもなお正確な資料で判断したいと思いますので、その資料も出してもらいたい。  それからもう一つ、これは自由労組の諸君の方からでありますが、第十二條の休業補償ですが、この平均賃金の百分の六十の計算の仕方です。これは具体的な例もありますが、月に三日に一日ぐらい雇われて行つて、毎日三百円もらつて三箇月働いたのでありますが、そのときの一日平均の計算の仕方が、一日三百円もらつて、その三百円の百分の六十というのが、三箇月九十日で割つてしまつて、一日平均百円にして、百円の百分の六十で、休業補償費の計算がされておるという例がありますが、そういう例があるかどうか、その点についてお聞きしておきたい。これは具体的に、日産化学の王子工場にそういう例があるのであつて、これですと、百分の六十が三分の一になつてしまうことになりますので、それをよくお聞きしたい。
  94. 池邊道隆

    池邊説明員 平均賃金につきましてお答え申し上げます。それは基準法の十二條に明記されておりまして、原則的な出し方といたしましては、災害が起つた前の三箇月間の賃金総額をその期間で割る。もしそれが今申されました設例のような場合につきましては、結局三分の一ということになるわけです。基準法の十二條では、最低基準は、そのときに稼働した日のみによつて計算したものの百分の六十ということになつております。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとやはり稼働日数ですから、三十日働いたなら稼働日数の三十日で割つて、実際一日三百円もらつているなら、三百円の百分の六十と計算するのが正当である。稼働日数三箇月通つたけれども、実際働いたのは三十日だという場合には、三箇月の九十日で割るのではなくして、実際働いた稼働日数三十日で割つて、その百分の六十というわけですか。
  96. 池邊道隆

    池邊説明員 そうです。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。もしそういう計算をしてなければ、これは計算のやり方が間違つているということになるわけですね。
  98. 池邊道隆

    池邊説明員 その通りでございます。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つ最後に、職業安定局長がお見えになつていますのでお聞きしておきたいのですが、これはやはり自由労組の諸君からでありますが、これは直接労災関係はありませんが、非常に今問題になつておりますので、ひとつ最後にお聞きしておきたいのです。最近婦人や少し年とつた人の労務手帳を、労働力が低下しているから、お前たちは労務手帳を渡しておくわけに行かないといつて、取上げておるという例がひんぴんとしてある。澁谷の職安のごときは、婦人と少し年をとつた人は、ほとんど労務手帳を取上げられたということを、熱心に訴えて来ておるのでありますが、大体こういうふうに、年寄りと女の人には労務手帳を取上げよという方針が出ておるわけですか。
  100. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 お答え申し上げます。失業対策事業につきましては、御承知のように労働能力の有無ということが問題でありまして、その点において不適格者でありますならば、さようなことはあろうかと思いますけれども、ただ老人であるがゆえに、婦人であるがゆえにという理由だけでするということは、私はないと考えております。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 どうせ婦人や少し年をとつた人で働きに出るという人は、食えないから出ておるので、労働能力が低下しているのは、実は栄養失調で、食うものも食えべいから労働能力が減つているという、切実な問題もあると思うのです。現に私のところに訴えて来ている例ですと、婦人が失対事業だけでは生活できないために、夜は銀座へ行つてくつみがきしておる、ところがくつみがきをしておると、婦人ですから非常に身体が冷えてしまつて、生理的に非常に無理が出て来る。また次の日は朝早く起きて行かなければならないということで、栄養失調と身体の障害で、生活の苦しさからつい能率が下つて来る。能率が下つて来て、今度は失対の方まで切られたということになると、この人の生活の道が全然立たなくなるのです。そういうことはもう少し考慮する余地はないですか。
  102. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 お答え申し上げます。御承知のように失対事業は、緊急失業対策法に基いておるのでありまして、その法の定むるところによつてども運営いたしておるだけであります。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 それはりくつであつて、家族五人も六人もあるものが、月四、五千円では栄養失調にもなつてしまう。晝飯だつてかたい飯は持つてなけないのですから、少しは顔も青くたるし、足だつてしつかりしないかもしれぬ。そうすると、お前は能率が低いからといつて失対まで切られたのでは、どうして生活して行くか。それはやはりそういう理由を十分検討して、この人はどうしても能率が低いという場合、生活が無理だから能率が低いのだつたら、ますますそういう人は保護してやらなければならないのじやないか。あなたは大分太つて栄養がいいから、そんな苦労はわからないかもしれませんが、もう少し温情のある方針をとれませんか。
  104. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 御承知のように失業対策事業は——これはりくつでも何でもありませんので、労働行政としていたしております。もしそれでどうしても生活ができないということでありますならば、厚生省所管におきまして生活保護法という法律がありますことは御承知の通りでありまして、生活保護と失対事業とは、おのおのその仕事の目的とするところ、ねらいとするところ、おのずから異なるものがあるのはやむを得ないのじやないか、かように存じております。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 生活保護法でとれる余地のある人は、何も失対事業に行かないですよ。いろいろの事情で生活保護がとれなくて、失対へ行つている。失対が唯一の自分の收入だという人が、失対へ行つているわけです。その人に対しては、失対は見るわけに行かないから、生活保護の方へ行けというわけに行かないと思う。しかもあなたの言うように、能率が低い高いを検査することなくして、婦人と年とつた人は一律に手帳を取上げているという事実ですが、もしそれが間違つておるなら、間違つておるということを自由労務者が職安へ行つてつていいですか。
  106. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、労働能力の不適格性の問題でありまして、婦人なるがゆえに、特別に手帳を取上げるというようなことは、私も指令を出したことはございません。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つ重要な点ですが、そうするとあなたの言う能率が高い低いというのは、どういう基準できまつて来るわけですか。
  108. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 御承知のように失業対策事業に従業いたします場合におきましては、いつ何時でも、普通の民間の事業にでも行ける能力ということが中心になつておるのであります。しかしながら、さればといつて、それだけ非常に嚴格にやるというわけにも参りません。そこでおのずからその地方地方において行われる失業対策事業の労働に耐え得る能力を持つておるかどうかということを、現場で判定する、かようになつておる次第であります。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、仕事についてもいろいろヴアライエテイーがあるわけで、たとえば重い鉄材を運ぶ人、道路でシヤベルで運ぶ人、あるいは掃除をやるような人というのがあるわけです。だからあなたの言うように、機械的に能率が低いというようなことはきまつて来ないと思う。だから職業安定所の方で少し親切心があるならば、道路の工事はできなくても掃除の方へまわす、掃除の方へまわせば、道路の方では能率が低い人でも、掃除の方は能率が上るということもあるわけで、そういう基準は、職安の方で十分生活の実情をくみとつて考えて、この人はここで使つてやらなければ気の毒だという人は、もう少し仕事をかえてやるとか、そう力を出さなくてもできるような仕事にまわしてやるというような、親切な指導方針をやれないものですか。
  110. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、失業対策事業の内容は、重労働、軽労働さまざまであります。その仕事にふさわしい人を選んでやる。この点につきましては親切に私どもいたしておる次第でございます。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 大分御親切のようですから、自由労組の諸君も喜ぶでしようが、そうすると、そういう方針なら、齋藤職安局長は国会でこう答弁しておるということを、自由労組の諸君が職安へ行つてつてよいでしようね。それだけ確かめて私の質問を終ります。
  112. 倉石忠雄

    倉石委員長 そういうことを答弁を求めても無理じやないですか。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 だから責任を持つてそう言つたかどうかということを聞いているのです。その答弁を聞いて私は終ります。
  114. 倉石忠雄

    倉石委員長 それで終りですね。次は……。     〔「答弁はどうした」「答弁を聞いているのだ」と呼ぶ者あり〕
  115. 倉石忠雄

    倉石委員長 答弁はありません。     —————————————
  116. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に失業対策労資関係並びに労働基準に関する件を議題として調査を進めます。本件に関する質疑を許します。青野武一君に発言を許します。
  117. 青野武一

    ○青野委員 実は林委員より私の方は一つ先に発言することに大体なつておりましたが、労災法の質問は労働大臣が御出席のときに申し上げたいと思いますので、本日の労働委員会では、労災法の改正法律案についての質問は保留しておきます。少し林委員から触れられた問題でありますが、まず特別調達庁の管財部長にお尋ね申し上げたいと思います。  質問の内容が少し込み入つておりますが、先ほど林委員からも申されました朝鮮動乱に関しての、日本労働者の雇用関係についてお尋ねしたいと思います。私どもが聞いております範囲では、雇用條件としては期間二箇月、二箇月の給料が三万円、そして職安を通じて自由労働者諸君にはつきり、日本の港外には出ない、労働は強制しない、この二つが基本的な條件になつておるにもかかわらず、昨年九月の仁川上陸作戦のときには、延べにして三千九百名程度の諸君が船内作業に従事せられておる。これは事実であるかどうかを、私は特別調達庁の管財部長にお尋ねするのでありますが、これらについて傷害とか疾病の場合の法的な補償は、先ほど労働基準法によつてこれを補償するという御答弁がありましたので、質問はいたしませんが、ただいま私が申し上げましたことは、特別調達庁としての責任者はこれを認められるかどうか、第一にこれをお尋ねしておきたいと思います。
  118. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの青野委員の御質問でありますが、これにつきましては、御承知の通り連合軍からレーバー・レキジシヨンが出まして、それに基きましてわが方としては、指令第二号に根拠を置きました政府が労務提供の責めを持つという点で、実はやつております。従いまして労働條件その他につきましても、軍の指示しております條件に従いまして、われわれやつております。なおこの提供につきましては、もちろん御承知の通り、先ほども係員から御説明いたしましたが、決して本人の意思そのものは無視してはおりません。むしろ本人の意向をよく確かめまして、その上でやるということになつておりますことを御答弁申し上げます。
  119. 青野武一

    ○青野委員 今の御説明では、もとより自由労働者の諸君が納得ずくでそういう船内作業、港湾作業に従事せられたということをおつしやつておりますが、ここにあります資料が事実であるかどうかは、御質問して御答弁を得なければわかりませんが、私どもが最も心配するのは、戰敗国であろうと戰勝国であろうと、普通の大工場に働く労働者であろうと日雇い労働者の諸君であろうと、日本人としてのわれわれが、この自由労働者諸君の基本的な人権は、外国の諸君じやない、われわれの手によつて保護しなければならない。納得をしない者を無理に連れて行くようなことがかりにあつたら、それはわれわれを代表して政府が、特別調達庁の係官が、嚴重に同胞愛の上に立つて、そういう行き方を訂正してもらわなければならぬ、私はそういう見地に立つてもう一つお尋ねしたいと思いますことは、これが事実であるかどうかをお尋ねしているのでありますが、御承知のように陸上輸送でも、昨年末までは四千五百両からの貨車が、日本国民の手に自由にならなかつた。そのために石炭の輸送、枕木の輸送、産業に必要な原材料の動きが、非常な惡影響を受けたことは事実であります。また海上輸送でもその通りであります。それは絶対的な指令あるいは命令等によつて動いているのかもわかりませんが、少くとも何千トンという一つの船で、何百人の日本人の船員が働いている以上は、医者もおらなければならぬし、医僚設備完備せられておらなければならぬ。しかもそういうことがほとんど放任せられているために、直る病気も直らない、不幸な人は船内でなくなつて行く。こういう状態が起つて、いるということをわれわれは承つておりますが、そういうことによつて犠牲になつた諸君は、どの程度数字になつているか。労働基準法に基いてそれらの諸君に対する補償、あるいは遺家族に対する保護あるいは扶助は、どういう形になつているか。しかもそれは日本政府関係の機関のどの官庁が責任を持つているかということを承りたい。
  120. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの御質問でありますが、われわれといたしましても、先ほど申し上げました通り、強制的な労働ということにつきましては、もちろん積極的にできるだけ避けるように努力いたしております。なお軍といたしましても、その点は明確に申し伝えられております。従いまして労働者各位の意向を十分に確かめまして、その上でやるというふうな措置をとつていると伺つております。  次に船舶中の衛生管理その他の問題についての点でありますが、その点につきましては、私どもといたしましても遺憾の点があつたと思います。従いましてこの点の完備につきまして、軍と数度折衝をいたしております。最近におきましても、御承知の船員法その他の措置によりまして、積極的に改善されるような措置が近く実現を見ることと考えております。  次に傷病あるいは死亡その他の御質疑でありますが、私の方で持つております資料によりますと、一月の末日までの状況を見ますれば、業務上で死亡いたしましたのは一名であります。なお目下調査中でありまして、十分にわかりませんけれども、その他に病気を原因といたしまして死亡いたした者が、三名あるようであります。そのほかに作業中のいろいろなことによりましてけがをいたしました者が、約百名ほどあるというふうになつております。  それから遺家族その他の措置につきまして、傷病手当その他の問題につきましては、基準法の線によりまして、大体それの倍額程度の手当が渡るような措置を構じてあります。なお遺族のことにつきましての手当につきましても、同様の大体倍額程度の金額が渡るような措置を講じております。
  121. 青野武一

    ○青野委員 その点は大体明らかになりました。私が使つております祕書の友達が明大の学業でありますが、これもやはり三箇月行つたことは事実だ。私の部屋にもいつも来るのであります。ところがたとえば横浜とか芝浦あたりに、自由労働者の諸君が船内作業のため希望して行きますと、納得づくで行つたかもしれませんけれども、実際にその留守家族は、二箇月も三箇月も一銭の收入もないのです。ここに一つの例をとりますと、神田橋から横浜に行つたある人が、名前は公開の席上でありますから特に省きますが、横浜の船からはがきを出して、父は朝鮮に行く、金のことは友人に——これも名前は祕しますが、よろしく相談してくれということを言つてつた。そこで留守家族は、その人に相談をしてみたが、問題にならない。そこで安定所に泣きついたが、けんもほろろにつつぱなされる。東京都の労働局に行つても、その通りであります。結局神奈川の渉外事務局に行けということで、これも行つたがだめ、そうすると、二箇月というものは無收入だ。五人も六人も家族をかかえ、病人をかかえているような方は、主人はどこに行つたということは手紙でわかつているが、あとの留守家族はどうすることもできない。金を借りに行くこともできない。そうでなくても、一箇月歩のよい人で二十日間働いておりましても、一ぺんの配給物に千円以上も金がいるのに、そういうことになつたらやつて行けなくなることはわかりきつている。こういうことがかりにあつたとすれば、管財部長あたりは、自由労働者が納得して行くにしても、そのあとの問題について、何とか保護のできるように、生活のできるようにする義務があると私は思う。そういう行き方で、昨年の九月に三千九百二十二名もひつぱり出された。これでは本人もそうだが、家族はたまつたものではありません。そういうことが将来繰返されても、日本の官庁は一言半句も言うことができないということは、自由労働者の生命を保障しないという一つの行き方になるのであります。こういう点について、管財部長は責任者として、こういつた船内作業に従事しております自由労働者の諸君の家族に対する生活保障の処置をとられたか、この点を具体的に私はお聞きしておきたいと思います。
  122. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの御質問でありますが、乘船当時は、軍においても、この点は非常に考慮を拂つております。われわれといたしましては、乘船前にたしか千円程度だと思いますが前金で希望者にやつているわけであります。  それから送金を希望します労務者措置でありますが、これにつきましては、県といたしまして、できるだけすみやかに希望するところに送るような措置を講ずるようし、措置をとらせておるはずであります。ただ御承知の通り、非常に唐突の間に乘り込んだりするような結果になりますので、あるいは相当お気の毒な事情にあつた者もあろうかと存じますが、一応県といたしましては、さようにやつております。
  123. 青野武一

    ○青野委員 実際問題として私どもの持つております資料、及び実際そういう作業に従事した本人から聞いておりますので、私どもは、これはうそとは認められない。そういつた問題について、責任官庁である特別調達庁が、全然ほおかむりをして終始傍観したということは、私どもは大いに責めらるべき問題であると思う。将来もこういう問題が起らぬとは、何人も保障はできないのであります。朝鮮動乱の続いている限りは、あるいは第三次世界大戰になるか、あるいは予定通りにこの動乱が終息するかわからぬが、これがぶすぶす生木がくすぶるように続いておる限りは、日本労務者は納得ずくでありましても、大量の人がまたこの港湾作業に従事しないとは、何人といえども予想せられない。そういうときに今のようなやり方をすれば、おそらく日本労働者諸君は、自分の生命をまず第一に考えれば、あるいは納得しない方向に行くのじやないかと思う。生活せんがためには、勢い働くところを見つける。今日の政府の労働政策というものは、それはいろいろ財政面から行きまして、完全雇用ということはむずかしいかもわかりませんけれども、東京都三万五千の自由労働者諸君でも、今までの統計から言つてみても、相当の数は就職ができておつた。一箇月の間にいい者で二十日、惡い人でも十五日ぐらい、それが輪番制になつて非常にあぶれておる。そしで最近では東京都は、東京都の労働局あるいは労働省方針か何か知りませんが、仕事があつても必要以上にあぶれを出しておる、そうして困らしておる。せつぱ詰まれば自由労働者の諸君は、一家心中をするか、惡いこと、たとえばどろぼうでもしなければ生きて行かれない。何とかして働こうという人間的な苦しい弱みから、またまたこういう惡いことが起らぬとも限りません。そんなときにどういう強大な勢力でも、そういう基本的な人権を蹂躙してでも、特殊な任務につかさしめることがあつたら、われわれが協力してそれを反省してもらわなければならぬ義務を持つておる、またわれわれはそうしなければならぬと思う。この点から行きましても、もう少し親切な同胞愛の上に立つた気持で、この留守家族の諸君の保護あるいは救済にあたるべきである、将来もまたそうしなければならぬと思います。この点について特別の一つの外国機関と自由労働者諸君が納得づくで一つの作業についても、その間のあつせんする日本政府機関が、親心を持つてめんどうを見て行かなければならない義務があることは当然であります。こういう点について今までのやつたこともそうでありますが、将来の問題もありまするから、特別調達庁の管財部においては、具体的にどういう考え方方法によつて善処して行かれるか、この点ひとつお聞きしておきたいと思います。
  124. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、われわれといたしましても、もちろんお話のことは十分わかりまするので、かような問題が起つた際におきまして、十分にわれわれの考えを吐露いたしまして、関係方面の了解を求め、善処方を願つたわけであります。従いまして今後御指摘のような事項がありますれば、われわれといたしましては十分な努力をいたしまして、かような遺憾の点がないように盡したい、かように考えております。
  125. 青野武一

    ○青野委員 重ねて御質問いたしまするが、先ほど林委員からも御質問があり、お答えがあつたように思いますけれども、ただいまのお答えでは一名なくなられて、あと別に三名なくなられた。何でも日本の船舶に従事しております人で、そうたくさんの数字ではありませんが、五人や十人じやないはずである。そういう人がやはり魚雷か何かの関係で、船内で死んでおることは私ども聞いておりまするが、こういう点について林委員の質問には、百万円から二百万円程度の弔慰金が来るということでありますが、その法的根拠はどこにあるのですか。たとえば一日の労働賃金の千日分として計算して、百万円から二百万円ということになりますと、どこから法的計算を割出して来るか、根拠がない。ある者は百万円の弔慰金、ある者は百五十万円、ある者は二百万円の弔慰金をもらう。それはどういう死に方によつてもらうのか、聞くところによれば七十五名の諸君がけがをしたとか、あるいは病気をして倒れた、これは労働基準法の四割増しで待遇を受けておるということも聞いておるのでありますが、それも事実であるか事実でないか、お伺いいたしたい。
  126. 中村文彦

    ○中村政府委員 お答え申し上げます。先ほど業務上の死亡が一名、それからほかに調査中でありますが、病気と認定されます者が三名あると申し上げましたのは、港湾荷役の関係であります。ほかに船員の死亡者が多少あります。これは私の方の手元に来ておりますところによりますれば、業務上の死亡が二十二名ということになつております。この方たちの扱い方につきましての御質問でありますが、荷役関係におきましては御承知の通り労働基準法の線で参ります。それから船員の関係につきましては、船員法の適用を受けますので、船員法の定めるところによつて参ります。ただ先ほど申し上げましたと思いますが、二百万円程度までということにつきましては、船員は、御承知の通り給與相当高いので、もし千日分という措置になりますれば、相当の高額になるわけであります。なおそれにつきましては、法律の定めております以外にさらに大体同額の手当がつきますので、先ほど申し上げましたような計算になるのであります。
  127. 青野武一

    ○青野委員 重ねてお尋ねいたしますが、お気の毒な死亡なさつた方に対する弔慰金は、今すでに支給済みになつておるかどうか、支給されるということになれば、特別調達庁はそれに対してどういう役割をするか、たとえば葬式に対して悔みに行く、またあとの遺家族のためにはどういう形で保護をし、救済をして行くか。こういうことは日本の官庁の責任者が当然すべきことであつて、ほかの方はおそらくしてくれないだろうと思います。それをしやくし定規にしてやりつぱなしにすると、死んだ者は死に損ということになる、そうなると東條軍閥がはなやかなりしころと同じように、働く者は結局自分の正しい意見を主張することもできない、食わんがためにはどんなことでもしなければならぬ。私どもが聞いておりますところによれば、東京の自由労働者の諸君の中には、職安に行つてもどうしてもあぶれる、一生懸命働いても足らない、自分の家族を養つて行くためには、あるいは国に置いておるかわいい子供に仕送りをするには、やむを得ず葛飾のある製薬会社に一週間に二回も三回も通つて、二百グラムずつ自分の血を売つておる、そういう悲惨な状態が自由労働者諸君の発行しておりますパンフレットの内容に書いてある。こういう気の毒な立場に立つております自由労働者の諸君は、半面労働力を通じて、あるいは道路の修築であるとか、飛行場の拡張であるとか、大建築の下積みの作業をするとか、日本の重要なる大きな仕事におけるその役割というものは、定職の会社工場に働く普通の労働者よりも非常に大きなものです。そういう人たちの生活の保障も生命の保障もせずに、ある特定の機関の言う通りに、なすがままにするということは、将来日本労働組合の発展の上からも、民主国家の日本の建設の上からも、非常に大きい憂慮すべき問題であると思う。将来もおそらくこういう問題が繰返し起つて来ると思いますが、これは特別調達庁の長官でございません関係上、責任ある御答弁を聞こうとは思いませんが、これらの点については今までのようなことでなしに、もつと親身になつて対策を立てて、自由労働者諸君と特別の機関との中間に立つて、ほんとうに日本人らしい生き方をしてもらいたいと私どもは思いますが、こういう点についてどういうお考えを持つておりますか、もう一つお尋ねいたします。
  128. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの御質問でありますが、先ほど申し上げました通り、私どもといたしましても、遺憾の点がありますれば、政府が提供の義務を負つていることに対する責めを果し得ない懸念もありますので、これらの分につきましては十分な注意を拂いまして、さような特別の方に対する措置については、遺憾のないようにいたしたいというふうに考えております。なお先ほどお話の出ました死亡せられた方、あるいはその遺族の方の取扱いにつきましても、特に十分な措置を考えなければならぬと思いますので、かような情報が入りますれば、ただちに県に指令いたしまして、遺族の慰問その他につきましても遺憾のないように、知事あるいはその係の者をして慰問させております。なお重ねて申し上げますが、さようなわけでありますので、われわれといたしましては今後かりにかようなことがありますれば、さらに遺憾のないように十分注意したいと考える次第であります。
  129. 青野武一

    ○青野委員 大体お答えでよくわかつた点もあるのでありますが、ちようど齋藤職安局長が見えておられますから、質問というよりも希望でありますが、一言申し上げます。やはり職安を通じて仕事のあつせんをしております関係上、東京都の労働局あたりは——先ほども私が冒頭に申し上げましたように、荷役作業、船内作業ということで連れて行く。連れて行かれた人は好奇心も手伝うが、あぶれて苦しいから、多少危險だと思つても行くのだ。そのときに一番先に安心させるのは、日本の港から一歩も出さないのだ、いくらわれわれが━━━といえども、諸君の労働を強制するのではないのだ、こう言つておいて、いきなり連れて行くのです。そして留守家族の者は困つておる。職安に泣きついて行くが、相手にしない。出す金がなければ、たとえば神奈川の渉外事務当局に行けとか、労働省にそういう一つ関係者だけ集まつていただきたい、そうして皆さんの御意向を聞いて、特にそういう方面に向つて話し合つてみたいとか、それくらいの程度のことは、東京都下の各職業安定所の係官はなすべきだ。ここは係が違うからといつてつつぱなされたら、自由労働者の諸君の家族は、主人が二箇月もどこに連れて行かれたかわからないで、食うに困り、路頭に迷う。先ほどのお話では、一番光に前渡金として千円くれるということですが、千円では二箇月も食えません。一ぺんの配給で飛んでしまう。病人をかかえていたり、子供を学校にやつている家族などは、PTAの会費も拂えないありさまです。そういう場合には、職業安定所に出す金がなくても、それは親身になつて世話をしてくれなければ、労働者の行くところがないのです。そういう点についてどうお考えになつておるか。と同時に、特に責任者として、関係方面に向つて文書その他の方法連絡するとか、もう少しあたたかい気持で善処していただきたいと思いますので、お考えを承りたい。
  130. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 お答え申し上げます。ただいまのお尋ねはまことにごもつともな点が多いのでありまして、私ども募集をいたしておる立場の者といたしましても、十分その点は考慮いたしておる次第であります。募集にあたりましても、軍の方面に対しましては、危險区域に行くときは、あくまでも個人的に納得ずくで連れて行つてもらいたいということは、しばしば申し上げておりますし、関係方面の本部におきましても、わざわざ横浜まで出向いて行つて、具体的に本人の意思を確かめてやるということまでいたしておる次第でございます。なお向うに行かれてけがされた方々、あるいは家族送金の問題等についても、募集の立場上どうしてもできるだけすみやかにしてもらわなければならぬということで、調達庁にもやかましくお願いいたしておりますると同時に、関係方面に対しましても、募集の上からいつても、家族送金はどうしてもできるだけすみやかにやつていただきたいとお願いをし、けがをいたしました場合にも、公傷——業務上の負傷という範囲をできるだけ広くいたしまして、それらの家族の方々のめんどうを見てもらうようということを、やかましくお願いをいたしております。しかしながら先ほど来のお尋ねのように、遺憾の点がありますることは、まことに遺憾でありまして、将来とも十分注意いたして参りたいと存じておる次第であります。
  131. 青野武一

    ○青野委員 最後に労働政務次官に申し上げます。それから、これは国際的に非常に微妙な問題でありますが、特別調達庁の長官に御伝達を願つて、この次の労働委員会において、政府を代表して、あるいは特別調達庁としての立場を、答弁を通じて明らかにしていただきたい。  御承知の通り太平洋戰争は、無條件の降伏であります。連合軍の主体勢力はアメリカである。連合軍の総司令部によつて日本は約五箇年半対日占領政策が行われて来た。そのために相当数の軍隊が日本におることは事実であります。飛行場にしても、軍港にしても、対日占領政策に必要なる設備であるとわれわれは考えておつた。ところか朝鮮の動乱と、太平洋戰争無條件降伏による対日占領政策とは、これは明らかに別個なものであるという主張をする者が、われわれ同志の中にもおるのであります。そこで御承知の通り日本の占領政策によつて、連合軍がおほりばたに総司令部を設けて、各所に駐屯されて、適切な作業に従事せられておるが、しかし北鮮軍が三十八度線を南へ越えることによつてつた朝鮮動乱と、太平洋戰争の結果無條件降伏した日本における対日占領政策というものは、これは画然として別個なものであるという判断が、やはり正しいのではないかと私も思う。そこで朝鮮動乱に必要なる近代戰争兵器であるとか、軍隊であるとか、あるいは負傷した兵隊の病院であるとか、そういうものが日本に置かれており、日本が利用せられておるということになりますと、国際的條約とか、あるいは連合軍と日本とがどういう協定をしており、どういう法文によつてそれが認められておるか、これはおそらく国民全体が聞きたいところであろうと思う。私は北九州め出身でありますが、三つの飛行場に囲まれて、八幡の製鉄所を足元に持ち、不幸にして九州に爆彈の雨が降らされるということになりますと、日本の石炭産業、日本の鉄鋼産業は壊滅いたします。いくら日本労働者三千万が馬力をかけて祖国の再建をやつても、銑鋼一貫作業東洋一の八幡の製鉄所と筑豊炭田が、爆彈の雨の洗礼によつて壊滅させられるたらば、おそらく何十年先まで何ともすることができない状態になる。こういう危險な状態に九州——特に北九州はさらされておるのであります。このときにあたつて政務次官なり、特別調達庁の管財部長が、その責任において御答弁されないならば、来週になつて開かれるこの次の労働委員会においてはつきりした御答弁を承りたいが、それは、こういう行き方について大体どういう協定があるか、どういう條約があるか、何によつてそういうことが許されているかということを承りたいと思う。  それから、これは私はきよう労働次官お尋ねしたいと思つたのですが、委員長の御発言の中に、きようの労働委員会は大体四時までにしようじやないかというお話がありまして、各派の意見も大体それにまとまつておりまするので、私は林委員と話し合つて、時間を分担したのであります。それでこの次の労働委員会に、労働大臣並びに労働省関係局長が出ておいでになるときに評しく申し上げますが、今東京都内における自由労働者諸君三万五千が、第十国会の衆参両院議長あてに請願書を出しております。その内容の一部分でありますが、あぶれをなくして、完全に就労の対策を立ててもらいたい。政治的含みを持つ失業登録の取消しや取上げ絶対反対、生活苦に悩む失業者に対して地方税を全免しろ、年末年始の三十日、三十一日、元日、二日、三日の五日間は有給休暇にせよ、簡易託兒所を早急に設置してもらいたい、婦人の生理休暇を自由労働者であつても当然認めてもらいたい。加配米は——今半月分は粉のように聞いておりますが、屋外における過激な労働である関係上、全部米を支給してもらいたい。これは九州地方の筑豊炭田の労働者も、外米のぼろぼろしたものでは仕事にならない、全部米で支給してくれろということを物価庁にお願いして、私もお供をしたのでありますが、自由労働者の諸君も、全部米で配給してもらいたいと言つている。それから日雇い労務者なるがゆえに、何らの保障も受けないということは不当であるというところから、健康保險の法制化を要求しております。また失業者に対しては、電気であるとか、ガスであるとか、水道であるとか、そういう料金を無料、またはある程度減免をする方法を立ててもらいたい。特需作業の行先きと責任の所在をはつきりしてもらいたい。これは先ほどからいろいろ質問をし、御答弁をいただいている内容でありまするが、こういうことを言つているのであります。団体の役員の作業場の就労時間の制限をやめること、失業者に対する不当彈圧を即時廃止すること、一日に三鷹あたりで五百人も六百人もあぶれる。あぶれれば食えない。そのために、何とかして仕事をくれと言つて、少し大きな声を出せば、ピストルを持つた警官が二百人も五百人も来るということは、確かにその職安の行き過ぎであります。もつと親切な気持を持つて、納得ずくで話をすればできることを、すぐに武裝警官隊を招集する、そういつた形の出て来ることを希望するといつたような行き方は、日本人同士のやるべきことではありません。こういう点について、ひとつ失業者に対する不当弾圧を即時やめるように、労働省は各都下の職安に対して指令を出してもらいたい。失業対策事業関係するところの自由労働者は、平均にして賃金を三百五十円に上げてもらいたい、朝鮮動乱によつてこれだけ物価は騰貴しているが、賃金はくぎつけにしている。そんな点では労働省はある程度理解を持つていただきたい。山口県の下関は、二百二十二円の自由労働者の賃金である。北九州の五市は、それよりはもつと物価は高いにもかかわらず、最近までは百七十六円であつたが、今度四十八円上げて、山口県の下関並にした。北九州の飛行場所在地がそうであれば、東京都においても今の二百四十二円は、最近の物価の上昇率から言つて、当然三百五十円にすべきである。そういつた物価の指数の上から、また朝鮮動乱による物価の上昇率から言つて、三百五十円を今要求しているのである。その他失業対策予算の増額、失業者に対して就職のあつせんをする、こういう十五項目が請願書の形になつて今度の国会に提出せられておりますので、これらを中心にして、この次の委員会に保利労働大臣の御出席をぜひお願いいたしまして、この点についての質問をし、お答えをいただきたいと考えます。私の質問はこれで終ります。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの船員の問題ですが、これは非常に重要な問題です。船員で朝鮮の荷役に従事し、二十何人死亡している。これに対して弔慰金が拂われたか、拂われないのか、拂われたとすれば、それは一体どこの金で拂つたか、それをまずお聞きしておきたい。これは非常に重要な問題で、一体終戰処理費で拂うべきか、あるいは向うの軍事費で拂うべきかという問題もありまして、予算にも関係しているので、少しその点をお聞きしておきたいと思います。
  133. 中村文彦

    ○中村政府委員 お答えいたします。ただいまの船員の死亡者につきましての慰藉金、その他につきましては、私の方の調べによればすでに支拂つているはずであります。  なおお尋ねのどこからということにつきましては、これは終戰処理費から出ていることと私は考えております。なおこの点につきましては、われわれとしても目下折衝をいたしている次第であります。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 それも資料を出していただきたい。幾ら船員がなくなつて、幾ら拂つたか。あなたは先ほど問題があると言いましたが、実は私たちも問題があると思います。御存じの通り終戰処理費というのは、日本の国の戰争の跡始末をするための費用であつて日本の戰争の跡始末と関係のない朝鮮の事変に対して、終戰処理費が支拂われる性格のものでないのであつて、この点はむしろ向うの軍事費で支拂うべきものだと思うのであります。実は西ドイツでも終戰処理費の使い道については、経験処理費の調査委員会政府が設けまして、十分調査したところが、終戰処理費の使途が、本来の使途と離れた使途であつたということで、弁務官に上申し、弁務官の認めるところとなつて、処理費が五割ほど削減されたという例もあるのであります。ただいま私のお聞きしました朝鮮事変の荷役に従事している船員に対して、日本の占領目的終了のための終戰処理費が支拂われたことは、終戰処理費の本来の目的を越えた使途に使われていると思いますが、特別調達庁の方はどう考えているか。終戰処理費の本来の目的、それから支拂うべき限界、こういうものについてわれわれは主張すべき点は、毅然として主張すべきだと思いますから、今日はとりあえず部長からお聞きしておいて、次会には長官も出て来ていただいて、はつきりさせたいと思います。
  135. 中村文彦

    ○中村政府委員 ただいまの御質疑の終戰処理費から出すか、どこから出すかという点につきましては、とりあえず終戰処理費から出ておりますが、これにつきましては御指摘のような考えはわれわれも同様持つておりますので、近く明確な線を出したいというふうに考えている次第であります。
  136. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時七分散会