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1951-02-21 第10回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十一日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席分科員    主査 上林山榮吉君       甲木  保君    北澤 直吉君       玉置  實君    苫米地英俊君       中村  清君    中曽根康弘君       戸叶 里子君    江崎 一治君    兼務 平川 篤雄君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         厚生政務次官  平澤 長吉君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     太宰 博邦君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園都長)   森本  潔君         厚生事務官         (薬務局長)  慶松 一郎君         厚生事務官         (社会局長)  木村忠二郎君         厚生事務官         (兒童局長)  高田 正己君         厚生事務官         (保險局長)  安田  巖君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局長)    田邊 繁雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (医務局長)  東 龍太郎君         労働政務次官  山村新治郎君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     亀井  光君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      中西  實君  分科員外出席者         労働事務官         (職業安定局失         業保險課長)  百田 正弘君         專  門  員 小林幾次郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算中外務省、文部省、  厚生省及び労働省所管  昭和二十六年度特別会計予算厚生省及び労働  省所管     —————————————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山主査 これより第二分科会を開会いたします。  昨日に引続き質疑を続行いたします。平川委員
  3. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣一つの問題だけお尋ねをいたしたいわけであります。それは今度の講和論議に際しまして、上きりに総理施政方針演説を初めとし、各党の質問の中にも、愛国心涵養ということが問題になつておるのであります。この愛国心涵養ということにつきまして、わが党の川崎委員予算委員会の席で質問いたしましたところが、総理はいつものごとく、国民の中から沸き上つて来るものを待つというような態度なんであります。それはそういうようなものであるかどうかということについて、私どもは多大の疑問を持つております。第一これに関連いたしまして、まず最初に私の一番危惧いたしておりますことは、愛国心涵養と申しますか、発露を待つと申しますか、そういうことがただいま問題になつておりますのは講和も近づいて来、かつ自衛態勢というものがなかなか整わない。そういうものに対する一つ準備的な心構えとしての要求ではないかと思う。そういたしますと、自然講和の時期と国民の中から沸き起つて来る愛国心の発現の時期、こういうものがいかにマツチするか、どちらが遅れるかということが問題になつて来る。そうなると、総理の言つておられるように、だんだん盛り上つて来るということも考えられないではないのでありますが、しかし手を打たずにおつていいものかどうかということは非常な疑問なんであります。総理は、何かそのときに、文部省においてはという言葉が出まして、もつぱら学校教育によつてやるかのようなお話であつたのでありますが、さすがに話しておるうちに、そうでないというふうに考えられたのか、語尾をごまかされまして、ただ文部省だけに関係のあることではないかというふうなことも言われたのであります。けれども考えますのに、ただいまみずからそうした国民思想の先達として働いて行かなければならぬものは教育者である。少くとも教育者が大きな部分をになつておるということについては、教育者自身自覚を持つておると思う。また文部省自体も当然これは大きな責任を持つておられると思うのでありますが、一体さような講和の問題なんかに関連をいたしまして、愛国心を振作するというようなことは、文部大臣としていわゆる教育学問政治的中立という線に矛盾するものであると考えておられるかどうかということについて、これをひとつお聞きいたしたいのであります。
  4. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまの政治的中立と矛盾するかという意味を、もう一度承つてから答弁さしていただきます。
  5. 平川篤雄

    平川委員 講和というような問題に客観的な事情として密接に結びついておりますから、自然そういう純粋な観念論としての愛国心というものでなしに、非常に歴史的な現実というものに即したと申しますか、非常にニユアンスの強い愛国心になつて来ざるを得ないだろうと思う。そういうところに気迷いがしよつちゆう教育者自体の中にもある。政治的中立ということがよく言われておりますので、そういうような際における文教の府の責任者として、今後愛国心発露というものに乘り出されるといたしますならば、お考えになつていらつしやる政治的中立というものと矛盾するかどうか、こういう意味であります。
  6. 天野貞祐

    天野国務大臣 愛国心をどうして涵養するかということが今問題なんですが、愛というようなものはしいることかできないということをトルストイが言つたことは有名でございます。ほかのことは何でもしいることができるけれども、愛ということだけは人にしいることができない、こういうトルストイ言葉は非常に意味の深い言葉だと思います。だから愛国ということを政府が何か国民にしいるような形でやると、かえつて反動的になつて来ていけない。そういう点が総理が自発的に待とうということを言われたわけだろうと思うのですが、しかしそれならば、ただそのままにしておいていいかというと、私は愛国心涵養というようなことは、道徳教育の最も大きい部門だと思つております。一体愛国ということについて、私の考えでは、二つの大きい間違いが世間にありはしないか。一つ愛国というと、何かいわゆる感情の激した、はげしい戰争行つて戰死をするとか、あるいはそのほか楠正成のこととか、何としてもすべて愛国ということの表現として見られることは、みんなそういう種類のことだけを愛国というふうに考えることは、私は非常に間違つているのではないか。それも確かに愛国表現ですけれども、しかし国民が日々自分職務に励む。そうして職務に励むことがすなわち国のためなんだ、自分たちはそれぞれの職場を通じて国家に奉公をするのだということをはつきり自覚させることが、一方において必要なのではないか。他方においては、戰前あるいは戰時中はそういう意味愛国心だけが力を持つていたのですが、戰後になつて来ると、今度は国家とか公共とかいうことは非常に忘れられてしまつて、たまたま愛国ということを言う人があれば、それは自分たち国家から利益をこうむつている、だからその利益をこうむりているから、それに対して自分たちが報いようと思うんだ、あるいは利益をこうむつているから、その利益を與える団体を自分たちが擁護しようと思うんだ、そういう考え方が非常に強く出て来ているように私には思えるのですが、しかし国家を愛するというふうなことは、自分たち利益を受けるという観点からばかり私は言えないと思う。もちろん国家国民の幸福ということをどこまでも考えて行かなければならない。戰時中のように、国民というものはただ国家方便であつて国民の幸福などはどうでもいいんだ、国民人的資源なんだという考えでは、とうてい国家の興隆ということは考えられないけれども、しかし国民の側からいえば、利益を受けるからというのではくなしてほんとうにこの国が自分たちの国なをだ、この国を離れて自分たちの国というものはある意味においてないんだ、自分たちの血液の中には祖先の血が流れているんだ、この国土に自分たち祖先が生れ、ここに育ち、ここに死んだ、これが自分なんだという、そういう一つ自覚を促して来るということが、非常に重要なことではないか。教育の面においては、そういうような間違つたいわゆる愛国心というような考えでなしに、ほんとう意味愛国心というものを知的に開発するということも必要なのではないか。学校教育においては、そういう意味愛国心涵養するように、生徒を全体として指導して行こう、そのためには、子供には国旗を見せるとか、国掌を歌わせるということも一つ方法である。また高等学校とかいうことになつて来れば、今私の申したようなことをもつと理論的に教える、国家個人という関係をもつと理解させるとか、そういうような仕方でもつて一方には愛国心を養つて行く。けれども愛国心というものを露骨に、いわめる愛をしいるようにやるということは、かえつて青年愛国心に対して反発させるというおそれもあるから、そこに非常なむずかしいものがあると思つております。学校教育においてそういう意味一般道徳教育を盛んにすることが、結局愛国心を養つて行くということになる。また他方社会的にいいますと、社会において、何かの意味学校に行かない青年とか、そういう人たちをもつと指導したいと思つておるのですが、これも上手にやりますと、戰時中あるいは戰前等の翼壯的なものになるおそれがある。一体どういう方法がこれを指導したらよいかということを今考えておりますが、できるならば十人ぐらいのすぐれた人たち地方行つて講演をしてもらうとか、あるいは指導してもらうとかいうような方法もしたいと思つておりますが、これを文部省からやりますと、かえつて反感を起して、また世間には何でも文部省のやることに反対をすることが、自分たちの人気をとるめゆんだという考えの人もおりますから、非常にそこがむずかしい。しかし要するに学校教育を通じ、また社会教育を通じて、ほんとう意味においての愛国的な情操を養うということに努めたいに今は考えております。
  7. 平川篤雄

    平川委員 議論をするわけではないのでありますが、ただいま大臣のおつしやつたことについては、私も全幅的に賛成であつて知的な判断が加わつたものでなくてはならないことは明らかなのであります。ところがその知的な判断をすべき素材が與えられていないように思う。文部省はもつぱら個人の完成という方面に力を入れておいでになるのであるが、そこには人間が構造的に社会と結びついており、国家と結びついておるという点の考え方というものを忘れておるのではないかと思います。現在いろいろアナレゲールなどといつて惡くいうのでありますが、かつて国家とか、社会とか、家庭とかいうようなものを中心にいたしまして、どちらかといえば、年長者と年のの弱い者、あるいは権力者と非権力者というような関係に立つて倫理が組み立てられておりましたものが、この敗戰によつて神話が否定せられ、国民道徳というものが一応否定せられまして、あらゆるものが私とA、私とBというようなものの関係だけになつて来ておるような気がいたします。それを統一する場合におきましては結局感情的なもの、あるいは利害関係というものが、どちらが先であるかあとであるかということを決定する要素になつておるのではないか、要するに上から下へずらつと系列がとれておりましたものが、一旦ばらばらに切りほぐされてそれがほぐされたままになつておるという問題ではないかと思います。そこでさような個人間の関係というようなものを、どういうものによつて結びつけるか、一つの統一された道徳体系と申しますか、そういうふうなものを組み立てるということが、現在の一番大きなわれわれのねらいどころとしなければならぬのじやないか。青年たち共産主義などに走つて行きますのも、一つにはさような強力な統一する概念というものがあるからじやないか。われわれの日本は、ただいまの文部省指導しておられるものの中からは、さようなものが強力にくみとれない、一体どこに最後の解決の統一点を見出そうかということが、大きな迷いの根本になつているのではないかと思います。この立脚点というものを一つにしなければ、いつまでたつて愛国心というものの論理が起つて来ない。たとえて申しますと、ただいま青年、児童の指導に当つております教育者の諸君にいたしましても、さような問題についての論拠というものは、これはむしろ政党が指導しておるのではないかと思う。一例を言えば、社会党などのように守るに足るべき国、守るに値するというものをまず建設することが大事な問衛である、しかる後に愛国心だとか自衛だとかいう問題起つて来るのだというような考え方が、非常に教育者間に支配的になつておるのではないかと思うのであります。そういうことがおいおいと教育全体に及んで来るわけであります。私はそのこと自体間違いないと思うけれどもただこれが戰争をがむしやらにいやがるという感情だけから出発しておりましたり、あるいは無批判にさようなスローガンによつて走りまわるといつておるということであつては、一つの統一ある基盤に立つて論議は起らないと思う。こういう点について文部当局指導を加えられるということは、これはそのまま政治に介入することになる。もしそれがないとすれば、文部大臣として強力に出ていただきたいといううふうに考えるのでありますが、御所見を伺いたいと思います。
  8. 天野貞祐

    天野国務大臣 私も今平川さんの言われたことに同感なのです。現在は極端な個人主義と申しましようか、そういうものになつた、これは戰争中あるいは戰前の非常に間違つた全体主義反動としてそれがここに起つて来ておる。先ほども申しましたように、国家というもののためには、個人というものはただ人的資源だというように考えて、人格とか個人とかいうものを全然認めなかつたことの反動として、日個人ばかりが一つの実在であつて、他のものはただ方便だという考えが強くなつて来ておる。だから自分利益を與えない国家ならば、そんな国家はあつてもしかたがない。そうではなくて、国家というものは自分自身と同じで、自分がいくら惡い自分でも、自分というものを捨ててしまうということはないので、たとえば親が子供を愛するのに、子供ができるから愛するというのではなくて、どういう子供でも、できない子供こそ愛することさえあるのであります。そういう意味感情を抜きにして、ただ功利的に、国家自分利益を與える、そういう国でなければ守るに値打せぬというようなことは、私は愛国心というものではないと思つておるのです。しかし先ほども申したように、国家としてはどこまでも国民の幸福というものを考えて行かなければならない。ところで、そういう全体といいましようか、国家社会というものに対する関心が現在非常になくなつてしまつてただ個人の幸福といえばまだけつこうですが、個人の安逸ということだけが指導原理になるという傾きを非常に持つてつて国家個人の安逸ということに対して何かおもねるような言論さえも社会にあると思うのです。だからそういう風潮を、一体どうしたら健全なものにすることができるかということが問題だと思います。ところで文部省が先に立つて、いわば戰時中に行われたような指導を積極的にするということになると、私はかえつて反感を起させたりいろいろして、非常にむずかしい。だから自分たち教育の面において、国家個人関係国家国民関係、また日本という国がどういう国であるか、新日本はいかなるあり方をすべきものであるか、それは現に明らかにされておることでも、たとえば天皇の象徴性というふうなことでも、一体象徴とはどういうことなのだということさえはつきりしないものがあると思うのです。そういう象徴性というふうなものでもはつきりさせる、あるいは基本的人権の尊重ということであつても、人民の主権ということであつても、それがどういうことであるかという意見さえも私はまだ徹底していないと思う。そういうものを徹底させて日本国というものは独自な一つの国なのであつて、そこに、どこまでも国を守つて行くということが意義があるのだということを、よく国民に知らせる、もちろん学校においても知らせる、そういうことを文部省として努めるということがさしあたつてのやるべきごとだというふうに考えておつて社会運動というふうなことは、私はある程度まで考えておりますけれども、よほどその点は注意深くやらなければならないというぐあいに大体考ております。
  9. 平川篤雄

    平川委員 それでは時間もないようでありますのでこれ以上申し上げませんが、ただいま文部大臣の言われるように、これは文部省として非常に立場のむずかしいところがあると思いますけれども、現在何とかして国民の意識というものを、早く一つにしなければならぬということにつきましては、お認めになつておると思うのであります。総理大臣の言われるように、漫然とやつておられるというようなことでは、やはりこれは困るのです。各省がひとつ力を合せて、あらゆる面でさような精神的な、あるいはそれを大きな意味政治と申していいと思うのでありますが、考慮を拡うように、文部大臣の閣内における地位として、御努力を願いたいと思うのであります。ことに個人的な、いわゆる社交的なエチケツトなんというものは、割合に食いつきやすい。学校なんかでも相当やつておると思うのでありますが、いわゆるしつけがその程度を出てはいけないと思います。また先ほどのお言葉の中にありました社会運動というものが、いわゆる講演会程度のものになつてもいけないと思うのであります。早い話が一つの例といたしまして、ただいま私ども郷里からの往復の途次に、例の車中なんかでいわゆる白衣を着た傷痍者が、こじき同然のことをやつておるのであります。これにはいかがわしいものがあるということでありますが、かようなものを目前に置きましたり、あるいはいわゆる戰争未亡人と申しますか、さような人たちただ厚生省的な管轄の範囲で扱つておるという段階ではないのではないか、これは段階と言つたら妙でありますが、敗戰のその目におきましても、かような国家に対する犠牲者というものに対して、国民がやはり責任として、これを守らなければならぬということは当然のことであろうと思うのであります。かような点に、一向教育界文部省も力を入れていないということは残念なことだと思うのであります。こうした犠牲者というものを取上げられますと、とかく何か軍国主義的なものの復活のように言われることを恐れるのでありますけれども文部大臣として、かようなものを学校一つの重大な徳目として取上げる御意思があうふどうか。これは一つの例でございますが、さような、かつて戰争関係したものですらも、国民道義心に訴えて、当然教育的に取上げなければならないものは取上げて行く御意思があるかどうか、最後一つお伺いをして、私の質問を終りたいと思います。
  10. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやいましたことは、私もまことにごもつともなことだと思います。そういう点にも、自分にできるだけのことをいたしたいと思います。
  11. 上林山榮吉

    ○上林山主査 この際私から便宜文部大臣に一言だけお尋ねいたしておきたいと思います。というのは、教育事業重大性にかんがみまして、あるいはまた過去の行き過ぎを是正するという意味において、かつまた選挙の公正を期するという意味において、地方公務員法が改正せられたことは御承知の通りでありまするが、近く地方選挙が行われるにあたりまして、これらの行き過ぎのないように、文部省としてはいかなる指導、助言をせられる御方針であるか、この点はすでに地方選挙をめぐつて微妙な行き過ぎも見られつつありますので、この際はつきりとお伺いいたしておきたいと思います。
  12. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういう点について従来行き過ぎがあつたというように聞いておりますし、また事実あつたところもあるのではないかと自分考えております。一体教育者がこういう点においていろいろ非難を受けるというようなことは、実に残念千万な話であつて、その点ほんとう考えなければならない。けれども、それがまた非常にむずかしいということは、委員長におかれてもおわかりになることだと思うのでありますが、私は教育委員会などと連絡いたしまして、そういうことに不公正のないように、できるだけ努めたい考えでございます。     —————————————
  13. 上林山榮吉

    ○上林山主査 引続いて厚生省所管を議題として質疑を行いたいと思います。苫米地委員
  14. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 時間がありませんので、一々具体的の問題を取上げてお尋ねすることは差控えたいと思いますが、予算を通してみますと、非常に事務費が多くて、実際の保護であるとか、もしは療養とかいうような金が予算の何分の一にも当つておらない。もちろんある対策を講ずるのには、その根本的な研究が必要であるということは私も十分に認めておる次第であります。またそれに対する会議講演というような価値を決して無視するものではありませんけれども、いたずらに委員会というようなものばかりが多くて、そうして実際に何をしておるのだか、われわれにはその効果はつきりしない、こういうものが相当あるのであります。その一例をあげて申しますならば、性病に対する対策であります。本年は幾らかその施設等予算は減つておりますけれども、その対策効果たるやまことに貧弱である。これは町を歩いてごらんになりましても、興行その他を見てもはつきりしておるのであります。そこでまず第一にこの問題についてお伺いたいのは、いかなる有効なる対策をお立てになつたかということであります。
  15. 山口正義

    山口(正)政府委員 お答えいたします。性病予防につきましては、予算といたしましては健康診断に要する費用、あるいは性病患者治療に要する費用、あるいは患者の届出、あるいは健康診断の結果、感染源を追究いたしまして、その感染源を見つけ出しまして、それに対して治療あるいは入院の措置を講ずるというようなことを考えておるのであります。御承知のようにこれらの措置は、性病予防法に基いてやつておるのであります。今までは主として強制的な健康診断ということに重点を置いてやつてつたのでございますが、強制的な健康診断だけでは十分な効果を発揮することができませんので、主として感染源の追究ということをいたしまして、その蔓延の元を調べて、それに対して適当の処置を講じて行くということをやつているのでございます。これは單に性病だけではございませんが、あらゆる疾病につきまして、国民一般疾病予防ということに深い自覚を持つてただかなければ、いろいろな施策をいたしても、なかなかその効果を現わすことが困難であるという状態でございますので、私どもといたしましては、国民衛生教育につきまして力を注いで、一般人たち性病というものを十分に理解していただいて、それにかからないようにするのにはどういうふうにすればいいのかということをよく自覚していただき、その徹底を期するように、衛生教育あいるは広報活動によつてその効果を上げたいと考えております。
  16. 上林山榮吉

    ○上林山主査 政府側に御注意申し上げますが、苫米地委員質問の中に、人件費が多過ぎて事業費が少いじやないかということを言われたのでありますが、どなたからでもいいですから、これについて御答弁願いたいと思います。
  17. 太宰博邦

    太宰政府委員 厚生省予算につきまして、人件費の占める比率が多過ぎるじやないかというような御質問のよりでございますが、実は率直に申しますと、私どもはそういう御質問を受けるとは思つていなかつたのでございまして、行政上の事柄につきましては、やはり委員会というようなところで審議し、方針を立てて地方に流すということが割合に比重の重い場合もありますし、それから行政のあるもの、たとえば生活保護法のようなものにつきましては、むしろそれよりも保護費として困つた方々に出すことに重点を置く性質のものもございますので、一概にどうこうということは申し上げかねると思います。大体今までのところは、特に行政費が多過ぎるという話を受けたことはございません。もし具体的にどの項目について多いじやないかというお示しをいただきますれば、御答弁いたしたいと思います。
  18. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 たとえてみれば、今の性病の問題につきましても会議とか委員会とか、それもきわめて必要でありましようが、今御答弁になつたくらいのものなら、常識でもできることなんです。それに專門委員会を置いたり、委員会を開いたり、講演会をやつたり、そのくらいのことならば、あれだけの経費は必要ないと思います。また児童保護の問題につきましても、同じようなことが見られるのであります。そこでこの性病の問題は、青年もしくは現在では少年の間にも虫ばんで来ております。性病が蔓延するということは、これは歴史の示す通り亡国の兆であります。そういう重大なることに対して、あれだけの金をとつて対策のために委員を置き、そうして委員会を開き、議演会をいろいろやるという。もつと的確な対策が樹立されるならともかく、そういう的確な対策を立てないで、今御説明のような常識で考えられるようなことを、こんなに多額の費用をかけておやりになる必要はない、こういうふうに私は思うのでありますが、いかがでございますか。
  19. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘のございました点ですが、私どもの方といたしましては、性病予防につきましては、本省費として四十八万円計上いたしておりまして、昨年度に比べまして二十万円ほど減少いたしておりますが、これは主として旅費の減少でございます。人件費のほかといたしましては、講習会費六万三千九百円、それから協議会費三万六千百三十円を計上いたしておるわけでございまして、特別に厖大な費用をお願いしておるわけではないと思うのであります。それから補助費の方は総額一億四千七百万円余でございますが、これはただいま申し上げましたように、強制診断に要する費用、それから性病診療所の運営に要する費用、それから患者を委託して入院させて治療させる費用を計上しておるわけでございます。
  20. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 児童保護の方にも本省費として百六十五万円、福祉事業の方が百六十六万円、これは不良見、孤児の保護の方ですが、同じくその中に事務費が非常に多い。全般的に検討してみると、委員会とか、研究とか、予算の説明にはそういうものが非常に多く出ておるのですが、これらはもう少し節約の余地があると私は考えておるのであります。またこれは厚生省所管じやないと言われるでしようけれども、もう少し風紀を改めるようにするとか、取締りをするとか、そのほかにいろいろの措置があると思うのでありますが、今伺つたところでは、この重要なものを相当軽く見ておるように思われるのであります。しかしこの問題はこれだけにしておきます。  次に、この前の国会で大臣にお伺いしたのでありますが、公立病院と私立病院の待遇が非常に違つておる。一方は免税されており、施設は国家もしくは公共団体がやつておる。それにもかかわらず、私立病院の方においては、税金はとられる、その施設は自分でやらなければならない。その施設も強制的に、これだけの施設をしなければ病院として認めない。そこでやむを得ず私立病院においては借金をしてその施設をやる。するとまたそれだけの余裕があつたと見て、その施設に固定資産税がかかつて来るというような非常な矛盾がある。のみならず健康保險の支拂いが非常に惡くて、そのために薬餌その他一切のものを立てかえて行かなければならないという非常な窮境にあるので、これをどうなさるつもりか大臣に伺つたところが、そういうことのないように十分考慮する、また税についても将来考慮すると答えられたのでありますが、今もつてその支拂いが滯つて同じように困つておるのであります。そこできようは大臣が出ておらないので、政務次官から、これがどういうふうになつているか、お答えを願いたいと思います。
  21. 平澤長吉

    ○平澤政府委員 ただいまお尋ねがありました公立病院並びに私立病院、それから国立病院のことはただいまお話がございませんでしたが、健康保險の問題につきましては、先般の国会におきまして料率と申しますか、費用の点も、経理が滯りなく参りますように、すなわち支拂いが順調に参りますためには経済基盤を固めなければならないというわけで、漸次その面を進めて行つておるのであります。さらにまた国民健康保險等の問題につきましても、社会保障制度審議会の答申等をも十分尊重いたしまして、地方税法を改正いたしまして、健康保險の費用を税として徴收しよう、その面によつて各單位組合において財源を十分持つて行こうということで解決して参りたいという考えでおるのであります。日本の医療におきましては、公立といわず、私立といわず、あらゆる医療機関を全部総動員いたしまして、医療の万全を期さなければならないのでございますから、今度の税制改正等につきましても、大臣がさきにお答えいたしておると思いますが、その筋と打衝いたしまして、これらのことの均衡がとれますように、医療の全体的見地から是正して参りたい、かように存じておる次第でございます。
  22. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 この問題にからみまして医療法の実施期間というものは、もし予定通りに行きますと、現在施設その他の問題で非常に悩んでおるので、困る向きも非常に多いのであります。これはいずれ延期されるだろうと思いますが、実施をいつごろまで延期をされますか。もう一つ医薬分業もこの秋まで延期になつておるらしいのですが、これにもまだ未解決の問題が相当あるように思われますので、これもどのくらいまで延期して行かれるお考えであるか、ついでにお伺いしたいと思います。
  23. 東龍太郎

    ○東政府委員 ただいまの御質問の第一は、医療法の病院、診療所等の施設に関する條項を延期するかどうかという点でありますが、ただいまのところあの医療法の実施を全面的に延期するというふうには考えておりません。しかしながらまたこれを全国的に、そしてあまりに画一的に実施いたしました場合に、医療機関の不足を来し、国民の医療に支障を来すおそれのあることも事実でございます。そこで私の方では、全国の病院の配置と人口等との関係、あるいはその付近にあるいろいろな医療機関の状況等をでき得るだけ実際に即して調査しておりますが、ほぼ全国的な状況が把握できる段階になつておりますので、それをつぶさに検討いたしまして、今ただちに本年の十月をもつて一応施行されるのが第一期の分でありますが、なお必要な場合にはあと二年間の延期ができることになつております。従つて具体的に申しますと、法律がしかれましてから三年間の延期の地域と五年間の延期の地域とをどうするかということになるのでありまして、この実地の調査に基きまして、でき得る限り医療機関に不足を来さぬように、言葉をかえますれば、三年をもつて実施を強行するという部分をでき得る限り少くいたしまして、なお二年の猶予の間に許されるだけの整備をしていただくという方針で参つております。なお具体的に申し上げますと、そうすると全国で一体何パーセントくらいの医療機関がなおあと二年の延期を許されるような地区に含まれるだろうかというのでありますが、この割合は実は季だよくわかつておりません。しかし私が全体を見ました勘で申しますと、本年の十月をもつてこの医療法のいわゆる四十八時間制を実施いたしますような部分は、大体二、三割の程度ではなかろうかという考えでございます。もつともこれにつきましては、先ほど予算の点で会議が多過ぎるというおしかりもあつたようでございますが、まことに重大な問題でもありますので、私の方にあります医療審議会において、各方面の権威の方々等の御意見をも十分参酌いたしまして、実際の不便の起りませんように、でき得る限り配慮いたすつもりでおります。  第二の医薬分業の問題は、私からお答えするのが必ずしも適当でないと存じますが、御承知のように目下医薬制度調査会におきまして、医薬分業の可否、あるいはそれが可である場合に実施いたします方法、時期等についての案を練つておりまして、まだ結論には参つておりません。私が会に出て伺つておりますところから推測をいたしますと、あまり遠からざる時期に会としての結論が出るのではないか。それに基きまして厚生省において必要な措置がとられることと予想いたしております。
  24. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 もう一つだけ別の問題をお伺いいたします。身体障害者保護が行われておりますが、この中にはもちろん戰争に行つて障害を受けた人も含まれておると思うのでありますが、先ほどもちよつとこの話が出ましたように、現在でもまだいわゆる傷痍軍人が路傍に立つて援助を求めておる。その中にはまぎらわしいも者もありましようけれども、中には傷痍軍人の記章をつけた人もあります。敗戰国といえども、ああいうほんとうに誠心誠意国家のために働いて身体に障害を受けた人間が、今なお路上に徘徊しておるということは、われわれ国民としては見るに忍びないのであります。もちろん今更生資金の貸付とか、職業を覚えさせるとか、いろいろのことはやつておいでのようでありますけれども先ほど愛国心というような言葉もありましたが、私は日露戰争のあとにあの傷痍軍人のみじめさを見、今度またあれを見せつけられておりましては、これは人道的に見て国家としてまことに許すべからざることで、何をおいてもこういう人々は国家の経費で何とかして行かなければならぬのじやないかと思うのでありますが、今なお路上に援助を求めている人々はどういうわけでああいう状態にあるのか、これをお伺いしておきたいと思うのであります。
  25. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 現在傷痍者に対しまする対策といたしましてやつておりまする大体の方針を申し上げますると、傷痍者に対しましては、その持つておりまする能力かできるだけ生かしまして普通の生活に帰るようにいたしたいという考えでありまして、そのために身体障害者の更生指導所というものをつくることにいたしておるのでございまするが、現在これは全国に一箇所、相模原に設けられておるだけであります。明年度におきましては、地方に若干これをふやすようにいたしたいということを考えておる次第でございます。なお労働省におきましては、身体障害者の職業補導のために、国の直接の委託といたしまして四箇所、その他地方の府県に対する補助としまして相当数の身体障害者の職業補導所を設けておられます。そういうような施設は現在まだ十分ではないのでありましてこれらにつきましては、今後できるだけ拡充して行かなければならぬというふうに考えて、逐次整備いたして参りたいと思います。また身体障害者自身の生活の困難というものに対しましては、現在生活保護法をもちまして、こういうふうな人たちに対する最低生活の保障をいたしておるのでございます。十分な收入がないために生活ができないという者に対しましては、一般の者と同じように、生活保護法によりまして最低生活の線を保障することにいたしておるわけでございます。それではなぜ白衣でもつて街頭に出ておるかというただいまの御質問でございまするが、それはおそらくその気持といたしましては、現在の生活保護の金では足りないということでもつて、街頭に出ておるのではなかろうかというふうに考えます。これは生活保護法の内容を拡充する以外には方法はないのであります。現在われわれといたしましては、できるだけ生活保護法の生活基準というものの内容を拡充いたすようにいたしたいと考えております。ただ生活保護におきましては、やはり働く能力がある限り、働く意思を持つて働いてもらうということが建前になつておりまするので、その意思を放棄いたしておりまするならば、生活保護法は適用されないという建前をとつております。そういうような関係で、街頭におきまして募金をいたしまして、その募金したものを自分の生活費に充てているという場合には、生活の保護はできないという建前をとつておるのであります。従いましてわれわれといたしましては、今後できるだけ生活保護の内容を拡充いたしまして、そういうことをしないでも済むようにいたしたいと思つております。なほ一般に傷痍軍人自身に対しまする国家保障的な見地の問題につきましては、これは私の方の所管でございませんので申し上げかねますけれども、われわれといたしましては、これについては相当のことを考えなければならないのではないかと期待いたしておりまして、そういうことになることを私といたしましては望んでいる次第であります。
  26. 上林山榮吉

    ○上林山主査 玉置委員、ございませんね。
  27. 玉置實

    ○玉置(實)委員 重複しましたからけつこうです。
  28. 上林山榮吉

    ○上林山主査 江崎委員、ございませんか——ではできるだけ簡單にお願いいたします。
  29. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 社会保障制度審議会では、その答申案として昨年の十月に八百億円の案を出したようでありますが、閣僚懇談会での審議答申案はその後どうなつておりますか、御報告を願いたいと思います。
  30. 安田巖

    ○安田政府委員 社会保障制度審議会から勧告が出ましたのは、昨年の十月十六日でございますが、いろいろ予算の編成時期等からみまして、若干遅れておつたようなこともございまして、二十六年度の予算にはそれが全般的に受入れられてるということはございません。ただ結核対策であるとか、そのほか社会保險等の部面におきまして、若干予算が増額いたしております。なお勧告そのものにつきましては、その後内閣の方で閣僚懇談会が設けられまして、なおその下に事務的の組織といたしまして連絡室があるのですが、その方で現在案を練られておるようであります。これは私から申し上げるのは少し所管違いでありますが、そういうふうに聞いております。おそらくは二十七年度の予算に間に合うように、何らかの代案が出されるのではないかと考えております。
  31. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 二十六年度の予算には、この答申案の精神はどういう形で盛られておるか、あるいは盛られておらないか、その点を御回答願いたいと思います。
  32. 太宰博邦

    太宰政府委員 先ほど申し上げましたように、審議会の勧告は十月の半ばを過ぎて出ましたので、政府といたしましては二十六年度予算にすぐに入れるということは、時期的にも非常に困難であります。また財政的の面からいたしましても、その全部を入れるということにつきまして、なお懸念がありましたので、結核対策あたりを中心といたしまして、緊急欠くべからざるものからとりあえず盛れるだけ盛つてみようというので、二十六年度に入れたのであります。社会保障経費はもちろん厚生省ばかりではなくて、労働省その他の方でも組んでいただいておると存じますが、厚生省所管だけで申しますと、大体私どもの感じでは、社会保障経費と見られるものの会計は、二十六年度は約三百九十二億ほどに相なろうかと存じております。もつとも御案内の通り、社会保障経費というものをどの程度に解釈するか。これを狭く解釈するのと、うんと広く解釈するのといろいろ違うと存じますが、一応私の方ではこの辺が大体見当ではないかと組んであります。一応そのうちのおもなものをちよつと申し上げます、社会保險については、審議会の勧告では、事務費につきまして全額国が見る。同時に給付金につきましても大体十分の二ほど、結核につきましては十分の五ほどのものを負担したらよかろうという御勧告があつたのでありますが、明年度におきましては、とりあえず事務費の方を大幅に拡張するという程度でありまして、健康保險につきましては、従来国庫負担が十分の五でありましたものが十分の八になつております。それから国民健康保險につきましては、従来十分の七の国庫負担の率が全額になつております。それから生活保護その他いわゆる国家扶助と申しますか、そういう面につきましては、大体前年度百六十三億ほどのものが二百十三億ほどに、約四十九億ほど大幅にこれも広がつてございます。それから先ほどありました身体障害者の保護というようなものにつきましても、これを漸次広げて行く方針で、引続きこれを計上してございます。それから医療とか公衆衛生面につきましては、何と申しましても結核対策が中心でございまして、これは予算の数字について申し上げますと、前年まで国立療養所の経費とか、それから結核予防の補助費とか、要するに結核対策と目せられます経費が、しめまして約五十三億ほどと存じますが、それが明年度におきましては、大体八十二億ほどにふえておりまして、差引約二十九億余というものが大幅にふえてございます。それから同じく結核対策の第一線機関でございまする保健所につきましても、引続き全国に保健所網というものを拡充いたすことにいたしまして、明年度におきましては、新設二十箇所、それから内容の充実いたしますもの八十一箇所というようなふうに考えておりますし、またその保健所の職員がいろいろ活動いたしまする便宜をはかりますように、若干の措置を講じてございます。そのほか金額としてはわずかなものではございますが、公案衛生従事者の養成費とか、あるいはいわゆる医療機構の整備のために、公約医療機関の整備に対する補助、これは従来実は数年前からお願いしておつて予算化しなかつたものも、本年度初めて予算化したというようなものもございます。まあおもだつたものを二、三申し上げますればそういうことでありまして前年度のいわゆる社会保障的なものに比べますると、しめまして約九十五億ほどのものが厚生省関係だけでもふえておる、かように存じます。
  33. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 結核対策日本では非常に重要だと思うのですが、結核予防法によりますと強制入院が規定されておるようですが、その八十二億の結核対策費と、この法律の強制入院が見合うかどうか、はなはだ疑問だと思いますが、どうでしよう。大体われわれの調査では、一年間に結核死亡者が十四万から十五万ほどあるように考えておりますが、実際は療養を必要とする結核患者はそれの十倍くらいおるだろうと思います。そういうことになると、バランスが全然とれないのじやないかと思いますが、その点どういうふうに考えておられるか。
  34. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御質問の命令入院に要する費用でございますが、御指摘の通り現在の一年間の結核による死亡者は十四万、患者は大体その十倍と推定しております。そのうち特に環境上病毒伝播のおそれのあるというような者につきまして、結核予防上必要と認められる者について命令入院を行う。今国会に提出いたしたいと思つております結核予防法の改正におきましても、同様のことを考えておるのでございますが、来年度の予算では、命令入院を要する者につきましての医療費の補助、これはただいま御指摘の通りに、全体の患者数と比べますと、非常にわずかな数字しか出ておりません。病院に入院させますのは大体二千八百九十八件、それから静養隔離さすものが三百九十五件、それは非常にバランのとれない数字なのでございまして、私どもといたしましては、できるだけこの数字をふやすようにいろいろ折衝しているのでございますが、なかなか財産当局の折衝が順調に参りませんので、思う通りにそれができない状態になつております。
  35. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 まことに残念だけれども、どうも結核対策は口に言うとちようちんとつり鐘というような御意見のように伺つたのですが、しかし日本の現在のような、国民所得が非常に少くなつている現状では、こういう政策じやいかぬと思うのです。これは徹底的に予算を組みかえなければいかぬと思う。きのうも言つたけれども、もうすでに敗戰六年にもなるのです。終戰処理費を何に使つている。こういうものをうんと削つて国民の衛生保健のために徹底的に金を使うべきだ。これをやり直してもらいたいと思う。それだけの気魂を厚生省で持つてもらいたい。一体ベツドはなんぼできるのです。感染のおそれある第三期の結核患者を收容するベツドは、一体なんぼできるのです。こういう具体的な数字を見ても、ただちにこれじや何ともならぬということがわかると思う。もつとはつきりした態度をとつてもらいたい。御回答を願います。
  36. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま申し上げました命令入院に要する医療費の補助、これはまことに残念ながらわずかな数字でございます。その他の点につきましても、なかなか私どもの思う通りに予算が計上できないのでございますが、しかしながら先ほど太宰政府委員からも申し上げましたように、全般的に相当増加を見込んでいただいているのでありますが、特に来年度におきましては、健康診断の普及徹底、それに要する経費の補助、それから予防接種の普及徹底、それに要する経費の補助、それから従来は認められておりませんでした医療費に対する補助、これは最近結核の特異的な治療として用いられております人工気胸、あるいは胸郭成形術、あるいはストレプトマイシンの注射、パスの服用というようなものに対する医療費に対しまして、ある程度の補助をすることになつております。病床につきましては、二十五年十二月末現在は、全国で約九万五千床であります。そのうち国立が約五万六千床、二十六年三月、すなわち二十五年度末におきましては、約十万二、三千床になる予定でございますが、これに対して私どもといたしましては、五箇年計画で大体十九万床に持つて行きたい、そういうふうに考えておりまして、二十六年度におきましては、とりあえず国立、公立、公益法人、健康保險、それぞれのものを合せまして、約一万七千床の増加を計上してお願いしているわけであります。なおとても十分とは参りませんが、私どもとしてはできるだけ対策予算を計上したい、そういうふうに努力しておる次第でございます。
  37. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 関連して……。私もこの問題はお尋ねしたいと思つてつたのですが、実は遠慮してお尋ねしなかつたのです。一つだけお伺いしたいのは、前々国会あたりでたしか問題になつたのですが、療養所に一度入つてしまうとなかなか出ない。そのために待つている人が非常に多くてその間に惡化して行く者が非常に多いということで、これに対して何とか考慮してもらいたいという話が出たのです、これはその後どういうふうになりましたか、これが一つ。  それからもう一つは、予算書を見ると、外来の患者が七千名とたしか書いてあつたと思うのです。あまり少いように思うのですが、あれは数字の間違いでしようか。私非常に少いという感じを持つたのですが、あれはどういうわけでしようか。もし療養所が不便な所にあるから外来患者が少いというならば、外来患者のために便利な所にひとつ診断所をつくるとか、もしくはその他の方法でやつてもらつたらどうかと思うのですが、この点はどうなつておるでしようか。
  38. 東龍太郎

    ○東政府委員 結核療養所の患者のいわゆる焦げつきの問題でありますが、これに対しましては療養所の中にもございまして、医師が、医療上入院の必要がない程度なつたという人に対しては、退所を要求することができるようになつております。そういう規定はございましたが、在来はそれがあまりよく行われておりませんでした。一昨年さような問題もありましたのと、とにかく入所を必要とする患者が殺到しておりますので、でき得る限りすみやかに、これら医療の必要のなくなつ患者には退所をしていただくという方針で、もちろん本省からも何回にもわたつて指示をいたしておりますが、療養所長におきましても、それぞれそのつもりで実施いたしておりますので、一昨年あたりよりはややよくなつた状態であります。まだ決して十分とは申せませんが、その方針は確保いたしております。  それから外来患者が少いじやないかというお話でありますが、大体結核療養所に入院いたしますのは、その療養所の外来へ通つて来て、そうして結核をみつけられて入るというのはきわめてまれなんでありまして、大部分が所在の保健所経由で参るのでございます。今のお話の数字、私どもはつきりつかんでおりませんが、もし外来患者の数が入院患者に比べて非常に少いということなら、それは国立療養所の予算に上つておるものと存じますが、国立療養所におきましては、外来は大体結核にあらざる患者の外来なのでございます。御承知の通り、比較的不便な所にあります療養所のもよりの人々が、結核以外の病気の場合に、普通の医療機関として利用されるというのが、大体国立療養所の様子でございます。従つて外来患者は入院患者に比して何分の一という程度でありましても、これはむしろ当然のことかと存ずるのであります。     —————————————
  39. 上林山榮吉

    ○上林山主査 厚生省所管質疑はこの程度にいたしておきまして、労働省所管質疑に入りたいと思います。大臣が病気でありますので、政務次官にかわつて説明をいたさせたいと思います。山村労働政務次官
  40. 山村新治郎

    ○山村政府委員 大臣が病気でございますので、私かわつて御説明申し上げます。  労働省所管の会計は、一般会計のほかに労働者災害補償保險特別会計及び失業保險特別会計の二特別会計がござい申す。まず第一に、昭和二十六年度労働省所管一般会計歳入掲出予算でありますが、本会計は歳入におきまして総額二億一千三百十一万四千円でありまして、ほかに郵政省所管郵政事業特別会計歳入に労働関係分が五千三万一千円計上されておりますので、両者の合計は二億六千三百十四万五千円となります。一方歳出総額は百七十二億六千六百八十五万九千円でありまして、ほかに建設省所管官庁営繕費に六千三百七十九万八千円、及び総理所管地方財政平衡交付金に統合されたもの一億九千三百五十三万六千円が労働関係分として計上されておりますので、その合計額は百七十五億二千四百十九万三千円となります。  一般会計関係経費を大別いたしますと、失業対策事業費七十七億五千万円、政府職員等失業者退職手当三億円、失業保險特別会計へ繰入六十三億九百四十一万六千円、雑件二十九億七百四十四万三千円となります。さらにこれを部局側に概略の御説明を申し上げます。  その一は、大臣官房関係経費二億八千八百十一万七千円であります。大臣官房におきましては各省共通の事務を行うほか、適正なる労働政策樹立実行上の基礎となる調査統計等に必要な経費を計上いたしております。  その二は、労政局関係の経費五千八百五十三万八千円であります。労働組合の健全なる発達並びに労働関係の調整をはかりますことは現下の急務であります。従いまして労働組合、労働関係団体等に対する積極的な労働教育を行うことに重点を置きまして、労働教育費四千二百五十一万二千円、また今次国会提出予定の地方公営企業労働関係法施行に必要な経費を新たに十二万八千円、その他おおむね前年度より引続きの事業のため所要の経費を計上いたしております。  その三は、労働基準局、産業安全研究所関係経費八億八百四十二万円であります。御承知の通り労働基準法は、各般の労働條件について、使用者及び労働者の守るべき最低基準を明確にして、労働者の地位の向上をはかり、国際貿易への積極的推進等を期待するものであります。特に本年におきましては、重点を産業災害防止対策労働基準監督官の研修におきまして、それぞれ所要の経費を計上いたしました。  その四は、婦人少年局関係経費三千八百十八万三千円であります。婦人少年局におきましては、婦人及び年少労働者の保護並び婦人の地位向上をはかるため諸般の企画、調査、啓蒙宣仏等を行つておりますが、これが事務並びに地方機関たる婦人少年局地方職員室の事務の円滯なる運営をはかるため、前年度に引続き所要の予算を経上いたしたのであります。  その五は、職業安定局関係の経費百六十億四十六万四千円であります。現下の労務の需給の状況はなお深刻な状態にあるのでありまして、一時的離職者の数もいまだ減少の傾向には立ち至つておりませんので、これら当該離職者の生活不安、ひいては社会不安を除去いたしますために、失業対策事業費を増額し、失業者の就労の機会を増加すると同時に、地方公共職業補導所の拡充をはかり、特に職業紹介業務の整備充実をはかるため、第一線機関たる公共職業安定所の定員を増加し、職業安定方策に万全を期したいと存じているのであります。なお失業保險特別会計へ繰入れるため必要な経費六十三億九百四十一万六千円を本予算中に計上いたしております。その他おおむね前年度に引続き所要の経費を計上いたしました。  その六は、中央労働委員会、公共企業体労働関係調整委員会関係経費七千百九十六万三千円であります。産業の平和を維持して生産の向上をはかるためには、労働関係を合理的に調整する必要がありますので、これらに必要な経費を前年度に引続き計上いたしました。また本年度におきましては、特に現在借上げ中の中央労働委員会庁舎の買收費を計上いたしております。  その他国立国会図書館支部図書館の経費につきましては、前年度に引続き所要の経費を計上いたしました。  第二に、労働者災害補償保險特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は、御承知の通り労働者災害補償保險法によつて労働者の業務上の事由による負傷、疾病、癈疾または死亡に対して災害補償を行い、あわせて労働者福祉に必要な施設をなすことを目的とする保險事業会計でありまして、全額使用者負担の特別会計でございます。本会計は歳入歳出とも総額百九億九千九百十五万三千円でありまして、その内訳は、歳入につきましては、保險料八十八億八千五百八十七万三千円、未経過保險料八千六百二十八万六千円、支拂備金十九億五千百二十一万三千円、その他七千五百七十八万一千円となつております。一方歳出につきましては、保險金七十六億一千八百九十五万円、保險施設費一億三千三百十六万六千円、業務取扱費五億一千百二十万九千円、保險料精算返還金一億七千八百五十万一千円、予備費二十五億五千七百三十二万七千円となつております。  第三に、失業保險特別会計について御説明申し上げます。本会計は、御承知の通り失業保險法によつて労働者が失業した場合に失業保險金を支給して、その生活の安定をはかることを目的とする保險事業会計であります。これが費用の負担は政府、事業主、労働者の三者持寄りの特別でありまして、うち政府は保險給付に要する費用の三分の一額と、事務費のうち運用收入、雑收入をもつて支弁できない部分を負担し、使用者及び労働者は失業保險法に定める保險料率によつて、おのおの同額を負担する建前となつているのであります。本会計は歳入歳出とも総額二百七億一千六百三十一万四千円でありまして、そのおもなる内訳は、歳入につきましては、一般会計より受入れ六十三億九百四十一万六千円、保險料百六億八百七十三万九千円、積立金より受入れ三十億円、その他七億九千八百十五万九千円であります。歳出につきましては、保險金百七十五億二千五百二十万円、業務取扱費六億六千百五十三万二千円、予備費二十五億二千九百五十八万二千円となつております。  以上をもちまして労働省所管関係予算の大要を御説明申し上げました。本年度におきましては、国家財政の見地より極力機構の整備並びに物件費等の節約をはかつて計上いたした次第であります。本予算の成立につきましては、愼重御審議の上、御賛成あらんことを伏してお願いする次第でございます。
  41. 上林山榮吉

    ○上林山主査 ただいまの説明に対して何か御質問がありますか。あれば、できるだけ簡單にお願いいたしたいと思います。苫米地委員
  42. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 労働基準局のことでありますが、労働基準法が必要である重要であるということは、だれもよく承知しておりますし、ここにもそれが述べてあるのでありますが、わが国の基準法というものは国状に沿わない点がある、またアメリカあたりの基準法よりもむしろきつくなつておるというようなことは、何人も承知しておるところであります。つきましては、この労働基準監督官の研修という経費が計上してありますが、もしこの労働基準法を文字通りに強制されると、やつて行けないという声が至るところにあるのであります。またそれが実情であろうと私は推測いたすのでありますが、この労働基準監督官の研修において、そういう実情をよく見て、適当に裁量できるような研修をおさせになるおつものでありますか。この労働基準法を文字通り通行するための研修をやらせるお考えでございますか。その点を伺つておきたいと思います。
  43. 山村新治郎

    ○山村政府委員 基準法につきまして、御指摘のようなことは往々耳にいたす点もあるのでございますが、今回の研修の予算計上の目的も、もちろん法の尊嚴を守りまするために、この法の活用と同時に、日本の生産向上の目的に資したいために、この研修はあくまでも監督官の素質向上の面を念願といたしまして進めて参りたいと存じます。
  44. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 まだ私はつきりしないところがありますけれども、次官の心をよく察知いたしまして、これはこの程度にとどめます。  次に職業安定についてですが、職業紹介所の各所でいろいろな不正事件を出しておりまして、これが社会的にも、また労働者に対しても非常に惡い影響を持つておると私は信じておるのであります。これに対して、單に定員を増加して安定方策の万全を期するといつたような甘い言葉では、どうも納得できないのであります。定員をふやす必要もありましようが、至るところで起しておるあの不始末をどういうふうに今後ないようにして行かれるか。方針でなしに、その方策についてお伺いいたしたいと思います。
  45. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 お答え申し上げます。安定所の職員の中に、ただいま御指摘のような不詳事件が間々ありますことは、私といたしましてもまことに申訳ないと存じておる次第でございます。これをなくする措置という問題でございますが、結局において安定所の職員の素質を向上させる以外に方法としてはないのじやないだろうか。こういうふうに私は考えております。主として問題の起りますのは、失業保險金の支給について問題が起つておるのでありますので、失業保險金の支給についての会計事務を徹底的に教え込むということのほかに——やはりそういうことは労働者のためにも相済まぬ話であり、雇用者に対しても相済まぬ話であるという自覚を振起せしめ、上官監督者の地位にある者は、やはり日常そうした人を仕事をやりながら教育して行く、訓練して行く、いわゆる上官訓練以外に方法はないのじやないか、こういうふうに私は考えておりますので、私どもといたしましては、監督者が部下職員を十分に監督し、気をつけさして行くというところに重点を置いて、問題が起つたあとではどうしようもありませんので、華前に問題が起らぬようにということで、訓練に力をいたして努力しておりますし、将来とも努力をいたして参りたい、かように存じておる次第でございます。
  46. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 その担当者の質の向上をはかるということはごもつともでありますが、それには時間を要する、ことであります。またそのためには待遇その他のことも、地位ということもいろいろからんで複雑になつて来ますが、さしあたりは監督を嚴重にする、またその組織をもつと合理化するということが必要であると思うのであります。それで監督についてはどういうふうにやつておられるか、また事務の不正のできないように合理化するためにはどういうくふうをしておられますか、それを伺いたい。
  47. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 監督の問題からお答え申し上げますと、実は本省には九人の中央の監督官という制度を設けておりまして、この中央監察官は一月のうち約二十日間というものは、もちろんブロツク的に担当地域をきめておりますが、それが全国の安定所、県庁を歩きまわる、こういう仕組みにいたしております。それと同時に、県庁にありまする職業案定課にもおのおの專門のそういう監察官を一、二名配当いたしてありまして、この人々は不正を摘発するといつたような気持ではなしにいなむしろ事前にいろいろな問題が起らないように、不愉快な事件が起らないようにというような気持で監査する。本省に九人、各府県庁には一、二名の專門の監察官を置く、こういうやり方で監察をいたしておるのであります。そのほかに主として失業保險特別会計で問題が起りまするので、失業保險特別会計につきましても、会計監査官という制度が置いてございまして、この監査官が事前にそういう事件の起らないように見てまわる、大体こういう仕組みにいたしておるのであります。  なお事務を組織的合理的にやることによつて不正を防止するという問題でありますが、これにつきましては、御承知の失業保險金が中心になつておりますので、監督者の地位にある者がその日その日の保險金の給の状況を毎日見るということによつて、そういう事件が起らないように、大体そういうふうな仕組みにいたしておる次第でございます。
  48. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 今の御説明のような監督があるにかかわらず、ああいう不祥事件が起つたというのはどういう点に欠点があつたのでございますか。
  49. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 失業保險金の支給について不祥事件の起る原因でありますが、いろいろ理由があろうかと思いますけれども、結局におきまして、ちよつとした金に困つて、でき心というところから始まつて除々にそれが深く入つて行くという例がやはり一番多いようでございます。すなわち安定所では、御承知のように失業保險金を支給しますために現金を持つております。それで一時ちよつと借りようといつたような気持から、ずるずる入つて行くというのがやはり一番原因としては多いようでございます。従つて先ほども申し上げましたように、結局公金というものに対する考え方をあくまでも徹底させるということがやはり一番大事なことじやないか、こんなふうに考えておる次第でございます。
  50. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 どうもちよつと食い違つているようですが、今の御説明は犯罪者の方の径路であつて、監督の方の落度はどこにあつたかと私は伺つておるのであります。監督の方にどういう手落ちがあつてそういうことが起つたか、もしくはどういう欠陷があつてそういうことが起つたかということを聞いているので、犯罪がこういう形でずるずると起つたということは、御説明を伺わなくてもわかつていることであります。
  51. 山村新治郎

    ○山村政府委員 御指摘の点につきましては、今後は單に安定行政ばかりではございませんが、労働関係一般の行政事務におきまして、あくまでも信償必罰の態度をもつて臨みたいと思います。
  52. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 それは起つたあとの始末をおつしやるのです。私の申しますのは、そういう監督のどこに欠点があつたから起つたのか、これをはつきりしてもらわなければ、今後欠陷を改めて行くことができない、こういうわけであます。
  53. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 監監督の不十分の点でございますが、やはり現金をたくさを取扱うということについての会計の監督事務、これに対して安定所並びに安定所以外の上級の県の監督者の方々の会計技術が不十分であるということが、やはり一番の原因じやないか、こういうふうに考えております。御承知のように従前におきましては、安定所が金を取扱うということはほとをどなかつたわけでございますが、最近のように失業保險金を厖大に取扱う、そこで会計事務というものについての監査のやり方というものがなれていないという点に多くその原因があるのじやないだろうか、こういうふうに存じておる次第でございます。
  54. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 只今の御説明で、つまり監督員の能力が足りないからそういうことになつたのだ、こういうことでありますが、経費をかけて監督員を置いて、それが役に立たぬということでは困るので、将来はそういう検定とか、資格のある人を監督官に選任されるようにして、こういうことがないようにしていただきたいと思います。
  55. 上林山榮吉

    ○上林山主査 政府委員にお尋ねいたしますが、その会計の監査には技術的に何か方法を実際講じているのですか、その点をひとつお尋ねいたしたいと思います。非常に重大な問題だと思いますから……も
  56. 百田正弘

    ○百田説明員 私から御説明申し上げますが、不祥事件の大体の手口と申しますか、それをあとで検討してみますと、いろいろな方法がございますが、現金を横領いたしまして、帳簿面をそれに合しておく、それを毎日々々所長がそれだけ見ておつたのでは、現金とその帳簿と、帳簿じりが合つております関係で、これはわからない。それからたくさんの決議書と申しまして、何の何がしに幾らやつたとずつと書いてございますが、その集計だけをふくらましてある。それを計算しているのですが、それを所長が、非常に求職者の多い、労働攻勢も激しいというときに、一々全部自分がそろばんをあたるわけにも参らないというところに重大な盲点があつたようでございます。そういう点にかんがみまして、それからそのほかには、小切手帳から小切手を一枚抜きとつて、所長の印をつかつてとるというようなことがあつたのです。そういう点につきましては、たとえば銀行側と所長の私印を合せて届け出ておきまして、その私印のあるものでなければ拂わぬ、しかもその所長はみずから自分の私印を押すというようなことでこの点を防ぎます。同時に今度は、実際に金を拂つた者と、失業の認定をいたします場合に支給台張というものに金額を書いてございます。この二つのものができている。これを必ず全然別人に一々当てさせて照合いたします。そういたしますと、その金額がぴつしやつと合いますと、今度は片一方だけそろばんを当てて、その下に書いてあるのを必ず別人にやらせる、こういう方法を最近全部についてとらせております。その関係上、比較的そういう面の不正が防止される、こういうふうに考えております。
  57. 上林山榮吉

    ○上林山主査 これはざらに公務員法との関係がありますので、思うように行かぬと思いますが、苫米地委員の言われるように資格のある者を会計の責任者に採用した場合、民間団体等にあるがごとくに、相当支拂い能力のある人に身元引受けをさせるというような制度を考えておられるかどうか、その点を伺いたいのであります。
  58. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 この問題は、私どもといたしましては重要な問題として考えておりまして、要するに安定所が現金を直接取扱うというところにいろいろな問題が起るのであるというふうに私ども考えておりまして、何とか現金を取扱う事務については、銀行その他むしろなれている方面に取扱つてただくというやり方も一つ方法ではないだろうか。根本的に見ますと、現金の支拂いになれておる銀行にお手伝いをしていただくという方法がいいのじやなかろうか、こんなことも実は考えておるのでありますけれども、現在の保險法あるいは会計法の建前から相当問題がありますので、そこまで今にわかに踏み切つてやるということは困難のようでございます。けれどもできるだけ私どもの方向としましては、安定所のなれない人々が直接現金の支拂いをするというところにとかくの間違いが起る。その点を根本的に改めることが必要じやないだろうかということで、いろいろな方法を目下検討いたしておるような次第でございます。
  59. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 今主査からお話になりましたが、保証人を立てるというような問題ですが、これは私数年前に一度申し述べたのですが、外国にはフイデリテイ・ギヤランテイという制度があるのです。政府でいわゆるフイデリテイ・ギヤランテイといつたようなものをこしらえて行きまして、そこに納金をさせて、そして間違いがあつたときにそれを修正させるというような制度をひとつお考えになつてみたらいかがでしようか。
  60. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 身元保証の問題でございますが、私どもの方といたしましては、現金を取扱つている人についてはできるだけ身元保証人を立てるようにということで指導をいたしております。しかし今般的にまだそこまで行つておりませをけれども、部分的には相当やつております。将来ともその点は私どもも努めて参りたいというように考えておる次第であります。
  61. 上林山榮吉

    ○上林山主査 江崎委員。できるだけ御協力願つて簡潔に願います。
  62. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 系統的にやりましよう。日本は一九四五年の八月十五日に敗戰をしたわけです。その後連合国の一貫した方針は、日本をいかにして民主化するかということであります。この民主化する基準をどこにおくかということについて、二つの大きな支桂を考えておつたと思うのです。一つは農民のいわゆる土地の解放である。もう一つ労働者の解放ということであります。自由意思によつて労働組合をつくり、そうして労働組合を通じて労働者の政治的、経済的な水準を向上させるということ、これがとりわけ重要である。従つて労働組合の問題については、極東委員会では十六原則まで出しておるのであります。その後ずつと経過をたどりますと、初めのうちは大体よかつた。ところがぼつぼつ日本のブルジヨアジーの本性が現われて来たのであります。それは昭和二十三年の……。
  63. 上林山榮吉

    ○上林山主査 できるだけ質問の要旨を御説明願います。
  64. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 あの賃金の三原則、それに続きますとよろの十二月に経済安定九原則が出ておる。これ以来急激に労働組合の運動が抑圧され、一方においては民間企業には企業整備が行われ、官庁においては行政整理が行われ、その結果企業整備によつて離職した者が、官庁統計によりましても六十四万人、行政整理で離職した者が十九万人、合計八十三万余の離職者が出ておるのであります。当時池田大蔵大臣並びに増田官房長官は、やがて日本の経済が復興して、こういつた離職者を全部吸收する、こういうようにはつきり言つておる。ところが実情はどうかというと、まさにその逆であります。これも官庁統計——これは皆さんの統計だ、これによつてもう一回復習してみてもわかると思うのですか、雇用指数についても、昭和二十二年の平均を一〇〇といたしまして、二十三年はちよつとふえて一〇九であります。二十四年の平均は九九・三、二十五年の一月は九三、それから六月は九二・四、七月には九一・九、こういうふうにだんだん雇用指数が減つておる。  それから生産指数ですが、これは逆にふえております。従いまして雇用指数をもうて生産指数を割ると、これは労働の生産性ということになるでしよう。むしろ設備改善によつて生産がふえたならばこれはよろしい。ところが事実はそうではなくして、労働者の奴隷的な強制労働によつてこの労働の生産性という指数はふえておる。これが実情だと思う。従つてへやこの極東委員会の十六原則はすつかり踏みにじられております。従つてまた労働指数の減少、すなわち増田官房長官や他出大蔵大臣が言つたのとは反対に、日本の産業がこの離職者を吸收しておらぬのでありますから、いわゆる労働市場は非常に惡化しております。労働力のダンピング、従いまして労働者の実生活というものはまことに見るにたえぬ状態に陷つておるというのが実情であります。従いましてこれを全国の職安の求職者の数について考えてみても、それがはつきり出ておる。増田官房長官や池田大蔵大臣の言つた言葉がいかにでたらめであつたかということがはつきり出ておる。例をとつてみると、これも官庁統計でありますが、昭和二十四年の五月は十一万一千四百九十四名、十二月はどうです、倍にふえております。二十三万八百十八名、昭和二十五年の五月になりますと、これが飛躍的に増加いたしまして四十一万百四十六名、十月になると四十四万三千十一名というようにうなぎ上りに求職者がふえておる。こういうように今や日本労働者の生活の実体というものは憂慮にたえぬ状態になつて来ておる。しかも先ほど言いましたように、労働市場が非常に惡化しておりますので、労働者の言い分は、なかなか通りません。職階制は非常に強くなつて来て、官公庁の国家公務員の例につきましても実にみじめなものです。超過勤務も拂わないで残業させられております。これは当局に聞くと、命令した以上必ず拂いますと言いますが、実情を調査してごらんなさい、文句を言つたら首になる、こういう状態。二、三例をあげてみますと、大阪の国際電報局、これは私は電通委員をやつておりましたので、この状態をよく知つております。これは特別の技能を有する無線の技術者です。この人たちに大体戰前の三倍の仕事量がありまして、人員は逆に三分の二です。しかも今度は航空関係に百名も拔かれるらしいというので、大あわてにあわてております。それからまた貯金局で大体六百五十名ほどおりますけれども、去年の暮れにカードの整理が山積しておる。二十五万枚も残つてつた。これはとうてい普通の残業ではやれません。いまだに十五万枚も残つておる。こういう形でどんどん労働強化が行われておる。そうして文句を言えば、いの一番に行政整理のときにその対象になるという形です。労働者の間では、非常な不満が盛り上つておるのだけれども、これを口にすることができない。ここに日本労働組合運動の決定的な問題があると思うのです。その一番ひどいのは、進駐軍関係労働者でしよう。これは苦しいけれども、実例をあげてみましよう……。
  65. 上林山榮吉

    ○上林山主査 江崎委員に希望を申し上げます。できるだけ質問の要点を具体的にお願いいたしたいと思います。
  66. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 例を申し上げますと、これは東京都の文京の渉外労働管理事務所に属するところの白木屋コミツサリ・ストアの問題です。ここの清宮五郎君——これは雑役ですが、この人が労働組合をつくりたいと言つた。そうしたところが、日本人の管理者であるところの渡辺という顧問ですが、この渡辺顧問が、組合などをつくつて、澄んでいる水を濁してどうするんだ、もしもそういうことをやるなら、首にしてしまうと言ひ、その後この管理人から、去年の七月二十日付をもつて、能力がありながら能力を発揮しなかつたという理由で、不当な解雇が申渡されておるのであります。こういう事実がある。そのほかもつとひどいのは、神奈川県の米軍の座間のキヤンプモーター・プールの問題であります。この事件は、昭和二十五年十月二十六日に、このモーター・プールのマネージヤーであるところのカゲユという人が、モーター・プールの全員を集合させて、給與について次のような話をしたのであります。それはどういうことかというと、今回日本政府からの命令によつて、十月分のオーバー・タイムは一切支拂わぬことになつたから、さよう承知してくれ、こういうような話であつたのであります。そこでこの問題を聞いて非常に不審に思われたので、その群衆のうちから、今後兵隊輸送をするような場合にオーバー・タイムになつても、これはやはり支拂われないのか、こういう質問をした。そうしたところが、回答していわく、そうじやない、オーバー・タイムは今後は支拂う、こう言つた。この十月分のオーバー・タイムも実は兵隊輸送をやつた、同じことじやないか、それなのにどうして支拂わないのか、もつとはつきりしてくれと言つたところが、この発言者であるところの浜島恒男、樋口明という二人の名前を帳面に書いたのです。帳面につけたからどうして帳面につけるかと言つたところが、別に何でもないと言う。そこで一同は何でもないならよいだろうというわけで解散した。そうしたところが、翌日の二十七日の午後一時ごろ、労働課のデイクソンという人が参りまして調査課に一緒に来いということで、連れて行かれたのであります。そして、その後手錠をかけられまして、警察へ一日放り込まれておつた。結局この人たちは、やはり解雇されております。こういうように、日本労働者はまつたく好隷のような状態になつておる。これが実情です。こういうことについて一体労働者は何をしているのか。この点について、これは私の発言だけではありません。自分の一人の意思や意見ではありません。この問題に対しては、日本全国の労働者に回答するつもりで御回答願いたいと思います。
  67. 山村新治郎

    ○山村政府委員 御質問の前段が非常に長く聞えましたために、御質問の要点をよく解しかねますが、何か不当労働行為的なものがあるという御指摘のように受取れるのでございますが、その問題につきましては、ございましたならば具体的にお示しを願いましたならば、労働省といたしましては善処するつもりでございます。
  68. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 動議を提出いたします。質疑はおおむね終了いたしましたので、本分科会質疑はどの程度に打切りまして、この討論採決は予算委員会に讓られんことを望みます。
  69. 上林山榮吉

    ○上林山主査 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  70. 上林山榮吉

    ○上林山主査 速記を始めて……。ただいまの動議をしばらく留保いたしまして、江崎君の紳士協約をお守りくださるということを前提として質問を許します。
  71. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 時間もありませんので、最後労働者の給與について意見を申し上げ、労働省の見解をお伺いしたいと思います。先ほど申し上げたように、日本の全般の労働者の賃金水準が非常に低いのです。時に国家公務員の手取りの実質賃金の低いということは、これは非常なゆゆしき問題で、各所に国家公務員の不正行為がある。これは実はこの手取りの給與が非常に低いことに原因するのです。具体的に私は知つておりますが、申しませんけれども、そういうわけで、今やどうしてもとのベースの全般的な改訂を必要とすると考えるわけです。あの日教組、その他いろいろな労働組合が、一万二千円ベースを要求して、今盛んにどうしてもこれくらいとらなければいかぬと言つております。しかも先ほど言いましたように、職階制は極端に上に厚く下に薄く、今回の給與の改訂でも、大臣は二万円ほど上つておるけれども、下級では二百円くらいしか上つておらない。こういうような給與の形態でありますから、このベース・フロア、最低賃金ということが非常に大きな問題になると考えている。たとえば最低賃金を十六歳で五千五百円というような案に対しても、そういう基準をきめることが必要じやないかと思います。そういう問題について労働省はどう考えておられるか、その点の御見解を伺いたいと思います。
  72. 山村新治郎

    ○山村政府委員 国家公務員の問題につきましては所管外で、人事院にお願いしたいと思います。  なお最低賃金の問題につきましては、ただいま賃金審議会におきまして検討中でありますので、その結果を参考にいたしまして善処いたしたいと思います。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつと一つだけ……。
  74. 上林山榮吉

    ○上林山主査 それでは恐縮ですが、二分以内でお願いします。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 私は時間を限られましたので、簡單に一言だけお尋ねいたします。ここに出されております婦人少年局の予算は、前年度より減らされておるのじやないかと思いますが、減らされておるかどうか。また減らされたならば、その理由と、今後もなおお減らしになろうとするかどうか。この婦人少年局に対してどういうお考えを持つておられるか。私は簡單に伺いましたが、はつきりとよくわかるようにお答えをいだきたいと思います。
  76. 亀井光

    ○亀井政府委員 婦人少年局の来年度の予算は、二十五年度より多少減つておるのではございますが、この大きな原因は、来年度予算の編成にあたりまして査定を受けました額について、旅費については、五%、物件費については一〇%の節約をいたしまして、それを給與ベースの引上げの財産に充てたという、各省共通の査定方針にのつとりました点が、この大きな減額の理由になつておるのであります。  それともう一つは、婦人局の二十五年度の予算におきまして、労働省内におきましても、旅費その他の点でアンバランスがございました点が多少是正されておるというふうなことでありまして、今年度の予算をもつてしても、二十五年度の予算において示されました事業そのものについては、それほど大きな支障はございません。二十五年度の事業を引続き執行するにつきましては、さしつかつかえない税度の予算が計上されておると思うのでございます。
  77. 上林山榮吉

    ○上林山主査 以上をもつて分科会における審査は全部終了したわけでありますが、先ほど苫米地君から動議の提出がございますが、本分科会質疑はこれをもつて打切り、討論採決は予算委員会に譲るべきものと決することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 上林山榮吉

    ○上林山主査 御異議なしと認めさよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十四分散会