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1951-02-20 第10回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科員昭和二十六年二月十九日(月曜日)委 員長の指名で次の通り選任された。    主査 上林榮吉君       有田 二郎君    角田 幸吉君       甲木  保君    北澤 直吉君       鈴木 正文君    玉置  實君       苫米地英俊君    中村  清君       中曽根康弘君    松本 瀧藏君       勝間田清一君    戸叶 里子君       江崎 一治君     ————————————— 会議 昭和二十六年二月二十日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席分科員    主査 上林榮吉君       角田 幸吉君    甲木  保君       北澤 直吉君    玉置  實君       苫米地英俊君    中曽根康弘君       勝間田清一君    江崎 一治君    兼務 坂田 道太君    平川 篤雄君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君         厚 生 大 臣 黒川 武雄君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     千葉  皓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (調査局長)  土屋  隼君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君         出入国管理庁長         官       鈴木  一君         文部事務官         (大臣官房会計         課長事務代理) 相良 惟一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     辻田  力君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      西崎  惠君         文部事務官         (調査普及局         長)      關口 隆克君         文部事務官         (管理局長)  久保田藤磨君         文化財保護委員         会事務局長   森田  孝君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     太宰 博邦君  分科員外出席者         文部事務官   剱木 亨弘君         文部事務官         (初等中等教育         局庶務課長)  内藤譽三郎君         專  門  員 小林幾次郎君     ————————————— 二月二十日  第一分科所属員坂田道太君及び平川篤雄君が本  分科兼務なつた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算外務省文部省  及び厚生省所管  昭和二十六年度特別会計予算厚生省所管     —————————————
  2. 苫米地英俊

    苫米地(英)主査代理 それでは会議を開きます。  主査がお見えになりませんので、主査がお見えになりますまで、暫時私が主査の職務を行います。  ただいまより予算委員会第二分科会を開会いたします。  本分科会は、外務省所管文部省所管厚生省所管、及び労働省所管審査を進めることになつておりますが、審議の都合上、本日の午前は外務省所管及び文部省所管、午後は厚生省所管とし、明二十一日午前に労働省所管審査をいたしたいと存じますから、さよう御了承願います。  これより昭和三十六年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたしまして、審査に入ります。  まず政府側説明を求めます。草葉政府委員
  3. 草葉隆圓

    草葉政府委員 外務省所管昭和二十六年度の予算について大要を御説明いたします。  外務省所管昭和二十六年度予算金額は十二億二千六百四十八万九千円でありまして部局別にその内訳を御説明いたしますと、第一に外務大臣官房経費でありまして、外務省設置法に定めるところの職員の任免、服務及び公文書類発受編纂、保存並びに予算、決算及び会計経理等に関する事務のほか、通信施設維持、庁舎及び官舎の営繕工事職員福利厚生退官退職手当支給等に要する大臣官房所掌一般事務処理するために必要な経費といたしまして一億四千九百六十八万円、並びに旧外地官庁所属職員恩給事務処理、及び明治以来の日本外交文書編纂公刊のため必要な経費として三百七十二万八千円、合計一億五千三百四十万八千円であります。  第二は政務局経費でありまして、外国に関する政務処理内外新聞通信及び報道に関する事務処理、法令の審査行政考査所管行政綜合調整国際経済機関に対する協力国際経済事情調査、及び太平洋戰争並びに日本管理に関する資料の收集等政務局所掌一般行政事務に要する経費としまして二千七百五万八千円、また情報啓発事業及び国際文化事業並びに通商利益増進保護に必要な経費としまして二千百七十六万三千円、合計四千八百八十二万一千円であります。  第三は條約局の経費であります。條約局におきましては、国際條約その他国際約束の締結、国際法及び渉外、法律事項処理並びに国際連合その他国際常設機関との協力に関する事務等のいわゆる條約局一般行政事務を行うに必要な経費としまして九百八十四万四千円、国際條約等に新たに加入する等の経費としまして百八十九万七千円、合計一千百七十四万一千円であります。  第四は調査局経費でありまして、一般国際情勢並びに各国の政治、経済外交に関する調査研究を行う、調査局のいわゆる一般行政に必要な経費としまして一千二百十一万一千円、その他国際情勢基本的調査研究に必要な経費としまして三百四十一万一千円、合計一千五百五十二万二千円であります。  第五は管理局経費であります。管理局におきましては、邦人海外渡航並びに在外財産に関する事務旅券の発給並びに査証に関する事務、朝鮮、台湾、樺太、関東州及び南洋群島等の旧外地、及び沖縄に関する残務整理事務、未引揚邦人調査に関する事務等を行うのでありますが、同局の一般行政に必要な経費といたしまして一千八百二十六万九千円、また在外邦人の戸籍及び国籍関係事務旅券及び渡航並びに査証事務、未引揚邦人に関する諸調査事務在外公館等借入金整理事務、旧外地官署残務整理事務に必要な経費としまして五千百六十七万二千円、並びに旧外地官署所属引揚職員給與支給等に要する経費としまして八千万円、合計一億四千九百九十四万一千円を計上してあります。  第六は連絡局経費であります。連絡局におきましては、中央における連合国官憲との連絡事務及びこれに関する各庁事務総合調整等に必要な経費として、二千六百八十万円を計上いたしております。  第七は連絡調整事務局経費でありますが、これら事務局は十二地方設置せられてあつて地方における連合国官憲との連絡事務、及びこれに関連する各庁事務総合調整をつかさどつており、これに必要な経費として、五千十万八千円を計上したのであります。  第八は外務省研修所経費であります。これは外務省職員等に、外交再開の目に備えまして、遺憾のないよう必要な研修を行わしめているのでありまして、これがため合計一千九百七十万八千円を計上いたしております。  第九は在外公館経費でありまして、明年度におきましては在外事務所二十館を予定し、この維持経費に必要な一般行政費として四億九千四百四十六万二千円、及び主要な在外事務所九箇所に設置する商品見本展示室経費五千三百六十七万五千円、合計五億四千八百十三万七千円を計上いたしました。  第十は出入国管理庁経費であります。同庁におきましては長官官房において一般官房事務処理するほか、不法入国者強制退去に関する一般事務正規入国者管理事務外国人登録に関する事務、及び不法入国者の護送、收容、送還のため必要な経費として、合計二億九十九万一千円を計上してあります。  最後は国立国会図書館支部図書館経費でありまして、この図書館支部経営に関します一般経費として、百三十一万二千円を計上したのであります。  以上がただいま上程されております昭和二十六年度経費大要であります。詳細御審議のほどをお願いいたします。
  4. 苫米地英俊

    苫米地(英)主査代理 ただいま説明のありました、外務省所管昭和二十六年度予算につき、御質疑がございませんか。
  5. 勝間田清一

    勝間田委員 ただいま事務的な説明を受けたわけでありますが、なお新しいいわゆる外交情勢変化に伴うものが、どう実体的に加わつているかということを、ひとつ御説明願いたいと思います。新しい情勢に即応する外務省予算として、どこに重点を置いてあるかということ。
  6. 草葉隆圓

    草葉政府委員 一応新しい情勢を検討しながら予算を組んだのでありまするが、大体の形としまして、従来の形を踏襲するという形で、特別な情勢変化はこの予算には計上してないのであります。ただ国際情勢変転等のために、あるいは情報その他の問題に備えるための予算は計上しておりまするが、従来の占領下行政が新しくなるという形における予算は、これには計上いたしておらないのであります。普通の状態で計上しております。
  7. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、もし講和会議等が開かれて来る場合におきましては、いろいろ海外施設の問題がございましようし、いろいろ外交上の変化が出て来ることと思いますが、そういう事態に処しては新しい追加予算が出るという考えでよろしゆうございましようか。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御見解通り、これは普通のいろいろの予算の形で来ております。講和会議等で自主権が回復されまして、独立国となりますると、外務省の機能もすつかりかわつて来ると思います。従つて追加予算等で、十分内容を充実した予算を組んで、御審議を願わなければならないと存じております。
  9. 勝間田清一

    勝間田委員 最近新聞紙上等で伝えられておることですが、どの程度真実であるかについての御説明を願いたいと考えておりますが、諸外国事務的連絡が開けて来るわけであります。そうなりますと、相当事務も進展させる必要があるのではなかろうかと思いますが、そういう問題も必要があるのかないのか。もう一つは、在外公館の問題で、何箇所かの増設が考えられておるようでありますが、これに対する見通し、今具体的にどうなさるかということを御説明願いたい。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 十七日発表しました二十箇国あまりの国々と、ある條件づきの直接の折衝が許される、従つてそれが事務的にもずいぶん煩瑣になつて経費等も増額するのではないかというお見込みのことだと存じますが、大体におきましては、お見込み通りに、事務等がたいへん増加しまして従つて同時にたいへん便利になると考えております。但し大体従来からこの仕事は、司令部を通じて同様にはいたしておりまして、直接に今度はできることになりました。従つてこのために急に直ちに増員したり、あるいは機構を改正したりというところまでには、まだ今日は至つておらないと思います。いずれはこれがだんだん活発になつて参りますると、お見込み通りに、相当内容の充実をするようなことになつて来なければならないと存じますが、まだ当分はさようなところまでは考えずに、現在の状態で行けるかと存じております。在外公館等は、ただいま御説明申しましたように、大体計上されております予算面におきましては、二十館程度予想しながら、従来の在外公館を一層整備をして、あるいは商品展示室等をいろいろなところにつくりまして、進んで行く予定でおります。
  11. 勝間田清一

    勝間田委員 なお研修所の費用は若干計上されておりますが、去年よりもかなり少くなつておるようではありますが、これは施設関係かもしれませんが、現在一番やはり大事なのは、次の外交官、次の担当者というものを十分備えて行くことが必要になつて来ておると思いますが、今の状況はどういう状況になつておりますか。收容人員であるとか、どういうものをどういうところにつくろうとしておるのか、この点研修所の計画をひとつお聞かせ願いたい。
  12. 千葉皓

    千葉政府委員 外務省研修所仕事が非常に重要であるということは、今お話のあつた通りでありますが、現在大体二通りにわかれておると思います。新規採用になりました者に対して、外務省仕事をするのに必要な教育を施す、もう一つは、従来外務省仕事をしておりました五年ないし十年の経験を経た者を、さらに再教育をするという、二つの仕事にわかれておるわけでありますが、現在大体クラスを常時五クラス設けることにいたしまして、大体一クラス八名ないし十名であります。この五クラスのうち二クラスが新規採用のものでありまして、あと三クラスが従来の者の再教育です。これに対しまして語学の研修、それから外交史とか、国際法についての研修、それから日本国内経済事情あるいは社会事情等の見学、そういうことなどもしまして、日本国内事情についても認識を深め、よつてつて外交官として十分な活動ができるということでやつております。  経費につきましては、ただいまお話のありました通りに、前年度に比べますと若干減つておりますが、これは従来外務省におきましては、戰争中から相当大勢の貴重な経験者がおりましたために、それを外交再開まで何とか維持して行きたいということで、それらの人たちを一時研修所定員のうちに繰入れまして、維持して参つたのでありまするが、昨年度から在外公館ができましたために、それらの人たちのうち、相当人数を在外公館に出しましたために、研修所定員といたしましてはそれだけ減りましたので、減つた分だけ研修所経費が減つております。実際の研修所事業費、たとえば教材を整えるとか、あるいは講師の謝礼を出すとか、そういう関係経費は減つておりません。かえつて昨年よりも若干ふやして、いよいよこの仕事に力を加えるようにしたい、こういう考えでございます。
  13. 江崎一治

    江崎(一)委員 ただいま承りますというと、日本政府は新たに今年度四箇所の在外事務所をつくられるそうでありますが、この四箇所をどういう地域につくられるのか、また今までの十六箇所も設置されたのは、どういう地点に設置されたのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  14. 千葉皓

    千葉政府委員 お答えいたします。現在設置されております在外事務所は——この予算は昨年の六月から八月にかけて組んだものでありましたために、多少実情とかわつて参つておりまして、この予算書には現にできておるものが十六箇所となつておりますが、実際は十七箇所であります。従いまして来年度二十箇所ということにしますれば、新規のものは三箇所、こういうことになるわけでありますが、現にできてあります十七箇所はどこどこかと申しますと、北米合衆国におきまして五箇所、すなわちニユーヨーク、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ホノルル、シヤトル、この五箇所であります。南米におきましてはブラジルのリオデジヤネイロ、サンパウロ、ウルグアイのモンテヴイデオ、この三箇所、欧州におきましてパリー、ストツクホルム、ブラツセル、へーグ、この四箇所でございます。それからインドにおきましてニユーデリー、カルカツタ、ポンペイの三箇所、パキスタンのカラチ一箇所、タイ国のバンコツク、これで合計十七箇所現在できております。そこで来年度早々できることを期待いたし、現在その交渉をいたしておりますのは、ビルマとペルーの二箇所と、さらにカナダのオツタワに設置してもらいたいということで、ただいま話を進めております。     〔苫米地(英)主査代理退席主査着席
  15. 江崎一治

    江崎(一)委員 お伺いしますと、いわゆる社会主義陣営は一箇所もないようです。米国を中心としたいわゆる資本主義陣営のみに在外事務所設置されるようでありますが、これは一体どういうわけでしようか。引揚げなどの問題については、特にソヴイエト在外事務所を置く必要があるのではないかと、われわれは考えるのですが、いかがですか。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この在外事務所設置は、御承知のように在外事務所設置法内容によります範囲だけに限られております。従つて日本との通商その他の関係の最も濃厚なところに早くする、しかも相手国司令部関係との了解がついて、その了解のもとに日本事務所設置する、こういう状態になつておりますので、将来はなるべく広い範囲在外事務所設置したい。明年度予算は二十箇所そこそこになつておりまするが、さらに情勢が許すならば、あるいはそれ以上に進めたいという予定で、現在までのところは、今申し上げたような情勢で進んでおるのであります。
  17. 江崎一治

    江崎(一)委員 今の御説明の論旨では、現在まで社会主義陣営に一箇所も設置されておらないのは、どういう理由によるのか、了解できません。世界勢力分布からいえば、ビルマやペールーや、その他ニユーデリーなんかに置くよりも、むしろソヴイエトとか、中共なんかに置くことが必要じやないかと思うのです。その点はどうか。
  18. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはただいま申し上げましたように、相手国の要請、連合国の承認、そういうのが中心になつて、いわゆる話合いがつきましたところから折衝をいたすので、その順序が今申し上げたようなことに相なつておるのであります。従つて日本としましては、ここを省いてここに置くというような方針行つたのではなく、今申し上げました、話合いがついたところに設置をするという順序参つたのであります。
  19. 江崎一治

    江崎(一)委員 そういたしますというと、中共ソヴイエトでは、在外事務所を開くということに同意しなかつたのかどうか。政府はそういう希望をされたことがあるのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  20. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は御承知のように、こちらからここ、ここに設置したいということはなかなか困難でありまして、従つて司令部相手国との間に話合いがついて、そうしてそれが現実に現われて来るという状態になつておりますので、中国等におきましては、まだ今までその動きを承知いたしておらないような次第でございます。
  21. 江崎一治

    江崎(一)委員 日本現状といたしましては、この地理的な理由からも、日本国内の産業の情勢から考えても、どうしてもアジア地域と密接な貿易をやらぬことには、日本経済は成立しないと思う。そういう意味において、中国市場というものは、われわれ見のがしてはならぬと思う。そういう点について特に留意されまして、中共地区ソヴイエトにおける在外事務所、ほかよりももつと重要であると考へるこの在外事務所設置方を、どうして政府は総司令部の方へ要請されないのか、また要請されたことがあるのかどうか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  22. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはただいま申し上げましたように、日本がみずから司令部にこうこういう国に置くと申しましても、なかなかそれは従来から困難であります。またそういう立場にも置かれておらないのであります。従つて司令部とその関係国との話合いがついて、そうして初めて日本設置し得るという情勢になつて参るのでありますから、日本が従来からこうこういう立場をもつてこれこれの国にどうするというようなことは、なかなか簡單にはできかねますので、従つてさよう御承知を願いたいと思います。
  23. 江崎一治

    江崎(一)委員 日本占領政策、その他日本講和に至るまでの諸問題は、連合国特にアメリカ、英国、ソヴイエト中国、この四大国の合同行為です。これは戰争中は一致団結して日本を敗北に導くために協力するということ、また日本が打ち負かされた後においては、講和條約に至るまで協力するということが、連合国相互間の確固とした約束です。しかるに一方的に資本主義陣営にのみ在外事務所設置されることが許可されてそして一方の社会主義陣営においては、一箇所も許可されないという矛盾は、一体どこから来るのか、これは日本民族に大きな不幸をもたらすのではないかと思いますが、その点について外務省見解を明らかにしていただきたいと思います。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 外務省といたしましては、在外事務所設置法精神等から考えまして、決していずれの陣営という考えには行つておらないのであります。あの設置法内容に盛つてあります仕事をするに必要なところに、なるべく置いてほしいというのは、これは当然の希望でありまするし、国民希望であります。決してこれを主義によつて区別したという態度は一つもとつておりません。
  25. 江崎一治

    江崎(一)委員 日本政府は区別しておらないと言われるのですが、このあてがいぶちのような設置方針について、日本政府はこれに対して意見を出されないのか、意見が全然取上げられないのかどうか。総司令部においてはそういうことに一顧も與えないのかどうか、その点はどうです。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 別にあてがいぶちということでもないと思います。結局相手国とよく相談ができたところから設置するということになりますので、相手国承知し、また日本ももちろんこれの設置希望しておるところを、司令部でまとめて話をする、それを日本設置する、こういう順序になります。決して今のようなことはないと存じます。
  27. 江崎一治

    江崎(一)委員 情報部報道課長もおられますので、お伺いしたいと思いますが、しからばソヴイエト中共では、日本在外事務所をつくるということについて、反対意見寅表示されたことがかつてありますかどうか、その点を明確にしたいと思います。
  28. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは今申し上げたような順序で参りますので、これは反対意思表示をするせぬという問題ではないのであります。両方の話ができて、そして通商その他に便益を生ずる場合に、ぜひこの施設が必要だというので、話合いができ上つて来るのでありますから、今までの順序としまして、むりにこだわつて来ておるところは一つもないと存じます。
  29. 江崎一治

    江崎(一)委員 説明のための説明をしていただいておつたのでは、いつまでたつても結論が出ないと思います。そこで国会においてははつきり真意を話してもらいたい。これは私議員個人に正答するのではなく、日本国民に回答していただくことになるのですから、その点は腹を割つて話してもらいたいと思う。しつこいようですが、ソヴイエトに対しては引揚げの問題があります。これは在外事務所があると事実が明確になります。日本国内経済事情はその有効需要が減じて、購買力がない。日本のこの経済状態は、どうしてもあの中共の大きな市場と提携しなければ、日本経済はどうにもならぬ状態だ。何といつて日本工業国であります。日本がたがた機械アメリカには売れません。どうしてもアジアの大きな市場日本経済が直結しない限り、日本の真の経済復興はないのであります。そういう意味において、どうしても中共にも在外事務所が必要だと考えます。ところがどうしてもできないというのが現状だ。総司令部ソヴイエト並びに中共との話合いができないということについて、情報部関係の人もおられると思いますので、そういうような世界の二大勢力間の経緯について、どういう関係で、どうなつているかを、この公の場所において明確にしていただきたいと考えるのです。
  30. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この在外事務所は、実はこの仕事内容は、御案内のように制限されておりまして、通商関係中心にした文化等を取扱うところもありますが、その中心は規定の中にあります十二、三の項目に限られております。従つて引揚げ問題等は、実はこの対象には現在全然ないのであります。またお話のように、ソヴイエト並びに中共等在外事務所設置するということは、実は話合いが全然まだないのであります。
  31. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 今の在外公館の問題でありますが、この経費を見ると、これを二十館にわけてみると、問題にならない少額なのです。世間で、どうも在外事務所ができたけれども、あまり役には立たないというような評判もありますが、その反面には、こういう予算あまりにも少くて、動きがとれないのじやないかというぐあいに想像もされるのですが、この点はどういうようになつておりますか。御説明願いたいと思います。
  32. 上林山榮吉

    上林主査 私も苫米地さんと同様な実感を持つておりますので、この点を明瞭にせられたいと思うのであります。私ほかの在外事務所は知りませんが、アメリカの各在外事務所の活動状況及びその規模について、実地に見て参つたのでありますが、あれでは單に渡航者のちよつとした軽い援助をするという程度のものであつて、いわゆる貿易その他の問題について活動状況が危ぶまれる点が非常に多いと思います。御承知通りに、向うでは一労働者でも、あるいは郵便局の配達夫でも、自動車を持つておるのでありますが、いまだ平和会議の来ない以前の日本在外事務所として考えてみても、自動車一台も持つていないというような状態では、これはまことに気の毒であるという実感をわれわれ持つておるのであります。今苫米地氏の非常に適切な御質問がありましたので、関連して、近い将来にどの程度の活動ができるようになるのか、あるいは人物についても、ここでとやかく申したくありませんが、どういう程度の人が今後行くのか、あるいは人員はどの程度ふやすつもりであるか、そういう問題についてもあわせて答弁を希望いたします。
  33. 千葉皓

    千葉政府委員 来年度の予算に盛りました四億九千万円、これは二十館にわけますと、一館当り二千五百万円程度でございます。これは私どもから見ましても、現地からの報告によりましても、必ずしも十分ではございません。しかしどうしてそれではそういう場合に十分でない予算を国会にお諮りするかと申しますと、これは在外公館と申しますか、現在の在外事務所が開設されますときに、いろいろないきさつがございまして、それは御承知と思いますが、関係方面から要請がございまして、もとよりわれわれの希望しておつたところでありますが、在外事務所をこれから開いたらどうだというお話がございましたときに、日本経済状態と申しますか、外貨の收支の関係などから考えまして、関係方面からも大体これくらいの経費でやつたらよかろう、そういうような示唆がありましたことに基いて始めたわけであります。外務省といたしましても、初めは様子もわかりませんので、大体そういうことでスータートしようということでやり出したのでありますが、もう一年たつてみますと、なるほど事務所事務費、あるいはいろいろな経費が足りないということがわかつて参りましたので、これにつきましては、逐次関係方面と折衝いたしまして、増額方を交渉いたしております。現に最近ではニユーヨークの事務所につきましても、従来職員が四角でありましたものをさらに二名ふやすことを承認され、その上現地で雇いますアメリカ人の職員についても、二名増員されることが認められるという状態でございまして、不足を見まして逐次先方に折衝するということでいたしおります。なかなか遅々といたしまして、私どもの思うようにはかどらないのでありますが、来年度におきましては、ここに計上してあります以上のものを実際には使わせていただきたいと存じております。  人員につきましては、委員長からお話がございましたが、人員も今申した通り、ニユーヨークでは二名ふやしてもらいましたが、その二名では実際は足りないと思います。ほかの在外事務所につきましても、大体現在の定員は四名が標準でございまして、小さいところは二名、五名ということになつております。実際は二名のところなどは、所長が病気をしますと、仕事がとまつてしまうというような状態でございまして、せつかく事務所を開きました趣旨にも非常に反することになつておりますので、ぜひ各館とも増員いたしたいと考えております。今申しました通り、一々これは関係方面と相談をいたして、その承認を得なければならない、そういうふうになつておりますので、今後ともその努力はいたしたいと考えます。
  34. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そういたしますと、本年度はこれだけの予算で十分やつて行けるというお見通しでございますか。この定員で二十箇所を、この予算でやつて行けるというお考えでありますか、これをお伺いしたいと思います。
  35. 千葉皓

    千葉政府委員 この四億九千万円の予算は、現在の規模のもので二十館を予定した場合の予算でございまして、今後折衝によりまして、たとえば定員をふやすことができました場合、あるいは二十館以上に在外事務所の数をふやすことができるようになりましたあかつきには、これでは足りないのであります。それにつきましては、別に政府といたしましては、大蔵省所管の予算に二十億の経費を計上いたしまして——これは主計局に、ございまして「海外出張其他海外拂関係諸費」ということで、金額は二十億になつております。この二十億のうちより、今後在外公館の増加があつた場合には、移しかえの方法によつて所要の経費を使うことができる、そういうふうになつておりますので、この大蔵省の二十億のうちから、外務省といたしましては必要な経費を移してもらうということにいたしております。
  36. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さきに委員長から御質問の、今後内容の充実、人物等についてどういう考えかということについて、一応御答弁申し上げておきます。  ただいま会計課長から御答弁申し上げましたように、事実経費は不十分であり、かつ直接においでになつた場合、ことに以前大使館、公使館、領事館等を御訪問になつて、昨今さらにおいでになつて、その状態を比較されると、なおその感が深いと存じます。これはどうしてもやむを得ない状態であつて、従来の大使館、公使館、領事館のような独立したすべての仕事ができません関係で、限られた範囲でやつておりますので、あるいはおいでになつても十分な資料などもできにくいと存ずるのでありまして、一層その感をお持ちになつたと存じます。しかしだんだんとお話了解されて、あるいは自動車を置くとか、ある程度まで進んで来るという情勢にはなつておりますが、仕事そのものが限られた範囲であり、人員が限られた予算範囲内における定員でありますので、十分な機能発揮ということは、かつての大使館、公使館、領事館と御比較になりますと、困難であろうと存じます。従つて現在の状態におきまして、最も適当と思いまする人たちをすくつて出してはおりますが、そういう意味において、特に直接現地においでになりました場合に、そういう御感想が深いと存じます。今後独立した国になりまして、在外公館等が復活せられるようになりますと、完全な公館になる次第であります。現在の状態におきましては、予備的に二十億の金も用意しておりますので、だんだんと許されますなら、十分な予算的な処置をなし得ると考えております。
  37. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいまの御説明了解はいたしましたが、今のような中途半端なものであるというと、民間では信頼しない。無用の長物だといいますし、また国費の浪費になることでありますから、どうか国家財政窮乏の折とはいえ、国費の浪費にならないように、必要だけの経費をとつて、有効に働くようにしていただくことを希望いたします。  次に「講和條約の将来に備え、国際連合の專門機関及びその他の国際機関並びに其の国際機関が主宰する会議等の実情の調査」云々ということが四百七ページに述べてありますが、その專門機関、国際機関、会議というようなものは、どういうものを御考慮になつておるか、それを伺いたいのであります。
  38. 千葉皓

    千葉政府委員 二十六年度中に政府といたしまして締結または加入を希望いたしております條約について申しますと、二国間のものとしましては、これは政府希望でございますが、日・米通商航海條約、あるいは日・英貿易金融協定、日・印通商航海條約、あるいは日・タイ間の貿易金融協定、そういうものであります。多数国間のものとしましては、世界気象機関に関する條約、それから貿易及び関税に関する一般協定、国際通貨基金に関する規約、国際復興開発銀行規約、それから国際連合中心になつてあつせんしております種々な刊行物に関する條約、そういうものであります。
  39. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいま伺いましたもののうちには、講和條約の将来にそなえて、というよりは、講和條約ができなければ加入できないものがあげられております。そうすると、先ほどの講和條約ができた上は追加予算で考慮してもらいたいというようなお話とちよつと矛盾して、了解できない点があるのですが、いかがですか。
  40. 千葉皓

    千葉政府委員 ここに計上いたしました経費は、これらの條約もしくは国際機関に参加するための諸準備の調査研究をいたすことを目的といたしたものでありまして、ただいま二十六年度中にこれらの條約に加入あるいは締結する希望であると申しましたけれども、予算に計上いたしましたのは、その準備研究のための経費でありまして実際にはこの條約そのものに加入するには別に経費がいると思うのであります。それは計上してございません。これらの條約に加入をする希望をしているということはもちろんでございますが、もとより平和の克復後でなくては、こういう條約は正式に締結できないわけであります。お説の通り、実際に條約に参加できますのは講和條約後と存じますが、しかし中に比較的技術的なものになりますと、講和條約前でも加入できるものがあろうかと考えられるのであります。列挙しました中には、講和條約ができなければ成立し得ないようなものがあることは、御指摘の通りであります。
  41. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 そうしますと、これは單に資料を検討するとか、人を派遣して資料を集めるとか、またその資料の整理をするとかいうような意味のものでありますか。
  42. 千葉皓

    千葉政府委員 その通りであります。
  43. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 次にお伺いいたしたいのは、四百五ページでございますが、国際文化事業実施に必要な経費というのがありますが、昨年度はこれに対してどういうことをなさいましたか、それをひとつ伺いたいと思います。またあわせて、本年度に予定しておる事業はどういうことであるか。
  44. 千葉皓

    千葉政府委員 この文化事業関係経費は、大体その半分がユネスコ関係経費であります。あとの申分は、日本の文化、あるいは日本の諸制度についてのいろいろな資料を集めまして、これをそういうものを求める方面に配付するということでございます。計画の内容は、二十六年度も二十五年度と大体同じでありますが、ユネスコ関係におきましては、地方におきましてこの関係の種々な会合を開催し、あるいはユネスコについての啓発事業の実施に必要な講演会、そういつたユネスコ関係の宣伝をかねたものが大部分であります。一方の文化関係の資料の收集、配付につきましては、これはたとえば国際文化振興会とか、あるいは交通公社などが、日本の文化について種々有用な資料をつくつておりますので、そういうものをもらい受けまして、これを在留外国人の求めに応じて配付する、あるいは一部は在外事務所にも送つて使つてもらう、そういうようなことをやつております。二十五年度でやりました通り、二十六年度も大体同じような計画を実施したいと考えております。
  45. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 以前に日米学生会議などに補助金を出しておつたようですが、近ごろはそれはどんなふうになつておりますか。
  46. 千葉皓

    千葉政府委員 教育関係の事業につきまして政府が補助金を出すということについては、憲法の規定がございまして、禁ぜられております。従いまして従来そういう補助をいたしましたけれども、現在いたしておりません。
  47. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 四百十一ページにありますが、在外公館借入金整理準備審査会——整理準備の階梯にあるらしいのでありますが、海外において引揚民が領事館その他に貸して、帰つて来て何年たつてもその金が返してもらえない。日本へ帰ればすぐにやるからという話であつたにかかわらず、それがもらえないために非常に窮乏している人があちらこちらにあり、陳情にも来ているのですが、これはいつごろ整理ができて、いつごろ支拂いができるでしようか、その点ちよつとお伺いいたします。
  48. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問のように、すでに五年以上たちまして、在外公館の借入金をすみやかに処理をし、支拂いをするということは、たいへん急ぐ問題でございますが、一昨年国会の御承認を得て、在外公館借入金の処置のための審査会の設置法を施行いたしまして、それによつて、昨年三月までに貸した方から申請をして、それによつて現在これの審査委員会をつくつて審査をいたしております。大体数は二十一万件ほど出まして、その中で、今日までの審査によりまして一応これは借入金として該当するであろうと予想されますのが十三万八千、さらに特別なケースとして調査を要すると認められますのが五万八千、それから今日までの調査によりまして、一応これは該当しないとはつきり思われますのが一万四千件、大体ケースとしまして七百主体ぐらいあります。その中で現在まで九十三主体を中心として約二万件あまりに、昨年の暮に確認証を出しまして——この確認証は当時の借り上げた金をそのまま書いておるわけであります。これは該当すると思われますものには、審査会で審査をして、それによつて外務大臣から確認証を出すのでありますが、その確認証をまず出しまして、それによつて今度は支拂いという問題が出て参ります。この支拂いにつきましては、今国会に支拂いに関する法律を大蔵省関係から出して、結局当時の向うの金を幾ら日本の通貨で支拂うかというレートの問題になつて参りますので、いろいろめんどうなこともありましようが、そういうふうに一応法律を出して、そして昭和二十六年度内に支拂いをぜひ開始して、本人の方に確認証だけでなしに、それが金としてすみやかに渡りますような方法をとる、こういう順序で進んでおります。従いまして外務省審査会を開いて毎週一回ずつ事務的にやりましたのを、委員の方で審査をしながら、大体二箇月目ぐらいに確認証を出して、なるべく早くそれを終了いたしたいと存じておりますが、ただ最も困難な五万八千くらいが少しあとに残るのではないか、早い方から早くして、安心を早く與えたいというので現在進んでおります。
  49. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の問題に関連してちよつと発言を求めます。今在外公館借入金の問題を御説明いただきましたが、これは関係者が非常に憂慮している問題でありますが、今国会にその支拂いに関する法律を政府としては提案なさるおつもりでございますか、それをはつきり承りたい。  それからもう一つは、その予算的措置をどういうふうに今度の予算案でしてあるか、この点、金額も含めて御報告願いたい。
  50. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今の第一点につきまして、法律案を今国会に提出する予定で進めております。それから支拂い関係予算という問題でありますが、これは大蔵省関係に実はなりますので外務省にはもちろん計上はいたしておりませんが、今度の法律案を今国会に急いで出したいというのは、支拂いに要する関係の法案を出して、そしてまずレートの問題を決定して、それから支拂うという順序になつて来ると思います。この国会にはぜひ出したいというので、今盛んに進めております。
  51. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その予算はもちろん大蔵省の方に計上すべきものでありますが、外務省としても御関心をもつて法案を出す以上は、当然金の裏づけがなければ意味がないのですから、お手当をなさつておると思うのですが、大蔵省の所管でも、どこの所管でもよろしゆうございますが、今度の予算案に金の準備までしてあるのかどうか。このことが一つと、それから法案を準備していらつしやる限りは、レートの問題とか、そういうことも御研究になつていると思いますが、大体どういう目途でさばくおつもりでありますか。その点をもう少し明確に御説明を願いたい。
  52. 草葉隆圓

    草葉政府委員 結局支拂い問題の中心はレートの問題だと思うのです。レートの決定というものは、影響を與えるところが最も大きいと思う。従つてレートの決定に関してのことさえきまりますと、あとは單なる予算的措置で済むのであります。ところが当時の状態と現在とを比較しますと、レートの決定ということが、さきに申し上げました総数二十一万——実際は十六、七万になりましようが、その方々に與える影響が最も大きいのであります。それは十分各方面から検討して、日本経済力とも考えてみて、妥当なるレートの決定というものが問題の中心になつて来る。これが今まで遅れておつたゆえんだと思います。従つて今度の法律案の主眼は、このレートの決定をどうしてするか。むしろこれは大蔵省で従来も相当詳細な研究をいたしておられるようでありますが、さてどの程度でレートの決定をするかということになりますと、やはり何か特別なそういう機関でも設けてする方が、あるいは妥当になるという点もありましようし、そういう点についての内容をうたつた法案というものが一つ考えられると存じます。従つてそれができますと、予算的措置は相当簡單にできるのじやないか。それなら予算に幾ら計上しておるかという問題になりますと、今予算に幾ら計上してあるというところまでは、レートが決定しておりませんから困難でありますが、多分大蔵省はそういう方針で進んでおられるのではないかと存じます。これは大蔵省関係になりますけれども、外務省といたしましては、一日も早く——現金という言葉は妥当ではありませんが、本人の方にいわゆるお金が渡るような方法を講じたいという意味で、外務省と大蔵省と話合いを進めておる次第でございます。そういう法案を今国会に出したい。しかもなるべく年度内に支拂いを開始したいという考えで話を進めておる次第であります。
  53. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 どうも草葉次官のお話を承ると、あいまいでよくわからないのですが、私はここで野党攻勢をやるなんという考えは毛頭ありません。関係者の身になつてぜひはつきりしていただきたいと思うのでお尋ねするのですが、ただいまの御答弁によりますと、審議会のようなものでもおつくりになつて、そうしてレートの決定を合理的に調整する、そういうのも一つの案だとおつしやつておりましたが、大体そういう方法でレートをおきめなさるおつもりでいらつしやいましようか。そういう内容の法案を御準備になつておるか、こういう意味です。それからレートが決定しないと金額は計上されないわけであります。従つて大蔵省で準備しているというのは解せない。しているだろうというお話ですが、しかし外務省としては、大蔵省に対して請求してひつぱり出す方の立場にあるのですから、そこまで見届けておいていただかなければ、職責を全うできないのではないか。従つて順序からいいますると、レートを決定する、それで円がきまり、総額が幾らになる、こういうことになると思う。今のお話では、この予算案に私は載つていないのではないかという疑問を持つのですが、もし必要とすれば、追加予算で計上しなければならないのじやないかとも思うのですが、その辺はいかがですか。あとで彈力的にそういうものを計上できるような予算措置ができるかということを、私は非常に疑問に思つております。その点を明確にしていただきたい。それから大体きめるとすれば、最高最低がどれくらいということは見当でつくと思う。大体最高はこれぐらいになるだろう、最低はこれぐらいになるだろう、そうすると全部のヴオリユームがどれぐらいになるだろう、その辺はどういうふうな御研究をしていらつしやいますか、その点もあわせてお尋ねいたしたいと思います。
  54. 草葉隆圓

    草葉政府委員 法案は最近盛んに検討しながら進めております。今ここでその内容を申し上げる段階にはまだ立至つていないと思いますが、できるだけ早く法案を提出するように、外務省としても相談を受けながら進めております。それで予算処置になりますと、お話のように、これによつてレートが決定しまして、そのレートは結局当時の法幣に対して現在の日本の通貨で幾らにするか、あるいは連銀券は幾らにするかという具体的の問題は、一々レートを決定して、初めて支拂いということになつて参ります。これは追加予算なり、予算的処置は、それぞれの方法で進めることになると思います。おそらく本年度の当初予算には、それに要する支排いというのは載つておらないと存じます。しかしレートが決定して、いよいよ支拂いの法律を出しますると、当然支拂を開始できるようになりますから、それに基いて予算的処置は進めて行くという段取になると思います。かような準備を進めておりまする最高最低というのは、全体としてどのくらいの見込みをするかというお話とも存じますが、これは押えようによつて、あるいは二百億にもなりましようし、あるいは百億にもなりましようし、あるいは五十億にもなりましようが、全体を、出ておりまする二十一万あるいは十六、七万のケースをただそろばんに入れて、すつとそのままする、そしてこのぐらいで押えるというような目途を持つて来るのは、結局レートを決定してからでないと、むしろあまりに政治的過ぎることになつて来るおそれがあると存じます。従つてもう少し事務的な検討をして、それから政治的な押えというのが必要になつて来はしないか、予算を十億円で押えよう、五十億円で押えようという範囲で来ることは、かえつて問題を起しはせぬかと考えます。
  55. 上林山榮吉

    上林主査 外務省の所管については、まだ重要な質疑が残つておるようでありますから、さらに継続することにいたしまして、この際文部大臣が見えておりますので、文部省の所管についての説明を承りたいと思います。説明を聞いたあとで、さらに外務省の所管に移ります。天野文部大臣。
  56. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 昭和二十六年度文部省所管予算大要につきまして、御説明申し上げます。  昭和二十六年度文部省所管予算額は二百六十九億五千八百七十四万七千円でありまして、これを前年度予算額二百十五億九百三十六万六千円に比較いたしますれば、五十四億四千九百三十八万千円を増加いたしております。今昭和二十六年度予算額のうち、重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は義務教育児童、生徒に対する教科書の無償配布に必要な経費であります。義務教育無償の原則を確立するため、小学校、盲学校及び聾学校児童のうち、第一学年生に対して、国語、算数、理科等の教科書を無償で配布するに必要な経費一億三千九百二十六万八千円を、初等中等教育局に計上したのであります。  第二は現職教員再教育講習会出席旅費補助に必要な経費であります。教育職員免許法の施行に伴いまして、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲聾学校の現職教員が所定の資格を得、かつ資質の向上に努めるため、現職教員再教育講習会に出席する旅費の補助に必要な経費一億五千五百四十五万五千円を、初等中等教育局に計上したのであります。  第三は育英事業の拡充に必要な経費であります。日本育英会法に基いて、優秀であるが、経済的な理由によつて修学困難な学生、生徒に学資を貸與する事業を行つています日本育英会に対し、育英資金を貸し付けるとともに、その事務費の補助に必要な経費二十四億二千六百七十万二千円を、大学学術局に計上したのであります。  第四は科学研究の振興に必要な経費であります。わが国力の基礎をつちかうため、科学研究費交付金、科学試験研究費、補助金等に必要な経費五億円を大学学術局に計上したのであります。  第五は私立学校の振興に必要な経費であります。私立学校教育の振興をはかるため、戰災等によつて損害を受けました私立学校に対して、その復旧に必要な資金の一部を貸し付ける等の経費十億六百八十一万千円を、管理局に計上したのであります。  第六は文教施設の整備に必要な経費であります。戰災を受けました国立学校その他の建物を復旧するため、国立学校等の施設整備に必要な経費六億三千四百七万九千円、公立学校その他の施設整備に必要な経費四十四億五千四百六十四万千円、文教施設災害復旧に必要な経費五億六千百五十八万八千円を、それぞれ管理局に計上したのであります。  第七は直轄学校運営に必要な経費であります。国立の大学、学校、附置研究所及び同附属病院の運営のため必要な経費百四十八億七百八十八万二千円のうち、百十億三千六百三十九万七千円を国立学校に、十億四千九百四十四万千円を大学附置研究所に、二十七億二千二百四万四千円を大学附属病院に計上したのであります。  第八は文化財保存に必要な経費であります。国宝その他の重要文化財を保護するため、その施策を講ずるに必要な経費三億五百二十万六千円を、文化財保護委員会に計上したのであります。  このほか、中等教育の振興、教科用図書の編修、改訂、発行、検定、体育並びに保健対策、学徒の厚生援護、学術資料の整備、現職教員再教育講座、社会教育及び芸術文化の振興、教育文化の統計調査、学校給食の普及奨励、その他文部行政及び学術振興上緊急欠くべからざる諸般の施策を講ずるため、それぞれ必要な経費を計上したのであります。  以上は文部省所管に属する昭和二十六年度予算大要につきまして御説明申し上げた次第でございます。なにとぞ御審議の上御協賛あらんことを希望いたします。
  57. 上林山榮吉

    上林主査 時間の関係がありますので、長くはできませんが、この際文部大臣に対して質問がございますれば……。江崎君。
  58. 江崎一治

    江崎(一)委員 この際文部大臣が来ておられますので、教職員関係の給與の問題についてお伺いをいたしたいと思います。文部大臣に直接関係のある日教組では、政府がいつも使われますところのCPSの消費者価格を基礎といたしまして、給與がこれくらいなければとうてい生活できないという基準を出しております。それによりますと、税込み一万二千二百円ペースという要求でありまして、これはまた生活上の実態調査の上に立つたところの基準にも合致するのでありましていまや日教組が中心となりまして、全官公労は申すに及ばず、民間の各労働者もやはりこれに同調するというかつこうが出ておるのです。これは日教組だけでなくて、広範な日本の労働者の切実な要求になつております。文部大臣は、自分の所管のこの教職員の方たちが、教職員としてりつぱに自分の仕事をやつて行くためには、これだけ必要だというこの要求に対して、どういうように考えておられるか。おそらくこの日教組の要求について御存じであろうと、思いますが、これは平衡交付金の問題などと関連いたしまして、非常に重要でありますので、この際特に大臣から明確な御答弁を願いたいと考えます。
  59. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 給與の少いということは、ひとり教職員に限らず、私は官公吏すべて非常に低い、ほんとうをいうならば、もつと高くするということが、ぜひ必要だというふうに考えております。ことに教職員については現在のような給與では不十分だと考えております。しかし現在の日本の置かれている経済事情からいえば、自分らの思う通りというわけにも行きませんけれども、これでは不十分ですから、教職員については別表をつくりたいという考えをもつて、目下人事院と交渉をいたしております。
  60. 江崎一治

    江崎(一)委員 私も文部大臣の今御報告になりました内容について多少聞いております。それを考慮いたしましても、これは低賃金のそしりを免れぬのでありまして、とうてい日本の第二の国民教育する教職員の生活を保障する段階ではないのであります。予算上、資金上どうしても仕方がないというようにいつも説明されるのでありますけれども、予算全般をわれわれが見ますと、これはまつたく不必要であるというような支出がたくさんあります。日本はもう戰後六年、いまだに終戰処理費が莫大な金額にのぼつておりますが、これは一体何に使うのだろうか、はなはだ疑問に思う次第であります。そのほかいろいろの予備費とか、いろいろの形でよけいな費用が計上されております。特に日本自衛のために警察予備隊をつくらなければならぬというようなことをいい、またどこからか侵略して来るといつて、べらぼうな金を使つておる。こういう非生産的の冗費を省いて、第二の国民教育に当るところの教職員のためにどんどん割くというような、大きな政治的な手を文部大臣はぜひ打つてもらわなければならぬのではないかと私は考えるのでありますが、この点について文部大臣はどう考えておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  61. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は今の御趣旨には非常に賛成なので、教職員の給與をもつと高めたいということは賛成でございますが、やはりそのために国家としてぜひとも必要なものは、これはいたし方がないわけでございますから、教職員の給與を上げたいとは思いますけれども、やはり財政全般につきましては、大蔵大臣のお考えによりましてやるということは、当然のことでございます。ただ自分の所管のことだけというわけにも参りませんから、できる範囲においてできるだけよい給與にしたいということを念願いたし、また事実そう努めておる次第でございます。
  62. 江崎一治

    江崎(一)委員 おそらく文部大臣も御存じだろうと思いますが、小学校、中学校では、PTAが中心になりまして、教職員の生活上の足らない部分をいろいろの形で補つております。そのために学童の父兄に対しては、非常に大きな経済的な重荷がかかつておる。こういうことではこの義務教育の徹底ということは、なかなかむずかしなります。教科書を今度は無料で交付するというような案がありましたが、それ以上大きな問題であると思います。大きな盲点はそこにあるということ、その点は十分考慮して考えていただきたいと思いますが、私たちの考えから行きますと、この予算の基礎であるところの人件費、これはまつたく人間らしい生活を無視したところの基準に立てられておるので、当然この予算は組みかえられなければならないと信ずるのでありますが、この教職員の実態をよく調査研究されまして、こういう点からでも、この予算を大きく組み直すための大きな努力を、文部大臣としてぜひ拂つていただきたいと考える次第であります。  さらに一つこの際お伺いしておきたいことがあります。これは具体的な問題でありますが、レツド・パージとあるいは関係があるかもしれません。問題は、滋賀県の彦根市に経済專門学校というのがあります。ここの教授の一人に亘理俊雄という人がおります。この経済專門学校は今度滋賀大学に昇格する。そこでこの経済專門学校の教授のほとんど全部に、新制大学である滋賀大学の教授のポジシヨンが内示されておる。ところがただ一人この亘理俊雄という教授は、思想的におもしろくない、こういうような理由で、何らの内示もない。このまま行きますと、経済專門学校は三月で廃校になるわけです。そうするとこれは失職するのか、その地位は一体どうなるのか、その点について明確に御答弁願いたいと考えます。これは滋賀県だけじやありません。全国的にこういう例がたくさんありますので、この際文部大臣のお考えを承つておきたいと思います。
  63. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今おつしやつた、その個人的なことは、私よく聞いておりません。しかしこの切りかえの際に、全部の従来の教授がみんな新制大学の教授になるということは不可能なことでございまして、従つてある人たちが新制大学に移らない場合もあるということも、よんどころないかと思つております。しかしその具体的な事実は、私は承知いたしておりません。
  64. 江崎一治

    江崎(一)委員 そうしますと、今の場合、彦根の経済專門学校が廃校ということになりますが、そうしますと旧経済專門学校の教授の地位はどうなりますか。
  65. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまも申しましたように、そういう切りかえの際には、やはり資格を持つた者だけが大学の方に行くということになつております。それを大学設置委員会の方で審査をいたしまして、資格を持つた人だけが行くということになります。
  66. 江崎一治

    江崎(一)委員 その亘理教授というのは資格があるのかないのか知りませんが、一体どういうことで自分だけ内示がないのかということを、学長にいろいろ質問をいたしましても、何とも答えないのです。おしに問答するような状態、これではまつたく話にならぬ、実にこれは文部行政としてゆゆしき問題だと思いますので、文部大臣から直接、こういう問題につきましては事態が明確になりますように、指示をしていただきたいと思います。
  67. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいま申して参りましたように、私はよく事情を知りませんからして、よく調べて適当にいたすことにいたします。
  68. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 今度夜間の短期大学ができるようでありまして、これは晝間働いて夜間に勉強する人々にとつて、まことにけつこうなことであると存じますが、現在あります大学の最も困難としておるのは、適当なりつぱな教授を得るということであり、これがなかなか得られないので、教育内容がまことに大学教育にふさわしからぬものもあるやに承つておるのであります。ところがそういうような大学の今分校とかいうような関係になつておるのが、一々独立して行こうというような運動もあることを知つておるのでありますが、この際むしろ文部省といたしましては、あまりけつこうでない大学は整理して、いい大学を補助して確立して行くということが、非常に必要な状態に直面してはいないか、一言いいかえれば、大学の資格審査をもう一度やり直す、もしくは嚴重に検討してみる。予期の目的を達するように進渉しておるかどうか、経営されておるか、事業行われておるか、こういうことをよくお調べになつて、検討する必要がある時機ではないか、私はこう考えておりますが、これに対して大臣の御所見はいかがでございましようか、お伺いいたします。
  69. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまおつしやいましたことは、実際そうなんであつて、第一経済力がないということも重要なことですが、それ以上教授力がないということが、大学の創設ということにとつては非常に困難なことでございますから、今のような御意見が出るのももつともでございますけれども、しかし一旦できた大学はできるだけどういう方法かでこれを保護して、無事に発達させるということを考える方がよくはないか、けれどもそれも程度問題でございますから、設置委員会の方で絶えず注意をして、はたしてどうなつておるかということを吟味してもらうように、私の方でも頼んでおりますが、なお一層そういう点についても注意をいたしたいと思つております。
  70. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 現在、いわゆる昔の師範学校が各所にあり、それが各所で分校というのですか、一つの総合的なものでまとまつておるのが、今別々に独立して行きたいという運動が非常に盛んなようでありますが、これは文部省としてはどういうふうにお考えになつておるのでございましようか。これを独立させて行くつもりであるか、もしくは今のままで行つていいというお考えですか、その点をひとつお伺いしたい。
  71. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 そこにもやはりむずかしい問題があるように思つておりますが、しかし全体とすれば、やはり統合ということがよいことだと考えますので、今そのために大学設置委員会にその特別の部門をつくつて、そういう点を研究いたしております。
  72. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 次にお伺いいたしたいのは、資格を得るための再教育の講習をやつておいでになります。これに対して今年は相当の予算が見積つてあるようでありますが、これは一体どのくらいの標準を立てていらつしやるのですか、これを承りたいと思います。
  73. 辻田力

    ○辻田政府委員 一人当りに割つてということには行きませんが、と申しますのは人によつていろいろ期間とか、必要がある場合とかありますので大体一日四十円の割合で旅費を計算いたしまして、その出席日数等も勘案いたしまして計算をいたしておるのであります。
  74. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 むろん平均で出ておると思いますが、一日四十円というのはあまりに少いように感ぜられますが、これはほかからまだ費用が出るというお考えのもとに、四十円という数六が出ておるのでございましようか。
  75. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいま申しましたのは、一日四十円の割合で計算いたしまして、それに日数をかけて、その大体三分の一を政府で補助する、三分の一は地方庁、三分の一は個人ということになりますが、三分の一だけを政府で補助するということになつております。
  76. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 この再教育の問題は、これを受けないと資格が得られないという重大な問題であるのであります。私は必ずしもこの講習会が非常に有効であつて、そのためにりつぱな資格を得られる人になるとも考えません。むしろ自分で研究している人にもつといい成績をあげている人もあると考えるのでありますが、こういう形式的な階段を踏まなければ資格が得られないとすれば、これを強制するとするならば、私は国家でその経費の大部分を持つてやるということにしないと、たとい三分の一自己負担ということになりましても、これは現在の教職員の給與からすると、なかなか大きな負担であると思うのであります。これが自由に自分から研究して資格をとろうというのであるならば、これは個人が全額負担しても、向学心に燃えておる人は喜んでやるでありましようが、これが強制せられたというような気持があるために、どうも食うものも食わないで節約して講習を受けなければならぬという気持になつておらないらしく、私は見受けておるのであります。そこで昨年あたりの実情を見ますと、一方では地方教育委員会に行きまして金を出せと迫る。他方ではPTAに迫つて父兄から金を出させるというようなことが、しきりに行われておつたのであります。従いまして先ほどもお話がありましたが、父兄の方も相当負担が重くなつておるのでありますから、この際にこういう経費は、地方と本省と双方で何とかカバーしてやるくらいの予算をとつていただきたいと思うのですが、これは貧乏国家だからなかなか困難でしようが、将来に対する努力のお見込みをひとつ承つておきたいのであります。
  77. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまのお考えは私も同感でございます。しかし免許状のための講習ということは、まだ改良の余地があると思つております。たとえば通信教授によつてやるとか、あるいは自分で研究して試験を受けるとか、また期間も現に延ばしましたが、一層これを延ばすことを考えるとか、そういうことを今研究しておりますから、そういう方面からこれを改良して行くことも必要なのではないか。他方において、今おつしやる通りに、ほんとうによい講習会ならば、全額自分が負担してもよいというくらいでありますから、そういうようにして、ぜひとも自分が出たいと思うものは、三分の一負担するということも、本来それを必ずせにやならぬというのではないのですから、私は今の日本現状では、よんどころないのではないかというように思つております。
  78. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 ただいま大臣のお説を伺いましたが、まことに私も同感であり、けつこうであると思うのであります。どうかそういうふうなぐあいに改善を加えるとともに、もし現在の制度を続けて行かれるのであるならば、もう少し予算的の処置を御努力願いたいと思う次第であります。  次に伺いたいのは、育英資金のことでありますが、これは趣旨におきましても、実際の交付からいつても、非常に余つておると私は見ておるのであります。私は以前にも申したことがあるのでありますが、借りた学費をある時期になつて返せというようなことになつておりますが、はたしてその返還の率はどんなふうになつておりましようか。
  79. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これは私は後に数学的に申し上げることもできるのですが、毎年育英会では返還率を大体予想しておるのですが、返還はいつもその二倍、三倍くらいあつて、非常によい返還率を示しております。数学的に御必要でしたらまたお答えいたします。
  80. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 私は、返還率がいいということは、非常に喜ばしい一つの事象であると存じますけれども、中には相当返さない人もあると思うのであります。むしろその返さない人の方に、自分が育英資金をもらつておることを誇りにしておるような人もあるやに聞いておるのであります。私はこういう経費は、むしろ金と名誉と二つを與えてしまう。いわゆるスカラシツプにして、返還などを希望しない。そのかわり嚴正にいい人を選んで、育英資金をもらう価値のある人間だという名誉と、それから返還のない金とをやつてしまう方が、むしろ効果がもつとあがるのじやないかと思う。学費に窮したから育英資金の金を借りたというよりは、自分がスカラシツプをとるようなぐあいに、自分の力で、世間に認められて金と名誉とをもらう、この方が人間を伸ばす上からいつてもいいので、わずかばかりのものが返されて来るということは、決して国家として大きな問題ではないと思うのでありますが、やはりこの返還制度をどこまでも嚴守してお進めになるお考えでございますか。
  81. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいま返還しない者も相当あるやに聞くとおつしやつたように私は聞きましたが、私の知る限りでは、返還しない者はほとんどないのではないか、これは非常に意外なことであつて地方の県でやつております育英会では、私の聞くところでは、返さないで困るということを言つていた人がありますが、日本育英会では、死んだとか、特別な場合とかいつて、こちらから免除するのは別ですが、自発的に返さぬといつた事例を私は聞かないのであります。かえつて非常に返還率がよいということは、私は日本国家として実に愉快千万な話だと思つております。これについては表をいずれ提出いたします。  それからまたスカラシツプのように、名誉のこととしたらよいではないかということは、私も同感であります。以前はみんな学資があつて、少数の金のない人間だけがこれを借りたからして、従来の奨学生というのは、貧困ということが特徴でありましたが、現在は学資のある者というのは例外であつて、すべて貧困なんですから、その貧困という條件はだれも一列で、選ばれた者が優秀生だということが、今度の奨学生の非常な特徴になつておる。そのために就職率なども非常によいという現状にありますから、名誉という点では、現在の奨学生はみな非常に嚴格に選び出された名誉の位置を占めておるということが言えるのであります。ただやつてしまう方がよいではないかということは、私もそれは確かに一理はあると思います。現在でも奨学生が、将来もし義務教育に従事した場合においては、これは返さなくてもよいということに結局なると思います。その他については、これは確かに考うべき点でございますから、私もよく育英会当局と話合つてみたいと思います。
  82. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 まことにくどいようでありますが、私は、もし志さえあるならば、育英会に寄付する。それは受取つてもいいと思うのでありますが、義務を負わせて、そうしてこの金を貸してやるということは、国家の事業として学問を奨励し、人を養つて行くという上から見れば、私はあまり賛成いたしかねるのであります。今お話のように、全部返すというのなら、その人の自発的の気持で育英資金に寄付するというのであれば、さらにそこで名誉をかち得るということにもなるのでありますから、この点はさらに御研究願いまして、私はやはりスカラシツプのようにやつて行きたいということの希望を捨ててないのですが、よろしくお願いいたします。
  83. 江崎一治

    江崎(一)委員 現在の日本教育の実態でありますけれども、一口にいいまするというと、今の教育は学問のスクラツプ、寄せ集めです。私技術者でありますけれども、新制大学の学生を呼んでいろいろ聞いてみますると、まとまつた学問形態を何ら持つておりません。例を一つあげますと、たとえば代数において、初め加減乘除の練習をやります。その次に因数分解とか、二次方程式あるいは多元一次方程式その他いろいろな過程を経まして、逐次高級な過程へ達するのが今までのやり方です。しかしながら今の状態はどうかというと、因数分解なんか知らぬ人が多い。式の暗算なんかあまり知りません。そうして応用問題にとりかかる。子どもは覚えがよいですからして、大体教わつたことは覚えますけれども、さてそれと同種類の問題を出すともうできない。これはやはり幾何でありますが、三角形の内角の和が二直角ということを知らないうちにピタゴラスの定理を教える。なるほど覚えるかもしれないけれども、これを応用できない。もつと高度な数学並びに工業方面においても、こういうスクラツプ教育が今非常に盛んです。そのことは覚えておつても応用がきかぬ。こういう状態で第二の国民が——今後あの学生が日本を背負つて立つ時代になつたら、これは思いやられると思う。こういう方針について文部大臣はどう考えておられるか。私は実際自分で体験したことを言うのです。
  84. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私も、ただいまの御意見にはまつたく同感でございます。ただ私は、こういう新しい制度も、以前のことをよく知つている方々が考えられたことなんですから、私どもは元のやり方がよいという考えを持ちますけれども、そういうことを知つた方々がやつておられることで、始めてまだ幾年もたたないのですから、すぐこれは惡いと言つてしまつてよいものかどうか、これはもつとよく研究して、ほんとうにぐあいが惡いならばいつでもやめたいと思つております。その他の点も、新教育については、これは研究すべきものをたくさん持つているけれども、始めて間もないのにすぐこれではいかぬと言つてしまうことはやはり早計ではないか、よく研究をしたいと考えております。
  85. 江崎一治

    江崎(一)委員 けつこうです。
  86. 上林山榮吉

    上林主査 ではこれで一応休憩いたします。午後は一時半開会いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  87. 上林山榮吉

    上林主査 休憩前に引続き会議を開きます。  外務省所管予算につき、残余の質疑を許します。北澤直吉君。
  88. 北澤直吉

    北澤委員 最初に伺いたいのは、昭和二十六年度の外務省予算の中の政務局関係で、情報啓発事業実施に必要な経費というのと、それから国際文化事業実施に必要な経費という二つがあるのであります。情報啓発事業の方は、二十五年度は六百八十五万円、二十六年度は千六百六十二万円、こういうふうになつております。ところが国際文化事業の方は、二十五年度が百十七万のものが今度は減りまして百八万ということになつておるわけでありますが、いよいよ日本講和条約を結んで、国際社会の一員として世界に向つて出て行くわけでありますが、そのためにいろいろな施設の必要もありますけれども、結局日本に対する外国の理解、それからまた外国に対する日本の理解、日本と諸外国との相互の理解を深めるということが、あらゆる点から申しまして最も必要だと思うのであります。従いましてこの情報啓発事業、あるいは国際文化事業というふうなことは、講和條約締結を間近に控えまして、これは日本として最も大事な仕事であると思うのでありますが、この予算がどうもあまり十分でない。特にこの国際文化事業の費用などが二十五年度に比べて減つているというようなことは、どうしてもわれわれには理解しにくいのであります。特に国際文化事業に関連しましては、日本国際連合のユネスコに参加する問題もだんだんと好転しましてこのユネスコ参加に関する日本政府希望、申込みがユネスコ事務所によつて受理され、ことしの六月ごろのユネスコの総会でこれが取上げられるということになつたのであります。こういうことを考えますと、国際文化事業に関する経費が去年二十五年度よりも減つておるということは、どうも私にはちよつと理解がしにくいのであります。この間の新聞によりますと、ユネスコから日本の青年運動に一万ドルの寄付があつたということでありますが、一万ドルはこれを日本の金に換算すれば三百六十万円であります。そういうことがございますのに、国際文化事業に関する外務省の費用がたつた百八万ということではどうもつり合いがとれないように思いますが、こういうような予算をとるのに、大蔵省との間にいろいろ御苦心があつたろうと思いますが、これが十分にとれなかつたいきさつをお伺います。
  89. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまの北澤委員の御意見通り情報啓発あるいは国際文化事業関係仕事が非常に重要なことはごもつともでございますが、まだ対外活動が許されておりませんので、現在のところこの程度のことしか行えないという状況にあります。特に御指摘にたりました国際文化事業実施に必要な経費、これが前年度よりも減つておるというその理由を示せということでございますが、これは前年度と大体同額を予定をいたしておるのであります。事務的なことでございますが、大蔵省の一般的な方針としまして、事務費を一割ないし二割削つておるのであります。その関係で百十七万が百八万という数字になつております。内容的には実際問題としましては、前年度と同様ということになつておるわけであります。
  90. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの御説明は一応了承できるのでありますが、二十五年度には、日本国際連合のユネスコに参加しておらない場合でも百十七万、ところが現在の見通しでは、ことしの夏ごろには日本が正式に国際連合のユネスコに参加できる、こういうことになりますると、これではとうてい足りないと思うのでありますが、日本がユネスコに参加を許された場合には、さらに補正予算か何かで増額を要求する、こういうことでありますかどうか。
  91. 島津久大

    ○島津政府委員 この予算をつくります当時には、ユネスコ関係のことは考慮しておらなかつた次第であります。御承知のように、その後だんだん進展して参りましたので、今年中にでも参加するということになりますと、その際はまたただいまお話のような補正予算なんかで考慮する必要があると思います。この予算をつくる当時は予想できなかつたのであります。
  92. 北澤直吉

    北澤委員 次に進みまして、通商利益増進保護に必要な経費というのがありますが、これは二十五年度が百五十一万円、二十六年度は、三倍程度になりまして四百五万というわけでありますが、これも私から別に申し上げるまでもなく、いよいよ講和條約を結んで、日本が国際経済の中に全面的に入つて行くことになりまして、特に日本経済自立達成という見地から申しましても、日本の貿易を画期的に増進しなければうかぬ状態でありますので、海外の通商経済に関する調査というようなことは、二十六年度におきましては格段と活発にしなければならぬと思うのであります。いよいよ講和条約ができまして、日本と各国との間に通商條約を結んで、ほんとうに日本外国通商関係が正常の基礎の上に立つて行くということになると、これまでのような鎖国経済占領下の制限された貿易時代とは違いまして、日本経済が国際経済に全面的に入つて行くというような場合におきましては、これまでのような海外の経済も知らない、いわゆる盲貿易をしておつたようなことでは、日本経済が全面的に国際経済に入つて行くのに非常に支障があると思うのであります。特に海外の経済事情調査にといては、あるいは通産省関係かとも思うのでありますが、いわゆるジエトロですか、海外経済調査に関する民間の団体もありまして、政府の補助でやつておるようでありますが、これもイギリスの、例の海外経済調査に関する機関なり、あるいはそれに関する費用なりに比べますと、雲泥の差があるのであります。イギリスと同じように日本外国貿易に依存することが非常に多いのでありますから、こういうような海外の通商経済に関する調査なんかは根本的にやりまして、——講和條約ができますならば、今度は世界の全部の国と通商航海條約を結ばなければならないようになりますので、こういうふうな程度では私は足りないんじやないかと思います。外務省は非常に控え目に予算を組んでおりまして、講和条約ができまして、いよいよ日本のこういう問題が根本的にかわる場合には、補正予算をお出しになるというお考えかもしれぬと思うのでありますが、私はその以前の、講和條約締結後の事態に処するための準備期間においても、相当しなければならぬ部面が多いと思うのであります。百五十一万を四百五万にしまして三倍くらいになつておるのでありますが、こういうお粗末なのでは、とうてい国際経済通商に関する調査とか情報の收集というふうなことは困難と思うのでありますが、こういうふうな点について外務省はどういうお考えを持つておりますか。
  93. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまの日本の貿易を振興するためには、もつと経費を計上すべきだというお話はごもつともと思いますが、ここに掲げました額は、もつぱら本省で使います経費でございまして、ただいま在外事務所が相当数できまして、これに関する費用も、四百十六ページをごらんになりますと出て参るのでありますが、内と外と両方で、極力限られた予算ではございますが、勉強して行きたいという考えでおります。なおまた講和條約がなりまして、通商航海條約がどんどんでき、また在外機構も充実拡張されるというようなことになりましたならば、これは先ほどユネスコの件で御説明申し上げましたように、そういう際にはまた特別の措置が必要になつて来ると考えております。現状におきまして、本省の経費は四百五ページ、在外の関係は四百十六ページでございますが、これで何とかやつて行くつもりであります。
  94. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは、国際通商関係に関する調査でありますが、これは通産省と外務省がダブつてつておるような点もあると私は思うのでありますが、通産省と外務省とのこれらに対する調査の重複とか、そういう点はどういうふうにして救済しておられるのか、この点をちよつとお伺いしておきたい。
  95. 島津久大

    ○島津政府委員 この点は通産省の方と十分打合せをいたしまして、重複のないようにいたしておるのであります。たとえば在外事務所の活動にいたしましても、すべて外務大臣を通じまして在外事務所との連絡をはかつておるのであります。たとえば通産省から在外事務所調査を命じます場合には、外務省に言つて参りまして、それを外務省から出先に出す。出先の調査外務省に参りましてそれを通産省の方に流す。その間ばらばらにならないように、十分に打合せをいたしております。
  96. 北澤直吉

    北澤委員 次に條約局の方の予算に移りますが、これによると、條約局全体で二十五年度は千四十九万、二十六年度は全体としては多少ふえておりますが、この中で国際條約の締結または加入に必要な経費が、二十五年度は二百三十万、二十六年度は百八十九万となつております。私は二十六年度になれば、二十五年度に比べてさらにいろいろな国際的な機関への参加の問題、條約の問題、いろいろな問題が出て来ると思うのでありますが、こういうものが二十五年度に比べて減つておるということは、これはどういうことでありますか、その点をお聞きしたい。
  97. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま御指摘の、條約の締結または加入に必要な経費、この下の説明の第二点にございますが、準備のための調査研究の費用が主となつておるのであります。これは先ほど文化事業の点で御説明申し上げましたと同様、前年度と同様の仕事内容予定しておるのであります。数字の算定になりますと、先ほど申しましたように、事務費を一律に創られております関係上、減つておるのであります。内容的には同様のことを考えております。
  98. 北澤直吉

    北澤委員 時間もありませんから先に進みまして、最後に在外公館の問題でありますが、午前中も他の委員から御質問があつたように私は聞いておるのでありますが、在外公館の問題は、いろいろ各方面から、どうも日本政府在外公館というものは能率が惡いとか、仕事のやり方がよくないとかいう非難をわれわれ聞くのであります。もちろん現在のようなこういう小さな予算で、しかも在外公館職員も少いというようなことでありますから、なかなか十分な働きはできないと思うのでありますが、それにいたしましても、もう少し在外公館仕事の能率化という点につきまして、外務省は留意される必要があると私は思うのであります。予算も相当とつておるようでありますが、どうも私どもが見ておりますと、在外公館の中におきましては、自動車一台持てないというような話も聞いておりまして、とてもそういうことでは日本政府の代表機関として十分な仕事はできないというふうに私は考えておるのであります。もちろん日本の財政全般とにらみ合せてつくらなければならぬと思うのでありますけれども、在外公館というものを置く以上は、やはり置くだけの目的を達するように、十分に使命を果し得るように予算をつけてやる、特に在外公館において従来困つておつた活動費と申しますか、調査費と申しますか、そういう面におきましても、十分に考慮を拂つてやらないと、せつかく在外公館を置いても、その意味が十分に達せられないようなことになると私は心配するわけであります。  それからもう一つ申し上げたいのは、在外公館は領事館と違つて外国においては、外国政府と交渉はできない。ただそこにおる日本人の世話とか、あるいは通商経済事情調査というようなことが主であるように私は聞いておるのであります。例は多少違うのでありますが、西ドイツにおきましては、やはり連合軍の占領下にありましても、イギリスとフランスとアメリカにはちやんとりつぱな領事館を置いておるということであります。ところがまだ日本では領事館を置くに至つていないで、在外公館在外事務所というような中途半ぱな形で行われているわけでありまして、その点西ドイツと比べましても、日本の在外政府機関の地位というものは非常に弱い、こういうふうに思うのでありますが、政府におかれてはこの在外事務所というものを——もちろん講和條約ができますならば、これは大使館なり、公使館、あるいは領事館になると思うのでありますが、講和條約締結前においても、西ドイツの例のように、在外事務所を領事館並みに引上げるというような考えを持つておられるかどうか。それからこれとあわせて、先ほど申し上げましたように、現状のままの在外事務所におきましても、これの能率を上げ、在外事務所設置の目的を達成するようにするために、一体どういう構想を持つておられるか、この点を伺いたいと思います。
  99. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問に対しまして、大体同様な御質問が午前中にありましたので詳細お答え申し上げておきましたが、お話通り、現在在外事務所は、予算その他におきまして十分でないことは、十分承知をいたしております。しかしこれは仕事の面なり、あるいは予算の面なりにおきまして、一定の制約のもとに限られておりまして、当然自動車その他は備えねばならないというように考えられまするところでも、なかなかそうは行きかねております。しかし今後お話のように、内容を十分充実するように、関係方面ともよく連絡をいたして、できるならば機能を十分に発揮し仕事をいたすように進めて参りたいと思います。従つて予算等におきましても、午前中も申し上げましたが、大蔵省等に二十億ほどの予備的な費用もあります関係で、だんだんとそういうことを許されますならば、日本の財政といたしましてもいたし得ると存じております。今後大いに努力をいたしたいと思います。
  100. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけ伺いまして私の質問を終ります。それは御承知のように対日講和條約の締結も大体今年中というふうに一般に信ぜられておりますが、講和條約ができまして、現在のような連合軍の軍事占領がなくなりますと、私は日本行政機構というものは、根本的に改革しなければならぬと思うのであります。日本行政機構が根本的に改革される中でも、特に外務省の機構というものは、講和條約締結前と講和條約締結後では、非常にかわつて来る、またかわらなければならぬものと思うのであります。たとえば今ある連絡調整事務局というようなものは、いわゆる進駐軍との連絡が主でありますが、こういうものは、講和條約ができますれば当然なくなるべき運命にあると思いますし、それから特に将来講和條約締結後、日本が全面的に国際経済に入つて行くためには、どうしても戰前の外務省のように、やはり通商局というふうなものもなければ、十分な目的を達し得ない、そうすると、現在の通産省との関係をどうするかというふうないろいろな問題がありますが、もし外務省におきまして、講和後に処する外務省の機構の改革の大きな輪郭でもありますならば、お伺いいたしまして私の質問を終ります。
  101. 草葉隆圓

    草葉政府委員 講和ができまして自主権を回復し、独立した状態になりますと、現在の外務省の機構において十分検討を要する点が多々ありますことは、御質問の通りであります。従いましてほかの委員会等でも御質問がありましたように、その点につきましては、外務省といたしましても、また日本政府全体といたしましても、十分検討をいたしておりますが、まだ申し上げる輪郭というものはでき上つておらないのであります。十分御意見をくんだような方向に当然進んで行くべきものだと考えております。
  102. 江崎一治

    江崎(一)委員 出入国管理庁予算のうちで不法入国者の護送、收容、送還に必要な経費についでお伺い申したいと思います。この経費は今年の予算では去年の大体倍額近くになつておりますが、これはどういう事情によるものですか。
  103. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 お答えを申し上げます。不法入国者の護送、收容、送還に必要な経費が昨年の倍になつておるという点でございますが、御承知のように、出入国管理庁は昨年の十月一日から出発いたしました関係で、予算がちようど半分違つておるのであります。
  104. 江崎一治

    江崎(一)委員 下の説明によりますと、不正入国者並びに外国人登録令違反の退去者を護送するのだということになつておりますが、この外国人登録違反者の送還と、それから不法入国者の送還と、数的にはどういう関係になつておりますか。
  105. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのところでは、不法入国者の方が圧倒的に多いのでございます。割合を申し上げますと、大体七、三ぐらいになつておるかと存じます。
  106. 江崎一治

    江崎(一)委員 不法入国者の国籍別、またはその不法入国する理由などについて詳細に説明をしていただきたいと思います。
  107. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 不法入国者と申しますと、主といたしまして戰鮮半島から、正規の手続を経ずして入つて来られる数が、全体の約九割と申してよいと思います。あとは、南西諸島と申しますか、主として沖縄方面から入つて来られる者が残りの約七、八割、最後に残りました一%ないし二%が、外国船に乘つておりました乘組員たちが、成規の手続を経ずして、要するに船が出てしまつたというもの、大体そういう状態でございます。
  108. 江崎一治

    江崎(一)委員 大体年間を通じましてどれくらいの人数に上つておりますか。
  109. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 朝鮮動乱が始まります前には相当数に上りまして、二十四年度におきましては約八千、それから二十五年度1これは暦年でございますが、約二千三百、むしろ動乱になりましてから数が減つております。
  110. 江崎一治

    江崎(一)委員 外国人登録令違反で送還された人が、すでにもう過去二、三年間に相当の数に上ると思いますが、この退去者を強制送還して、その人たちの朝鮮におけるその後の動静がどんなになつているかということについて御承知かどうか。今までわかつております点を明らかにしていただきたい。
  111. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、送還をいたしますのは、すべて司令部を通じてやつております。司令部の方から、これだけをいついつか、何の船に乘せて帰せという命令を受けまして、その命令によつてつておりますので、直接にこちら側から朝鮮内地におきます取扱いがどうであるかということを知る方法はないのであります。御了承願いたいと思います。
  112. 江崎一治

    江崎(一)委員 特に朝鮮の人たちが強制送還された後、あちらでどういう待遇を受けたかということ、その後どんな運命をたどつたかということについて、われわれいろいろ情報を持つております。それによりますと、特に昭和二十三年、二十四年ごろに送還された朝鮮人——われわれのいつております進歩的な人たちが、あの韓国に送られまして、今度の朝鮮動乱で一万数千名の人が李承晩の手によつて虐殺されたということを聞いております。そしてまた最近大量送還を行うというような政府の言明でありますが、やはり同じようにあちらの朝鮮の地に着くやいなや、こういつた銃口が待つておるのではないかと考えられるのであります。人道上みすみす死刑の宣告を與えるようなこの強制送還について、外務省は一体どう考えておられるか、これは人道上の問題でありますので、特にこの点は明確にひとつお答えを願いたいと考えます。おそらくこういう事情については、日本外務省情報によつてつておられると思うのでありますが、その点を腹蔵なくこの公開の席上において明らかにしておいてもらいたいと思います。
  113. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 先ほど申し上げましたように、詳しい情報を得てはおりませんが、司令部を通じましていろいろ話を聞きますところによりますれば、こちらから送り返します人たちが、朝鮮に入りましてから、韓国政府の厚生省と申しますか、社会省と申しますか、そういうところで世話をされまして、その受入れ態勢ができましてから、司令部を通じて送還が行われるというふうに聞いておりまして、大量虐殺というようなお話がございましたが、われわれただいままで知り得ました情報におきましては、そういうことは聞いてないのでございます。
  114. 江崎一治

    江崎(一)委員 おそらくそういうお答えをなさるだろうと予期しておつたけれどもこれはわれわれが聞いておるだけではなく、世界の各国が公然の事実としてこれを認めておるのです。それを日本外務省あたりが知らぬわけはない。事実をもう一回繰返して言いますと、送還された人たちが、あなたがおつしやつたような收容所に入りまして、そしていろいろ教育されて、いろいろな任務につかされるのです。その後、朝鮮はああいう状態国内が非常に混乱しておりますから、どうもこいつはあやしいということで、みそもくそも一緒に銃殺されております。こういうことがもう朝鮮じや平気で行われる、そういう條件下に、再び日本から進歩的な朝鮮人の諸君を送り返すということによつて、その運命がどうなるかということはきわめて明らかである。これがわかり切つてつて強制送還をどんどん進めようとすることは、人道上の大きな問題である。しかもこれを知らぬ存ぜぬと言われることは、はなはだ問題だと思うのです。これは国民全体の大きな問題であり、関心の的でありますから、そういう観点に立つて腹蔵なく話してもらいたい。説明のための説明なら聞きたくありません。どうぞ説明して下ださい。
  115. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは御承知のように、日本では外国人登録令に違反した者を送還いたしておるわけであります。従つてただいま管理庁長官から御答弁申し上げた通り考えておりまするが、それが向うへ行つてから、あるいは待遇がいいとか、あるいは惡いとかいう問題について、かれこれ日本政府がこれを申し上げる筋合いでもありませんし、またそういう批評をすることは妥当ではないと思います。
  116. 江崎一治

    江崎(一)委員 今のお話外務省の責任ある地位にある、しかも次官としての言葉としてははなはだ奇怪に感じます。戰争しておる二箇国から第三国へ亡命して来たとする。そういう場合には、その該当の国から身柄をよこせという要求があつても、これはなかなか渡さぬ、これが大体慣例でしよう。人道上の大きな観点に立つて、われわれは後世の歴史家の笑いもの、つまはじきの種にならないように、十分考えてもらいたいと思います。これには御返答はいりません。
  117. 上林山榮吉

    上林主査 平川委員は何かありませんか。——なければ私から一、二点お尋ねいたしたいと思います。一点はアメリカのフイラデルフイアからあまり遠くないシーブロツクというところに、南米から戰時中連れで来られた日本人が、相当の数に上つておりまするが、この人たちは、戰争が済んだので南米に帰りたいというわけで、アメリカ政府に、あるいは南米の政府に、いろいろ熱心なる運動をいたしておりますけれども、いまだ実現をいたしておりませんが、外務省としては、これについて何らかの情報を持つておるかどうか、あるいは近い将来これはどういうふうに解決される見通しであるかどうか、この点をまず第一に伺いたいと思います。
  118. 草葉隆圓

    草葉政府委員 いろいろ申されておるようでございますが、実は外務省といたしましては、まだ情報を確実に持つておりませんので、お答え申し上げる段階にはないのであります。
  119. 上林山榮吉

    上林主査 この問題は、私が最近アメリカに行つた際に、現地に行つて実際の実情を調べたのでありまするが、約四百家族のものが現在向うのシーブロツクというところの農村地区で働いておるのであります。聞きますと、これは日本人の方々のお話でありましたが、捕虜交換の準備として南米からつれて来たものである。しかし捕虜交換はその必要が数においてなくなつたので、現在合衆国に交渉しても目鼻がついていないし、南米側は言を左右にしてこれを受入れない。ただ個人的にごく少数のものが南米に帰ることができておる、こういう情報であります。しかも南米に家族が半分、北米に家族が半分いるものもあつて経済その他において非常に苦痛を感じておるから、この問題を早く解決するよう援助が願いたいという申出を受けましたので、この際一つ情報として申し上げておきますから、政府としてこれが解決のために善処せられるように希望をいたします。  第二点は、戰時中、日本に来ていた日本人の二世、これが北米を問わず、あるいは南米を問わず、現在日本にいるまま帰ることができない、これらもその後の社会情勢国際情勢変化によつて、ぜひアメリカないし南米に帰りたいという熱意のあるものが相当の数に上つておる。これらの問題についても、これが解決をはかるよう努力をせられたいという、いわゆる日本人一世、二世からの熱烈なる希望でありましたが、この問題に対して、現在どれくらい日本にこれらの種類の人たちがおるか、あるいはこれが解決の見通しは近くできるものであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  120. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま主査からの御質問の第二点の問題につきましては、現在ここへはつきりした数字を持ち合しておりませんが、御意見のような点が相当強く熱望されておると存じます。この点につきましては、第一、第二の問題あわせまして今後外務省はその解決をするために十分努力をして行きたいと思います。
  121. 上林山榮吉

    上林主査 ただいまの問題は非常に重要な問題でありますが、講和会議が締結せられない今日の事情においては、政府としても非常に困難な点もあると思いますけれども、ただいまの御答弁の通り最善の努力を願いたいということで私の質疑を終りたいと思います。  では一応外務省所管の質疑はこれで終りたいと思います。また必要があつたならば要求いたしますからおいでを願いたいと思います。     —————————————
  122. 上林山榮吉

    上林主査 午前中文部省所管について文部大臣の説明があり、これに多少の質疑を行つたわけでありまするが、さらに引続いて質疑を許したいと思います。甲木君。
  123. 甲木保

    甲木委員 ちよつと私社会教育の問題でお尋ねしたいと思います。これは先般予算委員会で二、三質問がありましたが、総理大臣の答弁は、国民運動に対しては、民主主義によつて下から盛り上つたその力で国民道義の高揚をはかる運動をするというようなお答えであつたのですが、文部大臣もちようどそのように答弁をされたのでございますので、私ここで重ねてお尋ねするのは、どうもこういうことがちよつと私納得行かぬのです。民主主義だから下から盛り上るということじやなくして、どうしてもこれは一つ政府として、またわれわれ為政者としても、国民全体に対してある一つの目標を示すということが必要じやなかろうかと思うのです。これはすなわち国民全体が自覚して、そうして同一なる自覚と自信を持つた人方が一丸となつて、現在の敗戰日本の頽廃しているこの思想をいかにして盛り上げるかというような気持が現われればいいけれども、そこまでまだ日本の社会教育というものが進んでいないのです。でございますから、私は今言うように、国民全体の愛国心はどうするか、終戰間ぎわから今日まで一つの社会教育の空間がある。これをいかに文部省の社会教育で補つて行くかということが、私は問題だろうと思うのであります。私どもはかつての帝国主義とか、あるいは軍国主義の思想、気持でやれというようなことではないのでございますが、わが国には古い伝統がありまして、その古き伝統に今日の新しい思想を継ぎ木して、そうしてわが民族の真の永遠性と、それから世界におけるところの神的使命と申しますか、そういうものを盛られて、ほんとうに日本が東洋の文化国家の主体であるというぐらいな、そういう国民の道義を高揚するということを、文部省社会教育局はひとつやつていただきたいと思うのであります。私どもがいなかに講演やまたいろいろの催しのある場合に行つても、かた苦しいことをやる場合にはなかなか集まらない。私どもの考えでは、映画か何か持つてつて、子供や、教育のないおじいさんおばあさんに至るまで、みんなが集まつたところで、わかりやすい一つの社会教育をしていただきたいと思うのです。こういう面について社会教育局としては、何かそういう構想を持つておるかどうか。この予算面で見ますると、非常に微々たるものでございまするが、実際の社会教育として、この予算で実際やれるかやれないか、局長のお考えを一応お尋ねしておきたいと思います。
  124. 西崎惠

    ○西崎政府委員 ただいま甲木委員のお尋ねの件でありますが、私も甲木委員とまつたく同感でありまして、総理並びに文部大臣からお答えいたしましたところの、社会教育的なものは盛り上る力に頼らなければならぬということはもちろんでありまして、この種の国民の自主的活動にまつようなものは、政府から命令的に出るのでは何らの効果はないのであります。しかしながら現段階におきましては、政府の相当強い指導助言というものがなくしては行われないことも、これまた事実でありまして、総理並びに文部大臣がお答え申し上げましたことにつきましては、政府の強い指導助言ということと相まつて、盛り上る力を助成して、そうして社会教育方面一般、ことに愛国心の高揚でありますとか、あるいは国民道義の高揚でありますとかいうことを実現して行きたいと思つております。それにつきまして現実の具体的な問題としまして、映画等を利用して人を集めるということも、これまた現段階では必要でございまして、社会教育的な会合はお説の通りなかなか人が集まつて来ないのでありまして、せつかくのいい催しも、集まる人が少ければ効果も薄いわけでありますので、われわれも映画、しかも社会教育的な意味を持つところの映画の上映によりまして、人も集めるし、また映画を通じて社会教育的効果もねらつておるわけであります。しかし仰せの通り、社会教育的な映画といたしましては、僅々三百万円程度の予算ではろくなことはできないわけでありますが、これは文部省にとりました映画教育予算のみならず、そういうふうな借上げその他ナトコ等の映画関係のものも利用いたしまして、お説に沿うような施設を講じたいと思つております。なおこれは一つ希望でございますけれども、近く講和会議ができますならば、それを契機といたしまして、何らかの方法で経費を捻出いたしまして、大々的な国民の道義高揚、または愛国心の高揚、自治精神の高揚のごとき重大なる精神運動を何とかして実現化したい、かように考えておるわけであります。
  125. 甲木保

    甲木委員 地方の公民館主事というと、すべてその村で相当の学識もあり、経験を持つた人がなつておりますが、どうも今の公民館主事に対しては、私どもから考えると、非常に離れた一つの社会教育方法をやつておるようであります。こういう方面については、文部省あたりは、たとえば県で何箇所かに集めて指導して行くというような方法をとつていただきたいと思うのであります。  それから話題をかえますが、私どもが本省に行つていろいろ事務地方の問題で相談してみると、現在の管理局ですか、その局というものは、私どもから見ると非常に複雑な気がいたします。文部省全体と同じような仕事管理局でやつておる。中等教育局あるいは昔の体育関係のものがみんなこういうところへ入つておるから、あつちへ行き、こつちへ行きして尋ねなければならない。尋ねるだけでなくて、事実上の事務がそういうように輻湊している感じがするのです。管理局を廃止するとか廃止せぬとかいう問題ではないのですが、私は今日の学生の思想や、いろいろの面から見ると、体育局というものはどうしても必要じやないかと考えるのです。今日の青年や学生の思想、言動というものは、体育面からいつて大いに影響があると思うのです。この点はぜひともひとつ文部省はもう少し強気に出て、体育局というようなものを設置するというような方針があるかどうか、幸いに次官も見えたのだから、御決心のほどを承りたいと思います。
  126. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 前の公民館のお説につきましては、社会教育局長からお答えしたいと思いますが、文部省仕事といたしましては、社会教育についての直接的な活動は、大体地方におまかせする形になりまして、文部省の主として行うべき役割は、社会教育に従事するものの指導もしくは助言とか、そういつた面が重要な仕事であろうと思います。従つてお話のございましたような公民館の運営なり、従事する人の素質を向上するということにつきましては、将来とも大いに講習なり、あるいは指導をやつて行く必要があると考えております。その点は今後ともわれわれの大いに努力すべき目標であると考えております。  それから第二番の、文部省の局課の編成の問題でございますが、実はただいま御指摘になりましたように、管理局というものの存在が非常に複雑でございまして、外部のお方にはしばしば御迷惑をおかけしておるような点があるということは十分存じておる次第でございます。ただ文部省設置法ができますときに、文部省の性格の問題等いろいろ研究をいたしたのでございますが、たとえば大学学術局でありますとか、初等中等教育局でありますとか、そういつたようなものは、本来の意味文部省の性格といたしまして、指導と助言の機関であつて行政的監督の作用は持たないのを本質とするという意味から、この行政的監督面と申しますか、そういつたようなものを伴いますものは、内容のいかんを問わず全部管理局に集中いたしまして、管理局はただこの行政的、監督的な性格を持ち、その他の部局は全部文部省本来の性格である指導と助言ということに集中したのであります。従つて管理局の組織の中へ各局に関係のあります行政的面の仕事がみな集まつております。これがため管理局の仕組みといたしましては、非常に複雑でございまして、非常に重複した点もありまして、外部の方に御迷惑をかけておると存じます。この文部省の組織のあり方につきましては、いろいろ論議さるべき問題と思いますので、私ども今後とも十分研究をして参りたいと考えておる次第でございます。  最後にお尋ねがございました体育行政が非常に重要であるという意味合いから、体育局を新設する意思なしやという問題でございます。従来体育行政を全部とりまとめまして体育局というのがありましたのを、学校体育につきましては、初等中等関係については初等中等教育局に、大学関係については大学学術局に、社会体育については社会教育局に、それぞれ分属させたのであります。これもまた一つ考え方でございまして、社会教育なり学校なりの対象に応じてこれを分割するか、あるいはある事柄を取出しまして、それを一局として存在させるかということは、文部省で歴史的に今まで論争された点でございます。体育局のみならず、たとえば職業教育に関する局を置くかどうかというような問題も、しばしば論議されておる点でございます。ただ体育全般の振興という面から申しますと、やはりどうしても一つにまとめて行くことが非常に必要であるというふうに考える向きが多いのでございまして、それでは今にわかに体育局をすぐ置くようにするかというと、そういう結論には達しておりませんけれども、この問題は非常に重要な問題として、大きな課題として、私どもとしては今研究をいたしておる次第でございます。この点は非常にむずかしい問題でございますので、十分愼重に研究をして参りたいと考えておる次第でございます。
  127. 甲木保

    甲木委員 それからこれは私はこの間予算委員会でも質問しましたが、その後私はその質問した結果、農林省へ行つて相談して、いろいろ研究しておりますから、重ねてここで申し上げておきますが、科学研究費、これについて、病院やいろいろの方面の雑收入が国庫に一応納められておりますが、こんなわずかな科学研究費やなんかでは、実際專門々々に満足な研究はできないということは周知の通りですから、こういう雑收入は、その学校付属病院とか、あるいはその他実業学校の專門的な研究費に充てることがいいじやないかと思つておるわけです。これは大蔵大臣にも相談して、一応研究するとは言つておりますが、ことに農学校は米麦の供出を一般の農村と同じにやつておる。学校側から言わせれば、ほとんど供出だから研究も何もできやしない、それで子供は弁当箱にお弁当を持つて来るが、夕方遅くまで農業やいろいろな実習につかせると、おなかがすいて仕事をしない。そういう面もあるだろうと思うのです。それで何といいますか、保有米と申しますか、こういうものをとつてやるというようなことをひとつ農林省と相談してもらいたいと思うのです。これは農林省も大体なるほどということを言つておりますから、文部省からひとつかけ合つてもらいたいと思うのです。  それから身体障害の問題で、盲の学校です。今盲学校あたりへ行きますと、なるほど一年生には教科書は支給することになつておりまするが、教科書よりか、点字を書くあれが七千円というのか八千円というのですか、これに非常に悩んでいるのです。御承知のように中には裕福な者もおりまするが、大体こういう人方は家から通うということはやつておらないのです。学校にとめておいておるようなものです。いろいろな経費もかかつて、ことに非常に貧乏人の子供がこういう学用品を買うということについては、血のにじむような苦しい何があるというのです。どうかこういうところをひとつ文部省は研究してもらつて、補助をするか、一定の製造商人ですか、それと特約して、なるべくもつと安く上るようなことを考えてもらいたいと思うのです。この点何とかお考えを持つておられるかどうか、一応お尋ねしておきたいと思うのです。
  128. 相良惟一

    ○相良政府委員 第一の点についてお答えいたします。主として甲木委員は現物のことについておつしやつたのだと思いますけれども、金銭收入について申しますと、そこから上る收入をすぐ財源に充てる、いわゆる收入金支弁ということは、現在の会計法上では不可能な状態であります。現物につきましては、農林省その他の関係各庁と交渉の余地があろうかと思つております。国立大学付属病院に例をとつて申し上げますと、もちろんそこの收入だけでは足りず、十八億も補助金と申しますか、国庫の方から経費を出しておるような状態でございます。收入金支弁というものが実現されてはむしろ不利な結果も生ずるということも考えなければならぬと考えております。
  129. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 今のにちよつとつけ加えて申し上げますが、大学はもとはこれは大学の特別会計になつておりまして、收入がある程度の支弁になつて出たのでありますが、終戰後、特別会計の整理で、大学の特別会計というのは全部なくなつてしまつたのです。今相良課長説明いたしましたように、收入金支弁という方法は、現在会計法上とられないという状況でございます。しかしこの点につきまして、ちよつと補足して申し上げたいと思いますのは、大学の予算について特別会計がいいか、收入金支弁、今の一般会計と同じようにした方がいいかという根本の問題は、まだ残つておると思います。これはいろいろ研究をいたさなければなりませんが、現在でも收入金が非常に上りました場合は、予算のときにはやはり支出の方で考慮してもらえることになつておりますけれども、しかしこの大学予算の全般の建前からいつて、いずれがいいかということについては、根本的に今研究する必要がある問題でありますので、私ども大学予算の立て方という問題につきましては、なおもう少し現在とは違つた科学的なやり方をしたいというので、研究を続けております。  それから盲聾唖の問題でございますが、これはただいま申されましたように、いろいろ盲聾唖の学徒が困つておるという実情はわかつておるのでございまして、予算には、約千八百万円を盲聾唖の就学奨励費として計上いたしてありますが、これは全国の盲聾唖に対しましては非常に少額でございましたので、十分なことはできないと思いますが、将来ともこの増額につきましては努力して参りたいと考えております。
  130. 甲木保

    甲木委員 社会教育の問題でちよつと落しておりましたが、地方のPTAに対して、寄付金の問題で文部省から何か注意事項を出しておりませんか、お尋ねいたします。
  131. 西崎惠

    ○西崎政府委員 ただいまの甲木委員の御質問でありますが、寄付金を特にとつてはならぬというような問題について注意を喚起したことはございませんが、しばしばPTAのあり方につきまして、こういうふうでなくちやならぬという指導をいたしておるのであります。そのうちに自然寄付金の問題にも触れておるわけであります。つまりPTAの存在の意義は、寄付金を募集して教員の俸給の支弁の用に充てるとか、その他学校の用具の購入に充てるということが本旨じやない。従いまして、そういう点に関しましては、きわめて愼重な取扱いをしなければならぬというふうな意味の注意を喚起しております。なおこの種の会合のときに、具体的な質問がありますたびに、今申しましたような趣旨で、PTA本来の使命をはき違えないよう善処するよう、注意を喚起いたしておるわけであります。
  132. 甲木保

    甲木委員 それが地方ではそういうことには考えておらぬのです。地方を歩くと、PTAが寄付金を言つて来て困るというようなぐちをこぼされる。そういう行き過ぎのないように、一応文部省あたりから適当な機会に指導していただきたいということをお願い申し上げておく次第であります。私はこの程度で終ります。
  133. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣にお伺いしたいことを留保いたしまして、次官その他からお答えを願いたいと思います。  第一番にお伺いいたしたいことは、平衡交付金の関係であります。今回の平衡交付金の中で、文部省が積極的に要求せられたものがどういうふうな結果になつたか、そのことについて概括的に一応お話を願いたい。
  134. 辻田力

    ○辻田政府委員 平衡交付金の算定におきまする基準財政需要額は、さきの仮決定額におきましては二千二百八十億と予定されて、そのうち教育費の基準財政需要額は、九百十六億円と見込まれていたのでございますが、その後いろいろな関係からこれが改訂を加えられましたし、また補正予算等も成立いたしました関係から、最初の二千二百八十億円が二千二百三十四億円になつたのでございます。そのうちで教育費は、ペース改訂とか、年末手当とか、級別推定表の改訂、ある心は認定講習補助関係費等も加えまして、九百三十四億円というふうに改められました。前の仮決定の場合におきましては約四〇%でございますが、今回の本決定におきましては、約四二%という結果になつておる次第でございます。ただいま申しましたように、このペースの改訂とか、あるいは年末手当、級別推定表の改訂、認定講習補助関係の費用等について、文部省といたしましては極力これを要求いたしまして、この額が一応算定されておる次第であります。
  135. 平川篤雄

    平川委員 一昨年の年末賞與の問題が、そのままになつてつたのでありますが、あの分は解決したのでありますか。
  136. 辻田力

    ○辻田政府委員 あの一昨年の年末手当の約七億二千万円の問題は、種々研究の結果、相当前に政府地方に対して貸した金と見合せまして、相殺するというような関係で解決したわけでございます。
  137. 平川篤雄

    平川委員 給與改善に必要な経費として、今回平衡交付金の中に決定せられました額について、いろいろ私どもうわさを聞くのであります。聞くところによれば、地方財政委員会が勧告いたしました額においても、なお給與べースをまかなうに足りない。従つてこれが地方の負担になつてしまつておるという実情があるということでありますが、文部省はそれについて御存じでありますか。またそれについていかなる対策をおとりになつておりますか。
  138. 辻田力

    ○辻田政府委員 先ほど申し上げましたように、昭和二十五年度の基準財政需要額の算定の場合におきましては、大蔵省当局あるいは地方財政委員会当局とも連絡いたしまして、六千三百七円ベースのときの経費と、それから一月から三月分の、ベース・アツプいたしました分と、級別推定表の実施による増加分と年末手当の分を計算して、計算の中に入れておるわけであります。
  139. 平川篤雄

    平川委員 聞くところによりますと、地方財政委員会は、二十五年度の当初予算において組まれました教員給の実績平均と申しますか、そういうものの單価を基準にいたして算定をしておるということでありますが、事実でありますか。
  140. 辻田力

    ○辻田政府委員 お答え申し上げます。地方財政委員会におきまして計算いたしております平均單価につきまして御説明いたしますが、小学校の教員につきましては、本決定におきまして本俸大体六千八百七十六円・扶養手当を七百四十八円、勤務地手当を五百四十一円というふうに計算しております。中学校におきましては本俸は七千五百四十四円、扶養手当九百九十八円、勤務地手当四百七十七円というふうな計算の仕方をいたしております。
  141. 平川篤雄

    平川委員 私が聞いておりますところでは、地方財政委員会では、先ほど二十五年度と申しましたが、二十三年度の実績の五千五百六十九円というものをベースにおいておるということでありますが、それは間違いであるとおつしやるわけでありますか。
  142. 辻田力

    ○辻田政府委員 今回の本決定における計算におきましては、先ほど申し上げました通りでございまして、ただいま平川委員からお話があつたようなことは承知いたしておりません。
  143. 平川篤雄

    平川委員 そういたしますと、このたびの平衡交付金の中に、小学校の教員一人当り一体平均いかほどの増額になつておるのか。
  144. 辻田力

    ○辻田政府委員 仮決定の場合におきましては、小学校の教員につきまして本俸が五千五百六十九円、扶養手当は本決定と同じでございますが、勤務地手当は四百四十八円というふうな計算をいたしております。その差額だけがふえたわけであります。中学校にきましては本俸が六千九十三円、扶養手当九百九十八円、これは本決定と同じでありますが勤務地手当におきまして三百九十六円というふうな計算をしております。
  145. 平川篤雄

    平川委員 政府ではこのたびの給與改訂がいわゆる一千円アツプということになつたので、いずれも同じように千円ずつふやす機械的な計算で計上しておると聞くのでありますが、それは誤りでありますか。ただいまおつしやる数字というものはそれに合うのではないですか、ちよつともう一ぺんお伺いしたいと思います。その結果総額百五十九億の増額になつておると聞くのでありますが、あなたの方の数字をお示し願いたいと思います。
  146. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいまの改訂前と改訂後との関係につきましては、昨日申しましたように、教育費の総額におきましては、若干ふえておりますが、その内訳については資料を持つておりませんから、あとからお答えいたします。その改訂された理由につきましてこの際申し上げておきますが、これにつきましては、ベース改訂とか年末手当、級別推定表の改訂、認定講習の費用等も加えたためでございますが、しかし一方におきましてはそれだけをプラスしただけではないのでありまして、市町村における小学校、中学校の費用の算定におきまして、学校当りの單位費用が改訂前においては高過ぎましたので、組合立の学校の奨励等に相当支障があつたのであります。小さな学校を過大に保障し過ぎた傾向がありまして、その額が多く行つたところでは、他の行政費にまわるというような関係がございましたので、その点を改めたということと、高等学校の課程別計数の中で、工業課程とか水産課程の計数を、普通課程一に対しまして工業においては従前は一・四〇倍でございましたのを、今回一・四五倍に改めた。また水産につきましては、前に一・七倍でございましたのを二・三倍に引上げたというふうなことがあります。それからまた定時制課程に要する財政需要額は、仮決定におきましては、人件費を負担する都道府県についてのみ算定しておりましたが、これを物件費を負担している市町村についても相当額を算出した。その他仮決定の算定方式においては、大都市を有する府県及び大都市の基準財政需要額は、概して不利に計算されておりましたので、これを修正するように計数を改めたというようなことでありまして、前の仮決定のものに対しまして、べース改訂とか年末手当、級別推定表の改訂等を、前の仮決定の計算自身を改めた上にプラスしたのでございます。それから今の内訳につきましては、後刻調べまして御報告いたしたいと存じます。
  147. 平川篤雄

    平川委員 私聞きたいのは、その内訳の中で給與改善費であります。その資料をお示しを願いたいと思います。今お話になりました中で、定時制の人件費へ物件費の倍率を改めたと言われましたが、それを詳しくお話願いたいと思います。
  148. 辻田力

    ○辻田政府委員 倍率を改め愛したのは、高等学校の課程のうちで、普通課程と職業課程とわけまして、職業課程の方で、工業と水産の関係の倍率を改めた次第であります。
  149. 平川篤雄

    平川委員 定時制の高校の方は。
  150. 辻田力

    ○辻田政府委員 定時制高校の方は、これは人件費の問題ではないのでありまして、人件費の問題ももちろん含んでおりますが、それを改めたというのは、物件費につきまして市町村のことを全然見てなかつたのでありますが、それを見るようにしたということであります。
  151. 平川篤雄

    平川委員 平衡交付金の問題は一時保留をしておきまして、その出された資料をもつて見たいと思います。  教育使節団が最近来て、第二次勧告をいたしておるのでありますが、これの跡始末と申しますか、それに基いて文部省では、教育の制度等につきましていろいろ新しい御計画があると思うのでありますが、さしあたり手をつけて行こうと思われる問題があれば、お示しを願いたいと思う。
  152. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 第二次勧告は、大体第一次勧告をいたしましたものがどういうふうに実施されておるかということを視察いたしまして、なお今後とも実施した方がいいということについて勧告して参つたのでありまして、いろいろな点について勧告いたしておりますが、その中でわれわれとして最も重要だと思いますのは、教育委員会の財政権の問題でございます。教育委員会の財政権の確立の問題につきましては、御承知のように、教育委員会におきましては、教育委員会が特殊の租税関係の財源を持つて、まつたく独立して教育行政を行つて行くというような勧告になつておるのでございます。しかしながらこの点につきましては、文部省としては昨年度から実は相当努力して参つておるのでございますが、ただいまのところでは、教育委員会の勧告の線にも至らないようなものにつきましても、なかなか国内的にも関係方面にも難色がございまして、解決を見ないような点でございます。ただこの委員会の勧告については、将来どうして行くかということは十分研究は続けておりますが、この通りがただちに実施できるかどうかということは非常に疑問であるような状態であります。見通しの点につきましても、実施すべきものは十分実施に移そうと考えておるのでございます。しかしこの教育使節団の勧告は、これを強制するのではございませんで、日本政府はこれにつきまして、この点を採用しようということを決定いたしまして、関係方面のアプルーバルを得ました場合に、初めてこれが日本政府の施策としてできる。だからあのこと自体を全部日本政府が行えというような勧告ではないという條件がついております。これはあの内容全部をとにかく何とか実施に移すということを今考えているのではなくて、あの中で採用すべき点をとつて実施に移して参りたい、そういうふうに考えております。
  153. 平川篤雄

    平川委員 昭和二十七年にはさらに下部の教育委員会ができるということになつておるのでありますが、これは文部省も御承知のように、教育委員会無用論というものがちまたにみなぎつている。教育の実際の担当者ですら、この教育委員会のあり方というものについては、否定的な空気が濃厚なのであります。私は昨年の夏以来数箇の府県に参りまして、知事、市長その他の人々に会つて意見を聞いたのでありますが、ふしぎなことに教育委員会の無用論は、その人たちは持つていない。むしろ財政権を持つた教育委員会ならば好ましいという意見を聞きまして、私はちよつと意外な感じがしたのでありますが、これがやはり私はほんとうの考え方であろうと思う。われわれといたしましては、もしこれを存続せられるならば、財政権の確立を見通した上で存続をせられるべきであると思いますが、それに関してただいま御研究中であるという話でありますが、教育税というような——教育税という名前がふさわしいかどうか知りませんが、教育税というものについては実現の可能性を一体どういうふうに見通しておいでになりますか。
  154. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 私どもやはり教育委員会制度につきまして、根本的に再検討する必要があるというので、現在考えております。今お尋ねの点は、ただ教育税がとれるかどうかというような問題でございましたが、これに対しまして、この機会に教育委員会制度そのものにつきましての考えをちよつと申し上げたいと思います。  日本教育を民主化するために、この教育委員会制度というものを採用したのでございまして、その民主化し、地方分権化するという根本の精神については、何人もこれに反対する方はないと私ども信じております。しかしこれを実施いたします場合に、米国における教育委員会の一部分の制度を持つて来たのでございます。ある程度アメリカではまちまちでありますので、その形そのままとはいえないと思います。が、そういつたような制度を一応完成したのであります。しかしその中身ともいうべき、実質的要件とも申すべき教育の財政権の独立という問題のまつたく伴わない、いわゆる半端な委員会制度というものが現在できております。従つて財政権の独立を伴うような委員会に進むか、しからざれば、財政権なき教育委員会でございましたならば、またその性格におきましても、財政権が伴うことができないとしますれば、これは相当考え直さなければならない問題があるのではないかというふうに考えます。なおただいまお話もございましたように、二十七年度から各市町村まで全部これを設置する義務を法律上きめられておりますので、はたしてそういうふうに、この区域まで全部現在のような選挙制度による教育委員会を置くことを必要とするやいなやということは、相当再検討する必要があると考えまして、現在この教育委員会法の改正について、各方面の意見を聞くために、各方面から委員を出していただきまして協議会をつくりまして、至急検討してみたいと考えておる次第でございます。  ただいまお尋ねがございました教育税の問題でございますが、これは二通り考え方があると思います。一般にあります地方税の中で、あるものを教育委員会の税として取上げるという方法と、今の地方税とは別個の体系として、一つの目的税として、教育税というものを創設して行くという方法があろうかと思いますが、第一の問題につきましては、ただいま初等中等局長から御説明申し上げましたように、地方費に対する教育費の割合から申しまして、全般では四二%になつておるということになりますれば、地方税の收入の相当な部分を教育委員会の方にまわさなければならない。たとえば財源をしつかりつかもうとすれば、あるいは住民税とか固定資産税とかいうような、地方財源として最も大事なものを教育費に持つて行くというようなことが考えられるのでありまして、こういうことは現在の地方財政の状況からきわめて困難ではないかと考えます。それでは目的税ということを考えられるかどうかという問題につきましては、日本の税制の原則といたしまして目的税というものは認められていないのでございます。来年度税制の改革で、国民健康保險につきまして、保險税といつたような目的税が創設されるやに承つたのでありますが、これはおそらくは唯一の目的税でございまして、この教育税といつたような目的税は全般的な問題になりますので、日本の税制としては非常に困難な問題ではないかというふうに考えられます。こういつたようた意味合いにおきまして、租税なり收入を教育委員会に独立財源として持たして行くということは、非常に裕福な経済状態である国家でありますならば、必ずしも不可能ではないと思いますが、日本のような非常に逼迫した経済事情の国におきましては、一般租税のほかに目的税とするか、あるいは一般税から持つて行くか、どちらにいたしましても、実施上非常な困難があるというふうにただいま考えております。
  155. 平川篤雄

    平川委員 そういうことになれば、当然最後の方法は全額国庫負担という方法が考えられるのであります。このことは委員会ができます民主化の方向というものを、決して阻害するものではないと思うのです。非常に経済状態の差のはなはだしい実情にありましては、その方がむしろ教育の機会均等をはかる上においていいと思うのであります。われわれは教育税が不可能ならば、これは全額国庫負担という方向に持つて行くべきであると思うのでありますが、文部省にはさような御見解は目下のところはないのでありますか。
  156. 辻田力

    ○辻田政府委員 教育財政の確立の問題につきましては、ただいま次官から答弁がありましたように、われわれとしては非常に重要な問題であると考えておるのでございます。そのために拔本的に教育税を設けるというようなことも研究はいたしております。またただいまお話のように、全額国庫負担というようなことも実はいろいろ研究しておりますが、現在までのところにおきましては、この実現は非常に困難性があるように考えておるわけであります。
  157. 平川篤雄

    平川委員 困難性があるというのは、どこに理由があるかを明らかにしていただきたいと思います。なおそれに付随いたしまして、長野県の県会が教育委員会に対して二十億という予算のわくを與えて処分の自由にゆだねたという話を聞くのでありますが、それについて文部省見解、並びに文部大臣以下当局の方で標準教育費の問題につきまして、しばしば希望的な言葉を出しておられるのでありますが、その後の経過を承りたい。
  158. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 全額国庫負担という問題でありますが、現在の教育につきましては、義務教育でありましようとも、また高等学校の教育でありましようとも、それが教育地方分権という考え方から申しまして、原則的にはその設置主体が全額を負担して行くという原則を確立して、その経費の足りないところをいわゆる貧富の財政状態を見て、国が平衡交付金をもつてつて行くという考え方で、この平衡交付金制度の建前が、地方が第一次的には全責任を持つという形でございますので、これを全額国庫負担という制度に改めますことについては、根本的に現在の地方財政との仕組の問題を考慮しなければ困難であると考えます。今局長から申しましたのは、その点を申し上げたのでございます。しかし純粋な意味における私どもの立場といたしましては、何らかの意味で、たとえば、かつてございました教員俸給の半額国庫負担といつたような問題は、もし将来研究の結果、これが考慮され得るならば、そういう制度もまた非常に望ましいのじやないか、というようなことを考えておるのでございまして、その点将来どうするかという問題については研究問題でございまして、現在の平衡交付金制度の建前からいえば国庫半額負担もまたこの制度に矛盾するということがどうしても避けられないのであると考えます。  それから長野県における二十億——数字はちよつと私正確には覚えておりませんが、今申されました二十億の数字かと思いますが、それだけを地方教育委員会にゆだねて、それだけならば自由に地方教育委員会が自主的にやつたらどうかという問題でございます。これは今お尋ねの中の関係方面との交渉の経過に関連いたしますが、知事の予算の査定権を教育委員会が制限するという方向は、非常に困る、ただしかし個々の費目についての決定権は、教育委員会に與えていただく、総額についてのみ県側がこれを査定するという考え方はどうかということを、提出されたことがございます。これはちようど長野県の場合と同じでございます。しかし私どもといたしましては、その案につきましては極力反対して参つておるのでございます。すなわちあるあてがわれました費目の内容についてまかせられましても、問題は結局その総額の問題でございまして、その総額を査定するのにつきましては、個々の問題の積上げにおいてのみ初めて総額が認められるのであつて、その個々の問題について知事がやはりいろいろ審査してこそ、初めて総額というものの査定ができるのでありまして、その総額だけをきめて内容はまかせるということは、要するに個々の問題でぜひ必要だというものを主張する機会を與えられないというような状態でございますので、現在の状態といたしましては、やはり個々の問題につきましても知事の了解を得て増額し得るような状態の方がいいのじやないか。だから現在知事から制限を受けるからと申しましても、総額の査定だけをされて、あと内容を全部まかされても、真実の意味においての地方教育委員会の財政の独立ということに、一歩を進めたものではないと私どもは考えております。  それあら標準教育費につきましては、実は私どもといたしましては、昨年標準義務教育費の確保に関する法律案を制定いたそうといたしましたが、これは御存じのようにその成功を得なかつたのであります。そこでこれに対する対策をどうしようかといろいろ考えまして今申しましたように、この義務教育費の半額国庫負担という方向がとれないかどうかということ、それから第二案といたしましては、地方自治委員会議におきまして標準基準財政需要額によりまして算定いたしました教育費につきまして、その計算の限度におきましては、地方の議会が教育委員会の提出しました予算を削減することはできないという、その査定権につきましての制限をいたしたらどうかということを、今日までいろいろ関係方面と交渉して参つておるのでございます。今申し上げましたように、義務教育費の半額国庫負担という面は、平衡交付金制度そのものの根本とも関係がございますので、現在の状況では、これはとうてい採用されないような状況でございます。第二案につきましても非常に困難性がございますけれども、これにつきましては十分今まで説明を続けて参つておるのでございまして、まだ非常に困難があるとは考えておりますけれども、最後的にこれは不可能であるというまでの結論には達しておらぬのでございまして、その点ただいまも交渉を継続中でございます。
  159. 平川篤雄

    平川委員 先ほどいろいろ困難な事情の中で、平衡交付金の制度が実施せられたもとになる地方分権の考え方というものと、相当摩擦があるというようなお話でありますが、私どもは、教育内容について文部省が一律に何もかも基準を示して統制をとるということについては反対でありますけれども、財政的にそれぞれの土地にまかせるということは、結局現在の状態においては、必ずしも地方分権によつて民主化が促進せられるとは考えられない。農村などへ参りますと、村長、村会関係人たちも品をそろえて言うのでありすが、地方税の税減ということもありがたいけれども、教育費を国庫に持つてもらうということがそれよりももつと大事だということをしきりに言つておる。こういうふうな民意もあることでありますから、ただいまいろいろな方法について文部省のお悩みになつております御実情はよくわかるのでありますが、この問題については早急に解決をはかられまして、この中でも国庫負担の問題については、特別に一層御考慮をお願いしたいと思うのであります。  それはその程度といたしまして六・三建築の予算であります。これについてはいろいろ問題が残つておると思うのでありますが、ことに認定外工事の跡始末、それからそろそろ小学校の方には相当危險な校舎ができかけておるのでありますが、こういうものをどういうふうになさるか、あるいは現在の予算によつて、新制中学校は、いわゆる馬小屋というやつがまだすつかり解消しないと思います。どういうふうな年次的な御計画を持つておりますか。この三つの点についてお答えをお願いしたいと思います。
  160. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 お答えいたします。六・三建築の問題でございますが、本年度の予算におきましては、六・三建築について四十三億計上いたしておるのでございます。これは昨年から実施しておりました校舎の〇・七坪ということを確保するために必要なる経費といたしまして、当初において六十三億を計上いたしたのでございますが、それを全部二十六年度において完成することが財政の都合上不可能でございますので、その一部分であります四十三億を計上いたしたのでございます。しかしながらあとなお二十億ばかりを将来とれば、一応〇・七にできるというような計算でございますけれども、最近の資材の値上りその他によりまして、四十三億ではなお相当額を増額しなければ、〇・七も完成しないというような状況でございまして、この残りの分については将来ともできるだけ努力して参るつもりでございます。なお今お尋ねのございましたように、われわれといたしましては、非常に問題になつておりました認定外の工事及び小学校等の腐朽校舎の問題等も相当重要な問題がございますし、なお六・三につきましては、〇・七というのは最小限度の、ただ教室、廊下その他わずかなものがついただけでございまして、中学校といたしまして必要なる特別教室その他の設備をいたしますのには、相当の坪数を増加して参らなければなりませんので、これは国家財政の都合もあるかと思いますが、財政の都合が将来許す限り、今申し上げましたようなものを含めて将来義務教育の方の施設の拡充に努めて、参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  161. 平川篤雄

    平川委員 認定外の工事、小学校の建築なども考慮を拂われるという点は、非常に満足をいたすことでありますが、われわれはこれをむずかしいことだとは思いますが、定時的に、年々ある一定の額が計上せられるように、文部省において努力をせられたいと思うのであります。というのは、この前の認定外工事の起つた原因を考えてみてもわかるのでありますが、もう来年はやめになる、二年きりでやめになるというような声がありますために、めちやくちやに、自分のところのふところぐあいを考えずに、工事に着手してやつたようなところがある。こういうことになりましては、ますます財政上の負担がふえて来る。多少の調査をいたしましたならば年々の計画というものが立つのでありますから、相当長年の計画のものに、小学校の建築を含めましてお考えになつて、その間に認定外工事の跡始末も織り込んで行かれるようにせられますならば、みんな安心をして、こらえられるだけこらえてやつて行くのじやないかと思うのです。どうかそういうふうに一層努力をお願いしたいと思うのです。この六・三建築につきまして、四十三億では足りないということについては、ここに私ども幾ら強い表現をもつていたしましても足りるということはないような気がするのであります。この程度にいたします。  ただ文部省として、こういうことをお知りになつておるかどうか一言この際お聞きしておきたいのであります。これは文部省関係のいわゆる補助金的なものだけではないのであつて、各所にそういう事実があるのであります。国庫からもらいました金額の一割なら一割、五分なら五分、そういうものを負担金として町村が出しまして、そうしてどういうふうになるのか知りませんが、主としてこれが運動費になりましたり、あるいは、中には各役所に何々協会とか何とかいう妙な私設の団体があつて、合法的な贈收賄が行われておるといううわさが非常にある。この六三建築予算につきましても、現実に一割なら一割を必ず負担しておるという実例は各所に見られるのでありますが、こういうような問題につきまして御承知になつておりますか、あるいはその使途がどういうふうになつておるのかへこの際ちよつとお聞きしてみたいと思います。
  162. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 ただいま御指摘の、割当金額の何パーセントかをそういうふうに供出しておるといううわさは聞いたことがございますが、事実その点を私どもは確認いたしておりません。また、たとえば東京に出かける必要があるということであれば、あれにはトータルとして二分七厘の事務費がみなついておるわけでありますから、そういう必要は一応ないものと申し上げるよりほかないのでありますが、今御指摘のようなことが事実あるとすれば、むしろ絶対にやめさせなければならぬことでありますから、すぐにその点を精査して、そういうことが起らぬように努めたいと思います。また現在そういう意味のことについて確認した事実は全然持つておりません。
  163. 上林山榮吉

    上林主査 この際、先ほど平川委員から質疑のありました教員給の基礎数字について、内藤説明員の説明を願います。
  164. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 待遇改善の問題でございますが、これは昭和二十五年度の補正予算におきまして、年末手当に要する財源といたしまして大体二十三億程度、これは小、中、高等学校の先生の分であります。それから千円の給與べースの改訂に要する財源が二十一億程度、それから教員には別表をつくることになつておりましたが、別表をつくらないで、とりあえず級別推定表の改訂をいたしまして、教員の給與が頭打ちをしないように待遇改善の方途を講じたのであります。これに要する財源が、一月から三月までで約五億円以上、四十数億円の財源がどうしても必要なわけであります。そこでこれに要する財源といたしまして、平衡交付金はわずかに三十五億しか増額が認められておりませんので、どうしても平衡交付金だけでは処置がつかなかつたわけであります。そこで、この前の平衡交付金法の仮決定に基きますところの教育費の財政需要額のうち、相当実情にそぐわないような点もございましたので、そういう点を補正いたしまして、市町村の教育費のうち、町村に少し行き過ぎたようなきらいもございましたので、二十三億ほど市町村の教育費を切りまして、都道府県の方に移した。それからさらに平衡交付金の増額等を勘案いたしまして、本年度の補正の分といたしまして、新たに都道府県に四十数億の財源措置をいたしたわけであります。もちろん金額で五十数億に上らなければならないのですが、この五十三億のうち十億は節約いたしまして、新たに四十四億ほどの財源措置をいたしましたので、何とかここでべース改訂ができるであろうと私どもは期待しておるのであります。ただ県全体が非常に財政が苦しいので、財源の見通しがつかなかつたために、べース改訂も級別推定表の改訂もほとんど行われておらないというのが実情であります。一月の終りに地方財政委員会からその旨の通達がございましたので、会議も招集いたして、財源の見通しについて財務当局もよく納得して帰られたと思うのであります。そういう点から、二月臨時会において二十五年度の待遇改善は何とか実施できるであろうと私どもは期待しておるのであります。それに要する経費につきましては、文部省といたしまして、教育委員会を招集いたしまして、各県にどれだけ新しく財源が行くかということの説明をいたしておるのであります。ただ二十六年度の教育費の問題が一つ非常に大きな問題となつてつているのですが、これは千百億の平衡交付金と地方税收入の二千百億程度のもので何とかまかなうように処置したいと考えております。この問題は三月地方財政委員会できめることになつておりますので、その際に教育費の基準財政需要を十分見積りまして、できるだけ円満に待遇改善が行われるように措置したいと考えて、目下地方財政委員会と交渉中でございます。
  165. 平川篤雄

    平川委員 内藤課長さんにお尋ねいたします。ただいまの十億節約というのは、この教育費の中で節約するということになれば、年末賞與、千円べース・アツプ、待遇改革——自然人件費の節約ということになりそうですが、その点はどうなんですか。
  166. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 それは教育費の中で人件費ばかりではございません、その他の教育費もございますし、高等学校の設備費もございます。できるだけ人件費の面を節約しないで、その他の教育費から節約するようにいたしたのであります。もちろん、これは一応基準財政需要額面から予算には組んでありますが、ある程度の節約はやむを得ないと存じます。なるべく人件費の分については節約をいたさないようにいたしたいと思つております。
  167. 平川篤雄

    平川委員 なるべく人件費の上で節約はしないようにということでありますが、私は人件費の方へも節約が及んでおることをある程度お認めになつているのを知りまして、驚かざるを得ないのであります。現在地方財政平衡交付金が少かつたというので首切りが生じておるという話を聞きまして、そんなばかな話はないと思つておりましたが、文部省はそれをお認めになつているのですか。
  168. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 大体昭和二十五年度の基準財政需要額の仮決定のときに、教育費の分につきましては、平衡交付金に入りました国庫負担金を元にしましたので、この額は相当余裕があつたわけであります。と申しますのは、前年度の一・三五を一・五に引上げまして、中学校は一・七を二・八に引上げ、さらに結核の分はわく外に丁三三%を見込みましたので、相当な財源が出たのであります。国庫補助費は二十億、総額にいたしまして四十億程度増額いたしたのであります。そこで、この仮決定にあたりまして、これを計算してみますと、各府県の基準財政需要額は、教育費の実際の予算と比較して、八月、九月の終りにとつた調査によりますと、全国の小学校で三分の二程度はこの基準財政需要額に達していない、中学校で半分は達していないというような実情もあつたわけでございます。私どもとしては、十億の節約を何とかしなければまかなえないはめに立ち至つたのでございます。これは御承知通り、平衡交付金が三十五億しか増額されていない。三十五億の増額に対して、教育費の所要財源五十数億というものをひねり出すためには、相当な無理をしなければならない。そこで先ほど申し上げたように、市町村の方で余つているようなところを計算し直して、そういうところから約二十三億ひねり出す。新しくとれた平衡交付金のところからも出して、従来の分のうちで節約のできる可能性のあるものは若干節約したわけでありまして、私どもとしては人件費の分の中にはなるべく節約しないという方針でおつたのでありますが、若干は入つたのであります。しかしながら給與費全体が五百数十億に上つておりますので、このうちの一%以下くらいになると思うのでありますが、若干の分は節約せざるを得なかつたという実情なのでございます。
  169. 平川篤雄

    平川委員 文部省のことでありますから泣寝入りをせられたのだろうと思いますが、国の予算で節約するといえば、たいてい五%ぐらいでも文句が多いのであります。五十億ばかりの金の中で十億節約するということが可能であるかどうかということは、考えてみてもわかるのであります。しかも一—三月の間の問題で、どの程度大きな出血が地方に行つておるかということについては、これはわかつてつて、こうしたむごいやり方をしたのだろうと思いますが、一体それはどこに責任があるのでありますか。文部省は泣寝入りをせられたのだろうと思いまして、私は追究いたしませんが、地方財政委員会の方に問題があるのか、大蔵省の方に問題があるのか、こういう非人道的な節約を強要した責任はどこにあるのでありますか。
  170. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 これは五十億の中で節約したというふうにお考えいただかないで、基準財政需要の二千二百八十億のうち、教育費の分が当初九百十六億と割当てられた、その九百十六億のうち、二十億ほどの節約をした。市町村関係から十億、都道府県から十億という意味でありまして、これは大体二%程度にあたるわけであります。年末手当を国の方が出す場合に、国の方では年末手当は大体五%の節約財源でまかなつたわけでございますので、ある程度の節約はやむを得ない。都道府県の場合は六百数十億に上つておりますので、そのうち一%程度の節約でありますので、そう大きな響きはないと私どもは思つております。この責任はもちろん文部省側にもありますが、決定は地方財政委員会でいたしましたので、地方財政委員会の問題でありますが、地方財政委員会はおそらく平衡交付金が非常な減額を見、八十八億の追加要求をしておつた建前もございますので、おそらくそちらの方にも響いて来るのではないかと思いますが、もちろん私どももその責任を回避するものではございません。
  171. 平川篤雄

    平川委員 時間の関係でこの程度にいたしたいと思いますが、ただいま二十六年度の給與改善の單価については今折衝中だというお話でありますが、聞くところによると、政府は、大体千円アツプの問題については、一人当り千円しか出さない意向だということであります。また地方財政委員会の算定いたそうとしておる基礎は、二十三年度のものを基準にしておるということを聞くのでありますが、その点はどうでございましようか。それから文部省のただいま要求しておいでになるのは、一人当り何円になりますか、数字をお持ちならば、お知らせを願いたいと思います。
  172. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 その單価につきましては、千円のベース・アツプということになつておりますが、実際法律を適用してみますと、千円ではとてもまかなえないというのが現状で、ございまして、予算措置をいたす場合には、教員の給與に対しまして、六千三百分の八千を掛けたわけであります。ですから、千円ちよつと越すわけであります。これでは財源が足りないことは私どもも承知しておるのであります。ただ基準財政需要に見る場合の根拠といたしまして、昭和二十五年度の国庫補助、これは平衡交付金に入つたのですが、そのときの平均單価が、小学校では月額五千五百六十九円、中学校では六千九十三円でございますので、この單価をとりまして、この單価に六千三百円分の八千円ペースを掛けたのであります。そこで出しました関係で、千円よりはやや上まわつております。そのほかに給與ペース改訂の財源がございますので、そういうものを合せまして、小学校で大体千五百円程度、中学校で千七、八百円、高等学校で二千円程度の財源措置をいたしております。が、実際はそれ以上にかかると思うのであります。しかしこの基準財政需要額はあくまでも最低でございますので、なおこれはすでに御承知と思いますが、基準財政收入の方を七割と見ておりますので、標準的経費の七割ということになつておりますから、一応地方財政には收入の面で多少の余裕がまだあると思いますので、その中から少しひねり出すということになるかと思います。もちろん十分な財源措置ではございませんが、現在において私どもの推計できる数字の最善を盡した次第であります。
  173. 平川篤雄

    平川委員 地方財政委員会の方に関係のある問題でありますから、あとはその方へ明日質問いたしたいと思いますが、最低をおきめになると、それすらよそへ持つて行かれますので、例の標準教育費の問題が起つているのです。さようなことで、さばを読まれることを奨励するわけではありませんが、多少政治的にお考えにならないと、結局は地方財政を圧迫し、教育というものに非常に大きな弊害を與えるものであると私は考えるのであります。さように御考慮をお願いしたいと思います。  あと大分問題があるのでありますが、主査の方でお急きでありますので、おもな点だけ二、三お伺いして、文部大臣のおいでを待ちまして、文部大臣にまた別にお尋ねを申し上げたいと思います。  義務教育教科書無償配布費というけつこうなものが今度できたのでありますが、これははなはだよろしいことで、たとい一年生だけでも頭をのぞかしておけば、将来の問題が出て来るからと思つて実は喜んでおつたのでありますが、聞くところによると、どうも地方負担をいたずらにかけるだけの結果になるんじやないかというような感じがする結果になつたようでありますが、この点について経過並びに文部省としてのお考えをお聞かせ願いたい。
  174. 辻田力

    ○辻田政府委員 憲法の定むるところの理想を実現いたしますために、一歩でも義務教育の保障の線に沿つて行きたいという考え予算の中に入れていただいたわけであります。最初の計算といたしましては、その当時発行されておりました教科書の最低單価をとりまして、その最低單価に対して員数倍をして計算したわけであります。それが予算書に載つております一億三千九百余万円になつておるわけであります。しかしその後朝鮮動乱その他の影響によりまして、用紙の値段が非常に高騰いたしました。従つて教科書の單価も上らざるを得なくなつたのであります。当初の予算のわくでは、最初考えておりました小学校一年生の国語、算数、理科の教科書をまかなうことができませんので、いろいろ研究の結果、現在におきましては、小学校一年生の国語と算数について教科書を無償で給與したいという考えでおります。この場合におきまして例外の点はもちろん認めたのでありますが、一方地方財政を著しく圧迫するというようなことは、われわれといたしましても好ましくないことでありますので、関係当局とも連絡いたしまして、政府からの補助金を一億三千九百万円、それからそれに見合せましてやはり同額を平衡交付金から積算的に出してもらうということに話合いがついておるわけであります。従つて地方の負担と申しますか、地方税から出て来る負担というものは非常に僅少なことになると思つております。
  175. 平川篤雄

    平川委員 そういたしますと、基準財政需要の中に、その一年生の国語と算数の教科書の費用が含まれるわけですか。
  176. 辻田力

    ○辻田政府委員 さようであります。
  177. 平川篤雄

    平川委員 それでは急ぎましてほかの問題に移ります。  定時制の高等学校の職員、ことに芸能科の職員が足りないために、ほとんど技倆もない者が音楽をやつたり、図画をやつたり、しかも山の奥で、オルガンもないために、竹の棒を振つて、肉声で音楽指導をやつたりというような状態が各地にある。これはことに若い人たちは、定時制高等学校ができるということについて最初は非常に喜んでおつたのでありますが、現実では生徒を苦しめ、地方に非常に大きな負担を與えておる。ことに旅費なんかはほとんど生徒の父兄の負担になつておる。ひどいところになりますと、三里も四里も山を越えて行かなければならぬので、授業に出れば当然二、三日はとまらなければならぬ。そうした食費から旅費一切のものは、その定時制の学校に来ておる生徒の父兄によつてまかなわれるというような状態が出ておるのでありまして、昨年も予算委員会におきまして、私は文部大臣にこのことの解決方をお話したのでありますが、一向よくなつておる風が見えない。  それから先ほど中学校の組合立がどんどんできることを阻害するから、平衡交付金でも考慮したというお話があつたのでありますが、地方によつて事情は違うかもしれませんが、組合立をむしろ解こうというような空気がだんだん見えて来ておるのであります。実際実施に当つてみますと、机の上で夏のまつ最中に計算をしたようなわけに行きませんで、雪のあるところもあれば、雨が降つて通えないようなところもある。そういうようなところの実情を無視して行われておりますのを、今度はむしろ是正しなければならぬという時期になつておると思う。ただこの組合立の中学校なんかを促進する前に、行政区画の改訂をまずやりまして、それからやるべきであつたと思うのです。今学校の問題を中心にして、どのくらいトラブルが起つておるかわからぬのでありまして、私ども仲裁に乘り出してくれと言われております学校問題というものはずいぶんたくさんあるのでありますが、学校騒動と警察のもらい下げだけは私は絶対やらぬと言つてつておる状態です。こういうようなことは、教育の機会均等の上から申しまして、ぜひとも考えなければならぬ問題でありますが、今回の予算措置でどういうふうに現われたか、また現われていないとすれば、どういうふうな経過になつておるか、お聞きいたしたいのであります。
  178. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 最初の定時制高等学校の関係と中学校の関係はちよつとはつきりいたしませんでしたが、中学校の関係について先に申し上げますれば、私ども六・三の予算関係を始めました当初は、必ずしも組合立でなければならぬというような態度を示してはおらぬのでありまして、小学校にくつつけるというようなことはなるだけ避けてほしいという程度で進行しておつたと思います。ところがその後実際に建築の仕事を進めて行きますと、先ほど御指摘になつておりましたような認証外工事の関係がかなり起つて来て、その認証外工事がかなり多いということが、例のドツジ・ラインで、六・三の予算はいらなくなつたのじやないかというふうになつて来たわけであります。そのころ関係筋、ことに出先の人たちが、併置校なり、小さな分立校なりといつたものを極度にきらいまして、できるだけ組合立にするといつたような、非常に強い指導をいたしておりました。それらが、その当時私どもが考えましたよりもよほど組合立を促進して行つたような結果になつております。その後だんだん建築が進むに従いまして、單独でやるよりも、組合立で行つた方が、将来学校の維持管理の上からいつてむしろ有利だろうという解釈を私どもも持つておりますし、地方関係者も、事実私どもの方に来ております資料なり、また予算要求なりの形に現われておりますものは、非常に極端な形で組合立を促進して来ております。普通には二箇村ぐらいが多いように思いますが、ひどいのになりますと、五箇村ということになつて来て、ただいま御指摘のように、かなり交通に不便もあるのではないかという事も実あるかと思つておりますが、私どもは今のところせいぜい二箇村から三箇村程度のところを中心にして、できるだけ融和的な意味での組合立といつたものの成立を希望し、予算の上でもなるべく組合の関係のものを勧奨して行くという状態で進んで来ております。  高等学校の関係の部分は担当が違いますので……。
  179. 内藤譽三郎

    ○内藤説明員 定時制高等学校の予算上の措置の問題でございますが、従来は御承知通り、定時制高等学校の教員費の十分の四を国が補助し、教員費自体は都道府県の負担であつたのでありますが、この補助金が平衡交付金の方に算入されましたので、この問題は平衡交付金法における定時制高等学校の教育費の扱いの問題になつたと思うのであります。そこで私どもといたしましては、定時制高等学校の重要性をよく認識しておりますので、全日制高等学校と同額を保障するようにいたしたのであります。この場合全日制高等学校におきます県立の学校ですと、給與費のみならず、物件費、すべての経費が含まれるわけでありますが、定時制高等学校はそれと同額を保障したのであります。そういう意味で、生徒一人に対して四千三百円ほどのものを保障したわけであります。あと物件費につきましては、市町村でこれは拂うことになつておりますので、市町村で負担しております。そこで市町村の負担分は授業料の收入でまかなうという建前をとつておりましたが、授業料だけでは定時制高等学校の充実が期待できませんので、今度の平衡交付金の本決定にあたりまして、市町村の分につきましては、全日制高等学校の一人当りの單位費用の二割を市町村でも見てやる。こういうような措置をとりまして、市町村の設備の充実に充てたい、かように考えたわけであります。  それからいま一つ問題として、定時制高等学校は、大体小さい学校が多いのでございますから、こういう場合に、従来の平衡交付金の建前は、高等学校の経費は、すなわち單位費用として生徒数のみをとつておる。小学校、中学校ですと、生徒、学級、学校と三本建てをとつておりますが、高等学校の場合には生徒数一本が測定單位になつております関係上、小さい学校が非常に不利になる関係もございますので、こういうような場合に備えて、ある程度学校数による経費を見るということにいたしまして、これは特別平衡交付金の方でこの措置を講ずるように、地方財政委員会と話がつきましたので、さらにただいまお話した上に、高等学校の学校当りの経費を若干見れると思うのであります。こういうような措置によりまして、定時制高等学校の振興を期したい、かように考えております。
  180. 平川篤雄

    平川委員 最後に一つだけお尋ねしたいと思います。  国家公務員たる教育職員は、大学の教授を初めといたしまして、地方におりますいわゆる昔の師範付属の教員に至るまで、非常に待遇が惡いということがいわれておるのであります。実際私どもの目につく点を比較いたしてみましても、二、三号俸は確かに大学の教授なんか違うと思います。けれども、これはただ教育職員だけの問題ではなしに、全部の国家公務員に多少そういうふうな傾向があるのではなかろうかということを感じておるのでありますが、文部省でさような資料をお持合せになつておりますならば、ひとつお示しを願いたい。と同時に、この問題のいきさつがどういうふうになつておるか。つまり地方公務員と均衡をとつて行くということ、これはいいことか惡いことか知りませんけれども、多かれ少なかれ国立学校の教員が地方に與えておる影響などを考えますときに、事は個人の生活の問題だけではなしに、大きな意味での教育にも関係あることだと思うのであります。ことに大学の教授などは、研究費が足りないとか、あるいは中には食えないために自殺するというような状態まで起つておるということは、ただいまの国情として、はなはだ憂うべき点があると思います。文部大臣がお見えになれば、そういうことについてもお伺いしたいのでありますが、国家公務員たる教育職員の待遇の問題について、文部省のおとりになつておる努力並びにその見通しというものについてお伺いをいたしたいのであります。
  181. 剱木亨弘

    ○剱木説明員 国家公務員でございます教育職員、大学の教授等につきましての待遇の問題についてのお尋ねでございますが、地方の教職員、いわゆる教育公務員との比較の問題につきましては、特に同じような小学校、中学校の職員でございましても、付属の者とそれから地方の教職員との間には、相当号俸の上に、現在もなお差がございまして、これについての資料等につきましては、調査もございますので、できるだけ早くお手元に差上げたいと思います。  それから一般に大学教授等の待遇の改善につきましては、特に先ほど申し上げましたように、教育公務員の級別推定表の改正によりまして、現在の一般の公務員の待遇の範囲におきましての、できるだけの改善は努力して参つておるのでございます。しかしながら根本的な問題といたしましては、大学教授の待遇が、現在の通りであつていいとは考えておりません。この点につきましては、人事院とも交渉を続けて参つておるのでございますが、何らか別個の給與体系をつくつて行きたい。これは相当の程度交渉を進めつつあります。将来はできるだけ大学教授につきましては、別個の俸給表で参りたい、そういうふうに努力をして参りたいと考えております。
  182. 平川篤雄

    平川委員 文部大臣に質問したいことが残つておるのでありますが、それを留保いたしましてこれで打切ります。
  183. 上林山榮吉

    上林主査 坂田君。
  184. 坂田道太

    坂田(道)委員 私は簡單に、平川委員の御質問と重複しない点だけお伺いします。  教科書の無償配給の問題についてでありまするが、予算に一億三千九百万円を計上されておりますけれども、これを実施いたします場合、どういうふうにやられるか、その法案はまだ提出されておらないと思うのでありますが、いつごろ御提出の御予定であるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  185. 辻田力

    ○辻田政府委員 今回の義務教育関係の教科書無償給與の裏づけをいたしますために、法律案を提出したいと思います。今の見通しでは、大体今週中くらいに出したいと思つております。
  186. 坂田道太

    坂田(道)委員 その法案の内容につきましては、法案が提出された際に詳しく御質問をしたいと思いまするけれども、大体の内容がおわかりでございましたら、おさしつかえない限り、御発表いただきたいと思うわけでございます。
  187. 辻田力

    ○辻田政府委員 この法案の内容は、まだ正式な決定をいたしませんので、詳しく申し上げかねるのでありますが、大体の骨子といたしましては、昭和二十六年度におきまして、小学校の一年生に、国語と算数の教科書を無償で給與する。それに対しまして、それに必要な費用のおおむね二分の一を政府が補助する。従つてその裏には、その半分は平衡交付金によつてまかなうということになつておるわけでございます。それから二十七年度以降の問題につきましては、新しく義務教育振興の審議会を組織いたしまして、そこで研究をするという大体の骨子でございます。
  188. 坂田道太

    坂田(道)委員 大体この法案につきましては、本年度限りの法案ということでございますか。
  189. 辻田力

    ○辻田政府委員 今回提出いたしたいと思つておりますのは、昭和二十六年度限りの法案でございます。
  190. 坂田道太

    坂田(道)委員 新聞等によりますと、理科を入れるというような新聞報道もあつたように思いますが、その点はもうはつきり、国語と算数ということに御決定になつておると、こう了承してよろしゆうございますか。
  191. 辻田力

    ○辻田政府委員 大体さように御了承をいただきたいと思いますが、ただ盲聾唖の問題につきましては、これは特別な措置をいたしたいと考えております。といいますのは、その他の参考資料等についても、場合によつては給與するということもあり得ることでございますから……。
  192. 坂田道太

    坂田(道)委員 もう一点だけ。これも新聞であつたと思いますけれども、国庫補助以外のあとの二分の一を地方公共団体でなくて、PTAあたりで出さなければならないというような報道も一部に伝わつておるように思いまして、これが製造会社あるいはまた配給機関というようなところに相当に影響を與えておると考えられるのでございまするから、この点ははつきりしておると思いますけれども、もう一度この際はつきり御言明をいただきたいと思います。
  193. 辻田力

    ○辻田政府委員 地方財政委員会、地方自治庁等と連絡いたしまして、現在は平衡交付金に積算するということになつております。
  194. 上林山榮吉

    上林主査 文部大臣に対する平川委員の質疑を留保いたしまして、文部省所管予算についての質疑は本日はこの程度といたします。
  195. 上林山榮吉

    上林主査 次に厚生省所管の二十六年度予算審査に入りたいと思います。  まず黒川厚生大臣より説明をお願いいたします。黒川厚生大臣。
  196. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 ただいま議題となりました昭和二十六年度厚生省所管予定経費要求額の内容について簡單に御説明申し上げます。  昭和二十六年度厚生省所管一般会計予算の要求額は四百四十二億七千二百四万七千円でありまして、これを昭和二十五年度予算額三百四十一億八千九十五万四千円に比較いたしますと、百億九千百九万三千円の増加と相なるのであります。  今右予算のうち、おもなる事項についてその内容を申し上げますと、まず第一は、官房関係経費七億一千九百二万円でありますが、これは十七箇所の国立公園のほか、三箇所の国民公園の維持運営をはかるため必要な経費三千七百四十七万六千円と、各種疾病の状態を迅速正確に把握するため、衛生統計の充実をはかる経費二億八千五百五十六万八千円と、その他厚生行政国民に普及徹底させる経費及び社会保障制度の企画調査に必要な経費等、官房事務処理に要する経費三億八千三百八十九万一千円と、また現在わが国人口問題の重要性にかんがみ、これが適切なる対策樹立のため、基礎的な調査研究を行います人口問題研究所の運営に要する経費千二百八万五千円を計上いたしました。  次に第二は、公衆衛生並びに予防衛生対策に関する経費四十五億千八百二十二万七千円であります。優生保護法に基き、惡質な素質を有する者の出生を抑制し、もつて国民資質の向上をはかるための経費五百十九万八千円と、国民の栄養に関する知識を普及し、食生活の改善をはかるため、国民の栄養調査を実施する等のため必要な経費三千五百一万円、衛生行政の末端機関であります保健所の使命は、ますます重要性を加えて参りましたので、さらにその内容を整備拡充するためと、これが運営に関し、調査企画及び指導等に必要な経費九億四千七百七十三万二千円と、国民死亡順位の首位を占めている結核の予防撲滅は、最も緊要な問題でありまして、これが調査、企画、研究及び結核技術者の養成を行うとともに、結核予防法に基き都道府県の負担する結核予防費、及び公益法人の経営する結核療養所の経費に対し補助する等、結核対策の強化拡充のため必要な経費十一億六千百六十八万九千円と、伝染病の発生を未然に防止するため防疫対策の強化徹底をはかるとともに、伝染病予防法、癩予防法、寄生虫病予防法に基く都道府県及び市町村の予防費、並びに私立癩療養所の経営費に対する補助等の経費六億五千九百九万三千円と、精神衛生法の適正な運営をはかり、精神衛生対策に関する調査、企画、指導を行いますのと、精神衛生法に基き、都道府県の支出する経費に対し補助するための経費、及び国民の精神衛生に関する総合対策を研究する精神衛生研究所の運営に必要な経費一億一千三百十四万五千円と、性病はますます蔓延の傾向にありますので、接触者の調査、健康診断及び治療を行う等、現下必要な性病対策を実施いたしますための経費一億四千七百五十五万八千円と、伝染病発生の根源をなす鼠族、昆虫の駆除、興業場、旅館等の衛生的文化的環境の改善をはかるため、その企画、指導を行いますのと、上下水道の現状国民保健上寒心にたえないものがありますので、これが衛生的な築造、維持、管理につき適切な調査指導をなすとともに、市町村に対し水道事業の助長発達をはかるため必要な経費四千四万九千円と、食品衛生法によりまして、不良有害の飲食物の取締りを行い、中毒の危害の発生を防止いたしますのと、また輸出入食糧品の衛生検査を行い、衛生上の事故の発生を未然に防止する等のため必要な経費二千三百六十二万一千円と、狂犬病の発生を予防し、その蔓延を防止する必要がありますのと、衛生検査施設に関する企画、指導及び疾病の予病治療に関する研究の指導を行うための経費四百十三万四千円と、検疫は、国内の伝染病予防上きわめて重要なことでありますので、十四箇所の検疫所を運営するとともに、これを指導監督するため必要な経費一億五千四百五十九万一千円と、公立結核療養所、公益法人結核療養所、保健所、伝染病院、精神病院等、公衆衛生関係施設整備に必要な経費九億五千四百七十二万五千円と、公衆衛生行政全般の適正なる運営をはかるため調査、企画に必要な経費六百八十三万円と、公衆衛生技術者の素質の向上をはかることはきわめて重要な事項でありますので、国立公衆衛生院におきまして、前年度に引続き医学科、衛生薬学科等七科目につき養成訓練を実施いたします経費五千九十一万四千円と、また疾病の予防、治療方法等の研究、細菌製剤の検査を行います国立予防衛生研究所の経営費一億八千七百八十九万三千円をそれぞれ計上いたしました。  次に第三は、医務対策に関する経費一億二千七百万三千円でありますが、医療法、医師法、歯科医師法等に基く各種審議会の円滑なる運営と、医務行、政の充実をはかるための経費五百七十四万四千円と、医師、歯科医師、看護婦等の国家試験及び実地修練を行うため必要な経費二千五百七十四万三千円と、医療内容の向上をはかりますため、病院管理者に対し研修を行うことと、歯科医療行政に関する企画、指導及び歯科衛生士の養成並びに保健婦、助産婦、看護婦の指導、養成、訓練等に必要な経費三千四百四十七万九千円と、七大都市における死因不明の死者につき、その死因の調査を行う経費を補助するための経費六百八十四万二千円と、社会保障制度の一環として、公的医療機関の整備充実をはかる必要がありますので、これが建設費に対し補助するための経費五千八万二千円と、その他あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法施行に必要な経費並びに医務行政の統轄運営に必要な経費四百十一万三千円をそれぞれ計上いたしました。  次に第四は、国立病院療養所の経営等に関する経費七十七億二千三百三十四万六千円でありますが、結核蔓延の現状に対処いたしまして、国立の結核病床千五百床を拡充し、五万七千五百五十床を経営いたしますのと、癩療養所は一千床を拡充して一方一千床、また精神頭部療養所は二百床を拡充して一万一千床、脊髄療養所は二十床を拡充して百十床を経営いたしますとともに、病院、療養・所の経営の指導、監督、機械器具及び建物の補修整備並びに結核、癩の治療薬として、パス、フロミンを購入するための経費、看護婦の養成及び再教育の実施と、また国立病院特別会計の円滑なる運営をはかるための一般会計から繰入れをなす等、医療確保のため必要な経費をそれぞれ計上いたしました。  次に第五は、薬務対策に関する経費十一億三千七百九十二万六千円でありますが、薬事行政の統轄運営及び医薬品、衛生用品企業の振興をはかるため、これに関す調査、企画を行い、これら企業を育成指導する必要がありますのと、薬局の整備その他医薬制度の確立、薬事審議会の適正なる運営、薬剤師国家試験の施行、医薬品、用具、化粧品、衛生材料等の生産技術及び品質の向上をはかりますことと、不良医薬品並びに麻薬等の取締りを徹底的に実施し、また薬事法に基き、医薬品、用具、化粧品等の不良品等を一掃するため国家検定を強化するとともに、製造所の指導監督を行う等国民医療の確保向上を期するための経費九千九百五十八万七千円と、結核及び急性伝染病の予防及び治療のため、ストレプトマイシン並びにワクチンの生産配給の円滑を期するため、国が買上げするための経費九億六千三百三十万六千円と、医薬品の創成及び製造方法の効率的な研究、医薬品、食品等の試験検定を実施いたしますため、国立衛生試験所の経営に必要な経費七千五百三万三千円を計上いたしております。  次に第六は、民生安定に関する経費二百二十億五千九百十三万九千円でありますが、現下の社会情勢にかんがみ、国民生活を安定し、社会福祉の増進をはかる等、すみやかに適切な施策を実施いたしますことは緊要なことでありますので、社会事業に関する諸般の調査を行い、社会事業施策の総合調整をはかりますのと、社会事業施設の指導及び社会事業関係職員の再教育並びに養成に必要な経費二千八百八十万六千円と、生活困窮者の生活を保護するため生活保護法の適正なる運営指導をはかり、生活保護法に関する調査、企画等に必要な経費千六百七十四万六千円と、傷痍者の保護更生施策の基本的調査收容施設の経営費に対する補助、国立の身体障害者更正指導所、及び失明者の保護更生を目的とする国立光明寮を経営いたします経費一億八千六百五十六万九千円と、国民の自発的な生活協同組織の育成発達をはかるための経費三百六十二万六千円と、生活援護物資の供給と、ララ救援物資の保管配分に必要な経費六千五十一万五千円と、生活保護法に基き、生活扶助、医療住宅、教育等各種の扶助援護を実施いたします経費二百十億六千三百四十五万六千円と、正常な生活から転落する婦人の保護更生をはかるため收容施設の経営費の補助に必要な経費千六百三十万八千円と、また災害救助法に基きまして、都道府県が支出する応急救助費の補助に必要な経費五千六十二万九千円と、生活困窮者、引揚者等の再起更生をはかるため、前年度に引続き更生資金を貸付けるための経費三億円と、生活保護法及び身体障害者福祉法に基き、市町村または都道府県が負担する施設設備費の補助に必要な経費三億二千二百三十八万四千円と、市町村が負担する公益質屋設備費に補加するための経費千十万円をそれぞれ計上いたしました。  次に第七は、見章福祉に関する経費八億二千二百四十五万一千円でありますが、児童福祉法により、児童の健全な育成愛護等児童福祉の増進をはかるため各種の施策を要しますので、これが調査、企画と、都道府県の負担する児童相談所、一時保護所の運営費に補助する等のため必要な経費一億二千八百四十二万円と、不良兒、孤兒、浮浪児等の保護及び收容施設の経営費に対し補助いたします経費百六十六万三千円と、保育所、母子寮及び保母養成所の運営並びに妊産婦、乳幼児の健康診断と、保健指導等母子衛生に関する施策を強化徹底するための経費四千五百十四万円と、身体障害見を保護するため適正な治療指導を行うとともに、義肢、盲人安全杖等の介護用具を給與する都道府県の経費を補助すると、肢体不自由見施設の経営を委託するに必要な経費三千二百二十七万六千円と、ユニセフより提供される救済物資の処理に必要な経費三千九百八十万円と、児童福祉法に基き、都道府県が負担する児童相談所、一時保護所、保育所、母子寮等児童福祉施設を整備拡充する経費を補加するため必要な経費五億六千二百二十万三千円と、強度の変質的不良少年に対し医学的、心理学的な面において特別な教育教護を加えるため、国立教護院を経営するに必要な経費千三百四万九千円をそれぞれ計上しておるのであります。  次に第八は、社会保險対策に関する経費三十九億四千六十三万二千円であります。社会保障制度の根幹をなす社会保險制度を統一整備する必要がありますので、これが調査、企画と、社会保險診療報酬の内容につき、適正な審査を行う等のため必要な経費九百六十八万円と、健康保險、厚生年金保險及び船員保險並びに国民健康保險の円滑なる運営をはかるための調査、企画、指導を行う必要な経費九百九十万六千円と、社会保險の審査に必要な経費千五百四十一万六千円と、社会保險制度の育成助長をはかるため健康保險法に基き、健康保險組合に対する業務取扱費及び結核病床設置費補助と、厚生保險特別会計並びに船員保險特別会計べ給付費及び業務取扱費の一部を一般会計から繰入れのため必要な経費十八億三千四百九十一万八千円と、また国民健康保險事業の育成強化をはかることは、現下きわめて重要なことでありますので、本事業の運営及び直営診療機関の経費に対し補助するため必要な経費二十億七千七十一万二千円を計上いたしたのであります。  次に第九は、引揚げ援護対策に関する経費三十二億二千四百三十万三千円であります。本年度中に外地から内地べ引揚げる者は、約十五万人と予想せられるのでありまして、これらの人々の援護の徹底をはかりますことは、きわめて重要でありますので、引揚港における收容保護、輸送、日用品及び被服の給與、医療その他各種の援護の万全を期しますのと、未復員者給與法及び特別未帰還者給與法に基きます各種の給與等に必要な経費をそれぞれ計上いたしました。  以上昭和二十六年度厚生省所管一般会計予算大要について御説明申し上げたのでありますが、次に特別会計の大要について申し上げます。  まず第一は、厚生保險特別会計の健康勘定においては、歳入歳出とも百八十二億三千五十七万六千円でありまして、年金勘定においては歳入百五十五億五百三十二万五千円、歳出二十億九百二十二万一千円、差引歳入超過百三十四億九千六百十万四千円であります。また業務勘定におきましては、歳入歳出とも二十二億七千二百四十八万三千円と相なつております。  次に第二は、船員保險特別会計でありますが、歳入において二十一億六千四百八十五万七千円、歳出において十七億一千八十四万七千円、差引歳入超過四億五千四百一万円と相なつております。  次に第三は、国立病院特別会計でありますが、歳入歳出とも四十四億二千七百六十一万四千円と相なつております。  以上昭和二十六年度厚生省所管一般会計及び特別会計の予算について概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算の成立につきましては、格別のお力ぞえをお願い申し上げる次第でございます。
  197. 上林山榮吉

    上林主査 本日はこの程度にいたしまして散会いたしたいと思います。  明日は午前十時より続行いたしたいと思います。     午後四時三十二分散会