○内山
公述人 内山であります。私は従来、と申しますか、昨年の九月ごろから、以来しばしば国会に伺いまして、地方自治の裏づけとしての財政強化の問題で皆様にお目にかか
つておるわけでありまして、また来たかという感じもおありになるかと存じまするが、本日は全体の知事とかあるいは地方団体の代表という意味よりは、むしろ
神奈川県知事というきわめて狭い意味から出発いたしまして、
発言をいたさせていただきたいと思うのであります。従
つてきようの
発言は、相当こまかくわたりまするし、正確を期しておるつもりでございます。また同時に地方自治に対する特に平衝交付金の問題その他の問題で、大蔵省と地方財政
委員会との二つの案が国会に提出されておるという重大な場合でありまして、国会こそがこれを判断する唯一の場所でありまして、これをおきますれば、
日本の自治もま
つたく崩壊するというような
状態であるのでありまして、そういう場面に直面いたしましての国会の方々に対しては、私どもも進んで公述もしなければならぬし、また本日のごとく
発言の機会を與えられましたことについては、深く感謝をするものであります。
お手元に配付いたしましたのは、
昭和二十六年度の一般
予算計画表というのでありまするが、これは神奈川県の二十六年度に対する
予算の
計画でありまして、この
計画をや
つてみまして当
つてみますると、次のようなことが出て来るのであります。すなわち神奈川県の人件費——これは教育職員と県の職員とを含むものでありますが、それと法令等に基く義務的の
支出、それから
公共事業費の地方
負担分、国庫補助に伴う地方
負担額、行政機関の通常維持費、最少限度の一般行政費というものについて、それぞれ総額並びに一般財源所要額というのを並べたのでありまするが、それによりますと、一般の人件費といたしまして、一般職員が八億六千三百万円、それから教職員が二十億九千三百万円、年末手当が一億二百万円で、合計三十億五千八百万円ということになります。そのうち一般財源から出るものが二十八億三千八百万円、それから義務費として七億四千百万円、これに対する一般財源が六億四千四百万円、次に
公共事業費というのが十三億九千二百万円、これに対して一般財源が三億九千七百万円、次に国庫補助事業費というのが三億八千九百万円、一般財源が二億一千一百万円、それから通常維持費というのが二億三千八百万円、一般財源が八千二百万円、さらに一般行政費と見るべきものが五億三千百万円で、一般財源が三億三百万円、これらの経費については、たとえば一般人件費の
単価というのは、そこにお配りいたしました別表の「一般職員に関する人件費調」というのがございますが、これは実質上国家公務員の
単価を下まわるほか、定員においても本年度当然生ずる職員を見込まないのでありまして、極度の節減を実施した上での
数字でありまして、教職員についても、これまたお配りいたしました第三表でございますが、定員については文部省指定の小学校生徒五十人について一・五、中学校では同じく一・八というのに対して下まわ
つた、小学校が一・二三、中学校が一・七二という
数字をも
つて算定した
数字でありまして、これは教員組合などとは、あるいは教育
委員会とは、相当争
つたあとで、県の財政上やむを得ないということで、むしろ押しつけた
数字であります。また定額は文部省の
昭和二十四年度通牒の
単価を基準としたものでありまして、これも全然問題のないところであります。さようにして、極度の節約を実施した上での
金額が、先ほど申し上げました
程度のものでありまして、地方自治体としての必要最小限度を計上したものであるが、これに対してこれをまかなうべき財源はどうか、こう申しますると、地方財政
委員会の
昭和二十五年度仮決定による平衡交付金十一億四千八百万円、並びに同
委員会の決定した神奈川県のとるべき税収、すなわち基準税収決定額の百分の七十、つまり七割、それが二十二億一千四百万円、これを合算いたしますと、ようやく三十三億六千二百万円になるのであります。これに競馬等の益金を四千万円加算いたしましても、三十四億三百万円となりまして、人件費及び義務費の一般財源所要額合計を充足し得ないのでありまして、これだけですでにもう赤字とな
つてしまうのであります。
〔
委員長退席、角田
委員長代理着席〕
以上申し述べました最小限度の行政を実施するためには、合計十億六千五百万円の赤字となるのであります。
昭和二十六年度において大幅な平衡交付金総額の
増加並びに配付方法の本県の不利を是正するための変更が行われるのでなければ、神奈川県は財政的に完全に破綻するとい
つてさしつかえない、またそのほかどうにもならぬのであります。
それで本年度の
予算は、以上の赤字に対してどういうふうにつくろ
つておるかと申しますと、それは
公共事業費の全額起債、約四億のから財源、それから平衡交付金三億五千二百万円の一方的な増額見込み、これが地方財政
委員会あるいは大蔵省で出す、出さぬにかかわらず、私どもの方で出るものとまず押しつけた
数字でありまして、そういうものを見込んで、その上にさらに税の収入を四千一百万円、それから義務費、並びに年末手当は計上しておりません。こういうものをいろいろととりまぜまして、一応この赤字をつくろ
つておるわけであります。きわめて不完全な
予算であるといわざるを得ません。
以上申し述べました
数字のほかに、神奈川県が自治体として地方住民の福祉のために、さらにまた国全般の利益のために、実施しなければならない事業のおもなるものを、最小限度の
金額で
計算した場合においても、別紙備考に示す
通り五億三千九百万円となり、これを合計すれば
歳入不足が十六億円となりまして、これだけの財源に関し、何らかの
措置が講ぜられない限りは、本県はその機能を全うして国家の復興に寄與し得ないのであるが、かくのごとき事項は、この際地方自治体側としては、ま
つたく考える余地がない
状態であることをまことに遺憾とするものであります。かくのごとき本県の
現状について、これを匡救するためにも今後もまた必死の努力を傾注いたしまして、
政府関係機関に善処を要望いたさねばならぬと深く期しておるのでありまするが、ここで申し述べたいことは、全面的な責任者として
現実の事態の是正を訴えるべき
政府の責任機関の欠如していることである。すなわち地方財政
委員会、大蔵省のいずれに訴えても、最終的に
現実の事態を責任をも
つて解決し得ない
現状は、地方自治体にと
つてまことに悲しむべき事実であり、中央においてきわめて漠然たる抽象的見解によ
つて、一方的に事実上各県
予算の査定を実施しておるにもかかわらず、具体的事実についてその是正を求むべき方途を持たないことは、地方自治体
当局者の深刻な悩みの種であることを、国会議員
各位の御明察に訴えて善処を希望する次第であります。
そこで以上のごとき県財政の破局的な実態について、そのよ
つて来る原因を探求しますると、当面の問題としては、第一に
政府の平衡交付金総額の算定の誤り、第二に地方財政
委員会の配分、算定上の不合理、これについてはただいま同
委員会で再検討中でありまするが、根本的な問題が検討されていない模様であります。以上の二つの点をあげることができるのであります。
そこでそのおもなる点について詳しく申しますると、第一に平衡交付金総額の算定についてでありまするが、大蔵省においては
昭和二十六年度地方財政平衡交付金の総額を一千百億円と算定しております。その算定方式として
昭和二十五年度当初
金額に対して、
歳入出各費目について、
昭和二十六年度の増減を
計算する方式をと
つておるのでありますが、その
内容について
予算のおもなる点を示せば次の
通りであります。
第一に職員の
給與についてでありますが、大蔵省は一律に一人当り千円増の算定をしておるのでありますけれども、まず一般職について地方自治法施行令の定める
通り、国家公務員と同様のベース引上げを実施し、その間に差別待遇を
意図しないならば、地財委の算定方式によりまして六千三百七分の一千とすべきはもちろんであります。特に国家公務員について人件費総額は、
昭和二十六年度
予算において大幅に増額せられ、一人当り
単価が月額一万一千六百七十八円となるにもかかわらず、神奈川県のごとき、これは全国としても
一つの特殊な地域でありますけれども、勤務地手当の加算率の問題で、国に比較すると九・四%高率であります。そういう県において切りかえを実施した場合において、やはり一万一千七百八十円となる。かくのごとき
状態において、これを可能ならしめる算定のごときは、実情に沿わないものといわざるを得ないのであります。ここに非常な大きな開きが出て来るのであります。
次に教育職員についてでありますが、これについても大蔵省は一律に千円をしいておりますが、神奈川県のごとき、文部省通牒の定類をそのまま採用してベース引上げを計上している県においても、その
単価は小学校一千八百七十九円、中学校が二千二百八十七円に達しておりまして、これは各県ともいずれも同様の
金額とな
つておるのでありまするが、今回の切りかえが高給者ほど高率となる制度である以上は、教職員の構成
内容から見まして、当然の帰結であるこの事実をま
つたく無視したところの大蔵省、地財委ともに大きな誤りを犯しておるものと私どもは考えます。現に神奈川県におきましても、大蔵省とか地財委の主張するようなことを申しましても、それは私どもも信じておりませんが、そういうことをしいようといたしましても、県の教職員は一人でもこれに応ずる者はないのでありまして、これは全国共通の問題であります。ベース改訂に伴う所要額は、「教員に関する人件費調」と、「一般職員に関する人件費調」という資料がここにございまするが、それにありまする
通り、四億六千七百余万円に達しまするので、これにまた勤務地手当とか、共済組合費とかいうようなものを包含すると、五億一千万円となるのであります。この問題は各県を通じ、地方財政最大の問題であるのであります。特に実情調査の上、合理的算定に是正せらるることを要望する次第であります。かようなことはあえて論ずるまでもなく、実地に調査することによ
つて、当然出て来るところの
数字的の結果であります。
次に法令の改正に伴う義務費の増額について申し上げますると、平衡交付金決定以後の法令の改正に伴うところの義務費の
支出増は、さきに全国知事会から提出せられておりまする表に示してありまする
通り、都道府県分のみにて百億円に達しておるのであります。これがほとんど今度は算入されておらぬのであります。これはまさに地方財政法を無視し、地方財政をはなは忙しく圧迫するとともに、その運営を著しく不安ならしめるものであります。さらにまた従来の補助金中、平衡交付金に切りかえられました
金額の算定について、地財委の調査の結果に基く
数字三十四億円が無視せられていることを遺憾とするものであります。義務費の地方財政、特に府県のそれの中に占めるところの比率が、神奈川県の資料によ
つてもきわめて大きいことを
認識せられ、その是正について格段の御配慮を煩わしたいのであります。これは法令によ
つてきめているものを地方に命じ、その法令を施行することによ
つて費用がかかるのでありまするが、その
費用は当然裏づけするということで法令にもきめてあるわけであります。そのきめてあることを私どもは喜んで実行しておると、
あとにな
つてから、その裏づけとなるべき
費用をくれないのであります。これはたいへん悪いたとえでありまするけれども、友達を、別に飲みたくもないのに、きようは一ぱいごちそうするから来いと言
つて呼んで行
つて、ごちそうしてや
つたが、いざとなると、きようは忘れたから、お金をお前拂
つてくれと言
つて拂わせる。そしてその金を
あとで請求すると、お前の方は金が大分ふところにあるようだから、別にこつちから拂わぬでもよろしかろうと言う、こういうようなことになるのではないか、これはきわめて不道徳なことである、こういうことを私は申しているのでありまして、これは国会にも非常に
関係があることでありまするので、ぜひひとつ是正を願いたいと思うのであります。
次には使用料、手数料その他の雑収入の増収見込みについてでありまするが、大蔵省は
支出増加に対する充当財源として、既定経費節約八十億円、使用料、手数料等雑収入増百八十一億円をあげておるのであります。このうちの節約八十億円については、もし
歳出の
増加を必要額だけ算入するならば、地方自治体として少くともこの目標に向
つて努力すべきであるとの意味合いにおいて、一応算定せらるることにあえて反対するものではありません。しかしながら雑收入増の百八十億に至
つては、算定の根拠を全然推算さえなし得ない、はなはだしい架空の
数字であります。もとより地方
予算を集計するならば、雑収入の総額は相当の
金額に達するのでありましよう。しかしながらその大半というものは使用料、手数料等、特定の事業に伴いまして、その特定財源として事業とともに伸縮する収入でありまして、この収入を転じて他の
歳出増の財源に充てるがごときは、地方行政の実態を知らざるもはなはだしきものであるといわざるを得ないのであります。雑収入の他の一半は、各種の運用資金と同一
予算中におきまして
歳入出とともに計上せられ、事実
予算面においてはゼロとして
計算せらるべき
歳入であ
つて、これまた地方
予算に若干の検討を加えれば、容易に発見し得べき
金額であります。
以上の事実を神奈川県について見るならば、別表二十五年の雑収入調べというのがありまするが、これをごらんになりますとよくわかるのであります。ずつと並んでおりますけれども、一番初めの経営的なもの一億二千五百万円というのがありまするが、たとえば不用品の売却代五百万円、生産物の売却代四千八百方円、こういうようなものはまずどこへ持
つて行
つて使
つてもさしつかえないものであります。それからまた延滞金、金庫利子あるいは診療収入、宿泊所収入、
住宅審査依託収入、その他というものが書いてあります。これは経営的なものであります。それから臨時的なものとして漁港の修築納付金とか路面復旧納付金とかいろいろなものが書いてあります。それから回収金というところに持
つて行
つて——これが大きいのでありますが、中小企業運用資金というのが一億円、これは二十五年度に中小企業のために資金を、貸し付けたのでなしに、県として銀行に預けておる。そうしますると、その金を見返りに銀行が一般に融資をしておる。次に農林振興のために五千万円をや
つたのでありまするが、それ以下大体似通
つたものがございますが、これが返
つたからとい
つて、ほんとうに県のふところに入るのじやないのです。県の財産ではありましようが、またその翌年同じように、あるいはそれ以上に金を出さないと、中小企業は困るのでありまするし、農林の振興運用というのにもさしつかえか起るのでありまして、もしこういうものを収入として勘定するならば、同時に
支出の方につきましても、県の行政需要額として
計算に載せるならばこういうものを収入としてもよろしい、けれども県のいわゆる行政費の中に載せないで、収入の方だけにこういうものを載せるというと、非常な不都合を生ずるわけであります。従
つてここに五億六百万円という総計の雑収入がありまするけれども、回収金三億円というものは、全然これは問題にすべからざるもので、これは右から左になくなるものでありまして、そのほかの雑収入のものといいましても、たとえば診療所の収入とか、宿泊所の何とかいうもの、そのほかずつと出ておりますが、いずれもこれは右から左に出て行く性質のものでありまして、こういうものを特に収入として勘定するならば、同時にまた
歳出としての勘定にもこういうものを載せないとつじつまが合わないのであります。しかるに
歳出の面におきましては、きわめて厳格に否定いたしまして、こういうようなものはほとんど載
つておらぬのであります。従
つてこれは片手落になりまするから、雑収入というものを百八十億なんと掲げることは、ま
つたくこれは地方に対し無理やりに
数字を押しつけるところのやり方であると私どもは考えておるのであります。
次に地方財政
委員会の平衡交付金配分上の不合理について申し上げますると、このことにつきましては別に地方財政
委員会に対し、私どもは詳細に
意見を提出しておりまして、同
委員会もまた目下全般的に再検討を実施中であるので、ここではこれを省略いたします。特に長いことでありますから。しかしながらただ一点申し述べるならば、地方財政
委員会の平衡交付金配分の方法が、シヤウプ博士の第二次勧告において明示せられておるように、標準行政費の単位
費用を著しく過小に見積ることによ
つて、行政費の総額を税収と平衡交付金の合算額に一致せしめる方法をと
つておるため、正当なる
計算によ
つて平衡交付金を按分配付せられる場合に比べて、税収の多い自治体ほど平衡交付金と基準税収の合算額が不当に低額となりまして、シヤウプ博士のいわゆる過剰均衡化を来しておることであります。私はこれを洪水的均衡化と申すのであります。平衡交付金というのは谷を埋めるというふうな考え方で始ま
つたのでありまするが、現在ではこれはもう洪水的な結果を来しておるのでありまして、まことに害をなしておると考えております。もし各自治体の
歳入に相当の余力があり、各自治体においてなるべく活発な行政が行われる場合におきましては、従来比較的恵まれなか
つたところの環境にあり、さらにまた伸ばすべき分野のある地方に対しましては、しからざる自治体をしてある一部をさきまして、比較的不利に甘んぜしむ、いわゆる足踏みをさせることも考えられるのでありましよう。しかしながら
現実には各府県ともいやしくも平衡交付金を受ける限りにおいて、一律に最低行政費をまかない得るかどうかが問題にな
つておる
状態において、なおかかる架空の観念を追うことは、税収の多い府県の財政を破綻に導くものであり、一方平衡交付金を受けない自治体が少しあるのでありまするが——府県においても市町村においてもそういうのがあるのでありまして、そういう交付金を受けない自治体が財源の豊富を誇り、これに対して一指も加えないというがごときは、はなはだ奇怪であるといわざるを得ないのであります。一部の議論として基準税収の七割として算定せられておるため、残余の三割を意識して、かかる
措置の正当性を云々するものがあるが、この残余の比率をさらに引上げることによりまして、税収のほとんど総額を平衡交付金の
計算中に算入するならば、税は実質上個々の自治体の財政に対して何ら加うるところなく、逆に徴税の義務と滞納の
危險負担のみが残存していることになり、自治体の本性は完全に没却せられることとなるのであります。言いまわしがはなはだまずいのでありますが、大体現在の税の組み方も私
たちにと
つてはずいぶんややこしいのでありまして、推定される税
負担力の七割をかけるというようなことで、それ以上と
つたものは、それは自分の方で使
つてよかろう、こういうようなことであるようでありまするが、ここで言うのは、さあそれならば、よろしいとい
つて、それ以上無理やりにとるように
なつたとしましても、どうしても平衡交付金をもらわなければ、県の財政をや
つて行くことができないようなところでは、とればとるほど、今度は平衡交付金の方が減
つて行
つて、働けば働くほど骨が折れて、そうしてけんかをして、その結果はどこまでも県の持つところの
歳入総額にかわりがない、こういうちよつとばかげた結果になるということを言いまわしたわけであります。
以上平衡交付金の総額並びに配分の算定について申し述べたのでありまするが、特に府県の立場から申し述べるならば、府県の
歳出はこれを一般財源について検討するとき、神奈川県の事例によ
つて明瞭であるように、ほとんど人件費特に教育職員のそれと義務費及び国庫補助事業によ
つて占められまして、右に関する各府県の所要額は、各省によ
つて簡単に把握せらるべき性質のものであり、そのほかの行政費についても、四十七都道府県について実態を調査するならば、それぞれ中央各省において比較的容易に認定し得るはずのものであります。税制の一定部分を自由裁量にまかすのほか、全般的に実態調査を実施し、
現実に必要とする
金額について標準財政需要を定め、これに対して所要の平衡交付金を
支出せられることが、総額の決定並びに配分を通じて不合理を是正し、財政破綻を防止するための近道であると信ずるのでありまするが、少くとも緊急に数府県にわた
つて大規模の実態調査を実施しまして、府県財政の実態を把握して、その破綻の防止をはかられんことを切望してやまないものであります。すなわち府県はまさに瀕死の
状態にな
つておりまして、これは時間が遅れるというと、病人に対すると同じように、大分
状態がかわ
つて悪くなると思うのであります。
次に、地方債のわくについて申し上げまするが、
政府案は二十六年度の地方債を四百億としている。そのうち三十億
程度は二十五年度分の災害にまわせるように聞いておるから、結局二十五年度の三百七十億のわくを一歩も出ていないことになるのであります。しかるに二十六年度の
公共事業に伴う地方
負担額は、
事業量の増大と災害復旧事業費の
負担区分の変更によりまして、二十五年度は
政府が全額
負担でありましたのを、今度は地方に三分の一
負担せよというようなことに急変したようでありますので、災害復旧事業費の
負担区分の変更等から、前年度に比し著くふえまして、地財委の
計算によりますれば、三百二十二億の増大、また大蔵省の
計算によ
つても二百九十七億の増とな
つておるのでありまして、この莫大な臨時費
負担の増は、従来の慣例からしても、また財政の常識をも
つてしても、当然起債の増額によ
つてまかなわるべきであり、これを既定経費の節約とか、あるいは税外収入のから増しをも
つて押しつけるとは、まことにひどいしうちといわなければならぬと思うのであります。このままに推移せんか、せつかく国の
予算に盛られました
公共事業費の、おそらく大半が地方団体の受入れ不可能となりまして、国の
予算が事実上不履行になるという重大な事態を生ずることは必要であろうと思います。この点についても特に御配意をいただきたいと思います。
以上神奈川県財政を例といたしまして、府県財政今日の窮状と、その当面の救助方策について訴えたのでありますが、根本問題として、地方税制と平衡交付金制度の根本に触れていささか
意見を
開陳いたしたいと思います。
第一に今日の地方税制、特に府県の税制は
金額があまりにも過小であります。私も五年知事をしておりますが、終戰後、初めのころは貧乏でありましたけれども、貧乏ということだけでありまして、不都合だとか、不合理だとか、不道徳だとかいうような感じは持
つておらなか
つたのでありますが、現在ではその点が非常に強く感ぜられますので、はなはだこれは遺憾とするのでありますが、その上にはなはだしい偏在税種の多いことでありまして、そのために地方財政今日の窮状と混迷の最大原因とな
つておるのであります。この結果東京都あるいは大阪府を除き全府県が、平衡交付金を受けざるを得ない
状態となりまして、全府県がことごとく中央において決定せられる平衡交付金のわく内において、シヤウプ博士の、いわゆる最大限の徴税努力をも
つて、最小限の行政を行い得ることにとどまるようになりましに、その最小限の行政すら、大蔵省の査定と地財委の配分によ
つて左右せられ、常に破綻のふちを彷徨せざるを得ないという
現状にあるのでありまして、独自の財政
計画のごときは、とうてい樹立不可能となり、財政的に自主機能を喪失しておるのであります。地方住民がその意思と能力に応じて、地方公共の福利を増進するために何ほどの
支出をなし、何ほどの事業をなすかを決定することは、自治の根本であることを思うときに、今日の税制は平衡交付金制度と相ま
つて、樹種と税額において地方住民の意思と能力の発揮の余地をま
つたくなからしめるとい
つてもさしつかえないほど、自治の最も重大なる本旨を没却させておるのであります。これを実例にと
つてみまするに、神奈川県においては全世帶六十万、このうち納税者はわずかに一七%、国税総額が二百三十七億円でありますのに、県税総額はわずかに二十二億一千四百万円でありまして、国税に対してその一割にも達しないのであります。これをしも
日本で自治団体であるとか、地方公共団体である、しかも地方分権であるということを言うことは、まことにいかがわしい限りであると思います。たとえば新潟県のごとき大県においては県税総額十三億九千万円、平衡交付金二十二億八千万円というがごとき、税制の不合理を如実に示すものであるといわざるを得ないのでありまして、これを救うためには国税中普遍的樹種の一部を地方税に委譲し、一方平衡交付金は特に住民の
負担能力僅少なる府県にのみ、これを
支出するようなその
金額を減少せしめることであります。これこそ本問題の根本的解決の唯一の道であると考えるのであります。
次に平衡交付金制度について申し述べるならば、本制度は税制が前述の
通り是正せられるならば、制度自体としてはきわめて合理的なものであると言い得るのであるが、毎年度
政府の方針その他社会
情勢の変転に従
つて生ずるところの
歳出増を、個々の団体に対して交付せらるるよう制度上の保障を設けるのでなければ、その都度節約の可能性が論ぜらるるがごときものであ
つては論外でありまして、地方団体は財政
計画の樹立をすることも、安んじてその執行に当ることも不可能となり、常に大きな不安にさらされておるので、この点に関する是正を早急に実施すべきであると考えます。
最後に行政事務の再配分に関連して申し述べるならば、シヤウプ博士の税制改革に関する勧告は、行政事務の再配分を前提とするものである。これを実施することなくして、税制並びに平衡交付金制度のみを実施し、そういう本末転倒のことをした結果が、たとえば比較的税収の多い神奈川県ですらも、その税収のほとんど全部を教育費に注入するほかなく、大多数の府県がその税収をも
つてしては教育費すらもまかない得ないという、はなはだ奇妙なる結果を生んでしま
つたのであります。かくのごとき跛行的制度改革が幾多の混乱と不合理を誘発することは当然であり、かかる事態に対処するため、シヤウプ勧告に基く財政制度改革に関してもまた当然暫定
措置を必要とするのであ
つて、たとえば国庫補助金制度を当分存置し、あるいは平衡交付金制度を当分保留して配付税制度を存続するなどの方法を研究実施されんことを要望するものであります。
なおこれは国の
予算を見まして、気づいた点をひとつつけ加えて申し上げますれば、終戰処理費という項目がありますけれども、
日本の今一枚看板ともいうべき国連協力費というものが一銭も盛られておらないということであります。これはあえてそういうことを申し上げるのは必要があ
つて申し上げるのであります。たとえば神奈川県のごとき場所で、道路が大きなトラツクが通るためにこわれる。言わずと知れた、これは朝鮮事変のために軍需品の輸送が盛んであるために起るのですが、たとえばその一例をとりますと、道路をだれが修理するかということであります。
〔角田
委員長代理退席、
委員長着席〕
以前でありますると、PDという方法がありまして、軍の責任者がちよつとサインすることによ
つて、どんな道路の
費用も出たのであります。しかしながら今日においては、そういう方法はないのであります。これを建設省に持
つて参りましても、大蔵省に持
つて参りましても、金の出る道がないというのであります。しかしながら
現実の道はこわれておる、しかもその道は神奈川県にあるということになりますると、もしこの道をほう
つておけば
現実に障害が起きる。またこれを直してくれということを要求されてから何日かか
つても、なおかつ直さなければ、県の知事並びに道路の責任者はどういうことになるかということは、大よその見当がつくと考えまするが、こういうことは
一つの例であります。そのほか進駐軍の労務者、これは東京でもありまするし、神奈川県などは現在そのためだけで二万人以上越えておりまするが、それはつまり普通ならば五万人のところが、今そういうために七万人、そういうものの
費用、これはもとより労銀は出ておりますけれども、その管理費というものが必ずしも十分でない。しかしながら、そういうものが出たからというて、これまた終戰処理費から出る方法がないと称して、金の出場がない。結局地元が何とか立てかえなければならない。立てかえるということは、将来補填されるということで考えておるのでありまするけれども、ほかのたくさんの場合と同じように、出しておいてくれ、
あとから拂うからとい
つても最後に拂
つてくれない場合に、そういうことさえの保障もないのに、私どもは
現実の要求に基いて出しておる金でありまするから、火のつくような催促をいたしましても、希望を述べましても、なかなか補填されないのであります。たとえばまた軍の需要において新しく人が移動する、そうなりますると、それに付添うておるところの
日本の労務者が
住宅を必要とする。この場合に、以前であれば進駐軍
住宅というのが自由にできました。それは軍の使うものでありましても、軍に従属するところの
日本人のためでもできたのでありますが、今日においては、なかなかそれができないのであります。地元の町村や地元の県が、何とかこれにぶつからなければなりません。そうしてこれを地元でできないからとい
つて中央に持
つて来たときに、現在の
予算では、二十六年度の
予算では大体出るところがないのであります。しかも
日本では国際連合に協力するという重大な事件を目の前に控え、実際
政府の方針としても、そういうことを堂々と述べておるのでありまするが、そういうときに
現実の問題として、そう大した金ではないと思います。しかしながら地方にと
つては非常に重大な大きな金であります。のみならず合点の行かない金でありまするので、私どもはずいぶんと、この問題については不満を持
つておるのであります。こういう意味におきまして、
議会の方で終戰処理費から出すべきものであるとおきめくださればけつこうであります。しからずんば、国連協力費という項目を
一つ設けて、
金額を計上していただきたいと思うのであります。
以上いろいろ申し上げましたが、
現実の問題といたしましては、地方の問題は全体として非常な窮状に立
つております。これはもう病人でいえば、明らかなる症状を呈しておるのでありまして、ほう
つておけば当然だめになることは明らかでございます。
数字の問題でありまするから、補填しなければ必ず赤字が出る、赤字が出ればその結果は当然出るものは出て来るのであります。しかもその赤字の補填、この始末を大蔵省も地財委も責任を持
つて解決することはできないで、
議会に二本建の
予算を出しておるのであります。これを決裁するものはひとり国会あるのみであります。こういうことは今日までなか
つたことであろうと思われますが、私どもも昔——あえて昔の内務省を謳歌するわけではございません。官僚という意味においては、私どももむしろ排撃する一人でありまするが、とにかく地方という——からだでいえば、地方すなわち
日本国家でありまするが、この地方の全部の四肢立体がまさにくずれんとするような重大な時機に立ち至
つて、これを全部自分で引受けて閣議で争う国務大臣も持たぬということは不都合であると私どもは思うのであります。さればこそ、今度のように国会にこういうものが出て来たものだと思うのでありまするが、今度国会において、これに対して少くとも合理的な、穏当な、同情的な解決が與えられなか
つた場合には、その及ぼす結果というものは、皆さんもおそらく御推定にかたからざるところと思うのであります。私は知事でありまして、いい年をして昔のあのようなむしろ旗を立てるようなことも申し上げたくありませんし、昨年九月以来陳情をしたり、いろいろなことを申しておりました。しかしながら、中には血気にはやる者もありまするし、いろいろ集まるというと、大言壯語するのでありまするけれども、結局最後まで——地方自治というものは決して五年や十年で片づくものではなしに、長年かか
つて築くべきものと思いますけれども、長い目で一生懸命働くということは骨が折れるのであります。私はそういう意味におきまして、必ずしもここで線香花火的にすべてを解決して満足しようという希望を持
つておりません。しかも少くともこの問題を全体の地方自治確立の意味において、皆様が地方にある
程度の納得をお與えくださるようなおあしらいをしていただきたい。本日は
神奈川県知事ではありますが、地方自治の確立という意味において特に申し上げたいと思
つております。長い間御清聽をいただきましてありがとうございました。