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1951-02-14 第10回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十四日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       井手 光治君    江花  靜君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       坂田 道太君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田口長治郎君       玉置  實君    永井 英修君       中村  清君    中村 幸八君       松浦 東介君    井出一太郎君       今井  耕君    中曽根康弘君       平川 篤雄君    戸叶 里子君       水谷長三郎君    横田甚太郎君       小平  忠君    黒田 寿男君  出席公述人         一橋大学教授  都留 重人君         日本興業銀行頭         取       川北 禎一君         日本私学団体総         連合会常務理事 高木 三郎君         東京商工会議所         中小企業委員長 五藤 齊三君         神奈川県知事  内山岩太郎君         日本農民組合中         央執行委員   大森眞一郎君         全国指導農業協         同組合連合会農         政部次長    山田  武君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  昭和二十六年度総予算について     —————————————
  2. 西村久之

    西村(久)委員長代理 これより昭和二十六年度総予算について、公聴会を開会いたします。  開会にあたりまして、本日御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。申すまでもなく、目下本委員会において審査中の昭和二十六年度総予算は、今国会中における最も重要な案件であります。よつて委員会においては、広く各層の学識経験者各位の御意見を聞き、本案の審査を一層権威あらしめんとするものであります。各位の豊富な御意見を承ることができますのは、本委員会の向後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第であります。各位におかれましては、その立場立場より腹蔵なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙中のところ貴重なる時間をおさきになり、御出席をいただきまして、委員長として厚く御礼申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人発言の時間は大体一人三十分程度といたし、その後において委員より質疑もあることと存じますが、これに対しても忌憚なくお答えを願いたいのであります。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は、委員長の許可を受けることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承を願います。なお発言の劈頭に職業と氏名を御紹介願います。  それではこれより一橋大学教授都留重人君より御意見開陳を願います。都留重人君。
  3. 都留重人

    都留公述人 私は一橋大学経済研究所所長都留重人と申します。私の本日申し上げますことは、主として概観的なことでございますので、その点あらかじめ御了承いただきたいと思います。  元来予算編成には、その基礎條件政策意図とが重要な問題となつておると思います。政策意図につきましては、この予算が発表されましたときの大蔵大臣の演説の中にも明らかにされましたように、私が繰返すまでもなく、幾つかの点があげられておりました。基礎條件に関しましては、たとえて申しますとどういうことであるかと申しまするに、この予算編成するにあたつて使つた物価水準はいつの物価であるか、あるいは補給金計算する際に使つたところの外国の輸入原料値段は幾らぐらいにしたか、あるいは輸出入の見通しをどれくらいに見たかというようなことが、基礎條件となるのでありまして、これに関しましては、政策意図と一応関係なく、客観的にこれを論ずることができるわけであります。政策意図に関しましては、私は、この機会に批判するとか本格的に取上げるということは差控えたいと思います。むしろ基礎條件に関する認識が正しいかどうかという問題が一つである。それから基礎條件政策意図とがかりに與えられたといたしました場合に、この両者の間に矛盾がないか。せつかくりつぱな政策意図を持つておられるにかかわらず、基礎條件認識を誤られたために、その政策が実現されないようなことになるおそれはないかという問題を、検討したいと思うのであります。     〔西村(久)委員長代理退席委員長     着席〕  例を引きますならば、二十五年度の予算に関しましては、当初の予定では約千二百億円くらいの政府引揚げ超過予定いたしまして、いわゆる超均衡予算としてインフレーシヨンを収束することを意図されたのでありますが、実際にまさに年度が終らんとする今日になつて、実情をよく調べてみますると、超均衡予算どころか、逆に政府財政面からは支拂い超過になるおそれさえできようとしておる状態であります。これは一にかかつて朝鮮動乱などのために国際情勢が急激にかわりまして、予算意図されたことが実現できなかつたということによるのでありますが、このように最初の政策意図が、いろいろな客観情勢の変化によつて大きく動かされるということ、これは二十五年度の予算がすでに私たちに示しておる通りであります。この大蔵省主計局で用意されました予算に関する説明書を見ましても、その第一ページに予算の特色といたしまして、「久しきに亘つたインフレーシヨンは収束し」という言葉がございます。それからわずか数行後には「インフレーシヨンの回避に努めねばならぬ」とあつて、つまりこれからインフレになるおそれがあるから、それを回避するための措置を講じなければならぬということが、同じページに出ておるような状態でありまして、一方においてはインフレーシヨンが収束する意図を持つた予算はできたものの、現実に特に朝鮮動乱以来、かえつてインフレぎみになつておるということに関する立案当局者側の御不安が、そこに反映されておるのではないかと思うのであります。  そこで基礎條件一つとして物価の問題を取上げたいと思うのでありますが、この予算当局者の御説明によりますと、大体昨年の十月ごろの物価を基準としてお立てになつたそうであります。昨年の十月と申しますと、朝鮮動乱が始まりましてから三、四箇月後でありまして、すでに幾らか物価上つてつたのでありますが、さらにその後になりまして、私たちは日々物価が上りつつある現実知つております。いくらかの数字を引用することをお許しくださいますならば、安定本部で推計いたしております総合市場物価という指数によりますると、動乱の起りました六月二十四日を一〇〇とした指数が、十月の中ごろには一二四に上りました。一番最近の指数であります二月三日には、一四四すなわち四割四分の騰貴を示しておりまして、予算編成当時に利用されました物価水準よりもすでに二割上つております。なかんずく金属、機械等に関しましては、朝鮮動乱のときに比べましてまさに二倍になつております。特に輸入品物価騰貴は非常に顯著でありまして、本日の毎日新聞に出ております永野富士製鉄社長発言によりましても、現在の鋼材などのもとになつているところの原料価格というのは、鉄鉱石は大体十ドル五十セントくらいだが、これからはそれが二十ドルくらいになることを予定してもらいたい。強粘結炭は十一ドルか十二ドルくらいだが、それが二十七ドルになることを予定して、製品値段の上ることを容認していただきたいという意味の発言があります。すなわち物価鋼材に関しまして二倍以上になることを、もはや予定しなければならぬという状態であります。特に運賃値上りは非常に顕著でありまして、ヴアンクーヴアーから横浜までの運賃などは、動乱当時一トンが六ドル五十セントくらいでありましたのが、ごく最近は十五ドル五十セントになりまして、ほとんど三倍に近いところまで上りつつあります。さらに主食輸入、これは国民生活によつてきわめて大事なものでありますが、主食輸入に関しましては、この予算計算基礎になりました数字から、現在は大体平均して一割上つております。もしこれが二割も上るようになりましたならば——これは計算すれば非常に簡単なのでありますが、ここに予定されております補給金の額は、二百二十五億でなくて、まさにその二倍、四百五十億円を必要とすることになるでありましよう。主食値段が、特に運賃などの引上げによつて動乱当時に比べて二割くらいに上るということは、もはや時の問題であるというのが専門家意見のようであります。こういう状態になつて参りますと、かつて大蔵大臣が言われましたように、国際物価えさや寄せすることは、インフレーシヨンではないなどという安心はできないのでありまして、むしろ国際物価へどんどんさや寄せされますと、その影響たるや国内にインフレーシヨンを伝播することになりまして、非常に危險なものを私たち国民は感ずるのであります。ドツジさんが来られまする前の約一年間の物価騰貴は六八・七%でありまして、その値上りをさして非常に危險なるインフレ状態であるということが、当時言われたのでありますが、現在の勢いで参りますると、まさにその当時のインフレ以上の値上りぎみを示しておるのでありまして、これに対処いたしまして、私たちが安心しておられないということは、すでに明瞭ではないかと思います。予算はもちろん長い期間にわたりまして、非常にこまかい準備などをなさつておつくりになるのでありますから、国際情勢の転変に対してただちに順応するということは不可能であると思うのでありますが、昨年の十月ころにはすでに相当のことが見越されておつたわけでありますから、かなり弾力性がその中に織り込まるべきであつたというのが私の印象であります。物価騰貴はどの程度予算の中に取入れられておるかということを綿密に調べてみますと、かなりのちぐはぐがありまして、たとえて申しまするならば、主食を買います私たち消費者値段は、ことしの一月から大体八・五%上りました。しかしながらそれはほとんどはね返らない。すなわち他の商品ないしは給與に響かない。給與に響く面はむしろ減税でもつて処置できるという前提のもとに、予算面にそのことは考慮してない。さらに補給金は今度主食一本になりまするので、約四百十五億円減るのでありますが、補給金を四百億円余り減らすということは、当然それが物価騰貴を誘発するものであるということは、経済学的にはもう議論の余地はないところなのでありますが、それも予算の面では物価騰貴としては反映されていない。さらに歳出歳入のそれぞれに前提されておりまする物価騰貴は、綿密に調べてみますと非常にちぐはぐでありまして、時間の関係上私はこの席では詳説を避けますが、もし御質問があれば、あとでお答えいたします。
  4. 小坂善太郎

    小坂委員長 都留さん、もしよろしければ、時間はけつこうでありますから……。
  5. 都留重人

    都留公述人 それでは今の点を、委員長の御指示によりましてやや詳しく申し上げます。たとえば歳出の面では、国民所得は、大体二十五年度に対しまして二十六年度は一一%の騰貴と申しますか、上昇予定しておられます。ところがこれはほとんどその全部が生産の増加から来るところの上昇でありまして、物価騰貴はほとんどそこに勘定されていない。歳入の方の基礎になつておりまするところの給與所得申告所得等におきましては、農業物価は九・三%の騰貴予定して歳入計算しておられますが、パリテイ計算基礎になりましたのは一八二・二のパリテイから一九五へと六・六%の騰貴程度でありまして、ここにもちぐはぐがございます。営業申告に関しましては、その製品が五・三%騰貴するという予定のもとに歳入計算をしておられます。いろいろな予算の中に入り込んでおりまする単価、これは非常に重要な項目をなすわけでありますが、単価のとり方、また相互の関係補給金を減らした場合にはどうなるか、主食を八・五%も上げた場合はどうなるかというようなことの影響が、十分に調整された上で予算編成されていないのではないかという心配を、私は抱いておるのであります。特に今後の物価の動きを私たちが考えてみまするに、これは政府の御政策が、統制よりはむしろ自由、国の中へ外からの物価騰貴が響かないようにするよりは、むしろ国際物価へのさや寄せという一般原則を持つておられます限り、騰貴することは避けがたい。消費者物価指数卸売物価ほど現在上つておりませんけれども、おそらくはじりじりと上つて行かざるを得ないだろうと思われます。そういう情勢のもとに、その影響がどういうことになるかということにつきまして、ごく重要な点だけを二つ申し上げたいと思います。  一つ物価騰貴がもし中立的な影響しか及ぼさないならば、すなわちヴエールのごときものであるならば、そのときには補正予算でもつて、そのまま予算をふくらましていただけばいいわけでありまして、その際には補正予算を拜見いたしましてから、議論いたしましようということになつてしまうのでありますが、実際には物価騰貴過程というものは、中立的な影響では済まない。私たち生活を振り返つてもよくわかりますように、物価騰貴過程におきましては、利子、賃貸所得は非常な不利な状態に立つが、営業所得は有利であるとか、給與所得はどうしても遅れがちであるとかいうようなことは、過去十年の間に十分経験した通りでありますが、單にそういう私たち所得の面だけでなく、予算歳出を扱う面におきましても、おそらくは選択的な効果を持つのではないか。選択的な効果を持つことが見え透いておるときに、あたかもそうでないかのごとき予想のもとに予算を通過されることは、国民の目から申しまするならば、議会の方々がそれを意図されたと解釈するよりほかはない。特に資本蓄積の問題に関しましては、今度の予算政策意図といたしまして、非常に重要視されておるのでありますが、もしも物価が二割、三割、四割と騰貴いたしまするならば、その事業量はうんと減らざるを得ないでありましよう。減る際に、おしなべて平等に減るかと申しまするのに、なかなかそうは行かない。やはりそこでも選択的なことが行われざるを得ないのでありまして、現在予算提案になつておりまする内容を見ますと、資本蓄積の面では非常に総花的な、八方美人的な形をとつておりまするが、物価騰貴いたしまするならば、ますますその事業量が減りまして、きわめて重要な関頭に立つておりまする日本経済が、一番重点的に行わなければならないものが中途半端になるというおそれはないか。その点はもう少しあとで詳しく申上げます。すなわち政策意図の重要な支柱の一つがここでくずれるのであります。  第二の点は歳入の面でありますが、税法上の減税七百何十億ということが申されておりまするが、実施面でもつて租税負担の率がふえたならば、何にもならないのであります。これは何度もかつてインフレ時代に言い古されたことでありますが、もし物価が二割騰貴するといたしまするならば、このたびに税法上の減税とは言いながら、実際には、給與所得者独身の場合には負担率現行の一三・九%から一四・三%に逆にふえるのであります。私がただいま月一万円の所得者の場合を想定いたしまして、また夫婦子供二人の場合でありまするならば、現行の八・九%が逆に九・一考にふえるのであります。またもしも物価が五割も騰貴するということになりまするならば、税法上はいくら減税かもしれませんけれども、負担率の面から申しますならば、事業所得をとりまして夫婦子供一人の場合、二十万円の所得者の場合、現行の二一・五%が二三・六%にふえるのであります。もしも物価騰貴するが所得はふやさないのだと言われるならば、このような計算は成り立たないのが当然でありますが、その場合にはもちろん物価騰貴しても、給與所得がふえないならば、それだけ実質賃金が減るということは明瞭でありまして、その面からの駁論が出て参ります。もしも物価が上るにつれて、所得が上るのだということになりまするならば、形の上では減税となつておる現在の新しく提案されておる税法、税率が、逆に負担を上げることになるということは、この前のインフレのときに何度も言い古されたことであります。すなわち税法上の負担ということと、実質的な負担ということとの間には乖離ができないのであります。大蔵大臣税法上の減税ということを言われたときに、このようなことを意図されたのではなかつたと思いますが、このように考えて参りますと、税法上の減税ということが、私たち国民にはまつたく皮肉に響いて来るのでありまして、インフレーシヨンを目の前に控えておりますような現状におきましては、税法に関しましても、いま少しの弾力的な措置を考えていただくべきではないか。特に議会では、これでもつて減税したのだというふうに安心されるならば、国民はやはりインフレの見え透いておる現状において、負担が当然ふえるのを知つての上で、かかる税法を通された議会の責任を問うことになるでありましよう。このように物価騰貴するということにつきましては、いろいろな影響が出て参るのでありまして、その点を十分御考慮の上で、予算編成を考えていただきたい。次に大きく問題にいたしたいと思いまするのは、自立経済計画実施の第一年である昭和二十六年度に関しまして、それがはたしてこの予算の中にどの程度盛り込まれておるかという問題であります。自立経済計画は、ことしの一月二十日になつてようやく新聞などに出たような状態でありまして、予算編成には、あるいはお間に合いにならなかつたかと私らも想像するのでありまして、直立経済計画をたとい政府が御採択になつたといたしましても、予算との間に十分の調整をするひまがなかつたということは想像できます。それで私が申し上げることは、予算編成当局の方に対しては、あるいは酷になるかもしれないのでありますが、やはり問題が重要でありますので特に指摘したいと思います。一番問題になりますのは資本蓄積であります。直立計画においては、御承知のように三年後にほぼ自立経済を達成する、生活水準も戦前の九割のところまで行く、国際均衡を回復するというような御計画のもとに、非常に野心的なる案を出しておられるのでありまするが、どうしたことか、昭和二十六年度につきましては見通し数字が非常に甘くて、何と申しますか低くできております。二十七年度になつて急に飛躍するようになつておるのであります。二十六年度と二十七年度との間のギヤツプをどういうふうにお埋めになるかということは、私たち専門的に考えましても、やや不安になるのでありますが、かりにその比較的低い二十六年度の見通しを実現せんといたしましても、はたして今度の予算でもつて十分のことができるかという問題があります。資本蓄積については、政策意図としては非常なる重点を置いたということが、政府当局者の方の発言の中に見えるのでありますが、予算をこまかく調べてみますと、その点でも不安がございます。見返り資金からの私企業支出は、二十五年度が三百七十一億でありましたが、二十六年度はこれを昔のいわゆる預金部、今度新しく資金運用部名前がかわりましたところから出すことにいたしまして、三百五十億に減つております。なかんずく海運に対して出します金額は、二十五年度の百三十五億から百十五億円に減つております。物価騰貴二割—四割を考慮いたしまするならば、これがあるいは半減ということにさえなるかもしれません。公共事業費につきましては、二十五年度は見返り資金から繰入れもありましたので、合計千百四十一億円でありました。二十六年度は千百六億円でありまして、これまた物価騰貴を考慮いたしますならば、かなり削減でありましよう。しかもその内容におきましては、食糧増産のためにぜひとも必要なもの、自立計画では、約三年間に千万石に近い米の増産をしようとしておられるのでありますが、そのために画期的に必要となる土地改良開拓等予算がどうなつておるかと申しまするに、二十五年度は土地改良について五十一億円、二十六年度は五十八億円、物価騰貴を考慮するならば何らの上昇でもありません。開拓につきましても二十五年度が六十二億円、二十六年度が六十四億円、これも物価騰貴を考慮すれば何らの上昇ではありません。また公共事業費の中に数えられまする港湾施設改善等、これは現在海運関係いたしまして非常に重要な点でありまして、港湾施設が十分でないために、わざわざ荷をおろしまする場合に港の外でもつて、はしけなどにおろして運ばなければならぬ。そのための費用はたいへんなものであります。これを何とか港湾設備改善によつて、もつと能率的にやろうとしておるのでありますが、そのための費用は二十五年度の二十六億円から、二十六年度の二十九億六千万円に、金額上わずか一〇%程度ふえた程度でありまして、物価騰貴を考慮するならばこれも削減でありましよう。さらに山林関係日本森林資源に関しましては、識者の憂慮するところは、日常の新聞にも最近ようやく出て参るようになりました。日本森林自然成長量は一年間に約一億二千万石でありまして、これ以上現在伐採いたしまするならば、禍根を将来に残すのであります。現に禍根を将来に残されてわれわれは苦しんでおるのであります。しかるにどのくらい現在切つておるかと申しまするに、二十五年度の実績はおそらくその二倍、二億一千四百万石ぐらいと推定されております。天然資源局の方は、現在の日本は四千万石程度で何とかやるべきだということさえ言つておられるのでありまして、日本経済的に開発できますところの森林面積全体は、約一千六百七十万町歩でありますが、その中のほとんど一割が現在なお要植栽地残存面積という名前で呼ばれております。つまりどんどん造林その他の植林等をして、これを開発するのでなければ、将来に禍根を残すとされておる面積になつておるのであります。その際に、そういうときにあたりまして山林関係支出は、二十五年度の四十六億に対して二十六年度は五十九億、やや増加はいたしておりまするが、三割程度増加ではありますけれども、もし物価が三割騰貴すればこれはとんとんであります。ことにこの政府予算の中で予定しておられまする公共事業での木材使用量、これは予算説明資料の中では九千七百万石というふうに書いてありますが、これはおそらくミスプリントか何かでありまして、あるいは一けたくらい違つておると思いますが、かりに一けた違つておるといたしましても九百七十万石でありまして、これは日本パルプ産業が使いますパルプ原木全体の量に匹敵するのであります。これだけのものを政府予算木材として使うことを予定しておられながら、それを補填するだけのことを予算の中で同時にしておられないということは、国の経済をあずかる政府としてはやや不親切ではないか、国民に対して不親切ではないか、もつと画期的なる造林計画ということを考えらるべきではないかと考えるのであります。さらに住宅、これは二十五年度は五万九千戸の建設を予定できるだけの金額をとられたのでありますが、二十六年度はさらに下りまして四万一千戸であります。住宅の欠乏が非常にやかましく言われておりまするときに、資本蓄積とはいいながら住宅がこのように減らされるということ、これも私たちの納得できないところであります。非常に総花的に資本蓄積の問題が取上げられましたために、全体にわたりまして重点的な考慮が拂われていない。そこへ持つて来て先ほど申し上げましたような物価騰貴が起つて参りますならば、事業量はさらに減ることになりまして、ますますもつて日本経済が自立するために必要なところの重要点へ、資本蓄積が集中されるということができなくなるでありましよう。その点を私は心配いたしております。  さらに現在インフレーシヨンを避けるために、輸入振興ということがやかましく言われておりまして、そのための考慮が予算の中の二、三の箇所に現われております。もちろん輸入の振興という問題は予算面で取上げるよりは、むしろもつと直接的に、あるいは通商産業省などの管轄下においてなさるべきことによつて、処理されることかもしれないのでありますが、予算面においてもあるいは緊要物資輸入基金を新しく創設されることであるとか、あるいは造船のために見返り資金ないし資金運用部の命を出すことであるとか、あるいは輸入がしやすくなるように国内金融を楽にするために、インヴエントリー・フアイナンスを五百億円も予定することであるとか、こういうようないろいろな考慮によつてなされておるのでありまして、まさに当を得たことであろうと思うのであります。しかしインフレがますます急激になればなるほど——インフレという言葉はやや言い過ぎかもしれません。物価騰貴が急速になればなるほど、輸入をさらにふやされなければならぬという要請は、その日その日の要請として出て来るのでありまして、その際には結局再び三年計画である自立経済計画よりも、緊要の措置に追われてしまう。この予算のわくでもつて物価騰貴を考慮しない予算のわくでもつて、限られた範囲内では、再び緊要措置に追われつつ、せつかくの自立計画というものがまたつぶれてしまう。その危險はないか。もちろんこの際米国という大きな船、親船に乗つた気持でもつて、緊要輸入も急ぐ必要はない。日本さえアジアの防衛の一環としての責任を果すつもりであるならば、アメリカがどこまでも援助してくれるであろうということを言われる方もあるようでありまするが、これこそ竹馬の足を切るようにするために、ここまで指導して来られたところのドツジさんの努力を無にすることでもありますし、また日本経済として、政治的自立をほんとうに確立するための要件としての経済自立を念願する国民といたしましては、容認できないところであります。特に私は議員の方々に去る昨年の十月にアメリカのフイリピンの事情調査のためにベル・コミツシヨンという名前で出ましたところの報告書を、ぜひごらんいただきたい。ベル・コミツシヨンの報告書の中には、終戦以来十四億ドルの金をアメリカがフイリピンにつぎ込んだにかかわらず、そしてフイリピンは親船に乗つた気持で、比較的楽な生活を一部の人がしておつたにかかわらず、その結果は、政治的に、社会的に、経済的にどういうことになつたかということを、きわめて率直に、私たちが驚くくらい率直にこれを書いています。私は日本経済が再びこのような轍を踏まないように、政治の任にある方が、今こそこの関頭に立つて、十分の決意をこの予算の中にも積極的に盛り込まれる必要があるのではないかということを、国民の一人としてお願いしたいと思うのであります。  最後に一言いたしたいのでありますが、それはたといでき上りました予算がいかにみごとなものでありましても——いろいろな欠陷は私も指摘いたしましたが、それらが修正されまして、たといみごとな予算ができましても、それが現実に個々の面においていかに使われるかということは別問題であります。これは私たち国民としてはこまかいことがわかりませんので、皆さんにおまかせするよりほかしかたがないのでありますが、巷間聞くところによりますと、公共事業費などは、ほとんどその一割がむだづかいされておるということが言われております。予算面では、りつぱな仕事のために出すべく国民の納得したことが、実際使う面ではまことにはずべき行為のために使われるのであるならば、これは私たちとしても、議員の皆さんに再びお願いしなければならない。單に予算をつくられるだけでなくて、予算がほんとうにその目的のために使われるような機構も考えていただきたい。必要とあれば国会に特別の調査委員会をこしらえて、そのような予算の使い方の効率化と申しますか、能率化について考えていただきたい。それこそがより重要な問題ではないかとさえ、私はときどき考えるのであります。六千何百億円という金は、私たち庶民にはちよつとピンと来ない金額でありまして、あたかもわれわれが耳では聞こえない大きな音を聞くようなものでありまして、何となく大ざつぱな気持で考えがちでありますけれども、その使われる一円一円が、ほんとうにその効果を現わすような組立てと、最後までの徹底したところの監査を十分にできるような措置を、この機会にとるようにしていただきたいというのが、私の一庶民としてのお願いであります。
  6. 小坂善太郎

    小坂委員長 公述人都留教授に御質疑はありませんか。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 一つだけ公述人にお聞きしたいのですが、吉田・ダレス会談あるいはそのほかの情勢から言いまして、日本の国が安全保障の方法をとる、安全保障のためには自衛権を考えなければならぬ、自衛権のためには再軍備が必要ではないかということを一部の人がとなえ出して参りました。そこで再軍備の問題が具体的な日程に上つて来るのではないかと思います。これはそれぞれ立場の違う人はあります。この点についてわれわれは反対しておりますけれども、やはり一部の人たちから再軍備論がとなえられておりまして、これは非常に具体的な日程に上つて来た。そこで、もし再軍備が必要だというようなことになりました場合には、本年度予算の中にその軍事的なクツシヨンが組まれておると考えられるか。あるいはもしそういうようになれば、昭和二十六年度予算は変更されるのかどうか。また変更される場合は国民負担はどういうようになるのか、その点ひとつあなたのお考えをお聞きしたいと思います。
  8. 小坂善太郎

    小坂委員長 林君、あなたのお考えを述べられる前に、都留君のただいま公述された問題点について御質疑になるようにしていただきたいのです。
  9. 都留重人

    都留公述人 公述しました範囲内でお答えしますので、私としてはこういう重要な問題について、非常に限られた答えしかできないことをやや不満に感ずるのでありますが、本日は公述内容の範囲内で申し上げます。ただいまのクツシヨンがあるかどうかという問題に対しましては、この説明資料の二十六ページに見返り資金の項がありますが、そこで二十六年度予算には、経済再建費という題名のもとに七百五十四億の金が計上してあります。この金額は私当局の方に何度もつつ込んでお伺いしたのでありますが、どうも何のためにお使いになるかはつきりしない。一部分は予定があるようでありまするが、この七百五十四億円の大部分が、来年度へ繰越すという予定だというような御説明であります。あるいは場合によつては、この七百五十四億円が動き出す可能性があるのではないかということは想像できます。それ以外に、この予算が組まれました内容から見まするに、今年度は国債費も昨年のように多くございません。昨年は国債費が八百何十億ございまして、その中から御承知のように二百八十五億がかの警察予備隊、海上保安隊の費用として出されたのでありますが、今年度は国債費もそのような組み方をしておりませんので、大体ただいまの御質問に対しましては、経済再建費のところの七百五十四億というのが、やや私たちから見ましてくせものだという感じがいたします。
  10. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員 一点だけ伺つておきます。物価騰貴の趨勢を考慮して予算にできるだけ弾力性を入れるべきだという御意見は、これは御趣旨はよくわかりますが、具体的にどういうふうな方法で弾力性を盛り込んだ方がいいというお考えですか。結局の問題としては、将来の物騰を考慮に入れて、税金もそれだけよけいにとるようにして、予備費もふやしておくとか、あるいはまたいろいろな方法があるだろうと思うのですが、具体的に予算編成の仕方として、将来の物騰を考慮に入れて弾力性をできるだけ入れるべきだという御意見の、編成に対する具体的なアイデア、構想というものをひとつお願いいたします。
  11. 都留重人

    都留公述人 簡単にお答えいたします。この問題は非常に実際の行政的な問題、及び立法の具体的な面に関しましては重要な問題だと思います。各国ともインフレ下においてどのような予算を組んだならば、弾力性を十分にその中に考慮できるかということについては、戦争後の時期におきまして、かなり研究が積まれておるようでありまして、不幸私はその方面の専門家でありませんので、ただいまの橋本委員の御質問に対しては、十分のお答えができないかと思いますが、大体の考え方といたしましては、幾つかの面があるのでありまして、一つ予算を組む事務能率と申しますか、それを非常に早めるということ、これはいまさら申してももう遅いことでありまして、大体この予算は昨年の七月ごろからもう一応できまして、十月に物価を考え直して、またつくり直されたということで今日に至つておるので、ほとんど半年を経過しておるわけであります。アメリカなどの例を見ますと、非常に早くできるということと、また第二には、十月に物価を新しく考慮して出されるときに、もう少し物価騰貴見通し現実的にされることができたのではないかという点、これは事務当局の方としては、まことに無理な注文でありまして、あたかもインフレをあらかじめ予定するような形でもつて予算を組むことはできませんので困難かと思います。その点の改善の余地はあまり多くはないかもしれません。第三には、この国会でもつて審議されまする場合に、このような事態に直面いたしまして、国際情勢が急激に変化するのを予定した上で、どういうふうに処置したらいいかということを国会自体でもつて考えられる。それには、一つ補正予算の時期を早め、そのことを最初から予定して、この予算が暫定のものであるということを明らかにされるということもあり得ましよう。第四には、もしも物価騰貴が、このように危險に類するものであることが今明らかであるならば、政策としてこの中に織り込んでおるものがほんとうに生きるような形で、この予算の組みかえをなさるということが、この時期に要請されるのではないかというのが、私の今日申し上げました最初の問題の考え方の基礎なつたのでありますが、それはあるいは困難であるかもしれない。困難であるならば、やはりその責任たるや、われわれ国民から見れば、議会にあるのだということになつて来るだろうと思います。第五には、特に税制に関しましては、税制の方では予算と違いまして、補正予算を組んだときには、あるいは税法を改正したときには、すでに税法上の適正が、実際面で不適正になつたという既成事実が、もはや是正できないという事態に立ち至つておるわけでありますから、それに対しては、アメリカなどで現在やつておりますように、税法そのものの中にビルト・イン・フレキシビリテイ——税法の中に織り込まれた弾力性という方式を、具体的に日本の場合にどういうふうにしたらいいかということの研究が、必要ではないかと思います。いろいろな面を持つた重要な問題に関しまして御質問を得たことは、非常に恐縮でありますが、私自身十分に研究が積んでおりませんので、やや思いつきで、至らなかつたことをおわび申し上げます。
  12. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は二つばかりお伺いしたいと思います。一つ予算というものは、やはりある見通しのもとに立てられているもので、その前提になつている世界的な、政治的な、軍事的情勢といいますか、これが基本にならなければならない。吉田内閣が考えているような情勢というものは、私は非常に楽観的な、甘いものだと思うのであります。たとえばこれは昨年の十二月でありましたか、ロンドン・エコノミストに世界のレア・メタルの需給の表が出ておりました。アメリカが軍拡を発動したあとのレア・メタルの需給というものは、非常に悲観的なものでありまして、それが結局アメリカの国内経済情勢を急激に転換させております。それがまた当然日本の国内経済にも響いて来るだろうと思います。現にアメリカの軍拡の間接的な下請的な要素が日本経済に出て来ておる。たとえば電球の生産を非常に日本が要請されているのがそれであります。そういう意味で今後の政治的、軍事的な情勢判断というか、これが一つ重要な問題として上つて来ると思うのでありますが、この予算の基本になつているような見通しと、都留先生のお考えになつておる見通しが、どういうふうにかけ離れているか。それが第一であります。  それから第二には、そこから来る日本経済構造のあり方といいますか、吉田内閣は自由経済ということを基本にして言つているのでありますが、しかし自由経済ではたして対抗できるかどうか。今吉田内閣が考えていることは、輸出入のきんちやくのひもを締める、あるいはあける、これしか考えておりません。しかしもつと大きな基本的な政策が必要ではないか、こう思うのでありますが、この現内閣のとつている経済体制というか、日本経済構造に関する問題について、御所見を聞かしていただきたいと思います。
  13. 都留重人

    都留公述人 非常に大きな問題でありますが、これもやや予算に限られた範囲内でお答え申し上げたいと思います。  第一の点は、私が本日の公述の最初の部分で申し上げましたのが、ただいまの御質問のお答えに当るかと思うのでありますが、物価見通しというところで、国際情勢の転変を集約して私は考えたのでありまして、国際情勢の転変に影響されますいろいろな事情が、現在の段階では予算の中にいかに織り込まれなければならないかということについての私の考慮は、この予算では十分に満たされていなかつた。それをこまかく申し上げるよりは、特に物価の点を取出して申し上げたのであります。必ず物価の点にそれが反映されて参りますので、それがどういうふうになりそうであるか、そうなると予算は一体どうなるか、予算はりつぱなものでも、運用はどうなるかということを申し上げたわけでありまして、予算編成は昨年の十月当時であつたと思いますが、そのときすでに当然われわれが了察し得べかりしことが、十分に織り込まれていない。その点に関しましては、緊要物資の輸入基金などが非常に少い。わずか二十五億円でしかないとか、いろいろな点に現われておると思います。やはりこれも総花的に問題を処理しようとされたところの、一つの欠陷が現われておるのではないかと思うのであります。  第二の点に関しましては、これも非常に大きな問題でありますが、私はもしもほんとうに自由経済の原則をお貫きになろうとする意図政府におありになるならば、むしろ為替を自由にされたらどうかということさえ考えるのであります。為替がくぎづけになつているということは、これは自由経済でないので、日本経済としてはきわめて大事な——外国に対する一つのレートがくぎづけになつておりますから、そのために外国の物価騰貴が、日本にそのまま流れ込むということにもなる。ほんとうに自由経済の時代でありますならば、外国に物価騰貴がありますと、為替という調節弁を通じて、それがただちにはなかなか国内に入り込まないように、すなわち日本の円が円高になりまして、おのずから輸出がふえない、輸入がふえるというかつこうになるのでありまして、国内のインフレは押えられる。そうして外国の物価騰貴もそのまま反映しないというのが、経済学の常道でありますが、為替だけはくぎづけにしておきまして、そのほかの面だけ自由々々と申しますと、自由経済としても、その点きわめてちぐはぐなことになるのであります。すでにきわめて重要な調節弁を統制しておられるのであります。そのために外国のインフレーシヨン日本にも入り込んでおるのであります。それですから、またそうしなければどうしても日本経済は、現在の段階ではわれわれのなさなければならないことが、十分にできないような状態になつておるのでありますから、自立経済が三年後に予定されておる今日、そうしてそれがただいま御質問になりましたように、国際的な物資の買いだめなどのために受ける影響において、日本が非常に敏感であり、かつ弱体であるということを考えますときに、特に食糧におきまして、主食を三百万とんくらいはどうしても輸入しなければならぬというような脆弱性を持つておる場合に、ちよつと朝鮮動乱でも起れば、ただちにそれが大きく響いて、激浪に翻弄される小舟のように動きまわる日本経済にとりましては、依然としてなお重点的な統制の措置が必要である。そのことがやはり予算の上にも反映さるべきものであるという個人的な意見を持つております。本日は、その面を本格的に申し上げる議題でもないと思いますので、ただいまの御質問に対して、限られた意味においてお答え申し上げます。
  14. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最初に物価に集中的に表現されると結論的におつしやつたのですが、物価に結論的に出て来る過程と條件、これをもう少し詳細にあなたのお考えを聞かしていただきたい。  それからもう一つ、後半の問題で為替のことをおつしやいましたが、私もこの点は非常に同感とするところがあるのであります。現在の状態では、世上為替切上げ論なるものが最近出て来ておる。これは一つの防衛措置としてやるという問題でありますが、この為替切上げ問題に対してどういう御見解でありますか、この二点をお伺いしたい。
  15. 都留重人

    都留公述人 ただいまの第一の御質問の物価騰貴過程とその條件という御質問につきまして、その意味をもう少し詳しくお伺いいたしたいのであります。
  16. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 都留先生がお考えになつておる情勢判断からして、物の動きと申しますか、あるいは国際的にも国内的にも、この予算面からする金の動きはどうなるか、結局それが物価にどう響くか、そういう過程と條件です。
  17. 都留重人

    都留公述人 この予算自体のはらんでおります物価騰貴に及ぼす影響という面は、この紙に書いたままで判断いたしますと、池田大蔵大臣の御発言にもありましたように、中立的な形をとつておると思います。昨年度のように、つまり二十五年度のように、予算に千二百億程度の債務償還などをして、超均衡ということをねらつておるわけではない。一応形の上では中立的になつております。しかしその内容にわたりますると、先ほどもちよつと話に出ましたように、経済再建費七百五十億というのがはつきりしないとか、あるいはインヴエントリー・フアイナンス、これは五百億円でありまするが、これは資産に見合う金でありまするので、考えようによりましては、デフレ的な経理の仕方である。また輸入に関する見通しも非常にはつきりいたしませんし、これだけのものを一般会計から国民の税金で充てるということは、きわめてデフレ的な方法であるということも考えられましよう。国民所得に対する割合などから申しまして、この予算それ自体の中に、インフレーシヨンを激成する要因があるということは、全体としては私は言えないと思います。言えないと思いまするけれども、ただ客観情勢の方の物価が上りました場合に、いかにこの予算でもつて運用して行くかという段になりますると、先ほど申し上げましたように、いろいろなところで選択的な決定をしなければならぬ必要に迫られるのであります。ただこのままで水ぶくれさせるということにはならなくて、選択的な処置をしなければならぬ。これは二十五年度について、すでに明らかにわれわれの経験したことであります。それを再び繰返すことになりまするので、そのときにそのような選択的な措置が、行政的な措置だけでとられないで、国会の最初から予定された形でもつて行われるということが、私たち国民としては希望するところであります。  第二の為替の切上げ、たとえば三百六十円を三百円にするというような、つまり円高にするという措置それ自体は、これはあるいは予算には直接関係はないかと思いまするので、詳しくは申し上げませんが、私が先ほど申し上げましたのは、必ずしも為替率を自由にしろという意味ではなくて、ほんとうに自由経済に徹するならば、むしろ一度為替を自由におつぱなした方がいいのではないかとさえ言える、こう申し上げましたけれども、それではお前は為替率に関してはどう考えるかということになりまするならば、私は為替率の問題も、日本経済その他の諸政策全体との関連において考えたい。もしほかのものを全部自由にしておくならば、為替も自由にした方がいいかもしれない。しかし、もしある程度の重点的なる統制によつて日本経済に要請されておることを実際に実現して行こうと思うならば、その際にはそれとの関連において、為替率についてもあるいは切下げとか、あるいは切上げとか、どの結論になりまするか私明言できないのでありまするが、為替率をいじるということも考え得るのではないか。さらにもう一言つけ足しますれば、為替率にたより過ぎるということは、私はなるだけ経済としては避けたい。為替率にたより過ぎるような経済は、ほんとうの統制に耐え得ない。それよりもむしろ統制をやる気ならば、直接に輸入の量の統制——現在食糧などについては、ほとんどそれに近いものをやつておりますが、輸入の量の統制をするならば、為替の統制がある程度第二義になり、農村が心配しておられるような、農村恐慌のときに外国から安い米が入つて来る、そのときに関税でもつて為替率を何とかするよりも、むしろ輸入の量の統制でもつて日本には何万石しか米は入れないというふうにきめることもできる。つまり統制措置には、いろいろなる組合せがあり得るのでありまして、その中の一環として考えるような答えをいたしたい、こう思つております。
  18. 橘直治

    ○橘委員 公述人に一点お伺いいたしたいのでありますが、先刻海運界の新造船に対しまする見返り資金の投資は、おそらく昨年度に比べまして、物価騰貴影響等も考えますれば大体中分になる、そういつたような御説があつたようでありまするが、われわれの考え方からいたしますると、現在できつつありまする山下汽船の山下丸あるいは山彦丸、これは第五次新造船で、今後の新造船は第七次でありまするから、おそらくこれの完成は最小限度一箇年後ではないか。こういつた場合に、今自立経済確立の上からも、インフレ抑圧の上からも、輸入の確保ということを叫ばれておりますが、この際さような新造船へ多額の資金を投下いたしまするよりも、現在政府の考えておりまするように、アメリカからリバテイ型大体四十万トンの購入とか、あるいは用船をする、こういつたような方式の方がむしろいいのではないかというように考えておるのでありまするが、この点に関しまする公述人の御意見はどうでありますか。
  19. 都留重人

    都留公述人 お答えいたします。ただいまの御質問は、私はきわめて妥当なお考えだと、私自身その問題自体に関しては感ずるのであります。まつたく現在の緊要の要求から考えまするならば、新造船にたくさんの金をつぎ込むよりも、できればリバテイ船を買うとか、あるいは用船をするとかいう方が急務でありまして、そういうことによつて輸入物資ができるだけ多く確保されるようにはかられるべきだという点は、まつたくもつともだと思います。ですからその点に関しますると、いかにももつとものように見えるのでありまするけれども、私はもう少し長い目で日本経済の自立ということを考えたい。それからリバテイ船の購入という問題も、日本ではまことに楽観的なお話が出ておりまするが、あるいはその通り実現するかもしれませんけれども、アメリカの情報など見ておりますと、必ずしも楽観できない。そういうことにたよるという態度でもつておるよりは、いざとなれば、自分たちは援助がなくても、日本経済をやつてみせるのだというくらいな迫力でもつて考えたい。やや乱暴に過ぎるかもしれないのでありますが、そういう長い目で見た国民の希望という観点から申し上げたわけでありまして、現実の要請から申しますると、まさにただいまの御質問の通りであるかとも思います。
  20. 小坂善太郎

    小坂委員長 都留さんどうもありがとうございました。  それでは次に移りたいと思います。次は日本興業銀行頭取川北禎一君より、御意見開陳をお願いいたします。川北公述人
  21. 川北禎一

    ○川北公述人 ただいまは都留教授から詳細な予算分析並びに御批判がございました。私は実は予算内容数字的に十分検討もいたしておりませんし、時間もございませんので、主として来年度予算経済金融の関係につきまして、ごく大綱的に申し上げてみたいと思います。やはり問題の中心はただいまも都留さんのお話にありましたように、客観情勢の変化、つまり国際物価の傾向、いわばインフレとの関係、これを一つのピヴオツトとして申し上げることになると思います。都留さんの御意見と重複した点も多々あると思いますが、大体主眼点で同じになりますのでお許し願いたいと思います。  二十六年度予算の性格は、いわゆるドツジ・ラインの線でありますところのインフレ収束予算の堅持ということと、財政規模の縮小による経済の正常化に重点を置くという点が、根幹をなしておると思います。これにいわば復興予算への積極性をやや加味したもの、こういうふうに考えるのであります。政府当局説明によりましても、来年度の予算の特徴は総合均衡予算、財政規模の縮小、税法上の減税、民生安定、文教、科学の振興、政府資金による資源の開発、産業合理化の促進、こういつた各種の目標が並べられてあるのでありますが、これを資金的に申しますと、本年度までの予算がいわゆる超均衡予算でありましたのに対して、来年度の予算は中立予算、引揚げ超過になつていないというところが数字的な結論になるのであります。これらのいろいろな目的を総合的に達成いたしますことは、なかなか困難であると思いますと同時に、この中立予算自体がはたして実現可能であるやいなやという点が、大きな問題であると思います。すなわち朝鮮動乱後非常に大きく変化いたしました内外の情勢に対応いたしまして、この予算の所期しておる目的が、はたして所期通りに実現し得るかどうか。さらに内外情勢の変化がこの予算にどの程度に織り込まれておるか。また具体的に現在これを織り込むことは困難でありましても、これらの点を十分考慮されておるかどうかという諸点が問題であろうと思います。従来のいわゆるドツジ予算が、日本の財政経済の安定を目的といたしましたことは申すまでもないのでありますが、他面それが当時の世界経済の大きな動向でありました戦後経済の安定、すなわちインフレ収束、経済の正常化という当時の世界的傾向を、日本の財政経済に導入したという点もあるのであります。ところがこのようなドツジ予算の背景になつております世界経済は、朝鮮の動乱を契機として大きく転回して参つておるのであります。すなわち大戦争の見通しはしばらく別といたしまして、世界は今や大規模の軍拡時代に入りました。これがため世界の経済、産業は大きな変化をなしつつあります。すなわち物資需給の逼迫、貿易市場は従来の買手市場から売手市場にかわりまして、財政は厖大な軍事予算によつて赤字財政への傾向に進んでおります。経済インフレ傾向化、このような世界情勢の変化は、当然わが国の経済へ、また財政へ大きな影響をもたらすものであります。すでに経済界は昨年の下半期以来、輸出、特需の増大いたします一方、海外からの物資の輸入が困難になり、生産財を中心として、先ほどもお話がありましたように、物価上昇傾向は顯著であります。この顯著な変貌を遂げつつある経済界、これが早晩財政に影響を及ぼすことは自明の理であります。従いましてこの内外経済情勢が、二十六年度予算に対しまして種々の新しい課題を要求する。この点が新年度予算の一等大きな問題点だと考えます。すなわちこの世界的情勢、特に世界的インフレ傾向がわが国経済財政に及ぼす影響いかん。また急速に要請されるに至りました生産の拡大、輸入の促進、また一面金の面におきましては、資金の需要と資本の蓄積、これらの問題、これに対する財政政策いかん。あるいはまた世界的軍拡に即応した新しい財政支出の問題、このような大きな課題に、二十六年度予算はいかなる方針で対処しようとしておるか。この間にいかなる問題が見出されるであろうか。私はその中で経済問題を中心といたしまして、若干私見を申し上げてみたいと思います。  昨年の下期を転機といたしまして、世界の情勢影響を受けて、日本経済情勢インフレ的傾向に転じつつあることは、いなめないところであります。財政におきましても、すでに二十五年度予算は本来いわゆる超均衡予算と言われておりまして、一般会計、見返り資金預金部全部込めますと、先ほどもお話がございましたが、予算上は千二百億円以上の資金引揚げ超過予算になつておるのであります。超均衡予算になつておるのでありますが、その後の国際情勢の変化で、主として輸出と輸入のギヤツプを生じまして、これがために外国為替資金の散布超過が巨額に上りまして、千二百億の引揚げ超過予定されておりました。この三月までの二十五年度予算は、反対に七百億円の散布超過となる見込みであります。このような客観情勢の変化は、すでに二十五年度財政の面に資金的には現われておるのであります。従いまして今後さらに内外情勢の変化に伴つて、来年度予算においては、一層諸種の原因による影響を免れないと考えるのであります。この二十六年度予算におきましては、いわゆるドツジ新構想といたしまして、一般歳入による貿易会計五百億のインヴエントリー・フアイナンスを、税によつてまかなうという厳格な線がとられました。また預金部資金の一部を民間産業資金に還元することになりましたが、一面においては、見返り資金は新投資のフアンドというよりも、インフレに対する調節弁として作用せしむるために、相当多額の剰余繰越しを次年度に予定されておることになつております。あるいはまた減税につきましても、ドツジ氏の声明されましたように、減税されたものが新投資されることが保障されない限りは、減税すべきでないという趣旨、なるほど税法上の減税は行われましたが、実質上の減税予算の面では出ていない。このように二十六年度予算におきましては、財政の規模を可及的に縮小しながら、一面できるだけ財政による貨幣所得の吸収を趣旨とするドツジ氏の線が——ある程度ドツジ氏構想が基本となつておるのであります。このような予算編成の構想は、もちろん建前といたしましていわゆる健全財政であり、けつこうなことであります。しかし現在及び今後の情勢、すなわち世界的物価上昇あるいは軍需インフレ傾向、その他不可避の客観情勢の変化に影響されて、はたして今後この方針の堅持ができるかどうかということが、大きな問題であると考えます。  まず一般的なインフレ傾向についてでありますが、日本の産業経済はすでに国際情勢を反映いたしておりまして、輸出の増大する一方、原材料の輸入は困難になり、物と購買力とのアンバランスが起りつつあります。また国際物価上昇、特に輸入価格の騰貴のために、国内価格水準が上昇しつつあります。現在のところでは、国際物価を為替相場で換算いたしまして、海外の相場と比較いたしますると、まだはなはだしく過高過大であるとは考えられません。数種高いものもございますけれども、大体国際物価水準の線を生産財、重要資材は維持しております。しかし輸入資材に依存することの多いわが国におきましては、もし輸入の困難、特に輸入の停頓するようなことがありましては、需給の弾力性、自動調節能力の乏しい日本経済といたしましては、物の需給の逼迫から来る物価の急上昇の懸念が、大いにあるのであります。すでにただいま申しましたように、アメリカにおける国際商品と、日本における国際商品とを為替相場で換算いたしますと、大体同水準にございますが、これをもし日本輸入して来るとなりますと、非常に巨額のコストになるのであります。御承知のように石炭とか鉄鉱石とか、大きなものは運賃が七割を占めるというようなものもある。二、三割から六、七割は運賃で占めます。その運賃はただいまもお話がございましたが、倍以上上つております。そういたしますと、輸入原価の高くなるということは、はなはだしいものがございます。従いまして単に海外における国際商品の価格と日本のそれとを為替相場で換算しで、それで大体水準を越えていないという程度では、日本の企業は成り立たない。成り立つかもしれませんけれども、一般物価上昇に非常に響いて来るという結果になるのであります。経済情勢につきまして、詳しく申し上げます時間もございませんが、これらの影響がすでに予算の面に及ぼしておりますこと、あるいは今後及ぼすであろうことで、たとえば先ほどもお話が出ましたが、予算項目中の価格調整費は、輸入食糧の最近の価格の騰貴から見まして、予定の数量を輸入するといたしますれば、将来必ずやその不足を来すことは明らかであります。また国内一般物価騰貴がどの程度予算に織り込まれておりますか。物件費の増加はもちろんでございましようが、もし民間賃金水準がさらに上昇するがごときことがございますならば、官庁の給與ペースの再改訂というような問題も起る懸念もないことはないのであります。さらに政府当局においてもおそらく考慮されておることと思いますが、今後の内外情勢、政治情勢の変化や、国防予算的な新規財政需要が生ずる可能性も考えられるのであります。二十五年度予算におきましては、債務償還費五百億がございました。その流用によつてある程度の警察予備隊費その他がまかなわれたのでありますが、来年度予算において、さらに大きなこの種の歳出要求に応ずる財源が用意されてあるかどうか。  簡単でございますが、以上要するに二十六年度予算は、朝鮮動乱勃発前におけるデイスインフレ政策の考慮と、事変後における内外情勢の変化、特に世界的インフレ傾向に対処しての考慮と、むしろ相矛盾した二つの要請にこたえなければならぬところに困難性があるのであります。予算といたしましては、現在並びに将来の物価上昇を十分に見込むとともに、さらに客観情勢の変化に対応すべき諸施策と、これに対する財源をあらかじめ考慮しておく。引続いて健全財政を堅持して、今後において少くとも財政面から赤字インフレを起さぬように、むしろ反対にこれを財政自体においてチエツクするような政策を、明確にせられる必要があると考えられます。今後のインフレ対策、すなわち物価上昇の抑制は、このような財政金融政策の必要でありますことはもちろんでありますが、私は生産の増大、輸入の促進、一定の国内需要の確保ということが根本であると考えます。  次に財政と産業資金の関係につきまして、簡単に申し上げますれば、二十六年度予算を見ますと、政府資金による産業資金の供給高は、運転資金、設備資金を合せまして、国の要求する産業資金の総額約七千五百億に対しまして、政府見返り資金預金部資金を中心として、約一千十億円を計上してあります。この額は二十五年度と比較いたしますと、三百二十億の増加になります。産業資金、運転資金を込めました全所要産業資金に対しますと、わずかに一三%でありますが、設備資金の需要に対しては四〇%の資金を供給いたしております。主として見返り資金並びに預金部資金であります。これに対して金融機関から調達されます資金は、大部分が運転資金でございますが、設備資金につきましては非常に少額でございます。預金部の債券引受四百億、そのうちの三百数十億をほとんど主たる財源として、長期金融機関が長期資金を出す。一般金融機関の出します長期資金は、わずかに二百億程度でございます。従いましてこの急激なる生産増加並びにこれに要する設備資金の調達のために、民間資金に依存する面はきわめて少い。先ほどもお話が出ておりましたが、一挙に日本の造船を所要額まで回復する。あるいはこの不足しておる電力を急速に回復する。それには大きな設備資金を要するのでありますが、日本の民間資本の蓄積が、一両年の間に一挙にそれほど多額なものができないということは、これは常識でございます。ただ本年は世界の軍需景気が日本に反映いたしまして、産業界は相当の活況であります。従いまして、この利益つまり企業内部の蓄積を用いて、これらの資金に充当することが予定されております金額は、非常に多うございます。運転資金を込めますと、千八百億が企業の利益の中から産業資金に向けられるものであります。総額の約三分の一以上を占めます。このうち設備が約九百億、自己資本で調達されます二百四十億の設備の資金、九百億を利益による内部蓄積によつて設備資金に調達する。非常に従来見なかつた一つの変化であります。ある程度私はこれはできると思います。昨年に比べまして、この自己調達の資金は七百億円の増加が見込まれております。以上は政府安定本部の資金計画によるものであります。従いまして二十六年度の産業資金の供給は、企業の内部の蓄積に依存する度合いが、絶対的にも相対的にも高くなつております。しかし今後予想される客観情勢、特にインフレ傾向いかんによりましては、はたして企業の自発的な資本蓄積を期待することができるであろうかということが、一つの問題であります。朝鮮動乱以来、景気の上昇に基いて企業の利益の増大、自己蓄積も相当増加しておりますことは事実でございますが、最近の景気が跛行的であります点から、その蓄積力は業種別によつてかなり区々であります。従つて目下資本蓄積の最も要求されております電力とか、造船、製鉄、そういう巨額の資金を必要とする業種には、自己資金による調達は期待し得ないのであります。またかつての超均衡予算の当時は、日本銀行の信用造出はそのままただちにインフレ的な作用を持つものではなかつたのでありますが、財政が中立予算となり、さらに支拂い超過予算となるようなことがございますと、日銀の信用造出にも限りがあると見なければならない。しかも物価上昇傾向が急激となりますと、民間資本蓄積の降下、つまり再投資は必ずしも期待できない状態が起ります。さらにこれらの資金が経済循環の秩序を乱すおそれもないではない。従つて自立経済確立の緊要性と、今後予想されるインフレ傾向とを考えるならば、インフレを抑制しつつ他面新投資を確保するというこの政策が、経済においても金融においても財政においても、とらなければならないと考えるのであります。この点に関して政府資金の産業投資を増加いたしますことは、一段と政府の支拂いを増加し、インフレ助長の懸念があるのであります。しかし一面その有効適切なる使用によつて、民間資本では調達困難な設備資金、ただいま申しましたような電力、造船等のごとき設備資金の供給をいたし、当面必要とす緊要物資の生産の増大をはかることができれば、この面ではむしろインフレ対策となることも考慮されるのであります。この点が非常にデリケートであります。政府が産業投資をふやしますれば、先ほど申しました政府の支拂い資金が増加して来るのであります。従いましてインフレ助長の懸念があるということが、一面警戒されるのでありますが、しかし単純にそうばかりも考えられない。もしその政府の投資が有効適切でありますならば、先ほど申しました民間資金の不足を補つて、そうして重要物資の生産を増大するならば、物の面において反対にインフレをチエツクするという政策になる。この点であります。政府が民間の資本蓄積の促進のために、法人企業の資本充実、預貯金の増加等、税制上の考慮を拂つておられますことは、時宜に適した措置と考えられますが、現下の情勢はこれをもつてはなお不十分である。私はやはり財政と経済の総合的な観点に立つて政府資金、特にただいま申しましたドツジ・ラインの線で、千数百億の繰越しを残すことになつております見返り資金、これの産業投資を積極化することが望ましいと考えます。また懸案の開発銀行のごとき新たなる政府機関の設立も、現下の情勢、特に今後の国際情勢を考えますと必要である、こういうふうに思います。  きわめて簡単でございますが、重複を避け、かつ大綱のみ申し上げましたような次第であります。
  22. 小坂善太郎

    小坂委員長 川北公述人に御質疑はありませんか。
  23. 小平忠

    ○小平(忠)委員 一点だけお伺いいたしたいと思います。ただいまの御意見の中に、金融面から考えまして、特に日本の財政経済という上から見まして、現在の国際情勢なりあるいは朝鮮動乱影響から、食糧問題について相当買付に狂奔している。あるいは現に食糧の過剰を予定されたアメリカでさえ、輸出を中止して、食糧の備蓄というような方向に転換しておる。さらに船舶問題あるいは買入れ価格等から考慮いたしまして、私は政府が現在二十五年度として計画しております残輸入数量、並びに二十六年の三百二十万トンの食糧輸入計画、これはとうてい望み得ないと考えますし、ひいては食糧の再統制ということも考えるのであります。川北さんにおかれましては、この輸入見通しなり、あるいは再統制という問題について日本の二十六年度の財政経済面から見た考え方から推して、どういうふうに考えられるか、その点をお伺いしたいのであります。
  24. 川北禎一

    ○川北公述人 簡単にお答えいたします。現在の世界情勢は、ほとんど数箇国の例外を除きまして、輸出統制をいたしております。数量、品目は種々ありますけれども、ほとんど輸出統制をしない国はない。この間に処して、日本輸入すべき食糧その他の重要物資が非常に多い。食糧につきましての問題は、従来のガリオアによる輸入ができるか、あるいはかりに新しい講和会議後の情勢として、これがとまつて日本の自力による輸入になるか、そういう問題もございますが、食糧に関しては、やはり日本国民生活安定のため、第一必須なものであります。この点はおそらくアメリカにおいても、相当考慮を拂つておるというふうに私は思います。これはむしろ私よりも政府当局の方がよく御存じと思いますけれども、実は今年は大豆が中共から入りませんから、大豆を加えますと、前年以上の食糧輸入を必要とするのでありますが、大体前年と同程度の食糧輸入はできるのではないか、私は食糧につきましてはそういうふうに考えます。しかしただいま申しましたように、ガリオアの食糧輸入をいつまで続けるかという問題がございますから、国内で食糧自給態勢——自給と申しましても、完全な自給はできないでありましようが、できるだけ自給度を高めるという政策は、国内の農業その他の政策として非常に大切なものだと思います。大勢が先ほどちよつと申しましたように、第三次大戦が急速に起るということでありましたならば、その心配はじかに起ります。しかし現在のところは大きな戦争が見送られて、その間に軍拡時代がしばらく続くという前提のもとに立ちますと、食糧の供給が非常にとまるとか、あるいは非常に窮迫するという事態は、まず日本としてはないのではないか。非常に大ざつぱな見通しでありますけれども、比較的楽観して考えておるような次第であります。
  25. 小坂善太郎

    小坂委員長 他に御質疑はありませんか。——それではこれで……。どうも御苦労さまでございました。  午前中の公述人の公述はこの程度にとどめまして、午後は一時から開会いたしまして、次に移りたいと思います。これにて暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  26. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして、公聴会を続行いたします。  まず日本私学団体総連合会常務理事高木三郎君より御意見開陳を願います。高木公述人
  27. 高木三郎

    ○高木公述人 私は文教予算、特に私立学校関係予算につきまして、いささか卑見を申し述べたいと存じます。  本年度予算は特に文教並びに社会保障につきまして、深き関心を持たれたる予算であるように承つておるのでございます。文教予算は申すまでもなく、国家の将来を形成する人物の育成、並びに科学の振興に関する重大なる影響を持つところの問題であります。しかるにわが国の文教予算は、従来はなはだしく軽視をせられておつたのでございます。ことに軍閥盛んなりし時代におきましては、まず軍備予算等に巨額の出費を要しましたことは、まことにやむを得ないことであつたと存ぜられます。しかしながら敗戦後の日本においては、軍備予算というようなものの必要がまつたくなくなりまして、ここにおいて民主的文化国家建設のために、国費の重要なる部分を投ずべきであると考えられるのでございます。しかるにその後における予算を拜見いたしますると、事実はまつたくこれに反しまして、依然としてきわめて貧弱なる文教予算を計上されておりますことは、国家将来のために、まことに遺憾にたえないところであります。  今昭和二十六年度政府予算を見ますと、一般会計歳出総額六千五百七十四億円に対しまして、文教関係予算はわずかに総額二百六十九億円でありまして、歳出総額に対してわずかに四%にすぎないのであります。さらにこの文教関係予算のうち、公立関係学校と私学とを比較してみましたときに、その間に著しき径庭があることを発見するのであります。すなわち国立大学関係に対する歳出百四十億円に対しまして、私学の予算は大学より幼稚園に至るまでを合しまして、わずかに十億余円でありまして、その比は七%であるのであります。国公私立教育機関の現状を見ますと、国立大学は七十校、学生数約十二万に対しまして、私立大学は百十七校、学生数約十七万に上つております。また私立大学以外の私立学校は、短期大学百三十二校、高等学校八百八十校、中学校七百六十七校、小学校九十三校、幼稚園千二百二十六校、その学生生徒総数は約九十五万に上つております。しかも大学は国公立大学九十六に対して、私立の校数はその十二割強であり、短期大学は公立の十七校に対して七十七割、幼稚園は公立の八百七十四校に対しまして十四割に当ります。ここになお御承知を願いたいことは、晝間勤労に従事いたしまして、夜間勉学する向学青少年に対する夜間教育機関は、従来私学がほとんどその大部分を担当いたしております。また現に今日においても、夜間教育機関は私学がその大部分を占めております。またさらに女子高等教育の面から見ますと、これはほとんどその大部分が、従来私学が担当するところであつたのであります。このほか実業教育その他の面におきましても、私学が日本の教育の上に貢献したところは決して少くないと考えるのであります。ともあれ十二万人の国立学校のため百四十億を支出いたします政府が、九十五万人の私立学校のために、わずかに十億余円を支出されておるというのが現状であります。一体教育の本質におきましては、官公私とも何ら区別の存すべき理由がないと思います。ひとしく国家有用の材を育成するということを目的としておるのであります。ただ国公立の各校が、公費をもつて主たる経営財源としておるのに対しまして、私学に原則として私財をもつて、自主自立の経営を行つておるのであります。当然の結果として、国公立の学校が大なり小なり官治統制を受けておりますのに対しまして、私立学校はノー・サポート、ノー・コントロールを建前としております。しかしながら敗戰の現実は、いかに私学でありましても、まつたく他の支持なくして自立自営を行うということは、きわめて困難であります。ことに戰災をこうむりました学校に対しては、まことに同情に値するものがあります。また直接戦災をこうむらずとも、私学の大部分は間接に戦争による影響をこうむつておるのであります。このほか戦災に関係なく六・三・三・四制の新しい学制によりまして、設備の改善をいたすことに巨額の経費を要するのでありまして、何ら財的の裏づけのない私学が、新学制に要するところの諸設備の調達に非常に苦心をしておることは、周知の事実であると思うのであります。私立学校法の五十九條によりますと、特に国または地方公共団体は、私学教育の振興上必要があると認める場合には、私立学校教育の助成のため補助金を支出し、または通常の條件より有利なる條件をもつて貸付金をなし、その他の財産を譲渡し、もしくは貸し付けることができる、かように規定をいたしております。しかるに国家は何ら財的裏づけのない六・三・三・四制を施行いたしまして、私学に施設の設備を強要しながら、これに対しては一顧も與えておらない。しかも国公立の施設の充実に対しましては、相当の支出を容認しておるということは、私どもは不公平ではなかろうかと考える。われわれは決して校費の補助をというようなことを、心から欲しておるものではないのであります。むしろ私学はその本領たる独立自営の観点より、他の援助を受けることなくして、おのおのの持つ歴史と伝統に従う幅の広い民主的教育を施すことを、理想としておるのであります。しかしながらいかんせん、わが国の現状はこれを許さないものがあるのであります。そこで最小限において国家または公共団体の援助を要望しておるのでありますが、国家の私学に対する援助はあまりに寡少なることは、前述の数字をもつても御了解が願えることと考える。  また先般当委員会においても問題を提供せられたように伺つているのでありますが、通信教育の問題について一言いたしたいと思います。六・三・三・四制の新制度とともに、戦後の特殊な教育施設といたしまして設けられましたところの通信教育は、御承知の通り教育基本法に従いまして、教育の機会均等という立場から、特に重要なる施設として認められておるのであります。すなわち大学の門戸開放の理想のもとに設けられたものでありまするが、創設以来なお日浅く、これを設置している各大学の現状は、いずれも非常に困難をきわめておるようであります。この教育実施における技術的、事務的の困難ということもあると思うのであります。同時に、外部における社会的、経済的悪條件、これらによりましても大きな制約を受けておるのでありますが、加うるに現在の各私学が、新制度に伴う施設の充実等に巨額の負担をこうむりましたために、学校当局といたしましては、その経営にさらに一段の苦心を重ねております。従つてこの制度の完成を見ますためには、各方面の多大の支持、援助がありませんければ、この重大な意義を有するところの通信教育の今後の発展ということは、期待できないと思います。  かような事情のもとに、われわれ私学関係者はきわめて謙虚な立場におきまして、本年度三つの要望を政府当局に懇請いたしたのであります。その一つは、戦災復興貸付金の増額であります。その二は、私立学校教職員共済組合の助成であり、その三は、私学金融機関の設立であつたのです。戰災復興貸付金は昭和二十二年以降の継続的計画でありまして、すでにその根本的理念は認められ、本年度までに七億余万円の貸付を受けております。さらに今後三箇年にわたり、なお相当額の貸付を受け得るいわば既得的特権であつたのです。従つて戦災復興建物に対する貸付金の増額という問題は、多々ますます弁ずるのであります。しかしながら戦災をこうむつた学校は全私学の三分の一に達せざるものであります。また単に戦災校の建物の復旧のみによつて私学が振興するものではないということは、説明を要しないのであります。私学の振興は、災害復旧のみならず、新学制に伴うところの施設の充実に対する財的の裏づけを必要といたすのであります。さらに教育機関は物的施設の充実のみをもつて足るものではありませんで、人すなわち教職員に有能な人材を得るということが、最も大切であると考えるのであります。極端に言えば、多少物的設備の不足がありましても、優秀なる教職員を充足した場合の方が、教育的効果の上ることは申すまでもないと思います。教育基本法の第六條によりますと、法律に定める学校は公の性質を持つものとしております。また学校教員は全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには教員の身分を尊重され、その待遇の適正が期せられなければならない。かようなことを教育基本法は規定いたしております。しかるに現在の教職員の待遇のあまりにも貧弱でありますことは、いまさら事例をあげるまでもないと思います。従来の教職員の待遇は他の公務員等に比しまして、著しく貧弱であつたということが申し上げられると思います。さりながら国公立の教職員はまだよい方であります。私立学校の教職員の待遇がいかに不十分であるかということは、ただいまとうてい言うに忍びないものがあると思います。しかもなお現職にあります間は、きわめて乏しい生活でありましても、天職に甘んずるということも考えられます。しかし一旦老齢にして退職する、または一朝本人もしくは家族の疾病、その他の災害に遭遇いたしました場合を想像いたしましたならば、思い半ばに過ぐるものがあると思います。われわれはかような観点からいたしまして、恵まれざる全国私立学校教職員五万数千並びにその家族のために、国立学校教職員に対する恩給制度、共済組合制度の恩恵を勘案いたしまして、私学教職員共済組合制度を計画いたしまして、これに相当なる助成を政府に要望したのであります。私学財政の問題はなお限りなくあるのでありますが、しかし根本的解決は個々の問題ではありません。拔本的私学財政の確立にあると想うのであります。これがためわれわれは校費の補給を受けるのではなく、せめて必要な施設に要する資金の融通を熱望しているのであります。私学に対する一般金融は、現在の金融機関をもつてしてはとうてい全きを得ないのであります。私学に深き理解と同情を有する特殊金融機関の設立を望む全私学の要望は、過去五箇年にわたり烈々として継続いたしているのであります。率直に申しますれば、私学は今や財政的危機に直面いたしております。一体為政者は心から私学振興を希望しておられるのだろうか。與党であります自由党は、党議をもつて私学振興金庫の設立を決定され、また民主党もその綱領中に、私学教育金庫の創立を公表せられております。社会党においても、私学教職員共済組合制度確立について応援をしておられます。各與野党とも何ら異議もなく私学の振興をとなえておられまするが、事実一向実効が上らないように考えられます。もし真に民主的文化国家建設のために私学振興をはかるというのであるならば、一刻もすみやかに救済の手を差延べなければ時機を失するのであります。悲しむべきでありますが、今や私学の衰頽は明らかに歴然と現われつつあるのであります。もし私学が今日以上に衰頽をいたしました場合における青少年の思想の問題、教育機関の欠陷、ひいては国費負担増加等を勘案いたしましたときに、この際私学助成の僅少なる国費の支出をいたすことを惜しまれることなく、十分なる援助を與えられることが国家百年の大計であると考えるのであります。もちろん今日五億、十億の少額をもつて私学の振興をはかるというようなことは、行われる道理がないのであります。承るところによりますと、英国におきましては戦後にユニヴアーシテイ・グランド・コミテイが組織せられまして、この機関を通じて巨額な国費をケンブリツジ、オツクスフオード、その他の私学に補助をしておるという事実があるのであります。またその場合何ら官僚統制を受けておらないのです。なお今回来朝せられましたロツクフエラー氏が、日本の私学のために巨額の私財を提供せられましたことは、ひとりこれを受けられた当該学校のみでなく、全私学人の深き感銘を受けるところでありますが、同時に政府並びに国民は、顧みてさらに一層文教政策の関心を深めなければならないのじやないかと考えます。私は文教に対して特に重大な関心を有する吉田総理大臣、また吉田総理大臣の絶対信任を有する天野文部大臣、さらに私学振興について将来とも大いに努力すると公約せられた池田大蔵大臣が、與野党とも国内問題として何ら異論のない私学振興政策に対して十分なる成算をお持ちになることを信じて疑わないのでありますが、現実に現われたるところの昭和二十六年度文教予算を拜見いたしまして、大いに失望せざるを得ないのであります。  計数の細目にわたりますことは、今日ことさらにこれの批評を避けたいと存じます。ただ政府並びに国会議員各位におかせられましては、十分私学の立場を了察せられまして、今後さらに善処せられんことをお願いいたしまして、私見を終りたいと思います。
  28. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か御質疑はありませんか。——御質疑がございませんようでございますから、どうも御苦労さまでございました。  次に移ります。次に東京商工会議所中小企業委員長五藤齊主君にお願いいたします。五臓公述人
  29. 五藤齊三

    ○五藤公述人 私は財政にはまつたくのしろうとでありまするが、中小企業者の立場から日ごろ考えております意見を、予算案に結びつけて申し述べたいと存じます。  過日公聽会のために予算案の説明書をちようだいいたしまして、それを一見いたしたのでありますが、まず二十六年度予算を概括的に拜見をいたしまして感じますことは、この経済安定期におきましての施策といたしまして、まず財政規模の縮小に留意せられ、その結果資本蓄積を念願せられまして相当額の減税を織り込んでおられますこの二十六年度予算は、大体におきまして私どももたいへん賛成を申し上げるところでありまするが、ただ非常な苦心の結果にかかわらず、中小企業界及び一般中産階級の租税の負担が、なお非常に過重であるということを痛感いたすものであります。従つてこの安定期の経済の場におきまして、至上命題としてとなえられております資本蓄積自立経済と申しますようなことが、とうてい行われ得ない状態に置かれておるのではないか、こういうふうに私考えるのであります。  ひとつここで中小企業者の実例を申し上げてみたいと思いますが、東京都内におきましての、これは大蔵省の非常に奨励をいたしておられます青色申告の結果の実例であるのであります。これはサービス業でありまして、理髪屋さんの実例であります。これは相当の理髪屋さんのようでありまして、いすが七脚あるそうでありまして、扶養家族が六名おられるようであります。これが二十五年度中の営業におきまして、いわゆるガラス張り経営の結果、利益金が五十五万三千七百八十九円六十二銭計上せられたのであります。その中で当年度の税金が二十一万九千七百六十一円五十銭、家事に三十一万九千三百七十六円、そのほかに前年度滞納いたしておりました税金を十万二千六百二十円五十銭拂つておるようであります。本年の利益から申しますと、約一万円ばかりの剰余利益が出ておるのでありますが、ただ前年度の税金を滞納いたしておりましたので、そのほかに十万二千円余りの支出を必要とせられておるようであります。もちろんまだ第三期の納税を済ましておらぬわけでありますが、現在現金が二千二百十七円五十四銭しか手元にない。銀行預金がわずかに六百三十三円しかない。サービス業でありますので、商品もなければ機械設備もない。資産がほとんどない。こういう状況でありますので、第三期の税をどうして拂うかということに非常に苦慮しておる。そういうことで、ある団体に相談に見えたということであります。これをもつてしてもわかりますように、今日中小企業の中で五十五万円の年収を実際上げまするのは、まず中小のうちの中規模企業といわなければならぬと思うのでありますが、その中産階級の実際の利益の中で、家事費と税金を拂いますと、万円くらいしか資本の蓄積ができない。これは経営の不手際もありましようけれども、前年度の不拂い税金を拂つたために、実際は資本を大きく食い込んでいるというような状態に置かれまして、三期の税金を拂うことができないというような状況に追い込まれておる。これは一床屋さんのお話でありますけれども、多くの中小企業はほとんど同じような状況下にあえいでいるのが、現状ではないかと思うのであります。二十六年度予算におきましては相当大幅の減税を見込んでおると、予算説明書にはうたつておられますが、この二十六年度の新しい法のもとで、かりに計算をしてみましても、ほとんど差がないのであります。実際の経費の上に現われます当年度の税金が二十一万九千七百六十一円五十銭でありますが、新税法計算せられまして二十二万一千百二十円ということになりまして、むしろ千何百円かふえておる。これは先年度の所得の決定が違つておりますので、こういう結果になると思うのでありますが、いずれにいたしましても、新しい税法を適用いたしましても剰余利得というものは残らない、生活をするのが一ぱいである、こういう状態でありますので、資本の蓄積等はまつたく思いも寄らない実情に置かれておると思うのであります。中小階級が没落いたしますことは、国家の中堅を失うゆえんでありまして、ゆゆしき問題でありますることは、これはもうひとしく認められておるところでありまするが、実情は、政府あるいは国会におかれましても、いろいろ配慮を行われておられながら、なおかつこういう過重なる税金にあえいでいるというのが、現状であると思うのであります。  そこで私考えますのに、二十六年度の予算の構想は、財政規模の縮小に一つの重点を置かれておられるようでありますが、なお一層この財政規模の縮小を徹底せられまして、行政の簡素化、あるいは政府機関とか公団等の早急廃止を実行せられまして、また官業の民営移行等も真剣にお考えいただきまして、とにかく財政の縮小を徹底的にはかつていただきたい、かように考えるのであります。この結果失業問題が起るという社会問題上の問題も、いろいろと御懸念なさるように拝承いたしておるのでありますが、今日の日本経済は講和を目睫に控え、世界情勢が世界的軍拡の波の中に置かれております現段階におきまして、相当量の輸出が伸びておりますことは、御承知の通りであります。今後日本経済は相当の活躍を期待することができると思うのでありますが、これを大きく阻害いたしておりますのは、現在の税制であると思います。税の軽減が大きく行われまするならば、日本経済の活況は期して待つべきだと思うのでありまして、この面におきまして相当数の失業者の吸収は、可能であると思うのであります。予算案を拜見いたしましても、失業対策費として、百四十四億円を計上されておられるようでありますが、その中の応急事業費に七十七億五千万円、失業保險費に六十三億円を計上せられておるようであります。この応急事業費によりまして救済せられる失業者の平均数は、十六万八千人と計上されておるようでありますが、この応急事業費の使い方が、まつたく非能率きわまるものではないかと私は考えるのであります。たとえば都市におきまして、失業救済のために道路清掃等をよくやつておられるのを見受けますが、これらの失業救済事業費を食つておる仕事のしぶりというものが、まつたく目に余るような非能率なやり方をやつておる。ほとんど半分は遊んでおるというような状態でありまして、これを生産の方面にまわすならば、大きなプラスになるのではなかろうかと、私は常に痛感いたすのであります。こういう点から考えましても、單に社会政策的な観点から、失業救済等に重点を置き過ぎますと、かえつて経済の伸張を阻害するという結果になることを、御留意願いたいと存じ上げるのであります。  とにかく中小企業の育成が国家再建の近道でありますことは、これはもう一つの合言葉になつておりますけれども、これを具現いたしまするような施策が、現段階においてはなお非常に不十分であると、私は痛感をいたしておるのであります。私どもといたしましては、中小企業振興のためにいろいろの施策をお考え願つておるのでありますが、そのうち見返り資金の別わくが、昨年の秋から一躍三倍にふえまして、一箇月一億円の融資が三億円許されることになりましたことは、たいへん喜ばしいことと存じておるのでございますが、またこれが非常にきゆうくつなわくに縛られておりますために、その実績がなかなか上つておらない。聞くところによりますと、日銀の方に十数億の金が眠つていて、実際に利用をせられていない、こういうことを聞くのでありまして、これはあまりにもわくがきゆうくつである結果ではなかろうかと思うのであります。まずこれは設備資金でなければ貸さないというわくがはめられておりますが、今日の日本経済の実情に照しまして、少々特需が伸張し、あるいは輸出が振興しましたからといつて、むやみな設備の拡張は非常に危險である、こういうふうに通産当局はいつも警鐘乱打しまして、設備の拡張ということを極力押えておるのでありますが、この見返り資金は設備資金でなければ貸さない、こういうわくをはめられておるのであります。ただ経営合理化のための機械の修繕とか、家の修繕とかいうようなことにばかり使えと命ぜられますが、これはまことに知れたものでありまして、多くの資金をとうてい消化できないと思うのであります。そこで私どもは、この見返り資金の別わくの用途を、設備資金から一歩前進いたしまして、長期運転資金に貸出しをせられるような施策を講じていただきたいと存ずるのであります。申すまでもなく現在の日本経済は、輸入にまつところが非常に大でありますが、客観情勢は必ずしも楽観を許さない。食糧その他重要工業原料等も、近く非常なきゆうくつさを感ずるようになるのではなかろうかという警告が発せられておるのでありまして、政府におかれましても、外貨資金を極度に利用せられまして、いわゆる備蓄輸入を急いでおられるのであります。これはひとり政府だけでありませんで、民間におきましても、その資力に応じて、企業がストツクを多く持つことが必要であるという段階ではなかろうかと思うのであります。現に大企業におきましては、いろいろの金融機関との関連によりまして、多くの資材の買いだめをしておられるのが現況であると思うのでありますが、中小企業はそれらのつながりがほとんどありませんので、手も足も出ないという現状にあるのであります。ここで見返り資金が長期運転資金として、一定のランニング・ストツクを持つ運転資金に貸し出されますようなことができますならば、今後の中小企業振興の上に大きなプラスになると思うのであります。  次に信用保険制度が昨年十二月十五日から施行せられまして、一つの前進を中小企業金融の上にもたらしましたことは、たいへん喜ばしいことでありまするが、これまた独立採算制を考えられまして、いわゆる保険価額を貸付金の七五%に制限せられておりますので、実際問題といたしましては、金融機関がこれに積極的な協力をしない、こういううらみがあるのであります。現に本年一月から三月までに、三十六億の貸付をする予定を立てておられるようでありまするが、一月におきましてはわずかに一件二百万円、二月は今日までにわずかに二件三百二十万円が、契約が終つたばかりだそうであります。そうして現在契約の進行中のものが、十六件五千八十万円ということを昨日私聞いて参りました。これでは三月までに三十六億の実績を上げることは、思いも寄らぬ次第ではなかろうかと思うのであります。これは一に、国家がこの中小企業振興策の上に、何らの国家損失を見ないように、いわゆるコマーシヤル・ベースに乗るような経営をしようということを前提としておられますので、金融機関がこれに積極的な協力をしない結果ではなかろうかと思います。よろしく信用保険基金の投資をいま一段とふやされまして、二十六年度におきましては十億円を予定せられておるようでありますが、二十億ないし三十億投資せられるようにせられまして、多少のリスクは国家が負担をするという親心を持つて、この中小企業金融の上に臨まれたいと思うのであります。輸出銀行に対しましては、二十六年度において五十億の出資をせられるように予定せられておるようでありますが、この中小企業金融に対しては、わずか十億しか出さないということになつておることを、私ども非常に遺憾に存じます。  その次に不動産金融は、中小企業のためにぜひとも望ましいことであります。勧業銀行が普通銀行とかわりましたために、不動産金融をやる機関が現在まつたくないのでございます。聞くところによりますと、政府におかれましては、開発銀行の設立の御計画もあるやに承るのでありますが、これが大企業の専門機関とならないように、中小企業の唯一の融資対象であります不動産金融等もこれによつて行われ、中小企業に大きなプラスがもたらされますように、お願いをいたしたいと存じます。  もう一つはやはり税の問題であります。同族会社の保留所得の課税を七%から五%に下げたということを一つのプラスとして掲げておられます。これは一般法人の保留所得の二%を廃止したことにバランスをとるためにやられたことと思うのでありますが、資本蓄積の観点から申しますと、これはぜひとも全廃をしていただきたいと思うのであります。七%が五%に下つたくらいでは、中小企業の資本蓄積はとうてい行われないと思うのでございます。同族会社というものは、中小企業のほとんど大部分を占めておると思うのであります。これはどうして廃止ができないかと、先日も大蔵省の理財局長に伺つてみますと、個人所得の累進課税とのバランス上どうも困難だ、こういうことを言われるのでありますが、個人所得に対しましても、私は一つ意見を申し上げたいと思います。個人の所得の中に財産所得と企業所得とあるわけでありまするが、この企業所得に対しまして、企業所得のうちの企業内の保留分に対しましては、法人と同じような意味において、低率の税をかけるということが理論上当然でなければならぬと思います。そういうことによつて、個人企業の多くの部分を占めておりまする個人所得の中の企業所得で、資本蓄積をはかつて行くという方途が望ましいのであります。かくいたしますことによつて、同族会社の保留所得の課税廃止のアンバランスをなくすることができまするし、零細個人企業の資本蓄積が、これによつて行われるではなかろうかと思うのであります。  なお最近は富裕税について、税務署ではいろいろ努力せられておるようでありますが、この同族会社の株式の評価にあたりまして、非常に過重な評価をやつているということを聞くのであります。これは私の知つております鉄鋼業を営んでおる資本金百万円の同族会社の例でありますが、この株式をその企業内容の資産から割出しまして、五十円の株を二千五百円を評価しているということであります。ほとんどそれと同じ含み資産を持ちましたたとえば石川島造船所の株を上場市場で見てみますと、これが拂込み金額にも達していないというような現状であります。同族会社いわゆる中小企業の税の圧迫というのが、この面にも大きく現われているということを申し上げておきたいと思います。この点につきまして、ひとつ税の公平というような観点から、善処をしていただきたいと存ずるのであります。  次に一般税制の問題について二、三申し上げてみたいと思います。固定資産の耐用年数短縮が資本蓄積に必要であるということで、現在大蔵省で委員会をつくつて審議を進めておられるのでありますが、大蔵省側の意見といたしまして、十八年で償却を認めておりました従来のある種の機械について、細分いたされました結果、二十三年に耐用年数を下げようという案が出ておるのであります。これは資本蓄積の観点からまつたく逆行する意見であると思いますので、現段階におきましては、耐用年数は短縮をすることが必要であると思うのであります。  次に、ある企業がその期におきまして十分なる利益をあげることができなかつたために、法定償却をなし得なかつた場合に、これをその次の期に繰越して償却を許されるという、一定期間の償却繰越しの制度を認めていただくことをお願いしたいと思います。  もう一つは、資産の再々評価が期待せられておりまして、二十六年度においてはこれが行われることによつて資本蓄積の推進をはからんとせられておるのでありますが、この評価差益税が六%と予定せられております。これには多くの異論がありまして、こういうような名目的な利益から税をとるのは、間違いであるという議論もたいへんありますことは、御承知の通りでありますが、これも資本蓄積の観点から、三%程度に引下げを要望いたしたいと思うのであります。昨年の再評価におきまして税をとることにきまりましたものが、現段階においては二%くらいの徴収にとどまつておるようでありますから、これから三%と引下げていただきましても、支障はまつたく起らないと信ずるものであります。  いま一つ、たなおろし資産に一割程度の含みを認容する制度を、復活していただきたいと存じます。古い税法ではこういうことが許されておりましたが、シヤウプ勧告でまつたくこれがなくなつたのであります。資本蓄積の必要でありまする今後の日本経済におきましては、ぜひともこういうものは必要ではないかと存じます。往年日本の紡績業が世界に冠たる実績をあげまして、英国のランカシア紡績を凌駕いたしまして、世界にその販路を広めておりましたその陰には、原綿の手持ちを毎期々々の利益の中から大きく償却いたしまして、手持ち原料の含み資産によつて利益のチヤージが十分にできるということに、その原因の一つがあつたと私は信じております。かくいたしまして、日本経済の再建の上に大きなプラスとなりますような施策を、ぜひともとられたいと私は考えるものであります。  いま一つ、試験研究所の経費は、現税法におきましては損金と認められません。たとえば一つの特許を生み出しますために多くの研究費を使いました場合に、この特許権に対しての経費は認められまして——この特許権が一つの資産として認められまして、その資産の償却において損金は認められますが、その研究費そのものを損金にすることを税務署は許さないのであります。これはよろしく、このように無から有を生じますような今後の経済再建のために必要な試験研究等の費用は、直接損金に認められるようにしたいものであると思います。来年度予算案の説明にも、今後資本蓄積の観点から、新しく外国から購入する機械等は、普通の償却の規定を越えて五〇%多く償却を許すことにしてある。これによつて数年の間にこの大半を償却することができるはずだといつて伝えられておりますが、これは同じような意味におきまして、試験研究費等はよろしくその総額を直接損金に認めてもらいたいものであると思うのであります。  また預金の利息の報告義務でありますが、これは金融機関におきまして、千円以上の預金利息はことごとく税務署に報告義務を課せられております。これは大きな銀行になりますと、非常な事務上の負担であるとこぼしておるのでありますが、今日の物価指数あるいは貨幣の実効価値というような観点からこれを見ますならば、今日の千円は昔のわずか三円にしか当らぬ勘定になるのであります。昔三円の金利を拂つたということが、徴税上どれだけの重要さを持つてつたかと思いまするならば、これは思い半ばに過ぎることであると思うのであります。よろしくこれは大幅に引上げまして、この義務を軽減いたしまして、この面からも資本蓄積をはかるべきではなかろうかと思います。またこれに関連いたしまして、無記名定期預金の問題でありますが、これは多くの議論がありまして、政府におかれましてもいろいろ折衝せられました結果、今回は許されなかつたようでありまするが、これは日銀の政策委員等におきましても、この無記名預金はなるべく残しておく方がいいというような個人的意見も、たびたび聞くのであります。資本蓄積の大局的な観点から、ぜひともこの無記名預金の復活を私どもは要求を申し上げたい。なお郵便貯金の非課税限度の引上げ、これも三万円が限度になつておりますが、これも今の論法で申しますと、昔の百円にしか当らぬことになるのであります。これなどもよろしく十万円ぐらいに非課税限度を上げていただきたい。こういう点からも資金蓄積がはかられなければ、今後の日本経済は再建がむずかしいと思うのであります。また保険料の控除を二十六年度から二千円認められましたことも、一つのプラスでありますけれども、これもせめて五千円くらいまで控除することを認められることが、必要ではなかろうかと思います。基礎控除三万円が認められましたのでありますが、その六分の一程度の五千円くらいの控除は、認められてしかるべきではなかろうかと思います。これは昔の税法ではその程度は認められておつたのであります。そういう各種の施策が総合的に集積いたしまして、真に資本蓄積の実績が現われまして、日本経済の真の自立が、早急に行われるようになるのではないかと私は考えます。  最後に二、三その他の問題について申し上げたいと思いますが、ただいま私学総連合の方から、文教予算のことについてるるお話がありましたが、私も文教科学振興予算について一言申し上げたいと思います。二十六年度予算説明を拜見いたしますと、六、三制の建築補助として四十三億円が計上せられておりますことは、第二の国民を養成いたしまする上に大きな配慮をせられておるものとして、多といたすものでありまするが、ただうらむらくはその内容について何らの考慮が拂われてない。ようやく戦後五年を経過いたしまして、新学制のもとに六・三制というものも完成に近づいておるようでありまするが、これはまつたく外側の外囲いだけでありまして、それはまつたく空虚な状態のようであります。私は昨日文部省へ参りましていろいろ聞いて参りましたが、内部設備といたしまして理科、体育、音楽、家事、社会学科、これらのいろいろの教具、教材というようなものはまつたく貧弱である。これらをそろえるためには、おそらく二百億円を越える経費を必要とするであろうが、これに対しても建築補助と同じ意味において、相当額の補助をすべきである。そうしないことには六・三制の教育制度というものは、とうてい完成を見ることができない。ただ外側の外囲いをしただけでは何の役にも立たないということを、ひとつ御記憶を願つておきたいと思います。  なお試験研究費として多くの経費が予算案に盛られておりますが、この中でも大きなアンバランスがあることを私は承知をいたしております。私は工業技術庁と特許庁との実情を聞いて参りましたが、工業技術庁に対しましては、工業化試験補助費その他の研究補助費として、四億五千万円を配当せられておるようでありますが、特許庁に至りましては、わずかに八百万円しか配当せられておらないようであります。工業技術庁の補助と申しますのは、これはほとんど大企業に限られております。現在新しい産業の一モデルと考えられておりまする例の塩化ビニールの工業、人造繊維工業等の新しい考案に対しましての工業化試験のようなものには、多額の金を要することは当然でありまして、これらに重点的にこの補助が行われておる。それでありまするから、四億五千万円の補助金が配当せられておるのでありますが、これらはほとんど大企業に重点的に流れてしまう。特許庁におきましては、いわゆる町の発明家の掘り出しまして、これに十万円とか二十万円とかの少額の補助を與えておるのでありますが、この無から有を生じますところの発明くふうに対する補助費が、わずかに八百万円しか二十六年度予算に組まれていない。これは他の経費を融通せられましても、いま少しこれを増額せられまして、科学技術の根源であります発明くふうの方に、もう少し温情を與えていただきたいと思います。真の生活文化、産業の合理化は、この新しい発明くふうから生れなければならないと存ずるのであります。  最後に予算に関連のありまする問題を一言申し上げたいと存じまするが、それは電気通信特別会計の中におきまして、構内電話の設備あるいはそれのとりかえをやります場合に、民間の費用をもつて従来はこれを行いました。そしてこれを電気通信省の規格検査に出しまして、その許可によつて使うことが許されておつたのでありますが、せんだつてこれが某方面の示唆によりまして許されなくなつた。ことごとく電気通信特励会計の予算によつて行われなければならないということになりましたので、これが予算に縛られて、非常にきゆうくつになつた。早急にある事業会社がこの産業の神経とも申しますところの構内電話を引こうとしても、とうてい引けない。こういつたようなことで、各方面で非常な支障を来しておるのであります。これはぜひとも従来のように、利用者がその費用を支弁をいたしまして、ある場合にはこれを電気通信省に寄付をしてもさしつかえないと思うのですが、こういうことが行われますように、予算技術の上においてひとつ御配慮を願いたいと存じます。  はなはだとりとめもございませんでしたが、私の意見はこれで終ります。
  30. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か御質疑はありませんか。
  31. 久野忠治

    ○久野委員 ただいま中小企業に対する金融保険の制度について、運営がはなはだ遺憾であるという御意見でありました。私もごもつともと同感に思うものでありますが、調査資料の中で一月に一件二百万円、二月に二件三百二十万円というお話でありましたが、この調査は東京都内だけの調査でありますか。またどこでおやりになりましたものですか。
  32. 五藤齊三

    ○五藤公述人 これは私の手元にけさ届きました全日本中小工業協議会の速報を取上げて申し上げましたが、全日本中小工業協議会は、中小企業庁と連絡をいたしておりまする団体でございまするので、おそらくこれは中小企業庁による調査の結果であろうと私は信じております。
  33. 永井英修

    ○永井(英)委員 ちよつとお尋ねしますが、中小企業の会社はおおむね同族会社だろうと思いますが、それがどれくらいの会社数で、資本金の総額がどれくらいになつておりますか。
  34. 五藤齊三

    ○五藤公述人 それは私現在資料を持つておりませんので、申訳ございませんが、お答えができません。が、とにかく中小企業は個人経営が何といつても多いと思いますが、同族会社の大半は中小企業の会社であるとお考えを願つて間違いないと思います。と申しますのは、従来の財閥的な同族会社と申しまするのは、御承知の通り財閥解体の結果、ことごとくなくなつておるわけでありまして、今日の同族会社のほとんど大部分は、中小企業者の会社であると考えます。もし御必要でございますれば、これは後刻商工会議所で調べまして、資料をお出し申し上げることにいたしたいと思います。
  35. 久野忠治

    ○久野委員 ただいま私が質問しました件で、銀行側の意見を聽取されたことがありますか。聽取されたとすればどういうような意見でありましたか。
  36. 五藤齊三

    ○五藤公述人 銀行等は正面切つてこれを忌避するということはもちろん申しません。しかし銀行はどこまでもコマーシヤル・ベースに乗るということがその建前でありまするし、銀行自体が多数の預金者を保護するという立場から、リスクを伴わない貸付をするということが建前でありますので、信用保険をつけなければならないようなものは、ある程度危險を伴うものだという意向はいなめないことであります。いろいろの会合で銀行等の意向をただしてみましても、まつこうからそれを表現はいたしませんけれども、それに類するような意見がたびたび出るのであります。
  37. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは他に御質疑がなければ次に移ります。  次は神奈川県知事内山岩太郎君にお願いいたします。内山公述人
  38. 内山岩太郎

    ○内山公述人 内山であります。私は従来、と申しますか、昨年の九月ごろから、以来しばしば国会に伺いまして、地方自治の裏づけとしての財政強化の問題で皆様にお目にかかつておるわけでありまして、また来たかという感じもおありになるかと存じまするが、本日は全体の知事とかあるいは地方団体の代表という意味よりは、むしろ神奈川県知事というきわめて狭い意味から出発いたしまして、発言をいたさせていただきたいと思うのであります。従つてきようの発言は、相当こまかくわたりまするし、正確を期しておるつもりでございます。また同時に地方自治に対する特に平衝交付金の問題その他の問題で、大蔵省と地方財政委員会との二つの案が国会に提出されておるという重大な場合でありまして、国会こそがこれを判断する唯一の場所でありまして、これをおきますれば、日本の自治もまつたく崩壊するというような状態であるのでありまして、そういう場面に直面いたしましての国会の方々に対しては、私どもも進んで公述もしなければならぬし、また本日のごとく発言の機会を與えられましたことについては、深く感謝をするものであります。  お手元に配付いたしましたのは、昭和二十六年度の一般予算計画表というのでありまするが、これは神奈川県の二十六年度に対する予算計画でありまして、この計画をやつてみまして当つてみますると、次のようなことが出て来るのであります。すなわち神奈川県の人件費——これは教育職員と県の職員とを含むものでありますが、それと法令等に基く義務的の支出、それから公共事業費の地方負担分、国庫補助に伴う地方負担額、行政機関の通常維持費、最少限度の一般行政費というものについて、それぞれ総額並びに一般財源所要額というのを並べたのでありまするが、それによりますと、一般の人件費といたしまして、一般職員が八億六千三百万円、それから教職員が二十億九千三百万円、年末手当が一億二百万円で、合計三十億五千八百万円ということになります。そのうち一般財源から出るものが二十八億三千八百万円、それから義務費として七億四千百万円、これに対する一般財源が六億四千四百万円、次に公共事業費というのが十三億九千二百万円、これに対して一般財源が三億九千七百万円、次に国庫補助事業費というのが三億八千九百万円、一般財源が二億一千一百万円、それから通常維持費というのが二億三千八百万円、一般財源が八千二百万円、さらに一般行政費と見るべきものが五億三千百万円で、一般財源が三億三百万円、これらの経費については、たとえば一般人件費の単価というのは、そこにお配りいたしました別表の「一般職員に関する人件費調」というのがございますが、これは実質上国家公務員の単価を下まわるほか、定員においても本年度当然生ずる職員を見込まないのでありまして、極度の節減を実施した上での数字でありまして、教職員についても、これまたお配りいたしました第三表でございますが、定員については文部省指定の小学校生徒五十人について一・五、中学校では同じく一・八というのに対して下まわつた、小学校が一・二三、中学校が一・七二という数字をもつて算定した数字でありまして、これは教員組合などとは、あるいは教育委員会とは、相当争つたあとで、県の財政上やむを得ないということで、むしろ押しつけた数字であります。また定額は文部省の昭和二十四年度通牒の単価を基準としたものでありまして、これも全然問題のないところであります。さようにして、極度の節約を実施した上での金額が、先ほど申し上げました程度のものでありまして、地方自治体としての必要最小限度を計上したものであるが、これに対してこれをまかなうべき財源はどうか、こう申しますると、地方財政委員会昭和二十五年度仮決定による平衡交付金十一億四千八百万円、並びに同委員会の決定した神奈川県のとるべき税収、すなわち基準税収決定額の百分の七十、つまり七割、それが二十二億一千四百万円、これを合算いたしますと、ようやく三十三億六千二百万円になるのであります。これに競馬等の益金を四千万円加算いたしましても、三十四億三百万円となりまして、人件費及び義務費の一般財源所要額合計を充足し得ないのでありまして、これだけですでにもう赤字となつてしまうのであります。     〔委員長退席、角田委員長代理着席〕  以上申し述べました最小限度の行政を実施するためには、合計十億六千五百万円の赤字となるのであります。昭和二十六年度において大幅な平衡交付金総額の増加並びに配付方法の本県の不利を是正するための変更が行われるのでなければ、神奈川県は財政的に完全に破綻するといつてさしつかえない、またそのほかどうにもならぬのであります。  それで本年度の予算は、以上の赤字に対してどういうふうにつくろつておるかと申しますと、それは公共事業費の全額起債、約四億のから財源、それから平衡交付金三億五千二百万円の一方的な増額見込み、これが地方財政委員会あるいは大蔵省で出す、出さぬにかかわらず、私どもの方で出るものとまず押しつけた数字でありまして、そういうものを見込んで、その上にさらに税の収入を四千一百万円、それから義務費、並びに年末手当は計上しておりません。こういうものをいろいろととりまぜまして、一応この赤字をつくろつておるわけであります。きわめて不完全な予算であるといわざるを得ません。  以上申し述べました数字のほかに、神奈川県が自治体として地方住民の福祉のために、さらにまた国全般の利益のために、実施しなければならない事業のおもなるものを、最小限度の金額計算した場合においても、別紙備考に示す通り五億三千九百万円となり、これを合計すれば歳入不足が十六億円となりまして、これだけの財源に関し、何らかの措置が講ぜられない限りは、本県はその機能を全うして国家の復興に寄與し得ないのであるが、かくのごとき事項は、この際地方自治体側としては、まつたく考える余地がない状態であることをまことに遺憾とするものであります。かくのごとき本県の現状について、これを匡救するためにも今後もまた必死の努力を傾注いたしまして、政府関係機関に善処を要望いたさねばならぬと深く期しておるのでありまするが、ここで申し述べたいことは、全面的な責任者として現実の事態の是正を訴えるべき政府の責任機関の欠如していることである。すなわち地方財政委員会、大蔵省のいずれに訴えても、最終的に現実の事態を責任をもつて解決し得ない現状は、地方自治体にとつてまことに悲しむべき事実であり、中央においてきわめて漠然たる抽象的見解によつて、一方的に事実上各県予算の査定を実施しておるにもかかわらず、具体的事実についてその是正を求むべき方途を持たないことは、地方自治体当局者の深刻な悩みの種であることを、国会議員各位の御明察に訴えて善処を希望する次第であります。  そこで以上のごとき県財政の破局的な実態について、そのよつて来る原因を探求しますると、当面の問題としては、第一に政府の平衡交付金総額の算定の誤り、第二に地方財政委員会の配分、算定上の不合理、これについてはただいま同委員会で再検討中でありまするが、根本的な問題が検討されていない模様であります。以上の二つの点をあげることができるのであります。  そこでそのおもなる点について詳しく申しますると、第一に平衡交付金総額の算定についてでありまするが、大蔵省においては昭和二十六年度地方財政平衡交付金の総額を一千百億円と算定しております。その算定方式として昭和二十五年度当初金額に対して、歳入出各費目について、昭和二十六年度の増減を計算する方式をとつておるのでありますが、その内容について予算のおもなる点を示せば次の通りであります。  第一に職員の給與についてでありますが、大蔵省は一律に一人当り千円増の算定をしておるのでありますけれども、まず一般職について地方自治法施行令の定める通り、国家公務員と同様のベース引上げを実施し、その間に差別待遇を意図しないならば、地財委の算定方式によりまして六千三百七分の一千とすべきはもちろんであります。特に国家公務員について人件費総額は、昭和二十六年度予算において大幅に増額せられ、一人当り単価が月額一万一千六百七十八円となるにもかかわらず、神奈川県のごとき、これは全国としても一つの特殊な地域でありますけれども、勤務地手当の加算率の問題で、国に比較すると九・四%高率であります。そういう県において切りかえを実施した場合において、やはり一万一千七百八十円となる。かくのごとき状態において、これを可能ならしめる算定のごときは、実情に沿わないものといわざるを得ないのであります。ここに非常な大きな開きが出て来るのであります。  次に教育職員についてでありますが、これについても大蔵省は一律に千円をしいておりますが、神奈川県のごとき、文部省通牒の定類をそのまま採用してベース引上げを計上している県においても、その単価は小学校一千八百七十九円、中学校が二千二百八十七円に達しておりまして、これは各県ともいずれも同様の金額となつておるのでありまするが、今回の切りかえが高給者ほど高率となる制度である以上は、教職員の構成内容から見まして、当然の帰結であるこの事実をまつたく無視したところの大蔵省、地財委ともに大きな誤りを犯しておるものと私どもは考えます。現に神奈川県におきましても、大蔵省とか地財委の主張するようなことを申しましても、それは私どもも信じておりませんが、そういうことをしいようといたしましても、県の教職員は一人でもこれに応ずる者はないのでありまして、これは全国共通の問題であります。ベース改訂に伴う所要額は、「教員に関する人件費調」と、「一般職員に関する人件費調」という資料がここにございまするが、それにありまする通り、四億六千七百余万円に達しまするので、これにまた勤務地手当とか、共済組合費とかいうようなものを包含すると、五億一千万円となるのであります。この問題は各県を通じ、地方財政最大の問題であるのであります。特に実情調査の上、合理的算定に是正せらるることを要望する次第であります。かようなことはあえて論ずるまでもなく、実地に調査することによつて、当然出て来るところの数字的の結果であります。  次に法令の改正に伴う義務費の増額について申し上げますると、平衡交付金決定以後の法令の改正に伴うところの義務費の支出増は、さきに全国知事会から提出せられておりまする表に示してありまする通り、都道府県分のみにて百億円に達しておるのであります。これがほとんど今度は算入されておらぬのであります。これはまさに地方財政法を無視し、地方財政をはなは忙しく圧迫するとともに、その運営を著しく不安ならしめるものであります。さらにまた従来の補助金中、平衡交付金に切りかえられました金額の算定について、地財委の調査の結果に基く数字三十四億円が無視せられていることを遺憾とするものであります。義務費の地方財政、特に府県のそれの中に占めるところの比率が、神奈川県の資料によつてもきわめて大きいことを認識せられ、その是正について格段の御配慮を煩わしたいのであります。これは法令によつてきめているものを地方に命じ、その法令を施行することによつて費用がかかるのでありまするが、その費用は当然裏づけするということで法令にもきめてあるわけであります。そのきめてあることを私どもは喜んで実行しておると、あとになつてから、その裏づけとなるべき費用をくれないのであります。これはたいへん悪いたとえでありまするけれども、友達を、別に飲みたくもないのに、きようは一ぱいごちそうするから来いと言つて呼んで行つて、ごちそうしてやつたが、いざとなると、きようは忘れたから、お金をお前拂つてくれと言つて拂わせる。そしてその金をあとで請求すると、お前の方は金が大分ふところにあるようだから、別にこつちから拂わぬでもよろしかろうと言う、こういうようなことになるのではないか、これはきわめて不道徳なことである、こういうことを私は申しているのでありまして、これは国会にも非常に関係があることでありまするので、ぜひひとつ是正を願いたいと思うのであります。  次には使用料、手数料その他の雑収入の増収見込みについてでありまするが、大蔵省は支出増加に対する充当財源として、既定経費節約八十億円、使用料、手数料等雑収入増百八十一億円をあげておるのであります。このうちの節約八十億円については、もし歳出増加を必要額だけ算入するならば、地方自治体として少くともこの目標に向つて努力すべきであるとの意味合いにおいて、一応算定せらるることにあえて反対するものではありません。しかしながら雑收入増の百八十億に至つては、算定の根拠を全然推算さえなし得ない、はなはだしい架空の数字であります。もとより地方予算を集計するならば、雑収入の総額は相当の金額に達するのでありましよう。しかしながらその大半というものは使用料、手数料等、特定の事業に伴いまして、その特定財源として事業とともに伸縮する収入でありまして、この収入を転じて他の歳出増の財源に充てるがごときは、地方行政の実態を知らざるもはなはだしきものであるといわざるを得ないのであります。雑収入の他の一半は、各種の運用資金と同一予算中におきまして歳入出とともに計上せられ、事実予算面においてはゼロとして計算せらるべき歳入であつて、これまた地方予算に若干の検討を加えれば、容易に発見し得べき金額であります。  以上の事実を神奈川県について見るならば、別表二十五年の雑収入調べというのがありまするが、これをごらんになりますとよくわかるのであります。ずつと並んでおりますけれども、一番初めの経営的なもの一億二千五百万円というのがありまするが、たとえば不用品の売却代五百万円、生産物の売却代四千八百方円、こういうようなものはまずどこへ持つてつて使つてもさしつかえないものであります。それからまた延滞金、金庫利子あるいは診療収入、宿泊所収入、住宅審査依託収入、その他というものが書いてあります。これは経営的なものであります。それから臨時的なものとして漁港の修築納付金とか路面復旧納付金とかいろいろなものが書いてあります。それから回収金というところに持つてつて——これが大きいのでありますが、中小企業運用資金というのが一億円、これは二十五年度に中小企業のために資金を、貸し付けたのでなしに、県として銀行に預けておる。そうしますると、その金を見返りに銀行が一般に融資をしておる。次に農林振興のために五千万円をやつたのでありまするが、それ以下大体似通つたものがございますが、これが返つたからといつて、ほんとうに県のふところに入るのじやないのです。県の財産ではありましようが、またその翌年同じように、あるいはそれ以上に金を出さないと、中小企業は困るのでありまするし、農林の振興運用というのにもさしつかえか起るのでありまして、もしこういうものを収入として勘定するならば、同時に支出の方につきましても、県の行政需要額として計算に載せるならばこういうものを収入としてもよろしい、けれども県のいわゆる行政費の中に載せないで、収入の方だけにこういうものを載せるというと、非常な不都合を生ずるわけであります。従つてここに五億六百万円という総計の雑収入がありまするけれども、回収金三億円というものは、全然これは問題にすべからざるもので、これは右から左になくなるものでありまして、そのほかの雑収入のものといいましても、たとえば診療所の収入とか、宿泊所の何とかいうもの、そのほかずつと出ておりますが、いずれもこれは右から左に出て行く性質のものでありまして、こういうものを特に収入として勘定するならば、同時にまた歳出としての勘定にもこういうものを載せないとつじつまが合わないのであります。しかるに歳出の面におきましては、きわめて厳格に否定いたしまして、こういうようなものはほとんど載つておらぬのであります。従つてこれは片手落になりまするから、雑収入というものを百八十億なんと掲げることは、まつたくこれは地方に対し無理やりに数字を押しつけるところのやり方であると私どもは考えておるのであります。  次に地方財政委員会の平衡交付金配分上の不合理について申し上げますると、このことにつきましては別に地方財政委員会に対し、私どもは詳細に意見を提出しておりまして、同委員会もまた目下全般的に再検討を実施中であるので、ここではこれを省略いたします。特に長いことでありますから。しかしながらただ一点申し述べるならば、地方財政委員会の平衡交付金配分の方法が、シヤウプ博士の第二次勧告において明示せられておるように、標準行政費の単位費用を著しく過小に見積ることによつて、行政費の総額を税収と平衡交付金の合算額に一致せしめる方法をとつておるため、正当なる計算によつて平衡交付金を按分配付せられる場合に比べて、税収の多い自治体ほど平衡交付金と基準税収の合算額が不当に低額となりまして、シヤウプ博士のいわゆる過剰均衡化を来しておることであります。私はこれを洪水的均衡化と申すのであります。平衡交付金というのは谷を埋めるというふうな考え方で始まつたのでありまするが、現在ではこれはもう洪水的な結果を来しておるのでありまして、まことに害をなしておると考えております。もし各自治体の歳入に相当の余力があり、各自治体においてなるべく活発な行政が行われる場合におきましては、従来比較的恵まれなかつたところの環境にあり、さらにまた伸ばすべき分野のある地方に対しましては、しからざる自治体をしてある一部をさきまして、比較的不利に甘んぜしむ、いわゆる足踏みをさせることも考えられるのでありましよう。しかしながら現実には各府県ともいやしくも平衡交付金を受ける限りにおいて、一律に最低行政費をまかない得るかどうかが問題になつておる状態において、なおかかる架空の観念を追うことは、税収の多い府県の財政を破綻に導くものであり、一方平衡交付金を受けない自治体が少しあるのでありまするが——府県においても市町村においてもそういうのがあるのでありまして、そういう交付金を受けない自治体が財源の豊富を誇り、これに対して一指も加えないというがごときは、はなはだ奇怪であるといわざるを得ないのであります。一部の議論として基準税収の七割として算定せられておるため、残余の三割を意識して、かかる措置の正当性を云々するものがあるが、この残余の比率をさらに引上げることによりまして、税収のほとんど総額を平衡交付金の計算中に算入するならば、税は実質上個々の自治体の財政に対して何ら加うるところなく、逆に徴税の義務と滞納の危險負担のみが残存していることになり、自治体の本性は完全に没却せられることとなるのであります。言いまわしがはなはだまずいのでありますが、大体現在の税の組み方も私たちにとつてはずいぶんややこしいのでありまして、推定される税負担力の七割をかけるというようなことで、それ以上とつたものは、それは自分の方で使つてよかろう、こういうようなことであるようでありまするが、ここで言うのは、さあそれならば、よろしいといつて、それ以上無理やりにとるようになつたとしましても、どうしても平衡交付金をもらわなければ、県の財政をやつて行くことができないようなところでは、とればとるほど、今度は平衡交付金の方が減つてつて、働けば働くほど骨が折れて、そうしてけんかをして、その結果はどこまでも県の持つところの歳入総額にかわりがない、こういうちよつとばかげた結果になるということを言いまわしたわけであります。  以上平衡交付金の総額並びに配分の算定について申し述べたのでありまするが、特に府県の立場から申し述べるならば、府県の歳出はこれを一般財源について検討するとき、神奈川県の事例によつて明瞭であるように、ほとんど人件費特に教育職員のそれと義務費及び国庫補助事業によつて占められまして、右に関する各府県の所要額は、各省によつて簡単に把握せらるべき性質のものであり、そのほかの行政費についても、四十七都道府県について実態を調査するならば、それぞれ中央各省において比較的容易に認定し得るはずのものであります。税制の一定部分を自由裁量にまかすのほか、全般的に実態調査を実施し、現実に必要とする金額について標準財政需要を定め、これに対して所要の平衡交付金を支出せられることが、総額の決定並びに配分を通じて不合理を是正し、財政破綻を防止するための近道であると信ずるのでありまするが、少くとも緊急に数府県にわたつて大規模の実態調査を実施しまして、府県財政の実態を把握して、その破綻の防止をはかられんことを切望してやまないものであります。すなわち府県はまさに瀕死の状態になつておりまして、これは時間が遅れるというと、病人に対すると同じように、大分状態がかわつて悪くなると思うのであります。  次に、地方債のわくについて申し上げまするが、政府案は二十六年度の地方債を四百億としている。そのうち三十億程度は二十五年度分の災害にまわせるように聞いておるから、結局二十五年度の三百七十億のわくを一歩も出ていないことになるのであります。しかるに二十六年度の公共事業に伴う地方負担額は、事業量の増大と災害復旧事業費の負担区分の変更によりまして、二十五年度は政府が全額負担でありましたのを、今度は地方に三分の一負担せよというようなことに急変したようでありますので、災害復旧事業費の負担区分の変更等から、前年度に比し著くふえまして、地財委の計算によりますれば、三百二十二億の増大、また大蔵省の計算によつても二百九十七億の増となつておるのでありまして、この莫大な臨時費負担の増は、従来の慣例からしても、また財政の常識をもつてしても、当然起債の増額によつてまかなわるべきであり、これを既定経費の節約とか、あるいは税外収入のから増しをもつて押しつけるとは、まことにひどいしうちといわなければならぬと思うのであります。このままに推移せんか、せつかく国の予算に盛られました公共事業費の、おそらく大半が地方団体の受入れ不可能となりまして、国の予算が事実上不履行になるという重大な事態を生ずることは必要であろうと思います。この点についても特に御配意をいただきたいと思います。  以上神奈川県財政を例といたしまして、府県財政今日の窮状と、その当面の救助方策について訴えたのでありますが、根本問題として、地方税制と平衡交付金制度の根本に触れていささか意見開陳いたしたいと思います。  第一に今日の地方税制、特に府県の税制は金額があまりにも過小であります。私も五年知事をしておりますが、終戰後、初めのころは貧乏でありましたけれども、貧乏ということだけでありまして、不都合だとか、不合理だとか、不道徳だとかいうような感じは持つておらなかつたのでありますが、現在ではその点が非常に強く感ぜられますので、はなはだこれは遺憾とするのでありますが、その上にはなはだしい偏在税種の多いことでありまして、そのために地方財政今日の窮状と混迷の最大原因となつておるのであります。この結果東京都あるいは大阪府を除き全府県が、平衡交付金を受けざるを得ない状態となりまして、全府県がことごとく中央において決定せられる平衡交付金のわく内において、シヤウプ博士の、いわゆる最大限の徴税努力をもつて、最小限の行政を行い得ることにとどまるようになりましに、その最小限の行政すら、大蔵省の査定と地財委の配分によつて左右せられ、常に破綻のふちを彷徨せざるを得ないという現状にあるのでありまして、独自の財政計画のごときは、とうてい樹立不可能となり、財政的に自主機能を喪失しておるのであります。地方住民がその意思と能力に応じて、地方公共の福利を増進するために何ほどの支出をなし、何ほどの事業をなすかを決定することは、自治の根本であることを思うときに、今日の税制は平衡交付金制度と相まつて、樹種と税額において地方住民の意思と能力の発揮の余地をまつたくなからしめるといつてもさしつかえないほど、自治の最も重大なる本旨を没却させておるのであります。これを実例にとつてみまするに、神奈川県においては全世帶六十万、このうち納税者はわずかに一七%、国税総額が二百三十七億円でありますのに、県税総額はわずかに二十二億一千四百万円でありまして、国税に対してその一割にも達しないのであります。これをしも日本で自治団体であるとか、地方公共団体である、しかも地方分権であるということを言うことは、まことにいかがわしい限りであると思います。たとえば新潟県のごとき大県においては県税総額十三億九千万円、平衡交付金二十二億八千万円というがごとき、税制の不合理を如実に示すものであるといわざるを得ないのでありまして、これを救うためには国税中普遍的樹種の一部を地方税に委譲し、一方平衡交付金は特に住民の負担能力僅少なる府県にのみ、これを支出するようなその金額を減少せしめることであります。これこそ本問題の根本的解決の唯一の道であると考えるのであります。  次に平衡交付金制度について申し述べるならば、本制度は税制が前述の通り是正せられるならば、制度自体としてはきわめて合理的なものであると言い得るのであるが、毎年度政府の方針その他社会情勢の変転に従つて生ずるところの歳出増を、個々の団体に対して交付せらるるよう制度上の保障を設けるのでなければ、その都度節約の可能性が論ぜらるるがごときものであつては論外でありまして、地方団体は財政計画の樹立をすることも、安んじてその執行に当ることも不可能となり、常に大きな不安にさらされておるので、この点に関する是正を早急に実施すべきであると考えます。  最後に行政事務の再配分に関連して申し述べるならば、シヤウプ博士の税制改革に関する勧告は、行政事務の再配分を前提とするものである。これを実施することなくして、税制並びに平衡交付金制度のみを実施し、そういう本末転倒のことをした結果が、たとえば比較的税収の多い神奈川県ですらも、その税収のほとんど全部を教育費に注入するほかなく、大多数の府県がその税収をもつてしては教育費すらもまかない得ないという、はなはだ奇妙なる結果を生んでしまつたのであります。かくのごとき跛行的制度改革が幾多の混乱と不合理を誘発することは当然であり、かかる事態に対処するため、シヤウプ勧告に基く財政制度改革に関してもまた当然暫定措置を必要とするのであつて、たとえば国庫補助金制度を当分存置し、あるいは平衡交付金制度を当分保留して配付税制度を存続するなどの方法を研究実施されんことを要望するものであります。  なおこれは国の予算を見まして、気づいた点をひとつつけ加えて申し上げますれば、終戰処理費という項目がありますけれども、日本の今一枚看板ともいうべき国連協力費というものが一銭も盛られておらないということであります。これはあえてそういうことを申し上げるのは必要があつて申し上げるのであります。たとえば神奈川県のごとき場所で、道路が大きなトラツクが通るためにこわれる。言わずと知れた、これは朝鮮事変のために軍需品の輸送が盛んであるために起るのですが、たとえばその一例をとりますと、道路をだれが修理するかということであります。     〔角田委員長代理退席委員長着席〕 以前でありますると、PDという方法がありまして、軍の責任者がちよつとサインすることによつて、どんな道路の費用も出たのであります。しかしながら今日においては、そういう方法はないのであります。これを建設省に持つて参りましても、大蔵省に持つて参りましても、金の出る道がないというのであります。しかしながら現実の道はこわれておる、しかもその道は神奈川県にあるということになりますると、もしこの道をほうつておけば現実に障害が起きる。またこれを直してくれということを要求されてから何日かかつても、なおかつ直さなければ、県の知事並びに道路の責任者はどういうことになるかということは、大よその見当がつくと考えまするが、こういうことは一つの例であります。そのほか進駐軍の労務者、これは東京でもありまするし、神奈川県などは現在そのためだけで二万人以上越えておりまするが、それはつまり普通ならば五万人のところが、今そういうために七万人、そういうものの費用、これはもとより労銀は出ておりますけれども、その管理費というものが必ずしも十分でない。しかしながら、そういうものが出たからというて、これまた終戰処理費から出る方法がないと称して、金の出場がない。結局地元が何とか立てかえなければならない。立てかえるということは、将来補填されるということで考えておるのでありまするけれども、ほかのたくさんの場合と同じように、出しておいてくれ、あとから拂うからといつても最後に拂つてくれない場合に、そういうことさえの保障もないのに、私どもは現実の要求に基いて出しておる金でありまするから、火のつくような催促をいたしましても、希望を述べましても、なかなか補填されないのであります。たとえばまた軍の需要において新しく人が移動する、そうなりますると、それに付添うておるところの日本の労務者が住宅を必要とする。この場合に、以前であれば進駐軍住宅というのが自由にできました。それは軍の使うものでありましても、軍に従属するところの日本人のためでもできたのでありますが、今日においては、なかなかそれができないのであります。地元の町村や地元の県が、何とかこれにぶつからなければなりません。そうしてこれを地元でできないからといつて中央に持つて来たときに、現在の予算では、二十六年度の予算では大体出るところがないのであります。しかも日本では国際連合に協力するという重大な事件を目の前に控え、実際政府の方針としても、そういうことを堂々と述べておるのでありまするが、そういうときに現実の問題として、そう大した金ではないと思います。しかしながら地方にとつては非常に重大な大きな金であります。のみならず合点の行かない金でありまするので、私どもはずいぶんと、この問題については不満を持つておるのであります。こういう意味におきまして、議会の方で終戰処理費から出すべきものであるとおきめくださればけつこうであります。しからずんば、国連協力費という項目を一つ設けて、金額を計上していただきたいと思うのであります。  以上いろいろ申し上げましたが、現実の問題といたしましては、地方の問題は全体として非常な窮状に立つております。これはもう病人でいえば、明らかなる症状を呈しておるのでありまして、ほうつておけば当然だめになることは明らかでございます。数字の問題でありまするから、補填しなければ必ず赤字が出る、赤字が出ればその結果は当然出るものは出て来るのであります。しかもその赤字の補填、この始末を大蔵省も地財委も責任を持つて解決することはできないで、議会に二本建の予算を出しておるのであります。これを決裁するものはひとり国会あるのみであります。こういうことは今日までなかつたことであろうと思われますが、私どもも昔——あえて昔の内務省を謳歌するわけではございません。官僚という意味においては、私どももむしろ排撃する一人でありまするが、とにかく地方という——からだでいえば、地方すなわち日本国家でありまするが、この地方の全部の四肢立体がまさにくずれんとするような重大な時機に立ち至つて、これを全部自分で引受けて閣議で争う国務大臣も持たぬということは不都合であると私どもは思うのであります。さればこそ、今度のように国会にこういうものが出て来たものだと思うのでありまするが、今度国会において、これに対して少くとも合理的な、穏当な、同情的な解決が與えられなかつた場合には、その及ぼす結果というものは、皆さんもおそらく御推定にかたからざるところと思うのであります。私は知事でありまして、いい年をして昔のあのようなむしろ旗を立てるようなことも申し上げたくありませんし、昨年九月以来陳情をしたり、いろいろなことを申しておりました。しかしながら、中には血気にはやる者もありまするし、いろいろ集まるというと、大言壯語するのでありまするけれども、結局最後まで——地方自治というものは決して五年や十年で片づくものではなしに、長年かかつて築くべきものと思いますけれども、長い目で一生懸命働くということは骨が折れるのであります。私はそういう意味におきまして、必ずしもここで線香花火的にすべてを解決して満足しようという希望を持つておりません。しかも少くともこの問題を全体の地方自治確立の意味において、皆様が地方にある程度の納得をお與えくださるようなおあしらいをしていただきたい。本日は神奈川県知事ではありますが、地方自治の確立という意味において特に申し上げたいと思つております。長い間御清聽をいただきましてありがとうございました。
  39. 小坂善太郎

    小坂委員長 公述人に御質疑ありませんか。
  40. 上林山榮吉

    ○上林山委員 ただいまの公述人に対しまして一、二簡単にお尋ねいたしたいと思います。御承知の通りに地方の財政が非常に逼迫しておるということは、われわれ国政に参與しておる者も十分にわかつておるのでありまするが、これに対しまして、国民の非常な苦しい中から出して来る税金を、地方財政の方面へ還元するわけでありまするが、この際に特に私どもが重点的に考えなければならないのは、貧弱なる府県あるいは町村に対する、特に災害というような問題に対しての国庫補助の率、このものは相当に公平に考えて行かなければならぬ、こう思うのであります。そこでその観点に立ちまして、さらに私ども掘り下げて考えなければならないことは、昨今政府においても、この要望に沿うべく努力しておるのは、税収入と災害の量とを比較して、国庫補助の率を按分しよう、こういうふうに進んで行くところでございますが、この機会に私は單にその基準を税収と災害の量とに比較するだけではなしに、府県あるいは市町村の税外収入というものを一つの大きな基礎として見て行かなければ、いわゆる貧弱なる府県市町村に対する補助の率というものは変更できない。変更しても大したことはない、こういうように考えておるのでありまするが、あなたは單に神奈川県の知事としてではなく、全国の自治体を代表しているというような気持で、どういうふうにお考えになるか、この一点をまず伺いたいのであります。
  41. 内山岩太郎

    ○内山公述人 山くずれとか川の氾濫とかいうものは、どんな貧弱な県に起りましても、またどんな富裕な県に起りましても、同じ量の復旧費を要するものと思います。この意味は、貧弱な県に起つた一億円の査定を受けたところの災害が、ゆたかな県で起ればそれは二百万円に値する、そういうことにはならぬと思います。一つの橋をかけるに、長さ百間幅二間の鉄橋をかけるのは、どこでかけても値段は同じです。
  42. 上林山榮吉

    ○上林山委員 質疑の要旨をよくおのみ込みになつておられないのじやないかと思います。私のお尋ねせんとする趣旨は、結局国庫補助の率を変更しようとする時期に今到達しつつありますが、その基礎が税外収入というものを全然考慮に入れずに、単に税収入を基礎にして、国庫補助の率を特に災害等に対して考えようとしておるのだが、実際の体験を通じて、単に神奈川県知事としてではなしに、全国の自治体という点からお考えになつて、税外収入を入れた方がいいのか、これを入れないで考える方が公平か、この点について聞いておるわけです。
  43. 内山岩太郎

    ○内山公述人 その点であれば、税外収入も込めたが当然だろうと思います。しかしながら、これはただお答えであります。シヤウプ博士も言われておるように、災害というものは国家的なものである。どこの県に起ろうとも、これは国家的なものである、しかも大きな場合は特に国家的な頭で直さなければいかぬということで、場災害は全額国でやる。それでもあまり国ばかりでやつては困るだろうから、小さいものは地方でやる方がよかろうということで、従来は十五万円以下の災害は地方でやりました。それ以上のものは国でやりました。こういう方法をとつたのであります。しかもそれはたつた一年——私はここで不平を申すのではありませんが、たつた一年。しかもその一年に、国庫は全額負担すると称しながら、全額ではありません、ただの一割だけ負担しておる。そしてその全額負担という姿を流してしまつた。しかも前には、皆さんの方が私よりよく御存じでしようが、昔は地方が一部負担するということによつて一つの財源を持つてつた。それを今度は国が全額負担するということから、地方の財源まで取上げてしまつたという話です。およそ八十億あつたという話です。しかもその八十億をふところにして、今度は全額負担しない、お前の方で昔通り負担しろという形になつております。そうして今日になつて、その負担の標準をどうするかということ、あるいは税の方をどうするかということですが、現在の地方税を基準にして、そうして災害に対して、税外収入を入れるとか入れないという議論は、少しまだ早いと思います。もう少し税制を改革したあとでやるべきものだと私は思います。今のままでやつたのではいけません。なぜなれば、農村県において、福島県とか鹿児島県とか、ああいう非常に大きなところで災害が起きるときには、そういう場所が広ければ広いだけ、小さい所よりも起きる可能性が多い。そういう場所で起きた場合に、今の税金の負担というものは五億か八億、そこに百億、二百億の災害が起きたときに、その土地の税金がいいとか悪いとかいうことは問題になりません。ですから、その地方の負担力をとやかく言うことは、これは少し重箱のすみを楊子でほじくるような考え方でありまして、日本の災害復旧は、ほんとうの意味においては、特別の基金でもつくつてやるほかない。今のようにぐらぐらしておつたのでは、結局だめだ。もう少し深く考えなければいかぬ、こう思います。
  44. 上林山榮吉

    ○上林山委員 いくらか私の質問の要旨に近づいたようでありますが、どうも少しぼやけているようでありますので、説明申し上げたいと思います。というのは、もちろん災害全体に対するシヤウプ博士の勧告案は私どもも十分承知しておりますが、私の言うのは、国庫補助の分に関する、いわゆる府県市町村の問題を取上げての話でございまして、その区別ははつきりしておると思うのでありますが、ただいま原則論としては、私が言うように、税外収入を見て、そうして税収入をこれに加えて、しかも災害の量に比例して国庫補助の額を確定した方がいいということをお認めになりましたので、私も了とするわけでありまするが、時期については尚早である、こういう御結論のようでございます。そこで私は実際問題をちよつと例を引いて申し上げてみたいのでありまするが、かりに例を競輪にとりましても、競馬にとりましても、府県でこれをやつているところでは相当の収入を得ております。これを各府県別に二、三申し上げてもいいのでありますが、御遠慮申し上げます。しかもその額はわずか何百万円とか何千万円とかいう程度じやありません。何億円という、あるいはそれ以上の固定の収入を得ておるのであります。こういうような場合には、そうした税外収入を多く持つていないところの県について、単に被害の量に応じて国庫の補助の率をきめたとするならば、それこそ不公平な結論になると思うのです。あなたのお話では、貧弱な府県の千メートルの工事も、あるいは裕福な県の千メートルの工事も、単価は大体において同じだ、あるいは経費は大体において同じくかかるのだから時期尚早であるという御議論のようでありまするが、私の言う意味は、それであればあるほど、税外収入が固定して、しかも大きな額を持つておる府県あるいは市町村に対しては、国庫の補助の率をある程度下げて、そういう収入のない方向にこれを振り向けて行く、これが国家的な処置としては穏当じやないか、こういう議論なんです。私現在数字も持つておりますが、しかしその議論はやめまして、大まかにお尋ねをしてみたわけであります。これについて何かございますれば承りたいと思います。結論だけでけつこうでございます。
  45. 内山岩太郎

    ○内山公述人 ただいまの御意見通り、私も全然同感でございます。但しこれは説明ではありませんが、競輪、競馬その他の点で非常な利益があるだろうというものは、日本で三つか四つか、そうたくさんないということだけを申し上げておきます。
  46. 上林山榮吉

    ○上林山委員 單に競輪、競馬だけに限つたものではない、例を引いただけです。
  47. 内山岩太郎

    ○内山公述人 全体として同感であります。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 地方税の徴収状況ですが、具体的に神奈川県でいつて、大体今見込みでどのくらいできておりますか。また地方全体として地方税の徴収状況がどのくらいになつているか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  49. 内山岩太郎

    ○内山公述人 二十五年度の意味でございますか。私のところで今準備してありませんので、確実なことを申し上げ得ないことを遺憾と思いますが、順調に行つているつもりであります。そして二十六年度の計算につきましては、事業税を八〇%とるものと見込んでおりますし、入場税、遊興飲食税のごときは、九五%以上を計上しておるつもりであります。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると全国的なことは別として、神奈川県からいいましても、大体見込額の百パーセントとれる状況にあるというようにお聞きしていいかどうか、その点が一つ。  それからもう一つお聞きしたい点は、平衡交付金の交付額が非常に少いために、地方の教員などが、実際は八千円ベースが実質的には切り下げられておるというような意見が出て来ておるのでありまするが、大体本年度予算のこの通りで行きますと、地方公務員並びに教員の賃金ベースは八千円ベースを、むしろ実質的には切り下げられる危險が起きて来るのではないか。また年末手当等の給與も不十分になるのではないかというように思われますが、その二つの点についてお尋ねしたいと思います。
  51. 内山岩太郎

    ○内山公述人 これは私、先ほどの御説明の中で申し上げたつもりでありますが、ここの中に、「教員に関する人件費調」というのがございますが、これをごらんになるとおわかりでありまして、国の方では千円と言つておりますけれども、現実に調べると千八百円、それ以上にもなつておるということをここに述べておるのでありまして、もし国が金は出さない、しかしながら一方法律ではこうあるのだということになれば、どうしてもただいまおつしやつたような事実が起きて来るのでありまして、現に私どもの方でも、意識的に二十六年度の年末給與はまだ予算に計上しておりません。これは拂わないという意味ではなしに、今のところ財源が見つからぬという意味であります。  それからまた平衡交付金も、二十五年度の仮決定では十一億余円でありまするが、思い切つて十五億円を計上しております。これも相当無理でありますが、どうしてもそこまで来なければ——そこまで来ても足りないのでありますけれども、少くともそこまで持つて行かなければ動きがとれぬと思います。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一点だけ伺います。先ほどの御説明の中でも触れられたと思いますが、もう一度はつきりお聞きしておきたいと思います。  第一点は、地方財政平衡交付金の予算説明の十一ページのところですが、使用料、手数料その他収入が地財委と政府の認定とは、十倍になつてつておるわけであります。この点はどうもわれわれ考えておかしいのですが、先ほど内山さんからも、これはどうも架空な数字だというような御説明があつたのですが、地方の自治体の責任者として、政府のこの見込みは不可能だとお考えになるかどうか。その点をもう一度結論的にでもけつこうですから伺いたい。  もう一つ資金運用部の問題ですが、郵便貯金やその他零細な地方民の預貯金があるのでありまして、これを今の制度でいいますと、資金運用部で大蔵省が一括してこれを握つて使つておるようでありまして、それが本年度は国鉄とか、あるいは郵政、電通、こういう方に使われておるようでありまするが、これはやはり地方の自治体の責任者として、なるべく零細なる地方民の預貯金は、地方に還元するように、地方自治体の財源として充てるようにという要望がおありでありますかどうか。その辺をひとつ念のためにお聞きしておきたいと思います。
  53. 内山岩太郎

    ○内山公述人 使用料、手数料というようなものを、百八十億でしたか、そういうものに勘定しているということは、これは率直に私をして言わしむれば、これは政府、いわゆる大蔵省が、ただ予算数字を合せるために書き上げたものだと私は言いたいのであります。私どもの方から言えば、大体手数料というものは左から入つて右に出る。注射をしてやつて手数料をとるけれども、注射のために金を使わなくてはならない、むしろこつちが追銭をつけてやる、そういうものであります。でありますから、手数料を百八十億とるならば、百八十億の歳出をつけなければならない。しかも、歳出の方は知らぬ顏をしていて、使用料の方だけを勘定するということはもつてのほかでありまして、これは間違いだと思います。  その次の郵便貯金の問題は、これは中小企業者から非常に熱烈な要望があります。すなわち地方で集めた金を中央に持つて行くということは困るじやないか。であるからどうか地方にそれを流してほしいということを要望しております。私どもはそれを代弁して、努めて政府に申出ております。
  54. 小坂善太郎

    小坂委員長 他にありませんければ次に移りたいと思います。  次に日本農民組合央執行委員大森眞一郎君にお願いいたします。
  55. 大森眞一郎

    ○大森公述人 日本農民組合の大森であります。私は農民運動の立場から、主として農林予算歳出面について、いろいろ問題になる点を指摘いたしまして、若干の意見を述べたいと思うのであります。まずわれわれ農民運動の立場、農民の立場からいたしまして、農林予算についてまず基本的に考えられる点は、大体三つの点からこれを申し上げることができるかと存ずるのであります。  第一の点といたしましては、昭和二十六年度におきましては、国際的なまた国内的な情勢から見ましても、経済の自立態勢を強化するという点においては、これは一般の方々の意見とわれわれの意見とはかわらないのであります。従つて財政政策においてもこの点が重視されなければならぬと思うのでありまするが、この日本経済の再建、自立化の方法といたしまして、私ども農民の立場からいたしますれば、まずその基本であるものは、農業生産力の増強によりまする国内食糧の確保ということが、絶対の前提條件でなかろうかと考えるのであります。第二の問題といたしましては、まず農業経済、農家経済を安定、向上させまして、余力をつくつて、これはやはり農業におきましても、農業資本の蓄積ということをわれわれは主張いたしたいのでありまして、もしこういう面の考慮が予算面において拂われるといたしますれば、それによつて国内市場が開発されるのでありまするから、この国内市場の開発ということが、やはり経済再建の基礎でなければならぬというふうに考えるのであります。これが第一点であります。  第二点といたしましては、朝鮮事変の進展の結果といたしまして、食糧需給関係につきましては、政府当局見通しと、われわれ運動関係の方面からの見通しとは、若干のずれがあるのでありまするが、われわれから申しますれば、やはり食糧需給関係は非常に困難になるというような見通しを持たざるを得ないのであります。従つてこの面から国内食糧の確保ということが、絶対に必要な條件となるかと考えられるのであります。従つて本年度予算においても、この点に重点を置いて、農業生産力を発展させるような諸施策を講じていただきたいというのが第二点であります。  第三点といたしましては、ドツジ・ラインによりまする経済政策のいろいろな矛盾があると思うのでありまするが、この矛盾も、結局農業経済の面にしわ寄せいたしておりますので、この面からも農家経済の安定のためには、やはり今年度予算において強くいろいろな面を考慮していただきたいのであります。  以上の観点から申しますると、結局におきまして、農産物価格の適正化を通じまして、農家の所得を確保するということが第一の点として考えられるのであります。第二の点といたしましては、現在の農業生産を発展させる意味におきましても、農業金融の確立ということが眼目となるかと存ずるのであります。第三といたしましては、これは増産態勢を実際上実施し得るような形で確立していただきたい、これが私どもの大体の考え方であります。こういう考えを基礎にして農林予算を見て参りまして、気づく点を若干申し上げたいと思うのであります。まず第一には、これは歳入面にも多少関係があると思うのでありまするが、農家所得の実体について、予算基礎なつ政府の見解に対して二、三問題があるので、その点をあらかじめ指摘してみたいと思うのであります。  これは昭和二十五年度ないし昭和二十六年度の分配国民所得の推計から考え得るのでありますが、この推計を見て参りますると、まず農家所得関係については、個人業種の所得中で農業関係のものは、二十五年度は六千六百四十億円であります。これを一〇〇といたしまして二十六年度を計算して参りますると、二十六年度においては七千二百九十億円でありまするから、一一〇になるわけであります。同じく林業水産関係を見て参りましても、二十五年度は六百億でありまして、二十六年度におきましては六百六十億でありまするから、これもやはり一〇%増の一一〇%であります。しかるに分配国民所得の合計は一一五%になつておるのでありまするから、これと比較いたしますると、農業関係所得は非常に低位にあると言えるのであります。実際に他の費目といろいろ合せて見ましても、ただ官公企業所得が最低でありますが、それを除いてはやはり農業関係のみが最低であるというような点から申しまして、現在の農業所得というものは非常に低いということを前提として考えたいのでございます。  そこで問題になりますのは、農業所得はこの推計で正しいかどうか、私はそこに若干ずれがあるように考えられるのであります。これで行きますと、やはり一〇%増になつておりますが、確実に一〇%増加しておるかどうかという点が私どもの疑問とするところであります。まず米価について見ますると、二十六年度予算の米価は、石当り六千百六円に予算上なつておりまするが、二十五年度の五千五百二十九円に比較いたしますると、やはり五百七十七円増でありますから、この比率から申しますと、一〇%の増であります。しかしながら、本年度においては超過供出奨励金の廃止によりまして、約二十三億が農家所得から落ちておるのであります。さらに早場米奨励金の削減によりまして、これも三十億が落ちておるのでありまするから、約五十三億ばかりのものが農家所得の面で落ちておるのであります。この点にまず疑問があるのであります。次に麦価について見ますると、この麦価の騰貴率は非常に低いのでありまして、大麦について見ますると、予算価格は千十八円でありまするが、騰貴率は一〇二・四%、小麦、裸麦につきましては、一俵当りが千五百八十二円でありまして、これを現行価格と比較して騰貴率を見ますると一〇四・八%であります。結局基本価格だけをとつて見ましても、騰貴率は二%ないし四%にしかすぎないのであります。こういう点から見ましても、農家所得が一一〇%上昇しておるというふうには決して考えられないのでありますから、この点も御注意をいただきたいと思うのであります。  さらに特需景気を出発点として、一般物価も漸次上昇をいたしておると思うのであります。政府においては、物価水準を一〇%上げて計算いたしておりまするが、しかしながら、現在シエーレの関係を見ますると、一〇%増になりました増加所得というものは、物価値上りによつて完全に吸収せられ、あるいは圧迫されるという感じを持つのであります。ただ一例でありまするが、肥料関係について見ますれば、昨年度の春肥においては、七割アツプの計算でなく、値上げ前の価格でこれを押えておつたのでありまするが、本年度は統制撤廃後七割アツプになり、最近においてさらに漸次上昇する傾向を見るのであります。従つてそういう面からも、農家所得は実質的に低下する傾向にあるということを前提としなければならぬのであります。このようだ関係から、まず食管特別会計に関連のある価格関係について申し上げますると、詳しいことはもちろん省略いたしまするが、われわれ米価審議会において再三要請いたしておりますることも、これは常に予算関係で押えられおりまして、われわれの要求は十分に組入れられないのであります。本年度におきましても、一般物価上昇等と比べまして、六千百六円では農家の再生産はできませんし、他の生産力を発展させて増産するというようなことは不可能であると思うのであります。結局われわれといたしましても、まだ推定はいたしておりませんが、やはり米価につきましても増額しなければ満足できない。従つて六千百六円というこの予算米価につきまして、再検討をしていただきたいというのが私の希望の一つであります。麦の価格については特にこの点が問題になると思うのであります。麦は統制を撤廃するといわれておりますが、もしかりに統制撤廃をいたしたといたしますれば、麦価格は上昇するというふうに一般には考えられやすいのであります。都会に接したところでは自由価格が相当高騰すると考えるのでありまして、その方面からいえば、農家所得もふえるわけでありますけれども、それは一時的現象であろうと存ずるのであります。これは時間の関係もありまするから省略いたしまするが、現在、農地改革後における農民の実態というものが、農地改革前と非常に異なつておるのでありまして、農地改革前においてはまだ地主というものがありました関係から、いろいろ保管するだけの経済的能力を持つてつたので、価格操作に対してもやはり強い力を持つてつたと思うのであります。しかし農地改革後におきましては、すべてが零細農民になつておるのでありますから、結局十二月から二月の間、戰前においてもやはり五五%程度のものは一気に売り拂つてつたのであります。従つて今日経済的に自家でこれを保存するだけの経済的能力のない零細農民が多数を占めた場合には、統制撤廃後においては十分中間商人に、商業資本に買いたたかれるということが考えられるのであります。そういう一般的な関係だけでなく、麦については外麦を放出することによつて価格を押えておるのでありますから、一般に予想されるような価格の上昇を見られないということが、私どもは考えられるのであります。従つてこれは統制を撤廃しても農家所得の十分なプラスにはならぬというふうな考え方を、われわれはとるのであります。統制問題を別といたしましても、やはり過燐酸を多く使う麦作におきまして、現在の燐鉱石の輸入価格を見ましても、すでに輸送費は倍以上になつておりますし、非常に価格は高騰して来るのでありまするから、これはやはり農業生産においての生産費を非常に高騰させるのであります。従つて麦の対米比価につきましては、少くとも最低昨年通りの、小麦、裸麦が八一・三%大麦が少くとも七〇%程度の対米比を見込まなければならぬのではなかろうか。さらにこうすることによりまして、一般消費者へのはねかえりもありますので、われわれといたしましては、二重価格制度を実施していただきたいというふうに考えるのでありまして、そういう問題をめぐつて価格関係を見ますれば、どうしても現在の予算に盛られた範囲の価格では、維持できないというふうに考えられるのでありまするから、この点からさらに米並びに麦についての予算価格につきましては、再検討をお願いいたしたいというふうに考える次第であります。  次に同じく米に関係することでありまするが、価格調整費の問題につきましては、現在輸入を三百二十万トンと見込んでおられます。調整費が二百二十五億円、しかし私どもの疑問といたしておりますのは、これだけの数量が朝鮮事変の進展の状況から見まして、国際的ないろいろな関係を見まして、はたして可能であるかどうか、相当不安な状態にあろうかと存ずるのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 なお現状のままでありますれば、あるいは数量的には首肯できるかとも考えられるのでありますが、一方では穀物価格は漸次上昇いたしております。ことに船賃は暴騰いたしておりまして、これは昨年十一月を基準にいたしまして年末を比較いたしますと、年末には約倍に上つておるのでありますから、こういう船賃の上昇傾向、暴騰の傾向を考え合せますときに、単価増は当然であろうかと存ずるのであります。従つて価格調整費に不足を来さないかどうかという点を私は疑問にいたしておるのであります。さらにこういう関係ばかりでなく、これは各国とも備蓄を始めておりますが、日本においてもやはり少くも半年程度の備蓄が必要でなかろうかと考えられるのであります。そういたしますと半箇年の備蓄といたしまして、数字的に確信ある数字は申し上げられませんが、約四百万トン程度のものを輸入する必要ができて来るのでなかろうか。こういたしますと、この数量確保が可能であるといたしますれば、やはり価格調整費を多く見込まなければならぬだろうと思うのであります。こういう面から価格調整費について、やはり十分御検討をいただきたいというふうに考えておる次第であります。  次に同じく食糧に関した点では、食糧供出関係の経費があります。この食糧関係の経費につきましては予算説明書にもありますように、これは二十六年度におきまして三十九億二千二十三万二千円、二十五年度と比較しまして九百二十二万四千円の増となつておりまするが、この内訳を見ますと、私どもの欲する供出制度あるいは農地委員会の問題等についての見解と非常に食い違いが出て参つて来ておるのであります。すなわちこの食糧供出関係の経費の中で、実収高の調査の面ではこれは現在減額いたしております。しかしその減額の原因は約一割の職員の整理にあると思うのであります。これは千五百人の首切りを予想いたしてこの計算が出ておるのでありますが、しかし私どもは食糧管理制度につきましては、政府のお考えになつておるような事後割当につきましては反対をいたさなければならぬのでありまして、これは農民団体すべてが一致した見解でございます。この点からわれわれの欲するのは、もつと民主的な食糧管理制度を確立すべきであり、事前において十分農民の自主的な申告を基礎とした割当をすべきであるという見解からいたしますれば、やはり事前の調査費というものは当然見込まなければならぬのでありまして、こういう点からわれわれの考える食糧管理制度から見ますれば、これを減額するということは不合理であるというふうに考えられるのであります。  第二の点は、これは農地委員会の統合によりまして、農業委員会経費が若干増額しておるようになつておりますが、しかし農業委員会というものにつきましても、現在農民団体の間では十分問題になつておるところでありまして、この点につきましては農調委と農地委員会、改良委員会と加えまして、結局において書記一千二名に減ずるというのが現在の方針のようでありますが、この農地委員会経費その他の減じた部分を二つにしたものとしてここでは増加した形に出ておりますけれども、実質的にやはり大きな削減であります。ことに農業委員会というものにつきましては、われわれは現在反対の態度をとつておる。というのは、要するに予算面から予算削減するという理由が主たる基礎になつて農業委員会というものが考えられておるからであります。かりに農業委員会というものが成立いたしたといたしましても、書記一千二名ではその機能を発揮することはできないというふうに考えられるのでありますから、この食糧供出関係経費につきましても、さらに御検討をいただきたいというふうに考えておる次第であります。  次に金融関係について若干申し述べたいのであります。これは農林漁業資金融通特別会計が今度の予算に盛られておりますが、これにつきましてはわれわれとしては賛成いたすところでありますし、当を得た措置であると思うのであります。ただしかしながら、この特別会計のできるまでの経過また現在の農業事業等から考えますれば、成案となつて出て来た予算については、なおわれわれといたしましては、十分御検討の上増額の措置をいただきたいというふうに考える次第であります。と申しますのは、当初の農林漁業金融公庫として最初出発した農林省案によりますれば、一般会計から五十億、預金部借入れが百五十億、計二百億が予算として要求されたところであります。ことにこの配分計画を見ますると、土地改良関係につきまして百六十一億、造林及び林道関係に二十九億、漁港修築運転開発関係に十億でありまして、結局われわれが増産最も必要であり、前提として申し上げました農業生産力の発展に最も必要であると思う土地改良費には八〇・五%を見込んでおるのであります。これが決定案になりました特別会計の面から申しますると、昭和二十六年度の決定案として提示されておるもののうちの配分計画を見ますると、土地改良関係につきましては、非補助事業関係におきまして二十四億九千四百万円、補助事業関係について十四億四千万円、計三十九億三千四百万円を融資することになつておるのでありまするが、これは前の農林省原案と比較しますると、四分の一弱になるのでありますし、ことにこの土地改良関係についての三十九億三千四百万円という数字は、全体の特別会計における資金の融通区分中からいたしまして、総額に対しては六五・六%に減つておるのであります。すなわちこの点では農業関係が非常に軽視されて来ておるという結果を見ておるのであります。すなわち当初案においては八〇・五%でありまするが、決定案におきましては六五・六%、結局一四・九%が減じておるのであります。従つて私どもは農林漁業資金融通特別会計のできたことについては、非常に敬意を表するものでありまするが、この経過を見ますると、漸次農業関係が軽視、されて来ておるという結果になつておるのであります。これは治山治水に重点を置くという一つの考え方かもしれないと思うのでありまするが、少くとも前段に申し上げましたように、私どもは土地改良による増産ということに重点を置かなければならぬと考えられますので、この内容について御検討をいただいて、少くとも総額におきまして、でき得れば農林省原案にまで増額するような措置がとられることを希望いたしたいのであります。     〔西村(久)委員長代理退席委員長着席〕  次に食糧増産関係経費についてでありまするが、私旅行から帰つて来たばかりで、具体的な資料を手元に持つておりませんので、十分検討することができなかつたのでありまするが、これは二十五年度と比較いたしまして九億八千七十八万八千円の増となつておりまするが、この程度の増額では一割増産はとうてい不可能であるというふうに考えられるのであります。この増額の重点となつたものも、米麦等の採種圃の施設補助が新しくつくられただけでありますし、田につきましては単作地帶の健苗育成施設と油紙に対して若干の補助費を出すという程度のものであろうと思うのであります。これでは不十分であると思いますので、これもやはり御検討をいただきたい点であります。  最後に公共事業費関係について申し上げたいと思うのでありますが、公共事業費につきましては、年々減額されて参つて来ておりますることは、われわれ非常に遺憾に考えておるのであります。公共事業費農業関係の経費だけを見ましても、昭和二十一年に三八・七%計上されたものが漸次減少しまして、特に二十三年以降急激に減つて参りまして、二十五年度におきましては一六%に減額されてしまつておるというような事実であります。こういう事実についてわれわれは非常に遺憾に考えておるのでありますが、今年度の決定予算案によりますれば、公共事業費が一千百五億九千万円、昨年度と比較いたしまして、三十五億円の減少となつております。これを予算説明書では、総事業費と比較いたしますれば、すなわち地方負担を含めた総額と比較いたしますれば、かえつて約六%の増額であるというふうに説明されております。しかしながらこの総事業費比較において増額しておるという関係を見ますると、これは前の比較において減額しておつた三十五億の減少という原因は、その主要原因として災害復旧事業費全額国庫負担制度をやめて、地方からこれを出させるようになつたからこういう結果になるという説明でありますが、しかしわれわれは地方交付金との関係を考えまして、三十五億を地方に負担させるということが、はたして妥当であるかどうか。また聞き及ぶところによりますれば、地方財政交付金の増額はわずかに十五億程度でなかろうかと考えられるのでありますから、その差額はすべて地方の負担になるのでありまして、結局地方を圧迫する結果になつておるというふうに考えられるのであります。  さらに農業関係事業について一点だけ申し上げておきたいと思うのでありまするが、これは一般公共事業費農業関係の経費と比較してみますならば少いのでありまするが、これを昨年二十五年度と比較しますると、現在百十九億五千万円を見込んでおられまするから、三十六億程度の増額になつておりまするが、一方から見ますると、災害等の関係については、若干減額をしておりますので、これだけの増額は実際上の増加にはなつておらないように考えられるのであります。従つて全体の額といたしましても、少くも農林省は一割増産運動の建前から、五百四十二億を当初要求しておつたのでありまするから、これに比較しまして、百十九億では非常に少いという感じを受けるのであります。実際こういう少い額であります関係から、実施面において非常に無理が来ておると思うのであります。増産関係につきましては、私どもは非補助事業という零細な事業については、これはむしろ補助金を出すべきである。零細なものに補助金を出すことによりまして目の前の増産ができる。今日のように急激に増産しなければならぬとすれば、そういう点に十分重点を置いて考えたいのでありまするが、この点にはただ単に融資関係だけで補助金が出ておらないのであります。また補助事業にいたしましても、事業量において三十一万七千九百十町歩、事業費につきましては、百七十八億四百万円に対しまして、補助額がわずかに十四億四千万円であります。これはこまかい計算ではありませんが、大ざつぱに計算しましても、一町歩当り約五万六千円かかるのについて、補助金がわずかに四千五百円であります。これでは現在の農家の実情からいたしまして、とうてい十分な事業の実施は困難であるというふうに私どもは考えるのであります。この点について十分御考慮をいただきたいと思います。われわれがなぜ土地改良を重点として主張しなければならぬかと申しますれば、申し上げるまでもなく、戰前におきましては、まだ地主制度がありました関係から、小作料の関係で地主の金融が十分できておつたのであります。また小作料を高く取上げるがためには、どうしても地主自体が土地を改良して、反攻を上げることによつて小作料を上げようという努力があつたのでありますし、市中銀行からの金融も十分できておつたのであります。しかし戦後におきましては、土地が担保力を失いました関係から、こういう関係がなくなつて来ておるのでありますから、どうしても土地改良というものが今の零細農民の力ではできかねるのであります。こういう点から見て、農業関係公共事業費を大幅に引上げることによりまして、土地改良を実施していただきたい。これが大体私どもの考え方であります。  総括的に考えまして、一方では増産の必要が唱えられ、食糧の確保が唱えられる反面において、予算面から見ますと、農業関係予算が非常に軽視されているように考えられるのでありまして、この点について十分御検討をいただき、国民食糧の確保ができ、さらに国内市場の開発ができるような方法をとつていただきたいようにお願いしたいので、簡単でありますが、若干の意見を申し述べまして、私の公述を終ります。
  56. 小坂善太郎

    小坂委員長 公述人に対して御質疑はありませんか。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 米価の問題で、シエーレやいろいろで、実際の農家所得は、米価が引上げられたにもかかわらず、それだけの所得の増がないというような例をいろいろお話でありましたが、今農村では等級の格下げが非常に農家の間に問題になつているようであります。私たちの調査によりますと、新潟県の亀田町では、米価は引上げられたけれども、等級が非常に厳格になつて切下げられたために、むしろ名目的な収入まで実は減つているというような例があるようであります。検査を非常に厳格にして等級を切下げるというような問題が、今農村では相当問題になつていると思いますが、その点について御説明願いたいと思います。
  58. 大森眞一郎

    ○大森公述人 これはやはり全般的な傾向でありまして、私どもの手元へ来ているのでも、岡山県などでは今年は非常に厳格になつた。米価審議会において私どもはその点を非常に追究して、政府当局の回答を求めておるのでありますが、規格が上つたのでないといつても、やはり全体予算関係から、末端に行きますと、実際上三等米が四等米になり、さらに五等米に落されるという結果は、全国的に見られる現象であろうと存じます。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 これも相当問題があるのでありますが、最近いろいろの軍事的の関係で、土地取上げの問題がありまして、それに対する補償が十分でなくて問題が起きておるようです。現に南多摩の秋留というところで、土地の取上げがあつたのですが、それに対する補償が十分でないということで、農民の間から補償をどうしてもらえるかというような問題が非常に起きておるようであります。これは東京湾ののりなどもそうであります。千葉県の漁場がやはり問題になつておりますが、そうした土地取上げと補償の問題がどうなつておるか、もし事例を御存じなら、御説明を願いたいと思います。
  60. 大森眞一郎

    ○大森公述人 大体そういうことはあり得る事実かと思いますが、私具体的に手元に資料を携えておりません。
  61. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうも御苦労さんでした。  次に千石虎二君に公述を願うわけでありますが、同君は急病のために代理人として、全国指導、農業協同組合連合会の農政部次長山田武君をして意見を述べさせたいという申出でありますが、これをお諮りいたしたいと思います。これに同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければ同意することに決しました。それでは山田武君より御意見開陳を願いたいと思います。
  63. 山田武

    ○山田公述人 私ただいま御紹介にあずかりました全国指導連の山田でございます。私は農業政策並びにこれと関連する農業協同組合の政策問題に関して、若干御意見を申し上げたいと思います。  なおそのお話に入る前に、ただいまも林委員からお話がありました実質米価の問題について、ちよつと申し上げたいと思います。この二月はちようど所得税の確定申告の時期になつておるわけでありますが、最近税務署においては、所得標準率を発表しておるわけであります。それによると長崎県の平戸のごときは五千七百七十円という所得を出しておる。この所得というのは、収入から支出を引いたものを言つておりますが、一体五千七百七十円という一石当りの所得がどうして出たのか。この税務署の査定に対して、国税庁へさつそく参りまして調べておるわけであります。あるいは愛知県の豊橋管内では五千五十円というような数字があるわけであります。五千五百二十九円という三等米の価格に対して、所得が大体全国平均では三割なり四割の必要経費を差引きまして、そうして所得が出るわけでありますが、五千円以上の所得がある、こういう問題が出ておりまして、さつそく豊橋税務署の管内は税務署の計算違いである。一度びつくりさせられて、われわれ側の資料を提出しまして、そうしてこれを訂正してもらつたわけでありますが、遺憾ながら長崎県の方の事例は、また内容調査をしてもらつておりますので、具体的にはわかりませんが、こういう事例があるので、皆さん方のお耳を拝借させていただきたいと思います。それで三重県におきましては、実質米価は三等米からずつと下りまして五千三百円、これは十二月の十五日現在で全県下の平均をはじきまして、実質米価を計算したものでありますが、一月の二十日に実際調べたところが五千百六十円、だんだん農家はあとになるほど四等米、五等米を出すので、ずつと下つて五等米に近い値段に全県下平均ではなつておる。こういうような問題が起りまして、これも目下名古屋国税局と共同で調べておるわけでありますが、全国平均では三等米はおろか、四等米の値段も下りつつある。こういう單に農家の所得の問題だけでなくて、所得の把握、税務署の税金の計算におきまして、現在全国的にこの所得計算上の問題は問題になつておるのであります。単に予算の問題に限りませんけれども、予算執行上の問題に関連いたしまして、若干皆さんに御報告申し上げたいと思うわけであります。  それで農業政策の問題と農業協同組合の政策の問題でありますが、今までわれわれは幾たびかこういう機会にも参り、あるいは国会にも参りまして、いろいろ農村の実情あるいは農業協同組合の問題につきまして、お耳を汚したことも数回あるわけでありますが、実際かんじんかなめの農林省へ行つてみると、農政局が従来のようにしつかりしていなくて、米価の問題をきめる場合には食糧庁が出て来る、食糧庁と物価庁で計算しておる。食糧庁へ行きますと、おれのところは生産者のためばかりでなくて、消費者のためも考える消費庁である、生産庁ではない、こういうような観点から米価政策の根本をなすところの部署がはつきりしていない、こういうふうに私どもは考えて、この際いろいろ農林大臣も行政の簡素化と申しますか、考えておられますが、基本的な農業政策をつくる部署を、この委員会におきましては予算上に関連してお知恵をお借りしたい、こう思うわけであります。  その次に私の手元に昭和二十六年度の予算説明の資料を頂戴いたしましたが、これの四十七ページに、昭和二十六年度輸入食糧価格調整費算出基礎、こういうものが出ているわけであります。これによりますと、たとえば小麦は一石当りで計算いたしますと、国内の生産者価格が三千九百何ぼになります。約四千円、輸入の方が五千二百円、これも結局国内の価格と向うから来る価格との差は千二百円、米におきましても六千百円で組んでおるわけでありますが、七千二百円、千百円の差があるわけであります。もしもこれを食糧補給金を出さないで、それだけ国内の農産物を引上げたら一体農家収入がどれだけふえたろうか、逆に申しますと、この食糧輸入補給金という操作によつて、どれだけ農村は犠牲をこうむつておるだろうかという計算を私はして参つたわけであります。その前に、昭和二十四年からこの金がずつと出ておるわけでありますが、昭和二十四年が四百七十七億九千八百万円。昭和二十五年が四百五十六億五千万円。昭和二十六年が二百二十五億。合計いたしまして千百五十九億四千万円という金が食糧輸入補給金として出たわけであります。それでごく概算的に私は計算しましたわけでありますが、この表の補給金單価に国内の食糧の供出石数をかけまして計算を出したわけでありますが、昭和二十四年度におきましてはその願が一千六百四十二億、昭和二十五年が一千三百五十七億、二十六年が四百四十八億合計いたしますと三千四百四十七億、きわめて大ざつぱな計算で恐れ入りますが、これを概計三千五百億と計算をいたして、この三千五百億という金が結局食糧補給金の操作によつて、それだけ農村には所得として入らなかつた、こういう計算に相なると思います。もちろんそれだけ市場価格が上るということも問題があるかと思いますが、ともかくこれだけの大きな金を、この単なる操作によつて農村の犠牲を強要した、こういうふうに私どもは判定を下さざるを得ないのであります。特に本年度の予算措置を見ますと、先ほど小麦の価格について申し上げましたが、これは昨年度の小麦におきましては、対米価比率の八一・三を六四というふうに引下げて差額金を出しておる。結局日本の国内の小麦は、この百七十万トンという放出価格によつて一見自由にされて値段が上りそうでありますが、百七十万トンの放出価格によつて左右される、こういう結果になつて、本年度の小麦の価格は、昨年とほとんど同じである。概算的には三%ぐらい上りますが、バツク・ペイや超過供出、その他計算をしますと、ほとんどかわらない値段であります。そういたしますと、関東地帯から東海地帶からずつと全国的に麦の増産意欲は非常に減つて、かつて昭和五年時代から小麦増産拡充五箇年計画というようなものを実行いたしまして、やつとこさで小麦の増産を遂行し、国内の食糧自給を考えるという政策をもつてつて来た政策がここでひつくり返しになつて、麦の増産はまつたくおじやんになつて来る、それではせつかくの麦畠であるけれどもたんぼにしようとか、あるいは野菜をつくろうとか、いろいろな策を講ずるわけであります。もちろん戦争以来、相当米麦二毛作水準の歪曲した経営形態を政府は押しつけて来たものでありますから、農家とすれば、いろいろ農業経営の立場から問題をもう少し解決して行きたい、地方も維持して行きたいと考えているところへ、この小麦の価格のストツプ令が出たもので、早々にして麦の増産はおじやんになる。先ほど大森公述人から予算的な措置で言われたのでありますが、価格面を通じてそういうふうに見られるわけであります。  ともかく私どもといたしまして、先ほど来申し上げました輸入食糧補給金という価格操作によりまして、約三千五百億という金が知らず知らずのうちに——こういう計算は今までだれもしたことはないというふうに私は考えておりますが、ともかくこれだけ少く金を渡されて、そうして昭和二十四年度の農家経済調査は赤字になつておる。赤字になるのは当然ではないかと考えられるわけであります。しかも一方に、農業政策を確立しよう、あるいは樹立しようという意欲さえも見られない。一方にそういう措置を講じながら、他方支出面においてはまつた措置を講じておらない、こういうふうに私どもは考えるわけであります。しかしながら昨年の米価の五千五百二十九円、あるいは本年の六千百六円でございますか、この価格はわれわれからすれば相当不満でありますが、この価格の客観的な意義を見つめますと、われわれ農業関係者としましては不満であるけれども、客観的には日本経済農業者の犠牲によつてそれだけ力を得て、やつと五千五百二十九円にし得た。再言いたしますが、五千五百二十九円は不満でありますが、若干希望を與え得るものであるというふうにも、客観的に評価し得るわけであります。私どもは今日農業政策を確定し得る、自立し得る時期が来ておるというような判定を下しておるわけであります。日本経済の強化、日本経済がだんだんと実力をたくわえつつ来ておる。もちろんそういう判定を全面的に下すことは断言しにくいわけでありますが、そういう角度から、本年度以降において基本的な農業政策を確立してもらいたい。ところがこの予算書を見ますと、農林省の予算のごときは、二十五年度の七十一億から五億ばかり減りまして六十六億、われわれが要望いたしておりまする、たとえば農業倉庫の整備の問題、あるいは増産関係とか、あるいは先ほど大森公述人の言われました燐鉱石の補給金の問題とか、いろいろ問題があるにもかかわらず盛られておらない。そこでそういう前提に立ちまして、農業政策を確立し得る時期、確立せねばならない時期にあたりまして、これが中核体としての農業協同組合の育成強化の問題を取上げてもらいたい。政府においても、安本長官の施政演説には、農業協同組合の育成強化をうたつてつたということを聞きましたが、この問題は先ほどの問題とも関連いたしまして、たとえば農業協同組合への出資が少い、現在五十億という数字でありますが、財務基準令では百五十億というような数字にまで持つて行きたい。こういうような角度から、相当無理をした政令が出ておるのでこれらについての予算的な措置を盛つてもらいたいというわけであります。現在農業協同組合の赤字の問題、経営難の問題が日程に上つておりますが、基本的に考えますと、もしも三千五百億の金が農村に流れておつたならば、余裕綽々出資増加運動もでき、再建運動もできる。だから片方においてもそういう再建整備の法案、あるいはこれに伴いまする予算措置政府がやつてしかるべきではないかというふうに申し上げておるわけでありますが、議員の各位においても、この問題を真剣に取上げていただきたいと思うわけであります。  以上きわめて問題は簡単に省略いたしまして恐縮でございましたが、私の公述をこれで終らせていただきます。
  64. 小坂善太郎

    小坂委員長 御質疑はありませんか——林百郎君。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどから私ばかり言つて恐縮でございますが、農業関係公述人の方はこれで終りですから質問いたします。  先ほど大森さんにもお聞きしたかつたと思うのですが、米価の問題がたいへん問題になりますので、輸入米価の関係、あるいは肥料の値上りとの比率の関係等いろいろありますが、一体農民からは米価をどのくらいにしてもらいたいという声がありますか、参考までに聞かしてもらいたいと思います。昭和二十六年度でけつこうです。
  66. 山田武

    ○山田公述人 昨年度におきましては、農業関係の諸団体で精密なる調査をいたしまして、五千八百円という数字現実見通しのある数字として提出したわけであります。昭和二十六年度におきましては、私どもはまだ架空計算もいたしておりませんので、お答え申しかねます。
  67. 小平忠

    ○小平(忠)委員 非常に大事な米価問題に触れまして、一点お伺いしたいと思います。この予算書によりますと、三十六年の予定米価を、九月末の指数を一九五と想定しまして、石当り五千二百九十七円、これに特別加算額としてパリテイ価格の一五%七百九十五円をプラスいたしまして、六千百六円という価格を想定した。その場合に政府は二十六年産については、超過供出は当然これを認めないということになるのでありまして、これは考慮してない。現在の段階では超過供出をやらないというが、事後割当の場合に将来追加割当をする。食糧事情等そのときの情勢によつて政府が追加割当をするというような場合に、この追加割当の奨励金が——現段階では出さぬ、それは当然米価の中に織り込んである、こういう説明をされておるのですが、この追加供出に対して奨励金を出すような段階になつて来るという場合に、やはり想定米価から控除するという結果になると思う。そうなつて来ますと、追加供出をする農家は、プラス・マイナス同じであるが、追加供出をし得なかつた農家は、その分だけ控除した形で価格の精算を受けるということになるので、天候やその他で追加供出をし得なかつた農家が非常にマイナスになる、こう思うのであるが、そういうような点について一体全国指導連が、農政面としてどういうふうにお考えになつているかという点が一点と、もう一つは農民課税に対して、最近農業協同組合が相当な赤字を出しておる。この赤字に対して、大蔵大臣農業協同組合、農民だけに赤字に対する……。
  68. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平君、あなたの御意見の発表は対論のときにやつていただいて、今は公述人の公述の範囲であなたの御質問を願いたいと思います。
  69. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それで赤字に対する課税免除を農業参協同組合だけにはできない、こう大蔵大臣はおつしやる。この問題について公述人はどうお考えになるか。  さらに農業協同組合に対して、国税庁の末端機関である税務署の吏員が職権をもつて帳簿を取上げて帳簿を調査して、課税標準を査定しておるというような非常に横暴な話を聞くのでありますが、そういう問題について、特に公述人は農村課税について掘り下げた検討をされておると聞くのですが、その二点について私はお伺いしたい。
  70. 山田武

    ○山田公述人 最初の点の事後割当になつて、しかも追加供出を強要する、こういう場合には私どもといたしましては、この米価のほかに何らかの措置を講ずべきである、こういうふうに主張するものであります。  それから第二点の農業協同組合の赤字の負担金の問題でありますが、これは農民が協同組合をつくり、しかも指導事業その他で賦課金を出しておるわけでありますが、これらに対しては協同組合の収支勘定として、賦課金は特別に取扱う、こういう建前になつておるので、そういう考え方から、私どもは国税庁の長官にも申し上げておるわけであります。
  71. 小坂善太郎

    小坂委員長 公聴会の速記録の印刷を急いでいただきたいという申出がありましたので、その旨を記録部に連絡いたしまして、可及的すみやかに出させるように措置いたします。  本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より引続き公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会