運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-23 第10回国会 衆議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       江花  靜君   岡村利右衞門君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       久野 忠治君    坂田 道太君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    苫米地英俊君       永井 英修君    中村  清君       井出一太郎君    今井  耕君       中曽根康弘君    勝間田清一君       川島 金次君    西村 榮一君       水谷長三郎君    横田甚太郎君       黒田 寿男君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  横尾  龍君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  負 小竹 豊治君     ————————————— 三月二十九日  委員川上貫一君は、退職者となつた。 五月十五日  委員川島金次辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員武藤運十郎辞任につき、その補欠として  川島金次君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員川島金次辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  川島金次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会中審査に関する件  昭和二十六年度予算執行状況等に関する件     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより予算委員会を開会いたします。  本日は特に本委員会に付託せられましたる議案はないのでありますが、昭和二十六年度の予算執行状況等に関しまして、政府からいろいろ説明を求めたいと思うのであります。最近に至りまして日本経済協力等に関してマーカツト声明等もあり、いろいろ具体的な観点から論議せられるようになりましたので、この間の事情等につきましても政府考えを聞きたいと思うのであります。なお先般憲法記念日を前にいたしまして行われましたリツジウエイ声明によりまして、平和條約が締結せられる前にも、諸種の行政権日本政府に逐次委讓するというようなことも言われておるのでありまして、本委員会といたしましても、予算編成権あるいは財政権等政府への委讓につきまして、その内容並びに方法等につきまして、聞かしてもらえれば非常にけつこうだと思うのであります。さらに終戰処理費が一部ドル払いになるということも聞いておりますし、また対日援助見返資金が打切られましたあとの経済自立の具体的な諸問題を、本委員会におきましても取上げてみたらいかがかと思うのであります。さらにまた、最近電力單価が上るというようなことも言われておりますが、電力單価は申すまでもなく、すべての工業物価の基礎になるのでありまして、これが上りますことは、二十六年度予算執行につきましても、かなり問題があると思うのでありますし、またその電力單価の決定につきましても、公益事業委員会安本あるいは物価庁との間に、どちらがその権限を持つのだということを論議されておる様子でありまして、私ども聞きますと、公益事業委員会の性格その他につきましても、やや奇異の感を持つのであります。こういうような諸問題につきまして、大蔵大臣並びに安本長官出席を煩わしまして、これから質疑をいたしたいと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、特定の議案もないのでありますから、どうか打解けた気持で坦々とした心境でお話を願いたいと思います。  これより質疑を行いますが、質疑通告順にこれを許します。川崎委員
  3. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま委員会開会劈頭にあたりまして、委員長から最近における経済事情に関連しての諸問題がむしろ材料的に整備をされて、大蔵大臣に予告をされたような感じでありますので、私は目下問題になつておる諸問題につきまして、大蔵大臣の率直な御見解をこの際伺つておきたいと思うのであります。  まず第一に五月の十六日にマーカツト経済科学局長声明が出まして、日米経済協力を促進する具体的な考え方が、アメリカ側見解として発表されたものとわれわれ受取つております。これは日本経済自立をしようとする将来において、当然政策転換も行わなければならぬし、自立に必要な條件も具備して行かなければならぬ。その関係独立も間近い際に、アメリカ側からこういう声明が出たことは、私は当然であると考えておるのであります。しかしそれと同時に、日本政府がこれらの問題に対して、どういう基本的な構想を持つておるか、具体的にいえば、日本経済あり方というものに対して、従来占領によつて擁護されておつたときとは違つた考え方が、ここに当然打立てられなければならないのでありまして、従つてこれはむしろ日本の方からも、日本経済協力はこういうふうにあつてほしいということの要請がされてしかるべきであると考えるのであります。  そこで具体的に問題を掘り下げる前に、一応大蔵大臣としては、マーカツト局長がこういう声明を出された、それに対応しての日本側の基本的な考え方、これをもう少し的を表示して申し上げるならば、たとえば日本側としては長期経済政策に対して、どういうような構想で今後進んで行くかというような点、あるいは総合調整機関というようなものをアメリカでは設けて、特需に対する調整をするというようなことを発表しておりますが、それに対して日本側としては、どういうような対応策があるか、こういうような問題を中心に、ひとまず大蔵大臣考え方をこの際御親切に表示をいただいたならばけつこうかと思うのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 先般マーカツト声明が出まして、私はこれを一応拝見し、そこでマーカツト将軍と直接にお会いいたしまして、一時間足らずお話をいたしましたが、別にあの声明が出ましたからといつて、私が特に今までの日本政府財政経済政策を、根本的に変更するというふうなことはないと私は考えております。あの考え方は過去二年余りずつと一貫したわれわれの主張であるのであります。ただ問題は、アメリカ特需関係あるいは東南アジア開発に積極的に乗り出した場合という度合いが強くなつたというのでありまして、方向としては何らかわりがないのであります。とにかく日本経済世界経済に直接につながつて行く、その度合いが強くなつて来た。ここで今までの政策を強化するといいますか、はつきりするといいますか、国際経済に乗り出す度合いが強くなつたから、今までの考え方を再認識しておいて、今問題になりました特需関係につきまして、アメリカの方で特別の機構を設けてやる場合において、日本がそれにタイアツブして行くのには、どういう具体的な問題があるかということをこれから検討して行く、こういうことと私は考えておるのであります。東南アジア開発にいたしましても、また国際通貨基金加入する場合におきましても、日本経済をもつと強い基盤にしなければならぬ、それが前提問題である、われわれは前からそう考えておつたのでありますが、それが逆に再確認されたというくらいに私は心得ているのであります。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 政策転換の問題よりも、今大蔵大臣が言われたように、こういう段階に立つてアメリカ側としての特需関係の問題とか、あるいは東南アジア開発の問題についての、アメリカ側の所信というのについての具体的な意思表示であつたのであつて、従来の政策転換しろというような意味ではない。これは大蔵大臣としては当然の御答弁かと思いますが、ただ事態が少しく違つておることは、今までよりはきわだつてわれわれは独立というものを、もう間近に迎え得る可能性が強くなつて来たという点であります。そうしてそれは時間的にも非常に追つて来ておる。今までのように漠然とした目標ではなしに、九月、十月というように独立の日がはつきり——一月、二月のところは別にして、だんだん鮮明になつて来ておるのでありますから、従つてこの段階を迎えての政策転換というよりも、むしろ新発展というものについて、たとえば日本物価国際物価さや寄せをしなければならぬというようなことをマーカツト少将は言つておるわけで、今までの政策からいえば、補給金政策などというものは一切打切つて行くという政府考え方であつたのが、たとえば、国際物価さや寄せをするというようなときに、鉄鋼、肥料というような問題では、やはり日本労働者の生活を維持するために、必要な補給金政策というものも、この際とらなければならないようなりくつになつて来る部面も出ておるのではないかと私は考えておるのでありますが、そういうような問題について、たとえばこの際あらためて検討しなければならぬ部面があるのではないか。だから政策転換というようなことを言うと、あるいは政府はそういうことはないということを言うよりほかに答弁の仕方もないと思いますけれども、こういう段階を迎えて、政策というものはどういうふうに発展をして行くのか、そういう点でむしろ率直なあなたのお考え方を、私はこの際伺つておきたいと思つて質問をいたしておるのであります。つけ加えることがあればつけ加えていただきたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 マーカツト声明を読みまして特にわれわれの感ずることは、今川崎君のお話になりましたように、日本物価世界物価と申しまするか、アメリカ、イギリスの卸売物価よりも相当高く上つておる。この傾向が進んで行くならば、せつかくアリメカから日本にいろいろな注文をしようといつても、注文ができないではないか、日米経済協力という建前から行けば、日本物価が上り過ぎないようにして行かなければ、注文をとろうといつて注文がとれない。そこで日本経済国際経済、ことにアメリカ物価の動きとあまりかわらないように、注文がたくさんとれるように経済基盤を強くする、物価を抑制するというか、正常の形に持つて行くべきではないかということが、マーカツト声明の骨子と私は考えておるのであります。この問題は前の国会におきまして触れたように、これは日本経済脆弱性と申しまするか、その点が一つ脆弱性一つのフアクターをなすのかもしれませんが、運賃の値上りとあるいは中共貿易の停止というか不振等によりまして、予想以上に上つて来ておるということは確かであります。しこうして今の物価値上りで、アメリカとの取引がどうなるかという問題になつて来ますと、また個々物資について考えなければならないのであります。鉄鋼にいたしましても、向う公定価格と、向うグレイ・マーケツトがあるということは御承知の通りであります。しかして日本鉄鋼関係輸出が、アメリカ合衆国に行くか、南米に行くか、東南アジアに行くかということになりますと、輸出全体から申しますと、今の鉄鋼価格ではどうしても輸出ができぬかというと、さにあらずという答えも出て来るのであります。しかし全体の考え方としては、やはり上り過ぎるということはよくない。ここにいろいろな施策を講じて、国際経済に乗り出して行つても、日本が強い基盤の上に立つような経済にして行かなければならない、こういうことがねらいであるのでありまして、われわれの日ごろから考えていることが再確認されたと私は考えるのであります。従いまして、それならこの百三十ドル程度のものは高くはないかと申しますと、アメリカ公定価格に比べれば高うございます。しかしグレイ・マーケツトから行くと必ずしもそうではない。そこでわれわれはどういう基準で行くかという問題になりますと、今検討中でありますが、できるだけ低くしなければならぬ。低くしなければならないという場合に、今お触れになつたように、鉄鋼補給金を出すかという問題になりますと、そうは参りません。これはなかなか考えなければならぬ。今言つたように、アメリカ公定価格さや寄せしなければならぬいうと強い前提があるとすれば、日本輸出貿易全体から相当考えなければならない。しかも鉄鋼補給金を出す場合において、鉄鋼関係業者利益状況はどうか、こういうことも考えなければならない。また日本物価が上り過ぎて高いと申しましても、国際市場物価に比べると非常に安いものもある。私がずつと前から申し上げておりますように、日本経済の復興には、まず安定をしなければならない。しかして安定が大体でき上つた場合に、最後の眼を入れる問題は、賃金の問題が一番しまいである、こういうことを言つております。もうその段階に来ておるのであります。米価につきましても議論がありますが、国際価格さや寄せするということは、日本米価ばかりでなく、日本経済世界経済に直結する場合においては、好むと好まざるとにかかわらず、やらなければならぬ。そこで今米価の問題が出て参りますが、パリテイ計算で行きますと、大方国際価格さや寄せするようになつて来るのではないか。そこでそうした場合に、労賃の問題とか、あるいは鉄鋼の問題、いろいろな問題がありますが、今言つたよう世界の情勢を十分見きわめ、しかも東南アジア開発ということが、マーカツト声明にあります通り重要なことであります。これは昨年私がアメリカに参りましたときにも、向う政府筋からも聞き、われわれも希望しておつたことでありますが、こういう問題とからみ合せて、日本経済あり方、しかしてその根本をなす物価問題について検討しなければならぬと思うのであります。この問題は一にも二にも日本経済をもつと強いものにして、受入れ態勢をがつちりさすということが一番だというので、その点につきまして、今までもやつて参りましたが、今後におきましても早急に再検討と申しますか、研究を續けて行かなければならぬ、こう考えております。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 本日は久しぶりの委員会でありますし、多くの方々からも質問があると思いますので、私はなるべく問題を提供して大蔵大臣のお考えを聞いておき、そうして進めて行きたいと思つております。アメリカ側総合調整機関を設けるというようなことが載つておりましたが、この問題に関しては御答弁がなかつたわけですが、日本側にも調整機関を設ける、これは民間の団体なども要望いたしておるようであります。たとえば経団連などもこういうことに対して具体的な意思表示をしておるようでありますが、安本長官の言明によれば、それは経済安定本部が一括してやつた方がいいんだというような記事を拝見したことがあります。大蔵大臣としては目下これらの問題についてはどうお考えになつておりますか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカにおきまして総合調整機関ができて、これから動き出すということは聞いております。これはどこの国でも同じようなものでありまして、軍拡で予算がふえて参りますと、各省各部局がずつとみないろいろな要求をいたします。それで統一的な生産計画とか配給計画ができない。これはアメリカも同じ状態であると聞いておるのでありますが、最近に至りまして、そういう各部門からいろいろな注文を出すのを一括してやろうという機関がようやくでき上つた。その機関ができ上りまして、日本にどんなものを注文するかということがこれから来るようになると聞いておるのでありますが、まだ十分動いていない。今でき上つたのでありますけれども、具体的に動き出す場合において、こちらの受入れ態勢をどうするかという問題があると思います。しかしこの問題につきましても、私は昨日ある大臣から聞きましたが、日本はどれくらい受入れられるか、こういう質問がありました。これは質問される人がよくない。日本が受入れられるのは、日本経済がどれだけ国際的に強みがあるかという問題なのです。たとい注文しようと思つても、日本のものが非常に高かつたならば、注文を手控えるようになるので、これは日本経済が早く安定して、アメリカあるいは世界経済とタイアツブする態勢が、いつ、どの程度にできるかによつてきまるわけです。根本の問題はそこだと思う。それがまず第一である。すなわち日本経済というものは、信用し得べき経済である。本年の一、二月ごろは非常に信用を獲得しておりましたが、二、三月から、物価高によつて、これはどうだろうという心配が起きております。これは信用し得べきもので、日本経済はますます安定して行くというかつこうをつけるのが第一である。その上に立つて受入れ態勢機関と申しますか、あるいは向うとの交渉に当る機関がいるのではないかと考えておりますが、何分にも今向うからどれだけ、どういう注文が来るかということがはつきりいたしておりませんので、私に関する限りにおきましては、まだ結論が出ていないのであります。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 マーカツト声明によると、国際金融機構に対して参加する際の必要四條件というものが上つております。その際に、第一に日本は将来の対外支払政策を決定してこれを公表する必要がある。この対外支払政策というのはどういうことを意味するのか。国際支払いの解釈というものに対して今日いろいろ見解が行われているようでありますが、大蔵大臣としてはどういうふうに考えておられるか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 国際通貨基金への参加の前提條件として四つ出ております。対外債務支払いの問題、あるいは予算の均衡の問題、いろいろな点がありますが、これは結局日本経済が安定した、信用し得べきものであるということを見せる一つのアイテムであるのであります。従いまして、最近のようにドルが非常にふえて来て、一時五億二千万ドルになつた。これは喜ばしい現象で、国際通貨基金に参加する場合の非常な好條件であつたのでありますが、五億二千万ドルが最近少し減つて参りまして、また日本のような輸出入の貿易状態であつた場合において、四億や五億でよいかということになりますと、必ずしもそうでない。やはりもつといるのではないかとわれわれは感じているのです。従いまして対外債務支払いということは、既存債務の問題のみならず、日本の過去の状態から申しましても、貿易関係におきましては輸入超過の国である。将来そういう点についてやはりはつきりした見通しをつけることがより必要である、こういうことを示したものと私は考えているのであります。従いまして今、既存債務をどういうふうな支払い方法にするか、あるいは将来どれだけの輸入超過で、どれだけの貿易外受取があるとかいうことを発表するという段階までには至つていない。——できれば、それに越したことはありませんが、外債なんかの支払いの具体的な方法というものは、今のところ、なかなか発表し得る段階には至らないであろうと私は想像いたしておるのであります。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 續けてこの国際通貨基金に関する問題について伺いたいと思いますが、これはぜひ独立前に加入をしたいというのが政府希望でもあり、一般の希望でもあると思うのですが、私の承知するところでは、九月に年次総会があつて、この際に加入ができないと、また非常に時期的に延びるようにも伝えられております。目下政府としてはどういうような見通しで、国際金融機関への加入を要望されておるか、また見通しとしては、どういうふうに見ておられるか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題も昨年の今ごろ向うで話をして、日本の実力としては大体入り得る程度までに至つておるということを、私は国際通貨基金委員長にも申し出たのでありますが、その後いろいろないわゆる占領治下におきまする問題があります、また外交的にいろいろ問題がからんで来ておりますので、私は今政府当局者として、どういうところに問題がある、それをどういうふうにして行くかという対策につきましては、いましばらくごがまんを願いたいと思うのであります。一日も早く入りたいということは、過去の考えとかわりはございませんし、また講和がこう近くなつて来たのでごいますから、講和前に入つた例もあるのでありますから、今までの努力を續けて行きたいと考えております。
  13. 川崎秀二

    川崎委員 マーカツト声明の中にも、一番重要な、しかも日本にとつては好影響の問題として、東南アジア輸出貿易の拡大ということが要請もされておるし、マーカツト声明によれば、現在日本にとつては、消費財輸出のチヤンスであるというようなことも示唆されております。昨年来この問題については、予算委員会においても、多くの論議もあり、建設的な要請もあつたところでありまして、この問題の具現化について、政府は目下どういう構想を持つておられるか、また今朝の読売新聞でありましたか、手元にございませんけれども、すでに各界情報として伝えられているもので、日米合弁会社、二十億ドル程度の資本でこの会社を興すとか、あるいは貿易調査団を派遣するとかいうような計画も伝えられておりますが、大蔵大臣として目下考えられておる構想なり、あるいはこれらの事実に対する情報でもありますれば、お伺いいたしておきたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 外資導入の問題でございまするが、これは二、三年前に貿易が始まつたころに外資導入のことが起りました。なかなか実際問題としては最近一年間ぐらいの問題であるのであります。現在におきまして、個々会社につきまして共同経営申入れ等はございます。まず第一に、日本石油が向うのカルテツクスと提携いたしましたのを最初にいたしまして、繊維関係その他でちよいちよい聞いておりまするが、これらは新会社合弁で設立するというやり方と、既存会社につきまして、ある程度物資、あるいはクレジツトによる形態があるのでありまするが、まだこれは大した額に上つておりません。次に貿易関係におきまして、短期のクレジツトにつきましてのいろいろな話合いがございます。これは為替関係の方で、今までもある程度来ておりますし、今後も相当できて来るのではないかと思います。しかしお話のような厖大な合弁会社をつくるということにつきましては、いろいろな話が出ておりまするが、私は今早急にこれが実を結ぶようには考えておりません。ことに先ほど来申し上げましたように、日本経済が今のままでよいかという考え方もありましようし、少し荒れ過ぎているという考え方もありましようが、この点をうまくやつて行くかどうかということによりまして、外資導入の額の問題、時期の問題がきまると思います。もちろん日本の最も必要な水力開発につきましても、いろいろな、論はございます。またこれにつきまして、日本の專門家が行くというふうな話も聞いておりまするが、これは一に日本経済が信用し得るようなものになる度合いによつての問題と考えております。従いまして個々外資導入につきましては、できるだけ助長をいたしますと同時に、日本経済をもつと信用し得るものにして大きいものを持つて来たいということで行つておりまするが、具体的に大きい問題はまだ聞いておりません。
  15. 川崎秀二

    川崎委員 それから具体的に特需関係の問題で伺つておきたいような問題があるのですが、たとえばアメリカ側からジープの改造などを命じて来まして、それを注文を受けて改裝したりする、ところが一方的に去年あたりの單価で押しつけて来ることが非常に多いそうであります。そのためにほとんど採算が成り立たぬというような場合も起つて来ておるように聞いておりますが、こういうような問題に対しては、大蔵省としてはどういうふうに調整しておられるか、これは直接の関係ではないと思いますけれども、そういうことがありますか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 私は向うの——いわゆるシヤウプの方とこういう問題につきまして、直接に具体的に話はしたことはございませんが、新聞その他によつて承知いたしまするときには、お話のような点があるということを聞いております。今ジープの問題が出ましたが、ジープの修繕等につきましては、今までやはりこちらでやりまして、いわゆる特需関係という名前を使つておりませんでしたが、終戰処理費收入として別個の收入に上つてつたのでございます。今後経済協力で特需注文がありました場合には、お話のような点があると思うのであります。たとえば日立の問題なんかは、これは三、四箇月ぐらい前から話がありました。なかなかお話のような点でうまく行かなかつたのですが、きようの新聞だつたか、話ができたということを聞いております。今後そういう問題が起つて来る、できるだけ安く注文しろ、こつちの方は相当値段が上つておるから、値段の開きがまず第一に起つて来る。しこうして物につきましても内地で調弁するときには非常に高くなるというときに、安い物を持つて来てくれないかという折衝の問題が起つて来る、いろいろな問題が起つて来ると思いますが、あくまでもこの問題はコマーシヤル・ベースによりまして、適当な取引価格でやつてもらわなければならぬということは、われわれとしても強く考えておる次第であります。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 それからその次には補正予算の問題であります。これは前の国会では補正予算は必要ならば組むというような御答弁であつたわけでありますが、だんだん事態が進んで参りまして、補正予算を組む必要がある。それから臨時国会にこれを出すというふうに伝えられておるのでありますが、目下のところ補正予算は出すつもりであるかどうかということが一つと、それからその財源として先般占領費を一部アメリカにおいて負担をするということになつて、その場合においては、歳出の減は財源として組むのだというような蔵相談も伺つたのですが、こういうような問題に関連して、補正予算の必然性があるかどうか、それを出せば臨時国会を召集していつごろやられるものか、こういうようなことについて、ひとつ虚心坦懐にお答えを願いたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 補正予算を組む必要はございます。ただいつ組むかという問題でありますが、補正予算を組まなければならぬというその理由は、御承知の通りこの前も議論になりましたが、主食の輸入補給金の問題、国内米価の問題、これが最も大きいアイテムであるのであります。しこうしてそのほかにも私は公務員の給與につきまして、今の実情に沿つたようにかえて行きたいというのが第二の問題、それから減税したいということが第三番、こういう問題から来る問題もありまするし、それからお話のように渉外局発表によりましてまだはつきりしたものではございませんが、対日援助が打切られ、そのかわりに進駐軍の費用の一部をドル払いにするという問題が起つて参りましたので、それで補正予算を組むようになるのではないか、こういう気持を持つております。その他こまかい問題につきましては、最近政府計画いたしておりまする人事院の勧告によります地域給の改訂の問題、これは年間で八、九億いると思いますが、こういうこまかい問題もございますので今の情勢といたしましては補正予算を組む、こういうことに相なつて来ると思うのであります。しかる場合におきまして、いつ組むかという問題になりますと、ただいまのところはつきりいたしませんが、私は講和條約等の関係もございますので、それによりましてその前後と申しますか、あるいは直後と申しますか、そういうときに相なると思つておるのであります。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの補正予算の問題に関する御答弁は、私どもは先国会において要望いたしました線に大体沿つておりますので非常にけつこうなことだと思つております。  それからもう一つ伺いたい点は、予算編成権の問題、並びに占領政策からする制約の問題でございます。これはまだはつきりしたことではございませんけれども、新聞紙に伝えられるところによると、ドツジ氏は十一月ごろに来訪されて、四たびわが国の予算編成に対して忠告をされるというような話も伺つております。どうなることかこれは知りませんけれども、せつかく独立を迎えて、一切のものが自主権を回復するという際に、予算の編成の権利は日本にあつても、占領政策から制約を受けるというようなことに相なりまするならば、政策は自由だけれども、裏づけはチエツクするということになるのでありまして、これでは完全な自主権とは言い得ないのであります。目下のところでも、二十六年度の追加予算編成権に対しては、別途の措置を講ずるというような司令部側の見解も出ておつたようであります。これらの問題に関連して、大蔵大臣予算の編成に関する自主権を完全に二十七年度以降においては、これを取返し得るものであるかどうかということについての御見解を承つておきたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 二十六年度の補正予算並びに二十七年度の本予算の編成に際しまして、リツジウエイ声明が出たから、今までと違つて占領軍の承認その他につきまして緩和せられたかという問題であろうと思いますが、私の今までの経験から申しますと、補正予算並びに二十七年度予算につきまして、今までの状態が非常にかわるとは想像いたしておりません。予算の問題につきましては、一番しまいまで残るのではないかというふうな見方をいたしておるのであります。どうもこのリツジウエイ声明につきまして、非常に論議があるようでありまするが、私は為替の問題以外は大した問題ではないのじやないかということを、遺憾ながらと申しますか、大した変化はないのではないか、それは個々の問題についてはある程度ありましようが、私はそういう見方をいたしておるのであります。従いまして、御質問予算の実際の問題につきましては、それはある程度全般的には緩和せられましよう。それは一昨年に比べまして、去年の方がよほど緩和されておる。去年より今度は緩和せられるということは期待もし、そうあつてしかるべきだと思つておりますが、今までより打つてかわつて来るというようなことは考えておりませんし、かわるにいたしましても、予算が一番かわる程度は少いだろうということを私は想像いたしておるのであります。
  21. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁は、大蔵大臣見通しないし見解として十分承つておきます。論議は別でありますから先へ進みます。  それから先ほどちよつと補正予算の御答弁の際に触れられましたべースの引上げの問題ですが、これは先般人事院は、地域給の改訂について勧告はしたけれども、べースの本質に触れての引上げの勧告はしませんでした。しかし物価事情その他からして、近くこれらのことが行われるのではないかとわれわれは予想しておるのであります。それについて大蔵大臣としては、べースの引上げとかなんとかいうことよりも、実質的に公務員、労働者の給與を充実して行きたいというお考えのようですが、それはどの程度のことをされようと今日ではお考えになつておるか、この点を承つておきたい。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 人事院の勧告はお話のようにまだございませんが、私は今の現状から見まして、できるだけ経費を節約し、減税にも充てたいし、公務員の給與も引上げたい。また米価の問題につきましても、私の持論であります国際価格さや寄せして行くという態勢で行きたい、こう考えております。従いましてそれならばべースを幾ら上げるか、べースの変更でなくても、賃金給與をどれくらい改善するかという問題につきましては、米の問題からします一般の物価事情、それから自然増收その他によりまする歳入の問題、減税と見合う問題もありますので、今程度の問題につきましては検討をいたしておるのでありますが、とにかくある程度給與をよくしなければならぬということは、私も感じておる次第であります。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 最後に大蔵大臣に一言だけ伺つて質問を終りたいと思いますが、最近政令審査委員会でありますか、総理大臣の個人的な何かの機関ができて、そうして占領後行われたところの諸法規の改正をこの際やりたいということで、委員を募られてたとえば独禁法であるとか、公正取引委員会法であるとか、経済諸法規にも関連して意見を徴せられておるようであります。しかし私は今も大蔵大臣が言われたように、あの政令審査委員会というのは、大体追放解除を中心としてやられるべきもので、また本質はそういう性格のように聞いております。また顔ぶれから見ても私はそうであると思つております。ただ小汀さんだとか二、三経済通も入つておられるけれども、急いで経済諸法規の改正をされるということは、大蔵大臣としては権威を多少阻害されておるというふうにわれわれは感じておるのです。それは当然財政問題、経済諸法規の改正問題が出るならば、当然政府の中枢体であるところのあなたとか、あるいは経済閣僚の中からそういう意見が出て、そして今日の與党である自由党というものと連絡をして出て行くべきが本筋であると思うのですが、諸法規の改正について大蔵大臣はどう考えておられるか。政令審査会にこれらの問題をまかすことについて、あなたはどういう御見解を持つておられるかという問題についてお伺いしておきたいと思う。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 あの七人委員会と申しますか、七人をもつて構成いたしております委員会は、追放解除の問題を主にしてやるという意味ではございません。経済その他、いわゆる占領後六年になんなんとしておるのでありまして、その間に政令として出されましたいわゆるポ政令によつてきめられた法規あるいはそれに似たような法律につきまして、実情に合わない点があれば、これをある程度改めるというので、研究されておるのであります。追放解除の問題のみを審議しているというのでは全然ないのです。ただ私が先ほど申し上げましたことは、非常に世間に強く響いておるようでありますが、一番大きく影響するところは、追放解除の問題その他経済の問題もあると思います。しかしてそれはこれからの検討問題だと思います。従いまして七人委員会をもつてきめたならば、政府の権威がなくなるじやないかというあなたの御質問でありますが、何らそういうことは考えておりません。七人委員会の答申が出まして、それによつて政府がきめるのでございます。だから諮問機関のようなものでございますから、権威を害するというようなことはございません。われわれは大いに民間の実情を知つた方々からそういう意見を徴する、こういう意味のものでございますので、答申が出ましたならば、政府政府自体として検討して行けば、それによつていわゆるいい知恵が得られると考えておる次第でございます。
  25. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 中曽根康弘君、関連質問を許します。
  26. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま川崎委員大蔵大臣に御質問になりました中に、補正の項目の問題がございましたが、今項目の問題に関連して国民が非常に関心を持つておる問題について、政府のお考えを承りたいと思います。この問題はもちろん政府当局においても非常に関心を持つて実現に努めておられると私は解しておるのでございますが、そのまず第一は、在外公館借入金の返済の問題、もう一つは戰死者遺家族及び戰傷者等に関する援護の経費の問題であります。  在外公館借入金の問題については、一月十三日の閣議決定でありますか、本年中に支払うという閣議決定をしたと伝えられておりますが、先般の国会において私は外務政務次官質問いたしましたところ、外務省としては至急やりたいし、何かこれに関する具体的な法律をつくりたい、それを大蔵省と協議しておる、そこで一番大きな問題はレートその他の問題であるけれども、今大蔵省と協議中であつて、至急実現に努めたいという答弁をされました。大蔵省の方においても研究中だろうと思いますが、この問題がどういうふうに処理されるか、大体レートをきめる方法であるとか、あるいはきめれば全体としてどれくらいの額に見通されるとか、そういう大体の構想でも、ひとつお示し願いたいと思います。  もう一つの問題は、戰死者遺家族及び戰傷者の援護費に関する問題でありますが、この問題についても厚生省において、かねてから非常に努力しておられ、厚生省で成案ができているということを私は知つております。内容も知つております。そこで閣議において、承るところによりますと、黒川厚生大臣及び廣川農林大臣は非常にこれが促進に努められておる。ところが大蔵省側では予算関係があつて非常に躊躇しておられる。幸いに総理大臣が国際的に影響があるということでしばらく見合せろというので、これがストツプになつたということを私は聞いております。しかし大蔵省としても現在八案を研究しておる、ニユアンスの異なつた八案程度のものを研究しておられるということを聞いております。この二件は大蔵大臣も関西への車中談で、すでに実現したいということをおつしやつておられるのでありますが、それが大体期目的にどの程度今後具体化されて行くか、ひとつ御構想をお示し願いたいと思います。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 第一に御質問の在外公館借入金の問題でございまするが、ただいま委員会をつくりましてレートの問題を検討いたしております。御承知の通りに確認の事務も大分進んで参りましたので、全体のスケールが大体想像のつくように相なりました。このレートの問題は、満州と、いわゆる中共と申しまするか、これがよほど違つて参りますので、その点の調整考えなければなりませんし、また幾らくらいの財政負担をするということも考えなければなりませんので、委員会を設けてやつておりまするが、ただいまのところ、まだ申し上げる程度の結論に近いところまでにも行つておりません。ただわれわれといたしましては、先般の国会で議決になりましたように、今年度中に具体的の措置をとらなければならぬという点ははつきりいたして、これが検討をいたしておる次第でございます。  次に戰争犠牲者の問題につきましては、これはお話の通りいろいろな案があるのであります。ドイツの例も今検討さしておりますし、また本年度どのくらいの基準額が具体化するか、あるいは将来の問題として、どういうふうな方法で少しでも戰争犠牲者の方々を慰めることができるかという問題は、これは将来の財政計画その他に相当の影響があるものでございますので、検討はいたしておりますが、今ここで申し上げるほどの結論はまだ見出し得ないのであります。
  28. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 勝間田清一君。
  29. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほど川崎委員からいろいろな問題を提起されたようでありますが、それらの問題について、なお大蔵大臣のお考えになつておることをお尋ね申したいと思います。  お話を聞いておつて一つ納得の行かない点は、先ほどの国際価格さや寄せの問題であります。今は国際価格と国内価格に非常な開きがあることは御存じの通りだと思う。それが大臣お話のような楽観的というか、このまま進めて行けば大したことはない、従来の方針にかわりがないというように申されますけれども、それならば実際これからの価格はどうなるかということを考えてみますと、この七月から電力なり食糧なり、あるいはお話のように賃金なりにいろいろ関連して来る。それから先ほどお話があつたように、補正予算の問題がやはり関連して来る。そうしてみますと、減税であるとか、あるいはまた賃金の引上げであるとか、あるいは食糧の補給金の問題であるとかいうような面を考慮して行かれる。一体こういう関係と、同時にその背後には国際経済の動きというものも、特にアメリカの調達計画考えて参りますと、結局非常なインフレの方向に進むのではないか、そういう方向に進むということと、現に出されている日米経済協力なり、また現実の日本経済脆弱性という点から考えてみても、そこに政策上非常に食い違つて行くんじやないかという疑念を実は持つわけであります。そこにおそらく何らかのインフレ対策なり、あるいはそれに関連する金融なり、財政なりの問題が出て来るのではないかと私は思うのですが、これらの問題について依然としてかえて行かないという大蔵大臣お話は、まだ私は納得が行かないのですが、それをどう処理されて行くかという確信あるところをもう少しお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 インフレになつて行く傾向が強いということは、私はある程度認めざるを得ませんが、われわれといたしましては、先ほど来申し上げましたように、できるだけ国際価格国際市場とマツチして行くように、つまり物価値上りにつきましてもできるだけその度合いを少くするようにやつて行かなければならぬと思うのであります。従いまして公務員の給與の引上げをやる、減税をやるということになると、いかにもインフレのように見えますが、今公務員の給與を引上げずにおくということが、いかに社会情勢その他に対して悪い影響があるか。それから米の値を上げるということもインフレになる、こういう問題でありますが、米の値も上げざるを得ない。そこでいろいろな面が上つて来る場合には、どういうふうにしてこれを押えるかということは、やはり財政政策と金融政策ではないか。しこうして財政政策につきましては、私はできるだけ財政規模の縮小をはかる、こういう方針は今後も強く出して行くつもりでおります。しこうして金融政策につきましても、私は不要不急の資金は極力押える。産業合理化とか、生産増強につきましては、これはどんどん出して参ります。そういうふうにインフレ防止の策は、私はあらゆる手段を講じて行く、こういう考えでやつて行く計画で、着々これが準備を進めております。私はいずれ二、三週間のうちには、そういう政策につきまして批判を得たいという気持で検討を續けておるのであります。
  31. 勝間田清一

    ○勝間田委員 概して間接統制の形で、金融、財政の引締めでやつて行きたいということだと私は思うのであります。もちろん私どもも米価の引上げがどうの、あるいは賃金の引上げがどうのという反対的な意味を申し上げるわけではございませんので、むしろこういうものは従来非常に押えられておつた問題でありますから、当然に調整が行われるべきだと私は考えるのでありますけれども、ただそうせざるを得ない條件がどんどん出て来るということが、実はこわいのだろうと私は思うのであります。そうせざるを得ない條件が出て来る。その條件を、早くいえば財政上あるいは金融上の措置によつておやりになつて行くということでございます。一体それならば財政上及び金融上の措置をどうやつて行くかということが、またこれからの経済の一番関心の高いところであります。  まず第一に財政上の問題を聞いてみたいと思うのであります。極力規模を縮小して行くということをお話になりましたけれども、一体どういう面で縮小ができましようか。先ほど来申した通りの状況から行けば、むしろ補正予算も必至になりましようし、またどうもさしあたり減つて行くようなことも考えられませんが、一体どういう形で財政上の縮小をやられるのでありますか。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 財政上の引締めの問題でございまするが、これは相対的の問題でございまして、今の国民経済の状況から申しますると、かなり引締めておるのであります。この前の議会におきましても、前年度の歳入歳出と本年度の分とは、歳入でも五億円しか違つていない、こういうようなお話でございまするが、日本の最近の経済のスケールというものは相当大きくなつて来ておるのであります。私の見るところでは、昭和二十六年度の租税の自然増收は、八、九百億と考えておるのであります。そういうふうに広がつて参りました。しかしこれを歳出には向けない。全部歳出に向けるということはせずに、こういうものでひとつアジヤストして行こう。そうすれば相当程度のことができると思うのであります。それでは国民経済がどうふえるか。財政の面はそこまでふやさぬということになれば、相対的には緊縮だということになつて行くと思うのであります。従いましていろいろな問題もございまするが、私は、経済が一応安定したと申しまするか、見通しがついた。そこで第二にいろいろな問題が起きて来る。これは勝間田委員にもこの前申し上げたと思うのでありますが、日本経済の安定の最後の眼は米価と労賃の問題であります。その問題が具体的に来たと思うのであります。そこへ国際経済の動きというものが入つて参りました。これはやつかいな問題ではございまするが、私は切り拔け得る。今申し上げました金融の合理化、財政の引締めによりまして、ここを切り拔け得るという確信は持つておるのであります。どういう面で減らすかということは、積極的に減らすということよりも、国民経済のふえるのに相応して財政をふやすということをせずに、ふえた割合にはふやし方を少くする、こういう方法でやつて行きたいという気持でおります。
  33. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次に、よく伝えられておるのでありますが、警察関係の増員等によつて追加予算を組むということをしばしば言われておりましたが、これはどういうことになりましようか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 警察関係の増員につきましては、大体五千人の増員を認めておるのであります。御承知の通り、国家警察は三万人と規定しておりまするが、そのうち五千人がいわゆる教育を受けておる状態でありますので、現状から申しますれば、教育を受けております五千人に相当する人員を今回認めて行こうとしておるのであります。しこうして片一方の自治警察の方で住民投票によつて減る場合もございましよう。こういうものはふえる方の財源になると考えておるのであります。ただ減つた分を、その金額だけすぐ平衡交付金を減らすかという問題になりますと、これはまた検討を加えなければなりません。片一方は五千人ふえますが、片一方は相当程度減るのじやないかということを期待しておる次第であります。
  35. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大体それが、今まで六十億ということが伝えられておつたのでありますが、どの程度のものになるのか。  それからもう一つは、やはり先ほどの補給金の問題でありますが、この補給金の問題は、大蔵大臣のお考えでは、なるべく少くして行きたいというお考えであろうと思いますけれども、いわゆる鉄鋼あるいは燐鉱石、いろいろのものがございますが、特に燐鉱石なども、従来までは三十億ということが伝えられておつたのでありますが、こういうような補給金に対する予算も出ておるのでございますか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 国家警察を五千人ふやすことによりましての経費は、大体年度内に三、四億くらいと考えておるのであります。六十億というのは、二万人ふやして行く、しかも裝備をうんとよくしよう、こういう計画なら四、五十億にはなるかもしれませんが、五千人でございますし、しかも年度内におきましては、ただちに五千人ふえるわけではございませんので、三億程度のものではないかと思います。  次に補給金の問題につきましては、私は今までの既定方針によりまして補給金なしの経済にしたい、こういう強い念願を持つております。従つてぼつぼつ出かかつております鉄鋼の補給金は、私は全然考えたくない。しこうして次に問題になりました燐鉱石の輸入価格の問題、この問題は今検討いたしておりますが、前年度の剰余金の範囲内におきましては、ただいまのところ補給金を續けております。七月一ぱいまではあると思います。八月からの秋肥の問題につきましては、今研究を續けておりますが、過燐酸は一俵三百五、六十円の公定価格が五百円か、五百五十円くらいしております。かかる場合におきまして、私は燐鉱石の補給金を出すということは考えたくないという気持でおるのであります。それよりも相当パリテイが上つて来るのであります。全体の生産費につきまして二%程度ではないかと思いますが、これは麦なり、米なりの価格に織り込んで行くのが至当ではないか。しかしこれは金高の問題でなしに、いろいろ問題があります。たとえば配給をうまくして行かなければならないという問題、あるいは過燐酸が高くなつて行くということになると、ほかの肥料を使うその場合において農作物にどういう影響があるかということも議論になつておるようであります。私はこの問題も検討はいたしておりますが、考え方としては、なるべく補給金なしで行きたいという方針で調整すべく検討を續けておるのであります。この問題につきまして、今はつきり申し上げられませんが、検討しておる。しかし考え方としてはやめて行きたいと思つております。
  37. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから、恐縮でありますが、減税の範囲は、どういうところを減税の筋囲にお考えでありますか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 これは先般税制懇談会とか、審議会とかいうのができまして、まず国税につきまして検討をせられ、答申が出ました。その答申を見ますと、基礎控除は今の三万円を五万円、あるいは扶養家族の控除につきましては、二人について五千円程度引上げする、その程度であります。それから大きい問題ではございませんが、今回の補正予算は、減税についてはまだ直接そこまで行つておりませんが、来年度においての考え方といたしましては、相續税の改正、ことに山林に対するものとか、あるいは免税点の問題等について考えておりますし、また富裕税の問題につきましても、来年度におきましては、今年度施行の状況を見ましてやめたらいいではないか、あの答申にありますように、富裕税をやめて、そして高額所得者の累進税を上げて行くのが、考え方からいつてもいいのではないか、こういう気持を持つております。なおあの答申にございました一時所得の問題、山林所得、退職所得、譲渡所得の問題につきましては、できれば今度、減税の法案が出る場合において、これに織り込みたいと考えておるのでありますが、現在は主として所得税であります。ほかの間接税につきましては、ただいまのところ考えておりません。
  39. 勝間田清一

    ○勝間田委員 二十五年度の剰余金はどのくらいになつておりましようか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知の通り租税收入は五月末まで、前年度賦課決定したものについては、前年度の收入になるということに相なつております。最近におきましても、毎日三億円前後ずつ、前年度の收入として、主として申告納税の税金が入つております。租税收入におきまして、大体七、八十億円の自然増收があると思います。印紙收入等につきまして少しぐらいございまして、まあ八十億程度ではないかと思います。それから価格差益の方で十億余り、そのほかのいわゆる不用額等を合せまして、うまく行つて二百億、あるいは少くて百六、七十億、こういう見当をつけております。
  41. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それからもう一つ、例の外資導入の線でいろいろのリスクを日本で見ることを考え、また優遇政策考えておるようでありますが、外資導入法とか、そういうものについての改正などは一体考えられておりましようか。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 外資導入につきまして、リスクの問題は私はあまり聞いておりません。ただ入つて来た外資の出方の問題、すなわち利子の送金をどの程度認めるか、あるいは元本の送金をどの程度認めるかという問題がありますのと、もう一つは外資が既存の株に向けられる場合におきましての許認可の問題、こういうのが問題になつておるのであります。ことに第二に申し上げました問題につきまして、すなわち新設の場合の外資につきましては、これは相当ルーズにいたしておりますが、既存の株を買う場合については、これは議論のわかれるところでありましてある人は日本の株価は今非常に安いから、無制限に外国資本で買わすことは策の得たことではない、こういう強い議論があります。片一方では、とにかく安い高いといつても今の相場に従うよりほかはない。そこである程度既存の株の外資も相当ゆるく認めたらどうか、こういう議論があるのであります。そういう点につきまして、外資につきましてある程度の支障があるということはわかつておるのでありますが、それをいかに調整するかということは、ただいま検討を加えておるところであります。
  43. 勝間田清一

    ○勝間田委員 アメリカ輸出入銀行からのクレジツトの問題があるわけでありますが、最近これは具体化の傾向をたどつておられましようか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ輸出入銀行からクレジツトの問題は、私はあまりたくさん聞いておりません。ただ一つ数百万ドルの分がございますが、これはここで申し上げる段階に至つておりません。それ以外輸出入銀行からこちらの銀行に対してクレジツトの分は、寡聞にしてまだ聞いておりません。
  45. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最後に、結局日本の企業合理化と申しますか、この問題が依然として重要な問題になつて来るわけでありまして、これに対する金融上あるいは財政上のいろいろな考慮が必要かと思うのでありますが、この問題について特別なお考えがございましたら、この際承りたい。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 企業の合理化の問題でありますが、これはなかなか言うべくして実際問題としてはやつかいな問題であります。今の企業を補修程度の合理化にするか、あるいは拡張程度の合理化にするか、いろいろな問題がございます。最近いわゆる糸へん、金へんの景気がいい、利益も相当出しております。半期に資本の三十割あるいは四十割を出している会社も相当あるのでありますが、この内情を調べてみますと、その利益はおおむね運転資金の増加に充てて、まだ産業合理化あるいは資本拡張の方に、向いていることは向いておりますが、思うほど向いていないという実情であります。たとえば綿業の問題にいたしましても、相当の利益を上げておりますが、綿花の手持品の増加によつてその利益が食われる。またほとんどの会社が、三万とか五万とかあるいは七、八万の錘の増加をして、これによつてやはり利益を食われて、増設ができないというので、借入れを要望している、こういうような問題がございまして、合理化の問題はまだ十分に行つておりません。この状態行つて、もう一年くらいたちますと、相当の利益が上つて、あるいは余裕ができるということにもなりましようが、まだここ半年あるいは八、九箇月の好景気でございますので、合理化資金まで十分まかない得るという程度に至つておりません。従つてわれわれといたしましては、そういう産業の拡張とかあるいは既存の設備の改良についてできるだけやりたい、こういう線を強く出しております。今までもそういうふうにやつておりますが、なまぬるかつたと申しますか、必ずしも生産増強の方に向つて行かない点があつたのであります。私は半年ばかり前にも、いわゆるビルの建設や普通の事務所が建たずに、冷蔵庫ができてくれればいいということをこの席上で申しましたが、私の期待通りに動いていない点があります。一万田総裁も言つておりますように、とにかく不必要とは申しませんが、そういうビルの建設あるいは不急のものについては極力押えて、そして生産の合理化、生産の増強という方面に効果的に持つて行きたい、こういう考えを持つております。たとえば、そういう合理化資金の問題のみならず、ユーザンスの問題にしても、ユーザンスが済んだあとのスタンプ手形の問題にいたしましても、この業種はスタンプ手形になつたからといつて、それをのべつまくなしにやるのでなしに、この業種がスタンプ手形になつたときに、どの方面に輸出されるか、とにかく今の輸出でも、アメリカ方面に行くのと東南アジア方面に行くのと、同じ品物でもよほど価格が違うので、ユーザンスの期間の再検討をすると同時に、スタンプ手形につきましても、その事業者の金融の状況を見ることはもちろんでありますが、その原材料がどういうふうに使われているかという見通し等をつけて、個々的に検討を加えて行かなければ、資金の効率が上らぬ、こういう考えを持つておりますので、私は個々会社の金繰り等を検討の上、そういう実際に即した金融政策をやつて行こうという考えでおります。
  47. 西村久之

    西村(久)委員長代理 中曽根康弘君、
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私に與えられた時間は非常に少いので、十五分ばかり大蔵大臣にお伺いいたします。先ほど川崎委員や勝間田委員質問の中で、大蔵大臣が一番重点を入れられました物価の問題であります。この物価がどういうふうにきまるかという基本は、何といつて米価と賃金であります。そこでそういういろいろな條件を考慮して、補正予算をお出しになるときの補正額というものは、大体どのくらいの額に上る見込みでありますか、まず大体の予想を承りたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 この補正額というのは、これは米価がきまり、あるいは先ほど申し上げましたようないろいろな問題——お話になりました在外公館の借入金の支払い、あるいは戰争犠牲者の問題等、全般的に出てから補正額というものがきまるのであります。従いましてただいまどのくらいになるかというようなことは、申し上げる資料を持つておりません。
  50. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 まあいろいろな歳出の條件がありますから、今にわかにきめられないと思いますが、しからば財源的にどの程度の補正額を認める余裕がございますか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 これは今の自然増收の見方で大体私は八、九百億あるのではないかという見通しを持つておりまするが、これもまた物価関係のあることでございまして、大体法人関係につきましては先ほども申し上げましたような状況で、予算の六百三十億円を相当上まわると思います。この六月二日ぐらいには一日に二百五十億くらいの法人関係の税も入るという見通しでございますので、法人関係には相当自然増收が出て参ります。それからまた一般の給與水準も民間の方は上つて来ておりますので、源泉課税の所得税につきましても相当上ると思うのであります。しこうして賦課課税の問題、すなわち申告納税の問題につきましては、今後の物価の動き、これはまた米価によつてもかわるのでございます。私が八、九百億というのは少し多いかもわかりませんが、相当程度出て来る見通しを持つておるのであります。しこうしてまた先ほど触れました前年度剰余金の半額使用の問題もございます。こういう関係がありますので、輸入補給金についてどの程度出せるか、これも小麦協定の問題も今話題に上つておりますが、こういうところでも差があると思うのであります。従いましてどの程度の財源があるかと申しますと、今申し上げた程度、すなわちよく行つて八、九百億、悪く行つて六、七百億の自然増收、それから百億近くの前年度剰余金の使用、こういうところが財源となると思うのであります。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 六、七百億ないし八、九百億程度は大体確実に見込まれるようでありますが、大臣は車中談でおつしやつておりますが、それをまず減税に充てたいと言つておりましたし、その他の項目もあつたようであります。そこで比率やあるいは金額は御無理と思いますけれども、大体補正を要する項目というものは重点的にどういうものを主として補正したいという、重要な項目でもお示し願えれば幸いだと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように米価の問題、賃金の問題、減税の問題、それから今の戰争犠牲者、在外公館あるいは地域給の問題、あるいはこまかい問題が相当ございます。そういうものがおもなるものであるのであります。従いまして次に大きい問題として残るのは、先ほども話題に上りました終戰処理費の問題が大きい問題として上つて参ります。これはまだ十分な折衝の段階に至つておりません。従いまして補正予算の問題になる相手になると思いますが、どういうことになつて行くかということについては、まだ申し上げる時期に至つておりません。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで一番基本になります米価についてお伺いしたいと思いますが、大体米価をきめる方式で農林省と大蔵省が対立しておるやに聞いております。農林省側はパリテイ計算で今までの一五%の加算額を認める。大体パリテイは二五〇程度になるかもしれない。現在予算等で予想しておるものはたしか一九五であつたと思います。大蔵省側は特別加算額というものは、なるたけ認めたくないという新聞筋の報道でありますが、この数字の米価の算定方法には大蔵大臣はどういう御見解をお持ちでございますか、承りたいと思います。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ話合いをしておる程度で、両相あるいは三相の意見が一致したというところまで至つておりません。いろいろな意見があります。ただ申し上げますことは、麦にいたしましても、米にいたしましても、ことに米の供出後の自由販売を認めるかどうかという基本的の問題につきまして、はつきりした線が出ませんと、これはむずかしい問題であるのであります。今特別加算の問題が出ましたが、これは御承知の通り、私は国際価格にできるだけさや寄せしようという念願のもとに、昭和二十二年以来出ております早場米の金額、それから超過供出後の金額を合計いたしまして、これを農家に還元すべく、当初の米の値段に入れるべきだということを昨年主張いたしまして、一五%があとから出たのであります。その金額を加算しようというのでやつたのであります。しこうして今後におきまして去年の計算で行きまして、早場米や超過供出の分をどれだけ加算するかというのが問題でありまして、私は一五%を問題にしていない。そういう早場米と超過供出の金額をまず当初の米価決定のときに入れるべきではないかということを主張いたしまして、一定の金額を入れた。そこで一定の金額を加算するかどうかという問題で、一五%の問題ではない。そこでその金額をどうとるかということは、自由販売になるかならぬかによつても違う。そうしてまたパリテイでやつたつた場合におきまして、米の値段がFOB価格とどういうふうな関係になるかということが問題であるのでありますが、私といたしましては、やはり今の状態としてはパリテイ計算で行くよりほかにない。しかしこの加算額についてもこれをやめるという気持は持つておりません。やめるという気持は持つておりませんが、算出の方法をどうするかということに議論があるわけであります。その点につきましていろいろ議論をしておりますが、その他の問題で価格をいつ上げるかという問題につきましては、私はこういうものはやはり国会の御審議を経てから価格を動かさなければならぬという強い考えを持つております。従いまして米価の問題につきましては、国会に出しまして、そうして食管の補正があつてしかる後に米価を動かすべきだという強い主張を私はいたしておるのであります。そして米価決定の問題も、他の問題といたしましては、価格を引上げる場合におきまして、食糧証券の発行増によるインヴエントリー・ファイナンスの問題もございます。すなわち運転資金の増加を一般会計で見るかということであります。私は今の経済状況から見まして、昨年の今ごろとは違う、私はインヴエントリー・ファイナンスはやはり一般会計で見て行く、こういう健全財政で行きたいという強い希望を持つております。従いまして米価の決定につきましては、生産者価格とインヴエントリー・ファイナンス、その他消費者価格の問題等、いろいろ検討すべき点がありますので、鋭意大蔵当局としての検討を續けておるのであります。
  56. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 消費者価格と生産者価格と二つの問題がありますが、両方とも大きな問題で、大体今大蔵省側の見解を示されたと思うのでありますが、そうすると臨時国会が開かれたあとに生産者価格あるいはその他の価格がきまる、そういうふうに解決していいわけですか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 答えが悪かつたかと思いますが、消費者価格の方につきましては、私は臨時国会で御承認を得たいと思います。麦のバツク・ペイの問題と、新麦の価格でございますが、これにつきましては、私は国会を開いて御承認を得るわけには実際問題として行かぬと思います。しかしこれは米価の問題についてあとで考慮をすべき問題でありますので、私は今臨時議会を開いてきめるべき問題だということは、消費者価格を主にして答えた問題であるのであります。
  58. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今麦のバツク・ペイの問題がありましたが、やはり二十五年産米の価格の問題があると思います。この価格について、大蔵省と農林省と対立しておるやに聞いておるのでありますが、大体パリテイについてどの程度のバツク・ペイを、いつごろおやりになるのですか、お知らせ願いたいと思います。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 二十五年産米のバツク・ペイにつきましては、麦の方で十億程度の違いがあつたかと思います。米の方では今四月、五月のパリテイがはつきり出ておりませんので、わかり次第やるようにいたしております。大体百八十億くらいの金がいると思うのでありますが、これが準備できておりますので、早急にきめたいと思います。この問題につきましては、あまり議論はないと思います。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 賃金水準の問題ですが、今度政府側においては人事院勧告をのまれて、地域給を改められたのでありますが、あの人事院勧告は、実は八千五十八円べースと一体になつて勧告された地域給なのであります。従つて地域給だけをのんで、八千五十八円ベースの基本をのまないというのは、人事院勧告を一貫する方法ではないと思うのでありますが、幸い大蔵大臣は公務員の賃金ペースも改訂したいと選挙前に言われておりましたが、大体補正予算の額ともにらみ合して、どの程度の改訂をおやりになる意思がありますか、見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 人事院の今度の地域給の改正が、八千五十八円ベースを基準にしてつくられたかどうかということにつきましては、私お答えできません。現状からいつて、あの程度の地域給につきましては、私は認めるのが至当だというので、ただいま関係方面と折衝いたしております。閣議では一応あの線で行こうということが内定いたしました。それで今折衝いたしております。本国会に出すべく事務当局を督励いたしております。  次に公務員の給與改訂をどの程度するかということにつきましては、できるだけいたしたいと思うのでありますが、これは一般会計ばかりではございませんので、特別会計におきましても、郵政等におきましては、現状でも相当の一般会計からの繰入れをいたしておるのであります。鉄道にいたしましても、一般会計から二十億円出しておるという状況であるのであります。こういう点から考えまして、どの程度給與の改善をするかということは、行政機構の改革等とにらみ合して結論を得たいと思いますが、今見通しはできません。私の腹はございますが、申し上げることはできません。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 腹を伺えないのが非常に残念です。大体時期的に、いつごかからベース・アツプをおやりになるか、一応時期の見通しでもお教え願いたいと思います。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 これはやはり皆様方に御相談申し上げてやるべきことだと思します。しこうしてそのやり方といたしましては、さかのぼつてやる場合もありますし、協賛後に実行する場合もあります。しかしそれは上げ方の問題、物価のいろいろな点から結論を得る問題であります。今とかく申し上げることはできません。
  64. 西村久之

    西村(久)委員長代理 午前の会議はこの程度にして午後は一時半より会議を續行することにいたします。暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  65. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引續きまして会議を開きます。  質疑を續行いたします。北澤直吉君。
  66. 北澤直吉

    ○北澤委員 御承知のように過般日米の経済協力につきましてマーカツト経済科学局長の発表がございました。この講和締結後の日本経済国際経済との結びつきの問題につきましては、各方面におきまして非常な注意を払つてつたのでありますが、今回のマーカツト局長のレポートの発表によりまして、この日本経済世界経済との結びつきの問題は、相当具体的になりましたことはまことにけつこうと思うのであります。そこであのマーカツト局長声明に関連しまして安本長官にお伺いしたいのであります。従来この日米経済協力の問題につきましては、日本の一部におきまして相当甘い考えを持つてつたように思うのでありますが、今回の声明の発表によりまして、結局するところは、日米経済根本基調はいわゆるビジネス・ベーシスというものの上に立つてやらなければいかぬ。特にアメリカ日本に特別の恩惠を與えるものではない。結局コマーシヤル・ベースの上に日米の経済協力をするのだということがはつきりされたわけであります。こういうふうに日米の経済協力あるいは今後の日本経済発展というものが、ビジネス・ベーシスの上に立つて行くということになりますと、どうしても結局するところは、日本の産業の合理化ということが、今後の日本経済政策根本でなければならぬと私は思うのであります。すなわち結局日本でできる品物が、よその国でつくる品物にくらべましてより安くて、より質のいい物をつくるということが、今後の日本経済の進むべき道と思うのであります。まず第一に伺いたいのは、日本の産業の合理化をはかつて、そうしてこの日本の価格の水準を、世界の価格の水準よりできれば低くするというふうなことによつて、この日本経済発展をはかるということでありますが、その産業合理化の方針につきまして、まずもつて政府構想を伺いたいと思います。
  67. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お尋ねにお答えいたします。御意見の通り日本の今後の進むべき道として、貿易によつて日本経済自立ということをはからなければならぬことは申すまでもないのでありまするが、それに関連いたしまして、御指摘のように日本の製品の価格が、国際価格よりも高過ぎるということであつては、とうていこの目的を達しないのでありまするので、この間のマーカツト声明にもありまするように、今後の日本としてでき得る限り努力して、価格の騰貴を防いで行かなければ物が売れないぞということがありましたが、その意味において、ただいまの御指摘のように、やるべきことの一つの問題として、企業の合理化ということの必要なことは申すまでもないのであります。この点につきましては、休会前の国会におきましても、この席上で私申し上げたのでありますが、ある程度日本の企業が利益が上つておるとすれば、その利益は、あげて設備の合理化あるいは能率化というふうな方面に投じて行くことによつて、生産コストを下げることが、日本に非常に必要であるということを申しておりましたが、その面につきましては、政府といたしましては設備資金——合理化に要する資金の貸付というようなことについては、まずもつて考慮を払つておるのであります。最近も見返資金の一部をさいて、能率的な機械の輸入ということについて助けるという方向をとつておるのでありますが、今後も予算あるいは金融の面について、でき得る限りこの点については重点を置いて考えて行きたいと思いまするし、さらにまた企業家における利益は、むしろ資本蓄積の方向へと申しますか、その面から考えましても新しい能率的な機械の新設というような方面に蓄積されて行くことについては、何かこれに対して利便を與えるというくらいなことは必要じやないか、かように考えておる次第であります。
  68. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府におかれても、この日本の産業合理化の問題につきまして、各般の見地から具体的な方策を練つておられ、またこれを実行に移しておられるということであります。午前中もこの委員会質疑応答があつたのでありますが、その中で、一方において米価を上げる、あるいは賃金べースを上げる、あるいはまた最近新聞で伝えられておりますように、電気料金も上げる、こういうようにだんだんいろいろのものが上つて行くということになると、それでなくてさえも現在日本物価国際物価を上まわつておるという現状を考えますと、今後日本の価格水準を国際的な価格水準に合せて行くということは、相当困難な仕事でありまして、よほど政府におきまして大英断をもつて施策を実行しなければいかぬと思うのでありますが、政府はべ一ス・アツプあるいは米価の引上げあるいは電力料金の引上げ、こういうふうな日本における生産コストの増大にこそ貢献すれ、生産コストの引下げには逆行するようなこういう政策を一方にとりながら、いかにしてこの日本の価格水準を国際的な価格水準に合して行くかということについて、もう一ぺん政府のお考えを伺いたいと思います。
  69. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御意見まことにごもつともな点であります。私どもも生活費あるいは国民生活に必要な主食等の値上りというものが、物価に及ぼす影響ということについては、深甚の考慮を払つておるわけであります。むやみにこれを無計画に上げるということを考えておるものではないのでありますが、ただここで申し上げておきたいことは、価格が上ると申しましても、結局アメリカ等外国に原材料を仰いでおる物で、その物の価格が外国の価格の値上りに応じて上つて来るという原価についての影響が、内地において商品化される場合に起つて来ることは、これは認めて行かなければならぬのでありまして、その影響から来る物価高の問題について、再生産されて輸出されるものについては、その他のいわゆる合理化によつて船賃の値上りから生ずる面の減、あるいは生産コストを引下げるための合理化というものについて、でき得る限りの処置を講じつつ、買却値段というものの引下げを考慮して行くことが第一であります。その間におきまして、製造家、販売家のとる利潤等について、大いにこれは自粛していただきたいと思うのでありますが、そういう面についてのできるだけの処置をとりつつも、なおある程度値上りが来るということで、一般の生活水準に及ぼす影響ということがありますときには、これに対応して考えなければならぬ問題だと思うのであります。従つてその際に今日米価計算にとつておりますパリテイ方式をとつて行くということになれば、そういう努力の結果やむを得ずして上つておるパリテイの関係においては、おのずから米の生産者価格の上ることはこれまたやむを得ないのであります。問題はその際に、これを消費者価格にどういうふうに反映さして行くかということが、結局問題になつて参ると思います。その際に私どもも、できるだけ消費者価格については、ただいま御指摘の点も考慮して、どういうようにするかということについては今愼重に関係当局の間で考慮中であります。希望といたしましては、できるだけその消費者価格への影響を少からしめるように努力いたし、またその時期なり額について今研究中でありますが、できるだけ、その及ぼす影響を少からしめるように努力をいたしておる次第であります。
  70. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府におかれても、この日本におきまするコストの引下げにつきましては、いろいろの構想を持つておるようでありますが、これに関連して伺いたいのは、結局今日の日本物価高につきまして、いろいろの原因があると思うのでありますが、その一つの大きな原因としまして、輸入する原材料が船賃の騰貴のために相当値段が高くなつておる。それから日本輸出する物品を外国に持つて行く場合に、やはり船賃によつて相当高くなつておるということがあると思うのであります。従いまして私はこの生産コストを引下げる問題と同時に、いかにして日本の船腹の増強をはかつて、そうして船賃から来る値上りを防ぐかということが、私は最も大事だと思うのであります。過般のマーカツト声明によりますと、日本アメリカのリバテイ級の船をチヤーターすることができないからして、今後はもつぱら新造船の方で行くというようなことが書いてあるようでありますが、こういうふうに日本がリバテイ船のチャーターもできないということになると、どうしても今日の状態、特に先ほど申し上げましたコストを下げるという見地から、日本の船腹をもつて輸入物資を運び、また輸出物資を運ばなければならぬ。そうすればこの船賃から来る値上りということを相当程度防止できると思うのでありますが、政府はそういう意味において、今後日本の船腹の増強につきましては、格段の措置をとらなければならぬと思うのでありますが、その点について長官のお考えを承りたいと思います。
  71. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点まつたく同感であります。ただいまの点、不幸にしてチヤーターの問題も、この間の声明によりますと、なかなか困難のようでありまするが、これに対しまして、御指摘のように自国船によつて運ぶということについては、この声明のあるなしにかかわらず、実は非常な力を注いでおつたのであります。第六次、第七次の造船計画並びにそれに対する資金の融通ということに対しましては、格段の処置をとつておるわけであります。今数字はちよつと申し上げかねますが、本年の終りまでには相当数の自国船の建造ができると思つております。同時にこれにかわる買船の問題についても、しかるべく今処置をとりつつあります。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 ちよつとそれに関連して私から二、三点お伺いしたいと思います。  先ほど北澤君から言われましたことに関連してでありますが、安本長官は先ほど外国原料あるいは船賃の値上りによるところの物価騰貴ということはやむを得ない。しかしながらその他のものにつきましては、できるだけ引下げて国内物価国際物価へのさや寄せに努力するという問題をおつしやいましたが、ここに一つ電力の値上げの問題があるのであります。これはもうあらゆる工業物価の基礎となることは申すまでもないことでありますが、この工業物価に関連いたしまして肥料に対して非常に影響がある、影響があるということは農業のパリテイに対して影響があるということなんで、これは非常になおざりにできない問題であると思うのであります。これについて私は安本あるいは物価庁は、どういうふうに電力の値上げを考えておられるか、その点を伺つておきたい。
  73. 周東英雄

    ○周東国務大臣 電力の生産コストに及ぼす影響については御指摘の通りであります。私どもも今日の電力料金の値上げ等については、できるだけ値上げの額、率というようなものについて高くならぬような程度にやつてもらいたい、またやりたい、かように考えております。ただこの点は、ちようど御質問がありましたから申し上げますが、御承知だろうと思いますが、電力料金についてはちようど時期が悪いのです。かなり今の料金としては一般的にいえば安いようであります。従つて電源の開発をすることは絶対に必要でありますが、なかなかこれにも時間と経費を食いますが、それの前に今必要な電力の分量をふやすためにには、ロスの軽減ということが非常に大きな問題でありまして、三割近くロスがあるということですから、その面に関連しても電力料金をある程度合理的なものにする、値上げするということは言葉が悪いのでありますが、合理的なものにする必要はあるのじやないか。ことにまた再編成後における今後の電源開発等におきまして、ある程度自己により償却し、まかない得るような計画のもとに進まなければならぬのではないかということ、また電力料金については御承知のように基本料金制、あるいは水力、火力における電力料金の違いというようなことが、ある程度基本的に直されなければならぬのではないか、こういう意味行いのもとに、電力料金の再検討が行われておるのであります。その結果は、御指摘のように何がしかとにかく上らざるを得ない。これは積極的に値上げということであれば、ただちにある程度コストに影響することも考えられますが、その分量等によりますれば、私は電力供給量が増すことによつて生産量を増すことになれば、單位価格というものについては上つただけそのまま影響するということはないのじやないかとも考えられます。むしろ合理的に価格を直す意味において、電力料金の再検討をすることが非常に必要である、かように考えております。
  74. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 安本長官にお伺いいたしますが、電力單価物価に比例するという考え方は一般的にそうできますけれども、発電所をつくりましてから今日まで一般物価に比例して電力料金が上ることは、必ずしも水力においてはないのでありまして、今後つくる場合においてはおつしやる通りになりますが、今までのものがそのまま物価に比例して上るという考え方をなさることはちよつといかがかと思う点がある。ことに安本あるいは物価庁がそれをきめるか、あるいは最近できた公益事業委員会がきめるかということについて、大分議論があつたようでございますが、われわれは政府の責任においてやるという意味から、やはり安本長官の管轄下に置いてこれをやる方が妥当ではないかという考え方を持つておるのでありますが、これについてあなたの御見解をちよつと伺つておきたいのであります。
  75. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今のは委員長のお聞き違いじやないかと思います。物価値上りに比例して電力料金を上げるということを申したわけではなくて、電力料金がいろいろ合理的にされた結果、幾分の値上りがあつたときに、その上つた率に比例して物が上るというふうにものを見ないでもいいじやないかと申し上げたので、むしろ供給量の不足している場合に、合理的に電力料金を直すことによつて、供給の度を増すことにすれば生産がふえる、従つて商品の單価も下る部分もあろうから、むしろ上つただけ比例して物価が上るというふうなことに考えなくてもよろしかろうということを申し上げたわけであります。  それから今の料金の問題については、私どもも実は物価全体をながめて国民生活に及ぼす影響等から物価政策をやつておる立場から申しますと、電力料金のきめ方も、物価庁等においてこれを扱うのが妥当ではないか、従来電気関係が通産省の資源庁にあつたときにおいても、この点につきましてはむしろ主導的な立場において物価庁は扱つてつたのであります。さように考えておりましたが、いろいろの経緯がありまして、御承知のように、ざつくばらんにいえば、最近何と申しますか覚書がありまして、一応電力料金の決定は公益事業委員会においてやるということになりましたので、行き方としてはしばらくそれに従うことはやむを得ぬことであります。ただこの際に事実上の問題として、公益事業委員会の決定の仕方なり、その額等について、一般物価状態あり方に関連して不適当なあり方であるとすれば、当然物価庁としては全体的なものの見方から、これにいろいろ意見を述べることも必要でありましよう。そういう連絡を事実上とつて行きたい、かように考えております。
  76. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたいのは日米経済協力の問題であります。これは政治、経済、文化、各方面におきまして両国の関係をますます密接にしまして、両国が一体となつて共産主義の世界侵略を排除するという点から申しまして、われわれはますますこの日米経済提携、あるいは協力をしなければならぬことはもちろんでございます。しかしながら日米経済協力考える場合におきましては、どこまでも日本経済自立という根本條件のもとに考えなきやならぬと思うのであります。最近いろいろ聞きますと、アメリカにおきましても各種の生産施設が非常に拡張せられまして、生産の増大を見ておるという話でありますので、将来国際情勢のいかんによつては、アメリカにおきましても生産が相当ふえる、あるいは過剰になるといつたようなことも考えられますので、私は日米経済協力考える場合においては、どうしても日本本位、日本経済自立ということを主体として行かなければならぬと思うのであります。その点から申しますと、日米の経済協力を考える場合におきましても、結局日本の立場から申しますと、何をさしおいても重要原材料の輸入を確保する問題、それからこの原材料の輸入の裏づけになる外貨資金を確保することが、日本から見た場合におきましては、最も必要であると思うのであります。ところが御承知のように、世界の原材料事情は非常に重大でありまして、現にワシントンにおきましては世界的な原料の割当会議が開かれておるわけでありまして、必ずしも日本希望するように、原材料が日本に割当てられるかどうか疑わしい状態にあると思うのでありますが、今後日本日米経済協力を進める場合におきまして、日本の必要とする重要原材料の輸入の確保につきましてはある程度の保証があるのか、この点を伺つてみたいと思います。
  77. 周東英雄

    ○周東国務大臣 重要原材料に対しての日本に対する輸入が確保できるかというお尋ねでありますが、これはマーカツト声明を通じてごらんになりましても、また私どもがいろいろ部分的に話し合つておるところから推測いたしましても、大体必要な原材料、ことに稀少な物資につきましても、今アメリカで行われておりまする割当会議等に出るものにつきましても、ある程度の割当に対しては日本として希望が持てる、かように考えております。
  78. 北澤直吉

    ○北澤委員 原料の日本に対する割当につきましては、ある程度の確信が持てるというふうなお話でございますが、それではその原材料を輸入するために必要な外貨資金の手当については、どういう見通しを持つておりますか、伺いたいのであります。現在においてさえも、外貨資金の不足のために輸入の確保がなかなか思うように参つておらぬのは、長官も御承知の通りでございまして、さらにいよいよ講和條約が締結せられまして、アメリカ日本に対する経済援助というものが打切られるというふうなことになりますと、将来の外貨の見通しというものは決して手放しで楽観できないと思います。この間の司令部の発表によりますと、ことしの七月一日から講和の締結までは、ガリオアの方は打切るが、イロアの方は打切らない。一方において占領軍の費用の一部をアメリカの方が米ドルでこれを支払うということでありますが、いよいよ講和が締結されますと、対日援助というものはイロアの方も私はなくなるのではないかと思います。そういたしますと、将来の外貨の見通し、もちろんそれはあるいは日本輸出の増強、あるいは貿易外の收益の増加ということからして、外貨の増加は見込まれますが、日本の必要な原材料の十分な外貨の確保ということにつきましては、必ずしも楽観を持てないと思うのであります。アメリカの方では講和ができまして、経済援助が打切られた後におきましては、あるいは政府もしくは民間からの日本に対する借款というふうなことも考えられており、現にマーカツトの声明におきましても、将来の借款についてはある程度明るい見通しを述べておるのでありますが、将来のアメリカからの借款と申しますか、いわゆる外貨導入と申しますか、そういう点について政府の方で具体的な見通しを持つておられますかどうか、伺いたいと思います。
  79. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点につきましては、いろいろと施設等の関係において、外貨の日本に対する借入れ、あるいはクレジツト設定というふうな事柄については、十分に希望を持つてよかろうかと思います。ただそれにつきましては、やはり外資の導入と資本投下というようなことが行われるについては、日本の価幣価値のあまり変動しないことを考えておると思いますし、またそれに対してはやはり計画そのものが確実に立つて見通しのある計画でなければならぬと思います。そういう点についでは、日本におけるかくのごとき受入れの態勢を整えて行くことによつて、十分に外貨の獲得はできる、かように考えております。またものによりましては前貸しというようなかつこうが起るのではないか、かように考えております。
  80. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお尋ねしたいのは、過般のマーカツト局長声明にもありましたが、日本アメリカが提携して、東南アジア経済開発に参加するという点が、相当強く述べられておるのであります。東南アジア経済開発につきましては、これはアメリカの方におきましても、いわゆる未開発開発計画ということで、トルーマン大統領がいわゆるポイント・フオアの計画として従来も進められておりますし、それからまたイギリスの方でもコロンボ計画と申しまして、インド、パキスタン、セイロン、マレー、英領ボルネオ、こういう地域を対象として、東南アジア経済開発計画というものを考えておる。現にコロンボ計画によりますと、六年間に十億八百三十万ポンドの外貨資金をもつて東南アジア経済開発計画しておるようでありますが、こういうふうにイギリスにおきましてもアメリカにおきましても、東南アジア経済開発につきましては、いろいろ案を持つておるようであります。ところが今回のマーカツト声明によりますと、こういう東南アジア経済開発について、日本アメリカだけが協力してこれに参加するという、こういうふうな線が強く出ておるようであります。この点はわれわれから申しまして、まことに望ましいと思うのであります。と申しますのは、先ほどもお尋ねしたのですが、日本におきまする生産コストを下げるという見地から申しますと、どうしても日本に近いところから原料を入れて、日本に近いところに日本の物を売るというのが、コストを下げる方法から申しまして、最もいい方法だと思うのであります。たとえば東南アジアから持つて来る場合と、アメリカの東海岸から原料を持つて来る場合を考えますと、船腹でもアメリカから持つて来る場合は、東南アジアから持つて来る場合に比べて三倍船腹がいる。また船賃も高い。こういう理由でありますので、輸入原料の値段を下げるということから申しますと、どうしても日本に近い東南アジアから原料を持つて来るということが、やはりわれわれは望ましいと思うのであります。御承知のように中共の貿易というものに、将来期待をかけ得ない日本といたしましては、どうしても日本に近い東南アジア日本との経済関係というものを、ますます密接強化いたしまして、そうしてこの方面から原料を確保し、またこの方面に日本の物を売るということが、いわゆる日本の生産コストを低くするという点に私は貢献すると思うのであります。でありますので、私どもは、もちろん日本には十分の能力はないのでありますが、ひとつアメリカと一緒になつて東南アジア経済開発というものに日本が大きな一歩を踏み出すということが、現在最も必要だと思うのであります。私は一年ぐらい前にもこの予算委員会でこの点を相当強調して参つたのでありますが、こういう空気が世界的になつて来た今日におきまして、ちようど日米経済協力の一環として、日米が協力して東南アジア経済開発に参加して、そうして今日世界で最も不足しております原料の開発、獲得という方面に力を注ぐことが必要だろうと思うのでありますが、政府におきましてこの東南アジア経済開発ということにつきまして、もし具体的の構想を持つておりますれば、まずもつて伺いたい。
  81. 周東英雄

    ○周東国務大臣 日本の産業の将来に関連いたしまして、南方の資源の開発をすることが必要であるというについての北澤さんの御意見は、まつたく同感であります。政府といたしましても、休会以前の予算委員会その他で私も話しましたが、結局経済協力という問題は具体的になつておらないが、何も将來起つて来るべき問題が軍需品の生産だけでなくて、むしろ恒久的な意味において世界人類のために新しく資源の開発をし、そのものを原料として生産し、これを東南アジア地区の民族に供給するということが、将来日本経済発展のためにも必要であるということを申したことがありますが、幸いにも今度はマーカツト声明によりまして、積極的にこのことが述べられ、しかも南方資源、東南アジア地区の資源開発については、積極的にアメリカは資金なり資材等について協力する、しかもこれに対しては日本の労力なり技術を使いつつ、その開発された資源は日本の工場の余力を利用して商品化することを述べられているのに対しまして、私どもは非常な喜びと満足を感ずるのであります。ただその具体的なことについては、今いろいろと相談中でありまして、今日まだどこのところで何をということを申し上げる段階でありませんが、相当にいろいろな物品について、それぞれの地区について日本が協力し、開発し、そのものを日本の工場に持つて来て商品化し得る希望と見込みは十分にあると考えております。
  82. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一点最後に伺いたいのでありますが、政府におかれましてもこの東南アジア経済開発につきまして、具体的に研究を進めておるというお話でございますが、盛んに日本の新聞などで日米経済協力日米経済協力ということをあまりに強調する結果、アジア諸国におきましては、日本アメリカとだけ経済的に協力して、アジア諸国との関係を軽く見ておるというふうな誤解もあるようであります。今回のマーカツト声明におきまして、日本アメリカがもつとこの東南アジア経済開発に乗り出すということになりますれば、そういうふうな誤解も解けて来るわけでありますので、その点はよいのでありますが、いずれにしても日本はアジアの一国であります。どうしてもアジアと日本との経済関係を密接にすることが日本の運命であると思いますが、そういう点から考えますと、日本は一方においては日米協力をして共産主義の侵略に対抗する、一面においてはアジアの諸国と日本との経済関係を強化する、簡單に申しますと、二また的な行き方をしなければならぬと思うのであります。それはちようど今問題になつておりまする日英支払協定のドル・クローズを存續するかどうかという問題にも出ているわけでありますが、とにかく日本が、このドル圏とポンド圏とに対して、一方だけに偏するわけには行かぬ、結局両方にらみ合せながら、今後の日本経済発展というものを考えて行かなければならぬと思うのでありますが、どういたしましても、日本経済というものを考える場合におきましては、結局アジア諸国の経済日本経済関係をより一層強化するということは申すまでもないのであります。政府におかれましても、一面日米の関係を強化すると同時に、他面においてアジア諸国と日本との経済協力の関係を強化するという点から、ただいま申しましたような日本アメリカが一緒になつて、アジアの経済開発に参加するということになれば、これはアメリカにとつてもよろしいし、アジア諸国にとつてもよろしいと思うのであります。結局日本はこれによつてアメリカにもアジア諸国にも対等の立場で協力をする、こういうふうな形になりまして、今後日本の外交方針を進めて行く上におきまして、それが一番よいと思うのであります。その点から考えましても、今後の東南アジア開発について、日米協力してこれに当るというふうな考えは、日本にとつて最も妥当な考え方と思うのであります。政府におかれましても、せつかくこの案に向つて具体的に研究調査を進められておるということでありますので、今後ともその線につきまして、ぜひとも格段の御盡力をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 苫米地英俊君。
  84. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 少し遅れて来ましたので、前の様子がわかりませんから、あるいは多少重複するところがあるかもしれませんが、この点御了承いただきたいのであります。  私のお聞きいたしたいのは電力料金の問題であります。電力再編成の場合に、日発と配電会社の意見に相当食い違いがあつたのであります。日発は再編成をすれば値上りは必然だと主張したのに対して、配電の方は値上りはそうない、合理化すればむしろ現在よりも安くすることもできるかもしれないというような意見を私どもは聞いておつたのであります。しかるに近ごろ世間に発表された間接のものでありますが、それによると七割とかなんとかの値上り考えておるということでありますが、もちろん一般物価値上りした今日、あの再編成当時の考えそのままでは行かないとは考えるのでありますが、この再編成の結果どのくらい値上りになつたのか、また物価の影響でどのくらい値上りになるのか、まずこのこととあわせて合理化の線においてどれだけのことが計画されておるか、また合理化されたか、私どもが再編成のときに取上げた問題の中に、合理化すべき大きな線のあることを見出しておつたのであります。しかしそれが現在どういうふうになつておるか、この点をまずお聞かせいただきたいのであります。
  85. 周東英雄

    ○周東国務大臣 新聞で伝えております値上げの率とかいうようなものは、まだ実はきまつてもおらなければ確定したものでもありません。ことに先ほど私ちよつと触れましたように、これは今日公益事業委員会がもつぱらこれに当つておりますので、今お話のような物価値上りで何ぼとかいろいろの上げなければならぬ理由というものについては、詳しく私承知しておりませんが、あるいは必要がございますれば、その関係の院外から出席を求めてもよろしゆうございます。
  86. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ただいまお伺いいたしましたようなこまかいことについて、御存じないことはごもつともでございますけれども、電力料金は直接にわれわれの生活費に影響するのみならず、物価にも影響を及ぼし、従つて国の予算にも大きな影響を持つて来るものであると確信いたすのであります。従つてそういう国全体の利害関係を持つておる重要なる問題について、レギユラトリー・ボデーというようなものが一存でこの値段の決定をするということは、あまりに大きな権限であり過ぎると思うのでございますが、この点について電力局かもしくは物価庁が監督するというような程度でなしに、もう少し強力にこれを考え、また政策に及ぼして行くような何かお考えがございませんでしようか。
  87. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ごもつともなお話であります。先ほどお答えをいたしましたが、この点については、ただいま一応公益事業委員会においてきめることになつておりますが、事実の取扱いとしては、できるだけ私どもの方の物価全体からながめた立場において、またいろいろの資料を集めた上において、物価庁において事実上の連絡をとり、十分な意見を反映させて誤りのないようにして行くつもりで、今折衝をいたしております。
  88. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 私はそういうふうに政府で深く考えて、愼重に決定されることを了承いたしますが、そのときの材料として、私は各社が何ほどのでき得る合理化を実行したか、なおこういう事情であるということを確かめ、また国民に周知させていただきたいのであります。現在の状況で、経費が足りないからといつて値上げを認めれば、合理化は促進されません。ですから合理化を促進させるためにも、監督の上において、また値上げを決定する上において、この内容に立ち入る必要があると思うのであります。合理化の必要な線は、私が申し上げるまでもなく非常にたくさんありますので、御承知のことと存じますが、どうかその合理化の線の進め方を値上げ問題にからめて十分御考慮願いたいと存じます。さらに合理化だけでなしに、現在不足しておるところの電力は、どうしても増加して行かなければならないのでありますが、そのためには外資を入れるということが必要になつて来ると思うのであります。電力問題は五年、十年先に延ばし得る問題でなくて、米国との経済協力をする上にも、また農村の生産を増加する上にも非常に重要なことでありまして、單に家庭消費、工業部面の消費ということにとどまつておらないのでありますから、急速を要するのでありますが、戰前においてもこの電力には外資がきわめて容易に入つて来たので、今もその事情はおそらく同一であろうと考えております。しかしこの外資の導入につきましても、その導入の仕方がいろいろある。各社が競争してやるか、もしくは国内の事情をいろいろ考慮しんしやくして政府がそれに指導を與えるか、ということに問題があると思うのでありますが、この外資導入ということについては、どういうような構想を持つておられるか、またそのことが現に進捗しつつあるかどうか、お伺いいたしたいのであります。
  89. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私が聞いておる範囲では、具体的に電源開発とかいうものについて、どれだけの額をどこの銀行から入れるというようなことは、まだきまつていないと思います。ただしかし、この電力の問題について一番投資はしよいものであります。日本受入れ態勢と申しますか、これは再編成が遅れて、この点については外資導入等に影響があつたと私は思うのでありますが、こういう再編成に関して、それぞれの会社の持場々々における電源開発について具体的な計画が立ち、そして遠くない将来において、これを実施するという具体案をもつて交渉が始められなくちやならぬものだと思います。その際に、一方におきまして日本開発銀行というものが一部金を持ちましよう。ただいまのところは開発銀行は二十五年度に百五十億という見込みが立てられておるが、あれだけではもちろん足らないのであります。また同時に、外資の輸入に関しては、やはりある程度の保証のあることを要求するのではないかと思います。日本の具体的な計画が立ち、受入れ態勢が整えば、初めてそこで幾ばくの額を外資として入れるかということも、向うの方もきめやすくなる。どうもあまりこちらの方が抽象的に外資々々と言つたところで、具体的に案のないところではどうにもならぬと思います。先ほどのどなたかのお話にありましたように、グツド・ウイルによつてつていたのではいかぬ、結局ビジネスということで相談が行くことになりましよう。やはりこういうことは具体的に案が立つてからだと思います。しかしこれにはかなり私は見込みがあると思つております。
  90. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 もう少し具体的に申し上げれば、各社が別個に競争をして外資を入れるというようなことになれば、現在立ち遅れておる地方は、容易に外資を入れることができないというような結果になる。そこでそれらの統制を政府でやつて行くお考えがあるかどうか、また場合によつては、ある地方は政府が保証をしても入れさせるというお考えがあるかどうか、こういうことをお伺いいたしたいのであります。
  91. 周東英雄

    ○周東国務大臣 具体的な措置はまだその点まで考えておりませんが、しかしお話のように各社ばらばらに行くということがいいか悪いか、これは相手方の出方もあろうと思います。また向う個々会社に貸すか、あるいは日本の特殊な機関を通じて、その方から貸すかというようなことが問題になつて来るのじやないかと、いろいろの情報から考えられますので、お話の点などは十分政府としても考えて、せつかくの電力に対する外資の導入等がやりいいように、具体的な問題についても研究して行きたいと思います。
  92. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 では、こまかいところへ入りませんで、最後に私は、この電力値上げ問題は軽々しく扱いますと、これは政府の不信任を来すばかりでなく、国民としても重大問題として政治的に取上げられる性質のものだと思いますので、どうかこれは予算委員会における質問に答えたから、それで済んだというような軽いお考えでなく、十分重くお取上げ下さることを希望いたしておきます。
  93. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 中曽根康弘君。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日米経済協力の問題と、講和に関する予算の問題で、周東さんと草葉さんにお尋ねをいたします。  まず第一に簡單な方から、草葉さんからお尋ねいたしたいと思います。講和條約は大体九月くらいまでに調印されるであろうと官房長官は言つておりましたが、大体それには間違いないと考えてよろしゆうございますか。
  95. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 ただいまの講和の時期の問題でありますが、あるいは夏とか、あるいは初秋とか、秋口とか、いろいろ話がなされておりますが、ちようど来月早々にはダレスさんがイギリスに参りまして折衝が進められる予定になつております。それが済みますと、もつとはつきりして来るのじやないかと実は考えております。ただ私どもといたしましては、なるべく早い機会にそのような取運びが進められたいということを強く希望はいたしておりますが、現実に九月ごろまでには確実に行けるかどうかという点は、実ははつきりお答えしにくいのであります。ただなるべく早く順調に進めたいことをたいへん希望いたしておる次第であります。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 なるべく早く順調にやりたいというのは、日本全国民の要望でありまして、これは政府だけではないと思うのですが、大体政府の方では、補正予算編成その他の検討もあると思うのであります。大体私はここであなたのその責任をとろうとか何とかいう考えではなくて、今後の日本の補正予算編成の時期やその他から考えて、外務省の方で大体いつごろの見当でそういう準備をしておるか、こういう心組みをお尋ねしておるわけです。
  97. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 外務省といたしましては、別に特定に九月ごろまでにはでき上るだろうという意味で進んでおるということよりも、いつでもできる態勢をとつて進んでおると申し上げる方がいいと存じます。従いまして時期はなるべく早いほど政府としても喜びまするし、国民はもちろんでございまするから、そういう態勢をとりながら進んでおる次第でございます。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば講和條約に備えて、外務省はどの程度の補正予算額を請求しようと思つておりますか。
  99. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これは実は講和條約の行き方と申しまするか、手續と申しまするか、あるいは開催地、すべての問題が関連をいたして参る問題と存じます。この前の四七年のアメリカのとつておりましたやり方からいたしますと、大体極東委員会構成国に十分相談をしまして、その後大体の見当がつきましてから会議の形をとつて来るというような行き方も今回考えられるのではないかと存じております。従いましてそういうふうなやり方で進んで参りますと、開催地の問題によりましても、予算その他内容がかわつて参りますから、こういうふうな見通しがもう少しはつきりいたしまして、それによつて予算というものができ上る、こういう考えで進んでおりますから、現在その見通しをもうしばらく持つてから予算というものはつくり上げて行くものだと、かような考えで進んでおります。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今草葉さんはいつでも開ける用意ができておると言われた。しからば予算的措置もできておるだろうと私は考えたんです。そうするとまだ現実的にはどの程度予算を請求するかという算定もしておらないわけですか。
  101. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 少しお答えが不十分であつたかも存じませんが、講和開催はそういう点におきまする條約その他によりまする準備がいつでもできる態勢を持ちながら進んでおりますが、ただいま申し上げましたように、各国の動き、各国のアメリカ草案に対する回答、そういうものから講和の具体的なものができ上つて、そうして講和の会議の手續というものになつて来ると思います。従いまして予算処置はそういうものをひつくるめまして考えて来るというので進んでおりますから、準備は進めておりますが、具体的な予算のこれこれというのは、もう少し状態を見まして進めて行こう、こういう考えでおります。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この前分科会であなたにお尋ねしましたときに、講和会議がもし開かれるとすると、それに対する全権大使の費用やらその他いろいろな費用は、臨時国会を開いて補正予算の可決を経て、それによつて捻出するということを答えられております。そうしますと、どうしても補正予算の可決を経なければ予算がないわけだから、国会を開く前に、つまり臨時国会を開く前に政府が調印をするということはあり得ない、こういうふうに私は今まで解釈して来たんですが、その通りでございますか。
  103. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 予算委員会でお答え申し上げましたのには、ただいま御質問のようなお答えは多分いたしておらないと存じます。いわゆる補正予算を臨時国会に願つて、それでこの講和に準備をして行く。はつきり申し上げましたように、現在大体講和の手續の問題もなおはつきりしていないと存じます。多分極東委構成国の国々に十分相談をして、その上で会議のような形をとるだろうとは想像しておりますが、ことに四七年はそういう行き方をとつて来たと存じますので、今回もさようであろうと想像しながら進んでおります。また批准、署名前に国会を召集して、国会の承認を経て、それから講和に臨むかという御質問の一点もあつたと存じますが、大体は講和草案はその会議において、いわゆる確定的なものができ上つて来るという形、それまで各国と一応基本的な相談をしまして講和会議という形をとりますと、その会議におきまして、いわゆる最終の確定案というものができて、そこで一応代表がこれに署名をして、それによつてつて参りまして国会の承認を経て批准という形になるというのが、大体普通の形であろうと考えております。従つて今回の講和條約の問題についても、大体その形を予想されておる次第でございますから、従つて署名以前に臨時国会を開いて御相談を申し上げるという順序は——総理はこの間なるべくその内容は、皆さんによく御相談をして進めて行くと申し上げましたが、この方針はもちろんそうでございますが、手續と順序といたしましては、大体そういうふうになつて出て来るものと想像しながら準備を進めております。
  104. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 中曽根君、午前中理事会で今回は日米経済協力その他で大蔵大臣安本長官の意見を聞いて行こうじやないかということでやつたんですから、ほかの方もおられますから、あまり外交問題について細目に入りますのでしたら、外務委員会で……。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 わかりました。草葉さんは私の質問をちよつと誤解なさつてつたようですが、講和の調印とか批准の順序は今あなたがおつしやつたように、あるいは調印の前には国会にかけないで、政府が調印したあとで、批准前に国会の承認を経てそういう手續をとられるという見通しを申されましたが、それはあるいはそうかもしれぬ。しかし全権大使をサンフランシスコとか、ワシントンに派遣せられる場合に相当厖大な経費がいる。それは東京で行われるか、ワシントンで行われるかわかりませんけれども、しかし東京で行われるにしても、かなりの経費がいる。そこで講和條約の調印に出席するためには特別な金がいるので、その金は現在外務省の予算に計上してない、しからば講和條約の調印以前には臨時国会を開いて、外務省として予算を請求して、その承認を経てから、要するに予算の捻出の承認を経てから講和條約に臨むのだ、そういう財政上の手續をこの前質問した。あなたはそれに対してそうだとこの前お答えになつた。ですから私は財政的手續からしても、講和條約調印前には臨時国会があると考えております。この点はどういうわけなんですか。
  106. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これは講和会議の問題に関してだけの立場から考えますと、実はもちろんその前にいろいろな関係で臨時国会等がありまする場合は別でありますが、講和だけの問題に局限して考えました場合には、早急に全権委員等を派遣するというような状態になりましたならば、実は外務省にも大蔵省と折衝いたしまして、予備費をいただいております中でももし間に合いまするとそれでもやれると考えております。それで足らない厖大な場合には別でございますが、大体二十億見当の予備費を計上して、外務省の対外的な処置を考えております。その範囲におきましては予備費的な処置がその中からとられる、かように考えております。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと二十億の予備費を、もし使えるならばそれで流用して可能だ、こういうお話ですか。そうするとその二十億の予備費は、国全体の予備費から外務省に割当られた分ですか。それとも外務省独自にそういう予備費の使用を認められておるのか。国全体にはたしか十億以上はないと思いますが……。一般予算の予備費は十億となつております。
  108. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまの御質問の予備費の関係でございますが、国全体の一般の予備費十億とは別のものでございます。大蔵省の主計局の所管としまして、海外払いの経費の予備金的なものが二十億とつてあるはずであります。これによりまして国際会議あるいは国際條約の分担金の費用、そういう海外払いのあらかじめ確定的に予想できない経費をまかなつておるくらいのものであります。たとえば在外事務所が随時できて参ります。これができます年度は、この関係の経費からまかなうこととし、その次の年度からは一般の予算に計上してまかなつて行く。次次にこれから出て参りますその経費は、これはまた二十億の予備金の中から外務省の方に振りかえて支出する、こういう関係であります。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでかりに調印がことしの八月か九月ごろ行われて、それから臨時国会を開いて、七箇国でありましたか、批准書の寄託がアメリカ政府に行われる、そういう関係になると思うのですが、その調印が行われてから批准書の寄託が一定数終つて日本が完全に自主権を回復するまでの間、日本の財政権といいますか、予算編成権といいますか、こういうものは何ら影響ない、現行通りだ、こういうふうに新聞に報道されておりますが、政府はかように解釈しておりますか、外務省筋として御回答を願いたい。
  110. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これは私どもの立場でお答えするのは、あるいはかえつて不十分かと思いますが、ただいまお尋ねの件につきましては、効力発生までは現状通りだと存じております。外務省的な考え方から申し上げまして、さよう御承知願いたい。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでお尋ねいたしますが、戰死者遺家族の救済の問題です。この経費を補正予算に計上するのかどうかということを、午前中私は大蔵大臣質問しましたところ、大蔵大臣は載せたいという口吻を漏らしておつたのでありますが、この遺家族の救済については、たしか向うからの指令は、ESSの指令で出ておつて、極東委員会とかアメリカから来ておる指令ではないとわれわれは解釈しておるのですが、その辺の関係はどうなりますか。言いかえれば、日本政府がESSの了解を得れば、扶助金その他をやることが可能であるのか、あるいは極東委員会やワシントンの了解を得なければやれないのか、このことを聞きたいわけです。
  112. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 ちよつとこの点は資料を手元に持ちませんので、よく調べましてお答え申し上げます。従来国会等でこの問題の折衝の場合に、たしか極東委員会と記憶いたしておりますが、しかしさらに調べまして間違いでありましたら、また訂正してお答え申し上げます。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは非常に今世の中の人は関心を持つている問題でありまして、われわれもこの問題は至急善処したいと思つておるのでありますので、恐れ入りますが、至急その方面の筋を調べて来ていただいてお知らせ願いたい。  それからもう一つは、在外公館借入金の問題ですが、これも前にあなたに御質問したのを覚えていらつしやると思います。池田大蔵大臣にも質問いたしましたが、レートの決定や何かでペンデイングになつておるようです。これに対して外務省はどういう促進方法をやつておるか、大蔵省とどういう話合いをやつておるか、ひとつその後のあなたの実績を知らしていただきたい。
  114. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 在外公館借入金の返済の問題につきまして、前にも申し上げたのでございますが、その後幸いに国会の御承認を得まして、在外公館の支払いに関する審査委員会の設置が決定いたしまして、すでに大蔵省を中心にし、外務省もこれに加わりまして、委員の任命を見ました。その任命によりまして、レートの決定をしながら、年内に支払いをすべく委員会を開催いたしております。これは遠からずその目的に向つて達成し得ると存じております。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 額は大体どれくらいの見当でおられますか。
  116. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 この額は委員会がレートをどのくらいの程度に決定するかによつて、あるいは百五十億、あるいは五十億というふうに、ずつと違つて来ると思います。その委員にはいろいろな関係者が入つておりますが、その決定によつて額に相違が生じて参ります。その借上げ当時の金だけは外務省で整理をいたしておりますが、レートの決定によりまして支払いを開始する、こういう順序になつて来るわけであります。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その額がもし非常に厖大な額に上つた場合は分割払いとか、そういうようなことも考えているわけですか。ことし一ぱいに支払うという意味は、ことし一ぱいに全部さいふをはたいてしまつて、貸借関係をなしにするという意味でありますか、それとも分割払いで長年にわたつて返すという意味でありますか、どつちですか。
  118. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これは額によりまして、今のお話のように一時に払うというのが困難な場合も、ございましようが、とにかく委員会の決定いたしました案によりまして支払いレートがはつきりいたします。それで国家財政負担の困難な場合は別といたしましても、なかなか年内にこの支払いが全部一ぺんにできるというのも、ちよつと困難かと思います。また当然今後の引揚者に関しまする支払いというものも起りまするから、本年内に全部片づくということは考えられないと存じておりますが、大体あの当時と現在とを比較いたしますると、とつぴようしもない厖大なということには行かぬではないかと考えます。そこそこの額になつて来はしないか、これは委員会の決定をまたないとはつきり申し上げかねまするが、そういうような考えを持つておりますので、できるならばなるべく早く支払いを開始し、多くの方に支払いができるように取運ぶのが必要ではないかと思います。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこそこの数字というのは大体どのくらいですか。大体近似値を計算して心組みをしておられると思いますが……。
  120. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これはこちらからかれこれ申し上げると、かえつて委員会の審議を束縛するようなことになると思います。委員会はやはり現地の状態なり、当時と現在の物価関係なりというようなことから考えられると思います。そこそこの数字と申しますのは、全体をそのままといたしましても、たしか百五、六十億であつたと記憶いたします。しかしその後の物価状態というものを考えますと、それよりも相当内輪な支払いというような具体的な状態になつて来るのではないかと想像いたしております。当時の総計よりも上まわるようなことは、当時の物価等と比較しまして、ないであろうと想像いたしております。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に一つ質問いたしますが、五月八日の各社の新聞に、こういう記事が載つております。それは賠償について井口次官が、大阪の商工会議所の懇談会で発した言明ですが、「賠償については日本の在外資産で埋め合せることとなろうが、ただ比島の要求に対しては相互の経済自立促進の建前から、比島から原料を輸入し、日本で割安加工して輸出するというような方式で、こちらの誠意を示したいと目下関係官庁で研究中である。」云々とありますが、関係官庁で研究中でありますか。
  122. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 賠償の問題は実は再三総理からもお答え申し上げました通り、なるべく現地の在外資産によつて日本からの賠償にしたいというような趣旨で、アメリカ関係国に了解を求めながら進めております。しかしなお現在フイリピン等におきまして、御承知のように賠償ということが相当いわれておる。こういう場合においてどうかというのでありますが、ただいま新聞記事の問題につきましては、さような言明があつたかどうかにつきましては、井口君に会いましてそのことをはつきり開いておりませんが、各関係省でそのことについて研究しておるという点は、さような問題について特別に進んでおるという行き方は、現在特別にはとつておらない次第でございます。ただ賠償問題は先ほど申し上げましたような、再三総理の御報告申し上げましたような方針で進んでおります。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この記事は非常に重大な記事でありまして、日本の今度の講和條約についても非常にデリケートな影響を及ぼす記事であるということを、私はこれを読んだ瞬間に認めたので、各社をみんな調べてみたのです。そうしたらはたして同じようなことが載つております。これは嚴然たる事実であります。それを外務政務次官ですから、あなたの方が上官のはずでありますが上官の方がお知りにならないということはないと思うし、五月八日にやつた言明を、現在二十三日までほつたらかしておいて、やつたかやらないか知らないというのでは、非常に怠慢だと思うのですが、はたして怠慢なのか、やらなかつたのか、どつちです。
  124. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 ただいまお話のように五月八日でございましたか、その記事が出たのは関西へ旅行の際だつたと記憶しますが、そういう話をしておつたという詳しい内容を、実は私別に承知をいたしておらないのであります。また事実そういう問題について、今日本政府各省から集まつて、熱心に研究しておるというようなことも、先刻申し上げた通り、その点はこれ以上実は申しました内容について申し上げることはどうかと存じますので、御了承願いたいと思います。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 こういう記事を見ると、困るのは吉田さんのほかにダレスさんだと思う。日本国民が一番困ると思う。これは非常に軽卒な言葉だと思う。私は声を大きく出したりなんかすると、あまり日本のためによくないから、私はあなたからこういうことはないということを言つてもらいたい、日本政府にはそういうような意思もないし、大体日本国家にはこういうことをやる能力がない、そんなお大盡ではないということをはつきり言つてもらいたい、あるいは適当なときに井口外務次官から、この言葉に対する釈明を聞き、しかるべく善処してもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
  126. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 賠償問題につきましては、ただいまお話したように、これは総理からも、再三申し上げました通り、今までアメリカの力によつてようやくここまで参りました日本が、賠償を支払うという能力は全然ないし、またないことを国民も承知してくれていると思います。従つてただいまの問題等につきましては、またよく相談いたしまして、他の適当な機会に御理解願える方法をとりたいと思います。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 外務省に対する質問はこれで終りますが、私にとるという意味ではなくて、日本国民に対してこういう迷惑をかけたことを、かけないような方向にひとつ持つて行つていただきたい。そういう何かけじめをつけていただきたいということをあなたに申しておきます。もしそういうことをあなたにやつていただかないと、私はこれを政治問題にして取上げる用意があるということを申し上げておきます。
  128. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 それは委員会の意見ではありませんよ。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に安本委員にお尋ねいたしますが、日米経済協力とか物価の問題なんかで私たち判断に苦しんでおりまして、政府政策をぜひ教えていただきたいと思うところがありますので、ひとつ懇談的にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に日米経済協力の問題ですが、けさほど各委員から大蔵大臣にお尋ねしておりますけれども、日米経済協力ということは、最近のマーカツト声明に、商業採算で行われて入札方式をとるということがはつきり出ておりますが、そういうようなやり方でやられて、しかも現在の日本の遊休設備の能力、日本の現在の科学水準、こういうものを全部勘案して、一体どの程度の受入れ能力があるか、これまた非常に重大な問題だと思う。たとえば現在の鉱工業の設備、あるいは生産高の中で何パーセントぐらいプラスになるだけの能力が一体日本にあるか、安本でも御研究中だということを私も承知しておりますが、安本長官から概括的な数字でもよろしいからお示し願いたい。もしわかりますれば産業別にお示しを願いたい。
  130. 周東英雄

    ○周東国務大臣 重大な問題でありますから、懇談的にお話申し上げたいと思いますが、今向うからの話で、デイテールに入つてぼつぼつ担当官と相談をいたしておるのでありますが、どういうものをどういう形でするかということは、まだ具体的にわかつておりません。ただ抽象的にこの間の声明にありましたような程度でございますので、向うから協力を求められる、あるいは生産ないしは輸出を要求されるものは何であるかということは、実はまだつかめておりませんので、ただいまのお話に対してお答え申し上げることができないことを遺憾といたします。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が申し上げておりますのは、向うが発注して、それに対応する日本の能力を調べるというやり方ではなくて、現在の日本物価水準や、あるいは余剰能力から見て、現在の各産業部門別にどの程度の余剰能力があるか、そういうこちらの受入れ態勢の能力をお聞きしているのであります。
  132. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私はある程度見通しを立てて実は申し上げたいと思います。ただ抽象的にどれくらいということはちよつと申し上げることを控えたいと思いますが、少くとも今日の生産能力といいますか、一二九ぐらいのパーセン・テージに生産能力を持ち得ると思つておりますが、今後の出方ということにおいて、この数字がもう少し、一三〇を越える程度にまでは行くのではないかということを、ただいまのところですと抽象的に申し上げるよりほかはありません。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは現在のたしか一二六を基準としてですか、それを一二九ないし一三〇ですね。  その次に承りたいと思うのでありますが、協力の方法で財界などが一番騒いでいるのは、向うの発注して来るのであろう資材の内容ですね、生産財が多いか、消費財が多いか、具体的にいえばそうです。それがまた日本の今後の産業構造のゆがみといいますか、そういうことを回避すると非常に重大なものになつておるのでありますが、消費財と生産財の可能性というのはどの程度の割合になりましようか、まだおわかりになつておりませんか。
  134. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まだ具体的にパーセンテージはわかつておりませんが、かなり消費財もあるのではなかろうかと思うのでありまして、声明中にもありましたが、アメリカ本国に対してもある程度の民需物資消費財が行くのではないか、かようなことが想像せられますが、まだ率はわかつておりません。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そのような日米経済協力が行われるについては、日本の財界につきましてもいろいろな意見があるようでありますが、その意見の大部分というものは、まず第一に自立経済計画というものを達成するのがわれわれの根軸であつて、それに附加するような形で日米経済協力というものをやりたい、これが第一点。それから第二番目は、国民生活水準をこれ以上切り下げられては困る、その点だけは絶対確保してもらいたいというのが第二点です。第三点になると、自由諸国——フリー・ネーシヨンズといいますか。その世界あるいはアジアにおける反共態勢の中における軍需生産能力といいますか、その分担を日本が引受けて、場合によつて日本自体の防衛機材の生産についても協力したい、こういうのが大体財界方面あるいはジヤーナリズムの要望でありますが、経済安定本部としては、日米経済協力をやるについては、どういうような主体的な要望を持つておやりになりますか。これはまだ公式の言明といいますか、態度を聞いたことがないのでありますが、安本長官からぜひ承りたいと思います。
  136. 周東英雄

    ○周東国務大臣 中曽根さんの御質問はまつたく同感であります。実は私どもの方の協力が、今後具体的にどうなつて参りますかわかりませんが、私どもといたしましては、ただいまお話のあつた、また財界等で心配しておる点は、むしろ私どもの主張でありまして、日本経済自立し得るような形を中心にもちろん考えて行きたいのであります。従つてそのことはとりもなおさず二番目の御質問の、国民生活水準を切り下げることなしに協力するということは、むしろ徐々にでも上げるというよい影響をもたらせるがごとくしたい、こういう考えを持つております。この点は従来とても主張をした点でありますが、この場所でもお話を申したと思います。その主張はかわつておりません。幸いにしてこの間のマーカツト少将声明中にも、協力というものが国民生活水準を脅かすことなしに維持して行けるようにして行きたいということが書いてありました。この点は私どもの意を強うするところであります。ぜひ今後そういうふうな形に考えて行きたいと思います。  さらに今お話のありました経済自立を達成しつつ附加してというのでありますが、私どもが絶えず考えていることは、他国のごやつかいにならずに、援助という形によらずして、国際貸借関係の均衡を得せしむるような形に持つて行かれるということが一つの目安であります。それはとんとんに生きて行けばいいということでなく、そういう国際貸借関係が維持されつつ、しかも進んではあの声明にありましたような事柄、すなわちわれわれの主張にもありました、東南アジア開発等によりまして、もつと積極的に世界物資の少いときに資源の開発を行い、それを商品化することによつて、大きくアジア地区における人類のためにもなることが、恒久的な協力の目標でなければならぬ、私はかように考えております。  それから第三番目にお話輸出の問題でありますが、これは日本としても軍需品の内容というものにいろいろと誤解があるといけませんが、日本が武器等をつくるということは許されないはずであります。ただ日本が民需、軍需というようなかつこうに、両方に使われるようなものについて、ことにこれは朝鮮事変なりに関する関係において、必要なものを供給するということはあり得るとは思いますが、積極的に武器をそういう関係以外に向けてつくることは、許されておらないと私は考えております。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それから財界筋でも一番心配しているのは、日米経済協力の持續する期間、これがまた非常に大きな問題でありまして、これは国際的緊張の継續期間と比例して行くだろう、そうお答えになるだろうと思いますが、結局やつてみたけれども、あるいは過剰生産なり過剰設備になつて背負い投げを食うというのでは意味がないし、これは非常な資本と労力の浪費になる、そういう点から考えても、非常に警戒して見る者が多いと思うのですが、この点に関して、関係方面に対して政府はどういうような態度をとつて、そういうことを未然に防ごうとせられておりますか、政府政策というか、向うに対するやり方をお示し願いたいと思います。
  138. 周東英雄

    ○周東国務大臣 この点はまことにもつともな心配です。私どもとしても、日本の未稼働工場などが動かせて行かれることは、日本のためにもいいのですが、これがただ一時的な関係でぱつと線香花火のようになつて、あとやめなくてはならぬということになると、これはたいへんなことになりますので、そういう点につきましては、先ほども申しましたように、軍需品、民需品両方にかえ得るようなものの生産がほんとうは望ましい。これは国際関係の緊張がはずれても、平和産業的な立場において、諸民族の需要に応ずるようなものをつくらして行きたいということが念願であります。こういう点は私は関係方面でも、ある程度了解しているのではないかと思うのは、今申しました東南アジア地区を開発し、その資源をもつて日本の工業を動かしてやろうという考え方は、これはむしろ協力ということが單に一年とか二年という問題ではなくて、そういう方面においては、長く協力しつつ他面世界に貢献するように生産をふやし、商品の増産をはかるという方向で考えて行かれるのではなかろうか、私どもはそう考え、またそうありたいものと考えておる次第であります。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 マーカツト声明が出てから、今までの誤解やあるいは臆測が非常に一掃されて、案外清明になつた感があるのでありますが、ここで私は安本長官に特にお尋ねいたしたいと思いますことは、コヤーシヤル・べースでああいう協力をやるという場合に、どうしても協力できないという部面経済的に出て来るものがある。しかし軍事的必要から、ある程度どうしても協力してもらわなければならぬという場合が、あるいは出て来るかもしれません。これは将来のことだからわかりませんが、いかなる場合においても、日本政府日米経済協力については、経済外的な強制を財界あるいは企業に対しては行わない、これは事実上あるいは法制上——事実上はよくやる例があるのでありますが、そういうひとつ保証といいますか、御言明を私は安本長官から得ておいて安心さしたいと思うのでございますが、いかがなものでございますか。
  140. 周東英雄

    ○周東国務大臣 具体的の問題が出て来ましたのでちよつとお答えをしかねますが、しかし心持としてはあなたのお話のような形にありたいと私どもは思つております。私どもが協力をなして行くことにつきましては、御指摘のように一番経済的な問題があると思うのです。日本の国内における生産物の生産費と、従つてその価格というものと、アメリカその他民主自由国家の国内における生産価格というものとの間に開きがあれば、これは協力しようにもしようがない。これをめちやくちやに圧迫してコストを割つて売らせるわけにも行きません。そこらに対しては非常にこれは一番重大な問題だと私どもはいろいろ苦心をいたしておる点でございます。そういう面については、できる限り設備能力の合理化、近代化ということをはかりつつ、また自由船を持つことによつて、船運賃の引下げという問題はもとより早急に考えなければならぬ問題でありますが、かくしてでき得る限りコストの引下げを行い、かつまた企業家の獲得する利潤というものに対しての自粛をはかりたい、こういう気持がございますが、ただそういう場合にも、どうしても行かぬということが起つて来るということは、具体的な場合に研究したいと思います。御参考に申しますが、ニツケル等については、近く御協賛を得るために法案が出ると思いますが、特殊な稀少物資であつて必要なものについては、特別な価格でこれを売つて行くということをやつて行こう、政府が大体ニツケルの輸入をいたしまして、これを必要な方面に時価以下で売り得るという形をとつて、そうして有効的な方面に使うということも考えられるかと思いますが、全体的には具体的の場合でないと申し上げかねます。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの御言明がありましたニツケル鉱に関する問題につきましては、私も法案を拝見いたしまして、非常な迅速な処置に対して敬意を表します。問題は今までここにおる駐屯軍が、日本の企業に対して発注したりあるいは契約する場合に、法制的にはそういうことはあり得ないのだけれども、事実上の行為でかなりの強制を伴うようなことを、入札の場合にもやつておるし、その他の契約の場合にもやつておる。そういうことが今度の日米経済協力で安易に継續されると、これは日本アメリカの将来について、非常に心配な問題が出て来るのであります。従つて御当局におかれては、そういうことが絶対に行われないということを財界や企業家に知らしてやるということが、協力精神を振起するゆえんであろうと思うのです。大体今の安本長官の御言明で了解いたしましたが、もう少しはつきり、これは筋の通つたことですから、そういうことは政府としてはやらせないということを言い切つた方が、案外協力を増すのにいいのじやないかと思います。いかがなものでございましようか。
  142. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはお話の通り、私どももそういうふうにやらせるように努力をいたしておりまするし、またそうしたいと思つております。ことに今度いろいろと関係方面と折衝しておりまして感ぜられることは、向うでも非常にそういう点について注意をしておるようで、これはもとより本国からの注文というようなものについての関係でありますが、向うでは予算等を別別に持つておるために、陸海空軍またECA等の関係から、それぞればらばらに注文したり、そこにいろいろな問題が生ずることを避けるために、できるだけ発注を一つにするという方向に持つて行きたい。その点は非常にこの間マーカツト少将が行かれて努力されたようであります。それからこの点は内地においても注文の仕方、またそれについての今お示しのような点については、向う考えておると思いますが、なお政府においても十分その御趣旨に従つて努力をいたして行きたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 第二番目に、日米経済協力が行われる場合には、やはり資源の問題がありますが、この点は先ほど北澤君が触れましたから申し上げません。その次の問題はやはり資金の問題であります。この協力の内容が消費財が中心になつて東南アジアその他へ出るということになると、この場合はある程度まだいいと思いますが、軍需資材が中心になつたような場合には、どうしても民間資本をかき集めても大したものじやない、結局政府資金か、あるいは外資にたよらざるを得ぬということになるのであります。これは協力の内容によつて多少度合いの違うものでありまするが、われわれがどう見ても現在の生産を一三六程度に、もし万一ふやすというような場合を考えてみても、現在の日本の資本ではとうてい間に合わない。この資金の手当という問題について、政府はいかなる処置をおとりになりますか、この点も承りたいと思うのであります。
  144. 周東英雄

    ○周東国務大臣 抽象的に申しますると、お話のように、あんまり大きなものが一ぺんに参りますと、資金の面で今日本経済はなかなか困るという点が多いと思います。しかしまだただいまのところ、そうまとまつて大きく日本経済力を無視したようなかつこうには出て来ぬようであります。その間に私どもは資金の問題については、十分お話のように研究をいたしたいと思いますが、ただいまのところ、そういう状態であります。その上に先ほどもちよつと北澤君にお答えいたしましたように、特別なものについては前払いの形で来るということもあるやに聞いております。こういう点で資金の面はでき得る限り考えられるのじやなかろうかと、ただいまのところ考えておりますが、しかしいろいろと問題が大きくなつたり何かすると、当然その点については十分考慮を払わなければならず、それに対しては、十分大蔵当局とも相談をして、案の進め方について齟齬のないようにいたしたいと思います。協力ができるかできぬかということについては、日本経済力というものと見合つて、ここに潤滑な資金計画が立つか立たぬかということにかかつておるということについての御意見は、私も同感でございます。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで経済協力が始まつた場合に、もう一つわれわれが心配しなくちやならぬことは、貸借対照表が合つても、経済の循環というか、循環の自動的調節ができなくなつて摩擦が起るという問題であります。言いかえれば、それは景気が破行するとか、あるいは社会の一つの階級に重圧がかかつて来るとか、そういうことがどうしても起りやすい。現に朝鮮動乱ですらも糸へん、金へんという問題が出て来て、一般大衆には潤わないということがあつたのでありますから、計画的な経済協力行為が出て来れば、必然的に起つて来るので、あります。そこでマーカツト声明の中にも、長期経済計画を立てる必要があるということがいわれてあるのだろうと思うのであります。この長期経済計画を樹立するということになると、これはどう見てもインフレの防止であるとか、あるいは今言つた計画的調節行為ということから考えると、現在のような自由経済方式では乗り切れないと思うのでありまするが、そういう点で、政府は新しい観点で政策を用意しておられるのか、あるいは現状を多少弥縫してやられるというのか、政府の基本方針を承りたいと思います。
  146. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように、協力の問題については、当面する問題と、ある程度長期にわたる問題とがあると思うのでありますが、これは常に根本においては、日本経済自立ということができるような形に持つて行きつ、さらに大きく発展するものを考えなくちやならぬのでありますが、そこにおきましては、当然にお話のように、産業間における片寄つた伸び方、従つて一部において非常に弱いところが出て来るということがないように、総合的な立場においてこれを見る必要がありますので、当然その意味における長期の計画は必要でありますと同時に、何としても今お話のように一番大事な、今日においてややともするとインフレの形になりそうな様相を持つというものに対しては、十分に私どもは戒心しつ、これが対策をあわせて考えるということも必要でありますので、その点は今研究中であります。しかしそのことはただちにあるいは金融の法的統制とか、あるいは価格の個別的な統制とかいうことには、すぐには私は行かないと思うのであります。今度のマーカツト声明にもありましたが、これを流れる思想につきましては、ざつくばらんに申し上げまして、関係方面でいろいろ必要なものについて日本に稀少物資さえ渡して行く、それがむだに流れたり、めちやくちやに思惑的に売られては困る、これらに対する処置が必要であろうということは言つております。これにつきましては、かねがね私どもが御協賛をいただいておる臨時物資需給調整法等の活用によりまして、おそらく物によつて使用制限、割当制限というものが起ることは、私はあまり遠いことじやないと思いますが、しからばといつて個別的に価格の公定をやるというような制度は今考えておりませんし、またこれはアメリカの事情と日本の事情というものが非常に違つておりまするし、関係方面でも必ずしもこれは考えてもおらぬようであります。われわれは従来の通りの形において、しかもその間に処して、日本経済を間違いない方向に、インフレを防ぐ方向に必要な制限ということは、具体的の場合に考えて行かなければならぬ場合もあるかと存じます。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大体ただいまの御答弁でわれわれも了承したのでありますが、ただ問題は、長期経済計画の問題であります。この長期経済計画という問題の場合には、今申し上げましたように、国内の物資の使用制限とか、その他のものが出て来るかもしれませんが、もう一つの面として輸出入の管理ということが多少出て来るのじやないか。この点についてはどういうような御構想をお持合せでございますか。
  148. 周東英雄

    ○周東国務大臣 その点につきましては、場合によつて必要ではないかと思います。このたび考えましたようなニツケル鉱のごとき、これは大体政府が輸入をいたす、そうして会計法の特例を設けて、時価以下に売り得るということを考えましたのも、一つの現われであります。原則はやはり、輸出入は民間に行わしめることの原則はかえませんが、物によつてはそういうことが起り得るだろうことは、ニツケルにおけるがごとしと考えております。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでこの長期経済計画を新しく樹立するということになると思いますが、今まであるものに対して経済協力というものを加味して御修正になるか、あるいはこれを発展的に練り直しをやるか、こういうことになると思うのでありますが、これはどういう御構想でこれから御編成になるか。言いかえれば、今までは自立経済審議会でありましたか、ああいう委員会を設けてつくつたこともありますか、あるいは安本内部において独自にそういうものをおつくりになるということをおやりになるのですか。これは相当重大な内容を持つと思うのでありますが、安本長官のお考えを承りたい。
  150. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お尋ねの点は、長期経済政策の問題でありますが、これは必ずしも自立経済審議会というものに、すぐにその政策の立て方についてはかる必要もないと思いますが、しかし政府として一つの新しい立場に立つて総合的な政策を立て、それを具体的に遂行するについては、幸い今の審議会がありますので、もとの計画というものに対する修正とか、あるいは相談とかいうことを行う必要が起れば、当然あれを活用することも、一つ方法だと考えております。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その長期経済計画を樹立するにあたつて、どういうことを主眼点にしてお組合せになるか、少し具体的に聞かせていただきたいと思う。たとえば経済協力をやるにしても、すぐ出て来るものは資金の問題であり、あるいは電力の問題である。そういう点について安本内部においてもある程度の基準なり、メルクマールなんかをつくつておると思うのでありますが、いかがでございましようか。
  152. 周東英雄

    ○周東国務大臣 もちろん経済計画については、この前立ててあります経済自立三箇年計画というものの骨というものは十分に活用し得る、これを私は現在の状況に応じて修正して行くということが一つの行き方だと思います。あるいはこの前も申し上げましたように、いろいろな諸條件の変化によつてこれはかえ得るというのだが、しかしともかく一応日本としての将来進むべき産業計画としての基本ラインを定めるものであると考えておりますが、今日の状況においては、あれはむしろ小さ過ぎるかもしれぬと思うような状態であります。先ほどお答えをいたしましたように、日本はどんどんやり得るのにどうかというのが中心でありまして、今日の場合においてはもつと積極的に生産をふやすというようなことが要請されて来る、また未稼動の工場を動かすということが起つて来れば、この工場をして動かすことを一時的にとどまらせずに、将来も永續するようにするということになれば、今お話のように従来の計画が修正され、同時にそれを動かすに必要な、一番ネツクであるところの電力あるいは資金というものについて、おのずから計画の変更が行われる、かように今考えております。ただいま具体的にどの範囲まで行くということは、まだ最後の結論を得ておりませんからお答えを差控えます。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでお伺いしたいと思いますが、池田大蔵大臣は午前中の委員会におきまして、補正予算を組むと言われております。われわれも組まざるを得ぬ立場にあるだろうと観測しておりますが、補正予算を組む財源といたしまして諸税の自然増收ということがあげられております。これは国民所得がふえるからそうなるのだと思いますが、一体政府は現在中だるみを過ぎて、これからアメリカ予算が通つて、経費が払われるようになると、大体上つて行くように観測しておりますが、昭和二十五年度の国民所得、あるいは生産水準あるいは輸出入の額、これはどのくらいになると見込まれておいでになるか。概数をお示し願いたい。
  154. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これは資料が、御要求によつてお手元に配付してあるそうでありますから、それをごらん願いたいと思います。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは資料を見るといたしまして、最後に一点お尋ねいたしたいと思いますが、安本長官は総合経済政策の軸を握つておられると思うのでありますが、そこで現在一番大きな問題は予算を組むにしても何にしても物価の問題が中心になつておる。ところがその物価の基準は何かというと何といつて米価と賃金であります。そこでこれから補正予算を組むにあたつて、現在の米価あるいは現在の賃金、あるいは現在の一般物資の価格水準、そういうようなものをどういう程度のめどにして、これからの経済を調節して行こうと言われるのか、まずその基本的な方針を承りたいと思います。動かすにしてもどういう程度の動かし方によつて国際価格との問題を解決し、国内的な一つの階層の遊離といいますか、要するに跛行を調節して行くか、どういう程度の基準を目標にして、この問題を解決して行くか。一つの具体的な例を申し上げますと、米価を上げる。そうすると生産者価格の問題と消費者価格の問題とすぐ出て来るのであつて、その負担をどういうふうに均分させるかということで、こういうことがすぐ出て参りますが、まず基本的な方針を承りたいと思います。
  156. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように米価というものが、全体の物価に重要な関係を持つておるということは御指摘の通りであります。従つてこの価格の決定に対しては、非常に愼重に研究いたしておりますが、お話のように米価の中での生産者価格というものに対しては、パリテイ方式をとつて決定しておりますので、パリテイの計算の基礎になるべき九十品目かの物資値上りということをできるだけ押えるように、生産の合理化あるいは原料などの外国から来るものについての船賃の値下げ等に努力することが一つの目標であります。しかし一応今日まで来ておる一つのパリテイによりますと、生産者価格は当然その線に沿うて上らざるを得ないのであります。まだその額については関係省内できまつておりません。しかしこれは当然その関係が起つて参りますが、同時にしからばその上つた生産者価格を、そのまま消費者価格に持つて行くかいなかということについては、今非常に心配をいたしております。私どもはざつくばらんに言つて、できれば一部は消費者に負担を願い、しかもその関係においては、消費者の関係においてできるだけ他の部面においての物価の上らないことに対する努力なり、できれば大蔵大臣も申したかと思いますが、個人の税金に対する減ということをもう少し考えてみたいという考え方でおります。こういうことによつて、一部はやむを得ざるものを消費者に負担を願い、他の部面は、できれば財政的に何か処置ができないものか、こういうふうな考え方で、今相談をいたしておりますが、まだいろいろな点から最後の結論を得ないのでありまして、目下御指摘のような意味においてこれが非常に重大な問題になりますから、政府もあなた方と同じ憂いをもつてこの点についての価格決定の時期、額というようなことについての検討をいたしておる最中であります。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 具体的に承りたいと思いますが、一番基準である米価の決定について、御存じのように大蔵省と農林省が対立しております。けさほども私大蔵大臣に伺いましたが、農林省は御存じのようにパリテイに一五%の特別加算額を加えた額を支持しておるわけです。大蔵大臣の方は、大体一五%はどの程度にかわるかわからぬが、大体あれは否定したいという考えらしい。これははつきり言明はいたしませんが、そういう口吻を漏らされておりました。安本としてはどちらの態度を支持するか、安本長官のお考えを承りたいと思います。
  158. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ここでどうも私が行司の軍配をあげる時期に至つておりません。今よく三省で協議を進めて、重大な米の価格について、できるだけ低かれと今望んでおります。まだ軍配をあげる時期に達しておりません。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 安本長官は木村庄之助じやないから、軍配をあげる必要もない。正しい理論を採用なさればいいと思うのでありますが、ひとつ数字を具体的に申し上げてみますと、米のパリテイが二五〇になるとすると、一五%の特別加算額を含んで、大体七千七百円程度になるという話です。そこで七千七百円程度にして、しかもこの一五%の特別加算額をかりに切る。それと対米比価、麦で換算してみると、もし切つた場合には小麦が千七百十二円になり、大麦は千九十九円になる。そうすると、大麦の場合は、昨年の額よりも安くなる。昨年の超過供出とか、あるいはそのほかのものを加えた場合、バツク・ペイ、超過供出、こういうものを加えた金額が、大麦の場合は千百十二円になります。ところがもし一五%の加算額を今年切るとすると、千九十九円になる。従つて去年よりも今年の麦の値段が安いということが出て来る。こういう数字を見ても、あの一五%を切るということが非常に不合理だということがわれわれは観察できると思うのであります。従つて当然あれは切るべきでない。もしかえるとすれば、別個の生産費計算でかえるべきであつて、もし別の生産費計算をとらないならば、あのパリテイに一五%を足すという方式をとる以外にないと思うのでありますが、この点は安本長官はいかにお考えになりますか、個別的にこまかく聞いてみたいと思います。
  160. 周東英雄

    ○周東国務大臣 こまかいところにお話が入つて参りましたが、私もその数字は聞いておりますので、今愼重に研究をさせております。ひとつでき上つた既成事実はあくまでもそのまま行かなければならぬかどうか。昨年一五%がつけられたということに対するりくつは、あの当時いろいろな関係から、少しでも米価を上げたいという事柄でああいう率が出た、このことは事実であります。別に特別な理由はなかつたようであります。しかし何とかもう少し上げたいのだが、パリテイの計算によると、どうしてもあの出た数字よりならない。そこで従来過去においていろいろもらつてつた奬励金の額を、その年の米価に加算しての率をとる、そのくらいはせしめたいというりくつから出ております。考えようによつてはそういうりくつは、同じようにもう少し高くということならつけるのもいいかもしれませんが、今日のように急激にパリテイ計算の品目が上つて来た。ことにこれは全面的な上りでなく、特殊な品物が上つているというような場合に、このまま持つて行つてさらにつけ加えることがいいか悪いかということは、それは立場々々を考えて、よく研究してみる必要があろうと思うのでありまして、私どもまだこの前の通りに、どんなにパリテイが上つてもその上に足すのがよろしいか、あるいはそれはいらぬのだという結論に達しておりませんので、ただいま研究中でありますから、もう少しお待ちを願いたい。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この米価の問題は非常に重大な問題ですから、安本長官からもう少しお考えを示していただきたいと思うのでありますが、御承知のように今のお話を聞きますと、パリテイ計算というものの基礎と権威が、まつたくくずれてしまつたという印象を受ける。去年はパリテイの指数が低かつたので、特別のサービスとして一五%足した。ことしはパリテイの指数が上つたからつけ加えなくもいい。そういうことになると、パリテイは一体何かということになつて、あれはたびたび御言明になりましたように、九十品目にわたる一般の物価値上りを集計して比率を示しているわけでありますから、パリテイが上つたということは、農家の生計費が上つた、あるいは生産費が上つたということであり、そういうことを示す以外の何ものでもない。従つて一五%足したというのならば、ことしも当然一五%足すという精神でなければならぬと思う。もしそうでないならば、昨年の米価は政治的米価であつて、客観的の物価庁のきめる米価でないと、こういうように私たちは判定せざるを得ない。そこで米価をいかにきめて行くかということは政治的にきめるか、あるいは科学的にきめるか、政府はもはやそのどつちかをとらなければならぬ段階に入つたと思う。そうすると生産費計算できめるのが私は今一番正しいと思うが、安本長官はいかがでありますか。
  162. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはざつくばらんに言つて、中曽根君のお話の点が首肯できる部分があるパリテイ計算についてはむしろおかしいということは、去年大分野党の諸君からしかられた。というのは、非常にインフレが高進している場合においては、むしろどんどん軒並に物が上つて行く。しかも政府が米を出来秋に買いとつてしまう。これは普通の場合には出来秋にはあまり売らないで、一年を通じて平均に売るということでありますから、米価も同じように上り下りするから、おそらく調和をとるということであります。ほかのものはとにかく、米だけは政府の配給責任において出来秋に買つてしまう。それではあとで困るというので後にそのようだパリテイ方式をとつた。それはそのときの一つの政治的な行き方だと思う。ところが今日のようになりますと、私はいろいろ疑問を持つのですけれども、非常なウエートの問題がやはりあると思う。たとえば肥料のごとき問題につきましては、施肥時期でない時期に非常に肥料が上つておるということがある。それはすぐに農家の購買という時期とはちよつとはずれているが、あるときには上つている。それはパリテイによることは事実だ。それからまたみそ、しようゆがめちやくちやに上つたということ、それの上り方が非常にひどいということで、八%も上つたことがあります。それもやはりパリテイに響いております。しかしこれがはたして実際の農家の生計にそのまま及ぶかどうかということは、これは議論があると思う。しかし私は議論はいたしませんが、そういうところにやはりパリテイ計算にも、よほど研究の余地があるなしいうことは、私はあなたと同じ意見を持ちます。これは去年附加率を一五%にきめたときに、お話の通り政治的なものがあると思う。これは野党の諸君に何だアーテイフイシヤルな、人為的なものを加えておかしいじやないか、何の根拠かと言われてしかられたのですが、これは私は一つの政治的なあれだつたと思うのです。それであなたの最後の質問の、一体そういう形によらなくて、米価というものは科学的にきまるべきじやないか、もう議論なくそのきめ方で納得できるような方法はないかという御指摘に対し、ことにあなたは生産費説が正しくはないかということでありますが、これは私も個人的には生産費計算というものが、ほんとうは一番いいのではないかと思います。ただ日本のように五百万農家が、ことに立地的に全国的に非常に気候、風土も違うところでの生産費というものは、ピンからキリまで非常にたいへんなものだ。その中で今一部考えられて、二千戸ぐらい調査して、それで生産費方式できめて行くという行き方は、少し足りぬのではないかということも考えられます。従つてこれについても理論的には正しいが、どういうふうにしてこれを正確なものにするかということについて、まだ研究の余地があると思います。比べると一番よいのではないかと思いますが、それがよほど多数の農家をとつてひとつ生産費計算をやるのが正しかろうと思う。これが今の準備の関係ではできておりません。今の資料だけでは足りませんというところに悩みがある。そこで私は今のあなたの御心配のような点がありますので、ことし二月ごろでしたか、この前米価をきめましたときに、ただちに来年は何とかして米価の算定方式というものをひとつ統一したい、これに対して審議会の学識経験者、実際家を集めて、ともかくも最も妥当だという一つの算定方式をきめてもらおうじやないか。そういたしますと、その算定方式に合せて出た米価というものは、一応みんなが納得したものになるのではないか、こういうふうな考えでそれを立案してもらつておりますが、そういう形に持つて行つて、できれば政治的な価格を決定しないで、科学的な方向に何とかして持つて行きたいと今苦心いたしております。昨年の米価決定につきましていろいろ御意見がありました。一々もつともな点もありますが、しかしその議論たるや、常にスタンド・ポイントの違つた計算方式に出ていた。同じスタンド・ポイントに立つての高い、安いという議論が出なければならないと思います。こういう点は余談だろうと思いますが、あなたの御心配と同じなので、何とか合理的な、科学的な方式による価格算定方式を見出したい。これを委嘱して研究させております。これができ上れば、ことしの米価の算定については、いいものができるのじやないかと思います。  さてただいまの問題につきましてはそういう形になつております。パリテイ方式をとるとすれば、どうしてもそこに生産者価格は当然かえられなければならぬということは先ほど申し上げた通りであります。そこで今の一五%をどうするかということは非常に財政の問題なり、あるいはパリテイ方式で上つて来た何千何ぼとおつしやいましたが、ある程度つけて来た、そういうものはいらぬのじやないかという大蔵省の説と、やはり一旦お約束したのだから——お約束というわけではありませんが、ああいう方式をとつたのだから、その率はかえたくないというような農林省の意見と、いろいろ議論があるようであります。何とか話合いがそのうちにつくだろうと思つております。両方の話を聞いて私ども最も適当なところへおちつかせたい、かように考えております。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これ以上相し上げることはそれでは遠慮いたしますが、米価が上ると賃金べースが上らざるを得ない。池田大蔵大臣は御承知のように選挙前の車中談で、賃金ベースを上げるということを約束しているのですが、おそらく今度の補正予算にこれが計上されると思う。安本長官は一体どういうお心組みでおられますか、承りたい。
  164. 周東英雄

    ○周東国務大臣 いろいろな点において鉱工業賃金指数は毎月大体上つている形になつている。そういう形のもとにおいていろいろと物価の今後における上昇を押えるような策はとつて行く。すなわち押えるような政策はとつて行きますが、それでもかつ全体的に見て、やむを得ざる分につきましては、ある程度工場賃金指数の上昇率と見合せて、低額賃金所得者に対する措置は考えて行きたいと私も考えております。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 賃金べースを上げるのですから、すずめの涙のようなものはおそらく上げないだろう。少くとも最低見積つて千円以上はべースを上げるじやないかと、われわれは常識的に解釈しておるのでありますが、そういうふうにして米価を上げ、賃金を上げ、補正予算を組んで行く、ところがはたしてそれだけの財源があるかどうかということを私は一方に心配しておる。けさ聞いてみますと、諸税の自然増收で八百億、それから昨年度の剰余金の半分、約百億、せいぜい八、九百億くらいしかない、かりに出すとすれば占領費を向うが負担してくれるから、それを流用してあるいは四、五百億くらい出るかもしれない、そんなに出ないかもしれません。そういうようなものを全部入れたとしても、まず千億程度と確実に踏みますが、ところがいろいろお約束になりましたものを乗せようとすると、どうしても金が足りないと思う。そこで切つて行くということになるのですが、一つの例を申し上げますと、一五%かりに米価を上げたとして、しかも消費者に、二〇%消費者価格を上げて負担させる、その場合に食管会計の赤字が四百五十億になる、一般会計から負担して出すということを大蔵大臣つておりますが、それが二百億くらい。そうすると米をいじつただけで約六百五十億から七百億の金がいるということで、いわゆる賃金べースにはおそらくまわらないだろうし、あるいはかりに講和條約の経費、警察の経費とか、いろいろ約束したのが多いと思いますが、一体安本長官としていろいろな場合のバランスを考えて、米価にどれくらいの比重を與え、賃金べースにどれくらいの比重を與え、そのほかの経費にどれくらいの比重を與えて、一応予想されておる千億程度の補正予算を組んだらいいとお考えになりますか。これは大体安本がバランスをとるところだから、安本長官の御見解を承りたい。
  166. 周東英雄

    ○周東国務大臣 バランスをとるところということを申しますが、まだそれは私ここでどのくらいにすると申し上げる時期になつておりません。よく今研究しておる次第であります。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは私は質問をやめますが、最後にこれに別の問題でありますが、電力料金の値上げに関して、値上げの理由の中に、電力会社側が開発資金というものを入れております。はたしてあれが妥当であるかどうかは、世の中の批判を浴びておるのでありますが、私たちは電力料金の値上げは絶対排除しなければならぬ。大体九分割をやつたときに、豊富にして低廉なる電力ということで、松永安左衛門氏があれだけ宣言した。われわれはそんなことは絶対できないと言つて反対したわけですが、はたしてやつて来ると、こういうふうな七割五分の値上げとか、四割の値上げとか、六割二分の値上げとか、あるいは五割であるとか諸説紛々、とにかく四割以上上ることは確実らしい。そういうような公約違反を三箇月後に俄然出して来るようなやり方について、われわれは非常に不満に思うのでありますが、ともかくその中で一つの項目になつておる電源開発の資金、電源開発の経費を電力料金値上げの理由に入れてよいかどうか、安本長官の明答を伺いたいと思います。
  168. 周東英雄

    ○周東国務大臣 明答が迷うことになつてもいかぬですが、とにかく、松永氏の言われていることがどういうことか知りませんが、しかし今日の事態、再編成されて企業体となつた各社の問題としては、開発の場合における減価償却というようなことを、やはり自己経済のうちに考えているのじやないか、その点は将来とも考えられてしかるべきではないかと思います。しかし詳しい説明をまだ受けておりませんからわかりませんが、すべての関係を国家補助とか何かでやるならともかくも、そうでない限りは、おのずからある程度先を考えつつ減価償却をして行くということの意味合いで、ある程度の率を考えることも一つの行き方ではないかと思つております。しかしこれも程度の問題だろうと思います。先ほど苫米地委員からもお尋ねがありましたが、電力料金の値上げについては、私どもも連絡をとつて厳重に監視して行きたいし、またこれは公聽会等も開き得るかと思つておりますので、そうむちやくちやなことの起らぬように皆様方の御協力も得たい、かように考えております。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一点承りたいと思いますが、その電力料金の値上げは公益事業委員会でやるのがしかるべきか、あるいは物価庁でやるのがしかるべきか、これが問題になつてつたようです。その解決方法として、関係方面から指令であるとかあるいは何か指導でもいただいて、それによつて公益事業委員会がやるというふうにきまつたということを聞いておるのですが、一体関係各省の所管権限の争議というものが、そのような関係方面の指示とか書簡なんかできめらるべきものなんですか。私はもつと正しい行政裁判的な純理に基いて行わるべきであつて関係方面の勧告や何かで公益事業委員会にきまつたり、物価庁にきまつたりすべきものじやないと思う。そういう点で、日本政府の毅然たる自主性がないことを非常に遺憾と思うのでありますが、この問題を安本長官はいかにお考えになりますか。
  170. 周東英雄

    ○周東国務大臣 この問題については、ざつくばらんに言つて、私も少し遺憾な点があると思います。しかし法理上の解釈だけできまらずに、いろいろのいきさつで、お話のように一応公益事業委員会ということになりましたので、私も遺憾に思つておりますが、しかしたといそういうことになりましても、物価庁という立場においては、国民生活の上に及ぼす物価全体のことを考え、その中の一つを占むる電力料金に対しては、十分意見も述べ、技術上の連絡においても調整をして行きたい、かように考えております。御指摘の点については、今後なおよく検討を加えて行きたいと思つております。
  171. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島金次君。
  172. 川島金次

    川島委員 大分時間が少くなりましたから、簡單に二、三点だけを安本長官にお伺いしておきたいと思います。  先ほど来の長官への質問に対する答弁の内容を聞いておりますると、政府がさきに立案をいたしまして実施の段階に入りましたわが国の経済自立三箇年計画、これがたまたま今度の日米経済協力の問題に当面いたしまして、せつかくの自立経済計画も、根底から修正もしくはまつたくの改編をしなければならぬ事情に追つたようで、そこでお伺いするのですが、日米経済協力といいましても、その中で国民の最も懸念をいたしまするのは、先ほどもどなたかからお話がありましたように、国民生活水準の問題であります。経済協力は動き出したが、国民生活の水準が低下するような事態になりますれば、非常にゆゆしき問題である。長官は今度の国会の劈頭において、経済自立三箇年計画の中で、昭和二十八年度を期して、国民生活水準は現在の七五%を九十何パーセントかに持つて行く、これを根幹としての経済自立計画であるということを明言されておつた。ところが最近——私はきよう持参いたしませんので、具体的にその名称を申し上げることはできないのですが、ある有力な雑誌でしたか新聞で、しかも安定本部が発表したものだという注釈付で、昨年以来の物価騰貴等に影響を受けまして、二十五年度中においては、大体国民生活の水準は戰前の七五%に復活した、ところが本年に入つて、諸物価の騰貴等に影響されて、国民生活水準は逆に七〇%に引下つて来た。こういうことを有力な雑誌でありましたか新聞でありましたかが、しかもそれは安定本部の計算によるものだという注釈付で書いております。これは、これから発足いたします日米経済協力問題の前提として、きわめて重大な事柄であろうと思いますので、その辺の事情は安本における調査の結果どうなつておりまするか。今私が申し上げましたような事態になつておるのでありますか、それを御承知でありましたらば御説明願いたいと思います。
  173. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように、昨年の十一月ごろまでの関係から行くと、ずつと国民生活水準は上つてつたようであります。その後における物価騰貴等の関係で、実質賃金と名目賃金との関係が少し下つたことは事実でございます。しかし今御承知のように、三月ごろからちよつと物価の点は横ばいで足踏みしております。今後における施策とにらみ合せて、その点についてはなお改善を加えて行きたいと思つておりますから御了承願いたいと思います。ただ先ほどのお話の中に、経済自立三箇年計画を立てたが、それは根本からかえなくちやならぬというようなお話がありましたが、私どもは今日のような国際情勢のもとに、確定不動の将来的な計画を立てることは困難である、しかしてこれは一つの基本ラインであつて、今後における国際情勢のいかんによつては、変化を受けることあるべしということははつきり書いてあります。その意味から行くと、ざつくばらんに言うて、生産関係はあの計画よりも二十六年度はちよつと下りはしないかと思つているくらいなんですが、幸いにして生産の方面においては、むしろわれわれの計画よりも上まわつて行く実情であり、また今後もそうであろうと思うのであります。この間に処して、私は生産の上昇ということと、それから起る国民所得の増、それから起る国民生活水準の維持ということに対しては、今後私はある程度望みを持ち得ると思う。私どももあなたと同じ憂いを持つておるのでありまするけれども、この間のマーカツト声明にもありますごとく、日本国民の生活水準を落すようなことはしないということを言つておりまするし、生産実数それ自体において上つておることは事実でありますから、この間において物価に関する施策なり、その他の諸施策を考慮することによつて、将来とも生活水準の維持、国民所得の増加ということは——非常に大幅でなくとも除々にでもよくなつて行く見込みは、私は立ち得ると考えております。
  174. 川島金次

    川島委員 国民生活水準の維持ということは、言葉だけではなく、実際問題として、ただいま私がお尋ねをいたしましたように、国民生活の水準が引下つて来ているような憂うべき傾向にある、それを、今度政府は生活水準を維持するのみならず、引上げるということが重大な仕事ではないかと思うのであります。かりそめにも日米経済協力のために、国民生活水準が著しく低下するのであつては重大な問題である。この問題をわれわれが考えたやさきに、経済の必然的な問題として、先ほど問題になつておる米価の問題もあり、さらにまた近くは電力料金の値上げ、あるいはまた本日の新聞を拝見しますと、鉄道運賃、ことに貨物運賃の最低三割くらいは値上げ不可避であろうというような報道も、われわれは目にいたします。マーカツト声明によりましても、その根幹をなすものは、まずインフレの抑圧ということが非常に重大に取上げられておる。またその通りであろうと私は思うのですが、現に国際価格からいたしましても、すでに国内価格は、若干の例外はありましても、非常に高い。その上に持つて来て、米価を上げる、電力料金を上げる、さらにまた運賃の引上げ、ベース・アツプも必然的にやらなければならぬ、こういう好むと好まざるとにかかわらざる條件がわれわれの目の前に迫つて来ておる。こういう形の中において、はたしてどういう方法経済自立計画を円滑に取運んで行くか。それはいろいろ問題もございます。物価の問題あるいは金融の問題、財政上の問題がありますが、ことにインフレの抑圧ということを中心に考えれば、何といいましても、物価、賃金、この二つの問題が大きな足ではないかと思う。そこでお尋ねいたすのですが、安本といたしまして、また政府といたしまして、今後の物価政策は一体どういう方針で、どういう姿を目標として進めて行こうとされておるか。およその具体的な方針があろうと思いますので、この機会に明らかにしておいていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  175. 周東英雄

    ○周東国務大臣 こまかいことは別にいたしまして、大きな一つの目標としては、国際経済に結びついておる今日、ことに日本が必要とする原材料は、その大部分を外国に仰いでおるという現状からいたしますと、物価の目標は、やはりアメリカ等自由国家における価格よりも高くなることは避けること、これを一つの目標として考えて行くことができると私は思う。しかしそれは大綱でありまして、日本における経済事情から、すべてを国際価格に結びつけてそれと同じにするという意味では刈りませんが、一つの目標としては——ことに輸出、輸入ということ、あるいは経済協力という面における大きな問題としては、やはり国際価格よりも上らないように、国内価格を調整して行くということについて考えることが一つの行き方である、かように考えます。
  176. 川島金次

    川島委員 物価問題で、もう一ぺん重ねてお伺いするのですが、従来政府が唱えたり実施しておるような、物価に対する放任主義的な、自由主義的な態度を、今後も一貫してやるつもりなのか。むしろ日米経済協力問題を中核といたしまして、国内の物価政策に対して政府が従来考えておるような安易な考え方では、この物価問題がくずれて行くおそれが十分にあるのではないか。新聞の伝えるところによりますと、何か直接統制はやらないで、金融あるいは生産の面において、この問題を解決して行きたいというようなことも言われておるのですか、それ以外に手をつけなければならない事柄が起るのではないかと、われわれは想像いたしておるのですが、その点はどうですか。
  177. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところ、まだ具体的にこれこれのものをやりますということを申し上げる段階に至つておりません。原則としては、やはり個別に公定価格をつけて、価格を統制して行くということは今考えておりませんし、また日本アメリカとの経済上の相違からいたしまして、そういうことはおかしいことであります。問題としては、先ほど中曽根君の質問にお答えしたように、生産なりあるいは原料の割当、使用制限というようなことがまず起つて来るのではないか。そういうことによりまして中間における思惑的な商品の買いだめなり隠れることを避けつつ、有効なところに有効に原材料を持つて行く、そういう方法によつて価格の思惑的上昇を避けるというようなことも、一つ方法でありましよう。また従来からいわれていることでありますが、今日こそあまり不急な仕事に金が出るというようなことのないように、金融面においてのいろいろの操作は必要であろうと思います。しかし法的にこれを統制する必要は別にないと思いますが、何か現実においてそういう面は考慮されてしかるべきであろう、かように考えております。しかしまだ具体的にいろいろな問題についてここで申し上げる時期に達しておりません。
  178. 川島金次

    川島委員 重ねてお尋ねします。先ほどちよつと私が申し上げたのですが、国鉄で運賃の値上げ、その中でも貨物運賃三割値上げが試案として論議されておる。この貨物運賃にいたしましても、旅客運賃の引上げにいたしましても、その理論的な根拠は別といたしまして、実際的に大幅の引上げは、ただちに国民生活に響き、物価の上にも大きな影響があることは言うまでもないのでありますが、この国鉄の運賃の問題について、安本の方面にも、国鉄の方からすでに何らか打合せでも現在あつてお話ですか。そういうことについて連絡でもあつたといたしますれば、その説明を願いたいと思います。
  179. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私まだ連絡があつたがどうか知りませんが、貨物運賃とか、旅客運賃を上げるということは聞いておりません。
  180. 川島金次

    川島委員 そこで、きようの新聞では、貨物運賃の値上げ、しかも三割ということが具体的に出て、新聞記者との会見の談合として報道されております。これは貨物運賃の引上げということは、いろいろ根拠、理由があろうということも、私は否定はいたしません。がしかしこの運賃の引上げが及ぼす影響はきわめて広汎であり、かつ重大であろうと思います。かりにこういう案があるといたしました前提に立つて、今日の場合において、安本当局として、責任者である周東さんは、この貨物運賃の引上げという問題に対して、どういう見解を持たれておりますか。その見解を率直に伺わしていただければけつこうだと思います。
  181. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私どもの立場としてだ、物はできるだけ上げてもらいたくないという気持だけであります。全然そういう話は聞いておりません。これは物価庁関係においては、必ず、そういうことがあれば、こちらに連絡がなければならぬことでありますし、よくその間においては私ども調整をとりたいと思いますし、調べてみたいと思います。
  182. 川島金次

    川島委員 何か私の質問に対して、長官はまことに簡單な意味での答えをしておるようでありますが、私はまじめな意味において質問をしておる。それに対する答えが何か非常にまじめさを欠いているのじやないかとさえ、私の印象では考えます。そういう態度は私はまことにいかぬと思うのです。電力の問題にいたしましても、米価の問題にいたしましても、運賃の問題にいたしましても、私が一番前提にお尋ねをいたしました国民生活の水準の維持、さらに積極的には向上という事柄と非常に重大な関係がありますので、私はその事柄についてお尋ねし、長官としてのまじめな、しかも具体的な確固たる見解を承ることによつて、われわれ今後の問題に処するにあたつての有力な参考にしたい、こういうことで私はお尋ねしておるのです。どうかそういう意味でお答えを願いたいと思うのです。時間がありませんから、最後にお尋ねをいたすのでありますが、今後の国民生活の維持、あるいはそれを中心として物価の問題、あるいは金融財政上の問題について、いろいろ先ほど来から私も伺つたことでありますが、この日米経済協力に関連して、さらにまた私どもが重視してやみませんことは、労働の問題、労働生産力の問題——いかに日米経済協力の話合いが円滑に進められ、具体的に国内経済にとつてプラスになるような話合いができましても、問題は、設備資金はもとよりでありますが、現実に物をつくつて行く労働階級の労働生産性の問題、裏からいえば労働者の生活の問題、これが非常に重大な事柄であろうと思います。そういうふうに考えておりますやさきに、政府部内におきましては、最近労働三法の改訂を何か企画いたしておるやに私は聞き及んでおります。しかも私の入手いたしました情報によりますと、労働基準法の改訂、たとえば労働時間の延長、緩和等を中心として、ややもすると労働強化になりそうな方向への改訂が、政府部内にもくろまれておる、これは安本長官の直接の担当ではないのでありますが、政府部内の長官として、こういう事柄もきわめて重大な関係のある仕事の一つであろうと思います。そういうことにもおそらく長官は常時関心を持つておられると思いますので、お尋ねいたすのですが、それら労働三法等についての改正の企画というのが、どの程度に今進んでおるのか承知でありましたならば、この機会に、きわめて簡潔でけつこうでありますので、お示しを願いたいと思います。
  183. 周東英雄

    ○周東国務大臣 労働基準法等の改正をやつておるか、またやつておる内容についてという話でありますが、まだ具体的に私どもは聞いておりません。閣議の問題になつたこともございません。あるいはそういうことが新聞等で伝えられたか知りませんが、私どもはあくまでも労働者の地位の保全ということについては、従来からまじめに考えておるのでありまして、今後日米の経済協力というものがどういうふうな形に具現して来るか知りませんが、あくまでもそういう場合においては、労働を搾取して行くというような形はとりたくない、こういう気持でおることだけを申し上げておきます。
  184. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林百郎君。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 簡單にひとつ質問をしたいと思います。マーカツトの声明を見ますと、日本の将来の市場を東南アジアの方向にさし示していると思うのであります。そこでこの問題を中心にして二、三お聞きしたいと思うのですが、原材料の調達については、マーカツト声明並びに日米経済協力としては、どういう方向を日本に指示しておるか、この点についてまず安本長官にお聞きしたいと思います。原材料の輸入、これが非常に重要な問題だと思いますが、この点については安本長官としてはどう考えるか、またマーカツト氏としてはどういう方向を指示しているか、こういう点をまずお聞きしたい。
  186. 周東英雄

    ○周東国務大臣 先ほどその点については北澤君の質問に対してお答えいたしたのでありますが、原材料等については、でき得るだけ日本に対して必要な物を送る、稀少な物資について国際割当会議等がありますが、そういう物についても、できるだけ日本に対しては送るようにして行くという話であります。
  187. 林百郎

    ○林(百)委員 その点がはつきりしないのですが、原材料の点で新たに日米の間に何か協定なり相談なりをしておるのかまたする計画があるか、その点をお開きしたい。
  188. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まだ具体的に日米の間において交渉はいたしておりません。
  189. 林百郎

    ○林(百)委員 大体将来の市場を東南アジアに求めるとして、そうすると決済の方法ですが、大体は東南アジアというと、御存じの通りにスターリング・ブロツクに加盟しておるものが非常に多いので、将来これとの決済の方法について、ドルとポンドの間の調整をどういうように考えておられるか、お聞きしたい。
  190. 周東英雄

    ○周東国務大臣 それはおそらく二十四日、明日から始まるでありましよう日英の交渉で、主としてこれが問題になると思います。そこで折衝の結果きまると思います。
  191. 林百郎

    ○林(百)委員 折衝してきまるのだが、大体日本政府考えとしてはどうするつもりか、どういうように調整して行くつもりかということを、私は聞いておるわけです。
  192. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはまだ折衝をなす内容については、私から申し上げない方がよろしかろうと思います。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、考え方を聞くわけです。あなたを責めるわけではない。もう少しざつくばらんに話を聞かしていただきたい。たとえばスターリング・ブロツクとのドル・クローズの問題、こういうような問題も将来このまま継續されるのか、あるいは廃止されるのかあるいはポンド・ユーザンスの問題なんかもどうなるのか。日本としてはこの際ドル圏とポンド圏の間にはさまつて相当いろいろな問題が出て来ると思いますが、そういう点をどういうように調整して行くかということを聞かせてもらいたい。マーカツト声明をよく見ましても、どうも材料の点では十分保証するというようなこともないので、ただ市場としては東南アジアの方向を指示しているわけなんです。東南アジアというと、御存じの通りここではイギリスの資本が相当入つて来ている。このイギリス資本と日本資本との間にまたいろいろ角逐問題が出て来るので、そういう問題の一つの非常に象徴的な問題として、決済の問題が出て来ると思うのですが、それについてどう考えるか。要するに決済の方法を聞くことによつて、ポンド地域とドル地域の間に入つた日本の将来の産業がどういう方向に行くかという問題、それからポンド圏とドル圏の角逐の間にはさまつて日本がどういう方向に行かなければならないかという問題が、判断し得ると思う。それについてどういうことを考えているかということを聞きますと、将来日本産業がどういう方向に行くかということの判断になるのですが、大体決済方法について、どういうように考えていられるか、説明を願いたい。
  194. 周東英雄

    ○周東国務大臣 あなたのお話はよく承知の上で今申し上げておる。ドル・クローズの存置がいいかどうかということはいろいろ議論がありますが、これはあなたの御心配とまつたく同様にいろいろ影響がありますので、交渉が始まろうとしている今、私が申し上げることを差控えたいと申し上げておるのであります。よくあなたのお話を理解の上で私は今申し上げられぬと申したのです。
  195. 林百郎

    ○林(百)委員 特に共産党だから説明できないようなこともあると思いますから、それならそれでやむを得ぬと思います。その次に、マーカツト声明の中でいろいろな問題がありますが、インフレを防止して国際的な物価さや寄せする、もし日本の国が手放しで楽観的な方向に行つて、インフレに対する相当の思い切つた措置をとらなければ、日本はせつかく経済的に自由な立場に立つても、発展は見込まれないというようなことが言われているようでありますが、今の川島委員質問の中にもあつたように、一体日本の国の経済の動向が、インフレ的な要素を多分に持つて来たということはいなめない事実だと思います。たとえば電力料金の問題、あるいは運賃の問題、あるいは米の消費者価格の問題、こういうような問題でさらにインフレの方向に行かないようにデフレの方向に進めるということは非常に困難だし、もしそうなると、このマーカツト声明の中にあるインフレ抑制ということ、あるいは国際価格へのさや寄せというのが、日本の勤労階級の低賃金とか思い切つた徴税というような形で、日本の人民大衆の犠牲の方向に行くのではないか。そういう形で国際価格へのさや寄せ、あるいはインフレの抑制という方向に行くようにわれわれは懸念するのですが、その点について安本長官としては、マーカツト声明のいうインフレの方向に行かないようにするということについて、具体的にどういうことを考えられているかお聞きしたい。
  196. 周東英雄

    ○周東国務大臣 その点は私たちも一番心配をし、施策を練つておるところであります。ただ物価を上げれば——電気料金とか米価とかいうものが上ること即インフレというようにおとりの御意見のようですが、ただ私は少し意見が違う。物の上るということと、それを対象とする物がなくなるということと見合つたときに、悪性のインフレが起るのであります。私は物が上つても、それに相当する物資があるときにはそのおそれはないと思う。これははつきりしている。私はそれはりくつだと思う。ただ問題は、そういう面から見ると、先ほど川島さんにお答えして御了承願つたと思うのだが、相当物が入つて来て生産が高まつて行くということならば、ここに国民経済はよくなる。ただその場合に一番困ることは、せつかく物が生産されても、諸外国との関係において、その価格が向うより高過ぎると売れぬということが起る。これが問題であるということが一つある。それからもう一つは、輸出関係が軍需品とかいうようなものばかりであつて輸出の数社が多くて、あとに国民経済に影響を及ぼす民需品の数が少くなつては困るという点がある。この点については私ども十分な関心を持つて処置いたしたいと思つているのでありまして、今日の一番心配な点、ことにマーカツト氏の声明の中でインフレを指摘されている点は、そういうことの立場から考えつ、日本物価がめちやくちやに上つて輸出ができなくなつては困るぞという指摘だと思う。従つてそういう面につきましては、先ほどもお話したのですが、ある程度国際価格で入つて来た原料を使つて商品化したものの価格を引下げる方法としては徹底的な設備の合理化というものが必要だと思う。この点は協力というものが單に一年くらいで終るものではないと思うのでありますが、早急に設備の合理化等をはかつて、單位価格の引下げ、生産数量の能率化ということをはかりつつ対応して行くことが一つだと思う。また一生懸命になつてつております自国船による原料の輸送、商品の販売ということが一つ考えられることであります。非常に値段の上つておるということの中には、今日のところ船賃が非常に高くなつておることは御承知の通りであります。一例をあげて言つても、燐鉱石が原価九ドル、船賃を入れて十二ドルで入つていたのが、船賃の値上げで二十二ドルくらいでなければ入らない。船運賃を下げるためには自由船の増強ということが必要である。これについては今集中的に努力して、相当数量船もふえておりますが、これは多少時間的なずれがあります。これを御指摘になると思いますが、片方協力の問題にいたしましても、そう一ぺんに今大量に来るわけではない、ぼつぼつ来るので、それに対応する面を考えつつ、しかも生産企業者の利潤をある程度自粛してもらいたいということを考えておる。先まわりするようですが、先ほどお話のあつた労働者を搾取して低賃金でさや寄せするのではないかということについては、私どもは実際避けて、機械設備の能率化によつて対応して行く、かように考えております。
  197. 林百郎

    ○林(百)委員 インフレの問題についての安本長官考えについては、一応私の方も賛意を表する部分もあるわけであります。実はその点について、物資の裏づけが欠乏して来たから物の値が上るのではなく、物資の裏づけは十分あるんだ、それに対して物の値が上つておるのは、これはインフレでないのだと言われるが、物の値が上つておるにかかわらず、豊富な物資が裏づけされておるということを証明し得る要素がないわけである。日米統済協力の問題を見ても、最もわれわれが関心を持つておる原材料の輸入については、非常に抽象的であつて、あまり親切な説明がない。だから日本経済を緊急物資調達計画の一環として入れるということ、それから東南アジアの方向をさすということも、非常に戰略的な意味を持つていて、日本の産業が好むと好まざるとにかかわらず、アメリカの軍事的な計画、あるいは東南アジアにおける民族独立運動に対する一つの圧力のために、日本の製品が使われるということは、われわれは大体想像し得る。そうなりますと、日本の産業が将来やはり軍事的な方向をさして来て、われわれ国民生活に必要な再生産の面からわれわれのつくつた物がはずれて行くということが非常に憂えられる。これは明らかにインフレ的な要素のために最近の物価騰貴の情勢が出ておると思う。それをマーカツト声明の指示するように、インフレを極力押えるということになると、あとの拔け道は、どうしても税金の非常な強圧的な徴收、あるいは労働者の賃金の統制というような形で、大衆の犠牲になるということが大体考えられるので、私は説明しておるわけであります。  そこでもう少しマーカツト声明について掘り下げてお聞きしたいのですが、基礎原料の供給源ということについては、メーカーである日本が新しい供給源を求め、これを開発するというようなことが指示されておるようであつて向うから大体この程度のものを供給するという保証はないようであります。先ほど安本長官から稀少物資という話がありましたが、稀少物資だけでは不十分だと思います。原材料の保証については具体的にどういうことがどういうように指示されているか。稀少物資のほかに、たとえば粘結炭、鉄鉱石あるいは工業塩というものについてはどういう話合いが進められ、あるいはどういうふうに安本長官は了解しているか、この点もう少し具体的に説明を聞きたいと思います。
  198. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まだ個別的、具体的に何をどれだけやるとかやらぬとかいうことは何も申し述べておりません。しかしこのことは声明にあるように、必要な原材料については入れるということであります。私どもはそれを信じておりますし、それをただ單に信じておるというだけでなく、休会前の議会で大分あなたに詰問されたのだが、輸入を楽観しておるが入らぬだろうということだつが、一月、二月、三月の輸入は決して価格の騰貴だけによる増加でなくて、とにかく一億四千五百万ドルというものが入つておる。二月は一億三千万ドル、三月は一億五千万ドル、こういうかつこうで入つて来ております。これは今までのことだから信用できないとおつしやるのですが、ともかくも今は輸入の方が非常に多くなつておるわけであります。これが再び生産されて出るのですが、こういう形勢は将来も信じてよろしい、かように考えます。
  199. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に楽観的な話を聞いたのですが、われわれは輸入は計画をはるかに下まわつていると思う。それから輸入の金額なんか大分数字を言つて示されましたが、御承知の通り運賃は厖大に上つているという点からいつて、現実的な原料材の輸入については、私はやはり安本長官根本的に見解を異にする。この点がやはり日本の将来の経済発展には、一番致命的な問題になると考えております。この点は安本長官は依然として非常に楽観的なようですが、これは将来事実が証明すると思います。  その次に外資導入の問題でありますが、外資導入についての日米経済の問題を見ますと、これは声明の中にも、現在は長期的計画のもとに買付注文を発するような單一の総括的計画考えられておらない。短期の非常に現地調達的な性格を持つた発注であり、しかも外資導入の方針については、何か長期にわたる資金を、根本的に日本の国の基礎産業を発展させるために投資するという方向が、あまり見られないのでありますが、この点について安本長官はどう考えておるか。さらに、むしろ日本の国が外資を保護する政策を明確にしろといつたことを声明の中で明らかに言つておるのでありますが、政府としてはこの外資を保護する政策として、どういうことを一体考えておるのか、その点もひとつ説明願いたいと思います。
  200. 周東英雄

    ○周東国務大臣 いろいろお話でありますが、前段には必要な物資は早急にいろいろ考えるが、将来についても考えるということがあつたはずだと思います。それから今の外資の問題、入れるけれども、お前の方で入りやすい態勢を整えろということを言つておるがどうだ、これは当然な話であります。人の好意によつて入れてもらおうと考えることが大きな間違いであつて、どこまでもビズネスということで考えるならば、日本受入れ態勢が、しつかりするこが必要であります。その意味において日本の通貨の安定ということも必要でありましようし、さらに今より外資を入りやすくするということについては、外資導入に関する法律の改正ということもあります。休会前の議会でも、たしか従来は外国から持つて来たドルの証明がなければいけなかつたのですが、今度はある程度会社の株を持つというような場合において、新規の設立とかあるいは増資というものに対しては、認可でよろしいということにしたりしている点は、外資の導入を容易ならしめる一つの方策であります。また将来はやはり配当等についても本国へ送金するということに対して、これを許可することは外資導入をやすからしめる方策であると考えます。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 私たちがこの点を聞くのは、外資保護政策を明確にしろということでありますが、この外資を保護するという名目のもとに、日本の産業の自主性まで犠牲にする方法がもし求められたとすればそれはせつかく外資が入つて来ても日本経済のためにはならなくて、むしろアメリカの資本の保護助成ということになつてしまう。その点が心配だから、マーカツト氏が日本政府は外資保護政策を明確にしろということを言つているが、具体的にどういうことを計画しているかということです。現に御承知の通りイランにある石油会社の接收というような問題が、国際的な問題として討議されているのですが、あの轍をわれわれは踏んではならない。もちろんアメリカの資本が入つて来ることもいいけれども、しかしその保護政策を明確にするというようなことのために、日本の産業の自主性を傷つけられるような方向まで行つては困るということで聞いているのでありますが、この点は時間がないから次に移りたいと思います。  その次に、先ほど安本長官の言われた自国船による原材料の輸入あるいは輸出の促進ということでありますが、マーカツト声明を見ますと、われわれが考えておつた、あるいは政府が説明していたような、アメリカの繋船の用船計画というのは法律上許されないのだということで、用船計画はできないということのほかに、日本の海上運賃のダンピングが非常に警戒されていて、日本の自主的な海運業の発展というのは大分制限されるようですが、先ほど安本長官の言つた自国船による貿易の進展ということは、結局日本で船をつくるということで、アメリカからの用船計画というのは大体見込みがないのか、その点をひとつ御説明願いたいと思います。
  202. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところ、遺憾ながら用船についてはちよつと困難であります。そこで日本の自国の船の新造改造、買船というようなことが問題になつて来るわけであります。
  203. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめたいと存じます。
  204. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際お諮り申し上げて御了承を得ておきたい事項がございます。それは本委員会におきまして閉会中審査の申出をなしまする場合、その手續等につきましては委員長に御一任を願いたいと存ずることであります。なお閉会中委員を派遣いたします必要のありまする場合は、その手續等はすべて委員長に御一任を願いたいと存じまするが、以上いずれも御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御異議がなければその通りに決します。  本日はこれをもつて散会といたします。     午後四時四十八分散会