運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-26 第10回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十六日(月曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 上林山榮吉君 理事 橘  直治君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君       村利右衛門君    小川 平二君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       黒澤富次郎君    島村 一郎君       庄司 一郎君    田中 啓一君       玉置  實君    苫米地英俊君       中村  清君    中村 幸八君       永井  英君    永井 要造君       橋本 龍伍君    船越  弘君       本間 俊一君    松浦 東介君       松本 一郎君    南  好雄君       宮幡  靖君    井出一太郎君       今井  耕君    北村徳太郎君       小林 信一君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    早川  崇君       山本 利壽君    戸叶 里子君       西村 榮一君    松澤 兼人君       水谷長三郎君    江崎 一治君       横田甚太郎君    小平  忠君       黒田 寿男君    小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         厚 生 大 臣 黒川 武雄君         通商産業大臣  横尾  龍君         運 輸 大 臣 山崎  猛君         郵政大臣電気通         信大臣     田村 文吉君         労 働 大 臣 保利  茂君         建 設 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 周東 英雄君         国 務 大 臣 林  讓治君  出席政府委員         内閣官庁長官  岡崎 勝男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君 二月二十六日  委員佐藤榮作君、松本一郎君、北村徳太郎君、  竹山祐太郎君及び宮腰喜助君辞任につき、その  補欠として橋本龍伍君、田中啓一君、山本利壽  君、小林信一君及び早川崇君が議長の指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  内閣総理大臣に対する質疑に入ります。松本一郎君。
  3. 松本一郎

    松本(一)委員 総理大臣には、先般来ダレス特使の来訪といい、また国会といい、連日の御健闘に私どもは感謝いたしております。しかして、講和会議日本完全独立と、明るい見通しが次第に近づきつつありますことは、御同慶の至りにたえないのでありますが、しかし、それに反して国際情勢は日々に險悪の度を加えておるのであります。この間総理大臣にはさだめし御心労願つておることと存じます。つきまして、私がお伺いいたしたいと思いますことは、もうすでにたびたび質問されてはおりますが、いまなお日本国民のうちには、往々にして誤つた考えを持つ人なきにしもあらずと考えますがために、一応重要な一点だけ特につけ加えてお伺いしておきたいと思います。  すなわちわが国平和主義についてであります。新憲法のもと、わが日本戰争を放棄し、世界いずれの国とも仲よく交際をして、文化国家としてこの地球上に私ども民族は生存して行くという、この根本の理念において何人も異論のあろうはずはありません。しかしながらこの平和主義を一歩誤りますと、不幸な敗北民族となつて外国隷属国家となる危険なきにしもあらずであります。私どもは常に平和を念頭に抱きつつも、万が一暴力によつて外国から不法な侵害を受けたるときは、断固としてこれを撃退して、自国の幸福と秩序と平和を維持するという強い平和理念を持つものであります。しかし中には平和々々というているうちに、いつしか知らず知らずの間に敗北民族となる誤つた平和主義者、中に極端なのは、某国と共鳴してわが日本隷属国家に陷らしめんとする、ことさらなる陰謀を持つ平和主義者、こう三通りあるように私は考えます。このことを国民によく知らしめることが、今後の日本の生存の上に最も必要なことであると存じますので、この機会総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。平和を論ずるのあまりに、敗戰主義というか、自衛権までも放棄するようなことがあつてはならぬというお尋ねと思いますが、その通りであると思います。今日は御承知通り国際情勢が緊迫した結果、さらに日本ばかりでなく、中立論が大分盛んになつて来て、中立論によつて戰争を防止するというか、少くとも介入したくないという議論が出ておりますが、これもやはり平和の名においてせられておるようであります。平和々々というがために、自衛権まで喪失して顧みないというようなことがあるならば、むろんたいへんなことであつて世界の平和、一国の平和、むろん維持すべきでありますが、その平和を維持すべきために自衛権まで喪失するというような、平和主義に堕するがために、自衛権あるいは自衛に関する思想とか、みずから国を守る考えさえも失うということがあつては、これはせつかく講和ができて一国が独立しても、何にもならぬことでありますから、平和は平和、同時にみずから守る精神はあくまでも徹底すべきであると私も考えます。
  5. 松本一郎

    松本(一)委員 ただいまの総理大臣平和主義についての御議論は、非常にけつこうだと存じます。このことは、八千万国民がこの重大なる危機に立つわが日本民族としてよく承知さるべきことと存じます。  ついては、第二にお伺いいたしたいことは、講和会議に際しまして、賠償の問題であります。特にフイリピン賠償でありますが、伝え聞きますところによりますと、フイリピンはわが日本に対して相当強硬なる意見を持たれているようでありまして、八十億ドルになんなんとする賠償を取立てようという意向も一時あつたようであります。このことに関しましては、去る十五日の参議院外務委員会において総理大臣は御答弁されております。すなわちフイリピンについては、戰時中日本の行動が穏やかでなかつたので、いまだにおもしろくない面もあるように思われる、非常に御心配のように御答弁されております。なお十九日の東京ホーブライト支局長の談といたしまして、フイリピン指導者たちは、日本フイリピンとは互衛互助精神に基いて今後交際をして行かなければならぬのであるが、しかし対日講和に関しては強い態度をとるであろう。なおフイリピン視察団が今日本のいろいろな工場等を視察して帰られる、ついてはこの視察団は、マニラに何を輸送せんとするのであるかということを考慮しておると報道いたしております。なおまたマニラフイリピン・ヘラルド編集長の談によりますと、これは二十日でありますが、ダレス氏はフイリピンにおいて、わが日本賠償について、それが実行可能である限り、フイリピン要求については考慮すると言われて、ある程度の保証をしたということが報道されております。なおまたさかのぼつてダレス氏が東京において外国記者団との会見の席上で、日本には現金による賠償はおそらくとり得なかろうということを言われております。但し工場設備とか生産物というような賠償については、言及されておらないのであります。この間非常に微妙なものがあつて、将来の日本のために重大なる影響があろうと考えます。このことについても、総理大臣の御所見をこの機会に承つておきたい、かように思うのであります。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、秘密会のときにおける私の説明は、これは秘密会でありますから、ここに私は答弁をいたしません。またダレス氏がどういう話をフイリピンにおいてせられたか、あるいはフイリピン政府としては、どういう考え方で対応したかということは私は存じません。但しフイリピン政府としては、日本賠償を求めるということは、これは始終唱えておるのであつて、想像すればむろんその要求はあつたろうと思います。しかし日本現状において、八十億ドルでありますか、賠償を求められても、これは拂う能力はないと思います。また日本としては、今日まで賠償物資として送り出したものもあるので、賠償に対しては相当な考慮を拂つておりますが、この上さらにということになつたら、これはむずかしい、支拂い能力はないと思います。その辺の交渉がどうなりますか、フイリピン要求するがごとく連合国側がこれに応ずるかどうか、これは今後の話合いであろうと思いますし、講和條約の内容をなすものでありますから、詳しいことは私はここで説明を差控えたいと思います。
  7. 松本一郎

    松本(一)委員 今日の段階におきまして、ただいまの御答弁以上のことを承りますことは、おそらくこれはむずかしいことと存じます。しかしながら講和会議は、佐藤参議院議長などは、年内に準備、来春になるであろう、と気の長いことを言われております。しかしながら、国際情勢変化いかんによりましては、意外に早まることがなきにしもあらずと考えるのであります。そのときになつてから賠償云々をいつたとて、もうすでにおそしと考えます。そのために私どもは、この機会日本国民の強い輿論を、この国会を通じてフイリピン初めアメリカに訴えたいと思うのであります。すなわちわが国が今置かれた現状は、申すまでもなく小さな海を一つ隔てて危険なる共産主義国と対立しておるのでありまして、万一のときには、わが日本民族は、敢然として自由主義国の一員として、この共産主義国打倒のために、立たなければならぬことも予想しなければなりません。このときから考えますと、わが国経済的に復興再建いたしまして、国民生活が一日もすみやかに総体的に安定することを念願としておりまして、終戰来アメリカの援助によりましてここまで再建復興いたして参りました。幾分安定して来たとはいいながらも、これは国民のほんの一部分でありまして、大部分農山漁村あるいは市街地の細民階級などは、まだ生活苦にあえいでいるのであります。昨年十二月、正月を控えて砂糖の配給すらも辞退した農民、漁民あるいは零細民が多数あること等は、アメリカフイリピン経済視察団あたりの方が、日本の中上層部だけをごらんになつて日本賠償能力ありなどと万が一考えなつたならば、たいへんな間違いであると思います。去る二日の工業倶楽部におけるダレス氏のあの講演の中にも、間接的共産主義を防ぐ手段として、抑圧と貧困と不正のある社会は、共産主義は防げない、こう言われております。まことにこれは真理である。しからばその貧困とは、すなわち生活難国民の多い国家は、共産主義の危險から防ぐのは容易でないということが想像いたされます。ここでもし一路復興途上にある賠償工場あるいは生産物を、将来にわたつて賠償しなければならぬということになつたといたしましたならば、必ずそこにはこれが上にも失業者がふえましようし、のみならず生活にあえぐ者もふえましよう。またひいては国民全般思想にも大動揺を来し、フイリピンに対する将来の感情のみならず、自由主義国との団結に大きな障害を與えるものだと私は思います。なるほどフイリピンには日本軍人行つて相当乱暴を働きました。品物で賠償せよと言われたとて、やむを得ないだろうと思うのでありますが、目前のもののみにこだわつて、五年、十年、永遠の世界平和ということを忘れるがごときことがありましたならば、これはひとりわが国のためのみならず、またフイリピンいな世界のために大きな不幸であると私は考えます。ついては次の四点を指摘しまして、この際賠償だけは特に御考慮を煩わしたい。しいて日本賠償しなければならぬならば、御迷惑ながら、御親類同様のアメリカ日本に肩がわつていただきたい、こう実は思うのであります。  その第一点は、すなわち太平洋戦争は一部のわが国軍人がやつたことである。国民の大多数は、ただ命令に黙々として従つただけであること、第二点は、わが国の国体は、かつて天皇主権から在民になつて、ここに民主国家として新しき国家が建設されたこと、第三点は、ポツダム宣言にも賠償金云々のことは書かれておらない、いわれておらないということ、第四には、わが日本民族がこの共産主義の強力なる防波堤として今後受持つ使命がいかに重大であるか、この四点を特にフイリピン初めアメリカにおいて御考慮を願いたいということと、さらにいま一つ日本のかつて歴史、すなわち今から七百年前に蒙古大帝国がわが日本を攻めて来た、わが日本民族は団結してこれを撃滅して成吉思汗以来の——あのアジアのちようど今日のソビエトの勢力圏とほぼ同じであります。この蒙古大帝国の野里も、日本民族がこれを打砕いたのである、歴史は繰返すということがもし真実とするならば、よほどこの点を私ども考えて、日本のこの歴史的使命がいかに重大であるかということ、これをまず外国に知つていただくこと。いま一つ日本人の性格であります。日本人は大体において信義の厚い国民である。すなわち義は大山よりも重くまた恩義に報いるに非常に厚い国民である。恩を知らざる者これ禽獣にひとし、これが血潮の中に流れておる伝統的民族である、こう考えます。このことを特にお考え願いまして講和会議にあたりましては、総理大臣に格別の御健闘を賜わりたい、かようにお願いいたします。  第三にお尋ねいたしたいことは、この予算案を拝見いたしますと、大体において失礼ながら私ども非常に上できだと存じます。占領下において総理大臣大蔵大臣の御苦労に感謝をいたします。しかし予算内容並びに数字を検討いたしますことも大切ではありまするけれども、この予算を運営いたしますにあたり、この衝に当る国家地方を通じて約三百万人になんなんとする公務員の心構え、これいかんによつてせつかく予算国民のためになりあるいはためにならないということになるのであります。しかるに終戰以来公務員の道義秩序非常に頽廃いたしまして、汚職事件は御承知通りく今一一例は申しませんが、枚挙にいとまあらずであります。最近幸い経済も復興いたし、物資出まわりがよくなりましたので、やや下火になりましたとはいいながらも、表面へ出るのは少くなりましたが、なお裏面においては汚職がなお相当あると思うのであります。また最近中央では大分減りましたけれども地方自治体におきまして、あるいは組合におきまして、しかもなお昔のごとく相当あることを私ども遺憾に思うのであります。ことに知事公選以来地方自治体のいろいろな醜い事件の多くなつたこと、これを私どもは意外に、実は残念に思つておるのでありますが、この際国民思想を善導し、惡化を防ぐ上からも、官紀を徹底的に粛正し、吏道を大刷新して、国民納得の行く政治をやらなければ、せつかく予算も私は無になるのではないか、また日本国民は悪いことには一つ言うと二つ目政府が惡い、政府が惡い、こういうので、その責任政府に転嫁する癖があるのであります。自分の足元を見詰めずに、やれ政府が惡い、與党が惡い、自由党が惡いとすぐに言うだろう、すなわち前の片山内閣のときの農林大臣永江氏は何をやつたか、また芦田内閣のときの栗栖大蔵大臣は何をやつたか、こういうことを考えて、上に立つ者が……。
  8. 小坂善太郎

    小坂委員長 質問でありますから、そのつもりでお願いし申す。
  9. 松本一郎

    松本(一)委員 下の公務員が惡いことをするのは実は無理がないのでありまして、幸い総理大臣は非常におきれいなことがお好きであります。また御人格におきましても清廉御潔白であります。いかにしてこの三百万人の公務員吏道を刷新あそばされようとされるのか、その御方針を承りたいと思います。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、賠償の問題については、先ほど申した通り講和條約の内容をなすものでありますから、あなたの御意見に対しては、私の意見を申し述べることは差控えたいと思います。しかし御意見は承つておきます。  また吏道の高揚あるいは国家公務員汚職問題についてどう考えるかという問題でありますが、これは政府としても、あくまでも道義の高揚なり、あるいはまた公務員汚職については、嚴罰をもつてこれに臨む考えでいたしております。これは従来もそうでありますが、今後ますますその考え涜職その他の取締りをいたしたいと思います。涜職等の問題も、結局社会生活の反映であつて社会生活が安定をすれば、従つてかくのごとき悲しむべき問題も少くなろうと思いますが、とにかく今日は敗戰後間もないときでありまして、またいくらか経済が安定したと申しても、昨年以来の話でありますから、この社会生活経済生活の安定は、やがてまた公務員涜職等の問題が少くなるであろうと思いますが、しかし取締りとしては今後ますます励行いたすつもりでおります。
  11. 小坂善太郎

  12. 川崎秀二

    川崎委員 すでに一箇月にわたりまして予算審議いたして参つたのでありまするから、もはやこまかい質問はいたしません。大づかみにその後の情勢変化並びに予算審議を通じましての民主党としての考え方をとりまとめまして、しこうして総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。  第一の問題は、本予算案審議を通じまして、われわれは世界情勢並びに日本物価事情が非常に変化をして来た点からして、補正予算は必至であるという感じを受取つております。また先般大蔵大臣は、川島金次君の質問に答えられまして、情勢次第によつては、補正予算を組む、こういう御言明もありました。総理大臣は、もちろんこの予算で足りるとは思つておられましようけれども情勢次第によつて補正予算を組む方針でありますかどうか、この点をまずお伺いしておきます。
  13. 吉田茂

    吉田国務大臣 今日まだ本予算もきまらない前に、補正予算を組むという気構えがあるかとおつしやれば、ないと言わざるを得ないのでありますが、しかし今後天災地変、いろいろなこともありましようししますから、その場合に必要とありますれば、補正予算を組まなければならぬだろうと思いますが、今日においては私は予定をいたしておりません。
  14. 川崎秀二

    川崎委員 天災地変が起らなくても、すでに今日起つておる世界情勢からして、補正予算が必至であることは、與党側政調会長あるいは幹事長も認めておるのです。ただそれは今日の段階においては、一応この予算で通しておいて、その後に補正予算を組もう、こういう言葉のニユアンスの違いだけであつて、ほとんどこれは全般的な輿論になつておると思うのであります。  そこで総理大臣にさらにお伺いをいたしておきますけれども講和会議前にいろいろな問題が出て参りまして、講和條約に関達する諸種の問題から、当然臨時国会を召集しなければならぬ。また補正予算が必要であるというようなときには、臨時国会を召集しなければ、とうてい来年の通常国会まで待つというようなことには相ならぬと私は思うのであります。また総理大臣の確固たる御言明によつて講和條約は本年中には成立する。こういうことでありますから、従つて臨時国会は召集されるものと思いますが、そういう場合には臨時国会は召集されますか。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は常に申しておるのでありますが、講和條約はいつ幾日できるということは言明いたしたことはありません。なるべく早く講和條約ができることは希望いたします。同時に、将来臨時国会を召集するかしないかということですが、必要があればいつでも召集したいと思います。
  16. 川崎秀二

    川崎委員 必要があれば召集するということでありまするから、その点で納得をいたしておきます。  それから第三の点は、先般ある新聞紙上に載つたことでありまするが、戰後の諸制度を改草する、つまり終戰後わが国ポツダム宣言によつて、当然民主化の道を歩まなければならなかつたのでありまするが、財閥の解体であるとか、農地開放労働運動の是認、その他基本的な政策として採用されたものは、これはやむを得ないけれども、しかしながら、平和條約の中で実施を強要されないものは、これらのわくの範囲内で国情に沿わない部分修正を行う必要がある、こういうようなことを政府は最近考えられて、しこうしてその示唆のもとに自由党政調会では、たとえば六・三制や労働法規修正考えられておる。これは総理大臣考え方によると、去る十三日の閣議の席上、こういう問題については講和の前から制定法令中の問題点の所在を明らかにしておくことが、国際信義建前上適当である、従つて今からこういうことは持出しておいた方がよかろうということで、戰後の諸制度のうち、国情に沿わない部分は改革をするのだというようなニユースが載つております。これについて吉田総理大臣はどういうお考えを持つておられるか、この際明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 新聞記事に対しては、私は責任を負いません。しかしながら、政府としては常にそのときそのときの政治上その他諸般の必要、あるいは諸般の事実の経過にかんがみて、現在の制度がよいか惡いか、あるいは将来の制度をどうしたらいいかということは常に考えております。また党としてもむろん考えております。そういうような考えが、あるいは新聞に載つたのかしれませんけれども、今日具体的にどうということは今考えておりません。
  18. 川崎秀二

    川崎委員 新聞記事には常に責任を持たないという例の建前から押されておるのでありまするが、私は、はなはだ遺憾だと思うのです。これだけの大きな問題であつて、しこうして自由党政調会で立案したことを、あなたは自由党の総裁でありますから、当然これらのことは関知されておる問題だと私は思うのです。しこうして自由党政調会から出されたのではなくして、むしろ政府側から、党の民主的な意見としてこういうものが出た方がよかろうということを示唆されたというのですが、そういう事実は全然ないのですか。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 かくのごとき示唆をいたしたことは全然事実ないことであります。
  20. 川崎秀二

    川崎委員 まああんまりかんしやく玉を破裂させないで、穏やかに答弁してください。若い者が穏やかにやつてつて、年寄りがけんか腰ではね。(笑声)  先般スターリン声明なるものが発表されまして、世界に大きな波紋を投げております。わが国では、これについての総理大臣の御感想は、いまだどこの本会議でも委員会でも言明されなかつたと思うので、私は伺いたいと思うのですが、スターリン声明のうちのきわめて重要な部分は、国連はすでにアメリカ道具になつておる、それから中共制裁を決議したことは、今後朝鮮動乱解決等において非常な支障になる、こういうことを言明したことは、明らかに米ソ両国の深刻な対立を示しておつて、今後こういう考え方であればこそ国際連合というものは運営が非常に困難になつて行くものと私は考えるのであります。もとより私は、総理大臣として、スターリン首相に対するところの反駁をせよとここで申すのではないのですが、しかし国連は今日アメリカ道具になつておる、中共制裁を決議したことは、朝鮮動乱解決を長びかせたものだという考え方に対しては、相当関心を持たざるを得ないと私は思うのでありますが、総理大臣の御見解、御感想伺いたいと思うのであります。
  21. 吉田茂

    吉田国務大臣 この問題は、参議院でありますか、衆議院でありますか、私からお答えをいたしたことがあります。すなわち外国政府声明に対して、占領下にある日本として自由にこれを批判することは差控えたい。また他の方から考えてみまして、御指摘の通りに今日は共産主義、民主主義相対立して、そうしてその対立した状況があるいは朝鮮事件なつたり、いろいろな形で現われて来て、この微妙な国際関係に処して、日本政府がそのスターリン声明に対して、こういう感想であるとか、こういう考えがせられるとか、意見を述べるということはおもしろくないと思いまするからして、その観点からも、また国際関係の非常に緊迫した今日において、私として意見を述べる、あるいは見通しを述べるということは、国のためによろしくないと思いますから、差控えたいと思います。
  22. 川崎秀二

    川崎委員 スダーリン声明は別にして、国際連合の今日のあり方というものが米国の手先になつておる、あるいは一定国によつてリードをされておつて、他の国はまつた意見が民主的に反映されないのだという考え方については、将来国際連合に加盟を希望しておる日本としては、これは非常に重要な問題であると私は思うのです。その点に対する御感想はいかがでしよう。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 これに対しても同じことであります。米国政府国連の関係を批評するというようなことはいたしたくないと思います。しかしながらこういうことは考え得ると思います。国連にしても米国政府にしても、いかにかして平和を維持したいという観点から、自然に意見の一致はできる。従つてまたその反対の主義者つまり民主主義の反対の陣営から考えてみると、その関係はよろしくないと言うかもしれません。しかしこれは平和に徹底するという意味合いからいつてみて、自然国連と米国政府意見が一致し、行動も一致するということはあり得るでしよう。しかしそれに対して私からとやかく言うことは差控えたいと思います。
  24. 川崎秀二

    川崎委員 わが国の集団安全保障と関連いたしまして、最近非常な問題が提起されたことは、ニユージーランド、オーストラリアをまわられたダレス特使との間に、太平洋同盟というような構想が非常に出て来まして、対日講和の補足手段という形で問題が提起されております。私は、この問題は非常に重要な問題であつて、おそらく現実的にはこういう形で発展をして来るのではないかというふうに考えるのであります。ことにアチソン・アメリカ長官は去る二十一日品の記者会見で、米国政府は今後この太平洋同盟の具体化について腰を入れるというような声明をされております。総理大臣は、この集団安全保障に関連して、太平洋同盟の具体化について、どういう御見解を持つておられるか承りたいと思います。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはこの間参議院お答えしたと思いますが、ダレス氏との間において何らの話合いをいたしたことがないのであります。一つには、これは日本国独立後の問題であつて、独立以前において、かくのごとき問題を話す資格なしとの意見であるかもしれませんが、話合つたことはありません。しからば太平洋同盟が提唱せられた場合にどうするか。太平洋同盟の考え方は、結局大西洋同盟の考え方と同じ筋合いであろうとは想像しますが、今日どういう内容をもつて計画されるかという草案さえもまだ示されておりません。けれども、思うに、大西洋におけると同様に、太平洋においても共産主義の脅威を感ずるでありましようから、いつかはこ、いう條約が具体化されるかと思います。その場合にどうするか、これは條約の内容を見て考えなければならぬことでありますが、私は常に申すように、集団攻撃に対する以上は集団防衛も考えなければいかぬと思います。将来太平洋同盟條約というようなものが提案せられた場合には、これは国民とともに十分検討いたしたいと考えます。
  26. 川崎秀二

    川崎委員 次にお伺いいたしたい問題は、国内問題で二つ重要な問題があります。簡単に伺つておきます。  それは講和会議前に、追放の大幅解除を期待することができるか、これはたびたび質問があつたけれども、最近特に政治の部面において、非常に大きな問題は、相なるべく自由主義者は講和前に解除をしてもらいたい。ことに戦争中軍部と闘い、自由主義的な精神を発揚して来て彈圧にもめげずやつて来られた人々に対する追放解除は、政府は腰を入れて当るべきものと私は考えておるのであります。端的に申しまして、鳩山一郎先輩のごときメモランダムケースではありますけれども、一日も早く追放が解除せられることをわれわれは望んでおります。従いまして総理大臣におきましては、こういうような過去の経歴において非常に信念的に自由主義精神を貫かれて、いわゆるポツダム宣言あるいはまた降伏條約に盛られたごとき極右的な、あるいは超国家的な人物でないと判定される者に対して、今後講和前において追放解除の努力を傾注されるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 追放の問題は政府としてもまたGHQとしても、なるべく早くでき得る限り多数に解除したいという方針を持つておることは明瞭であります。また政府としてもむろん努力いたします。しかし決定は日本政府でもなくまた総司令部でもなく、他の方面にあるようでありますからして、その結果はどうであるかということは言明はできませんが、少くとも政府なり総司令部なりは、常に追放解除には十分の努力をしておりますことを御了承を願いたいと思います。
  28. 川崎秀二

    川崎委員 去る六日ダレス特使と鳩山、石橋両氏は、すでに帝国ホテルで会見をしておつて、一部の議員から追放令違反ではいかという質問が出るほと、すでに政治的な活動が——外交部面ではあるけれども、あつたように私は思うのであります。従つてこれはもう一日も早く解除されてもいいのではないか、何か自由党の今後の政局と関連があるような点もありましようけれども、ことに鳩山氏の追放解除について、どういうふうにお考えになつておられるか、ぜひお伺いしたい。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 従来追放問題については党派を超越して考えておるのであります。従つてでき得る限り党派の異同を問わず、できる限り解除に持つて行きたいということはわれわれ希望してやまない。
  30. 川崎秀二

    川崎委員 次にお伺いしたい点は、電力人事に対する首相の考え方です。最近天下の耳目を聳動したものに、電力人事の不公平があると思います。少くとも関東電力会社の社長になつたところの高井氏のごとき、あるいは東北の社長になつた白洲氏のごとき、非常に世間から疑惑を持たれておるのであります。個人の非難は別にいたしまして、少くとも公益事業委員会と日銀総裁というものが正面から対立したということは、政府においても看過のできない重大なる事件であると思うのでありますが、総理大臣はこの両者の対立をいかに緩和されるか、またこの問題をどういうふうに收拾して行かれるか、その点についてあなたの御所信を承りたい。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 公益事業委員会の決定する人事は、政府の關與せざる建前にしておるのであります。また同時にいまだ決定しておらないのでありますから、決定した後において、人事の公平というようはことは問題になるかもしれませんが、まだ未決定の今日において、その間にいかに調節するかということは、公益事業委員会あるいはその関係の人の問題として、その決定を政府として待つておるわけであります。
  32. 川崎秀二

    川崎委員 最後に一言承つておきます。それは去る十四日の衆議院本会議の野党代表の質問に対しまして総理大臣は、外交は秘密が本体である、秘密でない外交はおかしなものであるという御発言がありました。その後私は予算委員会の席上議事進行に名をかりまして、適当な機会にこの問題については答弁を願いたい、少くとも外交は秘密が本体であるということだけは、今日の世界常識からしても私は納得行かないことであるということを申し上げたのであります。これは国際機密に関する部分があるので、従つて秘密を守らなければならぬ点が多いのだというような意味の御発言ではないかとも思うのでありますが、この際あらためてあなたのお考えを伺わせていただきたいと思うのであります。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 かつて公開外交というようなことをロシヤ革命当時に唱えられたのでありますが、それも遂に自然消滅したような状態で、私はいまなお外交は秘密で行くべきだというよに考えております。但しその秘密は、何も外交については国民の目をおおうという意味合いではなくて、いわゆる舞台裏の話はこれは公開すべきものではない。話がきまつて、そうしてある外交上の結論に到達した、ある問題について結論に到達した、これは国民に明示すべきものである、憲法もまたそう書いてあるのであります。あるいは條約ができれば国会に報告する、あるいは国会がこれに対して審議するということは、その点においてはむろん憲法にある通りであつて、それまで秘密にしようという考えではありません。外交の目的を達するためには、ある程度の——はつきり申しますが、ある程度の間……(川崎委員修正じやないか」と呼ぶ)修正ではないが、舞台裏の話はできない、こう御了承願いたい。
  34. 小坂善太郎

  35. 川島金次

    川島委員 この機会総理大臣に重要な問題の若干についてお尋ねをいたします。  総理大臣は先ほど川崎君のお尋ねに対して、講和條約の締結はできるだけ早期を望んでおる、こういうお話であります。具体的の時期の見通しについては本日は何ゆえか避けておりますが、先般のこの予算委員会の席上におきましては、総理大臣ははつきりと講和條約は年内に締結される見通しであるということを、明瞭にしかも満々たる自信ある言葉で言明されておりますことは、大臣も御記憶のことだと思います。それは速記録にも残つておりますから。しかるに本日総理大臣講和條約は年内というよりは、ただ單に早期締結を望む程度であるという言葉に変更されましたには、何か事情がおありであるか、その点についてお尋ねをいたしたい。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は変更いたしたとは考えていない。今年中にできるかもしれず、来年中にできるかもしれず、来月にもできるかもしれず、外交というものは秘密でありますからして、時期はいついつということは申し上げませんし、できないことと御承知を願います。
  37. 川島金次

    川島委員 総理大臣は先般は年内にとはつきり言明されておる、ところがきようはかわつておるのです。これと符節を合せるがごとくに、きようの新聞にはアメリカ側の権威筋の報道といたしまして、ダレス氏は六箇月以内に日本との講和條約締結の域に達するであろうと言われたが、実際問題はさらに六箇月先に延びるであろう、合計いたしますと一年の先になるということになるのであります。こういう事情と照し合せまして、きようの総理大臣言明が先般の言明と違いますので、私はそのお尋ねをいたしたのでありますが、その点これ以上深く追究しようとは存じません。  そこで第二にお尋ねをいたすのですが、これまた本日われわれ国民にとつてきわめて重視しなければならない報道が、新聞紙に伝えられておるのであります。と申しますのは、アメリカ日本の安全保障をさらに強化するため、州兵二個師団を三月中旬以降から日本に勤務せしめるであろうという重大なニユースが伝えられておるのであります。しかもこの州兵二個師団の派遣は、ダレス氏が日本政府に公約した日本の防衛のためだという補足的な報道までもついておるのであります。そこでお尋ねいたしますが、その州兵二個師団の派遣と、ダレス特使が総理とお話合いをいたしておりまする間に、何らかこの種に関連いたしました話が具体的に出ておつたのであるかどうか、率直に申し上げますれば、この州兵二個師団派遣について、総理大臣はあらかじめ御承知であつたかどうか、この点をお尋ねしたい。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 ダレス氏と私の間の話と、三月に二個師団が来るという——私もきようの新聞をちよつと見ましたが、何らの関係はありません。これはアメリカ政府の極東政策といいますか、その必要を認めて送るのであろうと思います。その事実については、まだ承知いたしませんのみならず、その理由についても政府としては何ら公然通知を受けておりません。
  39. 川島金次

    川島委員 この新聞の報道が事実といたしまして実現いたすということになりますれば、二個師団の半数が日本に駐兵されるであろうと報道されております。その半数となりますと、実際の数は一個師団の編成が基本的には一万八千と伝えられておりますので、三万六千の半分でございますから、一万八千の州兵が三月に日本に派遣されて来るということになる。この派遣されます州兵は占領目的のために派遣されるものであるということを総理大臣は言われたように私は聞いたのでございますが、この場合におきまして一体日本の国内に従来駐兵いたしておりましたアメリカ軍の補充を必要とするために、こういう大きな軍隊の駐兵がもくろまれておるのか、それとも従来日本に駐兵しておりましたアメリカ兵の全体数にさらにこれだけ加わるということになるのであるかどうか、その点御承知でありましたならば御説明願いたいと思う。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 お尋ねのことについては政府は全然承知いたしておりません。何ら公式に交渉を受けたこともなければ、内報を受けたこともな、何がゆえに駐兵をするかあるいは増兵をするかに至つたかという事情は、全然承知いたしておりません。
  41. 川島金次

    川島委員 総理大臣は全然御承知ないと表向きは申されるでありましようが、朝鮮動乱以来従来日本に駐兵して、おりました軍隊の数がおそらく減つておるのではないか、その減つた軍隊が現にすでに補充されておるかどうか、そして補充されておるとすると、かりにこの一万八千の新しい州兵の派遣がありといたしますれば、日本に駐在いたしますところのアメリカの軍隊が増加されるという形になるということをわれわれは想像いたすのでありますが、そこを私はお尋ねいたしておるのであります。その点はどういうことになりますか。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としてはアメリカ軍の増減については何ら承知いたしておりません。また裏道にも承知いたしておりません。
  43. 川島金次

    川島委員 これ以上どうもあくまでも秘密々々で通すようなお話でありますから、お尋ねをしてもむだと思いますからやめます。  そこでさらにお尋ねいたすのですが、先ほど與党側委員からも鋭く指摘されて、総理に尋ねておつたようでありますが、フイリピンの問題であります。わが国講和條約が切迫いたすにつれまして、アメリカ側は別といたしまして、フイリピン、濠州等における対日感情は、総理も御承知のように必ずしもアメリカと同様と言えない点が、随所にわれわれの身にも感知できるのでございます。われわれも先般現にフイリピンへ参りまして、その事情を詳しく身に感じて参りました。さらにまたアメリカにおいて濠州の議会の上下両院の議員の数名にも、私自身は直接にお目にかかる機会がありまして、濠州の対目的な感情の一部を私は直接に聞いたのであります。まことに講和條約を目の前にいたしまして、遺憾な事情があると心から痛切に感じたものでありますが、これに対しまして総理大臣といたしましては——まだ日本は占領治下でございますから、平等の外交権はもちろんないことは私ども万々承知ではありますが、この講和條約の最も有利な、しかも円滑なる締結の情勢をつくり上げるという意味合いと、それからもう一つは諸外国日本に対する対日感情の問題についての緩和を積極的にとりはからうという意味合いにおきまして、濠州あるいはフイリピン等に国民的な使節を派遣するという事柄は、一考に値する問題ではないかと私ども考えておるのでありますが、総理大臣はそうしたことについて何か考えられたことがございますかどうか、これをお聞かせ願いたいと思う。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 御趣意はけつこうなことと思います。何分フイリピン、マレー、濠州その他の日本に対する感情はまだよくないことがあることは、これは事実であつて、われわれ心配するところでありますが、しかしながら今日占領下にある日本としては、公然と国民使節を出すとか、政府の使節を出すということはできないからいたし方ありませんが、しかしもしできれば国民使節を出す、あるいは向う側から招待を受けるということは、連合国も承知するということであれば、あえてとめる必要はないのみならず、できればそういうこともけつこうと思いますが、今日においてはまだ問題にいたしておりません。
  45. 川島金次

    川島委員 それではさらにお尋ねいたします。総理大臣は先般の参議院の、予算総会と記憶いたすのでありますが、その席上、わが党の山田議員の質問に対しまして——もし多数講和の場合、その後においてソ連が日本に駐兵を要求いたしたときには、日本としてはどうするのかという重大な質問をされたのでありまするが、その質問に対しまして、新聞の報ずるところによりますと、その場合には日本としては自衛権を発動すると明白に総理大臣言明されておるように、私どもは拝承いたしたのでありますが、しからば、その自衛権の発動というものは、具体的にどういうことを意味するのであろうか、私どもちよつとふに落ちない、納得できない点がございますので、その点をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 そのときの応答については、今はつきり記憶がありませんが、けだしこういうお話であつたろうと思います。多数講和ができて、そしてソ連が参加しておらない、その場合に、ポツダム宣言によつてもしソ連が駐兵を要求したらどうかというような御質問であつたように思います。この場合、日本政府としては、外国の兵隊がどんどん入つて駐兵するということに対しては、自衛権の上から申して、つまり日本の国の安全を維持する上から見て、どしどし外国の……。(「連合国の一国ではないか」と呼び、その他発言する者あり)その時は連合国の一国ではなくなつておる。
  47. 小坂善太郎

    小坂委員長 林君、私語を禁じます。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 自衛権を発動せしめなければならぬ事態に立ち至るであろうという考えから言つたものと思いますが、しかし速記録を調べてから申し上げます、
  49. 小坂善太郎

  50. 横田甚太郎

    ○横田委員 外国の鼻息をうかがつて政治をしなければならぬということは、実に不愉快であります。同時に外国の軍隊の力を借りて国を守るということも、朝鮮を見ればわかるように、三十八度線を何回も行つたり来たりしてもらつて悲惨である。日本講和もちようど同じようになつております。日本は無條件降伏といつてつて講和の進行過程においては、無條件ではなく有條件講和になつておると思うのであります。なぜかというと、ダレスさんが日本に参りましたが、ダレスさんは自分と同じ意見の人と好んで会談した、こういわれております。ダレスさんは平和問題懇談会の人と協議しなかつた。もつとも安倍さんはカクテルパーテイーには招待されていたけれども……。ところが鳩山氏とか石橋氏とは話し合つた。このことから、誤つているかもしれないが、ダレスさんは自分と見解を同じくする者とだけ会見したと結論をつけるわけである、こういうことがいわれております。これは読売に報道されておつた記事であります。それで私が総理に聞きたいのは、総理はちようどこれと呼応するように、外交は秘密であると言われておる。しかしだれに対して秘密なのかわからない。ちようどこれと同じことでございまして、中国に対するわれわれの発言というものは、すべてが封じられております。われわれが責任を負わなければならないのは、中国であります。中国に対してわれわれは講話の意思表示をしなければならないのであります。アメリカと中国、ソビエトの違いというものは、アメリカは先ほどから申しましたように、おのれと意見を同じくする者とだけ話し合うというようなことをやつております。中国、ソビエトの人たちは、日本人民の意思をはつきり言つてほしい、こう言つておるのであります。こういう意味において、吉田総理は、日本が争つた当の相手方である中国に対して、日本人として道義的な責任をはつきり表明する勇気をお持ちかどうか、この点伺いたいと思います。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 勇気はありますが、中共からいまだ何らの問合せもありませんから、私はいたさないだけであります。
  52. 横田甚太郎

    ○横田委員 問合せはございませんが、アメリカに対しては、問合せがなくても意思表示をやつておられるのであります。この点は時間がありませんので、くどくは申しませんが、世界の今日の中心問題は、資本主義と社会主義の両立可能かいなかの問題であります。国連の問題といたしましては、中共問題が非常に大きな問題になつております。同時に世界の大問題であります。また今次大戰、特にまた日本講和問題におきましても、中国の問題は最も大きな問題でありまして、われわれは占領軍として日本に来ておる軍隊の中に、中国の代表だといわれている方が、台湾の居候の軍隊のように思えます。われわれが争つたものは中国本土であります。台湾ではないのであります。台湾は当時日本の領土であつた。こういう意味において、われわれがもつと責任を持たなければならないのは、もつと親交の度合いを発揮しなければならないのは、鉄鉱石のある海南島、あるいは開らん炭のある中国、大豆のある満洲、この領土と人民と資源と市場を持つておるところの中国本土に対するはつきりした意思表示であります。これに対する親善ということであります。日本の国においては、占領下においてもぼつぼつ自由が許されたといわれておるのですから、その国の総理として、卒先垂範して、アメリカ人に日本としては中共こそが当面の講和の相手であり、ここに対して講和の意思表示をするということを言われたことがあるか、ないか、伺いたい。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 中共政府から問合せがあつた場合には考えますが、何らの問合せがないからお答えできない。
  54. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは中国本土におきましては、いかなる政治形態が樹立されておるか。その政治形態は、人民の意思を代表しているか、あるいは代表しておらないかということに対する吉田総理の見解を承りたいのでありよす。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 私としては、そんなことにお答えする責任はない。
  56. 横田甚太郎

    ○横田委員 総理が怒つても怒らなくても、ここでどうしてもやかましく言わなければならない点は、遠き国と交わり、近き国と争うくらい愚策はない。アメリカ日本に対して非常に友好的だと総理は言いますが、何が友好的ですか。日本は中国に対して、今までの歴史から見たとき、どうやつて来たか。日本は神功皇后の時代から、中国に手を出し、朝鮮に手出しをした。あるいは太閤さんの時代でも、朝鮮を通つて中国をねらつた。そうしてその結果強力な太閤政権はくずれてしまつた。明治天皇も、またその子孫である今の天皇も、朝鮮から満洲をねらつて失敗して、外国人に占領されるという事態を招いたのであります。アメリカ講和のやり方についてはつきり言えますことは、アメリカという国は、今まで中国において国府を援助して来た。それが失敗した。それゆえにこそ、今度は国府援助の政策を日本に振りかえた。ところがその道は、日本の民族の歴史から見ますときに、行つてはいけない道だ、ここはいつか来た道だ、破滅の道だ。そこへ押し上げるような結果になる。だからわれわれ日本民族を代表する日本共産党といたしましては、アメリカの極東政策の遂行のためにやられる講和会議に対しては、非常に迷惑なんです。(発言する者多し)だから、総理大臣は中国に対する、この間違つた講和のやり方は、日本を破滅に陷れるのだということをよく考慮しておられるか、考慮しておられないか、この点を承りたいと思います。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 あまりその問題は重大でありますから、私はお答えいたしません。
  58. 横田甚太郎

    ○横田委員 総理大臣に聞きますが、去年のリーダース・ダイジエストの六月号におきまして、マツカーサー元帥はこう言つておられます、日本がなまじつかな軍備を持つことは、日本をねらう国の日本に対する侵略を思いとどまらす結果になるのではない、逆に日本が軍備を持つことそれ自体が、日本への侵略をいざなう好機を與えることになる、こう言つております。こういうような点を知りながら、今度集団保障とかいう名のもとに、アメリカと結ぶんだと言われるが、総理としては、天皇制時代の軍隊にまさるところの軍備を、アメリカに保障してもらえるのかもらえないのか、その点を承りたい。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はアメリカに対して、何らの保障を要求したことはない。(笑声)
  60. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは、外の侵略に対しまして、今度は中の間接防衛の問題がございます。この問題におきまして、共産党が問題になつて来ておりますが、共産党の台頭は、いろいろな意味において必然的なことなのであります。それを言うておると時間がございませんが、大橋法務総裁は、共産党に対しまして非合法化の法的準備はできたと言います。またきのうの新聞の伝えるところによりますと、選挙によつてこれをきめるべきだと言つておるのであります。ここではつきり聞きたいのは、日本共産党に対して、今次春の地方議会の選挙をやらせるのかやらせないのか。もしやらせるとすれば、それによつて当選した議員に任期中勤めさせるのか勤めさせないのか、この点を承りたい。
  61. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは今後の共産党の行動いかんによります。(笑声)
  62. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは判断できないのですか。——共産党の態度からといますか、今の現状ではどうですかということが一つと、巧妙しごくなアメリカ自由党政府の合作によるところの共産党に対する選挙干渉、共産党内に合法、非合法のくさびを打込んでいる、共産党は非合法化されるのだから、投票してもだめだということを人民に思い込ませるためではないか、こういう点に対するところの総理の考えは一体どうなんですか。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま申した通り、今後のことは共産党自身がきめられることであつて、従来のように、あるいは労働者、あるいは朝鮮人を手先に使つて治安を乱すとか……(「そんなはかなことがあるか」と呼ぶ者あり)治安を乱した事実があるから申すのであつて、そういうようなことがあれば、自然非合法化せざるを得ない。けれども私は、諸君も日本人であろうから、変なことはしないだろうと思つておる。(笑声)
  64. 横田甚太郎

    ○横田委員 朝鮮人や日本人をあずかつているのは、日本政府であります。それに対する財政政策、治安政策を立てて、そして治安対策の一環として警察予備隊まで強化しておりながら、共産党が煽動したからといつて日本の人民が政府にたてをつくほどたよりないところのあずかり方を政府はしているのですか。その点は一体どうなんです。そういう点と同時に、また私たちがはつきりと政府に聞かなくちやならないのは、日本を守れ守れと言われますが、一体日本の何を守るのかということがはつきりしないのであります。あなたたちは対日援助、対日援助と申しますが、アメリカの援助の実体を考えたときに、対日援助はアメリカの過剰物資が流れ込んでいるのです。この過剰物資は、日本の安い労働賃金を目当にやつて来る。この安い労働者を食わすために、農村においては低米価だ、その上補給金をうんとかつさらつてしまう。それゆえ日本農業は弱小再生産の一途をたどつている。アメリカ日本に対してやつた一つとして、農地改革が云々されておりますが、今から五十年前に、アメリカフイリピンにおいても農地改革をやりました。その結果は一体とうだつたか。良質のタバコが多く出るにもかかわらず、アメリカフイリピンにおいてそれをやらせないような経済政策をとつた。そして、フイリツピンにタバコができるにもかかわらず、アメリカからのタバコを買わなくちやならないようになつてしまつた。こういうような事実があるのであります。労働者の賃金にしたところがそうであります。食える賃金であるならば騒動は起さない。また朝鮮人に対する日本政府の政策は一体何であつたか。戰争中においては、日本でうんと働かせておきながら、それから後の朝鮮人に対して十分なことがなされたか……。
  65. 小坂善太郎

    小坂委員長 横田君、質問をしてください。
  66. 横田甚太郎

    ○横田委員 だから、政府に聞きたいのは、この政府のやり方のうちにおいてこそ、初めて共産党が人民の利益を代表して、政府と闘わなければならないところの、階級的に必要な階級戰が迫つておるのであります。私はそこを言いたいのであります。ところが政府は、ただ日本アメリカに援助してもらつていると、二言目にはこう言いますが、援助の階級性を見ますときに、労働者は安い賃金で苦しめられている。農村は低米価で苦しめられている。だから……。
  67. 小坂善太郎

    小坂委員長 横田君、質問をしてください。
  68. 横田甚太郎

    ○横田委員 質問です。
  69. 小坂善太郎

    小坂委員長 だから質問を継続して、早くけりをつけなさい。時間が過ぎて……。
  70. 横田甚太郎

    ○横田委員 怒つてしまつて答えぬから言うのです。二言目には日本の治安を乱すのは日本共産党だと言いますけれども、(「その通り」)日本政府の政策の中にこそ、かえつて労働者や、農民を離反させるような政策があるのであります。それを改める意思があるかないかをはつきり聞きたいのであります。
  71. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、治安を乱す共産党であれば、断然処置いたします。また……。
  72. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一つ……。
  73. 吉田茂

    吉田国務大臣 まだ答えておらない。(笑声)アメリカ政府の農地政策等は、私の関知したことではありません。
  74. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平忠君。
  75. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一問ありますよ
  76. 小坂善太郎

    小坂委員長 だめです。小平忠君。
  77. 小平忠

    ○小平(忠)委員 きわめて時間が制限されておりますから、重要な点を二点総理大臣にお伺いいたしたいと思います。  第一点は、政府経済安定本部長官を中心にして、日本経済自立三箇年計画を大体完成されまして、二十六年度から着手されようと考えられておるのでありますが、その際に私は、現在日本が置かれている地位並びに講和後における日本の復興というものを、総理大臣は一体工業立国を主体にし日本の再建、自立をされようとお考えであるか、あるいは日本の過去長き一貫した政策として、農業政策に非常に重点を置かれて来た、この農業立国的な面に重点を置かれるのか、この点について総理大臣の所信を明らかに承つておきたいと思うのであります。私はその際、もちろん両方とも重点を置くのだという回答ではなくて、現在の自由党の前身である政友会が、すなわち農山漁村に対してきわめて適切な政策を持たれたという観点から、農山漁村の政党であるということも一時いわれたこともあるのであります。そういう観点において、日本八千万民族の少くとも四七%を占めるこの農民あるいは漁民、あるいは勤労者を含めますならば、優に九割を占めるこの現状を、総理大臣は決して無視、軽視されるとは思われないのでありまするが、この点について、この二十六年度予算案を今討論採決しようという段階において、総理大臣の所信を承つておきたいと思うのであります。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本の人口の大半を占めている農民の利害を全然度外に置くということは、決して考えておりませんが、しかし農業政策に重点を置いて他を顧みないというようなことは、これば私がここで申すわけには行かない。すべての産業に重点を置きます。
  79. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、総理大臣考え方もわかるのでありまするが、しからばこの二十六年度予算案に現われておりまする実体をつぶさに検討いたしまするならば、政府は昨年以来、二十六年は大幅の農村危機打開のための興農予算を組むのだと豪語されておつたわけであります。しかるにその実体というものは、私として理解し得ないような点があるのでありますが、現在の農山漁村の実体から見て、この窮乏を打開し、すみやかにこれに対する適切な措置を講ずるのだという場合において、二十六年度予算案に現われましたこの予算的裏づけが、総理大臣はこれをもつて完璧とお考えであるか。しかし現在日本が置かれておる立場なり、あるいは国家財政の見地から、不十分ではあるが現段階においてやむを得ない、しかし逐次これを改善して、できるならば補正予算等においても大幅に増額したいという御意思があるのかないのか、この点について総理大臣の明快なる御所信を伺つておきたいのであります。
  80. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、お話の通りに、財政の全体と見合つてでなければ、農業にだけ重点を置いて行くというわけに行かないのであります。予算に組んだところは、現在の日本の財政状態において、興農といいますか、治山治水その他農業のために最大限度と考えて組んだのであつて、将来財政に余裕がある場合においては、むろん喜んで農業政策の完全を期したいと思います。
  81. 小坂善太郎

    小坂委員長 これにて質疑は全部終了いたしました。午後は二時より会議を再開いたしまして、討論、採決に入ることにいたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  82. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  これより昭和二十六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算の各案を一括して討論に付します。  まず川崎秀二君より提出せられました予算の組みかえを政府に求めるの動議について、その趣旨弁明を許します。川崎秀二君。
  83. 川崎秀二

    川崎委員 私は農民協同党、社会民主党並びに民主党を代表いたしまして、昭和二十六年度総予算案に対し、次のような修正意見を含む組みかえを要求する動議を提出するものであります。  その内訳をまず申し上げます。すなわち昭和二十六年度総予算に対する修正として、歳入、一般会計より外国為替特別会計への繰入れ中止五百億、これに対する歳出として、緊急食糧増産対策費百五十億、この内訳は土地改良百億、寒冷地対策その他農業経営改善に三十億、農林漁業協同組合再建利子補給二十億、第二、価格調整費の増百億、これは食糧、燐鉱石、カリ等輸入の価格調整のためであります。第三、地方財政平衡交付金の増百十五億、これには地域給補給費六億を含んでおります。第四、社会保障費七十五億、そ、の内訳は戰争犠牲者援護費六十億、健康保険、国民健康保險赤字負担十五億、第五、中小企業振興費三十億、これは国民金融公庫出資金の増に充当するものであります。第六、文教費の増三十億、その内訳は義務教育教科書配給代二十億、科学技術研究費の増に十億、以上歳出も五百億であります。なお講和條約がもし年内に締結し、終戰処理費が削減可能となりました際においては、これを治安並びに自衛力の強化に充当するという修正意見を持つておるものであります。  具体的にこれを申しまするならば、基本的な態度といたしまして、今回提出を見ましたところの昭和二十六年度総予算案は、昨年八月の半ばにおいて編成を終つたものでありまして、その後十一月にドツジ氏が参られまして、若干の修正が行われましたけれども、その後重大なる国際情勢変化に対処いたしておりません。すなわち、中国共産党軍隊の介入後の朝鮮動乱の影響と、世界の軍拡的経済動向による影響を無視しまして、補正予算必至の状況にありながら、なお原案を固持しておることは、われわれとして断じて納得の行かぬところであります。しこうしてドツジ氏が帰られたとはいうものの、今日ようやく自立性を回復しつつあるところの日本国民輿論に対してこたえるところなく、即時根本的組みかえをすべきでありながら、今日これを断行しないことははなはだ遺憾であります。従つてわが党といたしましては、この予算案に対し、基本的には即時根本的組みかえをなすべきことを要求するのでありまするが、しかも、もしこれが不可能なる場合におきましては、政府はすみやかに臨時国会を召集して、補正予算を提出すべきであります。従つてわれわれは、本予算案は、昭和二十六年度全体をカバーするところの予算案とは見ることができず、当初予算であるという考え方からいたしまして、修正は全般的にわたるべきものとは思いまするけれども、しかし今日この責任はすべて政府にあるのでありまして、われわれは今日出たところの案に対しますところの修正は、やはり本格的にこれに対して修正をしなければならぬという見地から、建設的に、以上述べましたよりな提案を試みた次第であります。  しこうしてこれを具体的にきわめて簡單に申すならば、第一に、インヴエントリー・フアイナンス五百億を一般会計をもつて支弁することは、あくまでも邪道であり、金融操作をもつてまかなうべきであるという点、第二に、減税千億の公約を裏切り、税法上の減税七百億、事実上の国民担税減少はわずか五億六千万円でありまして、補正予算を必至とすれば、かえつて年間を通じて増税予算となります。また資本蓄積政策の本道を歩まず、東銀債発行を強行して、日銀政策委員会と正面から対立し、金融界に混乱を招来して財政と金融の調和を失つたことも、予算面には現われぬというものながら、背後におけるところの一大失策であると指摘しなければならないのであります。また前国会は御承知のごとく救農国会といわれながら、何ら食糧緊急増産、農業復興について配慮しなかつたばかりでなく、今度の予算案についても農業復興費はきわめて寡少であります。しこうして輸入食糧は外国物価の騰貴によりまして、すでにこれを確保することが困難であるということが指摘されなければなりません。その他いろいろここで指摘することの事項はありまするけれども、これにつきましては民主党、社会民主党並びに農民協同党の諸君が、今後の予算の討論において、十分にその委曲を盡されることと思いますので、私はこれを省略いたします。  以上提案理由の説明を終ります。
  84. 小坂善太郎

    小坂委員長 ただいま提出せられました予算の組みかえを政府に求めるの動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  85. 小坂善太郎

    小坂委員長 起立少数であります。よつてこの動議は否決せられました。  これより本案につきまして討論に入ります。討論は通告順に従つてこれを許します。宮幡靖君。
  86. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま議題となりました昭和二十六年度一般会計、特別会計、政府関係機関の予算案に対し、私は自由党を代表して、これに賛成の意を表明せんとするものでありまして、その理由を逐次申し述べまして、全国民を代表する議員各位の御賛同をこいねがうものであります。  まず現下日本国情において、本予算案のごとき堅実な予算審議し得ることは、戰後の混乱を乗り越え、激化した惡性インフレを克服して国民経済を安定の軌道に乗せ、安定より復興へ、復興より自立へ躍進を続けつつあるわが自由党吉田内閣の功績であり、国民の審判が衆議院における絶対多数の議席を與えられた、その負託にこたえつつある歴然たる証左と申すべきであります。(拍手)もし本予算案を論難せんとするものがありとするなれば、それは、いまだ独立国家たり得ない現段階における物足りなさから来る不平不満でありと申さねばなりません。(「そ、の通り」)幸いにし講和條約の機運も醸成せられまして、自由独立の国の生命も、われら八千万国民のふところに抱きしめられんとする状況となつた今日、その原動力がいずこに存するやを自省しなければなりません。もとよりわれら日本民族が平和を愛好する優秀民族であつたことがその基本でありますが、それにも増して米国の好意ある援助を有効に活用して、経済自立の達成に邁進し、国際信用をかち得て、国際経済へも参加して、自由民主主義国家とともに、世界平和に貢献し得る資格あることを示した点に存するものでありまして、これまたわが党内閣の功績なりと称してはばからぬところであります。ことにわれわれが国民とともに銘記すべきことは、米国市民が世界平和のため、増税に続く増税の犠牲を拂われつつある中に、占領下日本において引続き減税の予算を編成し得ることは、事を構えて議論せんとする邪念を拂いのけ、冷静に判断を下すならば、感謝と感激の念禁じ得ざるものがあるべきことを確信する次第であります。(拍手)  御承知通り予算案の特色の第一点は、総合予算の均衡、財政規模の縮小、第二点は国民負担の調整、軽減及び資本蓄積の促進を目的とした大幅な減税、第三点は民生の安定、文教及び科学の振興等、第四点は政府資金の活用による資源の開発、産業の育成、合理化等のための資金供給の確保でありまして、財政規模の縮小は、名目金額においては七十一億円程度でありますが、国民所得に対する一般会計予算の割合は、昭和二十四年度は二五・七%、二十五年度は二〇・三%、二十六年度は一七・六%と大幅に減少し、財政の常道に復帰しつつあることを賢明に物語るものであります。  次に減税は、本年度の補正予算における減税措置と一連の構想のもとにおいて、実に七百四十三億円減税となる税法の改正を行い、これに加うるにタバコのピース、光の各十円ずつの値下げをあわせ行つて国民負担の軽減と資本の蓄積を促進せんとすることは、わが党かねての公約を実施に移したものでありまして、その誠実さを示すものと申すべきであります。しかるにこの減税措置は、減收入の上においてはわずかに五億円程度にすぎないので、これは税法上の減税であり、真実の減税でないなどと断ずる向きもありますが、この議論は良識ある者の言うべきことでないと申さねばなりません。税率を引下げ、基礎控除等を引上げて、各人に対して明らかに負担の軽減となるものであつて、たまたま国民所得の増大によつて国庫税收の総額において大差なき結果となつても、これを真実の減税にあらずと論ずることは、あたかも税率を引上げ、基礎控除等を引下げて増税を計画した結果において、国民所得が減少して国庫の税收総額が減少となつた場合に、これを減税と断じ得るかどうか、あえて説明を要しない点であります。  さらには一升の酒を求めても、酒税の引下げによる値下りの効果は明らかであり、この現実をたれが減税でないと主張することができましようか。タバコについてもまたしかりであります。ピース、光ともに十円の値下げをしても、販売数量の増加によつて、專売益金は本年度に比し三十億円程度の増收となる予算でありまして、專売益金が増加するので、実質の値下げではなくて、値上げであると、もし論ずる者があつたとするならば、五十円のピース一個が四十円で買い得る現実を否定することはできないでありましよう。  また社会政策的経費は、本年度の三百八十六億円に対し、五百六億円と大幅に増加せられ、結核対策、失業対策等に重点が置かれていることは、適切な予算措置と申さねばなりません。住宅関係についても、住宅金融金庫からの貸出し百十一億円と、公共事業費中住宅建設に対する補助四十三億円が計上せられ、また義務教育の充実に意を用い、育英資金の大幅増額、大学その他における科学研究費の五割引上げ等は、いずれも適切な予算措置と推奨するにやぶさかでありません。  続いて公共事業費の問題でありまするが、昭和二十五年度におきましては、一般会計からの支出のほかに、見返り資金より百十億の支出がありまして、合計千百四十一億円でありましたが、二十六年度公共事業費は、見返り資金からの支出はなく、文教施設、厚生施設、行刑施設及び官庁営繕等がそれぞれの所管に移されたことなどによりまして、予算額においては三十五億円程度の減少と相なつておるのでありますが、地方負担分の復活を含めた総事業量は、六%程度の増加となつておりまして、一応適当な計上と認められるものであります。しかしこれをもつて十分なりと主張するものではありません。すなわち災害復旧公共事業費四百億円をもつてしては、暴風水害等による国土の荒廃を回復するだけにも不十分と思われるのでありますが、何分にも国の資本の蓄積がなく、国民の負担を重加する以外には、拔本的予算措置を講じ得ないことを了とせざるを得ない次第であります。今戰前平和時代の財政状況に思いをいたすならば、災害復旧の補正予算の編成は、單に歳出面の検討を要するのみであつて、歳入は蓄積された資本を流用することによつてまかない得たことを思うとき、そぞろに資本蓄積の緊要なることを痛感する次第であります。従つて予算の特色として、減税による民間資本の蓄積を促進し、あわせて財政資金の運用による国の資本蓄積を強力に推進せんとすることは、適切妥当の措置と申すべきであります。  次に資源開発、産業の合理化等のために、巨額の財政資金が供給せられることでありまして、これらの部門で一般会計、見返り資金及び資金運用部からの直接、間接に供給される長期産業資金は九百七十六億円に達し、本年度に比し三百二十億円の増加であり、この措置は一面において資本の蓄積に大きな役割を果すと同時に、資金運用部の資金等が国庫へ滯留する非難を解消したものでありまして、特に注目すべき点であります。  次に地方財政の基本的な問題の一つである、地方財政平衡交付金につきましては、昭和二十五年度より十五億円の増の千百億円となつておりまするが、これに関する地方側としては百九億円の増加を要望しておりまするが、国家財政の総合的な見地から、地方側の希望を満たし得なかつたこともやむを得ざるものと認むべきであります。けだし地方財政は地方自治法の実施以来、画期的な自主性を認められたわけでありまするが、経済の自立の仕上げの段階にある現在としては、国の財政方針に順応して、財政規模の縮小と、地方税の負担軽減と、資本の蓄積とに一段の努力を傾くべきであると信ずる次第であります。  また農業振興費といたしまして、農地調整費十四億円、食糧増産関係費二十六億円、食糧供出関係費三十九億円、農業保險費五十七億円等が計上せられておりまして、これに加うるに金融措置による振興対策として、農林漁業資金融通特別会計が設置せられ、一般会計から二十億円、見返り資金から四十億円、合計六十億円を長期かつ低利の資金として運用する道を開きましたことは、いささか興農予算の面目を示すものと申すべきであります。  次に輸送力増強の予算措置としては、日本国有鉄道の予算の示すごとく、工事勘定の歳入においては、資金運用部よりの借入れ百億円、一般会計よりの繰入れ二十億円、合計百二十億円が計上せられておりまして、本年度の見返り資金よりする四十億円と比較するならば、外部資金の供給増加は八十億円でありまして、みずからの予算増加七百十五億円とあわせ考えますならば、輸送力の確保と強化に貢献し得るものと信ずる次第であります。  その他本予算案の細部にわたつて検討するとき、礼讃に値するもの少しとしないのでありますが、時間の関係もあり、これを割愛することを了承せられたいと存じます。  最後に本予算の実施運用の面について、国際情勢の急激なる変化と見合い、慎重の考慮を要すべき点につき、希望意見を申し入れたいと存じます。本予算において五百億円を外国為替資金特別会計に繰入れる措置は、輸出の振興に伴う円資金の需要に応ずると同時にも国際経済に刺激されて、ともすれば進行せんとするインフレ的傾向を抑圧するクツシヨン的役割を果すものであつて、いわゆるインヴエントリー・フアイナンスの妥当性を認むるものでありますが、すでに昨年十月には国内生産指数は戰前を上まわる状態となり、これに伴い輸出の増大は必然的となり、円資金の需要増加となることも当然の関連でありまして、もはや通貨の増発をもつてただちにインフレなりと心痛する時代ではありませんが、増発通貨がブラツク・マーケツトに流れ込む場合は、悪性インフレの要因となることに留意し、思惑資金の供給抑制等については、万遺漏なき措置を講ぜられるとともに、手持ち外貨の活用による輸入促進のあらゆる施策を断行して、本予算の有終の美を收められんことを期待してやみません。  今具体的にその施策の二、三を指摘するならば、まず協定貿易主義、すなわち輸出入均衡、バーター・システムを廃止すること、スターリング貨をスワツプし得る金額の限度を拡張すること、輸入為替自動承認制を改め、不均衡の買付を是正すること、外貨予算のFOB建をCIF建船運賃ドル拂いとすること、輸入清算方式を改善し、たとえばスイングの限度にかかわらず、ドル拂いを行うこと等の念速な実施を要望する次第であります。  以上は本予算に対し、自由党を代表して賛意を表明する理由と希望意見の一端を申し述べたにすぎませんが、冒頭強調したことく、本予算案は現下の国情においては最善のものと確信するものであつて国民の歓喜を乗せて本予算案の満場一致可決せられんことを熱望して、私の賛成討論を終る次第であります。(拍手)
  87. 小坂善太郎

  88. 井出一太郎

    ○井出委員 私は国民民主党を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする昭和二十六年度一般会計、特別会計並びに政府関係機関の三予算案に対し、反対討論を行わんとするものであります。  ただいま宮幡委員はだらだらと礼賛の辞を繰広げられましたが、これまつたく御用的言論以外の何ものでもございません。過去一箇月にわたる予算審議の過程において明らかになりましたように、本予算案は急変せる世界情勢現状とマッチせず、これに即応せる日本経済の実態と完全に遊離しておるものでございます。すなわち本予算案の大綱が閣議決定を見ましたのは、昨年七月十一日のことであり、朝鮮動乱後の新事態はほとんど織り込まれておらず、相かわらぬデイスインフレ方式の踏襲にすぎないのであります。言うまでもなく、朝鮮動乱は二転、三転、中共介入後の戰局は一種の長期膠着戰の様相を呈し、世界はここを接触点として二大陣営に相わかれて、すでにコールド・ウオーの段階ではなくなつております。合衆国は非常事態を宣言し、国連軍は半島の山野をその碧血で染めつつあります。これによつて展開せられた世界的軍拡競争は、原料資源の獲得戰となつて現われ、さなきだに基盤の脆弱なる日本経済の根底を震撼しつつあるのであります。国土狭小にして資源貧困、いたずらに人口のみ稠密な敗戰日本の生存する道は、一は国内自給度を高むることであり、他は海を越えての再生産ともいうべき貿易の振興をおいてはありません。その際原料の海外依存度がきわめて高いこともわが国の宿命であり、かく世界経済変貌の波はただちに大和島根へと打寄せて来るのであります。かかる際に機械的な予算均衡論と萎縮的健全財政論とを金科玉條として、激変せる世界情勢に眼をおおつて編成せられたのが本予算案であると言いたいのであります。  池田大蔵大臣はかつて、明年度予算案は今までつくつた予算の中で最も手ぎわよくできたマスターピースであると語つた由であります。政府が自画自讃するごとく、なるほど官僚技術的には一応そつがなく、末梢神経を働かせておることは認められましよう。しかし刮眼よく世界経済の動向を見抜いた政治的見識という点から見ますならば、本予算案は致命的欠陷を包蔵しておるのでございます。おそらく大蔵大臣がきわめて近い機会補正予算を組まなければならぬ客観的情勢が、今やひしひしと押し寄せておるのであります。昨年七月に新調した服は成長しつつある日本経済に寸法がまつたく合わなくなつております。ドツジ氏の処方箋で中毒症状となり、絶対多数の量的優勢の上に惰眠しておる大蔵大臣が、愕然として眼を見張る事態が遠からず来るであろうことを私はここに警告いたしたい。  われわれはかような意味から予算補正は必至であると見るものでありますが、当面若干の修正によつて予算案の欠陷を是正すべしという建設的立場に立つて、先ほど川崎委員より修正動議を提出いたしたのであります。しかしながら頑迷なる與党諸君のいるるところとならず、われわれはここに徹底的な組みかえ要求をいたすべく、これより逐次その理由を開陳して参りたいと存ずるのであります。  まず第一に、インヴエントリー・フアイナンス五百億の問題でありますが、先ほどわれわれは外国為替特別会計への繰入れを中止して、これを財源として本予算案の欠陷を是正すべき試みを提唱したのであります。原則的に言うて、かような資本勘定に属すべきものを一般会計からまかなうことが邪道でありますことは、財政学上からも異論のないところであり、公聽会における公述人諸氏の品をそろえて非難した点であります。かかる費目は当然金融操作で処理してさしつかえなきものであり、輸出増加に伴うインフレ懸念は、輸入の円滑化をはかることによつて当然解消せられるのであります。これがために減税がはばまれ、国民生活を不当に圧迫いたしますることはもちろん、もしこれが経済再建の方途に向けられまするならば、日本経済の基盤をつちかうきわめて大なるものがあるはずであります。おそらくは大蔵大臣も当初は賛意を表しておられなかつたようでありますが、唯々諾々とドツジ氏に従つたというのが真相でありましよう。これ本予算案が自主性に乏しいと指摘せらるるゆえんでありまして、外国際に弱く、内国民に強い現内閣の性格を端的に現わした証左であります。  第二点としてあぐべき欠点は、本予算案の基礎をなしておる物件費、人件費のべースについてであります。物価の基準は昨年十月にこれをとり、給與ベースはいわゆる八千円ベースによつておることが判明いたしました。われわれが補正予算必至であると主張する根拠はここにあるのであつて、総合市場物価は十月において朝鮮動乱当時の二割高、本月初めで四割高と相なつております。民間給與ベースも漸騰を示しており、今や公務員給與ば著しく低位に置かれるに至りました。本予算に盛られた各種の計画は、はたして予定の事業分量が確保せられるでありましようか。例を公共事業費にとるならば、本年度は千百五億円で、絶対数字において昨年よりも三十五億程度少いことは、先ほど宮幡委員も確認せられたところでございます。一歩を讓つて災害復旧費の地方負担を考慮すれば、前年よりも六%増したとの説明を首肯するにいたしましても、物価と賃金の値上りを織り込めば、その事業分量はとうてい二十五年度に及びません。明年度予算の特徴として民生の安定を呼号し、国土の開発を強調するなど、まことにおこがましい次第であります。  ドツジ・ラインをいたずらに直訳した結果、補給金を切ることをもつて親のかたきを討つがごとくふるまつた池田財政は、今ここにも重大な自己矛盾に陷つております。すなわち昭和二十六年度の価格調整費は、主食三百二十万トンを確保する目標において、二百二十五億円が計上せられておりまするが、今やこの程度の額をもつてしては、予定数量の購入の不可能なこと火を見るよりも明らかであります。海外各国の食糧備蓄の傾向は価格をつり上げ、加うるに海上運賃の急騰はどろなわ式の造船対策では追いつかず、政府考えている單価ではとうてい入荷不可能の現状であります。輸入食糧の価格をさえ御存じない農林大臣をいただく日本政府は、五億ドルの外貨を死蔵しつつ不幸にも国際的商機を失つて、今後の食糧行政は重大なる危機をはらんでおります。さらに燐鉱石その他の確保のためにも、これまた補給金の必至であることはそこにおられる安定本部長官もこれは認めておられる通り、約七、八十億の追加支出は目前の事実となつて現われております。さらに鉄鉱石や粘結炭に対しても補給金の考慮を拂うべき事態も遠からず、かくして池田財政の一角はこの点から崩壊しつつあるのであります。  食糧に関連して、さらに検討を加えるならば、現内閣の唱える自立経済計画自体が一種の空中楼閣でありますが、なかんずく食糧一割増産のごとき、まつたく白晝の夢でありましよう。安定本部の示した計数によりますと、二十五年度における米六千二百八十七万石、麦二千四百八十九万石を、二十八年度にはそれぞれ米六千八百三十六万石、麦二千七百五十二万石の増産を見込んでおります。日本のごとき農業における生産様式が古く固定した国において、かかる飛躍的な計数が実現するためには、おそらく国家予算の半額ぐらい投ぜねばなりますまい。しかるに二十六年度予算における土地改良費はいかん、開墾開拓費はいかん、技術改良の費用はいかん、まつたくお寒い限りであります。何をもつてこれを興農予算というでありましようか。去る十二月発表に相なつた農業センサスの結果は、増加せる人口と減少せる耕地とによつて、ますます零細化せる農家の姿を如実に示しております。人口の半分を占める農業者が、国民所得において四分の一にも満たない、パリテイ計算の魔術によつて低米価にすえ置く価格政策は、一刻も早く修正せられなければなりません。大幅な国家資本の導入なくしては劣弱な條件に置かれた原始産業部門の振興は期し得られません。かかる観点において本予算案が吾人の最も大きな不満を買うゆえんであります。第五点として、われわれは地方財政の立場からも本予算案に賛意を表しがたいのであります。由来池田財政は中央の財政均衡のみ眼中にあつて、そのしわを常に地方に寄せて顧みなかつたのであります。今回は特にそれがはなはだしい。先ほどの災害復旧費三分の一を地方に負担せしめたことだけによつても地財委の計算によると、三百二十二億の負担増と相なります。法律制定の結果当然地方が支出すべき義務費も三十四億円から増加しております。しかるに明年は千百億の平衡交付金であつて、二十五年度に比べて十五億の増という程度、まことにふえたというもおろかな数字でございます。地方税の本質的な不均衡性もあり、交付金算定配分の不合理性もあつて、地方の苦悶はいよいよ深刻になりつつあります。地方財政委員会は單なる勧告の機関になり終り、知事会議の要請や市町村長の悲鳴は政府の耳に達しないかのようであります。われわれは地方財政平衡交付金において、少くとも地財委勧告の線を支持するものであり、しかるときは本予算をもつてしては百九億の不足と相なります。  昨年十月十六日社会保障制度審議会が多年研鑽中の結論を出して政府に勧告したにもかかわらず、本予算案に組み入れられた社会政策的費用は、まだまだわれわれを納得せしめるには足りません。勧告を無規する常習は現内閣の悪癖でありまして、政府はその総額五百六億円を誇示して、本予算案の特色を宣伝いたしております。しかしながらこの中には同胞引揚費三十七億円までが混同して入つているのでありまして、いささか一貫性を欠いております。健保、国保が厖大な赤字を抱いて経営の困難に悩んでおりまするが、これらが何ら顧みられておらない。特にわれわれが声を大にして叫びたいのは戰争犠牲者の待遇の不備であります。まだ街頭に、車中に白衣の身体障害者が悲痛な姿をさらしておるのがあとを絶つておりません。最も重い負傷者で年額三千二百円の手当にすぎない事実は、まさに驚くにたえたることであります。ドイツにおいては傷痍軍人の待遇は完全無欠であり、遺家族、未亡人の生活国家がこれを保障しております。首相が愛国心の高揚をいかに説かれても、この具体的悲惨事を解決しない限りは望み得ないところであります。  ドツジ安定政策の最大の犠牲者として、一つに中小企業があります。資本主義的スタビリーゼーシヨンの結果、倒産者続出に至り、かつて池田蔵相が語るに落ちたところであります。しかしながらわが工場の九割以上が百人以下の中小工場であることを思い、往年輸出産業の六割までが中小企業であつたことにかんがみるなら、これが重要性は言をまたないところであります。本年度予算案において、これが対策のまことに貧困なることも審議にしばしば指摘せられました。国民金融公庫に申し込む零細な借入れも、現在では六に対して一の割合でしか希望がかなえられない状態であります。中小企業信用保險も発足したものの、いまだほとんど軌道に乗つて来ておりません。われわれは中小企業関係予算の僅少なる点にも、すこぶるあきたらないものを感ずるのでございます。  さらに労務対策費、文教対策費等についても言及いたしたいのでありまするが、時間の都合上これを割愛いたします。  先ほど宮幡君は減税の功徳を喋々と述べられました。減税千億の公約を裏切り、税法上の減税七百億、事実上の国民の負担減少はわずかに五億六千万円であるとは、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るものでございます。税法上の減税なるものが、インフレーシヨンをはらんでいる現段階においては、逆に負担を増して来るものであることは、公聽会席上都留教授も指摘した通りであります。物価が上ることが所得を増加せしめるものであると断定して、かかる租税政策をとることはすこぶる危險でございます。特に給與所得者等の立場において、重大なる異議を申し述べなければなりません。  以上私はおよそ十箇條をあげて本予算案に反対の理由を申し述べました。さらに数え来るならば、数千言を用いてもなお盡くるところではありません。特別会計、政府機関の予算については、これ以上言及する煩を省きます。  ただ、審議のあとを顧みて感じますことは、今や日本経済が重大なる転換期に際会しておることでございます。従来のデイスインフレの線はいやおうなしに修正を余儀なくせられつつあります。インフレは終息したという言葉の裏から、ただちに新しいインフレの足音が忍び寄つておるのであります。安定と復興をともにねらつたデイスインフレは、結果において安定により重点が置かれまして、朝鮮動乱がもしなかりせば、日本経済はおそらく萎靡沈滯の極に達したでありましよう。池田財政の行き詰まりを救つたものは、動乱という突発的な要因であつたのでございます。しかし、われわれは池田氏の財政感覚がこの新事態によく対処し得るやいなや、本予算案を通覧するときに、すでに池田氏の使命終れりという感を深うするものでございます。(拍手)デフレとインフレの岐路に立つて苦悶しておるのが本予算案の姿であります。講和が近づいても、また動乱が発展しても、財政需要は増加する一方でありましよう。日本自衛態勢確立の問題は近く具体的日程に上つて参ります。本予算の彈力性は、はたしてよくこれにたえ得るやいなや。見返り資金の中に経済再建費なるものが七百五十余億ありまして、一種のクツシヨンの役をなしておるようでありますが、いずれにせよ、補正予算を組むべきことはきわめて近いでありましよう。政府はそれを知らざるにあらず。願わくは、いたずらに面子にとらわれることなく、即刻組みかえの作業にとりかかられんことを希望いたします。  なお本予算案審議の過程におきまして、ダレス氏来朝をめぐる外交論議は別といたしましても、東京銀行の金融債発行のいきさつ、あるいは電力再編成にかかわる公益事業委員会の仮決定等が問題となりました。前者は、現内閣の金融政策、資本蓄積政策の本道を歩まず、東銀債発行を強行して、日銀政策委員会と対立し、金融界に混乱を招来した一例であります。また後者は、ポツダム政令によつて強行した電力再編成の本質に胚胎する矛盾を露呈したものと考えるのであります。(「その通り」「予算とは関係ない」と呼ぶ者あり)直接予算と関係なしとするも、けだし重大なる政治問題であります。一九五一年の春寒くして吉田内閣にいささか疲労の色あることは否定できますまい。この点を指摘いたしまして、私の反対討論を終ります。(拍手)
  89. 小坂善太郎

    小坂委員長 西村榮一君。
  90. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本予算案に反対の意見表示をいたすものであります。  その理由とするところは、第一に、本予算案の執行は困離であるということ。すなわち本予算案の編成責任者たる大蔵大臣自身が、補正予算の提出を言明せられたということは、この予算の執行が困離たることをその当事者自身が裏書きされたのでありまして、これはいまだかつて議会史上その前例を見ないのであります。  第二点は、今日の国際情勢変化に際会いたしまして、ただいま民主党の代表も述べられたのでありますが、それに即応の態勢が何らとられておらない。すなわち経済自立と生産拡大と将来激化するインフレーシヨンの克服に対しまして、何らの対策が講ぜられておらないということが第二点。  第三点においては、物価の高騰と国民生活の関連において、これまた何らの考慮が拂われておらないというようなことが主たる理由であるのでありまするが、私はここにこの理由を検討いたしてみますると、先ほど民主党の代表が言われましたように、本予算案の編成は昨年の十一月を基準といたしております。しかるに経済安定本部の調査によつて、すなわち政府が公表せられました物価の指数から考えましても、予算の編成当時よりすでに二三%の物価の値上りに相なつているのであります。国際的にこれを見まして、昨年度は原材の騰貴の年であり、ことしは消費物資の騰貴の年と一般にいわれているのであります。おそらく現在の状況から申しましたならば、本年度末になりますならば、物価は七五%ないし一二五%上昇するのでありましよう。     〔発言する者多し〕
  91. 小坂善太郎

    小坂委員長 靜粛に願います。
  92. 西村榮一

    西村(榮)委員 その原材料の騰貴の推定の基礎となりますものは、現在においてもすでに原材料は二五%の騰貴となつておりますし、船賃は三倍になつておりますし、食糧の国際的暴騰その他を勘案いたしますならば、おそらく本年度末におきましては、多くの物価の高騰と相なります。本予算案ではとうていこの予定事業を遂行して行くということは、困難に相なることは火を見るよりも明らかであります。従つて、今年度の予算を金額の面においてあくまで遂行して行こうといたしますならば、その事業は四割ないし五割の削減をするか、これを繰延べしなければならないのでありますが、同時に、公共事業費、文教費その他を勘案いたしまして、事業の繰延べないしは縮減というものが困離たることを御存じの大蔵大臣は、遂に本音を吐いて、追加予算の提出もやむを得ないということを表明せられたのであります。そこで問題は、今の予算を審査しているときにおいて追加予算のやむを得ないことを言明せられたのでありますが、しからばそれに対する財源は一体どこにあるのか。追加予算言明されながら、その財源をどこにもわれわれは見出すことができない。私どもは追加予算の財源を見出すことは困離であるのであります。しかも一方においては、追加予算の提出が必至である。これを考えてみますならば、当然将来国民の増税あるいは一大犠牲と相なつて現われて来る予算案、しかも政府みずから自信のない予算案を、何として国会がその権威と国民の信頼感によつて審議することができるでありましよう。これは政府自身も顧みて反省せられなければならないと思うのでありまして、政府が自信のない予算案国会審議、これを可決せよという政府の意思というものは、きわめて無理な難題をわれわれにふつかけておると申さざるを得ないのであります。(「心配するな」と呼ぶ者あり)これは自由党の諸君のように心臓も強く胃袋も強く、公約無規の常習犯であるならばとにかくといたしまして、(拍手)良心と識見を有する政治家のとらざるところであるということをわれわれは第一に申し上げざるを得ないのであります。  第二に問題になつておりますものは、何と申しましても今日は世界的な軍備の大拡張の段階に入つております。世界の市場は、買手の市場から売手の市場に転換したということは、私が警言するまでもなく、政府並びに自由党の諸君はよく御存じなはずであります。しからば問題は、その世界経済の大転換期に際会いたしまして、これにわが国の生産対策並びにインフレ対策その他の政策が相一致しておるかどうかということを考えてみます。ならば、これはてんでんばらばらだと申し上げざるを得ません。原材料は国際的にますます暴騰しおる。しかるにわが国は輸出即輸入という態勢をとらないで、今日五億有余ドルの手持ち外貨が出て来たのであります。手持ち外貨は、貿易利潤から発生して参ります利潤でありますならば、慶賀すべきでありますけれども国民に必要なる物資を輸出して、その材料を輸入できないで手持ちドルがふえたということは、わが国経済にとりまして、一大致命的な欠点であると申さねばなりません。おそまきながら今あわてて原材料の手当に従事するというのでありますが、その間半年間の時間的ずれでどういう現象が起きて来るかと申しますならば、国際的価格は二割、三割、はなはだしきに至つては二倍も暴騰するどともに、船賃がまた三倍に暴騰しておるのでありまして、この時間的ずれは、日本国民経済の非常なマイナスとなつて政府が念願せられておりますところの民間の資本蓄積は、ここに枯渇して来ておるのであります。従つてこの生産計画並びに産業政策を続けて参りますならば、国民はデフレーシヨンとインフレーシヨンのはさみ撃ちにあつて苦悶しておるのが、今日の現状であると申さねばなりません。そこで問題は、なぜドルの手持ちがこれだけ増加したのであろうか、同時に現在の産業界が非常に苦しんでおるということは、先ほど民主党の代表によつても述べられたように、あるいは数日来の論議によつて、金融政策の上において論ぜられましたように、民間に産業資金がないということ、政府の財政的吸上げがきびしいということ、同時に政府は財政資金として吸い上げては行くが、それが民間に返つて来ないということ、私は先ほど自由党の代表者によつて予算を非常にほめられた中に、私が賛成しているのが一つあります。それは通貨の増発は恐れるに足らず、こうおつしやつた。これは自由党年来の主張です。私は通貨の増発は、決して日本経済の将来にとつて、恐るべきものではないということは、自由党の代表と同じであります。ただ問題は、その増発されて行つた通貨が巡回コースを円滑に通つて、元の心臓に納まつて、もう一ぺん出て行くという巡回コースであるのであります。心臓から出て行く血液が、からだ全体をまわつて、元の心臓にもどる、このコースが金融機関に欠けておりますならば、それはわが国の金融政策上一大欠陷であるといわねばなりません。しかるに民間から多くの財政資金を吸い上げて行つて、見返り資金は千二百億活用しないままに眠つておる。五億ドルの手持ちドルは、これまた何ら活用をしない。わが国に大体産業資金として活用せられておらない資金は、先ほど民主党の代表が指摘されたインヴエントリー・フアイナンスその他の費目を合せて約四千億円、これが眠つておるのであります。一体現内閣のとんちんかんな産業政策並びにこの常識上判断のできない四千億円の資金を、どうして眠らしておくのであろうかということが、民間の一つのなぞであります。安本長官は目をむいて聞いておられるが、(笑声)あなた自身もよくお考えになつて——私はあなたに反省の時間を與えるために、今国会においてはあなたと論争しなかつた。安定本部長官は、大蔵大臣よりいくらか良心を持つておるだろうと思うから、猶予期間を與えておる。このふしぎな財政政策をなぜとつておるか、これは経済学上あるいは実際の金融政策の上において、産業政策の上において、ふしぎな現象である、これは増田君もラジオ討論会ではいろいろつべこべ御説明なさるが、私は聞くたびに、はなはだ苦しい答弁だと、いつも御同情申し上げておるのでありますが、このふしぎな財政政策というものは、四千億円を遊ばしておいて、しかも民間には非常な金詰まりを来して、民間には貧血が起きておる。一体このふしぎな財政政策というものは、どこから来るのであろうかというなぞを解くために、いろいろ頭をしぼつた。そこで巷間一つの説が飛んで来た。このふしぎな財政政策は、これをため込んで、将来独立後における再武装の費用に充てるのだということが一般に伝えられておるのであります。そこで私は……(「インフレをとめるのじやないか」と呼び、その他発言するものあり)まあ黙つて聞けよ。インフレをとめるかどうかは、これからおれが話すのじやないか。そこで問題は、私はこの四千億で、はたして政府考えておられると民間で流布されておる再武装ができるかどうか。かりにそういうことを政府考えておるとすれば、私はその短見にして幼稚なる経済政策を笑わざるを得ません。なぜならば、政府がかりに再武装をそのため込んだ金でするといたしましても、私は今日の再武装は、国際的に物資の欠乏の今日においては、金だけではできないということを政府の諸君はお考えにならなければなりません。現にこのことができるならば、豊富な物量と世界の半分近い金貨を持つておるアメリカでさえも、将来の万一に備えて、今日国際的に物資の買いあさりをしておる。備蓄輸入をしておる。單に金だけで再軍備ができるとお考えになるならば、私は今日における国際的な物の面における認識が下足であると申さなければなりません。これは私が申し上げれば、岡崎君は思い当る節があられると思うのでありますが、かりに金だけをもつて、それで再武装の費用がまかなわれるといたしますならば、私が先ほど申しましたように、金だけではできないということが一点。物の裏づけがなくてはならぬということ。同時に金だけあれば、外国から兵器を買い入れるのだというお考えが、もし政府当局にあるといたしますならば、それは日本国にとつて危險千万といわなければなりません。何となれば、日本自身に必要なるところの兵器を外国にのみ依頼するということは、結局兵器供給国の傭兵的存在となつて日本の独立と自衛のために危險なことであるといわなければなりません。この巷間の流説がかりに事実といたしましたならば、私はその反省を促さざるを得ないのであります。それよりもこの四十億円の資金をもちまして、ただちに原材料を仕入れ、日本の生産施設の補修、改善に充当されて、もつて日本産業の基盤を拡大し、国民生活の安定と国力を充実すべきである、こう私は思うのであります。これだけの産業資金を民間に出すということは、一見してインフレの激化になるというような懸念もあつたのでありますが……(発言する者あり)上林山君は大分神経戰にかかつておられるようでありますが、先ほどあなた方の代表の宮幡君が、通貨の増発恐るるに足らずと言うたじやないか。私はこの通貨の増発は恐るるに足らないが、これを有効に使うか使わないかによつてインフレーシヨンかデフレーシヨンになるのであつて、私は今日本にため込んでおるところのこの千二百億円の見返り資金、インヴエントリー・フアイナンスを組みかえて、これを産業設備改善費に出しても、決して私はインフレーシヨンにならないと思う。なぜならば現在のインフレーシヨンの諸原因というものは、これは物の欠乏から来ているのであります。日本の生産施設の縮小再生産過程と原材料の下足から来ておるのでありまして、物が下足して来る、生産基盤が縮小して来る、この日本の貧血している中になお血液をしぼりとる、しかも貧弱な経済でありますから、熱の低いのにかかわらずこれに向つて解熱剤を與えて血をしぼり、マラソン競争をしろというふうな政策というものが、今日の自由党の政策であるといわざるを得ません。私はこのゆえに現在の超均衡予算というものは、必ずや近き将来破綻するということを、ここに警告申し上げざるを得ないのでありまして、現に先般来安定本部長官が、この委員会において述べられたのは何であるかというと、物価は騰貴いたしませんしインフレーシヨンは大丈夫です。そんなに御心配になるほど物価は暴騰いたしませんとあなたが述べたその二日後において、安定本部の発表は将来物価の暴騰を警告して、これに対策をしなければならぬということをあなたの役所自身が発表している。このことを考えてみますならば、の予算案並びに財政政策というものは、私は近く破綻を免れないと思うのでありまして……(「心配するな」と呼ぶ者あり)心配するなということでありますが、特に私は日本の将来のために憂えるのであります。これは現内閣の一大失敗であり、現内閣の一つの弱点はその金融政策にあります。私は金融政策の問題はあとで述べることといたしまして、他の問題で一言触れておかなければならぬことは、先ほど自由党の代表によつて、減税によつて国民生活は安定した。民主党の代表によつてその点を反駁されたのでありますが、私はここに数字をもつてその御意見お答えしておきたい。ということは、減税は実質的には数字をおはじきになればわかるのでありますが、三%であります。ところが庶民階級にとりまして、最も影響をこうむる主食の騰貴は九%でありまして、安定本部の報告によりまするならば、食糧は一二〇%、被服は一一六%、光熱費は一九〇%、住宅費は一五一%に暴騰すると言われておるのでありまして、これを考えてみまするならば、私どもはここに将来物資の騰貴に備えて、国民生活の安定をはからなければならぬのでありますが、それに向つて何らの対策が講ぜられてない。特に朝鮮事変以来特需景気による超過利得者に対しまして、三百億円前後の増税を求めて、その増税によつて社会保障並びに失業救済費に充当してはどうかという提案をいたしたのでありまするが、政府はこれに対して何らの考慮を拂わないのであります。結局政府が鬼の首でもとつたように騒ぎ立てる減税というものは、この特殊利得者の課税を回避するための形式上の減税を行つたというにすぎないのでありまして、これまた羊頭を掲げて狗肉を売るものといわざるを得ません。  最後に、現内閣の最も弱点であるといわれておる金融政策について私はその反省を促したいのでありますが、元来ここにおられる林副総理その他の古い党人は、私の申し上げることをよく御了解くださると思うのでありますが、政友会の昔から、この自由党の特色というものは、生産復興に対する積極的政策をもつてその党是として来たのであります。遠くは高橋財政しかり、近くは石橋財政によつて、インフレ恐るるに足らずと豪語したことは、世人なお耳に新たなるところであります。しかるに、主税官たる池田勇人君が大蔵大臣に就任し、またドツジ氏が来朝するに及びまして、安定第一主義の名のもとに、国民生活と生産の復興とを犠牲に供して、ひたすら通貨の安定のために、国をあげて奉仕して来たのであります。その結果は、生産基盤の縮小となり、日本経済の基盤は弱体化して矮小化した。その一つの証拠は、国際的激動期に際会いたしまするや、この重大なる影響を日本経済が受けて来たのであります。これは岡崎官房長官のラジオ討論の材料になるかと思いますから申し上げておきますけれどもアメリカの物価が朝鮮事変以来今日まで、わずかに一七・八%の上昇であるにかかわらず、わが国は安定本部の控え目な統計によりましても、四六%の暴騰に相なつておるのであります。これは一体何を物語るか、アメリカよりも、約倍、二倍半、三倍近くの影響を、国際経済の上に受けるということは、わが国経済の基盤というものが、それだけ弱体化しておるという、このあらしに耐えられない弱体性というものを、われわれはよく認識しなければならぬと思うのであります。このことは、私は銀行家の指導による金融政策が今日失敗したということは、大きな問題であろうと思います。なぜならば、外国流の金融政策を日本がそのままうのみにしたところに、この金融政策の過去二箇年の大きな失敗があるのであります。外国の川において泳いだかつぱが、日本へ来ておれは水泳の選手だからと言うて、あわてて日本の川に飛び込んでみたけれどもアメリカの川と日本の川とは事情を異にして、ふちもあれば瀬もあつて、そこでふちに巻き込まれてあつぷあつぷと言うておるのが、今日の金融政策であるといたしますならば、この世界的選手をもつて任ずるかつぱが、川におぼれるというのはかつこうが惡いというので、いまだに方向転換できないというのが、今日の予算案の欺瞞的な案として現われた一つの証拠であるといわざるを得ないのでありまして、このことがもしも外国の銀行だけに言い得るといたしますならば、私は日本大蔵大臣に例をとつてみますると、昨日中曽根君の質問に対して、日本大蔵大臣は何とお答えなつたか、自分は無記名定期預金の廃止には反対である、けれども向う様から言われたのであるからこれはいたし方がないのであつて、何がゆえにこれを廃止したかということは向う様へ行つて聞いてくれ、自分は腹の中は反対であつたということは速記録に残つております。私はこの考え方が今日この自信のない予算案の提出となつて現われて来たといわざるを得ません。もし大蔵大臣が無記名定期預金の廃止、あるいは今のドツジ氏の指導する金融政策に向つて反対であるならば、何がゆえに大蔵大臣はその職を賭して反省を促さないか。私どもは、自分は反対ではあるが、言われたからしかたがない、これ以上の内容は向うへ行つて聞いてくれというようなことを聞くに至りまして、その大蔵大臣の良心と信念が奈辺にあるかを疑わざるを得ないのであります。しかも問題はこの予算案を提出するにあたりまして、初めは追加予算を出しませんと言い、その途中から遂にどろを吐いて、追加予算はやむを得ませんと言うに至つては、どこに責任があるか。良心と信念を持つて予算案を提出せられたかということを疑わざるを得ないのでありまして、個々に申し上げれば四、五時間かかりますから、私は礼儀を重んじて大まかな数字だけで反対の意見を申し述べたのでありまして、これを要約いたしまするならば、予算編成の基礎的條件がすでに崩壊し去つたということ、しかもそれは国際情勢の激変に備えて、金融産業政策がとんちんかんであるということ、同時に第三点においては、大蔵大臣の自信なき——インヴエントリー・フアイナンスその他において自信なき、みずからの良心と信念によつて編成されたものではないというふうな諸点を指摘いたしまして、私はこの際予算を返上し、この予算案に向つて反対するとともに、この自信のない、しかもおれは反対なのであるけれども、向うから言われたからしかたがないというような、この無責任なる答弁をせられた大蔵大臣は、良心と政治家の信念に従つてその職を去られんことをあわせて勧告いたしまして、討論を終ります。
  93. 小坂善太郎

    小坂委員長 江崎一治君。
  94. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、ただいま上程されました三予算案に対して、反対の意見を述べるものであります。以下系統的に本予算の本質を明らかにして行きたいと考えます。  まず第一に、この予算日本人予算ではないということです。まずこの予算の編成にあたつて、池田大蔵大臣アメリカ人ドツジ氏の意見に盲従して重大な改編を行つたことは、天下周知の事実であります。池田蔵相は、この予算は今まで最も満足すべきものだとうそぶいておつたのでありますが、ドツジ氏と折衝が終つたあとは、目の前の氷山がぐらぐらとくずれたようだ、ドツジ氏はもつとものわかりがよいと思つたのに、もうだれが大蔵大臣になつても同じだと言つておるのであります。この修正の結果、自由党の一枚看板の減税一千億の予定が、ありの涙のような五億円となり、同様に地方民の渇望の的であつた公共事業費で百億円、地方債で百八十五億円、平衡交付金で百九億円減ぜられる結果となつたのであります。どこに予算の自主性があるのか、まつた日本語で書かれたところのアメリカ人の予算といわなければならないのであります。しかもこの予算の実施面について見ても、終戰処理費一千二十七億円の細目については、政府当局は事情があつてその説明ができないことを、この委員会で告白しなければならない状態であります。これが真に日本国会に提出された日本人予算であつたならば、その内容説明できないなどということは、断じて許されないはずであります。見返り資金にしても、一々その筋の許可を受けなければならず、預金部資金もまたドツジ氏のさしがねて動かされておるのであります。  第二番目に、この予算は羊頭を掲げて狗肉を売るともいうべき毒まんじゆうのような予算であります。すでに昨年の八月、警察予備隊がポ政令によつて実施されたときには、その費用として債務償還費の中から、突然二百億円が国会に何ら諮られることなく支出されたのであります。一片の政令によつてかかる厖大な費用か他の費用から流用されたことは、日本憲政史上いまだかつて例を見ないのでありまして、東條軍閥すらなし得なかつた暴挙であるのであります。しかるに本予算においても、昨年の債務償還費と同性質の費目が至るところに含まれておるのであります。外国為替資金五百億円、見返資金特別会計中の経済再建費七百五十四億円、預金部資金の余裕金四百三十億円、計一千六百八十四億円は、いつでも人民彈圧費あるいはまた日本の再軍備費に流用できる毒まんじゆうのような費目であるのであります。本委員会の公聽会におきましても、一橋大学の都留教授は、はつきりこの費目が再軍備のための費用として流用されるであろうということを指摘しておられるのであります。池田蔵相が広島への車中談で、再軍備のための増税はしなくても済む、再軍備のための増税をしなくてもよいという意味のことを漏らしておるのであります。まさにこの予算案の中にはかかる再軍備のためのポケツト・マネーが至るところに含まれておるのでありまして、そのことを彼みずからが告白したのであると考えるのであります。われわれは羊頭を掲げて狗肉を売るともいうべきかかかる予算案を承認することはできません。  第三番目に、この予算は労働者とその家族をひぼしにして、労働者を軍事奴隷に落し込む予算であるのであります。この予算編成の基礎となつておる国家公務員の給與ベース七千九百八十一円は、今日ではすでに二年前の物価を基準にしたところの給與ベースでありまして、物価は上りほうだい、賃金は二年前にくぎづけだというのが政府の基本的賃金政策であるのであります。昨年の十二月、政府は二年ぶりで平均一千円のベース・アップをしたといつておるが、その内容は地域給を切下げ、号俸を切下げ、その上に諸手当を創る等、労働者の既得権を剥奪して、大臣に対しては三万円の給與の増額、青年労働者に対してはたつたの三百円という戰時奴隷的な職階制を押しつけたのであります。これが一千円ベース・アップの正体であり、このために日教組々主軸とするところの全官公、その他多数の民間企業の労働組合は、労働者の最低の生活を守るために、最低十六歳五千五百円、平均一万二千円の要求を出しておるのでありますが、政府は本予算においてもこれに一顧も與えておらないのであります。これこそ政府が労働者をいかになめ切つておるかということを示すものであり、労働階級の実力を知らないところの思い上りの現われであります。  さらに政府は二言目には日本経済の再建などとおこがましいことを言うけれども政府が行政整理で首にした労働者十九万人余、企業整備で首にした六十四万人余、合計八十三万人余の身のふり方をどう考えたのか。今や失業者、半失業者の数は、政府のお手盛りの官庁統計でさえも八百五十万人に達したと伝えております。この厖大な産業予備軍に対して、失業対策費として百四十億円を計上したが、これでは、失業者一人当り一箇年間を通じてたつたの一千七百円に満たないのであります。これで一体どんな生活が保障されますか。背に腹はかえられぬという言葉があります。今日ではわずかな一時金を目当に家族と水杯をして、あるいはまつたく皆さんにだまされて、朝鮮作戰の要員に参加する多数の日本人があることを御存じでしようか。横浜の柳橋職業安定所から紹介されて朝鮮作戰に参加した労働者の遺骨が、すでに二百四十七柱送還されておるのであります。政府が自称する自由にして民主的な社会とは、これを裏返して労働者の側から見ますと、まつたく地獄絵巻のごとき惨状を呈しておるのであります。その上に民主的な労働者は彈圧する。進歩的な労働者は追放する。労働組合どころか、団体交渉さえも、踏みつぶされ、首切りの脅威のもとに酷使されて、職場はまつたく格子なき牢獄と化しておるのであります。また繊維工場の女工は、再び女工哀史さながらの奴隷労働が強制されておるのであります。また漁業労働者や山林労働者は労働法規の保護の外に置かれておるのであります。ことに驚くべきことは、国連のAクラス諮問機関として認められた世界労連の一員である全労連に解散を命じたことであります。この反民主的、反人民的フアシスト根性がこの予算を貫いておるのであります。  第四番に、この予算は農村を荒廃させ、農民を奴隷にする予算であります。(「それはどこの国のことだ」と呼ぶ者あり)政府は米価を五千五百二十九円にして、高米価であるなどと高言しておるけれども、諸君は農民に聞いてみたらよろしいと思います。こんな値段でつくつた米をどんどん強奪されては、つくればつくるほど損になるということは、苦労しておる農民の子供に聞いてもわかるはずであります。それだけではない。買上げ価格を上げたかつこうをして、一方では奨励金をやめ、べらぼうにやつかいな検査規格を押しつけ、米の等級を格下げして、だから、いくら苦労してつくつても四等米か五等米ばかりであります。かくて実際の手取りの金は減少するばつかりであります。その上に肥料はどんどん値上りする、物価は引上げられる、農地改革は打切つてしまい、小作料を引上げ、どうにもこうにも食えないようにした上に、軍用地として土地を取上げ、税金はむちやくちやにしぼり上げるのであります。災害は復旧せず、河川や山林や田畑は荒れほうだいであります。こうして農民を食えない状態にしておいて、農村の青年を安い賃金で軍事工場にたたき込むのであります。いざ戰争になると、これに鉄砲をかつがせて、外国の安上りの雇い兵にしようとしているのであります。その証拠は警察予備隊で明らかであります。その八割以上が農民の子弟であることを皆さん御存じですか。  第五に、この予算は中小企業者に対しては、つぶれてもよろしい、自殺してもよろしい、一向とんちやくせぬという予算であります。予算総額六千五百七十四億円中、中小企業育成のためと思われるところの費用はかずかに三十億円足らずでありまして、全予算額の〇・四%にすぎないのであります。こんな予算世界中のどこに一体ありますか。(「ソ連はどうだ」と呼ぶ者あり)だからこそ、池田蔵相はかつて中小企業の五人や十人は死んでもよいと、言つたではないか。その根性は今もつて少しも直つていないのであります。これがその証拠であります。税金で一番いじめられているものもこれは中小企業であり、差押えや公売を手きびしくやられているのも中小企業である。銀行は融資せず、政府の放任しているのが、これまた中小企業であります。実は次の戰争には中小企業はいらないのであります。これが二十六年度予算の性格であります。  第六に、この予算は、税金がますます高くなつて日本の全人民をひぼしにしてしまうところの予算であります。政府は当初一千億減税とほらを吹いて選挙をやつたのでありますが、選挙が終ると、とたんに七百五十億円になつてしまつた。ところが、驚くべきことに、いつのまにやらそれが税法上の七百四十三億の減税となつてしまつて、事実上減税はたつた五億になつてしまつたのであります。これではまるでバナナのたたき売りのようなものじやないか。これが二十六年度の減税予算の正体であります。しかも一方国民生活はますます貧困化しているのに、政府は所得をかつてに水増しして、その水増し所得へどんどん税金をぶつかけて行くのであります。人民は佛えない、政府は差押えをする、それでもとれない、そこで政府は徴税彈圧のために差押えトラックの費用を増額しているのであります。それに引きかえ大口滯納者は差押えもせず、取立てもしない。たとえば二十三年度の決算において大口滯納千件のうち徴收したものはわずかに三十件、あとはまつたく放任して顧みないのであります。そうしておいて、本国会においてごていねいにも三年以上の滯納は棒引きにする法律を提案し、これを押し通そうと考えているのであります。これは何でもない、大口納税者の滯納の棒引き法案と言えるでありましよう。  さらに指摘しなければならないことは、外国商社、これは中国人と朝鮮人を除きます。この外国商社七千社中課税したのは五百社である。課税所得はわずかに六千万円、一社あたりの所得はわずか十二万円にすぎないということに至りましは、まつたく言語同断であつて、ただあきれるばかりであります。  第七番に、この予算日本の産業を犠牲にする予算であるのであります。これについてはいくらでも事例をあげることができますが、私はここにその代表的なものの一つとして、中共貿易の禁止を指摘したいと考えます。その結果どんなことが起つているか。まず石炭、中国でトン当り十一ドルで買える粘結炭を、わざわざアメリカから二十八ドルで買い入れておる。中国でトン当り十二ドルで買える鉄鉱石を、アメリカからわざわざ二十三ドルで買い入れておる。また中国でトン当り七、八ドルで買えるところの塩を、はるばる地中海から二十三ドルも出して買い入れておるのであります。しかもこの運賃が二十ドルもかかる。何のことはない、日本人は塩をなめるかわりに船賃をなめておるのだと言えるでありましよう。さらに中国から大豆が来ないために、みそが幾らでも上る、しようゆが幾らでも上る、油飢饉が起つて参るのであります。味の素横浜工場は操業停止のやむなきに至つておるのであります。その結果緊要物資輸入基金までつくりまして、外国為替のインヴエントリーを百億から五百億に増額して、無法なる貿易から生れるところの犠牲を、ことごとく人民に転嫁しようとしておるのであります。これがその予算であります。  最後に結論といたしまして、この予算戰争予算であるということを指摘しなければなりません、何ゆえならば、吉田内閣の朝鮮の内戰に対する干渉戰争への協力を初め、單独講和による日本の軍事基地と軍事産業の復活、再軍備を通じての日本を国際帝国主義のアジアにおける前進基地にしたてるあらゆる政策がこの予算の中に如実に盛り込まれているからであります。以下数項にわたつてこれを指摘してみたいと思います。  一つには終戰処理費であります。これが戰争の跡始末ではなく、戰争戰争準備のための費用でふることは、われわれの繰返し指摘したところであります。たとえばこれが軍事基地としての飛行場の建設、港の修理、兵舎の建設などの、特需の支拂いに充てられていることはもちろんのこと、直接兵器の修理に使われているのであります。たとえば冨士モーター横須賀工場は、昨年第一・四半期におきまして軍用自動車などの修理を行いましたが、この経費三十四億円はこの終戰処理費から支拂われております。そればかりではない。占領軍の自動車事故や漁場における演習被害の補償まで終戰処理費からの支弁であります。だからいつまでたつてもこの費用は減少しないのであります。  次に警察予備隊、海上保安庁の費用、これは政府がいかにごまかそうとも、万人の見るところ明らかに普通のいわゆる警察費ではありません。現に国民民主党の芦田君のごときは、日本に軍隊がいるではないか、警察予備隊は鉄砲を持つてタンクに乗つている、これがどうして軍隊ではないのかとさえ言つておるのであります。また海上保安庁は、対日理事会におきまして連合国から、実際には日本海軍の復活であると指摘されております。さらにその上に、この軍隊と呼ばない軍隊を政府は二十万人に増強しようとたくらみ、その費用を見返り資金経済再建費、その他の中に隠しているのであります。そのほか公共事業費も、港湾や道路やその他の軍事施設に使うつもりだし、失業救済費さえ軍事労務費として活用するのであります。また見返り資、金にしても預金部資金にしても、輸出銀行、緊要物資輸入基金にしても、これが主として軍事産業の復活と軍需物資の調達あるいは軍需資材の輸出に使用され、また将来使用されることは、私は幾らでもその実例をあげ、指摘することができるのであります。つまり一口にいえば、この予算全体が軍事的性格を持ち、軍事復活の意図によつてつくられておることは、平和産業の助成を無視し、中小企業を見殺しにし、厖大なる失業者群を放置し、農村を荒廃させ、文教、厚生、ことごとく犠牲にして顧みない点に如実に現われておるのであります。もしそうでないと言うなら、だれでもよろしい、そうでないという事実をあげてごらんなさい。  以上指摘して来たように、この二十六年度国家予算は、どの角度から見ても反人民的、反民族的売国予算であります。もし日本人としての血潮が一滴でもあるならば、何人といえどもこの予算に賛成することはできないだろうし、また民族の平和と独立を願うただ一片の誠意さえあれば、何人といえどもこの予算に賛成することはできないでありましよう。これに賛成し、これを支持する者は、国際帝国主義の番犬として国を売り、民族を売るやからであり、人民の明らかなる敵であります。わが党は以上の見地に立ちまして、全人民の名において断固として本予算に反対するものであります。
  95. 小坂善太郎

    小坂委員長 ただいまの江崎君の発言中、どうかと思う点が多いように思われますが、速記録を見まして、不穏当な箇所がありますれば適当の措置をとります——小平忠君。
  96. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はただいま上程されております昭和二十六年度一般会計予算特別会計予算並びに政府関係機関予算につきまして、農民協同党を代表いたしまして、反対の討論を行うものであります。  朝鮮動乱直後に編成されましたこの昭和二十六年度の予算案は、御承知のように国際情勢の急変等、特に世界的軍拡経済の影響によりまして、根本的に組みがえを必至とされておるにもかかわらず、何らその意図がないのであります。  すなわち講和予算を豪語し、経済自立を表明せる政府が、ドツジ・ラインに便乗してその責任を回避し、日本経済の安定を遷延ならしめておるのであります。かかる無為無策なる本予算案は、現実とはまつたく遊離することはなはだしく、急転せる情勢に対応し得ない非科学的なものなるをもつて、わが党はこれを返上し、即時根本的な組みかえを要求するものであります。  私は討論の重複を避けまして、主として農林関係予算について、すみやかに組みかえを必要とする理由について、具体的に私は内容を申し上げてみたいと思うのであります。  まず第一に、政府みずからが豪語した興農予算内容についてであります。戰後日本経済復興の完全な犠牲となつた農漁村は、一昨年以来いよいよ窮乏の度が加わり、昨年第七国会閉幕時においては、遂に與党、野党一致して、救農国会召集の決議案となつて現われ、政府もまたみずから興農国会を召集するのだと称し、あわせて廣川農相は食糧一割増産運動を提唱して、ようやくその緒につきかけたのであります。しかるに参議院通常選挙後の朝鮮動乱の突発により、次第にその影を薄めまして、昨年十一月第九臨時国会においても、完全に抹殺されたことはまことに遺憾にたえないのであります。われわれの終戰以来の主張たる農業政策の基本方策は、まず第一に国内の生産力を高め、外国食糧の輸入は極力これを抑制して、国内食糧を圧迫せざるよう主張して参つたのであります。すなわち政府の一割増産運動の提唱も、この線に沿つたものとして、われわれ深く共鳴したのでありますが、しからば二十六年度予算案に現われたものは一体何であるか。わずか六十億円の農林漁業長期融資や、土地改良において七億円、開拓において一億四千余万円の増額や、食糧増産関係経費でわずか十億円程度の予算的措置しかなされていないのであります。特に政府は国内の自給度を高めるために、経済自立三箇年計画を樹立し、これによると、昭和二十六年度より向う三箇年間に米麦等主食千二百万石の増産を計画しておられるのでありますが、以上のような予算的措置では、とうてい実現し得ないのみか、まことに貧弱な興農予算といわなければならないのであります。農業政策の基本をなすものは食糧政策であります。日本の食糧の問題の解決こそ、国家の喫緊の要務であることは論をまたないところであります。このことは、年間三百万トンの食糧の絶対不足量をいかにして埋めるかという点にあるのであります。終戰後歴代の内閣はその解決策として、まず国内の生産力を高め、なお不足量については、輸入食糧によつて需給の調節をはかつて来たのであります。しかるに最近の国際情勢の緊迫化に伴いまして、食糧対策も新たなる角度から検討されなければならない段階となつて来ておるのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 すなわち去る一月三十日のロイター電報は、濠州とカナダに対する英国の小麦買付に関する新規契約が成立したことを伝えておりますし、またインドとカナダとの問に話合いを行つているとも伝えられているのであります。ビルマ、タイ、インド等に対するフランスや英国の食糧買付競争は、かなり深刻なる規模で進んでおり、また一時食糧過剰が懸念されました米国でさえも、非常事態宣言をきつかけに、生産制限の方向をにわかに切りかえて、今や増産政策に転ずる一方、盛んに備蓄に乗り出しておるありさまであります。現に二月二日の外電の伝えるところによりすまれば、米国は小麦の輸出を停止するということを伝えております。このことは、やがてわが国の食糧輸入をして一層困難なはめに追い込もうとしておることが予想されるのであります。さらに昭和二十六年度分として三百二十万トンの食糧輸入を計画しておるのでありますが、政府はこれに基いて輸入食糧が仰げるからというような観点で、さらに雑穀の統制を来る三月一日より撤廃する、さらに麦類も供出制度をやめて、農民の売渡し申込みに応ずる考えであり、さらにその統制も七月一日に撤廃をするということを明らかにしておるのであります。このような甘い考え方で、一体日本の今後の食糧政策というものが円滑に行くかどうかという点であります。私は以上申し上げたような世界情勢なり、あるいは各国が食糧買付に狂奔しておるというような問題、あるいは輸入価格のうなぎ上りに高騰しておるという現状、あるいは船舶が極度に逼迫しておるというような問題から考えまして、政府が本二十六年度予算に計上いたしておりまする三百二十万トンの輸入食糧というものは、絶対不可能であるということを断定せざるを得ないのであります。従いましてこの食糧政策に関しましては、即時組みかえを私は要求しなければならないのであります。  第二点は、本予算案編成の基礎ともなるべき農産物価格、いな米価の問題であります。戰後わが国経済は国際経済と孤立して、独自の物価体系を形成し、インフレ政策とやみ価格によつて脅威せられながらも、低米価政策をかえずに、農産物の価格を決定せられておるのであります。資本蓄積の美名のもとに、日本経済の基礎たる食糧確保の責任供出ということを強制せられて来たのであります。国際経済の交流と、農民の血と汗と、そうして涙の結晶によつて、食糧事情の緩和せられるや、統制より自由への切りかえを目標にし、価格においても国際価格さや寄せという、いわゆる農産物価格に大きく影響を與える傾向を示しておるのであります。そもそも米価の決定につきましては、経済の推移からながめますと、多くが政治的、人為的につくられまして、農民抑圧の価格をでつち上げるのであります。たとい政治的に、人為的に決定せられる価格でありましても、国民経済を十分に尊重いたしまして、価格政策は物価体系の一環として考えられなければならないのであります。しかるに農産物価格については、農家経済の重大部門でありまする農業の拡大再生産を保障するということが、絶対に必要なのでありますが、しかし今まではこの線が公然踏みにじられておるのであります。従来のような、常に農業の再生産を無視した低米価政策をもつて終始いたしましては、農民の前途は暗影そのものであり、これは食糧増産上、日本経済の安定上、非常に危惧せられるところであります。かかる事情にありながらも——私が先ほど申し上げましたように、世界情勢の急転がわが国物価体系を著しく変動せしめておる。さらに朝鮮動乱を機といたしまして、まつたく予想もしなかつた圧どの物価騰貴を見ておる。かかる事態を予想しなかつた政府は、二十六年度の農産物価格の構成を、相かわらず低米価に押えて、米価については六千百六円と、昨年秋の二十五年産米決定時期に予算米価を作成いたしておるのであります。物価の動向を微細に見ますると、二十六年秋には、六千百六円というものは、あくまでも編成がえを必至としなければならないということを考えておるのであります。政府はこれに対して、実にあいまいなる答弁をいたしておるのであります。かかる観点から見まして、少くとも予算の編成の基礎になる米価については、あくまでも将来の見通しを立てて、最も公正妥当なものでなければならぬということを、私は強く指摘しなければならないのであります。  次に農林漁業資金について申し上げますならば、昭和二十四年以降の農村金融は、まつたく文字通り苦悶の中に陷つておるのであります。ドツジ・ラインの設定によつて国民経済に大きな影響を與え、金融機関の融資引締めが急激なデフレ現象をなして、通貨の收縮、金詰まりを来しまして、すでに凋落の波に乗つた農漁村の経済に特にその影響がはなはだしかつたのであります。日銀の調査によつて見ますると、各部門別の通貨分布状況は、昭和二十三年末において農漁村が通貨総量の二三・三%を占めていたのでありますが、ドツジ・ライン一箇年後における昭和二十四年末においては、一九・二%という低落ふりとなつております。また農業所得の面について安本の推計によりますと、農業所得の国民所得総量に対する割合は、昭和二十一年が二七・三%、二十二年が二五%であつたものが、昭和二十四年には二〇・九%と、非常に激烈な転落を示しておるのであります。これはまさしく農漁村の危機が証明されておるものと私は断ぜざるを得ないのであります。わが国における農林漁業の資金的措置は、ほとんどとられておりませんのみか、農業においては、農業手形、農業債券等は短中期資金てありまして、しかも償還確実な特定事業に限定いたして融資されておるのであり、農業生産の根幹をなす土地改良を初めとし、生産手段が長期的に達成せられるものについてのいわゆる長期低利の融資は、無為無策もはなはだしかつたのであります。食糧増産の基本線と、日本経済の安定の策からいたしましても、農村の危機的様相は重大視されなければなりません。このためには、農村の生産部面、なかんずく土地改良、畜産振興、その他の生産手段に対しまして、長期低利をモットーとする資金の供給が重要な要件となつておるのであります。かかる意味からいたしまして、昭和二十六年度より長期資金を特別会計によりまして融資されることは、われわれ農民ひとしく念願をいたしておつたところであります。しかしながら、農林漁業資金融資における資金は、一般会計より二十億、見返り資金より四十億、合計六十億円ということになつておるのでありまするが、土地改良事業が生産の絶対的要件であるにもかかわらず、小水力発電施設以外の農業部面には何も見られていない。またその額についても、六十億程度では、およそ政府が予想されておりまする生産量の拡充強化は、絶対に不可能であると考えるのであります。かかる観点よりいたしまして、農林大臣も、この六十億をもつてしてはとうてい不足である、これは上半期において使つてしまつて補正予算であとさらに六十億ないし百億くらい出したいと、この国会を通じておつしやるくらいであるならば、現在においてもこの予算を組みかえて出されることが妥当であると私は信ずるのであります。  さらに今日まつたく危機に直面しておりまする農業協同組合の育成強化に対する予算的処置であります。農業生産を増強して農民生活の安定をはかることは、わが国の自主的経済達成の重要な要件であるのであります。そのためには農業協同組合をしてその機能を十二分に発揮せしめなければなりません。しかるにドヅジ・ラインによるインフレの收束は、農業を初め中小商工業者に対し不可避的に大なる打撃を與え、農家経済は窮乏いたしまして、農業協同組合も当然その痛手を受けておるのであります。産業界は相互に競争を通じ、破産あるいは発展の色わけを持つ事態の方向を見出しておるのでありますが、農業協同組合は統制機関的役割と農民的組織を背負うために、破産、倒産もなすことができず、その打撃を依然として受けながらも、その組織経営を続けざるを得ないという状況なのであります。もちろん農業協同組合は農民の自主的組織であり、自力再建をいたさなければならないのでありまして、かかることを認識するがゆえに、全国的に農業協同組合刷新運動を展開いたしまして、系統組織の整備強化、農業協同組合教育の徹底等、これに努力を傾注いたしておるのであります。しかしながら経済情勢の諸種の原因によりまして、農業協同組合の資金は現在二百二十億という互大な額が固定化いたしておるのであります。この二百二十二億余円の巨額な固定費産を背負いながら、その未拂いに追われておる事態をもつてしましては、農協本来の機能が達成できないことは当然でありますし、今日この厖大なる資金の固定化によつて、農協はまつたく危機の中に突入しておるということを私は強く指摘申し上げなければならないこの際この農業協同組合の危機打開のために、政府は御承知のように農林省が中心となりまして、農業協同組合再建利子補給法案なるものを用意し、今後二十六年から向う五箇年間に三十三億三千七百万円の利子補給をするのだということで、その法制化の準備をされ、農林大臣はこの委員会においても必ずこの予算を出すのだとおつしやつておりますが、この予算的措置は何ら講ぜられておりません。かりにこれがもし補正予算でやるというならば、それまで農業組合の現在は待てないということに政府当局は十分認識を持つていただきたいのであります。
  97. 西村久之

    西村(久)委員長代理 小平君に御注意いたしますが、時間の関係がありますから、結論を急いでください。
  98. 小平忠

    ○小平(忠)委員 さらに私は重要な点を二、三指摘いたしたいのでありますが、農業委員会の問題であります。御承知のように政府は、例の農地委員会、農業調整委員会並びに農業改良普及委員会の三委員会を合同して、今回農業委員会一本にまとめるという案を進めておるのでありますが、しからばこの農業委員会をして、農業生産力拡充強化、あるいは農地改革の完全なる遂行、あるいは食糧供給の円滑なる遂行が、はたしてこの予算的措置においてなし得るかどうかという点であります。現在の行政機構を簡素化してこの定員を少くするということは、もちろん考えられるのでありまするが、この場合に、この委員会の書記を全国平均一・二人にする、さらにこの経費負担も、従来の方策を改めて、これを全国地方自治体に負担せしめるというような考え方では、私はとうてい所期の目的を達成し得ないと思うのであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 さらにこの農業委員会の性格も、まことにその自主性と権限が抹殺せられておるのでありまして、このような予算的措置とこのような方薬をもつてしては、一大混乱を呈するものであるということを、今日ここで警告を発しなければならないのであります。(「時間だ、簡單にやれ」と呼ぶ者あり)
  99. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平君、時間が参りました。
  100. 小平忠

    ○小平(忠)委員 さらに重大な問題といたしまして、肥料問題の重要性を追究するならば、御承知のように肥料についての価格差補給金は二十六年度からストツプされております。この点について予算審議中に、現に周東安本長官あるいは横尾通産大臣、あるいは大蔵大臣、このような関係者が二十六年度は補給金をつけなければならないということを、ここで明言せられておるのでありますが、このこと自体がすでにこの予算の組みかえをしなければならぬということを、明らかに示唆していると思うのであります。そういう点から見て、現にこの肥料問題が大きな問題として登場しておるのにかかわらず、何ら組みかえ修正をする意思がないということは、私はまことに遺憾にたえません。  さらに問題を取上げれば、單作地の問題なり、あるいは土地改良の問題なり、たくさんあるのでありますが、自由党の諸君がばかに時間だ時間だ、簡單に、こうおつしやいますので、私は討論ぐらい十分にやらしてもいいと思うのでありますが、あなた方がそうおつしやるならばあえて主張いたしません。そういう見地においてるる申し上げたいのでありますが、以上のような観点に立つて、まず政府が豪語したこの興農予算というものは、まつたく貧弱なものであり、これをもつてしては、現在重要視されているところの国内生産力の増強とか、あるいは食糧の一割増産というような問題は、とうてい達し得ないのみか、安本長官が中心となつて立案されておるところの日本経済自立三箇年計画において、二十六年から向う三箇年間に、米麦等主食一千二百万石の増産をするのだとおつしやつているような、このような問題はまつたく机上の空論に終るということを私はあえて強く申し上げたいのであります。  さらにこれは各党が論議いたしました例のインヴエントリー・フアイナンスの問題にしましても、あるいは減税の公約を裏切つたこと、あるいは社会保障制度についても何ら積極性がないこと、あるいは中小企業対策にいたしましても依然として微温的であること、あるいは文教対策におきましてもまことに貧弱な予算の処置がなされておること、あるいは現在の物価騰勢から見まして、賃金ベースの改訂というようなことも何ら考えていないというようなことを考えてみまするときに、この二十六年度国家予算に対しましては、私はすみやかに組みかえを要するものと考えるのであります。かかる観点におきまして、先ほど国民民主党が提案をされましたこの修正案については実は不満でありました。このような微温的な、部分的な補正では、とうてい私はこの一大危機を乗り切るということは不可能であろうとは思つたのでありますが、修正されないよりもいいという観点に立つて、この最低限の修正案に賛成をしたのでありますが、これもまつた自由党の諸君たちが一刀のもとに封じてしまつているということは遺憾にたえません。そこで私はかかる観点に立つて、この全予算について根本的な組みかえ修正をお願いいたしまして、私の討論を終ります。
  101. 小坂善太郎

    小坂委員長 黒田寿男君。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は労働者農民党の立場から本予算案につきまして討論をいたしたいと思います。結論から先に申し上げますと、本予算案はこれを政府に返上いたしまして、組みかえを要求する、こういうことになるのであります。簡單にその理由を申し述べてみたいと思います。  第一に指摘したいと思いますことは、先にある論者も触れられましたけれども、あわせて私もこの際この予算が自主性のない予算であるということを繰返して指摘してみたいと思うのであります。これはしかし予算案だけについてだけではないのでありまして、政治経済の全般にわたりまして最近現政府の非自主性というものは、私どもの目から見ますと、ますますはなはだしくなりつつあると思うのであります。この傾向は講和会議を前にいたしまして、わが国のいわば百年の大計を決しなければならぬこのときにあたりまして、占領下という制約のもとに置かれておるとはいえ、現政府の態度はあまりにも自主性を欠いておる態度であろうと私どもには考えられる。しかもそれが問題であるのは、ますます著しくなつて行く傾向にあるということでありまして、これは私ども国民の一人といたしまして、心から憤懣にたえぬところであります。しかし今日は、他の問題につきましてはこれをさておきまして、この予算についてだけこれをこの角度から見ますときに、ここにもやはり非自主性の一表現を見るのであります。すなわち政府はさきに昨年九月二十日の閣議で二十六年度の予算案を決定したのであります。それは歳入六千七百三十二億円、歳出五千九百八十億円という予算案でありまして、私はこれが池田大蔵大臣の手でオリジナルに編成された予算案であると思う。ところがその後ドツジ氏が来朝されましてこれに改編を加えまして、いわゆるドツジ・ライン改編の予算案として、編成し直されましたものが本予算案であります。従つて私はこの予算案は、多少前後の事情に通じておるものから見まするならば、池田案ではない、吉田内閣独自の案ではない、すなわち自主性のない予算であるということを断言することができると思う。私はこのことを言うことによりまして、格別池田大蔵大臣をあえて非難しようというのではありません。しかしながら、一日も早く外力の指示による予算案を編成しなければならぬという状態から、われわれは脱却しなければならない。このわれわれの念願の達成に向つて全力をあげなければならぬということを、この機会に特に強調しておきたいと思うのであります。  次に本予算内容に関しまして簡單に触れてみたいと思いますが、しかしこの点ではすでに各党の代表者諸君が相当詳細に論じておられますので、重複を避けたいと思います。池田大蔵大臣はこの予算委員会における冒頭の予算説明におきまして、この予算案の特徴を幾つか列挙せられているのでありますが、その第一は、この予算案が総合予算の均衡を確保しておる、こういう点であります。これはインフレ收束という点に、本年度の予算案におきましても、依然として重点を置いておるということであると私ども考えるのであります。しかしながら、こういう問題をまず問題点といたしまして、私どもの目から見ますと、この予算案を中心といたしました政府の本年度の財政政策を検討いたしますと、たとえば国庫対民間收支が、一千億円以上の散布超過になる可能性を含んでおるということを私どもは発見するのであります。これは昭和二十六年度国庫対民間收支見込みを数字について詳細に検討しなければならぬと思いますけれども、しかし私はこの数字はここでは省略いたします。一般会計、特別会計、資金運用部、政府機関などを通ずる総合予算から見ますときに、いわゆるキヤツシユ・アカウントを含まないオープン・アカウントのみの場合で千三百九十三億円の散布超過となる。私どもはこういうような見込みになつておるように計算をするのであります。その根本原因は言うまでもなく、外為会計にあることは明らかでございまして、ここではしかしこの点は数字にわたつて詳細に論述いたしませんが、このことが問題になるということを指摘いたしまして、ここに池田大蔵大臣が総合予算の均衡を保持し、それがインフレを收束する作用をなすものであると言われております、その御説明にもかかわらず、この予算がインフレヘの道を通じさしているということを私ども見ないわけには行かないのであります。  それからまた国際收支の見込みにつきましても、私は政府の御見解は甘過ぎると思う。この点につきましても私は数字はきようは省きますが、やはり政府の見込みは輸入というものが、将来にも順調に行くものとしての見込みであるように考えます。しかしながら過般トルーマン、アトリーの会談によりまして国際資源の割当協定などということを問題にしております。各国の再軍備強化に伴う輸出制限、中国からの輸入の杜絶というようなことを考えてみますと、政府の輸入の見通しは私は甘いと思う。見込み通りに行くかどうかということにつきまして、非常に私どもは疑問を持つております。ここに問題があると思う。ここにも結局受取り勘定の超過から来るインフレの促進の公算が大きく口を開いておるように見えるのであります。  なお問題点は対外的側画からも見ることができるのでありますが、やはりトルの為替相場というものがこの際問題になると私ども考える。国際商品の価格が御承知のような状態でどんどんと騰貴しておりますときに、そして世界的な再軍備に伴うインフレが進んでおりますときに、一ドル三百六十円という為替相場が大きく今問題になると私どもは思うのであります。これを維持しようといたしますならば、海外のインフレがじかに、直接に日本に及ぶと私どもは思う。その可能性と申しますか、それがあるということを私は見のがしてはならないと思うのであります。ここにも私は問題点が含まれておると思うのであります。  従つて、これらの諸点をあげましただけでも、池田大蔵大臣の言われるごとくに、この予算案がいわゆる総合予算の均衡を保つものであり、これがインフレを押えるという効果を十分に発揮できるものかどうかという問題になつて来ますと、私どもは先ほどあげましたような問題点を理由といたしまして、いなと答えざるを得ないと思うのであります。  なおこの問題に関連いたしまして、本年度予算案の特徴をなしておりますものは、いわゆる外国為替資金特別会計への一般会計からの資金繰入れ五百億、このインヴエントリー・フアイナンスの問題であると思うのでありますが、これにつきましては、やはり先ほど他の党の諸君もその意義を検討し批判されたのでありますから、私はこれは繰返したくないと思います。ただ、しかし私どもはこのインヴエントリー・フアイナンスの五百億円は、大蔵大臣のこれに関する表面上の御説明にもかかわらず、やはりその背後に隠された意図があるのではなかろうか。いわゆる予備費的性質をこれに持たせておるのではなかろうか、私どもはそういうように考えられるのでありまして、むしろここにドツジ氏が来朝され、その指示によりまして予算案を編成し直したという重要点がある。そしてわれわれの目で見ますときに、このことが本年度の予算一つの準戰的な性質を持たせておると思うのでありまして、われわれが予想しますごとく、国際情勢変化と申しますか、進展というようなものによりまして、そのような使途に使われるということになつて参りますと、それは生産的なものでなくて、非生産的なものに使われるということになるのでありますから、そこでここにも私はインフレの要因になる可能性がひそんでおる、このように考えられると思うのであります。このように考えて参りますと、本年度予算の第一の特徴として大蔵大臣の指摘されました点は、今のままの政策ではくずれる、こういうように結論せざるを得ないのであります。  それから第二は、本年度の予算の特色といたしまして、二十五年度に引続いて財政規模を縮小した、こういうことを指摘せられておるのでありますけれども、私はこれもくずれると思うのであります。なぜかと申しますと、予算案を作成いたしました当時と現在とでは、物資と物価の情勢が非常にはげしく変化しておりまして、しかもその変化は、将来ますますはげしくなろうとしておる情勢にあるからでありまして、私はこの点も数字は省きますが、食糧の輸入について申しましても、政府が本予算に織り込みました輸入食糧価格の單価と、米にいたしましても、小麦、大麦にいたしましても、すでに現在のそれらの食糧の外国における單価とは相当な幅で開きを生じておるのであります。従つてこのままの予算で行けば予定数量を購入できない。もし予定数量の購入をしようと思えば、どうしても追加予算を計上するよりしかたがない、こういう問題が起るのであります。なお私はこの食糧の輸入問題で、輸入の食糧に関する補給金の不足の問題ともなると思うのでありまして、これを増額しなければ、配給食糧の消費者価格を引上げなければならぬということになる。これを避けようとすれば、やはり補正予算の計上は不可避である、こういうように私はなると思うのであります。  なお公共事業費というような点から見ましても、同様なことか言えると私ども考えます。最近の物価のはね上りということを考慮いたしますと、公共事業費につきましても予算を増額するか、あるいは既定事業計画の事業量を縮小するか、どちらかだという困難な問題が発生して来ておるのであります。公共事業費関係では特に鋼材とかセメントとか木材というようなものが相当多量に使用せられるのでありますが、たとえば鉄鋼で申しますれば、二十六年度公共事業費関係といたしまして十九万九千トン、セメントは百八十一万四千トン、木材九千七百四十一万石、これほど多量に使用する計画になつておりますのに、最近の情勢から申しますと、ちようどこういう関係の物資の値上りが特に著しいのでありますから、ここにもまた補正予算か事業縮小かという問題が起りまして、この予算案はくずれて行くという点かここにもひそんでおると考えるのであります。  なお私はこの際公共事業費につきまして一言指摘しておきたいと思いますことは、政府は公共事業費は昭和二十五年度に比べまして約七十億円の増加である、こういうように説明をしておられますけれども、これは私は欺瞞であると思います。二十五年度におきましては、一般会計以外に百十億円の公共事業費が見返り資金から出されていたのでありますが、二十六年度はこういう見返り資金から公共事業費に利用するということができなくなりましたので、従つて二十六年度は実質上差引いたしますと、むしろ昨年度に比べまして三十五億円程度の減少である、こういうように私は見なければならぬと思う。こういうことを指摘しておきたいと思います。なお公共事業費につきましても、他の問題がありますけれども、これは省略いたします。  それから第三に減税問題でありますが、これも前に他の党の諸君から意見がありましたから、私はこの点はもう省略いたします。(「時間が経過した」と呼ぶ者あり)  それから第四に民生安定問題でありますが、これも社会保障の見地、あるいは労働者の賃金の見地、失業者の問題、それから農村問題という点から見まして、いろいろ批判の余地がありますし、われわれこの予算案では、はなはだ不満足でありますが、これもやはり前の論者によりまして論ぜられておりますし、農村問題につきましては、ただいま小平君が非常に詳しくお述べになりましたから、これも私は時間の関係上省略することにいたします。  結局結論にここで入りますが、大蔵大臣が本年度の予算の特徴であるといつて御指摘になりました点は、ただいま私の見方から行きますと、いずれもくずれる、こういうことになると思う。結局私どもその年々の予算を見ますときに、第一に働く者の厚生という見地からいつもこれを見るのでありますけれども、そういう面から結論的に見ますと、本年度の予算、またこの予算を通じて現われる政府の財政政策、物価政策というようなものを検討いたしますと、結局物価の騰貴、依然たる重税というものによりまして、大衆生活の窮乏化は、またこの予算より本年度発するということに結論をせざるを得ないのであります。その反面に……(「委員長注意してくれ」と呼ぶ者あり)この予算案の……。
  103. 小坂善太郎

    小坂委員長 黒田君、結論をお願いいたします。
  104. 黒田寿男

    ○黒田委員 この予算案内容は、先般大蔵大臣朝鮮動乱を織り込んだ予算である、こういうふうに私の質問に対しましてお答えになりましたが、ここがやはり問題となるのであります。朝鮮動乱という他の国民の不幸によりまして、わが国の金融資本、特殊会社に莫大な利益を與える。こういう性質をこの予算案は持つておる。これらの階級の資本蓄積ということに重点が置かれておる予算案である。私はこういう結論を下さざるを得ないのであります。そしてこういう財政政策の強行の過程を通じまして、私ども率直に申しますと、平和主義日本でなければならぬ日本を、戰争日本の方へ再び逆転させようとする吉田内閣の自主性を欠いた全政策の方向が、ここにも現われておるというふうに考えるのであります。  私は講和方針を含めましての吉田内閣の全政策に反対する立場におきまして、その内閣の政策の一つでありますところのこの予算案に対しまして、賛成することはできないのてありまして、組みかえのためにこれを返上したいと思うのであります。
  105. 小坂善太郎

    小坂委員長 小林進君。
  106. 小林進

    小林(進)委員 社会民主党を代表いたしまして、本予算案に反対の意見を申し述べます。  昭和二十六年度の予算は、われわれはまず講和條約を受入れるという態勢で組まなければならないと思うのでありまするが、この予算案全般を拝見いたしましても、ここには講和條約の受入れの態勢というものを一つも見ることができないのであります。農民、労働者あるいは中小企業者その他一般大衆は、まさに生活のどん底に追い込まれておるというのが現状でありまして、現在政府並びに一部の人たちが講和條約だ、あるいは独立だ、あるいはまた再軍備だと言う反面にも、一般大衆はそういうことは身近に考えられず、大体国民の八割ないし九割というものは、国のそうした重大問題を考える前に、毎日自分の生活に追われておる、食うことで頭が一ぱいだというのが今日の現状であります。この食えない大衆の現実の姿を解決するにあらずして、一体どうして政治があり、どこに予算があるのかということを申し上げたいのであります。講和條約の受入れ態勢といたしましては、まず財政、金融あるいは社会保障、こういつた方面に、今こそ強力な手が打たれなければならないと思うのでありまするが、この予算に現われた財政的措置というものは、総括的に申し上げるならば、国民生活を自由主義の名のもとにおいて、いよいよその貧富の懸隔をはなはだしからしめて、一部の金融資本家にとことんまで利益を與えて、一般大衆を死のどん底に追い込むようにでき上つていると申し上げなければならないのであります。私はどうしてもこの際、税金の面において税制を改正して、そして地方税の改正——この惡法は改正を行うのが当然でありますが、こうした両者の改正と相まつて、大いにひとつ勤労大衆の税金を軽減してもらわなければならないと思うのでありますが、基礎控除の面において一部涙ほどの好意を見せられただけで、これが現実に実施せられる場合には、次に申し上げる金融的な措置とともに、ますます勤労者が貧しくなつて行かざるを得ないということを申し上げたい。  特に金融の面でありますが、わが国経済を不安定ならしめておる根本の理由は、大蔵大臣にもしばしば申し上げましたように、この金融措置に対して拔本的な手を打たないところにあるということを申し上げたい。一言でいえば、高利あるいはやみ金融というものを根本的に退治して、そうして個人の貯蓄——もし資本の蓄積がそれほど重大なる国家再建の要素であるならば、個人の貯蓄をいま少し優遇する反面、やみ金融を根本的に撲滅するという、強力なる金融措置を講じてもらいたいということを熱望いたしておるのでありまするが、その点少しも見えないのであります。あくまでやはり大口金融、銀行屋、保險屋というものにのみ利益を與えて、中小企業者が朝鮮動乱以来、事業に熱をかけながらも、金融の面で倒れて行つていることに対する救済策が、一つも現われていないことを申し上げたいのであります。ただ数字の上にわずかに中小企業あるいは農民諸君に、金融の金庫を設けられておりまするが、これは申訳にすぎない。大金融に対する利息を支拂う程度のすずめの涙であることを、私ははつきり申し上げたいのであります。  次に社会保障制度の問題でありまするが、この社会保障制度も昨年度の予算に比較いたしまして、相当にふえております。けれども国民生活がさらに窮乏に陷つておるのでありまするから、これくらいの増額では、何もならないということを申し上げたいのであります。特に講和條約を中心にし考えまする場合、わが国の国内事情は、まだ戰争被害者、未亡人あるいは戰争の障害者といつたものが、そのまま放任せられておる。この戰争被害者をそのまま放任いたしておりまして、どこに一体国家の独立と国土の防衛が成り立つかということを申し上げたいのであります。従いまして、同じ負けたドイツでも、再軍備論と申しますか、防衛自由国としての国家を防衛するその前提條件といたしましては、何といつて戰争被害者を根本的に救済しなければならないということで、わが国の円に換算いたしまして大体三千億と称する巨額の費用が、遺家族、未亡人等の救済のために投ぜられ、そうして次の段階として国土防衛の体制をつくりつつあるにかかわらず、わが国では終戰五年、依然として誤れる戰争の犠牲者をそのまま放任いたしておりまして、これで一体どこに社会保障制度があるかということを私は申し上げたいのでありまして、こうした方面の費用を大幅に正しく組み入れられていないようなこんな予算には、断じて賛成することはできないのであります。  まだそのほか公共事業費については、前の黒田さんよりも御説明がありましたので、細部の説明は省きたいと思いまするけれども、大体公共事業費が一千百億、昨年度が一千三十億というのでありますが、これは予算説明書にもわかりますがごとく、鋼材やセメントや鉄、木材といつたものが、昨年度の公共事業の材料よりも非常に少く見積つてあるということは、事業の分量が昨年よりも非常に少いということを証明いたしておるのでありまして、これを言いかえれば、インフレのために実質上は予算が非常に減つていることになるのであります。もつともこの問題につきましては、現に通産大臣も予算の分科会で言われました。一体今年度の公共事業費について、あなたは幾らの値上りを考えておいでになりますかと言うと、政府としては大体一割五分程度の値上りと考えておりますということを言われました。まずその一割五分は、臆病者が周囲に気がねして内輪に恐る恐る言われた返事だと私は思うのでありまして、われわれから考えますれば、その一割五分はおそらく二、三割の値上りを内心考えていられるものと思うのであります。政府責任ある大臣みずからが、この予算説明に、すでに今年度一割五分の値上りはしかたがなかろうと言われている。その値上りさえも考えつかないようなこんな予算や、こんな公共事業費は、われわれどうしても賛成することができないのであります。これは実質上、昨年度の公共予算のおそらく八割か九割にしか該当していないことを私は申し上げたいのでありまして、こんなことでは広義の意味の失業対策費というようなおこがましい言葉は、みずからひとつ御反省願いたいところでありまして、断じて国家の救済事業にならないことを私は申し上げたいのであります。(拍手)  そのほか、時間がありませんので簡單にいたしたいと思いますが、次に農林予算について申し上げたい。これは小平君が具体的に申し上げましたから、個々の予算は別にいたしましても、この農林予算は今年度一年農林大臣が興農予算と称してずいぶん宣伝これ努められましたけれども、この予算全般をながめましては、少しも誇るべき予算の特徴が現われていないことを私は申し上げたいのでありまして、むしろ実質上におきましては、わが国の農林行政を非常に退化せしめているということを申し上げたいのであります。総予算におきましては今年度が二百六十七億、昨年度に比較して三十六億ふえておるとおつしやるのでありまするが、その最後の一点をとらえますと、確かに興農予算と称する点に十億の増額を持つて来ております。ところがその反面、農村の増産の根本となるべきところの、土地改良に関する重大なる事業を遂行いたします農地委員会の費用が、十八億削減せられているのであります。真に農村をして増産を大ならしめ、食糧をつくり上げるためには、何といいましても、まず第一に土地の交換分合、土地を計画的に公共的に交換分合せしめて、合理的なる農村経営を行わしめるということが、すべてに先だつ予算的処置でなければならぬのであります。しかるに現政府では、この土地改良、交換分合に関しまする最も食糧増産に大切な土地関係の費用を全部削減いたしまして、何かわけのわからぬような害虫駆除やあるいは折衷保温苗しろ、これももちろん大切でありますが、そうした方面にわずか十億円の金をふやして、拔本的な方面に十八億円減らした点を伏せて、そうしてもつぱら與農予算と銘打つて公称されることは、いわゆる農民をだますところのはなはだ卑怯なる説明であるということを私は申し上げたいのであります。  そのほか食糧問題につきましても、二百二十五億円の価格差補給金、三百二十万トンの輸入等、農林関係のこの食糧でも私ははなはだ危惧の念を持つております。それからまた一切の資材の輸入に関する国際收支の問題でも、はなはだ大蔵大臣も通産大臣も甘い気持でいらつしやる。そんな甘いことで世の中が済みましたら、これはまことにありがたいものでございます。その甘さでもつて大蔵大臣はまあ晩酌などいい気持でおやりになりましようけれども、それをやられる国民大衆がたまつたものじやないのでありまして、この点どうぞひとつお考えくださいまして、どうかわれわれのこの予算に対する反対の意見を再度愼重に考慮せられますことを切に希望いたしまして、私の反対討論を終ります。
  107. 小坂善太郎

    小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。各案を一括して原案に賛成の諸君は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  108. 小坂善太郎

    小坂委員長 起立多数であります。よつて、各案はいずれも原案通り可決いたしました。(拍手)  なお委員会の報告書作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければその通り決します。  これにて総予算案に関する議事はことごとく終了いたしました。  顧みまするに、本年一月二十三日、昭和二十六年度本予算案が今期国会に提出されましてより、ここに一箇月有余にわたりましてその間予算総会を開きますこと二十一回、分科会を開きますこと八回、公聽会を開きますこと二回、通計三十一回の会議を重ね、ひたすらに慎重審議を盡して参つたのであります。たまたま外は隣国におきます不幸なる動乱の波が世界の耳目を洗い、内は講和を待望する声の切なるこのときに際会いたしまして、各位におかせられましては、国政の全般にわたり、あらゆる角度より熱心なる論議を展開されまして、総予算をめぐる国政の大綱については、ここに明らかとなつたものと信ずるものであります。ただ委員長といたしましては、あるいはときに及ばざる点等も多くありまして、各位に対しまして、十分なる御満足をおわかちいたすことのでき得なかつた場合も間々ありましたやに拝察せられるのでありますが、各位におかせられましては、常に謙虚互讓の精神をもちまして、おのおのの立場を十分に御理解の上、常に委員長の足らざる点に対しましては、寛容の精神をもつて限りなき御後援を賜わり、おかげをもちまして、きわめて和気あいあいのうちに議事を進めることを得ましたことは、委員長といたしまして、衷心より感謝にたえないところであります。ここに本予算の議事を終了するにあたりまして、諸君連日の御精励と御労苦に対しまして、深甚なる謝意を表する次第であります。  本日はこれをもつて散会としたします(拍手)     午後五時九分散会