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1951-02-24 第10回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十四日(土曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 上林山榮吉君 理事 橘  直治君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       井手 光治君   岡村利右衞門君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       黒澤富次郎君    島村 一郎君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    苫米地英俊君       中村 幸八君    松浦 東介君       松本 一郎君    南  好雄君       宮幡  靖君    井出一太郎君       今井  耕君    北村徳太郎君       小林 信一君    竹山祐太郎君       藤田 義光君    中曽根康弘君       松澤 兼人君    水谷長三郎君       横田甚太郎君    小平  忠君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         通商産業大臣  横尾  龍君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         地方財政委員会         委員      青木 得三君         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         大蔵事務官         (主計局長)   河野一之君         農林政務次官   島村軍次君         食糧庁長官   安孫子藤吉君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君         物価政務次官  郡  祐一君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 二月二十四日  委員江花靜君、塩田賀四郎君、河野金昇  君、平川篤雄君、勝間田清一君及び風早八十二  君辞任につき、その補欠として黒澤富次郎君、  岡村利右衞門君、竹山祐太郎君、小林信一君、  松澤兼人君及び江崎一治君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員竹山祐太郎辞任につき、その補欠として  藤田義光君が議長指名委員に選任された。 同日  委員藤田義光辞任につき、その補欠として竹  山祐太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  開会に先だちまして一言申し上げまするが、昨日公益事業委員会委員長松本烝治君、同副委員長松永安左ヱ門君に、政府委員として委員会出席方要求しておつたのでありまするが、両君とも御病気のためということで見えなかつたのであります。松本委員長は、その後の病状を聞いてみますると、これは御無理のようでありまするが、松永副委員長につきましては、本日もさらに出席方要求してありまするから、同君に質疑を御希望の方は、そのおつもりでお待ちを願いたいと思います。  これより地方財政平衡交付金に関する問題を中心として質疑に入ります。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島委員 私は岡野国務大臣並びに地方財政委員会青木先生、このお二人にこもごもお尋ねをいたしたいと思うのであります。  日本の政治的、経済的さらに自治的な問題においての民主化が強く要請され、それにこたえるために、政府国民もそれぞれ努力を積み重ねて来ておることは、私どもも否定いたさないものであります。しかし地方自治中央の政治との関係に立つて地方自治民主化、ことに地方自治財政面における自主性強化ということは、地方民主化の上にきわめて重要な事柄であろうと確信をいたしておるものであります。そこでお尋ねいたしますが、地方財政自主性確立を前提といたしました場合に、今日のような、政府における地方財政交付金あるいは助成金等の姿において、はたして国民が、国家が要請いたしておりまするところの地方財政自主性というものが確立できるものであるかという問題であります。この事柄について、きわめて根本的、基本的な問題でございますので、特に岡野国務大臣並びに青木先生から所見を率直に承つておきたいと思うのであります。
  4. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方自治確立のために、財政基礎が強固にならなければならぬということは、御高説通りであります。われわれも御趣旨の通りに、地方財政強化ということについて日夜苦心いたしておるわけであります。御承知通りに、昨年地方税法を改正いたしましたが、これは今までの税法と違いまして、まつたく画期的のものでございます。その意味におきまして、地方においても財政のめどについて、まだ十分なる見通しもつかないだろうと考えます。と申しますことは、今後の自治強化ということにつきましても、御承知通り地方行政調査委員会議報告が出ております。この地方行政調査委員会議報告が出まして、市町村並びに府県段階、国の段階、この三段階ほんとう行政配分確立して、初めて地方仕事が本ぎまりになるのでありますが、仕事が本ぎまりになるのを待ちましてというわけにも参りませんから、昨年税法を改正いたしまして、地方相当数量財源を與えたのでございます。これは先ほども申し上げましたように、画期的の改正でございましたものですから、このわずか半年ほどの間で、地方自治団体十分満足の行くような財政收入になつておるとは私は考えておりません。しかし過去二十三年度、二十四年度におけるがごとき地方財政の非常な窮乏は一時救われたわけでございます。ただ中央におきましても地方におきましても、御承知通りに非常に財政が逼迫しておることは事実でございます。この意味におきまして、中央地方に対して十分なる援助をすることもできませんし、また地方においてあまり自分自身公共団体財政をゆたかにすることばかりに專心しておりますと、住民納税力にも限度がございますので、これも兼ね合いがうまく参りません。そういう意味におきまして、ただいまのところでは相当大幅な財源地方に與えて、地方財政確立する基礎はつくりましたけれども、これが十分なる安定をしたというところまでは私も認めておりません。しかしおいおいにこれを地方財政当局並びに住民の協力によつて確立して行き、同時に今後できますところの地方行政調査委員会議報告によりまして、各自治団体仕事を十分きめまして、その上でおそらくまた相当な財源的措置をもう一ぺん考え直さなければならぬ、こういうような見通しを私は持つております。御了承願います。
  5. 青木得三

    青木政府委員 お答えいたす前にお願いいたしますが、どうぞ私に敬語をお使いになることをおやめになられまして、青木委員とおつしやいますように……。  ただいま国務大臣から御答弁になつておりまして、私の申すことも大体同じことであると思いますが、日本地方自治確立いたしますためには、地方団体独立財源を持たなければならないということは根本原則であると思います。しかしながら、日本地方団体経済力が、いまだ十分に回復しておりませんものでありますから、今日の段階におきましては、中央政府より少からざる交付金、あるいは性質は違つておりますが、補助金を交付せられまして、そうして地方団体財政確立をはかつて行くことがやむを得ざる段階であると思うのであります。ただこの場合におきまして、中央政府財政上の理由によりまして、地方団体がその財政独立を獲得するに必要なる程度交付金等を支給せられることができない状況でありますと、はなはだ遺憾なことでありますが、地方団体財政独立自治の進展を期することは非常に困難な状況に相なると思います。そういう考えであります。
  6. 川島金次

    川島委員 この地方団体財政的な自主性確立がいまだに困難な実情にあるということも、われわれは了承いたすのであります。そこでさらにお尋ねいたすのですが、この地方財政自主性確立の困難という問題にからんで、今日の地方構成、平たく申し上げますれば、市町村あり方というもの、あるいは府県あり方というものが、はたして日本現状に照して適正なものであるかどうかということも、一考に値する問題であろうと思うのであります。これを具体的に申し上げますならば、市町村統合あるいは府県統合、こういつた人口構成上、経済力統合ということも一考に値する問題ではないかと私は考えておるのでありますが、この点について大臣研究あるいは考えられたことがあるかどうか、政府においてそういう問題についてはどういう態度で今日臨んでおるのかという事柄について、ついでにお伺いしておきたいと思うのであります。
  7. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。川島委員のお考えに私も同感の意を表したいと思います。川島委員は十分御承知通り、一万数百ある地方公共団体がいろいろの段階もあり、またいろいろにかわつておりますが、しかしながらほんとう民主主義を遂行して行きますためには、すなわちサービス行政地方においてやつて行こうとしますためには、ただいまのごとき小さい町村があつたのでは、これはその町村に住んでおる方の生活水準を上げるわけにも行きませんし、福祉厚生施設を十分やつて行くことは私は不可能だろうと思います。同時にまた今度――これは自治の精神でございますが、地方行政調査委員会議も取上げております。と申しますことは、地方における公共団体のおもなる事務市町村にまかせて行きたい、こういうふうになつておりますから、ますますもつて市町村というものはできるだけりつぱな力を持つて来なければならぬ。そういたしますと、ただいまの二千とか三千とかの人口を持つておるような町では、そこに住んでおる住民が、いわゆる厚生福祉を受ける点において遺憾の点があるだろうと思う。でございますから、私の考えといたしましては、将来町村というものは少くとも人口が一万くらいなくては十分なることは――これも十分とは申せませんが、ある程度生活水準を送つて行くという行政はできかねるのじやないか、その意味におきまして、われわれといたしましては、でき得るだけそういうふうに町村統合合併されていただきたいということを念願しておりまして、もしこれに対していろいろ町村側においてその統合合併に便宜を與えてくれ、こういう申出があるようなことがございますれば、われわれとしてはできるだけの力をお貸ししてそれを助成して行きたいと考えております。  それから府県の問題でございますが、これは大分前から府県統合したらいいだろうとか、五府県にしたらいいだろうとか、道州制をしいたらいいだろうというような問題が、過去数年にわたり出て来ております。しかしながら私のただいま見るところにおきましては、まず地方行政調査委員会議の勧告によつて市町村基礎にした事務の再配分確定しました後において、その結果として市町村というものがどういうものになるかという考えにおいて善処しなければならぬ、これに対してもいろいろ研究はいたしております。しかし研究はいたしておりますけれども、その條件がまだ整いませんから、確定的の私の意見をただいま申し上げるわけには参りませんが、しかしながら税制の改革によつて府県の中には非常にお困りの県がたくさんあるだろうと思います。こういう方面財政において助けて行くか、もしくは統合とかなんとかいう方面において何か支持して行くか、こういうこともやはり神戸委員会報告を、いよいよ実現するという確定案がきまりましてから考えなければならぬことと思います。しかしいずれにいたしましても、御高説通り府県並びに町村あり方に対しては、政府といたしましては十分の研究をいたしておる次第であります。
  8. 川島金次

    川島委員 そこで大臣の率直なお話を承つて、私も欣快に考えておるのですが、地方行政調査委員会議等でそういう問題を研究立案することもけつこうでありますが、大臣せつかくそのような積極的な熱意と方向を持たれておりますならば、政府においてこの際手取り早く地方団体の再編成に関する審議会あるいは調査委員会というようなものを民主的に設けて、根本的にこれを掘り下げて専門的に調査研究、立案するということが好ましいのではないかと私は考えるのであります。このようなことについて大臣考えられておるかどうか、その点を重ねてお尋ねいたします。
  9. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。神戸委員会国会がおつくりくださいまして、りつぱな方委員にして、そしてあれだけの報告を出していただいておる。そして政府といたしましては、これが非常に根本的な考え方になるのでありますから、すでに閣僚内部におきまして審議会をつくりまして、そして各省からの意見を求め、研究をさせ、着々とその神戸委員会をいかに実行するかということを政府部内において研究しております。この研究ができましたならば、それをまた国会に出しまして、皆さんの御意見を伺いたいと思いますが、私のただいまの考えといたしましては、せつかくあれだけのりつぱな委員会がおできになつてその報告が出ました以上は、それを基礎にいたしまして、まず政府部内で研究をとりまとめまして、国会の御審議を願うということが本筋じやなかろうか、これ以上あちらこちらといろいろな審議会をつくりましても、また屋上屋を重ねるだけだと思います。一応の結論が出ました上で皆さんの御審議を願いたいと存じております。
  10. 川島金次

    川島委員 それでは今度は青木委員にお伺いいたします。青木さんは私の学生時代の恩師だものですから、つい先生という言葉が出ましたが、これから改めましよう。(笑声)  ただいま大臣言葉をお聞きの通り地方財政確定のために、ことに弱小町村統合合併ということが、きわめて切実な問題であるという率直なお答えであります。この事柄について、地方財政委員会青木委員といたしましては、財政委員として、何か特別な観点に立つて研究調査をされた事柄がございますか。またあつたといたしますならば、財政委員会では、この問題についてどういう見解でおられるか、そのことについて、ついでに伺わせてもらいたいと思います。
  11. 青木得三

    青木政府委員 地方団体統合のことにつきましては、地方財政委員会は、昨年の六月に発足いたしましてから、まだその問題を直接取上げて研究をいたしたことはないのであります。しかし第二段の御質問にお答えいたしますと、御質問にございましたように、今日の日本地方団体の中には、財政的の独立をなし得るだけ規模を持たないものがありまして、地方財政平衡交付金思想は、さような地方団体に対しては、地方財政平衡交付金を交付することによつて財政を何とか切り拔けさせようという思想なのであります。しかしながら、かような政府交付金によつて、初めて財政独立が期し得られるというような地方団体が存在することは、決して理想ではないのでありまして、その意味におきましては、平衡交付金のごときは、なるべく少いことが理想であると言い得るのであります。従つて質問にございましたように、もし日本財政的に独立することのできない地方団体統合が行われまして、政府援助なくして、その財政独立を期し得るような段階に至りますことは、まことに喜ばしく感ぜられることでありまして、さようありたいと思つております。
  12. 川島金次

    川島委員 それでは次に続いて岡野国務大臣お尋ねをいたしますが、本年度の地方財政平衡交付金は一千百億円であります。これに対しまして財政委員会からは別な案が出ておりましたが、いろいろな事情政府確定案は、必要とされておりまする要求額より、減額の結果を見るに至つたのでありますが、この予算額において、今日地方財政危機が伝えられておりまする現状に即して、はたして満足な、というよりは、不安のない形で、地方財政の運営ができる見通しであるかどうかということについて、大臣の率直な見解を承りたいと思うのであります。同時にこの問題に対する財政委員会側の御所見をも、あわせて伺わせてもらいたいと思うのであります。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方財政平衡交付金につきましては、地方財政委員会から最低案として千二百九億円を要求されていることは事実であります。それに対して政府といたしましては、中央財政のいろいろな関係から、どうしても千百億円しか出せない。そういたしますと、結局差引百九億円の地方財政平衡交付金が足りないことも事実でございます。私の立場といたしましては、地方財政委員会の方をよく見ておりますと、地方財政委員会から出ております意見の、地方財政が窮乏しておるということに対しては、やはりその通り同情をもつて見ておる次第であります。しかしながら、また中央財政を見ましても、中央財政としてもどうしても千百億円以上出せないということになつている次第でありまして、そこで御質問は、地方財政がこのままやつて行けるかどうか、こういう御質問のように存じます。私は率直に申し上げますならば、千二百九億円を中央財政から出してもらいたいということを念願しておりますが、しかしこれが出せないということになれば、それでは地方財政がこれでまつたく行き詰まつてしまつて財政基礎が破壊されてしまうか、こう申しますと、非常に苦しいことは苦しいが、そこまでは行かないだろうと思います。でございますから、もし中央財政がこれ以上どうしても出すことができないということになりますれば、これは遺憾なことでございますけれども、ある程度地方における不急不要の事業を選択して、そしてこれを圧縮してつじつまを合せて行く、こういう結果になるよりほかに方法がないと思います。その意味におきまして、これは地方財政委員会の方でいろいろ研究もされておるようでございますが、私の意見といたしましては、中央でどうしても千百億円しか出せないということでございますれば、これは何とか千百億円で地方財政が破綻に瀕しないような方策を講じてもらわなければならない、こう考えております。
  14. 青木得三

    青木政府委員 国務大臣と私の申し上げることが齟齬いたしておりますと、あるいは御迷惑をお感じになるかもしれませんが、地方財政委員会といたしましては、ここに要請いたしました地方財政平衡交付金の千二百九億円というものは、これは最小限度数字でございまして、この数字が満たされない場合におきましては、地方財政は非常な危機に陷ることをおそれているのであります。国税の方におきましては、数百億円の減税をなさると伺つておるが、地方財政がどうしても立ち行かなくなります場合において、もし万一地方税の税率を引上げなければならないようなことが起りますると、せつかく国税を数百億円減税せられまして、国民の負担を軽減せられました効果が、それだけ減少せられるのではないかということを、非常に憂えているのでありまして、地方財政委員会としては、この数字最小限度数字であると御了承願いたいと思います。
  15. 川島金次

    川島委員 岡野国務大臣も、また地方財政委員会側といたしましても、地方財政危機的な現状に即応するためには、最小限度千二百九億円の地方財政平衡交付金が必要であると絶叫されております。そこで幸いに池田大蔵大臣が見えたのでお尋ねいたしたいのですが、ただいま岡野国務大臣並びに青木政府委員から絶叫された言葉を、大臣も直接お聞きのことと思いますし、またこの千百億円の交付金を決定するまでに、いろいろのいきさつがあつたと私は想像いたします。そこで大臣に率直にお伺いしますが、近く政府は、好むと好まざるとにかかわらず、補正予算を組まなければならない段階になるのではないかということが、ようやく議会の各方面から常識的に判断をされ、政府部内におきましても、一部の閣僚においてはそのことをもはや肯定しておる閣僚もないわけではないのであります。そこで池田大蔵大臣におきましては、今日におけるところのこの物価騰貴事情並びにこれに伴いますところの地方財政危機に即応いたすがために、来るべき補正予算の場合に、この地方財政平衡交付金の問題について考慮をするという心構えがおありかどうか、この点につきまして、せつかく見えられましたので、ついでお尋ねを申し上げておきたいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通り国財政も楽ではございません。また地方財政も今お話のようにかなり苦しいことは私も知つておるのであります。しかし今の状態としては、苦しい中でも何とかやりくりをして行かなければならぬという状態であるのであります。しこうして今後の状態において補正予算をつくるかつくらないか、こういう御質問でございますが、これは情勢によつて考えなければなりません。昭和二十四年度におきましても、また二十五年度におきましても、補正予算をつくつてそのときの要求に応じておるのであります。しかも変転きわまりないこの国際情勢のもとにおきまして――今つくつた予算で私としては二十六年度を乗り切つて行きたいという考えでおりますが、しかし予算というものはやはり国情に相応してかえて行かなければならぬものであります。これで二十六年度を是が非でも通すというような考えはもちろん持つておりません。情勢によりまして補正予算を組むこともあり得るかと思いますが、ただいまといたしましては、補正予算なしで行きたいというのが私の考えであるのであります。しこうして情勢によつて補正予算をつくる場合において、地方財政平衡交付金についてどうするかという御質問でございますが、これもやはりそのときの情勢によつて考えるのであります。今から地方財政交付金をふやすような補正予算をつくるということをお約束できません。いろいろな事情によりまして、あるいは地方財政平衡交付金を減らしてもらわなければならぬ場合もあるかもしれません。そういうことも考えなければならないのであります。(「じようだんじやない」と呼ぶ者あり)
  17. 川島金次

    川島委員 池田さん、あまり放言をやらぬ方がいいですよ。私はまじめに聞いておるのですから、やはりまじめに御答弁を願いたいと思います。地方財政平衡交付金を減らさなければならぬような情勢が年内に来るというのはどういう根拠ですか、むしろそれを聞きたいのです。そんなことを言われるならば、国際情勢日本物価事情、そういうことについて逆に私は聞きたくなります。しかしそんなことを私は議論したくありません。とにかくまじめにお答え願いたいと思います。  そこでさらに国務大臣岡野さんに御質問いたすのですが、ただいま大蔵大臣はこのままでなるべく貫いて行きたい、こういうふうな既定方針を曲げてはならないのであります。そこで先ほど来からお尋ねいたしますれば、岡野国務大臣におきましても、また地方財政委員会当局におきましても、今日の地方団体財政実情に照して、どうしてもさらに百九億円程度の不足があるということを両者は言明されておるのであります。しかるに一方大蔵大臣はこのままで何とか既定方針を貫きたいと言われておるのであります。そうすると、そこに何らかの形において、地方財政においてはどこかに無理をしなければならない。たとえばできない節約をするか、あるいは既定事業量を減らすか、あるいはまた税收をふやす方向地方団体税制政策を持つて行くかというような三方面のことについて、一つを選ばなければならないような事柄になるのではないかと、私ども心中懸念をいたしておるのであります。その事柄につきまして、はたしてしからばそういうことの何もなしにこのままで行かれるのか、それとも節約の余地があるのか、あるいは増税をするという方向に行くのか、どれによつてこの百九億円の不足をまかなうという方針で行くのか、この点についての具体的な率直な考え方を示しておいてもらいたいと思うのであります。
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。千百億円でどうしても地方財政をまかなつて行かなければならぬ、こういう金額になりますれば、今おあげになつたようなことが想像されるのであります。しかしながらわれわれといたしましては、ただいま住民の税負担というものは極度に行つておると思いますから、これ以上いくら財政需要がありましても、増税しようという考えは私は持つておりません。従いまして増税をしないで、しかも地方財政平衡交付金が足りないということになれば、結論としては不急不要の事業を圧縮して行くということよりほかに方法はないと思います。その点につきましては、ただいま地方財政委員会で極力どういうふうにして行こうかという具体案を検討中でございますから、御了承願います。
  19. 川島金次

    川島委員 国務大臣の増税をしたくないということはよくわかります。地方税はそれでなくても地方の非常な重税となつて、もはや地方民としては限界に達しておるようなところが各所にあることは、大臣もよく御存じの通りであります。そこでお尋ねいたしますが、これは岡野国務大臣または地方財政委員会当局からでもよろしい、いずれでもおわかりの側からお答えを願いたいのですが、今日までにおける二十五年度の地方税の滯納額は一体どのくらいになつておりますか、そうしてまたこの滯納の原因は一体どこから来ておるか、またその滯納の徴收に対してどういう見通しを持たれておるかという、この三点についでおわかりの側からでけつこうでございますから、この際お尋ねしておきたいと思うのであります。
  20. 青木得三

    青木政府委員 滯納額についての御質問でありますが、地方財政委員会の持つておりまする統計は毎月の徴收成績を見ておるのであります。ただいま手元に持つてつておりませんのですが、地方税は十二月末日におきましてその総額の約四五%を收入した状況であります。その残りの部分については、必ずしも全部が納期が到達してこれが滯納であるという意味ではありませんけれども、收入済みになつておりますものが四五%であります。さような成績となつております最も大きな理由として考えられますことは、やはりこの地方税の成立が昨年度八月まで延びまして、それまで地方団体地方税の徴收に十分着手することができなかつたということが、一番大きな原因であると考えるのであります。
  21. 川島金次

    川島委員 この地方税の滯納額について、後ほど、どちらからでもけつこうでございますから、詳しい数字をわれわれに示してもらいたいと思うのであります。  そこでさらにお伺いいたすのでありますが、地方税の改正案が政府においてはすでに用意されたと聞いておるのであります。その要綱などについても新聞紙上等で発表されて、われわれも若干知つておるのでありますが、この改正案はいつお出しになるのか。そうしてまたこの改正案によるならば、はたしてこの地方の眼前の財政危機というものを、打開するところの確固たる税制体系ができ上るお見込みでこの改正案が立てられたのかどうか。その点について国務大臣地方財政委員会側のそれぞれの御所見をこの際承つておきたいと思うのであります。
  22. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方税法の改正案は、昨日でございましたかオーケーが参りまして、そうしてただいま印刷中でございます。実は本日午後、国会の御審議を願うために提出する段取りでありましたけれども、印刷が間に合いませんから明後日あたりになりわせぬかと思つております。その要綱は、大体において先ほども申し上げました通りに増税はよくない、でございますからただいまの税法状態においていかにしたら徴收がよくできるか、主として徴收を強化するという方の意味においてやつております。それからもう一つの重要なる点は、いろいろ不合理がございました点もございます。使用者課税なんかは固定資産税としてはあまりおもしろくないという御議論が前国会にもございましたから、これをはずして、使用者すなわち庶民住宅なんかに入つているお方か、国とか公共団体が固定資産税を拂わないからといつて、その中に入つている人が固定資産税を拂うということは、どうしてもわれわれとしては承服ができませんから、これははずすことになつております。それからまた償却資産でございますが、中小企業なんかの発展を策する意味におきまして、今まで一万円以下を免税点にしておりましたけれども三万円以下を免税点にする、こういうふうなことをしております。また申告納税制度をとりましたり、源泉徴收をいたしましたり、とにかくただいまの税法においてできるだけ納める方も納めやすくし、またとる方においても楽に確保できる、こういう方向で進んでおります。明後日までお待ちくだされば提出いたしますから、どうぞそれまでごしんぼう願いたいと思います。
  23. 青木得三

    青木政府委員 ただいま岡野国務大臣より答弁しましたことくでありまして、今回の地方税法の改正は根本的の改正はございません。なおついでながら申し上げますが、この地方税法の立法の方は地方自治庁の岡野国務大臣の所管事務でございます。地方財政委員会の所管の事務ではございません。地方財政委員会といたしまして、日本地方税制度になお根本的に研究考慮すべきものがあるということは十分考えておりますが、実施後まだ日が浅いのでございますから、今回政府が御提案になつておりますように、ごく根本的でない改正にとどめるということはやむを得ない今日の情勢である、そう考えております。
  24. 川島金次

    川島委員 そこで岡野国務大臣お尋ねいたしますが、政府は今般の国税改正法等によりまして、一応税法上の減税をいたしたということになつております。一方地方税におきましても若干の改正を行いますが、それは根本的な改正でなくて、技術的な面が多いようだとただいま承つたのでありますが、この地方税国税との関係において、国税はなるほど税法上下りましたが、地方税においては依然として何らしんしやくを加えられておりません。そうして地方民大衆の生活というものは、物価の上昇に伴つて次第に困難を加えようといたしておる実情も、国務大臣はよく御存じのことと思うのであります。そこで国税においての税法上の減税はできたが、地方税の現行法を実施いたしました場合においては、国民的な負担は一体どういう形になつて現われるか、その事柄についての具体的な数字的な研究調査がございますれば、一部分の例でけつこうでございますから、その点をひとつ示してもらいたいと思うのであります。
  25. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知通りに、国民が納税いたしまするにつきましては、国税地方税とを合せた点においてふところぐあいを勘案するということが根本でございます。今回国税において減税をいたしました。そうして地方税においては少し増收になつております。それをいろいろ大蔵省並びに地方財政委員会研究しましたところによりますと、全体として二十六年度は減税になつておるというはつきりした数字の表ができておりますがただいま持つてつておりませんから、後刻お届けさせまして、皆様の御高覧に供したいと思います。
  26. 川島金次

    川島委員 それではそれを後刻委員に御配付を願いたいと思うのです。  そこでたまたま文部大臣が見えられておりますので、この機会にお尋ねをいたしたいのであります。ただいまお聞きの通り地方財政平衡交付金は千百億円で百九億円の不足、これがないと地方財政危機の打開かきわめて困難な実情にあるということは、文部大臣もただいまお聞きの通りであります。そこでお尋ねいたしますが、地方における教職員の俸給、あるいは地方の団体における職員の俸給の問題でありますが、二十六年度のこの地方財政によりまして、はたして中央官庁にならつた八千円ベースが実行できる形になつて行くものでありますか、どういうことになりますか、この点を御承知でありましたらばお示し願いたいと思います。
  27. 天野貞祐

    天野国務大臣 地方財政の非常に困難なことは、私もよく承知いたしておりますけれども、教職員の俸給というようなものは、どうしても出していたたかなきやなりませんから、ただいまそのことをよく地方財政委員会の方と私ども事務の方と折衝中であります。それはできる考えであります。
  28. 川島金次

    川島委員 それでは地方財政委員会当局お尋ねいたしますが、地方教職員並びに地方団体の職員の俸給の現状、そうして文部省当局と折衝されておる模様だと今承つたのでありますが、その見通しはどういうことになりますか、率直にひとつお答え願いたいと思うのであります。
  29. 青木得三

    青木政府委員 私は文部大臣と直接いろいろ御交渉申し上げておることはございませんが、地方財政委員会が今回の地方財政平衡交付金の金額を算定するにあたりましては、一々綿密詳細なる根拠によりまして――数字は今日持参いたしておりますけれども、煩雑を避けましてただいまは申し上げませんが、教育員の平均俸給の綿密詳細な計算をいたしまして、そうしてあの最後の地方財政平衡交付金の金額は出ておるのであります。そうしてその根拠になつております数字は、先般政府職員について給與ベースの改訂がございましたそれに比例いたしまして給與ベースの改訂をするということで、計算を立てましたものが地方財政平衡交付金の金額に相なつておるのであります。そういうように御了承願いたいと思います。
  30. 川島金次

    川島委員 そうすると文部大臣に重ねてお尋ねしますが、今の地方財政委員会当局お話によりますと、中央公務員のベース・アップにならうためには、どうしても千二百九億円の地方財政平衡交付金がなければ、その実現は不可能だということが明確になつておるのであります。そうすると大蔵大臣が千百億円で貫きましたところで、地方財政委員会当局は千二百九億円なければ、地方の教職員の給料を中央公務員並に引上げることは不可能だということなのである。折衝をいかにいたしまするかわかりませんが、そうするとこのままで行きますと、地方の教職員、あるいは府県庁に勤めておりまする地方公務員諸君の給與は、中央に準じて引上げることが不可能だということになるのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  31. 天野貞祐

    天野国務大臣 今承るところをそのまま考えれば、確かに不可能だということになりますけれども、しかしどうあつても教職員の給與というものは、中央にならつて引上げなければならぬと考えますので、その点地方財政委員会の方とよく相談をしてもらつております。すでに一月から三月までの分は、五十億円増額していただいて、それでまかなえることになつております。そういうようにやつておりますから、二十六年度もぜひそうしなければならぬという方針で進んでおります。
  32. 川島金次

    川島委員 くどいようですが、この問題について岡野国務大臣にもお尋ねをしてみたいと思いますが、国務大臣はどういうお見通しを持つておられますか。
  33. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私はまだ地方財政委員会のやつておることを十分承知しておりませんけれども、しかし給與費というものは、まず優先しなければならぬということを考えております。先ほど申し上げましたように、あるいは不急の事業をよしましても、給與だけは確保してやらなければいかぬ、こう私は考えております。
  34. 川島金次

    川島委員 ぜひその方向で確実に実行されんことを強く要望しておきます。  それから時間がだんだんたつて、ほかの方にも迷惑をかけるといけませんから、簡單に端折つて二、三お尋ねしておきますが、今度政府では地方財政平衡交付金配分について、何らか若干の改正を行うということをきのうあたり私ども聞いておりますが、この地方財政平衡交付金配分関係の改正の骨子というものはどこにありますか、その改正の内容について示してもらいたいと思います。
  35. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方財政平衡交付金は昨年できましたもので、そうして初めての試みでございまして、その配分方法につきましては、地方財政委員会地方財政委員会規則というものでやつておりますが、昨年の十月にこの規則によつて仮決定をいたしましたところが、どうも実情に沿わないというようなことが見えましたので、たとえて申しますれば、寒冷地帯とか、積雪度の強いとかいう方面では、その前の規則によりましてはいかぬ、前の規則でもそれを優遇するようにはできておりますが、十分ではなかつたという考えをもちまして、地方財政委員会の規則を、少し解釈をかえまして、そういう方面によけいに行くという決定をしまして、本決定をしたわけであります。しかしながら、御承知通りに、相手が非常に多いのでございます。何百種というほどの測定單位を、一々適当に測定価値をきめて行くということは、なかなか短期間にはできませんから、これは日に日にいろいろの各地方団体から言つて来られる陳情なり事情を参酌いたしまして、適当にかえて行きたい、こう考えております。そういう意味におきまして、平衡交付令法におきましては、実はそういうような規則にあります單位を来年度は法律できめなければならぬことになつておりますけれども、もう少し事情がおちつきますまで、もう一年間地方財政委員会の規則によつてやらしていただきたいという法案を提出することになつております。そうして十分地方財政委員会を督励しまして、公平にやつて行きたい、こう考えております。
  36. 川島金次

    川島委員 それでは次にお尋ねしますが、今度災害復旧国庫補助額の配分の仕方がかわつて来るということであります。そういうことになりますと、地方団体が今日まで当てにしておりました金額が非常にかわつて来て、それでなくても財政危機が伝えられております地方団体におきまして、災害復旧の工事が非常に繰延べられるというおそれがありまして、そのために起る支障をわれわれは相当心配しておるのでありますが、政府考えております災害復旧に対する地方の配付金額で、はたして地方がそれを受入れて、しかも災害復旧の完全な進行ができるか、その問題について国務大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 便宜私よりお答え申し上げます。御承知通り昭和二十五年度におきましては、一定額以上の災害は全部国庫負担になつておるのであります。これを改めまして、昭和二十六年度からは、その公共団体財政收入、また災害の規模、こういうものを勘案して合理的に国の補助金を出し、あるいは地方に負担をしてもらおう、こういうことにしておるのであります。しこうしてその案は、公共団体の租税收入の半分までは地方が三分の一負担いたします。租税收入の半分を越え二倍までは四分の一を公共団体が負担する。租税收入の二倍以上の災害につきましては、全額国庫負担、こういう考え方で進むのであります。従いまして私はよほど合理的になつて行くと考えておるのであります。しかしてこの際ちよつと川島君に申し上げますが、先ほど池田はまた放言をやつた、こういうことをおつしやいましたが決してそうではありません。地方財政平衡交付金というものは、国の事務地方事務との分配、その他の状況考えてきめらるべきものであります。こういう変転きわまりないときにおきまして、地方で負担しておる事柄と国で負担する場合が起り得る可能性はあるのであります。これは今ここでは申し上げませんが、三、四日前から新聞に出ておることなんかがもし実現するとすれば、地方財政平衡交付金が減る材料になるのであります。私は根も葉もないことは申し上げません。具体的には、閣議決定をしませんから申し上げられませんが、新聞をしさいにごらんになりますれば、これは地方財政平衡交付金が減つて、国の歳出がふえるようなことが昭和二十六年度に起るかもわからない。そうすれば地方財政平衡交付金が減る場合もあるということを申し上げたのであります。放言ではありません。いずれは実現するようになるかもしれませんが、この際あらためてお答えしておきます。
  38. 川島金次

    川島委員 何も私はそんなことをお尋ねしておりません。尋ねたことに対してお答え願えばよろしい。貴重な時間ですからよけいなことを言わぬでください。
  39. 小坂善太郎

    小坂委員長 あとが大分ありますから、独占を禁止します。
  40. 川島金次

    川島委員 もうおしまいにいたします。そこで最後にお尋ねをいたしたいのですが、これは最近若干立消えの形になる傾向になりましたが、岡野国務大臣お尋ねいたします。地方団体における議会の議員の定数の問題であります。これは国務大臣も御承知通り、アメリカにおきましては、人口に比例いたしまして比較的に少い議員を持つておるところが多い。しかしながらその反面に、人口十万くらいの都市において六十人、八十人という多数の議員を持つておるところもございます。しかしながら日本現状において、はたして今日の地方議会の議員の定数が適正なものであるかどうか。また財政上におきましても考えなければなりませんし、政治的にも一考の余地もあるように私ども考えておるのでありますが、国務大臣といたしましては、地方議会の議員の定数の問題について、いかような所見を持たれておるか、その点を最後にお尋ねして私の質問を打切りたいと思います。
  41. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方議会の議員の定数が多いか少いかということについては、いろいろ議論のあるところでございましよう。しかしながら、私はまず法的根拠といたしまして、市町村に関しては、地方自治法に、総選挙のときにはこれを減してもよろしいという規定が一つございます。と申しますことは、減すことが適当であると思うときには減せということが法の精神であろうと思います。同時にもう一つ考えなければならぬことは、御承知通りに、地方財政は非常に窮迫しておりますから、あまり数の多いということは、財政的にも負担がかかることでありますから、財政的見地から見まして、もしできることならば減した方がいいだろう。同時に先般も実例がございまして、布施市においては、市会において全会一致で定員を減すということを決議しております。私はこの三点から、すなわち財政方面からと法的根拠、同時に実際の市が実行したという意味におきまして、私は大体において議員の定数は減らした方がいいのではないかという考えを持つております。しかしながら、これは自治にまかしておいて、われわれ中央政府がこれを干渉すべきものじやない。すなわち今日の地方自治行政は、すべて地方住民の意思によつて決定するということを尊重しまして、今法的措置をして議員を減らせということはいたしません。しかしわれわれの希望といたしましては、以上の三点から、減らし得るものならば、減らしていただきたいという念願は持つております。
  42. 小坂善太郎

    小坂委員長 尾崎末吉君。
  43. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 岡野国務大臣に、時間の関係上簡單に御質問申し上げます。先ほど川島委員から質問があつたようでありましたから、違つた角度から伺つてみたいと思うのであります。地方財政平衡交付金は、前年度と比較いたしますと増額をされております。しかしながら二十六年度の予算には増額はいたしましたものの、平衡交付金としては一千百億円が計上せられておる。ところがこれに対しまして、地方財政委員会は千二百九億円が必要だ。これは先ほど川島委員等が述べられたように、公務員のベース・アップその他の問題で、どうしても千二百九億円が必要だ、こういう意見政府に出されたと聞いておるのでありますが、それがほんとうであるかどうかということ。時間の関係上一緒に申し上げますが、もし地方財政委員会の方で、政府と違つたそういう意見を出されたといたしましたならば、地方財政法の第十三條の規定によりますと政府地方財政委員会との意見が一致しない場合は、政府案と並んで地方財政委員会意見を付して国会に提出をしなければならぬ、こういうことになつておるようでありますが、その処置はどういうことにせられておるのであるか。時間の関係上もう一つ続けて申し上げます、もつとも二十六年度の予算中、地方債を四百億円ほど許すことになつておるのでありますから、結局これをもつて先の食い違いの点は調節できるというのであるか、以上の点についてお伺いいたします。
  44. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方財政委員会から、来年度の平衡交付金は千二百九億円なければ足りないということを出していることは事実でございます。同時に政府といたしましては、一般予算において千百億円にこれを査定して、これで地方財政をやつてもらいたいということになつていることも事実であります。同時に千二百九億円要求しておりながら、千百億円と査定したことについて、地方財政法第十三條によつて議会に出さなければならぬということになつておりますが、これは予算書にちやんと規定通りの記録を付して皆様の御審議を願うことになつております。  もう一点の地方債の四百億円は、今年三百七十億円でございましたのが、三十億円増しまして四百億円になつておるのであります。でございますが、地方財政委員会といたしましては六百十五億円いるというような意見になつております。この点におきましても、地方財政は二百十五億円の起債のわくが圧縮されておるわけであります。これはまたいろいろ地方財政委員会において、事務の量を勘案して善処しなければならぬと考えております。
  45. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで第二でありますが、岡野国務大臣先ほどの、いわゆる地方財政委員会の規則によつて交付する金額の率その他のものの改正をやるのかどうかという質問に対しましてのお答えに、積雪寒冷地手当等に対していろいろ考慮しなければいかぬから、そういうことで法律は改正しないが、一部の規則の改正によつて善処しよう、こういうような意見がありましたが、私が伺いたいのは、当分地方財政委員会の規則によつて善処して行くが、やつてみて遠くない将来、早く申しますと、来年度にでも改めた方がいいという結論が出ますれば、地方財政平衡交付金の制度をお改めになる考えであるのかどうか、この根本的なことを伺つておきたいと思います。
  46. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は法律というものは一定不変のものじやない、こう考えております。それで平衡交付金制度のできました当時は皆様の御審議を願い、あるいは前国務大臣あたりも、これは最もいい法案だと言われて、議会の方にもほめられたとかいう話を聞いておりました。しかしながら情勢は変転いたしまするし、また一万何百の公共団体に対する配分方法などは複雑多岐でありまして、ほんとうにわれわれが事前に考えた法律によつて実際行つてみた場合、そこにいろいろ不便な箇所、間違つた箇所などがないとは限りません。でございますから、あの法律が施行されましてからまだ一年になりませんが、今最後の平衡交付金の割当を研究中でございますが、そんなことをいたしまして、今年の平衡交付金をわけてみまして、いろいろ地方から情報をとりまして、その上でもし不公平であるとか、不満であるとか、あるいは実情に沿わないということを発見しますれば、むろん地方財政委員会の規則をかえることにやぶさかでない。同時にまた平衡交付金制度というものが実情に合わないということになれば、これまた考えなければなりませんが、将来のことは申し上げられないとしても、法律というものはそんなものだろうという考えから、できるだけ一般の実情に沿つて地方公共団体財政を十分適正にやつて行けるという方向に進めてみたいと思います。その進ませる点において、法律の改正を要する時期が来れば、むろん考えなければならないと考えております。
  47. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大分含みのある御答弁でありますので、岡野国務大臣のそのお含みに信頼をいたしまして、この問題はこれでとどめまして、次には地方起債の問題に移りたいと思います。昭和二十五年度までは、政府はその方針として、地方町村の起債の中で、荒廃した道路、すなわち災害が起つたというまでに至らない徐々に荒廃して参つた道路及びその道路の修理や新しい土木事業及び消防設備、特に消防ポンプ等の購入、こういう問題についての起債はお許しにならない方針をとつておられたようでありましたが、実際問題といたしましては、荒廃した道路の補修改良、あるいは土木事業等の必要やむべからざるものや、あるいは特に消防の施設及び消防ポンプ等の購入等に対する起債が許されないために、結果から見ますると、損害が非常に大きなものになつた。そういうことでありますので、二十六年度からはこういう問題を相当緩和せられなければいかぬと思うのでありますが、先般大蔵大臣にも質問を申し上げまして、大蔵大臣は、実情に沿うてなるべくそうしたいということであつたのでありますが、岡野国務大臣はこうした問題を二十六年度からは相当緩和せられる御意思があるのかどうか、あらためて伺つておきたいのであります。
  48. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほども申し上げましたように、来年度の起債は地方財政委員会意見によりますれば六百十五億円でなければいかぬ、こういうようなことになつておりますけれども、一般の財政金融政策から、地方起債は四百億円に限定するということになつております。そういたしますと、御承知通り、敗戰後国土はほとんど荒廃しきりになつておりまして、これを直して行きまするのにはおそらくあらゆる方面について需要がかさむことと思います。しかしながら、もしこれが税金は幾らでも取りほうだい、またそれに対して幾らでも出しほうだいということになりますときには、各方面の需要に対して十分まわすこともできましようが、御承知通り先ほども申し上げましたように、これ以上国民から税をとつて財政收入を充実するということはできない相談でございます。そうすれば入つただけのお金によつて、そして一番大事な仕事から手をつけて、だんだんと国土を改善して行く、こういう方向に向かなければならぬと思いますから、ただいまただ消防とか道路とか何とかいう方面だけに対して特別の措置をするということは、お約束はできませんが、しかしこれは地方公共団体実情に沿いまして、一番大事と思うところの仕事に重点的にやつて、だんだんとその財政の支出をして行きたい、こういう方向になると思いますから、御説の通りに、消防それから荒廃した道路を必ず優先的にやるということは私としてはお約束できません。
  49. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 御答弁の中でもう一つただしておかなければならぬ点は、いわゆる消防とか荒廃した道路とか、必要やむを得ない土木事業とかいうものを優先的にやれというのではなくて、二十五年度まではこういう方面のことはなるべくお許しにならないような方針をとつておられたようであるが、二十六年度からは実情に沿うて相当に二十五年度と違つた緩和をせられるのであるかどうか、こういうことでありますので、その点についてもう一ぺん伺つておきたいのであります。
  50. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。私は二十五年度以上に二十六年度は緩和されるような情勢ではないということを申し上げておるのであります。
  51. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、昨年度三百七十億円であつたところのものに本年三十億円をふやしまして、合計四百億円、こういう地方債となつておりますが、あとの三十億円というものは、たとえばどういう趣意で三十億円をふやされたか、この点を伺つておきたいのであります。
  52. 岡野清豪

    岡野国務大臣 三百七十億円の起債が四百億円になりましたのは、先ほども申し上げましたように、地方といたしましては六百十五億円ほしいということになる。それが中央財政金融政策から起債は四百億円にとめなければいけないということになりまして、四百億円になつた。そうしますと三十億円ふえたばかりでございます、しかしながら三十億円ふえましたけれども、まだ二百五十億円起債のわくが足りないということになりますから、その点においていろいろ勘案しなければなりません。いずれにしましても、今年三百七十億円でまだ足りないという情勢のもとにおいて待遇された各事業は、やはり来年度も同じような制約を受けなければならぬという私の見通しを申し上げたのであります。その四百億円を、すなわち三十億円増したのをいかに処置するかということは、まだ地方財政委員会でも十分な研究はしておらぬはずでございます。
  53. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、実情に即してやるというその解釈のいたし方についてはそこに相当の含みがあるのでありますかどうですか、それだけ伺つて質問をやめたいと思います。
  54. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。実情に即してということは、各地方公共団体実情に即して、最も急を要するものに使つて行くということに御了解願いたいと思います。
  55. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 他の委員の時間があると思いますので、この程度で私の質問を終ります。
  56. 小坂善太郎

  57. 藤田義光

    藤田委員 まず池田大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。  終戰以来地方自治に新しい法的根拠ができまして、いわゆる地方分権が順調に発達して参つておりますが、これが裏づけといたしましてシヤウプさんが再度にわたり来朝いたしました。その結果、いろいろの新しい地方財政措置が確立いたしたのでございますが、昨年の九月国会及び政府に対する形式はとられませんでしたが、非常な苦労をされましていわゆるシヤウプ第二次勧告なるものが一部発表されたのでございますが、この第二次勧告というものは、政府の今回の予算にいかに具現されておりますか、その大要をお聞かせ願いたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士の第一次勧告は、日本政府に対しまして普通のメモランダムで司令部より参つたのであります。しこうして第二次シヤウプ勧告は前とはよほど違いまして、マーカット少将より私の方に参考にというので来たのであります。従いまして第一次のように、シヤウプ勧告をほとんどうのみに――うのみということは言葉は惡いのでありますが、シヤウプ勧告を非常に尊重してやつたのとはよほど違いまして、第二次勧告につきましては、あまり入れておりません。入れない方が多いと思います。しこうしてシヤウプ氏がこちらで私にお話なつたようなことも、途中をとりましたので拔けておる点もあるやに聞いております。
  59. 藤田義光

    藤田委員 時間がありませんので要点のみお伺いしたいと思います。大蔵省におきましては、資金運用部資金法というものを用意されまして、郵政省の所管する簡易生命保險、これの一元化に必要なる法的措置を準備されておると拜承いたしておりますが、この法律案は本国会に上程されますかどうかお伺いいたします。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 今までの大蔵省の預金部を改めまして、資金運用部を設け、しこうして別に郵便貯金特別会計を設けまして、郵便貯金、簡易保險あるいは年金保險、こういうものは大蔵省の資金運用部に預託する。そうして資金運用部は、今申し上げました各会計に財務諸表を出しまして、その間の経理を明らかにする。集まつた金は大蔵省の資金運用部において運用する、こういうことにいたしまして、今国会に出す予定で今急いでおるのであります、
  61. 藤田義光

    藤田委員 資金運用部の設立を明言されましたが、これは現在の銀行局の預金部を総括接收をされる機構でございますか。あるいは大臣官房その他に別箇に設置される予定でございますか、お伺いいたします。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 大体の仕事は今まで通りでございますので、ただいまのところはやはり銀行局に置いて行こうという考えを持つております。しかし何分にも銀行局と理財局との分野は似たところもございますし、最近におきましては理財局において為替関係事務が非常に多くなり、外債その他渉外事務も多くなつておりますので、この機構につきましてはただいま検討いたしておりますが、今までと事務が大して違いませんので、銀行局にさしあたりは置いておく考えでございます。
  63. 藤田義光

    藤田委員 この新しい機構のもとに従来の特別会計も接收したいという御方針、われわれも趣旨に賛成でございますが、最近の閣議におきまして郵政大臣が反対をいたしまして、簡易生命保險の一元化は困難であるという情報を拜聽しましたが、この点はいかがでございますか。大蔵省の予定通りに一元化する自信がありますかどうか、お伺いしたい。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は他の委員会の方でも議論になつておるようでありますから、ここで申し上げまするが、簡易保險で集まつた金は、従来郵政省で運用いたしておつたのであります。しかるところ、昭和十六年でございますか、戰時体制になりましてから、これを大蔵省一本にするということになりました。簡易保險におきましては、一部の金を今申しますと、三十数億円の金が簡易保險局で貸したままで運用しておられるのであります。大部分の二千億円近い金は預金部でやつておるのであります。しこうして終戰直後、これをわけるという議論がありましたが、向うからスキャップ・インが昭和二十一年一月に参りまして、ぜひともこれは今まで通り全部合せて有効に使えというスキャップ・インが参りました。しかるところ、国会におきまして、参議院あるいは衆議院におきましても、簡易保險と郵便年金はわけた方がいいという議決がありました。われわれもそれに沿つて交渉いたしましたが、最近ドツジ氏が来られまして、わけるということはよくない。国民の零細な貯金であるから、やはり合同して国家目的に使つた方がよいというメモランダムが参りまして、せつかくの国会の決議でありましたが、われわれはまた今まで通り合せて使うことにいたしました。そうして仕事を進めております。しこうして今問題になつているのは、これをわけるということでなしに、簡易保險局で使い得るという規定があつたからその規定を置いておいてもらいたいというのと、それから今まで三十億円貸しておるが、それをそのままにして置いておいてくれ、こういう希望であるのであります。そうして私は今までやつておる三十数億円の方はそのままにしておいて、しかし建前上合同して使うということになれば、簡易生命保險法の第六十九條は、あるのはありましたが、ほとんど動かない條文であります。建前が合同運用ということになれば、そんな死んだ規定はなくした方がいいだろうというので、今議論をいたしておるのでありますが、私の考えております三十数億円の運用は今まで通り、そうして簡易生命保險法の第六十九條を落す。しこうしで合同運用する場合におきまして、大蔵大臣の專管ではありまするが、運用につきましては、総理を会長とし、郵政大臣大蔵大臣を副会長とする委員会を設け、それに諮問してやつて行くということになつて行けば、両省の意見がまとまるのではないかと思います。従いまして私は金融債を早く引受ける関係上、取急いで今明日中には閣議決定ができると考えております。
  65. 藤田義光

    藤田委員 昨年の十一月二十五日と十二月二日に、地方財政委員会から国会に対しまして勧告が参つております。いわゆる平衡交付金補正予算における増額の問題と起債の追加の問題でございます。平衡交付金は八十八億を増額してほしい、起債は百九十五億ふやしてほしいという強い勧告が参つておりますが、これは先般の補正予算のとき、ああいう結果になりまして、地方財政委員会の要望は大部分無視されたのでございますが、これがしわ寄せと申しますか、跡始末はいかにされる予定でございますか。この勧告案を立案されましたる地方財政委員青木さんの御所見を伺いたいと思います。
  66. 青木得三

    青木政府委員 ただいま御質問がございました勧告案が作成せられましたる当時、私は米国を旅行中でございましたものでありますから、実はその詳細なる事情については承知いたしておらないのであります。しかしながら、ただいま御質問がございましたように、地方財政委員会の要望が不幸にしていれられませんで、その結果といたしまして地方財政に、お言葉によりますと、しわ寄せというものができておる。これをいかにして切り抜けるかということは、全国一万有余の地方団体にとりましては非常に困難な問題であると思います。これらの地方団体におきましては、いろいろ苦心をいたしまして、何とかこの難局を切り拔けようとして非常な努力苦心を拂つておる現状でございますが、これを具体的に一々お答えするだけの資料も持つておらないのは、はなはた遺憾に存じております。
  67. 藤田義光

    藤田委員 青木先生は私の恩師でございますが、ただいまの御答弁はどうもはつきりしないのでございます。昨年の地方税法の通過の遅延によりまして、地方自治団体が短期融資を大蔵省からいただいたのでございます。これが利子に関しましては格別の措置を講ずるという閣議決定があつたことは御存じの通りでございます。金額は五億そこそこでございますが、この利子はいかにされたか、二十六年度の予算において処理されておりますかどうか、お伺いいたしたいと思います。これと関連いたしまして、今回大蔵省が地方財政を査定されるにあたりまして、災害復旧全額国庫負担法の修正、先ほど大蔵大臣から御答弁になりました新しい法律の通過を前提にされておりますか、あるいは全額国庫負担の前提のもとに査定をされましたか、この点を大蔵大臣にお伺いいたします。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 地方税法案の通過が遅れましたために、短期融資をいたしましたことはお話通りであります。しこうして短期融資によりましてどれだけの負担になつたか、私はまだ数字をつまびらかにしておりませんが、昨年の八月一日から従来の地方公共団体に対しまする預金部の貸付九分二厘ないし九分四厘の利子を、八月一日から六分五厘に下げました。このことによりまして、地方の負担は相当楽になつたと思うのであります。そこでこういうように下げても、なお利子負担を国庫が見なければならぬかどうかということは、数字を見た上で研究しなければなりませんが、私はこの金利を引下げたということで、地方公共団体はよほどよくなつたと思います。しこうして次の、全額国庫負担として地方は組んでいたかどうかということでございますが、これは地方財政委員会の方では三分の一負担ということで千二百九億円が出ていると思います。千二百九億円が三分の一の負担でお出しになるものとすれば、私が先ほど申し上げたような負担の仕方にしますと、三十億円ばかり減つて参ると私は記憶しているのであります。しこうして私が申し上げたようなやり方によりますと、全体としては七割六分四厘の国庫負担になります。府県によりまして、財政收入の少い、しこうして災害の多い府県におきましては、九十何%も国が負担しておる、一〇%足らずしか負担していないところも出て来るのであります。
  69. 藤田義光

    藤田委員 二十五年度の地方自治団体の短期融資の利子に関しましては、先般も地方行政委員会におきまして、東條主計局次長からまつたく大臣と同じ答弁がございました。ところがこれは問題の要点をそれた御答弁ではないかと思います。この利子の引下げということは、われわれから見れば当然のことでございまして、実は大衆から零細な資金を低利で借り入れておりまして、これを自治体に低利で貸しつけるべきところを、九分何厘という高利をとつております。政府が高利貸しを暫定的にやつてつたのを元にもどしたというだけでありまして、この利子の負担を自治体にさせる問題と、地方債の利子を引下げる問題とは、別個の問題である。私はこれは大蔵大臣の負債と解釈いたしまして、随時催告して参りたいと思います。これは前例になりますので、些少ではございますが、ぜひともひとつこの利子は政府において負担してもらいたいという自治体の熱望がございますので、この点は大蔵大臣の誤解の答弁ではないと思いますが、私の聞かんとする答弁と少しピントがはずれておるようでありますから、念のために申し上げておきたいと思います。  次は新入学生の六・三制に基く教科書の補助の問題、これは文部省の所管ではございますが、当然査定されました大蔵省で十分御存じのことと思います。声を大にしまして、教科書の無償配布ということが報道されたのでございますが、予算書によれば、わずかに一億三千九百万円が計上されておるのみでございます。しかも無償配布せんとする教科書は、国語と理科のみである。しかも半額の一億三千九百万円を地元に負担させまして、国費補助が一億三千九百万円という、これは表現がまずうございますが、無償配布の美名に隠れまして、実際上は地方財政に新たなる負担を加重した結果になつております。しかも九年計画で五十億を支出いたしまして、行く行くは六・三制全部を無償配布にするという計画でございますが、今年が初年度でございまして、こういう予算編成から参りますと、将来に禍根を残すのじやないか。無償配布の美名に隠れて、地方財政にさらに負担を加える結果になると思いますが、大蔵大臣所見を伺いたいと思います。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 初めの、預金部は高利貸しをやつておるというお話でございますが、決してそうではございません。藤田君御承知通りに、一昨年は預金部の赤字を補填するのに、五十億円近い金を一般会計から出しておるのであります。また昨年は二十数億円出しておるのであります。本年の当初予算は、三億円一般会計から出しておりますが、この預金部がようやく持ち直りまして、二十六年度は赤字を出さずに済むようになつておる。しかも金利を下げるようにいたしたのであります。しかして地方税が遅れたために、地方がお困りだろうというので、われわれはそういう場合においては考えたらどうかということであつて政府が法律的にこれを負担しなければならぬ義務はないのであります。負担しなければならぬ義務があるとすれば、金利を引下げた分と混淆できないかもしれませんが、負担すべき義務はないのでありますから、片一方で地方財政が持ち行くようにして行けば、経済的に関連があるので、私はまかなえるのじやないかと思います。  次に、今年四月に入られる小学校の生徒に、教科書を無償で配布するということは、現内閣が教育につきまして非常に深い関心を持つておる証拠であります。しかして、大体の予算は三億円程度で、半分を国が負担するということに相なつております。この金額が足る足らないという議論はありますが、御承知のように紙の値段が動きます。従いまして、三億円程度で行かないという場合においては、予算のやりくりで何とか半分だけは国でしよう、そして半分は地方でやつてもらいたい、これが六・三制全部に及ぶということになると、地方財政が非常にきゆうくつになり、国もきゆうくつになる。それはそのときの状況によつて考えなければなりません。これが平衡交付金の妙味のあるところであります。しかして平衡交付金の中には、この教科書を配布するだけの金は組んでおるのであります。
  71. 藤田義光

    藤田委員 短期債の利子の問題で、政府が負担する義務はないということを言われました。これはもちろん義務はございませんが、あまりに政府当局は従来、地方財政に対しまして権利を主張し過ぎておるので、私はあえて道義的義務を感じなければいかぬと思う。これは昨年の閣議決定も新聞に報道されまして、全国の自治体は一種の期待を持つております。ただいまの大蔵大臣答弁は、地方一万有余の自治体の期待権を侵害しておる。民法の規定に基いて、損害賠償を請求することができるのじやないか、私はそういうふうに感ずるのであります。文部大臣も見えておりますので、ただいまの教科書の問題について、繰返しお尋ねする気持はございませんが、無償配布すればするで、初めからはつきりと約束された通り予算の編成をされたらよろしい。文部大臣としてそれだけの予算がとれなければ、やめたらよろしいのであります。自分の地位に恋々としたいから、こういうから手形を出すという結果になるのではなかろうかと私は考えます。現に文部省におきましては、現在結核のために療養しておる先生に対する俸給の補助を、二年間いたしておりますが、これを三年に延長せんとしております。法律的措置は大分進んでおりますが、財政的準備が全然ございません。どこからこの金を出さんとするか、文部大臣所見を伺いたいのであります。教科書の問題に関しましては大蔵大臣から御答弁がございましたが、納得できません、文部大臣の良識ある御答弁を伺いたいと思います。結核職員の三年間俸給補助の問題も、もしかすると、地方財政に新たな負担を加重する結果になるのみであつて政府の親心というものは全然出ない。期間を一年延長するという美名のもとに、再び地方財政を圧迫するのではないかという懸念が濃厚でございます。従来の行き方から、こういう懸念の起きるのは当然でございますから、この点に関しまして文部大臣の明快なる御答弁をお伺いしたいのでございます。
  72. 小坂善太郎

    小坂委員長 藤田君に申し上げます。今のあなたの御質問でありまするが、これは前にこの委員会でしばしば問題になりまして文部大臣からお答えになつている問題でありますから、この際簡單にお答え願うことにして、なおあなたの方で小林信一君が文部大臣質問することになつておりますから、この程度でお打切り願いたいと思います。
  73. 天野貞祐

    天野国務大臣 教科書無償配布のことにつきましては、予算的措置として私はぜひとる考えでございます。二億八千万円でもつてできる範囲のことを本年いたす考えでございます。それからまた結核の三年のことにつきましては、三年がいいにきまつておりますけれども、私ども地方財政を圧迫すると困るから、今年は二年ということを言つておるわけでございます。
  74. 藤田義光

    藤田委員 最後に大蔵大臣にお伺いしたいと思います。大蔵省から出ております平衡交付金法第六條四項の規定に基く附記事項でございますが、この印刷物を見ますると、地方自治体の歳入超過というものが非常に大きい数字になつております。これは一見しますど、地方財政に余裕ありやの錯覚を起しやすいのでございまするが、どうしてかかる厖大なる歳入超過を来しておるのか、あるいは二十六年度推計においても、かかる厖大な数字をどうして出しておられるのか、はつきりとお伺いいたしたいと思います。委員長の御注意もありますが、この問題は非常に重大でございますので、質問継続を保留いたして答弁を願いたいと思います。
  75. 小坂善太郎

    小坂委員長 継続は認めません。
  76. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 お答えいたします。二十四年度の決算を各地方団体からとりますと、総体においては約四、五百億円程度の歳入超過であります。これは各団体全部合せました結果でありまして、個々の団体については、もちろん状況は違いますが、そういつた関係で、地方公共団体の中にも財政條件の相当いいものもあります。そういう面がプラスして現われる。一方歳入の欠陷もあると思いますか、そういうものが相殺されておる。こういうことになります。
  77. 小坂善太郎

  78. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま大蔵大臣から教科書の問題を通しまして、非常に現内閣が教育に対して重大な関心を持つているというようなお話を承つたのでありますが、これは私たちとしても喜ばしいことであります。また日本の国情からいたしますれば、これまた当然のことであるのであります。そこで世界の経済情勢が非常にこんとんとしている中で、日本の自主権は回復されようとしておる。その両者の問題からいたしまして、日本の経済自立の問題はいよいよ緊急になつて来ておるわけでありますが、日本の国情からいたしまして、先ほど申しましたように、單に文化国家というのは宿命的なものでない、日本の一つの国家目的であるという考えをやはり現内閣も根本として、教育を重大視しておられると思います。そういう点からいたしますと、現在自立経済計画なるものを審議会の方から御報告になつておられ、また好むと好まざるとにかかわらず、本年度の予算の中にもこういう傾向は多分に盛つて来られると思いますが、その際やはり重大な問題になるのは、私は科学技術の問題だと思います。要するに教育を基礎にしてつくられるところの力であると思いますが、この面をいかに現内閣が考えておるか。これに対して大蔵大臣とすれば、それに要する資金は相当に自立的に考えておるということをきつと言われると思うし、また文部大臣としますれば、これに対してはこういうふうな計画を持つておられるということが伺えると思いますが、その点に対しまして、大蔵大臣並びに文部大臣から御意見を承りたいと思います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、われわれといたしましては、文教の刷新興隆につきまして、十分意を用いておるのであります。科学技術振興に対しましても、今までにないような予算を出しております。数字は覚えませんが、多分十数億円昨年よりふえておると思います。
  80. 天野貞祐

    天野国務大臣 お考えのように、私も科学振興ということが、日本の将来に対して重要だと考えております。そのために就任いたしましたときも、三つの目標を掲げて、第一は義務教育の充実、第二は育英制度の拡充ということ、第三番目に学術研究の振興ということを考えて、ことに非常に重点を置いております。一体日本人は非常に学問的能力があるのに、まだ十分それが発達しないのは遺憾千万なことでございますので、ぜひこれを発展させたいと考えまして、大蔵大臣がただいま言われたような予算措置をすることができて、これで決して十分だとは言えませんけれども、さしあたつて私はある程度の充実ができるのではないかと期待いたしております。
  81. 小林信一

    小林(信)委員 大蔵大臣の最初のお考えと、ただいま御説明を受けました点とは、私たちといたしましては非常に遺憾な点があるのであります。と申しますのは、科学技術振興といたしまして五億円が計上されておりますが、これは昨年の踏襲であります。それから大学の研究費というものは、御承知通り旧態に復することすら困難な状態にあるので、これが自立経済に役立つような力を持つためには、画期的な予算が計上されなければならぬのでありますが、残念ながら單にこれが六億円が十億円にふやされておるような状態でありまして、決して実情に沿つて日本経済を世界経済にマッチさせて、ここに日本の自主権を回復する一つの素地をつくるというような点は、私たちにはうかがい得ないのであります。  文部大臣のお考えになつておられる点でもう二つ深くお伺いしたいのは、大体大学の研究費とか、あるいは一般科学技術というような面でのお考えは、それでよろしいのでありますが、やはり地方の産業を盛んにするということが、私は重大になると思います。そういう点もやはりお考えになつていただかなければ、平衡交付金の中に教育費を十分に盛るというふうなことがおろそかになるのであります。この点最近問題になつております高等学校の問題について、ぜひとも文部大臣の御所信を伺いたいのですが、従来の実業課程というものが、新制度になりまして非常に軽視されております。もつと実業課程を重視しなければ、地方の産業を盛んにすることはできない。従つて観念的な経済自立はあつても、国力の実際の面においてこれは不可能であるというようなことが考えられるのであります。この高等学校の現行の制度、定時制の問題につきましても、青年諸君の希望というものは、パーセンテージにしますとごくわずかのものであります。そうして高等学校の実情が、実業課程よりも普通課程の方に生徒の行く方が多い。というのは、実業課程に対する魅力が全然ない。施設だとか、あるいはこれに要する費用というふうなものが十分捻出されないために、全然生徒の魅力がないというような点に、基因しておると思うのであります。こういう点に対しまして、この際国家は関心を持たなければならぬと思うのでありますが、こういう点に対して、文部大臣がお考えになつておる点がありましたならば、お伺いしたいと思います。
  82. 天野貞祐

    天野国務大臣 高等学校が一般にいつて、職業的な教育をおろそかにする傾向があるということは、確かに私も認めております。ただせんだつてもお答えしたことでございますが、卑近な役に立つ人間をつくろうという意味の職業教育では不十分で、やはりどういう職業に従事するものでも、その人が一生人間として立つて行く必要な根本的な知識を與えるということが、非常に重要なことで、それが高等学校の本質をなしておるために、そういう方にばかり力が注がれて、直接な職業教育というものがおろそかにされておるという結果になつておりますが、その趣意においては、私は高等学校教育というものはよいのだと思つております。ただおつしやるような点が非常に稀薄になつておりますので、その点は十分力を入れようと考えております。
  83. 小坂善太郎

    小坂委員長 小林君に申し上げますが、この質問の趣旨は、平衡交付金の増額に関してでございまして、今までこの委員会において文教問題はしばしば取上げられておりますから、その意味でひとつお願いしたいと思います。
  84. 小林信一

    小林(信)委員 私のお聞きしたいのは、やはりそこでありまして、そういう地方の教育の実情、さらに全国的な教育の実情というようなものから、現在国家が当面しておる自立経済というふうな具体的な問題に関連して、教育が單に孤立的に考えられておるのではなくて、国家目的に常に並行して教育を考えて行かなければならぬという点から考えますと、どうしてもこれを促進し、これを強化するには、やはり教育財政確立だと思います。ところが教育財政の問題か、平衡交付金制度というものができまして、その当時は閣議においても、何とかして教育財政というものを平衡交付金の中にひとつ確立して行かなければならぬというようなことも考えられたのでありますし、また標準義務教育費確保に関する法律案というようなものが出そうになつて、終つた結果があるのであります。その当時われわれ心配したものは、教育財政がこのために非常な阻害を受け、支障を受けるために、日本の教育というものは、この重大な段階にあつて、その目的を達することができないというようなことを、私たち憂えたのでありますが、過去一箇年の経過からしまして、平衡交付金制度によつて日本の教育行政というものが、はたして発展し得られるか、非常に障害があるかというようなことは、政府当局においても相当御見解をお持ちになつておられると思いますが、その点まず文部大臣からお伺いいたします。
  85. 天野貞祐

    天野国務大臣 まず前のお問いに関連いたして来ますが、この平衡交付金の中には職業課程とか、定時制高等学校などについては特別の考慮をしようと思つております。その点前のお答えを補足しておきたいと思います。  なおこの平衡交付金制度ができたために、教育費というものが非常に不安定になつてしまつたということは、お説の通りでありまして、そのために標準義務教育費確保の法律案というようなものが企てられましたが、それが成立をしなかつたというようなことも、御承知通りでございます。しかし私は何らかの意味において、教育財政確立ということがぜひとも必要であるという考えから、今標準義務教育費確保の法律案にかわるものを、関係方面と折衝いたしております。そのほか教育財政審議会というようなものをつくつて、根本的に教育財政のことを討議し、確立したいという考えを抱いております。
  86. 小坂善太郎

    小坂委員長 小林君、質問はあと一問でやめてください。
  87. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、私の質問の重点を省くわけでありますが、先ほど川島委員から質問がありまして、やはりこの教育財政の重大な面として、給與の問題が取上げられたのでありますが、今回のこの予算を見ますと、政府においては、地方公務員である――私の今質問しておる点に関連いたしまするならば、教職員が新しい給與改訂によりまして受けるところの額は、千円というふうな形になつておりますし、それから地方財政委員会の方で計算されたものは千百十七円というようなことになつておるし、また私たちの考えておりますものは、それよりも相当上まわつた金でなければ、現在の教員諸君のあの線に沿いましたところの給與改訂は完全にできないのではないか、こう考えておるのであります。この点につきまして、地方財政委員会としましては、確実なる基礎資料に立つて算定したものであるという御説明が先ほどつたのですが、その確実な基礎に立つてという千百十七円の、至当であることを詳しく御説明願いたいと思うのであります。それから文部省といたしましては、はたしてこれが文部省の意向通りであるかどうか、この点もお伺いしておきたい。  それから、おそらくこの問題は、大蔵省の見解と地財委あるいは文部省の見解は齟齬するわけでありますが、第九臨時国会におきまして、御承知のように平衡交付金をめぐつて、はたして教員諸君の年末手当、あるいは一月から三月までのべース改訂の費用が捻出されるかどうか、非常に問題がありまして、結局文部省と大蔵省との意見が一致しなかつた。これに対しで岡野国務大臣は、なるべく御期待に沿うように調整いたしますというようなことを言われた。再び岡野国務大臣は、その調整の役目をされるでしようが、これに対するところの御意見を承つて、私は質問を終りたいと思います。この給與の問題は、先ほども他に優先してこの完結を期すべきであるという御見解のもとに――問題は、おそらく一人幾らずつ計上することが妥当であるかということが問題になると私は思いますが、文部大臣、それから地財委、大蔵大臣岡野国務大臣、それぞれの御見解を承りたいと思います。
  88. 青木得三

    青木政府委員 地方財政委員会が、平衡交付金千二百九億円の算出の基礎といたしております教育職員の待遇についてお答えいたします。たいへん煩雑でありますが、しばらくお聞き取り願いたいと思います。  この平衡交付金算出の基礎となつております小学校教員の俸給は、改訂前におきましては、本俸が五千五百六十九円、扶養手当は一・四六人といたしまして七百四十八円、それに勤務地手当四百四十八円を加えまして六千七百六十五円。これを今度改訂いたしまして、本俸が六千八百七十六円、扶養手当はかわりはありませんで七百四十八円、勤務地手当五百四十一円、合計八千百六十五円ということにいたしました。これは一例でありますが、中学、高等学校その他の学校についても、一々計算をいたしましてつくり上げたのであります。
  89. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時半より再開いたしますが、午後の問題といたしましては、物価の問題並びに麦の統制撤廃の問題を中心として論議をいたしたいと思います。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時八分開議
  90. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  中曽根康弘君。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 物価問題というものは、現在の日本の国内経済からすると、大体輸入問題に帰着することであるようであります。そこでこの輸入問題の一番典型的な例が今どこに出ておるかというと、稀少金属に出ておるだろうと思うのでありますが、その稀少金属の中で最も典型的な例は、おそらくニッケルだろうと思うのであります。そこで私は現在のそういう問題の一つの典型的な例としまして、このニッケルの手当について、現政府はいかなる施策を行つておるかということをお伺いしたいと思うのであります。そこでまず横尾さんにお尋ねいたしますが、わが国におけるニッケルの年間必要量はどの程度であるとお考えになつておられますか。
  92. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの御質問は、私としては非常にありがたく感じます。どうもややもいたしますと大きな問題のみ論ぜられて、そうしてしかも最も重要なる――量が少いというためか、あるいは使用価値が少いというためか忘れられるものが往々にあります。ただいま御質問のありましたニツケルの事柄につきまして、深く関心を持つていただくことに対しては感謝の意を表するわけであります。ただいま日本で使つておりまするニッケルは約千六百トンかと思います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その千六百トンというのは必要量として考えてよろしゆうございますな。そうしますと、それに対して現在金属ニッケルの国内における在庫量はどの程度になりますか。
  94. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先般国内の在庫量を調べましたところが、案外多く出まして、約千五百トンばかりニツケルを含んだものを加えてあるのでございます。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 千五百トンというのは数字の間違いじやございませんか。私がお尋ねいたしておりますのは、フエロ・ニツケルとか、そういうものを合せないで、純ニツケルとしてどの程度のものがあるのか、こういう質問であります。通産省の資料でもそんなにはないはずです。
  96. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 これは年末にかけまして調査をいたしましたものであります。案外に多かつたように私も考えておりますが、今の純ニツケルといたしましては幾らあるかということは、よく調べさせてあとで御報告申し上げます。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府委員からどうぞ……
  98. 徳永久次

    ○徳永政府委員 お答え申し上げます。ただいまの大臣がお答え申し上げました在庫調査の統計でございますが、全部の集計はまだ終つたわけじやございません。中間報告の表を今手元に持つておりませんので若干の狂いはございますが、お答え申し上げました千五百トンと申しますのは、純ニツケル及びニツケル合金類、それからニツケル合金のスクラツプ類というようなもので、ニツケルの用途として考えられる、また再び利用可能なものの品目を指定しまして、布庫調査を昨年の暮れやつたのであります。その結果ことしの一月の十五日までの報告でまとまりました分を集計いたしまして、その中にありますると推定される含ニツケル量を集計いたしますると、約千五百トンという数字が出ておるわけであります。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私の方で調べた数字によると大体千トンぐらいになつておりますが、そのうち千六百トンという年間需要に活用できるニツケルはどの程度になつておりますか。
  100. 徳永久次

    ○徳永政府委員 活用という言葉は広い言葉でございますが、私ども今度調査いたしましたものは、活用し得るものを実は調べたつもりでおるのでございます。従いまして、そのトータルの含ニツケル量としての千五百トンのものは活用し得ることを確信いたしておるわけでございます。しかしながら、最初に大臣からお答え申し上げました日本の年間需要量の千六百トンというものは、それぞれの用途を考えておるわけでありまして、その用途に対応するものとして考えました場合には、ある用途には向くものもあり、向かないものもあるというような点もございますので、メタル量のトータルはほぼ似た数字に相なつておりますけれども、一年分の需要量というものを円滑に供給するためには、ストツクの活用というばかりでなしに、新たなメタル・ニツケルというものの供給のさし水をしなければ、十分私ども考えておりまする用途は充足されないという事情にあるわけであります。そのアンバランスがどの程度にあるかという問題がございますが、これはまだ整理もいたしておりませんので、正確につかんでいないわけでございますので、非常に目の子の大ざつぱな数字に相なりますけれども、国内にありますスクラツプの調査によつて出ました数字のほかに、どう少なめに見ましても、三、四百トンのものはメタル・ニツケルとして供給しなければ、足らないのじやなかろうかという、非常に大ざつぱな目の子の見当でございますが、さような見当をつけておるわけであります。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その千五百トンの内訳をひとつ大至急取寄せて私に見せていただきたいと思います。千五百トンの中には大阪造幣庁にある三百トンのコインも入つておるわけですか。
  102. 徳永久次

    ○徳永政府委員 含ニツケルの分といたしましては、今のコインは入つておりません。ただコインのうちで、コインの工作過程に入つておるものを除いて、未処理でスクラツプの形にとどまつておるもの、それだけが数に入つております。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは幾ら入つておりますか。
  104. 徳永久次

    ○徳永政府委員 統計に出ましたものは全体で三百何十トンでございますが、二、三十トンのところかと思います。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 くずが二、三十トン、それが入つておるわけですか。
  106. 徳永久次

    ○徳永政府委員 入つております。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 通産省の千五百トンというのは、非常に過大な数字であつて、これは実際の表を見ないと私はそれを信用することができません。少くとも私どもが正確に調べた数字と大分違つております。そこで次にお尋ねいたしますが、しからば年間どれくらい輸入する必要がありますか、大臣お尋ねいたします。
  108. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 御存じの通り、ニツケルの原鉱も何もないのでありますから、全部といつていいくらい輸入しなければならぬと思います。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 全部といいますと何トンになりますか。
  110. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先刻申し上げた国内需要の千六百トンとお考えいただきたいのであります。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 千六百トン全部輸入しなければ間に合わぬというのですか、先ほど政府委員が話したのでは千五百トンくらい在庫があるという御返事でありますが、これはどういうわけですか。
  112. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今年はそれをもつて、使えますけれども、今年以後におきましては、日本には何もないのでありますから、それがなくなりましたら毎年全部輸入しなければならぬ、こういうのであります。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が聞いておるのは、今年度において今通産省が調べている千五百トンがかりに活用できるとしても、それは全部活用できる数字じやない。かりにそれを認めるとしても、先ほど政府委員答弁では、三百トンないし四百トンの輸入は必至だと言つておるが、本年度において外から手当を要する金属ニツケルの量は幾らか、こういうことを質問しておるのであります。
  114. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいま三百六十五トンをアメリカに要望しまして許可を得ておりますから、最近において輸入できるものと思います。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 三百六十五トンだけが今大体見当がついておる。それは金属ニツケルですか、それとも鉱石ですか、フエロ・ニツケルですか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  116. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 金属ニツケルであります。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その三百六十五トンという数字は、アメリカが正式に確定的に許した数字ですな。
  118. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 確実にそれだけ許可を得ておるのであります。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その三百六十五トンはマル特とかマル進の需要にのみ充てるものであつて、一般の国内需要には充てられない数字じやありませんか。
  120. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 それははつきり用途は今きまつておりませんけれども、使い得るものと、こういう考えであります。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 三百六十五トンというのは、私が調べた範囲ではマル特、マル進用として――これは確定したというところまでは私は知りませんが、進駐軍が特に許可する意向のものだということを聞いておる。しからば国内生産というものは年間どれくらいになりますか。
  122. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 御存じの通り、国内には鉱石がございませんので、鉱石を輸入しなければ国内の生産はないものと考えます。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しかし今新居浜の工場でも、志村の工場でも、動いておるじやありませんか。輸入しなくも動いておる。
  124. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今スクラツプ精錬をしておるのでございます。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこでスクラツプ鉱石の現有のものを基本にして、年間どれくらいの国内生産ができるか、こういう質問であります。
  126. 徳永久次

    ○徳永政府委員 国内のスクラツプ精錬は、実はごく最近に始められたのでありまして、スクラツプ精錬のみならず、中間的な原料といたしまして、鉱石ではございませんで、外国での溶鉱爐精錬を経ましたニツケル原料、これをこまかく申し上げますと、二段階ございます。溶鉱爐コンバート、いろいろ違いますが、一日にニツケル・マツトと申しております。そういうものの輸入も努力しておりまして、現実に商談ができまして、輸入することに相なつておりますものが、マツトの形で四百トンばかりございます。さような形で、月々の生産というものは、実は計画的につかみ得ない状況でございます。月々かわつておるという状況でございますが、各社が用意しております精錬の能力――スクラツプなり輸入のマツトを処理して、というと電解してということになりますが、その能力というものは、今動かそうとしておるものが月約七、八十トンの能力があり、さらに動かそうと思えば、もつと大きいものもできるというような状況に相なつております。現実にメタルになつて出ておりますものは、まだそこまで出ておるわけではございませんで、先ほど申しましたように姑息な仕事でやつておるわけでありますから、月々何トンずつ出るかと言われますると、正確にはお答えしがたい事情がございますが、四、五十トンは現物が出るように原料手当が進みつつあるというようにお答えし得るのじやないかと思います。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の政府委員答弁と、私の調査は非常に違う。私は実際の工場を調べてみた。実際の工場を調べてみますと非常な差があります。それでは政府委員お尋ねしますが、月四、五十トン出ておるというお話ですが、年間にすると四、五百トンになりますね。それじや外国から入れる必要はないじやないか。実際一体どの工場で何トン出ておるか、最近の具体的な例をお示し願いたい。月四、五十トンなんというのはインチキもはなはだしい。
  128. 徳永久次

    ○徳永政府委員 御承知のように昔大きくやつておりましたのは別子鉱業の四坂島であります。四坂島は昔の能力で申しますと年間三千トンまでの能力を持つておつたわけであります。つい最近になつてその設備の補修に着手いたしまして、硫酸ニツケルからのニツケルの回収ということを始めておりますし、それのほかにニツケル・スクラツプの精錬をやつているわけであります。最近動き出したばかりでございますが、私先般も工場を見に行つたのでありますが、二十トンくらいのものが出かかつているわけであります。それから関東地区では、志村化工がやつておりまして、生産量の数字は五、六トンというように聞いておるわけであります。先ほど申しましたマツトが四百トン入りますので、原料が非常に処理しやすくなるという事情もありますし、需要家から設備の拡張について金も幾らか援助してもらつて、それをふやそうという計画も聞いておりますし、それから別に太平鉱業も約二十トンくらいのスクラツプを原料としたものを考えているというような現情もございますし、先ほど申しました一月中における生産か幾らになるかということは、統計を十分用意しておりませんが、今集荷されつつあるスクラツプの状況、それからマツト輸入というようなことを考えますと、一両日の間には四十トンくらい出るようになつて来はしないかというふうに見ているわけであります。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の答弁は非常に不明確な答弁でありまして、私が実際会社へ行つて調べたところによりますと、別子鉱業月産二トン、志村化工月産二トン、大体全国で八トン以上出ないだろうという計算です。あなたは五十トンという計算で、非常な差があります。もちろん戰争前における日本の精錬能力は八千百トンくらいまで行つた。しかし現在それらの設備はすぐには使いものにならぬものになつていることは御存じの通りです。その七、八トンという数字と五十トンという数字の差があまりあるのに驚くのですが、具体的にどの工場から何トン出ているか、正確にお示しを願いたい、この問題は日本の輸入の最もテイピカルな問題であるために、私は実際これに集中して調べて来た。きようは遺憾ながら他に質問者がありますから、こまかく質問することができません。また横尾さんは非常に尊敬しておる性格善良な方ですから、私は意地の惡い質問などはいたしません。ともかくニツケルに集中的に出ているから、この手当を與党も野党も一緒になつてやろう、池田大蔵大臣にも聞かそうというのでやつておるのでありますから、どの工場から何トン出ておるか、正確にお示しを願いたい。
  130. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのお話よく調べて御返事をいたすつもりであります。但しこの際私申し上げておきたいことは、お話通りニツケルは非常な問題を持つております。つきましては、政府としては何とかしなければいけない。純ニツケルを買うだけではどうも不安である。精錬をやる。そうして鉱石を輸入することが最も必要なりと私は考えるのであります。最近におきまして、ニユーカレドニアあたりから、これを輸入した。しかしながら精錬と申しましても、長い間精錬工場を休んでおる。これの復旧にも相当の資金がいりますし、またニツケルが順調に入つて来ることになりましてから、これらの復旧した工場の維持をどうするかということも考えなければならぬかと思います。但し今申し上げましたのは、ニユーカレドニアとか、あるいはセレベスとか、そういうものをよくあさりまして、鉱石をできるだけよけい入れまして、日本のニツケル需要に充てることにいたしたいと思つております。また一面ニツケルを使わぬでも代用し得るものがあるとすれば、これまた考うべきものじやなかろうかと思います。先刻申し上げましたように、ニツケルのようなものに対しての関心が、わが国民に至つて少かつたことははなはだ遺憾であると思います。今日の御質問に対しまして敬意を表し、またそれに対してわれわれは一層努力をいたしたいと考えております。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大体通産省が持つておる数字が非常に不明確であいまいで、私はこれではたして日本の稀少金属の手当が、われわれが安心しておられるような状態にあるとは考えられない。そこで通産省の正確な数字を待つて、追つてもう少し明確に聞きたいと思いますが、今までの御返事の中でも、ともかく日本では四百トンくらい純ニツケルについて足りない。しかし今マツトを四百トンくらい手当をしておるという話ですが、マツトの純度はどれくらいですか。
  132. 徳永久次

    ○徳永政府委員 ただいま確定的に入つておりますマツトの分は、第一次の分でありますが、純度二〇%くらいでございます。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二〇%とすると、四百トン入つても八十トンしか出ない。そうすると、政府の言明を信用しても、やはり三百二、三十トンは不足だ。私の計算によれば、もつと不足です。この不足を一体どういうふうにして解決するつもりでございますか。
  134. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、さしあたりの問題として、マツトの輸入と純ニツケルの輸入ということでしのぐより手がないわけであります。過去におけるストツクの活用、それによつてしのいで行こう。しかし継続的な形として年間千六百トンのメタルの供給確保という問題は、今やろうとしておりますストツクの活用というのは一年こつきりのもので、なくなるのであります。マツトの輸入も、メタルに換算して年間千六百トンのものが確保し得るということは想像できないのであります。従いまして基本的には、大臣が申しましたように、鉱石を輸入してそれを溶鉱炉製錬なり電気分解をやつて日本の最小限の所要度と認められる千六百トンを何とか確保したいというふうに考えておるわけであります。私どもただいま一案を用意いたしまして、先般も衆議院の通産委員会にも御相談申し上げ、大体のアウトラインを御説明申し上げたのであります。まだ政府部内の研究段階にございますが、通産省としての一応の成案を得ましたので御説明申し上げて、国会からはそのラインで大いにやるようにと気合をかけられておるような状況であります。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が聞いておるのは、マツトの手当とか、あるいは原料鉱石の手当とか、ニユーカレドニアから何トンくらい話が進んでおるとか、カナダからどうしているとか、あるいは濠州からどうしているとか、タスマニアからどうしているとか、そういう買付状況を示してもらつて、何トンくらい契約が進行中で、そのうち何トンくらいは確実に見込まれる、そういう具体的な話をしてもらわなければ、抽象的な話ではこの話は進みません。
  136. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほど申しましたように、目先のところは、基本的な対策ができるまでの過渡期をつなぐ処置に現在追われておるというのが現実であります。その具体的の、過渡期をつなぐ仕方の第一のポイントは、メタルとしての輸入を司令部に懇請しておるわけであります。その数字は、われわれ千六百トンを懇請いたしておりますが、そのうち、ほぼ確実に話のつきましたものが、先ほど申しました三百六十五トン、これも二百十五トンの口と百五十トンの口と二つにわかれております。それが一つ。それから第二の問題はマツトとしての輸入でございますが、これは政府の努力と申しますより民間の努力でありますが、政府としてはマツトの買付をAAシステムによりまして、どこからでも買えるところから買つてくださいということをお願いしておるわけであります。それによりまして具体的に輸入の商談が進みましたものが、四百トンが一つ現われております。もう一つ約六百トンの――これは第二次のマツトでございますが、品位として七〇%くらいのものでございます。その商談が進みつつございます。但しこれはまだ確定的に日本に入るという段階には来ていないわけであります。それから鉱石の分といたしましては、基本的な政策を立てます前提として、当然調べなければならないわけでございますが、これは私ども会社側から聞いておるのでございますが、話は方々からございまして、そのうちに一つ信頼し得べき数字だけをつかまえてみましても、われわれが考えようとしております能力――月百トンくらいのメタルの製錬可能なものを考えておるわけでございます。それはセレベスの鉱石で、日本の計画する以上のものが、アメリカの貿易商社を通じまして話が進行いたしておるわけであります。さような次第であります。鉱石輸入につきましては、製錬の設備をつくることについての業者の危險が相当ございますので、その危險に対する政府側として何らかの助成の措置が必要と相なろうかと考えますが、原鉱石の手当については、さしあたり不安を感じていないという事情にあるわけであります。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 きようは時間がないので、政府委員がそういうふうにがたがた焦点を逸した答弁をされると、安本長官も待つておるのであつて非常に迷惑する。どうかずばりと焦点だけをお答え願いたい。私が聞いておるのは、先ほど申し上げましたように、マツトについてはどことどこに手当をしておる。鉱石についてはどことどこに手当をしておる。そういう明確な一覧表を口でずばりと言いなさい。それを言つておる。製錬をどうするとかなんとかということは、この次に私が聞くことであつて、そんなことを今答える必要はない。
  138. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの御質問ごもつともであります。表をつくつて差上げることにいたします。さよう御了承を願います。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私はあなたがつくるであろう表もすでに持つておる。それは私はある所から手に入れた。一月の半ばごろ通産省でできた表です。ところがこの表を、実際これを担当している商社について調べてみた。そうしたら、これはまだ確実な表ではない。話合いを進めておるという程度の情報にすぎない。実際入つて来る可能性のあるものというのは、マツトの四百トン以上を出ない。そうすると、これは相当重大な問題になつて来ます。大臣に伺いますが、一体ニツケルの値段は、昨年の二月の末と現在ではどれくらい開いておりますか。
  140. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今約二百七十万円になつております。昨年の六月には三十四万円ぐらいかと思います。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 朝鮮事変勃発前と現在と比べてみると、十倍以上に上つておる。稀金属の中で一番値段が上つているのはニツケルです。こういうふうに上つているというのは、思惑が相当ある。これは結局ニツケルが少いというところから来ているんだろうと思う。今政府委員がお答えになりましたが、月産五十トンもできておるというなら、こんなに上りはしません。通産省で一月の十八日につくつた文書に何と書いてあるか。金属ニツケル供給状況と書いてあつて、国内生産は第四表のごとく月産七、八トンのみで、原料ストツクも二、三箇月分のみであると書いてある。私は念のために言つておきますが、これは通産省の役人から手に入れたのじやない。通産省の役人をしかつてはいけません。私は別のところから手に入れた。こういうふうに、あなたの言うことと、通産省でつくつた書類と違うじやないか。これほど違うから、三百万円に上つているんですよ。政府委員先ほどの返事を大臣はどうお考えになりますか。
  142. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 はなはだ調査粗漏で申訳ありませんが、よく調べましてからお答え申し上げます。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 委員会へ出て来るときは、もう少し正確な誠意ある答弁をしていただきたいと思います。  それでは次に伺いますが、ニツケルは御存じのように非常に国際的な投機の対象になつているものであります。ただいまいろいろ御説明がありましたように、ともかく国内の生産を考えてみても、輸入の手当を考えてみても、私らの計算では、少くとも五百トンから八百トンくらい不足なんです。この不足をどういうふうに手当をするか、その一つとして恒久的に考えるのは製錬の問題であります。ところがニツケルという商品は、先ほど大臣が非常に注意深く申されましたように、国際的な独占商品になりつつある。そのために日本が製錬設備を持つてみても、こういう危機状態が去つた場合には、どかんとやられて会社がつぶれなくちやならぬ。これに対して特定金属製錬助成措置法という案をあなた方の方でおつくりになるために、鋭意研究を進められておることに対しては、私は敬意を表しておる。それで鉱石やあるいはマツトの輸入を前提として、国内の自給態勢をどういうふうに強化して行くかということについて、あなたの方針及び政策について伺いたいと思います。
  144. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先刻申し上げましたように、国内ででき得るだけつくりまして、そうして一部はやはり純ニツケルの輸入もするように努力したいと思います。今案をつくりつつあると申しましたが、これは急速につくらないと間に合わぬと思いますので、この点についても努力をいたすつもりであります。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 世界が臨戰態勢になつて、特に最惡の事態をわれわれが想定するときには、どうしても国内自給度の向上ということを考えないと、安心して寢られません。そこで戰前はともかく千八百トンも能力があつて日本でもかなりの自給能力を持つておつたわけです。そういうふうな態勢に徐々にわれわれが接近させて行くということは、これはわれわれ政治をあずかる者の当然の責任であると思うのであります。ところが御存じのように、現在の設備は非常に老朽しておつて、すぐに役に立たない。少くとも国内の自給に近づけるために、それではどの工場をどの程度補修したら、一応の目途に達するか、そういう具体的な計画がすでにあると思うのです。この段階へ来たらなくてはいかぬと思います。その具体的な計画を教えていただきたいと思う。
  146. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 まだ具体的の法案はできていないので、はなはだ恐縮でありますが、これから急いでつくろうと思います。
  147. 橘直治

    ○橘委員長代理 中曽根君に申し上げますが、他に質疑者も多いことでありますから、通産省に対する御質疑は適当に終結していただきたいと思います。
  148. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 適当に終結いたしますが、しかしこれから法案をつくつて考えるという状態では、これはやめるわけには行かない。私はこれはもう少し通産省の方で手当ができていると思つていた。聞くところによると、閣議では、吉田さんはあなたを見ると、輸入はどうか、輸入はどうかといつも聞くそうです。そういうことをワン・マンから聞かれている限り、これについてはあなたも手当をしているのだと私は想像しておつた。しかし手当をしていないところを見ると、よほどあなたは心臓の強い方だと思つて敬意を表する。時間がありませんから結論を急いでお尋ねいたしますが、ともかく現在の老朽した設備を補修して一人前に仕立て上げなくてはいかぬ。そのためにはまず第一に資金が必要である。第二番目には、鉱石の手当を確実にしてやるということが必要である。鉱石の手当がなくて、これから相談をやらなくちやならぬというのならば、会社としてもそろばんがとれません。第三番目に、国際的な変動が来た場合に、一たまりもなく荒されてしまうようでは、会社としてもまたこれはできないと思う。そういう点についてどういう配慮をしてこれから政策をとつて行かれるつもりであるか、この三点を詳細に御説明を願いたい。法案ができていなければ、大臣のこれからやらんとする方途をひとつ聞かしていただきたい。
  149. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 第一に鉱石の確保でありますが、私は常に鉱石の輸入は、ある期間を定めて、いわゆる年度契約をやるというようなものにいたしませんと、鉱石を買つて、その量がなくなつてからまた再び商談を始めるということは、非常に不安のように思いますので、何といたしましても、私はかかる鉱石のごときは、毎年いります量のあるパーセントは、年度契約にして、但し価格はそのときの状態による、こういうことにしたいと思います。それで今お話いたしますように、いります量の確保を各地においてしたいと思います。一箇所のみでやりますと、また来なくなる不安もありますので、各方面に手当をして行きたいと考えております。  それから現在の設備が老朽である、急激に使えないというものには、資金の融通をして行かなければなりません。また法案のいかんによつては、あるいは補助ということも考えなければならぬと思います。  それから最後のお話の、世界情勢がかわつて来たとき、これに対しては、国家が何らかの手で補償してやるということを考えたいと思つて、今法案をつくりつつあります。
  150. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その法案をつくるに際して、一番根本的な問題にからまつて来るのは通産省と大蔵省の話合いにあると思う。つまり金の関係ですが、この金の関係について、あなたはどういうような話合いを大蔵大臣とおやりになりましたか。大蔵大臣はどういう御見解をあなたにお述べになりましたか、お尋ねいたします。
  151. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私はニツケルの製錬をぜひやりたいということを概括的に話しております。金が幾らいるかということ、また工場を補修する費用が幾らということを考えまして、そしてこの金額をきめましてから、これはぜひ国家的に必要なものであるから、この方向に沿うて協力してくれるようにということを大蔵大臣に話しておきました。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの横尾通産大臣言葉を信用いたしまして、私はこれで質問を終りますが、ただ特に最後に申し上げておきますけれども、このニツケルに表現された輸入の問題というものは、日本国内の輸入問題の典型的な形であります。従つてただいまのような政府の施策のありぶりから見ると、日本の輸入政策自体がこういう状態にあるのではないかということを私は憂えるのであります。どうか私の心配が杞憂にすぎなかつたということに、またあなたが私に、大蔵大臣がこうやると言われたことを、必ず実現するように希望いたしまして、私の質問を一応終ります。
  153. 橘直治

    ○橘委員長代理 小平忠君。
  154. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は肥料問題に関しまして横尾通産大臣にお伺いいたします。  まず最初に過燐酸石灰は、現在配給統制がはずれておりまして、価格は、その原料である燐鉱石に補給金がつけられておるにもかかわらず、十貫当り三百七、八十円というようなことで、適正価格といわれております三百五十円よりも上まわつておる。さらに一昨年末のマル公から見ると、七割アツプという現状である。政府は二十六年から補給金を廃止するということから、非常に値上りを予想して買いあさるといいますか、非常に買いだめをしておるということが、相当具体的に現われておるのでありますが、大臣は一体買いだめなどをしておるその数字をどの程度までおつかみになつておるか、まずそれをお伺いしたい。
  155. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 買いだめの数量は私はまだ存じていないのであります。
  156. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それはまことに遺憾だと思うわけであります。なぜなれば肥料の生産面を担当されておる通産大臣として――これは非常に買いだめをしておるために、農家がほしくても手が出ないということで非常に困つておる。今春のまきつけを控えて春肥の配給をしなければならぬので、これは非常に重要視されておるのですが、それを大臣はお知りでないならば、ただちにそれの実態を調査して、私は善処していただきたい、こう思うのです。しからば現在価格問題についても、現在輸入価格はトン当りCIF価格で十五ドルというようなことになつておりますので、そういうことにおいて補給金がつけられておりますが、実際に最近の輸入価格はトン当り二十五ドルから二十八ドルというように、約二倍もはね上つておるという現状であります。そういうようなことから政府は二十六年度補給金を一応廃止いたしておりますが、最近の燐鉱石の輸入状態から見て、補給金を二十六年度はつけなければならないじやないか、こういうことを耳にするのでありますが、それは事実かどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  157. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 燐鉱石の値段が高くなること、それから補給金につきましては、実は本年度内においても約十億ばかりのものを増し、また二十六年度においては補給金をつけたいと思つて研究中であります。
  158. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま大臣答弁で、燐鉱石の補給金をつけたいということで努力中である、考慮中であるということでありますが、しからばその際どのぐらいの輸入を計画されるのか、私は最低百万トンぐらいはどうしても必要でないか、こう考えるのでありますが、大体今計画されておる二十六年度の数量と補給金の額について、今考えておられる点でけつこうでありますが、お聞かせ願いたいと思います。
  159. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 われわれもお話通り、約百万トン前後を輸入したいと思つて今交渉中であります。補給金の問題は先刻お話いたしましたように研究中であります。
  160. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そこで今大臣は非常に重要な発言をされたわけでありますが、二十六年度に補給金をつけたい、これはすでに二十六年度の予算案が提出されまして、ただいまここで審議をされ、大体この申合せでは二十六日に討論を打切つて採決に入りたいという段階にもかかわらず、二十六年に補給金をつけたいというからには、これは考慮中では私は重大な問題だと思うわけであります。もちろん補正予算という手もありましようが、補正予算を通過せしめるために、国会の召集をただちにやるわけでもないし、私は今緊急問題としてこれはただちに措置をしなければならない問題なのでありますから、その際に二十六年度の予算に、補給金をつける場合にはどういう方法でやられるのか、その点について承つておきたいと思うのであります。
  161. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今の補給金の問題については、すべて研究をしておるのでございます。さよう御了承願います。
  162. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣研究中とつつぱねておるのでありますが、すでにこの問題は、ただいまお見えになつた周東安本長官も、二十六年度燐鉱石に対するところの補給金はつけなければならない、つけるべきであるというように意見の一致を見たと私は聞いておるのであります。そういう観点で、この過燐酸石灰の原料である燐鉱石の問題については、昨今始まつた問題ではなく、すでに昨年末からこの問題は相当具体化しておる問題である。しかるに今日になつてもまだ研究中であつて、二十六年度につけるかつけないかわからない、こういうことでははなはだ私は遺憾にたえない。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 そういつた問題から値上りを予想して買いあさりをするというようなことが、非常に大きな支障を来しておるのでありますからして、政府はすべからくすみやかに、この補給金はつけるならつけるということを明確にいたしていただかなければならぬ。それから補給金をつける場合にはどういう方法でやるかという問題についても、私は具体的に明示願いたいと思うのでありますが、研究中ということでありますから、これ以上追究申しませんが、しからば現在値上りを予想し、相当の買いあさりをしておるということや、あるいはすでにマル公から七割アップという値上りをしておる。さらに北海道のごときは津軽海峡を渡つて行くという関係から、一割高の八割アップという現状です。そういうようなことからいたしまして、この値上りとさらに買いあさりをしておるということに対しまして、この肥料の円滑な配給なりあるいは価格の面においても、政府は適切なる処置を講ずべきであると考えるのでありますが、現在これに対する政府考え方、いかなる方策をもつてこの不都合な事態を善処されるのか、この点について明確な所見を承りたいのであります。
  163. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 事情を調査いたしまして、農林省と打合せをして善処したいと思います。
  164. 周東英雄

    ○周東国務大臣 肥料の問題は最も大事なものでありまして、農業生産に及ぼす影響が大でありますから、これは御趣旨に沿うように積極的に考慮をして研究いたしております。ただ今日の事態からいたしまして、どういうふうになつて行くかということはわかりません。もう少し推移を見て来年度において善処する意味において今研究いたしておりますから御了承を願います。
  165. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はあとの質疑者のことも考えまして、これで私の通産大臣に対する質問を打切りたいと思いますが、問題になつております過燐酸石灰の原料である燐鉱石の輸入問題について、本委員会を通じて予算案に計上されていない補給金を二十六年度はつけるということを、ここで言明願つたことは、私は肥料を直接使うところの農家にとつて、まことに明るい光明を與えたものであると思うのであります。これは私はもつとはつきり申しますならば、今日の事態が惹起してから、そういう方策をとられる前にこの方針を明らかにして、二十六年度の予算案に提示されたならば、それはまつたく現内閣の万全なる策と私は申し上げてよいと思います。しかしこの点については、いろいろな事情のあつたことも私はわかるのでありますから、万やむを得ぬと思いますが、ただいまの政府方針に基きまして、すみやかに二十六年度の補給金は――われわれは年来の主張としては、すみやかに補給金制度を廃止したいというのがわれわれの主張でありますが、しかし国際情勢の推移、現情から見て、特に肥料のごときものは、補給金をつけることもやむを得ぬだろうという見解を持つておるのでありますから、その意味からして、私はただいまの政府当局の言を信用し、すみやかにこの肥料行政について万遺憾なきことを、ただいま周東安本長官もお見えになつておりますから、周東安本長官にもお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  166. 黒田寿男

    ○黒田委員 関達して……。
  167. 小坂善太郎

    小坂委員長 黒田寿男君の関連質問を許可いたします。
  168. 黒田寿男

    ○黒田委員 通産大臣と安本長官にお尋ねいたします。ただいま小平君の御質問に対する通産大臣の御答弁で、燐鉱石に対する価格調整費を出すかもわからないというような意味の御答弁があつたようでありますが、従来政府は価格調整費というものをドツジ氏の言われる竹馬の片足といたまして廃止するという方針で来られ、この二十六年度の予算につきましても価格調整費につきましてはこれを逐次整理されまして、二十六年三月末においては輸入食糧のほか燐鉱石及び銑鉄を残すだけになつた、そのうち燐鉱石と銑鉄はことしの四月から廃止せられるので、二十六年度分は輸入食糧に関するもののみが残ることになつておる、こういうように予算の説明書にも政府方針が現われておるのであります。最近去る十九日に経済閣僚懇談会をお開きになりまして、いろいろ物価問題、統制問題等が議題になつたようでありまして、その中で輸出入価格の高騰に基く肥料、原材料の値上りの影響を最小限度に押えるために、近い将来補給金政策を復活する必要があるかどうか、     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 こういうことも問題になつたというように私ども新聞で拝承しておりますが、承りたいと思いますことは、政府は補給金政策というものをもう一度復活されるという御意思があるのでありましようかどうでしようか。通産大臣でも安本長官でもどちらでもけつこうであります。
  169. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話通り補給金というのは、原則としてはずして行くという方針にかわりはなかつたのであります。しかし今日における国際情勢その他の変化というものは非常なものであります。むしろその変化に処して――非常に燐鉱石等が値上りがして、肥料に関する価格が暴騰するというようなことがあれば、特殊なものについて研究をするということは当然の処置でありまして、政府はこの予算案にないのを、今度やるというならかえつて変更じやないかとおつしやるのはおかしいと思う。むしろあなたの平素からの言動からすれば、この今日の激動した事情からすれば、それに適応した処置をとるのが正しいと思う。しかし今日ただいまそれではすぐに何ぼにするかということは、もう少し研究の余地を残しておるのであります。積極的に研究をしておるということを御了承願いたいと思います。
  170. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいま私は燐鉱石について問題になりましたのでお尋ねしたのですが、今の御答弁によりますと、現在のような国際情勢のもとでは、あるいは燐鉱石、鉄鉱石、銑鉄、工業用の塩あるいはカリ、塩、粘結炭というようなものについても、燐鉱石についてとつたと同じような補給金政策が復活せられる可能性があるというように見てよろしいでしようか。
  171. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私がただいま申し上げましたのは、燐鉱石についてでございまして、これについては情勢の変化に応じて処置する。また單に補給金だけの問題ではありません。すべての点について輸入促進あるいは輸出制限、使用制限というような問題について、全体を通じて研鑽をしておるのでありまして、ただいま問題になりました燐鉱石については研究をしておるのでありますが、全般的にどうするかということを、ただいまのところでは話合いを進めてはおりません。
  172. 橘直治

    ○橘委員長代理 竹山祐太郎君。
  173. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私は主として安本長官に伺いたいのであります。なお農林、大蔵両大臣も希望を申しておりますが、見えませんから、あるいは関連する分はあとに保留をいたさなければならぬかもしれません。  第一に伺いたいのは、先般政府の公表であるかどうかわかりませんが、物価統制令によつて九品目の取締りを強化するということを発表されておるようでありますが、具体的にこの事実をお述べを願いたい。
  174. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お尋ねの点は、みそ、しようゆ等日常生活物資についての新聞紙の報道であると思いますが、これにつきましては、お話通り、ただいま思惑等の関係で、売惜しみ、買占め等のことが相当行われておるようであります。従つてまずどういうふうな形に思惑が行われ、どういうふうな形に買占めと売惜しみというような事実があるかということを調査することを、物統令の規定に基いてやつておる。そういう事実があるとすれば、今日の状態のもとにおいては許すことができないことであります。生活必需物資の値上り等の問題につきましては、でき得る限り国民生活に不安を起さしめないようにするため、そういう調査をまずすることにいたしております。
  175. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 新聞の伝えるところによると、調査だけではなさそうであります。摘発をするといいますか、実行をするということまで言うておるのでありますが、單なる調査でありますかどうか、その点を確かめておきたいと思います。
  176. 周東英雄

    ○周東国務大臣 その事柄は具体的の問題であり、売惜しみ、買占めの事実があつたかということについて、調査をしておるのであります。
  177. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私がこのことを伺うゆえんは、今日現実に物価が暴騰しておる、この事実をどうするかという政府の政策の問題に触れて来る。それで一体政府の価格政策は、どうお考えになつておられるのか、物価統制令によつて押えて行くだけが価格政策であるのかどうか、その辺を伺つておきたい。
  178. 周東英雄

    ○周東国務大臣 物統令によるこの調査だけが価格に関する政策ではございません。まず第一次の手取り早いところから処置をしておる。御承知のようにみそ、しようゆの値上り等は、かなり思惑が原因しておるのであります。竹山君も御承知のように、大豆等の原料が一時いろいろな事情で輸入が遅れております。そういう関係から先品物簿ということで、かなり売惜しみをしておる事実がはつきりある。こういうことから来る事態は、戒むべきは戒めなければなりません。同時に最近における大豆の輸入が、自動許可制になつて許可されました。近く三月末までに相当入る予定を立てております。そういう時日が参りますれば、価格はある程度安定する、こう思いますが、その参る途中におきましても、そういう思惑については適当なる処置をとることが必要であります。同時に価格政策ということについてのお尋ねでありますが、この点については、いたずらに価格が上つたからすぐ統制とかいうような形で押えることがいいか惡いかということは、竹山君も御承知通りだと思います。物が少くて現実に物がないならば、価格を押えて行くということだけでは価格は安定いたしません。その押える場合において、コストが違つて来る場合には補給するということはやらなけれぱならぬ。しかし押えることが効果を収めるかということも問題です。むしろそういう場合には物をこしらえるということが先であります。数量の増加であります。増加した場合に、現在の国際情勢の反映する物の上り方、その程度のものについて、場合によつてはそのまま価格に包含されていいものと、またはずされても影響のないもの、多少値上りするものとが出て来る。一律にいろいろな措置ができないのであります。従つてそういう面につきましては、今処置を立てつつありますが、近く公表になると思います。  もう一つこの際申し上げておきたいのは、よくあなた方はいろいろ価格を統制したらというふうなことをおつしやるのでありますが、今日の事態は、かなり前の事態と違つておるのであります。統制価格のある物資にいたしましても、非常にでこぼこが多く、原料に価格が統制されて製品に統制価格がない、あるいは製品に統制価格があつて、原料にないというような事柄をまず調整することが必要であります。また同時に外国輸入の原料を主として製品に使つておるものについては、公定のしようがない。どんどん刻々にもしも変化があるとすれば、そのたびごとに原価主義で行くということは当然なことであります。こういう面も価格に合せつつ、いかなる形に持つて行くかということと並行して考えておる次第であります。
  179. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 ちよつと訂正しておきますが、私は統制論を言うた覚えはないのであります。  そこで伺いたいのは、今お話のように、それぞれの手当も考えておるということでありますが、政府がまつ先にとつたのは、国民の感じからいえば、まず価格統制令でおどかして押える。その前段に今お話なつたマル公の撤廃であるとか、いわゆる自由党の年来の主張であるところの統制撤廃の処置等は宙ぶらりんになつておる。その処置が宙ぶらりんになつておるから思惑が起るのであつて、必ずしもこれは惡意ばかりじやない。また今通産大臣のいろいろなお話を通じてみても、要するに輸入の状況等がきわめて不明確である。これは日本情勢下やむを得ない部分もありますが、不明確だからそういう問題が起るのである。そこで一体政府のとつて行く順序をどうするお考えなのか。統制撤廃をやつて、マル公をみんななくしてしまつて行くのか、その前に価格統制令でどやしつけたということが、私には方法がわからないから伺つているので、まずその方法をひとつ伺いたい。
  180. 周東英雄

    ○周東国務大臣 えらく価格統制令でどやしつけたとかいう言葉を用いられたが、これは私は当然だと思う。去年の六月朝鮮事変が始まつたときに、綿糸、綿布が相当上つて、店頭から隠れた事実をあなたも御承知でありましよう。この際は、現実の事態としては、物があるにかかわらず、あるものは思惑でやられた。しかも取引の現状というものは実物取引ではなく、大体思惑で取引されておる。そういうことをするのは国民の敵だと思う。ああいうどさくさまぎれにこういうことをやることは、今日の日本の再建途上においては許すべからざることである。それを一応取締り、調査するということは当然のことで、綿糸の場合にあの処置に出たのと、原綿のアメリカの割当がふえたということで、それからじつとおちついて、再び店頭に出たということは、あなたも御承知のことである。もしもないものが上るなら、十一月ごろから店頭に出るはずはない。こういう面は国民の心理的な関係においても、取締りの効果だと思う。今度のみそ、しようゆも現実にそういう事実があるから、これを調査して、現に思惑、売惜しみをしておる事実があるなら、何をおいても調査するのがあたりまえだと思う。同時に順序としてはお話のように、今日不合理な統制価格の撤廃をするということは必要だと思う。しかし今日の段階においては、それをはずすということと同時に、それに並行して輸入の関係あるいは輸出制限、あるいは必要な物資についての割当による輸入については、使用制限というようなことをやる必要がある。この一貫した形において統制の問題、価格の問題を考えたい、かように思つております。非常に急いで申しましたけれども、ただいまはそれだけより申し上げる時期ではありません。
  181. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私は綿糸のやみも実は申し上げようと思つていたのですが、安本長官は綿糸のやみの取締りを成功だとお考えになつておられるのか。今の口吻をもつてするならば、あの取締りは成功したとお考えになつておられるようであるが、私らから見れば、決して成功したと思つていない。その証拠として、経済安定委員会において與党の諸君が政府を追求して、くたくにやつたことをあなたは御承知だと思う、要するにただおどかして騒ぎ立てたもんだから、大阪を初め業者はみな休んで碁を打つて遊んでいる。事実物はやみに動いておるし、価格はみなやみになつてしまつて、消費者が迷惑をしただけである。あれをもつて成功されたという前提で、今のような政府の御意見が出るとすれば、私はこつけい千万だと思う、いきなり価格統制令でおどかしてみたところで、この前の綿糸のやみ取締りと同じ結果になると思う。それでもつて決して問題は解決するのではない。私は、今長官の言われるような大前提に立つ準備といいますか、いろいろな手を打つて、後に惡いやつを取締ることに何ら反対をするのではない。実は政府はそれを助長しておるような結果になつておると思うので、この点を私は申し上げておる。長官が今のような御認識であるならば、もう一ぺんお考え直しを願いたい。  それからなぜ九品目に限定をされたのか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  182. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えします。意見の相違でありましようが、私は議論で議論をしないのであります。昨年の綿糸の問題については、事実がこれを証明しておる。あなたは消費者が迷惑して、悪いやつがもうけたとおつしやるけれども、現実に十一月から物が出て、価格が横ばい状態に、むしろ下つて来た事実をいかに見られるかということです。私は先ほど申す通り、こういうことをやつて、それによつてのみ効果があつたとは思わぬが、一つの効果はあつたと思う。同時にアメリカの原綿の追加割当が増加したという事実を私は言うておるので、ちつとも議論はいたしません。あなたが何とお考えになろうとも、その事実は事実であつて、その点から私はお答えいたします。  それから九品目に限つたのは、今日最も切実な、国民生活に必要なる日用物資であるみそ、しようゆというようなものについて、あまり思惑の事実があり、売惜しみの事実があるから、その部分を押えただけであつて、ほかにお教えを願つて、非常なあくどいものがあれば、調査しなければならぬ。同時にただいま申し上げましたようなことを並行的に今後もやつて行きたいと思います。
  183. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私もこれ以上議論はしません。そこで問題になるのは、みそ、しようゆの例をよく言われますが、みそ、しようゆの問題は、結局大豆の統制をどうするかという問題になつて来ると思いますけれども、雑穀の統制はいつから廃止されるのですか。
  184. 周東英雄

    ○周東国務大臣 雑穀の統制撤廃は三月一日からの予定であります。
  185. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それから雑穀に関連して麦の問題であります。これはむしろ農林大臣の問題とは思いますが、安本長官に方針として伺つておきたいのは、麦は強制供出の制度をとらないで、何月からはずすという方針でありますか。
  186. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところ七月以降においてはずす予定になつております。
  187. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 もう一つ伺いたいのは、麦の価格はこの間の米価と同時にきめた価格で、これを守るつもりでありますか、上げるお考えを持つておられるか。
  188. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまの情勢からいたしますと、あるいは米のパリテイの関係がかわつて来るような状態があれば、これは御承知のように生産者価格等にバツク・ペイの問題が起ると思いますが、その際に変更があります。その際にそれに関連して麦の価格がかわるということはあり得ると思います。
  189. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 米に関連して上ることはあり得る、これは当然だと思いますし、なお対米比率の問題についても検討をされるお考えがありますか。
  190. 周東英雄

    ○周東国務大臣 対米比価の問題については、これは今後の情勢の変化によりまして、また麦の食生活におけるウエートというものが、過去と今日の状態と多少違うのじやないかという点もあります。あるいは国際的に小麦というものが大きなウエートを持つて来て、それが相当量日本の食糧に影響を持つということの関係において、対米比価については愼重に研究いたしたいと思います。
  191. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 そこで大体麦の価格は上るだろうという結論になるように思いますが、そう了解をしておきたいと思います。  なおこれに関連して、前にもお話のありました燐鉱石の補給金の問題であります。これは私がおりませんでしたが、予算委員会においては、大蔵大臣は出すことに御賛成のような御意見はなかつたというように伺つておりますが、ちようど大蔵大臣もお見えになりましたから、今安本長官はそう申さなかつたが、通産大臣は燐鉱石の補給金については十分考えなければいかぬといいますか、積極的な御意見のように伺いましたが、大蔵大臣のお考えを伺いたい。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 燐鉱石の輸入補給金につきましては、最近の情勢によりまして研究しなければならない重大問題と考えております。
  193. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 この問題はタイムリーに重大な問題で、私が申し上げるまでもなく、問題は、今大臣のおいでになる前に、私が物価統制令の問題で政府質問いたしましたのも、肥料の買いだめをするといいますけれども、補給金がなくなるということが現に予算上明確でありますから、その段階におきまして、農民あるいは商人が、当然倍になる肥料を今のうちに買つておくということを、何の法律の根拠で押えられるのかと私は思うのであります。従つて倍に高くなる肥料を、当然政府がそういう処置をとるのでありますから、買いだめをすることの禁止が、物価統制令で、四百万農家あるいはそれに関連する商人を、どう取締られるのかという実際の問題は、私は不可能に近いと思う。要はそういうことの起らぬように、私が前段で申し上げたように、政府がそういう処置さえすれば、何もそういう警察力でおどかさなくても済む。要は今農民初めみんなが心配しておる燐鉱石を――私は今すぐ政府予算を出せと言うのではないのですが、新年度においてもこれは当然考えなければならぬ。これをどうお考えになつておるか。これはすぐ響いて来る問題であります。今前段で麦の価格も当然考えなければならぬということでありますが、麦の価格を考えるまでこの問題は保留されるのであるか、あるいはいつごろまで研究をされるのであるか、大蔵大臣に重ねて伺つておきたい。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 大体私の考えでは、補給金によつてどうこうするということはあまりすかないのであります。これはもう私が大蔵大臣になつてから一番の仕事は、補給金をなくすることに努力して来たのであります。しかるところ、最近の事情によりまして、燐鉱石もさることながら、運賃の高騰によりまして、かなり高くなつておるのであります。一俵三百五十円の過燐酸が、たとえば今五百円とか聞いておりますが、どれだけになつた場合に、麦の値段にどれだけ影響があるかということを考えて、燐鉱石の補給金を出したらよいか、麦の価格を補正したらよいかという大きな問題だと思うのであります。しかし幸いに今麦に対しては、もう相当手当は進んでおります。ただ春肥としての水稻への過燐酸、あるいは今年の秋の麦作に対する問題がありますので、早くきめなければなりませんが、こういう場合にすぐ補給金でまかなうのだということは、私は策が足りないのではないか、いろいろの点を考えてきめなければならぬ問題だと思います。政府といたしましては、今の現状から見まして、早急にこの問題について最後の断を下したいというので、通産、安本、大蔵と相談をいたしておる次第であります。もちろん農林省も入つております。
  195. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 大蔵大臣が補給金についてそうおつしやるのは、私は当然過ぎるほど当然だろうと思います。しかし現実の問題は、この補給金を全然お考えにならないとするならば、今のお話のように、麦の価格が、また同時に米の価格も上るのであります。この補給金がなくても、今安本長官が言われているように、麦の価格は上るのでありますが、米麦ともに主食が上るということについて、その方向をむしろ大蔵大臣は望まれるのであるか、お考えを一応伺つておきたい。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 補給金が正常なる経済におきまして喜ばしいものでないということが、竹山君も御承知通りであります。しからば補給金をやめて、麦の値を上げる、米の値を上げる、これがまたよいかというと、必ずしもそうばかりも行きません。そうすると、いわゆる補給金を出すか、補給金を出さずにおいて、麦の値を上げるか、麦の値が上つたときに消費者はどうするか、こういう問題があります。どこでこの調節をとるかということが問題だと思います。今までは補給金を出して、米価あるいは麦の値上りを防いでいた。今度はまだほかに打つ手はないかということを考えなければなりません。たとえば補給金を出さぬことにして、麦の値は上るが、消費者の方に何とか打つ手はないか、こういうふうな新しい考えもなきにしもあらずであります。こういう大きな問題をやはり政府としては十分研究した上でないと、軽々しく言うべき問題でない。補給金を出すということは、ある程度の逆転であります。そこで逆転を忍んで行くか、あるいはもう一歩発展的な考え方にするかということは、今申し上げるように、研究をいたしておる次第であります。
  197. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 この間経済閣僚懇談会のことを新聞を通じて知つたのでありますが、銑鉄の補給金をやめて、とりあえず燐鉱石の運賃の値上り分に向けるのだというようなことが報ぜられておりますが、これは事実でありますか。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 銑鉄の補給金を四月からやめるのを、三月からやめることにいたしますと、十億円ばかり出て来ますので、そういうことを言う人もあるかもわかりませんが、予算とかあるいは補給金とかいう問題は、そう片方が浮いて来たから片方に出す、こう軽軽しく考えられるものではない。全般的な経済施策、物価政策等から考えなければならぬ問題だと思います。
  199. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 その点もはつきりいたしません。そうすると、実は現にこの三月までに入つて来る燐鉱石の中でも、値上りと補給金の不足のために、どうにも荷物が入り切れない、断られておるような面もありますが、燐鉱石の現実の輸入がストツプすることを、大蔵大臣はやむを得ないとお考えになつておられますか。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 補給金の関係で燐鉱石の輸入がストツプするとは、まだ聞いておりません。燐鉱石は必要なものでございますから、入らないということになれば、適当な措置をとらなければならぬと思いますが、私はそういうことはまだ聞いておりません。
  201. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 これはよくひとつお調べを願いたいので、そういう事実が起つておるのであります。従つてあるいは通産なり安本なりがやかましく言うのでありますから、この際大蔵大臣に、農民の立場から、また肥料政策から、そのことは速急にひとつおきめ願わないと、契約した燐鉱石がとまつておることは事実であります。  それから前にもどりまして、米麦価格を上げるか、肥料補給金を出すかという問題は、これは重大な問題だと思います。今審議中の予算にしても、この問題がはつきりしなければ、ほんとうを言えば、審議をする価値はないと私は思う。もう予算実行数箇月にして、米麦価格の改訂が起るということになれば、賃金ベースの改訂は当然起ると思います。そうなると、この間運輸省の予算を組んでも、東海道電化ができなくなつているように、物価高による改定というものが当然起つて来ておるほかに、厖大なベース改訂という問題が起つて来る。そういう問題は先行きまかせでわからないのだ、愼重に研究をするのだという大蔵大臣の御答弁でありますけれども、これはやはり予算審議の前提として重大な問題でありますから、予算の担当大蔵大臣としてはお話ができないとするならば、価格政策の見地から、安本長官のお考えを一応伺つておきたいのであります。
  202. 周東英雄

    ○周東国務大臣 先ほどから、あるいはほかの機会で、大蔵大臣が申したよりに、この点はどうするかということを、はつきり今言明をおとりになりたいのが、あなたのお考えかもしれないが、私どもは今の状態において、将来の物価の上昇あるいは当然起るべきバツク・ペイの問題に関連しての米価のパリテイの変更というものが起るならば、当然それに相応する考えをもつて、それに対する研究をしております。しかし今日ただちにこれだけということを決定し得ないまだ不確定状態にあります。もう少し事の推移を見つつ善処いたしたい、かように考えております。
  203. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 これも予算に関連するから伺つておきますが、米麦価格の改訂を行わなければならぬということは、前からの御答弁で必至でありますが、そうすると現存の八百四十万石の麦の買入れ予算では不足するということも政府はお考えになつておりますが、大蔵大臣に伺いたい。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通り、食管特別会計には三十億ばかりの予備金があつたと思います。あなたは改訂になることを前提とし、相当上ることを頭に置いての質問でありますが、私は麦の値が少々動きましても、食管特別会計でまかない切れると思つております。
  205. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 結局問題の結論は、肥料の補給金にもどつて来るわけでありまして、私はそこで大蔵大臣の原則論をもう一ぺん伺つておきたい。気持としては、補給金政策はいやだということはわかりますが、ここに現実の経済問題の現われが、いくらすきだきらいだといつてみても、銑鉄にいたしましても、燐鉱石にしても、現段階において補給金政策というものを全部打切つてしまえる情勢いうものは、われわれには想像がつかない。好ましくないということは事実といたしましても、現実にはそういうことができないということは、私はまず今年の前年度予算から続いて来ておる補給金政策を――補給金を切ることだけが、いわゆる超均衡予算のいかにもりつぱなことであるという財政政策に重点を置いた予算の編成が、経済政策の面から破綻をして来ておる、これが一つの現われであると私らは信じております。この点について、あくまで補給金を打切つて、価格が上つてつてもやむを得ない、この間池田さんの放言だといわれた、物が高くなつてもしようがないのだというお考えで今後もやつて行かれるのでありますか、それを伺いたい。
  206. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がよくわかりませんが、私は先ほど申し上げたことで盡きておると思うのであります。補給金はいやですけれども研究はいたしております、しかも補給金がこの問題を解決する唯一の道ではない。価格の問題もありましよう、また消費者に対するいわゆる価格差補助金ということもあつて、いろいろなことを考えなければ、今のように何でもかんでもものが上りそうだつたらすぐ補給金にかけ込むというやり方は私は感心しない。しかし全然補給金は考えないとは言つていない。
  207. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 ちよつと触れられたが、私はそこで補給金政策を切るならば、二重価格制度をとるという問題が当然考えられなければならぬというわけでありますが、それに対する安本長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  208. 池田勇人

    池田国務大臣 ちよつと誤解があると困りますから申し上げておきますが、二重価格政策をとるということはございません。速記をお読みくださいましたら、そういうように答えていないということをはつきり申し上げておきます。
  209. 周東英雄

    ○周東国務大臣 二重価格制度をとるのかというお話でありますが、大蔵大臣の今の答弁で盡きていると思います。大蔵大臣も私もすべての価格の上昇とか補給金の問題を考えるについて、ある部分は消費者価格に吸收させることもできる、二次製品に吸收させることもできようし、一部を消費者が負担する、また一部においてはあまり上り方がひどかつたならば、それは新しい事態として研究する、こういうことを申しておることと同じであります。
  210. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 そこで前の問題にもどりますが、今論議されておるように、補給金の問題や、統制の段階のいろいろの問題が、不確定状態において物価統制令で押えつけて行くというやり方は、おそらく混乱を増すだけのことであつて、今の状態国民の立場から見ると、農民は決して物が高く売れておるのではない、いろいろの段階で中間のものがもうけておる、消費者はさらに今のような状態では必ず高い物を買わされるということで、その途中における価格政策を補強するところの格段の政策というものが、今までの御答弁を伺つてつても一向わからない、研究するということでありますが、国民生活の現状はゆつくり研究をされておつたのでは参つてしまう。ですからこの事態というものを早くきめて行かないといけないのでありますが、一体これは経済閣僚懇談会において、こういう点や統制の問題その他について、いつごろ結論をお出しになるのでありますか。
  211. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように急を要する問題でありますから、できるだけすみやかに結論を得たいと思つております。
  212. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私はなお食糧その他農林專門の質問者があとに控えておつて、農林大臣は見えませんから、私はその間に補給金及び統制問題について伺つたわけでありますから、この程度にしておきますが、どうも急所だけについて申すと、問題を繰返してくどいようでありますが、燐鉱石の補給金の問題は、これは単なる燐鉱石の問題ではないと同時に、この問題が閣僚の中において――どうもわれわれにはいろいろに結論を聞かされる、これははなはだ迷惑な話でありまして、もう少し早く経済閣僚においてこれをきめていただきませんと、いくら取締りをされようとしても取締りはできない、私は政府が原因をつくつておるということを申し上げて、私の質問を終ります。
  213. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いよいよ質疑も終末に入つて参りましたので、この際安本長官に残されておりまする重要な点について私はお伺いをしてみたいと思うのであります。  先般もこの委員会で総括質問の際に承つてつたのでありますが、今日地方財政の見地から公共事業費の問題については、国民ひとしく公共事業費の実体について重大な関心を持つております。そこでこの公共事業費の実体を伺つてみますのに、大体一般公共費は昨年よりも金額の上においては増額を見ておるのでありますが、事業量においてはむしろ減つておるという事態とあわせまして、災害復旧の問題が、日本が地理的あるいは諸種の條件から年年定期災害によつて、相当の被害をこうむるという観点で、すみやかにこの災害の復旧をする、同時に治山治水等の完全な施策を行つてこの災害を未然に防止する、いわゆる災害防止の施策をとるということは、刻下喫緊の要事でありますが、政府は昨年度四百九十五億円の災害復旧費を計上されておるにかかわらず、今年はそれを四百億円に大幅に減額された理由については、われわれまつたく納得し得ないものがあるのであります。これについて安本長官の所信を承りたいのであります。
  214. 周東英雄

    ○周東国務大臣 なるほど去年から少し災害復旧費が減つておるのはお示しの通りであります。私どもも御承知のように、できる限り国土保全維持また国土の復旧という立場から、これに関する予算の増額ということについて努めたのでありますが、現在の財政状況からいたしまして、遺憾ながら総額においてあまり多くを決定することができなかつたのであります。その上に加えまして、御承知のように種々の事情から、毎年見返り資金から出ておりました公共事業費が、二十六年度は今日のところ一応出ないようなかつこうになつております。そういう関係からいたしまして、来年度における公共事業費の扱い方については非常に愼重な考慮を拂いまして、昨年度見返り資金等で考えました災害予防の立場に立つてのダム建設とかいうような、むしろ国土保全のための予防施設、こういうものに見返り資金が相当出ておりますが、これはどこの地域におきましても継続事業になつております。これが今度見返り資金が一応なくなつて来る関係上やめるということは、効率的に非常に損失であるばかりでなく、われわれの目途とする治山治水ということに非常に影響がありますから、今度同じ目的のためにある公共事業費の中から、優先的にまず継続的な場面に使つておるのであります。そのために多少全体の公共事業費のやりくりをやらなければならぬということから、一面におきまして、事業費の方が少し減つたということであります。しかし今年から、いろいろ議論もありますが、災害復旧に関しましては、全額国庫補助をするということが一応原則的には認められておりませんので、従つて事業分量に関しては、地方が一部負担をするという立場から、そうえらい軽減になつておらぬというところにも苦心があるのであります。ここはひとつよく御了承願いたいと思います。
  215. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま周東大臣の御答弁で、了解できる点もあるのでありますが、御承知のように、公共事業費に振り向けられるところの見返資金百二十億円が打ち切られた。これは現在の災害復旧工事を全国各地でやつておりまする場合に、この見返り資金によつてつておるというところは非常に大きな打撃をこうむつておるわけです。これに対して大臣ただいまそういう面に相当手当をいたしたために、一般公共の方をふやしたというような説明もされたのでありますが、百二十億円という国の分だけの手当はされていないのでありますが、実際問題として公事業費に振り向けらるべき見返り貸金百二十億円というものが打ち切られた。これに対する措置はどのような方針で二十六年度はなさるお考えか承りたい。
  216. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところは、今申しましたように、その方の継続をすることが災害予防の最も必要な点であると思いまして、相当額、たしか六十億円ぐらいでありましたかは優先的に一応額を定め、あるいは相当額を盛つて、見返り資金でスタートした災害予防施設に応じておりまして、大体去年着手したものについての中止とか打切りというようなことはないように措置いたしております。
  217. 小平忠

    ○小平(忠)委員 しからば、ただいま大臣も触れられましたが、従来災害復旧費は、特に二十五年度は全額国庫負担となつております。この問題は例のシヤウプ勧告によりましても、災害復旧費のごときものは、全額国庫負担とすることが望ましいという現に勧告が與えられておるのであります。しかるにそういう観点であるにかかわらず、二十六年度は全額国庫負担という当然の方針を変更されて、三分の二程度の国庫負担というようなことにいたした理由は、今日地方財政が逼迫しておる現状から見て、これは非常に現実を無視したような手段じやないかと思いますが、これを本年通り全額国庫負担という方針に切りかえられることは根本的に不可能であるかどうか、この点について承りたいと思います。
  218. 周東英雄

    ○周東国務大臣 現在のところ全額国庫負担に変更することは困難であります。ただに困難であるということだけでなくて、本質的にいつて、これはやはり一部地方に負担を願う方がよろしいのではないか。もとより国家財政があり余つてふんだんにあるなら、災害復旧を国庫負担でやるのが一番いいことでしようが、これは理想であつて、できません。しからば、どれだけ額をきめましても――昨年各地方に起りましたのは、一事業一箇所十五万円以上は国庫負担ということにいたしたために非常に困られた。一つの町村全体が十五万円以上だからやつてくれとか、一郡全体が十五万円以上なら国庫負担ということになると、やはりこれは一つの府県に認めるなら、どこでも全額国庫負担でやつてもらいたいというのがあたりまえであります、そこに非常な不公平が生じますし、非常に望みたくないことですけれども地方には全額国庫負担であるということで、その災害の発生ということに対する事前事後における予防措置かともするとなおざりになりがちであります。どうせ国家が負担してくれるからというようになりかねないのであります。やはりむしろ責任を持つて、真実に復旧させるということでは、一部持つことが実際上にも正しいじやないか。こういう観点から、全額国庫負担を認めたものについては、それは一年限りということでやつております。その元へ返つただけてあります、ただ今日の状態――お話通り地方状態もまことに困つていらつしやるようでありますので、できるだけその点を救済するために、補助率についてはいずれ法案がおそらく提出されると思いますが、事案によつては、場所によつては、その県の財政町村財政考えて、全額行くものもありますし、あるいは四分の三行くものもある、平均して七五%程度に行くように考えております。
  219. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平君、たいへん失礼ですけれども、きようの質疑の目的は、この統制がはずされるということが物価関係にどう影響するか、そういうことが中心で、物価の上昇の関係とそれからことに麦の統制撤廃問題がそれにどういう関係があるかということで、特別に野党の要望、御希望をいれて質疑を継続することになつているのですから、どうぞその線をはすさないようにお願いしたいと思います。
  220. 小平忠

    ○小平(忠)委員 承知いたしました。  そこでただいま委員長の言もありますから、関連してあと一、二承りたいと思うわけであります。ただいまの工事費の問題でありますが、これは私もお伺いをしてみたいと思つてつたのでありますが、一箇所十五万円以上というこの限定によつて非常に迷惑をし、過日も上野の精養軒で全国の災害復旧関係の団体が集まつて、そこで強い決議をし、これを一箇所五万円にしていただきたい。それが相ならなければ、一町村單位十五万円にしてもらいたいという強い決議をいたして要望をいたしていることも聞いておりますが、これは実際問題として不可能であろうかどうか。仄聞するところによりますと、一箇所十五万円という鉄則をはずされて、地方によつては一町村幾つかの工事を集めて、十五万円になればよろしいのではないかという御意見も伺つておりますが、その点はいかがでありましよう。
  221. 周東英雄

    ○周東国務大臣 何か今誤解があるようでありますが、金額をどうするかという問題は、どの程度になろうと全額国庫負担になつておりません。去年は全額負担ということになつていたので、かえつて町村では一村全体を集めて十五万円になれば全額国庫負担にしてくれという意見が出ておつたのです。そうなるとどこもかしこも全額やらなければならぬということになるわけです。そこにも財政上の問題があつて、多少先ほど申したような理由で、今年は原則は全額国庫負担にならない。三分の二以上、しこうして例外的に、場所の状況によつてスライドをしてやる、こういうことででき得る限り地方の負担の軽減をはかつておる、こういうように御了承を願います。
  222. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私あと一点でこの問題はやめたいと思います。そこで実際予算が通過いたしまして、公共事業費の認証が終つて、実際に工事費を国庫から支出するという場合に、過去数十年来非常に不都合な点があるのであります。この点は東北、北海道、すなわち積雪寒冷地帶でありますが、こういうところは冬期間はまつたく工事ができない。やれば相当燃料等を使つて、そうしてコンクリートが凍らないようにというような形で、非常に工事の能率から見ましても、あるいは実際にむだな費用が費されているということは、私は非常に国家的な損失じやないかと思うわけであります。そこで積雪寒冷地におけるところの公共事業費を実際に行う場合に、強い輿論としては、会計年度を、むしろ四月から三月までというのを暦年とし、すなわち一月から十二月ということに変更願うならば、春の雪解けからすぐ工事に着工してちようどいいんだということを言うのですが、それは国家的な見地から不可能である。單に日本は全部が積雪寒冷地でもないというようなことから、それは不可能であるから、その点はわかるが、少くとも次のようなことだけは何とかやつてもらいたい、ということは、一箇年その年度で使われるところの工事費の第一・四半期に、少くとも四分の三くらい出していただいて、大体最も日の長い、暖かいときに工事を進めてしまう、そして能率の上らない、また全然工事ができない冬期間はやらない、休むというようなことにできないものかという強い要望があるのでありますが、実際公共事業費を主管され、また深くタツチをされて、その衝に当つておられる周東大臣見解を承つておきたいと思うのであります。
  223. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 従来は認証をやつておりましたのでそういうような事情がございますが、二十五年度におきましては御承知のように、災害につきましては第一・四年期において八割認証いたしております。北海道の寒冷積雪地帶については六割、二十六年度においては原則的に認証は一回にいたす予定になつておりますので、そういう点は十分考慮に入れて御趣旨に沿いたいと思います。
  224. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま河野主計局長の説明によりましで非常に納得し、またその地方といたしましては非常に喜びにたえないと思うのでありますが、ぜひそういう原則にのつとりまして、今後万遺憾なきを期していただきたいということを強く私は希望申し上げたいのであります。以上の問題はいよいよ質疑も終末に入つたので、委員長よりの言葉がありましたが、あと質問の機会がないので、重要な点でありましたから申し上げたわけでありまりますから、百八十幾つになつてす。  そこで本日特に価格問題、物価問題で安本長官においで願つておるわけでありますから、私は重要な点を一、二点承つておきたいと思うわけであります。と申しますのは、二十六年度の農産物価格問題、いわゆる米価問題、これはこの予算書案に、予算米価として二十六年度の予定米価を二月末パリテイ指数一九五を想定いたしまして、石当り五千二百九十七円に一応想定されておるわけであります。しかるに特別加算額を加え、さらに包装代等を加えて、二十六年の三等基準で石当り六千百六円という想定で、今日の国際情勢の推移なりあるいは今後朝鮮動乱の推移等を考えますときに、この六千百六円という想定米価の予定米価は、今日はまつたくとうていそういつたような価格では納まらないということを私は懸念するものであります。従いまして政府はこの想定米価を基準にして特別会計の予算というものを組まれ、またこの米価というものが国の予算の大きなポイントを持つという関係において予算を編成されておられるのでありますが、私は以上の諸点からこの石当り六千百六円という米価というものは、今日の段階においては修正改訂をすべき段階でないかと思うのでありますが、安本長官の所見いかがでありましようか。
  225. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今の予算に盛られておるのは、お話通りパリティ一九五ということを想定して入れてあります。これだんだんと先のものを考えて入れて行く、そういう処置をとつたのであります。現在のところまだ一月でありますから、百八十幾つになつております。つくりましたときは一八二くらい、将来を考えて一九五、そこに多少の開きがあります。これがあるいはどんどん上つて二〇〇になれば、当然これはバツク・ペイの問題から考えて、価格はかわつて来るということであります。そのときには必要な処置をいたさなければなりませんが、今日のところまだ一八八ということで、初めの予定に達しておりませんが、もう少し推移を見たいと考えております。
  226. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間もありませんから簡單にお伺いいたしますが、ただいまの大臣の御答弁によりまして、今後の価格の推移によつて善処をしたいというお考えであるわけでありますが、関連いたしまして、そのような価格政策を今後の推移によつてもちろん改訂しなければならぬということも考えられますが大体政府考えておりまする本年度の農産物価格政策あるいは主食の供出政策については、御承知のように米については、供出後の自由販売というような非常に安易な考え方をとつておられるわけでありますが、しからばこの価格の中に、もちろん今年はいわゆる事後割当でありますから、例の超過供出奨励金というものは含まれておりません。しかし今後の食糧の需給の推移から見まして、追加割当をするという事態が起らないとも限らないと私は思うわけであります。いかに事後割当といえども、追加割当をするというようなことが起らないとも限らないと思うのでありますが、追加割当をするというようなことが起きた場合に、追加割当に対して追加割当の獎励金を出す予定があるかどうか。その点を承つておきたいと思います。
  227. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように、二十七年産の米については事後の割当になるのであります。しかもそれは今までの行き方と違つて、生産ができた後、收穫時に達して検見をして、実際の收穫と見合つて割当をするのであり、しこうしてその当時における米の配給責任者たる政府の計画に基いてやるわけであります。そこで計画が間違つていればともかく、出来秋においてよく生産状況を見、政府の必要とする米の数量をきめて割当をするのだがら、私は二十七年産米において、追加割当等をすることはあるまいと考えております。
  228. 小坂善太郎

    小坂委員長 この際一言申し上げまするが、農林大臣はけさほどから非常に高熱を発しまして病臥中でございますそうであります。委員長といたしましては、本委員会に出席すべく、再三短時間でもよろしいからという督促をいたしておるのでありますが、本日はどうにも無理のようであります。なお政務次官以下事務当局は、全部見えておりまするが、農林大臣に御希望の方は、政務次官ではいけないでありましようか。――御都合か惡いようでありますから、明日また来てもらうように、委員長として督促したいと思います。川崎秀二君。
  229. 川崎秀二

    ○川崎委員 私は木内外為委員長に、最近の外貨の手持ち、あるいは輸出入の状況について簡單にお伺いをいたしたいと思います。私もこういう方はしろうとでありますので、ひとつあなたから、最近の状況について率直に内容を御発表願いたいと思います。  第一にこの外貨の手持ちは、昨年の十二月三十一日に五億二千万ドルということであります。しかるに最近の状況は、輸入が非常に進捗をしており、しこうして外貨の手持ちは減じておるというふうにも報ぜられておりまするが、最も最近の調査で、外貨の手持ちはどの程度になつておりましようか、数字をお示し願いたいと思います。
  230. 木内信胤

    ○木内政府委員 五億二千万ドルという数字は、昨年末でありまして、これは正確には五億一千九百万ドル、大蔵大臣からこの席でも御答弁があつたことと存じます。一月末はそれが四億八千六百万ドル、最近出ております数字は、二月十日でありますが四億七千九百万ドルでありますから、ちようど四千万ドルの減少であります。これに関連しまして実は世間に誤解があると思いますので申し上げたいと思います。しかもその誤解が一応私どもの責任の事項に関係しておるので申し上げますが、外国為替管理委員会のつくります数字というものも日本銀行から出しております。それはなるべく早く外貨の得喪の原因である輸出入の状況を世間に知らせたい目的をもつてつくつておるのでありますが、実は一月については、その数字ではたしか二千万ドルぐらい増加になつておると思つております。今申します数字は一月で三千三百万ドル減少であります。相当の開きが出てしまつておる。開きが出た原因が何であるかは、すぐにはわからないのでありますが、なぜ出るかということはおよそわかるのであります。その日本銀行から出します数字はどうしてつくるかと申しますと、大体為替銀行の報告によるのであります。輸入の物資に関しては、例の船積み書類というものが到着したときをもつて、つまり拂う原因がそこに確立しますから、拂うとして立つておる。ところが実際に外貨が減りますのは、普通ならばそれよりも約一箇月前、向うでドキユメント、船積み書類が出ますと、それを銀行に持ち込んで銀行から金をもらいますから、そのときに外貨が向うで引落されておる。それから一箇月して書類が来ますと、書類が来たときをもつてするわけです。向うで引落されたときはそれよりも早いわけであります。時期的の相違がありますから、今のように輸入が急激に進展しておるというときに、特にその差が強く出る。その他の原因もあるはずでありまして、今研究中であります。世間にそういう数字がすでに流れておりますのは、実際の外貨の状況とは相当の齟齬を来しまして、あの書類の後着というもので出す数字を、はたして世間に出すのがいいのか惡いのかということも、そこまで立ち入つて研究しております。その点多分そういう数字もごらんになつて、あるいは事実と反することと考えておられるといけませんので、御注意までに申し上げておきます。
  231. 川崎秀二

    ○川崎委員 先般大蔵大臣が二月の――今さだかには記憶いたしておりませんが、十三日ごろに、たしかここで発表されたときには、外貨の手持ち、十二月三十一日の手持ちと、それから輸出信用状または輸入信用状、拂うべきもの、とるべきものというものを、精細に発表されましたが、輸出、輸入両信用状の拂うべきもの、またとるべきものについての、一番最近の数字はありませんか。
  232. 木内信胤

    ○木内政府委員 その数字はたしか輸入信用状の残高三億八千五百万ドル、これはドル、ポンド、清算勘定、合計であります。それを申し上げてあるはずと思います。それは十二月末現在でありますが、その後一月二十日現在、これはあまり新しくありませんので、自慢にならないのですが、それで見ますと、七億二千三百万ドル、相当な増加をしておるのです。その他、それに関連しまして、これは新しい数字ではありませんが、一月三十一日に、世間には日本の外貨は非常に余つておる、非常に潤沢のように伝わりましたが、信用状の残高を見ますと、十二月末においても、すでに三億八千五百万ドルあつたのですが、それを債務と考えますと、必ずしも外貨は潤沢でないということが言えるのであります。しかしそのときにおいて、また今度は輸出になる方の信用状の受取り残高もあります。十二月末ですと、それが二億五百万ドル、その他ガリオアの援助の金が入る予定が十二月末で八千三百万ドルあつたはずであります。合計二億八千八百万ドルというものが今の三億八千五百万ドルという支拂いの方に対立する数字でこれもあわせて考えないと、ほんとうの姿は言えぬと思います。その三億八千五百万ドルが一月二十日には七億二千三百万ドルにふえたのでありますから、昨年末以来輸入急ぎ、いろいろ努力しました結果、その結果を今満喫しておる次第であります。外貨そのものも先ほど申しました通りやや減りぎみになつて来たのでありますが、信用状の残高、すなわちコミツトメントと申しますか、それは非常にふえてしまつたということも申し上げておきます。そのくらいのところが最近の数字です。
  233. 川崎秀二

    ○川崎委員 十二月三十一日に五億二千万ドルの外貨の手持ちがあつて、その場合には今おつしやつたような数字の輸出輸入の信用状の未拂いあるいは未受取りの分があるということであつたのですが、それが七億二千三百万ドルにも及んでおるようになつて来ると、大体状況は非常に変化して来ておるということを認めざるを得ない。それであなたが最近手持ち外貨は非常に減少しつつある。実質的に減少しつつあるのだということを指摘されておると思うのですが、私がこういうことをお尋ねしておるのは、輸入に関連して、これからの外貨の使用計画、それがどういうふうになつておるかということをぜひ伺いたいと思うのです。一―三月における輸入というものは非常に順調に運ぶように安本長官もここでは答弁しております。しかしどうも安本長官の答弁では信用がならないので、あなたが来られれば、数字的にそういう点がもつとわかつて来るだろうと思つて実はお伺いしておるわけです。外貨の一―三月の使用計画というか、輸入計画と関連して、どういう外貨予算というものを立つておるか、それをひとつ伺いたいと思うのです。
  234. 木内信胤

    ○木内政府委員 ただいまの質問に対しては、例の外貨予算というものはどういうふうに組まれているかということを御説明しなければならぬと思うのです。外貨予算、これは私ども関係しておりますが、外貨予算のとりまとめ役は安本でありますから、実は安本の方に御説明願う方がいいかと思いますが、特に私に言えとおつしやいますから申し上げます。  一―三月の予算というものは、五億五千二百万万ドルが最初に組んだ予算なのであります。ところが外貨予算というものは時々刻々直して行くのがやり方でありまして、何回か追加してやつているのです。その追加しました原因は、例のポンド貸金不足というものに関連して、ポンドのユーザンスと新聞にも書いてありますが、ポンドで輸入した場合四箇月間は借金をした状態において輸入が許されるということが成立しましたときに追加したといつたようなものがおもなものでありますが、何回も追加いたしまして、二月八日現在で今の五億五千二百万ドルが七億一千五百万ドルになつておるのであります。これが一―三月の予算の総額なのです。一―三月の予算というものはアナウンスメントして発表する予定でありまして、実際に金が必要なのは、ずつと先になるのが多いのであります。その結果今長期予算と呼んでおりますが、ずつと先、たとえば十月ころまでの状況をずつと見ておるというのが外貨予算の現在であります。もし現在のような外貨の收入というものに、大した変化がないとするならば、という前提のもとに今後四―六月の予算、七―九月の予算、十―十二月の予算というようなものは、一体どのくらいにまで行き得るのであろうかということは計算しております。それを大体申しますと、四―六月が二億五千万ドル、七―九年が三億一千万ドル、十―十二月が三億五千万ドルというものを目安に立つております。そう申しますと気がおつきになりますことは、一―三月は初め五億五千二百万ドルで出発したのが七億二千五百万ドルまで来た、ところが四―六月はガタ落ちになつて、二億五千万ドルに落ちるということになるのです。予算というものは尾を引いて行きますので、一―三月の予算にそれだけは予算を組んだが例の発表をしないで済むものもありますので、それをすぐ四―六月に継承する。ですから四―六月をずつと残しておいて、まあ平均に行くという関係になる。その結果こういり数字になるのでありますが、大体においてそんなことを目安に考えております。そこで但しこれだけは御承知願いたいと思うのですが、昨年は私どももこの仕事は初めてであつたために、愼重に過ぎて昨年の最初の一―三月の予算は一億三千万ドルであつた。今の七億二千五百万ドルに相当するのが一億三千万ドルであつたほど外貨状況も悪かつたのですが、きわめて内輪にスタートした、いろいろなかげんで輸入が非常に遅れてしまつたといううらみも感ぜられましたし、朝鮮事件以来一般輸出も伸張しましたし、特需もふえましたが、金は非常な勢いでふえ、輸入急ぎも非常に並行したために、十二月以降現在に至るまでは思い切つて予算を立て、今の一―三月のごとき予算は空前絶後といつてよいほど、当分の間来ない珍しく多額な予算だと思います。大体先は今のような輸入見込みであればそのように細るということであります。しかしこの予算の根拠となつております輸入見込みというものは、ただいわゆる数字のための見込みでありまして、この見込みというものは数字を寄せるための一応の目安であつて、今申しました数字にひどく膠着して必ずそうなるであろうということを強く考えておるものではない、その辺は状況に即して十分にフレキシブルにやつて行くのが予算の技術だろう、こう考えております。
  235. 川崎秀二

    ○川崎委員 他の諸君からもいろいろ質問があるようでありますし、せつかく来ていただいたときに多くの委員の方から質問があつた方がいいと思いますので、私はもう簡單にしたいと思うのですが、けさの毎日新聞によると、昨日の総理官邸での懇談の際において「木内外為委員長は現在手持ち外貨が減少しつつあるが、この際さらに輸入を促進するためにはポンド・ユーザンスと並んでドル・ユーザンスの再開を促進する必要があるとともに、約一億三千ドル」――数字はいろいろあるでしようけれども、「一億三千万ドルに上る日銀手持ちの金、貴金属を担保としたドル借款を要請すべきである」ということを提案したと伝えられておる。これは非常に重大な問題であつて、私は個人的にはこういう考え方に実は賛成をするものの一人ですが、しかし政府の政策としては、私は今までの考えから非常に発展した考え方でないかというふうに考えるのですが、こういう事実はありますか。
  236. 木内信胤

    ○木内政府委員 ただいま引用になりました毎日新聞の記事は私も見て驚いたのであります。全然誤伝であります。そういう話は、一般の輸入状況等については話をいたしましたし、幸いにして輸入がはかどつて来て、まず輸出でかせぐ程度は輸入できる、しかも少しは減る状況も見えて来たということは申しましたけれども、それがために従つてりくつとしてもつと輸入したければ、ドルのユーザンスをスタートするということはだれしも考えることでありまして、常に問題にしておることでありますから、これは珍しいことではないのであります。金塊についてどうというようなことは全然私申したこともありませんし、誤伝であります。
  237. 川崎秀二

    ○川崎委員 金塊問題は別にして、輸入促進のためには借款もしなければならないのではないかということは、今日の情勢からは考えられることだろうと思うのです。現在までに政府のとられておるような消極的な政策では、はたして一朝事態が急迫した場合において、十分なる備蓄ができるかということは、今日輸入促進に関連しての非常な重大問題です。そこで私は、金並びに貴金属を担保にしてやるということの云々は別にして、そういう積極的な政策をとるべしと、たとえば言われたところのあなたの考え方には、実は賛成しておつたのですが、それは何か口どめでもされて、この際そういうことは言つては相ならぬということであつたのだろうと私は思う。しかし、もし将来そういう事態があることが予想されるのであつて、もつと輸入を促進しなければいけないという考え方が出て来た場合、かかる提案というか、この担保の問題は別にして、考えられますか。またそういう考え方が至当であるとあなたは確信されておりますか。
  238. 木内信胤

    ○木内政府委員 どのくらいに輸入をなすべきかということ、あるいはもし輸出が非常にはかどるならば、この際外貨をため込んでおく方がよい、あるいは輸出の程度で円資金を買うがいいか、あるいは借金してもこの際円資金を買うがよいかという三つのチヨイスがあるわけであります。それについてどういう決定をするかということは私の責任外のことであります。これは政府においておきめになることである。ただ私の任務といたしまして、そういうことを政府が希望するならばできるかどうか、また希望した場合にできるように常にひとつ素地をつちかつておくということは、現実に外銀に接しております私どもの任務と思いますから、常に研究しております。実は昨年においてもすでにドルの銀行がユーザンスをくれ始めておつたのであります。いろいろな関係上、それを中止して、いわばせつかく貸してくれるものを断つた。当時外貨がたくさん余る状況にありましたので、当時は輸入するのには円資金が不足した状態でありますから、当時としては議論はありましたが、至当な決定であつたかと今からは思いますが、常にその問題は私ども研究しておりますし、その素地をつちかおうと思つております。世界情勢が緊迫いたしましたから、昨年に考えられたほど楽々とそういうパツセージがもらい得るかどうかは若干の疑問がありますが、持つて行きようによつてはもらえないものではない、常にそういうことを研究しております。
  239. 川崎秀二

    ○川崎委員 質問ではありませんが、問題はその自主的な経済方針、それから外貨政策にしても政府が積極的な政策を立てて、そうして昨年来ドイツで行つておるような、いかなる事態にも即応して経済自立というものが完全にできるような方策は、私は十分に立てらるべきであると思うのであります。従つて政府部内においても、それは最後の決定権は、あるいは大蔵大臣、安本長官等にあるでありましようけれども、積極的な輸入振興策、それに伴うところの外国為替管理委員会委員長としての十分なる措置が講ぜられておく方がよろしいと思いまして、あるいはあなたの御信念はそれ以上のものがあるかとも思いますけれども、この際御奮励を望んで私の質問を終ります。
  240. 小坂善太郎

    小坂委員長 北澤直吉君、関連質問を許可いたします。
  241. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま政府委員から、日本政府の手持ち外貨の予想外の増加についてお話があつたのでありますが、結局これに関連して外為会計の赤字が非常に増加しはせぬか。今年の一月の数字によりますと、大体二千四百五十億の赤字があつたのでありますが、ただいまのお話のように政府の手持ち外貨がふえますと、この外為の赤字が相当ふえやせぬか。そうしますと、これによつて結局また日本の通貨の膨脹ということになりまして、最近世間で非常に心配になつておりますいわゆる輸出インフレといいますか、この輸出増加に伴つて外貨がふえて、その見返りの円資金が出て、結局これが日本のインフレの促進につきまして相当の影響を持つておるという点で、われわれは外国為替特別会計の赤字について相当関心を持つておるのでありますが、今後のこの外国為替特別会計の赤字の増加の見通しにつきまして、お伺いいたします。
  242. 木内信胤

    ○木内政府委員 ただいまの御質問ですが、それはちよつと状況が今違うわけであります。私どもの会計は、外貨は非常に金持ちであるが、円は非常な貧乏人であつて非常な借金をしているので、あるいは有名であつたかと思うのであります。例の日銀ユーザンスと俗称されるものを始めまして以来、為替銀行が信用状を発行いたしますときに、私どもが日銀に信用状の金額に相当する外貨を売つてしまうのであります。売りますから従つて日銀から円をちようだいしますので、私どもの会計の赤字というものはないのです。現在私どもの会計はむしろ黒字になつて来ている、妙な関係で黒字になつたのでありますが、今後も輸出入というものが大体においてバランスして行く以上は、そうひどい借金をしなくちやならぬというケースはないことになります。
  243. 北澤直吉

    ○北澤委員 外為の方の会計はあるいは黒字になるかもしれませんが、結局その外貨の保有高が多いために日銀券が非常に膨脹している。去年の朝鮮事変の前のあれでは大体日銀券は三千百億です。それが去年の暮れには四千五百二十八億になつている。そうしますと結局日本の輸出増加に伴つて、あなたの方の会計は黒字であつても、結局そのために日銀の通貨が非常にふえる、これが結局日本のインフレに拍車をかける、この点を私は心配するのでありますが、その点をお伺いいたします。
  244. 木内信胤

    ○木内政府委員 それがインフレであるかどうか、またインフレであつた場合に、それがいいか惡いかということは、私が御答弁申し上げることでないと思います。ただ現在どういう仕組みになつておるかということは、多少複雑でありますから、御説明した方がいいかと思いまして、今の点を申したのです。私どもが日銀に売りました金額が二千何百億ということになるのでありまして、それは外貨という形において為替銀行に貸し付ける、こうなつております。そうしてその貸付になりました外貨が買えるのは、ユーザンスを、たとえば四箇月有しておれば、その四箇月のあとになつて輸入業者から円を取立てる、円を取立てた為替銀行が、取立てました円をもつて、私どもから外貨をそのときに買取る、そうすると私どもはその円をもつて日銀に売つた外貨を買いもどすという複雑なことをするのでありますが、要するに業者が四箇月後に円を支拂つたときに初めて日銀の回收になるのであります。ですからあの二千何百億というものが、インフレであるかどうか、いいか悪いかは別問題でありますが、とにかく回收さるべきものを延ばしておる制度であるということに違いないのです。ですから輸出しただけ、輸出したときはすぐに円がとれますから、そのときにすぐ回收してしまわなければいけないものなら、ユーザンス制度やるべからずであります。ところがユーザンス制度をやらなければ輸入というものは促進しないでありましようから、事実上ないと思いますが、ユーザンス制度をやりますれば、そういうふうに延ばしてやるということになる、ですから輸入というものはデフレを起す作用を持つているはずなのを、そのデフレ効果というものは、引延ばしてあとにまわすというように、単純にお考えになつて間違いないと思いますか、そういう状態になりますから、それがいいか惡いかということは、私申し上げたくないのであります。仕組みはそういうようになつております。
  245. 北澤直吉

    ○北澤委員 回收までは通貨の膨脹になるということですか。
  246. 木内信胤

    ○木内政府委員 回收すべきものを延期しておりますから、詳しく申し上げれば、膨脹を起すのは輸出でありまして、輸出のときに膨脹になつたものを輸入がそのときあつて、すぐとれば回收になるものを延ばしているこういう関係であります。
  247. 小坂善太郎

  248. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 文部大臣と法務総裁にお尋ねいたしたいと思います。今世の中の人が一番心配していますことは、戰争が起るかどうかという問題であります。ところがこの点に関する見解は非常にまちまちでありまして、それは結局一つはアメリカの態度ともう一つはソ連の態度、それに対する認識の差によるのであろうと思うのであります。  そこで法務総裁にまずお尋ねいたしたいのでありますが、ソ連としては、かつて彼らがとつた恒久革命の理論といいますか、赤色世界侵略というような構想をスターリンは捨てていないかどうか、もしそれを捨てていないとするならば、やはり日本も侵略されるという可能性があると思う。しかし恒久革命の理論を捨てて、完全に一国社会主義の理論を堅持しておれば、そのような可能性はないとも考えられる。そこに私は戰争に対する一つの目途というものが出て来ると思うのでありまするが、法務総裁はこの点について、いかにお考えになつておりますか。
  249. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私どもの入手いたしておりまする情報から判断をいたしますると、日本共産党の革命運動といものは、外国と相当の連絡のあるものである、かように考えておるわけであります。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本共産党の運動が、外国と関連がある、こうおつしやいましたが、その根源であると思われるところの、クレムリンであります、スターリンであります、このクレムリンにおける戰略というものが、恒久革命の理論をまだ持つているのか、あるいはほんとうに一国社会主義でやつて行くというのか、この点に関する法務総裁の御認識を承りたいと思います。
  251. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本におきまする共産主義者に対して、日本における運動をさしずをいたしておるということを考えますると、これは單にソ連だけの社会主義ということでなくて、もつと広い範囲の社会革命というものを考えて行動しているのではないかと推察をいたしておるのであります。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一方朝鮮に起りました朝鮮動乱も、それから日本国内における共産党の運動も、一連の脈絡を持つた運動であつて、それは世界恒久革命の一環として考えてよろしゆうございますか。
  253. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮動乱と、日本の国内におきまする共産主義の運動というものは、やはり相呼応しつつあるものと私ども考えております。
  254. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで法務総裁にお尋ねいたしますが、最近の日本共産党の活動の状況であります。徳田球一君以下九名の者が潜行して以来、たつた一人がつかまつたにすぎない。これは非常に巧妙な作戰を彼らがやつているからだろうと思うのであります。そこで私も若干の情報は知つておりまするが、共産党方面においては、地下指導部を実際につくつてつて、そこからすべての指令が出ておる、こういうことも聞いておりますが、現在日本共産党の中枢部がどにあるか。それから出て来ている指令が、どういうふうに各ブロック別に動いておるか、こういう点について、法務総裁の御認識を承りたいと思います。
  255. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の真の指導部がどこにあるかということにつきましては、情報として聞いておる程度でございます。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その情報として聞いておることを、私らにぜひ知らしていただきたいと思います。
  257. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在の指導部というもの、すなわち日本共産党の指導部というものが、日本の共産主義運動を指導しつつあるということは事実でありまするが、それ以外に何らかの組織があるのではないかという情報も入つております。しかしこれは情報として承知をいたしておる程度であります。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その情報として承知いたしておることを、私らに承知させていただきたい。
  259. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはちよつとここで申し上げない方がよろしいのではないかと考えます。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それではあとで祕密会にでもしてもらつて聞くことにしまして、われわれが聞いおる範囲では、たとえば臨時中央指導部というものが今潜望鏡のように出ておる。そのほかに、かつて地方委員会とか地区委員会、あるいは各種の細胞というものがありましたが、朝鮮動乱以来特にそのほかにいろんな機関が出て来ておる。たとえば日本を五つのブロックにわけて、軍管区司令官のような責任者まで配置されておる。その背後には徳球氏以下もぐつた地下最高指導部というものが存在しておる。そういう裏の動きが、最近の地方委員会やあるいは地区委員会、細胞の動きによつてやや看取されるということでありますが、法務総裁はその点どの程度まで御存じでございますか。
  261. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党に関する情報につきましては、これ以上ここで申し上げることはお許し願いたいと存じます。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 国会予算委員会に来て言えないということはないと思う。あなたが言つたつて、それくらいのことは世の中の人は知つておる。共産党はもちろん知つておる。そういうようにいたずらに隠す必要はないと思う。むしろ国民に実体を認識させて、なるほどそうかということを一般に知らせることが大事だと思います。
  263. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私といたしましてはこの際これ以上申し上げない方がよろしいと考えております。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば法務総裁にお尋ねいたしますが、共産党の党員数は、最近どのような増減を示しておりますか。
  265. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 団体等規正令によりまして届出をいたしておりますものは、最近におきまして非常に減退の傾向を示しつつあります。これを最近約一年間の趨勢について見ますと、二割以上減少をいたしつつあります。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二割以上減少したということは、日本の社会が安定して来て、共産主義者がいなくなつたという意味ですか。それとも、地下にもぐつて、より危險な情勢をはらみつつあるという意味でありますか。
  267. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 党員が減少しつつある、何ゆえにこれらの党員が党から離脱をいたしたかということにつきましては、いろいろな原因が想像されるのであります。最近におきまして、日本共産党の実体というものが、いろいろな機会に白日のもとに明らかになるに伴いまして、従来党を支持しておりました一部の人々が、党にそむいて離脱をいたしている、こういう者もございまするし、またただいまお述べになりましたるごとく、表面的に党との関係を絶つて、そうしていわゆる地下組織と申しまするか、共産党と表向き離れたという形で、事実上共産党の運動を継続しよう、こういう動機に出た者もある。これらが合計されまして、ただいま申し上げましたような現象を示しつつあるものと考えておるのであります。ただしかし、これらの人々の運動は、なるほど本人は非常にこれによつて共産党の活動を有力にやるつもりかもしれませんが、現在の情勢といたしましては、何ら重大なる危険をはらみつつあるものではない、かように確信をいたしておるのであります。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 共産党の最近の資金の状況はどうでありますか。昔と比べて潤沢であるか、あるいは昔から比べると非常に窮迫しておるか、資金の動きを御説明願いたいと思います。
  269. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の資金の状況につきましては、届出のありまする資金の状況も一時より非常に手元が苦しくなつておるのではないか、こういうことが想像されるような計数を示しつつあります。また情報といたしましても、職業党員に対しまする給料の不拂い、あるいは遅拂いというようなことがぼつぼつ出て参つておるような状況でございまするので、これによつても、ある程度共産党の財政状態というものが想像できるのではないかと考えておるのであります。
  270. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 共産党の街頭連絡とかその他の連絡、レポといわれておるものですが、そのレポは最近どういう様相を呈しておりますか。
  271. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の運動が漸次合法面から非合法面に移りつつあるということの結果といたしまして、当然共産党内におきまするいろいろな指令の伝達というようなものが、従来のような公然知られる形のものから、街頭連絡的なものに移りつつある、こういうことは聞いております。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 地下にもぐつた八人の共産党員を捜査するのに、一体今までどの程度の費用をかけておりますか。
  273. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この共産党員の捜査に関係いたしておりまする機関といたしましては、警察といたしまして、国家地方警察及び自治体警察がございまするし、また特審局、あるいは検察庁というような、各種の機関を動員いたしております。しかしながらこれらの機関につきましては、特にこれらの党員の逮捕そのもののための費用というようなものは計算をいたしておりません。またこれは各種の活動と相伴いながら行つておるという部分が相当にございますので、これらのうち、どれだけの部分が御質問の費用に相当するかということは、ただいままで調査をいたしたことはございません。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 共産党の非合法化を考慮中である、こういう言明がかつてありましたが、どの程度の行為まで出たら非合法化するか、その標準をひとつ示していただきたいと思います。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  275. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 すでに共産党の現在の実情というものから考えまして非合法にしていいか惡いか、理論上の問題といたしましては、相当解決がついておると考えております。ただ政府といたしましては、單なる理論上、現在の共産党の活動が非合法化に相当するものであるということ以外に、いろいろな諸般の政治情勢その他の政治的考慮という観点から、非合法化すべきかいなかということを決定すべきではないか、こういう考えのもとに考慮いたしておるような次第でございます。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、理論的にはもう非合法化してよろしい段階にある、ただそのほか政治的な考慮から、もう少し情勢を検討しておる、そういうふうに解釈してさしつかえございませんですな。
  277. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 非合法化自体がそもそも一つの政策でございますが、すでに日本共産党の行動というものをいろいろ総合いたしまして、單なる政治上の政党としての政治活動、これがすでに言論あるいは政策という域を逸脱しつつある、こういうふうに私どもは認識をいたしております。
  278. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最近地下にもぐつた八人のうちの一人が、東京都内のある病院に入院した。それを探知して――その病院の中にはお医者さんのシンパがおつたそうでありますが、そこで警察の方で衛生調査と称して顔を見にやつた。そして本人に間違いないというので、翌朝手配したところが、すぐその前の晩に脱走していなくなつたという話があります。これはほんとうでありますか。
  279. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その点につきましては、私まだ聞き及んでおりません。
  280. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは権威ある筋から私が得た情報でありますから、間違いないと思います。大橋法務総裁は手拔かりなくやつてもらいたいと思います。  それでは別の問題をお尋ねいたしますが、右翼の取締りの問題であります。反占領政策的な言動によつて、これが団体等規正令にひつかかるということでありますが、今まで終戰直後の状態からいうと、国を愛するということや、あるいはアジアの一員としてわれわれは立ち上る、この程度のことも、あるいは反占領政策的なことではないかといわれておつた。ところが客観情勢の変化から、今やそういう言葉は当然の言葉のようにいわれて来たのでありますが、一体国家主義的なこと、あるいは愛国主義的なこと、あるいはアジア主義的なこと、こういうことはどの程度のことまでいつたら、反占領政策的なことになるのでありますか、この点を明確にしていただきたいと思うのであります。
  281. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 反占領軍的な行為と申しますものは、占領軍の政策、あるいは占領軍に反抗し、反対するという意図のもとに行われました場合に、それが反占領軍的行為として処断をされるわけであります。
  282. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 愛国主義とか、あるいは国家主義であるとか、あるいはアジア主義という問題については、それは反占領政策にも関係する面が多少あるかもしれませんが、従来は極端な国家主義というようなものは追放に値しておつたり、あるいは戰争を支持するごとき言論はひつかかるということでありますが、新しい日本が立ち上つて行くということについては、日本国内の理想だけでは、とても青年を激励するわけに行かない。やはりアジアの一員として立ち上り、世界に盡すという一つの線があると思うのであります。そこでそのアジア主義というか、国家主義というか、愛国主義というか、どの程度までわれわれは現在いつてよろしいのでありますか。
  283. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは程度と申しますよりは、意図あるいは動機ということに関係のある事柄でございまして、占領軍の政策に反抗するという動機のもとに、またさような意図をもつて行われる行為につきまして、その行為の内容から見まして、さような意図が十分に外見的にも推定される、こういう場合におきましては、それは違反行為として処断をいたす、こういうことになつておるのであります。
  284. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば、占領軍に協力する動機をもつて、国家主義的なことや、愛国主義的なことや、あるいはアジア回復ということを唱えることは、決して団体等規正令その他にひつかからないと解釈してよろしゆうございますか。
  285. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本の復興とか、あるいはアジアの人々の生活を向上させるとか、あるいはアジアの諸国の独立というようなことのために、純粋に努力をする、これにつきましては、何ら占領軍の政策とは関係のない事柄であると考えます。ただしかし、過去におきまする日本の軍国主義、あるいは超国家主義的な意図、それを引続き遂行するというように認められる場合におきましては、これは必ずしもそういうわけにも参りませんが、しかしながら純粋にアジアの平和あるいは独立のために努力することは、占領軍の政策とは何等関係がない、かように了解しております。
  286. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大橋さんにあとでまた伺うことにいたしまして、文部大臣お尋ねいたします。
  287. 川島金次

    川島委員 関連して……。この機会に法務総裁に一言だけお伺いしておきたいのですが、総裁もさだめし御存じと思うのですが、去る二十一日、日本社会党東京都連が新橋駅頭において、内閣打倒、祕密外交排撃、平和確立に関する大演説会の開催を届け出た。その届出に対しまして、警視庁の方から主催者側に対しまして、遠慮してほしいとの申出がありまして、しかも結局それは遠慮してしまつた形になつておりまするけれども、その理由と根拠はどこにあるか。それからこの種の演説会を、今後わが党は各地で開催する準備中でございますけれども、この種の演説会に対して、今後どういう方針を持つておられるか。それについて一言総裁の所見を明らかにしておいていただきたいと思います。
  288. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その件につきましては、警視総監から何ら報告を聞いておりません。
  289. 川島金次

    川島委員 そういう事実があつたことは事実なのでして、そういう事柄に対して、しからば法務総裁の所見をあらためて聞かしてほしい。
  290. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 おそらく集会條例というようなものの見地から、さような措置をとつたのではないかと思いまするが、これは條例に基く一つの行政処分というようなものではなく、遠慮してほしいというような、事実上懇談の形で出たものではないかと思うのでございまして、これは私の方でも、今後もう少し事情を取調べました上で、他の機会においてお答え申し上げることをお許し願いたいと存じます。
  291. 川島金次

    川島委員 それでは総裁において、十分御調査の上、他日の機会にこの委員会でその見解を明らかにしてほしいと思います。お願いいたします。
  292. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 文部大臣お尋ねいたしますが、現在学校の先生やあるいは学生、インテリ、青年、こういう人たちが一番思い悩んでおりまする問題は、戰争と平和の問題であります。われわれ日本国民があの憲法を制定して以来、五年間の日月がたつた。その間において、非常に客観情勢の変化があつたゆえに、あの五年前に日本国民考え思想が、ある程度修正されなければならないのではないかというふうに、国民の大多数の者が疑問を持ち始めたのであります。そこで私は、あの憲法に盛られました、ことに思想に関連いたしまして、戰争と平和の問題について、文部大臣に御答弁をお願いいたしたいと思います。私はその材料といたしまして、平和問題を一番研究している平和問題懇談会、これは大臣も御所属になつておりまするが、平和問題懇談会が「三たび平和について」といつて世の中に声明をしておりますこの内容について、私は一々大臣お尋ねいたしたいと思います。私は決してこれは平和主義を攻撃するという意味ではない。またかつて戰前簑田胸喜氏一派が自由主義者を攻撃したような、ああいう意図でやるのではない。物事を解明して、不安の気持を去らしていただきたい、こういう意味大臣お尋ねするのであります。この平和問題懇話会の「三たび平和について」といつて世の中に公表した文章は、非常に胸を打つものがあります。私もこれを大分読み返してみまして、なるほどその通りだと、人間の純粋性において私は同感するところがあるのであります。しかしこの内容は、時間的なずれと申しますか、時間的な要素というものが、現在としては入つて来ていない。従つて大臣も多少のお考えがあるのではないかと思つて質問いたすのであります。  まず第一は平和問題懇談会の「三たび平和について」の声明の中に、「平和問題に対するわれわれの基本的な考え方」という條章がございます。そしてその一番初めに書いてあることは、「戰争は本来手段でありながら、もはや手段としての意味を失つたこと」こういう見出しで書いてあるが、内容は、戰争というものはあらゆる惡の中で最高の惡である、こういうふうにここに書いてあります。「言いかえれば、今や戰争はまぎれもなく、地上における最大の惡となつたのである。どのような他の惡も、戰争の惡ほど大きくはない。」とう言つておりまして、絶対無抵抗主義的な思想がこの中に盛られておるのであります。またこう書いてあります。「戰争の破壊性が恐るべく巨大なものとなり、どんなに崇高な目的も、どのような重大な理由も、戰争による犠牲を正当化できなくなつたという嚴粛な事実にいやおうなく世界の人々を直面させたのは、言うまでもなく第一には、原子爆彈、水素爆彈などのいわゆる超兵器の出現であつた。」こういうふうに書いて、絶対無抵抗主義的な思想を表明しております。これは一つの見識であります。しかしこの思想をそのまま持つて来ると、われわれがわれわれの生活協同体を守ろうとする意思や、あるいは人格の自由を守ろうとするところの意思や、そういう価値までも否定しているのではないか、私はこういうふうに解釈されるのであります。こういう自由なるわれわれの協同体を守ろうとする意思や、人格の独立性を確保しようとするわれわれの意思と、戰争の惡というものとは一体どういう関係にありますか、まず大臣お尋ねいたしたい。
  293. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えする前に、ちよつと一身上のことを申し上げておきたいのですが、私は第一の声明が出たときには、あれは願望ということでありますから、これに署名いたしましたけれども、それ以上になると、私が初め約束したような、ただの懇談ということを越えて、政治的な活動になるおそれがあるから、これ以上は自分はもうこの会にとどまることができないということを当時申して、それ以外出たことはございません。自分はそういう立場にあります。  今言われました第三の声明というものを、私は非常に多用なために十分熟読いたしておりませんが、今中曽根さんのおつしやつた趣意に対してお答えいたします。私はこれは非常にむずかしい問題だと考えております。私は元来国家というものと個人というものとは、次元を異にしているという考えを抱いております。だから独立国というものが自衛の軍隊を持つということは、何もさしつかえないばかりでなく、必要でさえもあると戰前は考えておりました。けれども日本の憲法が戰争というものを否定しましたから、日本国としては絶対平和というよりほかはないと考えておりましたが、しかし現実が、おつしやるように非常に変化をして来ている。だからこの国家というものがほんとう独立して行くということになると、私は絶対無抵抗主義というものではいけないものがある。そこに個人と国家というものとの違いがある。個人は身を殺して仁をなすということもできますけれども、国家は身を殺して仁をなすというわけには行かないから、ほんとう独立国ということになれば、軍備ということもよんどころないようなことになると考えております。ただしかし日本の憲法下においては、私は絶対軍備というものはあり得べからざるものであるというふうな考えでございます。
  294. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 人格の自由を守るという意思や、協同体の自由を守ろう、こういう意思の方が、場合によつては戰争の害惡よりも価値がある、こういうふうに解釈してさしつかえないわけでありますか。私は、天野先生はカントの権威者でありますから、そういう御見解をお持ちになるのだと想像しておりますが、そういう戰争の惡と、人格の自由を守ろうとする人間の努力、協同体の自由を守ろうとする気勢、こういうものとどちらが価値があるか。
  295. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は、国家という立場に立つと、戰争の惡と言つても、防禦戰というものはいたし方ないと思います。しかし進んで自分が戰争をするということは、これは絶対にいけないことであるけれども、国家という立場からは、自衛戰ということもよんどころない。それが結局は人格を守るということになるという考えであります。
  296. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 人格の自由を守るために、国家が自衛戰争をやることはやむを得ない、こういう解釈になるのではないのですか。国家が先にあつてそういう回答が出て来るのではなくて、自由なる協同体であるとか、あるいは人格の独立性であるとか、価値であるとか、そういうものが基本になつて、それを守るために、フレームとして国家というものがあるから、そういう国家の行う自衛戰争は正当であると判断されるのではないですか。
  297. 天野貞祐

    天野国務大臣 中曽根さんのお説を伺つておりますと、個人というものが先にあつて、個人が集まつて国家をなすというお考えではないかと思います。従つて個人の自由を守るための戰争は余儀ないものだというお考えかと思います。しかし私は、個人と国家というものは、鶏と卵のような論になりますが、国家が先で個人があととか、個人が先で国家があととかいう考えでなくて、個人すなわち国家、国家すなわち個人という立場から、この考えをいたしておるのであります。
  298. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その問題については、文部大臣の今のお話は、私を誤解しておるところがあるようでありますから、その点はあとで愛国心という問題のときにお尋ねいたします。  第二番目にお尋ねいたしたいことは、こういうことが書いてある。それは「自国または他国による武装に安全保障を託するような考え方こそ、かえつて安易な楽観論であるとわれわれは考えざるを得ないのである。」言いかえれば、これは絶対無抵抗主義が根底にあつて、安全保障というものを自国または他国の武装にたよつてはならぬという考え方であります。こういう考え方は、現在文部大臣が所属している吉田内閣が言明している考え方と違うように私は考えておるのでありますが、違うと断定してさしつかえありませんか。
  299. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういう絶対無抵抗主義というのは一つの見解であつて、もし中立ということが許されるなら、そういう考えは私もとりたいと考えておるのでございます。しかし現在のような中立が許されないと認められる時代においては、そういう考えは吉田内閣の考えとは相違しているというよりほかはないのであります。
  300. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大橋法務総裁にちよつとお尋ねいたしますが、こういう言葉が書いてあります。「思考方法が平和の問題に重大な関係を持つこと」という條章で、「端的に例をあげると、現在全面講和論者や中立論者に対してなされるさまざまの批評ないし惡罵を冷靜に検討する人は、そこにかの満洲事変以後、連盟脱退から日独伊軍事同盟を経て太平洋戰争に至る時代の思想的雰囲気を想起させるような論理や語調を容易に読みとることができるはずである」云々とあつて、そうして最後に、「第一次大戰当時、ロマン・ローランはヨーロッパ各国を襲つた精神的雰囲気を次のように述べている。攻囲の熱病がそこにはたけり狂つている。他の人人と同じように熱狂することを欲しない者は疑わしいやつとみなされる。正邪の判定に時間をかけて研究する余裕のない急迫した時代においては、すべての嫌疑者は裏切者である。」という言葉がある。私はこの言葉は非常に愼重に反省しなければならないいい言葉だと思います。それはかつての大戰前の日本の雰囲気は、まさにこういう雰囲気にあつたと思います。しかし現在大戰後の日本に、はたしてこういうような雰囲気、ここに書いておりますような日独伊軍事同盟を経て太平洋戰争に至る時代の思想的雰囲気というものが、これらの平和論者に対して浴びせかけているそのような雰囲気があるとお考えになりますか。
  301. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在におきましては、国民にはできるだけ平和を愛好すべきものであるという雰囲気が満ちておるのでありまして、さような好戰的な雰囲気というものは、今日日本の社会にまつたく見受けられないと考えております。
  302. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その次に重大な問題を承りたいと思います。それはこういう言葉であります。「具体的に「二つの世界」という問題を例にとつてみよう。「二つの世界」の対立に関して、われわれはさきにその対立の存在を率直に認めるとともに、その平和的共存を不可能とする考え方を排し、その共存の條件を積極的に研究する必要を説いた」云云とあります。そして要するに米ソあるいはスターリン、トルーマンという二つの世界は平和的共存が可能なりというように断定しているのであります。その理由といたしましては、イデオロギーとしての自由民主主義と共産主義の対立、米英を中心とする西欧国家群とソ連を中心とする共産主義国家群の対立、なかんずく最強国としての米ソの対立、これが二つの世界というふうになつておるのだけれども、これを一々具体的に検討してみれば、平和的共存は可能であるということを言つておる。ところが吉田内閣が昨年六月朝鮮動乱によつて出した外交白書なるものを見ると、平和的共存が可能であるということは考えられないという思想が明白に出ております。この二つの世界の平和的共存は可能なりや不可能なりや、これが非常に重大な情勢判断の基礎になります。私は昨日労働組合の総評議会の立会演説会に行きまして、結局われわれが考えている政策のわかれ目というものはここから来ている。そして私はある人と非常に論争して来た。労働組合の者が悩んでいるのもまたこの問題であります。はたして平和的共存が可能なりと考えるか、あるいは不可能となるであろうと考えるか、その点についてまず文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  303. 天野貞祐

    天野国務大臣 私もその点は非常にむずかしい問題だと思つております。ただわれわれの理想とすれば、将来はどうしても、類型的な共産主義でもなく、類型的な資本主義でもなく、この両者がいわゆる止揚された一つの形態が、われわれの考えている理想の形態であろうと思いますから、学者とか思想家という人たちが、この両者が共存できるんだという論をすることには、私ども理想として確かに傾聽すべきものを持つておると思います。けれども現実に処して行く上には、それは非常に困難なことだということを認めざるを得ません。しかしできることならそういう線には行きたい。しかし非常に困難なことだと今日は認めざるを得ないと思つております。
  304. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府の政策としては、共存可能なりということを前提として政策をしておるのか、あるいは共存は他日不可能になるということを前提にして政策をしておるのか、法務総裁に承りたい。
  305. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題について、政府を代表してお答えする立場に私はないと思うのでありますが、私自身の考えといたしましては、ただいま文部大臣の言われましたるごとく、共存は理想上また理論上可能ということは言い得るかもしれませんが、現実の情勢から見ますと、必ずしもそういう方向へばかり進むものとは考えられないという判断をいたしております。
  306. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 答弁が非常にあいまいですが、私は明確なお示しをいただきたい。要するに共存は可能なりと判断して政策しているか、他日不可能になるということを予想して政策しているか、その問題に対してずばりとお答え願いたい。
  307. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 中曽根君のお聞きになること自体が多少現実と離れておりはしないか。現実はそうはつきり割切れたものではないと私は考えております。
  308. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 現実は割切れていないというけれども、それはあたりまえのことであります。しかしあらゆる政治は情勢判断が基礎になつておる。その判断の基礎が一体どこにあるかということを私は知らせていただきたい。これは政治の基本です。少くとも法務総裁は、あらゆる観点から日本の治安やその他の問題を取扱つている方でありまして、そういう決断がなければ政策が打てないはずであります。その法務総裁の決断を承つておるのであります。
  309. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 法務総裁の決断といたしましては、将来いかなる方向に進みましても支障なからしめたい、かように考えております。
  310. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先ほど法務総裁は私の質問に対して、朝鮮事変や日本の共産党の状況考えると、やはり一国社会主義というものは薄くなつてつて、恒久革命的な世界革命の一環としての運動が行われておる、こう言われておる。それは私は共存不可能なりという前提のもとに政策が行われておると思うのであります。その点はいかがですか。
  311. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は共産党の動き、またそれに関連いたしまする国際共産主義者の動きというものが、現在においてさように相なつておるということを申し上げたのでありまして、将来これがいかなる形になつて行くかということは、これは今後の国際政治情勢によつて支配される部分が相当あるのではないか、かように存じております。
  312. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 簡單にお答え願いたいのです。要するに法務総裁は共存可能なりと決断してやつているのか、不可能なりと決断してやつているのか、そのわかれ目だけを知らせていただきたい。私は世界情勢見通しを言つておるのではない。政策の基準を言つておるのです。
  313. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政策の基準といたしましては、どちらにころんでも間違いないようにいたしたい、これが政策の基準でありまして、どちらか一つを予定して基準を立てるというような考えを私は持つておりません。
  314. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは法務総裁に率直に承るのでありますが、この中にこういう言葉があります。「第二に、日本が固有の軍隊を持つことには反対する。日本国が自国主体的な軍隊の組織を持つことは、明らかに憲法の永久平和主義に抵触するであろう。」云々とあつて、しかも憲法改正の問題で、日本国憲法をその永久平和主義を否定する方向に改正することは、憲法の解釈論としても許されない、こういう一つの見解があるのでありますが、この見解は正しいと思われますか、正しくないと思われますか。
  315. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法学者の方々が、現行憲法のうちにおきまして、幾つかの基本的原則なるものを取上げられまして、形式上の手続によりまして憲法改正の手続をとりましても、これらの基本原則については絶対にかえられないものである、こういう部分が憲法の中にはあるということを学説として述べておられることは事実であります。しかしながらただいま御質問の点は、戰争放棄並びに再軍備という問題だと存じますが、これは私はどの国といたしましても、自衛の権利が與えられておりまする以上は、この自衛の権利をどこどこまでも守つて国の独立を維持いたして行く。こういうことのためにいかなる事柄が必要であるかということは、常に国民みずからが判断をいたし、またその判断に従つて備えをなして行く。これは国家の独立ということがあり、また今日のごとき世界情勢ということを考え合せますると、この部分について学者の一部の方の言われるただいまのお説につきましては、賛成することができないのでございます。
  316. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 よくわかりました。  私は最後に先ほどから懸案になつております問題について承りたいと思います。それは国家と個人の関係でありますが、日本独立を失つている現在の状態でも、自衛権があるといわれております。そうすると国際法上は独立した国でなくても自衛することができる、しかもそれは権利として主張することができる、こういうことになると思うのでありますが、国際法上の人格がなくても自衛ができるというのは、その自衛によつて守られる客体はどういうようになりますか、文部大臣に承りたいと思います。
  317. 天野貞祐

    天野国務大臣 自衛によつて守られる客体は、すなわち主体であります。すなわちそれが日本であれば日本国家であります。
  318. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本国家という機構にあらずして、もつと実質的な一つの協同体的な、社会的なものではないのですか。
  319. 天野貞祐

    天野国務大臣 もちろんそうでございます。われわれの民族がその歴史と伝統とを持つてこの国土に住んでおる、そういう全体が日本国だと私は考えております。
  320. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで国家と個人という問題をもう少し御説明していただきたいと思います。確かに国家というものが主で個人が従であつてはならない、また個人が主で国家が従であれば、国家のために身を犠牲にするということはあり得ないし、最後に国家を放擲するという立場が出て参ります。そうすると国家と個人とが一体的なものでないと、論理的につじつまが合わないと思うのですが、それを文部大臣はどういうふうに表現してわれわれに説明していただけますか。
  321. 天野貞祐

    天野国務大臣 全体と個体という問題になるわけでありまして、すなわち個体が先で全体があとというものでなく、全体が先で個体があとというものでもなく、個体あつて全体あり、全体あつて個体あり、すなわち国家と個人というものが一にして二、二にして一という、そういう構造を持つておるものだというふうに説明いたしてはいかがかと思つております。
  322. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 文部大臣は平和懇談会から拔けておられるのですか、それともまだ在籍しておられるのでありますか。
  323. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は決して好んで個人のことを言うわけではありませんが、お尋ねの平和懇談会との関係は、私は第一の声明を出したときに、すでにこれでさえも私たちが初め懇談会を組織したときの約束と違うと思いましたけれども、しかしこれは願望だということであるから署名をいたしましたが、これ以上のことは自分はできないということをそのときに言いました。その後別に私は出席しませんけれども、寄り合つてやるだけのことでありますから、正式に脱会届を出すとかいうようなことはいたしておりません。
  324. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま文部大臣の御見解を承りますと、この平和懇談会の声明とあなたの御思想が大分隔たつておるように考えます。この平和懇談会の会員の中には、ほんとうに純真に平和を考えておる者もある。実際私はこれを読んでみても、この文章それ自体には非常に胸を打たれるものがある。平和を希求するという純粋な気持からは、これは非常に有益な文章であると感ずるのであります。しかし遺憾ながら時の流れというものがその要素に入つて来ておらない。従つて私はこの平和懇談会の声明とやや見解を異にするのでありますが、この懇談会は安倍能成氏以下学界のお歴々が名を連ねておる。たとえば和辻哲郎、高木八尺、獵山政道以下ずつと名前が並べてあつて天野貞祐氏も文部大臣文博として載つておるわけであります。従つて影響力が非常に大きい。現在の文部大臣はこういう思想でやつておられるのではないかと、地方の教員組合の人々は考えておられる。これは無理もない。「世界」という本が売れておるからであります。ところが実際御当人の天野さんはこれと思想が違う、そういたしますと、吉田内閣の一員として出所進退を明確にしていただく方がいいのではないかと思うのであります。従つてどもといたしましては、もし思想が違うのであれば、正式に脱会すべきだと思うのでありますが、天野先生はそういう御処置をおとりになりませんか。
  325. 天野貞祐

    天野国務大臣 この懇談会というものは入会届もなければ、脱会届も私はないと思つております。ただ人が集まつていろいろな話をするのであつて、安倍能成氏もおれば羽仁五郎氏もおるというようなわけでして、思想的にはまつたく違つた人たちが寄つておるので、これは一つ思想だと考えるのは、世間がこの懇談会の性質をよく知らないからなのであります。さまざまな人がそこにおるのであります。私は入会届も出しませんし、また脱会届も必要ないのではないかと思つております。
  326. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ところが東京平和問題懇談会として、こういうふうにずつと名前が書いてあつて、そしてその正式声明としてこういうものが出ているんですから、世の中の人は、これが天野先生思想であると考えるのはあたりまえのことなんです。これは天野貞祐個人であるならばいいのですが、「文部大臣」という名前がここに書いてある、これはゆゆしいことであります。私は天野先生のために出所進退を明確にしていただくことをお願いするのでありますが、いかがでありますか。もしあなたの御思想と違うならば、こういうように出されるということは迷惑である。自分の名前は抹消していただきたい、これが政治家としての天野先生の態度であると思いますが、いかがでございますか。
  327. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はうつかりして、そこに自分の名前が出ているということを知りませんでした。それに出ておれば、中曽根さんのおつしやる通りであつて、私は政治家というのではありませんが、一個の人間として必要なことだと思つております。そういう手続をとりたいと思つております。
  328. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大橋法務総裁に承りたいと思いますが、平和運動の中にはいろいろなものがありまして、安倍能成氏のようにほんとうに人間的立場から考えている方もあれば、あるいはクレムリンからの指令に基いて戰略的にやつているものもあります。この実体を私は知りません。しかし私が聞いている範囲では、やはり岩波グループの基礎にそういう手が差伸べてあるのではないかということもいわれております。そういうことは、懇談会が正式に声明を出す段階まで行きますと、政治的な波紋を呼んで来る。これだけの人が顔を連ねて出したものは相当な影響力を持つております。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 いい影響もありますが、惡い影響もあります。私はそういうような、いいあるいは惡い影響を世の中に出す段階になれば、このような懇談会というものも団体等規正令その他によつて、ある程度の手続をされなければならないのではないかと思うのでありますが、この程度の行動にまで出て来ているこの懇談会に対して、総裁は団体等規正令等から見て、どういうふうな御措置をおとりになりますか、御見解を承りたいと思います。
  329. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 平和問題懇談会というものは、ただいまお示しのような声明を出しており、そしてその内容もただいまの御説明によつて承知いたしたのでありますが、ことにそのうちにはただいま文部大臣がおつしやいましたように、その意に反して名前までそこに掲げてあるということになりますと、これはいろいろな点から十分に調査をいたしてみたい、かように考えております。
  330. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま大橋法務総裁の御答弁の中に、意に反して名が連ねてあると言われましたが、それが何か私がそれを欲しないのにそこに出ているというふうになりますと、平和問題懇談会に対してたいへん御迷惑になりますから、弁明させていただきたいのですが、私はついそういうことを何とも言つてやらないものですし、このごろ少しも何もしないものですから、向うでただ名前を載せたので、惡意があつて載せたのでは決してないと思つております。それからこの平和問題懇談会の性質を世間がよく存じていない。これはいろいろな人が寄つて、ただ話をし合つているので、そういう何か主義で言つておるのではありません。そういうことをちよつと弁明させていただきたいと思います。
  331. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 天野文部大臣お話がありましたから、私ももう一回ここで私の質問の趣旨を御了解していただきたいと思いますが、私は何も人間的な愛情というか、平和を希求する気持を否定する意味ではないのです。しかしそういうものが一つの政治行動に出て来ると利用される、しかも公人としての天野先生がここに名前を連ねていらつしやるから、出所進退を国家のために明確にしておいていただきたいとの念願から言つたのであります。決して人間の思想や言論を彈圧しようという趣旨で言つたのではないのでありますから、その点は両大臣におかれて十分了承していただきたいと思います。これをお願いして、終ります。
  332. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は日曜日でありますが、特に委員会を午前十時より開会いたしまして、金融債その他に関する質疑を進めることといたします。  なお廣川農林大臣は、明日出席を煩わすように要求いたしております。さらに本日出席を要求いたし、この委員会に姿を見せませんのでありましたが、松永安左ヱ門政府委員につきましても同様出席を要求してあります。  本日はこれにて散会いたします。     本日午後五時二十七分散会