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1951-02-19 第10回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十九日(月曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 上林榮吉君 理事 橘  直治君    理事 西村 久之君 理事 橋本 龍伍君    理事 川崎 秀二君 理事 川島 金次君    理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       北澤 直吉君    久野 忠治君       島村 一郎君    庄司 一郎君       苫米地英俊君    永井 英修君       南  好雄君    宮幡  靖君       井手 光治君    江花  靜君       甲木  保君    川端 佳夫君       坂田 道太君    塩田賀四郎君       鈴木 正文君    玉置  實君       中村 幸八君    松本 一郎君       井出一太郎君    長谷川四郎君       椎熊 三郎君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    平川 篤雄君       横田甚太郎君    小平  忠君       黒田 寿男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         大蔵事務次官  長沼 弘毅君         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      大月  高君         参  考  人         (日本勧業銀行         頭取)     堀  武芳君         参  考  人         (日本興業銀行         常務取締役)  中山 素平君         参  考  人         (地方銀行協会         会長)     伊藤  豊君         参  考  人         (東京銀行常務         取締役)    堀江 薫雄君         参  考  人         (日本銀行政策         委員会委員)  中山  均君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十七日  委員田中啓一君及び今井耕辞任につき、その  補欠として宮幡靖君及び竹山祐太郎君が議長の  指名委員に選任された。 同月十九日  委員田口長治郎君、北村徳太郎君、松本瀧藏君  及び川上貫一辞任につき、その補欠として苫  米地英俊君、椎熊三郎君、長谷川四郎君及び江  崎一治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員椎熊三郎君及び長谷川四郎辞任につき、  その補欠として北村徳太郎君及び松本瀧藏君が  議長指名委員に選任された。 同日  理事有田二郎君の補欠として上林榮吉君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  分科会所属員並びに分科会主査の選任に関する  件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  この際御報告申し上げることがあります。先般委員長に御一任願いました分科会の区分及び主査の選定につきまして、次の通り定めましたから御了承を願います。  第一分科皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府、法務府、大蔵省、建設省及び経済安定本部所管並びにその他の分科所管以外の事項、主査西村久之君。  第二分科、外務省、文部省、厚生省及び労働省所管主査上林榮吉君。第三分科、農林省及び通商産業省所管主査橋本龍伍君。第四分科、運輸省、郵政省及び電気通信省所管主査橘直治君。  なお分科員の配置は衆議院公報をもつてお知らせいたします。     —————————————
  3. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより、先般川崎議員から質疑があり、これに対して池田蔵相から答弁がありました金融債についての問題について、質疑を行いたいと思います。本件に関しましては、御承知通り第七国会におきまして銀行等債券発行等に関する法律国会において可決せられておりまして、昭和二十五年三月三十一日法律第四十号をもつて公布せられておるのであります。この法律に聽きまする金融債発行であり、先般の質疑の中におきましては、それぞれ与党側委員におきましては、池田蔵相答弁において足れりというような意見もあつたのであります。しかもなお本件に関しましては、すでに大蔵委員会において十分議了せられておりますことであり、しかもその結果、可決せられて法律なつている問題であり、この法律が適正に運用せられているという見解もあるのでありますけれども、なおこの際野党側委員の御意見を特に尊重いたしまして、これよりこの問題に関する質疑を行いたいと思います。質疑の形式によつてこれを行いまするが、本日ここに日本銀行政策委員会委員中山均君、日本勧業銀行頭取堀武芳君、東京銀行常務取締役堀江薫雄君、日本興業銀行常務取締役中山素平君、地方銀行協会会長伊藤豊君、この方々参考人として出席せられております。  これより質疑を行いたいと存じます。中曽根康弘君。
  4. 中曽根康弘

    中曽根委員 東銀債の問題について御質問申し上げたいと思います。大蔵大臣がまだお見えなつておりませんので、私はまず第一に東銀債発行されるに至つた経緯について、事実をこれから教えていただきたいと思います。その意味で、ここにわざわざお越しをいただきました関係銀行方々、事によれば実際その衝に当られた方にぜひお答えをお願いいたしたいと思います。この問題は非常にデリケートな問題でありまして、また監督官庁たる大蔵省のお役人の方がおられますが、どうぞ恐れないで、国家の金融政策のために、かつまた偽証にならないよう、に、お答えをお願いいたしたいと思います。  勧銀興銀の方にお尋ねいたしたいと思のでありますが、一月の二十四日ごろ、興銀資金部長さん、それから勧銀企画課長さんが大蔵省に呼ばれたか、あるいはどこかで大蔵省の方にお会いしまして、債券発行に関して何か注意のようなものを受けたことがおありでございましようか。われわれが調べた筋によりますと、興銀については割興発行を遠慮してもらいたい、これは成否がまだはつきりいたしませんが、割興利率をもう少し下げてもらいたい、こういうようなことが言われたといわれております。この点についてぜひ教えていただきたい。
  5. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは勧業銀行の方から先にお願いいたします。日本勧業銀行頭取武芳君。
  6. 堀武芳

    堀参考人 お答えいたします。ただいま御指名勧業銀行の堀でございます。ただいまの御質問についてでございますが、実はちようど私は問題になりましたときに、関西の方面に旅行中でございましたので、私その問題について帰つて来ましてから報告を受けた次第でございますので、その点御了解願いたいと思います。  二十五日に私の方と、そのほか興業銀行、なお債券発行をしております北海道拓殖銀行商工中央金庫農林中央金庫のそれぞれの事務担当方々大蔵省に呼ばれまして、私の方もその事務担当業務部の者が出ました。その席で金融債のことについていろいろと御懇談があつたようでございます。懇談ですから、いろいろの話があつたのですが、私の方の出席者が聞きましたその出席者報告を要約いたしますと、勧業銀行は、この際は短期債発行を遠慮してはどうかというような懇談があつたということを聞いております。それに対しまして、私ども銀行の者は、東京銀行短期債発行したからといつて、それに続いて自分の方の銀行債券発行をする考えは持つていない、しかしほかの銀行が続々と発行するようなことがあるとすれば、勧業銀行としても発行しなければならないことになるかもわからない、そういうふうに返事をして来ました。そういつた軽いお話があつたと聞いております。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 ありがとうございました。興業銀行の方……。
  8. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは次に興業銀行中山素平君にお願いいたします。
  9. 中山素平

    中山(素)参考人 ただいまお尋ねがございました、割引興業債券に関する問題でございますが、事実を申し上げますと、一月二十三日の日に私の方の資金部長の正宗が銀行課長から招致を受けまして、その節お話がございましたのは、ただいまの御質問のような注意とかいうような感触ではなく、東銀債発行に関連いたしまして、割興について、第一には、割興利率東銀債並に下げることができるかどうかというような問題。第三には、現在割引興業債券金融機関一般大衆と両方に売つております。従いましてこの利率の問題に関連して、一般大衆公募をやめまして、金融機関だけに限ることができるものかどうか。つまり非公募に限定することができるかどうかの問題。第二には、割引興業債券というものを、この際全廃すると申しますか、やめることができるかどうか。こういつた問題につきまして懇談がございまして、これに対しまして興業銀行としての考え方お答えしたということがございます。  この報告を受けまして、当時一般外部からの割興が全廃されるのではないかというような風説もございましたの下、私ども重役会でこの問題を取上げまして、その結果翌日の、一月の二十四日に私と資金部長銀行局長お尋ねいたしました。銀行局長にはたしてそういうような意思大蔵省側におありになるかということを伺いましたところが、大蔵省としてはまだそういう意思を決定しておらないというようなお話がございましてそこで私といたしましては、興業銀行考え方銀行局長お答えしたわけであります。  御承知のように、金融機関がその資金を自力で調達するということは当然のことでございます。従いまして、ちようど本年の一月から金融債預金部によつて引受けられるという措置がとられましたのですが、そのときにも大蔵省側から、金融債預金部引受けられる場合にも、従来通りに、たとえば興業債券についてはこれを金融機関あるいは一般大衆というものに売ると申しますか、こういつた公募努力をとどめることは困る、今まで以上の努力を払つてもらいたいというようなお話がございまして、これは当然そういうお話がなくとも、われわれ金融機関立場からはとるべき態度でございますので、こういつた問題からしましても、あるいは本年度預金部資金関係で、金融債引受が相当見込めますが、明年度におきましては、私どもいろいろ数字を当つてみましても、なかなか預金部によりまして金融債引受の多きを望むことができないというような情勢もございますので、われわれ興銀立場といたしましては、金融債公募、特に現状におきましては、割引興業債券というものが数十年の歴史を持つておりますし、消化といたしましてもかなりの額に上りますので、これをこの際やめることは不可能であるということをお答えいたしました。  第二の利率の問題でございますが、これも先ほど申し上げましたように、割引興業債券というものは、現在問題になつております東銀債とは私ども性格が違うと思うのでございます。金融機関長期資金を調達いたします場合に、五年あるいは十年、あるいはそれ以上の債券をもつて主要な資金源にするのは当然でございますが、実際の経済界実情からいたしましては、なかなかそういつた長期債券を集めにくいというような事情もございます。これは終戰後二十四年の九月までは、全部割引興業債券で私ども資金を集めておりまして、九月から初めて三年の興業債券というものが出て来たような実情でございます。それ以前におきましても、かりに五年、十年という債券を出しておりましても、それが償還の期限が来ましたときに、必ずしも五年、十年という債券がスムースに借りかえができないというような場合がございます。そういつた事情けときには、一時一年といつた短期債券でこれをつなぎまして、経済界実情が、そういつた長期債券を消化し得るといつたときに、これを借りかえるということも考えられるわけでございます。ちようど長期金融機関の場合に、短期債券一つ長期債券の補完的な作用をなして行くといつたような事情で、そのレート——現在でもそうでございますが、預金レートにもちろん基礎はございますが、これと直接関連はなく、一年ものの割引興業債券レート、それから三年もののレート、それから社債の三年もの、五年ものといつたのが、一つ系列をなしてきめられております。従いまして、ここで東銀債がかりに五分という定期預金並レートで出ましても、興業債券の場合にこれをすぐ五分に改訂するということはりくつの上でも、あるいは従来のそういつた起債條件系列の上からも、妥当でないと考えられます。現在一面に長期金融機構の問題が大きな問題になつておりますので、こういつた問題が解決するまでは、ただちに割引興業債券レートを変更することは不可能であるということをお答えいたします。二十三日、二十四旧二日にわたりまして、こういつた大蔵省側交渉した経緯がございますが、特別に割引興業債券大蔵省側から一方的に廃止しろという御注意なり御意見を伺つたことはございません。それから一月二十五日の会合は、先ほど勧銀の掘頭取がおつしやつたように、従来の債券発行銀行なり金庫は全部大蔵省に集まりまして、いろいろこの問題について御懇談したというのが事実でございます。
  10. 中曽根康弘

    中曽根委員 地方銀行代表の方にお願いいたしたいと思います。金融債発行の問題に関して、地方銀行でも発行できるようにするために、貸倒れ準備金資本に算入してよろしいというような、いざないといいますか、懇談といいますか、そういうことが大蔵省筋からあつたことがございますか。この金融債発行に関して、地方銀行側代表者は、どういう懇談なり話合いを大蔵省側からお受けになりましたか、教えていただきたいと思います。
  11. 小坂善太郎

    小坂委員長 では地方銀行代表者としまして、伊藤さんにお願いいたします。
  12. 伊藤豊

    伊藤参考人 ただいまの御質問に対しまして申し上げます。私は地方銀行協会会長でありまするが、日常東京に常任いたしておりませんで、広島銀行役員として広島におるのでありまして、この問題につきましては、大蔵省からのいかような交渉にも私は接しておりません。協会の方へ何かお話があつたかもしれませんが、私の耳にはそういうことは入つておらぬ。前後の状況から考えてみて、さような交渉はなかつたのではないかと考えられます。そのほかには知るところがございません。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 一つお尋ねいたしたいと思うのでありますが、金融債発行に関する通牒原案大蔵省がおつくりになつておつて、これを各関係金融機関担当者をお集めになつて下相談をしたことが一月二十五日ごろにあつたはずであります。その通牒原案担当者方々はみなごらんになつたのであります。その原案内容の中に、今申し上げたようなことが含まれておつたと私らは調べておるのでありますが、そういう事実がありましたか、関係銀行お方お尋ねいたします。
  14. 小坂善太郎

    小坂委員長 それではどんなか、そういうことがあつたという方がありましたら、お答えをしていただいたらいかがですか。
  15. 中山素平

    中山(素)参考人 私ども債券銀行に対しましては、先ほど堀さんなり私が申し上げましたように、一月二十五日にそういう御懇談がありましたけれども、ほかの一般銀行とはお扱いが違つておりますので、ほかの銀行関係は存じませんが、われわれ首脳部の方にまでそういう問題が提示されたということはないと思います。
  16. 小坂善太郎

    小坂委員長 中山君の今のお話に、ここに御列席の銀行の方で御異議がある方はありますか。——なければ、中曽根君これが代表的な意見であります。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 代表的な御意見といいましても、これは非常に中枢部おいでになる方で、実際その事務担当しておられるお方からまだ報告がなかつたのかもしれません。私が調べた範囲では、関係銀行から担当者代表者が御出席になりまして、その通牒原案を一応見た、そしてその原案の中に、貸倒れ準備金資本の中に入れてよろしいというような趣の言葉があつたということも調査してあるのであります。この点はかなり重要な問題であります。貸倒れ準備金資本の中に入れていいかどうかという問題は、税金の問題にも関係いたしますし、非常に重要な問題であると思いますので、これを明白にいたしたいと思います。この席に実際事務担当しておいでなつて、それにあずかつた銀行の方がおいでになりますれば、その方からひとつお答えしていただきたいと思います。もしおいでにならなければ、まことに恐縮でございますが、即刻ここへお呼び願いたいと思うのでございますが、いかでございましようか。(「その通りさつき首脳部までと言つた言葉が怪しいな」と呼ぶ者あり)企画課長調査課長が行つておるはずです。
  18. 小坂善太郎

    小坂委員長 各銀行代表者という意味で、本委員会としては代表者に来ていただいているので、個々の人に私の意見をこの委員会で聞いてみてもいかがなものでしようか。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の意見を聞いているのじやないのであります。その事実を明白にする必要がある。
  20. 小坂善太郎

    小坂委員長 事実に関してどういうことがあつたのかということは意見じやないのですか。そういう意味で言つているのであります。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の意見はこれからあとうんとあります。
  22. 小坂善太郎

    小坂委員長 あなたの意見じやないのです。その人を呼ぶとか、課長さんとか係官さんの意見を聞くのはどうかというのです。舟山銀行局長発言を求めておりますから……。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵省意見を聞いているのではないので、私は銀行の当事者の……。
  24. 小坂善太郎

    小坂委員長 今こういうことで言い争つていても進まないから、舟山銀行局長がどういうことを言うか、事情をつまびらかにしてもらつたらいいのではないかと思います。舟山銀行局長発言を許します。
  25. 舟山正吉

    舟山政府委員 今通牒の案について銀行側大蔵省から案を示したかどうかという点についてお尋ねでありますが、これは大蔵省から内示いたしたのでありますから、この点は銀行から証人を呼ぶまでもなく、私の方から説明したいと思います。この銀行課長からの通牒の案につきまして、債券発行銀行、それから多分地方銀行協会田部井常務理事も入つてつたと思いますが、大蔵省で用意いたしてあります通牒の案をお見せしたことはございます。
  26. 中曽根康弘

    中曽根委員 舟山さんにお尋ねいたしますが、その通牒の案の内容に、私が先ほど申し上げたようなことが記載されておりましたか。
  27. 舟山正吉

    舟山政府委員 貸倒れ準備金債券発行上の自己資本の計算に入れるということは入つております。
  28. 中曽根康弘

    中曽根委員 この問題は明白になりましたから、その程度にいたしておきます。  そこで大蔵大臣にぜひお伺いしたいことがあるのでございますが、大蔵大臣に御出席願えませんでしようか。
  29. 小坂善太郎

    小坂委員長 そのうち来ることになつておりますから、大蔵大臣に聞くことをはずして、ほかのことを聞いていただけませんか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは大蔵大臣の来るまで、東京銀行代表の方にどうぞお願いいたします。  東京銀行では、昨年の秋ごろから金融債発行しようといつて準備をされまして、いろいろお手当てをなさつたようでありますが、その経緯をお知らせ願いたいと思います。
  31. 堀江薫雄

    堀江参考人 ただいま御質問の、東京銀行貿易債券準備の点について、経緯を申し上げます。  先ほどの御質問は秋ごろからというお話でございましたが、私ども準備経緯はもつと古いのであります。と申しますのは、昨年の一、二月ごろから銀行等債券発行等に関する法律案国会に提出されまして、その制定の議がぼつぼつ新聞にも出て参りましたので、私ども銀行立場から申しまして、この問題は十分注目し、かつ研究しつつあつたわけであります。ところが国会で大多数により可決をせられまして、三月三十一日法律第四十号として正式に公布されましたので、私ども銀行といたしましては、さつそく研究なり予備的な準備にかかりましたわけです。そういたしまして、ちようど昨年の夏、いろいろな諸條件法律の制定するところに合致する目安もつきましたので、多少具体的準備を始め、九月に発行する予定を立てましたのでありますが、当時の状況が、必ずしも円滑に発行できそうに思われない事情にあるように思われましたので、一応九月の際はとりやめましたのですが、ある程度準備ができかかつたのであります。それ以後、去年の秋になりまして、資産再評価が実施になり、これが資本額に繰入れられるという問題も出て来まして、必ずしも東京銀行だけでなく、普通の銀行もやり得る可能性ができたというようなことで、この点について情勢ができ上つたというようなことで、昨年の十一月ごろから準備を始めましたのですが、前回の準備が多少できておりましたので、結局具体的には十二月の半ばごろに発行することに決定いたし、事務的な準備を始めたわけであります。そういたしまして、一月半ば過ぎでありますが、大蔵省に届出をいたしまして、二月十五日から三月十五日までの発行ということが、現在公募中であります。御意見通りであります。
  32. 中曽根康弘

    中曽根委員 売れ行きはどうですか。
  33. 堀江薫雄

    堀江参考人 売れ行きは、二月十五日、つい数日前からスタートいたしましたのですが、たいへん好成績のように報告が参つております。
  34. 中曽根康弘

    中曽根委員 きようは浜口さんがお見えにならないのを非常に遺憾に思いますが……。
  35. 堀江薫雄

    堀江参考人 さしつかえまして、私が代理で参りましたようなわけで…。
  36. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたは浜口さんの側近の方ですから、いろいろ浜口さんからも聞いていらつしやると思いますので、お伺いいたしたいと思います。  昨年の暮れに、大体われわれが調査したところでは、東銀と帝銀が金融債を出そうと考えて、運動というといけませんが、準備をして始めていた。ところが日本銀行の一万田総裁は、これは金融界を撹乱するから抑制したいという意向を持つておられた。そこで一万田総裁は、浜口さんと佐藤さんに対して、その抑制方を要望したということがわれわれの調査に載つておりますが、そういう事実がありましたですか。
  37. 堀江薫雄

    堀江参考人 私が浜口側近というその言葉は、はなはだ奇異に感ずるのであります。私は東京銀行役員といたしまして、特に常務取締役としまして、そういつた事務的な統轄をしているわけであります。私の立場から申しますれば、先ほど御報告ございましたように、昨年四月から研究準備を始め、夏以来具体的準備にとりかかり、そういたしまして、十二月十日前後から各事務担当者において進めることを話しておつたのであります。どういう形式で浜口額取のところへ一万田総裁からお話があつたか詳しくは存じません。
  38. 中曽根康弘

    中曽根委員 御存じなければやむを得ません。これから池田さんや長沼さんに対する質問があるので、どうぞ呼んでください。
  39. 小坂善太郎

    小坂委員長 池大蔵大臣は、現在閣僚懇談会をやつておりますので、それが済み次第すぐ来るように言つております。
  40. 中曽根康弘

    中曽根委員 長沼さんは。
  41. 小坂善太郎

    小坂委員長 今呼んでいます。
  42. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは時間の都合上ちよつと飛びますが、政策委員の方にお尋ねいたします。一月十七日に、政策委員会でありましたか、あるいは銀行協会理事会でありましたか、多分銀行協会理事会だと思いますが、岸さんがおいでなつて、大蔵省は大体東銀債は認めたが、東銀以外は出さないという了解をした、勧奨としてそういうことをやつた。それから政策委員会法律改正の申入れを政府にすることになつている、しかし大蔵大臣改正意思はないだろう、こういう事実があつたとわれわれ調査をしておりまするが、こういう事実はございますか。特に政策委員会としては、金融債発行に対しては反対の態度をとつておられ、その反対の旨を大蔵大臣にお申入れになつたはずでありますが、その事実の有無をぜひお知らせ願いたい。
  43. 中山均

    中山(均)参考人 初めのお尋ねの、理事会に岸さんがどの程度に言いましたかにつきましては、その理事会に私は出席しておりません。ただ政策委員の方で、銀行協会には岸さんを通じて、金融債発行については再検討をいたしたいから、しばらくお見合せ願えば非常に幸いだ、こういうような意味のお伝えがあつたはずであります。政策委員会といたしましては、一月二十六日にいろいろ協議をいたしまして、銀行金融債発行に関する件をおもに取上げまして、一般銀行金融債発行については、長期資金調達に関連し、金融機構を今後どうすべきか、今日のような機構ではたしてよいかということにつきまして疑問を持つている、それを再検討いたしたいから、その間は従来発行しておつた銀行債券はこれは当然よろしいが、新しく発行するものについては、しばらく見合してくれぬかということを、大蔵省にも委員を通じて申し入れましたし、銀行協会の方へも政策委員会意思を伝えて、そうしてお待ちを願いたいということを申し入れたはずだと思います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根委員 順序がございますから、大蔵大臣長沼次官の御出席を待ちたいと思いますから……。
  45. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは暫時休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午前十一時三十九分開議
  46. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を続行いたします。中曽根康弘君。
  47. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵大臣金融債の問題でお尋ねいたしますが、一月の十日ころ、池田大蔵大臣がたしか大阪へいらつしやる前だつたと思いますが、一万田日銀総裁が大蔵大臣に面会を求められまして、東銀金融債発行はしばらく待つてもらいたい、自分がアメリカから帰つて来るまで待つてもらいたい、こういうような要請をされたとわれわれ調べておりまするが、そういう事実が、ございましたでしようか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 一万田さんがアメリカへ立ちます前に私と会談いたしまして、そのときに、一年の金融債発行につきまして、別に百反対の意見は申し述べないが、いろいろな問題があるから、しばらく待つた方がいいと思いますが、どうか、そういうような話がありましたが、いや何もそう君が帰るとか帰らないとかいう問題じやない、これは発行の金額、條件その他によつて考えればいい問題である、こう私は言つておきました。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 それで池田さんは大阪へ行かれまして、その留守にまた、今度は一万田日銀総裁は次官に会つた事実があるのですが、次官にどうしても聞きたいのです。
  50. 小坂善太郎

    小坂委員長 長沼次官はあとで来ますから、そのとき聞きましよう。
  51. 中曽根康弘

    中曽根委員 この問題は池田さんは監督の責任者でありますけれども池田さんのお考えは、たんす預金を引出すという考えから、非常に好意的にこれをおとりはからいになつたと私は思います。私は池田さんには大した問題はないと思うのですが、やはり一番衝に当られた長沼さんから、いろいろこまかい話を聞きたいと思います。いろいろ議論や意見は私はあとで皆様からお聞きしたいと思いますが、一応事実だけを午前中明らかにして、午後議論でもするように持つて行きたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    小坂委員長 長沼君は政府委員なつておらないものですから、きのう御要求がなかつたので、とりあえず呼ぶことにしております。必ず来ますから、あなたのお話をどんどん続けていただいたらどうですか。
  53. 中曽根康弘

    中曽根委員 この前川崎委員から、この問題については大蔵大臣に御質問しておるのです。それが非常にぼやけた話になつている。それをもう少し克明に明らかにしまして、その事実に基いて、これは大きな金融政策の基本に関する問題が出て来ると思いますので……。
  54. 小坂善太郎

    小坂委員長 金融政策の基本に関する問題だから、個人がどう言つた、こう言つたということよりも、もつと大きく問題を取上げてこの委員会で展開したらいかがですか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 それは午後やります。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては私が全責任を負います。次官と一万田君がどういう話をしようとも、問題は私がきめるのですから、私に御質問願いたいと思います。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 もちろん最後には、大蔵大臣が全部総合して監督しておられる立場であるから、大蔵大臣お尋ねしたいと思うのですが、やはり直接担当された方々にも聞いておく必要があると思いまして、今まで現に銀行側からもそういうことをお聞きしておるのですから、長沼君からぜひ承りたいと思います。
  58. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうも一万田さんは日本にいませんし、長沼さんはここにいない。いない人同士の話はできない。長沼君はかりにどう言つても、相手の一万田さんから聞かなければ真偽が確かでないということになると、話は展開しないですよ。ですから、必ず来ますから、来たときに聞くことにしてやつてください。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 一万田さんがここにいないのは、吉田内閣にとつては非常に好運であつて、もしおれば、内閣は崩壊しております。     〔「つまらぬことを言うな」「休憩」と呼び、その他発言する者あり〕
  60. 小坂善太郎

    小坂委員長 他にも御質疑の方があると思うのです。ですから、中曽根君の御質疑はここで休憩することにして、ほかの方から御質疑をされたらどうです。政策論をほかの方からどんどん展開していただいて、参考人に特に来ていただいておりますので、貴重な時間でありますから、どうぞ皆さんから隔意のない御意見を承りたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は間違つた発言をしたくないのであります。もし臆測や何かで発言して関係者に御迷惑をおかけするということは、私としても恐れ多いことですから、一応関係者から御意見を聞いて、大蔵省がどういう立場であつたか、地方銀行がどういう立場であつたか……。
  62. 小坂善太郎

    小坂委員長 それなら申し上げたいのですが、なぜきのう一緒に長沼次官を要求してくださらなかつたのですか。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は要求しています。事務担当の方には……。
  64. 小坂善太郎

    小坂委員長 私が伺つているのは、民主党の理事川崎秀二君から、これこれの人を要求すると言われて、その通りにいたしておるのであります。これは御承知のように、委員会に諮つていたさなければできないことです。長沼君は政府委員ならよいわけですが、参考人として呼ぶわけですから、同じ手続がいるわけです。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 銀行課長も、政府委員でないので、説明員になつている。長沼さんも大蔵省のお役人で、説明員よりは格が上だと思う。それで……。
  66. 小坂善太郎

    小坂委員長 呼んでいますから来ますけれども、次官ですから、いろいろ時間の繰合せもあるわけです。どうぞ御了承願います。どうですか、ほかの方で御質疑がある方やつていただけませんか。林百郎君どうですか。(笑声)
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは時間を尊重しまして、中山政策委員お尋ねしたいと思うのですが、政策委員会としては一定の意見を持たれまして大蔵大臣に申入れをされ、銀行協会にも意思表示をなさいましたが、そういう結論に到遠するのには、どういう考え方でその結論に到達したか。それで大蔵大臣にお会いになつて直接そのことをまた申し上げたのであるか、その二つの点について伺いたい。
  68. 中山均

    中山(均)参考人 政策委員会といたしましては、あの法律によります金融債を出しますことは、現状の金融機関の状態では、非常にそこに資金の偏在があるという観点から、何とか一般の普通の銀行がこぞつてできるような方法ができぬものであろうかどうか。また金融債そのものを出すということが——これは法律的には可能でありますが、今の日本の状態からいつて、また今後の金融政策から見てはたしてどうか。こういう点につきましていろいろ検討しましたが、まだ結論は出てなかつたのであります。そこでとりあえず、総裁もアメリカに行きますので、向うに行きまして調査もいたしますし、またわれわれの方でも調査し、そして今後のあるべき姿をはつきり研究してみたい。その間金融債を出すことは一時見合せていただきたいということを、大蔵省並びに関係者にお願いして、しばらく発行方を待つてもらいたいということの意思表示をいたしたわけであります。
  69. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵大臣に直接お会いになつて、それを申入れされたのですか。
  70. 中山均

    中山(均)参考人 その点は総裁から——とにかく議長でありますから、議長から大蔵省にもその旨を言つてもらうことを、私どもとしましては強くお願いしまして、そして申し上げたというように私どもは聞いております。
  71. 中曽根康弘

    中曽根委員 ありがとうございました。それから、やはり長沼さんのところに問題が来るので、長沼さんはあと何分ぐらいかかりますか。
  72. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうも私の立場としては、つまり川ばたに来いということは言えるのですが、水を飲めとはなかなか言えない。来るでしよう。すぐ来るとは思いますが、そこで池田大蔵大臣立場とすれば、大蔵省のことは全部自分の責任だ、政府委員以外の者を呼ぶのはけしからぬと言つて憤慨されておる。しかし私は呼びますよ。呼んでいるのだから、委員長にまかしておいて、あなたの話を続けてください。
  73. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長立場はよくわかりますが、私の立場もひとつ了解していただきたい。大蔵大臣は、あの当時は大阪へ行かれて留守だつたのです。それで実際あとを代行されたと申しますか、女房役で助けておつたのは次官だつたので、その間なかなかデリケートな問題があると思うのです。そこでぜひ次官に来ていただきたいと思います。
  74. 小坂善太郎

    小坂委員長 呼んでおりますが、一、二分を争われると、委員長ははなはだ困惑するのです。
  75. 中曽根康弘

    中曽根委員 じや、このままで暫時休憩していただきたい。
  76. 小坂善太郎

    小坂委員長 それじや与党側委員の方はよろしゆうございますか。どうも委員長は、野党側の意見だけでなく、与党側意見も十分伺つて、総合的にやつて行かないといけませんから……。それではどうですか、大蔵大臣から事実関係を責任者として話を聞いていただいたら、そのうち来ると思います。
  77. 中曽根康弘

    中曽根委員 それじや一応聞きましよう。
  78. 小坂善太郎

  79. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は昨年末ごろ話を聞きまして、そうして一月の五日か六日、私は外相官邸で招待がありまして、東京銀行浜口頭取に会いました。そうして金融債発行についての意見を聞かれましたから、けつこうだろうと思う、自分は賛成だ、こう言つてつたのであります。それから十一日に私は次官を伴つて大阪へ参り、二十一日か二日に帰りました。東京銀行の重役の一人が私のところに参りまして、二十億円の発行で五分の利子、これでよろしゆうございますか、それはいかない、二十億は初めは多過ぎる、十億にしろ、金利は五分五厘にならぬか、こういう話をしましたところが、実はもう二十億印刷した、だから二十億発行さしてもらいたい、こういう話ですから、印刷したから二十億出す、とんでもない話だ、これは相談にならない、十億以上まかりならぬ。金利の五分五厘というのは、あるいは予約をとりまして、払込みが、最終日の払込みにしますと、五分二厘くらいになるから、まあそれならいいだろう。とにかく、相談に来るなら相談に来るようなかつこうで来るべきだ。印刷したからといつて大蔵大臣に押しつけるのはけしからぬということで、私は十億円を主張いたしました。しかる後省議を一応開いてみたらどうかということを銀行局長に申してみました。省議を開いた上——正式の省議ではなかつたと思いますが、最終日の払込みで五分二厘ならいいじやないか、こういうことできまつたのでありまして、この問題に対しては次官はあまりタツチしていないと思います。しかしまたこういう問題に対しては、私一人の責任で、私一人の考えでやつておりますから、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根委員 東銀で二十億出したい。それを大蔵大臣が一月二十一日に十億にしろと言つてつたのは、どういう理由から切つたのですか。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 これは全体の金融情勢を見まして、やはり初めのときから二十億出すというのはよくないから、情勢を見て、まず十億から始めたらどうかという考えで私の意見を言つたのであります。押しつけたわけではございません。相談を受ける以上は、大蔵大臣としては十億が適当であろうと考えたのであります。
  82. 中曽根康弘

    中曽根委員 伊藤さんにお伺いいたしますが、あなたは池田大蔵大臣と同じ広島県の有力者でありまして、しかも地方銀行代表しておられる方ですが、この問題について、地方銀行としては反対の態度をずつととつて来たと思うのでありますが、池田大蔵大臣に何か相談なり申入れなり、要望をなさつたことはございませんか、お尋ねいたします。
  83. 伊藤豊

    伊藤参考人 この問題につきましては、大蔵大臣へ相当の意見を持つて相談をいたしたことはあります。無記名定期預金という方法が停止されまして、そのかわりとして短期金融債というものを出すのである。こういうことを当時の私の頭としては承つた。無記名定期は、金融機関1むろん銀行一切がくつわを並べて資本蓄積の方法として無記名定期を奨励し、実行したのであります。ところがこの短期債券というものは、御承知通りに、発行の余力のある金融機関とある。それですべての金融機関発行余力があるならば、それはそれでもけつこうである。しかしながら、ある一部の銀行に限つて発行余力を保有しておることと、将来発行余力をつくるということは別問題として、普遍的に発行余力を持つておらないのであるから、もしこれが盛んに実行されるということになつて、一部の金融機関発行余力がなくて、それに呼応して行くことができないという片ちんばの状況になることは、不幸の側に立つ銀行立場としては耐え切れない。私の関係しております地方銀行の側では、まずほとんど発行余力がないのです。せつかく地方銀行が営々として資金蓄積をしておるものが、ある一部の金融債発行によつて、いわゆる税金とも関係がない、無記名であるというような、きわめて都合のいい資金徴收方法を着々実施されると、それに対応すべき手段が、時間的には欠けておる地方銀行のごときは、その保有しておる預金を横流しあるいは争奪される結果になる場合があるかもしれない。これをおもんばかるときには、これは金融機関立場においては公平を失する方法になるかげ、やめていただいた方がよろしい、どうかさようなことのないようにしてもらいたい。東京銀行が二十億やられるのを、大蔵大臣はこれを十億に押えられた。これは大蔵大臣担当の思いやりがあつてやられたことであつて、その心持は私は非常に感銘いたしておるのであります。かくあつてこそ大蔵大臣だと思つた。(笑声)しかしその十億円というものが端緒となつて、それに相呼応して他の有資格というか、條件のかなつておる銀行が対応的にどんどんやられると、やはりこれも困る。それであるからどうかそれはよしていただきたい。それよりもどうか全力を盡して無記名定期の復活のできるようにしていただくことができるなら、天下一様に預金の收集が不公平なく行えるから、そうやつていただきたいということを、私は力を入れてお願いしたのであります。このことは微に入り細に入つて考えても、どうしてもある金額を制約されることによつて、その結果は非常にいい結果を生ずることもあるでありましようけれども、何分にも一定の預金を保有して、地方銀行において、相当地方産業、中小産業に対してすみずみまでめんどうな金融をしておる。これが一朝争奪される、あるいはまた横流れになるというようなかつこうになつて来ると、預金が減ずれば貸金を回收せなければならぬという結果を生ずることも一応考えなければならない。さようなことになると、さなきだに一般は金詰まりという声のやかましいときであるから、それに地方銀行がささいな貸金でもそのきゆうくつのために回收を要するというかつこうになることは、どんな結果を生ずるであろうか、あるいはこの間に銀行不信のそしりを受ける場合があるかもしれない。場合によつては、撹乱を生ずるというようなことがあつてはならぬ。かようなことがわれわれ金融機関の首脳者としては考えなければならぬことであつて、非常に心配である。この旨ををもつて大蔵大臣に要請したことはございます。主として無記名定期復活をやつていただくことができるならば、かような問題を起さないで済むのではないかと考えるがゆえに、相当に大蔵大臣と話合いをいたしたのであります。大蔵大臣にはそのときにいろいろのお話がありました。これはその話でありまして、私の要請する精神は、さようなところに立脚して大蔵大臣に要請したのであります。
  84. 中曽根康弘

    中曽根委員 長沼次官がお見えになりましたが、ちよつとその前に今の話に関係しまして、東銀側が金融債発行するに至つた動機といいますか、どういう事情東銀だけ先に先がけて発行しなければなちぬ立場にあつたのか。それほど銀行はもう困つているのか。東銀側の言い分と申しますか、内幕をぜひこの際……。というのは貿易金融やその他の問題で、為替銀行という問題は将来考えなければならぬことがあると思う。そういう意味で、東銀立場発行に至る経緯と申しますか、立場事情を、銀行の内幕を、ぜひお知らせいただきたい。
  85. 堀江薫雄

    堀江参考人 事実の経過といたしましては、先ほど申上げた通りであります。しかしながら、今御質問のありました通り銀行個々には銀行個々の立場があり、また特色がある。従つて今御質問のような御趣旨が出たのだと思うのでありますので、それを申し上げます。われわれが金融債発行をいたしましたのは、先ほど申しましたように、昨年の四月であります。法律第四十号が公布された直後に、この問題を研究し実施を進めたわけであります。そのゆえんは、まあ一般的な理由といたしましては、戰後の経済復興にあたりまして、資本の蓄積が最重要な問題である。そういつた要請をこれによつて満たし得る。戰後日本銀行に依存して、われわれの銀行でも日銀からの再割によつて金融しておる。それを多少でも自己資金によつて補足することができるならば一銀行経営上健全になるといつた理由が一般的な理由でありますが、私ども銀行の特殊的事由といたしましては、われわれ貿易為替関係に主力をあげておる銀行でありますが、貿易為替資金というものは、原則としてかなり短期なものが多いのであります。しかしながらかつて国会でも論議がありました通り、輸出金融振興については、輸出貿易関係の生産資金といつたものをどうしてもあわせ行わない限り、輸出ないし為替資金を円滑に運用できない。こういう見地から、多少とも長く固定できる資金を確保したい。またこれは日本経済ないし日本の貿易発展に資するところが大きいということを考えたわけであります。具体的に申しますならば、われわれ生糸の輸出をいたします場合にも、それの輸出前貸という部分、これが繭を買う資金になるのでありますが、この購繭資金につきましては、一昨年の例では繭を買うときに金を出しまして、それが糸になつて輸出して円資金なつて返つて来るのに平均一年以上かかつております。それからまた昨年春まで大分輸出されましたインド、パキスタン向けの紡績機械、紡機、織機の類のごときも一年前後の貸金になつております。またその他におきましても、その他の分は一般の市中銀行と共通の問題でありますが、綿紡績あるいは毛織紡績といつたようなものの復元資金にはある程度長期資金を出した、これらの資金は形式上は一応二つになつておりまして、一つは初めから長期で貸し付ける契約になつております長期資金、たとえば紡績復元資金について各銀行のシンジケートができて、それは初めから一年半あるいは二年といつた貸付金も出ます。それからまた形式は九十日といつた短期償却資金でありながら、その九十日を繰返し借りかえることによつて、これが半年、一年、ときには一年半といつた貿易為替前貸資金ということになるのであります。このあとの場合といえども、形式は九十日の貸金でありますが、実際借りる側から申しまして、それを借りかえることによつて長期を期待している、こういつた形式で出ておるわけであります。私ども銀行の貸金ないし割引資金につきましても、その五分の一あるいは一五%といつたものが、こういう面に出ておるのであります。ところが資金の供給確保の場面から申しますと、御承知通り、戰後資金が安定いたしませんものでありますから、多く当座預金でまかなつておるわけであります。ときには定期預金もあるわけでありますが、定期預金につきましては、それを担保にして貸すといつた両建のような形式になつておるものもありますが、実質的な固定安定資金というものはなかなかできにくい。こういつた際に法律第四十号が出て、一般市中銀行といえども、それぞれ特色に応じた短期債券が出せるということになりましたので、私どもといたしましては、さつそくにこれを研究いたしまして、軌道に乘つけるというような準備に入つたわけであります。事実の経過は別にいたしまして、われわれの銀行立場を簡單に申し上げます。
  86. 中曽根康弘

    中曽根委員 東京銀行の方にお尋ねいたしますが、東銀だけ拔けがけ的に債券発行をやつたが、差迫つた必要あるいは緊急の事由でもあつたのですか。今のお話では自己資金を多くして、日銀のわくや何かに制肘されないように活発にやりたい、こういうお話でありますが、十億という金は大した金ではない、あの大東銀から比べれば大した金ではない、それを今あわてて拔けがけ的に出すというのは、何か特殊な事由でもあつたのですか。
  87. 堀江薫雄

    堀江参考人 御質問の拔けがけというのは、私どもはなはだ耳に快くないのであります。偶然東銀だけが出すという結果になつたのだと了解していただきたい。特に東京銀行がおつしやるような事情があつて、われわれだけでこつそり單独でやつたわけではないのでありまして、ただ東銀の特色を出しておる貿易金融については先ほどのような事情がある、また法制上これができるようになりましたので始めましたわけでありまして、その際日銀の借入金云々という事情はさらにありません。
  88. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは特に今あわてて出すというのは、緊迫した事由はないのですね。
  89. 堀江薫雄

    堀江参考人 そうです。ただその場合といえども、先ほど申しましたように、特にあわててといつても、一週間二週間という問題ではない、昨年の四月以来研究に研究を重ね、事務的折衝も経たわけでありまして、拔けがけにあわててこそこそやつた、あるいは短期間にやつたわけではないのであります。
  90. 中曽根康弘

    中曽根委員 けつこうです、ありがとうございました。今の御答弁その他についてはあとでいろいろまた申し上げたいと思います。  長沼さんにお尋ねいたしたいと思います。長沼さんは私の先輩でたいへん心苦しいのですが、大義親を滅すでお尋ねいたします。先ほど大蔵大臣から東銀債発行に関する経緯をいろいろお聞きしたのでありますが、一月十日前後、大蔵大臣が大阪へ参る前に、一万田日銀総裁は大蔵大臣をおたずねになりまして、東銀債発行は待つてくれ、自分がアメリカから帰るでま待つてもらいたいという要望をされた。大蔵大臣は大阪へいらつしやつて、あとにあなたがお残りになつた。われわれの調査による一月十六日に一万田日銀総裁は再び大蔵省に訪れて、長沼次官に中止方を申し入れたということになつております。こういう事実がございましたら、その経緯をお示し願いたい。
  91. 長沼弘毅

    長沼説明員 お答えいたします。一万田総裁が十六日に私を大蔵省に訪問されたという事実はございません。
  92. 中曽根康弘

    中曽根委員 一万田日銀総裁が申し入れたというふうにわれわれは調べたのでありますが、次官に対して政策委員会なりあるいは日銀なりから、ともかくこれはしばらく待つてくれという、そういう要望をされた事実はございませんか。
  93. 長沼弘毅

    長沼説明員 たしか十六日でありましたか、日付は忘れましたが、アメリカに立たれる直前私のところにあいさつに来られるというのでしたが、しかしわざわざおいでくださる必要もありませんので、何かお話を承ることがあれば私の方から参りましよう、こういうので日本銀行で私が総裁にお目にかかつたことはございます。その際特に東銀債の問題等でなく、一般的に、今後アメリカに行くについて、自分としてはこういう大体構想を持つて行きたいからというお話を伺つて、さようですかというので帰りました。
  94. 中曽根康弘

    中曽根委員 中山政策委員お尋ねいたしますが、一万田日銀総裁が十七日ごろ政策委員会で大体長沼さんは見合せるように承諾したらしい、そういうような言明をおやりになつたことの事実はございませんか。
  95. 中山均

    中山(均)参考人 私の聞き知つた程度におきましては、長沼次官ですか大蔵大臣ですか、そのとき名前はお話ありませんが、大蔵省へそれを委員長として持つて行くように強く要望したので、行つてお話をして来たということだけははつきり申しました。
  96. 中曽根康弘

    中曽根委員 十七日ごろの政策委員会で大体大蔵省はさしあたり待つ、遠慮する、とめる、そういうような内容を発表された、そういう事実はありませんか。報告があつた大蔵省が見合せるらしいというお話政策委員会であつた事実はございませんか。
  97. 中山均

    中山(均)参考人 それほど強くは私の頭に今残つておりませんが、そういう要望はいたしてありますので、多分そうなるのではないかと私は実は自分では信じましたけれども、総裁からの言葉としては、確かに見合せるというまでは私は聞いておりません。多分そういうことになるだろうと自分では信じておつたのであります。
  98. 中曽根康弘

    中曽根委員 長沼さんにお尋ねいたしますが、政策委員をやつている阪田さんから、政策委員会で、大体大蔵省は見合せるらしい、そういう報告のようなものがあつた、そういうことをお聞きになりましたか。
  99. 長沼弘毅

    長沼説明員 政策委員の阪田君から、実は本日のボードにおいて総裁は、はつきりしたことはわかりませんが、大蔵省としても発行をいくらか延ばすというふうなことを総裁として言われた。これは決定的なことを言われましたのか、あるいは総裁が一応希望的におらくそういうふうになるであろうというふうに言われたのか、その辺のニユアンスは私はわかりません。但し私はその問題について総裁と具体的な話をしたことはないということを阪田君に申しております。
  100. 中曽根康弘

    中曽根委員 長沼さんにお尋ねいたたしますが、そういうような話があつたので、長沼さんは自分はこれをストツプするというような意向を漏らしたことはないのだ、そこで誤解があつてはならぬというので、一万田日銀総裁がアメリカへ立つ数日前に舟山さんを使いにやつて、一万田さんに自分は賛成したのではない、一万田さんの意見に同調したのではない、そういうようなことを使いとして舟山さんをしてつかわしたことはございませんか。
  101. 長沼弘毅

    長沼説明員 そういう事実はございません。
  102. 中曽根康弘

    中曽根委員 舟山さんにお尋ねいたしますが、次官がないというのだから、ないのかもしれませんが、そういうような趣のことを、出発前の一万田日銀総裁のところへ、あなたがお伝えに行つたというようなことはございますか。
  103. 小坂善太郎

    小坂委員長 どうですか、事実審理というのは、どうも予算委員会の本質を離れておるように思いますが、どうかその線を離れないように御質問を願います。
  104. 舟山正吉

    舟山政府委員 そういう事実はございません。
  105. 中曽根康弘

    中曽根委員 ありがとうございました。大体これで事実がはつきりしたよに思うのでありますが、もう一点だけお尋ねしたいと思います。  それは一月の二十七日ころの銀行協会理事会でどういうような話があつたか、これは政策委員の岸さんが大体大蔵省東銀以外は当分認めない、東銀だけしようがないから認める、それから政策委員会法律改正大蔵省に申し入れることになつておる、そういうようなことを申入れといいますか、報告というか、そういうことがあつたということがわれわれの調書に載つておりますが、この点はいかがでございますか。政策委員の方にお願いをいたします。
  106. 中山均

    中山(均)参考人 私の聞き知つておる程度におきましては、場合によりますれば、もしこの法律があるために、少数の銀行だけが発行ができるということになりますれば、相当な金融上の困難ができて来ることを心配しまして、やむを得ざる場合には、法律改正も必要になるかもしれぬ。できますことならば、先ほど伊藤会長が言いましたような無記名定期を、ぜひ国会でもお認め願つて、そういうふうに進めてもらいたい。どうしてもそれが不可能だというならば、あるいは他の金融債券とかなんとかいう形で、各金融機関が全部そろつて行くようなことにぜひ考慮してもらいたい。それもどうしてもいかぬという場合には、最後としては法律改正もまた必要がある、こういうことも言われたことがあります。法律改正をするということまでは、まだ委員会ではきまつておりませんが、最後のやむを得ざる場合には、そうしなければ日本の金融政策としては困るではないかということを考えております。
  107. 中曽根康弘

    中曽根委員 それではこれで事実は明らかになつたようでございますから、一応質問を打切ります。
  108. 小坂善太郎

    小坂委員長 午前中はこの程度にいたしまして、午後一時半から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  109. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中曽根康弘君。
  110. 中曽根康弘

    中曽根委員 午前中の委員会で大体金融債発行に関する経緯が明らかになりました。午後は引続きまして、私は関係各位から意見を伺いたいと思います。最初に政府側から金融債発行に関するいろいろな見解について伺いまして、それからあとで関係金融機関から、金融機関立場からの御所見を承りたいと思います。まず第一に先ほどのいろいろなお話によりまして、一つ重大なことが出て来たのであります。それは池田大蔵大臣がこの前の予算委員会におきまして、昭和二十六年二月三日土曜日に、わが党の川崎委員質問に対して答えた言葉と先ほどの事実と相違する点が出て来ております。それはわが党の川崎委員が日銀政策委員会あるいは一万田日銀総裁は反対したではないか、こういう質問をしておるのに対して、池田大蔵大臣は次のように答弁しております。「先ほど来申し上げましたように、私は今の情勢としては短期金融債、定期預金にかわるべきようなものの金融債は、さしつかえないという考えでおるのであります。日銀総裁ともこの問題につきまして話をいたしまして、日銀総裁は反対をいたしておりません。」と明言しております。しかし先ほど来の中山政策委員あるいはその他の方々お話によりますれば、日銀総裁は明らかに反対しておられる。またその旨池田大蔵大臣にもお話があつたように大臣自体がおつしやいました。この食い違いは一体どうしたことでありましようか。池田大蔵大臣は前の川崎委員質問に対しては食言をなさつたのでありますか、この点をお伺いいたします。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 食言いたしておりません。日銀総裁一万田君から、短期金融債は反対であるという意見は、私は聞いたことはございません。
  112. 中曽根康弘

    中曽根委員 先ほど大阪へ立たれる前の話を聞きますと、日銀総裁は反対の意見を漏らしたように池田大蔵大臣から私は聞いた。今の言葉と非常に違うように思いますが、どうしたわけですか。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 速記を見て御質問願います。一万田総裁が立ちます前に、金融債発行は自分が帰つてからやつてもらつたらどうか、こういうことでありまして、一万田総裁金融債発行について反対を言つておるとは私は考えておりません。
  114. 中曽根康弘

    中曽根委員 今のお答えはどうもつじつまが合わぬと思うのであります。この予算委員会において川崎氏が質問したのは、東銀債発行を中心にして質問しておるのでありまして、私が午前中質問いたしましたのも東銀債を中心にして質問しておりまして池田大蔵大臣が一万田総裁が渡米される前にお会いになつたときに、一万田総裁東銀債についてはしばらく待て、今出すことについては反対だ、こういうことを言われておつたと思うのであります。従つて明らかに東銀債を少くとも今月中に出すとか、あるいは一箇月以内に出すとか、そういう点については反対しておるのに相違ないと私は常識上受取るのであります。この点大蔵大臣はいかにお考えになりますか。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題に関しましては、あなたの常識と私の常識は違います。一万田総裁は出すことについて反対だという意思表示はしないのであります。ただ自分が帰つてからやつてもらつたらいいというふうな意見であつたのであります。何も私は一万田総裁意見に従う必要はないのでありますから……。一万田総裁は二十五日に帰りましよう。東銀債発行は二月の十五日から三月の十五日までであります。私は一万田総裁が今度の処置に対して反対したということは考えておりません。
  116. 中曽根康弘

    中曽根委員 中山政策委員お尋ねいたしますが、先ほどの明瞭なお答えにもありましたように、日銀政策委員会は反対である。その議長である一万田総裁は、大蔵省あるいは大蔵大臣に申入れをしたはずであるとはつきり申されました。ただいまの大蔵大臣の御答弁とはなはだ食い違つておりまするが、日銀政策委員会及び議長としての一万田総裁はいかなる見解を持つておられましたか。
  117. 中山均

    中山(均)参考人 一万万田総裁大蔵大臣との話は、直接私は聞いておりませんが、少くも政策委員会におきましては、先ほど申しました通り、一月二十六日に銀行金融債発行に関する件というのを議題といたしました。一般銀行金融債発行については、長期資金調達に関連し、金融機構全般の見地より再検討を要するをもつて、従来の発行し来れる金融機関以外は発行を見送ることが望ましい、こういう決議をいたしまして、阪田大蔵委員を通じて大蔵省にこの旨を申入れ、また岸委員をして銀行協会にこの旨を申出て、しばらく研究させてもらいたい、これの是非については、私自身は考えはあるけれども委員会といたしましては、この問題について再検討いたしたいから、しばらく見送つてもらいたいという完全な意思を通達したものと私は確信いたしております。
  118. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの中山政策委員の御答弁にもはつきりいたしておりますように、日本銀行の日銀政策委員会は、明らかに現在出すことについては反対しておられる。見送つてほしいということは、明らかに現在出すことに対して反対の意思表示であると思います。ただいまの決定は、一月二十六日でありますから、日銀総裁が立たれたあとの話でありますが、おそらく日銀総裁は同じ思想を持つておられたに違いないと思います。一月十日前後における日銀総裁のお考えを、私は間接に承つておりますが、中山政策委員政策委員の一人として日銀総裁にお会いになつて、本年初め以来、日銀総裁は、金融債を現在出すことに対していかなる見解を持つておられましたか、もしおわかりでしたらこの際教えていただきたいと思います。
  119. 中山均

    中山(均)参考人 総裁の考えを直接に申し上げることは、あるいはいかがかと思いますので、控えたいと思いますが、委員会でも、この問題は相当重要な問題でありまして、たびたび協議をいたしました。そのときにおきまする中山委員としての考え方について一応御参考に申し上げ、そうして会議のぐあいを申し上げ、総裁もこれについては反対はなく、それを承認しておつたということも申し上げたいと思います。  この債券の本質でありますが、昭和二十五年法律第四十号、銀行等債券発行等に関する法律の第一條にはつきり書いてあります通りに、「この法律は、銀行等に対し、債券発行とあわせて米国対日援助見返資金引受による優先株式の発行とをさせることにより、経済復興のため最も緊要とされる長期資金の円滑な供給を図ることを目的とする。」と明記してあります。この法律意思をくんでみますと、第一に本法による債券発行は、長期資金の円滑な供給をはかることを目的とすること、これが眼目となつております。はたして東銀債長期資金の円滑なる供給をはかることが目的であると言い切られるかどうか、ということに対して疑問を持つております。従つて一般市中銀行債券発行により資金を調達することは、長期金融機構全体の見地から考慮する必要がある。特に短期債券による場合は、後述のような問題がある。第一、銀行間の不公平、それは何であるかといいますと、御承知のように第三條に「銀行は、自己資本の金額の二十倍に相当する金額から預金の総額とその発行している債券(通常「金融債」と称されるものをいう。)の総額との合計金額を控除した残額に相当する金額を限り、債券発行することができる。」とあります。それから考えてみまして、この一月現在におきまする自己資本をもつて基本とした場合に、どういう銀行発行可能かといいますと、銀行としては九行、大銀行三、地方銀行四、信託銀行二、その発行余力が百九十七億。なお大蔵省の解釈によれば、これは議論でありますが、自己資本の中に貸倒れ準備金がはたして入るかどうかということにつきましては、相当議論があり得ると思います。これは貸倒れ準備金を加算するとしても——大蔵省は合算すると解釈して参りましたけれども、そうした場合におきましても発行可能銀行は七十五行中二十二行、その発行余力が五百六十億。以上のように本法による債券発行可能の銀行は、一の場合に総数の一割二分、二の場合  この貸倒れ準備金を入れたものを基準にしました場合におきましても二割八分にすぎない。こういうことが非常に不公平だ。各銀行が実際に債券発行できるためには、発行余力のなない銀行は増資を必要とするが、債券発行を可能とする場合、最小限度に要する増資額は三十億ないし六十億見込まれます。十分の発行をしようというならば、それ以上の増資が必要だ。各銀行の増資につきましては、倍額以上の増資を要するものが、一の場合には半数以上であります。  次に短期債券の問題ですが、無記名定期預金の復活困難という総司令部の言明が一月十九日にあつたように思いますが、その際にこれと同趣旨の短期債券発行する余力ある銀行のみに限定して発行せしむることは、きわめて不適当だ、こう私どもは信じております、あるいは政府はそれとは関連がないと申されるかもしれません。事実として今銀行側はこぞつて無記名定期を要求しております。これができないというときに、たまたまこういうものを出したということは、はたして金融情勢上いいか惡いかということが一つの問題だと思います。短期債券の公平な発行を可能とするためには、前述のごとくに大多数の銀行が実際増資を必要とするのであります。銀行課長は増資をすれば公平にできるということを言明しておりますが、はたしてそのようなことができるかどうか。また短期債券を出すためにこういうような無理な増資をすることが、一体日本の経済上いいか惡いかという一つの問題があり得ると思います。債券発行の余力のある一部銀行が、優先的に短期債券発行した場合、これは資金の吸收のみならず、多額の定期預金の横流れを場招来するおそれがあります。これはならないとは私は断言できないと思う。たんす預金をとるというようなそんなものではない。私どもからいいますれば、やはり他行にある定期預金が、そこへ流れる可能性が至つて大であります。この場合から見ますれば、貿易資金等特殊な資金に充てるための債券発行であつても、公平の原則からいえば、東銀債発行は決して適当なものでない、こう私は信じます。長期金融機関の全般的の検討も、この際ぜひ議員各位にはお考え願いたいと思います。今や長期資金專門の機関は至つて不完全であり、また充実しておりません。そういう必要性が非常に多いと思います。どの銀行も相当長期資金を今やつておりますことは、そういう長期資金のないために——全然ないとは申しませんが、まだ不十分であるということを立証しております。長期金融機関については、債券発行による資金吸收を主とし、商業銀行とはまつたく性格をわけて考えたいというのが私の考え方であります。また国際金融機関との関連において、一般銀行債券発行は非常に考慮を要する、そういうようなことが、世界広しといえどもたくさんあるかといいますれば、おそらくそういうことは少い、寡聞にして私どもの方では少いと思います。たまたま一国ぐらいあるかもしれませんが、まず大多数はそういうことはない、そういうのが実相でございます。  なお債券発行の消化力でございますが、昭和二十五年中の金融債並びに社債の発行の消化状況を参考に調べてみますと、利付債券の八四%を銀行自体がこれに応募しておる。割引債券は四四%、普通社債は八〇%を銀行が消化しております。従つて一般銀行長期債券発行は、従来の利付債券の消化が大部分銀行により行われておる現状よりすれば、銀行がこれを引受けざる限り、消化は至つて困難であるということははつきりしております。短期債は個人の消化の割合が大きいのでありますから、発行すれば預金の横流れを惹起することは、これはとうてい避けられない。もしこれがなお法律があるからというだけで強行なさいますれば、地方に散在している多数の地方銀行預金は、これが横流れして、その結果中小企業が非常な金詰まりになつて来る。そういうような結果になると思いますので、私だけの考えとしますれば、金融債長期のものは特殊な機関——今までもやつてつたような機関に持つて行き、短期債は普通商業銀行はいたしたくないということを私は確信して、委員会においてもすでにこれを述べ、多数の委員もある程度の同調者がありましたので、議長としましては、この問題について深く研究してみるから、しばらくこれを延期してもらいたいということを痛切に考え、関係筋へそれぞれお申出があつたと私は確信します。
  120. 中曽根康弘

    中曽根委員 日銀政策委員会の意向がこれで明瞭になつたと思います。私自体も、ただいまの中山政策委員のお考えには同感でありまして、そのような御趣旨の質疑応答は、この法律をつくるときの速記録に載つておる。これはそこにおる川島委員や自由党の小山君やその他がやつておるのを私は克明に読んだ。舟後銀行局長はこれに対して答弁しておる。しかしその答弁は納得できないものが非常に多い。それはただいま中山政策委員の述べられたような問題です。たとえば長期資金短期資金の吸收の問題であるとか、あるいは定期預金が横流れする問題であるとか、あるいは地方銀行はこれによつて非常な打撃を受けるであろうという問題であるとか、普通銀行それから長期資金銀行を今後どういうふうに調整して行くか、そういう基本問題にまで及ぶ問題であります。ただいまの中山政策委員意見に私はまつたく同感でありますが、その中山政策委員のお考えに対して、大蔵大臣はいかにお考えになりますか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 中山政策委員意見に私は同感ではございません。全部が反対というわけではありませんが、そういうことを考えながらも、今の日本の金融状態としては、短期債券発行した方が適当であるという結論に至つたのであります。
  122. 中曽根康弘

    中曽根委員 いかにして適当であるかということを、これから少しずつお聞きしたいと思いますが、大月銀行課長がおりましたら、あのときの当事者としてちよつとお聞きいたしたいと思います。あなたはなぜ特銀の代表者を呼ばれて、遠慮しろとか、あるいは利率を下げてくれとか、そういうことを要望されたのでありますか。理由をひとつ明示していただきたい。
  123. 大月高

    ○大月説明員 東京銀行短期債が出ることになりました結果としまして、問題が二つございます。従来債券発行しておりました銀行債券というものを、どういうようにして行くべきか、それから従来発行しておらなかつた銀行債券発行に関してどう考えるか、この二つの問題が出ると考えたのであります。従いまして各銀行及び銀行界のそれぞれの御意見を聞く必要があると考えましたので、一月の二十四日には、銀行協会地方銀行協会、それから市中銀行の部長クラスの方、そういう方に来ていただいて、今後どうするつもりか、大蔵省としては、債券が出るということになると、その発行なり消化なりについて十分考えて行かなければならぬと思う、そういう意味懇談をいたしました。そのときに、午前中に問題になりましたいわゆる通牒案ということを考えておるのだけれども、それについて御意見はどうであろうかということで、懇談をしたわけであります。あくる日、そこで大体の意向がまとまりましたので、従来債券発行しておりました勧銀興銀、北拓及び農中、商中のやはり部長クラスと思いますが、その方々に集まつていただきまして、今後どうされるつもりかという話をした際に、午前中にお話のありましたような、勧業銀行短期債を将来どうしようとするか、興業債券の中でも特に割引債券利率をどうするか、あるいはこれをインター・バンクの消化だけに向けるか、一般消化に重点を置くかどうか、あるいはその結果として、やめる結果になるかどうかということについて、銀行側意見を徴し、私の方の思つていることも申し上げた次第でありまして、その結果、大蔵省として、上司とも御相談いたしまして、いろいろ対策を講ずる必要があると考えたわけでありまして、そういう意味懇談をしたわけであります。
  124. 中曽根康弘

    中曽根委員 大月さんに伺いますが、私が御質問申し上げましたのは、何ゆえ割興を押えようとしたか、あるいは勧銀短期債券を遠慮してもらおうと言われたか。われわれの推測しているところによると、それは東銀債を出されるために、片方を押えようとするあなたの考ではないか、たれかから受けた考えではないか、そういうふうにわれわれは考えておるのです。そういう意思でやつたのか。あるいはそうではなくて、何か別の動機があつてつたのか、その間のあなたのお考えを説明していただきたい。
  125. 大月高

    ○大月説明員 興業銀行の割引債券につきましては、従来七分二毛という利率で出ておるわけでありまして、新しく出ました東京銀行債券は五分二厘六毛というわけであります。條件も根拠法規も同じ債券であつて、異なつた利率があるというのは、いかにもおかしい話でございますので、そこを何かのかつこうで調整する必要があるのじやないかというので、懇談したわけでありますが、これは東京銀行債券発行されるということがきまつたあと、善後措置として、どうしようかということを相談した意味でございます。それから勧業銀行につきましては、従来といえどもその消化につきまして地方銀行との間にいろいろ問題がございまして、大部分が地方銀行によつて消化されておる現状でございまして、そのためになるべく勧業銀行の業務と地方銀行の業務とに摩擦が起きないようにということを、大蔵省としても考えて参りましたし、今後短期債券発行するというようになりますと、片一方で長期債の消化を依頼しながら、また片一方で競争するということになつて、その結果、いろいろなむずかしい問題が起るのではなかろうかと考えて、われわれとしまして勧業銀行債券発行をとめてもらいたいということではなくして、そういう問題が起きた場合にどうするかという問題に重点があつたわけでございます。それから片一方では従来の三特銀二金庫に対しましては、見返り資金が出ておりまして、この趣旨はできるだけ長い資金を産業界に出してほしいという意図で出ておるわけでございますから、できるだけそういう方向でやつてもらいたいという気持を持つてつたわけでございます。
  126. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の銀行課長さんの御答弁に満足しないのでありますが、ともかく東銀債を出するというまぎわになつて、しかも印刷もできた、そういうときになつて、あわてて今まで特権的に出しておつた銀行の人たちを呼んで、遠慮してくれ、あるいは利率を下げてくれ——これは明らかに東京銀行をバツクした行為であると私は考えざるを得ない。ただいまいろいろな理由をお述べになりましたけれども、しかしそれは一応のりくつであつて、あの時期にああいう行為をやるということは、明らかに東京銀行債券というものが頭にあつてつたに違いない。私はそう考える。これは常識がそう考えさせる。銀行局長さんの今の御答弁では私は満足できないのでありますが、ともかくそういうような東京銀行関係金融債というものを、適当に、スムーズに世の中に流して行くために、かような措置をとつたのではないのですか。
  127. 大月高

    ○大月説明員 先ほども申し上げましたように、この問題は東京銀行債券発行するということがきまりましたので、その善後措置として、金融債の消化及び発行の調整をはかりたい、こういう気持があつたわけであります。
  128. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると、大体東京銀行金融債を円滑に出すために、そういう措置をおとりになつた、こういうふうに考えます。私は今の御答弁を聞いたり、それから舟山銀行局長がいろいろ立ちまわりされたのを見てみると、舟山銀行局長大蔵省銀行局長でなくて、東京銀行局長だ。どうもそういう態度を今度の場合にはおそらくおとりになつたと思う。そこでお尋ねいたしますが、それでは興業債券利率を下げるとか、あるいは勧銀に遠慮させるということは、反面に興銀とかあるいは勧銀とかいう、今までの長期資金銀行をどういうふうに持つて行くというおつもりでおやりになつたのですか。そういう一定の明確なお考があつておやりになつたと思うのですが、この点について銀行局長から承りたい。     〔発言する者多し〕
  129. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。     〔「東京銀行に行け」「取引があるのだろう」と呼ぶ者あり〕
  130. 小坂善太郎

    小坂委員長 私語を禁じます。
  131. 舟山正吉

    舟山政府委員 だんだん伺つておりますと、私が東京銀行だけの利益のことをはかつておるような私語が聞えますが、私ははなはだ心外と思います。(「こつちが心外だよ」と呼ぶ者あり)それならばそうでちやんと……。     〔「答弁々々」と呼ぶ者あり〕
  132. 中曽根康弘

    中曽根委員 わかるように答弁してもらえば、そういうことは考えません。     〔「国家の金融政策を紊乱するものだ」と呼ぶ者あり〕
  133. 小坂善太郎

    小坂委員長 椎熊君、静粛に願います。
  134. 舟山正吉

    舟山政府委員 それは答弁をお聞きを願いたいと思います。私が東京の、一つ銀行のためにはかつたというようなことは、私の答弁を十分にお聞きもなさらないで、そういう発言をされることは、はなはだ軽卒であろうと思います。     〔発言する者多し〕
  135. 小坂善太郎

    小坂委員長 私語を禁じます。静粛に願います。
  136. 舟山正吉

    舟山政府委員 銀行短期債発行の問題は、昨年法律をこしらえましたときから、私どもの念頭にあつた問題であります。それでありますからその間研究の期間は相当ありましたけれども、具体的に東銀債発行する計画が出て参りまして、いよいよ発行する段取りとなりました以上は、この新しい短期債條件、それから既発の金融債條件との調節をとることが適当と考えられるのであります。そこでこの新しい東銀債発行條件は、定期預金利率をも考え合せまして五分というふうにきめたのであります。これにつきましては、すでに出ております割引興業債券及び割引商工債券、この條件をかえなければ、かえつて銀行の間に公平、不公平の問題を生ずるのであります。従来興業銀行勧業銀行、北海道拓殖銀行は特殊銀行でありましたが、この法律施行と同時に普通銀行となつたのであります。このことを銀行当事者も強く言つておられるのであります。そういたしますれば、今後発行して参ります金融債につきましては、大蔵省が適当と認めました東銀債発行條件、この列に並ばして行くということが適当なのであります。これに伴いましてその消化先をどうこうするという問題も起つて来のであります。このことを銀行課長銀行事務局と話合いをしたのであります。銀行課長興銀なりその他の銀行代表者を集めまして、こういうふうになさいということを申し渡したのなら問題でありますけれども……。(「事実はそうなんだ」と呼ぶ者あり)今御発言がありましたが、代表者は呼んでおりません。事務当局間で意見の交換をしたのであります。これはこの結果を穏当ならしめるために必要な措置であると思います。
  137. 中曽根康弘

    中曽根委員 銀行局長お尋ねしましたのは、勧銀興銀を押えて、今後勧銀興銀をどうしようか。銀行等債券発行等に関する法律をつくつたいきさつは、あなたは当事者ですから一番よく御存じです。やむを得ずああいう法律をつくつたわけです。しかし日本の場合は御存じのように、長期資金については特別の手当をやらなければ集まらぬという事情がある。そこで見返り資金ですらあなた方はおやりになつておる。従つてあの法律が発足した経過から考えて、当然短期資金長期資金は系統別に考えて出て来たわけです。そういう特性のある、しかもこの法律の第一條には、長期資金云々と書いてある。その長期資金を調達すべき責任があつて今までやつて来た勧銀興銀を押えて、大体貿易金融といえば短期資金が主です。それを優先さして発行してやるということは、どう考えても変でしよう。それでありますから長期資金をどうする、勧銀興銀をどうするという考えでおやりになつたかということをお尋ねしておるのであります。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 長期資金短期資金と一概に申しましても、一年ものが長期なりや、短期なりやということは問題があるのであります。見返り資金を元にいたしまして発行する場合におきましても、当初は一年の期間であつたのが、このごろは三年になつております。だからそこに長期とうたつてありましても、一年ものは短期なりという断定はできないのであります。しこうして私は今の金融情勢から申しまして、見返り資金の方から出ておるものは、金融期間は三年なり将来は五年になりましよう。しこうして今の銀行状況によつて、不公平とか公平とかいつておられますが、法律上はだれもできることなんです。ただ自分のところは資本金が少くて預金をうんとためておる人は債券発行はできますまい。しかし資本金が多くて預金の少いところは法律発行ができることになつておる。それを東京銀行資本金は十億円で、しかも支店が非常に少い。預金の吸收には不便だ。また実際二十倍になつていない。そこでこういう法制ができたから短期と申しますか、長期と申しますか、一年の債券発行ということは、預金吸收の上からいつて非常にいい策だと考えておるのであります。既存の銀行が、今まで集まつたたくさんの預金をかかえ、そして新しく出発した銀行が、法律上許されておる権利に基いて債券発行するというのであつて、公平、不公平なんというのは議論にならぬと思います。
  139. 中曽根康弘

    中曽根委員 池田大蔵大臣の御答弁については、あとで私は申し上げたいと思いますし、関係者からもおそらくある意見が出ると思いますが、ただ問題になるのは、先ほど東京銀行堀江さんがお答えになつた中に、何も東京銀行は緊迫した事由はないのだ、特にやる必要はないのだ、そういうことをはつきり明言されておる。ただ私が注意したのは、注意深くも、東京銀行短期資金だけではない、プラントあるいは紡績資金その他で長期資金でもやつておるのだという予防線を張つてつたのを、私はよく注意して聞いておつた。しかし答えの趣旨は、何も緊迫した事由がないということを明言されておる。あなたは店舗の問題であるとか、資本金の問題であるとか、新しく発足したとかいろいろ言つおられるが、それは東京銀行の弁護士みたいな立場でおつしやるのはいいけれども、しかし東京銀行自体がそんなことを言つていないのです。だから私は、東京銀行東京銀行なりの独自の考えでやつたと率直に聞いておる。そこで問題になるのは長期資金の問題であります。この法律の第一條には、先ほど政策委員がお読みになりましたが、経済の復興のため最も緊要とされる長期資金の円滑な供給をはかることを目的とするといつておる。長期資金短期資金という問題は非常に大きな問題ですが、私などはしろうとですから、何が短期資金か、何が長期資金かわかりません。しかし少くとも東京銀行が貿易のために主として使う金というものは、金融常識上考えて長期なりや短期なりやということを、私はここで金融界の方に教えていただきたい。まず中山さんからぜひ私に教えていただきたい。
  140. 中山均

    中山(均)参考人 あまり法律の論点からでは私の議論は立たぬかもしれませんが、常識から考えてみまして、貿易金融が長期資金だということは、私は言い切れるものではないと思つております。ただ戰後の状態で特殊銀行がなくなつて、為替銀行も従来の……(「これは二頭のへびだ」と呼ぶ者あり)二頭のへびではない、一つ意見です。私はそういう議論を申してもいいと思う。政策委員は政党を超越しておりますから、別に何も今の自由党にどうこうという、そういう考え方をいたしておりません。(拍手)そこで私の考えとしますれば、貿易の今の状態では、なるほど長期の分まで手を出さなければならないというはめに各銀行も行きつつある。この姿は決して金融政策から見ていい姿ではない。これは進めば進むほど惡い姿だ。早くこの姿をかえて、長期資金長期資金の方の行き方に少くとも日本はいたしたい。短期資金短期資金として、世界の商業銀行と手を、握つて行くような金融機関にしたいというのが私どもの精神であります。ただ今のところではそこに必ずしも行つておりませから、多少のものはこれはあり得る、こう思つております。
  141. 中曽根康弘

    中曽根委員 中山政策委員の権威ある御発言を聞きますと、貿易金融に使われる金は、常識上はこれは短期資金だと言われておる。但し現在の国情から長期に及ぶことも少しはある、こういう御答弁でありまして、私もそうだろうと思います。この点については興業銀行の方にもたいへん関係があることだろうと思つております。プラント的な性格を持つて来るものの輸出の金融、こういうものをちよつと先ほど堀江さんがお漏らしになりましたが、興業銀行にも多少は関係がある。ひとつ興銀の方からぜひ長期資金短期資金というものの区別を教えていただきたい。東京銀行が扱つておるような貿易資金というものは、はたして長期なりや短期なりやということを教えていただきたい。
  142. 中山素平

    中山(素)参考人 ただいま御質問の、東京銀行がお扱いになつておる貿易資金長期であるか短期があるかということは、はつきりりくつの上で長期短期ということを今の現状でわけることは、なかなかむずかしいと思うのであります。先ほど中山政策委員お話のように、本来短期資金であるということは言い得るかとも存じますが、現状におきましては、東京銀行が貿易資金もおやりになつておりますし、一般的な商業金融、あるいは部分的には工業金融をおやりになつている。これは決していいということではありませんが、それが実情でございます。従つて東銀の御必要とする資金のうちに、長期のもの、短期のものがあるということは事実でございましよう。ただ主体は短期であるということは、はつきり言い得ると思います。
  143. 堀江薫雄

    堀江参考人 簡單に意見を述べさせていただきます。長期短期につきましては、これは一種の相対論であります。経済の実勢、背景というものを考え合して区別すべきものでありまして、軍に三年だから長期、十年だから長期という問題でないと思います。現に戰争以前におきましては、十年、五年が長期資金と、常識論ではなつておりました。現在一年につきましては、私どもとしましては、貿易資金面でこれは長期資金と考えたわけであります。これはなぜ考えたかと申しますると、臨時金利調整法にも、長期場は一年以上となつております。それから、われわれ直接関係のあります、また皆さんが協賛されてつくられました輸出銀行の取扱い法にも、輸出プラントの貸出しにつきまして、六箇月以上を長期とするというような規定もございますの港、われわれといたしましては、一年を比較的長期と考えた次第であります。しかしながらこの長期短期も、最初に申しましたように経済情勢あるいは金融一般のそのと寺の段階、背景を考え合せてきめるべき問題である。現在は長期と考えているのだということであります。
  144. 中曽根康弘

    中曽根委員 今のお話を聞きまして、池田大蔵大臣が会心のえみを漏らされましたが、どうもあの顔を見ると、東京銀行を応援したくてしようがないという感じがします。  そこで私はもう一つ舟山銀行局長お尋ねしたいと思うのでありますが、関係者を呼んで相談いたした際、通牒原案を審査されましたときに、貸倒れ準備金資本の中に算入してもよろしいということで、中に入れられた、こういうことを言われた。しかしこれは税金の問題がひつからまつて来るのであつて、税金をとつてないものを資本の中に算入するということは、相当これは大憺な措置だと思うのであります。それではどうしてそういう措置をおとりになつたかということをいろいろ調べてみると、これは東京銀行から金融債を出させると、これは地方銀行が猛反対するだろう。地方銀行をなぜるためには、それくらいの何とか措置をしてやつて、不平を押えてやるべき零はないか。つまり東京銀行金融債を円滑に出すために、そういう措置をおとりになつた、そうして地方銀行の額をなぜようとしたのではないか、こういう邪推を私はしているのでありますが、一体税金との関係がどうなるか、それからどういう考えでそのような措置をおとりになつたのか、承りたいと思います。
  145. 舟山正吉

    舟山政府委員 預金その他の外部負債と自己資本その他の勘定との比率ををきめましたゆえんのものは、外部負債が非常に大きくなり過ぎましては、その債権確保の上におきましても危險があるという趣旨でございます。それで現行法におきましては、これを一応二十倍というように押えているわけであります。この貸倒れ準備金は、経済的に見ますると、銀行の内部に一応留保された資産であります。そこでこれは自己資本と合せて、対外負債の保証となり得るという解釈が下せるのであります。税法のことについて言及なさいましたが、税法の解釈とは別であります。これは法律によつて用語の解釈が違う場合はたびたびございます。これは政策的あるいは経済的に考えて行くべき問題だと考えております。これによつて地方銀行の頭をなぜるのだとおつしやいましたが、現に地方銀行が少しも喜んでおらないことは御承知通りであります。そういうような意図のもとにやつたわけではございません。
  146. 中曽根康弘

    中曽根委員 地方銀行が喜ばないというのは、そういう措置をやつたら喜ぶと思つたが、地方銀行もいろいろ内容が複雑で、利害が対立しておるために、それを喜ばすことができなかつたのだ、私たちはそういうふうに解釈しております。そこで舟山さんがお答えになりましたことについては、地方銀行の方でも相当に議論があるということを知つております。この際伊藤さんから、ただいまの御答弁に対してどういう所見をお持ちか、お漏らし願いたいと思います。
  147. 伊藤豊

    伊藤参考人 地方銀行を、積立金の繰入れによつて頭をなぜる、そういうことについてどう政府が考えられたか、それは私にはわかりません。貸倒れ準備金というものは、その中にはすでに貸倒れになりかけたものもありましよう。十分予備的に保留した性質のものもありましよう。この準備金全体を自己資金の中に組入れるということは、必ずしも地方銀行はけつこうだとは、一概に申し上げにくいのではないかと思うのであります。決してさようなことについて意見がふらつくものではありませんが、とにかく地方銀行におきましては、都市銀行の大部分の銀行のごとく、勘定の内容短期債券発行するのに適当な程度に到達しておらないものが多いのであります。これを急に勘定構成を発行に有利にするために、資本の増加をはかろうとするならば、先刻も中山政策委員お話のごとく、資本の増資をいたさなければならぬ今日の情勢におきまして、さように資本の増加というものが、手をたたいて歯を拔くようなかつこうにはなかなか参りません。ただいまの市場の情勢は、銀行の株価はおそらく五十円を割り、四十円に近からんとするような状態にあるものが多い。そのときにおいてさような債券発行するがために、にわかに資本金を増加いたそうとしても、払い込んだその日に五十円が四十五円になるような増資には、なかなか賛成し手が少いと思われるのであります。なかんずぐ地方の株主を背景といたしておる地方銀行においては、別してのことであると私どもは考えます。この際においてさようなかつこうの、簡單な考えによつて地方銀行が押えられるものとは私は考えませんが、どうかこの状態にかんがみ、何とでもして歩調のそろうた資金吸收方法を確立し、なお長期金融機関專門金融機関、商業金融機関、各種の金融機構に関する検討をもすみやかに完了せなければならぬときであると私は考えるのであります。地方銀行情勢は、短期債券発行につきましては至つて注意深く、地方の産業資金の枯渇をおそれおるという状況は、われわれ地方金融の第一線に立つて活躍しておる者の耳には、ひんぴんとこたえて来るのであります。こいねがわくは政府におかれましても、議員各位におかれましても、穏便なる処置によつて適当な方策を考慮されんことを希望いたすのであります。
  148. 中曽根康弘

    中曽根委員 ありがとうございました。  大蔵大臣お尋ねいたしますが、無記名預金がいけなくなつて、これはできないと言われる。そのかわりに、定期預金にかわるものとして無記名債券発行する、こう言われておるのであります。ところがりくつから考えてみて、無記名預金がいけなくて、無記名債券がいいというのは、どうもりくつに合わない。両方いい、あるいは両方惡いというならわかる。片方がよくて、片方だけ惡いというのはどういう意味でありますか。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 無記名定期預金もやり、あるいは割引金融債券も出すというような方法があると思いますが、御承知通り、無記名定期預金というものは、一昨年でしたか、臨時の、銀行局長が何かの通牒で行つたと思います。別に法律に無記名定期預金とかなんとかいうものがあるわけではない。実際問題としてそういうことが行われたのであります。しかるところ、株式の名義書きかえの問題とか、あるいは無記名定期預金の問題とか、あるいは支払調書提出の問題で、シヤウプ博士が来られまして、いろいろな改革案出されたのであります。その当時株式の名義書きかえは一箇月とか、二箇月以内にしなければならぬという法律も出そうでありました。また無記名定期預金はいかないということもあつたのであります。その役株式の名義書きかえ等も、日本の株主名簿が一箇所にしかないとか、いろいろな手数でうやむやになつた。しこうして無記名定期預金の問題も、やはりいかないままで行つておるのであります。しかるところ今の割引金融債の方は、無記名で出ている例が昔からある。しかもこれは話題に上つていない。そこで私は資金吸收の重要性から考えまして、今まで行われて来たもので、しいて反対のないものならやつてつたらいい、こういうことで無記名の割引金融債発行は適当である、こういうことに相なつたのであります。  なお、先ほど東京銀行の人が答えるときに、私が会心のえみを出したのは、日本興業銀行長期債券発行するということになつておりながら、三年もの、一年ものの割興も出している。あの法律によりまして一年ものの割興を出している。だから私は、あの法律によつて日本興業銀行が一年ものの割興を出しておれば、今度のもあの範疇に入れてもいい、こういうことでありまして、今のはなかなか名答弁であつたと思つて会心のえみを出したのであります。
  150. 中曽根康弘

    中曽根委員 無記名定期預金を復活させろという声が、非常に金融界には多いし、ただいまの地方銀行代表者も、これを非常に痛論しておるのでありますが、無記名定期預金を復活させるということはできないということですが、あれによつて約一千億の金を吸收したということをわれわれは聞いておりますから、むしろ無記名金融債なんかよりも、無記名定期預金を復活させる方が、歩調を合せて行くというためには一番いい政策であると思います。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 考え方といたしましては、そういう考え方もあります。私もこの問題につきまして、ちよつと関係方面にも触れたことがありますが、これをあまり触れますと、かえつて今の割引債券のようなものにも影響すると思いまして、深く触れなかつたのであります。それで私の心理は、無記名定期預金で三箇月あるいは六箇月あるいは一年ものならば、この際割引債券を出した方が、金融界全体のためにいいじやないか。そこである特殊の銀行がどんどん出すということになると、心配するように横流れの問題が起るかもわからない、その横流れは好ましくないので、発行の限度をアドヴアイスして行こう、こういうことであります。私は銀行家が無記名定期預金を非常に熱望されることも知つております。しこうしてまた、関係方面がこれを強力に否定せられていることも知つている。しかし資本の蓄積にこれはきわめて重大なことでありますから、私はこの際債券発行という道をとるのが、資本の蓄積、資金の吸收に非常に便利であると考えたのであります。
  152. 中曽根康弘

    中曽根委員 資本の蓄積に非常に御熱心なのはけつこうでありますが、私は邪道をふんで行くような感じがしてしようがない。それは先ほど来各関係者が述べられたような理由によるのであります。  そこでちよつと、今大蔵大臣の触れましたお言葉についてお聞きしたいと思うのですが、金融債発行するについては、一定の基準というものを設けておやりになつておるのだろうと思う。ところが東銀債については、大蔵大臣が知らない間に印刷も全部済んでおる。そして一月になつて届出て来た。法律によれば、届出ればかつてにできることになつておる。そこであわてたらしい。しかし初めは二十億でずつと進んで来たものが、急にぱつたり十億に減つた、これはいかなる理由によつてつたのでありますか。やはり何か基準をお持ちになつてこれを切つたに違いないと思うのでありますが、いかなる基準をお持合せでこれを切つたか。今後東銀類似の金融債発行するに際しては、いかなる基準でこの発行を奨励し、あるいは抑制するつもりでありますか、御答弁願いたいと思います。
  153. 池田勇人

    池田国務大臣 大体今の一年以上の定期預金は五分であります。従いまして金利は五分程度で私はいいと思つておりましたが、最近の状況から——最近と申しますを少し語弊がありますが、昨年の暮れごろから、やはり資金吸收のために、一年もの五分五厘ぐらいの利子にしたいという気持があつたのであります。このことは定期預金とも関係があるが、浜口東銀頭取も、そのくらいでいいじやないかと言つております。しかるところ先ほど申し上げましたように、最後の日に引受けますると、五分二厘何ぼ、こうなつております。市中の定期預金の一年ものがまだ五分五厘にきまつておりませんから、大体今の金利はこの程度皆いいのではないかと思つております。  それから土十億を十億に切つたのは、これは初めての試みでありますが、伊藤君その他地方銀行関係の人が、横流れが多くてはいかぬという状況でありますので、そこで初めはやはり少いところからスタートした方がいいじやないか、こういうので一応十億に切つたのであります。しかして今後の問題といたしましては、たとえば一年ものの割興が七分何ぼだつたと思いますが、東銀と非常にふつり合いになる、こういう問題をどうしようとか、あるいは勧業銀行興業銀行とは違つて各地に非常に支店を持つておりますので、勧業銀行がやると、直接業者にタツチすることが非常に多い。こういうことになつて参りますと、勧業銀行がいよいよどのくらいだすか、どういう條件で出すかということは、やはり銀行局の職員としては、一応勧銀その他の人の意見を聞いてみる必要があるというので、そういう全体の條件等につきまして検討を加えておるのであります。今後たとえば帝国銀行とか、あるいは債券発行のできる大銀行は相当ありますが、そういう場合におきましては、大体東京銀行に右にならえということで行くと思います。しこうして今の十億円の分のどれだけ売れておるかまだ数字は存じませんが、どれだけ売れて、そのうちで預金の横流れと思われるべきものがどれだけあるか、たんす預金がどれだけ出て来たかということをしさいに検討の上、私はこの十億という数をふやしてもよいかどうかを研究しようと思つております。他の銀行も右にならえでやらしてけつこうじやないかと思つております。
  154. 中曽根康弘

    中曽根委員 どうも今の大蔵大臣の御答弁を聞きますと、勘でやつておるような気がしてならない。二十億持つて来たが、伊藤さんにちよつと言われたので十億に切る。それでは四十億持つて来たら二十億に、百億持つて来たら五十億に切るというように、発行余力の範囲内で持つて来れば目途をつけてやるというような感じがいたします。大蔵大臣の独断でばつさり切つたり、ふやされたりすると、金融界は非常な混乱を来すだろうと思う。従つて将来の問題として、市中銀行あたりで一番関心を持つておるのは、大蔵大臣がいかなる基準をもつて発行を奨励し、あるいは抑制するか、これは店舗の状況とか、預金状況とかいろいろ見合してやるとおつしやつても、それだけでは満足ができない。どういう基準で公正におやりになるか、もう少し詳細にお話願いたい。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 金融の状況、その他各般の事情を勘案してやらなければいかぬのであります。大蔵大臣がばつさりやられるからといつても、何も非常識なことをやるつもりはございません。大蔵大臣がきめますけれども、やはり金融界の人の意見も聞き、あるいは事務当局の意見も聞いて適当な方法でやるのであります。今からこの條件で何分ということはございません。大体五分二厘程度を最小にして、そうして銀行の貸付あるいは日銀からの借入れの状況等を見て、個々の場合に考えて行かなければならぬと思います。
  156. 中曽根康弘

    中曽根委員 新聞によりますと、朝日信託、富士信託でありましたか、出したいということが出ております。東銀がこれを始めるというと、これは負けてはならぬというので、あらゆる銀行がかけ足で、発行余力をもつておる所はやり出すに違いないと思う。今後いろいろな銀行が届出をして来た場合には、みんなそれを受理してその通り受けておやりになるのですか、それとも東銀のこの分はこれだけで認めるが、帝銀の分はこれだけでがまんしてくれというように調整するのか、ともかく届出主義で何でもできることになつておるから、やろうと思えば何でも強行できることになる。この点をどういうふうに調整されますか。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 最近一、二の信託銀行が計画しておるようであります。これは東銀とは違つて三年程度のものと聞いております、お話通りに届出でできるのであります。しかしそこは、大蔵省といたしましては相談を受けると思います。相談と受けた場合におきましては、内面指導はいたしたいと思つております。
  158. 中曽根康弘

    中曽根委員 その内面指導というのが非常に問題なのでありまして、たとえば内面指導ということをあなたがおつしやいますならば、日本銀行政策委員会とか日銀総裁とか、あるいは大蔵大臣というものは、お互いに内面指導し合いながら、緊密な連繋をとつて金融の調整をはからなければならぬ立場にある。それは協調というものが基本になると思う。ところがあなた自体で日銀の総裁の言うこともきかぬ、政策委員会意見も無視する、自分だけが独断でこういうことをやるというのでは、日本の金融政策上一番大事な、根本的な協調ということをここで破つておる。そういうように非常に荒療治をおやりになる大蔵大臣が、あらゆる銀行から持つて来たものを、はたしてそういうように協調的にやれるものか、大蔵大臣が自分でそれを乱してしまつて、ほかの日本銀行やその他に協力を求めても、はたして協力できるものであろうか、その点についての大蔵大臣の所信を伺いたいと思う。
  159. 池田勇人

    池田国務大臣 おのおの意見があるのであります。しこうして意見が一致いたしましても、その施行についていつからという問題もありましよう。できるだけ協調を保つて行きますが、私は大蔵大臣としての責任の地位上、日本の財政金融のためになるという場合におきましては、一方では協調を保つのでありますが、協調のために自分の政策が行われぬということはいたさないつもりであります。従いまして、協調を保ちつつ自分の意見でやつて行く考えでおるのであります。
  160. 川崎秀二

    川崎委員 ちよつと関連質問があります。私は、この前の質問の際にもお尋ねをいたしたのでありますが、今の最後の、協調を破る場合もあるという言葉は断じて聞きのがすことはできないと思う。日本銀行政策委員会というものは、昭和二十四年六年三日、日本銀行法の一部を改正する法律によつて改正をされた。しこうして政策委員会は、第十三條の三の十に「左二掲グル事項ニ関シ主務大臣ヲ経由シテ行フ国会二対スル毎年ノ報告」として、「金融機関ノ状態及運営、必要ナル法律改正、当該年中二於ケル監督政策ノ変更、実施シタル政策及其ノ理由」とあり、日本銀行の業務の運営ばかりでなく、他の金融機関との契約関係に関する基本的なる通貨信用の調節その他の金融政策を、国民経済の要請に適合するごとく作成し、指示し、または監督することを任務とする重大なる機能を持つている委員会である。しかるにその委員会意見大蔵大臣によつて片つぱしから無視されて行き、その協調を破つてもよいというようなことで、はたして今後の金融政策が円滑に行くものでしようか。私は今の発言は非常に重大だと思う。日銀政策委員会の機能というものは、もとより最後的にはあなたの方の権能に、金融政策の行き方という国家統制上の考え方からするならばあるけれども、そういう協調を破つてもよいのだという暴言は、これは無視することはできないので、もう一度所信を承りたい。
  161. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、大蔵省、日銀政策委員会あるいは銀行協会等は、おのおのその立場で膝をつき合して相談し協調して行くのが本旨であります。そうしなければいけません。しこうして話が十分まとりません場合におきましては、大蔵大臣は職権によつて意思を通すよりほかにないのであります。しこうして大蔵大臣の職権と日銀の政策委員会の職権とはおのずから違つているのであります。日銀政策委員会の職権に関することは、これはそこに書いてあります通りに、政策委員会の意向を国会にかけることもありましよう。しこうして大蔵大臣の職権において、協調を保ちつつ自分の判断でやつて行くというので、何も暴言ではありません。
  162. 川崎秀二

    川崎委員 協調を保ちつつ行くという建前ならばよい、しかし現実に協調は破られている。しこうして重要な金融政策の上において破られたということは、私は非常に問題だと思う。午前中の質疑応答を通じても、一万田総裁は帰つて来るまで待つてほしいという希望的意見であつたと言つているのです。しかも政策委員全体の意向としてそういうことを申し入れたということは、少くともその期間に発行することに対して、反対をしていたということの明確な意思表示だと思う。今言われたこととやや矛盾する。あなたは先ほど協調を破る場合もあるというようなことを言われた。現に協調していないではありませんか。どこに協調しているのです。
  163. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、一万田総裁意見も十分聞きまして、そうして十億円の発行ということについて賛成をしたのであります。私は、協調は保つていると思つております。
  164. 中曽根康弘

    中曽根委員 協調を保つていると言われますが、しかし大蔵大臣と日銀の政策委員会あるいは日本銀行総裁が、円満に話を進めて行かなくて、どうしてほかの市中銀行長期資金銀行の協調が保てるか。基本的なしかも一番大事な問題についてこの法律が出て来たということは、これは政策委員会の考えが間違つているか、大蔵大臣の考えが間違つているかどつちかである。私らの判定によれば、それは大蔵大臣の失政であると考えている。けさほど来各権威者のお話を承つてみても、この金融債を届出主義で無制限に認めて行くようなことになると——あえて無制限とは申しませんが、届出主義で認めて行くということになると、今後金融界の混乱というものは恐るべきことになるだろうと私は考えるのであります。のみならず、預金を中心に資金を吸收して行くという銀行の正常な業務がおろそかになつて、金融債を売りさばくというような横の道に銀行が入つてつてしまうというおそれも十分にある、こういう点からして、私は大蔵大臣の考えの方が関連つておると考えるのであります。  そこで大蔵大臣にもう少し承りたいのでありますが、今度市中銀行東銀債にならつて発行余力の範囲内において届出して来た場合に、原則としてみんなこれを認められますか、どうでございますか。
  165. 池田勇人

    池田国務大臣 大体において認めて行く考えであります。
  166. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると東銀に認めたから帝銀にも認め、ずつと認めるようになると、金融界にどういうような事態が起きて来ると御想像になりますか。
  167. 池田勇人

    池田国務大臣 問題は金利の問題と、そうして東銀発行したその十億円の消化状況等を勘案してきめなければならぬ問題です。しかし東銀だけに認めるというのではありません。ほかのものにも原則として認めます。どの銀行にどれだけのものをいつやるかということは、これはやはり銀行協会あるいはポリシー・ボード等の意見も私は聞きたいと思うのであります。  そこで私は中山君の議論を十分聞いておりませんが、政策委員会でこうきめたとおつしやる。それで大蔵省の方へ私はこういう意見だ、これで何もひざ突き合せて相談してなかつた。ただ私と一万田君は原則としてこういうふうにするのだ、そこで一万田君は自分が帰つてからにしてもらいたいという意向があつたようでございますが、私は二月の十五日から三月の十五日までの間ですから、一万田君が帰つて来てから結論が出る、しかも十億円程度だからまあ今の金融情勢からいつて、とにかくこの際たんす預金その他を十分引出した方がよい、こういうことを言つております。しこうしてこれが池田蔵相の大なる失敗だと言われますが、これは結果をごらんになつたらわかると思います。私は今まではどうこう言つておりますが、日本の資本の蓄積の状況からいつて、しかも無記名定期が認められぬ場合において、これはあとからお考えになつたら、あなたは前言を取消されることがあるかと思います。
  168. 小平忠

    ○小平(忠)委員 関連して……。ただいま大蔵大臣東銀にならつて金融債発行を他の銀行にも認めて行く考えである、こう実はおつしやつたのでありますが、これは今朝来日銀の政策委員なり、あるいは地方銀行代表方々意見を拝聽しまするに、まつたくゆゆしき重大問題だと私は考えるのです。そこで関連しまして、このただいまの大蔵大臣意見に聞きまして、日銀の中山政策委員並びに伊藤地方銀行協会会長意見をこの際承つておきたいと思うのであります。
  169. 中山均

    中山(均)参考人 今朝来自分の意見の大体の基本はすでに申し上げたと思うのでありますが、今大臣の考えておるように、もし不幸にしてそういう余力ある銀行だけで、今のよろしいという法律の建前からはこれは是認せられねばならないと思いますが、はたしてこの法律がいいか惡いか、私ども長年銀行をやつて来た者からしますと、相当信用あるものは実は預金が多いのであります。そういう銀行は今のところ不幸にして債券発行ができない、しかもその債券は無記名であつて税金がかからない。そういうようなへんぱなものを出すことがいいのか惡いのか、私は惡いと思う。銀行界はこぞつてほんとうに手を握つて、この資本蓄積に邁進するが日本の再建上必要であると思う。ただ資金が寄るといつても、へんぱに寄るということならば、それは決してよい状況ではないと確信するのであります。ただ一方的には資金が寄り、——なるほど日本の総量として寄つても、それがはたして日本のためにいいかどうか。地方の中小工業は今金融には泣いております。これをどうしますか。私はそういうことを特にあなた方としてはお考え願いたいと思う。今のようなお話からしますればそういう結果になりますから、何とかこの法律についてひとつほんとうにお考えくださつて、日本の資本の蓄積が公平にできますように、金融機関がなまけておつてそれができぬというのならばこれはやむを得ません。ほんとうに働こうと思つても働くことができない哀れな姿を、何とか是正願いたいということを私としては考えているのであります。
  170. 伊藤豊

    伊藤参考人 大体中山政策委員の言われることを、私の言うこととは腹も一緒、口もほとんど一緒であります。ただ遺憾に考えることは、法律にそれを認めるようにできておりますから、だからこれを押えてしまうということに御遠慮があるのじやないかと思う。私法律をよく知りませんが、道路を歩く者が通行の権利を持つている。前途に金融撹乱という非常に忌まわしい心配があるという危險状態にあるときには、警察官はこれを警察処分として通行どめをする。金融機関にもやはり発行すべき権利があつても、大蔵大臣はこれに対して金融上の警察処分を行われることは一向さしつかえないじやないか。それで私は考えるのに、一応今日までの建前として、そういうふうなかつこうになつたことは遺憾なことであるが、われわれは東京銀行の十億円や二十億円にはへこたれない。先刻もいろいろなお話がありましたように、権利を持つている都市銀行が相次いで若干ずつを発行する、東京銀行に対する対立上の立場からこれをやられるということになつたときには、いなかの五十五の地方銀行は青い顏をして指をくわえて見ていなければならぬのであります。このときに金利を少々上げても、この金利には税金がつかぬ、無記名債券には税金がつかない、名前も隠れている。金利の問題とこれとはおのずから離れておるのであります。だから金利問題とこれとは一緒にひつつかない。でありますから、ここは私は適当なところで、ひとつ政府者も当の東京銀行も適当に歩調をとられて、あまりいなかのものを心配させないようにされることがいいことだと思うのであります。大蔵省がやられたことが必ずしも頭からしつぽまで不都合であるとは考えませんが、朝来から各種の議論を総合してみますると、そこに何らか考え足らざるところも相当にあるかに私は思う。どうかどてつばらの太いところを見せられて、東京銀行にしても大蔵省にしてもうまくやつていただくように、私は地方金融に関心を持ちます数十万の人を代表して、この希望を申し述べるのであります。どうか適当に御判断を願いたいと考えます。
  171. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの伊藤さんのお話は、非常に私の胸を打つものがあります。これは本日この委員会で聞いておられる満場の諸君の同感するところだと思うのであります。その伊藤さんの御見解につきまして、大蔵大臣及び東京銀行はいかなる御見所をお持ちか、お答え願いたい。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、伊藤君が地方銀行代表として意見を申し述べられたことも十分承知いたしております。その点は、けさほどから答弁の中にも載つております。ただ道を歩くのに、群衆が来ては警察措置をしなければならぬ。これは群衆が一ぺんに詰めかけるということを前提にして言つておることであつて、われわれはある程度がついておるところは、歩ける人は歩かしても、そう心配がないという確信がありますから、認めたのであります。
  173. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答えいたします。伊藤氏の発言については敬意を表するものであります。あの発言の具体的な結論といたしましては、おそらくは、私の想像するところ、無記名定期預金の復活が一番具体的な解決策だと思うのでありまして、これが諸般の情勢が好転して、無記名定期預金が実行できるならば、私ないし私の銀行も双手をあげて賛成すると思うのであります。しかしながら一面もしこれが不可能だという前提に立ちまするならば、現下敗戰後の栄養失調経済状態におきまして、一番不足なものは資本の蓄積である。その際たんす預金がうんとふえる。これはどちらの責任が知りませんけれども、徴税の攻勢がはなはだ急だ、また徴税の方法がはなはだせつかちだ、こういつた点から通貨ないしは金融に対する信任がなくなり、従つて千円札の退蔵が非常にふえて数百億円以上になつておる、こういう状態である。これをそのまま放置すれば、一種の潜在インフレとなり、何か動機があれば、公然と購買力になつてインフレを助長する。それがたんす預金のままでおれば、それは何ら生産面に寄与しないでマイナスになる。こういうものを吸引するのにどういう方法があるか。これは普通の預金の方法では実はできないのであります。この際にいろいろな特典を持つた無記名債券が出ますれば、奥深く隠れておるこういつたものが吸引できる。これが日本の生産金融にまわつて行くということになれば、国民経済としても非常なプラスになると私は考える。その意味におきまして、今後こういうものが各銀行において発行されることを個人としては希望いたします。要するに個々の銀行立場からだけでなしに、日本の国民経済全般の立場から、この問題を考慮していただくことを指摘したい、こういうふうに思うのであります。  なおそれならば東京銀行は第二回、第三回を出すか出さぬかというようなこともあるかと思いますが、おそらく伊藤さんのお話にもそういつた期待があるかと思いますが、この段階においては私は言明の限りでないと思います。趣旨は国民経済の立場からいつて、建前からいつて、出てしかるべきものだと考えております。但し現在二回、三回を発行するかということにつきましては、言明の限りではありません。
  174. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの大蔵大臣東京銀行関係の方の御発言と、政策委員あるいは伊藤さんとの御発言の差というものは、やはり事態の判断が違つている。要するに金融界に撹乱が起きるか、あるいは目的のために手段を選ばずに何でもやつていいか、こういうことが問題になつて来る。そこで私は第三者に近い興銀勧銀の権威者に、一体これを届出主義で今後も認めしやつたらどういうことが金融界に起るかということをお教え願いたいと思います。勧銀の方からどうぞお願いいたします。
  175. 堀武芳

    堀参考人 短期債の問題はもうすでに十分論じ盡されていることでありますから、私から申しませんが、法律の趣旨は、長期資金の調達を目的とするということは申すまでもないことであります。その意味において、私の方はすでに法律施行以来三年の債券をできる限り発行している次第でございます。その三年の債券というものは、長期の点においていろいろ問題があるだろうと思いますけれども、現在においてはほんとうの長期資金の調達を目的とするという点からいつて、本筋であると私は考えております。今度の短期債は同じ法律によつて発行ざれることになつているのでありますが、これは一面は長期短期ということについていろいろ見解の相違もあると思いますが、私どもの考えとしては、やはり三年ものが本筋であつて、一年の預金の変形のようなものは、本筋ではないと考えあおります。ただしかし、しばしば問題になりますように、現在資本蓄積が最も重要である。その資本蓄積の目的を達成するために、それに効果のあるものはできる限りいろいろな方法を動員してやつて行かなければならぬということは申までもないことでありまして、そういう意味におきまして、本筋でないものでも、効果があれば、それはできる限りやつた方がいいということは当然のことであると思います。その意味において、短期債が取上げられておることは、十分意義のあることだと私は信じます。ただそれを実行するにあたりましては、ことに最も安定を尊重する金融界において、新しいことが実行される場合におきましては、摩擦とか混乱とかいうおそれがないということ、受入れ態勢が十分できておるということが、量も望ましいことであると信ずるのであります。そういう点において、先ほどから見解の相違がありますので、今後の見通しの問題になることでありまして、非常にそれぞれによつて見方が違うと思いますが、私は少くとも相当数の銀行がそれに反対しておる場合におきまして、これをどしどし強行するということは、時期がまだ少しどうかと考えております。時期の熟するということが必要ではないか。時期が熟するにつれて、順次その効果のある発行方法をどしどしと議せられて行くのがいいのではないか、そういうふうに考えまして、けさ申しましたように、私ども銀行としては、今のところは、発行を差控えておる次第でございます。要するにその効果が最も尊重されるべきであり、またそれに基く惡影響がどこまであるか、その点が考慮さるべきものであると思います。私としては、今のところは多くの銀行がどしどし発行して行くということについては、まだその受入れ態勢の面において、時期が少し熟していないじやないか、こういうように信じておる次第であります。
  176. 中山均

    中山参考人 御質問お答えいたしますつこの問題は、根本は先ほどからお話が出ておりますように、日本の金融制度が確立していない、特に長期金融の機構がはつきりしておらぬというところに原因があるのだと存じます。これは問題になつております銀行等債券発行等に関する法律というものが生れて参りました経緯をお考えになれば、はつきりすると思うのであります。この法律がなぜ生れたかと申しますと、原因は私ども銀行にございます。二十四年の暮れごろから興業銀行債券発行がすでに限度に近くなつておる。興業銀行債券発行限度は、二十五年の三月末日まで、日本興業銀行法の規定にかかわりませず、払込資本金の二十倍まで発行できるという法律があつたのでございますが、これは二十五年の三月末で失効になる法律であります。従いまして興業銀行といたしましては、当時日本の長期金融の主体的な立場にございましたので、この限度の拡張が問題でございまして、ここで倍率、すなわち二十倍という倍率を伸ばすことを各方面にお願いしておりましたのですが、非常に難色がございまして、一面当時不動産金融の問題の重要性が叫ばれておりまして、これを勧業銀行にやつていただこうというような機運が強かつたのでございます。それともう一つは、見返り資金の私企業投資というものが、もつとわくを広げる必要があるということから、通産省の方から司令部の方に折衝された。こういつた問題が、結局従来の長期金融機関、たとえば興業銀行資本金を見返り資金によつて持つことによりまして、この二十倍の資金が新しくできるということが問題として提示されました。その結果、立法の経過は最初こういつた銀行債券を出すという建前ではなくて、むしろ見返り資金によつて優先株式の引受を受けた銀行、つまり当時予想されておりましたのは九特銀であります。これらの銀行債券を出すといつた、優先株式の発行に関する法律というような形で最初スタートしておりました。そのときたまたま終戰後問題になつておりました特殊銀行の廃止という問題が、それに関連いたしまして——ここで従来の特殊銀行と申しますものは、特殊銀行法によつて債券発行の権限がありましたのですから、この法律を廃止した場合には、つまり普通銀行になるわけでありまして、これらの普通銀行債券を出させるという形から、今申し上げました見返り資金の優先株式の発行、この二つが一緒になつてできたのが銀行等債券発行等に関する法律であります。従つて当時の立法者の意思あるいは立法の経緯から申しまして、普通銀行、先ほどの第一條に明示されております長期金融を円滑にするという建前から、債券を出して長期金融を積極的に担当するあるいはやるというようなことは予想されておりません。従つてこの法律短期債を出すということが妥当かどうかという問題は、あの第三條に債券の定義がございます。そのところには「債券とは、通常金融と稱されるものをいう。」というふうになつておりまして、この「通常金融債と稱されるものをいう。」というものの中に、そういつた短期債が入るかどうかということが一つの問題でございまして、これは法律の概念がはつきりしておりません。従つてこれを妥当かどうかを判定するのは、むしろ実体論から行くべきだと思います。この実体論については、先ほど来皆様がお話なつておりますので、ほとんど問題が出盡しております。従つて短期債発行ということが、この法律によつてはたして妥当かどうかということについては、多少私の見解は大蔵省の御見解とは違います。問題は先ほど来申し上げましたように、この金融制度あるいは長期金融の機構がはつきりしておらぬというところにあるのでございまして、私どもといたしましては、むしろこの問題を契機といたしまして、根本的に問題が解決されるという方向に持つて行くべきだと思うのであります。  それからもう一言申し上げますのは、これは午前中にも申し上げましたが、割引興業債券東銀債というものは、私は異質であると思うのであります。これはなかなかおわかりにくいと存じますが、午前中の御説明で申し上げましたように、割引興業債券式のものは、無記名定期預金とか定期預金とは全然関連なく、数十年来出ておるものでありまして、その経済的な作用あるいは銀行経営面から、長期金融を担当する機関として、これが補完的作用をなすものであります。従つて金利が、現在定期預金金利とは何ら関係なしにきめられておるというようなことからお考え願えば、異質のものであるということがはつきりして来ると思うのであります。この点、一つつけ加えて申し上げておきます。
  177. 中曽根康弘

    中曽根委員 ありがとうございました。ただいまの権威者のお話を承りますと、大体第三者から見ると相当混乱がやはり起るであろう。ともかく東銀が始めて、市中銀行が負けまいとしてみんな濫発するように出て来ると、これは地方銀行に及ぶのみならず、各銀行間の連帶自体が失われて来て、結局は日本の金融機構というものが相当ひびが入らされる、こういうおそれが十分あると思うのであります。そこで大蔵大臣のいる前で、きようはせつかく権威者に来ていただきましたので、ぜひ教えていただきたいと思うのであります。まず伊藤さんが日本経済新聞にお出しになつた短期債発行是か非か」というこの論文、私は非常に感佩して読んだのであります。この中にはいろいろな問題が含まれております。これはぜひわれわれにとつてもう少し内容を具体的にこの機会を利用して説明していただきたいと思うのでございますが、していただけますでしようか。大体今までおつしやつたことが入つていると思うのですが、たとえばあなたはこういうふうな見込みを書いておいでになる。「これが銀行間の資金争奪戰の具と化するときには、金利水準は混乱し、銀行資金コストは無用に高騰し、発行余力を維持するために無理な増資を繰返したりその他いろいろな原因で経営の安定性を害し、健全化に逆行ずることになるだろうことは想像にかたくない。」これは私は相当注目すべき文章であろうと思うのでありますが、こういうお見通しをなさる基礎をもう少し実際家の立場から御説明願いたいと思います。
  178. 伊藤豊

    伊藤参考人 先刻私は短期金融債発行せられる場合における資金の争奪のことが、必ずしも金利とつながりがあるのではないというような言葉を用いましたが、金融債というものは、すなわち無記名債券というものは、金利にかかわらず、税金の点において非常に妙味があるのであります。金利は少々安くてもよろしい、場合によれば金利はなくてもよろしいという考えのもとに持つて来る者もないではない。それでたんす預金なつておるものは、たんす預金にしておけば金利は一厘もつかない。しかしながら税金からは免れる。しかしどろぼうには危險を感ずる、火事にも危險を感ずる。短期債券になるならば、金利は少々安くてもその方がよろしいというかつこうになつて来る場合には、必ずしも金利をもつてこれを防遇することはできないという意味であつたのであります。現在一年ものの定期預金は、年五歩でやつております。定期預金の現下の金融情勢は、五歩のものが九歩八厘九毛というものになつております。従つて五歩二厘五毛というものは、それだけ高い負担を金融機関はいたすのであります。かようなぐあいに、ただの定期預金は今九歩八厘九毛も負担をしておる。その上に金利をよけい出せば、この争奪をいくらか食いとめるこができるというような感じをもつて金融機関がこれに対応しようとしたならば、この九歩八厘九毛はどこまで上つて行くやらわからないのであります。それはもつとも金利調整法において適当に押えておるから、反則はないはずだと信じますけれども、傾向としてはさような気分が生じて来る。預金の争奪に会うことの苦しさのためには、ここにいかなる考え違いが起つてつて来ないとも限らないということを私は強く心配するのであります。これすなわち健全を誤つて、きわめて不健全な方面へ経営の手段が流れて行きはせぬかということを心配する一つの根拠一であります。ただいま東京銀行代表お方は、たんす預金を引出すことに相当の効果があることをるる論述されました。大蔵省またこの点に大なる趣味を持つておられる。(笑声)やらないよりもやつた方がいいというお考えであることは間違いないのであります。しかしながらたんす預金金融債によつて引出しをなし得るものとするならば、これは私どもは双手をあげて大賛成をするものであります。たんす預金を引出すがために、われわれは夙夜苦心さんたんいたしておるのでありまするが、金利ではなかなかひつぱり出すことができない。ゆえにかくのごときことを考え出したものでありますから、この目的がたんす預金に限定され、真に効果がたんす預金にのみ集中し得るならば、これは何をかいわんやであります。たんす預金吸收の効果はありましようが、しかしながらたんす預金にあらざるものがどれだけ横流れをするか、これはおそらく想像することはできない。またこれがために、はたしてたんす預金がいかほど出るか、これも実際にやつてみなければわからないことなのであります。しかしながら一応想像し得ることは、たんす預金に伴つて、安定せる他行の預金が随伴して行われますということは、大なる関心を持つて見なければならぬと思うのであります。申されることはまことにけつこうです。しかしながら私どもの経験によりますと、決してたんす預金ばかりが出て来るものでなくして、それよりも手近な隣店の預金が争奪される。銀行ばかりでなく、どこの業界でも支店長心理、使用人心理という一つの割切れざる、なかなかやかましい心理があつて、主人に対して忠実を発揮するためには相当の努力をする。その努力のやりようというものは、手近なところから効果を上げようと努める傾向が多いのであります。これを考えるときに、達方のたんす預金まで行かないで、ごく手近な隣店の定期預金が、この方へとうとうとして流れる、この方が早いのじやないか、ここを私は非常に心配いたすのでありまして、経験のないお方にはなかなかぴんと来ないが、私どものように長い経験を持つておりまする者からいいますると、必ずしもたんすの鑛に手がかからないうちに他のひきだしに手がかかる、預金通帳に手がかかるというかつこうになりはせぬかと考えるのであります。他に申し上げることもございますが、これでごめんこうむります。
  179. 中曽根康弘

    中曽根委員 舟山銀行局長は、この法律が審議されましたときの答弁で、地方資金が中央銀行に吸收されてしまうではないかという質問に対して、いや地方銀行には何が還元するような形の措置をとろう、こういう答弁をしておられたことを私は記憶しています。それは具体的にどういう政策でおやりになるお考えでありますか。
  180. 舟山正吉

    舟山政府委員 お尋ねの点は、勧業銀行債券発行いたしまして、資金が相当勧業銀行のふところに入る、これをそのまま中央に融資するのでは、地方の資金が枯渇するではないか、こういう点を勘案いたしまして……(「大蔵大臣帰つちや困る」と呼び、その他発言する者あり)地方銀行勧業銀行の貸付の代理店として認めるというような方法を講じまして、地方の金融に資したい、そういう指導をしたいということを申し上げたのであります。
  181. 小坂善太郎

    小坂委員長 四時に約束してあるのだから、池田君に質問があるなら先にやつてもらわないと気の毒だと思うんですがね。
  182. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいま舟山銀行局長の御答弁を、大へん失礼いたしましたが全部聞き漏らしたのでありますが、地方銀行に対して代理貸しか何かのような形で融通してやるというようなことが書いてあつたと思いますが、それを具体的にもう少し説明していただきたいと思います。
  183. 舟山正吉

    舟山政府委員 勧業銀行債券発行によつて得ました資金を、地方に還元するための一つの方法といたしまして、地方銀行勧業銀行の貸付の代理店といたしまして、この債券発行総額うち何割かは、必ずその方式によるという定めをいたしたらばどうかということを当時提案したのであります。その後それは実行されております。
  184. 中曽根康弘

    中曽根委員 伊藤さんに伺いますが、この金融債で中央銀行が集めた金を、そういう形でもし万一やるとしても、はたしてカバーできますか、その点についてお答え願いたいと思います。
  185. 伊藤豊

    伊藤参考人 ただいまのお話勧銀に関する問題であつたと思うのであります。勧銀のこれまでの債券は多く地方銀行が持つております。また興銀においてもさようなかつこうにいたしております。それは地方銀行勧銀の社債を持つのであつて地方銀行の余裕の金を勧銀に提供して債券を取得する。そうすることは地方銀行の余裕の金を勧銀興銀に出すのであるが、実際にその地方に勧業貸付といいますか、興業貸付という種類のものがあつた場合にせいそれこれを地方へ還元するように勧業銀行が還元し、興業銀行が還元する、こういうことを債券引受けた地方銀行が要望することは当然であると思う。常に余裕の金を手元に持つていないで、一面においては勧銀の社債とし、興銀の社債として運用しておいて、そして半面地方にときどき起ることあるべき長期資金を代理貸しの形式によつて貸し出す。その金は勧業銀行の方から送つて来、興業銀行の方から送つて来る、こういう方法は今日までも実際にやつておるのであります。それが地方によつて、またときによつては厚い、薄いがありますけれども、そういう方法はやつております。しかしこの東銀に関する問題においては、まだ私どもはそれを考えるわけにも行かないので、そういう事態に頭を費したことがございません。
  186. 中曽根康弘

    中曽根委員 舟山銀行局長に伺いますが、この金融債一般について、勧銀がやつたようなそういう措置をおとりになるつもりでありますか。そういう意思はないのですか。私はこの前の速記録をうろ覚えに覚えておつたために、それが勧銀のみに限定した話であるか、あるいは東銀も含めた一般の金融債について、そういう措置を考慮するという意味の御発言であつたのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  187. 舟山正吉

    舟山政府委員 ただいまの地方還元の問題は、当時の国会におきまして、勧業債券地方銀行引受けるが、それでは資金を地方から中央に引揚げつぱなしで、地方の資金が不足ではないかということが出たことに関連いたしまして、勧業銀行地方銀行引受けてもらつた勧業債券の手取金のうち、歩合をきめまして、これを地方銀行をして代理貸しさせる、こういう構想であつたのでございます。今度の東銀債の問題につきましては、これは私どもの方針といたしまして、むしろ銀行引受けるということを認めない。個人相手、個人消化を目標とするということを指導しておるのであります。従つて中央銀行の代理店とする等の方法はさしあたつて考えられないと思いまま。
  188. 川島金次

    ○川島委員 関連して……。ただいまの舟山局長の答弁は、まことに食言もはなはだしいものだと私は思います。そもそも銀行等に関する債券発行等に関する法律案を審議したその当時、私は今日ある事態をあらかじめ予想したのです。発行余力のある有力銀行はそれでもよかろうが、しかし余力のない弱小銀行も国内には相当多数にある。一体そういう現状の上に立つてこの法律が実施された場合、必ずや地方の零細な預金をも吸收されるおそれが必至になるであろう。そういう問題に対して局長はいかなる考えをこの法案の実施にあたつて持たれているのか、この事柄が実現すると、国内の地方産業に関する金融の問題について深刻な、致命的な打撃を与えるおそれがありはせぬかということで、私はそのとき局長に御質問を申し上げたはずであります。その答えとして今中曽根君が読まれておるのでありましようが、局長の答弁を今質問の資料として出されたと思う。そのときに局長は明確にそういう心配は御無用だ、この法律を実施いたしまして、そして有力銀行債券発行し、その場合において地方の資金に大きな影響があるような場合、それに対して還元的な融資の措置を講ずるから、その点は心配はされなくてもよろしい、こういう意味のことを明確に言つているのです。それはよもや頭のいい舟山局長さんお忘れないだろうと思う。それを言つているのですよ。私は当時その質問の当事者なんです。だからそれを私ははつきり覚えているのですが、今の中曽根君の質問に対する局長さんの答弁は、たいへんな食い違いがあります。それはどういう心境の変化でそういうことになつたのか。あるいはその当時のことはまつたくお忘れになつてしまつたのか、もう一ぺんその点をひとつ、これは重大なことなんです。そのことが今日問題になつているのです。もう一度重ねて明快に……。
  189. 舟山正吉

    舟山政府委員 ただいまお尋ねの点は、私記憶は間違いございません。当時として資金を地方に還元するということを申し上げた趣旨は、勧業銀行の代理貸しを頭に置いての答弁であつたのであります。当時それは勧業銀行地方銀行との間のビジネスの問題でありますから、政府委員といたしまして、もうこういうふうにきまつたとか、あるいは名前をあげたり、その方法論を具体的に申すことはいたしませんでしたけれども、それを頭に置いて答弁しておりますことは、私ははつきり記憶しております。
  190. 中曽根康弘

    中曽根委員 第七国会大蔵委員会会議録、第三十四号の四ベージにあなたの御答弁が書いてあります。この御答弁はこういう文章ですからよく聞いてください。川島君の質問は、要点だけ読みますと、「有力銀行が大部分を独占して行くような形になるのではないか。かりに債券発行を認められましても、その債券の実際の目的を達成するのは、結局地方においても有力な中央銀行の支店等がかき集めてしまう。」そうことを言つているわけです。それに対してあなたの御答弁は、「たとえば定期預金にかわるような、簡易な形の銀行債券といつたものの発行も考えられるのであります。」これはさつき御答弁になつたと同じことです。「ただ全体といたしましては、一般の銀行短期商業金融を営むということを本旨とし、そこに重点を置いておりますために、債券発行を希望するものもないという状況であります。なお債券発行による長期金融は、比較的コストがかかりまして利ざやも狭い。従つてどの銀行もこれをなすことができる、あるいはこれをなすことを欲するという状況ではないのでございます。この点御了解願いたいと思います。なお」ここからです。「資金を地方から吸い上げまして、中央に集中し過ぎはしないかという御懸念でございますが、これは事宜によりまして、たとえば債券発行銀行が地方から集めました資金は、そのまま地方銀行に中央銀行の代理貸付を認めるといつたようなことも指導して参りまして、資金集中の弊のないように努めて参りたいと考えております。」と、ちやんと書いてあるのです。どうです、これは。
  191. 舟山正吉

    舟山政府委員 ただいまお読み上げになりましたことは、私のただいま申し上げたことにぴつたり合うのであります。川島委員から中央有力銀行というような用語をお使いになつておるように、今拝承いたしました、それだけのお読み上げでは、質問の全容がはつきりいたしませんが、それは主として勧業銀行が地方を荒すというようなことが非常に問題になりまして、それに対するお答えをいたしたつもりであります。
  192. 川島金次

    ○川島委員 関連して……。どうも私は率直に申し上げれば、舟山さんという人はそういう人ではないと思つた。非常にすなおな、非常に品格のいい人だと思つた。従つてきようの今までは、あなたのいろいろのお言葉対して、相当私は信頼を持つてつたのです。どうもしかし聞き捨てならぬ。そういう詭弁を弄されることは、国会の権威のためにも、私はお取消しを願いたいと思うのです。少くとも重大な大蔵委員会において、私も真剣な立場に立つて、そうしてこの法案が上程されたときに論議を重ねたわけです。そしてこのことのあるを予感いたしましたので、私は真剣な立場で承つた。何も勧業銀行の問題のときの委員会ではございません。銀行等債券発行等に関する法律案のときの私の質問であり、そしてあなたの答弁なんです。そうしてまた私はあなたがそういう率直な、しかも正直であろうと思う答弁をされたので、その答弁に私は了承したのです。ところが今のお話によりますと、まるで勧業銀行の問題だとか、有力銀行という言葉を使われたから、勧銀だと私は思いましたというような言葉を使われることは、詭弁もはなはだしいと私は思うのです。そういうことであつてはならぬと思うのです、もつとすなおであつて私はいいと思う。そのときはそうであつたが、今日はできないというなら、それでいいのです。そういうふうに直せばいいのです。何も私は追究しようとは思いません。少くとも、私が質問した、それであなたが答弁した、それは速記録にも載つておるのですよ。それをそういう詭弁を使われて、言を左右にして、逃げ口上みたいな形にとれるような言葉を使われるということは、私はあなたを思い直さなければならぬ。速記録に載つておる、ごらんになつたらいい。勧銀の問題じやない、私が有力な銀行と言つたのは何も勧銀をさしたのじやない、一般銀行債券発行させるという法律なんです。私もばかじやない、どういう法律つたか知つておる。そうしてこの法律が実施されれば、どういう事柄になるかということも、私はある程度察知ができていた、それで心配だから尋ねた。地方銀行は出せないのじやないか、有力な銀行債券発行する余力があるのですから、それで債券発行されたならば、地方銀行の持つておる預金ですらも資金が吸收されるおそれがあるのじやないかというのが、私の質問意味なんです。ここに出ている、そのとき答弁された言葉が今の言葉なんです。それであなたは非常に人格の高い、品位の高い方だと思いまして、そのときはそう信じておりましたから、そういう方針をもつて進むものなりとしての答弁で、そのまま私は了承したのであります。まことに聞捨てならぬことです。もう一ぺん思い直して、すなおな御答弁を願いたい。
  193. 舟山正吉

    舟山政府委員 ただいまきわめてすなおに私の答弁の趣旨を申し上げたのであります。当時勧業銀行の問題といたしまして、地方銀行資金を代理店貸しで還元するということも考えておりましたから、それを答弁の上にも申し上げ、それも現に実行されておるのであります。その前提といたしまして、債券発行する、それを地方銀行引受ける、地方銀行の金を持つて来るのでありますから、これを還元することが必要である。こう考えたわけでありまして、そこにいささかもごまかしも何もない、真相そのまま申し上げた次第であります。
  194. 中曽根康弘

    中曽根委員 舟山銀行局長は食言していないと言われるけれども、ここにありますからよく読んでください。私は種もしかけもありません。時間が大分たちましたから、私ばかりすると恐縮ですから次の党の方に渡しますが、私はけさほど以来各関係各位の御意見を承り、政府当局の意見も聞いて、非常に不愉快に思う次第であります。どういうことかというと、大体事態は見えすいておると私は思う。要するに銀行等債券発行等に関する法律というものができた。従つてこの法律によればできるのだ、それが妥当かいなかは問わない、法律で許されておることであるから何でもやろう、また官僚がつくつたのだからやつてみたい、こういうようなことから、ある銀行債券発行しようと申し出たら、それを何とかスムーズにやらしたいというために、ほかの方面の顧慮を忘れて、たとえば東銀が出したいというので、しからばこれにじやまになるというので、割興を遠慮させる、勧銀を遠慮させる、あるいは地方銀行がそれによつて騒ぐといけないというので、地方銀行に対しては貸倒れ準備金を中に入れて頭をなぜようとした、ところが利害が錯綜してこれも一致しない、従つて一つの無理をやろうとするために、あらゆる方面に無理が出てしまつたというのが、私がけさほど以来各位から聞いたところの結論であります。目的のためには手段を選ばない。東京銀行だけを出させるためには、ほかのものは犠牲にしてもいいのだ、そういうような、私は中にどんないいかげんなことが入つておるかどうかは知りませんが、ともかくそういうことだけは、はつきりしておると思うのであります。従つてこの問題は、率直に大蔵省においては政策がまずかつた法律的には合法的であるかもしれないが、少くとも妥当でなかつた、そういう点を御反省になりまして、先ほど伊藤地方銀行協会会長さんから御開陳になりましたように、私はここで何も政府に面子を捨てろとかなんとかいうことは申しません。適当な、穏便な措置を私はすみやかにとらなければならないと思うのであります。特に今度の問題を契機として、われわれが発見しましたことは、これをやられると、預金という安定した資本蓄積を忘れてしまつて銀行というものが正常な業務から離れてしまつて、あたかも商品券を売るように、あるいは金融債というものは、これは銀行券になつておる、銀行が出すあの銀行券と同じように、転々流通もするだろうし、打歩もつくであろうし、金融界は撹乱するということに結論はなつて行く。そうして支店長は、それの売りさばきばかりに身を入れて、預金の吸收には身を入れないということになる。それが考課表に出て来るということに結局どうしてもなります。そういう点から、どうしても日本の銀行業務の正常なる事態をこれによつて撹乱して、変な邪道の方へひつぱつて行くおそれがきわめて多いと思うのであります。そういう点もよくお考えになつて、自分の政策を修正していただきたい。特にそれが地方銀行を非常に圧迫する。結局それは地方に仕事を持つ中小企業、零細な企業に対する金融というものを非常に圧迫して行くということにもなるのであります。さらにそれは中央においては、今までの特銀の特色というものを抹殺してしまう。銀行等債券発行等に関する法律ができましたのは、先ほどもお話がありましたように、勧銀を中心にしてああいう話が出て来たのであつて、あのエイドによる優先株式を発行するというところまで、ずつと進めて来た経過を見れば、やはり特殊銀行というものは、特別銀行というものは認められないから、一応はすべてのものに権限を与えておくけれども、事実上の運用というものは、日本の長期銀行短期銀行というものとわけて、筋道を立てて進んで行こう、こういう暗默の了解というか、金融界の通念で私は進んで来たのに違いないと思う。しかしそれをこの段階になつて撹乱して、一般の市中銀行にもこのような債券を濫発させるということになると、長期資金の調達というものを、どのチヤンネルに入れるかという問題が出て来るのであります。もちろん東京銀行側には東京銀行側の言い分がありましよう。ユーザンスが五百億もたまつておるという話である。また店舗が少い、預金の吸收ができない、いろいろあることに違いない。しかしそれは日本の為替銀行のあり方というものにおいて、別個に考慮さるべきものであつて、それを救済するからといつて、ほかの銀行の歩調を乱すというところまでやるのは逸脱であります。こういう点を明確に意識してくださいまして、ただいまの政策をぜひとも修正していただきたい。  最後に特に私の遺憾に思うことは、日本銀行総裁あるいは日本銀行政策委員会、こういつた権威ある機関の勧告や意見というものを、まつたく抹殺、無視してしまつて大蔵大臣が自分の権限だと称してかつてにやつたということであります。銀行業務というというものは、銀行局長以下皆さん御存じのように、連帶的な要素が非常にある。協調融資であるとか、あるいはコルレスであるとか、あるいは手形の交換であるとか、ともかく緊密な連繋をもつて進んでおるのが、銀行業務というものであります。従つてその協調が破れるということになれば、えらい混乱が世の中に出て来ます。金融界に混乱が出て来るということは、産業界に混乱が起るということであります。従つてこれは軽々に見のがし得ない問題であります。その一番根本である大蔵大臣と日銀総裁と日銀政策委員会というものが、このように意見が隔離しているのに、何も緊急にやらなくちやならぬという必要はなかつた。これは先ほどお話になつた通りである。日銀総裁が帰るまで待つても十分やれる問題でもある。にもかかわらず、日銀総裁の留守をねらつて——ねらつたかとうかわからぬが、ともかく留守中にこういうように歩調を乱すことを上の人がやつてつて、どうして一般の銀行金融界というものが協調できますか。この点において私は大蔵大臣の重大な失政があると思うのであります。こういう点については、私はあしたまたさらに質問する機会を留保いたしまして、大蔵大臣から正式の言明を得ることを留保いたしまして、きようは一応これで私の質問を打切ります。
  195. 舟山正吉

    舟山政府委員 金融界に混乱や動揺のあつてはならないことは、私どもまず第一に注意しておるところであります。今度の東銀債発行につきましても、御質問を通じまして、大体これは非常に金融界に混乱が起る、それもかまわずにあえてするのだというようなふうにおとりになつておりますが、銀行家というものは、先々までも非常に心配いたします。それでありますから、先のことも考えなければならないのでありますけれども、私は現在の金融情勢のように、刻々かわつて参ります際には、この不安動揺というものを防止しながら、新しいこともやつて行かなければならぬものであろうと思うのであります。東銀債の問題にしましても、私どもの考えといたしましては、これは個人消化を主とするとか、あるいは、かりに他の銀行短期債発行するごとになりましても、その発行総額、あるいは募集の方法、あるいは條件、これらについて愼重な態度をとらなければならぬということは、初めから表明している次第でございます。そこで東銀債発行がきまりましたあとでも、さつそく他の同様な債券の善後措置につきましても、相談をしたいといつたような気持でやつたのであります。これをただちに東銀債発行のために、他の債券に対して無理をしいるといつたふうにおとりくださることは、はなはだわれわれの本意に合わないところでございます。
  196. 小坂善太郎

    小坂委員長 川島金次君。
  197. 川島金次

    ○川島委員 実は大蔵大臣に、重要な事柄について数点お伺いを申し上げたいと思いましたが、たまたま席をはずしてしまいましたので、大蔵大臣に対する質問は他の機会に讓つて、本日は留保をいたしておきたい。それを委員長に御了承願いたいと思う。  そこで時間の都合で端折つてお尋ねをしたいのですが、まずこれは舟山局長にお伺いいたします。実はたつたきようの午後四時十分ぐらいまでは、舟山局長の今日までのいろいろな委員会における答弁等につきましては、非常に私はまじめな気持で受取り、非常に信頼を持つて来た。しかし先ほどの言葉で私は非常に意外に感じておるのです。従つてあなたに本気になつて私は今後質問を申し上げていいかどうか、たいへん考えるところもあるのですが、しかし一、二重要な事柄でありますので、簡單にお尋ねをしておきたいと思うのであります。  と申しますのは、少くとも金融政策の問題に関する政府としての事務的な最高の責任者は、あなたであります。政治的な最高の責任は池田さんがもちろん負うのでありますが、しかしその最高の責任を負うまでに至る一切の事柄について、一つのかじとりを行いまする役目は舟山さんにあるのだと私は信ずる。そこでお尋ねするのですが、先ほど来から中曽根君からるる繰返して質問が行われ、そしてそれぞれ関係者から答弁があり、説明などがありましたことを聞きまして、私はまず第一に非常に感じたことがある。というのは一体そういう金融政策に対して事務的なかじとりを行いまする場合に、金融政策の輿論というものを一体どこに求めて行くか、また従来どこに求めて来たのか、また今後ともどこに求めて誤りない、積極的な、しかも円滑な金融政策を行つて、日本の自立経済の速成に寄与したいという方針なのか、ということについてまず承りたい。平たく申し上げますれば、この問題について日銀の総裁も反対だつた政策委員会も具体的に反対をしておる。地方の銀行協会代表者にも反対をしておる。こういう四面楚歌の中にあり、しかも当面の問題になりました当時、東銀代表の方でさえもこの問題について、大蔵省とは異なつたような意見を持つておる。こういう事柄はすでに東銀債券発行に対する内面指導をするまでには、明らかにあなたの耳に入つてつたのであろうと思う。にもかかわらずそれが無規されて今日のような事柄になつておる。一体あなたは今後の日本の金融政策を立て、またそれを実施する場合に、どういうところに傾聽すべき輿論を求めようとされているのか。この点は非常に大切な事柄でもありますので、この点に関連していずれまた大蔵大臣にもお尋ねするつもりでありますが、まずあなたにもこの点を念を押してお尋ねしておきたいと思うのです。
  198. 舟山正吉

    舟山政府委員 金融問題は、範囲も非常に広いのでありますし、また刻町変転する。それで、大蔵省といたしましても、資料の收隻とか、あるいは情勢の判断とか、これらについてはひとまず虚心坦懐に、各方面の意見なり批判なりを伺うわけであります。その中には日本銀行もございます。また政策委員会もございます。また市中銀行あるいは産業方面の資金需要者の側の意向というものもあるわけでございます。これらをいろいろ総合いたしまして金融政策の方針を立てるわけであります。あとは大蔵省としましてこれを取捨あんばいし、あるいはいろいろ異論のあるものにつきましては、大蔵大臣の責任のもとに金融政策をきめる、こういうことであろうと思います。これがただいまの御質問に対するお答えでございますが、なお先ほど来、大分前の国会答弁につきまして、川島委員は御疑問があるようであります。私は、当時あの法律ができますころから、ただいまお読上げになりましたように、あるいは預金証券といつたようなものの発行も、この法律によつて可能だということを申し上げておるのであります。しかし当時といたしましては、具体的にその問題は起つておりません。さしあたつての問題は、興業銀行勧業銀行債券発行の問題であつたわけであります。そこで御質問のなさり方も、主として旧債券発行銀行のことを年頭に置かれまして、いろいろ御質問になつたので、私の方も主としてそれを頭に置きまして御答弁申し上げているのでありまして、御答弁はただいまから考えましても、食い違いはなかつたものと確信しておる次第でございます。
  199. 川島金次

    ○川島委員 今の話が出なければこんなことを繰返すつもりはなかつたのですが、どうも繰返さざるを得ないことになりました。今の後段の方のことですが、私が質問したのは、速記録をごらんになればわかるのです。その前提は、新しく各銀行債券発行することによつて起るべき事柄について私は質問した。従来の債券発行しておりました勧銀とか興銀債の問題にからんで質問したのではありません。にもかかわらず、何か今になつて、あなたはそういうふうに牽強附会に、私の質問を別な意味にとつて、ことさらにそういうことを繰返されるということは、いよいよもつて私は心外に感ずるのです。もう少し私は、あなたに虚心坦懐な気持ちでいろいろのお話を聞いてもらつたりされたりすることを、特に強くこの際望んでおきます。お帰りになつたならばよくひとつ速記録をごらんになつて、そうして思い返していただきたい。それだけ申し上げておきます。前段の問題ですが、いろいろ各方面の意見を総合した、こういうことで今後もするのですか。きよう御足労願いました人たちは、いずれも各界を少くとも代表され、日本の金融界にとつてきわめて重要な役割を遂行されておる各位であります。その各位が、ほとんど例外なしに東銀債券発行問題に対して批判的な意見をされておるのです。そういうことはあらかじめわかつてつたのです。それをしも横車を押してそのことを強行された。こういう金融政策というものは、私はそれこそ望ましからざるものであると私は思うのです。そういうことは、あなたをとがめましても、筋が違いますからとがめませんが、今後は少くともそういう態度であつてはならぬと思う。国会の本日の委員会の席上における言論、各界の代表意見、これがいよいよ明白になつて来た以上は、やはり政府としても、その明白な輿論の上に立つて、虚心坦懐に考えを再検討するということこそが、賢明な事務官僚の立場であり、また政治家の態度でなければならぬと私は感ずるのです。  それはそれとして、第二にお尋ねいたします。この法律案が昨年の一月でしたか出ましたときに——速記録をごらんになればわかりますが、あなたは法案の第一條について、もう最初から最後までどの委員質問にも、この債券長期資金の供給を円滑ならしめるためにやることが眼目であり、ほかにはないんだ、こういうことを終始一貫答弁されておる。それはよもやお忘れないと思う。その当時におけるわれわれの金融問題に対する通念として、まさか半年や一年のものを長期金融なりと考えておりませんでした。あなたが多少でも凝念の生ずるような人柄であつたならば、そこは念を押しておきたかつた。しかし長期とは何ぞや、短期とは何ぞやとあらためてお伺いする必要もなければ、またあなたの言う長期は、われわれの社会通念における、経済通念における長期である、こう信頼をして、すなおにそれをそのまま受取つてこの法案の審議を進めたのであります。おそらくこの感じは与党の人もしかり——野党のわれわれでさえもしかりなんですから、当時与党の人たちはそうであつたろうと思うのです。しかるに突如として、長期資金の供給が大眼目であるという建前に立つたこの法律の実施にあたつて、一年の期限つきの金融案出した。これはわれわれの通念からいえば、短期債なんです。当面の東京銀行代表の方でさえも、比較的長期だろうと言われているが、ほかの人はみな短期だと言つている。これは社会通念なんです。社会通念であればこそわれわれは念を押さなかつたのです。そしてあなたの言葉言葉のままに通念として受取つて来た。しかるにこの長期を目的する債券発行という大方針を、短期債に切りかえてこれを承認してしまつた。私は社会通念的に見て、これは当時の立法精神にきわめて背致する態度だと思うが、あなたはそういうふうに感じられるかどうか、この点についてあなたの根本的な考え方を聞いておきたいと思う。
  200. 舟山正吉

    舟山政府委員 普通長期資金と申しますと、ただいま御指摘の通り三年、五年、あるいは戰前におきますと、十年、十五年、こういう資金意味するのでございます。しこうしてこの債券発行におきまして、長期資金を供給することを目的としたものであると第一條にうたつてございます。しかし私は当時から、それと同時に預金証券のごときものもこの法律によつて発行できるということを立法の精神として申し上げておるわけであります。それに基きまして一年の短期債が出たのでございまして、ここで一年の債券と申しますと短期であるかもしれませんが、資金長期短期というようなことは、現化の情勢におきましては、まず一年以上は長期、一年は短期である、こういうふうにはつきりはわけられない問題であろうと思います。この長期短期の間に中期というものもあり得ますし、短期でないものは長期でございます。それが金融の実態でありまして、現在債券の期限等も非常に戰前に比べて短縮されております。これにあわせて長期短期というものも考えて行くものと考えております。
  201. 川島金次

    ○川島委員 どうもますます舟山さんには似合わない答弁で、私も実はこんなことを申し上げたくないのですが、非常に唖然としているのです。あなたのために私は非常に措しむのです。勇将のもとに弱卒なしと言うが、いつの間にか心臓までたいへん池田さんに似て来たことについて、私はあなたのためにたいへん惜しむ。そこで押し問答をいたしてもしかたがありませんから別にお尋ねいたします。  先ほど当面の東銀債券に関する直接の話が大蔵大臣からあつたのです、これはしかも聞捨てならぬことは、東京銀行大蔵大臣に初めてこの問題で相談するときには、もうすでに二十億円の債券を印刷してしまつた債券印刷済みだ、こう申し出たと言われる。これはおそらく池田さんも驚いたでしよう。われわれ非常に驚いているのですから。一体この法律はなるほど届出主義です。しかしながらこの法律上審議の過程あるいは立案の背景、その後の状態、いろいろ勘案すれば、やはり大蔵省金融政策に関する重大な問題でありますから、内面的な指導があるということはわれわれとしても認めておる。またそういうことがあるべき筋合いであるということは、われわれは予測してこの法律の審議にも当つたのです。ところが先ほどの話によると、大蔵省にこの問題を問い合せるときに、銀行がすでに二十億円の債券を印刷してしまつている。大体私どもの通念からいうと、銀行経営者は一銭一厘を扱つておるので、非常に手がたい人たちが多い。ルーズな人たちが少い、ルーズな人間がおつたのでは銀行が成り立たぬ。そういう銀行が、しかも内面指導を受けることを予定される債券発行に関して、その問合せを、懇談をしない前に二十億円の債券発行したというようなことは、常識的にはちよつと納得ができない。ですから大蔵大臣のところへそういつた正式な話をする前に、銀行局長か、あるいは課長か、たれかの関係においてそうことを進めてもよろしいという、何かの示唆を銀行は受けたに違いない。そういうことを受けずして銀行がやつたとすれば、その銀行の当事者はきわめて無謀だと考えざるを得ない。そのことについて舟山局長はあらかじめ何か銀行に対して示唆を与えるようなことがあつたか。あるいはまた銀行局長以外に省の当局が、何か二十億円という債券を印刷してもよろしいという状態になるような示唆を与えたかどうか、その点を聞いておきたい。
  202. 舟山正吉

    舟山政府委員 東銀がいよいよ債券発行したいという申出がありましたのは、昨年の暮れであります。あとで知りましたことでありますが、それより以前に用紙の用意をしておつたということであります。印刷はことし話が始まりましてから條件等を書き入れる必要がありますので、印刷に着手したのはそのあとであります。特別の透きの入つております用紙は前から注文しておつたということをあとから知つたということでございます。しかしそれだけを取上げますと、突然のうちの話のように聞えますけれども、実は法律通りまして、すでに去年の夏ごろから東銀におきましては短期債発行したいという希望は持つておられました。そうして大蔵省の方にも御相談があつたのであります。しかし大蔵当局は愼重研究を要することであるからお待ちになるようにということで、ずつと待つて来てもらつたわけでございます。
  203. 川島金次

    ○川島委員 そこで東銀代表の方にお伺いいたします。今のお話ですが、大蔵大臣は先ほどお聞きの通り、あなたの方から話を受けたときは、あなたの方ではすでに二十億円の債券が印刷済みになつているということを明確にここで言われた。速記録を見ればわかるが、あなたもお聞きでしよう。これは届出主義であつても、内面指導を受ける事柄であることは言うまでもない。そういうことを手がたい銀行経営者の立場の人がいきなりあらかじめ準備をして二十億円の債券を印刷してしまつた。そういうことはわれわれは納得できがたいものであります。その点についてどういう事情であるか、ひとつすなおにお話し願いたい。
  204. 堀江薫雄

    堀江参考人 簡單にお答えいたします。今朝でございましたか、大蔵大臣が、役員の一人が自分のところに二十億円印刷できた、印刷という言葉を使われたように思います。その役員は私ではございません。それからまた大蔵大臣発言は何かと言葉を間違えたろうと思います。事実私どもは紙をすくことだけはやつておりましたが、御承知通り、静岡あたりで透かしの紙をつくるのは相当時間がかかります。それで紙を注文することはいたしておりました。これは万一金融債をやらなくてもその紙は定期預金の方にまわせる紙であります。両方にかけて紙だけの手当をしたのは実情でありまして、多分大蔵大臣のところに伺つたときに紙の手当がすでにできた。それが二十億円分だというふうに申し上げたのを、大蔵大臣誤解になつたことと思う。  それからもう一つ、私も商売を一日つぶしたついでに申し上げておきますが、ごく率直に申しますれば、われわれは法治国の国民である。また法治国の銀行である。それからわれわれとしましては今朝申し上げましたように、金融債発行の件につきましては、制定の議が起きたときから大部分研究し、注目しておつた。その制定過程におきましても、いろいろな政府委員と皆さんとの応答の中にも、一般の市中銀行もできるというお話でありましたし、また預金証券式なものができるというお話であります。そういつた経緯があつた後に、三月三十一日に正式に公布されたわれわれ法治国の国民としてその條件に合うものをわれわれが準備をするということはちつともさしつかえないじやないか。ことにこの公布が一年以前のごく短期の前に決定されたのであつて、その審議に慎重を欠く点があつたろうかどうかは別として、われわれしろうととしては十分国会において審議され、可決され、そうして公布され、それが届出主義がいいか惡いかは別問題でありまして、制定になりました以上は、私どもとしてはこの法律は守らるべきものであり、また実行に移してしかるべきものだと了解したのであります。この点をひとつ、審議過程においていろいろ問題もありましようが、私のしろうととしての簡單な印象をつけ加えさせていただきたいと思います。
  205. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より各分科会を一斎に開会いたしたいと思います。
  206. 川崎秀二

    川崎委員 議事進行について……。本日朝来各銀行代表者が来られま参して、金融政策の重大な問題でありまする東京銀行短期債発行の問題に関連しましてたいへん熱意ある御意見の展開がありましたことに対しましては、野党側としても非常に感銘をいたしております。しこうしてこの質疑応答を通じて非常に明らかになつた点は、日銀政策委員会というものが反対しておつた事実、あるいはまた地方銀行が今後もし都市銀行において債券発行するようなことがあるならば、非常な重圧をこうむるというようなことも現われて来ておるのであります。従いまして、私はこの問題は非常に重大な問題であつて野党側委員質問もまだ各派ともにありまするし、またでき得るならば、第三者的な立場にある言論界の経済問題についての権威者の意見も聞きたいし、また金融政策の及ぶところ中小企業も非常な打撃を受けるのでありますから、そういう場合における中小企業の関係団体の意見も聞きたい。さらに市中銀行代表者意見は今日は入つておりません。従いましてかような問題をも十分に委員長において処理せられて、適当なる機会に委員会において大蔵大臣を交え、さらに質疑応答を続けることを御考慮願いたい。こういう意味のことを要求いたした次第でございます。
  207. 小坂善太郎

    小坂委員長 議事進行に関する御発言でございまするから、委員長からひとつ所懐を申し述べさしていただきます。  本日は各参考人方々には御多忙のところおいでいただきまして、われわれといたしましては非常に裨益するところが多かつたことを、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  ただいま川崎君から他にいろいろの方々意見を聞くようにという話でございまするが、これはけさほども私が申しましたように、昭和二十六年度の本予算案の審議には直接の関連はございません。但しその背後にある金融政策としては、これは相当に大きな関連があることは委員長も率直に認めております。但しこの問題を本予算案の審議に並行して取上げるかどうか、同一の委員会で取上げるかどうか、またいつやるかどうかというようなことにつきましては、委員長としての意見は持つておりますが、これは本予算委員会に設けられましたるところの理事会に諮りまして適当な処置をとりたい、こう持つております。  なおこの際伊藤豊君の発言を許します。
  208. 伊藤豊

    伊藤参考人 今日は私ども関係しておりまする地方金融に関して重大なる関係を持ちます事項について、私どもを御招待になつて、しさいに意見をお聞きくださつたことは感謝にたえません。どうかじつくり御研究をこうむりますようにお願い申し上げます。
  209. 堀江薫雄

    堀江参考人 私も一言だけお願いがあります。それは委員長へのお願いか、議員諸公に対するお願いか、私はつきり知らないのですが、私も金融人の一人としてのお願いであります。それは金融ないし通貨の問題を国会でお扱いになる場合の態度でございますが、具体的に申しますならば、本月の十一日の日本経済新聞であります。これに予算委員会事務局で東銀金融債の問題に関連して、不正の事実ありやいなやのことから事情を究明するというような言葉が出たのであります。事の性質上私どもといたしましては、この問題に不正事実云々あるいは考査委員会式のものが介在する余地はないと常識として考えるのです。こういつた言葉はごく偶然に出たことと私は想像するのですが、御承知通り金融問題はなかなかデリケートな問題でありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。     —————————————
  210. 小坂善太郎

    小坂委員長 この際お諮りいたしまするが、理事有田二郎君より理事辞任したいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければさよう許可することに決しました。  つきましてはその補欠は先例によりまして委員長指名することに御異議ありませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければ、上林榮吉君を補欠理事として指名いたします。  次回の委員会の開会の時日は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十九分散会