運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-16 第10回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十六日(金曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君       麻生太賀吉君    天野 公義君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       上林榮吉君    北澤 直吉君       塩田賀四郎君    島村 一郎君       田口長治郎君    玉置  實君       南  好雄君    井出一太郎君       松本 瀧藏君    勝間田清一君       井手 光治君    江花  靜君       甲木  保君    川端 佳夫君       久野 忠治君    坂田 道太君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       永井 英修君    中村 幸八君       今井  耕君    中曽根康弘君       松澤 兼人君    水谷長三郎君       川上 貫一君    横田甚太郎君       小平  忠君    黒田 寿男君       小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         労 働 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         参  考  人         (京都大学教         授)      汐見 三郎君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十四日  委員塚田十一郎君及び稻村順三君辞任につき、  その補欠として上林榮吉君及び松澤兼人君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  分科会設置に関する件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  本日は午後一時より、内閣総理大臣に対する質疑を行う予定になつておりまするが、昨日はからずも十五年来の大雪でありましたために、交通機関関係上、公聽会を開会することができなかつたのであります。公述人として意見を聞くことになつておりました京都大学教授汐見三郎君が、今までこういう席にあまりおいでにならなかつたのでありますが、特に今回新たなる税制について意見を述べたいという考えで、京都から来ておられまするので、同君を参考人してこの際意見を聽取いたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。なお公聽会の続きは、明十七日午前十時より開会いたそうと存じまするから、御了承を願いたいと存じます。  それでは京都大学教授汐見三郎君より御意見を聽取いたしたいと思います。
  4. 汐見三郎

    汐見参考人 昭和二十六年度予算のうち、特に税制につきまして、意見を申し上げたいと思つております。はなはだかつてでございますが、きよう「はと」で立つことになつておりますので、二十分ばかりお話申しまして、それからいろいろ御意見を承りたいと思つておりますので、さよう御了承を願います。  昭和二十六年度予算でありますが、一昨年までは前年の予算よりも次の年の予算が必ずふえておるというふうなことになつておりましたのが、昨年から前年度予算より減額になりまして、今年も昨年ほどの幅ではありませんが、とにかく絶対額におきまして、前年度より今年の予算の方が減ずることになつております。それと同時に、従来の予算におきましては、公債收入部分よけいつたのが、租税收入部分よけいなつて参りまして、一般会計におきまして、租税收入專売益金を合せまして八四・九%というふうなことになつておりまして、租税財政において重要な意味を持つておることは、数字的にも明らかなわけであります。地方財政も同じことでありまして、地方税というものが相当の額に達しておりまして、量的に申しまして、ただいま申しましたようなことになつております。同時にまた質的に申しまして、シヤウプ博士が一昨年、昨年二度日本を訪れ、それでいろいろな勧告をされまして、シヤウプ博士勧告の全部ではありませんが、大部分日本に取入れられておるようなわけでございます。何分にもシヤウプ博士勧告というものは、日本国税地方税全体にわたつて大改革でありまして、いろいろな点に摩擦よけいつたわけでありまするけれども、こういうふうな大きい改革の後には、地震ゆり直しがやはりあるわけでございます。昨年は根本的改革をいたしましてことしの税制におきましては、昨年の地震大改革によつていろいろな摩擦のあつたところをば勘案いたしまして、日本の実情に適切になるようなぐあいにいろいろ苦心が払われているようであります。  シヤウプ税制というものに対しましては、いろいろな考え方があるだろうと思つておりますが、私の考え方によりますると、シヤウプ税制というものは、文字でいえば楷書のようなもので、日本租税制度というものは、従来は草書のようなもので、勘というものが非常に働いておつたが、今度は理詰めの税制によつて草書をば楷書に書きかえた形になつておるのであります。草書になれたわが国におきましては、楷書についていろいろふなれな点もあるわけで、ございまして、摩擦も起つたわけでございますけれども、今度の税制改革におきましては、シヤウプの第二次の勧告相当取入れまして、よほど緩和したものになり、草書楷書の間のようなところに来ておるものでございます。それで基本の線はシヤウプの線、これは近代的の租税立法でありまして、理論的でもあり、民主的でもあり、建設的でもある線でありまするから、これを推し進めて行く。しかし同時にどうもぎこちない点がある。今まで草書でなれていたところへ、楷書のかたい文字が出て来てどうもぎこちないところがある。それを楷書草書との間のところで除いて行くというところに、いろいろ苦心が払われているようであります。私はそういうあり方——去年のシヤウプ原案というものは少しかた過ぎた、しかし朝鮮事変が起り、いろいろな情勢からいたしまして少しゆるやかにした方がいいじやないかと思つております。  それから減税でありまするが、税法上七百億円ばかりの減税ができております。それは実質上減税なつておらぬじやないか、税法上の減税にすぎないじやないかという議論もありまするが、税法上の減税をやらないで、ただいまの税法そのままをやつておりますると、七百億円が増收なつて来る。税制改革税率の引下げだとか、基礎控除引上げだとか、いろいろなことで緩和いたしましたので、それで七百億円の増收が大体元と同じようなぐあいになつて来たというところが、今度の減税の特色であろうと思つております。従来租税よけいとろうと思うと、税率引上げるに限るというふうな考え方が行われておりました。これは太陽風の神とが旅人の衣を腕がすイソツプ物語のように、風の神式にきつくやれば、税金よけいとれるという考え方であつたわけですが、このたび酒の税率を引下げましたところが、かえつて相当増收なつて来た。それで法人税税率をば下げて、超過所得税をよしたり、法人負担を軽減いたしますると、法人税——もちろんこれは景気の影響もあるわけでありまするけれども、法人の申告が正確になりまして、かえつて税收が増しておるというように、従来は風の神式にやつてつた租税立法が、今度は太陽式なつて来て、納める方も、また徴收する方も、幾分気持が従来より楽になつて来たのであります。ことしもどうぞその方針をば持続して、税務行政が円滑に行くことを望んでおるわけであります。  今度の税制改革に現われております二つの線といたしまして、資本蓄積の線とそれから生活安定の線との二つが強く現われておるのであります。資本蓄積の線といたしましては、戰前に比べますと、わが国資本蓄積は二割五分に減つているし、また内容的に見て、ただいまでは他人資本が大部分を占めて、自己資本というものはわずかになつております。これは近代国家として自立経済を営み、多数の国民を養つて行くためには、どうしても資本蓄積ということがないと、国際経済に伍して行くことができないという意味からいたしまして、相当必要なことだと思つております。資本蓄積に関連いたしましては、資産再々評価を行うということと、それからまたそれで自己資本培養をはかる。それから他人資本培養として、銀行預金源泉選択をやるということは、これは非常に大きい問題でありまして、シヤウプの線から見ますと、銀行預金源泉選択はよくないということであります。総合課税を徹底する上から申しますと、たとえば無記名定期というようなものは、これはけしからぬというような考え方なつて行くわけでありますが、それでは換物運動が起き出したり、たんす預金が現われたりするのであります。従つて租税公平観念というものは、大乘的見地に立つ必要がある。無記名定期の復活は、これはよくないというふうに考えますが、源泉選択程度が、ちようど楷書草書との間を行くもので、いいものだというふうに思つております。直接投資の問題といたしましては、さきに申し上げました資産再々評価、それから積立金課税をやめる、それから同族会社解釈というものがへんぱな解釈なつておりましたので、これを合理的の解釈にする。それから間接投資の方におきましては、銀行預金の利子の源泉選択を許す、そういう方面をいろいろ考え、また設備の近代化のために耐用年数特別償却を認める、耐用年数に特別の考慮を払うというふうなことが行われているわけであります。  それから生活安定の線でありますが、税率は、世界各国に比べますと、日本租税税率は決して高いものではない。しかしこの刻みが、所得階段刻み相続税階段刻みというふうなものが、インフレーシヨンを織り込んではいるけれども、織り込み方が少いのであります。それで基礎控除をもつとうんと引上げるとか、それから扶養親族控除をうんと引上げるとか、あるいはまた勤労者控除よけいにするとか、いろいろなことが考えられるわけでございますけれども、ただいま日本所得のほとんど大部分勤労所得であります。資産所得戰前に全所得の二割を占めておつたのでありますが、ただいまはその五%というぐあいに下つて来ておりまして、結局国家收入というものは、勤労所得でまかなうしかしかたない情勢なつております。それで十分のことはまだできておらないようでありますけれども、租税收入との関連におきまして基礎控除引上げたり、それから未亡人控除を新たに設けたり、老年控除を設けたり、生命保險料控除を認めたり、いろいろな点で生活安定の面を努力してあるのは、私は十分とは申せませんけれども、現状においては満足すべき改革でないかというふうに考えておるものであります。  それから問題は、国税地方税両方から国民負担考えてみなければならないのでありまして、国税地方税の分野がそれぞれありまして、国税の支配する原則と、地方税の支配する原則とが共通のものがあり、また違つたものもありまするが、片一方で行つていることを片一方で裏切るというふうなことがないように、国税地方税とを合せて——地方税につきましてはまたそれぞれ專門の方から御意見の開陳があるだろうと思つておりますが、国税地方税は出す方からいたしますと、同じポケツトから出すわけでありますから、両方総合して考えてみなければならないというふうに思うのであります。  それから第三番目に、これは一つの問題として取上げてみたいと思つておりますが、ドツジ予算の線を貫きまして、終戰前日本赤字公債中心主義をやめて、租税中心主義に移り、それがドツジ予算によつて非常に強く現われておりまして、その精神が財政法第四條、それから地方財政法五條に現われておるわけでありますが、この線はやはり堅持しなれけばならないというふうに私は考えておるのでございますけれども、この線もあまり行き過ぎるとよくないというふうに考えております。たとえば地方財政法五條第一項の五のところに、普通税税率がいずれも標準税率以上である地方公共団体において、戰災復旧事業費及び学校、河川、道路、港湾等公共施設建設事業費財源とする場合には、地方債を起してもよい。しかし標準税率未満であるとその地方債が起せぬ、こういうふうの規定ができております。たとえば大都市のごとき市民税税率をば一五%に引下げたいと思うけれども、公債を起すためにはやはり一八%までとつておかないと、公債が起せぬというような、ある意味ではこれは健全財政を維持するいい規定とは思いますけれども、少しこれは行き過ぎではないか。この辺のところは納税者負担関係、また生活安定ということと関連して考えてみなければならぬ問題ではないかというふうに私考えております。  それから地方税の問題は、なるべく略すことにいたしておきまするが、多少関連するところを申し上げておきたいと思つております。地方財政平衡交付金を国から出して、地方税地方団体でとつて行く、自力でとつて行く地方税と、国民全体が出すところの地方財政平衡交付金と、一体どのくらいのバランスにしていいものか。これは今度の予算にすぐにどうということはできないかもしれませんが、今度の予算及び日本財政の将来に課せられた大きい問題であります。地方自治を非常にやかましく言う。ところがある府県のごときは、そこでとれたところの税金が二億円だ、ところが平衡交付金が八億円だ、国民全体の出した国家予算からさいたものとのバランスがそれではたしてよいのかどうか。しかし一方から申しますと、そのくらいの平衡交付金をもらわぬととてもやつて行けぬから、むしろ平衡交付金を増額したいという考え方も出ております。それで地方自治というものの考え方国家生活地方生活との調和をばどの点に求めるか。この地方税の見積りが、二十六年度におきましては二千八十七億円になつている。ところが平衡交付金の額がこれはその半分以上を占めている。地方税の半分以上が調整的なものだというところに財源配分について、ここにただいま申し上げました議論から行けば、平衡交付金削減論になります。しかし現実におきましては平衡交付金を増額して行かなければやつて行けぬというような声も高い。それでその両方をどういうふうに調整して考えて行くか。シヤウプ税制におきまして非常にすつきりした税制ができまして、地方税制は非常によく行つておるのでありますが、こういうところにシヤウプ税制についてあるいは見落しの点があれば、改めなければならぬ点がありはしないかというぐあいに考えておるのであります。地方税の問題は非常に国家財政関係が深いのじやないか。ことに事務配分勧告も出ているわけであります。事務配分勧告も、平衡交付金地方税国税、そういうものの全体を有機的に考えてみる必要がありやしないかというふうに私は思うのであります。  最後に、この国会で税法を早くきめていただいて、国税及び地方税をなるべく早くきめるということが、国民負担の上に非常にいいじやないかと思つております。昨年国税減税されて喜んでおつたところが、地方税が増税されて裏切られたということがありました。国税を扱う役所が大蔵省であり、地方税を扱うところは各地方団体でありまするけれども、出す方は同じさいふから出ておるのでありますから、両方をよく考えてみる必要がありはせぬか。ことに地方税の方は、これは地方議会におきまして、地方税法に基いて條例をつくられることになつております。それで條例できまるわけでありますが、昨年のごときは地方税法がきまりましたのが遅くなりましたために、半年の間に一年の地方税を納めるということになつた。それで税制改革に対する非難の声が高かつたのは、第一は、一年の租税負担が半年の間にしわ寄せになつたというところに、大きい原因があるんじやないかと思います。国民といたしましては、国の必要の経費地方団体の必要の経費は、税金で納めなければならぬということは、よく覚悟しておるところでございますけれども、未確定の間が長いということが非常に問題だと思つております。それから国の予算審議のときに、地方財政平衡交付金を通じて地方税関係が深いのでありまして、地方財政平衡交付金の問題がその間のチヤンネルをつくつておるわけでありますから、国家予算審議のときに、あわせて地方予算の方にも考慮を払つていただくことが、国民租税負担を公平にするゆえんではないかというふうに私考えております。  はなはだ簡單でありますが、一応これで終ることといたしまして、御質問がありましたらお答えいたしたいと思います。
  5. 小坂善太郎

    小坂委員長 何か御質疑はありませんか。
  6. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 先ほど地方税平衡交付金関係についてお話がありましたが、参考に伺いたいと思います。平衡交付金制度を置いておりましたドイツだとか、その他の国において、地方税收入の総体と、国税財源で出て来る平衡交付金との割合というものは、大体どんなふうになつておりましようか。
  7. 汐見三郎

    汐見参考人 私今その確かな数字は覚えておりませんので、比率の正確な数字は調べましてお答えいたします。やはり原則は、地方税を調整する意味での調整財源というふうになつております。比率はもう少し少いのじやないかと思つておりますが、今正確な数字を持ち合せておりませんので、調べましてお答えいたします。
  8. 西村久之

    西村(久)委員 この機会に一点お尋ね申し上げたいと思います。直接税と間接税との関係につきまして、今日のような段階におきましてはやむを得ぬでありましようが、行く行くはどういうふうなお考えを持つておられるか、伺いたいと思います。
  9. 汐見三郎

    汐見参考人 ただいま直接税と間接税比率の問題について御質問がありましたが、シヤウプ税制は直接税中心でやつて行きたい。それで国税地方税を、将来所得税法人税市町村民税で全体の七割五分をまかなつて行こうというふうな考え方で、税制改革シヤウプさんはやられたわけであります。直接税においては、所得税を充実する。それからまた富裕税というような財産税国税でつくつて行く。相続税最高税率を九割までにする。それから地方税としては、今まで土地家屋にだけかかつてつたものを償却資産にかけて行く。電車の車輌にも、レールにもかけて行く。それから旅館の夜具、散髪屋の鏡にもかけて行くというふうに、直接税は非常に重きを置かれておる。直接税中心というのは近代国家の特徴でありまして、このことは私よく認めるのであります。問題は程度の問題であります。それからこれは国民性の問題で、東洋では、直接税をかけると非難よけい出、間接税だと割合納まりがよいというのでありますが、取引高税をやめ、織物消費税をやめ、間接税は軽減をはかるということになつておる。直接税を増し間接税を減す、その進み方が非常に早く行つたものでありますから、これも税金を納める人と税金を徴收する人との間の摩擦を起したのだと思います。この点について、もう少し考えてみる必要がありはしないか、今度所得税税率を引下げて所得税を軽減したことは、相対的に申しますと、間接税の地位を、シヤウプさんの思つておるよりは少し高めたということになつております。私は直接税の方を間接税よりよけいにすべしというふうに考えておりますけれども、その程度行き過ぎにならないように、間接税間接税でまた相当強みを持つておると考えております。間接税をもう一度見直す必要がありはしないかというふうに考えております。
  10. 西村久之

    西村(久)委員 もう一点お尋ね申し上げたいと存じます。私は大体国民課税の対象は、中央税地方税を問わず、国民所得基準として、生活を脅かさぬ範囲内において徴收すべきものなりという信念を持つておるのであります。今日のような複雑な時代には、いろいろな税金をとつておるようでありますが、いかに複雑でありましても、所得以上の税をかけられるにおいては、国民担税力がないのは申し上げるまでもないのであります。それで各税種によつて所得基準課税をするという考え方がよろしいのが、今日のように税目を、府県税、あるいは地方税というて盛んにふやしておるようでありますが、これをふやしました結果は、結局課税標準がダブるきらいがまたなきにしもあらずというような感じがするのであります。ダブリますと、結局それだけ負担力のない者に負担がかかつて来るというので、中産以下の人は特に苦しい思いをしなければならぬ、こういうふうな結果になるのじやないかと心配いたしております。従いまして、所得中心課税をすべきものであるが、今日のように資産に対して——私は資産課税というのは、資産の生む所得を土台として課税せざる限りにおいては、必ず家を分割して処分しなければ、納税すべき資本がない、こういう結果を来すのではないかということを憂慮いたしておりますがために、税そのもの国民所得一本を基準にすべきものであるかないか、御見解が伺えたら伺つてみたいと思います。
  11. 汐見三郎

    汐見参考人 原則といたしまして、ただいまの御意見が私は正しいと考えておるのであります。問題は、無收益資産にかけるべきかどうか、所得のないところの財産にかけることが正しいか正しくないかという考えであります。これに対しましては、こういう考え方があるのでございます。無收益財産をそのままにしておくと、どうも資本の濫費と申しましようか、それを持つている人がなまけて、それを遊ばしておいて値上りを待つというような考え方なつて行く。無收益財産に適当な税金をかけると、その財産を持ち得る人は持つておるが、持ち得ない人は人に離す。そこでその無收益財産收益化するようにする作用がある。こういう考え方富裕税固定資産税考え方なのでございます。これもおのずから限度があるのでありまして、薬がきき過ぎてはいけない。本来の建前は、お説の通り所得中心にする。それで外形標準とか、そういうことは補充の意味、副の意味で、主客を転倒してはいけない。そういうふうに私は考えております。
  12. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 先ほど私の質問した点に関連しまして、ひとつ意見を伺いたいのですが、昨年以来地方財政平衡交付金の問題がありました際に、地方で当初予算で予想せざる歳出の必要が起つたことが確かにあるのです。その意味において、もし租税にほんとうに彈力性があれば、これはむしろ標準課税率中心にして動かして、租税でまかなうのが筋でありましよう。その際に現実地方税彈力性がない。従つて必要なものは、平衡交付金平衡作用という点から少し離れるかもしれないが、現実問題として、全部国から出してくれという要求が非常に強かつた。昨年度は御指摘のありました通りに、地方税施行が遅れましたし、後年期によけいとらなければならぬような状態になりましたし、かつまた平衡交付金についても、御承知の通り年度の半ばに、前年度に比べて非常にいろいろやりくりをしなければならぬという無理があつたのですが、二十五年度の今言つた地方税施行が遅れたこと、それから平衡交付金を返したり、追加支出したり、入れかえをするという関係を拔きにして、現在の平年度において、今日の経済事情から地方税制を見た場合に、これは彈力性があるとお考えでありますか、あるいは強力性はないのだとお考えになりますか。その公平な、学問的に見られた、そして実情を検討された上での御判断を承りたいと思います。
  13. 汐見三郎

    汐見参考人 ただいまの点でありまするが、たとえば府県税におきまして、従来農業、林業に事業税がかかつてつたのが、農業、林業に事業税がかからなくなつてしまつて、商工業だけの負担で事業税をまかなつて行くという建前になつて参りました。それで商工業のない府県は非常に強力性を失つて来たというような点がありまして、地方税制につきましては、府県の中で農業中心府県におきましては、経費の大部分は農業、林業に行く。ところが事業税の負担は農山村に少しもない。それから府県民税というのがなくなつてしまつたために、府県民と府県とのつながりがなくなつてしまう。税金をちつとも納めない府県民があつて、しかも府県経費の余沢にはあずかるというようなことがあります。これは一例をあげたわけでございますけれども、彈力性につきまして、もう少し考え直してみなければならぬ。それから工場が建つというふうになりますると、税金がほとんどなくて済んでいるということが起つて来る。すなわち片一方財源がなくて困り、片一方財源があり余つて何に使おうかというところが出て来るというようなことがあります。この辺につきまして、橋本さんもお話になりましたように、もう少し彈力性の点を地方税制について考えてみる必要がありはしないか、彈力性を喪失しているような気がするのであります。  それから地方財政平衡交付金の金額の問題でありますが、私はこういう考え方を持つております。地方自治の建前で行くのだつたら、地方財政平衡交付金というものは第二義的のもので、地方税で支弁して行くというのがいい。地方税で支弁して行けるような税制を立てて行くべきもので、地方財政平衡交付金をそんなによけい五倍とか、六倍とか得なければならぬという建前は、そこに何か税制彈力性に欠けるところがあるのでわないかというふうに考えられる。しかし現実におきましては、平衡交付金をもらえないと、また増額してもらえないと、とてもやつて行けぬというような実情にあるわけであります。そこで私さきに申しました問題と関連いたしますが、私はむしろ地方財政平衡交付金のただいまのやり方、すなわち地方財政法五條地方債を非常に押えるやり方を少し緩和して、地方財政平衡交付金をもらわなくていいようなところは地方債を緩和する、それから地方財政平衡交付金を総花主義にどこにも渡すというのでなしに、ほんとうに調整を必要とするところに渡して行く。従つて地方財政平衡交付金の算定標準も、基準財政收入の七〇%というのを一〇〇%にするとか、あるいは一〇〇%はどうかと思いましたら、あるいは八〇%にするとかいうことにして、地方財政平衡交付金原則としてはもらわなくていいようなぐあいにやつてつて地方債でやつて行けるようにする。地方債のわくを緩和するのと、地方財政平衡交付金のわけ方を、ほんとうに困つているところにはよけい渡すようにする。そうすれば、増額しなくとも相対的によけいもらえる。そういうところに問題の解決点がありはしないかというふうに考えております。
  14. 小坂善太郎

    小坂委員長 では汐見教授はこれから京都へ帰られるそうですから、時間の都合がありますので、この程度にいたしたいと思います。どうも御苦労さまでした。     —————————————
  15. 小坂善太郎

    小坂委員長 この際お諮りいたすことがあります。ただいま審査中の昭和二十六年度予算審査のために分科会を設けたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  なお分科会の区分、主査の選定及び分科員の配置につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じまするが、御異議はありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  17. 小坂善太郎

    小坂委員長 御異議がなければその通りに決します。  午前中はこの程度にいたしまして、午後一時より再開、総理大臣に対する質疑を続行いたします。  この際暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  18. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑に入ります。
  19. 川崎秀二

    ○川崎委員 議事進行について……。私は議事進行に関連し、野党各派を代表いたしまして、政府に対し、重大なる警告を発せんとするものであります。  すなわち一昨十四日衆議院本会議におきましては、先般来のダレス特使の来訪に関連をいたしまして、吉田・ダレス会談の会談内容につきまして、野党首脳者より率直なる質問が展開されたのであります。これに対しまする吉田総理大臣の答弁は、野党の最高首脳者に対する礼儀を失するばかりでなく、答弁の内容は、その真髄に触れず、顧みて他を言うがごとく、まさに独善かつ高踏的であつて、この質問戰を注視しておつたところの満天下の期待を完全に裏切つたものといわなければならぬのであります。その内容において、総理大臣は苫米地氏の質問に対し、こういう重大なる発言をされております。すなわち「一体外交は祕密であるのが本体であつて、秘密でない外交はおかしな話であります。」これは一体何を意味するものでありましようか。われわれはまことに了解に苦しむのであります。すなわち口を開けば従来国民外交を唱えながら、実は秘密が本体であるということが明らかになつた以上、国会としてこれを軽視するわけにいかぬのであります。まさにこれは国民を愚弄し、民主主義の本則を蹂躙し、一党の私事をもつて国家の大事を律せんとする、独善的な態度であると私は考えるのであります。今まで総理大臣は、国家と民主主義の本則についてしばしば失言しておるけれども、失言にしてかくも重大なるものはいまだかつてなかつたと私どもは記憶しておる。この言葉だけは私は看過ができないので、これがもし本則であるとするならば、東條、スターリンと何ら選ぶところがない。(「ヒヤヒヤ」)私は、総理大臣が先般来ダレス氏と会談をされて、日夜苦労をされておるその姿に対しては、敬意を表しております。国を思う切々たる気持は実に見上げた人物であると思つている。しかし民主主義者としてのあなたの本則から見て、これは一体何事であるか。私はあなたは講和会議までの暫定的な政治家だと思つておるが、その点についての考え方は今までも変化はありませんけれども、しかしこのことだけは国会として断じて融通することができない。委員会はもとより本会議においても、この総理大臣が外交は秘密が本体であると言つたことを、そのまま見のがしておくわけには行かないのであつて、おそらくこれは国際信義上言えない部分がある、秘密の部分が多いのだという意味であつたのではないかと、私は実は好意的に解釈いたしておるのでありますが、適当な機会においてその信念を吐露せられるよう、委員長を通じて申入れをいたしておきます。
  20. 小坂善太郎

    小坂委員長 ただいまの川崎君の御意見は、議事進行に関してでありますから、政府はお答えになることはありません。委員長といたしましては、あなたの御意見は御意見として承つておきます。  これより質疑を続行いたします。松本瀧藏君。
  21. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 ダレス特使日本滯在十七日間におきますところのその努力には、相当な成果があつたということを承つております。またその間の特使の御努力に対して深甚なる謝意を表するとともに、繰返して申し上げますが、吉田総理の御苦労に対しても敬意を表するにやぶさかでないものであります。しかし残念ながら、このダレス会見の全貌というものは、国民が満足するほどその情報が与えられていないのであります。ここに私どもがおそれますることは、政府が資料を出し澁ることによつて国民が正確なるところの判断を下すことができないために認識を誤り、講和受入れ態勢に誤謬を生じるようなことがあつてはいかぬ、こういうことをおもんばかりまして、ここに若干質問を試みんとするものであります。  まず最初に総理にお伺いしたいことは、ダレス特使の演説の中にもしばしば出て来たように、日本は自衛力というものを必要とする、これに対して総理も御同意されておるように印象づけられておるのでありますが、この自衛力とは一体何を意味するか、御説明を願いたいのであります。
  22. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 自衛力の定義ははなはだむずかしいのでありますけれども、読んで字のごとく、いずれにしても、常識で考えてみましても、日本の安全は日本の手で守る、守る権利があり、また義務がある。それが自衛力である。また日本国民の自尊心からいつてみても、他力によつて守ることを期待するとか、あるいは予期しておるというような、安全保障に対する日本の自衛力を他力本願で考えるようなことがあつては相ならぬのみならず、アメリカの方も、自衛する力があり、意思があり、覚悟のある国に対しては喜んで援助をするといいますか、協力するといつておるので、その趣旨ははなはだ明瞭であるように思います。
  23. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 その自衛力の中には、総理の考えでは軍備というものを含みましようか、御説明願いたい。
  24. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 むろん軍備というものが意味せられるのであります。独立をした以上は、国民の考うるところによつて、すべて自衛の方法を考えるということは当然のことであります。しかしながら、日本の現状においては、軍備というものができないという以上は他の方法によるほかない。しかしながら、未来永劫軍備を捨てることは、これは今後の状態によるわけであつて、もし経済的力その他ができ、また国民も軍備を持つことを必要とするというようになつて来れば、自然そのときに考うべきでありましようが、今日においてはまだその時期でないのみならず、また力がない。ゆえに軍備以外の力を考えて行くべきではないか、こう私は思つております。
  25. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 しからば、将来もし軍備を必要とするような事態が到来し、また日本の経済がそれを許すというような場合には、軍備というものは、今日の警察予備隊をもつて充てるのか、あるいはまた別個の自衛部隊をつくるかということに対して、将来のことでありますが、一応総理のお考えを承りたいと思います。
  26. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 今の警察及び警察予備隊が兵隊にかわるものでないということは、政府がしばしば言明しておるところで、この予備隊をもつてただちに兵力にかえるとかいうような考えは毛頭いたしておりません。一に国内治安の維持のために備えておる警察力であります。
  27. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 もう一点伺つておきたいのであります。もし、自衛隊と申しましようか、軍備と申しましようか、こういつたものをつくりますときに、日本の憲法を改正する要があるかどうかという点につきまして、もう一言御説明願いたい。
  28. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは、憲法にすでに軍備を撤廃するということを規定いたしておるのでありますから、いわゆる軍備なるものを置くということになれば、憲法を改正するか、国民の意思に問うのは、当然であろうと思います。
  29. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それでは次の問題に移りたいと思います。十一日のダレス声明に、対日講和の基本線とも目すべきような発表があつたのであります。その一つの要点でありまするが、簡單な條約で戰争を正式に終了せしむるということが書いてありました。思うに、対日講和條約の場合には、ヴエルサイユ講和條約みたいなごまかい点を規定するのではなくして、基本的な條項であると推測できるのであります。従つていかなる国でもこの講和條約を締結することを拒む理由のない、余地のないようなものである、とこう解釈できるのであります。その観点からいたしまして、ダレス特使も全面講和に全力を注いでおり、まだその希望を捨てていない証左であると思うのであります。しかし諸般の国際情勢からいたしまして、万一全面講和ということが不可能になつた場合に、不参加の国と日本との関係についてお伺いしたいのであります。その場合に、ミズーリ艦上で調印いたしましたあの無條件降伏の文書、これが失効するものであるかどうか、効力が失われるものであるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  30. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいまのところは、今お話のように、ダレス氏としても、各連合国に対して講和成立を交渉せらるるであろうと思います。ゆえにこの際、不参加の場合あるいは不参加の国に対して、日本の政府当局者がどういう関係を持つと考えるべきかというようなことは、これはダレス氏との交渉にも支障を生じやしないかと考えますから、お答えは差控えたいと思います。
  31. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 私の問わんとしているところは、降伏文書を調印いたしました日本と、参加しない国との間における法的の解釈、一体降伏文言は失効するのかどうか。もしこれが失効した場合には、参加しない国と日本との間には戰闘状態が復帰するというような説もあります。またその場合には、これらの国がアメリカにとつてかわつて占領をすることによつて、戰犯を多く收容され、また漁船等が拿捕されるというような、いろいろな説が流布されているのであります。これを解消することによつて日本国民の不安を除去したいという気持から総理にお尋ねしているのでありますから、この点についての御解釈をお願いしたいと思います。
  32. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 そういう場合に、第一拿捕するような事実が生ずるか生じないか、あるいはその講和條約に参加しない国が、ただちに日本に対して開戰を布告するとかいろいろな話がありますが、これはある事態を想像いたしての話であつて、私としては、その場合にこうするああするといつて、あらかじめいわゆる仮定の問題についてお答えすることは差控えます。但し、講和條約が成立すれば、いわゆるポツダム宣言なるものは失効をいたすといいますか、それにかわる條約のできるのが本体であろうと思います。何となれば、ポツダム宣言は戰敗国と戰勝国との間の関係を根本として規定いたしておるのであるし、講和條約は日本を対等の国として、もしくは独立の国として戰勝者、戰敗者という関係でなくして、友邦としての関係において規定せられるべきものでありますから、根本的原則において違つて来る。従つて講和條約成立とともに、ポツダム宣言の中に含まれておる條項は、一応廃棄せられるものと私は了解いたします。しかしこれは講和條約後における事態に処して、政府としては善処いたします。
  33. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 まだ解釈においてはつきりしない点があるのでありますが、この問題はこの程度にいたしまして、次の質問に移ります。  去る十一日に発表されました総理の声明の中に、「彼我了解上きわめて満足すべきものがあつた。」とあります。また十三日の本会議場におきまして、その演説の中で、領土、国連加入云々といろいろと述べられまして、これらのわが国民の関心の深い諸事項について十分話合いができた、すべての点について双方にとり満足すべき了解に到達したということを言つておられるのであります。双方の満足とは一体何であるか、国民は非常に知りたがつておるのでありますが、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  34. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えいたします。いかなる了解に達したか、すつかり申せと御請求があつても、これは講和の将来の内容にわたることでもあり、またダレス氏との間の話の内容にもわたりますことでありますから、これはお答えできません。はたしていかなる了解に達し、またそれが満足すべきものであるかどうかということは、今後の事態に徴して御了承を願いたいと思います。
  35. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 この問題はこれ以上追究してもちよつとむだと思いますので、それは他日の機会にまたお伺いすることにいたしまして、次に日本国民の最も関心を持つておりまする集団安全保障の問題でありますが、これは日本の当然負担すべき事柄が規定されております。従つて日本負担しなければならないことは当然であると思いますが、その負担の限界について、総理の御所見を伺いたいのであります。
  36. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ダレス氏との話合いは條約の交渉ではないので、いわゆるネゴシエーシヨンではなくて、何かの発表にあつたと思いますが、デイスカツシヨンの程度であり、互いに気持を話し合つた程度であつて、その結果これだけの負担日本は持つ、あるいはこれだけの犠牲を米国政府としては日本に与えるというような、そういう具体的の結論に達したわけではないのであります。互いに気持を語り合う、率直な気持を語り合つて、日米の間の了解点、合意点を発見するために、ダレス氏が来られたのであります。ただちに私たちの話が條約の内容をなすという交渉の性質ではないことを御了解願います。
  37. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それではもう少し具体的につつ込んでお聞きしたいのでありますが、対日講和七原則提案書の第四点にも示されてあるごとく、日本国がフアシリテイーズ——このフアシリテイーズの訳は、外務省の訳によりますと、施設という訳と便益という訳の二つがありますが、專門的に申しますと、あるいは同一の意味であるかもしれませんが、いずれにしましても、通過の権利を含めたフアシリテイーズの供与ということが規定されております。そこでこのフアシリテイーズの解釈でありますが、一応私の見解も申し述べまして、もし間違つておりましたならば、御訂正を願いたいと思います。  このフアシリテイーズの形においては、フイリピンにおけるそれと、あるいは英国におけるそれとに差があると思うのでありますが、ときどき私どもが聞かされておる権威筋からの話によりますと、英国におけるところのフアシリテイーズというのは軍事基地ではない、従つて治外法権というものを意味していないのだという説明を聞いております。このフアシリテイーズの解釈の中に、英国におけるそれと同じような解釈ができるものであるかどうか、総理の御見解を承りたい。
  38. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいま申したようなわけで、互いに了解し合うという程度でありまして、七原則にフアシリテイーズという文字があつたとして、この意味合いはいかんという法律的な談判をいたしたのでないのでありますから、そのフアシリテイーズの範囲はこうこうかくかく、性質はこうこうかくかくと、ここに正確に申し述べることはできないのみならず、そういう話はいたしませんでした。
  39. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 これはきわめて重要な点でありまして、日本国民の持つておる疑点を氷解するところの資料になると思うのでありますが、英国におけるフアシリテイーズの供与というものが、決して英国を植民地化していない、また英国の主権を阻害していないという説明を、しばしば聞かされておるのであります。もし日本のフアシリテイーズの場合におきましても、一応こういう解釈ができるものであるとしたならば、日本を植民地化するとか、あるいは日本の主権を阻害するという宣伝に惑わされることなく、きわめて国民が納得する一つの資料になると思うのでありますが、こういう研究等は外務省においてなしておられませんかどうか、お伺いしたいのであります。
  40. 吉田茂

    ○吉田国務大臣  それはフアシリテイーズの定義について論じなくても、ダレス氏にしても、あるいは米国側にしても、日本に対して完全な独立、自由、自主を与えたいという気持でありますから、日本の主権を害するような、将来においてフアシリテイーズについての解釈が生ずる余地はないと思います。
  41. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 ただいまの総理の御説明はきわめて重大なポイントだと思うのであります。日本の主権を阻害しないところのフアシリテイーズであるならば、治外法権というものはないというこの事柄は、国民が今日まで聞かんとしておつた大きな点だと思うのであります。ただ一つ加えておきたいことは、いかなる集団安全保障の形におきましても、国連憲章第四十三條のあの規定に基いて集団保障というものが行われる以上、このフアシリテイーズの解釈というものは、きわめて重要なポイントになると思うのであります。従つて、今後ともわれわれ国民は、きわめて深い関心を持つてこの解釈に注目しなければならぬと思うのであります。  次にお伺いしたいことは、総理は、国を守るためにはみずから犠牲を払うことを、国民の自尊心からして当然であると述べられておるのでありますが、ある大新聞の社説によりますと、これは再軍備を意味しておるんだというようなことを書いておりましたが、はたして再軍備ということをお考えなつての表現であるかどうか、お尋ねしたいのであります。
  42. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 先ほど申した通り、再軍備ということは考えておりません。
  43. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 しからば進んでこの問題についてお尋ねしたいのでありますが、先ほど事態の変転により、あるいは日本の経済の事情が許すならば、自衛のための軍備ということは考えられるというような意味のことを言われたのでありますが、ここに国民が知りたいと思つておる点が一つあるのであります。国連憲章第五十一條の、自衛は固有の特権であるという精神は、われわれも双手をあげてこれに納得するものであります。そこでこの自衛のために必要であるところの自衛隊、地上部隊と申しましようか、この地上部隊を将来編成いたしましたときに、この地上部隊をばただ国内だけにとどめて、海外に派遣する要のないような規定考えられるかどうか、御所見を承りたいのであります。
  44. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私の軍備を考えておらないとかいうようなことは、現在の国内外の情勢考えて言つておるのであつて、変転きわまりない将来、しかもいろいろな国際状況のはなはだ雑な今日において、未来永劫軍備を持たないとかいうことをここに断言しておるのではあまりせん。しかしながら現在の国情において、現在の事態において、日本は軍備を持つことができない、のみならず持たないがいい、こう申すのであります。
  45. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 ちよつと私の質問が不明であつたかもしれないのでありますが、将来のことを私は言つておるのであります。地上部隊を編成いたしましたときに、この地上部隊を国内の防備のみに使うような規定ができるか、あるいはどうしても自衛の性質上、海外に派遣しなければならないようなことになるか、もちろんこの研究はしておられるだろうと思いますが、その研究の一端を伺いたいのであります。
  46. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 いろいろ研究はしておりますが、すべての場合を想定して研究をいたして、こういう場合にはこうする、ああするということを、ここで私が具体的に発表するということは、少し問題が微妙過ぎると思いますから、お答えはいたしかねます。
  47. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それではこれに関連して、もう一点だけお伺いしたいのでありますが、專門家の研究の結果こういう説があるのであります。と申しますのは、もしアジア大陸諸国を除いたところの太平洋諸国の防衛協定というものができたときには、海外に日本の地上部隊を派遣するという事態は生じないということを言つておりますが、そういう点からしても、日本国民の非常に関心を持つておりまするところの海外派遣ということを食いとめることができるか。また同時にフイリピンその他の輿論に徴しましても、海外に出さない部隊であつたならば、納得できるというような強い意見が出ておるのであります。こういう点を加味したところの考え方というものが、もしあつたとしたならば、一応お聞かせ願いたいのであります。
  48. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 将来日本が地上部隊を置くというような事態が生じたといたしまして、その事態をどうするかということは、その事態に処してお答えをいたすほかいたし方がないと存じます。
  49. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 それでは時間が少くなつたようでありますから、次の問題に移りたいと思います。  軍事基地の問題ですが、これは一応私の解釈が間違つておるかどうか、情報が間違つておるかどうかということをただしてみたいのであります。万一事態が急迫いたしまして、どうしても日本に軍事基地を求めなければいけないというような状態になつた場合、もしかりにアメリカならアメリカが日本に軍事基地を求めんと欲するならば、それには四原則があるということを聞かされております。第一は日本国民の自由意思によるものである。第二には日本国民の完全なる了解に基くものである。第三は日本国民から完全なる協力を求め得るということであり、また第四は親善関係においてでなくちやいかぬ。もしこの原則がくずれたならば、軍事基地を日本に設ける意思はないということを言つておられるのであります。この事柄はダレス声明等あたりを通じましても一応うなづけるのでありますが、一応私の考えておるこの線に誤りがございましようか。
  50. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ダレス氏との間の話合いにおいて、軍事基地という問題には触れておりませんから、従つてあなたのお考えが正しいか正しくないかは、私はここに申し上げかねます。
  51. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 これ以上は追究してもしかたがないと思いますので、次の問題に移ります。  英仏等西欧陣営の軍備は防備のために、言いかえれば戰争回避に残された唯一の道であるということを言つております。またこの線がダレス氏の最近の著書であるところの「戰争か平和」の中にも盛り上げられておるのでありますが、こういう意味におきまして、日本に将来もしかりに軍備をもたらすようなことがあつたときには、この軍備は戰争回避のための軍備であるというふうに国民指導というものができるかどうか、総理のお考えを承りたい。
  52. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これも将来の仮定にわたる問題でありますから、お答えいたしかねます。
  53. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 では次の問題に移ります。総理は一昨日の議場において答弁の際に、ダレス氏と朝野各方面との会合を自分は妨げたものではない。むしろ自分が進んでお願いしたから皆が会えたのだということを申されました。参考までに承りたいのでありますが、去る六日に行われましたダレス・鳩山会談も総理があつせんされたのでありますか。
  54. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これははつきりお答えいたしますが、私は何らの相談を受けておらないのみならず、周旋もいたしません。もう一つお答えいたしますが、私はダレス氏がたれと会われようと御自由である、けつこうな話である、広くお会いなさいと申しましたが、お願いはしませんでした。
  55. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 もう一点お伺いしたいのですが、十一日の新聞紙上に掲載されました総理の声明の中に、「大使は日本本土及びその周辺に米国軍を駐在せしめて、軍備のない日本を守るため、米国との間に安全保障に関するとりきめを締結するよう招請されたが、政府及び国民大多数はこれを心から喜んで迎えるものである。」と表明されておるのでありますが。この内容に関して私は決して可否論をここに申さんとしておるのではありません。ただその政府のコミツトメントの態度に対して、少し説明を求めんとするものであります。これは国民並びに国会を無視したところのコミツトメントであるという論が高まつておる今日であります。この招請に対しては、総理は一度も国会にこれを報告し、あるいは国会の意見を打診されたことはないのであります。このような重大なコミツトメントは、今後とも政府は国会に諮るごとなく、自由にできる立場にあるとお考えになるか。わが日本の憲法によりますと、講和の諸條件というものは、事前において、あるいは事後において国会に諮り、承認を得なければならないということが規定されております。この意味におきまして、当然総理は国会にお諮りになるのだと思うのでありますが、もし事前にお諮りになるとしたならば、そのために今後国会と絶えず折衝して行かれるつもりか、あるいは対日講和のとりきめは、全然今後秘密によつて行うのであるか、所信をひとつ承りたいのであります。
  56. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ダレス氏との間に私は何らのコミツトメントを与えておりません。話合いをいたした程度で、ダレス氏としては防備のない日本の防衛に不安を生じておるのである。もしこのときに外国の侵入、進撃を受けた場合に、無防備の日本の安全のために日本が希望するならば、兵を常駐するというようなことは考えてもいいという向うの気持をべたのです。われわれもそういう場合に進んで日本の安全を保護してくれるという御好意は、まことにありがたいと申しただけで、ただちに軍事同盟を結ぶという協定をいたしたわけでも何でもないのでありますから、いわゆる話合いで、何らの約束でもなければ、いわゆる、コミツトメントでもないのであります。しかして将来はどうかというお話でありますが、日本憲法に書いてあります通り、條約はすべて国会に報告し、国会の承認をとるということは当然であります。
  57. 松本瀧藏

    ○松本(瀧)委員 時間が参りましたので、最後にちよつと所見を述べて私の質問を終りたいと思うのですが、われわれ国会議員は、対日講和を締結する連合国と日本国民との間に立つて、重大なる責任を感ずるものであります。日本国民の間には、まだ種々異なつた見解を持つておる者があり、ことに政府並びにその指導層の考えと一般庶民との考えには、かなり大きな開きがないとは断言できないのであります。一般国民情勢に通ぜざるがために事実を把握し得ず、臆測による誤解を招き、内外の事態に不安を感ぜしめるようなことがあつてはならないと思うのであります、また連合国が求めておるものは、一政党あるいは一特定グループとの講和ではなくして、八千万日本同胞との講和であります。講和條件に対する八千万日本国民の容認を求めておるのであります。また日本国民のその望むところは、何をおいても日本が平和で安全な環境を守るということであるのでありまして、ゆえに政府は国民によく説明し、説得することが必要であり、またかかる説得によつてのみ国民一致の見解に到達し、もつて講和担当の重大な責任をになつておるところの政府の事業も遂行できるのであります。よつて今日説明の不十分であつたことに対しては、他の機会において、さらに御質問する権利を留保いたしまして、本日の私の質問はこれをもつて打切ることにいたします。
  58. 小坂善太郎

    小坂委員長 次は北澤直吉君でありますが、この際上林榮吉君から質疑を要求せられております。たつての御希望でありますから、これを許します。上林榮吉君。
  59. 上林山榮吉

    上林委員 委員長がたつての希望であるというので許してくれたわけでありますけれども、同僚諸君に時間を十分にお譲りするという意味において一問だけお尋ねをいたしたいと思います。  十三日の本会議において、総理とダレス特使との間の会談の内容を発表せられたので、私どもは十分に納得が行つたのでありまするが、ただ一点だけ領土の問題に対して私はもう少しお尋ねしてみたいと考えるのであります。しかし領土の問題は言うまでもなく、講和條約の重要なる部分をなすと考えますので、詳しくお尋ねすることをやめまして、一、二要点だけをお尋ねしたいと考えるのであります。というのは、まず歴史的に考え、あるいは法律的に考え、かつまた民族ないしは地理的に考えまして、琉球列島、ことに奄美大島などはわが国の領主に属すべきものである、またそうしなければならぬという国民の熱烈なる希望でありますので、もし事情が許されるものならば、ダレス氏との会談の零囲気なりと私どもは承知をいたしたいのであります。この一点についてまずお尋ねをいたしたいのであります。
  60. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 領土の問題については、ダレス氏とは申さないが、連合国の立場はすでにポツダム宣言、もしくは降伏條約において解決された問題であるという態度をとつておるのであります。しかしそれは連合国の態度であつて、われわれとしては、日本国民の要望はでき得るだけの機会、いかなる機会をとらえても、国民の要望するところは十分連合国に伝え、また将来も伝えますというだけのお答えをいたすよりどうもいたし方がない。
  61. 上林山榮吉

    上林委員 総理のお答えは、やむを得ない御事情があるということは十分に承知しておりますので、かつまた国民の熱烈なる要望を、ダレス特使だけに限らず、連合各国にこれを十分に伝えたし、これからも伝えてこれが実現をはかるという、その熱意を私どもは十分に信用することにいたしまするが、ただここに琉球列島の中に奄美大島が含まれているというような実にあいまいな風説をなす者がありますので、私どもはこれは法律的にあるいは歴史的に、ないし民族的に考えて、そういう妄説をなす者がもしあるとするならば、これらの妄説を是正しなければならない、こういうような考えを持つております。一部の風説にすぎないと思いまするが、琉球列島の中に奄美大島が入つておるという解釈もあり得るものであるかどうか、私どもはそういうものは絶対にあり得ないと考えるのでありまするが、この点をお伺いいたしまして、私の質疑を終ることにいたします。
  62. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはダレス氏には、先ほど申した通り交渉に参られたのではないのでありますから、ただ、今お話したように連合国の態度はこうであるという話を聞いただけの話であります。しかして日本の領土として奄美大島が残るか残らないかは、今後講和條約の協議の場合において確定的にきまるわけであつて、それまでは確定的にどうきまつたとか、きまるということについての情報は存じておりません。
  63. 小坂善太郎

    小坂委員長 北澤直吉君。
  64. 北澤直吉

    ○北澤委員 総理大臣にお伺いしたい第一点は、対日講和に関しまして、総理とダレス氏との間に会談の結果意見の一致を見ましたいわゆる吉田・ダレス方式につきまして、国民の理解を深め、全国民がこの方式を全面的に支持するように、政府が国民の啓発について一段の努力を傾倒してもらいたいという点についてお伺いしたいのであります。  一昨日本会議におきまして、総理大臣の報告によりますると、米国は日本を敗戰の敵国と見ないのみならず、進んで日米両国が世界の民主自由主義諸国の一環として共同防衛の責任をわかち、将来長きにわたつて友好関係を結ぶことを希望しております。総理といたしましても、日本の新しい将来の運命を開拓して行くためには、民主主義諸国、特に米国と緊密に協力して行くことが必要であるとかねがね信じておられたという話であります。われわれとしましても、この点はまつたく御同感でございます。今回の講和にあたりまして、最も重要なことは、第一は、日本が完全な主権を回復すること、第二は、無防備の日本の安全を保障すること、第三は、日本の経済の自立を達成することであろうと存じますが、この三つの大きな目的は、米国の好意と援助によりまして、大体達成されることが明らかとなつたと思うのであります。敗戰によりまして完全に打ちのめされ、しかも世界各国の対日感情がいまだ完全に改善されておらない今日におきまして、しかも朝鮮動乱に見るがごとく、国際共産主義勢力が日本の周辺に追つて日本をうかがいつつある今日において、日本の独立と安全と繁栄を確保し、将来の運命を開拓するためには、世界の民主主義諸国、なんかずく米国と緊密に提携し、いわば米国と日本とが同じ船に乘つて、米国の援助を受けること以外に道はないと思うのであります。このときにあたりまして、日本国内には、反米、向ソ一辺倒の共産主義は論外といたしまして、一部にはいまなお世界の共産主義労力と民主主義勢力との中間に立つて、いわゆる第三勢力として中立を守らんとする意見や、日本の安全保障はすべて国際連合に依存し、日本防衛のための外国軍隊の駐屯に反対するばかりでなく、日本みずからを守る責任、義務をも回避せんとする意見が行われておりますが、これは現実の客観国際情勢を無視する議論でありますのみならず、日本を共産主義勢力の侵略の犠牲とするものでありまして、われわれのとらないところであります。こういう議論は、日米友好関係に重大な惡影響を及ぼし、国家のために百害あつて一利なきものであると思うのであります。そこで政府におかれましては、大局的見地から、かかる思想を一掃し、国民大衆が全面的に吉田・ダレス方式による講和構想を支持し得るように、国民に対する啓発について一段の努力を払う必要があろうと思うのであります。これがためには、たとえば過般の外交白書に類するような、講和白書のようなものを発表することが時宜に適することと思うのでありますが、これについての政府の御所見を伺いたいのであります。
  65. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 政府の方針としては、国論の統一とか確立とかいうことをはかるよりは、なるべく自由に国民の意思を発表し、その輿論の向うところに従つて善処したいというのが私の考えであります。しかしながら、同時に国民が客観情勢について十分の知識を得るために、外務省として持つておる資料は絶えず発表したい、また発表させる計画をいたしております。今日ただちにダレス氏との会談について白書を出すとか、出さぬとかいうような計画は持つておりませんが、しかしながら、時々刻々の国際情勢の推移については、外務省をしてその研究の結果を発表することに手落ちがないようにさせております。
  66. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたいのは、講和の最大問題でありまする日本の安全保障の問題でございます。日本は講和後ただちに国際連合に加入しまして、そうして国際連合によつて日本の安全を保障することを希望するわけでございますが、イタリアの前例もありまりて、ただちに日本が国際連合に加入することは、非常に困難であろうと思うのであります。ここに百歩を譲りまして、日本の国際連合加入が可能といたしましても、今日の国際連合の状況では、国際連合のみに依存するわけに参らぬと思うのであります。現に国際連合憲章の第五十一條におきましても、加盟国の個別的または集団的自衛権を認めまして、これに基いて地域的集団安全保障機構の設置を認めているわけでございます。北大西洋條約のごときはその一例でございます。日本の一部には、国連による安全保障はよろしいけれども、地域的の集団安全保障は危險であるというふうな議論があるのでありまするが、地域的集団安全保障というものは、国連の補完的作用をなすものでありまして、国連と一体であると私は思うのであります。日本としましては、国際連合のわくの中で地域的集団的安全保障機構に参加し、日本の安全を守ることが必要であるのでありまするが、この地域的集団安全保障機構は、北大西洋條約のごとき加盟国の自衛と相互援助を基本としており、日本のような無軍備の国がただちにこれに加入し得るやいなやは疑問と思うのであります。ダレス氏もこの点を指摘しておるのであります。従いまして日本としましては、地域的安全保障機構に参加し得るまでの暫定的の安全保障措置としましてこれを考えなければならぬのでありますが、これにはどうしても米国軍隊の日本駐屯以外には道がないのであります、米国も日本が希望するならば、軍隊を日本またはその周辺に駐屯してもよろしいと申されているわけであります。しかしながら外国軍隊の駐屯ということは、満州国の場合を考えてみましても、またイラクあるいはフイリツピンの場合を考えましても、実質におきましては、駐屯されている国の主権に種々の制限、制約が加えられる結果となるのみならず、国民の独立心を鈍らせることになりますので、米国軍隊の日本駐屯に関する協定を結ぶにあたりましては、できるだけ日本の主権を尊重するように考慮を払うとともに、駐屯期間をなるべく短かくするように留意することが必要だろうと思うのであります。もちろん日本の経済力や、あるいは地域的安全保障機構の設立等ともにらみ合して考える必要がありまするけれども、いつまでも米軍の駐屯にのみ依存するのは、適当ではないと思うのであります。これにつきまして総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  67. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、先ほども申した通り、ダレス氏との話は交渉ではなく話合いであつて、アメリカ政府は防禦のない日本に対し、万一の場合に対して援助する用意があるという気持を申されたのであつて、その場合に日本の主権がどうなるかこうなるか、あるいはこれに対する日本の義務はどうかというような、詳細な交渉をいたしたわけではありませんから、その点はお答えをいたしにくいが、しかしアメリカ政府の考えておることは、講和後において日本に完全な独立を認めるという趣意にありますから、今お話のような場合においても、日本の主権を害するような、日本の独立を害するような協定は、要望するはずはないと原則的に考えます。
  68. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたいのは、日本の加盟する地域的集団安全機構についてであります。この点については、この間の総理とダレス氏との間の会談でも触れられたようでありますし、またアメリカ政府におきましても、この問題については、同情的態度をもつて考慮するというふうに新聞等には伝えられておるのであります。この問題には種々の問題があるわけでありますけれども、日本といたしましては、アメリカをも含んで、地域的な安全保障機構がすみやかにできることを希望する立場にあると思うのであります。ヨーロツパでは、御承知のように北大西洋條約の成立と、マーシヤル・プランによります米国の経済援助によりまして、一応の勢力のバランスが共産主義陣営と民主主義陣営との間に保たれておるようでありまするけれども、極東におきましては、この力のバランスが、日本の敗北によつて破壊されたままとなつておりまするために、遂に中共の中国大陸席巻となり、さらには朝鮮の動乱となつたわけであります。極東の平和のためには、ヨーロツパと同じように、米国を含んだ地域的の集団安全保障機構と、アジア・マーシヤル・プランのようなものによりまして、アジア諸国の経済復興をはかり、そうして力のバランスを回復することが必要だろうと思うのでありますが、この点に対しまして、総理の御所見を伺いたいと思います。
  69. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 従来の国会の議場においてもはつきり申しておきましたが、ただいまお話の地域的集団安全保障というようなことは、何ら言及いたしておりません。
  70. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一点伺いたいのは、日米友好関係の増進についてでございます。日本の安全保障のためにも、また日本経済の自立達成のためにも、日米の友好関係をますます増進する必要があることは申すまでもないのであります。従来の日米の関係を見ましても、日露戰争までの五十年間は非常によかつたのでありますが、日露戰争後は、あるいは支那大陸におきまする両国の利害の衝突、あるいはアメリカ本国におきまする排日移民問題というようなことから、両国の関係は非常に惡くなりました。これが遂に日米戰争にまでも入つたわけであります。ところが今後日米両国が協同して共産主義勢力に当るというためには、両国の友好関係をますます強化する必要があることは申すまでもないのであります。これにはもちろん政治、経済その他各方面において、両国の友好関係の強化をはかることが必要でありまするが、最も必要なことは、日本とアメリカ両国の国民の精神的の結合をはかることであろうと私は思うのであります。相手の国の歴史なり伝統なり文化なり、あるいは国民性をよく理解し合い、お互いに尊敬し合うことによつて、初めて両国の精神的結合ができると思うのであります。こういうためには、私は両国の文化の提携と申しますか、そういう文化方面におきまする両国の提携を強化することが、非常に必要だと思うのであります。そういう点につきましては、政府におかれましてもいろいろお考えなつておると思うのでありますが、この機会に日米の友好関係をさらに増進することにつきまして、政府はどういうお考えを持つておられますか、この点を伺いまして私の質問を打切ります。
  71. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 日米の文化交流あるいは日米の間の文化連絡等については、米国政府側も日本政府側も、いろいろな形において考慮いたしております。たとえばグルー基金でありますとか、あるいはクリスチヤン・ユニヴアーシテイーかいろいろな企てがあり、さらに企てばかりでなく、着手している向きもありますが、このたびダレス氏は特に文化に関する点に重きを置かれたと見えて、ロツクフエラー氏を連れて来られて、日本の実地について視察もし、また考えも立てておられるようであります。ダレス氏のこのたびの訪問において、またロツクフエラー氏が日本に見えたということによつて、話はさらに一層具体的になるであろうと思いますし、なることに政府も努めます。
  72. 小坂善太郎

  73. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 吉田総理大臣にお尋ねいたします。ずばりと聞きますから、御明答をお願いいたします。  先ほどの御答弁の中で、講和條約ができればポツダム宣言は失効する旨お答えになられました。しからばその場合には、ポツダム宣言に基礎を置くあらゆる協定あるいはとりきめ、こういうものは一切効力がなくなると考えてよろしゆうございますか。
  74. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私はなくなるだろうと申したのであつて、なくなると断言はいたしません。何となれば、これは将来に属することでありますから。しかしながら常識で考えてみて、講和條約とポツダム宣言なるものの基本観念が違うから、講和條約ができれば、ポツダム宣言にかかわる性質において新しいものができる。ポツダム宣言の中にどういう将来残るものがあるかということは、今日私はここに明言いたしませんが、そういうものは講和條約の中に織り込まれるか何かして、ポツダム宣言にかわるものができるであろうと私は想像いたすのであります。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その場合に、要するにポツダム宣言に基礎を置く現在の協定やとりきめというものは、当然効果を失うように想像されるのでありますが、総理大臣はいかにお考えになりますか。
  76. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 当然失うか失わないかは連合国の決定するところによるのであつて、今日私が当然失うということを断言することも早過ぎます。し、失わないと言うのも早急であろうと思います。ゆえに私は、ポツダム宣言にかわる新條約ができて、従つてポツダム宣言の処分は連合国においてするだろうと想像するのであります。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ポツダム宣言の効力がなくなると想像されれば、ポツダム宣言に基礎を置く協定やとりきめは、当然私解消すると想像する。これは論理的に当然だろうと思う。総理大臣はもう一回この点を明確に、想像でけつこうでありますからお答え願いたい。
  78. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは想像論の交換弁は重要な問題を含んでおるのでありでありますから、結果を見て論ずるよりほかいたし方ない。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 吉田総理大臣の答弁にはなはだ不満であります。  しからば次にお尋ねいたしますが、ポツダム宣言が効果を失うであろうという場合に、ソ連が講和條約に入らないときには、ソ連も含めてポツダム宣言は効力を失うと吉田総理大臣は御想像になつておるのでありますか。
  80. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 今日は一応全面講和の線で参りますから、ソ連が入らなかつた場合にはどうするかということは、その場合に御答弁いたします。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の答弁は、はなはだあいまいであります。総理大臣はかねてより、全面講和ができない場合は多数講和でもやむを得ないということを希望いたします。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 希望を聞いたのではない。吉田総理大臣がお答えになつた御意思は、全面講和ができた場合にはソ連との関係において効果を失う、こういうふうにお答えになつたかという意味であります。
  83. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私の申した説明は前言の通り
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 前言の通りと言われても、前言がはなはだ不明瞭である。吉田総理大臣は世の中で知られているように白たびをはいているので、きのうの雪のように、非常に純潔な人だと思つてつたが、今の御答弁はきようのぬかるみみたいなお答えである。私は今のお答えを不満に思いますが、この点については時間がないからこれでやめます。  次に質問いたします。ダレスさんの声明があります。この声明の内容を読んでみると、日本に完全な主権を回復させるという言葉が書いてある。これもまた重要な言葉であります。そこで、完全な主権を回復させるという意味は、講和ができたあとには対日監視委員会というようなものはできない。完全に日本政府にあらゆる権限を回復させて、日本政府の自主性においてあらゆることを運ばせるという意味でありますか。この点を御説明願いたいと思います。
  85. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は多分そうだと考えますが、詳細のことはダレス氏にお聞き願いたい。
  86. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 詳細なことはダレス氏にお聞き願いたいといつても、ダレス氏の声明を読んでごらんなさい。総理大臣御存じのように、こう書いてある。政府と特使団との打合せに基いて政府が声明を出しておる。その中で政府は何と言つているかというと、「彼我了解上きわめて満足すべきものがあつた。」と書いてある。そうすると了解のあつたことは、はつきりしており、了解があつたというからには、今の国内的な措置の問題についても話合いがあつて、お互いに了解したことがあつたと私は判定する。だからこそここに完全な主権を回復させるということをダレス氏は言つておられる。そういう意味で、対日監視委員会とか——要するに国際法上、国内事項というものは不干渉ということが原則なつております。この原則が完全に貫かれた講和が締結されるのでありますか、その点の了解はいかがでありますか。
  87. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 先ほども申す通り、ダレス氏と私との間は交渉いたしたのではないのであります。互いに気持を話し合つたということであつて、その気持はまことにけつこうであるという了解に達したというのがどこが惡い。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうむきにならぬでもよろしい。
  89. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げますが、中曽根君の御質問は前の松本君の御質問と共通のものがありますから、簡潔にやつてください。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今総理大臣のお答えがありましたけれども、了解上満足すべきものがあつたという政府の声明があるので、了解があつたということになる。そこで国内事項について、いかなる程度の了解があつたかということを私はお聞きしておるのであつて、決して無理な質問ではありません。今の吉田総理大臣の答弁に対して、私は不満足であります。  そこで、しからばもう少し具体的にお聞きいたしますが、同じくダレス氏の声明の中にこういう言葉がある。「日本の戰後の立法及び発展を活気づけて来た国内的並びに国際的行為のりつぱな原則を守る」云々、このことはおそらくマツカーサー元帥が日本に来てやつた偉大な改革、たとえば農地改革、労働組合の育成あるいは独占の禁止、こういう連合軍がやつた重要な立法改革というものを、そのまま戰後も日本に継続させるという内容の講和が締結されるのであるかどうか、この点も御質問いたします。
  91. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 その点は特に話し合つたことはございませんから、お答えいたしません。
  92. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばここに書いてありまする「戰後の立法及びりつぱな原則」ということはいかなる内容のものでありますか。
  93. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 それはダレス氏にお聞きを願いたい。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ダレス氏にお聞き願いたいといつても、政府とダレス氏が打合せてやつた声明の中にそういうことが書いてあるのですから、総理大臣は知つているのに違いない。それを隠して言わないのに違いない。ちやんと顔に書いてある。私は総理大臣の答弁を非常に国民の名において不満に思います。
  95. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げますが、最初の約束を守つてください。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後にもう一点お尋ねいたします。ロツクフエラー氏が参りまして、日本の文化の向上について非常に協力されましたことをわれわれも感謝いたしますが、国民が一番関心を持つている文化上の問題は、日本に民間航空機の保有あるいは運営を認めるかどうか、あるいは平和のための原子科学の研究を日本にも認めてもらつて、サイクロトロンをまた日本に復活させて、湯川博士が日本で自分で研究できるような地位に日本がなるかどうかという問題であります。この民間航空機の保有と運営及び平和のための原子科学の研究の問題について、いかなるお話がありましたか、いかなる要望をなされましたか、お尋ねいたします。
  97. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 そういう点については何ら触れておりません。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 何にもしてないとは、政府は無能であります。私ははなはだ遺憾に思います。
  99. 小坂善太郎

  100. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理大臣に若干の質問をいたします。今まで再軍備の問題についてしばしば総理がお話になりましたことは、よく了解できるのでありますが、さらにひとつつつ込んで疑点になる点をお尋ね申したいと思う。けさでありましたか、キヤンベラから例のダレス氏が声明を出されたということでありますが、それによりますと、日本の再軍備は、国連に加入した後において、日本は再軍備をするということが一つ。その再軍備の大きはあまり大きなものではない。この二つを指摘されておるのでありますが、これについて吉田総理はいかにお考えなつていらつしやいましようか。
  101. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は日本国が持つべき将来の軍備の大きさとか、規模とかいうようなことには全然触れておらないのみならず、私としては今日日本国としては軍備を持つことができないというので、その議論を私はいたしましたけれども、さてその内容にわたつてどれだけの軍備を持ち、どういう規模のものを持つかということは一切触れておりません。また触れるべきでないと思いますから、ダレス氏も何ら言つておられません。従つていかなることを声明せられたか、それは私の気持は——理由は存じません。
  102. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理の答弁を聞いておりますと、現在はということが非常に耳につくのでありまして、そこであなたの談話の中にも、再軍備問題は講和後において、自由なる意思において考うべきだということを書いてございますが、その前にはやはり日本の自衛についての日本の義務を言われております。そこで私が聞きたいのは、現在の問題を聞いておるのではございませんで、たとえばあなたが言われた場合における講和後において、あるいは国連加入後において、こういう問題が現に世界的にいわれておる問題でございますので、この点についてのあなたの決意もやはり承つておきたいと思います。
  103. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 むろん日本として独立を回復する以上は、軍備を持つとか、持たないとかいうような主権の行動については、国際的に制約を受けるはずもなし、また制約を受けたくない、与えたくないつもりであると了承いたします。少くとも米国政府の考えておるところは、いわゆる完全なる主権を回復させたい。また日本国として、あるいは日本政府として、でき得べくんば自国の安全は、自国の力でもつて、自国の軍隊その他店もつて守ることにするのが原則であつて、そういうふうにいたすべきであると思いますが、現状において——また現状においてと言わざるを得ないのであります。将来日本が余力があればむろん軍備を持つがよろしい。またみずから他国に依頼せずして、日本の安全はみずから保障すべきであり、守るべきであると思いますが、現在としては、いかんせん敗戰後間もない今日において、かつまた国民の感情においても、親を失い、子を失つた国民の感情からしても、再び軍備を持ち、再び戰いを開くのであるかということは、これは国民に対して感情的に非常に不安な念を生ずるであろうし、かくのごとき不安はなるべく与えずに、他の方法をもつて国の安全をはかる、こういうのが政府として努むべきものであると考えますから、今日において軍備というものを考えられないという観点から、私はダレスさんにも率直に、今日われわれは再軍備というものは考えられない、こう申したのであります。将来は将来、今日は今日、私は今日の現状においてと言わざるを得ない。
  104. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、今後の問題について再軍備、あるいは再軍備をするしないというような問題については、もう言葉の通りだと私は思うのでありますが、今後の問題については、日本国のいわゆる自由なる意思によつて決定すべきものである。再軍備の問題は外国からとやかく言わるべきものではない、またアメリカもそう理解しておると思う。従つて今後の問題として再軍備をするというような公約なり了解なりを与えたことはない、こういうふうに解釈してよろしゆうございましようか。
  105. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 その通りであります。
  106. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで次にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、そういう状態のもとにおける日本の安全保障形式というものを、どういうようにお考えなつていらつしやいますか。
  107. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この間も国会で私ははつきり申したと思いますが、いわゆる国内の安全ということは、日本の自力で、警察力なり何なりの力で国の治安は保障するが、しかし集団的に攻撃を受けた場合においては、集団的に考えざるを得ない。しからばいかなる集団的防禦をなすかということは、これは相手方もあることでありますからして、日本政府だけがこういうことをきめたところが実行ができない話で、これは今後の交渉にまたざるを得ないとお答えをいたします。
  108. 勝間田清一

    ○勝間田委員 国内の治安ということについてもつとはつきりさせたいと思うのですが、国内の治安について、現在の警察制度あるいは予備隊制度、こういうものを改正して行こうと考えていらつしやるのですか。
  109. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはこの間の私の演説の中にも言つたと思いますが、治安の状態は、現在においては現設備をもつて足りると思いますが、しかし将来ますます警察その他の機関は充実して行きたいと思います。
  110. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次に集団安全保障の問題でありますが、この問題についても、総理の談話なり、またダレス氏の談話なりがございまして、日本国はこれに対して招待されておるということがはつきり言われておるわけであります。これに対していかにお考えなつていらしやいますか。
  111. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ちよつと聞きのがしましたが、しまいの方は招待されておるですか。
  112. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ええ、招かれておる……。
  113. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはさつきここで申した通りダレス氏としては、防備を撤廃した日本において、防禦のない日本において、安全が外国の侵入その他において侵された場合には、みずから守るだけの今日設備がない。ことに講和條約がたとい締結せられたその直後において、どうすることもしかたがないであろうから、その場合にはアメリカとしては、日本に兵隊を置いて、日本の安全を保護するという用意を持つておるという気持を話してくれたのです。いまだわれわれは独立も回復せざる今日でありますからして、独立後において安全の保障はどういうふうにするか、集団的安全保障はどうふうにするかということは、外国との交渉によつて集団的保障の協約といいますか交渉によつて自然形ができるので、これは日本だけがこう考えておつても、相手方が承知しないかもわからない。また相手方の事情については今日われわれは全然承知しないのでありますから、相手方の承知もしそうのないような計画を立ててもいたし方ないのでありますから、これは独立後における事態にかんがみて善処いたすと、お答えするよりしかたがないと思います。
  114. 勝間田清一

    ○勝間田委員 独立後において当然これは考えるべき問題もあると思います。すなわち日本の自由なる意思によつてこの問題はほんとうは考えるべきだと私も存じます。しかしその点についていわゆる先ほどから御質問のあつたような了解というものがもしあのといたしますれば、これこそ私どもはほんとうに聞きたいところなのでありまして、最近よく太平洋同盟ということが、アメリカでも、また南方あたりでも盛んに議論されておるのでありますが、こういう問題についての了解というものがございませんかございますか。
  115. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは先ほど申した通り、独立後の話でありまして、今日われわれとしては、他国と交渉する地位に立つてもおらず、相手方の事情もわからない今日でありますから、この点については、ダレス氏も私も何ら言及いたしておりません。
  116. 勝間田清一

    ○勝間田委員 何も研究していないということでございますが、しかしこの問題は非常に重要な問題でありますから、総理の所見を承つておきたいと思うのであります。国民はいわゆる地域的な保障を受ければ安心するというような考えにのみ実は考えがちであります。しかしながら私は、北大西洋同盟というようなものとは、日本の場合は非常に違つて来るのではないか。というのは地理的ないろいろな條件が違つております。特にすでに大陸などでは戰争状態というものを引起しておるわけであります。従つて地域的な集団保障というものに参加する国の性格によつては、むしろ日本の安全保障よりも、他のアジアのトラブルに日本が参加する方が主になつて来る場合の方が私は多いと思う。従つてむしろ日本の権利よりも日本の義務の方を、われわれは重要親して参りたいと実は考えるのであります。そういう意味から申しますると、私どもは現在諸外国でいろいろ論議されておる地域的な保障というものが、はたして日本の保障になるか、ならないかというところに疑点があるわけでありますが、総理の所見をひとつ承りたいのであります。
  117. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は先ほど言及いたさなかつたと申したので、これは私の聞き間違いであるかもしれませんけれども、論じておらないということと御承知願いたいと思います。研究はいたしております。しかしこの研究の結果、どういう結論が出たかということは申しかねますが、しかしもしかりに、よくうわさに上るがごとき東太平洋集団保障でありますか、というような形、新聞だけの話でありますが、それだけの形で日本がただちに参加するのはどうかというような、今お話のように、義務の方が多過ぎるというような感じもいたします。ゆえに御承知の通り大西洋防衛問題についても、現に相当議論があり、また議論のあるために結論に達しておらないような状態であつて、ことに東太平洋における地域的集団保障というようなことについては、よほど日本として考えなければならぬことでありますから、軽率にこうあるということは、よほど研究を要することだと思います。私一個の考えはありますが、政府の考えとして、講和條約のできざる日本の立場において申し上げることは影響がありましようから、お答えは差控えたいと思います。
  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その問題はきわめて重要な問題でありますので、私どもは、総理も十分に御研究を願つておると考えますけれども、なお日本のためにそういうことを強く希望いたしたいと存じます。  それから次の問題でありますが、講和というときに、やはり私どもの頭に一番浮んで来るのは、敗戰国日本は完全な平和を希望したいのであります。その点から見まして心配になるのは、中国の問題だと私は思います。一体講和の締結国に対する日本の自主権というものは、あるいはないかも存じませんけれども、いわゆる中国と平和を結ぶということは、一体どの政権であるか、この点どう考えておるか、中共政権であるか、あるいは蒋政権であるか、この問題は私ども今後の問題としてやはり残つて来る問題だと思います。これについての総理の御所見をひとつ承りたいと思います。
  119. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この点は御承知の通り、現に国際連合加入の問題についても、中共を認めるか、認めないかというようなことが問題になつております。そこでこういう係争問題があるときに、日本政府の当局者として、この国、この団体といいますか、薪政権とかあるいは中共と話をするというようなことを申したところがいたし方ないのでありますし、ことに現在国際連合において係争問題になつておるところでありますからして、私としてはお答えを差控えたいと思います。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理は従来全面講和を特に希望されておつたが、しかしやむを得なければということでおられたようでありますけれども、もし現在全面講和を希望するとしても、こういつた特定国の軍隊が日本におるとか、あるいは集団保障の問題が考えられるとかいうような、いわゆる軍事同盟の締結が、他の世界と締結されて行くということでありますれば、事実上いわゆる全面講和の精神というものは空文になるのであつて、それは單なる一つの気休めにすぎない、こういうように私は思いますが、その点についてはいかがでございましようか。
  121. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 それは日本国政府としても、またアメリカ政府としても、一応全面講和の建前でもつて列国に交渉するのが当然であり、またそうなるのであろうと思います。そこで日本政府として全面講和ができなかつた場合、どうする、こうするということは、当局者としてお答えができにくいと思います。
  122. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかしこれは何回言つても同じかもしれませんが、全面講和の思想で貫くということであれば、私はあらゆる軍事同盟というものにこの際参加しないということを明確に言われた方がいいのではないかと思うのです。もし軍事同盟の問題を真剣に論議するということでありますれば、むしろ多数講和の吉田内閣の考え方というものがここにはつきり表面に出されて、国民の批判にまつということの方が私はいいと思う。それが国民を現在迷わしておる問題だろうと実は思うのでありまして、現在はむしろあなたの見込みから行けば、全面講和はできないという立場に立つていらつしやるのではありませんか、その点をひとつはつきりお尋ねいたしたいと思います。
  123. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 見込みはとにかく、政府の立場としては、一応全面講和でもつて講和條約を考えて行くという立場をとるべきであると考えますし、またそういうふうな立場をとつております。
  124. 勝間田清一

    ○勝間田委員 こういう問題を次に聞いてみたいと思うのでありますが、私は最近における日本の自主権という問題を、講和前においてやはり当然考慮すべきである、こういうように考えるのでありますが、講和前における日本の自主権回復ということについての総理の確信なり、所見なりを承りたいと思います。
  125. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 今日日本は降伏條約のもとにおいて、占領下におる日本として自主権の回復ということは、これは矛盾する考えであると思う。ゆえになるべく早く講和條約をこしらえて独立を回復するということに邁進いたすべきものだというふうに考えます。
  126. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは必ずしもダレス氏の方ではないと思いますが、この問題について政府は折衝をされておられますか。具体的な問題がございましたら、お知らせ願いたい。
  127. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ちよつと御質問の趣意がわかりませんが、自主権回復について交渉しているかということでありますか。
  128. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうです。
  129. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 そういう交渉はいたしておりませんけれども、しかしながら私の交渉をまたずに、始終申す通りでありますが、米国、マツカーサー元帥が、日本の自主権、日本の行政は日本になるべく委譲するようにせよという方針でやつておられることは事実であります。しかしながらわれわれの方から自主権回復を公然持ち込んだことはありません。また持ち込まなくても、なるべくその趣意に沿うというマツカーサー元帥の趣意を了承いたしましたから、特に私の方から交渉はいたしません。
  130. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本の自主権の問題を考えて行く場合には、常に西ドイツの自主権というものと比較して考えて参りたいと思う。しかしその間において、私どもは西ドイツの場合と日本の場合と、非常に大きな違いのあることを実は悲しむものでございまして、この点については、私は吉田総理大臣の責任もあられようかと思うのであります。私は最近の日本の経済状態、特に輸入物資の状態等から考えまして、ドイツの場合と日本の場合とは、非常に大きな違いがあると思う。たとえて申しますれば、ドイツの場合は、六月以降においても完全に入超をとつておる。日本は不幸にして出超で、しかも政府の発表によれば、十二月末には五億二千万ドルのドルもかかえておるというような状態になつておる。こういう状態では、私は日本の経済的な自主権というものは期待できないと思うのでありますが、総理はどう考えていらつしやいましようか。
  131. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ドイツの現状は私はよく存じませんが、しかし一つ考えなければならぬことは、ドイツはヨーロツパの中央に位し、ことに鉄であるとか、石炭を持つている。ヨーロツパの重要なところに位しており、しかも軍需品といいますか、軍備に必要ないろいろな資源を持つておる。このドイツの連合国に対する立場と、日本の立場とよほど違うことも考慮に入れなければならぬと思います。しかし、しからば日本の現在の状態が完全なりやといえば、完全でないのであります。なお幾多の不満がありますが、現状においてはこれ以上はいたし方ありません。これは私の責任であるかもしれませんが、できるだけのことは盡しているが、これ以上はできないのを遺憾といたします。
  132. 勝間田清一

    ○勝間田委員 さらに一つの問題があると思うのであります。というのは、御存じの通りに、中共等との貿易が、一切ここで中絶をしておるという状態にあります。塩にいたしましても、大豆にいたしましても、あるいは鉄鉱石、粘結炭等々いろいろの問題にいたしましても、経済的に当然ペイすると思われる地域の貿易というものは、一応禁止されている。それらの品物がすべてアメリカなりカナダなりへ振りかえられている。これは私は経済上相当の損失もあろうかと考えるのであります。そこで日本の経済の窓口というものが、ほとんど一つの世界だけに限られて行く、地域だけに限られて行く。この限られて行く状態というものと、日本の経済の現状における自給率というものとを考えてみるならば、たとえば食糧は二割も依存しなければならぬ。あるいは原料は七割も依存しなければならぬ。あるいは日本の船舶の八割、九割をこれらに依存しなければならぬ。まつた日本の経済の綱というものは、ある特定国家に依存してしまうという形をとるのではなかろうか。そこに、今後の経済を考えて行く場合に、私どもは当然今度の講和では、それにかわるべき日本の当然主張すべき最低の要求というものがあると思う。これらをほんとうに確保できなければ、政治的に独立ができたとしても、経済的には日本の独立というものはできない。ここに私は問題があると思うから、今度のダレス会談なり、今後の講和会議に、日本の政府のしつかりした立場というものを発露されてほしいと私は思うのでありますが、これらに対しまして、会談をなされたかどうかということについて、総理の所見をはつきりお尋ね申したいと思います。
  133. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 最低の要求として、あなたのお考えなつておることはどういうことでございますか。
  134. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はまず第一に、日本の必要なる物資についての輸入を、たとえば中国等から確保してもらいたいが、それができなければ、たとえば食糧については国際小麦協定に参加して必ず食糧というものは確保するという道にわれわれを進めせてもらいたい。あるいはその他の、たとえば原料確保、あるいは粘結炭、鉄鉱石等揚々の軍需資材の割当計画が、アメリカ、フランス、イタリア等において現在やられております。しかもその国際機構が現につくられつつあります。そういう国際機構への参加なり、あるいはそれに対するわれわれの輸入の保障なり、こういうものを確実にやられて行かなければ、前途はちようどかごの中に入れられた小鳥のように、よそから三人の持つて来るすりえさに依存しなければならぬという状態が出て来れば、私は遺憾だと思う。従つてそういう條件というものがここに出て来るのではないか。その條件で出て来たものについての日本の要求というものは、不当な要求ではなくして、これは日本自立経済の上における必須の條件だと思う。これについての総理のお考えを聞きたいのであります。
  135. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 日本に対しての各種の物資の割当については、現にワシントン政府が考えておられると思います。つまり日本の産業なり経済なりを崩壊しないようにするためには、どれだけの輸出を必要とするかということは現に考えられております。適当の結果が出ることを希望いたしております。
  136. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はそれと同時に、向うが考えておるということでなくして、日本の自主性ということが最後においては非常に重要になつて来ると思う。この点をお尋ねいたしたい。
  137. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えいたします。日本の自主性で、日本現実にどれだけのものが必要であるかということの希望は申し述べております。この希望に応じてワシントン政府が検討しておるものと了解いたします。
  138. 小坂善太郎

    小坂委員長 横田甚太郎君。横田君に申し上げますが、非常にお気の毒ですが、委員長と総理が約束いたしました時間はすでに過ぎておるのであります。これは委員会の運営によることでありまして、委員長といたしましてはこの時間を守りたいと思つておるのでありますけれども、あなたの御要求があるので、特に許したことをお含みの上質疑を願いたいと思います。
  139. 横田甚太郎

    ○横田委員 二十分はあるのですね。
  140. 小坂善太郎

    小坂委員長 それは委員会全体として、一時間ある場合にあなたの方に二十分行くという話であつて、すでに一時間半を経過しておるということを、あなたは承知していただきたいのであります。横田君。
  141. 横田甚太郎

    ○横田委員 非常に見解の違う党が、総理の見解が私の方とどのくらい違うかということをはつきりさせるために伺います。  第一は、現在講和條約が進行しておると、こう言われますが、われわれはそう思わない。それで総理に言わせますと、日本は自由民主国家になつて、その晴れの一員に加われると言われますが、われわれは今の講和の形が、このままで行つたなら植民地になるのだ、こう考えます。しかしこのように見解が違うと言つておりましても、議会で答弁をつつぱねられるだけでありますから、最も近い、端的な問題からお伺いいたします。  まず西欧民主主義者にとりましては、立憲議会が一番大事だと思うのです。国会議事堂が一番神聖な殿堂だ、これが向うの主張だと思う。共産主義者には大衆集会が大事だ。総理大臣は、現在の講和の進行の過程におきまして、米国は日本に対して旧怨を持つておられない、非常に友好的に出ている、こう言われる。もし友好的に出ているのであれば非常にけつこうですが、われわれにはそう受け取れない点があるのです。それがすなわちこの国会議事堂の問題です。一例をあげますと、この国会議事堂の中にアメリカの兵隊さんが入つて毎日軍事訓練をやつております。私はこのことに対しては非常に不愉快に思うのです。吉田総理大臣は日本人として、日本の代議士として、この事実をどうお考えになるか。これを私と同じように不愉快に思われるものであるならば、外国の実権を握つている人たちとお話する機会が総理には多いですから、そのときにはつきり意思表示をされたかどうか。このことが一つと、それからまた、こういうふうな不愉快なことをなくしてもらうためには、日本人としてはどういうような運動をしたらいいか。これは法務府に圧迫されつつ、それに反抗して運動をやるしかしかたがないのか。それからまた同時に、こういうふうなことをやられますこと自体が、非常に大きな刺激になりますから、われわれはこれをやめてもらわなければならない。少くとも議事堂に対して鉄砲を向けるような訓練は困る。こういうようなことをはつきり意思表示するということ自体が、占領政策に違反になると思われるのか、それをまず第一点としてお伺いいたしたい。
  142. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 もしアメリカの兵隊が議事堂に入つて来て、国会に入つて来て、議事を妨げるとか、圧迫したということになれば、あなたのお説のようでありますが、現在においては、アメリカの兵隊が、国会の構内において練兵をするからといつて、それをもつてただちに国会の神聖を汚したものと私は考えません。
  143. 横田甚太郎

    ○横田委員 強く追究したいのですが、二十分に制約されておりますので……。
  144. 小坂善太郎

    小坂委員長 横田君に言いますが、二十分ではありませんよ。すでに…。
  145. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは簡單にしますけれども、第一に、この問題が非常に問題になるのであります。なぜと申しまして、侵略ということを、現在では間接侵略と直接侵略の二つにわけております。間接侵略の場合におきましては、ポツダム宣言第十二條によりましても、民族の自決ということが高く叫ばれております。われわれはこれゆえにこそポツダム宣言を進歩的な條約であると思い、これを守らなければならないと思つてつたのであります。またこれを守ることが世界の大勢であります。世界の人権宣言の前文には、どう書いてありますか。反対派をして武器をとらねば政権を握られないというような、思い詰めた形に追い詰めてはいけないというのが、世界政治今日の行き方であります。これが世界の最も正しい行き方であります。であるにもかかわらず、間接侵略ということは、賃金が安い、米価が不合理だ、税金が高い、日本の国には非常に軍事基地がふえて行く、これでは日本の独立が危ういと思つて運動するところの勢力を抹殺するということが、すなわち間接侵略に対する防衛で、それに対する防衛が問題になつているのであります。だからこの点において、ポツダム宣言第十二條に盛られましたところの、いわゆる民族自決、みずからの力において政体をきめる。一例をあげますと、全面講和が多数講和を圧迫いたしまして、全面講和でなくちやならないということで全面講和派が大多数を制した場合においては、一体政府はそれに従うのか、従わないのか。この点をお伺いいたします。
  146. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私が最も関心を払つておる間接攻撃なるものは、諸君のような共産党が日本国民の安定を害することが、最も困ることだと思つております。(「その通り」笑声)
  147. 横田甚太郎

    ○横田委員 政府の講相談義につきましてはつきりと言えることは、インチキだということであります。今度の戰争の原因は一体どこにあつたのでしようか。われわれが日本の歴史を見ますと、アメリカと争つたのじやない、中国の大きな人口と領土、資源が問題になつた争いなのであります。これと戰端を開きまして、日本がここに侵略をしておりましたときに、アメリカは初め武力を用いなかつた。しかし日本の侵略がだんだん南に伸びることにおいて、アメリカは非常に焦躁を感じ、後ほどになりましてアメリカがこの戰争に介入して来たのであります。戰争の原因といいますものは、近衛三原則として示されておりましたように、日支の共存共栄であり、共同防共であり、経済提携であります。これを徹底的にやろうと進んだものが、中国に台頭する人民の力に圧迫されまして撃破されたのであります。撃砕されたのであります。されば中国との親善が大事であります。中国との通商が大事であります。これを考えずに、何を好んでアメリカと今講和を問題にしなくてはならないのか。アメリカとはすでに講和になつておるじやないか。あなた方は何ぼでもアメリカへ行ける、われわれは行けない。(笑声)あなた方はアメリカのものは何ぼでも高く日本に持つて来ている。アメリカの思う通りに政治をやつておるのだ。これ以上の親善が何が必要なんだ。むしろこの既定の事実を失いたくないために、アメリカの人たちはこれを法文化しようと思つてつてる、それが單独講和だと思う。だからかような意味におきまして、総理にはつきりと聞きたいことは、中共問題をはつきり解決し得ないところの講和会議の進行なるものは、日本の多数の人民にとつて非常に迷惑であるということははつきり言えるのであります。そんなものは講和ではないのであります。中共との問題につきまして、ダレスさんとどういうようにこれを扱うという話合いをされましたか。この問題が解決してこそ初めて問題が解決するのであります。その点をお答え願いたいのであります。
  148. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 はつきりお答えいたしますが、ダレス氏との会談の内容は申すことができません。
  149. 小坂善太郎

    小坂委員長 総理大臣に対する質疑は、これをもつて打切ります。中曽根康弘君。     〔「もう一問だけいいじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  150. 小坂善太郎

  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は先ほどの質問に関連いたしまして、外務政務次官及び関係局課長に、国際法上の技術的な問題について簡單に御質問いたします。  まず第一は、講和條約というものは、先ほどの総理大臣の御答弁でもわかりましたように、非常に創設的な意味を有する。従つてポツダム宣言であるとか、あるいはその他戰争に関係したいろいろなとりきめが、講和條約という新しい創設的な行為をやることによつてとりかえられる、こういうことが先ほどの総理大臣の御答弁で明らかになつたように思うのであります。そこでこの講和條約というものは、どの程度の創設的効果を有するかという問題を、二つの問題に限定してお聞きしたい。その第一は、いわゆる戰争終了宣言という問題、つまり占領及び管理の終結の問題と、ただいま申し上げた講和の関係であります。よく政府筋の見解で、占領を終結してもらう、あるいは管理を終結してもらう、そのためには必ずしも講和を必要としないであろう、戰争終了宣言でも法律的には可能であろう、こういう見解が言われておりますが、はたしてその通りでありますか。
  152. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 戰争終了宣言だけでは十分でない場合が多くあると思います。従来の各国の例等を見ますと、その国内で戰争終了宣言をいたしまして、それを受けた方がこれを受けるという関係なつている場合が多いと存じますが、條約とは違いますので、全部が国際法的に有効になつたという立場に至らない場合が多いと思います。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、戰争終了宣言というものは、たとえば日本とアメリカが戰争終了宣言をやつた場合には、アメリカ国内における日本人の待遇が敵人でなくなる、あるいは敵人の取扱いがなくなる、あるいは外交使節の交換が行われる、そのことは可能であるが、マツカーサー司令部という占領軍の廃止、あるいは管理の廃止、こういうことは実現できないというお考えでありますか。
  154. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 それは、かりにアメリカが戰争終了宣言いたしまするならば、どういう形をとるかによつてきまつて来ることだと思います。     〔委員長退席、西村(久)委員長代   理着席〕
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もちろんそのアメリカの戰争終了宣言の内容によると思うのでありますが、日本と戰争状態を終結する、そういう終結するという意味は、現在のマツカーサー司令部の解消を意味しないものであるかどうか、つまり戰争状態がなくなるということは、占領や管理がなくなるということに必然的になるかどうかということを聞いておるのです。
  156. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 必ずしも必然的ということは妥当ではないと思います。その場合々々によりまして現われて来る状態になると思います。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その背後関係を少し法的に説明していただきたい。というのは、先ほど私が吉田総理大臣に質問いたしました背景には、降伏文書というものがあります。あるいは一九四五年十二月のモスクワ協定というものがある。これにより極東委員会や対日理事会ができておる。そういう降伏文書あるいはモスクワ協定に対して、戰争終了宣言というものがいかなる影響力を及ぼし得るか、講和はまたそれに対していかなる影響を及ぼし得るか、この二点について精細に御説明願いたい。
  158. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまの御質問は、戰争状態終了の宣言というのを前提としての御質問と思いましてお答えをいたしますが、戰争状態終了の宣言というものは、今日まで二、三の例があるのでありますが、その際にいかなる効果を及ぼすかということは、その場合々々によつてなつておりまして、今回の場合にかりに講和條約以外に戰争状態終了の宣言というものがありましたといたしましても、その効果というものは今日予測ができないという状況でございます。なおまた講和條約そのものが戰争状態を終結するというのが常則であろうと思うのであります。その場合は講和條約そのものと、ただいまおつしやいましたような問題との関係なつて来ると思います。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの答弁は答弁になつていないのでありまして。そんな答弁を聞くために、私はわざわざあなたに来てもらつたのではない。もう少し精細な研究のお答えを煩わしているのであります。私がなぜそういうことを言うかというと、われわれ日本人、特にわれわれの所属しておる政党は、軍事占領及び管理の廃止ということについて、今極力国民の輿論を盛り上げておる。占領と管理をすみやかにやめてもらいたい。講和が早いということはもちろんけつこうだ。しかしその前でもよいから、ともかく早く今の軍事占領や管理をやめてもらいたい。なぜそういうことを言うかというと、今日本人は国連協力でいろいろなことをやらされておる。あるいは朝鮮の戰乱で掃海作業をやつておる。そういうことはポツダム宣言には書いてないことである。あるいは占領基礎法規にはないことである。そういう今までの占領基礎法規をオーバーするようなことが出ておる。朝鮮戰線の模様によつては、もつと積極的な国連協力が出て来るであろう。われわれは国連協力軍参つてもよい、やつてもよいが、それは占領、被占領という関係でやるのは妥当ではない。日本国民に自由意思を返還して、国民の多数の自由意思によつて、新しい関係を連合国と日本国との間に設定してやるべきである。従つて軍事占領及びその管理というものは、すみやかに国際法上も国際道徳上も終結せらるべきというのが、われわれの主張なんだ。そういう前提をもつて私はあなたに質問しておるのです。従つてただいま申し上げましたように、戰争終了宣言ということによつて、軍事占領がやむのかやまないのか、マツカーサー司令部による日本の内政管理というものがやむのかやまないのか。これが一番基本問題になつて来ておるのです。その点もう少し明快にしていただきたい。と申しますのはあなた方の今の御答弁は、それは相手の占領終了宣言の内容によるといつておるけれども、常識上、通念上戰争状態がやむということが宣言されれば、今までのモスクワ協定とか、あるいはマツカーサー司令部というものがどういう地位になるかということを説明していただきたい。
  160. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 先ほど御答弁を申し上げましたように、アメリカ一国がかりに戰争終了宣言をいたしました場合には、アメリカと日本との戰争状態が終了した、しかし連合国との間における関係は、国際法規的には全部それで解消するという解釈は妥当でないと思います。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、マツカーサー司令部の占領、管理というものは、そのまま法的にも継続し得る、こういう御答弁と解してさしつかえありませんか。
  162. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 お見込みの通りでけつこうであります。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばただいまの軍事占領及び管理をやめてもらう方法は、講和以外にはありませんか。
  164. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 これもお見込みの通りであると思います。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 では講和以外にはないとしますと、講和の形に多数講和と全面講和とが出て来る。しかし今一番可能性のあるのは、何といつても多数講和であります。その場合一番問題になるのは、一九四五年十二月の皆さん御存じのモスクワ協定である。あるいはそれに基く極東委員会や、あるいは対日理事会の問題である。そこからマツカーサー司令部というものも出て来るわけです。そうするとアメリカと、あるいはソ連を除く国々と多数講和をした場合に、それらの創設的な効果というものは、モスクワ協定を無効に帰するだけの効果がありますか。
  166. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 この問題につきましては、さきに大臣からも申し上げましたように……(「答弁していない」と呼ぶ者あり)現在政府といたしましては、先般ダレス特使との会談の内容等から考えましても、いわゆる極東委員会構成十三箇国と全面的な話合いを進めて行く。従つてそれを別にこれこれこれだという前提で今考えながら研究して議論をすることは、かえつて災いを生ずると思います。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私はそんな答弁を要求しておるのではないのです。私が冒頭申し上げましたように、軍事占領と管理をやめてもらうにはどうしたらいいかということを、あなたに御相談して、教えてもらおうと思つておるのです。先ほどの御答弁で講和会議以外にはないということになつた。その講和は多数講和と全面講和以外にはない。そこで私は法技術的な解釈を聞いておるのです。何も政治的にあなたが総理大臣や外務大臣になつたつもりで答弁しろと言つているのではない。それは無理でしよう。しかし外務省としては、今日條約局長も政務局長も来ているけれども、その研究は済んでいるはずなんです。もしアメリカと多数講和しても、マツカーサー司令部というものはのかない、依然として軍事占領があつたり、管理があつたりする、モスクワ協定に縛られておるからそうなんだということになつたら、われわれは必ずしも多数講和に賛成だというわけにはいかない。われわれが念願しておるのは、占領と管理のすみやかな終了である。その大事なものが出て来なければ、そんなものは考え直さなければならない。そういう意味でお尋ねしておるのです。もう少し丁寧に、まじめに御答弁願いたい。
  168. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 お話の点についても、もちろん十分研究はいたしております。しかし今は政府の立場において、これを法的に解釈して、ここで申し上げるという立場にない一と存じます。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 草葉政務次官は、先ほどわが党の川崎委員の発言をお聞きになつたと思う。川崎君は秘密外交を排せということを言つておる。私は国会議員の一人として、ほんとうに現在の軍事占領、管理をどうしたら早くやめてもらうことができるかということを毎日心配して研究しておるのです。しかしそれをたれに相談するか、外務省にのこのこ行つて、あなたに個人的に相談したのでは公式的の見解はわからない。そのためにこそこの委員会というものがあつて、われわれ予算審議しておるのではないですか。もつとまじめにお考えを願いたい。決して私は党略的な考えで言つておるのではない。国民が一番願つておることは何であるかというと、講和や何かということもあるけれども、それよりも具体的なものは、占領と管理がやまるということなのです。その占領と管理がどうしたらやまるかということをあなたから教えてもらわなければ、国民としては多数講和がいいか單独講和がいいか、全面講和がいいか見当がつかない。それを明らかにすることは——前にあなた方は外交白書というものを出したじやないですか。それくらい熱心に国民に対する意思を表明するという御希望があるならば、一番キイ・ポイントのそれを出さなくて、どうして外務省と言えますか。もう少し精細に私は御返答を願いたい。今のようなお返事だつたら、私は絶対に承服しません。予算委員会の権威を冒涜する御答弁です。
  170. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま政務次官が申し上げた通りでありましで、法律的な解釈を公式にただいま申し上げる段階にないと思います。しかし占領を終結させるということは、講和條約で必ずできる問題と思います。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その講和によつて占領を終結させることができるだろうということを今政務局長は御答弁になつた。これは非常に重大な発言であります。そこで私はこの法的な根拠をこれからちよつとお聞き願いたいと思います。御存じのように、極東委員会の根本になつている一九四五年十二月二十六日モスクワ会議公表文というのがあります。その内容を読んで見ると、現在の占領管理に関係している文章としては、こういうことがある。「委員会は其の活動に関しては連合国対日理事会が組織せられたるの事実より出発し、かつ合衆国政府より最高司令官への命令系統および最高司令官の占領軍隊に対する指揮を含める日本国における現存の管理機構を尊重すべし。」こう書いてある。これを読んで見ると、極東委員会の行動というものは、合衆国政府とその出先機関である——出先機関というより、合衆国政府より最高司令官、つまりマツカーサー司令部への命令系統、あるいはマツカーサー司令部の占領軍隊に対する命令指揮、そういうものを尊重してやれということになると、必ずマツカーサー司令部というものが極東委員会にかわるような、あるいは米国中心的な存在になつているということは、私はここで推定しております。  それからもう一つ見のがすべからざる問題は、対日理事会の條項のところでこう書いてある。「最高司令官は日本の降伏條項、占領および管理ならびに其の補足的指令の完遂のための一切の命令を発すべし。」ここが大事なのです。「一切の場合において行動は日本国における唯一の聯合国のための執行権者たる最高司令官の下に、かつ之を通じ遂行せらるべし。」こういうふうにあります。そうすると、マツカーサー司令部というものがトンネルになつておつて、ほかのトンネルを使つてはならぬということが、大体これでうかがわれるわけです。そうしますと、もし日本と米国が講和を結んで、ここで今までの戰争状態が終結して、新らしい創設的関係に入るとする。そうすると米国の出先である——出先と言うと変でありまするが、マツカーサー司令部、米国軍隊、これが主流になつている、これが占領軍ということをやめて、駐屯軍であるとか、あるいはその他の名前のものになつた場合には、米国の系統によるところの最高司令官もない、そのチヤネルがなくなる。その場合には、ソ連の方はこれに対してしからばここへ占領軍を出すとか、司令官を置くということは、少くともこのモスクワ協定違反になつて来る。そういうことがあり得るから、米国との多数講和をやつた場合には、ソ連がここへ兵を出して来るとか、あるいは最高司令官を置くという可能性はなくなるのではないか、アメリカと多数講和をやる場合には、占領はやみ得るし、あるいはソ連から進駐して来るということも拒否し得るという可能性がここにあるのでありまするが、このただいま申し上げた点について、精細に外務省の研究をお示し願いたいと思う。精細に願います。少くとも十分以上話してください。
  172. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 いろいろ今こまかい点についての御質問でございますが、これ具体的な問題としてなかなか微妙な問題だと思います。それで対日講和が全面的に極東委員会構成十三箇国でできない場合、ある多数の講和ができて、そうして加盟せなんだ国々は、その後、ただいまお話のように、あるいは進駐等というような心配が多分にあるのではないか、これを法的にはどう取扱うとさようなことがなくなるかというような、ごく具体的な問題であります。常識的に考えますると、必ずしもそうばかりではないと存じまするし、また実際の国際法的に考えましても、講和の結ばれまする際には、十分それぞれの連絡をなされてやられると存じておりますし、一応戰闘行為、敵対行為は調印後済んだのでありまするが、お話のように、戰争終了という問題における講和というものが今後の問題でございまするから、従つてこの点に対しましては、十分の連絡があつて進められることと私どもは考えております。そういう意味におきまして、これを法理的にこまかく分析いたしますることは適当でないと存じます。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の草葉外務政務次官の御答弁を聞いて委員長もよくおわかりでしようが、ああいう答弁をしている限りは、私は時間の制限というものの拘束を受けたくない。これは予算委員会の名誉のためにも、委員長にぜひお願いいたします。私は満足する答弁を得るまで、追究するつもりですから、その点は御了承願いたい。私はまじめに質問しておる、これでも一生懸命勉強して来ておるのです。
  174. 西村久之

    西村(久)委員長代理 あなたの御質問の趣意はわかるのですけれども、答弁の方はあなたの御質問の趣意に沿うだけの御答弁ができかねるように委員長はうかがうのであります。何回繰返しても同じ答えをされるのではないかと思います。それでその心持を持たれまして、適当な時機に責任ある総理大臣にお尋ねになることが、かえつて私はいいのじやないか思います。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は外務省の人は、技術的に研究しておるので、中立的見解……。
  176. 西村久之

    西村(久)委員長代理 研究はなされておるのでしようけれども、この責任ある議場で、この研究を発表する段階にないと仰せになつておるのであります。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 委員長にお言葉を申し上げてはなはだ恐縮ですが、そこが祕密外交と言うのです。秘密外交というのはそこなんです。要するに私が聞いておるのは国際法上の解釈であつて国民が一番願つておることは、占領と管理をどうして早くやめてもらうかということです。占領と管理をやめてもらうためには、法的にどういう処置が必要かと聞いておる。
  178. 西村久之

    西村(久)委員長代理 中曽根君に御注意いたします。あなたの申すことはわかりますが、政府の方のお答えの趣旨はあなたもおわかりになると思います。これ以上のことは、現在の段階においては申し上げにくいということを言われておると思うのであります。従つて何回お繰返しになりましても、あなたの満足の行くような答弁は得られないと、委員長解釈いたしておるのであります。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 委員長は、そういうふうに解釈しておられるかしれませんが、私は少くとも数万票という票を得て国会へ来ておる。これは国民の名前において、ただしておかなければならぬことなのです。総理大臣は政治的な役目ですから、これはやむを得ないでしよう。しかし外務省の方々は官僚であつて、中立性を持つておる專門家なんです。従つてわれわれに、われわれが政治的に一番欲しておるところの軍事占領や管理をやめてもらうためには、法律的にはどういう過程が必要なんだということを教えてくれることは当然のことです。私は專門家じやないのです。それを教えていただきたいと言つておるのです。それを国民はまた一番聞きたがつておるのです。そういう意味で、私はもう少し質問を継続します。そこでただいま問題になつておるのは、モスクワ協定でありますが、先ほど政務次官、あるいは島津さんのお答えでありましたか、講和ができれば占領はやむであろうということをおつしやつた。そのことは私が先ほど申し上げたことに触れる言葉だろうと思うのです。多分それを肯定して、そういうふうな答弁をされたのではないかと思います。つまり講和という創設的効果を有する行為、しかもアメリカが中心をなしている占領というものは、モスクワ協定によつてアメリカが中心なつてこれを引受けておる。そのアメリカと日本の間が平和状態に帰つて、戰争状態が終結してなくなれば、ソ連としてもここへ持つて来るだけの大黒柱というものはないのだから、従つて占領を主張することもできないであろうし、あるいはまた最高司令官をここへ置くということもできないであろう、私はそういうふうに自分ながら解釈して来た。そういう意味で多数講和というものも、占領や管理をやめてもらうという意味においては、多少妥当性がある。もしそういう解釈が可能であるならば、われわれは多数講和というものも、国民の念頭から考えてよほど慎重に考慮してよろしい、こういう見解を持つておるわけなのです。従つてただいま申し上げましたように、モスクワ協定の中心はアメリカである、しかもここへ来ている占領軍はアメリカである、従つてアメリカとの関係が平和になれば、その他の国々はここへ占領やあるいは最高司令官を設置するという余地はなくなると思うのですが、その点もう少しこまかに説明していただきたいと思うのであります。島津さんは先ほど占領はやむであろうということをおつしやつた、その背景を問題と結びつけて教えていただきたいと思うのであります。
  180. 島津久大

    ○島津政府委員 先ほど申しましたように、私御答弁申し上げましたのは、ごく常識的に考えて申し上げておるのでありますが、そういう意味で、大体お説のような方向であろうと思うのであります。法律的の解釈、またこれは事務当局が中立性を持つてつて、はつきりと割切つて一本に出るものというようなお説でございますが、何分国際法その他の解釈というものは、いろいろな説があるのでございます。現に国内においても議論も区々にわかれております。そういう意味でただいま外務当局がはつきりと一つの固定した理論を、ここで御披露するという段階にないことを御了承願いたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 外務省の政務局長が、予算委員会に来て答弁なさるのですから、相当責任を持つた御答弁である、国民に対して責任を持つて御答弁なさるのだろうと私は解釈しております。従つて先ほど講和が成立すれば占領はやむであろう、そうおつしやつた背景には、やはり一つの透徹した体系をもつてお答えになつておるに違いないと思う。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 その考え方というものは私が申し上げましたその考え方を基本にして、そういう考え方を言つたのであるか、ただいま島津さんは、いろいろ学説があると言われましたが、いろいろな学説をひとつ御紹介願つて、その中でどれが大体妥当性を有するか、その点もお示しを願いたいと思います。
  182. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま申し上げましたのは、ただいま問題となつております具体的の問題について、こういう学説があるということを申し上げたのではないのでございまして、一般的に国際問題に関する理論というものの扱いについて申し上げたのであります。私これ以上御答弁はできかねると思います。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先ほどあなたがお答えになつたのと、大分違うのじやないですか。私が聞いたのはこのモスクワ協定を中心として、この講和という問題とあるいは協定の関係がどうなるかということを質問しておる。私は私の見解を述べた。それに対してあなたは、いろいろ見解があるということをおつしやつた。明らかにこの問題を中心とした学説をあなたはお示しになつておつた。今になつて、何だか一般的な国際法の原則論みたいな話を持ち出しても、それは私は肯定することはできない。問題を集約してこれから話しましよう。ともかくこのモスクワ協定というものを中心にして、アメリカあるいはその他との多数講和が行われた場合に、モスクワ協定及び現在の極東委員会、対日理事会、占領国というものは、アメリカが中心なつてチヤネルになつておる。従つてそのチヤネルであるアメリカと講和が成立して、創設的な効果を有する事態が出て来れば、それ以外の問題は一応は解消する、言いがかりの材料にはならない。こういうふうに私は解釈しておる。それは先ほど申し上げた通りです。この点を中心として外務省のお考えをお示し願いたい。
  184. 島津久大

    ○島津政府委員 率直にお答えを申し上げておるのであります。ただいまの御質問に対しましては、先ほど申しましたように、大体の方向として、そういうような考え方が常識的に妥当であろうという考え方を持つております。だがしかし、理論としてどうこうという結論を申し上げる立場にないということを申し上げておるのであります。もともとこれらの協定は、連合国間の問題であります。その解釈について、日本政府がたとい一事務官でありましても、法的な解釈を下すということは、この際差控えたいという考えを持つております。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 なるほどそれは連合国間の協定ですから、それは連合国間において解釈が正式にきまるものと了承いたします。しかし敗戰国の、しかも早く独立を願つている外務省としては、当然それらの問題について精細な研究をしているに違いないと思う。それを隠すというところがどうしても国会の権威にかけて解せない、私は何も吉田内閣総理大臣がこういうふうに考えておるのだとか、どうかということを言つておるのじやない。少くとも法律專門家である、また国会の、言いかえれば外務委員会や予算委員会の法律顧問ともなるべきような官僚が、どういう解釈をしておるか、それを国会が採用するとか、内閣が採用するというのは別問題だ。だから中立性を持つておるというのです。その御見解を聞いて私なりに消化して、国民にも伝えよう、こういう意味で言つておるのです。今のような常識的のあるいは大臣の答弁みたいな御答弁を、私は官僚であるあなたからは要求しておりません。従つてもう少しモスクワ協定を中心にして法律的にどういう見解が成立するか、この点をお答え願いたいと思います。常識的な見解というものは、政治的の責任を有する大臣がおやりになるのであつて、それを私は役人である皆様方にお願いしておるのではありません。どうぞ法律的な見解をお示し願いたい。要するにどうしたら早く軍事占領と管理がやむか。政務次官に聞いておるのではないですよ。島津さんに聞いておるのです。いいですか。ともかくどうしたら軍事占領と管理がやむか、法律的にはどういう方法が一番よろしいか。これをぜひともお教えいただきたい。私はそれをこなしまして、国民にお伝えいたしたいと思うのであります。
  186. 島津久大

    ○島津政府委員 たびたび申し上げますが、占領、管理を終結させる唯一あるいは最良の道は、講和であろうということを繰返して申し上げる次第であります。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大分話が前進して来まして、私も大分愉快になつて来ました。そうすると占領、管理を終結させるというのは、講和であるというのですが。それは全面講和でありますか、多数講和でありますか。いかなる種類の講和を意味しますか、島津さんにお尋ねいたします。
  188. 島津久大

    ○島津政府委員 この点は先ほど総理がお答え申し上げました通りであります。また政務次官からもその通りお答え申し上げました。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 どういう意味です。あなたからもう一回言つてください。
  190. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま季三面であるとか、多数であるとか、單独であるとかいうようなことを、確定的にどれであるということを論ずる段階にはないと思います。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 また変な話を承つて来まして、逆もどりしましたが、ともかく講和をやれば占領と管理がやむというところまではお答えになつた。しからばその講和、というものは、一応は常識的には全面講和にきまつている。全面講和をやればもちろんこれは常識的にも必然的にそうなるでしよう。これは私は問題ない思う。しかし問題は多数講和あるいは米国との單独講和の場合に、そのことが期待し得るか期待し得ないかという問題に問題をしぼつて来ます。その問題についていかにお考えになりますか、あなたがおつしやつたのは、いかなる講和を意味しておりますか。
  192. 島津久大

    ○島津政府委員 この点は、全面講和でない場合を想定してのお答えは、はつきりしたお答えを申しかねるのであります。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の御答弁は、私、今ちよつと話中でありましたので、明瞭にお聞きし得なかつたのでありますが、恐れ入りますがもう一ぺんお答え願いたいと思います。失礼いたしました。
  194. 島津久大

    ○島津政府委員 全面講和でない場合を前提としての御質問には、はつきりここでお答えはできないのであります。
  195. 川崎秀二

    ○川崎委員 議事進行について。先ほど同僚中曽根議員の條約関係に対するところの質問は、きわめて微細にわたつて、しかも專門的な質問であります。そこで当然外務省としては政務次官以下陣容をそろえて出て来られたのであるから、従つて堂々たるところの太刀打ちがあるものと私は思つた。これは総理大臣に対するところの質問でないのですから、政治的な問題ではありません。従つてもつと真剣なる応答があるべきでありますが、あるいは準備が足らなかつたかもしれない。従つてこの問答をいつまで繰返しておつて——質疑者は十分なるところの材料を持ち、答弁者の方はそれに対して、いろいろの関係もございましようけれども、十分なる答弁ができない。従つてこれは適当なる機会において十分なる用意をされて答弁をされるまで留保をしてもらつたらどうか、これをお諮り願いたいと思います。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私から発言いたします。
  197. 小坂善太郎

    小坂委員長 区切りをつけましよう。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 区切りをつける意味でちよつと発言いたします。ただいま同僚川崎委員から御発言がございまして、私も外務省の方々の苦衷もわかります。しかしこの予算委員会、国会というものの使命をもう一回再認識いただきまして、もし材料や、あるいは資料、あるいは研究が足りないようなことがありましたら、別の機会で十分です。私は何も今答弁しろと言いません。今度の議会が終つて、われわれが国へ帰るまで十分研究していただいて、御答弁していただいてもけつこうです。あるいは要すれば秘密会でもけつこうです。秘密会で秘密にしてくれということであれば、議員の名譽において秘密にいたします。ともかくフランクに、この問題は十分われわれに教えていただいて、納得して、多数講和とか全面講和とか、單独講和論、それをやれるようにしていただきたいと思うのであります。そういう意味でただいまの川崎委員の発言に私は同意いたしまして、少くとも一週間以内くらいにもう一回陣容をそろえて、資料をそろえてわれわれに適切なる御説明をいただく機会をいただきたいと思います。これで私の質問は終ります。
  199. 小坂善太郎

    小坂委員長 天野公義君。
  200. 天野公義

    天野(公)委員 私は労働大臣に数点お伺いしたいと思うのでございますが、まず第一に労働パージの問題についてお伺いしたいと思います。  戰争中、産業報国会、労務報国会等の重要役職員であつた者は、労働に関する一切の団体の一切の役職員の地位につくことが禁止されておるわけでございますが、産報等にあつて、労働者を抑圧したり、勤労大衆を軍国主義にかり立てた者が労働関係からパージされることは当然であります。この措置は戰後の民主的労働組合運動の発達のために不可欠なことであつたことは言うまでもないところでございます。しかしながら労働パージは、急速に一定の基準で行われたために、たとえば地方の名望家であつて、名望家であるというために無理に名目的な役員のポストにすえられて、実際上には何ら産報等の活動に関与しなかつた者や、また一生を労働者の安全、衛生の改善に捧げた篤志家であつて戰時中その特別の知識、技能のゆえに産報の役員にされたが、実際はもつぱら技術関係の業務のみに関与して、産報本来の業務にまつたく無関係であつた者までが、一律にパージされているという気の毒な例もたくさんあるのでございます。これらの特殊事情のある気の毒な人たちは適当な救済が考えられてしかるべきであると考えるのでございますが、今日民主的労働組合運動が強力に発展しておる現状においては、これらの人々に対するパージを若干緩和しても、何ら民主化に逆行する憂いなく、ときにはその專門的技術知識をもつて労働運動に貢献し得る面もあると考えられるのでございます。特に一般の公職追放該当者の一部が先般解除されたことにかんがみまして、労働パージについても、事情により一部解除の措置をとるべきではないかと考えるのでございます。聞くところによりますと、本日この問題について閣議決定を見たとのことでございますが、これに関する政府の見解及び措置をお伺いしたいと思うわけでございます。
  201. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答え申します。御質問の労働パージの問題でございますが、労働追放として指定を受けられている方が二万名以上に達しているわけでございます。この労働追放が、御意見のごとくわが国の民主的労働組合の発達の上に相当大きな寄与をなしたということは申すまでもないことでございますけれども、何さまとつさのうちにこの指定措置がいたされましたために、内部に立ち入つてみますと、事情まことに気の毒な方があるわけでございます。昭和二十三年の省令改正において、さような特殊な事情のある方については、それを免除するという救済規定もできたのでございますけれども、いろいろの事情で今日までの救済規定が十分に生かしておられない。今日の発達いたしましたわが国の民主的労働組合の現状からいたしましても、この救済規定をできるだけ全面的に活用することが最も妥当ではないかという考えをもちまして、先般来関係方面とも折衝いたしました結果、完全な了解を受けまして、労働省内に労働追放に関する審査委員会のようなものを設けまして、そうして御設問のように、たとえば産報あるいは労報、そういつたような戰時中の労働関係の団体の主要役員という名前を連ねておつても、実務の上に実質上関係を持たなかつた人でありますとか、あるいは專門的な技術により今後わが国の民主的労働組合の発展の上に寄与し得るような方々を、特別に詮議をいたしまして、この條項の免除を設けることが妥当であるという結論をいたしまして、その措置をとつて参りたい、かように考えております。
  202. 天野公義

    天野(公)委員 まことに適当な措置であると考えるのでございますがその労働追放に関する審査委員会というものは、大体いつごろまでにできて、そしてその審査の基準となるものはどの程度であり、その結果解除の見込まれる人数は、大体どのくらいの人数であるか、それからその解除の発表される時期は大体どのくらいの時期であるか、こういうことを伺います。
  203. 保利茂

    ○保利国務大臣 委員会はただちに発足いたしたいと存じます。どのくらいの方が免除の該当者として取扱われるかは、その都度心々審査に当つた結果を見なければわからないと存じますけれども、二万以上を越えられる該当者の中には、相当の数が含まれているのじやないかということは想像せられます。審査の結果は、その都度々々本人に御通知を申し上げるようにいたして参りたいと思います。
  204. 小坂善太郎

    小坂委員長 それではこの際、庄司君に発言を許します。
  205. 庄司一郎

    ○庄司委員 最初法務総裁に所見をお伺いしたい点は、過般の本会議において、民主党の苫米地委員長質問にも現われておつたのでありまするが、過般、アカハタ代用といいましようか、「平和のこえ」とかいう新聞関係の検索において、兵器彈薬といえば大げさであるが、銃砲火薬あるいは爆薬のような危險物を、相当数量において確保されておつた。共産党員であるかあるいは同調者であるか、承知いたしておりませんが、相当量の危險物を所持しておつた者もあつた。物件はむろん没收されたでございましようが、その後さような危險物の所持者等に対して、どういう方途を講ぜられておるか、やし、テキ屋のたぐいがチヤンバラのけんかを二、三回やつたくらいで、かなり全国的には解散命令を受けておる。しかるにただいま申し上げたような状況のもとにおいて、暴力革命を企図しておると言われておる共産党部内において、さような危險物を收集してこれを保持しておるというような、危險なるところの不逞なるやからに対しては、いかなる措置を法務総裁は講ぜられたのであるか、またこの後講ぜられんとするものであるか、最初この一点を伺います。
  206. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先般アカハタ類似紙の頒布の疑いをもちまして、全国的に多数の共産党員を検挙いたしたのであります。このうちに、数箇所におきまして彈丸、ダイナマイトあるいは小銃等を所持しておつたという事実がございました。事案は、ただいまなお検察庁におきまして取調べ中でございまするが、これらの品物を入手いたしましたる経路、また所持の目的等を十分に取調べましたる上、これらにつきましては、それぞれ法に従いまして嚴重に処断をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  207. 庄司一郎

    ○庄司委員 法に従いとは、銃砲火薬の取締り規則違反程度の該当者と法務総裁はごらんになつておられますか、さように軽微にごらんになつておられますか。
  208. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 銃砲火薬類取締法に違反をいたすということはこれは当然のことでございまするが、なおその他に、騒擾その他の計画をいたしておるというような事実が、取調べの上明らかになりました場合におきましては、当然そういつた面においても起訴しなければならない、こういうことになるわけであります。しかしながら先ほど申し上げましたる通り、これらの入手の経路、目的等につきましては、今なお取調べ中でございまするので、これ以上取扱いについて明確に申し上げる段階に至つておりませんのでございます。
  209. 庄司一郎

    ○庄司委員 国民の間においては、この問題に関してはかなり深刻なる不安焦燥にかられておるのであり、他の共産党の団体、あるいは党員等においても相当さようなものを携帶しておるのじやないかというような疑いも、相当持たれておるのでありまするから、すみやかに取調べを終了されて適当な手を打たれ、すみやかなる善処を煩わしたいと思うのであります。  次に法務総裁は、第九国会の末期でありましたか、徳田君あるいは野坂君のような、すでに逮捕状が出ておるところの諸君については、すみやかに逮捕の確信ありということを、本予算総会において言明されたことを記憶しておりまするが、その後一向逮捕も検索も拝聽しておらないのでありまするが、これは現下におけるわが国の警察力、捜査力がないという証左でありまするか、どうお考えでありまするか。
  210. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 本件に関しましては、全国におきまする検察庁、国警、自治警察また特審局等の各機関が、それぞれ緊密なる連絡をとりまして、鋭意努力をいたしておるのでございまするが、ただいままでその成果が上つておらないことはまことに遺憾に存じておる次第でございます。警察力の点につきましては、こうした全国的に捜査をしなければなりませんところの事件につきましては、現在の制度は運用が非常に困難な面も相当ある、かように私は考えておる次第でございまして、この点につきましては、目下警察制度改正の問題の一つのテーマといたしまして、十分に研究をいたしておるところでございます。
  211. 庄司一郎

    ○庄司委員 警察制度の運営が何かこう望ましくないような意味において、捜査、逮捕が困難であるかのような印象を受ける御答弁でありましたが、はなはだ遺憾であります。そういう点があれば、すみやかに改善の措置をとつていただきたい。この件はこの件として、もう一点だけあなたに承つておきたいのは、前国会の末期において、やはりこの席よりお伺いを申し上げ、かつ要望しておきました、私多年の持論の例の前科者の愛護の問題でございますが、せつかく長い十年の歳月をけみして、努力の結果立法化された刑法第三十四條第二項、すなわちある一定年限を経過せる刑余者は、ことごとく公なる公簿よりその前科リストを抹消する、かようなあたたかい愛の法律である。しかるにその後法務府系統の官公署において、あるいは警察あるいは市町村等の役所、役場等におけるいわゆる刑名簿の中には、全然刑法第三十四條第二項の立法の精神を実行に移しておらない点がきわめて多い。これはまつたく画竜点睛を欠くといいましようか、仏つくつて魂入れずといいましようか、せつかく刑余者に対するあたたかい、りつぱな愛護の立法化がなりましても、やはり二十年たつても、三十年たつても、常に前科者扱いをしておる、こういうようなことはすなわち基本人権の尊重という点から言いまして、まことに遺憾千万なことである。しかも検察庁の検事のごときは、被告人何がしは前科何犯であるというようなことを、起訴状の中にまでしたためておる事例が多々あるのでありますが、いわゆる前科抹消制度が立法化して、これが実施されてすでに満三箇年を経過しておる今日であります。それらに対して法務府は、あるいは更生保護事業審議会等と協議の上、どんな手を打たれ、この大きな愛護の理想を実施するために、どういういい手を打たれたか、あるいは公にはどういう通牒を出されたか、あるいは検事長とか検事正等の会合等においても告示されたか、そういう点において私はあえてあなたの責任を問いたいのであります。
  212. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 前科抹消の件に関しましては、前国会におきましても、庄司委員より温情に満ちておりまするところの御質疑をいただいた次第でございます。爾来法務府といたしましても、この問題は行刑並びに矯正保護の上から申しまして、收も重大な問題でございまするので、誠心誠意これについて研究を重ねて参つておるのであります。御承知の通り犯罪人名簿というものは、市町村役場において、保管をいたしておりまするので、これが抹消その他の事後の整理につきましては、当然市町村役場においてでき得る限りの努力を払つてもらはなければならぬものでございまするが、何分にも御承知の通り市町村役場等におきましては、事務も非常に熟練いたしておりませず、また人手も足りないために、自然にそのままになつて、法の趣旨を実現できないというようなことに相なつておる次第でございます。従いまして当局といたしましては、この市町村役場に対して、いつ幾日だれの前科を抹消すべきであるということを、適当なる機会に通知をいたすということがきわめて適切有効なる措置である、かように存じまして、この通知の方法について研究をいたして参つたのであります。これにつきましては、関係官庁といたしましては、市町村役場の管轄をいたしまする地方自治庁、また検察庁、刑務所、中央更生保護委員会というように、いろいろあるのでございます。これら各機関いろいろと案を協議いたしましたる結果、まずさしあたり、大般的には犯罪人名簿の制度につきまして、根本的な検討を加える必要があるということになりまして、これもまたいろいろ考案をいたしましたる結果、検察庁にありますところの名簿をカード化するということが一つであります。このカード化したことによりまして、その索引を便利ならしめ、そうして適当な時期に適当なる通知を発するということが必要である、こういうので目下いかなる様式のカードにすべきかという案を、寄り寄り研究をいたしておるような次第なのであります。このカード化ができますと、従つて市町村の犯罪人名簿もこれに即応いたしまして、整理することができるというふうに考えるのであります。  それからもう一つの点は、さしあたりの措置をいたしまして、懲役、禁錮につきましては、刑の執行を終了いたしましたるときにおいて、この刑の執行の最後の指揮を担任いたしましたる刑務所の側から、管轄の検察庁並びに市町村役場に対して、いつ幾日刑の執行を終了したということを通知する。そうすればこれを編綴いたしておきまするならば、その後は自動的にその編綴の順序に従いまして前科抹消の手続をとつて行けばいい、こういうことになるのでございまして、これによりまして法定期間が経過した後におきましては、自動的に市町村役場はその編綴いたしました通知書を索引といたしまして抹消手続をやつて行く、こういうことに相なるわけであります。もちろんこれでは懲役及び禁錮だけでございますから、十分なりとは申しかねるのでありますが、主として一般的に問題になりまする前科といたしましては、懲役及び禁錮の場合でございますから、この場合についてはそういう措置をとりたいということで、この旨を刑務所に対して通牒をいたした次第でございます。犯罪人名簿の制度の根本的な検討ということは、さきに申し上げました通り、別途に進めておるのでございます。これらの措置を講ずることによりまして、御趣旨のような前科抹消の手続の完璧を期して参りたい。こういうように考え、またさような措置をいたしたような次第でございます。
  213. 庄司一郎

    ○庄司委員 たいへんけつこうな措置をとられたようでありますが、地方の警察あるいは町村役場等において、まつたくこの問題を軽視している傾向がきわめて多いのであります。すでに刑法上においていわゆる前科者でない者を、前科者扱いにしている、これくらい大きな社会問題はありません。これは大きな人道問題です。どうかあなたは、たいへんけつこうな手を打たれているようであるが、これがすみやかに全国一万何千の市町村等に滲透して、ほんとうにこの刑余者に対する愛護の法律が花を咲き実を結び、再犯、累犯等がないように、やけを起して犯を重ねる者等がないように、そういう措置をひとつつていただきたい。これであなたに対する質問を終ります。
  214. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して伺いたい。先ほどの庄司委員の法務総裁に対する質問で、「平和のこえ」の検挙に際して、共産党員のところからダイナマイトや小銃が出て来たというような質問に受取れました。この点はあたかも共産党が暴力革命の準備のために党員がこういうものを計画的に準備しておるという意味にとれました。そこであなたにお聞きしたいのは、第一には、これは一体共産党員が所持していたのか、あるいは被検挙者の同居の家屋あるいは居所を捜査した際にそれが出て来たのか、その所持者は一体だれであつたのかということが第一点。  それから第二点は、これは党の指示あるいは党の方針として所持していたということになつていたのか。  第三点として、騒擾の目的のために所持していたのか。かりに党員の所有であつても何かかつて炭坑夫であつてそういう職務上の必要から持つていたという意味なのか。そういう点が非常に不明確、あたかも党の方針に従つて、党の革命のために所持しているという意味にとれたのでありますが、その点について、以上三点を明確に答弁願いたいと思うのであります。
  215. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私どもといたしましては、庄司委員の御質問に対しまして、その辺の事情を目下取調べ中でありまして、取調べの結果明らかとなつた事実に対して、嚴重に法を適用して処断をいたす、こういうお答えをいたしたわけであります。
  216. 林百郎

    ○林(百)委員 今取調べでわかつておる限度でけつこうです。
  217. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま捜査中でございまするので、これ以上申し上げることは御容赦願いたいと思います。
  218. 庄司一郎

    ○庄司委員 天野文部大臣にお伺いしたい第一点は、わが国現下の高等学校以上大学等に進学しあたわない青年大衆が、約五百万人あると調査されております。そこでお伺いしたいのは、向学心を持つておるわが国青少年に対しては、学問をおのれの欲するままに、自由に勉学をしあとら教育上の機会均等を与えなければならないと私は考えておる。従つてお尋ねしたい第一点は、この学校教育を受けたくも受けることのあたわない境遇にある全国約五百万の青年大衆を、どんな方法をもつて、将来文化国家を背負うところの、この後のよき日本、正しい日本の、文化国家の成員としてふさわしいものに教育せんとなさるお考えを持つておられるか、最初その一点をお伺いしたいのであります。
  219. 天野貞祐

    天野国務大臣 仰せの通り今中学校を出ても先に進めない学生が五百万人もおるということは、その通りでございます。私も非常に遺憾千万だと思います。何が気の毒だといつて、力がありながら上の学校に進めないというくらい気の毒なことはない、またそれが社会不安のもとにもなるということから育英制度を拡充して、来年度には高等学校生徒の三〇%はそれに行くように努めようと今やつております。けれども、そういうような育英制度の拡充といえども、そういう向学心のある者をすべて学校にやるということはできませんから、その行けない人たちに対してはいろいろのことを考えおります。たとえば通信教授によるのも一つでございます。定時制の高等学校もそうであります。また公民館を利用して、さまざまの教育的なことをするということ、また今回は社会教育法を改正いたしまして、社会教育主事というものを教育指導主事と同じような資格にする、それを教師にして、社会教育を盛んにする、また二十六年度から非常にわずかでございますが、モデル的な勤労青年学級というものを開設いたしまして、それは百十五学級でありますが、予算が非常に少うございまして、百七十万円でございますが、とにかく二十六年度からそういう新しいことを企てております。そのほか成年者のために社会学級というものを創設して、それに政府が助力するというようなことを企てておるのでございます。そういうような、学校の開放とか、さまざまな方法をもつて、この学校に行けない人たちの教養を高めるということに盡力をしようと思つております。
  220. 庄司一郎

    ○庄司委員 文部大臣のお考えは大体においてよろしゆうございます。だがあなたのお考えなつておる、また予算を要求されておる勤労青年学級の補助費、これはわずかに百七十万円、それから定時制の青年学校、これは全国現在学生が四十三万人就学しておる。この定時制の高等学校をもつと拡充強化するお考えがあられるならば、やはり都道府県の教育委員会、あるいは都道府県等に対して、教員の俸給の国庫負担であるとか、そういう手をお考えにならなければ、この後定時制の高等学校の生徒を増加させる余地がございません。この定時制の高等学校にさえも入ることのあたわない青少年が大体四百五十七万人、文部大臣はただいま議題となつておる予算のうち、文部省予算の国立の学校経費として百四十七億円を要求されております。そのほか五十七億かの文教施設費というものを要求されておる、はなはだけつこうであります。けつこうであるが、この教育の機会均等に全然恵まれておりませんこの四百五十七万人の諸君は、多くは社会教育法に準拠して、各市町村の公民館が経営をしておる青年学級というものに入つて、これは一箇年に何日かの教育を受けておる。教育の機会均等の点からいえばまことに恵まれない不遇なるところの青少年諸君である。しかもこの四百五十七万の青年学級に学んでおる、そうして学問を求めておる、教育の均霑を求めておるこれらの青少年大衆に対するあなたのお考えの上より、予算を要求されておるただいまの補助額は、わずかに百六十三万円と記憶しておりますが、そういう程度であります。国立の大学の学生一人当り一箇年の教育費は約五万円である、あるいは理工科あるいは医科大学生に至つては、一人当り七万円程度と私の調査においては出ております。しかるに高等学校にさえも、いわんや定時制の高等学校にさえも進学することのあたわない境遇にあるこれらの四百五十七万人の青少年諸君のために、百六十三万円の国庫補助というのは、一体これはどういうことになるのか。一人当りたつた三十三円ですよ。境遇に恵まれておる、大学に学んでおる諸君は、国費を一箇年に五万円ないし七万円の教育費の恩典を受けておる。恵まれざるところのこれらの青少年は三十三円、しかもそれも直接の補助ではない、都道府県に対するところの補助である。そこで文部大臣のお考えを煩わしたいのは、これらの恵まれておりません青少年学級程度の教育を受けておる、この青年学級教育というものを、もつとこれを刷新し、振興させてそうしてこれらの青少年諸君が、昔の言葉でいえば高等普通教育を受け得る程度の国費の助成ということをお考えになるごゆとりはありませんですか、この点をお伺い申し上げてみたいと思います。
  221. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやいましたことは、一々ごもつともだと思います。一方には、そういう多数の青年が、学校に行きたくも行けない、しかも学びたくも学べない、他方には、国家が多額の補助をしている学生たちが、まま自分の学業をも放擲しておるというような状態にあるが、実は自分が文教の府におつて、微力にしてこういう状態にしておくことははなはだ申訳ないことであると思つております。でありますから、そういう青年が、その土地におつても一般の教養を十分持つことができるように、今後はできるだけ努力を払つて御趣旨に沿いたいと考えております。
  222. 庄司一郎

    ○庄司委員 こいねがわくは、今度の予算には無理なことでございましようが、ぜひ次の二十七年度予算等において、これらの恵まれておりません青少年のために、真剣になつてひとつ御検討をお願いしたい。  次に文部大臣は、育英資金を増額して、やはり経済的に恵まれておりません学徒を援助すると述べられました。たいへんけつこうでございます。そこで私はお伺いしたい。なるほど配付された予算の説明書を見ると、本年度は育英資金関係が約二十四億、前年度より九億増額された。この御努力のあとはよく了承されます。また説明書の最後には——今度の増額二十四億によつて、学生十四万九千人に対して、つまり均霑を与えた。前年度より五万三十四人だけがふえるわけでありますから、たいへんけつこうなことであります。ところが私のお伺いしたいのは、育英資金の貸付運営の面において、とかく国立学校方面の学生にだけこれらの恩恵といいましようか、均霑が割合によくて、私学の方は差別虐待をされておるという事実を聞いております。文部省としては、もとより公立学校であろうと私学であろうとそこに差別はあられないと思う。しかし現実の問題としては、私学の方はきわめて少人数しかこの恩典に浴し得ない現状にあるということを聞いておりまするが、この十四万九千人のうち、国立学校はどのくらい、私学はどの程度というような何か切札でもあるのでございまするか、数がわかつた参考にひとつつておきたいと思います。
  223. 天野貞祐

    天野国務大臣 この育英資金をどういうように割当てるかということについては、育英会はもう絶対公平にやつて、公立とか国立とか私学とかいう区別は少しもいたしておりません。現在は国立の方が多くなつておりますが、これには実績とかいろいろな理由がございます。もう三年ぐらい前、あるいは四年ぐらいになるかもしれませんが、たとえば都下の私立の大学に対しては、どうかひとつ申し込んでくれ申し込んでくれといつて育英会の方から学校に催促をして、ごくわずかな人だけがそれに申し込んだというくらいで——今は事情が一変してしまつて、どこの学校でもここに申し込みをしますが、以前はそういう状態であつたのです。いろいろなことからして、国立学校が多くなつている、ということはありますが、すぐ調べて、どれだけのパーセンテージになつているかということをこの次お知らせいたします。私は先年その育英会の会長をしておりましたが、そのときのパーセンテージはむしろ私立の方が多かつたくらいだと承知しております。それは今度提出いたします。
  224. 庄司一郎

    ○庄司委員 どうかこの上とも公平無私に、怨嗟の声がないように御善処を煩わしたいものであります。  もう一点は、ただいま全国の国立大学あるいは高等学校の先生方、特に国語、漢文に関係のある教師だちから、こういうことを国会にたくさん陳情されております。それは、漢文というものを非常に虐待しておることである。これは詳しく申し上げると相当長くなるから簡單に言いますが、ちうど太平洋戰争のさ中において、中学校以上の学校において、英語教育は必要がないというようなことになつたと同様なことが、ただいま高等学校以上大学の間に行われておる。文部省のあるおえらいお役人は、大学高等学校漢文教授連盟の代表者に対して、マツカーサーの指令によつて漢文の方などはどうでもよいのだ、つまり軽く扱つてよいのだ、軽く扱うということは、教師の数において、また時間の割当てにおいて——ただいま漢文は国語科の中に含まれておつて、一月大体二時間であるそうでありますが、文部省のお役人の中には、マツカーサーの指令を受けて、われわれ書生時代の言葉で言えば漢文、大きく言えば支那学と言いましようか、そういう学科は教えずともよい、あるいはきわめてこれを軽視しているような——命令とまでは行かなくても、何かアドバイスを受けて文部省の指導方針がさようなことになつておるのでありますか、この点を伺つてみたい。
  225. 天野貞祐

    天野国務大臣 マツカーサー元帥からそういうような指令は決してございません。あるいはこういうことが誤り伝えられたのではないかと思います。それは、従来国語漢文と言つていたのを、今は国語科というものの中に漢文も含めているためにそういう誤解が起つて来たのではないかと思います。漢文をやつてはいけないとか、漢文を粗略にするというような指令などを受けたことは全然ございません。私は元来漢文を非常に尊重している人間で、漢文のために日本人の性格がつちかわれて来たことは事実だと思います。今後も尊重して行きたいという考えでございます。ただ漢文と普通言つているものは、これは中国の古典というよりは、私はむしろ日本の古典だと思つております。あのひつくり返して読むのは日本の古典だといつてもよい。従つてこれを国語の中に包括するということ自体は何もさしつかえないのであつて、これを重要視してどういう教科においてやるかということには、まだ多く研究を要するものがあると思つて、文部省の事務当局によくそれを研究するように今頼んでおります。
  226. 庄司一郎

    ○庄司委員 たいへんけつこうでございます。それらの調査研究をすみやかにされて、やがて中国との和平の時代がすみやかに来ることを念願しているこの場合、数年後において漢文を教える先生がない——いわゆる漢文です。いわゆる漢文を教える先生がない、あるいは七言絶句の詩もつくれない、あるいは禪でいえば、最後においてやるあの偈頌なんかもつくれないというようなことがあつては、まことに嘆かわしいことでありまして、将来中華民国との国文親善の時代において大いに役立つことでありまするから、願わくは今より漢文、支那学等について教え得る実力を持つた教師の養成等にも深い関心を持たれて、適当に御善処あらんことを要望してやまないのであります。  最後にもう一点は、義務教育の小学校あるいは中学校等の教師、特に小学校の方に多いのでありますが、最近山間僻地を開拓開墾して、入植者が新しい開墾の村をつくつておられる。従いましてそういうところにはなかなかりつぱな学校ができませんで、俗にいうところの分教場、寺子屋というものしかできていないのであります。ところがそういうところは文部省の御規則では、僻陬地といわれておるそうでありまするが、そういう遠隔の農漁山村あるいは難れ小島、新しい開拓村等に勤務するところの教職員は、中には非常な理想を抱いて喜んで行く教員もあるが、大部分は、特に家族の多い者等は、やはり子弟の教育その他の関係において、これを喜ばない傾向にある。そこで文部省の御規則によつて、僻陬地の教員に対する特別の勤務手当というような制度ができておるそうでございまして、ただいまは都道府県の教育委員会あるいは県等に大体おまかせのようであるが、これらの遠隔の地、特に新しく山奥あるいは海拔何千尺という奥地に開墾をして新しい寺子屋を建てた、そういうところに喜んで教員が行けるように、一層特別なる勤務手当と言いましようか、そういうことをぜひ御考慮の上、都道府県教育委員会その他と協議を遂げられて実施を願いたい。何かただいまの文部省の御規則では、国鉄から二十四キロ以上の地あるいは私鉄から十二キロ以上の地、いろいろそういう條項が二條とか八條とかにうたわれておる関係上、地方の都道府県の教育委員会が、手当を出したくとも出せない場所が相当あるというようなことを本員は聞いておるのであります。こういう意味において、かような交通不便な山奥や離れ小島等に勤務されておる教職員の諸君が、願わくはその子弟の教育も十分なしあたうようにしてあげる一端としては、どうしても特別の勤務手当を増額してやらなければならない、さように考えておるのでございまするが、こういう点に対してはいかがでございますか、文部大臣のお考えを承りたいと思うのであります。
  227. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまおつしやいましたことは、私もぜひそうした方がよいと考えております。現在でも僻陬地には手当を出しております。また單式学級と申しまして、一年から六年まで一つ教室で教えるというようなところも、また複式と言いまして、四年以上を一つ教室で教えておるところもみな特別の手当を出しております。しかしその手当が十分だとは言えませんから、そういうのを増額して、そして喜んで有能の士がああいう寺子屋的な、全体の生徒を自分一人で教えるというような、特別なところに教育の興味を持つて行かれる人もあるようにすることが、私は非常に望ましいと思い、そういうふうに配慮をいたしたいと考えております。
  228. 庄司一郎

    ○庄司委員 けつこうです。その御方針でなお予算措置を通して、相当待遇の改善をすみやかに実施されるように御善処を願いたいと思うのであります。  そこで最後にお伺いかたがたひとつ献策したい。それは旧臘内閣総理大臣は、官邸に全国の義務教育の校長さん方を総理大臣の名によつて招待をされ、いろいろ教育上に関する懇談会を催されたが、これはたいへんけつこうなことであると思います。そういうことは教育者の社会的地位を向上させるだけでなく、明るい希望を与えるものである。従つて文部大臣としてあなたは、総理大臣がああいうことをやつたから、おれはどうでもいいというお考えを持つてはならない。今申し上げた遠隔僻陬の地にあるような分数場や寺子屋の先生でもあなたの官邸に御招待されて、あるいは感謝あるいは激励あるいは慰問されるという御意向がございませんか。あなたは何か大学や高等学校方面には非常に御熱心であるようであるが、義務教育の低学校の方にはあまり手をお出しにならないような傾向が印象づけられておりまするが、総理大臣のおやりになつたけつこうなことをひとつまねられて——と言つてははなはだ失礼ではありまするが、いいことはまねてもよろしいと思う。私はかような恵まれない、交通不便な僻陬の地に、默々として働いておるところのこの無名の先生方を、文部大臣はすべからく在職中一回くらい御招待なされて、大いに慰安の道、あるいはそういう方々より教育上の研究報告をお聞きなさることがまことにけつこうであると考えておるが、いかがでございますか。
  229. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は多年大学におつたために、私が何か大学に熱心で、義務教育に不熱心のような印象を世間に与えるなら非常に遺憾千万であります。私は就任した際に、まず三つのことをやりたいと言いました。その第一は、義務教育の充実でございます。第二には、育英制度の完成でございます。第三には、学術の振興でございます。大学の充実とかいうことは、私の三大目標の中には入つてないくらいでございます。義務教育は第一に私が掲げたところでございます。また微力のために十分なことはいたしておりませんが、十分義務教育のために努力したいということは、第一に義務教育の充実を掲げたという事実でも御了承いただきたいと思います。  私は教育者の地位が社会的に低いということは実に残念です。小学校長というものを社会がほんとうにあがめ見るということにならなければいけない。そういうことはただ言うだけではいけないから、何か実際の方法はないものかとしきりに苦慮いたしておる次第でございます。ただいま仰せられたようなことも一つのことと思い、私も総理大臣の御招待には、たいへんよいこと、だと思つて、当時これに参加して、自分の意見も述べたくらいでございますから、私も総理大臣のそういう精神にのつとつて、今後いたして行きたい考えでございます。
  230. 庄司一郎

    ○庄司委員 教育者の地位を社会的に、国家的にこれを顯彰するというお考え、まことにけつこうである。ただそれを実現されなければなりません。たとえば文化勲章は、ただ大学を長くやつた先生であるとか、あるいは詩をつくる詩人であるとか、あるいは絵を画いて金をもうけた連中だとかいうだけでは、文化勲章の意味はない。やはり初等教育あるいは中等教育、大学教育でもけつこうであるが、一生を教育のために奉仕をした方々にも、文化勲章であるとか、あるいはまた藍綬褒章でもけつこうであるから、そういうことをあなたは真剣になつて実現を願いたい。最後にこのことを献策して私の質問を終ります。
  231. 小坂善太郎

    小坂委員長 天野公義君。
  232. 天野公義

    天野(公)委員 先ほどに続きまして、第二の問題といたしまして、現在問題になつております炭労ストの現状とその見通しについてお伺いいたしたいと思います。
  233. 保利茂

    ○保利国務大臣 昨年の十二月で期限になつておりました炭鉱従業員の賃金協定の更改にあたりまして、円滑の妥結を得ずして、去る七日から三井ほか大手四社のストライキが行われた。十三日にさらに九州の九社が参画するという現状で、炭労参加二十八万の従業員の中で約二十万のストライキが今日続行されておる。今回のストライキは、先申しますように、純然たる賃金協定、賃金問題をめぐつての純経済闘争の形をもつて行われておりますわけで、しかも労使当事者ともに、何とか相互の交渉によつて解決点を発見して行きたいという非常な熱意に燃えて努力をしておられる。その努力がだんだん進展いたして参りまして、かつまた政府といたしましても、基幹産業と言われます石炭業が、かような状態で停滯をいたしておるということは、まことに遺憾に存じまして、すみやかに団体交渉の妥結を得るようにその自主解決を望みまして、十三日に労使双方に対して、政府の考えとしてすみやかに最後的な団体交渉を持たれて自主解決をはかつていただきたいという申入れをいたしたわけであります。もとより重大なる産業でございますから、労働省といたしましても、争議の平和解決機関であります労働委員会といたしましても、この推移に対して深甚の注意を払つておりまして、団体交渉をもつて解決しあたわずというような状態に処するためにも、用意をいたしているわけでございますが、今日ただいまの段階におきましては、おそらく最後的な交渉の段階に入つている。しかも相互に、あくまで相互の交渉によつて事態を解決いたしたいという希望と熱意を持つてつておられますから、おそらくすみやかに自主解決がはかられるものと、ただいまのところさように期待をいたしておる次第でございます。
  234. 天野公義

    天野(公)委員 この問題は重要な問題でありまして、日本産業に及ぼす影響も非常に大きなものと思います。労働省といたしましては、労使双方の自主的な解決にまつておられるようでありますが、できるだけ早くこの問題が円満妥結に行きますように、格段の御努力のほどをお願いしたいと思うわけであります。  次に、先般本委員会で川崎委員からいろいろ御質疑があつたところから労働大臣のお考えを推察いたしますると、雇用の問題の解決には、大体において自立経済を達成することによつて、雇用問題を解決するというような大臣のお考えであるようでございます。根本的には私もそのように考えておるものでございますが、しかしながらこの失業問題の解決ということは非常に大きな問題でございますので、重ねて大臣の御見解を伺いたいのでございますが、自立経済審議会の試案によりますると、昭和二十五年を一〇〇といたしますと、二十六年、七年、八年と行くに従つて、失業者はずつと増して行くというような統計になつておるのでございます。二十六年度が一〇四・九%、二十七年度が一一〇%、二十八年度なつて、ちよつと減つて一○二%というようなぐあいでございまして、また人口の増加率から見ますと、失業者というものはだんだんふえて行くような傾向にあるように統計が出ておるのでございまするが、そのほかに潜在失業者の問題も大きな問題としてその背景にあるわけでございます。そこで労働大臣としては、自立経済に依存して雇用問題の解決に当られるのも当然でございましようが、さらに労働大臣としてこの失業問題の解決になお一層御努力をされる必要があると思うのでございまするが、この点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
  235. 保利茂

    ○保利国務大臣 失業問題が、わが国におきまして非常に複雑かつ深刻な様相を呈しておりますのは、申すまでもなく的確に捕捉したがい不完全失業者と申しますが、都市におきましても、地方におきましても、この不完全失業者が相当数背景をなしておるというところに、この失業問題の複雑性と深刻性があると思うのであります。根本の考え方としましては、要するに雇用の源泉である日本の産業それ自体が充実され、産業規模が拡大されて行くということでなければ、根本的な解決ははかられない。完全雇用完全雇用という声を非常にかけられるけれども、結局何と申しましても、雇用の源である産業の充実と規模の拡大に期待を持つ以外には、私は解決の道はないと思う。同時に失業問題の背景をなします、先ほど申しました農村等におきまする過剰労力と申しますか、不完全失業者と申しますが、この農村における過剰労力なり、不完全失業者の問題が、農村経済の充実発展によつて完全の形に安定して行くと——日本の失業問題の場合には、私は特に農村の経済の面から来る影響が非常に大きいと思うのであります。そういう意味からいたしまして、自立経済の一応の試案ができておりますが、この自立計画の達成で、失業問題の背景をなします不完全失業者の就業の安定を期待することができるのではないか、むろんこれができなければならない、かように考えておるわけであります。この不完全失業者の就業安定があつて初めて雇用安定の第一歩を踏み出すことになる、かように考えております。最近の情勢によりますと、自立経済計画の一試案として推定せられておりますところによりますと、雇用情勢の見通しは、先ほどお示しのような数字を示しておりますけれども、最近のいわゆる完全失業者の統計を見ましても、八月には五十五万円であつたものが、十一月には三十七万に減つてつておる。全体の雇用の状況を見ますと、八月ごろから全般的にはもち合い、あるいは紡織工業、金属工業、運輸業、建設業等においては、堅実な足どりをもつて雇用の増大を見ておるわけでございまして、この上失業者がどんどんふえて行くという統計は、最近の統計をもつて見ますとどこにも現われていない。八月以降は漸次改善の方向に向つているということを申し上げてさしつかえなかろうと存じます。なお何と申しましても、年々新たに追加せられて参ります労働力の吸收、少くも年々五、六十万の新たな労働力の吸收、そのことをかかえておりますから、さらに日本の産業の規模の拡大充実を見ずして失業問題の全般の解決を得るということは、事実不可能のことであつて、これは一歩々々日本の経済の立て直しととも拡充をして改善せられて行くべきである、かように考えております。
  236. 天野公義

    天野(公)委員 次に失業対策予算に関連した問題ですが、昨年度は失業応急事業費として五十五億計上されておるのに、今度は七十七億五千万円計上されて、非常に増額を見たわけでありまして、この点につきまして、労働大臣の御努力に敬意を表する次第でございますが、この応急失業対策でいろいろ仕事をやつておる部面を見ますと、事情はありましようけれども、仕事の能率の上つていない部面もたくさん見られるわけであります。すなわち労働力のある者も、ない者も同一賃金、働いても働かなくても同一賃金であるというところに、労働力の低下というか、非能率化ということが生じて来ると思うのでございます。しかも国家予算を七十七億も投じておる大きな事業であるのに、これを有効適切に使えないということは、非常に国家予算の浪費でもあるし、遺憾千万だと思う次第でございます。そこでこの事業費を有効適切に使用するために、賃金をある程度能率給にかえるお考えはないか。またそのほかにこの事業を有効適切にやつて行く御方策があるとすれば、それを承れれば幸いだと思う次第であります。
  237. 保利茂

    ○保利国務大臣 確かに御指摘のように、国費の浪費ではないかと非難をせられるような向きも、私は決して否定いたすものではございませんけれども、またできればお話のように能率給的な考えをもつてこの事業が経済的に、効率的に、建設的に、さらに有効的に用いられるようにいたしたいと思うのでございますが、この失業対策事業による賃金の扱い方は、御承知のように緊急失業対策法によつて、その同一地域の同一職種の賃金の一〇%ないし二〇%を下まわつて支給するという建前になつておりますので、その範囲内においては、御意見のような趣意をもつて操作もできると思いますから、その趣意で御意見は十分伺わせていただきたい、かように考えます。
  238. 天野公義

    天野(公)委員 政府当局では、今度いわゆる地方公労法というものを国会に提出されるようでございますが、もし提出するとすれば、地方公労法に含まれる対象をどうするか。すなわち地方の公営事業に関係する者、及び單純労務も含まれるか。業態の違つた二種類のものが同一法律に含まれるものであるか。それともこれは別途に扱われるようになるのであるか、この点を伺いたいと思います。
  239. 保利茂

    ○保利国務大臣 地方公務員法の審議をいたしました機会に申し上げておりますように、地方団体の営みます公営企業に対しましては、公営企業組織法と申しますか、その法案とにらみ合せて労働関係法を制定御審議願いたいという方針をもつて、ただいま準備をいたしておりますので、これはこの国会中に大体御審議を願える段階に至るではなかろうか。そしてその問題とあわせて、いわゆる公営企業の事業に含まれざるところの單純労務者の労働関係についてはどう扱うかという御質問でございますが、この分につきましては、一面において国家公務員法との関係がありますし、及ぶところが相当広汎にわたつておりますから、十分の検討を盡さずして法律をつくるというようなことは、なるべく避けなければならぬじやないか、十分の用意が整つた上でこの措置を講ずることが妥当であろう。ただいま検討をいたしておりますけれども、予言はできませんが、おそらくこの国会中にそれに関する法案の御審議を願うということは困難ではなかろうか、かように考えております。
  240. 天野公義

    天野(公)委員 そういたしますと、今度の国会には、いわゆる地方公労法の中に單純労務は含まれないというふうに了解してさしつかえありませんか。
  241. 保利茂

    ○保利国務大臣 公営企業労働関係法と申しますか、かりにそう名前をつけますと、その中には單純労務の関係は含まない、かように御了解を願いたい。
  242. 小坂善太郎

    小坂委員長 関連質問を許可いたします。久野忠治君。
  243. 久野忠治

    ○久野委員 先ほどの天野君の失業対策事業費の運営の問題に関連してお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この事業の運営上とかくの批判がなされておりまして、先般の公聽会においてもこれは指摘されたところであります。この失業対策費の予算の流用にあたつて、この事業を運営する場合に明確性を欠いているのではないか、私はさように解釈するものであります。すなわちこの事業費は、單に失業者を救済すれば事足りるものである、失業者を救済すればそれで目的は達せられるのだという解釈をもつて予算を流用されるのか、あるいは一定の事業計画をお立てになつて、その事業分量を完遂するためには、これだけの予算がいるのだというふうな計画性をもつてつておいでになるか、こういう点が非常に不明確なところからこうした問題が起きて来るのでないかと思うのであります。特に公共事業が各所において行われておりまして、しかも同一箇所において失業対策事業と一般公共土木事業とが運営されております場合に、その間労働者の賃金その他の労働條件において非常に相違があるというようなことが、地方公共団体でもとかくの批判を生んでいるわけであります。そういう意味合いから、私の希望を申し上げますならば、農業土木事業あるいは災害復旧事業等にこの予算を流用されまして、真に再生産に有効適切なる事業分野を開くということがこの際必要ではないか、さように考える一人でありまするが、こうした点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  244. 保利茂

    ○保利国務大臣 考え方としては全然同感でございまして、ぜひそういうふうにやらなければならぬ。ただ残念なことには、失業者の多いところと、事業施行を要するところが必ずしも一致しない。しかもこれは市町村なり、あるいは府県の公共団体で事業を主宰されておるのでありまして、むろん相当地方負担を伴うことでありますから、事業主体におきましても、その事業を計画せられるときには、できるだけ経済的な、建設的な種目を選ばれておるということはわかりますけれども、しかしまたもう少し何とかした仕事を計画したらよかりそうなものだと見られる点も——これは失業者の分布状況から見ましても、どうもやむを得ない場合もあろうかと存じます。しかしながらこの失業対策事業は非常に貴重な国費を相当大きく使つておることでありますから、御趣意のような点において十分に注意して参りたい。なおこの事業計画の遂行と申しますか、実施にあたりましては、ひとり労働省のみならず、安本と協議をいたしてその実施をいたすようにいたしておりますから、御意見の点はこの事業の実施に十分生かして参りたいと存じます。
  245. 久野忠治

    ○久野委員 ただいまの大臣の御答弁まことに満足するものでありますが、地方によりますると、地方公共団体の建設官庁にこの事業が委託されております。ところが直接の責任官庁でないために、ややともしますると投げやりに予算が流用されるという部面が非常に多いと思うのであります。そのために一部労働ボスの食いものにされたり、あるいは惡徳官吏の浮貸しの対象となつておるというようなうわさをまま聞くのであります。そうした意味合いから、ぜひひとつ労働省においても御留意をいただきたいことは、地方の建設官庁にその事業を委託する場合には、一定の事業分野というものをきめて、そうしてこの予算を御流用願うということが必要ではないか、私はさように考える一人でありますが、そうした面において、各事業官庁との御折衝、あるいはそうした事業計画をお立てになつておいでになるかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
  246. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほど申しますように、この失業対策事業は、市町村もしくは府県が計画を立て、その地方公共団体が主体となつてその事業を営まれておるわけであります。先ほどのお話のように、もしただすべきところがあれば、これは十分ただして参らなければならぬと思うのでありますけれども、委託ではございませんので、地方公共団体が主体となつて営む事業でございますから、どうかそういうふうに御了承願います。
  247. 天野公義

    天野(公)委員 最後に、退職金の問題についてお伺いしたいと思うのであります。現在の税制で参りますと、納入時期によつて、退職金の税金に非常に差が出て来るばかりでなくて、金の運用の面でも相当差が出て来るわけであります。その点については、大臣よく御承知であると思いますので、この点ぜひとも調整というか、何らかの措置が必要であろうと思うわけでございます。労働者保護の見地から、労働大臣にこの退職金の税金に対するお考えをお伺いしたいと思います。
  248. 保利茂

    ○保利国務大臣 勤労者の退職金に対して相当高率の税金が課せられておるということは、私は非常に遺憾だと思つておりまして、全部退職金に対して免税をするということは困難ではありましても、退職金額によりまして、そこにあるいは二十万円とか三十万円とかいう控除ぐらいは当然さるべきではないか。個人としてはそう考えておりまして、政府内部におきましても、この問題には努力をいたしておるわけであります。御協力をいただきまして——別外は、ございましても、多くの場合、退職金は勤労者の余生をその上に託する最終的の所得でございますから、これに高率の課税をするということは、理由はむろん十分あることと存じますけれども、なるべく早い時期に緩和せられるように措置しなければならぬじやないか。個人としてはまつたく御所見に同感であります。
  249. 天野公義

    天野(公)委員 この点について大臣の格段の御努力をお願い申し上げる次第であります。これで質疑を終ります。
  250. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より公聽会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会