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1951-02-12 第10回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十二日(月曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 川崎 秀二君 理事 川島 金次君    理事 林  百郎君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    北澤 直吉君       久野 忠治君    坂田 道太君       島村 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    中村  清君       中村 幸八君    松浦 東介君       松本 一郎君    南  好雄君       今井  耕君    中曽根康弘君       平川 篤雄君    松本 瀧藏君       戸叶 里子君    川上 貫一君       横田甚太郎君    小平  忠君       小林  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  田村 文吉君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         総理府事務官         (地方財政委員         会事務局財務部         長)      武岡 憲一君         総理府事務官         (地方財政委員         会事務局税務部         長)      後藤  博君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  島村 軍次君         海上保安庁次長 柳澤 米吉君  委員外出席者         電気通信技官         (業務局計画部         長)      米澤  滋君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君 二月十二日  理事稻村順三君の補欠として、川島金次君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより開議を開きます。  質疑を続行いたします。横田甚太郎君。
  3. 横田甚太郎

    横田委員 法務総裁に伺います。政府共産党対策が非常にデリケートなので、これには判断に迷う点がたくさんあるのです。それで伺いたいことは、たしか日本に来ている外国の武官が、共産党員を保護するのは少し考えものだ、こういうような談話があつたと思うのです。それから後、共産党員に対する態度が一体どういうふうにかえられたか、このことを承りたいのです。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 共産党に対しまして、いかなる取扱いをするかということにつきましては、諸般の情勢考えまして、政府としては愼重考究をいたしております。しかしながら現在におきましては、合法政党として取扱うべきものと考えております。ただ党員行動でありまして不法越規にわたりますものは、これはそれぞれの法に照しまして、その個人的責任を追究する。これは何も共産党に限つたことではないのでございまして、政党政派にかかわらず、さようの取扱いをいたします。すなわち共産党に対しまして、現在において特別の取扱いはいたしておらない、こういう状況でございます。
  5. 横田甚太郎

    横田委員 非常に穏当な答弁をいただいたのですが、そこで一点解せないことがあるのです。共産党に対しまして、全国各府県で同一の法規が適用されているのかどうか、疑わざるを得ないようなことが起つておるのです。と申しますのは、新潟などでは演説会がやれるのです。これは国会報告演説会が主になつております。兵庫でもやれる、京都でもやれるのです。それ以外でもやれるところがあるのです。ところ大阪ではやれない、会合は持てないのです。これはどういうわけかということを私たちは知りたい。これを自治体や国家警察に聞きましたが、警察見解はこうです。大体公安條例を見ますと、集会やり方に二つある。一つ許可制であり、一つ届出制である。大阪の場合にはたしか届出制になつて許可制でない。にもかかわらず、共産党国会報告演説会をどうしてやらせないのかと申しますと、これは外国日本に来ている占領軍人たちがやらしてはいけないという命令を出したとかいうのですが、何かそういう通達全国に出ておるのですか。またそういうような法があるとするならば、これはわれわれは一体どの程度まで守らなければならないのでしようか。またこれは地域的なものでしようか、それを伺いたい。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 集会につきましての取締りといたしましては、現在原則的には公安條例によるということに相なつておるのであります。そうしてこの公安條例の適用につきましては、現地当局におきまして、それぞれ現地実情から判断をいたしまして、どの程度取締りをするかということを決定いたしておるわけであります。同じ性質の集会につきましても、現地一般治安状況いかんということによりましては、結果としては多少違つた結果が現われることも、これはやむを得ないことと考えるのであります。
  7. 横田甚太郎

    横田委員 現地において現地状況によつてきめておるというように言われましたが、その現地状況というのは、一体何によつて判断されるかということがわからないのです。むしろ現地の人に聞きますと、現地としてはやつてもやらないでもそんなことはどうでもいい。ただ中央からやつてはいけないという通達が来ておるので、それでやらせないという答えですが、それじや話が合わないじやないかというと、東京へ行つたときにゆつくりと聞いて来ていただきたい。こういうふうに言つているのですが……。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまのところでは條例によりますもののほか、集会取締りといたしましては、司令部当局指示によりまして、現地実情に照し合せまして、不適当なものはこれを制限するようにという通達を受けておるのであります。これは私どもといたしましては、一般命令によりまする関係官憲よりの示達である、こういうふうに了解をいたしておりまして、これをその地方々々の関係者通達して遵守せしめるようにいたしておる次第であります。
  9. 横田甚太郎

    横田委員 それでは不適当なものは現地においてやらさない場合もあるということは、不適当でない場合はやらす、こういうことになるわけですね。大体この不適当というのは、どういう場合が不適当の基準になり、これをたれが判断するのかということをもう一度お願いします。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 不適当と申しますのは、一般治安から考えまして、さような集会を続行、あるいはこれを許可せしめることが治安上おもしろくないという場合において、不適当として不許可の扱いにいたしておるのであります。
  11. 横田甚太郎

    横田委員 そういうふうに不適当というものを判断するのは、どういう基準によつてだれがするのかをはつきりしていただかないと、たとえば神戸のように、朝鮮の人の、いわゆる俗にいうところ騒擾事件が起つておりました、そのあとにおいて集会が持てるにもかかわらず、至つて平穏な大阪においては会合が持てない。いわんや大阪市と離れた府下山間の私たち選挙区においては演説会が持てない。ところが他党の演説会は持てておる、これがわからないのです。それに対して現地状況あるいは不法越規の当人に対しては、個々的に何するということであるが、不法越規はすでに行為である。演説会をやらない前において、これは不適当だとか、不適当でないとか、あるいはこれをやらしたら治安が乱れるとか乱れないとか、取越苦労ばかりしておつたならば、かえつて法の威信が害されるのではないか、こう私は思うのですが、こういうような意味合いにおきまして、何と申しますか、もしそのような場合に不適当と向うが認めましようとも、こちらの方で不適当じやないのだとわかるなれば、それに対してかつてにやつた場合は一体どうなるのですか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 官憲指示にもかかわらず、これを強行せられるということに相なりますと、その結果は占領軍一般指令に基く指示に違反したということに相なりますので、当然処罰の対象になるといわなければなりません。
  13. 横田甚太郎

    横田委員 そうするとこの大阪の場合におきましては、何か私たちには解し得ないところ治安を害するようなものがある、政府はそういうふうに判断しておられるのですか、この点を伺いたいのです。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 すべて現地当局がその責任において判定を下すことに相なつております。
  15. 横田甚太郎

    横田委員 その現地当局に対しましては、占領軍からの指示があるのですか。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現地当局は、常に関係方面と連絡をとつて、実際上の判定をいたして、おるものと考えております。
  17. 横田甚太郎

    横田委員 このような形で行きますと、治安を口実にいたしまして共産党弾圧をやつておる。共産党の妨害をやつておる。いわんや地方議会選挙が近づいておる。その前におけるところ演説会の一回は、それから後におけるところの百回に相当するのです。しかも選挙が終りましたときに政府の言うことはきまつているのです。そうして日本占領している人たちの言うことはきまつている。見ろ、共産党は票数が減つたじやないか、これだけしか言わない。しかしその前におけるところの自由なる競争を、治安の名においてやらせずにおいて、そういうことをおくめんもなく言うということは、実際上においては何か共産党に対するところの特殊な、勢力を減殺さすというような政策考慮されておる結果、現われるのではないか、こう思うのですが、どうですか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題は、先ほども申し上げました通りひとり共産党に限らず、わが国のすべての政党は現行の法規並びに占領軍の許容する範囲内において、その主義政策を宣伝する機会を興えられるものと考えます。またさような意味合いにおいて、私どももこの問題を処理いたしておる次第でございます。
  19. 横田甚太郎

    横田委員 もう一回重ねて聞きます。私が具体的に出しました大阪におけるところ演説会の禁止というものは、全国と同じような治安状態にあるにもかかわらず、禁止されているところに私は疑問を持つのです。これは一体いつごろまで続くものでしようか。それとも政府の方において、この治安の点については、責任を持つて全国と同じように取扱つて行くというような配慮があるかないか、この点を聞きたい。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、基準全国同じ基準でやるべきものと考えますが、この基準を具体的に適用いたしますに際しましては、あくまでも現地治安はその現地々々の機関責任を負うものでございますから、その判定にまかすべきである、かように考えております。
  21. 横田甚太郎

    横田委員 現地判定において非常に損するものがある。たとえて申しますと、大阪におきましては、すでに法務総裁も御存じのように、去年の国会においても問題になりましたように、大阪警察庁の総監は非常に弾圧がすきだ、それゆえにやみ取締りがきつかつた。さればこそ全国においてやみ米の値段は大阪が一番高いので、それで大阪の商人が弱つている。京都でやれる商売が大阪でやれなかつた。それと同じように、かえつてこういうふうな厳格な、日本人通念をもつてしては解釈し得ないところの、治安に籍口したところの、共産党に対する言論の圧迫があるところに、一般大衆騒擾事件が起るのじやないかと思うのです。こういうような点に対して法務総裁より、大阪治安を担当し、そういうような解釈のできる人たちに対して、もう少し日本人らしい、現在の通念に立つたところ取締りをしてはどうか、こういうようなことを通達される意思があるかないか。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察の運営、管理につきましては、国会のお定めになりました警察法によりまして、その関係公安委員会が一切の責任を負う建前に相なつております。従いまして政府といたしましては、これに対してとかくのさしずがましきことをいたすということは、警察法の精神から見て適当でないものと考えております。
  23. 横田甚太郎

    横田委員 それから、これは言葉じりをとらえるようになつて、非常に小さい質問で気の毒なんですが、総理予算委員会においてもこういうことを言われたと思うのです。共産党非合法化したいけれども、現在はその段階でない、こういうふうに言われたのですが、非合法化したいというような意向があつて共産党非合法化できないその原因は一体どこなんでしよう。現在の段階において一、それは一体どういうふうに判断せられておられるのでしようか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在はまだ時期として適当でない、こういう意味ではなかつたかと推察をいたすのであります。
  25. 横田甚太郎

    横田委員 時期が適当ではない。その時期はおいおい至るという見込みでしようか。それともまたその時期は総理が別の会合のときにも言つておられましたように、共産党といえども日本人であるから、これは考え直してもらうというような考慮を拂つておる、こういうふうに言つておられた。こういうような点におけるところ政府対策は、どういうふうになつておりますか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては最初に申し上げた通り共産党非合法化ということについては、愼重考究をいたしております。
  27. 横田甚太郎

    横田委員 その愼重考究をしておられるところのその考究は、一体どのくらいまで進んでおりますか。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 相当進んでおります。
  29. 横田甚太郎

    横田委員 非合法化は決定的な段階まで進んでおりますか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さような程度までというわけにもお答えできかねることであります。
  31. 横田甚太郎

    横田委員 共産党非合法化するところ要素、それは一体どういうようなものを考慮に入れておられますか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本共産党自体行動というものを要素として考えて、研究をしております。
  33. 横田甚太郎

    横田委員 その考え研究する対象として、共産党員には尾行をつけておられるのですか。また共産党員に対しては演説会をやらせずに、特に騒擾を起すような地区をこしらえておられるのですか。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、立法政策の問題として考究をしておるわけであります。警察権の行使につきましては、この研究と別に関係のないことであります。さきにも申し上げました通り、これは公安委員会においてやられることでありまして、この研究とは関係のないことであります。
  35. 横田甚太郎

    横田委員 これは先日の予算委員会において大橋法務総裁とわが党の林君との間に質疑応答がされたのですが、その見解によりますと、林君はたしかこう言つたと思うのです。ポツダム宣言によりますと、無責任なる軍国主義、その中にはソビエトは入つておらない。なぜかといつてアメリカもその條約を結んだ相手方であり、ソビエトもその一つであり、あるいは中国もその一つであり、英国もその一つである。従つてそれが、占領が五箇年間続いて、その後において特に共産主義を無責任なる軍国主義と数えるようになつところ理由はどうか、こういうことを聞いたと思うのです。ところがその点につきましては、法務総裁だけの見解ではないのですが、アメリカ日本に来ている軍人も日本総理もみなこういうように言つておられる。情勢が違う、占領下情勢がかわつた、こういうように言つておる。情勢がかわつたために、そのポツダム宣言に盛られたところの文字から受ける解釈、いわゆる反共的ではないところポツダム宣言、それが占領下五箇年間過ぎました現在反共的にならなければならないその理由はどこにあるのか、法的根拠を承りたい。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私ども考えといたしては、別に情勢の変化が反共的になつたということではなく、日本におきまする共産主義活動が、漸次暴力主義的または軍国主義的になつて来た、こういうことだと思います。
  37. 横田甚太郎

    横田委員 暴力主義的、軍国主義的と、こうおつしやいますが、共産党員ピストルをぶらさげたり、こん棒をぶらさげたりして歩いている者はないのです。たしか警察予備隊大橋法務総裁管轄下にあると思う。これはピストルをぶらさげたり、こん棒をぶらさげるだけではかえつてだめなんだ。機関銃だとかあるいは飛行機とか、そんなものの訓練を受けているように私ども承るのです。だからこういうような意味合いにおきまして、暴力化している、軍国主義化している、これは法務総裁自身取締りの内答の中にあるのではないでしようか、その実はどうでしようか。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 暴力と申しまするものは、これは法令に違反して行われる場合において、その実力が暴力として考えられるものでありまして、皆様の言われる——暴力と言われますけれども政府法令に基きその警察力といたしまして持つ力、これは暴力主義的というようなものでないことは明らかであります。
  39. 横田甚太郎

    横田委員 大橋法務総裁に伺いたいのですが、国内法規ポツダム宣言を優越して効力を発揮するものではないでしよう。ポツダム宣言というものの大綱があつて、その線に沿つて憲法があるのでしよう。その線に沿つて諸法令があるのでしよう。といたしますればポツダム宣言に対してこれを守らないところ団体が、日本にあるかないか。私はないと思う。そうであるにもかかわらず、それをあるように解釈して、特定団体だ、特定団体だといつてこれを追いやるようにしておいて、これを騒擾を起すような、経済的な政治的な條件をつくつておいて、その條件を基礎にして法令をこしらえて、そうしてこれがいけないのだ、おれのところ法規によつてつておるのだ、君の方は法規によつてつておらないと言うのだつたら、これは何か一つの作為のためにやつておるのだと私は解釈する。そういうような意味合いにおける法規を云々されますが、大橋法務総裁は、日本国内諾法規ポツダム宣言を、どちらを大切にされますか、どちらを忠実に守りたいのか、この点を伺いたいのです。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私はポツダム宣言趣旨従つてできております日本法令というものは、これを励行すべきものと考えております。
  41. 横田甚太郎

    横田委員 それでは日本共産党ポツダム宣言を守らない、こういうようなことを言い、そういうような行動をやつたことがありますか。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 共産党の全体といたしまして、ポツダム宣言を守らぬというようなことは私は申し上げておりません。しかしながら共産党の一部の下部機関にして、このポツダム宣言趣旨から見て適当ならざるものは、すでに解散団体として処分をいたしましたることは御承知の通りであります。この点につきましては、共産党の一部の機関においてさようなことがあつたということを言わなければならぬ点を、私ははなはだ遺憾といたすのであります。
  43. 横田甚太郎

    横田委員 その点においても非常に疑問と思うのであります。たとえばアカハタにいたしましたところが、それ以外のものにいたしましたところが、あるいはここに来ておる川上君の質問にいたしましたところが、常にポツダム宣言の線に沿うてやられておるのであります。議員が議会において政府に対して質疑する、言論の自由が保障されておるにもかかわらず、これが懲罰の対象になる。それは国会内において数の多数を持つておる自由党だからやれるのです。そういうような行き方はまずい行き方として、後世に笑われながらも今やられることでしよう。しかしながら、私が今ここで言いたいということは、それがまた法務府において追放の問題としてこれが考慮される。現に林代議士がここで質問いたしましたところのその速記録速記課にございます。この速記課にあるところ速記を、あんたの部下の人、検察庁の人たちがまた調べに来ておるのであります。これは事実なんです、やはり私の速記録調べに来るでしよう。こういうことをやること自体がすでにマツカーサー元帥が、リーダーズ・ダイジエストにおいてこういうことを言つたでしよう。日本の国は今まではひどい国だつた労働者労働運動をやる。農民農民組合をつくつて運動をやる。無産階級無産政党をつくつて運動をやるときに、うしろから来て、その運動をやつておる人の肩をたたいて、豚箱にほうり近むというようなむちやなことをやつておる。これはいけない、これをやらせない、これがポツダム宣言趣旨だということを言われておつたと思います。しかしながら今現実にやられておりますものは、国会内において單に政府質疑することが問題になるだけでなしに、法務府の方々が来て、これをすでに追放一つの問題として考える、林君の速記録調べる、こういうようなことをやつてつて、これを法的に公平に扱つておると言えるでしようか。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 懲罰問題につきましては、国会みずからの問題でございますから、政府としてとかくのことを申し上げる筋合いではないと思います。
  45. 横田甚太郎

    横田委員 大体共産党政府との見解が違うということは、政府のあなたも言つておられる、共産党も言つておる。これは、はつきりしているのです。大体共産党政府とがポツダム宣言を守るということにおいては一緒であるにもかかわらず、それが行動において違つて来る。一体これはなぜ違つて来ているのか、そういうような点について、法務総裁はお考えなつたことがございますか。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 考えたことはございません。
  47. 横田甚太郎

    横田委員 弾圧原因考えずに、非合法化せねばならないところ政党の性格も考えずに、その行き方考えずに、そうして今ごろ非合法化考えておられるのですか。その点は、法務総裁としては常に愼重なる答弁をしておられるにもかかわらず、非常に間の抜けた答弁だと思う。共産党政府と違うのは政策上違うのです。共産党は徒党ではなく、一つ政策を持つているのです。私の考えによると、日本共産党の生命といたしまするものは、経済政策もいろいろあります。しかし大体においてはつきり言われることは、対華政策資本主義日本の伝統的な行き方と違うと思う。日本政策というものは常に大陸への進攻であり、侵略であつた朝鮮を盗みたい。中国を盗みたい、台湾をとつておきたい、樺太をとつておきたい、そうしてとつたところのものはわけ前を人民大衆に與えずに、一部少数の人たちがとりたい、これが古昔日本侵略主義者行き方で、そのゆえにこそ日本は破綻した。共産党はそれに終始一貫して反対し続けた。中国における二十一箇條の対支干渉もいけないのだ、満州事変もこういうような行き方はいけないのだ、日華事変もいけないのだ、東亜の大戦争もいけないのだ、第二次世界大戦もいけないのだ、共産党はその戰争反対にのみ闘つておるのであります。ところが現在の政府行き方、いわゆる占領五箇年を通じての政府行き方といたしましては、戦争へ直進しておるように思うのであります。暴力的なやり方をもつて法規に基かないところ暴力行為をやつているのは共産党だというようなことを言つておられますが、われわれたちその点については逆でありまして、国内において台頭するところの、賃金を上げてほしい、米価を合理的にしてほしい、日本をもつと民主的な国にしたい、こういうような人たちに対するところ民主勢力を圧殺する意味において、政府警察予備隊をこしらえておられる。これは外に行くのではなく、間接侵略に備えると言つておられる。私はそう解釈するのです。またそれが通説になつているように思うのであります。だから日本共産党というものが政府にたてつきますのは、戰争に反対する、戦争してはいけない、再び戦争に巻き込まれてはいけないということです。アメリカの伝統的な東洋に対する政策を見まするときに、アメリカは今に始まつて日本を援助してくれたのではないのでありまして、中国に対する思惑のあるときに、朝鮮に対して思惑のあるときに、必ずある程度日本資本家級階を援助しておつたのであります。それと何らかわりない。アメリカが、今、日本に援助してくれているということは、かつて中国におきまして中国を二つに割つて、国民政府軍には援助しよう、しかし中国共産党に対しては援助しない、それゆえ中国共産党勢力をつぶすために、三十億ドルの武器をもつてこれを弾圧した。それがすなわち失敗に終つた。その肩がわりとしてやられておるのが、日本に対するところのいわゆる講和條約の今の進行ぶりだと思うのであります。これは戦争への行き方だと思うのです。これに共産党は反対している。だから共産党がやりますところの戰争に対する反対闘争というものに対しては、法務府としては一体どういうような態度をとられるか、この点を承りたい。
  48. 大橋武夫

    大橋國務大臣 共産党に対しまする法務府といたしましての対策を決定する上から申しまして、共産党政策あるいは共産党の主張というようなものが政府と反対である、あるいは他の政党と違つておる、そういう点は全然問題といたしておらないのであります。ただ私ども共産党に対する対策というものを考えるにあたつて問題となりまする点は、ポツダム宣言趣旨に従いまして日本の民主化をはかつて行くという上から申しまして、また国内治安を維持するという上から申しまして、共産党行動が適当であるかどうかという点のみを判断いたして、これによつて対策考えよう、こういう考えを持つておるわけであります。
  49. 横田甚太郎

    横田委員 国内治安と言われますが、国内治安を守つておられるのは政府だけだと思つておられますけれども、私の考えところによりますと、また大多数の人においてもそういうような意見がふえて来ておる、それゆえにこそ自由党は選挙でぼろぼろ負けるような結果になつて来たのですが、大体治安を乱すものは政府の施策の中にあるのです。米の値段が安いじやないか、第一、アメリカの小麦を高く買うて、日本の産米を安く買つている。援助でないものを援助であると言つている。日本では今買わねばならないというときだのに、日本のものをどんどん輸出してしまつて日本の国をからつぽにして、国際的にインフレーシヨンが高進しているときに、現金だけを握つて喜んでいる。こういうような政治のやり方において人民生活の破綻がある。きのうも広川農林大臣が言われましたが、政治には腹が大事である。鼓腹撃壌、天下泰平、家内安全、これは東洋の言葉として、一番理想的な言葉であることは、大橋法務総裁御存じのはずである。食えない大衆をこしらえておいて、食えるように生活権を要求するとき、これが治安を撹乱するというのはおかしい。今の日本の町にはパンパンが充満している。学校を建てたら学校の横に特飲街ができた。アメリカ人が朝鮮で戰えば、米人に対して日本人の血が金で買い取られる。アメリカ人が戦争をやめて日本に帰れば、日本人がパンパンとしてはべる。こういうようなことで、一体日本治安が保たれると思うのですか。治安を守つているのは政府だけではないのでありまして、日本人全体、共産党といえども、いな共産党こそがむしろ一番考慮している、これを憂慮しているのです。ところが現在は国内におきまして、階級の貧困化があまりにもひどい。こういうような立場から治安が乱れていると思うのであります。その治安の乱れに対しまして、これは当然の要求であつて、経済的に解決しなければならないものを、武力的に弾圧して解決しようとするところに、国際的にも国内的にも国外的にも、いわゆる軍国主義的な武力的な弾圧的な、再びわれわれが迎えなければならないところの戦前の悪い政治が来るのじやないか。だから大橋法務総裁は、警察をこしらえて、それで扱つて、扱つた警察の定員では足らないから警察予備隊をこしらえ、警察予備隊をこしらえただけの定員では足らないから、これに装備をうんと整えて、定員をふやし、定員をふやしてもまだ足りないから、別の形におけるところの兵隊をこしらえなくちやならない、こういうようなジレンマに陷つて、それが経済的な負担になつて行き、かえつて日本の破壊になつて行く、私はこう思うのであります。こういうような意味におきまして、治安を守るというのは政府だけではないのでありまして、政府こそが治安をかえつて乱していると私は思う。  それから次のことを聞きますが、共産党員議会においていろいろ論議いたしますことに対しまして、法務府としては、これに対してとやかく、いわゆる容喙と申しますか、これに対する制裁と申しますか、そういうような卑怯な態度を今後とられるかとられないか、その点を承りたい。
  50. 大橋武夫

    大橋國務大臣 院内におきまする共産党員諸君の運動につきまして、別にこれをもつてどういうということを考えておるわけではございませんが、政府といたしましては、これもまた共産党の他の活動と関係があるものと考えまして、十分に関心を持つて注意をいたしておるのでございます。
  51. 横田甚太郎

    横田委員 注意しておられた結果はどうなるのですか、それを聞きたい。なにも注意などしてほしくないのです。こつちはこつちの判断でやるのです。大体日本共産党というものは、今まで弾圧されて、弾圧の中で育つて来た党なんです。戦争に反対して刑務所で育つてつた。それでも共産党はつぶれなかつた。そうして共産党は今に——簡単に申しましたならば、政治というものはそこのけ、おれがとるというのが政治の要諦だと言われておりますが、だから共産党は逆だといつて、自由党はかつてなことをやつているのです。おそらくこれが自由党の言いぐさであり、そうでなければ親米沢が政権を握つて、親米一色によるところの政治をやるのだというのが今の政府行き方だと思うのであります。その点は隠さずに言つてほしい。ところ共産党の出発には一つの歴史的な事実がある。共産党員は今から前に、日本でいえば、かつてありました天皇制政権のもとにおきまして、あなたよりか吉田さんよりか、もつとおとなしく刑務所の中にすわつてしんぼうしておつて日本の国をあなた方にまかして来た。その結果は今日の敗戦を招いて、情ないことに歴史上かつてないところの、外同人によつて日本占領されるような国辱的な立場に置かれたのであります。だから共産党に対しましていらないおせつかいをして、議会においてこう言つたといつて弾圧し、あるいはこれに対して追放をするというようなことをやつてみなさい。共産党はそれに対して闘う。闘うことにおいて人類の正義を守り、社会の秩序を守つて来た政党なのであります。だからこういうような点におきましては——法務総裁にお開きしたいこともございますがあとに官房長官もおられますので、とにかく共産党といたしましては、いらぬおせつかいはしていただきたくない。かえつておせつかいをすることによつて共産党はいかなる政府弾圧外国のこれに対する妨害があろうとも、人民の中に育つて、必ず日本の政権を握り、この国の独立は保つてみせるのだ、こういうような大気概をもつて進むものであります。もう法務総裁はよろしい。
  52. 小林進

    小林(進)委員 関連して……。
  53. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 関連しておる一点に限つて許可いたします。
  54. 小林進

    小林(進)委員 ちようど法務総裁がお見えになつておりまするので、かねがねお聞きしたいと思つている一点をお尋ねいたしたいと思いますが、特に自由党が政権をとりまして以来、だんだん国家警察——これは自治体警察にもその色彩があるのでありますが、政党色がだんだん顯著になつて参りまして、いわゆる警察の無色公平というような点が薄れているということを、われわれは地方において具体的問題にぶつかりまして痛感するのでありますが、これに対しまして、何か法務総裁に、お気づきになつている点があるかないか、まずひとつお伺いしておきます。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は新警察法趣旨によりまして、公安委員会警察の運営をやつておりまするので、これに対しまして、政党的な色彩が漸次加わりつつあるという傾向があるとは考えておりません。
  56. 小林進

    小林(進)委員 公安委員会が直接責任をとるということはわかるのでありますが、われわれやはり国会議員としては、その国会に対して責任を持たれる法務総裁責任ある答弁を、どうしてもお聞きしなければならないのでありまして、私どもは実は各地方において、実に警察が與党的であり——もつとも共産党に対するところの態度は別であります、この問題は別にいたしまして、その他の政党間におきまして、非常に不公平であるということについての幾多の例を私どもは持つておるのであります。その中で、時間もありませんので、特に具体的な例をたつた一つあげますならば、たとえていえば、地方選挙、これは町村会議員の選挙においてしかりであります。まず地方自治体におきまして、だれも選挙法などというものは知らない。知らないから選挙管理委員のところに行きまして、推薦状を出してもよろしいかと聞いた。選挙管理委員が、その規約を間違えまして、よろしい、こういうような判断を與えたから、その指示通りに、立候補者が推薦状を村内に配つたところが、その後管理委員の研究によつて、いけないことがわかつたからいけないと言われた。それでみんながやめた。その中にはいわゆる自由党の議員もおれば野党の議員もある。ところが、その結果について警察が手を入れて、その同じ行為をしたその中から反與党的な色彩のある候補者だけを、最も有力な者を呼んでこれを告訴して、しかもその運動員を、全部悪いのに、一人だけ悪い——おれ一人だけじやない、選挙管理委員の要求に基いてみんながやつたと言うのに、断じて受付けず、それだけを告訴して、数十人を検事局に送つた。結果はむろん起訴猶予でありますが、これらは合法的な警察の完全なる選挙違反、これは一つの例にすぎぬのでありますが、もつと教えろとおつしやるなら、私はいくらでも、あしたの午後までも晩までも、二日でも三日でも私は例をあげることができますが、こういうことを警察で行つておる。それを責任の立場にある法務総裁が知らぬ。まだ不公平なことがないなどということをおつしやるのは、はなはだ下情に通じないことをおつしやると思うのです。共産党の断圧に非常に力を入れておいでになる。けつこうです。大いにおやりなさい。同時なこういう問題もすべからく御研究になつて警察行政が公明正大に行われるように、何らかの具体的な策を講じていただきたい。これについて御所見を承りたい。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は現在の警察法の建前といたしまして、警察が政治的に、與党中心に動かされるというような事実はないということを申し上げた次第であります。ただしかしながら、新警察法によつてできましたる自治体警察の一部におきましては、必ずしもその運営が完全に、理想的に行つてはおりません。従いまして、御指摘になりましたような弊が、あるいはなきにしもあらずと存ずるのでございまして、この点につきましては、政府といたしましては、なるべくすみやかなる機会に、警察制度を改正することによりまして、これらの弊を救済いたした  い、かように考えておるのであります。しかしこれはいわゆる政府がその威力によつて警察の活動を與党本位に動かしておるというようなことがあるわけではないのであつて、ただ弱少なる自治体警察におきましては、地方ボスの活躍その他によりまして、必ずしも警察がうまく行つておるとばかりは言えない、こういうことを申し上げた次第であります。
  58. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林百郎君、関連質問許可いたします。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの横田君に対する法務総裁答弁は、わが党に影響するところが多いのでありますので、もう少し明確を期しておきたいと思うのであります。  まず法務総裁にお聞きしたいのですが、法務総裁の言う軍国主義という考え法務総裁考えておる軍国主義というのは一体どういうことを言うのか。まずこれからお聞きしたいと思う。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 普通日本人考えておりまする軍国主義を私は申しておるので、格別かわつたものを言うているわけではありません。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 日本人考えておる軍国主義というのは、旧東條軍閥のような、日本の国を誤まつて世界征服の挙に出でさしたポツダム宣言で言う旧軍事的な潜勢力、こういうものを復活させることが軍国主義的な考えだというように解釈するのが、われわれの正しい解釈だと思います。そのためにこそ世界の民主的な平和を愛好する勢力が結集してこれを破砕したのであります。この軍国主義というのは、ポツダム宣言で明確に示されているように、日本の国をして誤まつた世界大戰の挙に出でしめた勢力、これが軍国主義的な勢力だというのが、日本人の常識的な考えであります。そこで私は日本共産党の綱領の中には、まずポツダム宣言の忠実な履行ということ、それから一切の行動綱領を貫いてのわれわれの信念は、あくまで日本の平和を守り、日本民族を誤まつた運命に陷れた軍国主義の破砕というのが、日本共産党の一貫した精神であり政策である。このためにこそわが党は太平洋戦争以来ずつと戦争勢力と闘つて来たのであります。ところ法務総裁の先ほどの答弁によりますと、日本共産党軍国主義化して来たということをはつきり言つておられる。これは一体どういうところから日本共産党軍国主義化したと解釈されるか、その点を説明願いたい。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本共産党の動向一般から判断をいたしたわけであります。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 その点が非常に重大であります。ポツダム宣言によつても明らかなように、ポツダム宣言の連合国の中にはソビエト同盟が入つている。そうしてわれわれもまた英米の民主的な諸勢力とともに軍国主義的な勢力の破砕のために闘つて来たのである。それにもかかわらず、無責任な何ら具体的な根拠なくして、共産党軍国主義化して来たということについてはわれわれは聞き捨てならぬ。もしあなたがそう言うならば、具体的に日本共産党のどこに軍国主義的な傾向があるか、どこに軍国主義的な徴候があるのかはつきり説明する義務がある。あなたのためにわれわれの党員の何千人という人が検挙された、しかもこの共産党を中心としての民主的な勢力弾圧されている、そういう場合に、あなたはただ常識的に考えて、軍国主義的である、また一般的な傾向からいつて、無責任にこれらの人たちを投獄する理由はないのであります。もう少し責任のある答弁をお聞きしたい。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 共産党の活動が漸次暴力主義的、軍国主義的になつておるということは、活動全体から私は判断をいたしておるのであります。
  65. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 あなたの方では横田君があなたの党の代表として質問しておられるのですから、あなたは同僚の質問に対して不十分であるならば、補充的な意味においてきわめて簡潔になされなければならぬと委員長考えるのであります。この際一問だけ許可いたします。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 私の質問が悪いのじやなくて、答弁が、日本共産党軍国主義化しつつある、従つて三百二十五号で取締ると言つているのです。取締られる立場に立つた者にとつてはこれは重大なのです。わが党が甚大な被害を受けている場合に何ら具体的な理由を示すことなくして、共産党が単に軍国主義化して来たと言われる、われわれが命を賭して闘つているのは平和の確保のためである、それにもかかわらず法務総裁は、軍国主義化して来たといつて、われわれの行動ポツダム宣言に違反するとか、平和政策に反するがごときことを言うから、具体的な例を示してくれというときに、具体的な例を示さないから、示さない方が責任を果さないことになるのじやないかと思うのであります。(「命を賭すということが悪い」と呼ぶ者あり)平和のために命を賭すということがなぜ悪いのだ。
  67. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君、私語に対して答える必要はありません。質問ならば質問してください。
  68. 林百郎

    ○林(百)委員 こういう立場で質問しているのだから、委員長も、超党派的な公平な委員長つたら、どちらが公平であるか……。
  69. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 だから一問だけお許ししているのだから、きわめて簡潔に願いたい。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれは、共産党軍国主義化して来たということを具体的に説明してもらわなければ承服できない、これが一つ。もう一つは、先ほど党の国会議員の院内の活動について、党全体の活動から考えて監視する、注意している。しかし憲法には明らかに国会議員の院内における活動は責任がない、両議院の議員は議院で行つた、演説、討論、または表決について院外で責任を問われることがないと言われている。憲法によつてわれわれ議員の地位は保障されているにもかかわらず、あなたの監督下にあるところの特審局が、われわれ国会議員の院内における活動を監視する権限は全然ないと思います。その点についてもどう考えるか、この二つであります。  日本共産党軍国主義化して来たということは、具体的にどこにそういう徴候があるか、具体的な例をもつて示してもらいたい、これが一つ。われわれ国会議員は院内の活動については無責任だということが、憲法第五十一條によつて保障されている。それにもかかわらず、われわれはなぜ特審局によつて監視されるのか、いつ憲法を改悪したのか、国会議員の国会活動について重要な問題と思いますから、この二点についてはつきりした答弁を求めます。
  71. 大橋武夫

    大橋国務大臣 林君は共産党軍国主義的になつた、あるいは暴力主義的になつたから、共産党に対して政府取締りをいたす、こういうことを申されておりまするが、私は別に共産党軍国主義的になり、暴力主義的になつたからといつて取締りをいたしておるのではないのでありまして、取締りというものは、これは共産党取締りでなく、共産党員個々の人々の行為に対する取締りでございます。具体的にいかなる点がそれに該当するかということは、いずれ起訴に際しまして、起訴状のうちに記載いたしまするから、それをごらんいただきたいと存じます。  その次に、国会議員の行為に対して私どもが注意をいたしておる、これがたいへん林君のお気にさわつたようでございまするが、いかに林君といえども共産党員の院内における行動というものは、だれもこれは知らないうちにするのであるということは考えておられないので、院内においてある行動をされまするならば、これは国民の前においてされる行為でありますから、国民ことごとくそのすべての言動に注意をいたし、何を言つておるかということを調べるということは、これは国民としての権利であると私は確信をいたすのであります。もしわれわれが、林君の党の方々がどういうことを言われたかということを取調べるという権利がないということならば、院内においてさような行為をされないがよろしい、された以上は国民の前において言われるのでありますから、われわれは国民の立場におきまして、共産党員の代議士諸君が国民の前においていかなる主張をなされておるかということをはつきり知つておく。これは国民としての私は権利であると確信をいたすのでありまして、特に政府といたしまして、特別の権限によつてこれをやつておるのではございません。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君、関連ある質問ですが——この場であなたの御意見を特に強調されることはやめて、質疑はみなで、五十人の委員がそれぞれやつておるのでありますから、どうかそのことを忘れないように……。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで法務総裁答弁の中で非常に矛盾しておる点があります。共産党員共産党政策に基いて行動しておるのであります。あなたは共産党ポツダム宣言を忠実に履行し、平和のために闘う党であるということを認識されるならば、その党員共産党政策に反して軍国主義化して来たということは成り立たないと思うのであります。もし共産党が平和政策を一貫して貫いておるにもかかわらず、特に軍国主義化して来た共産党員があるというなら、その例を示す必要がある。この点あなたは言葉巧みに言つておるけれども共産党軍国主義化して来たという理由にもならないことを理由にして、共産党自体弾圧しようとしておることは明らかである。  もう一つは、党の国会議員が監視される、これは国民が関心を持つということと、特審局が特別な感覚を持つて、刑事的な、行政的な責任を追究しようとしてわれわれを調べておるのとは、全然別個の問題である。この点は明らかに法務総裁は憲法で保障されておるわれわれ国会議員の権利を剥奪して、特審局によつて刑事的、行政的責任対象として国会議員を調べておるということは明らかであります。これは川上君にしても、私にしても、その他の党員の院内における発言に対しても、特審局がどういう取調べをしておるかということは、もう一度調査すれば明らかであります。こういうことは明らかに憲法に違反しておると思います。こういう点は十分法務総裁の反省と、また間違つておる行動は即時取消しを要求いたしまして、私の質疑を終ります。
  74. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 緊急質問を一点に限つて許します。小平忠君。
  75. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は横田甚太郎君の質問に関連しまして法務総裁に対し、最も重要なる点一点について関連質問をいたします。ただいま法務総裁は非常に苦しい形でいろいろ共産党に対する答弁をせられました。私は率直に大胆にはつきりと法務総裁の言を支持いたします。何も別に遠慮される必要はないと思います。そこで今回のダレス特使の来訪を契機として、戦後日本共産党がとられて来たいろいろの問題を想起すると、共産党はいよいよ巧妙なるまた悪辣なる手段をもつて国内治安に対していろいろの問題を起して来るであろうと私は予想いたすのであります。これは現に兵器弾薬等に対する密輸が摘発されておるが、そのあげられた例をもつてしても、相当私は予想されると思うのであります。そういう観点から、また現在の国内治安維持の観点から、予備隊の編成が着々強化されつつあるのでありますが、私は二十六年度予算に計上された百六十億をもつてしては、とうてい完全な予備隊の訓練なり、治安維持の観点において完璧を期し得ないと、こう私は確信する。というのはこの百六十億では真に七万五千人というこの大部隊の訓練、機動訓練、こういうものはでき得ないのではないか、こう思うのでありますが、法務総裁はいろいろその点については確信があることを述べられた。しかし現実の事態を考えるときに不可能ではないかと思うのでありますが、この百六十億の予算をさらに増額するようなお考えはないかということが一点。  それからもう一つは、最近予備隊の訓練を実施する際において、この部隊訓練といつた観点から、軍国主義的な人ではなく、日本の国土の保全、日本の民族の愛国心に徹するような、かつて日本の陸海軍将校を相当大幅にこの予備隊に入れたいというようなお考えがあるやに聞くのでありますが、法務総裁はこのような考えがあるかどうか、以上の点についてお伺いしたいのであります。
  76. 大橋武夫

    大橋国務大臣 百六十億の予算は決して十分なりとは考えておりません。しかしいろいろ他の必要経費等との振合いから、この程度で収めた次第でございます。でき得る限りこれを能率的に使用すること等によりまして、御趣旨に沿うた訓練をいたしたいと考えます。  次に予備隊において、かつて将校として陸海軍において教育を受けた人たちを幹部として入れてはどうかという点でございまするが、この点につきましては、政府といたしましても、十分に考慮をいたしております。但しこの場合におきましては、旧軍隊の軍国主義的な弊風に染まつていないと認められる若い人たちであり、そして追放から解除せられた人たちであります。これらの人々を予備隊の幹部として入れまする場合におきましては、新しい予備隊の性格に適合するような、いわゆる民主的な予備隊の指揮官たるに適当な特別の訓練を行いましたる後において、これを部隊幹部として配属をする、こういうふうにいたしたいと考えまして、この方針のもとに目下具体策を考究中でございます。
  77. 横田甚太郎

    横田委員 岡崎官房長官に伺います。官房長官は賢い人たと聞いておりますから、ここではつきりしておきたいと思うのでありますが、あざなりの答弁はいらない。われわれ共産党議員は、大橋法務総裁との質疑応答にもございましたように、追放あるいは非合法化を前にしての論議であります。そこで私たちには、強圧も虐殺もそんなことはどうでもいい、一向こたえない。だから強がりで言うのではありません。われわれは日本の現実に対する真実を追求したい、これが私たちの念願である。だからはつきりした答弁をしてほしいが、おざなりの答弁ならいりませんから、そういうような前置きで開きます。
  78. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 あまりいろいろな前置きをしないで、簡潔にやつてください。
  79. 横田甚太郎

    横田委員 もうしてしまいましたよ。(笑声)このごろの新聞を見ておりますと、大体新聞記事をほんとうに思わねば議会で審議できないようになつているのだそうですが、二月八日の日本経済新聞によりますと、「無軍備論の二つの立場」と題しまして、ダレス氏の言としまして、ダレスと特使は「今日では人類が歩まねばならなかつた悲惨な道にまき散らされたただのしわくちやな紙片にすぎない諸条約」云々「よしそれが約束の文句であれ、抑圧の文句であれ、自動的に効力を生ずるとわれわれはもはや信じていない」こういうことを言つておられるのでありますが、アメリカの今度講和の特使として来ておられるところのダレスさんは、ここにもございますように、ポツダム宣言、あるいはヤルタ協定、あるいはカイロ宣言、こういうような条約に対しては、こういうような態度をもつて臨んでおられるか、そんなことはアメリカに聞けといわれるかもしれませんが、これはたいへんな問題になる。と申しますのは、このごろ直接侵略に対する間接侵略が問題になつております。その間接侵略の場合におきましては、国内の立ち上ろうとするところ民主勢力弾圧する、これを押える、これに対する防衛がすなわち間接防衛だ、こういうふうに解釈されておるのであります。そこでポツダム宣言解釈上において非常な疑点を生ずるのでありますが、ポツダム宣言の第十二条には「前記諸目的ガ達成セラレ且日本國國民ノ自由ニ表明サル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合國ノ占領軍ハ直ニ日本國ヨリ撤収セラルベシ」とこう書いてある。ここに「日本國國民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ」とあるこの自由に意思を表明する場合において、何かこのごろアメリカ行き方では、共産党勢力がたくさんになつて来てはいけない、こういうような建前をとつておるように私は思う。政府もそれに追随しておるように思う。だからもしこれはただ單にポツダム宣言が一片の紙きれにすぎないというような立場でやられるとするならば、たいへんなことになりますから、こういうような奇怪なことが、あるかないかということが一つ。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕  それから第二点といたしましては、先ほど申しましたように、国内で国民が自由に政治的な意思を表明する、それは一体どんな形か。それに対して政府はどういうふうな態度をとるか。この二点を伺いたい。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ダレスさんのお話につきましては、横田君のおつしやつたように、ダレスさんに聞くよりしかたがないと思います。私がこれを註釈する立場にないのであります。  それから自由なる云々の点につきましては、これはいろいろな方法があると思いますが、国会議員の選挙地方選挙、これなどはその著しい一つの方法であろうと考えております。
  81. 横田甚太郎

    横田委員 そういたしますと、そういうような形において出て来ましたところ共産党国会議員三十六名も、自由なる形において、選ばれた議員でしよう。さればこそこれに対しましては「真相」という雑誌が三十六人の写真を並べまして、マツカーサー元帥の言として、余もまた満足であるという皮肉つた記事を出したのであります。だからそのような意味合いにおいて、その三十六人をどういうわけでちよぼちよぼ減らすようなことをやられるか。この三十六人は人殺しをしたことはない。放火をしたことはありません。騒擾事件はそれからあとでひんぴんとして起つておりますが、それ前は起つておりません。だからかような意味合いにおいても、議会において、自由な意思を表明し、それに対して政府はいらぬことをしなかつたならば、共産党は順調に伸びる。順調にふえる。共産党勢力は各国の例を見ましても、政府弾圧されたときは小さくなります。しかしその後は実にバネ人形のように伸びるというのが共産党の形であります。それだからこそ共産党の政権獲得には、革命という形が伴つておるのは古今の例であります。ここに私ははつきり申し上げたいのでありますが、政府はむしろ自由な意思を表明せるところの人民の力に対して、何か別なやり方を加えておられるのではなかろうか。そういうものに対するところの自由な意思というものは、国会に選ぶことも一つの方法である。それに対して何だかわけのわからない追放令を出したというのはどういう意味ですか。それを伺いたい。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 政府は今ようやく確立せんとする民主主義の態勢を擁護するのに十分な力を加えようと思つております。それで民主主義の態勢を破壊されるようなことがあつてはならないので、防禦措置は講じますが、それ以上のことはないのであります。
  83. 横田甚太郎

    横田委員 あなたが確立しようとしておる民主主義は、一体何なのです。フアツシヨを倒すために、日本の天皇制政権を倒すために、ドイツのヒトラーを倒すために、イタリアのムソリーニ政権を倒すために、このためには社会主義国であるところソビエトの軍隊、そして中国におるところの国民党の軍隊あるいはそのとき第八路軍といわれた共産党の軍隊が一つになつて、資本主義の軍隊と社会主義の軍隊が一つになつて倒したのではないか。その中にはやはり民主主義を追求しておつた、だからその民主主義というものはその二つが渾然と一つになつておるのが民主主義だ。それがどうしてかつてアメリカの人が言つたからといつて、民主主義の中から一つ要素であり、しかも今度の第二次大戦において、欧州において最も大きな犠牲を拂つたソビエト、東洋において最も大きな犠牲を拂つたところ中国、この勢力に敵対するようなことに変形させるのか。こんなことをしていいのか。日本はこのようなことをしておつていいのか。この点に対するお考えはどうですか。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ただいまの御質問は漠然として趣旨がわかりませんから、もう一度要点を……。
  85. 横田甚太郎

    横田委員 わからなかつたら申しますが、前の戰争のときには、主といたしましてドイツと日本とイタリア、これに対してこの勢力を打倒するために戰つたものは、アメリカ、英国、ソビエト中国、フランス、こういう国をずつとあげることができます。これらが一つになつて守るべきものは、自由主義であり、民主主義である、この目的のために闘つたのであります。そうししそれらを守つたのが、ヤルタであり、あるいはポツダムであり、カイロの約束であります。こういうようないろいろの会談、国際條約を今ではかつて解釈して悪くなつておる。これを尋ねておる。だからかつて解釈した結果として、日本においては共産主義がなぜいけなくなつたのか、これを聞いておるのです。なぜそれを排除しなければならないような解釈をとらなければならなくなつたのか、なぜこれを排撃し、強圧をしなければならないような、政治の行き方を決定されたか、これを開いておるのです。
  86. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ただいま大橋法務総裁も言われたように、共産党合法政党として認められておるのであつて、別に何もやつてはおりません。ただ個々の共産党員が民主主義を破壊するような行為に出た場合に、処置するだけであります。
  87. 横田甚太郎

    横田委員 共産党一つの指導部に指導されておるのであつて、私たちもその一人である。あなたが言われるような、各所において治安を撹乱したとか、あるいは法の対象なつたと言われるのは、共産党であります。しかし共産党においては一つの指導部に指導されているのです。だからそこで聞きたいのは、それを弾圧の折、なぜ二つに解釈されるのか、これを伺いたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 共産党が一本で統制されているかどうか、これは共産党のことで、われわれは知つておりません。ただ共産党員治安を乱したもの、あるいは民主主義を破壊するものがあるならば、これに対して措置するだけのことであります。
  89. 横田甚太郎

    横田委員 知つておりません、知つておりませんといつて……。
  90. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 横田甚太郎君に御注意申し上げますが、あなたの解釈政府解釈とは解釈が違うのでありまして、共産党がやつておるのではない、共産党党員のうちで、治安を乱すものは取締りをする、こういうふうにはつきりお答えになつておるようでございますから、見解の相違になることを押し問答しましても、無用な質疑になりますから、その点委員長から御注意申し上げておきます。
  91. 横田甚太郎

    横田委員 委員長はおとなしいからあまり申したくないのですけれども、岡崎君の言は逃げ口上なんです。あれをもつて逃げ口上とするから、私は言うのです。
  92. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 答弁がはつきりしておりますから、委員長は申し上げておるのであります。
  93. 横田甚太郎

    横田委員 それなら、とんがらぬことを聞きます。鳴戸事件について聞きます。たしか鳴戸で爆弾が爆発いたしました。これは一月二十九日であつたと思いますが、午後の二時四十五分に、私の調べによりますと、魚雷、爆弾等の大爆発が起つて、重軽傷者が百余者出た。船舶の焼失、沈没、破損が約十隻、付近の塩田従業員の住居が三百戸全壊した。被災戸数が三千四百六十戸、被災者が一万三千百余、鳴戸市全域に大きな恐怖と災害をもたらした事件であつた。新聞の報ずるところによれば、これは海峡付近に多量の爆発物が沈んでおつた。こういうわけです。これを一ぺん伺いたい。被害の程度はどうであつたか、別にもつと大きな被害があつたのか、もつと小さかつたか、それを聞きます。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 正確なことは、今私数字を持つておりませんから言えませんが、大体おつしやつた程度のことだと思います。
  95. 横田甚太郎

    横田委員 あなたの部下がきのう来て、何を質問されるのですかと聞きに来たじやないか、なぜそんなやおちようをするのか、質問の前に、あなたに打合せると言つた。それを言つてくれたならば、大臣であろうと官房長官であろうと、詳しく親切にお答えします、と言つて来たのだ。それにそんな答弁があるか、それに関する調査はいつ知らしてくれるのか。
  96. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 その問題は海上保安庁の係でありまして、運輸省の問題であります。私どもはまだ正確な数字を持つていないことは事実であります。
  97. 横田甚太郎

    横田委員 しかし人命がとうといということはわかるでしよう。これは海上保安庁だとか、どこが何だとかいつて日本人から税金をとつて——日本人の暴行あるいは治安が問題になつたとき、吉田さんが一番心配するはずだ。その次に心配するのはあなたであるはずだ。それゆえもう少し気をつけた答弁をしてはどうです。聞いてもお返事がありませんでしようが、聞きたいことがあるのです。たとえば谷信サルベージ、民間会社が何したとか、何でこんなことをしたとか、その結果はどうであつたとか、こんなことを聞きたいのですが、こんなことは聞いてもむだですか、どうですか。
  98. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 むだなこともあるし、むだでないこともありましよう。
  99. 横田甚太郎

    横田委員 それではどういう程度まで知つておられますか。
  100. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 官房長官として知るべきことは知つております。
  101. 横田甚太郎

    横田委員 官房長官としてはこんなことは関係ないのですね。このうちの幾分かは知つておられるのですか。幾分かと申しますと、たとえて申しますと、瀬戸内海には機雷がたくさん沈んでいる。その機雷は鎖につながれている。しかし沈められたときが大分前であつた。それが海の塩、これに侵されまして、その機雷をつないでおるところの鎖が切れかけている。これは鎖が切れていつぶくぶくと表面に浮び出すかわからない。だから瀬戸内海は非常に危險である。こういう状態が報ぜられているのですが、真相は一体どうですか。
  102. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 それは運輸省の方にお聞きを願います。
  103. 横田甚太郎

    横田委員 それでは運輸大臣を呼んでください。
  104. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 それではそれが参りますまで、他の質疑がございましたら、他の質疑をやつていただきます。
  105. 横田甚太郎

    横田委員 それでは国民の講和運動のことだけ簡単に聞きます。日本におきまして単独講和はきらいだ、それをごまかした多数講和もきらいだ、全面講和でなければいけない、こういう団体がある。この団体の名前を全面講和愛国運動議会、こういつております。この団体運動をやつております。こういうような運動に対しましては政府は一体どういうような態度をとられますか。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 国民が自由に意思を表明することは、何ら拘束いたしません。
  107. 横田甚太郎

    横田委員 何ら拘束しないという官房長官を持つているところ政府のもとで、この運動が非常に弾圧されております。そうしてこの運動の動きは大体こういうようになつております。人民に自由な判断を願う意味におきまして、これは講和みくじというものをこしらえております。これによりますと、全面講和、再軍備反対ならば、「方角すべて平等にするがよし、むすこ徴兵される憂なし、娘挺身隊に取られるおそれなし、新聞ラジオのいくさの宣伝に迷うべからず、中共貿易再開されてしようゆ、みそ総じて物価下るべし、栄養失調爆創再びなくまた原爆のおそれもなし、軍備なければ税金下り一家こぞつて平和なるべし」これに対しまして、単独講和をやりましたら、大凶で、「待人来らず赤紙来るべし、税金高くなり配給に行列しいもの葉、豆粕を食うに至る、縁談、徴兵挺身隊などにより破るることあり、病院栄養失調爆創多かるべし、物価上り不足し買出しのリユツク必ず必要となる、家屋田畑を奪わることあり、講和投票用紙に署名し、この運動に協力せば全面講和結ばれる」こういうことを書いておるのです。こういうこともやつています。こういう運動弾圧しているから、聞くのです。「全面講和なら、世界の平和と日本の安全が守られます。日本の民族が完全に独立できて、外国の軍隊は一人残らず引揚げます。どこの国とも仲よく対等のつき合いができます。平和産業は広く興り、貿易も盛んになり、生活は明るくゆたかになります。日本のことは外国のさしずを受けずに日本人が自由にきめることかできます。単独講和なら世界は戰争になり日本は戰場になります。外国の軍隊はいつまでもいて日本人は苦しい思いをし、若い人は兵隊にとられます。隣近所の国々から憎まれ、つき合いができなくなります。働いた金はたくさん軍備にとられ、税金や供出は重く、物価は上り、仕事は一層つらく、国民はみな貧乏になります。外国の自由にされ再び役人と警察がはびこる世の中になります。」「結び」と書いて、「全面講和は日本人の団結がつくります。私たち一つになつて、全面講和を望めば必ず結べます。一人残らず、この投票に署名しましよう。」こういうような運動をやつておるのであります。これは大体全面講和派が単独講和をこう解釈しております。この見解には一体間違いがあるか、間違いがないか。間違いがあれば一体どの点に間違いがあるか、政府見解を承りたい。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 それは全面的に間違いだろうと思います。
  109. 横田甚太郎

    横田委員 全面的にどのように間違つているか、それを伺いたい。あんたが全面的にこれは間違いだというやり方に対して、共産党もまた組織の力をもつて、吉田政府のやることは全面的に間違いだと言つて強力にやつたならば、西欧民主主義の中枢であるところの、いわゆる協議の実態はどこで結ばれるか、それを承りたい。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 共産党が何をやられてもそれは御自由ですが、私どもは私どもの主張を貫くだけであります。そして今の何か読み上げられましたことは、あたかも共産党の諸君の宣伝と同じようなことだと見られますので、一々爆撃はいたしませんが、全面的に私は間違つておると考えております。
  111. 横田甚太郎

    横田委員 先ほどの文句がわからなかつたように、この文句もまだわかつていない。これは耳新しい人民の文句だからわからないのでしよう。これを一ぺん読んでみてください。それから一々御判断なつたらどうですか。
  112. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 横田君に御注意申し上げます。質疑を続行していただきます。
  113. 横田甚太郎

    横田委員 あまりなまいきだ。官房長官が何だ。君も代議士なら、おれだつて代議士だ。
  114. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 横田君に御注意申し上げます。あなたに質疑をお許ししておるのでございますから、討論は討論の時期にお譲りを願います。どうか御質疑を願いたいと存じます。     〔発言する者あり〕
  115. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 私語を禁じます。質疑の続行を願います。
  116. 横田甚太郎

    横田委員 それでは大体国会のことを伺いますが、私が西欧民主主義だと解釈いたしておりますのは、あんた方は英国やアメリカにおいてやられている議会がいいと言う。大体この議会政治というものは、今までの議会政治の形から見るならば、反対派というものはどんな強権政治のもとにおいても発生するのです。その反対派というものは常に暴力的になりやすいものであります。政権を奪うためには血を流す。源氏と平家のように、また徳川と豊臣のようにやるものです。そういうようなやり方が困るからというので、英国において発達した議会政治、ドイツあるいはアメリカにおいて発達しておつたところ議会政治を取入れて、そして日本にも議会ができた。アメリカのものは、戦後において取入れた、ほとんどと言つていいほど取入れた。その議会政治の特徴は、反対派を怒らさない、反対派に、血をもつてやらなければ政権をとることができないというような、思い詰めた考え方に走らせないのが、今日の議会政治の常道であります。さればこそ議会において自由なる論議をせよと言われておる。私は初めからあなたに対して何ら無礼なことを言つていないが、あなたの答えがあまりに無礼だ。昨日あなたは部下をよこして質問の要点を聞きに来させておきながら、その部下にいつておいたことにさえ答えない。あまりに常識はずれだからこちらが怒るのです。だから議会政治というものは、私が考えますところでは、政治につきものであるところの反対派を懐柔することに成功した政治でありましよう。さればこそ反対派が議会に来ておるときには、反対派の意見も聞かなければならない。われわれ反対派があんたたち議会ではこうして言論をもつて接しておるが、外においては、共産党政府は武装警官を介在して接している。そこで岡崎官房長官に聞きますが、議会における論議、質疑に対しては答えるのですか、答えないのですか。またそういう必要がないのですか、あるのですか。それだけ聞いて、あなたに対する質問はやめます。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 むろん質疑に応ずるためにここに出ておるのでありますから、御質疑に対しては十分にお答え申し上げます。
  118. 横田甚太郎

    横田委員 官房長官にはやめておきます。
  119. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 文部大臣がお見えですから、文部大臣の関係をお願いします。
  120. 横田甚太郎

    横田委員 それではその方に質問しましよう。私はこれは皮肉に言うのではないのです。まじめに聞くのですが、しかしあなたと私と生活環境が違う。従つて言葉が奇異にとれるかもしれませんが、その点あらかじめ断つておきます。大体静かなる愛国心というような言葉がこのごろはやつておるが、どういうわけで静かなる愛国心ということを最近言わなければならなくなつたのですか。
  121. 天野貞祐

    天野国務大臣 静かなる愛国心というのが、このごろはやつておるということを横田さんはおつしやいますが、これは数日前私が言つたのが初めてではないかと思つております。なぜそういうことを言うかというと、愛国心と申しますと、軍国時代のような、何かはげしい感じ、激情的なもの、そういうものが考えられますが、そういうものがほんとうの愛国心とは言えないのではないか。そのもつと根底に、ほんとうにこの国を自分の国として考え、そして自分らのやつていることは、これはただ個人の仕事ではなくて、同時にこれは国家的な活動なんだ、そういうことをはつきり自覚して、ほんとうに静かな気持で、この国を愛して、この国のためになるようにしよう、そういうことがむしろ愛国心の根本であつて、それがはげしい時代においては、いろいろな激情として発展することもけつこうですけれども、そういういわゆる軍国的な愛国心というようなものを、愛国心と考えるのは間違つておりはしないかという趣意で、私はそういう言葉を使つたわけであります。
  122. 横田甚太郎

    横田委員 そういうことがなぜ必要になつたかということを聞いたのです。なぜこういうことを申すかというと、エデンの園とか、天国とか、極楽とか、こういうようなことについては、大体お釈迦様の仏法も聞いたし、耶蘇の説教も聞いたし、いいものだと思つている人もある。いいものじやないというものは、これは架空談だとこう言つている。もしそういうようないいものだつたら守るのです。それは随喜渇仰して念仏をとなえるのです。ところ日本の現実は天国から非常に離れた地獄です。一等国から一ぺんに四等国になつてしまつた。それでこれはどうしてもこの国、この土というような観念が浮ばない。こういうような悪い現実をどう思つておられますかということと、さつきお尋ねいたしました愛国心を、なぜ最近やかましく言わなくちやならなくなつて来たか。この二つについて……。
  123. 天野貞祐

    天野国務大臣 むろん日本は天国とか、極楽とかいうようなものではないと思いますが、しかし人間の社会はどこでも私はそういうものじやないと思つております。日本は今横田さんが一等国から四等国に落ちた、こうおつしやいましたけれども日本が一等国から四等国に落ちたというのは、ただ軍隊の力を失つたというだけであつて日本民族がこれまで持つていた文化創造の力というものは、それは決してただ空想ではなくして、われわれの歴史がこれを示しておる。もつと具体的に言うならば、奈良とか、法隆寺などにある推古、天平の芸術品を見ても、あるいはまたわれわれの尊敬する学者たちが創造した日本の学問を見ても、宗教を見ても、文芸を見ても、日本人の持つてつたものは、何も減つたわけではない。一等国から四等国に落ちたといつて、私たちが悲観することはないのであつて、悲観するのは、あたかも軍という力が国家の本質であるかのごとく考える、そういう間違つた考えであると思う。事実また世界のどこでも、日本を四等国だ、世界の劣等国だと考えているところはない。なぜないかといえば、日本人の持つている文化創造の力をたつとぶからだと私は信じております。  第二の点は、なぜこういうように愛国心ということを言わなくてはならなくなつて来たか、これは非常に世界が動揺しておるために、自分の国を大切に考えて行かなければならない。ことにただいま増田さんのおつしやつたように、日本が四等国だというように考えて、自信を失う人が多いために、こういう愛国心ということの問題が盛んになつて来たのだと私は考えております。
  124. 横田甚太郎

    横田委員 あなたは今軍の力が落ちたために四等国に見るとおつしやいましたが、そういうふうなことは逆でございまして、軍の力をまたこしらえておられるのです。警察予備隊では足らぬがために、また百万もこしらえる。その下相談もされているそうです。こういうふうな論議は別といたしまして、私は四等国だといつて決して悲観していない。ただ要点は、湯川さんのように偉い、日本にほしいような人が、アメリカに行かなくてはならないような研究事情であつても、大臣は喜んでこれを一等国だと信じておられますか。
  125. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は日本の現状がこれで満足だと申したわけでは決してございません。日本人の持つ文化創造の力は一等国となる資格があると考えております。
  126. 横田甚太郎

    横田委員 満足でないという点があるのでありましたら、どういう点が満足でないのですか。文化創造の力を云々しておられますが、チヤタレイ夫人、あんなものは読んでもかまわないではありませんか。簡單に申すならば、あのチヤタレイ夫人だつて読物じやないか。女が出て来て白い足が出た、赤いものが出た。こんなものはありのままの姿でグロでもエロでもない、実在するものだ。自由に遊べない、自由に交際できない、自由に暮せない、こういうようなさもしい人たちが、その不満を満たそうと、わずかの料金を拂うてみんなでながめているだけなんだ、私はこう思う。そういうような意味合いから、日本という国が、あなたが考えられているほどいい国に解釈できないような貧困ぶりであると私は思う。この貧困をおおい隠すために、いわゆる愛国心を言つておられる。もつと極端に申しますると、愛国心の政治家ほどけちんぼうな政治家はない。ちようど八絃一宇の政治が飢餓政治と言われると同じだ。愛国心が叫ばれた時代ほど政治が貧困で生活に困つておる段階はない。     〔発言する者あり〕
  127. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 静粛に願います。
  128. 横田甚太郎

    横田委員 そういうような意味合いにおきまして、この愛国心というものをあまりとやかく言われますと、われわれが解釈しにくくなる。愛国心はずいぶんたくさんあります。楠公の七生報国、あるいは忠臣蔵の精神、あるいは満州事変の志士たちの愛国心、首相官邸に爆弾を投げ込んだ愛国心といろいろあります。それは行き過ぎた愛国心である。行き過ぎない静かな愛国心にしようと静かなという形容詞をつけたくらいでとまるほどなまぬるいものでないのが愛国心のたけりだ。愛国心は狂信的なものです。それだから天野文相は愛国心を云々する前に、日本の現実について少しお考えなつたらどうか。あなたが閣議に列席しておるときに、配給物が悪いというようなことも話される。またみその値を上げる、あるいはしようゆの値を上げるというときに、あなたは愛国心の涵養とともに、生活を改善されたり、あるいは値を上げたらいかぬということについて努力してもらえるかどうか、そういう点を伺いたい。
  129. 天野貞祐

    天野国務大臣 横田さんのおつしやる通り、愛国心について国民は確かに迷つていると思います。普通の私ども考えでは、共産党の諸君が言われる愛国心ということはよく理解できないところがある。そういう意味共産党の諸君の愛国心もあるとともに、世間一般の愛国心もあつて、わからない者が非常にあることは横田さんのお説の通りだと私は思つております。ただ私は決して愛国心などということを言いません。この間たまたま井出委員の非常に誠実なお考えに対して、私がそれと関連して述べたので、私は愛国心愛国心と唱えていることは少しもございません。また横田さんのおつしやるように、この社会をもつとよくしてみんながよい暮しをするということがまず大切なんだということは、私も非常に同感であつて、横田さんのお目にはとまらないかもしれませんが、かつて私も「貧乏論」というものを書いて、私の「道理の感覚」という書物に入つておりますが、私も貧乏ということは非常によくないのだということを痛感いたしたことがございます。そういう点において、ぜひ国民生活をよくするということが、愛国心を培養する非常に重大契機であるということについては、横田さんと同感であります。
  130. 横田甚太郎

    横田委員 愛国心のことはもう二つだけ聞いておきます。愛国心を云々するのは政治の貧困に弱つておるところの政治家たちが多数党を引ずり込むと言うと上品ですが、ごまかすために言つている言葉です。天皇制時代には天皇、あるいはまた皇帝、こういう人たちの使いふるした慣用語だ。歴史は皮肉なものでありまして、フランスにおいて栄華を誇りましたルイ王朝時代においてルイ十六世は、敵国の軍隊が自国に攻め込んで来たとき、国民がフランスを守ろうとしておるのに、ルイ十六世は奧さんと一緒に奧さんの国に逃げようとして、国境でつかまつた日本の現在にも皮肉な例がある。皇室費は二十六年度は一億四千四百七十一万二千円の予算であつて、前年度の一億一千二百四十五万四千円から差引きまして、三千二百二十五万八千円の増になつておるのです。これはうわさなんですが、非常に奇怪なことがあるのです。愛国心とどういう関係にあるのか。皇室はアメリカから一九五〇年型のキヤデラツク自動車を買うておられる。これは日本人には普通には買えないのですが、天皇は買うておられる。一方労働者は賃金ベースが安くて、何ぼ要求してもドツジ・ラインで押えられておる。聞くところによりますと、皇室費が上つた理由は、宮城に原子爆彈よけの防空壕をつくつて、そこへ天皇と高官はいつでも避難できるような設備をされるということを聞いておるのです。敗戰国においては往々にしてこういうことが多いのですが、こういうようなことがもしありましたならば、これは愛国心から見てどうなんですか。
  131. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はそういうことを少しも存じておりません。
  132. 横田甚太郎

    横田委員 次に愛国心ということについて、これからの文部行政がどうかわつて行くか、愛国心が唱えられるようだつたら、学校の先生もどんどん給與もよくなるでしようし、子供のきらいな給食ももらわないで済む、そういうような学校行政になるのか、その点はどうですか。
  133. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は横田さんと非常に誠実に問答しようとしておるのでありますが、横田さんの今の質問は私には納得できないものがあります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 横田甚太郎

    横田委員 そういたしますと、学校の先生たちから地域給あるいは六・三制のこと、あるいはそれ以外のことについて何千通からの陳情書があなたのところに来ておりますね。これはあなたは誠実な人でありますそうな。そこで私さえ気になるのですから、あなたはもつと気にされているだろうと思う。あなたは陳情書をどう処理されましたか。
  135. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は陳情を聞かなくても、今の一般の教育者の待遇が悪いということは知つております。これはひとり教育者だけが悪いのでなくして、すべての公務員が悪いと思う。どういう方法かによつて教員を含めた公務員全部が、ほんとうに生活がよくなるようにしなければならないということを私は考えておるのであります。そうして自分の力の及ぶ限りにおいては、そういうことはすでに主張しておるのであります。
  136. 横田甚太郎

    横田委員 そのお考えは非常にけつこうだと思うのです。これについては毒舌を振うことはない。大いにやつてもらわないといけない。そういう考えはいつごろ実現できるのか、その主張はいつごろ通るのですか。これが通りましたならば、共産党もあなたたちが気をもむような、賃金問題とか米価問題とか、税金問題で争うことはない。あなたの御主張はこの吉田内閣のもとにおいては、あなたの良心の許す限にできないか、これを伺います。
  137. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はそういうようにいつ何日までにこれをやるというようなことは、言つたところでそれができないとただ無責任なことですから、はつきりと横田さんにいつ何日までやるということを申し上げられません。けれども少くとも教員に関する限りには、教職員の給與の別表をつくつてこの待遇をよくするということを努力しております。けれどもこれをいつ何日までということをあなたにお答えのできないことを遺憾に思います。
  138. 横田甚太郎

    横田委員 実に気の長い話ですな。彌勒菩薩が五十六億三千万年したらお釈迦様の言われたように衆生を救済できると言つた、そういう大聖人も大昔はあつたのです。あなたの言うことはそれに似ている。あなたも大聖人の中に入りますよ。しかし早くやつてもらわぬと困る。日本はかつてはよいときもあつたのです。それはずつと前のことではありません。われわれにはやはり一つの目途がありませんと、私が国へ帰りましたときに、国の学校の先生たち天野さんという文部大臣は、現在の閣僚中最も誠実な愛国心の持主で、君たちのこともよく考えているからもう少しがまんしてくれということが言えない。予算の説明ができないのです。予算面から見ましたときに満足してもらう結果になつていない。ただこれを満足してもらうためには、天野さんという人格、誠実さ、それが吉田さんに買われたのでしようが、それを説明する以外に方法がない。だからある時期というものをある程度急いできめておいてもらわぬと困るのです。急げないというところを急いでくれというと、あなたは品が悪いといわれるでしようが、大体私たちはあなた方の持つている愛国心はきらいなのです。なぜきらいかというと、満州事変のときも愛国心を言われた。そうして満州は生命線だといわれた。実際満州でやられた愛国心の実態をわれわれは見ています。聞いています。そうしたらうそだつた。満州には日本人より安い労働者がある。日本労働者より安い賃金で雇える労働力がある。そこへ工場を建ててもうけられる。もうけたところに銀行が置いてある。このもうけを銀行に置いておる。その金と工場と安い労働力を守るのがいわゆる資本家の説く愛国心だつたのです。私はこう思う。さればこそ日本においての愛国心、そうして日本の国土、この土地というものを考えたときに、この土地の内容を言うならば、愛国心というような空虚なことを言わないでも日本人は期せずして守るのです。しかし今日日本の工場の労働者にして、一部の人は別ですが、食えない労働者は毎日工場に通つております。工場を守つております。賃金という形において工場を守つておるのです。農民はあなたが教育勅語を読んでやると言つても決してあなたのところに来ません。三月までに麦に肥料をやらなければならないと言つて田に行きますが、これは愛国心の発露です。今まで言われた愛国心は内容のない空虚なものであつて、資本家だけが、地主だけが得をした。特権階級が人民を抑圧した。そうしておのれのほしいままの暮しをした。この権益を守る内容がいわゆる愛国心であつた、私はこう思う。だから天野文部大臣もその点をよく考慮していただいて、いたずらに学校の子供たちに、この誤解されやすい愛国心というものを混同してつぎ込まないようにしてもらいたい。私があなたに何ぼ聞いておつてもあなたたちの説く愛国心というものはわからない。世の中には、私どもより未来はもつともつと発展するだろうと思うが、今は幼い子供たちがおる。その子供におとなの私たちがわからないような愛国心を言われると、この子供たちは何もかもわからず、ただとにかく人を殺したらいい。よそに行つたら、旅の恥はかき捨てだ、他国で強盗しろとか、金をとつて来いとかいうことになる。この点をよく御注意いただきたい。私は天野文部大臣にこれ以上質問しませんが、だから特に愛国心というものはどんなに注意しても、日本の国、世界の国を誤るものである、偏狭なものである。ちようど日本の神国と同じものだ。耶蘇の神は、隣の人を愛せと言つたが、日本の神様は自分以外の仏など川の中にほうり込めというので、これが日本人の神様であつた。そういうややこしい愛国心を々する前に、天野文相は哲人的な才能をもつて、もつと日本にぴつたり合うところ経済政策に重点を置いていただきたい。それを文教政策の中心にしていただきたい。この点だけを申し上げておきます。
  139. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 先刻の横田君の質問に対する答弁のため、海上保安庁より政府委員が出席しておりますから、この際これを聽取することにいたします。
  140. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 鳴戸の爆発事件に対しまして、被害の状況を現在わかつております点を申し上げます。  住宅が、全壊及び大破を入れまして百十三戸、その他僅少なる被害を受けました戸数は三千百七十二戸、船舶の損壊が十三、最も重要なる人命の損害は、死者はございません。重傷者が五名、軽傷者が五十八名、その他塩田の被害、そういうことになります。
  141. 横田甚太郎

    横田委員 この爆薬物を引揚げておりましたのは谷信サルベージ、この会社の性格は一体どんなものですか。またこの会社に、こういう爆薬物を引揚げろということを許されたのは、法的にはどうなのでしようか。そうしてそれを許されたときに、どういうふうな注意事項を興えられたか。
  142. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 谷信サルベージ株式会社はサルベージを行いまして、爆薬引揚げについての技価を持つているものというふうに認められました。これを許可いたします際に、海上において拔薬すなわち薬を抜くことをいたしました。同時にこれは拔薬作業をいたしますときには表示をいたしまして、千五百メートル以内には一切船舶の近寄ることを禁止しておる状態であります。そのほか陸上に揚げることは一切禁止しております。なおこれを取扱う場合、かなづち等で打撃を與えることをかたく禁止した條項をつけて許可しております。
  143. 横田甚太郎

    横田委員 これは海上で薬を拔くようになつてつたのですね。海上で薬を拔いていたのですか。実は地上で薬を抜いたために爆発したのではないのでしようか。
  144. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 大部分は海上において扱いておつたようでございまして、私の方の監督しておりましたときは、海上において抜いておつたのでございますが、爆発したときには陸上においてこの作業をやつていたように見受けます。
  145. 横田甚太郎

    横田委員 そうすると陸上でやつてつた命令通りつておらなかつたのだから、これは違法ですね。
  146. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 違法でございます。
  147. 横田甚太郎

    横田委員 爆弾の種類は一体どんなものですか。
  148. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 爆弾の種類は主として五十キロ爆弾でございました。
  149. 横田甚太郎

    横田委員 五百キロ爆弾があつたじやないですか。
  150. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 五百キロ爆弾も二個ございました。
  151. 横田甚太郎

    横田委員 事務的にずつと聞きます。瀬戸内海のことをあなたは聞いておりましたね。こういうことを聞いたのですが、水産委員会に開きましても、あるいは瀬戸内海を航行している船員に聞きましても瀬戸内海はあぶない。私は真偽がどのくらい確かかどうか知らないから聞くのですが、あそこには機雷が置いてあるそうですね。その機雷は海底にひつついておつて鎖でつながつてつた。その鎖が塩分で腐てつて来て、このごろごろごろ浮き出した。今危險状態に入つている。これは事実ですか。もし事実であるならば、こういうふうな箇所が一箇所なのか、全体なのか、それに対する対策を承りたいと思うのです。
  152. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 瀬都内その他におきましては浮遊機雷は現在ありません。現在ありますものは時期機雷でございます。海底に全部葉入つておりまして移動はあまりいたしません。
  153. 横田甚太郎

    横田委員 この磁気機雷というのは、これはやぼなことを聞いて笑われるかもしれませんが、知らぬから聞くのですが、海底に入つてつて危險はないというように聞いたのですが、いつまでたつても危險はないのですか。海底にずつとあるのですか。
  154. 横田甚太郎

    横田委員 時期が来たら爆裂するのでしよう。ある程度海底におると努力がうせるのですか。
  155. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 さようでございます。
  156. 横田甚太郎

    横田委員 そうしたら爆裂しなくなるのですか。
  157. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 さようでございます。
  158. 横田甚太郎

    横田委員 危險でないという意味ですか。
  159. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 さようでございます。
  160. 横田甚太郎

    横田委員 ほつておけという意味ですか。どうもできぬという意味ですか。
  161. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 それは現在海上保安庁におきまして掃海——海を拂う掃海作業を行いまして、大部分は危險が去つておりますが、なお生きておるものがあると非常に危險でございますので、これに対しまして誘致しまして誘導爆裂を行うような装置をつけまして掃海作業を行つて、危險な海域を安全海域に直しつつあるのであります。
  162. 横田甚太郎

    横田委員 生きているとあぶないそうですが、生きているが、片つ方は死んでいると言うんですが、生きているのとそうでないものとは、どういうふうに見わけて行くのですか。それを見わける技術は日本にはあるのですか。またその機雷はどこのものだということを……。
  163. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 この機雷に関しましては、海底にあります関係上、生きておるか死んでおるか区別が非常にしにくいものでございます。従いましてこれに対しましては掃海を行いまして、全面的にあらゆる危險箇所を掃海を行つておる状態であります。
  164. 横田甚太郎

    横田委員 そういうふうな状態のもとにおいて漁船なんかはどういうふうにこれを扱つておりますか。たとえば漁業に行くような船は危險はないのですか。
  165. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 大体木造船におきましては危險がほとんどありません。
  166. 横田甚太郎

    横田委員 日本にはこれ以外にまだこういうふうな機雷とか、あるいはいろいろの種類のものが海に沈んでおる、あるいは陸にそういうような危險区域がありますか。
  167. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 大体今申しました磁気機雷が主体でございます。
  168. 横田甚太郎

    横田委員 瀬戸内海以外のまだ日本の海域にありますか。
  169. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 現在の状態として日本の海域は、大体日本側におきましては掃海を逐次進捗しまして、各港に入るには大体において掃海ができ上つております。
  170. 横田甚太郎

    横田委員 それからもう二つだけ聞いておきます。これは陸上のことですからあなたが御存じないと言われたらおしまいですが、飛行機がよく墜落しますね。日本は今では飛行機のない国になつてしまいました。しかし九州でも飛行機が墜落したし、真偽ははつきりわかりませんが、米軍飛行機が利根川べりで飛んでおつて危險になつたので爆弾だけおろして行つた、こういうようなことを聞くのですが、こういうような被害は海にありますか。陸のことは知つておられたら言つていただきたいのです。
  171. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 海の方面ではそういう話はあまり聞きません。陸については承知いたしません。
  172. 横田甚太郎

    横田委員 ちようど私がこの新聞記事を見ましたのは一月の三十日です。この日の朝日新聞の記事には、たまたま鉱工品貿易公団のストツクあるいは非鉄金属を争うて軍人と特別調達庁の役人たち、あるいは通産省をまたにかけたブローカーたちが大もうけをたくらんだ大詐欺事件が起つている。ちようどこれと同じようなことなんですね。たとえば沈んであつたものを揚げて、そうしてその金属を売り込む。これはちようど何といいますか、このごろはやつております国連協力、そして戦争、鉄がほしい、人殺しの武器になる。こういうようなので、非常に殺伐な政治から、こういうような爆弾を揚げたい、もうけたい、こういうような商売がふえたのですよ。私はこういうふうに解釈するのですが、そういうような傾向は最近特に多くなつたのではないですか。だから海上保安庁に対しましても、爆弾とか船とか、そういうものを揚げさしてくれということで、旧軍人とか、あるいはそれ以外の人たちが非常に猛運動をやつておる、こういうような傾向はありませんか。これはあなたで答えにくいんでしたら、もう少し上の人に、だれに聞いたらいいのか、こういうようなことを言うてもらいたい。
  173. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 海上保安庁といたしましては、海の底に危險物のあることは、漁業の方面から申しましても非常に危險なのでございまして、これらに対しましての除去ということは早急に行わねばならぬという見地から行つているものであります。お話のようなことはあまり耳にしておりません。
  174. 横田甚太郎

    横田委員 もう一点だけ……。これによつて損害を受けた人です、これとは鳴戸のことですが、鳴門の爆発によつて損害を受けた人、こういうような人たちに対しては、政府はどういうような処置をとられましたか。
  175. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 政府といたしましては、これに対し善後処置を講じ、現在解決に努力を拂つている次第であります。
  176. 横田甚太郎

    横田委員 善後処置の内容です。
  177. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 内容は現在協議中でございまして、決定しておりません。
  178. 横田甚太郎

    横田委員 新聞に出ておつた善後策の決定は、あれはうそですか。
  179. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 新聞をよく……。
  180. 横田甚太郎

    横田委員 こういうような人命の損傷に対しては、政府は全部責任を持つてつてくれるように言うてくれることですね。責任をもつてやるべきです。それでいいです。
  181. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時半より再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  182. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  183. 小林進

    小林(進)委員 岡野国務大臣に御質問いたしたいと思います。この前の臨時国会におきまして、主として私は積雪寒冷地帯の平衡交付金の問題と、税負担の軽減について御質問をいたしたのでありまするが、そのときに岡野国務相は、私はもつぱら連絡員にすぎない、メツセンジヤー・ボーイにすぎないというような御答弁で、まことに要領を得なかつたのでありますが、もはや今日ここにおいて再びそういうようなお言葉をお使いになることはあるまいと思いますので、あらためてこの問題をお尋ねいたしたいと思うのであります。まず二十五年度の平衡交付金であります。その中に、特別平衡交付金といたしまして、百五億が予備に残されておつたのでありますが、現在これがどんなぐあいに分配されたか、分配計画がどんなぐあいになつているかということを、まずお尋ねいたしたいと思います。
  184. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。まずその前にひとつ釈明しておきたいと思います。私は自治庁の長官として、地方財政委員会と政府の間に立つて連絡をはかるのが私の仕事だ、こう申し上げて、速記録をごらんいただけばわかると思いますが、連絡員である、メツセンジヤー・ボーイであるということは、あなたのお口から出たのでありまして、私はそういうことを申し上げたことはございません。これを一応釈明いたしております。  それから第六国会以來、国会において御審議になり、同時に御決議になりまして、積雪度、寒冷度の強いところには特別の配慮をしたらどうか、こういうようなことがありました。それにつきまして、御承知の通りに第六国会にそういう決議案が出ましたものですから、平衡交付金法を出します場合に——皆様方の御審議を得て、公布になつたわけでございますが、その十三條に特に四項といたしまして、積雪度の強いところ、寒冷度の強いところ、そういう方面には特別の補正係数をかけて、そうして測定単位をあげて優遇するという法制上の規定をつくつておるわけです。これがまず第一に御決議に対応する法制上の処置でございます。  それから第二番目といたしまして、二十五年度の平衡交付金をわけますのは、昨年の十月ごろに仮決定をしたのでございますけれども、しかしやはり御決議の趣旨、第七国会にもそういう御決議がありましたから、その趣旨に沿いまして、そうして特に本決定をいたしますにつきまして、今までは土木費とか、教育費とかいう項目について、おもに平衡交付金の測定をしておつたのでございますが、そういうふうな積雪度の高いところとか、寒冷地帯の方面に対しては、もう少しほかの範囲にも差上げたらいいのじやないかと思いまして、労働厚生費のうちの衛生費とか、徴税費とか、そういうものも、やはり特別の係数をかけて優遇する、こういうふうにしております。そうして本決定はただいま研究して、その仮決定をそういうふうに範囲を広めると同時に、また係数も増して優遇するという方面で研究して、本決定に急いでおるわけでございます。  それからただいまお尋ねの特別平衡交付金の百五億でございますが、これは本月中に本決定がきまつた後に、さらにまたいろいろと特別の事情があるという方面に対して差上げるということで、これはまだ本決定が十分固まりませんけれども、固まつた結果を見た上で、特別平衡交付金の方へ手をつける、こう考えております。
  185. 小林進

    小林(進)委員 ただいま具体的な御答弁を得まして、この前とはまことに隔世の感があるのでありますが、それはそれとしておきまして、実は仮決定の分でありまするが、自分の選出県だけにこだわつているようで、あるいは誤解を生むかもしれませんが、一番事情に精通しておるものでありますから、例として申し上げるのでありますが、私の選出の新潟県におきまして、積雪寒冷地帶という特別の状況を加味していただいたとわれわれは善意に解釈して、抽出いたしましたその金額の総合計が、わずかに六千万円であります。これは現に勤務地手当等できめられているその額にも及ばない。勤務地手当だけでも法律に準拠して、——もつとも今人事院で改正しておられますが、改正後は別といたしまして、現在の法律に基いても一億二千万円くらいのものが、新潟県の勤務地手当だけにかかる。その半分にも至らないものをわずかに申訳的に配付せられたにすぎないのでありまして、われわれの科学的、数学的にやつた十年の統計に基いても、この積雪寒冷に基く損害として、少くともわれわれは新潟県だけで六億ないし五億の金というものを、よけいにちようだいしなければならないという数字を出しているのに、一割にようよう達する程度の六千万円でありまして、この点はまだ仮決定ということでございますので、本決定においてわれわれの意思を十分にくみとつて、これを大幅に加味していただけるかどうか、いま一言お伺いしたいのであります。
  186. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。各地方々々のこまかい数字に対しては、私はただいま記憶にございませんし、まだ決定最中でありましてよく存じておりません。事務当局をして、詳しいことがわかつておれば御答弁申し上げます。
  187. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 お答え申し上げます。積雪寒冷地に関しまする補正の程度が、仮決定に現われた数字から見て、非常に低いのではないかというお尋ねでございました。確かに御指摘の通り仮決定でやりまして、実際に算定をいたしました数字は、実情から見ましてかなり低かつたように認めたのであります。  そこでただいま大臣からも、ちよつと申し上げた通りでございまするが、今回本決定をなしまするにあたりまして、この関係の係数によりますと、積雪寒冷によつて財政需要額の算定を高める意味におきまして、多少修正を加えたのであります。  その第一点といたしましては、従来この補正係数を用いておりました行政費目は大体土木費、教育費あるいは警察費といつたようなものに限定いたしておつたのでございますが、さらにこれを衛生費及び徴税費等にも適用の範囲を広めて行くということが第一点でございます。  それから従来の係数は大体寒冷地手当の支給ということを主にして場算定をいたしておつたのでございまするが、さらにこのほか石炭手当の支給というようなものによる実際の支出額等もにらみ合せまして、係数を多少やり直しをいたしたのでござざいます。  それからいま一つは、この積雪寒冷関係の補正係数を適用いたしまする地域を全国一種から五種までにわけておつたのでございますが、今回本決定におきましては、これを一種から四種までにいたしまして、寒冷度の相当低いものは四種から三種にあるいは三種から二種にというふうに繰上げをいたしまして、実際に適用されます係数の度合いを高める、こういうふうな操作をいたしまして、ただいま計算中でございます。
  188. 小林進

    小林(進)委員 それでは、これは委員長に申し上げますが、御承知のように私ども社会民主党という政党を一昨日結党いたしましたので、その準備のために忙殺されておりまして、この予算委員会をしばしば欠席いたしました。従いまして今後私の質問にもあるいは従前に質問されたものと、質問が重複するかもしれませんので、その点は遠慮なく御注意を願いたいと思います。その点は省略いたしますから。  そこで今の平衡交付金の実は仮交付の問題でありまするが、これを見積りで仮交付されまして、最近それが過剰にわたつて、返還を要求されておる町村あるいは県が多いのであります。この始末のためにはなはだ困つておる。これをいかに処置されるか、岡野国務相の御意見を承りたいと思います。
  189. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。平衡交付金は昨年は初めて実施したものでございまして、同時に非常に困難な問題になりましたことは、御承知の通りに第七国会地方税法が通過しなかつた、そのために地方公共団体におきましては、四月一日から七月三十一日までの間まつたく税をとることのできない非常な困つた状態に陷つたのでございます。たまたま平衡交付金法が公布になつておりましたものですから、それで平衡交付金の財源を使つて、この税法の空白時代を埋めて、地方の公共団体の財政を支持して行く、こういう意味でかりに立てかえ拂いをした、こういうふうになつております。でございますから、当然行くべきところでなくても、やはり困つておるから出したという点もありますし、また今までの状態で見込み違いもたくさんあるでございましよう。しかしそれは初めお立てかえをしますときに、これは当然本決定があるときにはお返しを願うものでございます、お立てかえをするものでございますということで、実は出しておつたのでございます。それでいよいよ仮決定をいたしまして、ほんとうならこれだけは返してもらわなければならぬものがあるというので、お返しを願うような通知も出したのでございますが、しかしなかなか地方税法を新しく施行しましても十分徴税ができませんから、各地方公共団体の方では大分お返し願うのに困つておられるようであります。ただいま地方財政委員会の詳しい数字は存じませんけれども、催促をいたしまして、まだ返つていない金がたくさんある。しかしそれにつきましてはやはり本決定が出まして、それからまたこれを清算いたしまして、そしてお返し願うものはお返し願う、こういうことにしたいと思つております。これはできるならば本年度内に十分決算をしてしまいたいと、こう考えております。
  190. 小林進

    小林(進)委員 今立てかえ分として拂いもどしをしてもらう決意であるとおつしやる、それが非常に問題なのでありまして、実はこの問題は最初でございますから、自治庁においても財政委員会においても非常に予想のつかなかつたという点は、われわれ了承するのであります。これがあるために、この委員会におきましても、どうか過重なる仮拂いをしてくれるな、あとからこれをとりもどすということははなはだ困難だし、お互いに複雑な手続を講じて、とんでもない問題が起るからという警告をしばしば発したのでありますが、岡野国務相は御存じであるかどうか知りません。御存じないかもしれませんが、事務当局においてはその点間違いない、なるべくそのような過重支拂いにならぬように、十分注意してやりますから大丈夫と、しばしば言明せられて参つた。その結果が今も申し上げますように、こういう結果になつて、一旦手に入つた金は仮交付であろうとも本交付であろうとも、もらつたものは使う、使つてしまつてなくなつたときに返せというのは、どうもはなはだ地方自治体の成立を阻害すること甚大なものがあつて、今は非常に混乱しておりますので、私は過去の失敗の——これは失敗と申し上げたい。責任者として、自治相は大いに責任を痛感していただきたいと思うのでありまして、返せということを建前にして、今たとえば立てかえたというようなお言葉で逃げられては困ると思うのでありますが、それはそれといたしておきましても、将来の問題として、これを決算して取返すということは、私ははなはだ困難だと思うのでありまして、何かこれを取返さないで、ほかに適当な方法——自治体を撹乱せしめないで、スムーズに解決せしめるほかの方法を考慮されておるところがありやなしやを承りたいと思うのであります。
  191. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。間違つてたくさん拂つただろう、まあ間違いでございますか、私はその点は間違つていないと思います。ただ額において多少の見込み違いと申しますか、むしろ見込み違いではなくて、財政の急場を救うために、特に必要があつてお立てかえしたものでございますから、そのときはこれは地方公共団体の財政運用上やむを得ないことでして、どうしても見てやらなければならなかつた次第でございます。でございますから、その当時これは清算の上ではお返しを願うものだ、しかも四月から九月までの間に立てかえましたのは約六百何十億でございますが、あと大分残つております。それを本決定のときにいたすはずでございますから、その本決定によれば行き過ぎが調整できると思います。もう一つは、もらつたものだから、使つたものだから返し得ないというのは、ちよつと国の財政の立場から言いますと、ぐあいが悪いことであります。もしそういうことになりますと——片方では少しよけいにもらい過ぎたものが、使い込んだから返せないということになりますと、当然もらわなければならぬ公共団体がもらえずにしまう、こういうことになりますから、その意味におきまして、大体ひとつ返していただきたい、こういう感じを持つております。
  192. 小林進

    小林(進)委員 間違つてつたとは私は申し上げないのでありまして、見込み違いでお拂いになつ責任は、ひとつ痛感していただきたい、こういうのであります。それから余分にもらつた金を返さないというのではありませんが、今ここで急激に決算をしていただきますと、非常に自治体は問題の紛糾を起しますから、たとえて言えば、来年度の分に繰越すとかいうようなことを考えていただけないかということを申し上げておるのであります。一例であります。来年度の分にそれを振りかえていただけないかというような問題であります。
  193. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。平衡交付金の性格といたしまして、今年度の分を来年度に繰越して、そうして来年度で清算するというようなことは、ちよつと許されぬ立場にありますから、これはどうしても、私の言葉としては、できませんとこう申し上げるよりほか方法はありません。しかしながらむろん地方財政は困るところはたいへん困つておるところがございます。でございますから当然返していただかなければならぬという金が、どうしても返せぬというようなことがないとも限りません。その点においては、政府といたしましても考えておりまして、金融のお世話をするとかなんとかいうことで、当然何とか地方公共団体が窮地に陷らないようにお世話を申し上げようと、こう考えております。
  194. 小林進

    小林(進)委員 それでは問題をかえまして、ここに與党、野党が一致いたしまして、積雪、寒冷地帶に対する委員会を設けて、そこで——これは與党の案でありますが、積雪、寒冷單作地帶振興臨時措置法案という法律案をつくりまして、近くこの国会に提出する運びに今なつておるのでありますが、この法案を岡野国務相はすでにごらんになりましたかどうか、お伺いいたしたいのであります。
  195. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。まだ私拜見しておりません。
  196. 小林進

    小林(進)委員 その中には、相当積雪、寒冷地帶に対する特別の政府の措置を要望致しておるのでありまするが、特に税制の改革と税負担の軽減という項目を重要視いたしております。それから農林漁業長期資金融通法案でございましたか、六十億のあの金の貸付などについても、金利の点を特別に四分五厘以内にとどめて、低利でめんどうを見ていただきたいというような條項がこの中にありまするが、この点について岡野国務相のお考えをひとつ承りたいと思います。
  197. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 それには税法の関係もありましようし、金融財政方面のこともございましようし、詳しい御案を拜見いたしまして、そして私の意見を申し上げたいと思います。
  198. 小林進

    小林(進)委員 これは大蔵大臣にお伺いするのが順序かもしれませんが、自治相として、今一応伺つておきたいのは、現在のシヤウプ勧告に基く新しい地方税法、この税法によりまして、今地方の自治体というものは、財源のある裕福な市町村と、財源やその他のない貧弱町村というものの差が、だんだんはげしく現われて来ておるという、この傾向をお認めになりますやいなやを承りたいのであります。
  199. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。税法は一応通りまして、今の現行税法でやつておるのでございます。その結果を見ますると、過渡期でございますから今までとはいろいろ変動がありまして、非常に財源がなくて困つている公共団体もありますし、また相当に税収入が財政需要を越すというところもあります。概して申しますならば、これの手直しをしなければならぬと思いますが、しかしその手直したるや、やはりシヤウプ勧告にありましたように、いろいろ地方団体の規模の調整、それをまた勘案しなければならぬと思います。でございますから、これはぜひ地方自治を確立いたします過程といたしまして、税法ができましたら、その次には行政調査委員会議が出ました、あの地方行政組織の規模というものを適当にやりまして、そして事務の再配分もし、同時にすでに澎湃として地方に起つています町村の合併とか、何とかいうものも勧奨しまして、そういうこともやつてもらう。そうしてその結果において、税法も相当研究しなければならぬこともありましようし、いろいろなことがございましようが、まだ何と申しましても、この確立の過程でございまして、そういうぎごちない点がたくさんあることと存じます。これは認めます。
  200. 小林進

    小林(進)委員 今私がお伺いしようと思つていることを先にお話願つたのでありますが、今言われた行政区画整理の問題であります。この行政区域の整理の問題は、ほとんど全国あげてまさに輿論化しつつあると思うのでありますが、これに対する具体的な案を、もうお持ちになつておるかどうか、成案があるかないか、これをひとつお聞きいたしたいと思うのであります。
  201. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知の通りに、この新憲法並びに新地方自治法によりましては、地方に対する完全なる自治を許しておりますので、中央政府といたしまして、それに対するいわゆるインターフエア、干渉することは、絶対できないことに建前がなつております。けれどもこういうふうに、明治以来の自治制度が新しく設けられて、まつたく形のかわつた自治制度にかわつた過渡期でございますから、われわれといたしましては、やはり全般を見まして、こういうふうに合併されたらいいだろう、こういうところは一緒になつたらいいだろうというようなことも案がございますから、それはいろいろ地方のお方の意思を決定なさるに御参考になるように、そういう材料を差上げて、そして合併なり分離なりをお勧めする、こういう考えを持つております。どこまでも中央政府といたしましては、地方自治団体の自主権というものを尊重いたしまして、それに対して干渉がましいことはいたしません。しかしながらこうした方が自治団体がほんとうの自治を強化して行くのに、いいだろうと思われることは勧奨をいたして、おります。
  202. 小林進

    小林(進)委員 私はただいまのお話は非常にけつこうだと思います。今地方自治体は過渡期であるとおつしやいましたが、日本の民主政治も過渡期でありまして、あまり地方自治体にのみ指導権をにぎらせてまかせるというと、せつかくいい成案ができてもなかなかまとまらない。まとまらないでむしろ地方自治の混乱を来しておるような傾向が多いのでありまして、私は決して当局に干渉をしてくれということは申し上げません、大いにその態度はよろしいが、適当なる成案をもつてしばしば勧告をする、この行為はぜひひとつお願いいたしたいのであります。まずりつぱな成案をおつくりになつて、それをしばしば勧告をして、最も行政区画の合理的な自治体ができ上るように御盡力あらんことを切にお願いする次第であります。
  203. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際今井耕君にちよつと関連質問を許します。今井君。
  204. 今井耕

    ○今井委員 ただいま小林委員から発言のあつた平衡交付金の還付の問題でございます。小林君から意見もありましたように、仮拂いと申しましても、やはり自治体では、大体それを目標にして議会で予算をきめて行かなければならぬ。従つて目標がないのですから、それをある程度使つてしまうのもやむを得ないのであります。この問題で非常に困つておるのを私ども痛感しております。それで、ただいま金融その他の点でひとつ心配したい、こういう御答弁があつたのであるが、その金融というのは起債のわくでも認めるというのか、それをひとつはつきり御答弁願いたいと思います。
  205. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいま私が言明いたしますと、みんな返さぬというようなお考えになりはせぬかと、実はごく正直に申し上げれば心配しておるのであります。でございますから、本決定ができますと大体において返さなければならぬ金がほんとうにきまりまして、そうしてそのときに一応地方の財政をよく地方財政委員会で調べまして、これなら返せぬ法はないじやないかということで、相当私は督促しなければならぬだろうと思います。しかしながら、また実態がよくわかれば、なるほどこれは返せぬだろう、こういうふうになるだろうと思います。もしそういうように絶対返せないという目途がつきますれば、これは中央政府のことでございますから、何とかして差上げねば自治団体の財政が困ると思います。それに対していろいろの金融の措置をやる。たとえて申しますならば、市中銀行でお金を借りて差し上げるとか、まだそのほかにもいろいろ融通の道もありましよう。また起債のわくは、そういうことでなくても、今非常に少いときでありまして、今年度の起債のわくをどうするわけにも行きませんし、それから来年度の起債のわくもすでに提出しておりますように大体きまつておりますものですから、それをどうするわけに行きませんけれども、しかしわれわれといたしましては、もう半月か一月たちますれば、ほんとうに返せないだろうというようなものが的確にわかるだろうと思います。そのときに適当にお世話申し上げる、こう考えております。
  206. 今井耕

    ○今井委員 ただいまのいろいろ御心配される点はけつこうでありますが、だんだん年度末になりまして、自治体ではもうどうしようかと思つて見当をつけるのに非常に困つているのであります。従つて早くやつてもらわぬと処置がつかぬと思うのです。それでいつごろまでには必ずする、そうしてどうしても困るものについては、こういう方法をとるというように、大体安心を與えてやらないと非常に困るので、そういつまでも延ばせぬと思います。
  207. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。本決定がまだきまりませんし、それから特別交付金の方が今月一ばいもしくはちよつと遅れまして、三月の初旬にかかると思いますので、そのころにならないとほんとうの決定はいたしません。しかしながら、開き直つてお尋ねになれば、返していただくものは返さないと、地方財政並びに中央財政両方ともお互いに困ることですから、返すものは返すものとしてできるだけそのことを運んで行きたい、こう考えております。
  208. 今井耕

    ○今井委員 返さぬというのではなく返すのです。だがただいまのところ返せぬからお尋ねしているのである。そうしてどうしたらよいかという見当がつかぬと困るから……。これは自治体だけの責任ではなく、政府にも責任があると思うのです。従つてその責任というものを感じてもらつて、早く目鼻がつくようにしてやらぬと、政府責任も済まぬと思うのです。こういう点から私は申し上げたのです。
  209. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは政府と自治団体というものの法的の議論ではないのでございます。私の申し上げておりますのは、平衡交付金を分配する、これは平衡交付金並びに地方財政委員会の規則によりましてきちつときまつて、差上げるべきものは差上げ、過拂いしたものは返していただくということなんで、こちらから申しますれば、むしろ何とかして返してもらわなければ困る、私の立場としてはこういうことを言わざるを得ないのでございます。しかしながら、それではやはり地方と中央との調整がつきませんものですから、もし万一非常にお困りで、どこから見てもこれでは返せないというようなことが、地方財政委員会の方でよくお調べになりまして見当がつきますれば、そのときはわれわれも相当お力になつて、できるだけ金融の道をつけて、この年度末を過すように御助力をいたしたい、こう考えているわけであります。
  210. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣にお伺いいたします。大蔵大臣は、国家再建のためには、外国貿易と資本の蓄積による以外にないということで、資本の蓄積を非常に重要視されているのでありますが、この点私も同感であります。同感でありまするが、この力を入れられている資本の蓄積を、国民の階層にわけまして、大体どの方面に最も重点を置かれているのか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  211. 池田勇人

    ○池田国務大臣 どこに重点を置いているかというお尋ねでございまするが、私は各階層に重点を置いて行かなければならぬと思つております。これは減税のときにも問題になつたのでありますが、減税をいたしました場合におきましても、所得の多い方におきましては、資本の蓄積が多いのでございますが、所得のあまり多くない方におきましては、蓄積も困難な場合があるのであります。階層によりまして、貯蓄し得べき額につきましては、おのずから限度があると思うのであります。考え方といたしましては、各階層に向つて資本の蓄積をわれわれは要望しておる次第であります。
  212. 小林進

    小林(進)委員 率直にお伺いいたしまするが、現在のような米価と税制の制度で、はたして日本農民が、大蔵大臣のおつしやるように資本蓄積、資本というよりは資金でございますが、資金の蓄積が可能であるとお考えになるかどうか。それから現在の勤労者諸君が、今のような俸給で、はたして資金の蓄積が可能であるとお考えになるかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
  213. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは程度の問題でございまして、細々の生活をしている方でも、心がけ次第によりまして相当蓄積なされた方もあるのであります。相当に所得がありましても、あまり蓄積しない人があります。私は郵便貯金その他の増加の状況から見まして、一般大衆の方にもひとつ貯蓄していただきたい、こう要望しておる次第であります。
  214. 小林進

    小林(進)委員 郵便貯金の問題につきましては、あとでまたお伺いいたしたいと思うのでありまするが、同じ俸給生活者でも細々と暮す者は貯蓄か可能であるとおつしやいました。その細々というのと太々というのは言葉の問題でありまして、われわれが人間らしい最低生活をするかしないかによつてきまると思うのでありまして、われわれは人間の世界を論じておる。動物のような生活をして、生きるだけだとおつしやるなら、あるいは今までの状態で農民諸君も、労働者諸君も貯蓄はできると思いますが、いやしくも人間として生きる最低の生活状態においては、私はとうてい貯蓄はできないと思うのでありまするが、大蔵大臣の見解はいかがでありましようか。
  215. 池田勇人

    ○池田国務大臣 理論は程度問題になつて参りまするが、ただいまにおきましても郵便貯金も相当ふえて参つておりますし、また簡易保険は一年に拂い込まれる額が百六、七十億円だと思います。厚生年金も百十億円ばかりあります。また銀行預金につきましても、今年度は昨年ほどには参りませんでしたが、三千億円程度の預金の増加があるのであります。私は今の生活水準でもちろんがまんはいたしておりませんが、細々と生活を続けて行つても相当の蓄積はできつつあると考えております。
  216. 小林進

    小林(進)委員 敗戦後の日本が窮乏に耐えるということは、私も十分了承いたしておりまするが、現在国民生活の中で重税と生活の苦難を訴える国民といたしましては、相当生活の差異があることに、この不満の爆発点があると思うのでありますが、ともかく大蔵大臣は細々と生活をすれば貯蓄も可能であるとおつしやる。まことにこれは無理な話であります。しかしその無理な話を国民に要求いたしますからには、東洋道徳ではありませんけれども、上がまずこれを行うて下これにならう、大臣みずからが窮乏生活に耐え忍んで、おれもこれだけの貯蓄ができる。だから国民もこれにならえ、こういうようなことになりますると、相当国民の気持も私はかわつて来ると思うのでありまして、これは総理大臣並びに各大臣に要求いたしたいのでありますが、特にその衝にあられる大蔵大臣に申し上げたい。大蔵大臣の俸給は幾らかわかりませんが、不肖小林は月四万三千円、税金が一万三千円ばかり引かれまして、党費や何かで手取りが二万何ぼ、そのほか手当がつくという生活でありますが、正直に申し上げて、これだけの自分の生活で貯蓄はできません。政府のおつしやる貯蓄奨励の趣旨に沿い得ないことを、私ははなはだ遺憾に存じております。そこで正直に申し上げますが、大蔵大臣もひとつ御生活の一端をここにお明かしくださいまして、大臣も月給で生活して貯蓄もしている。だから下これにならえ、こういう模範を国民の前に御発表願いたい。これをおやりになりますならば、大蔵大臣のその着実な御生活にならつて、われわれも実は右へならえをいたしたいと思います。
  217. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は議員をかねておりますが、議員の歳費よりも大臣の俸給の方が少し上であつたかと思います。ことに最近は実費弁償でありますし、手当もふえて参りましたので、よくなつてつたのであります。なかなかお話の通りに貯蓄も困難でございます。しかしできるだけのことはやつて、毎月貯蓄はいたしております。
  218. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣が貯金をされていることはわかるのでありまするが、歳費その他国務大臣として正当なる、公然たる方法でおとりになるその収入だけで、貯蓄までせられている御生活をお送りになつていることは、私が信じましても国民全般はおそらく信ずる者は九割九分までないと思うのであります。これを計数的に明らかに御発表賜われば、非常に国民の幸いとするところでありますので、これをもつと簡明直明に御発表願えるかどうか承りたい。もちろん今ただちには困難と思いますが、後日発表できるかどうか承りたいと思います。
  219. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は私生活のことにつきまして、とやこう申し上げたくないのであります。私の名前の貯金はいたしておりませんが、子供三人の名前の貯金はいたしておりますから、四谷の郵便局へおいでになればわかります。
  220. 小林進

    小林(進)委員 この問題は私はぜひやつていただきたいと思いますが、あまりくどくなりますので省略いたしまして、次に移りたいと思います。  資本蓄積の問題と税制の改革でありますが、この問題につきまして株式の方面は、ドツジ氏でありまするが、シヤウプ氏でありましたか、忘れましたが、勧告もあつて名義の書きかえやら、売買高の報告などというものも相当緩和せられて、この方面は相当有利に解決せられておると思つているのであります。それから法人関係におきましても、社内留保等の問題も大幅に引上げられ、また税率も低い点なんかでこれも相当に優遇せられておるのであります。こういうのに比較して、個人の貯蓄の点は私は何ら恩典に浴していないのでありまして、どうも法人と個人関係には財政上の不公平を来しているかに考えられるのでありまするが、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  221. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一昨年までは法人と個人を別個の企業体として、独立課税の方法でやつてつたのでありまするが、御承知の通り法人は個人の延長と見るという考え方も、英、米流にはあるのであります。日本は今までドイツ、フランス流の税制であつたのを、シヤウプ博士が来られましてから英、米流の考え方にかえました。従いまして、法人は個人の資本によつてつておる、いわゆる出店と申しますか、そういうような考え方になつて参りましたので、昔の大陸系の税制に比べますと、よほど軽くなつたように見えます。雄前といたしましては、法人は個人の延長であるという見方がいいのではないかと思います。
  222. 小林進

    小林(進)委員 その税制理論は私も納得いたしまするが、現実にやつぱりわれわれは目に見えているところで、法人関係の税金がばかに安くて、個人関係に対してはどうも何らの恩典と称せられるものがないということは、ふに落ちないのでありまして、たとえて言えば、個人の貯蓄のごとき、われわれが郵便貯金や銀行へ入れるということも、所得のいわば節約した余剰分を郵便局に預ける。私が自分の月給から郵便局へ入れるとすれば、それは私の月給でちやんともう所得税をとられている。とられてしまつたその果実で、今もいうように細々暮しまして、そして郵便局へ入れたのにまたその利息に税金がかかるということになると、何か個人に関する限り、二重の所得税を国家に拂うような感じを受けるのでありますが、この点はいかがでありましようか。
  223. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう点は、個人も法人も区別はございません。しこうして所得があるところには所得の都度課税するのが建前になつております。
  224. 小林進

    小林(進)委員 その建前であるという税制理論は私は納得いたしまするが、現在大蔵大臣は基本問題として、資本の蓄積が重要だということを、しばしば言われるのでありまするから、ここでいま少し個人の貯蓄というものを財政的に保護し、めんどうを見る必要はないか、いわゆる生きた政治の手をここに打つ必要はないかということを、私は申し上げているのであります。大体利子所得などというものは、われわれの調査によれば、——あるいは間違つているかもしれません。大臣の前で数字を言うのはわれわれも自信がないが、大体年間二百億くらいじやないか。この二百億の利子所得に対して、まず巨億くらいのものが税金で取上げられる。こういうことはどうも他の法人や、株式なんかの売買なんかに比較して、今資本の蓄積を考える場合に決して妥当な方法ではない。そこに何らか打つ手はないかということを、私はお尋ね申し上げたいのであります。
  225. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今回の税法の改正におきましても、源泉選択課税の制度を認めたり、あるいは生命保険料の掛金につきまして二千円の控除を認める等いろいろの方法をいたしております。また少額の預金に対しましては銀行預金でも課税をしない、また御承知の通り郵便貯金は非課税に相なつておりますので、できるだけのいわゆる利子所得の優遇ということを考えておりまするが、何分にも財政の状況も御承知の通りでありますし、また利子所得というのは一般の勤労所得よりも、資産所得として重課すべしという理論があるのであります。従いまして私はそういう公平理論のみにとらわれてはおりませんが、いろいろの視角からいたしまして、今の程度でやむを得ないのではないかと考えております。
  226. 小林進

    小林(進)委員 その重課すべしという理論に対しまして、反対にこういう意見が、何か政治的に動いているということを聞いているのであります。それは大口所得者であります。私は零細関係の預貯金に対しては、もつと控除率を高めてもらいたいという信念を持つているのでありますが、反対に大口所得者の大口預貯金に対しては、累進課税率に基いて累進率を下げて、だんだん優遇するような処置をとれという猛烈なる政治運動があるということを聞いておるのでありますが、これに対して大蔵大臣は御承知であるかどうか承りたいと思います。
  227. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそういうことはまだ聞いておりません。源泉選択課税制度を認めたのも、大口所得をまけるという意味ではないのでありまして、預金の秘密性ということが非常に叫ばれておりますので、そういう制度を入れて新たに制度を設けた次第であります。
  228. 小林進

    小林(進)委員 実は私がこの個人貯蓄の問題をくどくどしくお尋ねいたしておりまする根本の問題は、現在わが国の経済を不安定にし、いわば信用制度を破壊している根本の理由は、やみ金融にあるということを申し上げたいからであります。このやみ金融を撲滅せざるにあらずんば、断じてわが国の経済が正常な状態に復帰することは困難である、私はこう思います。このやみ金融に対して大蔵大臣は、いかなる御所見をお持ちになつているか、承りたいと存じます。
  229. 池田勇人

    ○池田国務大臣 やみ金融は一時よりはよほど減つておると考えておるのでありますが、もちろん銀行法その他によりまして、やみ金融の取締りはいたしております。
  230. 小林進

    小林(進)委員 銀行法その他により、やみ金融の取締りをされておるということでありますが、現在その効果がどの程度に現われておるか、その実績をお尋ね申し上げたいと存じます。
  231. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはやみでございますので、なかなか実績の調査はむずかしいのでございますが、二、三年前よりも、よほど私は減つて来ておるのではないかと思います。しこうして昔どれだけやみ金融があつて、今はどれだけという資料は持つておりません。しかし全体としてはよほど減つて来たのではないかと考えております。
  232. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣に資料がないならば、私も資料がないけれども、それならば私も同等の権威ある国情をひとつここで申し上げたいのであります。私の見解は大蔵大臣と全然異なるのであります。確かにやみの金融は、表面に跳梁する形は、二、三年前より少くなつた。それから短期暴利の金利、いわゆる一月一割、一割二分というような高利のやみ金融は、確かに二、三年前よりも大分姿を消しました。けれどもその数とその巧妙さと利率のやや低い範囲におけるやみ金融は、二、三年前よりもずつとふえておると、私は確信を持つておるのでありまして、これはどうしても銀行法などのような緩漫な処置でなく、拔本的に手を打つていただかなければ、いかに大蔵大臣の方で資本蓄積だの、貯蓄を優遇するなどとおつしやつても、それでは何ら効果は現われて来ないと思うのであります。一例として私の考えを申し上げるならば、抜本的な措置として、ここでやみ金融のモラトリアム案を大蔵大臣の名でもつて出してもらつて、債務者は一切届出をする。これは何割の利息で借りておつてもよろしい。全部届け出でさせ、届け出たものは債務者本位でこれを棒引にしてやる、こういうことでもおやりになれば、それだけで経済界はすみやかにまともな金融状態に復帰するのではないかと思うのですが、こういう一案をあわせお考えの上、何か早急に手をお打ちになるお考えがあるかどうか、承りたいのであります。
  233. 池田勇人

    ○池田国務大臣 なかなかおもしろいお考えのようでありますが、おもしろいだけ大蔵大臣としてはなかなかやりにくいのであります。いわゆるやみ取引は、経済が正常な形になつて参るに従つて、よほど減つて来たと同様に、やはり資本蓄積をやつて行けば、やみ金融はそれだけなくなつて行くと考えておるのであります。
  234. 小林進

    小林(進)委員 やみ金融をそのまま放置して、資本蓄積が正常にもどればとおつしやるが、その御意見には私はどうも賛成できないのでありまして、どうしてもいま少し個人貯蓄の方、ことに零細貯蓄の方にもつと大幅の特典を與えられて、免税措置等の程度を引上げると同時に、やみ金融の退治について、大蔵大臣はいま一度とつくり御考慮あらんことを切に希望いたして、この問題を打切りたいと思うのであります。  次は岡野国務相にお尋ねしましたので、くどい話はやめまするが、この前の予算委員会にも、私は大蔵大臣に積雪、寒冷地帶の税金軽減の問題を御考慮願いたいということをお願いいたしました。大蔵大臣は国会の決議のことでもあるから、目下研究中であるが、十分考慮をするという御答弁をいただいて、今日まで楽しみにして参りました。もはや研究の時期もでき上つたのでありましようとも思いますので、いかような処置をおとりくださいましたか、これをひとつお伺いいたしたいと思うのであります。
  235. 池田勇人

    ○池田国務大臣 寒冷、積雪地の方々の所得に対しまして減税措置をすることは、なかなかやつかいな問題で、研究は続けておりますが、まだ結論は出ておりません。
  236. 小林進

    小林(進)委員 それでは同じことであります。今あなたの属しておられる與党で積雪、寒冷地帶振興臨時措置法というものを設けられて、税制改革の問題、金融の問題等について特別にめんどうを見るようにという法案が、近く国会に提出される運びになつておりまするが、これに対して大蔵大臣は御賛意を表してくださるかどうか、反対せられるかどうか、これをお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  237. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法案の内容を見ておりませんので、何とも申しかねます。
  238. 小林進

    小林(進)委員 次にいま一つお伺いいたしたいのでありまするが、講和條約が成立されますと、援助資金は全面的に打切られるかどうか。これは一つの予想でありますが、大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  239. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカさんのおきめになることでありまして、私にはよくわかりません。しかし、今までのような形式であるかどうかということにつきましては、相当疑問があるのであります。ほかの方法がとられるかという問題だと、やはりイギリス、フランス、ヨーロツパ地帶のECA関係をわれわれは思い出すのであります。どちらになるか、あるいは両方になるか、どつちとも行かぬかということは講和條約できまり、ことにアメリカの意思によつてきまることが多いと考えております。
  240. 小林進

    小林(進)委員 実際今おつしやつたECなんとかということは、私不勉強にして知りません。知らぬことは知らぬと申しますが、いかなる方法によりましても、講和條約の成立の時期が、今秋または今年末と見ましても、来年度から援助資金が打切られるということは、わが日本の経済自立の面においては、相当われわれは支障ないしは過重な負担になると思いますので、願わくは、これは内閣の問題でありますけれども、当面大蔵大臣においても、これが援助をなお継続し得るように努力せられる意思があるかないか、これだけ承つておきたいと思います。
  241. 池田勇人

    ○池田国務大臣 援助と申しましても、今のような対日援助になるか、あるいは今のような対日援助がなくなつて外資導入のかつこうで、借金で、日本の自立経済ができるまでを過して行くか、いろいろな問題があると思うのであります。何と申しましても戦争によりまして、非常な危殆に瀕した国でございますので、当分の間は何かの方法で援助していただきたいものと努力しているのであります。
  242. 小林進

    小林(進)委員 それでは私のあとの質疑は、次官ではまだ話になりませんので、しばらく休ませていただきまして、大臣がお見えになりましたら……。
  243. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 農林大臣はよんどころないことでおいでになれません、あす参りますから、あすにどうぞ。今井耕君。
  244. 今井耕

    ○今井委員 各委員から大分いろいろな方面の質問が出ましたので、簡単に数点について、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  まず第一点といたしまして、この予算の説明の特色の第一といたしまして、総合予算の均衡、財政規模の縮小ということが出ているのでありますが、なおまたその財政規模の縮小ということについて、価格調整費の削減ということが、最も大きな原因をなしているということもこの説明書の通りであります。事実において昭和二十五年度の当初予算におきましては、価格調整費が九百億円であつた。それが本年度においては、二百二十五億円に減つている。ざつと七百億円余り減少している。こういうことになつております。この金額は政府のいわゆる税法上の減税七百四十三億円とよく似た金額に思うのでありますが、この財政の縮小というものによつて、国民の負担が非常に軽くなる点において、財政の縮小というものは非常に好ましいのでありますが、しかし価格調整費の削減によつて財政が縮小されたと、こういうことでありますと、価格調整費を削減したために、一方において物価が上つて来る。従いまして、なるほど税上の負担は軽減いたしましても、国民生活上の負担はかえつてこれがために重くなる。こういうところに、財政の規模が縮小されても国民全体の負担はさほど軽くならないというところに、相当の矛盾があると思うのであります。この価格調整費の削減そのものが、企業の合理化とかそういうようなことによつてできたものであるなれば、それはそれでよろしい。ところが、これは相当価格に影響する面が多い。こういうところに非常な関心を持たなければならぬのでありますが、この価格調整費の削減が、大体物価にどのくらい影響しているか。こういうことについて何か大蔵省の方で資料があつたらお示しを願いたい。
  245. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政規模の縮小は、お話の通りに、われわれとしては今後とも努めて行きたいと考えているのであります。価格調整費は前に申し上げましたように、二十四年度の当初予算では二千二十二億円、だんだんはずして行つたのであります。そのために、特殊の物件につきましては、ある程度価格は上つて参りましたでしよう。たとえば肥料は一昨年は一万円余りであつたのが、今では硫安で一万九千円程度に相なつているのじやないかと思います。そういう特殊の物品につきましては相当上つて来たが、全体といたしましては、全体の経済には影響はそう大してないのじやないか。生活におきましても米、麦の上りますことによつて、生活が苦しくなりますが、片一方で減税をいたしておりますので、米が上つたために生活が苦しくなるそのほとんど全部を減税でカバーし得るような施策を講じておるのであります。
  246. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの例といたしまして、価格調整費を削減したために、肥料の値段が七割上つた、肥料の値段が七割上つたから、米価を上げた。その米価が上つたために、一方においてこれを軽減するために減税をやつた。こういうことになると、つまり減税というものが、価格調整費の削減ということと、財政規模の縮小というものの縁がここに非常に少くなる、こういう息は認めざるを得ぬと思うのであります。こういうようなことが、財政規模の縮小ということについて、本予算にわれわれが非常に関心を持つ点であります。  ついでに申し上げますが、二十六年度におきまして、燐鉱石の補給金が削除されるようになつております。これも八月から三月までに二十五億八千万円出ておる。年間約五十億である。これを削減すれば当然やはり過燐酸石灰などの値がそれだけ上つて来る。そうすると、これが農民にそれだけ転嫁される。こういうようなことも事実であります。従つてこういうような燐鉱石の補給金は継続してもらいたいというような希望が非常に強いのでありますがこれに対して大蔵大臣はどういうふうに考えておられますか。
  247. 池田勇人

    ○池田国務大臣 燐鉱石の輸入補給金は来年度からはやめる考えであります。どうも補給金という制度は、経済のほんとうの姿でないので、できるだけやめて行きたいという方針で進んでおるのであります。
  248. 今井耕

    ○今井委員 補給金をなるべくやめた方がいいということは、十分承知しておるわけであります。しかしその中には、やはりある程度段階を踏んでやりませんと、各方面に非常に重大なる関係を来す。従つてなお当分の間そういうことを考慮してはどうか、こういう意味でお伺いしたのでありますが、これはなお一層研究をしてもらいたい、こういうことを希望するわけであります。  次に特徴の第二といたしまして、国民負担の調整、軽減及び資本の蓄積の促進を目的とした大幅な減税、こういう点があげられております。事実この減税の問題につきまして、税法上において七百四十三億の減税となつておる。そのうち所得税の減税が六百十四億、減税総額の約八割が所得税の減税になつている。その内訳をずつと調べてみると、基礎控除の引上げ、つまり二万五千円から三万円に引上げるということによつて約百八十五億、扶養控除を一万二千円から一万五千円に引上げることによつて大体二百四十三億、税率の改正によつて約百五十億、その他においてざつと三十五億、こういうふうになつておると思うのでありますが、この基礎控除の二万五千円を三万円に引上げるということは、約二割基礎控除を引上げたことになる。扶養家族の控除一万二千円を一万五千に上げたということは、約二割五分の控除率を引上げたことになる。そこで物価の問題でありますが、ここに提出されております物価の値上りというものを調べてみますと、昭和九年から十一年の物価を一といたしまして、昨年の十二月が二八〇というふうに指数がなつている。その前の年の十二月には二一八です。そうすると、物価の上つた率は三割五分ということになる。それからなお本年におきまして物価は少くとも一割以上上るというふうにわれわれは見るのです。そうすると、大体四割五分物価が上る、こう考える。そうすると、物価が大体四割五分上るのにかかわらず、基礎控除は二割しか上げない、扶養控除は二割五分しか上げない、こういうことになりますと、なるほど控除は引上げておるけれども、所得の低い人たちはより一層生活が困難になる。こういう点が考えられるのでありますが、こういう点から考えまして大臣はどういうふうにお考えになるか、この点の御意見を承りたい。
  249. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今お示しの数字は間違いではないかと思います。昭和二十四年と二十五年を比べまして、三割五分も上つておろうはずはない。私の記憶するところによりますと、昭和二十四年のいわゆる消費者物価指数CPIは、一三七、八の平均だと思います。しかして昭和二十五年は消費者物価指数は相当下つておる。平均が二一七、八ぐらいになるのじやないか、私はこう考えておるのであります。従いまして、二十四年と二十五年を比べて三割五分の物価高というのは、計算にお間違いがあるのじやないかと思います。しこうしてまた二十五年に比べて二十六年が一割高ということも、少しどうかと私は思うのであります。生産は一割程度ふえますが、物価が一割上ろうとは考えておりません。そういうふうに上らぬように、できるだけ押えて行く考えでおるのであります。
  250. 今井耕

    ○今井委員 ただいま申し上げました物価の上りは、この資料に提出されております卸売物価指数から出しましたから、多少そこに差があつたかもわからぬと思います。ところが消費者の指数そのものにつきましても、今生活上最も困つているものは、衣食住の中で、食の方は大分事情がよくなつたが、繊維類です。この比率が非常に大きいということは事実です。従いまして、そういうウエイトの上から考えますと、相当な値上りを来しているということは、一般国民が十分わかつていることです。同時に、本年一割上らぬ、また上げぬようにする、こういうふうに御答弁になつておりますが、たとえば政府のこの前の国会に示されました、米価決定の基礎になるパリテイ指数から考えまして、約一割ぐらいはちやんと上つておることにして、二十六年度の米価も六千百六円ですか、大体予定を発表されておる。従つてこれはどうなる、これから先のことでありますから、今ここでそう争うわけにも行きませんけれども、まず一割ぐらいでとまつたら、よほど上の部であつて、大臣の御答弁のごとくに、そんなに上らないということになれば、これはまことにけつこうなことでありますが、大体国民が考えておるのは、少くとも一割上るということが当然のようであるということを私申し上げたいのであります。そこで大体基礎控除というものは、最低生活費には課税しない、こういう建前で進まなければならぬと思うのでありますが、そういう点から考えると、戦前におきましては、基礎控除が大体千二百円くらいであつた。それに対して物価が二百倍になれば二十四万円を基礎控除する、こういう比率もとれるのでありますが、これは日本の経済状態が今違うのであるから、そういうことは要求できないけれども、経済状態がよくなるに従つて、なるべくこういう幅を狭めて行くということが非常に必要なことである。ところが今の控除の程度では、まだこの幅が広まつて行く、こういうふうに考えるのでありますが、総合的に考えまして、どういうふうにお考えになるか。またこういう点について数字的な資料がちやんとできておるのであるか。言いかえますと、基礎控除を二割上げ、扶養家族控除を二割五分上げる。これはただ財政上の方から、こういう数字をお出しになつたのか、国民の生活安定、税負担という面からはつきりした資料に基いて、これだけ引くということが、国民生活上妥当である。こういう上からこの金額をお出しになつたのか、どちらを基準にしてお出しになつたのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  251. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この基礎控除というものは、必ず最低生計費とつながるものではないので、御質問の点は、まず第一財政上の観点からきめて行つたのであります。しこうしてできるだけ減税したいというので財政の許す限り大幅にやつたわけであります。お話の通り昭和十五年までは千二百円、基礎控除ではなしに免税点であります。大正年代は八百円、昭和十五年から基礎控除になりまして、年六百円というところから始まり、七百二十円になり、そして今では年二千五百円に相なつております。物価の事情から申しますと、もつと上げなければならぬと考えておるのでありますが、五千円を上げることによつて、所得税の減収が百数十億円、基礎控除を上げますと、扶養家族の控除もやはり上げたい。これを引上げますと、お話の通り三千円引上げによつて、二百数十億円の減税ということになりますので、きめるのは財政上の事由が非常に力強く働いております。
  252. 今井耕

    ○今井委員 御答弁によると、財政上の理由によるということでありますが、今日国民の生活安定ということが、非常に重要なときであり、そういうときに国民生活安定という上から強くこの問題を考えて行く、こういうことが非常に必要なことだと私は思うのです。これは大蔵大臣にこの資料を要求することは無理でありますし、大蔵大臣が財政方面から考えられるということは当然でありますが、今要求しておることは、いわゆる生活安定、こういう方面であるのであつて、この点については、別に経済安定本部長官にもお伺いすることにして、これだけにしたいと思います。  次に税率による税法上の減税でありますが、これによつて大体百五十億円の減税をする、こういうことになつておる。この税率の改正の内容をずつと見ますと、大体課税所得が八万円を超過するものに、ざつと五%の税率を下げて行く、こういうことになつております。そこでやはり政府から提出されました資料によりまして、国民の平均所得がどのくらいになるかということを計算してみますと、給與所得におきましては、平均約十五万円になります。農業所得におきましては、平均十三万四千円になります。営業所得におきましては、平均二十一万二千七百円になるのであります。そこで農民とか勤労者というような国民の大部分は十五万円以下の所得者であります。そこで政府原案のごとくに、基礎控除を三万円、扶養家族控除を一万五千円、平均扶養家族の人員が合計三人といたしますと、七万五千円が控除される。そうすると、課税所得は七万五千円、勤労者であるならば、もつと低くなる。そうすると、平均所得者以下のものは、今回の税率の改正による百五十億の減税の恩典に何ら浴しない。言いかえれば、百五十億円の税金の改正は、年所得十五万円以上の人だけに減税になるのであつて、それ以下の人は何ら恩恵に浴しない、こういう計算になると思うが、それで間違いないか、この点をお伺いいたします。
  253. 池田勇人

    ○池田国務大臣 多分勤労につきましても、低額所得者につきましては、税率以上に基礎控除の引上げ、扶養家族控除の引上げが非常にきつく響いて来るのであります。従いまして各階級におきます負担の軽減は、扶養家族が多い人と少い人と大いに違つて参りますが、全般的に相当低くなつておると考えております。
  254. 今井耕

    ○今井委員 低額所得者には基礎控除引上げ、扶養控除の引上げが相当大きく響くからそれでいいのだ、こういう御答弁であつたと思いますが、これはほかの物価が上つて、生活費が多くかかるのだから、それに即して基礎控除を上げるということは、民主安定の上からいえば当然のことです。むしろ扶養家族の控除というようなものは、年に二百万円も三百万円もある人は、扶養家族の控除をする必要はないのです。所得の低い人ほど必要なのであつて、それは私は理由にならぬと思う。従つてこの税率の改正によるところの百五十億そのものは、年所得十五万円以下の人は、何ら恩恵に浴しておらないということにはかわりはないと思うのだが、その点いかがです。
  255. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げた通りでございまして各階級の負担の状況は、税率と基礎控除、扶養家族の控除できまるべきものであります。しかしてその勘案の仕方は、財政的見地からやはりきめて行くべきものと考えておるのであります。
  256. 今井耕

    ○今井委員 この点はいろいろ観点が違いますからきりがないと思いますが、要するに税率の改正によるところの減税というものは、所得十五万円以下の階層には恩恵がないということは、これはもう間違いがない、こう考えるのです。この問題はこのくらいにいたします。  次に特徴の第三点といたしまして、民生の安定というようなことが非常に強く取上げられておる。中を調べてみますと、いろいろそういう点がうかがわれるのでありますが、特にここでお伺いしたいのは、生活保護費の問題であります。その基準を六大都市では五人世帶で五千四百七十円を五千八百八十円にする。月四百十円ふやす。その他の都市では同じく五人世帯で五千百二十円を五千五百二十七円、月四百七円増加する。つまり八%増加する。市町村では四千七百九十五円を四千九百六十八円にする、月百七十三円上る。これは三・五%の増ということになつておる。この金額はなるほどふやしてはあります。ふやしてはありますけれども、生活費の増加という上から考えると、そのふやし方はきわめて少い。従つて税の徴収というようなことについては、南鮮事変後の事情を十分に織り込んである。けれども、出す面については、なるほど加減はしてあるけれども程度がきわめて低い、こういうことが言えるのでありますが、こういう点については、どういうふうにお考えになつておりますか。
  257. 池田勇人

    ○池田国務大臣 米の値上り等を勘案し、また物価の状況もある程度加味いたしまして、計算いたしたのであります。
  258. 今井耕

    ○今井委員 そうすると大体六大都市、その他の都市では八%上げたらよろしい、町村では三・五%上げたらよろしい、そういうことになるかどうか、この点のお考えをひとつ承りたい。
  259. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 お答えいたします。生活保護費の計算のことでありますが従来食糧についてはいろいろ配給食糧というものもございます。それから従来そういつた要保護者が、どういうふうな程度の生活をしておるか、そういうふうなことをいろいろ検討いたしまして、今回食糧も上りましたし、それからまた繊維製品等も多少上つておりまするので、そういつた関係考えまして、ただいまのような数字にいたした次第であります。御承知のように生活保護費には税がかかつておりませんで、そういつた点もあわせて考慮しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  260. 今井耕

    ○今井委員 生活保護費というようなものは、ほんとうに困る人に何ぼ出したらいいか、こういう民生の安定という上から計算さるべきものであると思う。従つて、この支給は額そのものについては、はつきりした基礎があると思います。その資料があつたらお示しを願いたい。
  261. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 はつきりした算定の基礎は一応ございます。従来どうであつて、これに対して大体食糧は配給食糧で、調味料等につきましては、いろいろな従来各要保護者の例を調べて、大体定形的なものがございまして、それによつて算出いたしておる次第であります。もし御入用ならば資料を提出することにいたします。
  262. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの資料を要求したいと思いますから、委員長におとりはからいを願いたいと思います。  そこでなお六大都市、その他の都市は約四百円ずつ上る、八%の増にする。ところが町村では三・五%しか上げない。これは実におかしいと思う。六大都市やその他では月四百円上げて、町村では百七十三円しか上げない、こういう大きい差が一体どこから出て来るのか、このおもな点だけでもよろしいから御答弁を願います。
  263. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 これは従来からそういうふうになつておるのでございます。大体都市の生活費が高くて、いなかの方が安いというのは通説と申しますか、そういうふうなことになつておるのでありまして、それがために勤務手当につきましても、割合が違つておるのでありまして、従来からそういうふうに都会地は高く、いなかは安いのでありますが、その大きな原因は、いなかは物価が安い、住居費等につきましても相当安い、光熱、水道等についても、相当安い、こういう結果から来ておるのであります。
  264. 今井耕

    ○今井委員 どうもただいまの答弁では、納得できません。都市の方が町村よりは多少生活費が高くつくということは、わかつておるのです。従つて今日まで六大都市では五千四百七十円、その他の都市では五千百二十円、町村では四千七百九十五円と、そういう差がついておるのです。ところが今度それを増額するに六大都市、その他の市では四百円、町村では百七十三円、そのふやす金額に、なぜそんなに三倍からの違いをつくつたか。ふやす場合にも同じ比率でふやすべきがほんとうだ。ある程度の差がつきましても、もう少し差が少いのがほんとうだ。それは四百円対百七十三円というような、そういう差はつかぬと思うのです。また今日町村と都市との物価の差というものは、非常に少くなつております。むしろ都市の方が安いものがたくさんできておるのです。しかるにこの差がこういうふうに大きいということは、何としても割切れぬものがある。従つてそこをお尋ねしておるわけです。
  265. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 もし御入用でありましたら、算定の基礎を提出いたしますが、食糧はなるほど都会地も町村も一緒でございますが、その他マル公のはずれましたもの、みそ、しようゆ、各種の食糧についてもそうであります。それから薪炭費について見ましても、都会地参におきましてはガス、電気等の問題があるのでありますが、いなかにおいてはまきであり、炭である、そういつた薪炭費その他の内容につきましても、都会地とは相当違うだろうと思います。特にこういう要保護者は、いわば相当低い生活をしておりますので、そういつた最低生活費の面から考えまするならば、そこに弾力性がないという点もありまして、従つて物価が比較的高い都会地方において、物価の面が大きく響く、こういうような点も御考慮に入れていただきたいと思います。
  266. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの点は資料の御提出を願いまして、あらためてまた検討してお伺いいたします。  次に特色の第四点といたしまして、政府資金の活用による資源開発、産業育成、合理化等のための資金供給の確保、こういう点が取上げられておるのでありますが、なるほどこれによつて見ますると、総額が九百七十六億円ということになつております。ところがこれに対しまして、農林関係のものを見ますると、農林漁業資金融通特別会計が六十億と、開拓者資金融通特別会計が十四億円、合計七十四億円、総額九百七十六億円に対してわずか七十四億円、全体の七%、こういうことになつております。政府はいろいろ食糧の自給が必要であるというようなことで、ずいぶん今日まで新聞にも発表されておるが、この資金の供給確保というところの方面から見ると、わずか七%である、これは実にさびしいものだと思うのであります。この点をもつと思い切つて増加する必要があると思うが、これには大蔵大臣どういうふうにお考えになるか、この点の御意見を伺いたいと思います。
  267. 池田勇人

    ○池田国務大臣 来年度におきましては、今までにないように農林関係に出しておるのであります。昭和二十五年度をお調べくださつたらおわかりになると思うのであります。しこうして産業資金に出す分は、名前が農林とついているのはそれでありますが、預金部の金融債引受け等によりまして、他の銀行、農林中央金庫等を通じまして出る金も相当あるのでございまするから、実体的に御検討を願いたいと思います。
  268. 今井耕

    ○今井委員 この前にもだれかが質問されたのに対しまして、農林漁業特別金融へ六十億出す、六十億円出すことは画期的なことだというような御答弁があつて、私もあきれておつたのでありますが、なるほど制度が初めてできたということは画期的かもわからぬけれども、一千億円近くの中で六十億やそこらのものが出ても、これは金額からいつたら画期的というような文句を使うべきものじやないと思う。また去年から比べて非常に多いというお話だが、なるほどこういうものは去年はないのですから、倍数からいつたら、これは無制限の倍数です。従いまして考え方からいつたら、いろいろ考えられますけれども、非常にこの金額は少い、なおほかにいろいろ方法があると申されますけれども、それも大体私は承知しておるのです。そういうものを総合いたしましても、その金額というものは非常に少いということには間違いがないと思う。そこでこの六十億をもつともつと増加する必要がある。また農林大臣も増加するというように答弁されておるし、大蔵大臣もそういうふうに考慮しておられるようにも思う。その後これの増額につきましては、どういうようにお考えになつておるか、その後の模様をひとつお話していただきたい。
  269. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今回出しますものも一般会計からの繰入れ、また見返り資金からの繰込れであるのであります。私は大体この程度でがまんして行きたいと考えております。農林大臣としては財源があればこれをふやしたい、こういう考えも無理からんのであります。われわれも農林、水産、林業関係にもつと出したいという気持は持つておりますが、さあどこから金を持つて来るかという問題になりますと、まだ結論が出ておりません。
  270. 今井耕

    ○今井委員 この問題はこのくらいにしておきまして、次に税の徴収の問題でおりますが、昭和二十六年度租税及び印紙収入予算の説明というこれの内容にあります所得と税収の歩合の問題でありますが、これを見ますると、昭和二十六年度の申告所得の中の課税所得は、農業所得が百八十億円、営業所得が八百六十億円、こういうことになつております。それの収入歩合が農業所得が九〇%である。営業所得は七〇%である。こういうことになつておる。この営業所得を七〇%にしておるということは、徴収の時期に相当のずれがある、従つて七〇%というふうに低目に見ておる、こう思うのでありますが、しかし二十六年度に徴収する税額そのものからいうと、やはり前の分が順送りに来ますから、この計算から出た課税額というものは、これに近いものが出て来るはずです。そこで前年度の繰越しというものを調べてみますと、農業所得が六十六億円、営業所得が四百七十七億円、そのうちの収入見込みが農業所得で二十六億、営業所得で百九十五億ということになつております。そうすると農業所得の分は、計算から出した課税額は百八十億だが、実際は百八十九億とれる。ところが営業所得の方は、八百六十億というものが七百九十八億しかとれない。結局六十二億円だけはマイナスになる、こういう数字が出ておる。つまりこれは年によつて違いましようが、営業所得だけはどうしてもこれだけはとれぬ分ができておる。こういうことを示す一つになると思うが、この辺はどういうふうになつておるのか、この点を御説明願いたい。
  271. 池田勇人

    ○池田国務大臣 実態が違いますから、そういうふうな結果に相なつておるのであります。農業所得につきましては、昭和二十四年度は多分四百億円程度つたのではないかと思います。それが急激に百数十億円に減つて来たわけであります。過年度分が相当残つておるから、そういうかつこうに相なると考えております。
  272. 今井耕

    ○今井委員 営業所得の今年度の収入見込みが六百二億円である。それから前年度の繰越し、つまりまだとれておらぬのが四百七十七億円、本年度の収入見込みが六百二億円に対して約八割に近い前年度の繰越しがあるということになつて来るが、この内訳をいうと、前からの残りがずつとたくさんあるのか、前年度の分がこのうちでどのくらいな歩合になつておるのか、大体その辺の見当がどういうふうになつていますか。
  273. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま滞納が大体千億円足らずございます。当年分が三百八十億円、前年度すなわち二十四年度までの分が六百十億円だつたかと記憶いたしておりまするが、これは昭和二十四年度以前の分並びに今年度分につきまして、全体の千億円足らずのうち、営業所得の分が大部分を占めておりますので、二十六年度分に、相当の過年度分の収入があることに相なつておるのであります。
  274. 今井耕

    ○今井委員 二十六年度に相当たくさんの収入があると申されましたが、事実は百九十五億円しか見込んでおらぬわけです。この点もう少しはつきり伺いたいのですが、こまかい数字のことですから、またいつかの機会にお尋ねいたしたいと思います。次に大蔵大臣は本年の課税につきまして、ただ公平な理論だけにとらわれないでやつて行くという観点に立ちまして、利子の源泉所得とか、いろいろお考えになつておるのでありますが、これは非常に実情に即応したいい点だと考えます。こういう点から考えまして、今日食糧の確保及びこれの配給、分配というようなことも非常に重視しなければならぬ。こういう点から申しまして、だんだん統制は撤廃する方針はとつておられますが、米そのものについては、なかなかそういう時期は来ない、より一層重視しなければならぬ、こういう点から考えまして、米のやみというようなものを少くするということが、非常に必要であります。こういう点から考えまして、生産されたものが百パーセント供出の軌道に乗る、こういうことを考えて行かなければならぬのであるか、今日やみに流れておるのが——やみの価格も相下つておるが、税金を課けられるのが非常に困る、非常に税金を恐れておる、従つて農民の供出する代金、それの一割程度というようなものについては、これは特別に控除する、こういうようなことを考えたら、供出もうまく行くだろうし、また供出も百パーセントすれば、これは労働者の受ける賃金と同じように所得が非常にはつきりするのです。ごまかしが全然きかない。こういう点から考えても、ある程度の幅を見てやるということが必要である。こういう点から考えまして、供米代金の一割くらいのものについては、課税を控除するということが、今日の現状から考えまして、非常にふさわしいことじやないかということを考えるのでありますが、この点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  275. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそういうことは考えておりません。これは勤労所得の方でも、超過勤務手当につきましては、特別の措置を講じてくれ、こういうような強い議論があるのでありますが、やはり所得のあるところには課税するという建前は、堅持して行かなければならぬ問題だと思つております。
  276. 今井耕

    ○今井委員 これはいろいろ考え方があるのですから、この問題はこのくらいにします。  次に、承ると国税庁の方から、いろいろ税金をとる方針といたしまして、全国の税務署に通牒をされた。それにかきの木は三本以上は課税の対象にするとか、やぎは一頭以上とか、鷄は三羽以上とか、何かこまかいことを御通牒になつたということを聞いておるのですが、そういう御通牒を御出しになつたのかどうか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  277. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国税庁から出る通牒は、私は実は見ていないのであります。ただ過去三、四年あるいは二、三年所得の調査が非常に厳密と申しますか、行き過ぎの点があるやに見受けましたので、あまり苛察にわたらないように、裏のかきの木を調べたり、鶏が三羽とか五羽おるというときにこれを所得に見るとか、そういうことは私らが事務官吏のときにはやつていなかつた。もう少し何とかゆとりのある考え方になれぬかということを指示したことがございます。従つて今までのように、みかんの木が三本あるとかいうようなことは、今後は言わないと私は確信しておるのであります。従いまして従来よりもそういうこまかい所得の調査につきまして、よほど寛大になつて行くと、私は期待いたしております。
  278. 今井耕

    ○今井委員 だれか国税庁の人はおいでになりませんか。
  279. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御要求があれば呼びますが、どうしますか。あしたでも呼んでおきます。
  280. 今井耕

    ○今井委員 では明日その点を……。  次に農業協同組合の再建整備の問題ですが、これはさきにほかの委員の人から質問されまして、大蔵大臣の御答弁があつたわけですが、まだ大蔵省の方には、そういう調査したものが提出されておらぬ、こういう御答弁であつたのでありますが、もう農林省の方から大蔵省の方に、そういうような資料が提出されましたか、その点ひとつお伺いしたい。
  281. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一週間くらい前の御質同では、国税庁へまだ来ていないということをお答えしたのであります。その後におきまして私はまだ聞いておりませんが、大蔵省にまだ來ていないのではないかと思います。いずれ調べてみます。
  282. 今井耕

    ○今井委員 どうも非常におかしいのであります。現在非常に大きな問題になつておるということは、大臣も御承知の通りでありますが、大蔵大臣はまだ來ておらぬというふうであればしかたがないが、農林省関係の人はおりませんか。
  283. 川崎秀二

    ○川崎委員 この農業協同組合の問題に関連して……。
  284. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 関連質問を許します。川崎秀二君。
  285. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは先般から繰返している問題でありますが、実は今最もわが国において立法上権威のある衆議院の運営委員会におきまして、農林省の官僚は、農業協同組合再建利子法案は、来る二月二十日までに国会に提出をし、三月中にぜひとも成立を希望するということを責任をもつて言明をいたしておるのであります。従いまして先般來農林大臣は必ず提出をすると言い、大蔵大臣は知らないと言い、まことに奇妙キテレツなるところの問答が繰返されたのでありますけれども、すでにして、国会においてさようなる代表者が言明をいたしました以上は、これはきわめて重大な問題である。しかして農業協同組合再建利子法なるものは、必ず予算を伴わなければならぬ。予算はどうして編成しなかつたかということを聞きますと、それは大蔵省の責任であるということである。きわめてこれ重大な問題になつて來ましたので、大蔵大臣にしつかり伺つておきたいのでありますが、農林大臣は本国会中に提出することの含みをもつて、大蔵省に交渉されておる事実ありやいなや、その点に対し明快なる答弁を要求します。
  286. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう法案を考えておられるということは聞いておりますが、法案自体あるいはまた先般来農林省で調査された資料は、私はまだ見ておりません。
  287. 川崎秀二

    ○川崎委員 とにかくきよう非常に重要になつた点は、衆議院の運営委員会において議案の整理をする。本国会中に提出する法案を整理するというその政府側と衆議院の各派との交渉の最中に、そういうことが言明されたのでありますから、官僚は農林省の一役人ではありましたけれども、これはきわめて重大なことだと私は思いますので、大蔵大臣においては、至急農林大臣と折衝されまして、明日正確なる御答弁を願いたいと思います。
  288. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農林大臣とさつそく打合せいたします。
  289. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの件は一昨日全国の農業協同組合連合会の大会があつたが、そのときに農林委員長が自由党で、この農業協同組合再建整備に関する法律を出すことに決定したということを、はつきり大会の席で声明しておられる。私もそこに一緒におつたわけです。ところがまだ大蔵省の方は一向協議も受けておらぬし、大蔵大臣も何だか一向はつきりしておらないというところに非常にわからぬ点がある。この点ひとつ速急にただいま川崎委員が申されましたように進めるように希望する次第です。  それからもう一点、農業共済組合の問題ですが、農業共済組合の方から年年の異常災害で非常な損失ができて、不足金がたくさん出ている。この問題を政府である程度補償してもらいたいという希望が非常に強くて、この点については大蔵大臣も十分御承知のことと思うが、その後これについてどういうように交渉されているか、その後の経過をひとつここに御答弁願いたいと思います。
  290. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業災害の問題につきましては、料率その他につきまして、根本的検討を加えなければなりません。先般来農林省と大蔵省で話合いをいたしておりますが、大分話がまとまつて來たように聞いております。何とかできるだけ早い機会に解決策をごらんに入れたいと思つております。
  291. 今井耕

    ○今井委員 では以上で終ります。
  292. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 ではあとのあなたの御要求の大臣に対する質問は、明日に譲ることにいたします。  小林進君、文部大臣に関する質疑許可いたします。
  293. 小林進

    小林(進)委員 文部大臣にお伺いいたしますが、これはこの前の川島金次君の質問にお答えになつたのでありまするが、そのときに関連質問でお伺いしたいと、実は思つておりました事項であります。道義の基準ということについて、何か日本でも道徳の基準たるべきものがほしいと思う、目下研究中だという御答弁があつたのでありまするが、これは国民のひとしく要望いたしておるところでございまするので、文部大臣の、博識の、また忌憚のない気持をひとつ率直にお伺いいたしたいと思います。
  294. 天野貞祐

    天野国務大臣 この基準というようなものは、ある意味では非常にむずかしいことだと思つております。基準さえつくればそれで事が足るかというと、決してそういうものではなくして、たとえば従來の教育勅語のようなものであつても、教育勅語を骨の髄まで知らない日本人はないのですけれども、ただしかしそれを覚えたらばそれを実行するかというと決してそうではなくして、「博愛衆ニ及ホシ」ということ一つつてみても、これを十分知らない日本人はありませんけれども、しかし海外に行つては必ずしも博愛衆に及ぼさなかつた場合もあるというようなふうに、基準をつくつて基準を覚えさえすれば、それで事が足るような安易な考えではいけないということを、私は従來から考えておりましたので、この基準という問題も決してやさしいことでないと思つて、これを世間に問うてみて、その世間の人たちがどう考えるかということを、私は実は聞いてみたい考えつたのですが、それにつきましてはある人たちは、そんなものはだめだという論と、またやはりそういうものがあつた方がよいのだという論があります。私はそれにつきましてやはりこれはあつた方がよいのではないかという大体の見当を持つておりますが、しかしこれは非常にむずかしいことで、一体そういうものをつくつて、それはどこで出すのか、政府がこれを出すわけには行かぬ、あるいはこれはもちろん天皇から出すという筋のものでもない、あるいは国会ということであろうか、あるいは文部省ということであろうか、あるいは文部大臣個人ということであろうか、とにかくそういうように主体となるところが、すでにむずかしいということもあります。しかしその全体の問題はしばらくおくとしても、その内容はどういうふうにしたらよろしいかということで、非常にむずかしい問題をここに持つておる。私は自分のよく知つております人たちによく相談をして、そういうことを調べてもらつたりしておるというのが現状でございます。私自身はどうも多用のために、それに沒頭していることができないものですから、人に頼んで調べておるというような現状であります。
  295. 小林進

    小林(進)委員 基準の主体並びに発表の形式その他は別にいたしましても、ここまでお考えになつておられるのでありまするから、せめて文部大臣個人としてでもよろしゆうございますが、お考えの一端を具体的にひとつお漏らし願いたいと思うのでありますが、いかがでございましようか。
  296. 天野貞祐

    天野国務大臣 私の考えておりますことは、私は「今日に生きる倫理」というものを最近に書いたりいたしまして、そういう趣意は国民に向つて幾らか訴えておるつもりでございます。それを幾らか箇條書きにするには、どうしたらいいかということは、今ここでその一々の箇條書きを述べることは私はよくできませんが、ただその根拠になる点は、その著書にも述べており、また従來も述べて来たところでございます。もつとも箇條書きというようにしても、それは何もむずかしいことを言うのではなくして、ごく普通のことでよいのです。ただ論拠を明らかにするということも同時にしたいというような考えを持つております。
  297. 小林進

    小林(進)委員 まだ私は寡聞にして文部大臣の「今日に生きる倫理」という著書の内容を拜見いたしておりませんので、これに対してとかくの論は述べ得ないのでありますが、実は今日の社会情勢を率直に申し上げて、しかるがゆえにそうした道徳的の基準が必要であるということを、御理解いただきたいのであります。現在講和條約の成立と日本の自衞並びに再軍備といつた問題に関連いたしまして、一般国民は非常に疑惑にとらわれておるのであります。それは何がゆえに再軍備ならばまた戰わなければならないのか、何がために自衞のために戰わなければならないのかというようなその目的たるべきもの、奉仕する目的がはつきりしないところに、いわば漠然たる再軍備反対などというような素朴な空気が起つて来たのであります。また一方に予備隊警察、自治体警察国家警察におきましてもこの空気があります。われわれは單なる職業として雇われたものであつて、二年間だけ勤めれば十五万円なり何なりの退職金をもらつて、それで転職できる。その間命を大事に長らえて、ともかく勤め上げるのが第一である。いざ暴動、反乱という、そうした非常時には、まず命をなくさぬように、御身を大事にするのが第一だという考えが全部とは申しませんけれども多分にある。警察官吏の中にも、私は全部とは申し上げないけれども、單に職業のためであるから、なるべく危險なる場合は避けて、ともかく安らかにこの職業の道について行きたいという気持がある。こんな国民、あるいはその衝に当る人たちがみんなこういう気持である。ここでわれわれがいわゆる独立を回復いたしまして、自衞権を持つて、あるいは国を守るといつたところで、いかに自衞態勢を形の上にととのえようとも、こんなことでどうして一体完全なる国民の精神からなる独立というものができ上るかどうか、私はでき上るまいと確信いたすのでありまして、ここで国民の向うべき一つの道徳基準と申しますか、その確固たるものがなければならない。それは私は愛国心であつても、民族主義であつてもいいじやないかと、一応考えるのであります。もちろん民族主義は、従来わが国でいわれたような大和民族の優秀性とか、ゲルマン民族の優秀性という排他的な、他民族を排撃する民族論ならば、われわれはあくまでも打倒しなければならないけれども、国際協調主義にのつとつた新しい愛国心、新しい、正しい民族運動というものを、ここで、日本で編み出す必要があるのじやなかろうかということも考えられておりますので、これに対するいわゆる社会教育の衝に当る文部大臣の、いま少し具体的な積極的な御意見を、ひとつ承りたいと思うのであります。
  298. 天野貞祐

    天野国務大臣 今小林さんのおつしやつたことは、私もまつたく同感なのであつて、そのために私も昨今は筆をとることも少いのですけれども、機会あるごとにそういうことを自分は述べて来ておるつもりでございます。一体日本という国はどういう国であるか、また日本の国が将来どうなつて行かなければならないか、また国家理念からすれば、世界国家ということに、どうしても帰着しなければならないであろうが、そういう場合においても、決して世界国家というのは、すべての国家を解消してしまつて一つにするのじやない、この伝統と歴史を持つた日本国というのは、文化国家としてどこまでも国民が堅持されて行かなければならないという趣意のことは、私は自分の本にも述べておりますし、また機会があるごとにそういうものを執筆いたしております。数日前、静かなる愛国心ということを提唱いたしたのも、そういう趣意に出ておることでございます。微力ではありますが、そういう点について、今後十分ないろいろの策を講じて行きたい。社会的にも適当な方に——そこが非常に実際問題となると、むずかしいのであつて、うつかりやりますと、これは政府のさしずで上から押しつけるのだというきらいが非常にありますから、自発的にそういうことをやつてもらいたいと、一方では思いますし、また一方では何らかの指導的なことをやらねばならない。そこに現実問題となると、相当むずかしいものを持つておりますが、私はそういう点にも自分としては微力を盡す考えでおります。
  299. 小林進

    小林(進)委員 それでは続いてお伺いいたしたいのでありますが、この前の御答弁にも、アメリカのごとく宗教の布衍している国と違つて云々というお言葉がありましたが、この宗教の超国家性と愛国心というものとの関連性、及び西欧における宗教が、いわゆる国の道徳、倫理にどういう影響を及ぼしているか等について、ひとつ文部大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  300. 天野貞祐

    天野国務大臣 私がこの前申しましたのは、欧米諸国ではキリスト教というものが、みんな家庭教育の中に入つてしまつておるから、そこに道徳性というのを養う上に、宗教的情操というものが基礎にあるということが、非常に有利だという言葉を申すと、少し不適当かもしれませんが、非常によい点がある。日本にはそういう点が不十分だ。それに対して、いや日本にも仏教があるじやないかという御説明もございましたけれども、家庭教育において宗教的情操というものを養つて行く点については、まだ不十分なところがある。だからして学校で道徳教育をやるという際も、その点はやはり顧慮して、道徳教育というものが、もつとほんとうに日本人に適した仕方でもつてやられて行かなきやならない。欧米の学校そのままというわけには日本は行かないという趣意のことを、私は述べたわけでございます。だから道徳教育の振興ということを言いますと、すぐに修身の復活だとかいろいろ言われますけれども、私は決して古い忠君愛国の修身を、ここに復活しようというわけでは少しもありません。しかし何らかの意味において、小学校から大学まで一貫した道徳教育というものをここに教えて行く。それについては、小学校と高等学校などでは、よほど趣がかわつて来るのであつて、小学校ではすべての先生がこれを担任することができますけれども、高等学校あるいは大学の方になりますと、もつと理論的な解明を必要とする。同じ道徳教育なら何でもよいというわけには行かないのであつて、知識の開発ということが、非常に重要な役目を持つて来る。そういう意味で道徳教育ということを盛んにもつとしなければならぬということを述べたわけでございます。ところで今小林さんから、宗教というようなことを言えば、これは超国家的な、人類的な意味を持つているのじやないか、それと愛国ということとは一体どう関連して来るか、こういうことでございますが、超国家的の宗教といえども、それを日本人が学ぶときには、やはり日本人として学ぶのであつて、私どもはその一つの血液といえども、祖先の脈搏がここに打つているのであつて日本人ということを離れて宗教というものを、自分らが取入れるわけには行かない。どこまでも日本人としてこの宗教を取入れて、そうして自分の情操を養う。そうしてただ眼前のことだけでなくて、もつと絶対的なもの、そういうものに対する一種の情操を持つておるというようなことになるのであつて、決して宗教を信じたから、国民性がなくなつてしまうというわけではない。私の申します愛国というようなことは、これは世界的というようなことと、何も矛盾するものでない。国家的と世界的と矛盾するものでないということも、この委員会ですでに述べたことでございますから、ここに繰返しません。
  301. 小林進

    小林(進)委員 大体御意見を伺いまして、了承するところが非常に多かつたことを幸いといたします。  次には、これは厚生大臣にお伺いすることかもしれませんが、私はやはり社会教育の立場から御意見を伺いたいのでありますが、現在講和問題と自衛権——自衛の内容もいろいろございましよう。再軍備の立場から申し上げましても、遺家族、戰傷病者の問題が非常に今大きく浮び出ておるのでありまして、これがやはり路傍に投げ出されて、何ら国家的の保護を受けていない。こういう冷い国——ちようど大蔵大臣もお出でになりますから、お聞き願いたいと思いますが、こういう冷淡な、一つの金融的な処置も講じてくれない、財政的な援助も與えてくれない、こんな国なるがゆえに、われわれは従つて従来の自国防衛という面にも、まず御免をこうむる、遺家族の間にその空気が非常に強いし、またわれわれ年配の、現に戦場を馳駆して来た連中には、この嫌悪の気持が非常に強いのであります。これが中和を愛好する方向の気持に向つて行くならば、それでけつこうでございましようけれども、そうでなくて、むしろやはりこれが一つの極端な思想の系統へ走つて行く危險さえもあるのでありまして、これあるがゆえに、これは最近聞いた話でありますが、ドイツ等におきましても、国家予算の三%、日本の金に換算して大体三千億円が、この遺家族戰傷病者の救済のために使用されておるというのでありますが、こういうことにつきまして、これは文部大臣の社会教育の立場から率直な御意見を承りたいと思うのであります。
  302. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はこれがどういう事情になつておるかということをつまびらかにしませんから、軽率にこのことを批判することはできませんけれども、ただいま小林さんのおつしやつたようなわけでありますならば、これは実に遺憾千万なことだと思つております。これは何とかしなければ、小林さんがおつしやつたような御心配は、私も当然いだくものであります。
  303. 小林進

    小林(進)委員 大蔵大臣もちようどおいでになりまするので、予算関係からこの問題について御答弁をお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございましよう。
  304. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま文部大臣がお答えになつ通りでありまして、現状はわれわれの意に満たないところが多いのでございます。何とかしなければならぬと検討を加えております。
  305. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際、先般の川崎君の御発言の中に、手持ち外貨の昨年末と一昨年末における状況について、御質疑があつたのでありまするが、これについて大蔵大臣より発言を適当とする時期に達したという意味の発言がありますので、これを許します。池田大蔵大臣。
  306. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般の川崎君の御質問に対しましてお答えを申し上げます。日本の保有しておりまする外貨は、昨年十二月末で五億二千万ドルでございます。この五億二千万ドルのうちには、二千万ポンドすなわち五千五百万ドルが入つておるのであります。別に清算勘定すなわちオープン・アカウントの方で三千四百万ドルの受取り超過になつております。一昨年の暮れは五億二千万ドルが一億三千百万ドルに相なつております。このうちには、千五百万ポンドすなわち四千三百万ドルが入つております。しかして清算勘定は二百万ドルの債務になつておるのであります。従いまして、一年間にふえた外貨は二億八千八百万ドル、清算勘定で三千六百万ドルということに相なるのであります。しかしてまた一方、今の輸出入の状況を見ますと、十二月末で輸入の信用状の発行残高が三億八千万ドルございます。しかして輸出手形の受取りが二億ドルございますので、現状におきましては、輸出入の関係で一億八千万ドルだけ輸入信用状の方がたくさん出ておることになつておるのであります。
  307. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま外貨の手持ち並びに一昨年の十二月末の保有外貨との比較、それから輸入輸出信用状の発行残高に対する計算が明らかにされましたが、私がここでお伺いいたしたい点は、目下の輸入に関連しての最大の問題であると思うのでありますが、外貨の手持が多くなつたということは、ある意味においては今後これを大きく活用できるという考え方もあるのであります。しかしながら、過去におけるところの輸入政策というものが計画的でなかつた、また時期を失して、アメリカその他からするところの原材料その他の物資を輸入することにおいて、政府政策が欠けておつたのではないかということについて、先般来質疑応答が繰返されておるのであります。すでにアメリカの物価は、昨年の朝鮮事件に中共軍が介入して以来、非常な物価高になつて、そのために現実には、これだけ外貨がふえておつても、今後品物を買うときに、その間に非常な損失をするのではないかというふうにも見られるのでありますが、外貨の使用に対して、一体政府は今まで自主的に政策を進めて行つた考えるかどうか。外貨を使用しようとしても、非常に押えられておつた面があるのではないかというふうにも、われわれは感ずるのであります。またドイツはすでに原材料その他を輸入して、備蓄も非常にふえておるという状況であるが、日本ではこれとまつたく逆で、先般西村榮一君がこの予算委員会で、この状況はこじきが大金を抱えてまさに餓死せんとしておる状況だというような譬喩がありました。私もまさに宝の持ちぐされてあるというふうに感じておるのでありまするが、大蔵大臣は今後この外貨の使用にあたつてどういう方法をとるか。また従来までの政策に何か抑制された部面が多かつたのではないか。そういうような点について御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
  308. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一昨年の暮れから民間貿易になりまして、外貨の使用につきましては、閣僚審議会でこれを審議してやることになつておるのであります。御承知の通り長い間外国の事情はわかりませんし、また予算の使い方その他でふなれな点もありますし、またこの外貨予算につきましては、国内予算と同じように関係方面の了解を得ることに相なつておりますので、いろいろな手違いと申しまするか、不円滑の点が多かつたのであります。しかるところ昨年の五、六月ごろよりだんだん予算の使い方がなれて参りました。いわゆる長期予算を組んで自由に相当の金額のものを買えるような方法をとつて参りましたために、最近ではよほどよくなつて参りました。輸入も一月は一億ドルを越えるという状況に相なつておるのであります。また外貨が急激にふえましたのは、朝鮮事変による特需の関係でありまして、ほんとうの輸出入貿易以外の分も入つておりますが、今後はよほどよくなつて来ると思います。私の見通しでは、この一—三月におきましては、四億二千万ドル程度の外貨の受取りで、支拂いが四億五、六千万ドル、三千万ドルくらい支拂いの方が多くなつて来るという見込みでおるのであります。今後はよほどうまく行くと期待しております。またいろいろな方法を講じてうまく行くようにしなければならぬものと考えております。
  309. 川崎秀二

    ○川崎委員 今の予算の編成の仕方につきまして、財界方面では、従来までの四半期の編成の方法を、少くとも半年間にしろという要望が非常に強く出ておると思う。それから特に大蔵大臣に伺つておきたいのですが、外国為替管理委員会の委員長の木内信胤氏が、最近関経連の出しておる「経済人」という雑誌に、きわめて大胆に将来の外貨予算の編成の方法をかえてみたらどうかという意見を書いております。これは最近読んだ本では、最も端的に最近の貿易問題をえぐつたものと思うのですが、簡単でありますから、ちよつと読み上げてみますと「従来の予算編成方式、すなわち自己の手持ち外貨の範囲内での輸入という考えは、この際改める必要がある。すなわち今までの増加態勢を保ちながら、しかもなおかつ入超を起すことができるという方法である。この意味において外銀バランスを復活すべきことは、日本行き方として当然ではないかと思われる。」これが重要な点だと私は思う。「つまり借金がなくて一億五千万ドルのバランスシートを持つている方がよいか、それとも今言つたようなやり方がいいか、借金しても、すなわちバランス上はマイナスとなつても、三億五千万ドルの方がよいかということで、これについては先般来訪中のドツジ氏にも意見を尋ねてみたが、確答を得ぬうちに帰国された。私としてはこの際後者の方法を採用すべきだと考えている。」つまりバランス上はマイナスとなつても、三億五千万ドルの方がいい、借金がなくて二億五千万ドルのバランスシートを持つているような今までのやり方というものは間違つているというよりも、むしろ後者の考え方をとつて行くべきだということを、責任ある外国為替管理委員会の委員長が言つておるのですが、こういう考え方について大蔵大臣はどういうふうに思われますか、最後にお伺いをいたしておきます。
  310. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外貨予算はお話の通りに昨年の三、四月ごろまでは四半期ごとにやつてつたのでありますが、それでは輸出入がなかなかうまく行きませんので、長期予算にかえまして、たとえば一—三の外貨予算を組みますときに、四—六も考えて組むというふうな、とにかく弾力性ある方法にかえております。そのために輸入も相当伸びるようになつて来ておるのであります。しこうして第二の問題は、今まではこれだけの外貨があるからこれだけ買おう、こういう考え方であつた。しかしこれだけの外貨があり、今後またこれだけの外貨が入ることになるから、これだけ買おう、こういうふうな考え方にかわつて来ておりますので、前よりはよほどよくなつて来ると思います。  次に第三点の、為替銀行にドルを持たすという問題は、これは御承知の通り昨年の八、九月ごろ相当議論があつたのであります。私はせつかく為替銀行を設けたのでありますから、外為ばかりに全部集中して、それを日本銀行の操作によりやるということよりも、理想としては戦前のいわゆる外国為替銀行を使う方がいいじやないかという考えを持つておるのであります。木内君のその考えは、ちようど私が昨年八、九月ごろに持つてつた考えであるのでありますが、いろいろな点から、今のように日本銀行で外貨を売りつけてやるという制度になつて来ておるのであります。これは貿易の実態また外国為替銀行の状況等によつて、やはり実際に合うような方法で行かなければならぬと思つております。木内君の御意見は意見として私も考えないことはないのであります。
  311. 天野公義

    天野(公)委員 私は、電気通信大臣にお伺いしたいのでございますが、電通関係はほとんど国家が独占しておる事業でございまして、そのうちでも通信関係は全部国家に依存しなければならないという現状になつているわけでございます。ところで、そのうちで特に電話の需要という問題は、非常に今日国民の中で論議され、その整備拡充が要求されておるのでございますが、この電話の整備ということは、今日の日本の事態からいたしまして、経済、産業の復興、また経済自立達成の計画の上からいつても、非常に重要なものであろうと思うのでございます。ところが予算書を拜見いたしますと、電気通信事業の建設歳出、これが二百二十六億で、昨年度よりも四億きりふえておらない。こういうような状態でございまするが、大臣としてはこの電通予算について、この程度で御満足されておるのか、御満足されておらないのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  312. 田村文吉

    ○田村国務大臣 来年度の予算の額は二百二十数億になつております。この額で今熾烈な需要のもとにある電話事業の十分な施設がなし得るとして満足しておるか、こういうお尋ねでございますが、御説の通りでまつたく満足いたしておりません。もつと多額の資金を注入することによりまして、今日の熾烈なる要求に応じたいというので、がんばつておるわけでありますが、今日の財政状態、金融状態等の上から一応この予算で国会に提出するこに相となりました次第であります。
  313. 天野公義

    天野(公)委員 非常に御不満であろうということは、この予算を見ただけでもよくわかるのでありますが、この少い予算を使う場合において、どういうふうに使われるか、重点はどこに置かれるか、この点をお伺いしたいと思います。
  314. 田村文吉

    ○田村国務大臣 大体百三十五億の金と、八十数億のとりかえた費用の金とございます。その百三十五億の金で、来年度におきましては電話を七万五千個、市外線を七万キロ増設したい、こういう考えでおります。なお八十数億のとりかえ費用は、在来の電話施設の不十分、不完全、そういうようなもののとりかえに十分力をいたしたい、一応こういう計算に相なつております。
  315. 天野公義

    天野(公)委員 予算の基礎になつた時期は、大体いつごろでございましようか。それからこの予算にどの程度資材の値上りが見積られておりますか、その点をお伺いいたします。
  316. 田村文吉

    ○田村国務大臣 大体昨年の十月ごろに予算をつくりましたので、その当時物価の値上りをある程度見越しまして——三割ないし三割五分、前年度に比べまして物価の値上りを見込んで組んだ次第であります。
  317. 天野公義

    天野(公)委員 十月ごろを基礎として三〇%の値上りを見込んでおられるようでございますが、現在の資材の値上りは五〇%を越していると、私は見ておるのでございます。ところが現在の状況から行きますと、さらに値上りがひどくなつて、大臣の方で予定されている建設計画ができなくなるのではないかというような憂いを私は持つているのでございますが、そういうような場合に当局としてどういう御措置をとるか、事業を縮小するとか、補正予算を要求するとか、どういう点で切抜けられるか、それをお伺いいたします。
  318. 田村文吉

    ○田村国務大臣 ごもつともなお尋ねでございます。実は昨年の暮れから新年にかけまして、材料によりましては御説の通り四割八分から上つているものもあるようであります。しかし、これがはたして永続するかどうかということも問題でありますと同時に、すべてのものがさように値上りになるということも考えておりませんので、一応これで予算をおきめ願つておきまして、万一非常な変動等が起りますれば、やむを得ず補正でもお願いしなければならないと考えております。なお実際の事業の面から申しますと、在来もできるだけ努めておりましたが、企業の合理化によりまして、少くも本年予定しておりますだけのことは、多少物価の値上り等がございましても、大体完遂し得るという自信を持つている次第であります。
  319. 天野公義

    天野(公)委員 来年度大体七万五千個電話をつけられる予定のように承つたのでございまするが、現在の電話の申込み件数、及び二十六年度内の予定見込み件数はどれくらいになりますか、それをお伺いしたいと思います。
  320. 田村文吉

    ○田村国務大臣 簡単に現在の電話状況を御説明申し上げてみたいと思います。昨年、二十五年度は、当初六万五千個を増加するという予算で一応出発したのでありますが、熾烈な電話需要に対しまして、そういうようなことではとうていいけないというので、現在までございましたあき設備、つまり幹線が引いてあつたりして、あとそこにつければよいというようなあき設備、こういうようなものを極度に利用いたしました。今年度におきましては、まだ全部工事完了はいたしませんが、およそ十三万個以上の電話がつけられるように相なつたのであります。それに対しまして現在どのくらいの積算需要数があるかと申しますと、大体今年年度末におきましては、約三十万個残る計算でございます。しこうして二十六年度の末までになおどのくらいの申込みがあるかというと、推定でございますが、約四十万個ございまして、おおよそ七十万個来年度において需要があると考えるのであります。御承知のように現在の電話数は百十万個に達しておるのでありますが、戦争前の数には達しないのであります。しかし産業の異常な発達の状況下におきましては、とうてい今日の電話では足りませんので、なお隠れた需要はおそらくはその上に五十万、六十万あるものであろうと想像はできるのであります。かような意味におきまして、昨年度はできるだけあき設備を利用したのでありますが、今年度予算におきましては七万五千、そのほかにPBXが五万個、合計十二万五千個になりますが、なおこれが実施にあたりましては、先刻申し上げましたように、できるだけこれを合理化することと、またあき設備も全然なくなつたというわけではありませんので、できるだけあき設備等も利用いたしまして、予算には一応そういう数字になつておりますものを、もつと増加する方法について検討する、かような心構えで進んでおる次第であります。
  321. 天野公義

    天野(公)委員 本年度末に大体七十万申込みが残る、二十六年度にやる分が七万五千、約一割くらいの仕事きりしかできないようなお話でございますが、また二十七年度になればそれに応じて要求が幾何級数的にふえて行く、増設の方は算術級数的にふえて行くような状態が、今後とも続くのではないかと思うのでございます。そこで東京の状態を考えてみますと、そういう事情が反映しておると思うのでありますが、大体やみ電話が安いところで六、七万円、高いところで十万円を越しておるようた現状になつておるわけでございます。そこで東京における申込み件数及び来年度の電話の増設計画、新設局の計画がどうなつておるか、それを事務当局の方でもけつこうでございますから御説明願いたい。
  322. 田村文吉

    ○田村国務大臣 ただいまの計画の詳細につきましては、政府委員から答弁をいたさせますが、お言葉の中にございましたので、私も申し上げておいた方がよろしいかと考えますので申し上げておきたいと思います。御承知のように、戦争前の状況でございますと、電話を一本申し込みますのには大体五百円とか六百円、現在物価が百倍として五万円、二百倍として十万円、最高のときには現在の価格に直しますと八、九十万円の負担金をお願いしておつたのであります。しかし終戦後におきましては、できるだけさようなことはやらない方がいいだろうという関係方面の御意思もございましたので、一時三万六千円の電話公債も発行したのでありますが、これも今の大きなドツジ・ラインの上から申しまして、やめるべきだというのでやめたのであります。しかし何分にも今日の電話の状況を皆様の満足行くようにするには、少くもここに一千億から千五百億くらいの金がありませんとできないのであります。今日の財政状態におきまして、さようなことを国家資本にすべてよつてやるということが、困難なことは当然でありますので、そこである程度民間の利用者の方から負担なり貸金なりをしてもらうという方法が考えられていいのではないか、こういう点もございますけれども、目下これにつきまして関係方面の了解を得べく努力いたしておるわけであります。幸いにある程度金を貸すというような形になるならば、PBXとかそういうようなものは了解が得られそうでありますので、なおその点はもつと拡充いたしまして、そういうような線に持つて行ければ電話の復旧も非常に早くなる、こういうふうに考えて、利用なさる方々のお力をもつと利用する方法を考えたい、こういうように進んでおるわけであります。東京都関係のこまかい点の説明は、政府委員から答弁をさせます。
  323. 米澤滋

    ○米澤説明員 東京の需要の状況並びに明年度の計画の内容につきまして、御説明いたしたいと思います。  ただいままで積滯しております需要は全国の三十二万に対しまして、関東が約八万四千くらいでございますが、そのうちの七割くらいが東京にあると思います。これは見込みでありますが、明年の需要は全国の七十一万に対して、関東管内は大体二十一万くらいある見込であります。これらの需要と積滯に対しまして、明年度特に考えておりますのは、今年度はあき設備をたくさん使つたのでありますが、明年度はあき設備がことに東京の中央ではなくなつて参りましたので、どうしても基礎的な設備を相当補充しなければならないのでありまして、本年から着手しております第二丸ノ内局これは大電話局にして、将来四万の單子を入れる計画を進めております。明年はそのうち約一万は入れられると思つております。それから東京の中央及び外側にある三田とか芝、下谷、そういう各局に対しまして、建物を増築するなりその他の方法によつて、そこに加入者をできるだけ収容したいと考えております。なお東京都内にはありながら、東京中央電話局の管内にないものに対しましては、たとえば江戸川あるいは練馬、そういつた局は本年は局舎をやつておりますが、二十六年度と二十七年度の計画で、自動改式を進めたいと考えております。なお従来あります足立、本田という局も合せまして、二十七年度には工事の早くできたものから順繰りに東京の中に編入しまして、サービスの向上に努めたいと考えております。
  324. 天野公義

    天野(公)委員 先ほど大臣のお話で、最後に触れられた点は非常によい方針だと思います。現在私の調べところ、また聞くところによりますと、一本電話を入れるについて実際国家で負担するものは十四万くらいかかるということでありますが、ところが受益者の出す金は千八百円というような実情で、そこにあまり開きがあり過ぎるように私考えておる次第であります。そこで今までやつておられた電話公債というものを復活するとか、また受益者が相当出し合つて、電話が容易に引けるような措置をぜひ講じていただきたいと思うわけであります。その点に関して今大臣のお考えになつておる線は、大体どのくらいの受益者負担で、その見通しがいつごろつくようになるか、その点を伺います。
  325. 田村文吉

    ○田村国務大臣 その問題は終戦後において、ずつと考えて来られた問題でありましたが、関係方面では電話のごときものを特殊の人に特殊の負担をさせてやるということは、あまりおもしろいことではないという原則論から、好ましくないというので今日に至つたのでありますが、今日のような国家財政の状態から考えましても、どうしてもこれは受益者の方々からある程度の御負担を願うことにしないといかぬということで、目下これに対する了解を進めておるような状況でありまするので、かような場合にはどういうふうにするか、たとえばPBXの場合には実費をすべて計算し、これをあるいは借入れ資金の形なりにしてやるということにしておりますが、一般の電話の場合はお話のように十四万円かかるものを全部十四万円御負担を願うということもできますまいし、またあまりわずかでは資金面にも役立たないというようなことに相なりますので、目下その点につきましては検討いたしております。なおこれは関係方面の了解を得る手続中にありますので、今どのくらいかということはちよつと申し上げかねるのであります。さよう御了承願いたいと思います。
  326. 天野公義

    天野(公)委員 負担額はお漏らし願えないようでありますが、こういうような措置をぜひ講じていただきたいと思うわけでございます。  それから電話のことでもう一つ問題になりますのは、大企業の場合に電話を要求したら、すぐ電話が入るのでありますが、ここに残つておる三十万ないし七十万というような電話加入ができないような人たちは、大体中小企業もしくは零細企業、それに属する人たちが大半であろうと思うわけでございます。私ども始終いろいろ話を聞いておりましても、電話がないので困るというような——電話があれば商売も繁昌するというような話も、ほんとうに聞いておるのでございます。これは大企業に全然関係のないことでございます。中小企業、零細企業に非常に大きな関係を有する問題でございますので、この点について大臣の政治力なり御活躍を、切に期待する次第でございます。  電話の方はそれくらいにして、あとは簡単に郵政大臣に一言御要望を申し上げたいと思います。それは先ごろ新聞にも私設郵便屋というようなことが出て、検挙されたというような話が出ておりましたし、また私ども先般のお年玉のはがきを発送した場合に、自分たちでちやんと家も知つている、顏も知つている、移転もしないで、あそこの家であると知つているようなところに出したはがきが非常に返つて来ている。こういうところからサービスの点で遺憾な点が非常に多いように感ぜられるのでございます。また私どもの方の地区の問題でございますが、ある地区でポストを一つぜひともつくつてくれという要望を当局の方にしたところが、超過勤務や何かを出す予算がないから、ポストはつくれるのだけれども、人を使う予算がないからポストはつくれないというような話で、住民が非常に困つておるというようなところもあるのでございますが、そういうようなサービスの点について、郵政大臣として特に部下の方々に御督励を願いたいと思うのでございます。時間も大分おそくなりましたので、大臣に対する御質問はこの程度にしておきます。
  327. 田村文吉

    ○田村国務大臣 郵便のサービスにつきましては、年々その向上に努力して参つたのでございまして、ことに従業員の諸君が近年特によくやつてくれられますので、たとえば郵便の配達時間等も、大体戰前と同じようなところまで参つたのであります。しかし今お話がございましたように、必ずしも十分でない点もむろん多々あるのでございますので、なおそれらの点については、日常常に目につくたび、皆様からのお言葉がありますたび、やかましく注意しております。しかもそれが相当徹底していると考えますので、おそらくは今年中にはまつたく面目を新たにして、皆様からいかにもほめていただける郵便にいたしたい、こういうつもりであります。なお先ほどお話がございました私設郵便の問題でございますが、この点もお説の通りまことにわれわれの努力の足らぬ点があるから、ああいうものが依然として残るということなのであります。しかし大体郵便の状態も平常に復しましたので、私設郵便というようなものを、いつまでもやつておるということはいけないことと考えまして、先般遺憾ながら検挙いたした次第であります。今後たとえば大阪・東京間におきまして、前の日の夕方五時までに出したならば、おそくも翌朝十時ぐらいまでには、必ず配達するというようなサービスを、現に努めつつあるのでありまして、皆様の御満足の行くようになり得ると考えております。なお御注意の点は十分に部下を督励いたすつもりでございますから、御了承願いたいと思います。
  328. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際お諮りいたすことがあります。理事稻村順三君より理事を辞任いたしたいという申出が、ありまするが、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  329. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御異議なしと認めます。よつてこれを許可するに決しました。つきましてはその補欠は先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 御異議ないようでありますから、川島金次君を補欠理事に指名いたします。  なお公聴会の公述人は先般御報告申し上げましたが、さらに一名全国指導農業協同組合農政部長千石虎二君を追加して選定いたしましたので、御了承願います。  本日はこの程度にとどめまして、明日午前十時より開会し、質疑を続行することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十七分散会