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1951-02-10 第10回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十日(土曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 林  百郎君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    北澤 直吉君       坂田 道太君    島村 一郎君       苫米地英俊君    永井 英修君       中村  清君    中村 幸八君       松浦 東介君    南  好雄君       井出一太郎君    今井  耕君       川島 金次君    水谷長三郎君       横田甚太郎君    小平  忠君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         公益事業委員会         事務総長    松田 太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  島村 軍次君         食糧庁長官   安孫子藤吉君         通商産業事務官         (通商局長)  黄田多喜夫君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商振興局経         理部長)    石井由太郎君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 西村久之

    西村(久)委員長代理 会議を開きます。  質疑を続行いたします。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣に若干質疑が残つておりますので、この機会に二、三お伺いしておきたいと思うのであります。  まず第一に、これは緊急的な形になるお尋ねになるのですが、きのうから本日にかけましての新聞紙の報道するところによりますと、輸出金融措置である日銀ユーザンスの問題について、政府は別途従来と違つた措置考えなければならないという意図にかわつて来た。言いかえれば、ユーザンス期限の問題、あるいはこのユーザンス金利政策等の問題について、何らかの改訂を必要とすることに迫られておるやに報道されておるのでありますが、この問題についての大蔵大臣所見をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  4. 池田勇人

    池田國務大臣 ただいまやつておりまする日銀ユーザンス制度はかえる考えはございません。ただそのユーザンスの期間の問題は、実情沿つたようにやつて行きたい。すなわち今は原則として三箇月でございます。しこうして遠方の地から来るものにつきましては、特に四箇月を認めておりまするが、これを一律に三箇月にするということがいいか悪いか検討を加えまして、二箇月で済むものならばそれでやる、あるいは一箇月で済むものならば一箇月でやろう、たとえばよくいわれておりまするが、台湾からバナナを輸入する場合におきまして、三箇月とい今ふうなものは長過ぎるから、これは一箇月にする、こういうような実情に沿つたことは考えておりまするが、ユーザンス制度自体変更を加えるという気持はございません。  次に金利の問題でございますが、これは原則として日本銀行政策委員会できめる問題であるのであります。大蔵大臣としては最近の経済状況金融状況から見まして、二年の定期預金金利は、今の五分を五分五厘ぐらいに上げたらどうか、あるいはまた日銀高率適用の第二次の分について、今までは前三箇月の毎日の預金残高の一〇%を越える場合に、第二次高率適用であつたのを、この一〇%というのを六—七%ぐらいに下げて、高率適用にかかる場合を多くしようという検討は加えておりますが、まだ最後の結論には至つておりません。
  5. 川島金次

    川島委員 それで大体の方向が明らかになつたのですが、このユーザンスの問題について、既定の方針原則的には変更しないが、部分的には若干の変更を加えなければならないという事情に立ち至つたという意味言葉と私は解するのですが、それと関連して、この間から私どもが強く問題とし、また政府当局もこれに対してきわめて言葉強く懸念のない旨か表明されておるのですが、輸入の問題、この輸入の問題について政府が従来唱えておりまするようなものでなくして、どこかに懸念される部分が起きて来ておるので、こういうユーザンスの問題の内容についても、再検討を加えなければならぬようなことになつて来たのではないかというふうにわれわれは考えるのですが、その点はいかがですか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 何もそういう憂慮すべきような問題は起つておりません。ユーザンスの問題につきましては、きのうきようの新聞に出ることは、私はもう二、三週間前から話しておることであります。多分財政演説にも言つてつたかと思います。われわれの予想通りに、最近輸入が非常に伸びて参りました。懸念しておつた輸出か伸びて輸入が伸びないという、この懸念はだんだん薄らいで参りました。一月なんかは輸入の方が多くなつた、こういうふうな状況であるのであります。
  7. 川島金次

    川島委員 そういうことであればけつこうなことでありますが、その問題については一応それで打切つておきます。  次に、これは大蔵大臣にお伺いすることは必ずしも筋ではないと思うのですが、有力な閣僚でありますので、この際承つておきます。本日の新聞紙で報ぜられるところによりますると、問題となつておりまする日本船腹解決の上に非常な朗報が伝えられております。大蔵大臣もさだめし新聞をごらんになつたと思うのですが、アメリカリバテイ型船四十隻、総トンにおいて四十万トンの譲渡が日本に許されるのである、こういうふうな事柄が各紙一齊に報ぜられておりまして、このことが実際に実現されることは、日本船腹解決の上にきわめて有力なてことなるのではないかというふうに、われわれも快い、近来の記事として見ておるのでありますが、この問題について何らか政府は関知しておりまする点がありますかどうか、その点をこの際呵つておきたいと思うのです。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう話は、前からわれわれ希望的に望んでおつたのであります。御承知通りアメリカリバテイ型の船を向うの商船管理委員会で留保しておつたのであります。従いまして最近の船価暴騰等から、いずれはこれが解除になるのではないかという希望意見を持つてつたのであります。しかしこのリバテイ型以外のものにつきましても、たとえば中南米の船籍の分につきまして商談が二、三進んでいることは承知いたしております。リバテイ型四十隻が日本に来るということになれば、これは非常に朗報だと考えておりますが、しかとした、はつきりした通知はまだ受けておりません。
  9. 川島金次

    川島委員 そこで、さらに続いてお伺いいたしますが、先般のダレス特使の来朝によりまして、講和原則というものが一応明らかにされました。その明らかにされました中で、わが国の在外公私資産というものは没収される形になるということが、きわめて明白にされておるのであります。その没収された後における解決は、日本国内においてこれは処理さるべき性質のものであるという意味のことが、明らかにされておつたのではないかと私は記憶いたしております。私ども考えからいいますれば、この在外資産の中で、たとえば政府在外資産、この問題については別だと考えておりますが、民間の在外資産が今日まだ相当残つていることは事実であります。この在外資産講和條約とともに没収されるという形になりました場合に、国内においては大蔵大臣としてそれに対する対策を今考えられているかどうか、またそういう場合にどういう処置を講じようとしておられるか。またついででございますからお尋ねしておきますが、これら在外資産が一体どのくらい今日の時価においてあるのか、その点も御承知であれば、一緒にこの際示しておいていただきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 新聞にはお話のような点が載つてつたやに思いますが、私はしかとしたダレス考えその他を承つておりませんので、今ここでこの問題についての答弁は差控えたいと思います。また個人の所有の在外財産がどれだけあるかということにつきまして、はつきりした数字を持つておりません。
  11. 川島金次

    川島委員 たいへん何か含みのあるような答えで、まことに遺憾でありますが、どうでしようか、この問題は私はきわめて重要な問題だろうと思う。日本人が海外にあつて粒々辛苦積み上げた在外資産、その資産講和條約によつて当然もどつて来るということの予想は、私どもはしたいのでありますが、なかなかできない現実であるようにわれわれは想像している。そこでその問題が現実になつた場合に、どういう形において政府はこれに対して対処されるかということは、在外資産を持つた者の間において非常な重大な関心事であることは、言うまでもないことであります。そこで繰返してまことに恐縮ですが、今のような何か突き放したような答弁でなしに、大臣として、私見でもけつこうでありますが、何かお考えがあれば、この際ひとつ率直に知らしてもらいたい、こういうふうに思うのであります。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 国民の重大な関心事でありますので、未確定のところにおいて大蔵大臣がとやこう言うべき問題ではないと思います。
  13. 川島金次

    川島委員 どうも重大な関心事であるからわれわれは聞いておるのです、政府は、重大なことであるから、未確定答えができない、まことにその点は、私はむしろ不親切だと思うのですが、それがお答えができないとすれば、これは問題外にして、いずれまたの機会に譲りたいと思うのです。  ついでにさらにお伺いいたしますが、講和條約の締結か間近に迫つておりまして、国民の間にいささか明るい希望が生れておるのですが、それと同時に従来停止されておりました日本外債の元金あるいは利息支払い、こういつた問題が当然に起つて来るのではないかと思うのです。そこで大臣に伺つておきたいのですが、今日日本外債の総額は一体どのくらいあるのか。そして利息を払つておらない、その利息たまつた金額はどのくらいであるか。そして講和後においてこの外債償還方法というものは、どういう形になつて来るのかというようなことについて、政府考え方あるいは見通し等がございましたならば、この際伺つておきたいと思うのです。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 日本外債は、大体ドル表示のものが六千六百万ドルポンド表示のものが六千百万ポンドフラン表示のものが五億三千六百万フランであつたかと思います。しこうしてこの支払いにつきましては、債権者と話し合つてみなければいけませんが、われわれは原則として現金、利子を払う考えでおるのであります。イタリアの場合におきましては、四十年か五十年延ばしまして、金利その他も安くしたようでありますが、そうすることが将来の日本のためにいいか悪いかということは問題でございまして、私は元利とも払いたい、こういう気持でおります。こういうことか反映しましてか、最近アメリカ取引所日本外債が上場せられまして、きのうは一日に千ドルの分で六十五ドルぐらい上つて参りました。今千ドルのものが五百ドルあるいは六百ドルぐらいに相なつております。東京市債とかいろいろな銘柄によつて違いますが、上場せられたときよりもよほど上つて来ている。これはやはり日本の信用が高まつたということを表示するものでございます。非常にいい傾向だと考えております。
  15. 川島金次

    川島委員 今ドルポンドについて表示されたのでありますが、その元利合計いたしました外債を、今の為替レートに換算いたしました額、それからこの外債期限というものは、最も長いものでどのくらいになつておるのですか。もし御承知であつたらば、だれでもいいから説明していただきたいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 外債の種類によつて違いますが償還期限の来たものもございますし、まだ来ないものもございます。いずれ表にしてお上げしてよろしゆうございます。
  17. 川島金次

    川島委員 それではあとで刷りものにでもして配付を願いたいと思います。ついでにお伺いいたしますが、先般大蔵大臣は同僚の他の委員からの質問に対して、ブレトン・ウツズ協定への参加、その場合において管理通貨の今日の制度においてでも、これに参加できる可能性がきわめて多い、こういう答弁があつたように私は記憶いたしております。このブレトン・ウツズ協定にかりに参加できるような事態になりまして、今日の日本管理通貨制度そのままにおいての立場が参加できるということならば、きわめてけつこうであります。それとあわせて、私は日本がいよいよ講和を締結し、しかも国民総協力のもとに経済自立が漸次達成されるような形になれば、必然的に金本位制というものを復活することになるのではないかと考えておるのであります。この場合において、ややもすれば昨今における日本の歴代の政府は、金の問題についてとかく軽視するような傾向があるやに私は印象を受けておるのであります。そこでお伺いいたすのでありますが、今日日本政府が金を保有いたしておりますところの額はどれくらいあるか。それからまた将来の産金という問題について、今日政府がとつております態度、政策、そして金本位制の問題に対して、将来どういうふうに日本経済上持つて行こうとされておるかというようなことについて、考えがありましたならばこの際聞いておきたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田國務大臣 ただいま日本にあります金は、日本銀行が一億二千万ドル保有いたしております。これは連合軍から差押えられておりますが、一億二千万ドルと申しますと、大体四百三十億円それから終戦後日本で掘りました金があります。これは貴金属特別会計というので買入れておりますが、これが大体三十五億円か四十億くらいございます。これは大体産出額の半分ぐらいは入歯とかあるいは仏具、びようぶ等に使つているようであります。残り半分ぐらいが四十億円くらいになつておると思います。銀もかなりございますが、銀は大体金の三分の一程度ございます。金につきましては、私は非常に注意いたしておりますので、今後におきましても金の増産については努力するつもりでおります。見返り資金からも出るように努力いたしておりますし、また一般長期資金から、産金についてできるだけのものを出して行くようにし、それも年々ふえて行つておるのであります。ブレトン・ウツズ協定に入りますに、金本位制でなければいかぬかという問題は、これは先ほど申し上げましたように、その必要はございません。金というものに対して、私は日本人があまり大事にしないような気がいたしますが、世界各国とも金を非常に大事にするのです。われわれも外国に負けないほど金に対してもつと注意を喚起しなければいかぬ、こういう考えでおります。
  19. 川島金次

    川島委員 今の金本位制の問題に対しては、どういう考え方ですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今の実情から、金本位制はただちに日本には施行できない、また何も金本位制にしなければならぬという気持はございません。
  21. 川島金次

    川島委員 今日のことを言つているのじやないのです。政府経済自立の三箇年計画を立てておる。それと相にらみ合せて金本位制問題をどういう関連で考えられるかという問題です。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 経済自立金本位制とは何も不即不離のものではございません。金本位制でなくてもいいのであります。
  23. 川島金次

    川島委員 金本位制でなくてもいいということはわかつておりますが、その金本位制という問題に対して、今の政府は将来どういうふうな考え方を持つておるかということを私は尋ねているのです。くどいようですが、それをもう一度……。
  24. 池田勇人

    池田國務大臣 金本位制を採用するか、採用しないかという考え方ですが、私はただちに金本位制を採用する気持はございません。
  25. 川島金次

    川島委員 それでは次にお伺いいたします。私の聞き及ぶところによりますと、昨日経済安定委員会におきまして、タバコ民営の問題が上程され、そして与野党の間にかなりもみにもまれて、結局与党で提案されました、タバコ民営の時期尚早という案が、経済委員会では決定されたというふうにけさ聞き及んでおります。このタバコ民営の問題は、昨年の春でしたか、吉田総理タバコもできるならば民営にすべきだという意味言葉を発表されまして、全国にそれぞれ少からぬセンセーシヨンを起した問題であり、それが尾を引いて今日まで問題になつて、遂に経済安定委員会におけるそういつた問題になつて来たのであります。ここで私はあらためてさらにお尋ねしておきたいのですか、このタバコ民営の問題について、大蔵大臣といたしましては、昨年総理が伝えたというあの方針とやはり同じような考え方でおられるのかどうか。この問題についてこの際あらためてもう一ぺん聞いておきたいと思うのです。
  26. 池田勇人

    池田國務大臣 タバコ民営の問題につきましては、調査会を設けまして、その可否を検討していただいておるのであります。昨年から多分十数回開いておると思いまするが、まだ結論に至つておりません。いずれ近日中答申があるやに聞いております。これは政府の収入の点から申しまして、また農家の有力な事業であることから申しましても、事柄が重大でありますので、とくと検討してからお返事いたしたいと思います。     〔西村久委員長代理退席委員長着席
  27. 川島金次

    川島委員 そうすると、昨年吉田総理が一部に漏らしたという、総理自身考え方であるタバコ民営案については、大蔵大臣は別途な考えを持つておる、端的に申し上げれば、タバコ民営は時期でないということを考えておると理解してよろしいかどうか、この考をお伺いしておきます。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうふうにおとりになるのは間違いでございます。何とも言われない、今研究しておる、こういうことであります。
  29. 川島金次

    川島委員 それからさらにお伺いいたしますが、これこそは、あるいは大蔵大臣にお尋ねしても、筋が半分くらい通らない点もあるのじやないかと思うのですが、実は問題は一昨日からの炭鉱労働者ストライキです。今日非常な低賃金日本の動力たる石炭生産に携わつておりまする主要なる炭鉱地帯労働者が、賃金問題をめぐつて突如、しかもかなりの広範囲なストライキを決行するに至りました。この成行きは国民としてきわめて重視すべき事柄ではないかと思います。政府といたしましても、この問題については重大な関心をもとより寄せているのではないかと思うのであります。そこで私は端的にお伺いいたすのですが、大蔵大臣として、あるいは国務大臣として、今日の炭鉱労働者賃金が、今日の日本労働者の生計の実態と対比いたしまして、適当と思つているかどうか。この点について大臣に率直に——私見でもよろしいですがお伺いをいたしたいと同時に、この問題に対して政府は何らかの積極的な解決対策に乗り出す意思を持つておるかどうか、この点をひとつ伺いしておきたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 所管外のことでございまして、私がお答えするのはいかがかと思いまするが、あの四大炭鉱ストの状態になつておるということは、こことに遺憾なことであります。労務者側要求は、多分一日六百四十円とかいう——現行賃金の七割を上げろという要求であつたやに聞いておるのでありますが、それが適当であるやいなやということは、労使の間できめるべきものであつて政府が適当とかどうとか言うことはいかがかと思います。政府としてこのストをどういうふうに取扱うかということは、やはり原則として労使の間できめるべきものである。しかしそれが日本産業に重大なる影響を及ぼす段階なつて参りましたならば、政府は適当なる措置をとるよりほかございますまいが、ただいまのところは、積極的にどうこうするという段階にまで至つていないのではないかと考えております。
  31. 川島金次

    川島委員 私のお尋ねした主眼点は、財政経済を担当する主管大臣として、もとより国民全体の労働賃金等についても相当な関心を常に持ち、それに対する対策というものを常に考えておるのが、大蔵大臣の一つの仕事でもあると私は理解しておる。そこで今日の炭鉱労働者平均賃金ベースというものはきわめて低い。このきわめて低い賃金に対して、大蔵大臣として、あるいは国務大臣として、どういう考えを持たれておるか。炭鉱労働者要求するあの要求額が正当か正当でないかという問題でなくして、今の炭鉱労働者賃金というものに対しての御所見を私はお尋ねしておるのですから、もう一ぺんお聞かせ願いいたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田國務大臣 賃金というものはおのずから経済情勢によつて適当なところできまるべきものだと思います。労務者の方から言えば低過ぎるというお考えもあるやに聞いておりますが、使用者の側の方から言いますと、採箕の点からいつてやむを得ないという議論もあるかと思います。
  33. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣承知と思うのですが、今度の炭鉱スト労働者がもらつております平均賃金——坑内坑外、男女とも平均したものでありますが、平均五千四百円ベースです。これが問題なんです。これが問題となつて、もう長い間労使間において抗争が続けられて来ておる。その問題の解決の曙光が円満に口出されないで、突如起つて来たこの主要なる炭鉱労働者ストライキというものが、かりに長く続くということがあれば、これは日本経済にとつて重大な影響があることは言うまでもない。そういう事柄について、わずか平均ベース五千四百円ということであるとすれば、大蔵大臣としてもこの問題に対する所見はあるはずである。それで一体炭鉱労働者賃金というものが妥当なものであるかどうか。そして日本経済自立達成の上に、政府石炭増産も重要な部門として織り込んでおるのですが、賃金が低いためにこういうストライキが起る。ストライキか長引けば長引くほど、それは石炭生産力の上に大きな深刻な打撃を与えるということになつて、それがやがて政府のせつかく考え経済自立達成の上に、これまた重大な支障を来すことになるわけであります。従つて大蔵大臣といたしましても、所管外といえども、こういう問題にやはり重大な関心を持つておるはずであろうと思うので、私は承つておるのです。そこで重ねてお伺いをいたしますが、炭鉱労働者の五千四百円のこの低ベースに対する大蔵大臣としての考えを明らかにしてもらえばけつこうです。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 炭鉱労務者の五千四百円の賃金ベース実際はどれだけとつておられるかということは私は存じません。しかして大蔵大臣が今争議なつておる賃金について、どれが適当であるというようなことを言うのは、差控えたいと思います。
  35. 川島金次

    川島委員 その適当であるとかないとかいうことを、私は無理に聞いているのではないのです。国務大臣としてこの炭鉱労働者生産力というものはきわめて重大なものなのです。その生産に携わつておる労働者平均べ一スが実際五千四百円です。そういう五千四百円という平均ベースというものは、今日の日本国民の生活の実態に即して妥当なものであるかどうか、この程度のことについての大蔵大臣としての意見を漏らすことは、私はできるであろうと思うのですが、いかがでございますか。
  36. 池田勇人

    池田國務大臣 賃金ベースの問題、そうしてまた実際の支給の賃金がどうだ、こういうことは争議の行われておりますときに、国務大臣としてこれが適当であるとか適当でないとかということは、所管大臣、以外の私としましてとやかく言うべき問題ではないと思います。ただ争議が長続きいたしまして、そして日本経済に非常な悪影響を及ぼすような場合におきましては、適当な措置をとることにはやぶさかではございません。今そういう段階ではないと私は考えております。
  37. 川島金次

    川島委員 私は実はこういう主要炭鉱の労働争議がきわめて険悪な事態になつて来た、しかもこれは突然ではないのです。かなり今日に至るまでには長い時間がかかつておる。こういう事柄について大蔵大臣に直接申し上げてもしかたがないのですが、政府にも一斑の責任があると思う。こういう重要な石炭生産に携わつておりますところの労働者の生計の問題について、賃金の問題について吉田内閣が漫然と見送つて来たという、こういう態度に対しましては、われわれは非常な憤懣を感じておるものであります。おそらくこの問題がさらに深刻となり、拡大される傾向にあるやに私は聞いておるのでありますが、こういう問題について、政府がもつと常時積極的に熱意ある考え方を払つて行くという態度を私は強く要求したいのであります。この問題で押し問答していてもしかたがありませんから打切ります。  そこでもう一つさらに大蔵大臣に小さいことでありますが、承つておきます。今度大蔵省では全国の税務署の名前を何かかえて行こう、こういう計画があるということです。と申しますのは、従来の税務署という看板では各府県地方の徴税事務を行つておる事務所と混清しやすい形で、非常に納税者にも思わぬ迷惑をかける場合がある。そういうことでひとつ思い切つて税務署を国税署とかなんとか別な名前を掲げて、そういう混乱の起らないようにしたいものだというようなことを、大蔵当局は考えておるというような話を聞いておるのですが、それは事実ですか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 私は存じません。聞いておりません。
  39. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島君。理財局長も来ておりますから……。
  40. 川島金次

    川島委員 理財局長見えておるそうですが、理財局長にお尋ねしようとしたことは、今大蔵大臣にお尋ねした内容のことなのです。ただ大蔵大臣が見えない場合を予想して理財局長のおいでを願つたわけでありますから…。  そこで次に私は電力の問題についてちよつとお伺いをいたしたいと思う。経済安定本部長官の経済演説によりますると、日本の電力開発にもきわめて積極的な意見を発表されております。また一方において、経済自立審議会の答申案の中を見ますると、三箇年の間に相当な電源開発の計画を決定いたしまして、これを政府に答申をいたしております。そこでお伺いするのですが、この電源開発について、あの経済自立審議会で立案をいたしましたいわゆる水力、火力の開発、電気供給力の増強という方向を、三箇年の間に必ずやれるという見通しが立つておるのかどうか。それと同時に大蔵大臣もおられますから、この電源の開発には相当莫大な資金を必要といたすことは言うまでもございません。そこで経済安定本部長官は、この経済目立審議会の答申をそのまま取上げて演説をされておるようにわれわれは聞き取つた。そうするとこれまた非常に財政的な問題とのつながりが重要になりますので、公益事業委員会の当局の方とこれに関する財政当局の大蔵大臣としての見通し、対処の方針等につきまして、具体的な見解をこの機会に示しておいてもらいたい、こういうように思うわけです。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 私はまだ自立三年計画の内容につきまして検討いたしておりません。従いまして三箇年にどれだけの発電設備をするかということにつきまして、まだ話を聞いておりません。ただ私といたしましては、資源開発にできるだけの力を入れようというので、今年度は水力の方に百億円、来年度は見返りの方から百五十億円、こういう計画をいたしております。再来年においても見返り資金が相当余つておりますので、このうちから出したいという考えを持つておりまするが、具体的に三箇年間の電力開発に対して、どれだけの金を出すということはまだ検討いたしておりません。ただ電源開発は非常に重要のことでございますから、先般もこの委員会で触れでおりましたように、一億円の調査費を計上いたしまして、国内の水力発電の調査をしている。しこうしてこれには日本の金だけでも足りませんので、外資の導入に努力いたしたい、こういう気持を持つております。
  42. 松田太郎

    ○松田政府委員 電源開発の問題につきましては、公益事業委員会といたしましても最も大きな問題と考えております。特に今年の五月を期しまして新会社が発足をしたあかつきにおきましては、会社におかれましてもいわゆる発電、送電、配電という責任の関係がはつきりした態勢をとりますので、この問題については極力力を注いでもらうことと思つております。そういうような線に沿いまして、委員会といたしましても、先ほどお話の経済安定本部で立てられました経済自立審議会の結論、あるいは最近数箇年間における実績等も考慮いたしまして、三箇年ないしは五箇年というような計画を立てて、公益事業委員会といたしましても、ただいま各方面の意見も参酌いたしまして、この電源開発の計画に着手をいたしております。そうなりますと、ただいまの、言いかえれば昭和二十四年度に明瞭になりました実績から申しましても、電力の需要は年間三百七十四億キロワツト・アワーになつております。それをたとえば経済安定本部の想定せられておりまするところの毎年三・六%程度の増を考えてみましても、昭和三十年度、言いかえれば五箇年後の需要というものを想定いたしますと、約四百六十億キロワツト・アワー程度の数字に相なると思うのであります。さようにいたしますためには、どういたしましても火力、水力合せまして、二百五十万キロワツト程度の増量を考えなければならぬのであります。従つてそれに秘する所要資金も毎年そのままこれを実行するとすれば、五百億円から六百億円程度の資金が必要になつて来るのじやないか。もちろんそのうちには各社といたしましても、できるだけ社内の健全な発達をはかる意味におきまして、あらゆる合理化その他の努力をいたしまして、市場資金の調達等につきましても、できるだけの措置は講じなければなりませんけれども、どういたしましてもそれだけではなかなかむずかしいのであります。見返り資金その他の問題も必要になつて来ると思います。また将来におきましては、外資導入というような点につきましても、考慮しなければならぬ問題も起つて来るのじやないか、とかように考えて、その点をあわせまして私の方といたしましてもただいま研究をいたしております。
  43. 川島金次

    川島委員 これは私別にあげ足をとるつもりじやないのですが、今大蔵大臣のお話によると、経済安定本部長官の演説、自立関係、経済関係のことは知らない。どうもちよつと奇怪な話を私は承るわけです。いやしくも政府が二十六年度の予算の編成をし、そうして総理大臣以下経済財政関係当局の演説が国会で行われた、しかも経済安定本部長官の演説の中には、日本経済自立は二十八年度までにおおむね達成するんだ、そして国民の生活水準は二十八年度において戦前の九〇%に達する、それがためには貿易の問題あるいは電力の問題、こういう問題もこういう形で進むことによつて日本経済自立が達成されるんだ、こういうことを言つているのです。そういうことを言つているにかかわらず、当の同じ閣僚でありまする、しかもそういう経済諸計画の達成に対して、最も重要な役割を果さなければならない当面の財政当局の大蔵大臣が、そういうことを知らない。これはちよつと奇怪な話だと私は思うのですが、一体そういう演説をする場合に、経済安定本部長官は長官だけの独得のお立場で演説をし、そうして財政当局とは何ら関係なしに、かつて放題な自立経済計画というものを立てておいでになるのかどうか。これはちよつと私としては奇怪な大蔵大臣としての答えでありますので、一ぺん明らかにしてもらいたい。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 周東安本長官の演説につきましてはあらかじめわれわれは聞いております。しかし自立三箇年計画のうち造船が毎年どうなるか、あるいは電力のあれがどうなるか、具体的に話をしろ、とこうおつしやいますから、あれはまだ十分読みこなしていない、こう申し上げたのであります。大体の考え方につきましては安本長官と何らかわりはございません。計画の、たとえば繊維はどういうふうになるか、電気は三箇年でどれだけつくるか、そういうような具体的な問題につきましてはまだ読んでいない、とこう言つておるのであります。
  45. 川島金次

    川島委員 どうも何だか大蔵大臣ちよつと論弁を弄するようなかつこうで、あなたには似合わないと思うのです。もう少しすなおにひとつぼくらの話を——ぼくらの話を聞いてないんですよ、同じ閣僚で。  繰返して言うわけじやないのですが、周東さんは自立経済審議会のあの答申案に乗つて明確に言つているのですよ。そうして、しかも国民の生活水準を九〇%にするのだと、こう明確に言つているのです。そうして、それに伴う諸経済政策はこうなんだ、こういうことを言つている。従つて、電力の問題にも触れている。輸出入の貿易の問題にも触れているのです。そういうことになれば、必然的にぼくは、同じ政府の閣僚として、財政問題がこれに伴うということはこれは当然のことなんです。だからそういう事柄について、私は常識をもつてすれば、安定本部長官があのような具体的な演説をするからには、当然やはり大蔵大臣にもある程度の具体的な話合いがあつて、そうしてお互いに了解し合つた上での演説だ、こういうふうに私は常識的には聞いているわけなのです。ところが、大ざつぱなことについてはまあ聞いておるけれども、そういう具体的なことは聞かない。これは重大な問題だと私は思うのですよ。電力の問題にも触れているのですから、貿易の問題にも数字を出して触れているのですから。しかも、国民生活の水準を九〇%にするという具体的な問題まで出している。衣料の問題も出しているのです、具体的に。そうなれば、それに伴うところのやはり財政的な裏づけは、あなたの了解がなければ、あなたの協力なくしてはできない。できないにかかわらず、あなたにはあまり具体的な話合いがなしにああいう演説ができるということは、ちよつとわれわれ常識で判断できない。一体ああいう問題を発表する演説をいたします場合に、閣議その他の席上において、安永長官と大蔵大臣の間柄というものは、それほど密接な連絡なしにやつているのか。それとももつと何か、そういう連絡が行き届かずして突如としてあんな演説になつてしまつたのか。どうも私どもにはちよつと了解のしにくい点があるのでございます。まことにくどいようですが、その関連をもう一ぺんひとつ聞かしてもらいたいと思う。
  46. 池田勇人

    池田國務大臣 安本長官の演説につきましては、前もつて閣議にかけまして私も拜見いたしました。大体の線はけつこうだと思います。しかし、安本長官があの演説をなさいますその材料を大蔵大臣が全部検討して、そうしてけつこうだと言つたわけじやございません。三箇年計画について、電力、繊維、造船その他全部のことを三箇年の打合せはいたしていないのであります。
  47. 川島金次

    川島委員 そうすると、同じ閣内において、経済安定本部長官は自立経済審議会の答申を基礎として、日本の三箇年自立経済計画というものを立てる。ところが、一方のその計画を実施する面においてきわめて重要な任務にありますところの大蔵大臣、その大蔵大臣とは具体的な打合せがない。これでは私は、国民に一体経済自立計画というものを何の根拠があつて発表したかと言いたくなる。おそらく安定本部長官があの演説をされた以上、国民はひとしく、吉田内閣は経済自立に対して三箇年の計画でこれこれのものを持つているのだということに受取つたのです。ところが、今聞くというと、かんじんかなめの財政担当の池田さんは知らない。それではあの経済自立計画なんというものはから念仏だということにも、極端に言えば、なることになるのですが、私は政府閣僚間のこういう重要な問題を発表するときには、もつと緊密な、しかも具体的な打合せがあつて、その見通しを確信の上に立つて、初めて国民にあの重大な政策というものを公約すべきか政治家の責任であり、政府の責任であると私は思いますが、そういうことがないということになれば、あの周東安本長官の公約いたしました自立経済計画というものは、財政当局は、まつたく知らないとは言わないけれども、大部分知らない一つの空文の声明だということになつてしまいますが、この点はどうですか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 三箇年の各年ごとの、各業種のこまかい点につきましては、打合せいたしておりませんが、考え方としてはけつこうだと思つております。しこうしてこの問題は、私よりも周東さんにお聞きになる問題だと思います。
  49. 川島金次

    川島委員 そうじやないのですよ。私は吉田内閣の閣僚の中で——どの内閣の閣僚でも同じですが、実は大蔵大臣の地位というものを重く買つているのです。あなたは迷惑かもしれんけれども。それでいやしくも日本の三箇年自立計画です。しかもその計画の中には具体的なものを表明しておるのです。そういうときには財政がむしろ主軸になるのです。だから本来ならば大蔵大臣と密接な連絡、協議をして、これによつて財政的な裏づけも可能なりという見通しの上に立つて、初めて自立経済計画というものは国民に発表できる性質のものである。周東さんに聞いた方がいいだろうということですが、それはそれでよろしい。いずれ聞きます。しかしあなたは安定本部から無視されたような形になつていますよ、それでいいのですか。そうじやないですか。具体的に言つているのですよ。三箇年計画は電力の問題にも触れているのですよ。貿易の問題に触れれば電力の問題には当然触れる。大体の方針、大まかではないのですよ。国民生活水準は九〇%に達せしめるのだ、こういう具体的計画なんです。そういうことになれば、どうしたつて財政的な確たる見通しというものを持つておらなければ、こういう計画というものは立たない。しかるに大蔵大臣にはあまり話がなかつた。これは周東さんに、池田さんともあろうものが非常に甘く見られた、そういうふうに私は理解しますよ。またそういう性質のものではないと私は思う。しかしさようなことで時間をつぶしてももつたいないから、いずれ私は周東さんが見えれば、この問題についてお尋ねをしたいと思う。  それからもう一つ、大蔵大臣に最後にお伺いをいたしてみたい。この間この問題についてちよつと触れたのですが、お尋ねをしはぐつた問題になつておるので、あらためてお尋ねするのですが、地方の財政のてことなる交付金の問題でございます。地方は今度の政府の新税制以来、地方の都道府県はもちろん、市町村等におきましても、非常に財政的な危機を感じております面が少くない。政府からの財政交付金一千百億だけでは、地方の今日の財政実情から見、また地方市民の負担能力の点等からも勘案いたしまして、きわめて少いことが痛切に叫ばれておるのであります。そのことは大臣もよく御承知のことだと、私は思いますが、一体二十六年度における財政交付金の現状で、地方財政が円滑に運行して行けるという確たる見通しを大臣は持たれておるかどうか、これについて御意見を承つておきたいと思う。
  50. 池田勇人

    池田國務大臣 地方財政平衡交付金はもつと増額を要求されておりますが、私は國の財政の点から申しまして、この程度が最大限と考えておるのであります。地方におきましても、税の増収等がありますので、私は大体やつて行けると考えております。
  51. 川島金次

    川島委員 地方のいろいろの意見希望等を総合いたしますと、ぎりぎりのところ、財政交付金は二百億足りない。千三百億くらい出してもらえば、一方において、地方財政当局の諸経費の節約、徴税の円滑なる運行、こういつたことでどうやら地方財政の二十六年度はまかなえるだろう。しかしこの一千百億ではまかない切れない面が随所に出て来るということを率直に表明して、國会あるいは政府にももとより要望いたしておると思うのです。大蔵大臣として今日の地方財政の困難な実情に即して、もう少し地方財政交付金を増額するという意思を一体持たないものかどうか、この点についてもう一ぺん念を押して、くどいようですが、お伺いするわけです。
  52. 池田勇人

    池田國務大臣 いろいろ努力はいたしたのでありますが、千百億円以上にはふやさないことにいたしております。
  53. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時から再開、質疑を続行いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  54. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。横田甚太郎君。
  55. 横田甚太郎

    ○横田委員 通産大臣伺います。中共貿易が禁止されましてから後に、中共地区からこのようなものを買わないかと言つて来たことがありますか、ありませんか、これを承りたい。
  56. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 私まだその点はよく承知いたしません。
  57. 横田甚太郎

    ○横田委員 廣川農林大臣と違いまして、通産大臣は非常に人柄のいい正直な方ですから、簡單に申しますと、アメリカの人たちが、日本は中共とは貿易をやつてはいけないとこう禁止している。そうして日本から売らないにもかかわらず、その後において中共地区から海南島の鉄鉱石を買わないか、こういうようなことを言つて来た事実があると思うのです。これがあるかないかということを承りたい。
  58. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 海南島の鉄鉱石はまだ話がきまつていないと思います。
  59. 横田甚太郎

    ○横田委員 話がきまつていないということは、中共から取引の対象として話をしようかと言つて来たことを大臣は知つておられるのか、知つておられないのか、これを聞きたいのです。
  60. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 今の海南島の鉄鉱石の話は、香港経由でそういう話があつたことは聞いております。
  61. 横田甚太郎

    ○横田委員 その後その話は一体どうなつたでしよう。
  62. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 今通商局長から聞きますと、二、三回は入つたことがあるそうです。香港経由で契約して、二、三度入つたようです。
  63. 横田甚太郎

    ○横田委員 その鉄鉱石を買いました場合、アメリカがあつせんしてくれるところの鉄鉱石と値段はどういうふうに違うのですか。それで日本が得なんですか、損なんですか、それを承りたいのです。
  64. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 値段は船賃が遠距離になりますので、当然アメリカが高いのであります。
  65. 横田甚太郎

    ○横田委員 アメリカの方が高いのですね。そうすると日本という國は、高いところのものを余計に買つて、安いところのものを買わないで、貿易の振興をはかる、こういうことなんですか。
  66. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 好んで高いものを買うという意思はないのですけれども、しかしながらできないものは、これは何と申しましても買えないのであります。高いものであつてもしかたがないと思います。
  67. 横田甚太郎

    ○横田委員 そのできないというお答えを聞きたかつたのです。できないというのは一体どういうわけでできないのですか、それを承りたい。
  68. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 いろいろと御質問でありますが、できないということは、商談でありますので、向うとこちらの話がつかなければできないかと思います。
  69. 横田甚太郎

    ○横田委員 向うとこちらの話がつかなければできない、こう聞いておりますと、中に介在する権力がなくなるのです。この中に介在するところの権力がそうしてはいけないと言うのでしようか、それとも日本政府の意思によつてこれは話ができないと言われるのか、その点をはつきりしていただきたい。
  70. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 海南島の鉄鉱石のことにつきましては、私の聞いている範囲におきましては、あそこは港がまだ整備がうまくできていないはずであります。こういうことへも考え合せまして、船が入るか入らぬかということもありますので、簡単に外から言われでどうというのではないのであります。さよう御了承を願います。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  71. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは外からどういうふうな制肘があつても、海南島の港が修理されたなれば買われるという意味ですか。何に恐れてか答弁が非常に逃げておるのです。何かというとあなたの話には、全面講和でなくて単独講和のにおいが出ている。中共地区は除外するという話が出ておる。そこで共産党の見解と自由党の見解が全然違うのです。だからはつきり意地悪く聞きたいのですが、あなたの話であるならば、海南島の港が修復できたならば、そこから鉄鉱石を買つてもいいということになつて、中に介在するところの、買うてはいけない、売つてはいけないという制限の問題は出て来ないのです。それを承りたいのです。
  72. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 簡單に船積みができて、売つてさえくれますならば買います。現に開薪炭も幾らずつか入つて来ておりますから、中共だから買わないという考えではないのであります。今自由党がどうとかおつしやつたが、私はそういうことは今考えていないのであります。
  73. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは海南島からたしか私の記憶では十八万トンの鉄鉱石を出そう、そうして日本の國内で売れずに困つておるところの自転車と落花生の、バーターをやろうじやないか、こういうように申し込まれておるという話も聞いておる、これはどの点まで真相なんでしよう。
  74. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 私寡聞にしてそんなことは聞いておりません。
  75. 横田甚太郎

    ○横田委員 今まで中共ですよ、國民軍の政権を握つておる台湾と違うのですよ、この中共と貿易をやられて、その決済は一体もうけになつたか、損になつたか、これを聞きたい。
  76. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 こまかしいことは存じませんので、政府委員から……。
  77. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 昨年の七月から十月までの統計でございますが、輸入が三千四百万ドル輸出が千二百万ドルということに相なつております。それから昨年の暮れになりまして、輸出は大分出たのでありますが、それがたしか十月が四百五十万ドル、それから十一月が六百万ドルくらい出ております。
  78. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣伺いますが、この貿易は得であるという結論になるのですが、その得であるところの貿易をやろためには、どういうような方策を政府は持つておられるか、これを承りたい。
  79. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 先刻からのお話を承つておりますと、中共貿易のことについてのお話かと総合的に考えます。この中共貿易に対しましては、全面的には禁止いたしていないのであります。要品目に対して、輸出をとめるものもあり得るのです。これはおもに戦略物資でございます。戦略物資以外のもので、バーター式で、先刻申し上げましたように、現に開薪炭もやつておりますので、私としては中共貿易を阻止しているとは考えないのであります。
  80. 横田甚太郎

    ○横田委員 全部とめておらない、戦略物資をとめておると言われるのですが、その戦略物資とはどんなものなんですか。
  81. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 私から申し上げぬでも、よく御存じのことかと思います。
  82. 横田甚太郎

    ○横田委員 私は軍人ではないのでありまして、戦略物資というような、人を殺したりするようなややこしいものを知らないのです。だから大臣にはつきり聞くのです。大臣はこれは出してはいけない、これは出してもいい、これは買わなければならないということは、よく御存じのはずだ。日本の通産行政をあずかつておる大臣が、ここで戦略物資について言えない、言うことを恐れていて、それで國際間の貿易に参加することができるのですか。戦略物資に対するところの政府側の見解それから単独講和についての見解と、全面講和についての見解を承りたいのであります。
  83. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 まず全面講和と単独講和の問題に関しましては、私は何らお答えをする考えはないのであります。戦略物資につきましては、常識的に、戦争に使用し得られるもの、私はこういうふうに考えております。
  84. 横田甚太郎

    ○横田委員 戦争に使用し得られるものという、そのことはよくわかります。読んで字の通りなんで、その内容を私は聞いておるのです。自転車までこれに入つておるのですか。自転車だけではないのですよ。中共政権下におきましては、紡績業の再建ということがやかましくいわれております。紡績業には一つの規格がありまして、一つの機械を今もし日本から入れておけば、あとで何十万という紡績機械が増設される。そのときに入るはずなんで、それだから私は言うのです。それはあとにいたしまして、これとこれは戦略物資として出していけないのだということを言うことは、アメリカの軍律に照して悪いのですか。そうでなかつた言つていただきたいと思います。
  85. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 いろいろありますが、一々申し上げぬでもよく御存じかと思いますので、さよう御了承願いたいと思います。
  86. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣がしつこく言いますので、こちらもしつこく聞きますが、いろいろございますというのは事実でしよう。しかし、いろいろの中で一番問題になるやつをあげていただけますか。
  87. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 通商局長をして答弁をいたさせます。
  88. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 要輸出許可品目と申しますものは、輸出貿易管理令の別表第一というものに詳しく全部書いてあるのでございます。大体申し上げますと、はずれてる方を言う方が早いくらいでありまして、はずれていいるものは、大体繊維製品と、それから塩乾魚その他農水産物、それから自転車というふうなものははずれている方に入つております。
  89. 横田甚太郎

    ○横田委員 はずれてるというのは、出していい方ですね。
  90. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 そうです。
  91. 横田甚太郎

    ○横田委員 禁止の方を聞かしてほしい。
  92. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 禁止の方は、今申し上げました輸出貿易管理令の別表第一に、第一から第七十号くらい列挙してございます。それに入つておりますものは全部ということになつております。
  93. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしたら、そのあんたの言うところの、書いてある書類を見せていただきたい。共産党が参りますと、政府は概して資料を出さぬのです。昨日も、これはあんたの省ではないからとあんたは逃げられるでしようが、外務省の倭島君のごときは、未引揚者三十七万あるいは現在三十一万という國連へ提出した数的根拠について疑問を持つから、資料を出さぬかと言つたが、倭島君は出さないです。どうして出さないかというと、議会でやりましようと言うのです。それと同じであつて、共産党には出されないところのものが非常にある。だから、出されない資料の中にそういうものが書いてあるのですから、その資料を見せてください。
  94. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 これは政令でちやんと公布してありまして、出さないも、何ら秘密でも何でもございません。御入用とあらば、いつでも差上げることができますし、それは現にどこにでも出ておる資料であります。隠したり秘したりする必要は毛頭ないのであります。
  95. 横田甚太郎

    ○横田委員 それなら簡単に言つてくれてもいいでしよう。あなたは日本の役人であつても知らないこともある私ども通商貿易のことについては非常に知らない。知らないけれども、何か貿易の問題について非常に不可解な点がある。このように中共貿易を禁止するというような状態で行かれると、われわれは農村で豚を飼うのにふすまも買えない。現に商品が値上つて行く。みそ、しようゆが上つて行く。だから貿易全体についてはしろうとであるにかかわらず、政府の貿易政策について疑いを持つんです。議員にあなたが答えるのはあたりまえだ。それで初めて人民に奉仕する公僕なんだ。名前ぐらい言いたまえ。
  96. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 七十幾つありまして、一々覚えておりません。それでは資料をとつて来ますから、来てからお答えします。
  97. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは大臣伺いますが、大体日本の國民の心構えといたしましては、今度の戦争で一番打撃をこうむつたのは中國であります。これはわかつておると思う。われわれはアメリカのニユーヨークに対して爆弾を投げたこともなし、そこで強姦をやつた覚えはない。しかもアメリカ人が日本に来てさしずをしている。その根拠は何かというと、これは吉田さんに聞くのが適当かもしれないが、多くの犠牲を払つた者が、一番多くの物を得るのだというのがアメリカ人の考え方であります。すると第二次世界大戦において、極東において一番大きな犠牲を払つたのは中國です。中國の家を焼き、中國人を殺した、その中國の復興のためには、物の行くのを禁止するようなことをしてはいけない。向うが買おう、それなら売りましようでなければいけない。しかも中共貿易の特徴は、すべて現金で金を払う。これは事実でしよう。だからあなたはその点において、吉田内閣のもとにおいてはワン・マンさんがおりまして非常にやりにくいでしようが、そこを勇気を出してもらいたいどうしてもあなたの考えは聞違いです。中國にこそ日本から物を出さなければならない。それによつて國際的な道義が果される。そういうようなことを今まで言われたことがあるか、今後言われる覚悟があるか、これを承りたい。
  98. 橘直治

    ○橘委員長代理 横田君に御注意申し上げますが、予算委員会の権威にかんがみまして、用語をお慎み願いたいと思います。
  99. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 中共貿易が、わが國にとつて最も必要でもあり、また望ましいところであることは、もう何回も申し上げた通りであります。しかし現在の段階におきまして、現在とつております政策はやむを得ないものと考えるのであります。これはあなたと御意見が違うかもしれませんが、私はさように考えております、さよう御了承願いたいと思います。
  100. 横田甚太郎

    ○横田委員 今の答弁では中共貿易は望ましい、しかし現在やむを得ない、こう言つておられるのですが、やむを得られるような條件はいつごろできるんですか。どうしておつくりになるのですか。
  101. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 現在の世界情勢が直つたならば、行けると思います。
  102. 横田甚太郎

    ○横田委員 現在の世界情勢というようなややこしいことを言われますと、また聞きますよ。世界情勢に対する考え方は、みな違うんです。たとえて申しますと、国連の一番問題になつておるのは朝鮮問題であります。朝鮮において北鮮軍が侵略したといい、南鮮軍が侵略したといい、いや中共が侵略したといつております。しかしそういつておること自体が、国連でどういうように議決しましようとも、これは実行力を持たないのであります。持つたところが、その問題を国内へ持つて帰ると非常に国内が混乱する。英国でもそうでしよう。英国の労働党議員が、朝鮮においてやつておる国連のやり方は非常に困ると言つておることは、報道を禁止されておる日本新聞にさえ見えております。だから世界情勢というようなことを言われると、その世界情勢のもとにおいて中共貿易をやつてこそ解決ができると私たちは思う。だから世界情勢というような抽象的なことを言われるなら、あなたの考えておられる世界情勢なるものを一応承りたい。
  103. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 外交問題に関しましては、私はこの席においてお答えをいたしません。さよう御了承願います。
  104. 横田甚太郎

    ○横田委員 どうしてお答え願えないのですか。閣議において外交問題か出たときに、やはりあなたもその点について賛成、反対の意思表示をされるのです。だからその程度における意思表示をしていただきたい。どうなんですか。
  105. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 私は共産党の方々のお考えとまつたく違いますので、これは議論の出発点が違いますから、こういうことを論じますことは私は避けたいと思いますから、その点につきましては答弁はいたしかねるのであります。
  106. 横田甚太郎

    ○横田委員 避けたいというのは何ということです。意見の違うことは、あなたに聞かなくてもわかつておる。だからあなたのところは「平和のこえ」を押えている。共産党に対しては、議会ではつきり言えば懲罰にする、外で新聞を出せば投獄です。共産党には演説会もやらせない。このように違うのはわかつておる。しかしその違うところのいろいろの勢力が、あなたの言うところの西欧民主主義の政体のもとにおきましては、議会に出て来ていろいろ論議をするのが議会政治です。だから違うと言われるのならば、違う点はどこで明らかにするのだと大臣考えておるのですか。私の考えでは議会だと思うのですが、違いますか。その議会で通産省の実権を握つておられる方と中共貿易の論議をしていて、その中共貿易を論議しておる過程において、世界情勢というものが中心になりまして、それを中心にして、得だけれども中共貿易はできない、こう逃げられたから、世界情勢というものを自由党では日本に不利に解釈するものですねといわざるを得ない。共産党とは違うということはわかつておる。大臣にはどこで違う意見をはつきりするところがあるのか、これを聞きたい。
  107. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 私はあなたの今のお問いに対しましては、何ら答弁をいたしません。     〔橘委員長代理退席、委員長着席
  108. 横田甚太郎

    ○横田委員 そのようなだだをこねられますと、こつちも元にもどりますが、中共の鉄鉱石を買うた場合にはトン十一ドルになります。アメリカの鉄鉱石を買うた場合にはトン二十四ドルになる。日本国内においては塩が足らぬといつて大騒ぎをやつておる。この塩は非常にたくさんある。大豆とかみその値上りに対しましては、おかみさんたちが非常な心配をしておる。簡単に言えばそうなんです。こういうような点を打開するには中共貿易以外にない。だから中共貿易に対して、あなたは閣内においてもこの政権が中共貿易に向うように努力されるような考えはあるかないか。これをもう一ぺん伺いましよう。もし努力するつもりがあるならば、どういうような形でやられるか、また国民自体が中共貿易を盛んにする運動を起すためには、どういうふうにやつたならば法務府のスパイが共産党員につけられないか、この党も伺いましよう。
  109. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 非常にむずかしい御質問であります。中共貿易のできないために遠くから高いものを買う、これもやむを得ないかと思います。但し要許可品目外のものを出しまして、そうして中共からなるべく多くの物資を買うことに努力いたすものでございます。
  110. 横田甚太郎

    ○横田委員 断つておきますが、これは共産党の「前衛」ではない「経済評論」ですよ。これは塩のことを書いているのです。「第一次造船で向うから日本の船で運んでも運賃はアメリカの船と同じです。運賃協定によつで運賃を高くしないと外洋航海させぬというのです。そうなると塩の価格というのは非常に高くなる」と書いているのですが、中共から塩を買わないとするなれば、一体地中海の方から買うのか、それともそれ以外から買うのか。そういうところから買うようになつた場合に、品物においては安くついても、ここに出ていますように、外洋航海というものによつて高くなるのか、こういう奇々怪々のことがあるのかないのかということを承りたい。
  111. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 近いところよりも遠いところのものが運賃が高いことはお話の通りであります。近いところも現在運賃が上りつつあります。しかし先刻から申し上げますように、買えないものを近いところから安いからといつて望んでも——かつまた全部がそこから買えるのではありませんから、遠いところから買うのもやむを得ないと思います。だから先刻申し上げますように、中共からでも、要許可品目でないところのものとかえてもらつてつていただくならば、喜んで私の方は買うつもりであります。
  112. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたは聞き違えています。もう一ぺん読みますよ。こう出ています。運賃協定によつて安かつた運賃を高くしないと外洋航海ができないのだと書いてあるのです。こういう事実があるのですかないのですか。だから品物か安いにもかかわらず、遠いところから運んだ場合においては、外国の船で運ぶのと同じようにしなければならないのか。その一例としてここに食糧のことが出ている。アメリカからアメリカの船で運ぶときが九十七ドル日本の船で運ぶときが九十五ドルで、二ドル違うのです。だからかりにアメリカから二十六年度に六十万トンの食糧を運ぶといたしましても、アメリカの船で運んだ場合と日本の船で運んだ場合とでは、日本船の場合が四十七億二千万円、米船で運んだ場合には五十一億六千万円、つまり四億四千万円の損になるという事実があるといわれているのですが、これは事実で十か。
  113. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 運賃は定期船は協定があるのです。しかし不定期船は協定はないのであります。それからあなたのおつしやつたことは全部アメリカの船で運んでというお説ですが、今アメリカの船も日本の船も大して運賃の差がないのでありますが、しかし日本の船がないことは御存じの通りであります。だからアメリカ船を使わなければならぬ、あるいはよその船を使わなければならぬ場合のありますことも御了承願いたいと思います。
  114. 横田甚太郎

    ○横田委員 私の聞いておりますのは、アメリカの船を使わなければならぬというような断定ではないのでありまして、こういうような値段の差があるかないかということをはつきり聞きたい。そうしたらあとに妙な言葉があるのです。
  115. 横尾龍

    ○横尾國務大臣 こまかしいことは政府委員をして答弁させます。
  116. 石井由太郎

    ○石井説明員 ただいま運賃は、不定期船につきましてはすべてそのときの相場でとりきめられておりますから、外国船でありますから特に高く、日本船でありますから特に安いということはございません。すなわちヴアンクーヴアーから日本に持つて参るといたしますならば、今日たとえば十五ドルで一ぱいつかんでも、翌日は相場がかわつておれば十一ドル五十セントになり、あるいは十七ドルになる。その日その日の出来値が違うということに御了解願いたいと思います。
  117. 横田甚太郎

    ○横田委員 その日その日の出来値が違つておりますけれども、統計をとつた場合にそうなるのではないですか。アメリカの船の方が結局高くついて、日本の船の方が安くなるのでしよう。
  118. 石井由太郎

    ○石井説明員 お答えいたします。日本船の方が安くて外国船が高いということは、われわれが常識で考えるように実はないのであります。日本船の方が高い場合も多々あるのでございまして、日本船がたとえば十二ドルで動いておりますのに、外国船は十ドルで動いておるという場合もあるのであります。これはその日その日のいわば出来値でございまして、不定期船のマーケツトというものは決してマル公があるわけではございませんで、きよう引揚げが多ければ高く、少ければ下る、こういうわけでございます。たまたま一つ一つの例をとりますと、日本船が外国船より安いという場合もございますけれども、全体としては決してそういう原則があるわけでも、傾向があるわけでもございません。
  119. 横田甚太郎

    ○横田委員 この運賃のことを非常に気にいたしましたのは、これは日本経済の二十六年一月二十八日号にこういうことが出ております。「ワシントン二十七日発、共同、米第八十一議会で商船隊に関する上院分科委員会の委員長を勤めたウオーレン・マグナソン民主党上院議員は二十六日、もし事情が許せば日本の海運問題を研究するため今春日本を訪問する計画であると言明するとともに、日本の商船隊再建問題について次のように語つた。日米海運の競争を許すような対日講和條約をつくるべきではない。一万田日銀総裁と会見した際同氏は、商船隊再建の機会日本に与えてもらいたいと語つていたが、私は右のような意向を伝えておいた。しかし国内航路と他の東洋諸港との直接貿易復活のため、日本に援助を与えることはさしつかえないであろう。」こう出ておる。そこでもし日本船で運ぶのにそんなに安いのであれば、アメリカの船会社も困るであろう。だからしてこういうふうなアメリカに不利な競争はまずないんだとこう思つた。もしあとで調べまして米船で運ぶ場合も、日本船で運ぶ場合も差異がないのであればよいのでございますが、そうでなくして逆の場合があるのであれば、あなたたちは日本人として非常に困つた人です。だからこれを聞いたのです。全然ないのですか、これをもう一ぺん確かめておきます。
  120. 石井由太郎

    ○石井説明員 不定期船に関します限りは、そのような日本船だから安く、外船だから高いということは決してございません。日本船の方が外国船よりもはるかに高い運賃をとつて、外航でかせいでおる場合もございますし、またその逆の場合もあるのであります。それは要するにそのときどきの相場に従つておるということに尽きるわけであります。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して……。予算の説明書の四十七ページを見ますと、大麦、米、小麦は日本船の場合と米船の場合とでは違つておる。たとえば小麦は九十七ドルが九十五ドル、大麦は七十六ドルが七十四ドルとそれぞれ二ドルずつ違つておる。だから食糧に関する限り、船賃はやはり外国船の方が日本船より高いということが言えますか。
  122. 石井由太郎

    ○石井説明員 ただいま米船の方が高くなつておるというお話がございましたが、これはただいま私どもが援助を受けております対日援助の物資を運んで参ります運送方式の中に、軍用船による輸送があるわけでございます。この軍用船によります輸邊費は、一般の商業ベースの輸送費より高くなつておるわけであります。つまり定期用船料が一般マーケツトで三ドルなつておるときでも、軍用船は一定の固定しました用船料で、国内海運業者から米軍が用船いたしておりますので、その分は高くなつておるわけであります。つまり先ほど申し上げましたのは、少し言葉が足りなかつたかと思いますが、コマーシヤル・ベースで運ぶものはすべて同一ベースでありますが、軍用船の分は特別な運賃が設けられておる、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、援助資金で日本が食糧を買う場合には、普通の場合よりは高くなる。かつ日本船よりも高く買わされる。要するに日本の方が損をするのが援助だというのですか。
  124. 石井由太郎

    ○石井説明員 アメリカ船で運ばれます援助物資は、日本まで持つて来てくれるわけでございます。その中に入つておりまする運賃を一般の運賃とわけて考えますと、高くなつておるということであります。ただいまの御趣旨はちよつとわかりませんでしたが……。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 援助という名儀だけれども、援助で買うのはコマーシヤル・ベースより高いのです。しかも日本船より高くなつておるから、非常に損しなければならぬことになつておるじやないか。
  126. 石井由太郎

    ○石井説明員 軍用船の運賃が高いということは事実であります。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 だから援助というが、高くて損するじやないかということですが、それでけつこうです。
  128. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 ちよつと関連質問をさせていただきます。輸入貿易がきわめて緊要であり、それに対して政府におかれてはいろいろな施策を講ぜられております。いずれもまことにけつこうなことでありますが、ただここに運賃に関連して御考慮を願わなければならない問題があるのであります。それは運賃が近ごろ非常に高騰して来ておる。しかもこれがユーザンスの恩恵を受けることができないので、すぐ金融してこの運賃をまかなわなければならぬ。この運賃が厖大な数字に上りまして、輸入業者が非常に困難をいたしておることは御承知の通りであります。この点について政府では今後どういうふうな御計画を持つておられるか、また計画を持つておられましても、その実施が遅れては非常に困難する次第でありますから、いつごろどういうふうにするかということを、この際お伺いいたしておきたいのであります。
  129. 池田勇人

    池田國務大臣 お話の通りに最近運賃が暴騰いたしまして、従つて輸入業者が運賃込みでなしに品物だけのライセンスをもらつている場合には、それだけ別個になるわけでありますが、運賃を加算していない場合におきましては、やはりユーザンスと同じような方法で金融に不便のないようにいたして行きたいと思つております。
  130. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 わかりましたが、いつごろからそれができるようになりますか、お伺いいたしておきたいと思います。
  131. 池田勇人

    池田國務大臣 ただちにやります。
  132. 横田甚太郎

    ○横田委員 米国の対日援助を中心に考えたい。アメリカ日本を援助したということについて、非常に喜ぶ日本人と非常に怒る日本人とがある。そこでアメリカの援助というものが一体どんなものか。第一点として聞きたいことは、アメリカの議会において援助するという金額がきまりましたならば、その金が日本に来ないで、その額に相当する物が入つて来る。しかも入る物の値段はアメリカ人がかつてにきめるのであつて、われわれにはそれがわからないものがある、こう解釈していいのですか、これをひとつ……。
  133. 池田勇人

    池田國務大臣 金で来ずに物で来ているのはお話の通りであります。値段はアメリカの方の値段できまると思います。
  134. 横田甚太郎

    ○横田委員 援助の内容において日本で非常に困つたものが多いのであります。一例をあげますと、アメリカ日本に与えたいわゆる援助の中で一番大きなものだと言つているのが食糧であります。その食糧も非常に配給辞退が出ておる。このことが事実なのです。こういうようなことを数字をあげますと、これは大体わかるのですが、日本国内の配給辞退総量は昭和二十四年の十一月には三万四千四百四十七トンだつたのです。それが今日いわゆる昭和二十五年の九月には二十一万五千四百七十大トン、こうなつております。それが外国食糧の場合を例にとりますと、外米が二十四年の十一月が三万六千八百五十八トンであつたものが、二十五年九月には四十五万三千三百五十三トン、こうなつておる。これは非常にふえているのです。だから配給辞退というものは実際われわれも見ているのです。しかも納得の行かないものがあるのです。農村におきましても、これは農林大臣にあとで伺いますが、米穀検査は非常に嚴重になつている。いい米までが四等になり、五等になつているのです。ところが外国から入つて来ます米は非常に悪いのです。悪いにもかかわらず非常に高い値段で入つているのです。これがたしか食確法が上りました当時に、政府答弁としていただいたものですが、アメリカから入つて参りましたカリフオルニアの米は一石が一万七百二十円で入つているのです。当時日本の米は四千二百五十円だつたのです。このような形において非常に高い値段で入つて来ておる。高い値段で入りましたところのアメリカのこの米が六千三百円で売られている。日本の場合は四千二百五十円の米を、六千三百円で売れば手数料いろいろ出ます。ところがアメリカの場合は一万七百二十円のものを六千三百円で売るのですから、これはいろいろな補給金を出さなければならないことがわかると思います。しかも出してもらつたものが非常に品物が悪いから配給辞退がふえる。日本人が見ましても、日本の五等米より悪いものが非常に多い。水で洗つていただいただけでは食えないような米が出ておる。こういうような例をわれわれは見るのです。だからアメリカの援助を受ける場合におきましては、内容その他においてはいろいろな注文ができる、また品質についてもこちらから何とか、前であろうとあとであろうと苦情を申せるとか、陳情を申せるとでもいいますか、そういうようなことができるのですか、できないのですか。
  135. 池田勇人

    池田國務大臣 いらないものは原則として持つて来ておらない。アメリカのカリフオルニア米はお話の通り内地米よりも高うございました。これはガリオアでなしに一般のコマーシヤルといたしましても、シヤムの米とかビルマの米は高い。われわれは徐々に内地米を国際価格にさや寄せして行つて、補給金など少くしよう、こういう意味でやつているのであります。
  136. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは一ぺん大蔵大臣に見ていただきたい。(品物を示す)日本の農業は多肥農業であるということは御存じでしよう。これは農林大臣よく御存じですが、この袋には「援助物資」「米国硫安」と書いてある。これを日本の原料で受けるのです。しかもやみで入つたものではないのであります。これが入つたルートは長野県の農業協同組合に入つている。東京で扱いましていわゆる日購連からで、これが援助という形において入つている。いわゆる外安——米国硫安である。これを考えていただきたいのです。これはかなづちでたたいても割れはせぬ。レールの上に置けば汽車は脱線します。日本の農村では、こんな小さい石さえ農民は田畑からほうり出している。それなのにこんなに大きな溶けないかたまりを田畑の中にどんどんほうり込む。そんなことできますか。こんなものはどうもしようがないのです。これは廣川さんに聞きたかつたが、大蔵大臣にも伺う。こんな外安が念力で溶けるかと聞きたかつたのです。こういうようなものを持つて来られて、これがパリテイ計算の一要素になつて、米価は安くきめられる。安くきめられた日本の米や麦があればこそアメリカの悪い米が高く売られる。こういうことになると、援助を受けた場合に農村では非常に損だ。だからドツジ・ラインは農村にしわ寄せすると言われましたが、これを現実に見たときに今の政治は農村から収奪するものとこう考える。こういうような点に対しては、大蔵大臣はどうお考えでしようか。
  137. 池田勇人

    池田國務大臣 終戦直後におきましては、日本人は食糧のために相当困り、餓死する者もあるじやないかということを心配されたのでありますが、アメリカの援助によりまして、援助ばかりとは申しませんが、そういうことがなくて今日まで来たということに対しては、私はアメリカの援助を感謝いたしているのであります。品物によりましてなかなか使いにくいものがあるかもわかりませんが、これはやはりもらつたものでございますから、できるだけ利用して行きたいと考えます。
  138. 横田甚太郎

    ○横田委員 今の言葉の中で、もらつておるという言葉があつたが、ほんとうにもらつているか。援助は日本アメリカからの借金となつてしまつた、それをとりに来るのはアメリカとして常識じやないか。
  139. 池田勇人

    池田國務大臣 もらつているというのは、援助を受けておると訂正いたしておきます。それからこれはやはり非常に窮迫したときには、こちらが十分でないものも、望んでないものもあるかもわからない。しかし全体としてこういうことは考えなければならない問題だと思います。
  140. 横田甚太郎

    ○横田委員 窮迫した場合と言われますと、そこで抽象論になるが、窮迫でない。日本の中でできる国内の硫安は余つている。たくさんあるのです。しかも九万二千トンも輸出しているので、こんな場合におきましては、こういう日本水田に使えないかたいものはいりませんということは言つてはいけませんか。窮迫している、窮迫しているというが、お前のところは窮迫しているのだ、窮迫しているのだと言つて、一時中共地区で三千万人の中共の人が死ぬと報道された新聞記事と同じで、窮迫というものは今日においてはつきりと申しますと、遊んでいる人が窮迫しているので、働いている人はちつとも窮迫していなかつた。それを窮迫するように政治の力で働いている人人を収奪している。この硫安は……。
  141. 池田勇人

    池田國務大臣 いつ向うから来たのか存じませんが、最近では硫安はガリオアで来ていないと考えております。
  142. 横田甚太郎

    ○横田委員 これはいつ来たということをはつきりしておきますが、二十五年九月二十七日ごろに出荷された。これは通産省に輸入されまして、小倉ビルにある新日本肥料に参り、それから永代肥料に参りまして、日購連に参りまして、村へ行きまして、村から農民に配給された米国硫安で、援助が来たと農民は喜んで買つた。買つたがやれない、やれないので困るからと返そうとしたけれども、これが全部だめだつたのですか、これは大体その村に入つただけでも十五トンある。これは八貫目の紙袋に入れてあるのです。値段は六百八十五円なんです。それでこれがまだ公団に五十九万トンあるといわれているのです。こういう経路で入つたのです。こういうふうな困るものも援助の中にはあるということを大臣は認められるか認められないか、これなんです。だから援助というものは、われわれ働いている者にはあまりありがたく受取れないのです。残したい米をとられて、そのかわりに配りようのない少い外国製のタバコをもらつたり私も今は議員としてここへ来ておりまして、私は農業と縁のない人間のように見えますが、実は農事実行委員長も、農協の仕事もしておりました。そのときに、米のないところから米を出せと言われて出さなかつた者もおどかしつけられて出します。今度はタバコをくれます。足らないタバコをくれるのですが、タバコの袋を破つて本数をわけるのに往生するような少数を配れというのが実態なんです。その場合に日本農民といたしましてはタバコはほしくない。かたい硫安はほしくない。ほしいのは米を残しておきたいのです。しかも飯米を削つても出さなければならぬ。だから大蔵大臣に聞きたいというのは、援助というものはあまり押売りされますと、日本人で迷惑するところの階級が非常にたくさんある。これがふえておる。これをお認めになるか、ならないか。
  143. 池田勇人

    池田國務大臣 もらつて迷惑になるものは、もらわないように話をしなければならぬと思います。しかし私は非常に援助によつて国民は助かつた考えております。
  144. 横田甚太郎

    ○横田委員 第一具体的な問題として、さきのこういうような硫安は一体どういうふうに処置したらいいのですか。たとえば單位農協におきましてこれに困つているのです。あなたたちにしてはこの金はわずか二十万、しかしその村だけが二十万円で、この事実をさえよう言わないところの村がたくさんあります。そういうような村の農民たちは、こういうような援助物資に対してはどういうような意思表示をしたらいいか。政府にはこれを受付けるところの機関があるかないか、これを承りましよう。
  145. 池田勇人

    池田國務大臣 そういうものは前は肥料配給公団の方で取扱つてつたと思いますが、もしいらないものであるならば、適当の方法で申し出られたらけつこうだと思います。
  146. 横田甚太郎

    ○横田委員 適当な方法とは一体どんなことなんですか。
  147. 池田勇人

    池田國務大臣 肥料の所管は農林省か通産省にお聞き願いたい。
  148. 横田甚太郎

    ○横田委員 そう逃げられてもだめです。池田さんは地球をまたにかけて歩いておられるが、私たちは日本の農村をくまなく歩いている。従つて考えも違うでしよう。肥料は農林省と言われますけれどもそうじやない。それでは伊藤忠の買うたところの肥料はどうしたのです。肥料公団は今清算中です。清算委員会というものを持たれまして、ここで二十五年十二月、京都、大阪付近の公団の倉庫にあつた、それは大蔵省が今管轄しておるが、そこに千七百トンの石灰窒素があつた。これの乱袋が在庫品だという名目のもとに六貫目を百八十円で売つている。しかも売つているのは随意契約です。しかも袋は非常に上つておるにもかかわらず、マル公で七万五千袋売つているのです。この値で百人十円で買いましたところの石衣窒素が、これが農村に渡りましたときに四百二十円で売られているのです。これは大蔵省でやつたのです。ただいま肥料のことは農林省へと大蔵大臣は言われますけれども、あなたは物覚えがいいはずですから、自分の省でやつておる仕事はおそらく忘れておらないと思う。従つてこの問題は大蔵省だから肥料の問題において、この方法が適当な方法と言われるなら、その適当な方法と、それから伊藤忠においてこういうような事件が起つた、こういうことは御存じであるかどうか、この二点を伺いたい。
  149. 池田勇人

    池田國務大臣 存じておりません。いつ配給になつたかということは、昭和二十五年と申されますが、その事実を調べてみなければならぬと思います。しかしてまた肥料公団の清算事務はやつておりますが、清算事務のこまかいもの、すなわちどの肥料かいつだれに売つたかというようなことは大臣としては知つておりません。
  150. 横田甚太郎

    ○横田委員 しかし小さいことも一つ一つあなたが判を押すのでしよう。あなたに対しては小さいことだが、こつちには大きいことです。あなたは小さいとか大きいとか、なまいきなことを言いますけれども、農村においては小さい米を集めているからこそ、いわゆる供出富士ができる。あなたはいつもそれでごまかす。大きなことを知つているとほらを吹いている。大きなこの内容は貧乏な日本です。貧乏な日本を背負つて今日までやつて来たものは日本の農民であり、労働者です。だから、こういうような意味合いにおいてこれを調べて、あなたの権限としてできることは一体どんなことか。もう一つ適当な方法と言われましたが、大蔵省の管轄においては、農民が意思表示をするところの適当な方法とは一体どんなものですか。だれに聞くのですか。
  151. 池田勇人

    池田國務大臣 清算事務遂行上の個個の問題について私が決裁するということは、これは事実上不可能なことで、私は知つておりません。たとえば税務署の署長がだれだれの税金を幾らに決定した、こういうことまで大蔵大臣は知ろうはずはないのです。だから、もしいらないものを売つたのなら、これは買いもどし制度があるかどうか研究さしてお答えすることにいたします。
  152. 横田甚太郎

    ○横田委員 いつお答えしてもらえますかということが一つ。それから税務署のことについてはいつもぼろが出ますよ。あなたは税務署の小さい決定を知ないと言うたが、あなたの税務署は乱脈ですよ。一ぺん納めたところの税金に対して何回もとりに来ています。実際事なんです。納めてやれやれと思つているうちに、また督促状が来る。しかも一箇月してから……。あなたは外国事情ということをよう言われるけれども日本のことは御存じない。しかし、あなたの選挙をやられるのは日本である。だから広島はあんなに負けるのですよ。(笑声)だから、もつとはつきりしていただきたいのは、援助々々ということをもう一回はつきり聞きますが、あなたが言いますところの援助というものは、第一金で入らない、物で入る、その中にはいらぬものもあるし、いるものもある、いらぬものは返すようにしなければならない、こう要約していいのですね。
  153. 池田勇人

    池田國務大臣 必要度の少いものもあるでございましよう。もともと日本状況を見まして、こういうものがいるだろうというので向うから送つて来るのであります。情勢の変化によりまして、さほどの必要のない場合も今までの例としてはありました。しかしたとえばすずとか鉛なんかは、当時これはもうたくさんで困つた言つておりましたが、ずつと置いておきますと、非常に役に立つようなことがあるのであります。そう一概に物事というものは言えぬと思います。
  154. 横田甚太郎

    ○横田委員 特に私ら農村関係ですから、物の方から伺いたいのです。その物が入つて来た、こうおつしやいますけれども、援助の物を物として受取つたところの感覚が持てないのです。なぜかと申しますと、アメリカから米も来たかもしれない、小麦も来たかもしれない、あるいは綿が来たかもしれない、あるいはくわにするところの鉱鉱石が来たかもしれない。しかしこれはあなたたちがわれわれに渡すときには、いつも金をとつている。国民は何もただでもらつているわけじやない。配給公団は支払いを一箇月待つてくれたことがない。みな国民アメリカからの米であろうが、あるいはカナダの小麦であろうと、何であろうとかんであろうと、これはみなわれわれは現金を払つてつている。着物であろうと何であろうと、アメリカの援助物資だといつて、これを国民が、ただの一回でも無料でもらつたことはない。援助援助と言われて、これがいつの間にかたいへんな借金になつている。その点について非常にふしぎに思うのでありますが、この援助物資を——日本国内的に民族自決権を発動いたしまして、りつぱな政権ができた場合において、今のように中共に向けて、あるいは朝鮮においてアメリカと同じように行動をとれ、近い東洋と争うて海の向うのアメリカと一つになるような政策に反対する政権ができた場合に、前のが援助だからというて、ソビエトに対して今やつているように船の数を調べると、こういう形で来られては、はなはだ迷惑だ。援助々々といつて、実は借りたのです。借りた援助に対して、われわれにとつてはみな現金で払つている。(「財政というものと個人経済との区別をよくわきまえてやらぬと全然政治家としてだめだよ」と呼び、その他発言する者あり)
  155. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 静粛に願います。
  156. 池田勇人

    池田國務大臣 物で来たものは金にかえまして、御承知の対日援助見返資金特別会計に払い込み、そうして日本経済の復興に使つているということは御承知の通りであります。
  157. 横田甚太郎

    ○横田委員 尾崎君がやかましいですから、大蔵大臣なつてから言うように言うてください。(笑声)君ら、まだ大臣になれないから默つておれ。それでいろいろおつしやいますが、ちようど自由党のやじがあなたの言いたいことを言つておるのでしよう。しかし、そのやじの中にもありますように、あなたは日本経済を復興したと言われますが、その復興は非常に迷惑だ。民主主義だといつて労働者の首を切る。町にはパンパンが立つて街頭の装飾品のようになつておる。失業者か激増しておる。農村は非常に疲弊しておる。何が復興なんですか。援助だ援助だと言われておるが、この援助に対してわれわれは金を払つて、その金がたまつて見返り資金になり、見返り資金があなた方のすきなような形になつて、日発にも国鉄にも出されるでしよう。その結果としてできるものは、特別二等車であり、寝台車であつて、三等車は放任され、人民大衆には縁のないことのみやられて行くのであります。この点でわれわれは非常に迷惑だと思う。こういうような考えに対して、大蔵大臣はどういうふうなお考えを持つておるのですか。
  158. 池田勇人

    池田國務大臣 アメリカの対日援助で、発電もできめるいは船もつくられ、生産もふえて来ておるのであります。これをありがたくないというのはあなたぐらいのものでございましよう。
  159. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしたら電気料金を御存じですか。一例をあげますと、電気料金が一つの問題になる。アメリカの援助で発電ができて、電気がいよいよ送電されるときに、一体値段は何ぼですか。肥料をこしらえる場合は、これは一キロが五十九銭だと思います。それから水力発電の場合は二円二十銭、火力発電の場合は九円八十銭になつております。これはたしか間違いないと思います。考査委員会でずいぶんやつたんだから間違いないと思つておる。そうして発電されたところの電力量は日本において十分あるにもかかわらず、まず第三国人に先に使われる。日本におきましては、一般大衆は冬の寒い燃料不足の時代におきましても、一家族について二十キロ以上は使えないのであります。それ以上を使いますと、水力発電の料金でとらないで、九円八十銭の方でとるのであります。だから、援助だということで受取りましたところが、援助の結果はわれわれが苦しめられ、援助物資によつて圧迫され、援助物資によつて日本再建がされたというその実態からさらに圧迫されて、農村の疲弊というものが非常に重なつて行く。労働者賃金ペースもそうだ。援助あればこそあの食えない賃金で働かされるのであります。だから、援助というものがあればこそ警察予備隊ができるのであります。援助というものがあればこそ妙な単独講和とか多数講和とかいうような、日本人にはわけのわからない話が進められるのです。考えてみてもわかるじやないか。今度の戦争はどこを中心にして起つたのです。日本は何もアメリカと初めから戦争をやつたのではない。近衛内閣時代から、そのずつと以前から、いわゆる中国との問題が中心であつたのであります。その中心でありましたところの中国が戦争の発端でありまして、戦争の発端でありましたところの中国との講和問題を論議せずに、逆に戦争の後ほど中国を援助に参りましたところの戦争の原因でないところのアメリカとの講和が論議されておる。これというのも、一にアメリカが援助しておるという非常に恩をかぶせたところのやり方から来ておるとわれわれは思う。だから援助のからくりというものを大蔵大臣はもう少し日本人的に解釈して、日本の全部の人に訴えて、日本の独立心を喚起するような気持を持つてもらわなければならぬ、私はこう思う。そうしないと吉田さんの求めて得られないところの愛国心が出て来ない。あなた方の愛国心は説教なんです。だからこういうような意味合いにおきまして、援助物資が非常に困るのだという大衆が野にも山にも充満して来ておる。これはみその値上り、米の値上りと密接に結びついて来ておるのであります。こういうような点につきましては、大蔵大臣は今後外国の人と会うときには、特に日本国民生活から割出して、あまりにも多いところの財閥に対する援助の方法を改めない限りにおいては、国内であぶないことになります。それがいわゆる日本における赤色勢力をふやす原因になるんですよ、こういうことを言つたらどうですか。
  160. 池田勇人

    池田國務大臣 私はあなたとは見解を異にしております。
  161. 横田甚太郎

    ○横田委員 どういうふうに見解を異にしておられるのですか。
  162. 池田勇人

    池田國務大臣 アメリカの援助は、日本経済再建に非常に役立つ、かように考えております。
  163. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一回くどいようですが伺つておきます。労働者が首を切られても、低賃金賃金ベース改訂を望んでそれが得られなくても、米価が安くて困つても、強権供出で農民が自分の持米を残せず、そのために非常に困つても、こういう実態があつても、なお援助というものは日本経済日本人全体のために再建した、こういうことを言われるのですか。
  164. 池田勇人

    池田國務大臣 援助がなかつたならば、今困つておるより以上の困り方をすることになるのであります。
  165. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一回伺いますが、援助の額は非常に多い、非常にありがたいものだ、こういうふうに思つておられますか。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 累計二十億ドルになんなんとしております。非常に多くてありがたいものだと考えております。
  167. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうすると、ドツジ氏がアメリカの議会に出しましたところの報告書によると、これほどのわずかな援助でこれほどの多くのことが達成された国はないと言つておる。向うはちよつとやつたのにあんなに大きいものができたと言つておるのに、あなたは小さいものに対して非常に大きな援助をもらつたと思つておる。この弱い政府の腰では、日本の独立は保てなくなりはしませんか。われわれはポツダム宣言を守つて、東洋の近いところと仲よくして行きたい——中共までは行けなくとも、インドくらいまでは行きたい、こういうふうに思うのです。(「早く同胞を帰せ」と呼ぶ者あり)帰すよ、おるんだつたら帰すよ。私の言うのは、もう一ぺんはりきりしておきますが、共産党は、何もソビエトにこびたり、中共にこびたりしておるのではない。現在の日本政府は中共とかソビエトには了解運動をやらぬ。行くのは池田さんとか、アメリカに近い人々がアメリカへ飛行機で行くだけじやないか。日本にも親ソ的な者はおるのだ。ソビエトに対して引揚問題を解決したいというならば、政府があつせんして中共とか、あるいはソビエト地区に対して了解運動をやらしたらどうだ。こういう了解運動もやらさずに何を言つておるのだ。そういう意味合いにおいて、大蔵大臣はもつと日本の財政問題を考えていただきたい。現状では援助というところの妙なやり方のために非常に困つておる、これは事実なんですから、こういう意味合いにおきまして、援助というものを非常にありがたく受取れないところの階級層が、日本の野にも山にもたくさん出て来たのです。ここにいわゆる国内治安が問題にされるところがあると私は思うのです。こういうような意味合いから、大蔵大臣も今後よろしく援助ということについて、もつと日本の多数者に従われるようなすなおな気持なつていただきたい。なれと言つても、無理かもしれぬ。選挙のときにお目見えするほかはないでしよう。そういうときには、こういうような援助のために非常に困つた、こういう池田さんの売国政策じや困るという気分が充満しているということをはつきり御覚悟願いたい。そういうふうな気持の人間に対しては、大蔵大臣は今後法務府に頼む、それ以外に方法がないのか、あるのか。あるいは経済的にそういうような形にせずに、うまく持つて行けるような財政政策が立てられるのか、この点を伺います。
  168. 池田勇人

    池田國務大臣 アメリカの援助で困る人が野にも山にも充満しているというのは、とんでもないことだと思います。私はやはり援助を続けてもらいたいという気持が、野にも山にも充満していると考えます。
  169. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは大蔵大臣はもういいです。
  170. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君の関連質問を許可いたします。
  171. 林百郎

    ○林(百)委員 援助の点ですが、もらつた、もらつた大蔵大臣言つているのですが、もらつたことになつたのですか。
  172. 池田勇人

    池田國務大臣 もらつたということにはなつておりません。これはこの前からの委員会で申し上げた通りであります。もらつたという言葉を使つたなら、援助と直してください。
  173. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君、さつき大蔵大臣はちよつともらつたと言いかけてやめた。そうして援助と言つた
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 それではもらつたのと援助とはどういうふうに違うのですか。
  175. 池田勇人

    池田國務大臣 アメリカの対日援助というものは、この前から議論のありましたように、もらつたことには今なつていないのであります。これは以前の速記をごらんくださればわかると思います。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 実は国際的には債務になつております。ダレス特使との話合いの間にも、アメリカ側では二十億ドルの債務を日本は負つていると言つておる。それからアメリカの八十一議会でも、二十一億ドルの債務がある——債務ということになれば、これは無條件の援助ではない。権利義務の関係だと思います。そういうように認められるかどうか。要するに日本の国としては債務を負つているのであつて、決して恵みを受けておるのではない、権利義務の関係が残つておるというように解釈されるのか、あるいはただ恵みでもらつたのか、その点をはつきりさせてもらいたい。
  177. 池田勇人

    池田國務大臣 この前もお答え申し上げましたように、債務と心得ております。債務と心得ておるから援助でないという結論にはなりません。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 債務ですと、別に恵みを受けておるわけではないのだから、こちらが自主的に運営していいわけでしまう。権利義務の関係なんだ。われわれは債務として相手方に返済する義務を負うならば、これをわれわれが自主的に使う権利が当然ある。その点はどうですか。
  179. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君、あなたは非常にこだわつていらつしやいますが、さつき大蔵大臣の言つた意味は、もらつたということをちよつと言いかけてやめたと思うのですから、あまりこだわらないようにしてください。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 援助々々と言いますか、債権債務としてわれわれは将来返さなければならぬわけです。返すものならば、借りた方の日本の国の都合のいいように自主的に使えばいいのであつて、今横田君の言うように、むしろ迷惑なものがある場合には、自由に断ることができる、また自分の投資したい先には、自由に投資したらいい。それをマツカーサー元帥の承認を得なければ使うことができないということでは、これは債権債務関係ではないじやないですか。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの援助は、われわれは債務と心得ております。しこうして援助する場合において、援助を受ける方が非常に発言権を持つか持たぬか、これは別問題であります。
  182. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一点だけ聞いておきます。援助に値段があつた、こう解釈していいのですか。私は援助というものはくれるのだ、もらうのだ、あるいは返すのだというような、ややこしいものではなく、弱いものを助けてくれるために物を送つてくれたのに、それに値段があつたというふしぎなことがあつたのですか、その点だけはつきりしておいてください。
  183. 池田勇人

    池田國務大臣 御質問の趣旨がわかりませんが、物で援助して来ておるのであります。
  184. 横田甚太郎

    ○横田委員 物で援助して来ておる、その来ておるものが援助だと言つておりながら、それには何円あるいは何ドルという値段がついておつて、あとでいわゆる引取りの勘定、決算勘定が非常にきついものであつた、こう解釈していいのですか。
  185. 池田勇人

    池田國務大臣 物にはそれだけの値段がございます。それの累計が二十億ドルになんなんとしておるのでございます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党の聞きたいことは、債権債務だ、要するに債務だということになれば、借りたものはこちらが自由に使うことができるわけなのです。ところが自由に使える建前である債務に対して、非常に政治的な條件がついている。投資先にいろいろの制約條項がついている。これでは債権債務ではないじやないですか。だからもしそういう政治的な條件がついて、こちらが自由に使うことのできないようなものだつたならば、それは断ることもできるでしよう。それに対して全然こちらが自主性を持つていないじやないですか。普通借りたものであるならば、借主がどう使おうと、ただ借りた者に返しさえすればいいのだ、どう使うかということは、借主の自由にすることのできるのが貸し借りだと思うのです。ところがあなたは、債務だと言いながら、この債務は日本が自由に使うことができない。しかも返さなければならない。二重の負担を負うことになる。しかもこれに対して投資先の選択もできない。買い入れる物の価格の決定もできない。買い入れる自由すらもない。しかも返さなければならない義務がある。このことについては、日本一般の人たちも、こうした経済援助は「政治的なひもをつけられる必要はないのではないか、経済的な援助と政治的なひもとは別ではないか、援助についてはもつと自主性を持つべきではないかという声が、十分出て来ておるわけです。その点について大蔵大臣は、これは実際債務だとはつきり言うならば、この債務についてどうしてもつと自主性を持たないのか、われわれは疑問を持つておるわけです。その点をはつきり答弁してもらいたい。もう一度申しますが、結局政治的なひものついた債務を負うということは、日本の国がその国に隷属することになる、日本の国が植氏地になることになる。それは援助ではなくして、かえつて大きく国を売ることになる。(「ノーノー」)それについてどう考えますか。
  187. 池田勇人

    池田國務大臣 林君は弁護士で、国内法の債権債務は非常にお詳しいようでございますが、国際的の援助というものは、はつきり申し上げますが、へーグ條約に基いて、占領者は、被占領者の生活を続けて行くようにしなければならぬということによつて来ておるのでありますから、あなたが民法上の債権債務だけで国際問題のこういうことを片づけようとするのは、少し行き過ぎだと考えます。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 たとえば西ドイツあたりでも、はつきり自主性を持つておるのです。そうしてそれが本質的に援助にならない場合には、断つておるのです。あなたは自主性のないことをごまかしておるわけです。西ドイツと同様に、この援助物資については、もつと自主性を持つべきではないか、またあなたは、これを援助心々と甘く見ておるけれども、それは援助ではない、大きな負担になる。場合によつては、国を政治的に隷属させる、植民化するという大きな危險のある援助であるならば、むしろ断つた方がいいのではないか。終戦処理費と同じものが出ておるわけです。断つた方がいいのではないかということを私は言つておるのです。
  189. 池田勇人

    池田国務大臣 占領方式が違つておるのでありますから、西ドイツと同様に行かない場合もあるのであります。私は今までのアメリカの対日援助は、非常にありがたいものと考えておるのであります。あなた方と見解が違いますから、御議論として承つておきます。
  190. 横田甚太郎

    ○横田委員 農林大臣伺います。まず第一に、前の国会で尋ねましたときに、農林大臣は、朝鮮に米麦を貸しておるということはお認めになつたのですが、これは等質等量のものを六十日以内に返す、こういう約束で貸しておるのだ、こう言われましたが、この点に関してお尋ねいたします。そのときにも聞いたのでありますが、私の時間がなかつたのでお答えを得られませんでしたが、もう六十日以上たつておるのでありますから、その決算はどうなつておりますか。
  191. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 ぼつぼつ等質等量のものが入つて来ておるように聞いております。こまかい数字は事務の方から答弁いたさせます。
  192. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 あれは等質、等量のものを返す約束で出したわけであります。数量は、はつきりただいま記憶しておりませんか、漸次もどりつつあります。
  193. 横田甚太郎

    ○横田委員 もどりつつあるというのは、言葉です。すなわち等質、等量のものを返すというのは、数字じやないですか。その数字を聞かなければ、もどりつつあるというような形容詞でわかりますか。
  194. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 数字は明日でも差上げます。
  195. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは明日いただくことにして——明日は日曜です。(笑声)委員長、こういうことは整理してくれなければ困りますよ。
  196. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 なごやかでけつこうです。これは明後日に願います。
  197. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、広川農林大臣が一番力を入れておられるのは、いわゆる米麦  主要食糧の一割増産、これは間違いありませんか。これが農政の中心ですか。
  198. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 農政の中心は、予算面全般が中心であります。
  199. 横田甚太郎

    ○横田委員 その中におきまして、一割増産はどのぐらい比重を占めておりますか。
  200. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 増産の第一目標を示した程度であります。
  201. 横田甚太郎

    ○横田委員 第一目標を示しておられるのですが、日本にやみ米、やみ麦、やみ小麦があつたということはお認めになりますか。
  202. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 やみ市場のあることも承知いたしております。
  203. 横田甚太郎

    ○横田委員 やみ市場の中にやみ米、やみ麦、やみ小麦があることをお認めになりますか。
  204. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あることも承知いたしております。
  205. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、そういうものの数字は一体どれくらいあつたのですか。
  206. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 やみでありましてわかりません。(笑声)
  207. 横田甚太郎

    ○横田委員 広川農林大臣は非常にとんちにたけておられるが、そこで私は伺いだい。やみであるからわからないと言つておられるが、やみがなくなつたのだからと自由経済を云々しておられる、供出後の自由販売、こういうことまで言つておられる、しかも匿名供出まで言つておる。やみがあるからわからないというのは、社会党、民主党、共産党の言うことです。自由経済のあなたの言うことではない。私が解釈します政策資料より判断して、やみの数字は米と麦と合算して一千万石あつた。こういうことは大体農林省並びに食糧庁の通説であつた。こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  208. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 御解釈はごかつてに願います。
  209. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは安孫子さんに聞きます。
  210. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 やみへ流れますものの推定でありますが、これはいろいろの見方がありまして、もちろん私どもとしても、はつきりしたことを申し上げるわけに参りません。根本的には生産量がどの程度あるかということが基礎になるのであります。これは統計技術の進歩に伴いまして、また整備するにつれまして生産量が上つて来ております。従来やみとして考えられておりましたものが、帳面づらにだんだん載つて来たという傾向は争われないだろうと思います。終戦直後作柄が悪かつたと申しましても、五千万石の生産がありました。それが六千三、四百万石という数字に上つて参りました、一面これは増産の効果もございます。しかしながら従来統計数字に載らなかつた部分が数字の上に出て来たものがあろうと思います。それでそのうち半分が供出されると考えまして、あとの半分が自家用保有量ということになるわけであります。その保有量のうち、今度は販売用としてただいまお話のありましたやみというものがどの程度あるかということになろうと思います。それでやみと申しましても、一面生産者が自家消費に充てるものもあります。それから販売用に充てられるものもあろうと思います。あるいは物交用に充てられるものもあろうと思います。そのうち販売用並びに物交用として用いられます米あるいは麦類の数量いかんということが結局お尋ねの要点でありまして、その数量をどう判定するかということは非常に困難なわけであります。いろいろ申し上げましたけれども、具体的数字でこれくらいあるだろうということをこの際申し上げますことは、いろいろなさしさわりもありますので、御容赦願いたいと思います。ただ相当あることは私どもあると思います。
  211. 横田甚太郎

    ○横田委員 大体大臣は自由判断で答えられた、政府委員も自由判断で答えられておる、それを大政党たる自由党側から、共産党だからこまかく答えることはないと言うのは何事だ。
  212. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 そういうことは委員長聞いておりません。
  213. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではあらためて報告いたします。私が聞いたことは事実でありますから……。
  214. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 質問を継続してください。
  215. 横田甚太郎

    ○横田委員 広川農相に聞きたいのは、一割増産に力を入れておられる、しかしこれは安孫子さんの答えでもやみがないとは言えない、あなたはあるとも言つておらないし、ないとも言つておらない、やみだからわからないと言つておる。これが表面に出て来るのが一割増産の数字であつて日本生産量は実際は上らないのではないかと思いますが、これはどうですか。
  216. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 その点はちよつと見解を異にしております。品質の改良あるいは病虫害の防除、土地改良等によつて、反当の増収は必ず私はできると思つております。
  217. 横田甚太郎

    ○横田委員 そこで伺いたいのは、そういう形で増収できると言われますが、増収するには農民に一つの意欲が必要だ、何かの目標がいるでしよう。資本主義ならもうけたい、共産主義なら奉仕したい、こうなります。これが事実です。あなたが言うところの意欲とは一体何ですか。品種の改良をやつた、あるいは温床育苗をやつた、そうしていろいろよけいに、米をつくつたと、いろいろなことを言われますけれども、かえつて農村においては米や小麦をたくさんとればやみ値が下るから、結果においては——これは私の主観を言うのではない、農民としては結果においてはよけいつくらぬ方が得だという結論になりはしませんか。
  218. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 意欲には、分析すればいろいろあると思います。第一日本人たる以上は、自給度を高めたいという一つの大きな意欲があるということを御承知願いたい。なおまた価格の面についても、これを助長する意味においても米の価格をわれわれは上げたのであります。
  219. 横田甚太郎

    ○横田委員 日本人たる以上はと二言目に言われますが、その日本人はいろいろの政党にわかれておる。農民組合まで持つている。現在の社会におきましては、すべて個人の経営なんです。だから百姓をしておりましても、何割米をよけいにつくりましたところが、供出米を先に出しましたところが、決してその人の責任を、全部政府が最後まで見てくれるものじやない。だから米をつくるということも、やはりもうけが中心になる。自分にどれだけの利潤があるかということが中心になる。だからそれに対する価格的な裏づけ、経経的な施策、これを聞いている。
  220. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 ですから時代に適応するように、米の価格を徐々に上げて参つて来ておるのであります。
  221. 横田甚太郎

    ○横田委員 米の価格を徐々に上げておられる。それと同じように、徐々に税金も上げている、これはよく御存じですか。
  222. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 農村の税率は前よりもずつと低くなつておるように承知いたしております。
  223. 横田甚太郎

    ○横田委員 国の税金では安くなつておりましようが、地方税はふえている。私たちは大阪におりまして、近郊農村の例をとりますと、大体私たちの農地区におきましては、四反半ほどつくつておる。今度米価が上りました結果、地方税が三割上つた、それを二割に値切つたところが、反について千円ずつ損になつた、こういう現象がある。これは農林大臣として見ます場合におきましては、非常に困る結果になる、あなたの意思に沿わない。これは農民に間違つて税金をかけたんですか。それともまた税率の中に、こういうふうに米価を追つて税金をしぼる形があるんじやないのですか。
  224. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 地方税も低くなることを望んでおります。
  225. 横田甚太郎

    ○横田委員 今は高いと思われるのですか。低くなることを望まれるなら、今は高いのですか。
  226. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 あなたの言葉をかりていえば、だんだん高くなるということでありますから、だんだん低くなるととを望んでそう言つておるのであります。
  227. 横田甚太郎

    ○横田委員 私はこういう意味合いにおきまして、一割増産運動というものが、非常に農相の朗報的の政策によつて災いされておると思います。できなくなつてしまつたこともやつてやろうというのがあなたの政策の中心であります。いつ聞いてもそうです。これは占領下の農林大臣としてはこういう言いまわしが必要かもしれませんが、一割増産を問題とされるなら、もう少し価格の点において、あるいは農業施策の点において、農村の実情を見てやつていただきたい、こう思います。もう一つ、農村におきましてはこうなつております。今あなたが言われましたように、米価が上つた。この上つた基準は言うまでもなく、一等が五千七百六十六円五十銭、三等が五千五百二十九円、五等が五千四円、そうしますと、三等はあまりありませんので、四等を例にとりますと、一俵について二千百五十五円農民がもらわなければならぬ。政府はお払いになるだろうと思いますが、実際受けました農民は、これだけ金をもらつていない農村がたくさんあります。大阪府吹田市神境町においては、一俵について四等を基準にいたしまして二千百五十五円もらわなければならぬものを千六百二十円しかもらつておらぬ、あとの金はくれないのです。それから今度は吹田市の川面におきましては、三等、四等といろいろの基準が出ておりますが、ここにおいてもやはり千六百二十円です。埼玉県におきましては千六百円しかもらつておらない、青森県におきましてはほとんどもつておらないところがあるのです。この原因は一体どこにあると思いますか。
  228. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 米の価格が正式にきまるのが遅れたので、多分仮払いの額をあなたがおつしやつておるのだろうと思います。
  229. 横田甚太郎

    ○横田委員 仮払いの額が遅れておるから、それじやいけない。早く払うようにしてやろう、こういうふうに思われるのですね。これはよくわかりますけれども、実際はそうではないのです。これは農業協同組合が非常な借金をしているのです。協同組合の赤字なんです。だから協同組合の金融のものが、米代をもし払つてしまつたなれば則るのです。協同組合の金融が困るのです。だから農民に米代を払わぬうちから、本年度供米代金から先に引いておこうということで、天引きしておるのです。こういうふうなことは御存じでしようか、御存じありませんか。
  230. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 そういうことがあるとすれば、農民が納得して預金をしておることだろうと思つております。
  231. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは言葉で済まないのです。納得しておらないのです。納得しておらないから、私がこの前帰りましたときに、これは一体どうなるのでしよう、こう言うのです。で私は農民に、広川さんがおられるのですから、閣議の中においても非常に顔がきくから、そういうことはないだろうと言つておいたのです。しかし事実におきまして、これは決してそんななまやさしいものじやないのです。農民が納得してこれを貯金した、そんなものではないのであつて、これは農民が一日も早くもらわなければいけない。農村では娘の身売りが出ておる。紡績に出た娘が食えないから、林君も申しましたように、山の裏で身売りをしているのです。だから貯金するような余裕なんかないのです。だからこういうふうなことが実際にあるから、これに対して根本的にはどういうような施策を講じておられるか。
  232. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 もし農民が不承知の上でそういうことがあるとしましたら、取調べて善処いたします。
  233. 横田甚太郎

    ○横田委員 もしそのようなことがございましたなれば、これは供出に非常な影響を与える、こういうふうなことはお考えになりますか。
  234. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 供出にさわることだろうと思います。
  235. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではこれは供出阻害行為である。だからこういうふうな阻害行為に対して、どういうような手を講じる、こういうようなことを考えておられますか。
  236. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 よく調査いたしまして、それから善処いたしたいと思います。
  237. 横田甚太郎

    ○横田委員 それから米価が上つたつたと言われておりますが、米価が上つた反面に、米の検査が非常に嚴重になつている。むちやくちやに厳重になつているのです。ここに統計がございますが、これは昭和二十一年を基準にしますと、一等が六五あつた。二十二年には四八、二十三年には一八、二十四年にはこれはないのです。二十五年産米も、大体これは食糧庁の予定数量だということを言われておりますが、ないのです。二等は二十一年に二七あつたのが、二十二年には三五、二十三年には四一、二十四年には一二、二十五年には八と、こう下つているのです。それから四等を例にとりますと、二十一年には一であつたのが、二十二年には二になつている。二十三年には七になつて、二十四年には二六になつているのです。二十五年には四三になつているのです。それでこういうふうにいわゆるあつた一等がなくなつて、三等までが非常に少くなつて、四等、五等がふえている。これは一体どういうわけでこういうふうになつたのですか。米の品質は同じであるが、検査規格が巌重になつたからこうなつたのですか。
  238. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 検査をことさらに嚴重にしたということは私はないと思います。ただ保存その他の関係から、なるべく検査基準をよくして行くということはあるだろうと思います。それから昨年の例ですが、これは全国的に暮れに雨が多かつたので、乾燥度が足りなかつたために、あるいは等級が減つておるかもしれませんが、また去年よりは特に台風等があつたので、一番下位の等級をつけて、そうして供出が楽にできるようにとりはからつたようなわけであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代     理着席〕
  239. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうすると戦争が終りましてから、相当年数がたちました今日におきましても、米の品質は大体同じなんだ、こういうようなお考えはないでしようか。それとも検査が故意に厳重になつた、その一例としてこういうふうに私たちがひがんで申しますのは、大阪府北河内都寝屋川に検査に参りましたときに、検査に参る人が一等二等の判を持つて行かなかつた、三等も持つて行かなかつた。それで非常に農民が怒りまして、激昂した農民が交渉した結果、あわてて三等の印をとりに行つた、こういうような例があるのです。だからこのことにつきまして非常に疑問に思いまするのは、検査の規格というものは、大体一つの基準できめられておるにもかかわらず、最近になつて特に何か金融操作のために、わざと規格の検査を厳重にしておられるのじやなかろうか、こう思うのですが、どうでしようか。
  240. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 特に厳重にしろというようなことは本省から何らの指令を出しておりません。また大阪地方の例をおとりになりましたが、あそこは台風の通つた跡でありますので、品質が落ちておるだろうということで、そういう間違いがあつたかもしれませんが、しかしただ四等米の判だけだつたということは遺憾に思います。
  241. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは大阪だけではなしに、全国的にこうなつた。台風の通らなかつたところにおきましても、四等が多い、五等が多いのです。それから一等二等はないのです。だからここにおいてどうしても私たちがあなたにはつきりと聞いておいてもらわなければならないことは、何か金を払うのをからくりされる、こういう意味合いにおいて検査に対してこういうふうな非常に厳重な規定を設けておられるのじやなかろうか、こう思うのですが……。
  242. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 そんなことは全然ないとかたく信じております。
  243. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、米価をこういう点からお考えになつたことがございますか。昭和十八年に三等を基準にいたしまして一〇〇であつたものが、二十四年においても一〇〇になつておる。四等が九九・五であつたものが九五・四に下つておる。約五%下つておるのです。だから四等は非常に損になつておるのです。その損になつておるところの四等にたくさん規格を落す。だからこれは意識的、計画的にいわゆる供米代金の支払いのために、こういうような操作が行われているのじやなかろうか、こういうようなことをしつこく聞くのです。
  244. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 決してそんなことはございません。ただわれわれといたしましては、等級の間のカーブの差をなるべく少くするように努力したような次第であります。
  245. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうすると、この問題は元に返りまして、先ほども申しましたように、ここにも書いてございますが、二千百五十五円もらわなければならないのを、千六百二十円しかもらつておらない、千六百円しかもらつておらない、あるいはもつと少くしかもらつておらない、この農村におけるところの問題をどういうふうに解決つけていただけますか。
  246. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 納得しないでそういう強制預金みたいな形をとつておるところについては、われわれの方で取調べて善処する、こういうふうに先ほど申し上げたのですが、実際に具体的のものを取上げて、よくそのことについて検討いたしたいと思います。
  247. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではあなたの説の中心は、いわゆる納得しないで云々が問題になつておるのですね。これは農民が納得をしてやつたか、納得してやらないかということは、何を基準にお調べ願えましようか。
  248. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 それは大事な供出米の金の問題でありまするから、多分承諾書なり、あるいはなんなりあると思います。ないものは強制でやつたと思うよりほかないと思います。
  249. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは私たちが帰りまして、これはすぐにもらわなければならないのだという運動を起して、もらいに行つたら、何か善処してもらえるのですか。善処の内容は一体どんなものでしようか。
  250. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 供出価格の全価格を、政府は支払つておると私は信じております。
  251. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一ぺんこういう数字のことは——大臣は大きなことを知つておられるのですね。池田さんのようにわからない場合があるといけませんから、安孫子さんに聞いておきますが、政府としては全額支払いになつたのですか。この点ははつきりしておきたいと思います。
  252. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 お話のように米価が決定いたしましてから、ただちに差額を全部払つております。もし手元に行つておらぬような、ただいまのようなお話がありますれば、組合の内部関係におきまして、そういう事情があるのじやないかと思います。具体的な大阪の問題につきましては……(横田委員「大阪だけではない」と呼ぶ)大阪も若干聞いておりますが、全国的といいますか、その事例は聞いておりますから、大阪の問題につきましては、私の方の関係並びに県庁府庁というようなものと連絡をとつて調べております。これは組合員と組合との関係になるのが、大体最後の姿じやなかろうか、こう思うのです。
  253. 横田甚太郎

    ○横田委員 一割増産をされまして、一割増産をいたした結果として、食糧ができますね。そのあかつきにおきましても、大体どのくらいの日本におけるところの自給量の不足を来すのですか。
  254. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 一割増産を実行いたしますその結果について、供出数量がどのくらいになるか、それに基いて輸入食糧はどの程度減るかというような問題に関連してのお話だと思いますが、私ども需給の推定をいたす上から申しまして、やはりかたく踏んで参りますことが、食糧の需給の調整の上から必要であろうと思います。増産の効果は一年ごとにずれて参ります。従つて二十六年度の需給の見通しといたしましては、国内の供出米を大体予算上三千万石と押えております。本年の供出米とほほ同等に見ております。しかしながら、来年度の増産が非常に成功いたしますならば、その成績を織り込みまして、そこを調整して参るという段取りでございます。
  255. 横田甚太郎

    ○横田委員 それじや供出というものは、これはいつまでも続くものでしようか。供出を一体いつまでやられる見込みですか。
  256. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 米の統制をはずさない間、続けるつもりであります。
  257. 横田甚太郎

    ○横田委員 米の方は一体いつごろおはずしになりますか。
  258. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 今のところ、はつきりきめておりません。
  259. 横田甚太郎

    ○横田委員 はつきりきめておらないというのは、農林省一般の御意見ですか。
  260. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 さようでございます。
  261. 横田甚太郎

    ○横田委員 供出というものは非常に弊害があるのですね。いわゆる保有優先か供出優先かという問題があるのです。この保有優先、供出優先という問題におきまし七、非常に困るのです。これゆえにこそ、戦後におきましても、供出方法というものが非常にかわつているのですね。だからこういうようなものについては、今後どういうふうに善処して行かれるか、これを承りたいと思います。
  262. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 ことしあたりの供出は、ほんとうに農民が自主的に供出したと私は見ておるのでありますが、今後は事後供出におきまして、できたものから供出をはずして行く、こういうふうに考えております。
  263. 横田甚太郎

    ○横田委員 ことしは供出がうまく行つた、こういうことは農林委員会で伺いましたね。そのときに、行つていない例があります、ここにも載つておるのですが、こういうことを言うたとき、あなたは、これはそうじやないのだ、これは一部特定の団体が供出を阻害していると、こう言われましたが、一部特定の団体に供出が阻害されるような経済的な要因があるのですか。
  264. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 その上に、形容詞の、特にという言葉を使つておるはずです。特に思想団体等の教唆によつて供出をしないものについてはと、こう特にという字を特に一字加えておるわけであります。
  265. 横田甚太郎

    ○横田委員 特にといううちには、共産党は、思想団体じやないから、入つておらないわけですね、共産党は政党なんですから。特に思想団体という内容、その農村における活動はどんなことですか。
  266. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 特にある種の目的を持つて、特定の目的を持つてやるものは、すべてそう私は認めて言つたはずであります。
  267. 横田甚太郎

    ○横田委員 ある種の目的とは、一体どんなことですか。
  268. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 故意に供出を阻害する目的……。
  269. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは農村におきまして故意に供出を阻害する目的をもつて活動いたしましたならば、日本の議会でいろいろ論議して、アメリカの人に指導してもらつてできた供出制度が阻害される要素があるのですね。
  270. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 まだ的確な報告がありませんので、仮定の上に立つて私は言つて、おります。
  271. 横田甚太郎

    ○横田委員 供出というものは、一体これは農民が自由に売るものですか、それとも、どうしてもとられるものですかどうか。
  272. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 これは出さなければならぬ、義務づけられておると私は考えております。
  273. 横田甚太郎

    ○横田委員 出さなければならない義務の根拠は一体どこにあるのですか。
  274. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 これは法律であろうと思います。
  275. 横田甚太郎

    ○横田委員 その法律が非常に悪かつたら、かえるというような気持になれないのかと思う。なぜかといいますと、供出ということほどいやなことはないのですよ。私は戦争中刑務所におりましたが、出て来まして農村へ行つて、農村で見た実態というものは、非常に要い供出だつたですね。反当割なんですね。それから裸供出なんです。それから今日いわれておるところの、いろいろ名前のついた供出でございますが、この供出というものは何べんかわりましても非常に悪いのです。なぜ悪いといえば、法は議会でかわるのですが、しかし法の運用ができないのです。経済実態に即さないのです。だからどういうような形になつて来るかと申しますと、特に近郊農村の例をとりますと、百姓は引合わないものだ、これはお認めになりますね。百姓はいやなものだ。だから食える程度の、いわゆる飯米百姓になろうというところの農村における分化が起る。農村における分化が起りますと、供出農家なんが少くなつて、転落農家が多くなる。そういたしますと、その部落としては、どうしてもこれは供出できない数量がふえる。供出できる数量が減るんです。ところが政府からの割当は、いつの場合においても、単位部落に対しましては、供出量がふえて来る。だから供出というものを実際に見ましたときに、法規を守るという過程におきましても、法規を守つておらないのは、食糧行政に携わつておるところの政府の役人だという結論なつて行くんです。こういうような実例に対しては一体どういうお考えですか。
  276. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 とにかく供出をさせるための法律は、万全を期して皆さん方がつくつたのでありますが、なかなか思うように行きませんので、年々それが問題になるのでありますが、今年あたりは非常に法の運用の妙味を発揮いたしまして、非常に楽な気持で供出してもらつて、もうすぐ全部供出が完了すると私は思うのであります。特にこの間中国から九州等をまわつたのでありますが、保有量が相当ふえたといつて感謝されておるようなわけであります。ところで、前段に言われた、供出はいやなものであるという観点から、われわれは麦も自由にしたのであります。
  277. 横田甚太郎

    ○横田委員 皆さん方がいろいろ考えてつくつたと言われましたが、今の供出法規は、われわれがつくつたのではない。反対した。議会で拒否した。それでポツダム政令で無理に出たのです。これははつきり認めてもらわなければならぬ。それから法の妙味とかなんとか言われておりますが、供出というものはどういうふうな形においても納得し得ないということは、これは戦時中から始まつたことです。戦争が終つて、戦後におきまして、アメリカ人が日本に参りましてから、なおこれが形をかえようとしておるにもかかわらず、供出という大綱はひとつもかわつておらない。これは私は非常な疑問なんです。だからこれは戦時法規だ。戦争中のやり方なんだ。ちようど今、日本が朝鮮事変を控えまして、中共問題が世界の問題になりまして、日本が再び朝鮮に対する作戦基地となつて来た今日の段階におきまして、確かにこの供出法規は逆に使われておる。むしろ今日になつてこれが問題になるというのではない。占領直後において、占領軍自体が、今日のように国際情勢が発展することをあらかじめ見きわめて残しておいたのがこの供出法規です。戦争によつて農民を非常に犠牲にした。そういう意味において、供出のために国民はまた非常な疲弊をするのじやなかろうかと思う。こういう意味合いから供出はきらいだ。いけない。経済的にも納得行かない。こういう意味において、これに対して廣川農林大臣は、私どもが追放になるまで、あるいは非合法になるまで、議会に来ている間に、いわゆる日本の不半分子の代表的な意見として、これを説得するに足るだけの大演説、これを聞かせていただきたいのです。
  278. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 非合法になるか、追放になるか、私はよくわかりませんが、供出のことについてまだまだ改善しなければならぬところがあるから、その第二として今度は事前供出から事後供出にしようというところまでやつておるのであります。それでわれわれは、能率をほんとうに発揮いたし、経済の妙を得さしむるために、麦の供出を七月から廃止する予定でおるのであります。
  279. 横田甚太郎

    ○横田委員 事前供出から事後供出にかえたと言われますけれども、今までも事前供出というようになつているのですが、実際においては事後供出になつておつた。毎年補正問題で森さんの時代から農林省に押しかけた農民の今までの供出に対する動き自体がこれを現わしておる。だから供出法規がよい方に向つたのではなくて、悪い方に改悪されたのだと私は思うのです。だから廣川農林大臣は事後供出に改めたと言いますけれども、事後供出もやはり前と同じことだというお考えをお持ちになりませんか。     〔西村(久)委員長代理退席、委員     長着席〕
  280. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 そこはどうも見解の相違で、事後供出の方がいいと私は信じます。
  281. 横田甚太郎

    ○横田委員 事後供出というのは、農民がつくつたものをめちやくちやに取上げてしまうものです。その取上げられる形がいやなんです。農村におきましては懲役労働ですよ。簡単に考えてみなさい。農民は食うものも大体きまつておる、つくるものも大体がきまつておる。そこでつくつたものを出した場合に、値段も納得の行かないところできまつてしまうのです。米価審議会には私も傍聴に参りました。これは町におる共産主義者時代に行つたのではありません、国会議員に当選してから行つたのであります。ところが去年の米価審議会のときにも傍聴はさせないのです。給士の女の人は中に入れても、共産党員には見せないのであります。そこで米価がきまつたのです。だから結果においても非常に米価に無理がある。納得しない値段において人のものをとろうとするから、供出制度というような妙なものを今日においても続けなければならない、戦争中の攻奪勘定がやりきれたのではないだろうかと私は思うのですが、どうですか。
  282. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 決してそんなことはありません。これはやはりあの米価審議会を民主的に開いてきめておるのであります。今年あたりの米の価格をきめたのは、農民団体の代表の諸君から言われたよりも、実際は少し高くなつたくらいに私は思つております。
  283. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは妙なことを伺いますが、農民団体から言われたことより高くきまつたというが、今きまつたところの米価より安い米価をあなたのところに言つてつたところの農民団体があるのですか。
  284. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 米価をきめる最初のころの価格は、あの最終に決定したよりも、たいてい二百円くらい低い価格でわれわれが質問応答しておつたことを、私記憶しております。
  285. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはあなたの言われるのは間違いでありまして、パリテイ計算より一割五分水増したという意味じやないのですか。農民団体が要求したところの米価よりか高くきめたというのは間違いでしよう。
  286. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 それも見解の相違で、あの当時は私はそういうところであつたと存じております。
  287. 横田甚太郎

    ○横田委員 こういうことは見解の相違をはつきりしますと、あなたの方が勝たれると思うのです。すなわち、こういう団体が安く要求したのだというと、私の方でも、そういうことはありはせぬとは言えないから、あなたの方からこういう団体が安く要求したのだという事実を出したらどうですか。出してください。
  288. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 団体は各種の団体が来るので、どの団体だつたか記憶しておりません。
  289. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 横田君、記憶したとか記憶しないとか、押し問答をやつてもいたし方ないでしよう。その程度で……。
  290. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは、いろいろの団体がたくさん来ると言われましたが、ややつこしいいろいろのわからないような団体にも、何でもふんふん言つてつておられるのですか。そういうわけもわかりもしない、覚えていると言われもしないような団体が来たときに、何を好んで意地悪に安い米価を要求した団体の米の値段の数字をのみ覚えておられるのですか。そんなばかなことがありますか。
  291. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 これは脳の作用でしかたがありません。     〔「農林大臣注意しろ、あんな愚弄した答弁があるか」「質問が愚弄しておるのだ」「ふまじめだ、まじめな質問をしろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  292. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 静粛に願います。質疑を継続してください。
  293. 横田甚太郎

    ○横田委員 何がふまじめだ。ふまじめならふまじめで農林大臣に聞きますが、私の今までの質問が非常にふまじめですか。農林大臣に承りたい。あのやじはあなたたちの家の子郎党でしよう。
  294. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 家の子郎党でなく同僚であります。(笑声)
  295. 横田甚太郎

    ○横田委員 同僚であつてもよろしい。私の質問がふまじめであるか、ふまじめでないかということを聞くのです。現に農村におきましては、どこから見ましても、二千円以上の米価をもらわなければならないのに、今日千六百円しかもらつていない。東京が非常に下つておるのです。農村に行つてごらんなさい。これはずいぶん問題ですよ。こういうようなことを論議するのがいわゆる予算委員会なんです。今までのように、アメリカから来た援助物資をありがとうと言つてつて行け、この代金の支払いをどうしようか、この代金のかわりに軍事基地に沖縄を貸そうか、こんなばかな論議ばかりしておれますか。だから私の論議のどこがふまじめか。
  296. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 ふまじめだと思つておりませんから、まじめに答弁しております。
  297. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではまじめだと思つている人に聞きますから、御答弁願いたい。では第一に、今度一割増産をやられるというが、農村の問題を論議される場合、一番大事なのは肥料です。肥料が大事だということはほんとうにお考えになると思う。政党政派を問わず、農村においては肥料問題が大事である。ところが日本の全国の農村におきましては肥料が大問題になつておる。農村に肥料がないのです。三月までに麦に肥料をやらねばならないのに硫安がないのです。このことは御存じですか。
  298. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 農民団体から肥料がなくて困るという陳情はあまり受けておりません。ただ北海道等において、地域の関係で最近高いという陳情は受けております。ここはどうしてもあまり高くするわけに行きませんので、現在大蔵省にある配給公団の持つてつたものを三月までに相当数出したいと考えて、案を進めておりますが、ごく最近に出す予定であります。
  299. 横田甚太郎

    ○横田委員 肥料の不足ということはあまり聞いておられないと言われましたが、これはなるほど安孫子さんかどなたかからもこういう答弁伺いました。しかし農村においては実際に肥料が足りない。自由党の人はこうだ、ああだと言いますが、この解決は農林委員会の肥料対策委員会でも出ない。日本には肥料があるのです。生産もされておる。一月に十二万トンもできておる。その前の月も電気が足りなくても順調に行つておる。ところが農村には肥料かない。日本には肥料があるのです。そこで肥料がどこに偏在しておるかということが問題になつておるのです。これについておそらく次の農林委員会におきましては、廣川農林大臣に対しまして、農村に対して肥料を優先的に確保してもらうという行き方になろだろうと思います。だからこういう意味合いにおきまして、農村においては肥料が今足りないのだということをはつきり知つていただきます。これがなぜ足りないかといえば、これは私が言うのでもなしに、自由党の委員が農林委員会で言つておる。どういうふうに言つておるかといえば、このごろ肥料は御承知のように自由にだれでも買えます。ところが肥料が農村に必要であるにもかかわらず、農村におきましては非常に購買力が薄いために農民に入る肥料が買えない。今日本ではだれであつてもいい、金をもうけたらいいのだからというので、ほかの商業でもうけたいわゆる糸へん、金へんが肥料の分野に来て、これをとつてしまうのです。農林省としても大蔵省としても、これは農民に渡さねばならない肥料だと思つて入札される。ところがこの肥料はどうしても農村がいるのですからと言つて買い占めてしまうのです。この買占めが非常に人気があるそうです。だからこれも自由党の委員意見だそうですが、今度肥料の入札をやる場合には、後楽園球場でやらなければ入り切らぬだろうと言われている。これは深刻な事実です。だからこの原因は一体どこにあるのか、またこれに対してどういうように処置しようとしておられるか、この点をお聞きしたい。
  300. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 大蔵省にある清算事務で管理している肥料は、農村の系統団体に行くように目下交渉しておるわけであります。
  301. 横田甚太郎

    ○横田委員 系統団体に行くようにそれは交渉しておられるそですが、その交渉だけで済むものですか。たとえて申しますと、三月にどうしても肥料がいるというような農民に渡さずに買い込んでしまつて、売らぬで持つていれば値が上るのは当然です。さつきの伊藤忠の問題と一緒でして、百八十円で買うたものが四百二十円で売れるのですから、こうした問題が起る。これをとめるだけの法的措置がない。こういうものに対しては単に通り一ぺんの命令とか、あるいは通達とか、そういうもので片づきますかということが一つ。それから次にもし片づかないのだつたら、どういうような対策考えておられるか。
  302. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 急場に間に合せる三月までの肥料は、ただいままでの清算事務に保管しておる肥料を系統団体に流すようにしたいということは交渉いたしております。これは流すつもりで交渉いたしております。それからその他の問題について、中間の者がもうける、これをどうして防ぐかというようなことでありますが、省内におきましては肥料の需給調整法といつたようなものについて、いろいろ検討いたしておるのであります。
  303. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは非常に重大な問題でありまして、ちようどこれは農林大臣も御存じのように飼料の場合にも言えます。これは農林大臣に農林委員今が要求いたしましたように、現在村では非常に畜産業者が飼料に困つている。ところがこの飼料を買い入れる方法がない。現に今政府が持つておられるのは、この数字が間違いなかつたら、とうもろこしが六千トン、大豆かす、これは油糧の配給公団が五千トン、五等麦が一万トン、国内産ふすまが二万トンある。これを政府としては法の命ずるままに脱法的でなしに、正しく入札される場合におきましては、畜産業者がこれに入札に来る。そのときには他の実需家もやつて来る。その実需家の中にはみそ屋やしようゆ屋が入つて来る。これが一緒に入札する。そうなりますと、これが非常に上るのはあたりまえです。なぜ上るかといえば、豚の数はきまつておる、牛の数はきまつておる、あひるの数はきまつておる。ところが人間の数はうんと多い。だからこれらが入札に来まして、飼料でありながら、経済の現象としては飼料に行かずに逆にみそとかしようゆの方に行くのです。そうしてみそやしようゆは人間が食うものだから飼料より大事だという考えもある。せつかく農林省がお立てになりましたところの畜産五箇年計画というものはうまく行かない。それは事実です。これはちようど肥料と同じことです。農村においては米価がきまつているのです。やみ値がどんどん下つている。下るその原因は、やはり食糧は不足なんですが、アメリカあるいは東南アリアから買うている食糧に対しては、すべて大口の補給金を出しておられる。補給金によつて安くなつたところの食糧を日本の食糧と競争させるので、これは勝てるわけがない。だからこれは高く上げられないのです。私はこう思うのです。農村においてはおのおの生産するものにはおのずから生産費の限度がある。豚にいたしましたところが、牛乳にいたしましたところが同じだと思う。町の労働者の購買力が非常に減退しておる。その原因は低賃金である。そのために豚は食えない、牛も食えない、乳も飲めない。農村でもそれが安くなつて来る。そうなりますと、この人たちは逆にみその場合においてはいいのを食わずに悪い安いものを食うことになる。農村においてはこの経済の根本的な建直しがない限りにおいては、肥料の問題でもあるいは飼料の問題でも解決がつかない。これは単に需給調整法くらいでやろうとすれば、また役人がたくさん温泉に行つてやみ取引をやるようになる。こう思うのです。だからこういうような経済的な諸原因に対して、根本的にこれを打開するための何か方策をお考えですか。
  304. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 飼料の問題について、農林委員会で問題になつておりますことはあなたも御承知の通りであります。これを農林省の方では事実業者に飼料として渡るような方途も目下検討中でありまして、至急手を打つように進めております。
  305. 横田甚太郎

    ○横田委員 それを畜産の方にまわしてもらいましたところが、これを日本全国から見ると、十日分しかない、よく持つて半月分です。あとは一体どうなるのですか。
  306. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 でありますから、カナダの麦、あるいはアメリカから脱脂大豆等を輸入するように目下進めております。
  307. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは交渉は相当進捗しておるのですか、値段はまたどうなるのですか。
  308. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 入る期日、値段等は政府委員から説明させます。
  309. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 価格ははつきりいたしませんが、大体AAシステムで大豆かす、とうもろこし、そういうものを入れる話がついております。私の記憶では大豆かすが九万トン程度、とうもろこしが四万トン程度入ることになつております。これは官庁側としてはそうコントラクトまでタツチいたしておりませんので、価格の点についてははつきりつかんでおりません。しかしその契約のできたことはチエツクいたしておりますので、承知いたしております。積期も承知いたしておりませんが、順次入つて来るものだと思います。少しよけいなことを申し上げるようでありますが、その際のとうもろこしの四万トンはほとんど飼料になろうかと思います。大豆かすの方は、みそ、しようゆの調味料との競合関係はあろうかと思います。
  310. 横田甚太郎

    ○横田委員 飼料も国内に品物はあるのです。あるけれども、これは価格の関係によつて飼料の方にまわらない。どうしても今の法規のもとにおいては逆の方に行つてしまう。これがいいとか悪いとかは別問題といたしまして、農村においては畜産が一つの産業であり、飼料がどうしても欠くことのできないものであるならば、農村の方に自然になめらかにまわす方法は需給調整法以外にないのですか。経済的に根本的に打開するために、どういう大きな農村対策を持つておられますかということをお聞きしたい。
  311. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 でありますから、戦前にあつたような需給調整法のようなものを現在考究いたしておるということであります。
  312. 横田甚太郎

    ○横田委員 それから米価をきめる上におきまして、パリテイ計算でやられるということはいつまで続くのですか。このパリテイ計算は机上のからくりであります。実際においては農民が貧乏になつて行くことは間違いありません。これは見解の相違と言われるかもしれませんが、事実はそうです。ですからパリテイ計算というものを根本的に改めて、生産費全額を支払う、あるいはそうでなかつたら、今日のようにつくるものをきめておる、食う量もきめておるのですから、農民に対して米価についてはけちなことを言わずに、一反つくつたものに対しては一年に幾らやるとか、それには税金を免除するというような根本的な農政にかえられたらどうですか。
  313. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 価格決定についてパリテイ計策のお話でありますが、ことしあたりも単にパリテイ計算のみではないのでありまして、アルフアを加えておるのであります。そうして農村の生産費に大体くつつくように努力いたしておるのであります。農林省といたしましてはいつでも生産費を中心に考えておるのであります。ことしあたりは大体それと相一致いたしておるようなわけであります。
  314. 横田甚太郎

    ○横田委員 農民が買いますものの物価が非常に上つてしまつた。それから売るところの米の計算は一年先だ、こういうような結果になるのです。こういうふうなことでいつまでもやりますと、農村の疲弊は実にひどくなります。これでは非常に困る。だから農民に対しましては今年の米をつくるために必要な物資は貸し与える、肥料あるいはそれ以外の農機具も貸し与える、こういうような施策に進んで行くところの気持があるかないか、そうすることがむしろ一割増産を農民に納得させる結果になるのではないか、こう思うのです。
  315. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 今のところ考えておりません。
  316. 横田甚太郎

    ○横田委員 ほとんど日本の今までの政治を見ておりますと、賃金ベースでおつかけつこしますと、労働組合法ができてストライキがやれなくなる。ストライキのないような労働者の闘争というものは実に骨抜きであつて、何の要求もとれないようなものです。米価全体もパリテイ計算で行きますと、農村におきましては非常に妙な形になつて行くのです。これはうまく行かないのです。だから私の言いますことは、日本の農政の弱さというものは、農村が非常に政治に対しての要求力を強く持つておらない。現に戰争から後におきましても、日本の農村こそが日本経済再建のために、日本の今日をつくるために犠牲になつたのでありまして、この多くの犠牲を払つたところの農村に対して、もつと力こぶを入れてたくさんの農林予算をおとりになる、この方がいいのじやないでしようか。そうせぬと、あなたの方では去年の予算よりはわずかにふえているでしよう。ところがこれは数字はここにありますが、山が焼けた、焼けたところに木を植えなければならない、それがために予算を要求したにもかかわらず、その山は予算がないからことしははげ山で植林せずにほつておかなければならないという予算の組み方になるのです。だから日本の農林大臣は今まで遠慮し過ぎていた。それを農村から言われて来たが、上に対して遠慮していたのです。今度は逆に閣内においても日本の農村を根本的にかえなければならないという大願望を抱いてがんばつていただきたい。この点に対する考え方はどうかということが一つ。  それから日本は麦ではなしに米が中心になつております。米作農業に対しまして機械力の取入れが非常に少い。従いまして非常に生産費が高くつく。小麦をつくつているところの国は概して文明の程度が高い、米をつくつているところの国は概して後進国である、こういうことがいわれている。だから米を多くつくり、米を主食にして、米によつて食糧の中心を立てて行くというやり方は、日本の習性としてしかたがないのではありましようが、これを何とか機械化するような方法について、農林省においてはどういうふうなお考えを持つておられますか。
  317. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 前段の政治力の問題ですが、国会の大串が農村に基盤を置いた代議士諸君、選良諸君でありますから、政治力がないとは私は考えておりません。それからまた今度農林省として十分予算の面、あるいはその他について発言をしろということでありますが、十分いたしたいと思つております。  それからまた最後に水田の耕作をしておる国民は、文化の程度が低いというお話であります。また機械を入れろというお話であります。機械を入れるために、機械力を利用するために努力いたしております。
  318. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと大臣こういうことがあるのですよ。供出というものをさきのような抽象的論議で行くといけない、どこから見ましても納得できない一点はこういうことが大問題になつておる。国会におけるところの議員の構成竜農村出身の議員が多いと言われますが、これもポツダム政令のようなものでぼんぼんとやられたら政治力の出しようがない、こういう現状はお認めになるか。それで私がもう一つ言いたいのは、政治力の出しようのない国会の構成であるということである。たとえていいますと、日本に米が足りなかつたら米の値段が上ります。ところで、それでは日本国民が飢えるというので、外国から援助物資がたくさん来ます。そのような援助物資は高く人づて来る。同じ米でありながら、先ほども申し上げましたように、アメリカのカリフオルニアの米は一石が一万七百二十円であり、シヤムの米は、これは最近のものでないが、去年政府からいただいた資料ですが、シヤム米が九千七百二十円、日本の米は四千二百五十円である。こう三つ並べる、三つ並べましたところが日本の農民のこしらえた米はどこから見ても一等米である。これは一等米以上です。カリフオルニアの米は、あるいはシヤムの米は悪い。悪いにもかかわらずこの方が高いのです。ですから農民としてこの実態を知つたときに妙だなという気持を持つのはあたりまえだと思う。日本人一般が持つところの経済的通念といたしましてはこういうことが言われる。値打あるものは高い。おいしいものは高い。ところが日本の実際を見ますと、いわゆる米価なるものはものの悪いのが高く、いいものが安いのである。これを解釈するためにはただ占領という言葉があるだけである。そうして援助というものによつて農民がいわゆる町の論議をふさがれておるために知らないだけである。そういたしますと、日本の農民といたしましては非常に妙な感じを持つようになつて来るのではなかろうか。しかもその援助の結果として、大蔵大臣言葉にもありましたが、発電所の設備がよくなつて行く。よくなつた結果として、農村におきましては電気料金が非常に上つてつて、水揚げポンプを使えないという結果になつて来る。そういうような根本的な深い農業の内部構造を見たときに、米価のからくりを根本的にかえて、いわゆる国際的価格に経済的にもさや寄せするような大きな農政を立てていただきたい。それに対する方策があるかどうか伺いたい。
  319. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 米価を国際的な価格にしろというお話でありますが、やはり米価も経済の一環として重要な位置を占めておりますので、日本経済力に支配されるのは当然であります。しかしわれわれといたしましては、農民の納得するような価格にだんだん持つて行きたい、こう考えております。
  320. 横田甚太郎

    ○横田委員 ただいま納得する価格じやないですね、だんだん上つて行くのですね。だんだん上つて行く内容ですが、日本の米の価格がうんと上つてしまつたら、これはどうしても国際的にはやがて太刀打ちできなくなつて来る。米の場合には大きな開きがありましたが、小麦の場合におきましてはさほど大きな開きはない。そこで問題は非常に抽象的な問題になりますがあなたに聞きたいのは、日本の農民が供出という言葉において、結局においては先ほども申し上げましたように、自分のつくつたいい米が四千二百五十円でとられて行く。そうして外国から来たところの、町の人たちに配給するとこれをいやだと返すような悪い米がかえつて高く外国から買入られている。こうしたときに、これではかなわぬという気持を農民が持つて来る。この農民の気持は間違いですか。
  321. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 それは、農民はそういう気持を持つと思います。しかし現在の経済情勢、または置かれている環境からいいまして、現在のところはあれ以外にないと私は考えております。
  322. 横田甚太郎

    ○横田委員 現在の環境が問題になついているのですが、この環境を中心にいたしまして、今のしかたがないと言われる意見から悪く行くのです。何が悪く行くかといえば、世界の大勢から見ましたときに、戦争というものはいけないものであつて、戦争をやめねばならないというのが国連の行き方であつたのです。戦争の場合に集団的に決議をして他国を攻める、武力によつてこれを解決するという行き方ではなかつたのです。だから日本の国において正論といたしましては近い中国と結び、近いソビエトと結べ、そうしてアメリカは何も敵視するのではないのだ。世界のどこに対しても、われわれは対応の立場において栄えて行くところの民族になりたいのだというところの労働組合、農民組合の要求が出て来ない経済的な波基盤がここにあるのだと思うのです。だから援助ということに対しても、援助は確かに日本の一部少数の階級にはこれは役立つたでしよう。しかしこの援助にもかかわらず、日本農村は疲弊したのだから、もつとしつかりしなければならない、もつと農村は立ち上らなければならない。農村は立ち上るためにはどうするか、農民大衆の代表が集団的に自主性を持つてつて行くようにする意思があるかないか、これですね。
  323. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 やはり国会を構成している代議士、選良諸君は、農村を基盤としておるのでありまして、この国会において代表しておりますことが一番正しいと思つております。
  324. 横田甚太郎

    ○横田委員 そこが問題ですよ。国会を構成している議員が農村を基盤としていると言われますけれども、国会においては農村を基盤にして政治ができない現実があるということを認められますかというのです。米価決定の場合においても、廣川農林大臣は農村を基盤として出て来たところの家の子郎党と言つて悪いのだつたら、同僚の代議士を持つておるのです。それなら米価をもう少し高く買うてもいいはずなんです。ところが買えないというところに米価決定に対するところの外部の力——賃金問題もそうなんです。こういうようないわゆる国会において、なるほど議員が日本の農村の意見を代表して十二分にやられないというところの條件があるということを認められますか。
  325. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 占領下でありまするから、ある程度環境の支配を受けることは事実であります。
  326. 横田甚太郎

    ○横田委員 そのある程度は、農村に対しましては殺人的な程度じやないのですか。農村を殺す、そういうような深刻な決定的なこれは力じやないのですか。ほとんど農村を犠牲にすることにおいてのみ日本経済を再建して行こうとしている、こうなると思うのです。そうして農村を貧乏にしておいて、農民自身が経済的に食えないようにしておいて、この食えないようになつた次男坊、三男坊をピストルとこん棒をぶら下げさせて、あわよくばタンクに乗ぜて飛行機に積んで、君ら戰争せい、国内において立ち上るところの民主勢力を圧迫せいと、こういうような国柄に日本を再建して行くのが、今の占領下の日本の農政だ、こういうふうにお考えになりませんか。
  327. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 横田君に申し上げますが、あなたの御意見は御意見として、ここは予算委員会の質疑ですから、そのつもりで質疑の中心をはずれないように願います。
  328. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 決して私はさように考えておりませんで、農林をほんとうに再興し復興さして行きたい、これがいわゆる私の興農運動の根底であります。
  329. 横田甚太郎

    ○横田委員 農村を復興さして行くという言葉も私はすきです。その気持を農林大臣が持つておられるということもよくわかるのです。しかし現実にやられましたその結果は逆でありまして、農村自身を苦しめて行く、農村の疲弊を増して行く、日本の農業をアメリカ農業の植民地的なものにしてしまうのではなかろうか。これを聞いているのですよ。これは軍に意見ではないのでありまして、日本の農民が持つているところの非常に大きな疑問なんです。
  330. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 日本の農村が経済力がないから国家資本を注入して、そうして農村を復興さすように努力いたしているのであります。
  331. 横田甚太郎

    ○横田委員 その農林予算の入り方が少いのです。大きいか少いかというのは去年を比較にしているんじやないか。これは「読売評論」においても、予算のとり方が農相は非常に上手だ、予算をとる場合には朗報を一発ずどんとやる、そうしてこの予算をとる。この手腕はよくわかつておりますけれども、ほとんど日本の富というものは農民の犠牲においてこしらえた、私はこういうふうに思う。この農村を疲弊させますと、結局は満州事変のような結果になるのです。また第二次大戦によつてアメリカ人が日本を占領下に置く、こういうような原因になるのです。だから農林大臣は今までのような農林大臣が抱いておつたような構想ではなしに、軍艦をつくり陸奥をつくり長門をつくる、これだつたら農村のために農道をかえる、農村を機械化しよう、こういうような意見が戦時中のいわゆる農政を見ましたときにただちに言えるのです。それと同じように廣川農林大臣も大自由党の幹部として、国内において政治力を発揮して、警察予備隊というような棒をぶら下げ、ピストルを持つてのこのこ遊ぶような人間をたくさんこしらえるよりは、その金を農村に出せ。あんなものは農村のために一体何になるのですか。
  332. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 農村も大事でありますが、治安の維持も大事であると思つております。
  333. 横田甚太郎

    ○横田委員 しかし東洋の思想にもいいますね。人は腹が問題なんです。腹が満ちてそうして人民が満足しておれば天下泰平なんです。乱れるような経済的條件をこしらえておいて、犬殺しのような警察予備隊のかつこうをしてぶらぶら農村を歩かせて、そうして治安の確保ができますか。現に長野県においては何ができておりますか。こん棒を持つてストルを持つた巡査が怒り立つた労働者になぐり殺されている。なぐり殺されるのだつたら初めからピストルを持たぬ方がましなんです。(笑声)中国においては一体どうかというと、アメリカが非常に心配しまして、蒋介石に対して三十億ドルに余るところのタンクや飛行機をやつて中共政権を懲らしめようとしたが、その結果はどうなんです。納得しない人民が立ち上つたときに、国府軍にやつたアメリカの飛行機が、中共を押えるやつが、かえつて中共軍が外国勢力を追つ払うための飛行機になつた。だから治安の確保が大事だということも、共産党はあなた方よりももつと痛感します。だから治安の維持を考えないような、いわゆる治安が乱れるということは政治が悪いのでございまして。政治が悪かつたら治安が乱れるということは理の当然なんです。だから治安が乱れるし、そうして国に妙な形におけるところの税金のとり方が行われ、妙な形においてとつた税金で、かえつて納得しないような形においていわゆる戦時企業が再建されようとしているのです。これがいけないと思う。だからこういう意味において警察予備隊に払うような金を農村に出せ、こう言うたらどうなんですか。
  334. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 先ほど申し上げた通り、農村も大事であり、また国内全般の治安も大事であると思つております。ただ先ほどあなたがおつしやつたように、腹を満たすということが治安の根本でありまして、そのような意味からいたしまして、われわれ援助物資を喜んで受けて腹を満たすようにいたしておるのであります。
  335. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは援助物資もいいです。他国の親切もいいです。共産党も何もアメリカの援助をとやこう言うんじやない。アメリカがいかぬぞということをわれわれは言うのじやない。その階級構成がいかぬ、アメリカ、ソビエト、こんな言い方をしたことはない。アメリカはウオール街の銀行家が政治を持つている階級社会ですから、アメリカも一生懸命朝鮮の問題をやろうというときにいろいろな意見が出るのです。労働者は鉄道をほつたらかしておいてストをやるのです。そういうような国の政治のやり方であつては政治ができない。大きな作戦ができないのです。ここにも統計がありますが……。
  336. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 横田君、もし数字がわからなければ、あとで速記に入れてもよろしゆうございますから続けてください。
  337. 横田甚太郎

    ○横田委員 政府委員より早いですよ、探すのは。ここにあります。一九四五年にアメリカは九百五十億ドルの予算であつたのです。そのときの税金は四百五十億ドルつた。一九五二年には七百十六億ドルの予算なんです。これがほとんどが税金なんです。現在のアメリカの公債は二千五百六十億ドル出ているのです。国民所得というものが二千七百億ドルなんです。平時予算が四百億ドルといたしまして、八十億ドルの増税をやる。そういたしますと、百六十億ドルの税金をとりまして、結局今度の場合におきましては、公債の関係におきまして増税の余地がない。それが国内において初めからアメリカがああいうような形に出ているのだと、こう思うのです。だから、その国から援助を受けておりますということは、今申しましたように、納得しないところの値段で日本に入れられて、そうして払えない形においてだれかが背負つてしまつたところの借金を日本の農村から払え、労働者から払えと言つたところが、日本の農村を搾取し切つておいては蓄積がないから払えないのですよ。資本というものは国際的な、非常な売国性を持つておりまして、日本の資本家はそれこそアメリカであろうと、ソビエトであろうと、中国であろうと、そんなことはどこでもいい、もうかる所にいつでも逃げて行く。それがソビエトとか中共においては資本にかつてをさせないで、いわゆる人格を尊重いたしますから、この点におきましては向うに逃げて行けない。だから私の言いたいことは、アメリカの援助はけつこうでございますというような気楽なことを言つておりますと、国の政治がもつと大きな民主的な民族的な国民運動が台頭したときに、踏み倒されては困るというので、アメリカの人たちが借金を返せと言つたときに、多く集めなければならない農民が疲弊し、労働者が疲弊していると、一体だれが払うか。こういう意味で、援助物資を受けてその金を返すのも農村の労働者であり、町の工場において働いている労働者です。労働者、農民の労働が安く買われている。これでは日本が困つた結果になる。だからかような意味におきまして、農林大臣はもつと大きな立場から、援助というものはありがたいというようなことを言わないで、こういう援助に対してはこれはあかん、援助を受けておつたんではいつまでも日本は立てぬ、こういうような見地から予算を見てもらいたい、農政を見てもらいたい。その見方があなたの農政には、ほとんど馬力が認められません。予算面から見て、山は四万町歩も焼けている。あなたの言うだけで四万町歩。このように山が焼けて、しかも材木の需要は一体どうなんです。製品が安くて、山元においては木材の方が高い。このくらいの木材が必要であるというのにかかわらず、予算がないから焼けた山をほつとけというような、こういう予算の組み方を大蔵省の連中にされて、そうして大蔵省の連中につつ込んで行けば、これはドツジ予算だ、こういうようなことを言われて黙つているということはないじやないか。こういうときに、アメリカには偉い人がいる。アブラハム・リンカーンも偉いでしよう。ワシントンも偉かつたでしよう。こういう人が偉いというのは、一国の利益を代表して、自分の先祖が生れた国である英国に対してさえ対等の立場において権益を主張したからワシントンは偉かつたんじやないですか。われわれはアメリカから分家して日本に来たんじやないですよ。あなたの論法から言えば、われわれは高天原の民族だそうですが、この高天原の民族が、英国から来たところのアメリカ人が、先祖に対してまで堂々と同等の立場で言つたと同じように、アメリカに対して、われわれが同等の立場から——何も武器に訴えなくても、農村の収奪がひどいんだ、あなたのところの援助物資は農民が借りたんじやない、労働者が借りたんじやないと、こういうようなことを大きく意思表示してもらいたい。幸いダレスさんが来て、もう帰るそうですが、それまでに日本の農民が大きな大会を開いて、各村々からこういうような講和に対する論議、あの主張をつぶさに聞きまして、そうしてよくまとめて出すような習性を持つていただきたい。しかしそれが持てない。持てないというところの原因は、米価はかつてにきめて、代議士を選んで東京に出してあるのに、代議士が自分の米代について熱心に論議できない。食確法は国会で審議未了にしたにもかかわらず、これがポ政令で通つてしまつた。これでは農村は非常に日本の政治に対して冷淡になつて、責任観が冷淡になる。この冷淡になつたところに、いわゆるあなたの党の党首たちが困つて、愛国心というような妙なことを言つているんです。私はそう思うのです。だからこういうような意味合いにおきまして、もつと日本人的な気概を持ちまして、アメリカにもいい人がおりますから、いい人にほんとうの日本意見を代表いたしまして日本の窮状を訴える、こういうような考えなつていただきたい。そうしてあなたの削られましたところの予算は、この数字はあとで必要だつたら申し上げますが、削られた予算でもさしあたりとつていただきたい、こういうように思うのですか、そういうような予算はとつていただけないのですか。
  338. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 農村に資本の蓄積をしなければいかぬということでありますから、一生懸命国家資本を注入いたしまして、農村に資本が蓄積されるように努力いたしておるのであります。また日本が一本立ちにならなければならぬということでありまするからわれわれとしては講和を急いでおるのであります。最後に予算のことでありますが、予算は現在の日本の国家財政から見て、やむを得ずあの程度でわれわれはがまんをいたしております。
  339. 横田甚太郎

    ○横田委員 農村に資本を蓄積するように努めると言われておりまするが、農村に資本は蓄積されておらない現実をよく認めておられますか。
  340. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 土地改良をやりましたり、あるいはまた干拓をやりましたり、あるいは開墾をやりましたりいたしまして、農村に資本を入れて、そうして蓄積いたしております。
  341. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは日本は土地は狭いと申しましても足で歩くと広いですから、入れたと言われましたら、調べにくいです。ところが私は大阪におるのですが、大阪という土地を見ましたときに、これは農村の特徴として東北型、あるいは佐賀型それに対する近郊農村、関西型の農村におりますときに、どうも解決つかないものがあるのです。政府から入れた金はないじやないですか。その農民はだんだん貧乏になつているから町へ低賃金でからだを供出しているのです。この点を伺いたい。たとえて申しますと、御存じのように、日本の農村における家族が平均五人といたしまして、五人家族が四反五畝くらいつくつてつては食つて行けない。だから近郊農村におきましては畜産を取入れる。あんたの好きないわゆる有畜農業、これを取入れるのであります。こういうようなことをいろいろやつておりますが、金が入らない。農業協同組合をこしらえたところで、農業協同組合に対しましては農民は金を出資しないのです。出さないのはあたりまえなのです。もう義理で、村からはじき出されるので百円、三百円くらいは出すでしようが、そんなものが百人寄つたからといつて何ぼの資金になるでしよう。だから農業協同組合ができて、かえつて人件費に困る。今まで農業会が負担しておつたのが農民自体の負担になつて来た。こういうような現象が現われておるのです。特に近郊農村は、日本の農村の代表的な欠陥を現わして、いわゆる限られた小さなところにたくさんの人が住んでいる、これは大問題だ。だから要約いたしまして、この限られた土地ということはお認めになるか、その土地に日本の農家人口があまりに多くはないか、多いとするならば、この農家人口はどういうふうに解決して行かれるか、これを聞きたい。
  342. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 あなたの御指摘のように零細農でありまするから、多角的な農業経営にするように、いわゆる畜類も入れ、あるいはまた裏作等も奨励し、土地の改良費等も助成して、そうして資本を蓄積するようにしたいと思つてつておるのであります。  それから農村の過剰人口でありますが、これは今われわれは海外に出すというわけにも参りませんので、開墾事業なり、あるいはまた農村工業なりを奨励しておるのであります。
  343. 横田甚太郎

    ○横田委員 奨励していると言われましたが、奨励しているという言葉じやなしに、奨励するための費用が出ないのです。これを尋ねているのです。それで問題は、開墾できないところの近郊農村があるということも認められるでしよう。開墾するより家が建つ方が早い。開放された農地をいかに宅地にするか、やみ建築——やみ建築というと語弊がありますが、農地をやみ宅地にかえる、こういう行き方がありますが、その農村に対してはどういうようにお考えですか。日本の農政を見ておりますと、単作地帯に対してはやや考慮が払われているが、近郊農村に対しては、ほとんど考慮が払われておらないと思うのです。この点はどうですか。
  344. 廣川弘禪

    ○廣川國務大臣 近郊農村は単作地帯より収入が非常によくなつておることは、あなたもお認めになると思うのであります。また特にあなたのお住まいの方の大阪地方の農村の野菜栽培の技術は、非常に日本でも優秀なものであります。でありまするから、他の収入は単作地帶よりよろしいのであります。またさような点から、われわれといたしましては今までやらなかつた米の価格等も上げておるのであります。それからまた畜類その他を導入するための資本が必要でありますが、これは中金の長短期資金を入れたい、こう思つております。
  345. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明後十二日は午前十時より開会いたしまして質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時八分散会