運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-08 第10回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月八日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 林  百郎君       青木 孝義君    天野 公義君       井手 光治君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    久野 忠治君       坂田 道太君    塩田賀四郎君       島村 一郎君    庄司 一郎君       玉置  實君    苫米地英俊君       永井 英修君    中村  清君       中村 幸八君    松本 一郎君       井出一太郎君    今井  耕君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       松本 瀧藏君    勝間田清一君       川島 金次君    戸叶 里子君       西村 榮一君    水谷長三郎君       砂間 一良君    横田甚太郎君       小平  忠君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  横尾  龍君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         人事院総裁   淺井  清君         公益事業委員会         事務総長    松田 太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         農林政務次官  島村 軍次君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      上松 憲一君         通商産業事務官         (通商局通商政         策課長)    小室 恒夫君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君         日本国有鉄道職         員局長     片岡 義信君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月八日  委員上林山榮吉君及び砂間一良君辞任につき、  その補欠として島村一郎君及び川上貫一君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島委員 経済安定本部長官がおりますので、大蔵大臣が参りまするまでの間、二、三お尋ねを申し上げたいと思うのであります。  先般安本長官が、本会議の席上における経済演説の中で、最も力点を置いて強調された点は、日本経済自立達成という点であつたのであります。日本経済自立の問題につきましては、われわれといたしましても、国民とともにひとしく念願をいたしておるところでありますが、問題はいかにして日本経済自立達成をば促進するかという点にあると私ども考えるのであります。長官経済演説の中で言われました自立達成の方式は、大体さきの自立経済審議会が審議決定いたしまして答申いたしました内容と、大同小異であるように私は伺つたのであります。ことにここでまず最初に私がお伺いいたしたいと思うのは、長官朝鮮動乱中心としての国際情勢に対する、若干の分析と見解を述べられておるわけであります。たまたま二十六年度の予算案編成が最終的に決定いたしましたのは、言うまでもなく十一月の下旬であります。この当時において、政府朝鮮動乱を短期的な解決を見るものという見通しでおられたのか。さもなくば、この動乱解決の時期は、きわめて長期にわたるものであるという見通しのもとにおいて予算編成し、あるいはまた経済的な自立達成への計画をも考えられたのか。この点についてまずお伺いをしたいと思うのであります。
  4. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたします。政府としては朝鮮動乱見通しは、そう簡単に片づくものと考えてはおらなかつたのであります。ある程度、これは情勢からいつて長引くかもしれぬ。ことに朝鮮における具体的な問題がかりに片づいたとしても、朝鮮動乱後における経済復興の問題もありましようし、またこれを動機とする世界全体の軍備拡張熱というか、競争は相当続くものと考えて案を立てたのであります。
  5. 川島金次

    川島委員 そういう見地に立つてつたといたしますれば、その影響日本国内の各般の経済に、深刻なしかも直接間接的な影響を及ぼすということは、言うまでもなく想定される問題であります。ことに長官が今申されましたような、朝鮮動乱長期化及びこれに伴う世界における軍拡競争への激化、これが世界戦略物資の上における物価の問題、それがやがて日本国内における物価事情の上に直接甚大な影響があるということは、言うまでもなく想像にかたくない。現にすでにその影響がひしひしと打寄せておるという実態であります。長官のこの演説の中にも、物価は昨年七月以降上昇傾向を強調され、また大蔵大臣予算説明においても、同様に国内物価上昇の点を強調されておるのであります。しかるに先般来われわれ同僚及びこの委員会委員物価問題に対する質問に対する答弁としては、きわめて楽観的な印象を與えるような答弁であるのであります。そこで長官にお伺いするのでありますが、これはこの予算の問題のみならず、今後の国民大衆生活生計の上における影響、及び今後の日本経済自立達成への過程の上においてのこれまた重大な根本的な影響がありまする事柄でありますので、もう一ぺん、繰返すようで恐縮でありますが、長官日本国内物価の今後の見通しについて、どういう見解を持たれておるか、その点についてきわめて具体的にひとつ御説明を願いたい、かように思います。
  6. 周東英雄

    周東国務大臣 物価の将来に対しての御心配については、ごもつともなところであります。この点ただいまどのくらい上るかという見通しを話せというお話でありますが、これはむずかしいと思います。私ども決して物価の将来については楽観はいたしておりません。ことに国際経済と結び、相当多くの生産財外国輸入に仰いでおる場合に、国際情勢を反映して物価上昇傾向であり、それを輸入してつくる生産コストが、それだけ高くなることは当然であります。従つて将来も上昇傾向をたどるであろうということは、この前の演説で申しました通りであります。しからばどのくらいになるかということを今言えとおつしやつても、それは無理だと思いますが、私どもは直接戰争をやつておるのとは違いますので、その点につきまして、あくまでも物価を安定させる方向としては、必要な物をできるだけ輸入して、量をふやすことにより、物価の安定に対する処置をとることが第一の段階だと思います。ことに一律に物価が上るとおつしやいますけれども、私どもはじつと趨勢をにらんでおりますが、今日のところにおきましても、国民生活必需物資中心である食糧についての値上り傾向というものは至つて低い。一番の問題は生産財、ことにその中でも貴重な非鉄金属類等において値幅が大きい。この点は間接的には国民生活にも関係して参ります。一部におきましてはこういうものは、相当高くなつたものを入れて内地で生産いたしますが、そのものがただちに翻つて今度は輸出に向けられるものでありますと、その点の影響はそうきつく国内に直接に来るというかつこうにはなつて来ません。しかしやがてそういうものが国内から全部なくなつて来るということになれば、間接的には響きますが、ただいまはそういう状況にあると考えます。  もう一つ国民生活必需物資重要原料である繊維問題でありますが、この点につきましては私ども一番意を用いておる点であります。しかし今日の綿製品値上りにつきましては、これはちようど昨年の六月に朝鮮事変が始まつてから十月ごろまで少し高騰したということとよく似ている。しかもあのときはまだ将来への原綿輸入に対する見通しが立つておらなかつたにもかかわらず、実情がわかつて来るに従つて綿がおちつきをとりもどして来た。今日の状態はいずれ近くはつきりと申し上げたいと思つておりますが、ぜひ国民にも知らせたいと思つておる点は、原綿輸入確保の問題については、政府は非常に手を盡しております。おそらく昨年よりも今年度の方がよけい入手ができると思つております。そういう意味合いで、物がめちやくちやに上るとは思つておりません。私ども繊維製品については、これは国民生活に一番大事なものでありまして、できるだけすみやかに一人当りの国民消費量に対する供給量は確保して行きたいと思つておりますが、二十六年度は二十五年度よりも増加したいと考えられるほど来年の入手は確実なのであります。ことによく言われますが、羊毛のごときも昨年よりもよけい確保できる見込みであります。これは決して希望的観測ではなく、現実にそういう状態になりつつある。だからただちに一律に物が上るということで心配はいらない。どれだけ上るかというお尋ねでありますが、今申しますようにいろいろの分子が違つておりますから、どのくらいに上るかということの数字を申し上げることは困難でありますが、概して上昇するであろうというように考えております。
  7. 川島金次

    川島委員 今後国内の諸物価がおおむね上昇傾向をたどるであろうということは、今の長官の御答弁できわめて明白になつた。ただ問題となるのは、私は言葉じりをつかまえるわけではございませんが、今たまたま物価上昇傾向をたどるであろうと言われた中で、問題の食糧はおおむね横ばいであるかのようなお話があつたわけであります。しかしそれは違うのです。周東さんはきつとまたよく御存じないのではないかと思うのですが、政府與党統制撤廃論漸次具体的になつて来たことと、国際情勢逼迫感に伴いまして、その重要な問題点である食糧価格というものは、最近非常に暴騰をいたしております。一例をあげれば、ぬかのごときは、従来三百円であつたものが八百円になつておるということを私は知つておる。麦、大豆などは三倍、四倍であります。場所によりますと六倍であります。なるほど政府の現在配給いたしておりまする公定価格においては、それはくぎづけになつておる。しかし今の国民生活日本経済の全体の歯車の動きは、政府の計画しておりまするところの配給公定食糧だけでは成り立つていないということは現実の問題であります。一般勤労大衆生活においてもしかりであります。池田さんは給料が少かつたら、麦だけ食つておればいいではないかとおつしやいますがそれだけでは勤務が十分にできない。労働が完全に果せない。これが国民現実生活の姿であります。そういう姿の中に生活をいたしておりまする国民の最も重要な食糧は、今申しましたように急激な上昇を示している。政府はきわめて安易に考えておられるようでありますけれども実態はそうではない。といたしますれば、政府が安易に考えておつてさえも本年度国内物価上昇傾向をたどるであろうという見解を明白に持たれておる。その反面においては、それ以上深刻な物価事情というものが巻き起つておる。こういうことを前提として考えてみまするときに、一体二十六年度の予算というものが、はたして国民生活の安定にゆるぎなき編成をもつてされておるかどうか。この予算ではたして日本経済自立への第一年を果し得るものかどうかということを、われわれは真剣に懸念せざるを得ないのであります。  そこで私は大蔵大臣がお見えになりましたからお伺いするのでありますが、今安本長官は今後とも漸次国内物価は上るであろうという明白な政府見解を表明されました。ところが大蔵大臣は、先般来のこの委員会でのもろもろの物価問題に関する質問に対して、そんなにお前たちが心配するほど物価は上りはせぬ、まあよけいな心配だと言わんばかりの見解を表明されております。しかし今申し上げましたように、安本長官は正直に漸次上るだろうと言つている。一方今私が申し上げましたように政府がきわめて楽観しております食糧物価というものが、非常な激変的な形になつて巻き起つておる。こういう事柄に対して、それでもなおかつ池田さんは、二十六年度中における物価というものは、さように心配することでもなければ、従つて予算の面においても別にとやかく考え直す必要な面もないと、今日もなおお考えになつておりますかどうか。それをひとつお聞かせ願いたい。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 川島君の、食糧その他が急激な上昇を示しておる、こういうお話でございますが、これは見方でございまして、CPI、いわゆる消費者物価指数は、昨年の四、五月ごろ一二四まで下つてつたのが、十月に一二八になり、多分十二月は一三三、四ぐらいではないかと思います。ある程度上つて来ておりますが、大豆が六倍になるとか、個々の問題について言つておられますが、全体としては、そうあなたが御心配になるほど上つておりません。しかもCPIが一三三、四になつたということの原因は、主として衣料品でございます。衣料品につきましては、思惑もありましたでしようが、今安本長官が言われたような方法をとりまして、できるだけ上ることを押えておるのであります。しかして安本長官は大体物価上昇傾向にあるということを言われた。私もこれは否定したことはありません。物価上昇傾向にありますが、われわれはできるだけこれを押えて行こうとしておるのであります。しかもこれは国際物価上昇の余波を受ける。これは日本経済国際経済につながりを持つております関係上、やむを得ない。物価は上らないということを私は言つていない。上昇傾向にはありますが、大体予算といたしましては、ただいまのところこれでやつて行ける、やつて行きたい、こう言つておるのであります。
  9. 川島金次

    川島委員 今大蔵大臣からCPI数字が出て参つたのでありますが、私はそれを承知しないわけではないのであります。ただそのCPIとは別個な、個々現実的な現象を見た場合、ことに今の衣料はもとよりでございますけれども食糧問題等のことについては実際にそういう形が現実に現われておるのです。大蔵大臣がきようにでもおうちへ帰られて、奥さんにぬかでも買わしてごらんなさい。(笑声)簡単に買えませんよ。三百円か三百五十円で買えたものが、三百円や四百円で買えない実情です。大豆のごときはたいへんな値上りなんです。これは実際問題です。CPIの問題じやない。そういう実際問題の中に国民というものは生活しているんです。ということになれば、大蔵大臣がいかに、物価はなるべくこのまま安定させておきたい——それは政治家としてあたりまえなんです。政府の閣僚として、物価を上げさせたいなんということを考えるばかものはありつこない。しかしながら実際問題においては、そういう実情の中に国民は投げ出されておるのです。そういうことになりますと、国民生活問題だけでは実際はない。それが問題のスタートとなつて日本経済全体に大きな影響を及ぼして来る。同時にまた政府の今考えているような、昨年の十一月にきめたことを前提とするこの経済自立達成への過程の上においても、そこに合わない歯車ができるのです。そういうことになつたのでは、せつかく政府が民生の安定だの、日本経済自立達成だのと唱えておりましても、それがから念仏に終つて国民生活に脅威を與え、日本経済に思わぬ混乱を巻き起すおそれがあるのではないかというふうに私ども考えればこそ、そういう問題を取上げて両大臣お尋ねをしておるわけです。しかるに、できればこれでやりたい。それは、せつかくつくつた予算なんですから。——しかしあなたもまた長官と同じように相次いで物価上昇を認めている。長官も、漸次上るだろう、大蔵大臣たるあなたも、物価漸次上るだろう、こう言われている。そういうことになれば、しかもこの予算案は、昨年の十一月につくつた。それから漸次つて来ている。そしてまた実施されるのは四月なのです。さらに政府がいかに、輸入促進をし、生産の拡大をするから、その方面はカバーして行けるのであろうということを言われても、それが一片の希望的な問題に終らなければ幸いだと私は正直に考えている。それでこの問題を繰返して尋ねているわけなのでありますが、すでに安定本部あたりでもいろいろ作業し、調査をして、物価上昇率についても的確な数字を出しております。たとえば先般、安定本部から出て来た材料だと私は思うのですが、毎月生産財の非配給物価指数は、昨年十二月以来一〇%ずつ近く騰貴している。これは安定本部から出た材料です。新聞記者はそうでたらめを書くものじやない。安定本部発表とは書いてありませんが、新聞記者というものはそうでたらめには書けないのです。(笑声)書くものじやない。そう書いてある。これは安定本部材料なんです。生産財の非配給品ですらもそういう上昇率を示しておる。そして国民生活の、安定本部長官の言われるように、一番大切だと考えておるところの食糧問題が今申し上げたような現実であります。とすればいやおうなしに政府は国外のこの避けることのできない物価上昇という問題ととつ組みながら、その中でどう日本経済を持つて行こうとするか、どう昨年の十一月にきめたこの予算を実施するということに努力するか、こういう問題に当面することは私は必至だと考えておる。にもかかわらず、大臣は先般来から比較的に安易な話をされておる。もう一ぺんこの点に最後的に念を押しておきますが、今日の段階で将来の見通しをつけて大臣編成されました予算というもので、ほんとうにやつて行かれる確信があるのだ、補正予算あるいは予算追加等のごときことは絶対になくして、磐石の腰をおちつけて、この予算の実施が貫けるという確信を持たれておるかどうか、これをもう一ぺん最後的に繰返してお尋ねいたします。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 物価高による国民生活の窮迫を言われておりますが、われわれは消費者物価指数CPIが相当の材料になると常ににらんでおるのであります。一昨年のそれに比べますと、昨年の十二月相当上りましても、なお低いのであります。将来におきましてはやはり一般消費者物価指数ができるだけ上らないようにやつて行く考えでおるのであります。  次に昭和二十六年度の予算は、今の状態行つたならばこのままでやつて行けるかというお尋ねですが、私は激変のない限りこのままでやつて行けると考えております。
  11. 川島金次

    川島委員 そこでちようど人事院からお見えになつておりますから、ついでにお尋ねします。  人事院は昨年において一般国内物価指数勤労者生計賃実態等々を厳密に調査をされた結果、あの勧告を出された、しかもその勧告がそのまま政府には採用されないで、何か八千円ベースと言つておるが、実際は八千円ベースではないことも人事院はよく御存じ通りです。しかもただいま私どもが申し上げております通りに、政府みずからが物価上昇を認めております。そうして人事院は昨年においてさえも九千円近くのべースでなければ公務員の生活保障はできない、こういう確信のもとに勧告をされておるのであります。それが現実においては実現されないで今日になつております。その上にただいま申し上げますように、政府みずからが認めるように、物価上昇過程をたどつております。こういう形において人事院としては昭和二十六年度において、政府の先般のただいま申しましたような賃金体系において、はたして官公労職員生計の安定が真実に期せられるというお考えでおられるかどうか。もしそうでないとするならば、どういう物価事情生計事情において、いかなる対策をとらなければ、真に官公労諸君生計の安定が期せられないという確固たる別の見通しがあれば、この機会にちようどいい幸いでありますから御所見を漏らしていただきたい、こう思うのです。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 人事院総裁お答えの前にはつきりさせておきたいと思うことは、政府物価上昇傾向にありと言つたことをもつてお尋ねのようですが、私どもは今の国際情勢から、おそらく上昇傾向だろうとは認めますけれども、それは一体どのくらい上るかということ、また上るものは先ほど申しましたように生産財であります。しかもまた外国へ出る原材料が多いようであります。翻つて国内関係に見ますると、御指摘のように、なるほど大豆というようなものは、はつきり申しまして、ちよつと輸入が遅れております。ただいまその手当をいたしております。これは数が入れば価格はおちつくのであります。輸入が少いから、ないないという一つ思惑がそこへ入つて来ておるということも事実であります。そういう面につきましては、量を入れるということによつて安定させ得ると思います。そういう特例をもつてお話は私は研究の余地があると思う。というのは、先ほども申しましたように、十二月の東京卸売物価指数によりましても、実効物価趨勢を見ましても、大体において四%くらいしか上つていない。しかもさつき大蔵大臣が申しましたように、その大きなものは、綿に関する思惑が非常にあつて非常な上り方をしておる。そこでその面におきまして物価が上つておる。実際の米のやみ価格というようなものは、実効価格では大体横に行つておる。ある地方におきましては、むしろ公定価格を下まわつておるような実態であります。私どもはそういう実態をとらえて、消費財生活物資等値上り状況、それから生産財値上り状況というものをよく見合せまして、ほんとうに将来どうなるかということをはつきり見きわめた上で処置すべきである。大蔵大臣の申しますように、今日の問題とふたしましては、そうあわてて今の予算をかえるとかなんとかいうことは必要ない、かように考えております。運賃の問題がただちに影響するかいなかということは、具体的な品物について考えてよろしいのであつて運賃上つたからすべてが上るとただちに断定を下すことは早いと思います。
  13. 淺井清

    ○淺井政府委員 人事院に対する御質疑お答え申し上げます。まず最初人事院の八千五十八円ベース政府によつて採用されなかつたというような御発言があるかのように拜聴いたしましたが、私の考えまするところにおきましては、新しい給與法の第一條にありまするごとく、人事院勧告は原則こして尊重されておると私は思つております。まずその一番基礎となつておりまする、すなわち標準生計費民間給與との均衡を基礎として給與を算出いたすという一番根本的な考え方は、人事院勧告通り政府の法律によつて採用いたされておると思つております。  それから次に給與水準、すなわちベースにつきましては、人事院勧告いたしましたとほぼ同額のベース給與法において採用されておると思つております。さて現在の物価漸騰傾向におきまして、将来の見通しについて御質疑がございましたが、人事院といたしましては給與ベース引上げ勧告をいたす考えであるかどうかということだけしかお答えは申し上げられないのでございますが、人事院といたしましては、ただいま三つの点から仰せの通り厳密に再び調査をいたしております。第一の点は過般の新しいベースに切りかえまして、さてベースがいかほどになつておるかというのが第一点でございます。第二は民間標準職種すなわち政府職員の職務と同じような内容を持つておりまする民間職種賃金が、どのように騰貴いたして来ているかということでございます。第三は標準生計費の計算でございます。これは仰せのごとく厳密に調査いたしておりますが、ただいままでのところにおきましては、まだ勧告するという結論には達しておりません。ただ将来はいかがになりまするか、これは結局それらの調査の結果にまたなければならないと存じます。
  14. 川島金次

    川島委員 今のお話によりますと、何か政府人事院勧告を尊重したというお言葉のように承つたのでありますが、もう少し人事院はこの官公労の給與体系について、誠実に真剣に考えておる場所であると私どもは信頼し、期待もしていた。政府の先般きめましたいわゆる八千円ベースというのは、人事院の八千五十八円ベースとは内容が違うのです。ということは、私がいまさら申し上げるまでもない事柄だと思います。にもかかわらず、人事院ともあろうものが、政府に対する真剣な勧告が、なるほど半分くらいいれられたといえば、それまででしようが、しかし人事院は、私どもが信じておりまする範囲においては、すべて真剣な態度を持たれまして、しかも広汎に緻密に物価事情生計実態民間の同一な職種事情との比較等々を調査、勘案されて、ぎりぎりの線を出されたのだと私は信じておるのです。ところがそのぎりぎりの線が全幅的には採用されておらないということは、私は事実だと思う。が、今のお話によると、何か全幅的に政府に尊重されて、人事院勧告が全部まるのみにのまれたというようなふうに私どもには受取られるのですが、これは私どものみならず、人事院の活動を期待し、信頼しておりまする官公労大衆の諸君にとつても、重大な事柄でございますので、もう一ぺんその点についての所信を繰返して明らかにしておいていただきたい、かように思うのであります。
  15. 淺井清

    ○淺井政府委員 重ねてお答えを申し上げまするが、先刻の御発言中におきましては、全然採用されておらないかのごとく受取りましたので、それを申し上げたのであります。人事院勧告が全面的には採用されておらないことは、昨年中あれだけ私どもが強くやりましたことで、十分御了解くださつたことと思います。
  16. 川島金次

    川島委員 ついでですからもう一ぺん人事院にお伺いいたします。今お聞きのように、政府の閣僚は、輸入の問題は別として、とにかく物価上昇というものも否定はしておりません。おそらく人事院においても、ただいまお話のありましたように、民間生計費の実態等の調査を現在進められておるのだと思うのですが、この状態でかりに物価事情というものが推移したといたしますれば、当然そこに公務員の給與の問題が起つて来るのではないかというように、私どもには予測されるのであります。そういう点はただいま申し上げましたように、今のところではないかというお話でありますが、今後のそういう問題についての人事院としての見通し、これをひとつ率直にお聞かせを願いたいと思います。
  17. 淺井清

    ○淺井政府委員 人事院といたしましては、将来の賃金あるいは物価上昇見通しなどについては、発言すべき限りではないと存じております。人事院といたしましては、ただ調査に基きまして、公務員法第二十八條の條件を満たしましたならば、勧告をいたす義務がある。これだけでございます。それゆえに、ただいま厳密に調査をいたしておるのでございまするが、今日までのところにおきましては、まだ第二十八條の條件は満たしていないということだけを申し上げるにとどまるのでございまして、将来いかに相なりまするかは、ただいまここで私からは何とも申し上げることはできません。
  18. 川島金次

    川島委員 私は政治というものはそういう形式論ではいかぬと思うのです。お互いにそういう形式論をはずした裸の立場に立つてほんとう日本経済自立、民生の安定という土俵の上にお互いが乗り上つて、そしてお互いにその問題ととつ組み合いというところに私は政治の真剣味というものがあるのだという確信を持つておるのであります。そういう立場にわれわれはおるのです。私は何も野党だからというので、周東長官池田さんやあなたにいろいろの質問をしているのじやないのですよ。ことに昭和二十六年度は政治的にも経済的にも、また民族的な上に立つても、いろいろな意味において重大なときなんです。であればこそ、国民の一人として私はちよつと声を張り上げた形でお尋ねをしておるわけです。そういう真剣な場において、ただ形式的な答えでこの場を過せばよろしいのだという考え方であつては、国民が迷惑だと私は思う。それでそういうことを聞くのですが、これ以上聞いてもあなたの考え方はそういうところにあれば、これは答弁がないでしようから申し上げません。しかし少くとも国民大衆というものは、そういう形式論にこだわりながらものを考え、ものをつくつておるのではありません。きようの生活をどうするか、あすの日本はどうなるか、これを考えておるのです。憲法の何條、人事院の法律がどういうことであるという問題じやないのです。しかしそういうことを押し問答しておつても、あなた方の考え方がそこにあるならば、私は人事院というものをきようから見直します。それだけは断つておきます。おそらく勤労者もあなたの今の言葉で唖然とし、失望するだろうと私は思う。いずれまたその問題についてはお尋ねします。  ついでにもう一つ聞きます。これは答えられることだと思うから聞きます。人事院では目下官公労の職員の地域別的な生計実態基礎として、地域給に関する何らかの対策を新たに考えられておるというお話を承つておるのですが、その点がもし説明ができるならばこの機会に漏らしてもらいたい。
  19. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。われわれは公務員の利益を保護する立場から真剣にこの問題を取扱つておるのでございまして、決して形式に終始してないということは、過去の事実に照らしてもごらんくださることと存じております。ただここで勧告をするかしないかの見通しを言えと仰せられましても、これは結局物価でございますとか、経済政策等との見通しの問題と関連いたさなければ申し上げられることではございませんので、それは人事院では言いかねると申し上げただけでございます。  次に、今後のお答えでお見直しくださるかどうかは存じませんが、地域給の問題につきましては、真剣にこれまたとつ組んでおるのでございます。ただ何分にも全国にわたるところの重大問題であり、すなわち、御指摘のごとく各地方から勤労者各位の陳情等も多く、それを一々勘案いたしまして、無理のない案を出したいと考えておりまするので、あの法律におきまして規定されておりまする人事院の地域給に関する勧告を、いつ国会及び内閣に提出することができるかは、まだここで申し上げる時期に達してないのでございます。
  20. 川島金次

    川島委員 伝えられるところによりますというと、人事院では、具体的に申し上げますが、地域給を現在の三段階制と申しますか、それを修正いたしまして、五地域別の制度をあらためて設定いたしたい、このことによつて官公労職員の地域的な生計の安定のてことする、こういうふうに作業をされて、すでに大体その案が完了に近づいておる、こういう話を承つておるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  21. 淺井清

    ○淺井政府委員 現行三段階を五段階にいたしますることは、決して人事院の試案ではございませんので、国会の御制定になりました給與法の成文に書いてある通りでございますから、人事院はこの條文を誠実に実施いたしまして、五段階勧告をいたすのは当然でございます。ただもうすでに案ができているとの御推測でございまするけれども、まだこれは完了はいたしてないのでございます。
  22. 川島金次

    川島委員 それではもう一ぺんお尋ねいたしますが、今の五段階の問題について、人事院は早急に政府並びに国会の方へ勧告をするという用意を持たれておるかどうか、それをお聞きします。
  23. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。地域給の調査は、ずつと以前から相当の費用も予算に計上していただきまして、ただいま継続をいたしております。これは特別消費者価格基礎といたし、その他各種の事情を勘案いたしまするために、まだ今日完了いたしてないということを申し上げたのでございます。早急という御趣旨をどういうふうに御了解くださいまするか、私の見るところにおきましては、その早急がここ数日とかいうような意味でございまするならば、まだその段階には達していないと申し上げるほかはございません。
  24. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ちよつと関連して……。今人事院総裁から地域給の話が出たのでありますが、現在の予算の範囲内であれば、結局どこかを低めてまたどこかを上げるという形をとりましようと思いますが、それではおそらくないだろう。しかも現在の状況から申せば、当然私は追加予算なり、そういう形でもつて、どうしても予算の外にはずれて来るだろうと私は思う。これについての人事院の現在の考え方をはつきりお聞かせ願いたい。予算の外であるか、なお追加予算を要求するか。
  25. 淺井清

    ○淺井政府委員 人事院といたしましては、現在の予算の範囲内だけで操作をするということを前提といたして研究はいたしておりません。ただいま申し上げましたように、いろいろな状況から見まして、合理的なものを出したいと思つております。その結果あるいは予算上にどう響くかと申しますることはただいままだその案が結論に達しないので、人事院としてもわかりかねますし、第一予算に関する問題は大蔵省当局にお願いするよりいたし方ないと思つております。
  26. 川島金次

    川島委員 そこでもとへもどつたお尋ねを申し上げたいと思いますが、先ほど私が申し上げました、経済安定本部長官演説の骨子になるものは、何といいましても、日本経済自立達成で、大蔵大臣もその線に沿つての諸政策というものを、一応よかれあしかれ打出したわけであります。そこでお尋ねするのですが、この日本経済自立達成段階として、昭和二十八年度を一応の目標にされておる。これは審議会の答申案もそうです。また長官演説もそういうふうに明記されておるわけです。しかもその二十八年度を一応の目標に置いて輸出入の問題の解決生活水準の上昇、それに伴う諸施策がかなりこまかく言われておる。いずれも文章的には一応りつぱなのですが、内容的には何にも書いてないと同じ形のように私は実は感じておる。たとえば二十八年度の目標として国民生活を戰前の九〇%に上昇させるんだ、こういうふうに言われておる。なるほど三箇年の間に国民生活が戦前の水準の九〇%に達成ができればまことに幸いだと思う。がしかし一体そのときには国内における今日の五十万に余る完全失業者、あるいは四百万と称せられる不完全就業者、こういつたものは解消される形になるのか。それとも依然として失業問題は未解決、不完全就業者もちまたにおる、これもやむを得ないのだという考え方で、この二十八年度という自立達成を目標にされておるかどうか、その点についてお尋ねしたい。
  27. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えします。川島君の失業問題に対する御心配はまことにごもつともでありますが、これは何といたしましても、日本の今の経済状態では、一足飛びに完全雇用というところまで進むことはできないのは、これは川島君一番よく御存じのことと思います。どういたしましても日本経済実態からいたしまして、順次生産性を高めつつ、そこに雇用の機会を與えるという段階に進まなければならない。従つて計画といたしましては、全部それまでに完全失業者をなくするというところまで行つておりません。しかし、その計画の実行が諸條件にはばまれずに行くということになり、しこうして産業生産指数というものが希望のような形まで実行して進めば、おそらく不完全就業者というものは順次影をひそめて来て、二十八年度以降二十九年度ぐらいから完全失業者の数を減らし得る形に進め得るのではないか、かように考えております。
  28. 川島金次

    川島委員 およそ日本経済自立達成という大きな題目を掲げて国民に宣言し、その達成国民に公約する、こういう重要な問題を宣言をし、公約される場合、今のお話によりますというと、何やら二十八年度においても失業者のちまたに彷徨しておる姿が想像されるのであります。そういうことであつては、私はせつかくの政府日本経済自立達成目標というものも、半分は念仏に終るという形になるのじやないかと思う。国民の中には政府のこの自立達成計画について、ある程度の関心を寄せているものが少くないと思う。そうして今四百万にも余ろうという不完全就業者、四、五十万の完全失業者、あるいは未亡人、引揚者等々貧困な生活の中にあえいでおりますところの大衆が、この問題について一応の関心を拂うということは当然なのであります。ところが今のお話によると、どうもその点は非常にあいまいなんです。従つて政府の言うように、二十八年度を目標として一応日本経済自立態勢が整つたが、しかし今のお話によれば、反面に依然として失業者はころがつて、おる。それでは政府が声を大にして言われる日本経済自立でないと思う。もしそういう完全失業者や不完全就労者というものが想定されるならば、その完全失業者や不完全就業者に対して、一方に完全なる社会保障的な政策というものを確立してこそ、初めて私は日本経済自立態勢が、完全とは言わなくても、一応の整えを見せる姿になるのではないかと思います。従つて長官にお伺いいたしますが、そういう問題に対する安本の考え方というものはどういうふうに進んでおるのか、それをひとつ具体的にお示しを願いたいと思うのです。
  29. 周東英雄

    周東国務大臣 理想的なお話をもととしてのお話ならばその通りでありましよう。私どもは、ただ机上の空論を立てたくはないのであります。日本の現状から見まして、一歩々々確実な計画で進まなければならぬ。私どもは、この自立経済計画で満足だとは思つておりません。しかし、まず最初にわれわれが改訂して行かなければならぬ点は、他人のやつかいにならない、援助資金というものを打切られても、自己の経済によつて貿易のバランスを均衡させて行くということに眼目があつてしかるべきだと思うのです。従つて、今われわれとしては、まずそういう面を拾いつつ不完全就業者の数をなくして、進んでは今の完全雇用に行くならばけつこうであります。批判は自由でありますけれども、今の日本経済で、そういうことを全部やつて一人残らず就業させることができるとお考えになるのは私はいかがかと思う。しからばこれを別個にいたしまして、社会保障的なものでやつたらと言いますが、それは健全財政の問題であります。しかも私どもは、消極的な立場において財政を使つて行く形よりも、今日の理想は、やはり日本生産性を高め、産業を復興いたしまして、就労の機会、雇用の機会を與えることによつて、順次失業者の数を少くして行くということだと思う。理想的におつしやればそれはけつこうでありますが、やはりその点は、貧乏国になつ日本経済の復興に順次即応しつつ適当なる手を打つて行くべきである。そういう理想は、すぐにできるならば非常にけつこうでありますけれども、第一段階としては、私どもは現在の自立経済の線で行きたいと思つております。
  30. 川島金次

    川島委員 私の今お話したのは、失業者を全部一掃するのが理想だと言つたのではないのです。三年間にそうせよと言つたのではないです。あなたが、三年の後においても失業者があり得る、不完全就業者も漸次減少させる方向に向うけれども、全部拂うわけに行かない、こう言われるから、それならばこの自立経済の中にそういう面としつくりにらみ合せた保障制度というものを確立する必要があるのではないか、それでなければ自立態勢の意味というものは、それこそこの文章の中にある九仭の功を一簣に欠くという形になるではないかと私は申したのです。その点はどうです。
  31. 周東英雄

    周東国務大臣 私どもの計画は、この計画が予定通り進行して行つて生産性が高まり、そうして産業指数が一四一ですか、工業生産指数が一三一というようなかつこうになれば、それによつて不完全就業者は相当吸収できる、こういう目標なのです。とにかくわれわれは、積極的に産業を興しつつ、そこに就労し得る機会を與えるということを眼目に置いて計画を立てておるが、残念ながらそれまでの期間に不完全就業者を完全に吸収することは今の場合できない。しかもこれは最小限度の形であります。私ども九〇%の生活水準をもつて満足はいたしておりません。しかし一応援助資金が打切られるということになつている二十八年度において、まずその援助資金をもらわないでやつて行くという方策のもとにあの案が立てられております。幸いにしていろいろな関係で思う通り以上に生産が向上して行くならば、あの計画はもつと早く縮むかもわかりません。しかしこのことはすべて国際情勢影響がありますので、思う通り行かなければ、あの計画よりもさらに下まわるということも考えられる。しかし一応の目標をそこに置いて立てておるのです。
  32. 川島金次

    川島委員 どうも私がお尋ねしている的をはずしているような形ですが、私が繰返して質問しているのは、社会保障的な計画の具体的な腹構えです。そういうものがなければ、実際政府が声を大にして言う日本経済自立態勢などというものは満足なものではないではないか。これを私は繰返して言つているわけなのです。先般政府みずからがつくられた社会保障制度審議会の問題等につきまして、川崎君からもお話がありましたけれども、ある程度整つた社会保障制度に対する答申案が出ております。そういうことについても二十六年度の予算に盛られたものは、あるかなしかの程度のものなのだ、そういう事柄について、安本長官としてもこれは真剣に考えられているのではないかと思うので、これを承つておるのであります。その社会保障制度についてどういう具体的な態度を今後持つて進まれるか、それをひとつ重ねて聞きたい。
  33. 周東英雄

    周東国務大臣 社会保障制度についてはもちろん考えておりますけれども、まだ申し上げる時期ではありません。御承知の通りわれわれも真剣にやつておりますが、今御指摘のような社会保障制度審議会で具体的に研究している、というのはこれは何でもそのままやればいいという考えではいけません。やはり財政との見合い、将来これを一旦始めた後における財政負担を考えて行かなければならない。そうただ絵に描いたもちのようなことをやることはできませんので、お互いにやつた以上、スタートを切つた以上は、途中で参つてしまうようなことはいかぬのです。そこに愼重な考慮が携われておる。決して放擲をしてはおりませんが、日本の財政との見合い、しかも今日の問題ではなく、始めた以上は将来の財政の見通しも立てて行かなければならない。やはり今よさそうであつてつても、非常に苦しんでいるという例はほかの国にもあります。日本のような貧乏な国におきまして始めるということはいいとしても、あとのことを考えて行かなければならぬということで、愼重に研究いたしている点であります。
  34. 川島金次

    川島委員 それはその程度で、押し問答になるきらいがありますから、一応打切つておきます。そこで日本のこの経済自立、私は非常に重要な問題だと思いますので、午前中の最後の質問として、もう一ぺんこれは両大臣お尋ねしておくのでありますが、なるほど日本の国土は狭小になつた。人口は非常に増加した。その上によく政府国民の一部でも言うのだが、資源が少い、私はこの資源問題については考えようだと思う。なるほど人口は世界的に稠密をきわめております。領土的にも世界的に狭小な日本になつている。しかし資源的に見れば、食糧を除いた以外のもののおおむねにおいては、これは国の施策いかんによつては、その資源の不足だといわれ、貧困だといわれるものの開発と増大ということが、必ずしも達成できなくもないのじやないかという考え方を私は持つておる。たとえば地下資源等のごとき、石炭、あるいはまた地上の水力、あるいはまたその他の地下資源等におきましても、国の総力をあげた施策、集中的な施策、そういつたものを総合的に考えれば、必ずしも日本は資源的にそう悲観すべき立場にあるものではないと私は思うのです。スイスのごときは資源はない。ないが世界的にきわめてすぐれた生活水準を保つておるということも、私どもこの間見て来たのですが、そのようなところでさえも、やりようによつて国民生活水準というものを高めることができる。文化も高くなり得る。そうして平和をも保ち得るという事柄は、スイスを見るまでもないわけであります。そこで両大臣に尋ねるのですが、日本のこの資源というものの開発に対して、施策的にもあるいは財政金融の面においても、よほど真剣に考えられて、根本的なものをこの機会に立てるということが、非常に私は必要ではないかという考え方を持つておるのです。そういう日本のいわゆる資源的な隠れたる富というものは、一体日本に現在どのくらいあるか。その隠れたる富を生かすためには一体どういう計画において、どういう財政的な措置において、どういう労働力、どういう技術力等においてこれを開発して、一般的に悲観されているところの日本の富、資源、これを表に引出して行くか。そうして日本の真の、文字通り経済自立というものを達成するという積極的な、気宇の大きい施策というものが、今日最も緊急に要求されるときじやないかと、かように思うのでありますが、こういう問題についてひとつ周東さん、池田さん、両大臣考え方がありますれば、この機会に承つておきたい、かように思います。
  35. 周東英雄

    周東国務大臣 ごもつともな御意見でありますが、これにつきましては御承知のように終戰以後その点について目をつけて、国内における総合開発ということをやるために、昨年でありましたか、国土総合開発法なるものが御協賛をいただいてでき上つております。これを活用し、各地方々々における総合的な開発計画案というものを出してもらつて、最近案の一応提出されているものが十三地区あるようであります。この内容については、国土総合開発審議会で取上げて審査し、これが政府の方針になると思います。この中にいろいろ地下資源の問題、電力の問題、あるいは森林資源、土地の問題、こういうようなものがすべて含まれております。これを実施に移す適当な案が答申されれば、できるだけ早く実施に移して、お話のように残されたる未利用資源の開発に努力いたしたい、かように考えております。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 安本長官お答えなつ通りでありまして、国土の開発につきまして私は資金面からいろいろな計画をいたしておるのであります。そのために開発銀行的なものをつくるというのもこの意味であります。また最も要望されている水力の開発、これには予算面におきましても一億円の調査費を計上し、未利用資源の開発をはかつております。また日本に適した外貨獲得の分といたしましては、造船にも十分力をいたし、資金面から安本の計画を支持して行くように努力いたしております。
  37. 川島金次

    川島委員 きわめて答弁が抽象的で困る。もつと具体的に政府考えている所信を明らかにすべきだと思う。また明らかにしてほしいという立場から私は尋ねているのであります。たとえば池田大蔵大臣は先般の演説で、今の開発銀行をつくる、これは全額政府出資だというふうに言われた。ところがきのう同僚のだれかが質問すると、その内容については政府出資にするのか、民間出資にするのか、その他の方法によるのか、まだきまつていないというようなことを言われておるですね。何か日本の総合的な開発の問題について単なるゼスチユアであり、政党の選挙的な対策にもてあそばれておるというふうな気が、きのうの答弁を聞いていると非常にしたのです。割合に私は物をすなおに聞く方なんですが、そのすなおに聞く私でさえもそういうふうに聞いたのですから、ほかの人はどのように聞いたか推して知るべしなんです。今もまた大蔵大臣は開発銀行の話をされた、されたんだけれども、きのうの話を聞けば内容はわかつていない、しかも演説のときには政府全額出資により開発銀行をつくるんだといつているのです。ところがきのうの話は違うんですよ。そういうことであつては、一体政府の施策というものの真意がどこにあるんだということになるわけだと私は思うのです。これは何も私はへんぱな考えで言つているのじやないのです。そういうふうに考えるのはあたりまえでしよう。そういう事柄についても明確に、しかも具体的にこういう席上でその所見を表明することによつてのみ、初めて日本経済自立、財政問題の解決国民生活の安定の問題等見通しが立ち、それに対してわれわれが協力すべきものは協力し、反対すべきものは反対し、批判すべきものは批判するという一つの具体的な根拠が生れて来るわけです。そこでもう一ぺん、お話が出ましたから、その開発銀行の事柄について具体的にひとつお話を願いたいと思うのです。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 川島君はすなおに物事をお聞きになると言つておられますが、この問題につきましてはすなおにお聞きになつておられません。私は開発銀行を民間資金でやるとはきのうも言つておりません。財政資金でやると言つておるのであります。出資の問題はただいまのところは政府全額出資、しかも債券を発行するときには財政資金でやる。すなわち預金部、あるいは広い意味の復興金融金庫の肩がわりという問題も出て来ます。しこうしてでき上つた開発銀行がいかに資金を運用するかという問題につきましては、民間資金の短期資金をもつて長期に借しておるようなものを肩がわりするとか、こういうふうに言つておるのであります。私は決して間違つたことは言つていない。これは速記録をごらんになつたらわかると思います。しこうして、日本開発銀行の出資は政府出資でありますが、どれだけの金額にするか、あるいは業務の範囲をどういうふうにするかということについては、まだお話申し上げる段階至つていないのであります。御了承願います。
  39. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際林百郎君から川島君の質問に関連して質疑があるようでありまするから、一問に限つてこれを許します。林百郎君。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 私は別にあげ足をとるつもりでもなんでもないのですが、実はこの前の補正予算質疑の際にも、周東安本長官からこの輸入計画の点についてお聞きした際に、非常に周東安本長官は楽観的なことを述べられたのです。私たちとしては輸入は非常に重要な問題なんだがどうかと言いましたが、決して心配ないというような非常に楽観的に響く言葉を聞いていたわけなんですが、その後のいろいろな情勢を見ますと、日本の国の経済にとつて最も重要な問題は、輸出よりはむしろ輸入なんだ、最近では輸出を禁止して輸入に全力を盡すべきだ、輸出銀行も輸出入銀行にしなければならないじやないかという意見すら出ているようであります。また本年度、池田大蔵大臣も非常にまあ関係方面と折衝して苦労なさつたといわれておる、いわゆるインヴエントリーのような財政的な操作もせざるを得ないような情勢に立ち至つておるのでありますが、これは明らかに日本の国の貿易、特に輸入計画が非常に困難な状態に達しておるということの有力なる証拠だと思うのであります。そこで先ほど周東安本長官川島君の質疑に対する答弁を聞いていますと、先ほどは、たしか原綿と羊毛の例をあげられたと思いますが、これは非常に楽観的なことを言われたようであります。われわれは原綿はさておいて、羊毛の点については相当問題があるようにも思います。そこでこの際、この輸入計画について周東安本長官に、二十五年度の目標がどの程度であつて、それが現在どの程度まで達しておつて、それから本年度末には、これかどうなる見込みか、それから来年度の目標はどうなつているかということ、ことに原綿と羊毛は心配ないと言われますが、この点はどういう根拠から心配がないと言われておるかという点が一つ。  それから第二は、船賃が非常に騰貴して来ておるのであります。一例を申しますと、十一月下旬から十二月上旬だけで、鉄鉱石が七・五ドルから一五ドルに、小麦が七・三ドルから一二ドルに、石油が七・一四ドルから一二・二四ドルにと、一〇〇%から六五%、七一%の厖大な船賃の値上りをしておるのでありますが、本年度の輸入計画に対して、わずか一月の間に鉱鉱石のごときは運賃が一〇〇%も上つておりますが、これに対する本年度輸入計画において、特に船賃の値上りについてどう考えておるか、これが第二点です。  第三点は、造船の問題です。造船は、やはり第七次造船だけでも、民間ではどうしても五百億の資金が必要だと言つています。これが予算書を見ますと、正確には記憶しておりませんが、たしか見返り資金のうちから百十五億程度、これにさらに民間資本を裏ずけにして倍にしましても二百二、三十億円になります。これが民間資本の方で引受けられるかどうかは問題で、しかたがないから経済安定費、あるいはインヴエントリーの方から何とか融通しなければ、第七次造船計画も達成困難ではないかというような問題があるわけであります。こういうふうな船賃の点から見ましても、それから船腹の問題からいいましても、周東安本長官の言葉のはしはしから出るような楽観論は、むしろわれわれから聞くと、無責任じやないかというような印象まで與えられておりますが、今私が聞きました三点については、日本国民がみな聞きたがつておるところですから、できるだけ正確に誠意をもつてお答え願いたいと思います。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。誠意をもつて間違いのないようにお話をするつもりでありますから、先ほど川島君に羊毛、原綿については近くすべてはつきりしたときに申し上げると申しておりますから、今日は申し上げません。  それから船舶につきましては、第六次の追加についても、すでに計画が進んでおりまして、三月末までには必要なる資金をととのえて着工し得る見込みを立てております。第七次の造船につきましては、ただいま資金の関係について御心配でありますが、大体政府の方で見返り資金等につきまして計画を進めております。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 輸入の計画と達成目標は……。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 それは後ほど午後数字をもつて説明いたします。
  44. 川島金次

    川島委員 私は午前中の質問はこの程度にして、午後続行いたしたいと思います。
  45. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時半より再開、質疑を続行いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  46. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑を続行いたします。川島金次君。
  47. 川島金次

    川島委員 午前中ちよつと大蔵大臣質疑をし、その答弁を承つたのですが、その答弁に基いてもう少し具体的に承つておきたいと思うのであります。実は先般この席上で同僚の西村委員からだと記憶いたしますが、アメリカ及びその他の食糧統制問題に触れて、日本輸入食糧計画にある程度の齟齬を来すのではないか、こういう意見が出た。その上にこれは河野主計局長からの答弁であつたと記憶するのですが、輸入に関する運賃の大幅な値上り、こういう事柄もこの席上で明らかになつたわけです。そういう一連のことを前提とし、そうして先ほど午前中申し上げました国内物価の騰貴傾向を勘案いたしまするときに、まず第一に心配になるのは、政府の今の食糧輸入補給金だけで、はたして政府が予定いたしておりまする三百二十万トンの食糧輸入が完全に果せるかどうか、こういう問題に突き当るのではないかと思うのでありますが、アメリカ等におけるこれら麦輸出の禁止あるいは列国の食糧の買いあさり、船賃の大幅な値上り、こういうことを考えて、はたして政府の今日の補給金予算だけで所定の輸入食糧を入れるという確たる見通しを持つておるか、こういうことについてもう一ぺん繰返してこの機会に池田さんにお伺いをいたしておきたいと思うのです。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十五年度におきましては御承知の通り三百二十万トンの輸入計画でありました。昨年末までに百七十万トン、三月で百万トン程度の輸入かと思います。従いまして今年度三百二十万トンはちよつと困難かと思います。来年度におきましては依然として三百二十万トンの輸入を見込んでおります。しかるところ、ただいまの状態ではお話通りに船賃がかなり暴騰いたしました。食糧自体につきましての値上りはさしたる問題ではございませんが、船賃の問題であります。ところでわれわれといたしましては、この船賃が上らぬことを望んでおるのでありますが、今の状態でも三百二十万トン入れるということになりますと、二百二十五億円の補給金では足りないということは認めるのであります。しからばそれは何ぼにするかという問題でございまするが、これは私は、今予算を定める場合もアン・レーン・フアクターがあります。たとえば運賃でありますが、日本船でやつて外国船より安くつきますが、むちやくちやに安くなつて行くわけのものでもない。ただ私は、問題は小麦協定の問題があるので、小麦協定に参加することになれば、大体初年度でも七、八ドル、八、九ドルくらい安い、あるいは八十一ドルから七十一ドルくらいになると思うのでありますが、だんだん安くなつて来ますから、小麦協定に入るというアン・レーン・フアクターがあるし、船賃もそうむちやくちやに上るというものでもなく、一応のところでは今の情勢では不足するが、まあこの程度で努めてみるつもりであります。
  49. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣の率直なお答えによつて、二百二十五億円の補給金では政府が予定している食糧輸入は、船賃関係できわめて困難になつて来たということが明らかになつて参ります。そこで一体もしそういう所定の輸入量がこの補給金では困難だという場合に、しかもなおかつ所定の輸入量を入れなければならぬという事柄前提とした場合に、その補給金の不足額は一体どこに求めるか。それとも補給金をこのままに置いて輸入食糧を減少せしめるという心構えでいるのか、その点をひとつ承りたい。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 川島君も御記憶であろうと思いますが、昨年の今ごろ三百二十万トンの食糧を入れたらどうか。多過ぎるではないかという議論があつたのでありますが、われわれは目標を三百二十万トンとしてやつて行く。そうして極力これに向つて確保しようと努力いたしておるのであります。やはり計画といたしましては、私は三百二十万トンを来年度計画いたしております。しこうしてこのまま小麦協定にも入らず、船賃もどんどん上つて行つたという場合においては、それはそのときに考えればいいのであつて、今アン・ノーン・フアクターを持つておりますから、いわゆる三百二十万トン入れる計画で進んで行つてさしつかえないと考えております。いよいよどうしても三百二十万トンいる、そうして主食のシフ価格が上つて来るということになりましたら、そのときに考えればいいのであつて、私は今からそう取越苦労をする必要はないのじやないかと考えております。
  51. 川島金次

    川島委員 今の大蔵大臣の答えによると、必ずしも三百二十万トンなければならぬという絶対性のものではないように聞えた。そこで農林大臣にひとつお伺いするのですが、ただいま私の質問に対して大蔵大臣は小麦協定に入れれば別だが、かりに小麦協定の問題を除いた——現在小麦協定に入つておりませんから、除いた形において、二百二十五億の輸入食糧の補給金を計上してある、ところが船賃等の値上りによつて、あるいはまた国際的な食糧買付競争等のあおりを受けて、所定の輸入食糧が得られないかもしれぬ、こういう場合がわれわれは想像されるのであります。その場合に一体農林大臣として、かりに政府が定めておりまする三百二十万トンの輸入食糧がいけないということになつたときに、それでも国内食糧でいささかの懸念もないということになるのか、どういう形になるのか。これは重大なことですからひとつ……。
  52. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 予定は三百二十万トンにいたしておりますが、多少減りましても内地の貯蔵量が相当ありますので、これを食いつないで行くうちに新しい米、麦ができて参りますので、そう心配はいたしておりません。
  53. 川島金次

    川島委員 どうも廣川さん、もう少し真剣な話をしてもらいたいと思うのです。それではお伺いしますが、昭和二十五年度産米で、二十六年度に繰越されるところの食糧というものは現状でどのくらいあるのですか。
  54. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あんまり記憶のよい方でないので数字はよく覚えておりませんが、大体千六百万石くらいだろうと思います。
  55. 川島金次

    川島委員 この千六百万石の数字には若干どうも私には疑念があるのですが、あとでだれかを呼ばれまして正確なことを言つてもらいたいのです。  そこで重ねてお尋ねしますが、三百二十万トンの所定の計画に齟齬を来した、そういう場合に、一方においては備蓄米があるからまあ心配はないんだ、こういうことに農林大臣は言われるのですが、そうするとこの食糧補給金の二百二十五億というものは相当の彈力を持つているという考え方にもなるわけです。少しは船賃が上つても二百二十五億で間に合うかもしれぬ、もつと上れば他のことを考えるかもしれぬ、こういうことになる。かりに農林大臣が言われるように、繰越米があるから二十六年度の食糧生活にはさしたる懸念がないということは了承できても、これは大蔵大臣の問題になりますが、この二百二十五億円という予算の中にはそういうことをあらかじめ見越して、この補給金というものを立てているんではないかという疑問が生じて来るわけですが、その点は一体どういうことになるのですか。
  56. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 ちよつと川島君に申し上げますが、今あなたの御発言中、農林大臣が千六百万石近い備蓄米があるという話で、この数字は非常に疑点があるとおつしやいましたが、あなたの御要求は、それに端数でもつくのであろうからそれを補足せよという意味でありましようか。それとも全然でたらめ……。
  57. 川島金次

    川島委員 全体的に……。
  58. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 そうだといたしますと、これは委員会の権威のために問題にしなければならないと思いますが、どちらでございましようか。
  59. 川島金次

    川島委員 全体的だよ。
  60. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 農林大臣、そういう質問でありますが、これはちよつと問題になりますが、あなたのおつしやつた数字は大体それに近いということで間違いの数字でないと思う。端数があるかもしれぬという、こういう意味での御質問でしたら、書類で提出させるようにいたします。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 二百二十五億円の数字でたらめなものではないので、やはり大体小麦はシフ価格でトン八十八、九ドルと計算いたしております。米の方は大体百四十ドル程度に見ているのであります。しかして川島御存じ通りに、今年度の予算におきましては小麦を平均九十三ドル程度に見ておつたかと思います。それから米の方は百四十ドル程度で見ておつたのであります。しかるところ、ビルマの方の米は百二十八ドルあるいは百三十一ドル程度で参つた朝鮮米は百四十二ドルであつたのであります。しかして補正予算の場合におきましては十月までは実績によつてやりまして、その後におきましては実績でなしにやはり当初の予算数字で行つております。そういうふうに補給金の計算につきましては、そのときの状態により相当の見通しをつけてやつているのであります。いいかげんなものではないのであります。それから今年度におきましても三百二十万トンの輸入ができなかつたとすれば、船賃の値上りがありましても、私は六百数十億円の、予算が、相当の剰余を生むことを期待いたしているのであります。
  62. 川島金次

    川島委員 今の船賃の値上りがあつても、六百数十億円の剰余というのは、それはどういうのですか。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 本年度三百二十万トンを予定いたしまして、しかして先ほど申し上げましたような金額で行つている。それが、先ほど答弁いたしましたように、昨年末まで百七十万トン、この一、二、三月で百万トン、こうなりますと、輸入数量か減つて参りますから、そこに補給金の剰余が考えられる、こういう意味であります。
  64. 川島金次

    川島委員 さらにお伺いしますが、万一三百二十万トンの輸入食糧の確保が困難な事態に立ち至られ、備蓄米がかりに農林大臣の言われるように千六百万石の繰越しがあるからそれで補うから心配ないと言うが、それを食いつぶして行くような形になつたその後において、また問題が起つて来るのじやないか、こういうような形になるのじやないかと私は思う。そういう安易な考え方で、はたして日本の食生活の問題について、一般国民に不安のない経過でこれが持ちこたえて行かれるものであるかどうか。どうも農林大臣答弁によると、非常に簡単に物を片づけているという感じがいたすのでありますが、もう少し確たる見通しの上に立つて、今この問題については国民が非常に関心を集めている問題でありますので、ひとつ確固たる立場において廣川さんらしいお答えを願いたいと思います。
  65. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 大事な国民食糧でありますから、そう簡単には考えていないのであります。本年あたりの供出を見ますと、戦後初めて農民の自主性を発揮いたしまして、何らの他の力を借りずに、農民の力において、また自分の気持で供出をいたしたのであります。その供出いたしたあとに、相当農家の保有米があることも承知いたしております。この米をどうして集めようかと思つて現在研究いたしておりますが、無記名供出とかいうことで、税金の対象にならぬような方法を考えたらどうかというようなことまで今考えておるようなわけであります。決してそんなふうに簡単には考えておりません。また食糧の自給度を高めるということに力を入れておるのもそこに基因いたしておりまして、われわれは予算の少い点をしかられ通しでありますが、あの少い予算でも十分機能を発揮いたしまして、自給度を確立するために懸命に努力いたしておるような次第であります。
  66. 川島金次

    川島委員 ちよつと農林大臣がおられる間に関連して聞きまして、あと大蔵大臣に聞きたいのですが、政府では米を除いた麦の統制をはずすということでありますが、そういう場合に現在実行されております国民配給二合七勺の問題、これは一体どういうふうになるのですか。
  67. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 麦は統制をしておりましても、しなくても、生産高にはかわりないのであります。それを最も効果的に、自由に、経済的に、流すという意味において統制をはずすのでありまして、ただ基本食である米のみに二合七勺の基準量を置いて、そしてあとは自由にいたしまして、自由にとれるようにしておるというふうなわけであります。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理     着席〕
  68. 川島金次

    川島委員 話が前後して恐縮ですが、米の問題について、配給公団がいよいよ廃止される。そして卸売業者もでき、すでに小売業者もできて登録したようであります。目下は卸売業者の登録をやるような形になつておるはずでありますが、これに対して一昨日運賃等のプール計算をどうするかという問題について、同僚のどなたかからか質問がありました。それに対しては、今のところまだ答えができない、こういうふうに農林大臣は言われたのでありますが、何かきのうかきようあたりの新聞等に、その問題について散見されるのでありますが、その問題について最後的な政府としての態度をきめなければならぬようなことになつた事情かあるかどうか、それについて伺います。
  69. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 最終段階に参りまして、政府において最後の態度を決定いたしたようなわけであります。但し具体策は大体ここ二、三日うちに決定いたしますが、これを要約いたしますと、食管特別会計の中においてプールをやるということであります。具体的なことはもう二、三日お待ちを願いたいと思いますが、その食管特別会計の中において、等差のプールとそれから運賃の全国プールをいたしまして、その機関と並行いたしまして、予定通り十五日から卸売の登録を始めたい、こう考えております。
  70. 川島金次

    川島委員 政府は本来ならば、この問題も民間の機関において調整をする方法に持つて行き、いわゆる自由党の年来の政策である自由主義に、まつたく移行をいたしたいという考え方であつたのであるけれども、それが頓挫した形になつているとわれわれは受取つておるわけであります。そうなると、等差の問題、運賃プールの問題は政府がやる、そして配給の面は卸と小売の方面に持つて行く。何か政策の上においても、行政的な仕事の上においても、一貫を欠くような跛行的な形のものが、この米の配給問題については起つて来る。そういうことになると、卸においても、また小売方面においても、いろいろの問題が起るように私どもは予測されるのでありますが、こういう形になつた以後における米の配給問題について、政府といたしましては、何ら支障なく既定のような形で円滑に実施ができるという見込みでおられるかどうか、その点の確信をひとつ承つておきたいと思うのであります。
  71. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 元来ならば、プールの問題も民間にまかせることが一番能率的であると思う。しかし、どうしても独禁法あるいは事業者団体法という法律がありますので、それに抵触いたします関係上、さようなことにやるほか道がないのでありますが、しかしさようにいたしましても、米の配給その他については、何ら支障がないことを確信いたします。     〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長     着席〕
  72. 川島金次

    川島委員 ついでにもう一言農林大臣に伺つて農林大臣をおしまいにしたいと思うのですが、近く米の配給が卸も民間、小売も民間ということになつて、目下登録を済ましたり登録中のものがある、こういう形になるのでありますが、われわれの承知しております範囲においては、小売業者の登録件数というものは非常に少い。それで麦の統制は廃止する。米だけは扱う。その米は一箇月に半分かないし十七、八日ではないかと私は思つておる。そういうことで、小売業者に登録をさせて営業をさせても、マージンはそう高いものではないし、きわめて低いものです。そんな形で小売業者に店を開かせても、配給そのものには、私は直接に弊害があろうとは思わないけれども、一体小売業者がそれをやつて行けるのかどうか、こういう問題が必然的に起つて来るのではないか。そういうことになりますと、今度は小売業者自体がいろいろの競争考えなければならぬ。悪い想像をいたしますれば、小売業者がやみ米を買つて登録家庭に対してサービスをするというような形も起り得る懸念が十分あるのではないかと思う。正直に小売をしておる者は、だんだんに一般の家庭から敬遠されて、そしてやみ米でも上手に買つて、それをサービスする者は栄えて行く、こういつた形のものが生れてくるのではないかとさえ、悪い想像ですがわれわれ思えるのです。そういう事柄について、農林大臣は何か考えられたことがあるかどうか、それをひとつ聞かせていただきたい。
  73. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あの小売マージンをきめるときに、そういうことを心配いたしまして、業者とよく懇談いたしまして、そして大体希望の線で——多分全国平均百円程度のものだつたと思つておりますが、小売業者の希望を大体満たしておるようなわけであります。かりに麦ははずれましても、もち屋はもち屋で、やはり米屋の方に流れて行くようになると私は思つております。また自家労力といいましようか、自分の家の者だけでやつて行きますから、その間の収入もまた考えることができるので、今までの形よりもかえつて私は妙味が出て来るのではないかと思つております。
  74. 川島金次

    川島委員 どうもその答えでは私には納得ができないのです。大体小売業者の登録数はきまつておる。その数字は四、五百ではないかと私は記憶しておるのですが、それと政府考えておるマージンと、さらに一方の配給される量、これを計算いたしまして、はたして小売業者が成り立つかどうか。私の計算によると、その業者のマージンの収入は一万円足らず、こういうことになるのじやないかと私は見ているのですが、そういうことになれば、その業者が店を開きながら、その看板のもとにおいて、米の需給体制を必然的に乱して来るおそれが十分にある。そうなつて来ると私は重大だと思いますので、それを聞いているのですが、その点について大臣はできるだけ善処をする心構えでやつてほしいと思うのであります。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島君、ちよつとこの際あなたの農林大臣に対する質問に関連して、庄司一郎君から質問を求められておりますので、これを許したいと思います。庄司一郎君、
  76. 庄司一郎

    ○庄司委員 廣川農林大臣にお伺いしたい第一点は、いわゆる廣川朗報その一、食糧一割増産の確信のもとに、かなりジヤーナリスト方面に放送もされたようでありますが、この一割増産は米においてあるいは大麦あるいは小麦において、すなわち主食において一割を昭和二十六米穀年度において確実に収獲を上げ得る確信を持たれておるかどうか。ただ単なるおざなりの一片の朗報であつては、これは現内閣に非常なる悪影響を及ぼし、国民の期待を裏切ることになりますが、一割増産の根拠いかん、こういうことを第一点にお伺いしたい。  第二点は、食糧増産が確実に成功するためには、それぞれの手を打たなければなりません。農林省本省においては、食糧増産本部というでかい看板を掲げておられる。しかるにただいま議題となつております農林予算を見ますと、食糧増産に関する予算というものは二十六億円、この程度の要求である。この二十六億円は、食糧増産関係の指導費であるか、奨励費であるか、交付金であるかわかりませんが、大体その程度の予算を要求されて、われわれの協賛によつて一割の増産をなしあとうならば、まことにこれはけつこうである。さらに二十六億円を追加することもやぶさかではありませんが、食糧増産を期成するためには、やはり相当の奨励が必要である。たとえば大麦あるいは小麦の二毛作増産——従来二毛作を全然やらなかつた地方、いわゆる積雪寒冷地帯イコール単作地帯といわれておつた東北地方のごときは、このごろは盛んに自主的に、農民諸君が平年作以上に米をとつたほかに、濕田をかわかして干田化して、水落ちをよくして、大麦、小麦の増産をはかつておる。たとえば農林大臣の郷里である石川郡方面においては、小麦は反当り二毛作において七俵ないし十俵の生産、北緯三十七度関係の福島県石城の中市方面においては、驚くなかれ反当り二十八俵、うそのような話だ。北緯三十八度の仙台付近においては、反当り十俵ないし十五俵の収穫を、米をあたりまえ以上にとつたほかに農民諸君の努力によつて上げておる。でありますから、米の福島県あるいは宮城県のごときは、一割増産どころか、三割増産にもなつておる。しかるにそれらに対して何らの報償がない。米をあたりまえ以上に水田からとつたほかに、反当り十俵以上の大麦、小麦をとつた地方には、何とか報償制度はありませんか。奨励金交付とか、あるいはモデル指定村の指定を断行されて、奨励金を町村長あるいは農業協同組合長に交付するというような奨励制度、報償制度の御計画があられればけつこうであるという念願より、この一、二点をお伺い申し上げた次第であります。
  77. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 一割増産の基礎というお話ですが、これは今までの統計をずつと見ておりまして、あの程度で大体よろしいのじやないかと思つてつておるのであります。但し今全国を見ますと、一割どころではないのでありまして、二割増産運動を展開しておるところもありますし、あるいはまた三割増産運動を展開しておるところもあるのであります。現在農民諸君には、実際時局を認識していただいておりまして、真剣に取組んでおられるのであります。あの少い予算でも、必ず私は一割以上の増産ができると思つておるのであります。後段においてあなたがお述べの通り、すでに二毛作は盛岡から秋田の線にまで行つておるのであります。土地の改良その他に非常に熱心に力を入れておられるのであります。報償制度をつくつてはどうかというお話でありますが、自分で耕して、自分でこれをとりますと、それだけ農家には収益を得られるようになるのであります。その上になおまた国のためにつくつてもらうのでありますから、われわれといたしましては、乏しい予算の中ではありますが、報償のことも考えておるようなわけであります。
  78. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣にお伺いします。この問題は他の機会にもだれかから出たことでありますが、二十六年度の予算において七百億の減税を実施した、これを鬼の首として天下に宣伝をしておるわけであります。ところが実際の租税収入から見ますれば、実質的にはそれほどの減税にはなつておらない。この問題については、この間も他の委員からも議論があつたのでありまして、ことにインヴエントリー・フアイナンスの問題に至りましては、どうも大蔵大臣説明に対して、国民は納得のできない点が多いのであります。これをやらなければインフレが起る、だから国民の税金で特別会計へ繰入れるのだ、これの一辺倒の説明であります。しかし一体政府は、輸出の問題だけは一応軌道に乗つて来ておる、ところが輸入が予定通り思わしく行かないから、こういう問題が起つて来ておる、その輸入の思わしく行かないことの責任をたな上げをして、一般の大衆の税金から吸い上げた五百余億円という巨額な金を特別会計へ繰入れて、一応その問題を片づけて行こう、こういう形は少くとも一般国民は、あなたがどうおつしやつても簡単には納得できない。何か大衆の税の犠牲において輸入問題の無責任と無能とをカバーして行く、こういつた感じを一般国民、ことに働く大衆の方面では強く感じておるのであります。この問題について、こうせなければならなかつたといういろいろの事情があるやに私は聞いておるのです。本来の池田さんから言いますれば、これはできるならばやらない方がいい、こういうふうに個人的には考えておつたとも聞いておる。がしかしいろいろの経過からして、やむにやまれずこんなことになつてしまつた池田さんにしてはまことに不本意きわまるインヴエントリー・フアイナンスであるという説もある。この点については、この席上でせんだつて何か池田さん言われましたが、それは池田さんの本音ではないように私は受取つたのですが、くどいようですが、この問題について池田さんとしてのほんとうの本音をひとつこの機会に聞かせてもらいたい、こういうふうに思うわけです。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 朝鮮事変影響が全面的にわからなかつた場合、すなわちかくも輸出が早急に伸びて、そうして輸入がなかなかむずかしい、こういう情勢になつて来ますと、私は真底インヴエントリー・フアイナンスをやらなければいかぬ、こういう確信に到達したのであります。この前も申し上げましたが、重ねてのお話でございまするから申し上げますが、輸出が非常に伸びて来ますと、それだけインフレになるのであります。しこうしてこれを調節するために日本におきましても、大正三年から八年までには、当時の金で十七億円・今の金にしますと、三、四千億円のインヴエントリー・フアイナンスをやつたのであります。どういう方法でやつたかと申しますと、一般会計からの繰入れあるいは預金部からの繰入れあるいはまた一部大蔵省証券を発行して、民間の資金を吸収いたしました。それからイギリスでは最近の輸出の増加等から考えまして、今聞くところによりますと、十一億ポンドのいわゆる民間資金を吸収して、輸出増加によるインフレ防止対策をやつておるのであります。フランスでも昨年まではやりましたが、今はやめております。こういう状態で財政的に措置をとる。それは一般会計の繰入れかあるいは民間資金を吸収する、こういう方法であります。しかして今日本でこの輸出増加に伴いますインフレを防止するのに、政府が大蔵省証券あるいは国債を発行いたしまして、民間から資金を吸収するということはなかなか困難であります。そこで私は予算におきまして、民間からの資金の吸収をやめて、一般会計の方からまかなう。しかして片一方で減税を七百四十三億円もやります。そのときになぜこの五百億円の繰入れをやらずにインフレにしておいて、千二百四十三億円の減税をやらなかつたか。こういうふうなお話でありますが、私はそれはとらない。七百四十三億円の減税を一方ではすると同時に、片一方ではインフレ対策として、普通のやり方でインヴエントリー・フアイナンスをやることが、政府の財政を健全にし、国民生活、国の経済を安定さすゆえんである、こういう考えのもとにやつておるのであります。何もしいられたわけではございません。ただ朝鮮事変が起ります前の当初の骨格予算におきましては、かくも輸出が伸びるということを想像いたしておりませんので、七月に組みました予算編成方針には載つておりませんでしたが、その後の情勢によりましてこういうふうにいたしたのであります。
  80. 川島金次

    川島委員 今の池田さんのお話は、この間も私が聞いておつたところと少しもかわらない、そういう考え方であるのとわれわれの考え方とは若干違いが来ている。そういう問題についてここで押し問答をいたしましても、いたし方ないと思いますので、別の問題に入つて行きたい。  一体大蔵大臣国民負担の軽減をはかるために数字的に七百億の減税をした、こういうふうに言う。なるほど予算書を見るとその通り数字的にはなつているわけです。しかし一面において租税収入においては大差がない。それは大蔵大臣の言う国民所得がふえたから、そのふえたことを考えに置かなければ議論にならないではないか、こういうふうに言われるのです。しかし一方国民所得がふえると同時に、その国民所得のふえたということは、生産の増大もございましようが、けさから私が極力申し上げております物価の高騰ということがあなたの説明の中には拔けているのです。従つて国民所得がふえたのだから、一方に減税しても租税収入が昨年度と大差のないようにしてあるのだという説明の仕方はこれは一応うなずけるのです。しかし一方には物価が騰貴している。物価が騰貴していると、国民の、働く大衆の生計というものは、それから膨脹せざるを得ないことは言うまでもない事柄なのでございます。従つてそういう物価高騰という問題を中に織り込んで考えてみた場合には、池田さんが口を大きくしてこれは減税予算だと言うほどの減税には実質的にはなつておらぬ。私は国民負担の軽減ということは、国民経済の実質的な安定ということにならなければ実際問題ではないと思うのです。ところが、今申し上げましたように、国民所得がふえたから租税がふえるのだ、がしかし一方において物価上昇している。なるほど物価上昇することによつて利得を得、所得を増大せしめる階層もございましよう。しかし物価上昇によつて生計の脅威を受ける人々が国民の中で最も大多数を占めるということになることを、池田さんは考えの中に置いてもらわなければならないところが、そういうことを考えずして、ただ單に国民負担の軽減を七百億やつたじやないか。これだけでは、働く者の立場からいえば、必ずしも納得ができかねる実際の問題なのでありますが、そういう事柄について大臣はどういうふうな見解を持たれておりますか、この機会に伺いたい。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 問題をわけて考えなければならぬと思います。あなたは今年度の租税収入と来年度の租税収入はあまりかわらない、五億しか減つていないから、七百四十三億の減税ではない、こうおつしやるのですが、それは間違いです。減税であるか減税でないかという問題は税法で考えなければならぬ。物価が上つて国民生活が苦しくなるという問題とは学問上違う。よろしゆうございますか。もし減税をしなかつたならば五千百八十億円の税収入になるから、税法を改正いたしまして四千四百四十五億円にいたしておるのであります。これが減税なのである。しかし片一方で物価上つたために生活が苦しくなり、物価の上り方が賃金その他の所得よりもひどくなつて、そして生活程度が苦しくなるという問題と減税とは違う問題でございますよ。これをはつきりしてもらはなければならぬ。だから法人税を見てごらんなさい。五百七十億円の本年の収入が六百三十億円になつたら、法人税は積立金課税をやめても収入はふえるではないか、これを増税と言えますか。増税ではございません。自然増収なのである。だから減税か減税でないかという問題と、物価が上つて国民生活がどうなるかという問題は、別個の問題としてお考えを願いたいのであります。
  82. 川島金次

    川島委員 どうも政府の、しかも有力な大蔵大臣としては似合わない暴論です。税というものは国民生活に見合つた負担力でなければならぬ。なるほど大蔵大臣の前半の説明を聞けば数字的に減税したのだ、それは事実ですよ。それは認めます。しかし国民生活負担の実質的な軽減にならなければ、税制対策の本質じやないのだと私は確信するのであります。いくら数字的に減税したからといつて、一千億、二千億しても、働く大衆の生計というものが少しも楽になつておらないという事実があつたとすれば、それは税制政策の本質じやない。私はあなたとは考えが違う。あなたの今のお話を聞いていると、ただ数字的に減税が行れていれば、それで国民生活の安定に寄與するのだ、こういう考えじやないのですか。われわれは違うのです。われわれは少くとも国民の実生活の上に、その租税対策というものがあたたかい血となつて流れて入つて来るという、この実質的な問題をわれわれは租税対策の本質と考えておるのです。(「その通りになつておる」と呼ぶ者あり)その通りになつていない。物価が上つているのだ。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 私語を禁じます。
  84. 川島金次

    川島委員 そういう私は考え方になつておるのですが、それでは反問いたします。あなたは予算数字上いわゆる減税になつておれば、それがただちによつてつて国民生活の実質的な安定にてことなつて来るのだという不動の考えを持つておるかどうか、その点を私は承つておきたいと思います。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がよくわかりませんが、ここで例をとつて申し上げますれば、二十万円の所得のある人が来年も二十万円だつたならば、これは減税になります。それから二十万円の所得の人が、来年二十五万円になつたという場合において、もし減税措置を講じなかつたら、税金が相当ふえるのが、大体その程度の分ではあまりふえずに済む、これを学問上も実際上も減税という、しこうして物価上つただけで自然増収があるわけじやない、生産規模の上昇が主たる問題であるのであります。だから実際においてお考えになればわかることである。あなた方のような減税論とか租税論になりますと、税法は一つもかえなくても、国民経済の発展によつて増税になる、あるいは経済が縮小したならば税収入が上らぬから、税法はそのまま置いておいても減税になる、こういう議論に立つては、学問上立つて行かぬのであります。だから国民生活がどうなるかという問題と減税、増税の問題とは別個の問題であります。これはお考えなつたらおわかりと思います。
  86. 川島金次

    川島委員 違うのですよ。一体政治というものは学問じやないのです。学問もそれは必要だろうが、実際は学問じやない、たとえば十万円の所得者が今まで二万円の税金を納めていた。ところが政府の租税政策の改正によつて一万五千円になつた。なるほど五千円減る。そうすると八万五千円、今まで八万円のものが八万五千円の所得になる。それはわかる。ところが一方において物価が二割ふえたとすればどういうことになるのですか。そうすれば政府が税制対策によつて国民生活の安定に寄與しようという考え方で持つて来た税制対策も、一方の物価体系から受ける実質的な生計の脅威と差引けば、せつかく税は減税ということにはなつたが、実質的な国民生活の上には逆に脅威を深めるという形になり得るのですよ。ぼくはそれを言うのです。何も学問論を私はやつておるのではない。だから私の言うのは、あなたが声を大にして、七百億減税したのだ、これで国民はみな助かつたろうと言わんばかりのことをおつしやるが、実際はそういう形にはならない面が多いということを私は言つておるのです。この問題を押し問答しておつても切りがないからやめますけれども、私の言つておることはそういうことなんです。池田さんもずいぶん頭のいい人だからわかつたろうと思う。  それで税制問題について私は伺います。なるほどまだ法案が出てないようですが、基礎控除も上げました、扶養控除も引上げました。その上に今度は老年者の控除、未亡人の控除、扶養親族のある未亡人の控除あるいはアルバイト学生の控除、いろいろ考えたようであります。私はそれに何も反対ではございません。そういうことはやるべきだということは私も同感なのでございます。しかし一方において先般シヤウプ勧告に基いて、勤労者の勤労控除というものが二五%であつたものが大幅に引下げられてしまつた。これがいまもつてそのまま今後も持続されようとしておる。しかも二十五年度においても、四年度においても、給與所得者の税というものはほとんど百パーセントである。そして給與所得者以外の税はなかなか完納にならない。二十四年度、五年度を合せると、驚くなかれ、まだ一千億近い滞納がある。この滞納のあるという問題についてはあとで問題にしますが、給與所得者に対するこの二五%という前の旧勤労控除の控除額を引下げたまま今日になり、今後もこのままでいいと考えておるかどうか。私は少くとも給與所得者の今の生計実情物価の事情、そして租税収入の実績等から考えても、何とか給與所得者の勤労控除について、この辺で政府は一番考える必要があるのじやないかということを私は痛切に感じておるのでありますが、大蔵大臣は勤労控除の問題についてこのままでよろしいか、それとも何か考えなければいけないと考えられておるかどうか、この問題についての所見を承つておきたいと思うのです。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知の通りに、シヤウプ博士は勤労控除は一割という勧告であつたのであります。それを一割五分までに現政府でやつたのであります。しこうして再度の来朝ではシヤウプ博士は、農業所得に一割控除せよ、勤労の方が一割五分なら、農業所得に一割控除をなすべきではないか、というような意見を持つておられたようでございますが、私は農業所得の方につきましては、ただいまのところ一割控除する考えはございません。そうすれば、勤労所得の方の一割五分控除をまたふやさなければならなくなります。従つて私としては、今の勤労控除は一割五分で行つて、もし減税の機会があるならば、やはり基礎控除を上げて行くのがほんとうであるという考えを持つております。
  88. 川島金次

    川島委員 そうすると、勤労控除を引上げるよりも、むしろ基礎控除を上げるという計画を、あなたは今持つておるというお話と承つてよろしいのですか。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 もし減税の機会があるならば、基礎控除をやるか、あるいは勤労控除をやるかという問題になつたら、基礎控除をまず考えるべきだ。税法上の問題で意見を言つているのでありまして、減税の機会があればやる。今減税するかどうかという問題については、何とも申し上げられません。われわれは今後もできる限り減税したいという気持で進んでおるのであります。
  90. 川島金次

    川島委員 そこで次にお伺いしますが、午前中からの私の質問大臣のやり取りで、どうやら私の感じでは、二十六年度の予算もやがて補正しなければならぬような事態に来るのじやないかという気がする。そういう場合に、一体そういう補正というものは、どうせ歳出増、この歳出増が必至だということになつた場合に、財源をどこに求めるだろうという心配も、だんだんにして来るわけです。そういう場合に、増税をしなくてもこのまま押し切れるものやら、あるいはそういう事態が来るというと、減税はしたが、またしてももう一ぺん増税しなければならないというようなことになる事態が来るのやら、そういうことについての大蔵大臣の真剣な見通し、これより間違いないという見通しをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 私が先ほど申し上げましたように、インヴエントリー・フアイナンスの問題で、千二百四十三億円も減税すればいいという意見がありましたが、また減税した後増税をするということは、なかなか財政当局としてはやりにくいので、いろいろなことを考えて万全の措置をとつておるのであります。従いまして今のところははつきりは申し上げられませんが、大体のところこの予算で行けると思います。しかし変転きわまりない世界情勢に対処してやつて行く場合に、必要あらば補正予算を組むのに何らやぶさかではありません。しこうしてその財源をどうするという場合におきましては、補正予算で歳出増がどのくらいになるかによつて、財減を考えるのでありますが、私の見通しとしては、来年度中にふえることあるべき歳出に充てるために増税するというふうなことは、万々ないと私は考えております。
  92. 川島金次

    川島委員 それは今後の事態の推移にまつことの問題でありますから、何も執拗にそれをお尋ねしようとは私も考えてはおりません。がしかし一説によりますと、この二十六年度予算には、相当事態のある程度の変化を予測した、いわゆる弾力を持つた数字を織り込んである、こういうふうにももつばら言われておるのであります。だから大蔵大臣安本長官と一緒に声をそろえて、物価上昇過程にあるというふうに言われておりながら、この予算は補正せずして済むのだという見通しを言われている、その言葉と、今の一説とを照し合せると、どこかにつじつまが合うような気がする。そういう問題については、一体この二十六年度の予算にはそういう弾力はぎりぎりないのか、それとも何かの場合を予測して、何らかの形においてクツシヨンをつけておるのであるか、そういう事柄についてひとつこの際明確にしておいてもらいたいと思う。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 公正なる予算に含み隠しはございません。弾力というものはどういう意味でございますか、金をとつておいて不時の場合に充てるような、いわゆる予備金という性質のものは、御審議願つておる十億円以外にはございません。ただ問題は、予算を執行して行きます上におきまして、ある程度の物件費の動きはございましよう。それから人件費につきましても、やめた人をすぐ補充するかしないか、いろいろな問題があります。そういうふうなものはいつの予算にもある。しかし多分あなたのお話は、どこかとつておいて別の費目に充てる、隠し金があるかという御質問ならば、そういうものは予備金の十億円以外にはございません。
  94. 川島金次

    川島委員 特別会計のたとえば日本国有鉄道の人件費には、ぎりぎりの計上がされているのですが、一般会計の人件費の方には、あらかじめ来るべき夏季攻勢に備えての費用、あるいはそのことなくして済めば、再び起るであろう越冬資金、そういつた問題についてこの予算の中に考慮されて編成されたかどうか、それは全然ないかどうか、それをひとつ……。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 夏季攻勢なんか考えておりませんし、越冬資金は、今年度から予算に半月分の賞與を盛り込んでおるのであります。別に予算以外とか、あるいは予算の査定におきまして、そういうふうなことを予定してとつて置きはいたしません。
  96. 川島金次

    川島委員 それでわかりましたが、そうすると、先ほど人事院の総裁は、数日中ではないけれども、近く地域給の問題について、政府と議会に勧告するということをほぼ明らかにしております。その問題がかりに具体化した場合に、しかも人事院では今の予算のわく内ということを考えておらぬ。あるいはわくの外に出るかもしれない。また出なければ意味をなさないということになりますると、その面からいたしまして、予算の補正を必要とするようなことにならないとも限らないと私は思うのですが、その点はどういうふうになりますか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題につきまして予算を補正しようとは、私はただいまのところ考えておりません。
  98. 川島金次

    川島委員 いや、先ほどあなたはおいでになつてつたと思うのですが、予算のわく外に出ることを予定してあるいは勧告するかもしれない。それが議会で決定されるようなことになれば、予算を補正しなければならぬでしよう。それはどういうことになるのですか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 どんなものが出るかわかりませんが、地域給の変更によりまして、ただいま御審議願つておりまする予算を変更する考えは、ただいまのところ、私は持つておりません。
  100. 川島金次

    川島委員 そうすると地域給の問題が出ても、この予算内で他の方法でやりくりのつくという方針と見通しを持つておるということに了解してよろしいですか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 予算の範囲内でやりくりする考えでおります。
  102. 川島金次

    川島委員 ではその次に伺いますが、これは税制改正の出るたびに問題になり、昨今ではそれが問題になりながら悪い形になつて来たような事柄なのですが、例の退職金の問題であります。この退職金に対する課税問題は、予算委員会におきましても、また専門の大蔵委員会におきましても、その都度相当重要な問題になつて来ておるわけです。しかも永年勤続者の退職金というものは、言うまでもなく、身命をその職域にささげ盡して、老体になつてその職をしりぞき、そのときにもらう退職金ですから、これは血の結晶である。命の結晶である。(「その通り」)そういう退職金の問題について、政府はややもすれば税金政策について冷淡であるということが、私は言えるのではないかと思うのですが、この退職金問題について、今度の税制改正にあたつて、何らか具体的な新しい方策を考えておるのかどうか、それをひとつ聞きたい。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 退職金の問題、あるいは一時に出て参ります山林所得の問題は、たびたび議論にはなつておるのであります。従いまして、従来の所得税法におきましても、特別の措置をとつてつたのでありまするが、シヤウプ勧告によりますると、ただいまのような方法がいいというので、一応われわれはそれによつております。しかしこの問題につきましてはただいま検討中でありまして、今回の税制改正の中には載つておりません。ただ問題は、退職金にもいろいろな種類があるのであります。それは血の結晶の場合もありましよう。しかし今のような所得税のあれで行きます場合、基本給を少くして退職金をぽんと出すようにしますと、負担の均衡がとれないようになる。だからあなたのおつしやるように、血のにじむような退職金ばかりではないということをひとつお考えおきを願いたいと思います。
  104. 川島金次

    川島委員 それはなるほど血のにじむようなものでもないようなものも若干はあります。自動車で通つて、テーブルにふんぞり返つて、長い間かかつて退職してもらう金もある。しかし大部分というものはそうじやない、問題は数の問題なんです。一部にそういうのがあるからといつて、少数のものを基本にして一切が片づけられたのでは問題です。私は少くとも私見を申し上げれば、永年勤続者のいわゆる汗をあぶらの血のにじむような結晶である退職金、今日の金で申し上げれば二、三十万程度のものに対しては、すべからく課税しないというくらいの親心があつてしかるべきだと思うのでありますが、大臣のこれに対する率直な私見を承つておきたいと思います。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 二、三十万円の退職所得を全部ただちに免除する。免税するという考えは持つておりません。
  106. 川島金次

    川島委員 ただちに免除する考えはないとすれば、そういう問題について、何らか新しい手を打とうという考え方を持つておるかどうか、これを伺います。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、研究はいたしておりますが、今国会に間に合うように結論は出ないと思います。
  108. 川島金次

    川島委員 要するに池田さんは、そういう退職金の問題等については、あまり熱意を持つておらないというふうに私は理解いたしまして、この問題は一応やめておきます。  そこで次に承つておきたいのでありますが、これは税務行政の問題なんです。大蔵大臣あるいは国税庁長官は、いろいろと考えられて来た結果、少しは全国の所在の税務署の税務吏の態度というものがかなり直つて来ておるということは私も認めます。しかしまだまだ税務官吏の非行というものはあとを断たないし、また税務官吏の納税者に対する接触の態度というものは、必ずとも国民に快い感じばかりを與えているようなわけでもないことは、大臣も御承知だと思う。ことに私はこの機会に大臣一つの意見を出して承つておきたいのですが、たとえば税務官吏が、官吏自身の怠慢、あるいは重大なる錯誤、あるいは過失、こういつたことで不当なる査定をいたします。しかもその場合に異議の申請をされて、最終的にはそれが不当なる査定、課税であつたということが判明したといつた事態が生じた場合には、その当該税務官吏に対して何らかの責任を負わせるという、責任税務行政制度というようなものがきわめて必要ではないかと思う。今はどんなに誤つた査定をしても、ろくに調査もしない、あるいは全然調査もしない。そういうことで、簡単なしかも不当な査定をしたり、徴税をしいるという場合が少くないのであります。それは税務官吏に一方的な権限のみ與えて、その他面における責任をとらしめない、責任を負わされていないというところにも、大きな原因があるのではないかというふうに私見として考えられる。そこでそういう場合に処するために、しかも税務官吏が常に公正的確に、そうしてその税務行政に忠実に携わらしめるという建前から行きましても、そういつた責任制というものを確立する必要があるのではないかと私は思うし、そうしてその責任を全うした税務官吏に対しては、それぞれまた適当な報奨の制度あるいは手厚い待遇の改善をするということにもやぶさかでないという政府の態度を示すのがきわめて必要ではないか、こういうふうに思うのですが、大臣はそのことについてどんなお考えであるか、それをお聞きしたい。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 考え方といたしましては、私も同感でございます。しかしこれは実際問題といたしましては、なかなか困難であります。私はそういうような不当課税の起らないように、今までのように調査せずに更正決定をするのは原則としてよせ、こういうふうに言つておりますし、また職員の仕事ぶり等につきましては、特に監察官を相当多人数置きまして、そうして指導訓育に当つておるのであります。従つて私は滞納処分あるいは調査につきましても、行き過ぎたような場合がありましたならば、罰俸とか、訓戒、こういうことをやるように指導いたしておるのであります。どうぞ各位におかれましても、そういう事例がございましたならば、どしどしおつしやつていただければ、実際問題として相当な措置をとる考えであります。
  110. 川島金次

    川島委員 最近の税務行政の立直りについては、先ほど申し上げましたように認めます。非常によくなつて参りましたが、しかしなかなか満足でないということは今申し上げた例でもわかるのです。  もう一つ、今度は国民の側というよりは納税者の側の問題であります。これはかつて私が一昨年、私の見解に基いて立案をしたものですから聞くのです。今でもこういう事例のあとは断つておらないのです。と申しますのは、税務署の事務的な怠慢あるいは過失といいますか、あるいはおざりといいますか、あるいは事務的な不整備、あるいは横の連絡の不備、こういつたことから納税者側は正当なる納税を一ぺん済ましておる。にもかかわらず、その納税完了者に対して再び督促状をよこす。そうしてわざわざその出頭状を持参して税務署へ善良なる完納した納税義務者が出かける。出かけるけれども、税務署は出頭を求めておきながら、いろいろの都合があるでしようが、二時間も三時間もその出頭した納税者に会わない。それで遠いところの者はそのために一日棒に振るという事例がまだたくさんあります。これは私に例をあげろと言われれば持つて参ります。しかもそういうような目にあう納税者は自転車で来る、あるいはわざわざ汽車に乗つて朝早く来る。そうしてそういう階層は比較的に農村方面か中小業者に圧倒的に多い。中小業者や農家のみずからの労力なくしては生計のできない人たち、しかも正直に納税を済ましておるにかかわらず、出頭の案内状が来る。善良な素朴な人であるから、税務署から来たというので一日を棒に振つて出かける。そうして夕方になつて初めて当該税務官吏に会つて、照し合せて、ああそうでしたか、帰つてよろしい、これなんです。こんなばかげた話があるか、一体裁判所の証人に呼ばれても日当はくれるのですよ。費用弁償もしてくれる。しかも最も善良なる国の租税の問題に対して大きな協力をしておるそういう階級の人です。税務署の不始末からそういう国民に迷惑をかけておる。あとでその迷惑をかけた人に対して、税務署の手落ちであつたということがわかつてもそれなりなんです。その手落ちのために国民は貴重なる一日、二日を棒に振つても、それで何のことはない。時間を空費しただけが国民の損失、こういう形になる。こういうことは一体大げさに言えば、憲法の基本的人権の蹂躪の問題にさえなると私には思える。しかもそういう事柄に対しても税務当局は何らの措置を講じていないのです。だからそういうことがあとからから絶えず行われておる。国民に迷惑をかけておいて、国家には責任はないんだ、そうして損失をこうむるのは納税を済ました善良な納税者である。こんな片手落ちは不合理な話はない。こういう事柄についても何らかの賠償制度をとるとか、もつと税務官吏を厳重に教育して、そういうことのないような形にすることがきわめて必要だと思うのですが、そういうことがあとを断たないといたしますれば、大蔵大臣はこういう問題についてどのように考えておりますか、これを伺いたい。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点は私も実際よく聞いておりますし、陳情も受けておるのであります。二度呼び出しただけではございません。四度呼び出して、五度目には滞納処分にした、こういうこともありまして、非常に遺憾に思つておるのであります。御承知の通り昭和二十二、三年あるいは四年ごろまで税務の内部事務が非常に乱雑であつたことはみんな認めておるのでありまして、ただいま内部事務の整備等を懸命にいたしておりますから、将来そういうことがないようになると考えます。また国会議員の方にそういうことをやつた例もございまして、罰俸するか何とかしてやれと言つたのでありますが、罰俸まではしなかつたようであります。国会議員以外にも二、三人からそういう申出を聞いておりまして、厳重に措置するようにいたしております。これは内部事務が今まで悪かつたので、だんだん正確に行くように、そういうものを根絶する方法をとつておるのであります。御了承願いたいと思います。
  112. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣はもういいです。
  113. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 農林大臣は四時までだそうですから……。
  114. 川島金次

    川島委員 農林大臣に続いて二、三この際お伺いいたしておきます。大臣は、わが党がかつて主張した救農国会でなくして興農国会だと、前臨時国会で言われた。救農も興農も同じようなものですが、その興農ということについて廣川さんはたいへん熱心のようであります。しかし熱心ということと、いろいろなことを知つておるということとは別のようであります。もし農林大臣がおわかりにならなければ、他の係の方からお答えを願つても決して異存は、ございません。そのつもりで……。  まず第一にお伺いいたしたいのは、農地改革が行われてここに三年、全面的な日本国内の農村の農地開放というものはほぼ完了の域に達したのです。ところが昨日及び本日かの新聞によりますと、日本の講和條約締結後において、講和條約締結前に実施された日本国内の国政上の改革の問題については、日本国内の自由意思にまかせるのだという重大な問題が外電として伝えられておるのであります。この問題と、日本の改革の最も尤なる一つである農地改革——政府のいうほぼ完了いたしておる問題どの関連性を、私はこの外電記事を見た場合に、ふと頭に浮べたのであります。そこでお伺いするのですが、自由党の内閣においてはこの農地改革の問題に対して、所定の農地改革に関するその筋からの方針に沿つて、今後とも徹底した改革をやるという決意を不変的に堅持する建前で進むのか。それとも今のような事柄がかりに自由に許されるようなことになつた場合に、別に自由党としては考えるという心構えをどこかに持つておるのかどうか。まずそれを明らかにこの際しておいてもらいたいと思う。
  115. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農地改革はほぼ完了したと言われましたが、あなたのおつしやる通りにほぼ完了いたしております。ただマツカーサー元帥からの書簡によりまして、これを恒久化してはどうかということに基いて昨年立法化いたしたわけでありますが、これを今廃止されない以上は、あの通りの方針で行くのでありまして、廃止する、しないはあなた方のお考えであろうと思うのであります。
  116. 川島金次

    川島委員 そこでお伺いしますが、今日の農地改革の過程において、いまだ残つております小作地というものは全耕作面積に対してどのくらい残つて  いるか。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 それから開放されておらないところの山林などがどのくらい残つているか。この数字がわかつておりましたら、だれかから示してもらいたい。
  117. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 数字のことは間違うと事重大でありますから、政府委員からお答えいたします。
  118. 川島金次

    川島委員 いないのですか。
  119. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 政府委員もいないようでありますから、あとで……。(笑声
  120. 川島金次

    川島委員 一体、きのう私はこの委員会の運営について、相当強い意見と希望を付しておつたはずであります。そして小坂委員長もそれを了とされて、きようはそのつもりでこの委員会を開いたのではないかという私は確信を持つて出席しておる。というのは、一般総括的な質問終つてこれからはそれぞれその以外の数字的にわたるような質問もかなり出て来るであろう、従つて大臣だけでわからぬ点もあることは了承するから、大臣とともに事務的な当面の責任者もできるだけ資料を携えてこの委員会に出てほしい、これは與党を除いた全野党の一致した希望だつたのです。(「異議なし」「その通り」と呼ぶ者あり)與党の方だつておそらくその問題はその通りでしよう。ところが今農林大臣がおるからこの問題に入つて来るというと、事務当局がおらぬ。予算の審議にわれわれはできるだけ協力をいたしたいという謙虚な立場におります。従つてそういうことを申し上げたのです。ところがそういうことを申し上げてもそういうことが実行されておらないということになれば、われわれはわれわれで別の考えを持たざるを得ないということになるわけである。一体どういうのですそういうことは。
  121. 西村久之

    西村(久)委員長代理 お答えいたします。御意見の通りであります。それで答弁をする政府委員が出られておらなければ、今後は出るように政府の方に警告いたします。ただいま農政局長がお見えのようでございますから、農政局長がわかりましたらその方からお答えを願うことにいたします。——川島君にお諮りいたしますが、農政局長が今の御質問を聞き及んでおりませんから、あなたの質疑の要点を簡単にもう一度お述べ願います。
  122. 川島金次

    川島委員 国内の耕作地で、小作地として残つている分が全体の耕作面積に対してどのくらいあるか。また開放されざる、また開放に適すると認められるような山林がどのくらいあるか。そういうことについて数字的にわかつてつたら示してもらいたいというのが要求であります。
  123. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農地局長がちようど来ておりませんから、あとで出席さして答弁します。
  124. 西村久之

    西村(久)委員長代理 農政局長でおわかりにならないそうでありますから、農地局長が出席の日か、そうでなかつたら刷りものにして早急にあなたのところに届けるようにいたします。おられないのでありますからお許しを願います。(「刷りものじやだめだ」「無責任だ」と呼ぶ者あり)
  125. 川島金次

    川島委員 質問に対して、刷りものにすればいいと言えばそれまでですが、そういうものではないのですよ。ですからきのうあらかじめ申し上げて希望しているのです。それをいかに人のいい農林大臣でもこれはおもしろくないでしよう。
  126. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 率直に認めます。
  127. 川島金次

    川島委員 あなたは何もかも知つているとは私は思わぬのだから、やはり出席するときに適当な人を従えて来て、そうしてその席上で明確にしてもらうということが審議がしよいのです。そうしてわれわれが審議に協力するにも、ことにそれがスムースに行くことになるのです。これはもう野党だけではない。與党の人も同じ気持だと私は思うのですから、どうぞそういうふうに願いたいと思います。
  128. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 承知いたしました。
  129. 川島金次

    川島委員 では農林大臣のほかの方がついておらぬとすればあとまわしにしまして、通産大臣が来ておりますから……。
  130. 西村久之

    西村(久)委員長代理 川島君にお諮りいたしますが、農林大臣は時間の都合で中座されるかもわかりませんので、今の農地関係問題外の農政について、廣川農林大臣に継続して御質問がありますれば、この際継続して御質問を続けていただくことを委員長としては望むものであります。
  131. 川島金次

    川島委員 廣川農相に農政の大ざつぱなものを聞かんとするのですが、それと付随して、どうしてもこまかい事務当局の数字というものが必要になつて来るのですよ。そうすると廣川農相が答えられましても、私に対する答えは満足でない形になつてしまう。
  132. 西村久之

    西村(久)委員長代理 わかりました。従いましてあなたの要求通り通商産業大臣への質問をお許しいたします。川島金次君。
  133. 川島金次

    川島委員 それでは通産大臣にお伺いをし、その私の質問に対してこまかい答弁を必要とする部面は、大臣みずからでなくてもよろしいのですから、他の当面の係の方から御答弁つてもさしつかえないということを、私があらかじめ了承して御質問申し上げます。  まず大臣にお伺いしますが、午前中安本長官あるいは池田大蔵大臣、これらの方に対して日本自立経済達成の問題について二、三お尋ねをいたしたわけです。そこで大臣も御承知の通り安本長官は先般の経済演説の中で、日本経済自立達成への最も重要な核心となるべきものは、輸入の促進だ、こういうことを実は演説の中で再三繰返しておるということは御承知の通りであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 今の日本経済問題の中にあつて、貿易問題がきわめて重要な課題となつて来たということは言うまでもない事柄であるのでありますが、一体昭和二十六年度において計画いたしておりまするところの安本の輸出入計画と、実施に当るところの省であるところの通産省において、日本経済自立三箇年計画に沿う第一歩である二十六年度の貿易計画というものが、はたして安本で計画しておる額に完全にそれが実施されるという確たる見通しを通産大臣としては持つておられるかどうか。これは食糧の問題を除いてのことでありますが、それについての具体的な、大ざつぱな例をあげての数字をもそれにつけ加えて御説明願えれば幸いであります。
  134. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答え申します。安本長官説明されております二十六年度における輸出入の計画は、あの計画通りにぜひ進みたい、進むことがわが国の自立経済を確保するもとになるかとも思います。つきましては輸入についていろいろと困難の面があると思います。御承知のように中共から入るべきものが入らなくなつたということもあります。これらに関しましては、買入れ地を変更することにいたしておりますので、たとえて申しますと、鉄鉱石のごときもアメリカ、あるいはマレー、あるいはその他フイリピン等をただいまのところ考えております。数字的には事務当局より説明いたさせますが、鉄鉱石、粘結炭においては、まず二十六年度においては、安心してよくないかというような——あまり楽観はいたしませんが、そう考えております。従いましてあらゆる市場を通じまして原料の確保には邁進したい、こう考えておりますから御了承願いたいと思います。
  135. 川島金次

    川島委員 その問題について、午前中に共産党の林君からも具体的な説明がほしいと質問されているのですが、従つて今の大臣説明前提として、その掘り下げた内容について何か数字をお持ちでありましたならば、それをこの機会に示していただきたい。
  136. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えいたします。これはいろいろの数字でありますから書いたものを差上げて、おもなものだけを一応申し上げましよう。
  137. 小室恒夫

    ○小室説明員 御説明申し上げます。昭和二十六年度の貿易計画につきましては、現在安本においてなお検討中でございまして、最終的な結論はまだ出ていないと聞いております。実は安本当局からその点は御説明すべきかと思いますけれども、ただ大体の今日での見通しといたしまして、輸出については一応十一億ドル、輸入については一応十四億七千五百万ドルというような数字を基準にして考えておつたということはあるかと思います。  貿易計画全般について品目別にでも大体の目安を申し上げますると、輸出の方は御承知のようにこれから国際情勢がどうなりまするか。輸入も同断でありまするけれども価格等の関係はずいぶん変動がありまするし、また数量的にも今後情勢によりまして、いろいろ再検討を加えなければならぬ事態が当然起つて来ると思うのでありますが、一番基本的な輸出品目でありますところの纎維製品の大宗であります綿布につきましては、大体十三億ヤードくらいのものを見込んでおります。本年の実績は御承知の通り十億ヤードを数百ヤードばかり突破しました。それからまた生糸、これも昔からの輸出の大宗でありますが、これもうまく行けば十一万俵くらいまでは持つて行きたい。それからまた鋼材、これも今後鉄鋼原料の輸入等と関連いたしまして、生産計画の達成についても最も問題になるところかとも思うのでありますけれども、鋼材五十九万トンというような数字も一応は検討の基礎になつてつたかと思うのであります。また機械類等も素材との関係があつて、これまた輸出の将来について、いろいろな見方があると思うのでございますが、これも本年同様大体一億ドル前後というような数字を見積つております。これら個々数字につきましては、さらに詳細のものはもとよりあとで安本事務当局から提出されることと思います。  それから輸入の方でありまするが、十四億七千五百万ドルということで一応申し上げたわけでありますが、大体主食でありますところの米については八十万トン見当、また小麦は百七十五万トン見当、大麦が六十五万トン見当、また大豆は三十万トン、砂糖が五十万トンというような数字を一応検討の基礎にしておつたかと思います。これらについても、もとより今後の国際情勢に備えて、もつと買つておかなければならぬというような問題も当然出て来ると思いまするし、これは流動する数字と存じます。またこの十四億七千五百万ドルの基礎なつ数字を主食以外について申しますれば、綿花百六十万俵、羊毛三十二万俵、鉄鉱石が三百九十五万トンあるいはくず鉄が三十万トン、石油が二百五十万キロリツトル、それから塩が百四十万トン、生ゴムが六万トン、レーヨン・パルプが七万トン、原皮が一万七千トン、こういうようなところがおもな品目でございます。
  138. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際政府側に申しますが、ただいま説明を願つた資料を至急明朝のこの委員会までに提出していただきたいと思います。  林百郎君に関連質問を許します。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどちよつと安本長官にお聞きしたのですが、午後お見えにならないので、説明員でけつこうですが、昭和二十五年度の輸入物資の目標と、現在の完遂高と、年末の目標と、その比率がわかつたらひとつ説明していただきたい。私の方で要望しているのは、あなたが先ほど言われた食糧、鉄鉱石、粘結炭、塩、大豆原綿、羊毛、石油、こういう課目でいいと思います。
  140. 小室恒夫

    ○小室説明員 御説明申し上げます。詳細は刷つたものをお渡しいたします。なお申し上げておきますが、正確な輸入の統計は今日のところ昨年の十月までしか出ておりません。十月以降はある程度推測が入つておりますがそれで申し上げます。昨年一ぱいの数字を一応推測で申し上げます。  まず食糧から申し上げますと、歴年の二十五年の、つまり昨年一ぱいの輸入実績は米が六十七万トン……。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 目標を言つてそれから……。
  142. 小室恒夫

    ○小室説明員 申し上げますが、実は目標は会計年度の二十五年度ということになつておりますので、常識的に申し上げると、歴年で申した方がわかりいいと思います。それから実情を知るという意味でしたら、一昨年の実績とちよつと比べて申し上げます。その方が実際に即するかと思います。なぜかというと、輸入計画というのは当初に立てた計画が情勢によつて再検討しなければならぬようなこともありまして、初めの計画と比較すると、相当入つたような数字になつておりながら、皆さんの感覚からいうと、さつぱり入つておらぬというような変なことも起つて来ますので、とりあえずはそういうことで申し上げたいと思います。  二十五年の輸入実績は米が六十七万トン、小麦が百六十万トン、大麦が二十七万トン、主食の合計で二百五十四万トンでございます。それで前年の実績に対しまして主食合計で二十三万トン減つております。品目はたくさんございますからこの程度で申し上げておきます。それから大豆が十九万トン昨年入つております。前年に比べまして五万トン減つております。それから砂糖が三十七万トン入つております。この方は前年に比べて十四万トンふえております。なぜそういうふうな数字なつたかということを申し上げると、これはまた詳しくなりますからあとで申し上げます。  それから次に肥料でございます。肥料は燐鉱石が百万トン入つております。前年に比べまして三十万トンふえております。それからカリは十三万トン、これは前年に比べて三万トンふえております。  それから大きな品目であります纎維原料を申し上げます。まず原綿は昨年百六十三万俵、これは前年に比べまして七十三万俵ふえております。
  143. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 資料でいただきますから、簡単でけつこうです。
  144. 小室恒夫

    ○小室説明員 羊毛は昨年は二十万俵、前年に比べて四万俵ふえております。レーヨン・パルプは四万一千トン、これは前年が非常に少かつたので、前年に比べて十倍となつております。ゴムは五万八千トン、前年に比べて一万八千トンふえております。皮革は一万四千六百トン、前年に比べて倍になつております。塩は六十四万トン、前年に比べて九十三万トン激減しておりますが、これは前年が非常にたくさん買い過ぎるくらいに買つてつたからであります。鉄鋼原料を申し上げます、鉄鉱石は昨年百四十三万トン、前年に比べて十六万トンの減であります。強粘結炭は七十五万トン、これは前年はちようどその倍くらいになつております。大体こんな数字になつております。
  145. 川島金次

    川島委員 続いてお伺いいたしますが、この輸出入の問題、特に輸入促進の問題が、日本経済自立態勢の重大な課題になつておる。そういう輸入計画をもあわせて、安本が計画し、その実施に通産省が当るわけなのでしようが、その場合に問題になるのは、昨今しばしばいわれておりますところの船腹の問題、この船腹不足の問題の解決について、建造計画あるいは用船計画、買船計画、これらの問題の根本的な解決が今や必至に迫られておるわけであります。本年度の予算に盛られた程度のことで、はたして政府の所定の輸入貿易に伴うところの船腹の問題が、円滑に進み得られるものかどうか、そういう事柄については、かなり通産省は通産省なりで計画があり、希望もあるというふうにわれわれは承つておるのでありますが、それについて通産大臣として率直に、この程度がほしいのだというようなことについて御明示を願いたいと思います。
  146. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 船舶の行政面については私申し上げませんが、ただいま通産省としては船が早くほしいのであります。ただいま船腹の増強にはどういうことを考えておるか、幾らくらいいると考えておるかというお話つたと思いますが、現在の船舶は至つて少い、ことにクラス・ボートで外航に適する船は、数字に現われておりますけれども、あの中にはなお五千トン以下の船も加わつておりまして、それ以上を考えますと、北米に行けるような船は非常に少いのであります。従つて五次、六次の新造計画もやりつつありますけれども、六次は遅れまして、その六次は来年の三月までのうちに完成し、それからまた第七次も今計画されて、現に運輸省から二十日までに船主の希望を申し出るというふうに告示をされるそうであります。これに対して見返り資金からの計画が百十五億かと思います。しかしそのうちには二十五年度の繰越しがありますので、二十六年度の新造に使えるものは五十億から六十億くらいしかないと思うのであります。しかも今回考えられておる七次——二十六年度を四十万トンといたしますと、三月までのうちに第七次として約二十万トンの計画だそうであります。そういたしますと、この船を来年の三月まで、いわゆる二十六年度内に完成するというと、すべての船に対する見返り資金が一艘分全体は必ず出ることになるわけであります。いわゆる船価の五〇%出ることになると思いますが、これを二十万トンといたしますと、五十億から六十億ではようやくそれすらも補うことができない状態でありますから、私らはその次のなお残りの第七次の第二回目を約二十万トンといたしますと、相当の金額の融資を考えなければならぬ。これに対しましては、政府部内が必ず船腹の増強をしたいという腹でありますので、関係当局と相談いたしましてぜひこれをしていただいて、そして輸入に対する船腹の補強確保をしたい、かつ買船用船に関しましては、相当に申込みも用船の船もあるようであります。これに対しましてもまずいるものは資金でありますので、二、三個人あるいは会社が購入し、用船したものもありますが、これらの五万トンや三万トンでは今日の情勢に応ずることができ得ないのであります。ただ先般アメリカで百四十八隻でしたかの繋船をアメリカ市民に貸下げや拂下げがあつたということでありますが、あれがこたえまして最近多少運賃のレートが下つて来たように聞いております。しかしそれにいたしましても、日本国としては、どうしても私らは戦前とは行かぬまでも、少くとも二百万トンや四百万トンの船腹の確保か必要でないかと考えるのであります。そういう方面において私は輸送の側を確保するため、強力に関係当局と御相談をしたいと考えております。
  147. 川島金次

    川島委員 大分こまかく話がありましたが、そこで念を押しておきますが、昭和二十六年度の輸出入計画とマツチさせるための船腹、その船腹の問題については資金の問題もいろいろ隘路はあるが、それを克服して行きたい。まあその熱意はわかるのですが、かりに最大限度通産省が努力をいたしまして、その船腹の解決に当るといたしまして、一体どのくらいのトン数を本年度中には動かせるかというような見通しもついているのではないかと思うのですが、それはどうなのですか。
  148. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現在はつきりした数字を私持ちませんですが、少くとも百四、五十トンの船腹ができるのではないかと思います。これは想定であります。あとでよく調べて……。
  149. 川島金次

    川島委員 それはあとでお尋ねいたしましよう。その次に、ついででありますからお尋ねしますが、何か聞くところによりますと、通産省の中でいろいろ輸入促進の問題で検討をしておる。その際に貿易の促進をはかるために、必要な諸国に向つて——とにかく中共問題で輸出入問題が誤つてしまつたために、他に求めなければならぬ。そういうことになりますと、ただ漫然として従来のようにやつてつたのではいかぬ。そこで必要な国へ必要な通商使節団というようなものを派遣して、そうして貿易の促進に当つてはどうか。こういつた意見が省内にも出ているし、その計画も省として立てつつある。こういつた話も聞いているのでありますが、そういう事柄について大臣はどういう対処をするつもりでありますか。その点をひとつ……。
  150. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先刻船のトン数で申し上げましたが、あれは総トン数で、重量トンは違うのでありますから、さよう御了承を願いたい。  ただいまのお話はごもつともで、通産省としても在来盲貿易といわれておりますので、かつまた海外の事情も在外事務所ができたといえども、正確には入つて来ない国々もありますので、これらの国々に対しましては今お話のことをぜひ実行したいと考えております。
  151. 川島金次

    川島委員 今度政府では二十五億でしたかの予算をとりまして、緊要物質の輸入をはかる、それと同時に物資の貯蔵ということが考えられて来ている。通産省の中でもそういう問題が真剣に取上げられて、考えられている。そして、それぞれの手を打とうとされているか、手を打つたのか、その点はよく存じませんが、そういう備蓄の問題については通産省はどういうことになつておりますか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  152. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 重要物の備蓄ということが盛んに叫ばれているのであります。備蓄と申しますと、非常にいらぬものをたくわえるようなふうに聞えますが、われわれといたしましてはランニング・ストツクをよけいに持ちたいというような考えでありますけれども、これはまだ申し上げる段階まで至つておりませんので、さよう御了承を願いたいと思います。
  153. 川島金次

    川島委員 そのランニング・ストツクの問題ですが、一体その・ランニング・ストツクをするとすれば、まずどういうものをする必要があるが。これをさしつかえなければ全部でなくともよろしいですが、おもなるものについて大臣が希望して考えられている点について、またそういうものをどのくらい今のランニング・ストツクとして日本経済には必要かというような所見がありましたらば、それを示してもらいたい。
  154. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ランニング・ストツクをよけいに持ちたいのは、現在わが国にまつたく資材のない、原料がないものを持ちたいという気があるのであります。しかし、これにいたしましても、やはり私企業がある程度ランニング・ストツクを持ち得るものもあるのであります。また国家としても、ある程度援助しなければならぬこともあるかと思いますが、現在のところで何を幾らということまでは申し上げ得る段階でない。そこまではまだ研究を積んでおりませんで、さよう御了承を願います。
  155. 川島金次

    川島委員 これは私のうわさに聞いた話ですけれども、通産大臣がランニング・ストツクを持ちたいという意見を持ち、省もそういうことを考えていたんだが、そのことが実際は不可能に近い事態になつたという話を聞いているのですが、その点はいかがですか。声望があるのですか、それとももう絶望なんですか。
  156. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 形式によつては不可能であるかもしれませんけれども、また形式によつてはやり得る面もありはせぬかと、その点を今考慮中であります。
  157. 川島金次

    川島委員 もう一点大臣に承りますが、これは通産大臣を兼ねた国務大臣としてもひとつお聞き願いたいのですが、税金、金融の問題です。現内閣は中小企業の金融問題あるいは零細業者の租税の問題等について、まつたく無関心であるとは私は申し上げませんが、その点は認めますが、しかし今日本の企業の姿をこう見ておりますと、私が申し上げるまでもなく、大臣とくに御承知の通り、特需景気を中心とした、これに直結する直接間接の企業体というものは、非常に良好な経過をたどつて来ておりまして、昨年までは賃金の遅配欠配があつたのが、その賃金の遅配欠配がなくなつたというようなところも次第にできておりますが、しかしこれは一部分であります。いまだにいわゆる日本産業の一番最低限にありまするところの中小企業の人たちは、資金の面についても、なるほど中小企業金融、あるいは庶民金庫、あるいは今度できた中小企業信用保険等にすがつて、何らか打開する道が開けたとはいうものの、まだまだ一般的な中小企業の面は、非常な金詰まりにあえいでいるということはまぎれもない事実であります。そこで私は大蔵大臣に、中小企業の保険をつくつたり、あるいはまた別わく融資をするという事柄も、これはけつこうであるが、何とかひとつ中小企業専門の金融機関をつくつて、そうして中小企業に対する金融の道を真剣に打開するという方策を講ずるということも、日本経済自立の上にきわめて重要な事柄ではないかという質問をしたのですが、従来のやり方でもそれは役に立たぬと私は申し上げているのではありませんが、しかし従来の形だけではとても及ばないという感じがいたしますし、また事実においてもそういう実態をわれわれは見聞をしておるのであります。そこで大臣においてはこういう中小企業の困難な金融の問題について、もつと積極的に閣内において働く必要がある。そうして閣内において強力なる発言をして、中小企業の育成と金融難の打開のために、中小企業専門の金庫を持つくらいな積極的な決心をひとつ披瀝して、これの実現に邁進する必要があるのじやないかと私は思う。そういう事柄について大臣はどういうふうに考えているか、それをまず確かめておきたいと思います。
  158. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 中小企業が、わが国の産業に受持つウエートは非常に大きいということを感じ、そうしてまたこれは現在における状態にかんがみまして、非常に憂慮しておるものであります。いろいろの施設をいたしまして、そうして金融の道をつけることを考えておりますけれども、これがまだ完全に一向できていないということに対しては、はなはだ遺憾に存ずるし、また今後われわれはその方面に呼びかけて、そうして大いに金融難を打開するように努めたいと思います。ことにまた、最近できました信用保険制度の方もようやく発足しまして、金融機関は約二百箇所ありまして、取引を開始しておりますけれども、実際において保険をつけたものはわずかなものしかないのであります。それで真意のあるところを銀行にもよく伝えまして、そうして金融のできるように努めたいと考えております。ただいまの中小企業者に対する特殊なる機関というお話でありますが、それもあるいは必要かと思いますけれども、現在の段階におきましては、ただいま申し上げましたようなものがフルに働くようにまず努力して行きたい、このように考えます。
  159. 川島金次

    川島委員 次にお伺いしますが、今度政府の二十六年度予算では、法人税の大幅な増徴が予定されておりますが、これは各種企業法人の特需景気等、いろいろな情勢に伴つて所得の増大、利潤が増大するという結果から来ておるということは一応認められるのであります。ところがそういう形になりました結果として、私どもの懸念いたしますのは、これがいざ徴税の実施面になりましたときには、ややもすれば零細な企業を中心として組織されております法人の団体に強力にしわが寄つて来るというおそれがある。これはもう例年の税務の実際から見まして、そういう心配が非常にあるのであります。ことにことしは法人の税の徴収が非常に多くなつた。そのためにそれが上の方で取切れないで、また上の方はとりにくくて、その犠牲が下の方の中小企業におおいかぶさつて来るというおそれが十分にあるのですが、そういうことについて大臣はどういう形において——この法人税について不当な税のかかるような零細な方面の不当な徴税の防止というようなことについて、何か考えておられるか、あるいは閣議等でそういう問題について大いに話し合われたことがあるかどうか、そういうことについてひとつ承つておきたいと思います。
  160. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの税の問題につきましては、まだ閣議では申し出たことはありませんけれども、中小企業に対して過大な税金がかかりますことは、中小企業を破滅させるもとになることはよく存じておるのであります。従いましてそれらに対する課税の基礎となるべき評価のごときは、愼重にやつてもらうことにし、またわれわれもそれを愼重にやることになるように業者にもよく話し合つて行きたいと考えるのであります。
  161. 川島金次

    川島委員 もう一つ、われわれはわれわれの立場において零細な業者、たとえば一箇年に十万円程度とか、十四、五万円程度、あるいは二十万円程度までの、家族の労働において営業しておる零細な業者が日本にはたくさんある。またこういつた業者は、事業所得でなくして一種の勤労所得にひとしいものだ、中には勤労者以上勤労しなければ、生計が成り立たぬという業種もあるのです。そういう業者に対しては、やはり勤労者の所得控除と同じようにせよとは必ずしも言いませんが、これに準じた扱いをする必要があるのじやないか、こういうふうに私どもは主張をいたしておるのでありますが、通産大臣としては、そういう事柄についてどういう考え方を持たれておるか、今の税制ではやむなし、勤労所得とそういう零細な業者の所得とは、同じに扱わぬでもいいのだというような考えを持つておるのか、やはりそういう零細な、身体的な労働を中心として営業を営んでおりますものに対しては、勤労者並の扱いを租税の上においてもする必要があると私は思つておるのですが、これに対する大臣見解を承つておきたい。
  162. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの課税の問題につきましては、はなはだ恐れ入りますが実は私深く存じません。しかし今のお話はよくわかることでありますし、またわれわれもそういう小さい企業者を保護するという立場において、何か道はないかということをこれから研究する——これから研究するのではおそいと言われるかしれませんが、詳しいことはわかりませんので、これから研究をして善処したいと思います。
  163. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 川島君に申し上げますが、先ほどのあなたの御質問の農地に関しての詳細な説明をし得る農地局管理部長その他が参つておりますから、御質問願いたいと思います。
  164. 川島金次

    川島委員 どうぞ先ほどの御答弁を願います。
  165. 島村軍次

    島村政府委員 お尋ねは、たしか買収済みの面積と残存小作地及び今後回収すべき予定面積であつたであろうこと思います。十二月末現在の政府の買収済みのものは百九十万町歩、端数は省略いたします。残存小作地が約四十五万町歩であります。うち今後回収すべきものは三万町歩であります。以上であります。
  166. 川島金次

    川島委員 その買収済み以外の農地の問題が解決することに何らか支障が今日あるのか。それとも支障なしに早急にこの問題が解決の域に達するという見通しになつておるのかどうか、それをひとつ。……
  167. 島村軍次

    島村政府委員 農地改革の既定方針に従いまして、今後回収すべきものの三万町歩は、すでに買収をいたしましたものを除いて、別に困難な事情はないと思つております。
  168. 川島金次

    川島委員 重ねてお伺いしますが、残存の四十五万町歩というのが、小作地として今日残つてつて、その問題も早急に解決ができるという形になつておるという説明でありますか。
  169. 島村軍次

    島村政府委員 御承知の通りに、内地では、普通の小作地は、農家一戸当り約一町歩の平均が残存小作地になる予定になつております。北海道ではたしか四町歩でありまして、これの反別がすなわち四十五万町歩であります。
  170. 川島金次

    川島委員 そうすると師走の方針に基いて百九十万町歩の買収済みによつて、これで完了したということになるわけでありますか。
  171. 島村軍次

    島村政府委員 ほぼ完了したと考えてよかろうと思います。
  172. 川島金次

    川島委員 そこでお尋ねしますが、このせつかくの農地開放が実施されたのでありますけれども、ややともすると、この農地開放の問題が逆な形になろうという傾向もないわけではありません。ことに問題となるのは、農地は開放した。が、しかしいろいろの事情で実際の農家の平均反別は漸次縮小されておる、こういう形で零細農がにわかに激増するという現象がだんだんに強くなつて来ておる。こういう零細農の激増の問題に対しまして、農林当局としてはどういうふうな手を打とうとしておるのか。それともこの零細農の激増に対して、このまま放置しておくことが可なりという考え方を持つておるのかどうか、それをひとつ聞かしてもらいたい。
  173. 島村軍次

    島村政府委員 農業経営が零細化されつつあることはお話通りであります。     〔小坂委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 そこでこの零細化を防ぐとか、あるいは零細化された農業経営をどうするかという問題は、今後の大きい問題であると思うのであります。いろいろ考えられることがあろうと思うのでありますが、御案内の通り、農業経営の合理化も一つの方法でありましようし、あるいはまた多角化の経営もその一つでありましようし、あるいはまた農業経営に関しまして資金的な裏づけをするということも、その一つの方法であろうと思います。ただこれが完全に行われるかどうかという問題及びその程度の問題については、いろいろ議論の余地のあることでありましようが、総合的な農業経営改善に関しましては、農林省一体となつて各種の角度からこの零細化に対する対処方法を、ただいま申し上げましたような例によつて漸次予算面におきましても、それぞれ各種の方策を講じておるのであります。
  174. 川島金次

    川島委員 どうも今のお話ではちよつと抽象的で私にはのみ込めないところが多いのですが、しかしあとでゆつくりやることにいたします。  たまたま国鉄の方から来られておるそうでありますから、職員局長にこの機会にお尋ねいたしたい。と申しますのは、国鉄従業員の兼職の問題なのであります。この問題は、昨年来議会の中でいろいろと議論の焦点になつておることは御承知の通りであります。そこで今日国鉄の職員にして地方議員を兼ねておられる方が一体どのくらいあるか、その地方議員を兼ねておりますために、国鉄運営の上に何らか大きな弊害があるのかないのか、まずその点について率直な御見解を承りたい。
  175. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま国鉄の職員局長お尋ねでございましたが、この問題につきましては、一応政府といたしましていろいろ勘案しておりますので、御質問につきましてのお答えを私から先にさしていただきたいと思います。地方議員の兼職者は何人あるかという御質問でございますが、昭和二十五年八月一日現在で、都道府県会議員七名、市会議員が六十七各、町村会議員が三百九名、全部で三百八十三名でございます。現在の議員が勤務上支障があるかどうかという点につきましては、国鉄当局者から御返事をさせていただきたいと思います。
  176. 片岡義信

    ○片岡説明員 お答えいたします。職員局長であります。数字は国鉄の部長が申し上げた通りであります。現在のところにおきましては、支障はないものと思つております。
  177. 川島金次

    川島委員 私の知る範囲においては、国鉄の職員諸君の地方議員の兼職が、国鉄運営の上において、あるいは勤務の上において、重大な支障があるとは考えられていない。そこでこの問題は、この国鉄従業員の地方議員の兼職について、国鉄当局はどういうふうな形で解決をはかりたいとの方針を持たれておるか、このことについて、簡單でよろしいのでございますから、率直に示しておいていただきたいと思います。
  178. 片岡義信

    ○片岡説明員 その点に関しましては、国鉄当局といたしましては、この法律の改正を政府に要望しておるような次第であります。
  179. 川島金次

    川島委員 さしたる障害がないとお認めでありますならば、この問題——私は説明は拔きにいたしますが、どうぞ当局においても熱意をもつて事の解決に当られんことを希望する次第であります。  続いて、国鉄の関係者が来ておりますので、一、二点この際お伺いしておきたいのですが、日本経済自立達成にとつて、輸送問題がきわめて重要な事柄であることは、言うまでもないのであります。政府は、昭和二十六年から三箇年間において日本経済自立達成したい、こういう計画を持たれておるわけであります。しかしながらその自立経済達成へのわき役として、運輸交通の問題が有力な力としてそれに加わつて参りませんと、この自立経済計画というものは、おそらく画餅に帰するおそれが多分にあるのではないかと私は思う。そこでこの政府の主張いたしておりまする自立経済達成計画と相呼応する国有鉄道、及び一般の海運を加えました輸送計画について、何らかの具体的な構想を新たに持たれておるかどうか、ただ現在ありますところの輸送網に対する改修、補修という程度でこの自立経済達成できるのか、それとも新しい輸送計画というものをさらに積極的に立てなければならない形になるのか、もしそういうことになるならば、国鉄当局としてはどういう積極的な新輸送計画を持つておるか、そういうことについて具体的に案がありましたならば、この機会に示しておいていただきたい、かように思うわけであります。
  180. 石井昭正

    ○石井説明員 自立経済達成の計画と相呼応いたしまして鉄道輸送力を増強するという観点に立つて、施設並びに車両の整備計画を立てているのでございますが、最近の輸送状況は、この自立経済計画の線よりもなお一層出荷の強調化——これは一応特需の関係等もございまして、貨物輸送の面に相当の逼迫が生じて参つている状態でございます。この状態が比較的急速には解消しないというような見通しがございますので、来年度におきましては緊急に貨車を増備する計画を立て、予算に約八十三億円程度の貨車の新造並びに改造計画を立てて、輸送難を解消する計画をいたしておる次第であります。
  181. 川島金次

    川島委員 八十三億円の予算で単なる貨車の増備だけでありますか。路線その他の何か計画はないのですか。
  182. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま申し上げましたのは、輸送力の根本となりますのは貨車でありますが、これは最も輸送力を増強いたします上に直接的なものでありまして、貨車の計画数字を申し上げたのでございますが、もちろんこの貨車の増備と相まつて線路、施設の改良等は実施して参らなければならぬのでありまして、その点につきましては、総額約三百十二億円の工事予算をもちまして、その中で線路改良、あるいは電化計画の遂行、輸送力増進に必要な諸経費を計上してある次第であります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長     着席〕
  183. 川島金次

    川島委員 それと同時にあわせてお尋ねしますが、二十六年度及び二十七年度、八年度の自立経済と相呼応する国鉄の電化問題についてはどういう形になつておりますか。
  184. 石井昭正

    ○石井説明員 電化計画につきましては、大体主として石炭の経済、輸送能率の向上という建前から、最も輸送量の大きな線区に電化をする方針をとられまして、東海道線が浜松まで電化していることは御承知の通りでございますが、さらにこの東海道線の電化を逐次米原まで延長する計画にいたしまして、来年度の予算においても、東海道線に初年度の経費を計上している次第であります。そのほか電化に必要な電源の確保に有効な信濃川発電所の第三期工事が二十六年度の秋に完成して、大体五万キロの発電ができる予定になつておりますので、この電力の供給地域そういう点から考えまして、高崎線の電化を計画いたしております。ただいまのところ、明年度の予算に上つておりますのはその程度でございますが、逐次電源開発の増強とにらみ合せまして、東海道線をさらに大阪あるいは姫路まで、あるいは常磐線、信越線あるいは東北本線等、いろいろ必要な輸送力の根幹となつております幹線区域にまずこれを実施して参るということに相なるものと存じます。
  185. 川島金次

    川島委員 次にお尋ねしますが、先ほど大蔵大臣説明によりますと、一般会計の中には人件費の中に半月分かの余分な手当を織り込んである、こういう。話があつたように私は記憶しておるのです。承るところによると、国鉄の特別会計の方にはこれがないかのごとくに言われておるのですが、その点の予算の面はどういうふうになつておりますか、承つておきたいと思います。
  186. 石井昭正

    ○石井説明員 お答えいたします。国鉄に関しましては、二十六年度予算には年末手当の予算の計上はいたしておりません。
  187. 川島金次

    川島委員 一般会計には織り込んであつて、国鉄にはない、これは片手落ちだと私は思うのですが、それは出さないつもりでありますか。それとも経理上の関係で、一応出さないで、今後何か国鉄の予算の都合で、そういう一般会計と同じような取扱いをするという心組みがあるのですか、その点をひとつお伺いしたい。
  188. 石井昭正

    ○石井説明員 公務員の年末手当と同じ意味における年末手当は、一応ただいまのところは支給しないという建前に相なつておるのでございます。
  189. 川島金次

    川島委員 それはちよつとおかしいですね。何かそういう差別待遇をするという根拠があるのですか。
  190. 石井昭正

    ○石井説明員 昭和二十五年度の補正予算におきまして、年末手当の問題がございましたときに、御承知の通り国鉄の第二次裁定の問題と相からみまして、国鉄は公務員と給與の体系、考え方を異にする、その意味において裁定のほとんど全額に近い額を、予算上可能であるから、これを承認するという国会の議決をいただいたのであります。結局公務員と国鉄とは、給與考え方が違うのだということを、そこではつきりきめたというようなかつこうに相なつております。従いまして昭和二十五年度におきましては、国鉄は公務員の意味におきますところの年末手当の支給はなかつたわけでございます。それと同じ意味におきまして、二十六年度も一応予算には計上してない、こういうかつこうに相なつておるのでございます。
  191. 川島金次

    川島委員 そういう説明では、国鉄の従業員もおそらく納得できないと思うのです。われわれも聞いておりましてちよつと納得できかねます。一般公務員は、一般会計においてはそれぞれ若干の経費が計上されておるということは、大蔵大臣が言明されておるのです。国鉄に関しても、これは日本国有鉄道だからと言つてしまえばそれまででございますけれども、しかし国有鉄道の従業員諸君公務員に準じたものである、一切の権利義務はほとんど同じであります。別に罷業権があるわけではなし、それぞれの問題についても、公務員とまつたくかわりのない立場において日本経済の再建に協力しておるのであります。その形において、しかもその上に国鉄の業績は、従業員の健全なる努力によつて逐次改善されておるということも私どもは承つておる。そういう健全な努力、勤勉に対する報いということを国鉄当局は当然考えてやるべきだと私は考える。一般公務員にさえある。それを国鉄に関してのみ、立場が違うからこれは別なんだという考え方で臨むことは、私どもにはいささか納得が行かぬのでありますが、そういうことはできないというのであるか、したいのだができないという、ほかに別な理由があるのか、くどいようですがもう一ぺんお尋ねしておきたい。
  192. 石井昭正

    ○石井説明員 私どもといたしましては、国鉄の職員の建前が、公務員と異なる方が、企業経営の妙を得て、かつまた業務能率を増進する上から見て適当ではないかと考えておるのであります。従いまして公務員と右へならえをするというような態勢でございましては、国鉄の職員は、むしろただいまお話のございましたように、その努力によつて業績を改めた場合に、かえつてこの恩典に浴することがなかなかむずかしいというために、逆に勤労意欲が伸びないということに相なるかと思うのであります。従いまして、私が先ほど申し上げましたように、公務員と同じ意味における年末手当は計上していないということで、ただいまお話がございましたように、国鉄の職員の方々の努力によつて業績が改善されました場合に、何らかのリターンが職員になされるということに対しては、必ずしも不可能ではなし、また公企業の経営の上から言つて、そうあるべきではないかと私は考えております。
  193. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際関連質問を求められております。これを許します。松本一郎君。
  194. 松本一郎

    松本(一)委員 職員局長お尋ねします。先ほど川島委員の御質問に対して、国有鉄道職員が地方議員を兼職することがいいか悪いか、こういう質問つたと思います。それに対して局長の御答弁は、現在の勤務上にて支障なしと考える、こういう根拠のもとに、国鉄としては法の改正を政府に要求しておる、こう断定されて政府に要求されておるのですが、この理論的な根拠並びに支障なしということを事実上証明されるものがありましたら、この際御説明願いたいと思います。
  195. 片岡義信

    ○片岡説明員 お答えいたします。理論上の根拠と申しますか、国鉄の職員が大勢住まつておりますところにおきまして、地方公共団体の議員を兼ねますことが、公共企業体になります前にも相当数あつたのでありまして、公共企業体になつてから、これがある時期に切れるわけでありますが、相当数住まつておるところにおきまして、その地方自治に関係するということは、民主的な政治に関與する意味において許されていいことであるというように思います。  それから支障の問題でありますが、現在までのところを見まして、現在兼務いたしております者のうちの相当数におきましては、専従者として組合の仕事に専念しておるような者も相当ありますし、またその他の者につきましても、実際上においては支障がない状態であります。こういうことになつております。
  196. 松本一郎

    松本(一)委員 そこに住まつておる国鉄職員が、その地方の自治体の議員として参加するということは、これは民主的な行き方である、この御議論に対しては、私ももとより同感です。しかし実は局長には御経験があるかないか知らぬが、私も国鉄職員としておつたこともあり、町村長をやつたこともあります。また地方議会の議員をやつたこともある。この三者の経験を積んでおる私から考えてみますのに、職務上支障がないかということになれば、いわゆる地方自治の議員の職務を全うしようとすれば、おそらく国鉄職員の職務は全うできまいと思います。すなわち地方議員の職務は、ただ議会だけの職務でないことは御承知でしよう。たとえば県会議員はその県の県政を知つてつただけでは県会議員は勤まらぬはずです。日本中の各府県の県政をよく研究して、他府県はこういうふうにして県民の幸福をはかつておるから、わが県もこうしなければならぬ。こういうことによつて県政を発達させ、議員の任務が勤まつて行くのです。従つて県会当時だけたとえば県会に出る、あるいは村会のときだけ村会に顏を出すというのでは、これは今度は議員の職務は全うできぬ。従つて他府県を視察に出るというようなことは別として、個人的にもひまがあれば他府県を歩くとかあるいは他の市町村を歩いて、十分いろいろなよいところを見たり、悪いところを見て来る。そうしてもつて自分が関係しておる地方自治体の住民の幸福に資さなければならぬのであります。そういう仕事をやる場合に、一面において国鉄の職員であるとすれば、そつちの仕事がおろそかになるのは当然です。しからば国鉄の職務に忠実ならんとすれば、片方議員の仕事がおろそかになるのです。私どもは実地に自分が体験して来た経験に基いて、国鉄職員は地方議会の議員になられぬ方が、国鉄職員のためにも、また国鉄のためにも、ひいては自治体のためにも、すべてによいのではないか、こう実は考えておるのであります。先ほども答弁の中に年末手当の問題について川島君の御意見を拜聽しておりましたら、すなわち公務員と同じ形において産業復興に努力しておるのが国鉄職員である。こういうことを言われておる。こうなれば一般国家公務員も地方議員になつてよいという理論になつて来る。それを先ほどの御答弁を聞けば、普通公務員とは、すなわち企業経営においてこれは別であるということを、御答弁はつきりと区別されておる。この意味においても私は先ほど来伺つておりますのに、国鉄職員は地方議会には参加されない方がよいのではないか、それをどういう理論で、こういうような法の改正を政府に要求されているのか、局長はいろいろ御経験をお持ちのことと思うが、体験は何よりとうといのですから、御経験なしでものをお考えになるととんでもない間違いが出て来はせぬか、かように私は考える。幾分意見を申し述べましたが、この点もう一度局長のお考えを伺つておきたいと思います。
  197. 片岡義信

    ○片岡説明員 私はその方面の経験はみずからはないのでありますが、鉄道職員の全体のいろいろな動態を見ておりますと、職員の相当数、その市町村に住まつておりまするところにおいて、先ほど石井部長から申し上げましたような数が推されておるというような事実がございます。そうしてそれらのものについて国鉄職員としての勤めをそう支障なしにやられておるというようなことを見ておるわけでありまして、これに対しましていろいろな地方からも兼職をさせてもらいたいというような陳情等もあるような事実もありますので、現在のわれわれ見たところではまあ支障ないということを考えまして、そういうような要望もございますので、政府に対しこの改正方を申し出ておるような次第でございます。
  198. 松本一郎

    松本(一)委員 今、地方によつては、国鉄職員に、いわゆる地方議会になるべくなれるようにというような陳情があるというお話でありましたが、地方によつては、国鉄職員が議員になる、それがために国鉄職員自体も迷惑であり、地方も迷惑であるがために、途中でやめた議員のあることも、おそらく御承知だと私は考えます。かような意味で、この際貴重な経験に基いてものを御判断願わぬと、とんでもない間違いが起る。これは自分が国鉄職員であつた、議員にもなつてつた、また市町村長、理事者にもなつてつたという経験から判断して言つておるのです。これはこの一事だけじやありません。日本のすべてがそうです。こう私は考えるのであります。よくお考えおきを願いたいと思います。これで終ります。
  199. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十八分散会