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1951-02-07 第10回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月七日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 西村 久之君 理事 橋本 龍伍君    理事 川崎 秀二君 理事 林  百郎君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       上林榮吉君    北澤 直吉君       久野 忠治君    坂田 道太君       庄司 一郎君    玉置  實君       苫米地英俊君    永井 英修君       中村  清君    中村 幸八君       松本 一郎君    井出一太郎君       今井  耕君    北村徳太郎君       中曽根康弘君    平川 篤雄君       勝間田清一君    川島 金次君       戸叶 里子君    水谷長三郎君       砂間 一良君    横田甚太郎君       小平  忠君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  横尾  龍君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         公益事業委員会         事務総長    松田 太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月七日  委員島村一郎君及び竹山祐太郎君辞任につき、  その補欠として上林榮吉君及び平川篤雄君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  当委員会委員各位におかれましては、きわめて熱心な審議を連日続けられておるのでありまするが、本日は当予算委員会における案の提出者である大蔵大臣初め各大臣出席がないのであります。大蔵大臣は聞くところによりますると、関係方面との折衝でありまするからやむを得ませんが、それぞれ関係大臣に対しては事前に十分通告いたしてあるのであります。しかしかかる状況におきましては、委員長におきましても、審議を進めることはまことに無意味であると感ぜざるを得ないのであります。よつて政府の反省を求めたいと思います。   午前中の委員会はこれをもつて休憩いたしまして、午後一時半より開会いたしたいと思います。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま委員長の方からきわめて適切な発言がありましたのでわれわれも賛成でありますが、この際特に政府関係に注意を喚起いたしておきたいと思うのであります。それは本予算委員会は冒頭から予算案が提出されまして、きわめてスムースな審議に入つております。野党側も最初から協力態勢をしいて、十分本格的に審議するという形で、従来の予算委員会のごとく、期間が短かかつたり、あるいは政府側態度等によつて非常な荒れ方を見せた委員会とは違いまして、今日まではきわめて順調に進んで来ました。しかしながら、昨日来大臣出席はすこぶる悪い。大蔵大臣安本長官のごとき重要な閣僚は、一時間くらいしか出て来ないというような状態では、今後の審議に非常な支障を来すと思うのであります。まだ総括質問終つただけでありまして、これから一般質問に入つて、各委員が十分な審議を展開せんとしている折から、かかる政府側出席の悪いということでは、われわれとしても十分な審議ができません。委員長から御発言があつたので、まことにけつこうなことと思いますけれども、昨日の農林大臣答弁のごとき、ほとんど予算委員会の体をなさないような答弁ぶりである。今度の国会は、主として講和問題に院内外神経が集中されておつて、その重圧のために内政問題の審議がやや関心をそらされておるような状態である。しかしながら、ここに思いをいたして、やはり国民の台所、国民ふところぐあいということの方がより一層切実な問題であるのでありますから、従つて今後の予算審議にあたつて、まず第一に、政府側出席が悪いということでは、野党側予算委員会を通じての協力が十分にできないという段階に立ち至るのではないかと私は思う。  それから第二の点は、昨日の農林大臣のごとき不誠意な、ほとんど大臣の答としての体をなさないような答弁ぶりであつては、これは予算審議になりません。よろしく委員長から、各省は資料を整え、それぞれ予算委員会にふさわしいところの答弁態勢をつくつてもらうように御要望のほどを切に希望いたしまして、委員長発言賛成をいたします。
  4. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの委員長の御発言に対しまして賛成であります。さらに川崎君の発言も、私は当を得た発言と思うのであります。あわせまして委員長から政府当局にお願いしていただきたい点は、大臣答弁をなさる場合に、その内容いかんによつて政府委員をして答弁させるということもあり得ると思うのであります。従つてこの予算委員会内容から行きまして、大臣はすべて答弁材料等は十分に用意されておることと思うのでありますが、いかなる質問がありましても答弁せられるよう、政府委員も場合によつては随行せられて、万遺憾なきを期していただきたいということを重ねて申し上げたい。さらに大臣出席に関しましても、実は委員出席率も、本日のごときはあまり芳ばしくないと思う。しかしこれは要求した大臣がお見えにならないから、何回来ても自分の質問ができない、こういうことからもそういう結果が生じているように思いますので、大臣なり政府委員出席を特に私は委員長から強く要請を願いたいと思う。その間にあつて、大蔵省の河野主計局長は毎日お見えになつておる。こういう形は、これは当然であるとは思いますけれども主管大臣以外の大臣答弁主計局長答弁されるということは、非常なナンセンスであります。そういうことから申しまして、委員長からよろしく政府当局に強く要望していただきたいと思います。
  5. 川島金次

    川島委員 委員長からせつかくの話があつたのですが、予算委員会——戰争前のことは私は知らぬけれども、おそらく戰後予算委員会で、大臣出席がないから延会なつたというようなことは、空前の事態なんです。一体政府は口を開けば国際情勢が緊迫しているの、国民生活がどうのと言つておりながら、この重要なる予算委員会に、午前中大臣が一人も出席せず、遂に予算委員会は午後に延期されるのやむなきに至るということでは、私は政府の国政に対する熱意のほどを疑わざるを得ない。どうぞひとつ委員長から、もとより委員長も大いに考えられた点であると思うのですが、與党という立場を離れて、強硬に政府に警告を発してもらいたい。  それから野党の方もあまり委員出席率が芳ばしいとは申し上げられませんが、ことに與党出席率が悪い。パーセンテージからいえば、與党が一番悪いと言えるのではないかと私は思う。この点もひとつ委員長から仲間の出席率の督促をやつてほしいということと、今小平君からお話がありましたが、今日からは総括質問終つて一般質問に入ります。そうすると、どうしても政府委員でなければ答えることのできないような質問も、相当多数に上つて来るだろうと思う。従つて大臣出席に対する準備のさることながら、同時に大臣とその関係官は、できるだけ数字的な資料その他を十分に用意をして、この委員会出席すべし、こういうことをもあわせて委員長から強く要求してほしい、そうしてそれを実行してほしいということをつけ加えて申しておきます。
  6. 小坂善太郎

    小坂委員長 きわめて妥当なる御発言が三君からあつたわけであります。もとより委員長といたしましても、ただいま川島金次君から特に強い御要請がありましたが、あなた以上に私の心境というものは、憤慨している。そこであなたは終戰後に初めてこういう延会があつたとおつしやいますけれども、私といたしましては、今までの委員会におきましても、政府委員出席あるいは大臣出席がなかつたことはしばしばあつたのでありますけれども、来るまで待つてつた。しかし私といたしましては、当委員会の権威のために、それを待たずにこういうことを招来せしめて、しこうして政府の猛省を促したい、こういう気持があるので、あえてこういうこともいたしておるわけでございますから、その間の事情も御了承を賜わりまして、今後の運営については政府に対して十分な戒告をいたしますから、なお一層の御協力を相煩わしたいと思うのであります。  これにて暫時休憩いたします。     午前十一時二分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  7. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑を続行いたします。井出一太郎君。
  8. 井出一太郎

    井出委員 一応総括質問が終りましていわば一般質問に入るわけでございますが、大蔵大臣から先にお尋ねをいたす構想を持つてつておりますので、少しく前後整わない点があろうかと思いまするが、出席大臣の御都合もございまするので、まず経済安定本部長官に御答弁を煩わしたいと思います。  先ごろの本会議における大臣の御演説を文書によつてわれわれ配付を受けたのでございますが、文書で見ますると、なかなか堂々たる大論文でございます。一応あらゆる問題に触れており、まことにそつのない感を思わしめるのでありまするが、ただ惜しむらくは、筋金がどこに入つておるかというような点において、いささか不明瞭にも相なるやと考えるのであります。そこでその御演説中心にいたしまして、若干の箇所をお尋ね申し上げたいと思うのであります。  まず第一点といたしまして、大臣も述べられておるように、待望の講和條約が二十六年度においては必ずできるであろう、またこれは吉田総理大臣も本委員会においての答弁中、確信を持つて本年一ぱいにはこれができ上るであろう、というような言明をなされたのであります。そこでわれわれ過去五年、六年の久しきにわたりまして、講和さえ達成せられるならば、そのときこそ、日本国民は極東の囚人というような立場から解放せられて、ほんとうに自立ができるのである、こういうような非常な期待をこの講和に寄せておるのでありまするが、さてしかしながら、講和というものは、長い時の流れの上における一つのポイントであろうかと思うのであります。経済というようなものは、これは生きて動いておる、一つ流動性を持つておるのでございまして、必ずしも講和を迎えたから白が黒になるという体のものではなかろうと思うのであります。そこで経済総合企画をなされておる安本長官とされましては、この講和の大きな條件であります経済自立日本経済講和というものを境目として、どのように転換をするであろうか、この辺の見通しをまず承つておきたい。と申しますことは、われわれの前途には容易ならない事態が横たわつておる。現在の危機を認識する上におきまして、人によつていろいろございましよう。大蔵大臣の言動からわれわれがうかがいとるものは、どうも少しくオプテイミズムに流れ過ぎはせぬか、その点はさすがに周東長官は、深く広く御洞察に相なつておるのではないか、こうも私は思うのでございまして、そういう意味から講和をここで迎えた場合に、日本経済はどう一体転換するのか、その先は明るいものを期待していいのか、経済自立條件としては、どのようなものが考えられ、しかもそれに対していかなる対策を持つておられるかというような一般論を、まず初めにひとつ伺つておきたいと思います。
  9. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。御意見にありますように、講和條約が締結されれば、そのこと自体で日本経済がよくなつて国民生活が安定するというわけのものではないのであります。その点につきましては、政府は一致してさように考えております。それであればこそ、たとい政治上の独立を得る講和條約の締結があつても、真の独立というものは、経済自立なくしては、ならないのだ、その意味におきまして、従来外国援助、ことにアメリカ援助によつて、わずかに今日まで、敗戰後五箇年の経済生活を進めて来たのでありますが、そのことも一応今の形で進めば、来々年にはなくなるわけであります。そういう場合において、われわれは講和の成立によつてその政治的独立を回復するとともに、他人のやつかいにならずに、経済自立がなし得るように、一つ計画を進める必要がある。これを強力に推進する必要があるということで、経済自立審議会を設けまして、それに関する諸條件を検討いたしたのであります。幸いに今年の一月二十日に審議会から答申がありまして、政府といたしましては、その審議会答申中心にいたしまして、施策を遂行するつもりであります。その大体の構想といたしましては、外国援助を受けずに自立し得るために、目標として、来々年二十八年度において、貿易関係においては輸出輸入貿易外収入等合せて、大体十七億ドルの見合いになつております。これを達成するには、日本輸出を推進するために工業計画をいかにするか、しこうしてその工業計画を推進するに必要なる原材料の輸入確保についてはどうするか、また工業生産水準をそこまで持つて来るについて、並行して内地における食糧などの自給度向上についてはいかにするか、しこうしてこれらを推進するごとについて必要な電源の保有量をいかにするか、またこれらについての資金計画をどうするかということを中心に、経済計画を進めておるわけであります。
  10. 井出一太郎

    井出委員 大体は御演説にもありましたので、それをもつて長官の御意見はほぼわかるわけでございますが、さてその官立経済計画を立てます上に、一面においては国内自給度をより高めることと、同時に対外援助なくしては、わが国経済というものは成立ち得ない。しからばわれわれが今眼を外に転じました場合に、わが国に最も近接いたしている東亜市場というものか、はたして日本にとりまして現在どのような状態に置かれておるかと申しますと、中共は御案内の通りに、これとの貿易は一応杜絶をされておるといわなければならぬ。あるいはまたフイリピンあたり国民の感情を考えてみましても、なかなか日本人を相許すというところまでは行つておらないようであります。しかしながらわれわれはこの地帶の有用なる、たとば鉄鉱石、粘結炭工業塩、あるいは南方におけるボーキサイト、こういつた資源などを考えますときに、これなくしては日本経済というものはなかなか自立がしがたい。さりとて、この東亜市場との関係が必ずしも好転をしておらない。一体もしこれらの地帯から、かような物資を得られないといたしますときに、これは一辺倒にアメリカのみに期待をして輸入し得るものであるかどうか、東亜市場との今後の調整をいかにお考えになるか、また中共との関係ども、あるいに香港を通しての三角貿易的なものが、現在なされつつあるのかどうか、そういう点をひとつお伺いをいたしたいのであります。
  11. 周東英雄

    周東国務大臣 日本の将来の貿易立場からいたしまして、お示しのように東南アジアを軽視するわけに行かぬことは申すまでもないのであります。御指摘のように、ただいまはいろいろな事情中共との関係においては一時とだえたかつこうになつておりますが、その他の地域輸出輸入とも相当の金額、数量が見積られ、また実際に出入りしておるのであります。すべての物資アメリカのみに依存しておるという形ではないのであります。たまたま中国で得ておつた鉄鉱石、粘結炭等において、振替の地区としてアメリカが大きく出て参つておりますが、しかしアメリカだけにすべてのものを振りかえておるわけではなく、その他のアジア諸地域について輸出入ともに考慮を拂い、現に輸出入いたしておるのであります。
  12. 井出一太郎

    井出委員 輸入関係等につきまして、すでに同僚委員からも指摘があつたのでございますが、この資源に恵まれない国土狭隘な日本といたしまして、原料資源を得るのに非常なきゆうくつを感じつつあるのは、世界的な軍拡競争が始まりまして、一種の原料獲得戰がすでに展開せられておる、こういう状況下にあるので、非常に原料確保に困難を感じておるわけでありまするが、これらのことは、やがて日本経済を、自由党各位が誇称せられて来た自由経済というものを、変貌せしめずにはおかない、再統制というものが必至ではないか、こういう状況下に置かれておるかと思うのであります。あるいはすでに安定本部におかれましては、こういう問題についての構想もお立てになつておるやに伺いまするが、あるいはまた自由党においては民主的統制ないし自治的統制というような声も出ておりますが、しかしながら統制というものは、業者にのみまかせてでき得るものであるかどうか。これは過去の戰時中の経験からも非常に至難であろうかと思うのでございます。さりとてわれわれは官僚機構の復活を予想し、あの憂欝きわまりないところの官僚統制というものを、もう一ぺんここで復活することは、まことにたえられない感じもいたします。再び行列買いをするのかと思うと、すこぶる憂欝に相なるのであります。しかし世界情勢とマツチをいたした何らかの対策を持たなければならぬ。こういう意味から、いろいろお考えにはなつておると思います。たとえば臨時物資調整法が本年三月一ぱいで期限が切れると存じまするが、これを延長するというようなお考えもあるやに聞くのであります。こういうような点について、どのような構想をもつてこの窮迫した物資不足段階に臨まれようとするか、その基本構想を伺つておきたいと思います。
  13. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたします。井出さんのような勉強家が、今みたいな御心配をなさるのは、私はかえつてそのことを非常に心配するのであります。再び戰時中のような行列買いをしなければならぬかということが心配だとおつしやいますが、今の情勢からいたしまして、野菜の統制を復活して配給するとか、魚の配給統制価格統制をやるとか、くだものの配給統制価格統制をやるとかいうことは、必要もなし、そういうことは考えておりません。しかしこういう情勢になると、ともすると国民考え方が、再統制をやらなければならぬというところに来がちであります。今あなたの言われた、再び行列買いをしなければならぬというような心配が、ただちに再統制ということとイコールのような考え方になられることを私は心配する。私どもは、そういうことはやる意思もなし、また今やる必要はないと思う。ただ問題は、個々の品物につきましてよく考えなければならぬ。たとい今のような情勢になつても、すべての物資に昔のような配給統制をやる必要がないことは、もうはつきりしている。しかしいろいろと特殊な物資世界的に貴重な物資について、あるいはやがて世界的の割当というようなことが起り得る可能性はあります。そういう物資、ことに生産財について、あるいはそういう割当を受けて輸入したものについて、使用制限とか用途指定ということが起ることは予想せられる。但し国民生活に必要な繊維資源等については、数量的におそらく二十五年度以上に確保ができる見通しがついておる。何がゆえに綿糸の値段があんなに上るかということは、非常に思惑の動きがあります。綿は入らぬ、綿糸確保できないという声をだれが出すのか知りませんが、実際上の数字は近くお目にかけたいと思いますが、はつきり言つて、たとえば国民生活に必要な繊維資源であるところの原綿、羊毛というものは、二十五年度以上に確保されることははつきりしておる。そういうことからいたしまして、そういうものについて配給統制をやる必要もないと思う。従つてどもは、原則はあくまでも自由経済の形で進んだことが、戦争終結から今日まで、国民に非常にいい結果を與えておることは事実であると思う。りくつの問題ではなくて、事実がそうであるとすれば、むやみやたらに昔のように復帰する必要はないと思います。先ほど申しましたような生産財、しこうして貴重な輸入物資について、まず統制が起るとすれば起り得ると思いますので、そういう場合に処するために、臨時物資調整法というものの期間を延長するということも、近く御協賛を得べく法案を提出したい、かように考えております。
  14. 井出一太郎

    井出委員 私も何もそう神経戰にかかつておるというわけではありません。ただ世界情勢というものを考えますると、手放しの楽観をしておるわけには参らない。すでにあなたにその御用得も、心中ひそかに決するものがあるようにうかがいまするので、その点はこの程度にいたしまするが、今の再統制という考え方とは、むしろこれは逆に相なるかと思いまするが、講和條約が近い、従来のいろいろな制限は、経済的にも政治的にも撤廃されるべきだというふうな見地から、たとえば独占禁止法であるとか、事業者団体法ないし経済力集中排除法、こういつた一連の日本経済民主化するという意図のもとに、占領当局において強く日本国民要請したこれらの諸法規が、あるいはゆるむのではないか。またそうしないことには、日本経済をいたずらに弱体ならしめる。真の自立経済を遂行するためには、ときには強大な資本集中もしなければならぬというような観点から、これらの諸法規に対する緩和というようなことを耳にいたすのでありますが、こういう点についてのお考え方を承つておきたいのであります。     〔委員長退席橘委員長代理着席
  15. 周東英雄

    周東国務大臣 御指摘のような法規が、戰後における日本経済民主化のためにつくられて、今日まで実行されて来たということは、仰せの通りであります。従つて今日までこれらの法規が、日本業界民主化に役立つたことは、大きに力があつたのであります。相当にその実績が上つて再び資本集中とか、独占的な弊害も起り得ないかの状態まで再編成されておる今日、むしろ新事態に即応して行くのには、何もかも政府が実行して行くことによつて行政費を高めたり、非能率的な動かし方をすることが、日本経済自立の上に適当ではないときになつておりますから、できればこの民主化された業界を基盤として、今後推進する上においては、ある程度の民間の契約あるいは協定というような形において、効果を上げ得る道はありはしないかというようなことを基本に置きまして、研究をいたしておることは事実であります。しかしまだ具体的にまとまつておりませんから、今日どういうことをどういうふうな程度考えておるかということを申し上げる時期ではございませんので、時期が参りましたら申し上げます。
  16. 井出一太郎

    井出委員 これは研究中というようなお話で、方向といたしましては私の指摘した線をたどつておる、こういうように了解をいたしましたが、これにつきまして、関係方面話合い等をなさつたことがおありかどうか、これを一点伺つておきたいと思います。と同時に、これはたしか農林大臣が昨日あたり申されたと思いますが、例の食糧公団の廃止後の跡始末でございますか、これがなくなつた後における主食の国内操作のための運賃のプール計算ですか、これがやはりどうも事業者団体法等に触れて、その方面がむずかしそうに見えるようでございますが、こういう点を先方と折衝したお感じはどうであるか。つまりこういうふうな統制法規を少しでも緩和しそうな傾向に向つておるような印象を受けられましたかどうか。これはひとつ両大臣からそれぞれ伺いたいと思います。
  17. 周東英雄

    周東国務大臣 私どもの方では、まだそういう手続まで進んでおりません。
  18. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 御指摘の点は種々交渉をし、また話合いをいたしておるのでありますが、極東委員会の指令は厳然として現在ありまするので、いかんともしがたいような状態でございます。
  19. 井出一太郎

    井出委員 安本長官演説中には、日本経済がすでに安定がなり、著しい復興の跡をたどつたすでに昨年の十、十一月のころにおいて、鉱工業の生産水準は戰前のものを突破した。またわれわれに配られた資料によりましても、さような数字は明確に相なつております。そこで日本経済は、これは朝鮮動乱という特殊なフアクターが働いて参つたことはございましよう。このための特需、及び世界的な一つの緊迫状態からする見越し輸入というようなものが日本輸出を助けて、昨年の後半期においては思いもかけない好況が現出をいたした。大蔵大臣はおられませんが、かつてどもは池田財政の前途を危ぶんだ際に、あの超均衡予算から来るデフレの波は、日本経済をことごとく萎縮せしめて、去年の秋あたりにはたいへんな事態が来やせぬかということを予測したのでありますが、幸か不幸か朝鮮動乱は池田財政に幸いをしたかのごとく、ともかく日本経済の活況は数字の上に、経済諸事象の上にはつきり出ておるのであります。そうなつて参りましたときに——私どもはまだもちろん衰弱が回復したとは思いません。しかしよほど力はついて来た、こういうことは言えると思いまするが、そのときに日本経済実態を国際的に端的に表現をいたしまする為替レート、もちろんこれがノーマルな経済状況にありましては、為替レートというものは変動をいたすのでございましようけれども、今の場合は特殊な情勢下において、三百六十円というところにくぎづけに相なつておる。しかし三百六十円レートができました昭和二十四年でございましたか、あの当時から見ますならば、今日の日本経済ははるかに大きなプラスの面が出て参つておるのであつて、このレートの根底をなすところの基盤というものは、動いて参つたといわなければならぬ。私どもはこれはむしろよく動いて参つた、円がドルに対して強くなつて来つつあるのではないか、こういうように考えまするときに、この三百六十円レートなるものは、このままでよろしいと思われるのか、それともまたこれが何らかの要素によつて動き得る可能性があるかどうか、こういう点を承つておきたいと思います。
  20. 周東英雄

    周東国務大臣 為替レートに対するお尋ねでありますが、こういう大事な問題こそ、そう軽々に動かすべきものでないと私は考えます。なるほど朝鮮事変によつての影響は、わが国経済界に幸いいたしたことは、御指摘通りでありますが、しかもその間においても、やはり二、三億ドルの援助資金によつて日本経済がまかなわれている。たまたまアブノーマル・エキスポートといいますか、人為的な景気のためによくなつておるからといつて、これがいつまで続くのか、激動する世界経済に臨んで、ちよつとくらいよいからすぐに変更するということを考えるのは、まだ早いと私は思う。よほど日本経済の足元がしつかりして、そして日本の物価が安定し、諸外国の方がどんどん高くなつて不安定になれば別ですが、日本のちよつといいという景気は、アメリカ援助と朝鮮動乱という、特殊なことによつてつておるのであります。こういうようなことで為替レートを動かすということは、私は不必要であり、かえつて害があると思います。     〔橘委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕
  21. 井出一太郎

    井出委員 長官は、よくあなたの人物評が手がたい方だ、こういわれるごとくに、非常に御答弁も手がたくておられます。私は最初に、講和会議というものを契機にして、日本経済が大きな転換なり飛躍なりをするかどうかという点をお尋ねしたのでありますが、講和会議において、この為替レートというようなものが動く、あるいはいじくられる、こういうふうなことはないものかどうか。それからもう一点、今の御答弁中にありましたエイド・フアンドー援助資金というものは、これはおそらく今の計画から参りますと、あと二、三年くらい期間が残つているようでありますが、これが講和と同時にいかような姿に相なるか、これもあわせて承つておきたいと思います。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 講和会議の成立の際に、為替レートの変更が織り込まれるかということでありますが、おそらくそういうことは、講和会議内容に入らないのではないか、私はそう考えます。それから援助資金の問題は、講和会議成立後どうなるか。これも私見通しとしてはよくわかりませんが、しかし今のところ普通に行きましても、講和條約のあるなしにかかわらず、来々、年の上半期で一応なくなる豫定になつております。しかし日本経済の真に確立するためには、何らかの形で援助といいますか、外資の導入と申しますか、必要であろうと思います。その点は、講和会議が成立した後には、国際社会の一員となつて行くわけでありまして、それこそ大きく、プレトン・ウツズ協定にも加入し、国際通貨基金にも入りましようし、国際開発銀行等にも参加でき得て、日本経済の直接の援助だけでなくて、日本経済が最も必要とする東亜地域における資源の開発、またその地域における経済の確立といいますか、経済力を強めることができるような方向へ、何らかの処置が打たれることは、間接的に日本輸出相手国の購買力を増加することになるのであつて、あらゆる面がよくなつて来ると思います。従つて今の形における援助資金のみが、日本経済の復興に唯一のものでなくて、講和條約成立後は、あらゆる大きな面において、いろいろ独立的に要求もできましようし、また援助してもらうこともできる、かように思います。
  23. 井出一太郎

    井出委員 かりに援助が打切られた後、何らかの形で国際的な大きな支持が日本に與えられるであろう、こういうお見通しでございますが、これは私も日本の生存は、いわゆる自由世界といいましようか、民主主義国家機構の一翼において、国際機構の中でものを解決して行かなければ、これは成り立ち得ないと考えます。  そこで今長官の御答弁中にある外資導入という問題でございますが、従来とも外資導入という言葉はしばしば使われて参りました。共産党の諸君などは、外資導入反対、植民地化反対というようなスローガンを常に掲げて参りましたが、エイド・フアンドを別として、いわゆる外資というものがノーマルな形で日本に入つたことがあるかどうか。これは私はまだそういつた形では入つておらぬのではないかと思う。同時に資本が、これは民間資本でも、あるいは政府借款でもよろしゆうございますが、そういうものが入るための日本経済基盤というものが、従来はまだ十分培養されておらなかつた従つて資本がその本質的に要求をする安全という問題、あるいはそれが利潤を追求するという問題、こういう点からして日本経済は外資を導入し得る資格條件において、いまだ十分ではなかつた、かように思うのであります。しかしこの外資導入が援助資金にかわるような形において、講和後あるいは講和前でもよろしい、日本へ入り得る可能性というものを長官はどの程度に信じておられまするか、またその具体的な方途をどうお考えになつておるか、こういう問題をひとつ伺つておきたいと思います。
  24. 周東英雄

    周東国務大臣 日本経済の復興と安定ということが促進されるにつれまして外資の導入はあると私は考えます。今日までも実は少いながらも、数字はあとで申しますが、ちよつと今私の記憶によると、すでに株式で四百万株くらいについて外資が入つておりますし、またあなたは資金の面だけおつしやいましたけれども、金をもらうことだけではなくて、もつと無形な外資と申しますか、技術援助、特許というふうなものが日本に持つて来られることは、大きな意味における外資導入であると私は思う。この点につきましては、外資委員会ができまして以後非常な苦労を願つております。この前の議会では七件と申しましたが、最近は約三十件くらい重要な特許技術が日本に入つて来ております。なお今審議中のもので可とせられるものが十数件あります。こういうものが着々すでに入りつつあるのであります。講和が成立し、日本経済が安定に向つて行くに従つてこれは入つて来る。総理がすでに申しましたように、日本経済に不安定があり、日本が不信用な形であれば、持つて来ようにも持つて来られない、こういうことであります。その意味からいいましても、一日も早く経済自立を達成する道に総力をあげることが必要であると考えます。
  25. 井出一太郎

    井出委員 安本長官にもう一点だけ伺つておきたいのは、昨日でございますか、われわれ委員の手元に配付を受けました資金計画資料によりますると、二十六年度末の通貨は大体四千二百億程度に押えられよう、こういう計画に見ておるのでございます。日本経済の規模がその後非常に拡大をいたしまして、この程度の通貨量ではたして食いとめられるかどうか。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 古い貨幣数量説というふうなものにこだわつておるわけではありますまいけれども、この点はもう少しフレキシビリテイーを持たせてお考えになる必要がありはせぬか、この問題を一点。  それからさらにその計画を拜見しますると、預金の方でたしか三千五百億、それから貸出しで四千四百億というような数字が見えております。このことは、相もかわらずオーバー・ローン、昨年の秋あたり非常に問題になつたあの現象が、二十六年度も引続き継続されるのではないか。どうもやはり金融の面において何か不安定なものが多分に残つておる、こういう感じを持つのでございますが、この点いかがでありましようか。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 通貨の発行量でありますが、今御指摘のものは、一応の見込みであります。今後いろいろ物価等の関係もありましようし、かわつて来るかもしれませんが、一応の見込みはそうでございます。しかもそれは二十六年度末、二十七年三月末の状態であります。その間におきまして、たとえば二十六年十二月末における年末金融その他において、おそらくこれが四千五、六百億行くとかいうようなことは、これはフレキシビリテイーを持たせて今日までも許しておる。しかし年度末にはそれがある程度おのずから収縮されて、四千二百億くらいになるだろうという見込みです。その間の途中における状態は、多い場合もあることを予想しております。  それから今のオーバー・ローンをやはり許すのかということでありますが、預金の純増加というものを一応三千五百億に見ておるのでございまして、その他にも政府の出資余裕などにも相当額がありますし、雑勘定で地方公共体に対する預金というようなものが別になつております。そういうものを寄せますと支出に見た貸出高とおつつかつつになつておるのであります。一番初めの預金だけの問題でありません。あわせてごらんを願いたいと思います。
  27. 井出一太郎

    井出委員 もう一点、今のお言葉の中にありました物価の動向ということでありますが、朝鮮動乱以来、おそらく昨年六月に比べましたら、二割内外の値上りが物によつては出て来ておる。おそらく本年度といえども、本年これからのことを考えましても、諸般の経済活動は活発になるでありましようし、通貨はなかなか収縮しがたいし、物価の動向というものはやはり先高と考えなければなるまいと思います。廣川さんの御担当の米のパリテイ指数なども、明年度米は相当に高く計上をしておるようでございますが、こういう点、この二十六年度の物価がどのような推移をたどるであろうかという点についての予想をお漏らし願いたいと同時に、二十六年度の予算を編成するにあたりまして、人件費、物件費の基礎をどこに求められたか。これは大蔵大臣の管轄かもしれませんが、おそらく人件費は昨年の年末に改訂になつた給與というものが基準になつておりましようが、物件費の場合、物価の基準をおよそどこいらあたりにおとりになつておるか、これをひとつお漏らしを願いたいと思います。
  28. 周東英雄

    周東国務大臣 予算の編成に織り込んだ物価は昨年の十月下旬の物価と思います。今後における物価がどのくらいの高さに上るだろうという見通しか、こういうのでありますが、私どもはどのくらいのものに上るかは、まだ見通しをはつきりつかむことは困難であります。しかし国際経済に結びついて相当多量の原材料を外国に仰ぐ立場において、物価は上昇の傾向にはあるであろうということは考えておりますが、まだどれだけ上るだろうかという見通しをはつきりさせることは困難であります。
  29. 井出一太郎

    井出委員 このことはすでに指摘もされましたように、おそらく明年度中において補正予算を必至ならしめるであろう、こういうわれわれの見通しとも関連をいたすわけでございます。安本長官に対する質問は、あと廣川さんが時間の都合でお待ちになつておるようでありますから、一応この程度で打切りまして、農林大臣にお尋ねいたしたいと思います。  このほど来農林大臣との問答はまつたくのれんに腕押しとでもいいましようか、あるいはぬかにくぎと申しましようか、まことにとりとめがないのであります。これで廣川農林大臣が通るのであるから、きのう川崎君の言うたように、あなたは政治力をお持ちになる、こういうことかもしれません。そこで私はえらいむずかしく申し上げるよりも、大臣はみずから実践をされて、東京都でも有数な養鶏家でいらつしやる、こういうことを伺つておるのであります。こういう点から入つたら一番端的にお聞きができるのではないか、かように思うのでございますが、さてあなたはえさをどうされておるか、今日ふすまが八貫目俵でたしか六百くらいする、こぬかがやはり十貫で同様の値ごろをしておると思いますが、日本の従来の飼料、えさというものを考えてみますと、朝鮮あるいは満州方面の雑穀があつて、初めて日本の養鶏業は成立をいたしておつたと記憶するのであります。今日副産物であるぬかやふすまが、逆に米や麦よりも高いという逆現象を生じておるのでございますが、私はあなたの飼つておられる一千羽になんなんとする鶏のことを心配するのあまりに、どうもこの飼料事情ではあなたも御経済がたいへんじやないか、こういうふうにお察しをいたします。そこでいまひとつ日本のえさの事情、あるいはこれは中共との貿易によつて一部杜絶しておるという面もございましようが、これがほかの面から補われておるのかどうか、まずこういう点をひとつ皮切りにお伺いをいたします。
  30. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 ぬかにくぎだというお話でありますが、予算面にはつきりぬかにくぎでなく、数字をもつて示しておりますからどうぞごらんになつていただきたいと思います。  それから、飼料の話でありますが、畜産は非常に農業にとつて大事なことでありまして、この飼料のことを心配いたしておるのでありますが、今まで持つておりました政府の手持品をそれ相当に現在流しておるのであります。しかしその流し方が非常にむずかしいものでありまして、特に近ごろは何か知らぬ糸へんというかなんというか、その辺のところが景気がいいので、どうも競争入札するとそこいらに押えられるというようなことで、流し方も考えておるのであります。また中共から入らなくなつてどうするかというお話でありますが、カナダでは去年の作柄が非常に悪いので、日本でいう五等麦と申しましようか、こういうものがありますので、これを買いつけるようにいたしております。また脱脂大豆等についても手当をいたしておるのであります。そして日本の畜産関係を盛んにして行こうと努力しておる最中であります。
  31. 井出一太郎

    井出委員 あなたのところの鶏は親分の悠々たる態度で、あるいはえらいやせずに安心しておるかもしれません。私は問題をもう少し進めたいのでありますが、一九五〇年に世界農業センサスが行われまして、日本におきましてもこれに参加をいたしまして、その結果がたしか昨秋十一月ごろ発表されたと思います。これによりますと、農家の戸数が六百十七万戸余り、こういう計数が出ておる。それから耕作反別がどれくらいかという点につきましては、五百九万町歩という数字を見受けるのでございます。私ども従来農業関係にいくらかでも関心を持つております者が、常識として承知をしておりました日本の農家戸数というものは、大体五百五十万戸、これが従来長い間、戰争前あまりかわらず続いて来た農家戸数であつたと思います。それが今日は今申し上げたように六百十七万戸となつておる。また日本の耕地面積というものが田畑合せて六百万町歩ということが、長い間の私どもの常識でございました。それが今はどうかというと、わずかに五百九万町歩、こういう数字を見るときに、農家戸数の方では一割以上もふえておるにもかかわらず、耕作面積は二割近いものが減少しておる。この逆な数字は、従来の日本の農家の平均耕作反別が北海道を除いて約一町歩、こういわれたものが現在ではまず七反五、六畝という零細規模に転落いたしております。これは私ども日本農業を考えますときに、最も基本的な指標としてこれをとらなければならぬのでございますが、こういうようなむずかしい、実に困難な條件のもとにおける日本農業、これはいろいろこれに対する対策が示され、あるいはもつと近代化しなければいかぬ、あるいは機械を導入しなければいかぬ、有畜化をどうするとか、いろいろな対策が立てられておりましようけれども、もし廣川農政なるものがありといたしますならば、こういう基盤の上にあなたはいかなる構想をもつて日本農業を再建されようとするか、まずひとつこれをお伺いしたいと思います。
  32. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あなたのおつしやる通り統計では出て参つて来ておるのであります。御存じのように九州地区あたりに参りますと、四反二畝から四反八畝という平均であり、また四国へ行くと段々畑であり、あなたの方へ行くと田ごとの月という形容詞があるくらいであります。非常に零細な農村であることはわかります。これをどうするかということ薫りますが、われわれの農政史を見ますと、一番発達しておるのはいわゆる干拓事業であります。この干拓事業によつて南の方はどんどん発展いたしておるのでありますが、山地においては開墾をいたすことが通例であります。さようなことにやはり現在われわれとしては力を注いでおるのでありまして、また耕地の減ることは工場その他について年々三万町歩くらい減つておることは事実でありますので、それに対応いたしまして開拓する余裕のあるところは開拓者を入れておるのでありますが、要するにこれは零細農自体の力を増すことも大事でありますが、それよりもやはり国家資本を入れて、そうして耕地の開拓をしなければならぬと思いまして、その意味において公共事業費、あるいはまた農林水産金融金庫というようなもので、国家資本を入れて補つて行くようにいたしておるのが現状であります。
  33. 井出一太郎

    井出委員 廣川農政と称するのには少しくお寒い感じがいたしますが、今おつしやる干拓、開墾、これは日本の農地問題を解決する上において、外へ広がる意味において、外延的な方向において求められる一つの方途でございましようし、また一方国家資金を導入することによつて、農地改良事業を広凡にやる、こういうふうな、現在持つておる土地自体の生産力を高めるという行き方は、いわば内包的な行き方だ、こう申してもよろしかろうと思います。この二つの方面を、土地政策においてともかくも指摘をせられましたことは、一応廣川さんの農政は、ぼつぼつつぼにはまつて来た、こう私は申し上げたいのであります。さてしからばこの開墾、干拓でございますけれども戰後いわゆる緊急開拓という面が、一は食糧自給度を向上させるという点もございましたろうし、また一方は引揚者でありますとか、戰災者であるとかいう人々の失業救済という、一種の社会政策の観点から開墾、開拓が行われました。けれどもその実績というものは、はたしてどれだけ上つたか、こういう問題になりますと、あなたのおつしやるように、これからどんどん開拓をされてはたいへんじやないかと思う。多くの実例は、寸土を得て逆に豊沃なる地帯における尺土を失うとでも申しましようか、そのために山は濫伐、過伐されてしまう。そうしてこの開墾政策がたたつて、従来の美林をむざむざ切つてしまう。またそれが一種の土地所有不安を呼び起しまして、これがために幼齢林でありましても、あまりなわ張りをされぬうちに切つてたきぎにしようというようなことから、山が非常に荒れてしまつた。これは打続く年々の災害でもつて、私どもは苦い目にあつておる。あとから災害復旧をやつたところが、まるでこれはさいの河原に石を積むような仕事でございます。そういう点、私は日本の従来の開墾、開拓政策というものは、もはや重大なる批判を受けなければならぬ事態に際会しておると思うのであります。ところがどんどんまだ開懇をおやりになるということであつては、これは少し考慮しなければならぬと思いますが、この辺のお考えをもう一ぺん伺いたいのであります。
  34. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 開墾についてのお話でありますが、開墾を、單に開墾すべからざるところを開墾するというのではない。また山林等のお話もございましたが、山林は戰争中に、戦争用材として出したものに非常に基因をいたしておりますが、それにも増して一番不安を抱かしたのは山林開放の問題であります。すなわち山林についての改革とでも申しましようか、第三次農地改革とでも申しましようか、そういつたかけ声で非常に荒されておることも事実であります。また山林の相続税等についても非常な障害になつておるのであります。相続税を拂う場合に、高率な税率を課されるために、その代償として山林が切られるということも非常に影響いたすのであります。こういう点を、われわれは今後直して行かなければならぬと思うのでありますが、少くとも適地は開墾いたしまして、單に戰後の社会政策的見地でなく、農村の二男、三男の、いわゆるほんとうに心から農業をやりたいという意欲を断つてはならぬのでありまして、二男、三男対策としても開墾をやらなければならぬし、また日本相当工業で立たなければならぬので、工場等によつてつぶれるものも補わなければならぬので、やはり適地は開墾し、また山林を別な方法で守ることを考えるのが妥当であると考えております。
  35. 井出一太郎

    井出委員 もちろん私は開墾を否定するという立場ではないのでございまして、そこには真の開墾適地を見出して耕地にすることけつこう。しかし現在、山林に絶対的な林地といわれるものと、相対的林地と称せられるものがございます。これは山林にしておくことが、他の何をするよりも、最もよくその土地の生産力を発揮せしめ得るような、他に転換しない方がよいような林地をわれわれは絶対的林地と呼ぶのでございますが、ともいたしますと、そういう方面まで開拓のおのが、くわが振われるような点がございますので、これをひとつ農林大臣として、日本の林野の総元締めというお立場から、ぜひ御注意を願わなければならぬと思うのであります。  この機会にそういつた山林の問題が出ましたので、ちよつとついでにお伺いをいたしたいと思いますが、農林省が、いわゆる林野統一ということが多年の念願でございまして、たとえば従来民有林のほかには国有林、御料林あるいは北海道の林野国有林などは、これは北海道庁の所管でもあつた。あるいはその他学校演習林というようなものまで、日本の林野区分が非常に多岐にわたつてつたのでございますが、たしか昭和二十二年のころか、林野統一ができ上つたのでございます。そこで根本的な日本の林業政策というものを打立てなければならぬ段階に相なつておりますが、一つは国有林の面、一方は民有林の面において、それぞれ施策が立てられておるやにうかがい及ぶのでございます。そこで国有林の経営というようなものを私どもが見ておりますと、これははなはだ非能率な、どうも経済効果を上げておらない。見返り資金などが大分投入せられておるのでありますけれども、どうもやはりお役人の経営ということが免れないようでございます。同じ国有林と申しましても、この分布が東北地方などには国有林のウエートが非常に強い。軒先からもはや国有林だというような場所が非常に多いのでございます。こういうふうな国有林の分布が片方に非常に偏しておるというようなことからいたしまして、そういう地帶から国有林開放という問題がしばしば起つて来ておるようであります。そこでこういう問題を解決するために国有林の一部はこれを拂い下げる。飛び地であるとか、小団地であるとかいうようなものはむしろ民間にその経営を移して、集約的な経営をさせた方が、より国土を能率的に使うゆえんではないか、これに対する国有林野整備法というようなものが出るやにも聞いておるのでございますが、こういう点ひとつ大臣の御構想を開陳願いたいと思います。
  36. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 御指摘の点はその通りでありまして、日本の国有林は実に大きな大事な企業でありまして、日本にとつては唯一の大企業とも言えるようなものを国有林で持つておるのであります。国有林のあり方でありますが、この歴史は御存じの通り明治時代におきまして、あの官軍、賊軍とわかれた当時から出発いたしておりまして、非常にこれは不合理な配置になつておることは御指摘通りであります。特に賊軍であつたところのものは一県残らず全部官有林の形を形成しておるような、宮城県のような所もありますし、また東北地帶のように、ほとんど軒先まで全部国有林のような所もありますので、これにつきましては、私どもといたしましては、この開放というか、林野の再生とでも申しましようか、とにかく森林に関する法律は明治三十年ごろの古い法律でありまするので、これをほんとうに農村と直結するようにいたしまして、再生利用する法律を国会に提出する所存であります。特にこの法律の骨子ともいうべきものは、徳川時代、それ以前から非常に大きな力でもつて守られて来た水源林あるいは特定の保安林等は、民間地であるならばこれを買収し、あるいは民間に直接関係のある飛び地あるいは軒下等の国有林は、これをできるだけ民間に譲渡するというような方向で進めたいと思つておるようなわけであります。それから国有林の経営については、御指摘のような批判を受けておりますので、これを最も経済的に、またこれが役立つようにしようといたしまして、目下案を進めておるようなわけであります。
  37. 井出一太郎

    井出委員 農林大臣は大分お急ぎのようでございますから、もう一点だけお尋ねをしまして、若干残つた分がございまするが、これは他の機会ということにさしていただきたいと思います。  今国有林の問題が出ましたから、民有林の点についてもう一点伺つておきたいのでございます。御承知のように、日本の民有林を規制すべき森林法というものは、今大臣のおつしやる国有林の法規と同じように、その根本は明治時代に出来上つたものでございます。その後幾多の改正を見て来ておりまするが、今や新時代に即応した新しい出発を日本の民有林がしなければならぬ、こういう時期に相当たりますので、おそらく農林省とされましては、この面についても御研究が進んでいらつしやると考えます。そこでこの森林法の改正の問題でございますが、日本の山は、御案内のように戦後の旺盛なる需要にマツチするために、非常に大量の伐採が年々行われておるのでございます。これは用材林と薪炭林とを合せますると、二億石以上に上る、こう統計は物語つておりますが、同時にしからば年々の林木の成長量はどうか、こういう点を考えますると、これはまことにお話にならない。ことに日本の林野の多くの部分が奥地未利用林分というような関係もございまして、真に利用し得る経済林の成長量というものは、おそらく年々一億二千万石程度ではないか、そうするとそこには非常に大きな植伐の不均衡という事態が起つておるのでございます。従つて今後の林野政策というものは、ある程度計画性をどうしても持たせなければならぬ、こう考えられるのであります。昨年秋に日本に来られました、総司令部の天然資源局の顧問でありまするカーチヤーあるいはデツクスター、これらの人々が三箇月にわたつて日本の山林踏破をいたし、そうしてその結論的な勧告をおそらく大臣の手元へ差出されてあると思いまするが、これによりましても、日本の山林は今まさに危機を告げつつある、そういう意味からよほど計画施業を遂行しなければ、これはたいへんだということを指摘しておるのであります。従いまして、今回の森林法の改正の根幹には、やはりそのような意味での、従来は施業案と申しましたが、近頃では森林計画、こういうふうなものが相当強く入つておるやに聞き及びまするが、その辺の情報をひとつお漏らし願いたいと思います。  と同時に、もう一つやはり森林法の中に、従来森林組合と申す団体がございました。これは日本の民有林の基本的な団体でございまして、これが従来たとえば造林でありまするとか、その後の林木の育成でありまするとか、ないしは伐採加工というような面までも担当をして参つたのでありますけれども、戦時中これはいわゆる木材徴発というような木材統制法のもとに、どちらかというと、山を切るような仕事を主として担当させられてしまつております。そのために、この組合が本来の伸び方をしておらない、こういう点がうかがえるのでありまするが、今回聞くところによると、この森林組合のあり方というものが、総司令部側の意向によりまして、少しく形をかえた。今までは山林所有者は全部これに加入をしなければならなかつたのでございまするが、そういうことが日本経済民主化に反するというようなことから、任意加入の団体に切りかえられる、かように聞き及んでおるのでございます。この森林法の改正と、新しい森林協同組合というものとをこの国会において成立せしめる御意図で、事が運んでおり、また大臣日本の林業政策の重大性にかんがみまして、これをどこまでも推進ざれる御決意とを持つておられるか、これをひとつ承りたいと思うのであります。
  38. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 森林法につきましてもこれは御指摘通りでありまして、改正をする方途で進んでおります。またあなたの御構想のようなことが骨子として盛られております。  次に経済林のお話でありますが、まつたくその通りでありまして、奥地林開発については来年度予算にも載せてある通り、林道等については相当力を盡したいと思つております。  それからこの伐採量その他についてでございますが、これもあなたのお話通りでありまして、特に現在の日本の日常生活の生活改善と申しましようか、改良という点から見ても非常に大事なことでありまして、毎日燃料にたく薪炭は非常に大きな数になつておりますので、これを何に置きかえるかということが今問題になつておるのでありますが、幸い日本には非常に多量の亜炭が産出されますので、この亜炭を加工いたしまして、無臭、無煙のものを最も低廉に生産して、現在薪炭の大体三分の一くらいの価格で生産されるようでありますが、われわれといたしましてはこれを奨励いたしたいと思つて今案を進めておるようなわけであります。さようにいたしましてこの森林から出ますところの材木を最も効果的、経済的に使つて参りますようにいたしたいと思うのであります。  それから民有林についての計画化ということでございますが、これは御指摘のように計画伐採ができ、また計画植林ができるように勧奨いたして参るような方途をもつて森林法の改正をやつておるようなわけであります。  これと関連いたしまして森林組合の改組の問題でありますが、これはやはり協同組合をつくつてもらいまして、自由意思によつて形成するような形はとりますが、しかもこの組合を利用することによつて、森林所有者に非常に利益があるような方向に進めたいと思つておるのであります。農業と森林と水産と、この三つの協同組合を育成いたしまして、農山漁村の発展を私は望みたいと思つておるのでありますが、この協同組合を育成するにいたしましても、やはり政府の長期低利の金を使わなければならぬのであります。単に自己資本のみでは、特に民有林の植林等はなかなか思うようにできませんので、長期低利の金を何とかいたしまして注入したいと思つて考えておるようなわけであります。
  39. 井出一太郎

    井出委員 それでは農林大臣御都合もおありでしようから、あと若干保留をさせていただいて、文部大臣にお尋ねをいたします。  昨日も本委員会におきまして、天野文部大臣にあるいは愛国心というような問題、ないし国民精神の作興というような観点からの、同僚委員の質疑が行われたようでございます。これは総理がしばしばおつしやるところの問題でもありまして、私どもが今や講和を目前に控え、真に国際的にも名誉ある地位を占め、真に自立国民として立ち上る、こういう場合において、何よりもまず日本国民がほんとうに心の上で立ち上らなければ、これはどうにもならぬものだ、かように思うのでございます。それにつきましても、それでは昨日論議に出たような日の丸と君が代だけで、この問題が解決するかといえば、これは決してそうではない。もつと真に国民のうちから盛り上つて来るところのもの、これがなければ私は解決しないと思うのであります。私どもは悲しい敗戦の運命をここ五、六年耐え忍んで参りましたが、なぜか国民はほんとうに打つても響かないというような感を強くいたします。かつて、これはもう申すもおかしいことでありますが、ナポレオン戰役のあと、ベルリン大学の校外をフランスのラツパ部隊が粛々と進んで行つたそのとき、教室の中で哲学者フイヒテの講義を聞きつつあつた当時のドイツの青年は、おそらく歯を食いしばつて、このラツパ部隊の音にフイヒテの講義がかき消されようとしながらも、ノートのペンを休めなかつたというような事例を聞くのでございます。このことはまた逆に、その後フランスにおいて——ドイツとフランスとはお互いに宿敵の間柄であつたのかもしれませんが、普仏戰争は御承知のようにフランスの惨敗に終つた。けれどもその当時のフランス国民はどうであつたか。これをロマン・ローランが若き日を回想して述べておる言葉によれば、からつぽの胃袋をかかえて、困難な幾年かを過したが、しかし当時のフランスの若者には眼に輝きがあり、口端には微笑が浮んでおつた、こういうような記録を私どもは見るのであります。ところがどうも日本の現在の国民あるいは青年大衆は、私どもが若いころ天野先生の講義にはせ参じたような情熱が、今や失われておるのではないか。私は天野文相をあえてフイヒテになぞらえるわけではございませんけれども、一国の文教の最高の責任者であられる天野先生たるものは、やはりこの国民精神がどうも笛吹いても踊らない、これに対していかようなるお考えをお持ちになつておるか、これこそ私は今の日本の文教政策の最大課題ではないか、かようにも思いまして、この点をひとつ伺いたいと思うのであります。
  40. 天野貞祐

    天野国務大臣 今の井出さんのお考えは、私も強く同感いたすものでございます。私は決して国旗を立て、国歌を歌えば、それで事足ると考えているわけではございません。けれどもごく小さい子供たちが、自分はどこの国の人だかわからないというようでは困るということのために、国旗を立て、また国歌を歌うことが望ましい、また現にそうしておる人たちに対しても、そうすることが何らさしつかえない、何の遠慮もいらない、国旗を高く掲げ、国歌を歌うことが、少しもさしつかえないという意味において申したのであつて、決してそれをもつて事足るとしているわけではございません。私もどうかして日本人がみんな一致して、この国をもり立てて行こう、石にかじりついてでも、この国をもり立てて行きたい、そういう点については、福澤先生のやせがまんの説のように、われわれはやせがまんをして、ほんとうにこの国をもり立てて行きたいという精神を、どうかして作興したいと考えるのでございます。けれどもいろいろな事情が、それをさせないようなものがあると思います。その一つは、愛国心といえば、従来何か戦場に出てはなばなしいことをやるとか、そういう異常な普通でないことが、愛国心であるような考えが、今まで支配的であつた。けれども愛国心というものは、そういうものでなくして、ほんとうにこの国土が、この日本が、自分たちの基盤なのである、自分たちはこの国土を離れてないのであつて、またこの国土は自分たちを離れてもないのである。そういう自分たちの実体であり、国家の実体がまた自分たちである。そういう精神をどうか植えつけたい。いいかえれば、激越的な愛国心ではなくして、むしろ静かな、ほんとうにこの国を自分の国と考える、自分がこの国であるという自覚を、どうかしてさせたいということを強く考えておるものでありまして、そういうことをさまざまの方法をもつて講じようと努めておるわけでございます。私が昨今ややもすれば修身の復活などというように誤解されておる、道徳教育の振興ということを考えるのも、まつたく、どうかこの国をほんとうに自己の国とし、自己がこの国である、そういう自信を呼び起して、石にかじりついてでも、この自分の国の独立を守りたい、そういう考えでいたしておるものでございます。
  41. 井出一太郎

    井出委員 天野先生のそういうお考え方、これはわれわれもよくわかる。それでは具体的にどうかというような問題になりますと、これはあるいは予算の問題とかその他にもなつて参るでありましよう。私のところへ最近大学生がよくやつて来る。これらの連中は話してみると、反米であり、親ソである。全部が全部とは申しませんけれども、非常にそういう傾向が強いのであります。これはなるほど社会環境も、卒業したとすれば、そこに待ち受けるものは何かというと失業である。非常に前途の暗い、青年の熱情をかき立てるようなものは何もないのであつて、社会環境がそうさせておるとは思いますけれども、しかし彼らが何か権威に反抗をしようというような、一つの若い者独得の気持、こういうものを満たす学校教育というものが今日ないのじやないか。そういうふうな観点から、大臣はこの青年の指導というような問題をどのようにお考えになるか、これらの人々に何かえさを與えるといつては何ですが、これを満足させるような、彼らが反米親ソに求めるものをつかもうとする傾向を、何とか是正をする方法はないものか、こういう点をひとつ伺つておきたいと思います。
  42. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はただいま自分はこういう精神で、愛国心とか独立というものはこういう考え方だというようなことを申しましたが、その方法につきましては、やはりこれは教育の充実というよりほかはなく、また他方においては育英資金を増額して、そして学ぼうという志のある者をできるだけ学ばせる、一般の環境をよくするということが、必要な点だと思います。ただむずかしいことは、急に大学というものがたくさんできても、費用がないばかりじやない。そこにほんとうにこの教授力というものを供給することができない。ここに現今の教育の一つの大きな悩みがある。反米親ソといいますが、長く占領をしておれば、どうせどういうところでもあきられるとか、いろいろそこに不平が出るとかいうのも、人情の自然ではないか。そこへ持つて来て教育というものがどうも不十分な点があつて、ことに文化系統の学問などになれば、井出さんも御承知のことでございましようが、よほどすぐれた教授がやりませんと、とかく生徒の知識欲を満足させることができない。これに反してたとえば「共産党宣言」というようなものをドイツ語で読むなら、実に力強い。人の心をつかむものを持つている。片方では空虚な講義を聞く。片方ではリアテイを持つた、実在性を持つた一つの理説を聞くということになると、そういう理説と現行行われている実際の日本共産党諸君の活動というものを混同して、そうしていろいろいわゆる反米親ソというようなことの起つて来るのも、また日本の置かれている歴史的現実に基いたことだと私は思つて、それに対してはただ道徳的な説教というようなものは全然無力であつて、もつとほんとうの意味において知識を向上させたい。ほんとうの意味において学問を啓発したい。それには現在のすぐれた大学などは、ただ一般的な講義というようなことでなくて、ほんとうに学生をして知識を愛し、知識のために努力するという風を起すということが、非常に必要だというふうに考えるものであつて、その対策を突き詰めれば、ほんとうの意味における学問研究を盛んにしたい。ほんとうの意味における知育を盛んにするということが、非常に必要だということを考えて、現在の状況においてできる範囲でその方向に進もうといたしておるわけでございます。
  43. 井出一太郎

    井出委員 このきびしい歴史的現実に処して、どうか天野さんの御健闘を切に折るのでありますが、もう一、二点簡単に具体的な問題を伺つておきたいのであります。それは昨年の秋でございましたか、東大の教養学部を初めといたしまして、あるいは早稻田大学、その他にいわゆるレツド・パージ反対の学生運動、いろいろな犠牲者などを出し、かなり世人の注目を引いておるのでございますが、これが今日ではどのように解決がつけられたか、つまりそこには行き過ぎた処分のようなものは別になかつたのか、あるいは学生は納得して鎮静に服したのか、またこのことが日本の教育の上に、雨降つて地固まるとでも申しましようか、さしたる影響なしに済んだのか、こういうふうな点をひとつ御説明願いたいと思います。
  44. 天野貞祐

    天野国務大臣 レツド・パージということが世間で非常にいわれますが、これは私が言つた言葉でないので、私は決してこの共産主義の人たちを学校から探し出して、そしてそれを追放しようというようなことを企てたわけではなくて、大学の自由と大学の独立ということを防禦するために、よんどころない処置として、それを阻害するというような人たちはしりぞいてもらはなければならぬというふうに考えたわけですけれども、その考え方があやまつて宣伝され、私などは平生から尊敬しておるような青年学徒までも、私が排斥するのだというようなあやまつたことを言いふらされておる事情なんです。そのためによんどころなく、ある種の学生を退学させたりいたしたことでございますが、しかしこれで事がしずまつたとも、また多くのそういう学生たちがそれでもう事が済んだと言つておるわけでも少しもないと思います。そうじやなくて、まだとうていこういうことをもつてはこれはやまない。それについては一方からは私は制度上にも改めなければならぬことがあると考えております。けれども大学は自治であり、大学の独立ということを私は尊重する考えが強うございますから、自分の気づいているところもありますが、それを自分から押しつけようとは考えておりません。しかしそういう制度上にも改むべきところがある。また決してこれをもつてやんでいるわけではないからして、私は学生諸君に誤解がないように、ほんとうに自分たちは自由を愛上、独立を愛することにおいて、何も若い諸君の人後に落ちるわけではない、何も不当なことを自分たちが企てるわけではないのだということを、よく若い諸君には了解していただいて、ともに力を合せて、この文化日本の建設に努めたい。そういうことをどうか若い諸君に了解してもらいたいと考えております。
  45. 井出一太郎

    井出委員 文部大臣の御都合があるようでありますので、あとは簡単に一、二点事務的な問題を伺つておきたいと思います。それは近ごろアチーヴメント・テストと申しましようか、入学試験等に適性検査と称する、昔のメンタル・テストのようなものが大分採用されて参りました。これはなるほど一定の科学的基準に基いて、資格者をふるい落す上に用いるのには、まことに便利なものであるかのようでありますけれども、狭き門に対して志願者が殺到いたします場合は、これはどうしてもそこに競争試験というものはやむを得ない。しからばそこに試験勉強というものが当然伴つて参るのでございますが、このアチーヴメント・テストか普及いたしまして、——これは一つは、従来の試験勉強の弊を除かんがために、このような新しい制度を用いたのでありましようが、結果はかえつて逆に、むしろアチーヴメント・テストが本位になつてしまつて、今やこれらの若き世代がことごとくこのテストの亡者のごとく相なつておるようであります。これは私どももその問題集などを見ますと、ずいぶんくだらない、しかもそういうことに若い青春をうき身をやつして、あと一体何が残るかと思われるようなものに、ほとんど試験勉強の一切をささげておる。これは昔の暗記物なら暗記物を参考書にへばりついてやつたのも、弊害はあつたでしようが、まだこの方があとに残るものがある。このアチーヴメント・テストの弊害というものを大臣はどう考えられるか、ひとつ伺いたいのであります。
  46. 天野貞祐

    天野国務大臣 元来、できることならばどうか入学試験なんということはよしてしまいたい。従来は小学校を終つた者が中学に入るときにむずかしい試験をした。その入学試験の準備を小学校の時代にしたのを、とにかくもう三年先に送つたというのは六・三制の一つの大きなよいところだと思つております。けれども中学を済んだものが高等学校へ入るときに、すべての生徒を入るわけには行ませんから、そこに試験が起るのはやむを得ないというここは井出さんもお認めのところでございますが、そこでどういう試験をしたらよいかというと、現在では平生の中学の成績考査というようなものに加えて、入学の際にいわゆる入学試験をする。この点で井出さんのお考えはいかがでしようか。私はこれはいわゆるメンタル・テストではなくて、現在やつているアチ—ヴメント・テストというのは学科の試験なんです。メンタル・テストですと御説のような弊害が非常に多いのですが、これは学科の試験でございますから——もちろんこれが望ましくはないけれども。それほどの弊害とは言えないのではないか、ただいまおつしやつたようなことは少し種類が違いはしないかと私は思うのであります。いずれにしましても入学試験というようなものが好ましくないことは事実であります。しかしまた地方から見ますと、先ほどお説のありました通り、ここを一段階として努力するということも、悪いことばかりでもないというふうに私は思つております。けれども理想的なことではございませんから、その弊害をできるだけためるように、たとえば入学試験の迫らないうちに、むしろ平生において全国共通試験問題か何かでもつて考査するとか、そういう点をよく研究してもらうように今いたしております。
  47. 井出一太郎

    井出委員 大臣は、弊害がまだきつとお耳にあまり達しないから今のようなお説をなしておられると思いますが、私側近の二、三の高等学校の生徒をながめておりまして、彼らは実に有能な青年でございますが、ほとんどその問題集かなんかの鬼になつておるような状況でございます。従つてこの弊害はむしろ今後現われて、いろいろ論議されると思いますが、どうか当局においても十分御研究を願いまして、今おつしやるような、むしろ気軽な気持で、何か全国的な一つの標準というものがきまるとでも申しましようか、あるいは学科試験というようなものをもう少し合理化して行けると思いますが、そういう御研究を煩わしたいと思います。  それからついでにもう一点、通信教育というものが従来ございました。これは今でもあるでしようが、これによつていわば独学の士が講義録等にたよりまして、ほんとうにとうとい、血のにじむ勉学を続けておつたのであります。これはあるいは專検であるとか、高検であるとかいうような一定の検定試験を通ることによりまして、他の学校卒業資格と同一のものを與えられる。ここに貧困なる立場に置かれた青年が、一つの登龍門として志を寄せるところ、すこぶる厚いものが従来あつたと思うのでございます。またこういう経歴の方から非常にすぐれた人を輩出しておることも事実でございますが、この高検あるいは專検というような制度が、ただいま打切りに相なつておるのでございますか、その辺ははつきりいたしませんが、何かその方面からぜひこれにかわるべき一つの検定制度を続けてほしいというような要望がしきりとございます。従つてこれらの独学青年の志を満たしてやるような措置が講ぜられますやいなや。これはあるいは大臣御承知かどうかわかりませんが、御答弁を煩わしたいと思います。
  48. 天野貞祐

    天野国務大臣 私も御説には非常に同感であつて、何でもかんでも学校を出たものでなければいかぬということではいけない。それで通信教授ということには力を注いでおります。そうしてまたその通信教育を受けた人たちは一定期間学校について、そこで実地に勉強するということにして、その費用も育英会から出すということにいたしております。そういう意味で通信教育によつても一定の資格がとれるということになつておりますが、さらに二十六年度からは大学入学資格のそういう試験をも実施するということになつております。
  49. 井出一太郎

    井出委員 ぜひさような御配慮を願いたいと思います。もう一つ、これは今国会に請願がたくさん出ておりますが、職業教育法というものを新たに設定をしてもらいたい、こういう要望がその関係の学校方面からございます。これはあるいは学校教育法というものがあつて、もはやそのほかに別のわくを設ける必要がないとでもいうお考えがありはせぬかと思いますが、これは議員提案になるやのようにも聞きますが、文部当局としてはこれに対しては別に異存がないのか。それともむしろこういうものをもつと慫慂されようとなさるのか、この辺を伺つておきたい。
  50. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまお話の職業教育ということに対しては、非常に世間の要求が強いのでございます。しかし私はこの職業教育というものについて、こういう点は私たちが非常に注意しなければならないことだと思う。それは、現在の六・三制というものが一般の人間形成ということに力を入れ過ぎてしまつて、直接役に立つ職業教育をおろそかにしておるということが一般の非難なのでございますが、それは確かに当つておる、けれども職業教育というのが、ただ自分たちの使いやすい人間をつくる、すぐ間に合う人間をつくるのだといつて、人間を一つの手段として、便利な人間をつくるという意味の職業教育なら、私は断然反対したいと思います。職業はできるだけ職場で習いたい。学校におる間はできるだけ人間としての教養をつけて、一生涯それを自分の生活の基準にし、またそれによつて生涯を楽しんで行く、そういうような線を忘れた職業教育ではいけない。しかし現在のようでは確かに不足でありますから、職業教育の振興ということには、そういうよい意味においては私は全然賛成でございます。これは議員の方から提出になるというお話も聞いておりますが、私の方でも研究させておつて、できることならこれに国庫の補助を出すとかというようなことをしたい。しかしどこまでも私が願うところは、人間を一個の便利な道具にするというような意味の職業教育には、絶対反対したいという考えでございます。
  51. 井出一太郎

    井出委員 ただいま職業教育法に対して、基本的な人間形成というふうな立場と離れてはいかぬとおつしやることは、まつたく私も同感であります。どうかそういう線で職業教育法ができるように御配慮願いたいと思います。文部大臣の御都合の時間になりましたので、文部大臣に対する質問はこの程度で終ります。  続いて、大蔵大臣がおいででございますから若干時間お尋ねしたいと思います。池田さんには、もうすでに大筋のところは、私の同僚の川崎君からお尋ねをしてございますので、以下私の申し上げますことは若干個別的な、あるいは技術的な面にも相なるかと思いますが、どうかその場合は政府委員でけつこうでございますから、お答え願いたいと思います。  明年度の予算をもつて大蔵大臣としては五回目の予算作成である。従つて非常にその点手ぎわがお上手になられて、御自身もまあ現在の環境下においては満足すべき予算であるというように自画自賛をいたされておるようでございます。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 これはいろいろな批判があるとは存じますが、なるほどこの予算を拜見いたしますと、一応そつのない予算だという考え方はでき得ると思います。たとばまあインヴエントリー・フアイナンスが一番問題になりましようが、そういつたことは別といたしまして、たとえば公共事業費などもちよつぴりふやしてある、あるいはまた地方財政平衡交付金などにも若干配慮が見られる、適当には生活保護費、社会保險費にも配慮があるというようなぐあいに、確かにそういう点では御苦心になつたと思うのであります。けれども何と申しましようか、官僚的あるいは技術的にそういう意味でけつこうな予算かもしれませんが、ほんとうにこのどこに筋が通つておるかというような点になりますると、私どもも若干批判を持つておるのでございます。大臣が何かこの春書かれました随想のようなものを見ますると、次のようなことを述べていらつしやる。「現在の六千何百円ベースというような給與水準をとつてみても、これで公務員の文化生活を保障するものだとはいかに鉄面皮でも言えた義理ではないし、現在の米価にしても、これで米の正当な再生産費をカバーし切つているなどと主張することももちろんできないわけである。さらに税の問題になると、年収三万円以下の者に税をかけるということはいかにも無理であつて、よく非難を受けるように最低生活費に食い込んだ重税であると言われてもしかたがなかろう。」これなどを拜見しますと、なかなか池田大蔵大臣しおらしいと思う。まあ池田さんを人は傲岸不屈だと批評いたしますが、私は案外こういうところに本音をお出しになつておるんじやないか、とかように思うのでございます。それはその程度にいたしましてこれから質問に入ります。  私どもはこの予算を拜見いたしまして、一応次のような批判をいたしたのでございます。二十六年度予算案というものは、依然として萎縮財政の域を脱しない。まずその一点としてインヴエントリー・フアイナンス五百億を一般会計でまかないつつあること。第二点、朝鮮動乱のその後の影響を見込んでおらない。従つてこれは補正が必至であろう。第三点は減税千億ということをあなたは公約なされましたけれども、これは事実上はいわゆる税法上の減税七百億でもつてごまかされてしまつた、こういうこと。第四点といたしましては、前国会に引続き食糧緊急増産その他の農業復興経費がやはり非常に少い。さらにまた社会政策的経費の統一ある思慮を欠いている。財政金融政策の上に一貫性を見出し得ない。貿易政策等においても、ことに輸入関係などにおいて不備の点がある。産業の近代化、資本の蓄積に対しましても弱点を露呈している。さらに中小企業金融の改善等に対しては、まつたくこれを無視しているというような批評も一応考えているのでございますが、そこで以下こまかい点にわたりまして少しずつお伺いしたいのであります。  先ほど安定本部長官にも伺いましたが、この予算を組み立てられます上において、人件費、物件費というようなものの基礎をどこに求めておられるか、こういう問題でございます。人件費は昨年の補正予算のときの給與ベースにまあ基準があると存じますが、物件費などは一体物価水準をどこに求めていらつしやるか。これはなかなか激動やまない物価の趨勢でございますから、これをどこに基準をおいたかということは、やはりこの予算を遂行する上の大きな問題でございます。これを最初にお伺いをいたします。
  52. 池田勇人

    ○池田国務大臣 人件費におきましては、さきの国会で御審議願いましたあの引上げの線を基準にいたしまして、今年十二月は半箇月分の給與を出すことにいたしております。物件費につきましては大体昨年の秋の状態を見込んでいるのであります。従いましてその後におきまする物価の騰貴におきましては、予算の執行上考慮して行かなければならないと考えております。
  53. 井出一太郎

    井出委員 今おつしやいますことは、ただちにこの予算のわくに響いて参ります。たとえば公共事業費というようなものを見ましても、われわれに配付をされましたこの予算説明の七ページあたりに、所要資材の見込みというようなものが出ております。鉄鋼において十九万九千トン、セメントにおいて百八十一万四千トン、木材において——これは私は誤謬だと思います。事務当局の方でちよつとごらんを願いたいのですが、木材が九千七百四十一万石、これはどうも一けた違うのじやないかという感じがいたしますが、これはあとで御答弁を煩わします。こういうような数字はいずれも昨年の所要資材よりも少くなつている。従つて大臣は公共事業費は昨年よりもふえたと、このように呼号せられますけれども、事実ここに示してある資材関係から申しましても、事業分量というものは昨年より減らざるを得ないのじやないかと思いますが、この点はいかがでありましよう。
  54. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一概に公共事業費と申しましてもいろいろな種類があるのであります。たとえば道路とか、あるいは漁港、林道あるいは災害防除等の費用は昨年よりも実質的にふえております。しかして公共事業費のうちの災害復旧の問題につきましては、多分それに出ておつたかと思いますが、昨年度は四百七十億を見込んでおります。しかるところ、本年度は四百億円を見込んでいるのであります。これを減らしたのは二十六年度からは災害復旧につきまして地方の負担を考えているのであります。しかして地方の負担がどのくらいになるかという問題につきましては、私は今の実情から申しまして、地方の財政収入あるいは災害の大きさ、こういうものを考えてスライド制をしきたいと考えているのであります。今それを関係各省で研究いたしておりますが、予算面で減らしました災害復旧につきましてもできるだけ物価高を織り込みまして、減らないような方法で行こうと検討いたしておるのであります。全体といたしましては、大体公共事業費はふえておるとお考えつてけつこうだと思います。
  55. 井出一太郎

    井出委員 数字はどうですか。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 木材九千何百万石と申しますと、日本の一年分の使用量でございますから、これは間違いであると思います。
  57. 井出一太郎

    井出委員 これは先の問題ではありますけれども、物件費の基準を昨年の十月に置いておられるということでありますならば、その後の値上りというものは一割やそこらではきかないのではないか。従つて私はわずかこの程度の公共事業費の増額では、事業分量はどうも減るというふうな考え方しか浮ばないのであります。そこで災害の国庫負担を打切つたことから、地方でまかなう分が出て参る、こういうことも一応考えなければなりませんが、しからばこの国庫負担を打切つたという理由であります。シヤウプ勧告によりますれば、これは一定の限度以上の災害は国で全部始末すべし、こういう勧告のように存じておりますが、これは使用されてみて何か欠陷があつたのか。どういうふうな理由でまたもとへもどされたのか。地方ではこういうことでは朝令暮改で困るというような非難もございますので、この点を伺つておきたいと思います。
  58. 池田勇人

    ○池田国務大臣 二十五年度の予算を御審議願います場合におきましては、シヤウプ勧告がああいうふうに出ておりますので、これは臨時的に二十五年度だけわれわれは考えたい、こういうことを申し上げておつたのであります。しこうしてその後におきましても、検討の結果、やはりある程度は地方公共団体が負担する方が適当である。これは御承知の通り十五万円以下のものは地方が全額負担、それ以上のものは国が全額負担、こういうふうにやることは実際にも沿わぬし、やはりその土地の災害につきましては、幾分でもその土地の人が負担をする。しかし非常に財政収入が少くて災害復旧工事の多いところは、三分の一負担するといつてもできませんので、そういう場合におきましては、ほとんど全額を国で負担する。しかし財政収入が非常に多いところは、国が全額負担をしないで、やはり地方で、その地方の堤防を、橋を守るといつた気持を持つた方が、災害の予防におきましても、非常に効果的であるという考えから、一部地方に負担をしていただくことにしたのであります。
  59. 井出一太郎

    井出委員 シヤウプ勧告を二十五年度限りというように解釈なさつた、こういうことでありますが、それでシヤウプさんにあとおしかりを受けなければ仕合せだと思います。今おつしやつたようなことになりますと、一定の基準というような線が引かれておりませんので、そこに地方でトラブルが起るおそれがあるというようなことも予想せられるのでありますが、これはこれとして、このためばかりでもありますまいが、そのために地方負担というものが増大するのじやないか。昨年来池田財政を批評して、中央だけの健全財政を打立てるために、地方を犠牲に供して顧みない大蔵大臣だ、こういうようなことをよくいわれる。きのうわれわれの手元へ配付されました資料によりますと、二十六年度は国税において、国民一人当りの負担が六千七百十一円、昨年よりも三円多い。これでは大臣は税法上の減税をなされたでありましようが、実質的には三円負担が増加になつておる。また地方税を合せて計算をいたしますと、一人当りが九千二百二十円で、昨年よりも二百十八円増した、こういうような計数に相なるようでございます。これはやはり、どうも中央財政のしわを地方財政に寄せたというふうに解釈せざるを得ないのでありまして、ちようど岡野国務相もおられますが、あなたの立場において、こういうしわを寄せられてだまつていらつしやれるのか、その点を岡野さんから伺いたいと思います。
  60. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。昨年地方税を改正いたしましたのは、御承知の通りに地方の自治を確立するために、その地方の財政の基礎をしつかりさせてやろう、こういうことから地方税が提出されて、皆様方の御賛成を得て発布されたわけでございますから、もともと地方税法が出ます場合には、四百億というものが増税になることも予定されて出たものでございまして、地方の住民といたしましては、それを甘んじて受けて、自分自身の自治を、自分自身で財政基礎を固めて行く、こういうふうに考えていただきたいと思います。  それから地方税と国税とを合せまして、増加したということは、これは私のこの前聞いたところによりますと、そうはなつておりません。詳しいことは覚えておりませんけれども、国税と地方税を合計して、なお二十五年度においては税金は減つておると承知しております。
  61. 井出一太郎

    井出委員 今岡野国務大臣は、地方税と国税を合せたものは、国民負担はふえてはおらぬと了承されておる、こういうふうなことでございますが、われわれの手元へ配付せられました資料によりますと、さつき私が述べた通りであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 これは資料がないことには水かけ論でありますので、岡野さんの考えておられるその辺の数字を、資料としてぜひ御提出願いたいと思います。  それから資料ということが出ましたから、あわせて申し上げますが、国税の改正法案はいかがですか、まだ大蔵委員会へ出ているかどうか存じませんが、同時に地方税の改正の大要、こういうものも何か新聞にスクープされた程度のものはわれわれも目を通しましたが、これは正式に地方行政委員会に出たかどうか。この点委員長においてお調べくださいまして、この両案も本委員会資料として御提出を願いたいと思います。
  62. 小坂善太郎

    小坂委員長 承知いたしました。
  63. 井出一太郎

    井出委員 そこで問題をもどしますが、大蔵大臣予算説明の演説において、租税の問題に論及せられまして、「租税の公平理論にのみとらわれることなく」というような表現をなされております。これはこういう非常緊迫の事態でありますから、平常時における学者先生の租税理論がそのままに通るものでもない。場合によれば池田さんの横車の方がより通るというような事態でございますが、この公平理論にとらわれることなくという意味でございますが、あるいはこれからにおわせるものは、たとえば資本蓄積の問題へ重点を置くというようなことから、だから池田税制というものが資本主義的税制である、そこには社会政策的な観点というようなものが稀薄なんじやないかというようなことを、大臣みずから語るに落ちたというような感じがしないでもないのでありますが、この点はいかがでありましようか。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前からのだんだんの御質問についてお答え申し上げますが、公共事業費を地方の一部負担として行くということにつきまして、関係方面も了承しております。また今までシヤウプ博士の言う通りにはいたしておりません。あの人の意見よりもよほど違つたようなことをやつているのでございますから、御心配はいらないと思います。  次に昨日かお配りした租税の負担が、昨年よりも国税においてふえるというお話でございますが、これはこの負担をどうごらんになるかという問題であります。昭和二十五年度の国民所得は三兆二千億円、昭和二十六年度の国民所得は三兆七千億円、これを是認なさるならば、税法上の減税も実際上の減税も同じである。国民所得がふえた場合におきましては、同じ額をとりましても、減税と言うのが理論的であるのであります。しかして租税収入は本年度は四千四百四十五億円で五億円減つております。国民一人当りの負担が三円か五円かふえたということは、タバコがピースや光を値下げいたしましても、七百八十億本を八百二十億本のむことに予定しているのであります。それだから専売益金収入の千百二十億が千百三十億になるから、一人当りふえるのであります。タバコをたくさん吸われるならば、税ともいわれる収入がふえるのであります。これをもつて増税だと言われるのは、ピースの五十円を四十円に下げても増税だと言われるのと同じことになる。ここに今までの誤つた議論が行われることになる。これをお考えくださればわかると思います。ところで私は資本の蓄積につきまして、いたずらに公平の理論にとらわれることなくということは、たとえて申しますと、源泉選択課税を設けまして、預金の利子というのは、理論的に申しますと、ほかの所得に利子を加算してやるのがほんとうなのであります。これが負担の絶対均衡からいえばそうなんであります。しかし資本の蓄積が必要な場合に、国民の全体として大多数が源泉選択課税を施行したらどうかという声が強いのであります。そこでたとえば二十万円の所得の人が源泉選択で五〇%の税率を納めたとすれば不公平である。しかし百万円以上の所得者が源泉で五〇の利子負担をするということは、これは減税になります。そこで税の絶対的公平理論から申しますと、利子の源泉課税制度は理論的には合わない点がありますが、預金の増強その他の点から申しますと、こういうことも今の場合やつた方がいいじやないかという考えであるのであります。それからまた法人の積立金に対する二%の課税、これをやめるということも、これを配当したりしたならば、個人の課税になるべきものを積み立てておいて、今後に配当する、この利子を見積つてつておるのでありますから、今の積立金増強の必要から申しますれば、これはやはり私は非課税にした方がいいのではないか。また多くの緊要な産業につきましても、理論的にいえば、何ももうかつた場合において特別償却を認める必要はない。しかし重要産業の育成のためには、特別償却を認めるということも考えなければならない。租税には公平の理論とか、社会政策的な理論とか、経済上の理論とかいろいろなものがあります。公平の理論ばかりで行かずに、社会政策的なことも考えなければならぬし、また経済復興的な理論も考えなければならぬ、こういうことを言つておるのであります。それならば池田財政はそういうことを一つ考えてないじやないか、こうおつしやいますが、できるだけ認めております。たとえば保險料の控除にいたしましても、あるいはアルバイト学生の控除にしても、あるいは扶養家族のない未亡人とか、あるいは高齢の人に対する基礎控除とか、できるだけのことは見ておるのでありまして、イギリスあるいはその他の国の税制におきまする社会政策的の考え方はほとんど入れております。ただあるいはいわく三万円では少いじやないか。これは徐々に上げて行つております。何分にも今の財政状況といたしましては、これを急速に上げるということはできないのが、これは遺憾な点でありますが、徐々には上げて社会政策的なことを考えておるのであります。
  65. 井出一太郎

    井出委員 大臣が今言われた、たとえばアルバイト学生に考慮を及ぼしたとか、未亡人の立場考えてやつたとか、こういう点は確かにちよつと味をきかされてあると私も思うのです。けれども基本的な税法上の減税か、実質上の減税かという課題は、これは私は依然として残ると思います。国民所得を基準にとりまして、三兆二千五百億が今度は三兆七千億になる。この国民所得の膨脹というものが、国民の社会各層に均分に膨脹しておれば、これはまた考えようもあるかと思うのでありますが、今年と明年との差は、言いかえれば、朝鮮動乱ないしはそれに伴う特需輸出景気というようなものからして、国民所得の面にかなりでこぼこができておるのじやないかと思う。でありますから、単なる国民所得が増大したからというようなことだけでは、私はどうも承服しがたいものがあるのでありますが、この国民所得にしましても、この前にこれに論及したことがございますが、大蔵省では安本の数字をしばしば生でお使いになつておられるようでありますが、国民所得というものの計算の仕方、これは私専門家でありませんから、どういうふうな計数を用いられておるか存じませんけれども国民の生産所得とでもいいましようか、そういう面が強調されておつて、そういうところに中心を置いての所得のとり方をなさつておるのじやないか。もつと別な角度で、たとえば流通の過程であるとか、あるいは消費の力とか、そういうような角度が総合されたような国民所得というものが——これは学問的に成り立つかどうかはしばらく別といたしまして、そういう観点は、一体大蔵当局はどういうものを国民所得として押えられていらつしやるか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  66. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体安本の国民所得の調査に基準を置いておるのであります。しかしてそれは生産の増加、あるいは雇用の増加、あるいは物価の安定の増加、こういうものを見ておるのであります。
  67. 井出一太郎

    井出委員 先を急ぎますので、問題はまだいろいろありますが、ひとつ次の展開をいたします。われわれに配付されました資料の中で、租税に関する参考計表をちようだいしました。これはなかなか御苦心になるものと思われまして、非常に精密な税に関する統計が出ておりますが、ここで一点伺いたいのは、従来租税というものを分析します場合に、直接税と間接税との割合というようなものがよく論議の対象になつたと思います。今日まだ非常にアブノーマルな時代でございますから、あるいはまだ単なる学説の通りには行くまい、かようには思いまするけれども、この刷りものによりますると、日本の租税分野の中において間接税と直接税の占める割合は、過去の戦争当時におきましては、直接税が非常にウエートが大きかつたのであります。大体六〇%以上を直接税で占めておつて、間接税は三〇%内外であつた。ところが戰後間接税の割合がずんとふえて参りまして、二十六年度予算で拜見をいたしますと、直接税が五三・七%、間接税が四四・七%、両方の数字が非常に接近をいたして来ております。これは一体どつちの姿がいいかということは、問題ではありましようけれども、しかし間接税に重課せられることは、これはタバコも金持ちはピースを吸つて、貧乏人はバツトを吸えばいいのだという論理、これはちようど富裕階級が米の飯を食つて、しからざるものが麦飯を食えばいいという論理かもしれませんけれども、そういうような解釈で行けば、あるいは間接税の負担というものは、決して国民に一般的に同じレベルで押しかかるのではないという解釈もできましよう。しかしこれを同じ書物の最後に出て参りまするアメリカあるいはイギリスの計数と比べまするときに——非常に親切にこういうふうな統計をおつけくださつたことはわれわれも敬意を表するのでありますが、英国の場合は、従来直接税中心主義の税制だということを私ども聞いて  おりましたが、それによりますと、戦後の英国税制というものは、日本の現状とあまり大差ない状況になつておる。これは経済の困難なる国情というものがどうもこうせざるを得ないのかもしれません。アメリカの例を見れば、ずんと直接税の方が多くて、直接税が八〇%に対して間接税が一五%という程度であります。ですから日本とイギリスと経済状況があるいは非常に相似しておるということかもしれませんけれども、幸いにこういう統計表をいただきましたので、この点明年度予算における比率のごときは、どうも間接税にウエートがかかつて来て、国民大衆を圧迫するというような感じがあるのでありまするが、この点のひとつ御解明を願いたいと思います。
  68. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その統計をごらんくださるとわかるのでありまするが、昭和十九年には直接税が六十何パーセント、間接税が三十何パーセントと載つております。しこうしてこれを日本状態から申しますると、直接税と間接税が大体パーになつたのが昭和十二、三年ごろだと思います。もともと日本昭和の初めごろから昭和十二年ごろまでは間接税の方が多い状態であります。ことに間接税が六十何。パーセント、直接税が三十何パーセントという逆の状態のときが長く続いたのであります。しこうして税の理論といたしましては、税の中で所得税が一番いいのであります。これはアメリカ流に直接税の多い方がいいのでありますが、何といたしましても経済機構がほんとうになつていないという今の状態ではやむを得ないのではないか。イギリスでもそういうふうな状態であります。理論としては、やはり直接税中心がよろしいのであります。しかし実際におきましては、徴税のこと等を考えますると、まあまあというところではないかと思います。
  69. 井出一太郎

    井出委員 大蔵大臣の言われる通り、減税ということを首肯するといたしましよう。そうすると二十六年度、まだ先は長いのでありますが、世界的にはむしろ増税気構えの線が出て参つております。アメリカでは百億ドルの増税計画を、トルーマンは国会に要請しようという情報もございまするし、現に超過利得税の問題などが出ておるのでございますが、これは補正予算の問題ともからんで参りまするけれども、まず国民に負担をかけるという点については、これ以上二十六年度はしない。まずこの減税をあくまでも貫き得るかどうか、この確信のほどをお漏らし願いたい。
  70. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいまの状態で進んで行きまするならば、この予算でやつて行けると考えております。
  71. 井出一太郎

    井出委員 もう一つの比率の問題が出ましたついでにお尋ねするのですが、法人税の一般所得税に対するウエートの問題、これは戦争前の日本経済が非常にはなやかでありました時代においては、大体法人税は一般所得税と対比いたすときに、一対三くらいの比率を占めておつたようでございます。しかるに戰争後まつたく一切の企業が倒壊をいたしまして、それがためにおそらく法人収益というものは見られない状況が長く続きました。従つてときには法人税と一般所得税との比率が十対一というようなこともございましたが、最近は大臣が呼号せられるごとく、日本経済は安定し、今や復興は間近かにあり、こういう時期でございまするから、法人のウエートというものをもつと考えるべきではないか、こう私どもは思うのであります。ことに昨年の朝鮮ブーム以来の好況は、企業によりましては何十割という収益を上げておる、こういう事態に際会いたしまして、二十六年度予算では法人税が一般所得税の四分の一くらいになつております。この点などは、もう少し見積りができないものかどうか。昨年の経過は自然増収が法人税において非常に多かつたように思いまするが、この点いかがでございましようか。
  72. 池田勇人

    ○池田国務大臣 所得課税のうち、法人課税とその他の分につきましての割合は、お話通りに、終戦直後は十分の一くらいでございまして、最近伸びて参りました。これはどこに原因があるかと申しますると、やはり個人企業が法人企業に相当かわつてつたということにも一つの原因があるのであります。そうしてまた法人の利益が最近非常によくなつたということも一つの原因でございましよう。それからまた課税方法を、法人は個人の延長であるというので別個の独立企業体として取扱う昔の方法をやめたことによりましても、比率の関係がかわつて来るのであります。  次に来年度の法人税の見積りにつきましては、大体六百数十億円に見積つてつたかと思います。本年度の課税は五百七十億円、ある人の論法をもつてすれば、本年度が五百七十億円で、来年度が六百三十億円だつたら、法人は増税だと言われるかもしれませんが、われわれは増税だと思つておりません。とにかくふえております。しかしもつとふえるだろうというお話につきましては、資産再評価がフルに現われて参ります。相当会社の方では償却をいたします。ことに特別償却を認めますると、大体二千億近い法人の利益がございまして、そうして相当の、七百億あるいは八百億の償却をするのであります。そうするとこれは会社に留保になります。償却をした残りの分で税の積立金に充てる。こういうやり方でありますが、償却が相当響いて来ますので、大体六百三十億円程度が適当ではないかと考えております。
  73. 井出一太郎

    井出委員 法人税のついでにただいま償却の話も出ましたが、今回の税制によりますと、同族会社だけに対しては、積立金課税を、七を五%にして相かわらず存続する。この考え方はやつぱり同族会社に対する何か特殊の認定の仕方があるのかどうか。つまり同族会社というようなものは脱税の機関に利用されやすいというような、何か特殊な考え方を同族会社に持つておられるのか。こういう点と同時に、この同族会社という定義の仕方、これははつきりしておるのでありましようが、末端の税務当局などは、少しでも縁故関係があれば、たいてい同族会社というような認定の仕方をする弊風があるのでありまするが、こういう点どうお感じになつておりますか。
  74. 池田勇人

    ○池田国務大臣 積立金課税の場合に、一般の会社が二%、同族会社は七%、いわゆる五%に二%を加えて七%にいたしておつたのであります。普通の積立は、資本蓄積の意味から申しまして二%だけにいたして、同族会社は五%と二%で七%になつたのであります。しからば、なぜ同族会社だけそういう取扱いをするか、また同族会社の定義いかんということでありますが、同族会社は、実際におきまして配当率その他が、ある一定の個人関係相当支配されるのであります。そこで今までも加算税等でこれを補正しておりましたが、五%程度の積立金の課税は適当だと思つて残しておるのであります。  次の同族会社かいなかの認定の問題、これは非常にやつかいな問題でございまして、税法上では一応きまつておりまするが、知人、親戚並びに使用人の関係、それから同族会社をやりますときに、非同族会社が小会社として半分以上持つているというふうな分につきましては、親会社が非同族ならば、小会社は株数の関係によつても、これは同族会社に認めないとか、いろいろこまかい問題がございますので、個々の場合に当てはまるように通牒を出しております。ただ使用人と主人との間の関係、あるいは親戚が六親等以内のところとか、いろいろなこまかい問題がございますが、これにつきましても適正にやつておるはずになつております。
  75. 井出一太郎

    井出委員 今日の段階では、私は同族会社というものをそう差別待遇する必要はないのじやないか、こうも思いますが、どうかその末端の税務当局などをして混乱せしめないように御配慮を願いたいと思います。  続いて、今日は税の関係をさらいいたしたいと思いますが、関税が従来よりも大分徴収予定が見込まれておるのでございますが、いわゆる関税自主権というものは、現在においてはおそらく喪失されておると考えていいでありましよう。われわれが明治の歴史をひもといてみると、関税自主権を回復せんがために、大隈重信は片足を失つた、陸奥宗光はこれがために病を得た。まさに大臣の命取りであつたのでありますが、講和会議と関連して、この点は回復をされるもの、またそうあらしめなければならぬものと思うのでございますが、それに関連して、たとえば最恵国待遇でありますとか、そういうような一連の問題について所見を伺いたいと思います。
  76. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨日もお答えしたのでありますが、御承知の通り、現行の関税率等は大正十五年にこしらえたもので、従量税が相当つておりまして、課税上ほとんどナンセンスのようなものが多いわけであります。しこうして講和を見越しまして、われわれは関税自主権を持つべきであり、合理的な関税定率法をこしらえておく必要がある、こういう考えのもとに、本国会で御審議を願うことにいたしておるのであります。講和によつてきまる問題でありまするが、われわれはあくまで関税自主権を堅持する考えで進んでおります。
  77. 井出一太郎

    井出委員 国民負担の軽減を言われまする場合に、先ほどはタバコの例をお引きになりましたが、あるいはこれは酒などについても同様なことが言えると思うのでございます。明年度はタバコが、ピースや光などがそれぞれ十円下ると伺つておる。さらに酒は旧臘の値下げで二割七、八分でございますか、税が下りました。こういう專売品の扱い方においては非常にむずかしい問題かと思いますが、税を下げることによつて消費を増大する。従つて、消費量と税額との相乗積を最大ならしめれば財政目的は達し得ると思うのでありますが、酒の場合などは、まだ現状程度の値下げでは、やみ酒というものは根を断たない。これは米という原料が、実に零細な、五百万にも余る個々の生産者によつて生れて来ておりまする関係から、なかなかそういうところまでは手が届くまいとは思います。従つてまだこれを下げることの方が、より消費を増大せしめて、やみを撲滅し、所期の歳入を確保する道のようにわれわれは思う。こういう点、あなたは今の限度がぎりぎり一ぱいとおぼしめされるか、そういう点を伺つておきたいのであります。
  78. 池田勇人

    ○池田国務大臣 酒は旧臘減税をいたしたのであります。これによりまして、もし減税なかりせば租税収入に赤が出て来るのが、減税したために黒が出て来る、こういうふうなことに相なつたのであります。しかも国民はこれを減税と認めて、非常に喜ばれておるのであります。私は、今の二級酒が四百六十円でございましたか、一級酒が七百五十円、あるいは特級酒が九百何十円というのはまだ高いと思う。できれば下げたい。今の程度でも密造はよほど減つて参りました。まだないとは申しませんが、よほど減つて参りました、しかし密造のいかんにかかわらず、私は嗜好品とはいうものの、国民生活から申しまして、タバコも酒もまだ下げたい、こういう考えで進んでおります。
  79. 井出一太郎

    井出委員 確かにまだ酒もタバコも高い。これは戦前の物価と比較をいたしまする場合には、一般物価がかりに二百倍といたしましても、酒はおそらく三百倍、四百倍というところへ行つておると思いますが、どうか今申し上げたような御認識のもとにさらに御努力を続けられたいと思います。  この際それに関連して伺いたいことは、酒と申しましてもいろいろ種類があるのでありますが、その中で、たとえば日本酒であるとか、合成酒であるとか、しようちゆうであるとか、こういうような酒の税率間の均衡というものが戰前と大分違つてつておる。戦前は清酒、合成酒、しようちゆうというものに賦課せられておる税額は、大してかわりがありませんでした。大体一様だつたと思う。けれども今日はその開きが非常に多くなつて、酒類間の税率均衡を要望されておると思うのでありますが、これに対するお考え方はどうでありますか。これが一点。  それからもう一つは、清酒と合成酒を混合するということが、今日一般小売市場などでは、あるいは行われておると思う。しかし税法上の建前では、これを混和することは厳禁されております。日本酒も酒精添加その他によつて、大分合成酒に接近して来たような感じもございますが、多くの業界の要望というものは、やはり純粋にその両者の区分を立てるべきであるという見解のようでございますが、この点をどのようにお考えになつているか伺いたい。
  80. 池田勇人

    ○池田国務大臣 酒の類別によりまする均衡論でありまするが、これをいたします場合に、清酒なら清酒を特級酒で見るか、一級酒で見るか、二級酒で見るかというのが問題でございます。酒問答といわれますから、なんでございまするが、たとえば昔はサントリーの十二年もの一本に対しまして、いい灘の酒が四本、これでございました。ビール五本と酒一升、こういうのが昔の例でございます。現在は二級酒とビールとを比較すれば、一本と四本になつております。しかし特級酒とビールとしますと一本と八本。そこで酒のうちどれを見るかという問題ですが、全体の清酒のうちで過半が二級酒でございますから、二級酒を基準にしますと、大体似ておるのではないか、あまりその間の徑庭はございません。しかしこれはなかなかやつかいな問題でございまして、昔は灘の酒が四本分でサントリー一本だというのだから、サントリーをうんと高くしろといつても、やはり国民の嗜好などの点がございますので、増石高その他によつて税率を考えなければならぬと思います。  次に合成酒と一般清酒との混和を認めるかどうか、これは十数年来のやかましい問題でございますが、私はただいまのところそこまでまだ踏み切る決心がついておりません。御承知の通り米が非常に不足のために、もろみ添加等によつて増産をはかり、相当アルコールを今の清酒の中に入れておるのでございます。特級酒の中にもアルコールが入つておるのがある状態でございまして、実質的には合成酒と二級酒とはよほど似て参つておりまするが、今ただちに合成酒と普通の清酒とを混和してやつて行くかという問題は、業界におきましても大問題でございますので、今そういう決心はしかねている状況でございます。
  81. 井出一太郎

    井出委員 もうちよつと酒問答をいたしますが、合成酒あるいはその方面が、米を使うことによつて品質を優良ならしめる、これは事実でございましよう。その要望からして、本年度は砕米を数万石この方面へ配給になつたとか、ならぬとかいうことを聞くのでありますが、このことは事実でありましようか、これが一点。それから今年の租税収入を確保いたしまする上において、食糧管理が届いておりまする米は日本酒の原料でありますが、これは十分に確保されておりましようけれども、一方しようちゆう、アルコール、この面におけるいもの確保が、自由販売になりましたがために非常に至難であるということを聞くのでございます。従いましてこの面における所定醸造石数というものが見込み通り上るかどうか、このこともあわせ伺いたい。
  82. 池田勇人

    ○池田国務大臣 清酒の原料でありまする米は、御承知の通り今年十万石ふえまして、六十三万石になつたと思つております。しかしこれを十四、五年前の状況に比べますと、まだまだ五分の一、六分の一程度にしか来ていないのであります。われわれとしましては、税政確保の上から、できるだけ多くを望んでおりまするが、なかなかそうも参りません。従つて今のところでは六十三万石でがまんをして、アルコール添加その他で補つて行きたいと思つております。  次に蒸溜酒の問題でございますが、お話通りに大体二億貫程度のいもを予定しておつたようでありますが、半分余りぐらいしかただいまのところ入つておりません。今度切りぼしでどのくらい入りますか、あるいは輸入原料、たとえばとうもろこし、こういうようなもので、食糧に向かないものがあれば、これをとりまして、しようちゆうその他に充てたいと思つております。しかし大体米の十万石ふえたのをフルに予算に見込んでおりませんので、予算に見ていなかつたと思います。やはりいもの方の状況等を考え予算を組んでありますので、今年度の酒の収入につきまして、非常に減収があるというふうなことは考えていないのであります。
  83. 井出一太郎

    井出委員 政府の専売アルコール、こういうものが予算の面にも専売益金として出ております。これが前年度から見ると非常に減少をしておるようでございますが、これは一体どういう理由からでございましようか。政府専売のアルコール、これは通産省にもあるいは関係があるかと思いますが、その専売益金がこの予算面ではよほど減つておるようであります。聞くところによると、政府の手持工場を一部拂い下げたというようなことも聞くのでありますが、そのために施設が減つてこういう結果を来すのであるか、その辺のところはいかがでしよう。
  84. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アルコール專売益金の減少につきましては政府委員から答弁いたさせますが、私の聞くところでは、北海道の政府の二工場を拂い下げたやに聞いております。しかしてまた官営工場につきましても、経営規模を縮小するような気持で進んでおつたのではないかと思います。詳しくは政府委員から説明させます。
  85. 河野一之

    河野(一)政府委員 アルコール専売益金の減は、事業分量が減るからでございます。工場の縮小その他原料も少し減ります。
  86. 井出一太郎

    井出委員 通産大臣に伺いますが、これはどうでしよう。アルコールがよそへ輸出されるというようなことを耳にするのであります。たとえば合成ゴムなどの原料として、これがぜひとも必要だというようなことを聞くのでありますが、そういう輸出の事実はございませんか。
  87. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。アルコールそのものとしての輸出はまだ私聞いておりません。合成樹脂などに使うということは聞いております。工業用に多量あれを使つておるということは事実でございます。
  88. 井出一太郎

    井出委員 酔つぱらつてだれるといけませんから、酒問答はそれくらいにして切り上げます。(笑声)  そこで今度は少し辛いところで、塩の輸入の問題ですが、これはきよう最初にも、安本長官との問答で申し上げたように、原料塩というようなものの獲得が非常にきゆうくつになつて来ておるのでありますが、これに対しましては、輸入価格は一体トン当りどのくらいの見通しでおられるのか。これには補給金というようなものは切つて捨てても、日本のソーダ工業その他へは影響はないかどうか、これをお聞きしたい。
  89. 池田勇人

    ○池田国務大臣 塩の輸入補給金は見ておりません。御承知の通り、昨年の八月ころまでは一時塩の値段が非常に下りまして、CIFで十ドルを割るというような状態であつたのであります。従いまして、昨年の暮れ迫りまして食料塩は三、四千円に下げました。しこうして漁業用の塩も、実は下げたいということを大蔵委員会で私申しておつたのであります。しこうしてお話のソーダ塩につきましては、トン三千円というのは、十ドルを割るようなときは大体考えられましたが、十ドルを割つても三千円は安過ぎるからこれを上げようという話もございましたが、まだ関係方面との話がつきませんので、三千円で行つております。これは今地中海方面から持つて参りますと、大体十八、九ドルに暴騰いたしまして、ソーダ工業への拂下げ価格等につきましては早急に考えなければならぬ問題であると思つております。
  90. 井出一太郎

    井出委員 税の問題はまだ若干ございますが、ついでに山林課税の問題をお伺いいたします。御承知のように山林の所得税というものは、昔の五分五乗というような形式を復活せられまして、五年に分割して、その五分の一のものをその年の所得にプラスして、それで税を課する。そしてその山林の分に当る部分を五年分一緒に納めて、あとの一連年所得で調整をするというような方式をとつておられますが、シヤウプ勧告によると、これはたしか二十年、こういうふうに承知しておりますが、これを五年に短縮したということは、山林のような長期保続産業におきましては、非常に山持ちに不利が起つて参るのではないか。これがために再造林というようなものへ非常に響いて参る。あるいは所得税のみでなく、たとえば継承税という場合におきましても、最近一つの基準がきめられたようでありますが、継承する際の価格をどう算定するかという場合、時価からこれを逆算して参る。何十年かさかのぼつて、幼齢林のような場合に、実際においては、その木を切つてみたつて何の価値がないにもかかわらず、それが相当の高値を計算的には示しておるというような点から、この継承税にも非常な無理が生じておるようであります。こういう問題は日本の治山治水が非常にやかましく叫ばれております今日、相当御考慮を願わなければならぬと思いますが、この点をお聞きします。
  91. 池田勇人

    ○池田国務大臣 山林所得の問題は昔からやつかいな問題でございまして、シヤウプ博士は二十年にわけて課税しろというふうなことは、言つていなかつたと思います。また実際問題から申しまして、山林所得を二十年にわけて課税するということは、技術的に相当困難な問題であります。私は先ほども申し上げましたように、山林所得とか、あるいは退職金というふうなものは、あまり理論的にやつて行くよりも、もつと実際に沿うような方法にしなければならぬのじやないかというので検討いたしておりますが、ただいまは五分わけでやつておりますが、今検討を続けております。また相続税につきましても、今度相続法が改正になりまして、みんながわけ合つてとるようになるのでありますが、山林につきましても、これは昔から問題で、相続税は相当高過ぎる、また山林ばかりではございません。このごろ問題になつておりますが、病院経営をやつていたお医者さんが死んだ場合、子供が五人おつたときにどうするか、病院をわけ合うわけには行かないだろうというような、いろいろなやつかいな問題が相続税で起つておるのでありますが、いましばらくこういう問題は検討いたしたいと思つております。
  92. 井出一太郎

    井出委員 それでは税の問題はあともう一点、滞納の問題に触れて打切ろうと思います。  配付されました資料によりますと、現在において約一千億に近い滞納がございます。これもこの間論議があつたようでありますが、おそらくこれは年度末に行つてもある程度よほど馬力をかけられても残ることは明らかであります。そこでこういう滞納が生じたこの事態は、税の見積りが非常に水増しがあつて、それがためにどこか無理がかかつて来たゆえである。こういう解釈も確かに成り立つと思うのであります。つまりこの滞納になつておる分だけは、全部よけいに徴収できれば、そつくり国庫収入になつて歳入がえらく増すのでありましようが、そういう無理をしながら一方において減税だとこういうことは、非常に矛盾ではないか、こう思うのでありますが、この点を御解明願いたい。
  93. 池田勇人

    ○池田国務大臣 滞納はお話通り、過年度分は六百十四億円、本年度分三百八十二億円で、一千億に近いものがあるのでございます。これは十二日までに出て来るのでありますが、これをごらんになりましても、源泉所得の方の滞納は四十四億円、これはあまり無理はないのではないか。法人の方についてもそう無理はいたしておりません。申告納税が一番多いのでございますが、御承知の通り昨年度におきましても千九百億円の当初予算に対しまして実際は千三百億円ばかりであつたのであります。本年度におきましても当初予算は千五百億円を予定したのでありますが、補正で千百七十億円にしております。千百七十億円入らなくとも、千億円でもよい、無理してはいかぬ、こういうふうにやつておるのであります。滞納の原因は水増しで課税するということでありますが、そういう点もございましようが、やはり財政上資金繰りに非常に困つて滞納なさる人もあるのであります。中には少々利子を拂つても他の物を買つておいた方がよいという誠意を欠いた滞納もあるのであります。従つて今後御審議を願う予定であります。滞納の問題につきましては、もう税務署の方で水増し課税は絶対にやらない。今までのように、あまり根拠なくして、いたずらに更正決定をやるようなことはよさすようにいたしますと同時に、決定が誤りなかつた場合におきましても、金繰りの問題で延納を認める、分割拂いを認める、あるいは分割拂いを認めない場合におきましては、やはり一定期間特別の取扱いをいたしまして、三年後に調査の上で、行かない分は訂正する。こういうふうな方法で、こういういやな滞納の問題を合理的に解決しようと思つております。これがみなとれたらと申しまするが、なかなかみなとれないのであります。四、五千億円の税でありますので、毎年やはり一割や一割五分出て来るのはやむを得ない。しかしできるだけそういうことのないようにいたしておるのであります。
  94. 井出一太郎

    井出委員 四、五千億という数字で一割や一割五分はくずが出る、これは商売の上の売掛代金なんかでしたら、そう簡単に言い捨てられると思いますが、いやしくも国の権威によつて決定した税金を、少しこともなげに滞納処理をなさるような感じがいたします。もちろん苛斂誅求は困りますけれども、従来国民考え方の中には、税金だけは間違つても滞納したくない。滞納をするということは、何か犯罪の次ぐらいの行為をしたようなほどに破廉恥だという感覚を持つておりました。これは、やはりその当時の方が納税観念が尊重されておつた。今日世は澆季子とでもいいましようか、その観念が薄らいだからだといえばそれまででございますが、しかし大臣の今の御返答の調子が、何かこともなげにそのうちには切り捨ててしまうというようなことであるならば、これはどうも滞納したものが結局得をして、まあ政府をひつかけてやれというようなことにでもなつたら、これはゆゆしい問題だと思いますので、その点をもう一ぺん念を押してお尋ねをいたします。
  95. 池田勇人

    ○池田国務大臣 滞納した人が得であるというふうな気持は絶対に起してもらわないように努力はいたしておるのであります。しかし何分にも今の経済情勢から申しますと、勘定合つて銭足らずという場合も多いのでありまして、私は一割、一割五分は何でもないとは申しませんが、実情がやはり調査が不十分であつたり、金詰まりであつたり、あるいはまた不心得者といつては悪うございますが、ほかへ流用しようという者もないことはないのであります、好んでではありません、いやではございまするが、一割程度の分はやむを得ないのじやないか、しかしこれは行く行くはとれて行くのであります。どうしてもとれないようなものも、すぐに欠損にせずに、三年なり四年なり調査期間を置きまして、処理の完璧を期したい。今の状態がいかぬからというのですぐ帳簿上で落してしまいますと、これは困りますから、そういうふうに乱雑な処理をせぬように、一定の調査期間を置いて、それで正確を期したいという考えであります。
  96. 井出一太郎

    井出委員 ここへ陳情が出て来ましたから、もう一ぺん税の問題に関連をしておりますのでお尋ねをいたします。御承知のように日本の農業を再建いたしまするために、これが最も主体的なにない手とでも申しますものが農業協同組合でございます。これらの協同組合ないしその連合会というようなものは、組合員あるいはその会員に最大の奉仕をするのが目的であつて、もちろん経済行為をいたしまするものの、利潤追求ということが念願ではないのであります。従いましてこれに対する課税を軽減するということは、これはやはり大蔵省的な合理主義の考え方からいえば、おそらく特別な扱いということはされないと思う、従来一般法人に対する特別法人というような考え方も漸次解消いたしつつあるのでありまするから、そういう点、農業協同組合のこれらの要望に対して今までははなはだ冷たかつた、こう言わざるを得ないのでございますが、これらの協同組合が今非常に経営上難局に瀕しておることは大臣も御承知でございましよう。これが再建整備のためには、特に利子補給の道を講ずるというようなことも農林当局では考究中のように伺い及ぶのでありまするが、当面税制改革という場合に、農業協同組合並びにその連合会に対して法人税を賦課しない、こういう要望をいかがお考えに相なられましようか。同時にこれは、岡野さんもいらつしやるのですが、地方税という観点から、これらに対して附加価値税あるいは市町村民税、固定資産税、こういうものを免除するということをお考えになつてはおられませんが、この点を伺いたいと思います。
  97. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業協同組合に対しまする課税につきましては、前々から強い要望があつたのでありまするが、理論的に申しますると、やはり経済行為を営みまして、そこに所得があれば課税するのが至当ではないか。従来は特別法人税としまして、昭和十五年から特別の税率にいたしておりましたが、だんだん一緒にして参つたのであります。中間法人のみならず、公益法人でも経済行為を営む場合におきましては課税するようにいたしておるのであります。この問題は理論的には農業協同組合経営が思わしくなくて、何か是正の方法を講じなければならぬという問題とは別個の問題でございまして、中には非常にいい協同組合もあつて、こういうときには課税する、それから財政状態が悪くてお困りのときは、これは所得がないのでありますから、課税しない、これがほんとうではないかと考えております。
  98. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。農業協同組合につきましては、この前地方税を制定いたしますときに、相当御議論がございまして、われわれもよく承つております。そのときも今大蔵大臣の申しましたように、公益事業を行つておる純粋の農業協同組合の事業に対しては、むろんかけるべきでない、またかけないことにしておりますが、いわゆる経済行為をしておつて、普通の組合並びに会社がやつているようなことをやつておる部面だけに対しては税をかける、こういうことに地方税法制定のときになつております。また附加価値税は一年延びておりまするので、そういうことの御議論がございましたが、財政委員会の内部におきましても皆様方の御議論に十分よく沿うように、その取扱い規則を練つておる次第でございますから、御懸念のような公益事業をしておることだけに対して税がかかるということにならないと思います。
  99. 井出一太郎

    井出委員 税の問題はその程度に切上げまして、角度を若干かえたいと思います。大蔵大臣が、これは広島選挙に立ち向われる前夜でありますか、大阪において発表されたという日本開発銀行の構想でございます。これをひとつごくアウト・ラインだけお漏らしを願いたいと思います。
  100. 池田勇人

    ○池田国務大臣 どうしても長期資金を潤沢に出さなければならぬ、これが私は日本経済再建合理化に必要であると考えるのであります。しかして今の状態を見ますると、短期資金を取扱つている普通銀行が相当長期資金に行つておるのであります。最近は社債の発行その他で資産内容相当かわつて参りましたが、私はやはり輸出銀行を設けましたような考えのもとに、輸出に限らず、長期資金を潤沢にいたし、そうして曲げられた市中銀行の貸出しをもつと合理化する必要があるのじやないかというので、日本開発銀行の構想を今練つておるのであります。まだ申し上げる段階にまで立ち至つておりませんから御了承願います。
  101. 井出一太郎

    井出委員 実はもう少し詳しい内容が伺えると思つたのでありますが、その程度ではまだ納得できません。この間も長期資金と短期資金の問題はいろいろ論議せられましたが、従来の復興金融金庫、これは時の疑獄事件なども生んで、非常に龍頭蛇尾に終つたきらいがございますが、これなどとは全然趣は別なのでありますか。その点伺いたい。
  102. 池田勇人

    ○池田国務大臣 復興金融金庫と趣が違うかというお尋ねでありますが、長期資金を出すという考え方は同じでございます。しかし資金源をどこに求めるかということはたいへんな違いであります。とにかくどこか違つておるか、合つておるかという問題になるとやつかいなわけでありますが、私は資金源はやはり財政資金あるいは、できれば民間資金、こういうような構想を持つております。当座はやはり財政資金で行くよりほかにはないのではないかと考えております。
  103. 井出一太郎

    井出委員 金融問題になりましたので、ほかに二、三点をお伺いして、今日はその程度にしたいと思いますが、長期金融の一つの方途として不動産の担保金融、こういうものが従来はあり得たのであります。勧業銀行などはそれを中心的な使命にいたしておりました。これは農地改革による農地の担保力というものがなくなつたといいましようか、法制上非常に妙なものになつてしまいましたので、そういう関係もございますけれども、農村なんかで今日これにかわるべき何らかの方途がないものかという要望をせられるのであります。これはあるいは農村なんかについては、農地の自由販売というようなことを前提とするということになつて参るかと思いますが、これは自由党政調会あたりではこれに対する相当な立案が進んでおる、こういうことも伺つておりますが、その点大蔵大臣構想をお漏らし願いたいのであります。
  104. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は今自由党の政調会における不動産金融につきましての研究の材料を持つておりません。今の農地改革ということになりますと、担保力の点はなかなかやつかいな問題だと思います。ただ農業関係の金融といたしましては、御承知の通り、農業手形制度が相当行き渡りまして、運転資金は不動産担保金融ということでなしに、農業金融としては相当円滑に打つておるのじやないかと思います。ただ農業の長期の資金として、農地を担保にするという問題になりますと、これはなかなかやつかいな問題だと思いまするが、     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 私はここに農地担保の長期金融機関を特別に設けましても、なかなか運営上困難じやないか。一時勧業銀行でそういうふうなことを勧業銀行の別動隊としてやつたらどうかということを考えてみましたが、何分にも今は長期債券を発行しますと、七分五厘とか、八分五厘の利子になり、しかもまた銀行の経営費も、貸付には一割七、八分から、年二割くらいの金利にしなければ合わぬということになると、なかなか支障が多いのであります。そこで農家の、たとえば運転資金を農業手形でまかなうことにして、長期資金につきましては、何か組合をつくるとかなんとかして、十人連帶とかあるいは五人連帶ということで、所要資金を明示して、農林中金から出して行くような方法はできないものかというようなことを検討しておるのでありますが、なかなかやつかいな問題だと思つております。
  105. 井出一太郎

    井出委員 その場合、今度新たに構想をなされた農林漁業の長期金融資金は、中金をしてこれを扱われるようでございますが、それと今おつしやる十人ぐらいの連帶で、場合によつては担保なしで貸すというような線とは結びつくのでございますか。
  106. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは資金の性質でございまして、今の農家の方が土地改良等をおやりになる場合につきましては、相当の人が集まつておやりになるので、農林漁業の條件で運用されましよう。またそういう土地改良でなくて、長期であつても、そう長くはないのだというものにつきましては、農林中金の金融債の引受によりまして、相当の金を流し得ると思つておるのであります。
  107. 井出一太郎

    井出委員 今おつしやる六十億は、これは大体どういう内訳で流すか。つまり農業なり、水産業なり、林業なり、こういうような区分は事務当局ではおわかりでしようか。
  108. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農林省で御研究になつておるということを聞きました。しかも文書になつたものも私はある人から見せてもらつたのでありますが、まだ私のところにはこういう計画だということは来ておりません。今の農林中金が金融債の発行によりまして出す金の大きさ、また公共事業費から出ます土地改良の面、こういう面を兼ね合せてやらなければいかぬと思います。もちろん農業ばかりでなしに、漁業とかあるいは林業の方にもできるだけさいて持つて行きたいという気持を持つております。
  109. 井出一太郎

    井出委員 これはどうでしよう。事務当局でおわかりになりませんか。
  110. 河野一之

    河野(一)政府委員 一応は予算書に載つております。具体的な実施にあたりましては、先ほど大臣の言われましたように、まだ相当練らねばならぬ点がございますが、六十億は大体農業関係に四十一億、林業関係に約十三億、それから水産業関係で三億、塩田三億というような一応の内訳でありますが、なおその後いろいろ想を練つておる次第であります。
  111. 井出一太郎

    井出委員 内訳はそれではつきりいたしましたが、問題は、今大臣も言われたのですが、たとえば中金の金融債とのにらみ合せ、公共事業費との関連等もございますので、これがどういう形で流れて行くか。そういつた具体的なところまではまだまとまつていませんでしようか。
  112. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはこの特別会計をつくります前に、一つの金庫をつくつたらどうかという議論があつたのでありますが、これは特別な店舗を設けてもなかなかやりにくいのでございまして、やはりそういう農林中金の店舗を使つたらいいだろう、こういう結論になつて参りまして、一応特別会計というものに運用資金を持ちまして、それを農林中金を通して出そうといたしているのであります。農林中金の内部関係におきまして、この農林漁業金融の六十億の部門を特別に設けまするか、あるいは部門を設けずに、別勘定でやつてつて、店舗費その他を一部負担するか、信託会社の固有勘定と信託勘定と、こういうようなやり方もございますが、そういうふうな線に沿つてつたらいいじやないかと今検討しております。はつきりした結論は今出ておりません。
  113. 井出一太郎

    井出委員 どうも構想が動き出すのがいつも非常に鈍いのでないか。たとえば信用保険のような場合も、補正予算で五億か何かとつたあの制度が、今日まだほとんど店も開いておらぬ。店はなかなかたいへんでしようが、全然手続さえも末端へ浸透しておらぬ。こういうことでありますから、今の長期農林漁業資金というものは、これは非常に待望久しかつた。原始産業部門においては、何かこれがあることによつてほつとしたという感じで待望しておりますので、ひとつ急速にお取運びを願いたいと思います。この際もう一つお伺いしたいことは、この長期の信用でありますが、金利がおよそどれくらいになるのか、あるいはまたその期限、ないしこれは年賦支拂いで行くとか、そういう細目などはいかがでございましようか、もしわかつておりましたらお漏らしを願いたい。
  114. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは貸出先によつて考えなければならぬ問題でありますが、大体年賦償還の方法で、最長十五年くらいの予定でおります。金利につきましても、まず低い方を望んでおります。最高一割、最低四分五厘、平均六分か六分五厘にいたしたいと思つております。
  115. 井出一太郎

    井出委員 これと関連して考えますのは、これはかつて芦田内閣の時代であつたと思いますが、いわゆる農林漁業復興金融という銘を打つて、当時四十五億でございましようか、そういうものが成立を見て、やはりそれぞれ原始産業部門に流れて行つたという記憶があるのでありますが、これが現在ではどうなつているのか。もちろんあのまましり切れとんぼになつてしまつたようでありますが、これは現在どの程度貸付があるか、あるいはその中で回収せられたものがあるかというふうな、その一連の経過については、この際お伺いできませんか。
  116. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私記憶がございません。事務当局に聞いても記憶がないといつておりますが、そんなことをやつた記憶はございません。農林漁業復興金融金庫でございますか、聞いたことがございません。
  117. 井出一太郎

    井出委員 これはこういうことなのです。この前大臣が前国会でちよつと顔を出しましたときに、非常に農山漁村に対する福音であるという点を強調されまして、画期的な政策のように打出されたのであります。これは、私は事実借りたので、まさしく生き証人がいるのであります。ですからそれがどうなつているか、かげろうのごとく消えてしまつたというのではたいへんでありますので、ぜひこれはお調べ願いたいのです。
  118. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今農林漁業金庫というのでなしに、復興金融金庫から農林中金にある程度の金を融資したことは聞いております。しこうしてこの融資したしりが十八億円ばかり残つてつたのであります。それを見返り資金から二十億円出資のときに、優先的に拂わされたということがありますので、四十五億円とは記憶いたしませんが、しりが農林中金に復興金融金庫からの借入れとしてあつた。その後農林中金から、見返り資金が出ましたので、返しております。
  119. 井出一太郎

    井出委員 大臣が、これは何かのついでに証券対策とでもいいましようか、そういう観点から、投資信託という問題に言及せられておつたと思います。投資信託を再開する、こういうことは、あるいは証券業者としては非常な待望の的でございましようが、かつての戦時中行われた投資信託の結末が、今日ではまだついておらぬのじやないかと思う。やはりこれは被害者も相当にあるのでございまして、先の問題を解決しないと、そう簡単に投資信託というものをここで出されても、なかなか食いついて来ないではないかという点をおそれるのでございます。この投資信託に対する御構想と、今私の申し上げる元の始末が一体ついておるのか、またそれをどう処置されようとお考えになつておるのか、これを伺つておきたいと思います。
  120. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り投資信託というのは税法上の言葉でございます。証券会社が投資家からの金を預かりまして、合同運用しておるというかつこうのものであります。つきましては企業再建整備のときに、この問題をどう解決したか、私は今はつきりした記憶はございませんが、預金を切つたり、あるいは債券を初つたりしたような、方法で行つておるのではないかと考えております。私の考えております投資信託は、昔のような投資信託でございまして、零細な投資家と申しますか、あまり投資家方面に知識を十分お持ちになつていない方が投資しようとする場合、危險分散の方法で証券会社に信託いたしまして、そうして適当な株に投資する、こういうふうな方法をやつて税法上特別の取扱いをする、こういうのであります。この問題は先ほど大蔵委員会でも御質問があつたが、効果は上げるか上げないかということはなかなかむずかしい問題でございますが、私は証券対策としてあの手この手を打つことがこの際必要ではないか、また有力な証券会社について聞きましても、相当こういう要望があるというように聞いておりますので、制度としてはあの手この手の一つとして考えたらどうか、こういうので財政演説でもそう言つたわけでございます。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 井出一太郎

    井出委員 これは問題は少し別になりますが、大蔵省も監督上あるいは当然御承知であり、かつその間に介入された問題だと思うのでございますが、例の長崎の川南造船、これが先ごろ破産状態とでもいいましようか、某銀行がその債権を確保する意味において、債権額以上の相当厖大なる施設をすつかり押えてしまつたのでありましよう。その結果、あの地方における非常なセンセーシヨンを巻き起しまして、重大な問題になつておるようであります。八千あるいは九千といわれる従業員に対して、給料の支拂いができなくなつたばかりでなく、時節柄きわめて重大な造船業の将来に暗影を投ずるというような事実が起つておると聞いておるのであります。しかもこの会社には見返り資金が導入をされておるようでありまするし、またその事業は外国船の受注をいたしまして、国際的な影響のあるような事態だ、これは通産大臣もその方の御本職でいらつしやるから、事件は御承知かもしれませんが、政府はこれに対してどのような措置をおとりになつたのか、また責任あるお立場としてどう処理なさろうとされておるのか、これはひとつ大蔵大臣からも伺いたい。これは銀行を監督されるお立場がございましよう。同時に船会社の監督権は運輸省ですか、それにしましても、ひとつ横尾さんのお答えも、まださつぱりそこにおすわりを願つただけで御答弁を願つていませんから、お聞きしたい。
  122. 池田勇人

    ○池田国務大臣 川南造船の内証問題と申しますか、これにつきましては私も聞き及んでおるのであります。ただ銀行が貸出しをし、その債権確保上とります措置に対しまして、大蔵省がとやこう言うことはどうかと思いまして私はこの点について監督上の問題でなしに、見返り資金から多分二隻だつたと思いまするが、大体ことしの三月末に完成の予定で出ておるのであります。その債権確保の問題でお答え申し上げたいと思います。これは御承知の通り、造船所が内証を起して仕事が進まなかつたのでありますが、見返り資金は造船所に貸しておるのでなくて、船主に貸しておる。従いまして、船主が非常に困つておる。どういうことにするかという問題で検討いたしました結果、私はやはり続けて前の貸出金を追貸しして、期間は遅れても予定の船をつくらすという考えで進んでおります。そのために貸出金をふやさなければなりませんが、まず数億円ふえることになりまするが、今から着工することを思いますると、追貸しをしましてもまだ安くつく、また片一方では船舶が非常に早急に必要でございますので、仕事は続けてやつてもらうような考えで進んでおります。
  123. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えいたします。川南事件につきましては、私任官前から何か問題が起つておるということを聞いておりました。同業者としてはなはだ遺憾に考えております。なおまた多数の従業員を擁しておるのでありますし、かつ日本の造船業者として非常に遺憾な点が考えられるのでありまするが、しかしこれは私の所管でありませんので、実はその後のいきさつはまつたく存じていないのでございます。ただいままだ紛擾そのままであるということだけを聞いております。
  124. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時より開会いたし、質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四分散会