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1951-02-06 第10回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月六日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 事西村久之君 理事 橋本 龍伍君    理事 川崎 秀二君 理事 林  百郎君       天野 公義君    尾崎 末吉君      小野瀬忠兵衞君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    久野 忠治君       塩田賀四郎君    島村 一郎君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    苫米地英俊君       永井 英修君    中村  清君       中村 幸八君    松浦 東介君       南  好雄君    井出一太郎君       今井  耕君    中曽根康弘君       平川 篤雄君    竹山祐太郎君       川島 金次君    戸叶 里子君       水谷長三郎君    砂間 一良君       小平  忠君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  横尾  龍君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (理財局長)  伊原  隆君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊次君     ————————————— 二月六日  委員平川篤雄君辞任につき、その補欠として竹  山祐太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 昨日に引続きまして大蔵大臣に御質問いたしたいと思います。大蔵大臣の御答弁によりますと、講和條締結の際には、日本経済上におきまする完全なる主権を回復するように全力を盡したいというお話であつたのでありますが、新聞報道などを見ますと、最小限ではありましようけれども、やはりある程度制限が残るようなふうに報道されたのであります。そこで私は特にお願いいたしたいのは、もし多少なりともそういう制限が、講和條締結後も残るということでありますならば、その点を講和條約またはその付属文書か何かで明確にしておいてもらいたい。決してあいまいにならないようにお願いいたしたいと思うのであります。その点だけを御希望申し上げまして次の質問に移ります。  次にお尋ねしたいのは、日本講和條約を結んで、全面的に日本経済というものが世界経済に溶け込んで行くというふうになるわけであります。講和條約の締結までは、御承知のように、日本占領下にあつて日本経済は、たとえて申しますと温室の中の経済なのであります。従いまして日本経済世界経済の間には鉄のカーテンではないにいたしましても、ガラスのカーテンか、竹のカーテンがあるわけであります。講和條締結によつてこのカーテンがとられまして、日本経済世界経済というものが完全に融合する。日本経済が全面的に国際経済の中に入つて行くというふうになりますと、現在のような占領下の時代とは非常に違つたいろいろな現象が起きて来ると私は思うのであります。特に日本経済は、せつかく政府安定政策によりまして、大体インフレも一応終息いたし、ますます安定の度を高めておりますけれども、これは大蔵大臣もお認めになつておりますように、まだ日本経済には、いろいろの点において脆弱の点があるのは否定し得ないのであります。たとえば今でもインフレの要因が全部なくなつたというわけではありません。それからまた日本資本の蓄積というものは、これは政府もお認めのように非常に足りないのであります。特に日本経済で最も脆弱な面は、私は農村経済だと思うのであります。御承知のように日本農業経済というものは非常な小農の経営であります。世界のどこの国に比べても、日本ほど小さな農業経営の多いところはないのであります。従いまして日本経済の最も脆弱な面である農村経済というものが、もし日本経済が完全に全面的に世界経済に溶け込んで行くという場合には、私は国際経済との競争の波が、そのしわが最も多く寄つて来るのは農村経済ではないか、こういうふうに思うのであります。そういう点から申しまして、私は講和條締結までに、でき得る限り日本経済というものは、世界経済競争に耐え得るように、日本経済の底力を十分養つておく必要があろうと思うのであります。そういう点で政府におかまれしても、いろいろ御努力になつておることは、われわれもよく承知いたしておるのであります。そこでお尋ねいたしたいのは、日本経済世界経済国際経済との間のいろいろなアンバランスと申しますか、較差があるのであります。この講和條締結後におきまする日本経済世界経済とのアンバランスをいかにして調整するかという大きな問題があるのであります。このアンバランス調整方法といたしましては、いろいろあると思うのでありますが、私はおもなるものは、第一は、日本為替政策の問題、第二は、日本関税政策の問題、第三は、日本価格政策の問題、それから第四は、日本補助金と申しますか、そういうふうないろいろな調整方法によつて日本経済世界経済との間のクツシヨンの役目を果すいろいろな方法、手段があろうと思うのであります。  そこで第一にお伺いいたしたいのは、日本講和條締結以後の経済に処する日本為替政策の問題でありますが、政府は現在の一ドル三百六十円という為替レートを、今後も堅持する御方針と思いますが、その点を一応念のためにお尋ねいたしたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、講和締結後は完全なる意味世界経済に溶け込んで参るのであります。お尋ねの為替相場の問題、一昨年四月に一ドル三百六十円と決定いたしました当時におきましては、少し無理ではないかというふうな話があつたのでありますが、大体三百六十円で今までやつて参りました。しこうして最近の輸出の増強の状態から見て、一部には三百六十円を三百三十円とか三百円にしたらどうかという議論がちよいよい起つて来ているようでありますが、こういう為替相場は軽々にとやこう論ずべきものではないのでございまして、ただいまのところやはり三百六十円でやつて行くのが適当である、こういう考えを持りております。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 この為替の問題に関連いたしましてお尋ねしたいと思いますか、講和條締結後には、日本国際金融に関する世界機構、すなわち国際通貨基金協定とか、あるいは国際開発銀行協定というような、いわゆるブレトン・ウツズ協定参加認められるようになると思いますし、また日本としましては、ぜひともこれに参加するようにしなければならぬと思うのであります。大蔵大臣も昨年アメリカに参りまして、この国際通貨基金に関する日本参加の問題は、非常に好転しておるというようなお話もありましたし、また最近一万田日銀総裁アメリカに行かれまして、新聞記者などにお話なつたところを見ますと、この国際通貨基金に関する日本の加入問題も、相当明るくなつて来ている、こういうふうなこともあるのでありまするが、この国際通貨基金とかあるいは国際開発銀行協定というものに参加することは、講和條約前でも参加した先例はあるのであります。しかし日本の場合におきましては、講和條約の締結というものが非常に促進されておりますので、講和條締結後にこういう国際開発銀行協定参加することになると思うのでありますが、こういう国際金融関係機構日本参加する問題につきましては、従来とも政府におきまして、いろいろの交渉をいたしおると思うのでありますが、今日までの経過、あるいは今後の見通しにつきまして、この際一応伺つておきたいと思うのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 プレトン・ウツズ協定参加の問題は、昨年以来通貨基金の各委員とお会いしたときにも、相当有望であつたのであります。しかして日本参加いたしまするならば、これは人口の点からいいましても、外国貿易の点からいいましても、非常に有力なメンバーになり得るのであります。しかしてまた基金参加に対します日本の外貨その他の條件も、十分満たし得る程度に相なつておるのであります。お話のように講和條約前でも、実はイタリア等参加したのでありまして、私としては講和條約前にでも参加したいという強い意向を持つてつたのでありまするが、たまたま講和の話も非常に近くなつて参りましたので、ただいまのところでは、講和後になるかと思いまするが、講和締結されたならば、私は参加條件は十分整つておりますし、話も相当進んでおりますので、当然参加し得ることと考えておるのであります。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 こういう国際金融協定に関する参加の問題が、非常に明るい見通しを持つたようでありまして、まことに御同慶にたえません。これに関連して一つ伺いたいのでありますが、日本はこの国際通貨基金参加する場合’には、今のような日本為替政策でいいのか、あるいは金為替本位とか、そういうふうな金に関連を持つた為替政策をとらなければ、こういうものに入れないのか、その点を伺いたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 国際通貨基金参加につきましては、金本位制でなければならぬとはきまつていないのであります。管理通貨でもさしつかえございません。今の状態で当然入り得ると私は考えておるのであります。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 為替の問題は以上をもつて打切りまして、次に関税の問題に入りたいのでありますが、先ほど申しましたように、日本講和條約を結んだあとは、国際金融協定に入ると同時に、国際貿易機構、特に関税機構にも、これは当然参加を許してもらいたいのであります。またそういうふうに政府の方も従来いろいろ御努力のことと思うのでありますが、従来のように、日本が二国家間のバーター協定貿易をやるというふうなことでは、今日のような情勢ではなかなか貿易発展は期待し得ないのであります。これはどうしても多国間の多角的な貿易というものに持つて行かなければ、日本貿易発展というものは期せないのでありますが、そういう見地から申しますと、世界的な貿易機構、例のハヴアナ協定による世界的な貿易機構、あるいはその一部であります一般関税通商に関する協定、こういうものに参加しまして、そうして日本世界各国から最惠国待遇を受ける、これによつて日本世界各国との間に多角的の貿易を実施し得るようになることが、私は日本貿易の進展のためには、ぜひとも必要だろう、こう思うのであります。そのためには、日本関税制度の問題があるのであります。現行日本関税制度は、御承知のように二十五年前に大体つくつた関税制度であります。この二十五年の間に、世界情勢あるいは日本経済情勢は非常にかわつているわけでありますが、日本がこの国際関税協定参加することになれば、どうしても現行関税政策というものはある程度是正して、そして国際関税協定に入り得るように、日本関税制度を直して行かなければならぬと思います。政府におかれましても、そういう見地からこの関税制度改革の問題についていろいろ研究され、この国会にも関税法改正案を御提案になるように承つておるのでありますが、日本関税制度改革にあたりましては、日本国際関税協定に入り、そうして日本世界的に貿易発展を期するという見地から申しますと、あまり保護関税的な傾向でなく、なるべく外国から入る品物については安い税をかける、そのかわり日本外国へ売る品物についても外国で安い関税をかけるというふうな見地から、相当程度日本関税というものは低目に持つて行かなければいかぬ、こういうふうに考えておるのでありまするが、政府関税制度改革に対する御構想があると思うのであります。それを伺いたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように世界経済に飛び込んだときには、多角貿易で行かなければならぬ。それが望ましいことは当然であるのでありますが、御承知通り各国とも、今相当強い為替管理をやつております。またドルポンドコンヴアートはなかなかむずかしい状態でありますので、完全なる意味自由貿易ということは、なかなか言うべくして行われないのであります。しこうして日本世界経済に飛び込んで行きます場合におきましては、どうしてもいわゆる国際関税協定参加ということを頭に置いて考えなければなりません。しこうしてわが国の関税制度は、御承知通りに大正十五年に全面的の改正をいたしまして、その後ほとんどそのままにほうつておいた状態であるのであります。しこうして税率なんかも従価税よりも従量税が多くなりまして、貨幣価値が非常にかわつて来た現今においては、ほとんど意味をなさぬような関税定率であつたのであります。今回これを全面的に改正いたしまして、先般関税調査委員会の議を経て私のところまで参つでおります。今回の関税改正は、いずれ近日中に御審議を願うことに相なると思うのでありますが、お話通りに、原則はやはり自由主義的の考え方を相当加味して行つておりますが、何分にも日本産業育成考えなければなりません。根本はできるだけ安い税率ということで行つておりますが「産業保護意味から、一応適当な税率を盛り込んでおるのであります。ただ今の国内物価国際物価はまだ変動期でありますので、たとえば米麦等の主食につきましては、一応税率は持つておりまするが、当分のうち免税するとか、こういう経過的の措置をとつて日本産業育成国際貿易参加という、二つの旗じるしに抵触しないようなやり方で進んで行つておるのであります。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 政府におかれましても、なるべく自由通商原則に基いて、日本関税制度改革考えられるということでありまして、ある場合におきましては、ある程度保護関税というものもお考えになつておる、これはもちろん必要と思うのであります。しかしながら今後の世界経済を見ておりますと、いわゆる買手の市場から売手市場にかわりまして、今後いかにしてこの重要な原材料を確保するかということが、最も大事なのであります。そういう点から申しますと、やはり外国からそういう自由な原材料がなるべく支障なく日本に入つて来るということが、今後日本として最も大事な問題であります。そういう点から申しますと、そういうものついては、ある場合には日本産業保護という見地もあると思いますが、自由な資材の輸入を確保するというような大局的見地から、なるべくこれは税を安くして、そういうものがなるべく支障なく日本に流れて来るようにする必要があると思うのであります。一応その点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、原材料その他は原則として免税する考えでおります。ただ国内産業育成という見地から、ある程度の税を課税するということは、関税制度の趣旨から申しましてやむを得ないのであります。原則お話通りにいたしております。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 この関税の問題に関連して、もう一点伺いたいのでありますが、先ほど申しましたように、日本講和條締結一般国際関税協定参加できますれば、日本世界至るところに最惠国待遇を受けることになるわけでありますが、講和締結して、しかも国際関税協定参加するまでの間、そこに一つの真空状態があるわけであります。従いまして今度の講和條約の中に、その真空状態を満たすある種の條項が当然入るのでありますが、日本との講和條約に関するアメリカ合衆国のいわゆる七原則と申しますか、それがあるのでありますが、その中にこういうことが書いてあります。日本外国との間に新しい通商條約の締結まで、日本国は、通常の例外に従うことを條件として、最惠国待遇を与える、ということになつておるのであります。この点は非常に重要な問題でありますが、日本新聞には、これが逆に書いてあつて、最惠国待遇日本が受ける、こういうふうに一般には報道されておる。そうならばいいのですが、これは逆でありまして、日本が受けるのではなくて、向うが与えるというのであります。これだけを見ますと、日本が一方的に他国に最惠国待遇を与えるようでありまして、日本連合国から最惠国待遇を受けるということは書いてないのであります。これは項目だけを見ますと——従来世界でいくさに負けた国に課される一方的な條件でありました。日本日清戦争行つたあと、支那が日本に最惠国待遇を与えると書いてあつて日本が与えるとは書いてないのであります。これは重大な問題であつて外国にも与えるが、日本外国から最惠国待遇を受けるということでないと、日本は今後貿易発展は期待し得ないと思うのであります。結局相互主義に基きまして、日本外国に最惠国待遇を与えるが、外国としても日本に最惠国待遇を与える、こういうふうに相互主義にこれを直してもらわぬと、私は日本貿易発展上非常な支障があると思うのであります。どうぞ政府におかれましても、この点をよく御注意になりまして、外国日本に最惠国待遇を与える、日本ももちろん最惠国待遇を与えるのでありますが、そういう相互主義原則に立つて日本が最惠国待遇を受けるように、この上とも、御盡力を願いたいのであります。この点は外務委員会で詳しく政府にお願いしておつたのでありますから、これ以上触れません。  次にお伺いしたいのは、講和條約後の日本に対する外国経済援助の問題でございます。現在のように日本連合軍占領下にあります場合には、ひとり経済ばかりではありませんが、すべての面において、ある場合には連合国の力に依存する。日本安全保障連合国に依存する。日本経済におきまして、あるいは食糧が足りない場合においては、アメリカから食糧をもらう。こういうふうに占領下におきましては、外国の力に頼るということは、これはもちろんでありますけれども、いよいよ日本講和條約を結んで、独立を確保するという場合には、日本の将来の運命について日本自身責任を負担しなければならぬ。独立と同時に、独立を確保する責任は当然日本人が負担しなければならぬ問題であります。従いまして日本経済自立、あるいは安定ということにつきましても、なるべく日本の力でこれをやり遂げるということが、必要であろうと思うのであります。しかしながら、まだ残念ながら現在の状態では、日本だけの力をもつては、日本経済自立を完成することは非常に困難だと思うのであります。今度のアメリカの議会に大統領が出しております教書によりますと、来年の六月までの対日経済援助ということはあるのでありますが、その後一体アメリカ日本に従来のような援助をやるかどうかということについては、まだはつきりわかつておらぬのであります。しかしながらどうしても日本経済自立を達成するためには、もちろん日本もできる限りの力をいたすのでありますが、その足らないところは、従来通りアメリカ援助をわれわれはどうしても期待しなければならぬと思うのであります。もちろん従来のようなガリオア資金あるいはイロア資金というものでなくてもいいのであります。日本が対等の立場に立つて、あるいはアメリカから借款を受ける、あるいはアメリカがヨーロツパにやつておりますような、ああいうマーシヤル案のような形における日本に対する援助でもいいのでありますが、私は講和條約後におきましても、日本経済自立が達成されるまでは、ぜひとも日本の力で足りないところは、経済の面におきましても米国の援助をぜひ希望したいと思うのであります。この点に対する大臣のお考えを伺いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 今の関税の最惠国約款の問題、まことに同感でありまして、ぜひともそうありたいと考えております。いろいろこちらできめます関税定率別表も、最惠国待遇を受けるようなかつこうで、税率をきめまして、ぜひともそういうふうにいたしたいと考えております。  次に講和條締結後の日本経済自立のための連合国からの援助でございまするが、これもお話通りでございまして、今までのガリオアイロアというふうなものでなくても、やはり外資導入のかつこうによりまして日本産業合理化あるいは発展に資するよりな援助は望ましいことと考えております。何もただでもらうという意味でなくとも、やはり政府政府借款とか、あるいは民間の資本投資ということには努めて行きたいと考えております。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 現在は先ほど申しましたようなガリオアイロア資金ということで、アメリカ陸軍省占領費の一部として日本援助しておるのでありますが、この現在の対日援助というものはすべて物により——食糧とか原料とか、そういう物によつて日本に与えられておるのでありますが、もし講和條約ができまして、この対日援助の形がかわりまして、先ほど申しましたようなあるいは経済上のクレジツトとか、あるいはマーシヤル案によるような援助ということになりますと、これは物でなくて資金援助ということになるかもしらぬと思うのでありますが、今日日本の最も必要なものは、資金よりもむしろ物であると私は思うのであります。でありますので、私は講和條締結以後におきましても、もしアメリカ日本援助を与える場合におきましては、なるべく金でなくて物によつて援助をしてもらいたい。そうして重要原材料輸入を確保するということにしたいと念願するのでありますが、私は講和條約に関連して、別に日本アメリカの間に、何か経済協定というものができて、こういうふうな面を規定されることと思うのでありますが、私は講和條約以後におきましても、金でなくて、物で援助してもらうというふうにしたいと思うのでありますが、この点について大臣のお考えを承りたいのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 今お話通りに、売手市場になつておりますから、一応その点借りた方がけつこうだと思います。しかしこれはやはり国際情勢の変化によりまして、しかもまたポンドドルコンヴアートができるようになつて来ますれば、必ずしも物でなくともいいのではないか、やはりそのときの情勢によつて物であつたり金であつたり、適当な方法でやつて行けるようにいたしたいと思います。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 この対日援助の問題は以上をもつて打切ります。  次に連合国にある日本人の資産、財産の問題について伺いたいと思うのであります。今度のアメリカの対日講和原則によりますと、連合国にある日本人財産原則として連合国がこれを保有する、英語ではホールドということになつておりますが、これは一体一時的に保有するのか、あるいは永久にホールドするのかわからないのでありますが、とにかくこの案には連合国の領域内にある日本人財産連合国がこれを保有するということにしております。そこで私は特にお伺いしたいのは、アメリカにある日本の個人あるいは法人の私有財産の問題でございます。この外国にある私有財産の問題は、いろいろ問題もあるのでありますが、戰争の場合におきましても私有財産は尊重するというのが、戰時国際法原則であります。それからまた講和條約の例を見ましても、たとえばイタリア講和條約の例を見ましても、アメリカあるいはイギリスあるいはブラジルというような国は、イタリア人私有財産は返しておるというような前例もあるわけであります。今度のアメリカの腹案によりましても、原則としてこれを保有するということであるのでありまして、例外があるということを認めておるのでありますが、私は特にアメリカにある日本人私有財産というものは何とかして日本に返してもらうようにお願いできないものであろうか、こう思うのであります。と申しますのは、先ほど申しましたように、日本に対するアメリカ経済援助というものはだんだん減つて来るというわけで、日本の方ではぜひともアメリカ外資導入というふうなことを考えておるわけですが、この外資の導入よりまず日本人財産——これはアメリカ人の負担にはならないのでありまして、戰争中凍結された日本人私有財産を、全部でなくてもいいから何とかして日本へ返してもらうようにできないものであろうかと思うのであります。大蔵省におきましては、アメリカにある日本人私有財産については、はつきりした数字があると思います。これはアメリカが戰時中アメリカの戰争請求法律というものによりまして、凍結されておるわけでありますが、こういうものはひとつアメリカの好意的考慮を促しまして、ほかの連合国、特に日本にあまりいい感情を持つていない国は別ですが、アメリカだとかその他日本にいい感情を持つて、特に日本経済的に援助しようという気持を持つておる国に対しましては、日本人私有財産日本に返すように話ができないものかと思うのですが、この点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカにおきまする日本人私有財産は、お話通りに凍結せられておるのであります。特別方法によりまして、その凍結せられた資産のうちから、戰争によつて被害を受けた傷痍軍人その他に慰藉金として払われておるやに聞いておるのであります。私といたしましては、お話通りに戰時国際公法からいつて、それがどうかという疑問の点もありますし、またアメリカの好意に甘えましてそういうことのないように、前の所有権者に返していただくように努力はいたしますが、今の状態は凍結されて、その資産の一部からいわゆる戰争の被害者に対しましての慰藉金が払われておるやに聞いておるのであります。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 参考のために伺いたいのですが、アメリカにある日本人私有財産は、全部で大体どのくらいありますか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 これは調査はいたしておりまするが、正確な数字はわかりません。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 大蔵大臣に対する質問は、以上をもつて打切りまして、次に通産大臣に対する質問をいたしたいと思います。  朝鮮の動乱がだんだんと激化いたしまして、その結果として日本と中共との貿易はあまり多くを期待できない状態なつたことは御承知通りであります。そこで今後の日本貿易発展のためには、どうしても日本世界の民主主義諸国との間の貿易発展ということ以外には、日本貿易発展は期待できないと思うのであります。特た民主主義諸国の中で、日本アメリカとの経済提携と申しますか、これが日本貿易の大きな軸になると思うのです。そこで日本アメリカとの貿易でありまするけれども、戰事前におきましては、日米貿易というものは相互補助的な関係にあつて日本からは生糸を輸出し、アメリカからは日本に綿を輸出する。同じ繊維でありますけれども、日本は生糸を輸出し、アメリカは綿を輸出するということによつて、相互補助的に日米の貿易というものがあつたのであります。ところが今日におきましては、アメリカから日本に対する輸出は非常に多いのですが、日本からアメリカに対する輸出は非常に少く、ある程度貿易になつておるということであります。しかしほんとうに両国間の貿易関係を増進するためには、やはり相互補助的に——一方的でなく相互補助的になることが私は理想と思うのでありますが、通産大臣は、この日米貿易の将来に対しまして、これを相互補助的にするような名案があるかどうか、伺つてみたいと思うのであります。
  22. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答え申し上げます。御説の通りアメリカは相互的にぜひやつていただきたい。現在でも片貿易になつておりますけれども、わが国の商品の宣伝をいたして、そうして商品の品質をよくしたならば、今以上に貿易はできはせぬか、多少のクレームがありまして、いろいろ問題を起しておりますが、こういうものを除去することが一番いいと思つて現在努力しております。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 日米貿易をさらに増進することはもちろん必要でありますが、さらに私は、この日本貿易の面で最も大事な面は、やはり東南アジアとの貿易だろうと思うのであります。最近中共との貿易がほとんど杜絶の状態になつて、従来の中共貿易アメリカとの貿易の方に切りかえられておる。従来中共の方から輸入していた鉄鉱石あるいは粘結炭というものは、今度はアメリカから供給を仰ぐというように、日本の原料供給の国がアメリカの方に切りかえられておるようであります。ところがアメリカにおきましては、どうも資材のコストが高いと私は思うのであります。中共とかあるいは東南アジア地方に比べて、アメリカから生産されるそういうものはコストが高い。のみならず、こういうものは全部アメリカの東海岸にできる。従いましてこれを運ぶには、船がアメリカの東海岸まで行かなければならぬ。私が專門家に聞いたところによりますと、日本から中共もしくは東南アジアに船を持つで行つて運ぶ場合と、日本が船を持つてアメリカの東海岸から物を持つて来る場合と比較いたしますと、期間が三倍くらいかかる。従つて船腹が三倍以上必要である。こういうことになつて、船運賃もかさむ。従いましてどうしても日本アメリカから原材料輸入する場合におきましては、原料のコストが非常に高くなつて来る。将来日本が大いに国際場裡に発展するためには、なるべく原料のコストを下げるということがどうしても必要だと思うのでありますが、そういう点からいたしまして、私は日本の原料を入手するところは東南アジアに求めなければならぬ。コストの安い、しかも船賃の安い、距離の近いところの東南アジアに原料供給の土地を求めなければならぬと思うのでありますが、その点について通産大臣のお考えを伺いたいと思います。
  24. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お話通り、中共の貿易がとまりまして、原料の人手がなかなか困難であります。ことに中共から来ておりましたものの大部分をアメリカに依存しているような状態でありまするが、戰前におきましては、そのうちの鉱石のごとき、あるいはその他のものは東南アジア諸国から輸入しておつたのであります。船腹も三倍以上になることはお話通りであります。何といたしましても東南アジアから原料を入れることに努力したいと思います。ことにマレーのごとき、あるいはインドのごとき、これに多数のわれわれの要する原料がありますので、これらの国の原料を入れることに努力したいと思います。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 世界的な軍備拡張の情勢からして、世界的に原材料は不足しておる。日本が今後ともアメリカから原材料の供給を仰ぐにいたしましても、アメリカ自体が原材料に不足を来す場合もわれわれはある場合には考えなければならぬのであります。従いまして日本の必要とする原材料は、なるべく多く東南アジアから供給を受けるようにしなければならぬと思うのであります。ところが残念ながら東南アジアにおきましては、そういう資源はありましても、その資源の開発がなかなかうまく行つておらぬ状況であります。もしこの資源の開発を十分にするならば、私は東南アジアにおきましては、そういう原材料相当多量に産出されると思うのであります。ところが従来いろいろな関係で、あるいは資本がないとか、あるいは技術がないとかという関係で、東南アジアの開発が遅れておるのであります。そういうわけでイギリスあるいはアメリカにおきましても、東南アジアの資源の開発につきましては、いろいろと考えておるようであります。あるいはアメリカの未開発地開発計画、あるいはアジア・マーシヤル・プランによる東南アジアの経済開発を考えておるようでありますが、私は世界的に原料不足の現在におきましては、東南アジアの資源を開発して世界の原料不足を補う、たとえて申しますと、東南アジアをして世界の民主主義陣営の原料の供給地にする、こういうふうな大きな構想から、これは世界の国々が協力をして、東南アジアの経済開発、資源開発に努力すべきであると思うのであります。日本といたしましても、もちろん十分の資金はないのでありますが、あるいは技術の面において、あるいは生産財の面において、世界の民主主義諸国と協同して、東南アジアの資源の開発に参加し、そこから日本の必要とする原材料の供給を仰ぐというふうに持つて行くことが、日本のためにもいいことでありまして、これは世界全体のためにも非常にいいと思うのであります。最近アメリカの議会などでも、東南アジアの経済開発をすべしという、あるいは東南アジアと経済同盟を結んでやれというような、いろいろな案も出ておるようでありますが、私は講和條締結と並行しまして、ぜひアメリカも本気になつて東南アジアの経済開発に乗り出してもらうように、これがアメリカのためであり、日本のためであり、世界の民主主義陣営のためでもあるという大きな見地から、ひとつアメリカは思い切つた資金を出して、東南アジアの開発に乗り出してもらう。日本におきましても、できる限りの範囲におきまして、技術の面あるいは生産財の面においてこれに協力できるのでありますから、そういうふうな大きな点から世界の原料不足を補う、もちろんそれは十分完全に補うということはできないでありましようが、できるだけ世界の原料の不足を補うという見地から、世界各国が協力して東南アジアの資源開発に努力をする、こういうふうにぜひしてもらいたいと思うのでありますが、政府におきましてもひとつそういう大きな観点から、アメリカに対して東南アジアの経済開発に格段の努力を払うように言つてもらいたいと思うのでありますが、これに対する通産大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  26. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 御説の通り、東南アジアの資源開発は、わが国にとつて最も必要なことであると思います。現在のように原料の輸入をその都度やるということは非常に不安を感じます。私としましては、何としてもある期間は安心して輸入のできる契約ができるようにいたしますのには、今のお話通り、わが国から開発に援助をする必要がある。技術的にも、またある形式による資金の注入をしてやることが必要であると考えております。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 最近発足いたしました日本輸出銀行でございますが、この銀行をつくりました趣旨は、いろいろな生産設備を東南アジアの方面に輸出する場合に、資金の融通をするという考えで、生産財の輸出を促進するということが主たる目的になりまして、日本輸出銀行というものができたと私は思うのでありますが、私が今申しましたような、東南アジアの資源を開発して、日本の必要とする原材料をそこに求めるという見地から、この輸出銀行などの運営方法もそういうふうな面でひとつ考えてもらいたい。ただ日本の東南アジアに対する輸出の増進ということももちろん必要でありますが、東南アジアの資源の開発、そうしてできた原材料日本に持つて来る、そういう趣旨から、この輸出銀行などの運営も、今後はそういうふうな見地からしてもらいたいと思うものでありますが、これに対しまして通産大臣のお考えを承りたいと思います。
  28. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの御説ごもつともであります。輸出する前に原料の輸入が必要でありますので、輸出に関連したるものに対しては輸入品に対しましても輸出品同様に考えてもらうことを希望しまして、その点に努力するつもりであります。
  29. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけ通産大臣にお伺いしたいのでありますが、それは日本の海外経済事情の調査の問題でございます。従来よく言われるのでありますが、日本貿易は盲貿易である、世界経済事情も知らずに貿易をやつているというわけで、盲貿易であるということが各方面から言われておつたのでありますが、いよいよ日本講和條約を締結して、全面的に国際経済日本が溶け込んで行くという点から申しますと、今の日本の持つておるような海外の経済情報というものでは、これはきわめて不十分でございます。もちろん講和條約ができまして、世界各国日本の在外公館ができ、また日本の各商社、銀行の支店ができるということになりますれば、海外の経済事情に対する情報というものも相当つて来ると思うのであります。私は特にこの機会に通産大臣の御注意を促したいと思うのでありますが、そういう日本の海外の経済事情調査に関する特別の措置をひとつ考えてもらいたい。現在でもある程度政府資金も出しまして、海外経済事情調査組織ができておるわけでありますが、ああいう貧弱なものでは、私はとてもいかぬと思うのであります。現在イギリスがやつておるような非常に大規模の海外経済事情調査機関をつくり、そうして日本の、海外の経済事情に対する盛んな的確なる情報を握る、そうして臨機応変に日本貿易をやつて行くということはぜひとも必要でありますが、ぜひひとつ通産大臣におかれましても、今やつているようなああいう貧弱な日本の海外経済事情調査機関でなく、この機会に大幅に拡大強化して、講和條締結後の日本貿易の進展に対処するようにお願いしたいと思うのでありますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  30. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お説の通り、ただいまの盲貿易を早く終らせ、最も有効に外国の事情を調査して貿易に資したいということは、かねて考えておるのであります。先刻お話の点は、もう少し大きくするという考えで多額の予算を組みましたが、それも国家予算の関係上程度がありまして、今後ああいうものを最もよく指導し育成して行く、また幸いに定期航路も開かれることでございますので、そういうものも利用して調査を進めて行きたいと考える次第であります。
  31. 北澤直吉

    北澤委員 通産大臣に対する質問は、以上をもつて打切りまして、次に安本長官にお尋ねしたいと思うのであります。先ほど大蔵大臣に対する質問の中でもちよつと触れたのでありますが、日本経済で最も脆弱な面は、日本農村経済にあると思うのであります。日本がいよいよ温室的経済を出て、世界経済の荒海の中に日本が出て行くということになりますると、この日本経済の脆弱な面が最も大きな影響を受けると思うのでございますが、この講和條約を締結しまして、日本が全面的に国際経済に入つて行く場合の日本農村経済に対する政府のお考えをまずもつてつておきたいと思います。
  32. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えいたします。お話の点はごもつともであります。経済が復活して、商工業関係が殷盛になる場合において、常にいためられるのが農村であります。それにつきましては、今後の情勢に即して、できる限り農業経営、農村の生活に必要なる外から入る物資の生産を増強して、数量を増加して、これが価格の安定をはかることが一つの問題であります。  同時に常に遅れがちの農村における生産性の高揚ということが一番重点であると思います。決して農家というものは、物の価格、農産物価格の上昇のみ願うものでなく、單位生産量というものを高める。いわゆる生産性を高めることによつて収入を得せしめるということが必要でありますので、この点につきましては、絶えず申し上げておるように、土地改良あるいは病虫害の駆除、予防等、積極面における土地の生産性の高揚についての施策を行うことが等二点であります。  第三は、やはり農家における作物に対する考え方について、国際経済に結びついた以後は、もう少し考えを及ぼす必要がある。もとより食糧における自給度の高揚は必要でありますけれども、常に日本の脆弱なる農村面というものは、食糧生産にのみ重きを置いていた。もう少し換金作物としての作物の生産をなしつつ、そうして貿易原材料をつくり、あるいは鉱工業生産の原材料をつくるという面の収入の増をはかる、このことは土地の生産性の高揚と常に関連しておるわけであります。單位面積における生産数量、生産を高めることによつて日本の土地は換金作に向けて行くということによつて、農家所得の増ということを考えるべきでありましよう。  もう一点は過去における経驗から見ましても、脆弱なる農村における経営については、対経済及び農業経営の問題でありますが、農村における協同組合的の相互共助的の団体の育成、これによつて農村経済相当大きに部分を外に向つて守るという行き方が必要である。その他いろいろ輸入政策その他がありますが、中心はそこに置かるべきだと思います。
  33. 北澤直吉

    北澤委員 国際経済に全面的に入つた後の日本農村経済に対するお考えは一応わかつたのでありますが、先ほども申し上げたのでありますが、その日本経済の脆弱な面に対して国際経済に入つた場合のそれとの調整の問題、これは先ほど申し上げたのでありますが、その中でいわゆる補助金の政策があるのであります。結局日本経済世界経済との間のアンバランス補助金の形において調整する方法があるのでありますが、政府のこれまでの考えによりますと、補助金はだんだんやめて行く、二十六年度、来年度予算においては主食については輸入補給金をやるが、他のものに対しては補給金をやらぬということに大体なつておりますが、政府におきましてはこの補助金政策というものは、主要食糧以外は将来ともこれをやめて行く、このために補助金政策をとらない、別の方法日本経済の脆弱の面を保護するというお考えでありますか、その点をお伺いしたいと思います。
  34. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話補助金政策の問題でありますが、これはあまりにも戰争前の農村政策におきまして何もかもが補助金政策が多過ぎたのであります。そのことは結局農村を弱め、農村を依頼的にさせたわけであります。原則としては一つ一つのものについて補助金政策をとることはよほど再検討してよいと思うのであります。むしろ大きく土地の生産性を高める意味において農家の個々が負担し得ないようなものについて国家の投資をするという大きなところに集中して行くべきであると思います。もう一つの点はあなたが御指摘になりました通り輸入食糧についての補給金の問題でありますが、これは一面においては農村政策であるが、他面においては大きく国家国民に対する食糧政策の面であると思います。農村政策と食糧政策、一般国民に対する関係と、常に考えを関連せしめつつやらなければなりません。こういう面においてはある程度考えられると思いますが、原則的にいえば、こまかいところまで一つ一つ補助政策で行くということの原則は再検討せられてもつと大きな立場において考えられて行つてしかるべきと考えます。
  35. 北澤直吉

    北澤委員 先ほども触れたのでありますが、国際経済日本経済とのアンバランス調整する方法として物価政策、価格政策というものがあると思うのであります。現在においては、世界物価と日本物価との間に相当の較差があると思うのでありますが、これがいよいよ講和條約を結んで日本経済が全面的に世界経済に入つて行くということになりますと、この日本の物価と世界の物価との開きというものが、だんだん縮つて行く、これは当然の勢いと思うのであります。政府講和條約以後の、つまり日本経済が全面的に世界経済に入つて以後の日本の物価政策について、一体どういうお考えを持つておりますか、この点もあわせてお伺いいたしたいと思います。
  36. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように今後の経済としては当然に国際経済と結びついて参るのでありますから、日本の国民生活の上からいつても、日本経済の復興の上からいつても、必要なる原材料を外に求めておる場合においては、その間においての国際的な価格によつて、それが支配される。従つてそれから生ずる生産物の価格が相当影響を受けることも、これは当然だと思います。そういう場合において価格の上昇の程度でありますが、これが非常な価格の騰貴になる場合におきましては、それに対するある程度の考慮を払わなければなりますまいが、しかしその場合におきましても、物の量の関係でありまして、必要量が相当に入つて来てそれから製造される生産物の量がふえる、しこうしてその間において適当な価格において原材料国際的な価格がコストとして反映する分においては、私はあまり心配はないと思います。それだけ原材料が入つて日本の生産工業というものが、回転率が多くなればなるだけ、それだけ日本経済というものが上昇するのであります。その間において多少の騰貴がありましても、それに沿うところの賃金関係等の好影響が出て参りますので、それは心配はいらないと思う。しかし今日の一時的の、と申しますか、ある程度長い期間がかかるもしれませんが、国際的な価格と申しましても、それが軍拡競争に伴う、買いあさりに伴う思惑的な関係から入つて来ているものについては、これはある程度私は押えなけれだならぬと思う。もう一つは日本に大部分が生産される食糧日本固有のもの等についての価格の影響は、外国から輸入される物品からの影響というものは比較的少ないと思います。全然なしということはできませんが、そう大きなものはないと思います。それらに対する処置はここしばらくまだない、かように考えております。
  37. 北澤直吉

    北澤委員 次に安本長官にお伺いしたいのですが、政府におきましては自立経済審議会というものをつくりまして、一月の二十日に自立経済審議会の報告書というものをお出しになつております。これによりますと、昭和二十八年度までに日本経済自立を達成するという日本経済自立に関するブルー・プリントがここに示されてをるわけでありますが、これによりますと、日本輸入の問題でありますがが、先ほども通産大臣に伺つたのでありますが、なかなか日本輸入の問題は大きな問題であるという話であります。この自立経済審議会の報告書によりますと、昭和二十六年度には輸入が十五億ドル、二十七年度が十六億ドル、二十八年度は十七億ドル、そういうふうになつておりますが、こういうふうな日本の二十六年度、二十七年度、二十八年度の輸入計画というものが出ておるわけであります。これは政府においてどういうふうな根拠でこういうふうな見通しを立てたのでありますか、これは確実にこういう輸入ができるという見通しでありますか、その点を伺つておきます。
  38. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えしますが、その計画につきましては、審議会の報告書の冒頭に断つてありますように、大体の目標は従来考えられておる二十八年後半期において援助資金が打切られるということを前提としておる。今日までの経済は御承知通り輸出入のアンバランス、その赤字を援助資金によつてまかなつておるわけでありますから、その差額というものを打切られた以後において自給し得る程度に内地の輸出を上げて、受取勘定をふやす。そこにつじつまを合せようというのが一つの目標であり、一面においては、同時にその当時における国民生活水準を、今日より一割増の九〇%近くに持つて行くということを眼目として定めてあるのであります。従つてそれだけの輸出入、国際水準のバランスをとり得るためには、日本国内における輸出品その他鉱工業生産をどの程度まで持つて行くかという目標が出来たわけでありますが、しかもその産業の目標たるや、かたわになつてはいけませんので、結局各産業を通じて、調整ある形に伸ばすという関係において、おのおの多少調整がとつてあります。そういうことが目標であります。しこうして最終の目標としては、その生産をそこまで高める上について最終の必要点は、一面からいえば、できなければ障害になるというのが電力の問題と資金の計画であります。これがその計画の内容であります。
  39. 北澤直吉

    北澤委員 この報告書によりますと、アメリカ日本に対する援助は、来年の七月までのアメリカの会計年度では一億八千三百万ドル、それから来年の七月から再来年の六月までが一億ドル、その次の一年間が一億ドル、こういうふうに二十八年度まで、アメリカ日本に対する援助があるような前提のもとに、これは立つておるのでありますが、これは一応日本としてそれを希望するということでありますか。それともそういうふうなある程度のはつきりした根拠があるのでありますか、その点をお伺いしたいと思います。
  40. 周東英雄

    ○周東国務大臣 できるだけ早くお世話にならずに自立ができることを望むのでありますが、ただいま申し上げましたような一応の目標を立てて推算いたしますると、やはり来々年まで少しの援助は必要とするという一つの目標であります。もとより従来の予定にいたしましても、来々年までで打切られることになつております。しかもその金額は別にきまつておるわけではありませんが、本年におきましても、グレイ報告がありましたが、私が臨時国会で申しましたように、ある程度日本の生産規模というものが一定目標まで拡大せられて、輸出市場における確保がりつぱにできるということを前提とするようならば、今日の輸出の伸びておる状況から、打切られてもいいのじやないかというグレイの報告があるが、それができない場合においては、考えられるということが書いてあることを申しましたが、その通り、先ほどお話になりましたように、今年も琉球、日本を通じて一億五千万ドル、大体一億三千万ドル程度がこちらに来るかと思います。大体この考え方も近似した額におちついたようであります。今後の一応の目標としての希望であります。今後の日本経済発展の仕方によりましては、これが減ることもありましようし、またもちろんもう少し何らかの形において、もらわなければほんとうに八九%の生活水準を維持しつつ、国際貸借を均衡せしむることもむずかしいということになるかもしれません。一応の目標であります。
  41. 北澤直吉

    北澤委員 この経済自立計画の中にいろいろ重要な問題がたくさん含まれておるわけでありますが、その中でも私の特に重大と思いますのは、これは皆さん御承知のように、日本の船腹の増強の問題でございます。この船腹の増強につきましては、国内における新造船の問題と、それから外国の船を買うか、あるいはこれを用船する、チヤーターするというふうな問題があるわけであります。この新造船の問題につきましては、この委員会におきましても、いろいろ論議になつておりますので大体了承いたしてございますが、外国船の買用船の問題、外国船を買う、あるいはこれをチヤーターする、この買用船の問題は、一体どういうふうにお考えでございますか。最近の新聞によりますると、ちらほら外国の船を買うというような問題も出ておるわけでありますが、この外国船の買用船の現在の状況、将来の見通しの問題につきまして、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  42. 周東英雄

    ○周東国務大臣 船舶増強ということが輸入を確保する最大の要点になつておることは、お話通りであります。先日も出ましたので、ついでにこの際申し上げておきますが、新造船について、第六次の計画は大体十七隻ですか、これは貨物船ばかりで、すでに二十五年末並びにこの一月中に着工を終りまして、今日は六次の追加として七隻の計画をいたし、資金の手当をしておりますが、このうちタンカー一隻、貨物船五隻、これは三月末までに着工を終るという予定にいたしましております。それから改造の問題であります。A型船舶の改造は大体十一隻、このうちすでに六隻、四万四千トンくらいでありますか、これはすでに準備を完了しております。その他タンカー船九隻でありますが、この中の六隻も改造の準備を終つております。  次に御質問の買用船について民間でやつておりますことは、すでに一月中に買船の話のまとまつたのが七隻であります。二月中に話が進行して確実であると確約できるであろうというものが十一隻あります。なお引合い中のものが十隻あります。用船につきまして、今大体話がまとまりそうなのが五隻、こういう状況であります。
  43. 北澤直吉

    北澤委員 以上をもつて安本長官に対する質問を打切りまして、次に文部大臣にお尋ねいたしたいと思います。いよいよ国民待望の講和條和も本年中には締結され、それが効力を発生する段階に入つたのであります。これによつて日本は完全に独立するわけでございますが、こういうふうに日本が今までのような被占領国の地位を脱しまして、完全な独立国として世界発展をして行くということになりますと、まずもつて大事なことは、日本人独立心と申しますか、自立心と申しますか、自分で立ち上る精神、気慨でなければならないと思います。終戰後五年間、日本連合国占領下にあつて、とにかく日本の安全は連合軍に依存する、日本経済が惡ければ、外国から食糧を持つて来てもらう、こういうふうに何から何まで連合国に依存しておるようなこの五年間の経験から、ともすれば日本の人たちが、外国に依存する、こういう他力依存の思想が非常に強くなつて来たわけであります。そうでなくても、日本は長い間徳川三百年の封建制のもとにあつて、ともすれば事大主義が強く、強いものに頼る、長いものには巻かれろとか、泣く子と地頭には勝てぬというような他力依存の思想が、日本人の間には多いのでありますが、いよいよ日本講和締結しまして、完全な独立国となる場合には、どうしてもこういう他力依存の思想は一掃しなければならないと思う。こういう状態が長続きしますと、特にここにおられるようなりつぱな方々は別でありますが日本の青年諸君、若い人たちがこの他力依存の思想のとりこになるというと、日本はいつまでも植民地的な状態になるわけであります。どうしてもこの機会に日本の文教方面におきまして、日本人独立心と申しますか、愛国心と申しますか、そういう気持を大いに涵養するように、文部大臣に特にお願いしたいのでございます。それにつきましては、いろいろの方法があろうと思うのでありますが、まずもつてそういう点に対して、文部大臣の構想の輪郭なりともお聞きいたしたいと思います。
  44. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。私もただいま申されたことにはしごく同感でございます。日本人日本人たる自覚を忘れてしまうということではならない、どこの国の人間だかさつばりわからぬというようなことでは困るということを私は考えまして、それで国旗を立てるとか、国歌を歌うということを、子供からやらせることがよいという考えなのでありますが、しかしそういう考え方は、決して世界的ということと矛盾することではない。国家的ということと世界的ということは矛盾するという考え方が非常に間違つたことであつて、それは具体的な例を申し上げてみましても、たとえば福澤諭吉であるとか、あるいは内村鑑三であるとか、あるいは最近の湯川秀樹というような人たちを見ても、実にすぐれた日本人であつて、しかもすぐれた世界人である。日本的ということと世界的ということが矛盾するという考え方が非常に間違つておるのであつて、私はすぐれた日本人は同時にすぐれた世界人でなければならない、そういう考えをもつて教育をいたして行きたいという考えでございます。
  45. 北澤直吉

    北澤委員 ところが終戰以来五年間の占領行政の結果、日本の人たちが、これは言葉が惡いかもしれませんが、去勢されたような状況になつておる部分もあるのであります。日本の国はどうしてもわれわれ日本人が守るのだ、命を捨てても日本国はわれわれが最後まで守るのだという愛国の精神がなければ、せつかく日本独立を回復しても、日本の将来というものについて、われわれは考えなければならぬ問題が多々あると思うのであります。各国独立運動の歴史を見ましても、たとえばアメリカにおきましても、イギリスと戰つてアメリカ独立を確保しておる。あるいはインドにおいても、フイリピンにおいても、あるいはお隣の中国においても、民族の独立のためには、みな血を流して戰つておるわけであります。私はやはり日本におきましても、日本が完全な独立を確保し、日本民族の存立を確保するためには、日本人自身が血を流してもこれを守る、確保するという覚悟がなければならぬと思うのであります。そういう点から申しますと、どうしても日本人の愛国心と申しますか、そういう自分で立ち上る精神というものを涵養することが、私は最も大事だと思うのであります。ところが日本の一部には、あるいは今でも、日本安全保障は全部これを国際連合にまかせる、全部安全保障は他人まかせで、自分は中立、手をこまねいて、日本の安全を守つてもらう、こういう考えがあるように思う。しかしこういう安易な考えでは、とうてい私は日本の国をみずから守るという精神は養い得ないと思うのであります。私はこういう安易な、他人に全部まかして自分は中立を守るという思想を一掃しないことには、日本人の愛国心というものは涵養できないと思うのであります。これについて大臣のお考えを承りたいと思います。
  46. 天野貞祐

    天野国務大臣 愛国心ということは非常にむずかしいことであつて、愛国心というのは、私がただいま申しましたように、同時にそれが世界的な精神というものと合致していないといけないのであつて、ただ狂熱的な愛国心というようなものでは、ほんとうに日本の国を守つて行くということもできないと思うのです。そういう意味で私は愛国心というものは、それが排他的な、一種の狭い考えになるというようなことがあつてはならない、どこまでも、ただいま申したように、世界的ということと合致するような愛国的精神でなければならないという考えであります。そういう考えに立つて、この日本という国をどこまでも守つて行くことができると自分は考えております。
  47. 北澤直吉

    北澤委員 大臣のおつしやるように、狭い意味の愛国心でなく、とにかく国際社会の一員としての日本国の国民であるという広い意味の愛国心というものを養成するように、ぜひともひとつ大臣の御努力をお願いしたいのであります。この間、ダレス特使が工業倶楽部の日米協会の午餐会で述べられた中にも、世界の国民はアンビシヨン——希望を持つ権利があるというような言葉があるのでありますが、民族の将来、あるいは民族の発展というものにつきまして希望を持ちながら、自分で自分の国を守つて行くという思想を、特に日本の青年の間に涵養するように、文教の面において格段の御努力をお願いしたいと思うのであります。そこで問題は、今日盛んに愛国心とかあるいは自立心というものが強調されておるのでありますが、終戰後五年の間、ともするとこういうふうな日本の民族思想というものを、故意に抑制する——決して愛国心というものは惡くないのでありまして、ただ愛国心が惡用された結果、ああいう戰争になつたのでありますが、正しい意味の愛国心というものは絶対必要なのであります。そういう正しい意味の愛国心も、終戰以来五年の間に、ともすると押えつける、抑制する傾きがあつたようであります。あるいは学校の教育におきましても、日本の歴史を直すとか、そういう民族の希望を押え、国民の愛国心を押えるような教育が、今日まで行われておつたような傾きがあるような印象を受けるのでありますが、大臣はこれについてどういうお考えでありますか、承りたいと思います。
  48. 天野貞祐

    天野国務大臣 戰前あるいは戰時中、非常に片寄つた愛国心というものが主張されたために、その反動として今申されたような点があつたかと思われます。私は、もつと中正な意味の、中庸を得た意味の、ほんとうに愛国的であることが同時に世界的であるというような意味の愛国心を涵養したいという考えでございます。
  49. 北澤直吉

    北澤委員 大臣のおつしやるように、正しい意味の愛国心を養成するということが最も大事であることは、御同感であります。そこで伺いたいのでありますが、一つの国の存立を守つて行くためには、やはりその国に民族の精神的の中枢というものがなければならぬと私は思います。戰前の日本には、皇室というものがあつて、これに対する忠君愛国の思想があつた日本全体の国民の間に皇室という一つの精神的中枢があつて日本国の団結、統一が保たれておつたのであります。よその国の例を申しましても、現在中共におきましては、共産主義と申しますか、新三民主義と申しますか、こういう思想があつて、その上に毛沢東という中枢がある。ソ連においては共産主義がある。もちろんこれは共産主義は看板だけでありまして、実際は民族主義でありますが、その上にスターリンというものがおる。こういうふうに、各国とも精神的中枢というものがなければ、その国の統一なり、その国を守り得ないと思うのでありますが、そういう点から申しまして、どうしても日本にも、今後日本独立を守り、日本の将来の発展を確保するためには、やはり国民の精神的の中枢というものがなければならぬと思うのでありますが、こういう点について文部大臣は、いかなるところに日本国民の精神的中枢を求めんとするのでありますか、伺いたいと思うのであります。
  50. 天野貞祐

    天野国務大臣 日本には依然として象徴としての天皇というものがあられて、それが国の中心をなしております。われわれはある意味では非常に有利な位置に立つておるのであつて、東洋文化という非常に理解しにくい文化は、私どもには自分らに直接な、理解できるものであり、その上に西洋文化というのは割合、理解しやすい文化であるから、東西文化の融合という大使命を日本はになつておると思うのであります。
  51. 北澤直吉

    北澤委員 大臣のおつしやるように、正しい意味の愛国心を涵養するというわけでありますが、そこで具体的にいかにして日本人の愛国心を涵養するかというその方法論に入つて来るわけであります。このためには、まずもつて日本が必要なことは、現在のような占領状態を脱却して、完全な主権を回復する。そして日本人から見て守りがいのある日本でなければ、ほんとうの愛国の思想というものは起きないと思うのであります。そこでまずもつて大事なことは、一日も早く講和條約を結んで、日本が完全な主権を回復して、日本の国は日本人がこれを守るという形に持つて来る必要があると思うのであります。さらに必要なことは、ナシヨナリズムと申しますか、日本人の民族的思想をある程度満足させるということでなければ、私はほんとうの意味の愛国心は起きて来ないと思うのであります。そういう点から申しますと、日本の民族思想から見て最も大事なものと思うので、講和の問題におきましても、日本の領土の問題、あるいは日本経済自立の問題などは、日本の国民感情から申しましても、ぜひとも希望したいものがあるのであります。こういう問題において日本の国民の希望がある程度満足せられないということになると、いかに政府が叫んでも、愛国心の涵養を説いても、なかなか国民がそれについて行かないと私は思うのであります。日本の民族思想、民族主義、あるいは愛国心というものを涵養するためには、どうしても日本の国民にアンビシヨンが必要であります。この国民的の要望が今度の講和條約あるいはその他においてある程度満足されるということが私は必要であると思うのでありますが、この点について大臣のお考えを承りたいと思うのであります。
  52. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はただいま申しましたように、日本民族というものが非常に有利な立場に立つておる。非常に理解しにくい東洋文化は自分たちのものであり、しかも比較的理解しやすい西洋文化を取入れて行くのですから、ここに一つの新しい文化というものを世界に貢献することができる。そういう意味日本人は非常に大きなアンビシヨンを持つて、今後も立つて行くことができるという考えでございます。
  53. 北澤直吉

    北澤委員 この問題はこの程度で打切りまして、次に伺いたいのは、日本アメリカその他の民主主義諸国との間の文化の提携でございます。日本講和條約を結んで、あるいはこれと並行して日本安全保障をするために、日本アメリカ、あるいは日本とその他の国との間に、日本安全保障協定ができると思うのでございますが、しかしながら私が考えますのにいかに條約をつくりましても、そのその裏づけになる両国の精神的結合というものがなければ、これは十分にその條約の目的を達し得ないのであります。ドイツのカイゼル・ウイルヘルム二世が、條約というものは一片のほごに過ぎないということを言つたこともありますし、あるいは戰争中には、日本とソ連との間には日ソ不可侵條約があつたのでありますが、ソ連がこれを破つて対日戰に参加したのであります。こういうふうに、両国の間にほんとうの精神的の融合がなければ、いかに條約をつくつても、この條約というものは十分に効力を発揮するわけに行かぬのであります。そういう点から申しますと、日本の安全を守り、また日本の将来の経済自立をはかるためにも、どうしても日本と民主主義陣営、特に米国との間に精神的な結合というものがなばならぬと思うのであります。そういう点か申しますと、いろいろ方法はあるでありましようが、日本アメリカとの間の文化の交流ということが、この際非常に重要な問題であると私は思うのであります。戰争前は日本アメリカとの間の関係は、非常に近いようであつて実は遠かつたのであります。日本人アメリカ状態を知つている者は一小部分であり、またアメリカ人で日本のことを知つている者は、政府か実業家のごく一部しかなかつた。そういうことで日米の間の理解というものが十分なかつたのであります。これがだんだん進んで結局日米戰争に行つたわけであります。日本人アメリカ人の気心がわからぬ。アメリカ人も日本人の気心がわからぬ。お互いに気心がわからぬ。お互いの理解というものがなかつた結果、お互いにそこに疑い、猜疑心というものが起きたわけであります。終戰後五年間、進駐軍が日本に参りまして、アメリカの国民と日本の国民との間の接触が非常にふえる機会ができまして、日米の間の理解を進める上におきまして、非常な貢献があつたように私は思うのでありますけれども、どうしても日本アメリカとの関係というものは、精神的な結合というものに重点を置いて考えなければならぬ。そのためにはまずもつて文化交流というものをしなければならぬと思うのであります。例を戰争前の中国にとつてみますと、一般アメリカ人というものは、日本のことをあまり知らぬけれども、中国のことはよく知つてつたのであります、というのは、中国の各地に、あるいは山奥までもアメリカの教会なり、あるいは病院なり、学校なりがある。それからまた中国の例の団匪賠償事件によりまして、たくさんの学生がアメリカに留学した。また今申したように中国の山の中までもアメリカの教会がある。そこにアメリカ人の牧師さんがおるということで、その教会を通じまして、中国の事情というものがアメリカの津々浦々までも知られておる。こういうような関係で、アメリカと中国との相互の国民的理解というものが非常にあつたのであります。ところが日本アメリカとの間では、両国のごく一部の人しか知らないということであつたのであります。そういうことでは、今後日本アメリカとがほんとうに提携して、日本の安全を守り、あるいはまた共産主義の侵略に対して立ち上つて行くことはできないのであります。そういう点から見ましても、今後日本アメリカとの文化の提携、文化の交流ということが非常に大事であろうと思うのであります。そういう点につきまして、一体文部大臣はどういうふうなお考えを持つておられますか。この点を伺いたいと思います。
  54. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまおつしやいましたような日米の文化の交流をするということは、私も非常に必要なことだと思つております。そのためには、たとえば留学生制度の確立とかあるいは教育、学術及び文化に関する資料の交換とか、教職員、研究者その他文化関係者の交換とか、あるいは著作権の問題とか、文化アタツシエの設置とか、そういうふうないろいろなことによつて両国がよく理解をし合つて、私どももまだ大いに学ぶべきことがありますから、アメリカから多くを学ぶということが今後非常に重要になつて来ると考えております。
  55. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま日本アメリカとの文化の交流の問題をお尋ねしたのでありますが、これはひとりアメリカばかりではありませんで、日本世界の国々との間の相互理解というものを増進することが今後必要と思うのであります。  そこでひとつ伺いたいのは、国際連合の教育科学文化機構、いわゆるユネスコと称するものであります。これは世界各国の相互の理解を増進するという見地からできておるわけでありますが、幸いにしまして、ユネスコに対する日本参加の要望もユネスコの事務所で受理されまして、今年の六月の総会にかけられるということで、日本のユネスコ参加の問題は非常に明るい将来を持つておるわけであります。そこで問題は、そういうふうにユネスコに対する日本参加という問題が具体的に取上げられるような段階になつたにもかかわらず、この日本におけるユネスコの活動、あるいはユネスコ参加の問題に対する政府の予算というものは非常におそまつなものであります。こういうようにせつかく世界各国日本との文化の交流をはかり、お互いが理解を深めて、そして日本国際社会に乗り出して行くという場合におきまして、こういうユネスコに関する政府の予算の非常に少いのは一体どういうことでありすか。これは政府がこういう問題につきまして、あまり重点を置いていないというように誤解されてもやむを得ないと思いますが、その点につきまして文部大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  56. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。今までは確かにおつしやる通り非常に少なかつたのですが、二十六年度には三百万円を予算に出すように措置いたしております。確かにユネスコ運動というものをもつと私たちも強化して行かなければならぬと思つております。
  57. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけ伺いまして文部大臣に対する質問を終ります。最後は宗教の問題でございます。政府におきましても宗教の尊重ということはよく言われておるのでありますが、どうもそれが口先だけの問題に終るような傾きがありまして、実際の問題におきましては、日本におきまする宗教の問題は、あまり重要視されておらぬような印象を私は受けるのであります。私はどうしても今日のような日本におきましては、宗教というものを特に重要視して考えなければならぬと実は思うのであります。アメリカなどで民主政治というものが非常によく行つておりますのは、これは民主政治の裏にキリスト教という宗教がついておるからだと思います。アメリカ人の生活を見ておりますと、個人の生活が宗教に直結しておる。毎週日曜日には家族を全部連れて教会に行つて牧師さんの話を聞く。そこで大体人間としてなすべきことはこういうことであるということが自然と頭に入つて来るわけであります。ところが日本におきましては、昔は学校に修身科とか何とかいろいろなものがあつて、大体人の道というものを教えたのでありますが、終戰後はそういうものがない。ただ民主主義、自由平等、しかも宗教がない、宗教の裏づけがない。そうすると何をしてもいいのだ、こういうふうな気分がどうしても一般に広まりやすいのであります。こういうような宗教の裏づけのない民主政治というものは非常に危険なものであると私は思うのであります。ひとりアメリカばかりでありません。私は南方におつた経験もありますが、たとえばビルマ、シヤム等におきましては、お寺——あの辺は仏教国でございますが、個人の生活が仏教と直結しており、結婚する場合にも、あるいはお祝いする場合にも、すべてお寺でやる。ちようどアメリカの教会と同じようであります。ところが日本では宗教というものは死んだときにお世話になるものだ、生きておるときはお世話にならぬでもいいのだと思つておるが、これは非常な間違いだと思います。宗教というものはわれわれが生きておる間、この世において、われわれの個人の生活の間において直結しなければならぬ、そうして国民の道徳思想というものを養うことが一番大事だと思います。特に今日のように学校で修身も何も教えないという場合におきましては、どうしても宗教によつて日本人に道徳のある標準を与えるということが最も大事であります。そういう点から申しまして、私はどうしても今日のような日本におきましては、もつともつと宗教というものを重要視し、われわれの生活と宗教との間が直結されるような方途を、私は考えなければならぬと思うのでありますが、その点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  58. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。確かに日本の社会に宗教が十分な力を持つていないということは、これは一つの弱い点と言えるかもしれませんが、しかしまた学校では、別に宗教的なものに束縛されないで、自由にやれるという長所も持つておると思うのです。それで私は学校でも、特定の宗教の学校は宗教的な精神によつてやりますが、そうでない学校でも宗教的情操を非常に重んじるということは、教育基本法にもあることでございまして、どこまでも宗教的情操は重んじて行こうと思うのです。しかしただ国立、公立の学校等で一定の宗教を信じなければいかぬというわけには行かないと思うのです。だから宗教的情操を養うということに力を入れておるわけでございます。
  59. 北澤直吉

    北澤委員 政府におかれましても、宗教的情操を養うということでいろいろ盡力されておるようでありますが、今のところでは不十分で、どうしてももつともつとこの点に重点を置いてやらないと節のある国民はできない。終戰後の虚脱状態におきましては、日本人に節がなくなつておる、節のない竹のようになつておる。どうしても節のある竹にしなければならぬ。このためにはどうしても宗教というものにもつともつと重点を置いてまたりつぱな宗教家ほんとうに日本国民を救うというようなりつぱな宗教家が出て、日本人にりつばな精神的な基礎を与えることが必要であると思うのであります。南方の例をあげて済まぬのでありますが、ビルマにおきましては男は一生に一度は必ず坊主になります。短かいのは一週間くらい。そういうふうに一度は必ず坊さんになつてそうして訓練を受けるというふうなことがあるのでありますが、私は先ほど申しましたように、日本人の日々の生活というものと宗教との間にもつと密接な関係をつけるように、この上とも政府において一段の御盡力をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行ですが、与党の諸君の出席が少し少な過ぎると思うのです。
  61. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君に申し上げますが今やむを得ない事情のために退席した人が大部分なんですから……。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 野党の諸君もみなやむを得ない事情を持つているのですから、もう少し出席するよう努力してもらいたい。もし与党の議員の関心がないのなら、全部、野党の方にまわしていただけば十分やりますから……。
  63. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 与野党を問わず十分努力いたしたいと思います。  午前中はこの程度にとどめまして、午後は一時半から続行いたします。暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  64. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前中に引続きまして会議を開きます。  質疑を継続いたします。角田幸吉君。
  65. 角田幸吉

    ○角田委員 最初に天野文部大臣にお尋ねを申し上げたいのでありますが、大臣が御就任になつてから、非常な努力の結果文教予算が非常に多くなつたということは、教育界において非常に感謝をしておるのであります。二十六年度におきましては、六・三制建物整備のために四十三億、育英資金として二十五年度よりも五割増しの二十三億、学校その他の研究費として七十九億、これまた五割の増額をしておる。これは一に天野文部大臣の御努力であるということでひとしく教育に関係しておる者は感謝をしておるのであります。にもかかわらず、一方におきまして教育関係、ことに大学教職員に対する待遇のことについては、あまり御考慮を払われておらないじやないか、教育は言うまでもなく設備だけではなく、人というものが重大な役割を持つことは大臣承知通りであります。私は昨年の十一月号の新潮で、京都大学の吉川幸次郎教授の「学者のうつたえ」を読みまして、いかに学者が今日待遇が惡く困つておるか、御承知の東東大学の原田教授がああいう最期を遂げられたというようなことは、ほかに比較いたしまして非常に待遇が惡いためである。給与を考えるのに、年齢あるいは学歴、勤続年数というものを基準として、今日の教育界の教員の俸給の標準がきまつておるようでありますが、そのうちで学歴あるいは経驗というものを非常に軽んじておる。そうして年齢、勤続年数というものに非常に重きを置かれておる。その結果どうなるかというと、元の師範学校の卒業生が小学校の校長あるいは中等学校の校長になつて五十歳になつた先生と、大学を出て副手を経て教授になつて五十歳になつた者とあまりかわりがない。この点を一向お考えになつてくださらない。大学の教授は、一面におきましては教育公務員として、一面におきましては研究公務員としての二方面の努力をしておるにかかわらず、このことについて本年度予算などについても何ら考えておられない。こういうことを一般に言われておるのでありますが、この点につきましての文部大臣の御見解をただしたいのであります。
  66. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。ただいま申されたことは、私も非常に同感でございまして、吉川幸次郎君などは実に世界的な学者であります。年は若いですけれども、非常な学者であることは一般認められておるところでございますのに、それに対する待遇というようなものが実に惡いということは、今おつしやる通りでございます。でありますから、私もぜひこれを改めたいと考えましてそういう準備はいたしております。すなわち人事院に交渉いたしまして、ちようど司法官のような給与別表をつくりたいということを非常に熱心に私の方で研究いたしておりますから、近いうちに改善することができるようになるかと思つております。それからまた、これは直接給与ではありませんけれども、大学教授等の研究費が、二十五年度は十三億七千万円であつたのを、二十六年度の予算では二十四億を計上いたし、約十億円の増加をはかつております。これは直接に生活費ではございませんけれども、しかし大学の教授にとつて、研究費を持つておるくらい愉快なことはございませんので、そういう仕方によつて大学教授を優遇し、十分研究ができるようなふうに考えて行きたいと思います。私も多年大学におつた人間で事情もよくわかつておりますので、そういたしたいと思つております。今年十分個人的な俸給の増額ができなかつたことは残念でありますが、これをとり急いでいたしたいと考えております。
  67. 角田幸吉

    ○角田委員 今大臣から、特別俸給のことについて御研究になつて、近くこれは何らかの措置を講じたいということでありますので、それはそれといたしますが、この際天野文部大臣と、廣川農林大臣もちようどお見えになつておるので、ここに吉川教授の書いておるのをここで読み上げまして、天野文部大臣に一層の御努力を願いたい。これは決して天野文部大臣の御名誉にも不名誉にもならない事項であります。吉川教授は先ほど申しました「学者のうつたえ」の中で、こういつて最後を結んでおります。これは論語の一節を引きまして「『邦に道有るときに、貧しくして且つ賎しきは、恥なり。邦に道無きときに、富みて且つ貴きは、恥なり。』いまの日本は有道の邦なのであろうか。無道の邦なのであろうか。誰かの説に、田中耕太郎さんや天野貞祐さんが、文部大臣であるかぎり、学者の待遇の改善はなかなかむつかしかろう。何となれば、それらの人たちは、学者出身であり、あまりにも小さな数字になれた人たちである。むしろ大野伴睦、廣川弘禪などという人たちに文部大臣になつてもらつたらよかろう、という説がある。また一説では、それらの人たちは、われわれの月給を、一日か二日で使つてしまう人たちだろうから、われわれの月給を日給とまちがえて、そのままにすごすだろうという説をなすものもある。何にしても、今の日本政府に、あまり多くを期待するのは、無理なようである。そうだとすれば、かつての中国がそうであり、またヨーロツパでもアメリカでも部分的にはそうであるように、金もちが学者のうしろ立てになるべきであろう。かりにもしたとえば私に年五十万円だまつてくれる人があるとすれば、私は日本の東洋学を、もつともつと進歩させることをうけあうのだが。」こういうことが書いてあるのであります。こういうふうに言われておりますのは、これはほんとうの今日の学者の要求であることを御承知くださいまして、文部大臣の一層の御努力を願いたいのであります。  なお続いて六・三制と地方教育費の関係について一点だけ文部大臣にお尋ね申し上げたいのであります。六・三制というと何か寄付というふうに考えられております。寄付といえば、PTA、こういつたようなわけで、今日六・三制というと、何か寄付によつてまかなわれておる。こういうふうな印象がいまだ農村にはあるのであります。そしてわれわれは農村のPTAというものは寄付によつて発達し、育成されて来たのだ、こういう感すら持つておるのでありますが、非常に地方財政が困つておりまして、そこに平衡交付金が参りますが、教育費には充てないで、むしろ急ぐ土木、ごとに災害でもありますと、そつちの方に持つてつて教育費の方にまわらない、こういうのが実情であります。そこでこれは新聞で私は拝見いたしましたので、はつきりしたことは申し上げられないのでありますが、何でも文部省の調査だというものによりますと、一部十六県の調査によりますと、小学校では教育予算の七二%がPTAその他の寄付によつてまかなわれておる。中学校におきましては、六六%が寄付によつてまかなわれておる。これは文部省の調査だという新聞によつて私は見ておるのであります。実際実情が、その通り全部ではありませんけれども、そういうふうになつております。だんだん聞くところによりますと、教育委員会法の一部を改正して、たとえば予算見積り書をつくつて教育委員会の方で決定したものを知事が左右できないとか何とかいうことによるか、あるいは教育費の国庫負担、二十四年まで実施しておりましたものについて復活する方法はないか、あるいは教育税を新たに設けてこの道を講じたいといつたようなことを文部省でいろいろ考えおられるそうでありますが、この点についての文部大臣の最近の御見解あるいはその御態度等をこの際承つておきたいと思います。
  68. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやられたことは、実にその通りでございまして、せつかく平衡交付金として出されたものも教育費にまわることが少くなる。どうかして教育費を確保しようと言いまして、そういう法律案を前に、ほとんど成立しかけたのでありますが——、それも前大臣のときですけれども、成立に至りませんでした。それで私どもは、この国会にも何かそういうふうなものを提出して、この教育費を確保したいということを計画いたしております。今はそういう状態になつております。
  69. 角田幸吉

    ○角田委員 文部大臣に対する質疑はこの程度で打切りまして、これから法務総裁にお尋ねを申し上げたいのであります。  私はまず朝鮮動乱の前後における共産党の残虐的な行動について一応承りまして、最後に治安の責任者である政府において、どういうふうにこれをお考えになつているかというふうにお尋ねして行きたいのであります。  一九四六年の十月に嶺南事件が起りました。これは法務総裁も御承知のことであろうと思います。食糧が不足した、インフレだ、こういうわけで、コミゆニストの連中が農民をそそかのして、そうしてまず最初に村の駐在所を襲う。そしてピストルのようなものをとつた。それから今度は警察に行つて、いろいろの物をとつた、こういう事件がまず最初に起つた。それから一九四八年の五月に南朝鮮で国会議員の選挙があつた。そうして例の大韓国が八月十五日に成立した。ところがこの選挙に立候補された李何がしというものがおりますが、この人の家を共産党の者が襲い、立候補者の家族に対して暴虐を加えた。そうしてこの人の子供の五才と十才と十二才の者を殺して逃げた。これはあとでつかまつて死刑になつたということであります。それから問題は一九四八年の例の順天事件のことであります。これはずいぶん残虐をきわめた事件でありますが、まず学生を動員した。学生を動員して、それらに一万円ずつ金をくれた。そしてどんなことをやつたかというと、まず第一に警察官、役人、地主、そういう支配階級だと思う者の家を襲わせて、そうしてもう人語に絶するような残虐をきわめた。目玉を拔かした、皮をむいた、燒き殺した者がある、耳を切つたものがある。子供をひつぱつて、股をさいた者がある、こういうふうに残虐をきわめた。これがアメリカのライフの中に写真も出ております。これらのことによつて残虐をきわめ、残虐をきわめることによつて、初めて意気が上る、共産党万歳、こういうことで意気を高揚して行く。  それから今度の京城を中心とした問題でありますが、京城に共産軍が入つて来ますると、知識階級というものは全部拉致してしまう。この拉致の仕方が、小学校の教員といわず、大学の先生といわず、思想に関係のない技師までも、エンジニアまで根絶やしにこれを持つてつたのであります。そうしてどういうことをしたかというと、見解はこうだそうであります。共産党の社会においては資本主義社会におけるあらゆる学問というものはむだである。そういうものを一切抹殺しなければ共産主義思想、共産主義国は行われない、こういうことで拉致した、こういう事件があるのであります。さらに中には、大体今までの支配階級の女、一体この女たちを残しておくと、そういうものからまた生れて来る。それがやがて支配階級のようになる。こういうことで、十七、八才から五、六才までの女は一、二万人近くも拉致して殺してしまつた。こういうような事案が行われておるのであります。さらにこういうふうなことをやつておる。その中にこういうのがあります。これは新義州で起つた事件でありますが、料理屋だの芸者をしておるような者は、これはもう虐げられた婦人だ、こういうものを解放しなければならぬ、こういう叫びであるが、実際は、料理屋あるいは待合に一週間もみな集めておいて、凌辱の果てをきわめて、その後にこれを解放した、こういう事案もあるのであります。  さらにもう一つ最後に申し上げておきたいのは、これは一九五〇年十二月十三日から二十三日までの間のことでありますが、例の興南から釜山に十三七千の労働者が避難しております。目下はこれは巨済島におるそうであります。共産主義社会というものは労働者の味方だと主張するのでありますが、これは逆で、これらの労働者はいずれもとうていその共産主義支配下におられない、こういうことで避難をして来た。現にこれは大韓国の援護のもとに、今巨済島というところに避難をしておるというようなことを、私は各方面から情報をとつておるのでありますが、法務総裁がこのことについてお知りになつた範囲において、この際承りたいのであります。これは国民をして、共産党というものはかくのごとき残虐な行為をしておるということを知らしめることが必要であるために……。
  70. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮におきまする共産主義者の残虐行為について、ただいま角田委員から詳細お述べになりましたが、法務府といたしましては、この問題につきましては、特別に調査をいたした事実はございません。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行について…。今角田委員から質問なさつた、何か北鮮で共産軍が女をみんな殺した、資本主義の時代に生きていた女を生かしておくと、その子供はみな資本主義を考えるから、みな殺したというようなことを言われたが、その出所を私の方の参考までに調べたいと思いますから、今の事実をどういう所から調べられたか——角田幸吉氏は断定しています。聞いたとも、あるいは何の報道とも何とも言つていない。朝鮮に行つて見て来たようなことをはつきり言つている。昔から見て来たようなうそを言いということを言いますが、出所をはつきり知りたい。私の方で再調査します。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 林君に申し上げますが、林君たいへん御立腹のようでありますが、この問題はどうですか、質疑をずつと継続して、その結果こういう点が問題だということが起きたならば、そのときに発言願う。そういうことにおはからいいたしたいと思います。角田幸吉君。
  73. 角田幸吉

    ○角田委員 そこで法務総裁に承りたいのでありますが、最近「平和のこえ」なんかで検挙されたときなんかも、ラジオ放送で聞くと、武器があつた。朝鮮事件でこういうことをやつておるとき、幹部をつかまえると、必ずソ連の国旗が出て来たということも私は聞いておるのであります。今度の「平和のこえ」を検挙した場合に、幹部の中からソ連の国旗などが出て来た例があるかないか、この際承りたい。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 押収品につきましては、目下全体の報告を受けておりません。ただいま報告を受けておりまする範囲におきましては、国旗云々のことはございませんようであります。
  75. 角田幸吉

    ○角田委員 そこで法務総裁に承つておきたいのでありますが、治安維持の責任は内閣にあると考えるのであります。これは憲法上そう行くものと考えるのであります。ところが現在の警察法によりますると、また警察の運営から見ますると、公安委員会が警察を運営しているのであります。従つて政府は警察官の人事については間接的でしかない、こういうことになると思うのでありますが、それでは治安の責任を担当する内閣といたしまして不完全である。私はそういう意味から、これは公安委員の一人、少くとも公安委員長は国務大臣をもつて充てて、そして治安の責任を内閣が持つ。もつとも警察法の改正は、民主的な運営という面が強調されてあることは、警察法の前文において、全規定によつて明らかでありますが、それはほかの四人の委員によつてそれらのことができる。そういうわけで、内閣は治安の責任を担当する関係上、委員長は国務大臣をもつて充てるべきであると私どもは考えるのでありまするが、法務総裁のこの点についての御見解を承りたいのであります。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま政府といたしましては、現在の警察法に対しまして、若干の改正を加うべきでないかという点につきまして研究をいたしておる次第でございます。国家公安委員会と内閣との関係から見まして、その構成につきまして、ただいま角田委員のお述べになりましたような方向に改正するということも一つの研究の問題であると考えておりまするが、しかしこの点に対しましては、まだ政府といたしまして結論を申し上げる段階に至つておらない次第であります。
  77. 角田幸吉

    ○角田委員 その次に承つておきたいことは、自治警察と国警との関係でありますが、まず第一にお聞きしたいことは、地方自治警察は、御承知のごとく貧弱な町村におきましては非常に負担が多くなつておる。場所によりましては町村予算の三〇%が警察費用だ、こういうことである。そうしてこれにつきましては、先般来あるいは返上であるとかあるいは廃止、こういうものがしばしば出て参つたのでありますが、この問題につきまして、法務総裁はどうお考えになつておるか、どういうふうに警察法を改正するお考えであるか、このことをまず第一に承つておきたい。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察法の改正問題をただいま研究いたしておることは事実でございます。特にこの中でも大きな問題と相なつておりますのは、いわゆる小さい自治体警察と申しますか、町村におきまする自治体警察をいかに処置するかという点でございまして、この点につきましては、警察の民主化という意味合いにおきまして、でき得る限りこれを強化するということが必要でありますが、しかし実際問題として、町村が経費の負担、あるいは経営の能力というような面におきまして、この自治体警察に困つておるということも事実でありますがゆえに、もしその町村の希望がありました場合におきましては、かような町村の自治体警察はこれを国家警察に移管をする、また町村において希望した場合には自治体警察を認める、こういうようなことにするということも一案であると考えておるのであります。しかしこれはただいま一案として研究をいたしております程度でございますが、結論に達したという次第ではございません。
  79. 角田幸吉

    ○角田委員 この地方自治警察につきましては、定員の問題も問題となるのであります。これは御承知のごとく昭和二十一年度の人口できめた基準でありまして、今日におきましては、その後の人口の異動の結果、大分でこぼこができておる。こういうことについてもひとつ御考慮を煩わしておきたいのであります。全面的な改正にあたります場合には、定員の問題ということが相当の問題だと思うので、このことにひとつ御留意を願つておきたいと思うのであります。進んで国警と自治警察との協力関係でありますが、どうもこれはうまく行かないということが一般に言われております。それともう一つは、刑事訴訟法の改正も必要ではないか、こういうことが今日言われておるのであります。なぜそういうことが言われるかというと、戰時中といえどもわが国の警察官は十万越えなかつた。今日では十二万五千、それで犯罪捜査に当ると、前よりはうまく行つていない。こういうことで、そこに刑事訴訟法あるいは警察法の改正が必要ではなかろうか。これは言葉は少し行き過ぎの感はございますけれども、こういうことまで言つておるので、これは法務総裁にお考えを願いたい。国民には基本的権利があるが、官吏には基本的人権がない、こういうことを言われておるのであります。それは刑事訴訟法を通してそういうことが言われておるのでありますが、この点につきましての法務総裁の御見解をまず承つておきたいのであります。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 自治体警察の定員の問題でございますが、現在全国を通じまして九万五千というわくで縛られておるわけでありまして、今日では警察法実施当時の実情からかわつて来た都市におきまして、その定員を増加しようといたしまするためには、他の都市をかわりに減らさなければこれを実行できないという悩みがありまして、これがために警察の定員が、地方によりましては、非常に不適当になつておるところが少くないことは事実であります、この問題はこのたび改正法を研究いたしまする際におきましても、大きな問題の一つとなつておるのでありまして、ただいまの考え方といたしましては、すでに自治体が自己の財政によつて自治体警察を維持いたしまする以上は、その定員等につきましては、自治体の任意に定めるところに従つて自治的にきめさせるのが適当ではないか。全国を通じて幾らでなければならないというような自治体警察の定員の制限は、むしろ撤廃した方がいいのではないか、かように考えておる次第であります。  次に国家地方警察と、自治体警察との協力の問題でございます。従来一本でありましたところの警察が、新警察法発足に際しまして、自治体と国家地方警察の双方にわかれまして、その一つの反動と申しますか、調子と申しますか、爾来とかく自治体は自治体の独自性を主張し、またその反対に国家地方警察は、全国的な連絡の役割に当らなければならぬというようなことを主張いたしまして、双方の警察官の立場の主張が反撥し合いまして、自然感情的な疎隔対立を来し、その結果国警、自治警の双方の協力関係というものが、さような感情のために阻害されておる。これは確かにさような事実もあることと考えておるのであります。これにはもとより警察官諸君の教養を一段と高め、その本来の使命を十分に自覚してもらいまして、ひとしく国の治安に携わる警察の一翼ずつを分担しておるものであるという精神に徹して、今後協力して働こうという気持を振い立たせてもらうことが最も必要であると考えておりますが、同時に法制の上におきましても、この両者の法律的な関係を若干調整することによつて、かような傾向を助長する必要があるものと考えておるわけであります。  最後に、刑事訴訟法の問題でございますが、実施以来三年間の経験によりまして、この刑事訴訟法が、はたして今日の治安を維持する上からいつて理想的であるかどうかという点につきましては、いろいろ論議のあるところでありますから、政府といたしましても、この実施上の実際の体験を基礎といたしまして、よりよい刑事訴訟法を完成するという意味合いにおきまして、その改正の案というものについて研究を開始いたした次第でございます。
  81. 角田幸吉

    ○角田委員 今の警察の定員の問題に関連いたしまして進んで承つておきたいことは、国家地方警察費の昭和二十六年度の予算は百二十一億五千八百七十万ということになつておるようであります。そのうち教育費に四億三千四百九十三万円が使われるということは、警察官の素質向上のために、これは非常に喜ばしいことでありまして、私は非常な同感の意を表するのであります。しかしながらこれがために、こういう現象が起つておる。国警の方の三万人のうち、終始五千人ずつは警察大学に行つて教育を授けられる。そうすると、三万人の定員であるが、実際は二万五千しかない。しかもこれは幹部級であつて、非常に腕のいい人が警察大学に来ておるために、警察では治安の維持、犯罪の捜査その他について非常な蹉跌を来しておる、こういうことが一般に言われておるのでありますが、はたしてそうかどうか。もしそうだといたしまするならば、このことについてどういうふうに法務総裁はお考えになつて行くつもりであるか、このことをひとつ承つておきたいと思います。
  82. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察官の教養でございまするが、これは今日におきましては、ひとり新規に採用せられまする警察官の教育を十分に実施いたしまするのみならず、在来からの警察官の再教育ということを今日教育の非常に大きな重点といたしておる次第であります。その理由は、申し上げるまでもなく旧来の警察国家的な、中央集権の警察になれましたところの警察官を、そのまま新しい民主警察の警察官として転用いたしましたる結果、これに対しては新しい警察法の精神、またこの新しい警察法の精神を生かして、しかもなお警察本来の目的でありまする治安の確保に当るに必要なところの新しい知識並びに技術、こういつた面につきまして、従来の警察官は非常に見劣りがいたすわけでございます。これをこの機会に訓練強化するのでなければ、とうてい新しい警察制度というものは十分なる効果をあげ得ないという実情にあつたわけでございます。従いまして、教育の重点を新規警察官の教養と、それ以上に再教育という点に力を入れて参つた次第でありまして、これがために、お述べになりましたことく、警察官教育のために定員を奪われるというような事態も、事実あるわけであります。この点につきましては、警察の定員が事実上非常に減つておる。そして個々の警察官の負担する任務が非常にふえて来ておる。これはまことにお気の毒に存じておるのでありまするが、政府といたしましては、これらの点も十分に考え、また最近の実情等をも考え合せまして、国家地方警察の定員というものは、適当な時期に多少ふやすということを考えなければならぬのではないか、こういう点をただいま研究いたしておる次第でございます。
  83. 角田幸吉

    ○角田委員 なお法務総裁にお尋ねいたしておくことは、東京警視庁を国警にするお考えがないかどうか。何といいましても、治安維持というと東京、しかも警察官の数におきまして圧倒的に多い。諸外国の例によりますと、首都というものはたいてい国警になつておるのが多いようでありまするが、東京警視庁のごときも、ほんとうの治安維持のためには、国警にするのが正しいのではないか、私はこう考えておるのでありますが、法務総裁のこの点についての御見解を承りたいのであります。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 東京の警視庁というものが、首都警察といての特殊な性格を持つておるものであり、またこれに属する警察官の数が非常に大きな数に上つておることは御指摘の通りでございます。従いまして、一部におきましては、これを国家地方警察に編入する方が適当ではないかという御意見も伺つておるのでありまして、この点は警察制度の上からいつて非常に重要なる問題でございまするので、政府といたしましても、絶えず研究を続けておる次第であります。ただこの問題は非常に大きな問題でもあり、またいろいろな点においてなお研究すべき事項がございますので、早急に結論をつけるということは困難でありまして、ただいま政府といたしまして、近く提案の上御審議をお願いいたしたいと考えておりまする警察法の改正の問題の中には、さしあたりこの点は他日に譲るというような取扱いをいたさざるを得ないかと思つております。
  85. 角田幸吉

    ○角田委員 そこで私は結論的にもう一つ法務総裁に承つておきたいのでありますが、私は先刻朝鮮の残虐事件をあげたのであります。林君から出どころがどうだということを言われたのでありますが、これは私は外務省と在日大韓民国居留民団から得た材料によつて述べたのでありまして、大体そういうようなことが行われておつたということの材料を得たのであります。外務省から全部得たのではありません。居留民団からも得た材料によつたのであります。ところで一九五〇年、例の六月事件が起りましたときに、朝鮮の警察官は六万であつたのであります。あすこは人口二千万でありますから、日本との比からいたしますと、一人当り多いのであります。ところがこれらの人々はいわゆる軽武器を持つてつたのでああいう動乱が起りますと、どうにもこうにもならぬ。そこで朝鮮居留民団の人々は、ほんとうの治安の維持というものは、警察官の軽武器だけではとうていだめなんだ、重武器を持しめないとほんとうの治安の維持ができない、こういうことを言つておるのであります。そこで法務総裁に承りたいのですが、ほんとうの治安の維持をするために、法務総裁はこれらのことについて一つはお願いとして、朝鮮動乱のことについての各種の事件を御収集くださいまして、そしていかなる方法によつて、どういうふうに行われておるものかということを国民に知らしめる必要があろうと思うのであります。これは機会がありましたから知らしめる方法もとつていただきたい。それからまたそういう事件が起りますと、ピストルなどではとうていどうにもならぬものだということを、居留民団の人々が異口同音に言つておるのであります。こういうことにつきまして法務総裁はどうお考えになつておられるのであるか、これを最後に承りまして、私は法務総裁に対する質問を打切ることにいたします。
  86. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御忠告の点につきましては、善処いたしたいと思います。警察案における携帯武器の問題でございまするが、現在はただいまお述べになりまた通りピストルだけを持つておるのであつて、それ以上の武器が必要ではないかという御意向でありましたが、要するに武器というものは、警察官に襲いかかる危険の程度を基準として、いかなる武器が適当であるかということをきめるべきである、かように考えまするので、今後におきましても、国内の治安の情勢その他に十分に注意をいたしまして、必要なる最小限度の武器は必ず装備せしめるように努力をしなければならぬ、かように存ずる次第であります。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際川崎秀二君より、先般の農林大臣に対する質疑が残つておりますから、これを続行いたします。川崎秀二君。
  88. 川崎秀二

    ○川崎委員 簡單でありますから、自席から発言を許させていただきます。先般来、農林大臣欠席中のため留保いたしておりました質問を、きわめて簡單に伺いますから、的確にお考えを願います。  御承知のごとく、先般の第九国会は救農国会と言われた国会であります。また農林大臣の言をもつてするならば、興農国会と言われる国会であつたが、予算の裏づけなき国会でありました。すなわち農業政策を実行するには、当然これに対する裏づけとして予算措置というものが伴わなければならない。しかるに二十一億数千万円、総額三百三十二億のうちのわずか七%くらいの予算しかあなたはそのときに出しておらなかつた。そこでいろいろ質問をしてみると、今度の国会にはすばらしい予算をつくるということであつた。すなわち明年度予算、つまり昭和二十六年度予算には、多額なる経費を盛つて相まみえるということであつたので、非常に楽しみにしておりましたところ、現われて参つたところの予算は、依然として農業軽視の政策がとられておることを、私はになはだ遺憾にたえないと思うのでございます。目下御承知のごとく輸出入の関係から、われわれは日本経済自立に関しても新しい観点をもつて行かなければなりません。将来もし国際情勢が急変しまして、輸出が伸びないというような場合におきましては、われわれは食糧情勢の上において大きな打撃を受けるのであります。また農村における今日の経済問題を見るならば、農村はまさに陷没しようとするような傾向さえ示しておる。税金の重圧、そして反対給付は少しもない。このまま推移をいたしまするときには、農村の中に恐るべきところの思想が現われて来るのではないかとわれわれは懸念をいたしておる。そこでお尋ねいたしたい第一の点は、この予算をもつて、農林大臣ははたして満足をしておるものかどうか。できるならば追加予算を盛つてもらいたい、こういう希望をあなたは持つておると思うのでありますが、その点いかなるお考えを持つておられるか。お経の文句でなしに、的確にお答えを願いたい。
  89. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 お答えいたします。予算はなるべく多い方がよろしいようなお話でありますが、私もその通り考えております。しかし国家の経済はなかなか一省にのみそう割振りがありませんので、われわれといたしましては不満足でありますが、これをもつて興農運動を展開して実を結べると存じております。
  90. 川崎秀二

    ○川崎委員 今度の予算の特色は、社会保障費が百数十億もふえている点です。それから文教政策費も相当ふえました。社会保障というのは今日の大問題であるからしばらくおくとして少くとも今日の農村と都会とのアラバンス、またいろいろな経済上の不利からして、どうしても農村に対して大きなウエイトをかけたいわゆる財政資金によるところの政策が遂行されなければならないと感ずるのです。ほかの金融政策やなんかでは農村の金融というものはなかなかまかなえない。できるならば財政資金を投下して農村を保護するという政策をとつて行かなければならぬのであるけれども、この予算面に現われたところでは、たとえば公共事業費の予算でも、それほど大きくはふえておりません。一般会計において、昭和二十五年度は土地改良が三十四億、開拓が五十一億、計八十五億六千万円、今回の昭和二十六年度の予算は、土地改良が五十八億、開拓が六十三億で、その程度をもつては、農業政策を遂行するの非常に困難を感ずるのではないかと思うのであります。従つて農林大臣は、この窮迫した情勢において、少くとも食糧一割増産を叫んでおる情勢において、この予算をもつてして足れりとはしないと私は思うけれども、どうでしようか。
  91. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 予算の全般からいいますと、昨年よりは非常に多いのであります。しかしこれのみでほんとうに一割増産、あるいはまた食糧の需給が満足に行くかというと、なかなか思うようには行かぬと思いまするが、先ほど申し上げた通り日本の現在の事情からいつてやむを得なかつたのでありますが、特にここで金融面の直を開きまして、六十億の長期資金を出しておるようなわけでございます。またこれで足りないところは、中金等を通じて中、短期の金を今後出して行つて補いたいと思つている次第でございます。
  92. 川崎秀二

    ○川崎委員 的確に答えてくれませんか。農林大臣としては、この予算をもう少しふやしたい——どうせこれから質問いたしますいろいろな問題で、あなたはもうちよつと予算を出さなければならぬと言うことになると思う。その補正予算の一番の根源は実は農林予算なんです。だから情勢が許せば農林省はぜひともこの補正予算を出してもらいたいという希望を持つておるのではないでしようか。その点どうでしよう。
  93. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 何か補給金か何かのことからそういうことを推論されるように私は推察いたしますが、もしそういう機会がありまして、国家予算に余裕があつた場合には、優先的にやつてもらうようにわれわれは努めるつもりであります。
  94. 川崎秀二

    ○川崎委員 それでは具体的にお聞きをいたします。価格調整費は本年二百二十五億でありますが、すでに鉄鋼の補給金がなくなりまして、主食に限定をされておる。要するにあなたのところだけが価格調整費を使うわけであります。そこでこのうちで一番大きな問題は、何といつても小麦を初め主食の輸入ということでございますから、ぜひお伺いをしておきたいと思うのですが、小麦の輸入は、農林省としては一トンどのくらいに予定されて買入れをされる予定でありますか。
  95. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 大分海外の市場等が騒々しくなつておるようでありまして、予算面でどのくらいで買うといつてきめたか、ちよつと今覚えておりません。
  96. 川崎秀二

    ○川崎委員 驚き入つた答弁ですが、これは一番重大なことです。あなたの所管のうち、輸入関係で一番重大なことですからほかの方——農林省の人で知つている人はいませんか。
  97. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 平均してトン当り九十ドルくらいの予算でやつておるそうであります。
  98. 川崎秀二

    ○川崎委員 大蔵省の主計局長が来て御助言のようでありますけれども、一トン九十ドルで勘定は合いますか。
  99. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 高いものは九十七ドル、低いものは八十ドルドル・キヤツシユでカナダ方面から買うのは八十二ドル、あるいは四ドル、この説明書にずつと載つておるはずであります。全部平均しますれば九十ドル。米は百四十ドル程度に相なります。最近多少運賃が上つてつておるようでありますが、日本船の就航、ことに最近ではアメリカ方面につきましては大部分は日本船でやつております。そういつた関係もありまして、大体これでやれるものと考えております。
  100. 川崎秀二

    ○川崎委員 主計局長自身が大体これでやれると言うのでありますが、三百二十万トンの主食の輸入量を予定しておつて、そういうことでは私は非常に困るのではないかと思うのです。これは何かこういう質問が出ることを予想して九十ドルくらいということを言われておるのでしようが、実際には昭和二十五年度は一体幾らで買つてつたのですか。
  101. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 これも物によつて違うわけです。ガリオアは大体九十五ドル、それからずつと下りまして昨年の補正予算を組みました当時、この基礎になりましたのは大体十月ごろでありましたか、そのころにおきましては八十六ドルくらいでありました。その結果あの通りの補正予算で三百億ばかりの線が出たわけであります。最近少し運賃が上つております。
  102. 川崎秀二

    ○川崎委員 主計局長自身大体これでやつて行けるということでありますが、今後の情勢によつて食糧というものはだんだん国際的に価格が上つて来る、そういうときに国際小麦協定の中にも日本は入つておらないのでありますから、この情勢が続きますと、私は非常に至難なことになつて来ると思うのであります。そこでこの情勢で予定数量の入手について一体農林大臣は確信を持つておりますか。
  103. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 船繰り、あるいはまた買付等によつて多少遅れることもあるでしようが、大体われわれは買いつけ得ると信じております。
  104. 川崎秀二

    ○川崎委員 すでに新聞紙上の伝えるところによると、濠州、カナダ等の小麦はインド方面に多量に振り向けられておる。そうして一番新しいニュースでは、先般アメリカはネール首相の要請に基いて、二百万トン、インドに対して小麦を送るということを声明をしておる。こういう情勢で、日本が一番立ち遅れておつて、はたしてこの食糧を十分に入手することができるであろうかということについては、專門家の間において非常な疑惑があるそうであります。これが今年におけるところの食糧行政の最大の問題であろうと私は思うのであります。一体この買付は、二十五年度も非常に遅れておつた。先般安本長官の説明によると、これから馬力を出して、とにかく三月末には予定数量に近いものを出すということを言われておるけれども、今までの実績から見ると、はなはだ心もとないように私は思います。そこで来年度の計画について、船腹、その他の関係について計画的な配船というものもしなければならぬと思うのですが、それらに関しての農林大臣の御所見を承つておきたいと思うのであります。
  105. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 大事な国民の食糧でありますから、手落ちなく手を打ちたいと思いますが、こまかい配船、あるいはまた買付国等の詳細な点は、きようは政府委員が来ていないようでありますから、あとでお答えいたします。
  106. 川崎秀二

    ○川崎委員 それでは問題をかえましよう。あとでまたいろいろ質問があると思うのですが、こんなことでは私は満足できないけれども、四時にはマツカーサー司令部へ行かれるとかという話ですから、ほかの問題を質問しましよう。  そこでもう一つ重大な問題は麦の統制であります。これはあなたの方針では五月から廃止をされる、こういうことを言つておられます。しかし実際上これがはずせるものかどうか。最近の情報によると、統制をはずすことが困難ではないかというような情報も出て来ておるようでありますが、まずあなたの所信を伺つておきたい。
  107. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 既定方針通り、はずす考えであります。
  108. 川崎秀二

    ○川崎委員 先般毎日新聞の伝えるところでは、麦の統制を五月からはずして、はたして予算措置との関係でうまく行くかどうかということについて、司令部から示唆があつたように言われております。そのことの示唆がありましたか。
  109. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 何もございません。
  110. 川崎秀二

    ○川崎委員 一月の十六日、マツカーサー司令部から麦の統制というものだけでなしに、主食の統制は当分続けて行かなければならぬというような文書が来ておるという情報もあるのでありますが、これらの点についてはどうですか。
  111. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 主食の米に限りましては、これは統制を続けて所定の配給量を確保して行く考えでありますが、その他のものについては既定方針通りでありまして、何らの文書を受取つておりません。
  112. 川崎秀二

    ○川崎委員 これはひとつぜひあなたに野党として特に勧告をしておきたい問題がありますが、統制をはずすということについては、私は農家は非常に待望しておると思うのです。われわれも、でき得るものならば統制をはずして、確実にこれが確保できる、主食が確保できるということになれば私はいいと思う。そこに重大な問題があるのであつて、この点に対するところの見通しを誤つて断行されるときにおいては、不測の混乱が来やしないか。この点十分に考慮をされつつ自重を望みたいと思うものであります。  次にお伺いいたしたい点は、先ほど農林中央金庫等の投資によつて、予算の足りないところは農村金融の面でまかなつて行きたいというようなお話であつた。農林中央金庫の貸付け状況について、昨年度中の数字はございませんでしようか。
  113. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 数字を持つておりませんから、あとでまたお答えいたします。
  114. 川崎秀二

    ○川崎委員 何でも、そのときに持つておらないとか、それから一トン幾らで買つておるかわからないとか、それでは大臣は、ほんとうに勤まりませんぞ。あなたに対して、はなはだ失礼な言い分ではあるけれども、今はまだ代表質問の続行中です。当然そのくらいの材料は用意をされて臨むべきだと思う。しかし人柄に免じて許しておきましよう。  農業協同組合再建のための利子補給法というようなものを農林省では出すというようなお話ですが、どうでしようか。
  115. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あらゆる角度から検討して、協同組合を再建でき得るように目下考えておりますが、その中に、やはり一応利子補給というものも入つておるのでありまして、近いうちに国会に提出したいと思つております。
  116. 川崎秀二

    ○川崎委員 その予算措置はありませんね。どうしますか。
  117. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これはまだ政府部内でほんとうに相談がまとまつておりませんので、相談いたしたいと思います。
  118. 川崎秀二

    ○川崎委員 これは当然大きな問題になつて来るのであつて、この予算措置がないのに補給法を出そうということになりますと、これは政府責任です。大蔵大臣は聞いておられますか。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 農業協同組合の再建に関する相談はいたしておりますが、全国の農業協同組合の資産状態の報告はまだ受けておりません。従いまして、農林省で調査の上、大蔵省に不日御相談になることと思つております。
  120. 川崎秀二

    ○川崎委員 農業協同組同の債務というものは、先般の国会においては百六十億程度というふうにあなたは答弁されておると思うのですが、今はどのくらいになつておりましようか。大ざつぱでいいです。
  121. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 その後の調査で多小ふえておるようでありますが、二百億前後だと思つております。
  122. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうすると、どういうふうなやり方で出しておられるかわかりませんが、私が想像するところでは、これは本年は三十三億、そして五分としても十七、八億程度は利子補給をする必要があるのではないかというふうに私は想像しておるのですが、そういうようなことが現われて来ると、結局予算をどこかで修正しなければならぬ、あるいは追加予算をしなければならぬということになるのですが、そういうつじつまになつて来ませんか。
  123. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 今こまかい点を検討いたしておりまして、事務の方で見ておりますが、最終どのくらいになつてどういうふうにしたらいいかというところまではまだ行つておりません。
  124. 川崎秀二

    ○川崎委員 最後にもう一点お尋ねいたしておきたいことは、食糧自給ということになりますれば、何といつても土地改良が最大の問題ではなかろうかと思うのであります。現に土地改良に対するところの全国の要望というものは非常に高い。しかるにこれは関係方面との意見の調整などにおいて非常に困難であることは、私は重々裏は承知しておる。アメリカ考えておるところの農業政策というものが、どうもわれわれの感覚とぴつたり合わないので、土地改良が軽視されておることは非常に残念です。これはあなたが農林大臣を引受けて、政治力を発揮されるとすれば、土地改良が最も重点である。そして土地改良については、国会において農業議員連盟というものがないのに、土地改良議員連盟というものができて、非常に熱心にやつておるのですが、この予算に見られるところでは、わずかに五十八億程度でございます。耕地協会あたりでは、徹底的な土地改良をやるためには、十箇年計画として七千七百五十億くらいの費用がいる。つまり年間七百七十五億くらいいるというのです。私はこれは少し理想論ではあると思うけれども、しかしこれも傾聴すべき議論だと思う。その十分の一しかないような土地改良の予算では十分にやつて行けないと思うのですが、土地改良に対するあなたの信念のほどを聞かしてもらいたいと思うのであります。
  125. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 土地改良につきましては、私たちほんとうにとつ組んで参りたいと思つておるのであります。特に北海道における泥炭地帯の改良であるとか、あるいは九州地帶におけるボラ、シラス等をあのまま放置しておくことは、非常に日本に損であります。それからまた全国各地を通じて土地改良をすれば、二毛作が完全にできる場所がたくさんありますので、この方面に対しては力を入れたいと思つております。それでさようなものを対象といたしまして、本年度の六十億の長期資金の融資となるわけですが、これに自己資金並びに助成金等を入れますと、相当額の事業量が今年はできると思うのでありまして、足りないところはまたほかの方面で、いわゆる中金等の金を使い、土地改良に重点を置いて行きたいと思つております。
  126. 川崎秀二

    ○川崎委員 今や食糧政策並びに農業政策は全般にわたつて非常に緊要な問題になつて来ております。輸入の関係ももちろんですけれども、国内政策としても重要な問題になつて来ておるのでありまして、農林大臣は非常に政治力のある人ですから、ぜひとも農村政策については深い研究をされて、数字的にもこまかに分析をされて、そうして科学的な基礎に立つて農業政策を推進してもらいたいと思うのであります。新聞紙上によると、あなたは正月から官邸で首つ引きで勉強されたようですが、今聞いていると非常にたよりない。政治力はあなたはあるのだから、ひとつ政策を勉強して、もつと科学的に答弁してもらいたい。
  127. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際竹山祐太郎君から関連質疑を求められております。二問に限つて許します。
  128. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 今川崎委員からの質問に対して、廣川農林大臣の答弁がございましたが、非常にあつさりとやられました。日ごろの答弁であればそれでよいと思いますが、今のネール首相の要請にこたえて、アメリカが二百万トンの小麦をインドに送るという問題は、アメリカの議会においても大いに論議をされるであろうということが報ぜられております。私はこの問題を農林大臣が軽々しく取扱われたということは、一体国際的な情勢をどう見られておるか存じませんが、まことに概嘆にたえません。私はそんな軽い問題ではないと思う。カナダ、濠州の小麦がみんなインドに買いつけられておつて、これからわれわれが期待するものはアメリカ本土以外にないということは、大臣承知のはずなんです。そのアメリカの小麦が大量にインドに持つて行かれるという。第三国的インドの今の政治的な立場から見れば、アメリカがやりそうなことであるということは十分にうかがわれる。それならば一層農林大臣あるいは総理大臣は、この食糧問題について、もつと真劍に国民の心配を代表して国会においても述べられるべきではないか。私はあなたの簡單な答弁を惡意にはとりません。私はこの国会を通じて報道される空気が、アメリカの議会に反映すると考えるから。あえて再質問をするのでありまして、今のアメリカ食糧情勢について、司令部に対して農林大臣初め総理大臣はいかなる懇請なり折衝なりをされておるか、この問題に対してまず御所見を伺いたい。
  129. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 竹山君のお持ちのような気持で実は私は司令部の方にもよく懇請いたしております。幸いに司令部は日本のことをよく承知いたしてくれておりまするので、私どもは安心いたしておるのであります。また出先の買付等に対してまても、でき得る限りわれわれは督励いたしておるようなわけであります。
  130. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 それではもう一つ、具体的に数字を知らぬとおつしやるが、今十二月までの政府の資料を見ても、九十万トンしか食糧が入つていない。あとこれから入る具体的なものは、アメリカから三十万トン、濠洲から五万トンというようなもので、小麦についてはそれ以上一つも具体的になつていない。これはどこで聞いてもはつきりしない。それでも農林大臣は今後について安心をしていていいという御所見であるか、一応伺つておきたい。
  131. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 今までの足りなかつたところは今後とりもどすようにいたし、またあくまでわれわれは連合軍の好意を信じておるようなわけで、そして国民には迷惑をかけないようなことにして行きたいと考えます。
  132. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 角田幸吉君。
  133. 角田幸吉

    ○角田委員 それでは池田大蔵大臣に二、三の点をただしておきたいのであります。今年度の予算はきわめてよくできて、大蔵大臣の言葉をかりれば会心の作だ、こう言われておるのであります。私はこの会心の作である本年度の予算につきまして、一点疑いを持ちますので、この点をただしておきたいのであります。その会心の作だと言われる今年度の予算が、価格調整費において四百十五億の削減と、朝鮮事件の発生以来の経済界の好転に伴つて、税の方で七百億円の自然増収がある。こういうことが結局会心の作と言えるのでないか。もしこのことがある條件によつてくずれた場合には、きわめて憂慮すべきものがあるのではないかと考えるので、大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいのでありますが、一体昨年の十二月現在において、反面国税の滞納金が約一千億あると私は今記憶しておるのでありますが、現在どの程度の滞納があるのであるか。このことをよく承りまして、そうしてもしこの滞納がうまく行きませんと、歳入の不足という現象が現われて来て、せつかくの会心の作である今年度の予算に狂いが生じないかどうか、またあるいはそれほど会心の作であるところの今年度の予算を、きわめて会心の作としてりつぱに運営するためには、不当課税に及ぶようなことはないかどうか、こういうことについて、一点総括的に私は今年度の予算について疑いを持つたので、この際大蔵大臣のこの点に対する御所見を承りたいのであります。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年までの滞納税金は昨年度中によほど整理いたしまして、ただいまでは六百十億円ばかりの滞納に相なつておるのであります。よほど減つて参りました。しこうして昭和二十五年度の歳入歳出の見通しを申しますと、歳出の方ははつきり締めておりませんが、ある程度の剰余は出るのじやないかと思います。歳入方面は補正予算をいたしまして、よほど今の状態に合せて参りましたが、なおその後の経済情勢の変化から申しまして、勤労所得に対しまする源泉徴収の所得税、これは補正予算よりも四、五十億くらい上まわるのではないかと思います。それから法人税につきましても、補正予算よりも百億ばかり上まわるのではないか。しかして酒の税金も、予想以上に売れましたので、ある程度の自然増収が出ることに相なると思います。勤労所得とか法人税、酒の自然増収が出ますが、賦課課税の事業所得の所得税につきまして、補正予算で三百億余り減らしましたから、なおかつ徴収減が出るのではないかと考えております。そういたしますと、大体本年度の租税収入も予定通りに行ける。滞納の整理がもつと早く行けば、ある程度の増収が出るのではないか。決して赤字が出るというようなことは、ございません。なおこういう情勢でありますので、財政演説でも申しておりますように、今までのように調査も十分せずに更正決定をしたりすることは差控える。また行き過ぎた税の査察制度につきましても、運用上よほど考えるように指導いたしておるのであります。私は、税金を徴収することも必要でありますが、それ以上に経済の再建、ことに民心の安定ということが政治の要諦でありますので、税務行政につきまして十分注意してやらせるようにいたしている次第であります。
  135. 角田幸吉

    ○角田委員 なお続いて税務行政について若干お尋ねを申し上げたいのでありますが、予算説明、あるいは大蔵大臣の演説、あるいは当委員会の御説明、それらを総合してみますと、昭和二十四年度の国民所得は二兆八千七百四十七億、これが一般会計予算から見ますと七千四百十四億である。その当時の国民所得に比較いたしますと、財政規模が二五%であつた、こう説明をされておるようであります。しかるに昭和二十六年度におきましては、国民所得が三兆七千二百四十億、一般会計予算額が六千五百七十四億でありますから、この財政規模は一七%、こういうふうに非常に減つて来た。こういうところから自然にあらゆる国民負担というものが非常に少くなつたと言えるのでありますが、遺憾ながら昭和二十四年度の税金あるいは国民負担は、明治以来一番重い税金だと言われておる。国民負担が一番多かつたと言われておるのであります。そういう次第でありますから、国民一般は今日ではもう朝から晩まで税金のことが拔け切らない。昔は税金のことは令状でも来なければ考えない。令状が来て納めるまでの間は考えるけれども、しかし今日では朝から晩まで一年中税金のことを考えておる。そうしてそこからいろいろの問題が起つて参ります。昨年度は大蔵大臣の非常な御努力によつて七百億の減税をした。ところがあの二月の申告期には、いろいろな反税運動が起つたり、税務署へのデモが起つて、税務署員が四十名ほど負傷したというようなことが報ぜられた。こういうことは、結局税務行政に非常な欠陷があるためにこうなるのではないかとわれわれは考えております。そこで税務行政の改善について何らかの考えをなさつておるかどうか、ことに国税徴収法の改正等のお考えがあるかどうか、今日国会においてこれに関する何らかの法制的手続をするかどうか、このことをひとつ大蔵大臣にまず承りたい。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、昭和二十四年度におきましては相当重い税であつたのでありますが、二十五年度、二十六年度から逐次減税をいたしまして、国民の負担も以前よりは相当楽になつて来るのではないかと思います。減税と同時に、やはりお話のように税務行政につきましてもよほど改革を加えなければならない。従いまして、できるだけ納税者の意見を聞き、そうしてむやみやたらに更正決定するということは嚴に愼む、こういうきつい訓令を出しております。そして実態に沿つたような課税をすることがまず第一のことであるのであります。しこうして課税をいたしましてから後の徴収につきましては、これまたやはり経済界の変動その他で、課税はよくても納税にお困りの方がある、こういう場合におきましては、今までも実際手心でやつたこともあるやに聞いておりますが、分納制度を法制的に設ける。課税は適正であつたが、その後資産状態が惡くなつて納められないという方につきましては、三年間の分納を認める、三年間たつても、どうも納税の資力がないというときには、これは欠損処分をする、こういうように実態に沿つたようなことに改めたい。国税徴収法は今国会にぜひそういうような線に沿うように改正を加えて御審議を願うというような予定で進めております。
  137. 角田幸吉

    ○角田委員 税務行政についてもう少し私は大蔵大臣に承りたいのでありますが、大蔵大臣はこの点はきわめて知識が豊富であらせられる。そこでもう少し私が税務行政についてお考えをしていただきたいことは、戰前におきましては、所得税国税の納入者は約百万人くらいであつたが、今日では二千万人からある。二十倍にもなつている。ところが税務署の機構、たとえて言えば帳籍の書式であるとか、書類の流し方であるとか、監査の方式であるとか、こういうものが旧態依然として、百万人時代と同様な事務取扱いである。そこから税の計算違い、いわゆる誤納という問題が起つて来る。これでも相当国民が迷惑している場合が多い。それからさらに申し上げますと、もうすでに納めたものまで督促状が来る。極端な例を言うと、納めたものに差押えさえ来る、こういうようなことまで起つておる。こういうことについて單に今大蔵大臣が述べられましたようなことでは、税務行政のほんとうの改善というものは行われないじやないか、もつと合理的な、もつと革新的なものでないと、こういう問題の処理ができないじやないか、かように考えるものでありますが、大蔵大臣のこの点に対する御見解をひとつ承りたいのであります。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のような点があることはまことに遺憾千万でございます。御承知通り昭和二十三年、二十四年のころの税務行政は、新規の人をどんどん入れまして、事務にふなれの点があつたり、また課税の行き過ぎ等がありま」して、内部整理が非常に遅れておつたのであります。その整理を昨年来やつておりますが、いまなおお話のように、納税済みの人に督促状が行つたり、あるいは督促状も一回ならいいけれども、三回も行つて、四回目には差押えが行つているというような例も最近聞いたのでありますが、まことに遺憾な点がたくさんありますので、まず第一に税務官吏の素質の向上はもちろんでありますが、内部の整理事務につきましてもよほど改革を加えなければならぬと考えております。納税者も、源泉所得税の方の分は相当の数でありますが、賦課課税の者は大体三、四百万人程度かと考えております。今度の税法改正で今後は納税者がよほど減つて来ると思つておるのであります。しかしそれにいたしましても、今までの書類の不備の点、不完全な点がありますので、お話の点がちよいちよい出て来るのであります。今後そういうことのないように十分指導して行きたいと考えております。
  139. 角田幸吉

    ○角田委員 もう一点大蔵大臣にお聞きしておきたいのでありますが、滞納しますと、国税徴収法の九條で滞納金をとられる。これは規定があるから、やむを得ません。ところが誤納した場合には、国税徴収法の規定によると、これは逆に政府の方で利息を払わなければならないようになつている。ところが一向やつていないといううわさが多い。私も現に一昨年も昨年も誤納してそのままで、これは一年ぐらいたたないと返らない。こういう状態である。そこで承つておきたいのは、一体誤納というものは年額どのくらいあるものか、それに対して利息などを払つているのか、払つていないのか、そういう関係はどういうふうに置かれているのであるか。どうも政府のやること、役所のやることはかつてだ。国民の場合には厳重に滞納金をとる。しかし進んでこれを払おうとしない。国民のことごとくがそういうことを言つておる。先ほど私が申し上げましたように、今日では朝から晩まで税金のことを考えている。こういうことについて親切な態度をとりませんと、とかく国民からきらわれ、信用されないようになる。そこでただいま承つておきたいのは、一体誤納というのはどの程度のものになつているのか、その利息の支払いはどのくらいやつているのか、どういう予算を組んでいるのか、このことをなるべく詳細に承りたいのであります。
  140. 池田勇人

    池田国務大臣 租税払戻金として一応予算を組んでおります。それで足りなくなりますと、多分補正予算でも八億円ばかり組んだかと思いますが、過誤納の場合におきましては、さつそく還付するように言つております。またお話のように利子をつけることに相なつておりますので、利子をつけるように指導いたしておるのであります。もし税務署の方で利子をつけなかつたり、あるいは怠慢の点がありましたならば、ひとつお知らせ願いまして、そういう建前に立つておるのでありますから、やはり民間の戸を聞きまして、そういう怠慢を内部で十分戒節しなければならぬと思つておるのであります。私は先ほど申しましたように、督促状を何回も出す、こういうようなものは減俸を命じなければいかぬ、こういうふうにきつく言つております。もし誤納である場合に、払いもどしをしぶつたり、あるいはつけべき利子をつけないという事例がございましたならば、これは改めさせなければならないのでございますから、匿名ででもお申出くださいましたならば、ぜひともそういうことに指導して行きたいと思います。われわれとしてはできるだけ内部的に指導いたしておりますけれども、何と申しましても数多い中でございますので、不心得者がないことはないのであります。これはやはり民間の人からもひとつお教えいただきまして、ためて行かなければならぬことだと思つております。
  141. 角田幸吉

    ○角田委員 私は最後に大蔵大臣に希望を申し上げて、私の質問を打切ろうと思うのでありますが、とかく政府からの交付金というものは、期限通りつていない。たとえば災害復旧の場合における補助金でも何でも、政府の支払いはいつも遅れる。そのために町村で一番困つておりますのは、もらわれると思つたものがもらわれないために、起債をする、その起債の利子で困つておる。従つて三割もらうと思つても、この利子から計算すると、二割にもならぬ、こういうのが実情である。これは一般にそうである。だから誤納につきましても、わかつてから一年も支払いをしない、こういうことはまことに芳ばしくないことである。これらの点につきまして、政府の支払いというものは、今後即刻に支払いいたすよう督励せられんことをお願いいたしまして、私の大蔵大臣に対する質疑は打切ることにいたします。
  142. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際川端佳夫君に発言を許します。川端佳夫君。
  143. 川端佳夫

    ○川端委員 私は文部大臣のお見えになつておる機会に、文部大臣に関する質問を申し上げたいと思います。二、三申し上げたいのでありまするが、けさほど議論になつておりました愛国心高揚の問題についてまずお伺いいたします。愛国心を高揚するということにつきましては、過般総理大臣からも、民主主義的に下から盛り上る運動にして行きたい、これを買つて行きたいというふうな御意見もあり、そうしてけさほど文部大臣の御意見を聞いておりますると、その具体的な方法としては、国旗を掲揚する、あるいは君が代を歌うという式のことをおつしやつてつたのであります。愛国心の高揚が切実に叫ばれておる現今でありまするから教育は国のものであるという立場から、かつての国民精神総動員的なああいう方式はもちろんとらざるところでありまするけれども、何か具体的にもう少し突き進んだお考えはないかどうかという点をまず第一点として伺つておきます。
  144. 天野貞祐

    天野国務大臣 先ほど申しました国旗とか国歌とかいうことは、もつぱら小学校の生徒について私は申したことであります。その上のもつと上級の学校については、国家の性質とか、そういうことを明らかにだんだん知らせるとか、また一方学校でない一般社会には公民館等を通じて、国の性質とかほんとうの意味の愛国心というものがどういうふうなものであるとか、そういうことをだんだん明らかにして行こうというのであります。そういうようにして愛国心の高揚——しかし愛国心というものは、非常に場合によりますと間違つた方向に行きやすいので、そういう点を十分注意して、先ほども申しましたようにほんとうの日本的ということは、ほんとうの意味世界的というような意味を持つたという線でもつて、指導したいという考えであります。
  145. 川端佳夫

    ○川端委員 それでは愛国心高揚の問題はこの程度にいたします。  先を急ぎますので、漢字制限の問題について伺いたいと思います。当用漢字を拡張する、裏から申し上げますると制限漢字を緩和するという問題なのであります。これは御承知のように国語を簡易化したいというようなお考え方から、昭和二十一年十一月の内閣告示で公表されて守られて参つたのでありまするが、爾来非常に矛盾を感ずる点が多いのであります。たとえば制限をされておる中に例を申し上げますと、「一銭也、二銭也」の「也」が制限をされておる。あるいは「悠々自適」の「悠」が制限をされておる。あるいは「尚更」の「尚」が制限をされておる。あるいは「弘」という字も制限漢字、「宏」も制限漢字、あるいは「彦左衛門」の「彦」も制限漢字、あるいは「伊藤博文」の「伊」も「藤」も制限漢字、それから「岡崎官房長官」の「岡」も「崎」も制限漢字、あるいは「靖国神社」の「靖」も制限漢字、あるいは「被害甚大」という「甚」さえも制限漢字なのであります。ところが一方におきましては、あるいは「慰める」の「慰」、あるいは「緯度、経度」の「緯」だとか、「襲う」だとか、あるいは「憤慨」の「慨」だとか、「犠牲」の「犠」、あるいは「遊戯」の「戯」だとかいうようなものは、あるいは小学校の生徒にもややむずかしい方ではないか。先ほど制限されたものに比べればむずかしいのではないか、こういうふうな矛盾が感ぜられるのであります。しかもこの字を固有名詞に使えない。名前に使えないために子を持つ親がしばしば当惑されておることは、あるいはお聞き及びのことと思います。また聞くところによりますと、これが大きな悲劇を生んでおる。たとえば簡單な字であるから、こういう漢字が制限されておろうとはゆめにも思わないというところから名前をつけまして、あるいは古式ゆたかな方法でつけたかもしれません。そうして届けましたところが、これが制限漢字だというのでこれをつつぱつて、訴訟問題にまで持つてつておる例もあるそうです。ところがその間に配給がもらえないということで、実際に人間がいながら配給がもらえないという悲劇になつておるような問題もあるそうでありまするが、制限漢字を緩和し、当用漢字を拡張する、こういうようなお考えはございませんか、この点を伺いたいのであります。
  146. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまおつしやつたことは、私も平生感じておることでございます。ただしかし一般の漢字制限については、これは專門家の研究したことでございますから、私はにわかにそれをどうするということを言いかねますけれども、なおよく研究してもらいたい思います。ただ名前についてはいかにもおつしやる通りで、私もあれではどうかという考えを持つておりますので、これもよく研究してもらつて何とか緩和しなければいけないという考えを実は持つております。
  147. 川端佳夫

    ○川端委員 ただいま御答弁を承りまして、緩和することをお考え中のように受取れたのでありますが、国語でございますから、国民が便利なように使いたい、こういうことのために固有名詞に限つてだけでも早急に、具体的に緩和するお考えはございませんか。
  148. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。固有名詞を私は緩和したいと思つておりますけれども、従来のような非常に読みにくい名前をつけるというようなことも非常に困ることではないか、現在のままではいけないからこれをぜひ緩和したいと考えております。
  149. 川端佳夫

    ○川端委員 それではこの問題はこの程度にいたしまして、もう一点……。義務教育費の国庫全額負担というような建物から、二十六年度におきましては、予算の制限もありますから、小学校一年生の教科書についてはこれを全額負担したいというふうなお考えであつたと思うのでありますが、予算を拝見いたしますと、この半額に相当するような一億三千万円程度のものしか計上を見込まれておらない。こういう点について、これは当初われわれが了解しておつたところといささか違うのでありますが、この扱いはどうされようとされておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  150. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。今おつしやる通り半額しか出しておらないということは、私もこれは不十分だと思つておりますので、そのあとの半額は平衡交付金の増額を地財委の方に要求いたしております。そうしてできるならば全額が支給されるようにしたいと考えております。
  151. 川端佳夫

    ○川端委員 しからば半額は地方で負担しなければならぬ、こういう結末になろうかと思いまするが、御承知のように地方の財政は非常に逼迫いたしております。わずかなことのようでございますが、これをはたして完全にまかない切つて行くか行かないかという点は、あくまでも疑問だと思うのであります。もし半額をまかなつて行けなかつた場合には、あるところでは一年生の教科書を全部くれるところもあつた。あるいはあるところでは、そういうことをしてもらえぬところもあつた。これを極端に考えますと、それによつて教科書を手にすることができなかつた場合が起るようなことは考えられませんかどうか。
  152. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はただいま申しますように、その半額もどうかふやしたいというふうに地財委の方に交渉をいたしておりますから、教科書が手に入らぬということは起らぬと思います。
  153. 川端佳夫

    ○川端委員 それでは、できるだけそういうふうな方法でもつて、児童の教育のために盡されんことを希望いたしまして、質問を終ります。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 甲木保君。
  155. 甲木保

    甲木委員 私も文部大臣の御出席を幸いに、二、三お尋ねしたいと思います。何事も要は人に帰するものでありまして、今日の教育の欠陥は、平凡な言葉ではございますが、私は制度にあらずして人にあると思うのでございます。これさえ改善されるならば、たいていの問題は解決がつくものと私は信じておるのであります。すなわち人の欠陥は、教師に対する学生の信頼を失わしめ、教育の権威を傷つけるものであります。教育の権威に対する疑惑は、生徒をして追従するところを知らざらしめ、ひいて国家、法、道徳、宗教等に対しても疑惑を抱かしめて、遂には無思想やあるいは功利主義者になるのであります。そうして、種々なる犯罪を引起すということに相なるのでございます。現在の教育者の中には、かくのごとき教育の権威を傷つけるような者もあるのでございます。ことに教師としての職務を持ちながら、授業を放棄し、あるいは子供を犠牲にして、その職務を離れているという者が、往々に私どもには見受けられる。こういう様を見ると、子を持つ親として、いな国民全体として、許すべきことではございません。しかし教育は一切が人にあるのでございますから、教育する者も、される者も、ともに生活の環境をよくしてやるということが、最も大事でございます。教育者の生活を擁護すると同時に、今日の教育者の実態から、私どもが見まするど、職階制をやるか、能率給をもつて教育者の質を一段と高からしめるというようなことを、文部大臣はお考えになつておるかどうか、御意見を伺いたいと思います。
  156. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやいます通りに、教育にとつては教育者がもちろん非常に重要である。しかし私は同時にいろいろな設備というようなものも、ないとやれませんから、設備等も充実しないと困ると思いますが、しかし要は教育者にあるという御意見には、私も全然同感でございます。それゆえにもつと人材が教育界に集まるようにどうかしてしたいという考えから、育英資金につきましても、教育養成の分は、今度も非常に多額に申し出でまして、御協賛を得たいと思つております。そういうようにして人材をこの教育界に集めるということが教育のために非常に必要だということで、今いたしております。職階制のこともよく今後研究し、それをして行きたいと考えております。
  157. 甲木保

    甲木委員 私どもが若い教育者に会つていろいろ話をしてみますと、今の教育者はちようど労働者諸君のような一つの考えを持つております。自分たちが教育者だというような立場を考えていない。この点からいいますると、私どもはこの職階制か能率給をもつて臨むという強い気持に文部省が出て行かれる方がいいと思うので、ぜひひとつしていただきたいと思うのです。  次に小学校の職員で、一般教職員と学芸大学付属の教職員との待遇が、三号俸から四号俸も差異があるのです。御承知のように、付属の教職員はその県内で有能な者から拔擢しておるのでございます。この有能な者がかえつて一般教職員に比較して待遇が三号俸も四号俸も低いということと、その上恩給も一般の教職員と差異があります。また一般教職員は百分の二であり、付属の職員は、百分の一である。退職金においても、付属に在職しておる者は年数を加算しないというがごときはいかなる理由であるか。ことに優良なる職員を配置する付属において、一般教職員から見ると待遇が悪いということになると、いかに文部省が教育の振興をやろうといつても、教育者みずからが励みがなくなることがある。どうかこの付属の教職員と一般教職員との差が平等に行くというような方法考えてもらいたいと思いまするが、文部大臣の御所見を伺いたいのであります。
  158. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。今おつしやいました点は、いかにもごもつともなんです。ただこの付属の方におりますと、なるほど俸給は惡いのですけれども、研究の便宜とかまた教員としての地位とかいうようなものが、非常によいという点は認めなければなりません。けれどもそうだからといつて、片方の俸給が惡いというのではいけないと思いますから、私もこの点はどうか改めたいというふうに考えております。
  159. 甲木保

    甲木委員 次に今日官業及び官有財産収入の中で、学校の農場及び演習林の収入や付属病院の収入等は、雑収入として一旦国庫に納められておるのでございます。これ等の学校農場や演習林または付属病院は、一般政府機関の、利益を目的とするような官業とは全然異なつておるのでございます。こういうところは専門的学問を探求しておるのでございますから、これらの収入につきましては、一般政府機関の官業並びに官有財産の収入と同一に取扱うということは、私はどうかと思うのです。各学校の収入はその学校の研究費に充てるというようなことはどうかと私どもは考えるのです。そうすれば、そこの病院の教授なりあるいは農業学校の各專門々々の教授がその專門に向つて十分の研究がなし途げられると思うのでございます。ことに、先般私農業学校あたりを歩いてみましたが、農業学校の収穫した米麦の供出は、一般の農家と同様に供出をいたしておるそうです。それがために学校としての研究費がどうしても出ない、研究ができないと言つてこぼしておるのでございますが、この点も農林省あたりと一応御相談を願いまして、そうして学校が十分の研究ができるような一つの方法、対策を文部大臣考えていただきたいと思うのですが、この点につきまして、どういうお考えでございましようか、一応お尋ねしておきたいと思います。
  160. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。そのことについては私も前から聞いておりますのですが、しかし病院の収入というものをすぐその病院のものにするということも、できれば大学としては非常に都合がよろしいでしようけれども、これは私がにわかにすぐそうした方がいいかどうか。これは大蔵省のお考えがおありでございましようから、ただちに私が言うことはできないと思います。しかしよくその点も研究いたすようにいたしたいと思います。  それからもう一つの、農学校などの収穫したものを自分のところですべて処理できないという点も、しばしば私は聞くことでございます。これもどういうふうにしたらほんとうに公正に行くものであるか、なお研究して、善処いたしたいと思います。
  161. 甲木保

    甲木委員 もう一点お尋ねしたいのですが、教育費が平衡交付金に繰入れられてから目先の見えぬような政策の犠牲となり、各府県においても土木とかあるいは警察の費用に使われて、最低の教育費さえ出せないような県が幾らもある。この調子で行くと、持てる県と持たざる県との教育の水準がばらばらになると私は思う。ひいては教員の生活さえも脅かして来る。でございますから、文部省としましては、懸案の標準義務教育費法案あるいは平衡交付金に対するところの基準財政の支出をはつきりさせておく必要があるじやないかと思います。この点について文部大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  162. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやいましたことは、まつたくその通りでございまして、このままではいけない。それでありますから、私どもは今法案を準備して、関係方面と折衝をいたしております。できるならば、そういう点をはつきりさせて行きたいと考えております。
  163. 甲木保

    甲木委員 よろしうございます。
  164. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開会、質疑を継続いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十五分散会