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1951-02-05 第10回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月五日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 橋本 龍伍君 理事 川崎 秀二君    理事 林  百郎君       天野 公義君    井手 光治君       甲木  保君    北澤 直吉君       塩田賀四郎君    庄司 一郎君       塚田十一郎君    苫米地英俊君       中村 幸八君    松浦 東介君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       川島 金次君    戸叶 里子君       小平  忠君    黒田 寿男君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       久野 忠治君    坂田 道太君       鈴木 正文君    玉置  實君       永井 英修君    中村  清君       南  好雄君    今井  耕君       平川 篤雄君    松本 瀧藏君       砂間 一良君    横田甚太郎君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         通商産業大臣  横尾  龍君         労 働 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         総理府技官         (特別調達庁次         長)      堀井 啓治君         総理府事務官         (特別調達庁労         務管財部長)  中村 文彦君         法務府特別審査         局長      吉河 光貞君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         文部政務次官  水谷  昇君         農林政務次官  島村 軍次君         労働政務次官  山村新治郎君         建設事務官         (道路局長)  菊地  明君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。林百郎君。
  3. 林百郎

    ○林(百)委員 まず私は日本共産党を代表しまして首相を除いた各大臣に、本年度予算に関連して国民の問わんとするところを率直に問いたいと思うのであります。  最初われわれの見解として、この予算の組まれておる背景の政治的な條件、この政治的な條件のもとに本年度予算が組まれておるという前提に立つて、各大臣質問をしたいと思うのであります。われわれがこの予算の組まれておる背景の政治的な條件として考えられることは、第一に、朝鮮においてアメリカ軍隊が、その後朝鮮民族解放軍の再攻勢によつて後退を続けることを余儀なくされておるという情勢があること、これが第一。第二は、このために日本アメリカの朝鮮作戰第一線基地になつて、すでに兵站基地ではなくなつたということ。第三は、従つて日本にいる国連軍あるいはアメリカ軍隊というのも、日本占領目的のすみやかな終結ということよりは、むしろ積極的な朝鮮作戰作戰軍性格がかわつて来ているということ、従つてこの軍事的なアジアにおける諸情勢を反映して、日本の全経済も、好むと好まざるにかかわらず、軍事的な再編成に切りかえなければならない情勢になつて来たということ、さらに中日貿易の切断によつて、ますます日本経済特定国であるところのアメリカ経済に依存せざるを得なくなつて来たということ、つい最近来たダレス氏は、アメリカアジアにおける反共作戰の軍事的な分担の一端を日本に背負わせようということのために、太平洋同盟竝びに日米軍事同盟のしたくをしに来たということ、一方中国政府は、人民日報あるいは世界週報で伝えているように、このダレス特使の訪日は、米国の対日單独講和準備のためであつて米国は今や公然と日本を再武装しようと企てているということを表明しておるのであります。さらに二十八日の北京の婦人団体宗教団体では、抗米援朝日本武装反対デモが行われた。そのとき日本政府に対して次のことを打電するということを決議しておる。これはもし吉田政府が再武装を行うならば、中国人民の制裁からは絶体に免れないだろうということを、吉田政府に打電するという決議がなされておるのである。こういう情勢のもとに、本年度予算が組まれておる。従つてこの予算の各項目の中には、公然あるいは隱然として軍事的な性格を持つた部門が、厖大部門として占められておるというようにわれわれは考えられるのであります。従つてこういう観点から、まず池田大蔵大臣に聞きたいのは、終戰処理費の点であります。われわれは国民から率直にこういう声を聞くのであります、すでに日本の国は戰争が済んだ、戰争が済んだにもかかわらず、税金はとられて、生活は非常に苦しい。戰争が済んだのにこんなに税金をとられて、なぜわれわれの生活は楽にならないのだろうかということを、率直に国民は申しておるのであります。このことは、依然として日本の国の予算の中に、戰争は済んだけれども、再軍備——われわれの生活をゆたかにするような再生産にまわることなくして、戰争によつて絶対に消費される部門予算の中に組まれておるということが根本的な原因だ。これを率直に国民は、戰争は済んだけれども、税金をとられて生活は楽にならないという形でとつておると思うのであります。そこでまず終戰処理費の点でありますが、この終戰処理費を組むについて、本年度終戰処理費について占領軍部隊数とか、あるいは人数とか、師団数とか、これに要する労務者あるいは施設、どういう根拠で本年度千億円以上の終戰処理費が組まれたのか、この根拠をまずお聞きしたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ戰争終結宣言はございません。終戰処理費は必要であるという意味で組んでおるのであります。その内容のこまかい点につきましては政府委員より御説明いたさせます。
  5. 河野一之

    河野(一)政府委員 終戰処理費は、終戰当初の九月二日の降伏條項に基きまして、占領軍のためにわが方において施設するものについては、国の予算をもつてこれを負担するということに相なつておるのでありまして、その中の経費はいろいろございますが、現在の段階におきましては、新規の建設工事はほとんどないのでありまして、現在いろいろな施設維持をやつておりますが、そういう維持関係費用、あるいは住宅等における要員あるいは荷役の要員あるいは鉄道通信等に対する交通、通信費の繰入れ、こういうようなものが主体になつておる次第であります。
  6. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣にお聞きしたいのだが、この終戰処理費の算定については、日本政府関係方面要求に対して自由に裁定し、検討し得る権能があるかどうか、お聞きしたい。
  7. 池田勇人

    池田国務大臣 こまかい数字の点につきましては向うの説明を聞き、こちらの意見を述べて、相談の上でやつております。
  8. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると終戰処理費を組む責任は明らかに日本政府にある。池田大蔵大臣見解によつて終戰処理費は組まれておるということに解釈してよろしいかどうか。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 さようでございます。
  10. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、先ほど主計局長の話によると、新しい施設のためには、何ら費用は使われておらない、既設の施設維持のためにのみ使われておるという話でありましたが、現にわれわれの持つておる資料によりますと、新しい施設のために、たくさんの終戰処理費が使われておるが、この点は池田大蔵大臣はどう考えるか。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 終戰直後におきましては、終戰処理費経費相当部分施設その他に使われておつたことは御承知通りであります。その後最近においては、新しい施設に向きます金はほとんどない、非常に少いと私は記憶いたしております。数字の点につきましては、主計局長よりお答えいたさせます。
  12. 林百郎

    ○林(百)委員 主計局長よりも池田大蔵大臣にお聞きしたいのだが、実はあなたも知つておられる通りに、この秋にはすでに講和が締結されると言つておる。講和が締結されるということは、占領目的が達成せられたということである。占領目的がすでに達成せられたにもかかわらず、終戰処理費は依然として減少していない。外国からの援助資金の方は三割八分から四割も減じておるにかかわらず、依然として終戰処理費は削減されておらない、もしあなたの言われるように、終戰当初施設のためにたくさんの費用が使われたが、その後は補修と現状維持のためにだけ使われているというなら、どうしてこういう厖大費用がいるか、この点お聞きしたい。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 厖大費用と申しましても、終戰処理費もだんだん減つて参つております。それから使いますおもな方面鉄道通信への支払い、あるいは二十数万、三十万人近い労務者の給与、こういうものが昔より上つて来ておりますから、それからまた住宅その他の借上げ費用、そういうものがかさんで参つておるのでこうなつておるのであります。この終戰処理費は、アメリカ援助資金と関連してお考えになる向きが多いようでありますが、性質は全然違うものでございますから、御了承願います。
  14. 林百郎

    ○林(百)委員 最近、追浜あるいは三沢あるいは相模、こういう朝鮮事変後の新しい施設終戰処理費が使われておるのであります。あなたも言われるように、もし終戰処理費日本の国の戰争を終結するために使われるところの費用であるならば、こうした新しい朝鮮事変のために設けられる施設へ、なぜ終戰処理費が使われるのですか。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 新しい方面への金はよほど減つておると思います。講和が近いのだから、新しいものに絶対に使つていないということは保証できませんが、大体において使つておりません。
  16. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、終戰処理費のうち、朝鮮事変前に使われたものと、朝鮮事変後使われたものとの数字をあげてもらいたい。
  17. 河野一之

    河野(一)政府委員 従来までの終戰処理費はどういうふうになつているか、ただいま資料を持つておりませんが、最近における支出の状況は、大体月八十億程度です。朝鮮事変以後——あるいはもつと詳細な数字がお入り用でありますならば、毎月別の数字が手元にございますから、申し上げてもよろしうございます。大体八十億程度でございます。朝鮮事変後特にふえておるということはないのでございます。朝鮮事変関係のものにつきましては、これは林さんもよく御存じのように、ドル貨によりまして収入をいたしておるのでありまして、特に増加はございません。
  18. 林百郎

    ○林(百)委員 今主計局長は、P・D関係ドル貨で支払われているというが、そうすると、終戰処理費でP・D関係を立てかえ払いしておる、こういう部門があるかないか。あるとすればどの程度になつておるか、これをお聞きしたい。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 これは向うの計算でおやりになつておるのであります。従つて立てかえ払いをしておりますその分は、終戰処理費収入になつて予算に載つております。大体五十億前後だつた考えております。
  20. 林百郎

    ○林(百)委員 それはいつ支払われるか、そのうちの幾ら部分が支払われておるか、また幾ら部分がまだ支払われておらないか、その点を説明されたい。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、事業の進行程度によつて立てかえ払いの分が、逐次こちらの方に入つて来ることになつておるのであります。数字につきましては主計局長から答弁いたします。
  22. 林百郎

    ○林(百)委員 今も言われたように、すでに終戰処理費朝鮮事変関係のものを立てかえておる。またわれわれの資料によると、明らかに追浜あるいは相模あるいは三沢、こういうように日本の国の戰争を終了させるためではなくして、むしろ戰争を拡大することに使われている費用厖大に多い。このことは、いかに大蔵大臣がここで陳弁されようと、すでに外国ではこう言つている。ワールド・レポートによると、日本には四箇師団、七万五千の現有勢力がある。この占領軍部隊はすでに朝鮮作戰軍になつている。またニューズ・ウイークによれば、飛行場は十八以上あり、ジエツト機は七百五十機以上ある。この七百五十機が日本基地に戰闘配置されているというように、はつきり言つているのであります。こうして終戰処理費という名目にはなつているけれども、実際は朝鮮事変に介入するこの作戰部隊費用終戰処理費である。もしこれが終戰処理費でまかなわれておらないというならば、千二十七億というこういう厖大費用がいるはずはないのであります。現にこの秋に講和が締結されるというときに、池田大蔵大臣に聞きたいのだが、なぜこのような終戰処理費を持ち、なぜこのように飛行場が十八もあつたり、あるいはジエツト機が来ておつたり、七万五千の占領軍が必要なんです。その点をまずお聞きしたい。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 向うさんの金でおやりになることは、われわれの関係したことではございません。しこうして千数十億円の終戰処理費の内訳は、後刻内容を申し上げてもよろしゆうございます。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 向うさまの金でやるといいますが、実際はこちらの費用で立てかえておるわけです。あるいはこちらの費用を使つておるわけです。そこであなたにお聞きしたいのだが、一体占領目的というのと、それから、たとえば朝鮮事変に介入するというような作戰目的と、それがどう違うか。今いる軍隊日本の国の占領目的のためにこれだけ必要なのかどうか、そういう点について池田大蔵大臣としては、すでに日本の国は講和が締結される——ポツダム宣言によつて民主主義は復活され、あるいは軍事的な潜勢力は破碎された、だからもうこれだけの軍隊はいらない。費用はこれだけにしてもらいたいということを言えるのか言えないのか。また作戰軍占領軍との区別を池田大蔵大臣はどういうように考えているか、この点をお聞きしたい。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 終戰目的に必要な金だけを出しております。
  26. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣は、この終戰処理費が積極的に朝鮮介入軍作戰のため明かに使われているということをおおい隱している。それならばあなたにお聞きしたい。終戰処理費はどういう方面に使われているのか。この終戰処理費はどういうように使うのが正しいのか、そういうことについて十分検討する意思があるかどうか。これが作戰費用のために使われている。この本来の終戰費用目的を逸脱しているということを、十分に審査する意思があるかどうか。たとえば、同僚西村君の質問にもありましたように、すでに西ドイツでは終戰処理費の点について十分調査し、むだな点は省いて、これがために五割あるいは六割の節減をかちとつておる。こういう点について、あなたはここで白々しくも、終戰処理費は單に日本国占領目的のためだけだ、決して作戰費用だとかそういう点について使われておらないと言うけれども、その点をもう一度検討して、国民にこれだけの厖大な負担をかけておる終戰処理費について再検討して、これを削減すべきものは削減する、こういう意見があるかどうか、もう一度お聞きしたい。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 個々の問題につきましては、私は審査いたしまして、この程度でやむを得ないと考えているのであります。何も審査をせずに御審議願つているのではございません。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 終戰処理費の点について池田大蔵大臣は、これは明かに日本の国の占領目的だけに限定されている。決して朝鮮事変関係には使われておらないということを言つててんとしておるのであります。これはすでに国民の方が事実を知つております。今いる占領軍日本の国にポツダム宣言を実行させ、日本の国の軍事的な潜勢力を破碎させ、日本の国に民主主義を復活させる、日本の国に一日も早く戰争の危険をなくして、日本の国を平和にするためではなくして、むしろお隣に朝鮮事変が起きておるので、これに備えるための占領軍が来ておることも明らかだ。しかもそのために厖大占領費が使われるということは明らかだ。これは明らかに朝鮮への介入戰費用終戰処理費名目で負つておるのだ。ここでいかにあなたが、そういう白々しいことを言つても、この点を真劍に考えなければ、あなたは日本大蔵大臣の資格はない。現に西ドイツでは終戰処理費についての調査委員会——ちようど与党キリスト教民主同盟、自由党と同じです。これが全予算の三六%を占めておる終戰処理費について、調査委員会をして調査したところが、銀の食器が買つてあるとか、あるいは骨董品が買つてあるとかいうことが明らかになつておる。これに対して高等弁務官削除要請をした。またこの削除要請に対して、高等弁務官は十分調査した上、大幅に削減することをはつきり約束している。それにもかかわらず、あなたはこの千二十七億の終戰処理費が何ら本来の占領目的のため以外に使われておらない、てんとしてあなたはここでそう言つている。少くとも西ドイツでとつた例のように、この点についてもう一度再検討する意思があるかどうか、最後にお聞きしたい。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 再検討しなくとも、もう初めから検討いたしておりますから、ドイツのようなことはございません。これはこまかい問題でございますが、一昨年でございましたか、私は申し入れて、ある部分ははずしてもらつたこともありますし、また終戰処理費内容につきましては、私は事務当局以外に、自分で出かけて、個々の費目について審査いたしております。決してこれを朝鮮作戰に使つているとかいうことはないのでございます。あなたが独断的にそういうことを言われることは、私は心外にたえないと思います。
  30. 林百郎

    ○林(百)委員 特別調達庁関係の人は来ておりますか。
  31. 小坂善太郎

    小坂委員長 まだ来ていないようであります。要求はしております。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、私は池田大蔵大臣に対して、これから特別調達庁関係者が来た際に、いかにこの終戰処理費が新しい朝鮮情勢、新しいアジア情勢に対応して使われているかということを、はつきりさしたいと思う。  その次の問題に移りたいのでありますが、この予算の中で、われわれがやはり軍事的な性格を持つているように思われるものを、次にあげて見たいと思うのであります。  まず第一に緊要物資輸入基金でありますが、この緊要物資輸入基金二十五億円の設定であります。これはだれの発意に基いてやられたのか。これは当初から池田大蔵大臣考えられたのか、あるいは関係方面との打合せ、要講があつたのか、その点をまずお聞きしたい。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のように、貿易特別会計、その他いろいろな機関がございまして、政府輸入をやつてつたのであります。しかるところ、昭和二十六年度からそういうことをやめることにいたしました。その場合において、国際情勢の現段階政府輸入を一切しないかどうかという問題が起つて参りました。私は今の場合、こういう政府輸入の部面もある程度置いた方がいいというので、私の考え盛つたのであります。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この緊要物資輸入基金輸入するものは何を考えておりますか。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 日本経済再建に必要なもので、しかも政府輸入が適当であるというものならば、これによつてやりたいと考えております。何分にも二十五億円では、これは四回転くらいするかと思つておりますが、四回転いたしましても百億円、これでは足りないから、この会計に借入金の制度を設けようというので、今検討を加えております。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 日本経済再建のために必要なものと考えられるもの、それを具体的に大蔵大臣にお聞きしたい。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろなものがございます。何でも必要なものは買います。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 だから君の考えている一番必要なものは何かということを聞いておるのだよ。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 これはニツケルもございましよう。いろいろな特需物資もございましよう。また必要によりましては鉄鉱石とか、いろいろな原材料も買うこともありましよう。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 今池田大蔵大臣の答弁で明らかになつたように、これは特需物資あるいは鉄鉱石、あるいはアルミナ、こういうようなことを言われておるが、これは明らかに戰略的物資である。要するに君の考えている緊要物資というのは、日本の国を戰略的経済に切りかえるためのもので、国民生活に必要なものは何も出ていない。(発言する者あり)これは明らかだ。これは池田大蔵大臣みずから答弁しておる。緊要物資輸入基金による特需物資輸入は、日本の国を軍事的に再編成をするために、この軍事的な資材を購入するものと考える。あなた自身がそう答えておる。  その次にもう一つお聞きしたいのであるが、よく池田大蔵大臣が言われておる開発銀行、この開発銀行構想についてまずお聞きしたい。
  41. 小坂善太郎

    小坂委員長 林君にちよつと申し上げますが、池田大蔵大臣は丁重に、言葉に注意しておるようでございますから、あなたも、御熱心の余りと思いますけれども、用語の点は上品にお願いしたいと思います。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げたのは、日本経済再建に必要なものでございます。いるものは何でも買います。初めから予定いたしておるのではございません。ただ鉄鉱石などは御承知通り非常に不足でございますのでとにかくなくては困るというものからやつて行こうというので、決して再軍備しようというような考えではないのであります。  それから日本開発銀行につきましては、たびたび申し上げましたように、今その業務内容につきまして、また出資関係につきまして、検討を加えておるのであります。申し上げる段階にまだ至つておりません。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは鉄鉱石やいろいろ買いたいと言つているけれども、実際この緊要物資輸入基金輸入する物資は、日本の国の政府の自由にならない。こちらで買いたいものは実は買えない。向うから指定されたものを輸入しなければならない。情勢が非常に現実的なんだと私は考える。またいろいろな情勢を判断するとそうなる。そうすると明らかに、この緊要物資輸入基金という名目で、新しく昭和二十六年度予算に組まれたものは、実は日本の国の軍事的な再編成に使われるための基金である。それから開発銀行、これについても大体百億から百二十億というような基金を認めているようであるけれども、この開発銀行によつて輸入するものも、やはりこの緊要物資輸入基金考えられておると同じような方向に使われると思う。この点についてもう一度開発銀行構想について、これはどういう役割をこの銀行によつて果させるか、どういうものをこれによつて購入するなら購入しようとしておるか、輸入するなら輸入しようとしておるか、大体の構想についてお聞きしたいのであります。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 緊要物資輸入基金については、あなたが独断的にお考えになるような考えは持つておりません。日本経済再建に必要なものは何でも買う、こういうことなのであります。  それから日本開発銀行を、いかにも輸入銀行のようにお考えになりますが、これは誤りであります。これは普通銀行長期資金を出しておるというようなものを肩がわりするとか、あるいはほんとうに長期資金を今出す特別の機関がございませんので、そういう長期特別金融機関として考えようといたしておるのであります。そのために、要すれば輸入資金も出すことはありましようが、大体考え方は日本開発のために、長期資金を供給する特別の銀行として設立したいという考えであります。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 長期資金として日本開発のために使いたいと言いますが、そうするとその長期資金を投資する投資先はどういう方面考えておりますか。具体的に。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 投資先はいろいろなものがございましよう。長期資金を要する事業はたくさんあるのでございますから……。そこで日本開発銀行がたとえば鉄鉱とか、あるいは石炭とか、あるいは肥料会社の方へ出すとか、あるいは今までそういう方面長期資金を出しております市中銀行の貸出しを全部肩がわりするとか、あるいは幾分肩がわりするとか、いろいろな問題があるのでありますが、こういう関係につきましては、出資の、いわゆる資本金の限度もございますし、また債券の発行をどうするか、発行を認めるとしても、どの程度のものにするかということで、今検討いたしております。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 だから具体的に——あなたは先ほど輸入物資もいろいろあると言う、開発銀行の投資先もいろいろあると言うが、あなたの頭の中で、こういう方面が最も重要だと考えておるところを率直に言つてもらいたい。何も共産党だといつてこわがつて隱す必要はない。あなたの考えを率直に出してもらいたい。当然われわれと考えは違うと思う。あなたが重要だと思つている面と、われわれが重要だと思つている面とは違うと思う。そこで池田大蔵大臣の大体の財政方針がはつきり出て来る。だから率直に、開発銀行によつて投資したいと思う、あるいは日本の国として、これだけはどうしても開発してやらなければならない重要な仕事だと思う点を述べてもらいたい。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的にきまつておりませんので、率直に申し上げるわけに行きません。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 率直に言えないということは、結局この開発銀行を特需関係、戰略物資あるいは軍需産業等、当面最も必要な面にこれを使うということを考えられておる。それを率直にここで言えないから、そういうふうに答弁されていると私は考える。従つて池田大蔵大臣考えている開発銀行というのも、これもやはり緊急物資輸入基金と同じように、決して日本の国の自由に行くものでないし、アメリカの再軍備と関連を持つたもうからない戰略物資の購入、軍需産業の復興、こういう方面に使われるものというふうに、われわれは考えざるを得ないのであります。  そこでその次に聞きたいのは、池田大蔵大臣は広島の選挙の車中談の中で、これは新聞に伝えているところでありますが、再軍備をしても増税をしないと言つておられたそうでありますが、これは言われましたか、どうですか。また言つたとすればどういうことか。この点ちよつとお聞きしたい。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたは開発銀行輸入を主たる目的として建てるようなお考えでございますが、そういう考えは持つておりません。  広島へ参りました車中談で、再軍備をしても増税はしなくても済む、こういうことを言つたことはございません。再軍備の問題は私は話したことはございませんから、御了承を願います。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 それではあらためてここでお聞きしましよう。そうすると新聞に出ていたことは、あなたは言わないということですね。うそが書いてあつたということですね。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 再軍備の問題については言つておりません。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あらためてここで池田大蔵大臣に聞きたいのですが、あなたは日本の国に再軍備を必要と考えておられるかどうか。また今の情勢——ダレス氏が来て結局日本の国の安全保障は、太平洋同盟というような集団的な安全保障あるいは日米軍事同盟というような形、こうした形で集団的な、あるいは同盟的な形で日本の安全保障を確保しなければならない。またきようのアメリカの各新聞の輿論によりますと、日本の国が独立するためには、日本の国が自力でもつて防衛体制を整えなければならないということを盛んに言つている。こういう際に池田大蔵大臣は、講和も秋に迫るという日本の自立の問題についてどう考えられておるか、まずお聞きしたい。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 講和條約もまだ結ばれてないのであります。その後における問題につきまして、今私が意見を申し上げる自由を持つておりません。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとあなたは再軍備の問題あるいは日本の国の自衛の問題については、何も考えていないのですか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 考えてはおりまするが、意見としては申し上げられないということであります。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣が国務大臣として考えていることを、私は聞きたいわけなんです。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 私の考えていることを、あなたに申し上げなければならない義務はございません。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 そんなことはない、国会議員が国務大臣に対して、ことに日本の国が再軍備をするということになれば、最も大きなかぎを握る大蔵大臣に対して、世界の情勢から。日本の置かれている国際情勢からいつて、再軍備をどの程度にするか、またそのためには国民の負担はどの程度必要かということは、聞くのがあたりまえじやないか。現に大蔵省では再軍備をした場合の、国民の負担について調査しているじやないか、作業をしているじやないか。あなたも国民所得のうちの四%ぐらいは軍備に使つても負担にならないということを言つているじやないですか。ここへ来て急にそんな尻を隱してもだめだ。だから一体国民の所得の四%による軍備、あるいはあなたの大蔵省で目下作業して検討しておる軍備の問題について、実質的にどういう再軍備を考えておるかということをお聞きしたい。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 講和問題に関係することでありますから、私は今申し上げられないと言つておるのであります。ただ財政当局としまして、各国がどのくらいの軍備を使つておるかということは、大蔵大臣としては検討をいたしております。たとえばアメリカ国民所得の七、八パーセントであつたものが、今度は二二%になつた。イギリス、フランスの七、八パーセントは一一、二パーセントになつた。こういうことは大蔵大臣としては、一つの財政当局としての勉強でありますからやつておりますが、日本の再軍備をどうこうしようということは、私は考えておりません。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの予算の中には、全然池田大蔵大臣日本の再軍備、自衛の問題は織り込んでいないというように解釈していいですか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 予算をごらんになりまして、どこにそんなことがございますか。私からあなたにお聞きしたい。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 こつちが聞きたいのです。こんな情勢になつて、あなたの政府は單独講和して自衛して、日米の軍事同盟をすると言つておるではないか。それにもかかわらず池田大蔵大臣はこの予算に全然軍備のことを考えてない、再軍備のことを考えてないと言われる。そんな無責任なことがありますか。あなたは明らかに軍事的なクツシヨン、将来の情勢に対するクツシヨンについて、何らか持つておるはずである。しかしそれを言えば、あるいは再軍備論者だとか何とか言われるから、それを隱しておるのではないか。昨年の昭和二十五年度予算の中に、国債償却費として、あの厖大な国債償却費をつくつておる。これが池田財政の基本的な生命線である。あなたはこの中から警察予備隊に二百四十億使つておるではないか。あなたの言うことは全然当てにならない。今年もそういうふうにポ政令で何かに使うという場合には、これを使いますというものがこの中にあるならば示してもらいたい。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 日本政府が再軍備をやるということを言つた覚えはございません。従つて年度予算に再軍備の金なんかみじんもとつておりません。しこうして昭和二十五年度一般会計からの債務償還費から警察予備隊あるいは海上保安庁の費用の二百数十億円を出しましたのは、再軍備ではないということは、総理以下たびたび言つておることであります。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 警察予備隊が軍隊であるか警察であるかということは、もうここであなたと言い合わなくても、国民が全部知つているのですよ。これは明らかに軍隊だ、軍事費なんだ。しかも今年の秋講話が結ばれて、日本の国がもう再軍備しなければならないということのためにダレス氏も来、吉田もダレス氏と会つている。それにもかかわらず池田大蔵大臣は、財政的には全然そういうことは考慮しないということは無責任ですよ。それは無責任か言えないかどつちかだ。  そうするとまず私がお聞きしたいのは、経済再建安定費——見返り資金の中にある……。     〔発言する者あり〕
  66. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。私語を禁じます。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 見返り資金の中にある経済再建安定費の用途についてお聞きしたい。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ用途はきまつておりません。経済再建のために使おうというのでとつておるのであります。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 用途もまだきまつておらない金が七百五十四億あるということは、ちよつと解せないのです。では将来どういうところに使うつもりであるか、経済再建安定費というのは、どういうことを考えておるのか、お聞きしたい。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十六年度経済再建安定費としてとつておいて、必要の都度これを出そうというのであります。経済再建安定費は、日本の産業復興、国民生活安定に必要なる経費をこれから出す予定であるのであります。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 国民生活の安定のために使われるというならば、去年の経済再建安定費の中から進駐軍住宅費として二千戸、八十一億円使われておりますが、進駐軍の住宅費用は、日本国民生活の安定に必要ですか。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 日本国民生活安定の一つには、占領目的達成ということもあるのです。ただいまのところ、七百四十七億のうちには進駐軍関係住宅を建てる予定はないと聞いております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 なくても去年すでに経済再建安定費という名目の中で、日本国民の安定にあまり関係のない進駐軍の住宅が建てられているんです。だからこの七百五十四億というのも、いずれはこれと同じ面に使われるということを私は断定する。これ以上あなたにこの点を言う必要はないと思う。  その次に池田財政の根本的な観念の中で、資本蓄積ということを言われていますが、資本の蓄積の前に、国民生活の中には貧困が大分蓄積されているわけです。そこで貧困の蓄積の方の面についてはどういうように考えられているか、これをまずお聞きしたい。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 貧困の蓄積という言葉がよくわかりませんが、私は国民生活の安定をはかるべく産業の復興、減税、その他につきまして努力いたしております。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 じや一例を申しましよう。東洋レーヨンでは、昭和二十四年の十月から三月までの利益が一億四千九百万円です。これが昭和二十五年四月から九月の半年の間に、利益率が五・四倍になつています。また伊藤忠商事では二十四年十月下半期の利益が九百万円、これが二十五年の四月から九月の間には三億九千二百万円、四十四倍の利益になつておる。しかもこういうように大分利益率もあり、資本蓄積もされているにかかわらず。池田大蔵大臣は非常に御親切にも、なお資本の蓄積が必要だといつて、源泉選択課税、積立て課税の廃止、特別償却費を認めておる、あるいは株券の名義書きかえ登録制度を延期して、合法的な富裕税の脱法措置を認められている。大分こちらの方には御親切なんだ。ところが東洋レーヨンは、下半期の間に五・四倍の利益率を上げているのに、女工さんの賃金を見ますと三千二百円、食費に千四百円使われて手取りが千八百円、これではとうていやれないというので、裏の山で夜になるとからだを売らなければ生活ができないという人がたくさんいます。これはほんの一例です。紡績女工が場合によつてはからだを売らなければ暮せないという、こういう例がたくさんあるのです。だからあなたは資本の蓄積資本の蓄積と言つて、大分こういうことをやります、ああいうことをやりますと言われていますが、このからだを売らなければ生活できないという面についての保護政策、これをまずお聞きしたい。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 減税その他あらゆる施策をやりまして、おととしよりも昨年は非常にCPI——消費者物価指数も下つて来たのであります。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 驚いたものだ。それでは私は一例を申しますが、アメリカの新聞のクリチヤン・サイエンス・モニターの東京特派員が一九四七年の末、日本の産業中心地の旅行を終えたときに、日本の労働者の大多数は敗戰後、二百年前と同様な生活をし、労働をしておるということを指摘しておるのであります。私の考えるのには、資本の蓄積の前にまず貧困のこの蓄積を解決することこそが日本経済の安定であり、日本の国の国民生活の安定だと思うわけなんです。そこであなたは貧困の蓄積の方には、いろいろな対策を講じておると言いますけれども、たとえば失業対策費を見てもわかるが、これはあなたの予算書に書いてある、大体平均五十万人の登録失業者がある、これを毎日十七万人だけ使わせるというのでしよう。これがどうして十分な対策です。一方では利益率が四十四倍、あるいは五・四倍もの利益があるものに対して、なお保護政策をしようとしておる。一方には五十万の失業者に対してわずか十七万しか収容できないような予算しか使つておらないじやないですか。しかもこの失業者は——あなたにこの点一つだけ言つておきますが、自分のおやじがきよう登録できれば、隣りに行つて米を借りる、あぶれれば米を借りるわけには行かない。子供が職業安定所へ行つて、お父さんが登録できるかどうか見ておる、登録できたら、急いで家へ帰つてお母さんに連絡して、隣りへ行つて米を借りて来るという実情なんです。この登録失業者五十万に対してわずか三分の一の十七万人にしか仕事を与えないような方法をしておきながら、なお資本の蓄積を必要とし、あらゆる保護政策をするということは、明らかに池田大蔵大臣考え方では、日本経済の安定ということは、資本の安定であつて、労働者、あるいは農民とか市民としては、決して安定ではない、不安定だ。だからこそ広島の選挙は敗れたので、これはその顯著な例なのだ。これについてあなたは考えを改められるかどうか、この点をお聞きしたい。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 紡績、あるいはスフ、こういういわゆる糸へん会社のことが出ましたが、昨年の暮れに紡績その他繊維関係の会社が、どれだけ賞与を出しておりますか、一昨年の暮れと比較なさつたならば、相当こういう会社が年末賞与を出しておることがおわかりと思います。会社の方は、利益が上つた場合におきましては、職工職員の方に出すようにいたしておるのであります。しこうして日本全体から申しますと、法人関係におきましては世界に比べて相当安いのでありまするが、どうしても資本の蓄積が必要であるというので、法人関係のみならず、個人の方につきましても源泉選択の制度を認める等、いろいろな手を打つておるのであります。しこうして全体として経済を上に向かせて行くならば、国民全体の生活水準が上るのであります。私は今の場合ああいうふうな資本の蓄積の方法をとることが適当であると考えておるのであります。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 私は時間の関係がありますからはつきり言いませんが、たとえばボーナスの点、給与の点につきましても、一例を申しますと、東洋レーヨンでは今度の下半期の賞与は、十人の重役で六百万円です。はつきり申しましよう、一人平均六十万円です。ところが女工さんには平均五千円の賞与しか出ておらない。もしあなたが賞与の点を言うならば、そんなことはでたらめですよ。だからあなたの言う資本蓄積は、明らかに労働者の猛烈な収奪、アメリカ人の目から見ると二百年前の生活をしておる、労働者をそういう状態に置いての資本の蓄積、しかもその蓄積された資本が、先ほど私が申しました通りに、軍需産業だとか、あるいは再軍備だとか、われわれの生活には関係ない絶対消費の面に使われてしまつておる。この大衆の極度な窮乏、一方には厖大な資本が蓄積されて、しかもそれが軍需方面に使われて、軍需方面はますますもうかつて行くというこの組立てが、私は本年度のあなたの財政政策の基本的な考え方のように考える。だからこそ税金の問題については、あなたは法人にだけには感謝されると思う。あなたの財政政策の本質に、こうした大きな資本擁護のもとに猛烈な労働者の収奪が、いかに隱されておるかということを私は申し上げておきたい。この点についてはこれ以上あなたに申す必要はないと思う。  最後に、今大蔵大臣とは押し問答になりましたけれども、要するに本年度予算の中に、われわれが考えておるところによると、公然たる軍事費として終戰処理費、海上保安庁の費用等千二百四十二億、全予算の一八%。隱然たる軍事費としては、道路計画の一般公共事業費、あるいは失業対策費の一部六百五十三億。こういう厖大なものが含まれておる。さらに戰争経済に直接間接に使われる費用として、外国為替資金だとか、緊急物資輸入基金だとか、輸出銀行だとか、中小企業信用保険だとか、こういうものは直接間接軍事に関係して来る。これが五百八十五億。さらに国民生活とは関係のない国警の費用、裁判所の費用、刑務所の費用、法務府の費用、あるいは大蔵省の徴税費用、こういう直接間接軍に関係し、日本の国の再軍備に関係する予算が全予算のうちの二千九百七億、この予算の実に半分が直接、間接日本の国の再軍備と関係しておる。あなたは本年度予算については再軍備の点は全然考えておらないという、それはうそなんですよ。ちやんとあなたは万一の場合のクツシヨンや、公然たる軍事費をこの中に組んでおる。ただそれを共産党の私に答弁できないというだけなんですよ。それはほんとうなんです。だから私はこれ以上ほんとうのことを言わないようなあなたと、いつまでここで押し問答しておつてもむだですから、これ以上あなたにお聞きしません。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度予算に軍事費を含んでおるというようなことを、独断的におやりになるというようなことは不見識だと思う。もしそれならば何が軍事費かここで明確にしてもらいたい。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 私はあなたが法人に対しては非常に恩惠を与えておる。しかし失業者や労働者に対してはそれと比較して薄い。だから世間では池田氏に対しては、あなた自身は法人からは感謝されてもいいだろうといつておる。たとえば金へん景気、あるいは糸へん景気、特需関係で非常に利益を得ている法人に対しては、寛大な処置をとつておるということをいつている。しかも軍事費の点についてもう一度申しますが、あなたが何といつて終戰処理費というのは日本の国の戰争状態を終結させて、日本の国を平和にするための費用ではないのですよ。明らかに日本の国を朝鮮事変に介入させる費用が含まれておる。今あなたがどんなに陳弁されてもそうなんですよ。今占領軍性格を見ればわかる。日本の国から飛行機が飛び立つておる、この費用を直接間接終戰処理費が立てかえておるのはあたりまえです。これを軍事費といつて何が悪いのですか、私は率直に国民意見言つておるのですよ。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 終戰処理費は、朝鮮事変の軍事目的のために使つておりません。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に横尾通産大臣にお聞きしたいのですが、あなたにまずお聞きしたいのは、ポツダム宣言と、対日占領政策の基本政策の中で、極東委員会が日本の産業に対してはどういう方針を立てておられるか、まずその基本的な、極東委員会とポツダム宣言によつて命ぜられておる日本の産業のあり方についてまずお聞きしたい。
  84. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。ポツダム宣言では日本は平和産業に邁進するようにやつておるということに考えております。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとお聞きしますが、そのポツダム宣言と、極東委員会の諸決定の方針に従つて日本の産業はまつたく平和的な産業によつて営まれておるかどうかということをお聞きしたい。
  86. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 さよう考えます。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、東日本重工の横浜ドツクと浅野ドツクで、上陸用舟艇をつくつておる。赤羽の日本製鋼では裝甲車、機関銃、機関砲、追撃砲の修理をしておる。横浜の日産自動車では、軍用トラツクをつくつておる。荒川の日本建鉄その他ではガソリン爆彈をつくつておる。横須賀の旧海軍工廠では、軍用船の修理をしておる。横浜の旧大日本航空では、飛行機、自動車、小松製作所では、戰車の修理をしておる。小倉工廠では、戰車の修理をしておる。そのほかあげれば限りありませんが、これはやはり平和産業でございましようか。
  88. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。占領軍目的に合致するように修理の注文をしております。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの日本産業の軍事化については、あなたは戰車をつくつても、軍鑑をつくつても、機関砲をつくつても平和産業だといつておりますから、いくらあなたと問答してもどうにもしようがないと思います。そこで問題になるのは、しかもこうした軍需産業、低賃金のもとに、厖大な利潤をもたらす日本の軍需産業が、日本の資本家だけによつて運営されるならまだしも、これに対して最近は外国資本が入つて来ておる。たとえばゼネラル・エレクトリツクの代理の人が、芝浦工場の再建準備のために調査に来ておる。さらに具体的には和歌山における日産化学会社の工場の半分の株をアメリカ資本が買つておる。松尾鉱業会社、三菱冶金会社、日本冶金会社その他の会社に、具体的にアメリカの資本投資がなされておる。そのために商法を改正されて、無記名株だとかあるいは無額面株だとかいうものまでできています。そこでこうして日本の国の産業を軍事化するような方面に、外国資本が入つて来ることに対して、あなたはこれを適当に拒否する、あるいはこういうことをさせないようにする。ポツダム宣言と極東委員会の方針に従つて日本の国の産業を平和産業にするために、こういう軍事的な目的を持つてつて来る外国資本に対しては、これを拒否するように適当な措置を講ずる考えがあるかどうかお聞きしたい。
  90. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。外国資本の日本に入つて来ることが、必ずしも軍需工業のために入つて来るとは考えません。また軍需用であつて日本の産業がこれによつて救われるならば、私は日本が軍需産業をやつているのではない。向うのものを注文を受けて部分的にやることは、少しもさしつかえないと思います。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 支離滅裂でお気の毒に思うのですが、よその国の軍需品をつくつても、日本の産業の軍事的な再編成じやないのですか。そうでしよう。
  92. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 そうです。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 そうですとあなたは言われる。
  94. 小坂善太郎

    小坂委員長 大臣委員長の許可を得て発言してください。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 それからもう一つ重要なことは、軍事的な特需関係以外の産業に、平和産業にも直接、間接外国資本が入つて来ると言いますが、日本の現在置かれている情勢で軍需に関係のない、純粹な平和産業に入つて来る外資というのは具体的にどこですか。
  96. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 一々指摘することは煩にたえませんが、すべてのものが軍需産業とお考えになるあなた方のお考えに対して、私らはそうは考えないのであります。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 だから私も決して産業が全部軍需産業だとは言わないけれども、軍需産業以外に、直接間接軍需あるいは特需と関係ない産業に外国資本が入つておるならば、それをお示し願いたいと言つておるのです。
  98. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。私はまだ特に軍需産業に必要なるものとしてのみ入つて来ておる資本はないと思つております。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、ただいま申しましたたとえば芝浦工業だとか日産化学会社だとか、あるいは日本冶金会社だとか、こういうところが何をつくつておるかということは、まだ御存じないのですか。
  100. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 それらの会社がすべて軍需工業のみをやつているとは、私は考えないのであります。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 それじやもう一度申しますが、こういうのは、たとえばレーダーだとかガソリン爆彈だとか、こういうものをつくつておるのを、あなたはよく事実を調査されてから言つていただきたい。これはあなたの答弁いかんにかかわらず、日本の産業が軍事的に再編成されて、直接間接軍事的なものが非常にふえておる。またこれが非常な利益を上げておることは事実でありますから、これを率直に認めて、これがポツダム宣言あるいは極東委員会の諸方策から考えてどうなるか、真劍に考えていただきたい。  その次の問題ですが、実は日本の国の輸入計画が、昭和二十六年度日本の産業経済については非常に重大だということは、あなたもお考え通りであると思う。そこでまずお聞きしたいのは、すぐ近くにある、しかも非常に安く入つて来て、そうして船の問題もないところの対中共との貿易をやめられたのは、これはどういう事情からでしようか。
  102. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。これは前国会でお答えしたと同様に、私は現在の東洋の情勢上、軍事的に使われるようなものは輸出することをやめた方がよかろうというので、禁止したのであります。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、中共から塩や大豆が入つて来るのは、やはり軍事的な危険があるというのですか。
  104. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 輸入に対しましてはとめておりません。ただ輸出に対してとめておるのであります。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 輸出について、たとえばトレーラー・バスだとか、あるいはトラクターだとか、そういうものが軍需品と関係がありますか。あるいは鉄道のレールだとか(「ある、ある」と呼ぶ者あり)そんなものがあるというならば、日本の産業は全部軍事的な産業です。
  106. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのお話のようなものは、軍事的に使い得ると認められるからとめたのであります。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとトレーラー・バスとか、農場に使われるトラクターは、軍需品とどういう関係がありますか。
  108. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 農業に使いますものでも、軍事的に使い得るおそれがあるからとめたのであります。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、日本の産業は全部軍事的に使われる危険があるんじやないですか。何が純粹な平和産業ですか。そんなばかな答弁はないじやないですか。
  110. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。中国向けにこれを輸出しますと、軍事的に使われるおそれがあるからとめたのであります。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると中共へやれば軍事的になり、アメリカならば非常に平和的なのですね。
  112. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 トレーラーなんかアメリカにまだ輸出しておりません。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 これ以上質問にたえられませんからいたしませんが、そうすると、たとえば中共から入つておりました塩あるいは粘結炭あるいは大豆、こういうものはどこからかわつて入れますか。
  114. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。中共からは、日本からまだ要許可品目でないものは輸出しておりますから、それらとバーターで多少の粘結炭も入ります。塩は地中海から入ります。粘結炭も足りない分は、アメリカから輸入することにしております。
  115. 小坂善太郎

    小坂委員長 林委員に申し上げますが、あなたの御要求で労働大臣がけさから来て待つておられます。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこれだけお聞きしましよう。地中海から塩を輸入するのと、中共から塩を買う場合、運賃はトン当りどれほど違いますか。
  117. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。運賃の差額が何ドルであるかということは、まだ研究しておりませんが、しかしながら買えなければ、高い運賃を出しても買う必要があるのであります。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは知らないかもしれませんが、塩はトン当り現地では三ドル、地中海から塩を入れれば十二ドルも十三ドルもかかるのです。あなたはわからなければよく教えてあげます。こんな損までしてなぜ地中海から買うのですか。すぐ近くの中共に塩があるのに、厖大なむだな費用国民にかけておるのです。中共貿易の禁止は、日本政府独自の考えでやつたのですか。
  119. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。日本政府でやつたので、どこからも示唆を受けておりません。これは前国会でもお答えした通りであります。ただ高いから買うなとおつしやるけれども、中共から買えなければ、必要なものは少々高くても買うのが商法です。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 買えない原因をつくつたのはあなたじやないですか、中共貿易を禁止したのはあなただというのでしよう。そうしてこんな高い運賃——アメリカから石炭を買う場合には、中共から買えばトン当り十二、三ドルが二十八ドルでしよう、鉄鉱石つて中共から買えば十一ドルか、十二ドルのものが、アメリカから買えば二十四ドルでしよう。こんな損をあなた自身の判断でやられたのですか、だれの許可を得てやられたのですか。
  121. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今のお話は、現在の情勢で中共貿易をとめなければならぬ情勢にあると、私は判断したのであります。多少国民に負担をかけましても、やがてはそのことがよくなると思つてつたのであります。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 もう通産大臣はこれでいいです。  次に労働大臣にお聞きしますが、PD関係の工場で、非常な労働強化が行われております。たとえば石川島重工では、二十二才の労働者が一箇月に百十八時間の残業をしております。日本鋼管では浅野ドツクで一箇月一人三百時間の残業をやつております。小倉製鋼では晝十三時間、夜十二時間、こういうようなまつたく労働基準法も労働関係調整法も無視されたような……。
  123. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします……。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 何だ。あなたは、まだ質問を聞いていないじやないか。
  125. 小坂善太郎

    小坂委員長 委員長は発言を許しております。
  126. 保利茂

    ○保利国務大臣 PD工場に、非常な労働強化が行われていると言われますけれども、朝鮮事変が起きましたその直後において、そういううわさがございましたから、労働省といたしましては、関係方面とも十分の連絡をとりまして、労働法規が守られて行くように、そうして労働者が保護せられて行くように、十分の注意をいたしておりまして、お話のようなことは、私はないと思います。  なお残業関係に、労働時間が非常に延長せられていると言われますけれども残業をいたしますについては、労働法規の示します通りに、労働組合との協定を必要といたすのでございますから、お話のようなことは、一方的に強制せられていることは、絶体にございません。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 PD関係の職場では、団体交渉をする場合は、監督官の許可なくしては、団体交渉をしてはならない。また団体交渉をした内容を報告する場合には、監督官の許可なくしては報告できないということが言われている。あなたの言われるように、PD工場では完全に労働三法が守られているということは、実際においてはうそなんです。監督官やあるいは守衛や、こうした者の監督のもとに、ほとんど労働三法が守られておらないというのが実情なんだが、あなたの調査にはどういうことが出ておりますか。
  128. 保利茂

    ○保利国務大臣 各企業において、いろいろの企業防衛措置をとられるということは、私は企業経営者としては当然であろうと思います。いかなる措置をとられつつあるかという個々のことにつきましては、あなたのように何も存じません。しかしそういうことは当然とらるべきことであろうと思います。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 たとえばビクター・オートの——これは多摩です、PD工場では、米国に対して業務に忠誠なることをまず誓わせる。いかなる組合活動も監督官の許可なくしてはしない、こういうことがちやんと雇われる場合の誓約書に書いてあるわけなんです。これではもう日本の労働者ではない。これであなたは、PD関係の労働者が完全に日本の労働三法によつて保護されると考えられますか。
  130. 保利茂

    ○保利国務大臣 PD工場におきましては、労働法規はりつぱに守られておりますことを重ねて申し上げます。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 もうこれ以上、労働大臣にその問題についてはお聞きしませんが、私は日本の労働者が外国作戰の必要のためにどんなに苦しめられておるかという例を一、二申します。  まず第一に、桜木町の職安で、日本の労働者が朝鮮から遺骨になつてつて来た例を知つていますか。
  132. 保利茂

    ○保利国務大臣 まだ私はそういう報告は受けておりません。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 では事実を申します。十二月七日、横浜に、日本人の労働者の遺骨が二百四十七柱到着した。各所の沖仲仕でうわさがあつたので、このことを桜木町の職安の労働者の代表が調査に行つたところが、所長は、二百四十七柱とはひど過ぎる。しかし十三、四名のものは戰病死したことは間違いないということをちやんと答えておる。しかもこの労働者はどういう状態で朝鮮に持つて行かれるか。この点も私は事実だけ指摘いたします。「前略、横浜を出港してはや三箇月になるところです。グアム島での半年より仁川の一箇月は長いような気がいたします。この分で行くと来年(一九五一年を指す)に入らないと日本へ帰ることはできないかもしれません。毎日毎晩追いまわされて、つくづく泣ける思いをしております。真夜中の作業のつらいこと、身が張り裂けるよう。オーバー・タイムは日に九時間平均です。新聞はなし、ラジオはなし、戰況がどうなつておるか全然わかりません。仁川に入港しておるLR全員は日本に帰してくれるように嘆願中ですが、これもどうなることやら。皆様も何分協力してくださるようお願いします」という手紙が来ておるのであります。これは一人や二人ではありません。この前の委員会でも私は読みました。日本の労働者諸君は本人の意思ではなくして朝鮮事変に動員されておるのは実情なんですよ。これに対して労働大臣としては何らかの処置を講ずる意思がありますか。
  134. 保利茂

    ○保利国務大臣 労働省で職業紹介をいたしております場合に、進駐軍の、いわゆるスキヤツプの指令に基きまして、労務者の紹介をいたします。これは当然日本政府が負つておる義務でありますから、御紹介をいたすわけでありますが、その紹介せられた人たちが、どういう任務につくか。もとより紹介によつて、就労するか就労をしないか、それはその紹介を受けた労務者の自由意思によつてやることになつておりますから、ただいますいぶんはげしい御意見があつたようでございますけれども、私はあまりに実情に遠ざかる、あなたのある目的を持つ御意見ではないかというように思わざるを得ないのであります。     〔発言する者多し〕
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 もしこれが事実でないというなら、桜木町の職安に労働大臣と一緒に行つて調査してもよろしい。もう一つ私は事実を申し上げます。     〔発言する者多し)、
  136. 小坂善太郎

    小坂委員長 委員外の方は默つていただきたい。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 私は決して過激なことも何も言つているのではないのです。要するに日本の国の敗戰の状態を一身にPD関係の労働者は負つている。このことについて保利労働大臣は十分保護する意思があるかどうか。また第一こういうふうにPD関係あるいは朝鮮作戰日本人の労務者を動員すること自体が、これはポツダム宣言や極東委員会の諸原則に違反しているわけです。当然日本政府はこれを拒否することができるわけです。それをこういうことをあえてさせるのはどういうわけか。これを労働大臣としては十分考慮し、拒否するものは、敢然として拒否したらいいと思います。どう考えますか。
  138. 保利茂

    ○保利国務大臣 あなたはPDと進駐軍の直用者とを混同されておられるじやないですか。PD工場におきましては、先ほど申します通りの状態でございます。LR関係におきましては、これは進駐軍の直用でございまして、進駐軍の規律節制のもとに労務に服することでございますから、その点をお間違いなさらぬようにお願いいたしたいと思います。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 PD関係もLR関係も大体同じなんですよ。PD関係もLR関係も、要するに進駐軍関係の労働者の労働條件いうものは決してかわらない。だから、もしかわりがあるというならば、あなたのように十分に保護されているというならば、事実を一諸に行つて調査してもいい。
  140. 小坂善太郎

    小坂委員長 林君の今のは質疑でないように思います。私どもはこの委員会では明確に御質疑を願いたい。宣伝めかしいことよりも、質疑中心に御審議願いたいと思つております。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 では質疑しましよう。こういう状態に置かれておることをあなたは認めるかどうか。それはそれでいい。第一にまず私の聞きたいことは、このPD関係、LR関係の労働者に対して将来労働三法、ことに労働基準法、少年婦人の夜間労働の禁止、拘束八時間制の撤廃、最低賃金制または超過勤務手当の廃止、こういうようなPD関係には、労働基準法その他の労働三法を将来改正する意思があるかどうか。これが第一、第二は、進駐軍の労務者に対する賃金体制をてこにして、PD制を一般の国との契約者に普遍化する。要するにPW制を一般化する、たとえば国との契約に関する法律というようなものをつくることによつて、このPW制を一般化する意思があるかどうか。この二つをお聞きしておきたい。
  142. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はあなたの政策には賛成できませんけれども、労働者の保護につきましては努力して行くつもりでございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれの政策と反して労働者の保護はできないと思いますが、労働大臣がそう言うならそれはそれで置いておいて、次に移りたいと思います。あとはだれですか。
  144. 小坂善太郎

    小坂委員長 あとは安本長官——どうしましようか。それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後一時半より再開いたし、質疑を続行いたします。  なおただいまの林君の御質疑中不穏当な箇所があれば、委員長において速記録を見て適当な措置をとります。  暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  145. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。川崎秀二君。
  146. 川崎秀二

    ○川崎委員 先般総括質問を継続いたしました際、大体各主要大臣に対する質問は終つておりますが、その際法務総裁、運輸大臣、農林大臣はまだ予算委員会に御出席がなかつたので、質問の残りがございます。従いまして簡單に質問いたしたいと思つております。  私がお伺いいたしたい点は、共産党の非合法化に関する問題であります。憲法によつて、明らかにわれわれは政党の結社の自由、言論の自由、こういうものを認めておるのであつて、戰前におけるところの言論、集会、結社の自由は認められておりながら、治安維持法その他によつて禁止をされた時代とは、今日は違つております。しかるに最近国際情勢の緊迫化に名をかりて、共産党そのものの存在をも否定せんとするがごとき、政府の方針があるやに伺つておる。最近の農民協同党小平忠君の質問に対して総理大臣は、共産党を非合法化するということも、十分情勢によつては考慮しなければならぬ問題であるということで、従来の言説よりやや共産党非合法化に対して、一歩を進められた感じをわれわれは受取つておるのであります。もう少し様子を見ようということであつて、基本的には共産党の今日の活動は、まさに暴力革命というものを前提にした種々の活動をしておるのであつて、この際非合法化することが当然である、こういうような御発言であつたと思うのであります。これに対しては閣内の統一ができておると思うので、年末ごろに言つておられたあなたの言明とは違うように思いますが、ひとつ統一ある答弁をしてもらいたいと思います。
  147. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の非合法化につきましては、政府といたしましては、共産党の最近の行動その他から見まして、これが非合法化ということについて、愼重に研究をいたしておるのは実事であります。
  148. 川崎秀二

    ○川崎委員 もう一度お伺いいたしますが、それは憲法で規定をされておるにもかかわらず、共産党の活動がすでに法律の範囲を越えて活動をしておる、あるいは暴力的革命というものを予想しての行動をしたり、占領政策に触れたり、あるいはいろいろな要素があるという意味か。それともあなたの言われておるのは、たとえばマツカーサー元帥が先般出された書簡に抵触する部分があるから、これを元にして研究を続けておられるのか。そのところを少し分折して御答弁願いたいと思います。
  149. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の非合法化について私どもが研究をいたしておりまする理由は、共産党がその行動において憲法を破壊し、その他法令によつて定められる秩序に対して、好ましからざる影響を与える、その実際の行動の点よりいたしまして、これを非合法化する必要がありやなしやという点を、研究いたしておるわけであります。
  150. 川崎秀二

    ○川崎委員 私はマツカーサー元帥の書簡というものは、明らかに秩序を破壊し、破壊的な行動をするという行動に重点を置いておるのであつて、共産主義の思想そのものを禁止しておるものではないと思う。そこで議論としては、共産党員個々の活動というものが、占領政策に違反する、好ましからざる傾向を帯びる、あるいは現在の社会秩序を破壊する、こういう議論をかりにいたしておりましても、党そのものの存在を否定するということとは私は違うと思う。その点に関するあなたの御所見はいかがでしようか。
  151. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お説の通り、党員の一部が法令に違反するがごとき行動をとりましても、これをもつて党全体を非合法化する理由にはならないと思います。ただ非合法化の問題を研究いたしておりまするゆえんのものは、党員の行動が違法なものがある。しかもかような行動がしばしば計画的に行われ、あるいはまた多数の人々によつて行われる。しかしそれがほとんど党の活動と認むべき範囲にまでなつておりはしないかという点を、研究いたしておるわけでございます。
  152. 川崎秀二

    ○川崎委員 質問の点はその三点でありまするが、いま一点お伺いしておきたい問題は、それは政府は今後共産党の非合法化の問題を取上げる際においては、政府みずからの責任において自主性をもつてやることですか。それとも私の聞いたところによると、ポツダム宣言の政令その他を利用して、でき得ればこれでやりたいというようなことで、あなたが頼みに行つたといううわさまで立つている。そういうことは私はないと思うけれども、今の内閣だと、そういうような方針もやりかねまじき実績があるのでありまして、従つてぜひお尋ねをいたしておきたい点であります。そういうことはあるのかどうかということが一つ、それから今後やる場合においては、政府が自主性を持つてそれを断行するのか。あまりいい自主性ではないと私は思うけれども、しかしやはり政府が責任を持つてやるのであつて、何らかの示唆によつてやるものでないということでありますか。その点、ひとつ明快なる答弁を求めます。
  153. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、この問題につきまして、別段にどこに頼みに行つたということはございません。それから今後の問題といたしましては、事は内政に関する問題でございますから、許されたる範囲におきましては、当然政府が自主的に処理すべきものと存じます。しかしながらこの問題が、将来総司令部におきまして何らかの処置を必要とするということを、司令部側においてお考えなつた場合においては、当然何らかの指令があると思いますが、さようなことのない限り、政府としては自主的に考えるべきものと存じておるわけであります。
  154. 川崎秀二

    ○川崎委員 将来、総司令部側で考えるような事態が起れば別であるけれども、という御答弁でありますので、自主的に処理をされるものと私は解釈します。ただこの際、私どもの方の政党の見解といたしましては、共産党員個々の活動が、社会秩序を破壊する、憲法の條章あるいはその他の法律に明記されているところの、法律秩序というものを破壊しようという行動に出た場合においては、これは好ましからざるものとして追放その他の処理をとられることは当然だと私は思う。しかし党そのものの存在を否定するということは、これはいかに国際情勢が緊迫化して、共産党そのものの活動が反米的になり、反帝国主義的な闘争になるというようなことがあつても、私はそれは日本の将来のためにすべきものではないと思う。多少そのくらいのものがおつても、これは大海の中のごみみたいなものでありますから、(笑声)従つてそういう意味で御処置を願つた方がいいだろうと思います。何とぞそういうような考え方を進められんことを要望いたしまして、質問を終ります。
  155. 小平忠

    ○小平(忠)委員 関連して……。先般この委員会におきまして、総理大臣が私の質問に対しまして、共産党の非合法化につきましての考え方は、非合法化したいと考えておる、こういう御答弁があつたのであります。しからばいかなる方法によつて非合法化されるのか、主務大臣であられる大橋大臣にお伺いいたしたいのであります。これが第一点。  第二点は、総理大臣は、現在の日本の国内事情からして、国内の治安維持については、いかなる事態が起きても現在の予備隊なり、あるいは警察力の実態からみて磐石であると大みえを切つておられるのでありますが、現状は決してそのような安易なものではないと私は思う。なぜならば、現に警察予備隊の訓練の実態なり、また現在日本の各地に配置されておる予備隊あるいは海上保安隊の実情というものは、これはまつたく訓練といいましてもまだ訓練の途上にありまして、裝備に至りましても、その使い方さえも十分知らぬ。今日まではおそらく連合軍の監視あるいは訓練を受けながら、まだその訓練の途上——途上というよりも手をつけたにすぎない。現に私は各予備隊の管区の最高責任者から、今日のような予備隊の実態では、いざ国内に暴動が起きた場合には、とうていこれを防ぐことができないということを聞いている。こういうような点から考えまして、大橋大臣は一朝有事の場合にどう処されるか。さらに本年度予算の百六十億をもつて、はたして完璧な訓練がなし得るか。あるいは裝備の点においても申分がないか。あと二、三箇月してまたポツダム政令をもつて予算の追加といつたような御処置をとられることは、これは非常に国会の自主権を冒涜するものであると私は考えるのであります。仄聞するところによりますと、今度の予算の中にはそういつたような含みも十分あるのだというようなことも聞くのでありますが、そういうことが事実かどうか、こういう点についてお伺いしたいのであります。
  156. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 小平君にお答えいたします。共産党の非合法化の問題は、先ほど川崎君にお答えいたしました通り政府といたしましては愼重に考究をいたしておる次第でございます。従いましてまだその具体的な方法について、いかなる方法によつてこれをなすかということは定まつておりません。  次に警察予備隊の予算の問題でございまするが、本年度予算といたしまして計上いたしてあります百六十億というものは、これは非常にゆとりのある予算とは考えられません。訓練につきましても裝備につきましても、非常にきゆうくつなものであると考えられますが、しかし国の財政の全般の事情もございますので、一応この範囲内におきまして、これを能率的に操作することによつてでき得る限り予備隊の充実をはかつて参りたい、かように存じておるのであります。そうして将来において、ポツダム政令によつて予算の増額をするというような方法は好ましくないという御意見につきましては、私どももまつたく同感でございます。
  157. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それならばもう一点お伺いいたします。特に講話問題を中心にいたしまして、日本のとるべき態度、講和に対する発言権云々につきましては、これは非常に疑問のあることでありますが、少くとも今日の段階では、日本は世界の二大陣営、共産主義陣営につくか、あるいは民主主義陣営につくか、この一大岐路に立つておるわけであります。あくまでも日本の全人民が共産主義陣営に対抗して立ち上るという腹構えをつくる場合においては、少くとも国内態勢を急速に整備しなければならぬということは、これは言を待たないところであると思う。その場合問題は、朝鮮動乱から九州博多方面に重点を注がれておるのでありますが、北辺の北海道の現状は、予備隊があそこに相当数配置せられておるから完璧であると申されるのは、これは非常に安易な考え方であります。現に私は、過日の委員会におきましても、総理大臣にこの実情は申し上げた。非常に緊迫しております。現にあのマツカーサー・ラインというものは、北海道の稚内のあの最北端にひつかかつており、漁業権の問題を中心にして、北海道周辺に具体的な問題が——現に新聞やラジオでも報道されておるような問題を惹起して、戰々兢々としておるのです。現に樺太や千島の地帶には、ソ連は相当なる軍備をあそこに拡張し、あるいは相当なる軍隊を集結しておるというふうなことも仄聞する。そういうことで北海道の道民は戰々兢々としておるわけです。こういう点について大丈夫であるということをおつしやつただけでは決して安心はできない。ある程度裏づけをせねばならぬ。従つていろいろデマが飛んで、予備隊を急速に本年中に三倍にするというようなことが言われているが、予備隊の強化の問題と北海道の治安維持、あるいは北海道というものに対して大橋国務大臣は一体どういうふうに考えておられるか、この点をもう一ぺんお伺いいたしておきます。
  158. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 予備隊の強化の問題でございまするが、政府としてただいま考えておりまするところでは、予備隊の七万五千の現在の数、これを増加するという考えは目下持つておりません。ただこの七万五千をでき得る限り訓練によりまして強化する、またその裝備を改善する、かようにしてその力を強くして行きたい、こういう段階にあるものと考えております。  なお北海道のことについてお話でございましたが、北海道がわが国の治安の上から申しまして、非常に重要なる地点であるというお説につきましては、私もまつたく同感に存じておる次第でありまして、今後この方面におきまする治安につきましては十分に考えて参りたい、かように存ずる次第であります。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 大橋法務総裁にお聞きしたいのですが、昨日から本日にかけて「平和のこえ」という新聞の発行者並びに配布者そのほか関係者を検挙しているようですが、これはどういう方針から検挙を始められているのか、そのあなたの判断をお聞きしたい。
  160. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 「平和のこえ」は、その紙面の内容が「アカハタ」のそれと傾向を同じくするとともに「平和のこえ」の印刷、発送、配布その他に「アカハタ」の発行団体でありまする日本共産党の構成員が参加いたしておる事実によりまして、これを「アカハタ」の後継紙と認定をいたしたものであります。昨日来の検挙は、この配布に関係いたしておりまする、容疑のありまする人物に対しまして、取調べのため逮捕をいたした次第であります。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 「平和のこえ」の内容が、共産党の機関紙の内容と同一だというのでありますが、平和を求める、日本を平和国家として建設したいという希望を述べる、これが共産党の宣伝と一致して来るということになるわけですか。
  162. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 平和は平和でありまして、共産党の宣伝は共産党の宣伝であります。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 「平和のこえ」の中に、平和を希求する要望と離れて無責任だと考えられるような宣伝事項がありますか。
  164. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 それがありましたるがゆえに、先月これが差押え並びに発行停止処分をいたしたわけであります。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 あつたら、その事実をここで示してもらいたい。どういう点が占領政策に違反しているか、示してもらいたい。
  166. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その点につきましては、後刻事務当局から申し上げるようにいたしたいと存じます。
  167. 林百郎

    ○林(百)委員 三百数十箇所、四百人近くの人を検挙する、この「平和のこえ」が、どういう内容であるかというようなことを、総裁は答えることができないのですか。具体的に占領政策違反になる内容を、ここであなたに説明していただきたい。
  168. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は、この問題は非常に重要な問題であると考えまするので、そのお答えの正確を期しますために、事務当局をして答えさせる、かように申し上げた次第であります。
  169. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、政府の国務大臣としての大橋法務総裁の御意見を承りたいのです。
  170. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題につきましては、先ほど申し上げましたる通りに、政府といたしましては、占領政策に違反する内容を持つておるという理由のもとに、すでにその発行を停止する処分をいたしておるのであります。従いまして、これに基いて、私どもは、その内容は御指摘のようなものであるということについて、確認をいたしておるわけでありまして、その内容の正確を期しまするために、政府委員から資料に基いて御説明申し上げるようにいたしたい、とかようにお答えしたわけであります。
  171. 林百郎

    ○林(百)委員 「平和のこえ」、いわゆる全面講和、これを求めることが占領政策に違反するということは、われわれ考えられないのであります。もし「平和のこえ」として人民の間の平和の声を新聞に書くということが、占領政策に違反するということになるならば、占領政策というものはむしろ平和を求めるものでなくして、戰争を求めるものだということも言い得ると思うのです。だから題にもあるように、平和を心から希望するという目的で発行せられている新聞の中に、この占領政策の中心目標である平和を求めるということ以外に、むしろこの平和を押える、国民の全面講和と再軍備反対のこの声と逆のような声が、ここに書かれているかどうか、その点最高責任者としての大橋法務総裁に聞きたいのです。
  172. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 「平和のこえ」というのは題でありまして、この題のもとに実は平和に対する破壊的なる主張、あるいはまた現在の日本の法律、秩序に対しまする破壊、あるいは占領軍に対する反抗的な主張、そういうものが内容としてはあつたのであります。
  173. 林百郎

    ○林(百)委員 「平和のこえ」の中に、平和を破壊するような内容があるなら、それを示してもらいたい。
  174. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 「平和のこえ」には一九五〇年十二月二十七日付第一号に創刊の辞と題しまして、平和のこえ社名儀をもつて来るべき一九五一年こそ決戰の年だ。わが社は全日本、全世界の平和愛好人民の声を集めた紙の彈丸として、ここに「平和のこえ」を創刊した。「平和のこえ」が戰争挑発者の隱謀を打碎く役割をなし遂げ、占領軍を含む連合国の行動に反対し、その破壊的批評にわたる記事を掲載しております。その他十数項目にわたつて同様な記事があるのでございます。
  175. 林百郎

    ○林(百)委員 それが中心ですか——そうすると「平和のこえ」が発刊停止になつた理由は、世界の平和を希求する諸勢力と一緒になつて、平和の紙の彈丸として「平和のこえ」を出し、一切の戰争挑発者とは闘うということにあるようであります。これはポツダム宣言、対日基本政策に対する極東委員会の決定その通りじやないですか。吉河さんも御存じの通りポツダム宣言は、日本の国の軍事的な潜勢力を徹底的に破碎する。日本の民主的な勢力に対する一切の障害を除去するということが基本精神だと思う。そうなれば世界の平和を愛好する諸勢力と結集して、戰争挑発者と闘うということが、どうして占領目的違反になるのですか。
  176. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その内容の一端を今申し上げただけでありまして、至るところ占領軍の誹謗に満ち満ちておりまする「平和のこえ」の内容というものは、これは今日の日本において許すべきでない、こういう次第でございます。
  177. 林百郎

    ○林(百)委員 私はここでお聞きしたいことは、実はこれは「平和のこえ」の問題だけでないと思うのです。これからは諸新聞あるいは諸雑誌の中に全面講和を主張し、日本の国の軍事基地化に反対する記事は陸続として出て来ると思う。現にこれは経済雑誌ですが、ダイヤモンドの一月下旬号には、日本の国は明らかに一大軍事基地になつている。日本の国が経済的な援助を受けているからということを理由にして、政治的な支配を受ける理由はないということを、ダイヤモンドですら、はつきり言つているわけなんです。もし平和を要求し、戰争挑発者と闘うということが、占領目的違反だということになれば、この日本国の一切の言論機関は、全面講和を主張することはできなくなる。従つてそういう意味で、この問題は單に「平和のこえ」という問題だけでなくて、今後の日本の言論、出版界のあり方として、ぜひあなたに聞いておきたいわけなんです。そこであなたの見解として「平和のこえ」の中にあるその他の占領目的に違反すると考えられる点を明らかにしていただきたい。  もう一つ、実はその後朝日評論だとか、労働評論だとか、こういう雑誌がいろいろな圧力によつてみずから廃刊しております。こういうように全面講和、再軍備反対の諸新聞がいろいろの圧力によつてみずから廃刊し、あるいは彈圧を受けることになれば、これはかつての東條時代の言論抑圧とかわらない情勢になります。あのころの言論がもし自由に許されていたならば、日本の今のこうした不幸な目はあるいは避けることができたかもしれないと思う。そういう点で言論機関に対する取締りは、非常に民族や国家の運命にとつても重大な問題だと思う。軽々に取扱うべき問題ではないと思う。そこで一体言論機関の中でどういうことを書けば違反になるのか。今言つたように世界の平和愛好の諸勢力と結集して、紙の彈丸になるとかいつたことが、もし占領政策違反だということになれば、これは日本の言論機関としては、もうまつた戰争に協力する、あるいは單独講和に協力する、再軍備に協力するという面しか許されないということになる。これは非常に重要な問題であります。そこでこの際はつきりと最高責任者である大橋法務総裁の見解をただしておきたいと思うのであります。
  178. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 許される言論の基準というものは、すでにプレス・コードあるいは団体等規正令によつて明らかであります。それから「平和のこえ」というのを内容として、林君はこれはほんとうに平和を欲求する声であると言つておられますが、その内容はまつたくそれと正反対の事柄が書いてあるのでありまして、すなわち「アカハタ」の発刊停止という連合国司令官の措置に対しまして、これを彈圧であるとかいうふうに誹謗をいたした事実、また連合国軍に対しまして戰争挑発者であるというような名前を付しておる。あるいはまた反動勢力であるというようなことも言つておるのでありまして、これらは今日の占領下におきまするわが国においては、許すべからざる言動であると言わざるを得ないのであります。
  179. 林百郎

    ○林(百)委員 プレス・コードを見ると、進駐連合軍に対して破壊的な批判を加えたという場合には、プレス・コード違反になるといいますが、平和を要求して、日本の国が積極的な作戰基地になるということには反対だ、あるいはよその国の干渉軍の基地になることは反対だということは、進駐軍に対する破壊的な批判ではないと思う。御存じの通り、進駐軍というのは、日本の国の占領目的のために来ておるものである。占領目的というのは、日本の国の軍事的な潜勢力を破碎するということです。民主主義を復活するということであります。これは朝鮮事変とは何の関係はないわけであります。もし朝鮮事変に介入し、あるいは朝鮮事変関係するような軍隊日本の国にいたとすれば、これは日本の国の占領目的のための軍隊ではないと思う。これに対しては批判の自由はわれわれは許されると思う。われわれはポツダム宣言あるいは日本の国の占領基本政策の中に、将来日本の国がよその国の戰争の軍事基地になる場合も甘受しなければならないということは、決して書いてないはずであります。こういう意味でわれわれは朝鮮事変に介入する外国軍隊、あるいは日本の国を基地にしてよその戰争——日本占領目的以外の事項に関係のあるような軍隊に対する批判はなし得ると思いますが、この点について大橋法務総裁の見解をただしたい。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  180. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 林君の見解とまつたく所見を異にいたしております。
  181. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮事変国連軍が介入しておるということは、日本占領目的の一端と考えられるわけですか。
  182. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮事変占領軍が介入しておるかどうかというお話でございまするが、占領軍というのは、わが国の国土におる間が占領軍でありまして、朝鮮に行つておるのをただちにわが国の占領軍なりとは私考えておりません。
  183. 林百郎

    ○林(百)委員 その点が非常に重要だと思うのです。実は朝鮮事変が起きるということは、終戰当時、一九四五年のころには日本は予想しなかつたわけです。われわれはポツダム宣言や対日基本政策によつて日本の国の戰争を終結する、日本の国の民主主義の復活と、日本の国の軍事的な勢力の破碎、これだけの目的で来ておるのが占領軍だと思うのであります。日本の国が敗戰した後に起きた事象が朝鮮事変であります。朝鮮事変というものは、日本の国の終戰の諸條約あるいは諸連合国との間のいろいろな申合せの中にも考慮されていなかつたはずであります。従つてわれわれは朝鮮事変というようなものは、日本の国の占領目的以外の事項だと思うのです。従つて朝鮮事変のために動員されておる外国軍隊、しかも日本の国にかりにいても、これはやはり日本の国の占領軍にはならないと私は思います。この点を大橋法務総裁はどうお考えになつておりますか。
  184. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本におる間は、日本の占領のためにおる日本占領軍である、こう考えなければならぬわけであります。  それから朝鮮事変について、日本国内においていろいろな批判をすること、これはなるほどそれ自体は自由でございますが、しかしその内容占領軍を誹謗したり、あるいは日本の国内において無用の混乱を故意に巻き起すというような意図のもとに行われます場合においては、これはやはり日本国の法規によつて取締るのは当然である、こう私は考えるわけであります。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 大橋法務総裁の考えの中には非常に混乱があると思います。かりに日本の国にいようといまいと、それが日本占領目的のために来ておるのではなくして、その国の、あるいはその国と連合しておる国の利益のために、その国の戰争目的のために来ている軍隊であれば、それは日本の国の戰争状態を終結させるための占領軍ではないと私は思う。もし朝鮮事変に積極的に介入するために日本に来ておる軍隊も、これを占領軍だというのなら、これは占領軍の解釈の範囲が非常に広過ぎる。これはあなたは非常に間違つておる。もしこれを批判することも占領政策批判ということになれば、日本の国論はあげてアメリカの対朝鮮戰争に協力しなければ、占領目的違反になるということになる。われわれの知らない間に、いつの間にか日本の国全体を朝鮮事変へ介入させるということになる。大橋法務総裁の考えを敷衍すればこうなる。これは国民の求めるところとまつたく相反している点であります。だから私はこの点はこれ以上言いませんけれども、大橋法務総裁の占領軍の解釈は非常に誤つておる。ある一国がその国の利益のためにアジアで問題を起している。そのためにかりに日本の国に軍隊が来ておつたならば、これは日本の国の占領を目的としておるのではなくて、アジアにおける戰争に参加することを目的として日本に来ておる軍隊であるから、これは占領軍ではない。これに対する批判はわれわれは自由にできるはずである。そうでなければ朝鮮事変日本の国が積極的に介入し、これに協力しなければ、占領目的違反になるということになれば、そのことは日本の国を、知らない間に第三次世界大戰あるいはアジア戰争にひつぱつて行くことになる。非常な危険なことになると私は考えます。この点について、これは見解の相違だから、あなたといくら討論してもきりがありません。そこで新聞を見ますと、「平和のこえ」の下部組織、下部機関紙も取締つたと書いてありますが、この下部機関紙というのは何をさすのであるか。
  186. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 意見の相違だから、どうでもいいという林君のお説でありますが、しかし林君のただいま言われたるがごとき説が、そのままに聞き流されるということは、いろいろな意味におきまして誤解を生ずるゆえんでありますから、もう一度はつきり私の考えを申し上げます。占領軍と申しますのは、連合国によりまして派遣せられた軍隊であつて、そしてそれが日本の国土におるものはすべて占領軍である、こう解釈いたしております。そうしてそれ以外には占領軍はない、こう解釈いたしておるのであります。そうしてまた朝鮮事変の批判をされる、これは占領目的関係ない、占領軍に対しては何ら関係がないじやないか、こういうお説でありますが、この点につきましても、たとい朝鮮事変の批判でありましても、これが日本国内におきます占領軍に反抗するという意図を持つて、またさような内容において行われた場合においては、当然これは占領軍に反抗する行為として取締られるものである。この点を政府といたしましては、はつきり申し上げておく次第であります。  それから下部機関紙という御質問でございますが、これはどういうものが下部機関紙か、私にはお答えいたしかねるわけであります。というのはさような観念を私どもは持つておりません。
  187. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に重大な問題が出て来たようです。私は先ほど意見の相違だといつて打切ろうと思いましたが、もう一度念のために法務総裁に申したいのですが、ポツダム宣言の第六項によると「吾等ハ無責任ナル軍国主義が世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤を犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルベカラズ」とあります。これはかつて日本の国を誤つて大東亜戰争に導いた軍事的な潜勢力を破碎しなければならないということであります。第七項には「右ノ如キ新秩序が建設セラレ且日本国戰争遂行能力が破碎セラレタルコトノ確証アルニ至ル迄ハ聯合国ノ指定スベキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スル為占領セラルベシ」とある。要するに日本国領域内の諸地点は、基本的目的達成のために占領せられる。この基本的目的は何かというと、日本国戰争遂行能力が破碎されること、この目的のために占領軍というのはおるのであります。そうすると、朝鮮事変は、日本の国の戰争能力の破碎とどういう関係があるのですか。
  188. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮事変に伴いまする国際共産主義その他の軍国主義的な勢力が、国内において民主化を阻害するという問題を、占領軍としてはおそらく十分に考慮に入れておられることと、確信をいたしておるのであります。
  189. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に重大な点であります。もし共産主義の勢力が、このポツダム宣言による「吾等ハ無責任ナル軍国主義が世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ」とある、この「無責任ナル軍国主義」の中に入つており、これが除去せられるまでは占領軍がいるということになれば、この共産勢力を破碎しなければならないという、あなたの解釈のこのポツダム宣言の中に、なぜソビエト同盟が入つているのですか。ソビエト同盟が入つてポツダム宣言が締結されている以上、ここに言う「無責任ナル軍国主義」というのは、ソビエトを含めた世界の民主的な諸勢力に対して反抗したナチス・ドイツ、ムソリーニ・イタリア、東條軍閥、こういうものを言うのであつて、共産主義の勢力は断じてこの中に入つているはずはないのであります。もしこれが入つているならば、ソ同盟を含めてポツダム宣言を締結するはずはないのだ。この点大橋法務総裁の考えは全然間違つている。これについてあなたのお考えを聞きたい。
  190. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私の申し上げましたのは、すべての共産主義のものがという意味ではなく、それが国内の民主主義を破壊するという場合におきましては、いかなる主義主張でありましようとも、これはやはりこの排斥せらるべき軍国主義の一つと観念しなければならないものと考えるのであります。それが軍国主義的なものであります限り……。
  191. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、共産主義はその中へ入つているのですか、入つていないのですか。
  192. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 軍国主義的な内容を持つておりまする共産主義というものは、やはり入るべきものであると私は考えます。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 ここで念のために申しておきますが、日本共産党の綱領の第一には——これは重要な問題だからあなたに念のために申し上げておきたいのですが、日本共産党の行動綱領の第一項には、ポツダム宣言の嚴正実施、それから最後には、平和の擁護ということがあります。われわれはあくまで戰争挑発者に対して闘つているのであります。しかるに大橋総裁は取締らなければならないかつての軍事的な潜勢力、軍人あるいは一部の右翼的な反動勢力、こういうものはどんどん追放を解除して再採用をしている。一方かつてこういうものと徹底的に闘つた共産主義者は彈圧して行く。だから、あなたはこのポツダム宣言のこの「無責任ナル軍国主義」というものの解釈について、全然ポツダム宣言の精神と逆な解釈をしている。あなたはさか立ちしているというように、われわれは言わざるを得ない。これが一つと、もう一つは、かりにそういうことがあつても、国内の軍国主義を破碎するということのために進駐軍が来て占領しているとしましても、そうすると朝鮮事変のために来ている軍隊は、どういう関係があるか。
  194. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は、日本国内におりまする占領軍は、日本占領目的達成のために来ておるものでありまして、朝鮮事変のために来ておるものと観念いたしておりません。
  195. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本の国から飛行機が朝鮮に飛び立つて行く、あるいは軍艦がどんどん行く。この朝鮮に飛んで行つている飛行機も、日本の国から行く軍艦も、それから朝鮮へ行くために横須賀に一時駐在した軍人も、全部日本の国の占領目的のために来ておる占領軍というふうにあなたは解釈するのですか。
  196. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本の領土内におりまする限りは、日本占領目的のために来ておるものと私は考えております。
  197. 林百郎

    ○林(百)委員 もうこれは、これ以上やる必要はないと思います。  その次に、下部機関紙というものはわからないと言いますが、平和のこえの下部機関紙を取締つたのか、取締らないのか。また取締つたとしたならば、どういう種類のものを取締つたのか、それをお聞きしたい。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 「平和のこえ」につきましては、「平和のこえ」だけでございまして、「平和のこえ」の下部機関紙というようなものはございません。
  199. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今度の検挙は「平和のこえ」だけで、あとの出版物については全然関係ないわけですか。
  200. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今回検察庁に対しまして、法務府より告発いたしましたる事件は、「平和のこえ」の関係だけでございます。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど大橋法務総裁の答弁によると、「平和のこえ」が発刊停止になつたと言われます。ここで一つお聞きしておきたいことは、発行停止になつた後にも、なお「平和のこえ」が続継されたことがあるかどうか。
  202. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私どもは行政措置をいたしまする場合には、できるだけ有効にいたしまするので、発刊停止をした後に、さらに重ねて刊行するがごときことは、そういう措置のないように当初から十分に留意をいたしてやつておりまするから、さような事実はなかつたものと確信いたしております。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、「平和のこえ」に対して発行停止をした、「平和のこえ」はあなたの言う通りに発行停止して、その後発行しておらない。それにもかかわらず、何を検挙する必要があるのですか。
  204. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 「平和のこえ」を発行したということは、「平和のこえ」の内容から申しまして、それは政令三百二十五号に該当する犯罪になるわけでありまして、この犯罪を犯した犯人を処置するというのが、今回の検挙の趣旨であります。
  205. 林百郎

    ○林(百)委員 しからばこれを発行した責任者だけを処罰すればいいのであつて、それ以外に何も拡大する必要はないでしよう。
  206. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 刊行物の発行と申しまするのは編集、印刷並びにこれの頒布、これを一体として発行と考えるのでありまして、この行為に関与いたしましたるすべての人たちは、共犯として当然検挙しなければならないわけであります。
  207. 林百郎

    ○林(百)委員 大橋法務総裁の解釈を聞いていると、なるべく人民を犯人にして、刑務所にたくさん入れればいいというような解釈ばかり、先ほどからしておるのであります。たとえば、ある新聞が発行停止になりましても、地方などへ通達が行く場合、遅れることがあるだろうし、ある場合には発行してしまつた場合もあるだろう。そういう場合には家に一部あつたとか、あるいは一部分発送の途中にもあると思う。そういうものまで処罰するということになれば、これはまつたく無責任な拡大解釈である。「平和のこえ」という新聞を彈圧するということのねらいは、明らかにこの新聞を発行した責任者を処罰するということだけが目的ではない。むしろポツダム宣言によつて規定されているところの、平和を愛好し、かつ責任ある政府が樹立された場合には、占領軍はすみやかに撤退するという、こういう全面講和だとか、あるいは占領軍の撤退だとかいうものを求むる人民の声を彈圧する、「平和のこえ」の彈圧に名をかりて、むしろ日本の国の中から、こうした全面講和だとか、占領軍の撤退あるいは再軍備反対というような、ポツダム宣言によつて当然保障されているわれわれ日本人民の当然の権利、こういうものを彈圧し、單独講和ダレスの求めて来たところのアメリカとの軍事同盟、ここへ日本の国の全思想と輿論を統一することをねらいとしての「平和のこえ」の彈圧である、というようにわれわれには解釈される。この点について大橋法務総裁の見解をただしたい。
  208. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この種の刊行物につきましては、すでに昨年「アカハタ」の後継紙並びに同類紙の禁止についてのマツカーサー元帥の書簡の次第もあるわけでありまして、これらの刊行物は、その内容上当然違法な刊行物でございまして、これは犯罪として考える以外の何ものでもないわけであります。
  209. 林百郎

    ○林(百)委員 大橋法務総裁のほんとうの考えは、「アカハタ」の発刊停止と、これの後継紙ということに名をかりて、今言つた全面講和を主張する全輿論を彈圧しようとしている、これがあなたの真のねらいではないかというように思う。一例を申しますと、たとえば今「国土防衛」という新聞が出ております。これは自由党のあなたならよく御存じだと思う。この「国土防衛」の新聞紙には、日本の国を満洲事変当時と同じ状態に持つて来なければならない、それには台湾も朝鮮も樺太も全部また日本の国に奪い取らなければならないということが公然として主張されております。あなたはこういう論調の新聞は、民主主義的な主張の新聞として全然取締らない。そして日本の国を真に民主主義にしようと求めておるもの、真にポツダム宣言のねらつている民主主義を実現しようとする輿論は、これを断圧しようとしておる。ここで私があなたにはつきり最後に聞いておきたいことは、一体ポツダム宣言でねらつておる民主主義とは、すなわち日本の国のかつての軍事的な潜勢力を徹底的に破碎する、一切の戰争の危険を全部破碎するというのが真の民主主義であつて、あなたの求めているのは、むしろ再び日本の国の軍国主義を復活しようとするのが、あなたの感覚から言えば保護すべき民主主義だというように解釈される。この点ポツダム宣言がねらつている民主主義と、新たにあなた方が考えている民主主義とどう違うのか、はつきりさしてもらいたい。
  210. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 「国土防衛」という刊行物のあるということは聞いておりまするが、その内容において、日本の失うことになつておりまするかつての領土を、また奪い取るというような記事の内容があるということは、私承知いたしておりません。  それからポツダム宣言にいわゆる民主主義と、私の申し上げましたる民主主義とは違うように思う、こういう林君のお話でございまするが、頭が混乱をいたした場合には違うように見えるかもしれません。
  211. 林百郎

    ○林(百)委員 おそらく頭が混乱しているというのは、あなた自分のことを言つていると私は解釈します。ポツダム宣言によれば、軍事的な勢力を破碎する平和の確立が民主主義だ。その点はこれ以上言いません。  そこで私は最後にあなたに申し上げたいのだが、実は共産党を彈圧するとか、あるいは共産党に関連を持つということで、こうした平和を愛好する勢力を、軍事的な感覚を持つて彈圧する。軍事的な勢力を背後に持ち、この感覚を持つて彈圧するということが、民族の運命、国家の運命についてどういうことをもたらしたかということを、もう一度あなたに考えてもらいたい。今こそ日本の国は、どうしてももう一度平和を確保しなければならない重大な転機に来ている。かつて平和を彈圧し、戰争を謳歌し、共産党を彈圧したヒトラー政権、ムソリーニ政権、東條政権、蒋介石政権、近くは李承晩もそうなりそうですが、こういう諸政権が行つたこの愚を、あなたは再びやろうとしているのか。もう一度よく考えてもらつて日本の国と日本の民族の運命のために、今こそ全面講和と再軍備反対、死んでも平和を守らなければならない大事なときなんです。今ここで「平和のこえ」を彈圧し、「平和のこえ」の関係者をここで彈圧するということは、再びかつての治安維持法を回復し、日本の国に東條政治をもたらして来るところの大きな象徴であると私は解釈する。必ずあなたのこの政策は、日本の国と日本の民族の運命をあやまたせるものであるということを、私ははつきり断言することができるし、この点日本国民の一人として深く憂えている点であります。この点について、最後にあなたの見解をお聞きして、私の質問は終ります。
  212. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 林君は「平和のこえ」の問題につきまして憂えておられるそうでありまするが、この「平和のこえ」は名前は「平和のこえ」という、いかにも平和を愛好し、またこれを希求するがごとき名称を名乘りまして、その内容におきましては、民主主義に対する破壊的、また占領軍に対する悪意に満ちたる誹謗、あるいはまたきわめて危険なる軍国主義的、独裁主義的な傾向を、多分に内容といたしたものでありまして、しかるがゆえに私どもは、平和を愛好し、また民族の運命を憂え、そうしてまた民主主義を守る上からいつて、どうしてもかような刊行物は、そのままに放置することができなかつたのであります。これに対して非難されまする林君の今のお話というものは、私は実に林君のようなお説の出ることこそ平和の確保のため、民族の運命のために、衷心私の方が憂えておるわけでございます。
  213. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこれでもういいです。話はつかぬ。これは全然共産党と自由党の法務総裁と見解が違うんだから、これはこれでいい。  最後に文部大臣に一つだけお聞きして、私の質問を終りたいと思いますが、最近教育の再軍備化の徴候が非常に見えております。第一には教師や生徒から、国連協力費をとつておる。それから国連軍に対して慰問品を作らしておる。それで青蘭高女では星製薬軍需工場に学徒連合を動員しておる。愛知県の豊川の警察隊が豊橋に行進をしたときに、小学校から高等学校の生徒全部を動員して、警察予備隊の歓迎のために日の丸を持つて立たしておる、こういう事例が枚挙にいとまありません。なお念のために申しますと、横須賀の清泉女学校では、すでに防空壕への避難訓練をしております。これは明らかに教育の中に、日本の国の再軍備化が含まれておる。私は教育のこうした性格については非常に憂うるものであります。これは先ほど私が大橋総裁に聞いたと同じように、明らかに日本の国が知らない間に、あるいは皆さんは意識的に、教育の面を通じて、日本の国の軍備化と再軍備化が、戰争協力の態勢をもつて行くのではないか、かように考えられます。かつて文部大臣は全面講和を主張された平和の愛好者であります。それでいつからあなたはこういうように全面講和を捨てられて、軍国主義的な文部大臣になられたのか。その辺、あなたの心境の変化についても、よくひとつとつくりとこの際お聞きしておきたい。
  214. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまあげられましたいろいろの事例は、これは進んでしておることであつて、どこからも強制されておることはないと私は思います。教育の軍事化ということを言われますが、私は最近長野県の教育者諸君に呼ばれて、長野全県の義務教育の諸君と話合いましたが、そういうふうな教育の軍事化などということを言う人は一人もおりませんでした。私は決してそういう事実はないと思つております。それからまた私個人のことを、ここの貴重な時間に弁明することはまことに恐縮でございますが、私は初め朝日新聞社から全面講和か單独講和かということを問われたときに答えませんでした。全面講和がよいことはわかつておるけれども、しかしできないときには單独講和では悪いという結論は、私には出ませんでしたから答えませんでした。当時多くの知名の人が返事をしましたが、私は重ねて朝日新聞から電話で問われましたけれども、そのことを述べて、私は全面講和がよいと思うが、できないときには單独講和でいかぬという結論が出ないからと言つて、私の結論はあの答えの中に入つておりません。私はそういうふうにして、願望としてはどこまでも全面講和がよいと思つております。私は懇談会で発表いたしますときにも、願望だからこれに署名しようといつて私は願望だという意味において、あれに署名したものであります。私の論文をお読みになるとわかりますが、願望としては自分はどこまでも全面講和であり、できない場合もどこまでも全面講和日本はいつまでたつて講和ができなければ、しなくてもいい、これは一つの見識だと思つております。しかし自分はそういう考えではございません。
  215. 林百郎

    ○林(百)委員 文部大臣が全面講和の真摯なる希求者であることは一応よくわかりました。しかしあなたの言うできるならばという、できるならばというのですが、それは一体できるのですか、できないのですか。
  216. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はラツセルのような平和の非常な希求者として世界に知られている人でも、現在はどうもしかたがない。これは中立ということが許されなくなつたというふうに言つておると聞いておりますが、私は今日本の現実は、そういうところに来ておるのではないかと思う。
  217. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると日本の国に平和を確保することのできないような、日本の国の平和を脅かしている勢力ということは、どこをいうのですか、どういう勢力ですか。
  218. 天野貞祐

    天野国務大臣 今世界には二つの勢力がある。その勢力の中間に立つて中立ということができるということを、私は戰争のやんだころ思つておりましたけれども、それができなくなつて来ておる。たとえばラツセルがこういうときに平和を求める仕方は、やはり強大な力をつくつて、どちらも侵すことがないようにすることが平和をつくる道だということを言つておりますが、私などもそれは一理あるのではないかと思うが、要するに私はいつまででも、できなくても何でも全面講和でなければいかぬという、そういう考えに到達することができない。
  219. 林百郎

    ○林(百)委員 結論を申します。要するに文部大臣考え方の中には、全面講和は今の状態ではできない。むしろ平和を確立するためには強力なる力をつくらなければならない。あなたは言われた。この中には明らかにあなたが日本の国の自衛権と再軍備を考えておるということを、はつきりあなたは言われたと思います。ここで一言言いますが、そのあなたの考えが、いつの間にか全面講和から再軍備論者になつた。この考えが教育のあらゆる面に浸透して来ておる。これは問題を口先で決定されるわけではない。要するに現在行われている教育の事実が、三たび日本の国を戰争に巻き込むような教育が行われているということを、あなたにはつきり警告しておきたいと思う。  そこで私は最後に、われわれの考え方としては、結局一日も早く経済の自主権を回復し、平和の産業を発展させ、お互いの互惠平等の原則による対外的な経済関係を保障し、日本経済を非軍事化して、一日も早く全面講和を締結して、日本の国の平和と独立を確保したい、これが共産党の究極的な、また最も、真摯に求めている声であります。これを参考までに申し上げまして、私の全閣僚に対する質疑は、これで打切りたいと思います。
  220. 小坂善太郎

    小坂委員長 小平忠君。
  221. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は窮迫せる農村問題に関しまして、周東経済安定本部長官に質問いたします。  まず最初に食糧問題でございますが、日本の食糧問題の解決というものは、現下最も緊急の要事であることは、これは言をまたざるところであります。そのことは、年間三百万トンに近い絶対的食糧不足をどうして埋めるかという点にあるのでありますが、この問題に関しましては、終戰以来歴代の内閣はその解決策として、まず国内の食糧の生産力を高めることに全力を盡し、なお不足量については、輸入食糧によつてその需給の調整をはかつて来たのであります。しかるに最近の国際情勢の緊迫化に伴いまして、食糧対策も私は新たな角度から再検討をなさなければならぬ段階になつておると思うのであります。すなわち一月三十日のロイター電報は、濠洲とカナダに対する英国の小麦買付に関する新規契約が成立したことを告げておりますし、印度またカナダとの間において話合いを行つていることも伝えられております。さらにビルマ、タイ、インド支那等に対するフランスや英国の食糧の買付競争は、かなりの規模で進んでおり、一時食糧過剩が懸念された米国でさえも、非常事態宣言をきつかけに生産制限の方向をにわかに切りかえられまして、今や増産政策に転ずる一方、盛んに備蓄に乗り出しておるありさまであります。現に去る二月二日外電の報ずるところによりますれば、米国は小麦の輸出を停止するということを発表いたしております。このことはやがてわが国の食糧輸入をして一層困難な事態に追いやろうとしておりますし、さらにまた政府の本年度分として三百二十四万トンの輸入計画が、昨年末までにわずか九十万トン、二割八分しか輸入されておらないのであります。すなわちその大部分の残りは本年一月から六月までの間に輸入しなければならないということを考えてみまするときに、今後の成行きというものは、非常に私は重要視しなければならないと思うのであります。さらにこの予算書を見ますと、明年度は三百二十万トンの食糧輸入を計画いたしておりますが、政府はこの食糧輸入計画を基本にいたしまして、いろいろ国内の雑穀の統制を急速に撤廃するとか、あるいは麦類につきましては、二十六年度から国内産麦についても供出を廃止して、ただ、政府は一定の価格で農民の売渡し申込みに応ずることを明記しておるのであります。このような甘い考え方で、はたして今後の食糧事情というものを円滑に遂行し得るかどうかということを、いろいろ私は懸念をもつて見るのでありますが、今後の国際情勢の見通しなり、あるいは輸入の見通し、あるいは国内の増産の見通し、こういう点に基きまして、統制撤廃の問題や、あるいは政府の本年度つた三箇月、あるいは二十六年度の食糧政策について、食糧問題の参謀本部である、日本企画庁の参謀本部である周東経済安定本部長官に、具体的な数字に基いた、了解の行く御説明を、この機会に承つておきたいと思うわけであります。
  222. 周東英雄

    ○周東国務大臣 現下の国際情勢下においての食糧問題についての御心配はまことに敬意を表します。しかしただいまのお話の中に、多少時期的の誤りがありますからこれを修正しておきます。あなたは本年度十二月まで八十万トンしか入らないということでありますが、政府としての計画は四月から三月までの年度についての計画であり、これに対しまして、一応修正いたしました輸入計画は三百十万トンでありまして、しこうして四月から十二月までにおいては、すでに百七十万トン、米、麦、大麦合せて入つておることを、はつきり申し上げておきます。しこうして一—三月の見込みに対しまして、いろいろ船の問題なり、市場における関係もありまして、非常にかたく見積りまして、多少減るであろうということは、私どもは予想しておりますが、大体二百七十万トンまでは行く、これは確実な見込みを立てております。しかもこの間川崎さんの御質問でありましたかに答えましたように、その後におけるバーター制をとつている国々に対しましても、ドルによる現金決済を認められた機会を利用しまして、さらにその上とも買付に対して努力を続けておりますから、あるいはもう少しふえるのではなかろうか、大体二十五年度における計画数量には達し得るのではなかろうか、かように考えている次第であります。来年度の問題につきましては、大体御質疑のように、同じ期間において三百二十万トンの計画をいたしております。最近における国際情勢はお話の通り、しかしいろいろの問題におきまして、あるいは輸出の割当、あるいは輸出の制限等、国際的には起るかしれませんが、その間に処しても、日本への輸出、日本から見ての輸入というものに対しては、それぞれその間に処して努力をし、関係方面とも連絡をとりつつありますので、そうえらいかわつた数字にはなるまいかと考えますが、同時にわれわれとしては、国内における増産について、些少ではありますが、二十六年度予算におきましては、公共土木事業等においては、約三十五億の増加をし、それから害虫駆除その他の関係についての増産対策費用、それから農林漁業金融に関する長期資金等、これらに関連する関係において、ただいまのところ六十億円余支出する計画を立てております。別途消極的減損防止という方におきましては、農業災害に対する緊急予備費として二十五億を計上する等、できる限りの国内における増産を進めつつあります。これとあわせて来年度における食糧の見通しについては、貯蔵の石数とあわせて、大体切り拔け得ると、かように考えております。
  223. 小平忠

    ○小平(忠)委員 周東大臣のただいまの御説明によりますると、安本と農林省の間に、非常に基本的な考え方の違つた点があると私は思う。農林省の食糧庁、特に安孫子長官は、輸入食糧に対する発表を常に六月から翌年の七月という数字で発表いたしておりまして、安本は日本会計年度、四月から三月という、こういう期間的なずれによつてごまかしをしておる。こういう点について、今の大臣数字も、私は了とするわけでありますが、そういう期間的なずれがあるというと、常に輸入するについてのあいまいな数字が出て来るわけであります。そこで私が申し上げたこの数字は、農林省の発表した数字と安本の発表した数字と、総合された数字でありまして、期間的の六月から七月というものを三月から四月というふうに計算された場合には、そういつた計算が出て来ると思います。そういう期間的な場合を言うのではなく、基本的に大臣輸入の見通しはつくのであるし、心配はないということを、本会議においても、あるいは委員会においても、他の同僚議員の質問に対してお答えされておるのであります。私はなぜただいまこのような具体的な問題を申し上げたかと申しますと、現に国際情勢の推移というものは、ここまで緊迫している。簡單にこの輸入というものは望まれないのではないかという点を私は考えまして、その点を強く指摘して、大臣の所見を承つたのでありますが、しからばさらに一歩つつ込んで私が申し上げたいと思いますことは、大臣の楽観論——私は楽観論と見る以外にないのであります。そういうことは、現にわが国食糧の安定化のため、一種の優先輸入として扱われて来ましたところのガリオア資金による例の食糧供給の問題でありますが、本問題も例のトルーマン大統領の予算教書を見ますと、対日援助費の三割五分減による圧縮というものを、相当考えておるわけであります。こういう点から見ますと、はたして二十五年度残一—三の輸入計画が、その数字をはたして確保できるかどうか、さらに二十六年度の三百二十万トンというものを計画されましたが、はたしてこの数字がどういう観点から可能であるか、現に予算書には輸入先、あるいは船舶の関係も記入されておりますが、そんななまやさしい事態では私はないと思います。そういう点について、私は国会を通じて、全国民がこの食糧問題については納得の行く、安心のできる考え方を御発表いただきたいと思います。
  224. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私の申し上げました数字は食糧庁とは違つておりません。しかも私の申し上げる数字は、予算と結びついておる。予算はあなたの御承知のように、予算書にあげられたる輸入食糧の補給金は四月から三月までを考えております。その点で私はそう申し上げたのであります。従つて先ほど申し上げましたように、今苦しい時代ではあります。決して楽観はいたしませんが、しかし船の問題についても、最大の努力を払いつつ、自国船の増強対策を講じ、また用船、買船等も講じておりますし、買付につきましても、それぞれの国々において買付が進みつつあることからいたしまして、私はこれだけのものについては相当期待をし得ると考えます。しかし今後いかなることが起るか、絶体に起りませんとは神ならぬ身の保証はできない。そういうことまで考えて、あなたの考え方からみるとこれはできないだろうと言われますが、私はこれまでの船の対策、買付の関係資金の利用措置等から考えまして、ただいまのところ期待し得ると考えております。
  225. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そのような大臣の御答弁によつて、安心して農民は食糧の増産に、また消費者は食糧の円滑なる配給を念願し得る、私はこう思うのであります。そこで最近問題になつております雑穀の統制撤廃の問題であります。農林省はきわめて近いうちにはずしたいという考えでありますが、この問題も、政府並びに自由党与党のお考えとして、統制撤廃の観点から、これは特に雑穀の占める北海道の割合も考慮いたしまして、北海道の供出が完了した場合においてははずすのだ、こううことから現に北海道のごときはもう一月中にははずれるという心構えで、農家もあるいは農業協同組合も、その準備をしております。またその間隙を縫つて業者が北海道において非常に動いておるという現状であります。たとい事態が、今後国際情勢の推移によつて、再統制を必要だという段階に立ち至りましても、従来のような官僚統制論に私は絶対反対であります。これは今そこにお見えになつております池田大蔵大臣もこの委員会で、従来のような官僚統制はいけないから、是正したいということを申されておりましたが、周東大臣もまつたく同感ではないかと思います。再統制を行う場合においても、従来のような統制方式を一ぺん改めるという見地から、雑穀の統制を一たんはずして、そうして一つの新しいけじめをつけるという意味から、すみやかにこの統制をはずされることを望んでおるわけでありますが、周東大臣はこの点どういうふうにお考えになつておりますか、お伺いしたいのであります。
  226. 周東英雄

    ○周東国務大臣 雑穀の統制撤廃につきしては、農林大臣がたびたびお話申し上げておるように、一応政府としてきまつておる立場としては、春ごろからはずそうということに進んで、今研究中であります。
  227. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうも春ごろからという大臣の御答弁が非常に迷惑をしておるので、実は春ごろまでこのまま行つたならば、統制をはずす必要がなくなつてしまう。ひとつその点農林省とも十分検討願いまして、その態度をすみやかに発表いただきたいと、こう思うわけであります。  あわせましてお伺い申し上げたいことは、先般の周東大臣の本会議における経済政策に関する演説の中でも明らかにされております。また安本が中心となつて、自立経済審議会の最終案の発表を見ております。これの内容を伺いますと、経済自立三箇年計画に基きまして、昭和二十六年度から三年の間に、米麦等主食を約千二百万石の増産をはかろうとしておるわけでありますが、本年度予算を見ますると、わずかに六十億の農林漁業長期資金の融通や、土地改良においては七億円の増額、開拓においては一億四千万円、さらに食糧増産関係経費で、わずか十億円程度の増額を計画されておるのであります。このような食糧増産に対する予算の手当で、はたして政府考えられておるような三年間に千二百万石の増産ということが、実際可能であるかどうか、私に非常に疑問を持つわけです。もつと積極的に、国際情勢が緊迫化すればするほど、国内の生産態勢を強化する必要があると考えますが、大臣の御所見はいかがでありますか。
  228. 周東英雄

    ○周東国務大臣 国内における自給度向上のために、でき得る限り早く必要な経費を盛れ、こういうお話については、趣旨はまことにけつこうであります。私どもの立てた計画によりまして、大体三箇年計画を立てて、初年度たる二十六年度における経費としては、このたび御協賛を願つております予算の範囲内で、二十六年度の計画は進め得ると考えております。
  229. 小平忠

    ○小平(忠)委員 周東大臣に最後にもう一点お伺いいたしたいと思うのでありますが、ただいまの御答弁によりましても、国内の生産力増強のためには、非常に重大な関心を持つておられることは認めるわけであります。そこで本年度の公共事業費の予算を見ますと、特に安本所管として、年々日本が侵される災害のためにこうむる損害は莫大であるというような観点から、災害復旧、あるいは食糧増産の基盤となる土地改良等の予算についても、相当のお考えを持つておられることはわかるのでありますが、私は土地改良の重要性は、これはもう何といつてもいなめない事実であるし、さらに一歩突き進んで考えますときに、どうしても日本の置かれている地理的関係から、年年こうむる災害をいかにして防ぐか、また従来こうむつております災害をいかにしてすみやかに復旧するかという点であります。ところが災害復旧の点につきましては、昨年四百七十億の予算に対して、本年は七十億減の四百億しか計上していない。こういつたような問題は、災害復旧は全国の国民のひとしく願望しているところでありますにかわらず、いかなる事由によつて、安本がこの公共事業費の編成をされるときに、七十億の減額をされたか、その理由。  もう一点は、さらに私は災害復旧よりも、むしろ災害を未然に防止する、こういう施策に重点をおかねばならぬ、こう考えるのであります。先般の施政方針演説の中では、治山治水等災害を未然に防止するために、相当額の増額を考えているのだ、こういう説明がありましたが、私はこの予算書、あるいは説明書を拝見いたしまして、その積極性をどうしても認めることができないのであります。この点について周東大臣の率直なる意見を伺つて、周東大臣に対する質問を打切りたいと思います。
  230. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えいたします。去年に比較して、過年度災害費を少し減したではないかというお尋ねでありますが、お尋ねの通り少し減つておりますが、これは今あなたが御指摘になりました後段の質問に関連いたすものであります。わが国としては、少い耕地を災害によつて失うことは非常に困る。従つて災害復旧よりは、災害を未然に防止する予防施設の方を早く完成しつつ、並行的に復旧をはかつて行くということが、一番理想であります。しかるに御承知通り、昨年と違いまして、二十六年度は見返り資金から来る公共土木事業費関係が、一応今のところ、ちよつととめられているかつこうになつております。これはいろいろ努力しておりますが、一応とまつている。しかし去年からの国としての考え方としては、災害防除のために、各地方に見返り資金をもつて、山腹砂防、あるいはダム建設、河川の防災、これらに着手いたしておる。これが見返り資金がなくなつたということで、急にやめるわけに行かない。むしろこれをしつかりと完成させることがよろしいという意味において、関係省とも相談し、予算の中から、見返り資金を出した防災施設等については、優先的にこれを考えるという方向を決定して来たのであります。従つて多少その方を借りて来たというようなかつこうです。過年度災害費につきましては、私どももこれが減ることに必ずしも賛成ではありませんが、そういう事情でかえましたのと、一つは今地方負担の問題について苦慮いたしておりますが、幾分なりとも地方で負担していただけるというかつこうで、大体事業費については去年から減らぬ程度で借用いたしたのでありますから、御了承を願いたいと思います。  本年の計画として、治山治水計画についてどれだけ盛つたかということは、こまかい数字は私今持つておりませんが、これは河川砂防、山腹砂防、植林、河川改修等、各般にわたりまして、大体去年の五割増し、あるいは三割増しということに、公共事業費は予算を増額いたしております。その点は御了承を願いたいと思います。
  231. 小平忠

    ○小平(忠)委員 次に私は米価問題について大蔵大臣にお伺いいたします。この点は周東大臣の所管にも関係することでありますので、あるいは関連するかとも思いますけれども、大蔵大臣にお伺いいたしますが、この予算書の説明を見ますと、昭和二十六年産米の予定米価でありますが、これを二十六年の九月末のパリテイ指数を一九五と想定いたしまして、石当り五千二百九十七円、これに特別加算額を入れまして、さらに包装代百九円を加えて、二十六年の米価を六千百六円と予定されておるわけでありますが、この基本になりまする加算額の中から、二十五年産米決定の際に、超過供出奬励金と、早期供出奬励金を控除されておるわけであります。そこで明年度、二十六年の政府の方針として、超過供出奬励金をお出しになるお考えがあるのか、ないのか。仄聞するところによりますと、この奬励金を出す、最近の国際情勢の推移から、また日本の米麦等の主食についてのいろいろの現状から見て、超過供出奬励金を引続き出して行きたいというようなことを聞くのでありますが、この点についてお伺いしたいのであります。
  232. 周東英雄

    ○周東国務大臣 二十六年度については、超過供出奬励金はお話のように出すことをやめてあります。これは大体供出制度に関する法制が今度かわるはずでありまして、従来は事前に供出額を割当てる結果、一生懸命につくつて、さらにそれ以上出した場合における超過供出に対する奬励金の制度を設けたのでありますが、     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 今年からは事後の割当てになるわけであります。事前の割当てをやめ、事後の実際の作を見まして、供出をお願いするというかつこうになりまして、趣旨がかわつて参りますので、来年からは出さないということになつております。しかし制度として超過供出奬励金の形では出しませんけれども、今年の米価決定においてとりましたと同じように、一定の方式で出した米価の附加金をつける。そのために総額の一割五分程度のものをつけるというのは、過去における超過供出奬励金、早場米奬励金というものを、供出買上げ数量で割つてみた額が、大体一割五分くらいに当るものですから、過去に受けておつた利益というものをつけ加えるべきであるという考え方で、別にそれを附加しておりますのが、お話の六千何円になるわけであります。行き方はかわつておりますが、実質的には同じような形になつておる、かように思います。
  233. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その場合に私は非常に問題といたしたい点は、現在は超過供出奬励金をお出しにならぬという方針で、予算編成されておりますが、年度の途中で米価決定までの段階において、超過供出奬励金を出すという場合においては、これはもう想定米価ですから、その問題も仮定論になりますが、そういう問題は従来ともいろいろ米価決定についていざこざがあつたので、あえてここでお伺いするのでありますが、年度の中途で超過供出奬励金を出すという方針にきまりました場合に、例の特別加算額、これはパリテイ価格の一五%になつておりますが、これから控除なさるお考えでありますか、控除をされずに別に出すお考えでありますか、その点をお伺いしたい。
  234. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいま申しましたような趣旨で、供出奬励金を出さないことにしてありまして、はつきり初めから一五%加えてありますから、今のような途中で出すような形には、今のところならないと思います。ならないつもりでおりますから、そういうことを考える必要はないと思います。
  235. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そこが大事な点で、出さないと言つてつて、途中で出す。その場合に、超過供出奬励金というものを別途に出すのならば話がわかる。ところが出さないつもりで、加算額を一五%計上したのだ、こうおつしやるのでありますが、その場合にこれを出すということになつた場合においては、この加算額から超過供出奬励金を必ず差引くのであります。そうしますと、これは本年も問題が起きておるわけでありますが、特に二十六年の産米決定の場合に問題になる点は、超過供出をする農家はこれは同じでございます。かわりません。現在一五%というものを考えております。ところが天候や病虫害等の関係によつて、超過供出をでき得ないという農家は、この加算額から奬励金というものを差引いた額で支払いを受けるわけであります。こういう点において現在お考えになつておる控除額について、超過供出をし得る農家はいいけれども、その年の天候やその他で出し得なくなつた農家は、それを差引いた価格で買上げるということになるのでありますから、そういう点を今のうちに十分御考慮をいただいて、出す場合においてはこの金額を動かさないで、プラス超過供出奬励金ということを、十分お考えいただきたいと思うわけであります。  その次に、二十六年度予算書を見ますと、早場米奬励金を二十五年は六十億でありますが、明年は三十億に半減しておるわけであります。この半減をいたしました理由についてお伺いいたします。
  236. 周東英雄

    ○周東国務大臣 大体早場米奬励金というものについては、本質的に考えれば順次減して行くのが私は至当だと思う。農業政策の上から、早場米という形でその地方の政策を立てて行くか、別個の形で——土地改良その他によつて、反当収納を上げて収益を上げて行くというのが本来だと私は思います。早場米を早く出したら奬励金をやるというような行き方は、考え直して行くべきだと思う。来年度においては、いろいろ需給関係から見まして、大体早場米は三十億程度でよろしい、こう見たから減したわけであります。
  237. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは大蔵大臣質問いたします。政府は今回農林漁業の緊迫せる金詰りから、二十六年度において一般会計から二十億、見返り資金から四十億、計六十億をもつて特別会計として低利長期資金を融資するお考えのようであります。この問題に関しまして廣川農林大臣は、昨年考えた例の農林漁業金融公庫、これが関係当局と折衝の結果、どうも思うように行かなくて、その代案としてこの法案に落ちついたのでありますが、この場合に六十億では足りないのだ、従つて実際に当初は六十億でやつて見るが、この六十億では自分の考えとしては上半期にこれを使つてもらいたい、下半期は補正予算でさらに六十億を出す考えでおるということを、衆参両院の委員会なり、あるいはあらゆる機会に公表されておりますが、大蔵大臣としてもそのようなお考えをお持ちになつておるか、その点をお伺いしたいのであります。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度におきまして、農林、漁業金融のために六十億円の長期資金を計画いたしておるのであります。この使い方につきましては、なるべく資金の効率を上げる上におきまして早場米に使つて参りますが、六箇月で使つてしまつてあとはまた補正予算を組む、こういうようなことはただいまのところ私は考えておりません。
  239. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、その意見を伺つて非常に遺憾に思うわけです。一体政府は基本的な国の根本方針について、その大臣々々によつて別々な角度から意見を出している。これは私は非常に国の基本的な政策に、何というか大きな矛盾と、あるいは今後の行政に支障を来す、こう考えるわけであります。少くとも農林大臣がそれだけのことをはつきり明言されるからには、大蔵大臣と何らかのお話があつてそういうことをおつしやつたと思うわけであります。本件のごときは、全国の四十万農民が非常に希求しておる点であります。いろいろりくつは申し上げません。現状はもう大臣承知通りでありますから申し上げませんが、昨年例の農林漁業金融公庫を設置して、少くとも百五十億くらいの資金を流さなければならぬ。こういう腹を政府局でおきめになつた見地から、ほんとうに現在この六十億を出すのでありますれば、ひとつ思い切つてあとこの二倍の百二十億を最低限度として出すような方向に御努力願いたい、こう思うわけであります。この点についてはそれ以上追究申し上げませんが、何分の御配慮を願いたい。あわせまして、こういつたような臨時の方法ではやはり農林、漁業金融への基本的な問題は解決されないので、こいねがわくば昨年政府考えられた農林漁業金融公庫といつたようなものを、急速に設置されることが適切と考えるのでありますが、大蔵大臣としてこの農林漁業金融、これは所管でございますから、こういつた金融公庫を設置される御意向はあるかないか、お聞きしたいのであります。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度は、御審議願つておりますように、ただいまのところは六十億円を長期資金として計画いたしておるのであります。大蔵大臣として補正予算をつくつて百二十億出すというような約束はできません。しかし情勢によりまして、必要ならばこれは出すようにいたしたいと思います。ことに農林漁業の方の金融は、今まで非常におろそかにされておつたのであります。従つて今度六十億円出すということは、画期的な事柄であると考えておるのであります。だから他の人より農林、漁業金融に対して努力が足らぬというようなことは決してありません。人以上に努力をいたしております。しかし今から何ぼ何ぼ出すというようなことは、朗報ではありましようが大蔵大臣としては約束できない、こういうのでおります。しこうして農林漁業金融金庫とかあるいは公庫を設けるという問題を御議論になりましたが、私は特殊の金融機関を設けてやると片ちんばになつていかぬと思います。最近も水産金融公庫をこしらえるとか、あるいは船舶金融公庫をこしらえるという議論がありますが、なかなかむずかしいので、今せつかく農林漁業の方につきましては農林中金という既存の機関がございますので、これとタイアツプしてやるのが一番やりよい。たとえば土地改良の問題にいたしましても、公共事業費からも出て参ります。またこの農林漁業の特別会計からも出ている。また非常に例外的になるようなものは、農林中金の金融債発行によつても貸し付けられる。こういうふうに一元的にずつと行つた方がよいのである。ただ公共事業の方は、直接予算で施行して行くために一体をなすわけには行きませんが、考え方としては一体をなしている。しこうして農林漁業の六十億円と農林中金の金融債によりまする半長期資金、こういうものは私は一体をなして考えて行くのがよいのであつて、農林中金は農林中金で中短期の資金で行き、農林漁業特別会計長期で行こう、こういうような別々の機関によるよりも一体をなして行つた方がよいではないか、こういう気がしているのであります。私はなるべく新しい機関をつくりたくない。たといつくつたにしても、これは輸出銀行のように既存の金融機関とタイアツプして行く、こういうようなかつこうがよいと考えております。
  241. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大体大臣の御意見はわかりました。予算の審議中だから、審議中にまた補正するというようなことは言えない、その理由はわかります。あとの含みある言葉を信じ、現在緊迫せる農村金融の問題を大蔵大臣は真劍に考えていることを了承いたしまして次の問題に移りたいと思います。  この農林漁業金融公庫の対象とされておりますものは、大体土地改良を重点とされているのでありまして、非常にけつこうだと思うのであります。そこで日本の食糧問題解決のかぎとして、大きく取上げられている畜産の振興、この畜産の施設に対する融資の対象は、この法案から除外されております。それでひとつぜひこの対象の中に入れていただきたいと希望するのでありますが、農林大臣はこの点に関しまして、畜産の施設に対しては性質上長期というわけには参らないから、中短期の資金を、農林中金から相当額出す考えでいるということをおつしやつているわけであります。その場合に、はたして大蔵大臣の方にそういう御連絡があるのかないのか、またあつた場合にはその財源をいかなる形で求めようとするのか、預金部資金から持つて来るのか、この点について御説明をいただきたいと思うわけであります。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 農林漁業の六十億円は、畜産の面に一切出さぬ、こういうことはきまつていないと考えております。共同施設でおやりになるような場合に、その共同施設組合の方から畜産の方へおやりになる場合は流してしかるべきではないかと考えておりますが、まだ具体的に協議したわけではございません。御承知通り、北海道におきましては、預金部が公共団体へ畜産資金として相当貸しているのであります。だから私は、預金部で貸すか、農林中金で貸すかあるいは農林漁業特別会計資金にするか、やはり相手を見ながらその時期、その事業の性質によりまして、適当にやつて行きたいと思うのであります。農林と漁業だけだから林業もやらないか、林業にやらぬときまつているわけではございません。できるだけ各方面に適当な時期に、円滑に行くように考えて行きたいと思つております。
  243. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは大臣にあと農協再建整備の問題と課税問題についてお伺いをして終りたいと思います。  農協の再建整備に関しましては、政府に昨年以来非常なる御努力を願いまして、最近非常に明るい方向にありますことは喜びにたえないところであります。そして農林省が、この第十国会に農協再建整備法案を提出すべく、目下準備されているということを聞くのであります。この方法といたしましては、農業協同組合が戰時中の農業会から引継ぎました資産のこげつき、あるいは不良購買品のデツド・ストック、あるいは農協の経営の不振から出したところの赤字、これらを大体合計いたしますと、全国で約二百二十三億という厖大な数学に上つておる。これに対しまして、政府は二十六年から三十年までの五箇年間に、約三十三億三千七百万円の利子補給を行うという、この問題について、目下着々法制化の段取りにあるということを聞いておるのでありますが、これははたして大蔵大臣の方まで、この問題が具体化されておるのか。この法案を今国会に提出して通したいというお考えでありますか。あるいはその場合に、この予算には予算的措置が講ぜられておりませんが、いかなる方法によられるのか、この点についてお伺いをしたいのであります。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 農業協同組合の再建につきましては、昨年の春の初めごろ以来問題になりまして、農林省、大蔵省共同のもとに農業協同組合の実態の調査に入つておるのであります。大蔵省といたしましては地方の財務局を使いまして適当なる指導を加えつつ実態調査に当つておるのでありますが、まだこれが完了いたしません。来年度予算におきましても、相当の調査費を組んでおるのであります。しかし今まで集まりました資料その他によりまして、農林省では今お話のような再建に関します構想を練つておられるということは聞いておるのでありますが、具体的にどうなつているかということは私のところまで来ておりません。利子補給で行くか、どれだけの利子補給になるかという点につきましては、まだ両省協議をするところまで至つておりません。但し事務当局間では、やつているかどうかということは存じませんが、もしお聞きになりたければ、銀行局長が来ておりますから、銀行局長からお答え申し上げさしてもよろしいと思います。
  245. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 農業協同組合の整備につきましては、昨春来地方々々に農協経営対策協議会を設けまして、何分にも数が多いので、まず事情の把握が必要であるというもとに調査をし、かつ政令を公布いたしまして、今後農業協同組合の財務はこの基準によつて処理するという基準を示しまして、この実情を漸次それに近寄せて行くという努力をしておるわけであります。その結果財政的な援助、補助をしなければならないかどうかという点につきましては、まだ結論を得ておりませんし、今後の調査の結果をまちまして考えるべき問題であると考えております。
  246. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はこの問題についてはすでに大蔵大臣の耳に入り、方針を決定されておるものと実は考えておつたのでありますが、そこまで至つておりませんことは非常に遺憾に思うわけであります。しかしながら農業協同組合の現状は、これは大蔵大臣も十分御承知のはずでありまして、いろいろと、御配慮をいただいておるわけであります。そこでくどくどりくつを申し上げませんが、現在農村の再建の基盤となるものは何といつても農業協同組合であります。農業協同組合を完全に育成指導して、この農業協同組合の組織によつて農村の近代化、生産力を高めるということをやらなければ、いかに国内の食糧増産を叫んでも不可能だと私は思うわけであります。そこで戰時中の農業会の統制方式を農業協同組合の組織に移されたのでありますが、御承知のように、一時的に農業協同組合が統制機関という役割を持つたり、あるいは経済情勢の急変によつて、いろいろ経営上の支障があつたり、あるいは国際情勢の最近の段階が非常にデリケートなことから、現在農業協同組合が非常に経営不振に陷つて、あるいは事業休止なり、解散しておる組合が続発しておる現状であります。これを救うの道は、農業協同組合が自力で立ち上るということが不可能な段階にあることは御承知通りでありまして、どうしても私は今日の日本の農業協同組合は、まだまだ自力では立ち上ることはできないじやないかということから、ある程度政府がこの農業協同組合に対する補助、助成策をとらなければならぬと考えるのであります。幸いに昨年、例の報償物資の滯貨処理については、政府は現状を十分認識されまして、御承知のような処置をいただきました。相関連して、今度のこの農協の再建整備の問題は、へたをまごつくと政治問題まで私は発展するのではないかと思うのであります、ということは、現実の事態がそう遷延を許さぬというようなことから考えまして、すみやかにこの処置をとつてもらわなければならぬと思うわけであります。私は單に利子補給だけでなく、農業協同組合の現状から見まして、政府が低利長期の融資をなすべきである、こういうように考えるのであります。大蔵大臣は農林省の方からまだそういう相談を受けていない、こうおつしやることはわかりましたが、大蔵大臣として、農協の再建整備について利子補給なり長期低利の資金融資について、いかなるお考えを持つておられるか、この際お伺いしたいのであります。
  247. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、農業協同組合の実態を今調査いたしておるのであります。農林省並びに大蔵省で再々協議会を開き、また財務処理基準令というふうなもので、農業協同組合の経営のやり方等につきまして指導いたし、実態がどうなつておるか調査しておるのであります。農業協同組合につきましては、私も地方に行つたときにはよく聞いておるのでありますが、非常によく行つておるところもある、また悪いところはお話のような事情にあるのでありますから、よく実態をきわめ、しかる後に対策を講ずべきではないかと考えるのであります。お話のように農業協同組合の育成発達は、日本の農村、日本経済、これに至大な影響があることでありますから、十分検討を加えて、地についた施策を講じて行きたいと考えます。
  248. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大臣の御説は十分私はわかるのでありますが、実態の調査とおつしやいますけれども、すでに農林省はこの調査を完了いたしております。農林省は本年一月十三日現在をもつて、全国の農業協同組合の実態調査の完了を見ておるわけであります。この結果の数字は、いわゆる固定化した資産の負債の合計が二百二十三億という厖大なものになつておる。これは各都道府県の單位農業協同組合、連合会、また全国団体のすべての詳細な調査を昨年から約一箇年ほどかかつて農林省がやられたのであります。一月十三日にこの数字が出ておつて、農協再建整備に対しては、もう遷延を許さぬという現状を考えますときに、私は大蔵省といたしましても、すみやかにこの処置をとつていただきたい、こう考えるのであります。私のこの数字はハツタリでも何でもありませんが、そういつたことはいいといたしまして、大蔵大臣といたしまして、農協の再建整備について、一体利子補給なり、あるいは農協の再建整備に必要な低利長期資金を融資する方策を持つておられるかどうかということについて、もつと親切な誠意ある御答弁を承りたいのであります。
  249. 池田勇人

    池田国務大臣 金のやりくりにつきましては、宙に金が浮いておるわけでも何でもございません。また二百数十億円の赤があると言われるのでありますが、この赤の実態がどうなつておるか、ほんとうの欠損か、あるいはこげつきか、資金化がどの程度できるか、こういう問題をしさいに検討してでないと、金融対策というものはできないのであります。今私が利子補給をする、あるいは長期の金を出すといつても実態を調べない以上は申し上げかねるのであります。一月十三日にそういう調査ができたとお話になりますが、銀行局長のところにもまだ来ておりません。まして私は聞いていないのであります。二百数十億円の赤があるかないか、その赤がどういう形態のものか、どういうふうなやり方で、これを補填して行くか、農業協同組合自体の補填能力、こういうことから検討して行かないと、すぐ赤があるから利子補給をやる、金をあげる、こういうわけにはなかなかいかないわけであります。
  250. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その問題は農林省からまだ具体的な御連絡がないので、そのような御答弁であると思いますが、これはあらためて次の機会にお伺いしたいと思います。  次に農業協同組合の赤字から参りますところの赤字負担金に対しまする農家の課税上の問題でありますが、農業協同組合が一千万円の赤字を出したという場合に、かりに組合員五百人の組合の場合においては、一戸平均二万円の赤字負担をしなければならない。現に全国でこういう実例はたくさんあるわけであります。この場合に、この赤字に対して農家個々が負担しておりますが、現状は農民の課税対象として、この赤字負担分に対する控除をいたしておりません。私は当然赤字負担に対しまする分は、課税対象から控除すべきものである、こう考えるのでありますが、大蔵大臣の御所見いかがでございますか。
  251. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう問題は、農業協同組合ばかりでございません。たとえば自分が出資しておる会社がつぶれた、そういうときには月給からその損金を引くかという問題でございます。従来の税の取扱いといたしましては、資産の喪失につきましては、個人の所得がつきましては引かないという建前にいたしております。法人の方で見ますと、所得と資産の減耗とは差引きすることになつておりますが、個人の方では今までのところやつておりません。
  252. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それと関連いたしまして、最近全国的に国税庁の所管たる税務署の吏員が農業協同組合に参りまして、強制的に組合員の貯金の帳簿を取上げて、そうして組合員の実際の貯金額を調べて、徴税の参考にしまたそれに資している。すなわちこのことは職権をもつてやるのだというわけで、農協に対するそういう彈圧的な強制的なことをされておる実例を、非常に多く聞くのであります。私はこの預貯金の問題については、ある程度国家の財政上の問題から、国民の貯蓄奬励の意味から、かつて昭和二十三年にこの問題については、別に職権をもつて云々ということはない、特に税金の対象等にするためにそういうことはしないということを承つたのであります。法的な根拠も私は見るのでありますが、はたして税務署の吏員がそういう強制権——協同組合の帳簿を強制的に調査をするというようなことを、一体政府としてなさつていいのかという点について、大臣の所見を承りたいと思います。
  253. 池田勇人

    池田国務大臣 最近と申しまするか、昨年来お話のような点がちよちよい私の耳に入りました。また單なる預金調査でなしに、滯納処分の執行としまして、預金者に対して預金を差押えをするというような行き過ぎた行為がありましたので、これは嚴にとめるようにいたしておるのであります。先だつての財政演説におきましても、徴税のために貯蓄心を阻害するようなことはやめたいということを申しておりますように、徴税も必要でありまするが、貯蓄の増加ということが今の場合として非常に重要でありますので、そういうことのないように、十分指導をいたしておるのであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  254. 小平忠

    ○小平(忠)委員 最後に一点お伺いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。農業委員会を本年二十六年から実施されるというお考えであります。これは農林省が中心となりましてこの案を作成され、大蔵省はこれについて予算化されたのですが、従来の食糧調整委員会並びに農地委員会、農業改良委員会のこの三本を統合して、農業委員会ということにして、経費の節減をはかり、農業生産力を高める施策として、今度の予算書に具体的に現われて来ておるわけですが、実はこの問題は昨年一ぺんお流れになつた。全国の農業団体、農業協同組合等におきましては、これは乱暴な言葉ではありますが、みそもくそも一緒にするというようなことを言つてつたわけであります。農地委員会の性格と、食糧調整委員会の性格とは根本的に違うのだ、農地改革がまだ完全に終りを告げていないとき、食糧の増産あるいは供出等の重要業務とチヤンポンにしてはいけないという意見があつて、実は昨年は審議未了になつておるわけですが、この問題についても、全国の農民なり農業団体は真劍に考えて、なるべく多くの人間を使わないで、少い人間でやらなければならないという観点から、この三つを一本にする農業委員会については、各種農業団体としても、または私の意見としても、この案には根本的に反対するのではありません。これについては賛成するものであります。しかし賛成をいたします前提があるわけであります。その前提は現実を無視したようなやり方ではいけない。どういう点かと申しますと、今度は全国を一律に見て、市町村が持ちます定員を平均して一・二人としております。現に北海道の実例を申しますと、現在北海道の農地委員会は、平均三・七人、食糧調整委員会は四人、農業改良委員会は二人、合計して九・七人という人員がおるのでありますが、これを節約をして、経費の節減をはかるという見地から半減するというくらいのことは考えるのでありますが、九・七人もいる人員をいかに整理統合いたしましても、一・二人という形にするということは、大きな町村は二人という段階までは行けると思いますが、とても不可能な問題であります。北海道の現状からみますると、最低四・五人か五人いなければできない。町村の実態も本州九州等の町村は幾分趣を異にするでしようが、政府当局の見解は大体違つても、一人置くところと二人置くところというようなお考えであるらしいのですが、こういう問題について、はたしてこの予算について彈力性があるかどうかという点が一点。  もう一つは今後この経費の負担については、地方公共団体が負担をするようになつております。但し政府に余裕がある場合においては、この助成もなし得るような道も開かれておるのですが、主体は地方公共団体の負担になつております。こういつたような考え方では、おそらくこの農業委員会一本に整理されましても、重要なる農地改革の締めくくりなり、あるいは食糧行政は円滑には参らないと思うのですが、大蔵大臣のこの予算的措置に対する所見を承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  255. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通りに農地委員会、食糧調整委員会その他を一緒にいたしまして一委員会にいたしたのであります。これは農地改革の方の仕事もだいぶ済みましたので、一つの委員会にすることにいたしたのであります。これにはあまり御議論はないようでありまするが、かかる場合におきまして、人員の点について非常にお困りの地方があるやに聞いておるのであります。われわれは大体のお話の通り、一町村に一・二人というように考えております。全体で予算を組んでおるのでありまして、お話の通り一人のところもあり二人のところもある。こういうような程度の彈力性は持つておりますが、この予算を北海道に四人も五人もおるからというのでかえるつもりはありません。やはり全国的にその実情に沿うような考え方で行くべきではないかと思つております。
  256. 小坂善太郎

    小坂委員長 今回新たに設けましたる代表質問制に関連いたしまして、黒田寿男君、小林進君よりそれぞれ質疑の通告がありまするが、この席におられませんから、これは他日に讓ります。  これをもつて代表質疑を一応終ります。  引続きまして一般質疑に入ります。北澤直吉君。
  257. 北澤直吉

    ○北澤委員 きようはあまり時間もありませんので、一点だけにつきまして大蔵大臣質問いたしまして、明日また質問を続行したいと思うのであります。  日本に対する講和條約が、現在全国民の関心を集めている最も大きな問題でございますが、この講和の問題は、日本の政治、安全保障、経済その他各方面にわたりまして、非常に重大な関係を持つておりますことは申し上げるまでもないのでございます。ところがこの講和條約の、日本の政治あるいは安全保障等に関する部面については、非常に重大な関心が払われておるにもかかわらず、経済の部面につきましては、ともするとあまりこれを重大視しないというふうな傾向があるのでありまして、この点私は非常に遺憾に思うのであります。と申しますのは、日本講和條約を結びまして、政治的にも経済的にも自立をするというわけでありまして、結局日本経済の自立ということが、非常に大きな課題であるにもかかわらず、この経済の問題、経済面におきまする講和條約の影響と申しますか、そういう点が比較的軽く見られておるように私は感ずるのでありまして、その点は非常に残念に思うのであります。  そこで申し上げたいのは、結局日本経済上における完全なる主権の回復という点でございます。戰時中に、アメリカのルーズベルトと、それからイギリスのチヤーチルが、大西洋上におきまして締結いたしました英米協同宣言、それはその後連合国の共同宣言によつて確認されておりまするが、これによりますと、「戰勝国たると戦敗国たるを問わず、一切の国がその経済的繁栄に必要なる世界の通商及び原料の均等條件における利用を享有することを促進することに努むること」まあこういうことになつておりまして、戰勝国戰敗国のいかんを問わず、世界の国々は世界の経済的繁栄に必要な通商、あるいは原料の獲得に参加できるということになつておりますのみならず、ポツダム宣言におきましても、「日本国はその経済を支持しかつ公正なる実物賠償の取立てを可能ならしむるがごとき産業を維持することを許さるべし、但し日本国をして戰争のため再軍備をなすことを得しむるがごとき産業はこの限りにあらず、右目的のため原料の入手を許可さるべし、日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし」こう書いてあります。また最近ダレス特使日本に参りまして、日本講和條約につきましては、日本の完全なる主権の回復ということを、たびたびその声明等にも述べておるのであります。そういうわけでありますので、私は日本経済自立、講和條約後の日本経済自立達成におきまして、この日本経済上における完全なる主権の回復ということが、最も大事だと思うのであります。ところがときどき新聞等に現われておるところを見ますると、日本米国経済援助を受けておる間は、ある程度日本経済下の主権の行使に制限があるかもしれぬというふうなことが新聞に伝えられておるのでありますが、どこまでも今回の講和條約におきてましは、日本の政治、経済その他各方面における完全なる主権の回復、特に経済面におきまする完全な主権の回復ということを私は希望する次第であります。そういう点におきまして、一体政府はいかにお考えでございますかこの点を伺つてきようの質問を終ります。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の独立のないところに政治の自主はないということはマツカーサー元帥も言われた通りであります。最近講和の問題がこういうふうに持ち上つたことは、日本経済が自立できるようになつて来たということが、最も有力なる講和態勢確立の材料と思うのであります。従いまして講和後の日本経済の完全なる独立ということは、北澤議員と同じようにわれわれの希求するところでありまするがこの問題につきましては、講和條約の内容になる可能性の問題もありますので、今私はここでとやこう申し上げることは差控えますが、考え方としては、あなたと同じ考えで進んでおるのであります。私の見通しといたしましては、とにかく相当輸出入貿易もふえております。現に一昨年度に比べ昨年度、昨年度に比べ今年度と、援助資金の減つたこと等から見ましても、日本経済が年々に自立へ向つておるということは、内外ともに認めておるところでございまして、われわれはできるだけ早い機会に自立できるように、官民ともに努力して行きたいと考えております。
  259. 小坂善太郎

    小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会