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1951-02-03 第10回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月三日(土曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 川崎 秀二君 理事 林  百郎君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    島村 一郎君       庄司 一郎君    玉置  實君       苫米地英俊君    永井 英修君       中村  清君    中村 幸八君       南  好雄君    井出一太郎君       今井  耕君    中曽根康弘君       勝間田清一君    川島 金次君       戸叶 里子君    西村 榮一君       砂間 一良君    横田甚太郎君       小平  忠君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 黒川 武雄君         労 働 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         人事院総裁   淺井  清君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         日本專売公社監         理官      久米 武文君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 東條 猛猪君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局次長) 酒井 俊彦君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     太宰 博邦君         厚生事務官         (薬務局長)  慶松 一郎君         厚生事務官         (社会局長)  木村忠二郎君         厚生事務官         (保險局長)  安田  巖君         厚 生 技 官         (医務局長)  東 龍太郎君         労働事務官         (労働基準局         長)      中西  實君         経済安定政務次         官       小峯 柳多君  委員外出席者         労働事務官         (失業対策課         長)      海老塚政治君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎秀二君。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 予算委員会は本日から財政質問に入るわけでありますが、質問に入るに先だちまして、簡單に希望を申し上げておきたいことがございます。  今国会重要議案は総予算案が中心でありまして、もつぱらこれに国会の精力が集中されつつあるのであります。委員長におかれては、先国会におきまする貴重なる経験にかんがみられまして、議事の運営について細心の配慮をされ、先般来総理大臣に対する質問において、野党側は十分その意を聞くことができました。非常に予算委員会が本格的な軌道に乗つて来たことを喜びますると同時に、戰前の予算総会以上の権威を高めるために、今後議員質問、特に野党立場にあるところの各党の質問に対しては、十分にその審議を盡されるよう御配慮を一段とお願いを申し上げておきたいと思うのであります。期間に拘束されるとか、あるいは時間に追われるとかいうことでなしに、各議員に十分なる質問を展開することを許されたいと思うのであります。  質問に入ります。今回提案を見ました総予算案は、歳出入それぞれ六千五百七十四億円でありまして、大蔵大臣の申されておるように、今日の状態としては明らかに財政規模縮小ということを意味しております。二十五年度予算大正年間以来かつてなかつた財政規模縮小を実施したと同様に、今回もまた目下の状態では、わずかながらもその規模縮小したことは、長年負担の増大と財政うなぎ上りに恐怖した国民安心感を與えたものといたしまして、その建前から私は大蔵大臣編成の労苦に対しては敬意を表せざるを得ません。しかしながら、本会議でも、また当委員会の冒頭におきましても、予算内容につきまして御説明がありましたが、大蔵大臣は機会あるごとに、この予算案は、内容的に自分の会心の作であるということを言われております。今まで五回予算案を手がけられた——五回というのはおそらく補正予算も含めてのことと思いまするが、このうちで最も自分の意を得た予算であると、自画自讃をされておる。そこで私が伺いたい第一の点は、この予算に盛られた特色について、いま少しく解明的に御説明願いたいということが一つ。それからしばしばこの予算中立予算である、ニユートラル性格を持つておるものであるということが言われております。舟山銀行局長もそういう表現をされておる。あなたはこの予算ができてから名前をつけるのだということで、その性格についていまだ的確な表現はされておりませんけれども、大蔵事務当局言つておる中立予算というものの意味を是認しておられると思うのですが、それはどういう意味であるか。それからこの予算案特色について、いま少しく具体的に御説明願いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の予算ニユートラルだとは実は私は言つたことがないので、どういう意味銀行局長が言つたか存じませんが、補正予算を加えまして五回予算をつくつたうちでは、まあ経済状態がだんだん安定の度を加えて行つたおかげだと思うのでありますが、社会保障的の経費とか、あるいは文化方面へ相当出し得たということが、今までよりもよほどよくなつたというところであるのであります。具体的な問題は御質問があればお答え申し上げまするが、財政演説並びに予算案説明において述べた通りであります。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 自分中立予算ということを言つたことがないということでございますが、しかししばしばそういうようなことが言われておる。私は経済安定と復興の両方をねらつて、しかもその経済状態に応じて、彈力性のある財政を組んだ、こういうことが中立予算意味だと今日までは解釈しておつたのでありまするが、大蔵大臣の言明と、しばしば大蔵当局の見解として伝えられておるものと、その性格に関しての問題について、ただいま申されたことでは納得が行かないのでありまするが、そのようなことはどうでもよろしゆうございます。そこでいよいよ質問に入らせてもらいたいと思います。  この予算関連して最も見のがすべからざる点は、この予算決定は、昨年の十二月二十三日閣議決定をされて、その案がそのまま提出をされておると記憶しております。その決定にあたつては、朝鮮動乱影響最後段階にあたつて強く織り込まれたものと思いますが、いわゆる十一月戰乱、つまり中共軍介入以後の世界情勢をも織り込んでの予算ではないと私は思う。トルーマン大統領の爆彈的な非常事態宣言によつて世界軍備拡張に乗り出した、そのことによつて世界経済の上に大きな変化が現われつつある、そのことを考えられてつくられたわけではないと推測いたしますので、その後における世界経済発展、ことに軍備拡張による物資の買付、あるいはまた輸入競争ともいうべき現状、こういうものは日本にも大きな影響を與えておるのですが、この面からしてこの予算は、端的にいえば、中共軍介入前の予算であるということが言えると思うのであります。その意味で私は率直に大蔵大臣にお尋ねするのですが、あなたは昭和二十六年度予算はこれをもつて足れりとしておられるのでありましようかどうか、情勢発展いかんによつては、補正予算を組まなければならぬのではないか、かように考えるのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの情勢ではこの予算案でやつて行けると考えております。しかし変転きわまりない世界情勢に対処し、非常なる事態が起れば、これは別問題でございますが、ただいまのところは、これでやつて行けると考えます。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 変転きわまりない世界情勢で、今後重大な変化があればということでありまするが、私は現在のままでも、補正予算を組まなければならぬ面が、予算随所に現われておるのではないかと思うのであります。従つて今の御答弁は、補正予算を組まないのではないと解釈してよろしいでありましようか。そういうような情勢が起つて来れば、組まざるを得なくなるのではないか、むしろそういうことの可能性の方が多いのじやないでしようか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 変化の度合いでございまするが、ただいまのところは補正予算を組まなくてもやつて行けるという見通してございます。しかし情勢によりましては、そういうこともあり得ましよう。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 人の質問を繰返すようでありまするが、もう少し分析をしてみたいことは、今回の予算案最後のまとまりができたということは、昨年の秋ドツジ氏が来訪して、そうして閣議決定をした昨年八月以来の予算に対して、最終的にドツジ氏が折衝の過程において持ち出したインヴエントリー・フアイナンスの問題、そのことによつてまた大きな変化を見たわけであります。初めは何でも歳出の方は五千九百億程度であつたと記憶いたしておりまするが、これがインヴエントリー・フアイナンスというものが断行されなければならないということになつたことによつて、一方租税の水増しをしたことによつて最後予算の締めくくりをつけたように記憶しております。よつてあの程度朝鮮事変状態、すなわち国連軍が十万以下の部隊で戰つてつたような状態においても、最後朝鮮事変影響で、ドツジ氏に指摘されてかわらざるを得なかつた。そういうことと、その後における情勢というものは、はるかにそれよりも尨大なる戰鬪体形で戰争が行われており、その後に起つたところの世界経済の動向は、さらに今までよりも数倍のウエートで日本経済の上にのしかかつて来るようにわれわれは感ずるのである。従つて今回の予算といえども、私は最終的な予算には本年はなり得ない、こういうふうに考えておるものでございます。従つて補正予算は必至であると言つてもさしつかえないのではないか、こういう感じを持つておりますが、大蔵大臣はどうですか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 当初五千九百八十億円の予算を組みましたのは、川崎君御承知の通りに、朝鮮事変が起きまして、その影響がまだ七月、八月には十分わかつていなかつたのであります。従いまして七月の上旬に閣議決定によりまして、予算編成方針をきめたのでございます、それによつていわゆる骨格予算をつくつたわけなのであります。五千九百八十億円の場合におきましては、朝鮮影響は全然考えておりません。一応それをつくりまして、その上に朝鮮動乱影響をだんだん盛つて行つて、そうして十一月の末にきまつたわけであるのであります。初め予算をつくりました。ときには、全然それを入れておりませんから、当然かわつて来なければならない。特需景気はふえますし、輸出入増加して来る。しかも輸出増加が先行する。こういう関係でありましたので、インヴエントリー・フアイナンスを置きますと同時に、見返り資金で五百億円の債務償還をするという予定であつたのを、債務償還をせずに、習年度へ繰越す。こういうような方法にかえて来ておるのであります。今のところ、そういうふうにやつて行きますれば、大体朝鮮動乱影響を十分織り込んでおります。朝鮮で何万人の人が戰いをしておるといつても、これは主としたる、影響特需関係でございまして、予算にそう大きい影響はございません。それから輸出入関係につきましては、大体輸出は相当伸びて参りますし、また輸入もそれに伴つてだんだんふえて行つておりますので、大体まかなえるのではないかというふうに考えておるであります。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 昨年の第七国会、つまり参議院選挙の前の国会においても、あなたは昭和二十五年度予算補正はしないということを言われておつた参議院選挙後、補正予算は必至ではないかといわれるような意見が非常に台頭して、事実これを実施しなければならなくなつたわけでありますが、昨年の情勢と比べて、本年のこの予算はさらに前途不安感を覚えるものがあります。これだけではとうていまかない切れないというようなことが、随所に現われて来ております。これは具体的にあとでいろいろ大蔵大臣に聞いてみたいと思いまするけれども、昨年の情勢でもなお補正予算を組まなければならなかつた。本年の予算でも、とうてい私はやり切れないように思います。これは何かドツジ氏からでも口どめされておつて補正予算を組むということを言つてはならぬというようなお達しでもあつたのですか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 そんな達しも何もございません。組む必要が起つた場合には組んでいいのであつて、何も補正予算を絶対に組まないというものではない。やはり情勢によつて国政運用に支障のないようにして行くのが、本筋だと考えております。
  13. 川崎秀二

    川崎委員 私は過去三年間の池田財政並びに池田大蔵大臣編成されて来たところの予算方針を、ずつと見ておりますと、しばしばこういうことを繰返されておる。そこで最も重大な点は、日本経済自立ということが、今日講和問題に関連して非常にやかましくいわれておつて経済自立の前には、まず経済政策自立性というものをとりもどす、これはもう全国民の声であります。国会を通じて、幾多の重要なる経済政策占領政策との関連において制約をされたことは、はなはだ残志ではありまするけれども、しかしもはや日本国民は、経済政策に関する限りは、自己の力をもつてこれを突破する時期に到達しておるのではなかろうか。そういうことの信念方針がなくしては、しばしば予算動搖を免れないと私は思うのであります。もとより連合軍司令部昭和二十年日本に進駐以来、特に財政経済政策については、ワシントン方面から非常な批判を受けて、そうして最後には昭和二十四年にドツジ氏の来訪になつて以来、経済政策は一変を見ておるのでありまして、従来までの財政政策は、主として日本自主性ということよりも、むしろワシントンとの関係において起つたことが多いと私は思います。しかしもうこういうような段階を迎えて、しかして本年の末には講和條約が結ばれようというときに、なお自主性のない予算が続けられておるということは、はなはだ私は残念ではないかと思います。昭和二十四年にドツジ氏が来て、インフレーシヨンを強力に押えなければならぬということを言いましたときにおきます状況は、これは日本政治家が解決をし得なかつたものを、彼の多年の経験で示唆したという点で、私はあの原則というものは全幅的に受入れていいけども、少くとも昭和二十五年度以降の予算は、もつと自主的な考え方で組んで行かなければならなかつたと思うのであります。ところが昭和二十五年度の予算においては、債務償還千二百何十億でありますか、これはほとんどあなたの御主張というよりは、ドツジ氏の主張によつて制約を受けた。今回またインヴエントリー・フアイナンスがきわめて重大な影響を受けて、予算編成方針自主性を放棄せざるを得なかつた。こういうことでは、これから先あなたに大藏大臣立場を預けて、そうして日本国民が安心して行くことができない。常に財政方針というものが、自主性を蹂躪されておるというようなことで、はたしてよろしいでありましようか。こういう問題についての今後のあなたの方針信念というものについて、基本的に伺つておきたいと思うのであります。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 何も関係方面の言いなりほうだいになつておるのではありません。自分の所信は十分話しまして、そうして伺うの意見も聞くことは聞く、きめるのは日本政府できめるのであります。インヴエントリー・フアイナンスをやつたから自主性がない、こういうお話でありまするが、これは減税をやる、片一方では朝鮮動乱を十分織り込んで、そうして外貨の受入れが非常に多いときには、やはり財政資金等によりましてこれを調整するのが、適当な方法であると考えてやつておるのであります。何も向うから押しつけられて、そのままをやつたというのではないのであります。
  15. 川崎秀二

    川崎委員 それは事情を知らない国民であるとか、一般大衆に向つて、弁解的に言われるならば、それでよろしゆうございます。しかし多少でも予算委員会の表裏を知つており、あるいは財政方面の消息を知つている者には、今の答弁はまつたく顧みて他を言うようです。ただもう自主性を汚されているということは明らかである。私は特に今後あなたが大蔵大臣を続けて行く上において、その気構えを聞きたいと思つて、もう一度お伺いしたいのだが、たとえば昭和二十一年当時、あの麻のごとく乱れたところの日本財政経済を建て直すために奮鬪されたあなたの先輩である石橋湛山氏、これは自由党の大蔵大臣であつて、われわれとは異なつた政治的な立場には立つているけれども、しかし自主性を守ろうということについては、粉骨粹身努力をされた。ことに終戰処理費の問題などに関連して、連合国側言い分日本側言い分との調整について、どれほどの努力をされたかということは、多くの人の知るところです。本予算委員会において、終戰処理費内容説明されて、涙を流されて、自主性の蹂躪されつつある点を訴えられたときは、われわれは非常な感銘を覚えた。その信念気魄があなたにない。占領段階が今日のままであるならばいいけれども、もはや、昭和二十六年度の半ばにおいて、わが国は輝しき独立を迎えようとしておるときに、経済政策自主性を確保できないような大蔵大臣では、われわれは安閑としてまかせておくことはできないのです。具体的な実例があります。昭和二十五年度債務償還は千二百七十八億も組まれて、その債務見返り資金の五百億円の問題は別として、一般会計から七百数十億円を計上するということは、これは誤つてはいないか、こういう貧乏国において、こういうことをすべきではない、これが国論の大勢であつた。しかるにそのことを実際は主張しておきながら、遂にドツジ氏の主張の前に屈せざるを得なかつたあの経緯、また最近におけるインヴエントリー・フアイナンスの問題は、しばしば新聞紙上にも、またあなたの談話の上にも、これは原則的にはなすべきものではないということを強調されておつた事実があるのであります。しかるに最後の瞬間に至つてこれがくつがえる。また地方税の問題にしてもそうなんです。地方税修正の問題のごときは、あなたがアメリカで修正して来たようなことを言うけれども、事実はそうではない。国会におけるところの圧力、それから国民のほうはいたる地方税修正の声が反映して、遂に昨年の第八国会において民主党修正案が成立したというところに、私は大きなあなたの落度があると思う。今後こういうような政策を続けて行くと、私は国民にとつて非常に残念なる状態が起つて来ると思う。西ドイツの大蔵大臣は、輸入の問題にしても、税金の問題にしても、総理大臣が非常に信念的な気魄を持つた人でありますから、よけい通つておるのかもしれませんけれども、実に私はよく達成されておるように思うのであります。従つて今後大蔵大臣を続けて行かれる以上においては、もつと自主性を発揮してもらいたい。一体昭和二十七年度以降においては、完全なる自主性予算というものがつくられるかどうか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 占領治下におきましては、関係方面意見が加わることは、これはやむを得ないのではないか。しかしその間におきましても、われわれの言い分につきましては相当言つておりますし、また関係方面でも非常に尊重してくれていることは確かであるのであります。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 それでは答弁になりません。よく「あの声でとかげ食うかよほととぎす」という歌がありますが、(笑声)あなたはその声で、実際には権威の前にもろくもひざをついている。国民もみんな知つている。もう少し信念的な予算を組んでもらいたいと私は思う。質問を続けます。  インヴエントリー・フアイナンスの問題に関連をいたしまして、原則的にこういう資本勘定財政資金をもつてまかなうということは、予算編成の本則を無視した方法であるのではないかということが、いわれると思うのですが、それに関連をして御答弁を願いたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 予算編成方針を無視した考えとは私は考えておりません。それは外貨が非常に入つて参りますときには、これに対しまして財政資金でやるということは、今まで日本でもやつておることであるのであります。私は朝鮮動乱というものを十分織り込んでいないときには、インヴエントリー・フアイナンスの必要はないと考えておつたのでありまするが、動乱によりまして輸出が相当ふえて来る。そしてこの輸出増加によりまするインフレを防止するためには、インヴエントリー・フアイナンス財政資金から出すことは適当であると考えておるのであります。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 インヴエントリー・フアイナンスの問題は、第九国会つまり先国会においても衆議院並び参議院を通じて論議をされたところでありまして、これが本則的には不当である、不合理であるということは、強く指摘されておるのであつて、あらためてこの席上で大きくむし返しをしようとは私は思いません。しかしかりにこれが、朝鮮動乱に伴うところのインフレ懸念というものに対するところの、一つのクツシヨンの役割を勤めておるという考え方が是認をされたとしても、私は元来こういうものは金融操作をもつてまかなうべきだという議論を持つておるものでございます。インヴエントリー・フアイナンス五百億はとにかく税金をもつて国民から吸い上げるわけでありますから、この結果国民生活水準を切り下げるものであるということは、私は間違いない事実だと思うのであります。これについてのあなたの感想を伺いたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 金融操作をもつてやるべきだというお話でございますが、どういうふうな金融操作でおやりになるお考えでございますか。私としては、こういう場合におきましては、片一方で相当の減税をいたしておるのでありますから、財政資金によつてまかなうのが適当だと思うのであります。沿革的に申しましても、大正二年から大正七年あるいは八年までの、輸出増加に伴いまするインフレ防止のために、政府は当時の金で十七億円のインヴエントリー・フアイナンスをやつておるのであります。主として一般会計の剩余金でやつてつたのであります。今にして考えますると、十七億円と申しますと三、四千億円のインヴエントリー・フアイナンスをやつた例があるのであります。こういうことから考えましても、朝鮮動乱を十分織り込んだ場合におきましては、私は片一方減税しながら——ツジ氏は、この際減税すべきではないという強い意見でありましたが、しかし私は、どうしてもこの際減税しなければならぬ、まず減税して、しこうしてなお余裕があれば、インフレ防止のためのインヴエントリー・フアイナンスをやる、これで進んだのであります。私は金融操作でやるというても、なかなか困難であると思います。この一般会計からの繰入れなしに、国債を発行して民間から政府の方に資金を吸い上げるという方法はございます。これはイギリスでも、最近十一億ポンドの大蔵省証券を出して、そして民間から資金を吸い上げて、インヴエントリー・フアイナンスのかわりをやつたのでありますが、日本で今それができるかどうか、こういう問題になつて来ますと、政府が国債を発行して、一般の銀行あるいは個人に国債を持たすということは、なかなか困難であります。そこで私は、今の場合といたしましては、片一方で七百数十億円を減税いたしますので、五百億円程度インヴエントリー・フアイナンスをやつて行くことが、将来のためにもいい、賛金の蓄積にもなるという考えでやつておるのであります。
  21. 川崎秀二

    川崎委員 あなたは今いろいろなことを言われましたが、一番最後の点で将来のためにもいい、つまり現下の輸出増大によるところのインフレ懸念というような問題に関連して、それからまた予算財政金融政策との関連において、そういうことが情勢上よくなるというような話の点だけは、私は実際のところ現在の情勢の推移から認めておるのです。ところがそれはやはり本則的なものじやないということは、われわれは強力に従来とも言つてつた考え方をかえままん。そして実際問題としてそのインヴエントリー・フアイナンスの、あなたの今までの考え方が蹂躪された経緯について、私は非常な残念を覚えるものでございます。しかしこの問題はまたいろいろな機会において同僚諸君からもお話があると思いますので、私は今日はなるべく輸入の問題並びに外貨の問題、こういうような問題についてお伺いをいたしておきたいと思いまするから、その問題は端折ります。  私は池田大蔵大臣の演説の重要な部分である資本の蓄積の問題について質問をいたしたいと思います。資本の蓄積の重要なことは、先国会におきましてわが党代表が討論の際にも申し上げたことであります。また質問の際にも口をすつぱくしてその必要性を迫つたところでございます。大体現内閣のやることは、われわれの言つておること、あるいはまた民間識者の強く主張しておるところを、およそ半年あるいは一年後にようやくその一部分を実施するというやり方で、すべて時機を失しておると私は思う。債務償還の問題でも、あれほどやかましかつたのを無理をして強行しておつた。しかるにその後これはたな上げになつてしまつて、われわれの主張のようなふうになり、本年からはこれは行われなくなるというような状態であります。インヴエントリー・フアイナンスの問題も、だんだんにそういうふうになつて行くのではないかというふうにも考えるのであります。そこでお伺いしたい点は、資本蓄積の方途についてであります。先般の施政方針の演説においてもその大要はわかりましたが、この際詳細に具体的に説明していただきたいと思うのであります。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 財政演説で申した通りでございます。詳細にと言われますが、御質問があればこまかくお答えいたします。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 池田大蔵大臣の構想は、前の国会でわれわれが言つたことと、それから経済同友会あたりが昨年の十一月であつたか、京都で発表したいわゆる資本蓄積非常措置の要望、これを相当織り込んで、施政方針の演説の中にも言われておると思うのであります。しかしこのうちの一番重要な問題でもある、たとえば無記名定期預金の問題などについては、あなたはどういうふうにお考えになつておるのか。これが今日どうして実施をされないのか。こういうことを実施すれば、資本蓄積について非常に大きな効果を上げて来ると思うのですが、いかがですか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 無記名定期預金の問題でございますが、これがなぜ大きくクローズ・アツプされるのか、私にはよくわからない。源泉課税の方法を選べば、それでまかなえるのではないかという考えを私は持つております。どうして無記名定期預金でなければいかぬということになりますれば、最近発行しておりまする金融債でも、大体無記名定期預金的の効力が現われて来るのではないかと私は思つております。
  25. 川崎秀二

    川崎委員 それならば話が非常にあるのであります。金融債の発行の問題についてお伺いしたい。具体的にやれということでありますから、具体的にやりましよう。  大蔵大臣は税の專門家でもあり、また近ごろでは金融問題についても通曉されておる。私はしろうとです。しかしながら、ここでお伺いしたい点は、一体この金融債の発行をいかなる方法でやるのか。最近では東京銀行をして短期の金融債の発行をせしめるに至つたようでありまするが、その経過について、またどういう方法でやるのか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年の銀行等の債券発行等に関する法律によりまして、一般銀行は、預金が資本並びに積立金に対してその二十倍以下であつた場合、金融債をどの銀行でも発行し得ることになつておるのであります。しかして今、資本の蓄積が必要でありますので、発行し得る銀行が発行するのは、法制上何らさしつかえないと私は認めておるのであります。申出がありましてからこれを大蔵省で許可するとかなんとかいう問題ではございません。届出も要しない。ただ相談がありましたから、発行なさるのが適当でしようと言つたのであります。しかして問題は、一ぺんにどれだけ発行するかという問題になります。あまりに一度にやりますと、他の銀行からの預金の移動が行われて非常な困乱に陷つてはいかぬ。これが一つの心配であるのでありますが、そういうことの起らない程度に発行するのは、何らさしつかえないと思つております。
  27. 川崎秀二

    川崎委員 それではお尋ねをいたします。昨年成立いたしました銀行等の債券発行等に関する法律に基いて、申出があつたからこれをやつたということであります。しかしながら、この法律が制定をされるときには、もとより一般銀行に発行せしめるという建前にはなつておりまするけれども、大体従来発行しておつたところの興銀であるとか勧銀であるとかいう特殊なものにこれを取扱わせるということであつたので、初めは一般銀行にこれを発行させるということではなかつたのではないでしようか。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 一般銀行に発行させるつもりじやなかつたという断定はできないのであります。発行すれば発行してもさしつかえないということの建前になつておるのであります。ただ問題は、預金その他の関係と、積立金、資本金の関係によりまして、一般銀行はなかなか発行できないというのが多いのであります。たとえば地方銀行が七十ほどありますが、これでも全部が全部発行し得る程度のものではございません。また大銀行におきましても、昨年の九月に積立金が非常にふえたりなんかいたしましたので、大銀行も今では相当発行し得る銀行がふえて参りましたが、その当時はそういう余力がなかつたということだけであるのであります。初めから発行させないという気持は持つておりません。
  29. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、今後発行を希望するという場合は、法律は許しておるわけですから、届出があればどんどん許しますか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 許すことによつて、預金の横流れが起つたり、あるいは信用を阻害するような程度にまで行つてはいけませんけれども、原則としては許して行くつもりであります。
  31. 川崎秀二

    川崎委員 原則としては許すけれども、しかしそういう預金の横流れなどが起る可能性が多いから、そういう場合においてはとめますか。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りであります。
  33. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、問題はきわめて重大な要素を含んで来るのでありまするが、東京銀行だけに発行させて、そして将来原則としては許すけれども、弊害が多くなるような場合も考慮されるから、従つてそういうときには抑制するというので、現に抑制をしておるような事実はありませんか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 抑制はいたしておりません。ただ東京銀行は初め二十億円の発行計画としておりました。しかし当初ではありますし、一度に二十億はいかがなものか、まず十億円くらいで一応やつたらどうかという私の意見は言つたことがあります。従つて東京銀行は十億円を出しておるのでありますが、情勢によりまして今後出すようなことがありましよう。また他の銀行でも計画をしておるやに聞いております。
  35. 川崎秀二

    川崎委員 興業銀行が今まで発行しておつたものに対して、大蔵省のある課長が行つて、利率の関係がら興業銀行の発行しておるのをやめてくれということを申し入れたというような事実はありませんか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことを耳にいたしましたから、現にとめております。そう言つてはいかぬというので……。
  37. 川崎秀二

    川崎委員 そういうことを言つたことはあるわけですか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 だれがどういう言葉で言つたか知りませんが、そういうことを銀行局から指示したとかいうふうなことを聞きましたから、そういうことはよくない、一応銀行の意見を聞いて、やるというものならやらしてもいいじやないか、こう私は係の者に言つております。
  39. 川崎秀二

    川崎委員 これはきわめて重大な問題であつて、大蔵省は権利とかなんとかいう立場ではないでしようが、しかしながら、そういうようなことを抑制するようなことになると、やはり何といつて影響が甚大であります。従つてそういう御注意があつたことはいいけれども、そういうことを言つて行くということは、私はまつたく本筋を忘れておると思うのでありまして、これは今後嚴重に御注意あつてしかるべきだと思います。  それからこの金融債の発行に関して最も重大な問題は、市中銀行を純粹の商業銀行にしようというのが、今日までの政府方針であつたように、われわれは聞いておるわけであります。しかしてドツジ氏もそういうようなことを強く示唆しておつたと思うのでありますが、ドツジ・ラインの構想もそこにあつたとすれば、今後この社債にもひとしいような金融債を市中銀行が持つということは、私は邪道ではないかと考えるのです。世界金融債を発行としているところの商業銀行は、何でもスイスの山の中にたつた一つしかないというようなことを聞いておるが、商業銀行が続々とこの金融債を発行するようなことになれば、これは世界の非常なもの笑いになりはしないかと考えるのですが、大蔵大臣はどういうお考えでございましようか、この点についてお伺いしたいと思うのであります。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、金融債というものが一年程度のものならば、一つの定期預金の変形のように考えて行くべきではないかと思つております。銀行制度自体として、今の全部の銀行が普通銀行という形でやつております。しかして昔の特殊銀行が普通銀行か特殊銀行かわからぬような形で行つている。この制度でいいか惡いかということは検討を要する問題でありますが、一年の短期の金融債というのは、定期預金の変形のように考えていいのではないか、こう思つておるのであります。
  41. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど金融債の発行の問題について、預金が移動する、またその弊害が起つて来るということを指摘されたと思うのでありますが、私はその傾向は非常に多くなつて行くと思うのであります。だから今日各銀行は一齊に反対をしておる。地方銀行の大部分というものも反対をしておる。日本銀行の当事者ももとより反対しておりまするし、日銀政策委員会も反対しておる。銀行の総元締めであるところの日本銀行、その金融政策を取扱つておるところの政策委員会、こういう一連のものが本質的に反対をしておることを強行するということは、非常な無理が起つて来るのではないか。また一般の銀行、地方銀行等が反対をすることまで、あなたが押し切つて断行されるということになると、今後この大蔵当局金融界との関係というものは、うまく歯車が合つて行かないのではないかと考えるのであります。その点に対するところのあなたのお考えを承つておきたいと思うのであります。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げましたように、私は今の情勢としては短期の金融債、定期預金にかかわるべきようなものの金融債は、さしつかえないという考えでおるのであります。日銀総裁ともこの問題につきまして話をいたしまして、日銀総裁は反対をいたしておりません。いろいろな議論がありますが、私は長い目で見に行けば、資本蓄積その他の関係からいつて、適当なる方法思つております。     〔委員長退席、西村(久)委員長代   理着席〕
  43. 川崎秀二

    川崎委員 日銀総裁は反対をしておらなかつたというけれども、日銀総裁は賛成しなかつたのじやないのですか。現に日銀総裁はアメリカへ行つてつて、そうして何でも聞くところによると、あなたの考え方というものに対して賛成を與えないまま、アメリカへ行つたようにも聞いておる。この点についての真相を聞かせてください。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀総裁の意見によつて私がどうこうするわけのものでももちろんございません。ただそれが話題に上りましたときに、時期がどうだろうかというふうなことを言つておりましたが、私はこの資本の蓄積というものは急ぐものであるし、そういうものが、事柄自体がいいとなれば、何も一日、二月を待つ必要はない。やつて行く。日銀総裁は根本的にこういうものは反対だということは言つておりません。
  45. 川崎秀二

    川崎委員 根本的に反対ではないけれども、その実施については、当然この日銀というものについて非常な関連性を持つて来るものである。それが留守中に断行されておるということについては、相当一般は妙な考え方を持つて来ると私は思う。昨年末オーバー・ローンの問題にしても、あるいは財政金融の調和の問題にしても、あなたと日本銀行あるいは銀行関係というものは完全に歯車が合つて、うまく回転をして行くように思わない。目下財政経済政策の中心は金融政策にあるのでありますから、従つて大蔵大臣は、それは日本銀行の総裁の意見によつて自分の言説をかえるということはできないでしよう。またあつてはならないと思う。しかしそういうものはやはり調和がとれて行くならば、今日の日本経済にとつて仕合せはこれほど大きなものは私はないと思う。うまく行くことを心がけないで、方々で衝突をするというような事態が起つて来ると、財政金融政策というものはうまく行かぬ。これは火を見るよりも明らかでありましよう。あなたの強引な政策というものが非常に響いておる。外に対しては非常に自主性のない、ひざを屈した政策をしておるが、内へ帰れば非常な強引な政策をする、こういうことではうまく行かないのではないか、しかも裏面に何かあつたか知らないけれども、もしこれが一つの銀行の救済策であるということになるならば、これは金融界に摩察を生ずるだけではありません。政界にとつてもこれは非常に重大な問題になつて来ます。そういうようなことはありませんか。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 何も日銀あるいは金融界と歯車の合わぬというふうなことはございません。十億円発行することにつきましても、金融界の相当の人はけつこうでしようと賛成をしておるのであります。あなたのお話のように、非常に摩擦が多いというようなことは私はないと思います。
  47. 川崎秀二

    川崎委員 最後答弁をしてください。そういう一銀行の救済策であるという非難があるけれども、そういうことは断じて裏面においてもないかどうか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 一銀行の救済策、そういう考えは持つていないのであります。私はこういうようにすることが、資金の蓄積その他いろいろな点から考えて適当であるというような信念で行つておるのであります。建前もそういう建前になつております。
  49. 川崎秀二

    川崎委員 金融債の問題は、今予算委員会に初めて提起されたばかりでありますけれども、しかしながらこの国会を通じての、相当重大な問題になつて来るということを想起いたしております。従つて今後十分にこの誤解を解かれるために努力されると同時に、もしこれが東京銀行という預金の少い銀行についての單なる救済策であるというようなことが天下に明らかになつて来るときは、あなたの政治責任はきわめて重大なる問題になつて来ると思います。しこうして先ほどの私の質問の途上にはつきりわかつたことは、銀行課長がそういうこうを言つたことの事実があるということが出て来ていることであります。これはきわめて重大なことであります。興業銀行の債券というものに対して発行を押えようとしたり、あるいは聞くところによると、勧銀の債券発行というものに対して、そういうことをするなということを言われたという風説もある。なかなかこの問題は、私は重大な要素を将来にはらんで来ると思うのであります。しかし質問をこの問題にばかり固定しているわけに行きませんので先へ参ります。  目下輸出振興のために重要な要素になつておりまする輸出銀行は、初めはもとより輸出の振興を目途として創設されたものである。しかしながらその後輸出の活況、一方輸入の不振につれまして、当然輸入をも考慮する銀行としなければならぬという意見が相当出ております。民主党も前の国会において修正案を提出した際において、輸出入銀行として輸出輸入ともにこれを振興をさせなければならぬという見地から、修正案を提出したことがあります。しかるところ、この一月の初めごろでありましたか、自由党の根本政調会長は、輸出銀行だけでは足りない。どうしても輸出入銀行にまで拡大をすべきであるという意見を持つているようでありますが、これについて最近の状態について、また大蔵大臣考え方についてお伺いをしたいと思います。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 誤解があつてはなりませんので申し上げておきますが、大蔵省の銀行課長が、短期債券を発行するなというようなことは言つたことはないそうであります。その発行について相談をした当時、私もそういうことを聞きましたから、銀行に対しまして私の意見としてそういう話があつたそうだが、大蔵大臣としては、何ら短期債発行の制限をするつもりはないのであるから、誤解のないようにということを、勧業銀行の総裁か副総裁かに電話で話したことはあります。大蔵省の意見としては何もそういうものをさしとめる意思はありません。
  51. 川崎秀二

    川崎委員 ちよつと輸出銀行の問題はあとにして、先はど答弁されたところによると、興銀の方に対してはそういうようなうわさを聞いた。そういうことがあつた従つてそういうことがあつてはならなぬということを、あなたから申しておいた。こういうことであつたのでありますが、今の話は違いますかどうか。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 その発行するな、してはいかぬという……。
  53. 川崎秀二

    川崎委員 発行してるやつでしよう。
  54. 西村久之

    西村(久)委員長代理 川崎君、よく聞いてから発言してください。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行課長かたれか銀行局の職員が、発行してはいかぬということを言つたのじやないそうです。発行についての意見を徴した、あるいはこちらの意見をよほど愼重にしなければならぬということだつたそうであります。ところが私の耳にはそういう問題が否定的なような、あるいは発行が好ましくないということが、銀行局の意見としてあるということを聞いたので、それはとんでもないことだ、自分はそういう考えは持つていないということを当時勧業銀行の方にも言つてつたのであります。
  56. 川崎秀二

    川崎委員 今のことはどうも興銀と勧銀の場合とごつちやになつておるような気がするのですが、興銀の場合について言われたことを、勧銀にもあなたは何か電話で言われたというのだが、興銀の場合にはそういうような事実があつたのではないのですか。銀行課長が一月の二十何日かに言つたということを私は現に聞いておるのです。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕 現に相当な資料も持つておるのでありますが、これは証拠資料というものではありませんから、従つて議論は、そういうようなことがあつたかどうかということをお話しているわけです。先ほど言つたこととかわつて来るということは困りますが、実際問題としては興銀にはそういうことを言つたじやないですか。勧銀には、勧銀が発行しようとしたことを押えようとしたことの事実はない、とこういう意味じやないですか、どうなんですか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたは、銀行課長が発行してはいかぬ、こう言つたとおつしやいますが、そこまでは言つていないのです。それを私は言つておるのであります。具体的の問題は銀行局長がおりますから答弁させます。
  58. 舟山正吉

    舟山政府委員 勧業銀行ないし興業銀行に対して、短期債の発行をするなと申し上げたことはないのであります。興銀の短期債発行の問題が公表せられますと、金融界からはこれに反対する声が相当起つたわけです。そこで大蔵省としましては、金融の運行が円滑に参りますように考えまして、勧業銀行及び興業銀行については、元来長期債でありますが、長期債は今後預金部も引受けることになるわけでありまして、そういうふうに政府の特殊の恩惠にも浴することであるから、今すぐに短期債発行計画等を立てまして、この上にも他の銀行を刺激するようなことは適当ではないのではないかということを私どもの考えとして持ちまして、そして勧興両行の方ともそういう意見の交換をした程度であります。
  59. 川崎秀二

    川崎委員 これは大蔵大臣の先ほど一番先に言明されたことと、まただんだん議論がかわつて来まして、私はどちらをほんとうに信用してよいのか知らぬけれども、しかし現に銀行関係のことを処理されておるところの舟山さんの言われておることの方が正しいと思います。しかしこれは世上に多大の疑惑を持たれておる問題である。大蔵大臣がうかつであるかどうかは知らぬけれども、とにかくそういうことを言つたことがあるから、それはやめさせたのだということを最初に言われたということは、そういう要素があることを示唆しておると私は思いますので、これは今後相当重大な問題になつて来ると思います。でありますけれども、ほかの問題について実質的に伺いたいから、議論をほかの点に発展させて行きたいと思います。輸出銀行と輸出入銀行の構想について伺いたい。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 日本輸出銀行を改組して、日本輸出入銀行にしたらどうかという意見は各方面にあるのであります。私は検討を加えておりますが、何分にも御承知の通り、今年度五十億円、来年度百億円でございます。本年反大体五十億円は相当部分を使うことになると思いますが、来年度におきまして、百億円余りの金で輸出入というところまで行けるかどうか。それで何といつて資金は少いのでありますから、別個に日本開発銀行ともいうべきものを設けて、輸入に当らすとか、あるいはまた外貨が相当ありますので、特殊物資の輸入の特別会計、これの方で輸入の促進をはかつた方が、実際に合うのではないかという考えを持つておるのであります。しかし輸出入銀行はいかぬという結論には至つておりません。
  61. 川崎秀二

    川崎委員 今のことを聞いておりますると、目下の段階では輸出銀行として発足をしたものであるから、従つて内容的にもそれで行つた方がいいのだというお話でありましたが、しかし輸出入銀行が将来考えられないことでもないというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 開発銀行その他と関連して考えなければならぬということであります。それとまた回転基金の二十五億円の出資がございますから、これの借入金制度を認めてどんどん輸出をやつて行けば、今ただちに輸出銀行を輸出入銀行にかえる必要もないのではないかということであります。
  63. 川崎秀二

    川崎委員 外貨の手持ちについては世上非常な議論がございます。これを遊ばしておるということは、今日の状態において非常に適しておらないということで、五億ドルに近いところの外貨予算内容については、世上非常に注目をしておるのでありまするが、この際これを発表していただくことができますか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 今関係方面と数字をつき合せておりますから、いずれ一両日のうちにはお配りできると思います。大体五億ドルちよつと越えております。
  65. 川崎秀二

    川崎委員 ここでちよつと違う問題をはさんでお聞きしておきたい点があります。それはタバコ民営の問題です。タバコ民営の問題については、大蔵大臣は今までの方針で民営を断行しようという気持を今日も持つておられるものでありますが、どうですか。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 タバコの民営につきましては、審議会を設けまして審議し、最近答申が出ることと思つておりまするが、民営の方法につきましても、全部民営にするとか、あるいは耕作はやはり今まで通りで製造だけ民営にするとか、いろいろな形式があるのであります。私は答申を見まして検討して行きたいという考えであります。
  67. 川崎秀二

    川崎委員 去る一月二十九日、臨時專売事業協議会というものがありまして、それが答申案をつくることになつておるようでありますが、その席上で行われたところの議論によると、タバコの民営というものは断行すべきものだという意見が非常に強かつたというようなことも聞いております。しかし一体その内容でもし将来この協議会がタバコ民営を断行せよということの答申をした場合には、政府はこれを尊重して断行するのですか、しないのですか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 一月二十九日の会議の空気は私聞いておりませんが、タバコ民営についての審議会がございまして、そこで議論を鬪わせたところによると、相半ばというような状況であると聞いております。これは重大な問題でありますから、愼重に考えなければならぬと思つております。
  69. 川崎秀二

    川崎委員 その審議会の内容についてあなたは知らないと言うのですが、どなたか知つておられる方はありませんか、政府委員はおらないのですか。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 後ほどまた……。
  71. 川崎秀二

    川崎委員 この問題についてはひとり耕作者だけでなしに、国民の中にも、はたして民営に移して実際にタバコが安くなるか、またうまくなるかということについて非常に懸念をいたしております。ただ民間の事業にさえ移せばよい。——これは自由党本来の政策でありましようけれども、吉田総理大臣が一昨年来これを言つておるから断行しなければならないとか、あるいは池田大蔵大臣考え方がそういうふうに傾いておるからとか、今までの行きがかり上断行しようということであれば、私は非常な波紋を投げかけると思う。ことに專売益金千百三十八億の問題などにつきましても、国家の予算関連をいたしまして、非常な重大な問題となつて来るのでありますから、その点については十分考慮をして進まれんことを、この際切に要望をいたしておきたいと思うのであります。  次に私は現下の財政経済政策の中心ともいうべき輸入の促連に関しまして、私見を交えつつ質問をいたしたいと思うのであります。経済自立達成の過程におきまして、目下最大の問題が輸入にあるということは言をまちません。ことに世界的な軍備拡張の傾向を反映しまして、各国は戰略物資の獲得はもちろん、各種の主要物資の獲得を競う一方、供給国側にも今後の値上りを見越して、売惜しみのけはいが相当高まつて来ておると思うのであります。そこでこの点に関しましては、ひとつ安本長官から伺いたいと思うのでありまするが、昨年来国際市場は朝鮮動乱を契機として、非常に大幅な急上昇を示して、現在日本の買入れ価格についても、ニツケルは十倍になつておる。また生ゴムは三倍、羊毛は二倍、以下大小の差はありますが、軒並に値上りを見せております。アメリカは言うに及ばず、イギリスその他においても、植民地のゴムあるいはすずなどの戰略物資の確保を急いでおる。それから先ほど自主性の問題で申し上げましたように、ドイツは非常に先手を打つて、そうして現に朝鮮動乱直後、明確に入超主義を建前として、これまでの輸入月額平均が一億六、七千万ドルであつたやつを、昨年の七月以降は二億ドル以上に引上げられております。それから十月には三億一千二百万ドル、差引九千八百万ドルの入超実績をドイツでは收めておる。しかるに日本では、昨年四月の九千万ドルを頂点に、その後はだんだんだんだん下つて来て、七月以降は非常な出超に転じておる。それから十月以降は八千万ドル、九千万ドル、一億ドルというふうに十二月までしり上りになつて来ておりますが、これは例年十月以降は綿花、羊毛、小麦、米というようなものの買付で入超になることは当然であります。しかるに本年の輸入をあなたは十五億ドルというふうに見積りをされておりますけれども、こういう状態で、はたしてその確保ができるかどうかということについて、少しく今までよりも具体的に説明をいたしていただきたいと思うのであります。本年十五億ドルの輸入の確保ということができるか。これに関連して資金計画なども御発表願えれば仕合せです。
  72. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えいたします。輸入関係が昨年四月を契機として五、六、七、八月ぐらいまで少し減じましたことはお話通りであります。しかしその後におきましては、九、十、十一、十二とまたずつとしり上りになりまして、十二月はまだ最後の集計には至りませんが、円での通貨にいたしましたものを略算いたしますと、約一億二千万ドルになります。十一月には約九千万ドルという形に伸びて来ております。ことしの二十五年度の目標十一億ドルはおそらく越えるのではないかという形に考えております。
  73. 川崎秀二

    川崎委員 援助物資を入れて十一億ドルですか。
  74. 周東英雄

    ○周東国務大臣 そうです。従つて今後の処置であります。私どももお話通り、今の状態といたして、国際情勢のもとに、外国だけが買いあさつていて、日本は売るばかりでは困ると思います。輸出の伸びておることは一面において非常に喜ばしい現象でありますが、他面輸入がこれに追随しなければ、輸出を続けて行くこともできず、また日本経済に及ぼす影響が重大でありますので、輸出には極力手を盡しておるわけで、従つて七月以降は、いつかも申し上げましたが、まず第一に輸入外貨資金の効率運用ということを目ざしまして、実は毎四半期大体五億ドル前後の許可をいたして進んでおります。従来は約一億五、六千万ドルでありましたが、それを大幅に引上げて許可いたしております。このことも実は今の国際情勢に備えたのでありまして、従来は四半期ごとの輸出の受取勘定を目当にいたしまして、輸入を許可しておつたというような非常に時宜に適さぬことでありましたので、大きく先の輸出から受取る勘定を頭に入れて、先物契約を認めるということ、並びに従来の一々の国においての割当をやめて、百二十五、六品目にわたるものについては、大きく自動許可制を広げまして、どこの国からでも早く手をつけて、買うようにという方法をとりましたこと、それからバーター地域につきましては、できるだけドル決済を認めさせるようにいたしました。これも大体了解がつきました。こういう関係、並びにポンド地域におけるポンドの協定が昨年まで五千万ポンドでありますが、これからは輸出入おのおの八千万ポンドまで拡張いたしました。その他ユーザンスの問題については御承知の通りでありますが、これをもう少し伸ばしたいと思つております。目下の状態は、先ほどお話になつた羊毛のごときは、実は去年よりよけい買付は終つておりまして、これはできるだけ早く船の準備ができれば持つて来たいと思つております。原綿等はおそらく去年の輸入計画数よりも上まわると思います。これは結局最終におきまして船の問題になつて、船に集中いたしておりますことは御承知の通りであります。食糧につきましては、これはやや予定の輸入よりは減るかと思います。変更いたしました輸入計画は本年度——二十五年度は三百二十万トンくらいでありますが、いろいろの情勢で十二月末までは百七十万トンぐらいしか入つておりません。しかし一—三月におきまして、おそらく大体の買付見込みのところを寄せまして、二百七十万トン以上になると思います。最近先ほど申しましたバーターの地域のドル決済を認めるということになりましたので、もう少し上まわつて三百万トン近くにはなるのではないかと思つております。
  75. 川崎秀二

    川崎委員 今最後に申しました資金計画はいかがですか。
  76. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはこの前申し上げた通り、来年度の計画につきましては、まだ少し変動がありますので、次の機会に御説明したいと思います。
  77. 川崎秀二

    川崎委員 大体の数字も出ませんか。と申しますのは、長期資金計画の内容が発表されないと、議論の立て方が非常に困難になつて来るのであります、予算の審議をして行く上に非常な支障があります。御承知のように経済安定本部というものは、経済計画をするところであつて、決して説明をしたり報告を求めるところではない。先般安定本長官の施政方針の演説を聞いておると、実に経済内容について詳しく説明され、非常に頭脳明晰なるところを示されまして、敬服したのでありますが、しかしあれは説明本部長官とも称すべきものであつて政策あるいは長期資本計画、こういうものがなければ、われわれは安本長官としての役割には非常に寸足らずではないかというふうに感じたのです。今までも安本長官の演説は、たとえば片山内閣におけるところの和田氏にしても、あるいは芦田内閣のときの栗栖さんにしても、主として長期資金計画というものを一つの軸にして話をされておつたようであります。いまだにその資金計画ができないということけ非常に残念であります。何かお手元に大体のものが出て来たようにも思いますけれども、この際ひとつ御発表を願いたいと思います。
  78. 周東英雄

    ○周東国務大臣 資金計画の面ができなければ、産業計画の裏づけができぬというこうとはお話通りであります。大体は持つておりますが、これはざつくばらんに申しまして、いろいろ変動が起ると思いますので、一応今日見ました範囲において計画を立てておるということだけを御承知願つておきます。二十六年度についての財政資金の面からいたしますと、これはおそらく今の見込みでは対民間関係におきまして、收支はとんとんくらいになると見込まれます。今日の計算では一応引揚げ超二十二倍くらいになるのではないかということで、大体対民間收支はとんとんに行くだろうと思います。その内訳としてごく概略ですが、見返り資金勘定におきましては、約二百二十六億揚超、それから預金部は約二百三十億程度の支拂超、外国為替関係が二百三十億というような見込みです。金融機関勘定といたしましては、大体一般預金の増が来年度は三千億を超えるだろうと思います。この点はもう少し変化が起ると思いますが一応お聞き願つておきます。預金の増はもう少し上まわるだろうと見込みでございます。さように御承知を願います。それから預余部の預託金は大体なし。国債償還関係は、これも大体なし。金融関係におきまして個人及び預金部関係を合せて大体四百六十億ないし五百億見当と思いますが、これも多少異動があると思います。それから政府出資関係は百億程度。雑勘定関係も一応五百億程度見込んでおりますが、これがいろいろな関係でふえるのじやなかろうかと思つております。一応五百億と踏んでおります。それから日銀信用関係、これは大体二百十八億、これは借入金が、国償償還を寄せてであります。従つて金融機関勘定においての資金が大体四千三百億程度、こういうふうに思つております。これに対して支出関係が貸出し関係において約三千八百億程度。それから株式及び社債に三百九十億、かように考えております。通貨の増発がこれによつて大体来年度末に二百億前後。従つて日銀の発券高が四千二、三百億程度になるのじやなかろうか、かように思つております。こういう関係に立つことを前提といたしまして、大体産業資金に対する供給見込みというものを考えておりますが、これに対して大体企業の自己資金というものは社内留保、減価償却等を見まして、合計千六百二十一億くらい、大体千六百億程度。それから外部資金として株式社債、見返り資金、その他政府資金と一般金融機関の資金というようなものを合せまして、大体四千九百億程度従つてこれらを合せて産業資金供給見込みを、大体二十六年度は六千五百億程度、かように考えております。
  79. 川崎秀二

    川崎委員 今説明があつたばかりで、これについての批判ないし質問ということは、またあとまわしにさしてもらいたいと思います。  ただいまの資金計画の前にお話になつた輸入が大体確保できる、ことに羊毛の例をお取上げになられて、大体において昨年以上のものを確保できる、買付もすでに済んでいるのだというようなお話でありました。しかしながら実際においてこれを達成するということについては、当然船腹の問題が上つて来ます。これば御答弁の中にもありました。しかるに現在、船腹の増強政策というものは、昨日も参議院の本会議において外航配船というものを急速に充実しろという決議案まで出ておる次第でありまして、第一次造船計画から第六次造船計画に至るまでの経過を見ますると、海運界の要望しておるところのものに対して、大体三分の一以下の造船しかできておらないじやないか。こういうような状態では、はたして今申されておるようなものが実施できるかということについて、私は非常な懸念を持つのであります。従つて船腹増強政策については、これは運輸大臣に伺うべきものですが、安本としてはどういうふうな考えをされて進められておるか伺つておきたいと思います。
  80. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところ来年度の重要物資輸入の、大体五〇%くらいを自国船で運ぶというようら目標のもとに自国船の増強政策を立てております。これに対しましては、第六次造船については一応資金計画として完了しておりますが、これに対して第七次造船に対する金融考えて、これもぜひとも強行いたすべく今準備をいたしております。かくすることによつて大体二十六度内には三十二、三万トンの新船の増を計画しております。しかしお話のようにこれだけでは足らないので、ただいま沈船の引揚げ、あるいはA型等の戰時標準型の船舶の改造につきまして大体十万トン、沈船引揚げ十万トンという計画で、具体的にこれはねらいをつけております。その他につきましては、外国船の用船並びに買船について今努力を継続中であります。民間買船につきましては、すでに三、四万トン契約は終つておるように聞いております。いずれにいたしましても、この目標のもとに進めることによつて、大体二十五年度の輸入につきましては確保できると考えております。問題は、二十六年度については一面努力いたしておりますが、用船等の関係が迅速に進むということができれば心配はない、かように考えております。
  81. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際安本長官に申し上げますが、先ほど川崎君の要求のございました資金計画でありますが、これはお話のように動く要素を含んでおりましようが、本委員会としてきわめて重要な資料と存じますから、至急に刷りものにして御配付を願いたいと存じます。
  82. 周東英雄

    ○周東国務大臣 承知しました。
  83. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまのお話は、昭和二十六年度の造船船腹の確保に対してやや自信のないような面持であつたように私は受取つたのです。そこで問題は船腹増強の問題に関連して、やはり金融というものが非常に重大な問題になつて来ると思う。現在実際問題として造船能力というものは、日本には私は相当あると思う。日本はほとんどあらゆるものが破壊されておりますが、造船能力は現に相当あると思います。これに対しては金融の道さえつくならば、船腹の増強は十分に果し得るのではないかというふうに感ずるのですが、こういう問題について基本的な考え方大蔵大臣から伺いたいと思います。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 船腹の増強につきましては、昭和二十四年度以来相当の金を出しておるのであります。二十四年度では八十四億円見返り資金から出ました。そうして七十二隻、五十万トン近くを計画いたしております。今年度におきましては百三十五億円で、二十四年度の完成の費用と、そうして第六次造船の二十万トンを計画し、もうその緒についたのであります。しこうして来年度におきましては見返り資金から大体百十五億円の計画をいたしております。百十五億円と申しますと、第六次造船の二十万トン余りの分に五十数億円かかりました。そこで、来年度百十五億円の見返り資金では六十一億円しかないので、二十万トンもつくれない、十万トン程度しかつくれない、こういうことになります。運輸省の方では四十万トンの新造船をやりたいということでありますが、日本の造船能力から申しまして、第六次造船四十万トンはちよつとむずかしいのではないか、まあできるだけつくりたいというので計画はしておりますが、今のところ第七次造船を早急に始めたらどうか、六十一億円の来年度の予算で着手だけしてみよう、そうして完成に対する分は、あとから金融のことを考えるというので、早急に第七次造船の計画を今進めております。これが大体二十万トン、それから改造二十隻であります。別個に私は先ほど話がありましたA型船の戰標船、これの改造に力を注いだらどうか、これに大体二十隻ばかりで三十億円程度いるのでありますが、これはどうも銀行の方であまり船にばかり金を出すというのは好まぬような気風がありますので、今勧奨はいたしておりますが、要すれば見返り資金の方からでも改造の方にも出すような方法を講じて行つたらどうか、こういうふうな計画をいたしております。何分にも早急に船腹の増強が必要でありますので、私はできれば今の買船、用船という方向にも力を注いで行きたい、今買船の方も民間の方で三、四十隻の計画も進んでおるようであります。とにかくあらゆる施策が船腹の増強に向けられなければならぬというので、金融につきましても先ほど申し上げました第七次造船を早急にやる、そのための分も預金部の金を使う、あるいは改造には今まで見返り資金は出ておりませんが、見返り資金からある程度出せば銀行も貸しいい。そういうような方向で考えております。できるだけ金融の措置をつけて行く、こういうことであります。
  85. 川崎秀二

    川崎委員 従来までの船腹の増強政策については、非常に考慮を拂つておられたでしようけれども、実際には私は効果が上つておらないと思う。ただ、今の御答弁は、本日の大蔵大臣答弁の中では、最もまじめな答弁であつて、第七次造船は近く着手する、いろいろ言われておりまするから、そのことを信用しておきます。  そこで船腹増強とかあるいはまた海事のいろいろな問題について、最近では海事金融公庫をつくつたらどうか、あるいは海事金融制度を確立したらどうかというようなことを、運輸省方面では要望しておるようでありますが、こういう問題についてはどうですか。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 事が起りますとすぐ何々金融公庫、何々銀行と言うのでありますが、御承知の通りにおととしまでは、今の政府が半分持つてやるというようなことで、公団でやつてつたのでありますが、あまりうまく行きません。私はそれよりも見返り資金、預金部資金をひもつきで運用し、そうして民間銀行もこれにタイアツプして行く、これが一番動きやすいのではないかと考えております。従いまして海事金融公庫、海事金融銀行といつた新しい機関を今設けることについては考えておりません。
  87. 川崎秀二

    川崎委員 まだまだお伺いしたい点がありますけれども、時間の関係もありますので、午後に讓りたいと思いますが、午後は主として労働大臣、厚生大臣並びに農林大臣にお伺いをいたしますので、締めくくりとしまして、先般来経済の再統制問題について、安本長官は衆参両本会議で思想をはつきり申されておるので、大体私も同じような考えを実は持つております。統制は元来好むべきものではありませんけれども、世界的な風潮からいたしまして、重要物資についての経済の再統制ということは、私は必至であろうと思います。これはやはり好むと好まざるとにかかわらず、行われなければならないような状態に立ち至つておるのでありますが、本質的にいいまして、世界経済機構というものは、最近朝鮮動乱が起つたから計画的な経済が必要だということではなくして、すでにアメリカにおいては二ユー・デイールの政策がとられ、ヨーロツパの諸国はことごとくの計画的な経済において自国の国民生活の向上並びに資源の確保に努力をしておると思うのであります。世界経済の動向というものについては、やはり今後は総合的な大わくのもとで、個人の自由なる経済活動、経済の自由を認めるべきであると私は思う。そういう考え方でなければならぬ。裏返しにしていえば、まさに経済の原則は自由でございます。しかし今日以後は公共の福祉のために、計画的経済を断行するの比重がだんだん強くなつて来ておる。これは世界経済の流れでありまして、たまたま朝鮮動乱が起つて、アメリカを初め各国の軍備拡張競争によつて、いよいよその必要性は唱えなれて来たのではありますけれども、それ以前において、そういうふうに世界的な傾向が流れておると私は思う。従つて池田財政あるいは自由党内閣に現われておるような、ただ統制を撤廃すればいいというような考え方で、今日まで来たことについての大きな反省を現内閣はしなければならぬ段階に到達をしておるのではないかと思うのであります。私は安本長官の思想というものは、やや池田蔵相の考え方とは違つておるとにらんでおる。これはもう間違いない。しかし今後経済統制を受くる状態に立ち至るのは必至なことを考えますと、こういう考え方をもつて今日以後臨んで参らないと、随所に破綻を露出して来るのではないかというふうに感ずるのであります。従つて経済再統制の今日の必要性だけではございません。経済に関する原則論について安本長官のお考えをこの際最後にお伺いをいたしまして、私の午前中の質問を終ることといたします。
  88. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えをいたします。経済の基本原則について大蔵大臣と私と意見が違うのじやないかというお話なのですが、これはまつた意見は違つておらないのであります。今日自由党はもとより、現政府は、統一ある意識のもとに進んでおることをまず申し上げておきたいと思います。しこうして今お話になりました朝鮮動乱を機にして、かわるかわらぬの前に、世界は別の意味においてかわつておるのじやないかというお話ですが、私は日本経済の推進に対しては、日本の国における国情をもとにして考えたいのでありまして、日本が敗戰の結果打碎かれた、この日本経済を復興するという建前において、その意味におきましても、まず私どもは総合的にすべての日本経済の、各産業部門の間における片ちんばにならざる調整ある形に物価を持つて行きたいということで、経済自立審議会を興し、総合的な調整計画を立てたのであります。この意味においてわれわれが行くべき道として、総合的な計画を立つべきであるということについては同感でありまして、わが党政府もその趣旨によつて計画を立てたのであります。具体的な今日の問題につきましては、お話のように世界各国において、重要資源について割当制が行われるかもしれぬという情勢のもとにおいて、そういう物資等につきまして、用途使用制限等の起ることは当然であると考えております。
  89. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際井出一太郎君から関連質問を求められております。一問に限つてこれを許します。井出一太郎君。
  90. 井出一太郎

    ○井出委員 先ほど川崎君の質問に対して、大蔵大臣銀行局長の御意見が若干食い違つておるように承つたのであります。この機会に誤解を生ずるといけませんから、統一した御答弁を大臣から伺つておきたいと思います。川崎君の質問によりますれば、興銀の短期債発行について銀行局の一係官がこれを抑制するような事実があつたようであるが、これを大臣は承知しておるか、こういう御質問に対して、そういうことを耳にしたが、それはよくないことであるからさしとめるように手配した、これは一応大臣としての価値判断が加わつて、それはよくないことだ、こういう認識のもとに、さような行為に出られたようであります。しかるに舟山局長の御意見によりますと、興銀とか勧銀とか、本来長期債を主として行くべき銀行が、短期債に向うということはおもしろくないから、そういう点について銀行当局と協議をしたのだ。これはきわめて客観的な單なる事実だ、こう私は受取るのでございます。この点どつちがほんとうなのか、はつきり承つておきたいと思います。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 結論から申し上げますると、勧業銀行あるいは興業銀行が短期債を出すということにつきまして反対はないのであります。ただ金融界の情勢その他を考えて、適当にやつてもらいたい、これが結論であります。
  92. 井出一太郎

    ○井出委員 つまりそうしますと、大臣は、それはよくないからと、こういうふうな考え方ではなくて、むしろ舟山さんの言われたのが真相である、従つて先に言われた大臣の前言は取消された、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 私は興銀、勧銀に抑制するような言動があつたということを聞きましたから、それはよくないというので、係官にそういうことを言つてはいかぬ、こう言つたのであります。抑制するような言葉というのがあるいはとめたというふうにとれるか、あるいは抑制する意味において相談したということか、いずれでもよろしゆうございますが、結論は今言つたように、そういう銀行が出してもさしつかえないというのであります。
  94. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時から再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  95. 西村久之

    西村(久)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  午前中の川崎君の質疑に対する答弁のため、大蔵当局及び專売公社関係政府委員より、それぞれ発言を求められておりまするから、この際これを聽取することにいたします。久米政府委員。
  96. 久米武文

    ○久米政府委員 午前中の川崎委員の御質問に対してお答えいたします。臨時專売制度協議会は、昭和二十四年七月十二日の閣議了解に基きまして、大蔵省の中に大蔵大臣の諮問機関として設置せられたものであります。專売事業の運営の方式等について、調査、審議させるということが協議会の目的でありまして、主としてタバコ民営の可否というふうな問題について諮問されておるのであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕 会の構成は、黒田会長のもとに十六名の委員がおりまして、この協議会といたしましては、昭和二十四年八月一日に第一回の会議を開きまして、爾来今日までに合計十回、その間に小委員会五回、合計十五回の会議を開いております。最近の会議は去る一月二十九日に第十回の会議を開いております。近く第十一回の協議会が開かれ、その席におきまして、最終的な報告書が審議されるということに相なろうと存じます。
  97. 川崎秀二

    川崎委員 大体協議会の内容につきましてはわかりました。ただ私が午前中御質問申し上げたのは、一月二十九日の協議会の大体の空気は、十八名の委員のうち、十七名までは、タバコ民営を断行せよと主張する者であつて、ただ一人だけ反対をしておつたという状況であつたと聞いておるのですが、それは事実でしようか。
  98. 久米武文

    ○久米政府委員 協議会といたしましては、従来タバコ民営に関する賛否の両論は、ほぼ相半ばしているように記憶いたしております。去る一月二十九日の協議会におきましても、現在の段階において民営をすみやかに行うべしというふうな結論は、決して多数を制してはおらなかつたというふうに了解いたしております。
  99. 川崎秀二

    川崎委員 もう一問だけ質問いたします。そこで非常に紛糾したように、今大体の経過としては受取れるのでありますが、何でも伝え聞くところによると、今月の十二日には協議会を開いて、そこでは最終的な決定をしよう、案を出そうというふうなところまで行つておるようにも聞いておりますが、それは事実ですか。
  100. 久米武文

    ○久米政府委員 今月十二日の協議会においては、最終報告書の原案が会長から付議されると思つております。
  101. 川崎秀二

    川崎委員 労働大臣の質問に入ります前に、私は資料として要求をすでにいたしておきました滯納の整理の状況でございますが、大蔵当局から数字をあげて御説明ください。
  102. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 それは詳しい数字の問題ですから、川崎委員のお手元に今日中に届くように御配慮を願うことにして、委員会には月曜日には必ず提出するようにしていただいたら、どうですか。
  103. 川崎秀二

    川崎委員 よろしゆうございます。  労働大臣にお伺いいたしたい点は、現下の産業形態と関連をいたしまして、雇用対策の基本的な構想についてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、その前に私は、現下最も国民が憂慮いたしておりまするのは、失業者の激増ということであります。昭和二十三年度から二十四年度、二十五年度になつて、だんだん失業者がふえて参つております。現にあなたのところで出しておるところのいわゆる労働白書というようなものを見ましても、こういう問題は明らかにされておるのでありまして、昭和二十四年度平均を三十八万とし、以後累増の一途をたどつて、去年の四月に五十万というような推定もされておるわけであります。最近における失業者の最も的確な数、完全失業の数、これを御発表いただきたいと思います。
  104. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。いろいろ総理府統計でやつております労働力調査、あすこに現われます完全失業者、この数字は昨年の前国会でも大分指摘せられたのでありますが、五十五万というたいへんな記録を出しておつたわけであります。その後四十六万、四十一万と累月逓減いたしまして、一番新しい十一月の調べによりますと、三十六万に落ちて参つております。全体の失業者の把握をいたしますのには、非常に困難を感じますけれども、比較的実態に近いと思われますのは、職業安定所の窓口から見ました数字が私どもとしてはともかくも当面の対策上の一番手近かな資料として用いるわけであります。  その数字は、昨年八月、これはすべての統計が大体において失業者の最高記録を出している月だと思います。それによりますと、常用の関係におきまして、職業安定所に来る求職希望者が約九十万、それが一月に至りまして七十二万九千というように減つて参りました。日雇いの関係で申しますと、有効登録と申しますか、登録者の数が昨年八月で四十七万あつたのでありますが、十一月に至りまして四十一万というようになつております。それに対しまして常用の関係で私ども非常に関心を拂つておりますのは、求人の関係、失業者の吸收をはかる求人の趨勢がどういうふうになつているかと申しますと、五月、六月ごろは十五、六万ぐらいの求人数であつた。それが八月には十九万、十一月には二十三万四千というような数を示して、かなり特需、あるいは貿易関係の産業において、たとえば紡績工業、金属工業、建設業、運輸業等におきまして、堅実な雇用増加の足取りをして参つております。日雇いの関係におきましても、これは民間求人の需要が起りますと同時に、またあわせて御協力をいただいております失業対策事業の拡充によりまして、日々出頭して参ります出頭労務者、それが八月は三十四万であつたのが、十一月は二十八万というように逆になつて参りまして、最も注意を拂うべき日雇い労務者の就労状況も、八月以降堅実な足取りで逐月上昇して参りまして、十一月には十九日を越し、十二月には二十日を上まわるという状態を呈しております。さらに常用の関係を見ますと、もう一つのポイントとして失業保險の給付関係から見ましても、八月は四十一万四千人というような相当の数を示しておつたのでありますが、十一月には三十三万八千人というように逓減して参つておりまして、逐月八月を頂点としまして、どの面におきましても、堅実な足取りで改善の方向に向つております。今日も依然としてその状況を続けておることと確信いたしております。
  105. 川崎秀二

    川崎委員 職を求めた者とか、あるいは職業安定所の窓口を通じての数字はわかつたのですが、私が御質問いたしておる点は、完全失業者というものは今日どれだけかということについて、労働省はどういうふうに捕捉をしておるかということなのです。その数字は今はつきり示されなかつたように思いますがどうでしよう。
  106. 保利茂

    ○保利国務大臣 完全失業者という言葉で表わされておりますのは、総理府統計の労働力調査に現われておるのが、完全失業者の数であります。それを用いておるわけであります。その趨勢は先ほど申し上げた通りであります。それだけが失業者であるかということは、これは実態に必ずしも沿わない。でありますから先ほど申しました職業安定所の窓口に参ります常用の求職者、これは比較的実態に近い、今お話のようなものではないかと思つております。しかしさらに失業者の中には、いわゆる不完全失業者というものがございますから、その辺の関係もまたあろうと思いますが、一応完全失業者というものはそういうふうに考えております。
  107. 川崎秀二

    川崎委員 私が今申し上げようとすることをあなたが先に言われたのです。労働省では失業者の定義というものを、最近では今までの考え方を少し改めて、「調査期間中、全然就業しなかつた者で、休業中の者を除いた者のうち、就業を希望し、かつ就業が可能であつて、求職運動をしておる者をいう、」こう書いておられるのでありまして、まつたく完全失業者に対するとこるの対策は、これだけのことに限定をするならば、失業の定義というものは、きわめて狹隘、嚴格ではなかろうかということを私は考えておつたので、むしろ質問は、もつと違う不完全就業の状態あるいは部分的失業の状態にあるところの者が、どのくらいの数であるかということを聞きたかつたのです。しかしその前に、いわゆる労働者のいう完全失業者の最近の数字はどうかということについては、何かさつき私聞き漏らしたのかもしれませんけれども、最近の統計がございましたらお聞かせ願いたい。
  108. 保利茂

    ○保利国務大臣 まだ私のところに十二月の集計が参つておりませんけれども、十一月の集計によりますと、完全失業者と正確に言えるかどうか。職業安定所に見えられまする常用求職者の中には、現在職業を持つておられる方も見えるわけでありますから、職業安定所の窓口に見える方が、すべて失業者であるというふうにはとれません。しかしながら、いわゆる転業、転職希望の方も含まれておりますけれども、これは比較的少いのじやないか、少いようでありますから、現実にどうしても職業を求めなければならないという状態に置かれ、そしてその機関を利用せられるという人が、完全失業者に近いのではないか。この数字が先ほど申します常用求職者、いわゆる完全失業者とは言えないと存じますけれどもこれが比較的実態に近い、今川崎さんの御質問の数になるのではないか。それが昨年の八月ころは全国で九十万人だつたのが、十一月には七十二万九千人という数字を示しております。
  109. 川崎秀二

    川崎委員 わかりました。先ほど来申し上げておりまするように、完全失業者というか、労働省の言う定義による以外の失業がだんだんに多くなつて来ておるということの方が、今日は非常に重大な問題なのであります。ことに潜在失業者の数が最近ではますます農村においても広がつておるのではないかと私は感じておるのでありまして、このことの傾向は、日本の現在の社会において、完全雇用政策というものがとられておらないということに、大きな原因があると思うのであります。失業対策の窮極の政策は、もちろん緊急失業対策もありましよう。それから失業保險による救済もあるでしよう。しかし結局は前の労働大臣が好んで使つた、窮極においては雇用政策の確立だ、雇用の増大が問題を決定するのだということを、私は正しく理解しなければならぬと思うのです。従つて現在以後において、一体労働大臣は財政の面における制約もあるだろうけれども、完全雇用を目途としたところの失業対策というものを推進して行くお考えがあるのかどうか。その点について明快なる雇用政策の基本理論でもお聞かせ願えば仕合せだと思います。
  110. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えします。ごもつともでございますが、同時にまた川島さんのお話にもありますように、結局わが国の失業問題の深刻性並びに複雑性というものは、先ほど来お話の、いわゆる完全失業者をさらに圧迫するところの背景をなしている不完全失業者と申しますか、これは的確に捕捉することは困難であると存じますけれども、いわゆる農村における過剩労働力、あるいは都市における不完全就業者、これらの相当大きな数が、日本の失業問題の深刻性、複雑性の背景をなしているものと思います。従いましてこの完全雇用への第一歩というものは、どうしてもこの不完全就業者と申しますか、過剰労力が健全産業内に吸收せられて、不完全就業者の就業状態が安定するということが、最も大事なことであろうと思います。その上から行きまして、今度安本を中心として計画せられておりますところの、いわゆる自立経済考え、その構想の中には、少くともこの構想達成のあかつきにおいては、これらの不完全就業者の就業状態が安定して、さらに完全失業者の減少の一歩をどうしても見出して行きたいということが、この計画の中に強く織り込まれているわけでありますから、私はこの自立計画が、どうか国民皆様の御協力を得て、目的を達成いたしたいということを念願しているわけでございます。
  111. 川崎秀二

    川崎委員 自立計画が国民の協力をもつて達成されなければならないということは、ごもつともであります。また今回審議会から答申されたところの案というものは、机上案ではありましようけれども、かなり総合計画性を持つたものであるというふうにわれわれは感じとつております。しかしながら内閣の労働行政を担当する方としては、自立経済計画の達成ももとよりであるけれども、現在の閣内におつて、いわゆる財政金融方面の相当者から、経済上の理由をもつて、あるいは財政上の理由をもつて、いろいろと制約されるということに対抗して、当然この完全雇用を目途としたところの労働政策というものがとられてしかるべきであると私は思う。これは決して日本だけが世界の例外にあつてはならないのであつて、第二次大戰後の世界の動向というものは、労働権の伸張とからんで、完全雇用政策を全世界が採用いたしておるのであります。ことに財政上非常な窮乏の状態にあるイギリスであるとか、あるいは西欧諸国においてさえ、かかる見解をとつておる。いわゆるケインズは、失業の状態を富裕の中の貧困という言葉でもつて言つておりまするが、これを事実富裕の中の富裕にしなければならぬ。しかるに日本ではまつたく富裕の中の貧困だけではなしに、貧困の中の窮迫というような現状が今日の状態であつて、こういうことを是正して行くにめに、労働大臣は閣内にあつて、働く者の立場をもつと強く代弁する必要があると私は思うのであります。私が先ほど来聞いておりますと、自立経済計画の達成ということに現在は目途を置いておるというのだけれども、それは労働大臣の立場からいえば、やはり完全雇用というものが将来の目標であつて、それを達成するために、もとより総合的な計画経済立場から、日本の今のような状態では、あるいは移民の問題をも含めて解決をしなければならぬかもしれません。しかし労働大臣としては一体どうなんですか。完全雇用というものがやはり一つの大きな理想であつて、いろいろ困難はあるけれども、それに向つてこういうことを達成して行くという考え方があるのかないのか、この点について明快な御所信をこの際あらためて伺いたいと思います。
  112. 保利茂

    ○保利国務大臣 完全雇用が行われるような状態が現出して参りますということは、何人といえども理想とするところであろうと存じます。私ももとよりそうでありますが、問題は、雇用の基盤でありますところの日本の産業経済の実態を堅実化し、そして規模を拡大して行かなければ、雇用の源が脆弱であつては、完全雇用と申しましても、結局空論に終るのではないか。要は雇用の基盤であります産業の基礎を固め、そして産業の規模を拡大して参ります以外には、完全雇用への道はとうてい実現できない。そういう意味合いにおきまして、自立経済計画それ自体が、すでに完全雇用へ一歩踏み込んだもの、こういうふうに私は実は思つておる次第であります。
  113. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの問題は議論になりまするし、後段におきましては、自立経済計画は完全届用政策へ一歩踏み込んだものだ、こういうふうに言われましたので、その点で納得いたしておきますけれども、問題は現在の自由党内閣の施策に非常に重点的な問題があるのであります。つまり一昨年以来行われておるところのドツジ・ラインの政策、ことに中小企業、農民あるいは労働者というものに対して大きな犠牲を前提としつつ、しかして安定のためにはすべてこれらはたな上げにしてもいいという考え方が強行されておることに、完全雇用を困難とするような事態が起つておるのではないかというふうに私は考えております。もとより経済の安定は重大な問題でありますが、これを併行して、われわれはその中において、でき得る限り完全雇用の政策を広げて行かなければならぬ。自由党の今日の個人的な自由資本主義というか、こういうものによつては、私はとうてい完全雇用政策というものは、達成せられないというふうに断定してもいいのではないかと思うのであります。しかしながら、国内外の情勢あるいは自由党内部におきましても、いろいろと御意見を持つておられる方もありますので、自然に公共性あるいは保障政策というものを取入れた政策が、漸次織り込められるという可能性もあるかと思う。その辺にすわつておられる方には大分そういう方もおられますので、この点信用しつり議論を進めて行きたいと思います。  そこでもう少し今後の予算委員会の審議の便宜上明らかにしておきたい数字がありますのて、お答えを願いたいと思うのですが、失業保險の給付の状況が今どうなつておるか。予算との関係がどうなつておるか、これについて労働大臣のお答えが困難であれば、どなたでもかまいませんから、お答えを願いたいと思います。
  114. 海老塚政治

    ○海老塚説明員 最近におきます失業保險の給付状況を申し上げますと、一般の失業保險におきましては、給付額は昨年の四月が十一億九千七百万円でございましたが、それから逐月増加しまして、八月に至りましては十四億五千二百万円と達しております。爾後先ほど大臣から御説明がございました通り減少いたしまして、九月には十二億九千万円、十月は十二億六千八百万円、十一月は十一億八千九百万円という状況になつております。これに対しまして徴收額を申し上げますと、昨年四月が八億三千七百万円、八月が九億二千四百万円、十一月が十億四千百万円という金額になつておりまして、政府負担額が徴收額の半額ございまするので、最近におきましては、一般失業保險の給付状況と徴收額と比べますと、失業保險の財政はさしつかえない状況にあると考えられるのでございます。また日雇い失業保險について申し上げますと、日雇い失業保險の給付額は、二十五年の四月が三千九百九十二万円でございましたのが、八月に至りまして七千九百二十四万円に増加いたしたのでございますが、これも昨年の十一月になりますと、五千九百七十七万円というふうに減少いたしております。これに対しまする失業保險料の收納状況は、昨年の四月が三千五百二十五万円、八月が四千二百六十三万円、十一月がまだ未收でございますが、十月が四千七百五万円という状況になつておりまして、最近におきましては、日雇い失業保險におきましても、政府負担額と合しますると、大体さしつかえない状況になつておると申せると思います。
  115. 川崎秀二

    川崎委員 次に労働大臣にお伺いをいたしますが、労働組合運動は昨年になつていよいよ健全化の傾向にあると判断をいたします。しかしながら、組合運動の健全化ということは、決して沈滯化あるいは沈黙化というものを意味するものではなくして、労働者の当然要求すべきところの問題、あるいは獲得すべきところの権利、これらについては、組合運動はもつと活発になつて来なければならぬと私は思うのであります。ところが最近組合運動の活発化について、労働省の考え方というものが、やや萎縮をしておるのではないかというふうにも感ぜられます。一時極左的な組合が台頭をして、何事によらず鬪争を目標とし、ことに生活擁護を中心とする問題については、鬪争するばかりでなく、破壊的なラインに沿うて運動を展開しておつたころから見ますと、確かに組合運動の健全化ということは喜ぶべき傾向です。しかしこれは決して国情際勢によつて労働運動が萎縮したり、あるいはまた沈黙するような傾向になつてはならないのであつて、組合の健全化ということは、つまり矯激なる行動には走らないけれども、しかし労働権の伸張であるとか、あるいは自己の生活の確保についての要求については、むしろ労働省は進んでそのサービスをすべきだと私は思うのであります。どうも労働大臣の最近の動き——個人的には非常に愼重な方であつて、私は尊敬しております。しかし労働政策について、もつと生活を擁護するようなことについて、積極的な施策というものが、にじみ出ておらないように感じておるのであります。その点労働組合育成の根本的な考え方について、あなたの御所信を承つておけば幸いであると思います。
  116. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。労働組合運動に対する御見解についてはまつたく御同感でございます。しかし、最近のわが国の労働組合運動が何の萎靡沈滯しておるのではないか、もつと活を入れなければいかぬじやないかという意見もあるように伺いますけれども、私は、昨今の日本の労働組合運動の状態というものは、一時破壊的分子によつて大きな影響を受けておりました日本の労働運動に対して、労働組合員あるいは組合の指導者が、過去の経験を通じて非常な反省、検討を加え、同時にまた労働組合の幹部の諸公の非常な多数の方が、ここ一両年の間アメリカやヨーロツパに行かれて、現実に西欧諸国の労働運動のあり方についても研究せられ——御指摘のように、日本の労働運動が一昨年来非常に堅実な足取りに立ち直つて来ておる真の理由は私はそこにあると思う。これは私どもとして、労働運動に対して政府がいろいろ干渉して、さしでがましくして参りますよりも、やはわ労働組合の組合大衆ないしは指導者のお考えによつて日本の労働組合が当然あるべき姿になつて行くということが最も望ましい。そういう意味において、私はこの労働組合ないし労働運動に対しては、労働省が深く立ち入ることを非常に愼んでおる次第であります。しかしながら、これをもつて日本の労働組合ないし労働運動が萎靡沈滯しておるとは考えません。もとより、各企業においては活発に、労働組合の力が漸次発揮せられつつあるということを申し上げて御了解を得たいと思います。
  117. 川崎秀二

    川崎委員 私は、別に平地に波乱を起そうという考え方で申しておるのじやないが、労働省と労働者の要求というものがマツチして、互いに調整し合うというようなことになつて行きますれば、そうして組合運動は当然これは自主的に伸ばきなければならぬのでありますから、今のお考え方の基本はいい。しかし、こういような時期にこそ労働大臣は、労働者の要求をしておる、また内面的にこういう問題をやつてもらいたいという気持に飛び込んで行つて、そうして、たとえば最低生活の保障について真正面から取組むというような気魄が、気魄だけではなしに具体的なプログラムが必要であろうと私は思う。組合運動が健全化したということで安心しておると、将来非常に手をやくような事態が起らないとも限らない。そこで私がお伺いいたしたい問題は、労働者は最近何を一番要求しておるか。最低生活の保障と社会保障制度の確立という問題。そこで社会保障制度の確立と関連いたしまして、重大な問題はあとで厚生大臣に伺うわけですけれども、労働省の所管として重大な問題は最低賃金制の確立であろうと思います。これは昨年の十一月に審議会ができて、そうして最低賃金制度について審議を始めておられるそうでありますが、その後の審議状況というものが世の中にわかつておらない、どこまで進んだのだかさつぱりわかりません。労働大臣はオーソリテイーとして最低賃金制度に対してどういう考え方を持つているのか。もとより審議会の意見は尊重しなければなりませんけれども、あなた個人の基本的なお考えをこの際聞かしてもらいたい。
  118. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は、昨年十一月発足いたして以来研究をいたしていただいておる賃金審議会の結論を見ました上で政府の態度をきめなければならない、かように考えておりまして、賃金審議会の経過がどうであるということにつきましては、政府委員から御説明申し上げることにいたします。
  119. 中西實

    ○中西政府委員 賃金審議会は、昨年十一月に発足をいたしまして大体毎月定期に開いております。委員会といたしましては、一体現在までの日本経済の実情ばどうなつているか、これを十分に研究する必要があるということで、今それの分析をいたしております。さらに各国の立法例なり実情がどうなつているか、これも十分に調査する必要がございます。今そういつた基本的な調査をやつております。それが一段落しますればさらに次の段階に入る、こういうことになつております。
  120. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御説明は紋切り型で不満足ではございますけれども、しかたがない。労働大臣はけつこうです。  厚生大臣にお伺いしたいのは、国民が平和を享受している時代において最も強く要望されるところの社会保障制度の問題であります。あなたの所管は今日いろいろな問題がございますけれども、骨筋の通つた非常に重大な問題は社会保障制度の確立以外に私はないと思う。厚生省はたまたま社会保障制度の問題に最も関連のある役所になつたの——将来は社会保障省というものができるのが当然であろうと思つているから、この社会保障について、あなただけに御答弁を求めるということは困難ではあるけれども、一応この所管大臣になつたのでありますから、従つて私の質問に対して、私はいやがらせの質問はしませんから、率直に答えていただきたいと思うのです。その第一の点は、昨年の十一月十七日、社会保障制度審議会は、ここにありますような社会保障制度に関する勧告をいたしました。しかるに今回提案をされましたる予算案は、社会保障制度に関する経費を相当計上したとはいうものの、勧告を全然無視して提出されておる。私は社会保障制度審議会というものは——内閣に幾つ審議会があるかは存じませんけども、ほとんど御用機関です。政府に都合のよいような審議会をつくつているのであるが、社会保障制度に関する限り、マツカーサー元帥の勧告によつてできた権威ある審議会であつて野党側からも代表者が出ており、各層にわたつて代表者が出ている。大内さんはこれをもつて、とにかく今日の状態としてはこの程度において社会保障制度のスタートを切らねばならぬという勧告をいたしたのである。従つて第一年、初年度の経費くらいはこれに盛らるべきだと私は確信をいたしておつたのでありますが、なぜこれが予算に現われて来なかつたのであるか、あなたの御答弁を要求するものであります。
  121. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 お答えいたします。勧告は決して無視しておりません。と申しますのは、厚生省関係につきましては、すでに六月に社会保障制度審議会から研究試案を御発表になりましたので、その試案に従つて二十六年度の予算を立案したのでございます。そうして社会保障制度審議会の勧告が遅れましたために、予算の面においては私どもの思うように参つておりませんけれども、しかしながら研究試案について立案しただけであつて、二十六年度においては社会保障制度の確立に向つて一歩前進したということを申しておきます。
  122. 川崎秀二

    川崎委員 六月に発表されたところの試案に基いて立案をしたということであります。しかし勧告と試案とはおのずから違つておるし、また勧告を発してから後に、予算修正は十分に可能であつたと私は思うのであります。内閣にその熱情と思いやりがあるならば、社会保障制度の確立について、当然相当な予算がきまらなければならなかつた。しかるに実際は八月に決定をされた閣議決定案の内容そのものが最終的に決定をされたのであつて、勧告の趣旨というものが尊重されていないと思うのですが、その点いかがですか。
  123. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 勧告につきましては、御承知の通りさつそく内閣に社会保障関係閣僚懇談会を開きまして、目下検討中でありますが、私は勧告の線に沿つておると信じております。
  124. 川崎秀二

    川崎委員 内閣に審議会をつくつたということと予算とは関係がない。予算の上にどういうふうに勧告の趣旨を盛り込んだか、その後において修正しなかつたではないか、こういうことを私は聞いておるのです。
  125. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 国家の財政上、初めの立案より一歩進むことができなかつたことは遺憾でありますけれども、私は勧告の線に沿つておると思います。
  126. 川崎秀二

    川崎委員 その途上において勧告案が出て来た。従つてもう少しこれは制度として取上げてもらいたいということについて、六月以降においてあなたは閣議において十分主張されたのですか。
  127. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 大いに主張いたしました。
  128. 川崎秀二

    川崎委員 社会保障制度の勧告に従えば、初年度の経費は八百六十八億と記憶しておりますが、その程度であります。決してわが国の財政を無視して、この審議会が勧告をしたものとは私は思いません。この程度のものを入れるということについては、十分にしんしやくされてしかるべきであつて、現にあなたの方で出しておるところの予算案でも、五百億程度のものが出ておる。そこで一歩前進しておるということは事実です。しかし一歩前進しておるということは、数字の上において前進しておるのであつて、こういう制度をつくれ、社会保險制度を統合せよ、たとえば労働者災害補償法あるいは失業保險法、その他の法律によつてできておるところのものを総合して、そうして脈絡一貫した制度をつくれということを言つておるのであつて、これはやろうと思えばできないことではないのです。かなりその途上においては複雑な問題もありましようし、盤根錯節もありましよう。しかし社会保障制度の確立に向つて、厚生大臣が非常な熱意を持つておればできないことではない。国民がみな望んでおる。これはもう社会の弱者というものがみな望んでおる制度であつて、この時代においてやらなければ、私はこれから先国際関係が風雲急になると、いろいろな経費が出て来て、本格的にとりかかれないのではないか。この時期を逸したということは、はなはだ遺憾だ。それはあなたの言われておるように、勧告案が遅れたということはありますけれども、これは私は社会保障制度審議会の内部において大内会長を相当難詰したものです。すなわち司令部の意見や助言にひつかかつて、なかなか審議会の勧告を発表することが遅れました。勧告が遅れたというのは確かに審議会自身の責任である。しかしそれから審議会の内部で非常な議論が出て、遂に勧告を出すことになつたのです。十月十六日勧告案が出た。それから十二月二十三日、この予算案が最終的に決定されるまで相当の時間があつた。そこで今回り予算問題は、現政府が公共事業か社会保障か、こういうことに重点があるのでありますけれども、社会保障がずつと後退をして行つたということは、あなたの責任であるとさえ思つている。そういうことについてのお考え方を承りたい。
  129. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 大いに努力いたしましたが、わずかに百億程度の増になつたことは、私としては決して満足していないということを明言いたします。
  130. 川崎秀二

    川崎委員 この制度にかかるまでに相当な問題があります。こういう問題も厚生大臣としては積極的に解決しなければならぬと思う。国民健康保險等の赤字についてはどういうお考えを持つておられましようか。それから赤字の最近の統計がありましたらお示しを願いたい。
  131. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 赤字が出ておりますことは、非常に遺憾に思つております。この前の臨時国会において、料金の引上げ等もお願いいたして御審議願つたような次第であります。赤字の状態その他につきましては保險局長からお答えいたさせます。
  132. 安田巖

    ○安田政府委員 健康保險の方の赤字は、政府官署におきましては大体百パーセントとつたといたしましても、本年の三月末で約八億ばかりの赤字になります。これは先般の国会で御協賛願いました保險料の引上げによりまして、二十六年度におきましてはその赤字をカバーする、こういうような想定のもとに進んでおるわけであります。  なお国民健康保險については、御承知のように各市町村がそれぞれ主体でありますけれどもその実態も千差万別であります。大体私の方の予算の方から見た見通しといたしましては、全体で十五億から二十億くらいの赤字があるだろうと思つておりますけれども、これらにつきましては保險料の引上げであるとか、あるいは徴收の方法の確立ということによりまして、その赤字を解消するようにいたしたいと思います。
  133. 川崎秀二

    川崎委員 健康保險の赤字は料率の引上げによつて補うというようなことであります。先般の国会ではそれは自由党の多数でわれわれは押し切られたわけでありますけれども、しかし保險料率の引上げのみをもつて健康保險の赤字を補うという考え方は、もはや時代遅れなんじやないか。当然これは社会保障もしようというような状態に立ち至る以前において解決をすべき問題です。やはり国費で相当な負担をすべきものだと私は思う。国費で五割も負担しろとか、六割も負担しろとは言わない。少くとも三割程度は負担して、この際赤字を一掃して、新しい社会保障制度の確立に邁進すべきであると思いますが、厚生大臣はいかなるお考えでありましようか。
  134. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 健庫保險についても、国民健康保險につきましても、給付費において二割の国庫補助をしたいという厚生省の考えであつたのであります。残念ながら国家の財政上、二十六年度の予算には盛ることができなかつたのであります。
  135. 川崎秀二

    川崎委員 最後に一点お尋ねをいたしておきたい。また厚生大臣の考えをぜひとも固めておいてもらいたい問題は、社会保障制度の勧告が出ましたときに、司令部側から、この勧告は社会主義的である、社会主義的の理念によつてつくられたものであるというようなことを労働省のある官吏が伝えたことがありました。これはその後社会保障制度審議会との交渉によつて、当該官吏の陳謝もあり、われわれは了承をしたわけであります。しかしその誤りが相当国民の知識層に蔓延をしておるのです。この勧告が社会主義的なのと称するところは、私は少しもないと思う。イギリスにおいて行われておる社会保障の制度すらあれは資本主義経済機構を全然無視したものではないのだ、こういう考え方が一般的な世界批評として行われておるのであります。もとより医療国営の内容については、ままアメリカ等においては、イギリスの社会保障制度を非難しておる。しかしこの勧告は医療国営というものをまずとりはずしておる。健康保險の強制的な断行ということもとりはずしております。勧告の前文にありますように、「生活保障の責任は国家にある。国家はこれに対する総合的企画を立て、これを政府及び公共団体を通じて民主的能率的に実施しなければならない。この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを原則としなくてはならぬ。またこれは健康と文化的な生活水準を維持する程度のものたらしめなければならない。そうして一方国家がこういう責任をとる以上は、他方国民もまたこれに応じ、社会連帶の精神に立つて、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果さなければならない。」と書いてありまして、内容においても前文においても、これは決して社会主義的なものではなしに、むしろ社会連帶的な観念によつて国家保障ということと、一方において国民の義務というものを強調をいたしておるのでありまして、社会党の諸君あたりに言わせると、これは修正資本主義的だという非難をさえされたことがあるのであります。一方において社会主義的であると言い、あるいは一方においては、そういうような非難があるが、この程度のものを実施しなければ、今日の社会困窮の状態を私は救うことはできないと思う。従つて、社会主義的だというような見解が誤り伝えられておるのでありますから、そのことについては厚生大臣は信念を持つて、これはそういうものではないのだ、この程度のものは今日やらなければならないのだというお考えになつてもらいたいと思う。またそうでしようと思う。そういうことに対してのあなたの御信念をこの際お伺いいたします。
  136. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 勧告をよく読みましても、私自身絶対に社会主義的勧告であるというようなことは考えておりません。また勧告の線に沿うてどこどこまでも実施すべきであるという信念に燃えております。ただ来年度は、先ほど申し上げました通り、社会保障制度についてはわずかに百億の増でありますが、その一環である金額によつて幾分の飛躍をなし得ると私は信じております。
  137. 川崎秀二

    川崎委員 人事院総裁にお尋ねいたします。朝鮮事変以来物価の騰貴というものがまた再びじり押しになつて参りまして、これに伴つて消費者実効価格も相当上つておると思いますが、消費者実効価格の関係から労働者の賃金べースの改訂について、また再び勧告をするに立ち至るのではないかというように観測をいたしております。現在どのように消費者実効価格が上つておるかということと、それから将来、将来ではなく近く勧告をしなければならぬ時期に到達するのではないかと思われますが、今日その必要を認みられないかどうかという点について、簡單でもよろしゆございますから御答弁を願いたいと思います。
  138. 淺井清

    ○淺井政府委員 川崎さんにお答えを申し上げます。ただいま正確に利用し得るデータは昨年の十月までの統計でないかと思つておりますが、それによりまして人事院がかりに人事院勧告並びに現給與法において基礎となつておりますところのいわゆる標準生計費を考えますと、ただいまのところ実質的に約三・五%くらい上つておるのではないかと概算をいたしておる次第でございます。従いまして今日までのところでは、まだ再び給與引上げの勧告をいたすというような決定には到達しておりません。
  139. 川崎秀二

    川崎委員 よろしゆうございます。
  140. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 西村君に申し上げます。大蔵大臣はただいまちよつと手が離せないそうで、もう少し二、三分で参るという通告が来ておりますから、暫時このままお待ち願いたいと思います。——西村榮一君。
  141. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は大蔵大臣に、予算の組立ての方法並びに金融政策国民生活の安定という三点について御質問申し上げたいと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいと思うことは、昭和二十六年度の予算單価は、朝鮮事変影響を織り込んでおるという昨日の御説明であつたのでありますが、それでは大体において前年度と比較いたしまして、どの程度の値上りを見込んで織り込まれたか、その数字をひとつお示し願いたい。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 大体去年の秋の状況によりまして、秋の物価を基準としていたしておるのであります。各物件費の單価につきましては、いずれ政府委員より個別的に説明いたさせます。
  143. 西村榮一

    西村(榮)委員 この間の安定本部の統計によりますと、最近の物価の上昇率というものは、一週間に一%である、こういわれておるのであります。朝鮮事変以来すでに一六%の値上りを示しております。同時にアメリカの統計によりますと、原材料の一五%くらいの値上げというものを織り込んで、来年度のアメリカの予算が組まれるように承つておるのであります。そうすると昨年の秋の物価の標準で組まれた予算に対しましては、その後一週間に一%ずつ値上りしておるのでありますから、昭和二十六年度は当然非常な値上りになると思うのでありますが、この物価が非常に値上りした場合における予算に対しては、そのつじつまは追加予算というふうな形でお出しになつて合せるのか、あるいは事業短縮という形においてつじつまを合せるのか、どちらをおとりになるのであるか、お伺いしたいのであります。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 一週間に一%も物価がどんどん上つて行こうとは思つていないのであります。ただ、今のところ物価が上昇の傾向にあることは認めますが、できるだけこの上昇率を押えて行きたいと考えております。しこうして昨年の秋の物価を基準としてやつた関係上、将来予算不足が生ずるということは、これはある程度考えなければならぬかとも思うのでありますが、これは予算の使用をできるだけ効果的にやつて行き、何とか切り抜けて行きたいと思うのであります。
  145. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣はちよいちよい政府の統計を否定されるのですが、一週間に一%の値上りというものは、安定本部の統計による公表なのですが、今の周東安本長官とあなたは同じ閣僚なのですから、大蔵省の統計はこうだ、安本の統計はこうだと言われると困る。これは一週間に一%の値上りというものは、安定本部の統計なのだからよく御記憶を願いたい。そうすると今の御説明によると、大体追加予算を出さないで、事業を短縮してまかなうというふうな御答弁のように解釈してよろしいですか。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 事業を縮小してまかなうとは言つておりません。できるだけ金の使用を効果的にやつて行き、そうしてまたある場合におきましては、程度の問題でございまするが、発注その他について手心を加えるということも具体的な問題としてありますが、大体は今の予算をもつてつて行けるのではないかと考えておりまする。
  147. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいまの御答弁によりますと、金の使用を効果的にやることを主として、大体原案が執行できる、こういうふうなことですが、そうすると今考えてみますと、安定本部の統計によると、一週間に一%ずつ値上りをして行く。アメリカの予算編成方針を見ても、来年度の予算は原材料において一五%の値上りを見込んでの大体予算編成方針だと聞いておる。そうすると今一割五分ないし二割というものが、金の使用が効果的に行われておらないというふうに解釈できるのですが、一体そういうふうなゆとりが今の予算の中にあるのですか。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、物価の値上りはある程度予算にも見ておるのであります。しごうしてやはりいろいろなくふうを疑らさば、そのときの情勢によつて効率的に使用ができると思うのであります。また事業の繰延べ等も大部分についてそういうことはできませんが、情勢によつてはある程度の緩和は予算上認められるのであります。こういうことでなるべく物価を上げないようにすると同時に、御審議願つている予算でまかない得るように努力して行こう、こういうふうに思います。
  149. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣のただいまの御答弁によつて、今の予算の使用方法についてはゆとりがあるということが大体実証できた。効果的にやれば若干物価が値上りしてもこれはやつて行けるのだということは、その反面ゆとりがあるということを暗に物語られたと思うのですが、しからばお聞きしたいのですが、大体大蔵大臣は船賃の値上りというものをどの程度に見込まれておるのであろうか、大体朝鮮事変以来、船賃はずいぶん値上つたのですが、予算の上においてどの程度の船賃が上つた、こういうふうに上るのだということを見込まれておるか、その点一応承つてあきたいと思います。
  150. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通り朝鮮動乱後、世界的に船賃は相当上つて来ております。これは太平洋の船賃と、大西洋の船賃は上りようがかわつておりますが、バンコツクとかあるいはヴアンクーヴアー向けの方が、昨年の六、七月ごろに比べまして倍あるいは三倍近くのところもあるやに聞いておるのです。
  151. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、現予算において非常にゆとりがあるということを反面御承認になつておりますが、そのことは別にいたしまして、私は別な観点からお伺いしたいのですが、運賃が御説の通り倍ないし三倍になつております。従つてこの影響を最もどこに受けるかといえば、日本の原資材の輸入單価の高騰というものが受けるのでありますが、とりわけわれわれの考えなければならぬことは、日本の食糧の問題です。そこで現在予算において三百二十万トンの食糧の輸入というものを予定いたしておるのでありますが、この食糧の輸入に対しましては、非常に船賃を食うのです。その船賃の倍ないし三倍に値上りしたときに、一体予定通り三百二十万トンの食糧を輸入されるのあろうか、あるいはこれを減らされるのか。三百二十万トンの食糧を輸入されるとすれば、当然に補給金の増額という追加予算の形で出て来なければならぬのですが、一体どちらをおとりになるか。
  152. 池田勇人

    池田国務大臣 大体三百二十万トンを計画してやつて行くと考えておるのであります。しかし船賃の問題も、日本船を使うということになりますれば、相当安くもなりますし、また麦、米の価格も今まで通りにずつと上つて行くとも考えられませんので、今から今年の暮れあるいは来年のことを想像するのはなかなか困難な点があるのです
  153. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると船は日本の船を使うからさしつかえはない、小麦その他の世界の食糧もそう上るとも思われぬ、だから追加予算考えておらぬ、こう解釈してよろしいですか。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 大体そうでございます。しこうして今後船賃が上つて行き、米麦の国際価格が上つて行くということになれば、これはその場合に考慮すればいいことであります。また片一方におきまして、小麦協定に参加することによりまして相当小麦の値下りも考えられるのであります。今参加するとはきまつておりませんが、もしそういう段階になれば、輸入価格につきまして相当のゆとりが出るということに相なると考えております。
  155. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、万一食糧の値が上り、船賃が上つたら、その場合において考慮する。こういう意味は、その場合において追加予算を出す、こういうふうに解釈されるのですが。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 それはそうするよりほかしかたがない。
  157. 西村榮一

    西村(榮)委員 わかりました。そうすると、その追加予算の財源は一体どこにお求めになるつもりですか。
  158. 池田勇人

    池田国務大臣 それはそういう情勢のときに、財源を考えればいいと思うのであります。
  159. 西村榮一

    西村(榮)委員 それはおかしいじやないですか。私はあなたのあげ足をとろうと思つていないのだから、もつと率直に御答弁を願いたいと思う。ということは、日本船を使えば船賃が安くなるというようなことは、これは答弁としてはまことにあなたは名人の域に達しておられるけれども、現実ではありません。現実は船の製造をはかつてみたところで一年後です、同時に戰時標準型の船を借りるにしても、これはなかなか問題はデリケートでとんと参りません。現在アメリカで多くの繋船をなしているが、これは烱眼なあなたがアメリカにおいでになつておわかりの通り、アメリカを支配しているものは石油財閥、鉄鋼財閥、船の財閥、この三つがアメリカの政界における異常な支配力を持つている。日本朝鮮事変後船に困つている、しかも船員が遊んでいる。しかもこれは国際間の輸送力の円滑化ということは、日本のためのみならず、アメリカのためになる、国際連合のためになるという見地から、船の貸與方をしばしば申請しておるけれども、いろいろな実情で実現されていない。しかも新造船をやろうというにも見返り資金も思うようには出さない。それがうまく行つても一年後です。その間運賃は昨年の六月以来倍ないし三倍に上つております。おそらく本年はこれが倍になるでありましよう。そうすると当然船賃は上るということを予想せなければいかぬ。同時に食糧の問題でも南米その他において食糧の輸出は、これは他の国が買い占めまして、なかなか日本は思う通りに参つておりません。こういうふうなときに、あなたのような、やあ日本の船を使えば船賃は安くなる、小麦はそんなに上らないというふうなことでは、これは国民が得心しないのでありまして、先ほどあなたが答弁されたように、その場合においては追加予算においてこれはまかなうよりしかたがない。三百二十万トンの数量だけ入れようとすれば、それは追加予算よりしかたがないという御答弁の方が私は正直な答弁だと思う。そこでこの場合における追加予算の財源は一体どこにお求めになるのか、私はこれを聞いておる。だからこれはまだはつきりしないのなら、はつきりしないのだということでけつこうですが、あなたのように、船賃は日本船、麦は買える、高くならぬということでは、答弁としては池田大蔵大臣まことに満点ではありますが、政治家としてはちよつとうそをつくということになるので、正直な御答弁を願いたい。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 私は正直に答えておるのであります。それは船をつくりますと、新造船が十箇月程度かかることは承知しております。しかし戰標船の改装ということになれば、四箇月、五箇月でできるのであります。われわれは新造船を急ぎますと同時に、改装につきましても、今三十隻余りを計画いたしておるのであります。いろいろな手を使いまして、とにかく今の予算でやつて行くようにする。もしやつて行けないという場合におきまして、補正予算を組むという場合になつたならば、どこから財源を求めるかということは、やはり歳出がどのくらいになるかということによつてきまるのでありまして、たとえば補正予算輸入補給金が百億円足らぬ、そのときはどういう財源を見出すか、あるいは二百億円足らぬ、そのときにはどういう財源ということで、今からどこの財源を使うということはなかなか申し上げかねるので、そのときの情勢によつて考慮すべき問題だと思います。
  161. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体お話はわかりましたから、まあこの程度にしておきましよう。  次にお伺いしたいのは、日本のドルの保有量の問題であります。現在ドルは日本においてどの程度所有しておるか、その所有額が大体わかればお示しを願いたい。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 午前中にも御質問がありまして、答えておいたのでありまするが、一両日お待ち願いたいと思います。昨年の十二月末の分は、大体ポンドの方も入れてドルに換算いたしまして、五億二千万ドル程度に相なつております。それからオープン・アカウントが別にちよつとありますが、今記憶しておりません。一両日後には発表できると思うのであります。ただどこに発表しない理由があるかということになりますと、今輸入の許可を與えた分について、ちよつと関係方面と数字が合いませんので、それを検討いたして、はつきりしてから申し上げたい。昨年末の分はオープン・アカウントを除きまして、大体五億二千万ドルであります。
  163. 西村榮一

    西村(榮)委員 それが現在どういうふうに運営されておるか、同時に一昨昭和二十四年度の末においては三千万ドル前後であつたのですが、それが一箇年間に五億二千万ドルというふうにふえた理由、並びにそれがどういうふうに運営されているか、それを将来どういうふうに運営されようとするのであるか、この三点についてお伺いしたい。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨年末のドル並びにポンドの保有高は一億ドル足らずだつたと思います。一億八千万ドル、その程度でございまして……。
  165. 西村榮一

    西村(榮)委員 一昨年の末ですよ。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 一昨年の末、昭和二十四年十二月末が大体二億ドル足らずだつたと思います。しこうして今の五億二千万ドルというのは、昭和二十五年十二月三十一日現在でございます。そういたしますと、三億ドル余りふえておるのであります。このふえた原因は、輸出が非常に急速に伸びますと同時に、輸入がそれに伴わなかつたということであるのであります。しこうしてこのドルにつきましては、外銀その他に当座預金あるいは通知預金の形で保管いたしておるのであります。
  167. 西村榮一

    西村(榮)委員 昨年度末においては、日本の貿易じりによる手持ちドルは三千万ドルというふうに昨年の予算説明で聞いたのですが、間違いないでしようか。私はそう聞いているので、あとでもいいから一ぺんお調べ願います。  そこで私がこの際お伺いしておきたいと思うことは、この輸出が激増して輸入がこれに伴わなかつたということは、世間でよくいわれるのでありますが、輸入の伴わなかつたという原因は一体どこにあつたのでしようか。輸出輸入という態勢がとり得なかつたという原因はどこにあつたか、一応承りたい。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知の通り輸入の場合におきましては、外貨予算の割振りをやるわけでございますが、外貨予算のやり方がまだふなれのために、機動的に行かなかつたの一つの原因でございましよう。それからまた外国の状況が十分わからなかつたというのも一つの原因と思います。それからまた各国がある程度売惜しみをしているということもその原因と思いまするが、とにかく船腹の不是等があるのでありますが、最近に至りましては、外貨予算の使用につきましても、そういう今までの欠陷を補つて参りまして、この一—三月におきましては、私は相当に輸入が伸びて来るのではないか、こう考えております。一—三月はかえつて輸出よりも輸入の方が多くなるのではないかという見通しを持つております。
  169. 西村榮一

    西村(榮)委員 一月—三月における輸入がふえるということは、まことに喜ぶべき現象でありまして、どうかさように御努力を願いたい。私は悲観するわけではありませんが、あなたが見込まれるほど輸入はそう楽ではない、こう思つております。それで一月—三月にあなたが今言われたように輸入が予定通り行くものであるならば、今までも輸入が予定通りつていなければならぬ。ところが今理由としてあげられた外国の事情が不明であるとか、それから外貨予算が云々ということは、今始まつたことではないのでありまして、これは朝鮮事変からそういうふうな理由があつた。逐次それが改善されて来ている。しかるに輸入がうまく行かないということは、ほかに理由があると思う。私がその理由としてお伺いしたいと思うことは、外貨保管管理機構というものがきわめて官僚的な機構であるがゆえに、これが世界経済の大変革に際会いたしまして、有機的な巧妙な対策を貿易政策の上においてとることができなかつたということが第一点。次にGHQの外貨理官がアメリカ経済の動向をにらみ合せて、この活用について相当の手かげんを加えたのではないかというふうな感じがいたすのでありまするが、大蔵大臣はこの二点について、いかなる御感想をお持ちであるか。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 実際この輸入をいたしますのに、敗戰後の状況で、外国の事情はわかりませず、また使い方につきましても、外貨予算なんというのは初めてのあれでございますから、どちらかというと内外ともに引込み思案の点があつたのであります。このことがわかりましたのは昨年の五、六月ごろで、どうしても外貨予算の使い方を長期的にやらなければいかぬというので、昨年の七—九予算から長期予算というかつこうで組むことにいたしました。それからだんだんそういうふうな彈力性ある予算の組み方にいたしましたのが、この一—三月で出て来ることに相なるのであります。従いまして先ほど申し上げましたように、いろいろな事情はございましたが、それを改善いたしまして今後は相当伸びて来るという考えを持つております。
  171. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は外貨管理方法についての改善についてお伺いしたのでありますが、それについては御答弁がございませんでした。しかしこの際明らかにしておきたいと思うことは、大蔵大臣がいろいろ理由を述べられましたが、現実の問題といたしまして五億二千万ドルの手持ち外貨が生じて来たということは、これは輸出輸入の態勢をとらなかつたことに原因するということは大蔵大臣もお認めになつた。ところが、それが半年ずれて来た結果がどういうふうな影響があるかと申しますると、世界的に物価が二割、三割高くなつております。同時に輸入するに要する船賃が倍から三倍に値上りしております。そこで五億ドル——その当時輸出輸入という態勢をとりまするならば、国民経済は少くとも三百億円ないし四百億円というものが助かつておると思うのでありますが、この輸出輸入の態勢をとらなかつたところにドルがふえ、同時に日本経済が多くの損失をこうむつておるのでありますが、これについて何か将来について改善策をお持ちであるかどうか、こういうふうな態勢に対する改善策をひとつお伺いしたい。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほども申し上げましたように、今後は相当輸入が伸びて参ります。今の状態よりは三月末の方がドルが少し減つて来るのではないか、昭和二十六年度の終りにおきましては、私は輸入が伸びて現在よりも減るのではないかという計算ができておるのであります。
  173. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はあなたが重ねて輸入が伸びるとおつしやつたから、これは言いたくないことなんだが、あなたの答弁の中には矛盾がある。ということは、日本銀行がドル手持ちのために通貨を発行しておるのは、一昨日の発表によりますと二千百十億円、年度末において三千億円に通貨の発行は手持ちドルのためにふえざるを得まいという日銀発表である。同時に先般の予算委員会において、あなたのところの銀行局長が、年末には通貨の発行が四千億円を突破するのはやむを得ないということをここに言明された。そこで問題は輸入がふえて手持ちドルが減れば、そんなに通貨の増発にはならないのでありますが、あなたの幕僚たる銀行局長がこれの反対の言明をされた。しかも日本銀行は反対の方向を通貨の政策の上にとつておるのですが、それでもあなたは輸入がふえるという自信を他にお持ちなのでありますか、具体的にそういう例があればお示し願いたい。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 日本銀行を通じてのユーザンスの額がふえるからというので、輸入が伸びないということにはならないのであります。御承知の通りに期限がございまして期間的のずれがございますので、私が言う通りに相なると思うのであります。もちろん三月末までに大体の予定は二千八、九百億円のユーザンスになるかと考えておりますが、輸入も相当ふえて参ると思うのであります。
  175. 西村榮一

    西村(榮)委員 どうも今の答弁銀行局長並びに日銀当局の答弁と現実においてはふさわしくありません。しかしそれは私は追究することを避けましよう。そこで私は先ほど申し上げましたように、この手持ちドルのふえる原因は、一つ輸出入のバランスがとれないということにも原因する。これは貿易の自由性がないということに原因する。同時にこれは日本のドルの管理方法について、一体日本政府はこれに対する管理の権限があるのかどうか。これの運営について日本政府自主性が認められているのかどうか。この点を一応はつきりしておいていただきたい。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 外貨予算の使用につきましては、こちらで案を立てまして関係方面と協議いたしているのであります。関係方面意見一つも聞かずにこつちばかりでやるというわけには、ただいまのところ行きません。
  177. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると運営の責任は政府にある、それについての自主権もある、ただ、それについて参考意見をGHQに聞くのだ、こういうことで解釈してもよろしいか。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 参考意見と申しますか、承認と申しますか、相当GHQからの発言もあると聞いております。私は直接にこの問題で折衝には当つておりません。
  179. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は正直ですから法律通り物を解釈するのですが、法律によると、外国為替及び外国貿易管理法第三條によつては、「内閣に閣僚審議会を設置し、外国為替予算を作成する責任」云々とある。これは法律上明らかに日本自主性がある。しかもGHQの干渉の余地は法律の上にはどこにもありません。日本政府は運用について参考上聞くだけである。しからば問題は、五億ドルの私の問わんとするところのこの厖大なる手持ち外貨が生じて来たことは、その運営の責任は日本政府にありと私は解釈するが、伺いたい。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 外国為替及び外国貿易管理法第三條にそういう規定がございまして、閣僚審議会においてこの案をつくつております。私はその一人として参加している。しかしてこの運営につきましての責任は日本政府が負つているのである。負つているからといつて、いわゆる占領政策からして向うからとやこう言われることはあるということを御承知願いたい。
  181. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 この際勝間田清一君から関連質疑を求められております。これを許します。勝間田清一君。
  182. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の西村委員からお話のあつた外貨予算の問題について、若干関連質問をさせていただきたいと思うのであります。私は、五億二千万ドルのたくさんな外貨がたまつたという原因については、あるいは管理方式なり、あるいは輸入不振とか輸出がいくらかふえたとか、いろいろな問題がそこに形式上言われると考えるのでありますけれども、根本の問題といたしましては、いわゆる輸出統制あるいは輸出の管理という問題と非常な関連を持つているのではないかと考えるのであります。特に、最近における、たとえば外国の重要物資に対する輸出統制の強化、最近の報道によりますれば、重要資材等についてフランス、イギリス、アメリカ等がいわゆる重要軍需資材に対する割当委員会をつくつて、そうして各国に対する割当をやつている。割当をやる場合において一番注目せられるのは、いわゆる世界の再軍備計画と結びついて割当がやられている。これも私は今日の国際情勢から見てかなりあるべきことだと考えられるし、また非常に重大問題だと私は考えるのであります。こういう世界の再軍備計画と結びついて、ここに重要な輸出統制なり割当制度というものが行われるという問題と、日本の為替特に手持ち外貨の増大という問題とは、私はかなり注意すべき問題がそこにあるように考えるのであります。特に私はその意味におきまして、ほんとうに日本外貨に対する自主権が認められることは今日においては困難かも存じませんが、その運用方法について、よほどここで日本政府がしつかりしたものを持つておりませんと、私はそこに重大な問題があるような感じがいたすのであります。單に輸入輸出という問題ではなくして、かかる外国の割当制度の、しかも再軍備計画との関連における割当制度との関係、しかもそれが日本の手持ち外貨との関係が私は相当あるように感ずるのでありますが、それらの問題と関連をしまして、私は日本の平和的な輸入に対する外貨の利用ということについて特別な考え方を持つていないかどうか、これをひとつはつきりと今後の方針についてお話を承つてみたいと存じます。
  183. 池田勇人

    池田国務大臣 外貨のたまりましたのは、最近におきましては勝間田君のおつしやるようなことも相当に原因をなしております。ただ御承知の通り朝鮮動乱に直接関係のあります特需というのが、例の二億ドルを越えるというふうな状況に相なつておりますので、こういうのも相当急激に外貨ができた原因になると思うのであります。そこで今の世界情勢を見ながらお話通りにこの外貨の活用を十分はかつて行かなければなりません。従いまして御承知の通り外貨予算の組み方なんかも常にそういうものに合うように——前はどちらかというと、輸出がこのくらいあるから、その程度輸入予算というふうにしておりましたが、このごろは相当たまつて参りましたから、思い切り輸出以上の輸入計画を長期に立てて、そうしてできるだけ早くたくさんの物を入れよう、こういうことをやつておるのであります。
  184. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は非常に懸念をするのでありますが、最近日本の再軍備なり、あるいはそれに関したいろいろな態勢の問題などが論議されておるのであります。もしこの五億二千万ドルというものが日本の再軍備計画というものと結びつけられて、そこに外貨が今後利用されて行くことになつて参りますると、私は重大な心配を実はそこに抱かざるを得ないのであります。もちろんそういうことのないことをわれわれは信じてもおりますし、希望もいたしておるのでありますが、それよりも私たちはやはりそういう危惧に対しても、早くどうしても考えて行かなければならぬのは、たとえば食糧であるとか、衣料であるとかいう平和的な部面に対する輸入確保の政策、なかんずく五億二千万ドルの一部でもフアンドあるいは回転基金にでもして、食糧輸入の確保をはかり、あるいは食糧需給計画の完璧をはかるためにそのフアンドを利用するとか、そういう問題がずつと前に進んで来なければならぬのではないか、私はその面の希望を特に強く持つものでありますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと存じます。
  185. 池田勇人

    池田国務大臣 まつたくその通りでございまして、昨年の七—九の予算であるとかあるいは十—十二の予算におきましても、そういう考えでやつております。また一—三月の予算につきましても、先般も新聞にありますように、数千万ドルを追加いたしまして、とにかく早くたくさんな物を入れようと考えております。ドルがこんなにたまつているから、これを再軍備とかなんとかという考えは毛頭持つておりません。大体これを早く使おう、そのためには私はただいま二十五億円一般会計から出しまする緊要物資輸入基金特別会計、それにおきましても二十五億円では足りませんので、いわゆる手持ちの外貨を借りて来て、そうして相当な品物を輸入しようという計画で今進んでおります。
  186. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの際見返り資金の運用の状況について大まかでありますがひとつお伺いしておきたいと思います。
  187. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金はこの前の国会で申し上げましてから後は、年末に電気関係の方に三十数億円出ました。ただいまのところ公企業の方に向いまする公共事業費の百十億円、これは半分ぐらい出て行つたと思います。秋までは非常に出が惡かつたのでありますが、十二月ごろからかなり出て参りましたので、半額以上出ておると思います。それから公企業の方の住宅営団の方は、ただいまのところ半額ぐらいしか出ていないと思いまするが、もう大体契約もできましたから、三月末には相当出て行くと思います。それから輸出銀行の方も出て参ります。公的関係の方はかなり進んで参りました。私企業の電気関係の分は、百億円のうち年末に三十億出ました。それから船舶に参ります百三十五億は、もう六次造船で使い切つてしまいましたが、計画はできましたが金はまだ三、四十億残つておると思います。それから一般私企業、これは四十三億円を六十億円にいたしましたが、これも三十億円余り出まして、年度末までには出て行くと思います。六十億全部出ますか、あるいは五億くらい残るかしれませんが、これは計画通り行く予定であります。従いまして見返り資金の運用につきましては、当初の予定よりもかわつているのは、五百億円の債務償還は、今年度内に債務償還せずに翌年度へ繰越す計画であるのであります。
  188. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 西村君安本長官も見えておりますからどうぞ……。
  189. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体において昨年度よりかわつていないとすれば、見返り資金は、食糧証券並びに預金、その他ありますが、千余億円のゆとりがあると見なければならぬと思います。そこで私は大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、この予算案を見ますと、外国為替資金特別会計に五百億円が一般会計から繰入れられておるのでありますが、これをなぜ従来の形のように、日銀借入れ、あるいは預金部借入れ、ないしは見返り資金のこの余裕金をここに充当されなかつたかという点について御説明を承りたい。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知の通りに、見返り資金におきましては、大体今七百億円余り残つております。また預金部の方にも五、六百億円が年度末までには残ると思うのであります。見返り資金はその後もふえて参りますので、大体千億余り翌年度へ繰越すことになると思うのであります。これを使つたらどうかというお話でございまするが、先ほど来話のありましたように、輸入ユーザンスの関係日本銀行の信用供與が非常にふえて来ておりますので、今ただちにこれを使わずに、こういう輸出超過によりまする外貨のふえたためのインフレは、やはりある程度財政資金をもつてやるのが常道である、こういう考えのもとに片方で減税し、片方では財政資金でまかなう、こういうのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代   理着席〕
  191. 西村榮一

    西村(榮)委員 今の大蔵大臣の御答弁によりますると、これは別に税金から繰入れなくとも、借入金か、ないしは見返り資金からそれに充当してもいいではないかと思われます。しかも大蔵大臣減税々々と言われたのでありますが、これは事実上予算を見ると、縮減されたのは七百四十三億円で、これは水増し予算といわれておるのでありまして、こういう議論は別といたしましても、この五百億円の一般会計からの繰入れの資金、並びにその他これに類似の借入金で済ませる分が百二、三十億円ある。そこでこの六百二、三十億円というものが減税に振り向けられんば、大蔵大臣の公約の減税が実行できたのじやないか、しかも片方に見返り資金を遊ばせ、片方にドルの手持ちが莫大になり、その非常に豊富な財源がほかにあるのに、国民が増税に苦しんでおるのに、一般会計から繰入れなければならぬということの理由については、池田さんちよつと国民が納得しないのですが、もう少し御説明願えぬでしようか。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 西村さん御承知の通りに、今昭和二十五年度は、大体通貨の膨脹が八百億余りになるのであります。そうして政府一般会計、特別会計並びに政府関係機関を通じまして、大体私は六百億あるいは七百億ぐらいの政府の散布超過になるのではないかと思います。そこで今インフレじやないかというふうな議論がぼつぼつ出て来るのでありますが、これは今申しましたように、輸出が非常に急速に伸びた結果でございまして、来年度におきましては、昭和二十六年度は政府並びに関係機関を通じまして、私はとんとんで行きたいという考えで進んでおるのであります。従いまして、それじや今の繰入れなんかをせずに、五百億円を減税の方へ加えて、千二百四十三億円の減税をしたらどうか、こういうお考えでございまするが、これは私はやはりほどほどにやつて行かなければならぬ。減税もするし、またインフレ防止の策も講じなければならぬというように両方を兼ねてやつておるのであります。千二百四十三億円の減税をする、これはそのときはいいようでございますが、やはり将来のことも考えなければなりません。一ぺんに減税してしまつて、あとまた増税しなければならぬというようなことも、またこれは敗政政策としてとるべきでない。しかもインフレ防止のためにあらゆる手段を講ずる場合においては、七百四十三億円の減税をし、片一方ではインフレ防止のためにインヴエントリー・フアイナンスをして行くのがほんとうだ、こういう考えのもとに予算編成いたしておるのであります。
  193. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今あなたの説明を承りながら思い出すのは、昭和二十四年度並びに昭和二十五年度のあなたの財政演説である。この昭和二十四年度、二十五年度のあなたの財政演説は、ドツジ氏の指導のもとに日本インフレーシヨンを克服する。そのために通貨を安定しなければいかぬ。そこで通貨を安定するためには、超均衡財政をとつて、今日の公債を償還しなければならぬ。そこでその公債の償還が終つたならば、これは元の税体制にもどすのであつて国民よ、一時この増税はがまんしてもらいたい。将来の諸君の幸福のためにがまんしてもらいたいという演説をなすつたことを私は記憶しておる。これは池田さんの大名演説であります。そこで私はそのことを思い出してみると、今日通貨は安定した、経済は安定したから、公債償還の必要はないということで、公債償還というものをストツプされたならば、当然元の税体制にもどるのが当然ではないか。私はあえて減税ということは主張しません。税体制にもどるのがほんとうじやないか。しかもこういうように貿易資金というものは、従来日銀からの借入れ、預金部からの借入れだけによつてまかなつて来た。国民税金から出さなければならぬという理由はどこにもありません。しからばそれを減税に振りかえることができなければ、国家の計画経済に基く日本経済再建のために生産方面に使われるということであれば、国民は納得するでしよう。しかるにあなたの昭和二十四年度、二十五年度の財政演説と、今日言われておることと、矛盾があるのではないか。この資金の点について、ちよつと池田さんらしくない説明だと思うのですが、どうでしようか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 矛盾も何もないと思います。やはりそのときの経済財政状況によつて手を打たなければならないのであります。私としては昭和二十六年度はとんとんで行きたい。しかも外国為替資金特別会計の五百億円を日銀からの借入金でやるということになりますと、これは当然インフレになるのであります。私は今もなおインフレへの危險が絶対にないというわけのものではなく、ことに今の状態といたしましては、通貨が相当膨脹しておるのでありますから、やはり健全財政をとるよりほかにないというので、五百億円の外為への繰入れを決意したわけであります。
  195. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はそれでは別な観点からお伺いしたいと思うのでありますが、ドツジ氏並びに池田大蔵大臣は、しばしば日本の産業資金のまかない方は国民の資本蓄積において求めるのだ、こうおつしやつたのでありますが、今日の状況においてはたして国民の資本蓄積というものが生れて来るが、あなたの期待されるように民間の蓄積資本において産業資金がまかなえるかどうかという点をひとつお伺いしたい。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 これは国民の蓄積資本において相当まかなわれておるのであります。午前中安本長官から言われましたように、あすは多分お手元に上げ得ると思いますが。銀行預金も相当ふえております。それから株式社債の方も伸びて来ております。また法人関係について申しますと、私は二十五年度で七、八百億円の資本蓄積ができているのではないか。これは御承知の通りに非常に好況でありまして、再評価によります償却もできますし、また積立金も相当ふえまして、二十五年度もやはり七、八百億の資本蓄積ができる、着々資本蓄積は達成せられ、つつあると思うのであります。ただ今の状態では十分でございませんので、財政演説で申し上げましたような手を打ちまして、できるだけ旨い機会に資本の蓄積をいたしたいという計画で進んでおります。
  197. 西村榮一

    西村(榮)委員 蓄積資本が七、八百億円もできる、銀行預金もふえているということは、どこから御計算になつておりますか。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 これはごらんの通りに銀行預金は相当ふえて、貸出しもふえております。それから今の資本蓄積七、八百億というのは、会社、法人の分でありまして、非常な利益を昨年の九月決算期等にあげまして、償却が、大体われわれの見込みでは、三百五、六十億の償却ではなかつたか。それから積立金の増加、内部留保の方がやはりその程度のものがあつた、こういう数字が出ておるのであります。
  199. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は国会における答弁は、大蔵大臣はもう少しく正直に願いたい。一体どこに銀行預金がふえておりますか。四、五日前の銀行局長説明によりますと、昭和二十四年四月から十二月までに預貯金のふえたのが三千百九十五億円、昭和二十五年四月から十二月までに預貯金のふえたのは二千八百八十六億円で、前年度の九〇%に及ばなかつた説明られておる。あなたの統計によつてどこに預貯金がふえておるか、どこに資本蓄積の根拠があるか、承りたい。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行局長の申しました二千八百億円というのが、預金がふえておるのであります。
  201. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは銀行局の統計ですよ。あなたの方で資料の提出されたこの統計によると、昭和二十四年四月—十二月までにふえたのは三千百九十五億円、昭和二十五年四月—十二月まで同期間中にふえたのが、二千八百八十六億円でありまして、ふえた率は前年度の九〇%に及ばない。私はこれを言うのです。通貨の増発が約三十二、三パーセント、特需景気において景気は上昇しておる。物価は三〇%騰貴しておる。経済規模が大きく広がつて来ておる。しかるにかかわらず、銀行預金は前年度の九〇%に及ばないということは、同年度の通貨の発行量から申しまするならば、これは七〇%であります。一体どこに銀行預金がふえたと言われるのか。正直にものをおつしやい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十五年の一月銀行預金の計は七千六百九十七億百万円でございました。しかるところ十一月には一兆四十五億一千七百万円に相なつております。これが預貯金のふえた数字であります。
  203. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからばお伺いしたいのでありますが、昨日配付された大蔵省からのこの統計はうそなんですか。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 よくお読みくださつたらわかると思いますが、二千八百億円というのが増加額であります。これは昨年の三千百億円ほどにふえませんでしたが、二千八百億円の増加額でありますから、ふえたというのです。
  205. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたは預金がふえたとおつしやつた。大蔵省の統計で示されたのは、増加率は九〇%です。問題は昨年の一年間に鉱工業生産の増加は三八%です。国民所得は九%増加している。通貨の発行量は一九%増大しておるのにかかわらず、預金の増加率は、大蔵省の統計によると九〇%にしかとどまつていない。しかも私から申しまするならば、昭和二十四年は経済の不安定の時代だとあなたは言つた。通貨の不安定の時代だと言われた。昭和二十五年度に入つてわが池田勇人のためにとあなたは大みえを切つて、わが輩の努力によつて通貨は安定し、経済は再建されたのだと演説された。経済は再建され、通貨は安定しておるのにかかわらず、しかも生産は三八%に増大して資金の移動が多くなければならぬのにかかわらず、国民所得は九%増大し、通貨の発行が増大しておるのにかかわらず、預金が九〇%にとどまるということは、明らかに国民の蓄積資本がそこに枯渇しているということを意味するのではないですか。どうなんです。それでもあなたは七、八百億円というものがふえたとおつしやるのですか。
  206. 池田勇人

    池田国務大臣 事柄をはつきりいたしたいと思います。生産の増加、通貨の増加もありますが、預金が二千八百億ふえたならば、前年の預金に対しまして何割ふえておりますか。それでやつてもらわなければ困る。昭和二十四年につきましては、通貨の安定で非常にふえて参りました。そのときまでに及びませんが、二千八百億というのは純増であります。しかして一年間に七千六百億円というものか一兆億円になつた。その割合は何になりますか。こういうことでやつていただかなければ、片一方は前年に比べての増加をやるし、片一方は前年の増加額と増加額とを比較してやる、これでは私はりくつに合わぬと思います。
  207. 西村榮一

    西村(榮)委員 大分苦しいような御答弁ですからこの程度にしておきましよう。池田君が広島市で演説しているとき、私は郡部で演説して、広島の選挙では勝つたのですから、これ以上追討ちをかけることはやめておきましよう。(笑声)  そこで資本蓄積の問題に関連してお伺いいたしたいと思うのですが、きようも午前中川崎君が触れたのですが、東京銀行の銀行債の発行の問題でありますが、私が記憶するところによりますと、銀行の債券発行に関する法律案として債券発行を認められたのは——法律の名前は、銀行等の債券発行等に関する法律案ということでありますが、大蔵委員会における質疑応答の経過にかんがみ、かつまたその法律案の含みというものには、勧業銀行、興銀、並びに北海道拓殖銀行等というふうな特殊銀行が、長期資金をまかなうために、これに銀行債券発行の権限を與えるのだ、しかして一般市中銀行は大体に許可しないのだというふうな含みを持つて、あの法律案というものが制定されたと私は考えておるのでありますが、いかがですか。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕
  208. 池田勇人

    池田国務大臣 含みという問題でございますが、私は法律上できることだし、またした方がよいと考えましてやつたのでございます。あのときも、一切普通銀行には発行させないのだという約束をいたした覚えはございません。
  209. 西村榮一

    西村(榮)委員 含みというのは水かけ論ですが、しからば金融政策の問題から一応お伺いしたいのでありますが、特殊銀行というものは、従来も主としてそうでありますし、今日の産業界における任務は長期における設備資金、あるいは今日はなかなかやらないのでありますが、農村関係における不動産金融を主として、特殊銀行は長期資金をまかなう、一般市中銀行は短期の商業資金をまかなうというところにおいて、特殊銀行と市中銀行との一つ特色のある金融政策がそこに行われて来た、こう思うのですが、いかがでしよう。
  210. 池田勇人

    池田国務大臣 特殊銀行というのはどの程度にいつておられますか、農林中央金庫、商工中金は特殊のものでありますが、ただいまは勧業銀行、日本興業銀行は特殊銀行になつていない、普通の銀行であるのであります。ただ実質的にどうかと申しますと、昔から長期の金融をやつている。そこで普通銀行になりかわつたあとにおきまして、ことに日本興業銀行は長期金融になれている、こういうことだけであるのであります。しかしてあのときに、そういう昔の特殊銀行が債券を発行するだろうということを予定いたしましたのは、預金が少くて、拂込資本金が相当あるということで、余力が一番多い、こういうことであつたのであります。
  211. 西村榮一

    西村(榮)委員 法律上、特殊銀行と市中銀行の区別は戰後撤廃されたことは私も知つている。しかし何と申しましても、これは伝統的に持つその店の特色として、長期の資金を扱うのか、あるいは短期の商業資金を扱うのかということは、画然と区別されておる。従つてこの法律の適用されたのも、そういうふうな長期資金をまかなう銀行にこれを主として認めるということであつたのであつて、万一もしもあなたが言われるように、今日一般の銀行にもこれを適用するということであつたら、銀行債の発行というものは、大いに趣を異にしている。これは証券市場と金融業との業務の区別をしたときの趣旨からいつても相反するのでありまして、ここに市中銀行の短期資金と長期資金との混淆が起きて来る。そこで私があなたにお伺いしたいと思うことは、そういうふうな現実の各銀行の持味、特殊性というものを無視して、短期金融、商業金融を取扱う東京銀行だけに許可されて、他の方面については抑圧的な態度をとられたということについてふに落ちないのですが、いかがでしようか。
  212. 池田勇人

    池田国務大臣 私は東京銀行の発行いたしました一年の短期の債券は、大体定期預金的の性質を多分に持つていると考えておるのであります。従つてこれを大銀行が出しましようとも、また地方銀行で出しましようとも、原則的には私は断るつもりはございません。それからけさほども申し上げましたように、日本勧業銀行、日本興業銀行につきまして、短期債の発行をさしとめるような言動があつたとかいうので、それはやめろということでやめさせたのでありまして、みな同じスタートに立つて行かしたいと思つております。それから午前中も、各銀行が非常に反対しておるというようなことがございましたが、私の知る範囲内におきましては、あまり反対はないと思います。ただ一度にたくさん出しますと、金融の、何といいますか、混乱とまでは行きませんが、横流れ等が非常に行われると困るから、その限度につきましては、ある程度制限したいという気持を持つておるのであります。
  213. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこういうことは言いたくないのだが、なぜ長期資金をまかなう——しかも今は日本の産業界は、設備改善の長期資金と農村における不動産を担保とするこの特殊金融というものが非常に飢えておる、飢えておるが、これを満たす金融状況になつていないというので、従来そういうふうに扱つて来た銀行が非常に困つておる。しかるにそういうところに銀行債の発行を許可せずに、ひとり東京銀行だけに許可されるということについては、世人はなかなか納得が行かない。そこでこの問題のなぞを解くかぎといたしまして、こういうようなことが伝わつておるのです。私はこれは言いたくないから言わなかつたのですが、この本末転倒の金融政策というものは、浜口東京銀行総裁が白洲氏を訪問されて、白洲氏のあつせんによつて大蔵当局が即座に許可されたといううわさが一般に伝わつておるのでありまして、おそらくそういうことはないと思いますが、その真偽のほどをひとつ承りたいと思います。
  214. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことは私は存じません。西村さん御存じの通りに、届出になつておるのであります。だから今後もそういう考えを持つ銀行がありますれば、金融に非常な惡影響を及ばさざる限りにおきましては、私は認めて行くつもりでおります。
  215. 西村榮一

    西村(榮)委員 それはうわさでありますから、いろいろ聞いておりますけれども、これは日本政府の名誉のために、あまりそういう町のうわさは言わないことにいたしましよう。  そこで次にお伺いいたしたいと思いますことは、インフレーシヨンに対する対策であります。ドツジ氏は、先般来朝されましたときに、日本になおインフレーシヨンの要因は去つていない。特に朝鮮事変以来、その危險は増して来た、こう述べられておるのであります。大蔵省の銀行局長も年度末には四千億に達するだろうというふうなことで、非常にインフレーシヨンを懸念されております。大蔵大臣もまたそれに対する非常な危機を感じておられるようにいろいろ御説明を承つておるのでありますが、大蔵大臣はこの国際情勢、国内情勢をごらんになつて日本インフレーシヨンに対してどういう見通しを持つておられるか、しこうしてそれに対して一体財政当局としてどういうふうに対処して行こうとするか、この点を承りたいと思います。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今のところ、日本インフレーシヨンの段階に立つて、非常に憂慮すべき状態であるというふうには考えておりません。しかし何分にも世界情勢変化を受けまして、物価も相当上りつつあります。通貨もかなりふえて参りました。従いましてはやりこの際は均衡予算で行くべきである。そうして物価の上り方をできるだけ抑えて行こう、通貨の信用を増して行こう、こういう考えで進んでおります。
  217. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると大蔵大臣は、インフレーシヨンに対する懸念は大してない、こうお考えになつておられますか、
  218. 池田勇人

    池田国務大臣 大してないとか、大してあるとかいう程度の問題ではありません。私はそう憂慮すべきほどの問題ではないが、しかし財政演説でも言つておりますように、外国の物価の上り方と日本の物価の上り方を比べますと、日本の物価の上り方が今のところ少し強いようであります。これは日本経済の脆弱性から来ることでありますが、私はそういうことをなるべく緩和して、あまり物価が上らないように、そういうふうな考え予算その他も編成いたしております。
  219. 西村榮一

    西村(榮)委員 ところが現実において、物価が上らないようにという努力をされておるにかかわらず、通貨が増発されて物価が現実に上りつつある。この現象を大蔵大臣はどうごらんになりますか。
  220. 池田勇人

    池田国務大臣 これは世界影響を受けまして、ある程度上ることはやむを得ない。上るから心配だということで、無理な手で押えることはいたしません。原因に日本経済の脆弱性と、輸入がまだ十分に行われなかつたということ等から来るのでありまして、そういう原因を早急に是正して行くよりほかに道はないと思います。
  221. 西村榮一

    西村(榮)委員 物価を無理に押えぬということでありますが、しからば物価の上つて行く原因並びに通貨が増発されて行く原因は一体どこにあるでしようか
  222. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の上つて行く原因は、世界的の情勢に順応しておるのであります。それから通貨増発の原因は、主として生産の増強、経済規模の拡大によることが多いと思います。ただ輸出入関係におきまして、相当の信用の造出を日本銀行はやつております。これは認めなければなりません。
  223. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからば問題は、世界的な影響と、日本経済の脆弱性から来る物の不足、それから通貨の増発、今の大蔵大臣の御答弁によりますと、この三つがインフレーシヨンの原因のように見えるのでありますが、しからば問題は、通貨の増発の一大原因というものはどこにあるかというと、ドルの手持ちが非常に不自然に多いということ、それから日本経済の脆弱性を改革する何らの手が打たれていないということ、言いかえますならば、民間の蓄積資本を枯渇する対策をとる、すなわち五百億円の吸上げ、見返り資金を放出してないというふうなところに、私は原因しておるのではないかと思うのでありますが、これを一体どういうふうにして改革されようとするのでありますか、承つておきたいと思います。
  224. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたのお話は逆でございまして、私は見返り資金債務償還を本年やめたということ、日本銀行のいわゆるユーザンスも、二千億以上も出ております、従いまして預金部資金見返り資金の方は、使わずに置いておいて、日本銀行の信用造出のてこにしよう、こういう考えであるのであります。しこうして昭和二十六年度におきましては、見返り資金もある程度引揚げ超過になつておりますが、預金部の方で二百五、六十億円の散布超をいたします。そうして一般会計、特別会計を通じまして大体盛り込んで行こうといたしておるのであります。日本銀行から輸出入関係で相当のユーザンスをやつておる。そうして民間の資金が足りないからというので、見返り資金をどんどん使う、預金部の金をどんどん使うということになりますと、非常な通貨の膨脹になつて来るのであります。そこで民間の資本が十分ではございません、非常に窮乏ではございますが、やはり日本銀行の信用造出と政府資金を一体として私は考えておると言つておるのであります。
  225. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、今の答弁によりますと、見返り資金もこれは将来のてこ入れのために使わずに置いておく、同時に五百億円の一般会計からの繰入れも、これもインフレ対策だ、こういうふうに先ほど来御答弁になつたのでありますが、そうすると私がふしぎに思うことは、一面において五億二千万ドルを見返りとして二千百十億円というものが増発されておる。見返り資金は片方にある。しかも吸い上げて五百億円を別に積み立てる、こういうようなことになりますと、日本財政というものはきわめて大金持になつてしまう。私はこれを考えてみると、あたかもちよどこじきが大金を抱いてまさに餓えんとするような状態ではないか。この状態が続きますならば、私は非常なデフレーシヨンの傾向になるか、惡質なインフレーシヨンになるかどつちかで、日本経済はデフレーシヨンとインフレーシヨンのはさみ撃ちになるのでありますが、大蔵大臣はこの厖大な財政資金を一体何のためにため込まれておるのであるか。これはなぞです。見返り資金を民間の産業設備資金としてどんどん出すとか、あるいは五百億円の吸上げを減税に向けるとか、あるいは手持ち材料を輸出輸入という態勢でお買取りになるということであれば、今日の日本経済というものは一変しているにもかかわらず、それをなさずに、金ばかりためておいて物はどんどんなくなる。五億ドルの手持ち資金というものは、日本の品物が出て行つたことなのです。品物がどんどんなくなつて行く、物がなくなる。腹はひもじくなるが預金だけはふえて行く、こじきの預金からもなお五百億しぼりとろうとする財政政策というものは、どこに目的があるか、はつきりその目的をお示し願いたい。
  226. 池田勇人

    池田国務大臣 五億ドルたまつているのは、政府の財産じやございません。それから見返り資金や預金部の金を今ただちに放出せずに置いておきますことは、片一方日本銀行の信用の造出が——これは輸入をはかりますために、また輸出のつじつまを合せますために、相当の信用の造出をいたしております。御承知の通りに昨年の今ごろに比べまして八、九百億円の通貨の増でございます。それに加うるに、見返りからどんどん金を出したり、預金部から出すということになりますと、千四、五百億円とか、あるいはそれ以上の通貨の増になつて参りますので、今のところ見返り資金、預金部の使い方につきまして、相当注意深くいたしておるのであります。
  227. 西村榮一

    西村(榮)委員 五億二千万ドルというのは、政府の財産ではないとおつしやつたのですが、これはお説の通りです。しかし日本の財産です。これは日本国民の財産です。日本国民輸出した代価です。日本国民の汗とあぶらの結昌がこの五億二千万ドルです。これを活用せずして、一体政府財政当局として、その責任が果されておるかどうか。先ほど申しましたように、今五億ドルというものは輸出輸入という態勢をとれば、それでそろばんが合うのであります。半年ずれがあれば原材料は二割、三割上つておる。船賃が倍になつておる。国民に非常な損失を與えておる。これは国民に財産の信託を委任されておる政府の任務としては、きわめて怠慢であるといわざるを得ない。なぜこれを活用されないのか。同時にそこにインフレーシヨンを克服し、デフレーシヨンの危機を解決する要諦があるにもかかわらず、それをなぜなさないのか。なぜ原材料を買わないのか。見返り資金をなぜ使わないのか。こういうことについて御説明を承りたい。
  228. 池田勇人

    池田国務大臣 外貨の問題と国内金融との問題を混同なされないようにお願いいたしたいと思うのであります。五億余りの増も、これは輸入信用上のもとをなすもので、決して遊んでおるものではありません。しかしこれだけなくてもよいということは言えましよう。従いまして輸入が遅れているので、先般来各大臣も言われておりますように、輸入促進の方策を講じつつあるのであります。
  229. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは国内金融の問題だけに話を限定いたしましよう。  今日本経済は通貨が非常に増発されて、物価は非常な上げ足をとつている。しかも品物が不足して来ているというところに非常なインフレーシヨン招来の危機がはらんでおる。同時に民間は非常に金詰まりである。ところがどう抗弁されても預金の増加率は前年度の九〇%にしかならない。通貨の発行量は一九%ふえたにかかわらず、預金の増加率は減少しておる。しかも通貨が安定せりと呼号している中に、預金の減少というものは、明らかにデフレーシヨンの危機もまた含んでいるといわなければならないのでありまして、民間の産業資金の飢餓的状態をどうして解決して行こうとされるか。これを一応承りたい。
  230. 池田勇人

    池田国務大臣 預金の伸びが同じパーセンテージに行かなかつたということにつきましては、われわれ認めます。しかしそれは資本の蓄積その他あらゆる処置を講じてやつておるのであります。預金におきましては、二千八百億円の増加というのは、まあまあというところだと思うのであります。しこうして民間の資金が不足している、こういう問題でございますが、これはもう財政演説で申し上げましたように、ほんとうにこれは日本が戰争に負けたために、資金の不足をしておることはやむを得ない。そこでわれわれはできるだけ早い機会に資金の蓄積をやろうというので、先般来申し上げているようないろいろな策を講じておるのであります。
  231. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は国内金融の問題に関連して大蔵大臣にお聞きしたいと思うことは、今日のオーバー・ローンの解決であります。これは非常に昨年の秋から日本銀行が市中銀行に赤信号を出しまして警告いたしておるところであるのであります。市中銀行も、この日銀の警告に従つて産業資金を締めておるのであります。このオーバー・ローンの問題の解決について、大蔵大臣は何か御対策があればひとつ承つておきたいと思います。
  232. 池田勇人

    池田国務大臣 オーバー・ローンの問題でありますが、これは預金に対して貸出しがどうかという割合を主としていわれておるようであります。また半面では日本銀行の貸出しの増が非常に多い、こういうことがオーバー・ローンの話題の中心になると思うのでありますが、一時日本銀行の貸出しは千六、七百億円であつたのが、最近では千億円程度に相なつて来ました。きのう、きようは千五、六十億円ぐらいかと思うのでありますが、一時よりは六、七百億円減つて参りました。しこうして今度銀行自体で預金と貸出しとの割合、そうして昔で申しますと、預金に対しまして貸出しは大体六〇%が六五%、このごろでは九四・五パーセント銀行によつては一〇〇%以上になつているところもあるようでありますが、これは日本の今の状態が国債は発行いたしませんし、社債の伸びが惡い、……こういうようなことであります。昨年度の社債は四百億円くらいでありましたが、今後も一般市中銀行の貸出しを社債に振りかえるとか、あるいは一般の会社を増資させて借金を拂う、こういうように徐々に私は是正して行きたいと考えておるのであります。どうしても資金が絶対的に窮乏しておるのでありますから、オーバー・ローンという問題もそう心配のないうちに改めなければならぬ、こういうような気持を持つております。徐々に改善されて行くと思います。
  233. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの際、これはりくつじやないですが、大蔵大臣にひとつ提案をしたいことは、日本のオーバー・ローンというものは、日本の資本主義の後進性に基く特殊性でありまして、昨今に始まつたものではないのであります。明治二十年には大体貸出し超過が一六〇%、明治三十年において一三〇%、これが漸次欧州大戰後における民間資本が増大して、このオーバー・ローンが解消して太平洋戰争の最中においては、大体預金の六一%前後かになつてつた。ところが戰後大体において七、八割の財産がなくなつて、しかも資金需要が旺盛になつて来たというところに、一つのオーバー・ローンの現象が起きた。これは日本の特殊性なのです。そこへ持つて来て、いろいろあなたの御手腕によつて国民税金はどんどんしぼられた、こういうことにもなる。そこで問題はこの産業資金をどうまかなつて行くかということを考えてみると、私は今日の公債の保有高並びに日本の銀行貸出しの超過というものは、そんなに恐るべきことではない。ところが日本の公債というものが非常に少いということを考えてみまするならば、ここに新しい日本産業の再建に要する長期設備資金といたしまして、二千億ないし三千億円の生産公債と申しまするか、建設公債と申しまするか、そういうふうなものの発行の余力が、まだ日本の国際信用の上にあるのではないか。そこで、今まであなたはしぼれるだけしぼつたのですから、これからひとつ罪滅ぼしに二千億円なり三千億円の生産公債というものを発行して、それで今日の危機的状態にあるところの民間の長期資金をまかなうということにひとつお考えを願つたらどうか、こう思うのですが御感想はいかがでありましようか。
  234. 池田勇人

    池田国務大臣 財政金融の施策はよほど愼重にいたさなければなりません。いかにも景気のよいような話でございまするが、私はもう少し日本経済の基礎が向上し、よくなつて来たならば、そういうことも——そう二千億、三千億はだめでございますが、ある程度のゆとりをつけたいと思つております。ただ国債が外国に比べて少いからもつと出していいだろう、出すのほ民間の蓄積資金を集めてやるならよろしゆうございますが、日本銀行に公債を持たせて、それを使うというのは、また敗戰直後のようなインフレになりますので、私は避けなけばならぬ、よほど注意深くやらねばならぬと思うのであります。
  235. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたのお言葉によると、将来安定したらそれは考慮の余地がある、こいうふうに解釈してよろしいか。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカのことを申し上げて恐縮でございますが、実は向うなどは国債の発行は二千七百億ドルを国会の協賛を経て、そうして実際私参りましたときは二千五百五十億、百五十億くらい発行余力がある。赤字財政で当初予算は御承知の通り四百二十四億ドルの歳出で、三百七十二億ドルの歳入、五十億ドルの赤字である。こういうことであつてもアメリカはびくともいたしません。しかし日本はそうは行かない。だから私は何もアメリカのまねをすぐしたいというのではありませんが、そういうふうな少々赤字をやつても、びくともしないような経済日本を持つて行きたいというのが理想なのであります。しかし今はそれはできません。私かよく言うておるのでありますが、今ようやく病気が、なおりかけておるのでありますから、うまいものがあつたからといつて、すぐそれをむちやくちやに食うわけに行かない。よほど注意深くやらなければなりません。しかしからだがよくなつて来れば、少しは食い過ぎもできると思います。
  237. 西村榮一

    西村(榮)委員 賢明なる財政池田勇人氏の今の卓見に対して、私は敬意を表するものであります。しかしあなたのやられることは、回復期の病人に栄養を與えるということではなしに、ようやく回復しようとする病人に向つてむちでひつぱたいて、なおしぼりとろうとするのが、あなたの財政政策の現実だということをお考え願いたい。そこで今私はあなたがアメリカの例をとられたから、私もまたアメリカの例を申しますると、アメリカは今日国民所得が二千三百六十四億ドルに対しまして公債の保有高は二千五百億ドルです。これは国民所得に対して一〇七%です。イギリスの公債保有高は国民所得に比しまして二五七%です。日本の今日の公債保有高は五%を切つております。ほとんどゼロに等しい。私が言うのはここなのです。これを戰前に比較しますと、戰争以前においては、昭和九年から十一年までにおいて、日本国民所得に比して公債の保有高は、実に七二%でありました。これが戰後において財算が全部なくなり、そうして国土を再建しなければならぬ。資金の需要が旺盛なるこのときにおいて、公債の保有は五%を切つておる。そこで私は名医池田先生にお伺いしたいのは、あと五%をふやして、これを国民の栄養として注入するならば、今あなたが憂えられる国民体力というものはまことに旺盛になつて、あなたが税金をしぼられるのに都合がよくなるのではないかと思うのでございますが、いかがでありますか。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 仰せの通りに、アメリカは国民所得に対しまして、国債が上まわつておるのであります。今度も赤字をしますので、二千七百億ドルくらいになりましよう。日本は今国債としまして発行しておるのは、二千七百億円でございますが、その他の借入金等を加えますと、今年度の国民所得三兆二千億の大体五%でなしに、一割程度に相なつております。しかしお話通りに少いのであります。しかし借金が少いからといつて、もつと借金してやるとインフレーシヨンになります。それがあぶないのであります。だからよその国に比べて自分は借金が少いからといつてどんどん借金をすると、そこにぜいたく病が起きますので、よほど注意しなければなりません。
  239. 西村榮一

    西村(榮)委員 日本経済がぜいたくの起きるほどの状態ではないから、これはひとつあなたがお考えになりまして、生産資金のまかない方というものは、私はかりに建設公債、生産公債というものを申し上げたが、このまかない方については愼重に御考慮を願いたいということを希望して、この項目の質問を打切ります。  次に私はあなたにお伺いしておきたいと思いますことは、今日の日本経済の立ち上りというものは、これはもうABCでありますが、民間の産業を発展せしめなければならぬ、同時にそこに完全雇用態勢を確立いたしまして、国民生活の向上を期せなければららぬ、それには何というても資本がいるのでありますが、資本は今は飢餓状態です。そこで私は今の建設公債の一例を申し上げたのでありますが、その建設公債も一応に入れておいていただくとともに、問題になつておりますものは、民間の蓄積資本を増大し、国民経済を豊富にするためには、何と申しましても産業資金を出すのと、減税をしなければならぬ。減税もするし、産業資金も出すという財源は一体どこにあるか、そんな重宝なものはございません。そこで私はあなたにお伺いたしたいと思うことは、今日の国民経済というもの、あるいは税金の多くを食つておる終戰処理費は、節減の余地はないのかあるのかということをひとつ承わたい。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 終戰処理費はできるだけ少いことを望んでおるのでありますが、ただいまのところ関係方面との折衝では御審議を願つておる金額でおちついておるのであります。昭和二十四年度におきましては、御承知の通りに千二百億円余の中で、百数十億円の剩余金が出ました。今年度におきましては、そうは出ないかとも考えております。これは向うの終戰関係の方々の要求でございまして、われわれもそれを一応説明を聞きまして、この程度ならやむを得ないと考えておるのであります。
  241. 西村榮一

    西村(榮)委員 かりに講和條約が成立いたしますならば、その瞬間から占領軍費というものがなくなるはずなのですが、やはりそれらがなくなるものと解釈してよろしいか。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 せんだつて総理大臣がお答えになつた通りでございまして、私は何とも申し上げられません。普通ならばそれがほんとじやないかというような気がしておるのでありますが、はつきり申し上げられません。
  243. 西村榮一

    西村(榮)委員 休戰條約によつて占領軍費というものは講和條約の成立までは日本国民の負担でありますから、講和條約が成立いたしまして占領状態がなくなれば、この占領軍費というものは当然なくなるものだと私は確信いたしております。従つて大蔵当局といたしましては、あまり気がねすることなく、日本国民財政と同時に、法律の條文に従つて、この問題を処理されんことを希望しておきたい。同時に私はこの際お伺いしておきたいと思うことは、この終戰処理費の会計検査については、いかなる方法をおとりになつておるか。これはアメリカの国法に従つておやりになつておるのか、日本の会計法に従つておやりになつておるのか、どちらですか。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 講和條約の後におきましては、遠慮なしに私もやつて行くつもりであります。終戰処理費の会計につきましては主計局長より答弁いたします。
  245. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 お答え申します。終戰処理費の支出は、主として特別調達庁がやつておるわけであります。関係方面のPDとかLRとかいうものがありますが、そういうような調達要求書に従つて、特別調達庁が日本の会計法規に従つて支出をいたしておるのであります。
  246. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、会計検査の方法日本の会計検査法に従つてつておる、こういうことですな。だが問題がそこに残つておるのは、GHQから要請された要求書に対して、これを査定する権限が日本にあるのかどうか。
  247. 池田勇人

    池田国務大臣 向うのあれによりまして、われわれは妥当であるという結論になりましたら、御審議願うことにいたしておるのであります。
  248. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはきめて厖大な予算を組んであるのであります。特に私がふしぎにたえないのは、日本財政法において、予備金の多額の計上というものは差控えておるのであります。従つて予備金というものをたくさん計上することを日本一般会計において禁止しておる結果は、先ほど私が大蔵大臣にお尋ねしたように、三百二十万トンの食糧を輸入せねばならぬ、その数量を輸入せんと欲するならば、二割、三割、四割高くなる食糧を輸入し、かつまた倍、三倍になる船賃によつて運ぶことにおいて、食糧補給金を増加する新しい追加予算を組まねばならぬのではないかということをお尋ねしたのであります。それが予備金が豊富にありまするならば、追加予算でなくとも、それを含みとして審議すればいいのでありまするが、それがないから、私は将来を見通してお尋ねしたのでありますが、大蔵大臣の率直なる御答弁がなかつたことは、はなはだ遺憾であります。ところが終戰処理費昨年度の千二百億を見ますると、ここに私どもの了解に苦しむ費目がたくさんあります。雑労務費二百九十七億円、諸費百十七億円、これは一体何かと事務当局に問い合せてみますると、予備金的な性質のものであるというのであります。全予算費目の約一割に該当するものが、予備金の形において、諸費ということで、百十七億円というものが一括処理されている。日本の失業対策、厚生施設等を見まするならば、この費目がいかに厖大なるものであるかということに驚き入らざるを得ないのであります。そこで私が大蔵大臣に提案したいと思いますることは、終戰以来今日まで、この終戰処理費の莫大なる支出をして来たのでありますが、ここに日本国会は、終戰処理費の会計支出に対しまして、特別調査委員会を設置いたしまして、その支出が適当であるのか不当であるのか、あるいは節減の余地があるのか、あるいは増額しなければならないかということについて特別調査委員会を設置することを私は提案したいのでありますが、大蔵大臣はいかにこれをお考えになつておるか。
  249. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国会でこの予算案を御審議いただければけつこうじやないかと思います。支出後の問題につきましては、先ほど答弁したように、おのおのの機関で適当にやつておるのであります。
  250. 西村榮一

    西村(榮)委員 おのおのの機関で適当にやつておらないから、私はそれを提案する。と申しますることは、この千二百億円という負担は、国民にとりましては非常な負担である。これは御承知の通りである。そこで問題は、私は日本のことは差控えますが、日本においてはそういうことはないと思いますが、昨年の秋ドイツにおいては、この終戰処理費の重圧のために、ドイツ国民は非常に困りました。そこで西ドイツがこれに調査機関を設けました結果、三割の節減が可能となつた。これはアメリカ当局も認めた。調査の結果占領軍一人について、ドイツにおいてはドイツ人の使用人が四人平均で、その中には——ここに購買費というものが莫大に見積られておるのでありますが、ドイツにおいては調査の結果、購買する中央に、必要欠くべからざる物ということよりも、むしろ銀の食器であるとか、その他贅沢な支出が続々発覚されたのであります。従つてドイツの国会政府あるいは民間との合同における調査の結果、ここに終戰処理費三割の節減が可能になつたということは、ドイツの例において証明しておる。私が今あなたにお伺いしたいのは、講和條約の成立とともに、この費目は当然なくなるものだと確信しておるのであります。しかし何らか形をかえてこれが存続するといたしまするならば、日本政府において、あるいは日本国会において手のつけられない費目が存在するということは、国会の自主権の立場からいつて、かつまた国民の生命財産を預かる政治家として、これは黙視することはできません。従つて日本においては、ドイツのようなことはなかろうとは思うけれども、節減の余地があるのか、増額しなければならないのかということを調査する必要があると私は思うのでありますが、大蔵大臣に重ねて御所見を承りたい。
  251. 池田勇人

    池田国務大臣 講和後の問題は別にいたしまして、ただいまのところ、終戰処理費千百億円の分につきましては、十分御調査を願いたいと思つて御審議を願つておる次第であります。
  252. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の申し上げるのは、終戰処理費予算の審議でなしに、決済方法についても審議したい、こういうわけなのです。それについて国会がひとつ調査機関を設けて、これに節減の余地があるのかないのかということを予算審議の前に調査することに、大蔵当局として賛成せられるかどうかということなのです。
  253. 池田勇人

    池田国務大臣 実態はよくわかりませんが、お話通りに、予算がきまつたあと、予算施行について御審議なさるというのでございますが、予算の施行につきましては特別調達庁がやつておるのでありまして、私の所管ではございません。ただ私は、国会が各省の予算の使い方につきまして調査会を設けて審議なさることが、いいか惡いかという問題につきましては、よほど検討を要する問題だと思います。
  254. 西村榮一

    西村(榮)委員 先ほど勝間田君も関連質問の中で述べられたのでありますが、今、日本財政政策の中に了解のしがたいものが多くあります。見返り資金の余裕金千億円、手持ちドル、円貨に換算して二千百十億円、外為資金五百億円の吸い上げ、その他外為資金に類するものが百四、五十億円の吸い上げ、こういうふうに一面において金を遊ばし、そして国民から吸い上げる。しかも国民財政資金、産業資金に塗炭の苦しみをなめておるときに、かような常識上判断のできない財政政策は、一体どこから生れて来るか。この大まかの線は、吉田さんが非常な熱弁をもつて説かれても、国民は得心しない。得心しないからこそ広島で選挙に負けた。講和会議によつて日本は政治的に独立いたします。けれども独立した後においても、なお金融の動脈を握り、外国軍隊が駐屯して、政治的にそこに一つ影響を及ぼすというふうな意図があるならば、そこに初めてこの財政政策というものは私は理解できるが、日本国民生活の安定と日本の産業の繁栄のための財政資金と産業資金というふうな点を考えると、普通の財政理論では、これは理解ができないのであります。そこで私はさようなことはないとは思いますけれど、大蔵大臣になおしつこいようでありまするが、だめを押しておきたいと思うことは、講和会議の後において外国の軍隊が万一駐屯して、政治的に大きな影響を與え、金融の動派を握つて日本の産業を支配しようというふうなことは、万なかろうとは思うけれども、この懸念のある財政政策の一貫の流れをここに察知して見ますならば、私は吉田総理大臣が豪語せられるように、現内閣は講和を担任する、こう言われておる。しからばあなたもひとつ健康に注意してもらつて、講和成立後の内閣の大蔵大臣として輝ける足跡を残してもらいたい、こう思うのでありまするが、ただそこには一つの條件がある。その條件は何かといえば、あなたの担任される財政金融政策の上において、将来の日本の完全なる独立の体制が整えられて、金融の上において、他の制肘を受けない、他国の制肘を受けないというふうに、講和條約の上において考慮してもらいたいということを、ひとつ私は希望したいのですが、あなたはそれをやつていただく確信がなるか、これを伺いたい。
  255. 池田勇人

    池田国務大臣 私の財政政策国民の支持を受けていない、従つて何とかというお話でございましたが、私はそう考えておりません。私の財政経済政策国民の支持を受けておると確信しておるのであります。かくいたしまして、日本は過去一、二年の間に非常によくなつて来た。これはあなたが何とおつしやつても、世界的にもう認められておることであるのであります。これは單なる一つの事象によつて独断をおやりになることは、こちらとしては困るわけであります。講和後の日本経済のあり方につきましては、お説まことにごもつともであります。そのときまで大蔵大臣として残つておるとすれば、とにかく微力ながら全身を打込んでやりたいと考えております。
  256. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は最後の問題に入りましよう。最後は簡單にお伺いしたいのでありますが、以上の財政政策を通じて、大蔵大臣国民生活というものが今日安定しており、なおかつ将来安定できるかどうか。これははなはだ愚問のようでありますが、一応お伺いしておきたいと思います。
  257. 池田勇人

    池田国務大臣 安定というのは程度問題でございます。先ほど申し上げましたように、過去二年間の国民各位の努力によりまして、非常に安定の度を加えて来ておるのであります。今後におきましても、この安定の度をますます強くしようというので、あなたとは意見は違いまするが、こういう予算をつくつて安定の度を加えようといたしておるのであります。その間におきましていろいろな問題が起ります。御承知の通りのような世界情勢でございまするが、われわれは絶対多数の自由党の支持を受けまして、強力に安定政策を遂行して行く考えであるのであります。
  258. 西村榮一

    西村(榮)委員 失礼だが、その自由党が選挙に刻々と負けておる現実は、雄弁に物語つておるのでありますが、本予算案において安定しておるかどうかということについて、私は最後の反省を大蔵大臣に促したいということは、あなたは減税によつて国民生活は安定したとおつしやるのでありますが、減税を受けたものは、勤労所得税、並びに酒屋さんが主であります。減税影響を受けておらない国民が大多数ある。そこで減税影響を受けておらない国民の中に、どういうふうな他の面において生活上の圧迫を受けておるかと申しますると、これは安定本部の統計によりますると、主食においては、八・九%の値上りをしておる。食糧の全般的な値上りは二〇・四%、被服においては一六%、光熱費においては九〇%、住宅費においては五一%、こういうふうな生活上の値上りを受けて、減税国民所得総体にいたしましてわずか三%であります。私はこの意味において国民生活は決して安定どころの騒ぎではなしに、逆に不安定の度を増しつつある。しかも民間の金融はますます逼迫しつつあるということを考えてみまするならば、あなたが御自慢になるような本予算案ではない。現にあなたの本日の御答弁によつていろいろな矛盾が出て来て、銀行預金はふえたと言われるが、減つておる。追加予算を出さねばならぬということが明らかにされて来たというところにおいて、本日のこの質問において、またあなたの御答弁において、本予算案の矛盾が暴露しておるのでありまして、私はこの意味において、国民生活はますます不安定化するということを申し上げて、本予算案の再考を促しまして、質疑を終る次第であります。
  259. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 安本長官はよろしゆうございますか。
  260. 西村榮一

    西村(榮)委員 安本長官と通産大臣と運輸大臣と、関連して私は質問を申し上げておきます。ただ私はこの際申し上げておくが、安本の発表される統計を、ときどき大蔵大臣がまつこうから否定される。これは安本長官の権威の問題です。権威ある大臣として、自分の省が出す統計を、同じ閣僚が否定するというようなぶざまなことは、これからおやりにならぬように、周東長官の名誉にかけて、ひとつ大蔵大臣に交渉なさいということを申し上げて、私の質問を終ります。
  261. 周東英雄

    ○周東国務大臣 西村さんの御注意ははなはだありがたい次第でありますが、決して大蔵大臣は否定をしておるわけではなくて、一つの統計が、今後における見通しにつきましては、非常な激動する国際情勢の中にありますので、いろいろ見通しについては、見方が違う点もあると思います。しかしこの点は、絶えず連絡をして精査しておりますから、御安心をしていただきたいと思います。
  262. 小坂善太郎

    ○小坂委員長 本日はこの程度にとどめまして、明後五日、午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十八分散会