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1951-02-01 第10回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月一日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 橘  直治君 理事 西村 久之君    理事 川崎 秀二君 理事 林  百郎君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    坂田 道太君       塩田賀四郎君    島村 一郎君       鈴木 正文君    玉置  實君       苫米地英俊君    永井 英修君       中村 幸八君    松浦 東介君       松本 一郎君    南  好雄君       井出一太郎君    北村徳太郎君       平川 篤雄君    松本 瀧藏君       勝間田清一君    川島 金次君       戸叶 里子君    西村 榮一君       水谷長三郎君    砂間 一良君       横田甚太郎君    小平  忠君       黒田 寿男君    小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         労 働 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度一般会計予算  昭和二十六年度特別会計予算  昭和二十六年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  本日は国務大臣出席の都合もありますので、午前中は休憩いたしまして、午後二時より再開いたすことといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午前十時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十一分開議
  3. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより質疑を続行いたします。尾崎末吉君。
  4. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 国民があげて待望する講和條約が刻々に近づきつつある今日におきまして、その講和條約に関する基本的なものの中から、最も大きな問題と思われる七つの問題について、吉田総理大臣に御質問参を申し上げます。  その七つの問題とは一、終戰当時日本降伏條項に関すること二、全面講和か多数講和かの問題 三、軍事基地なるものの問題 四、再軍備の問題五、講和後における日本国連加入に関する問題 六、安全保障の問題 七、政治及び経済自主自立の問題であります。これらの問題は、従前から今日までの段階においてしばしば論議または希望せられたやり方を異にいたしまして、今日の段階におきましては、新しい趣と、きわめて重大な意義とを持つものであると信ずるのであります。すなわち国民はその胸中に持つところの希望を、米国を初め連合国に知つてもらいたいとこいねつておるのでありますが、今回の米国特使団ダレス氏もまた昨三十一日発した声明の中に、われわれは目下有益な相談を続けているが、この相談は、講和の性格を決定すべきことと信ずる諸原則を実際に適用する場合に助けとなるものであるものと言い、またわれわれは手元に提出された責任ある覚書の検討及びわれわれの会談から、決定に先行すべき知識を獲得しつつある。われわれは全日本国民が平和の再建に深い関心を寄せていることを知つている。私は本特使団意見を通達したあらゆる人々に対し、彼らが書いた事柄がわれわれによつて考慮されているということを保障したいとの、まことに喜ぶべき、しかも重要な事柄をも言われておるのであります。  そこでまず第一にお伺いを申し上げますのは、終戰当時日本連合国に対して降伏したその降伏條項につきまして、ポツダム宣言のみでなく、カイロ宣言その他も降伏條項であるかのごとく言うものもあるのでありますが、これに対する総理大臣の御見解をまず伺つておきたいと思うのであります。
  5. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。ダレス氏は、日本に対して講和條件を交渉するためではなく、日本側意見を聞きたいというだけの話でありまして、講和條約の内容についてあれこれ言つておられるわけではないのであります。それだけお答えをいたします。
  6. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 講和條約の内容に関する事柄以外で、さき申し述べました希望点等につきまして、おさしつかえない範囲で御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  第二は、従来全面的講和と、多数講和または單独講和との議論相当に闘わされ、全面講和論者人たちから受ける国民印象は、最初に多数講和または單独講和を結べば、その際後に残つた講和国々とは長く敵対行為でもとるものであるかのような錯誤に陥つておる者が多いようでありますので、この点に関し総理大臣お答えを伺つておきたいのであります。すなわち今日好意と親愛の情のもとにすみやかに日本講和を結ぶべきことを欲しない国がかりにありましても、日本の現状は、講和を一日も早く結びたいということを希望いたし、またそれを必要とする切実なものがあるのであります。他面、連合軍最高司令官マツカーサー元帥が述べられた言葉の中にも、日本は今や講和條約を結んで独立国家として自立し得る資格を備えて来ている実情であり、ダレス特使言葉の中にもこれが明らかとなつております。国際的な客観情勢によりましても、日本講和を結んで早く独立することを希望する国が相当あるように思われるのでありますので、これらの国々と、米国その他の好意あるごあつせんによつて早く講和を結びたい。ついてはでき得れば全面講和希望するのであり、アメリカその他もその努力を惜しまないように察するのでありますが、それができなければ、この際すみやかに日本講和を結び得る国々とこれを行いたいというのであつて、その後において最初一諸に講和を結ばなかつた国を敵対視するものでもなく、またされたくもない。残つたそれらの国々に対しましても、できるだけ最大の誠意をもつて、平和と人道文化の向上とを目ざす態度で、相互間の認識と好意とを深くすることに努しまして、将来なるべく早く講和を結びたいというのが、多数講和または單独講和の真意でもあり、事情でもあると信ずるのでありますが、国民のいわゆる誤解を解くために、この問題に対する総理の御見解を伺つておきたいのであります。
  7. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見通りであります。できれば全面講和と思いますけれども、これに同調しない国があれば、いかんともしかたありません。できれば全面講和で行きたいと思います。これは普通の常識でありまして、そうして日本国民としてもここに要望があると思います。
  8. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 第三は軍事基地なるものの問題であります。世上一部の人や一部の政党員などによつて論議をせられる軍地基地の問題に関しましては、現在これに関して関係国から何らの要求もなく、また問題となつてはおらないというのが真相であろうと思うのであります。もしまた万々一日本に帰属すべき島などを日本のために一時的に関係国軍事目的に使用することがありと仮定いたしましても、それは独立後の日本領土の主権を侵されるという筋のものではない。日本に対する侵略をはかるものがもしあつた場合に、日本独立を守り、ひいては世界の平和を確保し、人道を守るという好意と正義に立脚するものであると信じたい。その侵略のときにおいて昔の時代においては、侵略をしようという場合に、軍事基地を求めたというような先例は歴史の上にはあるようでありますが、今日においては全然これと趣きを異にいたしまして、かりに米国の場合を考えるならば、猫のひたいのような小さな日本領土または属国といたしたと仮定いたしましても、それによつて何ら得るところはなく、むしろ迷惑であります。やつかいなことばかりが生ずることは、十分察することができるのであります。従つて日本の一部を暫定的に使用することがあるとするならば、それは第三国日本を侵すような場合に、これを守り、かつ撃退するための足場にすぎないもので、その他に意味はないと信ずるのであります。われわれはこれに対しまして、平和国家文化国家としての目標のもとに、あとう限りの誠意ある義務を果すべきであると信ずるのでありますが、総理のこの軍事基地に関する問題に対する御見解を、あらためて伺つておきたいのであります。
  9. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま申す通りダレス氏は各界関係者意見を聞くという程度でありまして、具体的に軍事基地という問題は提案しておられません。しかしながら日本安全保障はどうするかという質問はありましたけれども、それに対して具体的に、お話のような軍事基地をどうするかというような問題は、私には提案されておりません従つてこれに対して私の答えも、具体的にどうこうということは申しておりません。かように事実の真相だけをお答えいたします。
  10. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 四番目はいわゆる再軍備論の問題であります。今日まで日本に再軍備ということの——仮想でありますが、仮想のもとに、それがよいとか悪いとかいう議論が行われておるのでありますが、これに対する総理の御所見伺いたいのであります。すなわちこの軍備、いわゆる仮想せられた軍備がよいとか悪いとかいう議論によつて相当国民をまどわしておるようでありますが、今は再軍備とかなんとか言うべき時期ではないのでありまして、いやしくも現在の憲法が存する限り、再軍備の計画や構想等があるはずもなく、ないのが当然であつて、ただ連合国側が、日本には自衛権を與えてはいけないとか、再軍備の権利を與えるべからずとかの條件をつけない方がよかろうというようなことを、米国その他の国の人々談話等によつて推測したり、新聞等が報じておるのをとらえて、一部の政党などが論じておるものであつて一言にしてこれを言えば、現在のところ再軍備などということは、われわれ日本国民が問題といたしておるのではなく、日本に対して、これを條約の上で制限しない方がよかろうという、米国その他の国々好意ある話のように思われるのでありますが、どうでございましようか。何らかの形による自衛権の強化のごとき問題は、もし講和相手国たちがこれを制限しなかつた場合、講和を結んで、国際世界に、日本が正常な姿で独立した後において、国民がこれを望むか、望まぬかの意思によつて決すべきものであると信ずるのでありますが、総理の御見解を伺つておきたいのであります。
  11. 吉田茂

    吉田国務大臣 再軍備論に対して、私の所見はすでに明らかにいたしたと思うのでありまするが、ダレス氏から私に再軍備をするかしないかというひざ詰め談判は受けたことはないのであります。しかしただ日本国民自負心から申してみて、いつまでも日本安全保障を外国にゆだねるということは、日本国民自負心がこれを許さないと思いますから、日本の安全は日本みずから守るということについては、この決意は、日本国民だれも私と同じうしておると思います。しかしながらそれがただちに再軍備になるかならぬかということは、ほかの問題であつて、私は軍備のみが日本を守るゆえんではない、こう考えます。これは私の施政の方針において申した通りであります。そこで今の再軍備論でありますが、これは私の私見としては、日本はただちに再軍備に入るということは、考えなければならない、軽々に考うべき問題ではないという持論については、私は今なお同じような意見を堅持いたしております。
  12. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 五番目であります。五番目は、国連加入に関する問題についてであります。最近講和気構えの中において、国民の一部にも、政党の一部にも、講和が結ばれれば、当然国際連合に加えられるものであるかのような誤つた考えを持つている者があるようであります。また国際連合は当然日本の安全を保障すべきものであるかのような議論をいたす者が相当にあるのは、誤つた議論ではなかつたかと思うのであります。国際連合には、国際連合の憲章の中にも諸種條件規約があり、これに加盟することはなかなか容易なことではないと思うのであります。もし米国等最大好意あるごあつせんによつて加入することができた場合においては、連合の一員として、当然守らねばならぬ規約、負わねばならぬ義務があり、これに対し嚴重にこれを履行できる用意と覚悟とを国民に求めておくべきことは必要なことではなかろうかと思うのでありますが、この点に対する総理の御所見伺います。
  13. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは国連考え方もあるのでありまして、国連がいかに考えておるかということは、私は正確なる知識は持つておらないのであります。これは相手方の出ようによつてわれわれが考えるという程度お答えをいたすほかにいたし方ないと思います。
  14. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 六番目は安全保障に関する問題であります。人道をもととする平和国家文化国家として立つべき日本に対して、講和後においてもし第三国侵略を企てた場合、これを防ぐための安全保障の問題に関しては、国民が最も心配をいたしておるところであります。この安全保障についても、全面講和の場合と單独講和の場合と異なることはもちろんであると思うのであります。すなわち多数講和の場合においては、残つた国との講和が結ばれるまでの暫定的なもので、有効かつ適切なものであることを希望いたしますし、全部の国々講和が成立いたしました後においては、恒久的なものとなるでありましようし、またわが国経済的に完全に自立するに至らぬ前と、自立できた後の場合と異なるでありましようし、ダレス氏の声明にも、今相談中の問題の中で最も大きな問題は、この安全保障の問題と、経済自立の問題であると言われでおるようであります。でありますから、これに対しておさしつかえのない範囲で、できるだけ総理の御所見をお伺い申し上げたいのであります。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話のような問題について、非常に詳細にダレス氏と話合いいたしておりません従つてお話のような問題に対して具体的にこう、あるといつてお答えするだけの資料を持つておりませんから、ただお話に対しては承つておくというだけのことを申し上げるよりほかありません
  16. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 この問題とあともう一問ありますが、この問題等に関しましては、どうぞ具体的のものでなくとも、いわゆる国民が最も関心を持つておる問題でありますので、おさしかえない程度総理の御所見けつこうでありますから、聞かしていただきたいと思うのであります。  第七番目は、政治及び経済自主自立の問題でありますが、先ほど申しましたように、講和に際しましても、講和後におきましても、日本経済自主自立の問題はきわめて重大でありますので、昨日も大蔵大臣安本長官等にも質問をいたしたのでありますが、この際総理からとの問題の基本的なものを伺つておきたいと思うのであります。  終戰以来米国その他から主食を初めその他の資材原料輸入、供給並びに対日見返り援助資金援助を受けて参り、国民の協力と相まつて、今日ようやく経済も安定の域に達し、国民生活も不十分ながら安定いたしかけて参つております。これらの援助資金を受けておりながら、強い自主性自立とを主張いたしましても、これは通るべきことではないと思うのであります。でありますから、対日見返り資金のごときも、これはいつまで日本に続けられるお見込みであるのか、あるいはまた早くこれを断ることができれば断つて、何らかの方法産業の復興、資金を求める方法はないかどうか、また現在以後連合国から賠償を課せられるかいなかによつて経済が長く自立できないか、できるか、国民生活の水準も上るかどうかということになりましようし、またこの国際情勢の激動する際でもあり、いわゆる経済産業自主自立ができるために、わが日本に必要なところの重要な資材原料等輸入が確保せられるかどうか、こういうことも大きく響くでありましようし、あるいはまた制約を受けておるところの諸種産業や工業の種類を、何でもやれるようになるかどうか、あるいは制約を受けておるものをどの程度緩和されるかということによつて経済自主自立ができるか、長引くかということになりましよう。政治の点につきましては、もとより完全な自主自立を許されることを信じておるのでありまするが、経済の問題につきましては、合のような事柄がありますので、これらと考え合せて、総理の御所見をお伺い申し上げたいのでございます。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 経済自立と申しましても、日本のような領土の非常に限られた日本において、しかも八千万以上の人口を擁している国としては、自立経済と申しても、これは真の自立経済ということはむずかしい。たとえばアメリカとか、あるいはソビエトのような意味合いでの自立経済ということはむずかしいものであつて日本経済はどうしても国際相依の関係において、国際的に相依存する関係に置かなければ、日本経済は立てないと思います。そこで国際的依存ができるかできないか。日本貿易主義が国際的になるかならないかということが問題であると思うのであります。これに対してアメリカとしては——連合国は存じませんが、少くともアメリカとしては、日本経済自立するように、と申しますのは、貿易均衡が保てるように援助したい。もしこれができなければ、いわゆる共産主義の方に走る、国際共産主義の陣営の方に走るという結果になりましようから、日本経済貿易によつて自立せしむるようにしたいというのが連合国考えであろうと思います。ゆえに、その意味において自立経済は成り立つのでありますが、日本の資源だけで日本自立しようということは私は望むべきことではないと思います。そこで国際依存主義において日本自立する。日本輸出入貿易がその均衡を得るということに列国、ことにアメリカが協力する、この趣意において私は間違いないと考えます。この線において日本自立経済をするということになれば、これは可能であり、またそういたさなければならぬことを私は確信いたしております。
  18. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 大体これで終りますが、一言希望を申し上げておきますことは、前の本会議におきまして野党の諸君から当らざる議論もあつたようでありますが、いわゆる講和條約に関しまして、総理が一人考えで條約をやろうとしておられるのではないかというような当らない議論をいたしたようであります。総理国民の声をよく聞き、これをよく徹底せしめることを御努力なさつていることはよく存じているのでありますが、できるだけ国民の声を向うさんの方にも反映せしめていただくし、またこの講和條約に至るまでの間におきまして、事外交の問題でありますから、表面に明かされないことも当然あるはずでありますが、おさしつかえのない程度国民にこれを知らしめまして、国民希望向うに反映せしめ、あるいはまたアメリカを初めその他の国々考えておられることを早く国民に知らしめまして、国民に安心をせしめていただくという行き方につきまして、強く希望を申し上げておく次第であります。これで終ります。
  19. 小坂善太郎

  20. 川崎秀二

    川崎委員 私は予算委員会再開野党質問の劈頭にあたりまして、講和をめぐる諸問題について吉田総理大臣所見伺いたいと思うのであります。前国会の終幕後の著しい情勢の変化は、もとより朝鮮戰局の変換がございます。しこうしてその戰闘規模が拡大したこと、これをめぐる世界政局の動向が、国際連合というものを一つの舞台といたしまして、深刻なる様相を呈しております。従つて国民はひとり日本の問題だけに限らず、世界の問題についても大きな関心を有しておるのであります。しこうして歴史の進展は遂にわが国連合国との講和が現実に具体的なプログラムとなつて現われて来たことであります。  私はまず吉田総理大臣に、このときにあたりまして、何よりもただいま尾崎末吉君も言われたように、国民に多く語り、国民の声をよく聞き、いわゆる秘密外交を排して、国民八千万の声を講和に結集するの積極的な気魄が総理大臣になければならぬと考えるのであります。  そこで冒頭にまずお伺いをいたしたい第一の点は、先般来からのダレス特使来訪や、あるいはワシントン英連邦その他の動きからいたしまして、講和條約の締結は、総理大臣の感覚では、遅くとも本年中に完了するものと思われますかどうか。数日来の動きから感得をされたところの、知られたところの考え方としては、少くとも本年中に講和條約は完了するのだという印象を受けられたかどうか。この点と、今私が申し上げました秘密外交を排して、あくまでも国民とともに講和と取組むという気持があるかどうか、この点をまずお伺いをいたしておきたいと思います。
  21. 吉田茂

    吉田国務大臣 気持は私は始終議会で申しておる通り国民と一緒に行きたい。国民要望に沿うて参りたいということは、始終申しておる通りであります。しかしながら、いつできるか、これは神様でありませんからして申すことはできませんが、私の希望を加えて、また私の感じから言つてみても、今年中に完了ができるであろうと確信いたします。確信いたします。しかしこれは確信であつて、お約束はできませんが、アメリカ考えから申してみて、多分そうなるであろうと思います。これは苫米地君にお聞きになつてもわかるであろうと思います。
  22. 川崎秀二

    川崎委員 ダレス特使来訪によりまして、すでに総理大臣は二回も会見をされております。新聞紙の報道するところによれば、対日講和原則に関してダレス氏との間において、ほぼ意見の一致を見たというものもありまするし、また総理大臣としてきわめて愼重に意見を述べられ、主としてダレス氏の考え方を聞かれたという報道もございます。すでにわが党の最高首脳も、親しくダレス氏を訪問しまして、しこうしてすでに決定を見ましたところのわが党の外交政策について、対日講和原則に関連し、具体的に国民意思を標榜をいたしております。また本日は野党有力政党である社会党も、同様にダレス氏を訪問をいたしておるのでありまして、明日午後零時半でありますか、日米協会の席上において、ダレス氏の見解が根本的に明示をされるということであります。すでにして昨日新聞記者団ダレス氏の言われておることは、今回の講和にあたつての、自分と日本側各代表との会見は、主として経済自立安全保障に重点を置いたということさえ言明をされておるのであります。そこで本日は、私は特に総理大臣にお伺いいたしたい点は、ダレス氏が会談でどう語つたかという内容ではなくして、対日講和原則というものがすでに明示をされておるのでありまするからして、それに従つて総理大臣の御構想を私は伺いたいと思うのであります。対日講和原則というものが、すでに十一月の二十五日ワシントンにおいて発表され、各連合加盟国に対してこれを通達をされております。今回の会談は、まぎれもなく対日講和原則に対するところの日本総理大臣考え方について、いろいろ打診があつたと思うのでありますが、述べられたことの内容は別といたしまして、原則的にどういうお考えを持つておるか、これをこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 原則的に申してけつこうであると思います。
  24. 川崎秀二

    川崎委員 それでは具体的にお伺いをいたしたいと思います。けつこうであるということでありまして、具体的にお伺いいたさないと焦点のぼける点もありましようから、順次お尋ねをいたすことといたします。仮定の問題ではありませんから、従つて的確にお答えを願いたいと思います。  第一に、七原則の第一項を見ますると、日本と交戰した一国またはあらゆる国にして、提案された條件に基いて日本講和を締結する意思を有し、かつこれに同意するものということが書かれております。提案された條件とは、まず今日ではアメリカ側の提案であろうと思うのでありまするが、これに対して締結する意思を有し、かつこれに同意するものと考えられる国は今日の客観情勢におきましては、あるいはソ連邦その他の国において支障を来すべき状態も起つて来るのではないかと私は考えるのであります。そこでこれははたして、全面講和を理想とするけれども、多数講和というものも可能としてアメリカ側がかような案をつくつたものであるかどうか、すなわちこの第一項は、多数講和というものの可能性をも認めておるかどうか、その解釈についてお伺いをいたします。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはお答えをいたしまが、原則的にけつこうなことであろうなことであろうと申したので、一応々々々にお尋ねを受けても、ダレス氏との間にこういう話をいたした、また七原則について逐條的にお話をいたしたわけでありませんから、この点はイエスか、この点はノーかとおつしやつても、私はお答えができません。これは御了承を願いたい。
  26. 川崎秀二

    川崎委員 今の点はどうでしようか。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 申し上げられません
  28. 川崎秀二

    川崎委員 これは非常に遺憾なことでございます。私は一つずつあげて申し上げて、そうして、これに対して、ダレス氏との会見を推測するということではない。総理大臣は当然それに臨まれるについては、考え方というものがあろうと思います。その考え方を私は聞いておるのであります。従つてこれはこういうことを言つたのだというのではなくして、どうぞその会談ということを拔きにしてお答えを願いたのでございます。これはあなたの解釈では、多数講和というものの可能性はあるのでございましようか。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私は始終申す通り、多数講和がきたいと思うのみならず、全面講和がきたいと思います。しかしながら、事実できなければいたしかたないということは始終国会で申しておる通りであります。得べくんばなるべく多数、得べくんば全面講和でいたしたいと思います。
  30. 川崎秀二

    川崎委員 それではもうこの條項を追うてお話をするのではなくて、條項とも関連のある事項について、私は先般来から吉田総理大臣の言われていることについて、なお確かめたい点を次々に質問を提起して行きたい、かように考えます。どうぞそのおつもりて御答弁を願いたいと思います。  国際連合に対して日本が加盟をしたい、あるいは加盟をすべきであると、いろいろな議論があります。しかしすでにして総理大臣国連加入というものに対しての希望を言われておるのでありまするから、この点に関しての質問でありまするが、国際連合の憲章には、御承知のごとく、憲章第四十三條は、共同防衛義務規定というものをはつきりいたしております。従つてこの特別協定、国際連合の一切の加盟国は、国際的平和及び安全の維持に貢献せんがため、安全保障理事会に対し、その要請に基き、かつ特別協定に従い、国際的平和及び安全の維持のため必要なる武装軍隊、援助及び通過権を含める便益を利用し得しむることを約すという箇條がありまして、国際連合へ将来日本が加盟をいたす場合におきましては、あるいは現在の新憲法と矛盾するのではないかという疑問が起つて来るのであります。これはすでに国会においても相当議論をされたところでありまするが、現実の問題となつて参りましたのでありまするから、この際あらためて総理大臣の御見解を伺つておきたいと思うのですが、国連加入希望する場合、この條項と憲法との矛盾をいかにして解決するかということは、相当重要な問題であろうかと思います。その場合に、はたして日本は新憲法の理想によつて武装を放棄したものであるから、従つてこれに保留をしてもらいたいとか、あるいはいろいろな意見が出るだろうと思うのでありまするが、そういうような関連の問題について、こういうような條章があるにもかかわらず、国際連合への加盟というものは可能性があるものかどうか、また日本政府としては、今日これを希望する方向に向いておるかどうかということをお伺いをいたしたいと思います。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は始終申しておる通り国際連合に加入する機会が得たいと思います。しかし問題は條件次第であります。国際連合の憲法にある通りに、日本の加盟した場合に、これを條件とするか、問題自体には原則もあれば、例外ということもありますから、国際連合がいかなる例外を設けるか、あくまでも原則を励行するか、これは具体的問題になつた場合に政府としては考慮したいと思います。
  32. 川崎秀二

    川崎委員 これはまたあとで再軍備論あるいは自衛権の問題に関連してお尋ねしたいと思います。もう一点、この点についてつつ込んでお話伺いたいと思うのですが、例外もあり得るだろうということであれば別でございます。しかし原則として行くならば、やはりこの憲章第四十三條は、ひとり各国の自衛権というものに対して共同防衛をするのではなくして、場合によつては外征の軍隊を派遣する、武装軍隊を派遣するという場合も考えられて来ると思うのであります。そういたしますれば、これは明らかに憲法とは矛盾するのでありまして、そういうような場合を予想しても、なおかつ希望するかどうかという点についてお尋ねをしておきたいと思うのであります。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 外交は実際の、現実の問題について考えるのでありまして、国連からそういう問題が出たときに、国家として考うべき問題であつて、今日予想して、そういう場合にはごめんこうむる、そういう場合には承諾するとかいうことは、あらかじめ予告はできないのは、いずれの政府といえども同じことであろうと思います。
  34. 川崎秀二

    川崎委員 領土の問題については、本日も新聞紙上において、これは降伏文書の條項に規定をされたことであるから、従つて日本国民希望ないしは要請によつて変更するものではないということを外電は伝えております。またそういうような解説をなしておる新聞紙もあります。これを信用してよいかどうかということは別でありまするけれども、しかしながら講和にあたつて講和條件のうちの最も重大な問題である領土の問題について、日本国民意思というものはきわめて率直に、かつ強力に私は反映されなければならないと思うのであります。ポツダム宣言によつて、明らかにカイロ宣言の條項は履行さるべく、日本領土は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらの決定する諸小島に局限せらるべしとは書いてありまするけれども、しかしながら講和にあたつて最大の問題ともいうべき領土の問題については、日本国民の感情というものは、はつきりとこの際反映されてしかるべきであろうと思うのである。また希望についてはこれを聞くことを拒むものではないということは、アメリカ側もしばしば述べられておるのであります。しかりといたしますれば、少くとも私は琉球、小笠原諸島のごとく民族的にまた歴史的な環境、しかして地理的な環境において明らかに日本領土であるというものは、総理大臣の口からも強く日本国民希望として反映されていいと思うのであります。対日講和原則を見ますると、これらの島々についての原則は、国連の信託統治となつております。国連の信託統治となりますると、信託統治の住民の国籍というものも重大な問題になつて来ると思うのであります。これについて総理大臣はどう思われるかということが一つと、いま一点は、小笠原、琉球等に対して、総理大臣はどういうお考え方であるか、この点を伺つておきたいと思うのであります。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは講和條約の内容について内示せられた場合に、われわれが考うべき問題であつて、今日政府はこう考えると、あらかじめ申すべき私は地位におりませんから、お答えをいたしません
  36. 川崎秀二

    川崎委員 この問題は、講和條約の條件になつて来た場合に議論すべきものではないと思います。むしろダレス氏と今日会見しているときに、日本国民のすなおな気持だけは反映をさせておくべきことであつて講和條約の締結のときには、領土問題はもはや主張しても、これは変更をすることを許さないという態度に出て来るのが、連合国側の態度であろうと私は想像しております。またこの想像は間違つていないと私は確信しておるのであります。従つて今日の段階において、小笠原、琉球というものは、少くとも他の島々とは違つて領土権は日本にある。信託統治をかりに連合国側決定をいたしましても、当然信託統治の期間が過ぎれば、日本領土としてこれは返還さるべきものだ、こういう考え方を私は持つておるのであります。私だけではなく、多くの国民はそういう考え方であろうと私は思います。今晩の夕刊を見ますると、すでにして、ワシントン電報で、十年間の信託統治、世界情勢が許せば日本に返還か、というような電報も参つておるのでありまして、この間の関係はきわめて微妙ではありましようが、総理大臣はどういうふうにお考えになつておるのか。その点だけは国民が今日聞きたいことであるから、ぜひともお漏らし願いたいと思います。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 私もぜひとも申したいと思いますけれども、これは講和條約の内容をなすものでありますから、当局者としてはお答えはいたしませんが、御希望はよく了承いたします。
  38. 川崎秀二

    川崎委員 ぜひとも要望すべきものとは思うがというお話でありましたので、この点に関する質問は、この程度で終ります。  次に私がお伺いいたしたいと思うのは、安全保障にからんでの現在の状態、並びに講和條約後に来るべき日本の運命についての保障の問題であります。総理大臣は先般来、共産主義の脅威を外部より受くることは、今日の段階においてはない、また共産主義の脅威は外部から来ないというようなことでありました。これはきわめて重大な現状認識並びに将来の事態に対する認識であろうと私は思うのであります。この点について特に問題を提供した意味で非常に重大でありましたのは、先ごろ発表されたところの芦田意見書なるものの内容であります。民主党は芦田意見書の内容とことごとく同一の考え方を、全党員が持つているというわけでも、ございません。ございませんが、少くとも芦田氏の所見は、現在の事態認識並びに対処策について、国民に多大の関心を集めたということはまぎれもない事実であります。否定することのできない事実ではないかと私は思う。そこで芦田さんの意見は、再軍備問題などで一般に間違つて伝えられておりまするが、少くとも現在の段階において、自衛力の強化を強調しておる。従つて軍備を強調しておるのではありません。そこで私はこの事態の認識という点では芦田元民主党総裁の考え方というものは、きわめて正鵠なる考え方であるという考え方に立つて質問をいたしたいのであります。  芦田意見書の内容の第一は、すなわち極東の情勢は重大なる危機を包蔵しており、わが国をねらう共産主義国の意図はもはやおおうべくもないと前提いたしまして。イギリス、フランス、アメリカその他各国の軍備を説明し、日本のみが今日傍観者のごとき態度で、何らの用意をしないことは許さるべきことではない。現在の日本は、すみやかに国民意思の統一を必要とする、私が総理大臣に求めることは、国民の輿論をこの方向に導くことである、政府はすべからく国民に向つて日本はあぶない瀬戸際に立つていること、日本人はみずからの意思で国を守る心構えを必要とすることを説き、政府みずから先頭に立つて旗を振ることが急務である、首相は熱情を傾けて、国民大衆の支持を求むべきであるといたしまして、その他これに対するところの対処策をいろいろと書いておられます。私が今総理大臣にお尋ねをいたしたい点は、この事態の認識というとものについて、総理大臣は芦田さんと見解を異にしておるものかどうか。対処策は別です。対決策は別です。事態の認識について、あなたは芦田さんのお考えと違つておりますかどうか。この点について明快なる御答弁を伺いたいと思います。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 明快にお答えをいたしますが、認識については、私は芦田君とはあまりかわつておらないと思います。ただ方法手段において、これに対処する対処策について私の考えがありますが、決して容易ならざる事態であるということは、芦田君と意見を同じゆうしておるのであります。今日御承知の通り共産主義と民主主義は相対立しておつて、食うか食われるかという危險な状態にあるということについては、芦田君とちつとも意見は違つておらないのであります。しからばこれに対してどう対処するかということについて多少私は意見がありますが、事態の認識については芦田君とは少しもかわつておらないのであります。
  40. 川崎秀二

    川崎委員 参議院のどなたかに対する答弁においては、ただいまのような御答弁でなつたように誤り伝えられておるのでありましよう。本日私から申し上げまして、事態の認識について同一であつたことは、私のこれから申しまするいろいろな意見につきましての非常な参考になつた次第でございます。そこで私がお伺いしたい点は、それならばこれに対してどういうような対処策をとるかということであります。日本は今日決して真空状態に置かれておるわけではない。侵略の脅威をすでにして受けておるのでありまして、将来これが重大な事態に発展して行くということの可能性は非常に強いのであります。すでに毛沢東は先年末の中国政治委員会の席上におきまして、明らかに日本の解放を公言をしております。アジアの解放は日本の解放がなくては終局的には達せられないということを言つております。解放ということは、共産主義者から言わせれば解放でありましようけれども、その他の主義者、その他の考え方を持つ人々からすれば、明らかにこれは侵略ととらなければならない。(「違うよ」「そうだ」と呼ぶ者あり)従つてわれわれは、その事態に対してもなお自主的自衛の必要はないものかどうか。先ほど総理大臣は、すでにみずからの国はみずからの力をもつて守らなければならないと言われまして、ただいままでの御見解とはややずれの来たような感じを私はいたしておるのであります。自主的自衛の必要は今日非常に高まつて来ておるのではないか。この点についての御見解を承つておきたいと思います。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は全局的に申すのであつて、毛沢東氏がどういう考えを持つておるかということは実は存じません従つて今申すように、具体的にどの方面から日本が危險にさらされるかということは考ておりませんが、しかしながら、現在民主主義共産主義と相対立して、現にアメリカその他においては軍備の増強をしておる時でありますから、事態は非常に重大である。しかしながら、毛沢東あるいは中共にいかなる政策があるかということは、実際に存じませんから、具体的には言えませんが、抽象的に申せば、すでに両主義がまことに深刻な対立をしておるという世界情勢に処して日本がどうするか。これは真劍に考うべきものでありますが、しかしながら、中共軍の活動からただちに第三次世界戰争に発展するとは、私は考えておらないのであります。しかし世界の全般的の動きから申してみて、容易ならざる事態であるということは、芦田君とともに意見を同じゆういたしておるものであります。
  42. 川崎秀二

    川崎委員 これに関連して最も重大な関連があると思われますのは、年頭におきますマ元帥の声明でございます。マツカーサー元帥は昨年言われたことと本年言われたことと、基本的な線においてはかわつておらないけれども、しかし事態の推移に応じて相当考え方を発展せられておるものと思うのであります。すなわち新憲法はあくまでも守らなければならないということを昨年は言つておられた。しかし本年は、侵略の脅威というものが日本を脅かすとするならば、その際においては新憲法も自衛の前には席を讓らなければならないということを申されておる。この新憲法も自衛の前には席を讓らなければならないということは、どういうことを意味されておるものかどうか。私は、吉田総理大臣がマツカーサー元帥の年頭所感を読まれて、この点についてどういうような感じをとられたかということをお伺いしてみたいと思います。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私がマ元帥に対して直接確かめたわけではありませんが、しかしながら、日本国としてああいう憲法があつてそうしてこの場合に処して自衛権に対して疑いをはさむようなことがあつてはいかぬという親切な気持から声明をせられたものと思います。
  44. 川崎秀二

    川崎委員 親切な気持声明をされたということは、その気持はわかります。そういうことでございましよう。しかしながら、その内容は当然自衛権の強化ということを意味するものであつて今日朝鮮の事態は、御承知のごとく国際連合軍がいま一度押し返して、京城附近で戰闘が再び行われておることで、やや国際連合軍にとつて戰況は小康を得ておるような形でございます。しかしあるいは再び大部隊の出現というものが考えられないことはない。人的資源は多く中共側にあるのであつて、さらに大部隊による逆襲ということも考えられないことはないのでありまするから、従つて日本が脅威にさらされるということの可能性が再び出ないとも限らないのであります。そういうことを頭に置かれつつ、自衛に道を讓らなければならぬということを言われておるのは、今からやはりそういう事態に対処しての自衛についての具体的な方途を講じなければならぬではないかということを言われておると思うのでありますが、いかがでありましようか。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは私はマ元帥のために代弁に立つだけの何がでございませんから、どうぞ直接にお聞きを願いたい。
  46. 川崎秀二

    川崎委員 マ元帥は日本に非常に親切でありますけれども、吉田総理は私に非常に不親切な回答ではございませんか。(笑声)聞いてくれなんて言うても、私はなかなかマツカーサー元帥に会うような機会はございません。地方税ではホイツトニー代将と会う機会がありまして、十分にお話をする機会がありましたが、マツカーサー元帥とはない。これは率直に申し上げたい。そこでマツカーサー元帥の考え方は別にして、マツカーサー元帥の考え方から、総理大臣は、どういうことでこの自衛というものを強化しなければならぬかということについてお考えを持たれたかどうか。このままで自衛はいいのでしようか。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は常に申しておる通り、朝鮮事件から第三次世界戰争にまで発展しないと思いますから、この点に対してはマ元帥の意思をあなたにかわつて確かめるだけの勇気もございませんから、さよう御承知を願います。
  48. 川崎秀二

    川崎委員 それは驚き入つた答弁でありまするけれども、問題をもう少しずつ発展をさせます。一時新聞紙上に伝えられたところによるならば、講和後におけるしところの、すなわち講和條約締結後の安全保障というものは、日本側としては米軍の保障占領を要求するのだというようなことを書いたものがあります。私は少くとも自主権が確立されてなお保障占領というような形が残るとは考えてはおりませんが、これはあるいはむだな質問かとも思いまするけれども、総理大臣から明快に伺つておきたい。かようなことを考えられたことはないでございましようか。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはむだな質問であります。さようなことは締結した後に考えるべきであつて、今日あらかじめ独立後の事態について予想をしてお話するということは、私にはできないことであります。
  50. 川崎秀二

    川崎委員 私は講和條約の前における安全保障というものも当然考えられる。すなわち條約が本年中には完全に締結をされるものと確信するというお話であつたが、本年中ということは、きようは二月一日でありまするから、相当まだ時間があります。その間にある特定の国から日本が不正の侵略を受ける、あるいは脅威を受けるというような段階に対しては、当然その前の安全保障というものも考えなければならぬ。そこでそれは国連による安全保障というものを一応考えられておるのか、あるいはこれと並行して、日本の自衛力を強化するということを考えられておるのか、そういう場合はどうでありましようか。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 いかなる場合においても、日本国の安全はみずから保護すべきものだと考えますが、しかしながらそれは急迫した事態、あるいは具体的に事件が起つた場合に考えるべきものであり、あらかじめ備えるべきであるということと同じものかもしれませんけれども、現在われわれが承知しておるところから申せば、現在の自衛処置でもつて日本の安全なり、日本の治安は維持せられるものと確信いたします。
  52. 川崎秀二

    川崎委員 この点についてはどうも私どもの考え方と、総理大臣考え方相当つておるようであります。われわれも平和を守るという気持は決して人後に落ちるものではありません。しかしながらこれは相手のあることであります。しこうして共産主義というものは、断じて中立を許さない形で、今日大きな圧力をもつてつて来ておるのであります。従つてこれに対するところの対処策がこのままでいいというふうに考えられて、はたして国民は安心するものなりやいなや、この点についての総理大臣のお考えを承りたい。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は今日の事態は、今申した通り、現実の事態に処するだけの自衛力は持つておると確信いたします。国民は安心しておると私は思います。
  54. 川崎秀二

    川崎委員 先ほどの尾崎末吉君の質問に対しまして、将来日本は、あるいは事態の突発によつては再軍備もしなければならないのではないかというのに対して、再軍備は今日の段階ではなすべきではない。しかし百年も二百年も先にするなとはわれわれは言つておらないというような感覚とは、違つたような印象を先ほど受けた。あるいは事態の進展によつては、そういうようなことも考えられるのではないかといういうようなふうに響きましたが、そう解釈してよろしゆうございましようか。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 解釈は御自由であります。
  56. 川崎秀二

    川崎委員 今度の七原則を見ますると、ものによりましてはポツダム宣言との間に抵触するような部分があるように感ぜられるものがあります。この際においていずれに従うべきかというようなことにつきましては、先般衆議院の本会議において、労働者農民党の黒田氏から質問がございました。これについて総理大臣の基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつとお尋ねをいたしますが、どう衝突いたしますか。
  58. 川崎秀二

    川崎委員 ポツダム宣言内容と七原則との間に抵触する部分が出て来ておるのであります。すなわち領土決定の問題について、台湾、澎湖諸島、南樺太及び千島に関しては、将来イギリス及びソヴイエトその他中国及びアメリカ決定すべき條件を受入れることとございまして、これは講和條約の効力発生後の一年以内に何らの決定に到達しない場合にあつては、国連総会が決定すると書いてあるのであります。すなわちこの点はポツダム宣言との関連において齟齬して来る場合があり得ると私は考えるのでありますが、いかがですか。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私が責任を持つて答弁いたすべき問題じやなくて、アメリカ政府かもしくはダレス君にお聞きを願いたいと思いおす。
  60. 川崎秀二

    川崎委員 この問題についてのあなたのお考え方を聞いておる。ダレス氏がどういう見解を示したかということを言つておるのではありません
  61. 吉田茂

    吉田国務大臣 私としては、総理としてはお答えができません
  62. 川崎秀二

    川崎委員 首相はしばしば日本の自衛は再軍備によらず、それ以外の方法で国を守る必要があるというようなことを言われております。すなわち国民自主独立の精神の涵養が急務であると言われておる。それならばその独立精神の涵養ということは、どういうような具体的な方法であなたはこれから先に展開させて行くものか、少くとも総理大臣はこういう自主独立の精神の涵養は急務であるということを言われた以上は、何らかの方法があり、方途があると思われますが、どうでありましようか。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはいろいろな方途がありますが、まず第一に、この間も申した通りに、国会における諸君の議論国民が最も注意を集めておりますから、諸君みずからも日本国民独立愛国の精神を涵養するように御協力を願いたい。
  64. 川崎秀二

    川崎委員 国民にそういうことを求めたり、あるいは政党に求められても、それだけでは私は足りないと思う。こういう自主独立の精神の涵養であるとか、あるいは愛国的熱情を結集するとかいうようなことを言われておる以上は、もつとそういうことに対する総理大臣の明快なる具体的な方途というものがなければ、総理大臣としてはなはだおそまつではないかと私は思う。  そこで問題にいたしたい点は、こういうような時局に際しまして、各界各層の意見を千分に聞かれる必要があるということと、各界各層に対して総理大臣がみずから先頭に立つて、いろいろと時局の重要性についてお話をなされ、かつ自主独立の精神の喚起について協力を求められることが必要ではないかと私は思うのである。その点についての総理大臣の御所見を承りたい。
  65. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はその点については毛頭異存がありませんが、しかしながら民主党諸君の言うように、日本国民の愛国心を高揚するために、政府みずからこれを指導するというようなことは、これは民主主義に反すると思います。国民の燃え上る愛国心、燃え上る独立の精神によつて自然にそこに至るべきものであつて、しかして日本民族の性質から見て、自然に愛国心なり独立心が燃え上ることを期待する。のみならず必ずあることを私は確信するものであります。政府が、あるいは私が国民を指導してこうするああするということをまつまでもなく、日本国民の精神の中にはその気力は必ずあるものと考えますし、私はそうすることが民主主義に反すると思いますからいたしません
  66. 川崎秀二

    川崎委員 私は総理大臣国民意思ということ、それから国民の自発的な行動ということ、こういうような問題については、下から当然沸き上つて来るべきものだ、あるいは政党などがやるべきことであつて、官がこれを指導するとかいうようなことをとるべきでないという基本的な考え方には、私も賛成なのです。しかし吉田総理大臣は、総理大臣であると同時に、二百九十何名かの衆議院絶対多数の第一党を率いておられるところの総裁であります。従つてそういう日本国民の過半数の意思を持つておるところの、代表しておるところの政党の総裁としてそういうことをやる意思はないのかどうか、その点についてお伺いいたしておきたいと思います。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はその必要を認めないのであります。
  68. 川崎秀二

    川崎委員 それでは違う問題に移ります。これは講和が切迫し、今後の日本の国内情勢と非常に関連のある問題でございます。私は別に他の政党の立場について批判がましい意見を申すものではございません。しかしながら今日日本社会党の国内におけるところの地位というものは、きわめて重視しなければならない。しこうしてその背後には勤労大衆という大きな勢力というものが横たわつておるということをわれわれは考えなければならぬのでありますが、総理大臣は第八回国会でありましたか、臨時国会におきまして、社会党の平和三原則に対しての考え方を述べられたことがありますが、その考え方は今日もかわつておらないだろうかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御質問の趣意がわかりませんが……。
  70. 川崎秀二

    川崎委員 第八国会で施政方針演説の内容につきまして、社会党の意見について述べられましたけれども、そのことはかわつておらないかどうか。それは社会党の内部には全面講和、永世中立、軍事基地化反対等の議論を立てて、しこうして共産主義者に利用されておるような分子がある、かかる考え方はから念仏である、こういうことを言われたことがあると思います。
  71. 吉田茂

    吉田国務大臣 実ははつきりお尋ねのようなことを言つたかどうか自信がありませんが、あなたがおつしやるならその通りでありましよう。そこでもしはたして上からば、私は社会党の諸君は共産党のお先棒をかついでおると確信いたします。(「関連質問」と呼ぶ者あり)
  72. 小坂善太郎

    小坂委員長 一応済んでから……。
  73. 川崎秀二

    川崎委員 私は今日最も重要視しなければならぬものは、社会党という政党もそとでありますが、それ以上に労働組合を中心とする勤労者の思想の動向であると思うのであります。勤労者が今日の講和條約の締結を前にしてなおこういう考え方を大勢として支配して持つておるということについては、あるいは国論の趨向が分明にならない、こういうふうに私は考えるのであります。国論の帰一ということを私は必ずしも政府は期待する必要がないと思う。しかし大部分の国民が、大体において今度の講和條約の内容についてはこれでよろしいとか、こういう方向にしてくれとか、大きな流れというものは、大河の決するように行かなければならないというふうに考えるのであります。そのときにおいて最も重要な問題は、この勤労者の、勤労階級、労働組合というものの向背であります。労働組合は今日組織としてはやはり社会党と同じく全面講和、永世中立、軍事基地化反対のスローガンのもとに、私は結集をされておると思うのであります。このまま講和條約に突入をいたすというような形になると、国論は明らかに大きな分裂を来すのではないかということを憂えるのであります。この点について吉田総理大臣見解はいかがでありましようか。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 勤労大衆は社会党のみを支持いたしておるとは思いません。わが党の政策についても支持いたしておりますから、あなたの独断について私は必ずしも同意はいたしません
  75. 川崎秀二

    川崎委員 私は民主党の党員で、ありますから、決して社会党に有利に託をしておるのではない。労働組合の分子の個々においては、自由党を支持される人は、きわめてまれでありましようが、ありましようか。また民主党もあるのです。しかし労働組合の組織としては、全国的な大きな組織、それから地方的な組織、ことごとくこれ組織といたしましては、今日かような考え方を一応提議をしておるということは、まぎれもない事実であつて、これを否定するわけには行かない。そこで私は労働組合の組合としての考え方がこのままに流れて行つてつて、そのままで事態が推移するならば、国論はきわめて危險な状態に立ち至るのではないか。こういう点に対する総理大臣の御見解を承つておるのであります。
  76. 吉田茂

    吉田国務大臣 どうも議論の末になりますけれども、わが党を支持している勤労大衆も少からざるものがあると思います。(「ないよ」と呼ぶ者あり)あります。
  77. 川崎秀二

    川崎委員 組合を言つておるのですよ。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 組合はどうか知らないけれども、組合以外の勤労大衆がわが党を大いに支持しておると考えます。あなた方の御議論には必ずしも賛成できません
  79. 川崎秀二

    川崎委員 そういたしますと分析をいたすわけでありますが、労働組合はこのままの形で行つても、その以外の分子が支持している。国論がそんなに大きくわかれてもかまわぬ。こういう考え方で国論が大きく割れるとは考えないということでありますか。
  80. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。私は勤労大衆はわが党を大いに支持いたすと思います。
  81. 川崎秀二

    川崎委員 今のところで一応区切りであります。関連質問があるということですから……。
  82. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ちよつと関連して……。
  83. 小坂善太郎

    小坂委員長 それでは勝間田君。
  84. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ただいま川崎君の質問に対しまして吉田総理が答弁といたしまして、もし川崎君の言われるような考えであるならば、社会党は共産党のお先棒をかついでおると考えますという今御答弁があられたのでありますが、これはきわめて重大な問題だと思うのでありまして、まず一つ、二つの点についてお尋ねした、と思うのであります。一つはいわゆる川崎君の質問の中に若干違つた点がある。その点についてば吉田総理もひとつ知識を改めていただきたい。すなわちわが党の主張いたしておるのは一つは全面講和である。この全面講和については先ほど来首相がさらさら答弁されたように、なるべく全面講和は望ましい、できれば全面講和はほしいとまで申された。先ほど速記に書いてあると思うが、そういう態度をとつておる点については、われわれの全面講和ということは、結局単なる理想ではない。現に当面しておるところの現在の情勢から見ても、われわれが国を深憂するところから出ておるところのものであります。これは吉田総理といえども国のためにほんとうに心配されたと思うのであります。国を思う立場から、われわれは現在の情勢に対してあくまでも全面講和であつてほしいというわれわれの党の態度から出発しておるのであります。しかもさらにもう一つの問題は、いわゆる中立の堅持ということを言われておりました。これも先ほど川崎君は、永世中立の堅持と言われましたけれども、二年間前からの大会以来、すなわち第五回大会、第六回大会、第七回大会を通じてはつきり申し上げておりまするのは、われわれは偏狭な永世中立をとろうとはしない。これは経済的な基礎も明らかでないし、同時に現在においては、国際的なつながりを持つた中立性がわれわれは望ましいのであるという考えからいたしまましてわれわれは国連加入における日本憲法第九條との関係から見て、いわゆる非武装憲法の立場におる国連加入が国際的中立の立場である。その立場をわれわれは考えているのでありましていわゆる従来普通世間で言われるところの単なる永世中立をわれわれは考えているものでは断じてない。その点もはつきり御認識をいただきたいのであります。同時に私は現在の軍事基地の設定の問題にいたしましても、われわれはポツダム宣言におきまして御案内の通りに、もし占領政策も終るならば、連合軍は即時撤退することが約束されている。今日において日本軍事基地がほしいという者があるとすれば、われわれはそれを疑わざるを得ない。これも私が日本の国の独立と平和を望む国を思う至情から出ておる問題であります。かかる問題に対して従来今日まで單なるそれを理想論として、單なるそれをから念仏として考えておつたいわゆる保守政党考え方というものに対して、われわれは非常な不満を持つているのであります。かかる考え方から行きますならば、私どもは日本憲法をほんとうに忠実に守つて、四年前の憲法に忠実に従つて、今日日本の絶対平和を守るということが、今日におけるところの日本国民の一人々々の考えであります。今日世界に第三次戦争の危機があるかどうか知りませんけれども、今日日本国民が希求している問題は、戰争に絶対加入したくない、われわれはもう一ぺん銃をとりたくない、これはおそらく私は、あなたが農村の村々に行つてお聞きになるならば、一人々お答えになると思う。その方法には幾つもあると思いますけれども、憲法の立場から考えてわれわれはこの三つの原則を持つているのでありまして、共産党の考えどがうあろうと、何の考えがどうあろうと、われわれはそんなことは少しも考えているところではないのであります。われわれの一番望むところは、今日の共産主義勢力というものに対して、どこに一番大きな脅威があるか、その脅威の根本をわれわれはついて行つて、同時に日本を不幸な事実に陷れることなく、われわれの平和を守つて行こうという決意から出て来るものであります。今日における世界の社会民主主義者が何を考えているか、あなたはよくお考えのことと思います。われわれはよく反動のあらしの中に立つても、同時に凶惡なる一つの思想の上に立つても、あくまでも社会民主主義を守つて行こうという熱意にかられて、しかもそれは祖国愛の見地に立つてわれわれやつているのでありまして、今日とかく世界情勢が混乱いたしますならば、ただちにあれは何々主義に通ずるとか、何々主義に通ずるとかいう一片の誹謗によつて物事を片づけて行こうとするそういう浅薄な考え方というものは、私はとらざるところであります。われわれの党の名誉にかけて、今日における吉田総理の心境が真実なものであるかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は御意見は了承いたしますが、私ははたしてしからばと申したわけであつて、そうであるならばというので、そうであるとは申しておらないのであります。
  86. 川崎秀二

    川崎委員 ただいままでの質問によりましてさらに明確にならない点を補足をしたいと思うのであります。その第一点は、ダレス氏の来訪以来しばしば日米個別條約というようなことが伝えられている。われわれは少くとも今日の段階において全面講和を理想として進んでいることについては、アメリカとしてもかわりはないであろう、ただ事態の推移によつてそれが多数の国家との條約の締結になる可能性もあるのでありまして、しかしながらただアメリカ一国との個別的な條約というものの可能性については非常に一般国民において否定的な考え方が強いのではないかと私は考えるのであります。そこで今回交渉をされていることは、少くともアメリカを中心とする極東十数箇国によつて締結をされるという見込みがあるものかどうか、あるいは場合によつては個別條約になる可能性があるかどうか。この点についていま一点お尋ねしたいと思います。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 これははつきり申しますが、私も存じません。またダレス氏もこの点について何も話をせられたことはありません
  88. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど来の問題でまだ残つておりまする問題は、経済自立に関する諸問題でございます。経済自立の問題は、今回の予算案とも関連をして、きわめて重大な問題でありますが、昨日の新聞紙上、あるいはまた岡崎官房長官の談によりますると、総理大臣は昨日の会談においては、主として経済自立の諸條件について、日本側の意向というものを伝えたというふうに言われております。官房長官もそういうような言明があつたのであります。そこで工業水準の制限撤廃とか、あるいは平等互惠のもとにおける通商の自由であるとか、あるいは国際市場における公正競争の機会均等とか、漁区の拡大であるとかいうような問題について、総理大臣はどういうお考えをもつて当られたものでありましようか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 私のダレス氏との話の内容については、すでにダレス氏の秘書というか、つまりダレス・ミツシヨンのスポークスマンが相当発表いたしておる以上に、私としてはここで、お話する自由を持ちませんから、お答えをいたしません
  90. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど中断はされましたが、労働組合大衆との関係について、社会党との超党派外交の必要性は、私は今日もなお減じておらないと思うのでございます。わが党が昨年来主張しておりまする超党派外交については、国の内外をあげて相当この問題について関心も呼び、かつ輿論は圧倒的にこれを支持しておると思うのであります。しかるに超党派外交ができないのは、総理大臣が真にこの超党派外交というものに対して熱意が欠けておるということが指摘されております。これはひとり私どもの立場ではなく、一般的にそういうことがいわれておる。今後いよいよ講和が迫るにつれ、一層この超党派外交の必要性があると思うのでありますが、総理大臣はこれを推進する熱意があるものかどうか、この点お伺いいたしておきたいと思います。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私の熱意が問題であるのではなくして、社会党の諸君がこれをするがいいという考えであるならば、そのとき初めてできることであつて、国家のためにいいか悪いかが問題で、私の熱意が問題ではないと思います。社会党諸君が同調せられるというならばまことにけつこうな話であると思いますが、すでに拒絶せられた以上は、私の方からいかに熱意を示しても、拒絶は拒絶でありますから、できないことであると思います。
  92. 川崎秀二

    川崎委員 私の熱意が問題ではなくして、社会党の態度が問題だと言われておりますが、社会党は決して外交を政争の具に供すべからずという考え方について違つた意見を持つておちれるとは思いません。すでに数次のラジオの討論会等を通じても、社会党の責任者がしばしば外交政争の具に供しないことで話し合うということならば賛成である、しかしながら一つの議論を先に出しておいて、多数講和でなければならぬとか、あるいは單独講和でなければならぬというような結論を先に出しておいて話合いをすることはまことにまつぴら千万である、こういうことを申しております。従つてあなたが虚心垣懐に超党派外交の必要性を認めて誠意を傾けて社会党ないしはその他の小会派につきましも呼びかけられるならば、欣然として参加をせられる、また話合いをすることの可能性というものは十分にあり得るのではないか。従つて超党派外交というものは、決して一つの結論を得ようというために行われるのではなくして、日本国民の各種の代表が真劍に講和問題に対して取組み、お互いが話し合う、その中からあるいは最大公約数によつて一応結びつくものもありましよう。領土、賠償の問題などはすでに社会党も自由党もそう大した距離はないのであります。従つてそういうような熱意を傾けられることを私は超党派外交と言いたいのでありますが、そういうような御熱意は今後もないものでありましようかどうでしようか。
  93. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は伺つておきます。
  94. 川崎秀二

    川崎委員 最近の総理大臣は人の政党の内部の問題につきましてあまり深く立ち入らず、たとえば自民連携のごときも断念をせられたかのごとき観があるのははなはだけつこうだと思います。しかしながら最近のいわゆる吉田苫米地会談におきまして少くとも外交問題に対して、あるいは講和を含むところの広義の超党派外交の問題に対してお互いが意見を交換し合うということで、あの会談は私は一致したものと思うのであります。よつて講和に関すところの諸問題が出て来るならば、総理大臣はそれらの問題について十分に私どもの政党とは話合いをするものだと私どもは思つておりました。しかるにその最も重大な第一の段階でもあるというダレス氏の来訪を前にして、あなたはダレス氏と二度も会見をされておる。昨日は、民主党の代表者が参りました。その前において、自分はこういう考え方を持つておるのだという考え方の御構想も、われわれ民主党の最高幹部にはお話がなかつた。はなはだ私は失礼ではないかと思う。行く前に話がないというのは、あるいはそういうこともあろうかと思いますけれども、帰つて来て後には、こういう話もあつたのだということぐらいは話があつてしかるべきだと思う。それがなくして、何で自民外交協調なんということができましようか。この点について総理大臣のお考え伺いたい。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 苫米地君もダレス君に会つて、こういう話をせられたというお話は承つておりません
  96. 川崎秀二

    川崎委員 そういうことは失礼な答弁です。あなたがそういうことをいい答弁だと思つておつたら、大間違いです。大体そういうことを呼びかけられたのはあなたの方です。従つて外交問題に対しては、われわれはこういう考え方を持つて行くのだということの片鱗くらいはあつてしかるべきだ。驚くべき答弁であつて、もはやそういうことであれば、われわれはこうい問題についても考えを新たにしなければならぬということに相なるのであります。これではまつたくあなたは全国民と話合いをして行く、全国民と十分に腹を割つてつて行く外交であつて、おれにまかせておけではないのだということを言われておるけれども、事実はそれに反しておるではありませんか。その点についてあなたの御感想を伺いたい。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は謙虚な気持をもつて民主党その他のお話を承りたいと考えております。
  98. 川崎秀二

    川崎委員 話を承るだけであつて、あなたの考え方を述べるということはなさらないのですか。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 承れば、自然私の意見も述べることになりましよう。
  100. 川崎秀二

    川崎委員 今日のこの講和問題の進行につれまして、漸次国民の輿論も私は明確になりつつあると思うのである。たとえば自衛権の問題にいたしましても再軍備の問題にいたしましても、あるいはまた領土の問題にしても、漸次国民の輿論が結集されつつある。輿論調査を見ましても、従来までと違つた一つの傾向は、こういう段階には、少くとも民心を新たにする意味で総選を断行すべきだという声がだんだん高くなつて来ておる。具体的実例を申し上げますと、昨年の夏でありましたか、輿論調査の一端に現われたのでは、講和前に選挙をする必要がないということのパリテイーの方が非常に強かつた。しかし最近においては、これがやや平衡して来た輿論調査が相当出て来ております。総理大臣も今の段階ではしないけれどもというような答弁をきのう参議院でされておつたと思うのでありますが、もし講和前に国民が解散を要望する声が漸次高くなつて来たというようなことを看取された場合において、総選挙をすることがありますかどうか、その点についてお伺いしたいと思う。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 はたして輿論が解散を要求するならば、民主政治でありまくから解散するのが至当と思いますが、まず当分のうちはないだろうと思います。
  102. 川崎秀二

    川崎委員 吉田総理大臣に特にお伺いしておきたい点は、この講和問題に関連をいたしまして、吉田総理大臣の態度を見ていると、これは第八国会以来野党側が指摘をしたように、まつたく対米依存である。しかして自分を中心にした外交をしておるのであつて国民とともに外交しようという気持がない。ことにアジア諸国におけるところのほうはいたる民族的機運というものと日本の調子が合わないということは、強く指摘されなければならないと私は思うのです。今日国際連合の舞台においても、最も注目すべき発言をして、おりますのは、インドのネール首相の発言であります。インドのネール首相は、疑いもなく私は民主主義者だと思います。民主主義者でありながら、彼は常に世界の平和を希求をして、しかしてその背後にはアジア的な感覚というものが非常に出ておる。日本総理大臣は、ただ対米依存、対英依存——対英依存などというものはほとんどかけらもなくて、ほとんどアメリカ一辺倒である。こういう考え方で、はたして今後アジアの諸国と講和後において十分に円満なる協調をして行けるものかどうか、非常に私は不安にたえないのであります。従つて総理大臣は、今後このアジアを今日大きな思想の線でリードをしておるところのネールの考え方などに対して、もつと探求し、しこうしてあなたの考え方もアジアの一環としての考え方に出て行かなければならぬと思うのでありますが、こういう問題についてあなたはどういうふうに考えでございましようか。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はネール首相の考え方についてよく存じませんが、なるべくは一緒に参りたいと思います。しかしどういう考えをしておられるか、私は存じません
  104. 川崎秀二

    川崎委員 どういう考えをしておるかわかりませんということは、総理大臣としてはなはだ不見識な話ではないかと思うのであつて、ネールの考え方というものは、四六時中新聞にも出て来ておるし、雑誌にも出て来ておる。そういうことに対してよく知らないというような考え方で答弁をされるということは、私は総理大臣としての親切なる答弁ではない、まじめなる答弁ではないと思うのであります。  最後に一点だけ伺つておきます。これは政局の問題とは直接に関連はございません。しかしながら、今世界をおおつておるところの戰争か平和かの関頭に立つて世界のまじめな常識ある人々考え方というものは、きわめて悲観的に傾きつつあると思うのであります。総理大臣はおひまがないから読まれたかどうか私は知りませんけれども、最近ヨーロツパの読書界に非常なセンセーシヨンを與えたものに、「二十五時」という小説がある。これはルーマンアの一小説家が書いたものでございますが、ゲオルギユという作家が書いたものであるけれども、暗黒のヨーロツパの将来について、非常に深い示唆を投げてある。すなわち全体主義的な思想というものは、ナチスが崩壊した後においても、なお今日巨大な手で戰争の脅威を増しつつヨーロツパを支配しておる。つまりこれは明らかに私はソ連のことを指さしておると思うのでありますが、そういうような空気、あるいはまた日本においても、青年の中には今日の民主主義というものに対してしつかりした確信を持つことができなくて、従つて勢い日本の貧困の問題、アジアの貧困の問題から、その思想は共産主義ないしはそれに同調するところの思想に流れようとする傾向が非常にある。私はこれは政治家としては相当深く考えなければならぬ問題であると思うのであります。今日本の青年の思想をどういうふうにしで啓発して行くか、総理大臣はこれらの問題についてどういうお考えを持つておられるか、最後にお伺いをいたしておきたいと思います。
  105. 吉田茂

    吉田国務大臣 非常に抽象問題でありますが、日本の民主政治を確立するためには、教育はむろん大事なことであり、民主主義日本の青年が同調するように指導いたしたい。またこれは民主政治将来のためにも大切なことでありますから、文部省当局等にも民主政治の確立については十分力を尽して行くように申しておるようなわけであります。これは單に文部省あるいは政府だけが考うべき問題でなくて、政党諸君としても、青年の民主主義確立については御協力を願いたいと思います。
  106. 小坂善太郎

    小坂委員長 明日は午前十時半より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十一分散会