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前田郁君 ただいま上程になりました
国鉄輸送力整備に関する
決議案につきまして提案者を代表して
趣旨弁明をいたしたいと存じます。
まず
案文を朗読いたします。
国鉄輸送力整備に関する
決議案
最近国鉄貨物輸送の逼迫に因り、国内物資の需給に破衡を来し、
産業経済に重大なる
影響を及ぼしつつあることは、真に憂慮に堪えない。
政府及び日本国有鉄道は、この情勢にかんがみ、資金、資材、従員、機構等に関し特段の措置を講じ、速やかに車両、施設等を増備改善して輸送力の整備を図り、以
つて産業経済の進展、民生の安定に資すべきである。
右決議する。
次に、
決議案の
趣旨について
簡單に御
説明申し上げます。
わが国経済の復興、貿易の振興等に伴いまして、国内貨物の動きが一段と活発に相な
つたのでありまするが、それに対応すべき国鉄輸送力の増強は著しく立ち遅れ、昨年秋以来、貨物輸送の逼迫はなはだしく、滯貨はすでに二百万トンを突破するがごとき状態でありまして、その
影響はあらゆる面に如実に現われ、真に憂慮にたえないものがあるのであります。
国鉄輸送力の
現状について、少しく具体的に申し上げますると、二十五年度の輸送実績は一億三千六百万トンで、年度当初の輸送計画を上まわること七%でありまして、戰後における
最高記録を示しておるのであります。この実績を月別に見ますると、朝鮮事変を契機とし、七月以降から漸次増加の徴候を示し、本年三月に至
つて昨年同月に比べて実に二三%の激増とな
つておるのであります。
次に、在貨トン数と発送トン数との割合、すなわち掛買要請に対し、どれくらいの貨物が輸送されたかと申しますると、二十五年四月において一日平均五十一万トンの在貨に対し、発送割合は六二%であ
つたのが、本年三月には、百八十六万トンに対し二一%という状態で、これを戰前の九九%と比較することは、諸般の情勢から見て無理であるといたしましても、戰後の混乱期における一一%ないし二二%を除けば、過去十数年来の最低率であります。かような状態でありますから、滯貨も漸次増加いたしまして、昨年の四月末には四十三万トンであ
つたのが、本年三月末には遂に二百万トンを越えるに至
つたのであります。この二百万トンの貨物は、金額にしては数百億円となるのでありまして、これが何ら活用されず駅頭に眠
つているということは、ひとり荷主のみならず、わが国
産業経済のため不幸であるといわざるを得ないのであります。
しからば、貨單の運用の面はどうかと申しますると、国鉄の貨車は九万四、五千両でありまして、その運用効率は、昨年四月の二三%から漸次上昇し、本年三月には二八%となり、戰前の三八%には遠く及ばないのでありまするが、戰後における
最高であります。これは国鉄
当局の
努力の成果でありまするが、しかもなお送り不足の滯貨を切りくずすまでに至らなかつたことは看過できない事実であります。ここで問題になりますことは、貨車の運用効率をさらに高め、輸送量の増加をはかることはできないかということでありまするが、貨物の足が延びていること、貨車の停留時間が、長くな
つていること、列車キロが少くな
つていること、その他施設の不備、労働
條件による制約等の不利な原因が錯綜いたしておりますので、国鉄といたしましては、まず最大能率を発揮していると見るのが至当であると推定いたすのであります。
飜
つて、二十六年度の鉄道貨物輸送計画を見まするに、
国会提出の
予算においては一億三千四百万トン、実行計画において一億三千六百五十万トンとな
つているのでありますが、自立経済の構想、国際情勢の推移等により、要輸送量は少くとも一億五、六千万トンに達するものと予想せられるのでありまして、二十五年度の輸送実績は一億三千六百万トンに対し約一〇%の増加となるのであります。この厖大なる数字をいかにして輸送するかは、国鉄のみならず、わが国に課せられたる重要な問題でありまするが、現在の国鉄の輸送能力をも
つていたしましては、ほとんど不可能でありまして、これが解決を期するには、貨車並びに施設の増備改善をはかり、あわせてこれに伴う諸方策を講ずることが必要であると思うのであります。
最近における国鉄の貨率増備計画について申し上げますと、二十四年度には千九百両を増備いたしましたが、二十五年度には、わずかに五百三十五両を新造いたしたにすぎないのであります。しかも、一方廃車したものが、二十四年度においては千四百両、二十五年度には三千五百両とな
つているので、新造車両は廃車車両に及ばないのみならず、廃車の補充さえ十分でないのであります。現在国鉄の貨車には、車齢三十年以上の老朽車が非常に多く、車両局の調査によりますれば、廃車すべきもの約二万五千両、そのうち運転保安上緊急廃車を要するもの一万四千両に達するということであります。一方、貨車の新造計画でありまするが、二十六年度
国会提出予算において、新造改造合せて約四千両、第一次実行計画において、
物価騰貴等によりこれを約二千六百両に
改訂し、第二次実行計画においては新造千五百両を追加したのでありまするが、廃車車両は二千四百両を数えるので、増加価数は千七百両にすぎないことになるのであります。
従つて、この計画が
予定通り実行せられたといたしましても、最大輸送能力は一億四千万トンを出でないと推定せられるのでありまして、出貨との開きは七百万トン以上になり、今後さらに一層深刻な貨車不足の事態が現出するであろうことは予想にかたくないのであります。
最近、わが国の
産業経済は復興著しきものがありまするが、その基盤は現になお脆弱で、弾力性に乏しく、わずかな物資需給
関係の不円滑によりましても経済循環に変調を来し、混乱に陥る可能性を多分に包蔵しているのであります。
従つて、物資流通過程の最も重要な一環を
なす輸送機能が一旦停屯いたしますと、
影響するところは広
範囲にわたり、
産業経済は、ために麻痺状態に陥り、自立経済も、日米経済協力も、紙上計画に終ることなきを保しがたいのであります。
はたしてしからば、何ゆえにかかる深刻な貨車不足の情勢に立ち至つたか。その原因は多々あるであろうと思われまするが、ひつきようするに、国鉄
当局の車両増備計画が当を得ていなかつたこと、国策として輸送力拡充計画が総合的に樹立せられていなかつたことの、この二つに盡きると考えるのであります。すなわち、国鉄が独立採算制に偏重するの余り、ともすれば輸送機関本来の使命たる公共性を忘れて営利主義的方策に走るきらいあることは、いなみがたき事実でありまして、貨車増備計画のごとき、閑却したとはあえて申しませんが、適切でなかつたと言い得ると思うのであります。
またわれわれは、戰後、特に講和を目捷に控え、策定せられている
産業経済に関する計画中に、真に輸送力の確保ないし増強ということを繰り込むべきであると考えるのであります。海上輸送力の拡充については、つとに問題にされ、特に外航船腹の増強については、本
国会において決議されたことは御
承知の
通りでありまするが、陸上輸送力、なかんずくその根幹を
なすところの鉄道輸送力については、確固たる対策が樹立されていないのは遺憾であります。わが国の地理的
條件並びに高度の貿易依存性より見て、海上輸送力の増強をはかる要あることはもとよりでありますが、これと並行して鉄道輸送力の整備をするということでなければ、輸送の完璧は期しがたいのであります。
以上のような観点において、われわれは鉄道輸送力、特に貨車の整備増強を国策として取上げ、資金資材等につき特段の措置を講じ、も
つてこれが実現をはかるとともに、輸送能率を高めるため、管理機構の改善、
従業員の教育待遇等、必要な諸方策を考究具現するよう、強く
政府及び日本国有鉄道に要望するものであります。
以上、
簡單でありますが、
決議案の
趣旨について申し上げました。各位の御
賛成を切望いたす次第であります。(
拍手)