○門司亮君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする
警察法の一部を
改正する
法律案並びに
国民民主党の
提出にかかりまする修正案に対して、
反対の
意見を申し述べるものであります。(
拍手)
両案に
反対をいたしまする前に、現在の
自由党の本問題に関する行政の関係において一言申し上げておきたいと思うのであります。それは大橋法務総裁の現在の地位であります。すなわち、
憲法の第四章第四十一條には、明らかに立法の権限を
国会に與え、さらに第五章の第六十
五條におきましては、行政の権限は
内閣にあると
規定いたしておるのであります。さらに第六章の第七十六條によ
つて最高裁判所は司法権を掌握しておる。さらに同第七十七條によりまして、
最高裁判所の定める
規定に検察官は従わなければならないということが明記してあるのであります。この
憲法の三権分立の
規定は、明らかに民主政治、行政の基礎であるとわれわれは深く信じて疑わないものであります。しかるに、現法務総裁でありまする大橋君は、一方においてこの司法権を掌握し、一方において警察の行政権に主管大臣としておられます現在の地位に対しまして、
憲法の
解釈上われわれは多大の疑義を持つということを、まず申し上げておかなければならないと思うのであります。(
拍手)われわれは、過去数代の間における
日本の政治、行政が、ややともいたしまするならばフアシズムの
傾向に陷らんといたしておりまするときに、一方において司法権を握り、一方において警察行政権が、たとい
法律の上に、おいて指揮命令の権限はないといたしましても、
政府に対していろいろな進言をし、さらに企画立案する立場にあるということは、明らかにこの二つの問題を混同したものであるということを申し上げなければならないのであります。
従つて、
自由党のこのフアシズムの性格を遺憾なく現
内閣は暴露しておるものであるということを、はつきりと申し上げなければならないと思うのであります。(
拍手)私は、かくのごとき見地に立
つて、今回
提出されておりまするこの
警察法一部
改正法案の逐條にわたりまして、きわめて簡単ではございまするが申し上げたいと思うのであります。
すなわち、その第十九條に定めておりまする、管区学校並びに警察大学に在掌中の者約五千を、第四條に
規定する三万の定員のほかに置くという
規定であります。これは警察学校におり、さらに警察大学におりまする者は、明らかなる、きわめて優秀なる警察官であ
つて、いつ何どきといえども十分出動し得る機能と資格を持つものであるということは、
諸君も御承知の通りであります。(
拍手)従いまして、この
規定は、第四條に
規定された三万の定員を、明らかに五千増員するという
規定であ
つて、欺瞞もはなはだしいものであるといわざるを得ないのであります。
さらにその次の第二十條に
規定いたしておりまする、知事の、重大なる
治安維持の
ために、公安
委員を通じて国警の出動を要請することができるという権限であります。この権限は、事態の
内容だけを見ますれば、あるいは妥当性があるかのような形は示しておりまするが、
昭和二十二年九月十六日の、マッカーサー元帥から時の
内閣総理大臣にあてた
警察法改正に対する書簡の
内容を見てみまするならば、いかなる事態があるといえども、
日本の警察制度を再び中央集権的のような状態にもどしてはならないという意味は、はつきり明記してあるのであります。従いまして、この趣旨と、この要領にのつとつた今日の警察権の行使が——しかも警察に対しまする権限と、さらに十分なる情報を把握いたしまするところの何らの組織の上に立
つていないその知事が、きわめて重大なる治安に対して、ただちに国警の出動を命ずるということは、一面知事にきわめて大幅な警察権を付與するのと同じである。すなわち警察権の中央集権化であるということをいわなければならないと思うのであります。それと同時に、いわゆる事案があると考えられておりまする当該自治警察に対し、公安
委員会に対し、あるいは首長に対しまして、何らの連絡も、何らの話合いもしないで、ただちに知事の認定によ
つて国家警察が出動して参りまして、その区域内において権限の行使をするということは、明らかに当該市町村の自治権の侵害であるといわなければならないのであります。今日、
日本の真の民主主義の建前というものは、地方自治体の完全なる自主的自律性である。これが
日本の民主政治の重要な点であるということは、これまた
憲法の九十二條に
規定しておる通りであります。しかるに、この自主的自律性が、かくのごとき角度から侵害されるということにな
つて参りまするならば、この
規定は明らかに自治権の干犯であるということを申し上げましても、私は決して過言ではないと思うのであります。
その次に問題にな
つて参りますものは、四十條の、地方の弱小自治警察を住民の意思によ
つて国家警察に吸收するという條項であります。この條文は、一見民主的のようにも見えておりまするが、先ほど申し上げましたように、真に
日本の民主化をはかろうとし、真に
日本の警察行政を民主化することの
ためには、地方の住民はその
責任において治安を確保すべきであるということは、これまたマッカーサーの同書簡の中に明記してある事実であります。こう考えて参りますると、われわれは、この地方におきまする、たとい弱小の自治警察と申しましても、当然これの維持のできない
欠陷を指摘いたしまして、これを十分に補足して、いわゆる弱小警察の育成助長がまずなされなければならないと思うのであります。すなわち、多く申されておりますような財政の問題、あるいは犯罪の科学的捜査、あるいは機動性、あるいは住民みずからの
責任においてみずからの治安を維持するというこの民意の高揚等に対しましては、何らの処置が今日まで講ぜられていないのであります。しかして、育成助長ということを忘れて、ただ單に弱小であるからこれを
国家に吸收する、その手段の一つとして住民投票によるということは、明らかに民主主義の冒涜であるということを考えておるものであります。(
拍手)われわれは、かくのごときことに対しましては十分警告を発したいと思うのであります。
さらにその次に書いてありまするものは、いわゆる住民の意思の決定において、地方議会の諸般の情勢と地方的
要求に応じて、警察官を適宜に増員あるいは減員することができるという
規定が設けてあるのであります。
従つて、この條項によ
つて、現在きめられておりまする九万五千の地方自治体の警察官の
わくは、くずれて参るのであります。このことを考えて参りまするならば、現在施行令第二條の別表にありまする警察官の定員を換算して参りまするならば、現在九万五千の自治警察は、明らかに十二万にふえて参るのであります。詳しい数字を申し上げまするならば、三万二千百十一名の増員が当然行われなければならない。そのうちで八大都市に含んでおりまする二方三千が、かりに現状維持として増員をしないといたしましても、八大都市を除く市以上が、かりに現状のままで増員するといたしまするならば、私は明らかに八千名の増員が行われ得ると思うのであります。しかいたしまして、この八千と管区学校その他におりまする五千名が定員外とな
つて参りまして、双方合せて参りまするならば、約一万三千の警察官が現員十二万五千に加えられて参ると思うのであります。一万三千の警察官が、かりにふえて参るといたしまするならば、ここに警察官一人当り二十万ないし二十三万の費用を計上いたしておりまするので、明らかに三十億内外の予算を必要として参るのであります。(「予算をどうするのだ」と呼ぶ者あり)今回この
警察法の
改正によ
つて、国、地方を通じ三十億の予算を
要求しなければならないということは、これまた
国民の血税にまたなければならないということであります。現在ですら、
国民は非常に税の電圧に悩んでおりますときに、この
警察法の一部
改正によ
つて、国、地方を通じて三十億の予算を
要求するということが、はたして妥当であるかどうかということであります。
諸君は、今、予算をどうするかと言
つているが、予算をどうするかということは、
諸君に聞きたいのであります。
自由党の
諸君に聞きたいのであります。(
拍手)われわれは、この予算的処置を伴わない、いたずらなる増員に対しましては、将来の問題といたしましても当然
反対をしなければならない。
諸君は、架空のと申し上げまするか、予算を伴わない人員の増加を決議するということは、私はきわめて不見識であると考えておるものであります。(
拍手)われわれは、この三十億の予算を、あるいは地方財政平衡交付金によ
つて地方に配付し、あるいは
国家予算においてこれをまかなわなければならない具体的処置が講ぜられていないということが、この問題に対しまする一つの大きな
反対の
理由であるということを、十分に知
つていただきたい。
さらに、民主党から出て参りましたるこの修正案でありまするが、その中で、私どもがいまだに釈然とし得ざるものは、いわゆる自治警察をこしらえることの
ために組合警察を組織することができるという違いができます。一方におきましては、
地方自治法の二百八十四條によりまするならば、なるほど一部
事務組合というものは当然できるのでありますが、今日の自治警察の制度というものは、町村固有の
事務とは、われわれにはいまだ考えられないのであります。もしこれを町村固有の
事務として
事務警察ができるといたしますならば、この原案にありますところの自治警察を国警に委讓するということに非常に大きな矛盾を感ぜざるを得ないのであります。この矛盾に対しましては、何らの
解釈がされていないのであります。
従つてわれわれは、かくのごとき
法案、かくのごときものとの間に十分の了解と十分の
解釈の成り立たないような修正案に対しましても、また
反対の意思表示をするものであります。
最後に、
警察法の一部を
改正する
法律案を
政府は
提出して参つたのでありますが、私は、
日本の警察制度に対しましては徹底的の改革を
要求し、徹底的の組織の改善をはからなければならないと思うのであります。すなわち警察予備隊と警察との関係、この関係は、いまだに釈然としたものもなければ、はつきりとした
法律もない。
日本の警察制度を
改正し、
警察法を
改正せんとするならば、この警察予備隊と警察との結びつきをはつきりしない限りにおいては、いつまでた
つても
日本の警察というものが明朗にならないということを、私ははつきり申し上げなければならないのであります。軍隊にほとんどひとしいような性格を持つこの警察予備隊と、純然たる行政警察である現在の警察との関連をいま少しく明確にいたしますると同時に、
日本のすべての治安、すべての警察制度を改革することが最も緊急であり、必要であると考えておりますが、
政府は、この点に対しては根本的に改革する意思がないということを
委員会において表明されておりますが、これは私は、
政府としてはきわめて無
責任な放言だと考えておるのであります。私どもは、この点を強く
要求いたしまして、原案並びに修正案に対して
反対の意思表示をするものであります。(
拍手)