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国務大臣(
山崎猛君)
桜木町駅構内における
国鉄電車の
燒失事故は、
主管事項といたしまして緊急御
報告申し上げたいと考えておりましたが、本日その
機会を得たのであります。
去る四月二十四日、
国鉄桜木町駅構内に起りました
国鉄電車燒失事故は、不幸にも乗客中に百六名の死者と、さらに九十二名の
負傷者を出し、近来まれなる
悲惨事でありまして、その
遭難者並びにその
負傷者、その
遺族の方々に対しては、まことに言うべき言葉を知らない、痛恨きわまりないできごとであ
つたのであります。さらにそれが広く
国鉄電車に対する不安の念をも抱かせるがごとき傾向さえ見るに至りまして、重ね重ね遺憾しごく、申訳のない
事件であつたと痛感いたしておる次第であります。
事故の概略を申し上げますと、当時
現場附近の
電線路の碍子のとりかえ
作業に従事いたしておりました職員が、誤
つてつり架線を切断し、そのため
駅構内の
渡り線付近で
架線に高低の差を生じましたところに、
電車を停止する手配の行き届かなかつた間に、
事故が起つたあの
電車が進入して参り、そのパンタグラフを
架線にひつかけて、これを切断したために発火したもののごとく、技術的には今日判断されておるのであります。発火と同時に、
電車はもちろん
非常停車をいたしましたが、火のまわりがきわめて早かつたことと、事後の乗客救い出しの手段において周到ならざりしうらみがあり、遂に多数の人命を失うことになりましたのは、返す返すも遺憾のきわみであつたと考えておるのであります。
事故の起りました
原因につきましては、ただいま
関係当事者数名が検察庁の手によ
つて取調べ進行中に属しておりますので、われわれ他より
関係当事者について直接これを
確め、これをつまびらかにすることのできない
現状にあります。そのために、
技術的故障の起つた過程を判断し得ても、これに携わつた
当事者に直接
尋問等のできないために、これを
確め得ざる
現状にあるのであります。しかしながら
運輸省といたしましては、それとは別に目下技術的に綿密な
調査を行
つておりまして、
事故そのものの直接
原因のみにとどまらず、
従事員の
指導訓練及び
作業の方法、
車両の構造、
運転規程等、
各般の見地より検討をいたしておりますので、早急にその結論を得まして、将来に対し交通の安全を期する
所存でおるのであります。とりあえず、ただいまでは、非常の場合に対処し得るに適当と思われまする
車両設備の
改善を実施せしめておりますが、
調査の結果によ
つては、必要なる
設備あるいは
業務上の
改善命令をも発する
所存でおるのであります。なお、このことありし以前より、
運輸省におきましては、交通安全の基準を高めます意味において、
鉄道保安に関する法規の
整備について準備中でありますが、このたびの
事故を
機会といたしまして、一層急速にその
整備を取進めて完璧を期したいと考えておる次第であります。
遭難者のみならず、
遭難者の
遺族各位並びに
負傷者の
各位に対しましては、まことにお気の毒なことであると存じております。でき得る限り弔慰の処置を講じまして、こいねがわくば後顧の憂いをできるだけ少からしめることに力を盡したいと、
各般の指示をいたしておるような次第であります。
以上は、きわめて概要の御
報告であります。もちろん、このことの
真相を明らかにいたしますためには、前に申し上げました技術的、機械的の
調査のほかに、これに直接携わ
つた従事員の状態をも
調査する必要がありまするのみならず、さらにまた御
報告申し上げるといたしても、技術的に、あるいは
図解等によ
つて詳細に申し上げなければならないのでありますから、私は、この本
議場におきましては、以上をも
つて一応の御
報告といたしまして、さらに詳細な面につきましては、
運輸委員会等におきまして、お尋ねに応じて一層明らかにお答えをして、これに対する
事件の
真相を明らかにすると同時に、
国鉄に関する
運輸事業について、
国民をして無用の不安を抱かしめないように、
安全感を持たしめ得るように万全の策を講じたいと考えておる次第であります。
終りに臨んで、特にこの
議場を通じて、全
国民の
諸君が、この
事故に対して深甚なる同情を表せられたるばかりでなしに、御弔意を表されたることに感謝するのみならず、さらに進んで
運輸当者として、あわせて
国有鉄道当局者にかわ
つて、
国民の前に、このたびの
事故について何とも申訳ないということを卒直に陳謝いたさなければならないと考えておる次第であります。
以上をも
つて私の御
報告といたします。
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