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1951-01-27 第10回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年一月二十七日(土曜日)  議事日程 第五号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  懲罰委員長辞任の件  常任委員長補欠選挙  故議員米窪滿亮君に対する益谷秀次君の哀悼の辞  地方公共団体議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案内閣提出参議院回付)  両院協議会協議委員選挙  国務大臣演説に対する質疑     午後一時二十三分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) お諮りいたします。懲罰委員長森幸太郎君から委員長を辞任したいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) つきましては懲罰委員長補欠選挙を行います。     —————————————
  6. 福永健司

    福永健司君 常任委員長選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  7. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。議長土倉宗明君を懲罰委員長に指名いたします。      ————◇—————
  9. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御報告いたすことがあります。議員米窪滿亮君は去る一月十六日逝去せられました。まことに痛惜哀悼至りにたえません。米窪君に対する弔詞は、議長において先例によりすでに贈呈いたしました。  この際同君に対し弔意を表するため発言を求められております。これを許します。益谷秀次君。     〔益谷秀次登壇
  10. 益谷秀次

    益谷秀次君 ただいま議長から御報告のありました通り、本院議員米窪滿亮君は、本月十六日、にわかに逝去せられました。さきに病を得てから、引続き御静養中と承つておりましたが、やがて御回復のことと期待いたしておりましたにもかかわらず、不幸にしてこの悲報に接し、心から哀悼至りにたえません。この際私は、諸君の御同意を得て、議員一同代表いたし、つつしんで弔意を表したいと存じます。(拍手)  米窪君は長野県塩尻の御出身でありまして、大正三年、東京高等商船学校を御卒業の後、同十年まで前後八年間、あこがれの海員生活を送り、翌十一年日本海員組合に入り、編集長となり、以後庶務その他の各部長を歴任して、ひたすら組合の育成と助長に献身し、海員福祉増進に全幅の努力を拂われたのであります。後に選ばれて副組合長となり、もつぱら組合指導に当られましたが、さらに戰後全日本海員組合創立されるや、また推されてその顧問に就任されました。海員組合の今日あるのは、君に負うところ、けだし絶大なるものありと申さなければなりません。(拍手)  文才ゆたかな君は、かねてから海洋文学に名を知られ、青年の血を沸かし、胸をおどらせておりましたが、進んで大日本海洋連盟日本海事振興会によつて海事思想の普及に一大努力を拂つておられたことは、だれ一人として知らぬ者はないのであります。(拍手)  君の信望は年とともに厚く、大正昭和にわたつて、ジユネーヴの国際労働総会労働代表またはその顧問ないしは労働理事として出席すること前後六回、あるいは労働理事会日本労働者代表として派遣されるなど、国際場裡にはなばなしく活躍して、よくその使命を全うされたのであります。(拍手わが国民主化の高揚とともに労働組合もますます向上発展の道をたどりつつあるとき、君の胸中まことに感慨無量なるものがあつたことと存ずるのであります。  大正十五年以来、君は社会民衆党及びその後身たる社会大衆党常任中央執行委員となり、鋭意党の発展に盡瘁されました。さらに日本社会党創立に際してはその創立委員となり、会計監査に就任、爾来党内の重鎮として今日に至つたのであります。(拍手)  昭和十二年以来、兵庫県第二区より立つて院議員に当選すること四回、在職九年十一箇月に及び、わが政界に一段と頭角を拔きん出て来られたのであります。さき片山内閣において労働省が設置せられるや、初代の労働大臣となり、戰後の複雑困難なる労働行政にその蘊蓄を傾け、すぐれたる手腕を発揮せられましたことは、いまだわれわれの記憶に新たなるところであります。(拍手)  君は資性温厚にして円満、しかも内に不抜の信念を堅持し、その人格と識見にわれわれは常に多大の敬意を表しておつたのであります。祖国再建の途上、幾多の問題をはらむ今日、国会の再開を目前に控えて長逝せられましたことは、国家のため大いなる損失でありまして、心から痛惜傷心至りにたえません。  ここに、つつしんで故人の御冥福を祈り、哀悼のまことをささげる次第であります。(拍手)      ————◇—————
  11. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわちこの際、内閣提出参議院回付地方公共団体議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案議題となし、その審議を進められんことを望みます。
  12. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  地方公共団体議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案参議事院回付案議題といたします。     —————————————
  14. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 採決いたします。本案の参議院修正同意諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  15. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数…。(拍手)     〔発言する者多く、議場騒然聽取不能
  16. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立少数であります。     〔発言する者多く、議場騒然
  17. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) ただいまの宣告の訂正を私は申し上げましたが、なお繰返して申します。起立少数であります。(拍手)よつて参議院修正同意せざることに決しました。      ————◇—————
  18. 福永健司

    福永健司君 憲法第五十九條第三項及び国会法第八十四條第一項の規定により、地方公共団体議員及び長の選挙期日などの臨時特例に関する法律案について両院協議会を求められんことを望みます。
  19. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永提出動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  20. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。(拍手)よつて両院協議会を求めることに決しました。      ————◇—————
  21. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより両院協議会協議委員選挙を行います。
  22. 福永健司

    福永健司君 協議委員選挙は、その手続を省略して、議長においてただちに指名せられんことを望みます。
  23. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて協議委員議長において指名するに決しました。  ただちに指名いたします。   地方公共団体議員及び長の選挙   期日等臨時特例に関する法律案   両院協議会協議委員    中島 守利君 山口喜久一郎君    石田 博英君  倉石 忠雄君    前尾繁三郎君  川本 末治君    福永 健司君  椎熊 三郎君    床次 徳二君  藤田 義光君(拍手)  ただいま指名いたしました協議委員諸君は、議長応接室に御参集の上、議長、副議長おのおの一名を互選せられんことを望みます。      ————◇—————
  25. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。三木武夫君。     〔三木武夫登壇
  26. 三木武夫

    三木武夫君 私は、国民民主党代表して、講和問題に関連する諸問題について吉田首相お尋ねをいたしたいと存じます。  今やダレス大統領特使の来訪を迎えて八千万同胞の熱望する講和の成立を近い将来に期待できますことは、喜びにたえないところであります。(拍手)しかしながら、講和民族百年の運命を決する死活の重大事であり、しかもそれは異常に困難な世界情勢の中において行われんとするものでありまするがゆえに、国民にかわつてこの重大事を担当しようとする吉田内閣としては、最高の叡智をしぼり、最大努力を傾けて八千万国民要望最大限度に実現するの覚悟がなければならないのであります。(拍手講和は決して自由党と結ばれるものでもなければ、ましてや吉田首相と結ばれるものでもないのであります。(拍手)八千万国民とこそ結びたいのが連合諸国の真意であることを忘れてはならないのであります。(拍手吉田内閣は、たまたま政権担当者として国民にかわつて直接その衝に当るにすぎないのだという謙虚な気持こそ必要なのであります。(拍手)ゆえに、現内閣がその衝に当るにほ、八千万国民叡智要望講和條約に凝結せしめるの努力を欠いてはならないのであります。わが国民民主党も、国民の信託を受けた公党としてこの民族共通課題のため党の全力をあげて協力するにやぶさかではありません。(拍手)  しかるに、吉田首相講和に対する見解は、断片的な言明のほか、ほとんど国民には知らされていないのであります。首相は、むしろ融和に関する論議をことさらに回避し、講和はおれにまかせておけというがごとき傲慢独善態度を今日まで示して来ているのであります。(拍手)われわれは、この首相態度をはなはだ遺憾といたします。連合国は、われらに対し一方的な講和を押しつけるというがごとき態度ではなく、むしろわれらの希望を尊重し、対等の立場でわれらの要望を聽取しようとする好意ある態度を示しておるのであります。国民の自由に表明する要望を総合して日本国民の自主的な案を率直に提示することが連合国の好意に報いる道であります。(拍手首相は、この国会を通じて、国民の前に講和に対する一般的見解を明らかにされんことを要望するものであります。(拍手)  次に、世界情勢に対する総理認識についてお尋ねをいたしたいのであります。第二次大戰後世界の平和と安定こそは人類共通念願であり、わが国もまた平和国家の悲願をもつて国家再建努力いたして来ましたにかかわらず、終戰後わずかに五箇年余にして、今や人類は恐るべき戰争脅威の前にさらされているのが現状であります。思うに、この悲しむべき世界情勢の根底には、世界の多くの人たの共産主義に対する致命的な認識誤りがあつたのではないかと考えるのであります。われわれは、再びこの誤りを犯してはなりません。共産主義のそもそもの思想的本質からしても、終戰後五箇年間の彼らの行動から見ても、それは断じて甘く見ることは許されないのであります。現下世界情勢は、いかにこれを甘く認識すると申しましても、吉田首相の言われるがごとき神経戰などという甘い段階では断じてないのであります。(拍手)現に朝鮮においては、はげしい戰争が日夜進行しており、共産軍侵略に対し、米国を中心とする国連軍は、すでに四万数千の犠牲を忍びつつ、血を流して戰つているではありませんか。この嚴然たる事実に目をおおうことは許されません。それはまだ熱い戰争とは言えないといたしましても、少くとも吉田総理の言われるがごとき冷たい戰争段階ではないのであります。しかもそれは單に朝鮮のみのことではなく、すでにインド支那、チベット、マレー等に展開されている事実は、決してこれを軽視することはできないのであります。いつ同機の事態の発生を見ぬとも限らぬ危險地帶は、アジアにも、中東にも、近東にも、ヨーロツパにも、至るところに存在しておるのだということを知らなければならないのであります。  朝鮮における合理的な平和が成立することは、日本国民の所念するところでありますけれども、共産軍要求等から見まして決して楽観は許しません。さればとて共産軍要求を大幅に認めて、侵略の勝利と、国連の権威の失墜を意味するがごとき緩和政策をもつてあがなわれた平和が永続するとは考えられないのであります。ゆえに、米英を初め国連は、合理的協定努力し、かつ全面戰争危險を極力警戒してはいるが、しかし、あくまでも侵略を排撃して、平和の原則を守るためには戰いを放棄しないものと信じます。かかる戰争状態が続く限り、何人も希望せざるにかかわらず、それがいつ全面的な戰争発展するかもわからないという危險は現に存在しておるのであります。  かかる共産軍の露骨な侵略性に対抗するため、米国はすでに非常事態を宣言して準戰時態勢を雅進し、また欧州統合軍の創設と充実に努力をいたしております。これはあくまで名誉ある中和のためであるという米国指導者の言を信ずるものでありますが、しかし、このような民主陣営防衛態勢の確立を世界共産主義勢力が拱手傍観するであろうという確証は、どこにもないのであります。民主陣営防衛力強化の前に、世界共産軍戰略的要地を掌握する挙に出る公算は決して少くないのであります。このような対象の中にわが国が含まれていることは、あらゆる兆候から疑うことはできません。現に中共軍指導者日本解放を公言しており、これに呼応して国内の暴動と暴力革命を企図する勢力も、遺憾ながら現に存在していることを認めなければならないのであります。  吉田総理施政方針演説を聞いても、このような内外情勢にはまつたく馬耳東風であります。わが国共産主義の跳梁は影を治めた、治安は何も心配はない、朝鮮の動乱はやがてうまく治まる、国連軍は破れない、大戰は起らぬ、まるで嵐の中に桃源の夢を結んでいるかつこうが吉田首相そのものであります。事態を冷静に見るということは、決して事態を甘く見るということではありません。いたずらに不安をあおることは慎まなければならぬが、事態の重大さを、いたずらにほおかむりして、不当の楽観を裝うがごときは、為政者の態度としては、きわめて無責任であります。(拍手)私は、必ずしも今すぐ危險が迫つておると言うのではないが、少くともそのような危險可能性は大きいのだと言うのであります。  およそ政治計画とは、最善を予想して楽観の上に立てらるべきものではなくして、最惡の場合にも対処し得るように立てるのが政治計画であります。すべての重大問題に対する政府の無為と怠慢は、世界情勢に対する首相の驚くべき甘い認識から来ておるのであります。首相時局認識は、史上空前の危機を自覚してこれに対処せんとする世界情勢テンポとも合わなければ、国民の感覚とも、あまりにもかけ離れておるのであります。ここに率直にその認識を明らかにされんことを望むものであります。  次に、講和後のわが国安全保障について首相見解をただしたいのであります。今日のごとき国際情勢のもとにおいては、講和後の日本安全保障の問題は国民最大関心事であります。講和條そのものは、戰争の跡始末に関することであるから、わが国将来の安全保障問題とは一応別問題のようでありますけれども、しかし、せつかく待望講和が成立し、民族独立が実現されても、その国家侵略脅威を受け、あるいは万が一にも侵略されるようなことになれば、講和独立意味をなさないのであります。われわれは戰争をしたくない。ひたすら平和国家で行きたいというのが八千万国民の例外なき念願であります。これを侵略するものがありとせば、天人ともに許さざる残虐不法のことといわなければなりません。(拍手)しかし、そのような公算が決してないとは言えない低界の現状は、きわめて遺憾であります。しかし、この現実に対しては、あくまで万全を期さなければなりません。その意味で、安全保障の問題は、講和と不可分の最大課題であります。  この点で、私も国民とともに国連に強く期待するのでありますが、国連は、いまだ出発点にあつて最終的世界平和機構ではありません。今後幾多の困難を克服しつつ国連は育成されるものであります。それはまだ多くの制約を伴い、決して万能薬ではないのであります。第一、日本講和会議後ただちに国連に加入を認められるかどうかもわからない現状であります。また国連原則の中で太平洋防衛條約の構想を説くものがあり、これは将来の問題として真劍に考慮さるべきものであるとしても、近い将来これに大なる期待を持つわけには参りません。かりご国連及び太平洋地域集団保障によつてわが国安全保障を求めるにしても、それには、われわれも当然犠牲を分担し、義務を果さなければならないのであります。(拍手)いずれにしましても、講和独立後のわが安全保障を全部他力に依存するなどということは、とうてい許されることではないことを覚悟しなければなりません。  自衛権国家の有する基本的権利であり国家治安独立と安全を守ることは政治第一義的任務であります。自分の国をみずから守る決意なくして国家独立はとうてい考えられるものではありません。(拍手)わが平和・非武裝憲法が当然に予想していた世界的條件は、不幸にしていまだ成立していないのであります。もし世界の一切の国が一切の武力を放棄するか、それとも一つ世界政府が一切の武力を管理するがごとき状態になれば、わが非武裝憲法は生きて来るのであります。われらは、そのような状態の実現されることを切望するものでありますが、しかし不幸にして、そのような状態はまだ実現されず、近い将来に実現されるとも思われません。侵略戰争脅威の存在する現下世界で、わが国のみが何らの自衛力をも持たず、一つ真室状態を呈していることは、世界平和のためにも決して有利なことではないのであります。  いうまでもなく、われらの要請するものは有効な安全保障であつて、必ずしも再武裝を言つておるのではありません。しかし、独立後のわが国が、平和愛好国国際的集団安全保障の一環として、ある程度の自衛力を持つことは、とうてい避けられないことであります。(拍手)しかしながら、いまなおわが国占領下にあるし、経済力は弱体であり、非武裝憲法は存在し、世界的世論もあることでありますから、今わが国がイニシアチーヴをとつて、かつてに再武裝を唱え、これを推進することは愼まなければならぬのであります。しかしながら、一方連合国に強制されて持つ軍備とか、あるいは傭兵とかいうような形であつては、これは問題にも何もならないのであります。  思うに、日本安全保障の問題は、平和愛好国世論日本防衛の絶対必要を自覚し、財政や武器の援助をも決意して、わが国自衛力の保持を支持する国際的な機運と、同時にわが国民自身自主自衛決意を持つことが合致して初めて正しく実現し得ることであります。(拍手)これが合致せなければ、日本の安全は確保されるものではありません。そこに内外政治家の高い責任があるのであります。そのために、われわれは講和によるわが国独立平和を切望し、かつわが国民の精神と経済自立全力を注がなければならぬのでありますが、同時にわが国安全保障については、国際的安全保障機構と結合しながら、わが国自主的計画を用意する必要があるのであります。それをもつて政治的取引でなく、腹を割つて連合国と交渉し、これを訴えることを要するのであります。そして、警察力強化国民防衛組織化とは、講和をまつまでもなく、ただちに着手さるべきことであります。  首相もまた、防衛国民の力でなすべく、他国依存独立は保てないと説いておりますが、すぐ再軍備を考えることは早計で、兵力のみが国を守るものではないと言われております。首相構想は、すこぶるあいまいであつて首相時局認識の甘さと相まつて国民安全感を少しも満足せしめていないのであります。(拍手連合国に村しても腹の探り合いで、むしろこういう点については、国際的に不幸な疑惑さえも與えておるのであります。もつと率直に首相信念を吐露し、この機会構想を明らかにされんことを望むものであります。(拍手)  安全保障とともに重大な問題は、経済自立に関する問題であります。講和後において、はたしてわが国経済自立が確保できるかどうかということについては、国民のひとしく憂えておる点であります。これにつきまして、あるいは日本産業水準であるとか賠償等の問題については、ほとんどこれに制限を加えないということが国際的空気であり、この点についてはアメリカの努力を多とするものでありますが、問題は、これだけでは解決をいたしません。一体、講和後におけるわが国経済をいかなる形で世界経済と結びつけるのか、人口問題の処理に対してはどういう見解を持つておるのか、この点についても総理見解を明らかにさるべき必要がございます。  また総理は、一面において、施政方針演説においても繰返し愛国心を強調し、自衛責任を説かれましたが、愛国心自衛責任感は、單に強調するだけで起るものではありません。われら八千万の国民が真に国を愛し、これを断固として防衛せざるぺからずとの気概を持つためには、日本の国の政治が、すべての国民が人間的な尊嚴に値する生活を保障せられ、民主的な自由を尊重せられるような社会をつくることが前提であります。(拍手)それには経済的基礎を安定せしめ、生産を最大限度に促進しつつ、でき得る限り社会保障制度を確立して富の公正な分配をはかることが必要であります。しかるに政府與党諸君は、旧式の自由経済観念をもつて弱肉強食の邪惡な論理を公言してはばからないというのが、今日與党態度であります。(拍手)その労働政策農業政策中小企業政策というものは、無為無策の一語に盡きるのであります。国連協力国連協力を口で唱えればするけれども、身を挺して国連協力の第一線に働いている労働者に、政府は一体何を報いたというのであるか。(拍手食糧自給を唱えはするけれども、低米価と災害にさいなまれながらも食糧増産に励む農村に、一体政府は何を報いたというのであるか。中小企業振興の掛声は大きいが、倒産を見送つた以外に何の振興策があつたのであるか。そればかりではない。遺家族や未亡人、引揚者、こういう人たち生活不安を解消するために、真劍に何をしたというのでありましようか。(拍手)要するに、無為無策を裏書きするにすぎないのであります。  今日の世界では、見えざる手に経済の調整をゆだねて、自由競争自由放任でやつておる国は、世界にどこにもないのであります。(拍手)むしろ、限りある條件をいかに国民生活向上のため最も能率的、合理的に生かすかをこそ考えなければならないのであります。それはすでに世界一般の趨勢でありますが、とりわけ今日のわが国においてはこの点が必要であります。それがためには、自由放任経済ではなく、適切な計画統制は欠くことができないのであります。のみならず、今日の世界情勢の中で、米国を初め各国とも、多かれ少かれ、準戰時態勢に伴う重要物資使途制限、輸出入及び物価、賃金の統制を実施しつつあることを忘れてはなりません。今後は、ますますこういう傾向が強化されるのであります。ゆえに、特に非常事態を宣言した米国経済の影響は、わが国としても真正面からこれを受けざるを得ないのであります。  米国としては、貴重な物資を漫然と自由経済市場に結びつけるようなことは、断じていたしますまい。すでにわが国においても、重要原料の不足、枯渇は日々に顯著となり、非常識な価格を呼んでおるのでありましておよそ五億ドルにも達する輸入資金を遊ばしておくがごときことは、政府の怠慢に属するものであります。(拍手重要物資輸入の確保は、今日日本の緊急の課題であります。ここにもまた適切なる自主的計画統制不可避性が存しておるのであります。首相は、かかる必要にもまるで無感知のようであるが、それはあまりにも世界情勢テンポとかけ離れておるのであります。首相は依然として旧式な自由経済の方式を固執しようとするのであるか、あるいはこの世界情勢わが国経済を順応せしめんとするのであるか、この機会に所信を伺つておきたいのであります。  最後に、講和受入れ態勢について首相見解をただしたいのであります。重ねて言いたいことは、講和は八千万の国民が結ぶべきものであります。従つて、おれにまかせておけというがごとき態度は、根本から間違つておるのであります。(拍手米国を初め連合国の好意ある対日援助を顧みるとき、わが国講和後においてもいかにこれら連合国の友好的独立国たらしめるかが為政者の重大な責任であります。その意味で、労働者、農民、国民大衆がそつぽを向くような講和危險であります。首相は、今こそわが党がかねて提唱した真の超党派外交をまじめに考慮し、(拍手)各党派、各団体、各層、各界に呼びかけ、その要望に傾聽し、でき得る限り国論の一致をはかつて民族の運命を決する講和に対処せられんことを望むものであります。しかし、これは決して挙国政権とか自民提携とかいうことではありません。政府政府の立場において、野党は野党の立場において、民族共通の大事業に最善を盡して協力することにほかならないのであります。(拍手政府信念と真情をほんとうに吐露してこれを訴えるならば、これに対して不当な言いがかりをつけたり、そつぽを向いたり、党略の具に供するようなものはあるはずがないのであります。  首相は、過般の記者団会見において、国民指導するのは民主主義に反する、輿論の向うところに従つて態度をきめるのが民主主義の政治だ、という趣旨のことを述べられました。しかし、およそ首相が、自由党の輿論であれ、国民の輿論であれ、輿論を尊重している方だとは、だれも考えておらないのであります。ここにワン・マン首相の名の存するゆえんがあり、首相に対する世の批判が存するゆえんがあるのであります。(拍手)してみれば、この輿論尊重の首相の言葉は、政府の驚くべき無為と怠慢の弁明の言以外の何ものでもないといわなければなりません。(拍手)  およそ世論というものは、ひとりで成り立つものではなく、何ものかによつてつくられ、指導されて行くのであります。民主主義は、決して政治家がその政策をさげて国民に働きかけ、説得し、指導する努力を否定するものではありません。それが独裁と違うことは、強権的な号令によらないだけの違いであります。首相が最善の良知をしぼり、政策を樹立して、これをもつて国民に働きかけ、誤れる意見を正し、正しき意見に傾聽し、説得のため懸命の努力を拂つてこそ初めて講和を担当する内閣総理としての責任を果すゆえんであります。(拍手)今こそ民族百年の運命を決する前に、旧来の無為怠慢の態度を打破して、老躰にむちうつて講和受入れ態勢の確立に総理は挺身すべきであります。それすらも惜しむということでは、吉田首相講和時の内閣首班者としての資格に欠くるものといわなければならないのであります。(拍手)  首相は以上の質問に対して率直に答えられんことを希望して質問を終るものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇
  27. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  第一の御質問は、講和に対する心構えいかんという御質問でありますが、この心構えについては、すでに三木君御自身から私のために弁明していただいたように考えます。(拍手)私は、かつて一度も、講和は私にまかせておけというようなことを申したことはございません。のみならず、いわゆる謙虚な気持において、国民の輿論に耳を傾けて、国民の輿論のおもむくところに従つて善処する、これはしばしば私が申したことであります。(拍手)これがすなわち私の講和に対する心構えであります。  次に、共産主義と民主主義との間の対立戰における国外の状況は、三木君のお話によると、今にも日本の安全が侵略せられ、脅やかされるということでありますが、私も決してこの国外の状況を甘く考えてはおらないのであります。むしろ甘く考えておられるのは三木君自身ではないかと思うのであります。(拍手共産主義が今にも日本侵略するというようなことは、私は、はなはだ甘い考えであると思うのであります。甘い考えは三木君の方であつて、民主党の諸君は、さらに反省せらるべきものであると思うのである。(拍手)  次に安全保障の問題でありますが、安全保障については、私も決して他力本願とは申しておらないのであります。三木君自身で私のために弁明せられた通りであります。日本の安全という問題の前には、すなわち日本に対する安全を脅かす勢力の現存を前提といたすものでありましようが、この点については、私は民主主義が非常に危險なりと甘くは考えておらないのであります。同時に、民主主義国家の最終の勝利は私は必ず来るものと考えて、共産主義の勝利が必ず来るとは私は……(発言する者多し)共産党諸君以外には、そう考えないのが国民の感じであると思います。われわれは、決して共産主義国が日本に侵入するということは思いも寄らないのであります。ゆえに、安全保障という問題の前には、まずいかなる方面から危險が来るか、その危險はどの程度日本に差迫つておるかという具体問題からして考えるべきであると思うのであります。この国内における共産主義脅威は、私は今日においては、共産党の諸君においても脅威ありとは考えておられないだろうと考えております。日本安全保障の具体問題については、日本に対する脅威の具体的実態をまずつかんで、しかる後に論ずべきものであつて、いたずらに脅威が差迫つておるとかいうような想像論では立論ができないのであります。  次に経済独立についてのお話でありますが、わが内閣及び自由党の政策は公表いたしております。單にこれをもつて旧式であるとか、あるいは無為無策であるとか、あるいは自由放任なりという抽象論だけでもつて論断せられるのは少し早いと思います。わが内閣及び自由党の政策については明らかに公表いたしております。各政策について具体的に、ここがいいとか、いかぬとかいうのは別でありますが、抽象的に無為無策とか、旧式であるとか、あるいは自由放任なりという抽象論をもつて一蹴せられることは、政治家たる三木君のお話とは考えられないのであります。(拍手)  また受入れ態勢についてのことでありますが、先ほど申します通り、講和は私にまかせておけなどと申したことは全然ないのであります。国民の輿論の向うところによつて国民要望するところ、国民の希望するところを、謙虚な気持において耳傾けて善処いたす、これが私の受入れ態勢であります。(拍手
  28. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 再質問がなければ次に移ります。勝間田清一君。     〔勝間田清一君登壇
  29. 勝間田清一

    ○勝間田清一君 私は、日本社会党代表し、吉田内閣の施政方針、なかんずく講和問題と、これに関連する経済政策について質問申したいと存ずるのであります。  そもそもイタリアの講和会議の場合とは違つて、ダレス使節団が、日本講和について、戰勝者が戰敗者に対して命令するといつたような形ではなく、まつたく対等な立場で日本人と相談する態度を声明せられたことに対しては、まことに感激にたえないところであります。しかしながら、このことは、当然に日本政府及び日本人にみずからの決意が要請せられるであろうことは想像にかたくないのでありまして、吉田内閣また講和に備えてみずから決するところのあるものと信ずるのであります。従つて私は、まず講和後に当然問題となるであろうところの重要諸問題について、一つ一つ吉田総理の確固たる信念を問わんとするものでありまして、まずわれわれは、従来しばしば論議せられた点でありますけれども、この重大なる段階に処しての新憲法に対する吉田総理の新たなる決意をここに問わんとするものであります。  申すまでもなく、われわれ日本人は、過ぐる昭和二十一年十一月三日、極東委員会の承認のもとに、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚いたしまして、新憲法を制定いたしたのであります。そして、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇、武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄することとなしたることは、われわれが、一に平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれわれの安全と生存を保持しようと決意したからであります。しかもこの理想は、国家の名誉にかけて達成すると、あえて誓つたところのものであります。しかるに、今日朝鮮事件の重大化に伴いまして、わが国内外にわたり、時局をいたずらに誇大に宣伝し、日本の再軍備を達成する目的から憲法改正を主張せんとする者のあることは、まことに遺憾のきわみと存ずるものでございます。(拍手)対外的な紛争を解決する手段としての武力を放棄した日本人の決意は、国際的紛争が重大化した今日においてこそ、われわれは守り抜かなければならぬと序ずるものであります。(拍手)われわれは、ここに、もしいずれかの国家が、われわれのこの日本憲法の改正をあるいは希望せんとするものありといたしまするならば、二千数百年の伝統に生き、新たなる決意に生きんとするところの日本人の名誉と尊嚴とを傷つけるものであると信ずるものであります。(拍手)われわれは、ここに日本信念世界に訴え、日本国民をして不動の道に安堵せしめるため、吉田総理信念をあえて問わんとするものであります。  第二の重大なる問題は、講和と再軍備は可分なりや不可分なりやという問題についてお尋ね申したいと思うのであります。すなわち、今日諸外国において日本の再軍備問題がしきりに論議され、同時に対日講和の促進が主張されていることは御案内の通りでありまして、アメリカの上院議員タフト氏は、過ぐる一月五日の演説におきまして、対日講和條約を即時締結し、日本に対し海空軍の援助及び日本陸上軍を編成できるまで若干の地上軍師団による援助をなすべきであると提唱いたしております。また去る英連邦首相会議におきましては、対日講和の締結と、限定された範囲内で日本の再軍備を許すことに意見の一致を見たと外電は伝えておるのであります。  われわれがあらゆる困難と闘いながら今日まで忠実に降伏文書の実行に努め参つたのは、われわれの独立と平和を保障する講和そのものであつたことは、疑いのない事実であろうと存ずるのであります。(拍手)それゆえに、われわれは講和の代償として再軍備要求されるものと考えることはできないのでございまして、また日本の再軍備を可能ならしめ、それを目的として講和が結ばれるものであるとも考えることはできないのでございます。日本講和は、再軍備とはまつたく無関係に、そしてそれはポツダム宣言を忠実に実行したところの日本人に対する連合国の好意ある代償として行われるものと、かたく信ずるものでございまして、また再軍備は何ら強制されることなく、日本人みずからが自由なる意思によつて決定すべきであるとの理解を、われわれは関係諸国家に対し強く希望せんとするものでありまするけれども、吉田総理の、これに対する確信ある態度を承らんとするものであります。  次に吉田総理は、昨日の施政方針演説におきまして、日本の再軍備問題はすでに不必要なる疑惑を外国に與えておること、二つには、強大なる軍備は敗戰後わが国の国力が耐え得ないという事実、第三におきましては、独立、自由、愛国的精神の熱情や、正しい観念に欠ける軍備侵略主義、軍国主義の抬頭となるとの理由をもつて、再軍備に対する慎重論を期せられたことについては、もちろんわれわれは敬意を表するところでありまするが、しかしながら、釈然たらざる疑点がそこに存在し、われわれ国民にその一切の疑惑を拂拭せしめるものでないということをここに感ずるのは、私一人のみではないと存ずるものであります。なかんずく、單独講和決意している吉田総理の考え方が、はたして最後まで再軍備に反対し続けることができるかどうか、そこに根本的な問題が存在すると考えるのであります。(拍手)  吉田総理は、昨年十月寄稿したといわれるフオーリン・アフエアーズにおきまして、われわれは決定的かつ取消し得ないほどに自由世界の側に立つている、それが他の側のお気に召さなくともいたし方はない、ということを言われているのであります。同時に吉田総理は、太平洋並びに日本安全保障確立のため、もし必要とあらば、われわれは国連主宰のもとにはせ参じたいと切望するものである、とも言われておるのでありまして、この考え方は、かつてにおける外交白書と同様に、二つの世界一つに決定的に身を寄せんとする態度でありまして、はたしてアリユーシヤンからフイリピンに至る防衛戰中の一拠点として日本の再軍備が論ぜられている今日におきまして、総理の考えている再武裝愼重論が最後まで貫き通せるものであるかどうか、根本的に疑いなきを得ないのであります。(拍手)  もちろん、今日における日本の再軍備が、西欧における、ドイツの場合とは違つて、その時間的緊急性、地理的緊迫感において雲泥の差のあることは私も認めるところでありますが、内外にわたる風潮は、この日本においてさえ、一辺倒の單独講和が再軍備に連なり、戰争に連なる危險を持つておることは、疑いのない事実であると存ずるものであります。それゆえに、われわれは、今日インドのネール首相を中心とするアジア、アラブ十二箇国が、アジアの解放と平和を守り拔くために、二つの世界の中にあつて、よく合理性を求め、協調の道を発見し、不退転の努力と忍耐を続けている行為に対して、満腔の敬意を表せんとするものであります。(拍手)これこそが真の民主主義者の勇気であると信ずるのであります。そうして、かかる態度においてこそ、極右極左等を排して、真に非武裝憲法を守つて日本の再軍備に反対することのできる態度であると確信いたすものであります。(拍手)まさに一辺倒の單独講和信念としている吉田総理は、橋のたもとに来ておる。渡るのか渡らないのか、これを、われわれはここに問わんとするものであります。われわれは、日本の再軍備に反対いたします。このことは、日本戰争介入を未然に防ぎ、同時にアジア及び世界の平和に貢献する、困難にして唯一の光栄ある態度と信ずるからであります。  われわれ日本民族は、不幸にして、誤れる軍閥の指導によつて廃墟の中に突き落されたのであります。領土の四割四分を失い、二百六十三万三千人の生命を、あるいは失い、あるいは傷つけたのでありまして、今日白衣を着て、あわれみを乞う人たち、墓標さえつくることもできない遺家族、生活の方途に迷う婦女子が、いまなお千数百万を下らないであろう。これらの人たちは、いかに君が代を歌おうとも、あるいは、いかに修身の教科書ができようとも、生活が今日のままである限りにおいて、吉田総理の言う、いわゆる愛国的精神ある国民を期持することは断じてできないと存ずるものであります。(拍手)真の愛国心、新たなる自衛の心というものは、あるいは荷車をひき、あるいは草を刈り、あるいはハンマーを振うところの、最も市民的ないわゆる勤労階級にとつて、守りがいがある祖国として日本が再生するところに期待されるものであると確信いたすのであります。(拍手)そしてまた、今日お年寄りや、あるいは特需で金をもうけた者や、あるいは資本主義社会指導者たちは、再軍備を説く権利もなければ資格もないと存ずるものであります。何となれば、銃をとるものは勤労階級であり、青年であります。また危險犠牲を最も多く受ける者は婦人と子供であるからであります。わが党は、ここに重ねて再軍備に反対するのであります。そして、真に共産主義と対決するものは社会民主主義であるとの信念に立つて武裝憲法をかたく守り、日本平和機構としての国連によつて保障されることを、好意ある諸国家に対して、あくまでも訴えんとするものであります。  次に吉田総理お尋ねをいたしたいと考えますることは、軍事基地を含む特定国家との軍事同盟を結ぶのか結ばないのか、また太平洋軍事同盟をどう考えておるのか、吉田総理信念を伺いたいのであります。前述のタフト氏は、十五日の演説において、アメリカは即時日本と軍事援助條約を締結すべきであると強調いたしております。また英連邦首相会議においては、日本の再軍備は、アメリカ軍の日本駐留を認めるとわきめを日米両国で結ぶことが前提條件なりと言われておるのであります。まだダレス氏が関係各国と交渉中と伝えられる七つの大綱の中で、第四におきまして、日本安全保障は、国連がこれを保障し得るまでは米軍がこれを行い得るように、日本米国に対して一定の便宜を典える、と君かれてあります。このことは、わが国安全保障について、国際連合による安全保障以外に、特定国家との集団的、地域的安全保障か、しからざればアメリカとの間における軍事的同盟の條約が締結される可能性があることを示すものであると考えるのでありまして、それが、たとい共産主義から日本を守らんとするアメリカの好意ある意図に出でたといたしましても、全面講和を不可能ならしめる重大なるポイントとして、われわれが最も危惧するところのものでありまして、われわれは、われわれの調印したポツダム対日宣言第十二項に示された通り、「前記諾目的が達成セラレ且日本国民ノ自由二表明セル意思二従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直二日本国ヨリ撤収セラルベシ」との條項が文字通り実行せられるものであると確信して疑わないものであります。日本安全保障は、ただ一つ世界平和機構としての国連に期待をいたしまして、またその国連日本基地を求める場合は、まつたく日本安全保障を目的とする一時的駐屯の場合に限るものと強くわれわれは希望せんとするものでありまして、吉田総理は、軍事基地及び特定国家との軍事同盟條約に対していかに考えておるか、これを明確に御答弁願いたいのであります。  またわれわれ国民は、今日の講和太平洋軍事同盟の起点となるのではないかとの心配を持つておるのでありまして、終戰以来今日まで、しばしば太平洋軍事同盟は主張されておるし、またそれが蒋介石、李承晩、キリノ氏等によつて計画されたこともある。そうして、この計画も、インドの反対によつて挫折したとさえ聞いておるのでありますが、数日前のニツポン・タイムス紙にも、いわゆるパシフイツク・パクトとして国会において論議せられたと報道されておるのでありますが、もしわれわれがこうした軍事同盟に参加するとしたならば、その結果はどうであるかということは明白でありましよう。特に重大な問題は、日本が万一の場合に戰争に参加する決意を示したものであるとわれわれは見ざるを得ないのでありまして、ここにわれわれは、吉田総理の、かかる地域的集団保障の軍事同盟に参加することに対しての確固たる考え方をたださんとするものであります。  次にわれわれが質問いたしたいと考えておりますることは、もし不幸にして單独講和となつた場合に、それ以後の外交にいかなる困難が予想されるか、特に中共、ソ連に対する外交をいかに処して行かれんとするのであるか、ここに重大な課題が存在いたしておると考えるのでありますが、吉田内閣は、今日まで講和を過大に宣伝して、従つて国民は、講和によつてただちに平和が訪れ、独立が確立されるものと素朴に信じ込んでおるのであります。しかしながら、はたしてかくのごとき楽観論が許されるでありましようか。われわれの見るところをもつてするならば、西欧側との関係は、確かにある程度前進するでありましよう。しかし、そのことは、同時に、ソ連と中共との間のみぞを一層深くすることを意味するものでありましてわれわれはミズーリ艦上において英米同様に、中ソに対しても無條件降伏をしたのであり、中ソに対して、少くともこの降伏條件の実行を拒否する権能も実力もわれわれにはないからであります。もし吉田総理が火中にくりを拾わんといたしまするならば、これに対する断固たる確信を、しかもその裏づけを、われわれに示してほしいと思うのであります。  私は、かつてインドのネール氏が、日本の單独講和日本に若干の利益を與えるかもしれない、しかしながら、それがアジアの平和にプラスになるかマイナスになるか、にわかに判定できないと言われたことを記憶いたしておるのでありまして、吉田総理は、單独講和後に予測される困難にいかに処して行こうとするのか、確信ある答弁を求めるのであります。  最後に一言、領土の問題について申し上げたいと存ずるのであります。すなわち、ダレス氏が日本と関係諸国との講和を進めておるという條件の七項目の中におきまして、領土の問題についての明白な意味が出ておるのであります。すなわち第一は、朝鮮独立を認めること、第二は、米国による琉球及び小笠原諸島の信託統治に同意を興うべきこと、第三に、台湾、膨湖島、南樺太及び千島列島の処分はまず米、英、ソ、中国が決定し、條約成立後一年以内に意見が一致しないときは国連総会が決定するとあるのでありまして、われわれの要求は、一九四二年一月一日の連合国共同宣言が指令したように、一つ連合国が領土の拡張を求めないという原則一つ国民の自由意思に基かないところの領土の変更を行わないという原則、この連合国共同宣言の趣旨にのつとりまして、一つにおきましては南樺太、千島列島、歯舞諸島、色丹島、沖縄島を含む南西諸島、小笠原諸島、硫黄列島、大東島、鳥島諸島等が日本の所属として最終的に決定せられることを強くわれわれは要望せんとするものであります。  われわれは、なかんずく今日におきまして最大課題とするところは、われわれは一面におきまして、南樺太あるいは千島列島に対するソビエトの考えには多く修正要求せんとするものであると同時に、われわれは今日合理的な見地に立つて、沖縄及び小笠原諸島に対する今日の状態をきわめて悲しく存ずるものであります。(拍手)われわれは、これらの諸島における住民の自由なる意思と、しかも連合国が領土を求めないという精神にのつとつて日本に対するこれら諸島の最終的帰属決定がなされることを切に希望せんとするものであります。(拍手吉田総理の所見を承りたいのであります。  次に、日本経済と国際経済との結合に関する諸問題であります。現在自由党内閣は、いわゆる講和後における経済態勢に処するに、一面におきましては自立経済の確立が唱道されており、面におきましては、いわゆる外資導入のから念仏がとなえられておるのでありますが、かかる事態におきまして、われわれがいかなる形で国際経済との結合をそこに持つておるのか、あるいはいかなる日本経済の繁栄の基礎をそこに築かんとしておるのであるか、われわれは、そこに大きな課題があると存ずるのであります。しかも、講和会議直後における一つの重大な問題は、一面においては安全保障の問題でありましよう。他面におきましては、いわゆる国際通商及び航海條約の締結等の諾問題が当然ここに日程に上らざるを得ないでありましよう。しかるときに、われわれが今日いかなる国際経済への参加が可能になるかと申しますならば、そこに一つは、プレトン・ウツズ協定及びこれに関連する国際経済機構並びに国際開発銀行に参加する問題が上つて来るのであります。われわれは、もとより全世界の友好国の間に立つて、多角的貿易をそこに確立せんとする制度に対しては、もちろん賛意を表するところでありますがゆえに、このプレトン・ウツズ協定及びこれに関する国際経済機構への参加に対してわれわれは現政府の所信を承りたいと思うのであります。同時に、今日われわれの目前に追つておりますものは、ハヴアナ憲章に基くところのいわゆる国際関税会議に参加する問題であります。同時に、年来課題となつておりますところの国際小麦協定参加に関する問題であります。この関税と食糧との二つの国際経済会議参加に関する政府の準備、用意を承りたいのであります。(拍手)なおその他、通商、航海あるいは漁区、あるいは関税條約等の締結につき、いかなる用意を現政府はなされておるのであるか、明白に今日所信を明らかならしめてほしいのであります。  また今日、吉田内閣自立経済を見てもわかります通りに、三箇年計画の最後の水準がわずかに戰前の九割程度にすぎないのであります。しかも、自立経済がはつきりいたしております通りに、雇用の問題は若干の改善があつたとしてもこの問題の解決はできないと断つてあるのでありまして、これがとりもなおさず、日本におけるところの、一面においては産業の破壊、他面においては年百五十万人の過剰人口をここにかかえておるからでありまして、日本の真の自立経済を確立せんといたしますならば、われわれは、そこに自由にして平和的な移民の要求を諸外国の好意によつて許容せられることを強く要望せんとするものであります。(拍手)  また同時にわれわれは、ここにさらに重大な問題と考えられるのは、いわゆる今日における対日援助の打切りの問題でありまして、打切り後における日本経済が、そのままに放置されてよろしいのであるかどうか。従来吉田内閣は、いわゆる外資導入と自立経済の二本建によつて主張されておつたのありますけれども、われわれは、アジアにおける今日の状態から見て、そこにクレジツトの設定、なかんずくいわゆる純政府資金のクレジツトの設定が当然日本政府において考慮あるものと考えるものでありまして、これらに関する所見を承りたいのであります。  さらに重大な問題は、吉田総理は、フオーリン・アフエアーズにも書いてあります通り、いわゆるアジア、なかんずく中国の市場を失つて日本経済は成立つとの信念を披瀝されているのであります。しかしながら今日におきまして、われわれが真実にアメリカ的あるいは西欧的陣営の協力を得なければならぬことは当然でありますけれども、それのみをもつていたしまして、日本の繁栄と発展は断じて期し得られないと考えるものであります。(拍手)われわれは今日、イギリスの労働党が、政治とは別に、あえて中共との通商を一面において行いながら、他面において朝鮮中共軍と戰つておるという矛盾を見るのでありますけれども、われわれは今日、歴史的にも地理的にも、全アジアを失うことによつて日本民族の繁栄は断じてあり得ないと考えるのであります。(拍手)試みに見るならば、われわれは今日まで、台湾から五百万石の食糧を得られ、朝鮮から一千万石の食糧が得られて戰前のわれわれの需給態勢を確立しておつたのであります。八十あるいは九十万トンの大豆が供給せられて日本の油脂資源及び調味料の資源が確保されておつたことは、諸君の御案内の通りでありましよう。さらにわれわれは、塩あるいは粘結炭、鉄鉱石等の諸資源を考えて参りまするならば、いかに深き関連が今日の中共と今日の日本との間に保たれねばならぬかということを痛感するのであります。われわれは、長い数千年の歴史の中で、あるいは仏教において、あるいは儒教において幾多の影響を受けたでありましようけれども、その間にあつてわれわれはよく日本を維持し、日本発展させ得たことを、われわれはつぶさに知らなければならぬのであります。今日における吉田内閣の施策は、不幸にして、このアジアにおける友好、アジアにおける連繋、われわれ民族の運命を引裂かんとする政策であるといたしまするならば、それは浅見もはなはだしい議論であるといわなければならぬのであります。(拍手)そこにわれわれは今日における問題、この世界におけるところの国際経済上、世界経済構造の中に日本経済がいかに処せんとしておるかについて、従来の吉田内閣の所見というものを根本的にここにかえる考え方が、当然要求されると考えるものであります。これに対する吉田内閣の真の希望を承りたいのであります。  さらに私は吉田内閣自立経済について申したいのでありまするけれども、自立経済がいかに資本家階級のために立案されておるかということは、内容を見れば一目瞭然とするところでありますけれども、(拍手)なかんずく吉田内閣が、生活水準はわずかに九〇%、特に雇用を全然考えないという考え方は、現在の日本の農村の最大課題と結びついて、これは日本経済自立、民主化を徹底的に確立するところの基本的な課題に対して何らこたえていないことを証明するものであります。(拍手)現在われわれが最も問題とするところは、年々百五十万の人間が増大し、いわゆる不完全就業者が四百万人存在し、完全失業者が五十万人存在しておる。このうちの半数、すなわち不完全就業の約二百万、これらが現在において農村に潜在するところの圧力となつていることは明らかな事実ではありませんか。増大する人口が一切考慮せられず、その結果現われるところの農村の生産水準はいかがであるかというならば、わずかに戰前の一〇%が吉田内閣自立経済の実体であります。増大する人口と、わずか一〇一%の生産水準、そこにおいて現吉田内閣は、農村におる近代化と進歩発展とをいかに蹂躪しているか、いかに欺瞞のものでおるかということが、はつきりわかるに違いないのであります。われわれは、かかる低生活水準、及びあくまでも農村をいわゆる奴隷的な形にすえつけんとしておるところの、その基礎に立つところの資本蓄積と、その基礎に立つた自立経済は、絶対に排撃せんとするものであります。(拍手)。今日これらの諸問題に対してわれわれは関係閣僚の所見を承りたいのであります。  以上、講和問題の重要課題と目される問題は、あるいはいささか今日においてその時を得ないかもしれませんけれども、その問題の主点は、結局われわれは、今日におきまして講和会議の問題そのものの背後にあるところの諸條約の締結がいかに重大であるかと存ずるがゆえに、この際吉田総理の所見を承りたいのであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇
  30. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  再軍備の問題に関連して憲法改正を考えておるかどうかという御質問でありますが、再軍備論は、今日のところは一部の議論か、あるいは要望であつて、憲法改正というほどまでに固まつておる問題ではないと考えますから、現内閣においては、今日憲法改正の問題は具体的に考えておりません。また軍備——再軍備については、未来永劫しないと私は申しておるのではありません。現下の状況において、これをいたすことはしない、こう申しておるだけの話であります。(拍手)従つて、百年、二百年後までするかしないか、そういうことまでは論じておりません。  また全面講和、單独講和論のむし返しでありますが、私はすでに申しておる通りに、全面講和ができるまで日本独立の回復をうつちやらかしておくことはできない。いやしくも日本と平和関係に入りたい、入ろうという国があるならば、一国といえども講和関係に入るべきものなりと考えるのであります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕  また安全保障の問題について、地域的、集団的軍事同盟を結ぶか結ばないか、軍事基地についてはどう考えるかという問題でありますが、今日のところは、これらの問題は、いまだ具体的の問題として政府の取上げておるところでなく、また政府が直接外国から交渉を受けておりませんから、お答えをいたしません。(拍手)  不幸にして單独講和ができた場合に、ソ連、中共との関係をどうするか。これもまた前礎として想像論でありますから、想像に基く抽象論はいたしません。(拍手)  領土問題については、いまだ直接に政府として交渉を受けておりませんから、これに対して何らかの議論をさしはさみますことは差控えます。  その他の問題は主管大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣周東英雄君登壇
  31. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えをいたしますが、第一に日本経済と国際経済との結びつきについてどう考えるかといつて種々お尋ねがありましたが、私ども日本経済自立ということを考える場合におきまして、その一つの支柱として貿易の振興を考えるということを申し上げたのであります。この貿易の振興ということは、当然国際経済に今後結びついて行くということを、はつきり申し上げておる次第であります。しかして、ただいま講和後においてブレトン・ウツズ協定、ハヴアナ憲章に基く国際関税協定等に入るか入らぬかということをお話でありますが、これはすべて完全独立いたした、講和成立後において当然考えらるべきことでありまして、勝間田君はやや時間的のずれを御質問になつております。われわれが将来国際経済の一員として立ち上る場合において、ブレトン・ウツズ協定に参加することは当然であります。しかし、それをやるにいたしても、ただ抽象的に議論しているだけではだめでありまして、どこまでも日本経済というものをしつかり確立して、世界に信用を得るがごとく、金の保有高等も相当に持つた後初めて要求をしていれられるべきことでありまして、ただいま、そういう準備のできない前から種々御議論になることは、まだ早いと思いますけれども、政府は当然にそういうことに対しては研究しているということを申し上げておきます。  また国際開発銀行等に対してどういうことを考えるかということであります。これも同然でありますが、先日蔵相から——わが国におきましても、開発銀行等のごときものについて今日研究中であります。これの成立のあかつきは、これらを通しましてアメリカとの問にクレジツトの設定等の事柄が行われることと確信いたしております。  また漁業條約とか通商航海條約にお触れになりました。日本としては、漁業條約等につきましては、将来公海における漁業の自由の原則というものは、ぜひ要求いたしたいと思います。それに関連して、資源保護の立場に立つて人類のために存する魚族の保護に対する協定については、喜んで参加する考えであります(拍手
  32. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 川村貫一君。     〔川上貫一君登壇
  33. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表して、吉田総理大臣並びに関係閣僚に対し質疑いたします。  今日本民族にとつて一番大きな問題は、戰争するかしないか、平和が保たれるか保たれないか、民族独立が保たれるか、日本民族が外国の奴隷になるかという問題であります。その内容は、全面講和をするか、單独講和をしてしまわれるか、再軍備をするかどうか、また占領軍に早く帰つてもらうかどうか、外国の軍隊をいつまでも日本におつてもらうのか、こういう問題であります。大多数の国民の意思は明白であります。国民の大多数は單独講和に反対しておる。国民の大多数は再軍備に反対しておる。同時に、占領軍の早期撤退を望んでおります。ましてアジアの隣人である……     〔発言する者多し〕
  34. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 静粛に願います。
  35. 川上貫一

    ○川上貫一君(続) 中国や朝鮮、ソ同盟と戰争をするようなことを喜んでおる者は一人もありません。しかるに、日本の今日の政治は、国民の大多数の要望を明らかに踏みにじつております。力づくで国民の意思を圧迫しようとしております。—————————私は、ここに日本国民の名において、かような政治を即時中止して、日本憲法を守つて、ポツダム宣言に基く全面講和を実現する一切の政策を実行することを日本の支配者に要求するものであります。(拍手)  しかし、事今日に及んでも、総理大臣はまだ、このようなごまかしが言えるでありましようか。たとえば鳥取県の夜見ケ浜半島をごらんなさい。今ではほとんど基地になつてしまつた。境の港には爆薬が山と積まれており、市民は戰争におびえておる。これは、この地域だけではありません。福岡県の板付、神奈川県の厚木、千葉県の木更津、すべて飛行基地であります。その他このような基地は、日本の国の中に十八箇所もあるといわれておりますが、特にその中の青森県の三沢には、—————————————————。(笑声)これは日本国民にとつて重大な問題です。  そもそもこの飛行基地は、すべて国民の税金でつくつたものです。終戰処理費によつてつくられた飛行場であります。—————————————————。政府がいかように強弁されようとも、国民は————————————————という事実をおおい隠すことはできません。(拍手)しかもこの終戰処理費は、二十六年度において一千二十七億が計上されております。この莫大な金が、次から次へと飛行基地や軍事道路や潜水艦基地のために使われたらどうなるか。国民の税金はますます高くなり、至るところで田畑は取上げられ、農民は立ちのきを命ぜられ、—————————————————————ことは明白である。(拍手)この重大な問題、すなわち国民の目の前で、国民の税金で日本が公然たる軍事基地になりつつある事実、これを総理大臣はどうお考えになつておるか。  総理大臣は、かつて日本を軍事基地にするようなことは、何の要請も受けたことがないと言われておりますが、そうすれば、今日総理大臣は、この歴然たる事実を知らないとおつしやるのであります。総理大臣は——————————————————日本の人民は、だれ一人として、軍事基地にしてもらいたいために税金を拂つた者はありません。総理大臣は、ポツダム宣言、極東委員会の諸決定に—————しておる。  それだけではありません。この終戰処理費は—————の輸送に使われておる、通信に使われておる、特需の支拂いにも使われておるという事実がある。終戰処理費は、連合軍が日本を民主化し、平和な国家をつくるための費用であつて戰争をする費用ではありません。(拍手)しかるに、それが—————ために使われておるとすれば、この終戰処理費は、明らかに———、すなわち———であります。  諸君日本国民は、外国の軍隊に軍事費を負担する義務があるかどうか。そのような義務は絶対にありません。またこの終戰処理費が——————————————————ポツダム宣言にも、降伏文書にも、作戰軍の駐屯を規定した條項は一つもありません。私は、この点に関し、内閣総理大臣に明確なる答弁をしてもらいたいと思います。  第二点として、私は、日本全土が作戰軍の兵器工場になつておる事案を質問したい。二つ三つの実例をあげましよう。元の横須賀造兵廠は、二万人の労働者で兵器をつくつております。九州の小倉工廠は、一万人の労働者で軍用の車両修理をしております。元の横須賀軍港は、明らかに軍港として再建されておる。また昭和飛行機、中島飛行機、池貝鉄工の館山工場、その他全国至るところで、たくさんの工場が続々として軍需工場として復活され、一般工場においても大量の軍需品がつくられておる。最近におきましては、それだけではない。横浜、東京都下の立川、横田には、明らかに高射砲陣地がつくられておる。私は総理大臣に聞きたい。ポツダム宣言並びに極東委員会の諸決定は、日本武裝解除と軍事施設の取拂いを義務づけております。日本における軍事活動の禁止、これを規定しております。極東委員会は、戰争をするために、再軍備を助けるような産業を維持することは許されないと、はつきり規定しております、日本政治は、明らかに————————————。もし総理大臣にして、これがポツダム宣言の違反でないと言われるならば、ここでその根拠をはつきりと答弁してもらいたい。また政府は、いつ、だれと相談して、日本をこのような兵器廠にすると、とりきめを行われたのであるか、私は、これを総理大臣にお聞きします。  さて第三の問題点は、朝鮮戰争協力で労働者が受けておる奴隷的待遇について質問いたします。今日、いわゆるPD工場、これは米軍の管理工場でありますが、その他至るところの軍需工場、これはもちろんのこと、鉄道で、船舶で、港湾で、———————————。たとえば東日本重工の川崎製作所では、保安課が————————ために小銃の訓練をしておる。また日本精工七千名の労働者は十時間労働を強制され、浅野船渠では、一箇月平均百七十時間の残業が行われております。しかるに、この強制に抗議をし、人権を主張する労働者が、ことごとく弾圧されておる。特に軍需品の生産と輸送に反対します労働者は嚴罰に処せられておる事実が、ひんぴんとして起つておる。私は言います。これらの労働者の闘いこそ、生活を守り、日本人民の奴隷化を防ぎ、日本戰争に巻き込まれる二とに反対する愛国運動であり、このような労働者こそ、ほんとうの日本人であると思う。(拍手)  この重大な問題に対して、政府はいかなる処置をとつて来たか。口でこそ愛国とか愛国心とかと唱えておりますが、総理大臣こそ、————————————————————————。(発言する者あり)労働者の怒りは至るところで爆発し、各所で抗議反抗の運動が起つておる。私は政府要求する。政府は、これらの労働者の権利の擁護と完全な法規の適用、及びかような不法行為をする者に対して嚴罰することに十分な責任を持たなければならない。ことに大橋法務総裁は、この問題について東日本重工下丸子工場の労働者に対して、————————————————。これは政府自身が、—————————————————言うたことにひとしい。はたしてそうであるか、私は総理大臣並びに大橋法務総裁の責任ある答弁をしてもらいたい。  以上は、ほんの一つ二つの実例であります。しかし、これによつて、今、日本にどんな政治が行われておるか。これは明白であります。日本政治は、日本を————————————————。そうして————————————————————————。こういうことをしておいて、日本の支配者は、これが日本人を侵略から守る道であると、国民を欺こうとしておる。これが安全の保障であると国民に信じ込ませようとしておる。(「議長、注意しろ」と呼び、その他発言する者多し)  私は、質問の第四点として安全保障の問題に触れなければならぬ。(「中止」、「除名だ」と呼び、その他発言する者多し)総理大臣は、国連軍による—————たたえて、こう言つておる。国連軍が韓国防衛に出動したことから、日本も必要な場合には国連軍が乘り出して来てくれるとの確信を得て、非常に心強く思うておる、これが総理大臣のいう安全保障であります。(発言する者多し)このことは、総理が、—————————————————————(「やらしていいのか」と呼び、その他発言する者多し)しかしながら諸君、今日帝国主義者が、日本の運命をどのように保障してくれるであろうか。彼らは、わが隣国である中華人民共和国の国連参加を今もつて拒否しております。またアメリカは、朝鮮の内戰に軍隊を派遣し、海岸に海空軍を出動さしております。このようにして———————————————————————。(発言する者多し)  特に国連の名による安全保障の一番よい例は朝鮮であります。朝鮮は—————————————————————————。(拍手)これが朝鮮民族にとつて安全保障であつたか、どうであるか。これは、ちつとも安全ではありません。完全に危險保障です。(拍手)これは日本民族の安全でない。(「そんなことが何の関係があるか」と呼び、その他発言する者多し)われわれは明らかに言いたい。かれらのいう日本の安全とは、このようなものである。それは———————————————————————それが吉田内閣安全保障だ。われわれは、このような安全保障には、まつこうから反対であります。  それに反して、アジアの人民は、率直に、日本民族の安全も含めて、民主的で平和的な安全の道をはつきりと提案し、要求しております。それは第一に、アメリカ軍隊の朝鮮からの撤退であります。(————————)第二に、アメリカ軍隊の台湾からの撤退であります。(拍手)第三は、すみやかなる対日全面講和の締結と、全占領軍の撤退であります。(拍手)これが平和と安全に対するアジア人民の要求であり、この要求はまた、日本人民の要求に完全に一致します。(拍手、発言する者多し)  さて、質問の第五点は再軍備の問題であります。日本の再軍備は、—————————————————————————。(拍手)これ以外に、何一つとして日本軍備の理由はない。しかるに政府は、昨年の十月に、国連軍を構成する日本軍の編成についての第一回報告というものを提出したことがないか。また外国から徴兵法の研究を命ぜられたる事実はありませんか。ことに政府は、旧軍人、旧将官、旧大政翼賛会の幹部を含む戰争犯罪人を大量に追放から解除しておる。これらはすべて明らかに再軍備の準備であります。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)日本人民を—————————————。ことに吉田内閣に至つては、これは言語道断、国民に何一つの相談もせず、国会にもはからず、——————————。  私は事実をあげましよう。久留米の警察予備隊は戰車を持つておる、装甲車を持つておるといわれておる。北海道八戸、久里浜の予備隊は、対戰車砲や迫撃砲の訓練をしておるといわれておる。—————————————————。これは明らかに陸軍である。これがいわゆる日本人部隊である。現にニユーヨーク・タイムズは、この予備隊を日本の兵力としてはつきり計算しております。総理は、再軍備は軽軽に口にしないなどと言うが、この事実は、事実において、こつそりと日本の再軍備を、ちやんとやつておるのだ。(拍手)しかも、この予備隊を三十万にする計画を持つておるという。  私は総理大臣に質問したい。この予備隊は、ポツダム宣言並びに極東委員会の諸決定に対する完全なる違反であります。またこの。——————————————————————第三に、この予備隊は、———————————————。日本の人民には、明らかにこのような軍隊は無用である。(「その通り」、拍手)われわれは、この予備隊の即時廃止を政府要求するものであります。(拍手)  さらにこの際私は、戰争自衛の問題について一言触れたい。なぜなら、吉田総理大臣並びに一連の反動政治諸君は、戰争の準備に備える自衛のために必要な再軍備ということを言つておられる。しかし私は、ここで申し上げたい。なぜ戰争危險が起るのであるか。それは対日全面講和が特定国の拒否によつて行われず、———————————————————。(拍手)対日全画講和が締結され、————————————————————。アジアに戰争の起る危險は何にもない。彼らはまた、共産軍の侵入ということを口にするが、それは一体どんな場合を予想しておられるのか。これは日本が單独講和を結び、中華人民共和国や、ソ同盟を敵とする場合ではないか。日本政治は、明らかにこれを予想しておる。わが党は、それゆえに、ソ同盟及び中華人民共和国の加わつた全面講和を主張しておるのであります。(拍手)それゆえに、またわが党は、全占領軍の即時かつ完全な撤退を要求しておるのである。これなくして、だれが何と言おうとも、日本の平和と民族独立をはかることは絶対にできません。(拍手戰争を宣伝し、自衛を云々し、再軍備を扇動するごときは、———————————————————。それが單独講和である。———————————私は、かような戰争宣伝を行い、平和を破壊するやからを嚴罰に処することを政府要求する。(拍手)  次に私は、第五点として、朝鮮に関する干渉を契機とし、日本の民主化が徹底的に破壊されておる事実をあげたい。吉田内閣は、昨年八月、日本で最も民主的な労働者組織である全労連を解散しておいて、十二名の幹部を追放し、これが占領政策に合致する行為であると、ふれまわつている。また政府は、全国にわたつて共産党員並びに活動的労働者一万七百二十名を職場から追放して、民主的な労働組合を破壊し、ストライキを彈圧し、デモを禁止し、民主的集会をさしとめ、民主的出版物一千数百種の発行を禁止し、その機関に弾圧を加え、その関係者を逮捕している。これらの事実は、日本において今日ポツダム宣言の—————————————————、日本の民主化が根底から破壊されておるという明らかな証拠である。(拍手)私は、日本人民の名において、かような無法に抗議します。私は、こういう事実を、全世界の民主的諸国と民主的諸勢力に告発する。  ことに最近、神戸においてその他名古屋において政府が行つた—————————————————に至つては黙視することができません。政府は、教育と自由、生活の保障を求めて当局に交渉した朝鮮人に対して、—— —————————————————————。この事件は、在日朝鮮人の彈圧を合理化し、特に————————————————。(拍手)それだけではない。このたくらみは、これによつて———————————————————。(拍手)このような吉田内閣こそ、まさしく正義と人道と平和と国際親善の破壊者であるというてよろしい。さらに私は、このような狂暴の政治の集中的な現われとして松川事件を指摘したい。そもそも松川事件は——————————————————。検察当局が頼みとする証拠物件と称するものは何であるか。それは外国文字入りのバールと、使いものにならぬ小さなスパナの、たつた二つだけである。それ以外には何もない。反対に、裁判所の調べによつて事実無根が明らかとなつたのであります。しかるに日本の支配者は、民主主義勢力に対する恐怖政策のために裁判所を圧迫し、この無実の労働者二十名に対し、五名を死刑にし、十五名を無期懲役その他の重刑に処する未曽有の判決を下している。これは憲法と人権に対する冒涜であります。だからこそ、この陰謀は、今や中国を初め全世界の民主勢力の一大抗議運動となつて摘発れている。(拍手)われわれは政府に対し、即刻松川事件に関する全被告を無罪釈放することを要求する。(拍手)  私は、最後に講和の問題について質問したい。日本帝国主義は、一九三一年、対中国武力侵入を開始して以来、前後八年にわたつて中国人民に対して残虐きわまる戰争を行い、幾億の人民の生命財産に莫大な損害を與えておる。日本人民は、このことを忘れてはならない。それにもかかわらず、周恩来総理兼外交部長は、中国四億七千万の人民を代表して、日本国民に対し、誠実な、公正な講和の締結を呼びかけておるのであります。この中国人民の同情と信頼にこたえることは日本国民の道義である。(拍手)しかるに何ぞや。吉田総理は、この中国を講和から除外し、国際帝国主義、特にアメリカの政策に加担し、みずから進んでこれを除外しようとしている。そればかりではない。———————————。この中国に対し、一切の貿易を禁止しておる。この恥知らずなことは、中華人民共和国四億七千万入の人民を明らかに侮辱するものである。周恩来外交部長の呼びかけに敵対し、全面講和を破壊するものだ。今日の中国人民は、ソ同盟とともに平和と反戰反帝の先頭に立ち、世界政治指導権を、社会主義並びに人民民主主義陣営に保障しておる。戰争を食いとめておる。民族独立を擁護しておる。これが中国の人民だ。  しかるに吉田内閣は、—————————————————————————。これは講和ではない。これは明らかに————————。これが單独講和である。これが再軍備である。單独講和を企てる者は、全面講和は望むところであるが、できないから云々を繰返しておる。なぜできないのだ。ソ同盟や中国が全面講和を主張して、これを妨害したことは、一ぺんもありません。ソ同盟や中国は、ポツダム宣言を踏みにじり、日本を軍事基地にし、日本を再軍備し、日本人民を戰争の奴隷にするような、こんな身がつて講和に反対しておるのだ。全面講和を拒否するものは、ソ同盟でもなければ中華人民共和国でもない。—————————————————。  われわれは言わなければならない。世界には、戰争に反対し、平和のために戰つておる厖大な人口がある。ソ同盟、中国、東ヨーロツパ諸国、ベトナム、朝鮮十億の人民がおる。インド、マレー、フイリピン、インドネシア、ビルマの人民も、独立と平和のために闘うております。さらにイタリア、フランス、イギリス等資本主義の国の労働者も平和の陣営に立ち、戰争の陣営には立つておりません。それゆえにこそ私は言いたい。戰争と單独講和は、世界勢力から孤立しておる。彼らの大軍備拡張は、彼ら自身の孤立化の証明である。——————————————————。エス・アツピール以来今日まで、すでに世界六億の人民が戰争に反対し、原爆に反対し、平和投票に署名し、原爆を最初に使用したものを戰争犯罪人とみなすことに賛成しておる。——————————————————。  世界の民主勢力は、東西一万キロ、ゆうゆうとして八千万も動員する態勢がある。さらにこれ以上に平和と独立のために闘う人民の意思は、いかなる兵器よりも、原子爆弾のおどかしよりも強いということを、朝鮮の事実が明らかにこれを証明しておる。私は質問します。吉田総理は、この強大な平和勢力を敵とし、日本人をこれと戰争させるつもりであるか…、
  36. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 川上君—川上君——川上君ちよつと申し上げます、申合せの四十分はすでに経過しておりますが、次の人の時間が減りますので御注意申し上げておきますけれども、どうぞ、この点御了承を願います。
  37. 川上貫一

    ○川上貫一君(続) 私は総理に言いたい。国際帝国主義者のために火中のくりを給うことをやめなさい。それは日本を冒險な戰争に巻き査込み、民族を滅亡させることである。私は総理に、單独講和と再軍備戰争のための一切の政治の帥時停止を要求します。  終りに私は、講和に対するわが党の基本的態度を明らかにしておきたい。  第一、講和は米、英、ソ及び中華人民共和国の四大国の協調と会議に基く全面講和でなければならない。  第二、主権の完全な回復。講和後における全占領軍の即時かつ完全な撤退。  第三、日本はソ同盟、朝鮮、中国その他平和愛好諸民族と絶対に戰争しない。  第四、わが党は、いかなる形にもせよ、日本を軍事基地にすることに絶対反対する。  第五、領土の帰属に関しては、ポツダム宣言、カイロ宣言並びにヤルタ協定の決定が嚴重に守られなければならない。しかるに、日本政治家の中には、千島列島及び南樺太の日本返還を主張しておる考がある。これらの人たは、一九四五年二月十一日ヤルタにおいて署名された米ソ間の條約、すなわち当時ルーズベルト大統領の発意と感想で、スターリン首相がこれを受諾することによつてとりきめられたヤルタ協定を否定するものであります。ヤルタ協定は、嚴たる国際間の條約であります。これを破ろうとするものは、国際條約を愚弄し、国際道義を踏みにじり、カイロ宣言にも難くせをつけ、ポツダム宣言まて蹟麟するものであるといわなければならない。千島列島を云云するものは、故意にソ同盟を誹謗し、国民に対して反ソ感情を沸き立たせ、国民を反ソ反共戰争にかり立てようとするものであるといわなければ心らない。  第六、わが党は、総理並びに反動政治家が唱える、戰争と再軍備のための自衛権に反対であります。これは国際帝国主義の自衛である。日本支配者の自衛である。これは民族自衛ではありません。わが党は、これと反対に、人民が反動と欺瞞を打倒し、全面講和を実現し、平和と民族独立を保障する。そのために立つてみずから闘う人民の権利を主張する。  以上、わが党の質問に対し、総理その他閣僚諸公の明確な答弁を要求します。(拍手
  38. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの川上君の発言中不穏当の言辞があつたようでありまするから、速記録を取調べの上、適当の措置を講じます。     〔国務大臣吉田茂君登壇
  39. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたしますが、ただいまの議論は、要するに共産主義の宣伝演説であると考えますから、一々答弁しない。
  40. 福永健司

    福永健司君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明後二十九日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  41. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十一分散会