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1951-03-27 第10回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十七日(火曜日)     午後零時一分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    大西 正男君       石井 繁丸君    加藤  充君       上村  進君  委員外出席者         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   藤井 貞夫君         検     事         (法務府民事局         第二課長)   平賀 健太君         参  考  人         (東京都新宿区         長)      岡田 昇三君         参  考  人         (東京総務局         地方課嘱託)  西井 昌司君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十四日  住民登録法案鍛冶良作君外三名提出衆法第  二六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律改正に関する件  戸籍法弁護士法及び司法書士法改正に関する  件  住民登録法案鍛冶良作外生名提出衆法第  二六号)     —————————————
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  本日の日程中、まず戸籍法弁護士法及び司法書士法改正に関する件を議題といたします。本件につきまして、各小委員会報告を求めることにいたします。まず弁護士法改正について、弁護士法改正に関する小委員長報告を求めます。小委員長山口好一君。
  3. 山口好一

    山口(好)委員 御報告を申し上げます。  さきに日本弁護士連合会から弁護士法第三十条第一項を改正して、「弁護士は、所属弁護士会許可を受けなければ、報酬ある公職を兼ねることはできない。」と改正してほしい旨の要望がございました。これを機会といたしまして、弁護士法改正に関する小委員会が二月十六日に設けられまして、爾来三回にわたり開催せられ、弁護士法改正審議した次第でございます。以下小委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  弁護士会弁護士法第三十条第一項を改正せんとする理由は、近時弁護士公職選挙によつて公職につき、あるいは民間代表として公職につく傾向が顕著であるにかかわらず、弁護士報酬ある公職兼職することは原則として禁止されているので、これを緩和し、所属弁護士会許可があれば、兼職できるようにしようとするものであります。これを医師法に比較するときは、医師のまま報酬ある公職につくことができるので、弁護士法規定は時流に逆行する規定であるという理由でございます。  これに対して人事院の意見は次の通りであります。  一、公務員兼職禁止理由は、公権力を行使する者は、政治的にも職業上にも中立性を保持しなくてはならない。これを経済的に言えば、公私利益衝突を防ぐことにある。従つて絶対的に禁止するものでなく、弊害がないことを見きわめて上司が許可した場合はできる。  二、報酬ある公職と言えば、一般職特別職国家公務員地方公務員行政官、司法官を含むから、兼職できる分職として広過ぎる。  三、弁護士法改正により、弁護士が県知事や市長なつた場合でも、地方団体の条例などによつて地方公共団体の長が兼職することを禁じているから、弁護士兼職が不可能の場合が多い。  四、弁護士が常時勤務を要する行政職兼職することは、国家地方公務員法の精神に反する。こういうのであります。  小委員会におきまして論議されましたことは、次の通りであります。  一、公職範囲は、公職追放にいうところの公職でなく、特定の会社、協会、団体などの職員を含まないと思われる。  二、弁護士兼職を許されておる範囲立法職であり、司法職は禁止され、行政職法律により許された特定職務に限る。但し将来は弁護士資格のままで判検事となるのが法曹一元論立場から望ましい。  三、弁護士基本的人権を擁護することを使命とするけれども、その職務関係人の依頼を受けて訴訟する事務などを行うものであるから、私職よりも公職であるべきである。これに対して、公務員公共の福祉を目的とし、公権力の行使の事務を行うから公職が本質である。同一人が弁護士公務員とを兼職することは公職と私職、または公職公職とで矛盾する場合を生ずる。つまり公私利益衝突することが兼職禁止根本原因である。  四、報酬二つ以上得られるとか、勤務時間において重複するとか、官吏に忠実定量義務があるとかの理由は、必ずしも現代の公務員兼職禁止理由ではない。  五、かく弁護士公職兼職することは法理上可能であるが、ただその弊害除去方法がむずがしいだけである。医者は市長となつても、診療事務地方行政事務とは公私利益衝突を来さない。しかるに弁護士市長となると、法律事務地方行政事務とは公私利益衝突を来すおそれが多分にある。  六、弁護士会許可は会の内部秩序を維持する上からいいが、公私利益衝突を生じないとの見通しをつけるのに不適当である。弁護士会長を含めた公職兼職委員会設置のような構想が必要ではないか。こういう点であります。  かくで三月二十二日、次のような三案が提出されたのであります。その案は日本弁護士連合会案でありますが、これはA案といたしておきます。A案は、第三十条第一項を次のように改める。「弁護士は、所属弁護士会許可を受けなければ、報酬ある公職を兼ねることはできない。但し、国会若しくは地方公共団体議会議員その他常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定事項について委嘱された職務を行う場合には、その許可を要しない。」というのであります。第二のB案は、第三十条第一項但書を次のように改める。「弁護士は、報酬ある公職を兼ねることができない。但し、国会若しくは地方公共団体議会議員その他公選による公職につき、常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定事項について委嘱された職務を行うことは、この限りでない。」  第三案は鍛冶委員案であります。第三十条第一項を次のように改め、第二項を第三項とする。弁護士は、所属弁護士会許可を受けて、報酬ある公職を兼ねることができる。但し、常時勤務を要する公務員なつたときは、弁護士職務を執ることはできない。  二項、弁護士国会若しくは地方公共団体議会議員その他常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定事項について委嘱された職務を行うときは、別項の規定にかかわらず、所属弁護士会許可を要しない。  右の三案について協議の結果、弁護士は、一、国務大臣政務次官その他特別職の若干、二、公選による公職(現在は地方公共団体の長、教育委員農地委員漁業調整委員)三、常時勤務を要する公務員兼職することができるしかし兼職中は弁護士は自動的に職務停止となる。  右の線で条文をつくることに相なりました。なお同時に事務的見地から弁護士法第五条の第二号中に「衆議院若しくは参議院法制局参事」を加えるというような点、なお九十一条などの司法修習生の読みかえを必要とするというような点につきまして字句を修正することも、同時に改正事項に入れることに相なりました。  三月二十六日、第三回の小委員会を開きまして、その席上次の案が提出いたされました。   弁護士法の一部を改正する法律案   弁護士法昭和二十四年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。   第五条第二号中「法務事務官又は」を「法務事務官、」に改め、「法務研修所の教官」の下に「又は衆議院若しくは参議院法制局参事」を加える。   第三十条第二項を第三項とし、同条第一項を次のように改める。   第三十条 弁護士は、報酬ある公職を兼ねることができない。但し、衆議院若しくは参議院議長若しくは副議長内閣総理大臣国務大臣内閣官房長官内閣官房長官政務次官内閣総理大臣秘書官国務大臣秘書官の職又は国会若しくは地方公共団体議会議員地方公共団体の長その他公選による公職につき、又常時勤務を要しない公務員となり、あるいは官公署より特定事項について委嘱された職務を行うことは、この限りでない。  2 弁護士は、前項但書規定により常時勤務を要する公職を兼ねるときは、その職に在る間弁護士職務行つてはならない。   第七十二条中「及び正当の業務附随してする場合」を削る。   第九十一条中「但し、同法に規定する」の下に「弁護士試補は、司法修習生と読み替え、」を加える。     附 則   この法律は、公布の日から施行する。  この案が同日小委員会において成案なつた次第であります。何とぞ右小委員会成案法務委員会の一応の成案として御採用願いまして、関係方面了解を得て、法務委員会に正式に提案できるようお願いする次第でございます。右御報告を申し上げます。
  4. 安部俊吾

    安部委員長 これにて小委員長報告は終りましたが、何か御発言はありませんか。別に御発言がないようでありますから、次に司法書士法改正につきまして、司法書士法改正に関する小委員長報告を求めます。小委員山口好一君。
  5. 山口好一

    山口(好)委員 北川小委員長公用で欠席いたしておりますので、私が代理で御報告を申し上げます。  司法書士法につきましては昨年の末に司法書士連合会から改正要望がございましたので、これを機会に二月十六日当小委員会を設けまして、その審議に着手いたしました。その審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  二月の二十四日、第一回の小委員会を開きまして、次のような方針を定めました。司法書士法改正取扱いの三原則案といたしまして、  第一、衆議院にて立法した法律はこれを実施してみまして、実情に適当しないところがあれば衆議院みずから改正すべきである。しかし、実情に適するかいなかが判明するまでには、少くとも一年間くらいの期間経過を必要とする。この意味司法書士法の場合は実績を見た上での再改正ということでは時期なお尚早であります。  第二、司法書士権限現行法以上に拡大することは反対である。その理由は、司法書士制度の将来のあり方について定説がなく、弁護士は一段上として、計理士、土地家屋調査士税務代理士行政書士などの同類的職業との関連におきまして、業務領域限界が明瞭でないから、今ただちに司法書士のみ権限拡大をいたすことは妥当でないからであります。  第三、司法書士法同類的職業法律まつ先に成立したために古い規定が残つております。それでその後に成立した土地調査士法行政書士法などの進歩的規定並にこれを調整することが必要と認められる。同類的職業法律の間に差別待遇をせず、規定調整をはかるとの立場のみから司法書士法を再改正することは少しでも早い方がよい。この意味における再改正に対してほ、政府も弁護会などでも反対のあるべきはずはないと思う、こういうことであります。二日二十四日、この意味司法書士法改正要綱案が成立いたしました。  一、認可を廃して試験登録制を採用すること。(二条以下)   理由 土地家屋調査士法行政書士法税務代理士法公認会計士法などは、いずれも試験登録制であつて認可は古い。しこうして現在の司法書士取扱いは、土地家屋調査士法附則2、3)行政書士法附則2)並とすること。  二、報酬規定会則にて設けること。(七条)   理由 土地家屋調査士法公認会計士濃、税務代理士法は、いずれも会則で定めでいる。司法書士法のみ官庁で定めている。  三、正当業務附随削除すること。(十九条)   理由 これは土地家屋調査士法税務代理士法公認会計士法などにはないのであります。行政書士法にはあるが、これは司法書士法第一回改正のとき妥協上設けられたものを追随したにすぎない。  右の方針に基きまして、各方面意向を徴しましたところ、同法改正反対する機運が強いことが看取されました。反対理由は、司法書士法の再改正は時期尚早であるということ、次に同類的職業との関連において業務領域限界が明確でないから、司法書士法のみ権限拡大するのはいけないということでありました。よつて方面反対意向を考慮して、次のような要綱案を三月三日第二回の小委員会で定めました。   司法書士法改正要綱案  一、弁護士職域を侵すようなことがあつてはならない旨を明記すること。(一条三項または第九条)   理由 弁護士業務を蚕食する懸念が、一条二項だけでは足りないからである。  二、認可を廃して試験登録制を採用すること。(二条以下)   理由 土地家屋調査士法行政書士法税務代理士法公認会計士法などはいずれも試験登録制であつて認可は古い。しかして現在の司法書士取扱いは、土地家屋調査士法附則2、3)行政書士法附則2)並とすること。     なお予算及び試験準備のため、この施行は明年以降とすること。  三、報酬規定会則にて設けること。(七条)   理由 土地家屋調査士法公認会計士法税務代理士法はいずれも会則で定めている。司法書士法のみ官庁で定めている。  四、正当業務附随削除すること。(十九条)   理由 これは土地家屋調査士法税務代理士法公認会計士法などにない。行政書士法にあるが、これは司法書士法第一回改正のとき妥協上設けたものを追随したにすぎない。以上であります。  しこうして三月三日第二回小委員会のあとで懇談会を開きましたが、その席上、弁護士連合会から、改正に対して全面的反対の御意見が表明せられました。その根本的理由は、司法書士弁護士職域を蚕食するおそれがあるということでありました。法務府は、業務執行府令で定めないことは反対であるが、それ以外の改正事項はしいて反対しない。試験登録制賛成であるという意見が表明されました。最高裁判所におきましては、試験登録制賛成正当業務削除反対意向であることがわかりました。爾来小委員会において、司法書士あり方について考慮中のところ、弁護士連合会から、全面的反対を緩和して次のような意見書提出がありました。   司法書士法改正案に対する日本弁護士連合会意見昭和二十六年三月八日)  一、第一条本文を左のように改正する。  第一条司法書士は、他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁又は法務局、若しくは地方法務局提出する書類(但し法律上の判断を要するものを除く)を代つて作成することを業とする。  二、試験制度を採ることには反対現行法通り認可制とする。但し第二条第一号中「三年以上」とあるを「五年以上」と改める。  三、報酬規定司法書士会会則で定めることには反対で、第七条本文を左のように改正する。  第七条 司法書士の受けることのできる報酬の額は、司法書士会意見を聴き、法務総裁が定めるところによる。  四、第十九条中「又は正当の業務附随して行う場合」を削除することには反対する。  また最高裁判所にも同調的賛成が多くなりまして、法務府も古い規定を改めて進歩的規定改正することは賛成であるという意見が多くなりました。よつて三月二十四日第三回の小委員会を開き、次の通り成案を得た次第であります。   司法書士法の一部を改正する法律案   司法書士法昭和二十五年法律第百九十七号)の一部を次のように改正する。   第一条第二項を削る。   第二条を次のように改める。   (資格)  第二条 第三条の二の規定による司法書士試験に合格した者は、司法書士となる資格を有する。   第四条を削り、第三条を第四条とし、同条第四号中「認可」を「登録」に改め、第二条の次に次の二条を加える。   (司法書士試験受験資格)  第三条左の各号の一に該当する者は、司法書士試験を受けることができる。   一 学校教育法昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第五十六条第一項に規定する者   二 裁判所事務官裁判所書記官裁判所書記官補法務事務官又は検察事務官の職の一文は二以上に在つてその年数を通算して三年以上になる者   三 法務総裁の定めるところにより、前号に掲げる者と同等以上の教養及び学力を有すると認められた者   (司法書士試験)   第三条の二 法務総裁は、毎年一回以上、司法書士試験を行わなければならない。  2 前項試験は、司法書士業務に関し必要な知識及び能力について行う。  3 第一項の試験を受けようとする者は、政令の定めるところにより受験手数料を納めなければならない。  4 法務総裁は、試験に関する事務の全部又は一部を、法務局又は地方法務局の長に委任することができる。  第四条の次に次の三条を加える。  (登録)  第四条の二 司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局に備えた司法書士名簿登録を受けなければならない。  (登録申請)  第四条の三 前条登録を受けようとする者は、司法書士となる資格を証する書類を添えて、当該法務局又は地方法務局の長に登録申請をしなければならない。2 登録申請をするには、政令の定めるところにより、登録手数料を納めなければならない。  (登録の取消)  第四条の四 司法書士が左の各号の一に該当する場合には、その事務所所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は、その登録を取り消さなければならない。  一 その業務を廃止したとき  二 死亡したとき  三 司法書士となる資格を有しないことが判明したとき  四 第四条第一号、第二号又は第四号に該当するに至つたとき第七条を次のように改める。  第七条 削除   第九条中「その業務範囲を越えて」の下に「、弁護士その他特定資格を有する者の行うべき」を加える。   第十一条を次のように改める。  第十一条 削除   第十二条第三号中「認可」を「登録」に改める。   第十三条第一項及び第三項中「第十一条又は前条第二号若しくは第三号」を「前条第二号又は第三号」に改める。  第十五条に次の一号を加える。   六 司法書士報酬に関する規定  第十八条を次のように改める。  第十八条 この法律に定めるもののほか、司法書士試験登録及び業務執行に関し必要な事項は、法務府令で定める。  第十九条第一項中「又は正当の義務附随して行う場合」を削る。  第二十条中「又は第七条第二項」を削る。    附 則  1 この法律は、昭和二十六年七月一日から施行する。  2 この法律において、「新法」とはこの法律による改正後の司法書士法をいい、「旧法」とは従前司法書士法をいう。  3 この法律施行の際現に司法書士である者は、新法規定による司法書士となる資格を有するものとみなす。  4 前項規定により司法書士となる資格を有するとみなされた者はこの法律施行の日から二箇月以内に登録申請をして、その事務所所在地を管轄する法務局又は地方法務局に備えた司法書士名簿登録を受けなければならない。この場合においては、新法第四条の三の規定を準用する。  5 前項規定により登録申請をしなければならない者が当該期間内にその登録申請をしない場合においては、その者は、当該期間経過の日において、附則第三項の規定により認められた司法書士となる資格を失うものとする。  6 この法律施行の際現に司法書士である者は、附則第四項の規定による登録を受けるまで、なお、司法書士の名称を用いてその業務を行うことができる。  7 旧中等学校令昭和十八年勅令第三十六号)による中等学校を卒業し、又はこれと同等以上の学力を有すると文部大臣が認めた者は、新法第三条の規定にかかわらず、当分の間新法第三条の二に規定する司法書士試験を受けることができる。  8 新法第三条第二号の適用については、裁判所書記在職年数は、裁判所書記官補在職年数とみなし、法務庁事務官司法事務官又は司法属在職年数は、法務事務官在職年数とみなす。  9 昭和二十六年においては、新法第三条の二第一項の規定にかかわらず、司法書士試験を行わない。  1○ この法律施行の際現に存ずる司法書士会は、すみやかに、新法第十五条の規定により、その会則中に司法書士報酬に関する規定を定めなければならない。  11 前項規定により司法書士会司法書士報酬に関する規定を定めるまでの司法書士報酬の額については、なお従前の例による。司法書士会が設立されていない区域における司法書士及び司法書士会の会員にならない司法書士報酬の額も、また同様とする。  12 法務設置法昭和二十二年法律第百九十三号)の一部を次のように改正する。 右の小委員会成案法務委員会の一応の成案として御採用願いまして、関係方面了解を得て、法務委員会に正式に提案できるようお願いする次第でございます。  右御報告申し上げます。
  6. 安部俊吾

    安部委員長 本件に関して何か御発言がありますか——別に御発言もないようであります。     —————————————
  7. 安部俊吾

    安部委員長 次に戸籍法の一部を改正する法律案につきまして、戸籍法改正に関する小委員長報告を求めます。眞鍋勝君。
  8. 眞鍋勝

    眞鍋委員 戸籍法改正に関する小委員会報告書を朗読いたします。   戸籍法改正に関する小委員会報告書   三月二十七日  眞鍋小委員長  私は二月七日戸籍法の一部改正に関する法律案を起草するために立法理由書提出しました。以下まずこれを読み上げます。   戸籍法の一部を改正する法律案に関する立法理由書   衆議院法務委員       眞鍋 勝 外十二名    一、現行法の欠点   現行戸籍法立法当時から後年改正する必要ありと認められる事項二つあつたと聞いている。第一は、戸籍法という名を「民」籍法修正することである。第二は、人名につける常用平易な字の範囲を民主的な方法で定めることである。第一の事項は、「戸」を「民」に直すという字の修正にすぎぬが、これには紙と筆と労力が必要である。全国市町村戸籍簿の表紙を書き直すだけでも多大の費用と資材を必要とすると聞いている。戸籍事務費全額国庫負担の請願が多い折からだけに、法務委員会の一員としていましばらくこの修正を他日に延期するほかはないと思う。   第二の常用平易な文字の問題は今や改正に着手すべき時期に達したと思う。子供の名につける常用平易な文字範囲国語審議会の定めた当用漢字範囲と同じと断定したことは軽卒である。両者の範囲を同一と誤認し、当用漢字国民に強制することによつて国民は多大の迷惑を受けている。たとえば無名、無籍の日本人が出現したり、戸籍事務担当者が五十四字を増加することを協議したり、同名異人が各地に現われたりしている。文部大臣が名につける漢字の緩和を答弁しているのは時宜に適している。    二、改正目的  人の名には常用平易な文字を使わねばなならぬという方針は何人も賛成するところである。しかしながら戸籍法施行規則第六十条によつて常用平易な文字範囲を「当用漢字表にある漢字かな文字(二十一年内閣訓令三二号)、当用漢字音訓表(二十三年内閣訓令二号)」の範囲に限定することは国民大多数の理性と感情の耐えられないところである。すべからく人名当用漢字やその音訓表によつて制限せられない旨を法令に明記すべきである。もつとも国語審議会当用漢字は固有名詞につき別に考え、当用漢字音訓表人名に適用することを意図していなかつた。けれども、少くとも目下裁判所当用漢字は子の名の届出の場合に適用さるべきものと解釈しているのである。人名につける漢字はこれを当用漢字に限定してはならない根拠は三つある。その一は、血統と土地とは人間社会構成の二大要素であつて、永遠不滅のものである。従つて人名、地名は永遠的、継続的なところにその性格があるから、当座統制を目的とする文字、用語政策の可変的効果から最も遠いところにある。その二は、日本人口八千万人、毎年増加人口百万人に対し、これにつける名の漢字当用漢字に限ると、当用漢字は千八百五十字、新制中学までの義務漢字は八百八十一字であるが、悪、凶、禍、死や電信電話のように人名に適しない字を控除すると、結局一千字となる。そうすると、百万人に一千字であるから、同一字が同一時期に約一千回命名に使われることになる。これではこれから生れる子の個人別がわからぬではないか。十年も経過すれば、佐藤、齋藤、後藤の姓の多い部落では同姓同名の異人が数十人も続出するおそれがある。第三に、民法は家を廃止したが、氏を廃止することはできぬ。「氏」を現わす「姓」の字は自由漢字であるのに、個人を現わす「名」の字は当座統制の漢字というのは予盾ではないか。地名には常用平易でない字が少いが、不動産登記法、土地台帳法には地名統制の規定はない。地名の漢字を制限するとなれば、土地登記簿の書き直しだけで数億円の予算を必要とするであろう。    三、漢字の文化的意義   現代漢字は日本字であつて、同時に中華字と符合するというにすぎぬ。漢字なくして日本人の日常生活は迅速正確に表現し得ない場合がある。六・三・三制の義務漢字八百八十一字だけでは、日本文化の精華を了解することはできない。日本人の家族生活の中にはよい漢字が親から子に、子から孫にと継承されている。終戦後五年にして漢字かな文字との関係を再検討する必要がある。終戦直後、漢字追放は行き過ぎであつた。現在の民生の安定の立場から漢字の「追放解除」が企図されねばならぬ。追放解除の範囲は狭く、その方法は民主的でなければならぬ。   立法理由書は前の通りであります。  かくて二月十六日戸籍法改正に関する小委員会設置され、小委員会を四回、懇談会を二回開催した。ここにその審議経過及び結果を報告申し上げます。  第一回においては人名漢字の問題を文部省国語審議会の定めた当用漢字の批判と、法務府民事局の出生届に適用する戸籍法施行規則の妥当性と、戸籍法改正という三方面から調査することとし、その根本方針を協議しました。  第二回においては広く各方面人名漢字の権威者の陳情を聞くことにした。この陳情会に述べられた論旨は、おおむね左の通りであります。  一、子供二人の名に使う漢字当用漢字表にないとの理由で、出生局を受理されなかつたのみならず、主食配給も受けていないという某氏は、戸籍法施行規則第六十条を廃止してもらいたい。それから国民の子供の出生届が法務府民事局長の通達くらいで受理されぬというのは、越権であると強く主張していました。この人については、その思想傾向を云々する人もありましたが、調査の結果、さような事実がないことが判明しました。二、科学者某氏は、漢字制限に反対であり、人名文字も常用平易な漢字を民衆自身が決定すればよい。文字漢字にせよ、かなにせよ、ローマ字にせよ、自然に成長し自然に消滅している。これを官憲が、その範囲を定めること自体が言語道断であると主張した。  三、大学総長某氏は、文字は生きている。新しく生れ来る文字当用漢字に入れているか。過去の漢字の制限だけでは当用漢字というのは当を得ない。また固有名詞につき別途に考慮するというけれども、固有名詞の漢字の制限は一国の歴史をなくする結果にならぬか。また文化政策を法律により強制することは妥当でないと主張した。  以上は人名漢字範囲を拡大すべきことを主張する人々の意見である。  これに対して人名漢字制限を主張する人々は、次の通り主張した。  四、文部省国語審議会の某氏は、当用漢字表をつくつた標準として、(一)漢字使用の社会的頻度数、(二)使用の影響力、(三)熟語の構成、(四)漢字の意義の分類等を根拠として選んだ。結局新聞雑誌等に使われている現実資料と文字国民のものにしたいという理想的要素とを合せて当用漢字表をつくつた。人名漢字については、現在まで少しも着手していないと説明した。  五、最高裁判所の某氏は、改名につき、犯罪隠蔽や債務免除等の悪用されることを避けるため原則として改名を許していないが、やむを得ざる事由として裁判所許可する理由は、(一)営業の譲渡とともにするとき、(二)男女性が混淆して判断されるとき、(三)同一市町村内の同姓同名が複数なるとき、(四)神官、僧侶の場合、(五)珍奇な名、(六)難読難解な名等であると説明した。、  六、法務府民事局は結論として(一)当用漢字表漢字範囲を広くしなければならぬ。その際、小中学校の学習漢字とのつながりを考慮しなければならぬ。新制中学までの八百八十一字の程度では戸籍法をいくら直しても効果はない。(二)戸籍の窓口事務統一のために、常用平易な範囲を示した委任命令は必要である。常用平易な文字の使用は訓示規定によるものでなく、強行規定によるものである。(三)戸籍法戸籍法施行規則改正する必要はない。(四)配給も受けない某氏はまれな例外で、国民大多数は当用漢字範囲内で子供の名をつけている、と。その後国語審議会長土岐善麿氏及び人名特別部会長宮澤俊義氏より戸籍法改正小委員会に対し、左の申入れがあつた。  一、当用漢字は終戦後官庁文書、新聞雑誌等に使用されているのに、今人名漢字に例外を許すことによりその一角からくずれて行つては困る。  二、国語審議会にて人名特別部会をつくり、四月末までに責任をもつて人名漢字別表をつくる予定である。これを考慮に入れて立法してほしい。  三、漢字問題は戸籍法だけでなく、各方面に影響があるから、漢字の追放解除という見地だけでなく、各方面の影響を考えて慎重に考慮してほしい。  三月八日第三回小委員会を開いて戸籍法の一部を改正する法律案について協議した。衆議院法制局にて立案した条文は次の通りである。  戸籍法の一部を改正する法律案試案(二十六年三月十日衆議院法制局)第一案(戸籍法第五十条第一項に但書を加える案)第五十条子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。「但し、祖先若しくは近親の氏名又は地名その他によりその子に縁故のある文字を用いる場合は、この限りでない。」 2、常用平易な文字範囲は、命令でこれを定める。  第二案(戸籍法第五十条に第三項を加える案、第五十条子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。2、常用平易な文字範囲は、命令でこれを定める。それから3、「市町村長は、出生の届出において子の名が第一項の規定に違反する場合においては、届出人に対してその旨を注意することができる。但し、届出人がこれに従わなくともその届出を受理しなければならない。」  別に第三案として、戸籍法第五十条第一項(常用平易の文字使用のこと)削除、第二項(常用平易の範囲を命令に委任すること)削除提出された。  小委員会の協議においては、第一案に賛成する者少く、第二案と第三案に賛成する者それぞれ同数ぐらいであつた。よつて委員間に協議懇談した結果、第二案を中心とする案を小委員会成案とすることに確定した。それが戸籍法の一部を改正する法律案昭和二十六年三月二十四日衆議院法制局)戸籍法昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。  「第五十条に次の一項を加える。市町村長は、出生の届出において子の名に前項範囲外の文字を用いてある場合には、届出人に汚してその旨を注意することができる。但し、届出人がこれに従わなくともその届出を受理しなければならない。」  以上です。何とぞこの小委員会成案法務委員会の一応の成案として採用し、関係方面了解を得て正式に法務委員会に提案できるようお願いする次第であります。右御報告申し上げます。
  9. 安部俊吾

    安部委員長 これにて小委員長報告は終りました。本件に関して何か御発言はありませんか。
  10. 上村進

    ○上村委員 今まで制限的な法律のもとにおいて自分の子供の名前をめんどうな漢字で届け出ようとしたのを拒否されて、やむを得ず常用漢字で届け出ておつたような人が、今度この改正によつて子供の名前を改名する人が多いであろうと思う。そのときに附則をきめておいて、一々そういう場合に裁判所許可がいらないように、簡単に戸籍役場で改正するという規定が欲しいように思われますが、それをどういうふうにしていいか、この附則においてするかどうか、それらの点について議論が出ていなかつたように思うのですが、ここでちよつと質問しておきたいと思います。
  11. 眞鍋勝

    眞鍋委員 御質問の趣旨に対しましては、改名の条文はあるので、できると思つております。ただこの際、もう一歩進んでいえば、こんなことを規定せずとも、戸籍吏が常識があつてしつかりしておれば、そういう問題は起らぬと思う。戸籍吏が字を知らぬ連中ばかりだからそういうことになるので、多少学問した者が戸籍吏になつておれば、そういう問題は起らぬと思います。
  12. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御発言がないようでありますから、お諮りいたします。戸籍法弁護士法及び司法書士法改正に関する件につきましては、各小委員長報告通り、各小委員会成案を本委員会の一応の案といたしまして、本委員会提出法律案として仮決定の上、諸般の手続をとりたいと存じますが、このようにとりはからうに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なしと認めます。そのようにとりはからうことに決しました。     —————————————
  14. 安部俊吾

    安部委員長 次に商法の一部を改正する法律改正に関する件を議題といたします。本件に関しましては、去る三月二十日の委員会におきまして、商法の一部を改正する法律改正に関する小委員会報告を聴取いたしまして、小委員会の案を採択して、本委員会提出法律案の一応の成案として仮決定をいたしたのでありました。この案につきましては、渉外手続を進めておつたのでありますが、諸君のすでに御承知の通り関係方面意向も漸次明らかにされ、仮決定をいたしました案につきましても、さらに検討を加える必要が認められる段階に立ち至つた次第であります。従いまして、ただいまより関係方面意向をお伝えするとともに、さらに協議を願いますために、暫時速記を中止いたしまして、御懇談を願いたいと思うのであります。速記をとめてください。     〔速記中止〕
  15. 安部俊吾

    安部委員長 速記を始めてください。  大体ただいまの懇談によりまして、この商法改正に関する問題に関しましては、明瞭になつたのであります。  午後二時まで休憩いたしまして、その上でさらに御協議をしたいと思います。それでは休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ————◇—————     午後三時八分開議
  16. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  鍛冶良作君外三名提出住民登録法案を議題といたします。提案者より提案理由の説明を求めます。鍛冶良作君。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 住民登録法案について、提案の理由を説明いたします。  現行の寄留制度は、寄留法を根拠法規として本籍外に住所または居所を有する者を寄留簿に登載し、戸籍簿と相まつて、市町村住民の居住状況を明らかにするため、大正三年以来実施されて来たのであります。しかしながらこの制度においては、市町村の住民全部が登録されるものでないため、行政上の利用価値に乏しく、従つて市町村のこの制度の実施に対する積極的な熱意を期待することは、当初から困難な状況にあつたのでありますが、この制度は、さらに住所寄留及び居所寄留という二種類の寄留を認めていますために、事務の複雑化を来し、必ずしも実用的でなかつたのであります。また、市町村住民の側から見ますと、この制度から受ける実益に比較して届出義務の負担が大きく、届出の励行を期待することも無理であつたのであります。以上申し述べましたような欠陥のため、現行の寄留制度は、現在ではほとんど制度本来の目的を達していないといつても過言ではないのであります。しかるに制度運用の実際は以上のような状況であるにかかわらず、市町村はこの制度のために年々相当額の経費を支出しております関係上、この制度は、これを早急に改革する必要あり、市町村当局も多年これを要望し来つたのであります。  他方、市町村におきましては、配給制度実施の必要上、昭和十五年ごろから、寄留簿とは別途に世帯台帳を調製し、これに市町村の住民を世帯別に登録しているのでありますが、市町村としましては、寄留制度がさきに申し述べました実情にありますため、世帯台帳を、住民を把握するための重要な基礎資料として、ひとり配給の事務だけでなく、選挙教育、徴税、衛生、統計、生活保護、住民の居住関係の証明等、各種行政事務の処理に利用している実情であります。しかるに世帯台帳の調製につきましては、法令上の根拠がないばかりでなく、本人の申告だけを基礎としておりますため、誤りも多く、市町村の公簿としてこれを行政の基礎資料とするにははなはだ不完全なのであります。しかし配給制度が廃止されたあかつきにおきましては、世帯台帳もまたこれと運命をともにすることとなりますので、早急にこの世帯台帳にかわる制度を樹立しておかなければ、将来市町村はその行政事務の処理上重大な支障にあうことと思われるのであります。  以上に申し述べました理由によりまして、この法案におきましては、現行寄留制度と世帯台帳の制度のおのおのの長をとり、短を捨て、住民登録の制度としてこれを統合し、市町村の住民を登録することによつて住民の利便をはかるとともに、市町村の行政事務の適正簡易な処理に資しようとするものであります。  次にこの法律案の内容中おもな点を申し上げますると、  第一に、住民登録事務は、市町村の固有事務として、市町村が処理するものとされていることであります。  第二に、市町村は、その住民について世帯を単位として住民票を作製し、これに住民の氏名、年齢、住所、本籍その他の事項を記載し、かつ住所の異動その他住民票の記載事項の変動があつたときは、その都度これを届出または職権によつて住民票に記載するものとされていることであります。  第三に、住民票と戸籍とを関連させることによつて、住民票の記載の正確を期するため、市町村は、その区域内に本籍を有する者について、戸籍を単位として戸籍の附表を作製し、これに戸籍に記載されている者の氏名、住所等を記載し、住所の異動があつたときは、住所地市町村からの通知によつて、その都度これを戸籍の附表に記載するものとされていることであります。  以上簡単でありますが、この法案の提案の趣旨及び内容の概況を説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上すみやかに可決せられんことを希望いたします。
  18. 安部俊吾

    安部委員長 これにて提案理由の説明は終りました。引続き本案の質疑に入ります。  この際参考人招致についてお諮りいたします。本案について意見を聞くため新宿区長岡田昇三君及び東京都庁総務部地方課の西井昌司君を参考人として招致し、これより両君より意見を聴取したいと思いますが、これに御異議ありませんか。   「「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたします。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員 参考人に対していろいろ聞かれることはけつこうでありますが、過日来住民登録法案起草小委員会で、いろいろ疑問の点を検討いたしましたので、そのうち特に大きな問題であつたものだけをここで御報告申し上げまして、きようの審査の資料に資したいと思うのであります。  第一に問題になりましたのは、第四条の第二項であります。「市町村は、前項各号に掲げるものの外、条例で住民票に記載すべき事項を定めることができる。」これが問題でありまして、これに記載しようとするものはどういうものかということを、立案者の説明を聞きますと、主食の配給を受ける世帯かどうかの区別、住居が所有家屋か、賃貸家屋かどうかの区別、畳数など行政上の必要に応じて記載したい、こういうのであります。これが一つ。  その次は、第二十二条第二項「届書には、第四条に規定する事項を記載しなければならない。但し、同条第一項第九号又は第二項に規定する事項で、政令又は条例で届出を要しないものと定めたものについては、この限りでない。」この但書は四条の問題がそのまま関連になつて来るわけであります。  それからその次は第十条の「利害関係人は、住民票の閲覧又はその謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。」この利害関係人と制限した理由、またその利害関係人とはどういうことで利害関係があるかないかということをきめるかというめんどうな問題がある。  その次は三十条、「市町村の当該吏員は、住民登録の正確な実施を図るため、必要と認めるときは、何時でも、事実の調査をすることができる。2前項の調査のため、必要があるときは、当該吏員は、関係人に対し質問をし、又は文書の呈示を求めることができる。」このあとに第三項があるのですが、この目的意外にこれを使われるという憂いがあるかどうかという問題、人身保護の上から、かような権限を市町村吏員に与えていいかどうかという問題があつたわけであります。  大体小委員会意向といたしましては、先ほど申しました第四条の第九号、二項は、必要があるとすれば地方自治法の第十四条でやれるのだから、ことさらこれに記載しなくてもいいではないか、またこの提案理由を聞いてみても、それほど重要でないものだから、めんどうを避けるためにやめたらよかろう、こういうことであります。  第十条の利害関係人ということは、これはどうも利害関係があるかないかをきめるということは容易でないし、しいて制限を設ける必要はなかろう、請求して来れば、そんなことは調べないでも、利害関係がないで拒絶し得るということなんですから、それをなくするために削つたらどうか、こういうことであります。  二十二条は、結局第四条を削るということになればいらない、こういうことであります。  それから三十条については、ほかのこれに類似した法律との対照もあるものですから、それらの点と対照した結果決定しよう、こういうことになつておりますから、御参考のために申し上げておきます。
  21. 安部俊吾

    安部委員長 それでは東京都庁総務局地方課の西井昌司さんに、ただいま提案者である鍛冶良作君より質問があありました第四条の九号と二項について、御参考になるようなお話があれば承りたいと思います。
  22. 西井昌司

    ○西井参考人 この住民登録法の問題は、明治五年に戸籍法とともに住民の調査ということを制定されて以来の制度の変革で、まことにけつこうな御提案が出たと思つておるのであります。  そこでただいま御質問になりました条例の問題でありますが、これは私はやはり存題しておいた方がよろしいと考えるのであります。その理由は、自治法にも一応市町村は条例の制定権を広汎に認められておるのでありますが、特にここに条例の制定権を認められたというのは、この住民登録目的範囲内において条例を定めていいという趣旨と解するのであります。しからばどういう点を条例で定められるかというような点でありますが、東京都におきましては配給の関係上、ある特殊の事項を調査する必要が起つて来る。たとえば薪炭の入手が困難な時代に、そこの世帯がそれで炊さんをなすかどうか、あるいはガスの設備があるかどうかというようなことを調査する必要が起る。また住宅の困難な時代には、その間数を調査する必要も起つて来るのであります。それからまた事務方面から見ますと、まず資格のようなもので、その人の年齢その他を見て、これは選挙権あり、あるいはこれは被選挙権ありというようなことをそれに記載しておく、またその他の衛生上の関係を記載することができる、こういつたようにその土地によつては調査すべき事項がありますので、こういうものを記載するのが目的であろう、こういうふうに考えます。また土地によりましては、今例をあげました薪炭の問題は何ら調査の必要もない府県もある、こういうようなぐあいで、その土地の事情によつて条例をつくらなければならぬ場所もあり、つくらなくていいところもある。こういう点も各地方の自治にまかした方がいいじやないかというところから、この条例の存続を希望するものであります。  以上の点だけ申し上げます。
  23. 安部俊吾

    安部委員長 さらに鍛冶委員より第二十二条の但書、これもやはり政令または条令ということになつておりますが、この点はいかがですか。
  24. 西井昌司

    ○西井参考人 ただいま私が申しました選挙権者であるとか被選挙権者であるとか、あるいは衛生上の義務を果した人であるとかということは、これは区役所だけで事務的にやればいいことであるから、届出を要しないものに属するのであります。それから政令ということがここにありますが、政令につきましては私としてはつきりしたことは申し上げられないのですが、この事務そのものが本来から言いますと、国家としても必要な事務であり、また府県としても必要なことであり、市町村としても必要なことである。そういう点からいくと、むしろこれは国家事務で、市町村に委任の形式をとるべき筋合いのものではなかろうかと思うのです。それは根本論であり幸して、今度市町村の事務ときめられた上はそれでけつこうでありますが、そういう精神からいくと、やはり国家として何か調査をすべき必要なものがあるとすれば、これは政令の存続も必要ではなかろうか、それから市町村は、先ほど申し上げましたように、その地方の自治に即応するような事項で調査を要するようなものを条例で定めて行く、こういうことで存続の必要なものであろう、こういうように考えております。
  25. 安部俊吾

    安部委員長 それから第十条の利害関係人ということに関しましても、鍛冶君より質問がありましたが、その点はどうですか。
  26. 西井昌司

    ○西井参考人 私はこれはあえて存続すべき必要があるとは思いません。戸籍はすべてに公開いたしております。住民登録票のごときも、戸籍に準ずるものでありまして、これは一般の人に公開しても別に弊害があるとは思われないのであります。
  27. 安部俊吾

    安部委員長 さらに西井参考人に伺一いますが、第三十条「市町村の当該吏員は、」云々というのがありまけれども、この点に関しましても鍛冶委員より御質問がありましたが、この点はいかがですか。
  28. 西井昌司

    ○西井参考人 私多年実務をやつて来ました。麹町の戸籍を三十年ばかりやつて来たのでありますが、その体験に基きますと、やはり戸籍は事実の調査権を持つておらない、書面審理だけであります。しかし住民登録法は生きた仕事なんです。そこで、どうしても実地の内容にわたる調査権を持たなくては正確を期しがたいだろう、そういう点から事実の調査権は認めていただきたい。そうして戸籍の方は、届出のみにたよつておるのでありますが、住民登録の方は、届出のみにたよらないで、職権発動といいますか、実際居住の事実あるものは登録させて事実に即応させる、これは事実に即応しなければ住民登録法の生命はなくなつてしまうのであります。そういう点からも調査権はぜひ必要と考えるのであります。そこで今度調査権を認めた以上は、それに対する何らかの罰則規定を備えておかなければ、結局有名無実になるおそれがある、さような意味から三十条の存続を希望するものであります。  以上であります。
  29. 安部俊吾

    安部委員長 大体それで鍛冶君の質問に対してお答え願いましたが、同様に参考人である岡田昇三君に質問します。  まず第四条の二項であります。「条例で住民票に記載すべき事項を定めることができる。」ということはどういう意味ですか。
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員 九号と二項と両方です。     〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕
  31. 岡田昇三

    ○岡田参考人 第四条の第一項の九号と第二項の問題でございますが、この「政令で定める事項」と申されておられますのは、おそらくただいま八号までに予想された以外のものをおきめのことと当然考えられるわけでありますが、私も政令で今後どのようなことを想像されるかということにつきましては、はつきりお答え申し上げることができないのであります。ただ第二項の問題でありますが、これは自治法十四条との関係もございまするが、実際実務的な面からこれを考えて参りますと、第八号までの事柄及び九号によりまして政令等で定められたものといたしましても、第二条によつて住民登録に関する事務は市町村の固有事務であるというふうに一応法律上はつきりいたしましても、さらにこれを市町村自身が自分のものである、この法律施行によつて自分の関係地域内におきまする市町村の行政の有力な一つの基礎資料になるんだという考えを持たします上におきましても、特に法律上条例によつてできるということの御決定を願つておいた方がよろしいのではないか、原案のような形がいいのではないかと思うのであります。特に先刻もお話がございましたように、たとえば特に義務教育の就学年齢層の者に対しまして記号をいたしております。ことに、中学校におきましては、義務就学者の就学奨励の問題が、市町村といたしましても学校教育法関連いたしまして起きて参ります。これはこれらの学籍簿、学歴簿と対照いたしまして処置いたしますことは、その世帯の構成と切り離した身分になりますので非常に困難になります。この住民登録に明らかになつておりますならば、ただちにそうした救済方法、あるいは就学奨励方法もとり得る。それから、これは一例でございますが、最近実施をされておりまする身体障害者の援護の問題でございますが、ただいまの実情から申しますと、障害者自体が法律による恩恵をほとんど了解しないでおるというような状態でありまして、せつかく国会で御決定になりました法令の恩典に浴し得ないというようなことで、ただいまどうしてこれを呼びかけたらいいかというようなことで、ポスターとがちらしとかで呼びかけるというようなことしか手がないのでございます。そういうような場合に、将来の大きな問題の一つとして、障害を受けた者に関しましては、やはり規則実施等により、これに対する給与等もありますので、そういうようなことも、将来この法律の実施に伴いましては、場合によりましては条例によつてそういうようなものもあらかじめ届け出てもらつて、この名簿に登載をして置く。さらにまた別の問題で、届出義務のない問題にいたしましても、たとえば現在戸籍法があり、寄留法があり、さらに印鑑につきましては、別途に印鑑法によつて印鑑証明をしておる事実は、本籍主義のところは少くなりまして、大体住所主義を採用いたしておるのであります。従いまして、これに、必要によつては本人の印鑑を押捺をして置くことは、間違いもありませんし、取扱い上も一元化して市町村の事務の運営が合理化されて行くのではないかというようなことも考えられるのでありまして、特に市町村が自分の固有事務であることをはつきりこの法律によつて定められたことを実施いたして行きます上からいいましても、特に条例で、ということがこの法律上明らかになつておる方がよろしいと私は考えるのであります。  それから第十条の利害関係人の問題でありますが、これは私も特に利害関係人と表示がありませんでもさしつかえはないのではないかと考えております。と申しますのは、一例でありますが、法律上の利害関係人でありませんで、婚姻、縁組等に関して相手方の事情も一応調べたいというような場合には、その利害関係人は、法律上の利害関係人でありませんために、その住民簿の閲覧ができないことになります。一方戸籍法の関係でありますと、戸籍簿はいつでも閲覧ができることに相なりまするので、身分登録の本籍地と、住所登録の住所地との遠隔な場合等におきましては、これの活用の上から行きましても、利害関係人と限定することになつて、特に大きな利益の点はないのではないかというふうに考えます。  それから二十二条の点につきましては、前と同じように、やはり九号と二項の関係がございますならば、それは存置をいただいた方がよろしいと思います。  それから三十条の問題でありますが、これは市町村がこの事務を実施いたしますためには、届出不十分の場合において、これに補充的な調査をいたしまして、これに対する措置をとつて行くことが公簿としての信憑性を保つ上におきましても、また市町村として、これを行政上の重要な資料といたしますためにも必要なことではないかと考えるのであります。このことについては統計法等に上りますたとえば国勢調査等によりましても、十分事実を質問いたすことができるようになつております。ありのままの正しい申告をさせろということで調査いたしておりますので、やはりこの点も単に受理するのみならず、信憑性を保つような方途を積極的に講じていただいたら、この原案は非常にけつこうだと存じておる次第であります。  それから罰則の問題でありますが、一応公簿としての、さような信憑性を保つための調査をするといたしますならば、やはり罰則も一応はこういう形でありますのが、この三十条の趣旨を生かす意味におきましても適当かと私は考えております。
  32. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 他に、今お見えになつている参考人の方に御質疑はございませんか——猪俣君。
  33. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今鍛冶委員が質問した点について御両人の答弁がありましたから、その範囲において質問いたします。  この第四条の一項の九号及び二項について疑問が出ましたゆえんのものは——先ほど西井さんも申されたように、これは画期的な法律だと思うのであります。そこで一般大衆を相手にしての実行が確保されなければならない。案は実に名案であり、まことに便利であつても、これに対して大衆が協力しないと、かえつて骨折り損のくたびれもうけみたいなものができる。大衆というものは、御存じのようなめんどうくさがり屋が非常に多いのであります。そこでこの四条の一号から八号まででも、相当めんどうな記載をしなければならぬ。しかも世帯主が記載届出義務者になつており、それを怠ると罰則で処罰されるというようなことに相なつておる。こういう構想から見まして、市町村において、むやみに条例で思いつきのことをあれも書かせろ、これも書かせろというふうに羅列されますると、実際はかんじんかなめの届出の事項に対して正確を期し得ないようなことが起り、また大衆の協力を得ることができなくて、実際の名案が、実ははなはだ成績よろしからずというような結果になりはせぬかということを、われわれ小委員会においては憂慮したのであります。便利という点から申しまするならば、今岡田さんなり西井さんのお話のように、いろいろのことがあろうと思いまするが、しかし畳数からガスの有無から、印鑑からかたわであるかどうかから、庭の広さがどうだ、二階があるか、平家だけかというようなことまで一々届けさせるということになりますと、たいへんなことになるのじやないかと思われまするが、実務に携わつている皆さんの経験を通して、さようなことでも、そんな心配をする必要がないんだという御見解であるかどうか、それに対してひとつお答え願いたいと思います。
  34. 岡田昇三

    ○岡田参考人 ただいま御質問の点でありますが、これは実は現在は東京都の条例をもつて、都民世帯台帳というものができておるのであります。おそらく各府県ともさような方法で、大同小異な取扱いをいたしておると思います。主として配給上の必要からできておるのでありますけれども、その中には、ただいまお話のございましたようなことが、ほとんど織り込まれてあるわけであります。日常転入、転出の場合には、いつも用いておることなのでございます。幸いかような画期的な法律によりまして、これに法的な根拠を与えるとともに、従来の寄留法をこれに合体させるという双方の長所をあげていただきますならば、事実ただいま取扱つておるような事柄ばかりであります。なおまたガス云々とかあるいは畳数というような問題は、燃料配給の関係上、さようなことを調査いたしておりますが、ただいまではほとんど実効を失つたようなものもございますので、これらにつきまして条例に定めますことは、むしろ主として住民の利益になることをこの条例によつて記載しておるというような考え方で参りますならば、現にやつておる程度のことでございますので、条例で定めましても、さよう大きな障害はないのではないか、現にやつておりますことと大体似たことであります。
  35. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今お話でありまするけれども、私どもの考えは、この住民登録法として、一般的にこういう規定を置かないで、何か必要があつた際には、市町村条例でさようなことを特別にその市町村々々々できめたらどうか。この法律は、御承知の通り、全国一律に相なる。そうすると、中にはこの二項がありますると、どうでもこうでも別に条例をつくらなければいかぬのではないかというような誤解が出て、しかもその届け出べき事項が各町村それぞれ違つたものができる、そういうことは全国的に施行せらるべき法律としては、どうも妥当の姿ではないのではないかという疑念があるのであります。これは議論になりまするから——私がお聞きしたいことは、そういうこまかいことを登録させる、届け出させるということが、実際上みんなに浸透し、しかもその協力を得ることがあなた方の経験から見てできるかどうか。われわれの懸念するような点はもうすでにやつていることであるから、心配はないというあなた方の実務からの御意見を今お聞かせ願つたのでありますが、それはそれとして了承しておきたいと思うのであります。  それから三十条の問題でありまするが、これは規定として形式的に見まするならば、まことにもつともなことであつて、調査の正確を期さなければならぬならば、ここに調査員の調査権というものを確立しなければならないことは当然だと思うのであります。但しこの三十条は、三十一条、三十二条と連関をして考えまする際に、往々にして、地方にありますところの個人対個人の悪感情、あるいは部落対部落の悪感情というようなことから、この市吏員が調査権を濫用するようなことがあつて、それがために一般の住民に迷惑をかけるようなことがないかということが、当法務委員会の心配したところなのであります。あるいはまたこれを選挙を有利にするために利用するような道を講ずるようなことがないか、たとえばごらんの通り三十二条には、質問に対してしやべらないということだけで五万円以下の罰金に処せられるということに相なつているのでありまして、調査員がある個人的の感情から、ある人に対しまして故意に三十二条の罰則が適用されるような調査をするというようなことはないであろうか。これは結局市町村の吏員の修養、人格という問題に相なるのでありまして、われわれは全幅的に信頼でき得まするならば、何らさしつかえないことだと思うのでありまするけれども、あなた方が今まで実務に多数の吏員をお使いになつてつて、諸般の世帯状態を調査なさる際に、かような何か市吏員がその調査権を濫用したような御経験があるかどうか、あるいはわれわれの心配するようなことは実際は杞憂にすぎないものであるかどうか、その御意見を承りたいのであります。
  36. 岡田昇三

    ○岡田参考人 三十条の問題でございまするが、これは先ほども申し上げましたようなわけでありますが、これは実例がいろいろございます。たとえば住民税の調査につきましては、申告を求めておりますから、申告に応じない者には、やはり地方税法による罰則がございますが、その場合には、やはり調査をいたしまして、それによつて申告を求めて、事実上申告未済者でありましても、罰則の適用をいたした例はほとんどないと思います。現に私どものところではございません。それから昨年行いました国勢調査におきましても、やはりこれと同様の調査をいたしております。この場合は、吏員以外の人もお願いをいたしまして、それぞれ調査をいたしておりまするが、私の経験ではさような心配はないと考えております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の猪俣君の質問で大体わかりましたが、あなた方としては実務家だから、あつたら便利だというところへ主眼を置かれるのだが、その半面、便利であるかわりに弊害はないかということを主にして話をしていただきたいと思います。今この第四条の一項九号でも大分問題になりましたが、住民登録法の本旨に基いてつくられるものなら異論はない、その頭で言えば問題はないのだが、これあるがゆえに、何か特別な目的を達せんがためにこれを使われることはないかということが一番心配になるところです。そうい、りことからもう一応お聞きしたい。さしあたつて一番問題になるのは、家の坪数であるとか畳数ということになると、固定資産税の対象になるのじやなかろうか、これはどうもほんとうのことを言つたらたいへんだから、なるべくうそをつけとか、言わんようにしろとか、こういうことが起らぬかどうか。それらの点について、もう一応御意見をお聞かせ願いたい。
  38. 岡田昇三

    ○岡田参考人 その点、もしこれがなくても、自治法の規定によりまして実施をするということも考えられるのでありますが、実際これを実施されることによつて、人民がひどくめんどうになり、または不利益を来すようなことはないか、こういう点も私どもも考えてはみたのでありますけれども、ただ住宅の坪数とか大きさ等を調べましたことは、沿革的に申しますと、然料の配給をしたいために、間数の大きい家には俵数を多く渡すとかいうことが主になつて調べたのでありまして、課税対象といたしましては、当然別に地方税法によりまして届出の義務も課せられておりますので、私としては特に今さようなことはこの条例の中に想像できないことなのであります。転入をする場合に、ただちに世帯票の届出とか、また寄留届をしなければならぬというような手数が解消して、むしろ住民には利益になるのじやないか。ただ想像はいろいろできます。ある市町村でこの条項をたてにとりまして、非常に個人の不利になるような条項を規定されてしまつたような場合に、どうなるかというような問題があると思うのでありますが、しかし市町村といたしましても、常識のある市町村議会でありましたならば、さようなことはなかろうかと私は考えます。都会地におきましては、さようなことはないと思います。ただ配給の問題がありますために、主として配給に直接必要な事項は、どうしてもこの条例によつてこの中に織り込んでいただくことが一番いいのではないかというふうに考えるのであります。たとえば御説明のありましたように、農村等におきましては、配給を受ける対象の世帯とか、あるいは自作農等で、自家の保有米によつて、配給を受けない世帯とかいうようなことは、この台帳に記録されることが一番適切だと存じます。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次に十条ですが、これは大したことではないが、こんなものはあつてもなくてもいいというかわりに、なぜこれをつけたかといいますと、何の関係もないのに、むしろここへ出た例を言うと、商売人が広告のために相手方を知りたいと言つて来た場合などはどうだという例も出たのでありますが、こういうものがなかつたら困るという事例があるかどうか、それを聞きたいのです。
  40. 西井昌司

    ○西井参考人 それは戸籍の方にもその例は非常にあるのであります。現行の寄留簿も、業者が来まして一日がんばつておりまして、非常に事務にも支障が起りましたが、最近それもたいへん少くなつて来たようであります。多少そういう弊害はありますけれども、それは閲覧方法の制限でやれるのではないか、これとこれを見たい、こういう制限でやつて行けるのではないかどいうふうに考えます。     〔押谷委員長代理退席、安部委員長着席〕
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 三十条ですが、これはなるほど調べる上においては、これがなくちやお困りだろうが、実例として弊害が起つたことがないかどうか、というのは、今言う通り、この目的以外に使われたというような実例はお聞きになりませんか。
  42. 岡田昇三

    ○岡田参考人 現在では寄留制度がございまして、一応法律がありますが、あれも実は市町村長が職権で調査をし、記載ができるわけであります。しかし事実問題といたしましては、これを調査いたしまして、特に特定の者を指して調査をいたすというようなことは、私どもでは例はございません。
  43. 押谷富三

    ○押谷委員 東京都の各区役所において、住民をねらいとするいろいろな登録簿冊があると思いますが、それは大体どういうようなものがありますか。たとえば寄留簿でありますとか、印鑑簿でありますとか、町籍簿であるとか、あるいは配給簿とか、そういうようにいろいろなものがあると思いますが、どういう種類のものがありますか。
  44. 岡田昇三

    ○岡田参考人 すぐあげられますものは、寄留簿であります。それから在籍して居住しておりますものは戸籍簿、それに印鑑届、選挙人名簿等があります。学齢簿の調査、配給のための都民世帯台帳、転入届、転出届、そういつたものがあります。そのほかにこれは市町村と申しましても、保健所法が実施されましてから、これは直接保健所に移つておりますが、たとえば定期種痘等の予防接種等を保健所でいたしますために、そういうことを調査いたしておるものがあります。
  45. 押谷富三

    ○押谷委員 ただいま承つたようないろいろな簿冊が備えつけられて、非常にたくさんの人がかかつて記載をせなければならぬのでありますが、この住民票がいよいよできることになつたならば、それらの簿冊をどれくらい省略できるか。言いかえれば、住民票を利用することによつて、それらの簿冊の手続を省略でき得るという範囲について、何かお考えになつておりますならば、その御意見を承りたいと思います。
  46. 岡田昇三

    ○岡田参考人 さしあたり考えられますのは、寄留及び都民世帯台帳は、住民票ができればいらなくなります。それから選挙人名簿の調製も、これが重要な資料にはなりますが、これをただちに選挙人名簿にすることはできません。しかし正確で重要な資料になります。そのほか学齢簿の関係があります。これは他の法律との関係もございますが、これらも一本にすればできないことはないと思います。それから印鑑簿等もこれに一緒にまとめて行くことができると思います。幾つも届出を要しないで一つで間に合うということは住民側にも利益になります。市町村の行政事務執行のためにも利益になります。
  47. 押谷富三

    ○押谷委員 都民在籍簿とおつしやつたですか。それは大体住所を中心にしておつくりになつておると思いますが、刑務所の受刑者に対する在籍簿の扱いはどうなつておりますか。
  48. 岡田昇三

    ○岡田参考人 刑務所の在籍者は扱いております。短期間のものは別といたしまして、刑が確定いたしまして収容されましたものにつきましては、転出を出しまして、そちらへ送付いたします。
  49. 押谷富三

    ○押谷委員 転入転出、刑務所の方の手続は……。
  50. 岡田昇三

    ○岡田参考人 配給関係は抜いております。
  51. 加藤充

    ○加藤(充)委員 今両参考人の言われておる実情は、実は東京都の都民世帯票条例というものの最初に規定されておるようでありまする、都民世帯票は、都民の世帯現況を明らかにし、生活必需物資の配給、その他都民生活の安定確保をはかるための基礎原票とする、こういう明確な目標がうたわれておつて、しかもその都の官庁は、そのために仕事をして来たのである。ところが今度問題になつておる住民登録法案の第一条によれば、その目的が都条例に比べて非常に広汎である。これはもちろん国法できめる場合と市町村条例できめる場合の性格の相違から来、従つて範囲も違うと思うのですが、以上のような点から、あなた方の経験は、第一条にその目的をうたつた住民登録法案に関する市町村自治体の関係職員の実務として、経験として、そのままわれわれはのみ込み得ないし、のみ込んではたいへんなことだということを感ずるのですが、あなた方お手元にある本法案の第一条の目的と、すでに御承知のはずの都民世帯票条例の目的の点から考えてみて、どういう感じを持たれるか。あえて私があなた方にその点をお聞きしたいのは、今まで鍛冶委員や押谷委員あるいまた猪俣委員などから問題が出されましたこと、当委員会において問題になつた第四条の第九号及び第二項との関連、それから三十条の問題、それから三十一条と三十二条との関連、その必要性云々というようなことが、かかつてこの問題にあるのであつて、あなた方のこの点についての判断をひとつ聞かせてほしいと思う。
  52. 西井昌司

    ○西井参考人 都民世帯票でも、ある程度は現実の住民を把握することができます。しかしこれはある程度です。なぜかというと、戸籍の裏づけがありません。そこで俗に言われる幽霊人口というのができて来るのであります。ところが今度の住民登録法によりますと、まず正確にこれが運用せられておれば、さような点はなくなる。また現在いろいろの行政を施工するために、一々その事項ごとに各戸をまわつて調査をするといつたような手数を煩わしておる。これが住民登録法一本によつて調整できる、そういう便利がある。また居住民としましても、その市町村という団体に入つて来て、その団体の一員となるということになつたときに、自分はここへ来たぞということを届け出ることは、決してむだな負担をかけるということにはならないと思うのであります。そういう点から見まして、私は現在の都民世帯票よりも、住民登録法の方が非常にいい案である、こういうふうに考えます。
  53. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたが今言われたことについて、一々ここで意見を交換するつもりはありません。あなたの意見を聞きたいのですから、こちらの方の意見を積極的に述べてもいたしかたないということは心得えておりますが、あなたがさつきから参考意見を述べられておるところでは、大体あなたの経験では、都民なり住民の利益のためにだけ、そしてそのことは都条例にきちんとうたわれておる。そういうことのために、今まで非常にスムースに行つた、あるいは職権の濫用をして摩擦を起したことがないという、そういう経験を述べられたと思うのでありますが、今述べられたように、各種行政事務の適正で簡易な処理に資するを目的とするという、上からの要請に基いて、そうしてそれが住民の利益というよりも、もつと高い行政事務というようなものが中心になつて、あなた方が末端で働かれるということになると、あなた方の今までの経験のように必ずしもスムースには行かない。スムースに行かないことの原因がいずれにあるにしても、そこにいわゆる三十条あるいは三十一条、三十二条との関連の摩擦が出て来る。こういうふうなことをわれわれは考えるのでありまして、そういう点からあなたに、あなた方の経験は明らかに都民の利益のために、住民の利益のために活動した経験しか、今まで持たなかつたのじやないか。そこでスムースに行つたからといつて、この登録法のいろいろなことがそのまま摩擦なしに行くとわれわれは考えない。こういうことで聞いているのです。  それでお尋ねしたいのは、実はこの条例で定めるとか、政令で定めるとか、政令で定めるとかいう、第四条とも関連がありますのでお尋ねするのですが、大体先ほど言つたように、何か幽霊人口が出て来るというような根本的な理由はどこに原因があるのか、それを職権でやられれば幽霊人口はなくなるのか、食糧の幽霊配給なんていうものは、非常に重要な問題なのでありますし、あのことについては制裁がそれ自体の中にもあつたかと思うのでありますが、しかもああいうことが根を絶やさないというような問題は、単に今までのやり方では幽霊人口が絶滅できないという説明だけでは聞き取れないのであります。それに関連して、朝鮮人や外国人、これは過去のことですが、戦争中にどういうふうなやり方で、これらの住居を特定したり、確定したり、確認したりしておつたか。それで、そういうときにいろいろどういうような問題が起きたか。それからなお私どもも召集をされたのでありますけれども、しかしながら、召集の方法がどういうことで行われておるのか、調べ方がどういうことで行われておるのか。何を基礎にしてどういう方法で調べたのかわからないのですが、過去のあの国民皆兵時代の徴兵適齢の者の確認、あるいはそれの調査、こういうような経験をひとつ聞かせていただきたいと思うのであります。
  54. 西井昌司

    ○西井参考人 私ちようど当時は麹町区の戸籍兵事課長をしておりまして、狭い経験にしか過ぎませんが、この召集をするときには、戸籍を中心としてやりました。そこでその戸籍にある人は、そこの番地に居住しておる者もありますが、おらない者も多数あります。そこで召集令状が来たときには、おらない人には召集通報人という届出を要求してあつた、そこでその通報人に連絡をする、それでもわからないのが出て来る。これは夜の二時、三時までかかつて電話帳だとかでいろいろ探しまして、そうして縁故者とかあるいは血族とかいうような者の勤め先を突きとめまして、それへ聞いてみてどこに今おられるかというようなことで、ようやく交付する。そこで弊害としては、召集をのがれる、と言つては語弊がありますが、そう言わない方がいいのですが、転籍を盛んにする人がいる。そうすると連隊区から令状が来たときには、その二、三日前に籍が他府県に移つている、そうすると一応それは取消されて、また他府県の連隊区から出す、その時分にはまたほかへ転籍している、こういう事例がありました。これは一つの弊害だつたと思います。狹い経験ではそういう程度であります。
  55. 加藤充

    ○加藤(充)委員 外国人の関係はどうです。
  56. 西井昌司

    ○西井参考人 外国人は召集いたしません。
  57. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いや、召集の関係ではなく、その住所の特定なり確認なりの方法ですね。
  58. 西井昌司

    ○西井参考人 外国人の住所を突きとめるためですか。——これは外国人といえども、寄留届をするように寄留法は適用しておつたわけです。ですから外国人でも相当長くおる人は寄留届をしておりました。しかしただ一時的滞在者は、これは当時の警察で、警察に届け出ることになつておりまして、そこで警察の方で、住所を登録しておつた。そのほかに無届の人は多少あつたかもしれませんが、それはわずかなものだつたと思います。
  59. 加藤充

    ○加藤(充)委員 今言われたような徴兵適齢の者の調査あるいは現実に召集をするというような問題の場合に、あの当時こういうふうな住民登録法ができておれば、きわめて便利であつたというふうな、御経験を通じての御意見はお持ちになりますか。
  60. 西井昌司

    ○西井参考人 どうもそいつは想像ということになりまして、現在これが執行された後でなければわからない問題であります。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 新宿区長さんにちよつとお尋ねいたしたいのですが、現在住民登録に関するような帳簿は、今おあげになつたのが五つか六つある。そのほかにポ政令によつて団体等規正令その他によつて、何かいろいろそういう帳簿があるのじやないかと思いますが、そのポ政令による帳簿はどのくらいありますか、どんなものがありますか。——それでは、それはまたあとでお調べいただくことにして、そこで予算関係をちよつとお聞きしたいのですが、一体あなたが今おあげになつた五つか六つの帳簿作製に関する予算というものは、どういうふうになつておりますか。区長として御関係だろうと思うのですが。
  62. 岡田昇三

    ○岡田参考人 市町村のこれに対します従来の事務の職員は、全部市町村の費用でやつております。その他につきましては、国の方の補助を受けております。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、この帳簿につきまして、平衡交付金のような形で国庫から金が来るようなことはないのですか。
  64. 岡田昇三

    ○岡田参考人 現在、寄留の場合でありますが、これは国の方からはそれに対する経費はございません。ただ実情といたしまして、これに対します取扱い手数料をいただいておりますが、これが市町村のこの費用のうちの一部に充てられておるわけであります。
  65. 押谷富三

    ○押谷委員 ちよつと聞き漏らしたのでありますが、住民を対象とする区役所備えつけの簿冊のうち、学齢簿あるいは寄留簿などは、現在事実上活用されているかどうか。なかんずく学齢簿は法規によつてつくられているようでありますが、つくりつぱなしでほとんどこれを他に活用する、利用するという機会も何もないと聞いているのですが、実際はどうでありますか。  それから印鑑届出の関係ですが、寄留と印鑑の届出ということについては、何か手続上関連をお持ちになつているか、その点お伺いいたします。
  66. 岡田昇三

    ○岡田参考人 学齢簿は、本来でありますと、在籍者につきましては戸籍簿、それから在籍者以外は寄留簿によりまして、登録されている学齢にある者を書き上げまして、学齢簿をつくるわけであります。学齢簿は市町村が保管をいたしまして、それによりまして各学校には学籍簿ができ上るわけであります。この学籍簿と学齢簿とは常時照合いたすことになつておりますが、そのもとになつている学齢簿をつくりほすのに、現在の場合では寄留簿があてになりほせん、そこでやむを得ませんので、やはり住民票によりましてこれが作製をして行く、その他には申告を求めて登載をして行くということになるわけであります。従いまして、できました学齢簿が、そのままほかに利用の方法がないかということになりますと、ただいまのところでは利用方法はないのでありまして、つくりつぱなしであります。ただ異動をすることにはなつております。ただ利用いたします点ではつきりいたしておりますのは、予防接種をいたしました場合に、特に定期種痘のごときものは、これに証印を押して行くということになつております。  それから寄留と印鑑の関係でありますが、印鑑届を出します者には、大体住所をはつきりさせないといけませんので、一応住所寄留の届出があります者が印鑑届を出すということになります。
  67. 押谷富三

    ○押谷委員 居所寄留簿はどうですか。活用されていますか。
  68. 岡田昇三

    ○岡田参考人 ただいま住所寄留、居所寄留と法律ではわかれておりますが、事実上はほとんど住所寄留ということになつております。
  69. 安部俊吾

    安部委員長 この際参考人の意見に合せまして、政府当局の意見として地方自治庁公務員課長の藤井説明員より所見を聴取したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 安部俊吾

    安部委員長 それならば、地方自治庁の公務員課長藤井貞夫君より、本件に関しまして御意見を聴取します。
  71. 藤井貞夫

    ○藤井説明員 地方自治庁の公務員課長兼行政課長藤井であります。私の方は特に住民登録に関しまして、その事務自体を所管をいたしておるわけではございません。ただ日ごろ仕事の性質上、地方自治の強化ということに関しまして、いろいろその立場からの意見を申し上げたり、またその他の仕事をやつております関係から、お呼出しにあずかつたことと存じますが、その見地から、私といたしましての意見を申し上げておきたいと思います。  第一の第四条の関係であります。第一項の第九号でございますが、この点に関しましては、おそらく原案にこの規定を盛られました趣旨は、一応住民票に記載いたしまする事項といたしましては、一号から八号で基本的な問題、少くとも全国的に統一をとるべき問題は尽されておるけれども、そのほかに何か必要なものが出て来るかもしれない。特に各省関係等で法務府に要求がございまして、こういう事項はぜひ行政事務の円滑な執行の上から必要である、そういうような要望があつた場合に入れる余地を存して置かれるおつもりでないかというふうに想像をいたすのであります。その点建前といたしまして、別に私といたしましては異議はございません。しかし説明の資料等を拝見いたしますると、今のところは別にこの九号を適用いたしまして、何か書いて行くという特別のお考えはないようであります。率直に申しますと、私自身といたしましては、この条項につきましては、むしろ特に重要なものがあればはつきりと一項のところへ書き上げて行くということにいたしまして、九号の政令で定める事項というこの条項は削除いたしても特にさしつかえはないのではあるまいかというような気がいたしております。しかしこれは関係各省の御意向もございましよう、また原案を提出せられました方々の御意見もあろうと思いますので、その点につきましても、特に私といたしましてはこうでなければいけないということを申し上げるつもりはございません。  第二項の点でございますが、これは先刻から両参考人から御意見の開陳がございました。私といたしましても、大体その意見と同様に、この二項は存置をせられることが地方自治の面から申しましても適当ではあるまいかというふうに考えておるのであります。これはやかましい議論は別問題といたします。特に住民登録に関する事務は固有事務であるから、ここに相当程度市町村の自主性を認めることが本来必要であるとか、その他また市町村といたしまして、これらの事務をほんとうに能率よく、積極的にやつて参りますためには、そこに何らか市町村の当局自体の行政事務の運営に適当である、あるいは便宜であるというような事項、特に市町村といたしまして、全国的に一定はできませんけれども、当該市町村自体についてのみ、あるいは適当な、必要な条項もあるかもしれません。そういうものをここに留保いたしておきますことは適当ではないかというふうに私は考えております。  それから先刻地方自治法の第十四条の関係で、本法がなくても条例で書けるではないかというお話もございました。これは一応そうい方解釈も成り立ちます。しかしながら厳密に法律解釈の問題としてこれを取上げました場合に、特に条例できめまする事項につきましては、第四条の一項の法定事項以外の事項であります。従いまして、これにつきましては、後ほどの条項で届出を要する部面が出て参ります。そういたしますと結局この条例によつて住民にそれだけの義務を新たに課するということに相なつて参ります。そういう場合に、法定事項といたしましてはつきり書いてございまする以外にそういう義務を課することは、結局法律規定いたしましたその部面において、条例にそのような事項を留保いたしますることが法律解釈の問題として当然出て参りますが、地方自治法の条例の規定事項範囲として当然出て参るかどうかということについては、これは若干の解釈上の問題は残ると思うのであります。そういう意味合いももちまして、ここにはつきりと「条例で住民票に記載すべき事項を定めることができる。」というふうに書いておきますることが、むしろ法律上の疑義を断つためにも必要ではないか、そのような見地から私は第四条の第二項の規定は、これを存置することが適当であろうというふうに考えます。但し先刻来いろいろお話のありまするように、市町村がこの条例をいろいろ濫用いたしまして、むやみやたらな事項を記載するというようなことがあつてはならないことは当然でありまして、その点については市町村当局の自粛を求めなければならないというふうに考えまするし、条例自体は議会の議決によつて制定されまするものでありますので、その間適当なる調整が加えられて参るのではないかというふうに考えるのであります。  それから第十条の利害関係人の問題でございますが、これは私といたしましては特に意見はございません。ただ原案者の意思を推測するに、全然関係のない者から、むやみやたらにこの住民票の謄本あるいは抄本の交付を請求されるというようなことになつても困るではないか、そういうような御意思もあつたのではないかと思うのであります。また一方におきまして、この利害関係人範囲の問題でありまして、これは相当流動性のあるものであろうと思います。利害関係人はここまででなければならぬというはつきりした限定があるわけではございませんで、この法律の趣旨から申しておのずから利害関係人範囲というものが出て参ります。従つて相当広範囲に解釈をされ得るのではあるまいかというふうに考えておりまして、利害関係人範囲いかんの問題にもなりますが、私どもといたしましては、利害関係人ということでも特別の支障はないのではないかというふうに考えております。  それから次は二十二条の第二項の点でございますが、この点は先刻四条のところで申し上げましたところによつて御承知おき願いたいと思います。特に二十二条の二項は届出に関する記載事項でございます。従つて但書で「条例の届出を要しないものと定めたものについては、この限りでない。」ということで、特別に届出の義務を免除する規定でございますから、この点は住民に対してそれだけ負担を軽減するゆえんにも相なると思います。これはむしろ適当な規定ではあるまいかというふうに考える次第であります。  それから次に、第三十条の当該吏員が住民登録の正確な実施をはかりますため、必要と認むる場合の事実の調査権の問題でございます。住民票というものはいろいろな利点を持つておりますが、行政事務の執行の便宜をはかるというようなことも、その主たるねらいであります。そういたしますと、何といたしましてもこの住民票は正確な事実の記載ということがその生命であると思います。そういう意味から申しまして、この程度の調査権は必要ではないか、もちろんその際市町村の当該吏員が職権を濫用して私生活にみだりに立ち入り、あるいは他の目的のためにこれを利用して行くということは、厳に慎まなければならぬ点ではないかと考える次第であります。  最後に、一言地方自治庁の立場として要望したいと存じますことは、この事務施行されることに相なりますと、これは相当の経費がかかるのであります。現在御承知のように、府県、市町村ともに、地方団体は財政の貧窮に呻吟しております。この際この新しい事務がふえましたために、いろいろとまた経費がかかつて来るということでは、とうてい負担にたえられないと思われますので、その点本委員会におかれましても十分御考慮に相なつておるように承つておりますが、このために特別な負担が自己財源から捻出しなければならないということにならないように、せつかくの御配慮をお願いしたい、この一点だけつけ加えて申し上げたいと思います。
  72. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  73. 加藤充

    ○加藤(充)委員 三十一条と三十二条の関係なんですが、住民の良識良心に訴えてこの届出義務というものを履行させるようにしたのが三十一条だと思う。そういう意味から見ると、この三十一条は万やむを得なかつた場合、しかも意識的な犯罪じやなしに、こういうふうな行政的な問題についての事柄に制裁を科しておると思うのです。三十一条では五百円の過料ですが、三十二条になると、三十条との関連ももちろん出て来て、ややこしい問題があるのにかかわらず、一方的なことで五万円以下の罰金ということになつておるのです。こういうふうな制度の本質として、これはその趣旨が転倒しておらぬのか、むしろこの三十二条の規定の内容によつて非常に恐るべき官僚主義、職権主義というようなものが強く出て来るのではないか、私はこう思うのです。自治庁にそういう点についての御感想なり意見を聞いてみたいと思うのです。
  74. 藤井貞夫

    ○藤井説明員 この点は実は私の方としてとやかく申し上ぐべき事柄ではないと思いますが、この三十条に対応いたします規定というのは、事実調査権を当該吏員に与えまして、それを十分に行使ができるように担保をいたしますための規定であると考えられます。そのために単に届出をしないという者に対するいわゆる制裁規定よりも、若干重くなつておるのではないかというふうに想像せられます。私はこれが規定として趣旨が転倒しておるのではないというふうに考えております。
  75. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはこの前の小委員会で調査をしてみましたから、調査の結果を私から皆さんに御疑報申します。この例は非常に多いのです。労働基準法、児童福祉法、統計法、船員法、漁業法、外国為替及び外国貿易管理法、国家公務員法、証券取引法、物価統制令、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律地方税法、その他たくさんあります。そこで実例を見ますと、労働基準法及び児童福祉法は五千円以下の罰金、これは前のですから、かわつておるかもしれません。それから統計法はそれほど重要なものではないと思いますが、六箇月以下の懲役または五千円の罰金となつておる。漁業法は六箇月以下の懲役または三万円の罰金、外国為替及び外国貿易管理法は六箇月以下の懲役または五万円の罰金、国家公務員法はこれはえらいので、三年以下の懲役または十万円の罰金、そのほかたいてい罰金ですが、それから地方税法、これは税の関係でちよつと違いますが、一年以下の懲役または二十万円の罰金、大体そういうようになつております。
  76. 押谷富三

    ○押谷委員 今地方自治庁の御意見を承つたのですが、この住民登録についての費用の裏づけという点で御要望があつたのであります。もちろん新しくこの制度を実施するに当つて必要な費用は考えなければならないと考えておりますが、ずつとこれが実施されてから後の常時の費用も、やはり御要求になるというお考えなのですか。
  77. 藤井貞夫

    ○藤井説明員 ただいまの点は、この制度が軌道に乗りました後における問題でございますが、これはいろいろ事務量等もよく検討してみなければわかりませんが、前々から御説明がございましたように、寄留事務であるとかあるいは配給の事務であるとか、いろいろ現在でもやつておるわけであります。それにかわる事務でありますから経常の方はそう別にふえないのみならず、あるいは若干の軽減も予想されるのではないかというふうに想像いたしております。ただ臨時的に附票をつくりますとか、あるいは住民票をつくりますとか、これにはかなりの経費がいりますので、それについでは特にお考えをいただきたい、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  78. 安部俊吾

    安部委員長 もう御質問はありませんか——なければ、これにて参考人及び地方自治庁の藤井説明員に対する質問は終りました。参考人各位には御多忙中にもかかわらず御出席くださいまして、いろいろ参考になるお言葉を拝聴させていただきましてありがとうございました。  それでは本日はこの程度におきまして散会いたしまして、次会は明日午前十一時より開会いたします。     午後四時四十四分散会