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1951-03-23 第10回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十三日(金曜日)     午後一時二十四分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    牧野 寛索君       眞鍋  勝君    武藤 嘉一君       山口 好一君    大西 正男君       小野  孝君    上村  進君       加藤  充君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         検     事         (法務法制意         見参事官)   影山  勇君         検     事         (法務矯正保         護局長)    古橋浦四郎君  委員外出席者         参議院議員   宮城タマヨ君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         参  考  人         (警視庁刑事部         長)      古屋  亨君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十三日  少年院法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第六号)     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律施行法案内閣提出  第四二号)  非訟事件手続法の一部を改正する法律案内閣  提出第六七号)  有限会社法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇〇号)  少年院法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第六号)  国内治安に関する件     —————————————
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  本日の日程中、まず国内治安に関する件を議題とし、警視総監田中榮一君及び警視庁刑事部長古屋亨君を参考人といたしまして、順次諸君よりの質疑に応じて意見を聽取することにいたします。質疑の通告がありますから、これを順次許します。押谷富三君。
  3. 押谷富三

    押谷委員 浅草米兵殺傷事件につきまして、警視総監お尋ねをいたしたいと思います。すなわち一昨日午前三時半過ぎに浅草千束朝鮮マーケット付近におきまして、米兵六名が朝鮮人集団暴行を受けまして、一名死亡し二名負傷するというまことに不詳事が起つたのであります。今講和を目前に控えておりますわが国の置かれたる国際的な立場から、かような事件を引起しましたことは、残念しごくに存ずるのでありますが、この事件につきまして、帝都治安の重責をになつておられる警視総監におかれて、この事件を捜査せられました今日の状況において、事件の全貌をここで許される範囲で御説明をお願いいたしたいと存じます。
  4. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。ただ事前に一応御了解を願つておきたいと存じまするのは、本事件米兵に対する暴行致死事件でございます。従いましてメモランダムによりまして日本側裁判権がございませんので、アメリカ軍当局におきましてただいま搜査中でございますので、事実につきましてお話申し上げたいと存じますが、搜査経過その他につきましては、全然私ども了知できない状況でございますので、その辺ひとつ含みおき願いたいと思います。  発生いたしましたのは三月の二十一日午前三時ごろでございまするが、場所台東区の浅草千束町二丁目四番地、通称国際マーケットと称するところでありまして、このマーケットにいるのは大部分朝鮮人であります。その状態はあるいはパンパン宿をやつたり、あるいはかつぎ屋をやつたり、そのほか無職の者が多数おる場所でございまして、そこへちようど午前三時ごろ米兵六人が自動車で参りまして、そのうち一人の米兵が、いわゆるポン引と称しまする金という朝鮮人と、どういうことが原因であつたか、これもまだはつきりいたしませんが、両者の間に争いが発生いたしまして、それと同時に他の朝鮮人等も屋外に密集して参りまするし、また他の米兵もその一人の米兵をかばうために双方の間に乱闘が始まつたのであります。そうしているうちに、他の米兵三名は他へようやく身を脱したのでありまするが、残りの三名のうち一名が非常な瀕死重傷を負いまして、この重傷を負つた米兵を他の二人がかばいまして、そうして自動車に乘せて途中まで来たのでありまするが、自動車が徐行して参るあとから、朝鮮人がさらに追及して参りまして、石やら、かわらやら、物件をその自動車に投げつけまして、あらゆる暴行をいたしたのであります。その自動車もそのまま運行不能に陷りまして、比較的軽傷の他の二人の米兵は、ようやく自動車から身を脱しまして、ちようど折よく小型の自動車がそばを通つたので、その自動車にただちに乘りまして、蔵前警察署管内の田原町の交番に訴え出たのであります。十分言葉はわからなかつたのでありまするが、関根という巡査がただちに異変の起つたことを察知いたしまして、その自動車でさらに現場にかけつけたのであります。それと同時にその異変の起りました付近の者が警視庁の一一〇番を呼び出しまして、ただいま米兵朝鮮人との間にけんかが起つておる、ただちに警察官派遣を願いたいと警視庁の五階の司令通信室にかかつて参つたのであります。その一一〇番の電話を受けますると、ただちに深夜警邏中のパトロールカーに無線をもつて連絡いたしますると、そのパトロールカーがただちに現場に到着いたしまして、その米兵関根巡査と一緒に現場参つたのでありまするが、その途中におきまして、関根巡査の拳銃によりまして、米兵のうち一名が威嚇発砲したために、その朝鮮人はさらに暴行しようというのを思いとどまりまして、くもの子を散らすように、それぞれおのおのの家に逃げてしまつたのであります。それと同時に、その瀕死重傷を負いました米兵をパロール・カーに乘せまして聖路加病院に運んだのであります。ただちに本署連絡をとりまして、本署から、浅草警察署から多数の警察官が参りまして、その付近一帶を全部包囲いたしまして、また予備隊から一個中隊応援派遣をもらいまして、さらに広範囲の地域包囲搜査をいたしたのであります。そしてありの出るすきもないようにぴつたり包囲をいたしまして、その区域に住む全員を家の前に立つて——これはMP側要請によりましてかような措置をとつたのであります。それと同時にまず街頭の関係者と思われる男並びに若干の、少数の女性等九十四名を浅草警察署全員出頭を求めまして、そうして一々搜査いたしたのでありまするが、そのうちまず関係のないと思われるものははるべく早く帰つてもらいまして、一応四十四名の者を留置いたしたのであります。これらの者はいずれも軍事裁判所の令状によりまして留置されたのであります。それで現在はCIDの方において事件の内容を調べておりますが、事件日本人数名を含む朝鮮人数十名がこれらのGIに集団的に暴行を加えまして、まことに遺憾なことでありまするが、一名が死亡せられたのであります。このマーケットは、大体朝鮮人が主として住んでおりまして、現在はつきりした人員はわからないのでありますが、あの付近の一帯に住んでいる大体の朝鮮人の数というものはまず二百五十名くらいではないかと考えております。そのうち現在地に登録されておりまする者が、わずかに九十八名ないし百名くらいでありまして、あとの百五十名というものは住居不定の者でありまして、所々方々転々として、いわゆる渡り鳥的に転々として歩く者でありまして、従つてそこに定住しておるものは、ごくわずかであります。百名内外であろうかと思います。これらの朝鮮人は主としてやみ屋、かつぎ屋——俗にかつぎ屋と申しまするが、やみ屋をやつたり、あるいは売春宿を提供したり、あるいは客引が主でございまして、比較的まじめなものはカフエーあるいは一ぱい飲み屋などを経営いたしております。これはきわめて小部分であります。     〔委員長退席鍛冶委員長代理着席〕 なおそのほかに今国際マーケットのあります付近——浅草公園付近でありますが、その辺に約百名くらいの朝鮮人が住んでおります。なおそのほかに六区に約四百名ほどの朝鮮人が住んでおりまして、大体業態は売春婦であるとか、客引あるいは古着屋露店等を経営いたしております。露店は主として皮革製品だとかあるいは石けんとか、あるいはゴムぐつゴム製品等を販売いたしております。  それで、大体におきまして、この朝鮮人の思想問題でありますが、指導力を有する主要人物というものはほとんどないようでございまして、あまり統制はとれずに、まちまちな行動をとつているようであります。中には昨年の三月二十日台東会館接収に際しまして、これに参画いたしまして若干暴行を働いた者も少数いるようであります。大部分北鮮地域の旧朝連系に属するものと見られております。非常に附和雷同性の強い、過激な性格を有するものであります。ただ今回の事件につきましては、私ども事件発生経過から、また時刻、周囲の状況等から考えまして、偶発的な事件でございまして、別に計画的にかかる暴行をやつたということはちよつと考えられないのであります。ただ彼らの胸中は意識的には思想傾向としまして、多少反米的な傾向もあつたかと考えられるのでありますが、今回の事件に関する限りは、私どもとしては単に偶発的の事件であろうという見解を持つているわけであります。  なお本事件はただいまCID責任を持つて搜査をいたし、処理しておりますので、日本警察としましては、CID命令により搜査に従事し、活動いたしておりますので、私がただいま申し上げました以上のことは証言できないのでありまして、これ以外に必要なことに対しましては、さらにまたCIDの指示を受けた上でないと御答弁できませんので、その点ひとつあしからず御了承願いたいと思います。
  5. 押谷富三

    押谷委員 この付近はたしか十二階下だと心得ておりますが、ここを中心といたしまして、多数北鮮系人たちが居住している状況は御説明によつて明らかだが、この付近一帶は反米機運相当盛んであつたように聞いておりますが、その点はどうでございますか。
  6. 田中榮一

    田中参考人 ただいまお話の点につきましては、現在国際マーケットの前等にいわゆる反米ビラとおぼしきビラ相当貼付されておりまして、従いまして、やはり私が前に説明いたしましたるごとくに、その大部分はいわゆる旧朝連系に属する人々でありまして、従いまして、思想的にはさような傾向を持つているものが多かろうと考えております。
  7. 押谷富三

    押谷委員 この付近に当夜、朝鮮人本国送還反対であるとか、人民民族戰線ビラが張られておつたと聞いておるのでありまするが、そういう事実はお調べなつておりますか。
  8. 古屋亨

    古屋参考人 お話の点は、当夜そういうのが特に張られておつたとは考えておりません。ただ朝鮮人集団地域でありまして、従いまして、軍事基地反対とか、そういうようなビラ張つてつたことは私ども現場へ参りまして知つておりますが、当夜張られたものとは考えておりません。
  9. 押谷富三

    押谷委員 この朝鮮人騒動関係いたしまして、先般上十條の集団暴行事件で、警視総監お尋ねをいたした際に、東京の治安はまかしてくれというようなお話でありましたが、実はこの事件が起りましてから、たしか昨日であつたと思いまするが、澁谷において米国人バイヤーに対して朝鮮人らしい者が暴行を加えたというような事件が起つたように聞いたのでありますが、これをもしお調べなつておれば、ちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  10. 古屋亨

    古屋参考人 お話の点は新聞記事でも拝見しておるのでありますが、はたして朝鮮人であるかないかという点については、今調査中でありまして、バイヤー風の男がそういうようなことがあつたということを情報として聞いておるのでありまして、はたして朝鮮人日本人かというような問題につきましては、目下調査中であります。さよう御了承願います。
  11. 加藤充

    加藤(充)委員 今の話で大体わかつたことは、新聞などの報道によりますと、朝鮮人マーケット朝鮮人マーケツトと言われているのですが、総監が言われたように、俗称は国際マーケツトというところなんです。それからまずお尋ねしたいのは、こういうふうなものの裁判権というようなもの、同時にそれに付属した搜査権というようなものがアメリカ進駐軍職権管轄に属することはわかるのですが、そういうふうな事件、事案というものが起きますときには、向うさんの職権だということになりますると、日本警察というようなもの、あるいは犯罪搜査機関というようなものは、自主的な独自の搜査は全然おやりになれないことになるのですか、おやりにならない方針をおとりになつて、やめるのですか。
  12. 田中榮一

    田中参考人 かような事件が起りました際には、日本警察として独自の立場犯罪搜査を中止することはございません。事件発生と同時にただちに関係当局の方へ連絡をとりまして、場合によつて関係当局のただちに現場への出動を申請し、または電話指揮または書面指揮口頭指揮、いかなる形式を問わず、その指揮によりまして、日本警察側としてぜひこういう措置をとらねばならぬということを関係当局に話しまして、その承認のもとに日本警察として、必要にしてかつ十分なる措置をとることにいたしております。従いまして、日本裁判権がないからといつて犯罪搜査もしくは犯人検挙を放任するというようなことは絶対にやつておりません。
  13. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、下請的な搜査以外にそういう独自な犯罪搜査をやりましたときに、日本警察搜査の結果判明したあるいは到達した結論なり、結論に至る事実関係なり、事情、動機、原因というようなものについて、もしかりに別個結論が出たり、あるいは別個の、それと全然対蹠的ではないけれども違つた事実関係というようなものが出ました場合には、それはどういう措置で、どういう形を持つものなのか、承つてみたいと思います。
  14. 田中榮一

    田中参考人 今私が申し上げましたのは、犯罪発生と同時に瞬間的に日本警察がいかなる措置をとるかということについて申し上げたのでございまして、あるいはCID搜査官現場に出動するか、あるいは出動しない場合におきましても、必ず緊密なる連絡を保持いたしまして、そして以後はCID指揮命令によりまして、日本警察がこれに協力をして搜査をするという建前なつておりますので、関係当局の方の意見日本警察意見が食い違つて双方両極端結論が出るということは絶対にあり得ないのであります。同じ方針のもとに、同じ方向に向つて搜査日本警察が協力するという建前なつておりますので、ただいまお話のような両極端結論が出て来るということは、過去におきましてもその例がございませんし、おそらく今後もそうしたことは絶対になかろうと確信をいたします。
  15. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、自治権といつてはおかしいですが、下請的になつて、それの補助機関となつて搜査その他に当るということになつたようですが、お伺いしたいのは、殺傷場所にいた、殺傷の被害を受けた六名の米兵の氏名あるいは軍隊における階級あるいはその所属部隊というようなものを、わかつてつたらお聞かせ願いたいと思います。
  16. 田中榮一

    田中参考人 まだ日本警察側にはわかつておりません。また一部はわかつておりますが、それはちよつと日本警察側としてここで申し上げることのできぬことでありますので、お含みおきを願いたいと思います。
  17. 加藤充

    加藤(充)委員 私どもの聞いたところでは、一人は黒人といつてはおかしいですが、いわゆるホワイトカラーではなくして、あとの五人がホワイトカラー人たちつたというのですが、そういうところはいかがでしようか。
  18. 田中榮一

    田中参考人 その点もちよつと申し上げかねるのでありますが……。
  19. 加藤充

    加藤(充)委員 それではこれは何の目的であの時刻に、あの場所に出て参つた米兵なのか。あるいはどういう要件でその現場にいたのかというような事柄はいかがでしよう。
  20. 田中榮一

    田中参考人 日本警察側に、米兵についてこれを聞きただす権限がございませんので、いかなる目的を持つてそこにいたか、日本警察側にはどうも判明いたしかねます。
  21. 加藤充

    加藤(充)委員 それではあなたがおやりになつたところだけをお聞きすることにしましよう。新聞によると約五十名の者が、これは大橋総裁のきのうの当委員会における発表の中にあつたのですが、その場にいた約五十名の者を同行して目下取調べ中であるというのですが、警察側がいろいろな情報でかけつけましたときに、現場にいたのは一体何名ですか。
  22. 田中榮一

    田中参考人 現場にいた数は、はつきりいたしておりませんが、いろいろの群衆、やじうまと申しますか、そういうものを入れたならば、おそらく私は二百名、あるいはそれ以上の者がおつたのではないかとも考えておりますが、一応事件関係ありと認められた者だけ、九十四名を署に来てもらつて一応調べたわけであります。
  23. 加藤充

    加藤(充)委員 その一応という目安でおつかまえになつた九十四名という者は、どういう手続でおつかまえになつたのか、あるいはつかまえた場所あるいは時刻というものは、どういう方法で、どこでおつかまえになつたのか、それを承つておきたいと思います。
  24. 田中榮一

    田中参考人 連行した場所現場からであります。連行いたしました場所浅草警察署であります。連行いたしましたことは、CID命令によつて警察として連行いたしたわけです。
  25. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると九十四名が現場から連行されたということにお聞きしていいのですか。
  26. 田中榮一

    田中参考人 さようであります。
  27. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると警察がかけつけたときには九十四名やはり犯罪的な状況にあるという状態で、いわゆる現場に九十四名いたということになるのですか。
  28. 田中榮一

    田中参考人 現場と申しますか、相当場所並びに相当関係があつたと認められる居住者、それを含めて九十四名でございます。
  29. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは逮捕状なんか見る機会があれば、これは明らかに報告書でわかることなんですが、現場でおつかまえになつた人間一体何人です。それから現場以外のところで事件発生後、相当つた時刻において検束した人間は何人なのか。
  30. 古屋亨

    古屋参考人 大部分の者が通称国際マーケットと称しまする現場付近から、CID命令警察に連行した。それ以外の者はほとんどないといつてもいいのでありますが、若干はやはりそういう命令であるから連行した者もございます。大部分の者は国際マーケットと称するところの現場におつた者であります。
  31. 加藤充

    加藤(充)委員 私は今もじようだんに言つたのですが、あれは夜分に行くところで一時、二時過ぎてから、アメリカ人のように行つた方がいいんだといつて、じようだん口が出たほどで、けさほど見て参つたのですが、旧十二階下のあそこから松翠閣という問題の自動車のあつた場所相当の隔たりがあると思うのでありますし、今までの発表によりますと、大体自動車近所までやつて来て、いわゆる松翠閣の前の自動車のあつた付近現場だというふうに私どもは理解するのですが、その場所からひつぱつてつたのではないのですか。
  32. 田中榮一

    田中参考人 私ども現場と考えている区域は高本といううちの前から自動車が運行不能になりまして、自動車が停止いたしまして、他のタクシーを拾つて行つた、その間がいわゆる現場と認められる場所なんです。
  33. 加藤充

    加藤(充)委員 これは私のきよう質問する本筋ではないのですが、たとえばきのう大橋総裁の話を聞きますと約五十名の者に同行を求めて、しかも任意出頭の形だというような調子の強い言葉を聞いたし、それは約五十名であつたというふうになつて、今お聞きしますと九十四名も一網打盡に明け方関係もなく安眠しておる者をその床の上からひつぱつてつたというようなことも私どもは聞いておりますので、またそういう数字も出て来ておりますので、これは重大事件ではあります。しかしながら重大事件だからといつたところで、やはり日本の警官が検束し、あるいは拘留するにはやはり日本国内法に基いたものでやるべきだと思いますし、よしんばアメリカ軍指揮の中に置かれましても、理由なしにただこちらの見込みでひつぱるということはあり得ないし、あり得べからざるように思うのでありますので、ただ必要だということで手当り次第にひつぱるということは進駐軍といえども世界人権宣言の中に規定されている人権の保障は、やはり尊重されるべき筋合いのものであるし、そういうことも人権宣言の中にも書いてありますし、こういうふうなことの中にきわめて重大な事件ではある。責任のある事件ではあるけれども基本的人権の侵害というようなものがあつたのでは、これはたいへんなことになると思うからお聞きするのです。
  34. 古屋亨

    古屋参考人 今お話がありました進駐軍の命だから云々というお話がございましたが、このときは現場進駐軍が参つておりました。その方のCIDの係官が参つておりました。その命令によつて連行したのであります。大体私どもとしても全然容疑のない人はひつぱるという意見もございませんので、大体容疑のあると認められる者をば、しかも進駐軍の命によつて警察に連行したのでございます。
  35. 加藤充

    加藤(充)委員 この付近朝鮮人一般北鮮系であるとか、旧朝連系統の者であるとか、そういうようなことから反米的空気一般に強かつたというように言われるのですが、こういうふうに判断した理由というものは、今言われたような理由だけで反米的だというふうに御判定になつたんですか。
  36. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。国際マーケットのところ並びにその付近には、いわゆる反米ビラを認められるものが無数に張つてございます。現在もなおかつその痕跡が十分認められるのでありまして、かかる点から相当反米意識のあつたということは、われわれには一応認められるのであります。それからなお占領阻害行為につきましては、先ほど私が説明いたしました中にもちよつと申し述べたのでありますが、台東会館接収の際に、いわゆる集団暴行を行いました者も、この地区の中には若干はいるのであります。従いましてそうしたものの意識がないということは言えぬわけであります。ただ今回の出来事に関しては、これは偶発的の事件であるということだけは、はつきり言えると思います。
  37. 加藤充

    加藤(充)委員 私は帝都治安の元締めをされておるあなたが、反米的だということで責任を転嫁されるのは、至つて卑怯であるということを、現場行つてあそこらの二、三の人に会つただけで、私はきようそういう確信を得て参つたのであります。実はあの辺が反米的だつたかどうかは知らぬのですが、非常に警察が、米兵あるいは進駐軍関係人々に対して無気力である。何回警察行つてもの方に積極的な取締りをしてもらえないというような機運、あるいはそういう機運をかもし出す事実が、大きな真剣な前提としてあつたということを、あなたはお感じになつていませんか、あるいは知つておりませんか。
  38. 田中榮一

    田中参考人 現在米兵に対しまする関係は、日本警察側裁判権がございませんので、かりにもし米兵側に何か不法行為等がありました場合におきましては、当然日本警察側としましては、MP要請を求めて、MPに一応取締りをお願いする。しかしまた事態が窮迫せる事態でありまして、相手方の生命身体にも危害を及ぼすというようなおそれのある場合におきましは、当然現場におります日本警察官としても、これを防止するために、適当なる措置を講じ得る権限は持つておるのでありますが、ただちに今日本警察側がこれに対して措置をとるということは、軍人軍属に関する限りは、日本側としては現在権限を持ちませんので、さよう御了承願いたいと思います。
  39. 加藤充

    加藤(充)委員 乱暴しておる現場であれば、MPやその他に通報したのでは遅れるといる場合においては、裁判権はなくとも逮捕して、しかるべくMPその他のものに手渡すという権限は、日本警察、敗れたりといえどもつているはずだと思うのですが、いかがですか。
  40. 田中榮一

    田中参考人 今私が説明いたしましたように、相手方の生命身体財産に対して窮迫せる事態にあります場合においては、日本警察側としましても、それに対して適当なる措置ができるのであります。
  41. 加藤充

    加藤(充)委員 それではこういう事実はあなたは元締めとして御存じになつておるかどうか。━━━━━━━━━━━━━━━━━。
  42. 田中榮一

    田中参考人 私はまだそういう報告は存じておりません。
  43. 加藤充

    加藤(充)委員 それからこれはごく最近の三月十四日のことでありますが、きよう私が行つて確かめて参つたので、間違いはないのです。浅草芝崎町の一の六番地、国際劇場の横の石原さんという家、刀陽堂という屋号で印鑑店をやつている日本人の家ですが、ここに夜の十二時からその翌朝の朝の零時ちよつと過ぎごろまでの間に、国際劇場のわきにサロンABCというものがありますが、━━━━━━━━━━━━━━━━━。それで石原さんの弟が裏から出て、交番に訴えた。あの交番は私も知つておりますが、そうした  ところが交番では、相手があちらさんでは困るというので、相手にしてもらえなかつたということを、今朝私は石原さんのところで確認して来たのですが、こういう事実はどうですか。
  44. 田中榮一

    田中参考人 はなはだ残念でありますが、私は実はそのこまかい事実の二、三についてただいませつかくお話がありましたが、まだ知らないのであります。さようなことのありました場合には、警察としましては、日本警察側が出てよい場面でありましたならば、ただちに出まして、適当な措置を講ずるか、あるいはむしろMP要請をして、MPによつて適当なる措置を講じた方がよい場合におきましては、MP要請をいたしまして、しかるべき措置を従来は講じておるのであります。
  45. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは警察におおそれながらと訴えて、それで警察官が出て来ておりながら、どうもしなかつたという実情が、今年の三月十八日の午後四時ごろあるのですが、これを御紹介して決意を促したいと思います。━━━━━━━━━━━━━━━━━━。それで近所の者がたいへん困つて警察に届けたところが、さつそく浅草署の署員と第六方面部隊の合計約二十名の人たちが、結局━━━━━━━━あとから見まわつて、保護には当つたのでしようが、そうやつて取押えないでいる間に、結局最後には、本間さんという鼻緒商人のところへ行つて、━━━━━━━━━━━━━━━━。これではせつかく警察に届けても、出動に及んだのではありますけれども、結局どうにもならない、不可抗力だ、しかたがないということで、みすみすそこで暴行がなされておるのを黙視したという事実があるようであります。こういうような事実は浅草署、第六方面部隊の方から、あなたのお耳に達しておりませんか。
  46. 田中榮一

    田中参考人 いろいろこまかいお話がございましたが、お話の実情は私よく存じておりませんが、警察としましては、一般の民衆に非常な危害を及ぼすというような場合におきましては、ただちにそれに対して措置を講ずるということは、従来も再三やつておるところでありまして、またそれだけの権限を持つておると考えております。従つてお話のようなことは、あるいは警察としても万全の措置を講じておつたが、向うが酔ぱらつておるために、そういうことをしたのではないかと考えておりますが、おそらく警察がついております以上は、そのなぐつた者がそのまま逃げるとか、そういうことは、絶対にないと私は考えております。この点は十分ひとつあと調べてみたいと思います。
  47. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 加藤君に御注意申し上げますが、議会でも、進駐軍の私行に関することは、相当注意せねばならぬことだと思いますから、そのつもりで発言をなさつていただきたい。
  48. 加藤充

    加藤(充)委員 そういうふうな幾多の事実が、最近の事例を拾いましてもあの近所にありまして、警察に行つたところでしようがないという考え方なんかが出て、警察何するところぞという気持に一般なつて来ますと、それでは乱暴な者に対しては手がないという形になる。しかしながらそれは警察がだめだということに対する気持の一般化でありまして、警察自体がやるだけのことをやらないで、ほうつておいて、この気持を反米的だというふうに断定して、そうして今度のような事件が起きると、結局その人たちを一切合財疑いをかけて、一網打盡にひつぱりまくるというようなことになつたのでは、これは日本のためにも、また日本に住む人々のためにも、たいへんどうも本末顛倒したことになります。結果はますます悪い結果しか出て来ない。責任のあるところを明確にされて、やる必要があると思うのであります。いたずらにそういうふうな機運を反米的だといい、朝鮮人強制送還のビラがあつたからといつて、どうもあれは朝鮮人が反米的な気持でやつたのだろうというようなことでは困ると思います。本質を明らかにしないうらみをの強くするのですが、その点をひとつ責任を明確にしていただきたいと思うのであります。
  49. 田中榮一

    田中参考人 私が申し上げましたのは、その付近に住む朝鮮人がどういう思想系統を持つておるかということを、これは本事件と切り離して別個に御説明申し上げたのであります。今回の事件がただちに反米思想であるかどうかということは、私は申し上げてないはずであります。従いまして今回九十余名を署へ同行したということも、何もそれが反米事件関係するというようなことは全然ないのでありまして、今回の暴行致死事件関係があるということだけで同行したのでありますから、その辺だけはひとつはつきり御了承願いたいと思います。
  50. 加藤充

    加藤(充)委員 私は警視総監にはその問題についてはそのくらいにいたしておきまして、ぜひひとつ責任を明確にしていただきたいことがあるのです。前々会以来当委員会におきましても、三月七日のあの十條における朝鮮人の乱暴事件というようなものが問題になつたのでありますが、そのことはさておきましても、当日の午後の二時ごろですか、松本久彌という日本ニュースのカメラマンがずいぶんな乱暴を受け、手記によれば、それは明らかに日本の武装した警官にやられたのだということを言われております。私のところに陳情に来て、これは松本君がとつた写真ではありませんが、わきの同僚のカメラマンがとつた写真があります。安全な場所で撮影しでいたのに、保護のために検束したということが答弁の中にありましたが、これを見ても、どうも検束をされたり、あるいは検束どころではなく、殴打をされるような状況のもとに撮影が続けられておつたとは、考えられないのであります。私はここで明らかに切望してやまないのですが、ずいぶん武装した警官が出て来る。秩序のために武装が必要だということが強調されて、武装さしていますけれども、結局ちようどイソツプ物語で例を引きますと、にくまれ者のおおかみがししの前に出されると、そこにはもうおおかみらしい本質を失つた、卑屈さだけが出て来る話を、イソツプ物語の話の中で幾多私はぶつかるのであります。こういうふうな二ユースーカメラマンのカメラを取上げるというようなことは、ずいぶんあつたようでありまして、私のところへ来た人たちが経験から訴えていましたが、報道班の人たちが報道の職務に従いつつある中に、人体に危害を受けるということは、二・二六事件のときにもなかつたと言つております。これほど武装して、これほど元気のいい日本警察官が、もつともつと自主的な立場——何もぶんなぐるとかなんとかいうことではないのですが、ししの前のおおかみのような態度でなしに、法に許された範囲で今少し自主権の擁護と、当然の職務の執行をおやりにならなければならないと思う。最近の警察は弱い者に対してはずいぶんいじめますけれども、こういうふうなほんとうに警察でなければだれもやつてくれないようなとこで、その真価を発揮できない。こういう事態が瀰漫しているところに、このたび国際マーケットのああいうふうな問題が出たのではないか。それは朝鮮人がやつたかどうかもわかりませんし、発表の段階でもないでしようが、多分朝鮮人の集団を中心にしたものがやつたのだろうというニユース発表がありますが、そういうふうなものは、事の根本の起る原因という深いものをえぐり出さずに、ただ出て来たものだけを処罰する、あるいは片づけるというだけでは、これは治安の根本的な問題は片づかないと思うのであります。この点について松本久彌君の問題について、警察官がやつたのだということの告訴、あるいはそういう抗議が、あなたのところへ届けられているようですが、その後いかがでしようか。
  51. 田中榮一

    田中参考人 先般の上十條におきまする朝鮮高等学校の校内における松本カメラマンの傷害事件につきましては、先般の法務委員会におきまして、私から度々御説明申し上げたので、大体おわかりであろうと考えておりますが、警察側といたしましても、もしかりに警察官がさような傷害事件を起したということならばゆゆしき問題でありますので、当時出動いたしました警察官側につきまして、十分に調査を進めたのでありますが、警察官暴行したというものは全然該当がないのであります。ただ当時非常な乱戦乱軍の間でありましたので、あるいは朝鮮人の投げました器物、石塊その他が、不幸にして松本君の頭上にぶつかつたのではないかということも考えられたのであります。また当の松本君自身も、警察官がやつたんだということははつきり言つておらないのであります。そばにだれがおつたかと言つたときに、警察官がおつたのだということは言つておるのでありますが、しかしこれも松本カメラマンが非常に重傷で苦痛のようであつたので、すぐ警察官が飛んで行つて、松本カメラマンをかかえ込んで、そうしてある程度愛護しておつたということは一応考えられるのでありますが、松本君自体が警察官がやつたとは言つていないのであります。さよう御了承願います。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 加藤君に申し上げますが、大橋法務総裁は二十分ないし三十分という約束で来てもらつておりますが、もうその約束の時間が過ぎますから、法務総裁に質問があるならその方をやつてください。
  53. 加藤充

    加藤(充)委員 ことしの二月二十七日の東京新聞の記事によりますると、「熱海で四名殺傷さる」という見出しのもとに、在日兵站司令部渉外局発表の記事が出ておるのであります。これは「二十六日熱海市の日本人ホテルで米軍将校ロバート・W・ヘツツラー大尉、第五騎兵連隊D中隊附ウイラード・W・ウイース大尉、第八兵站病院勤務は、日本人柴井良之助を射殺、本木常根、舞原深、渡辺厚三名に負傷を負わせた(横浜)」ということなんですが、これについて大橋さんの方で情報を入手されたか、あるいはこの事件の真相というようなものを、調査の結果お知りになつておればお聞かせ願いたいと思う。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 二月二十六日熱海に起りましたる事件につきましては、米軍当局におきまして、これの調査を継続いたしておられるのでございまして、私どもはその調査に全然参画いたしておりません。従いましてその内容につきましては、渉外局の発表を承知いたしておるだけでございます。
  55. 加藤充

    加藤(充)委員 あれはなぜ帳場の番頭が射ち殺されたり、あるいは負傷させられたりしたかというような原因関係、あるいはまた軒並かどうかはわからぬのですが、初島館というところと幾代館という二軒の旅館に起きた事件であるというような事柄も御存じはありませんか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 本事件につきましては、渉外局発表以外に何ら通報を受取つておりませんので、関知いたしておりません。
  57. 加藤充

    加藤(充)委員 そういう態度をさつきから問題にして、私は田中さんといろいろ問答を重ねたのですが、発表する自由があるとかないとか、適当であるかどうかというような判断は別個の問題として、これは朝鮮人の問題ではないのであつて、熱海の旅館で起きたことである。相手は米軍の将校なのでありますので、その原因とかいうものを発表しないは別として、どういうことでそういうことが起きたかということは、新聞記事にもなつている以上、治安の総元締めをもつて任じておられる大橋さんが全然知らぬ、存じませんということでは、不見識きわまりないと思います。その点についてはつきりした御返答を伺つておきたいと思います。知つていることを言えないということと、全然知らないという無責任なこととは違うと思うのです。
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この事案につきましては、米軍当局が管轄権を持つておるのでありまして、米軍当局において調査をせられております。従いまして日本官憲といたしましては、これに関與いたしておりません。従つて公式に申し上げる資料は何ら持つておらないという事実でございます。これは別に発表いたさないという意味ではなく、現在の状態においてはさように相なつておるということを率直に申し上げた次第であります。
  59. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、調べてはおるが発表はできないし、また発表は適当でないということなんですか、それとも全然知りません、存じませんということなんですか。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本側におきましては、調査をいたしておらないということでございます。
  61. 加藤充

    加藤(充)委員 これは発表ができるできないは問題ではない。調査する意図がどうこうとかいう問題を離れて、朝鮮人ではなく、日本人が数名射殺されたり、ピストルのたまをぶち込まれたりしておるのでありますから、やつぱり自主的に調べるだけは調べる。そして国内治安の根本的な対策を立てる。いたずらに共産党の非合法化を考えているというだけでは治安対策ではないと思うのでありまして、こういうふうなところに、進んで日本治安対策を考えられる必要があると思う。大阪あたりでは三年ほど前に、敦賀で米兵暴行したとかいうような壁新聞を書いたり、出版物を出したために、数名の者が延数十年の判決を国内裁判所及び軍事裁判所で受けたのであります。やつぱりそういうことは好ましいものではないとするならば、その原因というものを徹底的に調べる必要があると私は思う。それからもう一つは、そういう事件が起つてから二、三年たちますが、最近になると、これはただ悪口ではございません。大阪の方の新聞にはほとんど毎日、外人ないしは米兵自動車強盗というような記事が出ております。そしてその日暮しの運ちやんは安心して夜の仕事には出られないというような状態なつておりますので、そういう方面から日本人の受ける被害、また一般的に言えば、そのために乱れる治安ということから、生命身体あるいは財産の保護ということについて、積極的におやりになるべき必要があると思う。ただ職権がないから知らぬということでは、事は済まされない。切捨てごめんで泣くのはただ人民だけだということでは、大橋さんの職責が全うされたとは思われないのですが、その点重ねて確かめておきたいと思う。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知の通り、犯罪の搜査にあたりましては、官憲といたしましては法令に従つてこれをなすことが必要と存ずるのであります。従いまして今日連合国軍隊の将兵の犯した罪につきましては、日本政府におきましてこれを搜査、起訴いたしまする権限がないことに相なつております。これはさようの趣旨の日本側の政令が出ておりますので、当局といたしましてはこの政令に従つて行動をいたしておるのであります。
  63. 加藤充

    加藤(充)委員 それではこれでやめますが、もしそういう被害で、米兵でもなし朝鮮人でもない日本人が受けておりますものを警察に届け、あるいは警察が不可抗力だからしかたがない、あきらめた方が得だぜというようなことで、納得し切れないような問題がいろいろ出て、あなたの所へでもそめ被害の実情をたくさんかどうか知りまけんが、報告して、適当な処置を講じてもらいたいという要望書なり陳情書たり申入れがありました場合には、あなたはそれをどういうふうに裁き、治安の総元締めとしてのあなたの責任をお果しになるか、またそういうふうなことを絶滅するのにはどうしたらいいとお考えになつておるか、この点を最後にお聞きしたいと思います。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 陳情書が出ましたらば、十分に拝見をいたしまして適切な処置をとりたいと考えております。
  65. 加藤充

    加藤(充)委員 その適切な処置が、搜査権がない、裁判権がない、しかたがないのだ、政令がございますということでは、これは私ども適切な処置としては受取れないのでございます。被害をこうむるのはあなたではないので、そういうふうなことでは日本人の被害者は泣寝入りということに相なると思うが、進んで何とかなさるお気持があるのか。ただ現行の制度でもよくごらんになつて適当な措置をするということでは足りないのじやないかと思うのですが、どういう方法が今許されているのですか。
  66. 大橋武夫

    大橋国務大臣 身体、財産に対しまして急迫な侵害がありまする場合におきまして、その犯行者に対しまして逮捕いたすことは、警察といたしまして相手方の何人たるを問わないわけでございます。ただ事後この事件についての搜査を継続いたし、またこれに対して公訴を提起するということになりますると、これは日本裁判権に服する者でなければならないのであつて、その他の者でありまする場合におきましては、占領軍のそれぞれの官憲にこれを引渡しまして、連合軍の手によりまして適当なる処罰が行われることに相なつておるわけであります。
  67. 加藤充

    加藤(充)委員 そういうふうな資料なり、被害なり、事件の実態をGHQのセクシヨンに持つて行くというような道は講じてはないのでありますか。
  68. 大橋武夫

    大橋国務大臣 事件発生に際しまして、現在実際やつておりまする手続といたしましては、この事件の内容について明らかになりました事項を詳細に連合国軍の憲兵司令官に通報をいたしまして、その措置を待つということに相なつております。
  69. 加藤充

    加藤(充)委員 これは私が経験したことなんで、民事的な問題でしたが、大阪府の北河内のある村で、百姓がのらへ仕事に行く途中、道路を横切つたか道路を通つている間にジープに当てられた。これは終戦直後でした。それで私が近所に住まつてつたものですから私のところへ相談に来た。死体にこれくらいの布切れが置いてありました。それに横文字が書いてありました。それをたどつて行けばわかるだろうと思いましたから、私の方では、あの当時まだ大阪府庁の中にあつた渉外局の方へこの布切れを持つて行つて、未亡人は子供があつて気の毒だつたので、何とかというわけで話を申入れましたところが、結局その布ひらに署名がないということだけでだめになつた。それで未亡人はほんとうに悲惨な生活になつちやつた。おやじさんがそういう形で突然死んだものですからお家騒動が起きちやつて、未亡人はほおり出されるという始末になつちやつたのです。今の手続の話はわかつたのですが、最近そういうふうなことをやつて、そうしてそのことがGHQの方でいれられて、その被害が実質的にカバーされた、あるいはその被害を與えた者が処分を受けたとかいうような実例が、あなたがそういう申入れをされた事件の中であつたら一、二聞かせていただきたいと思います。
  70. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま実例として申し上げる事項を記憶いたしておりません。
  71. 加藤充

    加藤(充)委員 それじやおやりにやつたことがあるのかないのか、ここで確認するわけにいかないと思うのですが、腹をきめて、あるいはいろいろ考えて、これは手続しなければならぬなとお思いになつたのは、今あなたがおやりになつている実績から、あるいは今許されておるんだといつた手続から見ると、そう数は多くないと思うのですが、その数の多くなかりそうな件数の中から、その実例を、しかも被害者は日本人で、あなたのところへ処置がないから持つて来たんですから、その個人、その案件としては非常に切迫した重大な問題であるが、そういうふうな実例を思い出されないというに至つては心細い感じを強めるのですが、どんなものでしようか。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は実はこの事務を実際に取扱つておりませんので、それで申しかねるのですが、幸いに警視総監が見えておられますので、警視総監から申し上げることにいたします。
  73. 田中榮一

    田中参考人 私からかわつてお答えいたします。実際問題としてそういう事件が起りました際には、MPがただちに出動をいたしまして犯罪搜査に従事いたします。そうして犯人を搜査いたしまして逮捕いたします。そのほかもし損害等があつた場合におきましては、MP側におきまして被害者を呼びましてよく実情を調査いたしまして、もし損害賠償などで話がまとまるものは双方の話をまとめたりなどいたしております。  それからまた交通事故等におきまして、被害者がありました場合におきましては、家族に対しまして十分に慰藉の方法等を講ずるというようなことをMP側におきましても相当努力をいたされております。
  74. 加藤充

    加藤(充)委員 それではお伺いしますが、霞ケ関のモーター・プールの要員齋藤重郎という四十五歳になる男が、     ━━━━━━━━━━━━━ ━━━殴打されてか何かで死んだというようなことになつておりまして、しかもこれが公傷ではないというので働き先からは何ら見舞金も補償金ももらえない、こういう事件があるようですが、そういうようなことについて御存じか、もしそういうことについてあなたの方へでも申し入れられれば、かわいそうな遺族は、事の真相がはつきりすれば何とかなるものか、それを聞いておきたい。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 かような案件につきましては、日本政府の部内にこれを処理すべき機関があると存じます。法務府にはございません。他の省にあるはずでございます。他の官庁の係になつております。
  76. 加藤充

    加藤(充)委員 どうもたよりない。どつかで何とかなるはずだというだけの話では、家族や被害者はまつたく困ると思うのです。こういうような困る者をそのまま見のがすことは、大きな意味でも、差追つた意味でも、治安確保のためには好ましくない問題だと思うのです。そういう問題はこのごろ相当数が多いようであります。きのうでしたか、自由党の古島委員が埼玉県の一例を引いてお伝えしたと思うのでありますが、ああいう事例が多い。殺したのは悪いのにきまつておりますが、殺したとすれば、それが悪い悪いと言うだけでなしに、殺した原因は何だ、一体どうしてそういうことが起きたかというような事柄について、自主的に、日本人らしい感覚で調べて、そして善後策を講ずるなり進言をするなりしなければ、問題は片づかぬと思うのです。まん中にはさまつて、悪いことをしたのは朝鮮人だ、あるいは悪いことをしたのは日本人だ、お前は出過ぎたからなぐられたんだ、お前は出過ぎたことをやつたから強盗されたのだというようなことでは、結局問題は片づかぬ。あなた方はそういう意味で、反米分子であるとか、反米ビラだとかいうようなことばかりでなく、原因はどこにあるのか、従つてまた責任はだれが持つべきものか、その責任の所在を明確にする努力が自主的になされなければ、朝鮮人——朝鮮人と言つてはおかしいのですが、浅草の千束町の国際マーケットに起きた事件のような遺憾なことが、今後もますます——大橋さんがある方面へ何回も頭を下げなければ問題が片づかぬというふうな状態が、私がけさ行つて見ただけでも、千束町のあの付近にたくさんあるのですから、この点について責任を持つた処置をしていただかなければならないと思う。それで、今そういう被害の現状をどうするか、対策はどうするかという問題がありましたときに、現行犯のときに、それを逮捕だけする権限はあるという。しかしさつき日本堤の鼻緒屋さんの話に出て参りましたような事例になると、武装警官なり何なりが二十人ほどいらつしやつてくださつた、けれどもまあまあということでやつている間に被害が起つたというような事案が出て、そのまま逮捕しないから行つてしまう、あとになると、搜査権はございませんということになつたのでは、まつたく切捨てこめんのことになつてしまうと思う。もし大橋さんや田中さんがきよう御答弁になつているような処置しか日本人にはないのだということになりますると、被害の現場において現行犯が起きているという場合には、日本人みずから、被害者みずからがこれを防衛し、これを排除するという、現実的な行動に相ならざるを得ないと思うのであります。もう一つ、私はこういうふうな問題になりますと手続がないのでありまするから、大橋さんにお伺いするのですが、正当防衛というような問題は、やはり占領下においても、原因原因であるならば、緊急不正の危害に対してみずからを守るということであるなら、日本人でも朝鮮人でも、あるいは米人でも同じでしようが、人間一般として、個人として自分の生命身体に加えられる危害に対して、十分に救済の方法もないとなれば、みずからこれを拒否し、みずからそれを防衛する正当防衛というものは、この場合においてもりつぱに成立するのではないか。これはりくつではありません。現実の生命、身体、財産に対する危害を防衛する、あるいはそれを回復する手続が不十分な実情と関連すれば、より以上に正当防衛というものは、人類の一般的な感情なり本能の上に立つた原則的な問題だと思うのですが、こういう点はいかがでしよう。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど損害の賠償の要求につきまして、他の官庁と申しておりましたが、これはおそらく特別調達庁あたりがそれに該当するのじやないかと思いますが、(「厚生省だ」と呼ぶ者あり)厚生省でございますか——地方官庁といたしましては、都道府県知事がこの仕事を担当いたしております。従いまして、さような道が国内的に備わつておるということをまず申し上げておきます。  それから、実際日本に管轄権のないことによつて犯罪が遂行せられておるという場合におきまして、急迫な危害を除くために、当然これを現場において逮捕するということは、警察に許されたる権限であることは、先ほど申し上げた通りでございますが、その場合におきまして、被害者の側にとつて自己の権利を保護するための正当防衛の措置がどうであるかという御質問でございますが、この正当防衛という観念は、ひとり日本刑法において存在いたしまするばかりでなく、外国の刑法におきましても、この観念は存在いたすものでありまして、あらゆる場合におきまして、急迫不正の侵害に対しましては、当然やむを得ざる措置として正当防衛権は認めらるべきものであろう、かように存ずる次第であります。
  78. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつと関連質問を……。先ほど加藤君の質問に対して大橋総裁が御答弁なさつておられましたが、総括的にそばで聞いておりますると、何だか米人が切捨てこめんで、その場合にはどうにもしようがない、傍観するよりしかたがないのだというふうな感をわれわれは與えられたような感じがするのです。実は私は終戦直後でありましたか、横浜で憲兵総司令官に会つたことがあります。そのときの憲兵総司令官の話では、米軍といえどもあるいは米人といえども、不都合な行為があり、犯罪を構成するようなことがあつたら、遠慮なく言うて来てほしい、公正な処置をするからということを聞いたことが私あるのであります。そういう意味で、むろんただちに逮捕して裁判する権限は與えられてないであろうけれども、犯罪の内容並びに逮捕に協力するというようなことは、常識的に考えて十分連絡あると思うのですが、その点はどうでございますか。もうそういう問題には全然傍観的な態度であるかどうか。なぜそういうことをお尋ねするかというと、アメリカ軍は切捨てこめんだ、どうにもしようがないのだというようなことを宣伝して、かえつて反米宣伝をやつている向きが相当あるのでございます。その点をむしろこの際総裁の口から明確にしていただいた方がいいのではないかと思いましたから、ちよつとお尋ねしたのです。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 世耕委員の御質問はまことにごもつともでございます。連合国の軍隊に属します将兵の犯罪、あるいは連合国人で、連合国占領に公に付随する者、またはその用務に服する者、あるいは公務を帶びて日本に来ておる連合国人、こういう人たちに対しまして、日本裁判権がない、従つて日本の検察官が、これを日本の法廷に起訴することもできないということは、すでに法令によつて明らかには相なつておるのでございます。しかしながら、いかなる犯罪に対しましても、国内に起る犯罪に対して、現実にこれを防衛し、またこれによつて生ずる結果に対しまして、できるだけ適法な措置を講じさせる、これは日本の検察官並びに警察官の当然の職責でございまして、ただいま御質問にございましたごとく、現行犯におきましてはこれを逮捕する、また現行犯にあらざる場合におきましても、その犯罪の実情について十分に調査をいたし、必要なる搜査をなし、そしてその結果日本に管轄権のない人の犯罪であるという場合におきましては、これを連合国の官憲に通報いたし、その手によつて適法な措置を仰ぐ、こういうことに相なつておるわけでございまして、警察といたしましては、もとより連合国軍隊に属する人たちの一切の犯罪に対しましても、日本側として当然必要な搜査をいたし、その結果によつてこれを連合国の官憲に通報いたしまして、これに対する処分を求める、こういうことに相なつておるわけでございまして、決して切捨てごめんというようなことが、占領地たる日本において断じて許されていない、かように確信をいたす次第でございます。
  80. 田中榮一

    田中参考人 私から敷衍的に世耕委員の御質問に対して答弁いたしたいと思います。ただいま大橋法務総裁から御答弁がありまして、大体はおわかりかと存じますが、私ども首都の治安責任をもつてつております者といたしまして——現在東京都内におきましても、やはりそうした事件がひんぴんと起つております。この場で具体的に事例を申し上げるのはいかがかと存じておりまするが、りつぱに警察官が不法行為をやつた米兵を逮捕して、これを憲兵当局に護送した例も相当あるのであります。ただ連合国の軍人、軍属、それらの者が他人の生命、身体、財産に不法な侵害を加えて、しかもその場に陸軍の憲兵が居合せなかつたときにおいては、臨機応変の措置としてこれを逮捕して、ただちにこれを憲兵当局に引き渡すというような措置なつております。警視庁管下におきましても、日本警察が単独でこれを逮捕して、ただちに憲兵当局に引き渡したという例が再三ございますので、この辺だけは、決して切捨てごめんではないということをひとつ御了承願いたいと思います。
  81. 加藤充

    加藤(充)委員 一人であまり長いことやつてもしようがないですが、今の大橋さんの御答弁だと、さつき田中さんのお話になつたことと少しもやもやして来たので、最後に確かめたいと思うのであります。裁判権がないということ、それから現行で、MPがおつたりおらなかつたりした場合にでも、逮捕ができなかつたという場合におきましても、やはり日本警察として、被害の起きた事案の事実関係調べるということは、先ほど田中さんはできないんだと言つたのですが、大橋さんの話では、それができる、ただそれを突き出したり、あとから逮捕に行つたりすることは問題かもしれぬが、先ほどは、調べて適当な措置をとることはできるんだと言われたのですが、その点もう一ぺんはつきりしておきたいと思います。
  82. 大橋武夫

    大橋国務大臣 もとより日本側裁判権がございません。従いまして、刑事訴訟法上の日本国政府に属しまする強制処分を行う——たとえば勾留とか逮捕とか、こういうようなことは一般的にはできません。しかしながら、それ以外の強制力を伴わざる搜査の仕事につきましては、これは日本側においても十分になし得るのが建前であります。例外といたしまして、強制力を用いて系甫をするとか、あるいは強制処分をするという場合は、先ほど警視総監の述べられましたごとく、生命、身体、財産に対する急迫の危險が現にあります場合においては、現場において犯人を逮捕する、こういうことを認められておるわけであります。
  83. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 加藤君、約束の時間がよほど過ぎておるのですが、あとの人もありますから、これで終りにしてください。
  84. 加藤充

    加藤(充)委員 すぐあとの人に譲ります。  それでこのたびの事件について、大橋さんは責任の当局として、きのうの委員会で、まことに恐縮でおそれ多いことだ、おわびしなければならならいということを言つておりましたが、それはそれなりとして当然のことでありましようが、古島さんも言われたように、それからきようごく最近の一、二の例を申し上げて、その自主的な積極的な処置を強く希望したのですが、これだけの例を見ましても、こういう問題が起るたびごとに、また今度の事件ではありませんけれども大橋さん並びに田中さんは、やはりいろいろな未解決のままに残されているものがあつて、被害者である日本人——朝鮮人にもありますが、そういうような者に対して、責任が十分でなかつたということをこの機会を通じて深くわび、そうしてさらに自主的な責任のある態度を明確にする必要があるのじやないか。わび方が一方には足りない、そういうふうなわび方では、治安維持の自主的な確立にはどうも不充分だという気がするのであります。しかもまた自衛ということでずいぶん武装をかためられて、通信連絡の方法も機械化された。しかしこういうかんじんかなめのときに、向うが兇器を持つていて、日本人は敗戰国民で、ちよつとそれに手が出ないというようなときにこそ、武装された自衛というものが、まさしく機動性を発揮して活動さるべきなのでありまするが、先ほど申し上げましたような松本久彌君の問題、最近の事例だけを見ても、武装力の発動の相手方が違う。弱い者にはぶんなぐりほうだいというようなことになつたのでは、武装した警察隊というものは、さらがら昔の軍隊や、昔のフアッシヨ時代の警察と少しもかわりない。弱い者はいじめられ、強いところにはやらぬというようなことではだめだ。大橋さんは法務総裁ですから言うのですが、昔児島惟謙が大審院長をしていて、大津事件のときに、ずいぶん保守的な気持であつたかもしれぬが、皇子と皇帝とは違うということで、やはりそれなりに日本人らしい毅然たる裁判をやつて、護法の神と言われたことを、今思い出す必要があると思うのです。その爪のあかを薬にされることをここにお勧めするわけなのであります。こういうような状態が続きますと、また講和條約ができても、あるいは外国の軍隊が来る、進駐軍が来る、それに対しては治外法権だということになつて、処置なしというようなことで、武装した警察不備隊その他日本人の金のかかつた武装というものが、結局日本人にだけ向けられ、弱い者に向けられるというようなことになつたのでは、てんで取返しがつかぬし、本末顛倒もはなはだしいものだと思います。このたびの事件か起きたことに対しまして、再三再四瞑思反省されて、最も責任のある、そして根本的な治安というものの先頭に立つ必要があるのであります。その立ち方が不十分だとするならば、こういう問題は残念ながらただ陳謝するだけでは事は治まらぬということを、私はきよう浅草行つてつて、またきようの委員会の問答を聞いて、強く感ずるものであります。私の質問なり意見これで終ります。
  85. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 加藤君の発言につきまして、後刻委員長において速記録せ取調べた上、不適当と認められるもりがあれば、適当に処置いたします。世耕弘一君。
  86. 世耕弘一

    世耕委員 大橋総裁に二点ばかり簡單にお尋ねいたします。それは犯罪の搜査と犯罪の予防という点についてどういうふうなお考えを持つておられるか。どうも事件の内容をちよちよいながめてみますと、後手々々とまわつたような感がある。この点について犯罪の予防ということをむしろ重点に置かはければならないのではないか。犯罪の予防に重点が置かれたときに、初めて犯罪の搜査が完全になつ目的を達するのが早いのではないか。最近の状況から観察いたしまして、神戸事件、名古屋事件あるいは東京に起つた事件等も、ある程度予防可能ではなかつたかという点があるのであります。この点について、将来犯罪の予防ということについて新しい構想があるかどうかということが第一点。  もう一つは、犯罪が発生してから搜査すると非常な費用がかかる。むしろ予防において公益が維持され、経済的にも有効であるという点を考えて、犯罪予防という点についてお考えを伺つておきたい。  それから新しい憲法並びに刑法に基いて、人権擁護におびえて、かえつて人権侵害の機会を與えやせぬか。こういうことが搜査の上に相当いろいろな問題を残しておりはせぬか。そういうことを片づける意味において、何か新しい構想があるかということを伺いたい。  それから最後にもう一点は、いつかこの委員会でも発言を求めたと思うのですが、非常事態における国民の権利義務であります。今日の国際情勢並びに日本の国情から見て、非常事態発生の場合に、国民はいかなる義務と権利を持つかということを考えておかなければならぬと思うが、何かこれについて御用意があるか、あるいは研究されておられるかどうか。二、三学者の間にも議論があるようでありますが、またまじめな研究も遂げられておるようであるが、法務総裁としてこれについてどういう御見解があるか、この点伺ておきたいと思います。
  87. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お答えを申し上げます。第一点といたしまして、犯罪の発生いたしたる後において、費用を使つて搜査に力を入れるよりも、いま少しく犯罪の予防という点に重点を置くつもりはないかという御質問であつたと存ずるのであります。この点はまつたく同感に存ずる次第でありまして、神戸事件その他のもろもろの事件搜査におきましても、これらの犯罪の内容をできるだけつまびらかにいたしまして、将来の予防上参考となるべき事項がありましたならば、十分これを将来において活用いたしたい、かような考えを持つて搜査を進めておるような次第であります。もとよりかような犯罪の搜査において得られる知識ばかりでなく、社会一般のいろいろな実情に十分留意をいたしまして、今後におきましても、あらゆる角度からかような犯罪を予防するようにいたしたい、かように存ずることを申し上げさせていただきます。  第二点は、人権擁護も必要であるが、人権擁護が極端に主張される結果、かえつてそのことが人権の侵害を惹起するおそれはないかという点でございます。この点は新刑事訴訟法が制定されました当時においても、日本の現在の実情から、搜査その他の能力から見まして、人権擁護ということも非常に大切でありまするが、しかしこれがために、実際上犯罪の搜査を不可能ならしむる、従つてかえつて人権の侵害を多くするという機会がありはしないかという点も、ずいぶん問題になつたことと存ずるのであります。その後検察当局といたしましては、できるだけこの新刑訴の運用に習熟して、人権擁護と犯罪の必罰ということを調和させるために努力を続けて参つたのでありまして、最近におきましてようやく新刑訴の運用もやや翌熟いたしまして、犯罪の搜査にあたつて相当能率を回復いたしつつあるように見受けられるのであります。しかしながらなお現在の日本の社会の実情から考えまして、現在の刑事訴訟法がはたして人権擁護と犯罪の防遇という上から言つて適切であるかどうかという点につきましては、なお考究すべき点が多々あると存じますので、ただいま法務府といたしましても、この問題を取上げまして研究を続けておるような次第であります。もしこの研究の結果、必要があるということになりましたならば、将来国会におきまして新刑事訴訟法改正の問題をお取上げ願いたい、かように存じております。  第三には、非常事態における国民の権利義務でありますが、これは従来の諸国の実例から見ましても、非常事態におきましては、平素において認められる国民の基本的権利というものが、そのまま認め得るやいなやという点になりますと、これはいろいろ研究を要すべき点があろうと存ずるのでありまして、諸国におきまするような非常事態宣言によりまして、ある種の基本的権利を一時的に制限するというような措置も、場合によつては必要ではないかと存ぜられるのであります。この点はしかしなお当局といたしまして、一般的にさように考えておる程度でありまして、具体的にこの問題を取上げて研究を進めるという段階に至つておりません。しかしながらただいま承りましたごとく、この問題は、非常事態というものが決して日本にとつて夢のような遠い問題ではないという情勢がだんだん近づきつつあるように存ぜられますので、今後におきまして特に力を入れて研究を続けて行きたい、かように存ずる次第であります。
  88. 世耕弘一

    世耕委員 よく了承いたしました。ただもう一点つけ加えておきますが、警察予備隊の組織の中に、非常事態発生の場合に、総理大臣に非常事態宣言の権限が付與されておることが規定されておるようであります。私がただいま申しました非常事態における国民の権利義務というのは、結局暴動が起つた警察官ではどうにも始末がつかぬという場合に、当然国民がその警察隊に参加してその暴動を鎮圧する義務があるということが、外国の憲法その他の條章にあるのです。日本が非常事態ということを構想する場合に、当然これは具体的に検討されてなくちやならぬはずである。その点についての御用意があるかどうかということをひとつつておきたい。権利というよりもむしろ義務の方に重きをおいてお尋ねしたいようなわけであります。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま具体的な準備はないという点につきましては、義務についても同じでございまするが、この問題を今後研究するにあたりまして、ただいまお述べになりましたごとき義務という問題をも、あわせて研究さしていただきたいと思います。     〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕     —————————————
  90. 安部俊吾

    安部委員長 次に少年院法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますから、これを許します。武藤嘉一君。
  91. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 少年法と少年院法との関係をひとつ説明願いたいと思います。
  92. 宮城タマヨ

    ○宮城参議院議員 少年院法と少年法との関係と仰せになりますと、今度改正の法案と、将来におして改正されるかもしれない少年法との関係と仰せになるのででございますか。
  93. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 さようであります。
  94. 宮城タマヨ

    ○宮城参議院議員 これは直接の関係はないのでございます。ちよつと重ねてつけ加えさしていただきますけれども、この少年法は今年一月一日から年齢が引上りまして、十八歳から満二十歳までの子供を少年法によつてまかなうことになつておりますので、自然今度改正されますところの少年院法も二十歳まで引上りましたので、このいれものの点について問題が起つたのでございます。そういう関係はあると思いますが……。
  95. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 提案理由のうちに入つておりますように、在院の期間を六箇月から一年に延長されるという案になつておりますが、矯正教育の方は六箇月でどのくらい成績が上るとおぼしめすか。その辺をお答え願いたいと思います。
  96. 宮城タマヨ

    ○宮城参議院議員 御存じの通りになかなか手ごわい子供たちでございますし、ことに年齢が引上つて二十歳まで上りますと、質も量もたいへん問題でございますが、そういう子供たちに対しては六箇月ではとうてい矯正保護の目的は十分達せられないことなのでございますが、この法案の提案理由のところでも御説明申し上げましたように、保護少年の仮退院までの期間が、今まででございますと平均九箇月余りになつております。九箇月余りでことごとく目的を達しられたとは申されませんでございましようが、しかしながら、できるだけ長い期間を預かつて矯正保護したいのでございますけれども、しかしこれにはいれものや経費などの都合もございますので、せめて六箇月を倍にしてという意味で一箇年といたしたのでありまして、一箇年たてばことごとくの子供がよくなるということは、はつきり申し上げられないと存じております。
  97. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 私の選挙区でこの間少年院におります子供が——年齢を記憶しませんが、子供といいましても、十七、八歳だろうと思います。同じように入つている仲間を、ナイフでたしか二名ぐらいさし殺した、死んだのは一名だと思いますが、一、二名を殺傷した事件があるのです。こういうのは、そう簡単には——例外はありまするが、非常に困難だと思いますけれども、これに対する政府の御意見はどうですか。
  98. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 ただいま御質問の事件は、岐阜県にある各務学院の事件だと思うのでございます。最近少年院に収容している少年の中には、非常に性格も兇暴でありまするし、また重い犯罪を犯して入院する者がふえて参りましたために、各務少年院で起りましたような事件が、二、三にとどまらず起つておるのでございます。終戰前の少年院の教育と、今日の教育との間には、困難の度において非常な差異がございまして、職員一同非常に苦心の存するところでございます。従いまして、この少年を真に改善教化いたしまするためには、従来のように短い期間では、なかなかその目的を達することができません。どうしても在院期間は長くなつて参る傾向にございます。このたびの在院期間の延長も、そういうような関係から出ておるのでございます。なおそのほかに新少年法の建前が、少年を刑務所に収容するよりも、少年院に収容することに重点が置かれて参りましたために、勢いさような傾向に拍車をかけて参つております。従いまして当局といたしましては、悪質な少年につきましては、やはり一罰百戒という意味で、やむを得ず少年刑務所に収容するような手段も講ずるとともに、良質な少年につきましては、それら悪質な少年からの感化を避けて、十分りつばな教育がなされるような環境をつくりたい、かように考えておるのでございます。
  99. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 非常に悪質な少年が戦後相当に入つておるのでありますが、それについて検察側の御意見では、判事さんの方へ渡すといいますか、裁判所へ渡すよりも——悪質な場合、どれを悪質と申しますかは問題であろうと思いますが、悪質な場合は、むしろ検察の方で取調べをやり、検察の方で一応かたをつけて行く方が、犯罪の矯正の点からも妥当でないかという意見相当出ているやに聞いておりますが、これに対する政府の御意見はどうでございますか。
  100. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 新しい少年法は、非常に大きな理想のもとに、少年の年齢を二十歳に引上げ、そうして少年拘置監のかわりに、少年保護鑑別所を充てる等、画期的な制度を樹立しておるのでございますが、これは理想としてまことにりつぱなものでございますの、で、もしこれに十分な予算と、その他の事柄が付随いたしまするなれば、まことにけつこうな次第だと思うのでございます。ところが終戰後の財政の関係からいたしまして、この大きな理想を持つた少年法を運営するためには、いささか予算の点で欠くるところがございました。従いまして家庭裁判所の構成、またこれを収容いたしまする少年保護鑑別所の施設、あるいは少年院その他の収容保護施設の整備の点におきましては、この理想にいまだそぐわない点が非常に多いのであります。従いまして、さような点から生まれまするいろいろな不便な事柄が、一々犯罪という点で、社会の治安にいろいろな摩擦、影響を與えて参つておるのでございます。そういたしまして、従来治安の面に最も堪能な検察官が直接起訴権を持つてつたのに反しまして、この新しい制度におきましては、まず裁判所の審理を遂げました上、起訴すべきものだけ検察庁へ逆送するということになつております。その間身柄の授受等にいろいろな不便が参るとともに、搜査にもいろいろな不便が出て参りました。また治安維持という面につきましては、裁判所と検察庁との間の考え方にある程度の差がございまするために、従来ならば起訴せられて参りましたような事件が、起訴せられないというようなことも起きて参ります。従いまして、少年院の中に悪質な少年が非常に入つて参るというような傾向も出て参りまするし、また家庭に返されるというような場合も出て参りまするので、過渡期といたしましては、その点に非常な混乱が出て参りました。少年院その他におきまするいろいろな事故も、さような点に起因しておる点が非常に多いのでございます。本部といたしましては、この大きな理想を持つた法案の完全なる実施を遂げるまでは、ここ二、三年の間、十八歳以上の少年の起訴すべき事件につきましては、従来のまま、検事先議の方法によつて処理することが一番現実に即したやり方でございまして治安の面あるいは収容施設の面、その他において便宜を得るところと考えておる次第でございます。
  101. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 この提案の中にありまする、少年保護鑑別所等の施設が十分でないことにかんがみ、代用少年保護鑑別所等を昭和二十八年三月三十一日まで利用し得るようにする必要があるというのが、提案の御趣旨でございますが、これは一体実際二年後には大体目的通り建物その他収容施設が整備されるとお考えになるのか、そのお見込みをお伺いしたいのであります。
  102. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 少年保護鑑別所につきましては、今後二箇年間の努力によりまして、大体整備を遂げることができると考えております。ただ多少気がかりになりまする点は、家庭裁判所の支部が非常に各所にございまするので、この全部にその支所をつくることができないので、勢いそれはある程度設置をしない箇所を残すことにいたさなければならぬと考えておるのでございます。少年院につきましては、なお相当多額の予算を必要といたしまするので、再来年度の予算におきましては、よほど御援助を得て予算を獲得しなければ、完全な実施に対することができかねるのでございまするが、しかし大体二年の期間を置いていただきますれば、少年院、鑑別所とも一応この程度で発足できるような準備ができると考えております。
  103. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 ほんのわずかつけ加えさせていただきますが、岐阜県に、刑務所に入つておりました婦人ばかりでできておりまする工場があります。それは毛織物工場でありますが、その工場の成績について、矯正局長はその成績は上つておると思つていらつしやるか、ちよつと余談でございますが、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  104. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 御質問の刑務所は笠松の女子刑務所でございまするが、笠松刑務所は、終戰後特に女子受刑者のうちの優秀な者だけを集めて、そこで新しい職業教育を施すということを目的にいたしまして、たしか昭和二十三年末から発足したと思うのでございます。その後施設の増強等をはかりまして、施設におきましては、ある程度見るべきものができたのでございます。その矯正教育につきましても、当局といたしましては、従来の女子に対する矯正教育に新しい方法を加えたものとして、相当程度の進歩を示しておるものと考えておるのでございます。もちろんいろいろ不備の点がございまするので、その成果は今後の実施にまたなければならぬと考えておるのでございまするが、現状におきましても、相当程度の進歩した矯正をしておると考えておるのでございます。
  105. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 終ります。
  106. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑はありませんか——加藤君。
  107. 加藤充

    加藤(充)委員 不良少年の増加、とりわけ少年による悪質犯罪の増加というのはまことに困つたことですが、この年齢やあるいは収容期間を延ばすということや、あるいはまた刑務所へほうり込んでおくのが適当だけれども、まあしようがないから二年間延ばす、隔離するというような方針では、これは根本的な対策ではないと思うのですが、この点についてお伺いしたいと思います。
  108. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 もちろん矯正保護の本質は隔離ではございません。隔離はその手段としてやつておりまするけれども、その実体は、本人を矯正いたしまして、改善して、社会の有用な人として返すために、いろいろな積極的な処遇を與えておるのでございます。御質問の通りだと思います。
  109. 加藤充

    加藤(充)委員 先ほどあなたから、少くともこの遠大な理想を持つた少年の矯正教育の方針なり組織なりについて、裁判所側の取扱いが不適当な結果、ますます悪質な少年が町に放されたり、悪質な少年が刑務所にほうり込まれて、少年の仲間に入れられたりして、どうも困るというふうに聞きとれるお話があつたのですが、そういう実情なんでしようか。
  110. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 新しい少年法が、二十歳までの少年に対して全部少年法を適用いたしましたために、比較的その処分が軽くなつておるのでございます。そしてその結果、中にはそういう者があるのでございます。その例もあるのでございます。
  111. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、これはひとつお考えおき願つて、もつと進んだ御方針が聞きたいのですが、二十歳までを少年にするということ、十八歳が二十になつたということ、これは処分が軽くなつたというような判断をいたすべきでなくて年少者いわゆる少年については少年らしい処分が当然についてまわる、少年には少年らしい対策を持たなければならないという、少年法の本質の問題から来ることであつて、年齢が延ばされたために処分が軽くなつたというような御見解は、どうもあたたかい少年法の精神を体した御発言とは私ども聞きとれないのです。むしろそういうお考えだとなると、少年法の本質、少年の本質を間違えておるのではないかとすら疑わざるを得ないのですが、念を押して聞いております。
  112. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 私の申し上げたのは、従来の処分に対して、比較してみれば軽いというぐあいに考えられるので、さように申し上げたのでございまするが、少年法の目的といたしまするところは、もちろんその少年に対して、少年法に規定してありまする各種の処分が最も妥当だとしておるのでございます。ただ施設がそれに伴いませんために、法のまつたき運用のできないのを遺憾と思つております。
  113. 加藤充

    加藤(充)委員 それから法律案の提案理由の第二の項について一、二点お尋ねしておきたいのですが、この延期の問題というようなものは、前にも延ばして来たんじやないですか。
  114. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 これはこのたび初めて延期していただくわけです。
  115. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると提案理由の一に書いてある六箇月を限つて年を越しても入院さしておくというのは、今度初めての措置なのですか。前にもあつたことなのですか。
  116. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 初めからこの規定があつたのでございます。ただ期間が延びるわけでございます。
  117. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑はありませんか。御質疑がなければ、本案はこの程度にとどめます。     —————————————
  118. 安部俊吾

    安部委員長 次に商法の一部を改正する法律施行法案、非訟事件手続法の一部を改正する法律案及び有限会社法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし前会に引続き質疑を行います。御質疑はありませんか。
  119. 押谷富三

    押谷委員 商法の施行法に関する関係で質問をいたしたいと思います。  まずその第一点は、この改正商法の施行前にすでに設立されておる会社、いわゆる既存会社でありますが、この既存会社が改正商法施行後定款を変更しておかなければならない事項、定款を変更せなければ効力のないような事項、たとえば取締役の選任について累積投票によらない旨を定めるとか、あるいは総会の普通決議について定足数を排除すること、こういうような事柄で定款をかえなければならぬ、定款に定めなければならぬという事項は、今申し上げた二つのほかにどういうことがありますか。
  120. 影山勇

    ○影山政府委員 それらの事項はいずれも任意事項でありまして、そのほかに、たとえば総会の権限を改正商法二百三十條の二の関係で、業務執行の権限のあるものを株主総会に留保するという規定とか、あるいは取締役会について決議の用件について法律とかわつた定めをするとか、招集期間をどうするとかいうような点があります。
  121. 押谷富三

    押谷委員 今御答弁いただいたような相当重要な事柄について、この改正商法施行の際に効力を生ずるように定款の変更をせなければならぬと思うのでありますが、この既存会社の定款の変更は、ここに提案されております施行法によりまして、改正商法が効力を生ずる時期に、定款変更の効力が生ずる條件において事前に定款を変更するという、こういう形でやるものですか。
  122. 影山勇

    ○影山政府委員 この施行法案の附則の第二項で、そういう形でおやりになれば新法を施行になりましても、スムーズに新法の制度へ移行できると考えております。
  123. 押谷富三

    押谷委員 この附則第二項で定款の変更をするということになりますならば、おのずから株主総会の招集であるとか、定款変更のためのいろいろ準備がいると思うのでありますが、そういう重要な準備をしなければならぬ関係をにらみ合せますと、ここに出されておりますこの施行法の審議期間とにらみ合せて、一体この施行法の提案がたいへん遅れておるように思うのでありますが、これにつきまして政府はどういうお考を持つていらつしやるのですか。
  124. 影山勇

    ○影山政府委員 施行法におきましては、なるべく定款の変更を必要としないで新法に移れるようにいろいろ考慮いたしました。ことにただいま申し上げましたように、定款の変更を必要とするというような場合におきましても、新法施行前、この商法の一部を改正する法律の附則の第二項、第三項におきまして、こういう定款変更のための特剔抉議の要件が新法施行の日まで軽減されておりまして、そういう軽減された特剔抉議の方法で、いわば期限付の定款変更ができるようになつておりますので、この附則二項はそういう点を特に考慮いたしまして、定款変更が容易にできるように考えたつもりでございます。
  125. 押谷富三

    押谷委員 附則二項の関係はわかりますが、ただいま一般経済人、産業人の声を聞きますと、この改正商法の実施に備えて、既存会社が定款を変更する、これに合わない定款をかえるというための株主総会であり、その他の準備には、この期間が非常に短いので混乱をいたしておる状況であり、それがために改正商法の実施期も延ばしてくれというような要求さえも出ておるのでありますが、私どもはでき得る限り早い時期において、ただいま提案の施行法の審議を進めたいと思つておりまするけれども、この審議期間、またこれが成立と改正商法の実施とにらみ合せまして、政府の提案の時期が非常に遅れておつて一般の産業人、経済人に迷惑をかけなければならぬような状況であると思いますが、この点は特に将来御注意を願いたいと思います。  それからいま一点お尋ねをしたいのでありますが、株式の額面金額の引上げと旧株券の関係でありますが、株券の額面が五百円に変更された。こういうような関係から従来の十株券はちようど一株券に該当するわけでありまして、五十株券は五株券、百株券は十株券というふうになつて来ると思いますが、こうした場合において従来の十株券を一株券と訂正して、そのまま流用するというような形で、古い株券を利用するということは許されるものですかどうか、お尋ねしたいと思います。
  126. 影山勇

    ○影山政府委員 その点はさしつかえないと思います。ただ流通上単に十株券を一株券にするという点で、流通上のいろいろな危險が生ずるおそれが、やりようによつては起るかという心配はございます。
  127. 押谷富三

    押谷委員 きようはこの程度にとどめておきまして、また次の機会にひとつお尋ねをしたいと思います。
  128. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑はありませんか——質疑がなければ、本日はこの程度にとどめます。次会は明二十四日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十三分散会