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1951-03-22 第10回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十二日(木曜日)     午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       高橋 英吉君    古島 義英君       牧野 寛索君    眞鍋  勝君       山口 好一君    大西 正男君       上村  進君    加藤  充君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         検     事         (法務法制意         見第四局長)  野木 新一君         検     事         (法制意見参事         官)      影山  勇君         検     事         (法務検務局         長)      高橋 一郎君         検     事         (法務民事局         長)      村上 朝一君         出入国管理庁長         官       鈴木  一君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    桑原 正憲君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律施行法内閣提出第  四二号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律内閣提出第五七号)(参  議院送付)  裁判所職員定員法案内閣提出第一六一号)(  参議院送付)  非訟事件手続法の一部を改正する法律案内閣  提出第六七号)  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号)(参議院送付)  有限会社法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇〇号)  不動産登記法等の一部を改正する法律案内閣  提出第六二号)(予)  罹災都市借地借家臨時処理法改正に関する件  国内治安に関する件     —————————————
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  本日の日程中まず下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案裁判所職員定員法案裁判所法等の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。眞鍋勝君。
  3. 眞鍋勝

    眞鍋委員 今議題になりました中で、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。今回の簡易裁判所の増設について、従来国会請願陳情が出ていましたが、どの程度採用されて実現されているか。国民の熱心な要請でありますので、できるだけ採用して実現すべきであると思うのでありますが、どうなつておりますかお答えを願います。
  4. 野木新一

    野木政府委員 下級裁判所設立等につきましては、各地元の方から国会または法務府、裁判所等にそれぞれ陳情請願がありました。その多くは同時に国会にもし、裁判所にもしあるいは法務府にもしておるのが多いのであります。法務府といたしましては、この設立につきましては、予算その他の許す限り地元住民の方々の便宜をはかつて増設したいと思つておるわけでありますが、その順序といたしましては、やはり国会採択なつたもののうちで、地元準備態勢その他いろいろの事情で、設置した方が適当であるという順位を一応見定めまして、最高裁判所とも十分協議いたしまして、意見の一致したものから設置して行こうということになつておるわけであります。現在陳情請願がありますのは約四十箇所ほどでありまして、この中には国会衆議院また参議院において採択されたものが約十四箇所ほどございます。そのうち今回はこの法案に出ておりまする三箇所を先順位として、案といたしたわけでありますが、この三箇所におきましては、やはりそれぞれ国会請願採択されておりまして、たとえば小山町につきましては、第五国会及び第七国会において、衆参両院がそれぞれ採択いたしております。広島県の吉田町につきましては、第六国会において衆参両院がそれぞれ採択いたしております。なお鳴門市につきましては、たしか前会の第九国会でこれは衆議院の方で請願採択されておるものであります。今回はいろいろな事情で、この三箇所にとどめた次第でございます。
  5. 眞鍋勝

    眞鍋委員 重ねてお伺いしますが、三箇所はこのたび設置されるわけなのですか。
  6. 野木新一

    野木政府委員 現在出しておるこの法案が幸いに成立いたしますれば、小山町と吉田町と鳴門市の三箇所には簡易裁判所設立されることになるわけであります。
  7. 眞鍋勝

    眞鍋委員 なお次に裁判所法の一部改正に関する点について質疑をいたしますが、今回の改正の主たる事項は、家事調査官設置のようでありますが、調査範囲はどこまでするのか、一般的の事務経過説明していただきたいのでありますが、これをたとえば一、裁判官審判官の指示の範囲内の調査か、あるいはまたそれ以外に独自の調査ができるか、これが一つ。二、家庭事件調査刑事事件が発覚したならばどうするのか。三は、家庭まで出かけて調査するのか、あるいは家庭に行くときは身分証明書を持つて行くのかどうか。四は、どんは人物、たとえば学校出の者を採用するのか、以上四つの例を示しましたが、これらの点について経過なりを御説明願いたいと思います。
  8. 野木新一

    野木政府委員 今回の改正におきましては、家事調査官制度を新設することが、御説の通り重要な点をなしておるわけであります。家事調査官調査事項については、家事審判官の命によつて調査するのでありまして、その指揮、指示した事項調査するのが建前になつております。  次にその調査にあたりまして、何か犯罪でも発覚をいたしましたときは、もちろん犯罪を発見することが調査の目的ではありませんが、調査いたしている際に、何か犯罪があるということがわかつたならば告発する、その点は一般公務員と同様であります。  次に調査方法でございますが、これはあくまでも任意の調査でありまして、証拠調べのような強制力を與えた調査はいたしません。なお家庭行つて調査をするかどうかというような点は最高裁判所家庭局の方から、その運用の方針政府で聞いておるところによりますと、なるべく裁判所に来ていただいて、調査をして、家庭へ出かけて行くということはこれを避けるというような方針承知しております。  最後に、どんな人物家事調査官に充てるかというようなことにつきましては、家事調査官なるものは、家庭のこういう事件に当るものでありまするから、その人物につきましては、十分愼重を期して採用するような方針承知しておりますが、なおこまかい点は、裁判所の方がここにおられますから、便宜そちらから敷衍して御説明願いたいと思います。
  9. 桑原正憲

    桑原最高裁判所説明員 この家事調査官調査範囲をどうするかという点についてでございますが、御承知のように、家庭裁判所は、家庭内の事件を迅速に処理いたしますために、家庭裁判所審所について、いわゆる職権調査主義をとつておるわけでございます。この職権調査にあたりまして、調査方法といたしましては事実の調査及び証拠調べの両方の権限が認められておるわけでございます。その事実の調査につきましては、その方法様式等については、法規の上で何らの制限が設けられておらないのでございます。またその調査については強制権というようなものを用いることも認められておらないのでございます。証拠調べにつきましては民事訴訟法に定めます証人尋問とか、鑑定、検証とか、そういつたような方法がとられまして、あるいは宣誓をするとか、調書を作成するというような方式が、民事訴訟法規定によつて定められております。それにのつとつて証拠調べが行われ、従つて場合によつて強制力が用いられるということもあり得るわけでございます。今回裁判所法改正により設置せられることになります家事調査官調査をいたさせますことは、この事実の調査及び証拠調べの中で、前の方の事実の調査のみに限るわけでございまして、証拠調べというようなことにつきましては、これはやはり裁判官がその責任においてやらなければならないことでございますので、家事調査官については、事実の調査について裁判官の補助をさせるという構想に立つておるわけでございます。そうして家事調査官がその裁判官命令によりまして、事実の調査を行うにあたりましても、いかなる事項調査するか、またその範囲をどの程度調査するかというようなことは、担当家事審判官が具体的にこれを家事調査官に命ずることにいたしまして、家事調査官はその裁判官命令従つて調査を行つて行く、従つて家事調査官は、裁判官命令なしに、自分の独自の調査権を発動するというようなことは考えていないわけでございます。  それから家事調査官をいかなる人から任命するかということにつきましては、重要な問題でございまして、家庭裁判所につきましては、すでに御承知の通り、少年調査官という制度が設けられておるわけでございます。この少年調査官少年事件の審判について、非常に重要なる役割を果しておるわけでございまして、最高裁判所といたしましても、少年調査官の質的の向上をはかるということについて、鋭意努力を払つておるわけでございます。大体現在まで採用いたしましたものについて、根本的な方針は、大体旧制の学制におきまして、高等專門学校以上の人、新制学制にいたしましては、新制大学卒業以上の人をもつてこれに充てるという方針をとつてつておるわけであります。従いまして、家事調査官につきましても、やはりそれと同じ標準によつてこれを補充いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  10. 眞鍋勝

    眞鍋委員 なお三で例証いたしましたまだ家庭の方までは出かけぬというようなお話でしたが、もし出かけるとすれば、身分証明書なんかを持つて行くのですか。持つて行かなくてよろしいのですか。
  11. 桑原正憲

    桑原最高裁判所説明員 家事調査官に特別の身分証明書をすぐつくるかどうかということはまだ考えていませんが、現在裁判所につきましては、身分を証明する身分証明書というようなものがつくられておるわけでございますが、こういつたものを持つて、もし必要があれば、当事者の要求に応じて見せるということも考えられるのではないか、現在特別に家事調査官について身分証明書をつくるかどうかということはまだ考えておりません。
  12. 眞鍋勝

    眞鍋委員 以上です。
  13. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 関連しましてひとつ……。実は今国会の各委員会で問題になつている事柄につきまして、やはりこの裁判所法等の一部を改正する法律案の中でも問題になろうかと思いますので、この点をお確めいたすのでありますが、国家公務員法中の二條に、「国家公務員の職は、これを一般職特別職とに分つ。」ということになつておりまして、第十二号の、「裁判官並びに最高裁判所長官秘書官(一人)及び最高裁判所判事秘書官判事の各々につき一人)」、こういう規定改正案が今度出たわけでございますが、これは国家公務員法規定の中にあるものを、本法案によつて改正されようとするものと思うのであります。実は各委員会担当事項もございまして、たとえば法務委員会で制定された法案を他の委員会でまた独立立法をもつてこれを改正するというような、まことに国会運営上支障を来すような、法律制定秩序を破壞するような事柄が、今現実に起きておるのであります。その点をわれわれは委員会として調整しなければならない、調整しない限り、委員会でつくつた法案というものは権威がないばかりか、制定秩序を破壞する、こういう形になりますので、国家公務員法というのは当委員会制定立法ではないのでありまして、他の委員会制定立法でございますが、この点は今までその管轄委員会意見の交換なり御折衝がどういうようになされたか、また所管官庁との間に、そうしたことについて、十分な検討ができておるかどうか。この点をお伺いいたします。
  14. 野木新一

    野木政府委員 御説のところは、まことによく拜承いたしたわけでございます。御指摘の点につきましては、人事院の了承はこちらで得ております。しこうして現実のこの問題は、国家公務員法自体におきまして、その附則で、裁判官以外の裁判所職員は、昭和二十六年十二月末日まで一般職に属する職員とされておるということになつておるわけでありまして、従つてその反面、来年の一月一日からは特別職になるということが、国家公務員法自体に予定されておるわけであります。従いまして、この法律におきまして、来年の一月一日以降のことを予想いたしましてあらかじめ第二條の十二号をこのように改正いたしまして、ただその施行の期日は、この法律昭和二十七年一月一日からといたしまして、まつたく技術的の点でございますので、この程度のことはさしつかえないだろうという考え一つ法律にいたしたわけであります。ただ国会人事委員会ですか、そちらの方とは、政府側からはまだ特別な連絡はいたしておりません。
  15. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の御説明でほぼ了承いたしましたが、できますれば、こうした面に対しまして今後制定される場合、各担当委員会に御連絡を、政府の方におかせられましても、されるように要望いたしておきます。
  16. 野木新一

    野木政府委員 御指摘のことはよく了承いたしました。
  17. 安部俊吾

  18. 上村進

    上村委員 ちよつと下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いします。この設置の点についてよほど愼重にしなければならないというふうな考えをわれわれの党では持つておるわけです。それでお伺いしたいのは、栃木県の小山町ですが、小山町については簡易裁判所はないのですが、これは宇都宮から行けば、電車の便はしよつちゆう東武線がありますし、汽車もあるし、そう新たに急に、この財政難のときに設立する必要はないように思うのです。広島もやはりそうだと思うのですが、広島のことは私知りません。鳴門のことも知りませんが、特に宇都宮小山との関係ですが、ああいうふうな汽車の便利のいいところは、なるほど、あればそれはその小山中心としたところの住民には便利であるかもしれませんけれども、便利であるなんということを言えば、まあ郡に一つずつ置かなければならぬというようなことになつてしまうのですから、何か特に簡易裁判所がなくて不便を感じたとか、また特に必要だというような理由がおありでございましようか。具体的な事実をお伺いしたい。
  19. 野木新一

    野木政府委員 小山町に簡易裁判所設置する件でございますが、御指摘のように宇都宮とは、東北本線を通じておるわけでありますが、むしろ現在といたしましては、宇都宮よりも、栃木簡易裁判所の方に近いわけであります。
  20. 上村進

    上村委員 ああ間違えました、宇都宮ではない、栃木です。
  21. 野木新一

    野木政府委員 それでは御説のように、これは栃木で十分ではないかというような見解も、一方相当有力に立ち得るとは思いますが、何分小山町の新興の都市でありまして、いろいろの事件も最近多くなつて来ております。そして地元小山町はもちろん、その付近の町村の方から、かねがねこの点に設置してほしいという希望がありますし、また裁判所警察署等におきましても、同様これを支持しております。また国会におきましても、衆参両院採択しておるわけであります。しこうして法務府の方から見ましても、また最高裁判所と協議いたしましても、やはりこれに一箇所設置いたした方が、事件処理という点から見ても、また地元住民の便利から見ても至当であろうというような結論に達したわけでありまして、今約四十箇所ほど請願陳情の出ているうちでは、これなどが最も有力な、順位として最高位に位するものである、そう判断したわけでございます。
  22. 上村進

    上村委員 ちよつと私の質問お答えが願えないような形でございますが、とにかくこういうものの設置なんというものは、悪口言つちや何ですが、よく地方ボス自分のために運動して、——必要と言えばみんな必要ですが、そう大して必要でないのに、ボスあるいは対立的な関係から設置するというようなことが、これにはないかもしれないが、よくこの種の運動にあるわけです。それで、私は小山宇都宮というものはよく知つております。あそこは、まああれば便利ですが、なくてもいいのじやないかと思われる。だからして何か特別な、交通の便やいろいろなことがあるのだということを——小山に限らず吉田などもそうであろうと思うのですが、その点をお伺いしたい。そうして裁判所が独自に、何か特別な何をもつて、公平な眼でお調べなつた結果が、どうしても設置しなければ困る、あるいは事件件数が輻湊するとか、そういう点から見て、これはどうしてもこうだというようなことがあれば、そういうようなことをお聞かせ願いたいと思います。
  23. 野木新一

    野木政府委員 小山につきましては、昭和二十四年一箇年間における事件刑事については八百九十六件、民事については百九十四件ほどありまして、この程度あるならば簡易裁判所設置してもいいじやないかというように、事件数の点からも思われるわけであります。しこうしてなおこの点につきまして、地方ボスとかいうこともお話に出ましたが、もしそういう一方的のものでありますならば、各方面、たとえば地元町村はもちろん、検察庁それから裁判所、あるいは弁護士会そういうものが一致して賛成するには至らないと思うわけでありますが、小山につきましては、この弁護士会裁判所検察庁が一致して賛成しておりますし、また国会採択になつておるという事情及び私の方で事件数調査した結果によりましても、まあまあ一方的のことだけに動かされたものではないというふうに確信しておるわけであります。
  24. 上村進

    上村委員 くどいようですけれども、そうすると栃木簡易裁判所管内において、栃木地方件数小山地方件数とがどういうふうになつておるかということをお調べになりましたか。
  25. 野木新一

    野木政府委員 現在この法案小山簡易裁判所管轄に属せしめた地域は、大体栃木簡易裁判所管轄に属しておるわけであります。この二つをわけますと、小山簡易裁判所につきましては、ただいま申し上げたような事件数になります。栃木簡易裁判所に残存する件数は、民事につきましては昭和二十四年一箇年につきまして三百二十五件、刑事は千五百二十五件ということになるわけであります。なおこれは簡易裁判所裁判権を拡張する以前の数でありまするから、簡易裁判所裁判権を拡張しました今年度におきましては、おそらく事件はもつと上まわるのではないかと思うのであります。
  26. 上村進

    上村委員 わかりました。そうすると、そういう場合に簡易裁判所出張所というようなものでやつておるところもあるように思われますが、簡易裁判所としては支部はできないかもしれませんが、そういうことで、日本でそういうものをやつておるのがあるかどうか、あるとすれば——なくてもそうですが、栃木あたりのそういうところには出張所というものでやることができぬかどうかということを最後にお確かめ願いたいと思います。
  27. 野木新一

    野木政府委員 簡易裁判所につきましては、現在の建前出張所という制度は認めておりませんので、そういう制度は新しくつくらなければできないわけでございます。
  28. 加藤充

    加藤(充)委員 関連して……。あなたの方の資料だと、関係弁護士会意向がそうだつたというのですが、さすれば、あなたが「こやま」と言つたのは正式な地名は「おやま」だと私どもは理解しております。小山栃木管轄だとしますならば、栃木簡易裁判所には弁護士会があると思うのですが、あそこの弁護士会小山に持つて行くことに賛成しておりますか。
  29. 野木新一

    野木政府委員 これは宇都宮検察庁を通じて宇都宮弁護士会に照会いたしましたので、宇都宮弁護士会管内でありますから、十分意見を聞いておるものとこちらでは承知しておるわけであります。
  30. 加藤充

    加藤(充)委員 小山弁護士は何人おるのですか。
  31. 野木新一

    野木政府委員 今はつきりした調査は持つておりませんが、多分おるだろうと思います。
  32. 加藤充

    加藤(充)委員 小山には、私の知つておる限りでは一人もおらぬか、あるいはおつても一人だというふうに聞いておるのです。そうするとここでは検察庁意見というのが冒頭に出ておるわけですが、人権保障を要望されておる点からいうと、具体的に人権保障中心になるのは、これは制度として必ずしもいいことではありませんけれども、具体的な現実の問題としては、弁護士依頼者との関係刑事民事を通じて人権保障というものが現実になされておるわけです。その比重は高いわけですが、さすれば小山に一人か、あるいはおらぬくらいの弁護士状態で、小山にたくさんの事件があるからといつて、そこへ持つて行くというようなことについては、ぼくは弁護士会意見というものは、こういうふうな形で出て来たものかどうか見せてもらいたいと思う。それから第一、人権保障の点についてはきはめて事欠く場合が多いのであります。大体気のきいた事件になりますと、弁護士のところへまずかけつける。そうして相談する。そうして事件の前日ないし当日に弁護士と同道したり打合せしたりして、そうして出頭ずるのでありまして、さすれば小山弁護士が一人ないし一人もおらぬというような状態になつて、それを小山管轄を移したところで、弁護士はわざわざ出張して来なければならない。また弁護士のところには一々当日、前日に行かなければならないということになりますと、具体的な人権保障の点については、きわめてこれはマイナスになつてしまうのである。さすれば管轄地方検察庁など、が、事件が多いから、そこへ持つて行けというようなことがまつ先に出るのは当然予想されることでありまして、これはほんとうに人権保障を求めている、あるいはそういう立場に置かれた人々、こういう人々から上つて来た自主的な意見とは必ずしも考えられない節があるわけです。それから第一番に弁護士会意見といつたところで、それはどういうふうな意見になつておるのか、これも見てみなければわからぬと思うのですが、その詳細を御発表願えますか。
  33. 野木新一

    野木政府委員 この法案の立案に至ります順序を申し上げれば、かえつて御了解していただけるのではないかと存じます。たとえばこういうことであります。陳情等国会にありますと、あるいは法務府に直接ありますと、すぐ最高裁判所にも連絡いたしまして、最高裁判所の方から地元裁判所意見を聞いてもらう。法務府といたしましては、地方機関でありまする検察庁にまずその書類をまわして検察庁を通じて地元の市町村なり、弁護士会意見を聞いていただく。裁判所の方も同様に地元の市町村弁護士会意見を聞いて来まして、その書類最高裁判所へ参りますので、それと検察庁から法務府へ来ました書類と合せ、しかも陳情などの書類と合せてみてきめるわけでありまして、検察庁だけの意見できめるのではございません。また検察庁が独自にここに設置したらいいということを上申して来て、それに基いてやるわけでもございませんで、今申し上げたように、地元の方から陳情などあつた場合に、それに基いて、今言つたようにして調査して行く。その結果に基いてこの設置をきめる、あるいは管轄の変更をきめる、そういうような順序になつておるわけでございます。
  34. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると関係弁護士会意向というようなものは、何か問題があれば当然出て来るわけなんで、積極的に進んでそれを支持するというような関係弁護士会意向というふうなものはないのですか。
  35. 野木新一

    野木政府委員 法務府から直接地元弁護士会書類をやり、意見を求めることはありませんが、地元検察庁なり裁判所から各地元弁護士会意見を求めております。それにつきましては、こちらに対する報告は、弁護士会については特に意見がないとか、あるいは特に賛成したとか、反対のある場合には弁護士会反対である、そういうようなことを回報して来るわけであります。その程度で一応こちらは判断してやつております。
  36. 加藤充

    加藤(充)委員 地元に仮庁舎の用意ありということがここに書いてあるのですが、どういう仮庁舎でしようか。
  37. 野木新一

    野木政府委員 その点は大体地元の方にまかしておりますので、こちらとしては地元の方で大体十分だというならば、仮庁舎としてさしあたつて使えるだろうというように、一々詳細に当つているというわけではございません。
  38. 加藤充

    加藤(充)委員 事件刑事が八百余件で、民事が百九十四件で、そこで当然庁舎が必要になるわけですが、こういうふうなものを仮庁舎というようなことで補うとすれば、予算的にどういうふうな利便になるのか、その点を承つておきたい。そうしてまた先ほどお示しになつ件数刑事民事的な数字から見れば、その庁舎の予想というものはどのくらいにお考えになつておるのか、並びにその予算の数額等についても承つておきたい。
  39. 野木新一

    野木政府委員 小山町につきましては、現に町有の建物があるそうでして、それを大体貸してくれるという託になつておるようでございます。なお簡易裁判所は正式に建物を建てるといたしますと、平均規格と申しましようか、最高裁判所側で一応予定しておるものは、営繕費として大体六百四十万円ぐらいかかるそうであります。検察庁はおそらくこれよりも少額であろうと想像しておりますが、今具体的な掛字は持つておりません。
  40. 加藤充

    加藤(充)委員 ぼくたち弁護士をやつておりますので経験することなんですが、一たび簡單な秋祭の小屋がけ式みたいなところに入るのですが、それからまたすぐに、それでは事欠くというので、寄付金などを集めたりその他の方法で移転するのです。そこに新築のあれが始められたりしておつて、予算的にも問題が多いと思うし、その背後の実情においても、事いやしくも裁判所検察庁の建物の建設の問題ですから、これはたいへん神聖にならなければならないと思うのですが、それにもまして一時移つてまたかわるというような間に、まるきり事件が粗略に取扱われたり、あるいは一つも進行しなかつたり、行つてみて職権で変更されたりというような場合が——このごろは少し違うかもしれませんが、前の簡易裁判所設置の問題のときには幾多あつたのでありますが、そういう点で町有ということはわかつたが、その広さはどういうものだというような事柄、これはやはり明確にしておかないと、これで済ましたわ、またぞろすぐにその次の手を打たなければならないというようなことになつて、便利どころではなしに不便が加わる、しかもその背後に忌まわしいようないろいろのうわさも、神聖たるべき裁判所検察庁方面の建造について起きたりいたしまして、たいへん迷惑が多いと思う。ひいてはそのことがもつて地方簡易裁判所の所属する管轄の地域の調停委員あるいはその方面のいろいろなボスというような者と、そこに納まつた若手の格の低い検察官あるいは裁判所判事関係あるいはそこに地元から通勤可能なという便利的な立場で勤務される職員の方々との間のつながりが、きわめて不明確な点が出て来る。裁判が刑事民事も調停も、なべてその勢力にいろいろなコネクシヨンと影響を受けるというようなことになつておる実情は、あげれば私ここに資料を二、三持つておりますけれども、あなたの方でもお気づきの点も多々あろうと思うのでありますが、そういう点をお伺いしたいのです。仮庁舎が町有であるというのですが、その町有の仮庁舎の広さあるいは規模というようなものは、どういうものであるか。これを承つておかなければ、地元に仮庁舎の用意ありというだけでは、そこに設置するという理由の一つには必ずしもならないのであります。
  41. 野木新一

    野木政府委員 今あいにくここに図面等を持つておりませんが、一応申し上げますと、小山町の役場に隣接しております小山町有の木造二階建の建物一棟があつて、これがまず候補に上つておるようであります。
  42. 加藤充

    加藤(充)委員 今までの御意見を聞いて私の意見を申し述べたいと思うのでありますが、やはりこれは具体的に関係弁護士会などの意見国会において明確にした上でなければ、今のようなことでは、必ずしもそこに設置することが御提案の趣旨に合致するかどうか。私どもはどうもその点を確認するわけには行かないのでありまして、こういう問題については、急ぐことも急ぐのでありましようけれども、やはり人権保障の先頭に立つ、そうしてただ自分たちの利害というだけでなしに、公正な立場に立ち得るはずである関係弁護士会意向を、当委員会において明確にされた上で決定すべきものでなかろうか、こういうふうに考えます。関連質問を終ります。
  43. 山口好一

    ○山口(好)委員 今加藤君、上村君などの御質問になりました小山町に簡易裁判所をつくる件でありますが、これは私の地元でありますので、実は質問するというよりも私が答えれば一番いいのだと思うのであります。われわれも紹介議員として第五国会、第六国会にも請願をいたしておりまして、いろいろ各方面から調査つて参集両院とも採択になつております。それでただいまいろんな方面から質問がございましたが、私がそれに加えて質問をいたしたいと思いますのは、地理的にいろいろ御検討になりまして宇都宮にも裁判所があり、栃木市にも簡易裁判所はありますが、小山簡易裁判所ができましたときに、その管轄に属しまする地域というものは、相当広範囲になるのでありまして、鉄道の便あるいはその他バスなどの乗物の点から見まして、小山にできておれば非常に民衆のために便利がいい。共産党の諸君は何か裁判所ができると、人権擁護の建前から非常に不利益であるということを申されておりますが、反面から申しまして、民衆の側から見まして、これは人権を十分に擁護できないという結論になりますので、裁判所ができることはそういう両方面から考えますれば、やはり便利なところにつくつてほしい。事件が発生する場合に、手近なところに簡易裁判所を設けてもらうということは、人権擁護の点からも最も望ましいことである、こう申さなければならないのであります。でありますから、栃木簡易裁判所はありますけれども、御承知のように、小山から両毛線というのが支線で分離するのであります。東北本線宇都宮から参りましても、栃木裁判所に参りますのには、あそこで三十分か一時間待ち合せて乘りかえなければならないのであります。また南の方から東北本線で参りましても、やはり小山で一旦乘りかえて行かなければ栃木には行けない。そういう地理的な点は関係当局としましては今お答えがなかつたようでありますが、その点をひとつお答え願いたいと思つております。
  44. 野木新一

    野木政府委員 ただいまの点は、一応当然の前提になつておるような関係でありますので、先ほどの答弁では省略いたしましたが、小山簡易裁判所設置することになりまして、現に小山管轄に入れました町村におきましては、非常に栃木市に比べまして便利を得るわけでありまして、その状況につきましては、たしかお手元に差上げておるところの各町村からの状況についての比較対照表によつて明らかになつておると思います。そしてこの管内にあります関係町村は、いずれも小山簡易裁判所設置され、その範囲内に入るということについて、町村側でも希望しておるわけでございまして、その事情を御了承願いたいと存じます。
  45. 山口好一

    ○山口(好)委員 それから先ほど弁護士会の人たちが反対をしておらないかというような御質問がございましたが、小山の町には現在弁護士が一人おります。それから栃木市ですが、栃木小山の間は三里ほどしか離れておりません。その栃木市には多分七人の弁護士が現在おると思います。従いまして、両毛線を利用するなり、あるいは栃木から一時間置きに出ておりますバスを利用することによつて栃木弁護士は容易に小山に往復いたすことができるようになつております。また宇都宮市に在住いたしまする弁護士諸君もたくさんおられますので、そういう人権擁護の点では欠くるところがないと私は信じておりますが、特に地元弁護士会の諸君は、最初のころに幾分反対の色がありました。それは職業上から、幾らか事件が減るのではないかということで多少反対をなさつた方もありますが、だんだん了解せられまして、特に反対というような声を上げておりませんし、むしろその沈黙しておりますことは、事件の多い小山であるから、小山簡易裁判所を設定しても、そこに出張してもいいという意向になつておるように私は見受けております。ことに栃木市の現在の簡易裁判所の調停事件は非常に多くありまして、実際に行つて見ていただけばわかりますが、朝早くから多数の申立人と相手方がたむろいたしておりまして、事件が多いために調停委員などを総動員してやつておるのでありますが、その日に終らずに、むなしく帰るというような人もできて来るのであります。もし小山簡易裁判所ができまして、二つにわけるというようなことになりますれば、いわゆる民衆のためにも非常に利便を増大いたすわけでありまして、さような点から、地元弁護士会から特に反対陳情とか、反対請願とかいうものは出ておらないかどうかを伺います。
  46. 野木新一

    野木政府委員 別にそういうような反対請願なり陳情は、法務府としてはまだ受取つておりません。
  47. 上村進

    上村委員 一括されておるようですから、少し質問したいのですが、一、二点でよろしゆうございます。これは眞鍋委員説明で大体盡きておりますが、なお疑問とするところは、そうすると家事調査官というものは、具体的な事件が、訴状の提出あるいは和解の申立て、あるいは調停の申立てというような具体的事件裁判所へ係属した場合にのみ、その事件について係裁判官の命によつてのみ調査する、こういうふうにお伺いしてよろしゆうございますか。
  48. 野木新一

    野木政府委員 まつたくその通りでございます。
  49. 上村進

    上村委員 それはそれでよろしゆうございます。そうすると、これはくどいようですが、その家庭裁判というものは、新民主憲法にのつとつて設立した司法裁判所としては、特殊の社会性を持つておるものと思いますが、先ほども眞鍋委員質問したのですが、調査といえば、それはどこまでも必要だ、こういうことになると、家庭の内部へ行つたり、親戚のところに行つたり、子供のところへ行つたり、嫁入り先へ行つたり、いろいろなことをされるわけですね。こういうふうに発展して来ると、その家庭裁判なるものは、まつた家庭裁判設立の趣旨を無視してしまつて家庭の平和が、隠密にしなければならぬのが暴露されて、それがためかえつて派生的にいろいろなことになつて、非常に複雑怪奇になつて来ると思います。まあ裁判所が認めて調査するのだから、そう法外なことはないと思いますが、しかし法律できめる以上は、やはりそれらに対するある一つのわくを示しておく必要があろうと思うのですが、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  50. 野木新一

    野木政府委員 家事調査官調査が、御指摘なつたような行き過ぎになることは、まことにこの制度の本旨を没却するものでありまして、従いましてこの制度を立案するにつきましても、そういうことのないようにすべて裁判官が主宰いたしまして、家事調査官調査を行うにつきましては、全部裁判官命令従つてやるということにいたしまして、すべて良識ある裁判官の処置によつて、この制度本来の目的を逸脱することのないようにしておるわけでございます。
  51. 上村進

    上村委員 その点、たとえば農村あたりでは嫁に行つて出て来たり、兄弟けんかがあつたり、いろいろなことがある。そういう場合に、一方がいよいよ困つて裁判所に出す。そうすると、その裁判所へ出したというだけではよくわからぬのですが、いよいよその事件について裁判所から調査官が来たというようなことになりますと、裁判所が職権で行くのだから何も法律的には問題はないのですけれども、実際には非常に問題になる。証拠調べならばむろんいいのですが、調査というものと裁判所証拠調べというものとの関係、その調査事項そのものに対する証拠調べ調査調べとの限界が、そこに明確にされるようなことが考えられないものかどうか。結局裁判所というものや検察庁というものは、そう言つてはなんですけれども、人民はあまり歓迎していないわけです。自分のうちへ裁判所から来たとか、検察庁から来たということは、非常な重大問題になるわけです。ですから、その証拠調べ家事調査官調査というものの、調査事項に対する限界、そういうふうなものはどういうふうになつておるか。これは大事だと思うのです。
  52. 野木新一

    野木政府委員 まず家事調査官調査は、裁判所で行う、すなわち関係者に裁判所に来ていただいて、裁判所で行うということを原則的建前といたしますので、家事調査官が随時出かけて行くということは非常な例外な場合であります。その点でまずおつしやるような心配の点は、大体避けられると思います。  次に第二に、家事調査官は先ほど裁判所側から申し上げましたように、なるべく素質のいい人を選びまして、家事調査官の質が悪いことによつて起る弊害を避けたいと、この制度では思つておるわけであります。  次に証拠調べとの関係でありますが、証拠調べは御承知のように証人尋問とか、関係人の尋問とかいうような一定の方式に従つて強制力を持つてやるわけでありますが、この家事調査官調査は、その強制力を用いずに、すべて裁判官の指揮命令従つて、任意的に書面について、あるいは人の陳述を聞いて調査するという程度でありまするから、まず行き過ぎることはないものと確信しておるわけでございます。
  53. 上村進

    上村委員 最後に一点確かめておきたいのですが、なるほど建前はそういうふうになつておりますけれども、法律に何か明示しておかないと、やはりこれは家事調査官裁判所の命によつて、つまりほとんど証拠調べに近いようなものまでもやらされる場合がないとも言えないわけです。裁判官が賢明だといつても、多数裁判官のうちには、いろいろ間違えることもある。だからどうしてもそこにやむを得ず家庭に臨んで、あるいは争議の当事者のところに臨んで調べるときには、急速を要する場合とか、あるいはやむを得ない場合とか、何か制限をつけなければ、やはり調査官の調査の行き過ぎがあつて、それがために人民が迷惑をすることがあろうと思われる。そういう点に対しては、特に十分な警戒はむろんしてもらわなければならないが、法を制定した以上は、法の明文でそこのところを明らかにすることができないか、こう思います。
  54. 野木新一

    野木政府委員 家事調査官調査は、先ほど来申し上げておりますように、すべて裁判官命令従つてやるわけでありまして、行き過ぎがないということにつきましては、家庭裁判所裁判官の良識に信頼するわけであります。ことに外に出かけて行くというような場合には、一応裁判官が非常に特別の場合に、そういうことを命ずることがあるとすれば、命令の際にとくと注意するということを期待いたしますので、御懸念のようなことは万々ないと思つておるのであります。
  55. 上村進

    上村委員 その点はよろしゆうございます。もう一点だけ……。家庭裁判所の成人の刑事事件について、罰金刑にとどめないで、禁錮刑も科するのが便利だから、そうしたいということでありますが、これは私どもからみると、やはり家庭裁判所は主としていわゆる家庭裁判所的な性格を持つておるのですから、刑事裁判をやるという本来の建前ではない。そして簡易裁判所家庭裁判所とは、むしろ普通の裁判所よりも似寄つておる。ですからこの家庭裁判所が成人の刑事事件について、自分が扱つたら便利だからといつて、どんどん禁錮刑を科して行くということは、やはり禁錮の建前から言つても、他の地方裁判所の権限から言つても、これは改正の方がむしろ行き過ぎであつて、当を得ないと思うのですが、その点はどういうふうに理論づけておりますか。
  56. 野木新一

    野木政府委員 御指摘のような点も一応考えられると存じますが、しかし家庭裁判所における成人の刑事事件の運用の実情を見てみますと、昭和二十四年度におきましては、成人の刑事事件の受理したものは二百三十一人でありまして、そのうち既済が百六十人、地方裁判所に移送したのが、既済のうち五十四人、それから二十五年度におきましては、受理したものが三百八十九人、既済が三百四人、地方裁判所に移送したのが百十二人であります。この両年を合せますと、六百二十人受理、そのうち五百二十四人が既済、この既済のうち、百六十六人が禁錮以上の刑を科するのを相当として、地方裁判所に移送になつておるわけであります。そのパーセンテージは約三一%にあたります。そして家庭裁判所で禁錮以上の刑を科するのを相当として、地方裁判所に移送いたしますものは、事件をある程度審理いたしまして、刑の量定を考えるという段階にまで至りませんと、その決断がつかないわけでありまして、ある程度まで審理して、地方裁判所に移送する。地方裁判所はまた同じ事件を、初めから同じようなことをやり出すということでありまして、非常に手続が重複いたしまして、むだな点が生じ、事件の審理促進という点から好ましくないわけであります。しかも家庭裁判所地方裁判所につきましては、家庭裁判所において成人の事件を取扱うものにつきまして、アメリカなどにおきましては、一般の刑事手続よりは簡易な手続があるそうでありますが、日本では普通の刑事訴訟法で一律にやつておりますので、簡易の手続も認められておりません。そういう点からいたしまして、やはり家庭裁判所をして禁錮以上の場合も扱わした方がいいのではないか、そういうふうな結論に達したわけであります。
  57. 上村進

    上村委員 そうすると、裁判所法の三十一條の四ですが、これによつて結一局一人制と会議制になつて、そういう禁錮以上の刑になつた場合には、これは一人制でなく、会議制でやるというようなこともお考えになつておるのでございましようか。
  58. 野木新一

    野木政府委員 家庭裁判所で成人の刑事事件を行います際に、その刑事事件につきましては、現在のところ一定の範囲のものだけでございまして、いわゆる法定会議事件に当るものはございません。それほど刑の重いものはないわけであります。従いまして原則として單単独制でございますが、法律的には、事案によつて会議でやつてもよいわけであります。大体單独でやる場合が多かろうと存じます。この点は地方裁判所においても同様であります。
  59. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑はありませんか——質疑がなければ、本三案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  引続き三案を一括議題といたしまして、討論に付します。討論の通告があります。これを許します。上村進君。
  60. 上村進

    上村委員 共産党としましては、下級裁判所設立に関する法律案の方は、新設には反対でございまして、あとはむろん賛成でございます。その新設に反対するということは、この程度の提案理由によりましては、どうしても法律をもつて多額の費用、すなわち六百四十万円ですか、全部で二千万円以上の予算が至急にいるわけになるのでありますが、それほどにしてこの裁判所設置する必要があるかどうかということについて、相当疑問を有するのみならず、検討を加えて行かなければならないものであろうと思うのであります。私これは個人でございますが、簡易裁判所の新設は簡易であるからどんどんやる、また便利であるからどんどん新設して行くということになりますが、その裁判所設置及び廃止というものは、重大な人民に対する影響を持つておるのだから、軽率にやるべきではない。従来私どもの経験するところによると、政府方針によつて、われわれが何十年かそこへ出入りした裁判所が、突然と廃されたり、また新設したり、こういうことは、むろん伽藍崇拜、偶像崇拜ではないけれども、一旦裁判所というものができた以上は、その裁判所は相当永久性を持つというものでなければならないし、またそういう方針で立てられておると思います。だから立てるときには、相当永久性を持たして立てる。立てた以上は、やたらに廃止するということなしにして行くべきだと思うのであります。私の郷里の新潟県の南魚沼郡には、昔から六日町の区裁判所があつた。ところが今は廃止してあつて、今度そこに出張所ができた。だから裁判所に対する威信というものが、そういうことによつて相当毀損されておるわけです。そんな点から見ましても、新設ということについては相当考慮を要するということ。それから便宜であるというだけでは、便宜ならば村に一つつたならば一番いいということにもなるわけです。そういうことで本件は設立をしなければならないという理由がまことに形式だけで実体を備えていないように思われる。この三案ともそういうふうに考えられるが、新設に対しては反対をする次第であります。それからこれは私見でありますが、簡易裁判所出張所というものは非常に便宜なものではないかと思うのです。そういう意見簡易裁判所だけでなくて、検察庁などにもあるようですが、いずれにしましても、今日本の国民は非常に経済的にきゆうくつになつて来ておるときに、厖大な費用を要する新設というものは反対をしておく次第であります。  それから裁判所法の一部を改正する法律案、この点につきましては大体賛成なんですけれども、成人の刑事事件の権限拡張には反対するわけであります。これは先ほど言いましたように、簡易裁判所との均衡もありますし、本来成人の裁判といつても、家庭裁判の本質から言つて、そこで刑事事件をどんどんやるということは建前でない。だから現行法のように、禁錮以上にあたるような重大な刑事事件は、本来の刑事裁判所にまわすというのが、人権擁護の上から言つても、家庭裁判の本質から言つても適当であろうと思います。この点だけ反対する次第であります。
  61. 安部俊吾

    安部委員長 これにて討論は終りました。引続き採決をいたします。まず裁判所職員定員法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  62. 安部俊吾

    安部委員長 起立総員。よつて本案は万場一致をもつて可決いたしました。  次に下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所法等の一部を改正する法律案の二案を一括いたしまして採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  63. 安部俊吾

    安部委員長 起立多数。よつて両案は可決いたしました。  この際ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なしと認めます。委員長に一任に決しました。  次に日程追加についてのお諮りがあります。午後一時半より、本日の日程に追加をいたしまして、国内治安に関する件を議題とし、昨日浅草において米軍兵士六名が多数の朝鮮人に暴行されたという事件につきまして、その実情を調査いたしたいと思いますが、本件を日程に追加するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 安部俊吾

    安部委員長 御異議がなければそのように決します。  それでは午後一時半まで休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  66. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  ただいまより、罹災都市借地借家臨時処理法改正に関する件を議題といたします。この際、罹災都市借地借家臨時処理法改正に関する小委員長の報告を求めます。小委員長牧野寛索君。
  67. 牧野寛索

    ○牧野委員 先に日本弁護士連合会から、罹災都市借地借家臨時処理法第十條の期間を二箇年延長されたいという要望がありました。これを機会にして、二月十六日、罹災都市借地借家臨時処理法改正の小委員会が設けられ、正式には二回、事実上四回の小委員会を開いて審議しました。ここに小委員会における審議の経過並びに結果について、少し詳しく御報告申し上げたいと存じます。  同法第十條には「罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された当時から、引き続き、その建物の敷地又はその換地に借地権を有する者は、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これを以て、昭和二十一年七月一日から五箇年以内に、その土地について権利を取得した第三者に、対抗することができる。」とあります。弁護士連合会からの同法第十條の期間延長を要望する理由は左の通りであります。  右條項にある昭和二十一年七月一日から五箇年以内といえば、本年六月末日までのことであり、その日以後は、いわゆる戰災借地権者といえども在来の一般対抗要件を具備しなければ、その後その土地について権利を取得した第三者に対抗できなくなるわけである。しかるに戦災後及び終戰後の混乱にまぎれ、地主が在米の借地権を無規して新規に第三者へ貸し、第三者がその地上に新築して居住しているので旧借地権者が復帰することができず、これらの者から右第三者へ建物收去、土地明渡しの訴訟を起し、現に係争中のものも相当多数あるはずである。立法当時の考えでは、おそらく五箇年間には建築事情も安定するであろうし、また前記のような紛争も片づいて、平常通りの法律秩序が回復するものとの見通しから、一応五箇年と定めたのであろうが、その後のインフレーシヨンにより建築事情はますます困難となり、また建物收去、土地明渡しの訴訟は、予想のごとく簡單には片づかない。そのうち存続特例期間がまさに切れようとして来たのである。もしこのままで放置すれば、本年七月一日以降において地主がその土地の所有名義を変更すれば、せつかく在来地に復帰しようと努力して来た旧借地権者は、單なる金銭賠償を受けるのみで(それも地主の無資力等のため現実に賠償を受け得るかいなか、はなはだ疑わしい)もはや元の場所への復帰の道を絶たれてしまい、せつかく法律が旧借地権者保護のために設けた前記條項が十分な効果を上げ得ないことになる。なお同法第二條に基き設定された借地権の対抗力に関しては、法律に明文なきため判例の解釈も二様にわかれ、イ、設定されたときに対抗要件を具備したものと解する。ロ、前記第十條の類推解釈により対抗し得ると解するものとあり、必ずしも一定していないところ、右第二條第二項、第三項をめぐつて深刻な争いが続けられ、土地引渡しの本訴はおろか右臨時処理法に基く借地権設定、條件確定の申立事件すら未済係属中のものが多数ある現在、万一右、ロの解釈に落ちつくものとせば、それらのものはことごとくむだになるおそれあり、いずれにせよ前記第十條の五年の期間は、さきに同法第二條の借地申出期間の一年を、二年に改正伸長した権衡上より、少くとも二年間伸長する必要あるものと信ずる。よつて当局におかれては、右法律改正案を第十通常国会に提案し、万善の措置を講ぜられるよう早急に手配願いたく上申いたします。  これに対して法務府は賃借人が永久に取得したものであるから、当事者間においては、権利の実体関係は定まつている。二、裁判所に係属している訴訟や調停に関係ある賃借人のみのために立法することは、黙つているが、さらに多くの国民を保護しないこととなり、その間権衡を失する。三、この対抗力は立法当時からおおむね五年間と限定して、借地借家問題に対策を講じて来た。結局期間延長の必要ないのみならず、訴訟係属中の賃借事件のためにも経過規定の必要はないと主張したのであります。建設省も、一、都市の建築復興の見地から、建築敷地に登記のない借地権で対抗されては、第三者は土地買入れにいつまでも不安を感ずる。ニ、建築事情の促進の見地から立法しないことを望むとの主張がありました。  最高裁判所は、一、裁判所に訴訟や調停が係属中の事件については、第十條の対抗力に基いて保護すべきである。二、しかし経過規定として立法技術がむずかしいから、そのために訴訟事件の終了時期が明確に見通しつけられないようでは、延長を望んでいないという事情がわかりました  ここにおいて法務委員会委員会は、愼重に考慮した結果、次のような方針を定めました。  第一に、国会において、ぜひとも立法しなければならぬとの一般的條件は備わつていない。具体的にいえば、裁判所の訴訟遅延のため賃借人が自己の責に帰すべからざる事由によつて、不測の不利益を受けるから、これを立法によつて解決しなければならぬというような事情はない。  第二に裁判所に係属している賃貸借事件については、訴訟たると調停たるとを問わず、その事件が終了し、その土地の上に建設を終り、登記を終るまで、同法第十條の対抗力を保持させねばならぬ。  第三に期間を一年なり二年なり延長する新立法は、同法第十條の解釈問題と離れて、貸借政策、都市政策という政策の見地から取扱わるべきであるから、各党はその政策からこれを決定すべきである。  以上が小委員会で立てた方針であります。  翻つてこの際この問題の特殊性について申し上げて御理解を得たいと思う。  まず法律の專門家でも同法第十條については誤解を生じやすいのであります。たとえば一読しただけで賃借人の対抗力の根拠法は、今年六月末日でなくなるとか、あるいは訴訟係属中の事件でも今年七月一日には根拠法が失効するので訴訟では敗訴するとか、はなはだしきは罹災都市臨時処理法は今年六月末日で廃止されるとかというぐあいに考える人がありますが、そうではないのであります。その理由は次々に申し上げることにしますが、どうしてこんなに誤解を生じやすいかと申しますと、一は同法が臨時法と永久法との混合した中途半端な法律であること、すなわち同法は戰災の臨時処理だけでなく、後に地震風水害等の自然災害を入れたので永久法となつたことであります。その二は條文が五年間以内に取得した者に対抗力があると定めているが、漠然と五年間以内はと誤読するときは、先のような誤解を生ずるのであります。第十條の期間は登記のない借地人の対抗力を規定しているにとどまり、この対抗力がなくなつても民法借地借家法の対抗力の規定はありますから、根拠法はなくなることはないのであります。いわば例外法がなくなつて原則法にもどるだけであります。いわんや罹災都市借地借家臨時処理法が廃止になるというわけではありません。  そこで元にもどつて法務委員会委員会方針につきまして申し上げますと、第二の事項すなわち裁判所に係属している借地借家事件については、同法第十條の対抗力を確保せしめねばならぬことについて、これには経過規定を立法せねばならぬか、立法しなくてよいかにつき意見がわかれたのであります。しかし結局同法十條は五年以内に権利を得た者は永久に対抗力がある、玉年間だけ対抗力があるという意味ではない、従つて民事事件において、裁判所は口頭弁論終結後の現行法を適用して判決すべきであるから、その時の現行法は第十條の対抗力を保持している、一度得た第十條の対抗力は今年七月一日になつてもこれを失うことはない、このように見解の一致を見たのであります。と同時に七月一日以後土地の所有権が讓渡された場合に、賃借人は訴訟外にある新取得者に対抗できないので、訴訟には勝つても経済的には損をする、すなわち賃借人は結局土地を訴訟外の新取得者に引渡すのやむなきに至り、損害賠償金を旧賃借人に請求するだけということになり、そしてこの救済問題は政策問題であるということに意見の一致を見たわけであります。これより先に経過的立法を必要とする意見もあつたので、これに備えて衆議院法制局に立案を命じましたところ、次のような條文案の提出がありました。   第十條の第二項として次の一項を  加える。   前項の借地権に関して昭和二十六年六月三十日までに訴訟または調停事件が係属し、その訴訟の終局判決の確定または調停の成立により当該借地権の存在が認められた者は、前項の規定にかかわらず、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、これをもつて、同年七月一日からその終局判決の確定または調停の成立の日以後六箇月を経た日までの間に、その土地について権利を取得した第三者に、対抗することができる。 これを小委員に配付して参考に供したのであります。かくて三月十七日号最終の小委員会を開きました。自由党から経過的立法を設ける必要はない、また期間を延長することも都市復興の見地から必要ないとの意見が開陳されました。社会党から借地人保護のため一年間くらい延期すべきであるとの主張があり、共産党から前述の経過的立法の條文を支持する発言がありました。結局多数をもつて経過的立法をしない、すなわち罹災都市借地借家臨時処理法は、この際改正しないことに定まつた次第であります。右御報告申し上げます。
  68. 安部俊吾

    安部委員長 これにて小委員長の報告は終りました。本件について御発言はありませんか。——新発言がないようでありますから、お諮りいたします。本件は小委員長の報告の通り改正する必要を認めないことに決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ1者あり〕
  69. 安部俊吾

    安部委員長 新異議なしと認めます。よつてそのように決定いたします。     —————————————
  70. 安部俊吾

    安部委員長 次に国内治安に関する件を議題といたします。本件に関して発言の通告があります。順次これを許します。押谷富三君
  71. 押谷富三

    ○押谷委員 出入国管理庁長官鈴木氏にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、それは昨年の暮れから今春にかけまして、全国各地において朝鮮人の騒乱事件が起つておるのでありますが、それを契機といたしまして、朝鮮人に対する送還という関係が相当政治的にも関心を集めているようであります。昨年暮れの政府の発表では、不逞鮮人特に騒乱事件などを計画、指導したような朝鮮人に対しては、これを本国に送還する法的措置を講ずる、政令を出すというような発表まであつたのでありますが、これはいまだ実現をされておらないようであります。いずれにいたしましても、朝鮮人の本国送還ということが、鮮人取締り、鮮人に対する治安関係で大きく浮び出ているのでありますが、出入国管理庁におかれまして、この鮮人の本国送還というのはどういう形においてなされておるか、その事実をひとつお伺いいたしたいと思うのであります。
  72. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 お答えを申し上げます。私の方の役所の出入国管理庁で、第三国人、特に韓国人の送還をいたしておりますのは、外国人登録令違反ということに限りまして、送還をいたしておるのでありまして、ただいまお話のような外国人登録令違反でなくて、なおかつ送還するというものにつきましては、目下私どもの役所では扱つておらないのでありますが、そのあとの方の問題について、政府におきましても、具体的のことにつきまして研究をいたしておる段階でありまして、まだ発表いたす段階になつておらないのであります。
  73. 押谷富三

    ○押谷委員 法務総裁は閣議においでになるようでありますから、出入国管理庁長官に対する質問は後刻にまわしまして、まず法務総裁にお尋ねいたしたいと存じます。  お尋ねをいたしますことは、昨朝起りました朝鮮人による米兵に対する暴行事件であります。昨二十一日の午前三時半ごろに、浅草の千束町の朝鮮マーケット附近におきまして、六名の米兵が多数の鮮人に取囲まれまして、集団的に暴力を加えられて、一名は死亡する、二名は負傷する、自動車も破壞されるというような不祥事を起したのでありますが、わが国の講和を前に控えて、今日日本の置かれたる国際的地位などから考え、この時期を思いまするときに、まことに遺憾しごくな事件だと考えます。こういう大事件が起つて、それを私どもが考えますときに、この事件はいろいろな意味において重要性を持つておると思います。まず事件の全貌などを伺いたいのでありますが、事件はまだ捜査段階にあり、特に警視庁の方面から総監においでを願うことになつておりましたが、まだ本日はおさしつかえでお見えになりませんから、これは明日でも警視総監にお尋ねをすることにいたしまして、総裁におかれて今入手せられております情報等によりまして、次の点をお尋ねいたしたいと思います。  まずこの朝鮮人の暴行事件におきまして、時間的に午前三時半という時刻において、百名からの朝鮮人が一ところにただちに集まつて来ておるというようなことから、あるいはその前日は台東会館事件ちようど一周年記念日に当つておるということから、現場付近には強制送還の反対であるとか、民主民族戰線などといつたビラ、ポスターが張られておつたというような事実を総合いたしまして、一つの計画的な犯罪ではないか、計画性の確度合いがきわめて高いものではないかという感じがいたすのでありますが、この事件について入手せられました情報によつて、この事件の計画についてまずお尋ねをいたしたいと存じます。  それから昨年暮れから今春にかけまして、ずいぶん朝鮮人暴動事件が起つております。都内においても最近上十條の朝鮮人暴動事件、この事件などきわめて重要な相貌を現わしておるのでありますが、このようなときに対朝鮮人関係における治安の対策というものは、一般とむずかしいと思いますが、法務総裁におかれましてこれに対する治安の対策関係、これもお尋ねをいたしたいと思います。  さらにもう一点、昨年の関西方面における朝鮮人騒動事件の直後でありましたが、たしか法務総裁の新意見でなかつたと思いますが、この騒乱事件関係をし、計画をし、指導をした、いわゆる騒擾事件の首魁といつたような者に対しては、本国送還の立法的処置をするものである、政令によつて本国送還をするという新発表があつたごとく考えております。これについてその後どういう経過になつておりますか、重ねてこの点もお尋ねをいたしたいと思います。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 昨日午前三時過ぎに、東京都浅草千束町におきまして、新聞紙に伝えられましたがごとき不祥事件を発生いたしましたことは、帝都の治安に重大なる不安を與える次第でございまして、政府といたしましては衷心から遺憾に存じておる次第でございます。特にこれがために、占領軍の方が不慮の災厄を負われるというような結果を生じましたことは、重ね重ね遺憾にたえない次第でございます。  この事件の概要を、ただいま報告を受けております範囲において、簡單に申し上げますと、昨日午前二時ごろ東京都台東区浅草千束町二ノ四でありますが、これは俗に旧十二階下と言われる地区であります。ここに米兵六名が参りまして、この地区内にありまする朝鮮人マーケット内の通称高本浩振こと高浩振方に参りまして、そのうち三名が宿泊をいたしたのでございます。それから間もなくなお三名の米兵が同地に参りまして、その高の宅の屋内に入りまして、いろいろ談話をいたしておりまする間に口論を生じまして、おののごときもので腹部に瀕死の重傷を負わされました。これはそのうちの一名でございます。それで他の米兵が、これを乘用車一万三千三百七十四号にかつぎ込んだのでありますが、この米兵を追跡いたしまして、約二十名の朝鮮人が石や棒切れをもつて迫りまして、車を包囲いたし、暴行を加えまして、車の窓ガラスを破壞するということになつたのであります。このときに、暴行の様子を見ておりました者が、田原町の派出所に急報をいたしましたので、関根巡査が現場に急行いたしましたところ、同巡査の携帶いたしておりましたところのピストルをもちまして、アメリカ兵が威嚇発砲をいたしまして、群衆を追い払つたのであります。所轄浅草署におきまして、ただちに予備隊の応援を得て現場を包囲いたしまして、約五十名のその場にありました者を同行して取調べをいたしておる次第でございます。  今日までに入手をいたしておりまする情報から判断をいたしますると、この付近の朝鮮人が、非常に反米的な空気が当日あつたということは、これは十分に想像し得るところでございますが、事案は、ただいま申し上げましたる通り、どちらかというと偶発的なものでございまして、必ずしも計画的な犯罪でないのではないか、かように想像をいたしておる次第でございます。と申しまするのは、午前三時という時刻に、きわめて短時間の間に数十名という多数の鮮人が集合をいたしたということは、非常に奇異の感に打たれるのでございますが、この付近は大体終夜営業を続けておるというような地区でございまして、さようなことが、偶発的に起つたといたしましても、あり得ることではないか、この想像をいたしておるのであります。もとより現在なお取調べ中でございまして、確定的なお答えを申し得る段階に至つておらないのでございますが、ただいままでの情報を総合いたしまして、推定をいたしたところを申し上げたのでございまして、後に、なお内容につきまして、真相と異なるものを発見いたしましたる場合におきましては、あらためて御報告をいたしたいと存じます。  それからもう一点、朝鮮人の暴力事犯その他の不法行為をいたしまする者に対しまして、これを本国に送還するような措置を講じたい。これは昨年以来政府といたしまして、神戸事件その他次いでの朝鮮人の集団的暴行事件を契機といたしまして、治安上の必要という見地から考えておるところでございまするが、これは今日なお研究いたしておる状態でございまして、まだこれを実施の段階に移すという程度にはなつておらないのでございまするが、引続き研究を進めつつあるということは事実でございます。
  75. 押谷富三

    ○押谷委員 昨日のこの付近における町の中に、強制送還反対であるとか、民主民族戰線といつたビラ、ポスターが朝鮮人の住居しておりまする朝鮮人マーケット付近に張られておつたと聞いておるのでありまするが、そういう事実はわかりませんか。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 さような事実はあつたように承つております。
  77. 押谷富三

    ○押谷委員 この付近に住居をいたしておりまする朝鮮人は、北鮮系の者かあるいはいわゆる韓国系の者か、その点はおわかりでございますか。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮人として登録をいたしまして、韓国人としての登録のない人たちが多いようでございます。すなわちいわゆる北鮮系が多いというふうに見受けられております。
  79. 押谷富三

    ○押谷委員 まだはつきりしたことはおわかりでないようでありますが、この朝鮮人の暴行事件は、いわゆる北鮮系の在日鮮人が、反米意図をもつてなされたものであるとお考えになつておりますか。その点をお伺いしたいと思います。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この付近の朝鮮人の間に反米的な機運は多少あつたのではないかと想像いたしておりまするが、しかしこの反抗そのものが反米的意図のもとに計画されたものであるというふうには、ただいままだ断定いたすに至つておりません。どちらかというと偶発的、突発的な事故ではないかと、かように想像をいたす程度でございます。
  81. 押谷富三

    ○押谷委員 この朝鮮人とアメリカ兵との間に起りました一つの衝突事件でありますが、こういう種類の事件は、多く民族的に非常に感情が高ぶりまして、あるいは伝播する、続発するというようなことも一応考えられるのではないかと思いますが、それに対して政府としてはいかなる対策をお持ちになつておるかお伺いいたします。
  82. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 アメリカ兵に対しまする暴行事件といたしましては、従来数件起つておるにすぎないのでありまして、ことに今回のごとき集団的な凶悪事件は初めてのことでございます。当局といたしましても、これは非常に重大な犯罪である、かように考えておるのであります。将来におきましてかような犯罪が重ねて生起いたすことのないように十分愼重考えて参りたい、かように存じております。
  83. 押谷富三

    ○押谷委員 ぜひこの種の事件に対して万間違いのないように対策をおとり願いたいと思うのでありますが、同時に昨年来問題になつております不逞鮮人の送還処置であります。これは善良なる朝鮮人、きわめてまじめな朝鮮人の名誉と信用を保持する立場からしても、この不逞な企てをいたします特に凶悪な犯罪をするような鮮人に対しては、本国送還の必要があると存じますが、これに対する本国送還の処置についての将来の見通しについて、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題は、今年初めに計画を立てまして、ただいま関係筋と協議をいたしておるのであります。できる限りすみやかに実現をいたすようにいたしたい、かように存じておる次第であります。
  85. 安部俊吾

    安部委員長 押谷君にお諮りをいたしますが、先ほどもお話があつたように、法務総裁は閣議に列席せなければならぬのでありまして、ほかに発言の通告もありまするから、ほかの鈴木長官並びに高橋政府委員の方の御質問はあとまわしに願います。
  86. 押谷富三

    ○押谷委員 それでは、私は総裁に対してはこの程度にしておきます。
  87. 古島義英

    ○古島委員 関連して……。今の押谷君の質問で大体わかりましたが、日本の治安を乱すという者は、朝鮮人の方に罪があるように誤解されるのであります。私の考えでは、少くとも午前二時ごろ表を出て歩く、あるいは朝鮮人の家にとまる、こういうことはアメリカ兵といえども軍の仕事ではなかろうと思うのであります。こういう時間外に浅草あたりをうろつくという人間でありますから、これに対しても相当のことを考えねばならぬのであります。ことに先般埼玉県に起つたことでありますが、朝鮮人の高徳祚という男がおるのであります。これは中華料理をやつておりますが、そこヘアメリカの兵隊二人が自動車でやつて参りまして、うちにはアメリカのタバコがあるはずである、そのタバコがあつたら出せといつて、押し込んで参つたのであります。ところがその高徳祚という男は、アメリカ・タバコはありませんという抗弁をしたところが、中に土足のままで入つて、そこら中をかきまわした。結局タバコはありました。ありましたので、まだあるだろうというので、たんすをぶちこわして中を見ますと、十三万五千円の金があつたので、その金を持つてつてしまつた。つまりそれを通弁をいたしました男は、強盗で処分をされましたが、現実タバコを持つてつた米兵と、十三万五千円の金を奪取した米兵は、そのままでおるような状況なのである。こういうところから見れば、いずれが治安を乱すかといえば、米兵がときならぬときに押してまわつて、日本人もしくは朝鮮人の家宅に侵入する、そうして物を強奪する、こういうことを法務府の方でも知つておるはずでありますが、これはアメリカ軍隊に向つて十分なる抗議を申し込まずにおくから、あとからあとからこういうことが出て来ると思うのであります。米兵の不法に対してはどういうふうな処置をとつておりますか、これを承りたい。
  88. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 米兵の不当なる行動に対しましては、アメリカの軍事裁判所において管轄権があるわけであります。そしてただいままでのところでは、それぞれ法によりまして、先方において処分をしておられるというふうに相なつておるのであります。今回の事件につきましても、原因等の詳細は、なお取調べ中で明らかでございませんが、想像いたしまするところでは、おそらくほとんど突発的なことではないか。かような暴行ざたが発生いたしますについて、言葉の行き違いその地米兵の側にも、ある程度の原因をなしたようなこともあるのではないかと存じますが、詳細は取調べました上で、それらの原因を十分つまびらかにいたしまして、将来連合軍関係に対しまして、要望すべき事項がありますれば、政府としてもこれを要望をいたしまして、相ともに将来の不詳事を未然に防止するような有効な措置をとりたい、かように存ずる次第であります。
  89. 古島義英

    ○古島委員 アメリカ兵に対する裁判権がいずれにあるかは、法務総裁に承らぬでも承知いたしております。アメリカ兵はたいへん秩序が正しいように聞いておる。また公私の別がはなはだ嚴然としておるということを聞いております。たとえば軍の仕事をやつておる以上は、上官と下官との間においては、その立場上非常に嚴重な敬礼をせねばならぬというようなことも聞いております。ところが一たびその軍務を去つて自分の自由を散歩する、自由に行動するというときには、上官に対しても敬礼さえもせずに自由に遊べるというように聞いております。しからばあのアメリカ兵は軍務に服しもしくは軍の仕事をしておるという間こそは、ほんとうに軍人という立場においてやつておるのであるが、一たびひまをもらつて遊びに出るときには、これは軍の仕事ではない、自分個人の仕事でありますから、個人の立場として、日本政府においても、その人の行動等は見、その行状等は少くともこれを日本政府から通告をいたしもしくは報告をする義務があるのではないかと思うのであります。今のような場合でありまして浅草に午前二時におつて、しかもマーケットの高の宅にとまつたと、こういうのでありますから、おそらくはこの時分に外泊ができるというのは、軍の仕事として外泊したのではない。自分らが遊びに行つたにすぎぬのだと思うのでありますから、私人の仕事であります。また埼玉県に起つた強盗事件のごときも、午後十一時三十分に押し込んだのでありますから、おそらくこれも軍の仕事の帰りがけにやつたとは思われぬのであります。まつたく遊びに行つたついでにやつたことと思うのでありますが、昨日のことは昨日のことといたして、埼玉県に起つた強盗事件のごときは、もう久しき以前であります。一箇月半も前であります。こういうことでありますから、おそらく、その通弁は強盗として処罰を受けるような立場になつておる今日においては、その報告があつたはずだと思うのであります。その報告に基いて政府はどのような処置をとつたか、アメリカの司令部なら司令部に対してどのような要求をいたしたかを承りたいのであります。もしまだ何らの報告がなく、また何らの通告をし、向うに要求しなかつたというのならば、あらためてそれをやらなければならぬと思うのでありますが、やりますかどうかを承りたい。
  90. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま御指摘事件につきましては、私ただいままで報告を受けておりません。しかし非常に重大な問題であると考えまするので、取急ぎ調査をいたしたい、かように存じます。
  91. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私、実は押谷議員のときに出席いたしておりませんでしたので、重複するかもしれませんが、その点はあらかじめ御注意を願いたいと思います。  今米兵の立場からの質問もございましたが、最近講和談判が非常に早くなつたという報道並びに見通しをもちまして、国民とともに喜んでおります。この矢先に、秩序が非常に破壞されておりました終戰後のあの時期においてすらなかつたような事件が、ここに勃発したというのでありますから、非常に関心を持たざるを得ない現状になつたのであります。そうした意味からお尋ねをいたすのでございますが、新聞によりますと、米兵とのみ書かれておりますが、米兵にもいろいろな種類があると思います。黒人兵もおれば白人兵のユダヤ系もおれば、その他フランスや日本系というようにおると思いますが、今度の事件を起しました米兵はアメリカ人にはかわりはございません。国籍はアメリカ人でございましようが、人種と申しますか、これはどういう人種でありますか。
  92. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 アメリカ人という報告を受けておりまして、それ以上こまかい報告をまだ受取つておりません。
  93. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 浅草地帶と申しますと、東京でも相当風紀的に芳ばしくない地区だと私たちは想像いたしております。またここは生活面におきましても東京の中央と違いまして、特殊な生活面を持つた地帶だと考えております。この地帶に居住をいたしておりますところの朝鮮人の人数、そしてこの地帶の朝鮮人はどういうふうな生活をしておるのか、おわかりになりましたら……。
  94. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この地帶の朝鮮人の全般の調査はただいま承知いたしておりませんが、大体あの付近は朝鮮人マーケット街でございまして、朝鮮人が集団的に居住をいたしております。そうして終夜営業を常態とするような営業が多い、こういうふうでございます。
  95. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 最近都内にも朝鮮人を中心といたしましたいろいろな事件が起きております。学校の撤收にからんだ騒擾事件、こうした事件が起きておるのでありますが、先ほど総裁の押谷委員に対する質疑応答を聞いておりますと、偶発的と申されておりましたが、最近の東京のそうした騒擾事件と照し合せますと、多少そこに根拠があるのじやないかと私は想像するのでありますが、そうした計画性とかそうした行動の前兆というようなものは全然なかつたのでありますか。
  96. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいままでに承知しておりまする事件の経緯から見ますると、特に具体的な、かような事件についてのあらかじめの計画というようなものはなかつたのではないか、むしろこれは事件経過から見まして、突発的、偶発的なものと想像される次第でございます。但し最近におきまして、かような事件が急に起つたというところを考え合せますると、これらの朝鮮人の間に反米的な機運が若干あつたろうということは想像できると思います。
  97. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そこなのです。私は確かに反米的機運が一部の朝鮮人に釀成されつつあるし、またそれが露骨に現われようとしておる、この動きを日本共産党の動きと切り離して考えることがどうしてもできない、私はこういうように考えておる一人なのであります。実は最近共産党の非合法化問題が、広川農林大臣の口を通じて出たというので、世間的に騒々しくなつて参りました。これに対しまして外務委員会でありましたか、法務総裁が答弁されたことを新聞紙上で承つたので、その趣旨はよくわかりましたから重ねてお尋ねをいたしませんが、共産党の非合法化という言葉を契機にいたしまして、全国的に共産党の動きが活発になつて来た。そして私、一昨日も名古屋に参りますと、名古屋全市にわたりまして、警官に告ぐというようなビラを張りめぐらして、警察官に対してサボタージユを強要しておるのであります。名古屋市警は全力をあげてこれが捜査にあたつておるのでありますが、こうしたことは多分に東京にも感ぜられることと思います。先ほど押谷委員が言いました朝鮮人送還事件という問題も、当然にここに関連して考えられる問題でありまして、この関連した二つのものはどうしても今の国内秩序に対するわれわれの考え方からはつきり切り離して考えることができません。この点に対しまして十分な対策をお立てくださいまして、お進みが願いたいものだと思うのであります。  最後質問といたしまして、私はたつた一点だけお尋ねをいたします。不逞朝鮮人の送還という問題、これは相当国会でもやかましく言われた問題だと思つております。また新聞紙上でも相当やかましく唱えられて来た問題であるし、法務総裁の談話等にもそれに触れた談話がときどき出たのでございますが、先ほど法務総裁は早くというようなお言葉もありましたが、何ゆえに今日まで当然に問題になつたこの不逞朝鮮人の送還ということを実現されなかつたか、この点に対して法務総裁の御答弁を願いたい。
  98. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは手続上まだ関係方面と相談をいたしておりません。さような関係でまだ実現に至つておらない次第であります。
  99. 安部俊吾

    安部委員長 田嶋委員におはかりいたしますが、先ほども申し上げました通り、三時には重要な件に関しまして閣議があるのでございまして、明日もこの件に関しまして委員会が開会せられるのでありますから、御質問は明日まで保留をお願いします。また同様加藤委員に対しましても、御質問は明日まで保留をお願いいたします。
  100. 押谷富三

    ○押谷委員 出入国管理庁長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、朝鮮人の外人登録をいたしておらない者に対して本国送還の処置をおとりになつているようでありますが、本国送還するところまでどういうような形において、どういうような方法でなされるかということ、そして最近本国に送還をいたしました朝鮮人の数をお尋ねいたしたいと思います。
  101. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまお尋ねがございました朝鮮人の送還につきまして、その手続を最初申し上げますると、たとえば半島方面の開港場にあらざるところからわが国に不法に入つて参りました場合に、これを現場で警察官かあるいは海上保安庁等におきましてつかまえるわけであります。そのつかまえました者につきまして一応の取調べをいたしまして、外国人登録令違反ということになりますれば、單なる違反である、密入国だけであるということになりますれば、大体は起訴をいたしませんで、われわれの方に検察庁側から引渡しをされるわけであります。そのほか密輸物資を持つておるとかいうことがございますれば、またそちらの方の刑罰と関係がございますので、一応裁判にかかるわけであります。従いまして出入国管理庁の方に参りますときには、いずれにいたしましても、検察庁側の一応の取調べがあつたものを引受けるわけであります。それを管理庁の方におきまして、長崎県の大村に收容所があります。そこまで護送をいたします。收容所に相当数たまりますと、司令部の関係方面を通じまして船を用意いたしまして、現在におきましては大村から船に載せまして、朝鮮の釜山に揚げます。これはわれわれの所管外でありますが、韓国側におきましてはあらかじめ関係方面から通達を受けまして向うの受入れ態勢ができておるわけであります。日本から送還いたしました者は韓国側の、ちようど日本の厚生省に当るような省が社会部と申しまして、あるわけであります。そこで受入れをいたすというかつこうになつておるわけであります。最近に、本年に入りましてから送還をいたしました例は、三月二日に四百八名送還をいたしました。
  102. 押谷富三

    ○押谷委員 この朝鮮人本国送還という仕事において、出入国管理庁において扱われる仕事は、大村から船で積み出すというそこまでの仕事ですか、あるいは向うで引渡すというところまでおやりになるのですか。
  103. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 出入国管理庁の仕事といたしましては、船に積むまでであります。船に乘りましてからは海上保安庁の監督に移るわけであります。
  104. 押谷富三

    ○押谷委員 不法入国者に対する送還の処置はわかりましたが、総裁にも聞いておりました不逞な企てをする鮮人に対する送還につきまして、出入国管理庁において何か調査研究あるいは計画などをやつていらつしやる点がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  105. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねに関しては、政府といたしまして研究いたしておるという程度でございまして、特にこの際申し上げることはないわけでございます。
  106. 上村進

    上村委員 関連して……。三月二日に送還された四百八名という、これは大体みな不法入国という認定のもとに送られたということになるのですか。
  107. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたときに、大多数のものが密入国でございますので、それを主として申し上げましたが、外国人登録令と申しますのは、外国人が日本内地におりまして、必ず登録をしなければならぬ、たとえば日本人が戸籍を持つておりますように、外国人にも登録をさせまして居所進退を明らかにする制度ができております。この外国人登録令違反をいたしました際は、やはり密入国でなくとも送還の対象になり得るのでありますが、それにつきましてはただ外国人登録証明書を持つておらなかつたということだけで、すぐつかまえて帰すということはないのでありまして一応外国人登録令違反の事件について、裁判の判決を受けまして、体刑を受けて、相当数刑務所に收容されたという者について、特に送還をするということになつておるのでありまして、違反があれば必ず送還ということではないのであります。先般の四百何名のうちどういうパーセンテージであつたかは今ここに資料がございませんけれども、従来の大体のパーセンテージから申しますれば、八割程度は密入国であります。
  108. 上村進

    上村委員 この強制送還に対しましては、朝鮮の、少くとも朝鮮人連盟に属した諸君は女、子供に至るまで絶対反対をしておるわけであります。それでむろん自分の国へ帰すのだからいいじやないかというように、日本の政府当局では言つておる人があるようでありまするが、実際は送還されると向うへ行つて大体兵隊に持つて行くわけでありますが、はなはだしいのは何をされておるかわからない、すなわち送還即死刑というところまで、朝鮮の人たちは不安を持つておるのでありますが、そういう実情について、政府はお調べの上でこういう送還というようなことを法律的にやつておるのでしようか、その点を承りたい。
  109. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 韓国側におきまして、どういう処置をいたすかということについては、ただいままでのところ、直接に向う側に行つて実情を見るというような国際関係になつておりませんので、詳しい事情はただいまわかりかねますが、ただいままでにわれわれに入つております情報によりますれば、韓国側といたしましても、やはりりつぱな受入れ態勢を整えて、そして日本から送還された者については、寄るべのない者については、家を與えるとか、あるいは疎開させるとか、釜山におります北鮮その他からの避難民に対する施設と同じような施設を、やはり考えておるようであります。ただいまの、外国人登録令違反でないところの朝鮮人に対する送還について、どう扱うかということにつきましては、特別に聞いておりませんけれども、やはり韓国といたしましても、りつぱな司法制度があるようでありますので、それぞれの方法によりまして、もちろん人道に反しない、人道を重んじた方法によつて処置することを確信いたしております。
  110. 上村進

    上村委員 この四百八名のうちに、北鮮系が大多数でしようが、南鮮系、つまり韓国人民として登録しておる者があるのかどうか。それから四百八名の具体的な国籍、それから犯罪の種類、それからどういうことをやつてつたかというようなことのお調べがついておりましようか。おりましたらひとつお知らせを願いたいのですが……。
  111. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 どこに住所があるのかというようなことは、一応調べてはございますが、ただいま手元には持つておりません。
  112. 上村進

    上村委員 それをあとにでもお調べを願つて、われわれにはつきりさせていただきたいと思うのですが、その点お願いしておきます。これで終ります。
  113. 加藤充

    加藤(充)委員 朝鮮人強制送還について関連質問をいたしますが、われわれの経験では、占領軍の軍事裁判においても、最近は別ですが、しばらく前までは、判決の中に明らかに刑罰の執行後朝鮮に送還するという判決主文があつたのでありまするが、日本のやり方というものは、判決にそういうことはなくて、判決では日本の、刑務所に服役して、そしてそれから後にどういうふうな認定で、送還するような場合が起きているのか、起きていないのか、その点、承りたいと思います。
  114. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 強制送還につきましては、これは行政処分でございますので、裁判所において送還すべしというような判決にはならないのが、日本の建前でございますが、行政処分の方の強制退去ということにつきましては、外国人登録令の第十六條にそれが書いてあるのであります。その十六條によりまして強制退去令書を発するという手続になつております。
  115. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、一応外国人登録令の十六條かの根拠に基いて送還をしておる。その送還は従つて行政手続である、こう言われたようでありますが、そうすると一応外国人登録令に違反するという形においては、前提は犯罪ということになりますか。
  116. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 やはり外国人登録令違反ということになりますので、犯罪になるわけであります。
  117. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると今犯罪者のうちで送還をしているのは、外国人登録令十六條違反だけの者に限つておる、こう言われるわけですか。それともまた限つておるというのは、そういう前提に立つて送還が可能であり、また可能だからやつておるのであるか。犯罪者というものを前提にすれば、ただちに犯罪者全部が強制送還できるという建前には立つておられないのですか。
  118. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 外国人登録令違反ということだけでありまして、外国人登録令に関係ない者につきましては、強制送還というものは考えられないと思います。
  119. 加藤充

    加藤(充)委員 政府の発表なり、あるいは関係当局の発表では、犯罪者一般がすぐに送還されるのだ、するもしないも当局の自由であるというような調子のものが多かつたのであります。そうすれば生活も何もむちやくちやになるので、特にそういう発言や響きが、朝鮮人にきわめて重大なる関心を與えておると思うのでありますが、今の御答弁によると、犯罪者一般ではなしに、外国人登録令十六條違反だけを送還しておるし、またそれだけが送還できるのだという御返答だつたと思うのでありますが、そこでお尋ねするのですけれども、外国人登録令違反の中でも、必ずしも送還にならない者、あるいは体刑、あるいは罰金刑というようなもので、部分的におしまいになつている事例を、私ども日本の裁判所の処罰の前例の中に見るのですが、そういう御関係はどういうことですか。
  120. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 登録令違反になつた者は全部送還するというわけではないのでありまして、登録令違反の者に対して、その中から送還することができるという規定でありまして、お話の通りであります。
  121. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは二つの点をお尋ねするのですが、そういうふうな行政認定でかつてにやるというようなことになつてしまうと、それに心服しかねる事情を持つ者、原因を持つ者が多々出て来ると思います。私ども仄聞いたしますのに、先ほどのお言葉の中にもあつたのですが、長崎県の大村における施設の中で、強制送還を受けるために收容された者と、外部からの面会者との間のいきさつがありまして、たいへん大きな騒ぎがぶち起つたというようなことを聞いておるのですが、そういうふうなことがあるかどうか。またそういうことがあるとすれば、原因は奈辺にあるか、はつきりした御答弁を願いたいと思います。
  122. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 大村で收容を受けておりました者と、收容所の当局の者との間に、多少いざこざがありましたことは事実であります。原因はどこにあるかというお尋ねでございますが、これはいつもそうなんでありますが、收容者を送還いたします日取りがきまり、船がきまつて参りますと、やはり日本に残りたいという連中も多数出て参りまして、何とかして残りたいという気持から、非常におちつきを失つて来る状態が起るわけであります。そういうときにたまたま、面会時間と申しまして、朝鮮に送還される人と、わかれのあいさつに行つておる連中との面会が許されるのでありますが、その面会時間というようなものを超過したというところから、いろいろいざこざが起きまして、今お話のような——そう大した騒ぎとは思いませんが、騒ぎがあつたというわけでございます。
  123. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、強制送還をします際に、家人との面会あるいは家人に通知あるいは着かえをする余裕なども與えずに、強制送還をされておるような事例を私どもは事実見ておるのですが、そういうふうなことは、どういう根拠でなされるのですか。
  124. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 送還に際しまして、面会を拒否するような事例は、ただいままで聞いておらないし、また衣服その他必要がありますれば、着がえさせるということについて、われわれとしましては、万般の便宜を與えておるつもりでありますが、もし御指摘のような事例がございますれば、後刻特別に承りたいと思います。
  125. 加藤充

    加藤(充)委員 今度は避難民との関係ですが、避難民は、外国人登録令などの適用の問題と、また別個の性格を持つものだと思うのですが、避難民と外国人登録令の問題、それと送還の問題はどういう関係を現在持つておりますか。
  126. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいま避難民と言われましたのは、朝鮮動乱が起きまして、朝鮮におられないで、日本に避難をして来るという一連のことであろうと思いますが、現在におきましては、特に避難民であるから、特別の考慮を払わなければならぬという段階には至つていないのでありまして、その扱いに関しましては、外国人登録令一本で参つておりますので、特別に便宜を與えるということにつきましては、現在のところ、特に申し上げる点はないのであります。
  127. 加藤充

    加藤(充)委員 避難のことと同時に、人間としての住居の自由といいますか、これは世界人権宣言の中に明らかに規定されているところなのであります。避難民でありますから、もちろん登録令に基く手続などはいたしておりませんけれども、大きく日本あるいは日本が国際生活、世界生活の関係の中に入つて行きまするために、こういうようなものをただ外国人登録令十六條違反という形で一括に取扱つているということは、政策的にも、また世界人権宣言というようなものの中に規定されている関係から見ても、これは法律の拘束はなくても、多少法的なものとして、重要な影響なり、立場を日本人は持ちまするし、その立場に立つものだと私どもは思いますが、先ほどの大村の收容所で問題を起した連中、あるいは三月二日に送還された四百八名の中には、いわゆる外国人登録令というような関係じやなしに、実質的に避難民であるという実体を備えた者が多数あつたのではなかつたのですか。
  128. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 この四百何名かの中には、避難民と呼ばるべき、特別にそういう旗じるしで入つて来た者は、それほど多くなかつたと存じます。ただつけ加えて申し上げますが、現在におきましては、わが国に独自で考えるべき権限がございませんので、現在の出入国の関係におきましては、一切の人は日本に出入りしてはならぬという司令部の命令によつてつておるのであります。その間に、避難民であるかどうかというような、日本の歴史というか、長い目で見た、大きな方策から割り出された施策ということを、ここに織り込む余地がないことを遺憾に思いますが、韓国におきましても、避難民といえども国外には出さない、今韓国はあげて戰わなければいけないという意味で、この際避難民として日本に逃げておるような者は、むしろ韓国を裏切る者であるというようなところまで、韓国側としてはやつておるのでありまして、それやこれやを考えますれば、避難民はいつでも来いという態勢をわが国でとることは、現在適当ではないのではないかと思います。
  129. 加藤充

    加藤(充)委員 韓国の憲法はどうなつておるかわかりませんが、北鮮系だ、韓国系だというような、ややイデロギー的なもの、思想的なものを持たずして、ただ戰争はかなわぬ、被害が多くて生活の基礎を失つてしまつたというような者が、日本へ万難を排して逃げ込んで来たというような者までが、やはり今おつしやられたように、戰争をしなければだめなんだということで、また元の戰場べ送り返されているのが、いわゆる強制返還の態なんです。
  130. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいままでに、特に避難民として入りました者は、それほど多い数ではないのであります。なおこれはわれわれの方で得た情報でありますが、韓国の避難民というものにつきましては、国際連合の方で積極的な援助をいたしておりまして、朝鮮において相当の物資を與えますとか、日本で引受けないでも、韓国に相当の援助をするということで、国連側としては大いに張り切つて現在やつておられるようなことであります。
  131. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、先ほど言つた行政認定というようなこと、これとこれとは登録令違反だけれども送還しない、あるいはこれとこれとは送還するとうような事柄についても認定とあなたは言われたけれども、認定のいわゆる自主性というものがないのではないか、それで最後のお言葉のように、どうしても自主性がなくて、そういう一般的な、朝鮮の戰争の状態だからぜひともみな帰さなければならぬというような意味で、そうしてまた帰す時期あるいは帰すのについての責任というようなものについても、日本では、あなたのところではいわゆる自主的というものがないのですか。
  132. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 強制送還、強制退去の命令を出しますのは、先ほども申し上げたように、外国人登録令第十六條でございますが、これにはこういうふうに書いておるのでありまして、第三條の規定に違反して本邦に入つた者、これはいわゆる密入国でありまして、だまつてつて来た者であります。それから「第十三條に掲げる罪を犯し禁こ以上の刑に処せられた者」これが先ほど申しました外国人登録令違反、いろいろな手続を怠つたというような状況でありますが、これに違反して禁錮以上の刑に処せられた、そういう者に対して退去強制をすることができるという段階になつておるのであります。この範囲内においての自主性は持つているのであります
  133. 安部俊吾

    安部委員長 加藤君にお諮りいたしますが、明日も本件に関しましては質問を続行するのでありまして、大橋法務総裁も出席されるのでありますからして、保留していただけませんか。
  134. 加藤充

    加藤(充)委員 いま一点だけ、時間をとりませんからお願いします。いろいろ御答弁になつて今の段階でも明らかになつたのですが、そうすると先ほどから問題になつている朝鮮人の強制送還の手続を研究中だと言われておりますが、その研究の目的というようなものが、結局朝鮮人は一人残らず朝鮮における、あの地域における戰争の中にはめ込むために、あるいはまた朝鮮における戰争を遂行のために有害だとある立場で判断したものは、なるべくそれをオミツトをして行く、これは抹殺してしまう、除外して行くというようなために、やはり朝鮮戰争遂行のために、外国人送還の手続がいろいろ研究されている。それ以外にどうも今までの質疑応答の中に目的というものがはつきりしなくなつたのですが、そういうことにお聞きしていいのでしようか。
  135. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 強制送還の問題はもつぱら日韓の融和と申しますか、国際関係を親善にして行きたいというところから考えられておるものだと思います。
  136. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは避難民としての取扱いなどについては、先ほど言つたように自主性がないからしかたがないということではなしに、もつとおおらかに世界人権宣言の線に沿うて取扱いすべきだ。そこを避難民をどんどん騒動を起しても大村にやつて送り返すというようなことでは、御答弁の趣旨が徹底しないと思うのですが、そういう点についてはきようはもう質問はやめますが、ぜひそういうはからいをやるべきだという意見だけを述べておきます。
  137. 安部俊吾

    安部委員長 この際本件に関する参考人招致に関する件についてお諮りいたします。先刻押谷委員からも御要求があつたのでありますが、本件調査の必要から、その捜査その他に関しまして警視総監田中榮一君及び警視庁刑事部長古屋亨君を参考人として明日午後一時本委員会に出席を求めたいと思うのであります。そうしてその実情を聽取いたしたいのでありますが、このようにとりはからうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 安部俊吾

    安部委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。     —————————————
  139. 安部俊吾

    安部委員長 次に不動産登記法等の一部を改正する法律案議題といたします。質疑の通告がありまするから順次これを許します。田嶋好文君。
  140. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 不動産登記法の改正に当りまして、備えつけの帳簿の問題で相当疑いをはさめばはさまれるような気持がするのであります。と申しますのは、従来の帳簿でございますと、製本された本のごとき形になつておりまして、これを破りとるとか、それから改竄するというような面は、相当その発覚が早く、至難ではないかと想像されるのでありますが、新しくつくられるところの帳簿というものは簡單にとりはずしかできる形になつているのでありますが、これに対しましてどんな御見解をお持ちでございましようか。もう一つはこれをそうした危險から防ぐ方法として、何か特殊なお考えをお持ちでありますか伺つておきたい。
  141. 村上朝一

    ○村上政府委員 登記簿をバインダー式の様式に改めることにつきましては、ただいま御指摘のように用紙が帳簿から不用意に脱落する、簡單にたれでも用紙をとりはずすことができるということでは、帳簿の信用保持をいたす上から好ましくないことはもちろんでありますので、この点につきましても私ども十分研究いたしたわけでありますが、バインダーの開閉をいたします裝置にがぎをつくりまして、それをあけるかぎは登記官吏が自己の責において行う。新しく用紙を差入れたり、あるいは登記用紙を登記簿から拔きとるときは、必ず登記官吏がそのかぎをあけてやる。閲覧その他の際にたれでもそれを自由に開くことができないようにいたしたいと思います。なお用紙がばらばらになつておりますといたみやすく、また脱落の危險もありますので、とめ金で根元の方を押えまして固定しておく裝置もいたすつもりであります。なお各登記用紙の第一葉の表面欄外に番号を印刷しておきまして、ある不動産の登記用紙が三枚目のところにあれば三のところに登記官吏が捺印して、一枚ふえて四になれば四のところに捺印するというようにして、万一一枚が脱落するということになればただちに発見できるような裝置も考えておる次第であります。  なお登記官吏自身がこの登記簿について不正をするようなおそれはないかという点でありますが、これは現在とてももし登記官吏が故意に登記簿を改憲したり、不正の登記をしたりするつもりならばできるわけでありますけれども、従来登記官吏が登記簿自体に対してそのような不正をした例はほとんどないのであります。当事者には登記済み証も渡しておりますし、謄本も出ております。また申請書受付帳その他の補助帳簿もございますので、さような心配はないものと考えております。
  142. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでよくわかりましたが、従来の帳簿をバインダー式に改めた後の帳簿の特色、こうしたものはどういうことになりますか。
  143. 村上朝一

    ○村上政府委員 現在の登記簿は、御承知のように、一個の不動産について一登記用紙を用いるわけでありますが、一登記用紙は三枚一組になつておりまして、これを約五十組を一冊の帳簿につづつておるわけであります。従いまして、未登記の不動産につきまして、新たに登記すべき場合に、登記の申請が出ました順序従つて登記して参りますので、ある不動産について、たとえば所有権に関する登記事項が非常に多くなりますと、その登記簿には記入ができないわけであります。別の登記簿を持つて参りまして、そこのあいたところへ続けて記入して行くというふうで、一個の不動産登記について何冊もの登記簿にわたつて記載されている例が非常に多いのであります。そういたしますと、登記簿を閲覧するにいたしましても、幾つもの登記簿を取出して調べなければならぬというような不便があります。登記所の事務能率化の点から考えまして、また閲覧その他の必要な際における関係人の利便という点から考えましても、このバインダーに改めることによりまして、一個の不動産に関する登記が、すべて一箇所に集められているという方がはるかに能率的なのであります。また先ほど申しましたような、現在の登記簿の組織からいたしまして、常に三枚ずつの登記用紙をつづつてあります関係上、記入されない登記用紙も登記簿の中にはたくさんあるわけであります。たとえば抵当権の設定、その他所有権以外の登記事項がない不動産につきましては、乙区事項欄と申しておりますが、三枚目の登記用紙は用はないわけであります。これが所有権に関する登記事項は、別の欄に記載されます結果、所有権の用紙だけが多数必要で、抵当権の用紙は必要でないという場合にも、常にその三枚一組の用紙がとじられておるわけでありまして、登記簿の数もますます厖大になつて参りますし、登記所における登記簿の保管その他に遺憾な点を生ずるおそれがありますので、かようなバインダー式に改めたいと考えております。
  144. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 よくわかりました。もしお手元にでもこのバインダー式の登記簿の見本がございましたら、ひとつお見せ願います。
  145. 安部俊吾

    安部委員長 ここに見本がありますから、委員の方はごらんください。——ほかに御質疑ございませんか。——質疑ないようでありますから、本案はこの程度にとどめておきます。     —————————————
  146. 安部俊吾

    安部委員長 次に商法の一部を改正する法律施行法案、非訟事件手続法の一部を改正する法律案及び有限会社法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからして、順次これを許します。押谷富三君。
  147. 押谷富三

    ○押谷委員 商法の一部を改正する法律施行法案につきまして、お尋ねをいたしたいと思います。その第一点は、この施行法案の第一條に「この法律で、「新法」とは、商法の一部を改正する法律昭和二十五年法律第百六十七号)による改正後の商法をいい、」とありますが、この「改正後の商法」というここに年号及び法律番号が書いてないのでありますが、これはこのままでいいのか、あるいは法律第四十八号をさしておると思うのでありますが、そういうことを入れないのですか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  148. 影山勇

    ○影山政府委員 ただいま御質問の点でありますが、改正後の商法と申しまして、特に年号、法律番号等を入れませんでしたのは、商法の一部を改正する法律のそこに言う商法というのが明治三十二年法律四十八号の商法をさしておりまする関係上、ここに特に改正後の商法というのに法律番号、年号を入れなくてもわかるのではないかと考えましたために、ここに入れておりません。この法律の附則の四項でありますが、特にそこには「商法(明治三十二年法律第四十八号)」と書きましたのは、この以前に公布になりました商法によつて設立した合資会社が問題になりますから、一応念のために法律番号を入れたわけでございます。
  149. 押谷富三

    ○押谷委員 この法案の十七條の三項でありますが「前二項の規定は、ある種類の株主の総会に準用する。」「ある種類の株主」とあるのでありますが、それはどういう意味でありますか。何をさしておるか。旧法百四十三條に対応するのであるかどうかをお尋ねしたいと思います。
  150. 影山勇

    ○影山政府委員 商法では数種類の株式を発行しております場合において、そのうちのある種類の株主に何か不利益を及ぼすような決議がある場合には、そのある種類の株主だけの総合を必要とするということになつております関係上、そういうある種類の株主の総会にこの十七條の一項及び二項の規定を準用するという趣旨でございます。
  151. 押谷富三

    ○押谷委員 この法案の十八條の関係におきまして、新法の二百四十五條の二でありますが、ここの二百四十五條の「要領」というのは何を意味しておりますか。
  152. 影山勇

    ○影山政府委員 二百四十五條第三項の「前項ノ行為ノ要領」とございますのは、「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ讓渡」といつたような二百四十五條一項に定めます事項を決議いたします場合には、その次の條文の二百四十五條ノ二にございますように、これに反対する株主は、会社に対して持株を買い取つてくれという請求ができることになつております。そういう権利の行使の便宜考えまして、そういう営業上の行為の要領をあらかじめ通知及び公告に記載させるという趣旨でございます。従いまして要領と申しますのは、二百四十五條一項の「営業ノ全部又ハ一部ノ讓渡」一項の二号の「営業全部ノ賃貸、其ノ経営の委任」というような事項の要領でございます。
  153. 押谷富三

    ○押谷委員 この施行法案の十八條でありますが、ここで招集を早く出している場合におきましては、この要領は記載しなくてもいいことになるわけなんですが、そうすると、この通知を受けたときには、要領がわからない株主がいると言わなければららぬのだが、こういう要領を知らない状況におきまして、株主は買取り請求をするという形になつて来るのでありますか。
  154. 影山勇

    ○影山政府委員 その点は、ちようどこの総会、ここに規定しております場合は、経過的に新法に先だつて通知が発せられた。その決議をするのは新法施行後であるというような場合を考えておりますので、もともと株主の利益のために認められました株式買取り請求権、その通知にたまたま行為の要領が記載されていないために、その総会が不適法となつて、株主はこの買取り請求権を行使できないというのは不合理ではないかというふうに考えましたために、株主が行使しようと思えば、そういう株主の利益保護のための規定でありますから、株主がそれにもかかわらず行使しようという場合には行使できるように考えまして、この十八條の規定を設けたわけでございます。
  155. 押谷富三

    ○押谷委員 この二十一條の代表関係についてでありますが、新法によりまして、取締役会は代表取締役をきめなければならぬことになつているが、もし代表取締役をきめなかつたというような場合におきましては、制裁規定もないようでありますが、どうでありますか。
  156. 影山勇

    ○影山政府委員 代表取締役の制度は、新法におきましては必要的機関でございますので、これをきめないと、第一登記の記載事項となつておりますので、登記ができない。それから実際において会社が動かないかと思います。
  157. 押谷富三

    ○押谷委員 この代表取締役が数名ある場合におきましては、その代表の原則でありますが、これは各自代表、こう考えもいいわけでありますか、
  158. 影山勇

    ○影山政府委員 さように解していいと思います。
  159. 押谷富三

    ○押谷委員 この施行法二十一條でありますが、旧法によつて会社を代表する権限を有する取締役、こういうのは旧法に現われている全部の取締役——代表取締役全部を含んでいると解釈すべきでありますか。
  160. 影山勇

    ○影山政府委員 旧法によつて特に数人の取締役が共同するとか、あるいは特別に代表取締役を定めない場合には旧法の原則によりまして、全員が各自会社を代表するということになります。この二十一條一項は、そういう場合に、その各自代表の取締役を、それぞれ新法の代表取締というふうにみなしたわけでございます。
  161. 押谷富三

    ○押谷委員 この二十一條の二項に「取締役が共同して会社を代表すべきことを定めた場合には、その定は、」云云と規定されておりますが、この旧法にあります取締役と支配人とが共同して会社を代表する場合、かような場合は、どういうように解釈するのでありますか。
  162. 影山勇

    ○影山政府委員 取締役と支配人と共同して会社を代表いたしますいわゆる混合代表と言われておりますものは、新法上は認められないことになりますので、その混合代表——これは非常に数も少いかと思いますが、そういう定款の定めは、新法施行の日から効力を失うということになると思います。
  163. 押谷富三

    ○押谷委員 もう少し質問したいのですが、爾後の質問は次の機会に讓ります。
  164. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質問ありませんか。——質問がなければ、本三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこの程度において散会いたします。次会は明二十三日午後一時より開会いたします。     午後四時二分散会