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1951-02-08 第10回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月八日(木曜日)     午前十一時五十分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    古島 義英君       眞鍋  勝君    武藤 嘉一君       山口 好一君    吉田 省三君       大西 正男君    石井 繁丸君       田万 廣文君    加藤  充君       梨木作次郎君    世耕 弘一君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 昭和二十五年十二月十一日  委員牧野寛索辞任につき、その補欠として田  中豊君が議長指名委員選任された。 同日  委員田中豊辞任につき、その補欠として牧野  寛索君が議長指名委員選任された。 昭和二十六年一月三十日  委員鍛冶良作君、高橋英吉君及び牧野寛索君辞  任につき、その補欠として廣川弘禪君山本猛  夫君及び岡野清豪君が議長指名委員選任  された。 同月三十一日  委員岡野清豪君、廣川弘禪君及び山本猛夫君辞  任につき、その補欠として牧野寛索君、鍛冶良  作君及び高橋英吉君が議長指名委員選任  された。 二月八日  委員牧野寛索君及び上村進辞任につき、その  補欠として大上司君及び加藤充君が議長指名  で委員選任された。     ――――――――――――― 一月十六日  借地法及び借家法の一部改正に関する請願(武  藤運十郎君外一名紹介)(第七号) の審査を本委員会に付託された。 同月十六日  復権による前科の戸籍簿取扱に関する陳情書  (第三四号)  強制立退者の借地権に関する陳情書  (第四四号) 同月二十六日  住民登録制度実施に関する陳情書  (第七四号) を本会委員に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  神戸その他の地における騒じよう事件現地調査  についての委員会報告書に関する件     ―――――――――――――
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  日程によりまして、神戸その他の地における騒擾事件現地調査についての、委員会報告書に関する件を議題といたします。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 議事進行について……。この委員会は御承知通り、伝統的に各委員におきましてゼントルマンシツプに基いて発言をいたしておるのでありますが、この議案を審査するにあたりましても、どうかこの伝統を重んじていただいて、審議していただきたいと思うのであります。これが考査特例委員会のような風潮となりますることを、私非常に心配をいたします。そこでこの調査団を派遣いたしておりません唯一の党でありまする共産党側発言につきましても、十二分にこれを尊重し、これを許容してやつていただきたいと同時に、なおまた共産党諸君におかれましても、いわゆる常識上あまり長時間に同じことを繰返すとか、そういうようなことをなさらぬように、どうか討論あるいは質疑することは十二分にしていただきたいと思うのでありますけれども、おのおの良識に訴えまして、この委員会がスムースに運営できますように、特に私はお願いいたしておきたいと思います。
  4. 安部俊吾

    安部委員長 ただいまの猪俣委員発言でありまするが、委員長におきましてもしごく賛成であります。きわめて紳士的な君子の闘いといたしまして、今日はその主張するところは十分に主張して、そうして個人的な、あるいは感情に走るようなことのないように、御注意を願いたいと思います。  それでは当委員会においては神戸その他における騒擾事件調査のため、去る十二月中旬委員派遣の承認を得まして、田嶋好文君、押谷富三君、猪俣浩三君、大西正男君、それに私を加えまして、現地調査をしたのでありまするが、その調査を終了いたしまして、今回派遣委員から議長に対する委員会報告書案といたしまして、お手元に差上げてあります。それは神戸その他の地における騒擾事件実情調査報告書原案でありまして、これが提出になつたのであります。よつて報告書原案議題といたしまして、議事を進めます。まず押谷富三君から本報告書原案説明を求めます。
  5. 押谷富三

    押谷委員 ただいま議題になつております神戸その他の地における騒擾事件実情調査報告書原案説明を私からいたしたいと存じます。調査書はすでにお手元に差上げてありますから、その調査の目的、調査の方法並びに範囲、内容につきましては、申し上げることを省略いたしまして、ここには結論だけを御説明申し上げたいと存じます。まずこの調査から得ました結論といたしまして、騒擾事件性格でありますが、今回の騒乱は、表面上反税運動、あるいは生活保護全面就労などの経済闘争や、学校接収反対民族教育擁護などの教育闘争様相表面口実といたしておりますが、そうして合法運動を偽装いたしておりますけれども、その集団的計画性や、集団的暴力破壊性などより見まして、暴力革命化前哨戦としての権力闘争的色彩が濃厚であります。  第二番目に背後関係でありますが、神戸事件京都事件大津事件及び名古屋事件は、北鮮系暴力破壊分子、これは朝鮮人解放救援会民主女性同盟などでありますが、これらの団体日本共産党地方級組織及びその支配下にある各種組合団体との合作行動でありまして、大阪事件共産党員単独行動であります。また日常経済闘争から政治的権力闘争へ拡大発展しております。すなわち学園闘争朝鮮人学校騒動、あるいは釈放闘争など日常闘争と、職よこせ闘争、反税闘争レツドパージ闘争就学闘争など経済闘争とを、政治的権力闘争へ結合発展せしむることは、共産党の活動の方針でありますが、これとまつたく一致いたしておるのであります。  第三に国際的関連性でありますが、朝鮮動乱における戦況の推移と、関西及び中京地区におきます本件騒乱推移とは、まつたく相呼応いたしておる様相を呈しているのであります。また関西中京におきます一連本件騒乱事件は、国際連合軍協力妨害する意図をもつて企てているような事実が見られるのであります。第四番に、これらの各地におきまして起りました騒乱事件共通性でありますが、第一に、この示威運動には学童や婦女子を前面に立てまして、闘争をやつております。これは神戸大津名古屋において共通いたしておるのであります。またこん棒、割木目つぶし——目つぶしは砂にとうがらしをまぜたものなどでありますが、これをあらかじめ準備をいたしておつたのでありまして、神戸大阪京都などにおいてこれが見られるのであります。また幹部の者はうしろの方で指揮をいたしておつて、そうして活動した者は幹部ではない。まつたくこの逮捕等を免れるというような行動に出ておることも、一つ共通点であります。  第二番目に、警官隊に抵抗ができるように、あらかじめ訓練をいたしておつた。この訓練の事実も神戸名古屋等において見られるのであります。  第三番目に、各騒乱警備力分散警察力分散意図いたしまして、同時多発的に行われております。  第四番目に、各騒乱の間には相互の関連性が認められるのであります。  第五番目は、各騒乱参加者は、地元以外の他地区から動員されたものが圧到的に多かつたという事実であります。  これらが私ども調査をいたしましたいろいろの事実から得た結果であります。詳細につきましては御質問等によつてお答えをいたしたいと存じます。
  6. 安部俊吾

    安部委員長 次に本報告書原案について質疑に入ります。通告順によりまして、これを許します。梨木作次郎君。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 私たち手元に配付された報告書と、今押谷委員報告されたものとにいささか違いがあります。まずその点をお伺いいたしたいと思います。それは背後関係というところで、「共産党員地方級組織)及び」云々となつております。今お読みになつたところでは、共産党及びその支配下にある、こういうように私は聞きとつたのでありますが、おそらくこの報告書原案というものは、調査委員がそれぞれ協議されてこういう案をつくられたのであろうと思いまするが、その報告書原案とは違つておるように思いますから、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  8. 押谷富三

    押谷委員 共産党員と申し上げたのですが……。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 この原案には、「共産党員地方級組織)」となつておりますが、そういう言い方もされなかつたようであります。その点はどういうのでしようか。
  10. 押谷富三

    押谷委員 それは原案に書いてある通りです。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 書いてある通りなら、書いてある通りのようにもう一ぺん報告してもらいたいと思う。
  12. 押谷富三

  13. 梨木作次郎

    梨木委員 その次もう一点お伺いしたいと思うのですが、国際的関連性というところの二番目で、この報告書によりますと、「関西中京地方における一連事件は、国連軍協力妨害する意図をもつて企図されたようで拘る。」こうなつておるのであります。ところが今報告されたところを聞きますと、国連軍協力妨害する意図をもつて企てている事実が見られると断定されておるのでありまして、これは報告書原案と違いまするが、どういうことになるのでありましようか。
  14. 押谷富三

    押谷委員 大体この報告書に書いてある国際的関連性の第二の事実を日本語に直しますと、私が申し上げたように申し上げてもさしつかえないと考えておるのでありますが、御質問がありますから、この点をもう一度申し上げますと、「関西中京地方における一連事件は、国連軍協力妨害する意図をもつて企図されたようである。」
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは今報告された点について、ちよつと了解しにくい点がありますので、御質問いたしたいと思います。国際的関連性というところで、「国連軍協力妨害する意図をもつて企図されたようである」と報告されておるのでありますが、政府説明するところによりますと、日本には占領軍はおるが、国連軍というものはおらないというような趣旨のことを説明しておるのであります。過般の予算委員会におきましても、大橋法務総裁はその趣旨のことを答弁されております。そこでおらないはずの国連軍との協力妨害するということは、一体どういうことなのか、さつぱり私にはわからないのでありますが、一体どこに国連軍がおつて、どういうふうにそれとの協力妨害したというのでありましようか。それをお伺いいたします。
  16. 押谷富三

    押谷委員 この「国連軍協力」というのは、占領軍協力という意味ではありません。ここに申し申げておるのは、やはり「国連軍協力」という言葉通りのことを申し上げているのであります。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 私も言葉通り読んだのでありますが、政府説明によれば、国連軍というのは日本にはおらないことになつておるというように私は了解しておるのであります。この政府説明からいたしまして、おらないはずの国連軍との協力妨害したというようなことは、私はあり得ないと思うのであります。でありまするから、一体どこにおる国連軍との協力をどういうように妨害したということになるのでありますか。これは政府答弁するところと非常に食い違いがあるのであります。もちろんこれは国会法務委員会でありますから、政府答弁と食い違つてもかまわないのでありましようが、しかしながら、行政の最高責任を負つている政府が、そういうように答弁しておるのであります。従いまして、こういう報告書の書き方については、私は疑問を持たざるを得ない。だから調査された方々はどういう御見解でおられるのか。
  18. 押谷富三

    押谷委員 梨木委員から政府答弁ということを盛んに言われますが、われわれの調査をいたしました内容について、政府からいまだ意見の発表があつたことはございません。われわれはわれわれの調査をいたしました内容をここに申し上げているのでありますが、ここにいう国連軍とは、日本内地にいる占領軍をさしてはおりません。朝鮮に今おる国連軍に対して、あるいは武器をつくるな、送るな、売るなといつたようなアジビラをずいぶん散布いたしまして、この騒乱当時において、盛んに協力妨害いたしているような事実を、はつきりわれわれは資料によつてつかんでおります。従つてこの結論は、いろいろな資料を総合し、的確な情報をまとめまして、ここに出したものであることを御承知願いたいと思います。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 「国連軍協力妨害する」という表現からいたしますると、われわれの常識では、国連軍には協力しなければならないということが前提になつていると思うのであります。妨害という言葉も、これは妨げ害するということでありますから、まずその前提といたしまして、国連軍協力ということの義務がまず日本人にあつて、だからそれに協力しないのはいけないことなのだ、つまりそれは妨害的行為になるのだ、こういうことに理論的になつて来ると思うのであります。しかしながら国連軍協力しなければならない義務というものは、私の了解するところでは日本人民としてはそういう義務はないと考える。そして国会もいまだかつて国連軍協力しなければならないというような決議をしたこともないと私は了解しております。そこで国連軍協力ということが日本人義務であるかのごときことを前提にいたしまして、これを非難するような報告書、これは私相当問題だと思うのであります。この点について報告者はどのようにお考えになるか、その御意見を承りたいと思います。
  20. 押谷富三

    押谷委員 国連軍協力する関係につきましては、お互い立場からいろいろな考え方もあると存じますが、單に妨害という場合において、義務がある、あるいは権利がある場合にその権利を妨げるということが妨害であるとか、義務の履行を妨げる場合は妨害であるとか、そういうきゆうくつなものではなくてまつたくどちらでもよい自由な場合においても、自由の行動を妨げるならばやはりこれは妨害ということが言い得ると思います。別に言葉じりをとらえて争うわけではございませんが、しかし今日の日本の事態において、日本の置かれた国際的な地位から、国連協力をするということは当然なさなければならぬことであると私は信じております。神戸地区において、この国連協力にはつきり妨害するという何らかの資料をわれわれは得ますならば、この妨害という報告が出て来るということは、けだしあたりまえのことであると考えております。
  21. 梨木作次郎

    梨木委員 何々する自由がある、その自由を妨害するというような言い方をする、こう報告者はおつしやるのでありますが、その場合に、やはり何々をする自由という一つ権利がある、その権利妨害することは非難されなければならない、だからそれは妨害ということになるのであります。私は国連軍協力妨害するというような表現の仕方というものは、少くとも私たち常識では、国連軍協力しなければならない義務があるということが前提になつておらなければ、こういう表現は許されないと思います。少くとも表現正鵠を欠いていると思うのであります。今報告者の御説明によりますと、日本人としては国連協力しなければならぬ、こうおつしやる。それはそういうことを言う方々もあります。しかしながら御承知のように、日本労働組合の中の最大の組織であると言われているところの国鉄労働組合におきましては、国連協力反対するという決議が大会でなされております。国鉄労働組合と申しますならば、これは日本労働組合中の最も有力な、最も強力な組織であります。これがこういう決議をしておるのでありまして、しかもそれは国連協力しないということを決議しておるのであります。ここではさらにもう一歩進んで、国連軍への協力妨害したというようなことになつて来ておるのでありまして、だれでもが知つておるように、今国連軍朝鮮でいわゆる戦争的行動をなしておると言われております。この国連軍作戦行動協力しなければならないということを前提にして、これを妨害しておる云々というような非難の表現というものは、ますますもつて私はこれは妥当を欠くと思うのであります。ですから私はここでもう一度重ねてお伺いいたしたいのは、報告者は、国会といたしましては国連軍協力をしなければならないという、そういう一つ義務前提としておらなければこの表現は妥当を欠くと思うのでありますが、その点についてもう一度納得の行くような説明をしていただきたいと思います。
  22. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 調査団といたしましてお答えいたしますが、ただいま梨木君の質問に対しましては押谷君からお答えしたこと、これを敷衍する以外にないと思います。調査団といたしましては「国連軍協力妨害する意図をもつて企図されたようである。」という結論に到達いたしまして、この結論を曲げる意思はございません。梨木君の質問討論の部類に入る質問のように考えます。この点になりますと見解の相違だと思いますので、この点はどうか討論でしつかりと御主張願いたいと思います。
  23. 世耕弘一

    ○世耕委員 ちよつと関連質問……。今の梨木君と報告者との間の議論でありますが、この文書はこれは報告書でございましよう。だから事実を報告したのだから、その結論議論をするのは少し早過ぎるのではないか。
  24. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 だから今申し上げたように討論で……。
  25. 世耕弘一

    ○世耕委員 これは報告書だから、報告書のことが事実にあるかないかということであるならば別であるけれども、これについてどうこうという引延ばした議論は少し気が早過ぎるのではないかと考えます。双方の意見食い違いがそこから来るのではないかと思うから、しかるべくもつとつつ込んでお話願いたいと思います。
  26. 梨木作次郎

    梨木委員 もちろんこれは事実の報告でありますから、そういうように了解して私は質問しておるのであります。ところがこの事実の報告であるべきところに、すでに一つ先入観と申しますか——先入観と言うとちよつと正確を欠いておると思うのでありますが、ある政党だけが、またある人々だけが是としておる、そういう見解や主張の上に立つてこの報告がなされておるように思うのであります。で、單に国連軍協力しない意図をもつて企図されたようであるというのなら、それは事実の報告になるかもしれません。しかし「国連軍協力妨害する」という、こういう表現をすれば、まず国連軍協力ということ、これをしなければならないと、少くとも義務づけられたということが前提にならなければ、こういう表現正鵠を欠いておるという見解の上に立つて報告者質問したのでありまして、私は決して討論的なことを言つておるのではないのであります。だからもう一度お伺いするが、それでは「国連軍協力妨害する意図をもつて」というこれは、国連軍協力妨害した、こういう行為を別にこの表現によつて非難しようとしておるのではないということになるのかどうか。私はこれでは非難しておると思うのでありますが、そこのところをそれじやお伺いいたします。
  27. 安部俊吾

    安部委員長 梨木君にお諮りいたしますが、先はど田嶋好文君並びに世耕弘一君の両君からお話もありましたが、大体この妨害したということが結論に出ておるのだということでありまして、それがよろしいか悪いかということはこれは討論の場合に論議するべきことだと思うのでありますが、いかがでしようか。
  28. 梨木作次郎

    梨木委員 ですから私は討論前提といたしまして国連軍協力をしない意図をもつてこれこれの行動があつたということを表現しようとしておられるのならば、報告者意図がそこにあるのならば、私はあとで私たち討論の中で、この結論は、妨害という言葉を使うのは正鵠を欠いているという討論にならざるを得ないのです。それからこれ自身がすでに国連軍協力妨害することが非難されるべきだということを前提にしているのならば、また私の討論違つて来るのであります。單に国連軍協力をしない意図をもつてこれこれの行動がなされたというだけの報告になつておれば、私はこういう質問はしないのであります。少くともこういう表現をすれば、国連軍協力をしないことが非難されるべきことだ、こういうことが前提になつておるということは常識であります。だから非難さるべきことだということを報告者の方で前提にしておるのかどうか。これをまず聞いておかないと、私の討論ができないのであります。そういう意味において質問をしているのであります。
  29. 押谷富三

    押谷委員 この点について最後的なお答えをいたします。梨木君の置かれました政党立場からは、お説のような意見が出て来るのも了承はできますが、ここに申し上げているのは事実の報告であつて、われわれの調査の結果は、国連軍協力妨害する、この形においてなされたようであるという結論を、私どもが出している報告としてお聞きを願いたいと思います。国連軍協力に対する考え方につきましては、これはお互いの置かれた立場もありますが、私ども考え方から申しますならば、これは当然なさなければならぬ義務である、これを妨害するものは非難さるべきであると考えておりますけれども、これは押谷個人立場としてお聞きを願つておきまして、調査団としてはこれを報告した、かように事実報告とお聞きを願いたいと思います。
  30. 梨木作次郎

    梨木委員 了承。それではその次に御質問いたします。第一の性格というところで、「今回の騒乱表面上反税運動生活保護全面就労等経済闘争や、学校接収反対民族教育擁護等教育闘争表面口実とし、」これからが大事なんです。「合法運動を偽装しているけれども」と、こうなつているのであります。私たち常識では、合法運動を偽装するというような表現の仕方というものは、反税運動だとか、生活保護全面就労、こういうようないろいろな要求学校接収に対するいろいろな反対要求民族教育擁護要求、これは実際これをしなければならないいろいろな経済的な、また文化的なそういう要求現実にあつて、そしてその現実的な切実な要求をひつ下げて、いろいろな役所陳情をするということ、こういうことを合法運動を偽装するというような表現をもつてするということは誤りだと思うのであります。少くとも合法運動を偽装するというようなことは、実際は何ら生活に困つておらないのに、生活保護法を適用してもらいたいとか、それから民族教育を何ら圧迫した事実がないのに、民族教育を圧迫しているとか、そういうことを口実にして、そうして陳情するということは——いろいろ役所要求するということは、これは憲法上保障されている権利だからということで、そういう陳情運動をやる、それがいわば合法運動を偽装するというような表現に該当するかもしれません。そこで私はお伺いしたいのでありますが、私たち調査したところによりますと、まず第一に神戸事件のごときも、実際は朝鮮人諸君生活というものが非常に困窮しておつた。そこへ持つて来て重い税金がかかつて来た。こういう事実が現実にあつた。そこで何とか、こういう重い税金を納められないから減免してもらいたいという陳情を区役所に対してやる。それから生活に困つて食えない。事実終戦朝鮮人諸君は、終戦直後におきましてはいろいろなやみ屋だとか、あるいはまた長田区におきましては、ゴム家内工業が盛んであつた。これがゴム統制の撤廃の結果、これらのゴム家内工業が全部つぶされるようなうき目になつてしまつた。そのためにこれらの人々はやはりどうしてもこれでは食えないので、職安行つて日雇い労働者となつて働く、ところがそこへ行つても完全な就労はできなかつた。大体職安の所長の報告によりましても、一箇月十六、七日、それくらいが平均で、あとはあふれておるということを報告しておるのであります。そのために鉄くず拾いをやつても、一日に四十円、そういう程度である。非常な生活の困窮であつたのであります。そういうことのために、区役所に対して生活保護法の適用を要求に行つた。これは現実であります。こういう切迫した現実の問題、また学校問題にいたしましても、実際はあの神戸教育事件のために学校が閉鎖されてしまつた。閉鎖された後におきましての学校経営というものは、当然日本政府においてこの経営費一切を持たなければならぬのが、その経費の支出というものがなされておらない、このために学校の先生の給料の遅配が平均七、八万円に上つておるというような状態、学校はぼろぼろになつておるというような状態、こういう現実があつた。だからどうか学校の先生の給料を拂つてあげてください、こういう陳情が区役所へ持つて行かれるのは当然でありまして、これをすることは何ら非難さるべきことではないと私は思う。こういう現実があつて、そこへ陳情に行つた。私は調査の結果、こういうように聞いておるのであります。これらの事実を、合法運動を偽装したというような表現をもつてするということは、少くとも私は正鵠を欠いておると思うのであります。  そこでお伺いいたしたいのでありますが、今私がちよつと触れましたように、税金の問題についても、生活保護の問題についても、全面就労あるいは朝鮮人学校の問題、これらの問題について今ちよつと私が触れたような事実が、一体調査の結果なかつたのか。何もなかつたということになれば、あるいは合法運動を偽装してというような表現は許されるかもしれません。この点について私は、われわれの調査とこの結論とは非常に相違があるのでありまして、納得の行くような御説明を願いたいのであります。
  31. 押谷富三

    押谷委員 梨木君が御調査なつ内容は、また別の機会に御報告を受けますが、今例にとられました神戸事件において、長田区役所に詰めかけた朝鮮人は、生活に非常に困窮しておる、税金に困つておる。そこで反税あるいは生活保護法の適用というような要求を長田区長にしておる。この陳情は正しいのではないかということでありますが、なるほど長田区内における朝鮮人が、生活に困窮して生活保護法の適用を受けるとか、反税の要求をせられる陳情は、一応うなずけるのでありますが、その長田区役所に全然関係のない他の地区から、大勢の朝鮮人が出かけたといたしますならば、そのときに用いた言葉と実際とは大分相違していると言わなければなりません。神戸事件に現われました、長田区役所へ出かけて区長に強談をいたした朝鮮人行動隊の、ほとんど全部に近い大部分は、あるいは姫路であるとか、大久保、相生、明石、西宮、尼崎、伊丹、こういうふうな方面からかり出された行動隊でありまして、長田区役所の管内にはおらぬ人であります。全部ではありません。ごく一部は長田区役所管内におられたのでありますが、大部分の者は他地区から応援に来ている。こういうような人がこういう暴動、騒乱を起したときは、その要求言葉は單に表に現われた口実にすぎない、一つの偽装方法であつたと考えられてもいたし方がないと思います。われわれは、今梨木君が言われました神戸事件だけの問題をとらえましても、こういう事実がはつきりいたしておるのであります。そこでこの結論を出すに至つたのであります。
  32. 梨木作次郎

    梨木委員 そこで重ねてお伺いいたしたいのでありますが、今押谷さんのおつしやるところでは、なるほど長田区内の朝鮮人生活に困つてつた点は一応うなずける、しかし陳情に来たのは、長田区内の人は少数で、他地域の朝鮮人が非常に多く来た。だからこれらの反税運動だとか、生活擁護要求一つ口実にすぎないのだという御認定のようであります。そこでこれはどういうような御調査をなすつたか知りませんが、私たち調査し、聞いたところによりますと、こういうことになつておるのであります。西神小学校と東神小学校というのが神戸にあるわけでありますが、この朝鮮人の学校へは、神戸市内の朝鮮人の子弟だけではなくて、兵庫県下のあらゆる地区から朝鮮人の子弟が通つておるのであります。それでこれらの学校は、実際は朝鮮人にとつてどのように運営され、利用されておるかと申しますと、單に教育のことだけではなくて、何か事があると、この学校へ集まつていろいろ相談する。ここが朝鮮人にとつては、一面におきましては、ちようどクラブのようなもので、いろいろな生活問題だとか、その他の問題を相談したり、ここへ集まつて協議したりする、こういう場所に使われているのであります。この実態をどのようにおつかみになつて来られたか。実際はそうなつておるのであります。そこで問題になるのは、なぜ他地区の人が多く陳情に行つたかと申しますと、これはあとでもつと突込んで御質問したいのでありますが、この調査報告書を見ますと、十一月二十七日の事件をとらえておるのであります。ところが問題は、二十七日に起つた事件というのは、その前からずつと陳情その他の事実があつたのであります。これが二十七日の事件にまで続いて来ているのであります。まず一番先に来たのは、これはあとでもう少し詳しく申しますが、十一月の十七日、二十日、二十四日、二十七日、こういうぐあいに続いているのであります。それで十七日の場合は全然警察は出ておりません。長田区役所の神崎区長の語るところによりますと、この日は約二十名の朝鮮人が参りまして、税金が非常に高いからまけてもらいたい、実情を調査してください、それから納税組合をつくつて税金を納める方法をうまくやつて行きたいと思うが、どうかというような相談があつたというようなことであつた。その際に、納税組合をつくることはたいへんけつこうだ。ところで今までの延滞は全部まけてもらいたいというような話があつて、それはできませんというようなことを答えたと言つているのであります。これが十七日の話であります。そしてさらに二十日には、十七日に来た人と違つた人が約八十人来たと言つておるのであります。そのときは、生活に困つているから生活保護法を適用してもらいたい、こういう陳情で来ている。これは決して団体で来たのじやなくて、代表として会つたのではなくて、個々に話をしたいということで、個々に会つて話をして、そのときには陳情に来た人たちは、生活保護法を即時に適用してもらいたい、それから市民税を減免してもらいたい、それからパンをほしい、こういうようなことであつたそうであります。そのときさつそく生活保護の問題につきましては、十六件を受付けて、それを調べた結果、その後において九件は採用した、こういうことを言つておられます。そこで二十日の日には、この区長さんの話では、交渉のために暴言を吐いた人があつた、しかしながら暴行を加えられた事実はありません。こういうふうに言つております。自分が警官を呼んだのじやないが、係の者が心配して警官を呼んだ、こう言つております。それで区長といたしましては、警官を呼んだけれども、自分の責任で解決するから、どうか穏やかにやつてもらいたいということで話をして、その日は穏やかに帰つてもらつた、こう言つておるのであります。但しそのときに警官が動員されて来ましたので、この役所の中で一人検束されて、その他は役所の外で検束されたのである。この検束されたのも、決してこの交渉の中でいろいろな乱暴とか暴行を加えたとかいうような容疑ではなくして、実際は例の朝鮮人の登録令に基く登録証を持つておらなかつたという嫌疑で検束されておるのであります。そこでこの区長が五時ごろ自分でわざわざ警察へ行つて、どうか返してやつてもらいたいということを頼んで、一人を残して全部釈放された、こういつております。さらに二十四日になりまして、今度は大分たくさん来たようでありますが、外には二百名ほどおつた。代表三名と会つた、こういつておるのであります。このときの要求というのは、生活保護法を早く適用してもらいたい、それから市民税についての減免の要求と、もう一つは、例の二十日に検束された人が一人残つておるわけでありますが、これをどうか早く釈放するように運動してもらいたい、こういうことであつたというのであります。このとき外では歌を歌つてつたということは、区長も言つておりますが、それでは区長さん、あなたはこの日身の危險を感じたかということを聞いたところが、そういうようなことはありませんでした、こう答えておるのであります。これが二十四日、この日に大分検束者を出したのであります。こういう事実がある。先ほど申したように、西神小学校というのは兵庫県から全部子弟が集まつて来ておる。だからここで先生も検束されておるのであります。こういう関係から先生が検束されたというようなことで、この子弟が全部うちへもどつてこの事実を父兄に話した。こういうことから二十四日の検束騒ぎが兵庫県下全部に知れ渡つたのであります。そこでこのことを心配してたしか二十六日は日曜なのであります。二十五日は土曜であつたというのでありますが、結局自然的に二十七日に、五々西神小学校へ集まつて来たというのが真相だと私たちは聞いております。ところがこの報告書によりますと、二十七日の事件だけをとらえております。これでは私は真相がつかめないし、また二十七日の事件だけをとらえて来ると、それは今報告者の言われたように、他地区の人も来ておるから、陳情に名をかりた集団的な破壊的な行動だというような結論に持つて来られそうなのであります。事実はそうではなく、なぜ他地区の人が来たかということになりますと、二十四日の検束で特に先生が検束されて、それを心配して皆集つて来ておる。これは西神小学校を中心としての朝鮮人諸君生活状態をよく知つておるものにとつては、これは外から見ますと何か計画性があるように見えますが、そうではないという事実がはつきり出て来るのであります。だから今の報告者の御説明では、他地区の人が集まつておるからということは、今申しましたような関係から行きますと、そういう事実関係になつておるのであります。そこで私はこの調査にあたりまして、一体二十七日の事件の前のいろいろな陳情、そういうことをどの程度お調べになつたのか、長田区長にお会いになつてこの関係をお調べになつたかどうか、それをまずお伺いいたしたいと思います。
  33. 押谷富三

    押谷委員 お答えいたします。長田区役所へ出かけて朝鮮人が交渉をしたという、その交渉のうちできわめて穏やかで、正しい交渉をしたような内容につきましては聞いておりますけれども、われわれの調査目的に合致しておりません。目的がそこにはないのでありますから、これは報告書に出しておりません。その交渉の後不穏になつて報告をしなければならぬような内容になつたのは、十一月二十日からでありまして、今梨木君の言われました十一月二十日事件、十一月二十四日事件、十一月二十七日の問題の事件、こういうような関係一つ関連性を持つておりますから、十一月二十日事件から後は詳しく報告書にしたためております。そうして西神学校の生徒が他地区からも来ておるという話で、西神学校の先生が検挙された、そこで他地区の父兄が来たというようなお話をなさいますが、検挙されたものに対する心配ならば、検挙された役所の方向に向つてそういう人が動くのは一応うなずけますけれども、釈放運動は警察にする、あるいは検事局にする、生活擁護運動あるいは反税運動は区役所にする、その区役所の方面に向つて地区の者が大勢詰めかけておる。これは数字も報告書に、はつきりいたしておりますからごらんいただきたいと思いますが、こういうようなことになつているのです。そして西神小学校に通つている生徒が、他地区から来ていることは私は認めますが、われわれの調査いたしましたところでは、姫路あるいは伊丹、こういうような方面からは来ておらぬと聞いております。さような方面から非常にたくさんの人が狩り出されておる。一例を言いますならば、二十七日の当日に、姫路の駅で切符百枚をまとめて買うて、一人々々に百人に渡しているというような事実もあるのであります。こういうような関係から私どもはこの結論を出したことを御了承願いたいと思います。
  34. 花村四郎

    ○花村委員 議事進行について……。梨木君の質問は実は質問に名をかりて、本報告書を承認すべきやいなやの討論をしておるように考えられるのでありますが、委員会の審議の現段階からいたしまして、質問を許される場合を考えてみますならば、ただいま調査委員から報告をせられたその報告内容において、不明の点があるからそれをただそうという意味質問でありますならば、これはわれわれは了承いたすのでありますが、しかし梨木委員質問は、この報告せられた事実が誤つておるという意味における攻撃の議論をしておられるようでありますから、もし今後における梨木君の質問が今までのような質問でありとするならば、その質問は打切つて、ただちに本報告委員会が承認すべきやいなやの採決に入られんことを希望いたします。
  35. 安部俊吾

    安部委員長 ただいま花村委員よりの動議がございました。ごもつともと思いますが、梨木君にも再三御注意申し上げますが、要するにこの報告に関して不明な点がありますならば、それについて質疑するという建前から討論あるいはそのことがあつたかなかつたかというようなことは、追つて討論の場合にあなたがそういう発言をする機会があると思いますから、そういうようなことをお考えになつて、そして御質問あるように御注意申し上げます。
  36. 梨木作次郎

    梨木委員 今花村さんからと委員長から御注意がありましたが、実は神戸その他における騒擾事件調査ということにつきましては、最初からこの事件の背後に共産党があるやに疑われておつて調査の目的の中にもこれの調査がやはりその対象になつてつたと思うのであります。そのために私は調査委員の派遣にあたりましては、ぜひとも共産党委員を一人加えてもらいたいということをお願いしたのであります。私の了解するところでは、委員会では、それは議院運営委員会において、非常に調査委員の数を制限されるかもしれない。まず三名くらいならば共産党を入れるということはどうも困難だと思う。しかし五名くらいになればあなたの方の希望はよく考慮しておくということであつたのであります。ところが実際議院運営委員会調査委員の顔ぶれとして出されたところを見ますと、五名ではありますが、その中に共産党委員が入つておりません。そこで私は議院運営委員会におきましても、この点を主張いたしまして、そうして結局におきまして私の方の意見を愼重に考慮に入れて議長がその顔ぶれを決定するというようになつてつたと思うのであります。その後私は事務総長にお会いいたしまして、この点も議長は議院運営委員会の審議の状態に徴して顔ぶれの決定を考慮するということになつておるのだから、ぜひ共産党委員を一人加えてもらいたいということを希望した経緯を話しまして、その点を相談したところが、自由党の方で了解がつけば、いや自由党の方だけではなくて、他の委員諸君との了解がつけば、一名ふやすことも可能である、つまり六名にすることも可能であるということであつた。そこで私は押谷さんにもお会いして、その点を申し上げたところが、よかろうということになつた。そういうことで、私は当然参加できるものと思つてつたのでありますが、それが結局われわれは除外されたということになつております。そういうことのために、実際私がここで質問しなければならないようなことが——事が私の党に非常に重要な関係を持つておるのであります。そうしてこの結論から見ましても、私たち調査とは非常に違つておるのであります。でありますから、私たち調査によればこうだ。どうしてこういう結論が出て来るのだということを、私は討論ではなくて、どうしても質問をしなければならないのであります。私たちの党の委員を参加させてもらえば、こういう質問は出なかつたのです。だから、ここのところは、先ほど猪俣委員の方からも、この報告書の審議に当りましては、十分——特に調査に参加しておらない共産党質問や、それから発言については考慮してもらいたいという御要望があり、この点は委員長からも了承するということであつたのでありますから、どうか、少しあれでありましようが、がまんして、ひとつ許してもらいたいと思います。  そういうわけでありまして、今押谷さんのおつしやつたところによりますと、長田区役所朝鮮人諸君が交渉に行つた。そこで穏やかに交渉した事実もあつた。しかしそれは調査の対象になつておらない。私はこれは非常に問題だと思うのでありまして、これは私の方であとでもつと質問いたしたいのでありますが、国会の国政調査報告書というものは、本来ならば單にこういうできた事件だけを調べるのではなくて、こういういわゆる騒乱事件というものは、どうして起つたかというその原因、これを丹念に明らかにして、そうして人民の利益と幸福に役立つような、よりよき政治をつくり上げて行くためのその資料に、こういう国政調査が行われるものと私は了解しておる。ところが今のお話では、実際は刑事事件的なこの騒乱事件調査が主目的なようになつて来るのでありますが、調査方針の中では、この事件がどういうところに原因があつたかということを、まず究明するということは、調査の対象になつておらなかつたのでありますか。これは非常に重大なことでありますから、まず調査の方針の中に、この事件がどういうところに最も大きな原因があつたのかということの調査、これが調査の対象になつておらなかつたのですか。これはどうもおかしいのでありますが、これについてお伺いいたします。
  37. 押谷富三

    押谷委員 当然さようなことは、調査の目的になつております。この騒乱事件がどういう原因から出て来たか、どういうような前後の事情があつたということは、相当深く掘り下げて、各方面からの情報を収集しておりますから、今梨木君が言われましたような神戸事件について、十一月の十七日以後の出来事は、すべてわれわれの調査の対象になつておりますが、その中で報告書に出すのは、特に報告をせなければならぬような事情だけをあげているのであります。梨木君のお言葉の中に、十一月二十日事件を、非常に穏やかな交渉のように言つておられましたが、それは事実と大分違いますから、簡單に御説明申し上げます。  十一月二十日の八時ごろに工作隊員であります全相福——これは十七ページの終りから書いてありますが、全相福外十数名が、長田区の西神学校周辺の朝鮮人の家庭を訪問いたしまして、市民税で困つている人、生活ができなくて困つている人は、今から陳情に行くから、すぐ学校に来てください、行つてくださいというような狩出しをいたしまして、そうして約八十名が集まりまするや、この全相福、権源達が引率をいたしまして長田区役所に出かけて行つた。そして言いましたことは、今あなたが言われたように、きようから食うことができないから食わしてくれ。生活保護法をすぐ徹底して、救貧を行え。朝鮮人に対する市民税を免除せよ、こういうようなことを言つて相当強硬に区長に交渉した結果、区長はこれに対して、適当な答えを與えております。それで済めばいいのですが、この回答が不徹底で、誠意がないというので、居すわり態度に出たのでございまして、そのときに西神学校から中学生が二百名ばかり教員に引率されて区役所の表で、革命歌を歌う、朝鮮人解放歌を歌う、そうして盛んに気勢を上げて、区役所内の折衝委員に応援をいたしておる。こういうような事態であつて、区長も大体軟禁されておる形でありますから、そこで長田警察署は警邏隊六十六名、それから本部から警邏隊二十四名を派遣して万一に備えるというような情勢にあつたのであります。ところがそのときに、区長が外国人登録証を出してくれ言つたときに、登録証を持つておらない者がある。そこで警察署に連絡をして、これを連行取調べをせんといたしますると、その自動車の前に中学生がすわり込む。そして公務執行の妨害行為に出るというような形になつて、ここで検挙者が出て来た、こういうような事件でありますから、これは当然われわれは報告をせなければならぬとして、ここに報告書に出しておるのであります。  二十四日も、あなたの言われるのと大分違います。この二十四日にもたいへん険悪な状況において、しかもその参加いたしましたのは、おとなが百名まず集りまして、そして相当喧騒をきわめ、気勢を上げておつたのでありますが、それが二隊にわかれて、一隊はおとなが百名、中学生が二百名。他の一隊はおとなが二十名、中学生が百名、そして一方は区役所へ、一方は警察へというようなわけで、一つの大きな示威運動が始まつて来た。こういうような事件でありまして、そのときの目的、そのときの経過は報告書に詳しく書いてありますから、ごらんをいただきたいと思いますが、こうして二十七日事件が生れて来た。二十七日事件のまず前哨戦、その以前の状況はこういう状態であるという報告をここに掲げておるのであります。われわれはこの長田区役所、長田警察署、この地方における朝鮮人の動きのうち、相当取上げるものは取上げ、調査の対象になるものは全部にわたつて調査をいたしたということを御了承願いたいと思います。
  38. 梨木作次郎

    梨木委員 先ほど押谷さんの御説明の中で、検挙された者の釈放の要求ならば、それは当該官庁へ行くべきである。それが区役所へ向つて行進したのはやはりおかしいじやないかという趣旨の御答弁があつたと思うのでありますが、この点につきましても、私たちはこう聞いておるのであります。つまり、区長さんもそう言つておりますが、二十七日には十七名が区役所へ来た。そして二十四日に検束された人の釈放要求のために、警察へ一緒に行つてもらいたいという要望があつたというのであります。そこでこの十七名来たうちの二名と区長さんが一緒になつて、警察へこの釈放を頼みに行つた、こういうのであります。その頼んでおるときに、今区役所が襲撃された、こういうふうな報告があつたというのであります。そこでこれはたいへんだということで、区役所へ来てみると、何のこともない。十五名の代表は静かに区役所に残つてつた、こういうのであります。この辺がどうもまことにおかしいのでありまして、区役所が襲撃されたというようなデマが一体どこから出たかということが相当問題であると思うのであります。ところで、帰つてみたら十五名の代表は区役所の中に穏やかにおつた。その後間もなくデモ行進が来たというのであります。ところがこの十五各の人たちは、あんなデモを起してこつちへ来なければよかつたのにということをささやいておつたということさえ、区長は言つておる。こういうことから見ましても、これは計画的なものでないということが想像されるのでありますが、その前になぜ区役所へ来たかということです。これは二十四日の検束騒ぎのことで心配して方々から集まつて来た朝鮮人諸君が、西神小学校の広場に集まつてつた。約八百名とか言われておるのでありますが、ところがその八百名を、千名を越える武装警官がずつと取巻いておつたというのです。そしてピストルを見せて威嚇さしてみたりして、これはどうなるのかしらというように、取巻かれた朝鮮人の群衆は非常な不安な気持にかられておつたというのであります。これはどうなるのかしらん、このままここにおつてはたいへんだということで、それでは区役所へでも行こう、こういう自然発生的な形で、区役所に向つて行進を始めた。ところが途中でこれが交叉点へ来て、デモが分断されたときに、検束騒ぎが起つておる、こういうふうに聞いておるのであります。そこで区役所へのデモ行進というものはあらかじめ計画されたものでなくて、武装警官の非常な挑発によつて、こういう包囲から脱出する一つの方法として、そういう行動がとられたように聞いておるのでありますが、調査なすつた調査委員方々は、その辺のところをどういうふうにお聞きになつて来られたか、お伺いいたしたいのであります。
  39. 押谷富三

    押谷委員 梨木君のお言葉と実際とはたいへんな違いがあります。この神戸事件の発端、原因は、警察の方面から挑発したのではないかというようなお考え方があることは、今のお言葉によつても明らかであり、また「平和のこえ」等にも書いてありますから、大体承知をいたしておりますが、それはもうたいへんな間違いなんです。この事件に限つては、警察の方面は決して挑発的な態度に出ておらない。警察が警備に参りましても、物陰に隠れてなるたけ大衆の目につかぬような所に待避をいたしておる、隠れておつたというような形にあります。また特にこの事件についての大きな特徴は、警察はずいぶんたくさんのけが人を出しておりますが、だれもピストルを撃つておりません。警察署長やあるいは市警の本部の方からの指令は、絶対ピストルを使つてはならないというので、そのピストルを出すこともできないように縛つておこうとまで警察官がしたというような事実もあつたのでありますが、そこまではしてはいけないというので縛るなどはいたさなかつたようであつて、そのままにピストルは持つておりましたが、ピストルを使うとか、ピストルによつて威嚇をしようとかいうことは嚴禁をされておりますから、こういう大きな集団的な問題でたくさんの負傷者を出しておる警察官が、一発もピストルを放つておらぬということは、これはまつた一つの特徴として掲げられるくらいの警察の態度であつたと思います。こうして警察は大衆の感情を刺激するようなことのないように、挑発するような事態が起らないようにというので、彼らのおる場所もなるたけ大衆から目につかない所に隠れておる。そうして衝突いたしましても、ピストルを用いるというようなことは一切避けておるという形でありまして、向うから石をぶつつけられればこちらから石をぶつつけるくらいのことはあつたでありましようが、大体警棒で相手になつておるというような形であつて、まことに気の毒なくらいに遠慮しておつた。これは警察の方面からはつきり言つておることであり、われわれもその事実を認めております。そういう関係にあるということを御承知願います。
  40. 加藤充

    加藤(充)委員 押谷委員の今の御答弁の中で確かめたいのですが、神戸の問題で、十一月二十日の問題なんですが、区長の神崎氏が軟禁状態にあつたので、警察が自発的に救難におもむいたというのでしようか。  それから第二点は、区長が、外国人登録証を警察が来てから見せてくれと言つたというのですが、区長が言つたのですか、警察が言つたのですか。あなたはさつき区長が言われたというようなことになつているのですが……。
  41. 押谷富三

    押谷委員 お答えいたします。区長が十一月二十日に軟禁状態になつたという事実のその現実を知りまして、そうして区役所の方から長山警察署に通報をいたした、こう私どもは聞いて参つております。それから外国人登録証の提示を求めたのは、これは警察だと思います。
  42. 加藤充

    加藤(充)委員 関連ですが、平穏に済んだ事件、交渉事件があると言われたのですが、それは何回くらいですか、あなたの調査では……。
  43. 押谷富三

    押谷委員 私の方では十一月十七日から聞いております。
  44. 加藤充

    加藤(充)委員 十一月十七日には警察は出て来たんでしようか。
  45. 押谷富三

    押谷委員 警察は出ておらぬようです。
  46. 加藤充

    加藤(充)委員 人数なんかは、十七日と二十日とはどういうふうに違いますか。
  47. 押谷富三

    押谷委員 十七日事件は、私どもがここに取上げないくらいに簡単な事件でありますから、まず関係がないとしてお答えしなくてもよいと思いますが、しかし大体十七日の事件と二十日の事件朝鮮人の人たちの数におきまして、直接区長に会うた者は大した大きな相違はないと思います。が、出かけた人は大分違います。そうしてまたそのときの状況は、西神小学校から中学生が二百名ばかり、教員に引率されて区役所の前に行つて革命歌を歌う、朝鮮解放歌を歌うなどの一つ示威運動があつた。こういう事実がたいへんな違いなんです。
  48. 加藤充

    加藤(充)委員 十七日の事件は御報告がない。ない理由もお聞かせ願つたのですが、お言葉通り、区長に会うた数字は大体十七日も違わない。十七日には警察は来ない。それから二十日に今言つたような事情で警察が来たというようなことなんですが、警察が来てから外国人登録証を見せろといつたのは、大体区長室ですか、それとも区役所のどの部分で言つたのですか。私ども調査いたしました結果としましては、警察が来てから区長のいやがるのを無理やりに退去命令をわざわざ急遽白紙に書いて出した。同時に、それが検挙の口実にならないものですから、外国人登録令ということで検挙しかかつた。女の人などは大体ちよつと行つて来るということで買物に出るようなことで行つたのです。生活の問題ですから近所の御婦人はそう思うのはあたりまえですが、ところがそこで登録証を見せろと言われたので、持つて来なかつた者もあつたようですが、それじやおかあさんの登録証はあるからうちへ行つてつて来てやると子供などが言つた際に、それを容赦なしに検束が始まつた。しかも検束された者は、全部外国人登録令の問題で庁舎前において検束された。そして留置はそういうふうな結果で留置する。検束をやりましたけれども留置されたのは一人、それもおつつけ事情が判明して釈放されたという厳然たる事実があります。私どもは確めて参りましたが、こういう点はいかがですか。
  49. 押谷富三

    押谷委員 どの点です。
  50. 加藤充

    加藤(充)委員 外国人登録証の問題で検挙したのかどうか。それから同時に、検挙された者は長田の区役所の庁舎外にあつたのかどうか。そのときに検挙した者は何人で、その理由は何だ。そして留置されたのは一人おるようですが、それはどういう事情で一人だけ留置されたか。
  51. 押谷富三

    押谷委員 お答えいたします。凶悪犯罪の捜査に行つたような私ども調査ではありませんから、いつどの場所でだれがどんなことをしたかというような詳しいことを、われわれ一々調査の対象にしておりませんから、そういうこまかいことはごめんをこうむりたいと思いますが、とにかく外国人登録証の提示を求めてその結果持つておらない者がある。そこでこれを取調べのため警察へ連れて行こうとしたときに、その車の前に子供がすわつたり、寝たりして、車を動かさないようにした。この公務執行妨害という事実があつたから、公務執行妨害罪として一部の者を検挙した、こう聞いております。
  52. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、交渉をやつた仕方が悪いとか、あるいは集まり過ぎて無届集会である、そういうことで警察が検挙されたり、警備の処置をとつたのではなくて、たまたま外国人登録証を持つているか持つていないかということで検挙が始まつた、それで子供まで検挙した、こういうことに、少くとも二十日の事件はお聞きしてよろしいのですか。
  53. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 ちよつと議事進行について……。実は時間も一時を過ぎましたし、この程度でしばらく休憩させていただきたい。
  54. 加藤充

    加藤(充)委員 簡単なことだから結論的に……。
  55. 押谷富三

    押谷委員 公務執行妨害罪として検挙しているということが書かれている通りだ。
  56. 安部俊吾

    安部委員長 ただいま田嶋君より動議がありましたが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 安部俊吾

    安部委員長 ではさよう決します。  午後二時より再開いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  58. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を続行いたします。梨木作次郎君。
  59. 梨木作次郎

    梨木委員 神戸事件の中で朝鮮人学校の状態を聞きたいのでありますが、朝鮮人学校の経営がどういうようになつてつたか。私たちの聞いたところでは。朝鮮人学校が閉鎖されましてその後におきまして、これらの学校を分校として認め、そして経費は日本政府が負担する。具体的には神戸役所ということになるのでありましようが……。そうしてこの教科科目の中で、少数民族の教育の自由を認めるべきであるという建前から、朝鮮語、それから朝鮮の地理、歴史、こういうものを教科科目の中に一定の時間をとつて認めるようにというような交渉、そしてそれがある程度了解がついておつた従つて学校の経費を日本政府が負担するということになれば、朝鮮人学校の先生の給料も拂わなければならないわけになりますが、これが拂われておらなかつた。平均七、八万円の給料の遅配があつたという事実。それから学校がキジア台風のためにいろいろこわれたところができて来て、雨漏りなどがあつたというような状態にあつたにもかかわらず、当局側はこれに対してこれを修理してやるとか、その他経費を出すということをやらなかつたというように聞いておるのでありますが、こういうことをまずお調べになつたかどうか、そうしてそういう事実があつたかどうか、これをお伺いをしたいと思います。
  60. 押谷富三

    押谷委員 神戸騒乱事件は、教育関係における闘争という形で現われておりません。関西一円におけるあるいは中京地区を合せた一連騒乱事件で、教育関係が多少とも結びつきがあるとか、あるいは主として教育闘争によつて来ているのは、名古屋と、たしか京都つたと思いますが、そういう原因関係に教育の問題のついておるところはよく調べて参りましたが、神戸の場合は、この騒乱の目的に教育関係は何もうたわれておりません。現われてもおりませんから、従つて詳しくは調べておりません。しかし当時私どもは、調査目的ではありませんけれども、一応調べて参つたところでは、兵庫県では朝鮮人学校の閉鎖の後において、朝鮮人が集まつて、こういう東神、西神学校の二つがあつて、それらが朝鮮人一つの塾のようになつて朝鮮人子弟をそこで教育をいたしておつた。こういうことは認められますが、その程度しか調べておりません。
  61. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私の担当した班に関係がありまするので、その点をお答えいたします。  名古屋騒擾事件というのは、原因を教育問題に持たれておるのでございまして、この点に対しましては報告書に記載通り相当つつこんで調べたつもりでございます。報告書をごらんくださればよくわかると思います。
  62. 梨木作次郎

    梨木委員 今の押谷さんの御説明によりますと、塾のような形で経営されておつた。それは実際は行政上の技術的な都合がありまして、表面には塾として黙認しながら、実際は日本人学校の分校的取扱いをして、経費は日本政府が持つ、こういう了解ができておつたものと私は聞いておるのでありますが、それであるにかかわらず、経費一切を出してくれない、こういうことから非常に経営困難に陷つて学校の先生も非常に困つてつたということはどうでしようか。
  63. 押谷富三

    押谷委員 そういうことはないと思います。日本政府あるいは地方官庁にあいて、それらの学校の費用を持つというような公立学校のような形におけるものでは、西神学校、東神学校ともに、ございません。これはまつた朝鮮人が塾のような形でやるということを黙認いたしておつたという程度のものであります。
  64. 加藤充

    加藤(充)委員 関連して……。名古屋の問題で、朝鮮人の学校での問題についてお聞きいたしたいのですが、あそこに、名古屋にある私立大和小学校分校とかいうのと、それから守山小学校というようなものが、二つ朝鮮人に関連した学校としてあげられているようですが、この実情をちよつとお聞かせ願いたい。
  65. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 これは報告書の記載をお読みになつていただけば、ほぼおわかりいただけると思うのでありますが、少しく敷衍して申し上げますと、やはり守山小学校、大和小学校ともに政府の認めない学校でありまして、今後のこれら学校の運営につきましては、関係当局の語るところによりますと、日本人小学校の分校として、これを認めて運営して行きたいというような希望を持つて、善処をはかつているようであります。以上お答え申し上げます。
  66. 加藤充

    加藤(充)委員 七十九ページの(ロ)の(1)の分に、名古屋事件のようですが——事件というより名古屋の問題ですが、朝鮮人小学校はほとんどスト状態になつてつたというようなことがあるのですが、この朝鮮人小学校というのは、今言つた私立大和小学校分校のことなんでしようか。
  67. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 お答えいたします。七十九ページだと思いますが、これは今申し上げました守山小学校、大和小学校、その他関係朝鮮人小学校のことをさしております。
  68. 加藤充

    加藤(充)委員 私が聞いたのは、朝鮮人小学校という表示の中で、守山小学校というのは出て来ますが、さつき私の質問に対する田嶋委員の御答弁の中に、大和小学校云々というようなことがあつたのですが、朝鮮人小学校の中には、私立大和小学校というのが、朝鮮人関係のある学校となつている。それを報告書朝鮮人小学校一般の中に、その大和小学校分校というのも含めておるのか、その点が第一点。  それからもし私立大和小学校分校が、朝鮮人小学校と包括された中に入つているとするならば、私立大和小学校分校なる朝鮮人小学校の、その経営、運営の実際、それから学童の割振りというようなことを承つておきたいと思うのです。
  69. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 大和小学校分校につきましても、この報告書記載の範囲におきまして、われわれ騒擾事件の範囲囲とこれを認定いたしておるのであります。なお学校の生徒数その他につきましては、この報告書の記載としては必要なきものといたしまして、記載いたしませんでした。本件調査騒擾事件としての調査でございまして、文部委員会調査の範囲にはこれに触れなかつたのであります。
  70. 加藤充

    加藤(充)委員 私がお聞きしたいのは——こういうことにお答え願いたいと思うのですが、大和小学校分校という公称をもつて呼ばれております小学校の一つの建物なり、小学校は、これは元朝鮮人の中から接収をいたしまして、守山小学校の建物の接収と同じような意味合いで接収されたものを、大和小学校分校として運営しておつたのではないか。そうして中身は、この報告書に書いてあるように、朝鮮人小学校という実態をなしておつたのではないか、さすれば、お聞きしたいのは、大和小学校分校というものがどういう経過で出て来たのか。そしてそれは明らかに私立大和小学校の分校として名古屋にあつたのかどうか。そしてそういうふうな取扱いを受けた後に、そこでは依然としてもと通り朝鮮人の教育が行われていたのじやないか、この点を承りたいと思うのであります。
  71. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 大和小学校分校というのも、これは接収の対象になる学校と聞いております。なお運営等につきましても、接収の対象になる学校であれば、もちろん政府の認可したものではない、朝鮮人自体で運営をいたしておるのであります。これがやはり今回の事件の発端になつているのであります。
  72. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、この先生は日本人ですか、朝鮮人つたですか。
  73. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 聞くところによりますと、また証人として呼び出したところによりますと、そこの朝鮮人の子供を教える先生は、朝鮮人である、こういう調査になつております。
  74. 加藤充

    加藤(充)委員 これは、私ども調査では、日本人だということなんですが、それで国家から費用を——国家といつても、具体的にはいろいろ問題がありましようが、まあ日本側から費用を支給されて、そして接収建物ではあつたけれども、もつぱら依然として朝鮮人の教育をやつた、いわゆる朝鮮人小学校であつた、こう聞いておるのです。私がなぜこの問題を問題にいたしますかというと、接収を受けた建物、それからその後におけるその建物の利用並びに朝鮮人の教育について学校をなくした、教室をなくした人たちに対する朝鮮民族の教育問題として、地方によつて取扱いがまちまちである。中央のような、法律できめられたような取扱いではなかつたのではないか。こういうところに、やはりあそこでああやつておるならこうしてもらいたいという要求が当然に出て来るはずなのでありまして、その点を紛争の原因と関連さしてお尋ねしたいのでありまして、その関連において御調査の結果を御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  75. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 調査は今何回もお答えいたしました通りでございますが、もう一度申し上げますと、私たち調査目的というのは、騒擾事件につきまして、主として結論をして出してあります。この点を重点的に調査をいたしたのでございます。ただ学校の合理性、学校の運営に矛盾があるとかというような問題が事実現われましても、それよりもわれわれの大切なのは、その学校の運営を口実として操つた分子、その背後におるところの存在、これが本調査の重点にならなければならぬと思つておるのであります。そこにおいてわれわれはこの調査目的をそこにきめて調査をいたしまして、ここに結論を生んだことを御了承願いたい。
  76. 加藤充

    加藤(充)委員 朝鮮人小学校はほとんどスト状態であつて、教師、父兄に誘導された云々というような報告の事実並びに報告の文章が現われていますならば、あなたが主宰された名古屋市の事件調査について、朝鮮人小学校というようなことじやなしに、ちやんと私立大和小学校分校というようなことを、はつきりとあなたがお調べになつたのだから、そういうことを私は指摘してほしいし、指摘するのが、解釈はいずれにいたしましても、これが調査の自主的な報告でなければならぬ。しかもあなたが御指摘のように、名古屋においては——神戸にはなかつたけれども名古屋京都かにおいては、教育の問題が重要な問題として取上げられた。重要な問題と言つて語弊がありますならば、言い直しますが、いろいろ騒ぎの中に朝鮮人教育問題が取上げてあつたということが報告されます以上は、こういう特異的な取扱いをもしやつて、しかも日本人が学校の先生であるということが私ども調査には上つておりますが、あなたは朝鮮人の先生が、大和小学校分校の先生であつたというふうに言われておるのですが、その取調べの真実はいずれにいたしましても、報告として名古屋においては少くとも大和小学校の分校の運営なり実際なり、その経過というものが明かにされなければ、私ははなはだこの報告は、名古屋における問題が問題なだけに、非常に部分的である、あるいは意識的であるという非難を、あなたの報告書の文字、あるいは報告の事実の中から結論されてもしかたがないような気持がいたすのであります。  関連質問を終ります。
  77. 梨木作次郎

    梨木委員 押谷さんにもう一度この点を伺いたいのですが、神戸の西神並びに東神小学校、これが朝連解散に続いて閉鎖を命じられた、その後におきまして、これを日本の学校の分校にするということが決定された、それで朝鮮人の方もそれを了承したということを聞いておるのであります。その点はどういうように御調査になつておりますか。
  78. 押谷富三

    押谷委員 神戸においては、朝鮮人学校という存在は公には認めてないようであります。従つて朝鮮人学校の費用等も公では出しておりません。ただ黙認しておる。しかし朝鮮人の仲間においては、民族教育という要求があることは事実らしいのですが、神戸では騒乱の原因として民族教育などの要求は出ておりません。従つて神戸では学校問題は調査を詳しくはいたしておりません。私が申し上げた程度であります。
  79. 梨木作次郎

    梨木委員 そういたしますと、私の方の調査では、神戸事件の原因の中の一つとしてあげられておる問題は、朝鮮人学校に対する当局の無理解、民族教育に対する抑圧、そういうことがあげられておるのでありますが、調査団方々は、それは神戸事件の原因として取上げるほどのものじやなかつたということで調査をあまりされなかつたというように了承してよろしいのでありますか。
  80. 押谷富三

    押谷委員 梨木君はどこから教育問題が一つの原因になつているとお考えになるのかわかりませんが、私どもは理解に苦しみます。騒乱事件の当時、大衆の声とし、当局に対する要望といたしましては、朝鮮人学校に対する無理解とか、民族教育に対する要望、そういうことは神戸においては絶対にありません。一口もありません。ただ騒乱の集合場所であるとかあるいは騒乱に狩り出された人々の連絡機関が朝鮮人学校の生徒なり、その学校そのものを利用されたことは事実でありますが、その程度で教育問題というものがこの騒乱には現われておりません。
  81. 加藤充

    加藤(充)委員 押谷委員とはちようど大阪で私同職なんですが、大阪京都を中心として、あれは二十二年の春だつたか、二十三年の春だつたか、いわゆる朝鮮人の教育、学校問題で大問題が起きたことがあるのですが、やはりこのたびあなたの方がたまたま御選択遊ばされてお調べになつたところが京阪神を中心にした地域なんです。たまたまの結果にもせよ、今度の中心は朝鮮人の問題なんです。それから前のときは、あれほど天下の耳目を聳動してアイケルバーガーさんか何かが非常事態宣言を出して云云の問題が出たほどなんです。こういうふうな問題なんで、あの辺に行かれまして、朝鮮人の騒擾問題、いわゆる括弧づきの問題をお調べになるときには、やはりこの点を意識的に、徹底的につつ込んでお調べになるのが当然だと思う、常識だと思うのですが、そういうやり方で、御態度で調査に御終始遊ばされたかどうか、その点をひとつ念のためにお聞きしたい。
  82. 押谷富三

    押谷委員 朝鮮人の学校騒動とかいうことであれば、その学校は十分調べて来ますけれども、たびたび繰返します通り神戸における騒乱には、その原因として民族教育とか、朝鮮人学校とかいうことは、要望としては現われておりません。ただその学校が場所的に利用された、あるいは生徒が連絡機関であるということで、その生徒はどこから来てその場所はどんな場所であるかということは、現場へ参りまして親しく調査はいたしましたが、教育自体については関係がありませんから、その点に行きますと、今田嶋委員からお答えになりましたように、名古屋であるとか、あるいはまだ答えておりませんが、京都であるとかは、相当教育関係に影響がありますから、それは十二分に調べて来たつもりであります。
  83. 梨木作次郎

    梨木委員 それでは次に京都事件のことについて伺いいたします。報告書をざつと見たのでありますが、この二十六ページに事件発生までの発展的諸情勢という見出しで書かれてあるのでありますが、これによりますと、十月から十二月までの間にレツド・パージ闘争、反税闘争、学生運動、朝鮮人事件が記載のように十六件発生したのであるが、そのうち、十一月十三日井上電機事件をめぐる諸情勢は、円山事件にいろいろな意味において関連があると思われる。こうなつております。そこで私たち調査によりますと、十二月九日に計画されました集会は禁止されております。ところが十二月九日の集会が禁止されるまでの、九月以来の京都市警の集会、示威行進、そういう大衆行動に対する非常な無理解な弾圧的なやり方に対する人民の不満が、非常に強かつたということを聞いておるのであります。この調査によりますと、今読み上げたようなことが事件発生までの諸情勢の要因としてあげられておるのでありますが、そこでお伺いいたしたいのは、十二月九日以前におけるところの京都警察当局の集会禁止がどの程度に行われて来たかということを御調査なつたかどうか。私の方の手元に来ているところでは、まず九月の十七日に全官公主催の国会報告演説会、これは労農党の堀眞琴さん、足立代議士、それから風早代議士、こういう方々国会報告演説会、これは集会人員が三十名ぐらいであつたのに、武装警官が八十名で実力的に解散された事実がある。これが九月の十七日。それから九月の中旬には、さらに東山、上京区、中京区、下京区、左京区等で行われた市民の税金懇談会、これも禁止されております。それから九月の二十四日になりまして、全官公と映画サークル主催の映画講座、ここで映画「自転車泥棒」を上映したのでありますが、解説並びにあいさつが全部禁止されるというようなことが行われておるのであります。さらにカチユーシヤ楽団の上演も禁止されておるというようなこともある。次に十月十二日には、京都市会に市條例の改正案が出されたのであります。これが今度の圓山事件の当日の集会禁止の法的な根拠になつておるらしいのでありますが、この市條例改正案などに対しては、京都の民主団体は非常に反対しております。しかしこれを押し切りまして、十一月十一日に公布しておるのでありますが、その後になつて、この調査報告書にもありますが、十一月十三日の井上電機のいわゆるレツド・パージ、この問題に関連いたしまして、私たち調査によりますと、いわゆるレツド・パージによつて追放された人たちが、門を出て整然と帰ろうとしたのを、武装警官がそこですぐ全員を逮捕しておるのであります。これはいかにも乱暴なやり方で、警察は全部逮捕したのでありますが、検察庁はその後全部釈放するというような状態でありまして同じ捜査官憲の中においても意見を異にするような、乱暴な逮捕が行われた。この点は調査報告書にも載つておりますが、こういうことが十一月十三日にありまして、それからさらに、この報告書にも載つておりますが、十一月二十二日の京都大学の演劇部主催の前進座を囲む会、これがまた大学当局が許可したにもかかわらず二百名の警官で実力的に禁止された。さらに十二月七日になりまして、十二月九日の越年総蹶起大会、この大会の責任者であるところの全官公の議長の梅林信一氏を、一年前の京都交通労働組合年次大会における問題を取上げまして、暴力行為容疑として、同氏外四名を逮捕したのであります。このことは、実際は十二月九日のこの集会をやはりじやましようという政治的な意図のもとになされたというような印象を大衆は受けておるのであります。これは十二月九日になりましてこういう逮捕は理由がないということで、現に判事の方は勾留理由なしとして釈放しておるのであります。こういうことがずつとつながつて、集会に対する不当な、理不盡な弾圧が行われて来ておる、こういう事実があつたのでありますが、これらのことが、やはり私は十二月九日の集会禁止に対する大衆の憤激を買つた一つの原因ではないかと思うのであります。それまでの京都警察当局の集会に対する扱い方、これがどういうふうに行われて来たかということを御調査なつたかどうか。
  84. 押谷富三

    押谷委員 梨木委員から、デモ、集会禁止の京都の実例をたくさんおあげになりましたが、そういう集会の禁止のあつた事実は間違いないと思います。京都の市警におきまして、集会、デモ禁止の処置をとりましたこの処分が行き過ぎであるか、圧迫であるかという関係につきましては、私は行き過ぎとも圧迫とも考えておりません。これはその集会、そのデモのそれぞれの性格背後関係、その目的とする真の意図、こういうようなことをよく検討して、京都市警はデモ禁止等の処分をとつておると信じます。私は、私ども調査いたしました範囲において、警察が行き過ぎであつたと見るべき事実はありません。
  85. 田万廣文

    ○田万委員 いろいろ共産党の方におきましては、この調査報告書に対して質問がまだたくさん残つておるそうであります。私考えますのに、この際その質問の要旨を一括して調査団に対して答弁を求めるというように、お願いしたいと思うのであります。共産党の今後に残した具体的な問題に対する御意見をまとめて、調査団答弁を求めるというような形式をとつていただきたい。そうして調査団といたしましては、自由党の押谷君、田嶋君のみならず、わが党の猪俣君なり民主党の大西君もおられます。調査班として一括した調査班でありまして、自由党だけの調査班でもないのでありますから、そういうふうに願えば、まことに公平な御答弁ができると思います。それからいろいろ質問がある理由は、梨木君が先ほどいろいろ言われておりましたが、この調査団共産党の方が漏れた。非常に遺憾なことであるが、漏れたというところに多分に疑念を持つておられると思うのであります。従つてどもはこの調査が公平になされたということをかたく信じて疑わぬものでありますが、なおその共産党の人の疑念を解くために、さような方法をひとつ皆様の御同意を願つたらよいと思うのであります。動議として提出いたします。
  86. 安部俊吾

    安部委員長 田万君の御発言は、文書をもつて一括して質問せよというのですか。
  87. 田万廣文

    ○田万委員 さようでございます。
  88. 梨木作次郎

    梨木委員 ちよつとその取扱方についてわからない点があるので、まずお伺いいたしたいと思いますが、私の方から、あとつている質問を整理して一括して文書で出す、それに対して調査団の方から答弁していただく。そうするとそれは委員会以外で文書で出して、委員会外でそれに答弁してもらうことにしようという御意向なのか、私の方が一応整理しまして、あらかじめ出しておきますが、調査団の方でも回答を用意されまして、あらかじめ整理したものを私がこの委員会発言を求めて尋ねて、それに対して答弁をしていただくというようなかつこうをおとりになるのか、そこのところがわからないのですが。
  89. 田万廣文

    ○田万委員 私が申している趣旨は、要するに委員会において共産党諸君質問を一括して書面で調査団に出して、その調査団答弁をこの委員会において求めるということなのであります。こう言つては失礼でありますが、今まで聞いておりますと、そのポイントだけというと、ごくわずかなものになる、そのポイントに至るまでの話が長いと思うのでありまして、そのポイントだけを用意したものを調査団に対する質問書として出していただきたい。そうしてそのポイントに対する答弁調査団が一括してこの委員会でなさる。なおかつそれでも不明な点、疑問の点があれば、これはお聞きになることもけつこうと思いますが、とにかく要領よく議事を進行いたしたい、こういう趣旨から申しておるのであります。
  90. 安部俊吾

    安部委員長 田万君の御提案の趣旨を要約すれば、文書をもつてその質疑する要点を提出する。そうして調査団が協議の上、それに答弁をする文書を提出する……。
  91. 田万廣文

    ○田万委員 いや、口頭で答弁するのです。
  92. 安部俊吾

    安部委員長 委員会で口頭をもつて答弁する。そうすれば速記録にも載るし、それでどうですか。質問者の方でそれで満足しますか。
  93. 梨木作次郎

    梨木委員 議事進行についてですが、そういたしますと、きようのあと議事進行はどういうことになるのか、その点も……。
  94. 田万廣文

    ○田万委員 今の緊急動議をよく御理解願えればわかるのであつて、それがまとまればきようはこの程度で散会にして、そしてただちに共産党諸君においては準備にかかられんことを望みます。
  95. 安部俊吾

    安部委員長 なお先ほども梨木委員から、共産党委員調査団に漏れたということでお話があり、またただいまも田万委員からもそういうお話がありましたが、特に共産党に席を置かれる委員諸君を、計画的に調査団から漏れるようにやつたわけではないのであつて、これは理事会で委員長が承諾したというようなことも、議院運営委員会において梨木君が発言されたそうでありますけれども、それは後に梨木君とお話をして、そういうことはなかつたということは御了解を得ております。ただきわめて公平な立場においてやつたのでありますけれども、いかにしても共産党員の代議士の諸君の数が少数でありまして、五人と制限されてみますれば、やはり公平に考えて、民主党、社会党から一人ずつの調査委員を出しますれば、自由党が三人としてきわめて公平に調査団が構成される、こういうふうに考えておるのでありまして、その点はすでに梨木君においても御了解になつたはずであります。そこでただいまの田万君の御提案でありますが、この点に御異議ありませんか。
  96. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は別に異議ではないが、これはそう急がぬでもいいのですか。向うから質問書を書いて出して、それをプリントして配るには二日や三日かかります。急がぬならそれでいいですが、急ぐなら、今言う通りに、質問前提が長いからなんだから、要領だけを今やれば一番早や行く。その長いのをやめてもらえばいいのです。
  97. 安部俊吾

    安部委員長 速記を中止して……。     〔速記中止〕
  98. 安部俊吾

    安部委員長 速記を始めてください。ただいま懇談の結果、質問事項は十日までにこれを提出する、そして調査団の方においてさらにそれを研究して、十三日の法務委員会において答弁する、こういうふうに決定したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決します。  本日はこの程度において散会いたします。次会は十三日の午前十一時から開会することにいたします。     午後三時八分散