○眞溪
公述人 私は
日本宗教連盟の情
報部長をいたしております眞溪でございます。私がこの会におきまして
意見を述べたいと思います
理由を申し述べたいと思うのであります。
まずその
意見を述べたいと思う
理由の
一つは、この
宗教法人法案に関しまして、ややもすれば
一般に誤解を生じているということでございます。その誤解のおもなるものにつきまして情報を伝達いたしたい、しかし誤解が一日も早く一掃されますことを要望したいのであります。第二の
理由は、この法条というものは現在のところ、われわれにとりましては最上のものであると信じまするがゆえに、その賛成の具体切な事項について、若干
意見を述べたいというのが
意見を述べたい
理由の二つでございます。
まず第一の誤解一掃に関する問題でありますが、その誤解のおもなるものの中の
一つに、この
法律は淫祠邪教を取締るものであるという誤解であります。また取締
つてもらいたいという要望も一部にあるということであります。しかしながらこの淫祠邪教というものは、一体だれが決定するのかという問題であります。これは国である、あるいは国の
機関である、あるいは
法律というものが決定をすべきものではなくて、少くとも民主主義における
信教の自由という
立場からいたしますれば、その
宗教団体が存在するかしないかを決定するものは、民衆それ
自身でなければならぬと思うのであります。従いましてこの
法律は決して
宗教団体にかくあるべきものであるということを何ら要求いたしておりません。従
つてこの
法律は、この
法律によ
つて宗教法人となりたいものだけに適用されるのでありまして、この
法人法によ
つて宗教法人にならなくても、
憲法の保障するところの
信教の自由は、いかなる
個人といえ
ども、いかなる
団体といえ
ども、教義の宣布、儀式の執行ができるのであります。でありますから、私
どもはこの
法律は決して淫祠邪教というものを判定する
法律ではないということを強調いたしたいのであります。またそれを取締
つてもらいたいという要望につきましては、
信教の自由という
立場から絶対に反対せざるを得ないのであります。新興
宗教とは一体何か、それは年代でいうのでありましようか、あるいは教義の
内容でいうのでありましようか、こういう問題は絶対に
法律では判定できないと私は考えるのであります。
第二の誤解の問題は、この
法律は政府の
宗教支配が復活するのではないかという
一つの誤解であります。それは先ほど来も問題になりましたように、
認証ということがありますために、
宗教の支配の復活が危惧されておると思うのであります。しかしながらその
認証というものは、その
団体が
宗教団体であるかどうか、
宗教団体とは第二條に
規定されておる單なる形式上の問題でありまして、それがその
法律にきめておるものに合
つておるかどうかという判定、それにこの
法律によ
つて間違いなくその規則ができておるかどうかという問題、またその
宗教団体の代表者が申請をする代表権を持
つておるかどうかといつたようなことを、政府が
認証するにすぎないのであります。
宗教の本質それ
自身については、政府は何ら
認証の対象としておらない。しかも
信教の自由ということを建前としておる案でありますために、しばしば政府の
宗教支配の杞憂のある点に対しまして、その杞憂がないようにしばしば
規定をいたしておるのであります。たとえば
認証に当る官庁は、越えてはならない
一つの域をしばしば
規定いたしておるのであります。しかも
個人以外のものに
法律が
法人格を與えるということは、国が責任を持つべきであります。従
つて現在のように、いわゆる届出主義、登記主義ということになりますと、規則をつく
つて届けさえすれば
宗教法人になれる、しこうして
宗教法人に
なつたものが
宗教団体であるかどうかの判定が行われぬのであります。極端に申しますと、
宗教法人令は、いわゆる脱税のために悪用されるところの
法律であるとも言うことができるのであります。この
意味において国が
法人格を與えることに対して責任を持つということからいたしますれば、何といたしましても、この
程度の
認証の制度はやむを得ないというふうに考えるのであります。
また第三番目の誤解は、この
法律はいわゆる包括
団体を分散せしめる
法律であるというように言うのであります。またその逆に被包括
団体からいいますと、包括
団体の統制権を強化するものであるという誤解があるのであります。しかしながら今日の
宗教法人令におきましては、包括
団体から脱退して参りますことを
規定した箇條は
一つもございません。第六條の
所属団体の規則変更は、その管長の承認を得なければならないという
規定から見ます。と、一見脱退に対しても
所属宗派の管長の承認がいるかのごとくにも考えられるのであります。しかしながら判例の上から、あるいは
解釈の上から、そうではなくして、新しく包括
団体を設定する場合においてのみ、その包括
団体の管長の承認がいるのだ、従
つて脱退する場合には、包括
団体の承認がいらないといつたような
解釈の上で脱退をいたしておるのであります。ところが今度の
法律におきましては、
宗教法人個々の基本的人権は認めて、脱退は自由にできるのでありますが、従来のように單なる
解釈で行かないで、そこに一定の契約事項を破棄するということでありますがゆえに、その包括
団体にも通告して、また自分の利害
関係者にも報告をして、納得ずくで、いわゆるガラス張りの中で
宗教法人の挙動を決定するというふうにできておるのでありまして、むしろ包括
団体の側から申しますれば、きわめて適切な
規定ができたものと
解釈いたすのであります。また包括されておる
団体といたしましても、決して包括
団体から脱退ができないのではありませんで、正当な事由があり、正当な手続をとるならば、いつでも自由に脱退できるという基本的な人権が認められておるということからいたしまして、こうした誤解はまつたく誤解であるというふうに考えられるのであります。
なおさらに第四番目の誤解は、この
法律は株式会社法であ
つて、
宗教法ではないという
意見でございますが、むしろ私
どもはこれは
宗教法であ
つてはならないと思うのであります。
宗教団体法ができました当時には、
宗教は
法律によ
つて規定すべきではないという猛烈な運動が起りました結果、
宗教法がかえられまして
宗教団体法と
なつたことを思い起しましたときに、われわれは絶対に再び
宗教法などというものは
規定いたしてはならないのであります。従
つてこの誤解は、まつたくこの
法人法を知らない
認識不足の誤解であると私は考えます。
そこで第二の賛成する具体的事項の二、三を申し述べたいのでありますか、まずこの
法人法全体といたしまして、
信教の自由ということを中心にしておる。われわれは昭和二十年でありましたか、
信教の自由を制限する一切の法規、
法令は排除しなければならないというスキャップ指令をもら
つておるわけでありまして、この指令のために国が
宗教を支配する
宗教団体法が廃止を命ぜられておるのであります。でありますから、この
宗教法人法は、あくまでもこのスキヤツプ指令の意を体して、
信教の自由を中心としなければならないという点にあるのであります。このことはまつたくこの
法人法に具体的に表われておるということが言い得ると思うのであります。まずこれが私の賛成する第一の
條件でございます。つまり
宗教活動、自主的にしてきわめて自由なる
宗教活動を可能ならしめる物的な基礎を確保せしめておるという点に、この
法人法の中心があるという点を賛成をいたすのであります。第二番目には、規則の
認証制度をと
つておりますが、これはすでに述べましたように、
宗教団体でないものが
宗教法人になれないようにしておるという点について賛成を表するのであります。
第三番目には、この
宗教法人法は、官理面におきまして、
宗教団体の非常に民主化をはか
つておるとともに、
宗教法人それ自体の責任というものを非常に明らかにしておる。たとえば責任役員の
規定でございますとか、あるいは第十二條の中に出て参りまする包括
団体と被包括
関係どの間において、一定の契約事項があるならば、その契約事項を示さなければならないというふうに、他の
宗教団体が他の
宗教団体を絶体的に強制し、服従せしめるというような点のなくな
つておることなどは、最も賛意を表したい
一つであります。
なおさらに従来は法文のほかにたくさんの政令が出まして、実は法文だけ賛成いたしましても、政令でしばしば私
どもが困ることがあるのであります。ところが今度の
宗教法人法は、政令その他をすべてこの
法律に一本にいたしております。このことはまつたく従来の慣例を破つた新しいシステムであると考えるのでありまするが、これはきわめて法規に暗いところの
宗教団体側にと
つて、非常に便利であるということが言い得ると思うのであります。この点もまた賛成をいたしまする事項の
一つでございます。
なお第五番目には、従来
宗教法人の合併ということはできなかつたのであります。つまり合併しようといたしまする場合には、二つの
宗教法人が解散しまして、さらに新しい
法人を創設する以外はなかつたのであ力まするが、今回合併の
規定ができましたことによ
つて、きわめて簡單に合併できるということも、また賛成をしたい
一つの事項でございます。
なおこの
宗教法人法案は、いわゆる最大公約数というものによ
つてできておるのでありまして、現在でもおのおの六百の
宗派があり、二十万以上の
宗教法人がありまするが、この最大公約数の
法律の中において、その伝統あるいはそこの特色を十分に生かし得るところの、彈力性を持つた
一つの
法人法ということが言い得ると思うのであります。この点もまた私
どもが賛成をしたい具体的な事項の
一つでございます。
なお
宗教法人の、その用に供する
土地、
建物というものは、現在の
地方税法の第三百四十八條第三項に
規定されておりまするが、その用に供される
範囲がきわめて不明確でありまして、しばしば
地方長官の認定の差異によ
つて困
つておるのでありまするが、この
宗教法人法案におきましては、第三條において、その
宗教法人がその用に供する
土地、
建物を具体的に
規定しておる。しかも附則の第二十七項においてそれの本来の目的に使うものはこれを
免税といたしまして、十分
宗教活動の物的な確保に便ならしめておるという点も、またわれわれの賛成をしたい重大な事項でございます。
その他これを全面的に考えまして、現在の段階におきましては、少くとも最上のものであるというように考えますので、すみやかなる成立を希望してやまない次第でございます。