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1951-03-27 第10回国会 衆議院 文部委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十七日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長代理理事 岡延右エ門君    理事 佐藤 重遠君 理事 若林 義孝君    理事 小林 信一君 理事 松本 七郎君       柏原 義則君    甲木  保君       東井三代次君    圓谷 光衞君       井出一太郎君    渡部 義通君       小林  進君    浦口 鉄男君  出席政府委員         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (大学学術局教         職員養成課長) 玖村 敏雄君         文部事務官         (調査普及局         長)      關口 隆克君     ————————————— 三月二十四日  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二一号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二一号)(参議院送付)  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇七号)(予)  教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇八号)(予)     —————————————
  2. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 これより会議を開きます。  教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同施行法の一部を改正する法律案、この両案を一括して議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。渡部義通君。
  3. 渡部義通

    渡部委員 この間、私は免許をとるためのアイフェルにおいて、時間的にも経済的にも、アイフェルを受ける人たちが非常に困難を感じておつて、それが教師の資質の向上にもならないし、また授業時間を非常に圧迫する結果になつておるという教師たちの多くの陳情や、日教組の人々の意見等から述べて、質問をしたわけですが、文部当局の方では今度の期間的な延長によつてその点が非常に軽減されておるという答えがあつたようです。しかし実際問題として、実際に講習を受けておる教師たちからいえば、時間的にも経済的にも非常に困難だ、おそらく今度期間を延長されたからといつて、その期間のうちに全部とれるということは、非常に困難だという経験を申しておるわけです。もしそういう場合に、期間が来て、しかも非常に広汎な教師たちがまだ全単位をとることができないというような場合には、さらに延期するような可能性があるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  4. 稻田清助

    稻田政委員 認定講習におきまして、一級上の免許状をとりますために修得しなければならない単位数を計算いたしてみたのでありますけれども、これは一人平均二二・四単位ということになつております。認定講習以前に、いろいろな講習で、すでに三・三単位つております。昨年の認定講習におきまして平均四・二単位をとつておりますから、差引あと十四単位程度とるわけであります。これを昨年の夏の改正によりまして延長せられました期間、すなわち今後五年間にとることを仮定いたして計算いたしますれば、年平均単位弱であります。三単位と申しますれば三週間でありますから、かりに夏休みにおいてこの講習に出かけてこの講習に出かけて受けるといたしますれば、楽々受けられるわけであります。なお、さらに今回の改正案におきまして五年延長することになりますから、よもやこの期間におきまして、そうきゆうくつなとり方をいたしませんでも、すべての人がとろうといたしますれば、一級上の免許状を楽々取得するだけの講習受講が可能であると考えます。
  5. 渡部義通

    渡部委員 事実は、必ずしも計算通りには行かないのであつて、この点については、教師たちは現在非常に不安を持つております。でありますからわれわれは、もし一定期間内に単位科目をとることが非常に困難であるというような状態現実に起きておるような場合には、これはやはりさらに延期すべきものであるというふうな考えを持つておりますが、その点はそれとしまして、特殊学校盲聾唖学校等における問題がさらに加わるわけですが、現在盲聾学校での教師は何人ぐらいおりますか。
  6. 稻田清助

    稻田政委員 二千九百名程度考えております。
  7. 渡部義通

    渡部委員 盲聾唖学校では、全体として単位が軽くなつているのに、特殊教育の場合には、単位がさらに六単位加わつておるという点について、この学校に勤めておる人が、非常に困難を感ずるという事情があるのですが、この点はどうですか。
  8. 稻田清助

    稻田政委員 二級免許状を持つておりまする者がもし上級の免許状をとりまするためには、二十三単位とらなければならないのでありますけれども、二級普通免許状を持つておる盲聾唖教員が、一級盲聾唖教員免許状をとりまするためには、六単位とればよろしい、こういう意味におきまして、むしろこの点につきましては、一般よりも軽いとすら言い得る問題だと思います。
  9. 渡部義通

    渡部委員 それは違うと思います。盲聾唖学校教師たちは、むしろ普通の学校教員であることを欲しておるし、またいつまで盲聾唖学校教師をするかわからないのであつて、普通の学校にかわるというようなことになりますと、そのためにはやはり三十単位ぐらいとらなければならない。現にとつておらなければ、非常にいろいろな不便もあり、不安もあるというようなことで、盲聾唖学校教員組合全体として、われわれだけなかなか、おそらく各党に来ておると思いますが、そういう陳情を出して来ておるわけです。そうしますと、やはり盲聾唖学校の場合には、単に大單位とるというだけでなくて、そのほかに三十單位をとらなければならぬという過重の負担が加わることになりまするし、そのほかに、さらにこの講習を受け得る地方は、現在東京大学とか、東京大学、大阪大学、広島大学、福岡大学だけに限られておるということも聞いております。そうしますと、非常に遠隔地方からこれらのところにアイフェルを受けに行くためには、時間的にも、経済的にも特殊の困難があるわけですが、これについて特殊な考慮が払われておるのかどうか、この点を承りたい。
  10. 稻田清助

    稻田政委員 御質問の第一段につきましては、現在の盲聾唖教員の二級普通免許状を持つておる方々が、ほかに比しまして非常に楽々切りかえられておるという事実について、お認めいただきたいのであります。その基礎において考えました場合に、お話のように、盲聾唖教員あとで、小学校あるいは中学校教員になります場合には、他よりも楽々となるといたしますれば、むしろこれは他の教員に対しまして、権衡を失する問題だと考えております。またさらにこの二級普通免許状を得ております現在の教員方々は、特別の新教育による講習を、ほかの教員のように受けていないという事実についても、お考えいただきたい。そういうような意味合いからいたしまして、一級免許状を取得いたしますためには、こうした重要な教育でありますので、ぜひある程度講習を必要とすると私ども考えておるわけであります。  また第二点の受講便宜につきましては、通信教育につきましても、特別の便宜をこの方非の教育者に対しまして考慮いたしておりまするし、またほかに県当局その他におきましていろいろな催しもあり、また研究集会等におきましても、単位修得の道があるわけでありまして、われわれといたしましては、養成するといたしましても、一〇%以上というものは、相当充実した養成でもあり、再教育につきましても、今後ますますこうした各種方法を拡充いたしまして、便宜をはかりたいと考えております。
  11. 渡部義通

    渡部委員 盲聾唖学校に対して、特別の便宜をはかつておると言われるけれども盲聾唖学校職員に対する調整号俸は、すでに打切つてある。普通の一般教師としては、盲聾唖学校の方へ行くことは、必ずしも希望を持つていない。希望を持つていないけれども、特殊な人たちが、教師としての熱心さからそこに赴任するという場合に、調整号俸も打切られておる。しかも単位は、あなたの方は軽くなつたとおつしやるけれども、決して軽いのではない。軽いならば、盲聾唖学校全体から、ああいうふうな陳情が来るはずはないのであつて、あの陳情各地盲聾唖学校全体の教師たちから来ておること自体の中に、今度の認定講習の場合に、非常に困難を感じておるという意味が含まれておると思います。その困難というのは、先ほど申し上げましたように、単に単位の問題じやなくて、アイフェルを受けべき地域が非常に遠隔であるとか、不便であるとかいうような点があるのであつて、この場合に特別の便宜をはかつておると言われるけれども、どういう点に特別の便宜をはかつておられますか。
  12. 稻田清助

    稻田政委員 盲聾唖教員につきましては、御承知のように、俸給におきましても一号俸高くいたしておるわけであります。免許状各種級別と申しますものが、直接職階、職級に結びつくものではないのでございますけれども、現在の俸給としても、特別の処遇考えておるわけでございます。またこれらの方々が、ここに単位を新たに加えることについて、お話のように何か異議を考えておられるということでありますれば——それはどういうことか、私どもよくわかりませんけれども、とにかくここに単位が加えられるので、多少負担の加重を考えられるかもしれませんが、それはまた別に、ほかの小学校中学校あるいは幼稚園の先生方からごらんになれば、いかなるものであるか。やはり免許状は、すべてについて権衡を維持しなければならぬと考えております。当初におきましては、養成あるいは再教育に関しまする施設が充実いたしておりませんでしたので、こうした重要な教育でありながら、遺憾ながら特殊の配慮を用いなければならなかつたのでありまするけれども、特別に重要さを感じて、それらの施設を充実いたしましたあかつきにおきましては、むしろ他との均衡を考慮いたしますることが、教育界のために、われわれが配慮しなければならない務めだと考えております。また便宜方法といたしましては、先ほど申し上げましたように、こうした認定講習等につきましても、特別の配慮を用いたいし、また研究究会におきましても、特別の単位を認めるようにいたしたいと考えております。今の研究集合等は、もうすでにブロックごとに各地方で行つておるわけであります。また国立の大学におきましても、公開議座等を設けておりますし、通信教育につきましても、特別に優先的に考慮いたしておる次第でございます。
  13. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 ちよつと渡部君に御相談しますが、免許法については、特に昨日の午前、松本君によつても詳細に質疑が行われ、また今日と同じような答弁が懇切丁寧に繰返されました。ですからちよつと角度をかえて……。
  14. 渡部義通

    渡部委員 認定講習の場合の、米人講師の給料についてお聞きしましたが、もう一度正確に、米人講師のために支払う一人当りの、あるいは一単位当りの金額はどうなんですか。
  15. 稻田清助

    稻田政委員 認定講習には、外人教師はまつたく参加しておりません。それからいわゆるアイフェル——教育指導者講習における外人教師につきましては、全然手当を支給いたしておりません。
  16. 渡部義通

    渡部委員 全然手当がないということは、非常におかしな話なんだが、アイフェルの場合に一日に一万円ぐらいであるという風評が、各地認定講習を受けた受講者から言われておるのです。全然無給での米人講師の雇用というものはないと思うのですがどうですか。
  17. 稻田清助

    稻田政委員 前お答え申し上げましたように、アイフェルに参加せられる米人講師につきましては、米国政府において、その一切の経費負担いたしておるわけでございます。
  18. 渡部義通

    渡部委員 何のために、米人日本アイフェルのためにそういうふうな経費負担しておるのですか。
  19. 稻田清助

    稻田政委員 日本におきまする新教育充実発展のために、米国政府好意をもつてそうした外人教師を参加せしめておられることだと考えております。
  20. 渡部義通

    渡部委員 アイフェル科目講座は、どれくらいありますか。
  21. 玖村敏雄

    玖村政府委員 講座は、本年度は二十四講座でありまして、大体一般教育というのが三講座、その他の講座は、全部新しい教育学、あるいは教育心理学教育技術に関するものであります。
  22. 渡部義通

    渡部委員 文部省では、多分カリキュラムという雑誌の四月号を読まれたでしようが、ここに受講者が、アイフェル米人教師についてどういうふうに考えておるかというふうな点で、非常に注目すべき、またわれわれとして注意しなければならない問題が出ておると思います。あるアイフェル講習を受けた日本学者は、米人講師教育原理、あるいは教育心理学受講をした、しかしこれは非常に程度の低いもので問題にならない、天保銭的な講話を聞いておるような感じがしたというようにカリキュラムに書いてあります。ごらんになりましたか。
  23. 玖村敏雄

    玖村政府委員 カリキュラムの四月号ですか、三月号ですか、これはまだ見ておりません。しかしアメリカから来た講師の人が、全部第一流の学者だとは思いません。従つてそれらがことごとく非常に敬服する講義をする者ばかりだとは思いませんけれども、今おつしやつたようなことがもし事実だとすれば、それだけ日本学術の水準は高くなつておるし、なおそれにもかかわらず、アメリカにはアメリカの特色があるのですから、それはやはり学ぶべきは学んで行くだろうと思う。私どもの方にあります材料によれば、受講者がこの講義は何の役にも立たなかつたというような——これは無記名で書かせたのでありますが、そういうような表現は一つもありません。その大部分は、非常に有益であつたというふうに評価しておりますから、私どもとしては、主催者としての立場から、そういう評価によるほかはありません。
  24. 渡部義通

    渡部委員 これは私たちかなり注目しなければならない現象だと思います。確かにそういうふうな考えを持つておる人も、一部にはあるでしようが、とにかく非常に低い連中が来て、天保銭的な講話をする、そのために——これは大学先生ですが、先生自体は、自分の講座もその日はやれないというようなことで、非常にやつかいきわまるものだというふうな非難を非常にしておるわけです。文部省としては、アメリカからわざわざ講師が来て、しかも無料で日本教育の再建のために講義をすることを喜んでおるというふうに考えられるかもしれませんが、しかしこれは日本のために喜ぶべきかどうかということは、受講者のそういう感じの中にも、はつきり出て来ておると思うのです。この点は非常に重要だと思う。他の大学配属米人講師の問題にも関連するのですか、今米人講師のために、北海道大学とか埼玉大学とかでは、非常に財政困難の中から——たとえば埼玉大学では八十万円を年に支出するとか、北海道大学でも非常に高額を支出して——一方では日本教師たち雑誌もろくに買えない。もちろん研究資材とか研究施設とか、そういうものが非常に不完全な中で苦しんでおるときに、八十万円も出すような講師を雇つて来るという矛盾があり、しかもその外国講師が、日本でいえば中学校先生程度の者が大学に配属されておるという困つた状態が起きておる。これは事実上われわれはいろいろな報告を受けておるわけです。われわれの非常に心配する点は、外国から単に無給日本に来る好意というようなものを考えるのではなくて、日本教育は、日本教師たちが、こういう人たちによつて指導されなければならないような低い状態にないということを、われわれは申し上げておかなければならぬし、たといアメリカの方で、アメリカに適応した教育が、あるいは教育学が、あるいは教育技術が、相当高められたように見えておつても、そのことが日本人教育日本の諸状態に応じたところの教育に最善のものであるわけじやない。その講習日本人教師たちが、しかも大学教師たちがほとんど強制されるというようなことに至つては、日本人教師にとつて非常に不満であるばかりでなく、日本教育の上にも、非常に憂慮すべき問題がある。むしろ日本教育アメリカナイズするという目的のためにこそ、アメリカの方ではこういう講師をよこしておると、われわれは考えざるを得ない。こういう講師は、アメリカの方から指定されて日本に来るのか、または日本でこれは適当であろうといつて頼むのか、どちらの方法によつてこの講師が来るのですか。
  25. 稻田清助

    稻田政委員 第一のアイフエルに関連いたしまする御質問でありまするが、アイフエルに参加いたしまする各大学先生方は、決して強制いたしておりません。御本人希望を徴しまして、参加をとりはからつておる次第でございます。  第二に、新たに各大学に迎えまする外人教師の問題でありまするが、これは戦前におきましても、広く各国と教授交換をいたしております。それを再び開きまする第一着手といたしまして、ここに米国より三十数名の教師を迎えるわけですが、これにつきましても、まず各大学でその希望があるかどうか、どういう教科についてどういう性質の先生希望せられるかということを徴しまして、それに立脚して、適当な教師の招致をあつせんいたした次第でございます。
  26. 渡部義通

    渡部委員 アイフエルの場合には、講師はやはりアメリカの方から指定して来るわけですか。
  27. 玖村敏雄

    玖村政府委員 アイフエルの場合には、日本で開きたい講座希望を申し出ます。その希望する講座に、いかなる人がアメリカにおるかということは、われわれの方ではつまびらかでありませんので、向うからそれぞれの人を選んでよこします。候補者をあげて、その中から来るのでありまして、必ずしもわれわれの希望する通りの人が来ておるとはもちろん言いません。さつきおつしやつたように、人によつて非常にすばらしい人と、そうでない人があるのは、事実だろうと思います。
  28. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、向うから指定して来る。これに対して、日本の実績から見て、こういうもう天保銭的な講義をすると受講者たち考えられているような連中は、もはや日本教育を高めるのに何の役にも立たないということが明らかになつた場合には、これを拒絶して、さらに新しい、もつと高い、日本の学問の進歩に、日本教育発展のために役立ち得るような者にかえることはできますか。
  29. 玖村敏雄

    玖村政府委員 先ほどもちよつと申し上げましたように会員自身のエモーシヨンによれば、大体においてというより、むしろ大部分は、有効であつたといつているのですから、その中に多少の差はあつても、これは全然役に立たなかつた、だめだつたということは聞かれないのです。それから本年度の第一回の開催のときよりも、第二回の開催のときの方が、志望する者の数が非常に多かつたという事実に徴しましても、おつしやるように、そう失敗しているとは考えておりません。
  30. 渡部義通

    渡部委員 アイフエルについては、強制はしないと言われましたが、強制しないとすれば、アイフエル受講を拒否することはできますか。
  31. 玖村敏雄

    玖村政府委員 命ずることができないのですから、拒否するということはないはずです。
  32. 渡部義通

    渡部委員 それは形式論理的なお答えであつて、実際問題としてアイフエルを受けない者が、その後の教師としての位置にいろいろな制約を受ける、制約というより、有形無形の圧迫を受けているような事実も報告されておりますが、そういう点については、どうなりますか。
  33. 稻田清助

    稻田政委員 今お答えいたしましたように、希望者の方が非常に多うございまして、その中から選考いたすような次第でございますから、本人の進まないのに、無理に出てもらいたいというような事情もございません。
  34. 渡部義通

    渡部委員 アイフエルについては、それだけにしておきますが、米国人教師については、各地希望によつて配属したわけですか。
  35. 稻田清助

    稻田政委員 前お答え申し上げましたように、大学希望を徴しまして、それに基いて招致いたしました。
  36. 渡部義通

    渡部委員 その場合に、文部省米人教師に対しては月額三万五千円払つていると言われましたが、埼玉大学とか北海道大学なんかの場合に、今申し上げたような事情が現にあるという報告に接しているわけですが、そういう点はどうです。
  37. 稻田清助

    稻田政委員 まだ到着いたしておりませんから、お話のような事実があろうとは信じません。
  38. 渡部義通

    渡部委員 では、そういう点も調査されることを、私としては希望いたします。そういうことをはつきり調査されて、日本大学教授が、食うに食えない生活をやつていて、みんな内職をしなければならない。たとえば工業大学なんかでも、内職によらないでどうにか生活できるのは、七、八パーセントぐらいしかないわけなんです。ほとんど日本大学教授は、内職をしなければ食えない。しかも本も買えなければ、ろくな雑誌も買えない。研究室に行つてみれば、雑誌もなければ本もない、いわんや施設はほとんどみな瓦解状態にあるときに、大したものでもない中学教師に毛の生えたような連中が来まして、しかもそれに三万五千円も払い、そのほか住宅だとか何だとかいうようなものに特別な考慮払つてまで、外人講師日本大学に呼ばなければならないという理由は少しもないと思うのです。日本には、各大学に配属して、りつぱにその教授をやつて行ける人たちが、非常に多いのであつて、そういう人たちがどんどん失業しつつあるわけなんです。どんどん首切つておる。そういう優秀な教師たちをどんどん採用してやつて行けば、外人教師日本に呼ばなければならぬということは全然ない。いわんや文化的な交流の面については、そういう連中が来ても、われわれから考えてみて大して有益ではない。すばらしいものも何もつかむことができないようか講義をするよりは、その経費でもつて外国雑誌をどんどん買い入れるとか、また外国と他の形での文化交流をするいうことの方が、日本大学、その他の教育の面についてもそうだし、日本人文化一般を高める上にも、非常に重要だと思うのです。文部省は、講師交換重点を置くのじやなくて、日本教師たち生活を高めて、その文化的な、研究的な活動を十分にし得るような、物的な基礎を与えて行く面に、もつと重点を置かるべきだと思うのですが、やはり外国との交流講師交換という形でやつて行かれるつもりか、日本文化を高める方法を、日本学校教師の物質的な基礎を確立するという見地からやつて行かれる方針なのか、この点はどうですか。
  39. 稻田清助

    稻田政委員 外人教師の招聘は、文化交流の一環として考えておる次第でございまして、これに要しまする費用三千二百万円のほかに、一億円の外国図書購入費も、予算に計上しておる次第でございます。また先ほど申し上げましたように、これはそれぞれの大学教授会評議会の議を経まして、その大学において進んで迎えておるわけであります。またその処遇が、日本内地における日本人教師よりもよろしいというのは、これは交換教授の通常の例であると考えております。日本人におきましても戦前から、また今日、ごく少数外国におられる方がありますが、その処遇せられるところは、おそらく、また現実として、日本において日本教育家処遇せられる以上のものでもつて、やはり交換教授として迎えられておると考えております。
  40. 渡部義通

    渡部委員 この点については質問を打切りますが、埼玉とか北海道大学等において、外人講師のために特別の経費をかけなければならない状態に置かれているという事実について、ひとつ調査をして、今度われわれの方に提出してもらいたい。
  41. 稻田清助

    稻田政委員 外人教師に対しまする予算は、特別に予算を組みまして、必要な経費を配当いたしておる次第でございます。
  42. 渡部義通

    渡部委員 そうだとすると、おかしいのです。外人教師については三万五千円しか使つてないと言われましたが、特別な経費を組んでいられるならば、その特別な経費はこの予算の中のどこに出ておりますか。
  43. 稻田清助

    稻田政委員 行政部費の中に組んでおりまして、いろいろそうした宿舎に関しまする施設費用が含まれております。
  44. 渡部義通

    渡部委員 どのくらいになつておりますか。
  45. 稻田清助

    稻田政委員 やはり一人当り月額にいたしまして三万円程度に当たると考えております。
  46. 渡部義通

    渡部委員 私の質問は一応打切ります。
  47. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  48. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 次に、教育公務員特例法の一部を改正する法律案内閣提出第二一号)(参議院送付)を議題とし、質疑に入ります。  なお一言つけ加えます。本件は参議院において修正議決されて本院に送付されたものであります。     —————————————
  49. 松本七郎

    松本(七)委員 本案が提出されました最初のときに、すでに質問いたしたのですが、そのときの政府の答弁で、はなはだ心もとない答弁がございましたので、その点もう一度確かめておきたいと思います。それは二十一條の二の職階制の問題です。「国立学校教育公務員の例に準じて、すべての公立学校教育公務員について実施する」という規定がなされておるわけですが、政府の答弁では、何だか国家公務員に職階制が実施できるようならば、あるいは公立学校教育公務員にもやれないことはないのではないか。このような至つて消極的な答弁であつた。職階制を、どのような職務内容の区分をやるのか、基準をどこに設けるのか、そういう点が、具体的にはつきりしておらない。その上に、あるいはやつてもさしつかえないのではなかろうかというような、確信なしにこういう規定を設けているものかどうか、はなはだ疑わしいのですが、その点もう少しはつきりした政府の意図を知りたい。
  50. 關口隆克

    ○關口政府委員 第二十一條の二につきまして、前回の御質問の際に申し上げましたことが、どうも確信がないというお話でございます。方針としては、率直に申し上げますと、職階制は、国の公務員であるところの教職員について、現在立案研究中で、そこででき上つてしまつたのではないのであるが、国の先生方の分ができれば、地方公務員であるところの地方先生方の分についてもできるのである、こういうふうに申し上げましたので、自信のないことを言つたというふうに聞えたのかもしれませんが、なお現在研究調査中でございます。その内容につきまして、現在までおぼろに考えられておるところを申し上げますと、たとえば、教授とか助教授とか講師というようなことから区別されて行く段階というものも考えられますし、また別に、校長であるとか、あるいは分校の主事であるとか、あるいは学部長、研究所の長とかいつたような、行政管理的な意味での責任ということを考えに入れまして、さような要素について階級というものも考えられる。それらのものを組み合せて職階というものはつくり得るのではないかというふうに思つております。  なおつけ加えて申し上げますと、参議院の場合に、やはり人事院総裁が見えましたのですが、そのときも、職階制というものは、現在の一般職の公務員についてつくられているあのシステムだけが、職階制であるというふうに考えられると、先生方にはちよつとどうかしらんという懸念も起るのであるけれども、しかし職階制というものは、現在一般職の公務員に対してつくられている職階制のようなものが、あれがすべてなのではないので、先生方には先生方に適当なものがつくり得るという自信を人事院でも持つておる。人事院と文部省は、共同してこの仕事を今研究中であるから、その点については御心配はないのではないかということを答えられておりましたから、蛇足でありますが、つけ加えてお答えいたします。
  51. 松本七郎

    松本(七)委員 今局長のあげられた教授とか助教授とか、そういうふうな要素というものは、はたして職階制の要素として妥当なものかどうか、はなはだ疑わしい。何か職階制をしがなければならぬという前提から、むりやりにそういう要素を引出しておるような感じがするのですが、人事院の言われる特別のそういう職階制の制度というものは、具体的に言うと、どういうふうなことになりますか、もう少し詳しく御説明願います。
  52. 關口隆克

    ○關口政府委員 それはまだ私の申し上げた程度しか申し上げる段階に至つておりません。教授、助教授というものは)職階制としてどうだろう、その区別がつくかどうかというお話ですが、これは大学の方についてお考えになりますと、やはり教授助教授にも、そこに区別があり、講座の担当だとかいうことも区別があり得ることと思つております。これは蛇足でありますが、一番問題になりますのは、小学校中学校先生の場合じやないかと思います。この方に一番問題が多いので、私の少し調べたところでは、たとえばカリフォルニアでは、やはり職階制を小学校先生方についてもつくつておる。これは日本の今級別推定表、あるいは俸給の表をちようど裏返しにしたようなかつこうに、それを裏打ちするものとして照合するような形にできておるように、私は見たのでございますが、どうしても現在俸給をきめて行くについても、何か基準というものが必要なのであつて、それがやはり責任とか、仕事のむずかしさというものとにらみ合せて、その表ができておると思うのでありますが、この次にできる、今研究中の職階制も、そいういう点について考えて行くというふうに御承知願いたと思います。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 教育公務員で職階制をしいている例が、外国のどこかにあるかどうか。今言われたアメリカのカリフオルニアでは、どういうふうな内容でやつておるか、アメリカ以外の外国で、そういう経験がはたしてあつたかどうか、そういう点はお調べになつたことがありますか。
  54. 關口隆克

    ○關口政府委員 私、あまり外国のことをよく知りませんのでんけれども、私の調べたところでは、アメリカで一、二あるように聞いております。その中で一番評判になつたのは、カリフオルニアであるというふうに聞いております。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 その内容は。
  56. 關口隆克

    ○關口政府委員 内容につきましては、あまりかた苦しいかつこうでなくて、割合にふわつとした、年限とか、学校で修得された学識と申しますか、そういうものを参考にし、基準にしてつくつて行つたように見えますが、なおこれは調査物を後ほどお届けいたしたいと思います。
  57. 渡部義通

    渡部委員 職階制について、関連して質問しますが、大学等の場合には、プロフエッサーとか、アシスタントというものは、身分的な関係を形成するような状態ではない。今まではあつたが、そうあるべきじやないと思う。というのは、大学の研究というものは、アシスタントなしには研究できないばかりでなく、御存じのように、アシスタントの優秀な人の共同研究が、プロフエツサーの業績を今日まで可能ならしめて来たし、今後もますます可能ならしめて来るであろうときに、このプロフエツサーとかアシスタントの中で、やがて身分制的な関係をも予想するような職階制をつくり出すということは、学校の民主化ということが叫ばれておる今日、非常にこのものに逆行する傾向にあるというふうにお考えになりませんか。
  58. 關口隆克

    ○關口政府委員 地方公務員法の二十三條の職階制のところを一応読んでみますと、「職階制においては、同一の内容の雇用條件を有する同一の職級に属する職については、同一の資格要件を必要とするとともに、」といつたような考え方でありまして、職員の職を、職務の種類及び複雑と責任の度に応じて分類整理するという考え方でありますから、これを取違えて、何か身分的な上下の関係というふうにとられると、これは職階制の趣旨を誤解されたということになると思います。この点については、やはり職階制の趣旨を解明し徹底することに、われわれとしては努めたいと思います。
  59. 渡部義通

    渡部委員 その考え方というものは、ただ文章に書いたり、しやべつたりすることにすぎないのであつて、現にその方針に基いて労働界とか、その他において職階制ができておる、官公労においてもできておる。官公労において、職階制の打破ということが、官公労労働者の最も重要な闘争の目標であつたということは、御承知でありましよう。これが闘争の目標であつたということは、職階制というものができて以来、職階制のそういう言葉の上の、紙の上に書いたことによつて規定されているのではなくして、現実に身分的な関係によつて規定されて、そしてそれが職階制の下のところにある人たちが非常に活動を制約されてしまうということに対する、自由の抑圧に対する闘いとして、官公労の闘いは非常に強力になつているわけです。現実にそういうふうになつているときに、大学のような——古来日本大学はそうであるが、非常に封建的な関係が強く、それが科学者としてあるまじきものでないほど、封建的なイデオロギーによつて貫かれているような現状においては、職階制が設けられるということは、ちようど官庁における職階制と同様の結果を来す憂いが十分にあるわけなんです。だから、われわれは大学のすべてが、平等の立場において、ほんとうの共同研究ができるような状態のもとで職階制が設けられるということは、一つはそこの職員たちの身分的な自由に対する侵害にもなりがちであるし、一つは研究の発展の上にも、非常に不利であるというふうに、現実の問題としては見なければならぬと思います。そういうときに、地方公務員法にこういうような文句があるから、職階制を設けなければならぬというよろな論拠からするとすれば、文部省としては、非常に学問というものの性質について、大学あるいは教師というものの性質についての理解が足りないことになりはせぬか、この点どうですか。
  60. 關口隆克

    ○關口政府委員 申し上げます。同一の雇用條件、同一の仕事に対して同一の待遇をして行きたいというので、報酬、給料をきめて行く場合にも、やはり責任の限度、仕事の困難さというものは、考えられて行かなければならぬ。そういう趣旨で職階制をつくつて行く場合に、その職階制の趣旨の徹底を欠いていること、それからでき上つた職階制の運用上に、あるいは十分慣熟しないところがある。そこから起つて来る誤解あるいは不平、不満、あるいは円滑に行かないくしやくしやした何かおもしろくない気持とかいうようなものが、そつくりそのまま制度それ自体の欠陥だということになるかどうか。私どもの見るところでは、職階制がまだできたてであつて、そのことに対する趣旨の徹底を欠いておるということが、私は第一のように思われる。その次は運用上慣熟せざるところ、双方ともよくわかつていないというようなところから、誤解が生じたり、おもしろくない空気が出たりするのであつて、やはり職階制それ自身を改善して行く。そして運用に慣熟して行くならば、私どもは職階制それ自体を不必要というのでなくして、運用の問題、趣旨の徹底の問題ではなかろうかというふうに考えております。
  61. 渡部義通

    渡部委員 学問の世界で申しますと、そういう点から見ても、非常に不合理だと思われる理由があると思うのです。たとえば、なるほどプロフエツサー授業を受持つというような点については、責任があるでしようし、また研究の成果を教授の名前で発表するというような特殊な——これはむしろ利益を得ているわけですが、特殊な位置にはあるでしよう。しかしながら、プロフエッサーが大体アシスタントに対して科学上のテーマを指示したり、あるいはテーマの展開の方法についてアシスタントに一定の示唆を与えて行くというような点では、重要か意味を持つておるでしようが、しかしながら、アシスタントの方にしますと、私の友人たちは毎日顯微鏡あるいは機械を持つて、ほとんど余裕なく、自分の時間を持たないで、それに没頭しているわけなんです。しかしそういう者がいなかつたならば、教授の学問の成果は全然あがらない。その任務の軽重という点からいえば、そういう点に少しも任務の軽重なない。そういうアシスタントの縁の下の力持によつて、しかも科学的な良心をもつて強力に仕事を進めて行くところに、学問の成果はあがるのであつて、このアシスタンドを教授と比較して、職階的に差別づけようというようなことは、学問の世界にとつては、私は少しも合理性がないというふうに考えるわけですが、この点はどうですか。
  62. 關口隆克

    ○關口政府委員 今のお話を伺いますと、教授と助教授との区別は認める。しかし教授は助教授の助力なくしては研究はできないし、助教授も教授と同じように研究しているのであるから、それを職階的にだけ区別するのはおかしいというお話のように伺うのですが、教授、助教授というものがあるのは当然であつて、それによつてまた俸給の区別もできておるということは、おのずからそこに一つの特殊の責任の重い軽い、あるいは広い狭いと、仕事のむずかしさ、やさしさというようなところに、何らか区別がつけ得るのだということになるのじやないかと思います。
  63. 渡部義通

    渡部委員 学問の世界には、仕事のやさしさとかむずかしさという区別はありません。どんな仕事をしても、それが学問である限りは、同じだけの仕事の困難さが伴うのであつて、しかもその人たち生活しなければならぬ。ところが、職階制が設けられると——私この前東大の職階制による給料を見ましたけれども、上の方では千数百円も一挙に増俸されるときに、下の方は五十円ぐらいの増俸しかないというふうな不公平があるわけです。これはもともと助手とか副手というような人たちも、非常に重要な学問的任務を果しながら、しかも食えない生活を続けて行かなければならぬ。日本学者は、一般にそうですけれども、しかもそれに職階制がついたのでは、今東大の例をあげた点でも明らかなように、下の方は生活的にも全然成り立つて行かない。しかもその人たちは、終日終夜研究室に閉じこもつて、顯微鏡やその他の機械とにらめつこをしていなければならぬというような、学問上基礎的な非常に重要な仕事を続ける人たちにとつて、職階制が設けられることは非常に不利である。そうだとすれば、この前私は、職階制が何級ぐらいつくのでしたか、ちよつと忘れましたが、非常に多くの職階制がつくらしいですが、そんなことをしたのでは、下の人たちはまつたく生活に困つてしまうし、またその人たちが、十分な研究活動を続けることができない結果、日本の学問全体の衰頽を来す憂いさえあると考えるのです。こういう理由から、われわれは職階制には反対しなければならぬと考えるわけであるが、単に公務員であるという理由から職階制を設けるというのでは、文部省として学問に対する考え方が、はなはだ不確かであるというふうに考えるわけであります。従つて文部省としては、学問を取扱う人たちに対しては、特別の考慮を払うべき根拠があり、またそれに重要な意味があると思うのですが、そういうふうには考えられませんか。
  64. 關口隆克

    ○關口政府委員 先生方についてつくる職階制ができ上つたあかつきにおいて、下級の方の先生方が非常に不利になつて生活が非常に困窮する結果を来しはしないかというお話でありますが、そういうことのないようにつくつて行きたいと考えております。この点については、人事院の総裁も、参議院の委員会の際に、そういうことは触れておられたように伺いました。それから研究それ自体について職階をつけることはおかしいというお話がありましたが、研究それ自体のみならず、教授としては、研究を指導して行くという責任、いわば管理的な意味の責任をあわせて持つていると思うのでありまして、そういう責任ということは、やはり研究それ自体に加えて考えられてしかるべきではないか、そういうふうに考えております。
  65. 渡部義通

    渡部委員 文部省は、職階制をやつても、給料の点、生活の点、研究活動の便宜の点において、不便がないようなものをつくるという天国のような考え方を持つておられるようだが、そういう職階制ができればけつこうです。まあお手並を拝見するとしまして、それは一応終ります。  一応質問を他に移しまして、お聞きしたいことは、最近不利益処分の問題が諸方に起きており、今度の特例法の一部改正の場合にも、不利益処分を受けた者に対するいろいろな権限の問題が出て来るわけですが、現在不利益処分を受けている者のおもなる原因は何であるか、これは調査されておりますか。
  66. 稻田清助

    稻田政委員 東大の例について申し上げますれば、これはやはり公務員といたしまして職務妨害、その他公務員として不適当な行動があつたということが、不利益処分審査の前提として交付いたします文書に書いてあつたわけであります。それから神戸大学の例について申し上げますと、これは大学予科が廃止になりました関係で、当然職務を失うということがその事由に記載されております。
  67. 渡部義通

    渡部委員 現在最もおもなるものは、どういう点から不利益処分を受けておるのかという点を、全国にわたつてお聞きしたい。
  68. 稻田清助

    稻田政委員 教育公務員特例法といたしまして、不利益処分、つまり事前審査の前提となります処分を招来する事案につきましては、ただいま申し上げました二案があるわけであります。
  69. 渡部義通

    渡部委員 そうしますと、一つは東大の場合のように、公務員として行き過ぎの行動をとつたという点にあり、他は現在のところは、学校の再編成にからむ事情によるということになるわけですが、東大の場合に、公務員としての行き過ぎがあつたという点について、文部省はどういう報告を受けておるか。
  70. 稻田清助

    稻田政委員 文部省といたしましては、その審査の前提として交付いたしました調査書によりまして、事情を承知、たしておるだけであります。
  71. 渡部義通

    渡部委員 従つてどういう点が行き過ぎであるというふうに考えられておりますか。
  72. 稻田清助

    稻田政委員 大体五條の設けられておりますのは、任免権者及びそれに属しまする人々が、処分について判断いたします前提として、大学の自治を角重して、大学で審査せしめるわけでありますから、現在大学において審査中の事案につきまして、われわれといたしまして判断を申し上げますのは、不適当だと考えております。
  73. 渡部義通

    渡部委員 それでは、一般的に言いまして、現在の日本大学教授以下助手、副手に至るまで、これは十分に給料が保障されたり、あるいは研究活動がかなり自由にでき得るような施設が設けられたり、言いかえれば教師あるいは研究者として十分の待遇を受けておるのであるというふうにお考えですか。
  74. 稻田清助

    稻田政委員 これは程度の問題だと考えております。現在置かれております状況が、決して理想的な、まつたく間然すべからざる状態だとは考えておりませんが、そううた研究の充実等につきましては努力いたしまして、ごらんいただきました明年度予算等につきましても、相当研究費の増額等をはかつておるような次第であります。
  75. 渡部義通

    渡部委員 これは不利益処分を受ける場合の、最も重大な理由になるわけです。現在、あなたも認められておるように、教師及び研究者が、決して適当な待遇を受けておるとは考えられない。いわんや具体的な事情を言えば、先ほど工業大学の例で言いましたように、内職をせずに生きて行けるような教授はわずかに七%ぐらいにしかすぎない、みな内職しなければならぬというような、非常な生活上の困難が、全部の日本教師たち及び研究所員たちを襲つておるのでありまして、その結果、教師たちの中には、非常に健康までも破壊しておるという状態があるわけです。たとえば、私の友人で東大の有名な教授ですが——名前は言いませんが、一人はそのために結核が非常に悪くなつて、どうにもならなくなつておる。それから一人は、工学部の有名な教授ですが、これは最近栄養失調のために、眼底出血で勉強さえもできないという状態に置かれておる。しかもこれらの人たちは、日本でも最もすぐれていた学者であるがために、いろいろな仕事をして、他の教授たち学者たち、研究者たちよりは、収入も比較的多いのではなかつたかと思われるような人たちさえも、こういう状態にあるのであります。こういうふうな生活状態に置かれておるので、生活を擁護したり、学問を自由になし得る諸條件をつくり出すような動きというものは、全国の大学から小学校に至るまでの教員を通じての大きな運動になつたことは御存じでしようし、そのために組合運動というものが起きているわけであります。従つて、組合運動をしたからといつて不利益処分を受けるということが問題じやなくて、その前提として今日のような状態に置かれておることが、組合運動を行い、そうしてその運動の指導者たちがこの活動をしなければならないという状態に追い込まれているのではないか。この事実を、文部省の方としては認められておりますか。
  76. 稻田清助

    稻田政委員 教員の待遇改善等につきまして、ある希望を持ち、またその実現をはかる熱意を、かりに持つておつたといたしましても、その行動が国家公務員法の分限規定に違反いたしますれば、やはりそこに懲戒事由は生じなければならぬ性質のものだと考えております。
  77. 渡部義通

    渡部委員 組合の運動というものは、御存じのように、決して指導者個人の意思や、個人の行動が中心になるものではないのでありまして、これはどの組合でもそうであるが、組合の当時の情勢に応じて、組合の決定した方針に基いてまた組合から命ぜられている任務の当然の結果として、その組合指導者たちは活動しなければならぬし、活動することを義務づけられているわけです。従つて、こういう人たちが、他の職員全体のなさなければならない動きを代表して、特にある時間をそのために費したとか云々というようなことが、不利益処分の対象になるというふうには、われわれとしては考えられないし、そう考えることは、組合運動というものの全性質を無視することであり、また実際問題として、組合活動に非常に強い制限を加え、組合の発達を押えてしまう結果になると思うのですが、この点について、文部省の見解を伺います。
  78. 稻田清助

    稻田政委員 国家公務員の職員団体の幹部が、職員団体の活動に熱心であることそれ自体については、もとよりけつこうだと考えておりますが、その行動において、やはり国家公務員法その他に規定いたします分限の限度を越える場合におきましては、とがめられる性質のものだと考えております。
  79. 渡部義通

    渡部委員 それがとがめられるかとがめられないかということを決定するのは、一部の大学の管理者とか、文部省等がきめるべきではなくて、やはりその時代の全情勢の中で、どういうことを組合として要求し、通さなければならないかということによつて一つはきまるし、第二には、東大の問題について具体的に申しますと、面会を強要したというようなことが、しばしば指摘されておりますけれども、東大の職員組合としては、職員全体の利益と学問の自由、あるいは組合としての、組合員としての、日本人としての政治的な活動の自由というような要求を当然持つているのであり、しかもあの事件の起きた当時は、大学教組も、日教組の一部として、従つて全官公の一部として行動しなければならなかつた。しかも単に行動しなければならなかつただけではなくて、もう生活のぎりぎりまで参つてしまつて、年末には手当をどうしても必要とする。そのためには、年末までに解決しなければならぬというので面会に行く。面会に行くけれども、先方が面会しない。ここに問題が一つあると思うのです。一方は生活問題であり、しかも単に自分個人の生活問題ではなくて、全職員生活問題であり、しかも組合から課された自己の任務としてその仕事を果すために、しかも一定の期間内にそれを果さなければならないために面会する。一方は会わないというけれども、この問題を解決するためには、会わなければならぬから面会を強く求めるのであつて、これが面会強要という形になり、不利益処分の一つの原因にされているということになれば、罪は職員組合の指導者の中にあるのではなくて、会わなかつた人たちにも罪があるということになると思うのですが、こういう点についての、文部当局としてのお考えはどうですか。
  80. 稻田清助

    稻田政委員 具体的に、東大の事案につきまして、文部省関係の意見を表明することは、前申し上げましたように、この五條の精神から、目下審査継続中でありますので、われわれとしては差控えるのが当然だと考えております。お話のようないろいろな角度に立つて大学管理機関は、その良識、その誠意において適切な審査をしていただけることと期待しております。
  81. 渡部義通

    渡部委員 私は東大を例に引いたが、これは単なる例であるが、しかしながら、私はこの例をもつて一般的な問題を質問しているわけです。生活問題として、一定の時期に会わなければ、どうしても解決できないときに、先方が会わないということであつても、これは組合の指導者として、あるいは組合から義務を負わされた者としての責任として、会わなければならぬ、そういう問題が起きて来るわけです。そういう場合に不利益処分を受けることになると、これは東大だけの問題ではなくて、全国の問題になる。従つてこの問題についての文部省考えが、やはりはつきりしていなければならぬ。決して一方的な強要ではない、会わなければならなかつたから問題が起きたのだという点について、文部省として、はつきりした考えを持つておられるはずだと思いますので、伺いたいのであります。
  82. 稻田清助

    稻田政委員 一般論といたしまして、職務妨害、あるいは職場の秩序を乱しますれば、それ自身といたしまして、とにかく分限に違反するという問題が起り得ると思います。ただその原因につきましては、情状の酌量というような問題につきまして、審査すべき機関がいろいろ考慮する余地はもちろんある問題だと考えております。
  83. 渡部義通

    渡部委員 問題は、一方的に起るということは絶対にありません。必ず問題というものは、相互の関係の中でのみ起るのであつて、組合運動がある問題を要求して闘わなければならぬということは、当時の政治的、経済的な政策及び諸條件によつて起るのだし、組合の人たちが積極的にある問題を解決するために行動しなければならぬということは、この大学当局や、文部省なり、当事者たちの一点の態度と関連して問題が起るのであつて、一方的に、当面の組合運動に参加し、その指導的な任務を果した人たちの責任に帰することは間違いである。その点を認めなければならぬが、この点はどうですか。
  84. 稻田清助

    稻田政委員 その点につきましては、一々具体的問題につきまして現われました形態と、それを導くに至りました情勢とを判断して決定すべき問題だと思つております。
  85. 渡部義通

    渡部委員 それでは、具体的な点は、一応ここでは別といたしまして、このような状態のもとで、決して一方的に問題が起されるのではない。公務員たる者の域を越えた行動と言うけれども、これは決して一方的に起るものではないのであつて、しかも具体的な事情の場合には、その具体的な関係がはつきり示されなければ——不利益処分というものが示されて、その理由が明らかにされなければ、不利益処分というものは受けらるべきではないということになるわけです。そこでこの五條というものが、私は問題になつて来ると思います。第五條に、不利益処分を受けた者が今度の改正法案によると、公開審理も受ける権利は持つていないことになる。しかもそこで非常に多くの制約を受けることになりますが、今申しましたように、決して一方だけの行動によつて問題が起るのではなくて、それは相手の行動によつても問題が起るということを考えれば、やはりこの不利益処分を受けた者の側の利益を十分に保障し、十分にその利益を主張し得るような諸條件をつくり出すことこそが、民主化であり、人権を守ることであり、学校関係についていえば、学問の自由、学校の民主化を徹底させるものであると考えるのに、逆に出ているのは、どういうわけですか。
  86. 稻田清助

    稻田政委員 第五條の設けられた趣旨を考えますれば、これは任命権者がいろいろ処分いたします前提といたしまして、大学の自治を尊重するという意味合いから、大学管理機関それ自身の審査を前提とした規定だと考えております。従いまして、大学管理機関が真実を把握するに必要な種々の方法を、その管理機関自身が定めるところにまかせるのが適当だという意味合いから、改正をいたしたわけでございます。
  87. 渡部義通

    渡部委員 それでは大学の自治どころではない、むしろ反対に、管理者が不利益処分を受ける者に対して、それの処理方法を管理者側に有利に解決し得るような状態に、法案が改悪されているわけです。たとえばこの公開審理がなされないことによつて、具体的にどういう不利益をこうむるか、あるいは参考人なり、代理人を出して、十分に自分の立場を主張し、明らかにし得るような條件を、今度の法案でなくされることによつて、どういう不利益をころむるかということになりますと、一例をあげると、東大の問題で、私は特別弁護人になつて、ずつと評議員会に出て、双方の陳述の応答を聞いておつたわけです。公開審理をされ、特別弁護人その他の代理人が出ることができ、それから当局者側、つまり不利益処分をした側の方から証人を呼んで、その人に対する反証をどんどんあげることができることによつて、不利益処分を受け人たちがどういう経験を経たかと申しますと、こういうことがあるわけです。たとえばこれこれの事情であつたので、これが一つの不利益処分の理由になつたという一事があげられている。またそういう書面が大学当局側、あるいは大学管理機関の一部に属する人たちから書類として提出されている場合に、その書類の内容について一々追究し、一々具体的な証拠をあげさせて行く、そうして一々その当時の状況及び心理状態に至るまで追究して行きますと、向うで出した書類に書かれた根拠がくつがえつて行きます。その人自身がなるほどそうではななつたということを認めざるを得ないことになつて行く。そうすることによつて、初めて不利益処分の根拠が一つ一つくつがえつて行くことによつて、不利益処分を受けた人たちが自分の行動の正しかつたということを主張し得る状況がつくり出されて来るわけです。もし今この法案によつて、公開審理をするもしないも、不利益処分者から要求いたしますれば、開かなければならないという今までの状態ではなくて、開いても開かなくてもいい、大学当局がそれをやつておれば、かつてにきめればいいので、また参考人は、必要があれば大学当局は呼ぶが、必要がなければ呼ばない。さらにその他のいろいろな問題がありますが、こういう形になりますと、不利益処分を受けた人は、一方的に大学管理機関の提出した書類に基き、しかも大学管理機関が必要とするような手続のもとに、一方的にきめられる憂いがあつて、不利益処分を受ける者にとつての権利の侵害は、非常にはなはだしくなると思います。従つて、こういうふうな條項を設けられるということは、今後ますます生活の問題や、学問の自由の問題等に関連して、組合活動、その他の活動が学内に起ると思う、また起る條件にあります。そういう場合に、不利益処分を受ける人たちがどんどん多くなり、しかもその人たちが、一方的に今申しましたような形できめられて行くことになると、これはその人たち個人にとつて権利の侵害ということだけでなしに、日本の学園の民主化の上から言いましても、日本の学問の自由な発達の上から言いましても、困難な状況が出て来るわけなんです。従つてこれは非常に改悪された結果になると思います。
  88. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 ちよつと渡部君に申し上げます。国会法その他にも、討論と質疑とはつきり区別されてありますから、討論にわたらざるよう、そういうような心構えでもつて今後やつていただきたいと思います。
  89. 稻田清助

    稻田政委員 もしこれを争訟形態と考えまして、当事者訴訟主義に立つて考えれば、当事者はあくまで争いたい期間だけいろいろな方法をもつて争うということも、一応考えられるのでありますけれども、何分これは行政手続の領域に属することでもあり、ことに能率とスピードを要すべき人事に関する手続でありますので、大学管理機関がその良心、その名誉にかけまして、ことに同僚を審査いたすのでありますから、真実を把握するという点につきまして審議を盡して、必要とするならば公開をする、必要があれば弁論を聞くというような点に信頼いたしまして、適切な性質のものだと考えております。
  90. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 本日の会議はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後零時三十七分散会